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ウィノナ=ベルベット 年齢不詳、出身不明の女性。 実は勇者の館精鋭軍が送り込んだ 独自の行動アルゴリズムを持つ自律型のアバター。 勇者の館世界のナビゲータ的役割を持っており、 実際は槍を使い、戦闘能力も相当のものである。 人格は女性型でこそあるものの、 勇者の館キャラクターの影響を受けて成長・学習するため、 時折びっくりするような毒を吐く事がある。 なお、通常はスキル・アップの説明係を務め、 トライアルミッションや体験版の案内係、 果てはエムブレム屋まで兼任する万能振りを見せつけ、 まさに『どこにでも出てくる人』を地でいく。
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第二十五章-第二幕- カオスリキッドの狂気 第二十五章-第一幕- 第二十五章-第三幕- ライナスとリュミエルは、無事退院手続きを済ませ、 これから食事でも、という段階に至ったまでは良かったが、 ここハイアード・タウンにてミサイルでの攻撃を受けた。 だが、爆発が無いことに二人は疑問を抱いていた―― 「きゃーっ、何、何なのーッ!?」 一般人が逃げ惑っている。続々とシェルターに退避中だ。 「着弾点から何か来る!?」 ライナスがそう言って指を差す方向から、 無数の人型ロボットが駆けているのが見えた。 民間人を追い掛け回して攻撃しているのは明らかだった。 「見てしまったからには見逃すわけにはいかないな。 何より、自分自身の身を守るためにもね!」 「ええ、分かってる!」 ライナスとリュミエルは一目散に民間人の救助に向かった。 いくら自衛組織と言えど、こうまで無道な真似を 見逃しておくほど無責任な私設軍という話でもない。 それが勇者軍の矛盾であり、美徳でもあった。 「てりゃッ!」 ガチィン! 甲高い音を立ててライナスの剣が止められた。 よほど頑強な装甲でも採用しているのか、なかなか斬れない。 砲剣ストレンジバスターのように爆発性の攻撃であれば いっそ簡単に通用しただろうが、これが刃物の弱みでもある。 「ならば!」 ライナスは一枚のコインを取り出した。 「呪鞘カオスリキッド!」 コインは瞬間、液体金属となり、鞘となってライナスの剣を包む。 ライナスの切り札、呪鞘カオスリキッド。 戦闘時はコインとして隠れているが、 平常時は鞘として機能する意思を持つ生きた液体金属だ。 人の負の感情を餌に、持ち主の武器に異常な切れ味を与える。 ライナスの剣にたちまち負の力が宿り、再度鞘はコインへ戻る。 「烈風剣!」 超高速の豪剣が唸りをあげ、エリミノイドへと叩き込まれる。 まるで豆腐でも切るように、見事な真っ二つだ。 そもそも規格外の相手に使うための武器なので当然だった。 「疾風剣!!」 更に返す刀で多数のエリミノイドを轟然と叩き斬る。 ライナスが本気になった以上、この程度の数は ものの数とは言えなかった。 「ライナスさん、あれ!」 リュミエルが敵をなぎ払いつつ指差したのは、 例の円盤浮遊都市だ。やたらと遠くにいてこちらの攻撃は届かない。 「自分は遠くから高みの見物をかましておいて、 白兵戦で消耗戦を強いようというつもりか!」 ライナスはその姑息なやり口に怒りを禁じ得なかった。 真っ向から向かってきた分だけ先日の方がまだマシだった。 そのライナスの怒りを吸収し、呪鞘カオスリキッドが笑い狂う。 カオスリキッドの笑いもまた、ライナスを苛立たせた。 段々、ライナスの中で負の感情のループが始まった。 「ライナスさん、落ち着いて! そんな怒り狂うような敵じゃない! 刀線刃筋(とうせんはすじ)が乱れてる!」 「分かってる! 分かってるけど!!」 ライナスの負の感情のループは収まらない。 更にライナスの戦いが荒っぽくなる。 切り裂くような剣撃が、斬り潰す、という具合に変化した。 それに耐え得る剣も脅威だが、使いこなすライナスは更に脅威だ。 「でぇぇぇぇぇああああああああああッ!!」 「きゃあッ!?」 苛立ちが最高潮に達し、ライナスはカオスリキッドに 本来存在しないはずの狂気まで引き出されつつあった。 ミサイルの数に比例して送り込まれたはずの 多数のエリミノイドがたちまち細切れと化していく。 それは、傍にいるリュミエルさえ傷付けかねない勢いだ。 (駄目……止まれないの、ライナスさん!?) リュミエルも必死に応戦するが、 むしろライナスの出鱈目な太刀捌きの方が危なかった。 (そうじゃない……私が止める!) リュミエルは何かを決意し、そしてライナスに肉薄する。 「寄るな! 今の俺は危ない!!」 「黙って!」 リュミエルは無謀にもライナスにとっての零距離まで接近。 無数に切り刻まれ、柔肌が傷まみれになる。 鉄の意志で刃筋をライナスが制御していなければ死んでいる。 それでもやはり多少の怪我は免れなかった。 「こっち向いて!」 「なっ……むぐっ!?」 熱いヴェーゼをリュミエルの方から交わす。 刹那の間、時が止まる。ライナスは我を失っていた。 それが上手く作用し、負のループは掻き消えた。 「……はっ」 予想外の行動に、エリミノイドさえも動きを止めた。 「私を守って頑張ってくれるのは嬉しいけどね。 それでライナスさんに正気を失わせはしないわ。 二人で、何としても生き残るの。いい?」 真っ赤になりつつも、精一杯の見栄を張って諭すリュミエル。 「……あ……うん。分かっ……た。分かったよ」 ライナスがまだ夢現の定かならぬ精神状態のまま、剣を振るう。 すると、今までにも例を見ないほどの剣筋が敵を切り裂く。 決して鋭くはない。重くも無い。ただ正確だった。 ……と、ライナスとリュミエルが何者かの気配を察知して 後方を仰ぎ見ると、顔を真っ赤にした勇者軍主力部隊一同が、 じーっとライナスとリュミエルを観察していたりする。 「って、うわーっ!?」 「え、ええええッ!?」 ライナスとリュミエルは一応敵を迎撃しながらも 大慌てで味方への弁明を考え始めた。 「お二方とも、いつの間にそんな仲に……」 ユイナ姫は呆然と呟いた。 「任務中に、不真面目ですーッ!」 フローベールは猛然と説教を始めた。 「ここ、子供は見ちゃ駄目!」 (えー、なんでー?) 何故かジルベルトの目を塞いでいるルシアとソニア。 教育上悪い、ということだろうか。 「いやはや……参りましたね、はははー」 「ラブラブですねぇー」 リゼルとシルヴィアの言葉はある意味とどめだった。 