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「あたしがここに立ってることの意味は分かるよね?里沙」 ひと気のない夜の路地に立つ一人の女。 薄暗い街灯に照らされたその顔には冷酷な笑みが浮かんでいる。 里沙にはもちろん分かっていた。 女の言う「意味」だけではなく、このような事態が遠からず訪れることも。 だからこそ、敢えて一人で行動していたのだ。 「“粛清人”のあなたが目の前に立ってて、その意味が分からない方がどうかしてる」 だから里沙は静かにそう返した。 目の前に立つ女のコードネームを組織内で知らないものはいない。 裏切った者を容赦なく抹殺する役割を担ったその名は、ある種景仰され、それ以上に畏怖されていた。 「あれ?もっと怯えるかと思ったのにな。死ぬ覚悟を決めてたの?…それとも」 瞬間、耳障りな金属音と共に、里沙の傍らの交通標識が真ん中からへし折れる。 「まさかあたしと闘って勝とうなんてバカなこと考えてる?」 その端整な顔に浮かぶ残忍な笑みと、今しがた改めて見せつけられた圧倒的なサイコキネシスに、里沙は胃の底が冷え冷えとするのを禁じえなかった。 やはり無謀だったかもしれない。 だけど… 「勝てるかどうかは分からない。でも私は闘わなくちゃならない。あなたと」 …そしてひいては自分の“過去”と。 女の目が細められる。 「本気なの?…冗談で言っているんじゃなさそうね。でも結局はくだらなすぎる冗談。 あんたの薄汚いマインドコントロールが通じるとでも思ってんの?このあたしに」 ギギギギギギ・・・ 先ほど折れた標識が捻じ曲げられてゆくのが里沙の視界の端に映る。 あの力が里沙に向けられれば、ひとたまりもなく手足を引きちぎられバラバラにされるだろう。 だが、不思議ともう恐怖はなかった。 ―私は“過去”と対決し、向かうべき“未来”を切り開く。 自分を抱きしめてくれた愛の力強さとぬくもり。 自分のために命を賭してくれた愛佳の勇気と信頼。 「何処にも行ったりしないですよね?」そう言った小春の不安そうなそれでいて真摯な声。 絵里、さゆみ、れいな、ジュンジュン、リンリン…かけがえのない仲間たちとの共鳴が、里沙にこれ以上ない心強さを与えていた。 自分の居場所はもうあそこしかない。 「やってみなければ…分からない!」 里沙はチカラを解き放った。 自らの手で未来を掴み取るために。 忌むべきものでしかなかったその能力を、誇りとして未来に持ってゆくために。 * * * ―本当にバカな子ね。 冷たい笑みを浮かべたまま、女は里沙の攻撃を遮断するべく「精神のロック」の体勢に入った。 里沙の意識が入り込まぬよう、意識の全ての入り口に鍵をかけてゆく。 精神系能力者と対峙する際に最も有効で確実な手段。 そしてそれは女が得意とする技術であり、組織の中でも一人を除いては誰にも負けない自信があった。 隙間なくシャットアウトされた意識の内側で、女は里沙の意識の触手が入ってこられずに右往左往するのを感じていた。 目の前の里沙の表情にも明らかな動揺が見られる。 その顔は、早くも後悔と恐怖に彩られ始めていた。 「威勢のいいこと言ってたのにもうおしまいなの?残念」 大げさにため息をついて見せた女の顔に嗜虐的な笑みが浮かぶ。 もっと怯えなさい。もっと絶望しなさい。そして助けを請いなさい。 それがあたしの快感に変わるのだから。 「どうする里沙。土下座でもしてみる?犬の格好してワンワン言いながらついて来る? そこまでするなら助けてあげてもいいわよ?あたしは優しいから」 もはや仔犬のように震えるだけの里沙に向かい、女は小馬鹿にするように言った。 もちろん、それをしたところで赦す気などない。 ただ、無様に命乞いをする姿が見たいだけ。 期待を持たせておいて、やっぱり殺されると知ったときの獲物の恐怖の表情が見たいだけ。 里沙はどんな顔をしながら死んでゆくかしら。 だが、里沙は女の期待通りの答えを返さなかった。 「あなたには誰一人ひれ伏さない。誰一人ついてはこない」 「………なに?」 真っ直ぐに女を見据え、里沙は続ける。 「私には未来予知の力はないけれど、それでもあなたの未来は見える。あなたは独り。これからもずっと」 「…テメェェェッッ!!」 女の怒声と同時に空間が歪み、鈍い音とともに里沙の体が跳ね上がる。 地面に叩きつけられたその体は、そこら中の関節がありえない方向に折れ曲がっていた。 ―あたしとしたことがロクに楽しみもしないうちに… 女は我に返り舌打ちをした。 つい冷静さを失い、せっかくの獲物を楽に殺してしまった。 いたぶって苦しめてから殺すのが気持ちいいのに。 「独り。あなたはずっと独り。独り。独り。独り。独り…」 「な……っ!?」 そのとき、愉しみの時間を早々に終わらせてしまったことを悔やんでいた女の耳に、里沙の声が再び届いた。 地面に横たわった里沙の、そのねじれた首の上にある顔が笑っている。 「あなたは独り。独り。独り。独り。独り。独り。独り。独り。独り…」 薄笑みを浮かべた口元から繰り返される言葉。 「うあああぁぁっっ!死ね!死ねェッッッ!!」 不快な音とともに、里沙の額が割れて鮮血が飛び散る。 「痛いよぉ…痛いよぉぉぉお姉ちゃぁぁぁんん…」 ヒュッ… 女は自分が息を飲む音を聞いた。 いつの間にか、倒れていた里沙の姿が自分の妹の姿に変わっている。 幼い頃の。あのときの姿の。 「いやぁぁぁぁぁっっ!」 「どうしたんだ!何があったんだ!」 両親の声が聞こえる。 血まみれでグッタリする妹を抱きかかえて泣き叫ぶ母の声。 その姿と、立ち尽くすあたしの姿を呆然と行き来する父の視線。 そう。やったのはあたし。 でもそんなつもりじゃなかった。 ちょっと腹を立てただけ。それだけ。 あたしは悪くない。あたしは… サイレン。ざわめき。明滅する赤いランプ。 妹は幸い命を取り留めた。 犯人は通りすがりの変質者らしいと皆が噂していた。 警察もそう言っていた。 でもあたしの家族はそれが間違いであることを知っていた。 それまでのように知らないふりをすることはもうできなかった。 そしてあたしは独りになった。 独りきりに。 「痛いよぉぉぉぉぉぉぉお姉ちゃんがやったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」 また声が聞こえる。 血まみれの妹があたしを指差している。 父が、母が、憎しみと怖れの入り雑じった目であたしを見ている。 「ちがうの!あたしは悪くないの!」 思わず両親に向かって叫ぶ。 「うわぁっ!」 「きゃあっ!」 両親の額が裂け、血が流れ出す。 