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08/11/1 ┼ 月の移動 概要 月を任意の位置に移動させます。 月をリアルタイムに移動させます。 ノウハウ資料 今回はゲーム性とは縁遠いテーマですが、当研究室ではビジュアル面も重要視したいと思います。 時間をリアルタイムに更新させた時、太陽は動きますが月は停止したままです。これは少し残念です。 ◇ 月の位置を決める 月の位置を決めるパラメータは RollupBar の Environment の中に存在します。 パラメータ名の中で Latitude (緯度)、Longitude (経度)というものが有り、ここで月の位置を指定するのですが、実際には 「 方位 」「 高度 」 の方が合っていると思います。 Moon パラメータ パラメータ名 意味 Latitude 方位 ( 0 ~ 360 : 反時計回り or 北を中心に ±180 単位 : °) ※1 Longitude 高度 ( ±90 単位 : °) ※1 Size 大きさ ( 0 ~ 1 ) ※2 ※1 意味が有ると思われる数値の範囲で、設定できる数値はこの限りではない ※2 単なる(倍)ではない様子 ◆ 方位・高度の関係図 ※ 数値の単位は全て 「 度(°) 」 ※ もちろん Longitude 経度(高度) は、この方向の限りではない。 経度 ( 高度 ) を示す線が M 字形をしているのは間違いではありませn。 次の項目にある動画で、その様子の一部を確認する事ができます。 ここで一つ注意が必要なのは、 「 月は 180° 向かい合わせで2つ存在する事 」で、月を地平線に沈めて隠したつもりが、逆の空に出ているというハプニングが発生するかもしれません。月を隠す必要がある場合は、やはり Time Of Day ウインドウで月の輝きを調節する必要があるみたいです。 ◇ 月の位置を自由に決める 先程、月の位置は RollupBar の Environment から指定すると書きましたが、いちいち数値を入力して確認するのは面倒なので、見た方向に月を移動できるツールをフローグラフで作成しました。 ◆ 月の位置を自由に決めるフローグラフ ※ ページの最後で、フローグラフ xml ファイルのダウンロードを試験的に行っています。 ─ 使い方 ─ R キーを押している間だけ画面の中央に月が付いて来るので、好きな位置に移動させ、確定したい場所で R キーを離します。 R キーを離すと、 console に Latitude と Longitude の値が表示されるので、それをパラメータにコピペして下さい。 なお、出力されるデータの Latitude 緯度(方位) は、北 の 0° を中心に ±180° の形式です。そのままでも問題有りませんが、360° 形式が必要な場合は、申し訳ないですが手計算で変換をお願い致します。 動作の様子を動画にしてみた。 動画中で Longitude 経度(高度) を 80°まで上げた際に月が徐々に拡大して見えましたが、それが月の軌跡を M 字にした理由です。 Longitude 経度(高度) を上げてゆくと、だんだん月は大きくなるので、場合によっては Size で調整が必要となります。 90°になると、月のテクスチャが空全体を覆ってしまい、Size を 0 にしても効果はありませn。 この事より、自然に見せるのであれば、高度はせいぜい 80°まで。 後述する様にリアルタイムに動かすのであれば、60°前後までが適当ではないでしょうか。 ※ フローグラフについて 基本的にはプレイヤーの向きと視線の向きをそれぞれ DirToAngle ノードによって角度に変換し、月の位置を設定する MoonDirection ノードに渡しているだけのものです。 しかし、この DirToAngle ノードはその名の通り方向を角度に変換してくれるノードですが、、他ノードの dir から dir へ直接つなげば良いというものではなかった為、データの変換が必要となり、やや大げさなものとなりました。 この DirToAngle の研究結果については、別の機会に致したいと思います。 08/11/14 追記 ─ DirToAngle ノードについてのページを別途作成しました。 DirToAngles ノードの分析 ─ ◇ リアルタイムに月を動かす 上記の様に月の位置を決めても、停止しているのには変わりはありません。 やはり、リアルタイムに位置を動かして、現実に近づけたいと思います。 ちなみに、現実世界はこうなっているらしい… 太陽は東から昇る 地軸のズレは 23.4° 月の軌道のズレは、さらに 5° 一方、エディターの中はこうなっている 太陽の昇る(沈む)方角は自由に決められる。 地軸のズレ(太陽の通り道の傾き)も設定出来る。 (ただし、場所を赤道付近限定としているのか、「日照時間の変化」がつけられない。) 月は常に満月 この条件で、太陽と月の動きにリアリティを持たせたいと思うなら、マップが赤道上に有るとして、次の様に設定する事になります。 太陽を真東から昇らせる 地軸(太陽の通り道の傾き)を、(北半球で言う)夏なら北から 66.6°、冬なら南から 66.6°傾ける 月の通り道の傾きは、夏なら北から 61.6°冬なら南から 61.6°傾ける ─ 地軸のズレ(太陽の通り道の傾き)を測るには ─ 太陽が頂点に来るように現在時刻を 12時 に合わせ、「 月の位置を自由に決めるフローグラフ 」 で太陽と同じ位置に月を合わせると、おおよその情報が得られます。 ※ Environment Lighting ノードは太陽の位置を出力するノードと思われるのですが、正しい情報が得られない様子だったので、上記の方法で我慢するしかなさそうです。 月の位置をリアルタイムに更新する為のフローグラフを作成しました。 ◆ 時計回り( CW ) ◆ 反時計回り( CCW ) ※ ページの最後で、フローグラフ xml ファイルのダウンロードを試験的に行っています。 ─ 使い方 ─ 左下の3ノード ( 頂点時の時刻・頂点時の方位・頂点時の高度 ) に、月が最も高い位置に有る時の時刻と方位と高度を入力する。 Timer ノードの period パラメータで月の位置を更新する間隔を変える事ができます。 公式マニュアルによると、空の更新スピード ( Time of Day ウインドウ Current Time の Play Speed ) は 0.005 が良い値となっており、その場合、月の位置の更新間隔が 1 秒だと少しカクカク感が気になるかもしれません。気になる場合は 0.5 ~ 0.2 秒程度に変更するのが良いと思います。 ─ フローグラフの解説 ─ 基本として、 方位 0° に月が有り そこで月の高度は頂点に有り 時刻は 0 時である そこへ、まずは 「 方位・時刻 」 についての情報を追加する 月の方位を進める角度 例えば「 頂点時の方位 」が 180° であれば、月は 180° 進むので、0 時 の時点で月は 180° (南) に有る事になる。 月の方位を遅らせる角度 例えば 「 頂点時の時刻 」 が 3 時 であれば、180° から 3 時間分の角度をさかのぼるので、180° に到達するのが 3 時 になる事になる。 この様にして希望の時刻に希望の方位に月が有る事になる。 ここで、基本の 「 そこで月の高度は頂点に有り 」 について… 北をあらわす 0° を cosθ に入れる事によって、「 頂点時の高度 」 の最高高度を表す 1 倍 を得ています。 続いて「 高度 」 についての情報を追加する 頂点位置の調整 例えば 「 頂点時の方位 」 が 180° だったなら、希望した月の方位から 180° さかのぼった角度、つまり、北を表す 0° を cosθ に代入して、最高高度を得る事になる。 結果的に、希望する時刻・方位・高度に輝くの月の光を見る事ができるのです。 ◇ ファイルのダウンロード 今回は試験的にフローグラフファイルのダウンロードを実施してみます。 このファイルは体験版に付属の Sandbox2 で作成したものです。 この配布方法で他の環境で正常に動作するかは未確認です。 その点を留意の上、ご利用の場合は自己責任で宜しくお願い申し上げます。 月を自由に動かすフローグラフ 月の位置をリアルタイムに更新する為のフローグラフ 時計回り ( CW ) 反時計回り ( CCW ) ─ 使い方 ─ ダウンロードした xml ファイルを、適用したいマップファイルのあるフォルダに入れてエディターを起動し、フローグラフのウインドウから開いてください。 ※ いずれのファイルも、月が確認できる状態でご使用ください。 不具合など有りましたら、こちらへご報告をお願い申し上げます。 コメントページ 以上です、ありがとうございました。 ◇ 参考資料 現実世界について AstroArts 2.天球と座標系 Wikipedia 黄道 エディターのセッティングについて 公式マニュアル Time of Day Window Reference suitjump 公式マニュアル Environment Settings ┼ ┼ 無料レンタル
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その日は今年一番の寒波が到来しているとかで、学校創立以来の古さを誇る旧館、つま りSOS団が間借りしている文芸部の部室は、電気ストーブの弱々しい熱風では太刀打ち できないほどの寒さに覆われていた。 朝比奈さんが淹れてくれたお茶も、すぐに冷めてしうほどの寒さ。窓の外を見れば、雪 こそ降っていないものの、分厚い雲に覆われている。 そんな日に限って、今日は特にやることがない。平和と言えば平和な、暇を持て余 して行くところもない学生が、部室でぼんやりしている風景が広がっていた。 「どうかしましたか?」 窓の外に目を向けていたキョンに、チェスの対戦相手をしていた古泉一樹が声をかけた。 「いんや、そろそろ降ってきそうだなと思ってな」 チェス盤に視線を戻し、ルークをE-5に移動。今度は古泉が長考に入り、それを見計ら ってお茶に手を伸ばす。部室に入ってきたときに朝比奈みくるに煎れてもらったが、すっ かり冷たくなっていた。 「あ、新しいの淹れますね」 SOS団専属のメイド兼書記は目ざとくキョンの動作に気づいて席を立った。ちょっと 前までは電気ポットで沸かしたお湯を使っていたが、ここ最近はお茶淹れに目覚めたのか ガスコンロを使って温度計で湯温を計りながらお茶を淹れてくれる。 「んもう! あったまくるわね、この天気予報!」 コンピュータ研究部から奪ったPCで、ネットの海を彷徨っていた涼宮ハルヒが怒声を 上げた。またか、という顔つきで睨むキョンの視線も気づかないほど、モニターとにらめ っこを繰り広げている。 「今日は朝から雪だと思っていたのに、ぜんっぜん降らないじゃない!」 「いいじゃないか。これ以上寒くなられちゃたまらんだろ」 ハルヒが吠えればキョンがかみつくのも、ある意味あたりまえの光景だ。そして、その 返しが百倍になってくることもまた、東から昇る太陽が西へ沈むのと同じように必然のこ とでもある。 「何言ってるのよ。雪が降ったら雪合戦ができるでしょ。コタツで丸まってるのはネコの 仕事なの。ネコがいいとか言い出したら、猫耳つけて市中引きずり回すわよ。あ~も~、 今から降っても何もできやしないわ」 コイツのことだ、明日は交通機関が麻痺しまくりの大雪になってるかもしれん……。そ う言いたそうに眉根を寄せるキョンを余所に、ハルヒはマウスを投げ捨ててふんぞり返り ながら、アヒル口をパクパク動かして嘆息した。 「今日は解散ね」 団長の号令で、各々のメンツはそろって帰り支度を始めた。 せっかく淹れてくれたみくるのお茶を捨てるわけにもいかない、とばかりに1人残って お茶をすするキョンは、最後の戸締まりをして部室を出た。 なんだかんだと時間はもう遅い。部室棟から下駄箱までの移動ですれ違う人影は皆無だ。 「うん?」 誰もいないと思っていたが、上靴から履き替えたときに、粛々と外を見つめている人影 が1人。