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EFZ -Revival- におけるダイヤグラム (2018/08/08現在) 使用\相手 長森 七瀬 里村 川名 椎名 上月 月宮 寝雪 沢渡 美妹 川澄 倉田 神尾 霧島 遠野 天沢 D7 EX 起雪 天野 美姉 秋子 ± 順位 長森瑞佳 ― 5.5 5.5 5.5 6 5.5 5 6 6 5.5 5.5 5.5 5.5 6 6 5.5 5.5 5 5.5 5.5 5.5 5.5 +12 1 七瀬留美 4.5 ― 4.5 4.5 4.5 4.5 4.5 4.5 5 4.5 5 4.5 5 6 5 4.5 5 4.5 5 5 5 4.5 -5 18 里村茜 4.5 5.5 ― 5 5.5 5 4.5 6 5.5 5 5 4.5 5.5 5.5 5.5 5.5 5 5 5 4.5 4.5 4 +1 11 川名みさき 4.5 5.5 5 ― 4.5 5 5 5.5 5.5 5.5 4.5 5 5.5 6 5.5 4.5 5.5 5.5 5.5 5 5 5 +3.5 7 椎名繭 4 5.5 4.5 5.5 ― 4.5 4 5.5 5.5 5 5.5 5.5 5.5 6 4 5.5 5 4.5 5.5 5 5 5.5 +1.5 10 上月澪 4.5 5.5 5 5 5.5 ― 4.5 6 5 5 5 5 5.5 5.5 5.5 5 5.5 5 5 6 5 5 +4 5 月宮あゆ 5 5.5 5.5 5 6 5.5 ― 5.5 5.5 5 5 5 5 6 5.5 5.5 5.5 5 5.5 4 4.5 5.5 +5.5 3 水瀬名雪 4 5.5 4 4.5 4.5 4 4.5 ― 4 5 5 4 5 5 5 4 5 3.5 4 4 5 4.5 -11 22 沢渡真琴 4 5 4.5 4.5 4.5 5 4.5 6 ― 4.5 5 5 5 6 5 4.5 5 4.5 5 4.5 4.5 5 -3.5 16 美坂栞 4.5 5.5 5 4.5 5 5 5 5 5.5 ― 5.5 4.5 5.5 5 5.5 5 5 5 5 5 5 5 +1 11 川澄舞 4.5 5 5 5.5 4.5 5 5 5 5 4.5 ― 5 5.5 5.5 5.5 4 5 5 5 5.5 6 5 +1 11 倉田佐祐理 4.5 5.5 5.5 5 4.5 5 5 6 5 5.5 5 ― 5 5.5 5.5 4.5 5 5 5 4.5 5.5 5 +2 8 神尾観鈴 4.5 5 4.5 4.5 4.5 4.5 5 5 5 4.5 4.5 5 ― 5 5 5 5 4.5 5 4.5 5 4.5 -5 18 霧島佳乃 4 4 4.5 4 4 4.5 4 5 4 5 4.5 4.5 5 ― 6 4.5 5 4 4.5 5 5 4.5 -9.5 21 遠野美凪 4 5 4.5 4.5 6 4.5 4.5 5 5 4.5 4.5 4.5 5 4 ― 4 5 4 5 4 4.5 4 -9 20 天沢郁未 4.5 5.5 4.5 5.5 4.5 5 4.5 6 5.5 5 6 5.5 5 5.5 6 ― 5.5 4.5 5 4.5 5.5 5.5 +4 5 ドッペル七瀬 4.5 5 5 4.5 5 4.5 4.5 5 5 5 5 5 5 5 5 4.5 ― 4.5 5 4 5 5 -4 17 Unknown 5 5.5 5 4.5 5.5 5 5 6.5 5.5 5 5 5 5.5 6 6 5.5 5.5 ― 5.5 6 5.5 5 +8 2 水瀬名雪(起) 4.5 5 5 4.5 4.5 5 4.5 6 5 5 5 5 5 5.5 5 5 5 4.5 ― 5 5 5 -1 14 天野美汐 4.5 5 5.5 5 5 4 6 6 5.5 5 4.5 5.5 5.5 5 6 5.5 6 4 5 ― 5.5 5.5 +4.5 4 美坂香里 4.5 5 5.5 5 5 5 5.5 5 5.5 5 4 4.5 5 5 5.5 4.5 5 4.5 5 4.5 ― 4.5 -2 15 水瀬秋子 4.5 5.5 6 5 4.5 5 4.5 5.5 5 5 5 5 5.5 5.5 6 4.5 5 5 5 4.5 5.5 ― +2 8 使用/相手 長森 七瀬 里村 川名 椎名 上月 月宮 寝雪 沢渡 美妹 川澄 倉田 神尾 霧島 遠野 天沢 D7 EX 起雪 天野 美姉 秋子 ± 順位 EFZ -Revival- キャラランク (2018/08/08現在) ランク キャラクター S 長森瑞佳 S- Unknown A+ 月宮あゆ 天野美汐 上月澪 天沢郁未 A 川名みさき 倉田佐祐理 水瀬秋子 椎名繭 A- 里村茜 美坂栞 川澄舞 B+ 水瀬名雪(起) 美坂香里 沢渡真琴 ドッペル七瀬 B 七瀬留美 神尾観鈴 B- 遠野美凪 霧島佳乃 水瀬名雪 定義 基準 詳細 勝敗数の目安(100試合想定) 備考 5 5 互角 どちらかに傾く決定的要素がない 50:50 5.5 4.5 微有利 実力差があれば覆る。油断はできない 60:40 ダブルスコアが頻発 6 4 有利 有効な手立てがあり、勝ち筋が見える 70:30 トリプルスコアが頻発 6.5 3.5 大幅有利 単純作業を繰り返すだけで強い 85:15 対戦拒否 7 3 ハメ マブカプから来ました 98:2 神奈専用 勝敗数の割合は こちらのHPの計算結果 を参考にノリで設定しています。 差分まとめ (2018/08/08現在) 【S】 +12.0 長森 【S-】 +8.0 Unknown 【A+】 +5.5 あゆ +4.5 美汐 +4.0 澪 郁未 【A】 +3.5 みさき +2.0 佐祐理 秋子 +1.5 繭 【A-】 +1.0 茜 栞 舞 【B+】 -1.0 起名雪 -2.0 香里 -3.5 真琴 -4.0 ドッペル七瀬 【B】 -5.0 七瀬 観鈴 【B-】 -9.0 美凪 -9.5 佳乃 -11.0 名雪 .
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今後の予定 次回、2010年4月11日予定 JOYにて耐久カラオケ開催予定!! DAMのPV映像配信確認 カラオケDAMより確認できますので事前にチェックも可能です。 ①カラオケDAM ②本人出演映像 ▼http //www.clubdam.com/app/dam/page.do?type=dam source=honnin subType=bbcontents ③最新本人出演映像ページ下部 【本人出演映像一覧のPDF/アーティスト別】 これまでの歴史 第2.75回 自由歌唱大会 2010年3月7日 11時30分~17時30分(6時間) 第2.5回 自由歌唱大会 2010年2月?日 11時30分~17時30分(6時間) 第二回耐久カラオケ 2009年11月22日 11時30分~17時30分(6時間) 2時間ごと3回部屋チェンジ 参加者:7名 亜依、薫、kana、星藍、まゆ、真琴、沙希 第一回耐久カラオケ 2009年9月6日 11時~17時(6時間) 3時間ごと2回部屋チェンジ 参加者:7名 亜依、薫、kana、星藍、まゆ、真琴、柚子香
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夏休みが始まったというのに、出席日数のたりない彰(あきら)は補習を受けなくてはならなかった。教壇では教師が授業を進めている。蒸し暑い教室の中で退屈な授業が延々と続いていた。 彰は校庭に視線を移した。夏休みの校庭には誰もいない。今日はサッカー部も休みらしい。行き場の無くし校庭をさまよっていた彰の視線が不意に止まる。校庭に女の子が一人立っていた。この高校とは違う制服を着ている。ショートカットの女の子だ。 (うちの高校生徒じゃないのかな?) 彰が身を乗り出したその時、教師の一括が入り彰はしぶしぶ授業に戻った。 校庭を盗み見ると少女の姿はもうない。 彰は不思議そうに首をかしげた。 ◆◆ (まあいいや) 彰は今見た少女のことは忘れ、教師の様子をこそこそ伺いながらケータイをいじくった。ケータイのサイトを色々飛び回る。 と、不意にメールが届いた。マナーモードにしていなかった為、思ったより大きく教室に着メロが響き、教師の目に止まってしまった。 「こら、ケータイは電源切っとけって言ったろーが」 「すんませーん」 「ケータイは没収。補習終了後に取りにこい」 「……はいわかりました」 そう言うしかなかった。 (まだメール見てないんだけどな) まあいいや、と数分前にも思ったことをもう一度思う。あの着メロはあいつ以外には設定してない。亀レスでもあいつは気にしないだろう、そう楽観的に思うことにする。 ◆◆ 彰の携帯をポケットに押し込み、再び教壇に立って退屈な授業を開始する教師。しかし、携帯がなくなったからといって、その情熱が授業に向くはずも無い。 まるで、教師が今まさに汗を拭きながら説明している、熱力学第一法則のようだ、と内心で一人ごちるが、そんな思考遊びが暑さに茹った脳みそでいつまでも続くはずも無く、再び校庭に視線を向ける。 そこには何もなかった。 先ほど見た少女も、まるで夢か幻かと思うほどに何もない。 何かを期待していた訳ではないのだが、彰は若干の落胆を覚え、やむを得ずまじめに授業を受ける。……振りをして、脳内で何を議論するかについて議論するという、最低の時間つぶしをすることにする。 やがて、脳内会議場がぐだぐだにダレて来たのでそろそろ解散して、今度は脳内進化論でも試そうかと彰が真剣に考え始めたころ、定時を告げるチャイムが鳴り響いた。 教師は、にわかに浮わつく教室内の数名に、愛のこもった夏休みの課題を手渡して、教室を出て行った。 その後を追いかけるようにして教室を飛び出していく、カラーバリエーションに乏しい頭を見送ってから、彰もおもむろに立ち上がる。 そして、荷物をまとめて席を後にする前に、もう一度校庭に目をやる。 やはり、だれも、いなかった。 ◆◆ 彰は黙っていすから立ち上がり、まっすぐ職員室に足を向けた。廊下で騒ぐ女子達の間を抜けたときだった。ふと耳元で自分の名前を呼ばれた。 「彰…」 ◆◆ 彰の全身が硬直した。後ろに誰かいるのか、と思ったが振り返る事ができない。 「……彰」 少女が再び名前を呼ぶ。彰の背筋を冷たい汗が流れていく。少女の声には魔性の響きがこもっていた。 「……彰、私と来て」 何処へ、と彰は聞き返そうとしたが、声は出ない。 「……私の世界に。ね……?」 ……彰は我に返った。意を決して振り返る。だが誰もいない。通りすがりの女子が、楽しそうに話しながら、彰の隣を通りすぎていった。 ◆◆ ただの空耳だろうか。ただ風だけがさわやかに吹き続いている。なにか聞こえた。 「待ってる」 とてつもなく小さく悲しい声。すーっと透き通った声に彰は昔の頃を思い出した。 小学校の図書室で、いつも同じ本を読んでいた女の子を…。 子どもながらに気になってしょうがなかった。別に好きとかそういうのではなく、なにか気になった。 どこにでもいそうな女子だった。今となってはもう、顔も思い出せない。ただ女の子の泣き顔だけは覚えている。彼女は毎日図書室で泣いていたからだ。 ◆◆ (あの子、なんていったっけ?) 彰は顎に手を当て考えこんだ。 「彰!」 突然、背中を叩かれ名前を呼ばれた。彰はぎゃっと叫んで腰を抜かした。 「どうしたんだよ?お前…」 背中を叩いたのはクラスメイトの隆正だった。血の気の引いた真っ白い顔の彰に隆正は驚いた。 「どうしたんだよ。お前、凄い汗だぞ?」 「いや、なんでも無い」 ちょっと疲れているだけだ、と付け加える。本当は死ぬかと思った。 「そうだ。お前、メール見てないのか?」 そうだ。携帯を没収されたことなど忘れていた。 「花火、今夜になったぜ。8時に学校集合な」 「ここでやるのか?」 彰の声が裏返る。正直、学校には居たくない気分だった。 「なんだ?怖いのか?クラスの女子も来るんだぜぇ」 隆正は大袈裟に両手を広げる。 「なあ、まさか本当に怖いのか?」 隆正の目が本当に心配そうになったので、彰は渋々承諾した。夏休みは始まったばかり。楽しまなければ損だ。 彰は夜が来るのを待ち望んだ。 ◆◆ 隆正と別れた彰は、職員室で教師の小言を頂戴してから携帯を返してもらった。 もともと、あまり頻繁にメールをやり取りするタイプではないので、隆正からのメールだけだろう。そう思って、彰は携帯電話を開く。だが、 「なんだ、誰からだこれ?」 携帯電話には、二通のメールが届いていた。一通は、隆正から。しかしもう一つのメールは、まったく知らないアドレスから送信されたものだった。 彰は怪訝に思いながらも、メールを見ようとボタンを操作する。しかし次の瞬間、静かな廊下に盛大に携帯の着信音が響き渡った。 「うぉおう!?」 思わぬ奇襲に動揺しながらも、彰は通話ボタンを押して電話に出た。 ◆◆ 『お、携帯返してもらえたのか』 電話の向こう側は笑っていた。もはやイントロクイズのように短い着信だったが、耳が慣れているためにそれが誰なのか理解するのに時間はあまりかからなかった。 「……二回目か」 彰は無意識のうちにそう呟いていた。 『二回目? 何が?』 誰に向けた言葉というわけではなかったので、当然隆正には何のことだか分からない。別に分からなくても問題は一切起こらないのだが、彰は恨めしく理由を口にした。 「今日お前に驚かされた回数だよ。……で、なに?」 『いや、何も用事なんてないんだ。ただ先生に携帯もってかれたとき、マナーにしてなかったみたいだからちょいと悪戯しようかと』 教室に響くぐらいの大音量が職員室で流れたら、確かに視線はあの教員に向くだろう。独特の重々しい雰囲気が漂う職員室で、冷ややかな目をおくられて焦る教員の様子を想像すると、惜しいことをしてしまったと思った。 「さすが悪戯名人」 『ありがとよ。それじゃ、遅れんなよー!』 短い音がして、通話が終了した。 隆正――通称悪戯名人。伝説はカラスを使って朝礼中に校長のカツラを落としたこと。一応事故とされているが、彰のような一部の人間は犯人が彼だということを知っている。お咎めなしで面白いことをする、それが彼のポリシーらしい。 再び待ちうけ画面に戻ったところで、あの送信者不明のメールを開く。件名はない。広告メールではないようだった。 ◆◆ 8時。花火の時間になって彰は学校に忍び込んだ。夜間は出入り禁止なのだ。校庭ではすでに隆正と数人のクラスメイトがはしゃいでいた。 「よう、なんだ元気無いな」 隆正が悪戯っぽく笑う。しかし、彼の目の奥には深い思慮が見てとれた。 「そんなことないぜ」 彰は強がりを言った。 ――今夜、学校に行くな 謎のメールにはそう書かれていたのだ。誰かの嫌がらせか、それとも本当に警告なのか…。 彰はあらためて校庭を眺める。夜の学校は何故だか恐ろしい。昼間とはうって変わって静かで神秘的だ。まるで異世界のようだ。 その時、彰は異様な感覚に襲われた。 ◆◆ 急に気温が下がったかのような悪寒を感じた。いや、首筋に氷を当てられたような驚きとでも言えばいいのか。 悪寒は彰の後ろから、気配となって伝わってくる。 彰は思わず振り返った。見えたのは学校の校門だった。そこに人影が見えた。小さな……女の子か? 「ん? ……おいこら」 彰の視線の先を追って、隆正が動いた。隆正は校門まで小走りに進んで、見も知らぬ女の子に話しかける。女の子は小学校一・二年だろうか、小さな体に長くて黒い髪、胸には熊のぬいぐるみを抱きかかえていた。 「こら、子供が夜遊んでたらダメじゃないか」 隆正は妹でも叱りつけるように、気さくに少女に話しかけた。 「……お兄ちゃん達はどうなの?」 隆正と少女が話すのを彰は見ていた。悪寒は少女から伝わってくる。彰は自分がいつの間にか、背中にびっしょり汗をかいている事に気がついた。 ◆◆ 不意に、メールの言葉を思い出す。 ――今夜、学校に行くな けれど、目の前の少女とどんな関係があるのか。理由の見つからない悪寒は消えない。常に首筋に冷たい 何か を突き付けられているような、そんな感覚。 ただ、校門を挟んで感じる 違和感 。さっきまで感じていなかったはずのそれは……既に、昼間にも感じていた事を思い出す。 ――「待ってる」 昼に聞いたハズの、その一言が持っていた 違和感 。それは、過去にあったような 既視感 を持っていた。 彰は、昼に聞いた言葉を思い出す。それは、普段の自分が感じない 何か と共に、あの声は何と言っていた……? 私の世界に来て 、と。 それを彰が認識した瞬間、少女は語りだす。 「お兄ちゃん達は知っているし、気付いている。自分達がしている事は危ない事だ、って」 少女の瞳は、とても深く…吸い込まれそうな程真っ直ぐに彰を見つめている。そこに得体のしれない何かを感じた彰は、それを振り払うように話しかける。 「だけど、こう言うのはもっと大人になってからじゃないと……」 規律を破る背徳感 、とでも言えばいいんだろうか。いや、正しくは 日常からの解放感 ……それを無意識に前者とすり替えたのは事実だし……おそらく、それは全員そうだろう。それを内心で肯定した瞬間。 「そのスリルを感じていたいのでしょう? だから、私が 迎え に来たの。お兄ちゃんを 逃がさない為 に」 「……逃が、さない?」 まるで、心が見透かされているかのように告げた。だが、それ以上に逃がさない、とはどういう事か。 そこで彰はある事に気付いてギョッとする。 「 あの人 がお兄ちゃんを求めているもの。だから――」 少女の唇は、動いていない。さっきから、今に至るまで。 それよりも少女の言葉の1つ1つが楔となって彰の思考に割り込み、突き刺さっていくような感覚がある……だが、まるで、思考が麻痺しているかのように、それに抗う事が出来ない。 だが、少女はそんな事を気にも留めた素振りさえ見せずに、招きの言葉を口にした。 ――それはまるで、絶対勧告のように抗えない 力ある言葉 で。 「いらっしゃい、 彰 お兄ちゃん。 あの人の世界 に」 そう言って、少女は片手を差し出した。 ◆◆ 今や彰は、完全に呑まれていた。少女の仕草、言葉、目、その全てに。 抗えない。抗おうとする気力さえも奪われていく。 彰は、ただ少女の目に魅入られたように手を差し出し、少女の手をとろうとした。 だが、次の瞬間少女の姿が突然掻き消え、刹那だけ遅れて少女の居た空間を何かが貫いていった。 「だから『行くな』と言ったでしょう、私は」 どこか呆れた様な、しかしそれでも透き通った声に、思わず彰は後ろに振り返る。 そこに立っていたのは、天に輝く月よりも尚透き通った銀髪に、人の血よりも尚紅い目をした少女だった。 「お前は……」 どこかに覚えのあるその声と、そのまとった雰囲気に彰は何かを問おうとするが、疑問が口をついて出るよりも先に、 「下がっていなさい。彼女は貴方が欲しいみたいですから」 と、年頃は彰と同じだろうに、やけに落ち着いた声に我に返って『彼女』の姿を探す。 「……邪魔をしないで」 そう嘯きながら『彼女』は、先ほどまでと全く変わらぬ姿で、先ほどまでと同じ場所に、瞋恚の炎を瞳に宿らせてそこに立っていた。 ◆◆ 「邪魔……。よくそんなことを偉そうに言えますね。賞賛に値します」 銀髪の少女は余裕綽々というふうに笑って見せた。 「余計なものを持ち込もうとしてるのは、あなたたちでしょう。邪魔な奴らに邪魔と言われたら、それって正しいことのように思えませんか? 裏の裏は表、というように。意図的にごみを撒き散らす連中の後片付けをしてやって、何で咎められなければならないんですか」 対して、今の今まで不気味な日本人形のようだった少女は肩を震わせていた。 「何をほざくかと思えば、あの人のやっていることがごみを撒くのと同じことですって?」 「そう言ったつもりですけど、聞こえませんでした? なら、もう一回言って差し上げます。片付けが面倒なのでこれ以上こっち側に迷惑かけないでください」 冷静さを取り戻した彰はしばらく二人の会話に耳を傾けていたが、自分にはなんのことか分からなかった。ふとあたりを見回すと、さっきまでは集まっていたクラスメイトの姿がない。携帯も、メールや電話を受けた様子ではないので、勝手に移動してしまったのだろうか。 かといって、ぴりぴりした雰囲気の中でそれを尋ねられるほど、状況の読めない男でもなかった。 彼女らの会話は分からない。 だが、何故か自分に関係があるように思えて、この場から逃げる気にはならなかった。 「どうせ退いてもらえるとは思ってません。それに」 銀髪の少女は、その場で棒状のものを構える。 否、それは棒ではない。たった今、彰と少女の間を通り抜けていった『何か』を放ったもの。長い歴史を持ち、今なおその存在は忘れられることのない射る者の武器。 「この場で射抜いてしまった方が、断然効率的ですしね」 薄く赤色を帯びた弓を携え、銀髪の少女は不敵に唇を吊り上げた。 ◆◆ 「テディ!!いくのよ」 少女はクマの人形を投げ付けた。クマは巨大化すると鋭い牙と爪で襲い掛かってくる。 「うあああ!!」 彰は恐怖でパニックになった。一方、銀髪の少女は矢をつがえたまま微動だにしない。 「死んじゃえ!」 少女が叫んだその時、銀髪の少女が矢を放った。クマは矢を受けるとその衝撃で校門までふっとぶ。 「まったく無様ですね」 何事も無かったかのように銀髪の少女が髪をかきあげた。小さな少女は歯をガチガチと鳴らし震え出す。 「もっとも、その無様さは賞賛に値します」 銀髪の少女は再び矢をつがえ、そして放った。 ◆◆ 放った矢は閃光となり、少女の小さな胸を貫いた。 「グガガガァァァァァァァ!!!!!」 貫かれた少女の口から似つかわしくない奇声が響いた。 見る見ると少女の姿はドロリと溶け出し、灰色のただれた皮膚に細く歪に曲がった手足をした「鬼」の姿を現した。 そして、貫かれた胸から亀裂が走り、鬼は粉々に崩れていった。 その逸脱した状況。夢か幻か。 ただ、彰は粉塵巻き上がる向こうで光る紅瞳を逸らす事が出来なかった。 「あ、あ…。あの」 なんとか振り絞って声を出そうとする彰。 ――知りたい。 今の状況で唯一の答えを知るであろう彼女に聞きたい。 ぐちゃぐちゃにパニくってる自分の頭ん中でそれだけが働いた。 しかし、彼女は答えでなく、弓を彼に向けた。 ◆◆ 「伏せて!」 彰は驚く前に身を伏せた。素早く頭を抱えて膝をつく。 ヒョウ! と空を裂く音が彰に聞こえた。彰の頭上を、銀髪の少女の放った矢が通過していく音だ。 彰は恐る恐る身を起こした。そして振り返る。矢が飛んだ先に、さっきの小さな少女が妖艶な笑みを浮かべて立っていた。かわいらしい顔立ちだけに、その笑顔には凄みがある。銀髪の少女は舌打ちした。 「……お見事と褒めておくべきかしら」 少女の右手には、銀髪の少女が放った一矢が握られている。 「……凄腕ね。変わり身に気付くだなんて…… 自信喪失しちゃうわ」 少女の声を聞いて、彰は内心怖い思いがした。声も話し方も幼い少女のものなのに、その雰囲気がまるで年老いた老婆のようであるからだ。まだ何が起こっているのかわからず戸惑う彰の眼前で、銀髪の少女は再び弓に矢をつがえた。 「我が神眼からは、いかなる魔性も逃れる事などできぬのだ」 銀髪の少女の赤い瞳が、一際赤く輝きを増していった。 「同類殺しがよく言うわ」 小さな少女の顔が、醜く歪む。 ◆◆ 放たれた鋭い矢を少女はまるでふわり、と舞うように避ける。そして、不敵にも微笑みを浮かべた。それは優雅で、どこかしら冷酷な現実を突きつける。 「けれど、知っているかしら? 上には上がいるものよ。まぁ、眼については私ではないけれど、ね」 微笑みながら落ち着いて話す少女。今度は口も動いている。それは、彰にもわかった。だが……。 「少しだけ本気を出すわよ? きちんと発音もしているし――触れないのは情けだと思ってくれていいわ」 先ほどの少女の身代わりが使った 力ある言葉 を、今度は少女本人が口に出して紡ぐ。 「2人とも、その場から動いてはダメ」 ――少女の紡いだその言葉が、世界を変えた。 「今回は身代わりを斃した事で見逃してあげるわ。格下の同族殺しとはいえ、少しは楽しめそうだから、ね」 首は動く。だが、体は動かない。一歩も動かす事は出来ない。銀髪の少女を見ると彼女も全く同じようで、悔しそうに歯ぎしりするのが見えた。 「故あって本名は明かせないけれど。 四覚 が1人 言術師(げんじゅつし) ……そうね、我ながら良い名前を思いついたわ。 マストオーダー 、とでも名乗っておこうかしら」 最上位命令 。その名の意味は、彰が動けないをさておいても、銀髪の少女が動けない事。それがそのまま、その強さを示していた。 「ああ、最後に1つ置き土産をしていくわね。 私がいなくなったら、その呪縛は解けるわ 。それと――頑張って生き残ってね?」 そう告げて、少女は校門に手を触れて、 命じた 。 「汝は 狂虎 。その眼に映る主たる 我以外全ての生物 を蹂躙し、喰らい、野性に戯れるモノ」 すると、校門の一部がまるで粘土のようにぐにゃぐにゃとうねりはじめ、まるで水が分かたれるかの様に自然な動きで着地をする。 コンクリートの虎が、そこにいた。眼球すらコンクリートだというのに、その餓えた瞳は彰に 初めての死 を意識させた! 「じゃあ、 彰 お兄ちゃんちょっと かがんで 」 目の前の死の感覚すら無視をして、命令に従い、彰の体は勝手に膝を折って跪く。 「次は、必ず連れて行くから。バイバイ」 それは命令ではなく、宣告。 そこに悪意は感じられず、けれども恐怖以外の何者も与えない言葉。そして、少女が彰の頬に軽く口付けると、その姿はまるで闇に溶けるかのように消えていった。 それを皮切りに、コンクリートの虎は堰を切ったように少女に飛び掛かった! ◆◆ ここで、彼こと彰の意識は一度暗転する事となる。 眼が覚めたら、ただ彼だけしか今夜の事は覚えていまい。何故か? それが、彼の資格である故。 これが後、彰の街を恐怖で震撼させる連続行方不明事件と、それに纏わる彼の物語の序文だと、まだ誰が気付こうか。 そして、彰達は固いグラウンドで早い朝を迎えた。 ◆◆ 「あれは夢だったのか?」 だとしたら、自分も随分と恥ずかしい夢を見たものだと、彰は一人自己嫌悪に陥る。 夜中に花火をしに学校に忍び込んだら、突然怪しい少女が現れてどこかに連れて行かれそうになり、続いてそれを邪魔しにきたと思われる銀髪赤眼の少女が現れて、良く訳のわからない問答の後、怪しい少女は忽然と姿を消し、銀髪の少女がコンクリートの虎に襲われそうになってそこで眼が覚めた、と。 彰はやたらと鮮明に覚えている夢の内容を、ずらずらと並べ立ててからしばし黙考。そして結論に至る。 「うん、夢だな」 「残念ながら、夢じゃないですよ」 「んな!?」 すぐ隣から突然かけられた声に、彰は奇声を上げて飛び退ってしまう。 だが、隣に居た黒髪の少女はさして気にした様子も無く、飛び退ったまま身構えている彰を一瞥して 「それだけ動けるなら、”最上位命令”とやらの影響はなさそうですね」 と、言った。だが、その何の感情も含まれない言葉に、急速に昨晩の出来事が思い出され、同時にある一つの疑問が浮かんでくる。 「あんた、さっきの女の子……」 「さっきとやらが、昨晩の事を指すのであれば、あなたの言う女の子は私のことになるでしょうね」 やたらと回りくどい言い回しで肯定する少女。だが、そんな瑣末なことは、彰の脳裏に浮かんだ疑問にかき消されていた。 服装や背格好、そして何よりどこまでも透き通った、しかしどこかさめているその声は、確かに昨晩の少女のそれに間違いない。 その筈なのだが、同時に昨晩の少女とは決定的に異なる点があった。 「あんた、その髪と……目は?」 そう。昨日彰が見た少女は銀髪赤眼だったのだが、目の前に居る少女は、どこにでもあるような黒髪黒瞳なのだ。 彰がそう言うと、少女はどこか遠くを見るような目をする。 「そういう……血なんですよ」 どこか憂いを含んだその言葉に、彰が二の句を告げないで居ると、少女は一瞬で感情の揺らぎを消し去って、彰の目をまっすぐに見つめてきた。 「ところで彰、話があるのですが良いですか?」 ◆◆ その瞬間、彰の脳裏に記憶が蘇った。途端に心臓の鼓動が高まっていく。 「……思い出した?」 真琴の言葉も彰の耳には届かない。彰の心は昨夜の事を思い出していた。真夏の夜の悪夢に相応しい夜の事を。 「……そうよ! 失われた人たちのためにも、私達は負けるわけにはいかないのよ!」 真琴の頬を涙が一筋流れ落ちた。彰はそれには気づかず、ただ脳裏に浮かぶ悪夢を鮮明に思い出し始めていた。 ◆◆ 例えば、謎の少女と会話をしていたとき。例えば、真琴と名乗った彼女が、そこに立っていたことに気づいたとき。少女と真琴が会話をしていたときも、味わったことのない奇奇怪怪な現実を目前にしたとき。そしてなにより、一度周囲を見回したとき。 目に――いや、耳に収めようとしなかっただけで、全て、気づいていたのだ。しかし、彰は無意識のうちにそのことから逃げ、挙句には記憶に蓋までしてしまった。 呆けた声から始まり、悲鳴へ繋がり、不協和音の大合奏へと変貌し、時間の経過とともに演奏者が消えていく様子を――今でははっきりと思い出していた。 「う……うあ……」 隆正が。クラスメイトが。消えた。正体不明の指揮者によって。食われた。 異常な光景が広がっていることを知りながら、自分はいったい何をしていた? 小石の一つでも投擲して敵の注意を逸らそうともせず、ただ目を背け、臆病者の振りをしながら人形のようにその場にへたり込んでいただけではないか。 言い訳なんて、できるはずがなかった。彰は友人を、仲間を、見殺しにしたのだ。 全てを掘り返すと、急激な吐き気に襲われ、その場で嘔吐した。胸を押さえ、何度も何度も胃の中のものを地面に吐きつける彰の肩に、そっと手が添えられた。 「彰……起きたことは、仕方がないの」 首に、真琴の細い腕が回る。先ほどの気丈さは、そこにはなく、首筋に当てられた鼻の頭は小刻みに震えている。 「だから……お願い。