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「どうだい、新しい体は?」 「悪くはねぇな。能力も衰えてはいねぇ。」 「なによりだよ。この調子なら、もう少しで退院できそうだね。」 「あぁ、なによりだな。」 皮肉気に、学園都市の第二位は口元を歪ませる。 「もう少しで、あのクソみてぇな世界と感動の再会だ。全く…なによりだよ。」 「そうだね。でも、最後の治療が残っている。」 冥土帰しは、そう言って意味深な笑みを浮かべた。 今考えてみると、垣根帝督がこうしていられるのもあの医者のおかげのだ。少しくらいは、感謝してもいいのかもしれない。 「発見。相変わらず、間抜けな顔してんなぁ。」 嬉しそうに呟くと、少年は翼をひろげて飛び立つ。 標的は、肩を落としたツンツン頭の少年。 コンコン、と扉をたたく音がした。こんな部屋に来るのは医者以外にはいないだろうと思い、放っておくと案の定、勝手に扉をあけて訪問者が入ってきた。 「久しぶりだな、大丈夫か?」 医者ではない。本物かどうかも疑わしい記憶にも、このようなツンツン頭の少年は存在しない。 少し、返答に迷った。少年を傷つけないためにも知り合いの振りをすべきなのかもしれない、と思ったのだ。 「うわっ!?って、帝督かよ、おどかすなよな。」 「いいじゃねぇか。で、いったい今日はどんな不幸があったんだ?」 「補習と思って学校にいったら、実は担当教師が休みだったってとこか。」 「何だ、いつもと比べるとスケールがちいせぇな。」 本当に、つまらなそうな顔で垣根が呟く。 「スケールの問題かよ…げぇ、どうやら上条さんの不幸はまだまだ続くみたいですよ。」 疲れたような声で、上条は告げる。 前方に、学園都市第三位を発見。 「久しぶりだな、大丈夫か?」 初めて見る少年だったが、あの医者がわざわざ退院直前の自分を呼びつけて、相手をさせるのだから、きっと知り合いなのだろうと思って声をかけるが、少年は何か考え込んでいるようだった。しばらくして、ようやく少年は口を開く。 「いったい…誰だ?」 もしかして、初対面だったのだろうか、と少し焦る。 「上条当麻だ。お前は?」 「何だよ、初対面だったのか…まぁ、いいか。未元物質だ。よろしくな、ってかなんで知り合いの振りなんかしたんだ?」 「ははは、上条さんにも、いろいろあるんですよ。よろしくな、未元物質。」 そこまで言って、上条は少し顔をしかめる。 「『未元物質』って、どう考えても能力名だよな。本名は?もしかして、誰かさんみたいにあまりにつかわれないもんで忘れちまったとか?」 「いいや、一応本名っていえるものはあるけどな、いまの俺を表すのは、やっぱり『未元物質』っつー能力名だけなんだよ。」 心当たりでもあるのか、誰かさんのところで未元物質の表情が一瞬、険しくなった。 「俺はな、一度生まれ変わったんだ。」 「…は?」 話のつながりが全く見えない、と上条は首をかしげるが、未元物質は無視して続ける。 「体はバラバラにされて、脳も切り分けられた。今の俺は、垣根帝督から造られたクローンの脳に、垣根帝督って言うオリジナルの脳の中身を移すことによって生み出された存在だ。」 「脳の中身を移すって…そんなこと、できるのかよ?」 「脳の中身なんて言ってもな、どうせただのデータの塊だ。学園都市の技術なら、不可能じゃねぇよ。」 中途半端に魔術側の知識のある上条には、どうにも簡単には納得できそうもない。 「何にしても、俺は新しい生を得ることができたわけだが、ここで一つ疑問が生まれる。」 「疑問?何」 「生まれ変わった俺は、本当に垣根帝督なのか?」 「記憶の書き換えなんて、いくらでも出来たはずだ。仮に俺の記憶がすべて本物だったとしても、クローンの体である俺が、オリジナルである垣根帝督を名乗る資格があるのか…どんなに本物に似せて造ったところで、偽物は偽物、本物になることなんてあり得ねぇんじゃねぇかってな。経験も、思い出も、感情さえもオリジナルの物かもしれねぇけど、それでもまだ足りねぇんじゃねぇかって…能力開発のため、学園都市第二位の『未元物質』の力を使うためだけの抜け殻なんじゃねぇかって、そう思っちまうんだ。」 初対面の相手にすべてをはき出して、未元物質は俯く。 何となく、カエル顔の医者がなにをさせたかったのか、上条は理解していた。だからこそ、上条は口を開く。 「何だ、それ?くだらねぇな。」 本当に、あっさりとした口調で告げた。 「名乗る資格がない?偽物は偽物にすぎないって?そんなつまんねぇことで悩んでんのかよ。」 未元物質が鬼のような顔をしているのを無視して、上条は続ける。 「資格なんてどうでもいいだろ。過去のお前なんてどうでもいいだろ。大事なのは今、お前がどうしたいかってことじゃねーのかよ!」 「お前が垣根帝督でいたいんならそう名乗ればいいし、嫌なら適当に偽名でも使えばいいだけだろうが!」 「うるせぇな!テメェに何が分かるってんだよ!?こんな惨めなこと経験したこともねぇよぉな奴が」 「経験したさ。」 未元物質をさえぎって、上条が告げる。 「お前、さっききいたよな…なんで知り合いの振りをしたのかって。」 「あぁ」 「分からなかったんだよ。お前が知り合いかどうかさえ…俺は、夏休みの前半で記憶をなくしちまってさ、それ以前の思い出が全く残ってないんだ。だから、医者に呼び出されてこの部屋に来たとき、お前を知り合いだと思ったんだ。」 未元物質は黙ってきいている。 「今はさ、もう昔のことなんて全く思い出せねぇけど、もう俺は『上条当麻』じゃないのかもしれねぇけど、それでも『上条当麻』でいたかったから『上条当麻』を名乗るし、きかれたら胸を張って『俺は上条当麻だ』っていえる。お前はどうなんだ?」 「…俺は」 「さっきも言ったけど、嫌なら嫌でいい。何なら、俺が新しく名前をつけてやってもいいんだ。」 未元物質は首を横に振った。 「俺が生きていたのは、未練も何もねぇ、クソみてぇな世界だったが…」 フッと力のない笑みを浮かべる。 「それでも、『垣根帝督』を名乗るだけの理由はあったから…」 「そっか」 ニコリ、と上条が笑う。 「それじゃ、改めてよろしくな帝督」 「あぁ、よろしくな当麻」 「明日、花火大会でしょ。どうせ一緒にいく相手なんていないんでしょうから、わざわざ誘いに来てやったのよ。」 感謝しろ、とでもいいたげに、美琴は上条を誘う。何となく予想はしていたが、垣根と同じような目的があったようだ。 「いや、ありがたいんだけどさ、先約がいるんだよ」 「…誰よ?」 その程度は予想済みだったようだ、割と平然とした感じで訪ねる。 「…一方通行」 その返答に、美琴ばかりか垣根まで唖然とする。 じゃあな、といって帰る上条に声もかけれない。学園と市の第二位と三位は同時に固まってしまっていた。 「私は…あの一方通行より、女らしくないっていうの?」
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【種別】 人名 【初出】 新約四巻 【概要】 学園都市の暗部に君臨する『木原一族』の一人。 車椅子に乗るパジャマ姿の女性。イラストでは、眼が空洞のように黒く塗りつぶされて描かれている。 年齢不詳だが、一族の木原円周からは「病理おばさん」と呼ばれている。 敵対勢力の様々な試みに干渉して挫折させ、秩序を守ることを得意分野とする『諦め』のプロフェッショナル。 彼女自身も「他人を諦めさせるというスタイル」以外の様々なものを諦めてきたという。 研究者の道を捨てて教師としての道を歩んでいた木原加群に、異端としての道を「諦めさせる」ため、 無実の子供の精神を追い詰め、通り魔に仕立て上げて加群にけしかけた張本人である。 これがきっかけで、木原加群から相打ちとなって倒すべき仇敵として認識されることになる。 他キャラと比べても一際異様な容姿、狂気と哀愁を感じさせる行動理念、倫理も手段も問わない問答無用さ、ケレン味がかかった高い戦闘能力など、 特徴的な要素をいくつも併せ持っている。作品が作品ならラスボスを張れていたかもしれない。 【能力・スキル】 『未元物質』を吐き出すための塊同然となった第二位を使って、『未元物質』を利用した兵器を製造している。 また数々の研究の末、自身の肉体を改造して様々な攻撃手段を取り入れている。 いわゆる「変形ボス」的な戦闘スタイルを有し、 現在の形態で追い詰められると一段階上の形態へと変形させて、より強力な装備を解放して戦う。 以下は各形態の一覧。 第一形態:車椅子 重火器が仕込まれており、病理自身のドライビングテクニックも何ら不利を感じさせない機敏なもの。 さらにボタン一つで車輪を分解・再構成して、蜘蛛のような多脚ユニットと化すおまけ付き。 第二形態:脚力補助ロボット あらかじめ入院患者用の駆動ギプスで足を覆っており、いざというときは車椅子なしで歩行が可能。 虎すら蹴り殺す脚力と、それを生かした瞬発力で高速移動を実現した。 第三形態:移植『未元物質』 本来ならば携行するものであるEqu.DarkMatterを、暴走のリスクを冒して肉体に移植。 脚は最初から未元物質製であり、信号一つで生身への浸食防止リミッターを開放。超速再生が可能となる。 最終形態:未確認生物モード 再生のみならず肉体改造にも有効な未元物質を用いて、UMAの推測構造をもとに自身の肉体を正真正銘の怪物へと変化させる。 ただし長時間使用すると、未元物質に僅かに残る第二位の精神が拒絶反応を起こし、自身の精神が自滅するリスクもある。 スカイフィッシュ参照:1000メートル先のコンテナを射抜く鉄釘投げの技量を習得。 イエティ参照:巨大な腕を生やして行う文字通りの力押し。 リトルグレイ参照:オレンジサイズの脳を生成し、異能力(レベル2)〜強能力(レベル3)程度の超能力を複数使用可能。 ネッシー参照:人間の姿を捨て、巨大な首長竜となって敵を圧倒する。 【作中での行動】 新約四巻で、学園都市の命を受けた3人の木原の一人としてバゲージシティを襲撃する。 まずマリアン=スリンゲナイヤーと交戦するも倒され、自身も車椅子と駆動ギプスを破損。 通りがかった木原円周のスマホを使って自身の肉体へ信号を送り、自身に移植した『未元物質』を発動させる。 その後第二位の制御に関する情報を独占するために円周を始末するつもりだったが、行動を先読みされ上半身を破壊される。 円周は止めを刺したと思い込みその場を立ち去ったが、その直後、事も無げに再生し復活した。 その後は、円周と雲川鞠亜・サフリー・近江の対決を見物。 円周を撃破した3人を狙撃しようと試みるが、そこに現れた木原加群(ベルシ)と戦闘になる。 最終形態まで装備を使い果たすほどの死闘の末、相打ちとなり、 加群も含めて上条が救えなかった数少ない人物の一人となった。
