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新宿(東京都新宿区) ▶JR山手線/JR中央線/JR中央・総武線/JR埼京線/JR湘南新宿ライン/ 東京メトロ丸ノ内線/都営新宿線/都営大江戸線/京王線/小田急線/西武新宿線(西武新宿駅) ▶1日の乗降客数世界一を誇るターミナル駅。デパート、家電、各種雑貨、飲食、風俗などなどすべてを内包する繁華街。また乗り入れ線も多方面へ向かうため、アクセスに関しても文句なし。小滝橋通り、十二社方面、代々木方面には賃貸住宅もちらほらあり。とくに都庁のある西口の先にある十二社は意外にも静かな住宅街のため、なかなかおすすめ。逆に東口方面、三丁目方面は夜中でも賑やかなので暮らすには不向き。 【生鮮】 ・三平ストア(東口3分) ・紀の国屋(新南口3分) 【雑貨】 ・ドンキホーテ(東口3分) ・東急ハンズ(新南口3分) 【病院】
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新宿 日本最大の乗降客数を誇る駅。常に人で賑わう都庁のお膝元・東京の副都心。 物件駅 登場作: 元ネタガイド 最寄り駅:新宿駅(山手線・中央線・埼京線・小田急線・京王線・東京メトロ丸ノ内線・都営新宿線・大江戸線)・西武新宿駅(西武新宿線)・新宿西口駅(東京メトロ大江戸線)
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新宿A 新宿B 新宿C 新宿D ステージボス、ジョークグッズコンプ:度会 咲 新宿A 体力:-8 経験値:+8 ゼニ:+105~315 ファン:+3~11 各お仕事の必要体力量(仕事回数):120 (15回) エリア 仕事内容 アイドル ジョークグッズ:オモチャのクナイ ラブリー ビューティー ハッピー ラブリー ビューティー ハッピー 19-1 握手会で研究 天童 愛子(4) 嬉野 穂乃花(6) 日和佐 奈央(6) 赤 青 黄 19-2 小浜 千尋(6) 柳井 光(8) 三笠 若葉(7) 桃 紫 橙 19-3 田村 双葉(7) 蒲生 香奈(9) 三沢 可憐(8) 青 黄 赤 19-4 横手 つぼみ(8) 結城 芽衣(7) 三沢 可憐(8) 紫 橙 桃 19-5 鶴見 梢(10) 清水 梨沙(10) 船戸 舞(10) ― ― ― エリアクリア報酬:インストラクター、ラボドリンク1個、ラボポーション1個、6000ゼニ 新宿B 体力:-9 経験値:+9 ゼニ:+120~360 ファン:+3~12 各お仕事の必要体力量(仕事回数):153 (17回) エリア 仕事内容 アイドル ジョークグッズ:オモチャのクナイ ラブリー ビューティー ハッピー ラブリー ビューティー ハッピー 20-1 グラビア撮影で研究 天童 愛子(4) 嬉野 穂乃花(6) 日和佐 奈央(6) 赤 青 黄 20-2 小浜 千尋(6) 柳井 光(8) 三笠 若葉(7) 桃 紫 橙 20-3 田村 双葉(7) 蒲生 香奈(9) 三沢 可憐(8) 青 黄 赤 20-4 横手 つぼみ(8) 結城 芽衣(7) 三沢 可憐(8) 紫 橙 桃 20-5 鶴見 梢(10) 清水 梨沙(10) 船戸 舞(10) ― ― ― エリアクリア報酬:インストラクター、ラボポーション1個、金庫1個、6250ゼニ 新宿C 体力:-10 経験値:+10 ゼニ:+135~405 ファン:+4~14 各お仕事の必要体力量(仕事回数):170 (17回) エリア 仕事内容 アイドル ジョークグッズ:オモチャのクナイ ラブリー ビューティー ハッピー ラブリー ビューティー ハッピー 21-1 ミニライブで研究 天童 愛子(4) 嬉野 穂乃花(6) 日和佐 奈央(6) 赤 青 黄 21-2 小浜 千尋(6) 柳井 光(8) 三笠 若葉(7) 桃 紫 橙 21-3 田村 双葉(7) 蒲生 香奈(9) 三沢 可憐(8) 青 黄 赤 21-4 横手 つぼみ(8) 結城 芽衣(7) 三沢 可憐(8) 紫 橙 桃 21-5 鶴見 梢(10) 清水 梨沙(10) 船戸 舞(10) ― ― ― エリアクリア報酬:インストラクター、ラボドリンク1個、ラボポーション1個、6500ゼニ 新宿D 体力:-11 経験値:+11 ゼニ:+150~450 ファン:+4~15 各お仕事の必要体力量(仕事回数):220 (20回) エリア 仕事内容 アイドル ジョークグッズ:オモチャのクナイ ラブリー ビューティー ハッピー ラブリー ビューティー ハッピー 22-1 番組出演で研究 天童 愛子(4) 嬉野 穂乃花(6) 日和佐 奈央(6) 赤 青 黄 22-2 小浜 千尋(6) 柳井 光(8) 三笠 若葉(7) 桃 紫 橙 22-3 田村 双葉(7) 蒲生 香奈(9) 三沢 可憐(8) 青 黄 赤 22-4 横手 つぼみ(8) 結城 芽衣(7) 三沢 可憐(8) 紫 橙 桃 22-5 鶴見 梢(10) 清水 梨沙(10) 船戸 舞(10) ― ― ― エリアクリア報酬:度会 咲、ラボポーション1個、金庫1個、6750ゼニ
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――英純恋子、578万円 洋の東西を問わず、茶の世界と言うものは、凝り出すと金がどんどん消えて行くものである。 少し知識が付いて来れば、茶葉に凝り出し、良い茶葉を美味しく味わおうとすると、今度は茶器等の道具類を選び始め、 皆で一緒に茶を楽しもうと考え出すと、茶菓子の類にも手を伸ばして見たり、と。この世界は非常に奥深いのである。 奥深さは、金銭がどの程度必要になるのかと言う事の証明だ。内奥まで足を運ぼうとすると、趣味と言うのは往々にして金と言うものが入用になる。茶と言うものも、それは同様である。 純恋子も、茶は好きである。日本茶でも中国茶でも、ハーブティーでも。 嫌いなものはないが、好きなものはなんといっても紅茶である。茶会だって何度も開いた事がある程度には、知識もあるし愛着もある。 英財閥の令嬢が開催する茶会ともなると、皆が「英財閥が主催する茶会なのだから、何かしらある筈」と言うバイアスに囚われる。 早い話、期待されるのだ。用意する茶葉、茶うけ菓子、紅茶器の類、そして、余興等々。英財閥程にもなると、茶会は開いて単に終わり、では済まされない。 開いた以上は、客に百点満点のサービスを提供せねば、失格なのである。その事を純恋子は、よくよく認識していた。 純恋子が拠点とするハイアットホテルのワンフロア。 其処には彼女らがプライベートを過ごすスィート・ルームの他に、夕食や朝食を楽しむ為の専用の一室が用意されていた。 本来此処は宴会場と言うべき施設であり、その名の通り団体客がパーティを楽しむ時、或いは、企業が会議を行う為に提供される物である。 このようなサービスは一流ホテルでは珍しいものではなく、ハイアットはこの他にも結婚式場の提供サービスも行っている。 ハイアットホテルに幾つもある宴会場の内一つは、現在純恋子が宿泊しているフロアに存在し、彼女がフロア丸ごと借り切っている為、 当然、彼女はこの宴会場のサービスを当然の様に享受する権利がある。つまりホテルの側は、現在その宴会場を彼女に貸し切っている状態と言っても良い。 その一室に、純恋子と、彼女が呼び出したアサシンのサーヴァントである、レイン・ポゥの二人がいた。 五百平方mと言う、キャッチボールすら普通に出来そうな程広々とした一室の真ん中に、純白のテーブルクロスを敷いた長大なテーブルが用意されており、 その上に、レイン・ポゥ、もとい生前の三香織が購入していた衣服の数十~数百倍の値段はあると言うカップやソーサーが幾つも並んでいた。 カップには格調高い香りを放出する琥珀色の液体が注がれており、その傍に置いてあるソーサーには、単体で食べても満足出来そうなアップルパイが置かれている。 「足りないのであれば、幾らでもかわりを用意いたしましてよ」 カップの指かけに指を通しながら、純恋子は言った。当然用意はこれだけで終わりではない。まだまだ紅茶にも茶菓子も、控えがあるらしい。 レイン・ポゥは純恋子の真向いの席、つまり、長方形のテーブルの縦の辺に座っている事になり、純恋子から最も遠い位置にある。 ああ、確かに。高い茶葉を選んだのだろう、紅茶は非常に美味しい。茶菓子のアップルパイだって、何枚でも食べられる。 とても贅沢だと思うし、実際、楽しめた筈なのだ。この部屋が、本当に、二人だけしかいないのならば。 ――レイン・ポゥの隣で、カタカタと物と物とがぶつかり合う音が小刻みにかつ連続的に響き渡っていた。 カップから唇を離し、ソーサーにおいてから、彼女はテーブルの両サイド、横辺に座る人『物』達に目をやった。 「美味シイ紅茶」 「流石デスワ純恋子様……」 「ウン、美味シイ……」 極めて抑揚のない声で、それらは言葉を口にしていた。 身に着けている衣服は紅茶で濡れている。口元までうまく紅茶が運べず零してしまったのと、縦しんば口まで運んだとしても、紅茶が呑めず、唇から顎、顎から首へと、 紅茶が伝い落ちて、その衣服やテーブルクロスを汚してしまうのである。 「ねぇ、一つ聞いていい?」 「何でしょう?」 「このガラクタ達、何?」 努めて触れないようにしていたが、もう流石に無視出来ない領域に至ってしまったので、レイン・ポゥは訊ねてみた。 二人だけで茶を楽しむのであれば、自室のスウィート・ルームででも出来る。宴会場を貸し切ってお茶会を開くと純恋子が言いだした時、何で其処にしたんだろうと、 レイン・ポゥは疑問だった。そして指定場所に辿り着いた時、更に意味が解らなくなった。テーブルには既に、十二『体』の人形が席に付いていたのである。めいめいの服装を身に着けた、十二人の、女性を模した人形が。 「場のにぎやかし、ですわ。二人だけでは味気ないですし、急遽、私の友人を模してつくらせましたの」 「すっごい目障りなんだよね」 目の前で堂々と紅茶を零したりする人形と同席するのは、正直気が滅入るなんてレベルじゃない。 紅茶の味が感じなくなるレベルで不愉快なのだ。おまけにとってつけた様な機械音声。堪らなく破壊したくなってくる。 と言うより、場を賑やかしたいのであれば、別所で待機している執事や財閥の構成員でも呼べばいいではないか。まだエルセンと一緒の方が、百億倍マシであった。 「前々から思ってたけど、マスター……頭おかしいとか言われない?」 「そんな事はないですけれど。座学の類は得意ですわよ」 「一般的な常識とやらを私は身に――」 「ウン、美味シイ……」 話を遮られた事に腹を立てたのと、いい加減目障りなのとで、レイン・ポゥはカッとなって、掌から七色の虹の剣を、 十m程も伸ばしそれを横薙ぎにブンッと振るった。人形が一切の抵抗を許さず、胸部の辺りから切断され、床の上に転がった。 その様子を、何て事をするのだこのサーヴァントは、と言った風な、野蛮人を見る様な目で見つめる英純恋子。 「お前が言えた義理か」、と声を大にして言いたいレイン・ポゥ。切断されてもなお、床に転がった人形が機械音声を止めないので、イライラは更に募るばかりだった。 ――ソニックブーム、1万3千円 ある時期までこの男、シガキサイゼン(志垣最善)と呼ばれる男は、実に不幸な男であった。 元々は都内の美術大学に通い、一流の画家にならんと夢を追い続けていた若者だった。 特に墨絵には自信があり、何時の日かきっと、この絵で以て大成するのだと言う野望を抱いていた。 しかし美術の世界は、兎角道具に金が掛かる世界だ。筆、絵具、描く為の紙。何をするにも金が要る。 だからシガキは美大に通う傍ら、高給ではあるが労災の危険性が高い工場で、道具代を稼いでいた。 当たり前の事であるが、美術の世界は『腕』が命である。腕が物理的に動かなくなったとあれば、それは最早美術の世界では死んだも同然だ。 その工場で働く以上は、命よりも大事な腕が危険に晒される事をも意味する。だがその時のシガキはこう思っていたのだ。 自分だけは、大丈夫。ちゃんと気を付けるから。命よりも大事な腕や指を、危険に晒すようなマヌケはしないから、と。 その余りにも無根拠な自信のツケを、彼は己の身体で支払う事となった。不注意で手首から先をプレス機で挟み、骨や神経をズタズタにされたのは、数年前。 右手首は最早、何十年とリハビリを積もうが動かす事すらままならない程の重傷になってしまい、切除するしかないと告げられた時、シガキは本気で死のうとすら思った。 しかし、そんな度胸もなかった。会社から降りた労災補償で、シガキは、腕の神経と同調し、辛うじて指先を動かす事が出来る義手を取り付けたが、 これが実に、苛々する。元々値段相応の性能しかない義手である事もそうなのだが、やはり、生まれ持った生身の手に比べれば、その性能は格段に落ちる。 ましてや墨絵の世界は、繊細と言う言葉でもなお足りない程の細々とした技量が求められるのである。 義手などと言う大味な動きしか出来ないそれで墨絵を描く事など、不可能だ。 ある時期までは、親からの仕送りでヤケ酒を呷り、大学にも行かない日々が続いた。 俺には生きる希望なんてもうないんだ、それが一人になった時のシガキの口癖であった。 そんな生活が二か月程続いたある時、大学で取っていた墨絵の講義で、提出物を求められている事を、親しい友人のメールから知った。 この講義担当は優しい性格で、シガキの現在の境遇を慮り、本来は出席を取るのだが彼に関しては出席しなくても良く、最低限の提出物だけを出せば単位を出してやる、 と言うらしいのだ。此処で、そう言った配慮を無碍にはしたくないと思う中途半端さが、シガキの特徴であった。 此処で彼は、何を思ったか、右手の義手で筆を取り、墨絵を描き、それを提出したのである。――それが、その教授の琴線に触れた。 絵自体の上手さは、他の生徒のそれよりも当然ながら格段に落ちる。しかし、それを補って余りある、迫力と言うべきか、兎に角ダイナミズムに溢れていたのだ。 義手と言う動かすのに不自由する部位で描く以上、描く側も必死になる。だが必死に描いた所で、所詮は義手なので、綺麗な絵は絶対に掛けない。 実際に仕上がった墨絵も不細工な物であったが、それ故に見る者に伝わる気魄や鬼気は、尋常のものではない。 黒い墨からいやがおうにも香る、描き手の必死さ。其処に教授は惹かれた。そして、シガキを大学まで呼び出し、彼にこうアドバイスした。「お前はこのまま、その義手を誇りに思い、墨絵を描いて行くのだ」、と。 ――そして、現在に至る。 教授からアドバイスを貰い、しょうがなく義手で墨絵を描き始めてから、六年近い歳月が経った。 普通の墨絵師がかける時間の倍以上の時間を掛けて墨絵を仕上げ、それをコンクールに提出する。 それが、最優秀賞に輝き、名が売れ始めたのが、五年前。審査員は障碍者である自分に配慮しているのだ、と言う同じ絵師の誹りも随分受けて来た。 こう言った心無い批判に叛骨心を抱いたシガキは、怒りを抱き、更に墨絵を仕上げて行く。そしてそれがまた、優秀な賞を受賞する。それが、繰り返される。 気付いた時には、シガキは日本は愚か世界でも著名な美術家の一人になっていた。不自由な動きしか出来ない義手で墨絵を仕上げる、叛骨の画家。 何時だったかそんな風な説明をされていた。今では自分を慕う芸術家は相当数に上るらしく、障碍者の希望としても、機能しているらしい。 思わぬ形で、夢が叶ってしまった。 当時は憎い憎いとすら思っていた右手の義手も、今では自分になくてはならない相棒だった。 これ以外の義手は、もうつけない事としている。一つは、自分の不注意で本来の右手を失ってしまったと言う戒めの意を込めて。 一つは、これからも墨絵師としての自分を支えてくれるであろう、大事な仲間として。 現在では頻繁にテレビにも出る事があるシガキは、お忍びで、 新宿 某所に存在する寿司屋に足を運んでいた。 金にゆとりが出来、目立ったコンクールも無い暇な時期は、インスピレーションを高めると言う意味でも、身体を休める事がシガキには多くなった。 そんな彼の趣味は、寿司の食べ歩きである。魚市場へ足を運び、評判の高い寿司屋や、世間的には名の知られていない店など、自分好みの店を見つけるのだ。 今彼がいる店の評判は、聞いた事がない。この街では飲み屋の方が儲かる上に、立地条件が立地条件だ。寿司屋は少ないし、人の入りもそれなりだ。 なのに今シガキがその店にいるのは、野暮用を終えて帰路へとつく時に、洒落た外観のこの店を発見したからである。ここで夕食を取ろう、そう考えた。 「タマゴ……いや、中トロだ」 大将に注文を頼むシガキであったが、ついつい、貧乏であった時期の名残で、タマゴを最初に頼みそうになった。 最早やけ酒を呷り、親の仕送りがなければ生活が出来ない苦学生であったシガキサイゼンは死んだのだ。 少しぐらい、贅沢をしても良いではないか。そう思い、中トロを頼んだ。手際よく、店主がそれを差し出して来た。 キラキラと光る油がピンク色の魚肉にこれでもかとのった、美味そうな中トロ。それを手で掴み、醤油につけ、口元に彼は運んで行く。 美味い。この店は当たりであった。自分以外の人の姿が少ないのが、信じられない程であった。仕込みも良くしているし、シャリの管理も万全なのだろう。 良い隠れ家を発見したと喜びながら、シガキは今度は旬のものを頼み始めたのだった。 ――一方、その隣に座るフマトニこと、ソニックブームは何を頼むか悩んでいた。 ここの所は懐事情が宜しくない。元々金は潤沢にあった訳でもないのに、寿司を頼んでばかりいては、懐が寂しくなるのは当たり前の話だった。 ソウカイヤと言う一大メガコーポと言う後ろ盾が存在しない以上、この世界に於けるフマトニの立場は、元の世界よりも一段も二段も弱くなるのは当たり前の話だ。 それにも関わらず、ソニックブームが寿司を頼む訳。それはひとえに、ニンジャにとってスシが重要な意味を誇るアイテムである、と同時に。 元の世界ではそれなりの身分であった、と言う思いがフマトニからは未だに消えていない事が大きかった。とどのつまりは――見栄だ。 「サンマ……いや、赤身だ」 大将にオーダーを行うフマトニ。それを受けて彼は、慣れた手つきで握り始めた。 【……妥協してそれですか】、と言う声が念話で聞こえて来た。放っておけ、セイバー=サン。 ――アイギス、1万円 秋せつらと言うサーヴァントは生前、人捜し(マン・サーチャー)である以上に、せんべい屋だった事を強く主張している。 本当ならばこんな職業は引退したいところだったらしいが、需要と供給のバランスがそれを許さない。 せつらの人捜しの腕前は、区内は愚か区外でも評判が高く、 新宿 で探してほしい者や物があるのならば、この男に頼めば間違いないと言われる程だ。 そして事実、せつらは様々な依頼を遂行してきた。その実力には、異論が挟まる余地がない。それを本人は時々嘆いていた。 いい加減僕にせんべいを焼かせるのに専念させてくれないのかな、と。せんべい屋としてのせつらの年収は三千万円程だったが、人捜しとしてのせつらの年収は、 その十倍以上に達する程だ。それだけ需要があると言う事だ。そしその需要はついに、彼の命が潰えるその時までなくなる事はなかった。 聖杯戦争の舞台である仮初の 新宿 においても、せつらは人捜しのサーヴァントとして、その実力を発揮せねばならなくなっていた。 流石にせんべい屋のサーヴァント、ボイラーなどと言うクラスで呼ばれるのは御免蒙る所であるが、聖杯にからすらも、サーチャーとして認識されていたとは。 色々と、複雑な気分になると言うものであった。 「それで、で、あります。サーチャー」 「何かな」 相好を崩しながら、せつらは言った。 進化の過程で、或いは、どのような遺伝子の配列になれば、このような男が生まれるのか、と思わざるを得ない、そんな美に、アイギスも戸惑う。 美は追及をし過ぎると、美しいとすら認識されなくなる。極め過ぎた美は、純度が高すぎるが故に、人間的な要素とは隔絶した所に位置づけられる。 美の究極地に到達した時、人は、人として認識されなくなる。怪物として、認識されるようになるのだ。その事をせつらを呼び出してからアイギスは強く認識していた。 「……何故、せんべいを焼いているのでしょうか?」 