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第24話『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。空が荒れる日――』 風が止んだ。 強い日もある。弱い日もある。 でも、まるで空気が動かない日なんて、いつ以来だか思い出すこともできない。 燦然と輝く太陽。しかし、時折、通り過ぎる暗雲が大地に影を落とす。 上空では、緩やかな風が流れているのだろう。 白い雲は高く、黒い雲は低く、高低差のある雲が別々の速さで移動する。 二色の雲の隙間から、光の筋が後光となって十字に走る。 畏敬すら感じる雄大な空の景観。初めて見る空の異変に、せつなは本能的な恐怖を感じていた。 「せつな、どうしたの? 急がないと遅刻しちゃうよ?」 「ええ、ごめんなさい。ねえ、ラブ。台風の前っていつもこうなの?」 「う~ん、よくわからないよ。あたしは雷が鳴らない限りは気にしないし」 「雷も怖いけど、もっと良くないことが起こりそうな気がするの……」 授業が始まっても、せつなは空模様の移り変わりが気になって、ずっと窓ばかり見ていた。 それは他の生徒も同じようで、先生も特に注意しようとしない。 不自然なくらい静かだった外の様子が変わっていく。 再び風が吹き始め、上空の青空を包むように、南から本格的に厚い雲が押し寄せる。 パラパラと小雨が振り出した時点で授業は中断され、昼を待たずして全校生徒は帰宅を命じられた。 「あ~あ、今日の給食楽しみだったのにな」 「もう、ラブったら。それどころじゃないでしょ?」 せつなが、普段とは表情の違う商店街を眺めながらたしなめる。 人々の笑顔と、幸せが集まる場所。それがクローバータウンストリートだった。 道を歩いているだけでお店の人から声をかけられたり、挨拶したり。買い物する人、散歩する人で賑わって。 そんな喧騒は鳴りを潜め、シャッターを閉じた店舗ばかりが並び、閑散とした雰囲気が漂う。 「開いてるのは、日用品と食料品のお店だけね」 「うん、おかあさんは遅くなるって言ってたね。水とかがよく売れるからって」 流石に、ラブも不安そうに街の様子を見渡す。 台風は、毎年、必ずと言っていいほどやって来る。でも、今回は超大型と呼ばれる規模の大きいものだった。 大事な街、大切なお店の数々。二人で空を見上げながら、大きな被害が出ないことを祈った。 『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。空が荒れる日――』 桃園家の庭で庭木の支柱を立てていた圭太郎が、手を止めて帰宅したラブとせつなを迎える。 既にアンテナの補強を済ませ、ゴミ箱や鉢植え等も、全て家の中に移してあった。 「お帰り。ラブ、せっちゃん」 「ただいま、おとうさん」 「おとうさん、お仕事じゃなかったの?」 「お母さんから連絡があってな、早引きして帰ってきたんだ」 「そっか、予報よりも早く荒れそうだもんね」 「私も何か手伝うわ」 庭の手入れや大工仕事は圭太郎に任せて、ラブとせつなは溝と排水溝の掃除を受け持った。 準備の遅れている近所の家の手伝いもしていたら、あっという間に夕方になった。 既に空は分厚い雲に覆われていて、太陽なんてどこにも見えない。 それなのに、空が赤い。 夕日とは異なる光景。一面に広がる雲が、絵の具でも落としたかのように真っ赤に染まっていた。 「明日が本番らしいが、今夜から荒れるかもしれないな。ラブとせっちゃんはもう家の中に入っておくんだ」 「おとうさんはどうするの?」 「僕は今からお母さんを迎えに行く。そろそろ終わる時間だろう」 「あたしも行こうか?」 「私も行くわ」 「ありがとう。でも、まだ風も雨も弱いから大丈夫だ」 圭太郎を見送ってから、ラブとせつなは万一に備えた避難用具をカバンに詰めていく。 懐中電灯・ローソク・マッチ・携帯ラジオ・予備の乾電池・救急薬品・衣料品・非常用食料・携帯ボンベ式コンロ。 全部入れたら、ちょうど大きなカバン四つになった。 「こうしてみると、なんだか旅行の準備みたいだね」 「そうね、役に立たないといいのだけど……」 空の色が赤から黒に変わってきた頃、あゆみと圭太郎が帰宅した。 外の雨はますます激しくなっていて、二人ともレインコートを羽織っていた。 「ただいま。ラブ、せっちゃん」 「遅くなってしまったよ」 『おかえりなさい!!』 家族が揃ったことで、ようやくせつなにも笑顔が戻る。 あゆみの買ってきた食材で、三人で夕飯を作ることにした。 「今日はゴーヤと、じゃがいもを買ってきたのよ」 「どうしてゴーヤなの?」 「沖縄から上陸するから、そこの食材を縁起を担いで食べるといいらしいの」 「じゃがいもは何に使うのかしら?」 「台風の日は、なぜかコロッケがよく売れるのよね。だからコロッケも作っちゃいましょう」 「うん。なら、それは私に任せて!」 「あたしはゴーヤチャンプルを作るよ」 「あらあら、じゃあわたしはお吸い物でも作ろうかしら」 普段通りの楽しい夕ご飯。こんな時でも、家族が揃っていれば不思議と安心できる。 話題は主に台風のお話だったけど、三人とも、不安を煽らないように冗談を交えて聞かせてくれた。 「僕が子どもの頃は、台風が来ると、なんだかワクワクして楽しかったな」 「お父さんは、学校が休みになるのが嬉しかったんでしょ?」 「ははは、それもあるなあ」 「えぇ~信じられない。学校に行けないと寂しいじゃない!」 「そんなことよりも、街が壊れちゃわないか心配だわ」 「わたしの父、おじいちゃんはね、台風の日でも仕事してたわ」 「畳職人だったのよね?」 「ええ。『この家も職人の手によるものだ、滅多なことじゃビクともしねえ』ってね」 小さな台風なら、せつなも昨年に経験している。しかし、それは直撃もしておらず、大きな被害もなかった。 今回は規模が違う。書籍やテレビで、台風の本来の破壊力を知ってしまった。この街にも、同じことが起こるかもしれない。 青い顔をしているせつなを心配して、食事が終わっても四人は一緒に過ごした。 テレビを見ながら、みんなで体を寄せ合うようにして居間で過ごす。 ラブはせつなが小刻みに震えているのを見て、そっと、自分の掌をせつなの手の上に重ねた。 「せつな、怖いの?」 「うん。空が荒れるなんて、私には馴染みのないことだから……」 「そっか、ラビリンスじゃ天候すら管理されてたんだよね」 「信じがたい話だなあ……」 「安心だけど、それも寂しい気もするわね」 「私も、天気は決まってない方が好きよ。でも、自然は優しいだけじゃないのね」 「心配いらないよ! あたしがついてるじゃない!」 「わたしも頼ってもらわなくちゃ」 「僕が補強したんだから、絶対に大丈夫だ」 「うん、ありがとう」 せつなは努めて笑顔を作る。でも、不安は晴れなかった。 せつなが心配しているのは、自分のことではなくて、この家のことだけでもなくて―― 大好きなこの街が、壊れてしまうことだったのだから。 天と地を貫く眩い閃光。 月の光もなく、星が輝くこともない、 暗く、深い、漆黒の闇を、一瞬にして白く照らし出す雷光。 大量の雨粒が地表に叩きつけられる騒音の中にあって、一層の存在感を持って轟き渡る雷鳴。 この世界では古来より「神鳴り」と恐れられた、大自然の脅威の一つ。 「なのはわかるんだけど……ちょっと脅えすぎよ? ラブ」 「いや、だって怖いよ? って、キャアァァ――!!」 「はぁ~、それじゃ自分のベッドには戻れそうにないわね。しょうがないから一緒に寝ましょう」 「えへへ、やったね!」 雷の被害にあって命を失う確率は、一億分の一とも言われている。 ある意味、もっとも被害の少ない自然災害なのだが、ラブの言うには危険だから怖いわけではないらしい。 「キャアァァ――!!」 「はいはい、大丈夫よ」 先ほどとは、まるで正反対。せつなは、脅えてしがみ付くラブの背中をさすりながらクスリと笑った。 この様子では、朝まで寝かせてもらえないかもしれないと。 不思議なことに、そんな頼りないラブの体温を感じていると、さっきまで恐れていた台風の不安も薄らいでいくのだった。 雷が止んだのは、深夜遅くになってからだった。そこで、やっとラブが眠りに付く。 しかし、その後も暴風雨は容赦なく襲いかかる。 窓を叩く雨の音によってせつなが目を覚ましたのは、本来なら学校に遅刻してしまうような時間だった。 「ラブ、起きて。もうこんな時間よ」 「うう~ん? まだ暗いよ?」 「暗いのは厚い雲が空を覆っているからよ。風も昨日にも増して強いわ」 「どれどれ……。キャッ!」 外の様子を確認しようとしたラブが、慌てて窓を閉める。 突風と、それによって運ばれた雨が、ラブのパジャマを容赦なく濡らした。 「これは、確認するまでもないね。今日も学校は休みだよ」 「それはわかるけど、商店街や学校は大丈夫かしら?」 朝だというのに外に光はなく、まるで夜のように暗い。 真っ黒な厚い雲が、空を一面に覆う。微かに東の空が赤いのが、朝日の残滓なのだろう。 空は変化がないように見えて、よく目を凝らせば、雨雲がかなりの速度で移動しているのがわかる。 秋の高い空とは対照的に、厚い雨雲は地上に降りようとしているかのように、威圧感を伴って低く低く漂う。 「なんだか、雲が落ちてきそうで怖いわね」 「バケツをひっくり返したような大雨も、この雲から生まれてるんだよね。だから重たいのかな?」 「クスッ、確かにこれだけの雨を降らせる雲が、空に浮かんでいるのは不思議ね」 「こんなに強い風が吹いてるんだもん、雲なんてビュンって飛ばされちゃいそうなのにね」 せつなにとって、この世界の出来事は常に驚きと発見に満ちている。 ラブもそんなせつなと共に過ごすことで、多感な感性が更に敏感になっていた。 これまでなら、静かに通り過ぎるのを待つだけの台風にも、こうしてあれこれと想いを巡らせる。 雲は、大気中にかたまって浮かぶ水滴や氷の粒で構成されているらしい。 高度も大きさもバラバラだが、質量など無いに等しいだろう。本質的には霧と全く同じものなのだとか。 そんなものが台風の風圧にも散り散りにされず、地上に洪水をもたらすほどの大雨を降らせ、木々をなぎ倒す落雷をも発生させる。 