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「あ、犬だ、迷い込んだのかな」 少女は犬の前に行き、しゃがんだ 「かわいいなぁ・・・きゃあ!」 少女は犬の顔を見て驚き、しりもちをついてしまった さらに手をついた衝撃で穴が開き手が挟まってしまった 「なんだ、人の顔をみた瞬間に驚くとは失礼だな」 少女は突然犬が喋った驚きで声がでなかった 「ほう、ピンクとはいいものをはいているな、眼福、眼福」 少女が脚の方を見るとスカートがめくれ、下着が丸見えになっていた 「な、なに見てるの、変態犬、覗かないでよ」 「変態だと、そんな短いスカートをはいておいて、パンツぐらいいいではないか どれ、少しお仕置きをしてやる」 犬はそういうと少女の股間に襲い掛かかった 「やだっ、この!」 犬の身体を太ももで挟み、動けないようにする しかし、犬は太ももを味わうかのように顔をうずめ、舌で舐め始めた 「すべすべしててなかなか気持ちいいじゃないか」 一方少女は犬の毛が太ももを刺激され、むずかゆい感覚に襲われてしまう 「やっ、くすぐったい・・・あっ」 ほんの一瞬力をぬいた拍子に犬は少女の股間に顔をうずめる 犬は少女の股間の匂いを鼻で嗅ぐ 「いい匂いだ、これこそ少女臭というものだな・・・」 「この・・・変態!!」 人面犬は怒った少女に顔を挟まれ、窒息死してしまった
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着色白紙/ヘアー 作者名:公式 配布形式:公式 備考:公式着色白紙 関連アイテム:
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プラチナ・ガーネット 船から降り立ったボクはクロを頭に乗せたまま、マルーンの中心街へと移動していた。 旅行客が日々行き交うこの町は当然人も多い。 だからココでなら、ボクの両親達を攫った水色のローブの連中の噂も聞けるかと思ってたんだけど――。 「も、もうだめ……」 『はぁぁっ!?お、おい座んな、まだ聞き込み始めてから一時間も経ってねーじゃねぇかよ!このもやし野郎ー!!』 ……まったくクロはうるさいなぁ。 貧血でクラクラする頭を押さえ、ボクはクロの言う事も無視し噴水のそばに座り込んだ。 (だいたい、クロってばボクの頭に乗りっぱなしでで自分で歩いてないじゃないか。えらそうだよなぁ……)等と心の中で悪態をつきながら。 そんなこんなでボク達は一時間近くマルーンで情報収集をしていたのだが、未だ収穫はゼロ。 それどころか町の人たちは『そんな連中見た事がない』と口をそろえて言うのだ。 体力のないボクは中心街の人ゴミにのぼせてしまい……今に至る。 「うーん。この町にはあいつ等が襲来してない、って事なのかな」 『でもこんなバカでかい町だぜ!?一人くらいあいつ等の情報知ってるヤツがいてもおかしくねーんだけどな』 「いたけど――奴らによって殺されてしまった……とかは?」 『ありえねぇ。……とは言えねーよなぁ』 はぁ。とクロと二人、お互い溜息を吐いた。 あいつ等について名前やら、正体やら、目的やら……何か一つでも手がかりがつかめればいいんだけど、今現在分かっているのは「水色のローブを纏った、魔術師を狙う集団」と言うことだけだ。 (父さんや母さん……カチュアちゃんのお母さん達がどこに連れていかれてしまったのかさえもわからないし――) 「うわぁあああぁあっ!」 手がかりがなく再び溜息をつこうとした所で――突然、少年の悲鳴が耳に響く。 驚いて声が上がった方に視線を向けるとボクと同い年くらいの水色の髪をした男の子が人相の悪いヤクザ集団に囲まれていた。 そして気を失ってしまったのか、動かなくなってしまった男の子をヤクザ集団の頭領と思わしき人物が抱きかかえ、何処かへと歩きだす……。 (やばい……もしかして人攫い?) そう考えてからボクはハッ、と気付く。 今の男の子からは微かにマナを感じた。と言うことは(職業は分からないが)彼は魔術に関係している。 (まさか、あの男たちが水色のローブの集団!?……って、水色のローブは纏っていないようだけど) でも、あいつ等がいつもローブを纏っているとは限らないし。 それともアレか?ローブの連中に雇われて魔術師攫いを繰り返しているゴロツキとか…!! 「クロっ!!」 『あ?ンだよ』 「今、男の子を連れて行ったヤツらがいたんだけど見てた!?」 『……はっ!?』 ボクの言葉にそれまでだらけていたクロが飛び起きる。 クロは完全にぼーっとしていたようで男たちの存在には気付いていなかったらしい。まったく使えない使い魔だ。 『っておい!今何気に失礼なコト考えてただろーっ!?』 「細かい事はあとだよ!クロ、男の子を助けにいくよ!」 『お、おうっ!』 クロを肩に乗せるとボクはヤクザ集団が向かった方向へと慌てて駆け出す。 どうか、どうか無事で――!! 「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ……」 ない体力を振り絞り男たちを追うと、日の当たらない路地裏へとたどり着いた。 男たちはどうやら路地裏の薄汚れた家へと入っていったらしい。 (ここが彼らのアジトってことなのかな) 不用意に入り込んではいけないと思い、ボクはそっと聞き耳を立てる。 「ぼ、僕の…………ー!!!!!」 「あははは…………!!!」 「うわ………ああ…………ど、どうしよう……い………」 うまく聞き取れないが、男の子とヤクザ集団の会話が断片的に聞こえた。 怯え続ける男の子とその傍らで笑う不気味な男、と言うおっそろしい図がボクの脳内に浮かび上がる。 (うん……間違いない、さっきの男の子が襲われているんだ!!) その時、アジトに裏口の扉がある事に気付いた。 きっと体力のないボクが正面から突っ込んでも返り討ちに遭うのがオチだ。