アイギスにはそれが疑問であった。 ホームセンターから取り寄せた七輪と、墨。ネットの通販でやはり購入したうるち米と、醤油等々。 それを巧みに利用し、せつらは流れるような動きでせんべいの型を作り、七輪でそれを焼き、次々に仕上げていた。 香ばしい香りが、部屋の中に溜まって行き、換気の為に空けた窓からその匂いがふんわりと外へと出て行く。 今のアイギスの拠点にカウンターの類があれば、人の一人や二人、誘蛾灯に誘われる虫の様に購入しにくるのではないかと思われる程の、せつらの手腕であった。 「もしも聖杯に辿り着いたら、僕もどうしようかなと考えていてね――」 せつらは語り始める。 「大それた願いもないし、受肉でもしようかな、ってね。今度こそは、平凡にせんべいを焼くのも、いいかなって」 「だから、今練習していると?」 「君も食べるかい?」 「私は……食べる機能が存在しませんので」 「冗談だよ」 笑みを浮かべてせつらは、次の煎餅を焼き始める。誰に与えるでも売るでもないのに、一袋分の煎餅を焼くとは、物好きな男だった。 ――やはり、好意でせんべいを渡したのが間違いだったのでしょうか……?―― せつらが呼び出されてから一日たった頃、アイギスはせつらに煎餅を渡した事を少し後悔する。 「まずい」、と言った時のせつらの顔が忘れられない。不興を買ったのだろうかと思いその時は内心恐れたが、そんな事はなくてその時はほっとした。 ……今にして思えば、怒られた方が、マシであったのかも知れない、と思わざるを得ないアイギスであった。 ――佐藤十兵衛、8800円 不安な気持ちで、佐藤十兵衛は自宅の一室でスマートフォンを弄っていた。 受験の結果待ちの時ですら、此処まで緊張をした事はなかった。何せ彼にとって中高受験等、それこそ遊びにも等しかったからである。 落ちる気がしなかった、と言うのは十兵衛の言だ。プレッシャーや緊張には、強い。そんな自負が、この青年にはあった。 それが今は、嘘の様に緊張している。 心臓に陰毛並の剛毛が生えているのではと思わざるを得ないこの男が、何故此処まで緊張しているのか。 それはひとえに、自分のサーヴァントが今現在行っている行為の顛末を案じているからに他ならない。 結論から言えば、十兵衛が引き当てたサーヴァントである比那名居天子は、現在近所のスーパーに買い物に行っている 無論、そんな事をした時のリスクが計算出来ない程十兵衛は愚かではない。絶対やめろと断ったが、相手は世間知らずの問題児、嵐を呼ぶ不良天人比那名居天子だ。 そんな事を素直に聞くようであれば、誰も不良だとは言わない。外界の様子をこの私が見に行くっていってんのよ、素直に認めなさい童貞と言われた時には、 睾丸がないと解っていても高山で意識を昏倒させてやりたかった程である。が、このサーヴァントの不興を買うのはハッキリ言って面倒極まりない。 仕方ないから外面上はひきつらせた笑みを浮かべつつ、十兵衛はそれを了承。但し、そのままの服装では天子のそれは目立ちすぎる為に、現在の住まいに置いてあった、 妹の萌の服装に着替えさせつつ、近所のスーパーに向かわせた。 これで、誰が見た所で今の天子は、外面だけは無駄に綺麗なガキにしか認識されないだろう。 だがそれはNPCが見た時の場合であり、聖杯戦争の参加者が視たらその時点で、アウト。それを十兵衛は危惧していた。 要するに比那名居天子は、元々住んでいた所がド田舎――と言う認識――であった事も相まって、現在の外界、つまりそのド田舎の外側の世界について、 興味津々なのである。だったら俺が案内してやると言っても、私は一人で 新宿 を散策してみたいの一点張り。 プライドが高く、お嬢様気質。そんなキャラクターは、二十一世紀の創作物を漁れば幾つも出て来るが、実際にそんな存在と話して初めて解った事が、一つ。 ハッキリ言って、面倒くさい事この上ないと言う事だった。ストレスが順調に蓄積されて行くこの感覚、かなりどうにかなりそうな十兵衛であった。 「――戻ったわよ~」 ノックも何も無しに、天子は室内に入って来る。完全に、自分の部屋と言う認識であった。 手に持ったビニール袋ははちきれんばかりに膨らんでおり、俺の金で随分買いこんできやがったな、と言う事を一目で十兵衛は見抜いた。 「……そんで、何を購入されて来たんだ? お嬢様」 「そりゃもう、日々の糧よ」 「菓子は糧って言わねーよ、間食だ」 サーヴァントは食事の必要もないし、況してや天子は、安い弁当は肌に合わないと言って憚らない。 そんな彼女が唯一認めるのは、所謂御菓子の類。こればかりは、天界で供される菓子とは一味違って、悪くはないのだとか。 「まぁまぁいいじゃない。もうすぐ昼食でしょ? 十兵衛のご飯も買ってきて上げたから」 自分の菓子と俺の弁当の比率が9.999:0.001の癖によく言いやがるぜ、と言いたい十兵衛だった、グッと堪えた。 「ほう、そりゃ助かるわ。んで、何を買って来たんだ」 「はいこれ」 言って天子は、ビニール袋から、スーパーの惣菜弁当に売っている典型的な唐揚げ弁当と、大量の春菊が入ったビニール袋を十兵衛の前に差し出した。 「ちょっと待って!! 何コレ」 唐揚げ弁当は、まあ異存はない。問題は、春菊の方であった。 「春菊だけど」 「いや、俺、ピーナッツと春菊嫌いなんだが」 「知ってるけど」 「知ってる」 「いつもピーナッツを私に食べさせたでしょ」 「食べさせた」 「その意趣返し」 人の金で何晒してんだと、流石に十兵衛も切れた。天使も逆切れし始めた。 双方共に我儘で、プライドが高い。どちらも全く、精神レベルが似通った主従だと、二人は気付かないのであった。 ――雪村あかり、2000円 茅野カエデこと雪村あかりは、自分の演技力に絶対の自信を持っている。 幾つものドラマに出演、遂にはレギュラーポジションとしての地位を勝ち取る程であり、自らのうなじに埋め込まれた、 触手兵器が齎す凄まじい激痛を、全く痛くないと思わせる程の凄まじい精神力。 それら全ては、今もエンドのE組で、何食わぬ顔で教鞭を執っているあの破壊兵器、通称殺せんせーを殺す為に、現在は発揮されている状態だ。 姉の仇を取るまでは、あかりは自分を偽り続ける。そう、全てはその為の演技なのだ。 彼女の無念を晴らそうと、あかりは死を覚悟で必殺の触手を埋め込んだ。例え後々に待ち受けている物が避け得ぬ破滅だと知っていても、 彼女はそれを承知で受け入れた。それ程までに、彼女の覚悟は深く、重い。そして現在、あの地球破壊兵器はそれを全く認識出来ていない。 殺るなら、今しかない。そんな時期に、彼女は 新宿 へと呼ばれたのだ。全く想定外のエラーだったが、聖杯が、どんな願いでもかなえると言うのなら。 この世界でもやる事は変わりはない。全ての参加者を殺しつくし、聖杯へと至るまで。自分が引き当てた手札は、恐ろしいまでの存在だ。 勝ちの目がゼロだと言う事はあり得ない。後は勝って勝って、勝ちまくる。それしかなかった。 ――それはそれとして、だ。 「……」 黙々と、雪村あかりは、コンビニで購入したプリンやゼリー類を口に運んでいた。 後にはグミの類も控えており、幾ら年頃の女子中学生の食事とは言え、糖分に偏り過ぎている、と。 思わざるを得ない、そんな三時の一幕だった。 「……何か言いたそうだね、アーチャー」 言ってあかりは、真正面で、壁に背を預け瞑目しているバージルを見て、言った。 「……何も言うつもりはない」 「……そう」 再び、腹の中に石でも詰め込まれたような静寂が、場を支配した。 一分程経過して、再びあかりが口を開いた。 「そんなに財政的に余裕がない筈なのに、なんでそんな菓子なんて喰らってるんだ……って、突っ込むのなら今の内よ」 「黙って食え」 今にも宝具である閻魔刀を抜きはらいかねない程の気魄で、バージルが言った。 黙々とプリンを口に運び続けるあかり。買っておいたそれがなくなったので、今度はティラミスを取り出した。 チョコ味のそれは、如何にも万民受けする味なんだろうと、あかりは勝手に想像した。 「……正直ね、何か小言の一つや二つ言ってくれないと、凄い居た堪れないんだけど」 流石にもう面倒くさくなったのか、バージルはその場で霊体化をし、あかりの目の届かない別室へと移動し始めた。 正直自分だって、食べたくてこう言ったプリンなどを食べているのではない。 確かにプリンやゼリー、ティラミスは好物と言えば好物だった。 元は天才子役と言えども、雪村あかりは女の子である。年相応のものは好きであるし、年相応の悩みだってある。 甘いもの、取り分けて柔かい触感のものが好きになったのは、何時頃の事だったろうか。考えるまでもない。触手兵器を埋め込まれてからだった。 あれを埋め込んで以降あかりは水に対して本能的な忌避感を抱くようになったし、甘いものが特に好きになった。 これは触手兵器を埋め込む前にデータを閲覧していた為に、あかりもそう言ったリスクは認識していたが、此処まで強くなるとは思わなかった。 激痛に比べればまだ我慢出来る餓えではあるが、それでも、限界は来る。 と言うよりも、激痛に比べて、耐えねば死ぬ、と言う程でもない程度の苦しみだからこそ、解消したいのである。 前者の方は耐えられねば本当に死ぬ為に、必死に耐える事が出来るのだが、後者の方は、別段耐えられなくても死ぬ訳ではないから、ついつい解消に走ってしまう。 その結果が今の、大量のプリンやゼリー、ティラミス等であった。 つくづく、触手兵器としての本能が憎い。 口にこそ、武士の情けのつもりなのかは解らないが、バージルは全くあかりの現在の食事に突っ込まなかった。 それがかなり悲しいと言うか、哀れっぽいと言うか。まだ小馬鹿にする発言の一つや二つ、送ってくれた方が、まだ救いがあると言うものであった。 「……おいし……」 プラスチック製のスプーンで、ティラミスを掬って、あかりは口へと運んで行った。 如何にもなジャンクフードと言った風情でありながらも、チョコの味とココア味のスポンジのバランスが実に素晴らしい、研究された味だった。 一人で食べる甘味は美味い……訳もなく。はあ、と大きなため息が口から漏れ出るあかりであった。 ――伊織順平、1200円 W大学の御膝元の街である高田馬場周辺は、数多くの食事屋が店を開く場所である。 ラーメン屋もあればカレー屋もあり、大衆食堂もあるし、夜になれば居酒屋も暖簾を出し始める。 それだけに、伊織順平はゲーセンが終わるといつも、何処で何を食べようか迷うのだ。 S.E.E.Sと忘れられない体験を送った、あの埋め立て島の繁華街よりも賑やかな、高田馬場の街並み。 今は昼飯時なのか、道すがらサラリーマンよりも、明らかな学生風の男女の姿が目立ち始める。 この時間になるとそろそろどの店も混み始める頃合いだ。なるべくならば早く決めたい所である。 「今日は何喰いたいよ、えーこー」 今順平が言ったえーこー、本来ならば栄光と書いてはるみつと読む。 彼は順平が呼び出したサーヴァントであり、例え真名とは違う読み方であろうとも、クラス名で呼ばない、いやそれどころか、 自らのサーヴァントを実体化させると言う愚を、リアルタイムで彼は犯している事になるのだが、露呈する心配は全くない。 と言うのも、彼、ライダーのサーヴァントである大杉栄光は極めて隠匿性の高いサーヴァントであり、余程相手がそう言ったスキルについての看破能力が高くない限り、 先ず一目でサーヴァントだと露見しない。それを解っているからこそ順平は実体化させているのである。 「そうさなぁ……正直この街は初めてだし、お前に任せる気でいたんだが、たまには俺が決めないとな。お前にばかり決めさせるのも、しんどいだろうしな」 「おっ、配慮してくれるって訳? 照れるね~、この色男」 「ハッハッハ、生きてた頃は両の指でも数え切れない程の女と付き合って来たからな……っと、アレが良いんじゃないか?」 と言って栄光はある一方向を指差した。 それは、小洒落たカレー屋であり、聞いた事もない店名から推測するに、フランチャイズの類でない事が解る。 カレーショップ『じゅんぺい』。それが店の名前らしい。こいつ絶対に俺と同じ名前だから選んだな、と順平は思った。 ぞろぞろと人が並び始めている。並んでしんどくならないのは、今のタイミングを置いて他にない。 栄光が食いたいと言っているのだから、それでいいだろうと思い、順平達は並び始めた。 「見ろよ順平、食の殿堂。辛党が行き着く究極の境地だとよ。大きく出たな。食ってみたくねぇか?」 「ハハハ、お前、一番辛いカレーって言うのはさ、俺も一度食った事あるよ。スパイスでルーがペースト状になってんだよ。もう辛くて食えなくてよ、翌日トイレに行くのも苦痛なレベル何だぜ?」 「へー……や、ビビってる訳じゃないが、今日は中辛程度で済ませてやるよ」 「はは、そうすっか。辛すぎる奴食うと数時間後に後悔するからな、俺もそれ位の辛さにするか」 店の回転率は速いらしく、順平達はすぐに店内のカウンター席に案内された。 自分達のすぐ後ろに並んでいた男二人組は、テーブル席へと案内された。何を頼もうかなと思いメニューに目を通すと、自分達の後ろにいた男達が、それなりに大きな声で話を始めた。 「私達は、辛党を自称しているんだが、もうこの世の中にある辛いと言われる物は全て食べつくしちゃ、しまったんだよ。なぁ?」 言って、スーツを着た男は付添と思しき青年に同意を求めた。コクコクと男は頷いた。 「はぁ……そうですか」 店員の、不良風の男が興味無さそうに返事した。 「で此処では、そんな僕らでも食べた事のない、と言う極上のカレーを提供していると聞いたんだが?」 「ありがとうございます。仰る通りでございます。ン゛ン゛ッ」 其処で少したんが絡んだのか、一拍置いてから、その店員は話を続けた。 「お客様に相応しいカレーを、提供しておりますので。どうぞお楽しみ下さいませ」 「もう待ちきれないよ、早く出してくれっ!!」 どうやら、此処のカレーはそんなに美味しいらしい。 やはり辛い方が美味しいのだろうかと思い、順平は頼み直そうとしたが、もうメニューは注文してしまったし、厨房で作っている店員達も早速手をつけ始めた。 今更頼み直すのは、少々勇気がいるところだった。 待つ事、数分。順平達の下に、オーソドックスなカレーと、グリーンカレーが届けられた。 それに遅れて、一番辛いカレーを頼んだ客二名に、件のカレーが運ばれて来た。 「おっ、確かに辛いし汗もかくが……これはこれで美味いな」 適度に水が欲しくなる辛さ、スパイスがしみ込んだビーフ。そして、研究された堅さの米。成程、これは美味い。満足の行く味である。 「ヒー、辛ぇ……。グリーンカレーって言うからには控えめだと思ったのによ~……」 初心者が陥りがちな間違いである。 野菜を使ったカレーだからそんなに辛くないと思われがちであるが、実際グリーンカレーと言うものはどのカレーショップでも怏々に、 中々辛い位置にポジショニングされている物である。「頼んで失敗したなぁ」と順平は笑っているが、此処で彼に食べさせるのも、栄光の男が廃る。何とか完食しようと、スプーンを動かし始めた。 「あー、もう勘弁してくれ……!!」 「勘弁してくれ、と言うのは、私達のカレーにケチをつけると言う事で、宜しいんですかね?」 「お客様いけませんねぇ、最初に言ったはずですよ、御残しは一切許しませんと」 「誰か殺してくれ……」 「これでは辛党の名が泣くな!! なお前もそう思うよな!!」 「全くで御座います。この程度で辛党などと……」 「素晴らしい……これこそ辛党だな!!」 向こうは向こうで、想定外の辛さであったらしく、かなりの地獄絵図が展開されていた。 このカレーに限り頼んだ以上は完食前提(意味不明)らしく、店員が必死に彼らにそのカレーを食べさせている。 無論手ですくったりではなく、ちゃんとスプーンを使っている。食品衛生法に触れるからだって、ハッキリわかんだね。 「……頼まなくて良かったな、順平」 「……あぁ」 両者共に、コップの中の水をグイッと一杯あおりはじめる。 熱くなった口内に、冷たい水の心地よさが、とてもよく染みるのであった。 ――ルイ・サイファー、780円 「マスター」 「何かな?」 エクトプラズム製の椅子に腰を下ろし、その金髪の紳士は優美な笑みを浮かべて言葉を返した。 中世魔女狩りの時代に、当時の異端審問官やその母体である基督教の幹部達が、その尽くを焚書したとされる、幻の書物を、彼は読んでいた。 黒山羊の頭に人間男性の胴体と言う、邪悪で冒涜的な姿をした邪神・バフォメットとの乱交会であるサバトに参加した一人の魔女が著したとされる書物。 彼の邪神と饗する暗黒の晩餐の様子と、彼から授けられた様々な冒涜的な魔術の数々を記したとされるその幻の魔術書(グリモア)に、彼は目を通していた。 何故、当時の歴史の覇者が、影も形も残すまいと努めた魔術書が、このメフィスト病院に存在するのか? そして、この病院に君臨する、白き闇が形を成したとしか思えない魔人は、どのような手練手管を用いてこれを手に入れたのか? 恐らくその謎を解明出来る者は、誰一人としているまい。何故ならば、思考の海に潜った所で、その院長の姿を見れば、謎など吹っ飛んでしまうからだ。 ――ああ、この男ならば、手に入れてしまうかも知れないと。その畏怖すべき美を以て、彼の邪神の方から魔術書を献上しに来ても、おかしくないのだ、と。 悪魔を魅了し、邪神を惑わし。夢魔(リリス)をも嫉妬に狂わせかねない程の美を持つ男、ドクター・メフィストなら、と。 「貴方は食事を摂らなくても問題はないのかね?」 「機を見て近くの食事屋に足を運ばせて貰っているよ」 「嘘は吐かない方が身の為だ。それとも、君には食事の必要性はないのかな」 フフッ、と不敵な笑みをルイは返すばかり。身体が焼かれんばかりのメフィストの美を受けても恬淡とした態度を崩さぬ、底なしの精神力だった。 「天使はその位階が引き上げられればられる程、身体を構成する要素が物質的なそれから、霊的なものに変化して行く。エーテル、霊素、炎、雷、光。 特に熾天使ともなれば身体の全てが余す事無く神聖かつ霊的なそれであるから、生の人間はそれを直視すれば精神的な均衡すらも崩れかねない。 つまりは、飢えや老い、病の苦しみとは無縁と言う訳だな。……貴方にそれを説明するのは、天使に讃美歌の意味を聞かせる様なものであろうがな」 「いや勉強になったよ、流石だなメフィスト」 と、ルイは言うが、本当に参考になったのかどうかは、解らない所であった。 「マスターの身体は特に劣化が著しい。無理やり此処に来た代償だ。本来は必要ないのだろうが、今は、人間が食べるような食事を摂ってみるのも、良いのではないかね」 「少しの酒があれば、如何にでもなるさ」 「禁酒は健康な身体への第一歩だ、マスター」 「ルキフグスみたいな事を言わないでくれたまえ……おっと」 余計な事を言ってしまったと言った風に、少し悪戯っぽい笑みをルイは浮かべた。 茶目っ気のつもりであろうが、既にメフィストは、この男の正体を解き明かしている。 今のメフィストにとってルイと呼ばれる男は、xやyの解き明かされた方程式の様なものなのである。 「まぁ、食事を摂る分には問題はないか。頼むものは、君に任せるとしよう」 「ほう、宜しいのかね」 「君が何を好む所とするのか、気になるのでね。まさか霞を食べている訳でもあるまい?」 「理想とする所ではあるがな。解った、そう言う事ならば、十数分程待ちたまえ」 そう言ってメフィストは、黒檀の机の上に置かれた内線で、メフィスト病院の何処かに連絡。 子機を元の場所に置き始めてから、十数分。緩やかな時間が流れ始めた。メフィストは、黒檀の机に置かれた、エドガー・ゲイシーが著したとされる、 アカシックレコードについて記された三十ページ程の小冊子に目を通し、ルイの方は先程の書物に目を通す。 そんな時間が流れていると、空気分子をスクリーン代わりに、映像が、メフィストの目の前に展開された。 「出前の方がお見えになられました」、若い男性のスタッフはそう告げた。 「此処に転移させたまえ」 言ってからのスタッフの行動は迅速だった。 すぐに、メフィスト病院に届けられた、出前の商品が、黒檀の机の上にまで転移させられた。 魔術書をパタンと閉じ、ルイはその方向に目をやった。中華風の丼にはラップがかけられており、その内部で蒸気が蟠っている事がルイにも解る。 成程、確かに美味しそうではある。――が。 