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珍しく唯先輩が次の日曜日に集まって練習しようなんて言いだして。 私は先輩がやる気を出してくれた事が嬉しくて二つ返事でオーケーしたのですが。 他の先輩方は都合が悪いということでやっぱりその日の練習は無し、 という話になって私がしょんぼりしていると。 「じゃあ、あずにゃん。二人だけでも練習しよっか?」 なんて言ってくれて。 日曜日、私は唯先輩と二人で部室にやってきたのだった。 唯先輩も真剣に練習に取り組んでくれて充実したひと時。 ふと気がつくと結構時間が経っていた。 梓「先輩、ちょっと休憩しましょうか」 唯「…………」 梓「……唯先輩?」 唯「ふぇっ!?な、なに?あずにゃん」 梓「休憩しましょうって……大丈夫ですか?なんかボーっとしてません?」 唯「あ……ごめんね。うん、休憩しよっか」 梓「はい。じゃあお茶淹れますね」 ムギ先輩がお休みなので私がお茶の用意をしていると 突然背中に柔らかく暖かい物が伸し掛かってくる。 梓「ちょっ…唯先輩!危ないじゃないですか!お茶淹れてる時に抱きつか………」 ん? 違う。 私ぐらい唯先輩に抱きつかれているとこれがいつもの抱きつきでない事はすぐにわかる。 そして先輩の体温がいつもよりあきらかに高い事も。 梓「ゆ、唯先輩!……熱あるんじゃないですか!?」 どうやら先輩は抱きついてきたのではなく、お茶を淹れるのを手伝おうと 私に近づいてきた所で足がもつれて倒れこんできたようです。 唯「……ごめんね、あずにゃん。こけちゃった」 梓「そんなのいいですから!」 唯先輩のおでこに触れてみる。 熱い。 おそらく微熱なんてものじゃない。 梓「もしかして……朝から体調悪かったんですか?」 唯「え、う、うん……でも、朝はちょっとだけ熱っぽかっただけだよ?」 梓「……なんで無理するんですか。体調が悪いなら休んでないと駄目じゃないですか!」 唯「だって……あずにゃん今日の練習が無くなりかけた時すごくしょんぼりしてたでしょ? 私が休んだら練習無くなっちゃうから………」 まったく、あなたという人は…… 梓「……とにかく、保健室に行きましょう。……歩けますか?」 唯「……うん。大丈夫だよー」ヨロヨロ そう言う唯先輩の足取りはどう見てもふらついている。 梓「唯先輩。私の腕につかまってください」 唯「え……だ、大丈夫だよ。一人で歩けるよー」 普段平気で抱きついてくる人が何故こんな時だけ遠慮しているのか。 ただでさえ危なっかしい唯先輩をこんな状態で一人で歩かせるわけにいかない。 梓「いいから早くつかまってください!」 唯「は、はいっ!………ゴメンね、あずにゃん……」 保健室に向かい廊下を歩く私と唯先輩を、すれ違う生徒がチラチラと見てくる。 日曜日とはいえ、部活などで学校に来ている生徒はそれなりにいるようです。 ……自分で言うのもなんですが私達軽音部員は校内ではそれなりに顔を知られている。 特にボーカルの唯先輩はファンクラブのある澪先輩に次いで有名人ではないでしょうか。 そんな人がまるで恋人同士のように後輩の腕にしがみついて歩いているのだから 見るなという方が無理でしょう。 ………なにか誤解を招きそうな気がしますが今は唯先輩の体の方が心配だ。 周りの目を気にしている場合じゃない。 何人かの生徒にチラ見されつつたどり着いた保健室には誰もいなかった。 ひとまず唯先輩をベッドに寝かせる。 梓「保健の先生呼んできますから、唯先輩は寝ててください!」 _________ さわ子「38度2分か……結構高いわね……」 保健の先生がお休みだという事で仕事で学校に出て来ていたさわ子先生が保健室に来てくれた。 大丈夫かなぁ…… 梓「びょ、病院に行ったほうがいいんじゃないでしょうか!?」 さわ子「大げさよ梓ちゃん、落ち着きなさい。唯ちゃん、お腹とかどこか痛かったりする?」 唯「……んーん?体はだるいけど……別にどこも痛くはないよー……」 さわ子「そっか。じゃあとりあえず薬飲んでしばらく寝てなさい。後で家まで送ってあげるから。 梓ちゃん、救急箱の中に解熱剤があると思うから取ってちょうだい」 梓「は、はい!」ガサゴソ 保健室に備え付けの救急箱の中を探してみてもあるのは頭痛、生理痛の薬、胃薬、消毒液など。 お目当ての物は見つからない。 さわ子「おかしいわねー?解熱剤が置いてないわけないと思うけど……あ!もしかして……」 何か思い当たったのか、さわ子先生は保健室の片隅に設置されている小型の冷蔵庫を開けた。 さわ子「……やっぱり。あったわ、梓ちゃん。座薬」 ざっ……ZAYAKU?ざやくって……あの座薬ですか!? さわ子「唯ちゃん、座薬入れたことある?」 唯「えっ、そ、それって……お尻に入れるやつだよね?……い、一回もないよぉ……///」 さわ子「うーん…飲み薬が無いみたいなのよ。これで我慢して?」 唯「えぇぇぇーーー……///」 さわ子「ほら、カーテン閉めるから。できたら呼んでね?」 ベッドの周りに設置されているカーテンを閉め、私とさわ子先生はカーテンの外で待機。 しばらくしてカーテン越しにモゾモゾと動く音と唯先輩の声が聞こえてきた。 『んっ……ひゃうっ!冷たっ……あ、あれ?……あ、んん………ふぅ……はぁ………んっ……』 さわ子「………なんかエロいわね」ボソッ うっ……///私もちょっと思いましたがそれを口に出すのは教師としてどうなんですか。 唯「……さわちゃーん………」 さわ子「できた?カーテン開けるわよ?」 シャッ 唯「うぅ……グチョグチョになっちゃった……」 唯先輩の右手にはドロドロに溶けて原形を留めていない、かつて座薬であったであろう物体が。 さわ子「あちゃー……やっぱり自分で入れるのって難しいみたいねぇ…」 私も座薬については詳しく知りませんでしたが、体温で溶けるようになっている為 入れるのに手間取っていると唯先輩のように手で溶かしてしまうことはよくあるらしい。 さわ子「こうなったらしょうがないわね。私が入れてあげるわ!」 唯梓「「え……ええええぇっ!!?」」 な、なにを言い出すのかこの人は! 唯「ちょっ!ちょっとさわちゃん!?そ、それはさすがに……///」 さわ子「病人がなに恥ずかしがってんのよ。いいからお尻だしなさい!」 座薬を入れようと掴みかかるさわ子先生と必死に抵抗する唯先輩。 私はどっちの味方をするべきでしょうか…? さわ子先生の暴走を止めるべき? いやでも薬を入れないといけないのは確かだし…… 私が自分の行動を決めかねてオロオロしていると、 ピンポンパンポン 『山中先生。山中先生。至急、職員室までお戻りください』 さわ子「…やばっ!えーっと…梓ちゃん、後は任せるわ!薬入れたらしばらく安静にさせておいて。 落ち着いたら私が車で家まで送るから。頼んだわよ!」バタン さわ子先生はそんなことを言い残して保健室を出ていってしまった。 シーーーン………… 静寂が保健室を包み込む。 え? 後は任せる? ……………? え? えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええ!!!??? な、なにを任されたんですか私は!? 唯先輩の看病? ええ、それはもちろん献身的にやらせていただきます。 ただ、この場合の看病というのはまず唯先輩に薬を投与することであって…… え?え? 私が? 唯先輩のお尻に??? 唯「……あずにゃん……」 梓「は、はいぃぃ!!」ドキッ! 唯「……私、もう一回自分でやってみるよ……」 梓「え?あ……そ、そうですよね!えと、その……が、頑張ってください……///」 唯「う、うん……///」 唯先輩に新しい座薬を渡し、カーテンを閉じる。 再び妙に艶めかしい声がカーテンの向こうから聞こえてきた。 『…よっ……あれ?……んっ…んん……あっ…ぅん…………ふぅ………ん……はぁ…………』 『………ううぅ…あずにゃぁ〜ん……』グスッ ……駄目だったみたい。 カーテンを開けると涙目になった唯先輩の右手には二つ目の座薬の残骸が。 唯「もう薬なんていいよ……しばらく寝てたらきっと治るよ……」 梓「だ、駄目ですよ!ちゃんと薬飲ま……あ、そ、その……い、入れないと……」 とは言うものの唯先輩が自分で入れるのは無理っぽい。 既に二つも無駄にしてしまっているのだ。 自力で座薬を入れるというのは初心者(?)にはなかなかにハードルが高いようです。 梓「あ、あの……唯先輩…?」 唯「な、なにかな…?」 梓「その……もし、唯先輩が嫌じゃなかったら、ですけど……わ、私が………///」 唯「…………///」 梓「…………///」 唯「で、でも!あずにゃんの方が嫌でしょ?……その…私のお尻の穴に……ゴニョゴニョ……///」 全然嫌じゃないです!!! ……と、声を大にして言ってしまうのはさすがにどうでしょうか。 それではまるで私が唯先輩に座薬を入れたがってるみたいではないですか。 あくまでも看護として、唯先輩の体が心配だからやるのです。 他意はないのです。ホントです。 梓「わ、私は気にしません!さわ子先生も言ってたじゃないですか。唯先輩は病人なんですから お互いに恥ずかしがってる場合じゃありません!//////」 そんな事を言いながらも私は自分の顔が今までに無いほど熱くなっている事を自覚している。 うぅ…いま私、顔真っ赤なんだろうなぁ……『恥ずかしがってる場合じゃありません!』 なんて言ってもまるで説得力が無い。 私を見つめる唯先輩の顔も真っ赤に染まっていますが それは果たして熱のせいなのかそうじゃないのか。 唯「そ、そうだよね……じゃあ、あずにゃん……お願いします……//////」 梓「は……はいっ!!//////」 唯「……えーっと、じゃあ……パ、パンツ脱がなきゃだよね……///」 梓「え……ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええっ!!?/////////」 当然と言えば当然ですが。 私はパンツを穿いたままの人に布越しにお尻に座薬を入れて、 もちろんパンツには穴は開いてません!ジャーン! なんてマジシャンのような芸当はできない。 と言うかそんな手品テレビでも見た事ない。………当たり前か。 つまり唯先輩に座薬を入れる為には唯先輩の……お、お尻の…穴を出してもらうのは必須なわけで…… し、しかしですね、唯先輩がパンツを脱いで、しかる後に私が座薬を挿入するということは 唯先輩の……その………だ、大事な部分も全部見えてしまうということですよ!? 梓「そ、それは流石にまずいと思います!!///」 唯「え……?で、でも脱がないと入れられないよね?」 至極全うな意見を言う唯先輩。確かにそのとおりなんですが…… というか唯先輩は私の前でパンツを脱ぐ事に抵抗は無いのでしょうか? 『あずにゃんになら見られてもいいよ……』 ———なんて思ってたりして……えへへ……/// しかし私は唯先輩の大事な部分を目の当たりにして冷静でいられる自信は無い。 梓「え、えっとその、唯先輩?……パンツは穿いたままでいいんで 四つん這いになってお尻をこっちに向けてもらえますか……?」 先輩に四つん這いになってもらってお尻の穴がギリギリ見えるところまでパンツを下ろす。 そして座薬を挿入。これがお互いにとって一番ダメージが少ない方法ではないでしょうか。 唯「うぅ……あ、あずにゃん……この格好すっごく恥ずかしいのですが……///」 梓「が、我慢してください!///すぐに終わらせますから!!///」 恥ずかしいのは私も同じです。 ベッドの上の唯先輩は私に言われたとおり四つん這いになりお尻を私に突き出す体勢だ。 まさかこんな体勢の唯先輩をこんな位置から見る日が来る事になろうとは……////// 梓「え、えーと……まずはスカート……捲りますよ?///」 唯「……………ウン………/////////」 ヒラリ スカートの下から現れたのは唯先輩の形のいいお尻とそれを包み込む淡いピンク色の下着。 ……ものすごい破壊力です。頭がクラクラします。もうこのまま気絶してしまいそうです。 しかしながら現段階でノックアウトされているようではこのミッションをこなす事なんて出来やしない。 次の段階へ進まなくては。 梓「じゃ、じゃあ……パンツ下ろしますね………//////」ゴクリ 唯「……………………/////////」コクリ 唯先輩はもう返事をせず頷いただけだった。 お互いの顔が見えない体勢ですから、いま唯先輩がどんな顔をしているのかはわかりませんが おそらく私と同じぐらいかそれ以上に真っ赤な顔をしているのでしょう。 ライブの時なども強心臓で緊張とは無縁、周りの目などもあまり気にしない唯先輩ですが さすがにこの状況で平然としていられるほど羞恥心を無くしてはいないようです。 唯先輩のパンツに指を掛け、ゆっくりゆっくりと下ろしていく。 ……べ、別にこの時間を少しでも長く楽しむためにゆっくりしてるんじゃないですよ? お尻の穴が見えるギリギリのラインでパンツを止めないといけないので慎重に下ろしているだけです! しばらく下ろしていくと唯先輩のお尻のお肉に窪みが見え始めそれはどんどん深くなっていく。 こ、これが唯先輩のお尻の割れ目……! うぅ……鼻血でそう……////// 先輩のお尻の割れ目が見え出してから結構パンツを下ろしているつもりですが お目当ての器官はなかなか顔をださない。 お、お尻の穴ってこんなに下の方(?)に付いてるものだっけ…? ……はっ!もしかして唯先輩程の天使になるとお尻の穴なんてついてないんじゃ……? それならば唯先輩が自分で座薬を入れられなかった事にも納得がいく。 無い穴に薬を入れるなんて不可能に決まっているからだ。 ———などといい感じに私の思考が暴走しだしたところでいきなりそれは現れた。 こ……これが唯先輩のお尻の穴………/////////ゴクリ・・・ 2
