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元が縦書きなのでラノ推奨 ラノで読む 3 藤森飛鳥は羽里由宇を好きだった。 彼は初めてカウンセリングを受けた時から彼女に魅かれていた。それはまだ中学生であった彼にとって憧れの対象でしかなかったかもしれない。それでも何度か彼女と話していくうちに、彼女の人間としての魅力、女性としての魅力に触れていき、男として羽里と付き合うようになっていった。 唯一自分を理解してくれる人。 肉親ですら、妹ですら彼の心を理解することはできないであろう。ましてや彼の両親は完全に飛鳥を見捨てている。 それに道化師の話を真面目に聞いてくれるのは羽里だけであった。 決してバカにせず、仕事関係なく彼の悩みを聞いてくれる女性のことを、立場を超えて好きになっていまうのは仕方のないことである。 彼は羽里の臭いのする保健室のベッドの上に寝転がり、そのまま深い眠りに落ちるところであった。しかし、 「おい“僕”。こんなところで寝ている場合ではないぞ」 と、自分と同じ声をしたものが頭に響いてきた。 (うるさいな誰だよ――) 飛鳥がそう思い瞼を上げながら天井を見上げると、まるで重力など関係ないかのよに天井にはりついている道化師の姿があった。 「うわあ! ま、またお前か!!」 「あんまり驚かないでくれよ。キミが寝ているから僕もこうした格好で現れるしかないんだから」 道化師は呆れるように笑い、僕が起き上がると、道化師も天井から降りてきて地面に足をつける。 「日に二度も現れることなんてなかったのに……とうとう僕の頭はおかしくなってしまったのか……」 飛鳥は頭を振りながら、目の前の道化師の存在を否定しようとしている。 しかし、道化師は彼のそんな対応に少し戸惑いながら飛鳥の顔に自分の顔を近づける。同じ顔が重なっているため、まるで合わせ鏡にようにも見える。 「な、なんだよ」 「いい加減現実を受け入れたまえ。僕がまた現れたのは、キミに警告をするためだ」 「警告?」 「そうだ、キミの愛するものが危機に陥っている。実体を持たない僕にはこの世界に干渉する術はない。僕に身体を譲るか、それとも自分の力で戦うか、選ぶんだ」 「僕の愛する人……先生!」 「そうだ、彼女に危機が迫っている。僕は彼女がどうなろうと知ったことではない。だが、彼女の命を狙っている者は、僕にとっても敵だ。すぐに彼女のもとへ駆けつけろ」 「何を根拠に、なんでお前がそんなことを知っている?」 「僕は何でも知っているし、何も知らない。急げ、後悔したくはないだろう」 道化師は深く黒いその瞳で、飛鳥の目を覗き込む。 「く……」 飛鳥は自分の妄想の産物かもしれないものの言葉に圧倒されていた。 道化師の言葉の真偽はわからないが、それでも羽里のことが心配になった飛鳥はベッドから立ち上がり、急いで部屋から出て行く。その様子を道化師は背後から見送った。 ※ 「なんなのよ、なんなのよこれは!」 雨宮真美は四谷に抑えられながらも、そう叫ばずにはいられなかった。 パソコンに映し出された古い映像、その中では百人近い異能者たちによる小熊のラルヴァ虐殺が行われていた。それは戦いですらない。 一方的な蹂躙。 虐殺。 陵辱。 恐慌。 殺戮。 そしてラルヴァ因子をもつ猫耳の少女達もまた、その標的に晒されていた。 「この女の子たち……立浪姉妹の……」 その二人の少女は、学園のアイドルであった立浪みかとみきであった。雨宮も彼女達の活躍をいつも聞いては、その愛らしさと強靭さに憧れを抱いていた。 その彼女達が突然死に、あるいは行方不明になり、当時の彼女も毎日のように泣いていた。しかし、この映像は一体何なのだろうか。 「そうだ、キミたちは彼女達が殉死と行方不明だと聞かされていたね。だけど、これが真実さ」 映像の中の異能者たちは彼女達を忌むべき存在だと、罵り、今にも飛びかかろうとしていた。自分たちと同じ学園にいる彼らたちが、まるで雨宮には悪魔のように見えた。 しかし、そこで突然映像が途切れ、ノイズが大量に混じり何が映っているのかわからなくなっていた。 「な、何。この立浪さんたちはどうなったの!?」 「慌てるな、もうすぐ映像が戻る」 やがて映像が戻り、立浪みかが射殺される映像が映し出されていた。無残にも傷だらけの身体に留めを指すかのように何度もその可愛らしかった少女を無残にも撃ち殺していった。 「やめて、やめてよ! もう見せないで!!」 雨宮は目を伏せ、凄まじい虐殺の映像を見せられ、胃液がこみ上げてくる。こんなものを見るのは絶えられない。人間のすることじゃない。 「吐くのは我慢してくれよ。後片付けが面倒だ。だけど、これが一連の事件の真実だ。彼女達は学園の異能者に嵌められ、玩具のように殺された」 「うう、酷い。こんなの酷すぎる……。立浪さんたちが一体何したって言うの……」 「彼女達は何もしてはいない。学園の異能者たちは彼女にラルヴァの因子があるというだけで彼女達を始末した。捏造された真実まで用意してね」 「……」 「雨宮君。キミはどう思う? キミの中の正義は何を訴えている?」 「……わからないわ」 雨宮は呆然とするしかなかった。今まで自分が見てきた世界が崩壊するような、そんな感覚が彼女の心をかき乱していた。 「わからない、か。それじゃあこれはどうだろう。キミに見てもらいたいものがもう一つある」 そう言って脱力している雨宮を、四谷は資料室の置くに引っ張っていく。 数々の資料が置かれている棚に四谷は手を伸ばす。 「ああ、あったあった。これだよ」 四谷は一つのファイルを取り出した。 そのファイルにはこう書かれていた 『メメント・モリ計画・被験体一覧表』 「これは……?」 「ファイルをめくって見てみるといい」 そう言われ、雨宮はファイルに目をむける。 (何かの計画表? でもこんなの聞いたことないわ……) そこには数名の生徒の名前が書かれていた。 見たことある名前もあり、彼女は眼が釘付けになる。 (巣鴨伊万里――これって藤森君の妹さんの友達の名前よね。桜川夏子――桜川さんの名前がなんでこんなところに) そこには何人もの女生徒の名前が羅列されており、そしてその中の一つに有り得ないものを見た。 雨宮真美。 自分の名前もそこには書かれていた。 「よ、四谷先生。これは一体なんの名簿なんですか……」 雨宮は恐る恐る四谷にそう尋ねた。 四谷は彼女の耳元で、囁くようにこういった。 「双葉学園が秘密裏に進めていた計画だ。キミはその時の記憶は残ってはいないだろうが、双葉学園の兵器開発局はこの名簿の少女達全員の頭をいじっていたのさ。そしてキミたち“死の巫女”が誕生することになった」 ※ 女生徒は全部で五人。 全員青白い顔でナイフを握り、羽里を睨んでいる。 「あ、あんたたちそんな物騒なものもってどうする気?」 「やだなー先生。これで果物でも切ると思いますか?」 中心の女生徒、新田薫は邪悪な笑みでナイフを手馴れた様子でちゃかちゃかと回している。物騒なことこの上ない。 「見えない、わね」 どう見てもまともな雰囲気ではないと羽里は感じ、咄嗟に警報ベルに手を伸ばす。 「無駄よ」 新田がそう言うのも構わず、羽里はベルのボタンを押すが、何も起こらない。普通ならばけたたましい警戒音が鳴り響き、すぐに警護班が飛び出てくるはずである。 「な、なんで?」 「無駄って言ったでしょ先生。エレ・キーパーの奴が電子操作してるから今の双葉学園の警護システムは全部停止しているわ」 「な、何言ってるのよあなたたち。何が目的なのよ……」 「あなたの、抹殺」 そう新田が死刑判決を述べるかのような口調で呟いた。 その瞬間羽里は後ろを向き、全力で駆けた。何が起こっているのか理解できないが、生命の危機に直面しているのだけは理解できた。 (何よ、私があの子たちに命を狙われる理由なんてないはずよ――!) そう思いながらもとにかくこの場は逃げることだけを考え、走る。しかし、羽里は突然目の前に現れた壁に激突してしまった。壁と言っても硬くはなく、ぶかっても痛みはなかった。 いや、それは壁ではない。 正確には目の前には何もなかった。何も無い空間に羽里はぶつかったのだ。 「しまった、これは――」 「だから無駄なんですって。私たちから逃げるのは」 「空間――隔離か」 「そうですよ、この子が空間隔離の異能を持っているの。逃げることはできないわ」 そう言って新田は少女の一人を指差す。ソバージュのかかった不良少女が意識を集中して異能を発動しているようだ。 空間隔離とはポピュラーな異能の一つで、見えない壁、あるいは空間そのものを作り出し、外からは認識できないようにしてしまう能力である。その壁は異能者ならば簡単に破壊することは出来る、が、逆に言えば異能者でなければ壁を破壊することはできない。 そして不幸にも羽里は非異能者であった。 「そんな……」 「声を出そうが意味ないわ。生徒たちはみんな始業式に出てるから」 羽里は絶体絶命の状況にどうしたらいいのかと思考を廻らせていた。 どうしたらここから逃げ出せるのか。 「ああ、そういえば先生のお気に入りが保健室で寝てたわね。万が一あいつがこっちに気が付かないとも限らないから、ついでに始末しておこうかしら」 新田は薄ら笑いをしながらそう信じられないようなことを言った。 「ふ、藤森君……。あなたたち彼に手を出したら許さないわよ!」 「まったく、教師が生徒となんて不潔だわ。いやねほんと。二人とも死んじゃえばいいんだわ」 鋭い眼で新田たちはどんどん近づいてくる。 「なんで私を殺すのよ、私に一体どんな恨みが……」 「知らないとは言わせないわ。九年前の“メメント・モリ計画”。それに先生も関わってたんでしょ」 「なんであなた達がそれを――」 「その償い。いえ、清算をすべきなのよ!」 新田がそう叫んだ瞬間、脇にいた女生徒がナイフを構え飛び掛ってきた。 4 飛鳥は廊下を飛び出し、辺りを駆け回り、羽里を探していく。 しかし、どこを見ても羽里は見当たらない。巨大な学園でどうやって探せばいいのか彼にはわからなかった。こうしている間に手遅れになってしまったら、と飛鳥は不安で胸潰れてしまいそうである。 走っても走ってもどうしようもなく、それでも立ち止まるわけにはいかず、飛鳥は混乱の最中にいた。 「おい道化師。教えろよ! 先生はどこにいるんだ!!」 飛鳥はもう彼に頼るしかなかった。 否定し続けた彼の妄想の産物であろう存在に。 道化師は飛鳥の影からすーっと現れ、飛鳥の背後に立つ。 「珍しいじゃないか。キミから僕を呼ぶなんて」 「うるさい。教えろ。教えてくれ、頼むから……先生を……」 飛鳥は膝をつき、道化師に懇願した。道化師はそれを見下ろし、哀れむように見つめる。 「キミが僕に体を委ねてくれれば、すぐにでも彼女の下へ向かうことができる。