「これは何かな、メフィスト」 この男に口説かれれば、至上の幸福を味わった末、石ころですらその場でダイヤに代わるのではないか、と言う程の美を持った男が頼むものとは思えなかったので、ルイは改めて問うてみた。 「タンメン、だが」 「好物なのかね?」 「如何も、私に勝手なイメージを当て嵌める輩が多くて困るのだがな」 「成程、失礼した」 言ってルイはにこやかな笑みを浮かべて、黒檀の机に近寄って行く。 丼は、二つあった。ルイの分、メフィストの分。時刻は、十二時を回っていた。院長にしても、昼食時であるらしかった。 ――北上、400円 一人で自炊して解った事であるが、スパゲティと言うのは本当に偉大な発明だと北上は思う。 必須栄養素である炭水化物を摂取出来る点が先ず良い。つまりは、米やパンの代替物になる。 次に、安い。有名会社が打ってある、一束を細い紙で纏めてあるタイプは通常よりも割高になるが、それ以外、茹でる量を自分で決められる、 結束以外のタイプの奴は、量も多い上に値段も通常より安い。これを北上は購入している。 お次に、手軽に作れる。今ではスーパーに行けば、パスタを電子レンジで茹でる事が出来る専用の容器と言うものが売られており、 それを利用すれば鍋に水を張ってゆで上がるのを待つ、と言うのではなく、レンジでチンすれば二分か三分其処らで出来上がるのだ。 そして何よりも、それなりに美味い事である。但しこれはパスタソースに左右されるが、それを差し引いても、美味いのである。 正直北上からすれば、イタリア人が発明したものの中では、ピザと並んで偉大な発明と言っても良いだろう。こればかりは、評価をせざるを得ない。 新宿 で演じるロール上、北上が使う事を許されている金銭量は少なめである。 故にそれなりに節制を志さねばならない。しかし、艤装を外されたとは言え、艦娘は本質的には人間に限りなく近い生命体である。 通常は燃料やボーキサイトが一番効率の良いエネルギー摂取源であるのだが、彼女らの優れた所は、人間が摂取する食事からでもエネルギーが賄える事に在る。 サイボーグと言うものは、電気や石油で動くよりも、人間が取る食事からエネルギーを摂取できるタイプが科学的にも一番の理想体である。 故に彼女らは兵器と言う観点から見れば、極めて高い完成度を誇る決戦兵器でもあるのだ。 艦娘がそう言った目で見られていた事は、北上に限らず艦娘の誰もが否定しないし、それは仕方がない事だとも考えていた。 だが多くの艦娘は、食事は、次の戦闘に繋がる栄養摂取プロセスとみるよりも、艦娘の人間としての欲求を満たす重要な行為であると認識していた。 これは彼女らを指示していた提督にしても同様で、彼女らの休息時間、特に食事や睡眠、風呂回り等、かなり気を使っていた程である。 それ程までに、艦娘にとって食事と言う行為は重要なのである。 だがそれにしても……。 「随分とグレード下がったな~」 苦笑いを浮かべて、ちゃぶ台の上に置かれたスパゲティを見つめる北上。 赤々としたミートソースが乗っかった、オーソドックスなそれ。ソースは通常スパゲティと別売りである事が殆どで、だからこそ北上は、 そう言ったソースを買わず、家に買い置きしてあった醤油とシーチキンを混ぜたものをかけて食べていたのだが、今回は、ちょっと奮発した。 所謂、ちょっとした贅沢と言う奴ではあるが、艦娘として働いていた時期に比べれば、随分と食事の質が落ちたものだ。 あの頃はしっかりと栄養が考えられた食事の他に、間宮がとても美味しいデザートを作ってくれたりもした。 そして、同じ艦娘と笑いながらそれらを口にしていた。あの頃はもう戻らない。皆艦娘としての役目を終え、各々の道に進み始めた今となっては、だが。 「もう少し栄養を考えてみたらどうなんです? マスター」 ちゃぶ台の向かい側に座る、アサシンのサーヴァント、ピティ・フレデリカが進言する。 彼女の机の方にも、スパゲティが置いてあった。北上のそれと同じ、ミートソースだ。 「栄養バランスを考えた食事だと、金銭のつり合いがねー……」 栄養バランスと言う物を考慮した場合、必然的に野菜を購入しなければならなくなるのだが、この野菜と言うものがまた安くはない。 今の北上の所持金では、少し購入するのが躊躇われる。確かに栄養を万遍なく摂取した方が良いと言うのは正論中の正論だが、それは理想論でもある。 バランスをしっかり考えるとなると、相応の出費が必要となる。つまり、健康な肉体と言うものは、ある程度の金をかけねば、買えないのだ。 少なくともこの聖杯戦争中においては、北上は健全な食生活は買えない。悲しい話であるが。 「マスター、健康な食生活は十分な睡眠と十分な洗髪に並んで、重要な要素です」 「洗髪……? 何で其処で洗髪が出てくるの」 「髪が傷みますから」 「はぁ」 肉体面の健康に訴えるのではなく、髪の綺麗さに訴えかける理由が、北上には理解不能だった。 北上も艦娘であり、女である以上、美容にだって拘りたい。だが、美容を志すと言うのは、健康な食生活以上に金が掛かるものだ。 少なくとも、聖杯戦争中はそれ程神経質になる要素でもない。北上はそう意見した、が。 「駄目です」 一蹴された。 「北上さん、貴女は私のマスターであると同時に、一人の女性なのです。女であると言う事は、そう簡単に捨てて良い事柄ではありません」 「や、捨てるつもりはないんだけど」 「少なくとも、です。女である以上は、最低限美容には拘りましょう。食生活はその一歩。明日からで宜しいですから、改善して行きましょう」 「うーん……うん」 どうにも釈然としないが、食生活を正そう、と言う意見は正直尤もな所はある。 他ならぬ自分が呼び出したアサシンの進言である。はいはいといって、無視するのも心苦しい。 スパゲティを購入した近所のスーパーでは、ブロッコリーが安かったはず。あれを茹でてマヨネーズをかけるだけでも、大分違うだろう。 そんな事を思いながら、北上は、湯気を今も立たせるスパゲティをフォークで巻き、口元へと運ぼうとした。それに倣いアサシンも、スパゲティを巻き始めた。 「あれ? ねぇ」 「如何かしましたか?」 「や、気のせいかな? 一瞬アサシンのスパゲティに黒くて細いパスタが混じってた気がするんだけど……気のせい?」 「気のせいでは?」 「そうかな……おっかしーなぁ、焦げた奴何てない筈なんだけど」 アサシンが問題ないと言うのならば、そうなのだろうと思い、取り敢えずパスタを口に運ぶ。 北上の髪の毛が十本ほど、フレデリカのパスタに混じっている等、まさか夢にも思うまい。 ――セリュー・ユビキタス、330円 立場上地方から上京し、親の援助で一人暮らし、警察官を目指していると言うセリューは、必然的に使える金額が限られてくる。 この 新宿 におけるロールは、そのまま使える金額や、行使出来る権限にダイレクトに関わってくると言っても良く、セリューは特に、制限を多く受けていた。 使用可能な金銭などその最たる例で、必然、切り詰めなければならなくなる。 人間、思わぬアクシデントで懐に入る金額が減った時、真っ先に切り詰める候補に挙がるのは、食費である。 人と食は切っても切り離せない重要な要素であるが、生活を送る上で絶対に欠かせないインフラ料金などとは違い、即座に切り詰められる上に、 目に見えてその効果が表れるのが、食費なのだ。だから人間は、生活のグレードを落とさねばならない局面に直面した時、先ず食事から如何にかしようとするのだ。 元々、もといた所でセリューが職務を全うしていた、帝都警備隊も、其処まで給金が良かったわけではない。 何せ彼女は下っ端だ。公務員とは言えど、そう言った給金の格差はある。だからこそ、一部では汚職と言うものが罷り通っているのだが。 尤も、給金が少ないからと言って、文句を垂らした事はあれど、今の仕事を辞めようと思った事は一度もない。 何せセリューは、正義を全う出来れば、それで良いのだ。正義を成す事が出来れば、サラリーの低さの不満など、吹っ飛んでしまう。 セリュー・ユビキタスと言う女性は、そんな女だった。 「さ、出来ましたよ!!」 言ってセリューは、如何にも安っぽい、ニトリか何処かの家具量販店で購入したちゃぶ台の上に、今日の昼食を広げ始めた。 電子レンジで温め直した今朝の米、インスタント味噌汁。そして、カットされたキャベツに辛味噌を乗っけた物。 ……以上、七月某日の、セリュー・ユビキタスの昼食だった。 「……」 セリューのサーヴァントであるバーサーカー、バッターは寡言である。多くを語らず、必要な時しか言葉を喋らない。出来る者は多くを語らないのである。 ジッと、セリューはバッターの事を見つめていた。真珠の様に白い瞳が、セリューを射抜く。 「……毎度思うが、質素な食事だな」 「何も食べられないよりはマシですって!!」 それはそうである。何も食べられない人物からすれば、セリューの食事は豪華なものに見えるだろう。 他人の食事をとやかく言う筋合いは、バッターにはない。極端な話、セリューがカップヌードルを啜っていた所で、何の興味もない。だが―― 「何故俺も付き合わねばならない、お前の食事に」 「食べられる時に食べないと、いざという時に身体が動きませんよ。帝都警備隊時代も、その教えは徹底されてましたから」 セリューの様な、緊急出動が多い職場だと、食事は愚か睡眠ですらも不定期な事が多い。 その為、眠れる時には眠り、食べられる時には食べる、と言うのは彼女の様な職業に就く人間には、基本中の基本であるのだ。 そう言った仕事を行っていた時期があるセリューにとって、このように、好きな時に食べ好きな時に眠れる時間と言うのは貴重なそれである。 貴重ではあるが、それをかまけてダレた生活を送るのは宜しい事ではない。決められた時間に、三食食べる。それがセリューの 新宿 での日常だった。 好ましい事ではある。だが―― 「俺は食事を摂る必要がない」 鉄の様に厳しい口調でバッターが言った。 ちゃぶ台には、食事が二人分用意されていた。一つは言わずもがな、セリュー・ユビキタスのもの。 そしてもう一つ、セリューの物より多めに米が盛られた茶碗側が、バッターのもの、であった。 バッターにそもそも食事が不要と言う訳ではなく、サーヴァントはそもそも魔力で構成された存在の為、食事の必要性がないのだ。 その事をセリューに何度も訴えているが、彼女はそれを憶える気配が全くない。寧ろ、一緒に食べた方が美味しいじゃないですかと言う始末だ。 ――存外、我が強い女なのかも知れないな……―― バッターの事を見つめるセリューの瞳に、悲しいものが過り始めた。 このまま拗らせるのも面倒なので、仕方なくバッターはちゃぶ台に近付き腰を下ろした。彼女の笑顔に、晴れやかな物が戻りだす。 頂きます、と言う元気な声が、狭い部屋中に木霊しはじめるのであった ――遠坂凛、0円 現代の科学では人間の身体の六割近くが水で構成されていると証明されている事からも解る通り、人にとって水分はこれ以上となく重要な要素である。 尤もこれに関して言えば、現代の科学で説明せずとも、例え千年二千年前の人間に説明しても、皆は納得するであろう。 最古の哲学者である古代ギリシアのタレスが、万物のアルケー(根源)は水であると説いていた。 四大文明と言うものの多くが、潤沢な水量を誇る大河の付近で栄えていた。これらの事柄から、古の人々もまた、水がなければ生きて行けないと本能で察知していたのだ。 人の身体には脂肪と言う緊急のエネルギー源が備わっており、例え何も口にする事がなくとも、数十日は生きられるメカニズムになっている。 しかし、水を口にしないで生活するとなると、生存可能日数は、食物を口にしないで生きられる日数の十分の一を切る可能性が高いのだ。 人の身体は水で以て、生きる上で欠かせない化学反応を起こすシステムになっているからである。これらの事実から解る事は、つまり人は、 例え食事を摂っていなくても、水だけはあれば、何とか一月近い日数を凌ぐ事が出来ると言う事であった。 だが、遠坂凛は、まさか自分が、其処までの極貧生活に陥る事はないだろうと思っていた。 馬鹿な弟弟子のせいで家の財政は往時に比べかなり悪化したが、それでも、食う物に困る程生活に困窮した事はただの一度としてなかった。 それも凛が、しっかりと家計をつけ、生活に必要な金銭と、魔術師として活動するのに必要な資金を用意調達していたからである。 真面目に打ち込んでいれば、生活に困る事はない。況してや自分が、明日食う物にも困る程落ちぶれるなど、ない筈だ。そう思っていたのだ……。 現在凛は、死体だらけであった居間にちょこんと座っていた。 此処も昔は死体で溢れていたが、流石に気が滅入るので、自分が呼び出した最悪のバーサーカーに片付けさせた。 それでも、畳に染みついた血痕は消えない。うっかり死体の破片の名残であった大脳の破片を踏んだ時は、本気で絶叫しそうになった。 かなり、現状での遠坂凛の精神は危うい所まで来ている。冬木での堂々とした、如何にも育ちの良いお嬢様然として気風は最早存在しない。 あのバーサーカーの気まぐれに神経質になり、何時誰が此処を襲撃して来るか、と言った不安に押し潰されそうになる一人の少女が其処にいるだけだった。 それだけでなく最近は、碌に睡眠もとっておらず、食事も摂っていない為か、栄養状況も酷い。 その食事であると言うのだが、不幸な事に、黒贄が奪ったヤクザの邸宅には食糧がそれ程存在しなかった為、食べ置きも出来ない。 何か外で買いに行こうにも、自分の顔と名前は全国規模で売れてしまった為に、それも事実上不可能。黒贄に買い物に行かせるなど以ての外。論外だ。 ヤクザの死体から財布を奪い、出前を頼む……と言った事も考えたが、それだけは、最後のプライドが許さなかったので、やめた。 では現在、遠坂凛は何を口にしているのか。彼女は今湯呑を手にしていた。其処には氷を入れた水が、張られている。 其処に、食塩を数g入れたもの。それが、現状の凛の昼食であった。現状、持ち金も少なく、邸宅に備蓄されている食料もかなり少ない 一日一食生活。それが、今の遠坂凛の基本であった。彼女は己の資材を一切無駄に出来ない状態なのだ。それが故に、この食事とも言えない食事だ。 塩分は人体の必須栄養素の一つ。水分は、最早説明不要。その二つの栄養素を無駄なく摂取できる食塩は、何と優れた食物か――。 と言う自己暗示が、通用する訳がない。 どう足掻いても食塩水は食塩水だ。腹は膨れないし、そもそも本当に栄養を摂取出来ているのかも解らない。 本当に……どうしてこうなってしまったのだろうかと、考える事が凛には多くなる。完全に、末期の人間の思考であるとは、彼女は気付いていなかった。 「……はぁ……」 食塩水の入った湯呑をテーブルに置き、其処に凛は突っ伏した。夜までは動くのをよそう。エネルギーの無駄であった。 ちなみに黒贄は別室で、相変わらず自分だけの作業に没頭していた。 金に困ったら食塩水が良いと言うのは、実は彼のアドバイスであった。水と塩だけで四十日弱も生活していたと、彼は誇らしげに語っていた。 当然、お前のせいでいらない困窮を味わっているのだと、遠坂凛は身体の中のエネルギーが無駄に消費される事をお構いなしに、激怒したのだった。 ――ジョナサン・ジョースター、0円 新宿御苑周辺を拠点にし、子供達と遊び始めてから幾日か経った頃。 子供達の母親と一緒に、昼食をこの場所で食べる事がジョナサンには多くなった。 断るのも失礼だと思い、一緒に食べる機会がジョナサンには多い。この申し出はありがたくもあった。 この世界に於いてジョナサンのロールと言うものは、もといた世界の時の様な、名家の生まれと言うそれではないのだ。 有体に言えば、元の世界での潤沢な財力と言うものが、この世界で消滅している状態と言っても良い。 今日の糧に困る程困窮している、と言う訳ではないが、それでも、なるべくの節約は志したい状況である。 そんな中で、子供達の母親の申し出は、有り難く頂戴するべき干天の慈雨であった。空腹も満たせるし、子供達や親との親交も深められる。悪い事ではなかった。 「お料理が上手ですね、宮城さん」 「あら御上手ですわね、ジョースターさん」 言って、まだまだ三十にもならないだろう若い女性が、照れ臭そうにそう言った。 彼女が持って来たタッパーには卵焼きやタレのかかったミートボール、ドレッシングのかけられたレタスやキュウリ、トマトのサラダ等、 色取りも良く栄養もしっかりしてそうで、何よりも美味しそうな雰囲気がこれでもかと漂っていた。 他の母親が持って来た弁当箱やタッパーにも、めいめいの料理が中に込められており、各々の家庭の雰囲気と言う物を、ジョナサンは感じ取る事が出来た。 「へへ、こうは言ってるけど、母さんは余り料理得意じゃなくて、何品かは冷凍食品なんだぜ、ジョジョ」 「コラ、圭介!!」 言って、宮城と呼ばれた母親は、自分の子供である、如何にも腕白そうな風貌をした子供を叱った。 顔が赤らんでいる所から、どうやら本気で恥かしかったらしい。周りの母親達も、クスッと笑い始める。 「はは、圭介君。お母さんが折角お料理を作ってくれてるんだ。そう悪く言うもんじゃあないよ」 「はーい」 如何にも悪ガキそうな風貌をしているが、圭介と呼ばれたこの少年が素直な性格をした子供である事はジョナサンも、当然母親の宮城も知っている。 若い時分に親に隠れてタバコを吹かしていた自分に比べれば、全然可愛げがある方だと、ジョナサンも思っていた。 宮城が握ったお握りのサランラップを剥がし、口に運んでいると、近くで「コラッ」と、またしかる声が聞こえてきた。 今度は宮城のものではなく、別の母親からだった。この声は、佐藤と呼ばれる、やや小太りの女性のものだったか。 「駄目でしょう奈美。お箸の使い方がまた間違ってる」 「だって~……」 言って奈美と呼ばれた黒髪の少女は、面倒くさそうな表情を浮かべた。 如何も話を推測するに、子供の箸の使い方が間違っている事を、佐藤は叱りつけているらしかった。 ジョナサンが生きた時代に於いて、日本と言う国は極東の一島国であり、まだまだ取るに足らない小国と言う認識であった。 新宿 に導かれ、現代の日本と英国の関係を歴史書で学んでみた所、百年以上前と比較した場合、完全に立場は逆転していると見て間違いはなかった。 自分の死後に一次大戦と言うものが勃発し、イギリスの国力は疲弊。それを皮切りには、イギリスは沈んでは少し浮かび上がり、また沈むを繰り返しているらしかった。 永遠の絶頂など存在しない、と言う事をまざまざと見せつけられたジョナサン。やはり、紳士的に、そして、謙虚に生きるのが重要だと言う事を認識させられた瞬間だった。 少なくともジョナサンの生きた時代では日本と言う国の立場はまだまだ弱小のそれであった為に、彼は日本の文化についてまだまだ勉強不足な側面が多い。 食の様式についてもそれは同様で、箸だなどと言う道具など、つい最近知った位であった。 見た所細長い木の棒で食事を挟むと言う単純な道具であるらしいが、どうやらそんな道具にも、正しい使い道と言うものが有るらしい。食文化とはつくづく、面白いものだ。 「だって~、これでもちゃんと食べられるもん」 そう言って奈美は自分の箸の握りを母親に見せる。 正直何処が間違っているのかジョナサンには皆目見当もつかないが、この国の常識に照らし合わせれば、間違った握り方らしい。 「全く、そんな握り方じゃ笑われるわよ。皆見てないようで、そう言う所はしっかりとみてるものよ」 「え~……」 言って奈美は、ジョナサンの方に目線を向けた。助け船を出してほしい、と言う事だろうか。 「奈美ちゃん、お母さんの言う通りだよ。テーブルマナーって言うのにはね、皆はうるさいんだ。今から学んでおかないと、大きくなってから笑われるよ」 フォローしてくれるかと思いきや、逆に母親の方に加勢した為、一瞬だけ驚いた表情を奈美は浮かべる。 やがて、観念したように、箸の持ち方を母親のそれに似せて持ち始める。彼女にはかなり難しいらしく、かなり四苦八苦していた。 「ありがとうございますジョースターさん。流石はテーブルマナーの国ですわね」 「本当ですね。きっと子供の頃から厳しく仕込まれて、さぞ食事時のマナーもしっかりなさっていたのでしょうね」 「……ハハハ、お恥ずかしい」 【何で乾いた笑みを浮かべるんだ、マスター】 誰がどう見たって褒められているのに、何故か複雑そうな笑みを浮かべるジョナサンであった。 まさかテーブルマナーに関しては昔は本当にダメダメで、父親からも厳しい折檻をされていたなど、まさか言える筈がないのであった。