「あたしじゃない!あたしのせいじゃない!あたしが悪いんじゃない!パパ!ママ!」 言葉を発するたび、両親の体が切り裂かれていく。 「やめろ!お前なんて俺たちの子じゃない!」 「悪魔!あなたは悪魔よ!来ないで!こっちに来ないで!」 「いやあああああああああああぁぁぁぁぁっっっ!!」 あたしの絶叫とともに視界が真っ赤になる。。。。。。。。 * * * 女の「ロック」は確かに堅固だった。 以前の里沙ならば付け入る隙さえ見つけられずに敗北していただろう。 だが、里沙は見つけた。 僅かに開いた意識の入り口を。 自己の能力への過剰な自信から来る驕り。 それが意識の防御に隙間を作っていた。 そこから潜り込んだ里沙の意識が感じたのは、深く、深く、どこまでも深い孤独。 後はそれをほんの少し押してやるだけだった。 そこから引き出された残酷な過去。 その後勝手に深層から溢れ出した悪夢。 きっとそのままにしておけば、それらは女の精神を破壊しただろう。 だが、里沙はそうなる前にマインドコントロールを解いた。 女の精神に取り返しがつかないダメージを与えてしまう前に。 どうしてかは自分でも分からない。 いや…本当は… 似ていた。 自分が歩んできた道とあまりにも。 自分のこの忌まわしい力を肯定し、受け入れてくれたのはあの組織だけだった。 今の仲間たちに出逢わなければ、きっと自分もこの人と同じだったに違いない。 だから・・・ そこまで考えたとき、里沙の体を衝撃が突き抜けた。 この戦いにおいてのみ言えば、女の弱点が驕った心であったように、里沙の弱点は優しさだったと言えるかもしれない。 マインドコントロールから解放された女は、まだ半分悪夢の余韻に浸りながらも里沙にチカラを放った。 弱まりながらも、昏倒させるのには十分な威力の。 「殺す。殺してやる・・・」 血走った目で倒れた里沙を睨みながら、女はさらにチカラを放とうとした。 そのとき… 「待ちなさい」 「!?」 一瞬にして世界がモノクロームに染められる。 「…あんたか。何よ。何しに来たのよ」 闇色の細身のスーツ、同色のパンプス、落ち着いた物腰、静かな威圧感。 一切の音の停止した空間をゆっくり歩いてくるのは、女が唯一敵わないと思っている相手だった。 「その子を連れにきたのよ」 「何でよ。裏切者でしょ?殺すんじゃないの?」 わずかに目をそらしながら、勢いのない声で女は訊いた。 今日はなんて屈辱的な日だろうと唇を噛みながら。 「今はまだ…ね。まだ利用価値があるから」 「つまんない。あーほんっとつまんない!」 「さあ、帰るわよ。そんなに時間もないから」 闇色のスーツの女は、青白い顔で目を閉じる里沙を肩に担ぎ上げるとゆっくりと歩き出した。 「里沙…バカねほんと。“組織が許してもあたしが許さない” そう言ったのに」 聞こえないくらいの声でどこか淋しげにそう呟きながら。
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私の膝の上にのっかってきた、大きな“子猫”。 毎度毎度、怪我らしい怪我もしないのに他のメンバーの目を盗んではこうして私の家に来る。 「で、今日はどこ怪我したの?」 「いっぱい」 そう言ったきり、黙り込む“子猫”を見て苦笑せずにはいられない。 私は知っている、“子猫”はいつだって治癒する程の怪我を敵に負わされることなどないということを。 それなのに、いつも“子猫”は私の家にやってくる。 多分、誰にも知られてないつもりなんだろうけど…皆、知ってるんだよ? 「早く回復してほしいと、さゆ」 「はいはい、れーなは本当痛がりなんだから」 私は“子猫”―――田中れいなの髪を一撫ですると、治癒能力を解き放つ。 柔らかい桜色の光がそっとれいなを包みこむ。 満足げに目を閉じているれいなの顔を見つめながら、私は目を伏せた。 れいながいつも、怪我をしていなくてもここに来る理由。 それは、私の治癒能力が―――れいなにとっては、もう亡くした家族を思わせる温かさを持っているから。 仲間達に囲まれていても、不意に寂しさがこみ上げてくる時があるのだろう。 そういう時は必ず、れいなは私の家にやってくる、怪我をしていてもしていなくても、温もりに触れるために。 気がつけば、寝息を立てているれいな。 この子の“目に見えない傷”を癒してあげたい、そう想いながら私は今日もれいなを抱き締めた。
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会議と言う名の里沙の主張大会は、まだ始まったばかり。 ブラックは初期戦隊物にはいないのに、何故そこまでブラックを推すのかとリンリンに突っ込まれても 里沙はめげない、何故なら里沙はブラックの位置が好きでたまらないからだった。 ブラックの位置も作品によって様々だが、特に好きな設定は沈着冷静だけれど子供や自然を愛する 心優しい青年というような、所謂いいとこ取りみたいな設定が大好きである。 もし、オーラの色で立ち位置が決まるわけでないのなら。 あたし、ブラックをやりたい、っていうかやらせてというのが里沙の主張だったが。 うちは名前的には戦隊って名乗ってるけど、実際は組織だからそういうのはちょっときついやよー、 と苦笑いした愛に言われあえなく断念した。 ―――けして、泣いてなんかいない。 一度火がついた戦隊物魂(だが、その知識は昭和な上に偏っている)を絶やすことなく、里沙は 自己主張第2弾を投下することにした。 里沙の目の前では、里沙にヤキモチを妬かせたい愛が無駄にさゆみと絵里にセクハラを繰り返し。 れーな、ブルーに相応しいキャラになるっちゃと燃え上がるれいなを、小春と愛佳が応援し。 藍色な私はどうしたらいいのだと悩むジュンジュンを、影の薄いグリーンという設定がぴったりな リンリンが励ましてる。 まったくもって、平和すぎて泣けてくる光景であった。 頭が痛くなってきたような気もするが、里沙は口を開く。 「ねぇねぇ、戦隊ついでに質問するけど。 裏においてあるゴーカートって、何の意味があるの?」 「さすが里沙ちゃん、素人だったらあっさりスルーするようなところにも食いつく。 そういうところ、あっし超大好きやよー」 「愛ちゃんの自己主張はいいから。 で、あれって何のために存在するわけ?」 愛のアピールを一瞬にして遠いお空にファーラウェイして、里沙はツッコミを入れる。 喫茶リゾナント自体はいたって普通の、落ち着いた雰囲気の喫茶店なのに。 何故か裏のゴミ捨て場の隣に置いてある、ゴーカート。 使わないなら、業者とかに引き取ってもらえばいいのにと発見した当初から里沙はそう思っていた。 