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♯8「罪とX(ばつ) ~布とナニの間で~」 あくる日、華音と菜月はいつも通り一緒に学校に向かっていた。 強いて違和感を感じる点といえば、菜月からのアプローチがどんどん過激になっていることだろうか。 「…なっちゃん、少し聞きたいんだけどね」 「じゅる…ちゅぷっ…んっ…、なぁに?」 「なんでなっちゃんは私の指を咥えてるの?」 華音の左手の指を艶めかしい音を発しながら咥えている菜月、その姿は傍から見れば変質者そのものである。 「だってフェラ○○でk」「なんて事言うのよっ!」 「今変な事想像した華音と画面の前のキミはボク以上の変態だね☆ 伏せ字の中は『ーリ』だy」「まず変な事想像させるような事言わないで!」 「じゃあ正直に胸揉んだほうがよかった?」 「そうじゃなくてっ!!」 常識から光すら上回る速さで遠ざかっていく菜月(トランザムモード グロスインジェクション)を振り払い、険しい表情で華音は彼女を戒める。 「いくらなんでもやっていい事といけない事の区別くらいつけて!」 「ぶーっ、けち」 菜月は不満に口を尖らせる。 「ケチじゃない!」 「じゃあ何か見返りちょうだい。 等価交換だよ等価交換」 「等価交換って、一体何を…」 言葉に詰まった華音の視界に、自らの唇に指を当てている菜月の姿が映った。 「…もう、仕方ないなぁ」 彼女は少し頬を膨らませると、臆する事なく菜月と唇を重ねた。 すると逃がすものかとばかりに菜月が舌を捩じ込んでくる。 「んむ……ちゅっ…じゅるっ……んっ…」 朝早くから華音を貪る菜月、その姿は獣のごとし。 「…君達は朝から何をしてるんだ」 偶然2人を見つけた由布がそんな事を言うのも無理はなかった。 同時刻、K中学校保健室。 この時間はまだ生徒達も登校中であり、校内の人影は少ない。 そんな中、ここに一人の“ら違法者”が訪れた。 そのら違法者―――シンヤにしてはやけに早いお出ましであるが、無論彼が意味もなくこんな時間に来るはずもなく。 「やめてよね、本気で喧嘩したら、君達が僕に敵うわけないだろ」 そう呟くと、シンヤは鞄の中から怪しげな物体を取り出し、至極気持ちの悪い笑みを顔に浮かべた。 ―――邪神、今此処ニ爆誕セリ。 「…?」 教室に入った華音は、自分の机を見て何か違和感を覚えた。 「どしたの?」 「え…あ、ううん。 なんでもないよ」 菜月に問い掛けられた事で我に帰った華音はその疑問をしまい込み、着席したのち教科書類を取り出しはじめた。 後に菜月は、この時華音に話しかけた事を心底悔いる事になる。 午前11時45分、本来ならば3時間目と4時間目の間の休み時間なのだが、シンヤにとってはそんな事など頭の片隅にすら入っていない。 今彼の脳裏に浮かぶのは桜木華音ただ一人。 かのじゅ、もとい彼女が保健室に来るのを今か今かと待ち受けているのだ。 すると保健室の扉が開かれ、その向こうから1人の生徒が入ってきた。 (華音…じゃない?) その姿は確かに華音に似てこそいる、しかし彼女は華音とは似て非なる姿をしていた。 髪の色は茶系だが、華音よりも黒に近いダークブラウン。 髪の長さも華音より長く、それは腰のあたりまで伸びている。 そして最大の違いといえば裸眼である華音に対し、その女子生徒は眼鏡をつけていたという事だ。 「あら、どうしたの?」 保健教諭がその女子生徒に問い掛ける。 彼女が言うに先程から気分が優れないとの事だ。 (そういえば) シンヤはある事を思い出す。 彼は朝、華音の机に工作を行った際、席替えに気付かず誤って彼女の席に例のモノを散布してしまったのだ。 しかし、彼女が気分を悪くしここに来るという事は華音もそのうちそれの影響を受けるという事になる。 それを察知したシンヤの心は躍った。 (どの道俺の勝ちだ…ロリや外人に俺の華音は渡さねぇ……くくく、ざまーみろ!!) そして時刻は12時45分、すでに4時間目は終了し、恐らく教室では給食の準備が行われているであろう時間である。 そんな中シンヤは自分の性欲との戦いに明け暮れていた。 いつまで経っても保健室に来ない華音に痺れをきらし、隣りのベッドで寝ているであろう女子生徒をおかずにするか否かという状態だったのだ。 (…まぁ、一発くらい構わないよな。 スーパーコーディネイターである俺なんだ。 華音の中に何発でも出してやるさ) 菜月やセラフィーナに聞かれたら八つ裂きどころではすまない不埒な発想に押し流され、シンヤは二つのベッドを区切っているカーテンを少し開き、そしてその向こうに見える彼女の姿をおかずにベッドのシーツと体で自身のナニを圧迫、そしてそのまま体を前後に動かしそれをベッドに擦り付けはじめた。 と、その時。 ノック音が室内に響き、直後に廊下へと繋がる引き戸が開かれた。 そこから入って来たのは如月由布、華音やシンヤと同じクラスに所属する軽度の厨二病を患った(ある意味)可哀想な少年だ。 「…由布?」 由布が入って来た事に気付いた女子生徒は入口の方へ視線を向ける。 彼は給食の乗ったトレイを持っていた。 「あの、これ…気分悪いって言っても、少しくらいは食べられるだろ?」 そう言って由布はトレイをベッド横の机に置いた。 彼の素振りから厨二病の片鱗は見られず、むしろ年相応の少年らしく思える。 「そ、その…お大事に…」 「由布」 ぎこちない動作でその場を去ろうとする由布を女子生徒が呼び止める。 振り返った彼に彼女はひとつの言葉をかけた。 「…ありがと」 「…あくまで、執事ですから」 その単純でありながら、人の心に響く感謝の言葉に、照れ隠しか由布はアニメキャラの物真似で返答した。 「あ、それ結構似てる」 「そ、そう?」 シンヤのはらわたは煮えくり返っていた。 ニュータイプであるスーパーコーディネイター、なおかつ純粋種のイノベイター(自称)の自分を差し置き、すぐ近くで同年代の男女が不純異性交遊(シンヤ基準)するなど許しがたい。 そもそも常に保健室にいる彼は自分で給食を取りに行き、そして(他の生徒に見つからぬよう)返しに行かなくてはならないというのに、この女子生徒の場合はクラスメイトに運んでもらっているという差がシンヤにとっては我慢ならなかった。 本来ならば華音がメイド服姿で運んで来た上、口移しで食べさせるのが(シンヤの妄想の中での)摂理だというのに。 彼のストレスは(至極身勝手な理由で)どんどん蓄積されていった。 昼休み。 シンヤは遂に禁忌の領域へ足を踏み入れてしまう。 保健教諭が席を外しているのをいい事に、カーテンの向こうの女子生徒をおかずに先程同様床と自身の体重でその粗末なモノを圧迫、性の快感を貪らんとうつぶせになった体を前後に揺らしていた。 動かせば動かすほど快感は増加し、快楽に溺れたシンヤの表情は違法を通り越しもはや顔とは呼べない何かになってしまっていた。 そして彼の思考は辿り着いてはならない一つの答えを提示する。 (…ぶ……ぶっかけてやる…!) それはシンヤなりの復讐だった、自分の前で不純異性交遊(?)をした罰だと。 屈辱に歪む如月由布の表情がいかなる物か、そしてケフィアをかけられた女子生徒はどのような反応を見せるか、それを想像しただけでシンヤは身震いがした。 彼は体を起こし右手で下半身の息子をホールド、愚かなるピストン運動を開始する。 既に絶頂寸前まで至っていたそれは、ピストン運動によって遂にとどめを刺された。 沸き上がる幸福感、そして劣等感など一瞬で吹き飛んでしまう最高潮の感覚とともに――― ―――扉が開いた。 そこに居たのは桜木華音その人である。 彼女は驚きのあまり目を見開きその場に座り込んでしまった。 そしてそちらに向き直ったシンヤの息子から射出されたケフィアが華音目掛けて襲いかかる―――が、なんとかその数億の命を含んだ白い液体は華音の手前に着弾。 シンヤの毒牙に彼女が侵されることにはならなかった。 「あ……あぁ…」 恐怖のあまり華音の口から言葉が出ない。 下半身を露出した状態でゆっくりと迫るシンヤの姿は、彼女にとっては恐怖の対象でしかない。 (…なっちゃん……!) 心の中で親友の名を叫ぶ。 それが彼女にできる最大限の抵抗だった。 (華音!?) その叫びを菜月はしっかりと聞いていた。 それと同時に華音が置かれている状況を一瞬で理解すると、菜月の虹彩に金色の光が灯る。 そして、彼女は叫んだ。 「そんな事……させるかァァァァァァァァァァァッ!!!!」 「ッ!?」 シンヤの頭に突如激しい痛みが走る。 彼がその痛みに思わず歩みを止めた時―――。 ―――紅き光を纏った少女の斬撃が、一瞬にしてシンヤを吹き飛ばした。 その斬撃はとどまる事を知らず、終いにシンヤの肢体は空中へと打ち上げられ、足に引っ掛かっていた学生服のズボンとパンツをX字に切り裂かれた。 挙げ句の果てには重力によってシンヤは地面に叩き付けられてしまい、「ぐぅ」と言ったきり物言わぬ肉塊(比喩的表現)になってしまった。 あまりの衝撃に仕切りの向こう側にいた女子生徒もこちら側に顔を出した。 「何、これ…」 そういうのも無理はないだろう。 そもそも通常のシンヤですら常人に理解できるような代物ではない。 「性犯罪者の成れの果て、かな」 そう言って菜月は笑ってみせる。 その表情に先程の戦士としての面影は見られない。(シンヤの息子に付随する袋を踏みつぶさんとしている事を除けば) この事件はまたたく間に学校中に広がり、学校から連絡を受けたシンヤは両親にこっぴどくしかられた上、パソコンとゲーム機を没収されてしまった。 この罰が人々にとって当然の事、すなわち「摂理」であるのだ。 罪と罰、それは決して離れることのない関係。 トランザム菜月の動作は00のトランザムバースト→対ツヴァイ戦エクシアトランザム斬りを想像してください。 変態キャラばっか書いてると中の人も変態になるみたい。 え? 逆じゃないかって? ハハッワロス そういえば人気投票で1・2フィニッシュしてるセラフィーナとクリス出せなくてすいません(´・ω・) それではまた次回お会いしましょう。 PS(フェイズシフトに非ず) HGAWのガンダムXとディバイダー買ったんですけどこれやっぱりかっこいいですね。 そのままラテの玉をつぶせばいいと思うの -- 名無しさん (2010-12-30 02 11 49) なっちゃんと華音のDFからのGFHEからの究極石破天驚拳で終了ですねわかりますん -- 名無しさん (2010-12-30 23 47 46) 傷心のまま自室に帰還したシンヤに再び成績表を晒された兄タクヤの総攻撃が迫る。 力を合わせて戦いたいシンヤではあったが、ラテール軍団()の不在が災いしかつてない危機を迎えるのだった。 第九話『徳島に血の雨の降るごとく』タクヤ・H -- 次回予告 曲はHUMAN TOUCHで (2010-12-31 17 05 15) ちょっと旦那を呼んできても宜しいですか? -- 名無しさん (2011-01-01 00 59 06) 菜月はニュータイプだったのか…… -- 名無しさん (2011-01-01 06 37 49) スパロボZ2にX続投記念 -- 名無しさん (2011-01-05 16 12 17) 名前 コメント
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「・・・・ょ。1ヶ月ぶりだな」 その声に、そこに集まっていた面子・・・"旧"桜の散る夜 のメンバーと俺が振り向いた ~1ヶ月前~ 「ぇー、突然ですがぁ・・・・ギルドを解散します。」 状況がわからん。親父は何を言ってるんだ? 「・・・・親父?何言ってるん?解散?」 「そうだ。理由はだな・・・・過疎化だ。」 そう、最近このギルドのメンバーの大半が用事が合わなく揃わなくなってきてしまっていたのだ。 よく来るメンバーもいるが、そのメンバーだけでは運営がきついそうだ。 その後、みんなバラバラになっていったんだけど・・・ 今、目の前にはあの頃のメンバーのほとんどが揃っていた。 以上。回想から今までの説明。 「ぇー・・・そのー・・・今ここに新しいギルドを結成する!」 「マスター・・・またですか?」 「そうだ、みっちー。理由?寂しくて死にそうだt―――― ごめんごめん!ちゃんと説明するから!」 「(はぁ・・・いつも以上に賑やか(五月蝿い)ですねぇ・・・)」 「(澪さんいいじゃんw これくらいじゃないとw)」 澪さん・・・メイドの格好をしたりしているが男だそうだ。と、つっしーが何やら話している 「・・・・さて、ちゃんと説明するから聞いてくれー」 その時、ボロボロになった親父が何やら叫んでいた。 「さて、本当の理由を話そう。本当はな・・・またみんなとワイワイやっていきたかったからだ。」 「ふぅーん?・・・まぁいいや。で、ギルド名は?」 「あ、考えてなかった」 「「「おい!」」」 まぁ、そうなるか・・・・ 「桜の木・・・・音楽・・・・fm」 「ん?どうした、小僧。」 「小僧じゃない・・・・"春の奏"なんてどう?」 「"春の奏"か・・・・いいんじゃね?決定。」 え?そんなんでいいの?軽くない?! 「俺ぁ、春が一番好きなんだよぉ・・・その春って字が入ってるんだ。いいじゃねぇか」 適当すぎる。親としてどうなの? そんなこんなで、ここに新ギルド"春の奏"が発足した。 エリアスが崩壊する3か月前のことだった・・・ あとがき 1年ぶりでございます!にゃたり(以降:ほぅおぅ先生)です! さすがに、ブランクありすぎてgdgdしてると思いますが、いつもどおり10分未満ウオリティーは健在ですwww 今回のお話は、春の奏が発足したときのことをとても盛ったお話です。 本当は、ギルド発足→桜の散る夜メンツ招集→いつもどおり って流れでしたwww いやはや・・・書いていて懐かしくてついつい書いてしまいましたが、次回は未定です。 話は変わりますが、なんと、私ほぅおぅ先生は声優学科に入学が決定しました☆ いつか、アニメに出るかもしれませんwwww ということで、そのときは応援よろしくね!!!