もう、私だけじゃ手に負えない。このままでは、永遠に続く夜が始まってしまう。もう、暗闇の中にいるのは嫌なの。手を、貸して」 彰は、涙声をここまではっきり聞いたのは久しぶりだった。 そして、幼い頃の記憶がフラッシュバックする。断片的だった記憶が、徐々に引き上げられていく。 かびの臭いが漂う図書室。誰にも見つからないよう、部屋の片隅ですすり泣く少女。 あのとき、彰は彼女にちゃんとした言葉を掛けてやることができなかった。ただ不気味だと思うばかりで、数回の会話のうちに優しさをこめたことは一度もなかった。 真琴が、彼女でなくともいい。これは、あのときの罪を贖うために。 そして、昨晩の罰を償うために。 いつの間にか寝息を立て始めた少女をそのまま背負った彰の瞳には、決意の色が強く輝いていた。 ◆◆ ――あまりにも深いところにあったので、誰もそいつの寝床を察知することも、そいつが寝息を立てているのに気付くこともなかった。 ――そいつが目覚める瞬間も、やはり誰も気付きはしなかった。 それは目覚めると、先ずすぐ傍にあった高い棒によじ登って周りを見渡した。どうして自分が起きることになったのか、その原因を知るためだった。もう既に事は終わり、あるのは残り香だけだったが、鋭敏な嗅覚と、悪魔じみた洞察力を持つそれにとっては充分だった。嗅ぐ。一嗅ぎで、何が起こり、何が進みつつあるのかを理解した。同時に沸き起こったのは、憤怒であった。幼稚で下らぬ争いを、眠っている間に勝手気儘に始めて、そのくせ、「俺が起きたのに気付きもせぬ…」所詮そんな程度の低い連中のために、眠りを妨げられたことに対してである。そんな程度の低い連中が、自分を祀った土の上で自侭に暴れていることに対してである。どこのどいつかは知らぬが、どうせものの道理も弁えぬ若造であろうと思った。そいつにとっては、人間とは大体がそんな若造ばかりの連中である。しゅうしゅうと不機嫌な声をあげながら、それはするりと棒から降りて、寝床の真上に人間が建てた納屋に這入っていった。そこでしばらく物色すると、長い銀色の棒を見つけた。片方の端には丸い鋸がついており、もう片方の端には四角い箱がついている道具だった。棒を手に取ると、それが何のための道具なのかはわかった。草を刈るための道具だった。とんとんと上下に振ってみて、具合を確かめる。「気に入った」と満足して、今度は、そいつは腹をのたくらせ、暗闇をごそりごそりとまさぐった。程なく、丁度良い感じのする、鉄で出来た輪っかを発見した。何のための輪っかなのか、詳しくは判らないが、何か乗り物にすえつけるものなのだろうと結論し、真ん中に空いた六角形の穴に自分の体を押し込めてみると、予想以上に具合よくごろごろと回るので、そいつはしゅるしゅると嬉しそうに啼いた。 しばらく納屋の中で動き回り、鉄の輪っかと草刈機に慣れると、そいつは一転、猛スピードで納屋の戸をぶちやぶり、あぜ道を走り路地裏を駆け抜け、人通りも途切れぬ大通りに飛び出した。大方の人間には、そいつの姿は黒い奇妙な影にしかみえなかった。ごろごろと回る鉄の車輪は、それほどの速度をそいつに与えているのだった。 ひとしきり走り終え、そいつはまた高い棒に登って車輪を止めた。人間たちを観察する。外見ではなく、その内側。自分を見た人間たちが、自分に一体なんという名をつけたのか、と。 程なく。 一人の男が自分について付けた名を見つけたとき、そいつは目を輝かせて歓喜した。男は、黒い一輪車に跨り、蛇のような頭からしゅるしゅると鳴き声を漏らし、手に何かの棒を振りかざすその異様な幻覚に、そいつにまさしく相応しい名をつけて、すぐに仕事を思い出して忘れてしまったのだった。 そいつは――彼は、現世で獲得した名を体現するかのように、黒の車輪を勢いよくぶん回し、コンクリートだろうがセメントだろうが土だろうがリノリウムだろうが関係なく車輪痕を刻みつけながら疾走した。古くおそるべき龍神の牙たる眷属、その血脈を示す、蛇のような頭。その血脈を示す、巌のような両腕。その血脈を示す、車輪に巻きつく長い腹。かつて携えた奇怪な形の矛槍を回転鋸刃に持ち替えて、かつて跨った土砂混じりの激流を黒い鉄輪に乗り換えて、その威容の変わることもなく、陰陽師団を打ち倒し百鬼夜行を吹き散らす雷と水と風の遣い。おそるべき水、古き雷、おおいなる風を引き連れる龍の神威を畏れぬものを悉く、打ち据え、切り裂き、断ち掃うべく、彼は疾駆し、啼き喚く。 ――その名は、怪人・モノホイルスネークヘッド。 ◆◆ 狩真(かるま)市。 人口30万程の都市である。歴史のある町で市内では古墳や遺跡がいくつも見つかっている。その反対に都市化も急速に進み、人口も爆発的に増えていた。 その狩真市で連続失踪事件が起こっていた。満月の晩ごとに人が忽然といなくなるのである。怪しい振興宗教説やテロ説などまことしやかに囁かれていた。彰はそのことの真相を知る数少ない一人であった。 学校での事件から3日。彰は真琴と神社の境内で会っていた。真琴は今日も黒髪だ。彼女の話によると銀髪になるのは満月の晩だけらしい。満月の晩…即ち百鬼夜行(フェアリーライド)のことである。 「次の満月の晩までに戦い方を覚えてもらうわ」 そうしないと誰かが、場合によっては真琴か彰も死ぬことになるのだ。彰は黙って頷いた。 「妖魔達に対抗できるのは唯一『神器』のみ」 真琴は自分の弓を手にとった。薄紅の古い弓は、そんな力が隠されているようにはとても思えない。 「持ってみる?」 「いいのか?」 彰は緊張した面持ちで弓を手に取る。 「わあ!!」 意外にも重くびっくりした。まるで20キロ程のバーベルのようだ。持つには持ったが、とても扱えそうに無い。一方、真琴も驚いた顔で彰を見ていた。 「思ったより重いな…」 額にびっしょり汗をかきながら強がってみせる。 「凄い!!普通は持て無いのよ!?」 『神器』は力で持つ物ではない。いかに屈強の男でも『神器』は重くて持てないのだ。 ではどうやって持つか…? 「『神器』は心で持つのよ」 普通に持てるようになるだけでもかなりの修業が必要なはずである。 「あなた、やっぱり才能あるのね」 ◆◆ 「『神器』を体の一部に溶け込む感じにするの。そうすると、本当に体の一部みたいに簡単に操れるようになるわ」 「溶け込む…」 「そう、神器が飴のように溶けて、その溶けた物が自分の血管に入り込むイメージするの」 彰は真琴の説明通りのイメージをしてみた。すると神器が溶け出し、自分の体に入り込んでくるではないか。身が震える感覚と共に、自分の体に異様な熱を感じていた。 持っている弓に重さを感じなくなり、そしておもいきり振り上げてみた。 「へぇ、たいしたもんだよ。いきなりそいつを持つなんて」 「うわっ!」 いきなりの声に彰は思わず弓を離し、後ずさりしてしまう。 そして目の前には人良さそうな、スーツ姿の青年が立っていた。 「公平さん…」 真琴の顔が見る見る険しくなっていったのを彰は分かった。 「あー、僕の名前は松田公平。その真琴の兄代わりかな? 血縁で言えば叔父さんになっちゃうけど、いや、やっぱ叔父さんは無し。やっぱ兄代わりで。俺まだ25だし」 彰は松田の明るい声調に気が抜けてしまう。 「君も災難だったね。あんなのに狙われて…」 「私は貴方達には頼らないから!」 (ま、真琴?) 「でも、真琴ちゃん…一人でやるのはやっぱり…」 「私は父さんと母さんを見捨てた貴方達には絶対に頼らない!」 「えっ…、見捨てたっていったい!?」 一人状況が飲み込めずにいた彰はこの真琴の兄代わりに尋ねた。 「ん、ああ~、彼女の父親ってうちの親戚の者なんだよ。僕の叔父さんでね。それが18年前に彼女の母親と一緒に駆け落ち。で、彼女が…」 「いくわよ!」 「え?」 真琴はそう言って、彰の手を握るなり、人間離れした跳躍をした。 「うわぁぁぁーーーっ!!!!」 真琴の怒りで紅く染まった瞳と彰の悲鳴が闇夜へと消えていった。 「まいったな…。見捨てたわけじゃないんだけどなぁ…これでいいんですかね。豊子様」 松田は頭上に目をやると、腰ほど長い黒髪をした少女が巫女服姿で胡坐をかいて宙に浮いていた。その手には携帯ゲームを興じていた。 「ふん、頑固な所は宗春そっくりじゃな。それも素質もな」 豊子は目線を携帯ゲームのままで話しかけた。 「豊子様が本田の家に一喝すれば済む話じゃないんですか?」 「当の娘があれじゃ意味ない。気が済むようにしてやるしかない」 「基礎は宗春叔父さんが教えたんでしょうけど、叔父さんが亡くなってからは独自で鍛錬したんでしょうね。神器をあそこまで使えるのはたいしたものです」 「所詮は付け焼刃。素質の高さだけで助けられてるようでは後々危険じゃ」 「危険と分かってほっとくんですか?」 「珍しい『混じり血』の力を見極めたいしの。本田の象徴である紅い瞳をしておるが、その力の質は本田のとはちと違う。それに…」 「それに?」 「危なくなった時に助けてやってたっぷり恩着せてやればよかろう」 少女の愛らしい笑みで答えた豊子に、松田は頭を抑えた。 「悪党ですね。それを僕にやれと」 「手に余るようなら『鈴木』と『日野』の家からも人を出す。それにワシはこれで忙しい」 「…ところでなにやってるんですか?」 「スーパーフランス料理大戦・極じゃ。エスカルゴ怪人から企業防衛して敵対買収を阻止しないと料理を教えてもらえん。いやぁ、千三百年生きてこんな面白いもんがあるとは長生きするもんだのぉ」 最近のゲーム事情についてけない松田であった。 ◆◆ 番外――閑話休題 あなたには、才能があるのね――。 その言葉を聞いて、彼は三日前の昼、事件後夜が明けたその日の午後を思い出していた。 / ――りりん、と。 蜂蜜の様に濃厚で、どろりとした湿々な大気を根こそぎ攫っていくかの如き一陣の爽風が、風鈴の音を掻き鳴らした。 午(ひる)の南中を過ぎ、僅かばかり陽は斜陽に照っているが、それでも気温は未だ峠に差し掛かろうとしているその時刻に彰は一人、板張りの床で坐っていた。 思索を巡らすでもなく、また呆けるでもなしに。 彼は、人を待っているのだ。 ここは彼の自宅から程ない場所に位置する剣道場然とした場所だった。 そういう場所ではあるものの、彼は門下生など終ぞ見た事がない。それもその筈、ここは彰の幼少からの知り合いであり、また人生において少なからぬ影響を与えた言わば「師」たる人が戯れに設置した処なのだから。 師の名は、佐々木千夏と言い、年の程二十も半ば。既婚らしく、訳者の旦那と婚姻関係にある小説家である。 彼女は名の売れた文士でありながら、また一廉の剣客でもあった。何でも幼い頃から夢想神伝流の居合を嗜み、十七で五段にまで上り詰めたらしい。本人の言によると、その時急に、自身の流派が語る剣術理論に疑問を持ってしまったと言う。それから彼女は、天眞正やら、制剛流やら、色々な剣術流派を回ってみたものの、遂に自らの求める流派に行き当たらなかった為に、ならば自分で作ってしまえと郷里に戻り捏造したのがこの道場なのだ。 思い立った時、彼女は既に作家としてそれなりの財を成していた為、ここを作る際の経済的問題はあまり無かったようだ。 しかし、やはり戯れである。彼女は近隣に住む剣術、居合術の巧者へ練習場所を無料で提供する代わりに、新流派を研鑽する為の手を貸してもらおうと言う魂胆だったのだが、生憎保守的な古武術界に志を同じくするものなど早々いる訳はなく、結果集まったのはたった五人と言う有様であった。いや、むしろここはよくそんなにも集まったかと言うべきか。まあ、彼女自身この状況に悲観するでもなく(否、彼女の辞書に悲観と言う言葉が存するかは甚だ疑問なのであるが)平時通りのしたり顔でいるあたりそこそこに満足しているのやも知れぬ。 「おや、そこに居るのはアキ坊ではないか? 何だ辛気臭い顔でそんな所に坐ったりして。どれ、一つお姉様が話を聞いてやろう」 突然の声。縁側に面する開いた障子の隙間から、すらりと長い影が伸びて彼に話しかける。 件の人、佐々木千夏だった。カチューシャでオールバックに纏めているであろう長髪のシルエットが美しい。 「坂田、先輩」 彰は、振り向き様に彼女へと相対した。坂田とは千夏の旧姓である。千夏は直接の先輩ではなかったが、幼い頃からご近所として彰の姉貴分をつとめていた為彼はこんな風に呼び習わしていたのだった。 「もし、もしもの話ですよ。自分の友人が尽く蹂躙されてしまったら、坂田さんは敵を討ちますか? 自身の、大事な友人が……」 いつになく真剣な彰の姿勢を感じ取った千夏は、そもそも私の友人にそんな軟弱者はいないんだがねぇ、と一人ごちてからこう返した。 「何を言ってるんだい、この国は法治国家だよ。気持ちは分るが警察に任せて置きなさい。それが普通だ」 「相手は、普通ではないんです。奴らは法で裁けない」 化物だから――。そう言おうとして、止まる。 「……君はどうしたい?」 「え?」 「だから君の気持ちは。法で裁けないという事はその者も法の庇護にはないと言う事だろう? なるほどそれならば敵討ちも違法ではあるまい、無論無法ではあるが。 その条件下なら、私は準備が出来次第すぐにでも討って出るぞ。何より私の同志を倒す程の敵だ、よほどの手練に相違ない。其奴と立ち会えば我が剣術理論も完成を見るやもしれないしな。 私の場合はこんな動機だが……君は違うだろう? 友情、義憤、それとももっと違う何かかもしれない。私が私なりの動機を考えられる様に今君の胸中にも君なりの感情が渦巻いているのだろう? その坩堝から洗練された結論として出た答が敵討ちなら、それは本物であるだろう。少なくとも君の中では。 ならば私に意見を求めるのではなく、自分の胸に問うがいい。なあに、間違った所で誰も君を責めやしない。思った通りにやってみるがいい」 りりん――、風鈴が音色を奏でた。 「先輩、ありがとうございます」 「答は、出ているな?」 無言で、頷く。 「ならば行け、悔いは残すなよ。玄関までなら送って行ってやろう」 そうして、彼は腰を上げた。縁側を伝い、上がり框へと向う。途中、廊下にて千夏に負けず劣らずの長髪を持った女性にすれ違った。彼の背後に付いている千夏に会釈をしたところによると、彼女の言うところの同志、この道場の利用者であるのかも知れない。彰の知る五人の一人ではない様なので、きっと新たに加わった酔狂者だろう。 程なく玄関につく。 「では、行ってきます」 彰は言った。 「今生の別れでもあるまいに、そんなに堅くなるな」 千夏は返す刀で豪快に笑う。 「やるからには、きちっと報復して来い。何にしろ、普段あまり物事に心血を注がない君がここまで決意を顕わにしたんだ。その心意気の強さがあれば、そう道は開けるに違いない」 頑張れ、と彼女は彰の頭を撫でる。 一礼して、彰は道場を出た。 / 心で使う『神器』か。ならば今の俺に使えないはずがない。 彰はそんな風に思う。 隆正は親友だった。断じてあんな訳の分らない事態で消えていい人間ではなかった。 怒り、とは違う。感情が込み上げる。 心意気で、俺は『神器』を使ってみせる。そうして親友の敵としてせめて一矢でも、報いてみせる。 彼は真琴の言葉を聞いて、こんな事を思っていた。 ◆◆ その頃。 影に閉ざされたビルの合間に、マストオーダーはいた。ただし、1人ではない。 彼女の目の前には不気味なまでに痩身の……外套を羽織り、目以外を包帯で隠した 人間に見える何か が立っていた。 「報告は以上で終わり。あと何か あの方 から聞いてない?」 (……特には何も聞いていない。それよりも、気付いたか?) 「かつての百鬼を滅ぼしかけた 古き者 が目覚めたんでしょ? 気付いてるわよ、そんな事くらい」 目の前の何か、は一切言葉を話さず、念話を持ってマストオーダーに語りかけてくる。 (ふむ、それはそうだな。さして焦ったところで、あの程度の小物では今更我らをどうこう出来るものでもあるまい。もはや過去の遺物よな、アレは) 「しかし不便ね、貴男は。まぁ……私が触れても何も感じられないように、貴男は言葉を持たないからこそ、なのだろうけど」 (我らは あの御方 の末端に過ぎぬからな。それぞれがそれぞれの任を為すだけよ、そうであろう。 戯言使い ?) 言葉は喋らないが、皮肉さもなく単純に愉快であるかのように含み笑いをする 何か 。それを見て呆れたような表情のマストオーダー。 「まぁ、彰お兄ちゃんに2人も四覚が付いている事実の方が、私にとっては愉快なのだけど、ね?」 (それはそうよな。言術の主である汝(なれ)と瞳術の主である我が同じ目標を狙う、と言うのも奇なものよ……まぁ、 あの御方 の執心もわからぬではないが) その 何か の一言に合わせて、影でよく見えなかったその瞳が 金色 に変わる。 「あら、何か視えたのかしら?」 (何、これからここで殺し合いが始まるだけよ。我らには関わり合いの無いこと故、離れるだけでよかろう) 「……つまり、彰お兄ちゃんは巻き込まれないのね?」 (それを我に問うか? 戯言使い ) それを聞いて、聞くだけ愚な事だった、とマストオーダーは軽く自嘲した。彼の能力を、おそらくは誰よりも2番目に理解しているのは彼女なのだから。 「まぁ、貴男が言う限り100%巻き込まれないわね。何せ 完全な未来視 を可能にしているのだから」 (そう言えば、彼の者に出会った時の名乗りを考えておらなんだわ、何か良い案はないか? 戯言使い ) 「そうね、では 全てを視る者(オメテオトル) なんて言うのはどうかしら? 貴男の力はその言葉通りなワケだし」 ふむ、と。 何か は頷く。どうやら納得がいったようだ。 (では、彼の者に出会ったとき 四覚が一、全てを視る者 と名乗るとしよう) 「そうそう、さっきの報告の 同族殺し 。焚きつけておいたわよ? 貴男よりまるで弱い って」 (無駄な労力を使わせる。とはいえ、我が あの御方 の目である以上、神眼魔眼程度には負けぬがな。まぁ、仮にも汝が認めた相手だ、出会ったならば試すとしよう) そう言うと、オメテオトルは影に溶けて消えた。それを視て、マストオーダーも1つ大きく伸びをして、あくびをすると同じように影の中へ消えていった。 ◆◆ 怪人・モノホイルスネークヘッドはにたりと哂う。 「噂」による現世への認知・固定を必要としない彼は、既に総身に肉を詰め、気を漲らせて土中を進む。名付けられただけでそうなのであり、一輪車に乗った蛇頭の怪人、という噂が市内に広がったならば、彼は更に強壮たるからだを得ることができるだろう。 怪人が口の端を醜いと言うべき角度で吊り上げたのは、やはり、その血脈ゆえに。叩き伏せるもの、引き裂くもの、貫き穿つものとして、おそるべき龍神の逆鱗より生じた生粋の鬼神にして尖兵たる蛇頭は、鋭敏な嗅覚と悪魔じみた洞察力によって、血の滾るような事実を感知する。なるほどこの騒ぎに関わる大勢は取るに足らない下らぬ連中だ。しかし。少なくとも、二つ。「俺に気付いたものがいる…」それを知ったときの、彼の歓喜たるや凄まじく、八方四尋に渡る土を一度に赤く赤く焼き尽くすほどの猛りようであった。 ひとしきり焼いた土が冷めるまでごろごろと走り回ると、怪人はちろりと舌を出して考え始めた。考え直さねばならぬと、その必要に駆られたからであった。そう、少なくとも二つ、己に気付いた影がある。そして恐らくは、他にもまだ、そいつ程の使い手がいるだろう。全体の程度は低いが規模はそれなりであり、「四つか、六つ…多くとも八つ…」であろう、と怪人は目星をつけた。勿論その数は、怪人・モノホイルスネークヘッドの存在を悟った奴らと同程度の使い手、力の持ち主の数である。多くて八つ。まぁ、四つでもよい。多少質が悪くとも、それだけあれば恐らくは充分に満たせるというものだ。 一度冷めた脳髄に、再び焔が灯る。なるほど、目覚めた甲斐はあるというものだと怪人はまた歓喜に咆えた。 きっときっとやつらは、俺をみくびり、侮っているに違いない。そうでなければ、俺を知りながら、何故この土中に攻め入って来ぬ? 俺が肉を得ぬうちに滅ぼしに来ぬ? 決まっている。そうするまでもないと判じているからだ。それがどれほど、度し難い暗愚であるかを知るがいい。つまらぬ異能に心血を注いで喜ぶ雑兵輩よ、その眼と心に、太古に眠った威容たる異形を思い出せ。身の程を知らぬもの共よ、遥か彼方、忘却の地平と失逸の水平に投げ捨てて、省みることもなかった恐怖に震えて狂え。我が牙は、爪は、矛槍はそのためにある。おそるべき我が君の威を天地万里に響かせることこそ、この身の誉れなれば。 鉄車輪と草刈機と蛇頭を、がらがら、ぶんぶん、しゅうしゅうと喚かせながら、怪人は再び地表を目指す。空と川を除く大地はすべて彼の配下にして戦場。満腔の憤怒と歓喜と期待を隠しもせずに、怪人・モノホイルスネークヘッドは、コンクリートに一条の痕を残して吹き荒ぶ。火と風は最早、彼のもの。あらん限りの力を持って、獅子が兎を狩るよりも激しく、怪人は騒ぐ人間どもを襲うだろう。 ただ、一つ。 怪人・モノホイルスネークヘッドの思考から抜け落ちているのは、己もまた、対する敵を、人間やそれ以外のものどもを、大いにみくびり、侮っているという点であった。 ◆◆ 彰は夜の校庭に立っていた。事件から一週間。夜空の月はもう四分の一になっていた。 「隆正…」 親友の名を呟いてみる。校庭にはあの日、砕かれたコンクリートの虎が転がっている。それはあの日の出来事が夢じゃなかったということを示していた。 「本当に死んじまったのかよ」 彰の右手には弓が握られていた。真琴の予備の『神器』だ。彰は剣には覚えがあったが弓は全くの素人である。連日の練習に彰は疲れきっていた。 それでも音を上げるわけにはいかない。次の満月にはまた『百鬼夜行』が始まるのだ。 「彰」 突然、名前を呼ばれ振り返る。真琴が心配そうに立っていた。 「またここに来ていたのか」 「決意を新たにしたのさ」 我ながらに気障だと思った。自嘲気味に笑うが真琴は笑わなかった。真剣に聞いてくれていた。 「さあ、帰ろう。夜は危ないんだろ?」 彰は恥ずかしくなって歩き出す。すると、足元に一筋のタイヤの跡があることに気付いた。 「大丈夫よ。『百鬼夜行』は満月の夜にしか起こらないわ」 真琴が遅れて着いてくる。彰はタイヤ跡の先を目で追った。 突然、彰は異様な感覚に襲われた。これは…あの日と同じ感覚だ。 「そんな!?今日は満月じゃないのに」 真琴が空を見上げる。月が見る見る満ちてゆく。それと同時に真琴の髪が銀色に変わっていった。 「始まるぞ…」 彰は震える膝を無理矢理押さえ込み目の前の怪人を睨めつける。 「…『百鬼夜行』だ」 ◆◆ 頭上の桜の木の枝が、強風にあおられたかのようにざわめいている。まるで浜辺にいるような木枝や葉のさざめきに、木陰に立っていた松田公平の心中はとりとめない不安を感じた。こんな気持ちは滅多に感じたことがない。 百鬼夜行は満月の夜にしか起こらないはずだ。だが、このところ狩真市内はどうなっているのだろう。原則が破られて、妖魔どもが好き勝手に動いているように思えてならない。まさか“封印”が切れかかっているのだろうか。豊子様はなにか感じているようだが、あいもかわらずの韜晦ぶりで、携帯ゲームに熱中している。 だが、今日この場に行くよう命じたのはほかならぬ豊子様自身である。夕方近く突然呼び出して、「あの者たちを助けてやりや」と、この学校の方角へ視線を向けたのだ。 彼女自身も、この街で何かが起こりはじめているのを、それが“契約”と“封印”に関わりあるかもしれないと知っているからか。でなければ、あの彰とか言う少年のためにこのおれを寄越すだろうか、公平は考えた。 才能はあるが荒削りの上、正式の鍛錬を受けていない真琴では心許ないと断じたのだろう。あの彰という少年が次の世代の新たなる“契約”と“封印”に関わりがあるのなら、確かにおれがいたほうがよいだろう、という思惑も働いたのかもしれない。 そう、あの少年だ。高杉彰。 彼の力、磨かれていない原石のもつ根源的なまばゆさに公平は強い興味をそそられた。彼は自分をただの高校生と思っているようだが、見るものが見れば違う。おそらくは公平の友人である日野亮輔(ひのりょうすけ)も引きつけられるだろう。 オレンジ色の陽が天を染めつつ山の端に沈みゆくのを見定め、やがて空が深い藍の布地に細かな輝石をばらまくような時刻になると、校庭にあの少年が姿を見せ、追うように真琴も現れた。 そしてさらに――あのよく知っている、肌をぞわぞわさせる感覚が公平を襲った。 くるぞ、やつらが。 白い着物にたすきがけ、袴姿という時代錯誤のスタイル――往来の人すべてに冷ややかな視線を送られて情けなかった――、白いはちまきを巻いた額にべったりと、夏の暑さだけがもたらすのではない汗がしたたりはじめる。この瞬間はたとえ相手が小物でも背筋がひんやりとして、公平に恐怖と喜びを同時にもたらすのだ。 そろそろと植え込みに腰を沈め、膝元に置いてあった太刀を、しっかり握りしめた。 ◆◆ ――怪人は嗤う。 目の前に現れた2人の人間。更には近くの植え込みに隠れている人間。そして、何よりもこのぬめりつくような空気。それは、かつて自らが多くを喰らった過去と同じ空気だ。 ――敵意を認識する。 力だけその3つを比較するならば植え込みに隠れている牡、目の前の銀髪の牝、更にその隣にいる他愛もない牡の順に食い応えがありそうだ。 怪人……否、天の化身である龍の眷属たるモノホイルスネークヘッドは瞳に殺意の炎を宿しながら冷静かつ早急に、けれどもおそらくは誰よりも正確に戦場の流れを予想し組み立てていく。 ◆ 一方で、彰には気になっている事がある。先ほどからこの手に握っている神具が強く脈動しているかのように錯覚しているのだ。 道具は道具でありながら、何故神具と呼ばれるのか。これを手渡された時、真琴は教えてはくれなかったが……彼が訓練をしている最中、彼にのみ伝えられた事がある。 それは、彼が目覚めた時に彼の枕元に手紙が添えられていた事から知ったものだ。差出人はわからなかった。 ――神具とは、神を宿すモノの総称にすぎない、と。 それが、例えどれほど低級で低俗な神であろうと、神憑きとされる道具全てが神具として扱われる。 だが、一般にこうして使われる神具に宿る神は1種類だと、あの手紙には書かれていた。 ――付喪神。 それは、長い年月を経て万物に宿る八百万神群が一神の総称。それを物品に封じる事で道具は初めて神具と成る。 故に、それを使い、その力を引き出すために 心 と 意志 を必要とするのである。 真琴は予備、と言っていた。けれども、それは違う。宿る神が違えば、その質は大きく異なってくる。 そして、その手紙の最後には、こう書かれていた。 ――己を信じ、宿る神を真に信じれば、貴方の武器もその姿を変じるでしょう―― と。それが、今の彰にはどう言う意味なのかわからない。 ただ、彼の持つ武器の脈動は、誰よりも彼の心を映すかのように、今の心の底に住まう強烈な復讐心に呼応し、鼓動を刻んでいる。 そして、彰にとって初めての 血戦 が幕を開けた――! ◆◆ 「小童ども」 それは低く掠れた、唸るような音だったが、不気味なほど静かな夜のせいか意味が通るほどには耳に入る。 それでも二人とも警戒し、返事はしなかった。だが、それこそが怪人の欲しかった反応だったようで、ふしゅるふしゅると鼻を鳴らしながら言葉を紡ぐ。 「良い夜だとは思わぬか」 「妖魔が蔓延る現状を良い、とは表現できませんね」 銀髪赤眼になった真琴の物腰は普段とはまったく別のものになる。口調は淑やかに、性格は清らかに。しかし、小さな悪さえ許せない頑固さは依然変わらぬままである。 怪人は思いのほか冷静なようで、真琴の言葉にかっか、と笑って見せた。 「確かに愚図で愚鈍な人間どもにとっては死の到来に過ぎんだろうよ。いやしかし、そこの牡らならとかくとして、主ならばこの猛る気持ち……分からんことはないのではないか?」 「戯言を」 弓を構え、背負った籠から矢を抜き、つがえ、解き放つ。一連の動作を淀みなく行い、それでいて鏃は怪人の胴を捕らえている。 そこを狙えば必ず当たる。 本田に伝わる未来視る異能――神眼は、真琴にそう教えた。 そして、神性を帯びた一撃は確かに怪人の腹を貫いた。 「ふむ」 しかし、怪人は痛みに顔を歪めることもせず、一喝と共にその矢を引き抜いた。 「初撃から当てるか。なるほど、現世の退魔も衰えてはおらぬ、ということだな」 その一言に、真琴は眉間に皺を寄せる。 「……現世?」 「疑問など抱いている暇があるならば、行動を起こしたほうが懸命だと思うのだが」 言いながらも既に怪人は草刈機を鳴らしながら真琴の眼前へと迫っていた。神眼がどのようにして避けるべきかを判断し、即座に実行する。結果として、相手の斜め前へと滑り込む形となった。そしてすぐさま反撃を加えようとするが、それよりも早く怪人は振り返っていた。 得体の知れない黄色い瞳と視線が合ったとき、既に刃が襲い掛かろうとする。常に最善の選択を教えてくれる神眼も、乱用すれば性能が落ちる。最初と比べて、僅かに演算速度が遅くなっていた。 僅かなタイムラグが、命取りだった。 ◆◆ 真琴は舌打ちした。綺麗な顔には似合わない仕草であった。 だが、それも仕方ないかもしれない。怪人には真琴の放つ矢が、まるで通用しないのだから。飽きたとばかりに欠伸をする怪人を見て、真琴は歯ぎしりする。 彰は真琴の傍らに立った。更に一歩。真琴を背にかばうように立つ。 「あ、あなたでは無理だわ! どいて!」 真琴がヒステリックに叫ぶのを背中に聞いて、彰は真っ直ぐに怪人をにらみ据えた。怪人は余裕の貫禄を見せて、仕掛けてくる素振りすら見せない。 彰は左手に握った弓を強く握りしめた。そうしながら、昨夜の記憶の一端を思い出す。 コンクリートの虎を全く恐れずに戦った真琴の勇敢な姿勢、怪異の夜の中に映える銀の髪。そして真琴の美しさ…… 「……君に会えてよかった」 彰は呟いた。途端に握っていた弓が光を発した。 「な、何が!?」 背後で叫ぶ真琴の声も、今の彰には聞こえない。意識は手にした弓に集中していく。 「……ふっ!」 彰は手にしたものを振り上げた。いつの間にか光は消えていた。彰の手には、銀の光を放つ鞭が握られていた。弓は鞭へと姿を変えていた。 「……何?」 怪人が驚いたようだった。それには構わず、彰は鞭を一閃させた。 