アピールを瞬殺されたことを気にも留めず、愛はニヤリと笑ってリンリンの方を見る。 その笑みを受けて、リンリンは立ち上がった。 何事かと、里沙はリンリンに注目する。 「新垣サンの為に、リンリンが説明しまス。 新垣サンがゴーカート、と言っているのはリゾナンターにとっテ重要な乗り物なんデス」 「えー、どこをどうみてもただのゴーカートでしょ、あれ 遊園地とかでよく見る奴とそっくりじゃん」 「違いまス、あれはリゾナンカーと言いまして、 緊急の際に2人まで乗っテ移動することガ出来る、立派な乗り物なんでス。 あぁ見えて、時速300㎞出ルんですよ、すごいデしょー、リンリンの説明バッチリデース!」 「あ、そう、ふーん…」 リンリンの要点のみ押さえたと思われる説明に、里沙は頭を抱えたくなる衝動をこらえた。 何でゴーカートのくせに300㎞でるのよとか。 2人しか乗れないって、他の7人はダッシュで現場に急行かいとか。 っていうか、ゴーカートじゃ公道走れないじゃん、意味なくないとか。 様々なツッコミが一瞬にして、里沙の脳内を駆けめぐったのだが。 そのツッコミを、里沙は口にすることが出来なかった。 誇らしげに胸を張り、ニコニコと笑うリンリンの姿。 何かある度に里沙を気遣ってくれる優しい心の持ち主であるリンリンに対して、 そんなツッコミをガツンといれてしまえるキャラだったら、ダークネスでもなめられずに済むのだ。 スパイなのに、妙なところで心優しい里沙。 ―――少なくとも、その心優しさは今のところ何の役にも立たなかった。
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ドクン、ドクン、ドクン 高鳴る鼓動が愛佳にも伝わってくる 愛佳“にも”って? 今日は私の友達のめっちゃ大事な場面に付き添うてあげてるんです 友達っていうても、久住さんでも他のリゾナンターのメンバーでもなく、学校での友達なんです リゾナンターになって自分に自信が持てたことで、愛佳も愛佳の周りも雰囲気が変わってきて、今は友達がいっぱいいてます その中でよく図書館で一緒に勉強しよる子がおるんやけど、先月のある日、何かその子の様子が変やったんです 勉強になかなか集中できへんみたいやったんですけど、何かあったんか聞いてみても言葉を濁すんです それで次の日、登校中にいつもみたいに声は掛けんと、少し後ろからそっとついてってみたんです あるところで、近くの別の高校に通うてる男の人達が歩いてくるのが見えてきて そしたらその子が段々と耳まで赤くなってきてて 男の人達とすれ違って振り向いたその顔はもう真っ赤っか な~んや、そういう事やったんかぁ。 愛佳がいてるのに気付いたその子は、恥ずかしそうに小走りで学校へ向かって行きました 教室でようやく話を聞き出してみると、やっぱり“恋”をしちゃいましたかぁ~ 大きなスポーツバッグをいつも持ってる人なんやって。そっかあの人かぁ。確かに愛佳もほれぼれするくらいかっこいい人やった その日からは、もう直前に迫っていたバレンタインに向けて突貫工事の告白計画を進めたんです リゾナントでガレットを作っているこの腕を生かして、愛を込めたチョコ作りをサポート。 で、肝心のバレンタイン当日はどうやったかっていうと、 あの人にダッシュでチョコを渡して、逃げるようにまたダッシュで戻ってきました。やっぱりまた真っ赤な顔で。 「来月お返事待ってます!!!」 その時、そう言うたんやって。 来月。即ち3月14日。所謂ホワイトデー。 恋の背中を押してあげた以上は、愛佳にも恋の・末を見届ける義務があります それで今日の放課後、あの人がこの道を通るのをこうして一緒に待ってるんです あぁ、なんだか愛佳も緊張してきたぁ~ やがて、あの人が何人か連れでこっちに歩いてくるのが見えました ドクン、ドクン、ドクン 鼓動も一層速くなっているのが感じ取れます 近づいてくるにつれて、会話が聞こえてきました 連れのお一人があの人に質問をしていました 「A子とB子と二股かけてんだって?」 「ひとりおまえにやろうか?付き合える女なんかくさるほどいるぜ」 その時、すれ違ったおばあさんに大きなスポーツバッグがぶつかって、おばあさんが転んでしもうたんです 愛佳たちは駆け寄って、友達が体をおこしてあげて、私は落とした巾着袋を渡してあげました その次の瞬間―― バシィッ 乾いた音が辺りに鳴り響きました 「お年寄りは大切にしな」 友達がそう言ってるそばでは、あの人が顔を押さえてうずくまっていました 愛佳も周りの人達も呆気にとられている中、友達は愛佳の手を引いて駅に向かって歩き出しました 駅に着いてその子を見ると、涙がとめどなく溢れていて ごめんね、ごめんね、せっかくここまで手伝ってくれたのにって、泣きながら愛佳に謝ってきました なんだか私も泣けてきてしもうて、愛佳に謝ることないよ、今回は縁がなかったんだよって泣きながらなぐさめていました そうや、明日の日曜、二人で遊びに行こう。教えてあげたい喫茶店があるんや 遠くない未来、リゾナントにその子が幸せそうにまだ見たこと無い男の人と二人でやってくるのが見えました その子が嬉しそうに後ろをチョロチョロしてる。そして二人は寄り添い、手と手をつなぎ、輝いてる。
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パパの車がぶつかっちゃった。 愛佳、ウソをついちゃだめでしょ? ――― 愛佳が怖い。 ・ Resonant Night ・ 「アカン、またや」 目が覚めると、涙で首筋が濡れていた。 「もぉええやん、マジで」 繰り返し見る夢にうんざりしていた。 そしてその度に、泣いてしまう自分にも。 愛佳ちゃんが… 光井!おまえの仕業が!? お前が飛行機を落としたのか! 「もぉあんたらに何も迷惑かけてへんやん。 愛佳の夢にまで出てこんといて…」 光井と話すと事故が起こる 「嫌やぁ…」 枕に顔を埋めて大声で泣いた。 シーツを掴んだ指先が震えている。 「嫌や!こんなん、嫌やぁっ!!!!」 リゾナントの仲間と過ごす日々中で どんどん好きになっていたはずの能力が 憎くて憎くて堪らなかった。 夢の中で蘇る記憶は何一つ色褪せておらず そして何一つの仲間を愛佳に与えなかった。 頭を掻き毟って 喉が切れるほど叫んで 耳を引きちぎって 目を痛めつけて なにも見えなくていい、何も聞こえなくていい。何も感じられなくてもいい だから。 ――― 助けて 誰か… ◇ …か……あ、…い……あ、…か………あいか…あいか、愛佳…あいか! 自分を呼ぶ声で目が覚めた。 