ダッフルコートを羽織り、フードまで被っている小柄な少女は、キョンの見知っ た後ろ姿だった。 「長門、まだ残ってたのか」 声を掛けてきたキョンに、長門有希その姿を確認するようにチラリと目を向けて、すぐ に外へ視線を戻した。琥珀色の瞳はただ、外を眺めている。 「何してるんだ?」 「雪」 ただ一言、風に流されればすぐに消えそうな吐息に混ぜて呟いた。 「ああ、降ってきたのか」 雪が降るのはわかっていたが、こんなタイミングで降ってくるとはツイてない。地面を 見ればうっすらと積もっている。ハイキングコースのような坂道で転ぶのはゴメンだな、 などと考えている間、有希は微動だにせず降り続ける雪を見ていた。 本以外で有希が注視し続ける姿を見るのは初めてだった。普段の彼女を知っている者な らば、雪なんていう毎年起こる自然現象を、ただ呆然と眺めている姿が不思議に見えても 仕方がない。 「そんなに珍しいのか?」 だから、キョンがそんなことを口にするのも、当然と言えば当然だった。そして何より、 何か思うところがあるような、他人が見てもわからないような微妙な表情の陰り。 有希がただ、降り続ける雪を漠然と眺めていたわけではないことをキョン見抜いている。 「ユキ……ねぇ」 それが、空から降るソレを指しているのか、自分のことを指しているのかわからなかっ たのか、有希はキョンに顔を向けた。 「ユキは嫌い?」 唐突な問いかけに、言葉が詰まる。その真意を測りかねて顔をよく見ようとするが、フ ードに隠れた顔は口元しか見えない。 「あ~……そうだな」 今度はキョンが、窓の外に目を向ける。音もなく降り続く雪は、うっすらと世界を白一 色に染め上げようとしている最中だった。 「小学生のころは雪が降ると楽しかったな。今は、積もったあとが大変って気分だ」 「そう……」 どこか、沈んだ声。有希はうつむいて、傘を広げる。話は終わり、とでも言いたげに歩 き出したその後ろ姿に向かって、キョンは降り続ける雪を見つめながら言葉を続けた。 「それでも、今も昔も思うのは……綺麗だな、ってことかな」 ぴたり、と足が止まる。 「……そう」 長いような短いような沈黙のあと、有希は鈴の音のような声で返事をした。 「ああ、長門」 呼び止めたキョンの言葉に、有希は問いたげに振り向く。 「その……なんだ、傘忘れちまったんだ。途中まででいいから、一緒に帰らないか?」 言ってから、今日は朝から天気予報で雪が降る予報が出ていたことを思い出す。 ──そんな日に傘を忘れるヤツはいないよな……。 キョンがそんなことを考えるわずかな間。3秒も経過していないだろう、そのわずかな 沈黙のあと、有希は傘立てにちらりと視線を向けてから、静かに自分の傘を差しだした。 「途中までなら」 〆
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序文。 最初に鳥の話をする必要がある。 両手に収まる大きさに、クチバシから尾羽まで灰色尽くめの居姿。いまいち華やかさに欠けるその鳥は彼の庭におちていた。 高い空に吹く風に乗り損ねたか、それとも羽を休めているところを獣にでも襲われたか。 いずれにせよ飛ぶ力を無くしているそれを、何かの縁だと保護して、しばらく過ごした。 さして広くはない部屋。 飼育にはあまり適してなさそうな部屋ではあるが、飛べない鳥には十分な空間だったろう。 飼うにあたって助言を仰いだ人間に渡り鳥だと教えられた。けれど、すぐには納得できなかった。 確かにこの季節になると毎年、ぽつりぽつりと小さな点のようにみえる鳥の如きモノが矢尻の形の編隊でもって空の底のような群青の高みを横切って行く。 その悠然とした姿と、部屋の隅で縮こまる柔らかい石のようなこの姿とがいまいち繋がらなかった。 あの高さで、あの小ささなのだ。 手の届く間近にいるのだから、もっと大きく見えて然るべきではないのか。 それほどに小さく頼りなく思えていたその印象は、羽根を広げたときに一変する。 きつく結ばれた毛玉がほどけるように体積を広げ、折り畳まれていた羽根がほぐれてひろがる。 体躯に比べて、あまりに長大な羽根。 窓からの光を遮り、部屋を一瞬暗闇に落とし込むほどのシルエット。 その長さや大きさを具体的に表現しようとしても、印象は漠として、いまいち言葉には出来ない。 羽根を広げたその姿は、その一度に見たきりで、二度目はなかったからだ。 折れた翼は癒え、試すように伸ばした羽根で空を打ち、そのまま窓へ、その奥にある空へ真っ直ぐに吸い込まれて。 やはり、とても小さな点となって消えていった。 鳥に、未練や愛着、もしくは恩返しを期待するなんて馬鹿げている。 渡り鳥なのだからとっとと旅立たねば迷鳥としてそのまま生涯を終えることにもなる。 唐突に終わった生活に拍子の抜けた落胆は覚えたけれど。 あまりどうという感想も抱かなかった。 物事が道理に従い当然という結末に落ち着いた満足と、それにともなう微かな失望。安堵の中の小さな落胆。 それだけである。 あるけれど。 羽根を広げたそのシルエットだけは驚きもあって強く印象に残り、その後に度々思い出すことになる。 でも、思い出したところで。 それはいまいち明瞭でない曖昧な感情が心の内に薄いにごりを与えるだけで。 どんな気持ちになれば良いのかわかなくて。 ぼんやりした顔と頭で、鳥の行方と同じ方角を眺めてみたりする。 で。それからそれほどの月日は経過していない同じ街の話。 けっこう活況。なかなか雑踏。 市場である。 庇の下で商う者。いかにも露天然とした屋台やら、地べたの敷布に商品を並べる者など。 長方形に伸びる街の中心をつらぬく大通りの両脇にそれら雑多な様態の店が並び、もちろん中心には人々が絶えず往来している。 お祭りというわけでもなく、年に何度かという定期市でもない単なる常設市だけれども、それでもこの混雑てことはそれなりに栄えている街のようだ。 交通の要所――とはちょっと言い難いその街は、それでも大きな森を迂回できる位置にあり、急ぎの旅でさえなければ休養地点として折良く立ち寄れる地点にある。 というか、そもそも。旅を常態としている者どもが世の過半を占めているこの世界において、「急ぎの旅」なんて明確な目的を持って旅をしている奴はけっこう珍しく、だからこその活況といえる。 と、いえるのだけど。 世の機微を知るモノは、これに「今のところは」と付け足したがるかも知れない。 そんな連中にご高説を伺えば、この世界はごくゆっくりとした具合にではあるけれども着実に「アダヒトの世」になりつつあると予測を垂れてくれる。 アダヒトとはタビビトの対義である。語意としてはつまり、旅に生きず、ひとところに住み続ける人々の事を指す。 元々はニンゲンという種族を指した言葉だった。それがなぜ定住者全体を指す語に変わったか――を説明するよりも先に、ニンゲンについて話をさせて貰った方が理解は早いはず。 ニンゲンってのは、サルをひ弱にしたような連中だ。 いまいち、パッとしない連中ではあった。 この世界という舞台に登場したはいいけれど、力は強くなく足も速くなく身を守る毛皮もないので環境変化に弱く平常温暖な気候でしか暮らせず寿命もさして長くはない。多少の器用さこそ持ち合わせてはいたけど、それでどうかできるでもない。 生存競争の落ちこぼれ容易く組分けられそうな種族であっというまに淘汰されそうだったけれども、この世に生まれ落ちたからにはどうにか生き延びねばならない。しかし他種族と比較してハンデだらけな生態に選べるような生き方なぞ限られていたので、結局は「なるべく目立たないように」「こそこそと」「ニンゲンどうし寄り集まって暮らす」という選択しか出来なかった。 惨めではある。 けれども、目立たず過ごすことに成功したのか、それとも世界全体からとるに足らぬ種族と断じられたかは知らないけれど、彼らは着々と繁殖を続けて、その結果に流動性を乏しくしてますます一所でじっと暮らすような生態を育んでいった。 地に根を張るでもあるまいに。一カ所に留まり続けるなんて食料が枯渇した場合やら捕食者に目を付けられた場合やらを考えるとずいぶんリスキーな生態のように思えるけれど、しかし事実として彼らは「子孫を遺さず息絶える」という種族的危険の回避に成功し、集団自衛や集団狩猟なんて方法を発見し、外敵を阻むための集落を築き、農耕や牧畜を発明し、自ら作った垣根の中で生まれそこから出でることなく死ぬという文化を作り上げた。 誤解の無きよう注釈を加えれば、ニンゲン以外にも集落を作る種族はもちろん居た。居たけれども、ニンゲンほど大きくも立派な集落を作る種族なんて他にいなかった。 つまりそれほどニンゲンがひ弱な生き物だったってことなんだけど。 規模の増大によって集落はやがて「街」と呼ぶに相応しくなり、そうとなればいい加減「目立たずこそこそ暮らす」なんてことも不可能になって、だからいつ頃かのある日、他種族の大多数がふと気付くのだ。 なんか、旅路の途中にちょくちょくと、サルみたいな種族が群れて暮らしてる。と。 旅に暮らすそれら大多数の他種族は、いつのまにやらで出来上がってたそれら「街」を奇異の目で眺め、それらを指して適当な呼称でもって言う。 旅路の途中にある集落。旅と旅との半ばにじっとして動かない人々。中間に居る人たち。あいだの人。 それがアダヒト。 つまり、旅暮らし中心な他種族の主観から出来上がった言葉なのだな。だから自ずとそれはニンゲンのみを指す言葉だったのだけど、ニンゲンが快適に生存できるよう最適化された「街」というシステムは、種族は違えど共通点の多い他種族にもなかなか便利なものだったようで、そのうちにこれら街を一時の休息や物々交換による必需品の補充という形で利用するようになり始め、アダヒトもそうした旅人が作る物資や情報の流れを定住しながらにも得ることが出来るようになって。持ちつ持たれつの関係が折良く出来上がった。 世界にその存在を認められたも同然である。 そうなれば街はますます発展していく。日陰者でしかなかった連中が作り上げたそのシステムは、規模と機能と利点とを増加させて世界に不可欠な要素となり、放浪しか生きる方法を知らなかった他種族連中に「定住」という生き方を示すこととなり、示された種族の中の一部連中はそれに従い集落の中で生きて産んで死ぬことを選んで。 一言にアダヒトといっても、その言葉の中にニンゲン以外の種族が多く含まれるようになり、その意味を「旅をせずに生きている人たち」くらいの内容に変えて。 今に至る。 これらを踏まえて。 識者は語るのだ。 街ってのはつまり、そこで産まれて生きて死ぬことの出来るシステムである。外に出なくても。これを少し飛躍して語れば、街とは世界の中に出来た小さな世界だといえる。 この小さな世界は膨張を続け、やがて今の世界とそっくり入れ替わるであろう。と。 という話はあるけれど。 そんなことを意識しているのは極少数。余談として脇に置いておこう。 ともあれ、現時点の世の中は、放浪する人々の歩調に合わせて運行されている。 なので、この街の、その市を構成し流れて行くのも主にニンゲンならざる人々である。 目立つ中では頭抜けて規格外な身長の巨人、苔生す甲羅で人垣を押しやり押しやり進む亀人、影が服着て一人歩きしてるような真っ黒けも居れば鼻面の長く伸びた獣人もいる。そこの露天で呼び子をしている者は鹿の如きはえたツノに商品を色々とぶら下げているし、余り目立たない連中も、子細に観察すればまぶたが下から上に動いたり、舌の先が二股に割れていたり、靴でなくひづめでもって地に立っていたり等々。 根気よく探せばキミのお眼鏡に適う美女だってきっと見付かるだろう。 個人的なオススメは、ほれ、そこの少女である。 頭にこびとを乗っけたその娘だ。 小柄な体躯とほぼ同サイズかそれ以上のリュックに隠れてちょいと確認はし辛いけれど、空に向かって真っ直ぐのびる獣じみた耳、両方のこめかみに白い花をあしらい、正面に回れば如何にも少女然としたまつげに縁取られた大きな目玉が生真面目な面持ちで商品を物色しつつゆっくりと市場を巡っている。 見れば旅装もずいぶんとくたびれていて、自然と漂うその旅慣れた風情が、こう、まだ未成熟な外見とのミスマッチを誘いイイじゃないですか。 しかし――遍歴の異国連中が持ち寄る商品は色彩も様々。