ならば裏口から!! そう決意したボクは奴らにバレないように、足音を立てないように周り込むと、そっと裏口の扉を開け侵入する……。 「!!…………か?!」 「ふふん、オレは…………なんだぜ?……………!」 幸い男たちはボク達の存在に気付いていないようだった。 ――今だ。 クロとアイコンタクトを取ると魔法を詠唱する。 「……ん?なんだお前、どこから入っ……」 唱え終わった瞬間、黒い男(ヤクザの統領?)と目があったがその頃には詠唱は完了していた。 ボクは目を吊り上げると男に向かってビシィッと人差し指を向ける。 「その子を離せ!≪シャイニング・エクスプロージョン≫――!!!」 「!?ぶ、ブレス!伏せろぉおお!」 「えっ!?わ、わわわっ!!」 ドコォオオオオオオオオン 激しい音と共に爆発が起きる。(魔力を調整したから犠牲は最小限に抑えたよ!) ……木製の小屋、みごとに炎上。 しかしこれは男の子を助ける為に必要な犠牲だったのだ。仕方が無い。 「キミ、大丈夫だった!?」 満面の笑顔を男の子に向ける。……見た感じ、どこも襲われた形跡はない。よかった、間に合って! ボクは男の子を救えた事に喜んでいたのだが、それも束の間……。 「だ、大丈夫なわけあるか!何考えてるんだ、ジャックは僕の恩人なんだぞ!?」 ……? 男の子の態度に不思議に思っていると、彼は黒いアジトの統領を抱き起こす。……なんか様子が、おかしいような。 恐る恐るボクは口を開く。 「あの、その人って、魔術師のマナを狙って人攫いを繰り返してる集団の頭領、だよね?」 「は、はぁ!?ちょっと待て、ジャックは」 「オレはただのトレジャーハンターっ!んで、気絶したブレスを運んできたやさしーいお兄さんだ!!」 金や宝石ならともかくマナなんて全然興味ねぇよ!!と続けると、ジャックと呼ばれた男は機嫌悪そうにボクを睨む。 ブレスと呼ばれた男の子も溜息を吐くと、呆れたように頭をぽりぽりかいている。 えーと……これは、もしかして。 「ボク、勘違いしちゃってた……?」 「「思いっきりな!!」」 イライラしたように二人がハモる。 クロなんかは巻き込まれたくなさそうに「にゃあ」など適当に鳴き声を上げ、完全に動物になりきっている。いつもは饒舌なくせにこんな時だけずるい! 「ご、ごめんなさい……」 行き過ぎてしまった勘違いに、ボクはただひたすら謝るしかなかった。 【NEXT】予感と胸騒ぎ1 【BACK】少女たちの旅路
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「じゃあオレ、ちょっとジュース買ってくるから」 「うん。そこのベンチで待ってるね」 「先に行っててくれてもいいよ。追いつくから」 「そんなことっ……あるね……」 ぽつん。 三人がけのベンチの端に、小さな少年が腰を下ろした。 彼は藍川ヒロム。今年久瀬北中学に入学し、現在卓球の上達に情熱を燃やしている。 週末の部活動が休みの時に、こうして友人の眞白と共に卓球場で汗を流すことにして数週間がたっている。 「ほっ、」 やや時間を持て余すと、少年はピンと思いついたように素振りを始めた。まだまだ打つたびに体がぶれる ヒロムは、重り入りのリストバンドをしながら体の安定に気をつけて繰り返し腕を振った。 「この間のちいさいの……?」 「!?」 背中から呼びかけられビクつくヒロム。振り返って見えたのは、この場所で初めて試合をした相手であった。 「……?」 首をかしげ、上目遣いぎみに相手を見つめる。 (えっと……) (なんて言ったっけ?) 「アキラでいい……」 相手のことを覚えていないのが申し訳なく、あたふたと妙な仕草を見せるヒロム。 相手の、黒い帽子を被った少女は気にした様子もなく言葉を継いだ。 「それより……今日は保護者、いないんだね」 保護者? 「ちょっとこっちに来て」 「あっ、あのっ!まだ眞白くんが……!」 「いいから」 意外なほどの力強さでぐいぐい引っ張られてしまうヒロム。女の子に体格まで負けてしまうなんて……。 ヒロムは心の中でほろりと涙を流した。 ばたん、 「ふぅ……」 アキラは、ヒロムを小さな部屋まで引っ張って来ると、ひとつ息をついた。 「あの……」 「なに?」 「ここ、女子トイレぇ……」 はうはう。ヒロムは道中、何度か周囲の視線をみとめ小声でアキラを止めたが、効果はなかったようだ。 「邪魔が入らないから……」 アキラは変わらない調子で言うと、ヒロムをトイレに座らせて見下ろしながら言った。 「よく、ここに来るの?」 「え?えっと……」 そんな話?それならそこの広場でも。ヒロムは胸に浮かんだ言葉をアキラの鋭い視線の前に飲み込んだ。 「少しは、上手くなったみたいだね」 「あ、ありがとう!」 ヒロムはぱっと顔を明るくし、アキラに例を言う。素直は美徳だが、状況を考えることも覚えるべきかもしれない。 「この間の試合……」 「あ、アキラ…さんともう一人の人、すごく上手くてびっくりしちゃった!すごいね~」 やっぱりずっとやってる人は違うよね~。などと、ほとんど世間話のようにヒロムは話す。 しかし、アキラは若干表情を硬くしながら、ヒロムにある言葉を投げかけた。 「ずいぶん、り……川末にこだわるんだね」 「え?」 「川末は……キミのなに?」 「なにって……」 「調べたけど……中学まで運動部に所属したこともない。美術では期待された藍川ヒロム」 「それが……。全国優勝校を破った久瀬北卓球部へ……入部を決定付けたのが、久瀬北の二年生エース、川末」 「アキラ……さんが何を言ってるのか、わかんないけど……」 「アイツに渡すのは……惜しいから」 「あ、はは……アキラさぁん……」 「んふ……っ」 女の子の甘い匂いがこもる一室でキスをする。ヒロムはふとかわいい幼馴染のことを思い浮かべる。 しかし、絡みつく時間の長さがその想像をかき消していく。 