あ、愛佳また寝とったんや… なにか温かいものに包まれながらぼんやりとそんなことを思う。 「…疲れたなぁ」 半ば自嘲気味な愛佳の声に、鋭い声が続いた。 「愛佳!」 「へぇっ!?」 「やっと目ぇさめたかこのすっとこどっこい!」 「…ちょっと愛ちゃん、すっとこどっこいはないでしょ」 「絵里そんな言葉初めてききましたよぉ?」 「嘘ついちゃだめなの、絵里が発信源なの」 「絵里はいつも適当やけんね、覚えとらんのよ」 「ほんっと亀井さんってダメですよねー」 「クスミ、ソンナことイッタらシツレイダ!」 「オォーゥ、ジュンジュンさん。ジュンジュンさんもじゅうぶんシツレイデスよー!」 「ってみんなうるさぁーい!」 そしてその後に、聞きなれた焦がれた仲間の声が続く。 「なんで愛佳…」 のそり、と体を起こした。 れいながいつも愛用している紫色の毛布が方から落ちる。 それから、ジュンジュンの腕に包まれていることが分かる。 「…なんでみんな」 ジュンジュンが愛佳の頭を撫でた。 「ジュンジュンみんなヨリちょとオッキイから、」 「誰かと触れ合ってた方が安心するんじゃないか、って小春ちゃんが」 続いてさゆみが、泣き顔の愛佳の頬を包んだ。 ピンク色の光が溢れる。 やがてそれは愛佳の全身を包み、涙を拭い去った。 「なんで…?」 状況が読み込めていない愛佳は周りを囲む仲間を呆然と見つめていた。 「呼ばれたんよ、愛佳に」 愛が優しく微笑む。 「助けてーって、何回も叫びよった」 「ほっとくわけにはいかないでしょ」 「だからねぇ、急いで来たんだよ?」 「仕事もちょうどなかったし」 「ジュンジュンもヒマダッタだ」 「リンリンもー」 「――― そういうわけ。だからみっつぃー」 怖がらなくていい、泣かなくていい。憎いだなんて思わないで。 愛はこの夢の内容を分かっていた。 だからこうして、自分の能力を使い、愛佳をリゾナントへ連れてきた。 愛佳に欲しているものがここにはある。 「連れて来たのはあーしやけど、みんなを呼んだんは愛佳やからの」 「え?」 「共鳴したんだ。みんな仲間ってこと。」 「仲間…」 「乗り越えられないときはさ、頼ればいいんだよ。」 誰かが助けてくれればさ、もしかするとちっちゃな壁になったり、するかもしれないでしょ? 「傷ついたらあたし達が癒すから」 「いつでも、助けに来るから」 「ダカラ光井も、タマにはタスケルだよ?」 「…もぉー、ジュンジュン。呼び捨てするんやったら名前にしてぇ」 愛佳がやっと笑った。 それがリゾナントして、みんなに繋がる。 負けない、と思った。 そして強くなろう、とも。 それから。 思う存分に甘えて、助けてもらおう。 こうやってジュンジュンの腕の中に居るのも悪くない。 「なぁジュンジュン、今度はパンダの時にぎゅーってしてぇや」 「ミツイ!!!甘エルじゃないダぁぁぁぁ!!!!」 それからしばらく、あの夢は見なかった。
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「ミッツィってさー、暇なの?」 急に、そう言われて、ハイ!?っと声を上げた その姿がおかしかったのかなんなのか、久住さんは手を叩いて笑う 「だってさ、こうやっていっつも、小春の修行に付き合ってるじゃん」 いつも通りの思いつきトークかと思って、聞き流そうとしてたのに、 久住さんは雷撃の手を緩めて、こちらに向かい仁王立ち なんや、一体今度はなんなんやろ… 最初にもじもじしながらも、修行に付き合ってくれって言い出したのは久住さんやし、 夏の暑い日から、こんなクソ寒い…あ、めっちゃ寒い日に至るまで、 ほとんど欠かさずついてきてるのに、なんか問題があるんやろか… 今日なんて、家からわざわざあったかいスープまで持参してんのに… あ、本かな…本読んでんのが、お気にめさんかったんやろか? 「あの-、愛佳なんかしました?」 「もー!そうやってすぐ、自分が悪いみたいな事言うんだからー!!」 びしいぃっと音が鳴りそうなくらい、指で指されてますます訳がわからない。 久住さん、それはちょっと無礼ってもんですよ… 「なんなんですかー。じゃあ、しっかり理由聞かせて下さいよ」 もうついて来て欲しくないんやろうか… 新必殺技が出来そうで、誰にも見られたくないとか? ただ、単純に、愛佳にここにいられたら迷惑とか? 心の中に、慣れてしまったじめっとした感覚を隠しながら言い返せば、 いかにも嬉しそうな顔で、久住さんが口を開く。 やったー!言い返してくれた!そう顔に書いてあった。 「やーさ、ただ、待ってるのって、退屈そうじゃん。 そんなの、小春絶対無理。暇で死んじゃう。それが耐えれるなんて、 ミッツィー普段から暇なのかなーって」 理屈通ってるようで、まったく通ってない言葉の羅列 それを勢いでごまかそうとする久住さんに、折れて、はぁ、と頷く 「それとも、なんだろね。ホントに退屈なら、悪いしね… 小春は、小春はもう大丈夫だから、さー。帰っても、良いよ」 そう言う、久住さんの表情は、暗くて離れててもわかるくらい、落ち込んでる テレビの中では、あんなに自信たっぷりに喜怒哀楽を表現するあなたが― 「愛佳は、暇じゃないですよ。久住さんがサボってないか、見なきゃいけないし、 久住さんが少しずつ強くなるの、見られて楽しいんですから。」 サボらないもん!って一回怒っておいてから、続きの言葉で満足気に微笑む 表情筋が、コロコロうにうに動いて忙しい人だ。 「ってー!そうじゃなくて!まーたミッツィに丸め込まれるところだったよ!」 しゅびしぃっ!っと音のしそうな速さで再び、指さし点検 「ここにいるのが嫌なんじゃないなら、何で動かないの?」 「はい?」 久住さんは、さも当たり前の言葉を言ってやったぞ、という顔で 愛佳の方にずんずん近づいてくる。 慌てて膝に掛けていたフリースを畳み、立ち上がった 「何でなーんにもしないで、ずっといるの!サボってんの、ミッツィの方じゃん!」 「く、久住さんが付き合ってくれって言い張ったんじゃないですか」 「言ったよ、言ったけど…さ…」 なんつーかさ、ただいるだけじゃなくて…見てるだけじゃなくてさ… えっと…付き合って欲しいってのは、その…うーん… とーにーかーくっ!!! 身長の高い久住さんの顔が、ぐいっと愛佳と同じ高さになった じっとキラキラの瞳に見つめられて、心の中をのぞき込まれそうになる 「あたしは、修行を始めた最初っから、ミッツィと一緒に強くなりたいって、そう思ってた。」 