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焼き林檎 よくいる場所:雑談超特急KIP! 年齢:15歳前後 性別:男 住んでいる場所:不明 その他 掲示板「雑談超特急KIP!」の創設者である もと駅長 「特急」と板の名前にあったり、前の名前が「駅長」だったり 鉄道好きに思うだろうが 本人によればそこまで好きじゃないとのこと 荒桜でめっためたに叩かれていた
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泉どなた ◆Hc5WLMHH4E氏の作品です。 遥か上空から草原を見下ろすと、 そこには鎧に身を纏った女戦士が大きな剣を振り回し 大型のドラゴン三匹との激しい戦いを繰り広げていた その様子を映し出す17インチモニターの光を浴びながら マウスの上に右手を乗せ、滑らせながら人差し指を押す そうすることで、ただの空想上のキャラクターに魂が宿り、女戦士は私の分身となる 戦況はあまり芳しくはなかった 一匹だけならたいしたことない敵でもそれが三匹となると話は別 爬虫類の化け物は三本の矢のごとき結束力で襲い掛かかり 健闘も虚しく、鋭い爪の餌食となった私は、悲鳴を上げ力なく倒れてしまった せっかくいいアイテム拾ったというのに、また『やり直し』か 「……あ、もう行かないと!」 現実世界の時計を見ると、その針は午後2時35分辺りを指していた 今日は徹夜明けで、こんな時間だというのに意識は完全に覚醒してはいなかったけど パソコンをシャットダウンさせ、欠伸を振りまきながら身支度を始める 『ご乗車有難う御座います』 バスに揺られること数十分 唸るようなブレーキ音と車体の軋む音を発しながら、 バスは目的地である建物のすぐ脇にある停留所に停車した 『お降りの際はお足元にご注意ください』 今まで乗っていたバスが排ガスを撒き散らして去っていく様子をしばらく眺めた後 ゲートをくぐり、もはや通いなれた白く大きな建物を見上げる 同じ間隔で並ぶ窓の中で、一番上の右から五番目にある、 白いカーテンの掛かったその部屋に私を待っている人がいる だからこうやって毎週休みになるとこの場所へやってくるってわけ 入り口の自動ドアが開き、中からの独特な匂いが私の鼻に触れた それはこの施設内に数多く存在する、何らかの用途に使われる薬品の匂いかもしれない 私はこの匂いを嗅ぐたびに胸が締め付けられる思いだった 「病院なんてだいっきらい……」 何度そう呟いたことだろう 辺りを見回すと、赤ちゃんを抱く女性や三角巾で腕を縛った男性 その他ここに入院している患者など沢山の人が居る でもその大多数は、歳を召した老人達だった 備え付けられた椅子に腰を下ろし、ある人は杖に手を掛け またある人は腕組をして目を瞑り それぞれが自分の名前を呼ばれるのを静かに待っている そんな高齢化社会を象徴する光景を横目に通り過ぎると 私は最上階へと向かうべくエレベーターに乗り込んだ 今見た老人達には『若いのだから階段を』と言われるかもしれないけど 人間の楽をしたいという執念が創り上げた便利な道具や機械 その恩恵を幼少の頃から受けてきた私達若者にとって 便利なものを使わずに、わざわざ身体を動かすというのは無駄なこと 『苦労は買ってでも』そんな言葉は到底似合わない 別に全ての若者がそうだというわけじゃなく、ただ私が怠け者なんだろうけど エレベーターが上昇していく間身体にGが掛かり、一度それが強くなったかと思うと やがてその感覚が薄れ、電子音声が『五階です』と階数を告げた 扉が完全に開くのを待たずにエレベーターを降りると、すぐに左へ 「やっほーキョンキョン」 少し重たいスライド式の扉を開け、なるべく元気な声をその病室内へ響かせる すると呼びかけに気付いたキョンキョンが私に眠そうな顔を見せてくれた でもその目線は私の顔に向けられてはいない いや、確かに私が立つ扉の方向を見ているんだけど 焦点が定まっていないというか、ただ音のする方を見ただけだった 「いつもすまないな」 キョンキョンは宙を見つめたままそう語りかけてきた 私が病室に入ってからのキョンキョンの第一声は必ずこの台詞だ ある意味お約束というか決まり文句というか、これがもはや挨拶代わりになっていた そして私がここに来て必ずすることは、これまたお約束と言うべきもの 「また林檎剥いたげるね」 「もういい加減飽きたんだがな」 毎週毎週私が来る度に林檎を食べているわけだから飽きるのも当然 でもビタミンAだかBだか知らないけど栄養があるわけだし、いくつ食べたって別に問題はない それに何と言っても、 「病院に女の子が来たとなれば林檎を剥くのが決まりでしょ」 「誰が決めたんだそんなの」 「細かいことはいーから」 私の拳より大きく、私の身体を流れる血液より赤い 照明の光を反射させて輝く林檎の皮を、果物ナイフで丹念に剥いていく 全て剥き終わると、持ってるだけで果汁が滴り落ちてきそうな 水気を多く含んだ白っぽい果肉が顔を出した それを食べやすい大きさに切ってキョンキョンの口元へ近づける 「はいアーン」 「アーン」 シャクシャクといい音を立ててキョンキョンが林檎を味わう ついでに私も一切れ食べたけど、とても甘くて美味しかった 「美味いな」 「飽きたんじゃなかったのかな?」 「そのはずだったんだが」 「切ってくれた人が良かったんだね」 「そういうことにしておこう」 こんな風に二人仲良く林檎を食べるだけなら、 キョンキョンに会いに来るのが楽しみで楽しみで仕方ないはずなのに 今はこうやって病院に通い続けるのが少し嫌になってきている それは誰のせいでもなく、自分のせいだからどうしようもない ひとしきり林檎の味を堪能した後、私はキョンキョンにトイレに行くと告げ ゆっくりとした足取りで扉まで行き、静かに開けて外に出た そして扉から数歩足を進めると、立ち止まって深呼吸をした 心を落ち着かせるために行う手段なのに、何度繰り返してもその息は震えている そんな何の気休めにもならない無駄な抵抗を終えた後 トイレには行かず、今度は最初来た時と打って変わって ドタバタとわざとらしく足を鳴らしながら、扉を勢い良く開けてまた中に入る それから私は声を張り上げ、いつものようにこう言うんだ 「キョン! 今日もアンタに会いに来てやったわよ!」 若干声色を変えてね それはあまりに突然であまりにあっけないものだった 今まで当たり前のように存在していた人が一瞬で消え去ってしまうのだから その様はまるで……まるで今朝やっていたゲームみたい でも一つだけゲームと現実とで大きく違うことがある ゲームの世界であれば、一度ゲームオーバーになったとしてもすぐにコンティニューできる でも現実では、いくらコントローラーのスタートボタンを押しても元には戻らないし 記録してあったデータを読み込み、事の起こる前の段階からやり直すことも出来ない ここで物語は、まだ寒かった12月にまで遡る 私がある知らせを受けたのは、家に帰ってしばらく経って 本棚から一冊のマンガ本を取り出し、ベッドに寝転んだ時だった ページを開き、読んだ文字を脳内でキャラクターの声に変換していると 一日中家に置き忘れていた携帯電話が着信メロディーを演奏しだした 相手をかがみだと確認した後、電話を受ける 「もしもしー? かがみ、どうしたの?」 「こなた今家にいるの!?」 私のユルイ口調での受け答えとは対照的に、かがみは慌てた様子で声を張り上げている そんな電話越しのかがみの声に、私は何か只ならぬものを感じた 「そうだけど、どうしたのさ?」 とにかく何をもってかがみが慌てるような状況に陥っているのかを聞かないことには 私もそれに対してリアクションをすることも出来ないわけで かがみと私のテンションが雲泥の差なのは仕方がないと言える だから一体何があったのかを尋ねているんだけど 「いいからすぐに来て!」 「どこに? どうして?」 慌てた人間との会話は、相手がどうも肝心なところを抜かして話しちゃうから どうしても質問が多くなってしまう やっとの事でかがみから聞き出した内容は、私を驚かせるには十分すぎるものだった まさかそんなことが起こるなんて思ってもみなかったから 百パーセントありえないと言い切れないのは当たり前の事だけど 「病院よ! ハルヒと……ハルヒとキョン君が――」 誰だって急にこんなことを言われたら、まず聞き返すに決まってる 「え、なに?」 