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前ページ次ページゼロの機神 ギガンティック・ゼロ 広い教室の中で、生徒達は雑談にいそしんでいた。勤勉な一部の生徒達は配布されたプリントを解くことに精を出しているが、普通の学生ならば、自習の時間はこうやって談笑の時間になってしまうだろう。 一部のものは自らの使い魔と楽しいひとときをすごしている。 そしてオニクスは今日も、後ろの壁にもたれてそれを見物していた。こういうことに縁のなかったオニクスは、こういう「日常の風景を見ている」だけで、それなりに楽しかった。 (カナも、マサヒトも、俺さえいなければ…こうしていたのだろうか) ただ、雑談を交わし。 机に向かい。 友人らと帰路につき、 そして暖かい家で食事を摂る。 それだけのことすら、彼らは出来なかった。 (全て、俺のせい) そうだ、俺のせいだ。だが、オニクスはその想いを打ち消した。失われたものを過去に求めようと、何も戻りはしないのだ。過去はただ回想の為に存在し、それが何かを生み出すことはない。 参考にはなれど、それ自体が未来への鍵になりはしない。過去への逃避が何も生み出さぬように、これもまた無駄な行為…オニクスはそう感じた。 過去を振り返るのは構わない。だが、それを逃げ場にしてはいけない。 「…戯言だったな」 彼はあえて口に出す。それは自ら点けた、決意のスイッチ。スイッチがOFFからONへと変わり、意志という電気が躯に供給される。 (二の轍を踏むわけにはいかない) 以前の彼とは、明らかに違う。冷徹なマシンとしてのオニクスでもなく、残虐非道の殺戮者としてのオニクスでもなく、 ルイズの使い魔としてのオニクス。 そのスイッチが今、ONにされたのだ。 再び顔を上げた世界が、新しいものに見える程の決意。 それは、どれほどのものであったろうか。 そしてオニクスは、さっそくその決意を試されることになるとは、知る由もない。 「また男を誘惑してるのね~?」 「違うわよ、相手が勝手に寄ってくるだけよ」 キュルケとその友人らは、楽しい雑談の時間を過ごしていた。傍らにはびっしり字が書き込まれたプリント。それは既に彼女がプリントを終えたことを示している。 「で、あのクラスのボブがまた、ステキなわけよ」 「えぇ、私はタイプじゃないな」 「じゃだれがいいの」 「うーん、私は…」 このまま楽しい雑談は、続くかに思われた。だがそれを中断する声が、キュルケの視界の外から聞こえてきた。それは間違いなく、キュルケを呼ぶ声だ。 キュルケが振り向くと、そこにはよく顔を合わせる男子生徒が立っている。 「おぉい」 「ん、なに」 「ちょっとフレイムがうるさいんだけど、静かにさしてくれるかな」 「オッケー、ちょっとまって」 キュルケは立ち上がると、後ろの方に待機させておいたフレイムの方に足を進めた。フレイムは男子生徒の言った通り低い唸り声を上げ、落ち着かない様子でうろうろと動き回っている。 (こりゃうるさいわ) 「フレイム、静かにして」 キュルケは当然命令口調で、フレイムに静かにしろと命じる。だがフレイムは主人であるキュルケのいうことを聞かず、依然として動き回っている。 「フレイム!」 キュルケの語調が鋭くなる。するとフレイムはそれに反応するかのように顔を上げ、苦しそうな顔を見せた。何か具合が悪いのか、フレイムのうめきは止むことはなく、苦しい顔はキュルケに何か訴えかけるかのようだ。 「どうしたの…?」 「どうした」 そこに見かねたオニクスが歩いてきた。オニクスはかがみ、フレイムの背中をなでて、フレイムを鎮めようとする。 「主人が困ってるぞ」 オニクスの鋼鉄の掌が、フレイムの皮膚をなでる。それが不快だったのか、フレイムは声を上げてそれを振り払った。そして再び低く唸り、うずくまったようにフレイムは動かなくなった。 本格的に不審がる2人。何でも無い、わけがなかった。 オニクスがもう一度手を差し伸べ、背中をなでようとする。だが、そこで2人の悪い予感が的中した。 フレイムはオニクスの手を振り払い、口を開けた。 火炎! オニクスは瞬間的に次の行動を予測し、逆にフレイムの首を払う。それた頭はあらぬ方向に向き、そして予想通り、フレイムの口からは灼熱の炎……否、金色の光が吐き出された。 「な」 天井を光が焼き付くし破壊する。オニクスがフレイムから距離を置き、その様子をうかがう。キュルケや周囲の生徒も距離を置き、フレイムの状況をつぶさに観察する。 唸るフレイムは背中がうっすらと光り輝き、それは明らかに異常な状況であることを周囲に知らせる。フレイムの中に、なにかいる。だが、そんな事例は誰も知らないため、当然対処法はわからない。 周囲の生徒達はさらに一歩下がり、キュルケとオニクスは取り残される形になった。 「フ、フレイム」 そしてキュルケが、再び距離を詰めようとした、その時だった。急にオニクスの腕がキュルケの前に現れ、それを制したのだ。 オニクスはもう理解していた。 この感じ。 におい、否、気配と言った方が正しいか。 いや、そんなものよりもっと鋭敏で鮮明。 2人が視ている前で、フレイムの光輝く背中から「腕」が突き出した。それも普通の腕では無い。全体が黄色の装甲に覆われ、曲線主体のフォルムに、詰めのようなカウリングに覆われた手と指。 それは間違いなく、人ではない。 ギガンティックだと、オニクスは確信する。 そして決断は早かった。 「キュルケ、下がれ!」 その一声と共に、オニクスは右手にライトニングソードを生み出し、水平に払った。切っ先からエネルギーがほとばしり、紫色の衝撃波となってフレイムに一直線に飛んでいく。 キュルケは一瞬オニクスの行動が、理解できなかった。 「 え 」 爆炎。着弾した衝撃波は爆発と共に広範囲に煙をまき散らし、状況を不透明にした。噴煙に眼を覆うオニクスとキュルケ。状況は不透明なまま、時間が数秒、経過する。喧噪と悲鳴の中で、過ぎ行く時間。 「間違えるはずがねぇ」 オニクスは噴煙の先にいるはずのそれを見据える-------- 噴煙を割って、腕が飛び出してオニクスの顔面をつかみ取った。さらに噴煙を割って明らかになる腕の持ち主。それは全身を黄金で覆った、機神…ギガンティックに他ならなかった。 黄金のギガンティックはそのままオニクスを押し倒し、マウントポジションを取ってオニクスを殴りつけようとした。だが黙って殴られるオニクスではない。 背部のスラスターを全開にし、不意を取られたギガンティックを逆に殴り飛ばした。 殴り飛ばされたギガンティックは空中で姿勢を制御し、華麗に着地する。オニクスもゆっくりと立ち上がり、標的を正面に捉えた。 「お前…ヘスティアか!!」 ヘスティアと呼ばれたそれは、言葉を発する。現界してはじめて放つ言葉は、戸惑いでもなく、絶望でもなく、 一転の曇りなき、憎悪。 「貴様が…ヘファイストスを殺したッ!!」 一瞬の後、ヘスティア『ネフティス・』は、胸部のハッチを展開し、レーザーを放つ。オニクスはそれをライトニングソードで弾く。オニクスは間髪入れずに叫んだ。 「逃げろ!!」 突撃。ソードを振り上げて相手を打ち据えんと距離を詰めるオニクス。一方のネフティスも両腕の掌の間から三つ又の矛を生成し、これに応じる。 そして切っ先が激突し火花を散らした。それが始まりだったのか、ネフティスは連続してトライデントを突き出し、オニクスは剣戟でそれを弾く。 それを尻目に生徒達は出口に殺到し、教室には二機だけが取り残された。 「同志殺しめ!」 「ふざけるな、正当防衛だ!」 「残虐非道のコピーが、何をッ!」 怒れるネフティスは槍を斬り上げ、ライトニングソードを弾くと胸部のレーザーでオニクスを吹き飛ばした。よろけたオニクスにネフティスは槍を構え、突撃する。 だが、ヨロケから戻ったオニクスはライトニングソードを振り下ろし、槍の穂先を地面に逸らす。両者は武器を手放し、バックステップで距離を取る。オニクスが口を開いた。 「お前も『あのお方』の手先か!」 「そんなこと、知るか!私はヘファイストスの仇を討つ!」 「…関係無さそうだな。それより、事情も聞かずに斬り掛かってくるとはどういう了見だ」 「お前は私達に取って殺すべき敵だ、それだけの話だよっ!」 ネフティスは会話すらうっとうしいのか、全てを怒りで弾き、かたくなにオニクスの話を聞こうとしない。オニクスは困った。 やヘり悪役は辛いな。 「…なら力づくで止めるしかないな」 飛翔。空中で二機が激突する。そして着地。互いの位置は入れ替わり、二機は相手の手に取っていた武器を手に取り、再び剣を交えた。槍が鈍色の剣と激突して火花を散らす。 「私がお前を討つ!!」 「討たれるわけにはいかないんだよ!!」 互いの武器の力が拮抗し、弾き飛ばされる。すかさずオニクスは右手にハンマーを生成し、渾身の力で撃ち下ろした。 だがそれはネフティスの華麗なステップにかすりもせず、逆に側面を取られたネフティスの攻撃で、オニクスは窓の外に放り出されてしまった。大地に叩き付けられたオニクスに、追って飛び出したネフティスが、空中から追い討ちをかける。 背中の翼が全面に展開され、それは強力なレーザー砲となる。 「プラズマアーム!!」 瞬間、光の嵐。地上に叩き付けられるように降る金色の光はオニクスの装甲と大地を一瞬にして焼き尽くした。