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わたしは、自分の部屋で今までの事を振り返っていた わたし達は、フーケを捕まえ無事に破壊の杖を取り戻した 破壊の杖は、どうやらプロシュートの世界から来た物らしい その事から解った事といえば、プロシュートが召喚された以前にも 誰かが異世界から召喚されてしまった事ぐらいで、むこうの世界に帰る 手がかりにはならなかった しかし、何故わたしが異世界からプロシュートを召喚してしまったのだろう? わたしが真面目に考えてる隣では 「ダーリン、今日も素敵よ」 キュルケがプロシュートに迫っていた わたしはキュルケに対し、怒りよりも心配が先に出てしまう 「キュルケ・・・その、彼が怖くないの?」 キュルケをプロシュートから引き離し、耳打ちする 「確かに彼、敵には容赦ないわね、でも『そこにシビれる憧れるぅ』ってやつよ」 何それ? 「彼、敵にはそんなんだけど仲間想いの熱い男に違いないわ、コレ女の勘ね」 なに夢見てんのよ、彼の怖さは・・・わたしは夢を思い出していた 仲間が殺された時の彼の怒りを 仲間の強さを疑わない彼の信頼を 仲間の成長を願い叱る彼の姿を 殺しのイメージが強いが、別に彼は殺人鬼でも快楽殺人者でもない 人を殺す事が出来る『覚悟』を持った人間なんだ わたしは彼のそんな所にばかり気をとられ、今まで気が付かなかった それを、よりにもよってキュルケに指摘されるなんて 「ちょっとルイズ聞いてる?」 いけない、また考え込んでしまった 「聞いてるわ」 「あなた、彼を召喚して悩んでる様だけど、結構似たもの同士だと思うのよね」 「どっ、どこがっ?」 わたしと彼、一体どこが似ているというのかしら? 「自分の理想の姿を貫こうとする所ね。そこん所は私、あなたを認めているのよ」 自分でも顔が熱くなるのが判ってしまった 「今日の所はこれ位にしておいてあげる、じゃあねー」 キュルケが部屋から出て行った・・・まったく、言ってくれるわ・・・ でも・・・わたしの心には、もう迷いが無くなった この使い魔と、これから上手くやっていける わたしの心に爽やかな風が吹き込んだ 偉大なる使い魔 完
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「明日は虚無の曜日とか言って休みだってな。」 あれから数日がたったある日、ポルナレフが唐突に切り出した。 「そうね…て、なんであんた知ってんの?」 「ギーシュが言っていた。明日の虚無の曜日にモンモランシーとか言う小娘と街に行くとかな。」 (あれ?あいつ昨日ケティと仲良さ気に喋ってなかったっけ? さてはまた…) ルイズは昨日目撃したことを思いだし、ギーシュにまたあの不幸が起きないよう心の中で祈った。 「で、お前明日用事あるか?」 ルイズは少し考えて 「特に無かったと思うけど…」 と答えた。 「ちょうどいい。なら、明日その街に案内してくれ。」 「ハァ!?」 ルイズは素っ頓狂な声を上げた。 「何であんたの為にせっかくの休日を潰さなくちゃならないのよ!ギーシュ達に案内してもらいなさいよ!」 「男女の恋路を邪魔するのは無粋だ。」 ポルナレフが意外と真面目な事を言う。 「じゃあ今まで決闘してきた相手は?一人一人当たっていけば…」 「ギーシュ以外、誰も目を合わせようとすらせん。」 今度はちょっと淋しそうに言った。変に寂しがり屋らしい。 「…」 「だからお前しかいないんだ。頼む。」 ポルナレフが手を合わせて懇願した。 「…分かったわよ。しょうがないわね。」 ルイズがやれやれといった感じで言った。 「で、何しに行くの?買い物?」 「そうだ。」 ポルナレフが首を縦に振る。 「お金は?」 「ある。世話にはならん。」 「ふーん…」 何も知らないルイズは、どうせ厨房の手伝いかなんかで貰ったんだろうと思った。 その次の日の朝、学院から二人は馬に乗って出発した。 ポルナレフは馬に乗ったことは無いが、ラクダには乗ったことがある。 ラクダの方がよっぽどよく揺れる(らしい)のでポルナレフは馬に乗ってもさしたる苦痛は無かった。 「街まで馬で片道3時間だったか?」 ポルナレフはルイズの方を向いて尋ねた。 「ええそうよ。…てあんた何で知ってるの?」 「メイドのシエスタという娘に聞いた。まったく、シエスタはいい娘だ。 こんな俺にも何かと親切にしてくれる…まさに女性の鏡だな。きっと将来、良妻賢母になるだろう。夫になる奴はかなりの幸せ者だ。」 ルイズは、(ふーん…そんなメイドがいるのねぇ)と感心した。 「そうそう、平民同士だからかもしれんが、厨房の奴らは気のいい奴らばかりでな…」 ポルナレフはルイズに厨房の人々の事を話した。 平民とあまり交わったことの無いルイズにとってそれは新鮮な話だったが、あまり興味は無く、たまに相槌を打つだけで殆ど聞き流していた。 やがて二人は城下町に着いた 「…狭いな。本当にこれで大通りなのか?」 ポルナレフがトリステイン城下町きっての大通り、ブルドンネ街の人込みを歩きながらぼやいた。 「狭いかしら?人込みは否定出来ないけど、大通りってこれぐらいじゃない? それより、どこに行くのかいい加減教えなさいよ。」 ルイズが先を歩くポルナレフを追いかけながら言った。 「武器屋にな…」 「武器屋?」 「ああ。いつも決闘の時ナイフ使ってるだろ?あれは少し訳があって本来使ってはいけないものなんだ。 金が出来たからその代わりとなるような剣を買おうと思ってな。」 ポルナレフはルイズにそう言ったが、この時、半分しか理由を話してなかった。 本当の理由はチャリオッツを使うときにナイフより剣の方がリーチが長く連係が効く、と考えたからだ。 「それで場所は分かるの?」 「確かピエモンの秘薬屋とか言う店の近くにあるとかマルトーが言っていた。地図も有るんだが、まだ地理が分からなくてな… すまないがちょっと見てくれないか?」 ポルナレフはルイズにマルトーの描いた地図を渡して、先を歩くよう促した。 ルイズは異世界から来たとか言うポルナレフが一週間と少しで常識的な知識や金を手に入れていたのには 舌を巻いたが、まだ地理が分からないと聞いて少し優越感に浸った。 やがて店は見つかり、二人は羽扉を開けて中に入った。そしてポルナレフは店の奥から出て来た店主に話しかけた。 「レイピアを探しに来た。出来れば丈夫な物を頼む。」 ポルナレフはそう言うと袋を取り出した。先日オスマン達から巻き上げた金である。 「へぇ、分かりやした。で、あのお嬢さんは…」 店主が店内を見て回っているルイズをちらりとみる。マントの留め具に描かれている五芒星に気付いたらしい。 「私の主人だ。ただ連れ添いに来てもらっただけだ。」 そうポルナレフが言った 「そうでっか。そういえば最近下僕に剣を持たせる貴族が増えてやすね。自分から求めてくるのは珍しいけど。」 「ほう…そうなのか?」 「えぇ。何でも最近は貴族の宝物を狙ったメイジの盗賊が出るらしくて…」 「『土くれのフーケ』とやらか?」 「よくご存知で。その土くれに備えるためとかなんとか。おっと失礼。少しばかし見てきまさあ。」 しばらく待つと店主がやけに装飾が施されたレイピアを持って来た。 「しかし旦那、今時レイピアなんて使う人なんかいませんぜ。せいぜい貴族様の装飾品でさあ。」 「…」 成る程、確かに店内にレイピアは中々見当たらない。あってもどれもが華美な代物だらけだった。 実戦で使えるかどうか非常に怪しい物ばかりである。 「ちなみにそれは幾らだ?」 「へぇ2000エキューで。」 ポルナレフの所持金は500エキューしかない。明らかに足らなかったし、法外な値段だということも気付いた。 「ちなみに安いので幾らだ?」 ポルナレフが今度はかなり下手に出た。 「そうですなあ…そこの壁に立て掛けてあるので大体400エキューですな。」 店主が指差した先にはさほど装飾が華美でないレイピアが壁に立て掛けられていた。 見た所錆びてはいないし、そこそこ丈夫そうだ。 「それじゃあ、あれをくれ。」 ポルナレフは店主にそう言って袋の中から金貨を取り出して支払おうとした時、 「俺にさわんじゃねえ!貴族の娘っ子!」 いきなり店内でそんな声がした。ポルナレフが思わず振り返るとルイズが一本の剣を握っている。 「やい!デル公!お客さんにそんなこと言うんじゃねえ!」 店主が剣に向かって叫んだ。ポルナレフには何がなんだか分からなかった。 「ひょっとしてこれインテリジェンスソード?」 ルイズが驚いたように言った。 「何だ?その『インテリジェンスソード』というのは?」 「へぇ、魔法がかけられていて、意志を持って喋る剣のことでさぁ。」 「ほう…」 ポルナレフは多少興味を持ちルイズの方に歩いていくとその剣を手に取った。 こちらはさっきのレイピアと違い、刀身に錆が浮いている。喋るだけの駄剣か、と思っていると、 「…おでれーた。おめえ『使い手』か?」 剣が驚いた様に言った。 「『使い手』?」 「そうだ。どうだい?レイピア使うんならマンゴーシュはいるだろ?長すぎるし片刃でマンゴーシュには到底向かないが、俺を使わないか? お前さんならきっとマンゴーシュ、いや、むしろ変則的な二刀流として使いこなせる。」 「…成る程な。レイピアと大剣の変則的二刀流か…面白いかもな。」 「そうよ。だから俺を……」 「だが断る」 「ナニィ!?」 「すまないが意思を持つ剣というのにトラウマがあるんでな。しかも片刃というのが、な。」 そういうと剣を元の位置に戻した。 「ちょ、ちょっと待って!お願い話を聞いてね、ね!」 「…」 ポルナレフがうざそうに剣を見る。 「ほら、手足はないけど歌えるぜ!♪アア~オ~~~ンン~~トォ~~…」 「……」 ポルナレフがますますうざそうに見る。どうやら今度はインドでのトラウマを思い出したらしい。 それに気付いて、 「頼みます。買ってください。このデルフリンガー、一生のお願いです。トラウマだなんて言わないでね、ね?」 遂に剣は遜りはじめた。 その態度にポルナレフもさすがに哀れに思い、店主に聞いた。 「…このデルフリンガーとやらは幾らだ?」 「…100エキューでいいでさぁ。」 ポルナレフは袋から残りの金貨を全て出すと店主に渡した。 「じゃあ『あいつ』も頂こう。」 「何でそんな剣買ったの?装飾が殆どないレイピアと錆が浮いた口の悪いインテリジェンスソードなんてあまりにも趣味悪いわよ。」 店を出て大通りに戻ってからルイズが言った。 「人に趣味が悪いとか失礼だぜ、なあ相棒。」 鞘から少しだけ刀身が出ていたらしい。デルフリンガーが喋った。 「相棒と呼ぶな。」 パチンと完全に鞘に収め、(「あ、ちょ、待って…」) 「…まあ、レイピアは俺の最も得意な武器だ…ただこいつは余りにも哀れ過ぎてな…金にも余裕はあったし。」 と言って鞘に収めたデルフリンガーを見た。錆さえ落とせば使えるかと思ったが、マンゴーシュの代わりにはならないだろうしやっぱり無理だなと思い直した。 「ところで案内したんだからそれなりに御礼ぐらいはするんでしょうね?」 ルイズがずいっとポルナレフに詰め寄る。 「悪いが剣を買ったので持って来た金が無くなってな…まあ、普段から世話してやっているんだ。礼なんて別にいらんだろ。」 「な、ななな、何よそれ!私の休日潰してそれは無いんじゃない!?」 ルイズはポルナレフの『礼なんて無くて当然だろ』という態度に憤慨した。 「それじゃあ街で貴様の買い物でもしておくんだな。俺ももう少し町を見ておきたいしな。」 そう言うと、怒鳴るルイズを無視してポルナレフは通りを歩いて行った。 To Be Continued...
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「私は・・・・・・ゲルマニアの皇帝に嫁ぐ事になりました」 窓の外の赤い月を見るアンリエッタの瞳の色は、悲嘆に染まっている。 それだけで、彼女がこの結婚に対してどう思っているかが、痛い程にルイズは理解できた。 「アルビオンの革命が原因なのですね」 「えぇ、彼ら革命軍―――レコン・キスタは、今にも王家を倒し、国を乗っ取る勢いです。 いいえ、もう、事実上は彼らが乗っ取っていると言っても良いでしょう。 何せ、王国軍はほぼ壊滅状態で、ニューカッスルの城に篭城する事でなんとか生き延びているらしいですから」 敗北は時間の問題。 そして、その時間は限りなく短い。 「レコン・キスタは、全ての王権の廃止を謳っている以上、我々にも牙を剥く事になります。 悲しい事に、その時、彼らの進攻を防げる力は我が国にありません。 ですから・・・・・・トリステインは、ゲルマニアと早急に同盟を結ばなければなりません。 ふふ、そのような悲しい眼をしないで、ルイズ。 王族として生まれた以上、好きな人と結婚とする事など疾に諦めています」 「・・・・・・姫様」 「私が自分の心を殺せば、幾万の民の命が救えると言うのならば、喜んで私は自分の思いに杖を向けましょう。 王の命は民の為にあるのですから」 儚げに微笑むアンリエッタに、胸を締め付けられるような感覚を覚えたルイズは、どうしても彼女に同情の気持ちを抱いてしまう。 他人から羨まれて仕方の無い王族と言う彼女の立場。 しかし、果たして其処に居る事は、今、目の前で幸せを捨て去るしかない少女が望んだモノだったのだろうか? 「トリステインとゲルマニアの同盟・・・・・・これが結ばれたとなると、レコン・キスタも容易に手出しを出来なくなるでしょう。 ですが、向こうの者達も、それが分かっているらしく、私とゲルマニアの皇帝との婚約破棄の為の材料を血眼になって探しているようなのです」 アンリエッタは言葉を区切り、ルイズの眼を真正面から見据えた。 「私を悩ます原因は、この婚約破棄の原因となりえる物がある事です」 「原因となりえる物・・・・・・?」 「えぇ。