銀色の光が宙を横に薙ぎ、怪人を打ち据えた。 閃光と衝撃音が校庭に響く。優に二メートルを越える怪人の体が、横に吹っ飛んでいた。ガリガリと地面を削りながら。真琴の矢を全く受け付けなかった怪人が、彰の鞭の一撃で吹っ飛んだのだ。 彰の背後で真琴が息を飲む。 彰は手元に鞭を引き寄せると、宙へと銀の鞭を巻き上げた。 夜空の月はいつしか真っ赤な血の色に染まり、身を起こした怪人の双眸は不気味に黄色に輝いて彰をにらんでいた。 ◆◆ 「効いてない……か?」 彰は舌打ちした。 一見すれば、派手に吹き飛んだ怪人も、起き上がるその動作に淀みが無い。 強いて言うなら、ただの獲物だと思っていた相手に吹き飛ばされた屈辱を感じている、という程度か。 「恐らくあの怪人、単純な力の比較ならマストオーダーとやらにも匹敵するでしょうね。しかも、まだそれを発揮していない」 力を発揮していないのか、それとも発揮できないのか。おそらくは後者だろう。 そして、いずれは前者へと移行する予定である、と真琴は言う。 「つまり、倒すならできるだけ早いほうがいい、ってことか。でもどうやって?」 彰の鞭も、真琴の弓も効かない。はっきり言って手詰まりだ。だが、その答えは二人の背後から返ってきた。 「 開いたら いいんじゃないかな? 君ならできるだろう、真琴」 反射的に振り向いたそこに居たのは、真っ白な着物にたすきがけ、額には同様に真っ白な鉢巻き、という格好の松田公平が居た。 「……果し合いか?」 「……果し合いですか?」 「それは言わないで欲しいな……」 二人同時に、半眼になってそう言われると流石に公平もたじろぐ。だが、すぐに気を取り直して、 「……じゃなくてだ。彰君のためにも、一度見本を見せてあげたらどうかなって。本当の神器の使い方を、さ」 「正気ですか? 開放したら、この学校が吹き飛んだっておかしくないですよ」 「君は意外と常識的だねぇ。まあ、そう言う事なら……」 と、公平は腰に挿した太刀を無造作に地面に突き立てた。 その瞬間、空間が凍結する。いや、そう錯覚させるほどの何かが起きた。 「空間の固定ですか。さすが、その歳で豊子様の護衛を任されるだけはありますね」 「それほどでもないよ。さ、これで心配は要らない。思う存分やっちゃってくれ」 「……余り面白くは無いですが、いいでしょう」 そう言って、弓を構える真琴の目つきが変わる。いや、目つきだけではない。急にコインの表から裏に変わるように、真琴があたかも全く同一でありながら、全く異質なものへと変わったような、そんな錯覚を彰は覚えていた。 「あれ、判るんだ。やっぱり君、才能あるよ」 「……これは一体?」 「地獄の門を開くのさ。地獄の獄卒を地獄へと返す儀式。君も良く見ておくんだよ。あの子はなまじ基礎しか知らなかった分、誰よりも基礎がしっかりしている。今の君にはいい勉強になる」 そういわれて彰は真琴を見る。その様子には、ともすれば腰を抜かしそうな荒々しさがありながら、一切の歪みが無い。 真琴が、口を開く。 「我は汝の祖にて、汝は我の祖也。汝は我の主にて、我は我の主也。我は幽鬼の血に連なるもの。盟約に従い、汝の姿を現せ」 やがて、真琴から放出される気配が極限に達しようとしたとき、真琴は鋭く叫んだ。 「等活、貫け!!」 一陣の風が放たれた。 ◆◆ 地獄が開く。 地獄が口を開く。 地獄はそこから溢れ出す。 既に周囲は地獄めいた『百鬼夜行』。公平の太刀によって微妙にずらされた空間に、真琴がつむいだ言霊で、もうひとつの地獄が顕われた。 まず熱風。次に炎。そして、亡者と獄卒が、足並みそろえてやってくる。亡者は逃れる。地獄の責め苦から解放された彼らは、成仏せぬまま悪逆の限りを尽くすに違いない。亡者だけならばそうだ。獄卒は、逃げる亡者を片端から捕らえて、また炎に放り込み、逃げ出さないように鎖や棒や、鉄のようなもので出来た奇怪な武器で打ち据えたり、突き込んだりし始める。 生きているものに目もくれず、ひたすら、亡者どもを捕まえ続ける悪鬼のような獄卒たち。 「なん――だ、これは」 彰は呻いた。呻くことしか出来なかった。 「地獄よ」 真琴の、まるで夕飯の献立でも告げるかのような、そっけない応え」 「地獄? 地獄だって?」 「そうよ。これが地獄。ほんの少し世界がズレるだけで、簡単に地獄につながるの。凄いでしょう」 確かに凄いけどさ、と彰は言った。真琴の平静さに、あわてるのも馬鹿馬鹿しくなったのだった。 「これで、どうするんだ? こんなメチャクチャにして」 その疑問に、公平が明るく、「だからいいんじゃないか。このメチャクチャ加減が、丁度いいんだ」と言うと、たちまち真琴の顔が曇りに曇る。 「冷たいなぁ。ま、解説も面倒だしね。――いいかい、彰君。これだけの亡者と獄卒が溢れ出してきた。あの怪物はどうするだろう?」 そんなこと言われても、彰にはよくわからなかった。答えを期待したわけではなかったらしい公平が、少し楽しそうに笑う。 「僕らのことなど、気にも留めずに暴れまくる。僕らは、その隙と疲れを利用して、あの怪物の首を切るのさ」 鞭だって巧く使えばものが切れるんだぜ、と、公平は白い歯を見せた。白装束に白たすきで爽やかな笑みだというのに、彰にはやたらと、その顔がおぞましいものに見えた。 ――そう、まったくもってそのとおりだった。 公平の言うとおりだった。怪物――怪人・モノホイルスネークヘッドは、何も気にすることなどなかった。ただ、内にも外にも気色の悪い、あるいは鬱陶しい連中が満ち溢れはじめたという、淡々とした感情しか抱いてはいなかった。言葉を発するのも面倒なほどの、度し難い退屈。何だというのだ。せっかくあの小僧が、少しは面白いことをし始めたというのに、どうして人間は一々、ことをつまらぬほう、つまらぬほうへ運ぼうとするのか。何よりも許せぬことは、そう、 「俺がこの程度の火と悪霊と鬼どもで、どうにかなると思うてか」 怪人は激怒した。 猿知恵だけ達者な阿呆どもに、思い知らせてやろうと決意した。 吸い込む。吸い込む。吸い込んで、喉をひとつ、膨らし、 咆えた。 ただ一声。ぐおおう、と咆えた。 間近にいた亡者と獄卒が揃って自裁し、少し離れた場所にいた獄卒同士が殺し合い、彰たちと同じほど、怪人と距離を置いていた連中は、亡者も獄卒も顔と形を螺旋らせて、もと来た地獄へ逃げ戻る。 それが、単なる恐怖から出た行動だと、公平も真琴も彰も、最初は理解できなかった。理解できたのはようやく、自分たちにもそれが襲い掛かったからであった。一声。ただ一声で、怪人・モノホイルスネークヘッドは地獄を地獄に叩き返す。 「あてが外れたなあ」 ごろごろと、邪悪な雷のように、怪人。 「小細工は無駄と知れ。おのれらの全身全霊のみが、この身を滅ぼすのだ。それだけ、教えてやろう」 草刈機を地面に突き立てる。公平の結界が、いともあっさりと砕け散る。 「無論、おのれら如きの全身全霊に滅ぼされはすまいぞ、人間ども」 にたり、と笑い。「今だ、戦友。やっちまえ」と、白装束の男の悪戯っぽい笑みに、危機を感じ、漸く、すぐそばで唸る大馬力のエンジン音に気づき、 「おらァぶっッ潰れろトカゲ怪人ン!」 横合いから時速100kmで突っ込んできた0.5トンの二輪車に、物の見事に吹っ飛ばされた。 ◆◆ 通常の大型二輪をさらに一回り大きくした、特注仕様の巨大バイクがモトクロスバイク並の跳躍力で怪人にきつい横槍を与えた。さすがの体躯もその身を飛ばされるだけだった。 「崇之、相変わらず派手な登場だね」 青い炎に包まれた髑髏のイラストを背負った黒いライダースーツの男、鈴木崇之がにやけて答えた。 「最近、こいつが暇していたからちょうど良いや」 跨る鉄馬に手を叩いて答えた。そして備えていた槍 雷光 を手にし、肩にかけた。 「さてと…坊主と嬢ちゃん。お膳立てしたんだ、きっちり始末してみな」 ◆◆ だが、飛ばされたモノホイルスネークヘッドはすぐさま立ち上がる。 先ほどの地獄の門、おそらく相手は誰一人気付いていなかったのだろう。自分があの地獄の気を 食らっていた事 に。 かつての陰陽師達が 自分を滅ぼす為に 大儀式を経て開いた地獄の門を逆手に取り、自らの力と成す事で、彼は更なる暴威となり、襲い来る人間も妖魔も全て喰らい己の力とした。 先ほどまで先世の3割程度の力しか出せなかったものが6割、7割ほどまでか、回復している。 「さてと…坊主と嬢ちゃん。お膳立てしたんだ、きっちり始末してみな」 先ほど、自分を吹き飛ばした鉄の馬に跨った牡が、あの2匹にそう告げている。 ――始末? この自分を? 先ほどの己すらどうにもできなかったあの雑魚共が? 彼は地に宿る龍の眷属、ここが校庭である事が彼にとっての幸いだった。先ほどとは違い、地獄の気を喰らった事で彼の中に宿る チカラ も強くなっている。 モノホイルスネークヘッドは高く嗤い、その手に持った草刈機を地面に叩きつけ、叫ぶ。 「先ほどの地獄の門を開いてくれた事に感謝するぞ、小娘!」 それと同時に校庭そのものがまるで海の様に波立ち始める。それはぬかるむわけではないが、まぎれもなくそれは彼にとって最も戦いやすい足場である。 彼は、再び草刈機を地面に叩きつけるとそれによって出来た2メートルほどの高波に飛び乗った。 4人は、その現実に驚きを隠せないでいる。この波そのものがまるで水の性質を持つ土の様になっていたからだ。 「くっ!」 真琴が即座に射撃、しかし波に阻まれその矢は怪人に届かない。その質量に偽りはなく、崩れてきた波を避けるように4人は散開して、それぞれが怪人を狙おうとする! だが、それを察してか、 「のまれろ、人間風情が!」 地に再び足をついた怪人が、まるで杖を大地に突き刺すかのように草刈機を地面に突き刺した瞬間、そこを中心として巨大な土波が周囲に溢れだした! ◆◆ グラウンドの土が盛り上がり波となって押し寄せる。彰は慌てて走り出す。走りながら周囲を見渡した。完全に逃げ場は無い。 「冗談じゃねえ。死んじまう!」 復讐心によって支えられていた彰の勇気は絶望と恐怖に押し潰されそうだった。心が恐怖に支配された瞬間、神器は重さを増し彰は持っていられなくなった。彰は神器を捨てる。そしてさらに走る。 (怖い!怖い!!怖い!!!) 恐怖で気が狂いそうになった時、土波はついに彰を捉らえた。 「うあああ…!」 彰は耳を塞ぎ、目を閉じる。そして勇気も意識もその身体も全て土波に押し潰された。 凄まじい轟音が過ぎ去っても彰は立っていた。 (生きてる……のか?) 目を開けるとグラウンドはめちゃくちゃだ。しかし自分は無傷である。 ――何故? 振り向くと真琴が立っていた。全身砂まみれでボロボロの姿だ。 「まこ…」 その名を呼ぼうとした瞬間、真琴の膝がガクンと折れ崩れ落ちる。彰は真琴を抱き抱えた。 「真琴!」 ◆◆ 「なぜ……!!」 何故庇った、と問おうとするその声は、真琴自身に押し止められる。真琴は、それでもなお何かを口にしようとする彰を手で制して、一歩前に出た。 「下がっていなさい、彰。ここは……危ないですよ」 その今にも消え入りそうな声に、彰は思わず反駁する。 「お前こそ下がってろ! 俺が代わりに―――」 「あなたは神器を捨てたんです。もう戦う必要はありません」 神器と一緒にその資格も捨てたのだ、と真琴は言う。 「それに、そもそもアレは貴方の戦いには関係ない、純粋な魔。アレを退けるのは、私たち退魔の一族の責です」 冷然と真琴はそう言い放つ。だが、彰は納得いかないと食い下がった。 「バカ野郎、その体で何ができるって言うんだ! 無駄死にするだけだぞ!」 「だとしても、武器を捨てた貴方には関係ないことです」 「な……」 余りに冷たい論理の展開に切り捨てられ、彰は次の句を告げない。 押し黙った彰を尻目に、真琴は怪人に向き直る。 「お待たせしました、地龍の方。気まぐれに感謝します」 慇懃無礼な真琴の言葉にも、怪人はただにたりと笑うのみ。それは、自身の絶対的な優位を確信した狩猟者の笑みだった。 ◆◆ 月明かりを反射する美しい銀髪は鮮血に濡れ、その輝きを失っていた。 すらりとした四肢は砂にまみれ、その繊細さを欠いていた。 先まで紙一重とはいえ回避していた俊敏な動きは今や翼を折られた小鳥の様。 彰はただ目の前の少女が敵う筈の無い相手に挑んでいくのを見続けるしかなかった。 ――己の手に重くのしかかった神器を思い出す。 初めて真琴のそれを手にしたときとは比べられないほどの重量を持っていた。 親友を殺された ただそれだけを心の支えにして神器を持っていた。 ――目の前を鮮血が舞う。 糸繰り人形の様に不格好に踊り続ける真琴。 殺さぬように、しかし生かさぬように細心の注意を注いで獲物をいたぶる怪人。 眼を塞ぎ、耳を覆いたくなる。 しかし、そんな状況に既視感さえ覚える。 それを見るのはいつぶりだっただろうか。そうだ、俺がこの世界に足を踏み込む切っ掛けを作ることになったあの日だ。 また、俺の目の前で人が死んでいくのか。 それで、また俺はその復讐を糧に神器を手に打倒を誓うのか。 それは、なんという自己満足。失敗を糧に見えもしない成功へ向けて何の反省もせずにもがきつづけるのか。それでは決して答えには辿り着けない。 万が一に辿り着いたとしてもきっとそれを答えと認識しないだろう。 「そうか」 合点がいった。 頭の中で、心の中で、体の中で、すべての歯車が噛み合った。 この世界では誰も彼もが命をかけて闘っている。 ふとした瞬間に燃え尽きてしまうかもしれない刹那の時を生きるために。 「俺はただ、観戦チケットを手にしていただけだったのか」 なんと滑稽な。 一緒に闘うと嘯きながら、仇を取ると誓いながら、俺は選手用の入口すら通らずに観客席で無責任に一緒に闘おうとしていたわけか。 払うべき対価を払わずしてこの場にいる者達と肩を並べたつもりだったのか。 ――答えは、出ているな? 頷く。 誰に対してでもなく、自らに対して。 もう、怯えはなかった。 膝を付き、顔から血を滴らせて、それでも戦意を喪失しない真琴に近寄る。 「もう貴方には、関係がないんです、下がっていて、くだ、さ、い」 足音だけで気付く辺りさすがと言うところか。 荒い息に合わせて上下する背中はとても華奢に見えた。 黙って彼女達の間に割り込む。 「がっかりさせて悪かった…選手交代だ」 ◆◆ もはや抵抗するよりも蹂躙される方が楽だった。神眼が答えを教えてくれても、命令を実行することができない。最初の数撃は避けることができたのに、と歯がゆく思っていたが、今では体を動かすこと自体が苦痛だ。 嬲られている、というのはこういう感覚なのかな――。自棄になった私は、摩擦で擦り切れそうになった体を何度も起こす。何度でも起こす。今こうして戦えるのは、少なくともこうして敵意を見せ付けることができるのは、私一人なのだ。 松田さんも、鈴木さんも、あの砂嵐にやられて倒れたのだろうか。神眼に聞いてみると、答えはイエス。少し遠くまで飛ばされて気絶しているらしい。いったどの辺りにいるのかを自分の力で確認したかったが、宙に浮き、叩きつけられ、切断されない程度に四肢に傷を刻まれる中ではどうしようもない。私に自由などないのだから。 