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子どもの権利委員会・一般的意見20号:思春期における子どもの権利の実施(後編) 一般的意見一覧 (思春期の子どもの権利 前編より続く) IX.子どもに対する暴力 あらゆる形態の暴力からの保護 49.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および有害慣行についての一般的意見18号(2014年)に掲げられた、あらゆる形態の暴力を終わらせること(あらゆる場面における体罰を法律で禁止することを含む)およびあらゆる有害慣行を変容させかつ終わらせることを目的とした包括的な立法上、行政上、社会上および教育上の措置に関する勧告を参照するよう、求める。締約国は、防止およびリハビリテーションならびに被害を受けた思春期の子どもの社会的再統合に関する制度的プログラムの規模拡大のために、いっそう多くの機会を設けなければならない。委員会は、防止戦略および暴力被害者に対する保護対応の策定に思春期の子どもたちの関与を得る必要があることを強調する。 X.家庭環境および代替的養護 親および養育者への支援 50.子どもに安全、情緒的安定、励ましおよび保護を提供する親および養育者の役割は、思春期全体を通じて依然として重要である。委員会は、条約第18条第2項および第3項に掲げられているように親および養育者に適切な援助を与え、かつ、第27条第2項と一致するやり方で、最適な発達のために必要な支援および生活条件の提供に関して親を援助する締約国の義務が、思春期の子どもの親についても平等に適用されることを強調する。このような支援においては、思春期の子どもの権利および発達しつつある能力、ならびに、思春期の子どもが自分自身の生活に対して行なう貢献度の高まりが尊重されるべきである。各国には、伝統的価値観の名のもとで、暴力を黙認しまたは容認し、家族環境における不平等な権力関係を強化し、かつ、そのことによって思春期の子どもから基本的権利の行使の機会を奪うことがないようにすることが求められる [24]。 [24] A/HRC/32/32 参照。 51.委員会は、思春期の子どもたちが暮らしている、デジタル時代とグローバル化を特徴とする環境と、思春期の子どもたちの親および養育者が成長した環境との間で分断が大きくなりつつあることの重要性に対し、締約国の注意を喚起する。思春期の子どもたちは、世代間の理解を阻害しうるグローバルな商業世界(この世界は、親またはコミュニティの価値観に媒介されないままの場合もあれば、これらの価値観による統制を受けている場合もある)にさらされており、かつその影響を不可避的に受けている。このような状況の変化は、思春期の子どもと効果的なコミュニケーションを図り、かつ子どもの生活の現在の実情を考慮に入れたやり方で指示および保護を提供する親および養育者の能力にとって、課題を突きつけるものである。委員会は、各国が、世代間の経験の相違への対処に役立てるために必要な指針、援助、研修および支援はどのようなものかについての調査を、思春期の子どもたちならびにその親および養育者とともに実施するよう勧告する。 代替的養護を受けている思春期の子ども 52.大規模な長期入所施設で生活している思春期の子どもが十分な成果を達成できていないこと、および、程度ははるかに弱まるとはいえ他の形態の代替的養護(里親養護および小規模集団養護など)を受けている思春期の場合も同様であることについては、相当の証拠が存在する。このような思春期の子どもは、成績の低下、社会福祉への依存、ならびに、住む場所の喪失、収監、望まない妊娠、早期の出産、有害物質の誤用、自己危害および自殺のリスクの高まりを経験している。代替的養護を受けている思春期の子どもは16~18歳になった時点で離脱を求められるのが通例であって、支援システムまたは保護を欠いており、かつ自分自身を守るためのスキルおよび能力を獲得する機会も与えられてこなかったことから、性的虐待および性的搾取、人身取引および暴力の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれる。障害のある思春期の子どもは、コミュニティで生活する機会を否定されて成人施設に移送されることが多く、そこで引き続き権利を侵害されるおそれがますます高まる。 53.各国は、代替的養護を受けている思春期の子どもの支援に対する強い決意を示し、かつそのような支援への投資を増やすべきである。里親養護および小規模ホームを優先する方針を補完するものとして、差別と闘い、思春期の子どもが置かれている個別の状況が定期的に検討されることを確保し、これらの子どもの教育を支援し、自己に影響を及ぼす手続において真の発言権を認め、かつ、複数回の移動を回避するために必要な措置をとる必要がある。各国は、施設措置が最後の手段としてのみ用いられることを確保するとともに、秘密が保持される苦情申立て機構および司法へのアクセス等を通じ、施設で生活しているすべての子どもの適切な保護を確保するよう、促される。各国はまた、代替的養護を受けている思春期の子どもの自立を支援し、かつそのライフチャンスを高めるための措置、および、代替的養護を離脱するのに十分な年齢に達するなかでこれらの子どもが直面する特別な脆弱性および不安定性に対処するための措置もとるべきである。 54.代替的養護を離脱する思春期の子どもには、移行の準備、就労、住居および心理的支援へのアクセス、家族との関係修復への参加(これが子どもの最善の利益に合致する場合)ならびにアフターケアサービスへのアクセスに関わる、子どもの代替的養護に関する指針 [25] に一致する方法で提供される支援が必要である。 [25] 国連総会決議64/142付属文書。子どもの権利委員会の一般的意見9号も参照。 思春期の子どもが世帯主である家庭 55.相当数の思春期の子どもが、自らが親であるために、または親が死亡しもしくは失踪しまたは存在しないために、家族の主たる養育者となっている。条約第24条および第27条が求めるところにしたがい、思春期の子どもである親および養育者に対しては、子どもの健康、栄養および母乳育児に関する基礎的知識が提供されなければならず、また自らが責任を負っている子どもへの責任を果たせるよう援助するための適切な支援、ならびに、必要なときは栄養、衣服および住居に関する物質的援助が提供されなければならない。思春期の子どもである養育者が教育、遊びおよび参加に対する権利を享受するためには、追加的な支援が必要となる。とくに、各国は、ライフサイクルの重要な段階における社会的保護のための支援策を導入し、かつ、思春期の子どもである養育者に特有の要求に対応するべきである。 XI.基礎保健および福祉 保健ケア 56.保健サービスが思春期の子どもに特有の健康上のニーズに配慮して整備されていることはまれであり、この問題は、年齢、性別および障害ごとに細分化された人口動態上および疫学上のデータおよび統計が存在しないためにいっそう悪化させられている。思春期の子どもが援助を求めても、法律上および金銭上の障壁、差別、秘密保持および尊重の欠如、暴力および虐待、スティグマならびに保健ケア関係者による審判的態度を経験することが多い。 57.思春期の子どもの健康に関わる状況は、主として、個人、同世代、家族、学校、コミュニティおよび社会の各レベルに存在する、行動および活動によって媒介された社会的および経済的決定因子ならびに構造的不平等の結果である。したがって、締約国は、思春期の子どもたちと連携し、今後の包括的な保健政策、プログラムおよび公衆衛生戦略の基盤とするため、思春期の子どもの健康問題の性質および程度ならびに思春期の子どもがサービスへのアクセスにあたって直面している障壁についての、多面的な関係者による包括的検討を実施することが求められる。 58.自殺、自己危害、摂食障害および抑うつのような精神保健上の問題および心理社会的問題は、思春期の子ども、とくに脆弱な状況に置かれた集団の子どもの健康障害、疾病および死亡の主たる原因である [26]。これらの問題は、遺伝的、生物学的、人格的および環境的原因の複雑な相互作用から生じ、かつ、たとえば紛争、避難、差別、いじめおよび社会的排除の経験ならびに身体イメージに関わる圧力および「完璧」志向の文化によっていっそう悪化させられている。レジリエンスおよび健康的発達を促進し、かつ精神的健康障害からの保護につながることがわかっている要因としては、重要な大人との強い関係およびこのような大人からの支援、肯定的な役割モデル、適切な生活水準、良質な中等教育へのアクセス、暴力および差別からの自由、影響力の行使および意思決定の機会、精神保健に関する知識、問題解決および対処のスキル、ならびに、安全かつ健康的な地域環境などがある。委員会は、各国が、過剰な医療化および施設措置ではなく公衆衛生および心理社会的支援を基盤とするアプローチをとるべきであることを強調する。親、同世代の子ども、より幅広い家族および学校の関与を得た統合的な思春期精神保健ケア制度、ならびに、訓練を受けたスタッフによる支援および援助の提供を通じた、包括的な部門横断型の対応が必要である [27]。 [26] 到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)、パラ38参照。 [27] A/HRC/32/32 参照。 59.委員会は、各国に対し、思春期の子どもを対象として、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる、ジェンダーおよびセクシュアリティに配慮した包括的な政策を採用するよう促すとともに、思春期の子どもがこれらの情報、物資およびサービスに平等にアクセスできないことは差別にあたることを強調する [28]。このようなサービスにアクセスできないことは、思春期の女子が、妊娠および出産の際に死亡しまたは重大なもしくは生涯にわたる外傷を負う危険性がもっとも高い集団になることを助長する。思春期のすべての子どもが、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる、無償の、思春期の子どもへの反応性が高くかつ差別のない、オンラインでも対面でも利用可能なサービス、情報および教育にアクセスできるべきである。これには、家族計画、避妊(緊急避妊を含む)、性感染症の予防、ケアおよび治療、カウンセリング、受胎前のケア、母子保健サービスおよび生理衛生に関するものが含まれる。 [28] 経済的、社会的および文化的権利に関する差別の禁止についての社会権規約委員会の一般的意見20号(2009年)、パラ29参照。 60.セクシュアル/リプロダクティブヘルスならびにこれらに関わる権利についての物資、情報およびカウンセリングに関しては、第三者による同意または許可の要件などのいかなる障壁も設けられるべきではない。加えて、たとえば思春期の女子、障害のある女子ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子どもがこのようなサービスにアクセスする際に経験する、スティグマおよび恐怖の障壁を克服するために特段の努力が必要である。委員会は、締約国に対し、女子が安全な中絶および中絶後のサービスにアクセスできることを確保するために中絶を犯罪化し、思春期の妊婦の最善の利益を保障する目的で法律を見直し、かつ、中絶関連の決定において思春期の妊婦の意見が常に聴かれかつ尊重されることを確保するよう、促す。 61.科学的根拠および人権基準を基盤とし、かつ思春期の子どもたちとともに開発された、年齢にふさわしい、包括的かつインクルーシブなセクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、必修学校カリキュラムの一環に位置づけられるべきであり、かつ、学校に行っていない思春期の子どもにも提供されるべきである。ジェンダー平等、性の多様性、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる権利、責任のある親としてのあり方および性的活動ならびに暴力の防止に対して、また若年妊娠および性感染症の予防に対して注意を向けることが求められる。情報は、思春期のすべての子ども、とくに障害のある思春期の子どもにとってのアクセシビリティを確保するため、代替的形式で利用可能とされるべきである。 HIV/AIDS 62.思春期の子どもは、AIDSによる死亡数が増加している唯一の年齢層である [29]。思春期の子どもは、抗レトロウィルス治療にアクセスし、かつ治療を受け続けるうえで課題に直面する場合がある。HIV関連の治療にアクセスするために保護者の同意を得なければならないこと、情報を開示されるおそれがあることおよびスティグマを付与されることは障壁の一部である。思春期の女子は人口比に照らして不均衡なほどの影響を受けており、新たな感染者数の3分の2を占めている。思春期の子どものうち、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーである子ども、金銭、現物または好意と引き換えにセックスをする子どもおよび薬物静注を行なう子どもも、HIVに感染するリスクがいっそう高い。 [29] http //apps.who.int/iris/bitstream/10665/112750/1/WHO_FWC_MCA_14.05_eng.pdf?ua=1, p.3 参照。 63.委員会は、各国に対し、思春期の子どもの多様な現実を認めて、これらの子どもが、訓練を受けた要員(これらの者はプライバシーおよび差別の禁止に対する思春期の子どもの権利を全面的に尊重するものとする)によって提供される、秘密が守られるHIV検査およびカウンセリングサービスならびに科学的根拠に基づくHIV予防・治療プログラムにアクセスできることを確保するよう、奨励する。保健サービスには、HIV関連の情報、検査および診断、避妊およびコンドームの使用に関する情報、ケアおよび治療(HIV/AIDSのケアおよび治療のための抗レトロウィルス薬その他の医薬品および関連技術を含む)、適切な栄養に関する助言、霊的および心理社会的支援、ならびに、家族、コミュニティおよび自宅を基盤とするケアが含まれるべきである。HIVに特化した立法のうち、意図せずにHIVを感染させたことおよび自分がHIV感染者である旨を明らかにしなかったことを犯罪とする法律の見直しを検討することが求められる。 思春期の子どもによる薬物の使用 64.思春期の子どもは、薬物の使用へと引きこまれる可能性および薬物関連の危害を受けるリスクが大人よりも高く、かつ、思春期に開始された薬物の使用は依存へと至ることがより多い。薬物関連の危害を受けるリスクがもっとも高いことがわかっている思春期の子どもは、路上の状況にある子ども、学校から排除された子ども、トラウマ、家族の崩壊または虐待の経験がある子どもおよび薬物依存に対処中の家族と生活している子どもである。締約国には、麻薬および向精神薬の不法な使用から思春期の子どもを保護する義務がある。締約国は、このような有害物質ならびにタバコ、アルコールおよび溶剤の使用に関わる思春期の子どもの健康権を確保するとともに、予防、ハームリダクション(危害軽減)および治療のためのサービスを、差別なく、かつ十分な予算を配分して整備するべきである。思春期の子どもとの関連では、懲罰的または抑圧的な薬物統制政策に代わる措置をとることが歓迎される [30]。思春期の子どもに対しては、有害物質の使用から生ずる害の防止および最小化を目的とする、科学的根拠に基づく正確かつ客観的な情報も提供されるべきである。 [30] A/HRC/32/32 参照。 受傷および安全な環境 65.不慮の事故による受傷または暴力による受傷は、思春期の子どもの死亡および障害の主たる原因のひとつである。不慮の事故による受傷のほとんどは、路上での交通事故、溺水、火災、転落および毒物摂取によって生じている。締約国は、リスク低減のため、部門横断型の戦略を策定するべきである。このような戦略には、保護装置の使用を義務づける立法、飲酒運転および免許発行に関する政策、教育、スキル開発および行動変容に関するプログラム、環境への適応、ならびに、受傷した者のケアおよびリハビリテーションのためのサービスの提供を含めることが求められる。 十分な生活水準 66.貧困の影響は思春期において深甚な意味合いを有しており、極度のストレスおよび不安定感ならびに社会的および政治的排除につながることもある。経済的苦境に対処するために思春期の子どもが余儀なくされるまたは自らとる戦略には、学校を中退すること、児童婚または強制婚の対象となること、性的搾取または人身取引の対象となること、危険なもしくは搾取的な労働または教育の妨げとなる労働に従事すること、ギャングの構成員になること、民兵に加入することおよび移住することなどがある。 67.各国は、身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達のためにふさわしい生活水準に対するすべての子どもの権利を想起するよう求められるとともに、思春期の子どもおよびその家族が基礎所得の安定を保障され、経済的衝撃および長期の経済的危機から保護され、かつ社会サービスにアクセスできるようにする、社会的保護の最低基準を導入するよう促される。 XII.教育、余暇および文化的活動 教育 68.普遍的、良質かつインクルーシブな教育および訓練に対する権利を保障することは、思春期の子どもの直近の発達および長期的発達を確保するために各国が行ないうる、単独の投資としてはもっとも重要な政策投資であり、とくに中等教育の肯定的影響を明らかにする証拠はますます増えつつある [31]。各国は、すべての者が広く利用できる中等教育を緊急に導入するとともに、高等教育を、すべての適切な方法により、能力に基づいてすべての者がアクセスできるようにするよう、奨励される。 [31] www.unicef.org/adolescence/files/SOWC_2011_Main_Report_EN_02092011.pdf 参照。 69.委員会は、女子および男子の平等な就学を達成し、かつ初等教育後も女子が教育を受け続けるようにするうえで多くの国が直面している課題を深く懸念する。女子の中等教育への投資は、条約第2条、第6条および第28条を遵守するために必要な公約であり、児童婚および強制婚、性的搾取ならびに若年妊娠から女子を保護するのにも役立つとともに、女子およびその子どもの将来の経済的可能性を高めることに相当に貢献する。女子にとっての障壁となっている法的、政治的、文化的、経済的および社会的障壁を克服する目的で、肯定的なジェンダー関係および社会的規範を促進し、性暴力およびジェンダーを理由とする暴力(学校におけるものを含む)に対応し、かつ、肯定的な役割モデル、家族支援および女性の経済的エンパワーメントを促進する戦略への投資も行なわれるべきである。さらに、各国は、就学しない男子および在学し続けない男子の人数が増えていることを認識し、その原因を特定し、かつ、男子の継続的教育参加を支えるための適切な措置をとるよう求められる。 70.委員会は、周縁下された状況に置かれている思春期の子どもであって中等教育進学の機会を与えられない子ども(貧困下で暮らしている子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである子ども、マイノリティに属する子ども、心理社会的障害、感覚障害または身体障害のある子ども、移住している子ども、武力紛争または自然災害の状況下にある子どもならびに路上の状況にある子どもまたは働いている子どもなど)の人数が多いことに、懸念とともに留意する。集団化された集団が教育へのアクセスについて直面している差別に終止符を打つための積極的措置が必要である。このような差別を終わらせるための手段には、現金移転プログラムを設けること、マイノリティおよび先住民族の文化ならびにすべての宗教コミュニティの子どもを尊重すること、障害のある子どものインクルーシブ教育を促進すること、教育制度におけるいじめおよび差別的態度と闘うこと、ならびに、難民キャンプで教育を提供することなどが含まれる。 71.識字能力を身につけないまままたは資格を取得しないままの早期退学の水準の高さに鑑み、学校への継続的参加を妨げる障壁について思春期の子どもたちと協議するための取り組みが行なわれるべきである。委員会の見るところ、助長要因には次のようなものがある――授業料および関連費用が必要であること、家庭の貧困であることおよび十分な社会的保護制度(十分な健康保険を含む)が存在しないこと、女子のための十分かつ安全な衛生設備が設けられていないこと、妊娠した女子生徒および母親となった女子が排除されること、残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける処罰が根強く使用されてること、学校におけるセクシュアルハラスメントを解消するための効果的措置がとられていないこと、女子が性的に搾取されていること、環境が女子の包摂および安全に資するものになっていないこと、教授法が不適切であること、カリキュラムが関連性を有しておらずまたは時代遅れになっていること、生徒を自分自身の学習に関与させられていないこと、ならびに、いじめが行なわれていることである。加えて、学校には、思春期の子どもが仕事および(または)家族のケアの責任と教育を両立できるようにするために必要な柔軟性が欠けていることが多く、思春期の子どもは就学関連費用を負担し続けることができなくなる場合がある。各国は、条約第28条第1項(e)およびSDG〔持続可能な開発目標〕4にしたがい、これらのすべての要因への対処、ならびに、就学および通学の状況の向上、早期退学の減少および退学した者への教育修了の機会の提供を目的とした、包括的かつ積極的な措置を導入するべきである。 72.委員会は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に対して注意を喚起する。委員会はそこで、教育は子ども中心の、子どもにやさしい、かつ子どものエンパワーメントにつながるようなものでなければならないと主張するとともに、より協働的なかつ参加型の教授法の重要性を強調している [32]。中等教育のカリキュラムは、思春期の子どもが主体的参加の力を身につけられるようにし、人権および基本的自由の尊重を発展させ、市民的関与を促進し、かつ思春期の子どもが自由な社会で責任ある生活を送れるようにすることを目的として立案されるべきである。思春期の子どもの可能性を最大限に発達させ、かつこれらの子どもが退学しないようにするため、思春期の子どもの学習能力、同世代の仲間とともに活動する動機およびエンパワーメントを活用し、経験学習に焦点を当て、かつ試験を限定的に用いるような学習環境を確保する目的で、学習環境のあり方の検討を行なうことが求められる。 [32] 教育の目的に関する子どもの権利委員会の一般的意見1号(2001年)、パラ2参照。 教育から訓練および/またはディーセントワークへの移行 73.思春期の子どもの相当数が教育もしくは訓練を受けておらず、または就労していないことから、成人期への移行にかけて不均衡なほどの水準の失業、不完全就労または搾取につながっている。委員会は、各国に対し、就学していない思春期の子どもがディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に移行することを促進する目的でこれらの子どもをその年齢にふさわしいやり方で支援する(教育法と労働法の整合性を確保することも含む)とともに、これらの子どもの将来の就労を促進するための政策を採択するよう、促す [33]。条約第28条第1項(d)にしたがい、各国は、思春期の子どもが教育上および職業上の情報および指導を利用しかつこれらにアクセスできるようにするべきである。 [33] 持続可能な開発目標のターゲット8.6は「若者」(15~24歳の思春期の子ども)に関連したものである。国連総会決議70/1参照。 74.教育および訓練は、公式なものであれ非公式なものであれ、現代労働市場で必要とされる21世紀型スキル [34] を目的として設計されなければならない。これには、ソフトスキルおよび転換可能なスキルをカリキュラムに統合すること、経験学習または実践学習の機会を拡大すること、労働市場の需要に基づいて職業訓練を発展させること、起業、インターンシップおよび実習に関する官民パートナーシップを確立すること、ならびに、学業上および職業の機会に関する指導を提供することが含まれる。各国はまた、労働組合および職能団体への加盟に関する権利を含む就労者の権利についての情報も普及するべきである。 [34] 「21世紀型スキル」とは、今日の世界、とくに大学プログラムならびに現代的職業および職場で成功するために決定的に重要であると――教育者、学校改革論者、大学教授、雇用主等によって――考えられている、一連の幅広い知識、スキル、労働習慣および性格特性をいう。 