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【種別】 兵器 【元ネタ】 Equ. = equipment で「(軍隊などの)装備」か。 【初出】 二十二巻 【解説】 浜面仕上抹殺の為に派遣された学園都市の暗部部隊に支給された新装備。 垣根帝督の『未元物質』の力を使って製造された新物質を素材とし、 ありふれた物理法則を超越した性質を持つ、白いのっぺりとした仮面。 金と白で彩られ、縦の長さが顔の二倍以上ある異様な形相。目や口のための穴は存在しない。 また、仮面全体が携帯電話のLEDデコレーションのように発光し、複数の色の光で模様を描く。 その光により、『Equ.DarkMatter』の文字が浮かび上がる。 戦闘に入ると、仮面の中心部から生物的な外見の翼が発生。 複数枚同時に発生させることもでき、装備者の意志に従って盾にも武器にも用いる事が可能。 翼も仮面と同じ素材で出来ており、飴細工を伸ばしたような、不自然な広がり方をする。 その性能は、ライフル弾をたたき落とし、針葉樹林の樹木をたやすく切断する程。 不完全な状態の『原子崩し』位なら防げるようだ。 超能力とは一線を画した存在であり、 襲撃部隊の人間は、超能力をそのまま振るうことを『原始人の松明』と称し、 この仮面は『文明人が炎を使って打った鉄』であると説明した。 しかし、『仮面』という性質上、スーツと仮面とに隙間があるため、 隙間に攻撃を差し込むことが出来ればダメージが通る。 圧倒的な性能を持つため、本来は気にならない程度の欠点だが、 ハッタリと状況を駆使した浜面にそこを突かれ、派遣された3体共が撃破されてしまった。 なお、撃破された部隊の『仮面』は、学園都市との交渉素材の一つとするために浜面達が回収している。 これだけの規格外装備であっても、『敵陣に派遣してきた』という事実から、 学園都市にとっては「知られてもどうとでもなる」程度の重要度のようだ。 新約4巻において木原病理が使用。 上述の『仮面』やスーツといった身に着ける装備ではなく、肉体の全身に『未元物質』による改造を施しており、 心臓を潰されようが肉体を潰されようが、コマンド一つで修復可能なほどに強化されている。 肉体の一部をイエティやスカイフィッシュといった未確認生物の推定肉体構造に変形させる事で、常人離れした戦闘力を得る事まで可能。 しかしこの「未元物質による肉体改造」という利用法には大きな欠点がある。 というのも、第二位が製造させられた『未元物質』には必ず第二位としての『匂い』が残り、 それを取り込んだ病理の肉体は、移植手術の拒絶反応のように、病理の意識を作り物の体の外に追い出そうとしてしまうらしく、 結果的に肉体への『未元物質』の移植と変形行為には使用限度が生まれ、やがて自滅してしまう。 病理はこの自滅的な変形の繰り返しと木原加群の術式により、最終的に死亡した。 また、様々な兵器を製造させられていたからか、それとも病理の影響かは分からないが、 垣根は『未元物質』による人体細胞を構築する術を入手しており、新約5巻では遂に復活を遂げている。
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【作品名】とある魔術の禁書目録 【ジャンル】ラノベ 【名前】垣根帝督 【属性】超能力者 【大きさ】180cmくらいの人間に数十mの羽が6本ついてる 【攻撃力】翼・一本でビルの屋上から中腹までを破壊する。射程数十m 太陽光・翼を通し変質させた太陽光で人間を焼き殺せる 作中では一方通行に回避されたため未遂 【防御力】素は男子高校生並みか? 未元物質・不意打ちで120mの風圧とそれにより飛来したATMをぶつけられて無傷 あらゆるベクトルを操り、素材に関係なく内部破壊する能力ですら無効 ただし作中では帝督の能力の正体を見破られ、ベクトルを読まれ突破された 【素早さ】銃弾並みの速度で数十mを移動しながら、自分と同程度の速度で移動する 一方通行と戦闘できる。飛行しつつ、ビルを飛び移れる 【特殊能力】未元物質(ダークマター)により上記のように物理法則を改ざんできる 体表面に触れたあらゆるものを反射する一方通行が 「生活に必要なので無意識のうちに受け入れているものとベクトル」 を読みとり翼で反射をすり抜けたり、太陽光で焼こうとしたりした 【長所】超電磁砲より順位高い 【短所】一方通行のかませ 【備考】描写はないが下記能力者を倒した 麦野・本来『粒子』や『波形』の性質を状況に応じて示す電子を、 その二つの中間である『曖昧なまま』の状態に固定し強制的に操ることができる。 『曖昧なまま固定された電子』は『粒子』にも『波形』にもなれずその場に「留まる」性質を持ち、 擬似的な「壁」となった『曖昧なまま固定された電子』を能力で動かし高速で叩きつける事で絶大な破壊力を引き出す。 正式な分類では粒機波形高速砲。見た目は白く輝く光線。金属すら容易く貫き溶解させ、四方八方へ同時に放つことも可能。 絹旗・窒素を操り狙撃銃を防ぐ能力者 【解説】 学園都市第二位のレベル5、 垣根帝督が有する「この世に存在しない素粒子を生み出し(または引出し)、操作する」能力 。 及びそれによって作られた「この世に存在しない素粒子(物質)」。 元ネタのダークマターと異なり、未元物質(ダークマター)は『まだ見つかっていない』『理論上は存在するはず』といった物ではなく、 本当にこの世界には本来存在しない物質である。 未元物質は「この世の物質」ではない以上、この世の物理法則には従わないし、 未元物質と相互作用した物質もこの世のものでない独自の物理法則に従って動き出す(例:翼で回折した太陽光が殺人光線になる)。 単に変わった物質を作るというだけでなく物理法則全体を塗り替えてしまう能力。 天使のような白い6枚の翼の形態を持ち、飛行や防御・打・斬・風・衝撃波・光攻撃などかなりの応用性を持つ。 垣根帝督は太陽光と烈風に注入した併せて五万のベクトルにより一方通行の「無意識の内に受け入れているベクトル」を逆算、 偽装した「ありえないベクトル」の翼を、物理法則に従うが故の『隙間』へ打ち込むことで一方通行の反射をすり抜けダメージを与えた。 が、逆にその独自の物理法則を解析されてしまい、その法則を反射の設定に組み込まれた事で通用しなくなってしまう。 一方通行の黒い翼を見て未元物質というモノを理解し、更なる成長を遂げ数十メートルにも及ぶ白い翼を展開したが、 その真価を発揮する前に一方通行の圧倒的な力の前にねじ伏せられて敗北したため詳細は不明。 地の文では 「こことは違う世界における有機」「神にも等しい力の片鱗を振るう者」とされた一方通行に対して 「こことは違う世界における無機」「神が住む天界の片鱗を振るう者」と表現されていた。