私が以前、アルビオン王家・・・・・・ウェールズ皇太子に宛てた手紙。 その手紙が、ゲルマニア皇室に届けられたなら、恐らく、同盟どころの話では無くなるでしょう」 ルイズは、男性としてとても魅力的な事で有名なウェールズ皇太子の名前とアンリエッタの言葉の端々に散りばめられた感情から、 その手紙とやらの内容が、恋文である事が予想できた。 なるほど、大方、遠距離恋愛の文通の中で、戯れに婚礼の言葉でも書いてしまったのだろう。 ブリミルの教えの中で、重婚は重い罪である。 明るみに出れば結婚どころでは無いと言ったのは、どうやら比喩では無いらしい。 アンリエッタは、自分の胸の内だけに秘めた事柄を発した事により、先程よりも幾分、顔から緊張が解けていた。 対して、ルイズの表情は固い。 次に、アンレエッタが言ってくる言葉が予想できた為にだ。 「ルイズ・・・・・・今日、貴方の部屋に訪れたのは、この事に関係しています。 率直に言うと、貴方にはアルビオンに赴き、ウェールズ皇太子の下から手紙を回収してきて貰いたいのです」 心苦しそうに眼を伏せるアンリエッタに、ルイズは、ほらキタと、心の中で盛大に溜め息を吐いた。 「フーケ討伐の噂は、私の耳にも届いています。 幾多のメイジが苦汁を舐めさせられたフーケを捕らえたと言う貴方を見込んで、頼みます、ルイズ」 たかだか『土』のトライアングルのメイジを捕らえただけの生徒に戦場に行って来いと言うのか、この姫様は。 ルイズは、そのあまりの常軌を逸脱した頼み事に、ただ呆れるしかなかった。 温室育ちだと思っていたが、ここまではとは。予想外にも程がある。 だが、幾ら予想外と言えど、友人の・・・・・・しかも国の最高権力者の娘である人の頼みを無碍に断るのは、貴族として如何なものか。 「一つ、聞きたい事があります」 これだけは聞いておかなければならない。 「敵の数は、如何ほどですか?」 「・・・・・・・・・・・・五万、と聞いています」 五万人もの有象無象の敵の中に、切り込む自分の姿をルイズは夢想して、そのあまりの実現の難しさに頭を抱えた。 (ホワイトスネイク、あんた、五万の人間に勝てると思う?) どの道、城に近づくには包囲しているレコン・キスタと事を構えなければならない。 ならば、せめてどのくらいの確立で勝てるかを己の使い魔に問い掛けたルイズであったが――― (勝利ヲ前提トシテ考エルトナルト、君ト私ノ力ヲ最大限活カシタトシテモ難シイダロウ。 ダガ、手紙ノ回収ダケヲ目的トシ、敵陣ノ突破ダケヲ考慮スルノナラバ・・・・・・マァ、ナントカハナルダロウ) (あんた、五万人をなんとか出来るって言うの?) ―――割りと出来そうなニュアンスの言葉を返してきたホワイトスネイクに、思わず聞き返してしまった。 (数ハ、私ニトッテ致命的ナ脅威トナルコトハ無イ) 自身ありげな態度の使い魔に、胡散臭そう、と言った感じの視線を向けてから、ルイズは、アンリエッタの海色の瞳を覗き込む。 淡い色合いをしているその瞳の奥は、友人を死地へと送る罪悪感からか、どんよりと曇っている。 「姫様」 「・・・・・・はい」 「微力ながら、ルイズ・フランソワーズは、全力を尽くして目的の物を回収し、姫様へ届ける事を、此処に誓います」 「―――ルイズ」 ありがとうと、口元を押さえ俯くアンリエッタを見ながら、ルイズは拳を握り締める。 少なくとも、自分を訪ね、迷いを打ち明けた“この少女”は友人だ。 友人であるならば、自分は全力をもって彼女の苦痛を和らげなければならない。 それが、友達と言う関係であるのだから。 「頼みましたよ。ルイズ。 それから、これは王家に伝わる水のルビーです。 お金に困った時には、どうぞ、これを売り払って旅の路銀にしてください」 頼み事が済んだアンリエッタは、自分の指から引き抜いた指輪を手渡すと、 ルイズに一礼をしてから部屋の扉を開け、出て行こうとしたが、どうしても足が動かない。 「姫様?」 怪訝な顔をしたルイズの声に、アンリエッタは、あぁ、と悲しげに呻いた後に、マントから丸められた羊皮紙を取り出した。 「国よりも我を通す私は、きっと王族になど生まれてきてはいけなかったのでしょう。 ですが・・・・・・それでも、私は・・・・・・」 今にも泣き出しそうなぐらいに悲痛な呟きを漏らし、手紙をルイズの手に確りと握らせてから、アンリエッタは言葉を続ける。 「自分の気持ちに嘘をつけない・・・・・・こんな王女を、誰も許してくれないのでしょうね」 懺悔にも似た響きを持つ音に、ルイズは何も言えなかった。 いや、空気を読める者ならば、この時、誰も何も言えなかっただろう。 「だ、だ、だ、誰が許さなくても、僕が許します、このギーシュ・ド・グラモンが許します!!」 空気の読めない馬鹿一名は、声高々に反応した。 ルイズもアンリエッタも、突然現れた人物に驚いて固まってしまう。 そんな二人の様子など、もはや眼にも入っていないのか、 先程からずっと部屋の壁に耳を当てて話を聞いていたギーシュは、やれ、悩みなんて即座に解決してみせますとか、 レコン・キスタなんて、僕のワルキューレでこてんぱんにしてやりますとか、 あからさまに己が領分を履き違えた台詞を言いまくっていた。 なんとかアンリエッタより早く再起動をしたルイズは、目障りな金髪少年を連れて行くように、自分の使い魔に目配せすると、 ホワイトスネイクは、ギーシュの首根っこを掴んで、ずかずかと何処かへ去っていった。 最初は、放したまえ、とか、気安く触れるな、とか、強気な声が聞こえていたが、何かを殴るような音が廊下響いた後は、 勘弁してください、とか、もう許して、とか、実に情けない声に摩り替わっていた。 「あ、あの、ルイズ?」 「すっぱりきっぱり、今の事は忘れてくださいませ、姫様」 笑顔でそう言うルイズに、アンリエッタはこくこくと頷くと、 そのままフラフラと部屋からルイズの部屋を出て行った。 その後ろ姿を、ルイズはぼんやりと眺めていたが、 ギーシュをフルボッコにしたホワイトスネイクが帰ってくると、廊下と自室を隔てる扉を閉めるのだった。 早朝と言うのは、どうして、こうも気が滅入るのか。 才人は、そんなことを考えながら溜め息を吐いた。 「何、ぼさっとしてんのよ。さっさと付いて来なさい」 勝気で、傲慢で、可愛らしいご主人様は、朝も早くから元気一杯らしく、 まだ寝ている才人を蹴りの一撃で文字通り叩き起こしてから、 有無を言わせずに、剣を握らせて自分の後を付いて来るように言い放ったのだ。 ルイズと才人のどたばたに目覚めて、あからさまな不快感を隠さずにルイズを無言で見つめていたシエスタに、 出掛けて来る事を一応言っておいたが、あの顔はまったくもって納得していない顔であった。 帰ってきたら、多分、修羅場なんだろうなぁ、とか才人が考えている内に ルイズは目的の場所に付いたのか、早足だった歩調を止めた。 そこは、寮の五階ある一室の前であった。 「タバサ、起きてる?」 こんこん、と軽くノックをしてから返事を待つルイズであったが、三秒後には扉を抉じ開ける。 「ちょっと、入るわよ~」 良いのかよ、とか才人は思ったが、意見を口に出したら返答は蹴りか裏拳なので、何も言わない。 と言うか、言えない。 「何、まだ寝てるの?」 ベッドの上、ルイズ達が入ってきた事も気付かず、すぅすぅと眠っているタバサは、 上等なピスクドールのように、生きている、と言う単語から掛け離れた可憐さを持っている。 密かに、起こさずにこのまま寝顔を鑑賞したいと変態チックな考えに浸っていた才人を尻目に、 ルイズはベッドの真横に立つと、そのまま軽くタバサの頭を小突いた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・イタイ」 「起きたみたいね」 小突かれた頭を右手で押さえながら、タバサは恨めしそうに痛みの原因を作った人物を見たが、 そんな視線など気にもならないのか、ルイズはさっさと本題を口にする。 「あんたの使い魔。悪いけど、貸してくれない?」 あまりにもあまりな物言いに、流石のタバサも溜め息が口から出るのを止めることは出来なかった。 「アルビオン?」 「そう、急な用事でね」 自分の使い魔なのだから、どうして必要なのかを訊ねるタバサにぶっきらぼうに返答するルイズ。 その返答に、タバサは昨晩、彼女の部屋に王女が訪ねてきた事を思い出し、 恐らく国許からの頼まれた用事である事を看破したが、その内容までは流石の彼女も分からなかった。 「あんた相手に押し問答をする気も無いわ。 貸すの? 貸さないの? どっち?」 人にモノを頼んでいると言うのに高圧的な態度を崩さないルイズに、タバサは母国の勝気な従姉妹を思い出したが、 すぐに今の状況とは関係ないと彼女の顔を頭から追い出す。 「早く返事しなさいよ。こちとら竜が借りられないなら、馬で出発なんだから」 苛立たしさげに口調を荒げるルイズを宥めようと才人が、まぁまぁと声を掛けるが、返答の裏拳で沈黙する。 ふんっ、と鼻息荒く裏拳を放った拳をプラプラとさせて殴った痛みを散らせているルイズに、 タバサはベッドから立ち上がり、枕元に置いてある自分の身の丈程もある杖を手に取った。 「何のつもりよ?」 「使い魔は一心同体」 だから、と続きを紡ぐタバサは、大きな杖を確りと構え淡々とした声で告げる――― 「私も同行する」 ―――パジャマ姿で。 「・・・・・・どうかと思うわ」 本当に 緩やかとは掛け離れた風に身を委ねるタバサは、ルイズに注意された所為で、 パジャマでは無く学生の正装である制服姿となっている。 「うわっ! すげぇ! この竜すげぇ!!」 「五月蝿い!!」 背後の雑音に気を取られる事も無く、自分達を凄まじい勢いで運ぶ使い魔の首を撫でるタバサの顔は、睡眠不足の為か、幾分眠たそうであった。 「大丈夫、あんた?」 「問題無い」 普段通りの無愛想なタバサに、ルイズは、そう、と別段追求もせずに進行方向とは逆。 つまり、自分達が出発してきた学院の方へと視線を向ける。 「キュルケの奴・・・・・・どうしてるのかしらね?」 そういえば、あの赤毛の少女には何も言わずに出てきてしまった。 伝える義理が無いと言えば無いが、やはり友人に一言も無しに居なくなるのは、心苦しいものがある。 例え、それが伝えられないであろうものだとしてもだ。 「あんた、どう思う? キュルケが、今、何をしているかって」 ルイズの問い掛けに、タバサは暫く考え込むと、ルイズの方へと振り向き口を開く。 「怒っている」 「でしょうねぇ」 こりゃ、帰ったら大変ね、とルイズは頭を抱えるのだった。 ちなみに、同時刻。 もう出発したとも知らずに、ルイズ達を正門の前で待ち続けている、 髭を蓄えた凛々しい男が、何時まで経っても来ない彼女達に、ルイズと同じように頭を抱えているのは、 別にどうでも良い話だったりする。 第十一話 戻る 第十二話
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2話 「……ナルホド。ツマリ私ハモウオ前ノ使イ魔ニナッテシマッタノカ」 「そうよ」 「……ソシテコノ左手ノ甲ノ文字ハソノ印カ」 「そうよ」 「仮ニ私ガコノ左手首ヲ切リ落トシタナラ、ドウナル?」 「どうもならないわよ。あんたが痛いだけ」 「デハ、私ガオ前ノ使イ魔ヲ辞メル方法ハ無イノカ?」 「無いわ。主人と使い魔との契約は使い魔が死ぬまで解除されないもの」 「…………」 ホワイトスネイクは静かに絶望した。 何の因果か知らないが、主人と切り離された上にこんな小娘に使われてしまうことが確定したのだ。 こんなことになるなら主人の死と同時に消滅していたほうがいくらかマシだった。 しかも今いる場所は、地球とは全く別の場所らしい。 その証拠に、窓から見える月は赤と青の二つ。 まるでおとぎ話の世界だ。 「……モウ一度確認シタイ。ココハドコダ?」 「あんたもしつこいわね。別の世界から来たとか変なことも言うし……。まあいいわ。 ここはハルゲキニアのトリステイン王国にある、トリステイン魔法学院よ」 「ソシテ使イ魔トハ何ダ?」 「主人を守るのは勿論、主人の目や耳になったり、主人のために秘薬の材料を探したりもするわ。 最後の一つを除けば、スタンドと同じである。 「でもあんたに見えてるものは私に見えないし、おまけに秘薬の材料なんか探せないみたいだし……」 「ソレハイイ。ソシテ私ガ使イ魔ヲ辞メルニハ……死ヌシカナイ。ソウダナ?」 「ええ、そうよ」 実にスガスガしいルイズの解答に、ホワイトスネイクは再び絶望した。 「何よ、その顔! わたしがご主人様だってことに文句でもあるの?」 「アル」 ぴきっ、とルイズのこめかみに筋が走る。 じょ、上等だわ、この使い魔。 この私が、このルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがご主人様だってことに文句があるっていうの? お、面白いじゃないの。 「じゃ、じゃあ聞いてあげるわ。わわ、わたしのどこが、不満なのよ?」 まさしく「マジでキレる5秒前」のルイズ。 だがそれを知ってか知らずか、ホワイトスネイクは常識を語るかのように言った。 「適材適所、トイウ言葉ガアル。 優レタモノハ優レタ所ニ、劣ッタモノハ劣ッタ所ニ、トイウコトダ。 ソシテ……私ガ充テラレテモイイ場所ハタダ一ツ。ツマリ私ヲ使ッテイイ人間ハコノ宇宙デタッタ一人。 ダカラオ前ノヨーナ年端モ行イカナイ小娘ニ使ワレルコトガ一番ノ不満ダ」 「だ、誰よ、その『あんたを使っていい人間』ってのは?」 わなわなと震えながらルイズが言う。 「エンリコ・プッチ。 カツテ……ト言ウカ、ホンノ少シ前マデ私ヲ使ッテイタ人間ダ」 「エンリコ・プッチ? 誰よ、それ? それに『使っていた』ってどういうこと?」 「エンリコ・プッチハ聖職者デ優レタスタンド使イ。 『使ッテイタ』トイウノハ、単純ニ私ノ本体ダッタッテコトダ」 「『スタンド使い』? 