余暇、レクリエーションおよび芸術 75.休息および余暇に対する思春期の子どもの権利、ならびに、思春期の子どもが、オンラインとオフラインの双方で、遊び、レクリエーション活動および芸術活動に自由に従事しかつ参加する権利は、思春期の子どものアイデンティティの模索にとって根本的に重要であり、思春期の子どもが、自己の文化を模索し、新たな芸術形態を創り出し、人間関係を形成し、かつ人間として成長していくことを可能とする。余暇、レクリエーションおよび芸術は、人間の尊厳、最適な発達、表現の自由、参加およびプライバシーに対する権利にとって根本的に重要である、自分はかけがえのない存在であるという感覚を思春期の子どもに与えるものである。委員会は、これらの権利が、とくに女子について、思春期において広く軽視されていることに遺憾の意とともに留意する。公共の空間で思春期の子どもたちに恐怖および敵意が向けられており、かつ思春期の子どもにやさしい都市計画、教育施設および余暇施設が存在しないことは、レクリエーション活動およびスポーツに従事する自由の妨げとなりうる。委員会は、条約第31条に掲げられた諸権利、および、休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)にまとめられている委員会の勧告に対し、各国の注意を促すものである。 XIII.特別な保護措置 移住 76.生活水準の向上、教育または家族再統合を求め、出身国の内外に移住する思春期の子どもの人数が増えつつある。多くの子どもにとって、移住は重要な社会的および経済的な機会を提供してくれるものである。しかし、身体的危害、心理的トラウマ、周縁化、差別、排外主義、性的搾取および経済的搾取、ならびに、国境を越える場合には入国管理当局による摘発および収容を含むリスクを突きつけるものでもある [35]。移住者である思春期の子どもの多くは、教育、住居、保健、レクリエーション、参加、保護および社会保障へのアクセスを否定されている。サービスに対する権利が法律および政策で保護されている場合でさえ、思春期の子どもは、そのようなサービスへのアクセスに関して行政上その他の障壁に直面する場合がある。身分署名書類または社会保障番号を要求されること、有害かつ不正確な年齢鑑別手続がとられていること、金銭面および言語面の障壁があること、ならびに、サービスにアクセスすることによって収容または退去強制の対象とされることなどである [36]。委員会は、移住者である子どもについて詳細に述べた委員会の包括的勧告を参照するよう求める [37]。 [35] www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2012/DGD2012ReportAndRecommendations.pdf 参照。 [36] Fundamental Rights Agency, "Apprehension of migrants in an irregular situation - fundamental rights considerations"(2012年9月9日付)参照。https //fra.europa.eu/sites/default/files/fra-2013-apprehension-migrants-irregular-situation_en.pdf より入手可能。 [37] www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2014/DGD_report.pdf 参照。 77.委員会は、条約第22条において、難民および庇護希望者である子どもがその権利を享受し、かつ国際難民保護体制を通じて与えられる追加的保障措置の利益を受けられるようにするためには特別な措置が必要であることが認められていることを強調する。難民および庇護希望者である思春期の子どもは、国外追放のための迅速手続の対象とされるべきではなく、むしろその入国を認める方向で検討がなされるべきであり、また、子どもの最善の利益についての判断が行なわれ、かつ国際的保護の必要性が確認される前に送還されまたは入国を拒否されるべきではない。自国の管轄内にあるすべての子どもの権利をその地位にかかわらず尊重しかつ確保する第2条上の義務にしたがい、各国は、難民および庇護希望者である思春期の子どもであって保護者のいない者および養育者から分離された者ならびに移住者の双方を規律する、年齢およびジェンダーに配慮した立法を導入するべきである。このような立法は、最善の利益の原則を土台とし、出入国管理法上の地位の決定よりも保護のニーズの評価を優先させ、出入国管理関連の収容を禁止し、かつ、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)の勧告を参照しながら、これらの思春期の子どもが有する特別な脆弱性に対応するものであることが求められる [38]。各国はまた、思春期の子どもを移住へと向かわせる諸要因、ならびに、親が移住した場合に残された思春期の子どもが直面する脆弱性および権利侵害(退学、児童労働、暴力および犯罪活動の被害の受けやすさならびに負担の大きい家事責任を含む)に対処するための措置も導入するべきである。 [38] 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)参照。 人身取引 78.多くの思春期の子どもが、経済的理由または性的搾取を目的とした人身取引の対象とされるおそれに直面している。各国は、子どもの売買、人身取引および誘拐に関するデータ収集のための包括的かつ体系的な機構を確立するとともに、当該データが細分化されることを確保し、かつもっとも被害を受けやすい状況で生活している子どもに特段の注意を払うよう、促される。各国はまた、被害を受けた子どもを対象としたリハビリテーションおよび再統合のためのサービスならびに心理社会的支援への投資も行なうべきである。脆弱性および搾取が有する、ジェンダーを基盤とする諸側面に注意を払うことが求められる。国内の人身取引および国際的人身取引双方の危険性を親および子どもたちが理解するようにするため、ソーシャルメディア等も通じた意識啓発活動を行なわなければならない。各国は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を批准し、かつ、同議定書にしたがって立法の調和を図るよう促される。 紛争および危機 79.武力紛争および人道上の災害の状況により、社会的規範ならびに家族およびコミュニティによる支援体制の崩壊がもたらされている。そのため、思春期の子どもであって避難民となった子どもおよび危機の影響を受けている子どもの多くが、大人としての責任を引き受けることを余儀なくされ、かつ性暴力およびジェンダーを理由とする暴力、児童婚および強制婚ならびに人身取引のおそれにさらされている。さらに、このような状況に置かれた思春期の子どもは、教育、スキル訓練、安全な就労機会、ならびに、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる適切なサービスおよび情報へのアクセスを否定され、かつ、孤立、差別およびスティグマ、精神保健〔上の問題〕ならびにあえてリスクを冒す行動に直面する可能性が高い。 80.委員会は、人道プログラムにおいて思春期の子どもの特有のニーズおよび権利への対応が行なわれていないことを懸念する。委員会は、締約国に対し、保護システムの開発および設計ならびに和解および平和構築のプロセスにおいて主体的役割を果たす体系的機会が思春期の子どもたちに提供されることを確保するよう、促すものである。紛争後および移行期の再建への明確な投資は、思春期の子どもたちが、自分の国の経済的および社会的開発、レジリエンスの構築ならびに平和的移行に貢献する機会ととらえられるべきである。加えて、緊急事態対応準備プログラムでは、思春期の子どもたちの脆弱性および保護に対する権利のいずれをも認識し、かつ、コミュニティの支援およびリスク緩和の援助に関してこれらの子どもたちが果たしうる役割を認めながら、これらの子どもたちに対応することが求められる。 軍隊および武装集団への徴集 81.委員会は、思春期の男子および女子が、ソーシャルメディアの利用等も通じて、国の軍隊、武装集団および民兵に徴集されていることに深い懸念を表明するとともに、すべての締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう促す。委員会はまた、思春期の子どもが、テロリストのプロパガンダ、過激主義的見方およびテロ活動への関与にそそのかされやすいことも懸念するものである。思春期の子どもをそのような活動への参加に駆り立てる要因を模索するための調査研究が思春期の子どもたちとともに実施されるべきであり、各国は、社会的統合を促進する措置に特段の注意を払いながら、当該調査研究で得られた知見に応じた適切な対応をとるべきである。 82.各国は、軍隊および武装集団に徴集された思春期の子ども(移住の状況にある子どもを含む)の回復およびジェンダーに配慮した再統合を確保するとともに、あらゆる敵対行為において、かつ和平または停戦に関わる武装集団との交渉および協定において、思春期の子どもの徴集または使用を禁止するべきである [39]。各国は、支援介入の持続可能性および文化的適切性を確保する目的で、平和運動に思春期の子どもたちが参加する機会、および、地域コミュニティに根ざした非暴力的紛争解決に対する同世代間働きかけアプローチを支援するよう求められる。委員会は、締約国に対し、思春期の子どもに対して行なわれた紛争関連の性暴力、性的搾取および性的虐待ならびにその他の人権侵害の事案について迅速かつ適正な対応がとられることを確保するため、断固たる措置をとるよう促すものである。 [39] A/68/267、パラ81-87参照。 83.委員会は、世界の多くの場所で、思春期の子どもがギャングおよびパンディーヤ〔訳者注/ギャングを意味するスペイン語〕に引きこまれていることを認識する。これらの集団は、社会的支援、生計維持手段、保護およびアイデンティティの感覚を、合法的な活動を通じてこのような目標を達成する機会が存在しないなかで提供してくれることが多い。しかし、ギャングの構成員が生じさせる恐怖、危険、脅威および暴力の雰囲気は、思春期の子どもの権利の実現を脅かすものであり、思春期の子どもの移住を助長する主要な要因のひとつである。委員会は、攻撃的な法執行アプローチに代えて、少年の暴力およびギャングへの加入の根本的原因に対処する包括的な公共政策の策定をいっそう重視するよう、勧告する。学校、家庭および社会的包摂のための措置を重視しながら、危険な状況に置かれた思春期の子どもを対象とする防止活動、思春期の子どもにギャングを離脱するよう奨励するための支援介入、ギャングの構成員の更生および再統合、修復的司法、ならびに、犯罪および暴力に反対する自治体連合の創設への投資を進めることが必要である。委員会は、各国に対し、ギャングの暴力に関連する理由で自国を離れることを余儀なくされた思春期の子どもに正当な考慮を払い、かつ、このような子どもに難民資格を付与するよう、促す。 児童労働 84.委員会は、思春期のすべての子どもに経済的搾取および最悪の形態の児童労働から保護される権利があることを強調するとともに、各国に対し、条約第32条第2項ならびに国際労働機関の最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)の規定を実施するよう促す。 85.年齢にふさわしい形態の労働への導入は、思春期の子どもの生活において重要な発達上の役割を果たすのであって、これによって思春期の子どもはスキルを身につけるとともに、責任を学ぶこと、ならびに、必要なときは、家族の経済的安寧に貢献し、かつ自らの教育へのアクセスを支えることができるようになる。児童労働に反対する行動は、学校から労働への移行、社会的および経済的開発、貧困根絶プログラム、および、良質かつインクルーシブな初等中等教育への普遍的かつ無償のアクセスを含む、包括的措置から構成されるべきである。思春期の子どもには、国内法上の最低就労年齢(これは国際基準および義務教育に整合したものであるべきである)に達した段階で、教育ならびに休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する権利を正当に尊重されながら、適切な条件下で軽易労働を行なう権利があることを強調しておかなければならない。 86.委員会は、各国が、思春期の子どもの生活において労働が果たす積極的役割と、義務教育に対する思春期の子どもの権利を差別なく確保することとの間でバランスをとることに向けた経過的アプローチをとるよう勧告する。学校教育およびディーセントワークへの導入は、思春期の子どもの生活において、その年齢にしたがって両方を促進するための調整が図られるべきであり、またそのような労働を規制し、かつ思春期の子どもが搾取の被害を受けた場合に救済措置を与えるための効果的機構が導入されるべきである。18歳未満のすべての子どもを危険な労働から保護する旨を、具体的な有害労働の明確な一覧とともに規定することが求められる。有害な労働および労働条件を防止することに向けた努力が、家事労働に従事している女子およびその他のしばしば「不可視化された」労働者に特段の注意を払いながら、優先課題として行なわれるべきである。 思春期の子どもを対象とした司法 87.思春期の子どもは、法律に触れたことによって、犯罪の被害者もしくは証人として、または養護、監護もしくは保護のようなその他の理由で、司法制度と関わりを持つ場合がある。思春期の子どもが、被害者としても犯罪加害者としても権利を侵害されやすい立場に置かれにくくするための措置が必要である。 88.締約国は、条約第37条および第40条ならびに少年非行の防止に関する国連指針に一致するやり方で社会的要因および根本的原因に対応するため、修復的司法、司法手続からのダイバージョン、拘禁に代わる措置および予防的介入を重視する包括的な少年司法政策を導入するよう促される。少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に掲げられた勧告にしたがい、焦点は、テロリズムに分類される活動に関与した思春期の子どもを対象とするものも含む、更生および再統合に当てられるべきである。拘禁は、最後の手段として、かつもっとも短い適切な期間でのみ用いられるべきであり、また思春期の子どもは成人とは分離して収容することが求められる。委員会は、18歳未満のときに行なった犯罪について有罪とされたいかなる者に関しても死刑および終身刑を禁止することが絶対要件であることを強調するものである。委員会は、刑事責任年齢を引き下げようとしている国が多いことを深刻に懸念するとともに、各国に対し、刑事責任年齢を漸進的に18歳まで引き上げるよう奨励する。 XIV.国際協力 89.委員会は、条約の実施は締約国にとって協力的な営みであることおよび国際協力が必要であることを強調する。委員会は、締約国に対し、思春期の子どもの権利の実施について貢献を行ない、かつ、国際連合および地域機関の技術的援助を適宜活用するよう奨励するものである。 XV.普及 90.委員会は、締約国が、この一般的意見を、すべての関係機関、とくに議会およびすべての段階の行政機関(省庁および自治体/地方当局内の部局を含む)、ならびに、思春期のすべての子どもに対して広く普及するよう勧告する。委員会はまた、この一般的意見を関連のすべての言語に翻訳するとともに、思春期の子どもにやさしい版および障害のある思春期の子どもにとってアクセシブルな形式として刊行することも勧告するものである。 更新履歴:ページ作成(2016年12月25日)。
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子どもがつくる子どものまち「ミニ☆大阪」 年齢や学校を超えて子どもたちが、仕事を楽しみ、友達をつくった。狭い会場なので横つながりもうまれた様。知らない人に「いらっしゃいませ」と自分から声を出す。思ったことは人に伝える。大人にだって意見する。それを、ささやかだけれど、大切にしました。今年度は有志で開催を、と始動したばかり。皆さん、知恵をわけてくださ~い! 目次 1概要 2歴史 3仕事ブース 4大人の会議(例) 5子どもの会議(例) 6話題(例) 6.1(始まりの頃の特筆すべき点) 6.2(現在の特筆すべき点) 6.3(外部の協力者) 7参考文献 8関連項目 9外部リンク 概要 大きな研修室をメイン会場に2日間開催。定員100名のうち30名は事前に小5~高3を対象に募集した子ども実行委員。ミニミュンヘンのことを最初に紹介し、まちの仕組みづくりに興味深々。準備に当初の倍以上の時間を重ねた。 「自分達がまちを動かす主人公である」実感に心を動かした様で「まちに詳しい人」「まちを動かしてゆける環境」づくりに工夫し、「ワニタン府民」という具体的なシステムをつくった。 歴史 第1回 2008年 3月25日・26日 国際障がい者交流センタービッグアイ 仕事ブース 職安、 銀行、 市役所、 議会、 デパート、 放送局、 新聞社、 大学、 広告代理店、 写真屋、 病院、 レトロ菓子店WATAGASI、 びっくりカフェ、 ホットドッグ店 ※ 2009年度は 保育士も入り、保育所も開催予定。 大人の会議(例) こどものまちを主催する大人による会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 子どもの会議(例) こどものまちの主役である子どもによる会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 話題 (始まりの頃の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (現在の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (外部の協力者) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 主催団体 2007年のスタッフ有志で実行委員会をつくり開催 〒●●●●●●● ●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●● 参考文献 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 関連項目 ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●。
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子どもの権利委員会・一般的意見15号:到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利(第24条) 後編 (健康に対する子どもの権利 前編より続く) IV.義務および責任 A.締約国の尊重義務、保護義務および充足義務 71.国は、子どもの健康権を含む人権との関連で3つの態様の義務を有する。すなわち、諸自由および諸権利を尊重する義務、第三者からまたは社会上もしくは環境上の脅威から諸自由および諸権利の双方を保護する義務、ならびに、促進措置または直接の対応を通じて諸権利を充足する義務である。条約第4条にしたがい、締約国は、自国の利用可能な資源を最大限に用いることにより、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで、子どもの健康権に含まれる諸権利を充足しなければならない。 72.すべての国は、その開発水準に関わらず、これらの義務を優先的課題として、かついかなる種類の差別もなく実施するための即時的措置をとるよう要求される。利用可能な資源が明らかに不十分な場合でも、国はなお、子どもの健康権の全面的実現に向けて可能なかぎり迅速かつ効果的に行動するための、焦点の明確な措置をとるよう要求される。資源の高に関わらず、国は、子どもの健康権の享受を阻害しうるいかなる後退的措置もとらない義務を有する。 73.子どもの健康権に基づく中核的義務には、以下のものが含まれる。 (a) 国・地方の法律上および政策上の環境を見直し、かつ、必要なときは法律および政策を改正すること。 (b) すべての人が良質なプライマリーヘルスサービス(予防、健康促進、ケアおよび治療のためのサービスを含む)および必須医薬品の対象とされることを確保すること。 (c) 子どもの健康の根本的決定要因について十分な対応を行なうこと。 (d) 子どもの健康権の充足に対する人権基盤アプローチとなる政策および行動計画(予算措置をともなうもの)を策定し、実施し、監視しかつ評価すること。 74.国は、第24条に基づくすべての義務の漸進的充足に対するコミットメントを明確にし、たとえ政治的もしくは経済的危機または緊急事態の状況にあってもこれに優先的に取り組むべきである。そのためには、子どもの健康および関連の問題に関する政策、プログラムおよびサービスの計画、立案、資金的手当および実施を持続可能なやり方で進めることが必要となる。 B.国以外の主体の責任 75.国は、サービスの提供を国以外の主体に委任しているか否かに関わらず、子どもの健康権の実現について責任を負う。この点については、国に加えて、子どもの健康およびその根本的決定要因に関連する情報およびサービスを提供している幅広い国以外の主体が、具体的な責任を有しており、かつ具体的な影響を及ぼしている。 76.国の義務には、国以外の主体の責任に関する意識を促進する義務、および、必要なときは適正評価手続を適用しながら、国以外のすべての主体が子どもに対する責任を認識し、尊重しかつ充足することを確保する義務が含まれる。 77.委員会は、健康促進および保健サービスに関与しているすべての国以外の主体、とくに民間セクター(製薬産業および医療技術産業ならびにマスメディアおよび保健サービス提供業者を含む)に対し、条約の規定を遵守しながら行動すること、および、自らに代わってサービスを提供するパートナーがいる場合には当該パートナーによる遵守を確保することを求める。このようなパートナーには、国際機関、国際銀行、地域金融機関、グローバル・パートナーシップ、民間セクター(民間の財団および基金)、ドナー、および、とくに人道的緊急事態または政治的に不安定な状況において子どもの保健のためのサービスまたは金銭的支援を提供している他のあらゆる機関が含まれる。 1.親その他の養育者の責任 78.親その他の養育者の責任については、条約のいくつかの規定で明示的に言及されている。親は、必要なときは国の支援を受けながら、常に子どもの最善の利益にのっとって行動しつつ自己の責任を履行するべきである。親および養育者には、子どもの発達しつつある能力を考慮に入れながら、子どもが健康的に成長しかつ発達するよう子どもを養育し、保護し、かつ支援することが求められる。第24条第2項(f)には明示されていないものの、委員会は、親に対するいかなる言及にも、その他の養育者も含まれるものと理解する。 2.国以外のサービス提供者その他の主体 (a) 国以外のサービス提供者 79.国以外の主体を含むすべての保健サービス提供者は、そのプログラムおよびサービスの立案、実施および評価に、条約のすべての関連規定ならびに利用可能性、アクセス可能性、受容可能性および質に関する基準(この一般的意見の第VI章E節で説明)を編入しかつ適用しなければならない。 (b) 民間セクター 80.すべての企業は、条約に基づくすべての権利を含む人権に関して相当の注意義務を有する。国は、企業に対し、子どもの権利に相当の注意を払うよう要求するべきである。そのためには、企業として、その活動が子どもの健康権に及ぼしている悪影響を特定し、防止しかつ緩和すること(事業関係全体を通じて、かつ世界的に操業している場合には当該操業に関して、このような対応をとることも含む)が必要になろう。大企業は、その活動が子どもの権利に及ぼす影響に対処するために行なっている努力を公表することが奨励されるべきであり、また適当なときはこのような公表が要求されるべきである。 81.他の責任のなかでもとくに、またあらゆる文脈において、私企業には、子どもの労働に関する最低年齢の遵守を確保しつつ、危険な労働に子どもを従事させないようにすること、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」および世界保健総会がその後採択した関連の決議を遵守すること、エネルギー密度が高く微量栄養素に乏しい食品、および、高濃度のカフェインまたは子どもにとって有害となるおそれがある他の物質を含む飲料の広告を制限すること、ならびに、子どもを対象としたタバコ、アルコールその他の有毒物質の広告、販売促進および販売ならびに子どものイメージの使用を控えることが、求められる。 