「ちっ、違う! そんなんじゃない! まだ!」 「まだね、まだ!」 ライナスとリュミエルの弁解は『まだ』とか 言っている時点で、既に大して意味は無かった。 「お熱いとこ申し訳ないけど、まだ敵いるわよ。手伝う?」 実はこの場で冷静なのはセシリアだけだったりする。 「もう自分で片付けるからいいです!」 と、リュミエルは奥技を放つ準備を始めた。 そして、即展開―― 「天罰覿面・雷鳴陣!!」 ばぢばぢばぢっ! もう残りいくらかしかいなかったエリミノイドが全て感電し、 根本的な精密機械部分が根こそぎ破壊された。 「敵知らずして百戦勝つ術無し……成敗!!」 ぼごぉぉぉん!! 無駄にカッコいい決め台詞と同時に敵が爆発する。 「で? どういうわけだか合流の前にお聞かせ願いましょうか。 特にリュミエルさん。あなたの方からですよね?」 しつこくフローベールが訊いてくる。 「もう! そんなんじゃないってのー!」 「どんなんだって言うんですか、このこの!!」 「あれは人工呼吸! マウストゥマウスみたいな奴ー!」 「こんな陸のド真ん中で何がマウストゥマウスですかーッ!!」 きゃいきゃいと騒ぐフローベールとリュミエルだが、 ライナスも落ち着かなかった。ああまでされて 意識していられないほど、鈍感でもないからである。 一方セシリアは、エリミノイドの残骸を細かに見ていた。 (パーツや駆動系に見覚えはないけれど、 外観が明らかに彼等に似ている……どういうこと?) かつて勇者軍主力部隊と共に戦った人間の脳を入れたサイボーグ、 フロントとリア。それらと同型のマシンにしか見えなかった。 だが人間の脳が入っているようには見えない。 恐らくはこのエリミノイドをベースにして、 スペースを空けて人間の脳を接続したのが フロントとリアなのだろう。だとすればこのエリミノイドは 惑星アースが出自なのではないか、とセシリアは勘繰る。 もちろんジルベルトにもその意図をテレパスで読ませ、 それを全員に伝達する事で、至急会議が開かれる事になった。 ライナスとリュミエルの仲の事はともかくとして、 事態はまた新たな方向性へと動き始める―― <第二十五章-第三幕-へ続く>
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第二十九章-第一幕- ベビーズ・クライ 第二十八章-第三幕- 第二十九章-第二幕- 勇者軍主力部隊はようやくアーム城付近に上陸し、 FSノア49が向かったと思われる地点へ、 テディがウミネコに取り付けたカメラの映像を頼りに、 ひたすら歩いている最中であった。 「はぁー、遠いわねぇー」 ルシアが愚痴をこぼしながらひたすら山道を歩く。 騎兵以外は、多少の差はあれ、似たような状況だった。 山中の本格行軍など、まともに経験が無いので当然ではある。 (ただし、スプレッダー戦役中盤までの参加者はそうでもないが) すると、哨戒機だろうか。 ザン共和王国民政部の『ホークマン』小隊がその場に現れた。 「止まれ! この先は一時的に封鎖されている!」 「そうはいかんな」 と、ヴァジェスが前に出た。 「我々は勇者軍主力部隊だ。その意味は分かるな?」 「分かるとも。通すなと命令が出ている!」 ホークマン小隊は五機編成だ。 「すぐに片付けてやる!」 真っ先にライナスがカオスリキッドから剣を抜く、が―― 「きゃがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 人類の可聴音域ギリギリの絶叫が、突然周囲に鳴り響いた。 「この声は!?」 何名か、そう―― スプレッダー戦役の参戦者は全員聞いたことのある声だった。 「スプレッダー……女王体だと!?」 ホークマン小隊が怯えたような声をあげる。 突然空の向こうから凶悪なスピードで突っ込んで来たのは、 まぎれもなく、あのスプレッダー女王体そのものだった。 ただし、成長途中のため、そのまま小型化したような外観である。 「何故、スプレッダーが生き残っている! 討ち漏らしか!?」 事情を知らないテディやライナスが即座に攻撃態勢を取る。 スプレッダー女王体の凶暴さや強力さは熟知しており、 それだけに、決して油断の出来ない相手であった。 「そこのライディング・フレーム小隊! ここは休戦よ! 一致協力して、あの蟲を撃墜する、いいわね!?」 「あ、ああ!」 セシリアの要請にライディング・フレーム部隊も答える。 ところが―― 「駄目ですーッ!」 シルヴィアが静止する。もう間違えるはずはなかった。 あれが、ベビー。アンノウン・ベビーなのだ。 「駄目って! 正気なのか、シルヴィア!」 「駄目に決まってるじゃないですか! あれはベビーです! あなたが連れて帰ってきたんですよ、ギースさん!」 「……! あれが、こいつだったのか!」 真相を知ったギースも驚愕する。 まさか、自分の持ち帰ってきた未確認生物が 女王体のベビーだなどとは思わなかったのだろう。 「放置しておいたら殺される、撃て、撃てぇーい!」 逡巡する勇者軍を尻目に、ザン共和王国民政部の部隊が発砲。 多数の弾幕が着弾し、大きく怯むスプレッダー女王体。 「何故、積極的に襲ってこようとしない!?」 ロクな反撃も行わないスプレッダー女王体の様子を見て、 ジークも懸念を示した。 「分かりませんか!? スプレッダーの女王体の強さは あくまで群れを守るという本能の中にあってこそ! 孤立した一匹では、それほどの脅威ではありません! 今も、育ての親の私を追ってきただけなんでしょう! それに向かって、あんなに寄ってたかって!」 シルヴィアがライディング・フレーム部隊を 制止しようとした瞬間だった。 「ぎぃぃぃぃぃぃッ……!」 多少傷付いたスプレッダー女王体が、苦し紛れにだが、 酸を撒き散らし始めた。それを浴びた民政部の機体が ドロドロに溶け、そしてそのボディの大半が消え去る。 「うわぁぁぁぁぁッ、助けてくれぇぇぇッ!」 民政部のパイロット達は我先にと脱出し、 さっさと逃げ帰って行く。恐らくは報告するために。 「ああも凶悪な真似をされては放置出来ません、攻撃します!」 イシターがやむなくドラグーン化を解除しようとすると、 それもシルヴィアは制止する。 「百秒下さい! その間に説得を試みます! 言う事を聞いてくれないなら、ミームを使ってでも!」 無意識下で、最優先行動目標の書き換えをする機能の事を シルヴィアは言っていた。そういう器用な事も出来るのだ。 (分かったのー、やってみたらいいのー) ジルベルトがあっさりと承認してくれたので、 無駄に怪球ミームの力を使わずに済んだ。 