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午前11時34分27秒。火蓋は切って落とされた。 一厘が宙に浮かせていた、最大250万ボルトもの電圧を発生させられる小型スタンガン『DSKA―004』の群れを界刺へ向けて射出する。 同時に、真珠院が触れた木を念動力で地面から引っこ抜いた。宙に浮遊したそれから、慌てて蝉が飛び去って行く。 『物質操作』による精密な軌道を描き、『DSKA―004』が界刺に突き刺さ・・・らない。 それは、『光学装飾』によって作り出された光のコピー。すり抜けていくスタンガンを確認した少女2人は、 不可視状態の界刺が何処に居るのかに神経を尖らせる。主に使うは聴覚。 下は芝生が敷かれており、近くに来ればその足音で多少なりとも位置を捕捉できる。 そう思った少女達を邪魔するのは、周囲から絶え間無く聞こえて来る蝉の鳴き声。その耳につく音が、少女の聴覚を妨げる。 シャン!! 聞こえた。芝生を踏む音が確かに。それにいち早く気付いた一厘が、音の聞こえた方に思わず顔を、視線を向けた・・・その時!! ピカッ!! 閃光が煌く。だが、思いの外眩しくない。やはり、口ではああ言っておきながら少しは加減をしてくれるのか。そんな“甘い”考えが一厘の脳裏を掠める。 付近に『DSKA―004』を滞空させて、閃光を腕で遮る一厘の視線の先にある閃光が消える。 それに伴い光を遮っていた腕を少し下げ、聴覚に集中しながら閃光のあった場所を見ようとした一厘の顔面に・・・ ドスッ!! 界刺が投射した警棒が突き刺さる。鼻っ柱にクリーンヒットした警棒、そして顔面へのダメージに気を取られた一厘の腹目掛けて・・・ ボコッ!! 不可視状態を解いた界刺の拳が叩き込まれる。吹っ飛ぶ一厘。急に姿を現した界刺に驚きながら、真珠院は宙に浮かせた木による迎撃行動を行おうとする。 一厘程では無いにしろ、高い精度を誇る自身の念動力で界刺を吹っ飛ばそうと操作し・・・ ビュン!! 突如として、瞳に映るのが界刺から建物―後方にある常盤台学生寮―に移り変わる。その突然の事態に硬直してしまった真珠院の顎に・・・ ガッ!! 警棒が振り上げられる。木では無く自分自身が宙に浮き、呆気無く地面に仰向けになって倒れる真珠院。 所要時間18秒。まずは、界刺の圧勝。そして、一厘・真珠院の完敗である。 「ガハッ!!ゴホッ!!」 「ッッッ!!」 一厘は、腹部へのダメージに何度も咳き込む。鼻からは血も流していた。 真珠院も、顎へのダメージと地面に頭から倒れてしまったダメージに苦しむ。何処かを切ったのか、口から血が流していた。 「ま、こんなモンか。・・・戦闘開始から20秒も経ってないんじゃねぇの?“講習”でよかったな、一厘!珊瑚! これが本当の殺し合いってヤツなら、お前等はもう死んでるぜ?」 界刺が突き付ける現実。それは、自分達が弱いという厳然たる事実。 「もしかしたら、こう思ってるのかな?『半径30m内なら接触する必要無く』15kg以下の物体なら支配下における自分に、何で一切の躊躇も無く警棒を投射できるのか? 『接触さえすれば』重量級の物体を支配下における自分に、何で一切の躊躇も無く警棒を叩き込めるのか?どうかな?」 「「!!?」」 内心を読まれる。物の見事に。この男は、それすらも戦術に組み込んでいるのか。 「それなら、話は簡単だ。俺達能力者は、全て演算によって能力を行使している。つまり、何らかの手段で演算を阻害すれば能力は行使できない。 例えば、『然程眩しくない閃光に油断させ、閃光が消えた瞬間に対象者へ無意識に思考空白を発生させる』とか、 『目の焦点を狂わし対象者に思考硬直を起こさせ、攻撃する時に接触する物体に念動力を行使させないようにする』とか・・・ね」 警棒を宙に投げ、取り、投げ、取りを繰り返しながら語る様は、今の戦闘がお遊び程度であることを意味するのか。 「どうする、一厘?珊瑚?もうやめとくか?お嬢様の矜持(プライド)を損ねるのは、俺の本意じゃ無いしな。んふっ!」 心にも無い声が、表情が、態度が自分達の心を不愉快にさせる。その理由が、他の誰でも無い自分自身にあるからこそ余計に。 「まだ・・・まだ行けます!!」 「この程度のこと・・・試練と呼ぶには軽すぎますわ!!」 少女達は立ち上がる。自分達がこうなるのは、心の何処かでわかっていたこと。みっともない姿を晒す羽目になるのも、承知の上。 それでも尚、掴みたい物があるが故に、一厘鈴音と真珠院珊瑚は挑む。 「あっそ。そんじゃ来い。次は、もうちっとマシな姿を見せてくれよ」 そう言って、再び戦闘が始まる。学生寮の庭を賑わす狂騒は、まだ始まったばかりである。 「苧環様・・・!!」 「・・・見ていなさい、月ノ宮。一厘や真珠院が、あの男に挑む姿を」 「界刺・・・!!」 戦闘場所からは少し離れて見学している常盤台生達。彼女達の目に飛び込んでくるのは、自分達と同じ生徒が何度も倒れる姿。それでも立ち上がり、男へ挑んで行く様。 必死。この空間には場違いな空気が、夏の日差しによって湧き上がる熱気と共に色濃くなっていく。 「一厘先輩と珊瑚が・・・圧倒されてる?」 「晴ちゃん・・・」 「なんば圧倒されちょんの、晴天!?今は、あん男の能力ば見極めるチャンスったい!!」 「た、確かに銅街さんの言う通りです。わ、私もしっかりこの目に焼き付けますです!」 今現在はというと、真珠院が念動力で操作していた木を4つに折って挑み、隙あらば界刺に接触しようと果敢に攻めていた。 一厘は、真珠院をサポートするために『DSKA―004』の他にも操れる物体を動員して界刺の行動を阻害しようとする。 「これで、あの殿方も!!」 「いえ、何だか作為的な雰囲気を感じる・・・。これは・・・」 「罠・・・か!?」 「すごい・・・」 だが、それはまたしても光のコピー。少女達の攻撃は、虚しく空を切る。土煙が、盛大に舞い上がる。 「クッ!!」 「界刺さんは何処・・・!?」 少女達は不可視状態に身を置く界刺を探すために聴覚に集中するが、それは自分達の攻撃が起こした音のせいで無意味も同然だった。 一厘は、界刺と1人で相対する“恐怖”に無意識の内に急かされ、真珠院に駆け寄って行く。 「真珠院!ここじゃ、周囲の音が聞き取り難いわ。早くここから・・・」 「そうは問屋が卸さない」 「グハッ!?」 真珠院へ駆け寄る途中に、界刺は待ち構えていた。またしても姿を現した界刺の拳が鳩尾に決まり、一厘は束の間呼吸困難に陥る。 「ガハッ・・・!!」 「一厘先輩!?」 「そして・・・」 「なっ!?」 ダメージによって身動きが取れない一厘を担ぎ上げ、真珠院へ突進する界刺。真珠院は、一厘が居るために攻撃することができない。 「仲良くご一緒に!!」 「クッ!!」 突進を喰らう直前に、真珠院は念動力を己に掛けて宙へ逃れる。自分を浮遊させるそれは、高速的な移動こそできないものの、ある程度は自在に操作できた。 「へぇ。さすがは『念動使い』。自分を浮遊させたか。自力で空を飛べるってのは、気持ちいいんだろうな」 「さぁ、これであなた様の打撃系の攻撃は私には届きません!これで・・・」 「んじゃこうする」 「ガアアァァッ!!!」 「い、一厘先輩!?」 真珠院の視線の先に、界刺の右腕で首を極められ左腕と両足まで使ったホールド技により身動きが取れなくなった一厘の姿があった。 「い、一厘先輩!『物質操作』でスタンガンを・・・!!」 「そんな暇を俺が与えると思う?もし向けて来たら、速攻で一厘を“落とすよ”?真刺の首絞めはこんなモンじゃ無ぇけど、俺もアイツからそれなりに習ったしな」 「ぐううぅぅ!!!」 「なので・・・さっさと降りて来い。お前は、一厘が俺から学ぶ機会を奪うつもりなのか?自分のために先輩を犠牲にする。大した後輩だねぇ」 「・・・!!」 真珠院は、界刺の卑劣な行為に憤怒する。あれは、人質を使った脅しだ。あんな人間の言うことに等、この自分が従うわけには・・・ 「・・・成程。お前の考えはよ~くわかった。んじゃ、後輩の犠牲になってね、一厘?それっ!」 「カハッ・・・ガアァ・・・アァ・・・・・・」 「ま、待って!!!・・・わかりました」 いよいよ、一厘は意識が飛びそうになる。その姿を見て・・・真珠院は決断する。それを示すかのように、界刺の前に降りて来た。 「これで・・・よろしいですか?」 「し・・・真珠、院・・・!!」 「あぁ、いいよ。いい後輩を持って、一厘も幸せモンだ。なのによぅ・・・」 真珠院の行動に、顔を歪ませる一厘。その行動に界刺は・・・気を振り向けない。何故なら、自分に迫る危機の存在に気付いていたから。 バオッ!! スッ!! 土煙から現れたのは、長手袋に包まれた手。その手が自分へ及ぶ前に、界刺は一厘へのホールドを解き、その場から離れる。 「・・・後輩の健気な行動を無駄にするのか?」 「あらあら、あんなものは健気とは言いませんわよ?卑劣極まる貴方の脅迫によって、止む無く取った行動ですわ」 「全く。私が電撃を飛ばしていた方が、あの男が怯む可能性は高かったのに。自分がやるって聞かないんだから」 「津久井浜先輩・・・!!苧環先輩・・・!!」 真珠院と一厘の前に立つは、サングラスを掛けた津久井浜憐憫と苧環華憐。2人からは、界刺への敵意に満ち溢れていた。 「あらあら、こんなことなら朝食の際に『発熱爆弾』による制裁を断行するべきでしたわね」 「界刺得世。あなたが言う『いわれなき暴力を振るわない強者』とは、まさかこんな卑怯な真似を平気で行う人間のことを指しているわけ? だとしたら・・・私はあなたのことを思い違いしていたようね。見損なったわ!!」 津久井浜からは熱気が浮かび上がり、苧環からは電流が迸る。その様を見て、界刺はある提案をする。 「あっ!そういえば、1つ言うのを忘れてた。お前等が参戦してもいいって言ったけど、少し条件を付けさせて貰うから」 「はぁ?条件!?」 「そう。苧環!お前は、電磁波による物体感知ってできる?」 「そ、そりゃあできるけ・・・!!まさか・・・!!」 「そう。そのまさか。お前、その能力は使用禁止な」 電磁波による物体感知。これを禁止させられると、苧環は不可視状態の界刺を見付けることが困難になる。 「あなた・・・!!そんな都合のいいことをこの私が受け入れるとでも!?」 「苧環!お前は、こんな卑劣な真似をした俺を・・・まだ信じられるか?」 「えっ・・・?」 界刺が苧環に向ける視線には、一切の曇りも嘲りも無かった。その瞳が、その視線が苧環の瞳を射抜く。 「何で俺がお前にそういう条件を付けるのか・・・。その意味は、今の時点じゃわからないだろうけど。俺も言うつもりは無いしね。 苧環。お前が知る俺っていう人間は・・・自分に都合のいいだけのことをするような人間なのか?」 「・・・!!」 『意味』。界刺が自分の能力の一部を制限する『意味』。 この言葉から連想するのは・・・界刺がただ単に、自分達へ力の差を見せ付けるために動いているわけでは無いということ。 人質を使った脅しという卑劣な真似をしてでも一厘や真珠院を追い込んでいるのには、界刺なりの理由があるということ。 これは・・・『いわれある暴力』。少なくとも、苧環はそう受け取った。故に、苧環は数秒後に決断を下す。 「・・・ふぅ。仕方無いわね。わかったわよ。あなたの言う通り、電磁波による物体感知はしないでいてあげる。但し、それ以外の能力はふんだんに使わせて貰うわよ?」 「どうぞ。お好きなように」 苧環の了承を聞いた界刺は、その場から離れる。仕切り直しというわけだ。 「あらあら、良かったの、苧環さん?あんな卑劣漢の言うことなんか聞き入れてしまって」 「・・・あの男なりの考えがあるみたいだし、卑劣漢かどうかはそれを見極めてからでも遅く無いと思っただけよ」 津久井浜と苧環が会話する中、真珠院は座り込んでいるボロボロな一厘に駆け寄る。 「一厘先輩!大丈夫ですか?」 「な、何とか・・・。やっぱ、界刺さんは容赦無いね。・・・私のことを、女として見ていないのかも(ボソッ)」 「あら、何か仰られましたか?」 「え?ううん、何でも無い。それにしても、あの不可視状態って本当に厄介よね。私達の攻撃が、悉く空振りに終わっちゃう」 「えぇ。苧環先輩の感知能力も禁止されましたし・・・。どうやって得世様の位置を見破るかが最重要課題ですね」 一厘と真珠院は、束の間の休憩時間に頭を働かせる。自分達が大々的に攻撃すれば、その音で不可視状態に居る界刺の足音を消してしまう。これでは、話にならない。 「一厘先輩の能力で、得世様を操作することは・・・ハッ!!」 「・・・私の『物質操作』は15kg以下の物体しか操作できないからさ、人間で操作できるのは赤ちゃんくらいなんだよね」 「そ、そうでしたね・・・。余計な質問をして申し訳ありませんでした」 真珠院は、自分の口から出た“できもしない願望”に歯噛みする。自分は、一厘の能力について事前に説明を受けていた。 なのに、聞いておきながらも出てしまった自分の言葉に、感情に愕然とする。これでは、あの男の言った通りではないか。 「そ、そんなこと無いって!こういう自己分析は大事なん・・・・・・」 「・・・一厘先輩?如何されましたか?」 真珠院は、自分へ向けた言葉を中断させた一厘を疑問に思う。何故なら、一厘の表情が驚愕に満ちていたからだ。 『リンちゃん。君は涙簾ちゃんと組んだこともあったでしょ?あの時、君はどう思ったの?』 「(私は・・・私は、とんでもないことに今まで気付いていなかったんじゃあ!!?)」 一厘は、高速で思考を纏め上げて行く。自分の能力、自分の経験、自分への言葉etc。それ等全てを纏めた後に・・・“試す”。 「ッッ!!!」 それは、確かな手応え。それは、今まで自分が思いもしなかった事実、否、気付いていたのに無意識の内に無視していた事実。しかし、それは紛れも無い現実である。 「一厘先輩・・・?」 「真珠院・・・。不可視状態に居る界刺さんを見破る方法を思い付いたよ」 「ほ、本当ですか!!?」 「うん。これなら・・・きっとイケる。ううん、絶対にイケる!!それに・・・真珠院の能力を活かす方法も思い付いた!!」 「ッッ!!そ、それは・・・?」 「え~とね・・・」 一厘と真珠院は、戦闘再開前まで作戦を練り続けた。何時の間にか、一厘の瞳に輝きが戻っている。彼女は、心の中で固く決意する。 散々自分を痛め付けてくれた借りを、ここで返す。自分を駄目出ししまくった男に、目に物を見せ付けてやる。 そんな一厘の自分へ向けて来る視線に気付いた界刺は・・・口の中だけで笑った。 「そんじゃ、仕切り直しと行こうか?1対4か。中々にしんどくなって来たかな?」 「あらあら、さっきまでの威勢のいい態度は何処へ行ってしまわれたのですか?そして・・・そんなことを言った所で貴方への制裁は止まることはありませんことよ?」 「こんな機会は滅多に無いし。今日は、存分に暴れさせて貰うわよ!!」 「真珠院・・・。段取り通りに。私達は後方でタイミングを探るよ?」 「わかりました」 そう各々が言葉を交わした直後に、戦闘が再開される。初手は、苧環。 「ハッ!!」 苧環の放った高圧電流が界刺を貫くが、これもまた光のコピー。そして、それは苧環の予想通り。 