なんて神秘的な存在なのだろうと思う。あらためて、祖国ラビリンスが失ったものの大きさを知る。 「ラブ~、せっちゃん~、朝ご飯ができたわよ」 『は~い!!』 食卓には圭太郎が先に座っていて、珍しく新聞を広げていた。行儀が悪いとあゆみに注意される。 頭をかきながら、ラブとせつなに気が付いて挨拶をした。二人も笑って返事をする。きっと、台風の被害が気になるのだろう。 暴風警報で、当然のように学校は自宅待機。一部の地域では避難勧告も出ているらしい。圭太郎とあゆみの仕事も休みになった。 テレビのニュースでは、屋根の一部がはがされたり、自宅の一部が水没したりと、痛々しい報道が続く。 その都度、せつなの表情は曇っていく。何もできないとしても、ここでじっとはしていられない。そんな気がしてくる。 「おかあさん。私、食事が済んだら外の様子を見てくる」 「ダメです!」 「危ないことはしないわ! テレビじゃこの辺りは映らないもの。ちょっと見に行くだけだから」 「ダメと言ったら、ダメよ。外に出ると危ないからお休みなのよ」 「でもっ!」 「せつな。あたしたちは、あたしたちにできることをしようよ」 「私たちにできることって?」 「えっと、トランプ遊びとか、録画しておいた映画を観るとか」 「…………」 「あはは。ダメ……かな?」 「せっちゃん、自然に対して人が出来ることはないの。それよりもラブの勉強を見てあげて」 「わかったわ、おかあさん。ラブ、今日の私は特別に厳しいわよ?」 「お手柔らかにお願いします……」 昼過ぎになって、更に台風は勢いを強めた。まるで地震でも起きたかのように家が揺れ、ミシミシと軋みを上げる。 圭太郎とあゆみはそれでも落ち着いていて、「大丈夫よ」と微笑んだ。 結局、勉強の後は本当にトランプで遊んだり、映画を観たりして過ごした。ただし、あゆみと圭太郎も一緒に。 家族四人でお出かけすることはあっても、こうして一日中家で一緒に過ごすのは初めてだった。 せつなは不謹慎だと思いつつも、子どもの頃は台風が楽しみだったと言った、圭太郎の気持ちが少しだけわかるような気がした。 台風のような非日常でしか、得られない時間がある。そして、発見があるのだと。 暴風雨は、強くなったり、弱くなったりを繰り返しながら、深夜まで続いた。 流石に慣れてきたのと、やっぱり緊張が続いて疲れていたのだろう。その日はみんな早く布団に入って、ぐっすりと眠った。 「なに……これ?」 昨日とはまるで別世界。どこまでも青く澄み渡る空は、かつて見たこともないくらいに美しかった。 これが――台風一過。台風が過ぎ去った後、清清しい天候になること。 でも、せつなには、そんな空を楽しむ心の余裕なんてなかった。 「ひどい……。ずいぶんやられちゃったね」 「こんなのって……」 「せつな?」 「こんなのって、こんなのってないわっ!」 支柱を立てたにも関わらず、大きく二つに折れた庭の木。 建物の一部が損壊し、あちこちで看板や旗が引き千切られた商店街。 なぎ倒されて、へしゃげた駅前の自転車の山。ブロック塀ごと倒れてしまった学校のフェンス。 休日で生徒の居ない校庭では、数人の教師がゴミの回収作業に追われる。 四つ葉公園の美しい紅葉は、見る影も無いほどに葉が散って、剥き出しのハダカの枝が痛々しく連なる。 真っ赤な絨毯と感じていた落ち葉は、風で飛ばされて四方八方に散乱する。もはや、秋の風情の欠片も感じられない。 「自然は、美しくて、優しくて、心を豊かにしてくれるものじゃなかったの?」 肌を撫でる爽やかな秋風ですら、今のせつなには暴風の名残のように思えて憎らしかった。 街中を駆け回って、クタクタになった先にたどり着いたのは、先日、写生会でモチーフにした四つ葉公園の湖の畔だった。 無残に散った葉っぱは、風に散らされて水面を覆う。 ロープで繋がれていたであろう数隻のスワンボートは、湖の中央で転覆していた。 「帰らなきゃ。きっと、みんな心配してる……」 フラフラと、せつなは歩き始める。 一つ一つの被害なら、かつてのラビリンスの襲撃ほどではないだろう。 でも、ここまで広範囲に、一度に何もかも滅茶苦茶にするなんて。そんな暴力がこの世界にあるだなんて、認めたくなかった。 どの道を通って帰ってきたのか、自分でもわからない。ふと気が付けば、せつなは商店街に戻ってきていた。 なるべく、足元しか見ないように歩いてきたからだ。 目の前には駄菓子屋さんがある。お婆さんが低いキャタツに乗って、壊れた日除けを外そうとしていた。 「おばあさん。それ、私にやらせてください」 「おや、せつなちゃんかい。助かるよ」 その後も、一通りの掃除や後片付けを手伝った。 全てを終えて帰ろうとするせつなを、お婆さんが引き止める。 「お待ち、疲れたろう? そんな時は甘いお菓子が一番さね」 「でも……」 「いいから、お上がり。そんな顔をしてる娘を放っておけるもんかい」 話したいことがあるからと、強引に店の中に押し込まれる。 ちゃぶ台の前で正座するせつなに、熱い緑茶とお店のお菓子が振舞われた。 「泣きそうな顔をしてたよ。何かあったのかい?」 「何かって……。何もなかった場所なんて、どこにもなかったわ」 「そうだね。起きちまったことは、クヨクヨしたって始まらない。そうは思わないかい?」 「ラビリンスなら……。ラビリンスの科学力なら、台風だって押さえ込める。天災なんて失くすことができる」 「そういや、お前さんはプリキュアの一人だったね。でも、あたしはそんなの御免だね」 「どうしてですか? こんなに酷い目にあったのに」 「人間ってのは傲慢な生き物でね。どんなに幸せに恵まれたって、すぐに慣れちまって感謝の気持ちを失ってしまう。 だから、時々こうやってガツンと神様に叱ってもらう必要があるんだよ」 「この街の人たちは、叱られるようなことなんてしてないわ!」 「まあ高いところにいる神様にゃ、良い人悪い人なんて区別は付かないのかもしれないね」 「だったら、そんな神様なんていらないわっ!」 「要るんだよ。自然を畏れて、その恵みに感謝する心。それを失わないためにはね」 珍しく饒舌なお婆さんの言葉に、せつなは黙って耳を傾ける。 人間は自然の一部であり、自然を排除するのではなくて、共存してその力を借りることで発展してきた。 信仰や宗教、祭りや儀礼、詩歌や踊り、絵画や彫刻、住まいやエネルギー。せつなが愛する、この街の全てもまた、自然から生まれたのだと。 自然の力に「八百万の神々」を感じ、畏れ敬い、感謝と謙虚の心を持って、自然と共に生きていく。 その心を失った時、人もまた、人間らしさを失うのだと。 「夜があるから夜明けもあるんだよ。壊れやすいものだからこそ、大切にしたいと願うのさ」 「でも、取り返しの付かないものを失う人もいるはずよ」 「取り返しの付くものなんて、そうそうありはしないよ。だからこそ、人は支え合うんじゃないのかい?」 「だけど……だけど……。こんなの、悲しいものっ!」 お婆さんは一度話を切って、お茶の代わりを淹れる。せつなが落ち着くのを待って、再びゆっくりと話し出す。 「あたしだって、天災を歓迎してるわけじゃない。悲しい時は泣くといい。でも、それが済んだらもう一度街を見てごらん」 「もう、十分に見たわ……」 「いいから、ごらん」 せつなは再び外に出る。そこには、朝とは比べ物にならないくらいの人々が集まっていた。 それぞれ壊れた家を直したり、掃除や片付けをしたり。 それは、たった今、せつなもやっていたこと。ただ、一つ違うのは―― みんな、笑顔で取組んでいることだった。 「よっ、婆さん。壊れた日除けの代わりを持ってきてやったぞ」 「ありがとうよ。お礼に好きなお菓子を持って行っておくれ」 「馬鹿言わないでくれよ、とても釣り合うもんじゃねえよ。でもまあ、今日は大サービスだ」 被害の小さかった者は、大きかった者を助ける。助ける方も、助けられる方も、瞳に強い意思の力が宿っていた。 「どうして? こんなに滅茶苦茶になったのに」 「到底、立て直せないとでも思ったかい? まあ、一人じゃ無理だろうけどね」 「悲しいって気持ちを、悔しいって気持ちに変えて頑張るのさ。いつか、楽しいって気持ちに変わるまでね」 「一人じゃないから? そうね、一人で直すわけじゃないのよね」 「おじさま、私にも何かやらせてください!」 せつなは、日除けの取り付けの手伝いを申し出る。それが終わったら、他のお店の手伝いに回るつもりだった。 明るい表情で作業に取り掛かるせつなを、お婆さんは眩しそうに見つめてつぶやく。 「納得なんてしなくていいのさ、まだ若いんだからね。でも、あたしはこの歳になって思うんだよ。 幸せなだけの世界なんて、不幸なだけの世界と、なんの違いもありはしないってね。 望まなくたって、不幸は必ずやってくる。だから、幸せに向って精一杯頑張るんだよ」 笑顔を振りまきながら修繕を手伝うせつなの元に、三人の少女が駆け寄る。 「見つけたっ! せつな、心配したんだよ!」 「ごめんなさい、ラブ。私、今日一日、ううん、落ち着くまで、みんなの手伝いをするって決めたの」 「そっか。じゃあ、あたしも一緒にやるよ!」 「しょうがないわね。今日は仕事の予定もないし、アタシも手伝うわ」 「わたしの家は大丈夫だったから、一緒にやらせて」 若い娘たちが懸命に働く姿を見て、周囲の大人たちもやる気を漲らせる。 負けてはいられないと思ったのだろうか? いつの間にか、四つ葉中学の生徒や、他校の学生たちまで参加していた。 せつなには、お婆さんの呟きがちゃんと聞こえていた。 その意味は半分も理解できなかったけど、一つだけ確信が持てたことがある。 きっとこの街は、前よりもっと、もっと素敵な街として甦るって。 美しく澄み渡る青空は、そんなせつなたちを優しく見守っていた。
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ジャンヌドヴァンドーム(ジャンヌ・ド・ヴァンドーム) フランスのヴァンドーム伯の一。 ヴァンドーム女伯およびカストル女伯。 関連: ブシャールナナセイ (ブシャール7世、父) イザベルドブルボン(2) (イザベル・ド・ブルボン、母)