思いがけない言葉に、何を言い返そうか迷っていたのに、 久住さんは何も言わずに、元いたところに走っていった 『色んなやり方で、攻撃したい』 彼女はそう言って、修行を始めた 地面の7つのチップめがけて、同時に同じだけの電撃を落とす 最初は、3枚くらいしか当たらなかったのに、季節を二つ超えて、的はもう倍以上になった 何百回、何千回と散る火花を見て、愛佳はどうして何も思わなかったんだろう… 久住さんはずっと、ずっと待っていてくれたんだ… 「久住さん!」 急に駆け寄った愛佳を見て、久住さんは急いで能力を抑えようとする 間に合わないのはわかっていた。 びしびしっと、脳天から、足の先の先の先まで雷撃が流れる 目の前が真っ赤に染まって、気づいた時には、もう地面。 「ちょ、ミッツィ!何してんの!飛び出したりなんかして!!」 真っ青な顔で愛佳を抱える久住さん。これから自分が発する言葉を思ってなんだか笑えてきた。 あなたの発言であたしがいっつもどれだけそんな顔してると思いますか? ―たまには久住さん、困らしたろ 「久住さん、これから修行、付き合って下さい。 愛佳、久住さんの攻撃を全部避けれるような、そんな人になりたいです」 薄れゆく意識の中で、この後数分間の未来が視得ました それは愛佳をとっても残念な気持ちにさせました だって、意識を失った愛佳をおんぶする久住さんの表情が いつも以上に、とっても嬉しそうな、顔やったから…
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共鳴修学旅行~リゾナンターでんねん~ 「今日は一日、自由行動なのだっ!」 大浴場ジュンジュン獣化祭りから一夜明けた早朝、 3組臨時学級委員長新垣里沙の声がロビーに響く 「いやっほーぃ!」 リゾナンター達は一気に色めきだつ その周りにいるクラスメート達は予め予定を知っているため、喜びの声を上げる者はいなかった 明らかな温度差が浮き上がる 「ねぇ愛佳…みんなすっごいテンション上がっちゃってるんだけど…」 ある種、異様な盛り上がりを見せるリゾナンター達を控え目に指差しながら 愛佳のクラスメート安倍夏子ちゃんは怪訝な顔をしている 「あは…あはは…みんな朝からえらい元気やなぁ…あはは」 愛佳は笑顔をひきつらせながら適当に誤魔化した… そして、ススス~と里沙に近づいて耳打ちする 「新垣さん…あやつら、早いウチにシメといた方がええんやないですか?」 「おぉみっつぃー…それはワシも今、思うとった所よ…」 「さすが新垣殿…先を見る目は確かでいらっしゃる」 「いやいや、光井殿。そちもなかなかの者じゃよ…フォッフォッフォッ…」 「フォッフォッフォッ…」 「何、コソコソ喋っとるがし」 「ぅおっとぉ!」 「あ、いや、何でもないです!」 「ほーか?なんや二人とも悪っそうな顔しとったで?」 「愛ちゃんの気のせいだから!ってか、今日はあんまりハメはずさないでよ!」 「わかっとるがし!」 「愛ちゃんが一番心配なんだけどなぁ…」 「あーしは良い子にしとるがし。ほやけどあっちで早速モメとるで」 愛がニヤニヤしながら自分の背後を指差す 「ワタシはたこ焼き食べタイ!」 「絵里ちゃんはどっちかって言うと~お好み焼きな気分かな~」 「その前にミナミで買い物するったい!」 「小春、かに道楽のかにが見たいっす!」 「カニドーラク?ダッタらエビドーラクもアルですカ?」 「いいんちょー…早くも混乱してるの」 さゆみが呆れ顔で里沙に向かって両手を上げて降参のポーズ 「こっ…コラーーーーーッ!!!!」 今日一発目の委員長の雷が落ちた ━… リゾナンター&安倍夏子ちゃん一行は買い物を済ませ、 おいしいたこ焼き&お好み焼きを食べた後大阪の観光地のひとつ 道頓堀橋(通称ひっかけ橋)に来ていた 「おぉ~この人テレビで見たことあるったい!」 橋の側のビル壁面にドでかく設置された陸上選手をモチーフにした企業看板を見上げる 「すっごい笑ってるね、この人ウヘヘ」 「そこなの?」 「ワタシテレビで見たノもっとギラギラ光ってマシタ!ギラギラ!」 「ニガキ、アレ光らナイのカ?」 「今はお昼間だからねぇ…」 「小春が光らせましょーかー」 「いいから!光らせなくていいから!」 「あっちにかにがおるったい!」 「ほんとだぁ~。大きいねぇ…おいしそうですよ?」 「そこなの?絵里は相変わらず視点がおかしいの」 「エビは?エビはドコにいマスカ?」 「リンリン、もともとえびはいないから」 「ニガキ、あのカニの動きトテモゆっくりデ異常ダな」 「異常なのはジュンジュン、アンタの感覚だから…」 「はいはーい!小春が早く動かせましょーかー」 「いいから!絶対しなくていいから!」 「里沙ちゃんもなんだかんだ言うて楽しんどるがし」 がははと高らかに笑う愛にもたれかかりながら、ため息を吐く里沙 「これのどこが楽しんでる風に見えるのよ…もー愛ちゃんもしっかりしてよ…」 里沙が苦悶する横でバシバシ写真を撮りまくるリゾナンター達 「平和だねぇ…」 「ほんまやなぁ…」 ハイテンションについて行けない愛佳と夏子ちゃんは少し離れた所で他人の振りをしていた 「愛佳ぁー!なっちぃー!一緒に写真撮るとー!」 れいなが大声で呼びつけて、二人の他人の振りを台無しにする 「田中っち!なななななっちって呼ばないの!」 「なん?なっちはなっちじゃないですか」 「コラーッ!ダメーッ!」 「ガキさん、細かい事は気にしない方がいいですよ?」 「カメはもうちょっと細かい所を気にしなさーい!」 苦笑いの二人と、かにの下で騒いでいる集団に通行人の視線が集まる 「しゃーないなぁ…」 「せっかくだしね…一緒に写真撮ろっか?」 「せやな!」 愛佳と夏子ちゃんはみんなの方へと歩み寄る しかし、通行量の多いこの場所 前を横切る人が邪魔で、なかなか皆の所まで辿り着けない 「やっぱり大阪は人が多いなぁ…」 愛佳がつぶやく 「わっ!ちょ…やだっ!」「ナツ?大丈夫?!」 夏子ちゃんの慌てた声に愛佳が振り返ると、人混みのむこうでもがいている夏子ちゃんの姿 「何してんの…」 愛佳が夏子ちゃんに向けて右手を差し出す しかし、その手を握ったのは夏子ちゃんではなく見知らぬ男だった 愛佳は反射的にその手を振り払って、睨み上げた 視界に入るだけで気分が悪くなる様な、ニヤニヤした不快な笑い顔 「こんにちは、光井愛佳さん」 「ッ!!」 愛佳は危険を察知して素早く二、三歩後退った 「お前…何者や」 「愛佳!大丈夫と?」 