82.委員会は、製薬部門が子どもの健康に及ぼす甚大な影響を認知するとともに、製薬企業に対し、「医薬品へのアクセスに関する製薬企業のための人権ガイドライン」に特段の注意を払いながら、医薬品への子どものアクセスを増進させることに向けた措置をとるよう求める [19]。同時に、国は、製薬企業が子どもに対する薬および薬品の使用を監視し、かつ子どもに対する薬および薬品の過剰な処方および使用の促進を行なわないことを確保するべきである。知的財産権は、必要な医薬品または物資を貧困層にとって負担不可能にしてしまうような方法で適用されるべきではない。 [19] 到達可能な最高水準の身体的および精神的健康を享受するすべての者の権利に関する人権理事会決議15/22も参照。 83.民間健康保険企業は、いかなる禁止事由に基づくものであっても妊婦、子どもまたは母親への差別を行なわないこと、および、連帯の原則に基づく国の健康保険制度との提携を通じて平等を促進することを確保するとともに、支払い能力がないためにサービスへのアクセスが制限されることがないようにするべきである。 (c) マスメディアおよびソーシャルメディア 84.条約第17条はマスメディア組織の責任を明らかにしている。健康の文脈においては、その範囲をさらに拡大し、子どもの間で健康および健康的ライフスタイルを促進すること、健康促進のために広告スペースを無償で提供すること、子ども・青少年のプライバシーおよび秘密保持を確保すること、情報アクセスを促進すること、子どもおよび一般的保健にとって有害な広報番組および資料を制作しないこと、ならびに、健康関連のスティグマを固定化させないことを含めることが可能である。 (d) 研究者 85.委員会は、子どもを対象とする調査研究を行なっている諸機関(研究機関、私企業その他の機関を含む)には、条約および「人を対象とする生物医学研究の国際倫理指針」[20] の原則および規定を尊重する責任があることを強調する。委員会は、研究者に対し、子どもの最善の利益は常に一般社会または科学の進歩の利益よりも優先されなければならないことを想起するよう、求めるものである。 [20] 国際医学団体協議会/WHO、ジュネーブ、1993年。 V.国際協力 86.条約の締約国は、自国の管轄内で子どもたちの健康権を実施するのみならず、国際協力を通じて世界的実施に貢献する義務も有する。第24条第4項は、各国および国家間機関に対し、住民の最貧困層および開発途上国における子どもの健康上の優先的課題に特段の注意を払うよう、要求している。 87.ドナーおよび援助受入国が行なう、子どもの健康に直接間接に関わるすべての国際的な活動およびプログラムにおいて、条約が指針とされるべきである。そのためには、パートナー国が、受入国の子ども、妊婦および母親に影響を与えている主要な健康問題を特定し、かつ、第24条に掲げられた優先的課題および原則にしたがってこれらに対応することが必要となる。国際協力においては、国が主導する保健制度および国家的保健計画を支援するべきである。 88.各国は、緊急事態時における災害救援および人道援助の提供に関して協力する個別および共同の責任(国際連合機構を通じて履行されるものを含む)を負う。このような場合、国は、適切な国際的医療援助、資源(安全な飲料水、食料および医療物資等)の配布および管理ならびにもっとも脆弱な立場に置かれたまたは周縁化された子どもに対する金銭的援助等も通じて子どもの健康権を実現するための努力を優先させることを考慮するべきである。 89.委員会は、各国に対し、国民総所得の0.7%を国際開発援助に配分するという国際連合の目標を達成することを忘れないよう求める。財源は、資源が限られている国における子どもの健康権の実現にとって、重要な意味を持っているからである。最大の効果を確保するため、各国および国家間機関は、援助効果向上に関するパリ原則〔宣言〕およびアクラ行動計画を適用するよう奨励される。 VI.実施および説明責任履行の枠組み 90.説明責任は、子どもの健康権の享受の中核に位置する。委員会は、締約国に対し、可能な最高水準の子どもの健康および保健ケアを子どもが18歳に達するまで維持することについて、関連の政府機関およびサービス提供者が説明責任を負うことを確保する自国の義務を想起するよう求めるものである。 91.国は、義務を負うすべての主体が子どもの健康権に関わるその義務および責任を履行することを促進する環境を提供するとともに、すべての主体がその枠内で活動し、かつ監視の対象とされうる規制枠組みを定めるべきである。そのための手段には、子どもの健康に関連する問題に対する政治的および財政的支持を動員すること、ならびに、義務を負う者がその義務を履行する能力および子どもが健康権を主張する能力の構築を図ることが含まれる。 92.説明責任を確保するための国内機構は、政府、議会、コミュニティ、市民社会および子どもたちの積極的関与を得た効果的かつ透明なものでなければならず、またすべての主体についてその行動の責任を問うことを目的とするものでなければならない。このような機構は、とくに、子どもの健康に影響を及ぼす構造的要因(法律、政策および予算を含む)に対して注意を向けるべきである。財源およびそれが子どもの健康に及ぼす影響を参加型の手法で追跡することは、説明責任を確保するための国の機構にとって必要不可欠である。 A.健康に対する子どもの権利についての知識の促進(第42条) 93.委員会は、各国に対し、子ども、その養育者、政策立案者、政治家および子どもとともに働く専門家を対象として、子どもの健康権およびその実現のために自分たちが行なえる貢献に関する教育を行なうための包括的な戦略を採択しかつ実施するよう、奨励する。 B.立法措置 94.条約は、締約国に対し、子どもの健康権を差別なく実施するためにあらゆる適当な立法上、行政上その他の措置をとるよう要求している。国内法は、子どもの健康権を実現するために必要なサービス、プログラム、人的資源およびインフラを提供する制定法上の義務を国に対して課すとともに、支払い能力に関わりなく、妊婦および子どもを対象とした、必須の、子どもに配慮した良質な保健サービスおよび関連サービスを受ける制定法上の権利を規定するべきである。法律は、差別的な効果または子どもの健康権の実現にとっての障害がないかどうか評価するために見直しを行ない、かつ必要なときは廃止することが求められる。必要な場合、国際機関およびドナーは、そのような法改正のために開発援助および技術的援助を提供するべきである。 95.立法には、子どもの健康権の範囲を定義し、かつ子どもを権利の保有者と認めること、義務を負うすべての主体の役割および責任を明らかにすること、子ども、妊婦および母親がどのようなサービスの請求権を有するのか明らかにすること、ならびに、サービスおよび医薬品が良質であり、かつ害を及ぼさないものであることを確保するためにこれらを規制することにより、子どもの健康権の実現に関わる多くの追加的機能を果たすようなものであるべきである。国は、子どもの健康権について活動している人権擁護者の活動を保護しかつ促進するための、十分な立法上その他の保障が存在することを確保しなければならない。 C.ガバナンスおよび調整 96.国は、子どもの健康に関連する国際的および地域的な人権文書を批准しかつ実施するとともに、子どもの健康のあらゆる側面についてしかるべく報告するよう、奨励される。 97.子どもの健康に関する政策および実践の持続可能性を確保するためには、国家的な優先課題として支持されかつ確立された長期的な国家的計画が必要である。委員会は、政府省庁間および諸段階の行政機構間の協力ならびに市民社会の関係者(子どもたちを含む)との交流を促進するため、国が、条約の原則に基づいて構築され、かつ包括性および結集性を兼ね備えた、子どもの健康に関する国家的調整枠組みを確立しかつ活用するよう勧告する。子どもの健康に関連する政策およびサービスについての活動を行なっている政府機関、立法機関および省庁が種々の段階に多数存在することを踏まえ、委員会は、法令上の枠組みにおいて各機関の役割および責任を明確にするよう勧告するものである。 98.周縁化されたおよび不利な立場におかれた集団の子どもならびにいずれかの形態の暴力および差別を受けるおそれがある子どもを特定し、かつこれらの子どもに優先的対応を行なうことに、特段の注意が向けられなければならない。すべての活動について、全面的な費用見積もり、資金的手当および国内予算における可視化が行なわれるべきである。 99.子どもの健康とその根本的決定要因との関連を強調しながら、「すべての政策に子どもの健康を」戦略が活用されるべきである。子どもの健康に影響を及ぼすサービスの提供における透明性、調整、パートナーシップおよび説明責任の阻害要因を取り除くため、あらゆる努力を行なうことが求められる。 100.諸地域および諸部門の特有のニーズを満たすために地方分権化が必要とされる一方、これによって、自国の管轄内にあるすべての子どもに対して義務を果たす中央政府または国の政府の直接責任が減殺されるわけではない。諸段階のサービスおよび地域に対する配分についての決定は、プライマリーヘルスケアに対するアプローチの中核的要素を反映して行なわれるべきである。 101.国は、子どもの健康権の実施において、子どもたちを含む社会のすべての層の関与を得るべきである。委員会は、このような関与のための取り組みに、市民社会組織(草の根グループおよびコミュニティのグループを含む)の継続的な成長、発展および持続可能性に資する条件をつくりだすこと、子どもの健康に関する政策およびサービスの策定、実施および評価へのこれらの組織の関与を積極的に促進すること、ならびに、適切な金銭的支援または金銭的支援の獲得に関わる援助を提供することが含まれるべきことを勧告する。 1.国レベルの説明責任の確保における議会の役割 102.子どもの健康関連の問題について、議会は、透明性および包摂性を確保しながら立法を行ない、かつ、継続的な公の議論および説明責任の文化を奨励する責任を有する。議会は、実績に関する報告および討議を行ない、かつ、独立の検証機構への公衆参加を促進するための公的な場を創設するべきである。議会はまた、独立の検証の結果行なわれた勧告の実施について行政府の説明責任を問うとともに、その後の国家的計画、法律、政策、予算、および、説明責任を確保するためのさらなる措置において、検証の結果が参考にされることも確保するよう求められる。 2.国レベルの説明責任の確保における国内人権機関の役割 103.国内人権機関は、説明責任の履行状況を検証しかつ促進し、子どもに対して健康権侵害の救済を提供し、かつ、当該権利の実現のための制度的変革を唱道するうえで重要な役割を有している。委員会は、一般的意見2号を想起するとともに、各国に対し、子どもコミッショナーまたは子どもオンブズマンの権限には健康権の確保も含まれるべきであること、および、このような権限を有する機関は十分な資源を与えられ、かつ政府から独立しているべきであることを想起するよう、求める [21]。 [21] 「子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割」に関する一般的意見2号(2002年、Official Records of the General Assembly, Fifty-ninth Session, Supplement No. 41 (A/59/41), annex VIII)参照。 D.子どもの健康への投資 104.予算の配分および支出に関する決定において、国は、子どもの健康のための必須サービスの利用可能性、アクセス可能性、受容可能性および質を差別なく確保するよう努めるべきである。 105.国は、マクロ経済政策に関する決定が子ども(とくに脆弱な状況に置かれている子ども)の健康権に及ぼす影響を継続的に評価し、子どもの権利を損なう可能性があるいかなる決定も行なわれないようにし、かつ、このような決定を行なう際に「最善の利益」原則を適用するべきである。国はまた、国際協力において子どもの健康権が十分に考慮されることを確保するため、国際金融機関との交渉のあらゆる側面において第24条に基づく義務を考慮することも求められる。 106.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公共支出のうち子どもの保健に配分されるべき特定の割合を法律で定めるとともに、これに付随して、当該支出を体系的にかつ独立の立場から評価できるようにする機構を創設すること。 (b) 1人あたり最低保健支出に関する世界保健機関の勧告を達成し、かつ予算配分において子どもの保健を優先させること。 (c) 子どもに配分された資源および支出された資源の詳細な積算を通じ、国家予算において子どもへの投資を可視化すること。 (d) 権利を基盤とする予算モニタリングおよび予算分析、ならびに、投資(とくに保健セクターにおける投資)が子どもの最善の利益にどのようにのっとっているかに関する子ども影響評価を実施すること。 107.委員会は、資源の活用における評価手段の重要性を強調するとともに、締約国が子どもの健康権の実施における進展を監視しかつ評価することを援助するために測定可能な指標を発展させる必要があることを認識する。 E.行動サイクル 108.締約国が第24条に基づく自国の義務を履行するためには、計画、実施、モニタリングおよび評価というサイクルの過程を経たうえで、その結果を参考にしながら、さらなる計画、修正を加えたうえでの実施、ならびに、モニタリングおよび評価のための新たな取り組みを進めることが必要となる。国は、サイクル全体を通じて必要な修正を容易にするため、子どもたちの意味のある参加を確保し、かつフィードバックのための機構を組みこむべきである。 109.子どもの健康権の実現を目的とする政策、プログラムおよびサービスの策定、実施およびモニタリングの中心に位置づけられるのは、関連性および信頼性のあるデータが利用できることである。これには、脆弱な立場におかれた集団に相当の注意を払いつつ、子どものライフコース全体を通じて適切に細分化されたデータ、優先されるべき健康問題(死亡および罹病の新たな原因および軽視されてきた原因を含む)に関するデータ、および、子どもの健康の主要な決定要因に関するデータを含めることが求められる。戦略的情報管理のためには、通常の保健情報システム、特別調査および研究を通じて収集されるデータが必要であり、またそこには量的データおよび質的データの双方が含まれているべきである。これらのデータは、国および地方の政策およびプログラムの参考とする目的で収集し、分析し、普及し、かつ活用することが求められる。 1.計画 110.委員会は、第24条に基づく義務を履行するための活動の実施、監視および評価の参考とするため、国が、既存の問題、争点およびサービス提供のためのインフラに関する状況分析を行なうべきであることに留意する。当該分析においては、制度的能力、ならびに、人的資源、財源および技術的資源の利用可能性に関する評価が行なわれるべきである。分析の成果に基づき、すべての関係者(国および国以外の主体ならびに子どもたち)の関与を得ながら戦略を策定することが求められる。 111.状況分析を行なうことにより、国および地方における優先事項ならびにその達成のための戦略のあり方が明確になろう。基準および達成目標、予算措置をともなった行動計画ならびに運用戦略を、政策、プログラムおよびサービスの監視および評価ならびに子どもの健康に関する説明責任の履行促進のための枠組みとともに、確立するべきである。これにより、既存の体制および制度を条約と一致するように構築しかつ強化する方法が浮かび上がることになろう。 2.実績および実施に関する基準 112.国は、子どもの健康に関するすべてのサービスおよびプログラムが、利用可能性、アクセス可能性、受容可能性および質の基準を遵守することを確保するべきである。 (a) 利用可能性 113.国は、子どもの健康に関する施設、物資、サービスおよびプログラムが、十分に機能する形で、かつ十分な量で存在することを確保するべきである。国は、国内のすべての子ども、妊婦および母親に対して保健ケアを提供するのに十分な病院、診療所、保健従事者、移動型のチームおよび施設、コミュニティヘルスワーカー、器材ならびに必須医薬品があることを確保しなければならない。十分な量が確保されているかどうかは、サービスが十分に提供されていない住民およびサービス提供が困難な住民にとくに注意を払いながら、ニーズにしたがって判断されるべきである。 (b) アクセス可能性 114.アクセス可能性の要素には4つの側面がある。 (a) 差別の禁止:保健サービスおよび関連のサービスならびに機材および供給品は、法律上も実際上も、いかなる種類の差別もなく、すべての子ども、妊婦および母親にとってアクセス可能でなければならない。 (b) 物理的アクセス可能性:保健施設は、すべての子ども、妊婦および母親にとってアクセス可能な距離に存在していなければならない。物理的アクセス可能性を確保するためには、障害のある子どもおよび女性のニーズに追加的注意を払わなければならない場合もある。委員会は、各国に対し、サービスが十分に提供されていない地域における施設およびサービスの設置を優先的に進めるとともに、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもにサービスを提供するための手段として、移動によるアウトリーチのアプローチ、革新的技術、ならびに、十分な訓練および支援を受けたコミュニティヘルスワーカーに投資するよう、奨励する。 (c) 経済的アクセス可能性/負担可能性:サービス、供給品または医薬品の費用の支払い能力がないためにアクセスが否定されることになるべきではない。委員会は、各国に対し、利用料を廃止するとともに、支払い能力がないことを理由として女性および子どもを差別しない医療財政制度を実施するよう、求める。税および保険のようなリスクプーリング機構は、公正な、資力に基づく拠出に基づいて運営されるべきである。 (d) 情報アクセス可能性:健康促進、健康状態および治療の選択肢に関する情報は、子どもおよびその養育者にとってアクセスしやすくかつ明確に理解できる言語および様式で提供されるべきである。 (c) 受容可能性 115.子どもの健康権との関係において、委員会は、健康に関連するすべての施設、物資およびサービスの立案および実施に際し、必要なときは一部の集団に特別な注意を払いながら、医療倫理ならびに子どものニーズ、期待、文化、意見および言語を全面的に考慮しかつ尊重するようなやり方をとる義務として、受容可能性を定義する。 (d) 質 116.健康に関連する施設、物資およびサービスは、科学的および医学的に適切であり、かつ良質なものであるべきである。質を確保するためには、とくに以下のことが必要となる。(a) 治療、介入策および医薬品が、入手可能な最善のエビデンスに基づいたものであること。(b) 医療従事者が熟練しており、かつ、母子保健ならびに条約の原則および規定について十分な研修を提供されていること。(c) 病院の器材が科学的承認を受けており、かつ子どもにとって適切なものであること。(d) 医薬品が科学的承認を受けており、使用期限切れになっておらず、(必要であれば)小児専用であり、かつ副作用に関するモニタリングの対象となっていること。(e) 保健機関のケアの質について定期的評価が実施されること。 3.モニタリングおよび評価 117.前掲の実績基準に基づく要件を満たすためのモニタリングおよび評価を行なう目的で、十分に構造化され、かつ適切に細分化された一連の指標が確立されるべきである。データは、子どもの健康権の充足の支えとなる政策、プログラムおよびサービスの再立案および改善のために活用することが求められる。保健情報システムにおいては、プライバシーに対する個人の権利を保護しつつ、データが信頼でき、透明であり、かつ一貫していることが確保されるべきである。国は、人口動態登録および疾病サーベイランスを含む保健情報システムを、その改善の目的で定期的に見直すことが求められる。 118.国レベルで説明責任を確保するための機構は、モニタリングおよび検証を行ない、かつその知見に基づいて行動するべきである。モニタリングとは、子どもたちの健康状態に関するデータを提供することとともに、子ども保健サービスの質、ならびに、子ども保健サービスへの支出額および支出がどこで、何に、かつ誰に対して行なわれたかについて検証することをいう。これには、経常的モニタリングおよび定期的に実施される詳細な評価の双方が含まれるべきである。検証とは、子どもたちの健康が向上したか否かおよび政府その他の主体がその約束を果たしているか否かについて判断する目的で、データを分析し、かつ子どもたち、家族、その他の養育者および市民社会と協議することをいう。行動とは、これらのプロセスを通じて得られたエビデンスを活用することにより、効果があった取り組みを再度行ないかつ拡大すること、および、効果がなかった取り組みを是正しかつ改善することをいう。 F.健康権侵害に対する救済措置 119.委員会は、各国に対し、十分に機能し、アクセスしやすく、かつコミュニティを基盤とする子どものための苦情申立て機構を整備するとともに、子どもの健康権が侵害されまたは侵害されるおそれがある場合に子どもが賠償を求めかつ得られるようにするよう、強く奨励する。国はまた、法的地位に関わる幅広い権利(集団訴訟を含む)も定めるべきである。 120.国は、子ども個人およびその養育者が裁判所にアクセスできることを確保しかつ促進するとともに、子どもの健康権侵害に対する救済措置へのアクセスを妨げるいかなる障壁も取り除くための措置をとるべきである。この点については、国内人権機関、子どもオンブズパーソン、保健関連の職能団体および消費者団体が重要な役割を果たしうる。 VII.普及 121.委員会は、各国が、議会に対しておよび政府全体を通じて(省庁、諸部局ならびに子どもの健康問題について活動している自治体および地方の機関を含む)この一般的意見を広く普及するよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2013年6月28日)。