シルヴィアは懸命に、混乱して暴れ回る スプレッダー女王体、否、ベビーへと呼びかける。 「ベビー、私です。シルヴィアですよ! 聞こえているなら落ち着いて! 私はここです!」 しかし、酸の嵐は止まない。 「リフレクトフォース!」 対魔法攻撃用の結界で防御するシルヴィア。これで味方をも守る。 「私も手伝う、防御結界、展開!」 リュミエルの防御結界も使っての二重防御だ。酸では抜けない。 「落ち着いて下さい、ベビー! 私はここにいるんです、もう戦わなくていいんです!」 懸命の説得。どうやら猶予の百秒には間に合ったようだ。 スプレッダーは混乱状態から脱し、シルヴィアの声を確認して、 そしてシルヴィアの姿をその目に焼き付ける。 が、まだ少し混乱しているように首を器用に捻った。 「隊長! シエルさん! スプレッダー女王体が…… ベビーが何を言っているのか分かりませんか!?」 リゼルがジルベルトやシエルにテレパスの使用を要請した。 そして数秒後―― 「シルヴィアが本当にシルヴィアなのか混乱してるのー」 「自分が知っている彼女より小さいのが理解出来ていないのね。 彼女が小さいんじゃなくて、ベビーが大きくなっただけなのに…… けど、声だけは変わらないから、余計に混乱してるみたい」 二人とも、詳細に女王体の心理を読み取った。 しかし、諦めずにベビーへ語りかけるシルヴィア。 「忘れていないはずです、ベビー! シルヴィア=スターリィフィールドですよ! あなたの育ての親がここにいますよ!」 だが、結局知能的な問題で、ベビーの知っているシルヴィアと、 現在のベビー自身から見たシルヴィアとの差異が理解出来ず、 ベビーはまたシルヴィアを探すようにその場を離れ始めた。 その場にいるのにも関わらず、声だけ聞こえている、と解釈したのだ。 「ベビー! どこへ!?」 「ぎぃぃぃぃ……」 どこか寂しげな声をあげ、ベビーはその場を飛び去っていった。 「今なら間に合います、追跡しますか!?」 フローベールが追跡する準備を整え始めた。 「一人で向かっても襲われるだけです…… しょうがありません、次の機会を待ちましょう。 次こそ、説得を成功させてみせますからね」 いくらか希望を見出したようにシルヴィアが呟いた。 シルヴィアの声は確かに届いたのだ。あとはシルヴィアが 何も変わっていないことを理解させるだけで良かった。 そこだけが唯一の救いである。 そして、続けざまに姿を見せたのはザン共和王国民政部の議員六名。 今回、熾烈な戦いを続けてきたメンツばかりであった。 報告を受けて、この場にやってきたのだろう。 「来たか。少々予定とは違うが、仕方が無いだろう」 ヴェルファイア=ブレッド首相が言う。 「そろそろ、決着といかせてもらおうか」 「望むところです!」 レオンハルトとユイナ姫が互いに宣言し、一歩前へ出た。 スプレッダー女王体となったアンノウン・ベビーという 懸念事項を放置したまま、勇者軍と民政部は決着の時を 互いに迎えようとしていたのであった―― <第二十九章-第二幕-へ続く>
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第二十九章-第三幕- 民政部の真意(後編) 第二十九章-第二幕- 第三十章-第一幕- 勇者軍主力部隊は民政部の幹部達の総がかり攻撃によって、 なし崩し的に乱戦へと持ち込まれてしまった。 多数の人員が負傷もしくは一時的に拘束されたりしながらも、 なんとかミミックマン、メロウ、フィアナの三名を撃退した。 ようやくメロウ=クミンを撃退して一息ついたライナス達のチームだが、 そこへヴェルファイア=ブレッドと愛竜コモドが切り込んでくる。 「うわわッ!?」 大慌てでその場から退避するライナス。 「させません!」 怪球ミームを掲げ、シルヴィアが即座に対応しようとする。 「コモド! ストレイトシャウトだ!!」 「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 甲高く、しかも凄まじい音量の咆哮が辺りに轟く。 直接戦闘している者だけでなく、他区域での者まで 思わず動きを止めて耳を塞いでしまう。 耳を塞がなければ鼓膜をやられてしまいかねない破壊力だ。 シルヴィアも例外ではなく、ミームの制御に失敗した。 「みー、みー!」 怪球ミームはてーん、てーんとバウンドして 遠くへ離れてしまった。 途中で制御が解かれてしまったせいである。 「今だ、コモド!」 ヴェルファイアが相変わらず仁王立ちのまま指示を飛ばす。 コモドは即座に対応し、突撃を敢行する。 「そうは……させない……!」 メイベルが前に出る。鎧のおかげでいくらか騒音が軽減されたのだ。 「アフターバーナータックル!」 ずごぅッ! 赤い鋼鉄の塊と化したメイベルが轟音をあげて突貫。 ずがんッ!! これまた凄まじい轟音を立てて激突。 「ぬぐぉッ!?」 「ぎゃぁぅ!!」 ヴェルファイアとコモドは揃って転倒。 マキナのような超巨大物が対象で無ければ、 やはりこの攻撃も破格の破壊力があった。 「クロス!」 更にリゼルが奥技で仕掛ける。 「アイアンメイデン!!」 下から大地が隆起、上から氷柱の二段攻めで 鋼鉄の処女の如く、上下からコモドを挟み撃ちにするリゼル。 「ぎゃぅぅ!!」 まともに動けなくなったコモド。 どうやらヴェルファイア自身が大した戦闘力を持っていないようで、 実質、コモドの救助に専念せざるを得ないようであった。 「首相ーッ!」 そのリゼルの横から戦域を離脱してまで レオンハルトと愛馬エルトリオンが仕掛けてくる。 リゼルの退避はすぐには間に合わない。 「無理をするな! 下がれッ!」 そこへテディとドルカス、そしてセシリアが立ちはだかる。 「とぉぉりゃあぁ!」 テディのハンマーがレオンハルトの槍とぶつかり合う。 「そこッ!」 ドルカスの狙撃銃と、セシリアの弓がレオンハルトを狙うが、 レオンハルトは一切の無駄の無い動きで回避してみせる。 「ブレインフォックス、貴君か!」 「その名でなど、今更!」 更にドルカスが仕掛けようとすると、レオンハルトが構える。 「ブレイド・オブ・アイシクル!!」 氷柱が槍を覆い、強化される。彼の奥技だ。 「そんな距離で槍なんて!」 ドルカスも追撃しようとするが、レオンハルトは槍を突き出した。 「バスタァァァァショットォ!」 なんと、氷柱がそのままバスター系魔法の如く飛来する。 