ネフティスはさらに追い討ちをかけるようにプラズマアームを放ち、オニクスに憎しみを叩き付ける. 「貴様だけは!」 「いい加減にっ…話を聞けっ!」 オニクスはいつの間にか、背中に新たな装備を展開していた。羽のような文様をあしらったそれは、四枚の翼。そしてそれは光り輝き、その光はネフティスの眼を焼いた。 『アルゴスの百目』 「ぐっ…!!」 眼を覆って攻撃を中断するネフティス。その隙にオニクスは素早く立ち上がり、ネフティスの元へと飛翔する。一気に飛び上がり放つそれは飛び蹴り。 勢いのついたオニクスはネフティスを叩き落とし、再び窓枠を破壊して教室へと戦場は移行。そして床を突き破って両者はその下の階層へと落下した。 下の階層へと落下した二機。上を取ったオニクスが、掲げた剣を突き入れようと迫る。だがネフティスはそれを振り払い、逆にチェストファイアを浴びせてオニクスを追い払った。 「だから話を聞け!」 「貴様の話など聞くか!」 「被害者は俺の方だ!」 「ふざけた話を」 「やっぱりお前も『あのお方』の手先なのか!!」 「くっ、何だか知らんが、騙されないぞ!」 「畜生め!」 オニクスは一瞬で判断し、加速、剣を上段から叩き付けるように振り下ろす。迎撃に放たれたネフティスの蹴りと剣はぶつかり、互いのエネルギーを相殺。 再び距離を離したオニクスは剣から紫電を走らせ、ネフティスに向けて放った。紫電に焼かれ火花を散らすネフティスの装甲。 そこに畳み掛けるように再びオニクスの突撃。ネフティスは背中に新たにプレッシャー・カノンを召還し、迫るオニクスにそれを放った。 とっさに防御の態勢を取ったオニクスだが、かわしきれずに直撃、後退を余儀なくさせられる。 そこにミサイル・ポッドの弾幕がさらに襲いかかり、オニクスは力場障壁を展開して身を守る。力場障壁でミサイルをかき消し、オニクスは剣を弓へと変えた。 『光弓(アルク・ルミエール)』 弦を引くオニクス。それに対するネフティスもプラズマアームを展開し、同時に放たれた二つの飛び道具は互いを相殺し合った。弓はさらに光の槍へと変じる。 『光鑓(フレッチェ・ランス)』 再びの近接戦。剣先は幾重にも変則的軌道を描き、相手ののど元を抉らんと乱舞する。 正直オニクスは今回殺す気はなかった。できればこの誤解は晴らしたいところだが、オニクスの話は聞いてくれそうにない。なので名案が思いつくまで、オニクスは勝負を引き延ばすつもりだったのだ。 (俺が説得…不可) (四肢斬り飛ばして説得…それでもアイツは話を聞きそうにない。却下) (ルイズを呼んで説得…アイツは寝てる) (キュルケorタバサに説得を頼む…有力だが巻き込みたくない) (殺す…最悪パターン) だが、名案は当分思いつきそうにない。 「…手加減」 「え?」 キュルケとタバサは、距離を置きつつ二機を追跡していた。そして戦いによる移動が沈静化したところで腰を落ち着かせ、離れた場所からそれを観察していたのだ。タバサは視力に魔力を込め、つぶさに観察している。 キュルケは最初はじめて召還した使い魔をあっさり失ったせいで魂が抜けたようになってしまっていたが、タバサの「フレイムの仇を追う」という言葉に正気を取り戻し、タバサと追ってきたのだ。 「オニクスは本気で戦ってない」 観察をつつけるタバサは言う。 「なんでよ?殺さない理由が無いじゃない。あれもオニクスを倒したがってる理由があるらしいし」 「私にはわからない。でも、オニクスは戦いを終わらせたくないみたい」 キュルケは疑問だったが、妙に信じる気になった。この子の言うことはいつも不思議に的を射ている。タバサがそう言うのなら、信じていいかもしれない。 「でもあれ、下手に介入すれば瞬殺ね」 「シルフィードを呼べばまだなんとかなるかもしれない…けど…龍でも太刀打ちは難しいと思う」 「そうよねぇ…でも、ココでのぞきやってても状況は変わらないし…あぁ~、どうしたらいいのかしら」 こちらも名案は、浮かばない様子だ。 次 回 予 告 雷の神は我を忘れ、 怒りに任せて仇を討つ。 そして、黒の機神が 迫られる選択は。 次回「雷焔」 絆は、少なくとも簡単にはちぎれない。 前ページ次ページゼロの機神 ギガンティック・ゼロ
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神姫エウロパに仕えた『機神』の長と言われている。 4mの巨体に似合わず深い英知を持っていた聡明な神とされており、降臨してすぐに大陸中で蔓延した『一度感染したら死を待つのみ』と言われる奇病『腐死病』にかかった民を治し、さらには『腐死病』の原因を解明して大陸を救ったと古文書に記されている。 エウロパの死後は『自分たちの存在は新たな争いを生むだけ』と悟り他の機神たちと共に姿を消す。 その後は『人知れず邪神とそれに魅入られた者達を倒し、我らエウロパの民を見守っている』と言う伝承が残っている。 しかし、100年前の産業革命以降は一部の平民たちの信仰のみにとどまり、彼らの偉業はたんなる御伽噺と思われているのが現状。
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前ページ次ページゼロの機神 ギガンティック・ゼロ 剣戟の連打は続く。 光の槍は速度を緩めずに連続でふるわれ、海神の銛はそれを流しつつ反撃する。その応酬は続いていた。だがその拮抗も長くは続かない。ネフティスが槍を突き出し、オニクスと距離を離したのだった。 距離を取ったオニクスが不意に口を開く。 「かの光の神ヘスティアは、永遠の安息を願い、自らの処女と引き換えに人々の家々の『灯』に宿り、人々の団らんを見守る役職に就いたと言う…その温和なヘスティアが、この怒りようはなんだ」 「だから、仲間を殺した仇を討ちにきたんだっ!」 「おま、まだ俺が世界の新生なんて謳ってると思ってるのか」 「十分あり得る、ゼウスの野心を宿したお前ならな」 「そんな非建設的なことはとうにやめたよ、だから、剣を引いてくれ」 「ふざけるな、そんなワケが無いだろう!」 「じゃぁ殺していい。だから、俺の話をひとつだけ聞いてくれるか」 「…構わん」 「頼むからもう戦いをやめような?」 「断るっ!!」 言うが早いか、ネフティスの脇から二基のプレッシャーキャノンが展開される。オニクスは飛んだ。ネフティスの頭上へと。 直後に放たれた衝撃の塊が大地を薙ぎ、空へ飛んだオニクスは難を免れた。そしてオニクスは両腕の掌をネフティスに向けた。 「銃の腕(ゲヴェーア・アルム)!!」 青い閃光が掌から発せられる。それは魔力の弾丸となってネフティスに降り注いだ。そのまま落下するオニクス。着地する先はネフティスの目前。 ネフティスは両腕で防御したが、弾丸は容赦なく両腕の装甲を削ぎ取った。そしてオニクスは着地すると同時に、すぐさま次の行動へと移る。 放たれた膝が無防備なネフティスの腹を直撃し、続いて放つ蹴りが、ネフティスを一撃で吹き飛ばした。 ネフティスは壁に激突し、衝撃をもろに受ける。オニクスは姿勢を戻すことすら出来ないネフティスに更なる追撃。だがネフティスも黙ってはいない。チェストファイアを放ち、オニクスを退けた。 その隙にネフティスは姿勢をたてなおし、再び勝負は五分と五分へ。 先に動いたのはネフティスだった。背中のプラズマアームを展開し、オニクスに熱線を放った。オニクスは亀甲盾でこれを弾く。ビームの嵐は連続して仕掛けられ、フィールド・エフェクトを揺らした。 だが、ヘルメスの力を宿す亀甲盾、コピーであっても、その程度で砕けることはない。そしてビームのあらしがやんだ一瞬、オニクスは勢いを付けて盾を投げつけた。ネフティスが予想外の攻撃によろける。 オニクスは隙をつき、両腕からケーブルを伸ばし、よろけたネフティスを捕縛した。 「…これでうかつには動けまい。内蔵火器に頼った設計が災いしたな」 「いや、まだだ!!」 ネフティスは自由な両腕でケーブルの束を掴むと、渾身の力を込めて引きちぎる。ケーブルは瞬間二丁のライフルに変換され、銃口はオニクスに向けられた。 エネルギー弾の連射が、オニクスをよろめかせ、弾き飛ばす。その威力は戦場を教室から外へと変えるのに十分であった。 倒れたオニクスを見下げ、ネフティスは侮蔑の視線を向ける。 「…これで終わりだ」 そして、胸部のハッチと背中のアームを展開する。ネフティス最強の兵器、本気になればこの学院そのものを消し飛ばすことも出来る、ネフティス最大の切り札。 プラズマ・フレイムの充填に入ったのだ。 「おいおい、ココでそれを撃とうというのか」 「貴様を倒せればそれで構わない」 「なら、こっちも黙ってられないな」 立ち上がったオニクスもまた、両腰にプラズマアームを召還し、それを前面に向け同様にエネルギーを充填する。エネルギーは球状に肥大し、雷電を伴ってそれはまるで、プロミネンスを伴う恒星のようにも見える。 「どこまでも模倣しかないのか、貴様は」 「模倣でもいいじゃないか…それに」 「それに?」 「ある東方の英雄が、こんな言葉を残してる…『贋物が本物に負けるという道理がどこにある』と、な」 2体のエネルギーは最高潮に達し、それは破裂しそうに膨らんでいる。2体のにらみ合いが、終わりを告げようとしていた。 「雷-----(プラズマ)」 「雷-----(プラズマ)」 「「 焔 」」(フレイム) ルイズが目を醒まして最初に見たのは、窓を貫いて部屋を照らす眩しい灯だった。