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子どもの権利委員会・一般的討議勧告:国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利 一般的討議勧告一覧 (参考)移住労働者権利委員会・一般的意見2号:不正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利(2013年) (第61会期、2012年) 原文:英語〔PDF〕 日本語訳:平野裕二 I.背景(略) II.開会会合(全体会)概要(略) III.作業部会討議概要(略) IV.勧告 56.国際的移住の状況にある子どもの権利の尊重、促進および充足に関して、国がその政策およびプログラムにおいて考慮すべき問題ならびに他の関連の主体が指針とすべき事項を明らかにする目的で、子どもの権利についての意識および議論を喚起する場を提供するというDGD〔一般的討議〕の趣旨にしたがい、委員会は、以下の勧告を支持する。これにあたり、委員会は、子どもはどのような環境にあってもまず何よりも子どもであることを強調するものである。委員会は、移住の影響を受けている子どもの権利を特定しかつこれに対応するに際して、国および関連の主体は、さまざまな態様の子ども、状況または権利を分類しまたは区別しないよう配慮しつつ、条約のすべての規定および原則に基づいたホリスティックかつ包括的なアプローチをとらなければならないことを、あらためて指摘する。国際的移住の当事者である子どもまたはその影響を直接受けているすべての子どもは、年齢、性別、民族的または国民的出身および経済的地位または在留資格の如何を問わず自己の権利を享受する資格があるのであって、このことは、子どもが自発的な移住および非自発的な移住のどちらの状況に置かれている場合にも、また保護・養育者がいるかいないか、移動中であるか何らかの形で定住しているか、在留資格を認められているか否か等の諸条件の如何を問わず、変わらない。以下の勧告は、その検討の便宜を図るため、条約の実施に関する各国の定期的報告書についての委員会の総括所見および勧告の構成にしたがって配列されている。 一般的勧告(立法、政策および調整に関するものを含む) 57.国は、条約に掲げられた権利が、子ども自身またはその親の移住に関わる地位の如何を問わず、国の管轄下にあるすべての子どもに対して保障されることを確保するとともに、これらの権利のあらゆる侵害に対応するべきである。国際的移住の状況にあるすべての子どもに関する第一義的責任は、出入国管理機関ではなく子どものケアおよび保護を担当する機関にある。 58.国は、国際的移住の当事者である子どもまたはその影響を受けている子ども全員が、年齢、経済的地位、自己または親の在留資格の如何を問わず、自発的な移住および非自発的な移住のどちらの状況に置かれている場合にも、かつ保護・養育者の有無等に関わりなく、時宜を得た形で条約の全面的保護を享受できることを確保するため、人権を基盤とする包括的な法律および政策を採択するべきである。 59.国は、移住に関連するすべての国内法ならびに地域的および(もしくは)国際的な枠組みまたは協定に条約が統合されることを確保するため、立法、政策ならびにプログラムおよび関連の研修を含む措置をとるよう、奨励される。 60.国は、空港および港のような移住者の到着/通過場所における実務が条約および国際人権基準に全面的に一致することを確保するための具体的指針を発布するよう、勧告される。 61.国に対し、移住および他のいずれかの問題に関する政策、プログラム、実務および決定が、国際的移住の影響を直接間接に受けているすべての子どもの権利、ウェルビーイングおよび発達に及ぼす影響について効果的評価を実施するとともに、条約の基本的原則が、移住政策その他の考慮事項との関連で効果的に優先されかつ意味のある形で実施されること、ならびに、移住政策および子ども保護政策のさらなる発展に〔評価の〕結果が反映されることを確保するよう、勧告されるところである。 62.国はまた、国際開発政策、移住政策および子どもの権利との連携を個別におよび集団的に強化することも、求められる。 データ収集および調査研究 63.国は、移住の状態および移住が子どもに及ぼす影響に関するデータ収集および分析を増進させかつ拡大するための具体的措置を確保するべきである。このようなデータは、とくに年齢、性別、出身国、教育歴およびその他の関連情報(移住に関わる地位、入国許可、出国許可および就労許可の発布ならびに国籍の変更など)の別に細分化することが求められる。さらに委員会は、国が、このようなデータが(とくに出入国管理当局によって)資格外移住者を害するようなまたは資格外移住者の不利益になるようなやり方で利用されないことを保障するための保護措置を確保するよう、勧告するものである。 64.国は、移住の影響を受けている世帯が、地方の統計制度およびデータシステム、ならびに、生活水準、支出および労働力に関する全国的標本調査で特定されることを確保するべきである。このようなデータおよび情報を、移住の影響を受けている子どもが科学的根拠に基づく社会政策、地方計画および予算策定プロセスの発展に包摂されることを確保するために活用することが、勧告される。また、国が、国の政策および(または)プログラムの立案に際して移住者である子どもおよび家族の意見および経験を考慮するため、これらの子どもおよび家族(とくに、脆弱な状況に置かれた子どもおよび家族)と協議することも、勧告されるところである。委員会に提出する締約国の定期報告書にこのような情報を記載することも求められる。 65.さまざまな組織からの呼びかけを認識し、かつ国際的な移住と開発に関するハイレベル対話(2013年)に鑑み、関係者は、国際的移住の文脈における子どもの権利を、移住に関する子どもの地位の如何を問わず確保するための具体的措置に関する世界的調査の実施を検討するよう、奨励される。 66.情報の監視および収集を推進するため、締約国は、自国の領域内にあって移住の影響を受けているすべての子どもに関わる条約実施の体系的評価を委員会に対する定期的報告に組みこむとともに、人権保障に責任を負う国内機関(オンブズマン、平等機関等)に対し、移住の影響を受けている子どもに対応することを具体的任務としながら条約の遵守状況の監視において鍵となる役割を果たす権限を与えるよう、求められる。 67.国は、移住者である子どもの状況を監視する責任が出身国にのみ負わされないこと、ならびに、情報およびデータが通過国および目的地国に転送され、かつこれらの国によって受領されることを確保するべきである。その際、国は、移住の際および到着時に子どもをとくに対象とする効果的なサービスを提供できるようにするため、ケースマネジメント・システムにおいて子どもの即時的および長期的ニーズを監視するための機構を確立することが求められる。 子どもの定義および18歳未満のすべての者への条約の適用 68.子どもの定義にしたがって18歳になるまで権利および保護が与えられていることを想起し、国は、16歳以上の者を含むすべての子どもに対し、かつ移住に関するその地位に関わりなく、平等な水準の保護が提供されることを確保するよう促される。 69.加えて、国は、18歳に達した子ども(とくに養護環境を離れる子ども)のために十分なフォローアップ措置、支援措置および移行措置を提供するべきである。そのための手段には、長期的な正規移住者としての地位へのアクセス、および、教育を修了し、かつ労働市場への統合を図るための合理的機会へのアクセスを確保することも含まれる。 差別の禁止 70.国は、いかなる事由に基づく差別とも闘うための十分な措置を確保するべきである。その際、外国人嫌悪、人種主義および差別と闘い、かつ、移住の影響を受けている家族の社会統合を促進するための努力を強化することが求められる。国はまた、移住者である子どもおよびその家族を暴力および差別から保護し、かつ諸権利へのアクセス、公平および尊重を促進する目的で、とくに地方レベルで、移住者に関する知識を向上させ、かつ移住者に関する否定的見方に対応するためのプログラムも実施するべきである。このような取り組みにおいては、迅速かつ効果的な救済機構ならびに言語的および文化的に適切な十分な支援措置への、移住者による公平なアクセスを確保することも求められる。 71.国は、自国の移民政策において障害のある子どもまたは親が障害者である家族の子どもが差別されないこと、および、障害を入国申請の却下事由と考えないようにすることを確保するべきである。 子どもの最善の利益 72.国は、子どもに影響を及ぼすいかなる移住手続についても、当該手続のすべての段階および当該手続に関する決定において、かつ子どもの保護に従事する専門家、司法機関および子ども自身の関与を得ながら、子どもの最善の利益に関する個別評価を実施するべきである。とくに、子どもまたはその親の収容、送還または退去強制につながるいかなる手続においても、子どもの最善の利益を第一次的に考慮することが求められる。 73.国は、自国の法律、政策および実務において、子どもの最善の利益の原則が移住に関する考慮事項、政策上の考慮事項その他の行政上の考慮事項に優先することを明確にするべきである。その際、国は、移住手続、リスクおよび権利、保健面および精神保健面での支援、法的代理および後見、面接ならびにその他の手続に関する情報が、子どもにやさしく、かつ文化的に配慮のあるやり方で利用できることを確保するよう求められる。 74.国は、子どもに影響を及ぼすいかなる移住手続についても、当該手続のすべての段階または決定において、子どもの保護に従事する専門家および司法機関の関与を得ながら、可能なかぎり最大限に、継続的かつ個別的な子どもの最善の利益評価および正式な認定手続を実施するべきである。これには、子どもまたはその親の退去強制につながるいかなる手続も含まれる。国は、法律、政策および実務において、子どもの最善の利益の原則が移住に関する考慮事項その他の行政上の考慮事項に優先することを明確にするべきである。その際、国は、移住手続、リスクおよび権利、保健面および精神保健面での支援、法的代理および後見、面接ならびにその他の手続に関する情報が、子どもにやさしく、かつ文化的に配慮のあるやり方で利用できることを確保するよう求められる。 訳者注/パラ72~74の重複は原文ママ。 意見を聴かれる子どもの権利 75.国は、自国の法律、政策、措置および実務において、移住の文脈における子どもの権利および(または)その親の権利に影響を及ぼすすべての移住手続および司法手続における適正手続が保障されることを確保するべきである。すべての子ども(親その他の法定保護者とともにいる子どもを含む)は権利を保有する個人として扱われなければならず、その子ども特有のニーズは平等にかつ個別に考慮されなければならず、またその意見は適切に聴取されなければならない。子どもは、自分自身の状況に関する決定またはその親に関する決定に対し、すべての決定が自己の最善にのっとって行なわれることを保障するための行政上および司法上の救済措置にアクセスできなければならない。 76.とくに、国は、年齢の鑑別および決定の手続、面接の実務ならびに法的手続が、子どもの権利についての十分な専門性を有する職員によって、迅速な、子どもにやさしい、学際的な、文化的に配慮のあるやり方で進められることを確保するべきである。 アイデンティティ(名前および国籍を含む)に対する権利 77.国は、すべての子どもの出生登録を確保するための措置(移住者である子どもの出生登録を妨げるいかなる法律上および実務上の要因も取り除くことを含む)を強化するとともに、国籍を付与しなければ子どもが無国籍となる場合、自国の領域内で出生した子どもに市民権を付与するべきである。 人身の自由に対する権利および収容の代替措置 78.子どもは、移住に関わる自己の地位または親の地位を理由として、犯罪者として扱われまたは懲罰的措置の対象とされるべきではない。移住に関わる自己の地位または親の地位を理由とする子どもの収容は、子どもの権利の侵害であり、かつ、子どもの最善の利益の原則に常に違反する。これを踏まえ、国は、出入国管理上の地位を理由とする子どもの収容を速やかにかつ完全に取りやめるべきである。 79.国は、子どもが、通過国および(または)目的地国に家族構成員および(または)いる場合にはこれらの者といっしょにおり、かつ、その出入国管理上の地位についての解決が図られるまでの間、収容されるのではなくコミュニティを基盤とする環境で家族として滞在できるようにする立法、政策および実務を通じて、子どもの最善の利益を、人身の自由および家族生活に対する子どもの権利とともに充足する収容の代替措置を、可能なかぎり最大限に、かつもっとも制約の度合いの少ない必要な手段を活用しながら採用するべきである。委員会の一般的意見10号(CRC/C/GC/10、2010年)を強調しつつ、国には、自由を奪われた少年の保護に関する規則(ハバナ規則)を含む、拘禁環境に関する国際基準(これらの基準は行政拘禁または非刑事的拘禁を含むあらゆる形態の拘禁に適用される)を遵守する法的義務があることが、あらためて指摘される。このような措置は慎重に立案されるべきであり、また子どもの代替的養護に関する国連指針その他の人権基準にもしたがう形で立案されるべきである。国は、収容センターから放免された子どもが支援措置および適切な代替的養護を利用できることを確保するよう求められる。 80.にもかかわらず子どもが自由を剥奪されるときは、国は、いかなる場合にも、そのような措置を、もっとも短い期間で、かつ少なくとも人権法に掲げられた拘禁に関する最低基準を満たすような条件下で課すよう促される。これには、子どもにやさしい環境の確保、子どもの親または保護者ではない成人からの分離(たとえ子どもが16歳以上であっても同様である)、子どもの保護に関する保障措置および独立の監視が含まれる。 81.受入れセンターおよび(または)これに類する他の施設から失踪しまたは行方不明になった移住者の子どもの状況に関する懸念に照らし、国は、受入れセンターの手続/施設および環境についての、条約および子どもの代替的養護に関する国連指針に全面的にしたがった具体的指針を確保するべきである。 あらゆる形態の暴力(移住の文脈におけるものを含む)からの子どもの自由 82.国は、学校およびコミュニティ環境にとくに焦点を当てながら、国際移住の影響を受けているあらゆる年齢の子どもが、移住に関する自分自身のまたはその親の地位の如何を問わず暴力から平等に保護されることを確保するため、法的拘束力がありかつジェンダーに配慮した積極的な政策、プログラムおよび行動を採択するべきである。子どもに対する暴力に関する特別報告者および国連システム内外で同特別報告者を支援する諸機関は、連携して、かつ移住の状況にある子どもたちの意見およびニーズを全面的に考慮にいれながら、国際移住の文脈において子どもが暴力の被害をとりわけ受けやすいことを調査研究および行動における優先的問題のひとつとして取り上げていくよう奨励される。 家族生活に対する権利 83.国は、移住に関する自国の政策、法律および措置において家族生活に対する子どもの権利が尊重されること、ならびに、いかなる子どもも国の作為または不作為によってその親から分離されないこと(このような分離が子どもの最善の利益にしたがって行なわれる場合を除く)を確保するべきである。このような措置には、とくに、家族再統合の申請に対して積極的、人道的かつ迅速に対応すること、可能なときは常に移住に関わる地位の正規化のための選択肢を提供すること、および、残された子どもが通過国および(または)目的地国において親と合流できる(または親が子どもと合流できる)ようにするための家族再統合政策を、移住のすべての段階でとることが含まれるべきである。 84.国は、子どもが目的地国の国民である場合、その親の収容および(または)退去強制を行わないようにするべきである。逆に、親の正規化を検討することが求められる。決定によって子どもの最善の利益が否定されないことを確保するため、子どもは、親の入国許可、在留または追放に関わる手続において意見を聴かれる権利を認められるべきであり、かつ、親の収容命令および(または)退去強制命令に対する行政上および司法上の救済措置にアクセスできるべきである。子どもの最善の利益にしたがった、収容および退去強制に代わる措置(正規化を含む)を、法律によっておよび実務を通じて確立することが求められる。 85.国は、移住に関わる地位の如何を問わず、すべての移住者を対象として経済的、社会的および文化的権利へのアクセスを確保するよう努めるべきである。国は、移住の状況にある子どもおよび家族にとくに注意を払い、かつ残された子どもおよび(または)非正規な移住状況にある子どもを包摂しながら、社会政策、子ども期政策および家族保護政策にこのことが含まれることを確保するよう、求められる。 生活水準、経済的、社会的および文化的権利の享受 86.国は、移住の状況にあるすべての子どもが、移住に関わる自己のまたは親の地位の如何に関わらず、経済的、社会的および文化的権利ならびに基礎的サービスに対して国民である子どもと平等にアクセスできることを確保するとともに、このような子どもの権利を法律で明確にするべきである。その際、国は、移住の影響を受けている子どもおよびその家族(とくに非正規な状況にある子どもおよび家族)が、とくに保健ケア、教育、長期の社会保障および社会扶助等のサービスおよび給付に効果的にアクセスすることの妨げとなる、またはこれらの子どもおよび家族を差別する法律、政策および実務の迅速な改革を図るよう、強く奨励される。サービスにアクセスしにくくなることによってもたらされるジェンダー特有の影響(セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わる権利ならびに暴力からの安全保障など)への対応に、とくに注意が払われるべきである。国は、「残された」子どもが権利およびサービスにアクセスしようとする際に直面する困難について、市民社会および地域コミュニティと連携しながら具体的対応をとるよう求められる。サービスへのアクセスを妨げる行政的および金銭的障壁は、身元および居住を証明する代替的手段(供述証拠など)を認める等の対応を通じ、取り除くべきである。住民登録機関および公共サービス提供機関への効果的アクセスを実際上も確保するため、これらの機関を対象とした研修および指導の実施が求められる。 87.国は、住民登録機関、公共サービス提供機関および出入国管理機関の間の情報共有について、このような情報共有が子どもの最善の利益に反せず、かつ子どもまたはその家族が潜在的な危害または制裁にさらされないことを確保するため、効果的な保障措置が設けられるようにするべきである。このような保障措置は、サービス提供機関を対象として明確な指針を発布すること、および、非正規な移住の状況にある者の間でこれらの保障措置に関する意識啓発プログラムを実施すること等の手段を通じ、法律上も実際上も実施されなければならない。 88.子どもを貧困および社会的排除から保護するための政策、プログラムおよび措置には、移住の状況にある子ども(とくに、出身国に残された子ども、および、移住者である親から目的地国で生まれた子ども)も、その地位の如何に関わらず、包摂されなければならない。移住に直接間接に関係する形で人が脆弱な状況に置かれるあらゆる事態を防止し、かつこれに対応するための、国家的な社会保護制度の能力強化が図られるべきであり、また移住の影響を受けている子どもおよびその家族は、移住に関わる地位の如何に関わらず、かついかなる種類の差別もなく、出身国、通過国および目的地国における社会政策および社会プログラムの具体的重点対象集団に位置づけられるべきである。社会保護政策には、移住の状況にある家族および養育者を対象とした、これらの家族および養育者が子どもの養育責任を果たすことの便宜を図るための支援(コミュニティを基盤とする社会サービスを通じて提供されるものを含む)に関する具体的規定を含めることが求められる。これらの規定には、代替的養護を受けている子どものための特別サービスも含まれるべきであり、また移住が子どもに及ぼす心理社会的影響の緩和にも焦点が当てられるべきである。 健康に対する権利 89.国は、移住の過程、庇護を求める過程または人身取引の対象とされた過程で子どもが経験したトラウマに対応するための、十分なかつアクセスしやすい措置を確保しかつ実施するべきである。子どもの最善の利益に関する評価および認定を行なう場合も含め、すべての子どもが精神保健サービスを利用できるようにすることに、とくに配慮することが求められる。 経済的搾取からの保護 90.国は、移住に関する自国の政策および措置において、条約、ならびに、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する同第182号条約および家事労働者の適切な仕事に関する同第189号条約が考慮されることを確保するべきである。さらに、国が、労働の文脈で、とくにインフォーマル労働および(または)季節労働の状況で生じる子どもの権利侵害を特定しかつ是正するための監視制度および通報制度の設置を検討することも、勧告されるところである。 正規のかつ安全な移住経路および安定した在留資格へのアクセス 91.国は、可能なときは常に、正規のかつ非差別的な移住経路を利用できるようにするとともに、子どもおよびその家族が、家族の結合、労働関係および社会統合等の事由を根拠として長期的な正規の移住者としての地位または在留許可にアクセスできるようにするための、恒久的なかつアクセスしやすい機構を設けるべきである。これらの正規化プログラムにおいては、移住者の社会的統合の促進および子どもの権利(家族生活に対する権利を含む)の保護が目指されるべきである。 紛争状況 92.紛争によって生じた移住の状況等においても、国には条約および国際人権基準を遵守する法的義務があることを想起し、国は、紛争状況に関わる自国の移住政策および移住手続において子どもの権利に関する十分な保障措置が設けられることを確保するべきである。 V.結論(略) 更新履歴:ページ作成(2013年2月22日)。
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国連・表現の自由に関する特別報告者(Frank La Rue氏)による報告書:表現の自由に対する子どもの権利 意見および表現の自由に対する権利の促進および保護に関する特別報告者の報告書 A/69/335(2014年8月21日) 配布:一般 原文:英語 日本語訳:平野裕二〔日本語訳PDF〕 目次 I.はじめに II.特別報告者の活動 III.表現の自由に対する子どもの権利A.国際人権法上の表現の自由に対する権利 B.第13条:表現の自由に対する子どもの権利 C.第12条:自己の意見を自由に表明し、かつその意見を正当に重視される子どもたちの権利 D.第17条:情報にアクセスする子どもの権利 IV.表現の自由に対する子どもの権利の制限 V.表現の自由に対する比例性を欠いた制限の正当化事由として利用される子どもの保護 VI.子どもの表現の自由の促進A.団体を作り、かつ政治に参加する子どもたちの自由の奨励 B.子ども主導型アドボカシーの奨励 C.さまざまな情報源からの情報へのアクセスの確保 D.メディアの自主規制の促進 VII.子どもたちによるインターネットへのアクセスA.比例性を欠いた制限が採用されることについての懸念 B.インターネットの利用に関する子どもたちのエンパワーメント C.調査研究の拡大 VIII.結論および勧告 I.はじめに 1.特別報告者は、人権理事会決議25/2にしたがって提出される本報告書において、表現の自由に対する子どもの権利に焦点を当てる。 2.子どもの権利条約では、子どもを権利の全面的主体として認識することが強調されている。条約にしたがい、子どもが未成熟であることを、子どもから権利を剥奪して当該権利を成人のみが享有するようにすることの正当化事由として利用することは受け入れられない。子どもは、ミニチュアサイズの人権を認められたミニチュアサイズの人間ではないのである。それどころか、条約は子どもの市民的および政治的権利の保護を拡大するとともに、すべての子どもがその人格を可能なかぎり最大限に発達させることを確保するための具体的措置をいくつか掲げている。また、条約にしたがい、表現の自由に対する権利は子どもの成熟にともなって漸進的に行使されるべきである。 3.子どもを害から保護することおよびおとなが子どもを指導する義務の重要性について疑義を唱える者は誰もいない。しかしながら、年齢が低いことおよび相対的に未成熟であることの結果として子どもが直面する可能性のあるリスクが過剰に言いたてられ、表現の自由に対するおとなおよび子ども双方の権利を不当に制限することの弁明として利用されることがあまりにも多すぎる。このような不当な制限は、何が有害情報であるかについての定義の曖昧さおよび幅広さから生じることもあれば、単に学校、家庭および社会一般における権威主義的態度が暗黙のうちに受け入れられていることによって固定化されることもある。 4.インターネットが開発と人権を促進するための不可欠な手段として広く認められるのであれば、インターネットが子どもにとって不可欠な手段であることも理の当然である。しかし、暴力または虐待の目的でこれらの手段を利用することについての懸念が生じている。デジタル・コミュニケーションの利用を広範に制限することおよび検閲を行なうことは、単に受け入れられないのみならず、これらの懸念の解決策としても実効性を持たない。人権規範が求めているのは、コミュニケーションに対する制限が必要性および比例性の厳格な基準に一致する形で行なわれる、バランスのとれたアプローチである。 5.特別報告者は、本報告書で、表現の自由に対する子どもの権利が国際人権条約でどのように規定されているか、子どもの権利条約にとくに注意を払いながら明らかにする。続いて、この権利の実現を妨げている重要な障壁(表現の自由および情報へのアクセスに対する子どもの権利の直接の制限、ならびに、表向きは子どもの保護を目的としているものの実質的に表現の自由に対するおとなの権利も制限している全般的制限を含む)について詳述する。また、表現の自由に対する子どもの権利の保護および促進に関わる若干の経験についても述べる。インターネットが現代社会に与えている未曾有の影響に鑑み、特別報告者は、子どもの権利の促進にとっての新たなテクノロジーの重要性と、この分野で浮かび上がりつつあるいくつかの具体的懸念についても取り上げる。最後に、国際人権法が定める関連の基準に国内法および国内実務を適合させることに関する勧告を行なう。 II.特別報告者の活動 6.(略) 7.(略) 8.本報告書の作成にあたり、特別報告者は、表現の自由に対する子どもの権利に関する関連の研究の検討および専門家との協議を行なった。また、Child Rights International Networkが蓄積した情報も活用している。加えて、特別報告者は、リオデジャネイロ(ブラジル)、フィレンツェ(イタリア)、メキシコシティおよびヨハネスブルグ(南アフリカ)でこの問題に関する専門家協議を開催した。 III.表現の自由に対する子どもの権利 A.国際人権法上の表現の自由に対する権利 9.