言いようのない恐怖が背中を走り、ヒロムはぎゅっと目を瞑った。 「反応……しないわけじゃないんだ」 耳元で囁かれる言葉にかっと顔を染め、小さな体がなお丸くなる。 「そういう、奴かと思ったけど……」 「??」 ふと、投げかけられた言葉の意味がわからなくて気持ちが空白になる。恥ずかしさと、上気した頬の熱が すっと引いて沈黙が流れる。 「わからなければ、いい」 「!!……やあんっ!」 言葉と同時に、ヒロムの履物がずり下ろされる。火の出るような恥ずかしさの中、ふるんと顔を出すその部分は 熱く滾っていた。 「声、出さないで。……じっとして」 ヒロムの眼下には、小刻みに揺れるアキラの黒い帽子。敏感なヒロムのそこは、さっき唇に重ねあわされた、 少女の口内の蠢きにひくひくとどうにもできない反応を返していく。 「はっ……、あっ……」 麻酔にかかったようにぼんやりとした体の感覚を抱えながら、ヒロムははたはたと両腕をばたつかせた。 「……んっ」 少女は、瞬間に放たれたヒロムの性を受け止め、まだ緊張の解けない性器を解放する。 「初めて……だった?」 その時のアキラは、ほんの少しだけ唇を持ち上げて笑った。ヒロムはその笑顔に肩を震わせ、 がたんと、大きな音が鳴った。 「はっ、あん……」 小さな洋式の便座が、男女ふたり分の重さを支えていた。隙間もないほど密着した体。 悲鳴のようなうめきと嬌声が混ざる。 「どうし、……っどうして!」 「……趣味が似てるの。私と、アイツ……」 「そこで、待ってて……」 ヒロムはいつしか目に光を失い、呆然とトイレに座っていた。鼻をつく匂いは、今まで行われていた 行為の結果だ。タンクに腕を縛られたヒロム。アキラは柔らかに目を細める。 「あっ……!」 待って。 ようよう搾り出した言葉は薄い扉に遮られた。 「っかしいなぁ。藍川の足ならこの辺のはずなんだけど……」 眞白は思った。案外、もっとずっと、鍛えているのかもしれない。それは嬉しい想像だった。 そして―― 「川末…。藍川ヒロム……。私が貰ったから」 「!!?……どういうことだ」 「そのままの、意味」 (藍川っ!) 冷や汗を滲ませて少年が駆けた。小さくなる背中に、少女がくすりと嘲笑を送った。 終わり 作品保管庫へ戻る
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『Contentolino』 部屋の隅で震える少年に、少女は無遠慮に近付いていく。 「何をしているの?」 少年は怯えるように目を泳がせ、少しでも少女の視線から逃れるようにと自らの身体を隠す。 真っ暗な部屋では何も見えないはずなのに、少女には何故だか見透かされているような気がして怖かった。 「怖い事でもあったの?」 怖い。全てが怖い。 この部屋を包む闇も、少女の存在も。 「大丈夫よ。外には皆がいるもの。だから守ってくれる。私だってちゃんと頑張るから平気!」 少女が朗らかに笑っているような気がして、ようやく少年は顔を上げた。 この暗闇では何も見えないのに、少女の表情が本当に笑みなのか確かめたくて。 すると、思っていたよりも近くで少女の気配を感じた。 頬に何かが触れたように感じる。柔らかくて温かい何か。 それが少女の手だと気付き、少年は怯えるように身を竦ませた。 それ以上逃げ場はない。それでも、逃げ出してしまいたかった。 「……傷痕……怪我をしているの? 痛い?」 少年は震えるだけで、答えようとはしなかった。否、答えられなかった。 少女の手が少年の身体を滑るようにして進む。 気付かれてしまった。 気付かれてはならないのに。 「傷痕がいっぱい……髪にまで血が付いちゃってる……手当てをしなくちゃ。ちょっと待っててね! 今、手当てが出来る人を呼んでくるから!」 少女が立ち上がり、少年は咄嗟にその腕を掴んで制止する。 「……?」 「ま……て。ひと……よば……で……」 何年も言葉を発していないのだろう。酷く掠れた声。 「誰も呼んで欲しくないの?」 少年の頬に手を添えて問い掛けると、ほんの僅かだが頷く感覚があった。 「見られたくないのね……その傷痕」 怯えるように身動ぎながらも、少年は頷いた。 すると、少女は徐に自らの服を脱いだ。 「ちょっと大きめだったからあげる」 自らが着ていた長いコートを強引に少年の上から被せる。 そして、少年の手を自らの腕に触れさせた。 「私もね、怪我をしちゃったの。小さいんだけど、いっぱい。ここではちゃんと治せないんだって」 確かに、少年よりは軽症だが少女の肌にも無数の傷痕が走っていた。 「じゃあ……」 「気にしないで良いよ! 私は別に良いのに、女の子なんだからちゃんと隠しておきなさいって無理やり着せられただけだから。あっついのにねぇ」 本心なのだろう。少女の声は楽しそうに弾んでいた。 「だから、それで隠すと良いよ。隠したら人前に出ても良いんだって!」 「でも……」 言いよどむ少年の髪を、水を含ませた布で丁寧に拭う。 「大丈夫だよ。私の仲間は強いの! もう怪我する心配ないよ! 外はもう怖くないの」 少女は少年の手を引いて立ち上がらせると、有無を言わさず扉を開く。 外の明かりで呆然と立ち竦む少年が浮かび上がった。 この人種ではあり得ないはずの銀色の髪、服の隙間から見える醜い傷痕。 見られたと気付いて慌ててしゃがみ込む少年の髪を、少女は優しく撫ぜる。 「綺麗な髪ね。隠しちゃうのが勿体無いくらい。髪の毛を見られるのも嫌い?」 頷く少年の髪を問答無用で短く切り揃える。 「本当は私より藤司朗や政宗の方が上手なんだけどね。よし、完成!」 フードを被せると、僅かに覗き見る事も出来ないほどだった。 「私ね、沙鳥って言うの。小さい鳥っていう意味なんだって。貴方の名前は?」 「幸成……幸せに成ると書いて……」 「それじゃあ、幸せに成らなくちゃいけない人なのね!」 少年は躊躇いがちに顔を上げる。 