どうする」 飛鳥はその言葉を聞き、少しの間沈黙する。 どうすべきなのか。 その答えは一つしかない。 「見つけたぞ藤森飛鳥」 飛鳥が戸惑っていると、すぐ背後から声が聞こえた。 振り向けばそこには物騒にも手にナイフを握った二人の少女が立ち塞がっていた。 「き、キミたちは……?」 飛鳥は彼女たちの手にあるものを見て、足が竦んでしまう。 (なんなんだ、何が起こってるんだ――) 「五月蝿い。死ね」 その言葉が放たれた瞬間、飛鳥の眼のまえに火花が飛び散る。そして顎あたりに激痛と衝撃が疾走し、脳が揺らされたようで、自分が床に倒れているのだと理解するのに数秒かかった。 (蹴られた――!?) 飛鳥は倒れながらも視線を前に向け、目の前の女生徒のそのつま先によって全力で蹴られたのだと理解した。体の感覚が麻痺し、立ち上がろうにもどうしようもない。口を切ってしまったのか、口の中に鉄の味が充満して気持ちが悪い。 「あははは。見た今の? かーんって飛んでったぜおもしれー」 そう言いながら二人人の女生徒は笑いながら倒れている彼を見下した。 飛鳥は意識が失いかけ、一体どんな脅威が自分を襲っているのか理解できなかった。 ただ一つわかってることは、今自分が遭っている脅威に、羽里もまた遭遇しているのだということ。 (先生――) 「とっととこんなクズ始末して先生のところに行こうよ。お祭りが終わっちゃう」 「そうだな、血祭りって楽しいお祭りが終わっちまう」 女生徒たちは不気味に笑いながら飛鳥の胸倉をつかみ上げ、無理矢理その身体を起す。そして、手に持ったナイフを彼に突き立てようとしている。 (死ぬ――のか僕は。僕が死んだらどうなる。先生はどうなる――) 消えかける意識の中、ただそれだけを考えていた。 「くたばれ糞色ボケ野郎」 彼を掴んでいる女生徒は、一切の躊躇もなく飛鳥の心臓目掛けてナイフを振り下ろした。 (そんなのは、ごめんだ! 僕は生き残るんだ、何を引き換えにしようと、悪魔に魂を売ってでも先生を護るんだ――!) 絶望の中、少年は生を叫んだ。 理解不能の狂気の中、それでも彼は死を受け入れることを拒絶した。 「了承した」 静かな空間の中、そんな雪のように冷たい声が響いた。 「え? え? え?」 飛鳥の心臓に突き立てられたはずのナイフは彼の身体のどこにも刺さってはいなかった。 その代わりに、女生徒のブレザーの胸元あたりに綺麗にナイフは突き立てられていた。 あまりに自然にナイフは突き刺さり、まるでサーカスの一芸のように現実感を覚えることはできなかった。 有り得ないものを見るかのように女生徒は眼がガラス玉のようにひん剥かれている。 やがて糸の切れたマリオネットのようにぐらりと体勢を崩し、倒れていく。 その女生徒が最後にみたものは、歪んだ笑みを浮かべる藤森飛鳥と同じ顔をした“何か”であった。 ※ 「“死の巫女”って何なの四谷先生。なんで私や桜川さんの名前が載ってるの?」 「いい質問だ雨宮。さすがは優等生」 雨宮は自分の名前が記載されている名簿を見て、動揺していた。 「茶化さないで下さい。この“メメント・モリ計画”ってなんなんですか!?」 「僕も詳しい計画の内容は知らない。だけど、これは双葉学園が全力で隠そうとしていた暗黒史の中心だ」 「暗黒の歴史……」 「そうだ。外宇宙からこの星へアクセスしている存在、それと交信しようというのが“メメント・モリ計画”。三年前に取り潰された兵器開発局はその大いなる存在と繋がっている数名の少女たちを異能者として見つけだした。それがキミたち死の巫女だ」 「ま、まってください。私は異能者なんかじゃありませんよ」 「それはまだ未覚醒というだけだろう。キミが双葉学園に入学できたのも資質があると見込まれたからだ。しかし未だ発現に至っていないのはきっかけがないからさ。きっかけさえあればキミも他の死の巫女同様“|死を司る《タナトス》”の力を得ることができる」 「そ、そんなものいりません……!」 雨宮はファイルを放り投げ、その場から駆け出そうとする。しかし、四谷は彼女を逃がしたりはしない。彼女の腕を掴み、自分の下へ引き寄せる。 お互いの顔が、息がかかるほどに縮まる。 「やめてください……」 「キミはあの立浪姉妹虐殺を見て何も思わないのか。自分が知らず知らずのうちに奇妙な実験の被験体になっていたことを何も思わないのかね」 「私にはそんな記憶はありません……」 「記憶を消されてるのさ。頭をいじられてね」 「そんなバカなこと――」 「あるんだよ、キミに最後に見せたい物がまだある」 そう言って四谷は新たな映像ディスクを取り出してパソコンに挿入する。 やがて映像が再生され、そこには大量の用途不明の機械が置かれた白い部屋が映し出された。そこの中心には何人もの小さな女の子たちが頭に奇妙なヘルメットのような機械をつけて椅子に座っていた。座っている椅子には手と足を拘束するベルトが細い少女たちを繋いでいる。 「こ、これは――」 「ああ、見たまえ。あれがキミだ」 やがてその部屋には新しい少女が連れてこられた。紛れも無くそれは幼い頃の雨宮自身であった。虚ろな表情のまま、白衣の男たちに無理矢理椅子に縛り付けられ、ヘルメットを被らされていた。 「そんな、こんな記憶無いわ」 「だから言ったろう。キミの記憶は消されている。奴らによってね」 「嘘よ、嘘よ! そんなの、いや――」 「真実を見るんだ雨宮。さあ実験が始まるぞ」 白衣の男たちは何かのスイッチを押し、少女たちは全員凄まじい絶叫を上げながら震えていく。 画面から伝わる魂が焼け焦げる臭い。 まるでそこは地獄の底のような光景であった。 ※ 「くたばれ羽里由宇!」 ナイフを構え羽里に飛び掛ってきた少女は途中でその勢いをぴたりと止め、その顔は驚愕に歪んでいた。 「どうしたの玲子?」 新田はその女生徒、玲子が見ている視線の先に眼を向ける。羽里の真後ろ、そこにそれは存在した。 「なぜ、お前がここにいる――藤森飛鳥!!」 新田はそれを睨みつける。 「ふ、藤森くん? 来ちゃ駄目!」 新田が突然彼の名を叫び、羽里もまたそう叫びながら後ろを振り向く。 そこには確かに藤森飛鳥と同じ顔をした人物が立っていた。 そいつはその両手で先ほどの女生徒二人を引きずりながらゆっくりとこちらに向かってきた。その引きずられている少女二人の胸にはナイフが深々と刺さっている。 その光景を見て戦慄を覚えたのは羽里であった。優しく人を傷つけることなど決してできなかった飛鳥にそんなことができるはずはない、と。しかし目の前の人物は確かに飛鳥と同じ顔をしていた。 「なぜだ、なぜ非異能者のお前が空間隔離を突破できた! いや、そもそもそいつらは身体強化系の異能者なんだ、お前如き貧弱な奴に負けるわけが――」 「僕に異能なんて無意味だ」 そう言って両手の女生徒をぶん投げて新田たちのほうに放り投げた。 手の荷物を捨てたその人物は鬱陶しい前髪をかきあげ、その顔を見せ付けるようにしていた。間違いなく藤森飛鳥の顔である。 「藤森……くん?いえ、」 その人物は切れて血が出ている口元を拭い、その血のついた指を両目の真下に這わせ、ちょっとしたペイントをしていく。それは涙と星のマーク。まさしくピエロのようなペイント。 「キミはまさか――“彼”なの?」 その人物はゆっくりと不気味に唇を歪ませ、奇妙に笑う。 まるで道化のように。 まるで死神のように。 まるで悪魔のように。 「その通りだよ。さすがに彼が惚れこんでいるだけはあるね、実に聡明だ」 羽里は唖然とした。飛鳥がいつも怯えていた存在、道化師が今彼の身体を手に入れ目の前に存在する。 羽里は直感でこれが本物だと理解する。 本物の、飛鳥が言っていた道化師そのものだと。 「なんなんだお前、なんなんだお前は!?」 新田は苛立ちそうに頭をぼりぼりと掻き、歯を剥き出しにしている。 「殺せ、二人とも殺せ! 早く!!」 新田は仲間たちにそう呼びかけ、女生徒たちは全員飛鳥、いや、道化師に飛び掛ってくる。 「危ない、逃げて!」 羽里は彼の身を案じ、そう叫ぶ。しかし、それは無意味であった。 ナイフが彼の身体に当たる瞬間、紙一重でそれを避け、その少女の腹に強烈なつま先蹴りを入れる。苦痛で顔が歪み女生徒をそのまま吹き飛ばし、そのまま次々と襲ってくる少女たちも同じように足だけで一掃していく。 まるで踊っているかのように少女達の呼吸と動きに合わせ、彼女達の攻撃を避け、最小限の動作で蹴りを入れていく。 道化師は一人の少女の腕を蹴り上げ、ナイフを空中に浮かせそれを手に取る。 「冥界に帰りたまえ、哀れな少女たちよ」 そう呟き、凄まじい素早さで全員にそのナイフで切りかかった。 その直後、少女たちは不思議なことに血を一滴も流すことも無くその場に倒れこんでいく。 羽里は驚きを隠せなかった。 何の躊躇もなくナイフで彼女達を切り込んでいく彼が、飛鳥とはまったく別の存在なのだと骨まで理解できた。 「殺したの……?」 「いいや、殺してはいない。いや、最初から彼女たちは生きてはいない。そうだろ?」 そう道化師は新田に目を向ける。 「あんた何者なのよ、どこまで知ってるのよ……」 「僕は何者でもないし、何者でもある。何も知らないし、何もかもを知っている」 「ふざけるな、この糞野郎!」 新田は怒りをぶちまけながらその身体を変質させていく。皮膚がどす黒く変貌し、どうやら身体を鉄でコーティングしていっているようだ。 彼女は肉体変化系の異能者らしい。 「あんたの攻撃は私には効かないわ。この鋼鉄の身体を破ることはできない!」 「ほう、やはりキミたち人形も異能が使えるようだな」 「そうよ、だからもう諦めて死になさい!」 新田はその激増した体重で地面を蹴り、床がぼごん、とへこむ。その衝撃で新田は凄まじい爆発のようなスピードで道化師のもとへ駆け出した。 その鋼鉄の腕で、華奢な飛鳥の身体をへし折ろうというのだ。 どんな相手でも身体が人間ならば彼女の一撃で死にいたる。一撃必殺の攻撃が今道化師を捉えようとする。 「さあぐちゃぐちゃにな――」 その刹那、新田の動きは止まる。 「嘘、でしょ。なんで? なんで鋼鉄の私の身体に――」 新田の胸にいつのまにかナイフが根元まで食い込んでいた。鋼鉄の身体をまるで無視するかのようにずぶりと刺さっている。 新田は道化師を見つめる。 どうやら彼は手に持ったナイフを投擲しただけらしい。 なのになぜ自分の身体をこんなちゃちなナイフが刺さっているのか理解できなかった。 「だから言ったろう。僕に異能は無意味だ」 ぐらり、と新田は倒れこむ。 彼女は倒れこむ直前にこう呟いた。 「まさか本当に存在するとはね。“異能殺し”――」 新田は前のめりに倒れ、 「そんなの――反則じゃない」 その言葉を最後にもう二度と起き上がることはなかった。 