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店名 ゲームワールド5F 最寄り駅 新宿南口 台数 DX2台 ろっかくモード あり 編集日 2006/6/4 備考 店名 東新宿スポーツランド 最寄り駅 新宿 台数 DX4台 ろっかくモード あり 編集日 2006/10/11 備考
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メフィスト病院には、次のような有名な言葉遊びがある。 『治療室に入った者は必ず戻る。しかし、院長室に入って出て行った者はいない』、と。 より補足を加えるのであれば、院長室に招かれた者以外は、如何なる奇跡を味方にした者であろうと、如何なる神の加護、如何なる悪魔の庇護を受けようとも。 絶対に、其処から脱出する事が出来ない。後に待ち受けるのは、美しい男の繊手によりて下される、幸福な死だけである。 永久に外の風景を眺める事が叶わない、と言う地獄から解放させてくれるのが、虚無に話しかければ虚無を構成する分子の方から語りかけてきそうな美しい男なのだ。 それはそれで、最後の幸運、と呼ぶべき物なのかもしれないが。 院長室に、所謂顔パスで、通る事が許されている人物は、現在三人。 その内の一人は、この世界には存在すらしていない男。 新宿 警察に所属する刑事(デカ)の一人。 自分を痛めつければ痛めつける程、因果律レベルでその痛めつけた人間により不幸を強いらせると言う特異な運命を持った貧相な刑事、朽葉。 朽葉以外の残り二人は、聖杯戦争の舞台となっている 新宿 に招かれている人物だ。その内の片方は、しかも、メフィストと同じサーヴァントとして。 世界の誰よりも、黒の似合う美男子。親しみやすくて気の良い男の仮面を被った、残酷で冷酷な魔界その物のと呼ぶべき存在、秋せつらこそが、メフィスト病院の院長室に足を踏み入れる事を許された存在である。 ――そしてもう一人は、サーヴァントとして自身が召喚されてから認めた男。 メフィストが嘗て出会った如何なる紳士よりもずっと上品で、気品漂う物腰で。そして、彼の出会った如何なる魔人よりも空寒い何かを放つ男。 そのマスターこそは、地上で並ぶ者のいない賢者であった。地上で最も愚かな行いをしてしまった、大馬鹿者でもあった。 「素晴らしい」 最も愚かなその賢者の名こそ、ルイ・サイファー。 メフィストが認める、せつらと並んで黒の似合う男。いや、或いは黒その物。紳士の皮を被った悪魔であり魔王。 万年の統治を約束する名君の建前を持った、圧政に対する反逆者。それこそが、魔界医師が従っている男の正体であるのだった。 夏至に近い時期の午後一時とは、一年を通して最も明るい時期。太陽が最も高い位置に置かれた高見座から地上を見下ろす時間帯である。 その時限に差しかかろうとも、メフィスト病院院長室は、薄く青い闇が優勢を保っていた。 如何なる魔霊をも祓い、浄化する、太陽天の暖かな光をこの部屋に受け入れようとしないのは、単なる主の美観の問題なのか。 それとも主が、光を避ける者と言う意味を持つ悪魔と同じ名前をした魔人だからなのか。その真実を知る者は、誰もいない。 「この街には確かに、混沌が芽吹きつつある。私の望む、善い街になりつつある。実に、好ましい主従を呼んだようだよ、『彼』は」 ブラックスーツに身を纏った紳士、ルイ・サイファーは左手で、群青色に透き通った鍵を弄びながら、其処から投影されるホログラムを楽しんでいた。 名画と名高い映画でも眺めるように、ルイが面白がっているホログラムとは、何か。喜劇か、悲劇か。はたまた、ポルノか。 どれとも違う。ルイは、契約者の鍵を通して通告された、ルーラー及び 新宿 の聖杯戦争の運営者からの緊急報告を面白がっているのだ。 盛り上がりもない、事務的で淡々とした文体の文章に、アクセント程度の二名の男の顔写真。 話を要約すると、ザ・ヒーローと、バーサーカーのクリストファー・ヴァルゼライドと言う男達は相当羽目を外したらしく、それがルーラー達の逆鱗に触れたと言う事らしい。 それが、ルイには面白くて仕方がなかったのだ。彼はこの二人を愚かだと思っていない。寧ろ、自分を何処までも楽しませてくれる、実に有能な役者達だとすら思っていた。 「彼、とは誰の事か」 格調高く艶やかな漆黒をした、黒檀の机に向かって座る、机の色とコントラストを成すような白いケープを纏う男が訊ねた。 汚れや塵埃の方から、避けるに違いない完全な白を身に纏った、冷たい闇が人の形を成したようなこの男こそが、ルイ・サイファーが召喚したキャスター。メフィストであった。 「此処に投影されているホログラムが見えるだろう? 其処に映っているマスターさ」 「マスターの友人かね」 「当たらずとも遠からず、と言った所さ」 そう言ってメフィストは、凛冽とした輝きを、水晶体の奥底で湛えるその瞳で、ルイが左手に持つ鍵から投影された映像を眺めた。 サーヴァントと思しき男は、彼のナチスの将校服にも似た形式の黒軍服を身に纏った金髪の男で、言葉を交わさずともその烈しい気性が窺い知れる、鉄の男だった。 メフィスト好みの益荒男と言うべき人物である。男らしさの欠片もない柔弱な“僕”にも、見習って欲しいぐらいだ。 そんな男を従えるマスターの男は、市井を歩けば幾らでも見つかるような、平凡とした容姿と顔立ちの男だった。 とてもではないが、ヴァルゼライドと言う男には釣り合わない。普通の人間の目には、そう映るだろう。しかし、メフィストには違って見えた。 如何に普通の人間を装おうとも、修羅場を潜り抜けて来た人間は、目が違う、口の結び方が違う。一目見てメフィストは理解した。 マスターと言う体裁で此処 新宿 に呼び出されたこの男は、間違いなく、ルイ・サイファーが目を掛けているだけの大人物であると言う事を。成程、ザ・ヒーロー(英雄)と言う名前は、伊達でも何でもないらしい。 「碌な事をしなさそうな友人だな」 すぐにメフィストは、机の上で開いていた本に目線を下ろそうとした。 『嫦娥運行図』と名付けられたその古びた書物は、院長であるメフィストだけがその場所を知る秘密の書庫に納められた蔵書の一つである。 直近二千年の、世界中のありとあらゆる月の満ち欠けとその異常を記録した書物こそがこの本で、世界に四冊と無い貴重な書物だった。 単なる月の記録図ではない。狼男(ワーウルフ)と月の関係性と、何年何月何時に狼男が姿を見せたかと言う記録は勿論の事、 牛車に乗せられ月の都へと旅立って行った、ある美しい女の話をもこの書物は記録していた。 他にも、月齢と魔力の相関図をもこの書物は記録しており、この月齢の時に一番魔力や霊力、マナが満ちる土地は何処か、と言う事も記されている。 そんな貴重な書物を気まぐれに、メフィストが手に取った理由は一つ。つい数時間前にメフィストが臨時の職員として雇った、ある女性の話を受けたからだ、と言う事を知る者は、彼一人だけだった。 「概要は貴方の口から聞かされた程度だが、推察するに、到底正気とは思えんな。放射線の散布、大量殺戮、そして、ルーラーに対する反逆。一事が万事のような男達だ」 「だからこそ、私は好ましいと思っているのだよ」 ホログラムを消し、懐に契約者の鍵を仕舞い込んでから、ルイ・サイファーは大仰そうに腕を広げ、口を開く。 「混沌の中にあって、人は己を高める事が出来る。高次の霊になる事が出来る。真の自由を得る事も、出来る」 「貴方は、人間と飽きる程接して来て、未だに理解が出来ないのか? 人は、貴方が享受出来る混沌を生き抜ける程、強くはないぞ」 「肉体的な強さに関して言えばその通りだろう。しかし、肝心なのは生き抜こうとするその精神性だ。無論強さがある事は好ましい。だが私は、畏敬を以て今日を生き、希望を抱いて明日を夢む者を、決して見捨てはしないよ」 「人は無秩序な環境に身を置いている時こそ、秩序を求める生物だ。法とは即ち、理由であり根拠だ。人はそれなしでは生きて行けない。だから貴方は永劫、秩序の体現であるYHVHと戦い続けて来たのだろう」 「人が秩序と縋る者を求めるその時、創造主もまた形を伴い現れる。その通り。故に私は戦い続けて来た。宇宙の秩序を司る大いなる意思とね」 ルイは、目線を明白にメフィストの顔に固定させた。 常人は、それ自体が光り輝いているとしか思えないメフィストの面構えを、まず、直視出来ない。 中東の砂漠の国に、商人として生まれた男が開祖となった宗教は、天使の姿を人が見れば、発狂すると説いた。 神や天使とは、人の持つあらゆる言葉を用いても表現出来るものでは断じてなく、人間の感覚器官や美意識では見る事も評価する事も叶わぬ存在であるからだと言う。 では、この男の場合は如何か。如何なる修飾語、如何なる形容語句を用いても、表現出来ぬこの美しい男の場合は。 そして、その美しい男を真正面から見据えて、恬淡としている黒スーツの男は、一体、何なのか。誰なのか。 「私はこの街に、大いなる意思を中心とした理を破壊するだけの力を求めている。だが、それだけの力を生む混沌は、そう簡単に生まれ出でないのもまた、事実だ」 「だから、貴方は素晴らしいと言うのか? 新しく討伐令を敷かれたこの男達の事を」 「彼らは実によく働いていてくれているよ。だが、まだまだ私が求め、楽しめる程度の混沌には至っていないと見るべきか」 一呼吸を置いてから、ルイは続けた。 「私が手助けをせねばなるまい。先達の整えた舞台を、より良くする。先達の失敗を、取り繕う。それが、後続の仕事であり、労苦であるからね」 「何を成す、ルイ・サイファー」 「この街に、更なる試練と混沌を。君の語った魔界都市のような街に、昇華される時が来たのだ」 「貴方はやはり、無間地獄(ジュデッカ)の奥底で、永久に氷漬けにされていた方が良かったのかも知れんな。人に不幸しか齎さないではないか」 「試練に痛みと堅忍はつきものさ。良い定職に在り付きたいから勉強を頑張る、金銭が欲しいから必死に根を回す。神の与える試練など、それらの延長線上に過ぎない。まぁ、私の齎す試練も正しくそれに近しいのだがね」 ルイは滔々と言葉を続けて行く。 演説に特有の熱もない、要点だけを簡潔に述べる爽やかさもない。しかし、何故か、この男の言葉は、心によく染みわたるのだ。 まるで、ヒビの入った石に、雨水でも染み込んで行くかの如き語り口で、男は話をする。ルイの言葉は水であり、そして、人をその気にさせる炎だった。 「間もなくこの 新宿 は混沌に包まれる。あらゆる命に意味がなくなる街と化す。それを担うのは我々だ、メフィスト」 「だろうな。私には未だに実感が湧かぬが、この世界の 新宿 の主役は如何も、私達であるようだ」 「時は満ちた。私もいよいよ動こうかと思う。メフィスト、『準備』は出来たかね」 パタン、と、本が閉じる音が、例えようもない静かさを伴って流れた。 「最後のボルトを締め終え、実用の段階に入った」 「結構。其処に、私を案内してくれ」 「心得た、我が主よ」 言ってメフィストは立ち上がり、無言で音もなく、歩み始めた。 人の形をした白い光が風のような滑らかさで歩いているように、余人には見えるだろう。 それを追うように、ルイもまた歩き始める。周囲数百億光年に、光を放つ恒星が一つとして存在しない宇宙の闇が、人の形を伴って歩いているように、余人には見えた事だろう。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 其処が、地上に面した階なのか、それとも陽の光の届かない地下の世界なのか。 恐らく、それを推察出来る者は一人として存在するまい。この病院の全てを知っている、メフィスト以外は。 窓もなければ時計もなく、音もなければ生き物の気配すらない、メフィスト病院の何処かであった。 深海を思わせるような、青みを孕んだ闇の中を、二人は歩んでいる。メフィストと、ルイ・サイファー。 およそ照明の類が一つとして存在しない回廊であるのに、そこは薄らとした暗さしかなく、歩く分には問題がないと言う奇妙な結果が同居していた。 そんな不思議で、深海の奥底に建てられた神殿を思わせる神秘的な世界の中でも、メフィストの姿は白く光っているように見え、ルイの姿は黒く霞んでいるように見えた。 二人の存在感は、その程度の神秘さと不思議さでは、色あせる事すらないと言う事の証左でもあった。 この回廊を歩くまでの道のりは、本当に普通と変わりがなかった。 患者の関係者が見舞いの為に入院している部屋へと足を運ぶ、患者の担当医が定期検診の為にその部屋へと向かう。 本質は其処と何も変わりがない。であるのに二人は、このような奇怪な道を歩くに至っている。 ただ階段を上り、そして、時には階段を降り、またある時は、関係者以外の立ち入りを禁止すると言う扉を開けて其処の中に入る。 それだけなのに、二人は今この場所にいるのだ。だが、聡明なルイ・サイファーは気付いていた。 メフィストの宝具であるこの病院は、メフィストがその気になれば、この世の時空の法則が全く当てにならない空間に変貌する。 その装置が安置されている場所は、恐らくは院長室と同じで、普通にその場所に向かっただけでは先ず辿り着けない。 メフィストは、目的のものは地下に在ると言っていたが、それを愚直に信じ、地下に足を運ぶだけでは目当ての物を目にする事は不可能。 地下にあるのに、階段を昇る。其処とは全く関係のない扉を、開く。また適当な所で、階段を降りる。 そのような、特定の手順を経ねば辿り着けない部屋がこの病院には幾つも存在する事に、ルイは気付いていた。 そしてメフィストが、その装置を安置させる為に、その様なプロセスを設定したのは、妥当であるとすらもルイは思った。そのようなプロテクトを施す程の価値が、その装置にはあるのだから。 白が止まる。黒が、見上げる。 目の前に立ちはだかる、巨大な鉄扉を見るがよい。見る者に与えられる、異様としか言いようのない重圧感は、その扉が決して張りぼてではない。 正真正銘の、密度と厚みを伴った真なる金属の証であると言えるだろう。だが何よりも異様だったのは、その扉の表面に刻まれた、様々な魔術的言語。 在る箇所は、古英語で何かが記されていた。ある場所は、太古の大和言葉で何かが記されていた。 在る箇所は、シュメールの粘土板に刻まれた象形文字めいた言葉が。またある場所は、古代エジプトで用いられたヒエログリフが。 そしてこれら、世界史や日本史で存在を習う文字とは別に、明らかに魔術的な言語である、ルーン文字や梵字の類すら、扉の表面で市民権でも主張するかの如く踊っていた。 「厳重だな」 ルイがほう、と嘆息するように呟いた。単に、巨大な金属の塊、と言う性質が保有する、物質的強度だけでない。 扉の表面に刻まれたこれらの文字は、それぞれが異なる様式の魔術を成し、扉に霊的かつ魔術的な強度を与え、そして物質的強度も更に底上げしている事に、ルイは気付いた。 「核ミサイルに直撃しても無傷だ。理論上は、地球が粉々に砕け散っても、この扉だけは無事に形を保つ程の強度を持つ」 「試した見た事が?」 「まさか」 魔人と魔王のジョークは、聞くだけで心臓に悪いやり取りであった。 談笑と言えない談笑を行った後、メフィストは、スッと、その右腕を伸ばした。 夾雑物の一切存在しない白金を、削り、磨き上げたような美しさが、その腕にはあった。 向こう側が透けて見えそうな程白い薬指に嵌められた指輪の宝石が、光った。それに呼応し、扉は、重々しい音を立てて、観音開きになる。 事の一部始終を見届けたメフィストが、特に合図もなくスタスタと部屋の中に入って行く。当然、ルイもそれを追う。 距離感が狂う程広大な、立方体の部屋であった。 部屋に満ちているのは、青い闇。暑さも冷たさも感じぬ白い霧。閉所恐怖症なる病気がこの世には確認されているが。 これだけ広大な部屋に閉じ込められてしまっても、逆に同じ事だろう。人は、何もない広大な空間に放り出されて、正気を保って居られる程、強くないのだから。 そんな広大な部屋の中に在って、部屋の中央に設置された何かは、ある種のアクセントを演出していた。 一言で言えばそれは、所々に鉄鋲の打ちこまれた、真鍮製の奇妙なメカニズムだ。四方から飛び出した、奇妙な鉄管にガラス管。 そしてそれらを繋ぎ合わせる、表面にマイクロ単位の細やかさの魔術的言語の刻まれた針金と、ゴムのような素材の表面にやはりその言語が刻まれたケーブル等々。 メカニズム、と表現した理由は、その装置に取り付けられた、ハンドルやレバーのせいである。 中世的なクラシカルさと、近現代的なシステマチックさとモダンさが同居した、ちぐはぐな機械だった。まるで子供の奇妙な妄想が形を成したような何かであった。 「これが禁術に指定されたのは、千四百年の事だった」 「後にモンゴルと呼ばれる土地に生を受けた遊牧民の男が築き上げた一大帝国の影響で、ユーラシアの東と西の文化がサラダボウルの様に混ざり終えて久しい時代であり、オスマントルコ帝国はまだバヤズィト一世が健在だった時期か」 「権力者は常に、歴史の裏側で暗躍する魔術の一派を恐れたものだ。特にヴァチカンは、必要以上に神経質に、私の師を恐れた」 「ドクトル・ファウストの事かね」 「ヴァチカンが制御しようとして制御出来る男じゃないさ。あれは狂っているからな」 メフィストが装置に歩み寄る。ルイは、その様子を眺めるだけだった。 「今から行う術法は、魔術の歴史を読み解いても、成せた者はまずいない。いや、そもそも魔術が操れると言うのは基本的な条件であり、大前提だからだ。此処に更なる知識が加わり始めてこの技術は形を成す。これはある意味で、魔術でもあり科学。水にして油。焔にして樹木。相反する性質が必要な業だからだ」 「歴史上、この術法を操れた魔術師は、君が確認出来た限りでどれ程いた」 「本当に優れた魔術師なら、これを操ったと言う記録自体を抹消するさ。近現代で解っている限りで一番有名なのが、エドガー・ゲイシーだろう。ただあの男は、魔術に優れていた、と言うよりは、其処に『接続』出来る才能に溢れた、ある種のバグと言っても良い男に過ぎないのだが」 「私も知っているよ、その男なら。上手く操れたとは思えんが」 「無論、コントロールする術まではあの男は保有していなかった。精々が、記録を解読し、自身の病気を治せた程度だ。尤も、それだけでも十分過ぎる程凄いのだがな」 暫し、沈黙が降りた。本来ならば言葉を返す筈のルイが、黙っているからだ。 とは言えメフィストも、其処で彼に返事を求めてなどいなかった。何故ならば、まだまだこの男には、語る事があったからだ。 「不滅の存在を滅ぼす局面に立たされた時、マスター。君ならどう対処する」 「不滅になる前の過去に遡り、その存在に干渉して見るのも悪くはないが、私ならば、不滅を滅ぼせる存在を育てるだろうな」 「独創的な答えだ。……嘗て、私がそのような存在と対峙した時、私と、私が認める大魔術師は、この装置を使った。未遂に終わったがな」 「それは?」 「並行世界の数は、無限大にも及ぶ。貴方なら、理解している事柄だろう」 「無論」 「理屈自体は簡単だ。不滅の存在であると言うのなら、『その存在が滅んだ並行世界の未来』を探せばよい。そしてその未来を、その存在に押し付ければ良い。そうすれば、如何なる存在をも滅ぼす事が可能だ」 更にメフィストは続けた。 「不滅の存在に死を与える。不幸の源泉であるパンドラの匣をも無力化させる。如何なる存在にも、特定の運命を強いらせる事が出来る。今から操る術法とは、そんな、『神』の一端に触れる技術だ」 「君にそれが出来るかね」 「生前の時点でも、このような装置を借りねば出来なかった程だ。それに今は、サーヴァントとして矮化された身分。先程述べたような事柄は、不可能に近い」 「それでも、私の求める事は出来るのだろう?」 ルイ・サイファーの唇の両端が、少し吊り上った。 何億人の人間が見ても、魅力的としか映らない、その紳士の微笑みに、途方もない野望の色が見え隠れしているのは、一体、何故なのだろうか。 「出来る」 対するメフィストの答えは、氷塊の如くに冷たかった。 過去に勉強し尽くし、知り尽くしてしまった事柄に対する質問を、面倒くさそうに答える老教授宛らであった。 「ならば、これ以上の言葉は無用だな。是非とも、メフィスト。