「津久井浜!!」 「あらあら、そんな大声を出して・・・はしたないですわよ?」 そう無駄口を叩きながらも、津久井浜は地面に手を置く。己が能力『発熱爆弾』を発動させるために。 ドゴオオーン!! 急激な発熱による体積の膨張を利用した爆発。角度や温度上昇等を調節して引き起こされた爆発は、方向性を持って広範囲に渡って地面を吹き飛ばす。 しかし、完全には制御できないらしく自分達にも巻き上げられた土が降って来る。 「ちょ、ちょっと!!あなた、何味方も巻き込んでいるのよ!?」 「あらあら、爆発自体には巻き込んでいないのですから、このくらいは大目に見て下さいな。あの卑劣漢への制裁には、このくらいが丁度いいのですよ?」 苧環の文句にも、平然と受け答えする津久井浜。彼女も彼女なりに、界刺に対して警戒している表れか。 「ひっでぇな。後でバカ形製に怒られちゃうじゃないか」 「「!!」」 とそこへ、土を体の所々に被った界刺が姿を現して近付いて来た。遠距離では『発熱爆弾』にいいようにしてやられると判断したからか、界刺は接近戦を仕掛ける。 「接近戦で、私をどうとでもできるなんて思わないでよ!!」 「うおっ!?」 危うく界刺が交わしたそれは、苧環が作り出した砂鉄の剣。生身に喰らえば唯ではすまない切れ味に、鳥肌が立つ界刺。 「あらあら、余所見はいけませんわ?」 「ぬおっ!?」 砂鉄剣に気を取られた界刺に後方から、手を伸ばして来る津久井浜。彼女に触れられれば一巻の終わり。 それがわかっている界刺は、すぐさま横っ飛びによって津久井浜の魔手をかわす。 「そして・・・気を抜いても駄目ですわ」 「!!」 界刺の目に映るのは、津久井浜が地面に手を置いている姿。数秒後にあの爆発が自分を襲う。そう判断したが故に、『光学装飾』による演算の阻害を敢行する。 グルグルグル 「なっ!?」 廻る周る世界が回る。それは、まるで万華鏡。様々な色や形を成す光が像が、反射に次ぐ反射を、屈折に次ぐ屈折を重ねて束ねてグルグル回る。 津久井浜のサングラス越しに―加えて顔とサングラスの隙間から―瞳へ入る可視光線を操作し、界刺は津久井浜の平衡感覚を狂わせる。 「!!・・・ウッ!!」 「津久井浜!?」 平衡感覚を狂わされ急激に気分が悪化した津久井浜は、口に手をやりその場に蹲る。その姿に驚く苧環を狙い、界刺が疾走する。 「このっ!!」 苧環は、界刺に向けて即座に電撃を飛ばそうとするが、その直線上には蹲る津久井浜が居るため躊躇する。もし界刺にかわされれば・・・ 「『津久井浜に当たる』ってか?」 「!!」 自分の躊躇を看破された。苧環は焦りのままに砂鉄剣を振るうが、 スカッ!! 「なっ!?残像!?」 砂鉄剣が当ったと思った―そして、空を切った―それは、光の残像。 界刺は、苧環へ突っ込むと見せ掛けて、疾走の途中から光のコピーを走らせていた。自分を不可視状態にして。 残像と入れ替わったタイミングは、苧環にもわからなかった。それ程までに見事な交代劇。これは、穏健派救済委員の1人である啄鴉から習った光の幻惑術(体重移動編)。 コピーを出すタイミングや場所、そこに界刺流のオリジナルを加えた残像を“素通り”して、不可視状態を解いた界刺が今度こそ苧環に突っ込んで行く。 「甘ぇ!!」 「ガハッ!!」 砂鉄剣を避けた界刺が手に持つ、絶縁性付き警棒による突きが苧環の胸の中心へ放たれた。今の界刺の基準は、昨夜戦ったあの殺人鬼の速度である。 それに届かない者に対処することは、今の彼にとっては容易であった。砂鉄剣が、唯の砂鉄に戻る。 吹っ飛び地面に倒れ込みながらも、苧環は電撃を放とうとする。しかし・・・ 「きっとだけど、今の状態じゃあそれって当らないぜ?」 「はっ!?」 それは、界刺が看破したもう1つの事実。 「お前等『電撃使い』は、日常的に電撃を放つ訓練をしているわけだろ?ってことはだ・・・電撃を放つ時にどうしても出るんだよなぁ。体に染み付いた癖ってのが」 「癖・・・!?」 「そう。例えば眉間に皺を寄せたりとか、思わず拳を握り込むとか、そんな癖。つまり、体のどこかに力が入るんだよ。そして、それによる僅かな体温変化を俺は見逃さない」 「・・・!!」 サーモグラフィを行使して、対象者の体温変化を見極めることで行動予測を立てる。界刺自身、この方法は今まで余り使って来なかった。理由は疲れるから。 それを日常的に使えるよう訓練するようになったのは、救済委員の1人である雅艶総迩に完敗したあの日の出来事が切欠である。 「逆に、俺はそんな前兆を感じさせる真似は一切見せねぇ。これでも、『光学装飾』で少しは操作してるんだぜ? お前等に俺の挙動を察知されないように。最低限レベルだけど」 「(!!・・・ということは、さっきの焦ったような顔は・・・)」 自分の砂鉄剣を危うくかわした界刺の焦った顔。あれは、『光学装飾』で作っていたとでもいうのか? 「姿を消していないからって油断するなよ?もし、お前が電磁波による物体感知をしていたとしても、俺は次のペテンを仕掛けるぜ? それに、幾ら雷の速度っつっても放つのは人間だ。その人間が放つタイミングさえわかれば、避けることもできなくは無いんじゃないか? ちなみに、俺が光を放つタイミングはわかんねぇだろうけどな。理由はさっき述べた通り。 その上、サングラスをしていても俺の『光学装飾』は防ぎ切れない。ってことで・・・苧環。お前は俺に勝ち目無ぇよ・・・!!」 「(!!ま、まさか・・・本当に・・・?私が初撃で電撃を放った際に、界刺は私の癖や電撃を放つタイミングを看破したって言うの!?)」 界刺のカミングアウトに、苧環は息を飲む。何時の間にか、暑さによる汗では無い何かが背中を流れる。 「(さ~て、苧環さん。さっさと降参してくれ!!確かに癖っつーか体温変化はわかるけど、俺だって実際に電撃をよけたことなんて無ぇし!! 頼むから早く引き下がってくれ!!)」 対する界刺も冷や汗ダラダラ状態である。『光学装飾』を使うことで、そんな素振りは一切見せていないが。 つまり、界刺お得意のペテン―リンリンが言う所の『詐欺話術』―である。 「それにさ、早く津久井浜を看病しなくていいの?あの娘、今もグルグル状態だし」 「くっ・・・。・・・わかったわ。この勝負、私と津久井浜の負けよ」 「そうかい。んふっ、それが賢明だ。(ふぅ~、よかった!!助かった!!!)」 苧環の言葉に、安堵する界刺。俯く苧環が、津久井浜の下へ行くために界刺の脇を横切ろうとする。それが・・・この男にできた唯一の隙。 ガッ!! 「ぐっ!?」 「でも、あの娘達の戦いはまだ終わっていないわよ!!」 苧環からの手助け。界刺が持っていた2つの警棒の内、左手にあった警棒を宙へ飛ばすため、苧環は界刺の左手に右アッパーを繰り出す。 「苧環!!」 「隙を見せたあなたが悪い!それに、電撃や砂鉄みたいに目に見えやすい攻撃に気を取られていたんじゃないの!?」 苧環の一撃を喰らい、警棒が宙に浮く。それを、少女は見逃さない。 「苧環!!ありがとう!!」 一厘鈴音。15kg以下の物体なら接触せずに操作できる念動力系能力者。その彼女が、界刺の持っていた警棒に己の念動力を掛ける。 「くっ!!」 「一厘先輩!!」 「苧環の助けを無駄にしないわよ、真珠院!!さぁ、行くわよ!!」 「はい!!」 界刺に奪い返されないように、即座に自分達の方へ警棒を引き寄せる一厘。真珠院と一緒に考えた作戦が・・・いよいよ敢行される!! continue!!
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「ふぅ。うまかった。さすがは菜水オススメのランチだ。さ~て、昼寝でもしようかな?」 「ねぇ。さっき言ってた電撃の回避の件だけど、よく考えたら周囲一帯に電撃を放てばあなたに避ける術は無いんじゃないの?」 「・・・・・・」 「やっぱり・・・!!」 「ま、まぁいいじゃん。もう終わったことだし」 「よくないわよ!!」 ここは、先程まで戦闘を繰り広げていた庭の一角。気持ちいい風も吹き、木陰揺らめくその下で、界刺は横になっていた。今から昼寝タイムへ突入する腹積もりなのだ。 「あのさぁ、苧環。俺は今から昼寝タイムなの。いい加減ゆったりとした気持ちで過ごしたいの。君もそう思うだろ、嬌看?」 「ビクッ!そ、そうですね・・・」 現在界刺の隣に居るのは、界刺の嘘に騙された苧環と界刺の傍に居たいがために付いて来た鬼ヶ原の2人。他の女性陣は、界刺が無理矢理追っ払った。 「折角バカ形製達を追っ払ったんだからさ、もう少し静かにしてくんない?そうだ、君も昼寝するといい。きっと、気持ちいいぜ?」 という具合に会話した結果、鬼ヶ原、界刺、苧環という“川”の形で寝転がることになった。 「ふぅ。風が気持ちいい・・・。成瀬台に通ってる時は、屋上とかでよく昼寝してんな~。ここは、そこに負けず劣らずって感じかな」 「確かに・・・気持ちいいですね」 「・・・そうね」 日差しは尚も周囲に強く照り付けるが、昼食中に寮の職員が水でも撒いたのか比較的涼やかに過ごせるようになっていた。 「・・・ねぇ」 「ん?」 「・・・あなたには、一厘に“あの”能力が備わっていることがわかっていたのよね?」 「・・・あくまで予想でしか無かったけどね。制限とかがある場合は、逆にそれを逆手に取れる可能性があるから。そこら辺を考えていたら、ぱっと思い付いたな。 まぁ、あれほど精密に識別できるとは思わなかったけど。さすがは、リンリンってトコかな?」 「・・・あなたらしい」 苧環は、言葉以上に感嘆していた。一厘が見出した、『物質操作』の制限を利用した物体感知術。 この男は、それをいとも簡単に思い付いた。だからこそ、その可能性を一厘に気付かせ掴み取らせるために、自分に対して電磁波による物体感知を禁止させたのだ。 「もしかして・・・一厘の目の前で私の物体感知方法を禁止することを話したのも、一厘にそちらの方へ意識を振り向かせるため?」 「まぁ、その前から散々不可視状態でリンリンと珊瑚ちゃんを苦しめていたんだけどね。そうすれば、俺の居場所を知る方法がないかって嫌でも考えるだろうし。 それでも中々“あの”可能性に気付かないから、君の参戦を機に言葉に出しただけ。 もっとも、君に電磁波による物体感知をしてもらっちゃあ困るから、結局は言っていただろうけど」 「・・・界刺様って、すごいんですね。色んなことを考えて、それを実行しちゃうんですから」 「それは違うよ、嬌看?これは、すごいことじゃない。当たり前のことなんだ。自分の能力を把握した上で、自分が伸ばしたい方向へ向けて訓練する。 授業とかでも習うでしょ?それができないってのは、そいつが根本的にバカなだけ。もちろん、君の『発情促進』だって例外じゃ無い」 「えっ!?」 界刺の言葉に、鬼ヶ原は思わず振り向くが碧髪の男は目を瞑ったままだ。 「君の『発情促進』だって、本当はもっと有効的な活用方法があるかもしれない。 君のことは珊瑚ちゃんに聞いたけど、その様子だと『発情促進』は滅多に使わないんじゃ無い?」 「・・・はい。『発情促進』は異性・同姓問わず発情してしまうので。殆ど使ったことは無いです」 『発情促進』を行使すれば、異性・同姓問わず自分に発情してしまう。 それ故に、鬼ヶ原は能力行使を控えるようになり、ほぼ制御できる今でも滅多なことでは使うことは無い。 「そんなんだと、何時まで経っても弱点は克服できないぜ?それとも、君は『発情促進』の弱点を克服したくないの?」 「し、したいです!!で、でも・・・」 「・・・だったらさ、頑張んなきゃ。自分の能力に自信を持つためにも。自分自身に自信を持つためにも。 君含めて、俺が最近会った女連中はどいつもこいつも『私には自信が無い』とか『私はいらない人間だ』とか『私は○○失格だ』とかばっか叫んでる。 俺からしたら、どいつもこいつもぶん殴ってやろうかと思うくらいムカつく連中ばかりだ」 「「!!」」 心当たりがある鬼ヶ原と苧環は、ピクっと反応する。 「何でそんなに自信が持てないかね?ホント“自分”が可哀想だぜ?『まだ力はあるぜ』とか『もっと頑張れるぞ』とか“自分自身”が言ってるかもしれないのに。 自分のバカっぷりのせいで、碌に“自分自身”を見ようとしない、聴こうとしない、そもそも気付きもしない・・・アホか? そんなに自分のマヌケっぷりを披露したけりゃ余所でやれ。1人でやれ。そいつ等は他人に頼る前に、まず“自分自身”に頼れよって話だ」 界刺の厳しい言葉が、涼やかな空気を冷たいものに変貌させる。 「本当にやること全部やって、それでも八方塞がりならその時は他人を頼ればいい。 まぁ、現実ではそれを貫き通すことは無理かもしれないし、俺だって気軽に人を頼ることは幾らでもあるけど、 それでもここ一番って時に信じようとするのは“自分自身”だ。自分を、“自分自身”を信じてくれる他人だ。 それを有耶無耶にするってんなら・・・そいつは救いようが無ぇ大馬鹿野郎だ。 今回のリンリンと珊瑚ちゃんの場合は、彼女達自身が何とか踏み止まったから、俺も手助けしたけどね。だから、嬌看。君は、ここが踏ん張り所なんだよ?」 「ここが・・・!!」 「そう」 鬼ヶ原は、界刺の言葉をゆっくりと咀嚼する。その意味を、1つたりとも零さないために。ここが、自分の分水嶺が故に。 「例えばさ、君の友達とかに頼んで『発情促進』の相手役になってもらうってのはどう?」 「えぇ!?そ、それは・・・」 「今の俺は、君の『発情促進』が効かないから意味ないし」 「でも・・・」 「うん?もしかして・・・友達とか居ないの?」 「・・・はい。金束先輩や、真珠院さんとは少しくらいはお話するんですが、友達とまでは・・・。 一応私も派閥には入っているんですけど、能力のせいか余り親しくは・・・。私もこんな性格なので・・・。 慕っている先輩も居るには居るんですけど、あの方を実験台にするわけにはいきませんし・・・」 「・・・苧環。派閥の長である君に聞きたいんだけど、派閥間の対立とかってあんの?」 「・・・対立とまでは行かないけど、閉鎖的な傾向はあるわね。それぞれ興味を持った分野が切欠で派閥を形成することもあるし、友達感覚な派閥もある。 千差万別という言葉通りね。だから・・・確かにあなたの言う対立も有り得るかもしれない。下級生を自分の派閥に入れるために、あの手この手を使ったりとか」 「派閥に所属する人数や能力者のレベルを自慢したりして、それに他の派閥が反発するとか?」 「それも有り得る」 派閥の長たる者として、苧環は自身の経験を元に言葉を発する。界刺も、自身の考えを述べる。 派閥に関して少しだけ議論した後に、誰もが静かになる。場に沈黙が訪れる。 「・・・・・・」 「・・・何を考えているの?」 「・・・大したことじゃ無いよ」 「・・・嘘、ね」 未だ目を瞑ったままの界刺に、苧環が体を、顔を寄せて行く。 「形製も言っていたけど、あなたは本当に嘘を付くのがうまいわね。自分の本心を悟らせない。『光学装飾』で、自分を偽るように」 『光学装飾』。この能力は、界刺得世という男にふさわしい能力だと苧環は思う。 光で装飾し、言葉で惑わし、ありとあらゆるものを騙す彼を象徴しているかのような能力。 「さっき言ってた私達女性への文句や愚痴も、本心であって本心では無い。