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470 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 1/42016/01/26(火) 06 11 07.94 ID urE9Fw2X0 キオは学園で見かけたザンネックを追っていた。 (あのザンネック…ファラ先生がなんで…) ザンネックはちょうど敷地を出たあたりで停止し、学校にザンネック・キャノンの砲口を向けていた。 すでに攻撃の準備に入っているようで、両肩の粒子加速器が稼働している。 「待てえ!」 急ぎCファンネルを飛ばして攻撃する。 ビームはIフィールドにはじかれたが、それでこちらに気付いたらしくザンネックは砲撃の準備を中断した。 「おやおや。なかなか狩り甲斐のありそうな奴が釣れたもんだ」 「(ファラ先生の声! でも…違う!)」 「誰ですか、あなたは…いや、なんでザンネックに乗ってるんです。ファラ先生は…!」 あのパイロットは声こそよく似ているが、キオの恩師であるファラではない。キオはそう直感した。 「先生? …ああ、コッチの私は教員になってるのか。似合わない。処刑人は処刑人をやってりゃいいのにさ」 「何を言っているんですか…!」 「ああ、あんたにはわからない話だったか。まあわかったところで、私がお前の首を頂くことに変わりはない! この死神の魔手(デスイビルハンド)でね!」 戦略レベルの超長距離射撃を行えるザンネックだが、巨体と武器の取り回しの悪さにより接近戦には向かない。 組み付こうとすると、機体が何かにはじかれた。 「いきなり女に寄ってくるなんて悪い子だ」 ザンネックが何か持っていた。ビーム・サーベルの発振器のようなものから鞭状のビームが伸びている。あれではじかれたのだ。 「なんだ、あの武器…」 あんな武器をザンネックが持っているという話は聞いたことがなかった。 「便利だろ。ビームサイズにもビームランスにもなるんだ。――つまり!」 鞭を鎌に変えて、先ほどまで動かなかったザンネックが迫ってきた。 「うわっ!」 「お前のMSの首を刈り取ってやることもできるのさ!」 鎌が届く微妙な間合いに入り込んでビーム・サイズを振りかざすザンネック。意外な素早さに驚いたが、それも一瞬のこと。すぐに回避行動に移る。 「ははっ! この私、ファラ・グリフォンが処刑してやろう。お前も! あの学校の連中もねえ!」 名前まで同じ。キオの恩師と無関係とは思えなかったが、考えるのは後だ。 「処刑、処刑って。首をとることの意味をわかってるんですか、あなたは!」 「何を言ってる。首をとることに意味なんざないだろ!?」 ファラの言葉に、キオはぎりりと歯をかみしめる。 「あなたは、僕が止めてみせる!」 「止められるもんなら止めてみな、子供が!」 止めてみせる。決意を新たに、キオは攻撃を再開した。 471 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 2/42016/01/26(火) 06 12 20.99 ID urE9Fw2X0 数十分後。どうにかバズを撃破したアセムは、応援にやってきたシロー率いる警官隊にその場を任せ 損傷したダブルバレットでキオの元へとたどり着いた。悪い予感は当たり、ザンネックとAGE-FXが戦っていた。 両者とも素早く動き、攻撃の応酬を繰り返している。 「(援護は無理か…!)」 援護しようにも、あの中に割って入るのは無理だ。AGE-FXに当たってしまう可能性もある。 歯がゆい思いをしながら、目の前の戦闘を見守る。隙を見つけたらすぐに攻撃に移れるように。 戦いながら、ファラは違和感を感じ取っていた。先ほどから頭の中にノイズのようなものが走っている気がするのだ。 気のせいと決めつけていたが、ノイズはどんどん大きくなり、ついには言葉となって、ファラの脳裏に走る。 『ファラ先生が言ってた。首っていうのは、戦士にとって取るほうも取られる方も誉れの高いことなんだって 首を取られるってことは、それだけその人が評価されていたってことの証なんだから』 ファラが戦っているパイロット――キオの声だった。 「なんだこれは…頭に直接訴えかけてくる…!?」 『あと、神様への捧げものとして人の首の代わりに使うために生み出されたのが饅頭だっていうことも教えてくれた。 饅頭は生贄に使う人間の頭の代わり。つまり命の代わりだったんだ』 AGE3-FXがサーベルで切りかかる。 「だから――どうした!」 ザンネックはビーム・サイズで器用に受けて、また離れる。 「首は、いや人間はそれだけ尊いものなんだ! それをわからず首を取るあなたは僕の尊敬するファラ先生じゃない! ただのファラ・グリフォンだ!」 「ああそうさ、私はファラ・グリフォンさ! 無感動に人を殺して何が悪い!? "こっち側"の私など知ったことか! 私は処刑人の、人殺しの家系に生まれたファラ・グリフォンなんだよ!」 ビーム・ランスを突き出す。横に避けたところで、ビーム・サイズへと切り替える。AGE-FXの左足を切断した。 しかしAGE-FXはそんなことは構わないとばかりに戦い続け、今度は通信に乗せて声を届ける。 「親が…先祖が、家系がなんだっていうんだ! 子が親の業を背負うなんておかしいよ! あなたは、自分の劣等感にその道を選ばされただけじゃないか!」 「キオ…」 戦闘を見守るアセムの胸を、ちくりとした痛みと悲しみが走った。理由はわからない。 それは日登商店街でXラウンダーの能力を使いキオの言葉を聞いていたフリットも同様だった。 「父さんや母さんは何してるか知らない! でも、兄さんたちはいろんな道を歩んでるんだ! 僕はただのゲーム好きの子供で、将来のことなんか知らない! 学校や遊びのことで頭がいっぱいだもの!」 「MSに乗って、ザンスカール軍中尉の私に食らいつく貴様が、ただの子供!? 寝ぼけたことを言うな!」 472 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 3/42016/01/26(火) 06 15 03.54 ID urE9Fw2X0 「寝ぼけてなんかあるもんか! Xラウンダーなんていうワケわかんないものだって言われた。お前は凄いって何度も言われた。 でも、それでも僕は――普通の子供だ! 大人でも神様でも超人でもないんだ!」 激情に身を任せ、FXバーストを発動。勢いと見た目に怯んだファラのビーム・ランスを軽々と避けて、ザンネックへと抱き着いた。 「くっ…!」 「取ったッ!」 機体のあらゆる場所から吹き出すサーベルを使ってコックピット以外の場所にダメージを与えながら、右腕のサーベルを使って頭を切断。 間違ってコックピットに攻撃しないように、すぐにバーストモードを切る。 「頭を取ったって…私はまだ動けるんだよ!」 「それでいいんだ!」 ボロボロになりながらも反撃を試みるザンネックに対して、ブースターを全開にして渾身の体当たりをかける。 視界とバランスを失い体勢が不安定になったザンネックは、その衝撃でSFSから叩き落された。 「私が、子供に…!?」 その言葉とともに地上へと落下していくザンネック。全身にダメージを受けている状態で落下の衝撃を受ければ、もう動けないはずだ。 「ふぅ…」 コックピットの中で、キオは大きく息をついた。SFSはまだ生きていたが、遠隔操作される恐れがあるので念のため破壊しておいた。 「キオ!」 「ダブルバレット…アセム兄ちゃん…」 体を強い倦怠感が襲っている。キオは思いのほか疲れていた。 「学校は…?」 「ファラ先生とシロー兄さん達が頑張ってる」 「そっか…じゃあ、行かなきゃ…」 「え?」 AGE-FXを地上に降ろして、先ほどザンネックが落下した場所へと向かう。 「キオ!?」 予想外の行動をした弟を追い、アセムも地上へと降り立った。 キオの予想通り、ザンネックは機能を停止していた。外側からハッチを開く。 「大丈夫ですか?」 中のパイロットに手を差し伸べる。顔も体格もファラそっくりだった。違うのは鈴の飾りがないことと、額の奇妙なマークくらいか。 「…敵に情けをかけるっていうのか」 「戦いは終わったんだから敵も何もないでしょう。…アセム兄さん、引き上げるからちょっと手伝って!」 「あ、ああ…」 アセムの助けを借りて、ファラの右腕を強引につかんで引き上げる。特に暴れるようなこともなかった。 473 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 4/42016/01/26(火) 06 19 55.05 ID urE9Fw2X0 「お前たちは…一体なんなんだ?」 「言ったでしょ、ただの学生」 「同じく」 「あ、怪我してる!」 ファラは左肩から血を流していた。落下の衝撃で変形したコックピットの部品が刺さったらしい。 引き上げたときに暴れなかったのは、この怪我が影響していたようだ。 キオはポケットから消毒用のスプレーと止血用のテープを取り出し、消毒した傷口に貼った。 「こんな状況じゃ病院もやってないだろうし…とりあえず、これで我慢してくださいね。 シェルターまで行けば、たぶんちゃんとした治療を受けられると思いますから」 「なぜ、敵にそんなことをする…自分に害をなすかもしれないというのに」 言われてからキオははっとなった。 「…そこまで考えてなかった」 ばつの悪そうな顔で言うキオにファラが苦笑し、立ち上がった。 「私の負けだね」 「え?」 「テロ屋の真似事はもうヤメにする。で、警察に出頭してやる。それでいいんだろ」 「あ、はい…」 「なんで急に素直に…」 アセムの疑問には答えず、ファラはキオをじっと見つめた。 「あんたの馬鹿さと強さ、優しさに…どうにも惚れてしまったらしい。惚れた男の頼みは聞いてやるのが女ってものさ」 キオに向け、ファラが妖艶に微笑んだ。あまりの色気に流石のキオとアセムが一瞬どきりとし、しばらくファラが言ったことの意味を理解できなかった。 「いつかまた、会えるのを楽しみにしてるよ。キオ。デートの誘いはいつでも受けつけてるからね」 硬直する二人を後目に、手をひらひらと振りながらファラが去っていく。そして、ようやく言われたことの意味を理解した二人は。 「「えええええええ!?」」 二人そろって絶叫。混乱のあまり、結局あのファラが何者なのか聞くのをすっかり忘れてしまっていた。 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ アセム・アスノ キオ・アスノ ファラ・グリフォン マンガバン 光の翼 光の翼番外編 長編
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おしらせタイトルをクリックすると記事が表示されます。 本体更新 4.2.0-9J 詳細表示 2012年6月27日配信 『ニンテンドーeショップ』の安全性向上 システムの安定性や利便性の向上 ニンテンドーeショップ開店1周年感謝祭 ニンテンドーeショップ 2012年6月22日 「ニンテンドーeショップ」は2011年6月のオープンから、今月で1周年を迎えました。1年間ニンテンドーeショップを支えてくださったお客様に感謝の気持ちを込めて、2012年6月22日から2週間の期間限定で「ニンテンドーeショップ開店1周年 感謝祭」を開催いたします。1年間で人気が高かった10タイトルを、1週間に5タイトルずつ20%引きで販売いたします。■第1弾 対象タイトル■期間:6月22日(金)~6月28日(木)『電波人間のRPG』『ゼルダの伝説 夢をみる島DX』『@SIMPLE DLシリーズ Vol.1_THE 密室からの脱出_~不思議なクマドナルバーガー編~』『タッチバトル戦車3D』『ひらり 桜侍』■第2弾 対象タイトル■期間:6月29日(金)~7月5日(木)『スーパーマリオブラザーズ』『いきものづくり クリエイトーイ』『引ク押ス』『ひゅ~ストン』『ザ・ローリング・ウエスタン』この機会に、ぜひニンテンドーeショップにご来店ください。Nintendo ※上画面に画像あり 誰か来ています! すれちがいMii広場 2012年6月22日 すれちがいMii広場にいつの間に通信で誰かあそびに来ています!「ソフトを起動」を押して見てみてください。※今回、遊びに来るMiiをすでに_QRコードから受け取ったことが_ある場合は遊びに来ませんので_ご了承ください。 ※「ゲームセンターCX 有野の挑戦『星のカービィ 20周年スペシャルコレクション』」放送記念 詳細はこちら→スペシャルMii Nintendo Direct 2012.6.22 ニンテンドーeショップ 2012年6月22日 2012年6月22日ニンテンドーeショップからのおしらせ2012年6月22日に実施いたしましたNintendo Direct 2012.6.22のプレゼンテーション映像や出展タイトルの映像を公開しています。体験版や3D映像もダウンロードいただけます。Nintendo Nintendo Direct Pre E3 2012 ニンテンドーeショップ 2012年6月4日 2012年6月4日ニンテンドーeショップからのおしらせ2012年6月4日に実施いたしましたNintendo Direct Pre E3 2012のプレゼンテーション映像を公開しています。Nintendo 2012年5月へ←|一番上↑に戻る|→2012年7月へ