とりあえず、心中で嗤っておこう。 経験を積んだ大人がすぐに沈められた事実を。 そして、この校庭にいる少年を、巻き込んでしまったことを。 復讐を餌にして、無理やり誘い出したようなものだ。今のところ現状に文句はないようだが、いずれ問題は起こるだろう。彼の境遇故、いつかは渦に引き寄せられてしまうだろうが、何も知らないでいる方がよかったのかもしれない。 全てが始まった数日前。無理やりにでも、ここに来させないべきだったのだ。 彼が家を出た直後に、後ろから弓でぶん殴ってやればそれで済んだ話なのだ。 いまさら後悔しても遅い。ただ今はとにかく、彼が逃げるまでの時間を稼ごう。 これで何度目になるのか、震える足を弓で支えて立ち上がる。しかしすぐに弾き飛ばされ、地面を無様に転がっていく。その衝撃で土が口の中に入り、唾液と混ざり合って舌に纏わりつく。その感覚に無性に腹が立って、砂を噛み殺す。じゃり、と音がした。怨嗟のように絶えず鳴らし、暫くして思いっきり吐き出す。こんなことをするなんて、私はついに狂ったか。 怪人は動きを止め、その爬虫類独特の無機質な瞳を向けている。飛び出た口が何かを伝えようとしているようだが、生憎ながら聞こえなかった。ただなんとなく、いたぶっても倒れないことに悦んでいるように見えた。 そして再び、不恰好な装備品を構えて私に肉薄する。 だが、その巨体は私に届く前に間に誰かが飛び入り、変わりに吹っ飛ばされた。 そしてその誰かは、車線上に入っていた私を巻き込みながら、放物線を描いて落下した。 素人でしかありえない、無駄だらけの行動だ。 だからこそ、それが誰なのかが分かり、何故なのかが分からない。 「いてて……」 私を守るように地面に叩きつけられた少年は、静かに私の体を横にさせる。一般人ならばそれだけで大ダメージのはずなのに、彼はものともしていないようだ。 頭を軽く掻いて、私と怪人を交互に見る。怪人は、少し距離の離れたところにいた。 「無事じゃ……ないよな。まあその、なんだ」 ――生きててよかったよ。 場に不釣合いな、まるで初めて告白をする学生のような、初々しさが溢れる微笑。スニーカーで一度地面を蹴り飛ばして土を飛ばす。無論、メートル単位で離れている相手に届くはずはない。 逃げてくれればよかったのに。怪人と衝突する前の数秒で彼が言った台詞を思い出す。 「な……で……?」 声は届かなかったのだろう。彼が歩みだしてからも、振り返ることはなかった。 今ので極限状態から開放されてしまったのか、意識は保てても、体を動かすことはできなくなっていた。 ゆっくりと力強い足取りで怪人に向かっていく。 少し前まで逃げ腰だったのが嘘のように。 その手には、彼が保身のために投げ捨てた神器が握られている。 「――来いよ、トカゲ野郎。女の子虐めて悦ぶその精神、叩いてしばいて作り変えてやるからよ」 ◆◆ 「お、坊主もやる気でてきたな」 崇之は校舎上で様子を眺めていた。崇之の目には薄く緑かかった立方体の空間に囲まれた校庭の中に怪人と若い戦士二人の姿があった。 「やる気出てもらわないとわざわざ結界張った意味がない」 横の公平は答えた。すでに校庭一帯に遮断結界を張り終えた公平は二人の姿を見た。 「今回はあくまで二人の力の見定めと経験ですから」 「にしちゃ結構な相手だと思うが」 「だからです。中途半端な相手じゃ力は出せないでしょう。真琴の力と…」 「あの坊主か」 「ここで使えないならいりません」 にやける崇之。 「彼女も自分の力をまだ半端な眼だけと思って欲しくないのですがね」 公平は柔らかな顔になり、真琴を見つめた。 「混血の力か…まぁ、そいつは後の楽しみとして」 崇之は前に乗り出した。 「そろそろ決着つけてもらいましょうか、ご両人」 ◆◆ ヒュォ! と唸りを上げて彰の神具が怪人へと襲いかかる! 本来、鞭の先端は使い手次第で音速に到達する武器となりうるモノ。鞭の使い手としては素人の彰だが、呼吸は一定に保ちつつ、速度を落とさないまま、身体を軸に円の体捌きで怪人を連打する! (こいつ、効いてないのかよ…ッ!?) 当然、武器としての性質は軽いものに鞭は属する。熟達者ならば鞭で斬る事も可能だろうが、そこまでの習熟度を自身に期待してはいない。 一方の怪人は、その鞭の乱打とも言える打撃を真っ正面から全て受けきってなお、平然としダメージを受けているようには見えない。 ――怪人が、動いた。 まるで、目の前の露払いをするかのように、武器すら振らず手で鞭の先端を弾く! 彰はそれに合わせてバックステップ。 今までの連打でダメージは、おそらくない。否、ダメージ自体はあるかもしれないが……そう言えば、爬虫類は痛覚を持たない、という話を聞いた覚えがある。 無痛、と言う事は自由に動かせる限りその身体の能力は低下しない、という事だ。 「先ほどとは打ってかわったその態度。面白い」 ニィ、と口の端を持ち上げて笑う怪人。その視線の恐怖を受けてひるみそうになる心を、強く叱咤する! ――思い出せ、俺はさっきコイツを吹っ飛ばした! まだ相手が俺を侮っている間に突破口を見つけないと…! あの時、俺は何をした? 俺は何を考えた? 状況を整理し、思い出し、今持ちうる情報の真偽をさておいても、手段を組み上げ、あとは、浮かんだ考えを実行する! 「貫けえッ!」 イメージは、真琴が放った矢! それは、自分が先ほどまで振るった鞭と違い、ただ鋭く、的を撃ち抜くかのように怪人の脳天へ向かう! 一瞬、怪人の表情が歪み、身体1つ分怪人がずれた。彰は即座に次のイメージを強く描く! 先ほど振るったような円を描く鞭のしなり、それを利用して怪人の肩口を捕らえるように巻き付け――! 「斬れろおッ!」 怪人の肩に直接触れている部分が刃となるイメージ。次の動作は、言わばチェーンソーと同じ意味を持つ! 彰は叫びと同時に、全力で鞭を引く! その瞬間、青色の血と共に怪人の腕が宙を舞った! 「……これで、終わりか?」 怪人は、嗤っていた。自らの腕が切り落とされたにも関わらず、今までと変わらず嘲笑の表情で。 だが、彰は自分の考えが正しかった事を悟る。この神器と呼ばれる武器の能力は自身が強く思い描くモノを反映する。 それは、先ほど目の前の怪人が土に水の性質を持たせたのと同様のモノ。今回は腕だったが、次は足を狙う! 「ふっ、くははは、かはははははははははは!」 「な、何が可笑しいッ!?」 哄笑。それは愉悦。怪人は嗤う。高々と気持ち良さそうに。 片腕を失ってなお、彼が嗤う理由。それは……! ――ずるり、と言う音と共にその腕が再び 生えた 。 彰は歯噛みをする。痛覚がない、という特性を持つならば外見から『トカゲの尻尾切り』も想定出来たハズだ。 ただ、普通のトカゲと明らかに違う 再生力 。おそらく回復力も並の比ではないのだろう。 だが、諦めない。目の前の敵を討ち斃す為に、彰は再び鞭を構えた。 ◆◆ 彰は怪人を睨み据える。手にした鞭がヒュン、ヒュンと小刻みに空を切る。 「……お前は死ね」 彰の言葉に怪人が嘲笑った。そして彰に向かって一歩踏み込もうとする。その時! ヒュオ 鞭が素早く怪人の足元を打ち据えた。怪人の目にも止まらぬ電光石火の速さで。えぐられた地面から砂埃が微かに巻き上がった。 いつの間にか。 彰の鞭は、生き物のように動いていた。 彰は鞭を握り締めているだけだが、その鞭の先端は蛇の鎌首のように浮き上がり、怪人を向いている。 (こういう事か) 彰は心の内で呟いた。真琴が言っていた血管に溶け込むイメージではなく、己の意志と気が鞭に流れ込んでいくイメージによって、神具は彰の意志で自在に動くようになっている。彰の意識と直結した神具は、今や眼前の怪人を倒す為に、一分の隙すら見逃さずにうごめいている。 (……息の根を止める!) それが彰の強い意志であった。瞬時に鞭の先端が銀光を発して怪人向かって一直線に突き進む。 自身の不死性に絶対の自信を持つせいで、怪人の反応は鈍った。鞭の先端が怪人に襲い掛かる。 鞭の先端が怪人の口の中に突っ込んだ。そのまま後頭部に突き抜ける。 だが鞭の動きは止まらない。後頭部から突き抜けた鞭の先端は、孤を描いて、再び怪人の後頭部に襲いかかったのだ。怪人の呻きが上がった。 鞭の動きは止まらない。 彰の顔は必死の形相だ。死力を振り絞っているかのようだ。 怪人の顔の周囲を銀色に輝く鞭が縦横無尽に突き進み、そして、「パン!」と爆ぜる音がした。 月光の下で屹立する怪人の頭が粉みじんに吹っ飛んでいた。 しかし…… 怪人はまだ生きている! 「と…… とどめだ……!」 彰が最後の力を振り絞った瞬間、少女の高笑いがどこかから聞こえてきた。あの小学一・二年生の少女の声が…… ◆◆ 高笑いが聴こえる。 あの少女。言霊を操るあの少女の声が笑っている。 それがどうした。 彰の耳に届いた声は、彰の心に通りはしなかった。彼はただ、決意を完遂する。うねる彼の神具/鞭。 鋭い刃のような一撃が怪人の胸を断ち割り、重い戦鎚の如き一撃が怪人の腹を叩き折り――光のような一条の矢が、青い血にまみれて露出した怪人・モノホイルスネークヘッドの心臓を、欠片も残さず消し飛ばした。 屋上で、二人の男たちが胸をなでおろす。 「何だ、根性あるじゃないか。どっちも」 「予想外か?」 「小僧はともかくな。お嬢がなぁ。意外、意外」 笑う公平。笑う崇之。 「ま、そのくらいじゃないと、バイクが無駄になるところだったよ」 「…飲まれたままか、勿体無い」 「かわいい後輩どものためなら惜しくないさ。散々こき使うくらいで赦してやるよ」 ひどい男だな、と公平が唸り、知らなかったのか、と崇之はまた笑って、結界を解いた。 どこか遠くで、少女と男が佇む。 (何が可笑しかったのだ、戯言使い) 「何がですって? 面白いわよ。面白くないの、 オメテオトル ?」 (年を取ったトカゲが死んだ。それの何が面白い) 少女―― マストオーダー の、悪意と好意とが入り混じった妖艶な笑み。 「彰お兄ちゃんよ。お兄ちゃんは人間なのに、怪人・モノホイルスネークヘッド…あれほどの神性を討ち破ったのよ。とってもすごいことだと思わない?」 男――“オメテオトル”の躊躇ないいらえ。 (思わん。最初から判っていたことだ。騒ぐことではない) 何でも視える眼に頼りすぎじゃないかしら、と少女は思ったが、口にすることはしなかった。 オメテオトル 以外の自分たちが補えば良い。それが彼女たちの決まりだ。 (それよりも、不確定要素が消えた。この機を逃すべきではないぞ) 「ええ、それは分かってるわ。彰お兄ちゃんはクタクタだろうけど」 知ったことではないな、と、闇に融ける オメテオトル の眼が、不可解な光景を浮かべた。 未来のことである。それは間違いない。だが、『いつ起こるのか』が判らない。 一瞬、混乱する。「どうしたの?」 少女の声。答えるために冷静さを取り戻す。 (…いや。気をつけよ、戯言使い) 金色の眼が、“全てを視る者”の口が、その情景を告げる。 神性を帯び、異形に変化する畸形の刃に引き裂かれる、大小様々の人体。 「…お兄ちゃんが?」 (さて、そこまではな。こんなことは初めてよ。なんにしても、変化する武具はアレしか無い以上、彼が狂うのだろうさ) 「信じられないわ」 (そうは言うが) 「貴方の眼だものね。…でも、お兄ちゃんが…」 ふわりと、少女も闇に融けてゆく。 まさか、『虐殺』だなんて。 そんな一言が、どこからともなく滲んで消えた。 怪人は死んだ。 怪人が作り出した、悪意の塊みたいな濁流も消えた。怪人の死体と、鈴木崇之が乗り捨てたモンスターバイクを道連れに、もとの校庭の形に、荒々しく戻ってゆく。どちらも呑まれて、地中深くに沈んでいった、後。 「隠蔽が大変だ」 松田公平が太刀を払う。 「豊子様にお任せだ」 鈴木崇之が、気絶した二人の若者を担ぎ上げる。 その行く手を阻む、小鬼、悪霊、屍鬼、怨霊の群れ、群れ、群れ。 「突破も大変だ」 松田公平が愚痴っぽく言って、走り出す。 「公平君にお任せだ」 鈴木崇之がしれっと言い放ち、走り出す。 そう、今宵は偽りの満月。しかし、月が未だ欠けぬなら。 ならば。『百鬼夜行』は、終わらない。 ◆◆ 雷鳴のような乾竹の音(ね)と、地響きの様な踏込みの音(おと)が交錯した刹那、雌雄の影は別たれた。 残響の漣を示すかの様に女の長髪が靡いて揺れて、その剣尖は正中の正面に静止している。 対して、男の太刀筋は逆袈裟だった。大股の踏み込みと低い体(たい)。視線は虚空を睨め付ける。 二人は背中合わせだった。 「これは引き分け、かな?」 残心を解き、振り向いた女が言った。女は、千夏だった。 「いや、零コンマ三五秒程僕の太刀が遅れていました。貴女の勝ちです」 慇懃な口調。癖のある短髪と細い眼を有した青年も、振り返って答える。松田公平である。 それならやはり相打ちだと思うがなぁ、どちらも死んでしまうし。そんな風に不満げな言葉を漏らしながらも、内心嬉しそうな千夏。 二人は旧友だった。と言っても、友と呼ぶに足る程の期間親交をもっていた訳ではないが、少なくとも千夏はそう思っていた。 それはまだ彼女が大学生だった頃。新たなる刀の道を研鑽するべく長期休暇を利用して所謂武者修行の全国行脚に勤しんでいた時に、飛騨の山中に在した小さな道場で彼女達は出会った。 その流派、陽家田村流と言う。公伝される歩みを信じるのならば、祖は坂上田村麻呂であるらしい。昨今珍しい、打刀ではなく太刀を使う刀術を伝える一派だった。 何故彼が今この道場にいるのかと問われれば、それは偶然というに他ならない。彼が少し前に仕事でこの町へ入った時、たまたま千夏と遭遇し暇が出来たら手合わせをしようと誘われここに至ったのだ。 「しかし懐かしい。随分と久しぶりだなあ、松田君。正直言うともう会う事もないんじゃあないかと思ってたよ」 「それはこっちもですよ。いや、お手合わせできて光栄でした。ますます腕を上げられて」 朗らかに微笑む、白袴の男。その言葉は真実心から思ってのものだった。 ――だった、のだが。 千夏はこう思う。 確かに今回は良くて彼女の勝ち、悪くて相打ちという結果だが……それは彼の刀法の特色による結果なのではないか、と。 以前彼の稽古場に顔を出した、もう五年以上も前の話だが、その時千夏は彼の型稽古を観察した事がある。 本来型稽古とは仮想敵を想定する物で、それをしなければ意味など無いに等しくなる。しかし千夏がその型を見ながら予想した仮想敵は、どう考えても人ではなかった。 まず体を低くする動作は、巨躯の相手から隙を盗む為であるし、受けをせず徹底的に避け続けるのは尋常でない膂力で太刀を折らせない為だ。 軽く見積もって、二間は越すであろう巨大な何かとの戦闘だった。 公平は、腕力の点では千夏を優に越していたが、その剣術が対人様で無い為この手合わせで敗北に甘んじたのだろう。では、彼の流派に人型を相手取る刀法があったのなら。千夏は背にひやりとした物を感じた。 ◆◆ 「ん」 じっと座禅の形を崩さずにいた僧衣の姿をした、短く刈上げた髪の男がようやく重い腰を上げた。そして一踏みで跳び、魑魅魍魎の中へと飛び込んだ。 「あ? 亮輔! お前いたんか?」 「ん」 群がる鬼たちを手持ちの愛槍 雷光 でなぎ払う崇之の横に現れた日野亮輔は軽くうなずいて答えた。 「…ていうか、相変わらず口数すくねぇなぁ」 長い付き合いである亮輔の素っ気無さには慣れているが、相変わらずつかみ所のない奴だと思った。 「ごめん亮輔、後始末やっておいてくれる?」 そういって公平は抱えた二人と共にその場に立ち去った。 亮輔は軽くうなずくと、首にかけていた二つの五鈷杵をヌンチャクのようにした法具 羅剛 を構えた。 狂ったように襲いかかる下級の妖魔に亮輔は羅剛をすばやく振り回し、次々となぎ払っていく。そして羅剛の軌道が黄金の弧となり、それが形を変え、隆介中心に法陣へと変化していった。曼荼羅に似た封印の法陣が完成形となり、黄金の光を放ち始めた。その光を見た妖魔らはその場に固まりだした。 「喝っ!!」 亮輔の一喝で周囲の妖魔らが次々と浄化していった。 そして校庭には亮輔一人残っていただけだった。 「……」 亮輔は懐に忍ばしていた世間で定番のチョコレート菓子の「プッキー・抹茶味」を取り出した。 亮輔はようやく口元が緩んだ。 =履歴= 2007/08/03 書式若干調整。26レス目で更新。 2007/08/04 38レス目で更新。Wikiに転記。 2007/08/05 39レス目で更新。本文より転記。 2007/08/06 44レス目で更新。本文より転記。 2007/08/07 48レス目で更新。本文より転記。 2007/08/08 55レス目で更新。本文より転記。若干調整。 2007/08/09 61レス目で更新。本文より転記。若干調整。 2007/08/10 64レス目で更新。本文より転記。 2007/08/13 79レス目で更新。本文より転記。レス間表示を◆2個に変更。文章中区分けは◆1つに。 2007/08/16 89レス目で更新。本文より転記。/分割作業によりモノホイルスネークヘッド戦終了までを暫定的に区切りとしました。