「これは!? ソニアの真似だとでもいうの!? そしてソニアが一つの戦闘の流れを作った、と!?」 予想外だった。ドルカスはすんでのところで回避するが、 次々とブレイド・オブ・アイシクル・バスターショットが セシリアやドルカスをかすめていく。 「させん! マグマロックストライク!!」 地面を隆起させるテディのハンマー。 土塊に地熱を帯びさせて叩き込む。 思わず槍でガードしてしまうレオンハルトだが、 隙はそこにこそあった。 「二ノンの翼、発動!」 セシリアが二ノンの翼を発動させて、そのまま疾走する。 陸上歩行の補助装置として使っても異常に優秀である。 相手の背後まで回りこんでから弓を一撃叩き込む。 それでもレオンハルトは寸前で回避するが、 そこにドルカスの狙撃砲が待ち受けていた。 「予測射撃! アイズ・オブ・バーバリアン!」 狙撃砲『アイズ・オブ・バーバリアン』が火を噴き、 彼の槍の穂先ごと、肩を撃ち貫いた。 「ぐおっ!」 とうとう落馬するレオンハルト。パラディンとしても 破格の実力であるが、やはり多人数相手では分が悪かったようだ。 そのテディとドルカスに向けて、ソーサーが飛来する。 「ぬおっ!」 「わわっ!」 二人は大きく退避し、聖杯ライブチャージャーの力で 周囲の補助に回る事にするつもりだったが、ソーサーは それを許さず、二人を追撃にかかろうとする。 だが、そこにソーサーが一枚対抗してかかる。 ジルベルトが念動力で動かしているものであった。 もう一枚のソーサーもソニアが見事に受けた。 アースナックルをホールド状態で使っているのだ。 もちろん、ソーサーの使い手はリルル、否―― 念動力使用中のみの人格、シャルル=ブレッドである。 「これ以上好き勝手はさせないわ!」 更に三枚のソーサーを展開。脇から乱入しようとした コンラッドを抑制し、残る二枚をユイナ姫に向けた。 これでコンラッドは完全に動きを封じられてしまった。 「チトセ、好きに動いていいわ! 武器は私が抑えます!」 「ぶるひひん!」 チトセに機動を任せ、自らは二枚のソーサーを何とか払いのける。 「私を忘れちゃ駄目なのよね!」 シエルが無理矢理乱入し、呪文でソーサーを攻撃する。 「シエル! 無理しちゃ駄目!」 「この構図、懐かしいたらありゃしなくて、 それで燃えちゃうのよね。おかしいかしら!?」 シエルが生き生きと回復呪文を唱えつつ言う。 「懐かしい?」 「私と、お兄ちゃんと、ユイナ姫とソニアさん! 初陣の時と同じメンツなんだもの! ここにいる人って!」 「そう言えばそうですね!」 妙な一言で士気が上がり、ユイナ姫は槍をしまう。 「チトセ! 五十秒時間をちょうだい、それで決めます!」 「ひひん!」 チトセは懸命にソーサーから逃げ回る。 「ユイナ姫! 大人しく降参して! 怪我をするわ!」 あくまで強気にシャルルが言い放つ。 「シャルル! 勇者軍の底力を甘く見ない方がいいわ。 幻杖レプリアーツ! 力を示してちょうだい!」 幻杖レプリアーツが輝き、その力を示す。 その中から現状に最適な技を選び出し、抜き取り、使う。 「デスヴォイスシャウト!!」 ジルベルトとシエルの義姉、ラティシアの奥技だ。 彼女の声が衝撃波となって伝わり、周囲の地盤が緩み、 電波が撹乱され、地面に軽く亀裂まで走る。 そのレベルの音波攻撃の前では、シャルルも力を失い、 リルルに戻るしかなかった。こうなれば無力である。 「はぁぁぁぁぁッ!」 槍を取り出し、一気に接近する。 シャルルならともかく、リルルでは反撃の術は持たない。 「きゃぁぁぁぁッ!?」 「殺しはしません! ただ痛いのは我慢して!」 ユイナ姫が斬りかかろうとする、が―― 「そこまで! 我々の敗北である!」 と、ようやくコモドを助け出したヴェルファイア首相が 声も高らかに、しかも威風堂々と宣言してのけた。 「そこまで、って……」 あまりに唐突な終了宣言に、ユイナ姫も、リルルも呆然とする。 「並びたまえ、諸君! 我々民政部はこれより 勇者軍主力部隊と、共同戦線を張る!!」 「えええええッ!?」 主にフィアナとリルルのあげた声であるが、民政部一同、驚いた。 勿論、勇者軍も驚いた。壮絶にである。 「ど、どういう事ですか、首相!?」 だが、フィアナの言葉は無視して、ユイナ姫を呼ぶ首相。 「ユイナ姫もよろしいか!? 我々はこれより協力して、 FSノア49を完全に撃墜する作戦に当たる!」 「と、言われましても、なんでいきなりそんな事に? 民政部はFSノア49と停戦交渉を続けるつもりだったのでは!?」 「あれは――嘘だッ!!」 あまりにも堂々とした態度に、開いた口が塞がらない一同。 ただし、レオンハルトを除いて、ではあるが。 「嘘ぉ!?」 「うむ。勇者軍にも、民政部にも嘘をついていた! 私の狙いは、あまりにも強大なFSノア49に対して、 勇者軍の警戒心を煽り、全力を出す決意をさせた末に、 最初から民政部と共闘して事に当たる事にあったのだ!」 「だ、だったら最初から言って下されば良かったのに……」 「自衛だ何だと慢心更々の寝言を聞いているだけの 余裕を出して勝てる相手ではない。だからこそ我々は 自ら憎まれ役を買って出て、あなた方の危機感を煽った。 それこそ、味方まで騙して、だ。すまなかった」 「…………」 何か釈然としないものはあった。ここまで策略で 好き勝手に弄ばれていい気分がするものではない。 だが、四の五の言っている場合でもなかった。何より―― (分かったのー。一緒に頑張るのー) という身も蓋も無いジルベルトの同意があっては誰も拒否出来ない。 「では案内しよう、もうすぐFSノア49が修理を完了する。 出来れば我々の内輪揉めで警戒が緩んだ隙を突きたい、急ぐぞ」 「りょ、了解!」 あくまでヴェルファイア首相及び民政部の主導で、 勇者軍主力部隊は共同戦線を張る事となった。 最終決戦はもう目前である。 FSノア49は、そう離れていない位置で修理を進めていた―― <第三十章-第一幕-へ続く>