いち早く愛佳の隣に駆け付けたのれいなが小声で問いかける 「愛佳は大丈夫ですけど…」 夏子ちゃんとの間には真っ黒いスーツを着た男が立ち塞がっている 愛佳は男に警戒しながら、夏子ちゃんの様子を伺う 橋の向こう側の欄干の前で体の大きい男に背後から羽交い締められている夏子ちゃんが見えた 「あんたら…関係ない子を巻き込まんといてんか」 続いてれいなとは反対側に立った愛の冷たい声 「ようこそ大阪へ、リゾナンターの皆様」 唇を曲げて下品な笑いを浮かべる男 リゾナンター9人とスーツ姿の男が橋の真ん中で対峙する その周りを通行人達が何事かと取り囲む 「白昼堂々とこんな場所で…何考えてるの…」 さゆみがいらついた気持を吐き出す 「おや…我々の歓迎がお気に召さない様ですね」 スーツの男はパチンと指を鳴らした 野次馬の中から数人の男達が飛び出して来る その数は5人で、計7人のお揃いの黒スーツ男達がリゾナンターの前に立ちはだかった 「何するつもりや…」 愛が威嚇する 「それは貴方のお得意の精神感応で読み取ってはいかがですか?高橋愛さん あぁ、光井愛佳さんの予知能力で観てみるのも良いですね」 「この人達…さゆみ達の能力の事も把握してるの…」 「もちろん…何故ならば…」 バラバラとリゾナンター達に向かい合っていた男達が一斉に動き出して横一例に整列する 「我々は、ダークネス関西!」 ………。 両者の間に一陣の風が吹き抜ける シーン。 「フッ…フハッ…フハハハハ!恐怖のあまり声も出ぬか!」 言葉を失ったリゾナンター達の中で最初に動いたのは愛だった… 「アッヒャー!ダークネス関西やて!関西!」 「安易なネーミングなの…」 「ウヘヘ…寒いですよ?」 「ちょっ、アンタ達!思ってても口に出しちゃダメでしょーが!」 「そう言う里沙ちゃんも“関西”はどうかと思うやろ?」 「うん…まぁ…あのネーミングセンスは…厳しいよね…」 里沙でさえフォローできず、愛に同意せざるを得なかった 「なっ…きっ…貴様ら…」 馬鹿にされきったダークネス関西のリーダー格の男はわなわなと拳を震わせた そんな男へトドメを刺したのはれいなの一言だった 「………ダッサ」 「!!!」 リーダー格の男の顔色がスッと青ざめた後、一気に紅潮した 「お前らっ!しょーもない事ぬかしとったらシバき倒すぞ!ワレェ!」 激昂した男は声を荒げて喚き出した 「ニガキ、アイツの日本語オカシイ」 「いや、あれは関西弁って言ってね…」 「!!おちょくっとったらしまいには泣かしたんぞボケェ!」 「イヤや…あんなんと同じやなんて関西人として恥ずかしいわ…」 思わず愛佳は本音を溢してしまう しかし、それを聞いた男はすかさず反論する 「アホか!滋賀県民はホンマの関西人ちゃうやろが! 滋賀県はなぁ琵琶湖があるからしゃーなしに関西にしてやっとんねん!」 「うっさい!偉そうな事言うとったら淀川の水塞き止めんで! そしたら大阪人干からびんねんで!」 ※解説しよう! 滋賀県の琵琶湖は別名“関西の水瓶”と呼ばれ、 そこから流れる淀川の水は大阪府内流域の水道水として使用されているのだ! 「やれるモンならやってみろや!淀川塞き止めたら琵琶湖の水、溢れてまうねんぞ! 滋賀の田舎モンは溢れた水で溺れてまえ!そんで隣の田舎の福井にでも亡命せぇや!」 「ちょっと待つやよ!!」 低レベルな関西人同士の罵り合いにいきなり割って入ったのは愛だった 「アンタ…今…福井を…福井をバカにしたやろ!」 「え?ちょ…愛ちゃん?」 「は?…あぁ…お前が幼少期に過ごしたのは福井の田舎だったな…フン」 「またバカにしよって!許さんやよっ!」 ムキーと怒り出した愛 「愛佳っ!徹底的にやったるで!」 「はい!」 ここに強力な福滋同盟が立ち上がったのだった 愛佳はスッと目を細めた後、リゾナンター達だけに聞こえる小声で告げる 「右から4、1、6、2、3、5です」 「了解~」 愛佳の発言に絵里がやんわりと答える 「あーしは最後にするがし!」 「じゃぁ、れなが一番に行くと!」 「その次は小春が行きまーす!」 「アー…ジャァ、ワタシ3番目ですネ?」 「なっち!アタシはなっちをっ!」 「新垣さん…少し落ち着くの…」 次々に交される会話にとまどいながらも、引くには引けないダークネス関西からの刺客達 「何ごちゃごちゃぬかしとんねん!もぉええわ!お前ら!かかれっ!」 リーダー格の合図に男達が一斉に動きを揃えて飛びかかる しかし、そこは人間の動き いくら訓練を重ねようともその攻撃には若干のズレが生じてしまう 先程の愛佳の指定した番号はその僅かなズレを予知したものだった リゾナンター達は愛佳が告げたそのズレの順番を頼りに迎え打つ “1”と指定された、右から2番目に立っていた男の足にれいなの下段蹴りが叩き込まれる バランスを崩した男は前のめりになり、思わず両手を突き出した その手は地面に届く前にジュンジュンに捕まれる ハッとして顔を上げた時には既に遅し ジュンジュンは男が駆け込んで来た勢いにジュンジュン自身の怪力も加え、後方にポーイと投げ捨てた 男の体は空高く舞い上がり、橋の欄干の向こう側へと消えて行った 同じように、愛佳の予知能力によって見透かされた男達の攻撃は次々に看破されて行く 2番目の男は小春の念写能力によって仕掛けられた足元の大きな穴に気を取られ、 怯んだ隙にジュンジュンに首根っこを掴み上げられて飛ばされた 3番目の男はリンリンの漫画模倣術のひとつであるカメハメ波(もどき)による炎に右足を燃やされ、 慌てた所をジュンジュンの強烈なアッパーで打ち上げられた 4番目の男はさゆみの放ったうさちゃんズに動きを封じられてもがいている所、 ジュンジュンの重量感のある裏拳によりライナー性の放物線を描いて消えて行った 5番目の男は絵里が起こした竜巻にきりもみ状態で飛ばされて行った その間、僅か数秒 ボチャーンと道頓堀川の水面を叩く激しい水音が連続して辺りに響いた 「残されたのはアンタとアイツだけや…」 愛は表情を崩さず夏子ちゃんを捕まえている男を顎で指す 「クッ…」 リーダー格の男の顔に明らかな焦りの色が滲む 「ほれ、アンタの仲間達と同じ様に大腸菌と一緒に水遊びするやよ」 静かに最終宣告を浴びせた愛の姿が音もなく消えると、 リーダー格の男は苦しげな息をひとつ吐いてその場に崩れ落ちた 瞬間移動した愛が背後からお見舞いした首筋への一撃があっさりと効いたのだった ジュンジュンは小石でも拾うかのように倒れた男の上着を摘み上げて川へ放り込んだ 「で、アンタ一人になってもーたワケやけど?」 ゆっくりと振り返る愛 夏子ちゃんを捕えたまま、最後に残ってしまった男は恐怖のあまり小さく悲鳴を上げた 「その子を離すやよ…」 「今更許しを乞うたって遅いわよ!」 「へ?里沙ちゃん?」 「アンタはねぇ!それぐらい大きな罪を犯したんだからね!」 「ウヘ…ガキさんがキレましたよ」 「なっちを…なっちを人質に取るなんて外道の風上にも置けないのだっ!」 