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正直、のっちが一目惚れだなんて有り得ないと思ってた。 だって人見知りするし、そのせいで友達も一向に作れないのっちだったから。 でも、のっちは変わろうとしてる。たった一人の女の子を想って。 「お姉ちゃん」 「へ…?あ、なに?」 「さっきからぽけーっとして、大丈夫?」 心配そうに、ちゃあぽんがあたしの顔を覗き込む。 …そんなにぼけっとしてたんだ。 アホらし。のっちじゃあるまいし。 ふぅ、と溜め息を軽く吐いて、なんでもないって言おうとした時。不意にちゃあぽんの顔が近づいてきた。 (な、なん、一体なんなんよ!?) こつん。 おでこがぶつかる。 「熱は…ないね」 「……っ」 何故か心臓の音が煩い。 おまけにほっぺまで熱い。 (な、なんでこんなドキドキするんよ…妹相手に有り得んじゃろ) 「な、んしよるん…」 「え…熱計って、」 「べ、別に体調は悪くないんじゃけ、はよ離れんさいや」 「…そう?」 (こ、これは…そう、あれよ!ちゃあぽんは結構顔がいいけぇ、そう思うだけなんよ!) なんて、心の中であたふた。 (ただの妹なのに、おでこくっつけたくらいで焦って、恥ずかしいわ…) すっかり熱いほっぺを両手で挟んでみる。早く熱下がらんかな。 「…うりゃ」 「ふにっ!」 いきなり鼻を摘まれた。 …まったくこの子は。 「こら、ちゃあぽん!」 「あははっ、怒る元気あるんじゃん。なーんだ、心配して損した」 じゃあ、出掛けてくるねー。なんて脳天気な声が、すでに玄関から聞こえている。 なんて逃げ足の早い。 「…もう!」 触られた鼻が熱い。 きっと、今のあたしの顔は有り得ないくらい真っ赤になってるはずだ。 「有り得んわ……」 ちゃあぽんは妹なのに…。 ぽつりと呟いた言葉は、やけに部屋に響いた。 番外編END
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385 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 1投稿日:2006/12/28(木) 05 14 23 ID ??? そこは毎度おなじみラインフォード邸。そしておなじみ陸ガン部隊。 「キンケドゥが来たぞ! 撃ち方構え! ……てぇーっ!!」 銃弾の雨を浴びせられても、その二機は構わず向かってくる。 「ダメです警部、やっぱりあのマントをどうにかしないと!」 「くっ…だが、それには圧倒的な力で破らなければ…!」 とやっている間に、黒い一機が陸ガン部隊に飛び込んで―― ザシュッ! バズッ! ブシュッ! りくがん は ばらばらに なった! 386 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 2投稿日:2006/12/28(木) 05 15 50 ID ??? 「……なあ、トビア」 「はい、キンケドゥさん」 「手加減という言葉を知ってるか?」 「知ってますけど、やれるかどうかは別問題です」 「…………」 きっぱりした答えに、キンケドゥは片手で頭を抑えた。 ここは窃盗団アジト。たった今一仕事を終え、キンケドゥとトビアはガンダムを降りたところである。 自分の目的を果たしたキンケドゥことシーブックは、今後のことを考え、トビアの育成に力を注いでいた。最近の仕事にトビアを連れて行くのはそのためである。 だが、ひとたび戦闘をトビアに任せると… 『どけーっ! 加減なんか利かねぇぞっ!!』 で、後に残るのはジャンクの山。 「ムラマサブラスターが破壊力高すぎるってのもあるんだろうが…」 二人が見上げるのはキンケドゥ・ルミナス。この機体が装備しているのはムラマサブラスター、十四本のビームサーベルを一つにした、七支刀のような武器である。 破壊力は抜群。普通のビームサーベルでは受け止めることも出来ないだろう。しかしその分エネルギーの消費は激しく、何より『強力すぎる』のである。 最も接近戦が基本である分、ヴェスバーよりも余程取り回しの利く武器ではあるが… 「俺達の目的は盗みであって、警察を倒すことじゃないんだ。むしろやりすぎたら、後々に響いちまう」 「分かってますけど…」 トビアは唸って黙り込んでしまう。それを見て、キンケドゥは一つ息をつくと、ぱん、とトビアの背を叩いた。 「ま、少し考えてみろ。それだけガンダムを使えるなら、慣れるのも早いさ」 「はいっ」 にっと笑い、キンケドゥは戦利品『ローラ専用天然オパールネックレスその他』を持って、分析班に向かっていく。 トビアはキンケドゥの背を見送ると、もう一度自分の愛機を見上げた。 ルミナス――クロスボーン・ガンダムX3は未だに黒い塗装をされている。X2が直るまでの緊急処置だ。 それはつまりX2が直ったら、ルミナスの、ひいては自分の出番がなくなるかもしれないということでもある。 MS戦が三度のメシより大好きというわけではないが、活躍の場が減るのは寂しかった。 この後も実働部隊にいるためには、X2が直るまでにX3を使いこなせるようにならなければ…… 「スランプか、トビア君」 「あっ、ザビーネさん」 声をかけてきたのはザビーネだった。愛機が壊れたというのに相変わらず冷静だな、と思う。 あまり積極的に話す相手ではないが、ふとトビアは話を聞いてみたくなった。心配してくれたのだというのはトビアにも分かったのだ。 「スランプってほどじゃないと思うんですけど…。ザビーネさん、仕事のときって、何か心がけていることあります?」 「心がけていること?」 ふむ、とザビーネは顎に手をやった。 「…今回のポーズはポジションから外れていないか、とか」 「いや様式美の問題以外で」 「では、貴族に相応しく華麗に戦えているか、とか」 「だから様式美は…」 「様式美ではない! これは私の信念だ!」 「と、とにかく、外見以外でお願いします」 「……では、キンケドゥを警察部隊にぶち落としたい衝動を何とか抑える、とか」 「ダメじゃないですかザビーネさん! 仲間を裏切っちゃあ!」 387 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 3投稿日:2006/12/28(木) 05 20 04 ID ??? トビアとザビーネが話しているのを見て、キンケドゥはふっと笑みを浮かべた。 弟分が考えながら脱皮しようとしているのが分かるのだ。 「何にやにやしてんだよ、キンケドゥ」 「ちょっと嬉しくてさ」 「坊やが悩んでるのが?」 「いや、悩んでること自体じゃなくて」 苦笑してキッドに答えながら、キンケドゥは考えを巡らす。 トビアにはもう少し器用になってもらいたい。仕事のたびに警察を壊滅させては、他の犯罪の取締りにまで影響が出てしまう。 何よりそのうち警察も自身以外――サーペントテール等――に応援を頼むのを恥と思わなくなるかもしれない。 実のところ警察の縄張り意識には、助かっている部分が大きいのだ。 「なんとか加減を身につけさせないとな… それが出来ないなら、いっそ…」 「いっそ?」 「……いや、なんでもないよ」 「ふ~ん」 キッドは頭の後ろで手を組んだ。視線の先には、漫才コンビのようにボケとツッコミをしているトビアとザビーネだ。 あいつらいいコンビなんだな、と漠然と思う。 いちいち突っ込んでいるのがトビアであることは意外だが。 「なあ、キンケドゥ」 「ん?」 二人はトビア達に目を向けながら会話する。 「お前、最初から器用だったよな?」 「そんなわけないだろ。最初はビルギットさん…学校の先輩に迷惑かけ通しだったさ」 「それでもさ。MSに慣れるの、やたら早かっただろ」 「……モニカさんのおかげだよ」 「だーからF91だけのことじゃなくて。普通のMSでもさ」 「そう…なのかな…」 ザビーネが何事か講義している。素直に聞いていたトビアだが、そのうち昇竜拳で派手に突っ込んだ。 「で、思うに、だ。お前が器用なのは、家庭環境に原因があると見た」 「兄弟多すぎってことか? それじゃガロードだって」 「ガンダム坊やこそ器用の極みだろ」 「……それもそうか」 388 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 4投稿日:2006/12/28(木) 05 33 47 ID ??? 吹っ飛んだザビーネが頭を抑えながら起き上がる。トビアは手をぶんぶん振り回しながら盛んに何かを言っている。 「珍しいな、お前がガロードを褒めるなんて」 「ガンダム坊やのことは俺も認めてるの! 面と向かって褒めたら、あいつ簡単に調子に乗るから褒めないだけ」 「はは、お前に言われちゃ世話はないな」 ザビーネが手櫛で髪を整えながら立ち上がる。トビアがぺこぺこと頭を下げる。 「まあガロードの場合、昔のことも関係してんだけどな…」 「何か言ったか?」 「なんでも。でも確かにあれだけ兄弟がいれば、それなりに器用にもなるか…」 今度は二人は座り込み、床に指で何かを描いていた。ザビーネが一つずつ指を打ち、何かを言っている。そのたびにトビアはふむふむと頷く。 「一回うちで生活させてみるかな…ロランやアムロ兄さんを説得できればこっちのものだ」 「ばれないようにしろよ、もう疑われてないと思うけどさ」 「分かってる」 床の絵の話は終わったのか、ザビーネが何か言いながらランスを持って突きを見せる。トビアが何も持たない手で真似をする。 「ところでキッド」 「あん?」 「あの二人、あんなに仲良かったっけ」 「俺に聞くなよ」 今度はトビアが実際にランスを持って突きをする。 すっぽ抜けて修理中のX2の足に突き立った。衝撃で、ハシゴで修理作業をしていたウモンがバランスを崩した。持っていた部品がX2を固定している部品に当たった。 固定部品が外れた。 ドン、ガラガラガラガッシャーン… 「……ある意味、あれは才能かもしれないな」 「大味なのが持ち味ってか?」 「あいつは怪盗より強盗とか海賊の方が合ってるのかもしれない」 「ガンダム使っといて強盗じゃないなんて言うなよ」 「分かってる。ニュアンスの問題さ」 ハシゴから落ちたウモンと、愛機にとどめをさされたザビーネが、トビアを説教している。 ぺこぺこ頭を下げるトビアを見ながら、キンケドゥは弟分の未来の可能性を思い描いていた。 389 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 5投稿日:2006/12/28(木) 05 35 16 ID ??? その日の夜。 「……というわけで、うちに泊まることになったトビア君だ。さ、自己紹介を」 「は、はいっ! 明日までいさせていただきます、トビア=アロナクスです! よろしくお願いします!」 アムロの紹介に続いて挨拶をするトビア。元気な奴だな、また弟が増えた、などなど兄弟からは思い思いの声が上がる。 トビアもトビアで、目の前の男十四人に圧倒されている。 (すごい光景だな…) 一人一人もかなり個性的だ。かろうじて似ているといえる顔は、コーディネーターだという二人…キラとシン、と言ったか。それからシーブックともう一人…カミーユという人だろうか? くるくると目のやり場を動かしていると、ふとシーブックと目が合った。 