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【クラス】 アサシン 【真名】 垣根帝督@とある魔術の禁書目録 【パラメーター】 筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 運D 宝具A 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】 気配遮断:D 自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。 【保有スキル】 見切り:B 敵の攻撃に対する学習能力。 相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。 但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。 生存:B 暗部に長くいる経験からか、戦場にて生還する事に長けている。 対魔力:C 精神汚染系の魔術に対する強い耐性を持つ。物理的耐性にも強い。 未元物質を纏うことで得られるスキル。 【宝具】 『未元物質』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1 学園都市第二位のレベル5であった垣根帝督が有する、 「この世に存在しない素粒子を生み出し(または引出し)、操作する」能力 。 及びそれによって作られた「この世に存在しない素粒子(物質)」。 能力仕様の際は基本的に天使のような白い6枚の翼の形になる。 これらの能力を活かし、飛行や防御・打撃・斬撃・烈風・衝撃波・光攻撃に応用が可能。 また、未元物質を利用し、体の傷を癒やすことも出来る為、かなり万能である。 【Weapon】 拳銃。 【人物背景】 学園都市で暗部組織、『スクール』のリーダーを務めていた青年。 能力『未元物質』を所持する、学園都市第2位の超能力者(レベル5)。 基本的に敵でない一般人は攻撃しないし、敵を許す寛容さもあるが、逆上すると周りに気を使わなくなる。 それでも裏社会ではまだ人間味のある方だが、一方通行にはチンピラと酷評されるレベル。 【サーヴァントとしての願い】 再誕。一方通行へのリベンジ。 【基本戦術、方針、運用法】 宝具を活かした機動戦、もしくはトラップ主体の待ち戦術。 正面戦闘もこなせるが、長期的な戦いを踏まえ、消耗は避けたい。
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【名前】木原病理 【スペック概要】『諦め』を司る『木原』の一人 【サイズ】パジャマを着た女性だが、車椅子→駆動ギブス→『Epu.Darkmatter』と変化する 【攻撃方法】 『Epu.Darkmatter』 仮面型と違い、人体(脚部)に未現物質を取り込み強化、又、未現物質で様々な形態に変化することができる。 [威力]…一般人なら必殺の一撃の蹴り [射程]…脚の長さ [速度]…音速以上 形態変化、スカイフィッシュ参照 右腕の側面からスカイフィッシュのようなひだを発生させ、寝そべった状態で鉄釘をダーツのように軽く放るだけでコンテナを貫ける。鞠亜達が野菜工場から逃げるまでに正確な狙撃で8発、連射で300発打てる。不意に至近距離に現れた相手に対しても即座に眉間に叩きこめる。 [威力]…コンテナを貫通させれる。人間なら頭蓋骨を破壊して脳漿が飛び散る [射程]…千メートル先のコンテナを正確に貫ける [速度]…超音速 形状変化、イエティ参照 右腕を不釣合いな大きさの太く毛むくじゃらな腕に変形させ、拳で攻撃 [威力]…人間をコンテナごとグシャグシャに潰す [射程]…腕の長さ [速度]… 形状変化、リトルグレイ参照 左手の五本指が膨らみ、それぞれに初歩的な『念動能力』を扱うオレンジ程度の大きさの脳を製造。能力の強度はレベル2とレベル3の間ぐらいの力でしかないが、5人分を効率良く束ねることで人体の処分程度は可能な威力を生み出している。 [威力]…凄まじい爆発が起こる。波状攻撃で人肉を削ぎ落とし人体をバラバラにする。 [射程]… [速度]…製造後すぐ 形状変化、ネッシー参照 巨大な首長竜のような姿に変化する。頭だけで加群を振り飛ばす。 車椅子 車椅子の背もたれからアームのように軽機関銃と人間の腕が入るほどの大口径散弾銃が飛び出す 鉈のような刃物 【防御方法】 車椅子 車椅子がブレる程の超高速で小刻みに移動することで、何らかの機材がマリアンの黄金の鋸とかち合い、そのまま弾き飛ばすしたり防御することが可能。 未元物質による再生 心臓を潰されても、頭部を脳ごと切断されようとも、あらゆる外傷をコマンド1つで修復し戦闘続行可能 【移動速度:移動方法】 車椅子 通常形態で床にタイヤの跡を刻むほど高速回転したり、恐ろしい程滑らかな動きで段差やケーブルを乗り越える。蜘蛛のような多脚の足を備えるユニットに変形可能。 脚力補助用の駆動式ギプス 虎やライオン以上の速度で飛かかることも難しくない。虎を一撃で蹴り殺すのは少々難しいらしい。 『Epu.Darkmatter』 太ももから翼のようなパーツを広げて、通常では不可能な動きを実現する 【反応速度】 突然現れた人物の眉間に鉄釘を打ち込める 【特記事項】 未元物質による肉体変化は同時使用可能。 未元物質によって異常な再生能力を得ているが、本来は外付けの武装として使用する未元物質を人体に取り込んで使用しているため、過剰使用は垣根以外、未元物質の拒絶反応により十分も経たない内に自分自身の精神がどこかへ消えてしまう。 【基本戦法】 鉄釘や『念動能力』による遠距離攻撃。通用しなければ接近戦での肉弾戦 短期決戦が望ましい
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【種別】 超能力 【元ネタ】 Creation =「創造」 【初出】 新約二十二巻リバース(名前のみ) 【解説】 ウィンザー城でのパーティ中に、美琴が口にした能力名。 もう一人の上条はこの能力の「生体組織版」で作られたものではないかと疑った。 名前から、何かしらの物質を生成する能力だと思われる。 未元物質(ダークマター)との関連性は不明。
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【名前】垣根帝督 【出典】とある魔術の禁書目録 【性別】男 【年齢】17~18歳 【名ゼリフ】「ようメルヘン野郎。似合わねぇな、お互いさ」 【支給武器】魔法の箒@東方project、吉良のネクタイ@ジョジョの奇妙な冒険 【本ロワでの動向】 超能力開発を行う学園都市第2位の超能力者(レベル5)。 この世に存在しない物質を生み出し操作する能力『未元物質(ダークマター)』を扱う。 本編で一方通行に虐殺され、脳みそを三分割で冷蔵庫のような装置で保存され超能力を吐き出すだけの存在となってしまった状態での参戦。 まさかの参戦時期に読者も唖然としたが、未元物質で肉体を構築する術を得た後であったため、その話中で体を構築し事なきを得た。 その後俺(邪気眼使い)と遭遇したり、テレビ局の壁の損傷を直しているとき襲ってきたアサキム・ドーウィンと一戦を交わしたり、水銀燈、天野銀次と共に藍染惣右介の謎を考察したりと目立った活躍は無い。 だが中盤も終わろうという時期に本人格である忍が出現した仙水忍と遭遇。 能力開放時に天使の羽のようなモノを展開する『未元物質』と、天使とされるものはこれを纏った人間を見間違えたのではないかとまで言われている『聖光気』。 戦いは力及ばず仙水の勝利に終わったものの、両名の激突はまさしく人の域を超えた天域の戦いであった。 ていとくんマジ天使。
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♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「どうした!超能力者か!?」 「何なんだあいつは……」 ワゴン車の運転席で、建物の中で、それぞれ言葉を吐く浜面とショチトル。 運転席に座る浜面は垣根帝督が視界に入っておらず、突然の攻撃に混乱している。 一方ショチトルは垣根の存在は認めたようだが、それが学園都市第二位の男だとは気づいていないらしい。 つまりは唯一絹旗最愛だけが現状の危機を正しく理解していることになる。 だが―― 理解しているからといって、現状を好転させられるかと問われれば答えは否であった。 (超無理ですよ……勝てる訳がない。学園都市第二位と、レベル5と戦って勝てる見込みなんて超有りません。…………無論、だからと言って逃げられる訳もないですが。車に乗って建物から出れば、その瞬間光線で車ごと消し飛ばされるのが落ちですから) 打つ手なし。 最初から負けが見えている。 ならばそんな勝負はするだけ野暮だ。 さっさと諦めて、降伏するなり隠れてやりすごすなりして機を待とう。 生き残れればそれでいい。 逆に言えば、自分の生命より優先するものなど何もないのだ。 今までの絹旗最愛だったら、そう考えていただろう。 しかし―― (佐天さん…………) 打つ手がなくとも、投了出来ない理由が今の絹旗にはあった。 バタンッ、と絹旗はワゴン車の助手席の扉を『外側から』閉めた。 「お、おい!どういうことだよ絹旗!」 慌てて助手席の窓を開けて叫んでくる浜面に、絹旗は淡々と返す。 「すいません、先程仕留めた狙撃手の仲間の能力者が報復しに追って来たようです。なので浜面は佐天さんを連れて超先に病院へ行って下さい。道なりに10分程超飛ばせば隣街に着きますので。そこからGPS機能でも使えば超すぐに見つかると思います」 「お前はっ!?」 「ちょっとばかしあの能力者を足止めしておきます。別に大した能力者ではありません。私の能力でも超充分対処可能ですから」 誰がどう聞いても強がりにしか聞こえなかった。 遠距離から砲撃を行うような能力に、自分の周囲数センチの窒素を操ることくらいしか出来ない絹旗が敵う訳がなかった。 それでも、絹旗は戦うことを決意した。 「だから浜面は何としても佐天さんを病院に送り届けて下さい。絶対に佐天さんを死なせないで下さい」 今までの自分とは違う。 流されるままではない。 敵わないからと引き下がったりはしない。 怖いからと言われるがままにはならない。 自らの意志で以て戦場に赴く。 一人の少女を――守るために。 絹旗最愛という少女は、この日この瞬間、確かに『変わった』のだ。 