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律「あっ、という間に出て行っちゃったな」 唯「どど、どうしよう! 雪はないけど外はすっごく寒いよ~!」 澪「追いかけるしかないだろ! こうしてる間にも見失ってしまうぞ」 律「防寒着、防寒着!」 紬「みんな落ち着いて!」 唯「ふぇえ?」 澪「ム、ムギ?」 紬「こんなこともあろうかと、さっきの食事にGPS発信機を含ませておいたの! これでバッチリ!」 律「なんか色々引っかかるけど、さっすがムギ!」 紬「ロボアズサちゃんが受信するから、私達はゆっくり後を付いていけばいいの」 唯「でもでも、ゆっくり探してたらあずにゃんが大変な事になるかもしれないよ~」 紬「それもそうね……ならロボアズサちゃんに先行してもらいましょう」 澪「なるほど。離れていてもロボアズサの位置がわかるようになってるんだな?」 紬「これがその受信機でっす!」 律「準備万端だなぁ。ま、これで何とかなるか」 唯「お願いロボにゃん! あずにゃんを見つけてきて!」 アズサ「ふんス!」タッタッタッタッ…… 唯「おお~!」 律「こっちもあっという間に行ったな」 紬「私達も準備して追いかけましょう」 澪「無事でいてくれよ、梓……」 …… 梓「――はぁ……」 梓「かっとなった勢いで飛び出してきたまではいいけど」 梓「今、季節は冬真っ盛りだった……寒いなぁ」 梓「戻りたいけど、ここであっさり戻るのも癪だし」 梓「そもそも、あのロボットが居るからこんな目にあったんだ!」 梓「唯先輩とムギ先輩はともかく、まさか律先輩と澪先輩まで」 梓「あんなロボット量産でもされた暁には、日本が沈没しちゃうよ」 梓「考えてたら段々腹立ってきた」 梓「よし、戻ろう。戻ってロボットを停めて、ムギ先輩にデータを返してもらおう!」 梓「そうと決まれば早速……って、あれ? ここ、どこだろう?」 梓「考え事しながら歩いてたら、いつの間にか知らないとこまできちゃってた……」 梓「おまけに携帯もお財布も持ってきてない……やばい」 梓「と、とりあえず元来たと思う道を戻ろう!」 梓「――はあっ、はあっ、はあっ……つ、疲れたぁ」 梓「海岸だったのに、何か岩肌が目立つ所に来ちゃってる……」 梓「これは本格的に遭難……? ううぅ、寒くなってきた……」 梓「日が落ちて道も見えなくなってきたし」 梓「足元悪いから気をつけないと……うわわっ!」 梓「あいたたた……岩が出っ張ってたのか。ふう、良かった、少し擦りむいただけかな……」 梓「こんなとこで挫けてらんないよ。さぁ、また歩こう……痛っ!」 梓「た、立てない……!? 足を挫いちゃったんだ!」 梓「ど、どうしよう! こんな人気の居ない所で一人ぼっちで」 梓「ゆ、唯先輩! 律先輩、澪先輩、ムギ先輩!!」 梓「誰か……誰か助けてよぉ……」 梓「ロ、ロボアズサ……」 アズサ「ふんス!」 梓「うわっ! びっくりした……ロボアズサ!? どうしてここに」 アズサ「こレこレ」サッ 梓「え? 何か光ってる……GPSみたいなもの?」 アズサ「そウそウ」 梓「いつの間にそんなの仕掛けてたのか釈然としないけど……とりあえず見つけてくれて、あ、ありがとう」 アズサ「もうスグ皆さンが到着しまス」 梓「そうなんだ。でも、足を挫いちゃってて動けないんだ」 アズサ「こんなンじゃダメでスーッ!」 梓「な、何!?」 アズサ「ふんス!」ビリビリ 梓「あ、制服のスカート破って……巻いて固定してくれるの?」 梓「うん、ゆっくりなら歩けそう。ありがとう」 アズサ「どうもデス」 梓「……何か私と一緒な顔で、突拍子も無い行動ばっかりするから頭ごなしに否定してきたけど」 梓「お前は悪くないよね。ただプログラミングされた事を実行してるだけなんだし」 梓「でも、破いたスカートのお陰で下着丸見えでも全く気にしないのは……」 梓「助けてもらってなんだけど、やっぱりムギ先輩に話してもうちょっとマトモなロボットにしてもらおう」 梓「それにしても寒いなぁ……」 アズサ「暖かいモノ、出せまスヨ?」 梓「気持ちは嬉しいけど、変なとこから出すんでしょ? コップとかもないし」 アズサ「やッテやるでス」ババッ 梓「えぇ!? いや、だから受け止める物がないんだって……そ、そのあまり顔に近付けない……で」 アズサ「ンっ……んんんッ! んほオォッ!!」プッシャアアアァァァァ 梓「んぶうううぅぅぅぅ!?」 澪「――ロボアズサが立ち止まってる辺りまでは来たけど……」 唯「奥の方は真っ暗で見えないよ~」 紬「ごめんなさい、この受信機は大体の範囲でしかわからないの」 澪「懐中電灯も遠くまでは見渡せないしな」 律「ん? おい、あっちで声がしないか?」 唯「本当だ! お~い、あずにゃ~~ん!」 梓「ひゅ、ひゅいひぇんぴゃい!」ゴクゴク 澪「あー……」 律「直飲み……か」 紬「感動したわ!」 唯「感動したよ!」 澪「うわびっくりした!」 律「急にどうしたんだよ、お前ら」 紬「あれだけロボアズサちゃんを毛嫌いしていた梓ちゃんが……直飲みするまでになってたなんて!」 唯「友情だよ! 愛情だよ!! 熱情だよ!!!」 律「いやー、それはどうかなぁ」 澪「段々冷静になってきたけど、やっぱあのロボちょっとおかしいよ」 紬「人間と機械の垣根を越えた瞬間! 今日の出来事は日記にしたためておこう!」 唯「デリシャス! オーガニック!! ファンタスティック!!!」 律「こいつらの方が心配になってきたわ」 澪「あ、あれ? 梓の様子がおかしくないか?」 梓「ぶくぶくぶくぶくぶく……」ゴクゴクゴクゴク 紬「そして二人の愛は留まらず、禁断の階段を上り続けるの! 最終的に世界中から祝福されるのよ!」 唯「一大スペクタクル! 全米が震撼!! 私、CM出て『感動しました! ○○サイコ~~!』って言うよ!!!」 律「なんでちょっといい話になってんの?」 澪「ロ、ロボアズサの放尿が止まらない! 梓が溺死しちゃうよ!」 アズサ「すみマせんでス」ドバドバ 梓「」 澪「梓~~~~!!」 …… 梓「――――いやぁ……あの時は大変だったよ。お花畑が垣間見えたし」 憂「そんな事があったんだぁ。それで、そのロボは?」 梓「モニター期間が終わって、ムギ先輩のところの会社が引き取っていったよ」 憂「そうなんだ、残念。私も梓ちゃんそっくりのロボ見たかったな」 梓「当事者としたら気持ち悪くて仕方が無かったよ。もっと普通だったらまだしも、アレだし」 憂「結局データは破棄したの?」 梓「当然。作るなら私以外の人で作り直して下さい、って言ったよ」 憂「ふーん、そうなんだ。それで……」 梓「どうかした?」 憂「ううん、何でもないよ」 梓「それにしても、突然部室に行きたいって……まさか入部してくれるの!?」 憂「そうじゃないんだけど、ちょっと用事があって」 梓「はぁ……あ、着いたよ」ガチャ 梓「こんにちは。今日はロボもいないし、張り切って練習しましょう!」 憂「お邪魔しまーす」 ウイ「アッ……ああっ……おねえちゃーーーーン!!」プッシャアアアァ 唯「うまいうまい」ゴクゴク 梓「」 憂「わ~、凄い凄い! 完成したんですね」 律「おー、梓に憂ちゃん」 紬「急ピッチで仕上げさせたの~。ロボアズサちゃんのベースがあったからすぐに出来たみたい」 澪「どうしたんだ、梓。そんなところに突っ立って」 梓「な、な、な……」 澪「な?」 梓「な、何なんですかコレはー!?」 律「何って、見たまんまのロボウイちゃんだよ?」 梓「そんなの見ればわかります! どうしてロボがまたいるのかって事ですよ!」 紬「えっとね、梓ちゃんがデータを破棄してくれって言うから、憂ちゃんにダメ元で頼んでみたの」 憂「それで私が協力してロボが完成したんだよ」 紬「だから、またロボのモニターをするっていう訳なの」 梓「う、憂はあんなの許せるの!? 紅茶を飲んで股間から排出するんだよ!?」 唯「可愛いからいいじゃ~ん」 梓「唯先輩は黙ってて下さい!!」 唯「ふえぇ、あずにゃん怖いよ……」 憂「確かにちょっとやり過ぎかもしれないけど……」 律「ちょっとなんだ」 澪「あの姉にしてこの妹ありか」 憂「よく出来てるし、私も紬さんにお願いして一体借りてモニターする予定だから」 梓「ちょ、ちょっとそれ初耳だよ!? モニターするって?」 紬「憂ちゃんたっての希望でロボユイちゃんを作成してみました~」 ユイ「でデれこでン!」 梓「」 憂「きゃ~、凄~い! お姉ちゃんそっくり!」ギュー 梓「」 律「もう収拾つかない感じになったな」 澪「おい、梓? どうした」 梓「」 澪「立ったまま気絶してる……! あ、梓~~~~!!」 梓(ででれこでん……ででれこでん……あはははは……こんな日本は沈没だ…………) おしまい! 戻る
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梓「ミケ!おいでー!!」 猫「ニャーン」トトト 梓「えへへー。今日はお前に友達を紹介するよ!…ほら、ヒラタのアントニオ!」モゾモゾ 梓「大きいでしょ!とっても強いんだよ?今日もコクワ殺したからね!」 梓「オレアントニオ!ヨロシクナ!」フリフリ 猫「…」クンクン 梓「気に入ってくれた?じゃあ仲良しの証にー、しっぽイヤリングー♪」ギュッ 猫「!!フギャーッ!」バリッ 梓「きゃっ!!………痛いよお」ジワッ 猫「ウァーオ」フーッ 梓「なんで…ひどいよ…グスッ……うっく、うわああーーーん!!ぁーーん!!」 ~~~ 梓「私は猫に恐怖を覚えました。どれだけ仲良くしていても、奴らは平気で裏切ります」 律「えっ」 梓「悲劇は続きます。まだ幼かった私は、愚かにもそれを間違いだと信じて疑いませんでした」 ~~~ 梓「…グスッ(怖いけど仲直り、しなくちゃ)…ミケ、ミケ?仲直りしようよ」 猫「ウムァムォ」パキパキ 梓「…ねえミケ、何食べてるの?」 猫「ペッ」ポト 梓「………うそ……アントニオ…?」 梓「いやああああああっ!!!!」 ~~~ 梓「…そうして、私は猫を嫌うようにになりました」 梓「今でも猫を見るたび傷がうずきます…治ってるけど」 律「えっ……えっ?」 唯「あずにゃん…辛かったね。私にはいくらでもヒラタイヤリングしていいからね?」ムラムラ 紬「何言ってんだコイツ」 梓「……」 律(どうしよう、どう反応していいかわからない。…ていうか) 澪「今の話、梓が100パーセント悪いだろ。猫怒るに決まってるよ」 律「言っちゃったー!」 梓「はあ!?私の悲しみがわからないんですか!?どっちが悪いとかじゃなく今は泣く場面でしょ!」 梓「どんだけ空気読めないんですか澪先輩は!だからぼっちなんですよ!」 澪「あ、梓だってぼっちの癖に!!」 梓「違いますー!私はクラスにも友達がいますー!」 唯「ねえねえあずにゃん見て見てー!唯ホタル!」ボワー 澪「ひいっ!唯の顔が緑色に光ってる!?」 梓「何バカなことやってるんですか!さっさと吐き出して逃がして下さいっ!」 唯「えー?このままだとみんな食べちゃうよお。あずにゃんとってー?」ンアッ 梓「取らせるぐらいなら最初から食べないで下さいよ…ていうか何匹いるんですか」スッ 唯「かかったな!!」パクッ チュバチュバ 梓「指が抜けないっ!?」グイグイ 紬「いいぞ!そのまま犯っちまえ!!」 唯「(ガシッ)あずにゃんのみーずはあーまいぞー♪」レロォ ウゾウゾ 梓「ホタルの民族大移動!?」ググググ 律「…あはは、結局いつもの軽音部だな……はぁ」 ――― ザッザッ ポンポン 梓「ごめんね。…次は虫かご、洗わないとね。ダニついちゃってるから熱湯も使って」 カシャカシャカシャカシャ 梓「あ、澪先輩からだ」 ~~~ From:澪センパイ Sub: 本文: 今日、エカテリーナが成虫になってた。