だって、あれだけが本心なら、あなたはとっくに私達を見限っている筈。違う?」 「・・・さぁね」 「・・・きっとだけど、あなたが女性不信になってでも見限らなかったから救われた女性は沢山居る筈よ? 少なくとも、私はそう。私は、あなたに救われた。私は・・・あなたに感謝している」 苧環は、自身の本音を語る。この男が自分を含めた女性に苦しめられた事実に心を痛めながら。 「だから・・・ごめんなさい。あなたが苦しんでいることに、これっぽっちも気付けなかった。私は・・・あなたの言う通り大馬鹿野郎よ」 「・・・いいよ。もう終わったことだし」 「・・・それも、嘘。あなたってつくづく厄介ね。本当に大事なことは、絶対に誰にも明かさないんだもの。 形製が『分身人形』を仕掛けようと躍起になるのがわかる気がするわ」 「だったら、俺と関わらなければいい。そうすれば、君等が不快になること・・・ムグッ!?」 「・・・あなたの言葉なんて信じない。だって、どれが本当でどれが嘘なのかわかんないんだもの」 界刺の口を塞いだのは、苧環の人差し指。何時の間にか彼女は身を起こし、界刺の頭の横に正座していた。 「ハッ!!」 「!?」 掛け声と共に、苧環が界刺の頭を掴んで自分の膝の上に置く。 「お、おい!?」 「あなたは、ここに昼寝をしに来たんでしょ?でも、この芝生・・・何だか寝心地が悪いわ。私の感想だけど」 「まさか・・・!!」 「あなたが私達のせいで女性不信になっているというのなら、それを治すのも私達がやらないと。 私も、あなたのそんな状態なんて望んでいないわ。この私が女として扱われない?・・・屈辱だわ」 苧環の目が妖しく光る。つまり、苧環は界刺を膝枕すると言うのだ。そして、自分の膝の上で昼寝をしろと言っているのだ。 「い、いや、何かこっから更に酷い展開になりそうだから遠慮しとく!!経験上!!」 「駄目よ。それに・・・そんな経験なんてこの苧環華憐が塗り替えてあげる」 「(な、何か恐ろしい意味にしか解釈できないんだけど!!)」 界刺は何とかして苧環の膝枕から脱しようとするが、苧環が無理矢理抑え付ける。 「それに、こういうのは私から始めたんじゃ無いから。全ては、鬼ヶ原の“間接キス”から始まったんだから」 「!!」 「か、“間接キス”!!?ハッ!!ま、まさかあのミネラルウオーターは・・・!!?」 界刺は冷や汗ダラダラ状態で、鬼ヶ原へ視線を向ける。頼むから否定してくれ!!そんな男の願い虚しく・・・ 「・・・私の初めてですからね、界刺様?」 「Noォォォォォォッッッ!!!!!」 「さぁて。それじゃあ、私も遠慮無く行かせてもらおうかしら」 「あ、あの!!わ、私も・・・」 「へっ!?」 「へぇ・・・。クスッ。いいわよ、あなたも来なさい。早くこの男の女性不信を治療してあげないと」 「ど、どういう意味・・・!!?」 視線を横に向けると、そこには鬼ヶ原が正座している姿があった。その膝の先が、苧環の膝と膝の間に入って行く。これは・・・ 「よかったわね、界刺?常盤台が誇る美少女2人による“W膝枕”だなんて、普通の男子高校生には体験できない代物よ?」 「か、界刺様・・・。ど、どうぞ・・・!」 「(『どうぞ』っつったって!!俺は今女性不信状態なんだっつーの!!女性的なことを意識しちまうと・・・Noォォォォォッッッ!!!)」 美少女2人の膝の感触が、界刺の触覚を襲う。それに次いで、少女達から香る匂いが界刺の鼻腔をくすぐる。これは、ヤバイ。“女”をどうしても意識してしまう。 界刺の頬が僅かに朱に染まり始めたのを目に映した苧環と鬼ヶ原は、瞬間的に自分達の大胆な行動を改めて捉え直す。 その途端に2人共に羞恥心が頭をもたげたのだが、界刺の女性不信症を治す絶好の機会を逃すわけにはいかない等々、様々な理屈を付けて自分自身を無理矢理納得させる。 「こ、ここ、こういうのは、あ、ああ、案外ショック療法がい、いい、一番こ、ここ、効果的だったりす、すす、するのよね!! つ、つつ、つまり、か、かか、界刺をお、おお、おおお・・・・・・・・・“女”へ発情させればいいのよ!!!ハァ・・・ハァ・・・!! け、けけ、結構は、はは、恥ずかしいけど、か、かか、界刺のた、たた、ためなら・・・!! あ、ああ、あの“行為”をし、しし、しようとしたら、で、でで、電撃でこ、ここ、行動不能にす、すす、すればいいんだし!!」 「そ、そそ、そうですね!わ、わわ、私もか、かか、界刺様と出会ったショックで、す、すす、少しは男性不信がか、かか、解消され始めているみたいですし!! か、かか、界刺様のためなら・・・わ、わわ、私もしゅ、しゅしゅ、羞恥なんかき、きき、気にしてい、いい、いられません!!」 「(し、知るかー!!それはそれ。これはこれだっつーの!!お、お前等に俺が発情してどうすんだー!? こいつ等、後先全然考えて無ぇ!!くっ、何とかここから・・・ムグッ!?)」 「ほ、ほほ、本当にお、おお、往生際がわ、わわ、悪いわね?か、かか、観念なさい? そ、そそ、そうね・・・。こ、ここ、これだけじゃ、い、いい、今のか、かか、界刺にはふ、ふふ、不十分かも・・・。 こ、ここ、こうなったらお、おお、思い切って・・・(ゴソゴソ)・・・え、ええ、えええぇぇいっ!!!」 「(なっ!?)」 界刺の顔面左から押し付けられたのは・・・苧環の慎ましい胸。 (ブラウスのボタンを外して、多少はだけた状態にしている)。 「スゥ~。ハァ~。スゥ~。ハァ~。・・・私もやってみようかな。・・・(ゴソゴソ…ブチッ!ブチッ!)・・・あっ!・・・し、仕方無いか・・・。んしょっ!!」 「(な、何ぃー!?)」 界刺の顔面右から押し付けられたのは・・・鬼ヶ原の爆発しそうな胸。 (ブラウスのボタンを外して多少はだけた状態にする筈が、途中でボタンが吹っ飛んだため普通にはだけている) 「・・・何だか嫉妬しちゃうわね、その胸」 「・・・でも、重いですよ?肩がこっちゃいますし・・・」 「・・・勝者の余裕を感じるわね」 「そ、そんなつもりは・・・」 「(というか、お前等どけ!!息がしにくい!!ってか、こいつ等の汗が俺に落ちて来る!!そもそも、クソ暑ぃー!!こんなんで、昼寝ができるかよ!!!)」 周囲を覆う暑さと男性へ己が胸や膝を押し付けている羞恥心からか、苧環と鬼ヶ原の顔は真紅に染まっていた。とはいえ、先程よりかは冷静である。 一度行動さえしてしまえばというヤツなのか。やはり、女は度胸なのか。 「ハァ・・・ハァ・・・。ンハアァッ・・・ハァ・・・ハァ・・・」 「ハァ・・・ハァ・・・。ングッ・・・ハァ・・・ハァ・・・」 「(ちょ、ちょっと待て!!お、俺を発情させるんじゃなかったのかよ!?お前等が発情してどうすんだ!!?言ってることとやってることが全然違ぇー!!!)」 2人の顔から界刺へ向かって、幾粒もの汗が零れ落ちる。興奮しているためか荒くなっている吐息が、界刺の瞼や耳に何度も掛かる。 また、2人揃って前屈みになっているせいか、界刺の視線上には2人の胸の谷間がくっきりと見えてしまっている。その頂点にある“モノ”も、僅かながら瞳に映る。 加えて、そこから漂ってくる甘い“女”の香りが否応無しに鼻腔を刺激する。口だけで息をしようにも、苧環が左手で塞いでいるためそれも叶わない。 更に、苧環の右手が界刺の左耳や碧髪を妖しく愛撫し、鬼ヶ原の右手が界刺の首や胸板を、左手が界刺の右耳やうなじを優しく愛撫している。 正に、(界刺にとっての)地獄である。 「ハァ・・・ハァ・・・。ングッ・・・これで、界刺の女嫌いが少しはマシになるといいんだけど・・・。今度は・・・耳朶でも口に含んでみようかしら?はむっ!」 「ハァ・・・ハァ・・・。ゴクッ・・・きっと、いけますよ。こんな私でさえ、界刺様のおかげで少しずつ良くなっているみたいですから。 何事も訓練あるのみ・・・です!それじゃあ私も・・・。はむっ!」 「(Noォォォォォッッッ!!Noォォォォォッッッ!!!)」 少女達は知らない。例えそれが迷惑では無く純粋な善意からの行動であったとしても、本人の了解が無ければ何の意味も無いこともあるのだ。 それから1時間もの間、界刺はこの“女”地獄を味わい続けた。もちろん、昼寝はできなかった。『ウソツキには罰が当たる』とは、まさしく至言である。 continue!!
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「ちょっと待ったあああああぁぁぁっっっ!!!!!」 「『たかが』?フフフッ、何も知らない部外者が・・・舐めた口を・・・!!!」 「あらあら、矜持の高い人間を怒らせてしまいましたか。わたくし、そんなあなた様がすっごく恐いですの・・・んふふっ・・・!!!」 フィーサと界刺の応酬が止まらない。特に、界刺はお嬢様口調を交えて応酬しているせいか、剣呑とした空気が更に冷たさを増す。 「ちょ、ちょっと待ったあああああぁぁぁっっっ!!!!!」 「フフフッ・・・!!本当に貴方という方は・・・。これは、私自らの手で然るべき懲罰を与えなければならないようね」 「“素人”の君が?俺に?んふふっ・・・。それは、無理なんじゃないかなぁ」 フィーサの瞳が敵意に満ちる。表情が怒りに染まる。そんな少女を値踏みするかのうように、碧髪の男は胡散臭い笑みを浮かべながら視線を送る。 「あ、あれ?だ、だから・・・ちょっと待ったあああああぁぁぁっっっ!!!!!」 「無理かどうかは・・・戦ってみなければわからない!!いいわ。貴方の“講習”への招待、承りましょう。フフフッ、そこで完膚無きまでに叩き潰してあげる!!!」 「・・・・・・んふっ」 宣言する声色に憤怒が混じる。見下された視線が、軽んじられた声が、フィーサの心を苛立たせる。対する界刺は、一言の笑い声を零すだけに留まった。 この瞬間、午後の“講習”にフィーサ=ティベルとマーガレット=ワトソンの参加が決定した。 「・・・うううぅぅ・・・!!む、無視すんなやコラアアアァァァッッ!!!!!」 「・・・・・・で、さっきから何なのかな、“常盤台バカルテット”?何か用?」 界刺は、ようやく視線をフィーサから横に居る金束へ向ける。 先程から大声を挙げていた金束だったが、界刺達からガン無視されまくっていたので、遂には界刺の横にまで来て大声を挙げている。 「晴ちゃんを無視し続けるなんて・・・やっぱりあの人は氷像にしてあげた方がいいみたいですね~♪涼しいでしょうし~♪」 「そ、そりば言ったらフィーサも同じじゃなかと?」 「金束さん・・・ファイトです!!」 少し離れた所からは、銀鈴、銅街、鉄鞘がこちらを覗き見していた。どうやら、金束の威勢の良さに全てを託しているようである。 嫌な役割を押し付けたと言ってはいけない。金束本人は気付いていないのだから。 「ムフフ。アタシ達がここに来た目的は1つ!!界刺得世!!アタシ達と勝負しなさい!!」 「嫌。面倒臭い」 「ガクッ!!」 金束の対戦要望を即断で拒否する界刺。理由は面倒臭い。これは、界刺本人の嘘偽りの無い本音である。 「な、何で即答なのよ!?す、少しは考えてくれてもいいじゃない!!?」 「だって、先約が居るし」 「フィ、フィーサ?こ、ここはアタシ達に任せて・・・」 「この男は私の手で潰すと決めておりますの。余計な真似はしないで頂戴、金束・・・!!?」 「うっ・・・メッチャ怒ってる・・・!!!」 フィーサの言葉に、凄まじい棘があるのを感じる。何を隠そう、この2人(=他の“バカルテット”も)は同級生である。 一見しただけでは、とてもじゃないがそうは見えない。貫禄の差があり過ぎる。 「な、得世様。す、少しくらいは金束様のお願いをご考慮して頂けませんか?」 「珊瑚ちゃん・・・」 そんな最中に界刺に話し掛けるのは、赤髪の少女。真珠院珊瑚は金束の方を向いて、そして界刺に言葉を投げ掛ける。 「金束様や、銀鈴先輩、銅街先輩に鉄鞘先輩はいずれもレベル3以上の能力者。きっと、得世様のお眼鏡に叶う方々だと・・・私は思います」 「珊瑚・・・!!アンタって奴は・・・!!」 思わぬ援護射撃に、金束は顔を綻ばせる。逆に、界刺は真珠院の言葉に今まで疑問に抱いていたことを口にする。 「俺の眼鏡に叶うかどうかはどうでもいいんだけど・・・珊瑚ちゃん。君は、この娘に肩入れするわけだ。 そういえば、君ってこの娘にだけ『様』付けするよね。他の上級生には『先輩』呼びなのにさ。何か、過去に助けられた的な借りでもあるのかい?」 「は、はい!金束様には、以前助けて頂いたことがありまして。それ以来、『金束様』とお呼びさせて頂いております」 「ア、アタシとしては『様』付けで呼ばれること自体に悪い気はしないんだけど、やっぱりそう呼ばれるたびに鳥肌が立ったり体が痒くなるのよねぇ」 「(そりゃ、君に全然似合わないからだよ)」 少女達の言葉を聞いて嘆息する界刺。そんな男に気付かずに、少女達は昔と呼ぶ程前では無い話を語り続ける。 「確かあれって6月の上旬くらいだっけ、珊瑚?」 「そうですわ。私が路地裏に迷い込んでしまい、そこで不良とお見受けする方々に囲まれてしまったんです。 何やら怪しげな薬を薦められましたわ。その折に、金束様にお助け頂いたんです」 「ムフフ。アタシの手に掛かれば、あんなスキルアウト(やつら)へ一撃入れた後に・・・逃げ切るくらいワケないわ!!」 「「「「(逃げたんだ・・・)」」」」 遠藤、鬼ヶ原、形製、苧環の4名は金束の言葉に拍子抜けする。金束と真珠院の口振りから、 てっきり少女を襲う暴漢達を見事とっちめたという先入観を抱いてしまったからだ。 「・・・怪しげな薬?」 一厘は、真珠院が口に出したあるキーワードが気になった。それは、彼女が今関わっている“件”に符号するキーワード。 「え~と、何て言ったっけな。人を脅す時によく言うお決まり台詞みたいな言葉の中に、聞き慣れない言葉があったわね。 たぶん、あいつ等が所属するグループの名前だったような・・・。え~と・・・」 「あら、私もそのお名前は聞きましたよ。確か・・・」 「ね、ねぇ!金束と真珠院が遭遇した不良って・・・」 金束と真珠院が、記憶の底に沈めていたあるキーワードを思い出そうと頭を捻る。そして、一厘が2人にある確認を取ろうとする。 もしかしたら・・・。そんな逸る思いを見透かすかのように・・・ 「『ブラックウィザード』か・・・」 目を瞑った碧髪の男が、金束と真珠院を襲ったスキルアウトのグループ名を言い当てる。 「そうそう!確かそんな名前だったわ!見るからに下っ端みたいな雑魚連中のくせに、偉そうな名前を付けたものよね!」 「あら!よくわかりましたね、得世様。さすがは、色んなことをお知りな・・・ッッ!?一厘先輩!!?」 真珠院の視線の先には、界刺の胸倉を両手で掴みかかっている、必死な形相をした一厘の姿があった。 一厘は、以前に界刺達に風紀委員会の情報を教えていた。だが、その時に伝えたのは『シンボル』が風紀委員に目を付けられているということだけ。 現在進行中の案件である『ブラックウィザード』については、何一つ情報を漏らしていなかった(これは、春咲にも伝えられていなかった案件である)。 それなのに、界刺の口から『ブラックウィザード』の名前が出た。ということは・・・ 「界刺さん・・・!!あ、あなたは・・・知っているんですか!?