「ハルヒとキョン君が事故にあったのよ!」 最初その言葉を聞いたとき、あまり実感が沸かなかった きっとかがみが嘘を付いてるんだなんてことを考えていた 「今黒井先生がそっち向かってるから!」 でもかがみの声の震えから、これが紛れもない事実であり そして必ずしも良い状況ではないということがうかがえる 電話を切ってしばらくして、迎えに来てくれた先生の車で病院へ向かった 沈黙の支配する車内で、心臓の飛び跳ねる音だけが激しく響いて 同時に考えてはならないことが次々と頭に浮かんできてしまう それを振り払うべく頭を揺らすも、蛇のように心に巻きついて離れなかった 不吉なことばかり考えてしまう自分と、それを否定し、打ち消そうとする自分 その二つの自分を何度も戦わせているうちに車は病院に到着し キーのボタンを押し車をロックする先生を待たずに、私は大急ぎで中へ駆け込んだ でも結局みんながどこに居るのか分からない 仕方なく、逸る気持ちを押さえながら先生と一緒に治療室へと向かった 治療室には電話をくれたかがみやつかさ、それから…… とにかくみんな集まっていて、それぞれが暗い顔で佇んでいる あの古泉君でさえ暗い顔をしているというのに、ながもんは相変わらずだった でも私にはその顔が少し寂しそうに見えた 二つあるベッドの内一つには、まるでドラマのワンシーンのように 鼻と口の間に白い管を付けたキョンキョンが横になっている たった今まで口をすっぽり覆うマスクを付けていたらしい 『ザクみたいだな……』 こんな状況で、たとえ一瞬でもオタクなことを考える自分に苛立ちを覚える 隣には当然ハルにゃんが寝ていると思っていたけど ただ白いシーツが掛けられた無人のベッドがあるだけだった 「ね、ねぇハルにゃんは……?」 誰に言うでもなくそう尋ねてみたけど、答えが返ってくることはなかった そして場の空気が凍りついたことに気付いた私は、それ以上皆に質問を投げかけることが出来なかった この重苦しい空気に、聞かなくともその答えが予想できたから それはここへ向かう車内で頭に浮かんできた事と同じだった 急に肩を軽く叩かれ、振り向くと黒井先生が外を指差し目配せをしている 「涼宮は別なとこで治療受けとるらしい」 そして先生は私の耳元へ顔を近づけ、さっき私が尋ねた質問に答えてくれた でも何故別なところに居る必要があるのだろう? お医者さんが言うには、キョンキョンはとりあえずは命に別状は無いとのこと そのキョンキョンの隣にハルにゃんがいないということは ……もう止めよう 何事も悪いほうに考えるのは良くない 「ウチの目の前やってん、二人が事故に会ったの」 病室を出てすぐの長椅子に座ると、先生は小さな声で つい一時間ほど前に目撃した事故の全容を話してくれた 「あん時な……」 コンビニに寄って夕食を買い、止めてある車へ向かっていた先生は 並んで歩くキョンキョンとハルにゃんの姿を見かけ、声を掛けるべく近づこうとしていたという でも近づいているのは先生だけじゃなく、1台の大型トラックが二人に迫っていた 「なんとかしょーと走ったんやけどな」 ハルにゃんの名を叫びながら走る先生より速く二人へ接近するトラック その鉄の塊は容赦なく、先に道路に出たハルにゃんと 事態に気付き庇おうとしたキョンキョンに衝撃を与えた 集まった野次馬達の声と、後から聞こえてきたサイレンの音 キョンキョンとハルにゃんが救急車で病院へ搬送される様子を、 先生はただ呆然と眺めることしか出来なかった 地面に落ちた弁当を拾うのも忘れ、それどころか落としたことにさえ気付かずに 「ホンマに申し訳なくてな、何もでけへんで」 後悔に耽る先生の悲しそうな顔は今でも鮮明に思い出すことが出来る しばらくして、キョンキョンは無事意識を取り戻した でもその代わりに大切なものを二つも失ってしまった それは光とハルにゃんだった でもハルにゃんが居なくなってしまったことを、キョンキョンは知らない 事故の記憶はハッキリとしないらしく、ハルにゃんがどうなったかも分かってないんだ そんなキョンキョンに、ハルにゃんのことを誰も言い出せなかった……誰も 『事故のショックがある程度収まるまで』 そんな言葉を言い訳にして 「いつもすまないな」 「な、何よ急に」 「忙しいだろうに、毎週欠かさず来てくれるだろ?」 