君の腕前を見せてくれたまえ。私は彼のりゅうこつ座の主が運営する、北極星の王座のシステムを、人の身で操っていると言う事実自体もまた楽しみなのだ」 「心得た。ならば、しかと見るがよい。如何なる結末が待ち受けていようとも、それを覚悟して受け入れるが良い」 そう言ってメフィストは、白いケープの裏側から、土気色をした、しかし、それでいて全体的には筋肉のような質感を保った、 不細工な子供のような人形を二つ取り出した。ルイもまた、上着の裏側から、同じような人形を二つ、外に晒した。 「――これより、『アカシア記録(レコード)』の操作を行う」 言ってメフィストは、そのレバーに手を伸ばした。 今からメフィストが行う術法は、あらゆる次元に渡り存在する、宇宙的エーテルが流出している記録庫へ接続し、それを操作する禁術。 あらゆる世界、あらゆる宇宙の全歴史を記録(レコード)する史書であり、全ての歴史の全ての可能性の未来をも読み取れ、操る技。言い換えれば、根元への接続そのもの。 それこそが、今この部屋にいる白と黒が行おうとしている事柄だった。アカシアの霊異記を操ろうとして、メフィストよ。ルイよ。お前達は、何を成すと言うのだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ また、わたしが見ていると、小羊が七つの封印の一つを開いた すると、四つの生き物の一つが、雷のような声で「出て来い」と言うのを、わたしは聞いた そして見ていると、見よ、白い馬が現れ、乗っている者は、弓を持っていた。彼は冠を与えられ、勝利の上に更に勝利を得ようと出て行った ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「何故、私を呼び寄せたのだ」 苛烈な性格であると言う事が窺える声音で、その女は訊ねた。 「君が勝利を求めて渇望している人間であるからさ」 それを受けるは、黒スーツを着用した紳士、ルイ・サイファーだった。 「勝利? 馬鹿を言わないで下さいましミスター。お姉様は、富も権威も名声も、そして自分の国ですら持っていた御方でしたのよ」 ルイの言葉を受けて返すのは、先程の凛冽とした声音が特徴的な女のそれではなかった。 それは、その女性の背後に影のように付き従う、小柄な少女だった。リボンで纏めたシニョンが特徴的な緑髪の少女で、背の割に胸の大きい、トランジスタ・グラマーだ。 「大切な者だけは、ついぞ得られなかったようだがな、お嬢さん」 少女がお姉様と呼んでいる女性の顔が、不愉快そうに歪んだ。 ルイの言葉を受けた少女が、不愉快さと怒りに、酷く引き攣った。ルイの言った言葉の全て、理解しての表情である事は明白だ。 「君は確かに、誰の目から見ても完全かつ完璧な勝利を得る事が出来たのだろう。だが、君自身は、勝利だと思ってなかっただろう? 何故なら君と勝利を喜びあう筈だった男は――」 「よく勉強しているじゃないか、ミスター。だが、聡明な貴方なら理解しているだろう。知りたがり屋は何時だって、寿命が縮まるものだ、と」 背後の少女が動こうとした、その瞬間、彼女の身体は自由が効かなくなり、うつ伏せに倒れ伏した。 「なっ、がっ……!?」、と、少女のもがく声。彼女は今、自分の身体に、銀色の糸が纏わりついている事を知った。針金だった。 「君の気持も解らないでもないが、その男は私の主だ。そして、この病院で、争いは認めん」 ルイの背後に広がる、無明の闇の向こう側から、白い闇、輝ける光のような男が姿を現した。 苛烈な雰囲気を纏った女性が、言葉に詰まった。地面に倒れ伏した少女の表情から、険が抜け、呆然、そして、恍惚とした表情が露になる。 無理もない。この男の――ドクターメフィストの、悪魔的な美貌を見てしまえば、そんな事は当たり前の事なのだ。 「見事な腕前だ、とでも言えば満足か? 美丈夫」 「早く話を済ませたまえ」 メフィストの言葉は、余りにもそっけなかった。目の前の女性達になど、微塵の興味もないと言った風な体だった。 「お前の言う通りだ、ミスター。率直に言うよ、私の人生は、空虚だった」 「お姉様!!」 ギンッ、と、地べたに這いつくばる少女を、女は睨んだ。それだけで、少女は全てを得心。グッ、と歯を食いしばり二の句を押し殺した。 「確かに私は、誰の目から見ても明らかな勝利を掴んだが、私だけは、虚しかったよ。私の傍には、愛した男がいなかったからなぁ」 其処で女性は、頭上を見上げた。青い闇が蟠る、冬の夜空のような昏黒が広がっているだけだ。 「ただそれでも私は、待って待って、待ち続けた。何時か奴が……私が愛した、汚れた人狼(リュカオン)が戻ってくるのだ、と」 「結局、戻らなかった、と」 「私の言葉を奪うのはやめてくれ。他人から指摘されると、どうも、な」 苦笑いを浮かべる女。 「私の求めた勝利は、完全な勝利じゃなかった。ピースが、三つも四つも足りない、不揃いの勝利だった。それは、ミスターの言う通りだ。認めよう」 「――だがな」 「だからと言って私は、お前に踊らされる程愚かじゃないぞ。私は女である以上に、民の上に立つ為政者だ。況してや此処は、私の先祖であるアマツの民の生国。聖杯戦争? 馬鹿を言うな、乗る訳がない」 彼女の返事は、気高かった。そして、美しかった。 その言葉には微塵の嘘も偽りもなく、全てが真実、全てがありのまま。一切の虚飾を取り払ったシンプルな言葉は、余りにも美しい。 地面に這いつくばった少女は、女性の言葉に魅了され、ほう、と嘆息した。如何やら、同性愛(レズビアン)の気が強いらしかった。 「成程、予想していた通りの答えだ。君を動かすには、万の言葉を尽くしたとて、不可能だろう」 「切り札を早く見せたらどうだ」 「ふむ?」 疑問気な声をルイは上げた。「惚けは興を削ぐぞ」、と直に女は指摘。 「ミスターは、私が見た中でも一番聡明な人間だ。断言しても良い。そして、私が見て来たどんな政治家よりも腹の黒い曲者でもあるとな」 「つまり?」 「私を聖杯戦争の参加者、いや、サーヴァントか? その手駒として参戦させると意気込んだ以上、当然、私をその気にさせる『切り札』があるのだろう?」 「ふふふ」 ルイは、不敵に笑った。 「切り札を温存したまま機会を逸する事程、馬鹿らしい事はあるまい。悔いのないよう、今の内に開帳しておいたらどうだ?」 「ハハハハハ、素晴らしい。君は実に聡明な女性だ。腹を割って話せる人間は大好きだ、腹の探り合いなどは無駄なプロセスだから、ね」 そう言ってルイはポケットから、あるものを取り出した。 群青色の宝石で出来た鍵のようなそれは、契約者の鍵だった。慣れた手つきでそれを弄ぶと、鍵から、ホログラムが投影される。 それを見て――女性と、そして、少女は、心底驚いたような表情を隠せなかった。愕然、と言う言葉がこれ以上となく相応しいだろう。 硬直したまま動かないのは、少女の方だった。硬直から直に復帰したのは、激しい気性の女性であった。そして彼女は、笑った。 「は、ハハ、ハハハ、ハハハハハハハハハハハハハッ!!!」 爆発するような哄笑だった。病的な物すら感じられる程の、呵呵大笑。 心底愉快そうな笑みである一方で、自身の運命の皮肉さを呪い、嘲るようなシニカルさで満ち溢れた、すてばちな感情すらも読み取る事が出来る。 ホログラムには、金髪の、極めて意思の強そうな男性が映り出されていた。名をクリストファー・ヴァルゼライドと言う男だった。 「な、何だ、総統閣下はこの世界ではお尋ね者の犯罪者なのか、ククッ、ハハハハハハ!! 全く、笑わせるジョークを見せてくれるじゃないかミスター!!」 ルイは、女性の笑いが収まるのを待った。 たっぷり十秒程の大笑いが、広大な空間に広がった後、眦に浮かんだ涙を弾き飛ばしながら、女性は、ルイ・サイファーの方に向き直った。 濡れた鴉の黒羽の様に艶やかで美しい黒髪を、後ろに長く伸ばした女性であった。彼女は、クリストファー・ヴァルゼライドが纏っている制服と同じ様な軍服を身に纏い、 そして何よりも特徴的なのが、彼女の右目に取り付けられた眼帯だった。彼女の右眼は生前の時点で抉り取られている。 もしも、その様な身体的欠陥がなければ、さぞや美しい、軍服ではなくドレスを身に纏えば男をより取り見取りに出来た程の麗女であった事だろう。 「返事を聞かせてくれないか、セイバー。いや……『チトセ・朧・アマツ』くん」 それを受けて、チトセと呼ばれた軍服の女性は、懐に差した剣を勢いよく引き抜き、それを振り回した。 それは彼女の、弛まぬ鍛錬と天性の才能が組み合わさった剣捌きを受けて、びゅんびゅんと音を立てて彼女の周りを旋回する。 その剣は、剣身を複数に分割されており、分割された部分をワイヤーで繋ぎ止めた、いわゆる蛇腹剣と呼ばれる剣であり、まるで鞭のように、そして、 神技の如き軌道を描いて、チトセの周りを回転。ガチャンッ、と言う音と同時に、分割された剣が元の一本の剣になり、その剣先を、ルイの首元に近付けた。 「お前の指図は受けん」 チトセの言葉は、奇しくも、ヴァルゼライドと同じ、鋼であった。 「だが、このまま黙って帰るのも面白くない。折角、滅ぶ前の日本にやって来れたのだ。観光がてらに街を散策し、そして――生前成し得なかった事を成して見るのも、悪くはない」 「ほう、それは?」 「決まっている。私の愛した人狼(リュカオン)は、如何なる手段を用いてか、あの英雄を下したと言う」 剣を鞘に納めチトセは、言った。 「ならばこの世界では、奴の……ゼファー・コールレインの代わりに私が、『逆襲(ヴェンデッタ)』と『完全なる勝利』を、あの英雄を相手に成し遂げるのさ」 「逆襲か。それは、私にも、か?」 「そうだ、ミスター。つまらないか? その結果が」 「最高に面白いよ、セイバー」 ルイが爽やかな口ぶりで、返事をした。その貌に浮かぶのは、狂人の微笑み。 「研がれた牙を誇りに、地の果てまでも走るが良い。そして私は、君が今度こそ、完全な勝利を得られる事を祈ろう。何故なら君が――『期せずして、希望とは違う勝利を得てしまった哀れな女性』であるが故に」 ルイがそう語り終えると、チトセの従者にして、宝具である少女。 サヤ・キリガクレを縛る針金が解除される。急いで彼女は立ち上がり、敵意をルイとメフィストに露にする。目線は、メフィストから外されている。 その美を直視してしまえば、耐えられないと思ったからだ。 「サヤ、出るぞ」 「お、お姉様……」 「此処に最早用はない。余りにも薄暗く、黴臭いからな。出口は何処だ、麗しい美丈夫さん?」 「案内しよう」 言ってメフィストは、ケープの袖から、ビュンッ、と針金を伸ばした。 それはメフィストの右脇の方にずっと伸びていた。針金の伸びた方向に、チトセは歩いて行く。 ありったけの殺意と憎悪をルイに叩き付けながら、サヤはその場から、正に霧の様に消えて行く。 二人の退院を、ルイ・サイファーは愉快そうに眺めていた。望まぬ勝利を得てしまった白い騎士が今、 新宿 に解き放たれた瞬間だった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 子羊が第二の封印を開いたとき、第二の生き物が「出て来い」と言うのを、わたしは聞いた すると、火のように赤い別の馬が現れた。その馬に乗っている者には、地上から平和を奪い取って、殺し合いをさせる力が与えられた また、この者には大きな剣が与えられた ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「どうして私を呼び寄せたんですかねぇ?」 軽薄そうな男の声が、跳ねかえる壁が一目見ただけでは存在しないとしか思えない程広大な部屋の中に広がった。 「君がとても、トラブルの類を好みそうな者だからさ」 人をおちょくっているとしか思えない程、軽く、薄っぺらなその言葉に、ルイ・サイファーはいつものような笑みを浮かべてそう返すだけ。 「私がそーんなに、揉め事の類が好きそうに見えるんです?」 「過去の経歴を調べさせて貰ったよ。いやはや、実に面白い。人々を争わせ、星を滅ぼし、それを遠くから眺める。実に、悪辣だ。好ましい」 「照れちゃいますよ~」 と、それらしい声の調子で、軽薄そうな男は返事をする。 声と態度からは、目の前の黒スーツの男への警戒と侮り、そして――ルイの背後に佇む、圧倒的な存在感を保つ、白皙の美貌の男への畏怖めいた感情が、微かに読み取れる。 「そんな君だからこそ、赤い騎士の役割が相応しいのだよ」 「何です、それ?」 「世界の終焉を記した、黙示録なる書物に登場する、四騎の騎士の一人さ。赤い馬に跨ったその騎士は大きな剣をその手に持ち、地上に戦乱と喧騒の種を撒くのだよ」 「それはそれは……素晴らしい存在じゃないですかぁ」 「全くその通りだよ」 ルイは不敵な微笑みを浮かべた。相対する男もまた、笑った。 「私はね、君にその悪い力を存分に奮って欲しいのさ。出来るだろう? 災禍の象徴である、君ならば」 「良いんですかぁ? そーんな事をしちゃって? 私が本当にその力を奮ったら、遊びじゃすまなくなりますよぉ?」 「構わないよ」 一切の逡巡を見せぬ様子で、ルイは返答した。 一瞬、呆然に近いような表情を男は浮かべたが、直に、狂的な笑みを浮かべて、ルイの事を眺めた。 この男の正気を疑う以上に、初めて、自分の理解者を得たような、そんな心境を窺わせる笑みであった。 「君の混沌を齎す力は、私が必要とする力なのだよ。人の争乱、悩み、疑心、妬み。負の感情から生まれる何かも、またあるだろう。今の 新宿 には、それが必要だ」 「んっふふふ、ゆっくりりかいしたよっ。それじゃぁ、私、張り切っていっちゃいましょうか」 そう言って男は、空中に如何なる浮力を用いてか浮遊し、其処で足を組んで座る、と言う器用な体勢を解き、地面に両脚から着地した。 「……ところで、アサシン」 「なんでしょ」 「余り肩肘を張る必要は、ないと思うが」 それを指摘されて、顎に手を当てて男は考え込んだ ピンクがかった赤髪を、後ろに長く伸ばした人間だった。ドライヤーなどを使って整えていないのか、髪はもじゃもじゃと言う擬音が相応しい位になっている。 だがそれよりも目立つのはその長身である。二mを超す程の背丈の持ち主で、ルイやメフィストを見下ろす形になっているのだ。 伸ばした前髪で隠された瞳、喜悦に吊り上った唇。男の容姿は、一目見ただけでその性別を窺わせない、中性的なシルエットだった。 「……私がそんなに無理してるように見えます?」 「見えるさ。君の本当の性格は、そんな取り繕う風でもないだろう。そもそもアカシア記録に曰く、君の一人称は私、ではなく……」 「一人称はぁ?」 途端に、馴れ馴れしい口調にアサシンが変わった。 恐ろしく速いペースで、チッチッチッチッチッチッと舌打ちを響かせている。カウントダウンのつもりであるらしかった。 「『ミィ』、だった筈だが?」 「ぴーんぽーんwwwwwwwwwwwwwwww正解でーすwwwwwwwwwwwwwwグリフィンドールに893点!!!wwwwwwwwwwwwwww」 途端に、アサシンの態度がぶっ壊れた。 まるで第一志望の面接に挑む就活性にも似た真面目さでルイと会話をしていたアサシンであったが。 彼にこの事を指摘された瞬間、まるで躁病の患者の如くそのテンションを天井知らず的に上げさせた。 今のアサシンの態度に、全く違和感も何も感じられない。成程、これが如何やら素であるらしい。 「や~、慣れない口調で話すものじゃないッスね~~~~(CV:内田真礼)、もう吐きそうで吐きそうでwwwwwwwwwwww」 「そもそも、如何して初めからそのような話し方じゃなかったのだね」 「それはあれ、第一印象ってと~っても大事でしょ? 初めは礼儀正しく、後は砕けて。ミィとルイルイのコミュランクは今七位ですよ~wwwwwwwwwww」 「成程。随分と踏み込んだ関係になったな、アサシン」 「ど~も、そのクラス名? とか言う奴で呼ばれるの慣れないんですよね~」 「では、こう呼べば良いのかね?」、ルイは、アサシンの言葉を受けて、第二案を提示する。 「『ベルク・カッツェ』と」 「カッツェでいいッスよルイル~~~~イwwwwwwww」 其処でアサシンこと、ベルク・カッツェは空中を浮遊しだし、其処で寝っ転がる。 空中をうつ伏せに浮遊しながら、顎を両手に乗せると言う形で、カッツェは二人を見下ろす。 カッツェは何を思っているのか解らないが、数秒程何かを思案した後、ケラケラと笑い始め、空中を浮遊しながらゴロゴロと寝転がり始めた 「あ~イイっすね~wwwwwwwwwwwwwこの世界にはミィ以外のガッチャマンはいないし、あの脳内お花畑野郎もいないですしぃ?wwwwwwwwwwww思う存分ミィのウルトラなパワーを愚かな人猿に見せつけられますね~wwwwwwwwwwwwwwwwww」 「期待しているよ」 「ウッスwwwwwwwwwwwwあ、其処のイケメンさん、出口何処ッスか?wwwwwwwwwwww」 無言で、メフィストはその方向を指差した。 この状態で彼が口を開き、あの先に天国があると口にすれば、誰もがそれを信じ、その方向に何万人も向かって行くに相違あるまい。 表情にこそ動きはないが、如何も動作が緩慢で、面倒くささと言うものを体中から発散している。どうやら、カッツェと言う男は苦手な手合いらしかった。 「りょーかいでーすwwwwwwwそれじゃ、カッツェ、いきま~すwwwwwwwwwwwwヒャッホー! ぶううううーん、ぶーううーんっwwwwwwww」 そう叫びながらベルク・カッツェは、白い指の指し示す方向へと風の様に走り、去って行った。 「あれが黙示録の赤き騎士担当とは、随分なジョークだな」、とメフィストは溜息交じりにそう零した。 全てを血に染め、地上を戦禍に満たそうとする赤い騎士が今、 新宿 に解き放たれた瞬間だった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 子羊が第三の封印を開いたとき、第三の生き物が「出て来い」と言うのを、わたしは聞いた そして見ていると、見よ、黒い馬が現れ、乗っている者は、手に秤を持っていた わたしは、四つの生き物の間から出る声のようなものが、こう言うのを聞いた 「小麦は1コイニクスで1デナリオン。大麦は3コイニクスで1デナリオン。オリーブ油とぶどう酒とを損なうな」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「大樹!!」 「お母さん!!」 そう言って、三十路に漸く差し掛かったかと言う、世間的に見ればまだまだ若い年齢の女性と、小学校に入学したかどうか程度の背丈と年齢の子供が抱き合った。 母親の心境を語るのならば、漸く見つかった、と、無事で良かった、に尽きるだろう。 新宿 に用向きがあった為、 新宿 駅で降りた所で、我が子とはぐれた。 迷子である。気付いた時にはもう遅い、大樹と言う名前の少年は、駅から出た時には既にはぐれていたのだ。 新宿 駅は 魔震 が起こる前から、兎角複雑な構造をしている事で有名であったが、 魔震 からの復興後も、その構造には何の変化もない。 だから、子が迷っているとしたら、あの駅内であったのだろう。そうなると、見つけるのは困難を極める。何せ駅自体も広い上、人も大量に行き交いしている。 その上、探す対象が子供だ。親を待って一ヶ所で大人しくしていると言う事もしないだろうし、駅員に話しかける知恵と言うのも薄い。 何よりも母親は、子供に切符を持たせてしまっていた。勝手に外に出ている、と言う危険性すら考えられる。だから母親は、急いで一番近くの、 新宿 駅東側の交番に助けを求めたのである。結果論になるが、子供は十分程度後に戻って来た。 「お母様を探して、駅近くの路地裏を歩いていましたのよ」 「それは、わざわざ申し訳ございません!! 何とお礼を申し上げたら……」 「いえいえ、お構いなく」 但し子供は自力で戻って来たのではなく――大人の女性に連れられて戻って来た、と言うべきなのだが。 くすんだブロンドを短髪に纏めた女性だった。顔立ちは驚く程端正で、西洋人的な気風に溢れている。 髪の色と言い顔付きと言い、日本人、と言うよりアジアの人間ではないのだろう。それを抜きにしても彼女の顔立ちは綺麗である。 眠たげな瞳は、何処かセクシーさと優しさを醸し出しており、 新宿 ではなく表参道を歩いていれば、間違いなくモデルとしてスカウトされてもおかしくない風格すらある。 