「反則か、褒め言葉と受け取っておくよ、僕は世界をかき乱す“道化師《ジョーカー》”であり貴様たちを打ち滅ぼす“鬼札《ジョーカー》”でもあるのだからね」 少女たちを全員打ち倒し、飛鳥の顔をした道化師は羽里のほうを振り向く。 「あなた何をしたの? それにこの子達がもう死んでるって――」 羽里は一瞬にして破られた新田の鋼鉄の身体を不思議そうに眺めていた。 「僕の異能は異能にして異能にあらず、“異能殺し”と呼ばれるものだ。普通の魂源力とは真逆のエネルギー、そうだね“対魂源力《アンチアツィルト》”とでも呼ぼうか。そのエネルギーは異能者の魂源力を相殺し、無効化することができる」 「対魂源力《アンチアツィルト》……? だから藤森君は異能者でありながら異能検査に引っかからなかったのね……」 「そうだ。だがこの力は彼の身体にあるものであるが僕にしか扱えない。だから僕が彼の身体を借りる必要があったんだ」 「あなたは、藤森君の何なのよ。二重人格? いえ、そんな結果はカウンセリングでは出なかったわ」 「うん。僕と彼との精神と魂はまったく別のものだ。僕はただ彼の身体を借りているだけさ」 「彼は、戻ってくるの?」 「大丈夫だよ。脅威が去れば僕は引っ込むだけさ」 「そう、よかった……」 羽里は倒れている女生徒たちの下に駆け寄り、その身体を診る。 その身体はとてつもなく硬く冷たく、今死んだ死体とは思えない。 「本当にこれは――」 羽里が少女の身体に触れていると、突然身体が一気に腐り出し、一瞬にして骨になってしまい、その骨もすぐに灰になって消滅してしまった。そこに残ったのは学園の制服だけである。 「きゃあ!」 「だから言っただろう。彼女達は既に死んでいた。何者かが彼女達を操っていたのさ。僕が対根源力を込めたナイフで切りつけることによって、その延長された生命を終わらせた。これは異能の力で無理矢理生き返されたんだ」 どうやら道化師の異能殺しによって、彼女達の停められた時間が洪水のように押し寄せてきて一瞬で塵と化してしまったようだ。一体彼女達はいつから死んでいたのだろうか。いつから学園に潜んでいたのか。 「そんなバカなことって、いくら異能でも生命を操る力があるわけないじゃない!」 「それがあるのさ。この世でもっとも最悪で罪悪な異能。それはずっと昔から存在する。宿主を変え、人間の歴史の裏で生きてきた、その存在を僕らは“白き魔女”と呼んでいる」 「魔女……」 「ああ、死を弄ぶ存在。僕が戦うべき相手」 道化師はどこか遠くを見つめ、何かを決意した様子であった。 「今日は色々ありすぎてもう頭がパンクしそうだわ」 反対に羽里はその場にへたりこみ、深い溜息をついた。 5 羽里が深いため息をついた瞬間、突然時は止まった。 何もかもが静止し、空気すらもその動きを止める。 道化師はそんな中、静止する飛鳥の身体とは逆に道化師の意識だけがその時の止まった世界を認識していた。 「これは――そうか、そこにいるんだろう」 道化師は動かない目を真っ直ぐ見据え、目の前からゆっくりと歩いてくる人影にそう話しかけた。 静止した世界で唯一動いているその人影は、顔を見てもその顔を認識することができず、まるで顔が無いような印象を受ける。 そんな奇妙な男を道化師は睨み、 「やあ、僕の“本体”。何千年ぶりだろうね」 そう語りかけ、男は、 「やあ私の“影”。何千年ぶりだろうな」 そう淡白な調子で答えた。 「白き魔女も死の巫女たちもお前が裏で手を引いているのか」 「ふん、さあな。それを貴様に教える必要は無い」 「僕はわかっているよ。お前は僕のようにちゃんとした肉体を得ることはできなかった。お前は誰かの力を扱うことでしかこの世界に干渉できはなしない。しかしまさか白き魔女を手に入れているとは思わなかった」 「だからどうした。だとしたら私をどうするつもりだ」 「僕はお前を必ず滅ぼす」 「貴様に私を滅ぼせるものか、貴様はただの影だ。私が元の身体を失ったときの残滓にすぎない」 「僕がなんだろうと関係ない。お前なんかにこの星を滅ぼさせはしない。僕は人間の素晴らしさを知っている」 「人間か、愚かで不完全な生き物だよ。滅びた方がこの星のためだ。人間たちにラルヴァと呼ばれる我々の同胞たちのほうがよっぽどまともな生命だ」 「確かに人間は愚かかもしれない。それでも、それでも僕は――」 混沌の王と黒衣の道化師。 人知を超えた二人の戦いはどちらかが滅びるまで終わることは無い。 ※ 薄暗いどこかわからない場所に、桜川夏子は座っていた。 彼女が持つ携帯電話に何者かからの連絡が入り、彼女はそれに応答する。 「首尾はどうかしらエレ・キーパー」 『上々です白き魔女。雨宮真美は我々の手に落ちました』 「そう、よくやったわね。褒めてあげるわ」 『はっ、ありがたき幸せ。雨宮のタナトスの力があれば計画は第二段階に進みます』 「ええ、そうね。また貴方に指揮をまかせるわ」 『わかりました。引き続き任務を続行します』 そう言って電話の相手は電話を切り、桜川も携帯を雑に放り投げた。 「もう少し、あと少しでみんな一緒になるわ。みんな一つになるわ……待っててね、みかちゃん、みきちゃん――」 桜川は華奢な自分の身体を抱くように丸まり、そう呟いた。 悲痛さを感じさせるそのか細い声は、誰に届くでもなく消えていった。 ※ 突然道化師の身体がぐらりと倒れこんできて、羽里は吃驚してしまった。 咄嗟に抱きかかえ、なんとか押さえ込む。 「ど、どうしたの。大丈夫?」 「せ、先生……僕は……」 「ふ、藤森君、戻ってきたの……?」 羽里の胸に抱かれる彼は、もう道化師の空気を纏ってはいなかった。意識が藤森飛鳥のものに戻っていた。彼は焦点の合わない虚ろな瞳で羽里を見つめる。 「先生、僕は、僕は怖いよ……」 「藤森君、あなた覚えてるの?」 「うん、わずかだけど、自分じゃない何かが僕の身体で暴れているのを覚えてる。あれが、僕の心に潜んでいた道化師だったんだね」 「ええ、そうね」 「怖い、先生。僕はどうしたいいんですか……」 涙を流し、俯く飛鳥を羽里は強く抱きしめる。 「大丈夫よ藤森君。今は眠りなさい。あなたは私が護るわ。あなたに怖い思いなんてさせたくない……」 ゆっくりと瞼を閉じ、意識を失うように眠りについた飛鳥の額に軽くキスをし、愛しい人の頬を羽里は撫でていた。 それはこれから起きる激しい戦いの前の、刹那の平穏であった。 ――――――To be continued 前編へ戻る トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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元が縦書きなのでラノ推奨 ラノで読む 【ジョーカーズ・リテイク 愚者たちの宴:part.1】 「これから先 君が 動き回る屍となって ぎくしゃくと 夜を歩いたり まるで蜘蛛のように 地面を這いずる姿を見るのは あまりに忍びない ごめんなさい、許してください! ごめんなさい!ごめんなさい! ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!! 許してください・・・」 ――――筋肉少女帯〈リテイク〉 ※※※ 0 両親が仕事にでかけ、その幼い子供たちは家で留守番をしていた。 七歳程度の少年二人と、四歳くらいの女の子がそこにはいた。三人は兄妹で、その少年ふたりはそっくり同じ顔をしていた。 双子なのだろう、まるで鏡合わせのようにそっくりである。 彼らはテーブルの上にばらまいたたくさんのカードをシャッフルしている。 どうやら三人は暇つぶしにトランプで遊んでいるようである。 「僕トランプ初めてやるんだけど、カードの種類がよくわからないよぉ」 「うーん、いっぱいあるもんね。そこから説明しなくちゃね」 「うー、お兄ちゃんたちばっかりずるい! 弥生もやるー!」 「まだ弥生《やよい》には早いよ、お兄ちゃんたちがやるのを見てろよ」 双子の兄たちは、まだ幼い妹をたしなめ、片方が片方にカードの説明をはじめた。 「カードはいっぱいあるけど、基本的にはハート、クローバー、ダイヤ、エースの四種類だよ。これにみんな数字が書いてあるだけさ」 「このおじさんやおばさんは?」 「クイーン、ジャック、キングだね。僕もこれがなんで絵がついてるのかわかんないけど、やっぱわかりやすいんじゃない」 二人はわいわい言いながらトランプのカードを見てはしゃいでる。 そのうち一人が奇妙なカードがまざっているのに気が付いた。 「この変なピエロが書いてあるカードはなに?」 「ああ、それはジョーカーだよ」 「ジョーカー?」 「うん、変った扱いのカードでね、ゲームによって役割が違うんだ」 「へー、変なの。面倒くさいね」 「まーね。例えばババ抜きではみんなから嫌われて、自分に回ってこないようにと警戒されたり、すぐに棄てられちゃうカードだよ」 双子の二人はその奇妙な黒い道化師の姿が描かれたカードをまじまじと見ていた。片方の説明を聞き、片方は「なんだかそれじゃあ役立たずの厄介ものって感じで可哀想だね」とそう呟くと、もう一人は自慢げにジョーカーのカードを掲げ、 「でも、場合によっては最強になるのがこのジョーカーなのさ」 少年はそう言って、にんまりと笑った。 1 世界が憎い。 世界を滅ぼしたい。 世界なんて壊れてしまえばいい。 そう口にしなくても、どこか心の片隅で思っている人間は意外と多い。 双葉学園の高等部三年に席をおく茶髪の少女、谷川《たにがわ》あゆみもそう考えていた。 流行のファッションをとりいれて、何人もの男子と付き合ってみても、灰色の日常、灰色の人生は変ることはなかった。毎日毎日がぼんやりと過ぎてゆき、これは彼女にとってあまりにゆるやかな死刑執行とも思われた。 (ほんと、つまんないな。みんなは苦痛じゃないのかしら) 彼女は机に頬杖をつきながら自分のクラスを客観的に見つめてみる。誰も彼も同じ話題で同じように笑っているだけ。まるでマネキンが不気味に口を開けているだけのように現実感が無い。みんなは本当に自分の意思があって生きているのか、実は誰かに操られているだけのロボットなんじゃないか、そんな妄想が彼女にはあった。 (いまこの場で私がガソリン撒いて火をつけても、みんな死ぬことを後悔しないんじゃないのかしら。未練があるほど人生を大切にしてないんじゃないのかな) そんな物騒なことまでも考えて、溜息を漏らしていた。 もし自分に異能があったら、もっと人生は楽しかったのかな、そう思い、ついた溜め息は誰に届くでもなく消えていく。 双葉学園には異能者ではない一般枠の生徒も数多くいる。様々な事情で彼らは学園に身をおいていた。ラルヴァに肉親を殺され引き取られた者。ラルヴァとの戦闘の補助として活躍する者。覚醒する可能性のある者。一般生徒たちはそうして異能者たちと学園と共存していた。 