ウィンドウショッピングも楽しかろうはずだけど、その表情がかすかに愁いを帯びてみえるのは何が故だろう。 ともあれ、端から端までを順に巡っている視線がぴたりととある店の奥に吊してある香草にとまり、ついでに足もぴたりと止まる。 さても。 その姿に気が付いたのはそのお店の主人であろう恰幅が素敵なご婦人だ。多少なりとも商いの心得を持つ店番ならば店先に足を止めた旅人を眺めるのみでは済ますまい。なのでもちろんそのご婦人も売り口上を少女へ向けて発すべく口を開きかけるけども――ちょっと止まる。 少女の真剣な面持ちに少し気圧されて。 そしてそのまなざしが値札に注がれていることに気が付いて。 なるほど。 彼女の表情にかかる愁いは懐具合から発生しているようだ。 「すいません」 不意に響く声音。発生源はもちろん少女の口である。 売り口上を準備していたご婦人の口は半開きのままで、切っ先を完璧に制された形になる。愛想をつくろう暇もなく、更に少女が続けて言う。香草をびしりと指して。 「あの商品が高価すぎるので安くしてください」 モノの見事なド直球。 受け取り損ねたご婦人は反応に窮して少し固まる。 少女は自身の速球の威力に頓着せず、返答を待ち値札を指差したまま奥方の顔を真っ直ぐに見ている。 お互い硬直。妙な間。 それをもぞもぞ動きでもって破ったのは、少女の頭にのっかるこびとである。 「……これこれ。くじら」 大さじ一杯分を計るのに丁度よさげなてのひらで、少女の――くじらという名であるらしい少女の、ひたいをぺちぺち叩く。 「その言は何かと適当でない。これら立ち並べられたる品物の、それらいちいちに付せられた値札の、そこに書き込まれたる数値はあまねく主人の肉体を伴わぬ労働のたまものぞ。一口に値段というても、需要と供給を天秤にかけ、当世の流行をはかり、現在の財源や在庫の調整や常連客への奉仕などなど世をうねる不可視の事象を見抜きしてできうる限り勘案せねば決して出でぬ数値じゃ。いわば経験と洞察によって彫琢された玉石がこそこれら値であるのみならず、民草の営みを支える基礎たる要素である。これなるは世界を構成するモノの最小単位の一つであり、往来を行く人々を誘う化粧であり、ときには圧政に抗する剣となる。ただの対価の案ではない。それを画きたるはただの黒墨でなく主人の汗と血と心得よ。安易な否定はそれら心性への冒涜となりうるぞ」 と。唐突に始まったご高説に 「ははあ……」 少女と、お店のおばさんも一緒に相づちを打つ。 おばさんの方はまあなにやらわからぬ心地でもってついた感嘆を、あえて言葉にすれば「何を大げさな」だったろうけども。くじらの方は素で感じ入るところがあったらしい。ちょうど手に届く位置にあったカボチャの値札(おつとめ価格)を両手に取り、しみじみと眺めて、なにやら感じ入ったのかため息をついて。つとおばさんの目を見。 「ご無礼を謝罪すべきですか」 「いやいやいやそんなとんでもない」慌てて頭を振るご婦人。 「もういくらか付言するなれば――」 そんなやりとりはおいといて。こびとの高説はまだ続きがあるらしい。 「値引きの交渉に臨む第一声として「高価すぎる」はやや前衛的に過ぎるかの。警戒心を抱かせては上策とはいえまい。それでなくとも旅装のやつばらが店番に声を掛ける由縁なぞ値切りをおいてそうあるまいし。そうじゃろう奥方?」 「え? ああはいはい。そうですねえ」 「そうなんですか」 「……そうねえ」 奥方。同意を求められて、念押しに訊ねられてちょっと考えてみれば。まあそうなのだ。 その由縁を訊ねるよう真っ直ぐ向けられる少女の瞳に促されれば、口八丁でおべっかを使うよりも率直かつ有り体に答えてやりたくなる。 「足を止めて頂けるのはありがたいんだけど、旅人さんは一見さんが多いからねえ。通り過ぎるだけで戻ってこない人も多いし。お得意さんになってくれて、二度三度とウチで買い物をしてくれるならそのうちに負けた以上のお金が戻ってくるでしょ? だから例えば、口約束でもいいから、この街に来る度にウチへ寄ってくれるって約束をしてくれれば多少は勉強してあげられたりね」 くじら、ふんふんと頷く。 「約束スか」 「そうね。あと、商人はみんなお金持ちに弱いの。お金を使ってくれれば使ってくれるほど嬉しいけど、でも持ってないとそもそも使えないでしょ? そういう意味じゃあ、最初っから値切りに入ると財布の中身を見透かされちゃって良い印象にはならないかも知れないわねえ」 「なるほど。勉強になるっス」 笑うご婦人。眉根を寄せて、愛嬌のある思案顔になる少女。 「お得意さまになれないのなら、口約束とお財布の中身……」 うん。と一つ頷いて。 「じゃあさっそく実践を」 「いやいや。もう手遅れじゃろ」と。頭上からツッコミが入る。「それに値段の交渉で不可欠たるは市場価格の熟知じゃろう。その点でいえばお主の欲するその香草はもはやこれ以上の値引きは望めまい」 「そうなんですか?」 「うむ。今の値ですでに相場を大きく下回っておる。生薬とすれば血の流れを正常にし、煎じれば肉の臭みを爽やかに取り去りと用途の広く珍重される薬草じゃがこの付近では採取の適わぬうえに海路も望めぬこの街での入手経路はこの先の森と山とを越えた先と限定されておる。よって棚に並ぶことさえ希である故に、この値段は破格と呼んで相違あるまい」 「あら。『お目付』の方からそういって貰えると心強いわねえ。少なくともこの街じゃあ一番安くしたつもりですからね」ご婦人、ふくよかに笑って「他のお店で探してこの街の端から端まで歩いても、結局はこのお店に戻ってくることになると思うわよ?」 「そうなんですか……」 くじらは素直に落胆する。 気落ちする子供が目の前にあっては、むしろ手をさしのべずにいる方が難しい。 「あらあら。がっかりされたまんま旅を続けられちゃウチの名が心配だわ。ほら、旅人さんなら入り用な物も多いでしょ? 何か言ってご覧なさいな。勉強できる物ならしてあげるから」 「そうですか? それじゃあ」 と。店の棚を子細に見るため巡らせた頭が、右にー、左にーと、動いて。……あれ? と傾げられる。 「やっぱり、お塩がないんですね」 おっとっと。ご婦人、痛いところを突かれたと顔を歪ませる。 「やっぱり、とな?」 「お塩が安かったら補充しておこうと思ってずっと探してたんですけど。あっちからここまでのどのお店にもなかったス」 「そうなのよねえ……」ご婦人。腕を組んでうなる。「お客さんが必要としてるならウチで使う分だろうとお店に並べたいくらいなのだけど、ウチの台所にもないのよねえ……他のお店に相談しても、どこも入荷できてないっていうし。まるで流通から抑えられてるみたい」 一つため息をついて、思案顔でこびとの顔をみる。 「こういうのも、『目付方』に相談していいんですかね?」 「さて」 顔を向けられたこびとも、同じく思案顔になる。 ちなんで。先ほどから何度かでた『お目付』『目付方』とは、主に市場流通価格や通貨の両替など適正価格を判断・監視すべく国王に雇われている役職のことである。アダヒトの世界では今や旅人の流通がこそ国を支える資本となっているわけで、故に、彼らを騙し法外な値段で必需品を売りつけたり、通貨を不正なレートで両替したり等の、旅人の足を遠ざけるような犯罪は抑止できるだけ抑止せねばならない。ついでには、旅人の多くは彼らアダヒトよりは屈強かつ強靱な連中なので、旅人同士で徒党を組めば、国そのものとまでは言わずとも街の一つや二つは潰されかねなかったりする。ので、下手に不和を煽って腕力沙汰になるよりかは音便な旅人でいてもらう必要があるのである。 それら問題を防止するため、監視と報告とを請け負っているのが『目付方』である。 この役職は、基本的にそこのこびと連中が主として任に付いている。 それが何故こびとなのか。は、またそのうちの機会に解説するとして。 で。 「どこぞの商店が塩を一手に集め独利を得ている、という話ではないのじゃろ? それなればむしろ報告の役目を負うべく定めがあるが」 「そういう話じゃあないんですよねえ」 うーんん……。というご婦人のうなりが、なんとなく波長を変える。悩みの内容が切り替わったのかな、と、くじらは観察するがどうやら正解だったらしい。ご婦人、何やら打ち明け事をするべく決心したな気色になって。 「まだ噂話ですから、あまり悪く受け取って欲しくはないんですが……」 と、内緒話に顔を寄せてくる奥さん。 「ふむふむ」 と、それを受け耳を寄せるこびと。 が、頭上に居るので気を利かせて前屈みになるくじら。 の、背中をどついて駆け抜ける誰か。 どしん。とぶつかられたくじら、わっとっととバランスを崩しかけて危うく踏みとどまるけれども、その頭上のこびとはたまらず転がり落ち量り売り用に口を開けたまんまの小麦粉袋の中に落下。白い煙がぼすり。 「きゃああオキナ様オキナ様」と悲鳴をあげて見事に埋まったこびとを掘り起こすべく小麦粉に手を突っ込んだのと同時に、野太い声が響く。 「こォの野郎! 泥棒だーッ!!」 辺り一帯の人々が思わずすくみ上がる大音声。静止した世界の中で動いているのは、慌てて小麦粉を掘るくじらと、離れた路地裏に走り入る影と、それを追いかけてきた牛面の大男である。 「そっちの路地に逃げ込んだよ!」 無事救出されたこびと、ご婦人が指さすのを確認し一跳びで少女の頭上に戻り(小麦粉が舞い、)凛々しい声を発する。 「くじら!」 それを受けたくじらは、その意味をはかりかねて数瞬の間の後。 「あ。はい。うぃっス」 背負ったリュックをどさりと脱ぎ捨てつつ押さえつけられていた鞠のような弾み方でもって駆け出し、追う牛面を軽く抜き去り盗人の逃げ込んだ路地へ飛び込む。 日はまだ西寄りに近くあり、路地には隙間なく影が落ち空ばかりが明るい。そのやや遠くにある盗人の背中が見る間に近付く。 追われているのに気が付いた盗人、あたりに積まれた生活臭漂うタルだの木箱だのを行きすがりながら蹴り倒すが、くじらは難なく木箱を踏み越えタルを乗り越え散乱した果物は踏みつぶしちゃもったいないから一気に跳躍して跳び越えてと素晴らしい身体能力でもって距離を詰める。が。 路地裏に現れた十字路を、盗人が右折して視界から消えた。 「うえ」 呟くくじら。厄介である。右折された先にさらに十字路T字路なりがあったとしたら、下手をするとどちらに逃げられたかわからなくなる。これへの対抗策はもっと急いで追いすがるのみ――と思ったら。 「くじら!」 再び頭上から声がかかると同時に、こびとが眼前にぴょんと飛ぶ。走りながら両手のひらで受け止めたくじらを省みて、決然と目を合わせる。 目と目の間に、バチリと走る電光。以心伝心、アイコンタクト。苦楽を共にした物同士だからこその意志疎通。 言葉を交わす間さえももどかしく、瞬時に無言のままにこびとの意を汲んだくじらはその目をスッと細めて。 一言。 「いやっス」 「えええい、ワシのことは構わぬから!」 手のひらの上でもどかしく地団駄を踏むこびとに、ああもうはいわかったっスよと返事をして。急制動。空を睨んで――もとい右手の屋根を睨んで、こびとを握った右手をオーバースローにぐるりと二回転。 「てりゃっ」 控えめな気合いと共にこびとを放りあげる。とはいってもそう高い家屋ではない。すたんと無事両足で板葺きの屋根の上に着地したこびとはそのまま駆けて屋根から乗り出し盗人の姿を発見。狙いを澄まし迷わずホイと飛び降り、見事に盗人の頭上に落下。がしりとしがみつくと共に体にまだ残っていた小麦粉が折良く舞い上がり煙幕となって、何が起きたのやら慌てふためく盗人の眉間を「ほいっ」と掌底で打ってだめ押し。 盗人、たまらず背中から倒れ落ち、放りだされたこびとを丁度よく追いついてきたくじらが「オキナ様!」と叫びつつダイビングキャッチ。見事に抱き留めて、そのまま仰向けに倒れた盗人の腹の上に落下。