「――分かった。約束する。お前の友達は絶対に死なせない」 浜面が、力強く言った。 それは先程電話口で最後に言った言葉と同じ強さを持っていて、 ――そして浜面は今まで絹旗が一度も見たことがない顔をしていた。 それを見て、思う。 あぁ、これが本当の浜面なのだと。 今まで、どうして浜面が何も為してくれないものかと苛立っていたが、それはとんだ御門違いだったようだ。 彼は決して、正義の為に悪と戦う、と言ったありふれた正義の味方ではないのだ。 彼の戦う理由はただ――誰かを守る為。 守るべき誰かがいる時、浜面仕上は誰よりも何よりも強くなる。 それが浜面仕上という男の素質であり、本質。 ならば話は簡単だ。 「浜面、滝壺さんのことどう思います?」 「は?何だよ、こんな時に」 「超可愛いですよね」 「いや突然何言い出すんだよ!」 「否定はしないんですね」 「な……そりゃ、まぁ……」 心なしか頬を赤く染めて答える浜面に、 「ま、今はそれくらいでいいです」 絹旗は満足気に呟いた。 (――いずれ、浜面にも体晶のことを話しましょう。きっと浜面なら、滝壺さんのことも救ってくれる。今回佐天さんの為に駆けつけてくれたのと同じ様に。そしてその時も、私は私自身の意志で戦いましょう) 今まで何も変わらなかったのは、誰かに期待して自分が何もしようとしなかったから。 自分から変えようと思えば、浜面と滝壺を引き合わせ、自分が彼らを精一杯サポートすれば――そこに道は開けるはずだ。 確かな確信を胸に抱き、絹旗はそれをこの場を乗り切る原動力とする。 「それでは、私が合図したら道路に飛び出して下さい。それと同時に追っ手に攻撃を仕掛けて足止めをしますので、その隙に超全速力で安全圏まで逃げて下さい」 しっかりと紡がれるその言葉は、もう強がりではなかった。 言葉と同様に確かな足取りで絹旗は車を離れようとする。 「絹旗」 その背に、浜面が声をかける。 「――死ぬなよ」 短い言葉に、 「超当然です」 同じく短く返して、絹旗は気づく。 もしかしたら、浜面がここに来てくれたのは、泣いている自分のことを助けるためでもあったのかもしれない、と。 そして今も、銃弾を真っ向から受けても死なない自分のことを心配してくれている。 (――なんだか、やたら嬉しくなりますね) 思い、胸がきゅん、となる絹旗。 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?きゅん? (ちょっといや超待つのです絹旗最愛胸きゅんって相手あの浜面ですよ浜面鼻にピアスとかつけちゃうような超馬鹿っぽい奴で実際馬鹿だしルックスも別にイケてる感じでは超ないですしなにより浜面には滝壺さんの方がお似合いですってあぁぁぁぁぁこの言い方じゃまるで私も浜面に超好意を抱いていて慎んで身を引くシュチュみたいになってますぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!) 「ど、どうした!?」 突然頭を抱えてクネクネし始めた絹旗に、声をかけた浜面だったが、 「な、なな、なんでもないですからぁぁぁ!!」 と叫びつつ放たれた絹旗の右ストレートをまともに顔面に受け、 「ぶぉふぉぁあ!!!」 と悲鳴を上げながら運転席におさまる。 その惨状に目を向けずに、絹旗は今度こそワゴン車から離れ、建物の中に入った。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「話は終わったのか?」 建物内に戻ってきた絹旗に、赤いセーラー服を着た少女――ショチトルは問う。 「……ていうかどうした。顔が真っ赤だぞ?」 「いやほんとなんでもないですから!とりあえず保留!超保留にしときます!」 あたふたと叫ぶ絹旗。 「――まぁ、足手まといにだけはなるなよ」 そう言うショチトルは、大剣――マクアフティルを地面に突き立て、当然のように真っ直ぐ垣根のいる方向を睨んでいた。 「……一応言っておきますけど、浜面と一緒に車で逃げて下さったっていいんですよ?」 「それはこっちの台詞だ、大馬鹿野郎」 にべなく切り捨てるショチトル。 それを聞いて、やれやれですね、と絹旗は僅かに苦笑する。 「それで、あの男は何者なんだ?お前は何か知っているようだったが」 「ええ、私の組織のリーダーの不始末でやってきてしまった疫病神です。学園都市第二位、『未元物質』の垣根帝督。実力じゃ二人がかりでもまるで敵いやしませんよ」 「……どうするつもりだ」 あっけからんとした絹旗の敗北宣言に、ショチトルは怪訝な声を上げるが、絹旗は臆しない。 「力で負けるなら策を練るまでです。簡単なことですよ、何も超巨大兵器を相手にするわけじゃありません。クェンサー達に比べれば、超楽なミッションです」 「……クェンサー?」 「一度見ればハマること間違いなしの、おすすめC級映画の主人公ですよ。という訳で、作戦会議といきましょう。お互いの能力のネタばらしをして、そこから活路を見出していきましょうか」 彼方の垣根を見据え、絹旗は不敵に笑った。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「なかなか出てこねぇな。本当にいるのかよ、情報間違ってたんじゃねぇか?」 垣根帝督は廃棄施設へのランダム攻撃――日光を未元物質に通し、この世のものとは別の法則による回折現象で光線の様に変化させるものだ――を続けながら一人ごちる。 『スクール』の構成員である少年の話では、このあたりに狙撃手を始末した『アイテム』の構成員のうち二人が潜んでいるらしい。 本来の予定では、親船最中の狙撃が成功するにしろ失敗するにしろ、それによって警備が薄くなった素粒子工学研究所から『ピンセット』を強奪することになっていたのだが――狙撃手は親船最中の講演会が始まる前に見つかって殺されてしまい、その結果親船の講演会は何事もなかったように(実際表向きには何もなかったのだが)現在も続いているようで、素粒子工学研究所の警備が薄くなる様子もない。 その上狙撃手という遠距離支援の戦力も失った今、『ピンセット』強奪作戦は延期せざるを得なかった。 そうして暇になってしまった1日を『有効活用』しようとここまでやってきたのだが…… 「これで実は中にいませんでしたなんて展開だったら、俺って結構恥ずかしい奴なんじゃ……」 垣根が割と本気で心配し始めたところで変化が起こった。 けたたましいエンジン音とともに、建物の一つからワゴン車が飛び出したのだ。 「やっとか」 呟き、垣根がそちらに光線の照準を合わせようとしたまさにその時。 光線によって建物に空いた穴の一つから、垣根の立っている方向へ向けて何かが飛び込んできた。 「!」 ワゴン車への攻撃を中断し、そちらに意識を向ける垣根。 それは、道路の両脇にいくつも並べられている、事故の衝撃緩衝用の大量の水が詰まった特殊繊維で作られたバルーンだった。 バルーンは垣根に当たることはなく、その少し手前で地面にぶつかった。 (何だ?俺に当てるつもりで失敗したのか?だがそもそも衝撃緩衝用のバルーンなんて当てたって大した威力にはならないだろうに) そう思う垣根は、しかしすぐにその真意に気づく。 バルーンに、赤いセーラー服を着た少女がしがみついているのを見て。 (能力か何かでこいつを建物から俺のところまで飛ばし、着地の際のクッション代わりにバルーンを使ったってことか……いや、確か情報ではここにいるのは2人。とするとワゴン車の運転手と目の前のこいつで残りは0。射出はこいつ自身の能力か?) 考えている内に、セーラー服の少女――ショチトルはバルーンから飛び降り、危なげなく地面に着地する。 一方でワゴン車は既に車道に出ており、急加速をかけてこの場から離脱しようとしていた。 「……はん、成る程。そういうことか。いいぜ、そのゲーム、乗ってやるよ」 状況から一つの仮説を導き出した垣根は、目の前の少女に対して挑戦的に告げた。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ (絹旗の言ったとおり、こっちの意図に気づいたようだな……) ゲームに乗ると言った垣根の言葉を聞き、ショチトルは建物内で絹旗と交わした会話を思い出す。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「建物からワゴン車が飛び出し、それを追いかけるのを阻むようにショチトルさんが立ちはだかる……それを見た垣根はどう思うでしょうか?」 「……車の中に何か重要な物質、何としても破壊されてはならないものを積んでいて、戦線から離脱させよとしている、か」 かつて雲海の蛇に乗り、切り札である太陽の蛇を御坂美琴の猛攻から守ろうとした経験を思い出しながらショチトルは言った。 「そうですね、そしてそれはあながち間違っている訳ではありません。確かに佐天さんを死なせる訳にはいきませんから。しかし垣根は、その物資は自分達を不利、ないし私達を有利にする何か、だと推測する筈です。まさか暗部と何の関わりもない女子中学生を逃がそうとしているとは考えないでしょう。……かと言って、無害な少女だから逃がしてくれ、と言っても超信用してはくれないでしょうが」 「……つまりお前はこう言いたいわけか。