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「どうぞ、入って。」 犬を抱っこしたままの千聖お嬢様が、お部屋のドアを開けて私たちを通してくれた。 「お、お邪魔します」 緊張しつつ中に入ったものの、意外なほど中はこじんまりとして、シンプルだった。寮の物よりさらにビッグサイズなベッド以外は、学習机と応接テーブル、ソファぐらいしか置いていない。 「栞菜さん?どうかなさって?」 「あ、えと、栞菜でいいですよ。なんか、イメージと違ってたからびっくりしちゃって。」 「イメージ・・・?」 「あの、私の勝手な妄想で、お嬢様の部屋っていうと、グランドピアノとか高そうな文学全集とか、あとお人形とか! 千聖様のお部屋はすっきりしてるから。」 私がそう言うと、千聖お嬢様の表情が少し曇った。 「私、本はあまり好きじゃないわ。漫画は前に舞美さんが貸してくれたのだけれど、お母様が読んではいけないって。面白かったのに。 あと、お人形遊びより、私は外遊びが好き。でも女の子らしくないって・・・でも千聖は・・・ ピアノは、弾けないの。中等部になるまでは、お父様の出張先すべてに連れて行かれて、あまりこの家にもいられなくて。いつも各地の別宅を転々としていたから、習っている時間がなかったの。」 「え、じゃあ、勉強はどうしていたんですか?」 「家庭教師が教えてくれたわ。でも、やっぱりそれだけでは駄目みたい。今もあんまり勉強は得意じゃないの。何もできないわ、私。」 どうしよう。私が余計なことを言ったせいで、何だか空気が重くなってしまった。 やっぱりこんなに大きなお家の令嬢だと、行動にたくさん制限ができてしまうのかもしれない。 詳しいことはわからないけれど、昨日こっそり街に出てきたのも、そういう抑圧から開放されたかったからなんじゃないかと思った。 「そうだ、お嬢様には、ご妹弟がいらっしゃるの。」 ナイスパス!愛理がさりげなく、話題を変えてくれた。 「ええ、妹が2人と、弟が1人。今は3人とも、お父様のご出張先の近くに住んでいるわ。たまに戻ってくるけれど。」 「1人で、寂しくないんですか?」 「私には、寮の方たちがいるもの。メイドもいるわ。リップとパインだって。 それに、幼いうちは両親と行動を共にするのは、私の家の決まり事ですから。私はもう子供じゃないから、寂しくなんてない。」 ああ、何ていじらしいんだろう。 お嬢様は嘘がつけないタイプみたいで、本当は寂しいっていう気持ちが顔に表れてしまっている。こんな大きなベッドで1人ぼっちで寝ているところを想像したら、何だか泣けてきてしまった。 「きゃあっ!?栞菜?何?」 私は思わず、お嬢様を抱きしめてしまった。 細くて少年みたいだと思ってた体は意外なほど柔らかくて、ふわんと清楚なコロンの香りがした。驚いて暴れるお嬢様の、ちょっと癖のあるふかふかした髪を撫でてみる。 「ちょっ、ちょっと嫌よ、私小さな子じゃないのに、頭を撫でるなんて!離してったら!」 「千聖お嬢様、私、役に立てるかわからないですけどいろいろします!あの、私も結構寂しがりだし、もし夜怖かったら私の部屋に来ても・・あっていうか、私が添い寝します!」 「あは・・・」 愛理はどう受け取ったらいいのかわからない半笑い顔になっている。 お嬢様は私がおかしなことを言ったせいか、体を硬直させて抵抗をやめてしまった。 “出た出た、栞菜のレズ攻撃!おーかさーれるー!” “あんた、本当好きな子にベタベタしすぎwマジで誤解されるよそれ” 前の学校の友達のからかい言葉がよみがえってくる。正気に戻った私は、あわててお嬢様の体を離した。 「ご、ご、ご、ごめんなさい!私、変なこと言って。何か本当、あーもう!ごめんなさい!」 「・・・・して、くれるの?」 「え?」 「だ、だから、その、そ、そ添い寝・・・」 お嬢様は耳まで真っ赤にして、私のスカートの裾をギュッと握った。 「違うの、本当に千聖は子供じゃないのよ。でも、たまには誰かと一緒に寝たかったり・・・もうっ愛理ったら笑わないで!」 「だってお嬢様、今日はずいぶん可愛いこというから。ケッケッケ」 「うんうん、いつもこのぐらい素直だといいですね、千聖お嬢様。」 「うわあ!」 知らないうちに、私の隣にもう1人人がいた。 スラッと背が高くて、出るとこでて引っ込むとこ引っ込んでる、セクシーな体つき。 顔もこれまたものすごい美人で、今まで会った中では一番派手な印象だ。 第3ボタンまで空けてラフに着こなした制服がカッコいい。青いチェックだから・・・高等部の人か。 何かモデルさんみたいで、近寄りがたい印象だな。と思っていたら 「もう、えりかさんまでそんなこと言って!」 「ぶっ!」 お嬢様が投げつけたクッションを顔面に受けて、“えりかさん”はオーバーリアクションで後ろに倒れた。 前言撤回。美人は美人でも、相当変わり者のようだった。 「紹介しますね。こちら、中等部3年に転入してきた有原栞菜さん。栞菜、こちらは高等部2年の梅田えりかさん。寮長と、放送委員と、風紀委員、あと生徒会のお手伝い、と料理部・・・だっけ?」 「ええっ風紀って!」 「あはは、ウチいつも怒られるもん。えりこちゃん!風紀委員が服装乱してどうするの!って。」 主語はなかったのに、どういうわけか自然になっきぃのキャンキャン声で今の台詞が再生された。 「いろいろやってるんですねー。」 「あーうん、でも部活以外は全部幽霊なんだよ。」 どうやらえりかさんは、かなりマイペースなタイプみたいだ。 「・・・そういえば、栞菜はもう寮の方全員に会ったのかしら?」 えりかさんが持ってきたジンジャークッキーを食べながら会話を楽しんでいると、ふいにお嬢様からそんな質問が飛んできた。 「ええと、多分。愛理と、なっきぃと、えりかさん、舞美さん・・・あっ」 「どうしたの?」 いや、どうでもいいことなんだけど、全員美人すぎる。千聖お嬢様自身も可愛くて綺麗な顔立ちだけれど、自分だけでは満足できずにいろんなタイプの美人を侍らせてる? 「・・・ごめん、私1人で顔のレベル下げて。」 「?何言ってるかわからないけど、栞菜ちゃんはすごい可愛いと思うよ。ていうか美人系だよね」 「うん、とっても可愛いよ、栞菜。」 「ふふ、そうね。栞菜の目はとても綺麗な形をしているもの。」 うわうわ、また始まった!どうしてここの人たちはこんなに褒めあうんだろう。背中がむずがゆい。 「・・・本当はもう1人いるんだけどね、この寮のメンバー。ちょっと今、家庭の事情で」 「私、昨日舞に会いたかったの。街に行けば、舞がいるかもしれないと思って」 突然、お嬢様の声色が鋭くなった。 全員ピタリと口をつぐんで、お嬢様の顔を見た。 「えりかさん、千聖、舞に会いたい。どうして、会ってはいけないの?」 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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▼● Save My Sister 依頼者: ボーディン(Baudin) / ジュノ上層・民家 依頼内容: 悪霊が取り憑いた姉を助けてほしい。 ジュノ上層 / 教会 Mailloquetat ここは女神を祀った 聖堂です。あなたも女神に祈り、 日々の罪を清めるがよろしい。 Albrecht あぁ、神父様……。 Albrecht あれから一向に回復の兆しは見えません。 わたしはどうすればいいのでしょう。 Mailloquetat おぉ、アルブレヒト……。 お前の純真な祈りは必ずや神の御心に届く ことでしょう……。 Mailloquetat 祈りなさい。 祈ることですべては許されるのです……。 Albrecht は、はい……。 Albrecht あぁ、神様……! どうか我々をお助けください……。 わたしにはもう祈ることしかできません。 Mailloquetat あなたも あの信心深き者のように祈るがよい。 Mailloquetat そうすればきっと神は あなたを守ってくれることでしょう。 Alista お兄ちゃん……。 Mailloquetat あなたも あの信心深き者のように祈るがよい。 ジュノ上層 / 民家 Baudin ねぇ、何か分かった? 選択肢:姉の病気について何か分かったか? 実は…… Baudin ううん、いいよ。気持ちは分かるけど 顔を見れば分かるって。 いや全然 Baudin そう、やっぱり……。 でも気にしててくれてありがとう。 Albrecht やぁ、ボーディン。 オーディアの具合はどうだい? Baudin ずっとあの調子だよ、アルブレヒト さん……。 Albrecht そうか……。 でも大丈夫。僕が毎日祈りを捧げてるから よくなるはずだよ……。 Baudin うそだっ、姉ちゃんは治らないよ! Albrecht 何を言ってるんだ、ボーディン……? Baudin 姉ちゃんは呪われるようなことなんて してないもん! 何か心あたりとかないの? そんなんじゃ、姉ちゃんはいつまでもあのまま だよっ! Albrecht 今日のボーディンはどうかしてるな……。 また出直すとするよ。今度来る時までに 機嫌をなおしといてくれ。 Alista ボーディン、何かあったの? 兄さん、ひどく考え込んでてあたしのことに 気づいてくれなかったわ……。 Baudin いや、何でもないよ。 Alista ……そう、何もなかったならいいんだけど。 で、お姉ちゃんの調子はどう? Baudin うん、ありがと……。でも、あんまりよく ならないんだ。ねぇアリスタ、姉ちゃんと ピクニックに行ったとき、ほんとに変わったこと なかった? Alista い、いえ、別に変わったことなんて。 Alista あたし、きっと今によくなると思うわ……。 Baudin そうだといいんだけど。 Alista じゃあね、元気出して! Alista 絶対だよ! Baudin ……。 もうおいらどうしていいんだか……。 Baudin もし姉ちゃんを治す方法が 分かったら、教えておくれ。 おいら、どうしていいか分かんないよ。 ル・ルデの庭 通常時 +... Neraf-Najiruf この仕事をしていると 時々信じられない出来事に遭遇したりする。 