「幸成は幸せになる方法を知ってるんでしょう? それならまず、人より先に自分を幸せにしなくちゃ」 もう一度少年を立たせ、ちゃんとコートを着せ直す。 「私はね、小さくても自由に飛び回る鳥になるために鳥篭を出たの。だから幸成も幸せに成るために、酷い事した人たちに報復しなくちゃダメなの。絶対。勝手につけられた名前に負けてるだなんて言われたらムカつくでしょ?」 きちんと銀髪と傷痕が隠れたのを満足そうに確認し、少女は少年の手を引いて外へと連れ出す。 「さあ、悪い人たちをやっつけに行きましょ! こんな綺麗な子を閉じ込めて独り占めするだなんて、それだけで大罪だもん! さっさとこんなとこ消してしまいましょ!」 少女の言葉に、扉の奥で待機していた少年たちが苦笑しながら承諾する。 彼らが少女の言う強い仲間なのかとぼんやり眺めていると、少女は少年の背を押した。 「幸成も一緒に行こ? 空ってね、とっても大きいんだよ! 初めて外で見た時、ビックリしちゃった! それだけでも幸せに成れるんだよ!」 その時の光景を思い出しているのか、心底幸せそうな笑みを見て、少年は小さく頷いた。 僅かだが、笑みを浮かべて
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占い師と少女 マッドガッサー決戦編 20 ○月×日 23 03 占い師さん達と一旦別れ、階段へと向かっていた私たち。 その目の前に蜘蛛の群れがやってきたのは、もう階段も間近となった頃だった。 「今度は蜘蛛? もういい加減にして欲しいんだけど……」 眼前に広がる蜘蛛を見て、弟さんが面倒臭そうに呟いた。 「……まぁ、さっきのよりは数も少ないし、簡単かな」 こぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ………… 手に持っていたペットボトルの蓋を外すと、中から黒い液体が渦を巻いて出てくる。 「毒蜘蛛じゃないみたいだけど……邪魔だしね」 そう言って、弟さんがコーラを操る。 その導くままに液体が床へと広がり、蜘蛛を飲み込もうとうねりを上げた時…… 「――――ちょっと足止めをしただけで殺すなんて、残酷過ぎないかしら?」 ……唐突に、誰かの声が響いてきた。 それと同時に、蜘蛛の湧き出てきた教室から出てくる人影。 「女の子…………?」 常夜灯に照らされたその影は、端正な顔立ちをした少女だった。 微笑むかのように口元が弧を描き、その目は強い光を秘めている。 「誰だか知らないけど、いきなり沢山の蜘蛛が目の前に出てきたらさ、どけようと思うでしょ? 邪魔だし」 いきなり現れた少女に、しかし弟さんは冷徹な目を向けた。 その手に持ったコーラと、制止が間に合わず溶かされた蜘蛛を見て、少女が肩をすくめる。 「保険よ、保険。もし私があなたたちの目の前に飛び出したら、その蜘蛛のように溶かされていたんじゃない?」 「弟は無差別で人を殺すような事はしない。人を殺人鬼のように言わないで欲しいな」 弟さんの影から、不良教師さんが姿を現す。 その弟さんと似た容姿を見て、少女が驚いたように目を少しだけ見開いた。 「あら、双子? 珍しいわね」 「一卵性双生児の生まれる確率は1000組中4組。大して珍しくもない」 人に驚かれるのに慣れているのか、不良教師さんは眉一つ動かさず、少女に答えた。 どうやら2人に気を取られているようで、少女は私たちの方を気にしていない。 (あの子を「視る」なら、今なのかな……) いつもは占い師さんがやっている作業。 けれど今、占い師さんがいない以上その作業は私がやるしかない。 (都市伝説に対して「リーディング」を行うのは久しぶりだけど……うん、頑張ろう) 自分を鼓舞し、能力を使って少女を「視る」 能力を使うと同時に、少女から、彼女についての様々な情報が脳内へと入ってくる。 スリーサイズ、身長、体重、血圧など、多種多様な外的情報を吟味し、取捨し、選択していく。 それらは順調に処理され、私の中に蓄積されて行った。 (……あれ?) ――――しかし、ある時点からそれが狂う。 彼女の外的もの以外で入ってくるはずの、都市伝説の契約者としての情報。 それが、全く入ってこない。 (え? どうして?) やり方に問題はない。現にその他の情報は入ってきている。 ……なら、一体何が問題だと言うのか。 そこまで考え、ふと、ここを出る前に占い師さんが言っていた事を思い出した。 確か、占い師さんはTさんの中に「包み隠された部分」があると言っていた。 今まで私はそんな部分を持った都市伝説や契約者に出会った事はないけれど……もしかしたら、彼女がそうなのだろうか。 (……でも、占い師さんはそれが「隠されてる」って事に気づいてたし……) 私が読み取った限り、そんな事実はなかった。 (どういう事なんだろう……?) 未だに扱いきれていないこの能力。 その未知の部分に触れ、私は少し混乱していた。 「――――あら、まだ仲間がいたのね」 そんな最中に響いた少女の声。 その声は私たちではなく、もっと後方に向けられていた。 思わず、後ろを振り返る。 「いて、悪かったな」 ……その視線の先、廊下の角を近くで、占い師さんが肩をすくめていた。 その少し後ろに、黒服Yさんの姿も見える。 「悪いとは言ってないでしょう? ただ、そうね……話し合いは人数が多くなればなるほど抉れるものだとは思ってるわ」 占い師さんの言葉に、少女が首を振る。 私たちの方へと歩きながら、占い師さんは苦笑をして 「ほう……なら、あんたは交渉で一番大事な物を知ってるか?」 「ええ、残念な事に」 少女は微笑んだまま、言った。 「交渉でまず気にするべきはthreat……脅迫だと、アメリカの学校では教えているようね」 「正解だ」 私たちの元まで、占い師さんと黒服Yさんが歩き終える。 「そして、脅迫は強い立場の人間がする物。……じゃあ、今現在の立場が上なのは、俺かあんた、どっちだろうな?」 