敢えて私達がワゴン車を守るように立ち振る舞うことで、垣根帝督の本来の目的であろう『アイテム』の構成員――これには私も含まれるんだろうな――その抹殺より、ワゴン車の追跡の優先順位を高くさせる、と」 「ええ、その結果垣根の攻撃は『私達を殺すため』のものから『私達をより短時間で振り払うため』のものに超変わるはず。これだけでも私達の生存率は超上がります」 「だがそれはワゴン車を――つまりは佐天涙子とお前の連れの命をベットする行為だ。垣根帝督が私達を振り払い、ワゴン車に追いついてしまったら、まず間違いなく消される」 「その通りです。しかし、追いつかれなければほぼ間違いなく消されません。ワゴン車が病院、少なくとも隣街まで入ってしまえば、垣根も下手に手は出せなくなるでしょう。学園都市の『表』が気がつくところで能力を使えば、超希少な能力ですしね、ほぼ確実に上層部にマークされ行動に超制限がかかります。『スクール』は今何かを超企てているようです。内容はわかりませんが、それを考えると行動を制限されるのは『スクール』の望むところではないでしょう」 「だが、後日改めてあいつらが『事故』に遭う可能性は?」 「それもないでしょう。日が空けばワゴン車で輸送していた物資の内容を調べる暇も出来ます。そこで、運ばれていたのが物資ではなく中学生の怪我人で暗部と何の関わりもないとわかれば、超放っておくはずです。垣根が『ムカついたから殺す』なんて超破天荒な性格をしていなければですがね……少なくともウチのリーダーより人格者であれば大丈夫でしょうが」 「……私達がまずすべきことはワゴン車が安全圏に脱するまで垣根帝督を引きつけておくこと」 「えぇ、それだけは失敗してはならない超重要案件です。そしてそれが完了したら、フェイズ2に移行します」 「私達自身が垣根帝督から逃れる、と」 「そうです。ワゴン車に追いつけないと分かれば、垣根は『私達を殺すため』の攻撃に切り替え、本来の目的を達成させようとするでしょうからね。五体満足で逃げられれば御の字です。 まとめると、フェイズ1。垣根からワゴン車を逃がせば私達の勝ち。追いつかれれば垣根の勝ち。 フェイズ2。垣根に殺されずに私達がここから逃げられれば私達の勝ち。私達を殺せれば垣根の勝ち。 ――これはそういうウォーゲームです」 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ ゲームに乗ってきた垣根に向かって、ショチトルはバルーンから飛び降りた勢いを殺さないままに走り出す。 当然このバルーンは、絹旗が建物の中から力任せにぶん投げた物だ。 常人なら地面にバルーンが着地した時の反動で投げ出されるだろうが、かつて米国の戦闘機と渡り合うほどの速力を持った雲海の蛇を操っていたショチトルにとっては造作もない。 ショチトルは眼前の敵を見据え、虚空から大剣――マクアフティルを出現させる。 「機能的な学園都市にしちゃ随分ごてごてした得物だな。本当に斬れんのか?」 「心配するな。今すぐに試させてやる」 余裕の表情で軽口を叩く垣根に、ショチトルはマクアフティルを袈裟に斬りつける。 だが、 ガギィ!と音を立てて、マクアフティルは垣根に届く前に何かに阻まれる。 白い色をした硬質の板のようなものが、忽然と垣根の前に現れたのだ。 「斬れてねぇぞ?」 「……成る程な、これが『未元物質』か」 「はん、知ってたか。俺も有名になったもんだ」 垣根は目の前の板をノックするようにコン、と叩いて得意気に言う。 「こいつは硬度を強化した『未元物質』。対戦車ミサイルぶっ込んだって、壊せやねぇよ。『ここの世界の物理法則』に縛られたものじゃな」 「……そうか、そいつは好都合だ」 「あ?」 「お前の『武器』が強いほど、私にとっては都合がいいのさ」 言って、ショチトルは『自殺術式』を発動した。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「っ!」 垣根は、目の前に展開された『未元物質』に違和感を感じた。 (何だ?コントロールが……!) 次の瞬間、『未元物質』が垣根の意志を無視し、垣根に向かって突っ込んできた。 「ちっ!」 垣根は中空に球状の『未元物質』を出現させ、それを板状の『未元物質』に高速でぶつけることで軌道をずらそうとする。 だが、 (こっちもか!?) 唐突に球状の『未元物質』のコントロールまでが利かなくなり、垣根に襲いかかってくる。 「んだよそりゃ!」 悪態を吐きながら、垣根は地面に身を転がして二つの『未元物質』から逃れる。 (くそっ!他人の能力に干渉する能力なのか!?) 離れたところで立ち上がると、今度はショチトルに狙いを定める。 (この女が何かやってんのは間違いねぇ。こいつに一発ぶち込めば沈黙する筈だ) そして、今度は槍状にした『未元物質』を出現させるとショチトルに向かって投擲した。 だが、槍状の『未元物質』はショチトルの数メートル前方で突然停止すると、穂先を180度回転させて垣根の方へ戻ってきた。 (これも駄目か!) 更に板状と球状の『未元物質』のコントロールも操られたままであるらしく、3つの『未元物質』が垣根を襲う。 「くそったれ!」 やむを得ず、垣根は能力の使用を切った。 途端に3つの『未元物質』は跡形もなく消失する。 (自分で消すのは出来るのか……だが) 前方には再びマクアフティルを振り上げるショチトルの姿。 垣根は今度は『未元物質』を出さず、身体を捻ってそれを避ける。 (攻撃も防御も封じられたってか。キツいな、おい!) ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ (『自殺術式』が利いている……こういう風にも使えるとは、思いもしなかったな) ショチトルはマクアフティルを振るいながら思う。 作戦会議において、互いの能力の詳細をバラしあった絹旗とショチトル。 無論ショチトルのそれは魔術なのだが、細かいところはごまかして、『空気中に散布した媒介を通して、相手の所持している武器のコントロールを奪う能力』だと説明した。 すると、絹旗がそれに異論を唱えた。 絹旗との戦いにおいてショチトルは絹旗の手にしたコンテナのコントロールを奪ったが、その時絹旗は正確には武器を所持していなかった。 能力を用いて、自分の身体から数ミリのところに浮かせていただけ。 つまりは、『実際に手に持っていた訳ではない』と言うのだ。 そこから絹旗はショチトルの『自殺術式』に一つの仮説を生み出した。 即ち、『自殺術式』は『相手の所持している武器』のコントロールを奪うのではなく、『ショチトルが、相手が所持していると認識している武器』のコントロールを奪う。 絹旗は『自分だけの現実』が何とか、とよく分からないことを言っていたが、成る程『自分の認識に準じる』というのは分からない話ではない。 『自殺術式』の核である『原典』は自分の肉体と融合している。 ならば自分の認識が『原典』の生み出す現象に影響を与えるというのは有り得ない話ではない。 ――そして、そこから生み出された戦術がこれだ。 『未元物質』を垣根帝督の所持する武器だと認識することで、『未元物質』を『自殺術式』の影響下に置く。 単純だが、それ故に強力。 流石に絹旗の操る窒素のように目に見えないものでは認識のしようがないが、目に見える物体で、尚且つ垣根が操っているという前情報があれば、その白い物体を『垣根帝督の所持する武器』と認識することは難しくなかった。 それそのものが超能力の産物ということがあってか、垣根が自分の意志で消失させることまでは阻めないようだが、それでも相手の攻め手を奪えたことは大きい。 実際、垣根は先程から『未元物質』を出すのを止め、マクアフティルを避けることに専念している。 (これならば、いけるかもしれないな……) マクアフティルを振るい、逃げ場を制限することで、ショチトルは垣根を誘導していく。 そして、 (よし、行け!絹旗!) 垣根が、事前に絹旗と決めていた『所定の位置』に飛び込んだ。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ (訳わかんねぇぞ、おい!) 心中で毒づき、垣根帝督はショチトルのマクアフティルを避け続ける。 もともと運動神経は良い方であるし、かつての一方通行のように能力に頼り切った戦い方をしないように身体は鍛えている。 加えてショチトルの方がマクアフティルの扱いに不慣れであることから、何とかショチトルの攻撃を避けられている。 だが、避けるだけではどうしようもない。 反撃をしなければ、と思い『未元物質』が乗っ取られているメカニズムを解明しようとしているのだが―― (ぜってぇおかしい。AIM拡散力場に何の干渉も起きてないってのはどういうことだ?能力のコントロールを奪われてるのに、力場に乱れがないってのはありえねぇ……) 一言で言えば、分からない、に尽きる。 『超能力とはまるで別次元の力』を使っているとしか思えない。 (くそ、能力に頼り切りにならないっつったって、全く使えない状況ってのは……いや) そこで垣根は気づいた。 (こっちのコントロールは奪われていないのか……) こっちとは、垣根が自分の周囲に漂わせている、視認できないほど微細なサイズの『未元物質』の群れのことだ。 垣根はそれを常時展開し、自身に危機が迫ることがあれば即座に対応出来るようにしている。 第三位の超電磁砲が、電磁波の反射を利用して自分へ向けられた攻撃を探知出来るのと似たようなものだ。 