寝ている間に羽化したみたい。 本当は梓にも見せたかったんだけど、早く外に出してやりたくて、逃がしてしまったんだ、ゴメン。 でも、羽化したときは本当に嬉しかった。 梓のおかげで虫を少しは好きになれるかも知れない。ありがとう。 ~~~ 梓「羽化、したんだ。よかった…」 梓「…おめでとうございます。あとは、私が約束を果たす番ですね、と」カチカチ あきやまけ! 澪「……からっぽの、虫かご」 澪「…もう少しだけ、置いておこう…かな」コツッ ボクハキレイナムシノヨッオッニッ イキタインダサリゲナク♪ 澪「梓だ。こんな時間に何だろう」ピッ 梓『澪先輩!今からそっち行っていいですかっ?見せたいものがあるんです!』 澪「いいけど…何?」 梓『羽化直前のアブラゼミ!キレイです!感動モノです!』 澪(セ、セミ…いや、梓の厚意を無下にしたくないし、今の私なら…!) 澪「…わかった、持ってきて。私も見るよ」ドアガチャ 梓「じゃあ早速カーテンにとめて鑑賞しましょう!」トタトタ 澪「早っ!あ、そこ本積んでるから足元気をつけて」 梓「えっ?」ガッ 梓「あっ――」 グチャ 澪「…虫なんて嫌いだ」 おひるやすみ! 「じゃあ梓、今日の放課後だからね!」 梓「うん、またね。…さてと」ペラッ 純「梓ー、何読んでんのー?ん、ハウツー猫の…」 梓「な、なんでもないよ!ていうか誰?」ガサゴソ 純「あの頃の二人に逆戻り!?」 憂「梓ちゃん、さっき何の話してたの?」 梓「ああ、また買い物のお誘い。部活もないからいいかなって」 憂「そっか、試験期間は部活できないもんね」 純「そういや梓の部活…えっと」 梓「昆虫部」 純「そう、昆虫部の人たちは遊んでばっかりに思えるんだけど…大丈夫なの?あんた含めて」 梓「今日勉強会みたい。その辺やっぱり受験生だよね。私は成績いいし大丈夫だけど」 憂「お姉ちゃんだって!最近勉強頑張ってるんだよ?」 憂「中間テストは全部満点だったし、この前も…」モワモワ ~~~ さわ子「進路は…へえ、理系の超名門じゃない。てっきりワハ〇本舗目指してるのかと思ってたわ」 唯「私が虫を食べるのは芸じゃなくて愛の使命ですから」キリッ さわ子「ま、今の唯ちゃんの成績なら十分狙えるから、とめる理由はないわね」 憂「お姉ちゃんカッコイイ!」 唯「…なんで憂がここにいるの?」 ~~~ 憂「なんてことがあったんだあ♪」 梓「へ、へえ…唯先輩頑張ってるんだ(やばい、先輩は本気だ)」 梓「…あ」 唯「……」サラサラ カキカキ 憂「ね?」 梓(でも、あれ…蝶?) 唯「……」ペリペリ ペロッ 純「うわっ、なんかグロいことしてる」 憂「最近は食べる前に分解してるの!観察だって」 梓(私いつか殺されるかも…) 唯「…」サラサラ 梓(でも先輩たち、頑張ってるんだよね) 梓(…私だって!) 梓「ただ、こっちの方向には頑張って欲しくなかったな…」ハァ 梓「私、唯先輩に虫の良さを教育したことは失敗だと思ってるんだ」 梓「唯先輩には人を愛するように虫を愛して欲しかっただけなのに…」 純「いや、その前提からすでにおかしいから」 梓「ほんと失敗。これからの人生における大きな失敗ワースト3には入るぐらいの」 憂「あはは、大袈裟だよー」 梓「最近「あずにゃんが昆虫じゃないなんておかしい」とかブツブツ独り言繰り返してて怖い」 憂「家でもよく言ってるよ!他にも「産卵管ペロペロしたい」とか「寄生されて操られたい」とか」 梓「頼むからあなたのお姉ちゃんを病院に連れていって」 憂「梓ちゃん可愛いから仕方ないよー♪」 梓「仕方ないで私を危険に晒さないで。ていうかもはや私の何に魅力を感じるのかわからないんだけど」 憂「お姉ちゃんって感性が独特で可愛いよね!」 梓「なんで今の流れでその結論に落ち着いたの!?」 純(会話が高度すぎてついていけない…) 憂「そういえば梓ちゃん。期末が終わったら夏休みだけど、今年もお姉ちゃんたちと合宿行くの?」 梓「まだ決まってはいないけど…きっと二日三日行くことになると思うよ」 梓「…なんだかんだで、みんな遊びたいだろうから。私含めて、ね」 憂「あはは、そうかもね」 純「あーそれで思い出した。私、旅行に行くんだけど、 おばあちゃんがまだ風邪で預けられないんだよね…猫」 梓「あっ…」 憂「そろそろおばあちゃんの心配してあげたほうがいいかもね♪」 純「まあいい加減一人にしても大丈夫だとは思うんだけど…」 梓「……」 梓「あの、さ。純。私に――」 ――― 「……」 梓「…」ソワソワ 「……」ジーッ 梓「…あのっ」 梓「中野梓、昆虫系女子です!……よ、よろしくね?」 猫「ニャン」タッ 梓「ひっ」 END おまけ! 梓「…なんです?これ」 唯「新入部員だよー!」 紬「頑張る梓ちゃんが寂しくないように先生に頼んで買ってもらったのー♪」 梓「…人間じゃ、ないですよね」 唯「ヒント1はこの水槽!」※布を被せています 梓(レアな虫だあ…!) 唯「ヒント2!名前はトンちゃんです!!」 梓「ぽ、ポールトンノコギリ!!」ドキドキ 唯「惜しい!正解はスッポンモドキでしたー!」 梓「」ドンヨリ 澪「…あれ?」 律「唯、ヤスデを買ってやるって言ってなかった?」 唯「そのはずだったんだけど…」 紬「さわ子先生が「私も寂しくなったとき使えるように」って無理矢理…」グスッ 律「何に!?」 梓「…クスッ」 梓「もう、そんな不純な動機で飼われたら迷惑だよね?」コツコツ 梓「大丈夫、これからは私がちゃんと変態から守ってあげるからね!」 唯「おお…?」 律「予想外の反応…」 紬「てっきり怒って「生きたままウジムシに食いつぶされて死ね」とか言われるものかと…」 梓「そこまで言ったことありませんよ…そりゃ多少ガッカリはしましたけど、 先輩がたが私のためにしてくれたことが嬉しくないわけないじゃないですか!」 澪「梓…(ガッカリはしたんだ)」 梓「それに、亀だろうが猫だろうが人だろうが、なんだって仲良くなれる気がします!今の私は無敵です!」 梓「そう、脱・昆虫系女子です!よろしくね、トンちゃん」 END 戻る
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… … … 梓(とは言ったものの、いったいどうすれば……) 梓母「どうしたの? 梓ちゃん。元気ないわね」 梓「ちょっとね……」 梓(ああ、先輩達が来る日だけどっか行ってくれないかなぁ……) 梓母「歌おうか?」 梓「やめて」 梓母「でも、お母さん心配だし……」 梓「それでなんで歌うって発想になるかなぁ……」 梓母「じゃあ、お母さんどうすれば……」 梓「普通にしててよ」 梓母「親の心ぉぉぉぉぉっ 子知らずぅぅぅぅううぅぅぅうぅぅぅ」 梓「結局歌うんかい」 梓母「梓ちゃんが普通にしてていいって言うから……」 梓「そうだね、それがお母さんの普通だったね、私が悪かった」 梓母「梓ちゃんがこの調子だったら、今週末の旅行取りやめにしようかしら」 梓「旅行?」 梓母「結婚記念日に夫婦水入らずで温泉に1泊旅行にでも行こうかってお父さんが」 梓「えっ!? それ本当!?」 梓(これはチャンス!) 梓母「梓ちゃんももう高校生だし、独りでお留守番するのも大丈夫だろうって」 梓「中学生でも充分出来るわ」 梓母「でも、なんだか梓ちゃん元気ないようだから、1泊はやめにして日帰りにしようかなって」 梓「いやいや、行きなよ! せっかくの結婚記念日なんだからさ!」 梓母「そう?」 梓「うん!」 梓母「じゃあ、お言葉に甘えて」 梓「1泊といわずにもう2泊3泊しちゃいなよ!」 梓母「お父さんお休みその2日しか取れなかったのよ」 梓「そうなんだ~、お父さんも大変だよね~」 梓母「なんだか梓ちゃん元気になった?」 梓「私はいつでも元気だよ!」 梓(まさに形勢逆転!) 梓(これは私に嘘をつき続けろっていう神様からの啓示に違いない) 梓(なんとか上手いことやってやるです!) そして当日… 唯「おじゃましま~す」 梓「どうぞ、遠慮なさらず」 律「ほうほう、ここがかの有名なジャズバンドの……」 紬「意外と普通ね」 澪「そりゃ、ムギの想像を超えることなんてこれから先もそうそうないだろ」 唯「でも、こっちの棚にはCDが一杯だよ!」 澪「凄い量だな」 紬「さすが両親がバンド組んでるだけあるわね」 律「梓は小さい頃からこれらのCDを聴いて育ってきたんだな」 梓「普通ですよ、普通」 唯「気取らないところがまたカッコイイよね」 梓(いったいこれだけの量のCDを集めるのにどれだけ私が苦労したか) 梓(私のコレクションだけじゃ心許ない) 梓(だから今、近所のCDレンタル店のジャズ系のCDの殆どは我が家にあると言っても過言じゃない) 梓(新しいギターやその他諸々、欲しかった物を犠牲にしてお年玉貯金を切り崩した涙の結晶) 梓(途中、なんでこんなことしてるんだろ、って悲しくなってしまったけど) 梓(もう、ここまで来たら絶対に突き通す!) 梓「プレイヤーはそこにあるので、なにか気になるものがあったら聴いてもらっても結構ですよ」 澪「そうだな、何か聴かせてもらおうかな」 梓「あ、これとかオススメですよ。もしジャズでわからないことがあったらなんでも聞いて下さい 私の答えられる範囲で、ですけど」 律「すんなりオススメできるあたりはさすが本物だな」 梓「えへへ。じゃあ、私は何か飲み物でも持ってきますので、ゆっくりしてて下さい」 紬「手伝おうか?」 梓「大丈夫です」 梓(そう、大丈夫。あの棚にあった演歌のCDは全部入れ替えたし) 梓(これだけのCDコレクションを見たら疑いようがないはず) … … … 梓(この後は、今まで妄想していた両親とのライブ紀行を語ったりして) 梓(まさかこんなことに役立つとは、妄想もしとくもんだなぁ) 梓(ジャズの知識だってそこそこ自信あるからその合間合間で披露する) 梓(それで抜かりはないはず) 梓「すみません。慣れないもので少し時間がかかってしまって」 『あまぎぃぃぃぃぃぃ ごぉぉぉえぇぇぇぇぇぇ』 唯「あずにゃんおかえり~」 律「梓、この曲は?」 梓「ああ、天城越えですね。津軽海峡・冬景色と並ぶ石川さゆりの代表曲ですよ」 梓「1986年の第28回日本レコード大賞金賞受賞曲だったりします」 梓「ちなみに今聴かれてるのは新録音版ですね」 唯「へ~、さっすがあずにゃん!」 梓「えへへ。……って、えっ!?」 梓「な、なんで演歌なんて聴いてるんですか……」 律「ああ、なんかこのCD棚動くみたいだったから、動かしたら裏にまだ沢山CDあってさ」 唯「そしたら、なんか演歌のCDいっぱい出てきてね」 梓「!?」 梓(し、知らなかった……不覚っ!) 律「梓には悪いけど、ジャズより演歌の方が面白そうかなって」 梓「は、はぁ……」 紬「でも、梓ちゃんのご両親はジャズバンドやっていらっしゃっるのにこれだけ演歌も好きなのね」 梓「じ、ジャズと演歌は意外と通ずるものがあるらしくて」 梓(自分で言っといてなんだけど、初耳だよ……) 唯「なるほど~、やっぱり音楽ってやつはどこかしらで繋がってるもんなんだね!」 梓「も、もちろんです!」 澪「ところでさ、このジャズのCDなんだけど」 梓「は、はい! むしろそっちのことを聞いて下さい」 澪「なんだか◯×レンタルってシールが貼ってあるんだけど……」 梓「あ……」 梓(し、しまったー!!) 梓(ど、どうする!? いっそのこともう吐いちまうか!) 梓(いや……でも……) 梓「れ、レンタル落ちをいつも買ってましたので」 澪「そっか」 梓(持ち直した! ……のか?) 唯「ねぇ、次これ聴いてみようよ」 律「ん~、どれどれ? 『桜が丘恋慕情』か」 梓「そ、それはっ!?」 紬「どうしたの?」 梓「い、いえ……」 梓(お母さんのCDだよ……) 澪「桜が丘って、もしかしてここのこと?」 唯「私もそう思ってね」 律「しかも第2章とか3章とかもあるな」 梓「えっ!?」 梓(それも初耳だっ!) 紬「章立てだなんて、なんだかロマンチックね」 梓(なんでもないようなことが幸せだったと思う……) 紬「ねぇ、みんな。この『桜が丘恋慕情~最終章~』のジャケットなんだけど」 澪「ん? これって……」 律「なんかすっごい見覚えある人が写ってるな」 唯「あずにゃんの小さな頃じゃない?」 梓「!?」 梓(そういえば、小さな頃に両親と一緒にスタジオで写真を撮った記憶が) 梓(まさかそれがCDのジャケット撮影だったなんて!?) 梓(これは言い逃れ出来ない気がする……) 澪「梓、これはいったい?」 梓「あ、あはははは……」 『~~~~~ ~~~~~~~~~~~~♪』 律「あれ? なんか外で曲流れてるな」 唯「本当だね、演歌かな?」 梓「……えっ?」 澪「近くで演芸大会でもやってるのか?」 梓「いえ、そんな催しは無いはずですけど」 紬「でも、なんだかどんどん近づいてくる気が」 梓「ま、まさか……!?」 『桜ぁぁぁが丘ぁぁああぁぁあぁ 恋慕情ぅぅぅうぅぅぅうぅぅうううぅぅぅ♪』 梓「か、帰ってきちゃった!?」 梓母「帰ってきたよ、帰ってきたよ」 梓母「帰ってきぃぃぃぃぃたぁぁよぉぉぉぉぉぉぉ」 梓「な、なんで……」 梓父「いや~旅館の予約を間違えて1週間後にしてしまってたみたいでな」 梓「……」 梓母「やっぱりね、そうだろね、しんどいね、未練だね」 梓父「まぁそう言うなよ。来週行けばいいんだから」 梓母「やだねったら、やだね」 梓父「悪かったって。機嫌直してくれよ」 梓「あ……あ……そんな……」 唯「えっと……あずにゃん?」 梓「はっ!?」 梓父「おっ、梓のお友達か?」 律「こ、こんにちは……」 梓母「あら、いいおでこね」 梓父「おでこ? でこ……デコトラ!!」 律「!?」ビクッ!! 梓母「あんた、落ち着いて」 梓父「あ、ああ、すまん」 紬「あの~……もしかして梓ちゃんの」 梓父「娘がいつもお世話になってます」 澪「あ、いえ……こちらこそ」 梓(もう駄目だ……) 唯「あれ? だけど、あずにゃんのお父さんお母さんは今海外に行ってるんじゃ」 梓「……」 澪「梓? いったいどういう……」 梓「……」 紬「梓ちゃんのことが心配になって帰ってきた……とか?」 梓「……」 律「けど……こう言っちゃなんだけど、ジャズバンドやってるって感じじゃないよな……」 梓「ふ、ふぇぇ……」 唯律澪紬「!?」 4