前にエルディーム古墳で新米が呪われちまった 時なんかは、本当にどうしようか困ったものだ。 Adolie もしかすると、現在我々の想像が 及ばないような出来事が進行しているのかも しれないな。 Neraf-Najiruf エルディーム古墳で悪霊に 呪われちまうことがあるんだ。前に一緒に入った 新米がやられちまって……。生肉を食べたがるわ、 暴れるわでそりゃ大変だったな、あん時は。 Neraf-Najiruf で、いろいろ考えたんだが、 エルディーム古墳の石造りの部屋に 燭台があるだろ? 悪霊はあの火を嫌うらしい。 Neraf-Najiruf だからあの火をランタンにつけて 持ってきたらなんとか助けることが出来たんだ。 Adolie うむ……。だが、悪霊の種類によっては あの火を好むのもいると聞いたぞ。その場合 火を持ってくるのは逆効果だな。 Neraf-Najiruf じゃあ、あの時は運が よかったんだな。他に方法も分からなかったし、 オレに出来ることはあれぐらいだったからな。 Neraf-Najiruf もし必要だったらその時使った ランタンを貸してやるが、どうだい? 選択肢:ランタンを借りようか? 今はやめておく Neraf-Najiruf そうか、必要ならいつでも 貸してやるから言ってくれ。 借りる Neraf-Najiruf とりあえずランタンに火をつけて 持ってきてみることだな。どうせ他に方法も 分からないんだし。 Adolie 確かあそこには燭台が4つあって 定められた順番につけていかなければ ならなかったような気がするが……。 Neraf-Najiruf そうだそうだ、順番があって 手こずった覚えがある。けど、その順番は 忘れちまったな。まぁ、行けば何とかなるさ。 だいじなもの ジュノ親衛隊のランタンを手にいれた! ジュノ親衛隊のランタン ジュノの親衛隊員から借りたランタン。 火は消えている。 エルディーム古墳の石造りの部屋にある 4つの燭台から火をつけると 悪霊を退散できるらしい。 Neraf-Najiruf とりあえずランタンに火をつけて 持ってきてみることだな。どうせ他に方法も 分からないんだし。 Neraf-Najiruf エルディーム古墳にはいくつか 燭台があるが、石造りの部屋にあるやつだからな。 洞窟にある燭台はまた別の効果があるらしいから 間違えるなよ。 Adolie もしどの悪霊が取り憑いて いるのか分かれば確実な対処方法も 分かるんだろうが……。いちかばちか、だな。 ジュノ上層 Baudin え、それで姉ちゃんが 治るかもしれないの? エルディーム古墳は すごい危ないところだから気をつけてね! おいら、無事をお祈りしてるよ。 エルディーム古墳 (Brazierを調べる) 選択肢:ジュノ親衛隊のランタンに火をつけようか? つける つけない(キャンセル) かすかだがジュノ親衛隊のランタンに 火がついたようだ。だがこれでは効力はないだろう。 (Brazierを調べる) 選択肢:ジュノ親衛隊のランタンに火をつけようか? つける つけない(キャンセル) さきほどよりジュノ親衛隊のランタンの火が強まったようだ。 (Brazierを調べる) 選択肢:ジュノ親衛隊のランタンに火をつけようか? つける つけない(キャンセル) さきほどよりジュノ親衛隊のランタンの火が強まったようだ。 (Brazierを調べる) 選択肢:ジュノ親衛隊のランタンに火をつけようか? つける つけない(キャンセル) ジュノ親衛隊のランタンに火がついた! だいじなもの ジュノ親衛隊のランタンを手にいれた! ジュノ親衛隊のランタン ジュノの親衛隊員から借りたランタン。 火がついている。 悪霊を退散できるらしい。 最初に順番を間違えた場合 +... (Brazierを調べる) 選択肢:ジュノ親衛隊のランタンに火をつけようか? つける つけない(キャンセル) なぜかジュノ親衛隊のランタンに火がつかない……。 途中で順番を間違えた場合 +... (Brazierを調べる) 選択肢:ジュノ親衛隊のランタンに火をつけようか? つける つけない(キャンセル) 不思議なことにジュノ親衛隊のランタンの火が消えてしまった……。 (Brazierを調べる) 燭台に灯がついている。 ジュノ上層 Baudin えっ、これで姉ちゃんは治るかも しれないだって? ありがとう、はやくはやく! Baudin じゃあ早速……。 姉ちゃん、もうすぐ治してあげるからね! Albrecht 待つんだ、ボーディン! それじゃ治らない、むしろ悪化させてしまう。 Baudin アルブレヒトさん……? アリスタも……。 一体どうしてそんなことを知ってるのさ? Albrecht 妹が教えてくれたんだ……。 Alista ご、ごめんなさい……。 あたし、オーディアさんを治す方法を 知ってたの……。 Baudin えぇっ……、どういうこと? Alista グスッ、でもごめんなさい……。 あたし、お兄ちゃんをオーディアさんに 取られたくない、って……。 Alista 一緒にピクニックに行ったとき オーディアさんに悪霊が取り憑くところを 見たの……。だからどうやれば追い払えるか すぐに分かるはずだった……。 Alista グスッ、でもごめんなさい……。 あたし、お兄ちゃんをオーディアさんに 取られたくない、って……。 Alista あたし、ひとりぼっちになっちゃうって。 それでだまってたの……。 オーディアさんがあのままなら、 お兄ちゃんはあきらめるかと思った……。 Alista でも、それは違ってた。 お兄ちゃんはオーディアさんを本当に愛してた。 それがよく分かったの……。 Alista それに、ボーディンが悲しんでるのを これ以上見てられなくって……。 ホントにごめんなさい……。 Baudin ……。 Albrecht ボーディン、 僕からも謝る……、許してやってくれ。 アリスタもオーディアのことを 憎んで言わなかったわけじゃないんだ。 Baudin ……。 Albrecht ボーディン、 僕らを許してくれなくてもいい。 だけど、一刻も早くこれをオーディアに! Baudin これは……? 一体どうしたの? Albrecht これでアリスタが見たっていう悪霊を 追い払えるはずさ。モンスターどもがうろついてて ちょっと傷を負ったけど、こんなのオーディアの つらさに比べればたいしたことない……。 Baudin アルブレヒトさん、アリスタ……。 分かったよ。おいら、2人を信じるよ。 Baudin 姉ちゃん、アルブレヒトさんが 危ないところまで取りに行ってくれたんだ。 絶対治ってよ! Audia ウググッ……! 貴様ら、なぜこれを! グアァァァアアアア!!!!! Audia う、うぅん……。 Audia ハッ!? ここは一体……、わたしの家……だわ? わたし、どうしてたのかしら? Baudin 姉ちゃんっ! Audia ボーディン、どうして泣いてるの? 一体何があったの……? Albrecht あぁ、僕のかわいいオーディア……。 いいんだ、もういいんだよ……。 Audia みんな一体どうしちゃったの……? さっぱり分からないわ……。 Alista ごめんなさい、ホントにごめんなさい! Baudin アリスタ、 姉ちゃんとアルブレヒトさんが一緒になったって、 君はひとりぼっちになんかならないよ。 Alista えっ? Baudin おいらたちと一緒に暮らすんだろ? Alista そ、それじゃあ、許してくれるの? Baudin うん、おいらもアリスタの気持ち、 少し分かる気がするもん……。 Albrecht すまない、オーディア。 君をあんな目にあわせてしまって……。 Albrecht ボーディン……。 Albrecht そして見知らぬ方、本当にありがとう。 Albrecht 僕は恥ずかしいことに現実から逃げて いたようだ……。 Albrecht 神に祈る前にやらなければならない、 自分でも出来ることが絶対ある……。 そんな簡単なことも僕は忘れていた……。 Albrecht 自分が窮地に陥った時、 それでも自分が何かをしなくてはならない時……。 Albrecht そんな時、祈りを捧げることで 自分の中に少しばかりの勇気と希望がわいてくる。 自分が何もしないのでは、意味がないんだ……。 Albrecht これはオーディアのためにしてくれた ことへのお礼です。そして僕の目を覚まさせて くれたことに感謝しています。 ホーリーメイスを手にいれた! ホーリーメイス D24 隔300 追加効果 光ダメージ Lv43~ 戦白ナ 3000ギルを手にいれた! Albrecht ボーディン、これからは オーディアのことは僕に任せてくれないか……。 もう二度とこんなことがないように彼女は 僕が守る……! Baudin ……。 Albrecht ボーディン、お願いだ。この通りだから! Baudin ……うん、分かったよ。姉ちゃんと一緒に 幸せになっておくれよ。 Albrecht ありがとう、ボーディン……。 Albrecht オーディア……。 Audia アルブレヒト……。 称号:エクソシスト見習い Baudin おかげで姉ちゃんが元に戻ったよ、 どうもありがとう。 姉ちゃんのあんな笑顔、久しぶりに見たよ。 ヘヘッ……。 ル・ルデの庭 Neraf-Najiruf そうか、オレの方法では ダメだったか。ま、何にしろ治ってよかったな! Adolie ふむ、思った通りだ。 これはひとつ勉強になった。警備日誌にでも 書いておこう。 Adolie しかし、私が一番不思議なのは 彼があの背丈でどうやって燭台の火を ランタンにつけたか、だ。 ▲ ダボイ村の紋章 姉ちゃんを助けて ■関連項目 ジュノ上層 Copyright (C) 2002-2013 SQUARE ENIX CO., LTD. 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緩みがちだった表情を改めて、突然の来客に視線を向けます。 憂「ど、どうしましたか?」 紬「もしかして……お邪魔だった?」 紬さんの台詞にどきっとしました。 