ルイズは割れた窓に近づき、眼を細めながら窓の外の様子をうかがった。そして驚愕した。 光の奔流が、すさまじい光と音を伴って激突している。その一方に立つのは自らの使い魔、十式オニクス。そしてもう一方に立つのは、得体の知れない金色の機神。 それが、凄まじい光の発生源だった。二機のエネルギーは拮抗し、どちらが勝ってもおかしくない。ルイズは急いで自室を飛び出し、階段を駆け下りた。 凄まじいエネルギーの奔流は、真昼よりも眩しく周囲を照らし出した。二機のエネルギーは拮抗し、余波で周囲の雑草は激しく揺られている。 「生意気っ!!」 「ふん、だから言ったはずだ!」 機体のフレームがきしみ、耳障りな音を立てる。だがそれすらも、プラズマフレイムのこの轟音の前には蚊のなく声のように小さい。二機はなおも力を緩めることなく、奔流を放ち続ける。 さながら流れ落ちる滝が重力法則を越え、横向きになったかのように。 「貴様は何故戦うっ!」 「ただの自己保身でここまでするか!」 「ならお前は何を求める!!何が!お前に!その剣を握らせる!!」 「訳ありなんだよ、俺にも…護るべきものがある!!」 「そんなわけがないっ!!」 「後悔で人生終わらせたくなかったのでな!!どうも神は非情ばかりではないようだ!!俺はチャンスを貰った!!」 「何だと…ッ!!」 問答。 「かつて俺が自らの手で穢してしまった、前世の人々への償い…それを行うチャンスをなっ!!」 「ふざけるな…!破壊の神に何も守ることなど出来るものかっ!!」 「それだけじゃない…俺に新たに、生きる指標をくれた…あの危なっかしくてちょっと頭の回らない馬鹿なあいつを…守る為にっ!!」 がむしゃらにエネルギーが増大する。余波は硝子を砕き、まるで台風のようだ。 「…戯言につきあうものか…此処で果てろ、破壊の化身!!!」 ネフティスは烈昴の気合と共に、プラズマフレイムにひときわ強い魔力を混める。オニクスが押された。足下の土が削られ、オニクスは後ろに下がっていく。 オニクスの放つプラズマフレイムはネフティスのプラズマフレイムに呑まれるように、その勢いが殺がれていく。 …くそ。純正品にはやはり…勝てないか。 オニクスは己をのろった。 だが、その時またも自分を救ったのは、あの少女だった。 「ダメェーーー!!」 ルイズだ。その少女が凄まじい風の中を、一歩づつ歩いてこちらに向かってきていた。オニクスは驚愕した。だが、最も驚愕したのはネフティスだろう。なんせ、自分の否定したことが、現実になろうとしているのだから。 「莫迦野郎!!病み上がりが無茶するな!!」 「そんなことより自分の心配しなさいよ!!負けたら…負けたら絶対、承知しないんだから!!死ぬなんて許さないわよ!!」 ルイズの顔は必死で、真剣だ。メンツもあろうが、それは本気でオニクスを応援する、一人の少女の顔つきでしかない。 「…わかってる、我が主人。勝って帰るとも」 「…約束、よ。ちゃんと…ちゃんと帰ってきなさい!!」 オニクスは力強く返答し、ネフティスに向き直る。そして、力強く言い放つ。 「この通り、負けられない!!そこをどけ!!!」 瞬間、プラズマフレイムがネフティスのプラズマフレイムを押し返した。そして、エネルギーの奔流は収束し、爆発する。凄まじい光と圧力が解放され、オニクスはとっさにルイズをかばった。 収束する爆発。そこにいるのは、両手を広げてルイズをかばったオニクスと、その背に隠れたルイズ。そして地に倒れ伏したネフティスである。 「…馬鹿な…破壊の神に…守ることなど…っ!」 だがネフティスはまだ、憎悪の言葉を紡ぎ続ける。オニクスは周囲の安全を確認すると、ネフティスの元に向かい、膝をついてしゃがんだ。 「温厚な光の神らしくない真似はやめろ、『ヘスティア』。神の威光が汚れるぞ」 「私はただ仇を討つだけだったのだがな…どうやら貴様の言っていたことは本当のようだな…だが、解せない…」 「どうした」 「お前は何故…ヘファイストスを殺した」 「…俺は狙われた側だったのさ。俺だって何故現界したのかわからない。死んだ方がマシだと思ってたし、もし今までの気持ちだったなら、俺はお前に殺されたろう。 だがな、現界して事情がわからない俺を、ウルカヌスが一方的に襲ってきた。そして『俺は差し向けられた』と言った。つまりは、ヘファイストスは自分の意志ではなく、裏で命じた人間の意志で俺を殺そうとしたわけだ」 「なんだと」 「俺は死ぬわけにはいかない…彼奴のためにも…そしてまた俺達ギガンティックを使い、エゴで誰かを引き裂こうする奴がいる限り…正義の味方を気取るわけじゃないが…俺はただ…許せない」 「そうか…お前はアレスのようなことを言うな」 「アレス…」 オニクスは思い出した。かつてただ一人正義の味方として、戦いを止めるためにWWWに馳せ参じた勇壮なる正義の神の姿を。 そして、言葉をつなげる。 「…それも道理だ。俺は、アレスを元に作られたのだからな」 「…そうだな。くっ」 不意にネフティスが苦しい声を上げる。 「大丈夫か!?」 「ああ…戦闘ダメージが馬鹿にならない…お前の撃ったそれのお陰でな」 「そうか…なら、休むといい。話はそれからしよう」 「…私を…殺さないのか…」 「殺すものか。俺がお前でも、きっと仇を討ちにきた。お前の行いは理にかなったことだ」 「…詰めが甘いな…そこだけは…アレスと違う…」 ネフティスは静かに、眠った。 事態の沈静を見たルイズが、オニクスに声をかける。 「ねぇ、また戦っていたの?こいつも、アンタが言ってた『敵』のなかま?」 「違う…こいつは正しい…今回は俺も少し悪かったか」 「…どういうことなの」 「こいつが起きてから…話はそれからした方がいい」 事態の収束を見たキュルケやタバサも近寄ってくる。それを見たオニクスは、2人に声をかけた。 「空き部屋を用意してくれ!!ベッドがあると助かる!」 こうして急遽キュルケの部屋に集まったルイズ、タバサ、キュルケ、オニクスは、ベッドの上に眠るその躯体を見つめていた。 「ホントにこいつも神様なの?」 「ああ。俺達の世界では、光とかまどを司る、柔和な女神だった」 「女神!?こんなごっついのが!?」 「…外見で人は判断できない」 「人じゃないし」 そういた雑談を交わすうちに、彼女…ネフティス・は目覚めた。 「ん…ここは…どこだ?」 「目を醒ましたか。すまないが、お前が寝ている間に別の部屋に案内させてもらった」 ネフティスは上体を起こし、壁にもたれかかる。そして周囲の面々を一瞥した。ルイズ・キュルケは2回め、タバサは初見である。 「…オニクス、この娘と契約したのかい」 「ああ、そしてこいつが俺の『主人』」 「こいつってなによ!」 ルイズがオニクスを叩いた。しかし、オニクスの硬さに、拳に手を当てていたがっている。それをみて、ネフティスはふっ、と笑った。 「…平和だな」 「ああ。だが、この平和も、長く続かないかもしれない」 「…そのようだな」 「悪い予感ですめばいいが、事実ウルカヌスと玄武神が、俺を殺そうと差し向けられた。どうも、『あのお方』とかいう、俺達と同じような存在に指揮されているらしい」 「…敵はまた…ギガンティック」 「かもしれん。哀しいかな、またギガンティック同士で戦うことになったか」 「アレスの気持ちもわかるというものだ…このような哀しい戦いを続けさせるわけにはいかない」 「そう思うなら、少し力を貸して欲しい」 「…ああ、いいだろう。それに…お前も変わったことがわかったしな」 そうして、二機の協定は成立した。 「…おほんっ」 キュルケが、会話を終わった頃を見計らって会話に割り込む。 「…美しいお嬢さんだが、どちらさまかな?」 「キュルケ。ウチの主人のご友人だ」 「はぁ…」 ネフティスは、ルイズとキュルケを代わる代わる見比べる。 「この子が先輩で、このルイズ殿がキュルケ殿の後輩の間違いじゃないのか」 オニクスは吹き出してしまった。確かにキュルケは大人っぽくルイズは子供っぽかったが、ここまで豪快に間違える奴ははじめて見た。一方のルイズはもう顔を赤くして、ネフティスにまくしたてる。 「あーもう!ネフティス…さん?そんなにわたし、子供っぽくないわよ!!」 「馬鹿、ルイズ、そう言うところが『子供っぽい』」 「きーっ、何よ何よ何よ、2人してーッ!」 ふと、ネフティスが言う。 「やはり『理想の主人』に出会ったのかもしれんな、オニクスよ」 「ふっ、これがか?」 その後、ルイズが杖を取り出して失敗魔法を撃とうとしたが、迅速に動いたタバサによってそれは阻止された。そして暴れるルイズを尻目に、キュルケが話を続ける。 「ネフティスさんね」 「ああ、そうだ」 「あなた、どうやってここに来たか覚えてる?」 「まず、死した神々は、英雄の座で眠りについた」 「英雄の座?」 「死んだ神々の行き着く場所、つまりは天国だ。それで?」 「私は他の神々と酒を飲みかわし、静かな日々を送っていた。だが、異変が起きた」 「で、それで?」 「最初にゼウスがいなくなった」 ネフティスは語り続ける。オニクスが逆に質問を返す。 「ゼウスが?」 「ああ。そしてヘファイストスが、アルテミスが、アポロンが…そして私もこの地へとやってきた。だが、我々は最初、力を封じられていた。あるものは草木に宿り、あるものは生物に宿り、あるものは石像そのままの姿で… だが次第にこの世界に順応するにつれ、我々は多くのことを知った…ここが我々の世界とは違う世界であるということ、そして、我々を構成していた肉体を、形作れるということに。 