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憂「目を覚ました梓ちゃんは仲間が死んだことを知りひどくショックを受けてしまった」 憂「牙の多用によって体がボロボロになり、精神にも傷を負ってしまった梓ちゃんが、これ以上機関に所属して悪霊を倒していくのは無理だと判断されました」 憂「そして、梓ちゃんは霊力を封じられ、機関をやめることになった……」 憂「これが、私が聞いた3年前の事件の全てです」 律(そうか……昨日と今日で梓の強さが違ったのは封じられていた霊力を解放したからだったのか) 律「………それで?」 憂「実は、ここまでの話でおかしな点がいくつかあるんです」 律「?」 憂「実は梓ちゃんと一緒にいた仲間はそんなに霊力が高いわけでも、戦闘に長けていたわけでも無かったんです」 憂「そんな人間が、梓ちゃんに致命傷を与えられるほどの霊を、相討ちといえど倒せるはずがない」 憂「それと、機関には霊力の発生を探知できる装置があって、私達はそれによって霊の出現を知ることが出来るんです」 憂「3年前のその日、梓ちゃんが向かった先には3つの霊力の反応がありました」 憂「梓ちゃん、梓ちゃんと一緒にいた私達の仲間、悪霊の3つです」 憂「その装置によると最初に梓ちゃんの霊力の反応が無くなり、次に梓ちゃんと一緒にいた私達の仲間の霊力の反応が無くなったそうです」 憂「その後、何故か梓ちゃんの霊力の反応が再び現れ、そして梓ちゃんと戦っていた悪霊の霊力の反応が無くなり、梓ちゃんの霊力の反応だけがその場に残ったんです」 憂「おかしいと思いませんか?梓ちゃんが致命傷を負って倒れ、その後私達の仲間と悪霊が相討ちになったのなら梓ちゃんの霊力の反応は消えず、私達の仲間と悪霊の霊力の反応が同時に消えなければならないはずなんです」 律「…………」 憂「機関はこれらの矛盾を装置の誤作動ということで処理しました」 憂「でも、その装置が誤作動を起こしたのは後にも先にもその一回だけなんです」 憂「これらのことから、私は一つの仮説を立てました」 憂「最初に梓ちゃんが悪霊に殺された」 憂「そして、次に私達の仲間が悪霊に殺され、その後、梓ちゃんが甦って悪霊を殺した」 憂「これだったら今までの矛盾にも全て説明がつきます」 律「…………!?」 憂「悪霊に殺された人間が甦って自分を殺した悪霊を殺し返した」 憂「こんな馬鹿げた事は本来ありえるはずがない」 憂「でも、私はこの仮説が正しいと思っています」 律「…………」チラッ 律は梓が倒れているべき場所に目を移した。 ――――いない。 梓がいない。 律「なん……だと……!?」 律は慌てて音楽室を見渡す。 ―――いた。 憂「つまり………」 梓は音楽室の奥に立っていた。 憂「梓ちゃんは一回殺したくらいじゃ死なないんですよ」 その顔に、不敵な笑みを浮かべて。 ―――――。 梓(ここは……どこ?) 私はどこもかしこも真っ白な空間にいた。 梓(ここ、前にも来たことあるような……) …………駄目だ。どうしても思いだせない。 梓(私はどうなったんだっけ……?) 梓(そうだ……確か律先輩に胸を刺されて……) 梓(ということは、ここはあの世ってことか……) 梓(私、負けちゃったんだなぁ……) 澪先輩のことを助けられなかった。 また、私のせいで人が死んでしまった。 ………自分のふがいなさが嫌になる。 ここで待っていればもうすぐ律先輩と澪先輩が来てくれるはずだ。 梓(それで……いいや……) 梓(律先輩と澪先輩がいれば寂しくない……) 梓(少しすれば、唯先輩とムギ先輩も来てくれるしね) 梓「……………」 梓「……………」ポロポロ 目から涙が溢れた。 梓「うっ……うぇ……うぅ……」 梓「ごめんなさい……ごめんなさい……澪先輩……」 私は、その場で泣き続けた。 ?『また、泣いているんですか』 梓「………?」 その時、後ろから声がした。 ―――クルッ 私は振り返く。 梓「な……!!」 そこには、私と全く同じ姿形をした人間がいた。 梓『また、殺されちゃいましたねー』 梓『全く……あなたは私なんですから、あの程度の霊になんか負けないで欲しいものです』 どうやら、私の目の前にいる私にそっくりな人間は、私が律先輩に殺されてしまったことを怒っているらしい。 梓「だって……だってしょうがないでしょ……!!」 梓「律先輩は強かったし、私の牙も通用しなかった……」 梓「勝てるわけがなかったんだ……」 梓『……あなたの牙には無駄が多すぎるんですよ』 梓『あの撃ち方だと体に余計な負担がかかるし、本来の威力の半分も出せていない』 梓『まぁでも、それを抜きにしても田井中律にはちょっと勝てなかったかもしれませんが』 梓「……あなたは誰なの?」 梓『……今は説明している時間は無いです。それはまたの機会に』 梓『それより、秋山澪を助けたいんでしょう?田井中律を倒したいんでしょう?どうなんですか?』 私の目の前のそいつは、私に向かって問いかける。 梓「…………」 私は答える。 梓「助けたい……!!澪先輩を助けたい!!律先輩を倒したい!!」 梓『……そうですか』ニコリ そいつは微笑みながら言った。 梓『だったら、また、あなたの体を貸りますね』 梓『私が、倒してきてあげますよ』 ―――――。 梓「…………」ニタァ 殺したはずの梓が立っている。 律(甦った、だと……!?) 律(だったら……)グッ 刀の柄を強く握る。 律(何度でも殺してやる……!!) 刀を鞘から抜き、梓に斬りかかった。 律「おらぁぁっ!!」 梓「おっと」ヒョイッ ―――ブンッ!! 律の刀が空を斬る。 律「ふんっ!!」ブンッ 間髪入れずに攻撃を続ける。 キンキンキンキン!! しかし、律の攻撃は全て梓に防がれてしまった。 律(なっ……!?) 梓「今度はこちらの番ですねっ!!」 攻守が変わる。 ガキィッ!!ガキィッ!! 律(くっ……!!攻撃が重くなってる……!!) 律(だけど、この程度なら……!!) 律「痺ッ!!」 梓「!!」ビクッ 梓の動きが一瞬止まった。 律「うらぁっ!!」 ドゴッ!!! 梓「げふっ……!!」 律の蹴りが梓の腹部に入った。 梓の体勢が崩れる。 律(………死ねっ!!) ズバァァァァン!! 律の斬撃が梓を襲った。 梓「がっ……!!」 律「吹き飛べっ!!」 ドゴッッッッ!! 律が梓を蹴り飛ばす。 ダァァァァァン!!! 蹴り飛ばされた梓が宙を舞い、壁に叩きつけられた。 律(……なんだ、弱いじゃないか) 律(これなら……次の一撃で殺せる……!!) 梓が立ち上がった。 梓「ふぅ……さすが、といったところですね」パンパン 制服の汚れを払いながら梓が言った。 律「な……!?」 律(今ので……ダメージを受けていない……!?) 梓「でももう……終わりです」 次の瞬間――――。 バァァァァン!!! かつてないほどの衝撃が律を襲った。 律「ぐはぁっ……!!!」 律(これは……牙……!?でも…威力が全然……違……!!) 律(しかも、モーション無しで……!!) 膝から下の力が抜ける。 律(やばいっ……!!)ドンッ!! 刀を杖のようにして倒れるのを防いだ。 律(踏ん張れっ……!!) ―――ダンッッ!! 梓が私に向かって瞬時に移動してくる。 律(くっ……!!) 梓が下から斬り上げてきた。 律(防がなきゃ……!!) 力を振り絞って梓の攻撃をガードする。 ガキィィィィィ!!! 律の刀が手から抜け、宙に舞った。 律「しまっ……!!」 そして―――。 ―――ドシュッッ!!! 律の体を、梓の刀が貫いた。 律「あっ……あぁっ……」 自分の腹に刀が突き刺さっている。 ―――ズブッ ―――バタンッ 梓が刀を引き抜いた瞬間、よろめきながら律はその場に倒れた。 律「う……あ……あぁ……」 律「い…た……い……い…た……い……よぉ……」 あまりの痛みに立ち上がることが出来ない。 自分の刀も無くなってしまった。 梓に、消される……!! その時、澪のことが頭の中をよぎった。 律「み……お……澪っ……!!」ズリッズリッ 澪の元に這って近づく。 梓「その様子じゃ、術式も使えませんね。あれはある程度の集中力が必要ですから」 梓が何か言っている。だけど私には澪しか見えなかった。 律「い……や…だ……み……お……」 澪と……離れ離れになりたくない……。もう……一人は嫌だ……よ……。 ―――ザシュッッ!!! 律「いぎっ……!!」 自分の右ふくらはぎに激痛が走った。 見ると梓が刀を突き刺している。 梓「往生際が悪いですね……」 それでも、澪の元に行こうとする。 律「うっ……いや……だっ……」ズルッズルッ 梓「やれやれ……」 梓に制服の襟を掴まれ、強い力で仰向けにされた。 律「あ……う……」 ―――スッ 梓が私の首に剣先を向けた。 梓「もう……消えろよ」 律「…………!!」 必死に声を絞り出す。 律「や…め……て……ま…だ……消え…たくない……」 律「ひ……と…りは……い……や…澪と……一緒……に……」 ――――黙れ。 律「………?」 梓「黙れ、悪霊」 律「………!!」 梓の、はっきりと私を拒絶する言葉。 ―――ズンッ そして、私の首を梓の刀が貫いた。 憂(………!!) 私はただただ、驚いていた。 私達にしか使えないはずの術式を使った律さん。 さっき使った相手の動きを止める『痺』は上級の術式に区分されていて、私の所属している機関の支部のメンバーに使える人間はいない。 日本全国を探しても使える人間は数えるくらいしかいないだろう。 そして、そんな律さんをあっという間に倒した梓ちゃん。 いや……あれは本当に梓ちゃんなのか……? 律さんが消え、梓ちゃんが私の存在に気付いた。 そして私に話しかける。 梓「確か、平沢さんですよね?」 違う。この人は梓ちゃんじゃない。 憂「あなたは……誰……?」 梓「誰って……、中野梓ですよ。知っているでしょう?」 憂「嘘……!!あなたは梓ちゃんじゃない……!!」 梓「あぁ……うーん、えっーと……」 梓「簡単に言うとあなたが知っている中野梓は表の私。」 梓「それで今の私は裏の私。この説明で大丈夫ですか?」 憂「………!?」 表の梓ちゃんに裏の梓ちゃん……? 一つの体に二つの人格……? そんなことがあり得るのか? 梓「そんなことより……」 ―――スッ 梓ちゃんが刀を私の心臓につきつけた。 梓「私の存在を知ってしまった奴は全員殺すことにしてるんですが」 ―――ゾクゥッ!! 憂(な………!!) その瞬間、私は死を覚悟した。 6