シーブックが、にっ、と笑う。何かほっとした。 「分かっているとは思うが、トビアは普通の家庭の子供だ。お前たち、くれぐれも怪しい道に引きずり込むなよ」 「ひっでーっ! アムロ兄、俺たちを何だと思ってるのさ!」 「ジュドー、お前を例にするなら、ジャンク屋で稼いでいる上に学校に行っていない!」 「ぎくっ」 「じゃあ僕は?」 「キラ、お前は朝食を必ず奪われる…のはまだいいが人間関係が怪しい、特に最近シンに嫉妬しすぎだ!」 「ぎっくぅ」 「へへ、言われてやんの、キラ兄」 「シン、お前も一々キレてゴッドフィンガーもどきを撃つな! ドモンよりも引き金が軽いとは何事だ!」 「ぎぎっくぅ」 「全くだ。力を持つならまずその使い方を知れ!」 (うわあ、ドモン兄貴、自分が馬鹿にされたこと気付いてねぇよ) (しーっ、ガロード兄さん、聞こえたらまた暴れるよっ) 「他にも盗撮してたり女にだらしなかったり女装趣味だったりすぐMS持ち出したり事あるごとに自爆したり…」 「あ、あの、アムロさん、僕は皆さんの生活を体験したくて来たわけですから…」 「トビア!」 口を挟んだトビアの肩をアムロはがしっと掴む。 びくっと怯んだトビアに顔を突きつけ、アムロは心底からの言葉を吐いた。 「普通ってのはなぁ…とってもいいことなんだぞ…!」 ((アンタが言うかよメカフェチのエロ大名!!)) そう思っても口にする者はいない。 390 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 6投稿日:2006/12/28(木) 05 36 56 ID ??? 「じゃあまずは家の案内だが…」 「はーいアムロ兄! 俺がやるっ」 ぱっと手を上げたのは、確か先程一番に文句を言った少年だ。茶色がかった黒髪、おそらく自分とそう年も変わらないだろう。 「ジュドー、さっきも言ったが怪しい道には…」 「大丈夫だって! 俺はこれでも面倒見いいんだからさ」 それを聞いた明るい茶色の髪の少年、頭に『!?』を浮かべるが、アムロはそれに気づかなかったらしい。いや、気づいていながら無視したのだろうか? 「じゃあ頼むぞ、ジュドー」 「おっまかせ!」 ジュドーはニカッと笑って頷いた。 「俺ジュドー=アーシタ、十二男の十四歳! よろしくな、トビア!」 「よ、よろしくお願いします、ジュドーさん!」 「おいおい、固いなぁ。敬語なんて使うなよ、俺たちそんな年違わないだろ?」 「え、ええ…」 「ほら、力抜いた!」 「はいっ」 「はいじゃなくて、おう!」 「お、おう!」 「よし! リラックスしろよ、この家でカチコチになってたら、明日のお天道様は拝めないぜ!」 「は…おうっ!」 「よっしゃ! じゃあ一階から案内するぜ!」 391 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 7投稿日:2006/12/28(木) 05 38 17 ID ??? アムロの部屋 「す、すごい機材だね…」 「あんま入るなよ? 仕事の関係とかでフル作動してるし、他にも個人的な研究とかしてるらしいし」 「わ、分かった(これ、CROSS-BONESのアジトより凄いんじゃないか?)」 ドモンとヒイロの部屋 「ダンベル? 銃火器!?」 「ここもあんま入るな、っつーか絶対入るなよ。俺達だって入りたくないんだからさ」 「どうして?」 「ん~、例えば…よっ(ゴミを投げ込む)」 「あ、何を…」 ドッカーン 「ってなわけで、一触即発なのさ」 「ゲホゲホ… わざわざ爆発させなくても…」 シーブックとシローの部屋 「あ、ここは普通だ」 「何しろシーブック兄とシロー兄の部屋だからさ。影薄いコンビで平和なわけ」 「影薄い? シーブックさんが?」 「あ、お前はシーブック兄の後輩だっけか。クラブでどうよ、シーブック兄」 「ど、どうって」 「影薄くて後輩に忘れられてたりとかしない? イベントのときにいなくても気付かれなかったりとか…」 「そんなことないっ! むしろシーブックさんがいないと、俺たちはどうなるか分からないんだっ!」 「うおっ!?」 「ジュドーはシーブックさんのこと分かってないんだよ! すごくいい人で、俺たちを引っ張ってくれて、俺のことも面倒みてくれて…!」 「わ、分かった分かった! 悪かったよ! ほら、次行くぞ!(シーブック兄、外じゃ結構評価高いんだな…)」 392 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 8投稿日:2006/12/28(木) 05 39 33 ID ??? カミーユとロランの部屋 「ち、チリ一つ落ちてない…」 「カミーユ兄が神経質の上に、家事担当のロラン兄の部屋だからさ」 「すごい清潔…あ、女の人の写真が」 「触るなよ? 汚したり割ったりしたら殺されちまうぜ」 「ああ、それは分かるな。俺もベルナデットの写真を割られたら怒るよ」 「そんなもんか? 俺はよくわかんねーけど」 「ジュドーは好きな子いないの?」 「好き…ねぇ…好きなことは好きなんだけど、恋人って感じじゃないんだよなぁ」 「恋すれば分かるよ。大事な人はどうしたって守りたいって思えるようになるんだ」 「……お前、尽くすタイプだな? シーブック兄と気が合う理由が分かったよ」 「???」 ジュドーとガロードの部屋 「ここがジュドーの部屋かぁ」 「おう、それとガロード兄もな」 「汚いね」 「へへ、よく言われる」 「足の踏み場もないって言われないか?」 「ロラン兄にはしょっちゅう呆れられてるなぁ」 「ガラクタばっかりだし…ジャンク屋ってホントなんだね」 「貴重なパーツとかあるからな。入るなよ」 「入りたくても入れないよ、足場がないんだから」 コウとアルの部屋 「うわっ、ガンプラばっかり」 「ある意味すげーだろ。これ全部コウ兄とアルが作った奴」 「よっぽど暇なんだね」 「……お前、さりげなく毒舌か?」 「あれ、でも部屋の半分できっちり分かれてる…こっちがガンダムで、あっちがザク?」 「ああ、コウ兄はガンダム派で、アルはザク派なんだよ。いやジオン派かな? うちの中でアルだけジオン派なもんだから、よく喧嘩もするんだよな」 「はあ…(海賊派とかないのかな)」 393 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 9投稿日:2006/12/28(木) 06 53 54 ID ??? ウッソとキラの部屋 「うわ、パソコンばっかり」 「通称PC小僧の部屋っつってな。ウッソとキラは俺たちよりすげぇハッカーなんだ」 「ハッカー!?」 「っとと、変な意味に取るなよ! 腕のいいプログラマーってことさ。ウイルスの撃退とかお手のものだし」 「へえ…すごい(アシスタントに来てくれないかな)」 (危ねー、さすがに盗撮サイトやってるとは言えないもんな、犯罪一歩手前だし) シンとシュウトの部屋 「けほっ…なんか古びた部屋だね」 「通称開かずの間だからな」 「……何だそりゃ」 「説明しよう! シン兄は生体ミラージュコロイドという特殊能力を持っている! 俺達兄弟にすら知覚されず生きてきて十五年、最近やっと発見されて今に至るのだ! で、シン兄が透明人間やってたころに、俺達が絶対開かないと思ってた部屋がここ」 「…けほ…シュウト君は?」 「ラクロアに行ってたんだよ。その間は部屋なし。帰ってきたから、ちょうどシン兄と相部屋になったわけ」 「げほげほ…じゃあどうして未だに埃っぽいのさ?」 「それ、多分埃じゃなくてキノコの胞子だぜ」 「ええーっ!?」 「シン兄、あれで薬に詳しくてさ。自分でキノコ育てて成分とったりして…ありゃ、トビア? どこ行った?」 洗面所 「げほげほごほ…」 「そんなに神経質になるなよ。これくらい普通だろ?」 「ど、どこがだよ…」 「おい、ジュドー!」 「あれ、シン兄、どうしたの」 「どうしたの、じゃない! お前俺の部屋のドア開けただろ! せっかく育ってたキノコが全滅しちまったじゃないか!」 「勘弁してくれよ、トビアの案内してたんだからさ」 「う? …そ、そうか…」 「すみません、シンさん」 「ふん、気をつけろよっ!」 「あのさーシン兄、あそこシュウトの部屋でもあるって分かってる?」 「ああ、分かってるぞ? シュウトはちゃんと窓を通って入って来る」 「へ?」 「窓なら角度的にキノコにも問題ないんだよ」 「や、そうじゃなくて、シン兄たちの部屋、三階…」 「キャプテンに上げてもらってるから大丈夫だ」 「あー、その手があったか!」 「キャプテン?(頭領?)」 「あ、キャプテンの紹介はまだだな。ついてこいよ、トビア」 「うんっ」 394 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 10投稿日:2006/12/28(木) 06 59 57 ID ??? 玄関 「ガンダム!?」 「モビルシチズンだよ。アムロ兄の会社で開発したロボット。あ、ロボットっつっても心はちゃんとあるからな」 「よろしく、トビア」 「しゃべったー! ガンダムがしゃべった!」 「いやだからガンダムじゃなくて…」 「確かに私はキャプテン『ガンダム』だが、モビルスーツではなくモビルシチズンだ。この家の警備を任されている。会話機能つきなので、そこまで驚く必要はない」 「うわあああ、解説されたー!」 「と、トビア?」 「このようなリアクションは予想外だ。どうすればいい、ジュドー」 「いや、俺に聞かれてもなぁ」 とまあ、そんなこんなで兄弟家一周は終わった。 驚いてばかりで疲れたが、面白い家だとトビアは思う。 「で、お前、どこで寝る?」 「え? あ、えーと、どこでもいいよ。その辺の隅っこでも」 「何遠慮してんだよ。お前は今日明日は俺達の兄弟なんだからさ。図々しく押しかけろよ」 「いいの? ええと…それじゃ…」 と話していると、ドモンとヒイロがやってきた。どうやら湯上りらしく、ほかほかと体から湯気が立っている。 「寝る部屋なら、俺達の部屋を使っていいぞ」 「え? どうしてさドモン兄」 「俺はこれから夜行でファイト会場に向かわねばならん。ヒイロはリリーナ嬢の護衛だそうだ」 ジュドーとトビアは顔を見合わせた。確かに部屋は一つ空くが… 「ドモン兄さん、そろそろ時間だ」 「お、すまん。では行ってくる」 二人は出て行った。 しかしいくら空いている部屋とは言え、正直あの危険地帯で寝たくはない。明日のお天道様が永遠に拝めなくなるかもしれないのだ。 「……別の部屋で寝ていいかな?」 「いいよ。まだ死にたくないだろ」 「そりゃもう」 考え込むトビア。 今まで回ってきた部屋の中で、まともそうなのはシーブックとシローの部屋、カミーユとロランの部屋だ。あとの部屋は何か危険な匂いがする。 まず間違いなくシーブックとシローの部屋では安眠できるだろうが…せっかく来たのだから、別の兄弟と触れ合ってみたい。 「じゃあ、カミーユさんとロランさんの部屋で」 「よっしゃ!」 そのとき、ジュドーが妙な笑みを浮かべた。 トビアは気付いたが、自分の気のせいだろうと思ってしまった。 「そうだ、今日風呂はどうする?」 「一応着替えは持って来たけど。入れるなら入らせてもらいたい…いい?」 「おう、誰かと一緒に入ることになるけど、いいな?」 「(あ、そうか、十五人もいるからな…)もちろん」 395 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 11投稿日:2006/12/28(木) 07 04 36 ID ??? 風呂 「あ、トビア兄ちゃんにジュドー兄ちゃんだ」 「よーシュウト、コウ兄。入るぜ」 「どうぞ。早くかけ湯してくれ、俺たちも陸に上がりたいから」 「はいよっと。ほらトビア、桶」 「ありがと」 ざっぱざっぱと湯船のお湯を被る。温まったところで、コウとシュウトと入れ替わりで湯船につかる。 「よし、それじゃシュウト、頭下げろ」 「えー、やっぱりやるの?」 「十にもなって嫌がるなよ。セーラちゃんやリリ姫ちゃんたちに嫌われちゃうぞ、それでもいいのか?」 「それはダメ!」 「だったら、ほら!」 「は~い…」 「へ~、コウ兄が女を持ち出して話つけるなんて珍しいな」 「そうなの?」 「(ぼそぼそ)実はコウ兄はまだ…」 「おい、聞こえてるぞ、ジュドー!」 「いけね」 (まだ…何だろう?) わしゃわしゃわしゃ…と、コウがシュウトの髪を洗う。 