私は傍観を決め込むつもりだったが…力あるものは躯を作り、行動を起こしたようだ…未だ確認できるのは少ないな」 「お前、わかるのか」 「ああ、多少は…今この地に現界している躯体は六機。お前と私を含めてな」 「で、お前はどうして現界を」 「ヘファイストスは親しい友人だったから、特に私と強く繋がっていた…だが、その反応が突然、消えた。私はそのとき、直感がした。 ヘファイストスを殺したのは、オニクス十式、お前だと そして憎しみのままに、肉体を造り…」 「俺に戦いを挑んだ」 「そういうことになる」 「そこ!そこが重要なのよ」 突如また、キュルケが割り込んでくる。 「あなたは現界したとき、どうした?」 「オニクスの頭を掴み…」 「もっと前!」 「足で地面を蹴り…」 「もっと前!」 「…何かを突き破った」 「そこよ!貴方は何を突き破った?」 「……何を突き破ったんだ、オニクス?私はわからない…」 「……お前はポカをやらかした」 「ポカ?」 「出てくるときお前が突き破ったのは、このキュルケが生涯ではじめて召還した使い魔の背中だよ」 「ハ?」 ネフティスは当然疑問符を浮かべる。 「この世界の魔術師はな、一定の年齢になったら自身の『使い魔』を召還するというしきたりがある。使い魔は一生のパートナー。それを数ヶ月で背中ブチ破られて殺されたんだ、おまえが現界の質量召還に使ったせいで」 「………なるほど、現世の肉体の構築材料は…それだったのか」 しばらく思案するネフティス。彼女は考え込む。そしてゆっくりとキュルケの方に向き直ると、超スピードで頭を下げた。 「すまない!!」 「…え!?」 あっけにとられるキュルケ。歴戦(?)の彼女も、男に土下座されたことは星の数程あっても、神様に謝られたことは人生初の経験である。 「え、あ、別にそんなつもりじゃ…」 「復讐に囚われすぎていたようだ…これではヘファイストスに顔向けが出来ぬ」 「…」 「すまんな…ならば、キュルケ殿やヘファイストス、オニクスへの償いの意味も込めて…このヘスティア、命続く限り、貴君の使い魔を勤めよう」 「…ホントに!?」 キュルケの顔が子供のようにパァッと輝く。ヘスティアはうん、と一回うなずいた。 「ああ、ならば、契約を果たそうではないか」 キュルケはオニクスらの方を向き、しっしっ、と手を払う。解せないルイズが反抗する。 「なによ」 「神聖な儀式の時ぐらい、2人にさせなさい?」 「…わかった」 察した全員が出て行くと、一人と一機が、口づけをかわした。 そして、光の神は一人の少女の使い魔となった。 次 回 予 告 少年少女らに迫るのは 成績を左右する大きな行事 そして、青銅の騎士と零の魔術師、 機神達の動向は。 次回「品評」 失敗は、誰かに原因があるとも限らない。 前ページ次ページゼロの機神 ギガンティック・ゼロ
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前ページゼロの機神 ギガンティック・ゼロ 数週間が経過した。 あれ以来、機神の襲撃はない。 そして、生徒達の間では、二つの話題が持ち上がっていた。 春の使い魔品評会。 そして、それをアンリエッタ姫殿下が見に来るかもしれない、という噂。 否、真実ではあるが、それが真か否かは、未だ生徒の間に伝わってはいない。魔術師達はこの品評会で好成績を獲得するために、この時期は使い魔とのコンビネーションの強化を始めとした特訓に励む。 強い使い魔に頼ってばかりでも駄目、主が突出しても駄目。微妙なさじ加減を計るために。 その件に関して、ルイズは思い悩んでいた。彼女の使い魔はめっぽう強い。なんせ神様なのだから当然だろうが、これでは絶対に「使い魔に頼る魔術師」と見られてしまう。 しかも、自分は恥ずかしながら何も出来ない。おこちゃまの学芸会とは違うのだ。これは「使い魔と魔術師とのコンビネーション」を見るための品評会だ。 しかし、その思い悩みの種は、彼女自身だけでなく、その使い魔にもあったのだ。 -授業中の教室- 今日の授業は理科。前では教師が教鞭をふるいつつ黒板に白い字を書いたりしている。 「えー、現代で『サラマンダー』と呼ばれる種の起原は、火山などの付近に生息していた蜥蜴が、この灼熱の世界に耐えるために変異したものとされており…」 ルイズはその字を追いつつ、ノートに書き写す。 「このサラマンダーも普通の蜥蜴とは異なる数多くの特徴を…」 書き写す。そして、小さな声で溜め息をついた。授業に集中しなきゃと思いつつも、彼女の頭の隅に、現在進行形である心配事が居座っているのだから、溜め息をつくのも致し方ない。 それは重大なことで、こんな基礎中の基礎より、ルイズにとって大事なことだった。 そしてその原因のひとつは、窓の外にいる。チラリと窓の外を見やるルイズ。眼下では教室に入らない、各々の使い魔達が休足を過ごしている。その中にある、金色の影と漆黒の影。 それを見てルイズは、深い溜め息をついた。 全く、他人事だと思って。 -その頃、ルイズの遥か下の地上- 「ドローツー、黄」 「ちぃ、リバース、黄」 「黄の7」 「きゅい、青の7」 「ドローフォー、赤」 「赤、ドローツー」 「あ、私だ…」 そこでは、奇妙な光景が展開されていた。これを見たら、どんな人だって百人中百人「ありえねー」と言うだろう。何故って、ギガンティック2体と蒼い躯の龍が、UNOをしているのだから。 元々戦うために作られたギガンティックと、伝説の中の伝説である龍が、庶民的なUNO。ギャップにも程がある。しかも龍は言葉を喋ってるし、常識逸脱もいいところだ。 「駄目駄目だわ…」 「まぁ、UNOなんて策略だし…赤1、ウノ」 こうなったのには、もちろん訳がある。 数日前のことだ。シルフィードは暇を持て余していた。 「はぁ~、姉様は授業だし、他の使い魔は喋れないし、退屈…きゅい~」 シルフィードはこの世界で絶滅したとされている「韻龍」である。 韻龍は言葉を解すとされ、非情に高い知能を持つとされる。それ故にかつて人に狩られ、韻龍は絶滅した…と、信じられていた。 だが、実際には絶滅などしてはいなかった。ここにシルフィードがいることが、それを証明している。 「姉様は意地悪なの~」 シルフィードはタバサが大好きで、もう許すのならば一日中傍にいてもいい程であった。だが、そのタバサは、シルフィードとなかなか接する機会を持てない。 故にシルフィードは、こうして暇を持て余す日々が続いていて、ストレスが溜っていたのだった。しかし、自分が韻龍であることがバレたら、大変なことになる。 それを心の支えにシルフィードは今日まで頑張ってきたのだが、それもそろそろ限界というものだ。 「きゅい~!誰かとお話ししたい~」 その時、シルフィードに近づく影があることに、注意が散漫だったシルフィードが気付くことはなかった。 「ここが使い魔が普段待機してる広場」 「ほう、そのようだな」 「動物園のようで飽きないとは思うが、それも最初だけだ、暇になるぞ」 「そうだな…」 同時刻、オニクスはここの構造に不慣れなネフティスを案内しているところだった。オニクスもどうせ暇だったし、ルイズらは授業中だ。なので暇つぶしもかねて2人は、校内を練り歩いていたのだ。 「やれライオンだの鳥だの…」 「豪勢なメンツだろ?」 「そうだな…ん?あれは何だ?」 ふとネフティスが、視界の隅に何かを捉える。それは蒼い躯の龍だ。 「ほぉ、龍とは珍しいな」 龍は首を振り、何か独り言をつぶやいている様子だ。 「あれはおまえのご友人の使い魔だよ」 「喋る龍とは」 「喋る?空耳だろ」 オニクスが、ネフティス、そしてシルフィードに疑いの視線を向ける。そしてそれを凝視した。耳も凝らす。 それは喋っていた。 「おいおい、嘘だろ」 「知らなかったのか?」 「今までただの龍だった!」 「なら本人に聞いてみるのが筋というものだな」 ネフティスがオニクスを追い抜いて歩き出す。オニクスもすぐに後を追い、シルフィードの巨躯に背中から迫った。そしてシルフィードの背中をぽん、と叩く。それは過剰なまでの速度で振り向いた。 「きゅい!!?」 「おい龍、お前、喋れるのか?」 シルフィードは焦った。聞かれてしまった。 (どうしようお姉様、どうしよう~) 「………」 「やっぱ空耳じゃないのか?」 後から追ってきたオニクスが合流する。シルフィードは無言だ。だがネフティスは動かない。シルフィードの顔を見つめている。シルフィードはさらに困った。冷や汗だらだら。 そして困ったシルフィードは最悪の行動をとる。 「し、知らない!喋れる龍なんて知らない!」 「「…………」」 「…はっ!?」 「「嘘だッ!!!」」 どう見ても喋ってます、本当にありがとうございました。 「これは他の人には内緒にして欲しいの~」 「いいだろう」 数分後、そこでは韻龍とあぐらを組んだギガンティック2体が話し込むという奇跡のコラボが実現していた。 シルフィードは喋れる相手が出来たには出来たが、これが主人にバレたら大変なことにもなりかねないので、やっぱりまだ困っていた。 だが、やはり話し相手が出来た喜びには変えがたく、数分後には陽気な声で雑談が始まっていた。 「もちろんお姉様にも」 「承知した」 「俺もだ…それより、シルフィード、暇なら少し遊ばないか?」 