「まぁそうね」 ハルにゃんの口調を真似て、素っ気ない態度で言葉を返すけれど、 それとは裏腹に、私の身体に納まる小さな胃がキリキリとストレスを訴えてくる 私の胸の内なんて知る由も無いキョンキョンは、しみじみとした様子で言葉を続ける 「俺がこうなってからある程度の時間が経ったが、その間不幸だと思ったことは一度も無い この退屈な病院での生活に刺激を与えてくれる人達が俺には居るからな」 でも、その中で一番大きな刺激であるハルにゃんはもう存在しない 今キョンキョンの目の前にいるハルにゃんは偽りだった その字は『人の為』と書くけど、ハルにゃんになりきりキョンキョンを騙すこと それはキョンキョンの為にはならないし、誰の為にもならない 私の姿を見たキョンキョンは、事実を知ったキョンキョンはどう思うだろう ずっと秘し隠しにしてきた私達にどんな気持ちを抱くだろう それはきっと良い方向じゃないはずだ だからといって隠し通すことが許されるわけないのに…… 「ご、ごめん」 「どうした? 何を謝ってるんだ?」 「ちょっとトイレ」 「あぁ」 病室を出て、割とすぐのところにトイレはある この病室はトイレに近くて本当に良かったと今になって思う お陰でいくら泣いたって、声を押し殺していれば誰にも気付かれることはない 『いつまで続けるつもりなの?』 本当だよ、いつまでこんなことを続けるつもりなんだろう 『それで彼は幸せなの?』 不幸だと思ったことは一度も無いと言ったキョンキョン それは『知らない』からそう言えるのかもしれない 『それで貴方は幸せなの?』 幸せ……今の私はその幸せから線を一本抜いた状態 自分で自分を、キョンキョンを巻き込んで今の状況に追いやったのに こんなところで涙を流して悲劇のヒロイン気取り 私ってどこまで自分勝手な人間なんだろうね トイレから戻ると同時に私は『涼宮ハルヒ』から『泉こなた』に戻った 二つほど食べ残っていた林檎は、もう既に茶色く変色し始めている 「それじゃ、今日はもう帰るね」 「いつもありがとよ、こなた」 泣いちゃったせいで少し鼻声なのは気付いてないみたい 「うん! じゃーね」 「ハルヒは帰っちまったみたいだから、よろしく言っといてくれ」 「う、うん」 別れ際に見せてくれた柔らかな笑顔 私にとってその笑顔を見るのはとても辛いことだった 「こなた」 病室を出て少し歩いたところでふと声を掛けられ 下を向いていた顔を上げると、目の間には紫のツインテールがあった 「あ、かがみ」 かがみの顔は普段私の知るものとは明らかに違っていた でもそれがどう違うのかはよく分からない ただ、怒りとも悲しみとも取れるような表情 複雑な感情が混ざり合った、とても形容しにくい表情だった 「ちょっと、いいかしら」 かがみは有無を言わさず私の手を引き、私は屋上へと連れて行かれた 最近少しは暖かくなってきたけど、屋上は風が強く 冷たい空気が私の体温を徐々に奪っていく 「ちょうどキョン君の病室の前まで来たときに、こなたが足を強く鳴らして 病室に入るのが見えたのよ、だから私も中に入ろうとしたら」 中からハルにゃんの声、正確にはハルにゃんの真似をする私の声が聞こえたんだね 本来なら聞こえるはずのない声が 「それで入るには入れなくて離れたところでしばらく眺めていたら、こなたがトイレに行くのが見えて」 そこまで言った後、かがみは屋上の冷たい手すりにもたれ掛り、空を見上げながら 何度かキョンキョンに会いに来たときの事を思い出しているようだった 「今思えばキョン君が、まるでハルヒが生きているかのように話してた その時は事故の影響だと思って、だからまだキョン君にはハルヒのことは知らされていないんだって……」 その先は声に出さなかったけど、かがみが何を思っているのか私にはわかった まさかこなたが真似していたなんて……そんなことを考えているんだろう 「ねぇこなた、いつまでもキョン君に嘘を付き続けるのはよくないわよ 私も一緒に行くから本当のことを言おうよ」 「いいよ、一人で言うから」 「……そっか」 真実を嘘で塗り固めても虚しいだけ そんなことはもちろん分かっていたし、 いくら声が似ていたってハルにゃんの代わりにはなれない 私が真似をしたところでハルにゃんが帰ってくるわけでもない そんなこともよく分かっていた ごめんねキョンキョン、ごめんねハルにゃん 許してなんて勝手なこと言えないけど、今本当のことをキョンキョンに伝えて 心の底から謝ろうと思ってるんだ……ホント勝手だよね 「あれ? 