垣根の場合は、更に幾つかの数式を組み込み、自分に向かってくる攻撃に自動で反応して『未元物質』の防壁を作ることが出来るようにしてある。 防壁がかえって邪魔になったり、防壁用の演算能力が負担になるような高速戦闘中以外は、その機能は大抵オンになっている。 とまれ、その極小の『未元物質』のコントロールは奪われていないようだ。 (視認出来るものしか操れねぇのか?…………ん?なんだこりゃ) 極小の『未元物質』にはある程度の分析機能も備わっている。 垣根はそれによって空気中に漂う停滞回線の存在を発見したりもしたのだが―― (空気中に異物が混ざってやがる。それも停滞回線とは違う。これは………!?) 考えている内に目の前に迫ってきていたショチトルに気づき、慌てて回避行動を取る垣根。 だが、 (しまっ――!) ショチトルの眼前から飛び退いた瞬間、今まさに意識を集中させていた極小の『未元物質』が、攻撃を探知した。 向かって左側。 ショチトルが飛び出してきた建物がある方だ。 辛うじて視線だけ向けると、すぐ目の前に電話ボックスほどの大きさのコンテナが迫っていた。 (まだ中にもう一人いやがったのか!くそ、『間に合わねぇ』!) それは、コンテナを防げないという意味ではない。 むしろその逆だ。 眼前が白く染まる。 オフにしていなかった自動防御の数式が、『勝手に防壁を作り出してしまった』のだ。 垣根の鼻先に出現した、四畳半の畳を縦にしたのと同じくらいの面積と厚さを持つ『未元物質』の板が、コンテナを阻み、ガァァン!!と大きな音を立てる。 そして、 「クッソぉぉォォォがぁぁァァァァ!!!」 瞬時にコントロールを奪われた『未元物質』が、ゼロ距離から垣根を強襲し、学園都市第二位の能力者である垣根帝督は、避けることも叶わずに、自らの能力の産物である『未元物質』の板によって20メートル程弾き飛ばされた。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ はるか後方へ吹き飛ばされる垣根帝督。 それを、絹旗最愛はコンテナを投擲した体勢のまま眺めていた。 初めは『絹旗とショチトルが二人とも出て接近戦を仕掛ける』という作戦を提案したのだが、ショチトルが『今日知り合ったばかりの相手とコンビネーションが上手く行くわけがない、連携の隙を逆に垣根に利用されて自滅するのがオチだ』と反対したため、ショチトルが接近戦、絹旗が後方支援を担当することになった。 そして、この時のショチトルの『自滅』という発言から、絹旗が思いついたのがこれだ。 初めは絹旗は動きを見せず、垣根が周囲に気を払う余裕を無くしたところで奇襲的に攻撃を仕掛け、自動防御機能を引き出した上でそれを乗っ取り自滅させる。 結果垣根は自らの強大な力で自分の首を閉めることになる。 自動防御機能が作動しなかったならそのままコンテナで押しつぶしてしまえるから問題はなかったのだが――この様子ならコンテナで攻撃するより余程大きなダメージが見込めることだろう。 「こんなもんですか」 無様に地面に倒れ伏す垣根帝督を見ながら、絹旗は呟いた。 「楽勝ですよ、超能力者」 ――無論、どれだけカッコイイ台詞を吐いたところで、常時パンツ丸見せ状態というビジュアルによって、何もかも台無しになってしまっていたのだが。
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♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「どうした!超能力者か!?」 「何なんだあいつは……」 ワゴン車の運転席で、建物の中で、それぞれ言葉を吐く浜面とショチトル。 運転席に座る浜面は垣根帝督が視界に入っておらず、突然の攻撃に混乱している。 一方ショチトルは垣根の存在は認めたようだが、それが学園都市第二位の男だとは気づいていないらしい。 つまりは唯一絹旗最愛だけが現状の危機を正しく理解していることになる。 だが―― 理解しているからといって、現状を好転させられるかと問われれば答えは否であった。 (超無理ですよ……勝てる訳がない。学園都市第二位と、レベル5と戦って勝てる見込みなんて超有りません。…………無論、だからと言って逃げられる訳もないですが。車に乗って建物から出れば、その瞬間光線で車ごと消し飛ばされるのが落ちですから) 打つ手なし。 最初から負けが見えている。 ならばそんな勝負はするだけ野暮だ。 さっさと諦めて、降伏するなり隠れてやりすごすなりして機を待とう。 生き残れればそれでいい。 逆に言えば、自分の生命より優先するものなど何もないのだ。 今までの絹旗最愛だったら、そう考えていただろう。 しかし―― (佐天さん…………) 打つ手がなくとも、投了出来ない理由が今の絹旗にはあった。 バタンッ、と絹旗はワゴン車の助手席の扉を『外側から』閉めた。 「お、おい!どういうことだよ絹旗!」 慌てて助手席の窓を開けて叫んでくる浜面に、絹旗は淡々と返す。 「すいません、先程仕留めた狙撃手の仲間の能力者が報復しに追って来たようです。なので浜面は佐天さんを連れて超先に病院へ行って下さい。道なりに10分程超飛ばせば隣街に着きますので。そこからGPS機能でも使えば超すぐに見つかると思います」 「お前はっ!?」 「ちょっとばかしあの能力者を足止めしておきます。別に大した能力者ではありません。私の能力でも超充分対処可能ですから」 誰がどう聞いても強がりにしか聞こえなかった。 遠距離から砲撃を行うような能力に、自分の周囲数センチの窒素を操ることくらいしか出来ない絹旗が敵う訳がなかった。 それでも、絹旗は戦うことを決意した。 「だから浜面は何としても佐天さんを病院に送り届けて下さい。絶対に佐天さんを死なせないで下さい」 今までの自分とは違う。 流されるままではない。 敵わないからと引き下がったりはしない。 怖いからと言われるがままにはならない。 自らの意志で以て戦場に赴く。 一人の少女を――守るために。 絹旗最愛という少女は、この日この瞬間、確かに『変わった』のだ。 「――分かった。約束する。お前の友達は絶対に死なせない」 浜面が、力強く言った。 それは先程電話口で最後に言った言葉と同じ強さを持っていて、 ――そして浜面は今まで絹旗が一度も見たことがない顔をしていた。 それを見て、思う。 あぁ、これが本当の浜面なのだと。 今まで、どうして浜面が何も為してくれないものかと苛立っていたが、それはとんだ御門違いだったようだ。 彼は決して、正義の為に悪と戦う、と言ったありふれた正義の味方ではないのだ。 彼の戦う理由はただ――誰かを守る為。 守るべき誰かがいる時、浜面仕上は誰よりも何よりも強くなる。 それが浜面仕上という男の素質であり、本質。 ならば話は簡単だ。 「浜面、滝壺さんのことどう思います?」 「は?何だよ、こんな時に」 「超可愛いですよね」 「いや突然何言い出すんだよ!」 「否定はしないんですね」 「な……そりゃ、まぁ……」 心なしか頬を赤く染めて答える浜面に、 「ま、今はそれくらいでいいです」 絹旗は満足気に呟いた。 (――いずれ、浜面にも体晶のことを話しましょう。きっと浜面なら、滝壺さんのことも救ってくれる。今回佐天さんの為に駆けつけてくれたのと同じ様に。そしてその時も、私は私自身の意志で戦いましょう) 今まで何も変わらなかったのは、誰かに期待して自分が何もしようとしなかったから。 自分から変えようと思えば、浜面と滝壺を引き合わせ、自分が彼らを精一杯サポートすれば――そこに道は開けるはずだ。 確かな確信を胸に抱き、絹旗はそれをこの場を乗り切る原動力とする。 「それでは、私が合図したら道路に飛び出して下さい。それと同時に追っ手に攻撃を仕掛けて足止めをしますので、その隙に超全速力で安全圏まで逃げて下さい」 しっかりと紡がれるその言葉は、もう強がりではなかった。 言葉と同様に確かな足取りで絹旗は車を離れようとする。 「絹旗」 その背に、浜面が声をかける。 「――死ぬなよ」 短い言葉に、 「超当然です」 同じく短く返して、絹旗は気づく。 もしかしたら、浜面がここに来てくれたのは、泣いている自分のことを助けるためでもあったのかもしれない、と。 そして今も、銃弾を真っ向から受けても死なない自分のことを心配してくれている。 (――なんだか、やたら嬉しくなりますね) 思い、胸がきゅん、となる絹旗。 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?きゅん? (ちょっといや超待つのです絹旗最愛胸きゅんって相手あの浜面ですよ浜面鼻にピアスとかつけちゃうような超馬鹿っぽい奴で実際馬鹿だしルックスも別にイケてる感じでは超ないですしなにより浜面には滝壺さんの方がお似合いですってあぁぁぁぁぁこの言い方じゃまるで私も浜面に超好意を抱いていて慎んで身を引くシュチュみたいになってますぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!) 「ど、どうした!?」 突然頭を抱えてクネクネし始めた絹旗に、声をかけた浜面だったが、 「な、なな、なんでもないですからぁぁぁ!!」 と叫びつつ放たれた絹旗の右ストレートをまともに顔面に受け、 「ぶぉふぉぁあ!!!」 と悲鳴を上げながら運転席におさまる。 