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第二十五章-第二幕- 情報収集 第二十五章-第一幕- 第二十五章-第三幕- 勇者軍は滅びかけたグラード・シティの難民キャンプにて 負傷者の手当てをしている、ノーラ=アドミラブルと名乗る 魔神軍メインメンバーの少女と出会った。 彼女は他の者に比べ、いたく友好的であり、 いくばくかの情報を聞き出す事に成功したが、 もう少し情報収集をするべく、彼等はその場に留まっていた。 「よう、治療はあらかた終わったのか?」 ローザがまたも、ノーラに話しかける。 やはり彼女が一番会話的に相性が良いように感じられた。 「はい。あとは軽傷者ばかりなので、私も少し休憩です」 やっぱりニコニコして応じるノーラ。 敵意というものがまったく感じられない。 「あんた等は勇者軍のカウンターになる存在なんだろうから、 俺等がどういう組織で、どういう目的を持ってるのか、 ちゃんと知ってるんだよな?」 「はい。人類史上最強の私設軍にして絶対勝利の存在、 あらゆる特定国家にも過剰に肩入れすることなく、 それはアーム王家を擁するザン共和王国も例外じゃありません。 事実、ザン共和王国の民政部とは争ったこともあると聞きます。 ある特定時点から、自衛組織に様変わりしているはずですね。 ただし、結果的に惑星アースを救った行動も多く、 それが誤解を招いている、と理解しています」 「……いや、感心したぜ。そこら辺の軍組織より よっぽど俺等の事を正しく把握してやがる」 素直に驚き、賞賛するローザ。 「あ、あと組織構成としては、バックにスポンサー多数。 それらとブラフと、超絶精鋭主義の結果によって 現在の立ち位置を危ういバランスで保っているはずです。 作戦部を主として研究部、人事部、情報部によって構成され、 後進指導用に特別結成されたOB・OG部隊があるとか。 それから世代交代も異様に速く、30代で現役引退も 当たり前のように行われているらしいですね」 ほとんど軍事機密に抵触するような事まで羅列してくる。 一体どこからそんな情報を集めてきたのか、 逆にローザも、そしてその他のメンバーも気になった。 「なるほど、じゃあ誰がその情報をお前達にもたらした? 私達勇者軍にスパイがいた、とでも言うのか?」 「スパイはいませんよ? 元勇者軍所属者がいるだけで」 「何ぃッ!?」 目を見開いて驚愕する一同。 「という事は、魔神軍のリーダーは……レオナか!?」 昨今、 「ぶぶーっ、違いまーす。まだ教えられないですけど、 レオナちゃんはただのメインメンバーの一角でーす」 妙に子供っぽく訂正してくるノーラ。 急に肩透かしを食らったような気分がして、一気に脱力する一同。 「……まあいいや。とにかくそっちばっかりこっちを知っていて こっちがそっちを知らないのは、なんか不公平じゃねぇか? なんか教えられる事があったら教えてくれよ。 言っとくけど、相互理解が和解への第一歩だぞ?」 「はいはい。えーっと、 魔神軍は周知の通り、勇者軍と対になる存在で、 我等のリーダーは時に共闘、時に衝突して切磋琢磨しつつ、 現在の勇者軍と同等の立ち位置を確保するのが 現状の目標の組織です。意見ががっちり噛み合えば、 友好的になると思うんですけどねぇ。民間人の救援に関して 意見の相違があるせいで、ぎくしゃくしてますね」 「言ってみりゃ、交渉の余地は残ってるつぅ事か」 「で、組織構成は、ぶっちゃけてしまうと勇者軍の丸パクリです。 レオナちゃんが色々と教えてくれちゃったので」 「あからさまに対抗意識満々じゃねーか」 「そうする方が組織構築が早く済むからだって言ってました」 「なるほどな」 一応は納得して、ローザも応答する。 既存組織の模倣をする事は、新たな組織構築を行う際には 常套手段であり、決して悪い手段ではない。 「で、最終的に答えはこれだ。勇者軍のバックに、 最終的にはアルファ=ストレンジャーが 付いているのとは対称的に、 魔神軍のバックには魔神王が付いているのか?」 「違いますよ。大体メンバーの中核たる私達が見たことないのに、 そんな事出来るわけないじゃないですか。 ゲン担ぎみたいなものです」 はっきりと言ってくるノーラ。 「分かった。で、最後はこれだ。ノーラはなんで一人だけ 勇者軍を屈服させる戦いにも参加せず、こんなところにいる?」 「私はこうやって人を治癒している方が性に合いますから。 しがらみとか、軋轢とか、そういうの駄目なんですよねー」 あっけらかんと回答するので、ローザも思わず苦笑した。 「そうか。じゃあ少なくとも俺達が あんたと対立する事ぁ無いって事か。 だったら俺達に協力して、 双方の架け橋になってもらえねぇのか?」 「うーん、それはそれで魅力的なお誘いですけど…… 一応メインメンバーの私が、それはまずいかなぁって……」 躊躇し、決断は避けるノーラであった。 そこまで意見が交わされた時であった。 緊急サイレンが市街地に鳴り響き始めたのだ。 官庁にセットされた大型の識別装置がイグジスターに反応したのだ。 「イグジスター警報発令! 詳細な数は不明! あとおよそ三分で、難民キャンプの現状位置に交差します!」 オペレータの声が市街地中に大音量で鳴り響く。 「ちっ、話はここまでか!」 ヴァジェスが立ち上がり、先頭を切るべく、動く。 「方位特定完了! 数は推定……三十万!? それだけじゃありません! 官庁正面から六時方向! 特に強力な一体、南の海から来ます!」 更にオペレータの声が鳴り響く。 「ちっ、イグジスター五滅将とやらかよ!?」 特に強力な反応、というとそれしか思い浮かばなかった。 ロバートもただちに武器を抜き、臨戦態勢に入ったが、 主力となり得る勇者軍はヴァジェスを入れても六名、 他にはノーラと、ポメぐらいなものだ。 結構な人数を治癒したところで、 それが戦力になるとも思えず、 もはや敗走は確定的状況となっていた。 「あわわわ……どうしましょう……!」 「くっ、どうする……!? カイトさんなら……!」 「奴ならどうする……戦闘か、逃亡か!?」 今はまだいない仲間の策謀ぶりを思い浮かべつつ、 ウォルフ王子とエリックは各々、頭を悩ませる。 敵がいよいよ、本気の攻勢を見せ始めたのであった。 <第二十五章-第三幕- へ続く>