『本体』? ……あんた、何言ってるの?」 「……ソウカ、マダマトモニ説明シテイナカッタナ」 そう言うと、ホワイトスネイクはふわりと空中に浮き上がった。 「私ガ『スタンド』ト呼バレル存在ダトイウコトハ話シタナ? 『スタンド』トハ精神ガ具現化サレタモノ。 ツマリ私ハエンリコ・プッチノ精神ガ具現化サレタモノダトイウコトダ。 『種族』トイウ括リハ私ニハアマリ合ッテイナイ訳ダナ ソレトコノ具現化ノ元ニナッテイル人間ヲ『スタンド本体』ト呼ブ。 サッキ言イッタ『スタンド使イ』トハスタンドヲ持ッテイル人間ノ総称ダ」 ホワイトスネイクはペラペラと説明する中、ルイズはぽかんとしてホワイトスネイクを見上げていた。 「スタンドニハ『ルール』ガアル。 能力、性能、性質、スタンド本体カラ離レラレル距離……スタンドハ様々ナ『ルール』ニ縛ラレテイル。 故ニ……オイ、聞イテルノカ?」 「……あんた、空飛べたの?」 「正確ニハ『浮ク』ダ。 コノ程度ノコトナラ大概ノスタンドハデキル。 ソレハイイトシテ、私ノ話ハ聞イテイタンダローナ?」 「き、聞いてたわよ! 要するに……っていうか、あんたの話を信じろっていう方が無理よ。 あんたの言ってることが本当なら、あんたは生き物ですらないことになるじゃない」 「ソノ解釈デ合ッテイル」 「それが信じられないってことよ。第一あんた、私と話せてるじゃない。 それにちゃんと痛がったりもするみたいだし……やっぱり『生き物じゃない』ってのは信じられないわ」 「今ハ分カラナクテモイイ。ソノウチ信ジルヨウニナル」 そう言ってホワイトスネイクはふわりと椅子に降りた。 「まあ……今はそういうことにしておいてあげるわ。 他のみんなには『エルフの眷属』だって言っておくから」 「『エルフ』?」 「亜人の一種よ。すごく強力な先住の魔法が使えるの。 それも優秀なメイジ何十人分にも匹敵するぐらいのね」 そこでルイズはいったん言葉を切る。 「それで、結局あんたが言いたいのは『私が優秀な主人じゃないから認めない』ってことでしょ!? 何で私の実力を見もしないうちからそんなこと言うのよ!」 「私ハコレデモ20年人間ヲ見テキテイル。 誰ガ優秀デ、誰ガ無能カハ、見レバ大体分カル。 ダカラオ前ガエンリコ・プッチニ及ブヨウナ器デハナイコトモ分カル」 ぶちん。 本日二度目、ルイズの中の決定的な何かが音を立てて切れた。 「なっ、何よさっきからプッチ、プッチ、って! そんなにそいつがよければそいつのところに行っちゃえばいいじゃない! 何で私のところに召喚されてきたのよ!」 「ソレハ無理ダ」 「何でよ!」 「エンリコ・プッチハ既ニ死ンダ」 「……えっ?」 「私ガコノ目デ確認シテイル」 予想もしなかった答えに、言葉を失うルイズ。 だがそんなルイズに構うこともなくホワイトスネイクは続ける。 「正直、何故自分ガ生キテイルノカ……ソレスラ私ニハ見当モ付カナイ。 ソシテ此処ハ分カラナイコトバカリダ。 何故スタンド本体ト切リ離サレテイル私ガ存在デキルノカ? 何故生キル目的モナイノニ私ハ生キテイルノカ?」 そこでホワイトスネイクはいったん言葉を切る。 「オ前、サッキ私ノ足ヲ踏ンヅケタヨナ?」 「え、ええ……」 「本来ナラ私ハスタンド攻撃デシカダメージヲ受ケルコトナド無インダ。 コレハ私ダケデハナイ。スタンド全テニ共通スルコトダ。 ツマリ……ヒョットシタラ私ハ、モハヤスタンドデスラナイノカモ知レン」 そう言ったきり、ホワイトスネイクは何か考え込むかのように押し黙ってしまった。 ルイズも言葉が見つからず、何も言えない。 ただはっきり分かったのは……ホワイトスネイクが「生き甲斐」をなくしているということ。 その生き甲斐だった人はもうすでに、しかも目の前で死んでしまっていて……。 ルイズにはもちろんそんな経験はない。 それどころか、自分の生きがいとなるようなことさえ見つけていない。 やっぱりこいつの言う通りで、自分はまだ小娘なのかもしれない。 でも―― 「それで……あんたはこれからどうするのよ?」 「自決デモシヨウカト考エテイル」 「ふーん……って、ええええええええええええ!?!?」 「無論本気ダ」 「ちょ、ちょっと! い、いくら生き甲斐がないからって、そんな、何も死ぬなんて!」 「オ前ハ知ラナイカラソンナコトガ言エルノダ。 生キ甲斐ヲ失ウコト、生キル目的ヲ失ウコトガ意味スル本当ノトコロヲナ」 「何よそれ! 全然納得できないわよ!」 「納得スル必要ハナイ。 オ前ノヨーナ小娘ニハ説明シタトコロデ分カラン事ダカラナ」 そう言って、ホワイトスネイクは退屈そうに天井に目を向けた。 ……ななな、なんなのよ、こいつは。 さっきからわたしのことを小娘、小娘って。 しかもなんなのこの態度? まるで私のことをご主人様だなんて思っちゃいないわ。 スタンドだか何だか知らないけど、たかが亜人の分際でいい気になってくれるじゃないの。 今に見てなさい。このルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがあんた如きを使い魔にするぐらい当然のメイジだってことを……。 そこまで考えて、ルイズの思考が止まる。 じゃあ、それをどうやって証明するの? こいつに自分を、どうやって認めさせるの? その手段が今の自分には……あるの? ……「今の」? その単語に、ぐるぐると回り続けるだけだった思考が一気に一つにまとまった。そして定まった。 今後の自分の目標、そして目指すところ。 「ねえ、あんた。……賭けをしない?」 「賭ケ、ダト?」 「そう、賭けよ」 「内容ハ?」 ホワイトスネイクが乗ってきた。 その様子にルイズは内心でほくそ笑み、そして少し間をおいてからこう言った。 「1年でわたしが、あんたがご主人様と認められるだけのメイジになれるかどうか、よ」 ふふん、と胸を張るルイズ。 だが。 「真面目ニ聞コウトシタ私ガ馬鹿ダッタ」 そう言ってまたホワイトスネイクは天井に目をやった。 「ちょ、ちょっと! わたしは真面目に言ったのよ? わたしが立派なメイジになれればあんただって私の使い魔になるっていう立派な生き甲斐が出来るじゃないの! そ、それを、『真面目に聞こうとしたのが馬鹿だった』ですって!?」 「仮ニ1年間デ何モ進歩ガナカッタトシテモ……1年間ハ私ヲ使イ魔トシテソバニ置イテオケル。 ソレガオ前ノコノ賭ケニオケルメリットデアリ……強イテ言エバ勝ッテモ負ケテモオ前ハ得ヲスルヨーニナッテイル」 「なっ……」 あっさりと自分の考えを看破され、唖然とするルイズ。 「ソレニ何カ勘違イシテルナラ言ッテヤル。私ハオ前ノヨーナ小娘ニハ何モ期待シテイナイ。 ダカラオ前モ私ニ何カ期待ナンカシナイデサッサト新シイ使イ魔トヤラデモ呼ベバイイ」 「な、ななな、なんですってええええええ!!!」 度重なるホワイトスネイクの高慢な物言いに、ルイズの堪忍袋の緒が三度切れた。 「あ、あんたは! さっきから小娘小娘ってわたしをバカにして! せいぜいあの世でみてなさいよ! あんたがわたしの使い魔にならなかったことを後悔するぐらいのすごいメイジになってやるんだから!!」 「後悔ナドスルモノカ」 「ふん、そんなこと言ってられるのもせいぜい今のうちよ! 偉大なメイジになったわたしを見たあんたはあの世から飛んで戻ってきて、 泣きながら『わたしを使い魔にしてください』ってお願いするんだわ!」 「勝手ニ言ッテロ。私ハ好キニスル」 「逃げる気!?」 「……何ダト?」 「そうよ! あんたは怖いんだわ! わたしが立派なメイジになって、その私に見返されるのが怖いんだわ! この臆病者! 卑怯者! でも逃げるんだったら今のうちに尻尾巻いて逃げるがいいわ! わたしは一人前になった後、その後ろ姿を大声で笑ってやるんだから!」 プッツ~~~ン! 決定的な何かが、また切れた。 だがルイズのではない。 「……言ッテクレルナ、小娘」 ホワイトスネイクのだ。 ホワイトスネイクはそう呟くと、椅子から跳ね上がるようにして空中に上がり、 ルイズの目の前に見せつけるように急降下した。 ドヒュゥンッ! 「きゃあっ!」 「コノ私ガ、コノホワイトスネイクガ、オ前如キ小娘ニ泣キナガラ懇願スルダト? 逃ゲルダト? 面白イナ……コノ20年、私ニ向カッテココマデ言ウ奴ハソウハイナカッタゾ……」 「な、なななな何よ! 何する気よ!」 「オ前ノ賭ケニ乗ッテヤルンダ」 「……え?」 「期限ハ半年。 ソノ間私ハ、オ前ノ言ウ『使い魔』トシテオ前ヲ見極メテヤル。 ソシテオ前ガソノ半年ノ間ニ私ニ認メサセルダケノ者ニナッタナラ、オ前ノ勝チダ。 ダガナレナカッタナラ……」 「オ前ノ『記憶』ヲ貰ッテイクゾ」 地獄の底のような声でそう言うと、ホワイトスネイクは煙のように消えてしまった。 後に残されたのは、ぽかんとした顔のルイズだけ。 「……ひょっとして……うまくいったの?」 「記憶を貰っていく」ということの意味どころか、期限が半年に縮んだことも、まだ分かっていないルイズだった。 To Be Continued...
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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百四十五話「六冊目『大決戦!超ウルトラ8兄弟』(その3)」 地獄星人スーパーヒッポリト星人 剛力怪獣キングシルバゴン 超力怪獣キングゴルドラス 風ノ魔王獣マガバッサー 土ノ魔王獣マガグランドキング 水ノ魔王獣マガジャッパ 火ノ魔王獣マガパンドン 究極合体怪獣ギガキマイラ 巨大暗黒卿巨大影法師 登場 最後の本の世界への冒険に挑む才人とゼロ。最後の世界は、メビウスが不思議な赤い靴の少女に 導かれて入り込んだもう一つの地球の世界。ここで才人たちはメビウスの代わりに、侵略者に立ち向かう 七人の勇者を探すことに。しかしまだ一人も見つけられていない内に、怪獣キングパンドンが 襲撃してきた! それはゼロが倒したのだが、直後に怪獣を操るスーパーヒッポリト星人が出現し、 キングシルバゴンとキングゴルドラス、更には四体の魔王獣をけしかけてくる。さしものゼロも この急襲には耐え切れず、とうとう倒れてしまった。どうにかダイゴに救われた才人だが、重傷にも 関わらず再度変身しようとする。だがその時、暴れる怪獣たちの前にウルトラマンティガが立ち上がった。 勇者として目覚めたダイゴが変身したのだ! 「ヂャッ!」 我が物顔に横浜の街を蹂躙する邪悪なヒッポリト星人率いる怪獣軍団の前に敢然と立ち はだかったのは、ダイゴの変身したウルトラマンティガ。その勇姿を目の当たりにした 人々は、それまでの疲弊と絶望の淵にあった表情が一変して、希望溢れるものに変わった。 「ウルトラマンだ……!」 「ウルトラマンが来てくれた……!」 「頑張れ! ウルトラマーン!!」 街の至るところでウルトラマンティガを応援する声が巻き起こる。そして才人も、感動を 顔に浮かべてティガを見つめていた。 「ダイゴさん……変身できたのか……!」 『ああ……! この物語も、ハッピーエンドの糸口が見えてきたな!』 ヒッポリト星人はティガに対してキングシルバゴン、キングゴルドラスをけしかける。 しかしティガは空高く飛び上がって二体の突進をかわすと、空に輝く月をバックにフライング パンチをシルバゴンに決めた。 「グルウウウウゥゥゥゥ!」 ティガの全身の体重と飛行の勢いを乗せた拳にシルバゴンは大きく吹っ飛ばされた。ゴルドラスは ティガに背後から襲いかかるが、すかさず振り返ったティガはヒラリと身を翻して回避しながら ゴルドラスのうなじにカウンターチョップをお見舞いする。 「ギュルウウウウゥゥゥゥ!」 魔王獣たちも続いてティガに押し寄せていくが、ティガはその間を縫うように駆け抜けながら 互角以上の立ち回りを見せつけた。 「いいぞ! ティガーッ!」 才人は興奮してティガの奮闘ぶりに歓声を上げた。……しかし、所詮は多勢に無勢。やはり 一対七は限界があり、ヒッポリト星人の放った光線が直撃して勢いが止まってしまう。 「ウワァッ!」 「あぁッ! ティガがッ!」 ティガの攻勢が途絶えた隙を突き、怪獣たちは彼を袋叩きにする。挙句にティガはヒッポリト カプセルに閉じ込められてしまった! 「まずい!」 ヒッポリトカプセルが中からは破れない、必殺の兵器であることを才人たちは身を持って 体験している。才人はティガを救おうとゼロアイを手に握った。 「ゼロ、行こう! ティガを助けるんだ!」 『よぉしッ!』 今度はゼロも止めなかった。 が、しかし、才人がゼロアイを身につけるより早く、夜の横浜に更なる二つの輝きが生じる。 「! あれは、まさか……!」 『二人目と三人目の勇者か……!』 ティガに続くように街の真ん中に立った銀、赤、青の巨人はウルトラマンダイナ! そして 土砂を巻き上げながら着地した赤と銀の巨人はウルトラマンガイアだ! 「ジュワッ!」 「デュワッ!」 並び立ったダイナとガイアは同時に邪悪な力を消し去る光線、ウルトラパリフィーを放って ヒッポリトカプセルを破壊し、ティガを解放した。助け出されたティガの元へダイナ、ガイアが 駆け寄る。 三人のウルトラマンが並び立ち、ヒッポリト星人の軍勢に勇ましく立ち向かっていく! 「ダイナとガイアが、ティガのために立ち上がってくれたのか……!」 感服で若干呆けながら、三人の健闘を見つめる才人。 ティガはヒッポリト星人、ダイナはシルバゴン、ガイアはゴルドラスに飛び掛かっていく。 一方で四体の魔王獣は卑怯にも三人を背後から狙い撃ちにしようとするが、その前には四つの 光が立ちはだかった。 「ヘアッ!」 「デュワッ!」 「ジュワッ!」 「トアァーッ!」 才人もゼロもよく知るウルトラ兄弟の次男から五男までの戦士、ウルトラマン、ウルトラセブン、 ウルトラマンジャック、そしてウルトラマンエース! この世界のハヤタたちが変身したものに違いない。 