あゆみもその一人である。彼女は父親をラルヴァに殺されたことがある。しかし、いつも彼女を虐待していた父親が死んだのは彼女にとっては嬉しいこと以外の何者でもなかった。父親を殺したラルヴァに感謝こそすれ、異能者たちのように殺したいとは思ったこともなかった。 かといってラルヴァに肩入れをするつもりはないが、そう考えている彼女にとってこの学園は少し居心地の悪いものであった。 それが彼女の倦怠をより強くしている要因の一つでもあった。 そんな彼女がきちんと時間通りに学校にやって来るのは学業のためではなかった。あゆみはちらりと視線を斜め後ろに向ける。 そこにはホームルームの準備をしているクラスメイトが席に座っていた。 可愛らしい顔していて、いつもはにかむような笑顔、それでいてどこか影を感じさせる少年。彼は藤森飛鳥《ふじもりあすか》。あゆみは今まで何度かクラスが一緒になったことはあっても、特に会話を交じわせたこはほとんど無かった。あゆみはこのどうでもいい人間ばかりが集まっている学園で、彼だけをいつも見ていた。 今日は四月の始業式。再び彼と同じクラスになれたことに彼女は神に感謝していた。それでも飛鳥と仲良くなるきっかけなんてあるわけがなく、彼女はまたも溜息をもらしていた。どんなに傍にいても彼と自分の距離はきっととても遠い。その思いがまたも彼女の倦怠を強くしていく。 (どうして藤森君にこんなに魅かれるんだろう) 下らない人間たちの中で、あんなに可愛い顔をして笑っている彼を見て、あゆみはそう考えていた。どうせ自分と彼とは釣りあわない。何人もの男と付き合っては別れを繰り返し、誰も愛すことはなく、誰にも愛されることもなく、ただファッションで交際を続けていただけ。 そんな彼女が唯一恋焦がれてしまった少年。 この恋が叶わないのならば、大人にならないうちに世界なんて終わってしまえばいい。 彼女はそう願った。 ※ (もうすぐ始業式か。下らないな、さぼってもいいが目立つ行為はまずいだろうか) 教室で石のように動かず、じっとしている男子生徒、古川正行《ふるかわまさゆき》はうんざりしながらつまらない時間が経過するのを待っていた。 彼は普通の人間ではなかった、異能者であった。 そして普通の異能者でもなく、脳をいじられ、異能と肉体を強化された改造人間と呼ばれる存在であった。改造人間はオメガサークルという違法科学機関の人間兵器である。彼はオメガサークルの工作員として学園に送り込まれた。 衝撃のバラッド。それが彼のコードネームであり、そちらが真の名前でもある。 バラッドの任務は調査と報告。とは言っても特に決まった調査対象は無く、学園で何か変ったことがあったら逐一機関に報告するといった類のものである。 しかし彼が学園に来て以来特に変ったこともなく、とりためて報告することはあまりなかった。せっかくの底上げされた異能を使う機会もなく、彼は鬱屈としていた。 暴れたい。 ただそれだけを考えていた。 戦闘特化の異能である彼は今までも何人もの敵を殲滅してきたエースである。戦うことに愉悦を感じ、オメガサークルに拉致され、改造されたことさえも感謝しているくらいであった。それなのに自分の力を誇示できない今の状況にとても苛立っている。 何か面白いことが起きないか、そう考えていてもどうしようもないことはわかっている。だからといって勝手な行動をとれば機関に消されてしまうかもしれない。 彼は苛立ちながらクラス全体を見回す。 今この瞬間、こいつらを殺したらさぞ面白いことになるだろう、そう頭に思い浮かべ、少しだけ唇を醜く歪ませた。すると、何故か一人の男子生徒と一瞬だけ眼が合った。 女みたいな顔をしたその生徒は普段見せない厳しい視線で彼を睨んでいた。 (あいつは藤森――。何をこっち見ている) バラッドは負けじと彼を睨みつける。普段は大人しくいつも笑っているような藤森飛鳥をバラッドは嫌っていた。学園外で見つけたら殺してやりたいと思ってもいた。飛鳥のようにいつもへらへらとしている軟弱な人間を心から嫌悪しており、女みたいな顔に女みたいな細い体。いつかへし折ってやりたい、そういう願望で彼の胸はいっぱいであった。 ある意味それは歪んだ性癖のようなものなのかもしれないが、バラッド自身にその自覚はなかった。 飛鳥はすぐに視線をバラッドから外してしまう。 さっきの鋭い眼は、普段の藤森飛鳥とは似て非なるものだとは、この時のバラッドには気づくよしも無かった。 ※ 雨宮真美《あまみやまみ》は迷っていた。 一緒のクラスになった藤森飛鳥に話しかけるべきか、やめておくべきか。 彼女は三つ編みに眼鏡、膝下のスカート丈という、いわゆる“優等生”といった風貌であった。見た目だけではなく、事実彼女の学力は優秀で、これまでずっとどのクラスでもみながやりたがらない学級委員長をしていた。それ故に彼女はずっと委員長と呼ばれ、始業式も始まっていない、役員など決まっていない今も彼女のことをクラスメイトは委員長と呼ぶ。 そんな堅物とみなが思っている彼女も、普通の女の子のように恋をしていた。 女の子のように可愛らしく綺麗な顔をした男の子。いつも優しい顔で笑ってはいるが、たまに見せる斜に構えた表情、それらの全てが彼女の母性をくすぐっている。そんな彼女が恋する相手、それが飛鳥であった。 (私なんかが話しかけたりして、鬱陶しいなんて思われないかしら。ううん、藤森君はそんなこと思う子じゃないのはわかってるわ。それでも――) 恋愛経験なんてない彼女にとって、これは初恋であり、どうしたらいいのかわからなかった。こんなことを相談できる友達もいなかった。彼女のことを便利な委員長としか思っていないクラスメイトたちは彼女のことを善意の押し売りだと、揶揄していた。陰でそう言われても彼女は自分が正しいと思うことをせずにはいられない。 そんな強い心を持つ彼女でも恋は強敵であった。 (私って本当に駄目ね。きっとこのまま何もできずに学生生活を終えてしまうんだわ。飛鳥君との思いでも作れずに、このままずっと) 雨宮はそう考えるたびに胸が痛んだ。 このまま学校を卒業して別れてしまったら、もう二度と彼に会えなくなってしまうんじゃないか。 そして自分は好きでもない人と結婚して、好きでもない仕事について、そうやって生きていくんじゃないのか。そんな風に未来に対しても不安を抱いていた。 彼女はふと、心の中で呟いてしまう。 今この時、時が止まってしまえばいい、世界が終わってしまえばいい――と。 2 神様どうぞお許しください。 僕はどうしようもない嘘つきです。嘘だらけの道化です。 人に嫌われまいといつも楽しくも無いのに皆に笑顔を向け、騙し、欺き、心の中では冷めた眼で彼らを見ているのです。 そんな風に藤森飛鳥は心の中で懺悔をしていた。 彼には何もなかった。 異能も、学校での目的も、将来の展望も、何もない。 心から信じられる友達も、恋人も、敵も、誰もいない。 「お兄ちゃんって、いつもそうだよね」 妹の弥生に彼はいつもそう怒られていた。自分の笑顔を嘘だと知っている弥生は、兄である飛鳥を軽蔑していた。それを飛鳥自身も感じており、妹とは距離を置いて、あまり会ってはいない。同じ学園内に通っているのに、学園が巨大すぎるというのもあるが、それでも兄妹がこうして会わないというのは異質である。 仲が悪い、と言えばそれまでなのだが、それはそんな浅いものではなかった。幼い頃はとても仲がよかった兄妹、一体いつからお互いそうなってしまったのか。 いや、それは彼が一番よく知っている。 (明日人《あすと》……お前がいなくなってから、ずっとこうだ) 飛鳥は何か遠い思い出に浸りながら、ぼーっと机に座っていた。もうすぐ始業式が始まる。それまで少しの間ゆっくりしていよう、そう思い席に座り、机を整理する。 (始業式か、いっぱい人が集まるんだろうな。いやだな。息が詰まりそうだ。今から気分が悪くなってくる) 大量の人間たちに囲まれることを思うと、飛鳥は嫌になってきた。 吐き気さえ覚える。 数百、数千の生徒たちが一堂に集まり、ひしめきあう。飛鳥にはそれは耐えられなかった。彼は人間が怖いのだ。恐ろしいから笑顔で取り入ろうとする。 出来れば近づきたくはない、しかし離れれば人から敵視され、孤独になっていく。それはとても辛い。孤独は身を焦がし、人を死に至らせる。 自分の半身を失ったことがある彼にとって、これ以上孤独になるのはとても辛いことであった。しかし、それでも人を恐れる彼は、必要以上に人との距離を縮めたいとは思ってはいなかった。 矛盾とジレンマ。 それが飛鳥の全てであった。 「い、委員長……」 飛鳥はおさげの少女、雨宮真美に話しかけた。正確にはまだ委員長ではないのだが、みんがそう呼び、どうせ今年も彼女が委員長をするのだろうと思い、そう呼びかけた。呼ばれた雨宮は少し慌てた様子で、飛鳥のほうを振り向いた。 「ど、どうしたの藤森君」 「ちょっと気分悪いから保健室に行ってきていいかな」 「え、調子悪いの? 大丈夫?」 雨宮は本当に心配しているように飛鳥の顔を見つめる。 「始業式には出れそうもないから、先生に言ってくれるかな」 「うん、それはいいけど。歩ける? 保健室までついていこうか?」 そう言う雨宮の親切を断り、飛鳥はそそくさと教室から出て行く。飛鳥は雨宮が苦手だった。いつも積極的で、人の内面に押し入り、親切を振りまく。彼女のような真っ直ぐな人間が飛鳥は理解できなかった。 廊下をふらふらと歩き、どうしたものかと飛鳥は考える。 始業式に出たくないだけで、本当に気分が悪いわけではまだない。 保健室に行くのもためらわれた飛鳥は、このままブラブラとどこかで時間が過ぎるのを待とうと考えていた。 (僕一人がいなくても、きっと誰も気が付かない) 彼は廊下をさ迷うように歩いていく。 ふと、窓の外を見ると、桜が咲いているのが見える。 花は美しい。散っていく姿はとても美しい。 人間も、こうして散っていく姿が一番なのかもしれない。 そう、みんな、等しく滅びていけば―― 「その考えはこれ以上いけない」 突然声が聞こえた。 どこから――? そう思ってあたりを見回しても誰もいない。空耳かと思いまた窓の外を眺めようとした時、彼はありえないものを見た。 窓には飛鳥と同じ顔をしたものが映っていた。 いや、窓に光が反射し、自分の顔が映っているということは至極当然のことではある。だが、その窓に映っている飛鳥の姿は奇妙な格好をしていた。 「な、なんだ……これ」 そこに映る自分は身を包むようなコートとマントを着込み、首にはぎざぎざした付襟、頭はピエロの帽子のような二つ又になっているフードをすっぽりと被り、眼のあたりには赤いインクで涙と星のペイントがされている。まさに道化といった印象である。しかし、ピエロというにはあまりに全ての装飾品が真っ黒で、死神や悪魔のようにも見える。 