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第二十三章-第一幕- 成長の兆し 第二十二章-第三幕- 第二十三章-第二幕- 勇者軍主力部隊は、海戦での危機を乗り越えて、 ようやく陸地まで到達する事が出来た。 あとはアーム城への訪問である。 戦力もだいぶ整う事になるだろう。それほどまでに 王女ユイナの存在はこの勇者軍では重要である。 それはさておき、勇者軍一同はアーム城に入る事が出来た。 とはいえ、流石にエルリックは連れて行けないので、 先代艦長であるカーティス=ワイズマンが船もろとも預かった状態だ。 ここからのコンラッドは、一般兵と変わりが無い存在となる。 「ユイナ姫ー! どこですかー!?」 フローベールが上がりこむなり、いきなりユイナ姫を探し回る。 「ど、どうしたんですか!? フローベールさん!? 皆さんも……」 ユイナ姫が姿を見せ、そして驚く。 「どうしたもこうしたもありません! バスクは!? 安否は確認出来ているんですか!? ユイナ姫!」 姉なので当然だが、バスクが心配でたまらないフローベール。 ユイナ姫も心配そうな顔で応じる。 「たまたまシエルとジークさんが遭遇したところで 行方不明になった、と連絡が入っています。 シルヴィアさん達が出立した直後ぐらいのタイミングですね。 ただし、生命反応は追えていて、生きているようですよ。 もっとも現地の水害がひどく、 まだ出てこられないようですけど……」 「そうですか……」 まず生きていると知ってホッとするフローベール。 「ああ、でもあの子すぐおなかとか空くから…… 最低限の非常食は持ってたと思うけど……心配です…… せめてこの非常食袋を届けてあげられたら……」 と、凄まじいパンク具合を見せている非常食袋を取り出す。 むしろ内容量よりそれを詰めた技量を賞賛すべきか。 「それも大事ですが、すみません、ユイナ姫。 アンノウン・ベビーに脱走されてしまいました……」 と、申し訳なさそうにリゼルが言う。 「脱走? シルヴィアさんに懐いていたのにですか?」 「ええ。それは間違いないんですが、いかんせん時期が悪過ぎました。 敵の襲撃でダメージを受けて、逃亡してしまったんです。 出来れば全世界規模での 捜索網を立てておいて欲しいのですが……」 「分かりました。出来れば管理下に置いておきたいですからね。 というより、敵とは、やはり例の『FSノア49』ですか?」 「えふえすのあふぉーてぃー?」 何のこっちゃ分からん、という顔をする一同の前で、リゼル一人が 「あ、敵がなんかそんな名前を言っていたような気がします。 それって、例の円盤都市の名前か何かですか?」 「ですねー。ザン共和王国民政部が突如こう呼び出したので、 仕方なく私達も準拠して呼ばせてもらってますけど。 なんでそんなコードネームにしたのか、教えてくれなくて。 正直、お母様の再交渉も難儀しているみたいです」 ユイナ姫もやれやれ、という顔をする。 とはいえ、いつまでも名称不明では締まりがないのも事実。 とりあえずその呼び名に総員が従う事にした。 ともあれ、敵はそのFSノア49だけではない。 「いや、もうなんか早速民政部からの嫌がらせっつーか 妨害っての? そういうのが立て続けに来るのよね。 とりあえず、ここに来るまでに二回は襲われたわね」 「二回もですか!? まずいですね…… お母様の再交渉、上手くいっていないんですね……」 ソニアの文句に、更にユイナ姫は怪訝な顔をする。 (毎回撃退すればいいのー) 「あのね、ジル君。事はそう簡単でもないの」 と、子供をあやすようにユイナ姫が言う。 「レオンハルトおじ様もそうだけど、民政部には 少なくとも六名の戦闘エキスパートが揃っているの。 勇者軍よりも遥かに特異な戦闘能力の持ち主だから、 甘く見ていると酷い目に遭わされるかもしれない。 というよりまともな戦士はおじ様だけかも……」 「ネイチャー・ファンダメンタルみたいに 変な奴等がうじゃうじゃ出てくるっていうの?」 ルシアも気になるのか、訊いてくる。 「性格的にはまともな人達ですよ、政治家ですから。 ただ純粋に能力が特殊な人達が多いらしいんです。 私も知人が多いわけでもないから詳しくは無いですが…… 今までに類を見ない苦戦の仕方をするでしょうね。 勇者軍としては当然、抵抗せざるを得ない立場ですけど、 そうなると、彼等がもうすぐ出てくると推測されます」 「つまり、時は金なり、ですね?」 シルヴィアがなんとなく噛み合っていないまとめをするが、 大体伝わるので、気を利かせて黙っていてあげる一同であった。 「となれば、ユイナも行かねばならないでしょう」 と、後ろからイスティーム王が姿を見せる。 「ほら、既に荷物の支度はさせてあります。 幻杖レプリアーツは持っていますね?」 「はい、お父様。きちんと持ってます」 と、家宝である幻杖レプリアーツを取り出す。 ストレンジャーソードに匹敵するスペシャル装備だ。 ほぼ全ての魔法や技をストックのキャパシティ分だけ吸収し、 任意に即時放出出来るという反則極まりない武装である。 「では、行って来て下さい。バスクの事も心配でしょう。 今回は私が自ら、この城を守らせてもらいます。 軍機で守られた部分も責任を持たないといけませんしね」 「はい、行って来ます。じゃあ行きましょう、皆さん」 ユイナ姫はむしろ乗り気で参戦してきた。 やはり、自らの手でバスクを探したいのだろう。 その想いは、むしろフローベールと並ぶところだった。 「必ずバスク君を探し出しましょう、フローベールさん」 「はい、必ず見つけ出してみます。待ってて、バスク!」 固い握手を交わす両者。 (ユイナ姫が加わってとっても頼もしいのー) 「……あれ? 隊長、思考送信ってそんなに明確に出来てたっけ? なんか以前よりずっと明確に隊長の声が聞こえる気がすんだけど。 てかなんか隊長、目が変じゃねぇ?」 と、ここまで黙っていたコンラッドが疑問を示す。 確かに、ここしばらくの訓練のおかげで、 ジルベルトのテレパス能力は先鋭化し、思考を送る力も より明確化してきた。それはサイキッカーとしての領域である。 しかし、そこまでくれば副作用も生じてくる。 副作用には個人差がある。ほとんど他人には区別の付かないものから 容姿があからさまに変わるものまで千差万別である。 参考までに、初代勇者軍メインメンバー、セレナ=カレンの場合は 髪型が無作為に変わる、というワケの分からないものであった。 ジルベルトには……オッド・アイ化の兆候が見られる。 特に実害は無い模様であるが、見慣れないと違和感がある。 現実的には超能力使用中の合図である、と見なされているようだ。 「じゃあジル君、ひょっとしたらサイコキネシスが使えるかも。 練習してみたら実戦でもいけるかもしれないわ」 と、ユイナ姫がボールを渡してくる。 (ん~~~~~) ジルベルトが強くボールを意識すると、 ふいよふいよと、実にゆっくりだがボールが動き出す。 やはりジルベルトの能力には成長の兆しが見られた。 この不安材料だらけの戦局においては、数少ない希望であった。 「じゃあジル君は練習しながらでいいけど、行きましょう。 とりあえず、レイリアさんとエイリアさんに出撃願わないと」 「メインメンバーが多い方が嬉しいからなぁ」 と、コンラッドも同意した。 こうして大方の方針は決まり、次の目標地点は妖精の森。 目的はルスト家メンバーと合流の流れとなった―― <第二十三章-第二幕-へ続く>