「七人のウルトラマンが出そろった!」 『勇者全員が覚醒したってことだな……!』 ウルトラマンたちはそれぞれマガグランドキング、マガパンドン、マガジャッパ、マガバッサーに ぶつかっていき、相手をする。これで頭数はそろい、各一対一の形式となった。 七人の勇者が邪悪の軍勢相手に奮闘している様をながめ、才人はポツリとゼロに話しかける。 「なぁ、ゼロ……俺はさっきまで、俺たちが頑張らないとこの世界は救われないって、そう思ってた。 俺たちが物語を導いていくんだって」 『ん?』 「でも違ったな。ダイゴさんは、俺たちが倒れてる間に自分の力で変身することが出来た。 他の人たちも……。思えば、これまでの物語の主人公たちも、みんな強い光の意志を持ってた。 俺たちはそれを後押ししてただけだったな」 と語った才人は、次の言葉で締めくくる。 「たとえ本の中の世界でも、人は自分の力で光になれるんだな」 『ああ、違いねぇな……』 才人とゼロが語り合っている間に、ウルトラ戦士対怪獣軍団の決着が次々ついていこうと していた。 「ヘアッ!」 「ミィィィィ――――! プォォォ――――――!」 空を飛んで上空から竜巻を起こそうとするマガバッサーに、エースがウルトラスラッシュを 投げつけた。光輪は見事マガバッサーの片側の翼を断ち切り、バランスを崩したマガバッサーは 空から転落。 「デッ!」 エースは落下してきたマガバッサーに照準を合わせ、虹色のタイマーショットを発射。 その一撃でマガバッサーを粉砕した。 「シェアッ!」 「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」 ウルトラマンは非常に強固な装甲を持つマガグランドキングに、両手の平から渦巻き状の 光線を浴びせた。するとマガグランドキングの動きが止まり、ウルトラマンの指の動きに 合わせてその巨体が宙に浮かび上がる。これぞウルトラマンのとっておきの切り札、ウルトラ 念力の極み、ウルトラサイコキネシスだ! 「ヘェアッ!」 ウルトラマンがマガグランドキングをはるか遠くまで飛ばすと、その先で豪快な爆発が発生。 マガグランドキングは撃破されたのだった。 「ヘアァッ!」 ジャックは左手首のウルトラブレスレットに手を掛け、ウルトラスパークに変えて投擲。 空を切り裂く刃はマガジャッパのラッパ状の鼻も切り落とす。 「グワアアアァァァァァ!? ジャパッパッ!」 「ヘッ!」 鼻と悪臭の元を失って大慌てするマガジャッパに、ジャックはウルトラショットを発射。 一直線に飛んでいく光線はマガジャッパに命中し、たちまち爆散させた。 「ジュワーッ!」 「ガガァッ! ガガァッ!」 セブンはマガパンドンの火球の嵐を、ウルトラVバリヤーで凌ぐと、手裏剣光線で連射し返して マガパンドンを大きくひるませる。 「ジュワッ!」 その隙にセブンはアイスラッガーを投擲して、マガパンドンの双頭を綺麗に切断した。 魔王獣は元祖ウルトラ兄弟に全て倒された。そしれティガたちの方も、いよいよ怪獣たちとの 決着をつけようとしている。 「ダァーッ!」 ダイナのソルジェント光線がキングシルバゴンに炸裂! オレンジ色の光輪が広がり、 シルバゴンはその場に倒れて爆発した。 「アアアアア……デヤァーッ!」 ガイアは頭部から光のムチ、フォトンエッジを発してキングゴルドラスに叩き込む。光子が ゴルドラスに纏わりついて全身を切り裂き、ゴルドラスもたちまち爆散した。 最後に残されたスーパーヒッポリト星人は口吻から火炎弾を発射して悪あがきするが、 ダイナとガイアにはね返されてよろめいたところに、ティガが空中で両の腕を横に開いて 必殺のゼペリオン光線を繰り出した! 「テヤァッ!」 『ぐわああああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――ッ!!』 それが決まり手となり、ヒッポリト星人もまた激しいスパークとともに大爆発を起こして消滅。 怪獣軍団はウルトラ戦士たちの活躍により撃滅されたのであった! 「やったッ!」 『ああ。……だが、戦いはこれで終わりじゃないはずだぜ。まだ真の黒幕が残ってるはずだ……!』 ゼロがメビウスの話を思い出して、深刻そうにつぶやく。 果たして、ウルトラ戦士の勝利で喜びに沸く人々に水を差すように、どこからともなく おどろおどろしい声が響いてきた。 『恐れよ……恐れよ……』 それとともに街の至るところから幽鬼のようなエネルギー体が無数に噴出して空を漂い、 更に倒したキングゴルドラス、キングシルバゴン、キングパンドン、キングゲスラ、 スーパーヒッポリト星人の霊も出現して空の一点に集結。全てのエネルギー体も取り込んで、 巨大な黒い靄に変わる。 その靄の中から……ウルトラ戦士の何十倍もある超巨体の怪物が現れた! 首はキング シルバゴンとキングゴルドラスの双頭、尾はキングパンドンの首、腹部はキングゲスラの 頭部、胴体はスーパーヒッポリト星人の顔面で出来上がっている、自然の生物ではあり得ない ような異形ぶりだ! これぞ闇の力が怪獣軍団の怨念を利用して生み出した究極合体怪獣ギガキマイラである! 「グルウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」 空に陣取るギガキマイラは身体に生えた四本の触手から、一発一発がウルトラ戦士並みの サイズの光弾を雨あられのようにティガたち七人に向けて撃ち始めた。 「ウワァァァーッ!」 ギガキマイラの怒濤の猛攻に、七人は纏めて苦しめられる。これを見て、才人は改めて ゼロアイを握り締めた。 「遅くなったが、いよいよ俺たちの出番だ!」 『おうよ! 八人目の勇者の出陣だな!』 勇みながら、才人はこの世界での三度目の変身を行う。 「デュワッ!」 瞬時に変身を遂げたウルトラマンゼロは、ゼロスラッガーを飛ばしてギガキマイラの光弾を 切り裂いて七人を助ける。ティガがゼロへ顔を向けた。 『ウルトラマンゼロ!』 『待たせたな、ダイゴ! 一緒にあのデカブツをぶっ飛ばそうぜ!』 『ああ、もちろんだ! これで僕たちは、超ウルトラ8兄弟だ!!』 ギガキマイラはなおも稲妻を放って超ウルトラ8兄弟を丸ごと呑み込むような大爆炎を 起こしたが、ゼロたちは炎を突き抜けて飛び出し、ギガキマイラへとまっすぐに接近していく! 「行けぇー!」 「頑張れぇー!」 巨大な敵を相手に、それでも勇気が衰えることなく立ち向かっていくウルトラ戦士の飛翔 する様を、地上の大勢の人々が声の出る限り応援している。 「頑張ってぇーッ! ウルトラマン!」 その中には、北斗の娘の役に当てはめられているルイズの姿もあった。 『ルイズ……!』 才人はルイズの姿を認めると更に勇気が湧き上がり、ゼロに力を与えるのだ。 「セアッ!」 「デヤァッ!」 八人のウルトラ戦士はそれぞれの光線で牽制しながらギガキマイラに肉薄。ゼロ、ティガ、 ダイナ、ガイアが肉弾で注意を引きつけている間に、マン、セブン、ジャック、エースが 各所に攻撃を加える。 「シェアッ!」 ウルトラマンは大口を開けたキングゲスラの首に、スペシウム光線を放ちながら自ら飛び込む。 ゲスラの口が閉ざされるが、スペシウム光線の熱量に口内を焼かれてすぐに吐き出した。 「テェェーイッ!」 エースはキングゴルドラスの首が吐く稲妻をかわすとバーチカルギロチンを飛ばし、その角を ばっさりと切断した。 「テアァッ!」 ジャックはキングシルバゴンの首の火炎弾を宙返りでかわしつつ、ブレスレットチョップで 角を真っ二つにする。 「ジュワッ!」 キングパンドンの首にエメリウム光線を浴びせたセブンに火炎弾が降り注ぐが、海面すれすれを 飛ぶセブンには一発も命中しなかった。 『へへッ! 全身頭なのに、おつむが足りてねぇんじゃねぇか!?』 ウルトラ戦士のチームワークに翻弄されるギガキマイラを高々と挑発するゼロ。彼を中心に、 八人が空中で集結する。 「グルウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……!!」 するとギガキマイラは業を煮やしたかのように、全身のエネルギーを一点に集めて極太の 破壊光線を発射し出した! 光線は莫大な熱によって海をドロドロに炎上させ、横浜ベイ ブリッジを一瞬にして両断させながらゼロたちに迫っていく。 「シェアッ!!」 しかしそんなものを悠長に待っている八人ではなかった。全員が各光線を同時に発射する 合体技、スペリオルストライクでギガキマイラの胸部を撃ち抜き、破壊光線を途切れさせる。 「デヤァッ!!」 煮えたぎった海面には全員の力を合わせた再生光線エクセレント・リフレクションを当て、 バリアで包んで修復させる。 その隙にギガキマイラが再度破壊光線を放ってきた。今度はまっすぐに飛んでくるが、 すかさずウルトラグランドウォールを展開することで光線をそのままギガキマイラにはね返す。 「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」 己の肉体がえぐれてしまったギガキマイラは、勝ち目なしと見たか宇宙空間へ向けて逃走を 開始した。だがそれを許すようなゼロたちではない。 『逃がすかよぉッ!』 その後を追いかけて急上昇していく八人。大気圏を突き抜けたところでギガキマイラの 背中が見えた。 「テヤーッ!」 「シェアッ!」 セブンとゼロはそれぞれのスラッガーを投擲。それらに八人が光線を当てると、エネルギーを 吸収したスラッガーはミラクルゼロスラッガー以上の数に分裂。イリュージョニックスラッガーと なってギガキマイラの全身をズタズタに切り裂き、足止めをした。 「ジェアッ!!」 とうとう追いついたウルトラ戦士たちは同時に必殺光線を発射し、光線同士を重ね合わせる。 そうすることで何十倍もの威力と化したウルトラスペリオルが、ギガキマイラに突き刺さる! 「グギャアアアアアアァァァァァァァァァ――――――――――――――ッッ!!」 ギガキマイラが耐えられるはずもなく、跡形もなく炸裂。超巨体が余すところなく宇宙の 藻屑となったのであった。 見事ギガキマイラを討ち取った勇者たちは、人々の大歓声に迎えられながら横浜の空に 帰ってくる。 『やりました……! この世界を守りましたよ!』 『……いや、まだ敵さんはおしまいじゃないみたいだぜ』 喜ぶティガだが、ゼロは邪な気配が途絶えてないのを感じて警告した。実際に、彼らの 前におぼろな姿の実体を持たない怪人の巨体が浮かび上がった。 それこそが人間の負の感情が形となって生じた邪悪の存在であり、真に怪獣軍団を操っていた 黒幕である、黒い影法師。それら全てが融合した巨大影法師であった! 『我らは消えはせぬ……。我らは何度でも強い怪獣を呼び寄せ、人の心を絶望の闇に包み込む……。 全ての平行世界から、ウルトラマンを消し去ってくれる……!!』 それが影法師の目的であった。心の闇から生まれた影法師は、闇を広げることだけが存在の 全てなのだ。 しかし、そんなことを栄光の超ウルトラ8兄弟が許すはずがない! 『無駄だ! 絶望の中でも、人の心から、光が消え去ることはないッ!』 見事に言い切ったティガの身体が黄金に光り輝き、グリッターバージョンとなってゼペリオン 光線を発射した! 他のウルトラ戦士もグリッターバージョンとなって、スペシウム光線、 ワイドショット、スペシウム光線、メタリウム光線、ソルジェント光線、クァンタム ストリームを撃つ! 『俺も行くぜぇッ! はぁぁッ!』 ゼロもまたグリッターバージョンとなり、ワイドゼロショットを繰り出した! 八人の 必殺光線は一つに重なり合うと、集束した光のほとばしり、スペリオルマイスフラッシャーと なって巨大影法師の闇を照らしていく! 『わ、我らはぁ……!!』 巨大影法師は光の中に呑まれて消えていき、闇の力も完全に浄化されていった。 地上に喜びと笑顔が戻り、そして夜が明けて朝を迎える。昇る朝日を見つめながら、ティガが ゼロに呼びかける。 『ウルトラマンゼロ、本当にありがとう! この世界が救われたのは、君たちのお陰だ……!』 『何を言うんだ。お前はお前自身の力で自分を、世界を救ったんだぜ』 『いや……君たちの後押しがあったからさ。感謝してもし切れない……。この恩は必ず返す からね! 必ずだよ!』 そのティガの言葉を最後に、ゼロの視界が朝の日差しとともに真っ白になっていく……。 遂に六冊、全ての本を完結させることに成功した。才人はその足でルイズの元まで駆け込む。 「ルイズッ!」 ルイズのベッドの周りには、タバサ、シエスタ、シルフィードらが既に集まっていた。 皆固唾を呑んで、ルイズの様子を見守っている。 ルイズは今のところ、ぼんやりとしているだけで、傍目からは変化が起きたかどうかは 分からない。 「……どうだ、ルイズ? 何か思い出せることはあるか?」 恐る恐る尋ねかける才人。するとルイズが、ぽつりとつぶやいた。 「……わたしは、ルイズ……。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……!」 「!!」 今の言葉に、才人たちは一気に喜色満面となった。ルイズのフルネームは、ここに来てから 誰も口にしていないからだ。それをルイズがスラスラと唱えたということは……。 「そうよ! わたしはヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズだわ!」 「ミス・ヴァリエール! 記憶が戻ったのですね!」 感極まってルイズに抱きつくシエスタ。ルイズは驚きながらも苦笑を浮かべる。 「ちょっとやめてよシエスタ。そう、あなたはシエスタよ。学院のメイドの」 「ルイズ……記憶が戻った」 「タバサ! 学院でのクラスメイト!」 「よかったのねー! 