突然オニクスが、シルフィードに切り出す。シルフィードは首を傾げ、ネフティスも疑問の眼差しを向ける。オニクスは右手にケーブルを収束させ、その手の中に何かを生成した。 出てくるのは赤い小箱。小箱の表面にはカードをあしらった絵が書かれている。 「トランプなの?」 「この世界にもトランプがあるんだな…それはそうと、これはUNOと言ってな…俺の世界に伝わる、カードゲームのひとつだ。まぁ、暇つぶしにはなろう」 「…賛成だ」 「楽しそう!やるやる!」 鳴き声を上げ喜ぶシルフィードと、静かに賛成の意を表すネフティス。ここに後々ルイズの頭痛の種になる、二機と一匹のゲームが始まった…… ということで、その後も彼らの親交は続き、今日も主人らの授業の合間に、UNOに興じているというわけだ。いや授業の合間だけでなく、彼らは時間が許せばルイズの監視の眼を逃れ、UNOに興じた。 (オニクス→シルフィ→ネフティス) 「(赤ドローツー)そういえば」 「(2枚引いて赤9)きゅい?」 「端っこの建物に宝物庫があっただろう?」 「(青9)それはオニクスから聞いている」 「(ドローフォー)あれって何入ってるんだ?えと、赤」 「(四枚引いて、リバース赤)あそこはね…色々噂はあるけど、『破壊の杖』とか『オリガの角笛』とか『英知の塊』とか、いろいろあるらしいわ」 「英知の塊?」 「(赤7、8)さしずめ宝玉ってところか?」 「いや、それが最重要機密らしくて、私もわからないの~。みんなの間では、『赤黒く光り、敵味方問わず魂を喰らい尽くす魔剣』とか、『小箱に入った太古の生物の化石』とか、『力強いおっさんの胸像』だとか…」 「(黄8)大層な話だな…セキュリティは大丈夫なのか?」 「(黄リバース)あそこは固定化やら自動攻撃端末やらで、蟻の入る隙間も無いらしいきゅい」 「(黄7、6)油断が命取りだ、ウノ」 「(緑6)力づくで外壁ごと潰されるかもしれないぞ?」 「(ウノ)校長直々にかけたって言う固定化は伊達じゃないらしいの。あ、青」 「(出せずに二枚引く。青7)ちっ」 「(ドローフォー)それよりネフティスよ、お前のところは出し物決まったのか?黄色」 「(四枚引く。黄0)出し物?私は多分お姉様となんかするの!」 「(黄ドローツー)何の話だ?」 「(青ドローツー)ほら、使い魔の品評会が近いらしいって聞かなかったのか」 「(四枚引く)ひどい…」 「(青スキップ)ああ、キュルケも言っていたな。ウノ」 「(青スキップ)いいカードが来ないの」 「(青5)ウノ」 「(黄5、6)ツキが回ってこないきゅい~」 「黄4。あがり」 「黄1。あがり」 「きゅい~~~」 シルフィードが悔しそうに鳴く。ネフティスが小声で笑った。 「はは、落ち込まずに頑張れ」 「さて、そろそろ授業が終わるか?」 「もうすぐお姉様と会える♪」 すぐに陽気な声になるシルフィード。 同刻。 森の中に、打ち捨てられた小屋がある。そこに、「土くれ」のフーケとユーノワがいた。彼らは図面や何か表を書きながら、言葉を交わしている。 「アンリエッタ殿下が来るってのは本当なのかい?」 「トリステインの内通者からの確かな情報だ。それで警備が手薄になる。わかってるよね」 「今回いただくのは…『英知の塊』。それがあの学校で一番位の高い品物。そしてそれを盗み出せるのは」 「ああ。フーケ、君だけだよ」 「ふっ、おだててくれるじゃないか。侵入の手はずはカンペキかい?」 「ああ。僕が陽動、君が直接の盗み。目標を奪ったら即座に撤収、欲は出さない」 「そう。いい子だ」 「決行は姫殿下がやって来る日と同じに調整しとくよ。姫殿下に、一泡吹かせてあげよう」 「ふっ、それもいいねぇ…」 フーケが不適な笑みを浮かべる。ユーノワも表情が出せたならば、きっと笑っていたことだろう。 夕時。学園の中庭には、いつものメンツが揃っていた。 ルイズ。オニクス。キュルケ。ネフティス。タバサ。シルフィード。 今日ここに彼女らが集まったのは他でもない、使い魔品評会の芸を考えるためだ。もっともタバサは興味がなかったのだが、キュルケが強引につれてきたのだ。 「今日はちゃんと考えなさいよ?カードなんかやってないで!」 ルイズがオニクスにぴしっと言う。オニクスは小さい主人を見下ろしながら、溜め息をついた。 「良かろう、我が主。それで、あてはあるのか。残念なことに君には何も出来ない」 「ううっ」 いきなり痛いところを突いてくるオニクス。毎度のことながら遠慮というものが無い言い回しだ。ルイズは怒りを抑えつつ、オニクスや周囲の皆と共に、考え始める。 もちろん今回ばかりはオニクスもまじめに考えており、本当にやる気がないわけではないことがわかる。 「…ルイズ、剣は使えるか」 「使えるわけないじゃない!学院で剣なんて習わなかったわよ」 「じゃあ槍。戦斧。太刀、ショーテル…」 「武器の類は杖しか使えないっつってるでしょーが!!」 「…せめてまともに魔術が使えれば」 「なんかいった!?」 「いいえ何も。ネフティス、何かいい案はあるか?」 オニクスがネフティスに話をふる。 「…組体操とかはどうだ?特殊な技能は必要ない」 「あのな、中学生の運動会じゃないぞ」 「なら射撃…」 「こんなチビに銃が使えるか」 「『ジュウドー』の組み手でも披露するか?」 「時間が無い」 「上手くお前の主人の無能さをごまかせる方法は無いか…」 「俺が技を披露して、それを上手くルイズが使ってるようにごまかすとか…」 「現場にはプロの魔術師もいる。一発で見抜かれるぞ」 「…問題は山積みね、ルイズ」 「…揃いも揃って無能だのチビだの…それでもアンタら使い魔かーっ!!」 「いいえ、ケフィアです」 「意味わかんないわよ!!」 「そうだルイズ、俺の力を使えば…」 「あれだって結局はアンタの力のオマケじゃない!それに私、あれをまだ自分で制御できてないし…」 …道は長い。そして、タバサは本から顔を上げることはない。 焦る自分。 進む時間。 決断とひらめき。 今試されようとしているのは、力ではなく… 次回「連携#1」 思い返すこともあるだろう。自分の過ちを。 前ページゼロの機神 ギガンティック・ゼロ
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機神 事前登録キャンペーン?で登場したカテゴリ。 関連カード 黄 1-041UC 白銀の機神巨兵 関連リンク カテゴリ タグキーワード「機神」を含むページ一覧
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SD01 『白銀の機神~DIAMOND DEITY~』 Before (SD01)紅蓮の稲妻~BLAZING THUNDER~ After (SD02)轟天のヘヴンズドア~ROARING HEAVEN S DOOR~ 2009年9月10日發售 SD01(基本牌組01) 內容 全20種48枚 C卡=12種、U卡=4種、R卡=3種 M卡=1種 卡片48枚(C卡36枚、U卡8枚、R卡3枚、M卡1枚) 白銀之能量15個+規則手冊1本+遊戲墊2枚+會員卡1枚 收錄卡片 綠色 靈魂 SD01-014 スカンクス? SD01-015 ハッチドリ? SD01-016 アメンボーグ? SD01-017 重装蟲キャタバルガ? U SD01-018 草原の狩人キングゲパルド? R 地界 SD01-030 豊穣の大地? R SD01-031 朝焼け岬? 魔法 SD01-037 キャリーコア? SD01-038 エメラルドブースト? U 白色 靈魂 SD01-019 モモンガル? SD01-020 ヒトデム? SD01-021 神機グングニル? SD01-022 グラスカルゴ? SD01-023 機人ドロイデン? SD01-024 人馬機兵アトリーズ? U SD01-025 鎧装獣スコール? SD01-026 鉄騎皇イグドラシル? M 地界 SD01-032 機械神の加護? 魔法 SD01-039 ブリザードウォール? R SD01-040 アーマーパージ? U