「そんな、まさかあ」笑い飛ばそうとしたところを紬さんの真剣な瞳に見据えられて失敗し、思わず口をつぐんでしまいます。紬さんがベッドの縁に腰かけてこちらを覗き込んできます。 紬「憂ちゃん、本当はもうだいぶ具合がよくなってるんでしょ」 憂「……どうしてそう思うんですか?」 紬「顔つきが元気そのものだもの。頬がちょっと赤いのは別の理由かしら?」 紬さんに悪戯っぽくそう言われて、ああ、この人にはもう全部見透かされてるんだなと確信しました。そういえば紬さんは「そういう話」を喜んで聞く人だって、梓ちゃんが話してたっけ。 憂「その」 紬「?」 憂「……相談に、乗ってもらえませんか」 紬さんは終始ニコニコしたまま、ええと快諾してくれました。私はかけ布団を思いきり引っ張り上げて、躊躇いがちに話しはじめます。 …… 律「わー! 唯、落とす落とす!」 唯「ふえっ? あ、あ、ああーっ」 積み重ねたお皿が宙を舞い、床に激突する瞬間。澪ちゃんが華麗な動作でお皿を掴み取りました。りっちゃんと私で澪ちゃんに大きな拍手を送ります。 唯「すごい、すごーい! ピエロみたーい!」 律「澪、やるなぁ! もう一回やってみせてよ!」 澪「だ・れ・が、やるかあー!」 澪ちゃんの見事なげんこつを受けて、私たちは料理を再開しました。包丁の握り方をあずにゃんに教えてもらっていると、後ろからなにやらひそひそ話が聞こえてきます。 律「なあ……やっぱり唯をキッチンに立たせるのはさ」 澪「色々と問題かもな。私、今度という今度は皿を割らずにいられる自信がない」 むう。なんだかわりと酷いことを言われてるような。 思わず「そんなことないよー!」と反論しようとしたときでした。 梓「先輩、危ない!」 唯「え?」 包丁の先端が私の人差し指にぷすり、と突き刺さりました。 律「あ」 唯「あ」 キッチンの空気が凍りつきます。人差し指からは血がたらり。私の背中からは冷や汗が、たらり。 澪ちゃんが顔面蒼白で頭を抱えます。 澪「い、……いやああああー!!」 しゃがみ込んでしまった澪ちゃんをりっちゃんがなだめました。 律「ちょっ、落ち着け澪! 唯、こっちはいいからお前は早く手当てしてこい!」 唯「り、りりりりょうかいしましたあ!」 私は慌ててキッチンから飛び出します。去り際にりっちゃんが私の背中に向けて叫びます。 律「ついでにムギも探してきて!」 ムギちゃん……? そういえばどこ行っちゃったんだろ。「あいよー」と返事して私はリビングに走りました。 風邪薬のありかを知らない私が当然消毒液のありかを知るわけもなく、ムギちゃんの姿も見当たらなくて、仕方なく憂の部屋に足を運ぶことにします。今日だけで何度あの部屋に行ったかわかりません。 階段を上がるとムギちゃんの話し声が届いてきました。 唯(あ、ムギちゃんいた。でもどうして……) 憂の部屋にいるんだろう? 不思議に思いながらドアの前に立つと、よりはっきりとした声が聞こえてきます。ムギちゃんはどうやら憂とお話しているみたいでした。二人とも何を話しているんだろう。 唯「ねーねー二人とも、一体何を……」 紬「つまり憂ちゃんは、唯ちゃんとキスがしたいのね?」 Yeah? なんと……今ムギちゃんは、なんとおっしゃいました? 憂「そういうことです……」 憂も肯定しちゃってるし! えと、えとえと、これって一体どういうことー!? 私は無意識に胸の前で両手を合わせました。 唯「あいたーっ!」 紬「!?」 憂「お姉ちゃん!?」 人差し指に激痛が走り、自分でも驚くくらいの大声を発してしまいました。ムギちゃんがものすごい速さで部屋から飛び出してきます。涙目の私の顔面を捉えて、 紬「唯ちゃん、今の話……聞いた?」 必死の形相でそう訊ねてきます。痛む指をくわえたまま、私は否定の態度を示しました。 唯「聞いてない、聞いてないよ!」 紬「本当に? 嘘ついたらお菓子はなしよ?」 唯「うーん……聞いちゃったかも……」 弱いなあ私! せめてもうちょっとだけ粘れないかな! 紬「なんて最悪なタイミングなの……」 ムギちゃんが腕組みをして溜め息をつきます。部屋からすすり泣く声が聞こえてきたのは、そのときでした。 唯「うい――?」 今のって、憂の泣き声? 私はムギちゃんを押しのけて部屋に飛び込みます。 唯「憂、どうしたの!?」 部屋に入った私は思わず呆然としてしまいました。 憂は頭から布団を被って、うずくまってしまっていました。 憂のこんな姿を見るのは久しぶりで、一体何が起きているのか全然わからなくて。 慌てふためいた私は、とりあえず床に膝をついて必死に謝ることにしました。 唯「ご、ごめんね憂。私、憂とムギちゃんが話してるの知らなくて、それで」 憂からの反応はありません。ただかすかな嗚咽が中から漏れ聞こえてくるだけです。 私はいよいよどうしたらいいかわからなくなって、布団越しに憂の身体を揺さぶりました。 唯「ねえ憂、どうしちゃったの? お願い、何か喋ってよお……」 憂「出てってよ……」 唯「え?」 まさかの一言に思考が停止します。憂の泣き叫ぶ声が、私の胸の奥深いところを鋭く貫きました。 憂「お願いだから部屋から出てってっ」 気づけば、私は青ざめた表情で何もできず固まってしまっていました。焦点の定まらない目で憂の布団を見下ろします。 もう一度、次はもっと真剣に謝ろうとしたときでした。 紬「唯ちゃん、今はそっとしておいてあげましょう」 ムギちゃんが私の肩に手を載せてきました。「でもっ」納得いかない私に、けれどムギちゃんは無言で首を横に振ります。 なんだかどうしようもなく悲しくなって、私はがっくりと肩を落としました。ムギちゃんに連れられて憂の部屋を後にすることにします。人差し指の痛みはとうに感じなくなっていたけど、代わりに激しい痛みが胸を襲っています。 唯(いやだよ……) 私は心中で呟きました。憂、どうしちゃったの……。私のこと、嫌いになっちゃったの……? … ドアがぱたんと閉じられる音を耳にします。私は自己嫌悪でいっぱいになっていました。 お姉ちゃんは何も悪くないのに。ううん、誰も悪い人なんていないのに。ただお姉ちゃんに嫌われるのが嫌で、お姉ちゃんの言葉を聞くのが怖くて、あんな態度を取った私が悪いだけで……。 憂(もう、お姉ちゃんの顔……見られないよ) 先ほどの会話を聞かれたことよりそっちのほうが辛くて、私は再び泣き出してしまいました。ごめんねお姉ちゃん。悪いのは私なの。キスがしたいだなんて思った私のほうがおかしいだけなの……。 一人だけの部屋はさらに孤独感を増して、私を押し潰そうとしてきます。今の私にそれを弾き返す力はありませんでした。布団を引っ張る力を強めて、私はただ時間が過ぎるのを待ち続けました。 …… 澪「唯。ゆーい」 梓「唯先輩、聞いてますかー?」 澪ちゃんたちの呼びかけで私は我に返りました。時計は夜の八時を指しています。みんなはもう帰り支度をはじめています。 せっかくおいしそうなカレーを作ってくれたのに、ほとんど口にできないまま片づけられてしまいました。ムギちゃんのお菓子を前にしてもちらつくのは憂の顔ばかり。 お願いだから部屋から出てってっ―― あんなことを言われたのははじめてで、どうしたらいいか、どんな言葉をかけたらいいのか、ちっとも頭が働きません。このままずっと憂に嫌われて生きていくのかと思ったらっ……。 唯「ぐすっ……そんなの、いやだよう……!」 律「うわっ、どうした唯!」 梓「唯先輩、やっぱりさっきからおかしいですって!」 みんなから心配されても流れ出る涙を止めることはできません。すると、ムギちゃんが意を決したような表情で私の手を取りました。 唯「ううう……ムギちゃぁん……」 紬「ね、唯ちゃん。ちょっとだけ聞いて」 周りの視線も気にすることなく、ムギちゃんは真摯な声で語りかけてきます。 紬「唯ちゃんも憂ちゃんも、もう昔とは違うの。二人とも大きくなったのよ。お母さんのキスで単純に喜べる日々はもう終わったの」 ムギちゃんが何を言っているのかわかりませんでした。それでもムギちゃんから不思議と目を離すことができません。 紬「憂ちゃんはね。唯ちゃんとのキスに、お母さんのものとは違う、何か別のものを見いだしたの。唯ちゃんはそれに気づいてあげないとだめ」 唯「別のもの……?」 わからない。わからないけど。ムギちゃんが何かを訴えかけていることだけはよく理解できて。 唯「それに気づいたら、憂と仲直りできる……?」 紬「絶対とは言えないけれど、転がりようによっては、きっとね」 それなら。私は涙を拭うと、大きくかぶりを振りました。 唯「じゃあがんばる。がんばって、憂の気持ちに気づいてみせる」 ムギちゃんが満面の笑みを浮かべます。何の話をしているのかさっぱりな澪ちゃんたちは、顔を見合わせて互いに首を傾げるばかり。 澪「えっと、じゃあ何かあったらまた連絡してよ」 律「よくわからないけど、あんまり一人で思い悩むなよー」 帰り際、みんながかけてくれた言葉に、私は胸が温かくなるのを感じました。 唯「うん。澪ちゃん、りっちゃん、ムギちゃん、あずにゃん。今日は本当にどうもありがとう。また明日ね」 はにかみながら小さく手を振って、夜の闇に消えていくみんなを見送ります。 玄関のドアを閉めたのち、私は憂の部屋のある方角を振り向きました。明かりの消えた廊下を前に、喉がごくりと音を立てます。 唯「憂……」 憂が何を求めているのか、知るのはちょっとだけ怖い気もするけど。憂とこのままなんて嫌だから私は一歩足を踏み出すの。 憂の笑顔が見たいから。もしかしたら二度と今の関係には戻れないかもしれないけど、一歩前に踏み出したい。 唯「よし」 覚悟を決めると、私は階段に足をかけました。 唯「憂、入るよ」 ドアの奥には、依然として膨らんだままの布団が見えました。私はベッドに腰を下ろすと、なるべく落ち着いた声で話しかけます。 唯「ねえ、出てきてよ、うい……。寂しいよ」 憂「……」 もぞもぞと布団が動いて、中から憂が顔を覗かせました。布団から出てきてくれたのはいいものの、憂は私に背を向けて沈黙を貫き通します。 憂の背中はしゅんとしていて、見るからに落ち込んでいる様子が伝わってきました。憂にもこんな弱々しい姿があったんだ……。ずっと立派な姿ばかり見てきたから、もしかしたら忘れちゃっていたのかもしれません。 