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その日は今年一番の寒波が到来しているとかで、学校創立以来の古さを誇る旧館、つま りSOS団が間借りしている文芸部の部室は、電気ストーブの弱々しい熱風では太刀打ち できないほどの寒さに覆われていた。 朝比奈さんが淹れてくれたお茶も、すぐに冷めてしうほどの寒さ。窓の外を見れば、雪 こそ降っていないものの、分厚い雲に覆われている。 そんな日に限って、今日は特にやることがない。平和と言えば平和な、暇を持て余 して行くところもない学生が、部室でぼんやりしている風景が広がっていた。 「どうかしましたか?」 窓の外に目を向けていたキョンに、チェスの対戦相手をしていた古泉一樹が声をかけた。 「いんや、そろそろ降ってきそうだなと思ってな」 チェス盤に視線を戻し、ルークをE-5に移動。今度は古泉が長考に入り、それを見計ら ってお茶に手を伸ばす。部室に入ってきたときに朝比奈みくるに煎れてもらったが、すっ かり冷たくなっていた。 「あ、新しいの淹れますね」 SOS団専属のメイド兼書記は目ざとくキョンの動作に気づいて席を立った。ちょっと 前までは電気ポットで沸かしたお湯を使っていたが、ここ最近はお茶淹れに目覚めたのか ガスコンロを使って温度計で湯温を計りながらお茶を淹れてくれる。 「んもう! あったまくるわね、この天気予報!」 コンピュータ研究部から奪ったPCで、ネットの海を彷徨っていた涼宮ハルヒが怒声を 上げた。またか、という顔つきで睨むキョンの視線も気づかないほど、モニターとにらめ っこを繰り広げている。 「今日は朝から雪だと思っていたのに、ぜんっぜん降らないじゃない!」 「いいじゃないか。これ以上寒くなられちゃたまらんだろ」 ハルヒが吠えればキョンがかみつくのも、ある意味あたりまえの光景だ。そして、その 返しが百倍になってくることもまた、東から昇る太陽が西へ沈むのと同じように必然のこ とでもある。 「何言ってるのよ。雪が降ったら雪合戦ができるでしょ。コタツで丸まってるのはネコの 仕事なの。ネコがいいとか言い出したら、猫耳つけて市中引きずり回すわよ。あ~も~、 今から降っても何もできやしないわ」 コイツのことだ、明日は交通機関が麻痺しまくりの大雪になってるかもしれん……。そ う言いたそうに眉根を寄せるキョンを余所に、ハルヒはマウスを投げ捨ててふんぞり返り ながら、アヒル口をパクパク動かして嘆息した。 「今日は解散ね」 団長の号令で、各々のメンツはそろって帰り支度を始めた。 せっかく淹れてくれたみくるのお茶を捨てるわけにもいかない、とばかりに1人残って お茶をすするキョンは、最後の戸締まりをして部室を出た。 なんだかんだと時間はもう遅い。部室棟から下駄箱までの移動ですれ違う人影は皆無だ。 「うん?」 誰もいないと思っていたが、上靴から履き替えたときに、粛々と外を見つめている人影 が1人。ダッフルコートを羽織り、フードまで被っている小柄な少女は、キョンの見知っ た後ろ姿だった。 「長門、まだ残ってたのか」 声を掛けてきたキョンに、長門有希その姿を確認するようにチラリと目を向けて、すぐ に外へ視線を戻した。琥珀色の瞳はただ、外を眺めている。 「何してるんだ?」 「雪」 ただ一言、風に流されればすぐに消えそうな吐息に混ぜて呟いた。 「ああ、降ってきたのか」 雪が降るのはわかっていたが、こんなタイミングで降ってくるとはツイてない。地面を 見ればうっすらと積もっている。ハイキングコースのような坂道で転ぶのはゴメンだな、 などと考えている間、有希は微動だにせず降り続ける雪を見ていた。 本以外で有希が注視し続ける姿を見るのは初めてだった。普段の彼女を知っている者な らば、雪なんていう毎年起こる自然現象を、ただ呆然と眺めている姿が不思議に見えても 仕方がない。 「そんなに珍しいのか?」 だから、キョンがそんなことを口にするのも、当然と言えば当然だった。そして何より、 何か思うところがあるような、他人が見てもわからないような微妙な表情の陰り。 有希がただ、降り続ける雪を漠然と眺めていたわけではないことをキョン見抜いている。 「ユキ……ねぇ」 それが、空から降るソレを指しているのか、自分のことを指しているのかわからなかっ たのか、有希はキョンに顔を向けた。 「ユキは嫌い?」 唐突な問いかけに、言葉が詰まる。その真意を測りかねて顔をよく見ようとするが、フ ードに隠れた顔は口元しか見えない。 「あ~……そうだな」 今度はキョンが、窓の外に目を向ける。音もなく降り続く雪は、うっすらと世界を白一 色に染め上げようとしている最中だった。 「小学生のころは雪が降ると楽しかったな。今は、積もったあとが大変って気分だ」 「そう……」 どこか、沈んだ声。有希はうつむいて、傘を広げる。話は終わり、とでも言いたげに歩 き出したその後ろ姿に向かって、キョンは降り続ける雪を見つめながら言葉を続けた。 「それでも、今も昔も思うのは……綺麗だな、ってことかな」 ぴたり、と足が止まる。 「……そう」 長いような短いような沈黙のあと、有希は鈴の音のような声で返事をした。 「ああ、長門」 呼び止めたキョンの言葉に、有希は問いたげに振り向く。 「その……なんだ、傘忘れちまったんだ。途中まででいいから、一緒に帰らないか?」 言ってから、今日は朝から天気予報で雪が降る予報が出ていたことを思い出す。 ──そんな日に傘を忘れるヤツはいないよな……。 キョンがそんなことを考えるわずかな間。3秒も経過していないだろう、そのわずかな 沈黙のあと、有希は傘立てにちらりと視線を向けてから、静かに自分の傘を差しだした。 「途中までなら」 〆
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”メアリーがいない、メアリーがいない” ガタガタガタガタ、彫刻が震える。ポタポタポタポタ、インクが落ちる。 ”かのじょはどこへいったの? みんな、さみしがってるよ。” 赤い服のマネキンが動き出して、そこかしこに青い人形が散らばる。 ”おこってないよ、もどってきてよ。” 真っ暗闇に、鐘の音が響いて。美術館に、安らぎは戻らない。 ”みんなのいばしょに” ”かえろう、メアリー” ※ ※ ※ 外の世界は、色鮮やかで、知る機会さえなかった輝きに満ち溢れていた。 通りはガラス張りの箱物が太陽の光を浴びて、谷間をカッコいい車たちが走り回る。 歓楽街の人々の喧騒はそこらじゅうから静粛を奪い取って、雑踏は目が回ってしまうほど。 店のガラスケースにはいかにも自分は美味しいと主張するスイーツが並んでいた。 そんな世界で、けれども、一際大きく心を震わせたのは、ただ昼と夜が移り変わっていくことだ。 東から昇る太陽が、街中を覆っていた闇を薄らがせてゆき、やがて天頂にいたると、自分たちを見守ってくれるようで、 西に沈むにつれて、一日を生きた生物たちを労わるように夕闇が覆っていく。単なる太陽の運行に、彼女は、メアリーはひどく感銘を受けた。 ……皮肉なことである。彼女は自分の異物感を自覚していったのは、太陽が昇るごとのことであったのだから―― どこにいってもいっしょのことだ。 おまえのこころはつくりもの。 いばしょはきえてひとりぼっち。 くらやみのそこへ。 バイバイ メアリー。 ※ ※ ※ ……メアリーの正体は絵画である。彼女が人間として生きていくには、美術館、ゲルテナの世界で他の人間を犠牲にしなければならない。 それが美術館のルール。蔵書からの忠告。しかし、故意ではないにしろ彼女は、この電脳世界に来てしまった。美術館のルールを破ってしまった。 ……電脳世界に来て数週間、対価が支払われなかったことによる影響を、彼女は存分に味わった。 NPCとしての彼女に割り振られた役割、それはある画家によって描かれた絵画であることであった。 絵画の役目、それは誰かによって鑑賞されるか、資産として売買されること。 彼女、メアリーという作品はある売り出し中の高級住宅のインテリアとして扱われた。 観覧客が来ている間は、絵の中から動かないようにじっと動かず、眺める視線から耐える。 隙を見計らって外に出たとしても、お菓子を買うどころでも、友達を作るどころでもない。金銭も、自分の存在を証明するものもないのだ。 彼女にできたことは、いつ人が来て額縁だけの絵画を目撃されるかに怯えながら、近くのケーキ店の店頭を物欲しそうに眺めるだけだった。 「よもや、絵画ごときが、この聖帝サウザーを呼び出すとはな……」 サーヴァントが呼び出されたとき、メアリーの外に出たいという願いはとっくに色あせてしまていた。 涙も出ず、寂しさに打ち震え続けた彼女が願うこと、それは――。 「…………フン」 彼女は、怯えながらの外出において、夕暮れ道、父親と一緒に帰る娘を見た。 頼れる腕によって持ち上げられて鈴のなるような声で喜ぶ娘、それは、メアリーには、とても眩く映った。 彼女の根底、自分の父親、……メアリーは己の現在、一人孤独である状態も相まって、自分の生みの親――父親について強く求めていた。 彼女の願いは、自らがお師さんと慕ったオウガイとの再会を求める、ランサー、サウザーにとって、少なくとも下らないと切り捨てられはしなかった。 死の直前、南斗六星の帝王として、南斗聖拳の伝承者として、捨て去ったものをケンシロウに再び悟らされていたサウザーには、既に不可能なことであったのだ。 ランサーは、とりあえずは、マスターを害するという考えを捨てることにした。 「……止まり木代わりには、認めてやる」 【クラス】 ランサー 【真名】 サウザー@北斗の拳 【パラメーター】 筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:E 幸運:E 宝具:A 【属性】 中立・善 【クラススキル】 対魔力 D 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。 【保有スキル】 戦闘続行:B 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。 南斗鳳凰拳 A+++ 南斗聖拳最強の拳。 修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。 は将星の宿星、一子相伝の正当伝承者としての証。 防御の型である構えが例外を除いて存在せず、圧倒的攻勢による制圧前進を基本とする。 速度と火力を併せ持っており、手刀や足技、闘気を飛ばすことによる斬撃を主体としている。 【宝具】 鳳凰呼闘塊天 ランク B 種別 対人宝具 レンジ - 最大補足 1 南斗鳳凰拳の奥義の一つ。身体に闘気を纏うことによって、自らの筋力、敏捷、闘気による攻撃を強化する。 天翔十字鳳 ランク A 種別 対人宝具 レンジ - 最大補足 1 対等と認める敵に帝王の誇りを持って相対する、鳳凰拳唯一の構えを持つ秘奥義。 自らの体に鳳凰型の闘気を纏わすことによって、天空を舞う羽のように、相手の物理攻撃を無効化する。 ただ、実体を持たない攻撃や、魔力による攻撃。躱すことのできないほど高密度な攻撃は無効化できない。 落鳳破 ランク A 種別 対軍宝具 レンジ 2~50 最大補足 100 前方に向かって鳳凰型の闘気を放ち、敵を攻撃する。鳳凰は地に沿ったのち、天に舞い上がる。 【weapon】 無銘の槍。 【人物背景】 南斗鳳凰拳の伝承者、元は師オウガイのもとひたむきに修行を積んでいたが、伝承の試練によって父とも慕うオウガイを手にかけたことで一変。 一切の愛を否定するようになり、世紀末の世界においては非情にも子供を酷使、オウガイの墓である聖帝十字陵を建造しようとした。 最期はケンシロウに敗れ、オウガイからの愛を思い出しながら崩壊する十字陵と運命を共にした。 【サーヴァントとしての願い】 お師さん(オウガイ)との再会。 【マスター】 メアリー@ib 【マスターとしての願い】 ”お父さん”と美術館の世界に帰る。 【weapon】 パレットナイフ 【能力・技能】 『メアリー』 メアリーはワイズ・ゲルテナによる絵画が、ゲルテナの世界において動き出したもの。 よって、大本の彼女がいた絵画が破壊されたとき、彼女も消滅する。 また、絵画が動いているという神秘のため、魔力は常人より高い。 【人物背景】 薄暗い美術館の世界において動き出した絵画『メアリー』 外の世界に対して猛烈な憧れを抱き、何としてでも外に出ようとしていた。 性格は明るく幼げであるが、それゆえの残酷な面も見える。 【方針】 聖杯を狙う。ここに居続けるのは嫌。