その惨状に目を向けずに、絹旗は今度こそワゴン車から離れ、建物の中に入った。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「話は終わったのか?」 建物内に戻ってきた絹旗に、赤いセーラー服を着た少女――ショチトルは問う。 「……ていうかどうした。顔が真っ赤だぞ?」 「いやほんとなんでもないですから!とりあえず保留!超保留にしときます!」 あたふたと叫ぶ絹旗。 「――まぁ、足手まといにだけはなるなよ」 そう言うショチトルは、大剣――マクアフティルを地面に突き立て、当然のように真っ直ぐ垣根のいる方向を睨んでいた。 「……一応言っておきますけど、浜面と一緒に車で逃げて下さったっていいんですよ?」 「それはこっちの台詞だ、大馬鹿野郎」 にべなく切り捨てるショチトル。 それを聞いて、やれやれですね、と絹旗は僅かに苦笑する。 「それで、あの男は何者なんだ?お前は何か知っているようだったが」 「ええ、私の組織のリーダーの不始末でやってきてしまった疫病神です。学園都市第二位、『未元物質』の垣根帝督。実力じゃ二人がかりでもまるで敵いやしませんよ」 「……どうするつもりだ」 あっけからんとした絹旗の敗北宣言に、ショチトルは怪訝な声を上げるが、絹旗は臆しない。 「力で負けるなら策を練るまでです。簡単なことですよ、何も超巨大兵器を相手にするわけじゃありません。クェンサー達に比べれば、超楽なミッションです」 「……クェンサー?」 「一度見ればハマること間違いなしの、おすすめC級映画の主人公ですよ。という訳で、作戦会議といきましょう。お互いの能力のネタばらしをして、そこから活路を見出していきましょうか」 彼方の垣根を見据え、絹旗は不敵に笑った。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「なかなか出てこねぇな。本当にいるのかよ、情報間違ってたんじゃねぇか?」 垣根帝督は廃棄施設へのランダム攻撃――日光を未元物質に通し、この世のものとは別の法則による回折現象で光線の様に変化させるものだ――を続けながら一人ごちる。 『スクール』の構成員である少年の話では、このあたりに狙撃手を始末した『アイテム』の構成員のうち二人が潜んでいるらしい。 本来の予定では、親船最中の狙撃が成功するにしろ失敗するにしろ、それによって警備が薄くなった素粒子工学研究所から『ピンセット』を強奪することになっていたのだが――狙撃手は親船最中の講演会が始まる前に見つかって殺されてしまい、その結果親船の講演会は何事もなかったように(実際表向きには何もなかったのだが)現在も続いているようで、素粒子工学研究所の警備が薄くなる様子もない。 その上狙撃手という遠距離支援の戦力も失った今、『ピンセット』強奪作戦は延期せざるを得なかった。 そうして暇になってしまった1日を『有効活用』しようとここまでやってきたのだが…… 「これで実は中にいませんでしたなんて展開だったら、俺って結構恥ずかしい奴なんじゃ……」 垣根が割と本気で心配し始めたところで変化が起こった。 けたたましいエンジン音とともに、建物の一つからワゴン車が飛び出したのだ。 「やっとか」 呟き、垣根がそちらに光線の照準を合わせようとしたまさにその時。 光線によって建物に空いた穴の一つから、垣根の立っている方向へ向けて何かが飛び込んできた。 「!」 ワゴン車への攻撃を中断し、そちらに意識を向ける垣根。 それは、道路の両脇にいくつも並べられている、事故の衝撃緩衝用の大量の水が詰まった特殊繊維で作られたバルーンだった。 バルーンは垣根に当たることはなく、その少し手前で地面にぶつかった。 (何だ?俺に当てるつもりで失敗したのか?だがそもそも衝撃緩衝用のバルーンなんて当てたって大した威力にはならないだろうに) そう思う垣根は、しかしすぐにその真意に気づく。 バルーンに、赤いセーラー服を着た少女がしがみついているのを見て。 (能力か何かでこいつを建物から俺のところまで飛ばし、着地の際のクッション代わりにバルーンを使ったってことか……いや、確か情報ではここにいるのは2人。とするとワゴン車の運転手と目の前のこいつで残りは0。射出はこいつ自身の能力か?) 考えている内に、セーラー服の少女――ショチトルはバルーンから飛び降り、危なげなく地面に着地する。 一方でワゴン車は既に車道に出ており、急加速をかけてこの場から離脱しようとしていた。 「……はん、成る程。そういうことか。いいぜ、そのゲーム、乗ってやるよ」 状況から一つの仮説を導き出した垣根は、目の前の少女に対して挑戦的に告げた。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ (絹旗の言ったとおり、こっちの意図に気づいたようだな……) ゲームに乗ると言った垣根の言葉を聞き、ショチトルは建物内で絹旗と交わした会話を思い出す。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「建物からワゴン車が飛び出し、それを追いかけるのを阻むようにショチトルさんが立ちはだかる……それを見た垣根はどう思うでしょうか?」 「……車の中に何か重要な物質、何としても破壊されてはならないものを積んでいて、戦線から離脱させよとしている、か」 かつて雲海の蛇に乗り、切り札である太陽の蛇を御坂美琴の猛攻から守ろうとした経験を思い出しながらショチトルは言った。 「そうですね、そしてそれはあながち間違っている訳ではありません。確かに佐天さんを死なせる訳にはいきませんから。しかし垣根は、その物資は自分達を不利、ないし私達を有利にする何か、だと推測する筈です。まさか暗部と何の関わりもない女子中学生を逃がそうとしているとは考えないでしょう。……かと言って、無害な少女だから逃がしてくれ、と言っても超信用してはくれないでしょうが」 「……つまりお前はこう言いたいわけか。敢えて私達がワゴン車を守るように立ち振る舞うことで、垣根帝督の本来の目的であろう『アイテム』の構成員――これには私も含まれるんだろうな――その抹殺より、ワゴン車の追跡の優先順位を高くさせる、と」 「ええ、その結果垣根の攻撃は『私達を殺すため』のものから『私達をより短時間で振り払うため』のものに超変わるはず。これだけでも私達の生存率は超上がります」 「だがそれはワゴン車を――つまりは佐天涙子とお前の連れの命をベットする行為だ。垣根帝督が私達を振り払い、ワゴン車に追いついてしまったら、まず間違いなく消される」 「その通りです。しかし、追いつかれなければほぼ間違いなく消されません。ワゴン車が病院、少なくとも隣街まで入ってしまえば、垣根も下手に手は出せなくなるでしょう。学園都市の『表』が気がつくところで能力を使えば、超希少な能力ですしね、ほぼ確実に上層部にマークされ行動に超制限がかかります。『スクール』は今何かを超企てているようです。内容はわかりませんが、それを考えると行動を制限されるのは『スクール』の望むところではないでしょう」 「だが、後日改めてあいつらが『事故』に遭う可能性は?」 「それもないでしょう。日が空けばワゴン車で輸送していた物資の内容を調べる暇も出来ます。そこで、運ばれていたのが物資ではなく中学生の怪我人で暗部と何の関わりもないとわかれば、超放っておくはずです。垣根が『ムカついたから殺す』なんて超破天荒な性格をしていなければですがね……少なくともウチのリーダーより人格者であれば大丈夫でしょうが」 「……私達がまずすべきことはワゴン車が安全圏に脱するまで垣根帝督を引きつけておくこと」 「えぇ、それだけは失敗してはならない超重要案件です。そしてそれが完了したら、フェイズ2に移行します」 「私達自身が垣根帝督から逃れる、と」 「そうです。ワゴン車に追いつけないと分かれば、垣根は『私達を殺すため』の攻撃に切り替え、本来の目的を達成させようとするでしょうからね。五体満足で逃げられれば御の字です。 まとめると、フェイズ1。垣根からワゴン車を逃がせば私達の勝ち。追いつかれれば垣根の勝ち。 フェイズ2。垣根に殺されずに私達がここから逃げられれば私達の勝ち。私達を殺せれば垣根の勝ち。 ――これはそういうウォーゲームです」 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ ゲームに乗ってきた垣根に向かって、ショチトルはバルーンから飛び降りた勢いを殺さないままに走り出す。 当然このバルーンは、絹旗が建物の中から力任せにぶん投げた物だ。 常人なら地面にバルーンが着地した時の反動で投げ出されるだろうが、かつて米国の戦闘機と渡り合うほどの速力を持った雲海の蛇を操っていたショチトルにとっては造作もない。 ショチトルは眼前の敵を見据え、虚空から大剣――マクアフティルを出現させる。 「機能的な学園都市にしちゃ随分ごてごてした得物だな。本当に斬れんのか?」 「心配するな。今すぐに試させてやる」 余裕の表情で軽口を叩く垣根に、ショチトルはマクアフティルを袈裟に斬りつける。 だが、 ガギィ!と音を立てて、マクアフティルは垣根に届く前に何かに阻まれる。 白い色をした硬質の板のようなものが、忽然と垣根の前に現れたのだ。 「斬れてねぇぞ?」 「……成る程な、これが『未元物質』か」 「はん、知ってたか。