『ブラックウィザード』について!?」 「さぁね。その感じだと、今になって風紀委員が血眼になって捜査してるみたいだね?というか、息苦しいんだけど?」 「ふざけないで下さい!!!ちゃんと・・・ちゃんと私の質問に答えて下さい!!!」 「い、一厘!!どうしたって言うのよ!?お、落ち着いて・・・」 「苧環は黙ってて!!!」 「!!」 苧環の制止も受け付けない、否、誰の声も届いていない。 今一厘の頭の中にあるのは、自分が関わっている“件”―『ブラックウィザード』―の情報を持っているであろう碧髪の男から有益な情報を引き出すこと。 「答えて・・・答えて下さい、界刺さん!!・・・まさか、界刺さんって・・・『ブラックウィ・・・痛っ!?」 「違ぇよ。俺は『ブラックウィザード』の一員じゃ無い。話が飛躍し過ぎだ、リンリン。 苧環の言葉を借りるわけじゃ無いけど、もうちっと落ち着け。チッ、面倒臭ぇ・・・」 興奮していた一厘にデコピンを喰らわし、界刺は仕方無しという雰囲気を露にしながら話し始める。 「おそらくだけど、晴ちゃんと珊瑚ちゃんが関わった不良は『ブラックウィザード』に属する人間だろう。 丁度、“表”の一部に“レベルが上がる”って言う薬が広まり出した時期と6月上旬は符号するし」 「ア、アンタに晴ちゃんって言われる筋合いなんて無いんだけど!!」 「・・・何処でそんな情報を!?」 「蛇の道は蛇って言うだろ?君のような風紀委員が知るようなことじゃ無い。もし知ったら・・・君は風紀委員で居られなくなるよ?」 「・・・!!」 蛇の道。つまり、そういうこと。一厘のような“表”だけに関わるような人間が足を踏み入れるべきでは無い道。 「“レベルが上がる”?何だか胡散臭いね、バカ界刺?君のようにさ?」 「まぁ、胡散臭いってか危険な代物だけどな。実際にレベルが上がった奴も居るって噂だけど、大半はレベルなんて上がりゃしない。金の無駄さ。 しかも、薬の成分に快楽性や中毒性が強い物が大量に含まれているみたいだからね、一度でも引っ掛かったら、薬物中毒一直線。 最悪・・・廃人になって二度と普通の生活には戻れないだろう。よかったね、2人共。もし引っ掛かっていたら、君達は今ここに居ないよ?」 「そ、そんなにヤバかったの・・・アタシ等って!?」 「こ、恐い・・・!!」 界刺の言葉に、金束と真珠院は身を震わせる。界刺の言葉通り、一歩でも間違えた選択を取っていたら、自分達は今ここに居なかったのかもしれないのだ。 「でも、この程度の情報は君達風紀委員でも調べは付いているんじゃないの?」 「・・・薬が広まり出したのが6月上旬ということは特定できていませんでした。 『ブラックウィザード』に関する有益な情報は、どうしてか集り難いんです。それだけ、彼等の隠蔽工作が優れているのかもしれませんが」 「・・・だとすると、やっぱり独断か・・・。それか暴走か・・・。んふっ、肥大化した組織ってのは面倒だね」 「アホ界刺・・・」 「お前の考えている通りだと思うぜ、バカ形製?」 「界刺さん?形製さん?ど、どういう・・・」 「フム。つまりは部下の暴走・・・ということね?」 界刺と形製のやり取りにイマイチ付いていけていない一厘に代わって、フィーサが口を出して来る。 「金束達の話だと、2人が会った『ブラックウィザード』は末端の人間の筈。 そんな奴等を“上”が統制できていない、もしくは統制できなくなり始めている可能性が高い」 「あっ・・・」 「それか、部下は部下でも組織の中枢に居る人間の一部が独断で薬を広め始めている可能性も考えられるんだよ、一厘?」 「そ、そうか・・・」 一厘は、フィーサと形製の分析に思わず頷く。確かに、今まで相当な隠蔽工作をしていた組織が、余りにも下らないことでその情報が漏れ始め出している。 肥大化による組織の腐敗。これは、現実に幾らでもあることだ。 「(この感じだと、桜はあん時の会合の中身を全然聞いていなかったんだな。ま、無理も無ぇけど。自分の姉が救済委員だとわかった直後だったし。 それと、今回の件に関して『軍隊蟻』はやっぱ風紀委員や警備員とは関わっていないようだな。 もし関わっているのなら、『ブラックウィザード』に関する情報をもっと横流ししている筈。 節度あるって言ってもスキルアウトなのは変わんねぇし、馴れ合いは好まねぇか。専守防衛とは、よく言ったもんだぜ。なぁ、“お嬢”?)」 界刺は一厘の様子を眺めた後に目を瞑り、様々な思考を脳裏に浮かばせる。 今思い浮かべているのは、『ブラックウィザード』と抗争中のスキルアウト・・・『紫狼』。 『確かに姐さんの言う通り、昔の「紫狼」はスキルアウトにしては大人し目のグループだったけど、 刺界が言った通りリーダーが代わって以降は戦力を増強しているみたい。縄張りも段々拡大しつつあるって話もある』 『どうやら、以前のリーダーに不満を持つ者も少なからずいたらしいな。それに、今の「紫狼」は加入に能力者のある無しという制限を設けていないようだ。 中には高位能力者も居ると聞く。後、これはあくまで未確認情報だが現リーダーがある傭兵を雇ったそうでな。その男・・・とてつもなく強いそうだ』 『傭兵?もしかして・・・そいつも能力者なの?』 『その当りについては未だ不明だ。だが、その傭兵の力であの「ブラックウィザード」の猛攻を押し返したという情報が幾つかある』 そして、昨夜出会った殺人鬼のこと。 『だが、俺は仕事に無関係の人間は「無闇」に殺さない。その例外があるとすれば、それは俺が興味を抱いたということに他ならない』 「(人を殺す仕事を請け負う。つまり・・・殺し屋や傭兵と呼ばれる部類の人間。確かにあの男なら、単騎で『ブラックウィザード』と渡り合うってのも納得できる。 『ブラックウィザード』の“手駒達”には能力者も結構居るって聞くけど、あいつ相手じゃあ対抗し切れないだろうな)」 凄まじい殺気を撒き散らしながら、自分を殺しに掛かって来た男。もし、あれが麻鬼の言う『紫狼』の現リーダーが雇った傭兵ならば、 麻鬼が掴んだ未確認情報に確かな信憑性を付与することができる。 「(きっと・・・あの男の出現が切欠な気がする。今まで均衡が保たれていた『ブラックウィザード』を、あの男が揺るがした。 そして、秘かに埋まっていた腐敗の種が芽吹き始めたって所か。そんで、その触手が“表”にまで広がり始めている。これは、おそらく誤算であって誤算じゃ無い。 もし、部下が勝手に薬を売り捌く対象を“表”に変更したとしても、それに幹部連中が気付かないわけが無ぇ。 ましてや、自分に害があれば仲間でも躊躇無く切り捨てることで有名な、あの“孤皇”東雲真慈がそんな勝手な真似を許すわけが無ぇ。 つまり、連中にとっても“表”にまで手を伸ばす必要ができたんだ。狙いは“手駒達”の補給と強化。それと、手に入れた金による武装補充って所か。 そんでもって、対象を広げた弊害として風紀委員に捕捉されたって感じか。連中にとっては、中々に厳しい展開だな。・・・『風紀委員にとっても』だけど。 こりゃあ、血で血を洗う大規模な殺し合いに発展しそうだな。リンリンとかは、そんなのに耐え切れるんだろうか?・・・まぁ、知ったこっちゃ無いか。リンリンの問題だし。 推測としちゃあ、大体こんな所かな。やっぱ、あの殺人鬼・・・ただ者じゃあ・・・)」 「刺!!界刺ってば!!」 「うん!?な、何?」 思考の渦に身を委ねていた界刺は、苧環の声によって現実に引き戻される。見れば、他の女性陣も自分に注目していた。 「何って・・・。あなたが急に黙って難しそうな顔をしていたから、声を掛けたのよ。何回呼んでも全然反応しないし」 「バカ界刺。その様子だと、他にも情報を持ってそうだね。この際、一厘に全部教えてあげたら?」 「界刺さん・・・」 苧環、形製、一厘の順で声が掛かる。特に、一厘の声は懇願にも似た色を帯びていた。 「・・・駄目。“サービス”はここまでだ」 「界刺さん!!」 しかし、界刺はこれ以上の“サービス”はしないときっぱりと告げる。その表明に、一厘が抗議の声を挙げる。 「・・・おい、一厘。君は、何か勘違いしてんじゃ無ぇか?」 「か、勘違い・・・?」 「そう。俺は、風紀委員じゃ無い。そんな俺が、何で君達の都合で動かないといけないの?」 「!!」 一厘は、今更のように気付く。自分が相対している男、界刺得世とは一体どういう男なのかを。 「君は、俺という人間をよく知っているだろう?もし俺が君の望むような人間なら、“あの”お嬢さんがあんな目に合うまでほっとかない。違うかい?」 「そ、それは・・・」 “あの”お嬢さん。それは、一厘の先輩風紀委員である春咲桜という少女。彼女は、かつて大怪我以上の傷を負った。 そして、それを界刺は黙認した。自業自得という名の下に。 「『ブラックウィザード』が売り捌く薬なんかに引っ掛かる人間なんてのは、どいつもこいつも今の自分に自信が無い連中が殆どじゃ無ぇの? そんな連中がどうなろうが、俺にとってはどうでもいいことだ。自業自得だしな。勝手に薬物中毒になって、勝手に廃人にでも何にでもなりゃあいい。 まぁ、“レベルが上がる”とか関係無しに引っ掛かった奴については、そうは思わないけど」 聞く人間によっては冷血漢の台詞にも聞き取れる言葉を、界刺は躊躇無く口に出す。 「俺がいざという時に最優先するのは自分だ。間違っても俺以外の人間じゃ無い。 自分のことを最優先に考えられない奴に、他人を助けるなんてことはできない。そう、俺は考えているから。 俺は、他人のためには動かない。全部、俺自身のために動く。俺の信念に従って。俺の信念が正しいことを、この世界に証明するために。 だから、一厘。俺は俺の信念に従って“サービス”終了を決めた。この決断を・・・君が変えられるとでも?俺は、君にとって都合のいい人間じゃないよ?」 「・・・!!!」 一厘は言葉を失う。心の何処かで思っていた。自分は、界刺得世という男のことをもう理解していると。 短いながらも濃密な時間を過ごした自分は、この男をもう理解したのだと。 だが、それは思い違いだった。目の前に居る男の言葉を、今の自分は消化し切れない。 「例えばさ、午前中の“講習”も今から行う“講習”も、根本的に君達のためになんかじゃ無い。俺のためだ。 俺の信念に従った結果、“講習”を開くってことにしたんだ。一厘!珊瑚!俺は、君達のために手取り足取り優しく教えてあげたのかい?」 「・・・優しくなかったです」 「・・・痛みと苦しみを伴いました」 一厘と真珠院は、自分達の体験した“講習”を思い出す。痛くて、苦しくて、幾度と無く倒れた末にようやく光明を見出したのだ。 「そうだろ?他にも、遠藤ちゃんや嬌看には暴力じゃ無いけどかなり厳しいことを言ったし。でも、君達はそれでも自分が成長するためならって受け入れた。 君達は、俺が与えた色んな痛みや苦しみから自分の力で何かを掴んだり学んだりしたんだろ?それは、君達の努力の賜物だ。俺は、切欠を与えたに過ぎない。 だが、“レベルが上がる”なんて胡散臭い薬に頼った連中は、何の努力もしていない。何も苦しんでいない。唯の“負け犬”も同然さ。 当人からすれば努力してんのかもしれないけど、俺からしたらそんな薬に安易に頼った時点でお話にならない。 俺は、そんな人間のために動いたり命を懸けるなんざ真っ平御免だね。繰り返すけど・・・それは自業自得。自分のツケは自分で払え。 それでもどうしようもないって時に・・・俺は初めてそいつのために動く。そいつが、全ての手を尽くして駄目だったんだ。だったら、俺の力を貸してやる。 俺以外の奴の力も借りて、そんなどうしようもないことをブッ飛ばしてやるよ。世界の一部である人間(おれたち)の手で!!」 界刺得世という男は、無償の善意で動くような人間じゃ無い。そのことを、ここに居る女性達は初めて、あるいはもう一度認識する。 「だから、一厘。これは、君の抱える問題だ。君が何とかしなきゃいけないことだ。俺を・・・何時までも安易に頼っていちゃ駄目なんだよ?」 男は少女に言う。もう、時期は来たのだと。それは―“自立”という名の巣立ちの刻(とき)。 「・・・わかりました。これ以上は、界刺さんにお聞きしません。自分の・・・いえ、自分達の力で何とかしてみせます!!」 一厘は、自分の安易さをまた恥じる。今朝の図書室で界刺に甘えてしまったことを、またもや繰り返してしまった。 これでは、駄目。こんなんじゃあ、何時まで経っても界刺に追い付けない。だから、もう一度心を強く持つ。 界刺の言葉に全て納得できないのなら、相容れない部分があったのなら、それは一厘鈴音自身の信念が芽吹き始めている証拠。 きっと、それは界刺も望んでいること。自分だけの確固たる信念。それをどう成長させるかは、自分次第。 「私は、界刺さんみたいに薬物中毒に苦しむ人達を簡単に切り捨てることはできません。だから、私は私の意志でその人達と向き合おうと思います。 そして、そんな人達を苦しめる『ブラックウィザード』に対しても、自分の信念でもって立ち向かおうと思います!」 「うん。いいんじゃないかな。んふっ・・・成長したね、鈴音」 「!!」 界刺の手が、一厘の頭にポンと置かれる。初めて、自分の下の名前を呼んだ。『成長した』と・・・初めて言ってくれた。自分の成長を・・・認めてくれた。 それが・・・それだけのことが・・・嬉しかった。すごく、すごく嬉しかった。だから・・・ ハグッ!! 「お、おい!?リンリン!?」 「嬉しい・・・嬉しいよ!!初めて・・・初めて界刺さんに・・・『成長した』って言って貰えた・・・!!すごく・・・すごく嬉しい・・・!!」 一厘は椅子に座る界刺に抱き付く。自分が目標とする人が、散々自分を駄目出ししまくった人が、初めて認めてくれた己の成長。 この歓喜を言葉だけでは表せなかった。だから、言葉だけでは無く行動でもって示した。そんな少女の頭をポンポンと叩く界刺は、周囲に向けて声を放つ。 「・・・ハァ。君達、“これ”で機嫌を悪くしないでくれよ?」 「わかってるわよ。一厘のこの喜びようを見ちゃったら・・・ね」 「まぁ、アホ界刺に色々言われまくっていたようだし、溜まっていた色んな物が爆発したって感じかな?」 「・・・マーガレット。この男には一切の油断も許されないわよ。全身全霊でもって叩き潰す。いいわね?」 「わかっております。これだけのものを見せ付けられたのでは・・・否が応にも手を抜く余裕等存在しないと認識せざるを得ません。私も、全力で臨みます」 「私も・・・一厘様のように何時か界刺様に『成長した』と言って貰えるように頑張らないと!!」 「サニー先輩の言う通りですわ。私も、未だスタート地点に立ったと言うだけ。ここからは、私次第。得世様に受けたご厚意に恥じぬように、精一杯努めなければ!!」 「そ、そうです!!遠藤も、フィーサ様に自分の成長した姿を見せたい・・・!!が、頑張ります!!」 「“自分自身”を信じて努力する・・・唯それだけです!!」 「・・・・・・・・・あれっ?何だかアタシの存在が忘れられているような・・・?あれっ?」 「(・・・そろそろ頃合いかな?)」 各人が様々な反応を示す中、界刺はこの場を纏めるために自分が抱く3つの目的を打ち明けることを決断する。その3つの目的とはー!! continue!!