そう、それはピエロというよりはまるで―― 「ジョーカー……」 いつか見たトランプに描かれていた黒い道化師の絵にそっくりであった。 「そうだ、僕はジョーカーだ。飛鳥、キミは世界を憎んでいるかい」 「うわぁ!!」 突然そこに映る道化師の格好をした自分にそう問いかけられ、飛鳥はひっくり返りそうになる。 「な、なんだよお前! ラルヴァなのか!?」 「違うよ、ボクはキミの心に存在するものだ。ボクはキミにしか見えないし、ボクもキミにしか語りかけることはできない」 「僕はとうとう頭がおかしくなったのか……」 飛鳥は目の前の現実を振り払おうと頬をつねってみるが、目の前の道化師は姿を消すことはなかった。 「夢じゃない……」 飛鳥は道化を凝視する。自分と同じ顔をした、道化姿の少年。 「お前は……明日人――明日人なのか!?」 飛鳥はそう叫び窓に顔を近づける。 「明日人……確かにボクはそう呼ばれていた存在であった……」 「何を言ってるんだよ明日人! お前がいなくなってから僕は、僕は――」 飛鳥は泣き崩れるようにその場に膝をついた。 藤森明日人。 それは飛鳥の双子の弟。 七歳のときに不幸な交通事故で死んでしまった飛鳥と同じ顔をした少年。 明日人が死んでから飛鳥の人生はずっと、半身がもがれたかのように憂鬱であった。何をするにも熱くなれず、斜に構え、嘘の笑顔だけを取り繕って毎日を生きてきた。 その時から妹の弥生とも上手く付き合うことができなくなり、両親ともほとんど口を聞かなくなった。 明日人は異能を見出され、学園に入学することが決まっていた。その転校の日、明日人はダンプに撥ねられ、その短い生涯を閉じた。 そのつてで飛鳥と弥生も双葉学園に入学することになった。妹や両親といても気まずい彼にとって寮の生活のほうがよっぽど気が楽であった。 死んでしまった明日人が今、自分の目の前にいる。そんな事実が飛鳥の心を揺さぶっていた。 「飛鳥、ボクはもうキミの知っている明日人ではない。ボクはただの藤森明日人の魂の残滓、いわば残留思念のようなものだ」 「どういうことだよ……」 「藤森明日人のバックアップ、と思ってくれればいい。彼が果たすべきだった使命、それが今迫っている。ボクは藤森明日人本人の代わりにそれを果たさなければならない。だが今のボクには実体がない」 明日人――いや、黒衣の道化師、ジョーカーは飛鳥の眼を真っ直ぐに見つめる。 「“敵”が動き始めた。迷っている時間はない。力を貸して欲しい飛鳥」 ※ 谷川あゆみは突然席を立ち、教室から出て行ってしまった藤森飛鳥を目で追った。 (どこに行ったのかな、トイレ?) 話しかけられた雨宮が心配そうな顔で彼を見送っていたのを見て、それは違うなと理解できた。 飛鳥がどこに向かったのか、それが気になったあゆみは気が進まなかったが雨宮に直接聞いてみることにした。 (でもわたしこの子苦手なのよね。いつも偉そうに説教してくるし) それでも飛鳥のことが気になったあゆみは雨宮に尋ねてみることにした。 「ねえ委員長、藤森の奴どこ行ったの?」 「え? 気分悪いからって保健室に……どうして?」 そんなことを聞くあゆみを不審に思った雨宮は眉を細めながら彼女の顔を見る。 「べ、別にいいでしょ。ちょっと気になっただけよ」 「ふぅん。珍しいね」 「対した意味はないわよ。私もちょっと気分悪いから保健室に行くわ」 あゆみはぶっきらぼうにそう言って、雨宮の制止を振り切り教室を出て行く。 勿論本当に気分が悪いわけではない。 飛鳥のいる保健室に自分も行く口実に過ぎない。 たとえ同じ保健室にいても会話なんて出来るとは思えないが、それでも彼の隣で寝ていられたらそれはどんなに幸福だろう。あゆみは心を躍らせて保健室へと向かっていく。 しかしもうすぐ始業式が始まる、ということは保健の先生も保健室にはいないはず。ということは保健室の鍵は開いてないんじゃないのか、とあゆみは思った。 もし開いていないのなら飛鳥は困ってるんじゃないか、もしそうなら話せるきっかけになるかもしれない。あゆみは保健室への歩を早ませる。 だが、彼女の期待も虚しく、扉の前には飛鳥はいなかった。 (なんで……? 保健室は開いてるのかな) 静まり返った廊下を足音立てながら歩き、あゆみは保健室の扉に手をかけた。扉はまるで重さがないかのようにすんなりと開く。 鼻につん、と来る保健室独特の匂い。薬品や何やらが混ざり合った清潔と潔癖の匂い。あゆみはそんなこの部屋の雰囲気が嫌いではなかった。どこか心安らぐような感じがするのだ。 「すいませーん。ちょっと休ませて欲しいんですけど」 返事はない。保健室に入ってみるが、やはり教師がいる気配は何も無い。しかし―― 「先生はいないけど、休んでいったらいいわ」 そんな、透き通るような綺麗な声が聞こえてきた。 あゆみが驚いて、声のする方向、ベッドの上に眼を向ける。 そこには一人の少女がベッドから上半身だけ身体を起していた。 「あ、あんた……」 あゆみは絶句した。 そこにいる少女はあまりに美しく、まるで天使がそこにいるのかと錯覚しそうになる。 ガラス細工で出来たような透き通る綺麗な瞳。長い睫毛。小柄だが、それがまた愛らしい雰囲気を纏ってもいる。 だが一番異彩を放っているのはその少女の白い髪。まるで穢れの無さを表しているかのように純白で、色素が存在しないかのようにさらさらと放たれた窓からそよぐ微風になびいていて、まるで完成された絵画を見ている気持ちになってしまう。 「あんたは、桜川夏子《さくらがわなつこ》……」 あゆみは彼女の名前を知っていた。 いや、学園内で彼女を知らないものはいない。しかしその誰もが彼女のことを“いないもの”として認識していた。 学園内の数少ないカテゴリーFの異能者の一人である桜川夏子は、いつもこうして保健室にいるという話をあゆみは聞いたことがあった。 特別に保健室で個人授業を受けて教室に行くことがないという。あゆみは思い出す、今日貼られたクラス表に、自分と同じクラスに彼女の名前があったことを。建前上今学期から桜川とあゆみはクラスメイトということになっているようだ。 「そう、私が桜川夏子よ。よろしくね谷川さん」 あゆみはふいに名前を呼ばれ、びくっと身体を強張らせる。 「何を驚いてるのかしら。クラスメイトの名前くらい知ってるわ」 夏子は笑っているのか泣いているのか無表情なのかよくわからない曖昧な表情であゆみを見つめる。夏子は学園指定のブレザーではなく、何故か真っ黒なセーラー服を身につけており、なんだか他の生徒と違う神秘的な雰囲気がある。そのためあゆみは夏子にどう接したらいいのかわからなかった。 「あ、あのさ。ここに男子来なかった? こう、女みたいな顔をしたなよなよした奴」 あゆみは思わず藤森のことをそう悪態まじりに言ってしまう。本当はそんな繊細な藤森のことが好きなのに、他人にそのことを悟られたくは無いのだ。 「女の子みたいな男子……藤森君のことかしら。そうね、見てないわ。今日は誰もここに来てはいないの」 夏子は飛鳥のことも知っているようで、そう答えた。あゆみはがっくりと肩を落とし、教室に戻ろうかと後ろ向こうとした。しかし、 「待って、谷川さん。あなたも保健室で休みにきたんでしょう。どう、少しお話をしない?」 夏子はそう言い、シーツを取り払いベッドに腰掛、もう一人分座れる場所を空けていた。それはここにきて座って欲しいという合図なのだろう。あゆみも魅かれるように夏子の隣に座っていった。 ※ 古川正行こと、改造人間バラッドは飛鳥とあゆみが教室から出て行くのを不審に思いながらも見送るしかなかった。 だが、今から始業式が始まるというのに奴らはどこにいくのだ、そう思いながら動きかねていた。何か、少しでも変ったことが起これば暴れる口実になるというのに。たとえ生徒を殺そうと、バックアップの改造人間たちがそれをフォローしてくれる。 そうなればさすがに学園にはいられなくなるだろうが、それでもこんな下らない任務についているよりは遥かにましだ、そう思いながらバラッドは指をぱきぱきと鳴らしていた。 (そいえば雑音三重奏《ディスフォニー・トリオ》の奴らは異能者狩りの任務に出ていたっけか。俺もあいつらのような戦闘チームに入りたかったな) 彼は同胞の改造人間のチーム、ディスフォニー・トリオのことを思い出していた。名の通り彼らは三人のチームで、少女のアダージョ、巨漢のレント、優男のタクトで構成されている。凄まじい戦闘力を誇る彼らは、外でオメガサークルと敵対している異能者たちを狩るのが仕事であった。 彼がその数あるチームの中でディスフォニー・トリオを気にしているのは、アダージョのことをバラッドが気に入っているからであった。アダージョも他の改造人間同様に、拉致され記憶を奪われ、異能を強化されて機関の兵隊にされている。他の軍や組織に売り飛ばされていないだけマシなのだろうが、アダージョはいつもバラッドに不満を漏らしていた。 「どうして私たちは戦わなきゃいけないの。どうして私たちはここにいるの。もうこんなことはうんざりなのよ」 いつもそうやって弱音を吐いていた。戦闘用の改造人間ではないアダージョは、機関に玩具のように危険に晒されることに限界がきていたようだ。 この手のぐだぐだと弱音を吐くメンバーをバラッドは嫌っていたが、可愛らしい容姿をしたアダージョだけは特別であった。 彼女と話をしていると、なんだか心が落ち着く。 自分もいつかアダージョと同じチームで任務をしてみたいと、常に思っていた。早く学園から開放されて彼女に会いたいという思いは、彼の破壊衝動の元になっていた。蓄積されていく不満や欲求。それらを開放するのに最も効率がいいのが破壊だからだ。 だから彼はいつも暴れる理由を探している。 早くアダージョに会いに行くためにも。 ※ 雨宮真美は明らかに仮病の谷川あゆみを、飛鳥の下へ向かわせてしまったことを後悔していた。彼女のようなタイプが飛鳥のような繊細なタイプの男子を好きになるとは思えないが、それでも自分の好きな男子と彼女のような、遊んでいる、いわゆる不良少女を一緒の部屋に寝かせたくはなかった。 だからといって今さら保健室に言って連れ帰るわけにもいかず、どうしたものかと溜息をつくしかなかった。 「おい雨宮。何を考え込んでいるんだい。君らしくもない」 「あ、四谷先生。おはようございます。四谷先生が今年の担任なんですか?」 「そうだ、また今年も頼むよ“委員長”」 彼女に話しかけた若い教師、四谷正治《よつやせいじ》は生徒から人気があり、特に若くて二枚目なためか、女生徒からの支持が高いようだ。しかし、雨宮はどこかこの教師に苦手意識を感じているようである。 (なんでかしら、どうにも信用が出来ないのよね。若い先生は多くいるのになんでかしら……) 雨宮自身もこの嫌悪感が何に由来するものなのかわからなかった。