表現の自由は、市民的および政治的権利に関するすべての国際・地域人権文書に掲げられている [1]。市民的および政治的権利に関する国際規約第19条では、表現の自由に対するすべての者の権利(国境にかかわりなく、あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える権利を含む)が承認されている。同条に基づき、あらゆる形態の表現およびその普及手段が保護の対象となる(第2項参照)。この権利には、規約第19条第3項および第20条に掲げられた制限に服することを条件として、他者に伝達しうるあらゆる種類の考えおよび意見の通信を行ないかつ受けることも含まれる。 [1] 世界人権宣言第19条、市民的および政治的権利に関する国際規約第19条、欧州人権条約第10条、米州人権条約第13条および人および人民の権利に関するアフリカ憲章第9条参照。 10.子どもも規約に定められたすべての市民的権利から個人として利益を得る [2] にもかかわらず、従来、表現の自由に対する権利は子どもたちと関連づけられてこなかった。ジュネーブ子どもの権利宣言(1924年)および〔国連・〕子どもの権利宣言(総会決議1386 (XIV))など、子どもについて取り上げた従前の国際文書では、子どもは未成熟さゆえに意味のある選択を行なうことはできないという憶測に基づき、この権利に関するいかなる言及もなかった。子どもの権利条約は、子どもの権利および固有の尊厳の保護における分水嶺である。従前の国際法文書とは異なり、条約は、子どもに対するおとなの義務を基盤とするアプローチ(子どもの権利宣言参照)から権利の保有者としての子どもに焦点を当てるアプローチへの、重点の劇的な転換を促している。 [2] Official Records of the General Assembly, Forty-fourth Session, Supplement No. 40 (A/44/40), annex VI, para. 2. B.第13条:表現の自由に対する子どもの権利 11.子どもの権利条約は、表現の自由に対する子どもの権利を宣明した最初の国際法文書である [3]。第13条の文言は、市民的および政治的権利に関する国際規約第19条第2項および第3項の文言を緊密になぞっている。一部の論者によれば、第13条は規約第19条の規定を、子どもに適用するための試みをほとんど行なうことなく「剽窃」したものにすぎないため、それ自体ではほとんど価値がない [4]。しかし、意見を聴かれる権利および情報にアクセスする権利を保護する条約第12条および第17条に掲げられた規定とあわせて読めば、第13条は、表現の自由に対する子どもの権利について、規約第19条による保護よりも優れているとまではいかなくとも、同等の水準の保護を与えているということができる。 [3] 子どもの権利および福祉に関するアフリカ憲章(1999年発効)第7条も参照。 [4] Sylvie Langlaude, "On how to build a positive understanding of the child s right to freedom of expression", Human Rights Law Review, vol. 10, No. 1 (2010), pp. 33-66. 12.第13条では子どもの発達しつつある能力について言及されておらず、また表現の自由に対する権利を行使するための最低年齢もしくは一定の成熟度も定められていない。この意味で、表現の自由には発達の側面があると捉えられてきた。表現の自由の目的は、子どもたちが、社会において他者とともに精神および自分自身を発達させ、かつ公的生活に参加する市民へと成長していけるようにするところにあるからである [5]。子どもの表現の自由は、子どもが自律的に意見を表明する能力を身につけたときまたは子どもがティーンエイジャーになったときから始まるのではないし、そのようなことはありえない。子どもが、事前に機会を与えられることもなく発達し、18歳という魔法の年齢に達した途端に自律的な存在として社会に参加するようになるなどと期待することはできないのである [4]。 [5] Herdis Thorgeirsdottir, A Commentary on the United Nations Convention on the Rights of the Child Article 13 - The Right to Freedom of Expression (Martinus Nijhoff Publishers, 2006). 13.とはいえ、子どもはおとなではなく、子どもが発達しつつある能力を有しているという事実を回避することもできない。子どもの権利条約第5条に掲げられたこの原則は、単純に、子どもの「子どもらしさ」を考慮する必要性と、子どもの発達および権利行使のあり方はおとなのそれとは異なるという事実を反映したものにすぎない。条約第5条に基づいて親および子どもに責任を負う他の者に付与されている役割が示唆するのは、子どもが表現の自由に対する権利を享有する度合いは、実際上、子どもに特化したものではない国際人権文書において同様の文言で表されている権利をおとなが享有する度合いほど幅広くはないということである [6]。表現の自由に対する権利の行使は子どもの成熟とともに拡大する一方、第5条に基づいて親が行なう適切な指示および指導はそれにしたがって後退していく [4]。 [6] Aoife Nolan, Human Rights Law in Perspective Children s Socio-Economic Rights, Democracy and the Courts (Oxford, Hart Publishing, 2011). 14.条約第13条の文言は全体として規約第19条の文言をなぞっているが、一部の規定は省略されている。第一に、第13条には、干渉されることなく意見を持つ権利(規約第19条第1項)が含まれていない。ただしこの権利は、第13条第1項に黙示的に含まれているか、または条約第12条もしくは第14条に包含されていると推論することもできよう [7]。第2に、第13条には規約第19条第3項の第1文(「2の権利の行使には、特別の義務および責任をともなう」)が含まれていない。現代的表現媒体の強力な影響力ゆえに規約に導入されたこの1文を含めることは、子どもの表現の自由との関連では必要ないと判断されたものと思われる [7]。 [7] Sharon Detrick, A Commentary on the United Nations Convention on the Rights of the Child (Martinus Nijhoff Publishers, 1999). 15.表現の自由に対する権利の適用範囲はかなり広い。子どもの権利委員会によれば、条約第13条は、国家に対して行使できるだけではなく、家庭、コミュニティ、学校、公共政策の決定および社会においても行使できる権利を付与するものである [4]。 16.とくに、家庭は、表現の自由に対する子どもの権利の実現におけるもっとも重要な柱のひとつと考えられている。親が子どもの養育および発達について第一次的責任を負っており、かつ子どもの最善の利益を基本的関心事としていることは、広く認められているところである。委員会は、家庭の構造を、子どもが自由な意見表明を学び、それによって社会に参加するために必要なスキルを身につけられるような参加型のものにすることを奨励している。家族構成員の義務には、子どもの意見を聴き、かつそれを真剣に受けとめる義務や、条約上の権利の実現について子どもを支援する義務が含まれる(CRC/C/43/3, paras. 999-1,002〔訳者注/「意見を聴かれる子どもの権利」に関する委員会の一般的討議の勧告、パラ16-19〕参照)。 情報を求める権利 17.情報を求める権利(子どもの権利条約第13条第1項)は、情報、とくに公的機関が保有する情報にアクセスする権利としばしば関連づけられてきた。この権利は、子どもが国内外の多様な情報源からの情報および資料にアクセスできるようにすることを目指す、条約第17条の規定とも密接に関連している。 18.情報を求めることおよび情報にアクセスすることは、子どもの発達にとって必要不可欠であるとともに、社会生活への参加に欠かせない前提条件である。したがって、子どもの権利委員会はこの権利を、公的機関が保有する情報にアクセスできるようにする積極的義務を国に課すものと解釈してきた。自由権規約委員会の見解によれば、この権利を実効あらしめるために、国は、公益に関わる情報に容易に、迅速に、効果的かつ実際的にアクセスできることを確保するためにあらゆる努力を行ない、かつ、ある者が(情報の自由法などの手段により)情報にアクセスできる必要な手続を制定するべきである(CCPR/C/GC/34、パラ19参照)。 情報を受ける権利 19.子どもは、あらゆる種類の情報および考えを受ける権利も有している。子どもの権利委員会がその総括所見および勧告でこの規定に言及することは多くない。打ち立てられつつある原則は、子どもを異なる文化に親しませるための措置がとられなければならないこと、メディアは子どもが他の文明について学ぶのを援助しなければならないこと、および、すべての子どもを対象とした児童文学の刊行、普及および提供を奨励するための措置がとられるべきであることぐらいである [4]。 20.情報を受ける権利は、教育に対する子どもの権利を締約国が承認した第28条、および、子どもの教育においてはとくに子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させることを目指すものとすると強調されている第29条と、密接に関連している。 情報を伝える権利 21.最後に、子どもは他者に情報を伝える権利を有する。情報を受ける権利の場合と同様、子どもの権利委員会の先例にはこの権利への言及がほとんど見られない。委員会は、たとえば、子どもには子どもの雑誌、テレビその他のメディアに寄与する権利、学校の内外で政治的活動に従事する権利およびインターネット上のチャットルームを開設する権利があると述べている [4]。 許容される制限 22.子どもの権利条約第13条第2項では、表現の自由に対する権利の行使には一定の制限を課することができると明示的に規定し、当該制限を掲げている。子どもの権利委員会は、この権利に対する制限として許容されるものについての包括的先例を発展させていない [4]。ただし、規約第19条第3項の解釈および適用について自由権規約委員会が行なった分析は、表現の自由に対する子どもの権利についても必要な修正を加えて当てはめることができる(CCPR/C/GC/34、パラ21参照)。 23.第1に、制限は公衆がアクセスできる法律によって定められ、かつ、個人が自己の行動をしかるべく規制できるよう十分に精確に定式化されていなければならない。第2に、制限は、第13条第2項(a)および(b)に掲げられた事由、すなわち他の者の権利または名誉の尊重および国の安全、公の秩序または公衆の健康もしくは道徳の保護に基づいてのみ課すことができる [8]。第3に、制限は必要性および比例性の厳格な基準に一致するものでなければならない。 [8] 子どもの権利条約の起草過程においては、制限の正当化事由に追加する形で「子どもの霊的および道徳的福祉」への言及を含めるという提案が、そのような制限を子どもにのみ課すのは不公正となること、および、その問題は情報へのアクセスに関する第17条ですでに扱われていることを理由に却下されている。Sharon Detrick, A Commentary on the United Nations Convention on the Rights of the Child参照。 C.第12条:自己の意見を自由に表明し、かつその意見を正当に重視される子どもたちの権利 24.子どもの権利条約第12条は、国際人権法において他に例を見ない規定である。これは子どもだけが有する権利であって、おとなが有する権利ではない。子どもは、市民的および政治的権利に関する国際規約に明示的に掲げられた、自己に関わるあらゆる状況について意見を表明する一般的権利を有していないためである [4]。子どもの意見に常に耳が傾けられるわけではないという事実が、意見を聴かれる一般的権利を条約に含めることの正当な理由となる。第12条の目的は、おとなが有する全面的自律権を有しない一方で権利の主体でもある子どもの法的・社会的地位に対応するところにある(CRC/C/GC/12、パラ1参照)。 25.同条第1項は、自己の意見をまとめる力のある子どもに対し、自己に影響を与えるすべての事柄に関して自由に意見を表明する権利と、その後、その子どもの年齢および成熟度にしたがって当該意見を正当に重視される権利を付与している。第2項は、自己に影響を与えるいかなる司法的および行政的手続においても意見を聴かれる子どもの権利を定めている。 26.意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられるすべての子どもの権利は、条約の基本的価値観のひとつを構成するものである。子どもの権利委員会は、第12条を条約の4つの一般原則のひとつに位置づけてきた。これは、同条はそれ自体でひとつの権利を定めているというのみならず、他のあらゆる権利の解釈および実施においても考慮されるべきであることを強調するものである(CRC/C/GC/12、パラ2参照)。 27.第12条にしたがい、締約国は、当該権利を自国の法体系において承認する義務、子どもに影響を与えるすべての行動および意思決定プロセスへの子どもの積極的関与を容易にするために適切な機構を整備する義務、および、表明されたこれらの意見を正当に重視する義務を履行する義務を負う。子どもの権利委員会は、子どもの意見に耳を傾けているように見せることは相対的に難しくないものの、子どもの意見を正当に重視するためには真の挑戦が必要であると指摘してきた。委員会によれば、子どもの意見に耳を傾けることは、それ自体が目的とされるべきではなく、むしろ、国が、子どもたちとの交流および子どもたちのための行動において、子どもの権利の実施にこれまで以上の配慮を払うようにするための手段として見なされなければならない(CRC/GC/2003/5参照〔パラ12〕)。 28.表現の自由に対する権利は、第12条に掲げられた、意見を聴かれる権利と混同されることが多い。子どもの権利委員会は、どちらの条文も強く関連し合っているとはいえ、これらの条項は異なる権利を定めたものであって混同されるべきではないと考えている。第12条は、子どもに影響を与える事柄について具体的に意見を表明する権利、および、子どもの生活に影響を及ぼす行動および決定に関与する権利に関連している。この規定が、締約国に対し、子どもに影響を与えるあらゆる行動および意思決定への子どもの積極的参加を容易にし、かつ表明されたこれらの意見を正当に重視する義務を履行するために必要な法的枠組みおよび機構を導入する義務を課している一方、表現の自由は、締約国によるこのような関与または反応を要求するものではない。ただし委員会は、子どもの自由な意見表明を可能とする環境をつくり出すことは表現の自由に対する権利を行使する子どもの能力の構築にも寄与すると考えている(CRC/C/GC/12、パラ81参照)。 29.表現の自由との関連で第12条が有するもうひとつの興味深い側面は、参加が重視されていることである。この文言は同条では用いられていないものの、子どもの権利委員会は、さまざまな機会に、子どもは社会に参加することによって意見を聴かれ、公共の問題に関する見聞を広め、かつ自国の生活において役割を果たせるようになると指摘してきた(たとえばCRC/C/SR.379、パラ55参照)。参加は、家庭、学校および社会一般において奨励されるべきであり、政治的、社会的、経済的および文化的生活に関わるものであるべきであり、かつ、既存の諸制度を通じておよび子どもに特化した機関の創設を通じて行なわれるべきである。子どもの参加権を奨励することの理論的根拠は、子どもの発達を促進するところにある。子どもが学校およびコミュニティの生活に参加する経験を持たなければ、長じて社会の全面的構成員になることは期待できないからである(たとえばCRC/C/SR.277、パラ50参照)。 D.第17条:情報にアクセスする子どもの権利 30.子どもの権利条約第17条は、情報にアクセスする子どもの権利を扱うとともに、そのような情報の提供をマスメディアに対して奨励する際の国の役割について取り上げている。この規定の目的は、子どもが国内外の多様な情報源からの情報および資料(とくに自己の福祉および健康の促進を目的とするもの)にアクセスできるようにすることである。同条は、マスメディアが果たす重要な機能も認めるとともに、第17条に基づく子どもの権利を実施するために締約国がとる必要のある多くの措置を列挙している。これらの権利には、とくに書籍、雑誌、新聞、テレビ、ラジオ番組および図書館を通じて情報を求めかつ情報にアクセスする積極的権利も含まれる。 31.締約国は、第17条(e)に基づき、子どもの福祉に有害な情報および資料から子どもを保護するための適切な指針を発展させるよう求められている。したがって、子どもは成熟にともなってますます広範囲の資料へのアクセスを認められるべきであるが、その発達しつつある能力次第で、発達にとって有害となる可能性がある資料から保護されるべきでもある。委員会の先例では、「有害な資料」の包括的定義は示されておらず、暴力的、人種主義的またはポルノグラフィー的資料への一般的言及が見られる程度である。 32.この権利は、条約第13条に掲げられた、情報を求める権利と密接に関連している。この権利の行使は、子どもが見聞を広め、よって社会生活に参加できるようにすることを目的とするものだからである。子どもの権利委員会は、この権利を充足することは意見を聴かれる権利(第12条)の効果的行使の前提条件であるとも指摘してきた。委員会は、子どもは自己に関わるすべての問題についての、子どもの年齢および能力にふさわしい形式による情報(たとえば子どもの権利、子どもに影響を与える手続、国内法令および国内政策、地元のサービスならびに不服および苦情の申立て手続に関連する情報)にアクセスできなければならないと説明してきた。 33.委員会はまた、メディアが、子どもの意見表明権に関する意識を促進することおよびそのような意見表明の機会を提供することのいずれにおいても重要な役割を果たすとも指摘してきた(CRC/C/GC/12、パラ83参照)。この規定に基づくメディアのその他の義務には、さまざまな情報源からの情報へのアクセスを提供すること、若者が社会に対して行なう前向きな貢献を描くこと、子どものためのサービス、施設および機会に関する情報を普及すること、平等主義的な原則および役割を促進すること、ならびに、ポルノグラフィー、薬物および暴力の描写水準を最低限に留めることが含まれる(総会決議45/112付属文書〔リャド・ガイドライン〕参照)。 IV.表現の自由に対する子どもの権利の制限 34.子どもたちは、子どもの自由なコミュニケーションを認めることのリスクを過剰に言い立て、かつ子どもの主体性を過小評価することの多いパターナリスティックな態度が確立されていることの結果として、表現の自由に対する権利の実現を妨げる特有のハードルに直面している。加えて、子どもたちの権利は、おとなの表現の自由を阻害するすべての障壁の影響も受ける。 35.子どもの権利委員会は、多数の国々に対し、家庭、学校および社会一般を含むあらゆる領域で子どもに対する伝統的態度が残っていることにより、自由な自己表現に対する子どもたちの権利の受容が引き続き遅れていると指摘してきた(たとえばCRC/C/SGP/CO/2-3〔シンガポール〕、パラ33およびCRC/C/ECU/CO/4〔エクアドル〕、パラ40参照)。子どもたちの表現の自由を妨げる障壁は、子どもに対するおとなの権力に疑問が呈されないままの環境においてとりわけ蔓延している。教育現場は、子どもは自分自身の権利、意見および気持ちを有する人間であるという認識と子どもに対するパターナリスティックな見方との間に存在する緊張の一部が、特段のわかりやすさをともなって浮き彫りになる環境である。 36.教育の目的に関する一般的意見1号のパラ8で、子どもの権利委員会は次のように述べている。 「子どもは校門をくぐることによって人権を失うわけではない。したがって、たとえば教育は子どもの固有の尊厳を尊重し、かつ第12条第1項にしたがった子どもの自由な意見表明および学校生活への参加を可能にするような方法で提供されなければならない」 37.しかしながら、多くの国では、教育とはおとなが子どもをあらかじめ定められた形に成型するための手段であるという考え方のゆえに、子どもたちが自由な自己表現の権利を否定されている。このことは、たとえば生徒に学校の運営方法についての意見表明をさせないことが多い、権威主義的な学校環境および教育手法の蔓延(CRC/C/KOR/CO/3-4〔韓国〕、パラ40参照)に明らかである。場所によっては、意見を発展させかつ表明するよう子どもに奨励する参加型の教育手法ではなく、暗記学習が引き続き標準とされているところもある(CRC/C/15/Add.148〔サウジアラビア〕、パラ39)。 38.生徒が団体を作ることおよび政治的意見または論争を招きかねない意見を表明することを認めていない学校は多い。1969年のティンカー対デモインズ独立コミュニティ学校区事件(Tinker v. Des Moines Independent Community School District)は、おそらく子どもの表現の自由の保護に関する最初の重要判例であろう。1965年12月、3人の生徒(13歳、15歳および16歳)が、ベトナム戦争に抗議するため、平和のシンボルをあしらった黒い腕章を着けて学校に行くことを計画した。その抗議の計画を耳にした地方学校当局は、学校における腕章の着用を禁止し、関与した生徒らを停学にした。生徒らはアメリカ自由人権協会の支援を得て裁判所に不服申立てを行ない、その申立ては、1969年、アメリカ合衆国最高裁判所によって認められた。 39.司法制度は、根深い権威主義的慣行を修正するうえでしばしば重要な役割を果たす。いまのところ、表現の自由および情報へのアクセスに対する子どもの権利を確認した裁判所の決定例はほとんどない。しかし、とくに米国では教育現場における実例が増えつつある。たとえば、フロリダのある高校生は、学校でゲイの権利を支持するいかなるシンボルも着用してはならないとされた。校長が、虹をあしらったいかなるシンボルも生徒にゲイの人々のセックスを連想させると考えたためである。連邦裁判所判事は、前述のティンカー事件判決を引用した決定で、学校は当該生徒の権利を侵害したと判示した [9]。 [9] American Civil Liberties Union, "Federal judge rules that students can t be barred from expressing support for gay people" (13 May 2008). 40.生徒が運営する刊行物は、生徒が意見を表明できるもうひとつの重要な手段である。これらの刊行物は、若者にとっての関心事であり、おとなが議論に居心地の悪さを覚えるかもしれない問題についての報告が掲載されることから、支援の供給源となる。しかし、生徒の記事は、ティーンエイジャーの妊娠や親の離婚の影響等の問題を取り上げているという理由で検閲の対象とされてきた。生徒によるソーシャルメディアへの投稿もますます監視の対象とされるようになっており、場合により、子どもが学校の批判を投稿したという理由で退学になることもある。 41.文化的活動への子どものアクセスも、正当な理由なく検閲の対象とされる場合がある。1993年のドゥンドゥズ・チシザ対ケイト・カインジャ大臣事件(Dunduzu Chisiza Jr. v. Minister Kate Kainja)で、マラウィの裁判官は、公立学校で独立系グループが行なうすべての劇その他のパフォーマンスを禁じるのは表現の自由の侵害であると異議を申立てた役者の申立てを認容した [10]。一部の学校が宗教的理由で音楽の自由を禁じているという報告もある。 [10] Article 19, "Kid s talk freedom of expression and the UN Convention on the Rights of the Child" (1999)参照。 42.学校カリキュラムの内容の制限も、多様な情報源からの情報に対する子どものアクセスに影響を及ぼす場合がある。これとの関連で、学校管理者が支持する考えに逆行する考えを記載した書籍および教材が禁じられることも、もうひとつの懸念事項である。