俺も有名になったもんだ」 垣根は目の前の板をノックするようにコン、と叩いて得意気に言う。 「こいつは硬度を強化した『未元物質』。対戦車ミサイルぶっ込んだって、壊せやねぇよ。『ここの世界の物理法則』に縛られたものじゃな」 「……そうか、そいつは好都合だ」 「あ?」 「お前の『武器』が強いほど、私にとっては都合がいいのさ」 言って、ショチトルは『自殺術式』を発動した。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ 「っ!」 垣根は、目の前に展開された『未元物質』に違和感を感じた。 (何だ?コントロールが……!) 次の瞬間、『未元物質』が垣根の意志を無視し、垣根に向かって突っ込んできた。 「ちっ!」 垣根は中空に球状の『未元物質』を出現させ、それを板状の『未元物質』に高速でぶつけることで軌道をずらそうとする。 だが、 (こっちもか!?) 唐突に球状の『未元物質』のコントロールまでが利かなくなり、垣根に襲いかかってくる。 「んだよそりゃ!」 悪態を吐きながら、垣根は地面に身を転がして二つの『未元物質』から逃れる。 (くそっ!他人の能力に干渉する能力なのか!?) 離れたところで立ち上がると、今度はショチトルに狙いを定める。 (この女が何かやってんのは間違いねぇ。こいつに一発ぶち込めば沈黙する筈だ) そして、今度は槍状にした『未元物質』を出現させるとショチトルに向かって投擲した。 だが、槍状の『未元物質』はショチトルの数メートル前方で突然停止すると、穂先を180度回転させて垣根の方へ戻ってきた。 (これも駄目か!) 更に板状と球状の『未元物質』のコントロールも操られたままであるらしく、3つの『未元物質』が垣根を襲う。 「くそったれ!」 やむを得ず、垣根は能力の使用を切った。 途端に3つの『未元物質』は跡形もなく消失する。 (自分で消すのは出来るのか……だが) 前方には再びマクアフティルを振り上げるショチトルの姿。 垣根は今度は『未元物質』を出さず、身体を捻ってそれを避ける。 (攻撃も防御も封じられたってか。キツいな、おい!) ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ (『自殺術式』が利いている……こういう風にも使えるとは、思いもしなかったな) ショチトルはマクアフティルを振るいながら思う。 作戦会議において、互いの能力の詳細をバラしあった絹旗とショチトル。 無論ショチトルのそれは魔術なのだが、細かいところはごまかして、『空気中に散布した媒介を通して、相手の所持している武器のコントロールを奪う能力』だと説明した。 すると、絹旗がそれに異論を唱えた。 絹旗との戦いにおいてショチトルは絹旗の手にしたコンテナのコントロールを奪ったが、その時絹旗は正確には武器を所持していなかった。 能力を用いて、自分の身体から数ミリのところに浮かせていただけ。 つまりは、『実際に手に持っていた訳ではない』と言うのだ。 そこから絹旗はショチトルの『自殺術式』に一つの仮説を生み出した。 即ち、『自殺術式』は『相手の所持している武器』のコントロールを奪うのではなく、『ショチトルが、相手が所持していると認識している武器』のコントロールを奪う。 絹旗は『自分だけの現実』が何とか、とよく分からないことを言っていたが、成る程『自分の認識に準じる』というのは分からない話ではない。 『自殺術式』の核である『原典』は自分の肉体と融合している。 ならば自分の認識が『原典』の生み出す現象に影響を与えるというのは有り得ない話ではない。 ――そして、そこから生み出された戦術がこれだ。 『未元物質』を垣根帝督の所持する武器だと認識することで、『未元物質』を『自殺術式』の影響下に置く。 単純だが、それ故に強力。 流石に絹旗の操る窒素のように目に見えないものでは認識のしようがないが、目に見える物体で、尚且つ垣根が操っているという前情報があれば、その白い物体を『垣根帝督の所持する武器』と認識することは難しくなかった。 それそのものが超能力の産物ということがあってか、垣根が自分の意志で消失させることまでは阻めないようだが、それでも相手の攻め手を奪えたことは大きい。 実際、垣根は先程から『未元物質』を出すのを止め、マクアフティルを避けることに専念している。 (これならば、いけるかもしれないな……) マクアフティルを振るい、逃げ場を制限することで、ショチトルは垣根を誘導していく。 そして、 (よし、行け!絹旗!) 垣根が、事前に絹旗と決めていた『所定の位置』に飛び込んだ。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ (訳わかんねぇぞ、おい!) 心中で毒づき、垣根帝督はショチトルのマクアフティルを避け続ける。 もともと運動神経は良い方であるし、かつての一方通行のように能力に頼り切った戦い方をしないように身体は鍛えている。 加えてショチトルの方がマクアフティルの扱いに不慣れであることから、何とかショチトルの攻撃を避けられている。 だが、避けるだけではどうしようもない。 反撃をしなければ、と思い『未元物質』が乗っ取られているメカニズムを解明しようとしているのだが―― (ぜってぇおかしい。AIM拡散力場に何の干渉も起きてないってのはどういうことだ?能力のコントロールを奪われてるのに、力場に乱れがないってのはありえねぇ……) 一言で言えば、分からない、に尽きる。 『超能力とはまるで別次元の力』を使っているとしか思えない。 (くそ、能力に頼り切りにならないっつったって、全く使えない状況ってのは……いや) そこで垣根は気づいた。 (こっちのコントロールは奪われていないのか……) こっちとは、垣根が自分の周囲に漂わせている、視認できないほど微細なサイズの『未元物質』の群れのことだ。 垣根はそれを常時展開し、自身に危機が迫ることがあれば即座に対応出来るようにしている。 第三位の超電磁砲が、電磁波の反射を利用して自分へ向けられた攻撃を探知出来るのと似たようなものだ。 垣根の場合は、更に幾つかの数式を組み込み、自分に向かってくる攻撃に自動で反応して『未元物質』の防壁を作ることが出来るようにしてある。 防壁がかえって邪魔になったり、防壁用の演算能力が負担になるような高速戦闘中以外は、その機能は大抵オンになっている。 とまれ、その極小の『未元物質』のコントロールは奪われていないようだ。 (視認出来るものしか操れねぇのか?…………ん?なんだこりゃ) 極小の『未元物質』にはある程度の分析機能も備わっている。 垣根はそれによって空気中に漂う停滞回線の存在を発見したりもしたのだが―― (空気中に異物が混ざってやがる。それも停滞回線とは違う。これは………!?) 考えている内に目の前に迫ってきていたショチトルに気づき、慌てて回避行動を取る垣根。 だが、 (しまっ――!) ショチトルの眼前から飛び退いた瞬間、今まさに意識を集中させていた極小の『未元物質』が、攻撃を探知した。 向かって左側。 ショチトルが飛び出してきた建物がある方だ。 辛うじて視線だけ向けると、すぐ目の前に電話ボックスほどの大きさのコンテナが迫っていた。 (まだ中にもう一人いやがったのか!くそ、『間に合わねぇ』!) それは、コンテナを防げないという意味ではない。 むしろその逆だ。 眼前が白く染まる。 オフにしていなかった自動防御の数式が、『勝手に防壁を作り出してしまった』のだ。 垣根の鼻先に出現した、四畳半の畳を縦にしたのと同じくらいの面積と厚さを持つ『未元物質』の板が、コンテナを阻み、ガァァン!!と大きな音を立てる。 そして、 「クッソぉぉォォォがぁぁァァァァ!!!」 瞬時にコントロールを奪われた『未元物質』が、ゼロ距離から垣根を強襲し、学園都市第二位の能力者である垣根帝督は、避けることも叶わずに、自らの能力の産物である『未元物質』の板によって20メートル程弾き飛ばされた。 ♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀ はるか後方へ吹き飛ばされる垣根帝督。 それを、絹旗最愛はコンテナを投擲した体勢のまま眺めていた。 初めは『絹旗とショチトルが二人とも出て接近戦を仕掛ける』という作戦を提案したのだが、ショチトルが『今日知り合ったばかりの相手とコンビネーションが上手く行くわけがない、連携の隙を逆に垣根に利用されて自滅するのがオチだ』と反対したため、ショチトルが接近戦、絹旗が後方支援を担当することになった。 そして、この時のショチトルの『自滅』という発言から、絹旗が思いついたのがこれだ。 初めは絹旗は動きを見せず、垣根が周囲に気を払う余裕を無くしたところで奇襲的に攻撃を仕掛け、自動防御機能を引き出した上でそれを乗っ取り自滅させる。 結果垣根は自らの強大な力で自分の首を閉めることになる。 自動防御機能が作動しなかったならそのままコンテナで押しつぶしてしまえるから問題はなかったのだが――この様子ならコンテナで攻撃するより余程大きなダメージが見込めることだろう。 「こんなもんですか」 無様に地面に倒れ伏す垣根帝督を見ながら、絹旗は呟いた。 「楽勝ですよ、超能力者」 ――無論、どれだけカッコイイ台詞を吐いたところで、常時パンツ丸見せ状態というビジュアルによって、何もかも台無しになってしまっていたのだが。