「よくわかんないけどブチギレてるのは確かなの…」 「卑怯なその行い、なっちが許してもアタシが許さないのだっ!」 「新垣さんマジギレしてるっす…」 「怒ったニガキはつおソウだナ」 「怒った新垣サンは何スルカわからナイデス!」 「キレガキさんの眉毛が揺れよう!ハッハッハッ!」 リゾナンター達が口々に切れたと騒ぎたてる度に男の顔から生気が消えていく 手も足も震え、喉から途切れ途切れの息がかろうじて吐き出だされる 「その罪、地獄で未来永劫悔やみ続けるのだ!」 カッと見開かれた里沙の両目 その目に射抜かれた男は突然頭を抱えて暴れだした 怯えきった絶叫を上げ、その場でのたうちまわった挙句、 自らその身を道頓堀川へと投げたのだった それを見届けた里沙は我に返り、フゥとため息を吐く そして愛佳はペタリとその場に座り込んでしまった夏子ちゃんの元へ駆け寄った 「ナツ!大丈夫?!」 「あ、うん、なんとか…」 そう言って、夏子ちゃんはかよわい笑顔を浮かべた パチ…パチ…パチパチ… 「へ?」 どこからともなく起こったまばらな拍手に愛佳が気付いた時には既に大きな拍手の渦になっていた パチパチパチパチパチパチ!! 周りの群衆は拍手と共に、感動と讚美の言葉をリゾナンターへ向ける 「あ…人が見とること忘れとったわ」 「ちょ…愛ちゃん…これ…」 「自分ら凄いな!テレビかなんかの撮影なん?」 野次馬の中の一人が愛佳に声を掛けてきた いきなりの事に動揺しつつも愛佳は素早く切り返す 「あ…あの…わっ私達、新喜劇に入りたくて大阪に来たんです!」 おぉーー ひっかけ橋全体を大きなどよめきが包む あの演技力ならいけるやろ むしろ可愛すぎてアカンのちゃう? どっちかっちゅーと、手品師の方が向いとるやろ 口々に感想を述べ合う野次馬達 「それで、あの…なんばグランド花月はどこですか!?」 「あぁ…それやったらこの道グワー行ったらラーメン屋あるから その角ピュッて曲がってブワーて行ったらドーンてあるわ」 「ありがとうございます!」 愛佳が元気良くお礼を告げると同時にリゾナンター達は教えられた道に向かってグワーっと走りだした 愛佳も夏子ちゃんの手を引いてメンバーの後を追いかけた 背後から野次馬達の“がんばれよー”なんて激励の声が飛んで来る 「ハッハッハッ!あの人達、愛佳の言い訳信じとーよ!」 先頭を走るれいなが体を反転させ、後ろ走りしながら笑いかける 「みっつぃー!どうせならもっと上手い嘘つきなよ!」 「やって、とっさの事で何も思いつかへんかってんもん!」 「ちょっと愛佳!?どーなってんのよぉっ!!」 まだ状況を飲み込めきれない夏子ちゃんは、必死に走りながら問いかける 「後で説明するわー!グフフ」 笑いながら答えた愛佳は隣を走る里沙にチラリと視線を送る 里沙は少しバツが悪そうな笑顔を返した その後、人通りの少ない路地に入ったリゾナンター達は里沙の精神干渉能力をれいなの能力で増幅し、 辺り数km内に居る人間の記憶から自分達を跡形もなく消し去った それはいつも少し寂しさの残る作業だった だけど、今日だけは、愛佳は笑っていた 能力を晒け出した後でも、友人は愛佳の手を握ってくれた 恐怖に怯えるでもなく、不快感を表わすでもなく 夏子ちゃんは愛佳が差し出した手を握って、ついて来てくれた それだけで愛佳は嬉しかった その気持ちはこの場にいる誰もが理解できた だから、里沙は夏子ちゃんの記憶に少しだけ残して置いた 夏子ちゃんのために果敢に敵に立ち向かう愛佳の姿 そして、すべてが終わった後、素早く夏子ちゃんの元へ駆け寄る愛佳の姿 ちなみに、里沙が「なっち!なっち!」と取り乱した部分は勿論、綺麗さっぱり削除された 「なんや、自分に都合の悪い記憶を消せるてええですね…」 「いや、あの、普段からこーゆー事してるわけじゃないから!」 「ホンマですかぁ?」 「ホーントだってば!」 愛佳は日記でも始めようかな…とちょっと思ってしまったのだった
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リゾナンダーの秘密基地―― 田中「愛佳、まだ残っとったのね。 光井「あ…田中さん。おかえりなさい。忘れ物ですか? 田中「ん…まぁそんな感じ。愛佳は何やってたと? 光井「私は…あの、今日は久住さんが作戦会議の途中で帰っちゃったじゃないですか。 だから、今日の会議の詳細をまとめておこうかなって。 田中「…それで、こんな遅くまで? 光井「…はい。 田中「……。愛佳、れいなはいつも不思議に思っとるよ。 愛佳はなんであんな奴のことを気にかけとるのかって。 この前だって、『いじめられるのはあんたの自業自得よ!』とか、酷いこと言っとった。 光井「そうですね、でも…あってると思います。 田中「そんなことない!愛佳は優しすぎるとよ。だからああいうイヤ~な奴に目をつけられるっちゃ! 光井「……。 田中「愛佳が悪いなんてことなか。小春の言うことなんて気にすることない。 あんな自分勝手な奴はシカトすればよかと。それこそあいつの自業自得っちゃ! 皆あいつの事は嫌っとう。 光井「……そんなこと…ない。そんなことないです。 私…久住さん…いえ、キラリちゃんに、憧れてましたから。 田中「でもそれは!あいつの事雑誌でしか見たことなかったから…! 光井「…キラリちゃんはうちのクラスでも凄い人気なんです。 …私とキラリちゃん…同い年なのに、片方はいじめられっ子で、もう片方はスターモデルで人気者。 何でこんなに違っちゃうんだろう、って、涙が止まらなくなったこともありました。 田中「……。 光井「だけど、その時思ったんです。キラリちゃんはいつでもあの笑顔を絶やさない。 本当にいつでも笑顔で…。でも私は泣いてばっかりだなって。 ……私もあんなふうに笑えたらなって…思うようになって。 田中「…それは…でも……あくまでそういう仕事だからっちゃ。 光井「私…気づいたんです……久住さん、ここに来てから一度も笑顔になったことが無いんですよ。 田中「え…?!……あ…。 光井「…私、久住さんを見てると…なんだか、写真の中のキラリちゃんに一生分の笑顔を盗られちゃったんじゃないかって。 今の久住さんは…本当は……昔の私みたいなんじゃないかって。 だから…ほっとけないんです。 田中「…愛佳…。 光井「…じゃ、まとめ終わったので帰りますね。失礼します。 田中「…あ…うん。おつかれいな、愛佳。 アジトに1人残された田中は、光井と初めて会ったときの、一切の感情を奪われたようなあの瞳を思い返すのだった。
https://w.atwiki.jp/papayaga0226/pages/222.html