たとえば、1982年の教育委員会対ピコ事件(Board of Education v. Pico)で、米国の裁判所は、思想上の理由で書籍を学校図書館から取り除くことはできないと判示している。 43.情報を直接禁止することに加え、一部の学校カリキュラムでは、歴史に関する偏った見方または特定の集団(女子、セクシュアルマイノリティ、民族的マイノリティまたは障害のある子どもなど)に対する偏見のある見方が提示される場合もある。自分自身の意見を形成する子どもの自由に悪影響を与え、かつ逆に差別を固定化させることにつながる可能性があるこのような状況については、さまざまな国連条約機関が各国に対する勧告のなかで提起してきた。 44.この問題については欧州社会権委員会も取り上げている。同委員会は、2009年、性教育を取り上げたクロアチアの学校カリキュラムが性的指向を理由とする差別を行なっていると認定した。同委員会は、カリキュラムに掲げられた一部の説明は同性愛者にスティグマを付与するものであり、かつ否定的な、歪められた、非難されるべき、かつ品位を貶めるステレオタイプに基づいていると指摘している [11]。 [11] International Centre for the Legal Protection of Human Rights v. Croatia. 45.表現の自由に対する子どもの権利を制限することの影響は、校門の内側には留まらずに公的生活にも及ぶ。子どもたちは、おとなとまったく同様に、政治的意見を表明したことを理由に過度の暴力または恣意的拘禁の対象とされる可能性がある。たとえば、子どもの権利委員会は最近、シリア・アラブ共和国に対し、南部の街であるダルアで、校舎の壁にペンキで反政府的な落書きを行なったとして罪に問われた8~15歳の児童生徒の集団が逮捕および隔離拘禁の対象とされたこととの関連で、このような人権侵害があったことを強調した(CRC/C/SYR/CO/3-4、パラ46参照)。ベラルーシに対しても、2010年12月の大統領選挙との関連で行なわれたデモの際に青少年が拘禁されたことについて懸念を表明している(CRC/C/BLR/CO/3-4、パラ35参照)。 46.法律による比例性を欠いた制限は、おとなおよび子ども双方の権利への干渉となる。これには、たとえば表現の自由は「イスラムの原則」に照らして解釈しなければならないという要件を引用する曖昧な文言の制限条項を掲げた法律や、安全保障に対するリスクの過度に広範な解釈が含まれる。これは、子どもの権利条約第13条第2項および第15条に定められた制限を超える可能性がある(CRC/C/15/Add.254〔イラン〕、パラ40およびCRC/C/PRK/CO/4〔北朝鮮〕、パラ27-28参照)。 47.平和的集会に対する子どもの権利の不当な制限には、子どもの表現の自由を妨げる一般的な障壁の一部が反映されている。平和的集会および結社の自由に対する権利に関する特別報告者は、最近の報告書で次のように指摘している。 「若者が一部のデモに参加することについて安全上の懸念があることもあろう。しかし、……マレーシアの法律のような法律〔15歳未満の子どもはデモに参加できないとするもの〕は、そのような懸念に具体的に対応するのに十分なほど限定されたものとなっていない。むしろ、特定の年齢の個人を対象とする全面的禁止は、住民のある層全体について平和的な集会に参加する権利を例外なく消滅させるものであって、子どもの権利条約第15条に反している」(A/HRC/26/29、パラ24参照) V.表現の自由に対する比例性を欠いた制限の正当化事由として利用される子どもの保護 48.分野によっては、一部のタイプの情報へのアクセスに関して子どもの安全および福祉を懸念すべき正当なかつ理解できる理由が存在する場合もある。たとえば、多くの国は、とくに子どもの保護を目的として放送(とくにテレビ)を規制している。国による規制にはたとえば何らかの年齢別放送制限システムが含まれ、かつそのシステムを執行するための独立機関が設置されていることが多い。子どもにはふさわしくないと一般的に考えられている内容には、性的に露骨な内容、暴力および攻撃的言葉が含まれる。ただし、規制はメディアの自由に相当の影響を与えかねない。そのうえ、何が有害な情報にあたるかの定義は主観的なものである。したがって、子どもの保護を目的とするあらゆる規制および当該規制を執行するために設けられた機構は、おとなおよび子ども双方の権利を縮小させる比例性を欠いたまたは恣意的な制限が課されることを防止する目的で、開かれた、かつ透明なやり方で定期的に再検討することが求められる。さらに、これらの規制の執行を委ねられた機関の独立性を確保することはきわめて重要である――たとえば当該機関の構成に関する規則は、とくに政治的勢力または経済的利害によるいかなる干渉からも保護されるような形で定めることが求められる。 49.たとえばインターネットのフィルターの設定方法の決定にあたって有害な情報を曖昧かつ広範に定義すれば、結果として、十分な情報に基づく決定を行なうための支えとなりうる情報(性教育および薬物の使用等の問題に関する誠実な、客観的なかつ年齢にふさわしい情報を含む)に子どもがアクセスできなくなりかねない。これは、リスクに対する子どもたちの脆弱性を軽減するのではなくむしろ悪化させてしまう可能性がある(さらに詳しくはインターネットについて取り上げた後掲VII参照)。 50.有害な資料から子どもを保護するために事前検閲を行なうことは、国際人権基準に逆行する比例性を欠いた制限の一例である。たとえば、『最後の誘惑』(オルメド・ブストスほか)対チリ事件(The Last Temptation of Christ (Olmedo Bustos et al) v. Chile)において、米州人権裁判所は、チリ政府が子どもの道徳を保護するためにマーティン・スコセッシの映画『最後の誘惑』を禁止したことは米州人権条約第13条(思想および表現の自由)の違反であったと判示した。同裁判所は、判決理由として、映画館への子どもの入場を規制することなど、事前検閲よりも制限度の低い措置をとることによって子どもを保護することは容易であったと述べている。 51.事前検閲に関するより最近の判例(南アフリカ印刷媒体連合ほか対内務大臣ほか〔Print Media South Africa and Another v. Minister of Home Affairs and Another〕事件)で、南アフリカ高等法院は、南アフリカ映画および出版物法(1996年法律第65号)の改正は表現の自由に対する憲法上の権利を侵害していると宣言した。同改正は、子どもが年齢にふさわしくない資料に接することを防止し、かつ児童ポルノを禁止する目的で、出版者に対し、出版物を提出して事前の承認を得るよう(若干の例外を除いて)要求するものであった。同決定は、事前抑制システムについての懸念ならびに出版物の分類に関する曖昧かつ過度に広範な基準についての懸念を指摘している。 52.子どもを保護しなければならないという主張は、情報への子どものアクセスのみならずおとなの権利に対する制限をも正当化するために子どもがますます利用されるようになってきているという、新たなパターンの一部となっている。多くの場合、制限は、子どもを有害な情報から保護したいという、真摯なかつ善意に基づく願いに根ざしたものであるが、差別および検閲を擁護するために子どもが利用される場合もある。 53.もっとも憂慮されるのは、子どもを保護しなければならないという主張が、たとえばレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーに関する問題についての情報へのアクセスを妨げるために、またそれによってセクシュアルマイノリティへの差別を正当化するために利用されていることである。ロシア連邦では、子どもを有害な情報から保護する行政法の改正が2013年7月に施行され、子どもたちの間で「伝統的ではない性的関係を宣伝すること」が違法化された [12]。平和的集会および結社の自由に対する権利に関する特別報告者は、他の委任受託者らとの合同声明で当該法についての懸念を公に表明した。子どもの保護を理由としてロシアの反同性愛者法を正当化しようとする論拠は、欧州人権裁判所によっても、2011年のアレクセイエフ対ロシア事件(Alekseyev v. Russia)において拒絶された。このような批判にもかかわらず、他の国々も追随している。ウクライナでは、2013年、子どもを対象とする「同性愛関係の宣伝」を禁止する法案を議会が検討するべきである旨の勧告が行なわれた [13]。同法案では、「宣伝」は、同性間の関係に関する情報の拡散を目的としたあらゆる公的な活動と定義されている。2014年6月には、キルギスタン議会の人権委員会が、「伝統的ではない性的関係に対する肯定的な態度の形成を目的とした」情報の普及を犯罪化する法案を承認した [14]。 [12] ロシア連邦法第135-F3号(2013年7月29日)参照。 [13] 子どもを対象とする同性愛関係の宣伝の禁止に関する法案第1155号(2011年6月)参照。 [14] 子どもの健康または発達にとって有害な情報からの子どもの保護に関する法案(2014年)参照)。 VI.子どもの表現の自由の促進 54.表現の自由に対する子どもの権利の保護することとは別に、国は子どもの表現の自由を促進する義務も負っている。子どもの表現の自由を保障するためにおとなが組織する音楽、芸術および演劇等の活動への子どもの参加を奨励するだけでは十分ではない。子どもたちは、処罰を恐れることなく、自分たちの意見を口頭またはその他の手段で詳しく述べる、満足に足る機会および空間を持てるべきであり、かつ多様な情報源からの情報に国境を越えてアクセスできるべきである――このことは、すべての子どもに対し、差別なく適用される。このような積極的義務は、公立図書館、音楽指導等の活動および遊び場等の施設のための資金が真っ先に削減されることの多い経済危機の際にも留意されるべきである。子どもたちの表現の自由を積極的に促進するために考えられる方法の若干例を以下に示す。 A.団体を作り、かつ政治に参加する子どもたちの自由の奨励 55.若者市長制から子ども議会に至るまで、子どもたちが政治に参加するための仕組みがますます用意されるようになりつつある。アイスランドでは、財政危機後の2008年、市民による憲法の書き換えを行なうことが合意された。この一環として、憲法改正プロセスで子どもおよび若者の意見も考慮されることを確保する目的で「若者憲法プロジェクト」が設置された。ドミニカ共和国では、学校における安全な飲料水の供給等の問題を扱う自治会評議会が創設され、若者による選挙でその構成員が選ばれている。 56.政治に新たな世代の子どもたちの関与を得ることは、政治文化を刷新し、かつ選挙への参加を増進させるために役立つ。最低投票年齢を16歳に引き下げた国もいくつかあるが、これは、子どもたちの意見の正当性を公的に認め、かつ子どもたちの政治参加を奨励することにつながる前向きな一歩である。あらゆる年齢の子どもたちが、自ら希望するのであれば、公共政策に関する政治的プロセスおよび協議に何らかの形で関与する機会を与えられるべきである。 B.子ども主導型アドボカシーの奨励 57.子どもたちが主導するキャンペーンは、重要な議論を喚起し、かつ社会全体に利益をもたらしてきた。子ども主導型アドボカシーの取り組みを展開する際には学生連合が中心的役割を果たすことが多い。たとえば2011年には、チリの高校生および大学生数千人が法外な教育費負担への抗議を行なった。これらの学生による動員の政治的影響は、チリの教育制度に関して続けられている議論のなかで引き続き感じられている。教育費負担に対する同様の学生による抗議はいくつもの国で行なわれてきた。 58.韓国では、教育制度内の権威主義的慣行に反対する大規模な社会的動員を高校生が進めてきた。生徒によって喚起された公的議論の結果、2012年、ソウル特別市議会は児童生徒権利条例を採択した。これは、とくに生徒の抗議権、体罰の禁止、宗教的活動への参加義務の撤廃ならびにレズビアン、ゲイ、トランスジェンダーである生徒ならびに妊娠した生徒の差別からの保護を確保するものである。この動員の流れで韓国の生徒により結成された韓国青少年権利行動は、引き続き生徒の積極的活動を推進している。 59.英国の13歳の少年は、自分が通う学校の差別的な服装規則(夏期に女子のスカート着用を認めながら男子の短パン着用は認めない)に反対して立ち上がった。クリス・ホワイトヘッドは、男子のスカート着用は禁じていないという、制服に関する学校方針の抜け穴を利用した。仲間の生徒約30名が抗議に加わり、これがきっかけとなって学校は政府に関する方針を見直した。一方、クリス・ホワイトヘッドは自由人権賞候補にノミネートされた [15]。 [15] Lucy Sherrif, "Chris Whitehead, schoolboy who wore skirt to school, up for human rights award", Huffington Post (21 November 2011). 60.インドでは、「児童婚に反対する女子クラブ」ネットワークのメンバーが、若年婚の有害な影響に関する啓発活動を行なうことにより、娘を幼くして婚姻のために手放すことがないよう家族を説得する支援をしている。このような活動は、家族の圧力に抵抗したいと考える女子だけではなく、ジェンダーを基盤とする期待にさからえば娘が排斥されたままになると恐れる親にとっても命綱となっている [16]。 [16] Melanie Kramers, "Indian girls persuade parents they are too young for marriage", Guardian, 29 June 2011. C.さまざまな情報源からの情報へのアクセスの確保 61.子どもたちが自分自身の意見を形成し、かつ見識および責任のある市民になれるようにするためには、さまざまな情報源からの情報にもアクセスできなければならない。このようなアクセスは、多くの子どもたち、とくに孤立したコミュニティで暮らす子どもおよび自由を奪われた子どもにとっては限られたものとなっている。子どもの権利委員会も、マイノリティ集団にとっての情報のアクセス可能性(情報がこれらの集団のニーズに十分に関連しておらず、またはこれらの集団自身の言語でアクセスできるようになっていない可能性)および障害のある子どもにとっての情報のアクセス可能性の問題を提起してきた。 62.委員会は、「子どもとメディア」に関する一般的討議をもとにまとめられた勧告において、子ども向けの書物、雑誌、演劇その他の形態の表現の制作および普及を確保するための国による予算的支援の重要性および国際協力を通じた援助の重要性を確認している(CRC/C/15/Add.65、パラ256)。コミュニティ放送および公共放送への投資は、多様な情報源からの情報へのアクセスを促進するうえで、また子どもたちの声をメディアに反映させるうえで中心的役割を果たすことが多い。たとえばアルゼンチンでは、通信および視聴覚サービス法により、公共放送機関を対象として、子どもたちのための、および商業放送によって軽視されているその他の層のための番組を放送する時間を確保する義務が定められている。同法の実施の監督を委ねられている公的機関は、通信および視聴覚サービスについて議論するための公聴会(子どもたちを対象とするものを含む)を推進している。また、最近では、生徒が主導して自分たちの学校で行なうラジオ放送活動も支援してきた。さらに、アルゼンチン教育省は、コンテンツ制作への子どもの積極的参加を通じたものも含む、子どもに配慮した教育番組制作の促進を目的としたチャンネルの開設を支援している。 D.メディアの自主規制の促進 63.予算的支援を提供することに加え、国は、メディア団体に対し、子どもたちの取り上げ方および関与のさせ方に関する自主規制を奨励することができる。国際ジャーナリスト連盟は子どもに関連する問題についての報道に関する指針案および原則案を策定してきたが、これは70か国のジャーナリズム団体によって採用されている。これには、ステレオタイプの使用および子どもが登場する話のセンセーショナルな提示を回避することについての規定も含まれている。 64.子どもたちはメディアへの参加権も有しており、刊行物のなかには完全に子どもたちによって運営されているものもある。前述の一般的討議をもとにまとめられた勧告で、子どもの権利委員会は、メディアに対する子どもたちの参加権を促進しながら、生徒はメディアとの関わりおよびメディアの活用を参加型の方法で実践し、かつ広告を含むメディアのメッセージの解読方法を学習できるようにされるべきであると主張している(CRC/C/15/Add.65、パラ256)。 VII.子どもたちによるインターネットへのアクセス 65.インターネットは、世界のすべての地域に住む子どもたちおよびおとなの、迅速かつ安価にコミュニケーションをとる能力を劇的に向上させてきた。そのためインターネットは、子どもたちが表現の自由に対する権利を行使するための重要な手段のひとつであり、また子どもたちが他の権利(教育、結社の自由ならびに社会的、文化的および政治的生活への全面的参加に対する権利を含む)を主張するのに役立つツールになりうる。インターネットはまた、子どもたちを含むすべての市民の関与が必要とされる開かれた民主的社会の発展にとっても不可欠である。しかし、インターネットの規制をめぐる議論では、子どもによるインターネットへのアクセスと関連した潜在的リスクについても突出した形で取り上げられ、保護のための政策において、インターネットが有するリスクにもっぱら焦点が当てられて、インターネットが子どもたちのエンパワーメントにつながる潜在的可能性は見過ごされる傾向がある。さらに憂慮されるのは、子どもを保護したいという真の思いからか、または検閲の隠れみのとしてかにかかわらず、比例性および有効性を欠いた措置(すべての人を対象としてオンライン上のコミュニケーションを阻害する、広範で配慮を欠いたフィルタリングおよびブロッキングのシステムなど)を利用する国もあることである。 66.インターネットが広がったことにより、数百万人の人々が前例のない規模で学習、発信およびコミュニケーションをすることができるようになった。インターネットは、学校における双方向的利用の可能性およびそこで利用可能とされる広範囲の情報を通じ、大いなる教育的利益を提供しうる。たとえばウルグアイの「プラン・セイバル」(Plan Ceibal)は、教育制度を通じてインターネットへのアクセスを促進する注目すべき実例である。より具体的には、子どもの権利委員会が提案するように、インターネットは、通学することのできない子どもたちに対し、インターネットに依拠した移動学校プログラムを通じて教育を提供できることから、教育において重要な役割を果たす(CRC/C/GC/11、パラ61)。 67.インターネットはさらに、若者が公の議論に参加するための他に例のない経路となる。たとえば米国では、17歳の少年が、学校で同性愛について話し合うことを教師に禁ずる法案に抗議するためのツイッター・キャンペーンを組織したという [17]。 [17] Shira Lazar, "Is it okay to say gay? Devon Hicks protests Tennessee bill", Huffington Post, 25 May 2011. 68.ソーシャルネットワーキングサイトも、人間関係を育み、かつ情報交換および交流を容易にする手段として、子どもたちにとってますます重要なものとなっている [18]。子どもたちの報告によれば、ソーシャルネットワーキングは、創造性を助長し、仲間の好みを参考にした選択および意見形成を可能にし、議論を促進し、かつオフラインでは利用できない自己表現の場を提供してくれるものである [19]。これらのサイトは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーのコミュニティなど、このような場がなければ孤立感を覚えるかもしれないマイノリティ集団のメンバーにとってとりわけ重要な役割を果たす可能性がある [18]。 [18] UNICEF Innocenti Research Centre, Child Safety Online Global Challenges and Strategies (May 2012). [19] Child Exploitation and Online Protection Centre, Understanding Online Social Network Services and Risks to Youth Stakeholder Perspectives (2006). 69.とはいえ、インターネットの利用には子どもたちにとって若干のリスクがともなうのも事実である。インターネットの利用に関連するリスクとして広く認知されているものには、ポルノグラフィ―的資料にさらされること、ネット上での性的勧誘およびネットいじめなどがある。 70.たとえば性的搾取の場合、テクノロジーの進歩(インターネット接続の高速化や、インターネットサービスプロバイダを迂回する新たな資料伝達方法を含む)により、児童虐待をともなう画像の共有が容易にされてきた。ネット上での性的勧誘にもインターネットが用いられているが、現在では、性的虐待を行なう目的で子どもまたは若者と「仲良く」なり、オンライン上で性的接触を図ることまたは実際に会うことがその目的となっている [18]。犯罪者は、このような目的で、チャットルーム、ソーシャルネットワーキングサイトおよびインスタントメッセージのようなオンライン上のフォーラムを利用することが多い。これにより「伝統的なプライバシーの境界が解体され」、子どもたちがリスクにさらされる結果が生じている [18]。最後に、最後に、ネットいじめとは、情報通信技術を通じておとなまたは他の子どもが行なう心理的いじめおよびいやがらせと理解されている。ネットいじめは、脅迫および威嚇、いやがらせ、ネットストーキング、中傷および名誉毀損、排除または仲間からの拒絶、なりすまし、私的な情報または画像の勝手な公表ならびに自分の思い通りに行動させようとすることなど、さまざまな形態をとりうる。これは、ただでさえ社会のなかで弱い立場にあると考えられている集団にとってはとりわけ問題である [18]。 A.比例性を欠いた制限が採用されることについての懸念 71.インターネットはすべての子どもにとって危険であるという一般的な恐怖心は誤解につながりやすく、インターネットは特定の状況下で有害にも有益にもなりうるという現実を過度に単純化している。オンライン上のリスクに対する子どもたちの脆弱性をより幅広い社会的・文化的視点から理解することにより、これらの懸念がどのような性質のものであり、かつそれをどのように捉えるべきかについて、より深い知見を得ることが可能である。子どもたちによるインターネットの利用状況、その行動およびリスクに対する脆弱性は年齢によって異なり、かつ個々の子どもによっても変わってくる。保護のための措置は、子どもおよびおとなに同様に悪影響を与える絶対的ブロックまたは検閲の措置を利用するのではなく、子どもたちの発達しつつある能力を認めようとするものでなければならない [18]。 72.平和的集会および結社の自由に対する権利に関する特別報告者はかつて、インターネットに対する制限が増えていることを懸念とともに指摘していた。たとえば、活動家および批判者を標的にして沈黙させ、かつ合法的表現を犯罪化する目的でオンライン上の活動のブロックおよび監視を行なうことなどである――一部には、政府がそのような措置を正当化するために制限的法律を制定したケースもある(A/HRC/17/27、パラ23参照)。このような制限は透明性を欠く形で課されることが多いため、検閲問題の報告が困難になる。さらに、たとえ若干の水準の制限は正当化される場合があるとしても、不法な内容以外の資料を一括して禁ずることは保護という目的との関係で比例性を欠く(前掲、パラ44)。それどころか、そのような措置は、表現の自由に対するおとなの権利を過度に制限してしまうことから、オンライン上のリスクに関する議論を抑止することで子どもたちをいっそう危険な状況に置いてしまうことに至るまでの、意図しない影響ももたらす。 73.特別報告者は、親および学校当局が、インターネットへの子どものアクセスを管理するためのソフトウェアを利用し、かつオンライン上の安全について子どもたちを指導することができる場合、国の関係機関による全面的禁止は必要とされないと指摘している(A/HRC/17/27、パラ27参照)。それどころか、国の関係機関がそのような広範な禁止を決定することは、インターネットへの子どものアクセスに関する判断権を親および養育者が行使することの妨げとなるので、子どもの権利条約第18条と両立しない。