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白い魔法少女と黒い男と銀の機神 ◆vyNCf89vh2 ――美国織莉子は困っていた。 自身の能力である「未来視」の調子が悪い――というのも理由のひとつではあったが、目の前にいる『ソレ』とどう接すればいいのか分からないというのが、現時点においては最大の理由であった。 『ソレ』は人間と呼ぶには、あまりにも機械的過ぎた―― しかし、機械と呼ぶにしては、あまりにも人間的過ぎる―― 織莉子の前で堂々と、その存在をアピールする『ソレ』。 全長約2メートル。 最高出力2500馬力を誇る、鋼の肉体を持つ銀色の機神。 スマートブレインモーターズが産み出した、まさに技術の結晶―― 『ソレ』の名は――オートバジンといった。 ◇ 「最後の一人になるまで殺し合って欲しい――ね。やれやれ、困ったわ……」 話を十分ほど前に戻す。 美国織莉子は、自身のスタート地点である城の前で、一人佇んでいた。 彼女の足元には、ここに転移される直前にアカギという男から与えられたデイパックがひとつ、ぽつんと置かれていた。 しばらくの間、ぼーっと目の前の光景を眺め続けた織莉子であったが、やがてあることを思い出し、視線を足元に持っていく。 「そういえば、中に地図が入っているんだったわね」 そう言いながら、いそいそとデイパックを開け、中身を確認する。 ――一リットル入りペットボトルに入った水が二本。 ――学校の購買部でも売られていそうなパンが六つ。 ――ノートや鉛筆といった筆記用具。 ――そして、手のひらサイズの平たくて丸い形をした赤と白のツートンカラーで彩られた機械が出てきた。 「これは……?」 よく見ると、その機械にはボタンのようなものが付いていた。 試しにそれを指でポチっと押して見ると、機械の真ん中に備え付けられていた液晶画面がパッと明るくなる。 そして次の瞬間には、その液晶画面に『H-8』という文字が表示された。 ――アカギが言っていた『現在自身がいるエリアを示すデバイス』である。 「なるほど、これで私のいる場所は分かったわけだけど……」 地図がなきゃ意味が無いわ、と再びデイパックの中をあさり、地図を探す。 「あった!」 地図はすぐに見つかった。 見つけて取り出すと同時に、ばさりと広げて自身のいるエリアは、この殺し合いの会場のどの辺りに位置するのかを確認する。 が―― 「く、暗くてよく読めない……」 そう。現在の現地時刻は午前0時。 いくら空には月と星々が輝き、織莉子の背後に建つ城は所々がライトアップされているとはいえ、暗いことに変わりはないのだ。 美国織莉子。自身の世界においては、巴マミのような歴戦の魔法少女にすら恐怖を抱かせるほどの威圧感を持つ『白い魔法少女』―― ――なのだが、日常面の彼女、どこか抜けている印象が否めない。 彼女の親友である呉キリカが、それ以上に色々とアレなせいで目立たないが…… 「大変、大変。明かりになる物は入っていないかしら?」 デイパックの中をあさり始める織莉子。 その時―― 「!」 デイパックを漁っていた手が突然ピタリと止まる。 「――誰かが近くにいる」 そして、ポツリとそう呟いた。 美国織莉子の魔法少女としての能力――それは「未来視」。 数秒から数分、一ヶ月、果てにはその先まで、とにかく未来に起こる光景を「視る」ことができるチカラ―― 普段は織莉子本人が「見たい」と望むことによって発現する能力であるが、今回のように無意識下に発動することもある。 ――だが、いつもどおり発動したはずのその能力に、織莉子は違和感を覚えた。 「視える」光景が、何故か濃い霧がかかったかのようにボヤケているのだ。 普段ならば、どんなに先の光景であっても、繊細に、はっきりと「視える」はずなのに―― (おかしい……) そう思いながらも、「視える」光景をじっくりとその目に焼き付ける。 ――自身よりも一回りほど背が高い人影。 ――それが自身の前に立ちふさがっている。 ――その人影が何者なのかまではボヤケているせいで分からない。 ――だが、うっすらとだが「視えた」場所的に考えて、そう遠くない未来で起きる出来事のようだ。 「この場所は……」 すっと視界を背後の城へと向ける織莉子。 そこには、城の中へ入るための大きな城門――と、その脇に停車されている一台のバイクがあった。 「…………」 城門の横に駐車されているバイク――それは、明らかに違和感バリバリな光景だった。 城自体は中世ファンタジーなどに登場する典型的なものとは構造が違うようだが、それでも違和感がある。 ――近づいてじっくりと見てみる。 (変わったデザインね……) まだ中学生であり、かつ機械や乗り物に興味があるわけでもない織莉子でも、そのバイクは変わったデザインをしていると思った。 特に、ハンドルの部分が、ハンドルというよりも『何かの取っ手』のようにも見え―― 「あら?」 よく見ると、そのバイクの座席にはそのバイクのマニュアルと思える薄い冊子が置かれていた。 ――早速手に取り、一枚目のページを開いてみる。 ――が、やはり、暗くてよく読めない。 「え、えぇと……。ハンドルの……スイッチを、押し……スイッチ?」 バイクのハンドルの方へと目をやる。 ハンドルの手前、丁度座席との間に位置する部分――そこには、確かにスイッチと思える部位が存在した。 「ここかしら?」 手を触れ、ぐっと力を込めて押してみる。 すると―― 『 Battle Mode 』 「あら?」 突然、バイクから電子音が鳴り響き、同時に黄色いランプが点灯する。 「も、もしかして、このボタンってエンジンのスイッチだったのかしら?」 急いで切らないと、と再びボタンへ手を伸ばす織莉子。 だが、彼女の手が再びボタンに触れるよりも先に―― ――ガシャン! 「へっ?」 ――ガシャン! 「え?」 ――ガシャン! 「え? え?」 ――ガシャン! 「え? え? え?」 ――ガシャン! 「えぇーーーーっ!?」 バイクが突然動き出した。 ――否、『変形』を始めた。 そして数秒後、そこにはバイクではなく―― 『…………』 「…………」 左腕に盾――実際はバイクの前輪――を備えた銀色の人形ロボットが立っていた。 ――そして、現在に至る。 ◇ 「えぇと……。あなた、魔女……ではないわね。どう見ても。うん……」 目の前の存在に言葉が通じるのかは分からないが、そう話しかける織莉子。 それに対してオートバジンは、ただ黙って織莉子の方を見つめたまま動かなかった。 「……も、もしかして、あなたもこの『儀式』とやらの参加者なのかしら?」 ――ピロロロロ…… 「!?」 オートバジンの人間で言うと顔と目に該当する黒い部分が電子音を発しながら僅かに光った。 織莉子が言った今の問に対して「いいえ、違います」とでも言っているかのように。 「…………」 『…………』 ――黙って見つめ合う(?)二人もとい一人と一機。 「――そ、そういえば、デイパックの中には一人一人ランダムで支給される道具が入っているってあの男は言っていたわね~」 だが、数秒ほど経過したところで、織莉子がそのようなことを口にしながらくるりと後ろに振り返る。 ――発言がかなり棒読みだったことはあえてここでは突っ込まない。いや、むしろ突っ込まないであげてほしい。 「もしかしたら、何か武器とかが入っているかもしれないから確認しておかなくっちゃ~……」 そして、そう――やはり棒読みで――口にしながらオートバジンの前から離れると、置きっぱなしにしていたデイパックの方へと戻っていった。 ――いや、この場合『逃げた』と言ってもあながち間違いではなかった。 なぜなら、デイパックの方へと歩く織莉子は、誰がどう見ても早足であったから―― 『…………』 ――ピロロロロ…… そんな織莉子の様子を黙って見ながら、オートバジンまるで「寂しいです」とでも言っているかのように、顔を僅かに光らせるのであった。 ――オートバジンが自身に支給された支給品のひとつであることを織莉子が知るのは、それから数分後。 デイパックから取り出した懐中電灯を明かりとしながら、オートバジンのマニュアルを一から読み直した時のことである。 ◇ ――サカキは怒っていた。 突然このような舞台に放りこまれ、殺し合いを強制されたからという理由もあるが、再び自身の組織が表舞台に立つ時が来たというのに、それを邪魔されたからという理由もある。 ――この舞台に放り込まれる直前、彼はある洞窟にいた。 三年前、彼の組織はある一人の少年とそのポケモンたちによって解散に追い込まれた。 少年から『真の強さ』――『協力』や『団結』という概念が生み出す強大なチカラ――というものを見せつけられたサカキは、再び『強さ』というものは何なのかを知るため、一人修行の旅に出た。 ――それが結果として、最愛の息子を孤独にしてしまったのだが、そこは別の話である。 それから三年が経ったある日、サカキが洞窟で偶然ラジオを聞いていると、突然ラジオからこのような声が聞こえてきた。 ――こちらはコガネラジオ塔! こちらはコガネラジオ塔! ――三年間の努力が実り、今ここに、ロケット団の復活を宣言する!! 「!」 修行中の身となっていたサカキにとって、それはまさに青天の霹靂であった。 自身の組織――ロケット団の突然の復活宣言。 当然、ボスであるサカキには全くもって覚えのないことであった。 ――ラジオからはさらに声が聞こえてくる。 ――サカキ様ー、聞こえますか~? ――我々、ついにやりましたよー! それは、紛れもなくロケット団の構成員であった者たち――かつての部下たちの声であった。 三年前、部下たちに何の事前報告もなく、突然の解散宣言をした自分。 正直あの時は、もう二度と彼らの前に顔を出すことはできないだろうとサカキは思っていた。 ――だが、現実は違った。 かつての部下たちは、自身が勝手に組織を解散させた後も、残党として社会の裏側に身を潜めながら待ち続けていてくれたのだ! ロケット団こそがサカキという男がいるべき場所であると――ロケット団こそがサカキという男そのものであると、彼に思い出させるために――! ――行かなくてはならない! 部下たちのもとへ! 未だにサカキという存在を必要としてくれる者たちの場所へ――! 気がつくと、ラジオの電源を切るのも忘れて、サカキは歩き出していた。 今度こそ、部下たちと世界を手にするため。 三年前は手にすることができなかった『真の強さ』を我がものとするために―― ――サカキが謎の黒い空間に足を踏み入れてしまったのは、その直後であった。 ◇ 「…………」 サカキは無言で闇夜の中を歩き続ける。 