唯「ごめんね、憂」 私は後ろから憂を抱きしめました。憂が身じろぎして、真っ赤な目をこちらに向けてきます。 唯「私のせいで憂を傷つけちゃって……ごめん」 憂「お姉ちゃん……」 いつだって私の傍にいてくれた大切な「妹」。でもきっと憂は、なんとなくだけど、それを望んではいないんだと思います。だから考えるんだ私。憂がどうしてほしいのかを……。 唯「ねえ、憂」 私は憂の耳許で囁きかけました。 唯「こっち向いてよ」 憂は首まで赤くして首を横に振ります。 憂「向けないよ……。私、もうお姉ちゃんに合わせる顔がないもん」 唯「どうして? 憂は何も悪くなんかないよ?」 憂「悪いよ。私、ちょっとおかしいの。お姉ちゃんとキスすること考えてたら、頭がぼーっとしちゃって。お姉ちゃんはこんな妹……嫌でしょ?」 唯「いやなんかじゃないよ」 本心からの言葉を紡いで、私は憂の頭を撫で回します。「うそだよっ!」泣き顔で振り返った憂の口を、次の瞬間、私の唇が塞ぎました。 憂「んっ……」 わずかに開いた憂の唇から吐息が漏れ出します。驚きのあまり身を剥がそうとした憂を抱き寄せて、キスを交わしたまま、まるでもつれ合うかのようにベッドに倒れ込みます。 どれくらいそうしていたでしょうか。 お互い真っ赤になりながら、ふわふわした感覚の中で素直な感想を口にしました。 唯「……キスってすごいねえ」 憂「……うん、すごいね」 見つめ合っていると妙におかしさがこみ上げてきて、それは到底耐えられるものではなくて。私たちは熱っぽい笑顔を浮かべ合いました。汗でへばりついた憂の前髪に心臓がどきりと高鳴ります。 あぁそうかと、私ははっとした気分になりました。 きっと……憂もこんな気持ちだったんだ。 今までわからなかった、あるいはわかっていて見ようとしなかった様々な感情が、たった一回のキスで一気に解放されたような気がしました。私、憂がいつからか……どうしようもないくらいに好きになってたんだ。 唯「……ぎゅ~」 自覚した途端、今までとは違う「好き」って気持ちが私の全身を満たしました。憂の身体に回した腕をさらにきつく締め上げます。 唯「ぎゅー、ぎゅー」 憂「お、おねえちゃん。苦しいよ」 そう言う憂は、けれど抵抗する気配は微塵も感じられなくて。湧き出る愛情を抑えきれず、私は「ういー、うーいー」と名前を呼びながら一心不乱に頬を擦りつけました。 唯「一生大事にするよ。もう憂は私のもの。ずっとずっと私だけのものだよ」 憂「よ、よくわかんないけど。とりあえず気持ちが通じたみたいだし、喜んでいいのかな……?」 唯「もちろん。ね、もいっかいちゅーしようよ。ちゅー。ねー、うーいー!」 なんか、多くのことをほっぽり出しちゃった気もするけど。憂も嬉しそうだし、これでいいのかなとも思います。 難しいことを考えるのはもう少しあとでいいや。今はただ憂だけを見ていたい。憂のことだけを感じていたい。だから……。 唯「――好きだよ、憂」 憂「私も……お姉ちゃんが大好き」 他に誰もいない部屋で私たちは、それ以上言葉を交わすことなく、互いの温もりを確かめあうことに集中します。 未来のことなんて全然わからないけど、憂がいて、私がいれば、道が閉ざされることはない。そう思います。 エピローグ それからしばらく音楽室では、一冊のノートが部員たちによって回されることになりました。 ○平沢唯観察日記 九月二日(火曜日) 記入者:田井中律 珍しく唯が家からお弁当を持ってきてたよ。間違いなく憂ちゃんが作ったものだと思うけど。 ご飯のところに大きなハートマークが描かれていたのが見えたな。ありゃどう見ても愛妻弁当だよ、愛妻弁当! ↑ハートマークって何で作られてたんだ? ↑確か鮭フレーク ↑おいしそうね 九月三日(水曜日) 記入者:中野梓 昨日から唯先輩が教室まで憂を見送りに来ています。いつも一緒に学校来てるのは知ってましたけど、あんなべったりしてるとは思わなくてびっくりしました。 あと、憂もなんか様子が変です。話しかけても上の空だし。「お姉ちゃん……ふふ、ふふふ……」って突然笑い出すし。心配だなあ……。 ↑うわ、それはやばいな…… ↑おかしいのは唯だけじゃないってことか ↑むしろ憂の変貌っぷりが見ていて怖いです 九月四日(木曜日) 記入者:秋山澪 おい、あれは一体何なんだ? ここ数日、唯が憂ちゃんの話しかしてないぞ! お見舞いに行ったときも様子が変だったし、やっぱりこれはもう何かあったとしか……。 ↑今日にでも問いただしてみるか! ↑賛成です! ↑でも、いいのかしら……そんなことして ↑だって気になるじゃん? ↑善は急げだ! やーるぞー! 九月五日(金曜日) 記入者:琴吹紬 神は天にあり、世はすべてこともなし。 まさに雨降って地固まる、ね。おめでとう、憂ちゃん。唯ちゃん。 もしものときの旅費は私が出すから安心してね! ↑おーい、ムギ……いいのかそれで…… ↑唯 先輩が幸 せ なら、そ れでい いと思い ます ↑字が震えてるぞ梓 ――日記はここで終わっています。 おしまい。 戻る
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「包帯、きつくないですか?」 「はい、大丈夫です。」 舞波さんは手際よく私の足に湿布を貼って、くるくると包帯で包んでいく。 ただの疲労だったみたいで、この後バス停まで歩くのにはもう支障がなさそうだった。 あまり長居をするのも悪いし、私は折を見て荷物の整理を始めた。そこで、お母さんに連絡をしていないことに気がついた。 まだ心配されるような時間じゃないけど、一応・・・そう思って、私は千聖ちゃんに「どうもお世話になりました。あの、電話をお借りしてもいいですか?」と切り出してみた。 「ええ、もちろん。ちょっと待っててね。コードレスのお電話、取ってくるわ」 「あ、私が行きますよ。」 「いいわ。舞波ちゃんはここにいてさしあげて。」 千聖ちゃんはぴょこんと立ち上がると、早足で部屋を出て行った。 ――沈黙。 私はこういう微妙な空気が苦手で、話題を見つけようと、ついおかしなことを口走ってしまった。 「・・・あの、何歳ですか?」 「え?」 「あ、いや、何か若いなーって。メイドさんなのに!同い年ぐらいなのかなとか思って」 あぁ、われながらデリカシーのないこと!一対一の会話のしょっぱながこれってどうなの。 「ふふふ。」 でも、舞波さんはそんな失礼な問いに怒るわけでもなく、ほっぺにえくぼを作って笑ってくれた。 「私、今15歳です。学年で言ったら、高校1年生。」 「そうなの?じゃあ同い年だ!」 なんとなく嬉しくて、思わず声が大きくなる。そんな私を見て、また舞波さんは「ふふ」と笑った。 「ん?」 「いえいえ。もっと年上の方かと思っていたから。びっくりしちゃって。」 orz そう、そうなんだ。私はよく言えば大人っぽい、悪く言えば老けて見られることが結構ある。ぜんぜん、気持ちは若いつもりなんですけど! 「ふふふふ」 よっぽどツボに入ったのか、舞波さんは目を細めて笑い続ける。不思議と嫌な感じはしなかった。 さっきの千聖ちゃんとのやりとりを見ていたら、おとなしい人のように感じられていたけれど、案外面白がりなとこもあるのかもしれない。 「・・・失礼しました。私、今学校に行っていないから、同い年の人と話すのが新鮮で。何か楽しくなっちゃった。」 「学校・・・行ってないんだ。じゃあ、ここで住み込みで働いてるってこと?」 「うーん。働いてるというか、ここ一週間ぐらい、置いてもらってるだけ。居候はなんとなく嫌だったから、家事の手伝いをさせてもらっていて。ちょうど今、お屋敷に人手が足りない時期だったみたいだし。」 人手が、足りない? 「ほ、本当に!?」 「うわぁ」 思わず顔を近づけて迫る。 「あの!よかったら私を雇ってもらえませんか!」 「雇う、って」 「私、住み込みで働けます!っていうか、住み込みがいいんです!結構、掃除とか得意なんで、お願いします!」 「・・・えーと、でも、それは私が決められることではないから・・・」 ――そうか、そりゃそうだ。 でも、私にとってこれは、家を出るための大きなチャンスだ。・・・・それに、ここはあの学校に近い。どうしても逃したくない。 「・・・でも、それはいいかもしれないですね。」 「えっ?」 私が一人メラメラ燃えていると、舞波さんが独り言のようにつぶやいた。 「めぐさんは、お嬢様とも気が合いそうですし。私から、提案させていただこうかな」 「気・・・合いそう?さっきなんて、思いっきり私の存在無視して舞波さんとしゃべってたじゃない。」 「ふふふ。お嬢様は、警戒してたり緊張してると、もっとギクシャク気を使っておかしな感じになるから。ああして普段どおりの態度でいるってことは、めぐさんのことはもう好きな人のカテゴリーに入れたってことだと思いますよ。」 ――何か、何か、この人って。本当に優しい人なんだな。 私は柄にもなくじーんときてしまった。 私を立てながら、お嬢様へのフォローも忘れない、けれどあくまでさりげないその心配り。千聖ちゃんがあそこまで舞波さんを慕う理由が、少しわかったような気がした。 「それに、私・・・」 「お待たせしました。ごめんなさいね、食堂に舞美・・寮の方がいらしてたから、少しお話をしてたの。お2人は、何のお話を?」 舞波さんの話の途中で、千聖ちゃんが戻ってきた。白い陶器のような質感の、大きな受話器を小さな手でしっかりにぎっている。 「お嬢様。よかった。愛さん、今、お仕事を探しているんですって。それで、お屋敷に住み込み」 「嫌よ。」 舞波さんの声を、千聖ちゃんがピシッとさえぎる。子供のようだと思っていたその声色の変化に、思わず息を呑んだ。 「千聖・・・」 「だめ。そんなこと・・・そんなの嫌!帰ってちょうだい。千聖は舞波ちゃんがいればいいの。帰って。」 “めぐがいてくれたら、それだけでいい。他の友達はいらない” 私の頭に、そんな言葉が甦ってきた。 あの時の雅の目が、声が、堰を切ったように頭の中を浸食していく。 「ごめんなさい、私」 いたたまれなくなって、私は荷物を掴んで部屋を飛び出した。 幸運なことに、今度は迷うことなく、広いお屋敷の出口にたどり着くことができた。 心臓のドキドキが止まらない。