帰ったんじゃなかったのか」 「うん、ていうかよく私だって分かったね」 「まぁな」 戻ってきたときには、変色した林檎はもう無かった 何だかんだいって全部食べてくれたのか 今はそんなこと気にしてる場合じゃないけど 「あ、あのさ」 本当のことを言う為に戻ったというのに、いざキョンキョンを前にすると 喉まで出た言葉がそこで止まってしまう 「えっと……その」 代わりに出てくるのは沈黙を埋める為の短い言葉だけで どうしてもキョンキョンの顔を見ることが出来ない その顔はきっと私を見つめているから だからずっと下を向いていた 「こなた」 名を呼ばれたことで初めてキョンキョンを見る とても真剣で、全てを悟ったような顔をしていた そしてキョンキョンは本当に全てを悟ってしまったらしい 「何となくそんな気がしてたよ。 ハルヒはもう居ないんじゃないかってさ」 「え?」 「俺が聞いていたのは確かにハルヒの声だったが、どこか違和感があったんだ」 「そっか……そうだよね」 本人にその自覚があったかはさておき、キョンキョンはハルにゃんに一番近い存在だったんだもん それが私の演じるニセハルにゃんに不信感を抱かないわけがないじゃん 「まぁ確信は無かったが、そんな気がしてな」 そう言ってキョンキョンは小さく溜息をついた 今まで我慢していたけど、キョンキョンの寂しそうな顔を見て感情が一気に溢れ出した 私は涙を流しながら、ただひたすら謝罪の言葉を繰り返すことしか出来なかった 「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」 キョンキョンにしがみつき、そう叫ぶしかなかった 「こなた、もういいんだよ」 そんな私をキョンキョンは大きな腕で抱きしめてくれた でもそのせいで余計涙が溢れてくるんだよ 「別に恨んでなんかいない。 今まで辛かっただろう? もういいんだ」 「うぅ……キョンキョン」 「もうハルヒを演じなくていい。 アイツとはいつか必ず会える日が来る それまでアイツも大人しく……はないだろうが、向こうで待っててくれるはずだ」 「ゴメンナサイ」 「わかった、わかったからもう泣くな」 「だって……だって」 キョンキョンの優しさが逆に凶器となって私に突き刺さる 涙が止まらない、止めることが出来ない もういっそのことこのまま消えてしまいたかった 『あ~もう、いつまで泣いてんの!』 それは幻聴と呼ぶにはふさわしくない程ハッキリと聞こえた 涙を流し続ける私の耳が捕らえたのは 今まで真似してた私が言うのも変な話だけど、とても懐かしい声だった いつもキョンキョンに命令してた時と同じような口調、そして彼女特有の元気な声 その一喝が私の涙を吹き飛ばしてくれた 「気のせいじゃないか?」 「でも確かに聞こえたんだよ」 「きっと疲れてるんだよ。 今日は夜更かしせずによく寝たほうがいいぞ」 「うん、わかってる」 キョンキョンの言うとおり、疲れてるんだろうね でも自分の過ちを今ここで打ち明けて、一応は許してもらえたことだし 少しは心が軽くなった気はしないでもない 「それじゃーね、キョンキョン」 「あぁまたな」 「終わったみたいね」 病室を出るなり、またかがみが声を掛けてきた 私のことなんて気にせず先に帰ってて良かったのに かがみは私が終わるのを待っていてくれた 「アンタが心配でね」 「ありがと」 「どういたしまして」 私は本当に良い友人に恵まれているんだって今頃気付いたよ もしあの時つかさに出会ってなければ、当然かがみと会うこともなかった もっと言えば、かがみに宿題を見せてもらいに行った時に初めて かがみと同じクラスだったキョンキョンとハルにゃんに会ったわけだから もしかすると全てはあの外国人を撃退した瞬間に決まっていたのかもしれない でも、もしそうだとすれば二人を襲った悲劇も規定事項だったのだろうか そういえば、かがみは折角キョンキョンに会いに来たのに 私のせいで病室に入れなかったんだ 「明日にでも顔を出すからいいわよ」 「あ、良いこと思いついた!」 