色々心配してたけど、ちゃんと元に戻ったのね!」 「パムー!」 「シルフィード、ハネジローも!」 仲間の名前を次々言い当てるルイズの様子に、才人は深く深く安堵した。あれほど怪しい 状況の中にあって、本当にルイズの記憶が戻ったというのはいささか拍子抜けでもあるが、 ルイズが治ったならそれに越したことはない。 「よかったな、ルイズ。これで学院に帰れるな!」 満面の笑顔で呼びかける才人。 ……だが、彼に顔を向けたルイズが、途端に固まってしまった。 「ん? どうしたんだ、その顔」 才人たちが呆気にとられると……ルイズは、信じられないことを口にした。 「……あなたは、誰?」 「………………え?」 「あなたの名前が……出てこない。誰だったのか……全然思い出せないッ!」 そのルイズの言葉に、シエスタたちは声にならないほどのショックを受けた。 「う、嘘ですよね、ミス・ヴァリエール!? よりによってサイトさんのことが思い出せない なんて……あなたに限ってそんなことあるはずがないです!」 「明らかにおかしい……不自然……」 「変な冗談はよすのね、桃髪娘! 全っ然笑えないのね!」 シルフィードは思わず怒鳴りつけたが、ルイズ自身わなわなと震えていた。 「本当なの……! 本当に、何一つ思い出せないの……! あるはずの思い出が……わたしの 中にない……!」 ルイズが自分だけを思い出せないことに、才人はどんな反応をしたらいいのかさえ分からずに ただ立ち尽くしていた。 「……」 混乱に陥るゲストルームの様子を、扉の陰からリーヴルがじっと観察していた。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 召還の儀式の最後の一人、ルイズが数十回の失敗の後になんと平民を呼び出してしまったとき、トリステイン魔法学園の教師、コルベールは驚いた。なにせ人間を召還するなどというのは今まで前例がない。 しかし、同時に彼は、落ちこぼれで見栄っ張りだが、その実影で涙ぐましい努力をしているルイズのことを、とても心配していたので、形はどうあれ、初めての成功を心の底から喜んだ。 ルイズは不満だ、やりなおしたいと食って掛かってきたが、コルベールはそれを許さなかった。 「(使い魔が何であるか、なんて長い目で見たら大した問題ではないんですよ・・・)」 使い魔によってメイジの才能を見る向きもあるが、それを言えば我が学院の長にして大賢者オスマンの使い魔はハツカネズミではないか。 それよりも、使い魔を従えたという事実こそが大事なのだ。ルイズへの風当たりもきっと弱まるに違いないし、そのほうが彼女に必要なことのはずだ。 だから、コルベールの心配を知ってか知らずか、ルイズがしぶしぶとコントラクト・サーヴァントを成功させたときは肩の荷が下りたような気すらした。 使い魔が人間だということは、後で学長と相談して何らかのフォローを入れよう。使い魔になる平民は少し可哀想な気もするが、なに、気にすることはない。 トリステイン最大の大貴族、ヴァリエール公爵家三女にとって唯一無二の存在になれるのだ。決して粗略にはされまい。 後は使い魔の少年の手に浮かび上がってきた奇妙なルーンを写し取って学院へ帰ろう。 コルベールはルーンを近くで見るために少年の手を取ろうとした。 油断しきっていたコルベールは、さっきまで顔を赤くして混乱していた少年の目に、いつの間にか『覚悟』の光が見えていることに気がつかなかった。 「エコーズACT3!その男を攻撃しろォー!!!」 『ACT3 FREEZE!』 その瞬間コルベールの体は草原にめり込むほどの勢いで前のめりに墜落してしまう。 「な・・・なんだ・・・?」コルベールは何かに躓いたのかと思い立ち上がろうとした。だが、意に反して腕をあげることすらできない。 「コルベール先生、何もないところで転ばないでくださいよ!」遠巻きに見ていた生徒達が笑う。だがコルベールは自らの身に起きたことの異常性に気づき始めていた。 「(う、動けない・・・!これは・・・私の体が『重くなっている』!?この少年の仕業か?そんなはずが・・・!重力制御など、例え土のスクウェアでも出来るものではない・・・!)」 ビキビキと体中の骨が軋む音がする。呼吸すらままならない。 いつまでも起き上がらないコルベールを生徒達が不思議に思い、騒ぎ出す。 「コルベール先生いつまで寝転がっているんだ?」 「ていうか、おい!あれを見ろよ!ゴーレムか?」 「見たことがない形・・・っていうか、微妙に浮いてる気がするんだが・・・」 「まさかメイジ・・・?でも杖は持ってないぞ!?」「マントも着てないしな。」 コルベールは目だけを辛うじて動かして、少年を見上げた。 すでに契約の刻印も済んだのだろう。立ち上がった少年はコルベールを見下ろした。 「それ以上・・・ぼくに近づかないでもらう・・・」 そしてその少年の前に、白い小さな人影が見える。体中に翠色の装飾を施した見たこともない形状のゴーレムだ。 ゴーレムはコルベールを指差して言った。 『射程距離5mニ到達シマシタ。S.H.I.T!』 このゴーレムがやったことなのだろうか。 もしかしてミス・ヴァリエールはとんでもないものを召還してしまったのでは・・・? だが当の本人は事態の深刻さをまるで分かってないようだ 「そのゴーレム、あんたの?コルベール先生に何をしたの?」 「今度はこっちが質問する番だっ!!いったいぼくに何をしたんだ!!」 康一はルイズを睨みつけた。 「なによ。そんな目したって怖くないわよ!あんたはもう私の使い魔になったんだから、私の言うことを聞きなさい!私の質問に答えるのよ!」ルイズは命令した。 ファーストインプレッション(第一印象)が大事なのだ。使い魔に我が侭を許せば後が大変である。イニシアチブを取らなければならない!・・・と本に書いてあったのだ。 「使い魔だって?それはすごく・・・すごく嫌な響きがするぞっ・・・!人間というよりは、まるでペットを呼ぶような・・・」 「ペットじゃないわ。まったく・・・使い魔も知らないなんて、どこの田舎者よ・・・。とにかく、あんたは私が召還したんだから!私の言うことを黙って聞けばいいのよ!平民!」 「じゃあ、ぼくに攻撃してきたのは君・・・?」 そこで康一は気がついた。この女の子はスタンドが見えている。 つまりこの子はスタンド使いだ・・・! 「もう一度聞くよ・・・。ぼくに何をしたんだ・・・?この左手の印は何?」 「それは使い魔のルーンよ!あんたが私のものになった証よ!あんたは一生私に仕えるのよ!」 康一は震えあがった。 「じょ、冗談じゃないぞっ!ぼくはそんなのまっぴらごめんだっ!今すぐ元のところに戻してくれ!」 「知らないわよそんなの!あんたが勝手に来たんでしょ!私だって、あんたみたいなチビの平民が使い魔だなんて嫌よ!」 康一は目の前のルイズと呼ばれる女の子を攻撃するべきか考えていた。 しかし、自分よりも小さな女の子(きっと中学生くらいだろう)を攻撃するにはためらいがある。 それに、なぜかこの口の悪い女の子からは、不思議と『悪意』が感じられないのだ。 自分を拉致し、無理やり使い魔とやらにしようとしているにも関わらず! ルイズはこの生意気な平民をどうしてくれようかと考えていた。 意味の分からないことを喋るし、変なゴーレムは出すし、何よりこっちの質問にまるで答えようとしない!使い魔の癖にご主人様をなんだと思っているんだろう! そしてなにより、やっと手に入れた使い魔に、舐められるのだけは絶対に嫌だった。 二人の間に険悪な空気がただよう。 そこに車に潰されたカエルのように、未だ地面にへばりついたままのコルベールが割って入った。呼吸がほとんどできないので今にも死にそうなか細い声である。 「ちょ、ちょっと待ってください・・・。こんなところで争ってもしょうがありません。ミスタ、何か誤解があるようですから、どうか落ち着いた席で話し合いを・・・。」 「疑問はおありでしょうが、私からちゃんとお答えします。これは我々にとっても前例のないことなのです・・・」 康一は懇願するコルベールを見ながらしばらく考えていた。 自分は被害者のはずだ。でも攻撃したという当人達からはなぜか悪意を感じないのだ。 それどころかまるでこっちが理不尽なことをしているような空気すらある。 それにこの小さな桃色髪の少女はともかくとして、こっちの男性はまだ話が通じそうだ。 「・・・わかりました。ちゃんと説明してくださいよ!ACT3!3 FREEZEを解除しろ!」 康一がそういうとコルベールの目の前からゴーレムが消えた。それと同時に体の自由が戻ってくる。 コルベールは軋む体をなんとか立ち上がらせ、服についた草を掃った。 「えーと、大丈夫ですか?」康一が気遣う。 「ええ、なんとか・・・」コルベールは苦笑いした。 実はあまり大丈夫ではなかった。ものすごい圧力で地面に押さえつけられていたので息をするたびに肋骨が痛む。 骨は折れていないと思うのだが・・・。 コルベールは一つ大きく息をすると、ざわめく生徒達に向き直った。 「さぁ、みなさんはもう学院に戻りなさい!」 「ミスタ・コルベール!ルイズとその平民はどうするので?」人垣の中から手があがる。 「学院長と話しあった上で今後のことを決めます。みなさんは自分の使い魔をしっかり慣らして、しっかり明日の授業の準備をするように!では解散!」 コルベールは手を叩いて帰るように促した。 奇妙な平民や突然現れて突然消えたゴーレムに興味津々な生徒達だったが、彼らも自分の使い魔を召還したばかりである。 二言三言なにやら唱えて杖を振ると、大人しく言いつけにしたがって飛び去っていく。 「さぁそれではとりあえず学院長室までお越しください。そこで話を伺いましょう。ミス・ヴァリエール。当然ですがあなたにも来てもらいますよ。」コルベールも数語の呪文と共に浮かび上がり、生徒達の後を追っていく。 「と、飛んだ・・・」康一は愕然としている。空を飛ぶスタンド使い?しかも全員が? そしてそれを横で見送る桃色の髪の女の子に聞いた。 「君も飛ぶの?」 ルイズはそれを聞くと、きっと康一を睨みつけ、ぷいっとそっぽを向いた。 そして早足で歩き去っていく。 未だに自分の置かれた立場がいまいち分かっていない康一だったが、いつまでもここにいるわけにもいかないので、彼女の後をついていくことにした。 みなが立ち去った後、二人の少女がまだ帰らずに残っていた。 「ねえタバサ。いったい何があるって言うの?」 一人の少女は先ほどルイズにキュルケと呼ばれた少女である。大きく開いた胸元からは褐色の肌が覗き、はっとするような色気がある。その足元には大きなトカゲを従えている。 「ルイズの使い魔が気になるの?きっとマジックアイテムか何かをもっていたのよ。」 と腕を組む。 「たしかに不思議なゴーレムだったけれど、小さいしすごく弱そうだったじゃない?ミスタ・コルベールは不意打ちで転ばされてしまったんだわ。」 いかにも「これだからトリステインの男は」と言わんばかりに鼻を鳴らす。 しかしタバサと呼ばれたもう一人の少女――青いショートヘアーで、グンパツな女性と比べてこちらは背が小さく、なんというか・・・平坦だった――は真剣な表情で先ほどコルベールが倒れていた場所にしゃがみこんだ。 「見て。」 タバサはぼそりと言った。 「何?落し物でもあったわけ? え・・・これって・・・」 キュルケがタバサのそばまで行くと、今まで草で隠れていた『跡地』が見えた。その場所だけ地面が人型にめり込んでいる。 「深さは10サント近くあるわね・・・。でもどうして転んだだけでこんなことになってるのかしら。」キュルケはアゴに指をあて、 「実はミスタ・コルベールの体重が100リーブル(約470kg)くらいあった・・・とか?」冗談めかして笑った。 タバサは笑わずに振り返り、言った。 「只者じゃない。」 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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「ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」 「おいおい、あんまり召喚が出来ないもんだから、そこらへんの平民を雇ったんじゃないのか?」 失敗に次ぐ失敗を繰り返すこと24回。 ルイズの召喚魔法で現われたのは、ほっそりした黒髪の美人だった。 「ミスタ・コルベール! やりなおしをさせて下さい!」 あまりの事にやりなおしを要求するルイズだったが、コルベール先生はにべもない。 春の使い魔召喚は神聖な儀式だ、やり直しは認められないの一点張り。 「でもっ、平民が使い魔だなんて聞いたことありません!」 「実は私、平民じゃなくて貴族なんです」 「ええっ!?」 「なんですと!?」 召喚された使い魔の突然の発言に驚くルイズとコルベール先生。 貴族を召喚したとなると、場合によっては国際問題にもなりうる大変な事件だ。 「ほ、本当に貴族なのですか?」 「ええ、嘘です」 困惑しながら聞いたコルベール先生に、しれっとした顔で答える女性。 「本当は私、エルフなんです」 「ええええええ、エルフー!?」 ズサッと音をたてて女性から離れるルイズ。 他の生徒も一様に数歩後ろに下がっている。それほどにエルフは恐れられているのだ。 「どどどどどうせまた嘘なんでしょう? だって耳が長くないじゃない!」 「私の父はエルフだったんですが、人間だった母と恋に落ちて、私が生まれたんです。 でも、二人の仲を認めない周囲の人達によって二人は……そして私もあわや……」 「そんな事があったのですか……おかわいそうに、ミス、えーっと……」 「ひとみです」 「ミス・ヒトミ。それでは本当に、あなたはエルフの血を引いているのですね?」 悲痛な表情で同情したようにコルベール先生が言う。 