それでも露骨に避けるわけにもいかず、彼女は四谷と会話を続けた。 「まだホームルームと始業式までは時間ありますよね? どうしたんですか?」 「ああ、ちょっとお前に頼みたい仕事があってな」 「ええ、いいですよ。先生とも二年のときからの付き合いですし」 内心は面倒だと思いつつも、優等生的な台詞を言ってしまう自分に、雨宮は少しだけ嫌悪をしていた。 「悪いな雨宮、頼みを聞いてくれるほどいい生徒なんてお前以外にいないからな」 「そうですか。四谷先生の頼みならいくらでも聞いてくれる生徒なら沢山いるんじゃないでしょうか。特に女子は」 「いやはや手厳しいね。キミは僕をそんな風に見てるのかい」 「いえ、別に。すいません」 二人は廊下を歩いていく。もうすぐ始業式が始まるというのにこの教師は何をしたいのだろうか、と雨宮はいぶかしんでいる。 「先生、何をするんですか?」 「うん、まあちょっと資料の整理をね。大丈夫だよ始業式までには終わる。よしんば間に合わなくても僕の手伝いだって言えば怒られないだろう」 「そうかもしれないですけど、そんないい加減でいいんですか?」 「ははは、あまり生真面目過ぎても人生つまらないぞ雨宮。少しは気を抜かないとな」 四谷とそんな風に雑談をしながら二人は資料棟の地下に向かっていく。電気が通ってないのかそこは薄暗く、雨宮はこんなところに来たことがなかったために、少し不気味に感じていた。 「先生、何の資料を整理するんですか。ここってあまり使われてないですよね」 「ああ、資料室というよりは倉庫と言ったほうがいいだろう。いらなくなった資料がここに溢れているのさ」 そう言って四谷は歩を進め、どんどん奥へと一人で行ってしまう。 「ま、まってください」 雨宮は置いていかれないように駆け足で四谷についていく。 やがて資料棟地下の最深部に行き着く。 その最後の部屋の扉は重厚な電子ロックがされた機械の扉であった。 「ここは、こんな厳重に何の資料が保管されているんですか……?」 「双葉学園の暗黒史、さ」 「え?」 「ここには外部に漏れたらまずいものが大量にあるのさ。学園にとって致命傷になりかねないものがね」 「そ、そんなものをどうするんですか先生……。ましてや私になんか」 雨宮は不穏な空気を感じ取り、この場から逃げ出そうと思ったが、まだ四谷が何をしようとしているのか確信がもてない。 「キミにも見てもらいたいのさ。キミだって許せないはずだ。もしこの学園が裏で何かをしてきたというのならね」 「そうですけど、だけど先生、そんな重要な資料があるならその扉を開けることなんてできないんじゃないんですか」 「そうだね、何重ものロックがかけられているし、踏み込めば警報がなり僕らは消されるかもしれない」 「じゃ、じゃあ諦めたほうがいいんじゃないんですか」 「普通、ならばな。だけど僕にはそんなものは意味がないのだよ」 四谷は電子扉にぴたりと、掌を置いた。 「残念だが僕は普通じゃないんだ」 そう言った瞬間、電子扉のロックは解除されたようで、次々と扉が開かれていく。警報も作動してないようである。 「ど、どうして……まさか異能……」 「そうだ、これが僕の異能だ。異能力は何もキミたち子供だけの特権ではないんだよね」 そう言って四谷は邪悪な笑みを浮かべ雨宮を見つめた。 どうやら四谷は電子を操る力を持っているらしい。だが、彼が異能者だということは誰も知らない。つまりそれは、彼が異能を隠して学園に潜入していたということ。 (な、なんなの。何が目的なの――) 雨宮は恐怖を感じ、後ろを振り向いて逃げ出そうとしたが、四谷はその腕を掴んだ。 「は、離して!」 「そうはいかない。キミにも知ってもらわなければならない」 そう言って四谷は雨宮を資料室の中に引きずりこんでしまう。 そして、重厚な扉が閉まり、鍵がかけられ、もう逃れることはできなくなってしまった。 part.2へつづく トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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えっと・・・、その・・・、私のお嫁さんです・・・。 -- 飛鳥 (2006-07-08 06 17 14) よ、嫁ですかっ ・・・・つまり嫁が戦っているのでs(ry う~む・・・深い・・・・ -- こいぬ (2006-07-12 01 57 37) ほぅほぅ…ということは鬼よm(銃声 コ、コホンつまり強い嫁ですな(何 -- ウィンド (2006-07-13 22 44 26) 実は意外と恥ずかしがりで人見しr・・・・ゴスゥッ(撲殺音 -- 飛鳥 (2006-07-14 03 33 20) ほぇ~・・・可愛い嫁さんですなぁ~・・・くだs(銃声爆音 -- ぷるこぎ (2006-07-16 16 47 39) いや私が貰u(爆死 -- パチョ (2006-07-25 18 00 43) 何気に人気だなぁ、この絵・・・。 下にはバッカスもあるのに・・・! -- 飛鳥 (2006-07-26 17 12 24) 名前 コメント
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2008年03月14日 平成19年度 佐藤研追い出し会 in 大宮 2008年12月20日 佐藤研忘年会 in 大宮 2009年4月09日 佐藤研追い出し花見会in飛鳥山 2009年9月25日 メルシャン撤収作業in長野 2009年1月22日 年度末たこやきパーティーin研究室 2010年4月04日 佐藤研追い出し花見会in飛鳥山 2011年04月04日 平成22年度 佐藤研追い出し会 in 大宮 2011年7月22日 穴掘り打ち上げin取手 2012年1月21日 平成23年新年会 in井野アーティストヴィレッジ 2012年4月04日 佐藤研追い出し花見会in飛鳥山 2013年4月02日 平成24年佐藤研追いコンin大宮 観賞の時にはIE 6.XもしくはSafariをお勧めします。 Firefox 3.Xではすべての写真が見れない可能性があります。
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旧石器~平安(原始・古代) 日本列島への人類居住~公家の時代 総合 縄文時代 弥生時代 古墳時代 飛鳥時代 奈良時代 平安時代 総合 日本神話 組曲「日本建国」 (日本神話)組曲『日本建国』を歌・・・えてねぇw 建国記念日ってことで組曲「日本建国」歌ってみた建国記念日ってことで組曲「日本建国」歌ってみた(再エンコver.)(アカウント停止) 酔った勢いで組曲「日本建国」を歌ってみた 日本誕生流星群(神話から歴史へ) 日本神話に見るヒンニュー教の起源 日本神話に見るヒンニュー教(仮) 組曲『原始~飛鳥』改 組曲「飛鳥・奈良時代」 組曲「奈良・平安時代」 第参版 組曲「奈良・平安時代」 第四版 組曲「文学史」 第参版 組曲「文学史」 第四版 縄文時代 その時歴史がウゴイタ? 第一回 貝塚完成 その時歴史がウゴイタ? 第一回 貝塚完成 弥生時代 卑弥呼 175年頃?~248年頃 その時歴史がウゴイタ? 第二回 卑弥呼の亀甲占い その時歴史がウゴイタ? 第二回 卑弥呼の亀甲占い 古墳時代 その時歴史がウゴイタ? 第三回 前方後円墳の出現 その時歴史がウゴイタ? 第三回 前方後円墳の出現 飛鳥時代 組曲「飛鳥時代」 遣隋使(第2回) 607年 その時歴史がウゴイタ? 第四回 遣隋使妹子 その時歴史がウゴイタ? 第四回 遣隋使妹子 奈良時代 鑑真 688年~763年6月25日 日本史FLASH 戒律を伝えた男~鑑真物語 (転載) 国分寺・国分尼寺の詔 741年 その時歴史がウゴイタ? 第五回 国分寺の建立 その時歴史がウゴイタ? 第五回 国分寺の建立 平安時代 今週のお題【平安時代の流行語大賞は?】 その時歴史がウゴイタ? 第六回 蹴鞠の流行と藤原氏の台頭 その時歴史がウゴイタ? 第七回 女流作家の活躍 810年~1086年 組曲「摂関政治」組曲「摂関政治」を歌ってみました 菅原道真 845年8月1日~903年3月26日 You - 菅原道真 -【おまけ付】「You - 菅原道真 -」を歌ってみた【かえる】 源氏物語 初出1001年 若紫の暴走 サイハテ - 源氏物語 - 絶対可憐チルドレンのキャラで源氏物語 1156年~1192年 源平ユカイ~カラオケver.『源平ユカイ』を歌ってみた。 源平ユカイ【をうたってみた】 1167年~1185年 白いのぼり(源氏)が倒せない 一ノ谷の戦い 1184年3月20日 その時歴史がウゴイタ? 第八回 源平争乱 一之谷の戰い 壇ノ浦の戦い 1185年4月25日 【弁慶】壇ノ浦夜合戦記【義経】 藤原泰衡 1155or1165年~(家督相続)1187年10月29日~1189年10月14日 【字幕替え歌】泰衡ストール
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ID INFUSED-第12弾- 飛鳥井 木記 肴:生牡蠣 酒:飛鳥井 純米吟醸/丹生酒造 備考:
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226 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 32 16 ID xRLJ+/CC 結意の家は、一言でいうととても簡素だった。どうやら独り暮らしをしているようで、あまり物がない。 部屋自体の規模もあまり大きくなく、どこにでもあるありふれたアパートの一室だった。 結意は帰宅して早速晩飯を作る準備をしている。変なものを入れないよう見張っていれは、そこは問題ないだろう。 …歩き方がぎこちない内股ぎみになっていることに対しては、つい責任を感じてしまった。 「まっててね飛鳥くん!今日は飛鳥くんの大好きな焼き魚にするから!」 「あ、ああ。」 ―――あれ?こいつにそのこと話したっけ? ……愚問か。87回も告白するようなやつが俺のことを調べててもおかしくはない。 「88回目だよ。」 「!?」 びっくりした…結意のやつ、実は読心術でも使えちゃうのか? それにしても、実に手際いいな…。やはり一人暮らししてるだけあって料理も上手いんだな。 あっというまに食卓に焼き魚と白飯とその他いろいろが並べられた。明日香も料理はできる方だが…これはもう、どこに嫁に出しても恥ずかしくないレベルだ。 「だからぁ、飛鳥くん以外のとこにお嫁になんか行かないからね!」 「…なあ、さっきから俺の独白への的確なツッコミが気になるんだけど…。」 「飛鳥くんのことならなんでもわかるよ?」 と、まるで「地球が回ってるのは常識だよ?」と言わんばかりに当然のようにそう答えた結意。 そこまで清々しく言われたらなんだか反論する気もおきなくなってしまう。 「ふう…ごちそうさま。」 結意の作った飯は旨かった。魚の焼き加減も完璧だし、付け合わせの品もかなりの出来だ。変なものも入っていないようだし…これなら大丈夫だ。 満腹になったところで俺はシャワーを借りようと切り出した。 「なあ結意、風呂借りていいか?」 「うん、いいよ?廊下でて右だよ。」 「助かるよ。」 227 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 33 06 ID xRLJ+/CC …結意の家の風呂は意外に広かった。俺はついユニットバス風な造りかと思ってたからこれには驚いた。 しかし、やっぱり風呂は最高だな。こう…なんていうか、一日の疲れが吹き飛ぶというか…そんな感じがする。 と考えていると、突然ドアが開けられた。冷えた外の空気が入り込み、背中がぞくりとしてしまったが、さらなる侵入者への驚きでそれはすぐかき消された。 「えへへ……背中流してあげる。」 「なっ――――結意!?」 そう、結意が風呂場に入ってきたのだ。全裸で。なんだか目がヤバいような気がしないでもない。むしろヤバい。 あ、鍵かけられた。本日二度目の監禁っすよ。 「ほらほらぁ遠慮しないで♪」 「っく……」 だめだ。こんなときでも俺の相棒は空気を読めない。いや…あえて空気を読まない、通称えーけーわい か? 俺が振ればカラカラと音がしそうな自らの頭でそんなことを考えている間に結意はなにやらごそごそと動いて――― むにっ むにむに… 突然のやわらかい感触に俺の思考はリアルに引き戻された。そしてそのまま異物はどうやら俺の背中を磨いている…? 「あのー、なにをしてらっしゃっるんでしょうか…?」 「なにって、背中洗ってるんだよ、おっぱいで。飛鳥くんこういうの好きでしょ?」 ―――――誰か、宇宙人とコミュニケーションをとる方法を教えてくれ。あまりのぶっとび具合についていけそうにない。 結局、結意に背中のみならずあちこち洗われそうになったがなんとかやり過ごすことに成功した。…もうここの風呂を借りるのはよそう。 そのとき、洗面台の上に置いておいた携帯がぶるぶると震えていることに気づいた。着信だ…自宅…!?なんだこれ! 自宅 21 57 自宅 21 57 自宅 21 56…………履歴は、自宅からの着信で埋め尽くされていた。なんなんだ…これじゃあまるで、いつもの結意みたいだ。 とりあえず、電話に出てみる。 228 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 34 25 ID xRLJ+/CC 「もしもし…?明日香か?」 『あ…やっとでたぁ…おにいちゃぁん…ひっく…』 電話越しの明日香の声は、震えているようだった。「お兄ちゃん」なんて言われたのは小学校以来だ。 俺が帰ってこなかったことがそんなにも不安だったのだろうか。 『お兄ちゃん…今どこにいるのよぉ…?』 「悪い悪い。今友達んちにいるんだ。晩飯ごちそうになったから、今日は俺の分はいいからな。」 まさか結意と一緒にいるなんてこと言えるわけがない。明日香の中ではおそらくたちの悪いストーカーと認識されてるだろうからな。 まあ、ついさっきまでは実際そうだったわけだが。 『そういうことを聞いてんじゃないのよ!!ばかぁ!』 ―――耳がイカれるかと思った。明日香め、いきなりでかい声出すなよ。 『私がどれだけ心配したと思ってるのよ…。まさかあの女に捕まって監禁されて××されたり×××されてんじゃないかって…心配だったんだからぁ! お兄ちゃん…早く帰ってきて…。私…お兄ちゃんがいないと…ねえ……お願い…うぁぁぁぁん……。』 訂正。どうやらうちの妹は極度のブラコンだったようだ。 「…わかった、すぐ帰るよ。だから、大人しく待ってるんだぞ?」 そう言ったとたん、ぴたりと泣き止んだ。よほどうれしいかったんだなぁ。 『うん…待ってるから!早く帰ってきてね!』 ――ふう。仕方ない、帰るか。 電話を終えた俺はそそくさと衣服を身につけ、かばんを持って玄関へと向かった。靴を履き、ドアノブへ手をかける。 刹那―――風を切る音がした。 「どこいくの、飛鳥くん?」 230 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 35 21 ID xRLJ+/CC 振り向くとそこには結意がいた。本来なら目も眩むような魅力的な笑顔の下からは、般若のような冷やかなオーラを感じる。 どこから引っ張り出したのかはわからないが、木刀を構えて氷のように冷たい声で俺にそう問いかけている。一言でいうと…怖い。 「いや…その…」 「ど こ い く の ?」 「ひっ―――!?」 「外に出ちゃだめって言ったよね?飛鳥くんの為なんだよ?外に出たらこわいお兄さんに襲われちゃうよ?」 「だから、いいかげんその発想から離れ――(ヒュンッ)――うわぁっ!?」 名人も真っ青なほどの神速で木刀を振りぬいてきた。あんなもの食らったら男の俺でもただでは済むまい――――っ!? 「飛鳥くん…ごめんね。」 ―――時が止まって見えた。結意は木刀をゆっくりと俺めがけて振り下ろそうとしている。俺は、それをただぼうっと見ていることしかできなかった。 それはまるでスローモーションで再生されたムービーのような光景だった。 ばきっ、と鈍い音が響いた。その瞬間、襲いかかった激痛に俺は意識を手放した。 次に目を覚ましたとき、俺は即座に自分が絶対的なピンチに陥っていることを悟った。 まず、両手を後ろにまわした状態でおそらく縛られている。 両足も同じく。足首と、膝元を縄できゅうきゅうに固められていた。そのような格好で俺はベッドに横たわっている。ちなみに服は着たままだ。 肩からは先程の打撃の痛みがずきずきとしみてくる。 「具合はどう?」と結意が尋ねてきた。 「いいわけないだろう。さっさとほどいてくれないか?」 「だめ。だってほどいたら飛鳥くん、出ていっちゃうでしょ?外は危険なんだよ?ここで朝までゆっくりしていきなよ、ね?」 と、あどけない笑顔でそう告げる。普通に考えたら外より今のこいつの方が数倍危険なんだけどな…。 「離してくれ。俺は帰らなくちゃいけないんだ。」 そうだ、家で明日香が待ってるんだ。余計な心配かけちまったからな。早く安心させてやりたいんだ。 「…さっきの電話の女のとこに行くの?そんなにその子がいいの?……私じゃ、足りないの?」 「あのなぁ、明日香は俺の妹だ。足りる足りないとか、そういうもんじゃないだろう。」 「知ってるよ。あの雌猫ったら、私の飛鳥くんになれなれしくして……そのうちひどい目にあわせてあげるわ。それより…」 そう切って、俺のもとに歩み寄る結意。思わず背筋がぞくりとしてしまった。 231 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 36 21 ID xRLJ+/CC 「飛鳥くんが他の女のことを考えてるのが許せないなぁ。そういうのって、すっごく失礼だよ?飛鳥くんは私のことだけ考えてればいいの。」 結意は俺のズボンのチャックに手をかけようとしていた。俺はとっさに身をよじってかわす。が、縛られているせいでうまく動けない。結果、俺はベッドからずりおちた。 そのまま、馬乗りの形で結意に押さえつけられてしまった。 「すぐ気持ちよくしてあげるからね?大丈夫、飛鳥くんのためにちゃんと勉強したから。」 なにをどう、とは言わなかった。結意の次の行動がそれを示したからだ。いつのまにかズボンは膝までおろされ、わが分身が情けなくあらわにされた。 結意は、それをうれしそうにほおばった。 「ん……ちゅっ…ちゅぱ…あひゅかくんの…おいひぃよ…んぐ……」 「っ、ああっ…やめろ……!」 初めて味わう生暖かい感触から注ぎ込まれる快楽の波に、俺は早くも限界を感じていた。 「ゆいっ…やめろ…もう、でるっ……!」 が、結意は離れなかった。むしろ今の言葉を合図により一層激しさを増した。獣のように俺にむしゃぶりつく結意の姿に、俺はさらに興奮した。 ――――我慢できなかった。俺は結意の口のなかに迸りを放った。 「えほっ…ごほごほっ……」 結意は苦しそうにせき込んだ。瞳からはうっすら涙が滲んでいる。が、口の中のものを軽く咀嚼し……飲み干した。 「ん…あんまりおいしくないね……。やっぱ、漫画ってあてにならないなぁ……」 「お前は普段どんな漫画を読んでるんだ!?」 「えっと、(検閲により削除)とか(検閲により削除)とか、あと(検閲により削除)かなぁ。」 「……もういい、訊いた俺がバカだった。で、用は済んだだろ?さっさとほどいて…」 ――――――♪♪♪♪♪♪ 日本語で"飲み下せ"という意味の曲名の、某スタイリッシュアクションゲームの主題歌の着うたが流れた。 なんていうタイミングだ。このすさまじい皮肉に俺は一気に脱力した。マナーモードを解くんじゃなかった。 なぜか結意のポケットから聞こえているが、このさい考えるのもあほらしい。 まてよ…この着信は確か……自宅だ。まさか、明日香!?ほんっと、なんつータイミング! 232 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 38 23 ID xRLJ+/CC ピッ――― 「もしもし?」 『お兄―――だれ?』 「あ、申し遅れました。私、飛鳥くんの彼女の織原 結意っていいます。よろしくね?」 『…どういうことよ。あんた、まさか例のストーカー女!?兄貴に何したのよ!』 「何って……ナニかな?」 『――――あんたねぇ!あたしの兄貴を汚したわね!?』 「汚したなんて……飛鳥くんのほうからシテきたのよ?」 『…うそ!そんなのうそよ!兄貴がそんなことするわけないわ!』 「本当よ。私がやめてって言っても聞いてくれなかったわ。おかげで私、腰が立たなくなっちゃって飛鳥くんにおんぶしてもらっておうちまで連れてってもらったのよ?」 俺は思った。女って、恐ろしい。まさかこの天然系変態美少女からこんな、相手を的確になじるようなせりふが出てくるなんて。 織原結意……恐ろしい子! バキン!! ふと、なにかが砕けるような音がした。床には青い破片がいくつか散らばっている。これは…なんだ俺の携帯じゃないか。 「ってオイ!!なに人の携帯をこんな見事に粉砕してくれちゃってんだよお前!」 「だって…あの女むかつくんだもん。飛鳥くんは私のものなんだよ?なのに自分のものみたく主張しちゃって……だから、ついやっちゃった。