「何よ?」 皆まで言うなって感じだろうけど、病院に女の子が来たとなれば? それはもう一つしかない 「キョンキョンに食べさせてあげなよ」 「何をよ?」 「決まってるでしょ、林檎だよ」 「林檎!?」 「果物ナイフなら病室にあるからさ」 かがみが剥いてくれたらきっとキョンキョンも喜んでくれるはず 私ばっかりだと飽きるだろうし……まぁ林檎自体飽きてるだろうけどね とにかくこれはまたとないチャンスなんだからさ 料理が出来ないとか不器用だとか言わず、林檎の一個くらい剥いて口移しで食べさせたら そこからあんなことやこんなことになってだね、無事かがみの恋が実るってもんよ 「……こなた」 「なに?」 「やんないわよ」 とか言いつつ、ちゃっかりやるのがかがみなんだよね まったくかがみのツンデレ精神には日々驚かされる 「やんないって!」 こうやってかがみをからかうのも久しぶりだ というより、こんな風に笑ったのはいつぶりだろう これからはもっと笑えたらいいな いつかハルにゃんに会ったときに暗い顔してたら怒られちゃうよ 「そうだ、つかさは?」 「今日はお留守番」 「そうなんだ、でも――」 とりとめのない会話を続けながら、自動ドアを抜ける 少し歩いて振り返り、来た時のように建物を見上げると、 キョンキョンの居る505号室の電気はまだ赤々と灯っていた 「おやすみ、キョンキョン」 まだ寝るには早い時間だけど、そう言って私とかがみは病院を後にした 夢を見たんだ いや、こなたのことがあったから正直夢なのか現実なのかわからん だから勝手に夢だってことにしてんだけどな そろそろ寝ようと思って、MP3プレイヤーの電源を消して リクライニングさせていたベッドも倒して布団を被ったんだ 何故俺が一度も目にしたことの無いMP3プレイヤーをいとも簡単に操作できるのかというと こなたに手伝ってもらい、ボタンの位置を完全に暗記したからだ 最初は手こずったが、人間が進化の過程で記憶容量を大幅に大きくしたお陰で 失敗しながら繰り返し操作を続けていく内、たとえ見えないとしても 再生や停止はもちろんのこと、ランダムやシャッフルといった曲選択の細かい設定にいたるまで 全て指の感覚と頭に浮かべるイメージだけで容易に操作できるようになったわけである ……おっと、話が逸れてしまったな 静まりかえった病室で、ふと声が聞こえた 『まったく、私のモノマネなんて100年早いわよ!』 その声は懐かしいものでな、すぐに誰だかわかったんだ だからごく自然にそいつの声に答えた 「100年たったら死んでるだろ」 『私はもう死んでるわよ』 いくら夢だからって冗談きついよな? 現実であっても夢であっても、やはりアイツは変わらない 「ついでに聞くが、もしかしてそっちでもSOS団なんてのを――」 『当たり前じゃない! まだ団員はゼロだけど』 そりゃそうだろうな、わざわざ死んでからあんなのに入る奴なんていない 『言っとくけど、これはアンタの為なのよ』 「俺の為とはどういうこっちゃ?」 『だって、アンタは団員その1でしょ? だからこっちでも一番に入団するようにしてるのよ』 しかしだからといって俺が死ぬまで待つというのだろうか それは明日かもしれないし、はたまた何十年後かもしれない というか既にその時が来てたりしてな 『まだその時じゃないから、せいぜいのんびりしてなさい。 すぐこっちに来ちゃダメだからね』 「のんびりするのは俺の得意技だ、その点は安心してくれ」 『それこそ100年ぐらいかけてもいいわよ』 「わかったよ」 ハルヒにそう言われたのだから、後100年は生きれるかもしれんな そこまでくれば、いくら怠け者の俺でも天国行きの電車に乗り遅れることはないだろう 遅刻して罰金を命ぜられることもな 『楽しみに待ってるわ。 