アジアの人間は西欧の人間は皆同じ顔に見えると言うが、そんな事はない。母親にすら解る、大樹をわざわざ交番に案内してくれたこの女性が、際立った綺麗さだと言う事を。 だがどうにも、日本の季節については不勉強であったらしい。東京の夏にはそぐわない、黒色のドレスコートを身に纏い、その上にパナマ帽である。 暑いに決まっている。コーディネート自体は見事だが、これでは着ている方も後悔しているに違いないだろう。 「お子さんに間違いありませんね?」 そう訊ねるのは、この交番の駐在の警察官であった。 既に年配に差し掛かっているが、一目見て真面目で、実直そうだと解る、見事な身体つきの男だ。 若い時分はさぞや、剣道や柔道、空手などで腕を鳴らした事であろう。 「はい、間違いありません」 「解りました。早期に発見出来て幸いでした。それでは僕は、 新宿 駅に連絡を入れさせて貰います」 そう言って駐在は、交番内の固定電話を手に取り、電話番号を入力して行く。 ドレスコートの女性が此処に来る前、駐在は 新宿 駅の駅員に、こう言う子供が迷子になっていないか、職務を遂行する傍ら探して欲しい、と。 連絡を入れていたのだ。見つかった以上、このような結果になったと言う事を報告する義務があると言うものだった。 「それでは、私はこれで」 「すいません、本当にすいません」 「いえいえ」 そう言って、ドレスコートを着た女性は、軽く母親と、駐在に会釈し、堂々とした足取りで去って行った。 話していて魅力的で、そして不思議さを感じる女性だった。その上、日本語もかなり上手い。故国では相当なインテリであったのだろう。 母親の彼女も見習いたいものであった。短大を卒業こそしたが、今では学生時代に学んだ事の殆どを育児の忙しさで忘れてしまっていた。 「お母さん、あの綺麗な女の人、すっごい強いんだぜ!!」 あのくすんだブロンドの女性の姿が見えなくなってから、大樹と呼ばれた少年は、目を輝かせてそう言った。 日曜の朝早くから始まる特撮ヒーロー、不死鳥戦隊フェザーマンを毎週楽しみにしている少年であったが、今の瞳の輝きは、それを視聴している時の物によく似ていた。 「強いって、何が?」 「俺がお母さんを探してた所でさ、すっげぇ『怖い骸骨のお化け』がいたんだ!! 早く逃げなきゃ、って俺が思ってたんだけど、そこにあのお姉さんが現れて、パンチ一発でお化けをやっつけちゃったんだぜ!!」 「もう、そんなわけないでしょ。アニメの見過ぎよ」 「本当だって!!」 そう言って大樹は力説するが、はいはい、と母親である彼女はそれを流すだけ。 先週のフェザーマンは、そんな内容だったかと思い出す彼女。確か先週は、戦隊の一人が操られて主人公の敵に回ったが、直に元に戻った、という話だった筈だが。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ――何故、私を呼んだのだ―― ――君自身が餓えたる黒い魔人だからさ―― ――餓える?―― ――黙示録、と言う書物を読んだ事はあるかね―― ――アポカリプスだろう。知っているぞ―― ――では、その中に登場する、子羊が呼び寄せる四騎の騎士の話は?―― ――……―― ――偏った読み方をしているね、君は―― ――うるさい―― ――話を戻そう。俗に黙示録の四騎士と呼ばれるその騎士達は、白、赤、黒、青の四色の馬に跨った者達の事であり、彼らは神より与えられた権能を以て、地上の人類を殺戮し尽くすと言われている―― ――……使える設定だな―― ――何に、とは聞かないよ。白は勝利を、赤は戦争を、黒は飢餓を、青は死そのもの。君は、黒を担当して貰おうと、呼び寄せたのだよ―― ――私が、黒? 服装と翼のせいだからか? 随分安直ではないか。黒と言う色は嫌いではないが、私を表すのには飢餓と言う概念は不適だろうよ―― ――君が戦いに餓えたる魔王だからだよ―― ――何?―― ――君は戦いが好きだろう。君が今のような存在になってから戦いが気に入ったのか、それとも人であった頃からそうだったのか。それは私としては興味がない。肝心なのは、君の現在だ。君がとても戦いを好きで、愛している。その一点が重要なのだ―― ――胡散臭いお前の意見に賛同してやるのは癪だが、確かにその通りだよ。私は、強い魔法少女と戦う事が、何よりも好きだった。血が躍る―― ――命を掛けた戦いが好きな君の事だ。君は、君自身と対等な魔法少女と戦う事は、何よりも好きであった事だろう。言い換えれば君は、自分を倒してくれる好敵手を探していたような物であり、自分の死に場所を求めていたに等しい人物でもある―― だが、と、黒スーツを纏った紳士は其処で言葉を区切った。 ――強かった君は、敗れ去った。君自身が問題にもしていなかった弱い少女の不意打ちで。理想の好敵手でもない相手に、理想の死に場所とは到底言えないような所で、君は、殺された―― ――……―― ――君は渇望しているのではないのかね。戦闘を。そして、自分の納得の行く結末と言うものを―― ――それに、私が餓えているとでも?―― ――違っているのならば謝罪しよう―― ――答えはいつか教えてやる。ただ、これだけは言っておく。私を呼び出した理由は如何あれ、私はお前にいくばくかの感謝を抱いている―― ――ほう―― ――何のかんのと言っても、生前のようなスペックを振えぬ仮初の肉体とは言え、現世に戻って来れたのは中々嬉しい。それに、聖杯戦争、だったか。魔法少女以外の強者がいるのだろう? いいじゃあないか、素晴らしい事柄だよ―― ――だが――、と、言うのは、最早紐としか言いようがない程の細い繊維で、局所を隠していると言う痴女的な服装を身に纏った、ブロンドの髪の女性だった。 ――お前の指図は受けんよ、明けの明星殿。私は私の意思で動く、それを忘れるな―― ――元より、私は君の自由な意思を尊重する立場だよ。行きたまえ、アーチャー。君の飢えと渇望を満たす相手との出会いを、私は祈ろう―― ――本心では、ないのだろう?―― ――さて、ね―― 新宿 、と呼ばれる町は、平和そうな所だった。 行き交う衆愚。立ち並ぶ虚栄と虚飾のビルディング。そして、都市的な退廃と泡(あぶく)のような都市的繁栄の匂いが香る、爛熟の街。 何処にでもある栄えた街。何処にでもある、経済都市。だが、彼女は違った。彼女は明確に感じ取っていた。 あのスーツの男が語っていた事は嘘ではない。この街は本当に、聖杯戦争なる、超常の輩が跋扈し、凌ぎを削る舞台に選ばれたのだ。 彼女の嗅覚は血の香りを捉えていた。彼女の皮膚は戦火の熱を感じていた。彼女の身体は――荒れ狂う殺意の渦を感じて歓喜していた。 「面白い街だ」 新宿 駅の周辺を歩きながら、パナマ帽を被ったドレスコートの女性は呟いた。 この街は、あのスーツの男に餓えと呼ばれた感覚を満たす者は、きっといる事であろう。それに、聖杯にだって興味がある。 この力を使って完全に復活する事も、ありかも知れない。夢と空想は、尽きない。 彼女の身体は、これからの期待とドキドキで、日本の夏より熱く燃え滾っていた。 大声で叫び、サーヴァントと呼ばれる存在を、呼んでみたくなる。――『魔王パム』は、此処にいるぞ、と。叫んでみたい衝動を、ぐっと彼女は抑えるのであった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 小羊が第四の封印を開いたとき、「出て来い」と言う第四の生き物の声を、わたしは聞いた そして見ていると、見よ、青白い馬が現れ、乗っている者の名は、「死」といい、これに冥府が従っていた 彼らには、地上の四分の一を支配し、剣と飢饉と死をもって、更に地上の野獣で人を滅ぼす権威が与えられた ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「おのれ魔界医師、私を呼ぶとは何たる無礼者じゃ!!」 その存在は、アカシア記録制御装置(コントローラー)で呼び寄せられるなり、すぐさまそう叫んだ。 彼女を 新宿 に呼び寄せると、ルイ・サイファーから言われた時、メフィストは正気を疑った。 理論上、彼女を呼び寄せる事は可能な事柄であった。魔力回路や肉体的性能や強度を高めた、メフィスト謹製のドリー・カドモン。 ルイ・サイファーは、このカドモンに、アカシア記録に記録されている異世界の存在の情報を固着させ、その存在をサーヴァントとして動かそうと考えたのだ。 つまりルイは、アカシア記録制御装置を動かして獲得した、該当存在の情報を依代にして、カドモンにそれを注入させ、言うなれば、受肉したサーヴァントに近い存在を、 産み出そうとしたのである。理論に間違いはなく、成功する蓋然性が極めて高い実験ではある。しかし、リスクがないわけではない。 先ず、彼らには、サーヴァントを本来御す為の令呪がない為、自由に活動が出来ると言う事が一つ。 そして何よりも問題なのは、彼らはルイの魔力によって動く存在ではなく、自前の魔力回路が生み出す魔力で動く存在だ。自律性が恐ろしく高い。 彼らはサーヴァントでありながら、マスターを必要としない完全なる独立存在だ。そんな物を四体、 新宿 に放てば、どうなるのか。想像するに難くない。 これらの性質を加味して、最後のドリー・カドモン、四騎士における青に相当する存在として、彼女を呼び出そうとルイから言われた時。 メフィストは珍しく、目を見開かせて驚いた。呼び寄せる事は可能だが、その存在を呼び寄せるなど、悪魔を召喚するよりもずっと危険な事柄なのだ。 如何なる黒魔術師が、如何なる用意をしておこうとも、彼女を呼び寄せた末に待っているのは、無惨な死以外にはあるまい。 その存在は過去、メフィストと浅からぬ因縁を持った女性であった。 嘗て魔界都市を壊滅寸前にまで追い込んだ、最強の毒婦にして、バビロニアの大淫婦の再来。世の全ての吸血鬼の女帝にして、自らの赴くがままに動くわがままな女王。 そして、人生で初めての恋に破れ、世界の何処かに隠れるように逃げて行った、哀れな女。全てを受け入れる魔界都市ですら、受け入れられなかった女。 「久々に出会うのだ。挨拶の一つぐらいは、して然るべきではないのかね」 「貴様の創造主(つくりぬし)は、冗談の才能だけは授けなかったようじゃの。私の顔を爛れさせた男が、よくも言うわ」 メフィストと、ルイの目線の先にいるのは、女だった。 年の頃は二十代。誰がどのような角度で見ようとも、それ以外の年齢には見えないだろう。 だが、最早。年齢など、誰も問題にしないだろう。彼女の貌を。身体を見てしまえば。 天使の美貌を持つ男、秋せつら。神の美貌を持つ男、ドクターメフィスト。彼らですら、この娘の美貌には及ぶまい。 風に委ねた黒髪は、この部屋の青い闇を支配する程の神秘性と王威に溢れており、あらゆる黒よりなお目立つ。 人の手の触れ得ぬ高山の山頂の万年雪よりもなお白いその肌は、身に付けた飾り気のない、純白の衣装ですらが薄汚れた汚物に見えてくる。 美の基準は、年代、時代、国によって変わると言う。だがしかし、この女性の誇る美は、永遠であり、不変。そして、絶対の物であった。 薄暗い闇の中に、ポッと光がともったようなその美貌の持ち主の名は――一体。 「ほほほ、じゃが、唯一面白い冗談があるとすれば、今の貴様の境遇だの、メフィスト」 「ほう」 「魔界医師と呼ばれ、この私ですらが認めた男が、事もあろうに使役され、頭を垂れる身分になっておろうとは。それも、ただの人間に従っているのではない」 目線を、黒いスーツを身に纏った男の方に向けた。 凝視しただけで、男を射精させる程の、美と言うエネルギーを内包した女性の視線を受けても、ルイは、平然とした顔をするだけだった。 「事もあろうに、悪魔どもの王に従っていると言うのだから、愉快極まりないわ。当ててやろうか、貴様の名は、ルシファー、じゃろう?」 「ルイ・サイファーさ」 「ふん、神に逆らい魔界で燻っていると、愉快さも失うようじゃ。メフィスト以上につまらぬ冗談だぞ」 つまらなそうにルイから目線を外した。 「メフィストよ、一つ答えよ」 「何か、姫よ」 「ふん、今更貴様がその名で呼ぶのは、白々しいとしか言いようがない。何故貴様は、その男に従っている。そして何故、貴様自身も弱くなっているのだ」 姫と呼ばれた女性が、一切の嘘は許さぬ、と言う、女帝の眼光を輝かせながらメフィストに詰問した。 別段、欺く程の事でもないと思ったのか、メフィストは説明し始めた。この世界の 新宿 の事、此処で行われる聖杯戦争の事。 そして、メフィスト自身も姫自身も、サーヴァントと呼ばれる存在になり、弱体化していると言う事を。 「下らぬ」 全てを聞き終えた姫の答えは、短く、簡素で、解りやすいものだった。 「私に聖杯を求めて争え、とでも言うのではあるまいな。嘗ては戯れに、フィリップ四世なる王を誑かし、彼の愚王の手によりて壊滅させられたテンプル騎士団とやらも、同じような物を求めていたな」 「君がそんな物を求める程、安い存在じゃない事位は知っているさ。私が求めるのは、ただ一つさ、姫――いや、『美姫』よ」 其処で一呼吸を置いて、ルイは続けた。 「君はこの 新宿 で、飽きるまで自分を謳歌して欲しいのさ。寝たい時に寝、食べたい時に食べ、血を吸いたい時に血を吸い、交わりたい時に交わる。君の理想は、それだろう」 「然り、じゃ。悪魔王。だが、貴様は一つ見誤っているぞ」 「ほほう」 面白そうに、ルイの表情が動いた。 「私がこの堕ちた 新宿 に呼び寄せられたのは、大方貴様の差金じゃろう。貴様ともあろうものが、理解していない筈があるまい。貴様の口走ったそれは、自由じゃ。 そしてその自由こそ、私が尊いと思う物。だがな、貴様の思惑で、偽りの肉の人形に情報を固着されて、この世界に呼び寄せられた私に、自由があると思おうか?」 「実に、口が立つな」 ルイは反論をしなかった。その通りであるからだ 美姫が言っている事は要するに、ルイがどんなに姫の理想とする条件、つまり自由だが、それを保証して現世に呼び寄せた所で。 サーヴァントに近しいスペックで呼び寄せた以上、その時点でそれは自由ではないのだ。それはつまり、檻の中の自由。軛の中での解放に過ぎないのだ。 「心底不愉快じゃが、今の私は貴様の掌で踊る文字通りの人形に過ぎぬ。それがつまらぬと言うのじゃ。どんなに貴様が私に自由を楽しめと言おうが、これで本当に、愉しめると思うのか?」 「ならば、自死を選ぶかね、姫よ」 と問うのは、やはりルイだ。これを受けて、ホホホ、と高笑いを浮かべる姫。 天から落ちて来た白銀の琴の様に美しい声で彼女は笑うが、その声に秘められた、残忍かつ冷酷な感情を聞き取れる者は、決して少なくないだろう。 彼女と言う人物を知らなくても解る、捻じ曲がった性格の笑い声であった。 「私の本体は今でも船に乗り、地上の何処かの時空を彷徨っておる。所詮この世界の私など、一抹の夢に過ぎぬのだろう?」 其処で、ククッ、と忍び笑いを浮かべ、美姫は続けた。 「私にとっては死すらも楽しみな事柄じゃ。この世の悦楽を飽きる程楽しめば、後は自ら命を断つわ。生きたい時に生き、死にたい時に死ぬ。最高の在り方じゃろうが?」 「そうかそうか、それには賛同の余地があるな」 「――尤も」 「それを今行えば、秋せつら君に遭えないだろうがな」 「――貴様。今、何と言った」 嘲るような微笑みに彩られた美姫の表情が、一瞬で、虚無その物の如き無表情に転じて行った。 無、とはまさに、今の彼女の表情の事を言うのだろう。喜びがない、怒りがない、哀しみがない、楽がない。 能面ですら、まだ幾らかの表情を湛えていると言う物だ。今の彼女の貌は、星のない宇宙の暗黒そのものだ。 だからこそ、恐ろしい。次に如何なる感情の波が迸るのか、理解が出来ないから。 「君の愛した男が、この 新宿 にもいると言っているのだよ。彼もまた、サーヴァントとして――」 其処で、姫が動いた。 腕全体が消し飛んだとしか思えぬ速度で、ガッと、アカシア記録制御装置から飛び出した鉄の管を掴んだのである。 重さ数tは下らない、真鍮のメカニズムを片腕で持ち上げ、音速を超える程の速度で、ルイの方へとそれを放擲した!! 彼にそれが激突し、肉体を破壊し内臓を飛び散らせるまであと二m程、と言う所で、そのメカニズムは上空へと消え去った。 見るが良い!! そのメカニズムを巨大な両脚の爪で器用に握る、銀色の大鷲を!! 翼を広げれば、二十mにも達する、その気になれば巨象ですらも持ち上げられそうな、その大鷲の魁偉!! コレなるは、彼の魔界都市に於いても名高い、ドクターメフィストの針金細工。彼は、姫が制御装置を手にしたその段階で、懐に忍ばせていた針金を使って、瞬間的にこの大鷲を作り上げていたのである。 「せつらを従えるは、何処の誰じゃ」 地の底から響いてくるような、恐るべき声音で、姫が訊ねた。 「聞いて、如何するのかね」 メフィストが静かに訊ねた。彼だけが、冷淡な態度を崩しもしなかった。 まるで美姫よりも、ルイよりも。アカシア記録制御装置に、異常はないだろうか、と言う事の方に興味関心がある、と言うような装いである 「その者を縊り殺す」 殺す。その言葉の意味する所は何よりも重い物である一方、人類史の過去未来を問わず、多くの者がその言葉を口にして来た。 ある者は冗談で、ある者は恫喝で。そしてその言葉の多くが、話しの流れで場当たり的に飛び出した言葉だったり、単なるその場凌ぎの、重みを感じさせぬそれであった事だろう。 姫の口にした、その言葉の重さは、別格だった。 北の果ての海に浮かぶ氷山よりも冷たくて重々しく、そして、その意思を絶対に遂行すると言う漆黒の情動が、その言葉には渦巻いていた。 情念により鬼になった女を、般若と人は言う。今の美姫が、伝承の般若の通りの、恐ろしい風貌であれば、どれ程良かった事か。 美しいが故に、凄惨だった。ヴィーナスですら褪せて見える程の美貌の持ち主が、今の殺意を発散しているからこそ、絶望感が、凄まじかった。 「私は許さぬぞ、メフィスト、ルシファー。せつらは、私が求め、下僕とするべき男だった。何処の誰が、奴の心を射止めたか? 何処の誰が、従えているのか? 女である事も問わぬ、男である事も問わぬ。若かろうが老いていようが、赤子であろうが獣であろうが、私はその存在を赦す事など出来ぬ」 ルイの方を、決然たる目つきで睨めつけ、姫は言った。 「今一度は、貴様の掌の上で踊ってやろう、明けの明星。私が唯一、奴がいればこの世の何者もいらぬと認めた男が、サーヴァントなどと言う下らぬ身分で呼び出されたと言う事実が、最早許し難い。奴を従える者を殺し、せつらも殺し、私も死のう」 「お好きなように」 ルイの口は吊り上っていた。これで、四騎士の全てが揃った。 白のセイバー、赤のアサシン、黒のアーチャー。そして、蒼のライダー。 この街が辿る運命を、メフィストは夢想した。この都市は、魔界都市になるか。それとも――黙示録の世界となるか。 彼の知能を以ってしても、先の見通せぬ、ルイ・サイファーの鬼謀が、酷く腹ただしいのであった。 【四谷、信濃町(メフィスト病院)/1日目 午後1:10分】 【ルイ・サイファー@真・女神転生シリーズ】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [契約者の鍵]有 [装備]ブラックスーツ [道具]無 [所持金]小金持ちではある [思考・状況] 基本行動方針:聖杯はいらない 1.聖杯戦争を楽しむ 2.???????? [備考] 院長室から出る事はありません 曰く、力の大部分を封印している状態らしいです セイバー(シャドームーン)とそのマスターであるウェザーの事を認識しました メフィストにマガタマ(真・女神転生Ⅲ)とドリー・カドモン(真・女神転生デビルサマナー)の制作を依頼しました(現在この二つの物品は消費済み) マガタマ、『シャヘル』は、アレックスに呑ませました 失った小指は、メフィストの手によって、一目でそれと解らない義指を当て嵌めています ドリーカドモンとアカシア記録装置の情報を触媒に、四体のサーヴァントを 新宿 に解き放ちました ?????????????? 【キャスター(メフィスト)@魔界都市ブルースシリーズ】 [状態]健康、実体化 [装備]白いケープ [道具]種々様々 [所持金]宝石や黄金を生み出せるので∞に等しい [思考・状況] 基本行動方針:患者の治療 1.