トビアは昔を思い出した。 小さい頃は、ギルと一緒に風呂に入ったこともあったっけ。 もっと小さい頃は、今は亡き本当の両親と… 「コウ兄、そろそろいってもいいか?」 「どーぞ、でも悪戯はやめろよ?」 「分かってるって! 上がろうぜトビア…トビア?」 「うん?」 「どうしたんだ、お前」 「なんでもないよ! えーと、ジュドーの髪を俺が洗えばいいか?」 「あ、それなら頼むわ。俺がコウ兄の髪洗うから」 「おうっ」 男四人並んで、前の人の髪を洗う。髪が終わったら、今度は背中だ。 「い、いでででっ!? おいトビア、やりすぎ!」 「あ、あれ? ごめん、力入れすぎた!」 「頼むぜ、まったく」 そのうちコウがシュウトの背中を洗い終わったので、今度はシュウトが最後尾のトビアの髪を洗いに来た。 「それじゃシュウト、いきまーす」 「よろしく、シュウト…っ…!」 ガキィッ! 「あっ!?」 「~~~~っ!」 「わーっ、ご、ごめんトビア兄ちゃん!」 「だい、大丈夫だよ、シュウト…」 「シュウト、お前また力いっぱいやったな!?」 「ごめんなさいジュドー兄ちゃん!」 「と、トビア、早いところ冷やせ。ほら冷タオル」 「すみません、コウさん…」 396 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 12投稿日:2006/12/28(木) 07 06 35 ID ??? 就寝 先にジュドーと話した通り、トビアはカミーユとロランの部屋に泊まることにした。 「それじゃ、よろしくお願いしますね」 「分かりました。では、僕のベッドを使ってください」 「ええっ!? そんな、いいですよ! 押しかけたのは僕なんですから!」 「いいよ、ロラン。トビア、俺のを使え」 「ええーっ!?」 「カミーユ!? 一体どうしたんですか、そんな優しいこと言うなんて!」 「俺だって成長するんだよ! ほら、トビア」 「でも、本当にいいんですか? カミーユさんはどこで寝るんです」 「俺は、そこだ」 言ってカミーユが指したのは、部屋の真ん中だった。二つのベッドのちょうど中間に当たる。 「床じゃないですか!」 「余計な気を使うなよトビア。明日までお前は俺の弟なんだからな」 「カミーユさん…」 「ロラン、お前はベッドで寝ろよ。お前がもし風邪引いたら、誰がウチの家事やるんだよ」 「……素直じゃないですね、カミーユは」 ロランは笑って、おやすみ、と言って眠った。すぐさま寝息を立て始める。カミーユはそっとロランの頭に毛布を被せた。 トビアもカミーユのベッドに潜り込んだが、申し訳がない。くるりと寝返りをうつと、毛布一枚で床に寝るカミーユの姿が見えた。 「カミーユさん…」 「…………」 「僕、ちょっと詰めますから、一緒に寝ませんか?」 「…………」 「……寝ちゃったのかな」 「いや、起きてるよ」 「あ、すみません」 「別に気にするなよ。俺にとってはこれが日常なんだ」 「え?」 「もうそろそろ来る頃だからな…トビア、今から起きることは、ロランには秘密だ。お前は頭から布団被ってろ。朝まで絶対起きるな」 「は、はい」 何が起こるのか分からなかったが、有無を言わさぬものを感じる。トビアは布団をすっぽり被った。 それから少ししただろうか。 すうっと、窓を開けるような音がした。 びくっとした。泥棒だろうか。鍵はちゃんとかけたはずなのに。 トビアは起きようとして、『朝まで絶対起きるな』というカミーユの言葉を思い出した。 (妖怪でも来てるのか?) 昔よくギルに聞かされた話を思い出す。 悪い子のところには、枕返しという妖怪が夜にやってくる。枕を返された人は、一晩中悪夢に苦しむという。 自分は『悪い子』だ。普段の生活は置いといて、裏で盗賊をやっているのだ。 どきどきどきどき… 自分の心臓がやけにうるさい。 397 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 13投稿日:2006/12/28(木) 07 09 33 ID ??? 「カミーユは気付いていない…チャンスだ、グエン」 「よし、今夜こそローラをハァハァ…む、もう一人いるぞ」 「ああ、それはトビアという少年だ。今日は泊まることになっている」 「なるほど。しかし客人を床に眠らせるとは」 「いや! ロランがそのような冷たい仕打ちをするはずがない。きっとロランは自分が床に寝て、客人をベッドに寝かせたのだ」 「おお! さすがはローラ!」 「それでは…ハァハァ」 「うむ…ハァハァ」 (な、何なんだよこの人たち!) どう聞いても男の声だ。それにローラ? ここにいるのはロランとカミーユと自分だ、ローラという人はいない。 そういえば、とトビアは思い出す。 何度となくラインフォード邸に忍び込む怪盗キンケドゥ、もといシーブック。標的にしているのは大抵グエン卿のコレクション、それもローラ=ローラに関するものだ。 ファッション誌で話題になっているというシルバークィーン、ローラ=ローラ。彼女がここにいる? そんなはずはないのだが… 「ローラァァ!」 「今夜こそ王子様が迎えに…!」 「誰が王子様ですって?」 石よりも冷たい声がした。 空気が凍りついたのを感じた。 ゴキッ、ゲシ、グシャッ… 「か、カミーユ…何故お前が床で寝ているのだ…」 「あなた方の考えることなんて簡単に読めるんですよ、クワトロさん…いや、シャア=アズナブル」 「は、謀ったな、カミーユ…」 ドガシッ! ガラガラガラ! シーン…… 「トビア。その気配、起きてるな? そのまま寝ろ。今のは夢だ。悪い夢だ。忘れろ」 それっきり何も聞こえなくなった。 トビアは震えながら目を閉じた。 これは夢だ。悪い夢だ。枕返しが見せた夢だ。 「おはようございます、トビア。…どうしました?」 「いえ…なんでもないです…」 翌朝、寝起きのロランを見たとき、トビアは『ローラ=ローラ』の真相を悟ってしまった。 カミーユは夜中の戦いで疲れたのか、まだ床で毛布に包まっていた。 398 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 14投稿日:2006/12/28(木) 07 15 08 ID ??? 朝ご飯…の準備。 「助かります。いつも朝食の用意をするのは僕だけですから」 「ええっ!? 十五人分全部ロランさんが!?」 「キャプテンも手伝ってくれるときはあるんですけどね。最近は警備が忙しいみたいで」 「はあ…じゃ、今日くらい僕に色々言ってくださいよ。やれることは手伝いますから」 「ありがとう、トビア。それじゃあこの魚を焼いてくれますか? 表面が焦げてきたらひっくり返してください」 「はいっ」 … … … … 「…トビア、僕、『表面が焦げてきたら』って言いましたよね?」 「ご、ごめんなさい」 四尾の秋刀魚は、見事に黒焦げになっていた。 「えーと、それじゃあ、お皿の用意をお願いできますか?」 「あ、はい!」 「中くらいのお皿を十三枚お願いします。あと小さなお皿を二枚」 「はいっ!」 … … … … 「トビア、それ、大きいお皿…」 「ああっ、道理で数が少ないと…」 「えーとそれじゃ……洗い物を頼めますか」 「は、はいっ!」 … … … … 「トビアーっ! 水出しすぎ、洗剤も使いすぎです! もっと節約して!」 「す、すみませんっ!」 「え、ええっと…じゃあ、ちょっとキャプテンを応援してきてくれませんか。そろそろキャプテンの対決があるころですので」 「はい…」 朝の玄関先。青空に筋雲がさわやかだ。 だが目前の光景はどうだろう。 「掃討終了」 「み、ミンチより…(くらっ)」 赤いジャンクともはや誰なのかもわからないほどのミンチを目にし、トビアは気絶した。 399 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 15投稿日:2006/12/28(木) 07 16 23 ID ??? 「おーい、起きろトビア」 「うう…キ…」 「シ ー ブ ッ ク !」 「はっ!?」 慌てて飛び起きれば、目の前にいるのはキンケドゥ…ではなくシーブックだ。 何がどうしたのかとあたりを見れば、いつの間にやら自分は家のなかにいた。しかも今自分が寝ているのは、先日もお世話になったソファである。 「お前は玄関先で気絶したんだよ。キャプテンが家の中に運んだんだ」 「ああっ、そうだ、玄関先にミンチが…ううっ」 思い出して気持ち悪くなるトビア。それを見たシーブック、 (ミンチに慣れてないとこんなもんなのかな…) と、自分達の異常さを噛み締める。 「ま、とにかく起きたんならいいや。朝ご飯だぜ」 「は、はい…ハンバーグないですよね…」 「安心しろ、今日は焼き魚だ。でもロランの奴、珍しく失敗したみたいでさ。四尾くらい真っ黒焦げの魚があって」 「それは僕が食べます」 間髪入れずに宣言するトビア。きょとんとしたシーブック、しかし何か悟ったのか、それ以上の追求はしなかった。 その代わり、最大の懸念事項を確認する。 「トビア、お前早食いに自信あるか?」 「え? …まあ、それなりには」 「それなりかぁ。ま、自分の身は自分で守れよ」 「ああ、争奪戦になるんですね」 「そういうこと」 「大丈夫ですよ。うちでも毎日ゴハンは争奪戦ですから」 その見通しは甘かった。 400 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 16投稿日:2006/12/28(木) 07 17 18 ID ??? 台所・朝食 「ローラの料理はやはり美味い! おかわりであーる!」 「だ、誰ですかこの人!」 「ギム=ギンガナムさんだよ。うちの食卓に意味もなくやってきて、意味もなくキラの分を食べて帰ってく人」 「それって窃盗じゃ」 「ああ、一度捕まったよ。それからは米味噌醤油持参で来てる」 「じゃあどうしてわざわざキラさんの分を?」 「さあ…ギンガナムさんの分を用意しておいても、必ずキラの分を取るんだよなぁ」 「…キャプテンさんは…?」 「ギンガナムさんは客人認定されてるからセーフ」 「いやこの場合アウトでしょう」 と顔を上げた直後。 「うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ」 「お、俺のサンマがぁ! いつの間にかキラ兄の口にぃぃ!!」 「よせシン、落ち着け!」 「放してくれコウ兄! いつもいつも俺の朝食!」 「俺のサンマあげるからいいだろ!」 「コウ兄のは真っ黒焦げのハズレサンマじゃないか! 俺のは焼き加減絶妙なアタリサンマだったのに!」 (あああ、ごめんなさいごめんなさい) 「で、でも同じサンマだぞ? いいじゃないか食べられないより食べられた方が!」 「炭を食えってのか、アンタって人はー!」 「し、シーブックさん、これヤバイですよ、シンさんの右手が燃えてますよ!」 「ああ、いつものことだから」 「いつもぉ!?」 「トビア、自分の分確保したか?」 「は、はい」 「じゃああと十秒以内に全部食べろ」 「はっ!?」 わけも分からぬまま急いでかきこむトビア。味も何も関係ない。 黒焦げサンマを口に入れたところで、タイムアップとなった。 「ひぃっさつ! パルマフィオキーナァ!!」 どんがらしゃ! 食卓は崩壊した。 「シン! 腹立ちまぎれに食卓を壊すなんて、そんな弟をもった覚えはありませんよ!」 「け、けどよロラン兄! 今のはキラ兄がよけたからで!」 「だ、だって朝から食卓をミンチで汚すなんて、そんなの許せないじゃない!?」 「あー、キラ、シン、長くなるなら外で、な?」 「言われなくてもやってやるさコウ兄! キラ兄、表に出ろ! 今日こそはアンタのミンチ記念日だ!」 「ふざけないでよね、いくらやったってシンが僕に勝てるわけないだろ!」 「トビア、どこまで食べられた?」 「ご飯がまだ残ってました…サンマも半分以上…でも味噌汁はここに」 「上出来だ。お前、この家でも生き残れる素質あるよ」 「あんまり嬉しくないです…」 とやっている脇で、 「ご馳走様である!」 全ての発端であるギンガナムは暢気に合掌していた。 401 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 17投稿日:2006/12/28(木) 07 30 49 ID ??? 居間 「またキラとシンか…」 「シロー兄さん、ずるいよ。