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第二十六章-第二幕- エネミーイーター 第二十六章-第一幕- 第二十六章-第三幕- カイト=ワイズマンとの会議の結果、水中と水上、 及びそれらに囲まれた離島に 人類の生き延びる場がある事に気付いた勇者軍は、 その実践検証のため、カイトの潜水艦 『ブルー・ワイズマンMk-Ⅰ』に 乗り込むために、リプトール・タウンへと移動していた。 「現状では余り騒ぎを大きくしたくはない。 ステルスが得意なクロカゲがいれば偵察に便利だったが……」 エリックがぼやきながら、 イグジスターの視界が勇者軍全体に行かないよう、 空中威力偵察を行いつつ、囮としても動いていた。 ぶっちゃけて言うなら、魔力がもつ限り、飛びまくって 一方的に攻撃する方が、対イグジスター戦術としては 優秀だったりするのだが、 魔力には限界がある上に、飛べるのが彼とヴァジェスだけなので、 この戦術は思うように使えないだけだったりする。 単独で行動するとなれば、滅法有効だった。 いざという時は強行離脱も可能だからである。 「さあ、ヴァジェスも上手くやってくれているだろう。 誰にも気付かれる事無く、リプトール・タウンに入ってくれよ……」 エリックの懇願叶って、ロバート達の主力部隊は 一気にリプトール・タウンに接近していた。 「ウォルフ、周囲にイグジスター反応は?」 「かなり積極的に動いていますが、 どちらも囮に引き付けられています。 時々、ヴァジェスさんもエリックさんも、 急旋回や急反転などでイグジスターの視界から外れて、 更に撹乱を続けていますね。 この分なら、秘密裏に入り、騒ぎを起こす可能性は低いかと」 「だといいがな……奴等は視界より嗅覚の方が侮れねぇ。 もっとも、目も耳も鼻も無い奴等に 五感を問うのがどうかと思うがよ」 「それに不特定要素の存在が無い、とは断言出来ませんしね。 どこからか、民間人が逃げてきた場合は それに巻き込まれるでしょうし、 救出を拒否する理由は何もありませんので……」 「だな」 「急ぐぜ、ロブ。せっかくヴァジェス達が苦労してるんだ。 俺等が無駄にするわけにゃいかねぇだろ」 ローザも大事な事を念押ししてくる。 「……?」 すると、エナが急に足を止める。 「どうした、エナ。急ぐぞ?」 「いえ、ちょっと待って下さい。 レーダーに勇者軍端末の反応……です」 「エリックのおっさんか、ヴァジェスじゃなくてか?」 ロバートも足を止める。 「……違います。両名は未だイグジスターを撹乱中みたいです。 それとは別の反応が一つ、 イグジスターから逃げているみたいです」 エナは慌てて通信をONにして、呼びかけてみる。 「こちら勇者軍サブメンバー、エナ=ギャラガー伍長。 誰か分かりませんが、応答して下さい。誰ですか?」 すると、聞き慣れた声が応じてくる。 「こちら、マリー=ジーニアス! グラード・シティへ援護すると聞いて一足遅れて行ったが、 既にあそこはイグジスター共の巣になっていた……! 不運にも察知されて、結構な数のイグジスターと、 やたらと強力な擬態イグジスターに追われている。 合流を求める! こちらも抵抗したが、 既に魔力も物資も枯渇している! 繰り返す、救援と合流を求める!」 「マリー! そのままリプトール・タウンに向かいなさい! そこからほど近いはずです! そこで待機及び援護します! 合流後、速やかにブルー・ワイズマンに乗りますよ!?」 ウォルフ王子も呼びかけると、 マリーは安堵したように一息つく。 「了解した! 市民はシェルターに 避難するよう指示しておいてくれ! 誰もいないと分かれば、私達が逃げ切る分には問題ないはずだ!」 「分かりました!」 ウォルフ王子は馬に乗り、一足先に庁舎へ向かう。 避難指示を即座に出すためである。 「よし、一足先にリプトール・タウンでマリーを待つぜ! ローザ、おっさんとヴァジェスにも囮作戦を中断させろ!」 ロバートの指示に頷き、ローザは二人に連絡を取った。 「おっさん、ヴァジェス! 囮はそこまででいい! すぐ合流を頼む! マリーの奴がここに来て、イグジスターに追われてるってんだ!」 「何、マリーが!? 無事なようで何よりだ。了解した!」 「そういう事態ならしょうがねぇだろうな。すぐ行くぜ、ローザ!」 二人とも即答し、すぐに反転してリプトール・タウンへ向かう。 それからの行動は迅速だった。リプトール・タウンの民間人を シェルターに退避させる。万が一中に進入して来る可能性が 無いでもなかったが、四の五の言っていられる状況ではない。 到着後、まずは折衝を終えたウォルフ王子が戻ってきた。 その直後にヴァジェス、そしてエリックが戻ってきた。 「来るぞ!」 ざばぁぁぁん!! 豪快な音を立てて(これでも静かに浮上しているつもりだが)、 ブルー・ワイズマンが姿を見せる。 ハッチを開けてカイトが呼びかける。 「民間人もろとも、全員無事か……すぐに避難を!」 「すまん、カイト! マリーの奴が今追われてるらしい! それを保護してから、乗る! ハッチはまだ閉めておけ!」 「分かった……待つよ」 ロバートの言葉に納得したカイト。 彼はハッチを閉めて、イグジスターの侵入阻止に専念した。 「来るぞ、敵とマリーだ!」 だが、イグジスターの戦闘には何故か鎧付きが混じっている。 「あれか! イグジスター五滅将! えーと何体目だ!?」 「四体目ですよ、覚えておいて下さい……!」 ローザにツッコミを入れるエナ。 「さしずめ、リビングメイル・イグジスターってトコか」 「亡霊……の憑いた鎧ですか? そんなの、呑めるんですね」 「亡霊単体なら無理だろうが、鎧を媒介しているからだろう」 ヴァジェスが冷静に持論を述べるも、 追われているマリーはそれどころではない。 「くぅ、しつこい……! はぁ、はぁ……ロブ、援護をしろ!」 「助けて下さいとエナみたいに素直に言えんのか貴様はっ!」 「そんな事をほざいている場合か、お前は!」 「いいから解けよ、封印をよ!」 ロバートは、諸事情により今まで使う事が出来なかった、 家宝ストレンジャーソードを取り出し、 その鞘付きの刀身を高く掲げた。 マリーとイグジスターまでの距離はまだそこそこに開いている。 封印を解くなら、今のタイミングしかなかった。 