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『ポツダム? いいえそれは脱ダムです』 そうさ。今この瞬間この場所において、僕は大層必死に自制している。 ほんの少しでも自身の気を緩ませてしまえば、それはまるで決壊するダムの如く。今の僕は笹船のように流され、沈められ、再び浮上することはないだろう。 ああキョン、僕のキョン。君がどれだけ思考の海に埋没した所で想像も付かないことだろう、この僕の感情が。 能天気そうな顔をしてパンを頬張る君を眺め、僕の面白くないかもしれない薀蓄話に耳を傾ける君の目を覗き込み、自転車の後ろで君の背中に体を預けながら君の顔を窺っても、僕に君の気持ちがわからないのと同じように。 人に他人の心がわからない事なんてある意味、太陽が東から昇るのと同じように極々当たり前の解さ。人は言葉で繋がっているがその言葉は完全なものではないのだから。 そして君の感情が僕に完全に届かないのと同じように僕の感情も君には完全に届かない。 ……そして僕はどうにも届けたくなってしまったみたいなんだ。僕の心を、君に。 そうさ。中学校の最終学年で、僕は君と共にいたいという気持ちを抱いていたのだと思う。言い換えるならば、今僕は確かに君と共にいたいという気持ちを抱いている。 そしてその気持ちはどうやら思慕の情に昇華した上、恥ずかしながらどうにも僕はそれをおさえきることができない。 求めているんだ。君の姿や、声や、匂いを。僕の心も体も。制御不能というやつだね、自分でも何故こんな具合になってしまったのか理解に苦しむ。 恋愛なんて精神病だと言い切った僕がこのざまなんだから当人からしてみれば笑い話にもなりはしないね。 そしてたった今も脳内で行われている思考にさえ僅かずつ君が侵食してくるのさ。君はこんな無様をさらす僕を笑うだろうか。 ……いや、この無様は既に定められていた事だったのかもしれない。 兆候はあったんだよ、その兆候を感じ取ったからこそ僕は自分を律する意味も兼ねて精神病だなんてあえて宣言したのさ。 他人に、ましてや未熟だったのだとしても指向性を持ち始めている感情の対象に向けて言い放つことで踏ん切りをつけようとした訳だね。事実君から踏み込んでくることも無かったし僕も一定の距離を保ち続けていられた。 そして僕たちは親友として日々楽しみを分かち合い、親友として別れる事ができた。それで終わった筈だったのに。 いなくなってわかるだなんて、そんな陳腐な枠の内に収まってしまったわけさこれが。 時の流れが風化させてくれるどころか余計に際立たせてしまう。色褪せるどころか、想い帰す君の姿はとても鮮やかに輝いているなんてね。 それにしても困りものだよ、どうもこうもない。今になって冷静に考えてみれば……、今の僕が冷静であるという事を客観的に証明する術はないのだけれど、そもそも僕は自分自身の心に対する付き合い方を間違えたのだ。 抑圧はいつか必ず解放を生む。登り続ける事も降り続ける事も不可能なように、それこそ先ほどに例えたダムの最大貯水量を超えると放出か自壊しかないように。 僕は自分の内に生まれ出た感情に困惑し、どう対処するか試行錯誤することも拒み、結局持て余した挙句に蓋をして無理矢理に押さえ込む道を選択した。 このことに関して言えば具体例を挙げることは容易いことさ。現在僕が進学した高校が君と同じくしている、という発言をしたとすればそれはまごう事無き虚偽になるから。 僕は君に狂ってしまったのさ、恋愛は精神病だと嘯いたのはあながち間違いじゃあない。 今でも僕は自分はおかしくないと心のどこかで思っている。真の狂人は、己が狂人であると自覚できない。 突然として世界が表情を変えたように見えるならば、自身の見る目が変わったというだけのことなんだから。 そして恐らく僕の世界を見る目は変わったのだろうね。君のいない光景はただ一色に染まった単調な世界にしか感じ得ない。 世界はこんなにも美しく在るというのに、僕は君を介してしかその美しさを感じ得ない。まさしく病だ、完治の見込みは無い。君の傍へ僕が寄り添ったとしても僕は更に君を求めるだろうから。 麻薬のようなものなのかもしれないね、恋愛がなのか君がなのかは僕に答えを出すことは出来ないけれど。 ここでは仮にキョン分としておこう。今きっと僕の体はキョン分欠乏症に陥っているに違いない。 ならばこれは精神疾患ではなく肉体の禁断症状ということになる。 もしそうならば僕はもう廃人寸前かい? 君のせいでならば本望なのだがね、くっくっ。 まあ簡潔に言うならば僕は決壊寸前のダムだったのだが、今この瞬間に完全に決壊してしまったのを自覚したよ。 君が視界に入ったんだ、僕の声が届く所にいるんだよ。僕の眼は君の一挙手一投足を追いかけている。その他のものは頭脳が情報として処理しない。 もう完膚なきまでにやられているわけだ、君にね。 僕のキョン、覚悟しておくといい。 ここで君に再び出会ってしまったのは運命だよ。様々な人に色々な事を言われて尚僕の根本は無神論者だが、今この瞬間だけは神の存在を信じても構わない。 そしてこの再会の場を与えてくれた神に感謝しようじゃないか。 一年越しだよ、この一年は長かった。人の体感時間は歳を重ねるごとに短くなっていくといわれているが、経験の中で最も短い筈のこの一年は本当に長かったよ、キョン。 やりたい事が沢山ある。教えたい事柄も沢山ある。そして伝えたい想いもあるわけだが、まず僕は言葉を紡ぐのさ。少なくともまずは親友として挨拶はしておかねば。親しき仲にも礼儀は必要だからね。くっくっ、くっくっくっ。 「やぁ、キョン」 僕は変わってしまったが、君は変わってしまったかい? 恋は人を臆病にするだなんて素敵じゃないか。どうでも良いが素敵と索敵は字面がとても似ているね、僕も索敵する必要があるようだ。この一年で君の周囲にどんな悪い虫が付いたか確かめなくちゃいけないんだからね。 (終わり
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ニーナ=フォン=リヒテンベルグは目の前の敵を見据える。敵は毛皮を着て、魔剣を持つ殺人鬼、ジェイク=ワイアルド。ジャック=ザ=リッパー。 正直、ニーナは怖いと思った。手に持っている血を吸い尽くす魔剣。毛皮によってガスマスク越しからでも判る面妖さ。その面妖な面の中で爛々と輝く眼光。 怖かった。しかし、それ以上に譲れなかった。ジェイクの言った事は、決してニーナが見過ごせるものではなかった。 「小娘、イマ何か言っタカ?」 「悪が、――――――――悪だけ人の本質なのか、って私は言ったの。」 「ああ、ソウだよ。悪がヒトの本シツだ。ソレが俺が魔術師にナって解った結果ダ。――――――――――ニンげんは弱い。汚い。醜い。お前ハ、チガうといいキレるのか?」 ヤールはジェイクの隙を見据えるついでに二人の表情を見比べる。 問いかけるジェイクの表情は、心底「悪人」という言葉が似合った。 一方、ニーナの表情は見えない。今の彼女の俯いた態勢では顔が見えなかった。 そしてニーナは口を開いた。 「……確かに、人間は悪かもしれない。」 「ッ―――――――――――――!!」 「ほぉー………。」 信じられない、と言う様な。どこか納得したかの様な。そんな矛盾した心がヤールの中をよぎった。しかしやはり目の前の少女を信じることが出来なかった。 彼女は常々「人の役に立ちたい。その為に魔女として大成したい。」と言っているのをヤールは知っているからだ。 「ハハッはははははははははハハハハハハハハハハはははははハハハハハ!!ナんだヨ、分かるジャアネエか!!ナンならお前もコッチ側に……」 「貴方と一緒にしないで。」 その瞬間。空気が凍りついた。ジェイクの表情が止まる。ヤールの心の中もまた、固まった。 「確かに、人は悪かもしれない。貴方の言う通りで弱くて、醜くて、汚いかもしれない。」 ふと、ヤールは反射的に顔をある方向に向ける。視界に何か入ってきたからだ。 「私は見てきた。お母さんとの旅で、いろんな人を見てきた。中には悪人もいた。」 それは光。東から昇る朝日が、ロンドンの空から夜を掃い始める。 「でも、悪人と同じくらい――――――――――――――――――――――――――――――善人だっていた!!」 そして太陽の輝きが、彼女の顔を照らした。 その時、ヤールはニーナの表情がやっと見えた。そして彼は目を見開いた。 その紫水晶色の瞳は意思で輝いていた。 その口のなかは、覚悟で歯を食いしばっていた! その表情は、立ち向かう事を諦めていない表情だった!! ―――――――――――そして何より太陽が、そんな彼女に微笑むかの様に、朝日で照らしあげていた。 ……それは出来過ぎた偶然かもしれない。陽光をスポットライトの様に扱うとはなんて度が過ぎた、なんて身に余る、 しかしなんて。 今の彼女に似合う演出なのだろう。 ニーナを見るヤールは心のどこかで、そう思った。 「だから私は信じる、人の光を、人の意思を、ヒトの強さを。そして、私はそんな人たちの役に立つ魔女になりたい。悪人だっているって解っていても。私は諦めない。私は魔女になりたい。人の役に立ちたい。 ――――――――そのためには今ここで止まるなんて、死ぬなんてことは出来ない!」 「イイヤ、テメエハここで死ぬンダヨォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」 狂獣が、雄叫びを上げる。自分と真逆な考えを持つこの少女とは決して相成れない。そんな奴は速攻で斬り殺す。吸血なんてセコイ方法は使わない。斬って、刻んで、嬲って、骨の髄まで殺し尽くすと心に決めた。 「テメエハここで死ぬ!!俺にかなう事なんテ、ナニヒトツ無いって事を思い知らせてヤル!!!」 「確かに、私は強くない。あなたの足元にも及ばない。……でも、立ち向かう事は出来る。だから私は逃げない! 私なんかにも出来る事があるのなら、―――――――――――――――――――精一杯それをやり遂げてみせる!!」 ニーナもまた負けまいと宣言する。左手に握りしめた『樫の杖(オークワンド)』の植物がそれに呼応するかの如く生い茂り、そして火蓋を切った。 槍の様に鋭く尖った植物は、標的を貫かんと加速する。間一髪でジェイクは避けた。しかし、一瞬反応が遅れたのか、ガスマスクの一部が剥がれ、左目が晒される。 むき出しになった左目に、一本の投げナイフが突き刺さった。 「ギィ、アアああああアアアアああアアああああああアアああああああアアアアああああ!!テェメエエええええええエエええエエエエええええ!!」 投げナイフが飛んできた方向を振り向く。方向は斜め右後ろ。そこには投げナイフを投擲した張本人、ヤール=エスぺランがいた。 「ニーナ、一瞬貴女を疑ってしまってすみません。やはり貴女はどこまでも立派だ。お詫びとまではいきませんが、布石を打っておきました。」 「え、ヤールさん?布石って……。」 言っている途中でニーナは気付く。こうして話をしている隙に目の前の殺人鬼が襲ってきてもおかしくはなかった事に。ならなぜ今、自分たちは生きているのか?答えは簡単。ジェイクは“動かなかった”のでは無く“動けなかった”のだ。 ヤールが打った布石とは、今回用意した霊装『紅帽悪鬼(レッドキャップ)』だ。 この霊装の元になったのは『レッドキャップ』と呼ばれる妖精。イギリスの民間伝承にある極めて危険な妖精で人殺しに纏わる血塗られた場所に出没し出遭った人間を惨殺する。彼らの名の由来となっている帽子の赤は犠牲者の血で染められたものであり、それゆえに常に赤錆色を帯びているのだという逸話がある。 霊装『紅帽悪鬼』は投げナイフと赤い帽子で構成されている。赤い帽子をかぶった者を『妖精レッドキャップ』に対応させ、投げナイフには『吸収した血液を帽子のアクセサリーに染みこませる」と言う効果がある。 この霊装の効果だけではジェイクの動きを封じることは出来ない。ジェイクの動きを封じているのは彼おなじみの魔術、『感染魔術』だ。 ヤールは投げナイフに普段使っている紙片を張り付けることで、吸収した血液は紙片にも染みこみ。感染魔術で『繋がり』を作り。ジェイクの動きを掌握、行動不能にしているのだ。 「さぁ、ニーナ。チャンスは今しかありませんよ!!」 「ありがとうございますヤールさん!!」 ニーナは即座に『樫の杖(オークワンド)』から、葉の生い茂った蔦を伸ばし、ジェイクの全身を縛る。 直後、ジュゥウウウウ!! と音を立てながら煙を立てる。 「グッギャァアアああアアアアぁあああああああああああアアああああアアああアアアアアアアアああああああアアああああああアアアア!!!」 今までで一番、左目に『紅帽悪鬼』が刺さった時よりも鋭い痛みが走る。 北欧神話の一つ、ヴォルスンガ・サガによるとこの毛皮を被ったシギスムンドはカラスの運んできた不思議な葉によって呪われた毛皮を脱いだとされている。そのカラスは隻眼の主神オーディンの使いだったとも言われている。 蔦にはルーンが刻まれている。――――――――――――――――『A(アンザス)』。神、情報を意味するルーンであり、北欧神話の隻眼の主神オーディンのルーンでもある。 この逸話に基づき今、『呪狼の皮』は剥がれてゆく。 バサリ、と毛皮が融け、落ち、朽ち果てる。これでジェイクの肉体は普通の人間と何等変わらなくなった。 腕まで縛られていては剣はふるえない。命の危機の回避も、もう使い果たした。 ジェイク=ワイアルドが完全に詰んだ瞬間だった 「く……そんな。馬鹿な。馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁあ!!こんなことがあっていい物か!!!」 「ええ、あるモノです。さぁ、覚悟してください!!」 縛り付けたジェイクを、植物で持ち上げ、一気に振り下ろす。 地面にたたきつけられたジェイクは、ゴッ!!という打撃音とを聞いた後、意識を放棄した。