東京―AM0;46 喫茶リゾナントからほど近いオフィス街。 高層ビルの連なりに深く刻み込まれた、迷路のような路地裏通り。 餌を求めて、這い出てきたノラ猫が一匹、不意に足を止め、首をもたげた。 しかし、はるか上方のただならぬ気配に驚いたらしく、素早く身をひるがえしねぐらに戻ってしまう。 ひしめく高層ビル群。その中でも、ひときわ高くそびえ立つビルの屋上から、尋常ならざるエネルギーが発露されていた。 地上200メートル。強風に煽られながらも円陣を作り、天を睨みつける七名の能力者たち。 田中、道重、亀井、久住、光井、ジュンジュン、リンリン。 この七名が作る円陣の中央から、高密度の意識エネルギーが夜空の暗雲を突き刺し、天に向かって放たれていた。 それぞれが意識エネルギーを放出し、田中がそれを増幅する。 増幅したエネルギーを久住という媒体を通して、 はるか異国の海域で新垣里沙を探すため、瞬間移動を繰り返す高橋愛のもとへと送り続ける。 瞬間移動とは、あらゆる能力の中でも最も、身体に負担を強いる能力である。 イメージの出来ない場所への、長距離に及ぶ瞬間移動は、自殺行為と言って過言ではない。 高橋は日本を出てから丸2日間、休む事無く瞬間移動を繰り返し、今は太平洋を越え、バミューダ海域をさまよっている。 今は、メンバー達が昼夜を徹し、途絶える事無く送り続ける意識エネルギーが、高橋愛の命綱となっているのである。 しかし、意識エネルギーを放出すると言う事は、自らの命を削る事と等しい。 “命がけ”はメンバーも高橋も一緒であった。 丸2日、飲まず食わずで転送し続けたメンバー達は、すでに限界を迎えていた。 最初に円陣から離脱したのは、亀井絵里だった。病に冒された心臓が悲鳴を上げていた。 鼻血が止まらず、血圧が急激に低下し昏倒した。 道重さゆみが、側に駆け寄って治癒を施そうとするが、ままならず、亀井に覆いかぶさるようにして動かなくなる。 それから直ぐ、光井が倒れ、リンリンがそれに続き、 リンリンを支えようとしたジュンジュン、田中れいなまでもが巻き込まれて膝を突いた。 これ以上続けるのは危険だと判断した久住が、一旦エネルギー転送を止めその場に座り込んだ。 強風、吹きすさぶ高層ビルの屋上。 七名はただ夜空を見上げ、物も言わずに倒れこんでいた。 暫しの沈黙の後、田中れいながポツリと言った。 「小春……今、愛ちゃんが居る場所を念写してくれんね?」 小春からの返答は無かったが、ビルをライトアップしていた照明が見えなくなり始めたので、 田中はもう、念写が始まっている事に気付く。 仰向けに倒れて、夜空を見上げていた田中の視界がジワジワと変化し、やがて闇夜の海へと映像を変える。 俯瞰から映し出されたその映像。月も無く、底なしの闇を広げる海。 島影など何処にも見えず、ただ果てしない水平線が続くばかり。 おそらく、その最中(さなか)に漂えば、方角など瞬時に見失うであろう。 俯瞰の画が、徐々に一つの対象に近づくと、漆黒の海に漂う人影を捉える。 蒼白の顔、濡れた髪、白い息を漏らした、高橋愛が荒波に揉まれていた。 常人なら、ものの数分で気が触れてしまいそうな夜の大海に浮かび、 次に飛べる(瞬間移動)その時まで、ひたすら漂い、力が戻るのを待つ。 久住によって夜空に念写されたその光景を、みんな黙って見ていた。 すると、仰向けに寝ていた田中れいなが、ごろりと身を返し、腹這いになった。 ゴソゴソとスカジャンの擦れる音を聞き、皆が田中の方を見る。 【これより先はこのBGMと共にお読み下さい】 音源リンク切れ『どうにかして土曜日(インストろメンタル)』 田中は拳をコンクリートに突きたて、わななく手で身体を支え立ち上がった。 「れいな!」 「田中さん!」 田中の身を案じた、道重と光井から声が上がった。 「あげん……あげん、なんも無か暗闇で、愛ちゃん寂しいちゃろね」 田中は震える足を自分で何度も叩き、気合を入れながら夜空を見上げる。 「れいな!これ以上は危険よ」道重が制する。 田中は、なけ無しの意識エネルギーを天に向かって放ち始める。 「れいなも、同じやった。暗いトンネルの底を這いつくばって生きよったんよ。」 「……………………」 「愛ちゃんは、出来そこないの不良のあたしに、光と居場所をくれた。」 田中は、天を睨みつけ叫ぶ。 「今度は、れいなが愛ちゃんの光になる。こんエネルギー、途切れさす訳にはいかないちゃ!不良娘の意地にかけても」 ざわめくは、七つの心。 田中の声が、涙で詰まる。「…………見てみい。あげん弱りよう愛ちゃん……見たこと無かよ」 コンクリートの上でもがき、のたうつ音がする。 振り向けば、奮い立つ心に任せて、立ち上がる光井愛佳がいた。 「愛佳……」道重は込み上げる思いで呟いた。 「高橋さーん!聞こえますか?うちの力、届いてますか?」 力いっぱいに、叫ぶ光井。その叫びは、自分自身を奮い立たせるため。 「覚えてますかー?初めて駅で会った日のことを! うちはホームの端っこで自分の命を揺らしていた…… そんなうちに、高橋さんは生きろって、明日を変えろって言うてくれはりましたよね!」 ―――『!!!!』―――――光井の体が不意に弾けて、ビクンッとぶれた。 瞬刻のひらめきを得て、目を閉じたまま微笑む。――未来視(ビジョン)が視えたのだ。 「この声が!この声が、もし聞こえてるなら……高橋さん、次に飛ぶ時は、今向いている方角とは逆に飛んで下さい! 間もなく、夜が明けます。朝日の方角に飛んで下さい!新垣さんに出会えるはず!」 「視えたんだね!ミッツィー!」小春が喜んで立ち上がる。 「グゥオウォォォー!!」共鳴する魂がざわめき、一瞬の獣化を見せたジュンジュンが咆哮と共に立ち上がる。 「アイヤ――!!」リンリンも後に続き、道重もそれに続いた。 亀井がフラフラと立ち上がろうとしているのに、道重が気付いて声を上げる。「絵里!……」 が、亀井は黙って首を振り、血溜まりに足を取られながらも立ち上がった。 みんなの、心配そうに見つめる視線に気付いて、亀井が天を指差して言った。 「ダークネスのボケナス共!もうすぐ、勇気の塊みたいな人がそっちに行くからね!ガキさんに指一本、触れんじゃないよ!」 その言葉を受けてニカッと笑った田中が、大きく息を吸い、天を睨みつけると、亀井を真似て言った。 「よう聞きぃ!ダークネスのボンクラ共!今から、お前らの秘密基地ば、最強の能力者が乗り込むけん、覚悟決めて待っとき!」 「ワァ――――――――――ッ!!!」「アァ――――――――――――ッ!!!」 東京の夜空に、娘たちの咆哮が響き渡った。 この共鳴、鳴り止ます訳にはいかない。絶対に。