あの日から、なるべく考えないようにしていた雅の事を、今日1日でこんなに思い起こしてしまうなんて。 「待って、めぐさん」 玄関でスニーカーを履くのにてまどっていると、背後から舞波さんが追いかけてきた。相変わらずポーカーフェイスというか、何を考えているのかイマイチ掴めない、ごく普通の顔をしている。動揺しまくりな私や千聖ちゃんと大違いだ。 「お世話になったのに、ごめんなさい。」 とりあえずそう言ってみると、舞波さんは軽く首を横に振って「これ」と小さな紙を渡してきた。 「私のメールアドレスと、ケータイ番号です。良かったら、」 「舞波ちゃん!千聖をおいていかないで!」 「それじゃ、また今度。バス停までは、別の者がお送りしますから。」 そして舞波さんはくるりと踵を返して、その涙まじりの声の主のほうへ戻っていった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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360 名前:パンドーラー12 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2014/06/22(日) 20 37 09.90 ID 1U8ko4x5 [2/6] ―――午前6時。 5月の朝はまだ冷たさを残していた。 トシヤはこの時間になり、ようやく帰宅した。 朝帰りするのは2度目だ。 ただ今回は…。 「ただいま…」 家の中は静まりかえっていた。 トシヤはマキを探した。 「(マキ姉さんに言わなければ―――)」 彼女はすぐに見つかった。 リビングで膝を抱えてうずくまっていた。 風呂にも入っていないのだろうか、着の身着のままである。 傍には携帯が放り出されていた。 さっき確認したから分かる。 おびただしい数の着信があった。勿論マキから…。 「姉さん…」 何と声を掛ければいいか…。 その雰囲気だけでマキが異常な状態だとトシヤは感じた。 そして、もう一つの思い当たりも…。 彼女は、マキは、自分を諦めていなかったのだ。 トシヤはそれを悲しく思った。 同時に、心のどこかで嬉しさも感じていた。 嬉しさ? バカな考えだ、トシヤは頭から追いやるようにした。 361 名前:パンドーラー12 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2014/06/22(日) 20 38 11.41 ID 1U8ko4x5 [3/6] 「ただいま、マキ姉さん」 「―――」 「メールでまた帰りが遅くなるって送信したよね」 「―――」 「実は…彼女が出来たんだ」 ビクッ! かすかにマキは身体をふるわせた。 「その人の家に泊まってきたんだ」 「…」 「あの日に、普通の姉弟になるって約束してくれたけど、今のままじゃ無理みたいだね」 「…」 「僕には恋人が出来た。だからマキ姉さんも誰か恋人を作るべきだよ。 そうして年月が経てば、お互い間違っていたって気付くときも来るだろうからさ」 「…」 「まずはその一歩を始めたいんだ。マキ姉さんも同じ風にしてくれると嬉しい…」 「…」 「…また話し合おう」 そう言って、トシヤは自身の部屋に戻っていった。 マキは…。 昼頃になり、トシヤの携帯に着信があった。 ミコトからだ。 「もしもし、トシヤ君?」 「はい、ミコト先輩」 「先輩っていうのは、よして…」 「えと、ミコトさん…」 「うん」 「…用件はなんですか?」 「昼食でもどうかと思って」 「わかりました。すぐに行きます」 正直、ありがたかった。 マキと同じ屋根の下にいるのが、気まずかったからだ。 原因は自分なのだが、マキも問題がなかったとはいえないだろう。 そうトシヤは自己を正当化する言い訳をたてた。 362 名前:パンドーラー12 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2014/06/22(日) 20 39 24.90 ID 1U8ko4x5 [4/6] ミコトのマンションに来るのも何だか慣れてきてしまった。 そう思いながらトシヤは入り口に向かった。 オートロックになっているため、インターホンからミコトを呼び出す。 「こんにちは、ミコトさん」 「ようこそ、トシヤ君。どうぞ」 程なくして、入り口が開いた。 デリバリーピザで腹を満たした後、今後についてミコトが提案してきた。 「お姉さんの自立を促すためにも、トシヤ君は家から離れるべきだよ」 「はぁ…でも一人暮らしするお金なんてありませんが…」 「何を言っているんだい?ここに住めばいいじゃないか」 「え?!」 「私一人で持て余していたことだし、お金だって心配はいらないよ」 「いや、流石にそれは…」 「遠慮することはないよ。ちょっと早いけどお互いのための同棲と思えばいい」 「?!!」 「これからは私も自炊の仕方を勉強しなければいけないな、ああ、生活用品も買ってこなければ…。ベッドは―――思い切ってダブルを―――」 彼女が、目の前の女が、何を言っているのかトシヤには分からなかった。 「ちょっと待って下さい!僕らはまだ付き合いたてじゃないですか!」 「だからこれから愛を深めていこうじゃないか」 「考えが飛躍していますよ、それに姉さんともちゃんと話し合っておきたいですし」 「以前、君たちを見かけたが…お姉さんの君を見る目は異常だったよ」 「え?」 「まるで、夫婦とでもいわんばかりに…ね。話し合いが出来る相手ではないよ」 「でも…それでも僕の姉なんです。とりあえず今日は失礼します。ご馳走様でした」 そう言って玄関に歩を進めたが…。 363 名前:パンドーラー12 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2014/06/22(日) 20 40 10.28 ID 1U8ko4x5 [5/6] 「?!」 トシヤは急に視界がグラついた。 「トシヤ君?疲れたのかい?」 「―――」 「しばらくここで休んでいくといいよ」 トシヤは恐怖を感じた。 心配する口調のミコトが―――笑っていたから――― そして、そのまま意識を手放した。 遡ること、1時間前。 ミコトのマンションの入り口にユリコが立っていた。 トシヤを偶然見かけたので、後を尾行してきたのだ。 そのまま、マンションに入っていくトシヤを見ていた。 「―――もしかして、ここに?」
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2009/05/23 【Viva!Venforet!!】 久しぶりのサッカー観戦。楽しみ楽しみ。 なんだかイマイチだなぁ。。。 後半に入って、漸く楽しくなってきたぞ。 結果は3-1。 いぇーい お疲れー! やったぁー。勝ちました。 これで気分よく帰れるってなもんだな。 2009/06/06 【マス釣り大会】 かっちゃんがじいちゃんと一緒に、マス釣り大会に参加しました。 こんなサイズ数匹のほかに・・・ こんなビッグサイズも! 金色ボディーのお魚は、漏れなく景品(図書カード)付き! やったね! ※ 写真取る前に、いきなり食っている奴は誰だ! 2009/07/12 【ミニ四駆大会】 久しぶりにミニ四駆のレースに参加しました。 懐かしい顔少々・知らない顔いっぱいで、随分メンバーが変わっています。 運も味方してくれて、2位でFINISH! よかったよかった。 ※ なに?優勝できなくて悔しい? ・・・ 欲張っちゃあいかんよ。 2009/07/30 【多摩テックへ・・・】 最近、何かちょっとしたことがあると「スネ夫」くんになってしまうのには閉口します。 今から楽しいところに行こうってんだから笑ってよ。 八王子ICを下りた辺りからそわそわ・・・ 入場が待ちきれません。 なんかヒョロヒョロのゴーカートだね。 とうちゃんの子供の頃は、みんなこんなもんだったよ。 オシッコ漏れそう!とか言いながら記念撮影。 テントの中には「HONDA T360」も展示してありました。 この車は、HONDAが一番最初に作った四輪自動車なんだよ。 日本で最初にDOHCエンジンを搭載したのは、なんとトラックだったのだぁ・・・ 早いとこ飯食ってプールに行くぞぉ! お待ちかね。本日のメインイベント。 広いプールは気持ちいいねー。 折角来たんだから、乗り物にも乗りましょう。 ガリオン・ガリオン。。。 しゅっぱーつ。 2009/08/01 【焼もろこし】 今日はかっちゃんのお誕生日。 家でごろごろしていても暑いだけなので、お山方面にお出掛けすることに・・・ 夏になると忘れられない食べ物といえば・・・ 「焼もろこし!」という訳で、いつもの観光農園にやってきました。 この地に住んでいると、桃・葡萄の類は、「イヤ!」「もういらん!」という程、頂く事が出来ます。 皆さんからの好意に感謝しつつも、今度は「もろこし下さい」などという不届き者たちです。。。 すきっ歯をもろともせず、豪快にかぶりつく息子。 シャリシャリ・・・とリスのように噛り付く娘。 お腹いっぱい食べたと思っていたのに・・・ 夕方には好物のパスタを貪り付く息子。 食べながらもう疲れちゃった娘。。。 2009/08/02-03 【海水浴】 今年の夏休みのメインイベント! 朝からの大雨も昼過ぎには上がり、今夜は伊東にお泊り。 美味しい御魚を頂いて上機嫌です。 海には何度も来ているけど、泳げたのは今日が初めて。 ふざけていると怪我するぞ! お星様みっけ! 海から上がり、美味しいお寿司を頂きました。 2009/08/09 【ミニ四駆大会】 先月の結果に気を良くして、のこのことやってきましたが・・・ 何とか決勝戦には残ったもの、絶不調です。 2009/08/10 【社会見学】 県が主催する夏休みイベントに参加しました。 まずは、国道137号線に建設中の河口2号トンネル掘削現場を見学することに。 最先端まで進んで・・・ ダイナマイトを仕込むための、ドリル穴を開ける作業を実演してくれました。(ドリルジャンボという掘削設備です) とにかく「デカイ」「うるさい」で大変な現場です。 次に向かったのは・・・中日本高速道路八王子支社の道路管制センター。 ふーん。こんな風になってるんだぁ。 ※ 交通情報のおねいさんに会いたかったな・・・ (父) で、またまたバスで移動して着いたところは、昭和町にある「甲府保全・サービスセンター」 高所作業車に載せてもらって、色んな特殊車両をひと眺め。 放水車の実演有り・・・、HPの救急作業実演有り・・・ 除雪車のロータリーがぐるぐる回ったり・・・ で、とっても楽しく勉強させてもらいました。 んでっ、朝集合した風土記の丘に戻り・・・ 巨大な勾玉に乗っかって、本日の予定は全て終了。 ※ イベント続きで、疲れました。 かっちゃん13 子供たちメニュー かっちゃん15