「今こそ封印を解き、我が手に戻れ、呪鞘カオスリキッド!!」 じゅばっ! 意思を持つリキッドメタルである カオスリキッドが鞘としての役割を止め、 一枚のコインに戻って、本来の持ち主、マリーの手に戻った。 それと同時に力を解放された ストレンジャーソードが遂にその力を顕現させる。 刀身を黒いゲル状の何か、そう、イグジスターと同じ物質が包み込む。 その力は聖なる何かとか、優しい何かとかでは決してなく、 強いて言うなら邪悪とか、魍魎とか そういう得体の知れない何かである。 その異様な反応に驚き、リビングメイル・イグジスターを含めた 数万からのイグジスターの大部隊は、揃って足を止める。 自らの同族が、人間側の力となっているに 等しい様を見た、いや見せられたのだ。 それは彼等にとってまさしく悪夢同然であり、 信じられない出来事だった。 「何だ、あれは……! 我等に近く、しかし何かが違う異物か……!」 リビングメイル・イグジスターが呟く。 が、その剣は持ち主にとって安全装置にはなり得ない。 「がぁああああああ!」 普通のイグジスター同様に、 持ち主であるはずのロバートを食らおうと 丸呑みの捕食行動をかけてきたのである。 「っ!?」 すぐに回避し、危うく難を逃れつつ、異物となった剣は放さない。 「所有物が持ち主に逆らうんじゃねぇぞコラぁぁぁぁぁっ!」 どがすっ! ぼごすっ! がごっ!! 剣のイグジスター化した部分を殴りつけるロバート。 自らの武器と格闘する異様な光景を見せつけられ、 イグジスターどころか、勇者軍までもが呆気に取られる。 やがて一方的に殴りつけ、 抵抗する気力をイグジスター部分が失うと、 あらためて、ストレンジャーソードを抱え直すロバート。 「ようし、このクズが、大人しくなりやがったな」 そのいびつな剣をイグジスターに向けてロバートはいつもの如く、 巨大なびきマントを広げて、紋切り型の台詞を口走る。 「殲滅させるが上等と! ほざきのたまう愚物の群れを! 同族同類押し付けて! 共食いさせての生者必滅! 魍魎反逆ストレンジャー! 一方的捕食の因果を貴様等も味わいやがれ! この『反逆暴牙剣エネミーイーター』の暴虐によってなぁ!」 ぐったりとしたエネミーイーターをごりごり足で踏み躙りながら、 強引に言うことを聞かせるロバート。 「我が同族へのその仕打ち……許せぬ……!」 初めてまともな事を言いながら、 迫るリビングメイル・イグジスター。 それに他のイグジスターが続く。屈服させられる同族の姿が、 よほど衝撃的だったのだと理解すると、 ロバートは口から湯気を吐き、目を光らせ、 今にも熊か何かを食い殺しそうに感じられるような、 恐ろしく陰惨な笑みを浮かべる。完全に狂人の視線である。 だが、その顔が、何故か勇者軍に不思議と勇気を与えるのだった。 「ロブ……それでこそ、貴様という奴なのだな」 先程まで切羽詰っていたマリーも、ようやくふてぶてしく笑う。 改めて鞭を抜き放ち、戦闘の意思を示した。 リプトール・タウンに駐留するブルー・ワイズマンと マリーの生存をめぐる戦いが今、幕を開ける。 <第二十六章-第三幕- へ続く>
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暗黒場末の館にようこそ。 ここは場末という存在が創作物を置くだけのサイトです。 主な創作物 Soldiers 剣と魔法の後日談[タイプ]漫画[ジャンル]中編日常系ファンタジー剣と魔法の時代から500年後に転生した魔人ボルデと、勇者の子孫が一人テリュールが血統のみが支配するディストピアの世界で生きる物語。一応初めて完結出来た漫画です(頑張った)。 Soldiers DesireWing(体験版)[タイプ]ゲーム[ジャンル]長編RPG機械を禁じられた世界で生きる者たちの物語。勝つのは尊厳侮辱か、それとも正義か。退・魔・開・始。最も女を捨てた女が今、立ち上がる。 ディープ・デッド・フィラー[タイプ]小説[ジャンル]中編能力バトル神より啓示が下った。願いを叶える宝石【D・D・F ディープ・デッド・フィラー 】を破壊せよ。最強の探偵・最強の怪盗が今、日本に集い、対峙る。最初期はギャグで書いてたんですが、だんだんシリアスな能力バトルになっていく謎の小説です。 お嬢様学園最強の女[タイプ]小説[ジャンル]お嬢様バトル最強のお嬢様が集う、ホーリー・リザレクション学園に最強のお嬢様が集う。最強のお嬢様 ヴォイド可憐口内から100本の剣を射出できるお嬢様 生贄子究極のセクサロイドお嬢様 『病』悪VS悪。生き残りをかけたサバイバルが、いま始まる。(未完) Scarlet Valkylion-紅烈紅殺紅剣-[タイプ]ゲーム[ジャンル]紅海がなぜ紅いか知っているか。それは紅いからだよ。
https://w.atwiki.jp/noelchannelwiki/pages/22.html
《プレイゲーム》 Minecraft 《主な出演者》 ラムザ(魔女の館finalから参加) あるにあ AOSSJANK アムムムム タップフォレスト 《投稿期間》 2014/11/12~2015/6/24 《投稿本数》 20本 完結 再生リスト https //www.youtube.com/playlist?list=PLBt0NnF7IEu5Nds0HmHDAjLFNN163Oi9e 動画情報
https://w.atwiki.jp/mizuto25/pages/17.html
どうも。こんにちわ。館主の水都です。皆さんお久しぶりでございます。 さて、この間日記に記した話のことなのですが、ようやく就職が見つかりました。 これで皆様に恥ずかしめることもなく、ここの館主らしく日常を過ごせます。(安堵 体調があんまり良好な方ではないのですが、頑張って行こうとおもいます。(笑 話が変わりますが、この間私の母上に友人と撮った写真をMALLにて送り付けましたら電話にて「大きくなったねぇ~。」と言われました。(笑 ちょっと母上・・。大きくなったて・・一年しか経ってないし、もう私は大人ですよ?(笑 母上が言うには“横に大きくなった”と言う意味らしいです。(笑 あぁ・・そう言う意味でございますか。(笑 納得でございます(笑 ということでダイエットでもしてみようかと思います(汗 暢気に笑ってる場合ではありませんよね。(汗 期待はしないでください(笑 次の更新は未定ですので、失礼ながら私の気分次第で更新致します。 では今日はこの辺りで失礼致します。 2008年 11月15日 水都 瑠璽