求めて来た患者を治す 2.邪魔者には死を [備考] この世界でも、患者は治すと言う決意を表明しました。それについては、一切嘘偽りはありません ランサー(ファウスト)と、そのマスターの不律については認識しているようです ドリー・カドモンの作成を終え、現在ルイ・サイファーの存在情報を基にしたマガタマを制作しました そのついでに、ルイ・サイファーの小指も作りました。 番場真昼/真夜と、そのサーヴァントであるバーサーカー(シャドウラビリス)を入院させています 人を昏睡させ、夢を以て何かを成そうとするキャスター(タイタス1世(影))が存在する事を認識しました アーチャー(八意永琳)とそのマスターを臨時の専属医として雇いました ジョナサン・ジョースター&アーチャー(ジョニィ・ジョースター)、北上&モデルマン(アレックス)の存在を認識しました 浪蘭幻十の存在を確認しました 現在は北上の義腕の作成に取り掛かるようです マスターであるルイ・サイファーが解き放った四体のサーヴァントについて認識しました。 【セイバー(チトセ・朧・アマツ)@シルヴァリオ ヴェンデッタ】 [状態]健康、実体化 [装備]黒い軍服 [道具]蛇腹剣 [所持金]一応メフィストから不足がない程度の金額(1000万程度)を貰った [思考・状況] 基本行動方針:バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライドとの戦闘と勝利) 1.余り 新宿 には迷惑を掛けたくない 2.聖杯を手に入れるかどうかは、思考中 [備考] 現在 新宿 の何処かに移動中。場所は後続の書き手様にお任せします 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]健康、実体化 [装備] [道具] [所持金]貰ってない [思考・状況]真っ赤な真っ赤な血がみたぁい! 基本行動方針: 1.血を見たい、闘争を見たい、 新宿 を越えて世界を滅茶苦茶にしたい 2.ルイルイ(ルイ・サイファー)に興味 [備考] 現在 新宿 の何処かに移動中。場所は後続の書き手様にお任せします 【アーチャー(魔王パム)@魔法少女育成計画Limited】 [状態]健康、実体化 [装備]パナマ帽と黒いドレスコート [道具] [所持金]一応メフィストから不足がない程度の金額(1000万程度)を貰った [思考・状況] 基本行動方針:戦闘をしたい 1.私を楽しませる存在はいるのか 2.聖杯も捨てがたい [備考] 現在新宿駅周辺をウロウロしています 【ライダー(美姫)@魔界都市ブルース 夜叉姫伝】 [状態]健康、実体化、せつらのマスターに対する激しい怒り [装備]白い中国服 [道具] [所持金]不要 [思考・状況] 基本行動方針:せつらのマスター(アイギス)を殺す 1. アイギスを殺す、ふがいない様ならせつらも殺す [備考] 現在メフィスト病院にいます ※ドリー・カドモンを触媒に呼び寄せられたサーヴァントには、以下の特徴があります ①基本的に彼らには霊核と呼ばれる物が存在せず、言うなれば受肉しているに等しい存在です ②彼らにはカドモンに備わった自前の魔力回路が用意されており、魔量供給無しで魔力が自動回復しますが、その代償として霊体化が出来ません ③ルイ・サイファーはこの四体のサーヴァントに対する令呪を持たず、基本的に完全に独立した行動であり、特徴としてAランク相当の単独行動スキルのような物を持ちます ④魔力を使い過ぎると、ステータスの大幅な低下が発生し、それを越えて魔力を消費し過ぎると、単なるドリー・カドモンに戻ります。これを、魔力の遣い過ぎによる退場とします 時系列順 Back シャドームーン〈新宿〉に翔ける Next レイン・ポゥ・マストダイ 投下順 Back 開戦の朝 Next 太だ盛んなれば守り難し ←Back Character name Next→ 45 インタールード 白 ルイ・サイファー 46 It s your pain or my pain or somebody s pain(前編) キャスター(メフィスト) 白のセイバー 48 Cinderella Cage 赤のアサシン 43 推奨される悪意 黒のアーチャー 37 レイン・ポゥ・マストダイ 青のライダー 46 It s your pain or my pain or somebody s pain(前編)
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魔界都市〈新宿〉という街には死が溢れていた。 道を歩くだけで、跋扈する人殺しも辞さない路上強盗や、抵抗されれば殺人に容易に至る性犯罪者に遭遇する─────この程度ならまだ命が助かる目が有るだけマシな方。 生贄を求める邪教徒、実験用の素体を求める狂科学者、人肉嗜好症の食人鬼に殺人淫楽症の狂人、寄生妖物や悪霊に操られた即席殺人鬼、購入した兵器や人体強化薬や変身薬、妖虫妖物、パワード・スーツやサイボーグ手術等の威力を試す相手を求める暴力人間etc…が襲ってくる。 それらに遭遇せずとも、飛行妖物や双頭犬といった妖物や、地下に縦横無尽に張り巡らせた通路を用い、地上の人間を前触れ無く連れ去る地底人、脳に寄生して人間を自分の餌や、餌の収集役に変える寄生妖物等が命を脅かし。 それらの危険生物を避けても、天空からの謎の落下物に潰されて死んだり、空間の歪みに呑まれてそれっきり。という事も有る。 今現在、聖杯戦争が行われている〈新宿〉には、それらの死が一切『無かった』。聖杯戦争が始まるまでは。 聖杯戦争は〈亀裂〉以外は平凡な街を、死産に終わった“魔界都市”を、再び現世に産み落とさんとする行為なのかも知れなかった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ あれから正午になろうとしていた。 〈新宿〉中の動物から齎される情報で、その後の聖杯戦争の展開を把握していたパスカルは、〈亀裂〉を除いては平穏な街だった〈新宿〉が、彼が生前駆けた神魔の戦場に近づいていく事を、睦月の家に居ながらにして把握していた。 尤も所詮は小動物。パスカルがまともに理解出来たのは、瞬間移動を駆使し虚空から無数の剣を飛ばす青コートの剣士と、虹を操る少女、剣や槍を振るい魔術を行使する青年、爪を飛ばす騎手、高熱を纏う鋼の鬼。そして黒贄礼太郎の常軌を逸した身体能力と不死身ぶり。 これ以外は皆目見当が付かない。例えば青年を一蹴したサーヴァントなどは、見ていた筈の鳥も獣も唯々恍惚としているだけ、恐らくは強力な魅了を使うのだろうがそれ位しか判らない。 南元町で戦ったであろうサーヴァントに至っては豪雨により確認不能。 戦っていたところを動物達が見たサーヴァント達の大雑把な姿形は理解出来たが、ステータスも戦い方も不明だった。それでも何も無いよりかはマシだろうし、 青年のマスターを除いて、マスターの姿も把握した。これで不意を衝くも逃げるも自在。確認した者達に対しては充分なイニシアチブを確立できた。 居ながらにしてパスカルは充分な戦果を得たといって良い。 更にパスカルは知らなかったが、青年のマスターについての情報が無いのは幸いだった。同じ艦娘の北上が聖杯戦争に関係していて、しかもいきなり行方不明と睦月が知っては、睦月は更なる精神的な重みに苦しんだだろう。 その後の報告で、メフィスト病院に青年とそのマスターと思しき片腕を失った少女が現れたそうだから、結局のところ死んではいないが。 ─────ソロソロ動クカ。 パスカルはあの後公園での戦いに居合わせた動物達に、『蝿の王のマスターと同じ服を着た人間が多く集まる場所を探せ』と命じて街に放っていた。 パスカルは刹那が制服を着ていた事に気付いていた。あの闘争は蝿の王とそのマスターにとっては恐らくは遭遇戦。最初から戦う気だったのなら、身元がバレる様な格好でやってくるとは思えない。 パスカルは蝿の王のマスターの通う学校を突き止めその行動を監視、隙を見てマスターを殺害することで、確実に蝿の王を葬るつもりでいた。 生前に二度戦い、その強大さを身に刻んでいる蝿の王。七大罪の一つ“暴食”を司り冥府を統べる、聖四文字により天より堕とされた神々の王。 そんな代物が聖杯への途上に居るのだ。原因は不明だが、存在が著しく矮化している今のうちに葬るのが最善というもの。 マスターを葬るという手段を用いるのは、冥府の番犬たる己が死者を呼び戻せる宝具を持つ様に、冥府を統べる蝿の王もまた、蘇生に関する宝具を持つかも知れぬと思ったからだ。 直接に蝿の王マスターを探させず、同じ服を着た者を探させたのは、直接にマスターを捜索・監視させると、聡い蝿の王に気付かれるからだ。 パスカルはあの蝿の王を決して侮ってはいない。いくら弱小化していても、魔界の副王は伊達では無い。 宝具が実質使えないパスカルにとって、動物会話スキルは切り札と言えるもの。その存在は確実に秘さねばならぬ。漏出のリスクは極小であっても避けるべきだろう。 結果としてかなり時間がかかったが、パスカルは蝿の王のマスターが通う学校を発見。後は適当な場所でマスター暗殺の機会を伺うだけだった。 パスカルには蝿の王と雌雄を決するつもりは無い。パスカルの姿は兎に角目立つ、あの難敵を相手に闘えば人目に触れるのは確実。パスカルの姿は宝具に等しいレベルでその正体を叫んでいるに等しい。 悪魔に関わりの有るマスターが居れば己の姿から正体を割り出すのは容易だろう、まして英霊ともなれば。 聖杯に至るまでに戦う者達の実力を認めるが故に、パスカルは確実さと隠匿の為に、暗殺という手段を用いる理由が有るのだ。 そしてパスカルはこの理由の為に、人目が有る時間帯は戦うことを避けねばならなかった。 此処で問題になるのは睦月だった。初戦で大きく心を痛めてしまった睦月を伴うのか、それとも置いていくのか。 妥当な線で考えれば、拠点がバレていない以上、自分がここを離れれば睦月が捕捉される可能性は極めて低い。 第一パスカルの方針はマスターの暗殺、睦月の方針に反している。 ─────逃避シテイルナ。 パスカルは苦笑する。蝿の王を追い、睦月の事を気に掛ける。これを逃避と言わずして何と言う? 既に青コートの男と、蝿の王と、鋼の英雄との三つ巴の魔戦に於いて、鋼の英雄のマスター、パスカルが児童公園にて刹那の間目視した青年姿を動物達が視認し、報告を受けている。 あの多彩な戦技と熟練の戦歴とを併せ持つ蝿の王と、燃え盛る剣を以って渡りあったという青年。 パスカルが見たその姿とを併せて考えれば、ザ・ヒーロー、神魔の争闘する黙示録の世を戦い抜いたフツオに他ならない。 パスカルは聖杯に対して強い憤りを抱いた。 ─────何故俺ヲフツオノモトニオクラナカッタ。 楯突いたものの願いは叶え無いというのか。 俺がフツオと殺しあうところを見たいのか。 ─────フツオノ戦イヲ終ワラセズ、更ナル戦イヲ行ワセルノハ、逆ラッタモノニ安息ヲ与エヌトイウ意思カ。 聖杯に対して憤るのに比例して、パスカルのフツオへの思いは強まる。 時と場所を変えても闘争を強いられる主の力になりたかった。 だが、パスカルはフツオの捜索を命じなかったし、自分で探そうともしなかった。 命じたのは蝿の王のマスター捜索。 睦月による令呪の縛りがなければ、パスカルは即座に主を探しただろう。そうしていれば、パスカルはザ・ヒーローと共に戦い、結果として蝿の王と青コートの剣士を脱落させられたかも知れぬ。 だが、パスカルは束縛され、自由になるまでの間、行動では無く思考に時を費やした。 思考をするのは悪では無い。確実な行動の為には、確実な思考は欠かせない。 だが、この時は思考を後にして行動するべきだった。 ─────フツオハ無力ナ少女ヲ躊躇ワズニ殺セルヨウナ人間ダッタカ? パスカルの覚えているフツオは優しい青年だった。だが、出来ないかと問われればパスカルは否と返す。 人の世では無くなった時代と、人では無いものに為る事を強いた運命は、フツオから“人”を刈り取った。 フツオが聖杯を求めるのなら、女子供も斬り捨てるだろう。心の中で悼みながら。 ─────フツオハ聖杯ヲ欲シテイル。 パスカルがフツオに会うことを躊躇う理由。もし聖杯を求めるフツオが己も敵と見做してきたら? 己はフツオに牙を剥けるのか?睦月を護ってフツオを斃すのか? 思考は堂々巡りを続け、答えは出ない。 運命は彼らに安息を齎す意志は全くと言って良い程に無いらしかった。 パスカルは思考の海を揺蕩っていた。ある気配─────生前では存在することがごく当たり前だった程に慣れた気配を感じるまでは。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 山吹町の路地裏に其奴は居た。原型を留めない人体が散乱した中に立ち尽くす中学生位の少年は、傍目には惨劇の場に遭遇して心神喪失状態になっただけの様に見える。 だが気配を辿ってやってきたパスカルは感じていた。あの黙示録の世界を覆っていたものと同じ空気を。 ─────何奴ダ? 霊体化したまま様子を伺うパスカルの前で、ソレは起きた。 「ああ…ダメだ。全然たりねぇ……いや、喰えるものはそこいら中にある…………」 少年の身体が変わる。全身に緑色に光る筋が走り、少年は人ならざるものへと変わる。 パスカルはこの地が生前彼が主と共に駆けた神魔の戦場と錯覚した。 今やパスカル前に居るのは、人間では無い。パスカルに劣らぬ体躯を持つ、純白の身体の巨虎はまさしく……。 ─────ビャッコ!? 地の四方のうち西方を守護する獣。それが何故ここに?あの少年は間違い無くNPCだった。それが悪魔に変わるとすれば。サーヴァントの仕業でしかあり得ない。 そしてパスカルには、こんな芸当が出来そうな手合いに心当たりがあった。 ─────貴様カ!蝿の王!? だとすればあの脆弱はこの事に力を割いていたが故か? 兎も角、周囲のNPCを襲う気でいるこの獣は放置してはおけなかった。 「オオオオオオオオオ!!!」 パスカルは霊体化を解き、猛速でビャッコの後ろから体当たりを見舞い、その巨体を宙に舞わせ、空中で動きの取れなくなった巨虎に、収束させた膨大な魔力を灼熱の火線として撃ち放つ。 「GYAAAAGAAAAA!!!」 10mの距離を瞬きよりも短い時間で飛んだ聖獣は、迫る焼滅の火線を、空中で身を捻って確認して避けようとするそぶりも見せずに咆哮。眼前に展開した水の壁が凄まじい蒸気を噴き上げながら火線を相殺する。 間髪入れず、立ち込める高熱の蒸気を貫いて、巨虎がパスカルに迫る速度で猛襲、これをパスカルは敢えて避けず正面から受け止めた。 大気が震え、大地が揺れる。暴走する大型車両衝突にも等しいビャッコの体当たりを受けたパスカルはの足元の路面が砕けるが、パスカルは聳え立つ巌の如く不動。 続けて振るわれた装甲車すら切り裂く爪撃を自身も右前脚を振るって迎撃。ビャッコの爪は愚か、前脚ごと砕いてのけた。 「GYAIAAAAAAA!!!!」 爆発音を思わせる咆哮と共に一気に5mも飛びすさった巨虎は、大きく口を開ける。その口腔に溜まる白い輝き、周囲に残っていた高温の水蒸気が一気に冷やされ結露して、路面や周囲の塀を濡らす。 上下に並んだ、鋼すら噛み裂けそうな牙の間から放たれるのは、凍滅の閃光。白く輝くアイスブレスは、その余波だけで周囲を濡らす水を氷結させて、パスカルへと音の速度で奔る。 白い輝光に挑むは、赫の閃光。音すらはるかに超える速度で飛ぶ鋼すら瞬時に気化する高熱の火線が白光を貫き霧散させ、再度出現した水の壁も、間断なく押し寄せる赫により遂に貫かれ、壁の後ろに居たビャッコを貫いた。 悲鳴すら上げる事無く、ビャッコは跡形残らず蒸発した。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 睦月の待つ家への帰路でパスカルは思考する。 ─────アレハマガイモノナドデハ無イ。 あの速度、あの筋力、己のファイアブレスを一度は防いだ水の壁。全てがパスカルの知るビャッコのそれに近い。 全く同じ─────という訳では無いが、そうパスカルが思う程に、アレは“ビャッコそのもの”だった。 ─────NPCヲ悪魔二変エテ、何ヲ目論ム。 決まっている。圧倒的な数の暴力による蹂躙だ。 ─────サセヌゾ、蝿ノ王。 パスカルは決意を固める。睦月が聖杯に掛ける願いの為に。未だ邂逅せぬフツオの為に。生前と死後の主の為に。必ずあのランサー、蝿の王を葬り去ると。 魔界都市〈新宿〉という街には死が溢れていた。 獣に変身した男が、妖物に憑依され全身が奇怪な変貌を遂げた女が、遠い先祖から受け継がれてきた妖魔の遺伝子が〈新宿〉の妖気により覚醒した子供が、手術で妖獣と細胞レベルで融合し、人を超えた異形の肉体を得た老人が人混みに混ざり。 尽きぬ怨念を抱いて死んだ者達の怨霊や、魔導師により召喚された奇怪な“神”や、空間の歪みによりやってきた異界の様物が廃墟に巣食い。 新型の殺人ウィルスを植え付けられ、一山幾らで買える〈区外〉には存在しない狂猛にして凶悪な毒を持つ虫にやられ、ビルを容易く貫く熱線に灰も残さず消し飛ばされ、拳銃弾サイズの小型核弾頭の残留放射能に血反吐を吐いて倒れ。 これらの死は、嘗ての〈新宿〉、〈亀裂〉を除けば、人界に幾らでも有る平凡な街、死産に終わった魔界都市には存在しなかった。 しかし、今では、〈新宿〉にこれらの死が溢れつつある。 この聖杯戦争は、関わった者達の意図とは関係無く、新たな“魔界都市”を人の世に産み出そうとしていた。 街路を征くケルベロスもまた、実体化していれば“魔界都市”を彩るに相応しい存在だった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ パスカルが出て行った家の中、睦月は驚愕に震えていた。 突如光だした契約者の鍵、映し出されていたのは、今朝、凶刃を振りかざして自分の命を奪おうとした男だった。 しかし睦月の意識を捉えたものは、ザ・ヒーローでは無かった。 「放射線……?」 初めて聞くが、どこか嫌な響きの言葉だった。睦月や如月が必死に護り抜いたものを、穢し傷付けられたかの様な、そんな響きの言葉だった。 その感覚が何なのか、睦月一人では答えは見出せそうに無かった。 【早稲田、神楽坂方面(山吹町・睦月の家)/1日目 午前12:30分】 【睦月@艦隊これくしょん(アニメ版)】 [状態]健康、魔力消費(中)、精神疲労 [令呪]残り二画 [契約者の鍵]有 [装備]鎮守府時代の制服 [道具] [所持金]学生相応のそれ [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を手に入れる……? 0.…… 1.如月を復活させたい。でもその為に人を殺すのは…… 2.出来るのならば、パスカルにはサーヴァントだけを倒してほしい 3.この男の人…!? 4.放射線…? [備考] 桜咲刹那がランサー(高城絶斗)のマスターであると認識しました ザ・ヒーローがバーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド)のマスターであると認識しました。 パスカルの動物会話スキルを利用し、 新宿 中に動物のネットワークを形成してします。誰が参加者なのかの理解と把握は、後続の書き手様にお任せ致します 遠坂凛の主従とセリュー・ユビキタスの主従が聖杯戦争の参加者だと理解しました ザ・ヒーロー及びクリストファー・ヴァルゼライドに対する討伐令を知りました。 【早稲田、神楽坂方面(山吹町・睦月の家の近所)/1日目 午前12:30分】 【ビースト(パスカル)@真・女神転生】 [状態]霊体化 [装備]獣毛、爪、牙 [道具] [所持金] [思考・状況] 基本行動方針:聖杯の獲得 1.ザ・ヒーローの蘇生 2.蝿の王が戦力を揃える前に殺す 3.フツオと遭遇したらどうするか…… [備考] ランサー(高城絶斗)、バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド)と交戦。桜咲刹那をマスターと認識しました ランサーが高い確率で、ベルゼブブに縁があるサーヴァントだと見抜きました 戦闘中に行ったバインドボイスは、結構広範囲に広がってたようです。 ザ・ヒーローのことはちらっとしか見てません。なので自分の知る主と同一人物なのか確信に至っていませんでしたが、その後の情報でフツオとほぼ確信しました。 ある聖杯戦争の参加者の女(ジェナ・エンジェル)の手によるチューナー(ビャッコ)と交戦、 新宿 にNPCを悪魔に変える存在が居ると認識しました NPCを悪魔化させているのがランサー(高城絶斗)と推測し、彼の弱体化をNPCを悪魔化させている為と推測しました。 桜咲刹那の通う学校を把握、現在は桜咲刹那の拠点を探っています。 桜咲刹那を殺害し、ランサー(高城絶斗)を確実に葬り去ると決意しました。 雪村あかり&アーチャー(バージル)・ジョセフ・ジョースター&アーチャージョニィ)・北上&モデルマン(アレックス)・ロベルタ&バーサーカー(高槻涼)・英純恋子&アサシン(レイン・ポゥ) の大まかな姿と各サーヴァントの大雑把な戦い方を『動物会話』スキルにより把握しました 北上が右腕を失い、メフィスト病院に行ったことは把握していますが、北上が艦娘とは知りません 『動物会話』スキルにより黒贄礼太郎の不死身さと身体能力を知りました 人目に付く時間帯は戦いを避ける方針です 時系列順 Back さくらのうた Next 推奨される悪意 投下順 Back It`s your dream or my dream or somebody`s dream Next Cinderella Cage ←Back Character name Next→ 13 DoomsDay 睦月 ビースト(ケルベロス)