不良教師さん達4人に、金さん、私、大将の7人。そこに占い師さんと黒服Yさんが加わっている今の私たち。 それにその傍らで溶かされつつある蜘蛛を見て、少女はため息をついた。 「……そうね。あなたたちの方が立場的には有利のようだわ」 「そう言う事だ。話しは聞くが、こちらも急いでる。出来れば無駄な戦いは避けたい」 占い師さんの言葉に、少女が頷いた。 「ええ、手早くすませましょ。一応言っておくけど、私は中立で――――」 「待て」 話を始めようとした少女に、占い師さんが制止の声をかける。 「話し始める前に、ちょっとしたお願いがある。なに、簡単な事だ」 少女は軽い笑みを顔に浮かべ、占い師さんに聞き返した。 「――何かしら?」 「出来れば基本人格か主人格の方を出してくれないか? あんたの行動に、あんた以外の人格が賛同しているのかだけ知りたい」 さらり、と事も投げに言われた言葉。 それを聞いて、少女の顔から表情が一瞬落ちた。 「……あら、何のことかしら」 しかしすぐに微笑みを顔に張り付け、少女は首を傾げる。 「言ったろ、あまり時間がないんだ。駆け引きをするつもりはない」 目を細める占い師さんに、少女は肩をすくめ 「何で知ったのかは分からないけど……そうね、向こうと話を付けるから、ちょっと待っててもらえるかしら」 そう言って、目を閉じた。 「……なるほど、DIDの患者か」 その様子を見て、不良教師さんが呟く。 その横で、弟さんが首をかしげていた。 「でぃーあいでぃー?」 「お前も知ってるはずだ。……DID、日本語に直せば『解離性同一障害』。世間に浸透している名前で言えば――――」 「多重人格、だ」 不良教師さんの言葉を遮るように、男性の声が響いた。 声の元へと、全員の視線が向けられる。 その声の主を見て、占い師さんが呟いた。 「……ほう、基本人格は男か」 「悪かったな、こんな格好で」 ふてくされたように、少女……いや、少年が呟く。 人格が変わったせいなのか、少年の目元は少女と違って少し垂れ下り、勝気な笑みも浮かべていなかった。 「マッドガッサーの被害に遭ったんだろう? さして不思議でもない」 「ああ……ただ一応言っておくが、基本的に交渉事はカズネに任せてる。俺に何か聞いても大して答えられないぜ」 先程の少女とは少し違った動作で、少年は肩をすくめた。 「取り立てて何かを聞こうと思ったわけじゃない。ちょっと基本人格の方も見てみたかっただけさ」 そう言って、少年を見る占い師さんの目。 少女を見た時には使っていなかった能力。それを少年に使っている事が、私には分かった。 ただ、さっき能力を使ってみても、私にはほとんど読み取れなかったのだけど……。 (……もしかして、多重人格だから?) そう思い、占い師さんに尋ねてみると 「……そうだな、多重人格者は読みにくい部類に入る。Tさんが故意に自分の一部を隠したとすると、こいつは自然にその状態になったタイプだな」 「でも、契約した都市伝説が分からない、何て事があるんですか? あの女の子、普通に蜘蛛を操ってましたけど……」 「都市伝説の契約と能力の使用に関しては分かってない事も多い。大体、多重人格の場合は契約をその人格同士で行えるのか、それともその人間一人を単位とするのかも分からないからな」 「そう、なんですか……」 何百年も生きてきた占い師さん。 その占い師さんにも分からない事があるのだと、私は少しだけ驚いた。 「――――さて、と。急いでるんでしょう? 早く話を終わらせなくていいのかしら?」 「おやおや、もう基本人格はお休みか?」 「交渉に関しては私に一任されてるのよ。聞いてなかったのかしら」 少し不機嫌そうな少女の声。 自分のペースで話を進められなくて、少し苛立っているのかもしれない。 「ああ、言っていたな」 「なら、もう話は済んだでしょう? 今度は私の話を聞く番じゃない?」 「それも道理だ」 占い師さんの言葉に、我が意を得たように少女は言葉を紡ぐ。 「さっき途中で遮られたけれど、今の所、私たちは中立の立場なのよ。条件さえ満たしてくれるなら、どちらの側についても構わないわ」 「条件?」 不穏な言葉に、不良教師さんが眉をひそめた。 「そう、条件よ。とは言っても、凄く簡単な事だと思うわ」 少女は微笑みながら続ける。 「私たちが欲しいのは、女体化するガスか、その効果を持つ魔法薬。それさえ手に入れば、どちらが勝っても構わないわ」 「女体化するガス、ね……。そんなもの、何に使うんだ?」 「あなたもさっき見たでしょう? 私たちは二重人格、2人で1人の存在なのよ。……なのに」 言葉の途中で、少女がため息をついた。 「どういうわけか、和弥……基本人格が男なのに、私は女の人格として生まれてしまったの。この苦労が分かるかしら?」 「さて、な。あいにく俺に二重人格の友人はいない」 「そうでしょうね。でも、私たちには息抜きが必要なのよ。人格によってちゃんと体も分けられるような、ね」 「…………ふむ」 隣で、占い師さんが軽く唸った。 男女両方の人格がある身体……私には想像もつかない境遇だ。 「話は以上よ。この戦いが終わった後、貴方たちが魔法薬なり女体化ガスなりを私に少しでも分け与えてくれるなら、貴方達を手助けするわ」 「もし、断ったら?」 「その時は、マッドガッサーの方に同じ相談を持ちかけるだけよ」 「あいつらが早々交渉に応じるとは思わないが……そうだな、少しこの教室で待ってもらえるか」 占い師さんの提案に、少女が首をかしげる。 「あら、すぐに決めてくれるんじゃないのかしら?」 「この後俺たちはまた別のグループと合流する。俺たちだけで決めて、後でそいつらと悶着は起こしたくないからな」 そう言って、占い師さんの目が階段の方へと向く。 説得の最中なのか、もう説得は終わったのか、階段からは何も聞こえてこない。 