その肩にはデイパック、腰にはモンスターボール、そして右手にはスマートフォンにも携帯ゲーム機にも見える、ある端末が握られていた。 その端末の名は高性能デバイス。 『儀式』の参加者全員に通常支給されるデバイスを一回りほど大きく、そして機能を拡張させたもの―― サカキに与えられた支給品のひとつだ。 その液晶には、自身がいるエリアだけでなく、そのエリア全体の詳細なマップが表示されていた。 さらにこのデバイス、もうひとつ『とっておき』とも言える機能が搭載されている。 それは――『術式探知』。 そのエリアに存在する『プレイヤー』の呪術式を感知し、現在そのエリアに何名のプレイヤーがいるのかが表示されるというものだ。 ――現在、サカキのいるエリアには二名のプレイヤーがいることが端末の液晶には表示されていた。 当然、そのうちの一名はサカキということになる。 ――つまり、現在サカキがいるエリア『H-8』には彼以外にもう一人術式を持つ者――『プレイヤー』が存在するということになる。 「――いるとすれば、あそこか?」 サカキは前方にそびえ建つ、大きな城を睨む。 確か『ポケモン城』と言ったか、とサカキはスタート開始とほぼ同時に確認した地図の内容を思い出していた。 「…………」 ――サカキは無言で、腰のベルトに付けていたモンスターボールを取る。 そして、それを掴むと同時にひょいと前方に放り投げた。 ――ポンと音をたてて開かれるモンスターボール。 中から出てきたのは、鎧のような強靭な肉体を持つ、大型のポケモンであった。 ――ニドキング。 この『儀式』に放り込まれる直前までサカキが手持ちで連れていたポケモン。その一匹。 他にもニドクイン、ドンカラス、ガルーラがいたはずだが、何故か今その三匹は今サカキの手元にはいなかった。 ――言葉には決して出さないが、サカキはこのニドキングに対して『思い入れ』というものを感じていた。 それは、このニドキングがロケット団のボスであるサカキとしても、かつてのトキワシティジムリーダーであったサカキとしても常に手元に置いていた一匹だからだ。 言ってしまえば、苦楽を共にしてきた存在―― 故にこのニドキングは、三年前から一人修行の旅を続けてきたサカキにとって、唯一の仲間とも言える存在であった。 「――ッ!」 「――そうか、お前もこの茶番には怒り心頭のようだな……」 ニドキングの顔を見ながらサカキが呟く。 この『儀式』、サカキは、何としてでも生き残るつもりでいる。 当然だ。三年間という長い月日の果てに、再びロケット団が世界にその名を轟かせようとしているのだ。 自身の帰りを待っている部下たちのもとに行くまで死んでなるものか。 ――だが、あのアカギという男に言われたとおり、ただ他の『プレイヤー』を潰し回って勝ち残る気もなかった。 自分はロケット団のボス・サカキ。いずれ世界を手中にする男だ。 そんな自分が、どこの馬の骨とも分からぬ輩の言いなりになるつもりなどない。 例えそれが、相手に自身の命を握られている状況だとしてもだ。 ――利用できるものは、他の『プレイヤー』であろうと、道具であろうと、そしてポケモンであろうと全て利用する。 そして、最後は生き残る。 どのような結果になろうとも、最終的に自身が生きていればそれでいい―― それが、サカキのこの『儀式』におけるたったひとつの行動理念であった。 「――さて、このエリアにいるというもう一人の『プレイヤー』とやらは、いったいどんな奴なのだろうな?」 できるのなら有用な――利用できそうな奴がいいのだが、と思いながらサカキはニドキングを連れ、城を目指して再び歩き出した。 【H-8/海岸沿いの道/一日目 深夜】 【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】 [状態]:健康 [装備]:高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール@ポケットモンスター(ゲーム) [道具]:共通支給品一式 [思考・状況] 基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない 1:ポケモン城へ行く 2:同エリアにいる他の『プレイヤー』と接触したい。そして、『使えそうな者』ならば利用する 3:『強さ』とは……何だ? [備考] ※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です ※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています ※『ギンガ団』についての知識はどの程度持っているかは後続の書き手さんに任せます ◇ 一方その頃、城の前では美国織莉子が自身のデイパック、そしてオートバジンの前でがっくりと項垂れていた。 「ま、まさか本当にコレが私の支給品だったなんて……」 ――ピロロロロ…… そんな織莉子を見下ろしながら、オートバジンは電子音を発しながら顔を光らせていた。 その様子は、まるで織莉子に対して「『コレ』だなんて失礼な!」と言っているようにも「まぁ、気を落とすな」と言っているようにも見えた。 ――織莉子はまだ気がつかない。 先ほど彼女が「視た」人影の正体は、オートバジンではなく、これから彼女のもとにやって来る、もう一人の『プレイヤー』であるということに。 そして、織莉子はまだ知らない。 自身の目の前に立つ、一見イロモノな銀色の存在が、実はとんでもない性能――チカラ――を秘めているということに。 白い魔法少女と黒い男が出会う瞬間は、刻一刻と迫っていた―― 【H-8/ポケモン城城門前/一日目 深夜】 【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】 [状態]:健康、白女の制服姿 [装備]:オートバジン@仮面ライダー555 [道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0~2 [思考・状況] 基本:(いろんな意味で)これから先、どうすればいい……orz 1:本当にどうしよう、コレ(オートバジン)…… 2:そういえば、まだ地図と名簿も確認してない…… [備考] ※参加時期は第5話以前(詳細な参加時期は後続の書き手さんに任せます) 【「未来視」の制限について】 1:基本的に「視える」のは最長でも十数分後までの未来です 2:「視える」未来が先であるほど、「視える」光景が霧がかっているかのようにボヤけて見え辛くなります 3:上記制限は、本人が望んで発動させた場合でも、無意識下で発動した場合でも同じです 【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】 現在の護衛対象:美国織莉子 現在の順護衛対象:なし [備考] ※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません ※『ビークルモード』への自律変形はできません ※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します 【支給品解説】 【高性能デバイス】 通常支給されているデバイスの発展型。 自身がいるエリアだけでなく、そのエリア全体の詳細なマップが表示される。 さらに『術式探知』機能を持ち、そのエリアに存在する『プレイヤー』の呪術式を感知し、現在そのエリアに何名の『プレイヤー』がいるのかも表示される。 ただし、分かるのは人数のみで、詳細な場所までは分からない。 【サカキのニドキング@ポケットモンスター(ゲーム)】 ドリルポケモン。タイプはどく/じめん。 わざマシンや教え技により習得できる技が幅広く、見ただけでは技構成や型が読み難いことが最大の強みであるポケモン。 通称「技のデパート」。 頭部を始め、身体のいたる所にトゲがあり、その全てに毒がある。 【オートバジン@仮面ライダー555】 スマートブレイン社の子会社であるスマートブレインモーターズ製の可変型バリアブルビークル。 左側のハンドルグリップは着脱可能で、ファイズのミッションメモリーをセットすることでファイズエッジになる。 高性能AIを搭載しており、『バトルモード』と呼ばれる人型のロボット形態へ自律変形する。変形後は独自にファイズのサポートを行う。 ハンドル手前(『バトルモード』時は胸部)にあるスイッチを押すことで、任意変形も可能。 本ロワでは、制限により通常形態である『ビークルモード』時は自律変形を含む一切の自律行動が不可能になっている。 また、護衛対象もファイズではなく、“『ビークルモード』時に変形ボタンを押した者”を護衛対象とする。 護衛対象の仲間も順護衛対象として守るようになっているが、その順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断する。 また、護衛対象と順護衛対象が同時に敵の襲撃を受けた際は、護衛対象を優先して守る。 019 「復活祭」 投下順に読む 020 檻の中の猫 時系列順に読む 初登場 美国織莉子 028 殺さねばならない相手がいます 初登場 サカキ