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女性の少年声をこよなく愛する青年 ドM候補 声劇部屋の主 「箱庭の世界で」、「鬼眼」、「散りゆく桜」という台本が好きらしい 劇部屋で台本をあげる際は以上の台本から人数に合わせて持ってくる 本人がいうには、ジャンルとしてコメディーの台本が苦手らしい 以前「鬼眼」台本の固定キャスト声劇の企画者 キャストとしても主人公 暁 慎夜 役として参加している 現在よっしープロダクション生粋の少年声ユニットのプロデューサーとして(通称よっしーP) SKYAAMとGreen☆Smileというユニットを立ち上げる SKYAAMメンバー:歌投稿メイン、サブの活動としてボイドラやラジオ 由李:リーダー・企画担当 綾汰 そうた:ユニット専属MIX師・企画担当 アルファ+β:企画担当 真琴@友達募集中 くろ:企画担当 Green☆Smileメンバー:ボイドラやラジオメイン、サブの活動として歌投稿 緑茶(ろくさ):リーダー そら吉 Leira 琴音 まつり riru@翔太 プロダクション専属絵師:真琴
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神無月の巫女 エロ総合投下もの 迷い猫 爆弾投下予告 注意 1.しつこくまた前世です 2.日常のお話。ほのぼの系 3.エロなし 4.ほんのちょっとだけイズミさん登場 5.注意書きが少ないことが要注意 それではいってみよー 学校を終え、姫子は真琴と2人で並んで帰っていた 笑い声をあげ楽しそうに談笑しながら、日の暮れた道を歩き屋敷の入り口が見えてきた 「あ…」 「どうされました、姫様?」 屋敷の入り口でピタリと歩くのを止め、振り返りじっと一点を見つめている姫子に真琴は問いかけた すると姫子はにっこりと真琴を見た 「真琴、すぐに屋敷に入るから先に戻っててもらえる?」 「え?あっ分かりました」 少し不思議そうな表情のまま頷き、言われたとおり屋敷へと入っていった 真琴の姿が見えなくなったのを確認した後、姫子は踵を返し入り口の近くに生えている大きな木に近寄りしゃがみ込んだ 「おいで」 「……」 手を差し伸べ言うその視線の先には草むらに隠れるように小さくなっている黒い仔猫がいた 姫子は一目見た瞬間どうしてもこの猫が気になって仕方がなかったのだ しかしその仔猫は姫子が優しく声掛けるも警戒心が強いのか、姫子から視線を離さずにピクリとも動かない 近くに生えてた猫じゃらしを振って気を惹こうもビクともしない 恐いのか時折「みゃあー」と鳴いている。座ったまま一歩近づくと、仔猫も素早く一歩下がってしまう 「お前、親と逸れてしまったの?」 言葉など通じないのに怯えているようなその仔猫に笑顔で言い続ける 一人立ちするには少し早すぎる猫のサイズ。姫子はどうしても放っておけなかった 優しく声を掛けても、おもちゃで誘惑しても真っ直ぐ自分を見据える不安そうな仔猫の目 その仔猫の目には見覚えがある 初めて出会ったときのあの子もこんな風に怯えていたっけ… 姫子は懐かしそうに目を細めた 「大丈夫、怖がらなくてもいいのよ」 愛情をこめ呼びかける。すると、ずっと縮こまっていた仔猫が立ち上がりゆっくりと恐る恐る姫子に近づいてきた そして差し伸べられた姫子の手の平に甘えるように頭をすりすりと擦り付ける 姫子は自分を信用してくれたその仔猫を抱き上げその小さな顔をじっと見つめた 「少し小さいけど美人だね、お前も」 「にゃあーん」 可愛い声で鳴く仔猫。姫子は仔猫に似ている遠い昔ここに来たばかりのときの彼女を被らせていた 「ただいまー」 仔猫を抱いたまま屋敷へと入り、草鞋を脱いで玄関に上がった 「あ…姫さ…」 「ん?」 自室に戻ろうと足を向けた時ふと誰かに呼ばれた気がして振り向いた 「お帰りなさいませ姫様ぁ~っw!」 「あら、イズミ達」 姫子の帰宅に下女のイズミ、ミサキ、キョウコの3人が大きな声をあげパタパタと姫子に向かって駆けて来た 途中「きゃっ…!」と小さな悲鳴が聞こえたがイズミはそのまま姫子の前に立った 「お帰りが遅いのでどうしたのかと皆で心配しておりましたわっ」 「ごめんなさいね」 いつもと変わらず大袈裟過ぎとも思えるイズミらの出迎えに姫子は苦笑しながら応えた 「あら?どうされたのです、その仔猫」 「ん?ああこの子?表にいたのよ。親猫と逸れてしまって迷い猫のようなの」 姫子の抱く仔猫の存在に気づいたイズミに姫子は腕に抱く仔猫の背を撫でながら答えた 「ま~可愛いですわねぇ」 イズミが仔猫に顔を近付けると姫子の腕の中に隠れるようにしていた仔猫が突然「ウゥ~~ッ!」と低い声で唸り声をあげた 爪を立て恐いのか怒っているのか毛が逆立っている 「ほらほら、イズミ達が大きな声出すから恐がってしまったじゃない」 「えぇ!?そ、そんなぁ~っ」 姫子の言葉にぱっと猫から離れ困ったようにイズミは慌てた 仔猫を落ち着かせようと背を優しく撫で、おろおろと困っているイズミ達に姫子は微笑み 「そうだ、腹を空かしてるみたいだから魚でも用意してもらえる?」と頼んだ するとイズミは表情をぱあっと明るくさせ「はい!分かりましたわ!」と台所の方へと嬉しそうに消えていった 走って廊下を曲がっていくイズミ達がいなくなったのを確認し、静かになった廊下で姫子は振り返った 「千歌音、大丈夫?」 「はい…」 先ほどイズミとぶつかったあとずっと物陰に隠れていた千歌音が腕をおさえながら出てきた 「私を迎えに来てくれたの?」 気が小さく控えめな性格の千歌音に近寄り微笑むと、千歌音は顔をあげほんのりと頬を染める 「え?…あ、姫様が中々屋敷に戻られないから様子見てきてって真琴さんに頼まれて」 「そう、ごめんね。わざわざありがとう」 思い出したかのように答えた千歌音に礼を述べると千歌音もほっと笑顔を浮かべた 姫子の抱える仔猫に目をやり、「その仔猫どうされるんですか?」と訊ねた 「ん?あぁここで飼ってあげたいのだけど、お父様猫は好きじゃないのよね…」 少し残念そうな表情で仔猫を見ると、姫子を見つめていた仔猫が不安を読み取ったのか「みゃあー」と小さく鳴いた 安心させるように姫子は笑って仔猫の額をこりこりと指で撫でてやった 「明日村を回って飼ってくれそうな者を探すわ、この村のものは皆優しいし」 気持ち良さそうに目を閉じる仔猫を姫子は母親のような優しい目で見つめる 微笑ましいその姿に千歌音は心が温まっていく 「お優しいのですね、姫様は」 見るもの全てを惹きつけるその美しい横顔をうっとりと見つめながら言う かつて自分がここに連れられて来た時からもずっと変わらぬ姫子の優しさに胸の奥がきゅんと熱くなる 「弱いものは放っておけない性質なだけよ?」 千歌音の問いに顔をあげ笑みを浮かべながらさらっとそう答える そう当たり前のように言えるところもまた姫子の魅力なのだと千歌音は思う 見詰め合う2人は互いに微笑んだ すると姫子の腕に抱かれた仔猫が起き上がって「にゃあーん」と千歌音に向かって鳴いた 「お前、千歌音は恐くないのね」 「え?」 イズミの時とは違い興味津々で身を乗り出す仔猫を見つめ嬉しそうに言う そして何か思いついたのか「じゃあ、千歌音に仕事をあげる」と千歌音を見た 「は、はいっ」と姿勢を正す千歌音にひょいと仔猫を渡した 「え?あ、あのー…」 仔猫を渡され目を丸くする千歌音ににっこりと微笑み 「あとで私の部屋でご飯食べさせるから、千歌音がこの子に餌を与えてやって」 「えっ…?わ、私がですか?」 驚く千歌音。姫子の部屋へは普段用が無い限り真琴以外は入ってはならない その誰もが憧れ行きたがる姫子の部屋へと招かれ、胸の鼓動が早まる 頬を染める千歌音に姫子はゆっくりと頷いた 「だから、後で私の部屋にその子を連れて来てね?」 「…はいっ!」 姫子の誘いに千歌音は嬉しそうに頷いた 嬉しそうな千歌音に姫子も微笑み仔猫の頭を撫で「じゃ、ご飯もらってくるから」と言って台所へと歩いていった その後姿を見送ったあと、じっと自分を見つめる仔猫に目を落とした 「良かったね、お前も姫子に拾われて」 「にゃあーん」 優しくそう呟いて自分と似た境遇の仔猫の頭を撫でてやった そしてその後、仔猫に餌を与えながら仲良く遊ぶ2人の姿があったそうな END
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アニソン アニソン(た行検索) 探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕 曲区分 曲名 歌手 作詞 作曲 編曲 OP1 ナゾ!ナゾ?Happiness!! ミルキィホームズ こだまさおり 高田暁 高田暁 ED1 Lovely Girls Anthem 麻生夏子 こだまさおり 平田祥一郎 平田祥一郎 IN ナマコソング ミルキィホームズ 森脇真琴、桜井弘明 桜井弘明 武藤星児 IN ヨコハマを歩こう 米倉千尋 こだまさおり Akihiko Ono Akihiko Ono IN 私はあなたを導いてゆく NICO 森脇真琴 伊藤賢 伊藤賢 IM ヴィーナス戦線異状なし 佐々木未来、橘田いずみ こだまさおり 鈴木裕明 鈴木裕明 IM ムーンライト探偵S N 三森すずこ、徳井青空 こだまさおり 鈴木裕明 鈴木裕明 関連商品リンク OP1 - ナゾ! ナゾ? Happiness!! - ミルキィホームズ CD ED1 - Lovely Girls Anthem - 麻生夏子 CD 探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕 ボーカルアルバム BLOOOOM!!!! 探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕 (1) Blu-ray 探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕 (2) Blu-ray 探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕 (3) Blu-ray 探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕 (4) Blu-ray 探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕 (5) Blu-ray 探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕 (6) Blu-ray アニソン アニソン(た行検索) 探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕
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乱回胴 vs 須藤真琴 がらんとした教室で須藤 真琴はため息をついた。恥ずかしがりの彼女にダンゲロス・ハルマゲドンは荷が重過ぎる。 必要な戦いであることは理解しているが、それでも自分の出番が来ないことを願ってしまう。 ――だが、闘争の女神は些細な望みですら許さない。 近づいてくる足音に彼女が顔を上げると、2教室分ほど先に男が立ち止まったのが見えた。 「ば、番長グループ、須藤真琴だな!」 悲鳴に近い呼びかけと、ビシィ!っと音がする……と形容するには幾分かためらいの混じった動作で向けられた指に、思わず真琴はうなずいてしまう。 「我が名は乱回胴!百鬼を払い夜行を崩し、悪夢の夜を泡と消す者……学園に朝をもたらす者だ!!」 名乗りと共に男は木剣を振り上げる。 だが、遠い。逃げるにせよ能力を使うにせよ、2教室分という距離は十分すぎると思えた。 ――おそらく頭の弱い奴なのだろう。 彼女はそう考え、能力は使わず仲間が来るまでの時間を稼ぐために距離を取ろうとした。 「貴様ら魔人は、学園の夜明けに必要ない……朝の霞に滲んで消えろ!」 その瞬間、乱は叫びと共に自らの足へ柄尻を全力で振り下ろした。 意味不明な行動に須藤が身構えた瞬間、乱は一足飛びで須藤に肉薄していた。 ありえぬ速度の接近、跳躍と述べたほうが適切な移動方法。いかなる奇跡が乱に舞い降りたのか。 否、奇跡ではない。 その正体はチキンスレイヤーによる衝撃制御。オサレな台詞により発動したチキンスレイヤーは防御を無視した乱の足にダメージを与えず、大地へ衝撃を透過させた。 つまり彼は――その全身全霊を持って、地面を蹴ったのだ!! いかに魔人と言えど、人類の限界に近い力で接近されては逃げられる道理がない。 無防備な須藤の脳天を叩き割ろうと振り上げられるアロンダイト。 狙うのは必殺、即死させなければ魔人は食いしばり、最後の力で抵抗してくる。 乱の武器が鈍器である以上、一撃で殺すのならば頭部を潰して即死させるしかない。 「剣風は逆巻き轟轟と荒れ、柳に在らぬは断ち折れ消えよ!奥義、轟天風乃剣!!」 チキンスレイヤーの起動条件たるオサレな台詞を叫び、彼は木剣を振り下ろす。 避けられぬ一撃、もはや須藤には防御する術はない。 ……だが、その一撃は胴へと叩き込まれ、須藤の脳天を叩き割ることは無かった。 ――このとき、二人の間には不可解な現象が発生していた。 13年後、ある漫画で心滴拳聴と呼ばれるこの現象は二人に共通項―極度の恥ずかしがり―がある故に発生し、二人に勝機を与え、奪っていった。 ――死にたくなるほど恥ずかしい。俺、人としてマジ痛い気がする。 もし、この声を聴いた瞬間須藤が乱をあざ笑っていればアロンダイトは振り下ろされず、乱はショックで家に帰り引きこもっていただろう。 ――あ、私死んだ。 もし、この声を聞いた瞬間乱が須藤にアロンダイトを振り下ろしていれば須藤は即死していただろう。 だが、 ――でも、俺はヒーローになりたい! 恥ずかしさより夢を取ろうとする乱の生き方を須藤は美しいと思ってしまい、 ――顔、見られたらヤだな。 捨てられぬ自分に近い須藤の望みに乱は共感してしまった。 ゆえに須藤には乱を笑えず。 ゆえに乱に須藤の面を割るようなことは出来なかった。 もはや二人の間に戦いは成立しない。戦うには相手を知りすぎてしまった。 この先は語るまでもない。 乱は自分に近いものにオサレな醜態をさらしたことで凹み、須藤は最期の力を振り絞って生徒会に一矢報いようとするだろう。 どちらの向かう先にも同じく死が待っている。二人の邂逅は二度とない。 だが、だがそれでも、もう一度めぐり合うことがあるならば――