その間、少女は少し考えるようなそぶりを見せ 「そう、ね……分かったわ」 そう言って、少女が軽く手を振った。 その動作と共に、廊下にひしめいていた蜘蛛の群れが、教室へと戻っていく。 「私はその教室で待ってるわ。貴方達がここを出て……」 ちらりと教室内の時計を見る。 その針は、11時11分を指していた。 「……そうね、9分後、11時20分になっても戻らなかったら、私はマッドガッサーの方へ行くわ」 「分かった。それまでには戻ってこよう」 「……それじゃ、別のお仲間とも会えるといいわね」 占い師さんが頷くのを見て、少女が蜘蛛を引き連れ、教室の中へと入っていく。 その背はすぐに闇に紛れ、後には蜘蛛の死骸と、時折響くカサカサという音だけが残された。 少女の足音が完全に消えるのを待って、占い師さんに聞く。 「……よかったんですか? あんな約束をしちゃって」 「なに、屋上へ行くにはどうせここを通る事になる。下手にまくと、次会った時に敵に回られる可能性もあるからな」 占い師さんはそう言って、階段の方へと視線を向けた。 「さて、あいつが言ってた時間まで後8分強。さっさと合流するか」 防火シャッターの閉まった廊下のすぐ隣。 薄暗い階段の先からは、微に声が聞こえ始めていた。 ○月×日 23 11 占い師一行・不良教師一行・金さん・黒服Y、階段付近にまで到達。 前ページ次ページ連載 - 占い師と少女
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「京太郎様!」 嬉々として自身を呼ぶ声に、須賀京太郎は何事かと振り向く。 様付けで呼ばれるほど偉い立場ではないのだが─── 「あ、えーっと……神代さん?」 「神代さんなんて他人行儀な呼び方をなさらず、小蒔とお呼びください」 「………流石に、呼び捨ては…」 都会の真ん中で、都会に迎合しきった金髪の青年と、都会には似つかわしくない巫女装束の美少女が、間の抜けた会話を交す。 数日前、麻雀の団体戦の日程の最中に、京太郎は道に迷ったこの娘を助けた。 その日に、迷ったり困ったりしたらと伝えたメールアドレスではあるが、メールアドレスは専らその日に何があったとか、永水の巫女たちが何をしたとか、そういうのを伝えるツールと化していた。 霞さんが怒りますよ、と京太郎は巫女装束の姫を送り届けると提案し、小蒔も喜んで受けきれる。 そして、それを見つめる四人の巫女── 小蒔が一度の邂逅、一度救われただけで運命の人と乙女の如く語る男を見定める、厳しく冷たい眼差し。 無邪気に甘えようとする小蒔を受け止め、嗜めながらも、柔らかな雰囲気が変わらぬ男。 男慣れしていないとはいえ、神代の姫が心から甘えようとする相手── 神代小蒔がホテルに帰ったとき、仲間たちは警察に職質を受けており。 それを良いことに、小蒔は京太郎に甘えまくっていて。 押し付けられるおもち、鼻を擽る汗と美少女の匂い、無垢な好意に必死に耐えようとする京太郎。 巫女たちが帰ってくるまで、京太郎は果たして耐えられるのか──
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悪魔の少女 07 亜細亜日本とある山 二人の男女がいた。一人は「悪魔憑き」の少女、もう一人は「ツングースカ大爆発」の男。 「能力を使わずだぁ?はっ、出来るもんならやってみろ!」 男が右手を突き出す。瞬間、少女のいた場所が爆発する。だが、そこに少女はおらず。既に男に向かって走り出していた。 男は、少女に手を向け、能力を発動しようとし、少女が左にまがった事に気付く。 すぐに手を左に向け爆発を引き起こす。が、爆発は少女よりも遥か遠方で起こる。 男が慌てて少女に狙いを定めようとする間に、既に少女は、男の前に立っていた。そして、男の喉に少女の拳が突き刺さる。 男は一瞬息が出来ず動きがとまるが、すぐに前方を爆発させる。だが、それは二つの事で無意味であった。 一つ、その爆発は、明らかに無関係な場所で起こった。一つ、その爆発が起きた時、少女は男の左横にいたのだ。 少女の回転する様に繰り出された蹴りが、男の腹へと入る。 男の体が、くの字にまがり、その顔を挟み込む様に、少女の肘と膝が打ち込まれる。 男は、既に少女のいる方向もわからぬまま、爆発を起こす。だが、至近距離で起きた爆発に、男を巻き込まれ、吹き飛んだ。 少女は知っていた。だが、男は知らなかった。いや、勘違いしていた。ただ、それだけの事。 「ツングースカ大爆発」 それは、1908年ロシアで起きた謎の爆発である。 半径約30キロメートルにわたって森林が炎上し、約2,150平方キロメートルの範囲の樹木がなぎ倒された。 地球に落下した天体の爆発が原因とされているが、隕石の残片等は見つかっていない。 その為、落下した物は、マイクロブラックホールや反重力物質、異星人の宇宙船等様々な説が存在している。 もっとも、男の契約した「ツングースカ大爆発」は、何が爆発したかなど関係のない話である。 なぜなら、男の能力は「爆発」部分に焦点を当てているからである。「爆発を起こす能力」その威力は最大で広島型原爆以上になる。 その意味で、確かに「ツングースカ大爆発」は最強であった。警察は当然のことながら、軍隊にすら勝つ事が出来る。 どれだけ大勢の都市伝説や契約者であろうと蹴散らし、どれだけ巨大な都市伝説であろうと吹き飛ばす。 だが、その能力が最強であるのは、遠距離或は中距離に限られていた。 近距離において、爆発の威力はかなり抑えなければ、自分も巻き込んでしまう。まして、接近戦ともなれば尚更である。 広範囲攻撃によって必要のなかった狙いの精密さのなさが、自分を巻き込まないように気にし続けなければならない威力が、男の足を引っ張った。 だからもし、少女が男を殴った時、能力ではなくその手で、反撃していれば結果は変わった、かもしれない。 「さて、お仕置きで、すむと思うなよ。」 ボクは男が嫌いだ。