加えて、自主規制戦略に関してコンテンツ提供者を援助するためのプロジェクトもいくつか進行中である。 74.子どもたちによるインターネットの利用状況に関する理解が限られているために、子どもの保護を目的とした、より制限的なアプローチがしばしば採用される [20]。実のところ、子どもおよび若者の圧倒的多数は、オンライン上の自分たちの振舞いが被害または危害につながるとは考えていない。子どもたちはすでにインターネットから身を守るためのさまざまな戦略を活用しており、これにはオンラインまたはオフラインの友人に相談すること、望まないコンテンツをブロックしまたは無視すること、プライバシー設定を変更することなどが含まれる [18]。調査によれば、親および教師がインターネットのことをよく知らない場合に、子どもたちはオンライン上でよりリスクの高い振舞いをすることが明らかになっている [20]。逆に、親が十分な情報を得ており、積極的に関与しようという姿勢を有しており、かつインターネットおよび自分の経験について子どもたちと話し合うことこそ、より安全なオンライン経験を確保するためのもっとも強力な保護措置であることも、証拠により示唆されているところである [18]。このことは、親および養育者がとる措置のほうが、広範な制限を課すことに傾斜する現在の傾向よりも、子どもたちを保護するうえでより効果的であることを示唆していると思われる。 [20] Sonia Livingstone and Monica E. Bulger, "A global agenda for children s rights in the digital age recommendations for developing UNICEF s research strategy" (September 2013). B.インターネットの利用に関する子どもたちのエンパワーメント 75.インターネットを含む情報通信技術が、安全も促進しつつ子どもたちの権利および発達を促進するような方法でこれらの技術を活用できるように子どもたちのエンパワーメントを図るという観点から規制されかつ監視される環境をつくっていく必要がある(CRC/C/GC/13参照)。欧州委員会による「子どもたちのためのインターネットの改善に関する欧州戦略」は、オンラインにおける子どもたちの安全を向上させるための戦略の有益な実例である [21]。ただし、エンパワーメントとは、インターネットを子どもたちにとってより安全な空間にするというだけの話ではない。インターネットがどのように情報アクセスツールおよび子どもたちの批判的思考を支援するツールとなっているかという点に注意を向けることも必要である。 [21] Brian O Neill, "Policy influences and country clusters a comparative analysis of Internet safety policy implementation" (London School of Economics, 2014) も参照。 76.子どもたちのエンパワーメントには、子どもの発達しつつある能力を念頭に置きながら子どものインターネット利用を支援するための、親を対象とした訓練および子どもとともに働く専門家を対象とした訓練が含まれなければならない [18]。オンライン上の安全および子どもの発達にとって有益な情報を紹介する積極的方法のひとつは、情報通信技術に関する学校方針の策定に子どもたちの関与を得る等のやり方も含め、学校カリキュラムを通じてそれを行なうことである。非政府組織および公共通信(ラジオなど)は、学校に行っていない子どもたちに対して同様の支援を提供することができる [16]。子どもの安全を確保するための取り組みの例をいくつか挙げるとすれば、「セイファーネット・ブラジル」、「スロバキア・セイファーインターネット・センター」、ベネズエラ・ボリバル共和国の「マノス・ポル・ラ・ニニェス・イ・アドレッセンシア」(子ども・青少年のための手)などがある。 77.インターネット上の保護およびインターネット利用促進のための戦略を策定する際には、子どもたちのニーズを満たし、かつ子どもたちがすでに用いている多様な知的戦略および創造的戦略を活用するために子どもたちの関与を得ることが、とくに子どもおよび若者は最新技術にいっそう親しんでいる傾向があるだけに、重要である。このような関与戦略は、信頼関係の構築および開かれたコミュニケーションの奨励にも役立ちうる。子どもの権利委員会は、すべての国が、保護のための子どもにやさしいヘルプラインをともなった、アクセスしやすく子どもにやさしい通報制度を設置するよう勧告している(CRC/C/GC/12、パラ120参照)。 C.調査研究の拡大 78.子どもの権利の行使におけるインターネットの役割を明らかにするためには、とくに、子どもがインターネットをどのように利用しているか、子どもはインターネットの安全な利用法をどのように学習しうるか、および、どのようにすれば親、養育者および国はインターネットを破壊的なツールではなく肯定的なツールとしてとらえられるかということとの関連で、いっそうの調査研究が実施されなければならない。また、インターネットについて現在行なわれている利用制限を注意深くかつ批判的に検討することにより、子どもおよびおとなにとっての潜在的悪影響を明るみに出し、インターネット上の安全に関わる懸念の実際的解決策を奨励し、かつインターネットにおける子どもたちのための機会を最大化することも重要である。 VIII.結論および勧告 79.表現の自由に対する子どもの権利は、すべての子どもの権利の保護にとって画期をなした子どもの権利条約を含む国際人権条約によって十分に確立された権利である。実際上、子どもたちを権利の全面的主体として承認すること――条約に掲げられた理念――は、法律、政策および態度の転換を必要とする。表現の自由に対する子どもの権利を尊重し、保護しかつ促進することは、このような転換の中核である。 80.世界人権宣言と市民的および政治的権利に関する国際規約は、第19条で表現および意見の自由に対する権利を定めているが、この権利を享有するのはもっぱらおとなであるとは述べていない。それどころか、規約前文では、国際連合憲章において宣明された原則にしたがい、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳および平等のかつ奪いえない権利を認めることが世界における自由、正義および平和の基礎をなすものであると定められている。前文ではまた、これらの権利がすべての者に固有の尊厳に由来するものであることも認められている。 81.子どもの権利条約が世界のほぼすべての国によって批准されたにもかかわらず、表現の自由に対する子どもの権利を実効あらしめるためにとられた措置はあまりにも少なく、子どもたちにとってのこの権利の実現を妨げる多くの障壁が依然として残っている。学校および家庭では、異議を申し立てられないままの権威主義的な態度がおとなと子どもとの関係を形づくっていることが多い。より憂慮されるのは、通信技術の進展とともに一部の国が表現の自由に対する比例性を欠いた制限を採用し、それを、実質的に子どもおよびおとなの権利を制限するものでありながら、子どもたちを危害から保護するための措置として打ち出していることである。 82.国が子どもたちを保護する基本的義務を負っていること、および、子どもに指導を行なうのがおとなの義務であることは明らかである。しかし、子どもの保護と表現の自由を対立する目標として扱ってはならない。逆に、子どもたちが優れたコミュニケーションスキルを発達させ、かつ新たなテクノロジーの積極的活用を学べるよう支援することによってこそ、危害から身を守る子どもたちの能力を増進させることができるのである。 83.子どもたちはおとなと同じ成熟度に達していないかもしれないが、子ども時代とは変化のプロセスであり、その過程で成熟が徐々に進んでいく。意見を発展させかつ明確に表現する能力は、人生の最初期の段階から開始される学習プロセスより生じるものであり、当該プロセスの完遂のためには適切な尊重および奨励が必要である。子どもを危害から保護する義務の懈怠が重大なリスクをもたらすとすれば、子どもたちがその精神、批判的思考および意見を発達させる余地を否定することも同様の結果につながる。特定の事柄に関する情報を奪い、かつ公的議論への参加を禁止することは、子どもたちの孤立および政治的疎外を強化させるだけになりかねない。子どもが意見を聴かれる権利を行使できるようにすることは、義務であるだけに留まらず、保護措置の有効性の増進にとってもきわめて重要なのである。 84.国は、あらゆる公共政策の最前線に子どもの最善の利益という目標を据え続けることをけっして忘れてはならない。これには、子どもたちを危害から保護するための規制の規範を確立することとともに、同時に、すべての規範において表現の自由に対する権利に関連する国際基準が遵守されるようにすることが含まれる。 85.特別報告者は、各国が次に掲げる措置をとるよう勧告する。 子どもの表現の自由に対する不当な制限を撤廃する目的で法令および政策を見直すこと 86.国は、国際人権基準との一致を図る目的で、子どもの自己表現の権利および情報へのアクセス権を制限する国内法令および国内政策を改正するべきである。おとなまたは子どもの表現自由を制限するいかなる法律においても、この権利の制限について確立されている3つの基準、すなわち曖昧さのない法律による規定、正当な目的の追求ならびに必要性および比例性の原則の尊重も遵守されなければならない。 87.国は、放送活動、インターネットおよび他のあらゆるメディアにおける子どもの保護についての法令を注意深く改正するべきである。たとえば、放送活動における子どもの保護のための番組類別制度は受け入れられるが、いかなる特定の表現についても、それが公表される前に事前検閲の対象とすることは受け入れられない。通信に関する規則の執行権限を与えられた機関の独立性は、政治的および経済的干渉から保護されるべきである。 88.国は、子どもの主体性の促進において学校が中心的位置を占めることに鑑み、教育制度における権威主義的な規範および実践を取り除くことに特段の注意を払うべきである。 表現の自由に対する子どもの権利を促進すること 89.国は、表現の自由に対する子どもの権利(情報へのアクセスを含む)をあらゆる場面で積極的に促進するべきである。家庭、学校および社会一般を含むあらゆる領域で見られる、子どもたちへの伝統的な権威主義的態度に異議を申し立ててもよい。とくに国は、子ども主導の活動のための回路の創設に注意を払うべきである。 90.国は、子どもたちが学校で多様なコミュニケーション形態(口頭、文書およびあらゆる形態の芸術を含む)を用いることを奨励するべきである。学校カリキュラムにおいて、社会的コミュニケーション、メディアおよびジャーナリズムについての知識を伝達することが求められる。 91.国は、異なる年齢層の子どもを対象とした教育的および娯楽的内容を有する番組づくりならびに内容を子どもたちが制作する番組づくりを促進するべきである。 インターネットへのアクセスおよびオンライン上の安全を促進すること 92.国は、あらゆる場面で子どもたちによるインターネットへのアクセスを促進するために積極的措置をとるべきである。教育制度において、子どもが有するすべての権利(とくに表現の自由に対する権利、公的生活に参加する権利および教育に対する権利)の促進におけるインターネットの中心的役割を考慮することが求められる。インターネットを、否定的なまたはその他の点で危険な媒体と見なすのではなく、肯定的な――個々の子どもおよび社会全体にとっての利益を有する――資源として捉え直すための努力が行なわれるべきである。たとえば、すべての社会的出身の子どもにとって、インターネットは書籍にアクセスするための優れた手段となる。 93.国は、子どもたちの安全を脅かすインターネットのリスクに対し、オンライン上の危害から身を守るための利用者の能力の増進を含むホリスティックな戦略を通じて対応するべきである。戦略には、親を対象とする訓練および子どもとともに働く専門家を対象とする訓練を含めることが求められる。オンライン上の安全の促進を目的とした取り組みの立案および実施には、子どもたちの積極的関与を得るべきである。インターネットが子どもたちの生活に及ぼす影響についても、さらなる調査研究が必要とされる。 表現の自由に対する子どもの権利への国際的関心を高める 94.表現の自由に対する子どもの権利の侵害に対し、すべての国際人権保護機構によって常に注意が払われるべきである。とくに子どもの権利委員会は、各国に対する勧告のなかで第13条および第17条を組織的に取り上げていくことができる。 更新履歴:ページ作成(2015年4月10日)。
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子どもの権利委員会・一般的意見19号:子どもの権利実現のための公共予算編成(第4条)(前編) 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 CRC/C/GC/19(2016年7月20日/原文英語) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-17)A.背景(パラ6-10) B.理論的根拠(パラ11-13) C.目的(パラ14-17) II.公共予算との関連における第4条の法的分析(パラ18-39)A.「締約国は、……措置をとる」(パラ18-20) B.「あらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置」(パラ21-24) C.「この条約において認められる権利の実施のための」(パラ25-27) D.「経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」(パラ28-34) E.「および必要な場合には、国際協力の枠組の中で」(パラ35-39) III.条約の一般原則と公共予算(パラ40-56)A.差別の禁止に対する権利(第2条)(パラ41-44) B.子どもの最善の利益(第3条)(パラ45-47) C.生命、生存および発達に対する権利(第6条)(パラ48-51) D.意見を聴かれる権利(第12条)(パラ52-56) IV.子どもの権利のための公共予算編成の原則(パラ57-63) → 子どもの権利と公共予算 後編A.有効性(パラ59) B.効率性(パラ60) C.公平性(パラ61) D.透明性(パラ62) E.持続可能性(パラ63) V.公共予算における子どもの権利の実施(パラ64-111)A.計画(パラ67-86) B.策定(パラ87-93) C.執行(パラ94-103) D.フォローアップ(パラ104-111) VI.この一般的意見の普及(パラ112-116) I.はじめに 1.子どもの権利条約第4条は以下のように規定する。 締約国は、この条約において認められる権利の実施のためのあらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置をとる。経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、および必要な場合には、国際協力の枠組の中でこれらの措置をとる。 (訳者注/国際教育法研究会訳) この一般的意見は、締約国が公共予算との関係で第4条を実施するさいに役に立つはずである。ここでは、締約国の義務を明らかにするとともに、公共予算に関わる有効な、効率的な、公平な、透明なかつ持続可能な意思決定を通じて条約上のすべての権利(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもの権利)を実現する方法についての勧告を行なっている。 2.第4条が子どものすべての権利に関連するものであり、かつ、これらのすべての権利が公共予算の影響を受け得ることに鑑み、この一般的意見は条約およびその選択議定書に適用される。この一般的意見は、公共予算がこれらの権利の実現に資することを確保するための枠組みを締約国に対して提示するものであり、また第III節では、第2条、第3条、第6条および第12条に掲げられた条約の一般原則の分析を行なっている。 3.この一般的意見で「子ども(たち)」に言及するさいには、18歳未満のすべての者(いかなるジェンダーであるかを問わない)であって、公共予算関連の決定によってその権利に直接間接の影響(肯定的影響か悪影響かを問わない)が生じる者またはその可能性がある者を含むものとする。「権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども」とは、その権利が侵害される被害をとりわけ受けやすい子どもであって、障害のある子ども、難民状況にある子ども、マイノリティ集団の子ども、貧困下で暮らしている子ども、代替的養護のもとで暮らしている子どもおよび法律に抵触した子どもを含むが、これに限られない。 4.この一般的意見では以下の定義を適用する。 (a) 「予算」には、国の歳入動員、予算配分および支出を含む。 (b) 「実施義務」とは、後掲パラ27に掲げた締約国の義務をいう。 (c) 「条約の一般原則」とは、第III節に掲げた諸原則をいう。 (d) 「予算原則」とは、第IV節に掲げた諸原則をいう。 (e) 「立法」とは、子どもの権利に関連するすべての国際条約/法、地域条約/法、国内法および国内下位法令をいう。 (f) 「政策」とは、子どもの権利に影響を与えるまたはその可能性があるすべての公的な政策、戦略、規則、指針および声明(そこに掲げられた目標、目的、指標および目指される成果を含む)をいう。 (g) 「プログラム」とは、法律および政策の目標を達成する目的で締約国が定めた枠組みのことをいう。このようなプログラムは、たとえば子どもの特定の権利、公共予算編成過程、インフラストラクチャーおよび労働力に影響を与えることにより、子どもに直接間接の影響を及ぼす可能性がある。 (h) 「国内下位」とは、広域行政圏、州、郡または自治体など、国の下位の行政段階をいう。 5.第I節では、この一般的意見の背景、理論的根拠および目的を示す。第II節では、公共予算との関連で第4条の法的分析を行なう。第III節では、このような文脈における条約の一般原則の解釈を提示する。第IV節では、公共予算編成の原則を取り上げる。第V節では、公共予算が子どもの権利の実現にどのように資するかを検討する。第VI節では、この一般的意見の普及に関する指針を示す。 A.背景 6.この一般的意見は、「実施に関する一般的措置」という概念は複雑であり、委員会は、個々の要素に関するいっそう詳細な一般的意見を適宜発表していく可能性が高いと述べた、条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を踏まえたものである [1]。また、委員会が2007年に開催した、子どもの権利のための資源に関する国の責任についての一般的討議を踏まえたものでもある。 [1] 一般的意見5号の「まえがき」参照。 7.この一般的意見は、予算に関わる原則を人権の視点から掲げた国連のいくつかの決議および報告書を参考にしたものである。これには以下のものが含まれる。 (a) 子どもの権利への投資の改善を目指す人権理事会決議28/19 [2]、および、当該決議に先立つ国連人権高等弁務官の報告書「子どもの権利への投資の改善に向けて」(Towards better investment in the rights of the child)。そこでは、子どもへの投資との関連における国内政策の役割、資源動員、透明性、説明責任、参加、配分および支出、子どもの保護制度、国際協力ならびにフォローアップについて取り上げられている。 (b) 財政政策における透明性、参加および説明責任の促進に関する総会決議67/218。同決議は、財政政策の質、効率性および有効性を向上させる必要性を強調するとともに、加盟国に対し、財政政策における透明性、参加および説明責任を増進させるための努力を強化するよう奨励している。 [2] 同決議は無投票で採択された。 8.この一般的意見の作成にあたっては、委員会が調査を通じて各国、国際連合、非政府組織、子どもたちおよび個人専門家と行なった協議、ならびに、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ・カリブ海、中東・北アフリカおよびサハラ以南のアフリカで開催された会議および地域協議も参考にした。これに加えて、オンライン調査、フォーカスグループにおける討議ならびにアジア、ヨーロッパおよびラテンアメリカで開催された地域協議を通じて行なわれた、71か国から参加した2693人の子どもたちとの世界的協議 [3] も参考にしている。この世界的協議では、年齢、ジェンダー、能力、社会経済的状況、言語、民族、就学状況、避難を余儀なくされた状況および子ども参加型の予算策定の経験という観点からさまざまな背景を有する男女の子どもから貢献が行なわれた。公共予算の決定に携われる人々に対する子どもたちのメッセージには、以下のようなものがあった。 (a) ちゃんとした計画を立ててほしい。予算では、子どもたちのすべての権利に対応するのに十分なお金が用意されるべきです。 (b) 何に投資すればいいのか、私たちにきいてくれなければ、私たちに投資することはできません。私たちはわかっているので、私たちに尋ねるべきです。 (c) 特別なニーズがある子どものことを予算に含めるのを忘れないでほしい。 (d) お金は公正に、賢く使ってほしい。私たちのお金を無駄なことに使わないでください。効率的にやって、お金を節約しましょう。 (e) 子どもたちへの投資は長期的な投資で、たくさんの成果を生み出してくれるものなので、そのことを忘れずに考えてほしい。 (f) 私たちの家族に投資することは、私たちの権利を保障する重要な方法でもあります。 (g) 汚職が絶対ないようにしてほしい。 (h) 行政に関する問題についてみんなの意見を聴いて、若くても歳をとっていても、市民全員の権利を認めてほしい。 (i) 政府には、もっと説明責任と透明性を高めてほしい。 (j) お金がどのように使われたのか、記録を公表してほしい。 (k) 予算についての情報を、子どもたち全員に、わかりやすい方法で、ソーシャルメディアなど子どもたちに人気があるメディアを通じて提供してください。 [3] Laura Lundy, Karen Orr and Chelsea Marshall, "Towards better investment in the rights of the child the views of children" (Centre for Children s Rights, Queen s University, Belfast, and Child Rights Connect Working Group on Investment in Children, 2015). 9.すべての中核的人権条約に、条約第4条と同様の規定が含まれている。したがって、これらの規定に関連して発表されてきた、公共予算について取り上げている一般的意見は、この一般的意見を補完するものとみなされるべきである [4]。 [4] たとえば、締約国の義務に関する社会権規約委員会(経済的、社会的および文化的権利に関する委員会)の一般的意見3号(1990年)を参照。 10.この一般的意見は、締約国が有する、自国の管轄内にある子どもに直接間接の影響を与える財源の管理に関わるものである。この一般的意見は、アディスアベバ行動目標(第3回開発資金国際会議、2015年)および「世界の変革:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015年)を認知する。これらのアジェンダでは、プログラム支援、セクター支援および予算支援、南南協力ならびに地域間協力など、子どもに影響を与える国際協力関連資源の国による管理について取り上げられている。委員会は、やはりこのような管理について取り上げている、「開発協力および開発計画に対する人権基盤型アプローチについての共通理解声明」(国連開発グループ、2003年)、「援助効果にかかるパリ原則:オーナーシップ、調和化、整合性確保、成果および相互説明責任」(2005年)、アクラ行動アジェンダ(2008年)および「効果的な開発協力のための釜山パートナーシップ」(2011年)を想起するものである。加えて、委員会は、公共財務管理に関して国内的、地域的および国際的に策定された基準および現在策定中である基準が、当該基準が条約の規定と矛盾しないことを条件として、この一般的意見にとって関連性を有する可能性があることも心に留める。