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ver0.303 概要 発生条件 攻略条件 イベント悪魔になる薬 クリア報酬悪魔になる薬百合の花ルート 直哉ルート 攻略情報 ボス百合の花ルート・直哉ルート分岐 ベル・デル討伐百合の花ルート 直哉ルート ベル・デル討伐百合の花ルート 直哉ルート MAP新宿北 新宿南 西入り口 東入り口 百合の花共同募金事務所 YAKUZAビル1F YAKUZAビル2F 新宿大聖堂連絡路 新宿メシア教会 天国 ガイア教会 攻略情報 ボス攻略 概要 様々なルートへの入口となるダンジョン。 発生条件 攻略条件 悪魔になる薬D3 新宿衛生病院クリア ベル・デル討伐EV6 不死の者クリア(未作成) イベント 悪魔になる薬 百合の花ルート・直哉ルート分岐イベント戦 ベル・デル 中ボス戦 タケミナカタ(オザワ) ボス戦A シャドウりせ ボス戦B アークエンジェル他5体 クリア報酬 悪魔になる薬 百合の花ルート ¥50000+10000 奴隷 りせ D16 渋谷センター街出現 REQ6 不死の者(未作成)出現 直哉ルート 50000 奴隷 りせ(未作成) 奴隷 ハル(未作成) インストールソフトバ・ベル(未作成) 攻略情報 ボス 百合の花ルート・直哉ルート分岐 イベント戦 ベル・デル 中ボス戦 タケミナカタ(オザワ) ボス戦A シャドウりせ ボス戦B アークエンジェル他5体 ベル・デル討伐 百合の花ルート ボス戦 ベル・デル 直哉ルート ユズの救助ボス戦 ベル・デル ベル・デル討伐 百合の花ルート ¥50000 REQ7 灼熱の花(未作成)出現 直哉ルート ¥50000 EV3 大魔宮への誘い(未作成)出現 インストールソフトバ・ベル(未作成)強化 奴隷 ユズ(未作成) 奴隷 アツロウ MAP 新宿北 0 1 2 3 4 5 6 7 8 910111213141516171819 0■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 1■□□□□□□□□□□□□□□□□□e1■ 2■□■扉■□■扉■□■扉■□■■■■□■ 3■□■□■□■□■□■□■□■A□■□■ 4■□■■■□■扉■□■■■□■□□扉□■ 5■□□m1□□□□□□□□□□■■■■□■ 6■□■扉■□■扉■□■扉■e2□□□□□■ 7■□■□■□■□■□■□■□■扉■■□■ 8■□■■■□■■■□■■■□■□□■□■ 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y2のあと、直人と会話不死の者(百合の花)を受けている場合、直人と会話後ベル・デルと戦闘 A 新宿北へ 出現悪魔Lv15 エンジェル Lv13 コッパテング Lv15 イヌガミ Lv15 ジャックフロスト YAKUZAビル1F 0 1 2 3 4 5 6 7 8 910 0■■■■■■■■■■■ 1■□□□□□□■■o2■ 2■□■■■■□■■□■ 3■□□扉o3■扉■■□■ 4■□■■■■□□□□■ 5■□■■■■■■■□■ 6■□□□□□■■■□■ 7■■■■■□■D扉□■ 8■o4□■■□■■■□■ 9■□□扉□□■E扉□■ 10■■■■■■■■■■■ IE崩れ対策(画像) イベントo2,o3,o4 会話してないとオザワに会えない 出現悪魔Lv16 ドリアード Lv16 ヨモツシコメ Lv16 ネコマタ Lv16 ヒッポウ Lv15 ガギソン Lv15 ジャックフロスト YAKUZAビル2F 0 1 2 3 4 5 6 7 8 910 0■■■■■■■■■■■ 1■□□□□□□□□□■ 2■□■■■■■■■□■ 3■□■□□□□□扉□■ 4■□■扉■■□■■扉■ 5■□■o5■■□■■□■ 6■□■■■■□■■■■ 7■□■o6□□□□□□■ 8■□■■■■■■■扉■ 9■□□□□□□E■o7■ 10■■■■■■■■■■■ IE崩れ対策(画像) イベントo5 会話してないとオザワに会えないまた、選択肢次第で戦闘 o6 会話してないとオザワに会えない o7 オザワと戦闘 出現悪魔Lv16 ドリアード Lv16 ヨモツシコメ Lv16 ネコマタ Lv16 ヒッポウ Lv15 ガギソン Lv15 ジャックフロスト 新宿大聖堂連絡路 0 1 2 3 4 5 6 7 0■■■■■■■■ 1■■■■□扉G■ 2■出☆□□■■■ 3■■■■■■■■ IE崩れ対策(画像) イベント☆ 上野をクリアーしている場合、☆のポイントで魔人が出る可能性がある確率は10%で一度判定すると、外にでるまで判定が復活しない 出現悪魔なし 新宿メシア教会 0 1 2 3 4 5 6 7 8 91011 0■■■■■■■■■■■■ 1■G■■■■□□b1□□■ 2■□扉y4■■□□□□□■ 3■□■■■■■□□□■■ 4■□扉□■□■■扉■■■ 5■□■■■□■□□□■■ 6■□□□□□□□□□■■ 7■F■■■□■■■■■■ 8■■■■■■■■■■■■ IE崩れ対策(画像) イベントy4 y3のあと直人と会話 b1 ボスと戦闘(薬イベント)アマネと会話後、ベル・デルと戦闘(不死の者(百合の花)) 出現悪魔Lv17 エンジェル Lv19 グルル Lv20 アークエンジェル Lv18 狂信者 Lv22 テンプルナイト 天国 0 1 2 3 4 0■■■■■ 1■■□□■ 2■□□□■ 3■□□■■ 4■■■■■ IE崩れ対策(画像) ガイア教会 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0■■■■■■■■■■ 1■□□□□□□□■■ 2■□□■□■□□■■ 3■□■□□□■□■■ 4■□□□□□□□■■ 5■□■n2□m1■□■■ 6■□□■□■m2□■■ 7■□□□□□□H■■ 8■■■■■■■■■■ イベントn2 ハルのライブ後、直哉と会話。依頼を受ける不死の者依頼時は直哉と会話後、ベル・デルと戦闘ベル・デル撃破後に会話で報酬をもらえる ワープH 新宿南へ 出現悪魔Lv15 インプ Lv15 ジャックフロスト Lv14 ゾンビナース 攻略情報 *悪魔になる薬進行手順共通ルートe1 新宿北 ケイスケに会う(※0.277時点では会う必要もなく、分岐にも影響しない) e3 新宿北 カイドーに会う(※0.277時点では会う必要もなく、分岐にも影響しない) o1 新宿北 メッセンジャーと話す(はなさないとオザワに会えない) y1 新宿北 アマネと会話 n1 新宿南 ハルと会話 y1 or n1 二人と話した状態で、もう一度どちらかに話しかけるとイベント進行ベル・デルが現れ戦闘となる5ターン経過で自動的に勝利 百合の花ルート(アマネの説法を聞いた場合)y2 新宿南 直斗と話す y3 百合の花共同募金事務所 直斗と話す y4 新宿メシア教会 夜でない時に、教会に行き、直斗と話す o2-6 ヤクザビル 全てのメッセンジャーと話す o7 ヤクザビル オザワと会話し、タケミナカタと戦う m5 新宿北 りせと会話する(会話しない場合は獲得できるりせが非戦闘員となるので任意で) y5 新宿南 直斗と話す(ここで会話するとm5が消滅する) b1 新宿メシア教会 夜に訪れて、ボスと戦う 直哉ルートn2 ガイア教会 直哉と話す o2-6 ヤクザビル 全てのメッセンジャーと話す o7 ヤクザビル オザワと会話し、タケミナカタと戦う m5 新宿北 りせと会話する(会話しない場合は獲得できるりせが非戦闘員となるので任意で) b1 新宿メシア教会 夜に訪れて、ボスと戦う(※初めから夜に来て入れば一日でここまでこれる) ベル・デル討伐進行百合の花ルートy3 百合の花共同募金事務所 直斗と会話。ベル・デルと戦い。逃げる b1 ベル・デルと戦闘し、倒す 直哉ルートn9 新宿南 ユズを助けるかどうか選ぶ助ける場合はユズ・アツロウが獲得可能だが、ベル・デルとの戦闘回数が増える助けない場合はアツロウは加入不能だが、ユズは調教ステータスなどが変化するが獲得可能 n2 ガイア教会 直哉と会話。ベル・デルと戦い。逃げる e2 ベル・デルと戦闘し、倒す n9 ユズを見捨ててる場合はユズを獲得できる n2 直哉と会話して報酬をもらいクリアユズを助けてる場合はユズ・アツロウを得るか選べる ボス攻略 鬼神 タケミナカタ LV 20 Neutral/ Chaos ANALYZE COMPLETE! HP[2030/2030] 忠誠度 100 MAG 9999999 MP[600/ 600] EXP: 24/ 15400 CP 2 通常攻撃:打撃 1- 1回 射程1 単体 力 22( 22) *********** 攻撃 104 知恵 13( 13) ******* 命中 54 魔力 16( 16) ******** 防御 127 耐力 19( 19) ********** 回避 54 速さ 12+10( 12+10) ****** 魔法威力 81 運 5( 5) *** 魔法効果 64 戦闘相性 剣撃 100% 飛具 100% 打撃 100% 戦技 100% 火炎 125% 氷結 100% 電撃 反射 衝撃 100% 神経 125% 精神 100% 破魔 0% 呪殺 100% 地変 100% 水撃 100% 疾風 50% 重力 100% 核熱 100% 万能 100% 所持スキル [1]ジオンガ [2]マハ・ジオ [3]気合 [4]突撃 [6]暴れまくり 能力値がかなり強化されている関係でレベルのわりにはかなり強い HPが低下することで、マハ・ジオンガと気合をしようするようになり、ジオンガ、マハ・ジオを使わなくなる 弱点は見ての通り、炎であるので攻撃は炎を中心に考えよう 防御面に関してはとりあえず主人はスターグローブは用意しておきたい 戦技・打撃は装備での耐性はとりにくいが、女なら鬼喰い兜が使える また、仲魔だとパリカー・はなこ・ナイトメアといった打撃・戦技無効のキャラに観音札を使うだけで完封になるので 基本的にダメージがかさむのは前衛なのでこのへんのキャラをまぜることにより飛躍的に楽になる この3者は用意しやすく、多くのボスで、有能な壁役となるので育てるのも悪くなく、ペルソナカードとしてストックしておくのも有効である 悪魔憑き シャドウりせ LV 20 Light/ Law ANALYZE COMPLETE! HP[1430/1430] 忠誠度 100 MAG 9999999 MP[2516/2516] EXP: 14/ 15400 CP 0 通常攻撃:打撃 1- 1回 射程1 単体 力 5( 5) *** 攻撃 55 知恵 10( 10) ***** 命中 49 魔力 11( 11) ****** 防御 66 耐力 6( 6) *** 回避 49 速さ 7+10( 7+10) **** 魔法威力 63 運 4( 4) ** 魔法効果 54 戦闘相性 剣撃 100% 飛具 110% 打撃 100% 戦技 100% 火炎 70% 氷結 120% 電撃 100% 衝撃 100% 神経 80% 精神 80% 破魔 0% 呪殺 0% 地変 100% 水撃 120% 疾風 100% 重力 100% 核熱 70% 万能 100% 所持スキル [1]アギ [2]アギラオ [3]マハ・ラギ [4]マハ・ラギオン [5]マインドスライス [6]セクシーダンス [7]ファイナルヌード [8]マハアナライズ 楽をするなら、儀式を妨害して天使をだしたほうがいいかもしれない 天使は全員呪殺弱点なのでボスをのぞいて、開幕ムドでほとんど崩れてしまうからである この場合、ムドがなくても主人公が蠱毒皿を投げるだけでも良い シャドウりせをえらぶ場合は氷結・水撃COOPの準備をしよう 幸い、HP1430はかなりひくく、また能力値も高くないので、スキルは強いものの あっさり決着をつけられるだろう なお、シャドウリセはそれぞれHP50%を割った時点でセクシーダンス、30%を割った時点でファイナルヌードをやり 50%時点では5%、30%時点では10%の確率でセクシーダンスを行う 両方とも成功率が高く危険なので、明らかに割ったと思ったらGUARDで備えるのもいいだろう また、50%以上のときはマハラギオンがとんでこないなどの特徴もあるが 50%をわると一回目の行動がマハアナライズ固定になって、実質一回攻撃になるので はやめに割らせてしまったほうが楽かもしれない まぁどちらにしろ、COOP要員をしっかりと揃え、炎の壁などの対策もとれば、怖いのはファイナルヌードだけだろう ベル神 ベル・デル LV 25 Dark/ Chaos ANALYZE COMPLETE! HP[2000/2000] 忠誠度 100 MAG 9999999 MP[1000/1000] EXP: 20/ 29250 CP 2 通常攻撃:打撃 1- 1回 射程2 単体 力 15( 15) ******** 攻撃 97 知恵 12( 12) ****** 命中 61 魔力 12( 12) ****** 防御 137 耐力 20( 20) ********** 回避 61 速さ 10+10( 10+10) ***** 魔法威力 73 運 5( 5) *** 魔法効果 66 戦闘相性 剣撃 0% 飛具 0% 打撃 0% 戦技 0% 火炎 0% 氷結 0% 電撃 0% 衝撃 0% 神経 0% 精神 0% 破魔 0% 呪殺 0% 地変 0% 水撃 0% 疾風 0% 重力 0% 核熱 0% 万能 0% 所持スキル [1]マモリクズシ [2]メテオフィスト [3]地獄の業火 [4]吸血瘴気 [5]雄叫び イベントにて手に入るヤドリギを使う事でのみダメージを与えられる。 それ以外は全てブロックされるので注意。 初回戦闘の時は5ターン耐えれば逃げられるようになる。 その後イベントが進み雑魚を引き連れて出現した時は雑魚を全滅させることで逃走可能。 ちなみに100%逃走成功ではないので普通にこける事もある。勿論敵からの攻撃も食らう。 また、二度目の戦闘後は倒すまでエンカウントがベル・デルに固定される。 レベルが20後半でもMPが切れたりするので、封魔の鈴推奨。 ユリの花ルート行こうとしてもヤザワの居る部屋に入れないで毎度詰まってしまう ビルにいる人達全員に話しかける以外にもなにか条件あるのか? -- (名無しさん) 2013-08-21 23 49 39 o1のメッセンジャーと話してないか y4のイベントこなしてないか オザワと会うまでの進行手順で抜けてるのないか調べてみたら? -- (黒天) 2013-08-24 12 13 14 o1のメッセンジャーには気が付かなかったありがとう 今度からもっとちゃんと調べてからコメントします -- (名無しさん) 2013-08-28 14 49 15 o1がm5になってて進行不能になってるだが -- (名無しさん) 2013-10-15 22 11 43 名前 コメント すべてのコメントを見る
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店名 エクステンション(エクステ)VARY 新宿アルタ店 電話番号 03-5363-8385 店舗住所 東京都新宿区新宿3-24-3新宿アルタ6F 店舗までのアクセス JR新宿駅東口徒歩1分 JR新宿駅東口よりルミネエストからB13出口、スタジオアルタの6Fに当サロンはございます。 営業時間のご案内 11:00~20:30 定休日 不定休(アルタ定休日に準ずる) 取り扱いクレジットカード 使用不可 カット価格 スタイリスト数 2人 席数 3席 備考 4席以下の小型サロン/一人のスタイリストが仕上げまで担当/年中無休/最寄り駅から徒歩3分以内にある/ショッピングモール内にある/カード支払いOK/女性スタッフが多い ▼新宿のその他の美容院 ABC wisp HAIR 新宿店 Penelope AUBE hair space Casa Madre 新宿西口店 artist 新宿店 Studio Greed arts LANTIS PATORA 新宿 Hair/ Make NANO 新宿店 Extentions TOKYO 新宿店 Trans Hair Glamorize Euphoria【ユーフォリア】新宿店 ヘアーリゾート 粋 Shup CLOVER Euphoria【ユーフォリア】新宿通り Somali ネオアロ-ム DROP mer hair tink u LATO Hair 新宿店 Casa 新宿南口店 ルッソカペリ holic×holic Neolive deco 新宿東口店 Hair studio NOW amuse【アミューズ】 ネオアローム 新宿駅前店 Repeat of Hair 新宿店 NANA EXTENSION 新宿店 Neolive eco 新宿東南口店 asleep kamikaze 新宿店 artist 新宿通り店 Beauty Salon TANAKA 新宿小田急ハルク店 Stilla smooth ラフィエスタ 新宿西口駅前店 ステファン・マレー AXY HAIR&MAKE(アクシー) アイランド・uno・クレール アイランド・uno キャトルボーテ 新宿マルイ本館店 Rio-B SHINJUKU MEM BE-WAVE 新宿 Cellier 新宿店 D-salon新宿 MAC hair新宿店 Four Seasons JEWEL HAIR
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海峡 場所 歌舞伎町とJR新宿駅の近くにあり 料理 量は多い から揚げ良し。誰かに5個食べて欲しい 酒 焼酎のボトルの種類少ないかも メロンサワーはシロップみたいでまずい 値段は高めかも その他 いろいろと支店あり(馬場とか) 情報提供者・・・☆ 甚八 場所 西武新宿線新宿駅近くetc 料理 味も種類もまずまず。 宴会コースだと枝豆・サラダ・刺身・唐揚げ・デザート等が出てくる。 酒 サークルで使う居酒屋の中では美味い部類に入る 飲み放題でウイスキー・日本酒も頼める その他 トイレが狭く、ゴールできる箇所が1箇所しかない 座敷の席数が多いのが良 店員さんに顔覚えられてる サークル御用達の居酒屋 情報提供者・・・プ 呑者家 場所 伊勢丹の奥の通りを入ったあたり2階 料理 コースでもおいしい 気になるメニューがいっぱい 酒 日本酒、焼酎いろいろあり 雰囲気 よくある居酒屋 予算 3000~4000円 その他 特にない 情報提供者・・・☆