ボク自身も男の恰好をしているけど、べつに好きでこんな恰好をしているわけじゃない。 この前、男を女に変えているガスマスクの都市伝説を見たが、あいつが全ての男を女に変えてくれればいいのに。 もう一度言うが、ボクは男が嫌いだ。死んでしまえばいいと思う。だってあいつらボクにあんな事……、もし警察が来るのが遅かったら……。 とにかくあいつらは、死んでしまえばいい。けれど、結局あいつは死ななかった。 あいつが脱走したと知って、ボクは恐怖した。それだけならまだよかった。その後、あいつが脱走時に起きた爆発が、前にボクがいた町に向かって続いていた。 一人では殺される。そう思って、ボクはあの女に助けを求めた。契約者相手に警察は無意味だし、放火のせいで「組織」からは狙われていたから。 女はあっさり、了承してくれた。 結果、あいつは女に倒された。どうせなら殺してしまえばよかったのに。 でも、これでボクはあいつに怯える必要も無くなった。 「本当にありがとうございました。」 「いいよ、気にすんな。ああでも、忘れんなよ。次放火したら、またあそこのきまぐれ料理食わすぞ。」 「絶対、やりません。」 ちなみに、爆発でかなりぐちゃぐちゃになった山が大丈夫かと不安になったが、山は女の知り合いの私有地だと知るのはかなり後の事である。 前ページ次ページ連載 - 悪魔の少女
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あめふりしょうじょのゆううつ【登録タグ あ いのっぴ 初音ミク 曲】 作詞:いのっぴ 作曲:いのっぴ 編曲:いのっぴ 唄:初音ミク 曲紹介 いのっぴ氏 の10作目。 今回はあす缶さんのイラストから曲を作らせていただきました。(作者コメ転載) イラストを あす缶氏 が、マスタリングを 7c氏 が手掛ける。 歌詞 また雨が降って 下を向くの 私は雨降り 傘を差した 待ち合わせ (一時間) 一人きり (待ってても) 泣きそうな (来ないなら) 顔してる (諦めよう) そんなこと (人ごみを) 気に留めず (見つめながら) 音楽を聴くの (イヤホンで雨音を塞いで) 三拍子で歌いながら 君を待つ お気に入りの (せっかくの) 長靴も (日曜日) 今日だけは (泣きそうな) 喜んでる (その顔も) 明日から (しばらくは) 晴れるから (もういいや) さようなら (傘をしまって笑おう) 三拍子で歩きながら 君の事探すよ 嘘みたいな本当のこと期待して コメント 追加おつ! -- 名無しさん (2012-11-22 23 49 22) 名前 コメント
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イノシシの国 イノシシ編パート5 伍 紅葉が冴える森。 笠の下、小さな唇から漏れた白い息が、樹々の間に消えて行く。 冷えた空気を遮るように、縞合羽を体に巻き付けると、獣の匂いが、なせの匂いを包み込む。 高く梢のそびえる根元、樹洞に押し込められた小さな体は隠れて、笠だけがはみ出して茸のように横から生えているようだった。 少しくすんだ紅葉が高い空を遮る枝の間から落ちてくる。 なせは、被せられていた笠を外し、不自由だった首を振る。 頬に、舞い落ちる葉の影が落ちた。 「ばじさまのにおい」 縞合羽からは、濃い獣の匂い。 既に慣れきってしまった獣脂の匂い。 笠を手にもって、縞合羽に頬をすり寄せ、匂いを嗅ぐと、少し落ち着いた。 小さく笑んで、また白い息を吐く。 木枯らしが吹いた。 辺りを見回す。 視界からバジが消えて、随分経っていた。 初めてひとりにされた身では、心細くて、何処へも踏み出せない。 この森をゆけば、どちらが街道だったのか、それすらも分からなくなっていた。 「ここで、待っていれば、戻ってきてくださる」 樹皮によりかかり、自分に言い聞かせるように、なせは呟いた。 足下に、紅葉が落ちる。 それを、拾おうとして、なせは身をかがめた。 その時。 落ち葉を踏みしめ、やってくる足音が耳に届く。 複数。 それと同時に、野太い男の声が、複数。 なせは身を凍らせた。 「……すぐに、戻ってくる」 なせは息をひそめる。 樹洞に隠れてやり過ごそうと、笠を持った手を引っ込める。 手元で、思ったより大きな音がした。 ひっかかったまま、動かない。 縦にしてもしまえない。 「ばじさまの、笠」 悲鳴に近い吐息が漏れた。 緊張に、ひゅーひゅーと喉が鳴る。 声が近づいてくる。 逃げなければ。隠れなければ。でも、何処へ? この辺りは、紅葉に色づく樹々で、少し暗くなっている。 向こうに薮が見える。 なせの視線が硬い動きで、あちらこちらを彷徨った。 声が樹の後ろから近づいてくる。 「おい、こっちに本当にいるのか?」 「風上だぜ? 間違いない」 「でもよお、強いオスだったら困るじゃねェか」 足下でかさりと、落ち葉が音を立てた。 「おっ、気配がするぜ」 「でもあんな幅で俺達が隠れられるはずもねェ」 「なんか、匂いに違うの混じってねェか?」 声色の違う、野太い男達の声が三人分。 なせはバジ程鼻が利かない。 でも、バジ達が鼻が利くのは承知していた。 (ばじさまの、匂い) 自分の匂いではなく、バジの匂いを追ってきたと、そう理解した時、なせの足は樹洞より転がりでて、薮の向こうへと一気に走り出した。 手に持った笠が空気抵抗の邪魔をする。 手離さずに笠を胸に抱きかかえて、一心に走る。 「おっ、何かいたぜ」 なせの走る姿を認めたのか、声が少し訝し気なものに変わった。 「ん? なんだ? ありゃ」 「イノシシ……じゃねえな、ネズミか?」 背後で響く声。 なせの視線がちらりと声の方を向いた。 両目の開いた、イノシシが三人。 (……両目の開いたイノシシの男を見かけたら、すぐに逃げろ) なせの全身に脂汗が滲んだ。 視線を戻すと目の前には薮。 