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律「私は澪と一緒に見た、あるロックバンドのライブDVDの影響かな」 梓「あ~、それはありがちですね」 梓「ってことは澪先輩も同じ理由で?」 澪「まぁそうかな。ほとんど律に無理矢理やらされた感じだけど」 梓(よかった、この人たちは普通だ) 律「まぁ、澪とは小さい頃から家族ぐるみの付き合いだしさ」 律「何よりも、父親同士がコンビ組んで仕事してるようなもんだし」 律「その娘がバンドでリズム隊組むのも面白いんじゃないかなって」 律「私も何かしら音楽には関わっていたいって気持ちだったけど ギターやキーボードみたいなちまちましたことは苦手でさ」 律「親の仕事みたいな繊細なことは、私のような大雑把なやつには出来そうもないし」 梓「親の仕事? いったい何をなさってるんです?」 律「調律師だよ」 梓「ち、調律師って、あのピアノの調整とかする人ですか!?」 律「うん、そう。やっぱり親の仕事ってさ、子供から見てカッコイイって思うじゃん? だから、私も何か音楽に関わっていたいと思って」 律「しかも、名前が『律』だし。そんな名前付けられたら音楽をやらざるを得ないっての」 梓(ここにも音楽に造詣が深い親を持つ娘が……) 梓「あ、ってことは親同士がコンビを組んでるっていう澪先輩の親御さんも?」 澪「うん。私のパパ……お父さんは、ベーゼンドルファーってとこでピアノ職人してるんだ」 梓「ベーゼンドルファー!? 世界のピアノ製造御三家じゃないですかっ!」 澪「よく知ってるな」 梓「ま、まぁ、ジャズにはピアノの楽曲も多数存在するのでそのくらいは」 梓(嘘をつき通すためになまじ知識だけはあるんだよね……) 律「さすがジャズバンドやっている親の娘だけはあるな」 梓「ウチの親は本物ですからね。あ、あはははは……」 梓(どうしよう……。この流れじゃきっとムギ先輩の親も…… でも、流れ的に聞かないわけにはいかないし……) 梓「あ、あの。ムギ先輩の親御さんも何か音楽に関わる仕事をしてる……とか」 紬「ごめんなさい。私の親は音楽とは無縁なの」 梓「そうですか」ホッ 紬「私の親は会社社長で家はただの金持ちなの。なんだか普通でごめんね」 梓「正直一番羨ましいです」 唯「でも、ムギちゃんはピアノのコンクールで賞を獲ったことがあるんだよ~」 紬「もう昔のことよ」 梓「確かに、ライブのときもキーボードが一番安定していたように思います」 律「おっ、後輩のくせに生意気な奴だな~。まるで他が駄目だったみたいな言い方じゃん」 梓「あ、いえ。そういうつもりじゃ……」 澪「まぁ、それに関して言えば私たちが一番よくわかってることだけどな」 律「それにさ、親が音楽とは無縁だって言ってたけど、ムギのところで楽器店経営してるじゃん」 唯「そうそう、私もそこでギター買ったし」 梓「そ、そうなんですか」 澪「あの駅前商店街の10GIAだよ」 梓「わ、私もそこでギター買いましたよ!」 紬「お買い上げありがとうございま~す」 梓「あ、いえ。ども」 律「今度から何か買う時はムギの名前出したら安くしてくれるよ」 澪「こらこら」 紬「でも、お得意様になってくれるなら、私からも店員さんに梓ちゃんのこと言っておくわ」 梓「あ、ありがとうございます」 唯「ムギちゃ~ん、私も~」 澪「唯は25万のギターを5万にまけてもらっただろ」 梓「……」 澪「ん? どうした梓、なんか元気ないな」 梓「あ、えっと……なんだか皆さんの親御さんのお仕事がとても立派だなって……」 律「なに言ってるんだよ、梓のとこの親も充分立派じゃん」 澪「それに私たちの親はこっち方面には疎い関係の仕事してるけど」 紬「梓ちゃんの親御さんはダイレクトでバンド活動に関係があるじゃない」 唯「そうだよ、この中で一番恵まれてるよ~」 梓「そ、そうですよね~、あははは」 律「やっぱり、親と一緒にライブしたりすることもあるの?」 梓「まぁ……たま~に?」 梓(ないない! ライブ自体一回もやったことないよ! 唯一あるのは小さい頃に町内会のカラオケ大会でお母さんと一緒に演歌歌ったくらいだし!) 唯「すご~い! やっぱりカッコイイよぉ~」 澪「やっぱり梓には教わることが沢山ありそうだな」 梓「ま、任せて下さいよ!」 梓(うぅ……なんだかすごい部活に入っちゃった……) … … … 梓「はぁ~……せっかく、楽しそうな部活に入って 今まで欺瞞に満ちた学生生活にピリオドを打とうって思ってたのに……」 梓「よもや音楽に深く関わる仕事をしている親を持つ娘が多数いる部活に入っちゃうなんて」 梓「マエストロの娘です! 調律師の娘です! ピアノ職人の娘です! 金持ちの娘です! 売れない演歌歌手の娘です!」 梓「あ、明らかに一人だけ浮いている……」 梓「まぁ、金持ちの娘ってのも大概だけど……」 梓「でもこの中じゃ演歌歌手の娘なんて絶対に馬鹿にされる」 梓「ある意味、親がジャズバンドやってるって言っといて正解だったかもしれない」 梓「そうだよ、中学の頃だってなんだかんだ言ってバレなかった」 梓「高校でだって大丈夫なはず!」 梓「それに、別にギターの腕は嘘じゃないんだし」 梓「うん! 私なら出来る!」 梓「私は私の道をいく!」 梓「せっかくの部活だもん、楽しまなきゃね」 梓「ただいま~」ガチャ 梓母「んんんんあずさちゃぁぁあぁぁぁぁあん おかえりぃぃぃいぃぃぃぃいいぃぃぃぃぃ」 梓「もう! 家ではこぶしまわすのやめてって言ってるでしょ!」 梓母「ごめんね、梓ちゃん。お母さんどうしても昔を忘れられなくて」 梓「恥ずかしい思いをするのは私なんだから……」 梓母「恥を忍んで 貴方を想うぅぅぅうぅぅぅうぅぅうううぅぅぅ」 梓「即興で歌わないで!」 梓母「ついつい」 梓「ついついじゃないってば」 梓母「ズン、ズンズンズンドコ」 梓「あ・ず・さ!」 梓「って何やらせるのよ!」 梓母「やっぱり血は争えないのよ」 『桜ぁぁぁが丘ぁぁああぁぁあぁ 恋慕情ぅぅぅうぅぅぅうぅぅうううぅぅぅ♪』 梓「こ、この曲はっ!?」 梓父「お前っ!」ガチャ 梓母「あんたぁぁぁぁあぁあぁぁんんぁぁあああぁぁぁぁぁぁ」 梓「ちょ! お父さん!? 仕事は!?」 梓父「ああ、荷物の配達先の経路が丁度この近くを通る道だから、ついでに家に寄ったんだ」 梓母「あんたぁぁぁ3日ぶりぃぃぃぃぃいいぃぃぃ!!」 梓父「相変わらず、いいこぶしきかせてるな!」 梓「どうでもいいけど、トラックのカーステの音量どうにかしてよ! ご近所迷惑でしょ!」 梓父「ああん!? 母さんの歌のどこが迷惑だって言うんだ!?」 梓「誰の歌だってこれだけの音量で鳴らせば迷惑になるって!」 梓父「母さんの歌は別格だろ!」 梓「ああもう!!」 梓父「十数年前、カーラジオから流れてきたこの歌に俺は文字通り心を奪われた」 梓父「キャンペーンでCDを手売りで売り歩いてた母さんに出会い」 梓父「そして梓、お前が産まれた」 梓「途中端折りすぎでしょ!」 梓父「なんだ? 詳しく聞きたいのか? この思春期め!」 梓「うぜぇ!」 梓「ってか早くこの歌なんとかしてよ!」 梓父「なんだよ、演歌が嫌いな日本人なんていないだろ?」 梓「少なくとも私はそんな親のせいで嫌いになった!」 梓父「ったくよぉ、ギターなんて始めてやがってよ、この西洋かぶれがっ!」 梓「むしろそっちの日本エキスが濃いだけだって」 梓母「あんたぁぁ 時間はぁぁぁ 大丈夫ぅぅぅぅうぅぅううぅぅ?」 梓父「おっと! いけねぇ! じゃあな!」 梓母「気をつけてぇぇぇ 生きて 生きて 巡りあうぅぅぅぅううぅぅぅ」 梓「もうやだ……」 … … … 梓(私が軽音部に入って数週間) 梓(相変わらず練習時間よりもお茶の時間の方が多いヌルい部活動) 梓(し、幸せだなぁ) 梓(狙い通り梓友と一緒に過ごす時間も段々減ってきてるし) 梓(部活でもそれ程親がジャズバンドやってるっていう話題にならない) 梓(ただ……) 唯「あずにゃん! これ美味しいよ~♪」 梓(変なあだ名をつけられてしまった) 梓「ま、それも些細なことだし」 紬「もしかして、このお菓子あんまり梓ちゃんの好みじゃなかった?」 梓「あ、いえ、すごく美味しいですよ」 澪「なぁ、梓」 梓「はい?」 澪「ちょっとお願いがあるんだけど」 梓「私に出来る事ならなんでも」 紬「みんなとね、相談したんだけど」 律「私たちってさ、バンド組んでる割にはライブ経験が学校の行事でしかないんだよ」 唯「せいぜい学園祭と新歓ライブくらいなもんなんだよね」 澪「だからさ、梓の親がどんな感じでライブやってるのか参考にしたいんだ」 梓「!?」 律「もっと言うなら、生でライブしてるところ見てみたいんだよ」 梓(つ、ついに恐れていたことが……) 梓(中学まではバンドといえどジャズになんて興味のないガキばっかりだったから 親のライブを見に行きたいなんて言い出す子はいなかったんだけど) 梓(ってかそれを見越してのジャズバンド設定だったし) 梓(でも、やっぱりバンド組んでる人間からすれば、例えジャズでも見てみたいってのが普通だよね) 梓(しかも知り合いの親がやってるってなればなおさら) 梓(流石にもう無理だ……) 梓(正直に白状しよう) 梓(仮にここで先輩たちに愛想を尽かされて高校生活でのバンド生命が絶たれたとしても、それは私の責任) 梓(グッバイ私の部活ライフ。これにて試合終了です) 紬「出来れば、梓ちゃんもステージに上がってるところも見てみたいかなって」 唯「あずにゃんもたま~に一緒にライブしてるんだよね」 梓「あのですね!」 澪「やっぱり迷惑か?」 梓「その……なんというか……」 律「ちゃんとさ、お金とかも払うから」 唯「そうそう、なにもタダで連れていけってわけじゃないんだよ」 梓「いや……だから……」 澪「もしかして、梓の親のバンドは人気過ぎてもうチケットが取れないとか?」 梓「そ、そうなんですよ! もう毎回発売即SOLD OUTなんです!」 律「それは凄いな」 梓(バンド生命延長決定!!) 梓(って馬鹿!!) 律「でもさ、そんなずっとってことはないだろ?」 梓「いえ、いつも小さいハコでやってるもんで常に瞬殺なんです」 唯「すごい人気なんだね」 澪「だったら、もうちょっと大きめのところでやればいいんじゃ……」 梓「ウチの親はオーディエンスとの繋がりを大切にしたいという本物志向なので」 律「はぁ~、さっすが本物は違うんだな」 梓(我ながら苦しい……だけど、諦めたらそこで試合終了だ) 梓(安西先生、バンドが……したいです!) 梓(だから、梓はいけるところまでいってやります!) 紬「だったら、私の父に頼んで主催者側になっちゃったらいいわ!」 梓(クソッタレ! 金持ちがっ!) 唯「どういうこと?」 紬「チケットが取れないならあっちから来てもらえばいいのよ」 澪「なんか革命起きちゃいそうな言い草だな」 紬「幸い、ウチの経営しているライブハウスにも小規模なものが幾つかあるし」 律「なるほど、それだったら私たちの分のチケットを最初っから取っといてもらえばいいもんな」 紬「もちろん梓ちゃんの親御さんにはギャラも弾むわよ」 梓「で、でも……スケジュールが」 澪「どのくらい先まで詰まってるんだ?」 梓「え、えっと……ご、5年?」 澪「そんなに先まで……」 梓(ってか5年先までお父さんに配送の仕事があるかどうかの方が怪しいよ……) 唯「そうだ! いいこと思いついた!」 律「なんだなんだ?」 唯「本番は無理でもさ、リハーサルとか見せてもらえないのかな?」 梓「!?」 律「おお! むしろそっちの方が興味津々だよ!」 唯「こっちには娘っていう関係者がいるんだし」 澪「ちょっと権利濫用って気もしないでもないけど」 律「梓お願いっ! この近くでやるライブのときだけでいいんだ!」 紬「私からもお願い! きっとこのバンドの糧にしてみせるから」 澪「私からもお願いするよ、本物に触れてみたいんだ」 唯「あずにゃ~ん、お願~い」 梓「か、海外に……」 澪「ん?」 梓「今、親は海外公演へ行ってるので」 唯「そ、そっか……」 律「さすがに海外までリハ見に行くわけには行かないよな……」 梓(ついに海外進出を果たしてしまった……) 紬「いつくらいに帰ってくるの?」 梓「北米の後にヨーロッパ各国を転々とするので半年は……」 澪「結構長いな……」 梓(ヨーロッパを転々とするってのはある意味本当なんだよね) 梓(ただそれがハウステンボスだったりポルトヨーロッパだったり 志摩スペイン村への荷物の配送なんだけど……。しかも明日には帰ってくるし……) 唯「あずにゃん……」ウルウル 梓「えっ? な、なんで唯先輩そんな涙目で……!?」 唯「あずにゃん! 寂しいね、寂しいね!」 梓「唯先輩!?」 律「そ、そっか……唯も親がよく海外へ行って留守にするもんな」 澪「あ~、そういえばそうだったな」 唯「だからあずにゃんの寂しさがよくわかるんだよ~!」 梓(うぅ……罪悪感……) 唯「私は妹がいるからいいけど、あずにゃんはずっと独りだよね」 梓「はぁ……まぁ……」 梓(実際毎日うるさいくらいだけど) 唯「だったらさ、この週末はみんなであずにゃんのお家に泊まろうよ!」 梓「えっ! あの、ちょっと!?」 律「それいいな!」 澪「うん、親がバンドやってるんだから、家にもなにか参考になるものがあるかもしれないしな」 紬「庶民のお家でお泊りするの夢だったの~」 梓「いや……でも……」 唯「ダメ?」 梓(あんまり断ってばかりいると逆に怪しまれるかもしれない……) 梓「わ、わかりました」 唯「やった~!」 梓(でも、どうしよう……お母さん今は普通の専業主婦だから毎日家にいるし) 梓(それだけでも、両親がバンドやってるって嘘がバレてしまう) 梓(嘘をつくとまた新たな嘘をつかなきゃいけなくなるとはよく言ったもんだ) 梓「……」 梓(だけど、今更引き返せない) 梓(ええいっ! ままよっ!) 3