さっさと退避しちゃって」 「まあそう言うなシーブック」 コートを着て、出勤前にニュースをチェックしているのはシローだ。 (この人が、アマダ警部…) 「トビア」 「は、はいっ!」 思わず背筋がしゃんとなる。それを見たシローは笑っていた。 (愛嬌ある顔だな…) いつも見ている『アマダ警部』は、眉間に筋を立てて怒鳴っている姿か、執念を纏ったEz-8であるから、シローの普段の姿に違和感を覚えるのも仕方ない。 「どうだった、よく眠れたか?」 「あんまり…変なことがあって」 「変なこと?」 「変態が来て、ローラローラって言って、カミーユさんがドカバキゴスッて」 「……ああ、それは変な夢だな。忘れろ」 シローは視線をはずして言った。目が据わっている。 隣を見れば、シーブックも額に片手を当てていた。 よく分からないが言われたとおり忘れよう、と味噌汁の残りを飲んでいると… 『次のニュースです。昨日の夜、またも怪盗キンケドゥが…』 「!!☆?▼♪!?」 もろに気管に入れてしまった。 「くそ、キンケドゥめ…って、大丈夫かトビア」 「げほ、ごほごほ…だ、大丈夫っ…ですっ」 シローが背中をさすってくれる。トビアは味噌汁のお椀をテーブルに置いて、思いっきり咳き込んだ。 「す、すみません」 「気にするな」 シローがほっと笑顔を見せる。いい人だ、とトビアは思った。 こっそり隣を見ると、シーブックが笑いをかみ殺したような顔をしていた。 402 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 17投稿日:2006/12/28(木) 07 39 36 ID ??? 『キンケドゥは最近新兵器で警察部隊を薙ぎ払っているんですよねぇ…。どうも手口が怪盗より強盗に近くなってきましたね』 ぎょっとしてTVを見れば、映っているのはムラマサブラスターを振るう黒いガンダム。 黒く塗装したX3だ。乗っているのは――紛れもない自分だ。 なすすべもなくジャンクにされていく陸ガン部隊。逃げ惑うパイロット達。 呆然とTVの映像を見ているトビア。シーブックが横目でちらりと見てきたのにも気づかない。 「兄さん、今回の被害は?」 「全MS大破、カレンがミンチになった」 ぞくりとした。 「サンダースのトラウマが復活してきたみたいでな…」 「トラウマ?」 「あいつ、配属される部隊が自分を残して全滅するっていうジンクスを持ってたんだ」 「? でも、サンダースさんも落とされてるんだよね?」 「ああ、だからまだいいんだが…同じような状況を何回も経験するとな…」 「そう…か…」 二人の声は暗い。 トビアはTV画面を見ることができなかった。 お椀の中の味噌汁に目を落とす。ワカメと豆腐の上に、色のない自分の顔がぼんやりと映っていた。 『次のニュースです。先日話題となったクライン社とダイクン社の提携ですが…」 ギィィィィ…… そこに不気味な音を立て、アムロが部屋から出てきた。 「……クライン社が…ダイクン社と…ハロが…僕のハロ…ボクガハロヲイチバンウマクツクレルンダ」 「なんとー!?」 「あ、アムロ兄さん! 正気に戻ってくれ!」 「な、な、な…」 目が完全に逝っている。髪はぼさぼさ、服もだらりとして、何か臭う。昨日の長兄の面影はカケラもない。 「どうなってるんですか、この人本当にアムロさんなんですか!?」 「いや、たまにこうなるんだよ、兄さんは」 「だからって一晩でこんなに!」 「はっはっは。情けないな、アムロ君」 『うわあっ(なんとー)!?』 気がつけば、居間にもう一人の男が現れていた。 金髪にノースリーブの服、サングラス。見たことのない男だが、その声には聞き覚えがある。 アムロは逝った目のまま、金髪の男を見止めたらしい。 「…何しにここに来た」 「君を笑いに来た。そう言えば君の気は済むのだろう?」 勝ち誇ったように、にやりと笑う金髪の男。ふるふると拳を震わせるアムロ。 緊迫した空気が流れていた。TVの声など気にもならない。 トビアも、シーブックも、シローも、息を呑んで成り行きを見守っていた。 ……が。 403 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 18投稿日:2006/12/28(木) 07 40 44 ID ??? 『か、カミーユ…何故お前が床で寝ているのだ…』 『あなた方の考えることなんて簡単に読めるんですよ、クワトロさん…いや、シャア=アズナブル』 「あーっ! 昨日の変態!」 夜の騒動を思い出し、思わず声を上げてしまう。 金髪の男はびくりと顔を引きつらせたが、努めて平静にトビアを見た。 「なんのことかな。私はクワトロ=バジーナだ。それ以上でもそれ以下でもない」 「でもカミーユさんは、クワトロさんがシャアだって言いました」 「と、トビア君…寝ていたのではなかったのか…」 認めてしまったのがシャアの運の尽きである。 いつの間にやらアムロの手には、携帯用ビームサーベルが握られていた。 「なるほど。つまりお前にはこうされるべき理由があるんだな」 「いや違う、落ち着けアムロ」 「今日は気が立っていてな、ちょうどストレス発散をしたかったんだ」 「そんなにミンチが見たいか」 「見たくはないがロランのためだ」 「嘘だ! 今の貴様はエゴによって動いている」 「エゴの塊の貴様が言うか!」 ――調理中―― 「ふう、すっきりした」 と、ビームサーベルのスイッチを切ったアムロ、目に生気を取り戻し、溌剌としている。 あまりの変わりようにあんぐりと口を開けていると、アムロは昨日と同じ笑顔を向けてきた。 「おはよう、トビア」 「お、おはようございます…」 「アムロ兄さん、早く風呂に入った方がいいよ。またコーヒー漬けになってたんでしょ」 「そうするよ、シーブック。おや休日出勤かシロー」 「ええ、昨日の始末書が残ってますからね…では行ってきます」 『行ってらっしゃい』 アムロとシーブックがシローを送り出す。 トビアはアムロの携帯ビームサーベルを見た。次に、元シャアだった物体を見た。 見事にミンチだった。 トビアは気絶した。 404 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 19投稿日:2006/12/28(木) 07 46 37 ID ??? というわけで、トビアは心配したアムロの一声で自分の家に帰ることになった。 「でも、ミンチに耐性はついた気がします」 「つかなくていいんだけどな…」 苦笑するシーブック。 玄関には今家にいる兄弟たちがずらりと並んでいる。昨日と同じく壮観であった。 「な~んだ、もう帰っちゃうのかよ。もうちょっといればすぐ慣れるぜ?」 「ごめん、ジュドー」 「大げさなんだよ、今生の別れでもあるまいし。家近くなんだろ?」 「へーへー、俺はカミーユ兄みたいに悟っちゃいませんよっ」 「ジュドーはきっと寂しいんだよ、せっかく仲良くなれるかもってところだったから」 「あ、ちょっとコウ兄!」 ジュドーが慌てる。トビアは照れくさくなって頭をかいた。 「これ、おみやげ。うちの畑でとれたんだ」 「僕らもちょっと手伝ったんだよ。ね、アル兄ちゃん」 「うん!」 とウッソ・アル・シュウトがくれたのは、とれたての野菜である。ほうれん草とジャガイモ。 「でも、もらっちゃったら家計が…」 「そのくらいで赤字に食い込むほどではありませんよ」 ロランがにこにこと笑う。 「それより、ご家族の皆さんでおいしく食べてください」 「……ありがとうございます!」 「んじゃ俺は秘蔵のジャンクを…」 ガラクタにしか見えないものを取り出そうとするガロード。 「い、いえ、そこまでしてもらっては」 「つーかガロード兄、それ俺の!」 「は? こりゃ俺がキッドから買ったジャンクだぜ?」 キッドから? ひょい、と見てみると、何か見覚えのあるパーツだった。いや、見覚えどころのものではなく―― (X2のブランドマーカー起動装置!?) 結局トビアはガロードからジャンクをもらい受け、その足でアジトに直行。盛大にキッドを絞った。 そのうちやってきたキンケドゥやザビーネも参加して、キッドはミンチになったが、トビアはもう特に調子悪くもなんともならなかった。 405 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 20投稿日:2006/12/28(木) 07 47 32 ID ??? その後―― 「手加減が分かった、って、本当に大丈夫なんだろうな?」 「はい! 任せてくださいキンケドゥさん!」 「撃ち方構えっ! バストライナー砲も準備!」 『了解!』 毎度毎度のラインフォード邸、毎度毎度の陸ガン部隊。ただし今回は、別部隊ホワイトディンゴから降ろしてもらった一丁のバストライナー砲が装備に加わっている。 白と黒のガンダムが月をバックにプリティでキュアキュアなポーズを取り、そのまま黒が突っ込んでくる。 「てぇーっ!」 シローの号令にバストライナー砲が火を噴く。が、黒は熱線をさっと避け、あのデタラメな超巨大ビームサーベルを起動させた。 ザッ、と音を立て、バストライナー砲が斬られる。 陸ガン部隊は警戒した。またジャンクにされるかという恐怖感もあったし、新兵器があっけなく落ちたという失望もあった。 だが… ブゥ…ン… 何を考えたか、黒は巨大ビームサーベルの光を消したのだ。 とまどう陸ガン部隊。 だが、直後。 ドガッ! バキッ! ガスッ! りくがん は がれきに なった! 406 名前:番外編・トビアの兄弟家一日体験記 21投稿日:2006/12/28(木) 07 48 40 ID ??? 「あー、トビア」 「はい、キンケドゥさん」 「手加減ってどういう意味か知ってるか?」 「力を抑えて戦うって事ですよね」 「間違ってはいないが…」 きっぱりした答えに、キンケドゥは片手で頭を抑えた。 ムラマサブラスターを起動させずに、鈍器のように使うとは…正直予想外である。確かに強力すぎることはないし、むしろハンデと言って良いくらいであるが… 「ビームじゃどうしても強すぎるんですよ。シャアさんもミンチになっちゃってたし」 そう無邪気に言う弟分を見て、キンケドゥは第二案を実行することにした。 「トビア」 「はい」 「お前、今度からヒートダガー使え」 「ええっ!?」 その後、ムラマサブラスターの使用許可が下りるまでに三ヶ月を要した。 トビアが最終的に『てかげん』を覚えられたかどうかは不明。 追記 後日、ダイクン社はクライン社と提携して新型ハロの開発に成功した。しかし生産されたハロ全てに強制盗撮機能がつけられていたことがナナイの極秘調査で発覚、すぐさま販売禁止の上処分となった。 処分までに集められた画像はダイクン社の社長のプライベートコンピュータで見つかり、シャアはナナイ初め重役たちから袋叩きにあったらしい。 その夜、兄弟家では長兄が上機嫌であり、五男と七男は平穏な夜を過ごしたそうな。 おわり link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ ガンダム一家 ガンダム家 キンケドゥ・ナウ シーブック・アノー トビア・アロナクス 中編