それじゃ、オヤスミ』 と、こんなやりとりがあったわけだが やはり夢だったんだろうな 目が覚めるともう昼で、僅かに光を感じた 太陽がこの病室内を照らしているようだ やって来た看護婦さん……もとい女性の看護士さんが テレビの置いてある棚の、引き出すタイプのテーブルの上に 少し形の歪な、皮を剥いてある林檎が置いてあったと教えてくれたが こなたなら俺を起こすだろうし、一体誰が来たんだろうな それとナースステーションに絆創膏を求めて、 俺と同年代くらいの女の子が恥ずかしそうに尋ねてきたらしい 「それで、あげたんですか? 絆創膏」 「私物をあげたの、キャラものだったから余計恥ずかしそうだったわ」 と看護士さんはクスリと笑い、俺に嬉しそうに語るが そのイタズラ口調は朝比奈さんにちょっかいを出すハルヒを思い出させてくれた 夢ではのんびりしてろと言われたが、俺達がハルヒの元へ行くのはいつになるやら きっと行った先でも朝比奈さんに如何わしい格好をさせて遊ぶんだろうね いや、朝比奈さんはこの時代の人間じゃないんだったな それなら代わりにみゆきさんあたりをとっ捕まえるに違いない そんなことを考えていると、ハルヒのあのバニーガール姿を想像してしまい いやらしく緩んでしまった口元に手を当て、必死に誤魔化した こなたが俺の様子を見たら、きっとナースに介抱されて変な妄想をしてると思うだろう 「やっほーキョンキョン」 噂をすれば、看護士さんと入れ違いにこなたがやってきた別に土日を潰してまで俺に会いに来てくれなくてもいいんだが 折角の休みをこんなヒマな病室で過ごすなんて嫌だろうし 「何をおっしゃいますかねキョンキョン」 「実際ヒマだろ?」 「わかってないなぁ」 見えはしないが、恐らくこなたは両手を広げて肩をすくめ 『あきれた』といったジャスチャーをしているに違いない 確かめようがないが、俺には分かる 「こなた、今日は林檎はいらないぞ」 「うん知ってるよ。 だってそれかがみが持って来た林檎だもん」 なるほどそういうことか、謎は全て解けた 「かがみに言っといてくれ」 「何て?」 「林檎美味しかった、今度来るときは絆創膏を忘れるな」 「あはは、了解」 俺は夢の内容をこなたに伝えようと思ったが、その夢の中のハルヒの声と いつもこなたが真似をしていた声とを聞き比べてみたくなった 「なぁこなた」 「んー?」 「もう一度やってみてくれ、ハルヒのモノマネ」 「ヤダよもうやんないよ」 よく考えたら昨日あんなことがあったってのにまた真似をしろはないよな ハルヒだって言ってたじゃないか、私のモノマネなんて―― 「ハルにゃんのモノマネなんて私には100年早かったね」 「あっ」 「どうしたの?」 「いや、なんでもない」 それは夢に出てきたハルヒの言葉と似ていた こなたはかがみが来るのを知っていながら、ちゃっかり持参してきた林檎の皮を剥いている 一応2つもいらないと断りをいれたが、こなたにとっては食べるより剥くことに意義があるらしく 俺が林檎を口にしようとしまいと、そんなことは関係ないらしい 鼻歌混じりに林檎を剥くその音を聞きながら、俺は顔を窓に向け、見ることの出来ない空を見上げた そこにハルヒの顔が浮かんでいるような気がして作品の感想はこちらにどうぞ
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【検索用 あかいりんこ 登録タグ 2022年 CeVIO hoki philo あ なつめ千秋 可不 曲 曲あ 落葉】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:なつめ千秋 作曲:なつめ千秋 編曲:なつめ千秋 ピアノ:philo(Twitter) ギター:hoki(Twitter) 絵:落葉(Twitter) 映像:落葉 唄:可不 曲紹介 恋も愛も欲しいのよ 曲名:『赤い林檎』(あかいりんご) なつめ千秋氏 の17作目。 歌詞 今日もまた知らないところで知らない誰かに優しくしてるの? 齧られた心がまだ痛いの… 帰ってきたらまたあなただけの呼び方で呼んで 今はまだ知ったかぶりでもいいの 頷いていたい だけど傘を差せばほら、雨は降るものよ 坂道を転げ落ちたような想いも熟れるほどに甘くて まるで赤い赤い林檎みたいね 少しだけ誤魔化したくてさ 初めて会った日の服を着てみた 偽物の言葉じゃ許せないよ 埃は優しく拭いて 3秒 視線そらさないで どこが好き?