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七瀬 瞬(CV 鳥海浩輔) ロックバンド『ヴィスコンティ』のベーシスト。 都内のライブハウスで絶大な人気を誇る高校生カリスマバンドのリーダー。 メジャーデビューの声がかかるものの、現在はライブハウスでの活動に終始している。 アルバイトとバンド活動に明け暮れているため、勉強をする暇がまったくない。 ……というか、一切興味がない。 寡黙な性格で、クールで真面目。でも金銭が絡むと……? 要らないものをすっぱりと切り捨てる、無駄を好まない性格。 ED条件 APPEND STORY 01 / APPEND STORY 02 / SECRET STORY CHAPTER01 / CHAPTER02 / CHAPTER03 / CHAPTER04 / CHAPTER05 / CHAPTER06 CHAPTER07 / CHAPTER08 / CHAPTER09 / CHAPTER10 / CHAPTER11 / CHAPTER12 CHAPTER 01 【Action Point】 どうせすぐ辞めるような相手に、教えるギターはない アンタの話なんて、聞く耳ポトンだ オレは単に、スイミングするつもりで来てたんだ アンタは仙道に騙されただけだ。ご臨終様だな あぁ、人に撫で撫でしくされるのは嫌いだ 星がぶらりと散歩する Good money そこにバーがある! ブンコ 底辺×高さは2 【Selection Point】 でも、卒業出来なかったら、問題でしょ? 頑張り過ぎなんじゃないのかな…… ▲TOP CHAPTER 02 【Action Point】 アンタには関わりのない事だ、吸っておけ 地球がもし丸くなっても~ …オレが補習を受けるだなんて、太陽が東から昇るくらい珍しい事だと思っておけよ 黒い点といえばホクロだろ 反対 2LDK 人工衛星 そんな事を言って、実は何かたくわんでるんじゃないだろな ハッ。あんなの日常炒飯事だ 1円をバンカーにするものは1円に泣く! 【Selection Point】 頑張ってる瞬君のバンドを知りたかったの 瞬君の好きな事って何? 【Zapping Point】 風門寺 悟郎 / APPEND STORY1条件 ■BLUE 風門寺 悟郎 / APPEND STORY2条件 ■RED ▲TOP CHAPTER 03 【Action Point】 仙道の言うことなんて、四苦八苦嘘っぱちだ オレたちは敬遠の中なんだ ……確か、ワールドカップを始めた奴の言葉だろ ……もしや、カイロでも渡したんじゃないだろうな? ……アルデンテ山脈 ……ジェラート ……マミアナ ……沢山 一時千金と言うだろう? ……人の事をコチョコチョと嗅ぎ回りやがって…… 【Selection Point】 えっと、それなら挨拶をした方がいいわよね ▲TOP CHAPTER 04 【Action Point】 小さな親切、VIPなお世話 食後に休みを取らないと牛になるぞ 滝沢ポキン 牛丼屋 大工さん みっともねぇ海戦 疲れた体には「ニュートン」が溜まっているものだ いいか、もう2度と……恩着せかしましい事はするな 94都道府県の地形や気候を覚えて何の役に立つ? どうせ、足先ばっかりな筈だ! 【Selection Point】 あのね、こないだは本当にごめんなさい 生徒のプライベートを勝手に聞く訳には…… ▲TOP CHAPTER 05 【Action Point】 大仏は夜中になったら走り出すんだろ? 『摂氏・ちょうどいい温度』に決まってる ジャック 怠け者の法則 目には見えないが大切なもの 風船力がかかってるからな この世は食うか食われるか。捨てるか捨てられるか。焼き肉定食だ。 【Selection Point】 でも、大丈夫?瞬君に内緒で来たのに? ……瞬君って、もしかして口下手? そう言えば、瞬君のバイトって何……? 【Zapping Point】 SECRET STORY条件 ■RED ▲TOP CHAPTER 06 【Action Point】 引き篭もり 女ったらし お掃除術か!?アレは良かった、目からコンタクトが落ちたからな! 小野の姪 別れの予感 へそまがり トンボの目玉と同じくらいの『神眼』だ 【Selection Point】 あくまでも自然に…… 「ただより高い物はない」……じゃない? ▲TOP CHAPTER 07 【Action Point】 このランチュウ主義国家でそんな横暴が許されるかっ! タクシー 森オウムガイ ダサイ治 マーガリンでもOKが出たらやってやってもいい 仙道だけの十九番じゃないぞ 見たいなら見ても良いが、歓談料よこせ 【Selection Point】 大丈夫よ、暗い顔なんてしてないわ! そう言う瞬君も最高にかっこいいわ! 【Zapping Point】 仙道 清春 / APPEND STORY1条件 ■RED 仙道 清春 / APPEND STORY2条件 ■BLUE ▲TOP CHAPTER 08 【Action Point】 「カバは風邪引かない」って言うしな まぁそれにはモロ、手をあげて素直に驚くな 確かにな…家系図が100年も続いているなんて、想像もできない タンバリン 赤字 ゲン ソース 【Selection Point】 ……翼君、やめてっ! 辛い時はゆっくり休まなくちゃ! ▲TOP CHAPTER 09 【Action Point】 サダメ チッチャイコスキー 多岐レンタル料 腎臓が胃から飛び出しそうだ ごぼうが煮える! 【Selection Point】 じゃあ……頑張って着てみようかな えっ、本当に?有難う! 私と踊ったら……瞬君が恥ずかしいのよ? 【Zapping Point】 真壁 翼 / APPEND STORY1条件 ■RED 真壁 翼 / APPEND STORY2条件 ■BLUE ▲TOP CHAPTER 10 【Action Point】 九影 勇気と努力と根性 町長夫人 太陽 パトカーが豆鉄砲~ 【Selection Point】 瞬君はそんな人じゃない!私、信じてる! ……瞬君が大好きだもの! 【Zapping Point】 SECRET STORY条件 ■RED ▲TOP CHAPTER 11 【Action Point】 ホワイトディのことを考えたら鬼が笑う これはチョコという名のどんな兵器なんだ!? エンゲージリング 学習塾 ウザイ 【Selection Point】 な、何でもないの! バンドも、受験も……瞬君が決める事よ! 【Zapping Point】 斑目 瑞希 / APPEND STORY1条件 ■RED 斑目 瑞希 / APPEND STORY2条件 ■BLUE ▲TOP CHAPTER 12 【Action Point】 犬や猫が降ってきた 人間は考える…暇がある 三途の川? 世渡り上手 朝っぱらから先生にセクパラするんじゃない、悟郎 【Selection Point】 楽しみにしてるわね! 聞いてもいいの……? 【Zapping Point】 草薙 一 / APPEND STORY1条件 ■BLUE 草薙 一 / APPEND STORY2条件 ■RED ▲TOP ED条件 PERFECT STORY、DREAM STORY、NORMAL STORYは各ED条件のページ参照。 APPEND STORY 01 PERFECT EDを見る。 他のB6攻略中に出現するアペンド選択肢の正しい組み合わせを選ぶ。 ■RED 翼 CHAPTER 08 ■BLUE 一 CHAPTER 11 ■BLUE 悟郎 CHAPTER 11 ■RED 清春 CHAPTER 09 ■RED 瑞希 CHAPTER 12 APPEND STORY 02 DREAM EDを見る。 APPEND1と反対の選択肢を選ぶ。■BLUE 翼 CHAPTER 08 ■RED 一 CHAPTER 11 ■RED 悟郎 CHAPTER 11 ■BLUE 清春 CHAPTER 09 ■BLUE 瑞希 CHAPTER 12 SECRET STORY PERFECT ED、DREAM ED、NORMAL EDをすべて見てる。■RED CHAPTER 05 ■RED CHAPTER 10 ▲TOP
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22代目スレ 2008/01/20(日) ラミア「ではこれより、宇宙船乗組員資格試験の最終試験を行う。 コンピューターによって選出された11人でグループを作り、実技をやってもらう。 テスト会場は、そこの窓から見える宇宙船だ。 なにをやるかは行けばわかる。 では出発しろ」 ラミア「古いセリフだが、グッドラック」 【エアロック内】 マリ(2年生のこの時期に宇宙船乗組員資格が取れるっていうのは聞いてたけど、 実技試験があるっていうのは知らなかったな。 いったい、なにやらされるんだろ) マリ(オレンジ色の安全照明だ。もうヘルメットを取っていいのかな) ???「ちょっと、おかしくない?」 ???「人数が足りないのではなくて?」 ???「11人いないぞ!」 マリ「待て、みんな、落ち着くんだ。まずヘルメットを取ろう」 レイナ「コンピュータのミスかしら」 タカヤ「誰か、宇宙船までたどり着けなかったのかも」 レタス「しかし、もうエアロックのハッチは閉まっていましてよ」 マリ「船内に続くドアもあかないし、いったいどうなってるんだろ」 ゼフィア「コンピュータのミスかもしれん」 レイナ「なんで上級生がいるんですか。2年生の試験ですよ?」 ゼフィア「去年は体調を崩していてな。試験を受けられなかったのだ」 マーズ「早いとこ、せんせーがたがいるステーションに連絡取ろーよ。 うちゅーでの迷子は怖いよー?」 レイナ「部外者ーっ! そしてロボーっ!」 マーズ「ちゃんと外部からの受験票は持ってんよー」 レイナ「あんた、宇宙船生まれの宇宙用でしょう。 なんでいまさら宇宙船乗組員資格なんか取りに来てるのよ!?」 マーズ「条例が変わっちゃったんだよ。 AI搭載のロボも、資格持ってないと船外作業できねーんだって! 屈辱だよ屈辱! 潜水艦がスキューバの資格取りに来てるよーなもんだよ!」 タカヤ「とにかく、おかしいよ。マーズがいうとおり、先生方に連絡を」 ーブツッ スピーカー『あー、あー、テスッ、テスッ。ごきげんよう、諸君』 マリ「なんだ? この声、変声機を使ってる?」 スピーカー『説明は一度のみ。質問は受け付けない。 どうか諸君、集中力を持ってお聞きいただきたい。 これから、諸君にはギャンブルをやってもらう。 賭け金は、命・・・・・・! そう、まさに、命がけの、ギャンブル・・・・・・っ!』 ・・・・・・ざわっ・・・・・・ざわっざわっ タカヤ「冗談じゃない」 レイナ「誰がそんなものやるっていうのよ!?」 スピーカー『いいや、やってもらう。やらざるをえんのだ、諸君は・・・・・・っ! なぜなら、すでに・・・・・・! 置いているのだよ・・・・・・! 賭け金を、テーブルに・・・・・・! 諸君らは・・・・・・っ!』 ・・・・・・ざわっ! ゼフィア「ぐっ・・・・・・!」 タカヤ「ゼフィア先輩!」 スピーカー『諸君らが着ていた、宇宙服だよ・・・・・・。 仕掛けさせてもらったよ。皮膚感染する、毒を・・・・・・っ! 効き目には個人差があるが、いずれは諸君もこうなる。 そう、彼のように・・・・・・!』 ゼフィア「苦し・・・・・・」バタッ マリ「なんてことを!」 マーズ「毒ね、おれはロボだから、かんけーないかな」 スピーカー『そこのロボ君には、ミクロサイズの爆弾を吸い込ませてある。 小さなものだが、その柔らかそうな上半身が吹き飛ぶには充分な威力のをな』 マーズ「んげっ」 レタス「種目は?」 レイナ「ちょっと、レタス!?」 レタス「ギャンブルにも、いろいろと種類がありましてよ。 なんでして? ポーカー? ルーレット? 花札? 限定じゃんけん?」 スピーカー『いやいやお嬢さん、失望させて申し訳ないが、それらにはすべて複雑なルールがある。 そして、全員がルールを知っているとは限らない。 それでは、あまりにも不平等・・・・・・っ! そこで我々が用意するのは、単純至極な、遊戯・・・・・・っ!』 マリ「その、大げさな喋り口調はなんなんだ」 スピーカー『エアロックの隅を見てみたまえ。小箱があるだろう』 レタス「これでして? 入っているのは、コインが一枚きり」 スピーカー『そう、それだよ。それこそが、このギャンブルの、唯一無二の道具・・・・・・! コインを投げて、右か左かを相手に当てさせる。 ルールはたったこれだけ! 実に、単純明快・・・・・・っ!』 ・・・・・・ざわっ・・・・・・ざわっざわっ スピーカー『諸君らは全部で6人。 しかし、我々が助けて差し上げられるのは5人まで・・・・・・っ! すなわち、1人には死んでもらう! 確実にな・・・・・・! 心配することはない。我々は殺人鬼ではない。死んでもらうのは1人でいい。 1人が死んだ時点で、全員を解放し、解毒剤を渡そうじゃないか。 犠牲者となる1人を決定する手段が・・・・・・、コイントス・・・・・・っ! 面白かろ? この・・・・・・、趣向・・・・・・!』 マリ「吐き気がする」 タカヤ「お前は何者なんだ。どうして、こんなことを!?」 スピーカー『質問は受け付けないといったはずだが、寛容の心を持って受け止めよう。 君らの親族に恨みを持つ者だよ・・・・・・』 マリ「バルマー? ゾヴォーグ? でも」 タカヤ「たしかに、だいぶ滅ぼしたり追い出したりしてるけど」 レタス「まさか、お父様に限ってそんなことは」 レイナ「まさか、あのバカオヤジ!?」 マーズ「うちは、インファレンスおじちゃんたちが、だいぶやらかしてっからなー。 あー、あとシホミおばちゃんが天魔降伏で冥闘士をたいりょーに」 レイナ「時と場合考えてボケなさいよ!」 スピーカー『では、諸君らの健闘を祈る・・・・・・!』 ・・・・・・ざわっ・・・・・・ざわっざわっ レイナ「ちょっとレタス、あんたどういうつもりなのよ。 どうして犯人のいいなりになるようなこと」 レタス「ゼフィア先輩の容態を見るに、毒ガスの話は真実だと考えるのが賢明でしてよ。 さらに、スピーカーを使ったり、あらかじめコインを用意していたことから、 この宇宙船のシステムは、すでに犯人側によって掌握されているのではなくて?」 タカヤ「へたに刺激すれば、問答無用で宇宙空間に放り出されるかもしれないわけか」 マリ「電話は、ダメだ。通じない」 レイナ「ちょっとロボ、あんた宇宙用でしょ? ひとっ走りして、助けを呼んできなさいよ」 マーズ「そりゃー、おれはへーきだよ。 でもでもー、ロボット三原則第1条により、そのめーれーはじっこーできませーん」 レタス「コントロールボックスは反応なし。 私たちは、このエアロック内に閉じこめられてしまっているのですわ」 マーズ「毒が仕掛けられてるってんだから、うちゅー服は着らんないでしょ? そんな普段着のまま、うちゅー空間に向けてドアあける気? ちょっと息止めただけで、どーにかなるもんじゃねーよ。 腹圧で破裂して、だいぶグロいことになっちゃうよー?」 ブブブブ マリ「なんだ? ケータイのバイブ機能? さっきは通じなかったのに、なんで? しかも番号非通知で」 ハザリア『俺だ』 マリ「いま、お前に構ってる場合じゃ」 ハザリア『いつまで通話できるかわからんから、手短に話すぞ。 なんだかわからんが、俺は薄暗い部屋に監禁されている。 室内にはなぜかテレビがあって、貴様らの様子が映し出されている。 とにかく、事件の全貌がまるで見えん! 貴様、たしか骨伝導式の小型イヤホンマイクを持っていたな。 髪の毛に隠れるようにして、それを装着しておけ。 俺からの通話に応えるときは、小声でな。周囲に気取られんように』 マリ「なんでそんなことを」 ハザリア『この茶番を仕組んだ人間が、貴様のそばにいる可能性もあるのだ。 警戒しろ、注意を忘れるな、そのケータイだけが貴様の命綱だと知れ。 そう、つまり、そのケータイはダブルサテライトキャノンで』 マリ「うるさいよ」 ハザリア『もっとも注意すべきは、スズキアミの親父だ』 マリ「切るぞ?」 ツーツーツーツー レイナ「電話、通じたの?」 マリ「いや、なんか、切れた。ダメだ、もう通じない」 【密室】 甲「んっ、んん・・・・・・」 乙「目が覚めたか」 甲「あなたは?」 乙「知らん。わからん。 目が覚めると、部屋の中央には死体がひとつ、 向かい側には両手両足を縛り付けられた女が一人。 その頭上にはアナログ式の壁掛け時計。時刻は10時。午前か午後かはわからん。 妙に反響する部屋だな。声が、なんだかおかしな感じだ。 以上だ。あとは、自分の名前すら思い出せん。記憶喪失というものか」 甲「えっ、なにこれ。頭も金具かなんかで固定されて、動かせない」 乙「俺の方もおなじだ。自分の身体すら見られん。 おい、俺はどういう外見をしている」 甲「まず、男の人。歳はたぶん、18、9。老けて見えるだけで、もう少し若いのかも。 背は高い方だと思う。髪は銀色、ていうか、灰色? 薄暗いからよくわかんないけど、かなり血色が悪い。インドア派な感じ」 乙「俺から見える貴様は、女だ。髪は銀色。 年の頃は14、5。童顔なだけで、もう少し上かもしれん。 学校の制服のような服装をしている。おそらく学生なのだろう。 全身にうっすら皮下脂肪が乗っているが、ウェストは妙に細く、胸はやたらにでかい。 それから、頬がやけにぷにぷにしている」 ーブツッ スピーカー『あー、あー、テスッ、テスッ。ごきげんよう、諸君』 乙「なんだ?」 スピーカー『諸君たちは今、自分の名前すら忘れたまま監禁されている。 さぞかし不安だろう。恐ろしいだろう。心細いだろう」 甲「ここはどこ? あなたは誰? わたしは誰なの? もう、なにもかもわからない!」 スピーカー『すべて、不足なく答えよう。 ただし、条件がある。次の問いに答えたまえ。 一度しかいわん。質問は受け付けない。 どうか諸君、集中力を持ってお聞きいただきたい。 君らが見る死体が、合計ふたつになるのは、何時のことか?』 甲「なに、それぇ」 スピーカー『答えは、記憶を取り戻せばおのずとわかるはずだ。 では、諸君らの健闘を祈る・・・・・・!』 【エアロック内】 レイナ「とりあえず、ポーズとしてコイントスをするのね?」 タカヤ「そうだけど、その前にレタスさん、上着を脱いでくれ」 レタス「あら、唐突なアプローチをなさるのね」 タカヤ「君にはマジシャンの腕があるんだろう? 疑いたくはないけど、上着にどんなもの隠し持ってるか」 レタス「構わなくてよ?」スルッ レイナ「って、腕細ッ! 肌きめ細かッ! なんなのよ、もう、最近出てきた子たちは」 レタス「預かっていてくださる?」 タカヤ「重ッ!? いったい、なにが入ってるんだ」 レタス「女の秘密を暴こうとするのは、マナー違反でしてよ?」 タカヤ「じゃ、始めようか。 ゼフィア先輩はゲームなんかできる状態じゃないから、そこで横になってもらって。 残りで輪になって、時計回りに」 タカヤ→マリ→マーズ→レイナ→レタス→タカヤ タカヤ「この順番で、いいかい?」 マリ「べつに、構わないけど」 タカヤ「それじゃ、まずは俺から。はい、コバヤシさん」 マリ「ええと、右」 タカヤ「当たり。コバヤシさん勝ち点1。 マーズ、記録しておいてくれ」 マーズ「あいよ」 マリ「次はわたしだ。ロボ、どっちだ?」 マーズ「えーと、お椀持つ方」 マリ「左っていうことか? ストレートにいえよ。 はい、外れ。ロボ負け点1」 マーズ「ふんじゃー、次はおれね。ほい」 ピンッ マーズ「あいあい、右か左か、どーっちだ?」 レイナ「ちょっと、コイン床に投げるなんて!」 マーズ「コインを投げて、右か左か当てさせろって。 スピーカーさんがゆってたのは、そんだけだよ。手で握れなんて、きーてない。 おれロボだからさー、コマンドはせーかくに打ち込んでくんねーと」 レイナ「無効よ無効! あんた、あたしが右って答えたら、自分の身体より左にあるから左だとか屁理屈こねる気でしょ!?」 マーズ「左って答えてたら、部屋の中心線より右にあるから右って答えただろーね」 レイナ「ダメッ、ダメダメッ! 通らない・・・・・・、そんなのは! コインは右手か左手かに握ること! いいわね!」 マーズ「あいあい、じゃー、あらためて。 はい、どーっちだ」 レイナ「ええと」 マーズ「ペナルティ代わりに、コインがどっちにあるか教えてあげよーか」 レイナ「いらないわよ。どうせウソでしょう」 マーズ「おれはロボだから、ウソはいわねーよ。 えーっとね、太陽が東から昇るなら、太陽が東から昇らない場合、右だよ」 レイナ「また! わけのわかんないことばっか! えぇと、太陽が西から昇るわけないから、左ね! 左!」 マーズ「はいザンネン。右だよ」 レイナ「あんた、ウソつかないとかいって!」 マーズ「ウソなんかついちゃいねーよ。 『太陽が東から昇る』っていうのは真として成り立ってるから、 『太陽が東から昇らない場合、コインは右』ってゆーのも成り立つの。 あのね、『Aならば、(Aでないならば、Bである)』ってゆーのは、論理学じゃ常に真として扱われんの。 よくある、IQサプリ的なサムシングだよ」 レイナ「ああ、もういや! このロボ!」 マーズ「レイナさん、負け点1ね」 【密室内】 甲「死体の合計がふたつになるって、どういうことかなあ」 乙「しかし、我々の中間地点に転がっている死体はひとつきりだ」 甲「殺して増やせっていうことかな」 乙「怖いことをいう女だな、貴様は」 甲「でも、こんながんじがらめに縛られてちゃ、ムリだよね」 乙「・・・・・・ぐっ!」 甲「どうしたの?」 乙「おい、貴様は人殺しか?」 甲「訊かれても、記憶がないから答えようがないんだけど」 乙「今、頭の中に数枚のイメージが浮かんだ。 貴様がひとを殺しているところだ。ナイフでメッタ刺しにしている。 殺されているのは、銀色の髪をした女」 甲「待って、それは催眠術みたいなものなんじゃないかな! わたしたちの記憶を消したみたいな」 乙「どうも、このイメージの中にいる銀髪の女は俺の血縁者のような気がする。 姉か、妹か、母親か。ダメだ。わからん」 甲「殺されてるのって、この、目の前に転がってる?」 乙「いや、暗くて、よく見えない。白い服を着ているくらいしか。 女にしては大柄だが、では男かといわれると自信がない」 甲「こっちもおなじ。あっ、ちょっと待って。わたしの頭の中にも、閃いた」 乙「なにが見えた」 甲「見えたんじゃないの。文字、言葉? 『レベル7に到達せよ』」 乙「ギャグか?」 【エアロック内】 マーズ「コインが舞う! 舞いて削るは人の命・・・・・・! まさに、この一投一投が、命がけの、勝負・・・・・・! この時点で1位は全勝のレタスおねーさん・・・・・・! 次いで、地味に勝ちを重ねてるマリおねーさん! まんなかにおれ! 妙に引きが弱いレイナさん! 