彼は基本的に平民にも分け隔てなく優しい人物だ。 もちろん、ひとみと名乗った女性が美人だからというのも無関係では無いが。 「ええ、もちろん嘘です」 「なんですかそれはーっ!!」 ガクっとこけるコルベール先生。 周囲の生徒達も一気に脱力してしまう。 その中からいち早く立ち直ったのはルイズだった。 「ミスタ・コルベール! やっぱりこんな嘘つきの使い魔なんて嫌です!! やり直しをさせて下さい!」 「ダメですよミス・ヴァリエール。きちんと契約しないと、進級できませんからね?」 「ううううう……仕方ないわ。こうなったらさっさと契約よ」 「契約……さては私にインチキな商品を売りつけて身包みをはがそうという魂胆ですね?」 「そーゆー契約じゃないわよ!」 「そうですか、安心しました。ではこの契約書にサインをお願いしますね」 「えーっと、ここで良いのかしら……って、ちがーう! 貴方が私と契約するんじゃなくて、私が貴方と契約するのよっ!!」 「まぁまぁ、べつにどっちでも良いじゃないですか」 「良くないわよ! 大体何よこの契約書は! 『私は貴方に全財産を譲渡します』? こんな契約するワケないでしょう!」 「ちっ」 「アンタ今『ちっ』て言ったぁ!!」 「しかたありません。お詫びに貴方と契約をしましょう」 「は、はじめっからそうすれば良いのよ」 「そのかわり、私の身の回りの世話と秘薬の原料を探してくる仕事、それと私の護衛は貴方がやって下さいね」 「逆でしょうがソレっ! って言うかなんでそんなに詳しいのよ!」 「ゼロの使い魔は全巻読んでますから」 「ナニよソレ?」 「もちろん嘘です。これなんてエロゲな小説なんか全然読んでません。 12巻なんか覗きとか百合とか大変な事になってるじゃないですか」 「キッチリ読んでるじゃないのーっ!!」 「タバサの冒険の2巻は今月発売なんですよね? この近くにライトノベルが置いてる本屋さんってありますか?」 「知るかーっ!」 「でもラノベって店員さんにオタクの人が居ないとレーベルの絞りが甘かったり、在庫の揃いが悪くて大変なんですよシャナさん?」 「そーゆーこと言うの禁止! 二重の意味で禁止よっ!」 「うるさい! うるさい! って言ってください。メロンパンあげますから」 「要らないから黙れ!」 「24のひとみ実写ドラマも10月放映なのでお見逃し無く」 「ますます知るかーっ!!」 凄い勢いでボケるひとみと突っ込むルイズ。 「い…いいかげんに……ゼイ……ハァ……そのしょうも……ない発言を、やめ……ハア」 「あら、それじゃあ私は必要ないって事ですよね? では失礼しますねー」 「え!? あ、ちょっと! ハァ、ハァ、ってゆーか、ゼイ、しょうもない発言が、ハァアンタの存在意義なの……?」 ついに息切れしたルイズがゼーハーと息を整え、周囲の誰もがポカーンと呆れているうちに、スタコラと逃げ出してしまった。 既に息が切れて追いかける体力も無いルイズ。 この後当然、クラスメイトから「召喚した使い魔に逃げられた」と馬鹿にされてしまうのだった。 こうしてルイズの春の使い魔召喚儀式は失敗。 失意に崩れ落ちそうな少女は、追い討ちのように学院長室へ呼び出しを受けてしまう。 「ああ、きっと留年を通告されるんだわ……お父さまやお母様やお姉さまになんて言おう……」 思い足取りで階段を登り、いっそこのまま何処か知らない国に出奔してしまった方が楽かと思い悩みながら、 ルイズは学院長室の立派で大きなドアをノックした。 「どうぞ、入って下さい」 中から女性の声が聞こえる。 しかし、それは秘書のミス・ロングビルの声ではなかった。 ついにセクハラに耐えかねて新しい秘書に代わったかと思いながらドアノブに手をかける。 「鍵はかかってますから。あと開けると爆発するトラップが」 「そんなワケあるかー! 見つけたわよ私の嘘つき使い魔!」 蹴破るぐらいの勢いで扉を開け、学院長室へ転がり込むルイズ。 「はい、嘘です」 「なんでこんな所に居るかは聞かないわヒトミ! とにかく私の進級のために契約しなさい!!」 「ダメですよルイズさん。先生をヒトミなんて呼び捨てにしちゃあ」 「誰が先生よ! もうアンタの嘘はお腹一杯なの!」 「いや、ミス・ヴァリエール。それは本当じゃ」 「え?」 ギギギと音がするような動きで首をめぐらせた先に居たのは、学院長のオールド・オスマン。 「ミス・ヒトミは今日から我が学院の教師になった。 それに伴い、ミス・ヴァリエールの進級は特例として認められたので、安心なさい」 優しく言葉をかけてくれる学院長。 しかし、ルイズにとってはもっと気になる部分があった。 「ヒトミ、先生?」 「はい」 あまりの理不尽な展開に目の前が暗くなる。 どうせオールド・オスマンは美人だからとかそんな理由で教師にしてしまったに違いない。 トリステイン魔法学院オワタ。 そう思いながら、ルイズの意識は暗転していった。 「ってお話が冒頭から全部嘘なんですけどね」 そんな声を遠くに聞きながら。 終わり 週間少年チャンピオン連載の「24のひとみ」から 嘘つき美人教師ひとみ先生召喚でした。
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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百十四話「自然襲来」 友好巨鳥リドリアス 地中怪獣モグルドン 電撃怪獣ボルギルス 古代暴獣ゴルメデ 登場 ……才人がふと気がつくと、いつの間にか自分が懐かしき自分の家にいることを知った。 台所では、母が料理を作っている。自分は、その様子を後ろから見つめている。 「母さん、何を作っているの?」 「あんたの好きな、ハンバーグだよ」 そんな何気ない会話が、何故か胸に突き刺さる。母が振り返る。見慣れた母の顔。どこまでも 優しく、穏やかな母の顔……。 「才人、お前、どうして泣いてるの?」 「あれ?」 才人は目をこする。気づくと、涙が溢れていた。 「変な子だね」 そう言って笑う母の顔が、いつしかタバサの母に変わっていた。才人は驚いて、叫び声を上げた。 「うわぁ!」 才人は自分の叫び声でベッドから飛び起きた。 「夢か……」 脳が覚醒してきた才人は、今の自分の状況を振り返る。アーハンブラ城でタバサを救出したのが 五日ほど前のこと。それからガリアの領土を突っ切り、ゲルマニアのフォン・ツェルプストー領まで 退避することに成功したのだった。懸念されていた道中の敵の追撃は、意外にも一度もなかった。 そして才人は、今の夢のことを分析する。故郷の夢はリシュの事件の際に何度も見せられたが、 あの件はもう終わりを迎えている。またサキュバスの能力によるものではないだろう。それに それ以前に一度だけ、母の夢を見た記憶がある。ヤプール戦後の、瀕死のところをティファニアに 助けてもらって一時的にルイズたちと離れていた時だ。 それ以外に自然に故郷のことを思い出すことは、不思議とほとんどなかった。もう大分長いこと ハルケギニアに滞在しているというのに……。自分は自分で思っていた以上に薄情な人間だったんだろうか、 と才人は一瞬思ってしまった。 フォン・ツェルプストーの屋敷にかくまってもらってから、ルイズはまずアンリエッタの元へと タバサ救出作戦が成功した報告の手紙を送った。しかし自分たちは名目上国家反逆罪。その処罰は 如何なるものが下されるのか。 「でもぼくたちは、ガリアの元王族をトリステイン側に引き入れた形になるんだよ。政治的に 悪い話じゃない。むしろ勲功と言ってもいいくらいだ。差し引きで賞罰なしという落としどころに なるんじゃないかな」 「あのお優しい女王陛下が、理不尽なお裁きをされるはずがないよ。特にルイズ、きみは陛下の ご友人なんだから」 ギーシュとマリコルヌはそんな風に気楽に構えていたが、アンリエッタからの返信を一読した ルイズは、途端に真っ青になったのだった。 返信の手紙には短く、一行だけこう記されていた。『ラ・ヴァリエールで待つ アンリエッタ』。 「あら、よかったじゃない。あなたの実家、すぐ隣じゃない。面倒がなくっていいわね」 キュルケはとぼけた声で言ったが、ルイズはぽつりとつぶやいた。 「実家はまずいわ。わたし、殺されちゃう」 そんなこんなで、ルイズたちはフォン・ツェルプストーからラ・ヴァリエール領へ向けて 出発した。一行の中でだけ、タバサの母親だけは屋敷に残してきている。彼女のことは ミラーナイトたちが交代で警護することになったので、とりあえずは安心していいだろう。 タバサはこっちに同行していた。キュルケは母親と屋敷に残るように勧めたのだが、何故か 頑なに拒んだのだった。 「なぁルイズ。お前、どうしたんだよ?」 道中の馬車の中、ルイズはずっと震えっぱなしだった。そのことを才人たちは不思議そうに 見つめていた。 「アーハンブラ城に乗り込む時より、怖がってるじゃない。そんなに実家に帰るのが嫌なの? 変な子ね」 呆れたようにため息を吐くキュルケ。才人は、ガリアに侵入したことを家族に怒られるのが 怖いのだろうかと思った。 「でもまぁ、取って食われる訳じゃないだろ。こないだ、参戦の許可をもらいに行く時だって、 そんなに怖がってなかっただろ」 「事情が違うわ」 ルイズは、震える声でつぶやいた。 「事情?」 「こないだは参戦の許可をもらいに行ったのよ。“規則”を破った訳じゃないでしょ」 「規則というか、法律を破って怒るのは姫さまや王政府だろ? そりゃ、お前の父さんや 姉さんも怒るだろうけど」 「それどころじゃないわ。わたしの家には、規則を破ることが、死ぬほど嫌いなお方がおられるの」 ルイズは両手で自分を抱きしめ、更にひどく震え始めた。 「な、何だよ! そんなに怖いのかよ! 一体どっちなんだ? お前の父さんか? それとも、 あの姉さんか?」 「か、かかか」 「か?」 「母さまよ」 才人は、ルイズの母親のことを脳裏に蘇らせた。エレオノールに似た感じではあるが、 家族が集まった席では大人しく座っていただけだった。そんなに怖い人物にも思えない。 ……いや、重大なことを忘れていた。その後のシャプレー星人襲撃でのこと。彼女は才人が 他に見たことがないほどの凄まじい風魔法を操り、シャプレー星人を一方的に屠ってギラドラスを 弾き飛ばしたのだった。 その時にルイズが言っていた。母は、先代マンティコア隊隊長“烈風”カリンだと……。 周りもルイズの母が“烈風”だと知るや否や、一気に色めき立った。それほど“烈風”の名は トリステインで有名なのであった。 ルイズは続けて告げる。 「で、当時のマンティコア隊のモットーが、“鋼鉄の規律”なのよ。母さまは、規律違反を 何より嫌っているの」 馬車はいよいよラ・ヴァリエールの城に近づいてきた。城の高い尖塔が見えてくる。 馬車の中はすっかりと重苦しい沈黙に包まれていた。それを破って、才人が口を開く。 「な、なぁルイズ……。お前の母さんが、マンティコア隊の“烈風”殿だとしてもだよ? 三十年も経てば、人間も変わるだろ? 確かに昔は怖い怖い騎士さまだったかもしれないけど、 今はいい年なんだから、そんな無茶しないよ。罰って言ったって、せいぜい納屋に閉じ込める ぐらいだよ」 だがルイズは臨終の床の重病患者のように言った。 「あんたは、分かってないわ。分かりやすく言うと、わたしの母よ。あの人」 その言葉に、馬車の中の全員が緊張した。才人はその空気に耐えられなくなり、大声で笑った。 空元気である。 「あっはっは! そんなに心配するなって!」 「そうそう! いくら伝説の烈風殿だって、今じゃ公爵夫人じゃないか! 雅な社交界で、 戦場の垢や埃もすっかり抜け落ちてしまったに違いないよ!」 ギーシュが唱えた時、急に馬車が停止。同時に馬車に大きな影が覆い被さった。 才人は一瞬、既視感を覚えた。 「ピィ――――――!」 直後に、自分たちの前に青い鳥型の怪獣が着地した。ルイズと才人はその怪獣を知っている。 リドリアスである。 「ピュ―――――ウ!」 「グイイイイイイイイ!」 更にモグルドン、ボルギルスものっしのっしとこの場に現れた。ルイズたちの到着を知って、 出迎えに来てくれたようだ。 「ひぃぃッ! 怪獣!?」 「あッ、みんな待って! この怪獣たちは危険じゃないのよ」 リドリアスたちのことを知らないギーシュらが震え上がって逃げようとするのを、ルイズが止めた。 才人は先ほどの話の流れも忘れて、馬車から出てリドリアスたちの前に立つ。 「お前ら! 俺たちのことを覚えててくれたのか!」 「ピィ――――――♪」 リドリアスは顔を才人に近づけて甘える。 「あはは、そうかそうか。かわいい奴らだな♪」 「グウワアアアアアア!」 怪獣たちの中にゴルメデも混じってきた。 「お前、あれからここに居ついたんだな」 「サイト君」 リドリアスの背中から、一人の男性が降りてきた。ヤマノ医師……ハルケギニアに流れ着いて、 ラ・ヴァリエールの掛かりつけの医者となったキュリア星人である。 「ヤマノ先生、お久しぶりです! でもどうしてここに?」 「あー、それはだね……これから起こることのために、医者があらかじめいた方がいいだろうと 思って来たんだ。どうにか奥さまより先に到着できたようだ」 その言葉を聞いて、才人はこれから待ち構えていることを思い出して白目を剥いた。 「せ、先生……これから起こることって……!」 ヤマノは才人の問いに答えず、代わりに忠告した。 「いいかね? なるべく姿勢を低くしておくように! ボーッと突っ立っていたら吹き飛ばされて しまうよ!」 「そんな嵐が来るみたいなこと!」 「いかん! 悪いが私は退避させてもらうよ。どうにか怪我を少なく済むようにしてくれ!」 慌てて脇の林の中へ逃げていくヤマノ。四体の怪獣たちも、散り散りになって避難していった。 直後に、馬車道の先から巨大な竜巻がこちらに向かってものすごい勢いで向かってきた。 