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常盤台中学校は内宗県常盤市に位置する私立の女子中学校である。 1.概要 常盤台中学校は常盤地区再開発時に建設が開始され、現在は内宗県で1つしかない女子中学校となっている。 また南北鉄道線の常盤台中学校駅と隣接している。 この学校に通う半数の生徒は常盤台地区の学生寮から通っている。 この学生寮は常盤台中学校を建設するさいに常盤台地区の土地の一部を常盤台中学校側が買収して建設した寮である。
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常盤台中学校駅は内宗県常盤市内にある南北鉄道線の鉄道駅の1つである。 1.概要 内宗県常盤市内にある相対式ホーム2面2線を有する南北鉄道線の鉄道駅。 常盤台中学校の最寄り駅でもある。 2.駅構造 2-1 乗り場 番線 用途 方面 1番線 南北鉄道線 杉の宮・青柳方面 2番線 南北鉄道線 常盤台・藤河・南藤河方面 3.利用状況 平日の朝と夕は通勤・通学客で混雑する。 4.周辺地域 常盤台中学校と駅が隣接している。
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宗介「こちらウルズ7、常盤台中学の潜入に成功した」 ① ② 戻る 次へ 1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 15 30.38 ID 6ob3lNul0 かなめ『ソースケはもう“ウルズ7”じゃないでしょーが』 宗介「む、そうだったな」 かなめ『……まあこれも一応“任務”だし?“ウルズ7”って呼ぶのも面白いわね じゃあ“ウルズ7”。“任務”の内容を復唱しなさい』 宗介「“御坂美琴”の護衛であります。マム!」 かなめ「結構!」 5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 17 40.74 ID 6ob3lNul0 ―常盤台中学・学生寮― 黒子「護衛研修?誰かを護る研修ですの?」 美琴「その逆、“守られる研修”よ SPの養成学校の学生の研修相手になるのよ」 黒子「面倒な研修ですのね。御生憎様 わたくし誰かに守られるような弱い女ではありませんのに」 美琴「私だってそうよ。実際に向こうの学校レベル0~2中心で 常盤台の生徒の方が強いってことは珍しくないんだけど… 何でも『淑女たるもの守られる側の経験も積んどけー』っていう常盤台の方針らしいわ」 黒子「はぁ…その護衛とやらの殿方のせいでお姉様との時間が割かれると思うと… 一体どんな人が来るんですの?」 美琴「まだ名前しかわからないわね えーっと…私の護衛役は……」 美琴「相良宗介…って名前みたい」 7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 19 31.97 ID 6ob3lNul0 アニメフルメタ派 ネタバレ注意 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― かなめ『――ってな感じでハッキングして御坂美琴の護衛役はソースケ担当に変更しておいたわ いやー御坂美琴が常盤台の生徒でよかったわ。ソースケの通ってるガッコでこんなイベントがあるとは偶然ね』 宗介「そうだな……しかし学校側にハッキングとは随分と大胆な手を使ったな」 かなめ『文句言うなら得体も知れない依頼主に言いなさいよ! いきなり女子中学生の顔写真だけ送って“この子を守れ”って依頼に無理があるってんの おかげでまず御坂美琴を探すのに苦労したっつーの でも前金も報酬金も高かったし?それなりに本気出さなきゃならないってわけ』 アル《警告――大金を撒餌にした罠の可能性が高いです これが罠なら私たちはネズミ以下でしょう》 無機質な合成音声が響き渡る。 彼の名は――アル。以前は宗介の愛機“レーバテイン”に積まれていた高性能AIだ。 かなめ『――このぉ……!言わせておけば…! アンタのトランザムと食費(電気代)に金がかかってるんでしょーが!! じゃなきゃまだ学生なのに護衛会社なんて作らないわよ!』 そう、今のアルはASでも無ければ兵器ですらない。何の変哲もないスポーツカーに積まれているのだ。 これは他でもないアル本人の希望によるものであり、アルによって命を救われた宗介の感謝の印でもある。 9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 21 55.10 ID 6ob3lNul0 アル《私の人工知能がより“人間”に近づくためには必要な経費です 私が言いたいのは依頼を蹴るのではなく――》 かなめ『ハイハイちゃんと警戒しろってことでしょ?わかってるわよ いいソースケ?私はなんとか依頼主を探るからソースケは普通に護衛してて頂戴』 宗介「了解した」 アル《私は?》 かなめ『アンタは適当に屋外で待機! いつでもソースケのバックアップ出来るようにお願いね』 アル《ラージャ。では軍曹が寂しくないように通信上にBGMでも――》 宗介「いらん。普通に待機していろ」 11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 25 16.87 ID 6ob3lNul0 ・ ・ ・ かなめ『いーいソースケ!普通によ? ここには林水センパイいないんだから誰も尻拭いできないからね?』 宗介「ふっ……心配するな 護衛任務は最早俺にとっては得意分野だ これも君のおかげだな」 かなめ『そ……それならいいけど』 宗介「では交信を終了する」 14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 27 07.63 ID 6ob3lNul0 寮監「御坂。お前の護衛役が到着したので降りてこい 白井の護衛役はまだ先なので白井は待機しておけ」 美琴「はい」 黒子「はいですの」 美琴「じゃあ行ってくるわね」 黒子「いってらっしゃいまし」 ――― ―― 黒子「ふふふ……殿方がお姉様と一日中一緒だなんて認めませんの この白井黒子……しっかりと“露払い”しなくては……っ!!」 2 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 15 47.66 ID 0uR3lPPN0 かまわんつづけろ 16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 29 14.06 ID 6ob3lNul0 美琴の降りたころ、ロビーには常盤台の学生とSP学校の学生が大勢いた。 護衛する方と護衛される方、どちらも緊張した様子でありどこか様子がぎこちない。 美琴(そりゃー女子中学生と男子高校生をいきなり合わせたらこうもなるっつーの) 護衛「わ、私は婚后様を護衛させてさせていただく――」 婚后「要りませんわそんな暑苦しい自己紹介 ああもう、聞いてませんわよこんな面倒くさい行事 だいたい!あなたのような『低能力者』に私のような『大能力者』の護衛が務まるとでも思って!?」 護衛「そ、それは――」 美琴(あーあー、婚后さんの護衛役の人も可哀想ねー まっ、婚后さんの気持ちもわからなくはないわ。女子中に言い負かされるようなやつに護衛されるなんて……) 先生「御坂さん。こちらが担当の相良さんです」 美琴「はい」 目の前には引き締まった顔の男子生徒が行儀よく立っていた。 そして愛想のかけらもないへの字口を開く。 宗介「本日○八○○時より御坂殿の護衛の任に着きました。相良宗介です」 18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 32 42.94 ID 6ob3lNul0 第一印象は――まあハンサムな男だなと思った。 しかしこの男には軟派な雰囲気は一切感じ取れない。 美琴(へえ……中々芯がありそうじゃん) まず目が他の生徒と明らかに違う。 相手を臆せずに強く見ている、それでいてそのずっと先を見据えているような眼差し。 美琴「えーっと……アンタが私の護衛なのね 私は御坂美琴。よろしくね」 宗介「はっ。よろしくお願いします御坂殿」 握手などは一切せず、それ以上二人の会話は続かなかった。 19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 34 08.79 ID 6ob3lNul0 護衛研修1日目は所謂“顔合わせ”でしかない。 聞いた話によると普段は男と接する機会がない常盤台の学生に対する研修も兼ねてるとか。 つまり護衛役とはコミュニケーションを取らねばならないのだ しかし―― 美琴(こ、コイツ無愛想すぎる……!) さっきの自己紹介から美琴の部屋に戻る最中である今まで一言も口にしないのだ。 美琴(堂々としてるようでこいつシャイなんじゃいの!?気まずいっつーの!) 美琴「あ……あんた私に質問とかないの?」 宗介「?…特にありません」 美琴(しろよ!この空気ぶち壊せよ!っつーか何で私が気遣ってんの!?) 宗介「……っ!いや、1つありました」 美琴「な、何?何でも聞いていいわよ!」 宗介「御坂殿は、何者からか恨みを買った覚えはありませんか?」 美琴「はい……?」 21 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 37 33.65 ID 6ob3lNul0 ある――というかありまくる。 あまり門限を守るタイプでない美琴は街のヤンキーどもによく絡まれる。 その都度、真っ黒に焼いてさしあげたりするもんだから 恨みなんてものは大安売りのバーゲンセール状態で買い漁っているようなものだ。 それだけではない。 夏休みの間、美琴はいくつかの“闇”とも戦った。 その際に買ったであろうドス黒い恨みもないとは言い切れない。 美琴「な、何でそんなこと聞くわけ?」 宗介「護衛にあたって重要だからです。何か心当たりはありますか?」 美琴「そりゃあ……無いとは言い切れないけど話すようなことじゃないわよ!」 宗介「やはりありますか……何をしたんです? 統括理事の娘を誘拐して腹に爆弾でも括りつけて身代金の要求でも?」 美琴「は?」 宗介「それとも罪のない子供がいる孤児院に毒ガスを撒いたか……いや待てよ? ま、まさか……っ!!汚れのない女子中学生をクスリ漬にして高額で……っ!?」 23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 40 45.06 ID 6ob3lNul0 美琴「あ……アンタは私を何だと思ってるんだぁぁあああああああああ」 バヂバヂィ……っと学生寮の廊下に電光が走る。狙う先はもちろんこの妄想男――宗介である。 宗介「あ……危ないじゃないか」 美琴「いきなり愉快な妄想ぶちまけてるからでしょーが!! つーか何?私がそういったサイコ野郎に見えるわけ!? ……ってアンタ今の避けたの……?」 宗介「……いえ、とっさに身を屈めはしましたが。避けることが出来たのは偶然です 今のは、能力ですか?」 美琴「能力に決まってんでしょ。アンタも学生なら能力ぐらい知ってんでしょ? そういやアンタってレベルは?」 宗介「システムスキャンの結果でしたら……」 宗介「“レベル2”でした」 24 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 41 53.32 ID ALcuPZFb0 開発受けたのか 27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 44 03.02 ID bjrjyCR40 ラムダ・ドライバを発動させるのに出る変な脳波が引っかかったりしたのか? 28 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 44 13.36 ID 6ob3lNul0 少し時を遡る。 レナード一派との戦争が終わった後も、宗介とかなめは元の生活には戻れなかった。 かなめが拉致される前のドンパチが原因だ。宗介に至っては戸籍偽装まで知れ渡ったので完全にお手上げ状態だった。 そんな中、救いの手を差し伸べたのは意外にも学園都市だった。 『千鳥かなめを“原石”として学園都市に招きたい』 “原石”とは能力開発を受けずに、生まれ持って能力を有する能力者のことを指す。 『吸血殺し』の能力を有する姫神秋沙という少女がこれに該当する。 一種の精神世界であるオムニ・スフィアからブラックテクノロジーを引き出し その技術を自分のものに出来る『囁かれし者』であるかなめは学園都市から能力者として認定され学園都市に招かれることとなった。 そこでかなめは学園都市に“戸籍の無い相良宗介も学園都市に招いてくれ”を提示し、学園都市はこれを呑んだのだ。 その後、かなめは長点上機学園に、宗介はSPの養成学校に編入という形で学園都市に迎え入れられた。 学生であり、何の能力を持っていない宗介は当然能力開発を受けたという形になる。 ――閑話休題。 美琴「へー。“異能力者”ねぇ……どんな能力なの?」 宗介「大したものではありません……むしろこんな能力あってもなくても何も変わらないです」 美琴「そんなこと言わずにさ、ちょっと見せてよ」 30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 48 42.11 ID 6ob3lNul0 宗介「――こんなものです」 美琴「う~ん……ちょっと変わり種ねアンタ でも確かに今のままでは……何なら私が教えようか? 知ってるだろうけど私これでも学園都市の第三位だし」 宗介「光栄です、御坂殿。しかし自分は能力に頼るつもりはありません」 ……珍しいタイプね、と美琴は思う。 美琴「そんなことよりさ、その『御坂殿』ってのやめない? アンタ私より年上なんだしさ、タメ口でいいわよ」 宗介「む……いえ、しかし――」 美琴「いいから!私が気まずいって言ってんの!」 宗介「そうか……了解した“美琴”。これからは丁寧語は無しだ」 美琴「ぶほぉっ!み、みみみみ美琴って4ランクぐらい友好度上げてんじゃないわよ! 飛ばしすぎよ飛ばしすぎ!」 宗介「??……では御坂、これからよろしく頼む」 美琴「ええ、こちらこそ」 今度こそしっかり、二人は握手を交わす。 33 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 51 54.31 ID 6ob3lNul0 しかしまあ……電撃を飛ばしてから仲良くなるとは皮肉なものね。 などと美琴は考える。思えば“あの馬鹿”と知り合ったきっかけもビリビリだ。 などと物思いをしていると自分の部屋に辿りついた。 美琴「ここが私の部屋よ。1つ後輩がルームメイトでいると思うけど――きゃあ!」 突然、宗介が美琴の肩を引き寄せた。 美琴「ちょ……ちょっとアンタ何してんのいきな――」 宗介「しっ!……静かにするんだ御坂。トラップだ」 美琴「と、トラップ?」 宗介「扉の隙間の部分を見てみろ」 美琴「???」 覗き込んでみると、確かに引っかかりの部分には糸のようなものが巻かれていた。 ドアノブを回すと糸が取れてトラップが発動する仕組みだろうか? 恐らく黒子が悪戯で仕掛けてたものだろう。さしずめ自分に近寄る男に鉄槌を加えてやると言ったところだろうか。 35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 53 51.97 ID SInf6OQyP 宗介が空回りせず立ち回っているだと・・・ ここは戦場か! 36 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 54 44.63 ID rdTbG01bP 35 な……なるほど! 37 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 54 47.14 ID 6ob3lNul0 美琴「……ったくあの子ったら、私や寮監が引っかかる可能性を考えてないわね それにしてもこんなものに気づくなんて、アンタも流石ね――って アンタ何してんの?」 気づけは宗介は、実に手際よく作業を始めていた。 ドアの隙間には何やら粘土のようなものを練り込み そこから伸ばした糸を離れたところまで丁寧に引っ張る。 宗介「下がるんだ御坂。これよりトラップを的確に“処理”する」 美琴「処理?」 宗介「これを被って俺の後ろに隠れるんだ」 どこからともなく“安全第一”と書かれたヘルメットを取りだし、美琴にかぶせる。 美琴は美琴で訳がわからないまま、一応宗介の指示に従ってみた。 宗介「耳を塞いで口を半開きにしろ御坂!これよりトラップを“爆破”する!!」 美琴「え!?