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オススメ度 リーダー ★★ サブ ★★ リセマラ ★ 図鑑No:316 タイプ:体力 属性:火 Lスキル:ブレイズカウンター / ダメージを受けると、稀に火属性攻撃で超反撃する スキル:防御の構え / 少しの間、受けるダメージを半減する 主な入手方法:各種ダンジョン/友情ガチャ/レアガチャ 寸評 火のゴーレムの最終進化系。 リーダーとしては、優先度は低め。 サブとしては、優先度は低め。 内容については指摘・議論は下記まで 名前
https://w.atwiki.jp/pazudraparty/pages/19.html
オススメ度 リーダー ★★ サブ ★★ リセマラ ★ 図鑑No:318 タイプ:体力 属性:木 Lスキル:ストーンカウンター / ダメージを受けると、稀に木属性攻撃で超反撃する スキル:防御の構え / 少しの間、受けるダメージを半減する 主な入手方法:各種ダンジョン/友情ガチャ/レアガチャ 寸評 木ゴーレムの進化系 スキルについては使えないこともないが優先度は低い。 内容については指摘・議論は下記まで 名前
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3039.html
ある貴族の邸宅- その頃、ある貴族の邸宅の内部。 最新部の主人の部屋に当たるそこに、主人はいない。豪奢なカーペットの上には衛兵が倒れ、その倒れた衛兵達の中心には、一人の女性と一騎のギガンティックが立っている。 「『金獅子の宝剣』、確かにいただいた…と」 女性はペンで紙に何かをかくと、そのカーペットの上におく。そして後ろに立つ機体に話しかけた。 「主人が戻る前に、撤収するよ、ユーノワ」 「わかっている。行こうフーケ」 そして一人と一機は部屋を出る。そう。今しがた部屋を出た女性こそ、今世間をにぎわす「土くれのフーケ」その人である。 今夜も貴族の屋敷に忍び込み、家に代々伝わる宝を戴いたのだ。 そしてそれの隣にいたユーノワと呼ばれた機体こそ、かつて東欧ロシアに仕えた、ゼウスの妻と呼ばれ、2体のギガンティックを葬った青の機神、ユーノワ・である。 彼女とユーノワは階段を駆け下り、廊下を突っ走り、脱出する。もうドアを開けるのも面倒で、ユーノワが機銃でドアを吹き飛ばす。 そして階段を再び駆け下りて、メインホールに繋がるドアを蹴破った。 「あ」 そこに、丁度正面のドアを開けて来たのであろう、屋敷の主がいた。見事にフーケは最も出くわしたくない人間と出くわしてしまったのだった。隣には沢山の衛兵もいる。 「これはこれはフーケ。ワシの『金獅子の宝剣』をどうするつもりかな?」 「きまってるじゃないか。戴くんだよ」 「この数を相手にするというのかね?」 ユーノワが、ゆっくりとフーケの前に歩み出る。まるでフーケを守るかのように。衛兵はフーケ達に剣や槍を向け、既に戦闘態勢に入っている。 この数、常識ならば相手は難しいだろう。だがそこはユーノワ、この程度の敵にやられるわけはなかった。 「ほほう。フーケの騎士というわけかね?」 「…フーケ、『百目』を使う。さがって」 「容赦ないねぇ、アンタは…」 こちらを無視した上に、余裕な口を叩くフーケが、貴族の何かに触れたようだ。貴族は懐から杖を取り出し、フーケに向けた。 額には怒りマークが浮かび、明らかに怒っている。それを見たフーケが、「ありゃりゃ」という顔をした。 「あんた、どうなっても知らないよ?」 「…フーケ、生きて帰れると思うなよ。私はこれでも名の知れたメイジ。貴様一人を葬るなど雑作もないことだ」 「あっそう。ユーノワ」 「わかってる」 軽く流すフーケと、それに応じるユーノワ。ユーノワはそう言うが早いか、背中のスラスターを展開し、翼のようなパーツを展開した。 翼は上下に分かれ、目のような意匠をあしらった絵が多数に描かれている。そして、ユーノワは先手を打った。 必撃の先手を。 翼にあしらわれた「目」が光った。 「な、何だこの光は…ッ」 「眠るがいい。悪夢に抱かれて、永久の眠りを」 「ふっ、ふざけるなぁああああ!!」 光に目を潰された貴族は、でたらめに杖から魔術を放つ。だが魔術はフーケにもユーノワにもかすりもせず、無駄な魔力の浪費となった。 だが彼は引き続き魔術を連射し、まるで泣きわめく子供のように叫んだ。 「ああああああっ」 だが、魔術にも限界はある。魔力が切れ、杖からは何も放たれなくなった。だがそれでも貴族はでたらめに杖を構え、叫び続ける。 ユーノワの光は周囲の兵士にも作用し、周囲の兵士も貴族の狂気が伝染したかのように、でたらめな行動をとり始めた。 それもそのはず、ユーノワの放つ光は対象者に悪夢を見せ、自滅させる精神兵器。 今頃貴族の頭の中では、まさしく『悪夢のような光景』が展開されていることだろう。やがて貴族はふらりとして、倒れてしまった。周囲の兵士もそれに釣られて、バタバタと倒れていく。 それを見ると、ユーノワは後ろを向いてフーケに話しかけた。 「フーケ、終わった」 「ごくろうさん。じゃ、撤収するよ!」 「了解」 2人は堂々と正門から、貴族の邸宅を脱出した。 同時刻- 森の中に、ぽっかりと開いた空間。そこに玄武神は立っていた。玄武神の体には無数のナーブケーブルが巻き付き、自己修復を行っている。 (ありえない…あの小娘…) 玄武神の驚きは未だに頭の隅にあった。ナーブケーブルを行使し、玄武神に致命傷を与えた少女。光神へスティアの力を使い、片手間でビームを弾き返した少女。 あれは玄武神を驚愕させるのに十分だった。 「…あり得んッ!」 思わず口に出して叫ぶ。叫びは周囲の木々へと吸い込まれ、森に眠る動物達以外に、それを聞く物はいない。一瞬切り裂かれた夜の静寂は、再び修復された。 玄武神を修復するナーブケーブルの立てる音だけが、空しく森に響く。 ふとそのとき、玄武神の後ろに何かが出現した。 『ヘルメスよ』 「!」 それは銀の美しい躯体を持つ、一見騎士の鎧を連想させるギガンティックであった。だがその姿はうっすらと透けており、幽体のようにも見える。 玄武神は彼の存在に気付くと、すぐさま膝をつき、臣下の礼をとる。 『オニクスを処分し損ねたようだな』 「は。申し訳ございません」 『次は無いと思えよ』 「承知しました」 『ユーノワがそちらに向かっておる、次は合同で作戦を行え。アルテミスやヘスティアも、この地に生を受けたようだしな。全く、呼んでもいないというのに』 「…宿命という物でしょう」 『それはどういう意味だ、玄武神よ』 「ギガンティックは最後の一騎になるまで殺し合う。それが、前世から課せられた宿命。なら我々が存在する以上、運命が我々の一人勝ちを許すはずがない。 ふたたびあのWWWを再現するために、きっと運命が…また廻り始めたのです」 『…そうかもしれんな。だが、その運命ももうすぐ消滅する』 「そうですね」 『では健闘を祈る。汝の行く手に、光あらんことを』 幽体のそれが消え去る。それが消えた後も、玄武神はしばらく臣下の礼をとっていた。 「…次こそ…仕留めてみせるさ。オニクス!」 ルイズは目を醒ました。そして身を上げた。周囲を見て、ここが自室でないことを確認する。そして、記憶を辿り始めた。 あの玄武神とやらに撃たれた後の、記憶が不鮮明だ。ルイズはすぐに気付く。その場所の記憶が、キレイさっぱり抜け落ちている。 白い宇宙。 オニクスの声。 ナーブケーブル。 部分部分は抜き出せても、それが繋がらない。眼をつむってジグソーパズルのピースを手探りで探している、そんな感覚。だが、その作業をくり返すうちに、ある単語が見つかった。 「カナ」。 「…誰?」 疑問。 全て終わって、一段落したはずなのに、頭から疑問が抜けなかった。 こんこんっ。 軽快なノックの音が部屋に響いた。 「どうぞ」 ルイズは返事をする。すると、ドアを開けて入ってきたのはとても見覚えのある顔だった。キュルケが、タバサを連れて見舞いにきてくれたのだ。 「あら、元気そうじゃない。これなら見舞いは必要ないかもね」 「元気で悪かったわね」 「あはは、冗談よ冗談。それより、アンタが魔法を使った時は、ビックリしたわよ」 「え?」 今彼女はなんて言った? 「だから、あんとき。極太ビームを撃って、オニクスを助けたじゃない」 「私が?魔法?いつ?」 「…覚えてないの?もしかして」 キュルケは、事態の詳細をルイズに話した。ナーブケーブル、そしてルイズが魔法を使ったことを。 「…というわけ。すごかったわよ?」 ルイズはまだ良くわかっていなかった。 魔法。私が、魔法。 「…ドッキリとかじゃないわよね」 「ないわよ?」 「もしかしてこれってよくできた夢?」 「ならほっぺをつねってみなさい」 「枯れない桜の生み出した幻ってことは?」 「ないわよそんな」 「VR訓練とか?」 「ないない」 「…うそん」 「ほんと」 「………」 しばらくの静寂の後に、ルイズは再びしばらくの眠りについた。驚きのあまり、螺子が外れてしまったのだろう。 「…あらら」 キュルケはすやすやと眠るルイズを見て、困った顔をした。だがすぐに、その顔は神妙な顔に変わる。 「あれは…魔法なんかじゃなかった」 「…『オニクス』と同じ力」 後ろのタバサがそれに同意する。 「ルイズ…あんたにあのとき、何が起こったの?」 次 回 予 告 謎が謎を呼び、 オニクスは主人と相見える。 そして語られるのは、 歴史の闇に葬られた薄幸の少女の人生。 次回、「疑問」 嫉妬か、憤怒か。あるいは。