そんなこと聞かないでね どこだって好きだから 恋も愛も欲しいのよ サビてしまう前に この声はどうせ聞こえないんだからわがまましか言わないの なんて嘘だよ 今はまだ知ったかぶりでもいいの 頷いていたい だけど傘を差せばほら、雨は降るものよ 坂道を転げ落ちたような想いも熟れるほどに甘くて まるで赤い赤い林檎みたいね 今日もあなたの夢の中で泣いてやりたい コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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91 名前:Nana[sage] 投稿日:2006/05/04(木) 19 59 29 ID oTo8ewRK0 シドの林檎飴のサビって手扇子でしたっけ? 記憶が曖昧なので分かる方いたら教えていただきたいです。 94 名前:Nana[sage] 投稿日:2006/05/04(木) 23 27 20 ID JgedQP5LO 91 そうだよー
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イザグラが一晩でやってくれましたその2 ん、キャラ説明? 林檎は林檎で良いじゃないですか
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作詞 椎名林檎 作曲 椎名林檎 私の名前をお知りになりたいのでしょう でも今思い出せなくて哀しいのです 働く私に名付けて下さい お呼びになってどうぞお好きな様に 五月に花を咲かす私に似合いの名を 木通が開いたのは秋色の合図でしょう 季節が黙って去るのは淋しいですか 泪を拭いて顔を上げて下さい ほらもうじき私も実を造ります 冬には蜜を淹れて貴方にお届けします 私が憧れているのは人間なのです 啼いたり笑ったり出来ることが素敵 たった今私の名が分かりました 貴方が仰る通りの「林檎」です 美味しく出来た実から毎年お届けします 召しませ! 罪の果実
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道祖土 林檎 キャラ説明 キャラクターカード カード名 性別 マーク 属性 取得方法 1 2 3 道祖土 林檎/家出お嬢様 女 愛 覚 仲間 MONSTER OF GLASS1 スタンドカード カード名 取得方法 アブソルート・ドメイン/道祖土 林檎 MONSTER OF GLASS1
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鳴上林檎 プロフィール 名前 鳴上 林檎(なるかみ りんご) 通称 ナルカミ、林檎 性別 男性 生年月日 1996年度生まれ 年齢 不明(2018年度で21~22歳) 血液型 不明 一人称 俺 お友達 影山達也 概要 SOJ学院OB(2014年度卒業)。 在学中(当時2年生)に選抜クラス(第8期生)に選ばれ、CHaCK-UPの「木星人★ジュジュ」としてデビューした。 人物 2012年4月、SOJ学院に入学。 美波旅生の相棒。校内ではいつも一緒にいる。 基本的に美波の考えに同調しているが、天宮王成のことも憎からず思っている。 その場の空気に合わせた発言も多いため、やや真意が計りにくい人物。 探偵ものの漫画やドラマが好き。怪盗トリアイナの正体がジャン・ミナモトではないかと西園寺巌から聞いた際には、ノリノリで探偵役を引き受けていた。 関連項目 木星人★ジュジュ 脚注 [タグ]登場人物 登場人物(第三弾) 登場人物(選抜クラス第8期生) 登場人物(選抜クラス)
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椎名林檎 正しい街 アイデンティティ シドと白昼夢 やっつけ仕事 月に負け犬 丸の内サディスティック 茜さす 帰路照らせど… モルヒネ
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林檎ちゃん