……ちょっ!!?」 38 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 55 21.64 ID SInf6OQyP ごめん完全に俺の勘違いだった 39 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 56 20.24 ID rdTbG01bP ズコー 40 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 56 48.27 ID fiLUo+Xv0 相良さんいつも通りだなwwww 43 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 57 23.15 ID 6ob3lNul0 爆風と共にけたたましい轟音が学生寮に響き渡る。 美琴の部屋のドアは遠目で見ても無事ではないとわかるぐらいの姿になっていた。 宗介「ふぅ……危ないところだった」 美琴「あ、危ないのはアンタだぁぁああ」 バリバリィ!っと今度は宗介が避ける暇も与えず電撃を浴びせる。 宗介「い、痛いじゃないかちどr――御坂 このやり取りに既視感があるぞ」 美琴「知るかんなもん!っつーかいきなり爆破ってどういうオツムしてんのよアンタ!」 宗介「しかしどのようなトラップがあるかわからない以上、爆破するしか手段はなかった」 美琴「アンタってやつは……ちょっと凛々しいと思ってたら天然ボケなの!? まったく万が一部屋に人がいたら……」 ――待てよ? 寮監((御坂。お前の護衛役が到着したので降りてこい ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 白井の護衛役はまだ先なので白井は待機しておけ)) ――まさか? 黒子「お……お姉……様」 美琴「く、黒子ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお」 46 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 00 59 36.66 ID 6ob3lNul0 宗介「む、怪我をしているのか?」 美琴「わ、わからない!でも爆風で吹っ飛ばされたみたい! 早く診てみないと……!」 宗介「その必要はない」 宗介はむっつりへの字口で黒子に近づき、懐から何かを取りだした。 あれは…… 美琴「な、ナイフ!?」 宗介「治療して欲しければ洗いざらい吐くんだな 所属・目的・雇い主を言え」 そう言って宗介は黒子の右腕を背中に回しナイフを突き立てた。 けが人かもしれない少女に対してこの仕打ち。血も涙も無い男である。 宗介「生憎だが今日の俺は気が短い。 質問に答えなければ耳を切り落と――!?」 突然――宗介の視界が反転した。 宗介「!!?」 黒子「この……バイオレンス類人猿がぁああ!」 黒子の空間転移によって1.5mの高さから頭を下向きに落とされたのだ。 47 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 02 13.78 ID 6ob3lNul0 宗介は左手・肘・肩・背中と器用に受け流しながら着地する。 とっさに受け身も取ったがそれでも勢いは殺しきれず背中への衝撃は大きかった。 宗介(かはっ!……一体何が!?俺は投げられたのか?) 黒子「あ、あの高さから着地した!?ふふふ……では更なる地獄がお望みですのね!」 そう言って太ももから金属矢を取りだす。完全に臨戦態勢だ。 美琴「ちょ、ちょっとアンタら――」 寮監「そこまでだ!貴様ら!」 黒子・美琴「「!!?」」 50 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 05 32.28 ID 6ob3lNul0 黒子「りょ、寮監……!!」 寮監「この騒ぎは何だ?白井……?いや、そんなことはさておき 今“能力”を使ってたな……白井?」 黒子「そそそそそそそそそれはですね寮監。わたくしではなくこの殿方が……!」 寮監「言い残す言葉はそれでいいのか?」 寮監が黒子の首に手を回した途端ゴキッ!っと嫌な音が響く それ以降黒子はピクリとも動かなくなった。 美琴「黒子ぉぉぉおおおおおおお!」 寮監「御坂……貴様にはこの事態の説明だ」 宗介「その説明は自分から」 寮監「ほう……」 ――!! 宗介(この人は……!?) 寮監(この男……っ!!) 宗介・寮監((出来る……っ!!)) 51 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 08 30.22 ID bjrjyCR40 シンパシー感じとるwww 53 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 09 11.14 ID 6ob3lNul0 宗介「失礼ですが、あなたは?」 寮監「私か?私はこの学生寮の寮監だ。 ちなみに“コレ”は一応この寮生でな……私の監督下にある では私の質問だ。……所属と名前は?」 ――何だこのやりとり。と二人の間に流れる異様な空気を美琴は感じ取っていた すると宗介は“休め”の姿勢を取り大きく口を開け 宗介「はっ!寮監閣下! 自分はSP養成学校所属、三年B組相良宗介であります! 階級は軍曹!得意分野は偵察とサボタージュであります!」 美琴「はい?」 今なんか後半がおかしかった。軍曹?あの新兵に怒鳴る人? 宗介「――失礼。後半は忘れてください……」 寮監「いや、いい軍曹。では軍曹、説明をしろ」 宗介「はっ!」 58 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 13 21.62 ID 6ob3lNul0 宗介「本日○八一五時 護衛対象御坂美琴及びその護衛相良宗介の両名は談笑しつつ御坂美琴の部屋に到着。 同刻、部屋の扉に異常を発見しました」 寮監「不審物か?」 宗介「肯定です。糸のようなものが括りつけてあることを確認しました。 ――自分はこれをドアノブを引くと同時に発動する高脅威トラップだと判断。 しかし始業間近であったため検査を断念。もっとも確実な処理を行いました」 寮監「その処理方法とは?」 宗介「高性能爆薬による爆破処理です」 美琴(いや!その流れは無い!言ってやってくれ寮監、この戦争ボケ野郎にガツンと一言!) 寮監「…何!?爆破だと?」 宗介「はい。爆破です」 寮監「ベストとは言わないが……妥当な判断だ」 美琴「ズコー!」 61 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 15 33.15 ID 6ob3lNul0 宗介「どうしたんだ御坂?」 美琴「ずっこけてんのよ!それはもう古いリアクションしたくなるぐらい! 何で納得してるんですか寮監?こいつ私の部屋のドアを爆破したんですよ!?」 寮監「状況の破天荒さに惑わされてはいけない。正しい状況をよく見てみろ御坂 爆破で吹き飛んだのはドアとその周辺部。おまけにドアの横で待ち伏せしていたであろう白井だけだ」 美琴「え……あれ?本当だ」 部屋を覗いてみると部屋自身は多少煤がついている意外目立った損傷は無い 寮監「よほど上手く爆破しなければこうはならない。それでいて白井の作ったトラップは沈黙した 100点とは言わないが、これがもし本当の爆弾で迂闊に引けば御坂達が死ぬと考えると……まあ妥当な判断だろう しかし爆破自身は非常識には変わらないのでそこはマイナスだ。それでいいな軍曹?」 宗介「了解です!寮監閣下!」 寮監「それにトラップをしかけたのは私の管理下である白井だ。 その点も考慮して、向こうの学校にはマイナスは伝えないようにする」 宗介「お心遣い感謝します!寮監閣下」 美琴(何でこの二人はこんなに息あってんのよ……) こうして、宗介の護衛生活が始まった。 63 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 19 33.13 ID 6ob3lNul0 宗介「定期連絡。定期連絡。千鳥、聞こえるか?」 かなめ『聞こえるも何も聞いたわよ。アンタまた爆破したですって!?』 ・ ・ 宗介「……何故それを?…お前か?」 アル《護衛で忙しい軍曹に代わって定期連絡したまでです。まさかチクるなとでも?》 宗介「……まあいい。そうだ千鳥、確かに爆破した。だが――」 かなめ『――ちゃんと損害報告も聞いたわよ。出来るだけ抑えたみたいね』 宗介「ああ……やはり完全に大丈夫だとは言い切れないんでな」 かなめ『まあ、ちゃんと節度が分かってみたいだし?今回はいいわ』 64 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 22 01.33 ID 6ob3lNul0 宗介「それで、そっちの方はどうだ?」 かなめ『それがね、この依頼はアルが睨んだ通り何かあるっぽい 依頼者へのプロテクトが異常に硬すぎるのよ どうする……降りるこの仕事?』 宗介「いや、ヤバい事件かもしれないなら尚更降りられない」 かなめ『いい子だった?』 宗介「ああ、危険な目には合わせたくない」 かなめ『……わかった。じゃあお姉さんも人頑張りしますか! 依頼主探すのは拉致あかないからとりあえずあの子が狙われそうな理由を探ってみるわ』 宗介「ああ、頼む」 66 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 24 16.92 ID 6ob3lNul0 ―翌日― 護衛研修の二日目は街に出ての野外研修である。 野外研修と言ってもヤンキーのサクラを用意して護衛対象を襲われる ――などと言ったあからさまな仕掛けは用意しない。 この研修では“事件を如何に未然に防ぐか?”を問うのだ。 美琴(その点で言うと……コイツはすごいわね) 宗介の動きは、ありていに言えば隙が無い 例え10トントラックが突っ込んできても冷静に対処出来そうな振る舞いだ。 今、宗介と美琴は特に目的もなく街を歩いている。しかしその歩き方には違和感があった。 ランダムのように見えて、どこか一定の法則に従って動いているように感じる。 67 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 25 54.54 ID 6ob3lNul0 美琴「この動き……もしかして狙撃とかを警戒してんの?」 宗介「!!?」 宗介が驚いたように目を見開いている。コイツのこんな顔が見れるとは思わなかった。 宗介「自然に見えるように動いていたつもりだったが……不自然だったか? ……俺もまだまだ未熟だな」 宗介が急にしゅんとなった。その仕草は飼い主に叱られた子犬のようでどこか可愛らしい。 美琴「い、いや自分で言うのもアレだけど私レベル5だからね 物事のパターンを頭で演算するのが癖になってんのよ 普通の人間なら気づかないと思う――いや絶対に気づかない そのぐらい凄いわよアンタ。たまにネジ飛んでるけど」 宗介「……そうか。まあ俺は専門家だからな。これぐらい出来て当然だ」 『出来て当然』と言いつつもどこかドヤ顔である。 最初コイツは無愛想だと思ったが、案外ユーモアや茶目っ気のある人間なのかもしれない。 68 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 28 13.50 ID 6ob3lNul0 美琴「で?結局どこに向かってんの?」 宗介「特に決めてはいない。行きたいところはあるか?」 美琴「うーん……私もこれと言って――」 上条「おーい!御坂ぁ!」 .ヘヽ! \ V \ 人| ト、 . \、 .\ ト、 V \ i ;イ . | i ト、! \ . \ト、 ト、 \ .ヘ \} } \ー、 | / ! ハ |_, ィ――-、 \\ | \_ _\ ヘ / ヘ -イ /⌒ヽ. メ { ┃ \ ゝ \! / \ ト、 メ / \ 、 ヘ / ノヽ \ト、ゞゝ ┃ ! , - 、\! ./\二ニ=-\ | { (⌒ ) ヾ \ ┃ , /┃ ヽ. V \ 美琴「!!?」 | \ (. \___/ {. ┃ }./ \ | \__ \\\\ \┃__//.} ヘ、 \ | ヘ ij \\\/ノ ヘ\ | i ヘ l | . \ ヘ \ | |\ \ \ i\ `ー― ´\_ノ / \ ヘ. \ V \/\ .\ \ / \ .\ヘ 宗介(!?敵か……!?) 69 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 28 58.43 ID K8HAa21q0 上やん逃げてー 72 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 30 21.88 ID 6ob3lNul0 上条「おっす。平日の昼間っから何してんだお前?」 宗介「………」 美琴「あ、あああああああアンタこそ何してんの!?学校は?」 宗介「………」 上条「俺?うちの学校は今日は短縮校時で午前で終わり で、夕方には特売があるから早めに戦地入りしましょうって算段ですよ あっ……もし暇なら御坂も手伝ってくれないか!? お礼は絶対にする!何でもする!」 宗介「………」 美琴「お、おおおおおおお礼!?な、何でも!?で、でも………その……」 宗介「………」 上条「ん?……アレ?こちらの方はお知り合い?」 宗介「………」 74 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 32 39.48 ID 6ob3lNul0 宗介(!?敵か……!?――いや待て、常識的に考えたら友人だろう) 以前の自分なら容赦なくナイフを突きつけてていただろうが、今の自分はもう違う。 俺はもう一般人の感覚を手に入れたんだ。 もう千鳥にはバカにされないぞ。 上条「おっす。平日の昼間っから何してんだお前?」 宗介(「平日の昼間にノコノコと顔出しやがって――」 ――いや違う、これは額面通り学生である御坂が何故平日に街にいるか聞いているだけだろう) 美琴「あ、あああああああアンタこそ何してんの!?学校は?」 宗介(この御坂の慌てよう……まさか……!?) 76 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 35 07.04 ID 6ob3lNul0 上条「俺?うちの学校は今日は短縮校時で午前で終わり で、夕方には特売があるから早めに戦地入りしましょうって算段ですよ あっ……もし暇なら御坂も手伝ってくれないか!? お礼は絶対にする!何でもする!」 宗介(戦地!?戦地と言ったか今!?――いや待て確か特売とも言ったな 以前に千鳥と特売に行ったが、なるほどあれを戦地と表現するか……いいセンスだ) 美琴「お、おおおおおおお礼!?な、何でも!?で、でも………その……」 宗介(!?御坂が赤面している……これは確か……こういう場合は…) 上条「ん?……アレ?こちらの方はお知り合い?」 宗介(ま、まさか……この男……御坂の……) 78 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 36 40.58 ID 6ob3lNul0 /l/;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /;;;/ // /;;i /| ト、_;;;<, ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ , //;;;;;;/ // /;;/,/;l , |;;;;;;ヾ,、;;;`;、 ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /i レ;;;;;;/ /;;i /|;/ i;;;;| |.ト、;;;;;;ヽ\| ;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /;;i /;;;;;;/ / /;;;;レ"i;;レ"|;;;| i; |;;小;;;;;;;;i ;;;;;;;;;;;;;;;/ /;;;i/;;;;;;;/ /,,,=テニミ=,, i;;;l i;; i;;;;! ヾ;;;;i ;;;;;;;;;;;;;i /;;;;;;i;;;;;;;;/ / /i;;;/,,,,,,,,, =ミ;i /;;i;;;;;;;;i `リ ;;;;/ i;;i i;;;;;;;;;;;;;;;;i /i ,/.|/ ~I;て,)~`.i ii`-/、;;iヾ;;;;i ;;イ^i;;;;i/;;;;;;;;;;;;;;;;;i i;;;i i i ト;;;;ノ i;;iル 、 リ ヾi ")vl;;;/|/|;;;;;;;;;;;;;;i i/iレ `-,,,,- l;;;;/ ,メ, ノ (,_,|;;;i`! -i;;;;;;;;;;;;;;;i i ,リ // |\ レ ` ,_ \i;i~l -、i;;;;;/^i;;;/ " ~フ \リ-、__ i;;;i レ _ ノ ;;;;;ヘ, キi / ;;;;;i `、,__,A i ;;;;;;i キ ,r---,,」 宗介(ストーカーか……っ!!