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【公園】 梓「ここなら広いし練習できそう」 梓「まずは補給だね。おしっこしなくちゃ」スルスル 梓「えっと、ここにあてがって……」 梓「んっ……あ……でちゃう……」 チョボボボボボ ジョロロロ 梓「ん……」 梓「あ、ちょっと溢れちゃった、あわわどうしよ。手にかかっちゃう」 梓「そいや唯先輩がいってたな。出しすぎるとおもったら予備弾倉にスト ックすればいいって」 梓「ん……ちょろちょろっとね。あは、いい感じだ」 「ママーあの人公園でおしっこしてるー」 「しっ、見ちゃいけません///」 梓「……」 梓「いいや、気にしない気にしない。子供のおもちゃとは違うんだから」 梓「んーなんか的になるものないかなー」キョロキョロ 梓「よし、あの木にしようかな」 梓「……しっかり目標を見据えて……両腕を安定」 梓「い、いくぞー……」 梓「発射ぁ!」カチッ ピョロロロ…… 梓「あ、あれれ……どうして」 梓「なんで勢いよくでないんだろう」 梓「どこか壊れた? んー、銃口になんかつまってるとか?」ジー ピュルッ ピュー 梓「うにゃあああっ、顔にー」アタフタ 梓「ひいいいっ臭いよー」 純「あはは、あんた何してんの」 梓「!」フキフキ 純「梓ももってるんだ?」 梓「じゅ、純!!! みてたの!?」 純「へー、スタンダードモデルねー……ぷぷ。素人臭」 梓「な、なによぅ」 純「いやー、初々しいなーとおもってさ。てか銃口のぞくとか……ぷぷぷ ー」 梓「純もやってるんだよね? おしっこシューター」 純「当然じゃん。ていうかいまから始めるとか梓遅れすぎ」 梓「……むう」 純「あ! ってことは私のこともしらないんだ?」 梓「え?」 純「ふふ……この鈴木純様のことをしらないなんて」 梓「えっ、えっっ」 純「シューターハンターの純様と出会った不幸を呪いな」 梓「は?」 少女「しらないの? 純お姉ちゃんはこの辺一帯を仕切る才能あるおしっ こガンマンなんだよ」 少女2「お姉ちゃんとの勝負にまけたら容赦なくシューターをまき上げら れちゃうの!」 少女3「シューターハンター、初心者キラー純様の異名は伊達じゃないよ !」 梓「誰!?」 純「私の子分たちってとこかな」 梓「ってことは純ってすごいの?」 純「うん、私に勝てるやつなんてこの辺りにはいないよ」 梓「……」 純「さてと梓」 梓「!」 純「買ったばかりで浮かれてるところ悪いけど、あんたのシューター。も らっちゃうから」 梓「!!」 純「あんたにここでおしっこガンマンファイトを申し込む!」 梓「おしっこガンマンファイト……?」 純「ルールは多種多様。今回は私のきめたルールで戦ってもらおうかな」 梓「は?」 純「だってここ私の支配下の公園だし」 少女「さすが純お姉ちゃん姑息!」 少女2「初心者相手にも容赦なし!」 梓「ほんとに負けたら巻き上げられちゃうの?」 純「それがここでのルールだから」 梓「友達からも?」 純「この世界に情けなんてないんだよ」 梓「……わかった」 純「腹括ったようだね。じゃあルールを決めようか」 梓「うん」 純「どうしよっかなー……あ、そうだ!」 純「向こう50M先にある木みえる? あれに付いてる実をどちらがより多 く撃ち落とすか」 梓「え……ちっちゃくて見えないよ」 純「ふふふ……なら当たるまで撃ちまくるしかないね」 梓「……」 純「さて、おしっこを補給するよ」ヌギヌギ ジョボボボボボボボボボwww 梓「うん……」ヌギヌギ チョロロロロ… 純「ふふ……」 梓(どうしよう……あんまりでなかった) 純「あんたそんだけでいいの? それじゃせいぜい4、5発しか撃てない けど?」 梓「しかたないじゃん……でないもんはでないんだから」 純「教えてあげる。いつどこでもおしっこができるように膀胱管理をする のもガンマンの仕事だよ」 梓「えっらそうに」 純「さて、木の下で子分に落とした木の実をカウントさせるからあんたは 私の横にならびな」 梓「……」 純(圧倒的実力の差に畏れ慄きな) 純「さぁ! あの時計の針が三時をさしたら同時に開始」 梓「……わかった」イジイジ 純「……セーフティは忘れずちゃぁんと外さなきゃだめだよ梓君……くく く」 梓「うるさいなー」 純「……くるか」 梓「……」 目をつぶって少しだけ集中。 相変わらず心地の良いシューターの重さ。 今回は試射室での30Mとは比べものにならないほどの距離だ。正直点に しか見えない。 だけど、あたるわけなんてないと思いつつ、すこし気分は高揚している 。不思議だなぁ。 あぁ、私、たったこれだけですっかりシューターの虜になっちゃったん だ。 待ち遠しい。このかたい引き金を早く弾きたい。あの反動をもう一度こ の手に……。 そっと目を開く。視界の右端に映る大時計の針が午後三時を指し示した 。 純「おっしゃー!! いけええ!!」 ピュッピュッという音と共に、純のシューターから黄色い水弾がいくつか飛 び出していく。 それは風をかき分け、目標の木へと迷うことなくまっすぐに進んでいく 。 しかし、どれも目標に着弾はせずに、すんでの所でそれていったようだ 。 純「くっそー、やっぱ遠いかー」 梓「……」 純「なにあんた。撃たないの? 舐めてる?」 梓「待って」 純「セイフティーはずすの手こずってるとか? ぷぷ」 梓「違うってば」 純「ならお先に私がたたき落としちゃうから!!」 純はどんどん弾を撃ち放つ。しかしどれも当たっていないのだろう。 子分の少女たちが頭の上で大きな×をつくっている。 純「キー! くやしー」 梓「……」 純「はやくうちなよ。あんたどうしてじっと観てるだけなの」 梓「……集中、してるから」 純「は?」 梓「風……もうちょっと、もうちょっとおさまれば」 純「えっ……」 まだ西から吹く風がやかましい。これでは弾は大きく左にそれ、木まで 到達するのは難しいだろう。 直感的だが、私にはそれがわかっていた。 シューターを構えていると、妙に冷静になるのはなぜだろうか。 全能感? 出会ったことのない得体のしれない感覚が、いまはまだ引き 金をひくべきではないと教えてくれる。 隣では純がやけになってカチカチカチカチと無駄撃ちを繰り返す。 馬鹿だなぁ……。 純「バンバン! バンバン!」 純「あたれあたれー!」 純「バンバンバンバン!」 カチッ カチッ 純「あ、あれ……嘘、弾切れ!?」 梓「……純」 純「チッ……でもね梓、あんたが当てない限りは私の負けではないんだよ! わっはっは!」 梓「……そうだね」 純「ちょっと、人と話すときは顔をみろって習わなかった?」 梓「純……この勝負、私の勝ちかもしれない」 純「は? まだ一発も撃ってないくせになにいってんの。気でも違った? 」 梓「だって……風が……やんだから」 瞬間、チャンスを見逃さずトリガーを引く。 手に伝わる重たい反動。すこしだけ顔にしぶきがかかり不快だった。 解き放たれた直径5センチにも満たないおしっこの弾丸は、静寂に包ま れた公園を切り裂いてまっすぐ飛んでいく……。 純「なっ……!!」 梓「……いけ……」 梓「いけええ!!」 木に着弾。葉が舞い散り、おおきく揺れる。 その直後、遠くで少女たちが腕で大きな◯を描いた。 純「……」 梓「……あたった」 純「……ちょ、ちょっとまって梓!!」 梓「?」 純「いまさ、弾が異常なほど収束してなかった!?」 梓「?」 純「だってあんたのシリンダーの中! 空っぽじゃん! 4、5発分はあ ったようにみえたんだけど!!」 梓「……あぁ、そういえばそうだね。なんでだろ」 純「なんでだろって……ふ、ふつーのモデルだよねそれ!?」 梓「うん。1200円くらいで買ったよ」 純「……そんなに威力がでるなんて……ありえない」 梓「で、勝ったわけだけど。約束通り一発あてたよ?」 純「ま、まちなって! あんたずるしたでしょ!」 梓「してないよ」 純「おかしいおかしいおかしい! 初心者が50Mも先の的あてれるわけな いじゃん!」 梓「そんな勝負ふっかけるなんて純のほうがずるくない?」 純「……」 梓「……」 純「……敗者は勝者にシューターを渡す……これが私のルール」 梓「いらないよそんな臭いの」 純「ちゃんと洗ってるし!」 梓「いらないってば……それよりさ」 梓「なんかいい特訓方法おしえてよ! 私今度のおしっこガンマン大会に でるんだぁ!」 純「嘘……でるの?」 梓「うん」 純「……わかった。いまのあんたじゃおそらく勝ち進められない」 梓「だろうね」 純「私が基本から叩き込んであげる。この純様が」 梓「うん、なんでもいいから知織がほしいな」 純「でもね、並大抵のことじゃ大会参加なんて無理だよ」 梓「えっ?」 純「……私は今年が初参加だけど、アレはどうも魔窟らしい……」 梓「そうなんだ。なんかお気軽射撃フェスティバルっぽいイメージだった んだけど」 純「とりあえずまずは体力づくりから! はい、公園10周!」 梓「えー、もっと撃ちたいんだけど」 純「おしっこないじゃん」 梓「……そうだった」 純「一日に撃てる量なんてそうそう限られてるんだから無駄にしない様に ね」 その晩 梓「そういえばおしっこシューターの説明書よんでなかったな」 梓「なになに」 梓「……なるほど、おしっこの濃度や質、鮮度で威力が変わるんだ」 梓「だからがぶがぶ飲んでだした薄いおしっこじゃあんまり意味ないって ことかぁ」 梓「じゃあこのストックしてるおしっこも数日したらゴミ弾になるってこ とね」 梓「シューターにはさまざまなタイプがあります」 梓「自分にあったシューターを使い、たのしいおしっこガンマンライフを お過ごしください」 梓「へぇ」 梓「そういや他の先輩たちもやってるんだよね」 梓「みんなうまいのかな」 梓「……」 梓(試射室の唯先輩かっこよかったなぁ……) 梓「っと、誘ってくれた唯先輩に恥かかさないためにもうまくならなきゃ !」 梓「家でできることは弾道イメージトレーニングと膀胱管理、筋トレ、メ ンテナンスくらいかぁ」 梓「……集中集中」 梓「…………」 梓「……」 梓「……だめだ、シューターにちゃんとおしっこいれないとなんかやる気 でない」 梓「でるかな……んっ……」 チョロッ…… 梓「でたでた!」 梓「ってこんだけかー……」 梓「いいや……バーン!!」 ピュッ バコン! 梓「うわわわわわ、パソコンがふっとんだ!!!」 『室内での仕様はお控えください』 おしっこガンマンあずにゃん 第一話:了 3
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唯「ちがうよーおしっこガンマン大会だよー」 梓「え? だから我慢でしょ? 私トイレ近いのでそういうのは……」 唯「もうー、わからないかなー」 唯「つまりはね、こういうことだよ!」 チャキ 梓「み、水鉄砲……はっ、まさか!?」 唯「ばーん!」 ピョロロロロロ ジョボジョボ 梓「……つめたっ!」 唯「はい! あずにゃんは死にました!」 梓「……なに……これ」 唯「私はおしっこガンマンだよ!」 梓「ふ、ふああああああああ!!!」 ガチャ 律「お、やってるなー」 澪「梓もやろうよ! おしっこシューター」 梓「え、おしっこシューター?」 紬「おしっこシューターもってないの?」 唯「えー、しらないの~?」 梓「はっ、まさか! それって!」 唯「おしっこシューターはおしっこシューターだよねーりっちゃん」 律「そりゃ知ってるよなー」 梓「はいです! 全国で女子高生を中心とした一大ブームを巻き起こして るというあのおしっこシューターですか!」 澪「あぁ、タカラ◯ミーから好評発売中だ」 梓「へぇ……実は初めて見るんですよね。わぁ、おもしろそうです」 紬「楽しいわよ~?」 唯「あずにゃんもやろうよ!」 梓「で、どうやって使うんですかコレ?」 唯「ほら、上についた給水口あるでしょ? ここから自分のおしっこを補 充するんだよ」ヌギヌギ 唯「みてて……んっ、こうやってアソコをあてがって…………ふあ……」 チョロロロロロ ジョボボボボ…… 律「お、今日の唯のおしっこは綺麗だなー」 澪「まさに黄金銃だな。強そうだ」 唯「へっへー、これで負けなしだよー」シャキン 紬「唯ちゃんかっこいい!」 唯「ばーん!」 紬「きゃー、つめたーい♪」 梓「なるほど……構造はふつうの水鉄砲と同じなんですね、ふむふむ」 唯「興味でた?」 梓「はい。やってみたいです」 紬「でも梓ちゃんの分のシューターがないわ……」 澪「うーん、どうしようか」 唯「あ、じゃあ私帰りにあずにゃんと買いにいくよ。私のシューターのメ ンテも兼ねてね」 律「そうだな。