「……っ」 なせはそのまま笠を盾にして突っ込んだ。 大きめの縞合羽があちこちの枝にひっかかって、穴があく。 もがきながら外して、先へと進む。 「おい、追いかけてみるか?」 後ろから迫る声はあくまでも能天気だった。 「よしとけ、『冬』は間近だ、女をやっと抱けるんだぜ?」 言い合う声は、若者特有の軽い口調。 「でも、あれが女だったらどうする?」 だが、なせには、会話の内容を聞き取る余裕も無い。 薮をやっと抜けると、また全力で走り出す。 藁靴が片方脱げた。 拾わずに、つんのめるようにして駆ける。 「あんなにオスの匂いをぷんぷんさせてる奴がか?」 足音は歩いて、変わらず追ってくるが、遠ざかりつつある。 このままなら、逃げ切れそうだ。 「『冬』の前に男とやってたから、あの匂いだって言うのはどうだ?」 上がった息を整えようと、少し速度を落としかけた、なせの背後で、下卑た笑い声が響く。 突然、足音が、疾走に変わった。 なせの喉から、悲鳴が息の漏れる音として生ずる。 「ぬしさま……っ」 イノシシ族は、走ると一転して足が疾い。 遠ざかっていたはずの足音が地響きとともに、近づいてくる。 三人分。 逃げ切れない。 つんのめる足先を、無理矢理前に運んだその時。 後ろから衝撃が来た。 「……っ」 なせの体が高々と空に舞い上がる。 高い悲鳴が、空を引き裂いた。 放物線を描いて、遠くの薮へと落ちて行く。 途中、大木の枝に縞合羽がひっかかって、落下が止まった。 一瞬の間を置いて、合羽が外れて、そのまま薮へと落ちる。 空中に残された笠は、風に翻弄されるように薮の手前へ後から落ちてきた。 その上を、急に止まって勢い余った蹄が踏み抜く。 笠が潰れる音が鈍く響いた。 「まさかあんなに飛ぶとは」 二人分の蹄も、後から揃って、立ち止まる。 「ぶちかましたんじゃあるまいな」 若いイノシシの三人組は、顔を見合わせて、足下の笠と自分達の顔を見比べる。 「いや、かすめただけだ。牙も当っちゃいねェ」 皆バジより一回りは体が小さく、牙も短い。真新しい旅姿は、泥汚れが裾についており、まだ乾ききらない毛並みが見える。 「とにかく、あれは何なのか確かめようぜ」 笠を蹴飛ばして、一人が薮に近づいた。 「イノシシの女じゃないのか……」 「そんなの分かりきってただろ」 肩を落とす一人を、もう一人が小突く。 「おい、見ろよ。耳、耳」 先に覗き込んだ一人の、好奇の色を帯びた声に、他の二人も群がった。 「お、なんだ? こりゃ」 落下の衝撃で気を失ったなせは薮の枝の上にひっかかるように、仰向けに倒れていた。 裂け傷の出来た縞合羽はなせの体を守るように巻き付いている。 白い顔には、黒髪が張り付いて、先程の恐怖を物語っていた。 「あー、この縞合羽か、匂いの元は」 薮に引っかかってあちこち破けた縞合羽を、一人が引っ張ると、なせの体が地面へと転げ落ちる。 「おっと」 一人が、それを抱きとめた。 「んー、やわらけェ」 剛毛に覆われた頬を寄せて臭いを嗅ごうとするのを、もう一人が止める。 「おい、独り占めは駄目だろ」 その言葉に渋々、抱きとめた一人は、なせを落ち葉積もる大木の下に寝かせる。 「ていうかよ、その匂い、相当強くねぇか? このオス」 一人が不安げに、紐が外され、なせの下に敷かれた縞合羽の匂いを警戒する。 「俺たちゃ三人いるんだぜ? 戻ってきても勝てるだろ」 先程なせを抱きしめた一人は、自信ありげに言い放つ。 「尻尾がねェな、本当に」 一人は、めくれ上がったなせの赤い小袖の裾をさらにまくり上げて、足を開かせた。 下帯から続く太腿が露になる。 片方だけ脱げた藁靴。両の臑は、薮を通り抜けた際に、またしても切り傷だらけになっていた。 「見ろよ、毛が全然生えてないぜ」 産毛の透ける白い脚を、剛毛の生えた腕がなぞり上げて行く。 なせの膝がぴくりと跳ねた。 「なあ、これ女かな、それともガキかな」 下帯をつついて、一人が無邪気な声を上げる。 「んな事言われてもよ、初めての『冬』なんだ、わかるかよ」 「じゃあ、試しにこの脚に挟んでヤってみるって言うのはどうだ? きっと気持ちいいぜ?」 「んー、脇も良さそうだよな」 なせのだらりとした腕をもう一人の剛毛に包まれた指が持ち上げる。 「なら、断然口だろ」 黒髪を踏まないように、頭の上に一人が立った。 「噛み切られたらどうするよ」 笑い声が響く。 「とりあえず、ヤってみるか?」 脚に執着している一人が、なせの脚を持ち上げながら、自分の股間に手を伸ばした。 「里の検番に見つからないうちに早くしようぜ」 袖をまくり上げて、脇を露出させ、匂いを嗅ごうとする一人も興奮してきたらしい。 「そういえば、こいつさっき恐怖の匂い振りまいてたもんな。まずいか」 思い出して、頭上に立っていた一人が首をすくめる。 「里までの距離はどのくらいだっけ?」 匂い云々に、なせの両の太腿を持ち上げ、揃えさせていた一人が顔を上げる。 「そんなにねェな」 風の匂いを嗅いで、一人が首を振った。 「出入り禁止食らったらどうするよ」 なせの髪が、落ち葉とともに、風に舞う。 「でもよ、『冬』になったら、俺達、協力してやれねェぜ?」 屈んでなせの脇に顔を埋めようとしていた一人が、ちらりと辺りを見た。 「選ぶのは女側で、一人だけって言うしな」 三人に迷いが見られた、その時。 風の匂いに、怒気が混じった。 「なせっ!」 旋風が、三人組の一人を突き飛ばし、剛毛の固まりがもつれあって横に転げて行く。 残された二人に緊張が走り、後を追いかける。 飛び交う怒号の中、争いの場は、なせから離れた。 なせの閉じられた瞼の上を、舞い落ちる紅葉がかすめて行く。 露になった四肢を、柔らかな腐葉土の上に投げ出し、片膝を曲げ、脚を放り出した姿で、なせは動かなかった。 帯と、手を付けられなかった着物の胸元が、僅かに上下する。 西日に傾く森の中。 木枯らしは、落ち葉を舞い上げ、なせの姿を覆い隠して行った。 (了)