……そうだストーカーに違いない) ;;;;i、i `, ) ;iv ` `, / i i ` , ! ! i ` , i __ i ` - , _ノ `- ,__ i ,---~---~ どうだクルツ、マオ。俺は他人の色恋沙汰まで把握出来るようになったぞ 次会ったらもう朴念仁だのトーヘンボクだの言わせない。 俺はまともな一般人になれたんだ。 79 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 37 04.18 ID dGBvPWk70 ※なれていません 80 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 37 26.14 ID ALcuPZFb0 (ノ∀`)ノ∀`)ノ∀`)ジェトストリームアチャー 82 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 38 12.21 ID 6q0P3cLG0 やっぱり軍曹はさすがだ 84 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 38 31.08 ID 6ob3lNul0 美琴「こ、こここここここコイツは……その……」 宗介(あんなに気丈な御坂がこの慌てよう……やはりストーカーか……っ!! 下衆めっ……!) 宗介「……俺のことか?」 上条「あ、やっぱり御坂のお知り合いですか」 宗介「……知り合いなんてもんじゃない」 上条「え?」 宗介「俺達は“ただならぬ関係”だ……そうだろ美琴?」 美琴「ふにゃ……?な、なななななんて?」 上条「え~……っとつまりあなたは……?」 宗介「まだわからないのか?俺と美琴は恋人同士だ 愛し合ってる。フォーリンラブってやつだな」 上条・美琴「「!!?」」 90 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 40 50.14 ID 6ob3lNul0 美琴「な、ななななななな何言ってんのアンタ!?」 上条「へ~。御坂って年上が好きだったのか」 美琴「え!?ちょ……違っ……わないけど何か違う!!」 上条「あはは、照れんなって~! 彼氏いるんなら紹介してくれたっていいじゃないか水臭いな~」 美琴「え……」 何だこのリアクション。私に彼氏がいるって思ってもコイツにはその程度の―― 宗介「紹介する必要はないぞ美琴」 上条「…はい?」 88 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 39 22.74 ID uNnnO0HC0 おぉう…… 91 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 40 50.61 ID dGBvPWk70 気を利かせたつもりなんだよね、これは… 94 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 42 56.14 ID ZGf/MnU+0 軍曹はフォローに微塵の悪意もないから質が悪い 96 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 43 19.57 ID 6ob3lNul0 ・ ・ ・ ・ 宗介「美琴……こんな男に構わず昨日の夜の続きをしてくれ ・ ・ アレはよかった。まさか君にあんなテクニックがあるだなんて」 美琴「ちょ……真顔で何言ってんのアンタ!/// そんなこと言ったら勘違い――」 そう言って上条に目配せをする。そこには赤面した上条が 上条「あ~……何か話かけてスマン御坂 彼氏さんとその……楽しんでくれ!じゃ、じゃあ!」 美琴「ちょ…ちょっと!誤解!誤解だって!」 上条「すみませんでしたぁぁぁぁああああああああ」 踵を返すなり、上条は逃げるように走り去って行く。 97 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 43 56.02 ID h9zuiTxt0 流石は軍曹殿、妙な知恵を付けたせいで斜め上に行ってしまわれた 100 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 44 57.91 ID SInf6OQyP いきなり突き倒して首元にナイフを突きつけないだけ成長しているんだ、彼は・・・ 101 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 45 08.86 ID 6ob3lNul0 宗介「か、完璧だ」 以前隊にいた時にこんな会話があった。 マオ((――そんでね。あんまりにもしつこいから私はその男の前で電話するフリしたのよ 『もしもし?ベン?今日も寂しいから●●●に●●●●してぇ~』みたいなことをね そしたらその男泣いて逃げて行ったわ。どうよこの話?)) クルツ((うわっ!ひっでぇ!)) ヤン((ぷぷぷっ……最高っす!)) マオ((要はね、ビッチになりゃいいのよ。そうすりゃ私に変な幻想抱いてる男は失望して逃げていく 我ながら完璧な作戦ね)) あの時は半信半疑であったがこうも効果があるとは……! 宗介「やったな御坂、これで君のストーカーは――御坂……?」 107 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 48 21.69 ID 6ob3lNul0 おかしい。御坂は下を向いたままワナワナと震えている。 昨日気づいたことだが、御坂美琴という少女はどこか千鳥かなめと似ている――同類と言ってもいいかもしれない そして千鳥かなめが怒っている時の“溜め”の仕草はだいたいこういうものであった。 千鳥かなめの場合、この後、目視出来ないスピードでハリセンが飛んでくるのだが 発電能力者のレベル5である御坂美琴は…… ・ ・ 美琴「乙女の尊厳2つも奪っておいて何ドヤ顔してんじゃお前はぁぁぁあああああああああああああああ!!」 108 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 50 00.95 ID 6ob3lNul0 ……効いた。死なない程度に手加減はしているだろうがそれでも電気銃並の電気をもらった 少し気絶していただろうか?街のど真ん中で倒れているのはわかる。だが動けない。 美琴は美琴で、さっきの少年を追ったのか、ここにはもういない。 宗介(しかし……) ・ ・ 美琴((乙女の尊厳2つも奪っておいて何ドヤ顔してんじゃお前はぁぁぁあああああああああああああああ!!)) 宗介(…2つ?) 宗介(しかしマズイな……護衛の最中にはぐれてしまった) きっと待機していたアルが動いているだろう……断言できる 事前に相談したわけではないがアイツはアイツでそれぐらいの判断力はある。 宗介(だが…今は“身体”が車のあいつに出来る護衛なんてたかが知れてる…… 早く俺が動かないと……) ???「痺れが残っているのでまだ動かないで下さい……」 宗介の目の前に1人の少女が屈んでいた。 宗介(……?誰だ?) ???「……とミサカは名も知らぬ少年に命令します」 目線を落とすと、太ももの間から縞模様の下着が視線に飛び込んできた。 それと同時に宗介は再び気を失った。 110 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 50 17.91 ID KGzaOryP0 正直美琴は泣いてもいいと思う 112 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 51 25.93 ID joqcwCES0 この御坂なら千鳥かなめと三日三晩酒を飲める 113 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 52 39.02 ID 6ob3lNul0 目を覚ますとそこは病室だった。 宗介「クソっ!あの後気絶したのか!通信機は!?」 案外近くに置いてあった荷物から通信機を取り、アルに連絡をする。 アル《無様ですね》 宗介「そういうのは後にしろ……御坂は大丈夫か?」 アル《ええ。問題ありません 強いて言えば先ほどの少年の誤解を解く作業に悪戦苦闘していました》 宗介「やつはストーカーじゃなかったのか……」 コンコン……と不意にノックが響いた。宗介の病室の扉からだ。 ???「よろしいでしょうか?」 少女の声だ。どこかで聞いたことがある声だが気のせいだろうか? 宗介「開いている」 ???「失礼します……とミサカは礼儀正しく入室します」 宗介「なっ!?」 115 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 54 23.97 ID 6ob3lNul0 宗介の目の前には、お茶の乗ったトレイを持つ御坂美琴がいた。 宗介「み、御坂……!?君が何故ここに?」 ミサカ「!!……お姉様のお知り合いでしたか。とミサカは自身の行いに後悔しつつ打開策を思案します」 お姉様?こいつは御坂美琴の妹なのか? ――いや違う。御坂美琴の経歴には目を通したが妹なんてものは存在しない。 それに目の前の『ミサカ』と名乗る少女は何から何まで異様だった。 まず体幹が不気味なぐらい安定している。そして仕草の1つ1つにまるで隙が無い。 目の前の少女は御坂美琴のような平和な世界に身を置いていては仕上がらない完成度をしている。 宗介(こいつは……むしろ俺の知ってる世界の――) そう断定した宗介の行動は早い。素早くナイフを取り出しミサカと名乗る少女に肉迫。 痺れが残っているのか多少動きにキレが戻ってないが――問題無い。 118 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 01 58 24.91 ID 6ob3lNul0 ――!? 視界には病院の天井が広がる。一体自分は何をしたのだろうか? 宗介(確か俺は“ミサカ”の腕を取ろうとして――) 思い出した。ミサカの手首を掴んだ途端、逆に投げられたのだ。 その人間離れした体術に全く対応できなかった。まともに受け身も取れずに頭から落ちたらしい。 ミサカはと言うと――右手でトレイを器用に支えて目を丸くしている。お茶は一切こぼれていない。 ミサカ「な、何するんですか?……とミサカは警戒しつつ尋ねます」 どうやら向こうに交戦の意思は無いようだ。拘束して尋問するつもりだったが 手負いの今は分が悪いようだ。 宗介「お前は一体何者だ……?何故御坂美琴になりすましている?」 ミサカ「み、ミサカは……」 ミサカと名乗る少女は、初めて少女らしい感情のある表情を浮かべた ――罰が悪いと言った様子だろうか?ひどく狼狽している。 ミサカ「あ、あなたの素性が分からない以上、お答えできません――とミサカは回答します」 120 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 00 09.19 ID 6ob3lNul0 ミサカ「逆にミサカから質問をします あなたは傭兵ですか?――とミサカは自己の見解を吐露します」 宗介「……答える義務は無いな」 ミサカ「では、更なるミサカの見解を述べます あなたはソ連出身ですね?――とミサカはかなりの自信を持って問いかけます」 宗介「……!?」 ミサカ「先ほどの動きはソ連の暗殺術と酷似している点がいくつかありました――とミサカは捕捉説明します ただ正規軍ではないようです、あなたの動きは正規軍というよりはゲリラ兵に近いです。 ミサカの鼻腔に伝わる硝煙の臭いからすると――得意分野は爆破でしょうか?とミサカは曖昧な質問を投げかけます」 宗介「なっ…」 121 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 01 54.79 ID sbQvqqvi0 見透かされてるww 122 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 02 22.82 ID 6ob3lNul0 ミサカが連ねる宗介の特徴は、当たらずしも遠からずと行ったところだろうか 恐るべき分析能力だ。たったこれだけのやり取りでここまでわかるものなのだろうか? ミサカ「そして何より得意なのが……ASですね?無駄な筋肉がついていない長い手足、細い体とは対照的にがっちりした首回り 異常に厚い手首や肘の肩の皮――どれも熟練したAS乗りの特徴です……とミサカは今度は確信を持って問いかけます」 宗介「お前は一体――何ものなんだ?」 ミサカ「……何ものなのでしょう?ミサカにもわかりません 強いて言えば……ミサカ達は今それを見つけている最中です」 宗介「……?」 ミサカ「そんなことより……お茶にしませんか?とミサカは場の雰囲気を和ませることを試みます」 宗介「俺への尋問はいいのか?」 自分は何を言っているのだろう?本来ならばこちらから尋問しなくてはいけないのに 何故か目の前の少女にはペースを奪われてしまう ミサカ「割とどうでもいいです――あなたはそんなに悪い人には見えないので それよりASの話を聞かせてくれませんか?とミサカはあなたへお願いします」 宗介「ASの?そんな話に興味があるのか?」 ミサカ「はい。知識は豊富なのですが……実際に載ったことはありませんので ――とミサカは自己のニワカっぷりをアピールしてみます」 125 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 06 06.89 ID 6ob3lNul0 ヤバい……怒りにまかせてビリビリさせたままあの馬鹿護衛を放置したままであった。 “あの馬鹿”の誤解を解いた後、ついうっかり特売にまで付き合ってしまった。 美琴「出来るものならここいらであの馬鹿の家に行って料理の1つでも振る舞いたかったけど……」 買い物も終わったところであの馬鹿護衛のことを思い出してしまったのだ。 ここがビリビリした現場だが…… 美琴「やっぱいないわね……ってアレは初春さん?」 黒子と同じジャッジメントの初春飾利が何やら物騒な顔をして佇んでいた。 初春「あっ!御坂さーん!戻ってきたんですね」 美琴「???」 初春「ちゃんと彼を病院へ送りましたか?彼大丈夫そうです?」 話がイマイチ読めない。 美琴「え~っと……何かあったの?」 初春「も~さっき説明したじゃないですか~ 男子高校生がエレクトロマスターと思わしき能力者から攻撃を受けて気絶していたんですよ~」 美琴「へ、へぇ~……」 127 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 08 05.90 ID 6ob3lNul0 初春「で、通報があった場所に駆けつけてみたら御坂さんがその高校生を病院に連れて行くところだったんで 被害者本人への調査はあきらめてサボろう――じゃなくて聞き込みでもしようかな~なんて……」 美琴「ちょ…ちょっと待って!?」 初春「さ、サボろうとしてませんよ!?」 美琴「違う!その前!私が送ったってとこ!」 初春「ええ!?……いつものあの病院へ送っていくって御坂さんが言ったじゃないですか ――って御坂さん!?急に走ってどこ行くんですか!?」 美琴「ちょ…ちょっと急用思い出した!ありがとう初春さん!」 さ、最悪だ。あの馬鹿護衛はよりによって“あの娘達の誰か”に介抱されたのか 早くあの馬鹿護衛が目覚める前にあの娘を遠ざけないと――後々厄介なことになりそうだ 130 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 10 34.24 ID 6ob3lNul0 美琴「ああもう!こっからだと車使わないと遠いじゃないの!」 ブッブー!と突然のクラクションに美琴が振り返る。 そこにはバカでかいスポーツカーが停まっており、一人でに助手席の扉が開いた。 アル《おめでとうございます。あなたは私が走り初めてから10000人目のすれ違った通行人です 記念にどこへでも送って差し上げましょう》 美琴「自動操縦のトランザム!?つーか何よその胡散臭すぎるキャンペーン!?」 アル《胡散臭くなどありません。どうです?乗りますか?乗りませんか?》 美琴「口答えするなんて高性能なAIね。いいわよ乗ってあげるわよ! 第七学区の病院まで至急!マッハよマッハ!」 アル《ラージャ。マッハは無理ですが》 133 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 13 08.46 ID 6ob3lNul0 美琴「着いた!全速力ありがとうトランザムさん」 アル《ネガティヴ。私の名前はトランザムではなく、アルです。以後お見知りおきを》 美琴「???…とにかくありがとうアル!」 全力で病院へ駆け込む。病院のロビーには見知った顔の医者がコーヒーを飲んで休憩していた。 