てへっ☆」 「てへっ☆じゃねえ!このバカ!」 「…飛鳥くん、もうあの娘と話しちゃ駄目だよ?飛鳥くんには私がいるんだから。」 「無茶言うな!あれは俺の妹だ!そんなこと―――」 「 わ か っ た ? 」 結意は俺に木刀を再び差し向け、そう言った。くそう……木刀なんて、だいっきらいだ! だけど…そんなこと言われて黙ってなんかいられない。 「…そんなことできない。明日香は、俺の大事な妹なんだ…。」 233 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 39 11 ID xRLJ+/CC ―――がしかし、次に結意の口からでた言葉はあまりに俺の予測を度外視していた。 「ねぇ…どっちだと思う?」 意味がわからない。なにが、「どっち」なんだ。俺は結意にそう尋ねた。すると結意の回答は…… 「私の…ううん、私たちの赤ちゃん!男の子かな?女の子かな?わくわくするね!」 世界が凍りついた。俺の頭の中は「絶望」の二文字で埋め尽くされた。予測してはいたが…実際こうして言われるとダメージがでかい。 もう俺は結意に完璧に囚われた。一生逃げられないのだろうか…? 「今日、いっぱい中に出してくれたよね?だから絶対、飛鳥くんに似て元気いっぱいの赤ちゃんが産まれるよ!」 「―――――くっ…」 もう俺には抵抗する気力もなかった。それを悟ったのか、ふいに結意は俺の手足の枷を解いた。が、最強(凶)の枷をはめられた今の俺には、ロープなんざおもちゃ以下だ。 もはや逃げる気も起きない。俺は死んだも同然だった。そんな俺に結意はさらなる追い討ちをかけてきた。 「でも、元気な赤ちゃんを産むためにはいっぱい栄養が必要だよね!だから…頑張ってね、お と う さ ん !」 そう言いながら服を脱ぎだす。脱ぎながら、結意の手が俺の相棒をさする。こんなときでも相棒は敏感に反応した。この空気の読めなさを俺も見習いたいよ。 …とりあえず、朝になるまで俺は解放されなかったとだけ言っておこう。
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難しかった・・・・・・。 -- ~飛鳥~ (2006-04-03 18 43 22) うまーい。 -- 花** (2006-04-03 18 48 36) 本当に上手!キレ〜イ☆ -- バニラ (2006-04-04 10 23 02) ありがとー。そう言われると、うれしいっっっ。 -- ~飛鳥~ (2006-04-04 10 30 37) 名前 コメント
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露峰 飛華(つゆみね あすか) 年齢27歳 4月4日生まれ 身長186cm/78kg 体脂肪率10% 自営業(オカマバーのママ)兼カナリア実働班所属という二足の草鞋を履く女性的なバイセクシュアル 双子の飛鳥と違いスラっとした人が好み しかし精神的優位に立つことが多くネコとしては不本意。 しかし気になる男性は虐めたくなるらしく、どうあがいても女王様になる宿命である。 背中の中心に青い背骨の刺青、左手に赤色のフィンガーグローブ 15歳に家族から絶縁状態となり、双子の片割れ飛鳥と家を出る。 飛鳥と共にオカマバーのママ(ゆりかもめ悦子)に雇われ彼女の店で働くことに。 その頃に安く買い取った(いわくつき)マンションの一室で暮らし始め早12年が経つが、怪現象に遭遇したことはない。 (霊感が強い人には何か視えるのかもしれない) 20歳の頃 両親を失った従妹の「純」を引き取り共に暮らすことに。 双子は彼女のことを可愛い妹または娘のように扱っており、彼女の周りにチラつく男性を片っ端から襲撃している。(性的な意味で) スキンシップ癖の強い飛鳥を窘めることが多く、いつも仲介役を買っている。 ■武器 日本刀(打刀) 愛称「凌霄花」 全長90cm/重量1.2kg 光を淡い橙色に反射する以外特徴がない刀、中~近距離戦闘に特化しており鞘を使う場合も。(普段鞘はデジヴァイスに収納しっぱなしです) ■パートナー 今現在は未定です。
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GM まずは、オープニングフェイズです OP――天王寺瞬 部活が終わった頃には、すっかり太陽は落ちていた。 蛍光灯が立ち並ぶ夜道を二人で歩いていた。 そこで、奴と出会った。 登場判定をどうぞ 天王寺瞬 登場判定ってどうやるですか>< GM んと 矢椚佑 1D10 GM 1d10、浸食率増えるだけ 天王寺瞬 (ころころ)6 GM セッション最後まで、浸食率が100%以上だと、NPCになるから GM 気を付けてねw 天王寺瞬 はいな!>< GM では、君は部活帰りに、赤峰舞と一緒に帰っている 天王寺瞬 「すっかり遅くなっちゃったね~? っと、なんだ…?」 GM 黒いポニーテールの可愛い、160cmぐらいの子にしようか GM 赤峰舞「そうだね、最近、変な噂が多いから、気を付けないとね」 GM 赤峰舞「…ん? どうしたの?」きょとん、と瞬を見上げる 天王寺瞬 「ん? 気のせいかな…?なんてもないよ(にこり」 天王寺瞬 「ま、変なやつなんて出てきたら俺が守るけどね!」 GM 赤峰舞「うん、瞬は強いもんね」 GM と、にっこりと笑顔で頷き返す 天王寺瞬 「へへへっ…」(ちょっと照れて上を向く GM 赤峰舞「照れなくても良いのに…あら?」ふと、彼女が前を見ると、そこには一人の少年が立っていた 天王寺瞬 「ん?どうしたの?」 GM 目の前の少年はミリタリー服を着ていて、足首と左腰に大型のジャックナイフを持っている GM 赤峰舞「…いや、いや…」彼女は突然怯えだして、君の後ろに隠れる 天王寺瞬 「ん?舞どうしたの?」 GM 赤峰舞「なんか、なんか怖いの…」がたがたと肩を振るわせる様子はとても演技とは思えない 天王寺瞬 「どうしたんだ、落ち着いて?」(困惑 GM 赤峰舞「いや、いやー!!」頭を抱え、耳を塞ぎうずくまる少女 GM 少年「…」彼はその様子を冷ややかな目で見ている 天王寺瞬 「…君が何かしたのか?」 天王寺瞬 (そっちの少年に目を向けよう GM 少年「…」彼は何も応えずに――すっと、音もなく結界をはる GM 《ワーディング》 天王寺瞬 「何をする気だ!」(咄嗟に舞を庇う体勢に GM 《ワーディング》の中では、非オーヴァードである赤峰舞は力無く倒れる、だが―― GM 少年「…驚いた。君はオーヴァードだったんだね」>瞬 天王寺瞬 「………」 天王寺瞬 「だったらなんなんだよ!」 GM 少年「君たちの噂は知っている。恋人同士なんだってね」淡々と呟く GM 少年「悪いことは言わない。彼女とは別れた方が良い。それが彼女の…そして、君のためにもなる」 天王寺瞬 「何でお前にそんなこと言われなきゃならねぇんだよ!」 GM 少年「…それもそうだったな。すまない、余計な事を言ったようだ」 天王寺瞬 「………」(舞を庇う体勢のまま睨み続けるぞ GM 少年「だが…考えておいた方が良い。それが、君のためだ」 GM そう言うと、すっと霧に包まれ、そして、霧が晴れた先にはもう彼は居なくなっていた 天王寺瞬 「……… なんなんだよ… 俺は…普通に生きたいだけなのに……」(舞の方を見、俯き GM 赤峰舞は苦しそうな顔を浮かべたまま、気を失っていた 天王寺瞬 「舞……」(背負って公園まで連れてきベンチに休ませますね GM 彼の言った言葉は何だったんだろう? そして、何故? 心の中でどこか気に掛かるところがあった GM では、シーンカット GM 名前すぐにばれるから、斉藤恭一でシナリオロイスを取って 天王寺瞬 はいな 天王寺瞬 恐怖と…なんだろ? GM 憧憬とか? 天王寺瞬 んじゃ、それで 天王寺瞬 恐怖が表で。 GM では、次はPC2です OP――天城結華 学校の屋上から見る風景は格別の物だった。 仰げば青い空、白き雲。見下ろせば部活動に励む生徒。 この環境は支部では得られなかった物だった。 だが、それを壊す機械的な電子音が鳴った。 GM 登場判定をどうぞ 天城結華 少しだけ、神経質そうに眉をひそめる。「……はい」 天城結華 (ころころ)10 GM 波杜飛鳥「あ、私。お仕事なんだけど、良いかな?」 GM そう言えば、チルドレンって18歳までなんだよね。エージェントにしてくれない?w 天城結華 ん……あ、そうか。そう言えば、チルドレン枠だったんでしたっけ。 GM まぁ、彼女はエージェントと言うことで 天城結華 ぴく、と表情が硬くなる。「はい。直ぐにでも」 GM 波杜飛鳥「斉藤恭一…『ジャック・ザ・リッパー』にジャーム認定が下されたわ」あ、斉藤君に付いて知ってても良いよ GM 彼は一週間前から行方不明に鳴っていた 天城結華 「“ジャック・ザ・リッパー”──彼は、裏切ったんですね。やっぱり……」酷く冷たい声で応じる。 GM 波杜飛鳥「えぇ、そこで、彼の捕獲をお願いしたいの。生死は問わないわ」 天城結華 「判りました、これより任務に掛かります。……波杜さんは、学校への連絡をお願いしますね」 GM 波杜飛鳥「うん、わかったわ。あ、そうそう。二つほど言うことがあるの」 天城結華 「……はい。手短にお願いします」 GM 波杜飛鳥「まず、一つ目なんだけど、天王寺瞬くんを覚えてる? 彼と行動戦線を組んで貰いたいの。彼にはこっちから連絡をしておくわ」 GM 波杜飛鳥「二つ目なんだけど、なんだか最近、このG市でジャーム事件が少ないわね。ないことに越したことはないんだけど…ちょっと気になるわね」 天城結華 「天王寺……先輩、ですか?彼は、一般のオーヴァードのはずですけど……」 GM あれ? イリーガルじゃなかったっけ? まぁ、いいや。使い倒したれ GM 波杜飛鳥「『これを機にイリーガルにならないか?』と誘う布石よ」 天城結華 「……判りました。上の判断であれば、異議はありません」 天城結華 ……とは言っているが、声が少しばかり不服そうだ。 GM 波杜飛鳥「うん、がんばってね」と、君の感情の変化には気づかないようだ GM 波杜飛鳥「それじゃ切るわね。幸運を祈るわ」と、携帯を切る 天城結華 「はい。では、いつもの時間に経過を報告します」電話を切り、しまい込み…… 天城結華 「やっと、この街からジャームを駆逐出来たと思ったのに──ッ」小さく呟いて、校舎の裏手へ。 GM シーンカット、かな? 天城結華 はい。お願いしますっ GM では、シーンカット GM では、斉藤恭一にシナリオロイスをお願い 天城結華 (ころころ)30,81 天城結華 かつては感服すべき相手だったけれど、今は酷い憤りを感じている。感服/憤懣、N表で。 GM OK