大きく引き離されて、全敗のタカヤおにーさん!」 マリ「どんだけノリノリなんだ。 いいから、さっさと右か左かいえよ。 さっきから思ってたけど、お前、コイン取るのも投げるのも、時間かけ過ぎなんだよ」 マーズ「だぁーって、どーせポーズでやってるゲームだし。 そんなマジメにやるこたねーよ」 レイナ「もう小一時間経ってるけど、いつまでやらせるつもりなのかしら、このコイントス」 レタス「犯人から時間の指定はありませんでした。 おそらく、犯人の気まぐれで打ち切られるのではなくて?」 ゼフィア「・・・・・・はぁっ、・・・・・・はぁっ」 タカヤ「ゼフィア先輩だって、このままにしとくわけにはいかないのに」 マリ「相変わらず、こっちからのケータイは繋がらないし」 マーズ「あいあい、じゃー、おれの選択。お箸持つ方。あれ、フォーク持つ方?」 マリ「右な。はい、お前の負け」 ブブブブ ハザリア『よう、どうにかこうにか安全圏を確保しているようだな』 マリ(そういう意図でやってるんじゃない) ハザリア『だが、油断は禁物だ。あまりゲームにのめり込みすぎるな。 俺は、そのエアロック内に犯人の一派が紛れ込んでいると睨んでいる』 マリ(根拠はあるんだろうな) ハザリア『マーズが毒について指摘したとき、スピーカーの声はすかさず反応していただろう。 あらかじめ録音していたわけではないという証拠だ』 マリ(お前みたいに、外部からモニターしてたんじゃないのか? だいたい、一番怪しいのはお前なんだよ。なんでモニターしてるんだ) ハザリア『だが、それだけでは説明のつかんことがある。 あまりにもスムーズにゲームが始められたことだ』 マリ(たしかに、もうちょっとモメてもよさそうなものだよな) ハザリア『何者かが場を操っているのだ。 運命共同体のような顔をして、舌なめずりをしている悪党がな。 そう、『スズキアミの親父』のような』 マリ(スズキアミの親父さんを、怪人かなんかみたいにいうな) ハザリア『犯人が自殺志願者でない限り、必ずどこかに安全パイを持っているはずだ。 『スズキアミの親父』を探し出せ、暴き出せ、すべてを疑え。 そして、生き残るのだ」 プツッ、ツーツーツーツー マリ(あいつめ、勝手にかけてきて、勝手に切るなんて。 あんなこといわれたら、全部が疑わしくなってくるじゃないか。 レイナはゲームに必死すぎる感じがあるし、 マーズはなんだかんだいってロボだから完全に死ぬ可能性は低い。 ゲームに乗るって言い出したのはレタスだし、タカヤが全敗してるっていうのも、なんだか不自然だ) 【密室内】 乙「思うのだが、俺はゲイなのだろうか」 甲「え、そうなの?」 乙「いや、わからんが。貴様のスカート、裾が少しまくれ上がっている」 甲「えぇ~」 乙「にもかかわらず、俺はなにも感じない。 男性として、これは少し不自然だ。よほど真性のゲイなのか」 甲「わたしが、ものすごいブスなのかな」 乙「比較対象がないからな、なんともいえん」 甲「ねえ、いま、ウンコしたい?」 乙「なにをいいだす」 甲「人間の性格っていうのは、ほとんどが1歳から3歳までの肛門期に決まっちゃうんだって。 一度に大量のウンコしたがる子は倹約家、こまめにウンコする子は浪費家みたいな。 フロイトさん的にいうなら、 ホモっていうのは太いウンコが肛門を通り過ぎてく快感を忘れられないひとなんじゃないかな」 乙「貴様、何者だ?」 甲「それで、ウンコしたい?」 乙「いや、特にしたくはない」 甲「そういえば、この状態でウンコしたくなっちゃったら、どうするんだろう」 乙「そういうことをいうな。ウンコしたくなるかもしれないだろう」 【エアロック内】 レタス「右ではなくて?」 レイナ「またぁ? レタス、あんたなんでそんなに強いのよ」 マーズ「だぁーって、レイナさん、けっこーわかりやすいもん。 眼球運動とか、ゲンコツの細かい緊張度合いから、横で見ててもわかっちゃうよ」 レタス「終わりは始まり。 ステージに立った時点で、観客はマジシャンの術中に陥っているのでしてよ」 マーズ「やっべー。このおねーさん、マジシャンだよ。 千里眼とつるんでテーマパークで大立ち回りした挙げ句、次の本でそっこーなかったことにされんばかりのマジシャンだよ」 レタス「マジックとは、マジジャンと観客との心理戦に負うところが大きいのです。 素人の目線を読むことなど、造作もないことでしてよ」 レイナ「レタス、あんたキク科野菜廃業してセロリにでもなるつもりなの?」 レタス「『リ』はいらなくてよ」 マーズ「そりゃ聞き捨てならねーよ! リーさんはいるよ! ひつよーだよ! OGシリーズで大活躍の予感だよ!」 レイナ「なんであんた、リーさんに食い付いてんのよ」 マーズ「おれ、きっとどこかにいるって信じてる! リーさんと妹さんとの間に出来た、捏造2世!」 レイナ「そういうのがまかり通ってたら、あんたこの場にいないからね?」 レタス「リーさんを冒涜するような話は、許さなくてよ」 レイナ「なんであんたまでリーさん大好きなのよ!?」 タカヤ「レタスさん、次は俺の番だけど、いいかな」 レタス「あら、失礼」 マーズ「この時点で、タカヤおにーさんは全敗・・・・・・! もしここでゲームを打ち切られれば、アウツッ・・・・・・! もちろん倒れたまんまのゼフィアおにーさんを差し出せば犠牲はまぬがれるけれど、 タカヤおにーさんの性格からして、そのセンはナシ・・・・・・っ! まさに絶体絶命! 後がない状況・・・・・・! ざわっ!」 マリ「なんでナレーションみたいになってるんだ、お前」 レイナ「レタス! あんた仕掛けるときにもマジックを使ってるでしょう!?」 レタス「たしかに、コインズ・アクロスといって、 手を握ったままコインを右から左に移動させるテクニックはありましてよ。 指の裏側などにコインを隠すパームなど、物心ついたころから習得しています」 レイナ「それ、反則なんじゃ!」 タカヤ「いいんだ、レイナさん。 スピーカーはイカサマ禁止とはひと言もいってない。 それに、レタスさんはいま、両腕を剥き出しにしてる。腕時計すら着けてない。 こうなると、マジックというよりテクニックだ」 レタス「私は自殺願望など持っていません。 拾える命なら拾いたいと考えるのは、自然ではなくて? 全身全霊を使ってでも」 タカヤ「その通りだ。だから俺も」スッ レタス「なっ!?」 レイナ「タカヤ、あんた!」 マーズ「おにーさん、しょーきなの!? 目をつぶるなんて! いーかい? イカサマが容認されてる時点で、これはゲームなんかじゃねーんだ! ロジックを組み上げて勝ちをさらう、頭脳戦なんだよ! ざわっ! 目を閉じるなんて、それはあまりにも運否天賦・・・・・・っ! ざわっ! あまりにも分の悪い賭け・・・・・・っ! ざわっ! あーっ! なんだよ、さっきからザワザワうるせーな! 言語プログラムのこしょーかっ!?」 レイナ「疑問覚えるのが遅い!」 レタス「目を閉じれば、目線を読み、コインを移動させることができなくなると考えたのでして? 悪くはない考え、しかし必勝法にはなり得なくてよ。 ただ、勝負が五分になっただけ」 タカヤ「それが、ギャンブルだ」 レタス「賭けるのですか、強運に」 タカヤ「右だ」 レタス「・・・・・・あなたの、勝ちでしてよ」 タカヤ「くやしい。けど、ヒリヒリする。これが、ギャンブル!」 マリ(なんだ? いま、かすかな違和感があった。 おかしいっていえばすべてがおかしいんだけど、いったいなにが?) ブブブブ マリ(着信? ハザリアから? 今度は番号通知で) ハザリア『貴様か、ようやく繋がった』 マリ(お前な、こんなときに番号非通知にしたり通知にしたり、なにケータイの設定いじって遊んでるんだよ) ハザリア『待て、貴様、なにをいっている。 いいか、俺はいま、なんだか暗い密室に監禁されている』 マリ(それはさっき聞いたよ) ハザリア『バカな! 俺は、監禁されてから、いま初めて電話が繋がったのだぞ!』 マリ(エ?) ハザリア『バカモノ! 貴様が受けていた電話はニセモノだ!』 【密室内】 甲「ゲイかどうかはわかんないけど、たぶんあなた、女の子と付き合ったことはないと思う」 乙「そうか?」 甲「だって、女の子に気遣いしようっていう気が全然見えないもん」 乙「そういう貴様も、男と付き合ったことはないと見える」 甲「なんでそう思うの?」 乙「いきなりウンコとかフロイトとか言い出すからだ!」 甲「偉そうな喋り方。でも、なんだかポーズみたいな感じがする。 ほんとはけっこう弱い人なんじゃないかな。 三島派か太宰派かでいうと、太宰派みたいな」 乙「貴様は、おそらく兄なり姉なりがいるのだろう。 どうにも子供っぽさが抜けきれていない」 甲「そっちも、けっこう子供っぽいと思うよ?」 乙「ところで貴様、右脚になにか汚れが付いていないか?」 甲「えぇ~、そんなこといわれても、動けないのに」 乙「待て。貴様いま、右脚を動かしたのか?」 甲「右って、わたしから見て右? そっちから見て右?」 乙「どちらでもいい。俺から見える貴様は、どちらの脚も動かしていない!」 甲「えっ、それって、どういう」 乙「そうか、そういうことなのか」 甲「あ、そっか。わかった、わたしも」 乙「わかってみると、気味が悪いものだな」 甲「あなたの名前はゼラド・バランガ。わたしが、自分だと思い込んでいた人物!」 乙「貴様の名前はハザリア・カイツ! 俺が、自分だと思い込んでいた人物だ!」
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- 7/15 テメナス西北東から2エリア 1.テメナス(チップ管理Virginiaさん) 2.テメナス(チップ管理Virginialさん) 3.テメナス(チップ管理Virginiaさん) 4.アポリオンNW(チップ管理takkiさん) 編集中 【ホマム希望受付】7/15まで。 ―古銭撤収済― Arshemia(1胴2脚3手)Axell(1足2手4胴)Kajikaji(1手2頭) HIsou(1手2足3脚))Mayura(1脚2足3手)Wesker(1手2胴3足4脚) Whitoneko(1脚2手3足) 【ホマム・サブ希望受付】7/15まで。 ―古銭撤収済― Arushia(1胴2手3足)Wisteria(1胴2足3頭) 【ナシラ希望受付締切】7/15まで。 ―古銭撤収済― Arushia(1胴)Wisteria(1胴)Virginia(1脚2足) Shujuju(1胴2脚3足4頭) ―古銭未撤収― Elein(1胴2手3足4頭) 【ナシラ希望・サブ受付締切】7/15まで。 ―古銭撤収済― Axell(1脚2足)Whitoneko(1手2脚) 【チップ管理状況】 スマルト スモーキー Takki Tacky Tyrfing Takki Axell Tyrfing チャコール マゼンタ Takki Axell Kajikaji Tyrfing Axell Kajikaji Tyrfing エメラルド スカーレット アイボリー Tacky Tryfing Tacky Tyrfing Tacky Tyrfing オーキッド セルリアン シルバー 戻る 仕事で間に合わないと思います ._.; もし間に合ったら参加します ._. -- whiteneko (2007-07-13 21 12 50) すみませんが、欠席でお願いします; -- Axell (2007-07-14 09 51 43) ホワイトネコさん、アクセルさん欠席了解しました。 -- Arushia (2007-07-15 15 02 23) リアル多忙により更新がスムーズに出来ず申し訳ありません…。 -- Arushia (2007-07-18 12 57 41) 今回の参加者 Afise、Arshemia、Arushia、Elein、Hisou、Kajikaji、Mayura、Nemuri、Shujuju、Takki、Virginia、Wesker、Wisteria 計13名 欠席者 Axell Tacky Whitoneko 欠席未連絡者 Lizu 西11枚(未クリア) 北51枚 11+51=62 分配 1人4枚 ストック10枚 アイボリー→Virginiaさん -- Arushia (2007-07-18 13 04 05) 名前 コメント }