美琴「ゲコ……じゃなくてお医者さん!お久しぶりです!」 冥土返し「やあ遅かったね?相良宗介くんだろ?」 美琴「そう!そいつ!そいつ何号室?」 冥土返し「123号だよ。いやーびっくりしたんだよ?感電した患者を一万きゅ――」 美琴「123ね!?ありがとう!」 ―123号室・相良宗介― 美琴「ここね!!」 美琴は勢いよく扉を開けた。 ――そこには、信じられない光景が広がっていた。 134 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 16 47.10 ID 6ob3lNul0 ミサカ「それなら……完全に第三世代の方が有利なのでは? とミサカは率直な疑問を投げかけます」 宗介「いや、そうとも言い切れない。完全電気駆動の第三世代ASと違い 動力のトルクを伝える『流体継手』を持つ第二世代ASは単純な腕相撲では第三世代に勝る」 ミサカ「しかしそれは実戦には何の役も立たないのでは?――とミサカは的確な突っ込みを入れます」 宗介「ものは考えようだ。例えば大規模な荷重がサベージとM9にかかったらどうなると思う? 落石でも建物の倒壊でもなんでもいい」 ミサカ「……屁理屈です。仮に大荷重を持ちあげられたとしても 装甲のスペックはM9に利があるのでその戦術では落石自身のダメージでサベージがお陀仏です とミサカはそのナンセンスな戦術を批判します」 宗介「確かに装甲のスペックはM9の方が上だ。しかしそれはあくまで耐弾性能に関する話だ。 M9の電磁筋肉は超アラミド繊維のような構造を持つことで防弾ベストのような機能を有しているが 複雑な人型骨格では建造物として考えると案外脆い一面がある。 その点、あのずんぐりむっくりな流線形のボディであるサベージは、単純に建造物として堅牢だ」 美琴が病室を開けると、何ともまあマニアックな話が繰り広げられているではないか。 美琴「何なの……この和みよう?」 137 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 19 41.21 ID 6ob3lNul0 まだ出会って二日だが、この馬鹿護衛がこんなに流も暢に喋るとは思っていなかった。 自分のクローン……妹にしても同じだ。あの子達の目ってのはこんなにも生き生きしていただろうか? ミサカ「あなたのASの知識量には感服します。 まだロールアウトされていないM9についてまで詳しいなんて驚きです とミサカは羨望の眼差しであなたを見つめます」 宗介「……技術誌と専門誌を読み漁ってるのでな。ハリス社の『アームスレイブ・マンスリー』は購読を勧める。 それに君の知識にも感心した。まさかロックウェル社のMSO-12の開発秘話が聞けるとは」 ミサカ「あ、それについてはまだ少し情報が 実はジオトロン社とロス&ハンブルトン社も操縦システム開発に動きが――」 宗介「な、何!?ジオトロン社はここ最近おとなしかったがまさか――」 美琴「い・い・加・減・に・しろぉおおおおおおおおおおおお」 宗介・ミサカ「「!!?」」 139 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 21 17.17 ID 6ob3lNul0 美琴「なにシカトぶっこいてオタッキーな会話繰り広げてるのアンタらは!? 私を無視すんじゃねーっつーの!!」 宗介「み、御坂か!?」 確かに盛り上がりすぎた。何をやっているのだ俺は この怪しすぎるミサカに尋問する前にまずは会話によって打ち解けようとしたのだが…… ミサカ「お、お姉様……申し訳ありません。その…み、ミサカは……」 ミサカは明らかに狼狽し、上目遣いで美琴に謝っている。 美琴「う、うん?な、何か今日はしおらしいわねアンタ……調子狂うじゃないの」 141 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 24 03.20 ID 6ob3lNul0 宗介「ま、待て御坂!このミサカは本当に君の妹なのか!? 君に妹などいなかったはずでは――」 美琴「い、妹と言えば妹よ。訳はちゃんと話すから……その……何て言えばいいか」 ミサカ「み、ミサカは退室します。本日やることがあるので……とミサカは逃げるように病室を後にします」 そう言ってミサカはとぼとぼと退室する。その姿は隙だらけであり どう見ても普通の女の子だった。 宗介「ま、待てミサカ!」 ミサカ「?」 宗介「礼と謝罪をしていなかった。病院の件、助かった。 そして先ほどの無礼を謝罪する」 ミサカ「いえ、ミサカも無礼はしましたし……ASの話、楽しかったです ……とミサカは率直な感想を述べます」 宗介「ああ、俺も楽しかった。まだ話足りないぐらいだ。また機会があれば」 ミサカ「……はい」 美琴「ちょっと待って! アンタ……“何番”?」 19090号「み、ミサカは……19090号です」 143 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 27 07.82 ID dGBvPWk70 恐怖感情の子か 144 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 27 10.64 ID 6ob3lNul0 美琴「そう……ごめんね。見た目では他の子と見分けつかないや」 19090号「それが普通です、とミサカは――」 美琴「でも……これからアンタだけは見分けつくかも」 御坂がミサカに微笑む。 退出した時のミサカはさっきまでの狼狽していた様子は消えていた。 美琴「さて、アンタには何て話せばいいのかしら……?」 宗介「やはり……妹ではないのか?」 ・ ・ ・ ・ ・ 美琴「妹と言えば妹よ。あの子――ううん、あの子たちの呼び方は“妹達”」 147 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 31 40.91 ID 6ob3lNul0 耳を疑うような話だ。 ミズホ機構へのDNAマップの提供・量産能力者計画・欠陥電気…そして絶対能力進化 先ほどまでのミサカはその美琴のクローンの19090体目だというのだ。 宗介「馬鹿げている…!」 美琴「そう、馬鹿げた計画なのよ。でもそれももう終わったわ どっかの馬鹿が計画止めてくれたおかげでね」 宗介「?」 美琴「とにかく、計画は終わったの。それでもまだ1万人近い妹達は生きている ほとんどの子は外部の学園都市協力機関に移ったけどね 学園都市内にも5人ぐらい残ってたはず。あの子はその一人ね」 宗介「そうか」 美琴「私がこの話をアンタにしたのは、私に“妹”がいるなんてことを他言しないで欲しいから 特に常盤台の関係者にはわね」 それは自らの体裁のためだろうか……それはそうだ 自分のクローンがうじゃうじゃいるなんて気味の悪い話、誰だって知られたく―― 美琴「――だって……騒ぎになればあの子たちが学園都市に居づらくなるじゃない? 何だかんだ言っても……あの子たちは私の“妹”なのよ」 149 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 36 36.30 ID 6ob3lNul0 美琴「……なに目を丸くして愉快な顔してんのよアンタ?」 宗介「――失礼。俺は君を誤解していた」 美琴「誤解?」 宗介「ああ、何て言えばいいだろうか……とにかく君はいい女だ」 美琴「ちょっ……いきなり何言ってんのよ///」 宗介「?……思ったままを言ったまでだが? それに君にも謝らないと行けなかったな。さっきは君の友人に無礼をしてすまなかった それに君の尊厳も――」 美琴「ああ、い、いいわよあのことはもう!誤解も解けたし」 宗介「そうか……?それと君にもう一つ話がある」 美琴「話?」 宗介「そう、俺が君を護衛する本当の理由だ」 152 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 39 18.92 ID 6ob3lNul0 美琴「護衛会社?アンタ学生じゃないの?」 宗介「ああ、学生だがこれでも苦学生なのでな。副業として護衛会社を設立した 長点上機にいる相棒と……もう一人妙な相棒 とにかく3人で経営している」 アル《妙な相棒とは私のことでしょうか?》 宗介「アル……勝手に通信をするなとあれほど――」 美琴「アルって……さっきのトランザム?」 宗介「……!!」 アル《私がミス御坂をここに送り届けました》 美琴「なるほど。見るからに怪しいと思ってたらアンタ繋がりだったわけね で?アンタら護衛会社が何で私なんかを護衛に?誰の依頼?」 宗介「それが……依頼主がわからないんだ。これを」 そう言って宗介が1枚の写真を取り出す 154 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 40 54.43 ID 6ob3lNul0 美琴「私の……写真……?」 宗介「ああ、送り主も不明でこの写真と『この子をしばらく護衛するように』という文面のみ 君が有名人だったのは幸運だったが、今思えばこれは……」 美琴「あの子たちの可能性があると?」 宗介「そうだ。それなら名前を言わなかったのにも納得がいく どうだ御坂?妹達とやらには狙うだけの価値があったりするのか?」 美琴「あの子たち単体には……失礼ではあるけど能力的な商品価値はないわ あるとすれば……あの子たち全体の“価値”」 宗介「??」 美琴「ミサカネットワークって言ってね。あの子たちは自分の脳波を電波として飛ばして 1つの巨大なネットワークを形成しているの。そこでは情報を共有が可能ってわけ クローン体と学習装置で整理された『同一の脳波』だからこそ出来る芸当よ」 “情報の共有”という部分に宗介は引っかかった。 このシステム、根本的な部分は違えどどこかオムニ・スフィアに通じる部分がある 宗介(まさか……アマルガムの残党か?) 155 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 43 36.83 ID 6ob3lNul0 美琴「ただ妹達全員を護衛してるんじゃキリがないわよ あの子たちもそれなりに強いし……半端なやつじゃそう簡単に手を出せないはずなんだけど」 宗介「何か特別な個体はいないのか?」 美琴「いる……でもその個体は私達よりも幼い姿なのよ いろいろ引っかかるけど……これってやっぱり私絡みなんじゃ……」 冥土返し「特別……と言っていいかわからないけど、変わった個体ならいるよ?」 宗介「?あなたは?」 冥土返し「失礼、僕はこの病院の医者だよ。そして妹達の主治医でもある 部屋に立ち寄ったら興味深い話が聞こえてしまってね?」 美琴「変わった個体とは?」 冥土返し「そこの患者さんをここに連れてきた……19090号だよ?」 宗介・美琴「「!!?」」 158 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 45 38.52 ID 6ob3lNul0 冥土返し「彼女は最初から少し変わっていた。あんまりこういう言い方をすると他の子達に失礼だが 19090号は他の子たちと比べて明らかに感情が豊かなのさ」 美琴「感情が……確かに他の子と比べて照れ屋に見えたわ」 冥土返し「それだけじゃない。彼女は感情を手に入れることで他の個体にないことを始めてね?」 宗介「他にないこと?」 冥土返し「ダイエットさ。他の個体に内緒でだよ?」 宗介「は?」 美琴「他の個体に内緒って……ネットワークは?」 冥土返し「そう、彼女はネットワークから切り離した“プライベート”の領域を手に入れたんだ もっとも、他の子たちも最近個性が出つつあるからこういった領域は増えるだろうけどね?」 宗介「しかし……何故そのミサカだけ感情が豊かなのです? 番号から察するに最終ロットじゃない。彼女を境目に感情が豊かになったのならまだ話はわかるが……」 冥土返し「そこは僕もわからないんだよ。彼女が学習装置で感情を入力されたのが8月19日 ……君はこの日に何か覚えはある?」 美琴「その日は……確か絶対能力進化計画の関連施設を潰した日 初めて施設側から大規模な応戦があった日だからよく覚えてる」 161 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /17(月) 02 47 19.22 ID 6ob3lNul0 冥土返し「ふむ……混乱もあいまって学習装置に誤作動でもあったのかね?」 宗介「話はさっぱり読めんが、そんな話はミサカに聞けばいいんじゃないのか?」 美琴「……それもそうね」 冥土返し「彼女なら今日が定期健診だから――」 看護師「――先生!一人が……!ミサカ19090号さんが見当たりません!!」 冥土返し「落ち着いて……ね?他の妹達なら場所がわかるんじゃないかな?」 看護師「それが……!ネットワークでも見つけられないみたいです!」 美琴「ま、まさか……!?」 宗介「考えたくはないが……このような場合 案外“最悪のパターン”というものが起こったりするものだ…!」 戻る 次へ
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輝く負け犬 金束晴天 氷結の百合姫 銀鈴希雨 超高性能な野生児 銅街世津 隠れた駄々っ子 鉄鞘月代 花が咲き乱れ、蝶が舞い踊る楽園“常盤台中学”を舞台に お嬢様のイメージを見事にブチ壊す恐怖(?)の4人組“常盤台バカルテット”が罷り通る! ばかるてっとと超電磁砲と白黒さんと 常盤台のバカルテットとエースと白黒さんが軽~く交錯する時、自己紹介的な読み切りが始まる!キリッ) ばかるてっとと鬼ヶ原さんと白黒さんと 常盤台のバカルテットと鬼ヶ原さんと白黒さんが作者の思いつきという衝動のままに交錯する時、何かが始まる!キリッ) せっちゃんは―――(前編) せっちゃんは―――(後編) 鉄鞘月代の口から語られる常盤台の野生児 銅街世津とは? 金束×鉄鞘 「そうだ、セブンスミストに行こう」 始まりは、金束のそんな一言からだった。襲い来るゲコ太。はぐれる仲間達。 果たして鉄鞘は無事に帰宅することができるのか!? ばかるてっととバレンタインin恵みの大地(デーメテール) いつものように、いきつけの喫茶店『恵みの大地(デーメテール)』で面白おかしく過ごす常盤台バカルテット。 果たして彼女たちはどのようなバレンタインデーを過ごすのだろうか。
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内宗県内の南部に位置する地区の名称である。 正式名称は内宗県常盤市常盤区。 常盤と呼ばれる地域の中でも南北鉄道線の常盤台駅周辺は、 閑静な高級住宅街となっており、隣駅の常盤台中学駅より 常盤台中学校に通う生徒が多く住んでいる町である。 1 常盤台の歴史 常盤台は常盤台中学校が完成するまでは、 アパートや団地が多い普通の住宅地であったが、 常盤台中学校が学校建設の際に、アパートと団地の建っていた地区一体を買収し、 更に常盤台中学校が女子寮用として他の住宅も買収したことにより、 常盤台全体の地価が上昇したため、生活水準が高めの世帯が多くすむ高級住宅地へと変貌を遂げた。
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常盤台中学校前駅 駅前にお嬢様学校とも称される学校がある。 文化祭実行時は臨時列車を運行する事がある。 次駅 学園都市線 ←ときわ台駅 星鐵学院前駅→ 田園都市線 団地前駅→ 田園都市新線 田園調布駅→ 接続路線 学園都市線 田園都市線 田園都市新線 主な駅の施設 待合室(各ホームに設置済み) 停車種別 一部特急を除く全種別 ホーム 番線 路線 方面 備考 1番線 学園都市線・田園都市線 本線・京東鉄道線・栗橋・羽生方面 なし 2番線 学園都市線・田園都市線 朝霞台・志木線・田園都市・目黒・新越谷方面 なし 3番線 田園都市新線 折り返し田園都市・目黒・新越谷・仙川方面 建設中 4番線 田園都市新線 折り返し田園都市・目黒・新越谷・仙川方面 建設中
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【種別】 人名 【初出】 超電磁砲(小説) 【解説】 常盤台中学に入学を希望している少女。12歳の小学6年生。 亜麻色の髪を肩の辺りまで伸ばし、前髪を横一直線に切り揃えた小柄な少女。 夕暮金糸雀の妹で、愛称は「ニワトリ」。 能力はレベル4の「血中肥大(マクロダイイング)」。 姉の事が大好きで、同じ通学路を通って一緒の学校に行きたいと思い、常盤台中学を受験する。ただ、「大好き」のレベルが黒子が美琴に向ける偏執的愛情に近い節がある。 常盤台中学の推薦入試で面接試験を受けに「学び舎の園」を訪れていたが、会う筈の姉と会う事ができず困り果てていたところで美琴達に保護される。 その後は傷ついた姉と再会を果たし、ディベート代表達に対して、姉を傷つけたと激怒。 能力で巨大化させた白血球をけしかけ主力として活躍した。