梓お金あるか?」 梓「あ、はい。どれくらいあれば買えますか?」 律「一番安いので1000円ちょっとだから大丈夫大丈夫」 唯「シューター選びは先輩にまかせなさい! ふんす」 梓「それじゃあお願いします!」 澪「でも売ってるかなぁ。いまとくに人気絶頂だし」 律「確かになー」 紬「私の家からも余ってるのもってきてもいいけど」 唯「大丈夫大丈夫。私の知り合いのお店には置いてあるから」 澪「そうか、よかった」 梓「楽しみです♪」 澪「……」ニヤッ 律「……クク」 紬「……フフ」 唯「えへへ~♪」 梓「~♪」 【ホビーショップ一文字】 とみ「あら唯ちゃん、またきたの?」 唯「あ、おばあちゃーん!」 梓「どもです。ご無沙汰してます」 とみ「おやおや、あずにゃんさんも一緒なのかい」 唯「今日はあずにゃんのシューターを買いに来たんだー。あと私のシュー 太のメンテも!」 とみ「それじゃあ預かるからねぇ」 唯「うん」 とみ「シューター選びはあずにゃんさんがするのかい?」 梓「あー……でもよくわからないので」 唯「私があずにゃんに合ったシューターを選んであげるよ」 とみ「なら心配ないねぇ」 唯「あずにゃん! おしっこシューターのコーナーはこっちだよ! きて きて!」 梓「へー、いろんなのが置いてあるんですねー」キョロキョロ 唯「これがスタンダードモデルだよ。安くて使いやすいから人気!」 梓「唯先輩がもってるのとおんなじですね」 唯「私のはこっから少しだけカスタムしてるけどね」 唯「でもね。本気でやるならこういったすでに出来上がったフルスペック シューターを買うよりも」 唯「自分でパーツごとに選んで組み立てたほうがいいんだよ」 梓「え?」 唯「ほら、パーツがならんでるでしょ?」 唯「フレーム、グリップ、マガジン、サプレッサー、リアサイト、フロン トサイト、セイフティー、トリガー、バレル」 唯「それにチャージシリンダー等の周辺パーツも充実してるからね」 梓「……?」 唯「まぁ、おいおいわかるようになるよ」 梓「……なんか、難しそうです」 唯「澪ちゃんなんてオタクだからパーツごとにオーダーメイドしちゃうん だって!」 梓「お金かかりそうですね」 唯「あずにゃんは手もちっこいし力もないから、やっぱりスタンダードモ デルかなぁ」 梓「とりあえず普通のでいいです」 唯「決まりだね。おばあちゃーん! これ試射していいー!!?」 とみ「はいはい、そんなおっきな声ださなくても聞こえてるよ唯ちゃん」 唯「じゃああずにゃん行こ!」 梓「試し撃ちできるんですか?」 唯「うん! 地下にあるんだよ」 梓「へぇ」 【試射室】 梓「なんか本格的なんですね……こういう部屋テレビでみたことあります 」 唯「向こう30M先の的を狙うんだよ」 梓「遠くないですか? まずこんな水鉄砲じゃそこまで……」 唯「のんのん」 唯「まずはおしっこを補給するよ」 再び唯先輩がパンツをおろして試射用シューターの給水口に秘部をあて がう。 その後チョロチョロという水音と共に中のシリンダーが満たされていく 様子が見える。 唯「さっきだしたからあんまりでないや。まぁいっか♪」 唯「じゃあみててね」 唯「チャキン!」 唯「セイフティー解除!」 セイフティーを外すカチャリという小さな音。そして、とたん唯先輩の 表情が一変した。 いつものゆるさなどかけらも残っていない。鋭い目付き、すこし歪んだ 口元。 ライブ演奏のときとはまたなにか違う、ただならぬ気配を彼女は纏う。 その時私は直感的に理解した。彼女は、平沢唯はただの女子高生ではな いと。 唯「ばーん!」 掛け声とともに唯先輩がトリガーをひいた。 そしてその後の光景に、私は絶句するのだった。 銃口から放たれた黄金の水の塊は、私が部室で浴びたのとは比べ物にな らないほどの勢いで宙を駆ける。 それはほとんど一瞬の出来事だった。 なにが起きたのかわからない。 遠くからバスリという紙の破ける音がした。 唯「……あずにゃん、びっくりするのはわかるけどこっちばっか見てない で、ちゃんと的をみてよ」 梓「へっ? あ、はい……」 視線をターゲットへと移す。 梓「!」 唯「ね? おもしろいでしょ?」 そこにあったのは大きな穴があき無残な姿へと変貌したターゲット。 おしっこの臭いが鼻孔をくすぐる。 唯「おしっこシューターは、パワーをセーブしなかったら鉄砲みたいな威 力になるんだよ~」 梓「す、すごいです!」 唯「でしょ?」 梓「かっこよかったです!」 唯「でしょ?」 梓「私にもできますか?」 唯「うん。はい、次はあずにゃんの番」 梓「わぁ……」 唯先輩からシューターを渡される。 中におしっこが入っているため、ズシリとした重さが手に伝わってくる 。 いよいよだ。 梓「これ……ほんとに撃っちゃっていいんですか?」 唯「うん、けど的にむかってだよ!」 梓「はいです」 唯「じゃあ両手でしっかり握って~、シューターを目の高さまでもってき て~」 梓「……」ブルブル 唯「怖くないよ。トリガーを引く瞬間はすっごくきもちいんだから」 梓「でも……」 唯「じゃあ私も一緒に握ってあげる。それなら安心でしょ?」 梓「……はい、お願いします」 唯先輩の手をが私の手の上に覆いかぶさってくる。 とてもやわらかくて温かい…… 唯「えへー、あずにゃんとの初めての共同作業~」 梓「ち、近いです」 唯「ほら。しっかり前みて! いくよ!」 梓「はい!」 深呼吸をした後に、トリガーにかけた人差し指におもいっきり力を込め た。激しい反動が体を揺さぶる。 それが、私の人生を狂わせた、はじめてのショットだった…… 30分後 【店内】 梓「すごいですすごいです!」 唯「もー、あずにゃんはしゃぎすぎー!」 とみ「おやおや、終わったのかい?」 唯「うん! あずにゃんったらすごいよ! はじめてで的のド真ん中ぶち 抜いたんだから!」 とみ「へぇ、それは才能豊かだねぇ……」 梓「いやー、それほどでもないです、えへへへ」 唯「ううん! 謙遜しなくてもいいよ! ほんとにすごいことなんだから 」 梓「にしても楽しいもんですね! ちょっとおしっこ臭くなっちゃうのが 難点ですけど」 唯「それがいいんじゃん。ショットのあとにあたりにただようアンモニア 臭は生を実感させてくれるよ」 梓「そんなもんですかね」 とみ「どれにするかきめたかい?」 梓「あ、えっと。いま試射室でつかったのとおなじモデルを……」 とみ「はいありがとね。お代は1260円」 梓「んーっと。あったかな……ありました! お釣りください」チャリチャリ とみ「お買い上げありがとうねぇ」 唯「おばあちゃんはメンテナンスもしてくれるから、なにかあったらここ に持ってくるといいよ!」 梓「はい!」 唯「あ、それでおばあちゃん私のシュー太は?」 とみ「あーはいはぃ、できてるよ。いつもの調整で良かったんでしょ唯ち ゃんは」 唯「うんありがと! わーいシュー太ー綺麗になってよかったねー」スリスリ とみ「バレルの痛みがすごかったんだけど、唯ちゃん無茶なつかいかたし てないかい?」 唯「そうでもないよ?」 とみ「そうかい、ならいいんだけど……それと……」 唯「?」 とみ「唯ちゃん、よければあずにゃんさんも」 梓「?」 とみ「ほら、このポスターみてちょうだい」 唯「……あぁ、おしっこガンマン大会のエントリー! 今日あずにゃんに 言おうとしてたやつだ!」 梓「大会の日時は来月頭ですか」 唯「場所はウチの高校だよ! ポスターはってあったよ!」 梓「ほんとだ……全然興味なかったんで知りませんでした」 唯「参加しようよ!」 梓「でも……どんな競技があるんでしょう。的当て?」 唯「さぁ」 とみ「参加するかい? エントリー数にも限りがあるみたいなのよ」 梓「うーん……でも私まだはじめたばっかですし……」 唯「記念参加でもいいじゃん!」 梓「そうですね」 唯「はーい、ってことで参加しまーす!」 梓「がんばって練習します」 唯「私と特訓する?」 梓「とりあえず最初は一人で試行錯誤しながらやってみます」 唯「そか」 2
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…… 梓「どこにいるんだろう」タッタタタ 純「梓~~~、まってよ~~」 梓「ここでも銃撃戦のあとが……あ、大丈夫ですか!」 参加者「 」 梓「くさっ」 純「顔にあびて失神してるみたいだね」 梓「こんな臭いおしっこはじめて……」 純「ね、ねぇ梓……なんか向こうから足音しない……?」 梓「えっ」 ガショーン ガショーン 梓「こ、こっち近づいてくる!!!」 ガショーン ガショーン 純「あ、あの金ピカの装甲は!!!」 梓「……!!」 臭気の中からのろのろと現れた影。 それはよく見慣れた金髪と、特徴的な眉毛の持ち主。 まごう事無き、『ゴールデンシューター』のムギ先輩だった。 紬「あらあら、うふふ、梓ちゃんこんなところにいたのね」 梓「む、ムギ先輩!! ご無事でしたか!」 紬「うん!」 純「……」 梓「いやー、よかったよかった。ホっとしました」 梓「これから一緒に行動しましょう! 三人いれば」 純「まって梓!」 梓「!」 紬「…………」 純「……先輩ですよね?」 紬「……なにが?」 梓「じゅ、純どうしたの? はやく向こう行ってムギ先輩と合流……」 純「ここにいる人たちをみんなやったのって……」 梓「!」 紬「……」 梓「え、む、ムギ先輩がここに倒れてる人たちをやったんですか!?」 紬「……だとしたら?」 純「……同じように、私たちもやるんですよね?」 紬「……」 梓「な、ま、待ってよムギ先輩がそんなことするわけないじゃん!」 純「じゃあ先輩の体中に付着した返り尿は何さ」 梓「……」 純「ご丁寧にシューターを撃ちぬいて破壊してるんだよ!」 紬「それが手っ取り早いの。むしろそれしか無いわ」 紬「だって、このガトリングで」 ガシャリという音と共に、巨大なアームガトリングの銃口がこちらを向く。 頭が真っ白になった。一体全体どういうわけなのか、理解が追いつかな い。 そしてそのままムギ先輩はとても悲しそうな目をして呟いた。 紬「殺しちゃうのは可哀想だから……」 その言葉が届く前に私は純の裾をひきよせ、身を翻していた。 直後、私たちがいた場所を通り過ぎる雨のようなおしっこの弾丸。 ムギ先輩のガトリングが尿を吹いたのだ。 ……間一髪だった。 動かなかったらそのまま全身おしっこまみれ、いや威力によってはあっ という間に失神していたかもしれない。 純「ちょちょちょちょ! ぎゃあああ」 梓「ムギ先輩!! どうして!!」 体とは裏腹に頭はいまだに冷静さを取り戻せないでいる。 ムギ先輩は極めてのんびりした動作でこちらを見ると、再び巨大な銃口 をつきつけた。 梓「くッ!!」 純をつかんだまま、すぐ側の教室へと飛び込む。 また間一髪のところで回避に成功。バサササという音が背後から聞こえてく る。 床や壁がムギ先輩のアンモニア臭のキツイおしっこで染められたようだ 。 紬「梓ちゃん、どうして逃げるの?」 梓「やめてください! 私たちは敵じゃないんです!」 紬「そうかしら? たった8人しか残れないのよ? なら出会った人から 倒していくのはセオリーかと私は思うんだけど……」 梓「……こ、後輩なんですよ!!」 紬「……先輩だとか、後輩だとか」 ムギ先輩がぽわぽわした顔をしぼってこちらへ近づいてくる。 紬「おしっこガンマンの世界を舐めないほうがいいわ……!!」 梓「なっ」ゾクッ 純「あへあへあへあへww」 梓「純! しっかりして! パ二クってる場合じゃない!!」 抵抗しなくちゃ……いくらムギ先輩のといえど、他人の尿で全身を陵辱 されるのは耐えられない。 私は震える手でホルダーから銃を引きぬく。すでにセーフティは解除し てある。 やるしかない……やるしか!! 紬「梓ちゃん、震えてるわ。無理しないでいいのよ? さぁ、その銃を私 に頂戴?」 梓「誰がッ!! 私は唯先輩とも約束したんです! 必ず勝ち残るって! !」 紬「私に勝てる気でいるのね……残念……」 梓「!」 紬「……シューターを持ってまだ一ヶ月でしょ? 馬鹿にしてるわ」 梓「そ、それは……やってみないと」ガタガタ 手の震えがおさまらない。 人にシューターを向けるのがこんなに怖いことだとはおもわなかった。 そんな私にムギ先輩は言葉でおいうちをかける。 紬「シリンダーは大丈夫? ストックはある? 銃身は? ちゃんと正面 に構えてる?」 梓「う、うわああああっ」 勢いに任せて発砲。 いつも練習で撃ってるのとは違って、とても弱々しく小さな水の塊がム ギ先輩向かって宙を舞う。 紬「……なにそれ」 私の決意の弾丸は、虚しくも金ピカの装甲をまとった手の甲でパシリと 軽くはじかれてしまったのだった。 紬「やれやれね。でも梓ちゃん、これで覚悟ができたでしょ?」 