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前へ 「村上さんはさ」 千聖様のお部屋へまいりましょう、と言われ、メイドルームから移動する際中、俺の後ろをしずしずと歩く村上さんに話しかける。 「千聖ねーちゃんのことどう思ってるの。メイドとして、じゃなくて、同年代の同性として」 「難しいご質問ですね」 「何か、全然タイプがちげーじゃん。たとえば、村上さんがねーちゃんと同じ学校通っててさ、部活とか委員会で知り合いになっても、全然関わらなさそう」 「ああ、それはそうかもしれないですねえ」 なぜか、とても楽しそうに笑う村上さん。 あんまり、特定の女子のグループには入らなさそうなタイプだよな、この人。でも好き嫌いははっきりしてるから、一匹狼っつーか、付き合う相手を選んでそうな。 「ほんと、千聖ねーちゃんって、何考えてるのかわかんねえ」 「・・・でも、大好きなんでしょう?千聖お嬢様のこと」 「別に。家族に好きも嫌いもねーよ。家族は家族だ」 そんな村上さんだから、俺はわりと、この人には本音をさらけ出せたりする。いちいち詮索してこない、サラッとしたところが、いろいろと話しやすい。 絶対、性別間違って生まれてきたよな・・・もったいない。男だったら、サッカー部に勧誘してたのに。つーか、彼氏はいなさそうだけど、彼女はいそう。とかいってwぷぷぷ 「おぼっちゃま」 千聖ねーちゃんの部屋につながる、廊下の角の前で再度村上さんに呼び止められる。 「何?」 「ふふ、さっきの。前に、お嬢様も同じこと言ってました。寮の皆さんも交えてご家族のお話をなさっているとき、“家族に、好きも嫌いもないでしょう?”と。 だから、空翼様は何も心配することはないんですよ」 「別に俺は心配なんて」 「いいなあ、そういうの。」 その時、俺は初めて、村上さんのおねーさんっぽい顔を見た気がした。 ふっと微笑みを浮かべた表情はちょっとさみしそうにも見えて、俺が普段マッチョ(ryと言っている人とは全く別人のように見える。 「このお屋敷に人が集まってくるのは、当たり前のように、家族の愛があるからなんでしょうね。 誰もが望んでいて、でもそう簡単に手にすることのできない・・・。家族と離れて暮らしている寮生さんたちは殊更、それを強く感じていらっしゃるでしょうし」 「む、村上さんだってまあ、うちの家族みたいなもんじゃん」 自分の家族を褒められるのがむずがゆいのと、いつにない村上さんの様子に、俺は慌てて口をはさんだ。 村上さんは、目をぱちくりさせて俺をじーっと見ている。 「ありがたいお言葉ですが、空翼様・・・」 「あ・・・いや、だからさ、家にいる人は家族だろう?まあ、ショボ執事とかは庭の木みたいなもんだけど」 「あはは。せめて、郵便ポストぐらいには思ってあげてください。・・・ま、雑談はこのぐらいにして」 ああ、この切り替えの早さ。俺が本格的に困る前に、話題を切り上げてくれる。やっぱこの人って・・・ 「あ、ちなみにおぼっちゃま。私は別に○○○ついてないですし、性別間違ってもないですよ。みや・・・ま、今のところ男性にこれといった関心がないのは大当たりですけど」 ――だから、心読むなっつーの!やっぱり当分、つえーメイドの称号は外せないな。 部屋の前まで行くと、腕組みしてドアにもたれかかっている人物、1名。 俺の顔を見るなり、眉間にしわを寄せて舌打ちしてきやがった。 その険しい表情のまま、村上さんをジロリと睨みつける。 「何で連れてくるんでしゅか」 「おい、デコおんな。ここは俺の家だぞ。お前なんか、寮をクビに・・・」 「まあまあ、お二人とも。 実は、クレヨンの汚れを落としていた海夕音様が、空翼お坊ちゃまに見つかってしまったものですので。お坊ちゃまも気になさってるみたいだから、お連れしたんです」 「・・・ふん、ほんと、ちしゃとの弟とは思えないぐらい空気よめない奴でしゅね」 「お前、さっきから生意気なんだよ。俺は千聖ねーちゃんに会いに来てるんだ、そこどけよ」 こいつ・・・いつも姉ちゃんの彼氏(?)気取りで気に入らない。 ℃変態みたいな奇行はないものの、目つきも口も悪すぎるったらありゃしない。こんな奴に惚れてるなんて、俺のサッカー子分 Σ(少Д年;)は考え直した方がいいんじゃないのか? 「まあまあ、萩原さん。ここは私に免じて、ね?」 村上さんがそう言うと、デコ女は少し小首を傾げながら、チラリと横目でねーちゃんのいるドアの方を見た。 「・・・まあ、仕方ないでしゅね。鬼軍曹が言うなら、特別でしゅよ。おいつばしゃ、さっさと入るでしゅ」 このっ、覚えてろよ!俺が当主になった暁には・・・って、そのころにはコイツはいないか。・・・いないよな?この屋敷にへばりついてたりして。恐ろしい女だ。 「ねーちゃん、入るよ」 明るい茶色のドアを開けると、いつものねーちゃんのバニラっぽい匂いが広がった。 その女子って感じの匂いに全然似合わない、二匹目の悪魔が振り向く。 「うーわ、なにしにきたんだかんな」 「それはこっちのセリフだ。マジ、何ではぐれ悪魔超人コンビそろってんだよ・・・」 ℃変態はヤンキーみたいにアゴを突き出しながら、ずいっと顔を近づけてきた。 「今女子会やってるんでー、男は出入り禁止だかんな」 「はあ?お前とデコ女が参加してる時点で女子会じゃねーだろ。悪魔の晩餐だろうが」 「はーん?・・・あ、なんだめぐぅも一緒なんだ。何か御用?でも、なんでこいつも・・・」 ――くっそー、さっきから村上さんばっかり!ここは俺んちなんだぞ! 「みおんの奴が、手クレヨンで汚してウロウロしてたんだよ。んで、何やってんのか聞いたら、俺がいじめたとかいって泣き出すから。意味わかんねえ」 「・・・あー、で、こっち来ればわかるってめぐぅに言われたってこと?」 「まあ、そういうこと」 あらそうですかーふん、と片眉をあげて鼻で笑う℃変態。 ほんっと、こいつムカつく顔させたら世界一なんじゃねーのか。デコ女は煽ってくるようなことはないが、こっちは絶妙に癇に障る行動を起こしてくる。 こんな性格の奴と、ねーちゃんはよく毎晩一緒に眠れるもんだ。ぼけーっとしてるから、こいつの邪悪さに気が付いていないのかもしれないな。今度俺がちゃんと教えてやらないと。 「ねーちゃんどこだよ。・・・ん、何だよ、お前も手汚れてるな。何やってんだよ、一体」 そういえば、ドアの向こうのデコ女の手も・・・いったいなんの儀式だ? 応接用のでかいテーブルの上には大きな紙が敷いてあって、ところどころにペンやクレヨンがはみ出したような、点や線の名残りがある。 「でっかい絵でも描いてたのか?」 「まあ、そんなとこ」 「つーか、それより、千聖ねーちゃん・・・あれ?ちょっと待てよ?」 ここへ来て、俺は自分が重要なことを忘れていたのに気が付いた。 「今日はねーちゃんと寮の人で、夕飯食って帰るんじゃなかったのか?お前なんでいるんだよ」 「・・・ああ、そういう設定になってたかんな」 「設定だと?」 「まあ、つばさじゃないの!」 その時、奥のクローゼットが開いて、ねーちゃんが姿を現した。 ああ、そうだった。ねーちゃんの部屋はちょっと特殊で、いじけて籠城する時用に、隠し部屋が作られていたんだった。 どうりで部屋にいなかったわけだ。 「フガフガどうしてここにフガフガフガ」 「なんだよ、弟がねーちゃんの部屋に来ちゃいけないのかよ」 相変わらず、何言ってんだかよくわからないかつぜつの悪さ。 しかも、千聖ねーちゃんの顔にも、絵の具みたいなのが引っ付いている。 「千聖は今、手が離せないのよ。あとでつばさの部屋に行くから、少し待っていてちょうだい」 「夕飯の話はどうなったんだよ。帰ってきてるんじゃん」 「あ・・・えと、だから、フガフガフガ」 「なんもねーなら、なんで俺の誕生日・・・」 言いかけて、俺はしまったと口を閉じた。 だが、時すでに遅し。背後まで迫ってきていた、℃変態とデコ女が、プギャーwwwと指をさして笑い出す。 「出、出たーwwwおねえたまに誕生日祝ってもらえなくて号泣奴―www」 「は?泣いてねーよ!うっぜえな」 「ハッ、そんなことで部屋まで押し掛けるなんて、オメー何歳でちゅか?」 こ、この・・・!クラスの奴らとかだったらぶっ飛ばしてやるところだが、相手は(一応生物学上は)女だ。それでなくても、どういう攻撃を仕掛けてくるかもわからない、超危険人物。 なすすべもなく、俺は奴らを睨み返すことしかできない。 「村上さん、こいつら何とかしろよ!命令だ!」 「あっはっはっは」 「笑いごとじゃねーだろ!」 「とにかく、空翼はめ・・・村上さんと一緒にお部屋へ戻りなさい!命令よ!」 「しょーだしょーだ、おにいたまはでいりきんちでしゅ!めーれーぉ!」 いつの間にか戻ってきたみおんと、後ろですました顔してる明日菜ねーちゃんも加わって、“カエレ!カエレ!”コールばりの罵倒。 「あははは、首を洗って待っていてくださいね!とかいってw」 「うわっはなせ!なんだよいったい!」 そしてラスボスのごとく現れた矢島さんに、首根っこをひょいっと掴まれ、軽々と部屋の外にポイーッされてしまった。 結局、みおんの泣いてた理由もわからなかったし、無駄足にも程があるだろ! 「頼むよ、村上さーん・・・理不尽だろ、こんなの」 「あはは。おぼっちゃまも苦難の連続ですねぇ」 泣き言を漏らすも、村上さんはいつもどおり飄々としていて、俺の苦情なんて何も気にしてないようだった。 次へ TOP
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