シャプレー星人やギラドラスに向けられたものと、まるで見劣りしない規模であった。 「ぎゃあああ――――――――――――――――――――ッ!!?」 嵐が来る方がまだマシであった。 才人たちは、“烈風”カリンの苛烈さが実力同様全く衰えていないことを、たっぷりと 思い知らされる結果となった。 しかしルイズの盾となった才人が受け止めた竜巻は、反射的にルイズが唱えたディスペルに よってかき消された。それにカリーヌが驚いて杖を止めた隙にアンリエッタが慌てて仲裁に 入ったことで、彼女の強烈な処罰は終わりを迎えた。 娘への罰としてはあまりに過激なようであったが、ここまでのことがされたという事実があれば、 ルイズたちへの処分に関して異を挟む者が現れることはないだろう。カリーヌはアンリエッタの 顔を立てながら、彼女がルイズたちを不問に処し、それぞれのマントを返すことが出来るように 取り計らったのだった。 そしてルイズが“虚無”の担い手であることが、ディスペルによってとうとう彼女の家族に 知られることとなった。しかしルイズの家族は、それを問題なく受け入れた。ラ・ヴァリエール 公爵などは、アンリエッタがルイズを戦争の道具として扱うならば、長年の忠誠を捨てて国に 反逆するとまで言い切った。それはまさしく、父としてルイズを深く愛しているという証拠であった。 才人はルイズの家族の愛情に感動を覚えるとともに、心のどこかで何かちくりとするものを 感じていた……。 その後、コルベールがアニエスに連れられて一行の無事を確認しにやってきた。彼はどうにか アニエスと和解できたようだ。結果的に何もかもが上手く行って、万々歳であった。 ……しかし、才人は心のどこかにかすかなしこりを残したまま、夜間にヤマノの医務室で カリーヌから受けた傷の上に巻いた包帯を交換してもらっていた。 「あいっだだだ……!」 「大丈夫かい? いやしかし、ひどい傷だな。奥さまも無茶をなさる」 ヤマノが包帯を取り外し、看護服姿の少女の持つ盆に乗せた。……使用人だとしても大分 幼い見た目の少女である。 「ヤマノ先生、その子は?」 「ああ、彼女はエルザ。色々あって、私の助手をしてもらってるんだ。言っておくと、エルザは 人間とは異なる種族で、私同様見た目通りの年齢ではないよ」 とヤマノは紹介した。その少女エルザは、受け取った血がにじむ包帯を見下ろし、次いで 才人の身体の傷痕に視線を移した。 「血……」 ゆっくりと才人に近づこうとしたエルザを、ヤマノが制した。 「やめなさい、エルザ」 「舐めるだけでも……」 「駄目だ。彼は怪我人だ。分かるね? 必要な分はちゃんと与えてるだろう」 才人はこのやり取りに冷や汗を垂らした。エルザという少女、一体どういう種族なんだろうか。 そんなことをしていたら医務室の扉がノックされ、カトレアが中に入ってきた。 「ヤマノ先生、ルイズのナイトくんの容態はどうでしょうか」 「カトレアお嬢さま」 「か、カトレアさん」 才人はカトレアと間近に向き合ってドギマギした。ルイズから険しさを抜いて成長させたような、 全身から包容力を醸し出している彼女は才人の好みを直撃するので、不意に目の前に現れられると 息が詰まりそうになるのだ。 「傷は完全には塞がってませんが、全て急所は外してます。しばらくはところどころ痛む でしょうが、生活する分には何ら問題はありませんね」 「よかったわ。ごめんなさいね、母さまが手荒なことをしちゃって。悪い人ではないのだけど、 ちょっと融通が利かないお人なのよ」 謝るカトレアに、才人は愛想笑いを浮かべた。 「ルイズのお母さんですから。仕方ないですよ」 カトレアもあはは、と笑い、椅子に腰を下ろして才人に話しかけてくる。 「あれから、色々大変だったんでしょう。アルビオンでは、随分と危険な目に遭われたとか。 わたし、随分心配したのよ。あなたとルイズのこと」 才人はカトレアたちに、屋敷に参戦の許可をもらいに来てからのことをざっと説明した。 戦争のことや、行方不明になったこと、タバサを助け出す冒険のことにカトレアたちは驚き、 感心し、才人の活躍を褒めたたえた。 才人はそんな風にカトレアと話していると、ふと母親のことを思い出した。先ほどルイズの 家族の時も、かすかに地球の母のことが頭によぎったが、今は母の記憶がどんどんと脳裏に 膨らんできて、いつの間にか押し黙っていた。 「どうしたの?」 カトレアに尋ねられると、才人は慌ててごまかす。 「ご、ごめんなさい! 何でもないです!」 「そんな顔はしてなかったわ。どうしたの? 話してごらんなさいな」 「何か悩み事でもあるのかな。他言なんてしないから、私たちに打ち明けてみたらどうだい? 抱え込んで精神を弱らせたら、傷の治りも悪くなってしまうよ」 カトレアとヤマノの勧めにより、才人は母のことを考えていたことを話すことにした。 「……どうして、どうして思い出すんですかね。こっちに来てから、あんまり思い出したり しなかったのに。変だな。ずっと忘れてたのに、どうして今になって思い出すんだろう」 「あんまり、ということは、前にも思い出したことはあったのかい?」 ヤマノの聞き返しに、才人はうなずく。 「さっき言った、アルビオンで行方不明になってた時に。でもそれからはずっと思い返した ことはなかったのに。まぁあれこれと毎日のように忙しかったというのもあるんですが…… 今も、安心して気が緩んだからでしょうかね」 「ふむ……」 才人の告白に、ヤマノは腕を組んで考え込む。 「望郷の念は、人間として自然な感情だ。むしろ、故郷を懐かしく思わない方が自然ではないさ。 君もこっちに来てから長いんだろう? 別におかしなことではないさ」 「はぁ……まぁ、そうかもしれませんね」 「と言うより、今日までで一度二度くらいしか故郷のことを意識しなかったというのがいささか 妙ではあるね。君くらいの年頃なら、もっと思い出してもいいくらいだろう」 ヤマノの言葉に、カトレアが告げる。 「きっと、抑えられていたんだと思いますわ」 「抑えられていた?」 尋ね返す才人。 「ええ。人間の心ってよく出来ていてね、何かつらいことや、とんでもないことが起こると 鍵が掛かっちゃうの。おかしくならないためにね」 「……」 「きっと、いきなり別の世界に連れてこられて、心がびっくりしたんだわ。で、故郷のことを なるべく思い出さないように鍵が掛かってしまったのね。でも、何かきっかけがあったのね。 心の鍵を外すきっかけが……」 カトレアの言葉に、才人はタバサの母とのやり取り、ルイズの両親との絆を目にして、 内心抑え込まれていた想いが蘇ったんだろうと感じた。アルビオンでの時も、子供たちと 家族のように暮らすティファニアの様子に触発されたのだと判断する。 才人はあらためて、地球に残している自分の家族のことを意識し、表情を曇らせた。それを察した カトレアは、才人に申し出た。 「つらい時は、いつでもわたしに甘えていいのよ。お母さんの代わりは無理だけど、わたしが お姉さんになってあげるから」 「あ、ありがとうございます」 カトレアの温情に才人は照れくさく感じながらも、重くなっていた心が明るくなっていくのを 感じ取った。 「でも、今は甘えてばかりはいられません。ルイズの力を……あの“虚無”を狙っている奴が いるんです。そいつはタバサとそのお母さんにもひどいことをした。そいつをやっつけて ルイズを守り抜くまでは、俺はしっかりしてないと」 才人は心に使命感を滾らせてそう言った。カトレアは才人を軽く抱きしめて、言い聞かせる。 「無理はしないでね。わたし、あなたやルイズが無事でいてくれれば、他に何も望まないわ」 「カトレアさん……」 ゆったりとカトレアのぬくもりを肌で感じていた才人だが……いきなりヤマノが目を見開いて 席を立った。 「ヤマノ先生? 急に怖い顔をしてどうしたの?」 「……遠くから、何か不吉な気配を感じました」 窓を開け放つヤマノ。見れば、エルザも何やら警戒しているような、怯えているような 様子をしている。 「精霊の動きがおかしい……。精霊の声が、変に歪んでいく……!」 才人は彼らの反応に危機感を抱くと、カトレアから離れてヤマノとともに窓から夜空の果てを 見つめた。そうして、空に異常があるのを確かめて驚く。 「! 黒い雲が……いや、台風がこっちに近づいてくる!」 ラ・ヴァリエール領の風景の空の雲が急激に渦巻いていき、風が猛烈に吹き荒れる。丸きり 台風の予兆であった。しかし、季節はまだ春を迎えようとしている頃合い。そんな時期に、 あんな大きな台風が発生するものだろうか。 そして強風と同時に、医務室内の気温が異様な勢いで上昇していくのを感じた。どうやら熱波が、 台風と同じ方角から押し寄せているようなのだ。 「あッ……!」 「カトレアお嬢さま!」 身体の弱いカトレアが、急な熱波に当てられてよろめいた。ヤマノが咄嗟に彼女を抱き止めて支える。 「どうなってるんだ……。異常気象か? いや、それにしたって異常すぎるぜ……」 更に才人の視線の先で、もっと異常な事態が起こり始めた。 領地の雄大な森から、更に巨大な木々が目に見えるほどの速度で生えていき、既存の木々を 呑み込むようにしながら成長していくのだ。まるで別の森が、元あった森を侵蝕しているようであった。 「な、何だありゃ!」 才人は驚愕するとともに、今起きていることが自然現象などではないことを確信した。 何かの力の作用により、異常事態は人為的に引き起こされていると。 「ピィ――――――!」 「ピュ―――――イ!」 「グイイイイイイイイ!」 「グウワアアアアアア!」 外からリドリアス、モグルドン、ボルギルス、ゴルメデの咆哮が聞こえてきた。それらには、 明確な警戒と恐怖の色が表れていた。 台風と熱波と異常な森が、ぐんぐんとラ・ヴァリエールの城へと押し寄せてきた。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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本来は良識の府の象徴的存在としてあるべきなのだが、トリステイン魔法学院の学院長室は、部屋の主と同じくどこまでも軽かった。 秘書が本の整理をすれば背筋に指を這わせ、秘書がかがめばネズミを走らせ、秘書が横にいれば臀部へと手が伸び、三度に一度秘書からの反撃が受ける。 このように乱れた部屋が権威を持とうはずもないのだが、今日の学院長室は気まずくも重い雰囲気に包まれていた。 原因はただ一つ。「遠見の鏡」に映し出された平民の女だ。 後ろを振り返らず、すれ違う者の目を気にもせず、全力で手と足を振り、廊下を真っ直ぐに駆けていく。 「オールド・オスマン」 「うむ」 「あの平民、逃げてしまいましたが……」 「うむ」 「あの逃げ足! そして躊躇の無さ! 主人への気遣い皆無! あんな使い魔見たことない!」 「うむむ……」 真面目と不真面目、ハゲとヒゲ、好一対の二人は苦い顔を見合わせた。 「まさかあそこまでアレな使い魔とは予想外でした。やはり参加者はある程度絞っていくべきかと」 「まぁ待て。結論を出すのはまだ早かろう。あの使い魔にしても何かしらの考えがあってやっておることかもしれん」 万事に拘泥しないオールド・オスマン個人としては、なるだけ門戸を広く開いておきたい。 だが使い魔の自覚が無いただの平民を晒し者にしては、使い魔本人も主のメイジも気の毒だろう。 しかし開始前から爪弾きにするというのも問題だ。どうすべきか、慎重に事を決める必要があった。 「平民の使い魔はもう一人いたはずじゃな。それを見て決めるのもよかろう」 「はあ」 「それにじゃ。君の意見を汲むとすれば総合的な評価をつけることになる。臆病さを打ち消すだけの長所があれば問題あるまい」 「なるほど」 「私としても実現させたいと思っておるよ。君の提案した『使い魔大品評会』を」 お父さま、今までお世話になりました。 お母さま、わたしの死体に怒りをぶつけるのはやめてくださいね。 ちいねえさま、悲しませてごめんなさい。 もう一方姉さまがいたような気もするけど、たぶん気のせい。そうですよね、エレオノール姉さま。 ……ここまで悲観的なこと考えておいてなんだけど、あれ当たったからって死にゃしないわよね。 医務室行きは確定だろうけど。あーあ、秘薬って高いのよね。顔に傷でも残ったら嫌だから使わなきゃならないし。 以上、時間にして一秒半。あ、今二秒になった。 人間の潜在能力というのは大したもので、ワルキューレがわたしに振り下ろした拳を見ながらここまで色々と考えることができた。 殴られる覚悟を決めて、その百倍はグェスをぶん殴ることも決めて、わたしは頬を差し出したけど、今日のわたしは良くも悪くも全てが裏目で、望んでもいない助けが入った。 わたしの頬と青銅で作られた拳の間に一枚の掌が差し込まれた。 人を殴り飛ばそうとするだけの勢いがあったはずなのに、ぴたりその場で静止する。 「勇気と無謀とは似て非なるもの」 厚く、傷だらけで、でもほんのりとした暖かさを持つ掌の持ち主は……。 「蚤の無謀をとるか、人の勇気をとるか。当人次第じゃな」 ぺティ! いきなりのお説教にムカッときたものの、どうやらその相手はわたしじゃなかったらしい。 ぺティの目は食堂の一隅を占める大釜へと向けられていた。 わたしは退いた。殴られる気こそあれ、退く気なんてさらさらなかったのに、それでも一歩退いた。 半ば以上はよろけていたと思う。これを認めるのはとんでもなく悔しいんだけど、わたしを襲ったワルキューレではなく、助けてくれたぺティに圧されていた。 よろけ、転びかけたところを後ろの誰かが受け止めてくれた。 「老師、よろしくお願いします」 その誰かは見なくても分かった。あんたまた人の見せ場とる気? かわいい女の子に容赦しないくらいだから、老人のぺティにだって容赦するわけがない。 