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ジュエルペットきら☆デコッ! Blu-rayセレクションBOX Blu-rayBOX発売日:9月20日 全国テレビ東京系列放送され、で大人気のジュエルペットシリーズから、“きら☆デコッ! "が待望のBlu-ray発売決定! ★描き下ろしイラストBOX ★豪華声優陣によりオーディオコメンタリー ★声優陣サイン入りポストカード ★作品解説ライナーノーツ 2012年放送。2013年9月20日、Blu-rayBOXが発売。前シリーズにジュエルペット サンシャインが、次回作にジュエルペット ハッピネスがある。 http //www.tv-tokyo.co.jp/anime/jp-kiradeco/ 監督 森脇真琴 原作 サンリオ・セガトイズ シリーズ構成 ふでやすかずゆき キャラクターデザイン 宮川知子 美術監督 武藤正敏 色彩設計 坂本いづみ(~36話)、石黒文子(37話~) 撮影監督 五十嵐慎一 CGディレクター 宇根信也 CGスーパーバイザー・管理 菅友彦 編集 中葉由美子、村井秀明 音響監督 岩浪美和 音響効果 野崎博樹 録音調整 山口貴之 音楽 渡部チェル 助監督 佐藤まさふみ(~19話) アニメーション制作 スタジオコメット 脚本 ふでやすかずゆき 江夏由結 井上美緒 杉原研二 金杉弘子 竹内利光 大場小ゆり 絵コンテ 森脇真琴 高柳哲司 石踊宏 山本三輪子 渡辺健一郎 佐藤まさふみ 豊玉三郎 宮崎なぎさ 喜多谷充 島津裕行 麦野アイス 金崎貴臣 大久保政雄 桜井弘明 島崎奈々子 川崎逸朗 稲垣隆行 山本天志 山口暁生 演出 原田治 信田ユウ 福井俊介 石踊宏 徐恵眞 坂口竜太郎 渡辺健一郎 倉谷涼一 萩原露光 室谷靖 関野関十 山口暁生 佐藤まさふみ 島崎奈々子 秦義人 三沢伸 佐藤和男 森脇真琴 作画監督 小田嶋瞳 梶浦紳一郎 飯田清貴 日高真由美 兼子秀敬 本田辰雄 松本勝次 筆坂明規 金城美保 池内直子 森亜弥子 鶴田愛 山下敏成 高橋敦子 古池ゆかり 野道佳代 小田多恵子 水野貴子 野田康行 加藤壮 穐本ゆかり 飯野亨 宮川知子 近藤瑠衣 大沢美奈 一川孝久 和田佳純 山崎展義 洪範錫 ■関連タイトル ジュエルペットきら☆デコッ! Blu-rayセレクションBOX 映画ジュエルペット スウィーツダンスプリンセス/おねがいマイメロディ 友 愛 ジュエルペット きら☆デコッ!ミュージカル ~めざせ!NO.1アイドル~ ピアノミニアルバム やさしくひける ジュエルペット きら☆デコッ! シール ぬり絵 楽典付♪ OP・EDテーマ 芦田愛菜/ずっとずっとトモダチ 初回限定DVD付 3DS ジュエルペット 魔法のリズムでイェイッ! ジュエルペット NEWキラデコチャームトランク ジュエルポッドダイアモンド キラデコダイアモンド手帳 ジュエルポッドアクセサリー ネックストラップクリーナー付 パープル ジュエルポッド ダイアモンド きらデコッ シール 12 フィギュア・ホビー:ジュエルペット きら☆デコッ!
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引き継ぎの残り二キャラはアラン、犬神にしようと思います。犬神はロールでテリーさんから記憶引き継ぎの話を頂いていたので記憶を一部引き継ぎ(はっきりと覚えているわけではない)でお願いしたいです。 - カメレオン (2018-09-24 01 39 19) 引き継ぎに関して質問なのですが、名前だけは同じままに中身は実質的に別キャラという形で、所謂IFバージョンでのキャラ作成は引き継ぎ扱いに該当するのでしょうか…? - ◆1l7w67iV.c (2018-09-24 00 15 44) 一応、同姓同名ではあるので引継ぎに該当します。理由に関しては、スレの雰囲気上の問題ということでご理解下されば…… - ◆lTlfuInPquXm (2018-09-24 01 07 10) ありがとうございます。東雲五十鈴、ミツキの二キャラを来歴、能力共に大幅に変更した上で引き継ぎますのでお願いします…! - ◆1l7w67iV.c (2018-09-24 15 04 55) お疲れ様です、引き継ぎキャラですがなしで行こうかなと - 紅咲 (2018-09-23 23 13 05) すみません途中送信です、もしリクエストがあれば受け付けます! - 紅咲 (2018-09-23 23 14 30) 引き継ぎですが、まずはエリーゼを引き継ぎたいと思います。後の二人はまだ決められていないのでもう少しお待ちを… - カメレオン (2018-09-23 03 12 05) 引き継ぎキャラの能力を弄りたく思います。性格の方も少々弄りたいなと思うのですが大丈夫でしょうか? - 星導 (2018-09-23 00 33 35) 大丈夫ですよー! - ◆lTlfuInPquXm (2018-09-23 21 59 23) 名前や能力といった大きなところはそのままで年齢や能力の詳細のような細かいところを変えて引き継ぎたいのですがこれは大丈夫なのでしょうか…? - 黒塚(中) (2018-09-19 20 46 04) はい、大丈夫ですよー! - ◆lTlfuInPquXm (2018-09-21 03 07 55) 了解です!回答ありがとうございます〜 - 黒塚(中) (2018-09-21 12 30 42) 名前も外歴もガラッと一新しますが、現在は千尋と阿留多伎の二名のみ引き継ぎ予定です。他のキャラは予定がありませんが、ご要望があれば受け付けます。 - ラビット (2018-09-19 03 52 52) 引継ぎ予定は議論のほうでも言いましたがシンラ(+ベルっち?)です。投下されたキャラシートを見てるとジョーカーさんの異能を引き継ぐのはやりすぎかなと思っているのですが、どうなのでしょうか……? - シンラ中身 (2018-09-18 21 17 51) こちらも、実際に運用してみないことには何とも……能力が余りにぶっ飛んでいない限り、査定等で弾くことはありませんので、その辺りは適時調節して頂ければ - ◆lTlfuInPquXm (2018-09-18 21 32 24) 了解しました。これから出てくるキャラのレベルにもよりますが、初期装備からは外す方向でいったん考えたいと思います - シンラ中身 (2018-09-19 01 42 31) 現時点での引継ぎ予定は有宮のみですが、スペックはどの程度まであった方がいいでしょう?リセット後の基準がどのあたりまでか把握できていないのですが、向こうで実銃振り回すのはやり過ぎでしょうか。 - スパロー (2018-09-18 20 33 58) 実際に運用してみて空気を掴まないことには、何とも言い難いですね……結局のところ、その場の状況で適時調節されるのが良いかと思われます - ◆lTlfuInPquXm (2018-09-18 21 27 32) では現状維持、かつ所持品の変更という形で一旦進めようかなと。回答感謝です。 - スパロー (2018-09-18 22 35 13) 前に有宮を引き継ぐと言ってましたが、ちょっと思う所があるので少し考えさせて頂いていいでしょうか。この件は一旦保留とさせて頂く形に… - スパロー (2018-09-21 23 51 16) 火々里と外道院のみを引き継ぐ予定です。質問なのですが火々里の方の異能を初期の頃の異能に戻すのは可能でしょうか? - 火々里 (2018-09-18 20 03 56) 大丈夫ですよ~!むしろそっちの方が動きやすいかもしれないです。ところで、椚瀬と赤霧の関係はどうしましょうか?もし引き継がれる場合、複雑な事情はさておいて「椚瀬と赤霧は付き合っている」くらいのふわっとした感じになりますが… - ◆lTlfuInPquXm (2018-09-18 21 35 12) できれば関係は継続できれば嬉しいですね〜、ふわっとした感じでこちらは大丈夫です! - 火々里 (2018-09-18 21 47 19) アレックスは引き継ぎます。ただメイン降格なので稼働率は低くなりますね……他にこのキャラとはまだ続けたいとか自分にあったらお願いします - アレックスの人 (2018-09-18 17 27 20) 柊真を引き継ぎます。 - 柊真 (2018-09-18 15 04 27) お疲れ様です。特に問題がなければ霧亡柘榴を引き継がせていただきます。 - 柘榴中身 (2018-09-18 10 50 49) 質問なのですが、「名前や容姿が似ている別人」を作成しようと思うのですが、それは引継ぎ扱いになるのでしょうか? - ◆wglGXjqBPM (2018-09-18 09 20 27) その場合は問題ないかと思われます。いわゆる同姓同名のキャラクターを対象としたもので、スレの雰囲気に直接関わるものですので、上記のように明文化しました。 - ◆lTlfuInPquXm (2018-09-18 10 54 32) お疲れ様です。陸山麻絵を引き継ぎます - 鬼久 (2018-09-18 09 02 25) 引継ぎキャラの通知です。椚瀬杏子と古牧濃紗を引き継がせていただきます。各キャラクターとの関係を引き継ぎたい方は、こちらのツリーにレスポンスお願いします。 - ◆lTlfuInPquXm (2018-09-18 05 02 18)
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136期チーム総括、来期への展望 今期はヤクルトの連覇を阻止すべく、また久々の優勝を勝ち取るべくスタートした それでもローテーションに2名のルーキーが名を連ねるなど、経験豊富なベテランが少ないだけに、一気に勝負をかけたいところ 初日は負け越し2つの4位と波に乗れそうで乗れない惜しい戦いが続くも、2日目以降は投打共に勢いを取り戻し、順調に貯金を増やしていった それでも首位ヤクルトとの差は開いていき、最終的には13.5ゲームの差がついてしまった 貯金9での2位はなかなかのものだが、「来季こそは」の思いは強い 打線は9人中7人が2桁本塁打、投手もスペランカー選手がMVP、ルーキー紀藤真琴選手が新人王を獲得するなど、確実に地力は付いてきている MVP 野手 伊曾保選手 テノ選手がなかなか調子を取り戻せず苦しむ中、 核弾頭に中軸にと様々な打順に適応し、自身久々の2桁本塁打を記録した。 リーグを代表する選手へと成長する為のきっかけの年となるだろうか? 投手 スペランカー選手 40試合に登板するなどシーズンを通じてフル回転。 0点台の防御率を残し、見事MVPを獲得した。 今期絶好調の四方堂ナリカ選手へと繋ぐセットアッパーとして大ブレイクを果たした。 136期チーム成績 年度 順位 勝ち 負け 引分 勝率 打率 防率 得率 本塁 盗塁 失策 監督 コーチ 136期 2位 70 61 4 .534 .271 2.71 3.4 96 5 91 王 高井 136期個人成績 登録野手 ポジション 選手名 製作者名 打率 安打 本塁打 打点 四球 犠打 盗塁 守備率 捕 パスカル DDS .268 156 10 45 43 0 0 .403 一 藤井 山本 .319 181 15 60 67 0 0 .986 ニ ゆきんこ 政宗 .282 164 13 65 51 0 0 .982 三 BE BE .249 131 8 40 24 0 0 .959 遊 ジオ マーク .248 137 11 57 51 0 0 .979 左 ハーバー ボシュ .262 130 2 26 23 39 5 .985 中 亀田 凡田 .279 153 8 46 67 0 0 .979 右 伊曾保 伊曾保 .283 168 13 47 67 0 0 .957 DH テノ ヤンマ .250 136 16 56 76 0 0 - 登録投手 ポジション 選手名 製作者名 登板 防御率 勝 負 S RP 投球回 奪三振 先 徳田 クロ 25 2.30 11 8 0 0.0 172 0/3 63 先 †悠姫† 悠登 24 2.28 9 11 0 0.0 174 0/3 84 先 ジャニ之 yf 23 3.88 7 9 0 0.0 139 0/3 63 先 ソロモンよ 私は帰ってきた 22 2.82 7 7 0 0.0 137 0/3 77 先 紀藤真琴 遅球王 20 3.01 9 6 0 0 128 2/3 34 先 実は4世 ういうーい3世 21 4.68 5 11 0 0.0 125 0/3 60 中 sly スラィリー 24 2.28 5 2 0 8.8 47 1/3 30 中 魍魎 京極堂 29 2.00 2 0 1 8.6 63 0/3 26 中 瓢 合歓 43 2.29 5 3 2 11.9 70 2/3 29 中 スペランカー ハムスター 40 0.95 6 0 2 20.4 75 2/3 43 中 トーマス びたわん 22 3.80 4 3 0 3.2 42 2/3 21 抑 四方堂ナリカ エロゲオタ 39 1.63 0 1 36 0.0 38 2/3 27 祝!個人タイトル受賞者 選手名 タイトル スペランカー 投手MVP・ベスト9 紀藤真琴 投手新人王 四方堂ナリカ 最多セーブ・ベスト9 瓢 GG 入団・退団情報 入団 退団 来場者数 今日の観客数 - 昨日の観客数 - 合計観客数 -