梓「あっ……あっ……」 純「梓……」 梓「撃っちゃった……私、撃っちゃった……」 紬「……撃っていいのは、撃たれる覚悟のある人だけよ!」 三度目のインサイト。何度みても恐ろしい銃口だ。一体どれだけ弾があ るのだろう。 あぁ、もう追い詰められている、これ以上は逃れられない。 純「お、おたすけぇ~!!」 梓「……くっ」 紬「大丈夫。苦しくないわ。ただちょっと臭くて気が遠くなるだけ」 梓「そんなの……耐えられないです!!」 紬「わがままね。でもダメよ。あなたはここにくるには力不足だった。た だそれだけ」 ムギ先輩がニヤリとした表情を浮かべる。 トリガーを引く気だ。 何かいおうとした瞬間、眼前がわずかにフラッシュした。 梓「あっ」 純「ひっ」 言葉は出てこず、情けない声とともに反射的に目をつぶる……。 梓「……」 梓「……あれ?」 二、三秒たった。しかし私に尿弾は降り注いでいない……。 これは… …? 純「梓! 梓!! いつまで目ぇつぶってんの!」 梓「はっ!」 目を見開くと足もと数メートル手前が水びたしになっていた。 尿だ。 梓「外した……? でもなんで!?」 純「前前!」 梓「!」 そこには私が会いたかった人。 ふんわりとした栗色の髪をなびかせ、銃口をしっかりとムギ先輩につき つけた唯先輩の姿があった。 唯「やっほーあずにゃん。ぎりぎりせーーーふ!」 梓「唯先輩!!」 紬「唯ちゃん、どういうつもり。私のバレルに撃ちこんで狙いをずらすな んて」 唯「可愛い後輩をまもっただけだよ!」 紬「……邪魔しないで?」 唯「のんのん。あずにゃんは私と同じ場所からのエントリーだからね。仲 間も同然なのさ!」 紬「そう、唯ちゃん、残念だわぁ」 梓「唯先輩逃げて!!」 唯「ん? 逃げる~~? えへへ。あずにゃんこそ早く逃げなよ!」 唯「ちょっとここは戦場になるよ!」 唯先輩はそう言い放つと容赦なく金色のおしっこの弾丸をムギ先輩にむ かって何度も撃ち込んだ。 ドピュンドピュンという重たい音が教室内に響き渡る。 しかしムギ先輩はそれら全てを体中にまとった装甲でふせぎきり、すぐ さま右腕の兵器ともいえるシューターで反撃する。 唯先輩は軽やかな身のこなしでそれらを回避し、蹴飛ばして倒した机の 後ろに逃げこむ。 あっというまに狭い教室で銃撃戦がはじまった。 純「や、ヤバいヤバい! まきこまれる~~~~!!」 梓「で、でも唯先輩をおいては……」 唯「いいよ。私がムギちゃんをとめるから」 紬「うふふふふふ~」ババババババ 唯「んもう! 乱射しすぎ! どんだけおしっこあるの!」 紬「どうせ一発一発に威力はでないから、古いおしっことガトリングは相 性がいいの~!」 唯「!」 梓「もしかしてあの背負ってる箱にはおしっこがたくさんつまってるんで すか!!?」 唯「……だね。アレ、貯尿タンクみたいなもんだよ」 紬「当たり~。これがガトリングと連結してるの。だからいちいちチャー ジもしなくてすむの~~」ババババババ 梓「ず、ずるいです!!」 唯「さすがだねムギちゃん!」 紬「ありがと~。さぁ、唯ちゃん、そんなとこに隠れてないででていらっ しゃ~い」 純「うあわわわわあ」 梓「純は落ち着いて。私たちも反撃するよ!」 純「でもこんなにおしっこが雨あられってるのにぃ!!」 紬「その隠れてる机もどんどん削れていくわよ~」ニコニコ ババババババ ババババババ 唯「……このままじゃこっちがフリだね。よし、あずにゃん逃げないなら 私に力を貸して!」 梓「えっ」 純「わわわわ私もお手伝いしますうう」 唯「私が一瞬隙をつくりだす。だからその間にムギちゃんの顔を狙って撃 って!」ヒソヒソ 梓「え~~~顔をですか!?」 唯「顔にはさすがに装甲まとってないからね! 正面からならそこしか狙 うところないよ!」 梓「わ、わかりました!」 純「はい!!」 紬「こそこそしてないででていらっしゃい」 紬「みんなまとめてハチの巣にしてあげる~~♪」 ババババババ なおもムギ先輩は連射をやめる気配はない。 唯先輩が鋭い目でムギ先輩を見据えている。 一体どうやってあの人から隙を奪うのだろうか。 私と純は一挙一動を見逃さないように神経をすり減らして事態の展開を 待った。 唯「ききたいんだけどさ。あ、ムギちゃんのほうね」 紬「なぁに?」ババババババババババババ 唯「ちょっとうるさい! きこえないよ」 紬「しかたないじゃな~い♪」ババババババババババババ 唯「なんでムギちゃんはこれに出場したのかなって」 紬「……それはね」ババババババババババババ 唯「それは……?」 紬「教えられないわ~~~うふふふふふ」ババババババ 唯「そっか、じゃあ!」 唯先輩はふっと微笑むと、窓に向かって発砲した。 ガラスがけたたましい音をたてて砕け散る。 紬「そんなので気をひくつもり? あはは唯ちゃんっておろか……ガッ」 窓の遥か向こうからなにかが突然飛来し、ムギ先輩の横っ面を吹き飛ば した。 衝撃でガトリングの照準は私たちから完全に外れ、天井、床とありもし ないほうをおしっこでそめあげる。 紬「むぎゅううっ!!! いったーい!」 梓「その隙は!!」 純「逃さない!!」 おいうちをかけるようにムギ先輩の顔面に向かって同時に発砲。直撃。 紬「きゃあああっしみる~~~」 梓「よし! あたった!」 唯「いまだあずにゃん! 逃げるよ!」 梓「えっ」 唯「こんだけやれば十分! いまはとにかくムギちゃんから遠ざかる!」 純「とどめとかささないんですか!」 唯「それだとこっちももはや無傷ではすまないからね! ムギちゃんみた いなのは相手にしないのが一番!」 紬「え~ん、まってよ~~、うう、くさ~い」 ムギ先輩が必死に顔を拭いている間に私たちは教室をあとにした。 はやく落ち着ける場所にいきたい。 唯先輩にはききたいことがたくさんあるから。 5
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~~~ 梓「うわああああああーーーーーっ!!!!」ガバッ 純「な、何!?どうしたの梓!」ガバッ 梓「ハッ、ハッ、ハァ、ハァ……夢?」 梓「………………私が、あんな夢…」 純「大丈夫?梓、怖い夢見たの?」 梓「……」スウゥゥッ 梓「うわああああああああああ!!!」ガバッボスッゴロゴロゴロ 純「」ビクッ 梓「ああああああああああ」ダダダダダ 梓「ふんっ!ふんっ!」ガン!ガン!ガン!ガン! 純「梓、あずさぁーっ!やだよお!しっかりしてよお!!」ポロポロ 憂「ふわぁ…梓ちゃん、朝から元気だね…」 梓「ていうか何の虫なのっ!?」 梓「……」 憂「はい、お水。落ち着いた?梓ちゃん」 梓「うん。ありがとう」 純「ホントにびっくりしたんだからね…梓が変になっちゃったのかって」 憂「純ちゃん大泣きしてたねー。それで、なんであんな発狂してたの?」 梓「…変な、夢見た」 純「へえ。どんな?」 梓「…虫になって、虫の唯先輩と交尾して最後は子供に食べられる夢」ボソッ 憂「キャー♪」 純「なんかゴメン、梓ゴメン」 梓「二人が昨日変なこと言うからだよー…」ムスッ ――― 憂「お姉ちゃん言ってたよ。あずにゃん分が足りない、って」 梓「逃げようかな…」 「あーずにゃん!」ガシッ 梓「ひぃっ!ゆゆ唯せんぱ…誰このミイラっ!?」 純「不審者だー!」 憂「梓ちゃん今助けるよ!……シッ!」シュッ 唯「酷いなあ、私だyごはあっ」ドサッ 梓「あぎゅっ」 純「見事な延髄切り…梓も巻き添え食らってるけど」 梓「」 憂「ごめんねお姉ちゃん、気づかなくって」 唯「憂がこの格好にしたんでしょー?ドジなんだからあ」 憂「だってお姉ちゃん、帰ってきたとき全身が腫れ上がっててグロかったんだもん」 唯「てへへ、やりすぎました♪」ペロ 純(何やったんだろう…) 梓「」 唯「あ、そうだ。あずにゃん貰ってくね」 憂「断らなくても梓ちゃんはお姉ちゃんのものでしょ?」 唯「そでした!じゃあね、二人とも!」グイッ 梓「」ズルズル 憂「おさわりは厳禁だよー!」 純「…いっつもあんな感じなの?」 憂「うん♪可愛いでしょ?」 純「何が?」 梓「………はっ!?」 唯「あはっ、あずにゃんおはよー♪」 梓「唯先輩…。ここは…」 律「やっと起きたかあ。一週間も眠ってたんだぞ?」 紬「もう目を覚まさないのかと思った…」グスッ 梓「私…そんなに長い間」 澪「おまえら変なところで連携するなよ…梓が信じてるだろうが」 梓「え…それじゃあ何日経ったんですか?今何曜日ですか?」 唯「月曜日だよっ!」 梓「やっぱり一週間経ってるんだ!!どうしよう!」 律澪「落ち着けっ」 紬「では改めて、今日のお菓子はお土産の生八ツ橋よー♪」 梓「定番ですね。超ありがたいです」 唯「虫のアメとかは売ってなかったんだよね。ごめんね?あずにゃん」モグモグ 澪「虫といえば梓、この前の約束なんだけど。修学旅行の間、考えてたんだ」 律「こいつ、修学旅行の間中ずっと悩んでたんだぜー?」 澪「だって、自分で考えるの苦手だし」 紬「結局みんなで考えようって話になってね?」 梓「澪先輩がいいなら構いませんけど…」 澪「話し合いの結果、梓には猫嫌いを治してもらうことになった」 梓「へー…って、ええええっ!?」 律(お約束だなあ) 梓「無理無理不可能できませんっ!猫は大嫌いなのに!」 澪「何でもするって言っただろ?約束は守らなきゃな」 梓「確かにそうですけど…」 唯「別に直さなくてもいいよ、あずにゃん。私もあずにゃんを泣かしてみたいし!」 紬「私、ナマイキな後輩をいじめるのが夢だったのー♪」 梓(冗談に聞こえない…) 澪「私だって虫の苦手を治そうとしてるんだぞ?」 律「へえー、梓ちゃんってば澪ちゃん以下のヘタレなんだー?キャワイー♪」 梓「なっ…!やってやるです!!」 律「よーし、その意気だ!」 唯(簡単に乗せられちゃうあずにゃん可愛い…) 梓「…でも、期待はしないでください」 澪「え?」 梓「私と猫は永遠に分かり合えないだろうと思っていますから」 律「梓…何があったんだ?」 梓「ごめんなさい、今は…言いたくありません。でもいつか必ずお話しします」 唯「あずにゃん…辛いことがあったんだね」 梓「いえ、それにいつまでも過去に縛られていてはダメですよね!」 律「そうだぞ梓!そんな辛い思い出忘れちまえー!」 梓「頑張ります!あ、澪先輩が幼虫を育てるのが先ですからね?」 なかのけ! 梓(大変なことになってしまった) 梓(澪先輩の幼虫ももう終齢まで育ってるし、成虫になるのも時間の問題…) 梓「…腹をくくれ中野梓、お前はトンボだ、不退転だ」 梓(あ、でも実際にくくったらちぎれちゃったんだよね、トンボ) 梓「じゃなくて。…まずは徐々に慣らしていかないと」 ファンシーショップ! ガヤガヤ カワイー 梓「猫、グッズ…」 梓(なんで本物を飼わないんだろう。飼えないにしても、ぬいぐるみとか見た目が全然違うのに) 梓「私にはわからない…律先輩が私から隠れる理由も」 律「」 律「こ、これは、そう弟!弟に買うために来ただけだからっ!!」 梓「落ち着いて下さい、それはそれでアレです」 梓「律先輩は身も心も少年だと思ってたのに…最近イメージ崩壊です」ハァ 律「女だから別にいいだろ!女の子なんだから!わたくし女の子っ!」 律「そういう梓だって。何か買いに来たんだろ?」 梓「勉強の一環です。猫グッズ買ったらさっさと帰ります」 梓「よくわかんないし、この辺のちっこいのでいいや」チャラ 律「おっと!そんなんじゃダメダメですわ梓ちゅわん。ゼーンゼン可愛くない!」 律「せっかくだからこのりっちゃんが梓のために素敵なのをチョイスしてやろう!」 梓(別に何だっていいんだけどなあ…) 律「小物の入門編としてはー…このキーホルダーだな、こっちのも目立つし…」 つぎのひ! 梓(…結局色々買わされてしまった。まあいいや、昨日買った本読もっと)ペラッ 「中野さーん、聞きたいことが…あれ?可愛いキーホルダーつけてるね」 「ほら、あの店のじゃない?中野さん行ったんだ」 梓「ちょっと昨日、ね(何この食いつき…)」 「よく見るとストラップもじゃん!猫好きなんだ、意外ー!」 梓「そういうわけじゃないけど…」 「私いい店知ってるんだけど、今度教えてあげる!」 梓「えっ?ちょっとあの」 憂「梓ちゃんがカゴメカゴメされてるね、純ちゃん」 純「梓を置いてどんどん話が勝手に進んでいってる…恐るべき猫グッズの魔力」 梓「まさか今週も別の店で買うことになるなんて…」 梓「私の意思に関係なく猫グッズが増えていく…財布はそれに反比例…うう」 カシャカシャカシャカシャ ピッ 梓「はい、澪先輩?」 澪『梓ぁ、大変なんだ!幼虫が!エカテリーナが病気かも知れない!』 梓「え!?何があったんですか!詳しく教えて下さい!」 澪『葉っぱだって洗ってたのに…ううっ、どうしたらいいかわからないよお…』 梓「今から向かいますから、落ち着いて下さい!」 6