ワルキューレの拳がぶんぶん振るわれる。当たれば死ぬ。嘘。でも大怪我はするでしょ。 そんな攻撃が降りそそぐ中、ぺティのフットワークは羽根のよう。すげー。 その左手には、たぶん荷運びしていた中から失敬してきたんだろう、ワインが一瓶握られていた。 右手には、いつも着ている使い古したコートが提げられている。 そのコートで暴れる牛をあしらうようにして、左足で一撃、ワルキューレの足首へ蹴りこんだ。 さらに避けたところでもう一撃、椅子の上から着地しなに鋭く蹴り刻み、青銅の足首が大きく変形する。 流れるように三撃目が決まり、青銅の足首がポキリといった。 さっすが修行者、やってくれるわ。ギャラリー含むわたし、歓声。 「ふむ。あきらめは悪いようじゃな」 釜の中でくぐもった詠唱が乱反射している。ぺティを取り囲み、ワルキューレが全部で三体練成された。 ギャラリー含むわたし、ブーイング。修行者だからって平民相手にやりすぎでしょ。 周囲が騒ぐ中、当のぺティと、わたしの後ろの誰かさんは、慌てる様子も見せない。 ぺティにいたっては右手のワインのコルクを飛ばし、喉を鳴らして飲む始末。落ち着いてるっていうか混乱してるのかしら、ひょっとして。 ギーシュがワルキューレをけしかけようとした時には、すでにワインが一瓶空になっていた。速っ。 あーあ、あの飲み方は悪酔いするわよ。殴られて痛くて、起きたら頭も痛いって最悪じゃない。 「それではいくかの」 行くってどこに行くのよ。酒飲みの行くとこっていえば一つしかないけど。 ぺティは大きく息を吸い込んだ。大きく大きく吸い込んだ。どこまで吸うの? 吸った分だけ吐き出した。大きく大きく吐き出した。吐きすぎじゃない? 内臓出るわよ? ぺティの呼吸はどこまでも大きくなる。息遣いがここまで聞こえてくる。変なの。 その息遣いに合わせて口から赤い何かが出てきて、うええっ内臓……いや内臓じゃない。内臓は青銅を切断しない。濡れてる……液体? ワイン? 口から出てきた赤い液体が……っていうと血みたいね。 ワインか血か分からない何かが、形を変え、矢継ぎ早に噴き出された。見た目はともかく、威力に関しては血やワインなんてものじゃない。 ゴーレムの末端を狙い、液状の円盤が次々に命中した。足首を断ち切られ転ぶもの、頭を削り取られるもの、腕が落ちるもの。 あらゆる方向へ飛び、かといって狙いは過たず、真紅の散弾がワルキューレを斬りさいなむ。 直線で飛ぶならともかく、あきらかに不自然な軌道を描くものもある不思議。これ、魔法? ギャラリーは喝采を通り越して呆然、ただ一人空気の読めない誰かさんだけが拍手を送る。 もう這いずる事すらできないくらいズタボロにされたワルキューレを避け、ぺティが大釜へと進み出た。 足を踏み出すたび、手を差し伸べるたび、床に飛び散った赤い飛沫がダンスを踊る。何これ。 どうやら魔法ってことは間違いないみたいだけど、原理はこれっぽっちも分からない。 釜の底に指をかけ、返した。息を呑むギャラリー含むわたし。 重そうな釜を軽々とひっくり返したから驚いたわけじゃない。 中のギーシュが幽鬼のように痩せこけていたからというわけでもない。 わたし達が驚いた理由は、釜の中にいたのがギーシュだけじゃなかったから。 二体のワルキューレがギーシュの両脇、一体だけ突出したワルキューレが小脇に剣を携えていた。 その剣を前へ突き出し、ギャラリーの呑んだ息が悲鳴として吐き出されんとしたその時。 ぺティが、ぺティのコートが、ゆらめいた。その動きは、例えるとしたら意地の悪い蛇。 蛇が、その身を縮ませ、思い切り伸ばす。反動でぺティは縦に一回転、横に半回転、半秒ほどで天井近くに跳び上がった。 ワルキューレの剣はコートを突き刺し、なぜか抜けなくなったみたいでもがいているけど、誰もそちらは見ていない。 上。滞空速度は異常なほどに遅い。混乱するギャラリーが身を乗り出し、輪をかけて混乱しているはずのギーシュが撃墜を命じる時間は充分すぎるほどあった。 左からワルキューレ。右からも同じタイミングでワルキューレ。 迎撃されることを知りつつ、正しい放物線を描いてただ前へ落ち、左右から襲いくるワルキューレに向けてそれぞれ一本ずつ脚を伸ばした。 打撃をくわえようって蹴りじゃない。その証拠にワルキューレは削れもへこみもしていていない。 ぺティの脚はあくまでも遮蔽物を排除するために伸びていた。 二体のワルキューレに挟まれる形で落ちてきたぺティが、両の脚でワルキューレを押しのけた。 ということは、つまり、ギーシュは丸裸でぺティの前に身を晒すことになる。 ワルキューレに脚をかけたままで、十字に組まれた手刀がギーシュの喉元へと突きつけられた。 なんて早業! 始まった、と思った次の瞬間にはもう終わっている。まるで稲妻ね。 壁に押し付けられた格好でギーシュは動けない。動いてみようがない。 怒りのためか、それとも焦りのためか。青ざめていた顔に赤みが差してきた。そしてこけた頬に柔らかな肉が……ってええええっ!? 充血し、濁っていた目に一条の光が差した。だらしなく半開きになっていた口元に力が戻る。 視線はしっかりと定まり、くたびれていた髪は艶やかさを取り戻し、一匹の幽鬼がわたし達の知るギーシュ・ド・グラモンになった。 モンモランシーは驚き、戸惑い、そこから喜び、喜びを隠すように口を一文字に引き結んだ。 彼氏彼女で百面相してりゃ世話無いわ。 「もういいようじゃな、お若いの」 右のワルキューレを蹴り、その反動で左を蹴り、誰かさんの隣に着地した。悔しいがお見事。 支えを失ったギーシュは壁を背にして尻餅をついた。 モンモランシーは「馬鹿馬鹿大馬鹿」とギーシュを叩く。その瞳からは滂沱と流れる涙がって見せ付けんじゃないわよ。 「お嬢様、そうむやみに殴っては頭が馬鹿になってしまいます。ゲ……ゲ」 そう思うのなら止めなさいよ。だいたい馬鹿に関してはもう遅いわよね。 「よかった、よかった。仲直りできた。ねっ」 ……誰? 「お疲れ様でした老師」 よくよく考えてみると、あんた何もしてないじゃない。 いつの間にか殺伐だった空気が微笑ましいそれに変わり、ギャラリーはなぜか拍手。わたしも拍手。 確実に見せ場をとられた。絶対に気のせいじゃない。ちょっと涙目でわたしも拍手。グェス何処行った。見つけたら皮剥いでやる。
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地面に放ったエメラルド・スプラッシュの威力を見て、こちらへ近づこうとしていた鎧の男は足を止めた。 先ほどまでこちらに敵意を向けていた奴らも、目を丸くしている。 ともかくこの行動で、スタンド使いが今、ここにいないのは確認できた。 才人を引っ張る時も、今、エメラルド・スプラッシュを撃った時も、誰も反応しなかったからだ。 ならば結論は一つ。 僕をここに送り込んだ奴は、別にいるッ! そうと決まれば、急いで本体を探さなくてはならない。 しかし…… 「なんだよっ、変な所につれてこられたと思ったら、いきなり宙に浮いたりっ! 訳わかんねぇよ!」 あまりにも非常識な光景に、才人が思いっきり愚痴をたれた。 才人は僕と違い、スタンド使い、いや一般人に襲われても、それをのける術が無い。 多少危険だが、真っ先に逃がすしかない。 僕はハイエロファントの触手を、城壁に引っかけ、もう片方の触手を才人に巻き付けた。 そしてそのまま、定滑車の要領で城壁まで才人を持ち上げる。 「うおっ! なんだよ、これは!」 「黙ってろ! 舌を噛むッ!」 全力で才人を城壁の通路まで押し上げる。あまり力の強くないハイエロファント・グリーンにとっては、殆どパワーに余裕がない。 今、攻撃されれば、僕に身を守る手段はないッ! しばしの間。 誰もこちらに攻撃してくる気配はない。それどころかほぼ皆が、僕の方には見向きもせず、才人の方を向いて驚いたような顔をしている。 「『フライ』ッ! しかも速い!」 「何で平民が魔法を使えるんだ!?」 「いや、その前に…… 誰か、あいつが杖を抜く所を見たか!?」 其奴等は、人が浮くということとは別の次元で驚いているようだった。 まさかスタンドの代わりに、違う概念があるとでもいうのだろうか? ともかく、今はここから離れるのが先決だ。 友好的にすまそうにも、僕らはここの奴らに、敵意をもたれすぎている! そのまま、才人を引き上げたハイエロファント・グリーンに捕まり、自分も城壁へと登る。 「この、火のラインメイジである僕が…… この僕が! 」 地面から立ち上がったマントをつけた奴らの一人が、こちらをにらむ。手には長めの棒ッきれらしきものが握られていた。 其奴は何かをブツブツとつぶやく。すると、杖の先に50cmはあろうかという火球が現れた。 「『フライ』中なら、さっきの妙な技もつかえまいッ! 平民風情がっ、思い知れ! 『フレイムボール』!!」 こちらに向かって火球が飛んできた。 僕は確信する。ここにはスタンドと違う、けれども似たような概念が存在するのだと。 速度は中々に速い。このままではかわしきれないだろう。 だが、このサイズなら…… 「かき消せるッ! 『エメラルド・スプラッシュ』ッ!」 僕の捕まっていた触手から、エメラルドの力のビジョンが放たれる。 そのビジョンは、僕を追ってくる火球をうち消し、そのままマントの男に襲いかかった。 「何で『フライ』中に呪文が使えるんだッ!」 マントの男はそういって、僕のエメラルドスプラッシュを全身に浴びる。男の身体は木の葉のように宙に舞い、地面へとたたきつけられた。 下の広場が、一気に騒がしくなった。今ならここから逃げ切れる! 「なぁ、お前、今のどうやったんだ?」 「後で教えます。兎に角、いまは早く……」 下を見る。周りは平らな土地であるが、所々に点在する木々に隠れながらいけば、何とか巻けるかも知れない。 そのとき、後ろから小柄な少女特有の、高い声が聞こえてきた。 「まちなさいっ!」 僕らは、とっさに振り向いて、声の主を確認する。 その声の主は、こちらへ着た時、才人の一番近くにいた、桃色がかったブロンド髪の少女だった。 しかし、僕の視線はすぐにその少女の周りへと向けられた。 マントをつけた奴らが、さっきの奴と同じように、こちらに杖を構えていたからだ。 「ちょっとあんた達、あたしの『使い魔』に何するのよッ!」 「うるさいッ! まだ『契約』もしてないだろうが! 第一、『メイジ』だろうが『使い魔』だろうが、平民風情に貴族が遅れを取るなんて、恥さらしも良い所だッ!」 マントをつけた奴らのリーダー格らしき男と、先ほどの少女がなにやら言い争っている。 耳を傾けてみると、使い魔やら、契約やら、メイジやら、全く聞いたことのない単語が、連呼されているのが聞こえた。 良く解らないが、とりあえず、只で返してくれるつもりは無いらしい。 僕はハイエロファントをもう一度ほどき、触手状態にする。そしてそれを城壁の一カ所、一カ所に引っかけ、蜘蛛の巣のように張り巡らした。 再び下を見る。いつの間にか少女の姿は消え、マントをつけた奴らが杖の先を光らせていた。人数こそ10人ほどいるが、さっきの奴より大分、光が小さい。 無駄だと悟りつつ、僕は一応の警告を入れた。 「既にこちらには、そちらを攻撃する用意が出来ているッ! 何もしなければ、こちらも手を出すつもりはないッ」 「今更ァ、後に引けるかァァァァアアアッ!」 杖の光が石、氷、風、火… 兎に角、様々なものに変化し、僕らめがけて飛んでくる。 相手に引く意思は全くないようだ。ならッ! 「伏せてろ、才人! 『エメラルド・スプラッシュ』 INッ! 『法王の結界』ッ!」 僕も全力で応じよう。 人型の時なら裁ききれない量だが、この状態なら問題ではないッ! 先ほどの何倍もの量で発射されるエメラルドの破壊のビジョンは、石も、氷も、風も、火も全てを巻き込んで、奴らに襲いかかる。 相手を殺さない程度に加減はしたが、それでもこの量、もし、まともに食らえば二週間はベットから立ち上がれまい。 土くれはめくれあがり、ものはピンボールのように跳ね、砕け散る。 ほぼ瞬時に、下の奴らは恐慌状態へと陥った。 「ハァ~…… ハァ、ハァ、ハァ…… 」 「お…… おい、大丈夫かよ?」 「心配入りません。少し、疲れただけです」 しかし、僕の精神力も限界に達している。 あと一回、『エメラルド・スプラッシュ』を撃てるかどうか…… 今、逃げ損なったら、次は無いッ! 「走ります。才人、ついてこれますか」 「ああ、何とか」 そのまま城壁の上部を駆け抜け、登った時と同じ要領で、城壁の外へと降り立った。 少し離れた位置に森があったのは、実に運がいい。 ひとまずここに身を隠して、それから本体を探し出して、叩く。 そうすれば…… 「やっぱり、こっちの方にきたわね」 「!?」 いつの間にかいなくなっていた桃色ブロンドの髪の少女が、僕らの目の前に立っていた。 「よくもさんざん逃げてくれたわね……」 そういって、少女は杖を取り出した。どうやらあの力を使うには、こういう棒が必要らしい。 距離は10m程。今はスタンドパワーが惜しい。なら、近づいて取り押さえるッ! 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。このものに祝福を与え、我の使い魔となせ」 杖を取ろうと手を伸ばす。 しかしその手は空を切った。少女の方から、こちらに近づいてきた所為だ。 僕の顔の近くに、少女の顔が寄る。甘いにおいがした。 「あんた、感謝しなさいよね」 少女はさらに顔を寄せてくる。 何を感謝しろというんだ! と心の中で毒づきながら、僕は少女から逃れるように、思いっきり上体をそらした。 ……少しそらしすぎた。体勢を崩した僕は、そのまま少女に巴投げをかけるようにしてこける。 「「え?」」 僕の後ろにいた才人は、そのまま少女と頭突きとも取れるような、盛大なキスをして、仲良く地面へと倒れ伏したのだった。