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中野比奈・水鳥夏実 番外編 (後編) 背後から『たましいふきこみ銃』で俺の魂を半分吹き込んだ神宮寺を連れ、会場を出る。 今日のためではないが、予め練習をしておいたので神宮寺の操り方も問題ない。 俺は『万能グラス』を通して中野比奈と水鳥夏実が予想通り更衣室へ入った事を確認すると、人目がない物陰で『石ころぼうし』をかぶり、存在を隠した俺達も更衣室へ向かった。 ……万能グラスで2人の場所を確認しながら、選手専用のロッカールームを目指して歩く。 『タイムテレビ』で予め確認した通り、中野比奈はトイレ、水鳥夏実はシャワールームで身体の疼きを開放中のようで。カメラが仕掛けられてるとも知らず……。 2人がオナッてる間に、俺と神宮寺はロッカールームに入ると『吸音機』を設置し、 『キンシひょうしき』を用意して俺らと中野・水鳥以外がロッカールームへ入ることを禁止し、さらに『シナリオライター』を再び取り出す。 「まずは盗撮用にイク時は宣言してもらって……ま、あとはこっち来てもらえばいいか」 ライターを使い、万能グラスで2人がイクとこを観ながらしばし待つ。良い画が撮れました。 ほどなくして、少々フラついた足取りで2人がロッカールームへと入ってきた。お互いに何をしてきたかは察しているようで、無言で椅子に座り、目をそらしている。 俺は『運動神経コントローラー』を神宮寺に持たせ、アンテナを水鳥夏実に付ける。 ズボンを脱いだ状態で、まずは俺だけが石ころぼうしを外して2人の前に姿を見せた。 「やぁ、2人とも試合後のオナニーは気持ちよかったみたいだね♪」 突然、目の前に現れた男の姿に、2人の水着美女は驚きを隠せない。声すら出ないようだ。 次の瞬間には、自分達がオナニーしていたことを知られていると理解したのかみるみる顔が朱に染まっていく。 同時に、2人の顔は共に「どうして?」という疑問の表情を浮かべていた。 「そりゃ2人がイクとこまでしっかり見てたからね。おかげでコレ、どうしようか?」 そう言って、俺は自分の逸物を指差す。半起ちしたソレはボクサーパンツ越しでもハッキリと隆起し存在を主張している。 すかさず俺は神宮寺を操って運動神経コントローラーを操作し、水鳥夏実の右手を布越しに俺の逸物へ重ねさせ、形を意識させるようにスリスリと上下に撫でさせる。 「な、なな夏実ちゃん! な、何して、ダメだって、そんな、あぁん……」 中野比奈の方は予想通りというか、勝手に悶えている。 水鳥夏実はというと、わけがわからず完全に固まってしまっていた。仕方ないので、さらに運動神経コントローラーを操作して俺の逸物を取り出させる。 そのまま水鳥の身体を操作して中野比奈の手を取り、俺の逸物を握らせた。 ……ジュプジュプと音を立て、中野比奈は俺の逸物をフェラチオする。別にしてくれとは一言も言っていない。ただ握らせたら、タガが外れたように自分から咥えてきた。 まぁ、だから水鳥夏実の方にアンテナ付けたんだけど。 「んっ、んぐ、んっ! んん……あはぁっ! ダメ、夏実ちゃんそこダメぇぇん!」 喘ぎを抑えきれず、中野比奈は咥えていた逸物を離してしまう。 それもそのはず、背後からコントローラーで操る水鳥夏実に愛撫されているのだ。 右手で自慢の巨乳を揉みながら時折水着越しに乳首を摘まみ、左手もまた水着越しに 濡れそぼった秘所をクニクニと弄っている。 「あっあっ、そこぉ……気持ちい、あん、すごぉい、大きい……」 「どう? コレ、挿れてほしいか?」 俺の逸物を両手で握りながら、中野比奈はコクコクと頷く。 もう少し抵抗や羞恥があると楽しいんだが、これはこれで話が早くて良い。俺がロッカーに手をついて立ちバックの体勢をするよう中野比奈に命令すると、すぐに言われた通りの姿勢をとり待ちきれないといった表情で振り返ってくる。 ファンが泣くぞ、この好きモノめ…… 俺は軽く呆れながらも、水鳥夏実に付けたアンテナを外し、神宮寺を操って神宮寺の石ころぼうしも外して姿を見せる。突然もう1人現れたことで2人とも驚いたが、これからが本番だ。 俺は『機械化機』を取り出し、さらに『とりよせバッグ』で適当なバイブを取り寄せる。 あとはこのバイブの機能を、神宮寺の逸物に機械化機で移せば準備完了だ。 中野比奈に水着をズラすよう命じ、神宮寺の身体を操って逸物の先端を濡れそぼった秘所にあてがい、ゆっくりと沈めていく。勿論ゴムは装着済みだ。 「あっ、あぁぁ……すごい、気持ちいい……! こっちも、大っきい……っ!」 「そりゃ良かったねぇ……さ、世界で初めての本物逸物バイブだぞ」 バイブの機能をオンにすると、神宮寺の逸物が猛烈な勢いで振動を始め、ウネウネと動いて中野比奈の膣内をかき回す。 「あはあぁぁあぁうっ!! なにコレ……すご、あぁ、ダメ、かき回されちゃうぅ!!」 「ああぁぁっ!、 そんなに、そんなに激しくしないでぇ! 壊れちゃうぅぅっ!!」 「あんっ、イイッ! 気持ちイイ! もっと突いて、比奈のオ○ンコ突いてぇっ!!」 人間では不可能な動き。それに加えて、人間の肉棒特有の熱さと、パンパンと打ち付けるピストン運動が合わさる。 熱くたぎった肉棒が無機質に膣内をかき回し、力強い抜き挿しで膣壁を擦られる。 体験したことのない刺激が生み出す快感に、中野比奈は我を忘れて喘ぎ続けた。 「おっけおっけ、問題なく使えそうだね……じゃ、俺も楽しもっかな」 すっかり放置プレイだった水鳥夏実を責めるため、俺は『無生物さいみんメガフォン』を取り出した。 「水着、お前はバター犬だ。バター犬は女の子をペロペロできる羨ましい役なんだぞ」 「え? え? バター……やっ、はぁん! やだっ、そんな、とこ、舐めちゃダメぇ!」 即効で催眠完了。このエロ水着め。 さて次に『つづきをヨロシク』のスプレーを右手に吹きかけ手袋を作る。初めて薫流を責めた時を思い出すなぁ。 手袋をはめた右手の中指をローションでたっぷり濡らし、水鳥夏実の後ろから水着の中に手を滑り込ませ、お尻の穴に中指を挿し込む。 「あううぅぅ!? そこ、違っ……あ、あ、舐めちゃ、ダメ、動かすのもダメぇ……!」 「どうだ、犬に舐められて感じちゃってる今の気分は?」 「いやぁ、聞かないで……ワンちゃん、止めてぇ……感じちゃう、からぁ……!」 スラッとしたモデル系の美人にこんなこと言われたらちょっと萌えちゃうね。つまり止めさす気は微塵も無い。 「じゃあお尻の方で気持ちよくなっちゃおうか」 「え、あっ、いやぁぁぁ! お尻ダメっ! 指動かしちゃダメぇぇ変になっちゃうよぉ!」 「そういえば、クリトリスは感じ過ぎちゃうんだっけ? じゃ舐めてもらわないとね」 「だめだめダメぇーーっ! 無理だから、ホントに変になっちゃうからぁっ!」 アナル責めを手袋に任せて俺は手を抜き取り、バター犬となった下の水着にクリトリスを責めさせる。上の水着は引き続き乳首だ。 つづきをヨロシク使ってるとアナル責めするとき汚れを気にしなくて良いなとか思いつつ、水着がクリトリス責めに移った事で空いたアソコに、水着をズラしてバックから逸物をあてがう。当然トレードマークのコンドームは装着済みだ。 ゆっくりと挿し込み、奥まで入った後も、逸物を子宮へとグリグリ押し込む。 「あ、あ、大っき、や、太すぎ、も、奥まで、きて……押し込んじゃ、あはあぁぁぅ!」 ピストンすることなく、水鳥夏実は最初の挿入でイッてしまった。挿入する前から4点責め状態だったとはいえ、随分とイキやすい身体だ。 この分だと、イキっ放しになるのも早いかもな……俺は少しずつ、しかし確実にピストンの動きを早めていく。 さらに水鳥夏実の両膝の裏に『透明ハンド』を1本ずつ通し、後ろからM字開脚にして抱え上げた。この体勢だと、水着があってもアソコに逸物が挿入されているのが丸見えだ。 「いやあぁぁっ! 恥ずかしい、あっ、イッちゃう、イッちゃうからぁ!」 「イッてる、もうイッてるから、あ、あれ? あぁ、ウソ、あぁぁっ!」 そろそろイキっ放しに入ると見て、俺もスパートをかけ一気に攻め続ける。 「あぁーーっ! なにこれぇ!? スゴイッ!! 止まんないよぉーーっ!!!」 「お、入った入った。あとはもう何されてもイッちゃうよ、ほら」 「あ、すごい、イク、またイク、あぁーーまた! またイク、イク、イクーーッ!」 イキっ放しになった後も、俺は中野比奈に見せつける様にして水鳥夏実を攻めた。 「イク……イクッ! またイク! まだ? まだイクの? あぁぁまたイッちゃうぅ!!」 「夏実、ちゃぁん……気持ちいの? あぁん……そっちのも大っきくて気持ちいいの?」 「あぁっ、気持ちいい! あっ、イクッ! イキすぎて死んじゃうーーっ!!」 神宮寺の肉棒バイブに喘ぎながら、トロけきった表情で中野比奈が視線を向けてくる。 ま、相方の方は、マジでそろそろ限界のようだしな。 「どうする、このままだと相方が壊れちゃうぞ。代わりにお前がやるなら助かるけど?」 「あん、やる、やりますぅ! お願い、夏実ちゃんの代わりに、比奈にしてぇ!」 まぁ、どう考えても自分がやってほしいだけだろうけど、そこまで言うならやってやろう。 俺は水鳥夏実から逸物を抜き、取消スプレーで手袋も消す。催眠も解除してやった。 神宮寺の肉棒バイブを抜き、前から中野比奈のアソコに俺の逸物をあてがう。トロトロに愛液で溢れかえったソコは俺の逸物もなんなく受け入れ、飲み込んでいく。 「ああぁぁぁーーっ!! すごいっ、さっきのより大っきい、こんなの初めてぇ!!」 意識がないとはいえ、神宮寺に悪い気がするなぁ…… 「じゃ、こんなのも初めてかな?」 「ぁあん、あはぁぁっ!? あぁ、お尻、お尻にも入って、あぁ、ウネウネしてるぅ!」 神宮寺の肉棒バイブを後ろに挿し込んでの2本挿し。つーか、アナル開発済みかよコイツ…… ならば手加減無用。バイブ機能もオンにして前後から激しいピストンで奥の奥まで突き上げてやる。バイブの振動が伝わってヤベェ。 「気持ちいいか、スケベ女? 今までのセックスと比べて何番目くらいよ」 「あぁんっ、気持ちいいっ! 一番、一番気持ちいっ! こんなの初めてぇぇーーっ!」 「じゃあ俺の奴隷になるって誓え。誓わないなら、やめるけど」 「いやあぁぁやめないでっ! 奴隷になるから! 比奈のオ○ンコもっと突いてぇ!」 このあと中野比奈もイキっ放しに入り、俺がイクまで攻め続けた……。 で、2人ともイキ過ぎてほとんど動けない状態になってしまい、『お医者さんカバン」で応急処置を施し、三度シナリオライターを使って接戦の末に決勝進出、接戦の末に惜しくも準優勝という結果に何とか落ち着かせた。 ………… 帰りの車内、俺が運転する隣で、神宮寺が苦悶の表情を浮かべている。 聞けば、自分の逸物が何故か腫れてて痛い事、その痛い理由が全く記憶に無いという。 そういや星野マドカの時も記憶なかったよな……その、スマンかった。 「で、痛いってさ、どんくらい痛いのよ?」 「亀頭に電動マッサージ機を当て続けたあとの感覚に似てるな……」 「したことあるのかよっ!?」 機械化機でバイブ移すのは……やめとこう。
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更新おくれました! 小説つづき完成したみたいで今日送られてきました! 続きではないので番外編にさせてもらいました。 登場人物少ないですが、面白いのでみてください 桃らんの改造版ももしよかったらみてね! 番外編 +... ?「…」 ーー…遅い…約束の時間は十五分前なのに… 私は新宿駅の改札口にいた。 季節は夏、船長こと私はオフ会に来ていた…が、約束した時間にあの子達がいない… もう耐えられない。 そう思った時、 「♪~♪♪~♪~…」 メールが来た、あの子達からだ。 メールを開いてみると、 [船長何してるの?池袋駅の改札口前で待ってるよー] とのことだった。 ……ん…?待てよ?‘池袋駅’………? 船「…!?」 思い出した…!新宿じゃなくて池袋だ! 私は「5分以内に行くね!」と送信して、急いで電車に駆け込んだ… 出会い厨…だと!? 休日のマックは、大変混雑している。 都会ならではの騒音とは比較的に、私達は沈黙していた。 船「本当にごめんね?(苦笑)」 これで本日三回目となる。 二人はその度々に ?「あ!良いよー大丈夫だよー!」 ?「気にせんで良いよー!」 と言うが、その後の沈黙が辛すぎる。 二人は手前のイスに座ってケータイをいじってる。 右の小柄で方言を話す子は桃歌らんだろう。左の身長の高い美人さんは、みくり…かな? その時、 僕は男友達が少ない 桃「よっしゃ!返信来よったww」 み「どうだった?」 桃「来れるって(笑)‘行かない’って言うの期待してたのにww」 み「嫌々会うんだwww」 …ん? どうやら二人は怒ってるのではなく、誰かにメールを送ってたみたいだ。 桃「みく姉はどうやった?」 み「今から新幹線だって、遅いしwww」 新幹線、来る、の発言で私は気付く。 船「え?他に誰か来るの?」 コミュ障の私にとって、あまり人数は増えてほしくなかったが、内心は実際に会うのが楽しみだった。 …しかし、この時までは。 桃「うん!来るよ!Sグレイとタイガ!ww」 船「え」 顔面蒼白になる。 あの二人だけは絶対に会いたくない。 船「え…やだ…あの人達嫌い…」 私は思わず口に出してしまった。 すると、 桃「…ーっwww」 み「せんちょwww正直すぎるwww」 二人は咎めるどころか、笑い始めた。 まぁ、確かにここで咎められたら2コンボでヒットポイントを削られるだろう。 そういう意味ではありがたい。 そしてとうとうその時が来た。 (…♪♪~♪♪~…) 桃「あ、Sグレイからだ!」 み「何てー?」 桃「今、改札口前。だって」 …! いよいよ手汗が止まらなくなる。 私達は会計をすまして、改札口へと向かった。 ーー…どうしよう。 まさに、カビの極み 改札口前にはSグレイこと、奴がいた。 あの気色悪い顔は片時も忘れなかった。 いや、頭に風呂に生えたカビのようにこびりついて、忘れられなかった… そう…奴はカビだ… 船「久しぶりー!カビくん!」 …しまった! 頭の中でカビを連呼していたら、口に出してしまった! 桃歌らんとみくりは爆笑してるが、Sグレイは明らかにキョドってる。 二次元だけど愛さえあれば関係ないよね! 私達は池袋の街を練り歩くことにした。 船「アニメイト本店、新Ver…Ktkr!」 私はテンションがおかしかっただろう。 だがしょうがない。 ネカフェもねぇ、漫喫ねぇ、アニメイト、とらのあなもない田舎に住んでる私にとっては、とても新鮮だった。 船「うぉっ…カノキドとかキュン死だろ///」 アンソロジーコーナーで大好きなCPを見て、即購入する。 S「にしても…みくりと桃歌は予想通り可愛いけど、船長さ…」 Sグレイが、そう言いかけた時、 船「あんたみたいなデリカシーの無いカビ男がいるから、うちは二次元に走ったんだよねー」 み「その通りだよSたん、外見で人を判断するとか最低だよ」 桃「Sグレイwww叩かれとるww」 と、女子からの総攻撃を食らった。 ついにやって来た! だいぶ日も傾き、私達は最後の目的地へと向かっていた。 その時、 (…♪♪~♪~♪…) みくりのケータイが鳴った。 みくりがケータイを開き確認すると… み「あ、タイガ着いたってー」 桃「遅ッ!ww」 船「…」 再び、昼にも襲ったあの感覚がよみがえる。 私達は、タイガのいた場所が近いということもあり、すぐに合流できた。 最後の目的地、カラオケに向かう途中 虎「Sたん、よく船長と行動できたねww」 だいぶヒットポイントを削られたが、ここで留めの一撃が来る。 虎「あれ?ww船長怒ってる?ww」 船「うん。」 私は無表情で答えた。 その後、 船「頭は良いけど、顔と性格の良さは比例しないんだね(笑)」 と思い切り毒を吐いてやった。 みくりと桃歌らんは爆笑しているが、Sグレイとタイガは苦笑い。 そして、カラオケに着いた。
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その日はそう、少しいい事があってなんとなく遅い時間まで出歩いていたの。 今考えれば、きっと全てがあの時あの場所にいるための伏線だったに違いないわ。 ~~~ 裕樹君捕獲大作戦 番外編 「寒い晴れた夜は声と電波がよく通る」 ~~~ とある月の綺麗な夜、白銀に照らされた道に女が一人。 口元を綻ばせながら歩いている。 どうでもいいが、この書き出しには犯罪の匂いがする、と書きながら思った。 まぁ、本当にどうでもいいので本文に。 歩いているのは、なんだかとっても嬉しそうなグラジオラスである。 嬉しそうなのも当然、今日の彼女はとっても幸運だった。 お昼ご飯では、いつも混んでいる食堂に並ぶこともなく入れた上に、 普段ならとっくになくなっているはずの“特製定食ユミスペシャル”(1日10食限定)の最後の1食にありつけた。 溜まっていた仕事も一気に片付いて、定時で終業。 道を歩けば500わんわん拾い、試食した新作よんた饅は絶品だった。 そんなこんなで何となく帰る気分にならず、適当に店を覗いたりしていたら、いつの間にか人っ子一人いなくなっていた。 そこで今日の出来事を振り返りながら、ようやく帰る事にしたのだった。 つと目を上げた先には、白衣の女性が一人。 月明かりに照らされた眼鏡がその瞳を隠していたが、周囲に漂う悲しみまでは隠し切れてはいなかった。 普段なら、きっと何かあったのだろうと通り過ぎていただろう。 ただ、今日の彼女には一人で悲しんでいる人を放っておくような選択肢はなかった。 「綺麗な月ですね。」 いろいろ考えた結果、とりあえず無難な話題で話しかけるべきだと思ったのである。 別にグラジオラスのボキャブラリに問題があるわけではない。 彼女はピクリとも動かない。 きっと、頭が何かでいっぱいなんだと思う、グラジオラス。 私だって急に話しかけられたのに気付かなくて、時々真砂姉ぇに怒られるもの。 「今日の月はいつもより綺麗ですね。」 さっきのが実は聴こえていたら恥ずかしいので、少し言葉に変化を加える。 ――― ええ。 静かな声だった。 というより、心の声のようだった。 彼女は月を見上げたまま、語り始めた。 とても好きになった人がいる事。 彼には彼自身も気付いていない想い人がいるようである事。 彼にひどい事をしようとした人を止められなかった事。 なによりも、自分が彼の側にいるだけで彼に禍いが降りかかってしまう事。 グラジオラスはただ聞いていた。 こういう時はとりあえず聞いてあげるのが親切だと思った。 一度も口を開くことなく語り終えた彼女に、何か言葉をかけてあげたくなった。 しばらく考えて、口を出たのは一言だった。 「希望っていうものは“だからどうした”と言い続けることから始まる、そうです。」 それは、グラジオラスではない誰かの言の葉だったのかもしれなかった。 彼女は一瞬だけ、驚いた表情でグラジオラスを見た後、その美しい微笑みを見せた。 グラジオラスが瞬きをした後には、月光満ちた道だけがあった。 もう一つ名残があるとすれば、グラジオラスのえもいわれぬ充足感だけである。 ちなみに、彼女が昼前に出会った裕樹についていた女神だと気付いたのは、翌日になってのことである。 ところ変わって、とある屋根の上。 月と雪に照らされた男がひとり、明るい月を眺めている。 風のないこの夜に、白くはためくマントに包まれて。 「あー、そんな恐い顔せんでも。せっかくの美人さんやねんから。」 音もなく現れた彼女に、振り向きもせずに言い放つ。 足跡を残さずに近付く彼女に呼応するかのように、マントがはためき光を散らす。 「と言っても、恋のお相手やないから、あんまり関係ないか…。」 軽いため息とともに、昼間、仕事ついでにトラップを仕掛けた相手を思い出す。 (まったく、裕樹はんも面倒持ち込むんやから…) おもいっきり自分のことを棚どころか、空の彼方に追いやった言い草である。 「あ、そうそう。ふーこさん…やったな、手紙預かってるんや。…うちの師匠から。」 いつの間にか取り出してあった紙切れを、肩越しに差し出す。 吹きもしない風に導かれるように宙を舞い、ふーこと呼ばれた彼女の手におさまる。 月明かりを頼りに読み進め、読み終わった途端に手紙は風にさらわれた。 「にしても、あの師匠もたいがい悪人やねんから。弟子にくらいちゃんと会って話したらええもんを…。」 すでに彼女が立ち去っていると知っているため、ただの独り言である。 その手には雷羅来に宛てられたもう一通の手紙が握られている。 『 親愛なるバカ弟子へ あまり女性を哀しませるな。 追伸:お前のまんとには魔法をかけてある。その効果で今夜くらいは彼女と話せるはずだ。』 「……とりあえず帰って寝よか。明日は裕樹はんに埋め合わせしたらんとあかんしなぁ。」 (寝たらこの首も治るやろか…?) 来は今朝寝違えたらしい。 余談ではあるが、このあと足を滑らせ、屋根から落ちることになる。 (文責・雷羅 来)
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その日はそう、少しいい事があってなんとなく遅い時間まで出歩いていたの。 今考えれば、きっと全てがあの時あの場所にいるための伏線だったに違いないわ。 ~~~ 裕樹君捕獲大作戦 番外編 「寒い晴れた夜は声と電波がよく通る」 ~~~ とある月の綺麗な夜、白銀に照らされた道に女が一人。 口元を綻ばせながら歩いている。 どうでもいいが、この書き出しには犯罪の匂いがする、と書きながら思った。 まぁ、本当にどうでもいいので本文に。 歩いているのは、なんだかとっても嬉しそうなグラジオラスである。 嬉しそうなのも当然、今日の彼女はとっても幸運だった。 お昼ご飯では、いつも混んでいる食堂に並ぶこともなく入れた上に、 普段ならとっくになくなっているはずの“特製定食ユミスペシャル”(1日10食限定)の最後の1食にありつけた。 溜まっていた仕事も一気に片付いて、定時で終業。 道を歩けば500わんわん拾い、試食した新作よんた饅は絶品だった。 そんなこんなで何となく帰る気分にならず、適当に店を覗いたりしていたら、いつの間にか人っ子一人いなくなっていた。 そこで今日の出来事を振り返りながら、ようやく帰る事にしたのだった。 つと目を上げた先には、白衣の女性が一人。 月明かりに照らされた眼鏡がその瞳を隠していたが、周囲に漂う悲しみまでは隠し切れてはいなかった。 普段なら、きっと何かあったのだろうと通り過ぎていただろう。 ただ、今日の彼女には一人で悲しんでいる人を放っておくような選択肢はなかった。 「綺麗な月ですね。」 いろいろ考えた結果、とりあえず無難な話題で話しかけるべきだと思ったのである。 別にグラジオラスのボキャブラリに問題があるわけではない。 彼女はピクリとも動かない。 きっと、頭が何かでいっぱいなんだと思う、グラジオラス。 私だって急に話しかけられたのに気付かなくて、時々真砂姉ぇに怒られるもの。 「今日の月はいつもより綺麗ですね。」 さっきのが実は聴こえていたら恥ずかしいので、少し言葉に変化を加える。 ――― ええ。 静かな声だった。 というより、心の声のようだった。 彼女は月を見上げたまま、語り始めた。 とても好きになった人がいる事。 彼には彼自身も気付いていない想い人がいるようである事。 彼にひどい事をしようとした人を止められなかった事。 なによりも、自分が彼の側にいるだけで彼に禍いが降りかかってしまう事。 グラジオラスはただ聞いていた。 こういう時はとりあえず聞いてあげるのが親切だと思った。 一度も口を開くことなく語り終えた彼女に、何か言葉をかけてあげたくなった。 しばらく考えて、口を出たのは一言だった。 「希望っていうものは“だからどうした”と言い続けることから始まる、そうです。」 それは、グラジオラスではない誰かの言の葉だったのかもしれなかった。 彼女は一瞬だけ、驚いた表情でグラジオラスを見た後、その美しい微笑みを見せた。 グラジオラスが瞬きをした後には、月光満ちた道だけがあった。 もう一つ名残があるとすれば、グラジオラスのえもいわれぬ充足感だけである。 ちなみに、彼女が昼前に出会った裕樹についていた女神だと気付いたのは、翌日になってのことである。 ところ変わって、とある屋根の上。 月と雪に照らされた男がひとり、明るい月を眺めている。 風のないこの夜に、白くはためくマントに包まれて。 「あー、そんな恐い顔せんでも。せっかくの美人さんやねんから。」 音もなく現れた彼女に、振り向きもせずに言い放つ。 足跡を残さずに近付く彼女に呼応するかのように、マントがはためき光を散らす。 「と言っても、恋のお相手やないから、あんまり関係ないか…。」 軽いため息とともに、昼間、仕事ついでにトラップを仕掛けた相手を思い出す。 (まったく、裕樹はんも面倒持ち込むんやから…) おもいっきり自分のことを棚どころか、空の彼方に追いやった言い草である。 「あ、そうそう。ふーこさん…やったな、手紙預かってるんや。…うちの師匠から。」 いつの間にか取り出してあった紙切れを、肩越しに差し出す。 吹きもしない風に導かれるように宙を舞い、ふーこと呼ばれた彼女の手におさまる。 月明かりを頼りに読み進め、読み終わった途端に手紙は風にさらわれた。 「にしても、あの師匠もたいがい悪人やねんから。弟子にくらいちゃんと会って話したらええもんを…。」 すでに彼女が立ち去っていると知っているため、ただの独り言である。 その手には雷羅来に宛てられたもう一通の手紙が握られている。 『 親愛なるバカ弟子へ あまり女性を哀しませるな。 追伸:お前のまんとには魔法をかけてある。その効果で今夜くらいは彼女と話せるはずだ。』 「……とりあえず帰って寝よか。明日は裕樹はんに埋め合わせしたらんとあかんしなぁ。」 (寝たらこの首も治るやろか…?) 来は今朝寝違えたらしい。 余談ではあるが、このあと足を滑らせ、屋根から落ちることになる。 (文:雷羅 来)