このような基準の例を3つ挙げるとすれば、公共財務管理における有効性、効率性および公平性を強調する『公共財務管理国際ハンドブック』(The International Handbook of Public Financial Management)[5]、財政運営および説明責任を向上させるために過去、現在および将来の公共財政についての公的報告において包括性、明確性、信頼性、適時性および関連性を求める国際通貨基金の「財政の透明性に関する規範」(2014年)、および、国連貿易開発会議が2012年に採択した「責任あるソブリン融資の促進に関する原則」がある。 [5] Richard Allen, Richard Hemming and Barry Potter, eds., The International Handbook of Public Financial Management (Basingstoke, Palgrave Macmillan, 2013). B.理論的根拠 11.委員会は、締約国が、国内の法律、政策およびプログラムを再検討し、条約およびその選択議定書と一致させるようにするうえで相当の進展を達成してきたことを認める。同時に委員会は、十分な財源が責任ある、効果的な、効率的な、公平な、参加型の、透明かつ持続可能なやり方で動員され、配分されかつ支出されることがなければ、そのような法律、政策およびプログラムは実施できないことを強調するものである。 12.委員会は、委員会に提出される締約国報告書の審査、締約国代表との議論および総括所見において、予算規模が子どもの権利を実現するうえで十分かどうかについての懸念を表明してきた。委員会は、条約で要求されているとおりに国・国内下位レベル双方の予算において子どもの権利を優先的に位置づけることが、これらの権利を実現していくことのみならず、将来の経済成長、持続可能かつ包摂的な開発および社会的団結に永続的かつ肯定的な影響を与えることにも寄与することを、あらためて表明する。 13.以上のことに基づき、委員会は、締約国が、国・国内下位レベルの予算編成過程および行政制度のあらゆる段階を通じてすべての子どもの権利を考慮すべきことを強調する。予算編成過程が国によってある程度異なること、および、独自の子どもの権利予算手法を開発した国もあることは認識しながらも、この一般的意見は、すべての国に関係する4つの主要な予算段階、すなわち計画、策定、執行およびフォローアップに関わる指針を示すものである。 C.目的 14.この一般的意見の目的は、子どもの権利のための予算に関わる条約上の義務についての理解を向上させ、もってこれらの権利の実現を強化するとともに、条約およびその選択議定書の実施を増進させる目的で、予算の計画、策定、執行およびフォローアップが進められるあり方に真の変革が生じることを促進するところにある。 15.この目的は、予算編成過程全体を通じて国の各統治部門(行政府、立法府および司法府)、各段階(国および国内下位)および機構(省庁など)がとる措置に関連するものである。これらの義務は、国際協力のドナーおよび受入国にも適用される。 16.この目的は、国内人権機関、メディア、子どもたち、家族および市民社会組織など、予算編成過程に関わる他の関係者にも関連するものである。締約国は、自国の状況にふさわしい方法で、これらの関係者が予算編成過程において積極的な監視および意味のある参加を行なえるような環境を整えるよう求められる。 17.加えて、この目的は、この一般的意見の内容についての意識啓発および関連する公的職員等の能力構築との関連でも、各国にとって関連性を有する。 II.公共予算との関連における第4条の法的分析 A.「締約国は、……措置をとる」(States parties shall undertake) 18.「措置をとる」という文言は、締約国には、子どもの権利を実現するために適当な立法上、行政上その他の措置(公共予算に関連する措置を含む)をとる自国の義務を果たすか否かについての裁量権はないことを意味する。 19.したがって、公共予算の編成において何らかの役割を果たす国のすべての統治部門、段階および機構は、条約の一般原則および後掲第III節・第IV節に掲げられた予算原則に一致する方法でその職務を果たさなければならない。締約国はまた、立法府、司法府および最高監査機関が同様の対応をとれるようにするための環境も創出するべきである。 20.締約国は、あらゆる段階の行政府および立法府の予算決定担当者が、必要な情報、データおよび資源にアクセスでき、かつ子どもの権利実現のための能力構築を図れるようにするべきである。 B.「あらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置」(all appropriate legislative, administrative and other measures) 21.「あらゆる……適当な措置」をとる義務には、以下のことを確保する義務が含まれる。 (a) 子どもの権利実現のための資源動員、予算配分および支出を支える法律および政策が整備されること。 (b) 子どもの権利を増進するための適切な法律、政策、プログラムおよび予算の編成および実施を支える目的で、子どもに関する必要なデータおよび情報が収集され、生成されかつ普及されること。 (c) 承認された立法、政策、プログラムおよび予算を完全に実施するための十分な公的資源が効果的に動員され、配分されかつ活用されること。 (d) 予算が、国および国内下位のレベルにおいて、子どもの権利実現の確保につながる方法で体系的に計画され、制定され、実施されかつ説明されること。 22.措置は、それがある特定の文脈(公共予算の文脈を含む)において子どもの権利の増進に直接間接の関連性を有する場合に、適当と判断される。 23.公共予算との関連で締約国がとることを義務づけられる「立法上の……措置」には、現行法の再検討、ならびに、国・国内下位レベルで子どもの権利実現のための予算が十分大規模なものとなることを確保するための立法の策定および採択が含まれる。「行政上の……措置」には、合意に基づき制定された立法の目的にかなうプログラムの立案および実施ならびにそのための十分な予算の確保が含まれる。「その他の措置」には、たとえば、公共予算編成過程に参加するための機構および子どもの権利に関連するデータまたは政策を発展させることが含まれると考えられる。公共予算は、これらの3つのカテゴリーの措置全体にまたがるものと理解できる一方で、その他の立法上、行政上その他の措置の実現にとっても不可欠なものである。国のすべての統治部門、段階および機構が、子どもの権利の増進について責任を有する。 24.委員会は、締約国には、自国が選択する公共予算関連の措置がどのように子どもの権利の向上に結びついているかを示す義務があることを強調する。締約国は、これらの措置の結果として子どもたちのために獲得できた成果の証拠を示さなければならない。条約第4条が履行されたというためには、結果についての証拠を示さないまま、措置をとったことの証拠を示すだけでは十分ではないのである。 C.「この条約において認められる権利の実施のための」(for the implementation of the rights recognized in the present Convention) 25.「この条約において認められる権利」には、市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利が含まれる。締約国は、市民的および政治的権利については即座に実現し、かつ、経済的、社会的および文化的権利については「自国の利用可能な手段(資源)を最大限に用いることにより」実施する義務を有する。すなわち、これら〔後者〕の権利の完全な実現は必然的に漸進的に達成されざるを得ないということである(後掲第II節D参照)。 26.子どもの権利の実現のためには、公共予算編成過程の4つの段階(計画、策定、執行およびフォローアップ)のすべてに緊密な注意を払うことが必要である。条約の一般原則およびこの一般的意見で概要を示した予算原則にしたがい、締約国は、予算編成過程全体を通じて、すべての子どもの権利を考慮することが求められる。 27.予算の観点からは、「子どもの権利を実施する」とは、締約国には、自国の実施義務を遵守するようなやり方で公的資源を動員し、配分しかつ使用する義務があるということを意味する。締約国は、以下のとおり、子どものすべての権利を尊重し、保護しかつ充足しなければならない。 (a) 「尊重する」とは、締約国は子どもの権利の享受に直接間接に干渉するべきではないということを意味する。予算との関連では、国は、たとえば予算の決定において一部の集団の子どもを差別したり、または子どもによる経済的、社会的および文化的権利の享受に対応するために現に実施されているプログラムから資金を引き上げたり資源を別に振り向けたりすること(後掲パラ31に掲げる事情がある場合を除く)によって、子どもの権利の享受に干渉することは控えなければならないということである。 (b) 「保護する」とは、締約国は、条約および選択議定書で保障されている諸権利に第三者が干渉することを防止しなければならないということを意味する。公共予算の観点からは、そのような第三者に該当する可能性がある主体として、公共予算編成過程のさまざまな段階で何らかの役割を果たす可能性がある企業セクター [6] および地域的・国際的金融機関を挙げることができよう。保護する義務が含意するのは、締約国は、自国の歳入動員、予算配分および支出が第三者によって干渉されまたは阻害されないことを確保するよう努めなければならないということである。そのためには、締約国は、そのような第三者の役割を規制し、苦情申立て機構を設置し、かつこれらの第三者による人権侵害事案に体系的に介入することが必要になろう。 (c) 「充足する」ためには、締約国は、子どもの権利の完全な実現を確保するための行動をとらなければならない。締約国は以下の対応をとるべきである。(i) 子どもが自己の権利を享受できるようにし、かつそれを援助する措置をとることによって子どもの権利の促進を図ること。予算に関わる文脈では、これには、すべての子どもたちの権利を包括的かつ持続可能なやり方で増進させるために必要な資源および情報を、行政府、立法府および司法府のあらゆる段階および機構が持てるようにすることが含まれる。そのためには、国の諸機関のあいだで条約およびその選択議定書についての知識および理解を高めるための措置を整備すること、ならびに、子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する文化を醸成することが必要となる。 (ii) 国が、やむを得ない理由により、自国が利用可能な手段により自らこれらの権利を実現できない場合に、子どもの権利のための対応をとること。この義務には、子どもたちがたとえば国の異なる地域で自己の権利をどの程度行使できているかを評価しかつ監視する目的で、信頼できる、細分化されたデータおよび情報を公に入手できるようにすることが含まれる。 (iii) 予算に関わる意思決定手続およびそれが及ぼす影響について適切な教育および公衆の意識啓発が行なわれることを確保することにより、子どもの権利を促進すること。これは、予算との関連では、子どもたち、その家族および養育者と、予算関連の決定(これらの決定に影響を与える立法、政策およびプログラムを含む)についてやりとりするための十分な資金を動員し、配分しかつ使用することを意味する。締約国は、より効果的な促進が必要とされる領域を特定する目的で、さまざまな集団に関する成果を継続的に評価するべきである。 [6] 企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)参照。同一般的意見において委員会は、「国が、企業が子どもの権利侵害を引き起こしまたは助長しないようにするためにあらゆる必要な、適当な、かつ合理的な措置をとらなければならない」ことを明らかにしている(パラ28)。 D.「経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」(With regard to economic, social and cultural rights, States parties shall undertake such measures to the maximum extent of their available resources) 28.この義務にしたがい、締約国は、十分な財源を動員し、配分しかつ使用するためにあらゆる可能な措置をとらなければならない。条約およびその選択議定書上の権利の実現を前進させる政策およびプログラムに配分される資金は、最適なやり方で、かつ条約の一般原則およびこの一般的意見に掲げた予算原則にしたがって使用されるべきである。 29.委員会は、他の中核的国際人権条約における「利用可能な手段(資源)を最大限に用いること」および「漸進的実現」の概念の進展 [7] を認識するとともに、条約第4条はこの両方の概念を反映していると考える。したがって締約国は、国際法にしたがって即時的に適用される義務に影響を与えることなく、経済的、社会的および文化的権利の完全な実現を漸進的に達成する目的で、自国の利用可能な資源を最大限に用いることにより、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで、これらの権利に関する措置をとらなければならない。 [7] たとえば障害のある人の権利に関する条約第4条第2項参照。 30.「締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」とは、締約国には、すべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を充足させるための予算資源を動員し、配分しかつ使用する目的であらゆる努力を行なったことの実証を期待されているということである。委員会は、子どもの権利は相互依存的でありかつ不可分であること、および、経済的・社会的・文化的権利と市民的・政治的権利を区別するさいには注意しなければならないことを強調する。経済的・社会的・文化的権利の実現は子どもが自己の政治的・市民的権利を全面的に行使する能力にしばしば影響を与えるのであり、その逆もまた真である。 31.第4条によって締約国に課されている、利用可能な資源を「最大限に用いることにより」子どもの経済的、社会的および文化的権利を実現する義務は、締約国は経済的、社会的および文化的権利との関連で意図的な後退的措置をとるべきではないということでもある [8]。締約国は、子どもの権利の享受に関わる現行水準の低下を許すべきではない。経済危機の時期における後退的措置の検討は、他のすべての選択肢を評価し、かつ子ども(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども)への影響が最後に生じることを確保した後でなければ、行なうことができない。締約国は、そのような措置が必要であり、合理的であり、比例性を有しており、差別的でなく、かつ一時的なものであること、および、したがって影響が生じたいかなる権利も可能なかぎり早期に回復されることを実証しなければならない。締約国は、影響を受ける集団の子どもたちおよびこれらの子どもたちの状況について知悉しているその他の者が当該措置に関連する意思決定手続に参加するよう、適切な措置をとるべきである。子どもの権利によって課される即時的かつ最低限の中核的義務 [9] は、たとえ経済危機の時期であっても、いかなる後退的措置によっても損なわれてはならない。 [8] たとえば、子どもの権利のための資源に関する国の責任についての一般的討議(2007年)の勧告のパラ24および25、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)のパラ72、ならびに、社会権規約委員会の一般的意見3号のパラ9参照。 [9] 社会権規約委員会の一般的意見で明らかにされている中核的義務を参照(教育への権利に関する13号(1999年)、到達可能な最高水準の権利に関する14号(2000年)および社会保障への権利に関する19号(2007年)など)。 32.条約第44条は、締約国に対し、自国の管轄内にある子どもの権利の増進における進展を定期的に報告するよう義務づけている。利用可能な資源を最大限に用いることによる子どもの経済的、社会的および文化的権利の漸進的実現およびこれらの権利によって課される即時的義務の実現ならびに市民的および政治的権利の実現を実証するために、明確なかつ一貫した量的・質的目標および指標が活用されるべきである。締約国は、すべての子どもの権利のために資源が利用可能とされかつ最大限に使用されることを確保するための措置を定期的に見直しかつ改善するよう期待される。 33.委員会は、経済的、社会的および文化的権利を含む子どもの権利の実施のために必要な資源を獲得する手段として、国レベルおよび国内下位レベルで、説明責任が果たされる、透明な、包摂的なかつ参加型の意思決定手続が設けられることをおおいに重視するものである。 34.国の歳入動員、配分および支出における汚職および公的資源の誤った管理は、利用可能な資源を最大限に用いる義務を国家が遵守できていないことの表れである。委員会は、締約国が、腐敗の防止に関する国際連合条約にしたがい、子どもの権利に影響を与えるいかなる汚職も防止しかつ解消するための資源を配分することの重要性を強調する。 E.「および必要な場合には、国際協力の枠組の中で」(and, where needed, within the framework of international cooperation) 35.締約国は、子どもの権利を含む人権の普遍的尊重および遵守の促進に関して相互に協力する義務を有する [10]。条約およびその選択議定書に掲げられた権利を実施するために必要な資源を欠いている国には、二国間協力、地域的協力、地域間協力、世界的協力または多国間協力のいずれの形態をとるかにかかわらず、国際協力を求める義務がある。国際協力のための資源を有する締約国には、受入国における子どもの権利の実施を促進する目的でそのような協力を行なう義務がある。 [10] 国際連合憲章にしたがった諸国間の友好関係および協力についての国際法の原則に関する宣言(1970年)参照。 36.締約国は、必要なときは、子どもの権利を実現するための国際協力を求めかつ実施する目的であらゆる努力を行なったことを実証するべきである。そのような協力としては、予算編成過程における子どもの権利の実施に関連する技術的および金銭的支援(国際連合からの支援を含む)[11] も考えられる。 [11] 条約第45条参照。 37.締約国は、利用可能な資源を子どもの権利のために最大限に動員しようとする他の国の努力に協力するべきである。 38.締約国の協力戦略は、ドナーにおいても受入国においても、子どもの権利の実現に寄与するようなものであるべきであり、子ども(とくに、もっとも権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども)に悪影響を及ぼすものであってはならない。 39.締約国は、国際機関の一員として開発協力に関与するさい [12] および国際協定に調印するさいには、条約およびその選択議定書に基づく自国の義務を遵守するよう求められる。締約国は同様に、経済政策の計画および実施にあたって、子どもの権利に生じる可能性がある影響を考慮するべきである。 [12] 一般的意見5号、パラ64参照。 III.条約の一般原則と公共予算 40.条約の4つの一般原則は、子どもの権利に直接間接に関連する国のあらゆる決定および行動(公共予算を含む)の基礎となるものである。 A.差別の禁止に対する権利(第2条) 41.締約国には、「子どもまたは親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位にかかわらず」、あらゆる種類の差別から子どもを保護する義務がある(第2条第1項)。締約国は、あらゆる行政段階において差別を防止するために行動するべきであり、予算関連の立法、政策またはプログラムにおいて、その内容面または実施面で、子どもに対する直接間接の差別を行なってはならない。 42.締約国は、十分な歳入を動員し、かつ資金の配分および使用をしかるべき形で進めることによって、立法、政策およびプログラムとの関連ですべての子どもにとって肯定的な成果を確保するための積極的措置をとるべきである。実質的平等を達成するため、締約国は、特別な措置を受ける資格を有する集団の子どもを特定するとともに、そのような措置を実施するために公共予算を使用することが求められる。 43.締約国は、差別が行なわれない環境をつくりだすとともに、国のすべての統治部門、段階および機構ならびに市民社会および企業セクターが差別を受けない子どもの権利を積極的に増進させることを確保するための措置を、資源の配分等も通じてとるべきである。 44.子どもが自己の権利を享受するという点に関わる肯定的な成果に寄与する予算を達成するためには、締約国は、関連の立法、政策およびプログラムを見直しかつ改訂し、予算の一定の部分について増額もしくは再優先化を図り、または予算の有効性、効率性および公平性を高めることにより、子どもたちの間に存在する不平等に対応することが求められる。 B.子どもの最善の利益(第3条) 45.条約第3条第1項は、子どもに関わるあらゆる行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されると定めている。締約国には、子どもに直接間接の影響を与えるすべての立法上、行政上および司法上の手続(予算を含む)においてこの原則を統合しかつ適用する義務がある [13]。子どもの最善の利益は、予算編成過程のすべての段階を通じて、かつ子どもに影響を与えるすべての予算決定において、第一次的に考慮されるべきである。 [13] 自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)、パラ6(a)参照。 46.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)で指摘したように、条約およびその選択議定書に掲げられた諸権利は、子どもの最善の利益に関する評価および判断の枠組みを示すものである。この義務は、国が、予算の配分および使用に関わる優先的課題であって相互に競合するものの比較衡量を行なうさいに、きわめて重要となる。締約国は、予算に関わる意思決定において子どもの最善の利益がどのように考慮されたか(他の考慮事項との比較衡量がどのように行なわれたかを含む)を実証できるべきである。 47.締約国は、国レベルおよび国内下位レベルで立法、政策およびプログラムがすべての子ども(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれており、特別なニーズを有しているためにその権利の実現のために人口比に照らした割合よりも多くの支出を必要としている可能性のある子ども)に与えている効果を確認する盲的で、子どもの権利影響評価 [14] を実施するべきである。子どもの権利影響評価は、予算編成過程の各段階に位置づけられるべきであり、かつ監視および評価のために行なわれている他の取り組みを補完するようなものであることが求められる。締約国が子どもの権利影響評価を実施するさいに適用する手法および実践方法はそれぞれ異なることになろうが、その枠組みを開発するさいには、条約およびその選択議定書ならびに委員会が発表した関連の総括所見および一般的意見を活用するべきである。子どもの権利影響評価のさいには、子どもたち、市民社会組織、専門家、国の統治機構および学術研究機関などの関係者の意見を参考にすることが求められる。分析の結果は、改正、これまでのものに代わる対応および改善のための勧告としてまとめられるべきであり、かつ公に利用可能とされるべきである。 [14] 一般的意見5号のパラ45ならびに一般的意見14号のパラ35および99参照。 C.生命、生存および発達に対する権利(第6条) 48.条約第6条は、すべての子どもは生命に対する固有の権利を有しており、かつ、締約国はすべての子どもの生存および発達を確保しなければならない旨、定めている。委員会は、一般的意見5号において、子どもの発達とは「ホリスティックな概念であり、子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するものである」こと、および、「実施措置は、すべての子どもが最適な形で発達できるようにすることを目指したものでなければならない」ことを指摘している(パラ12)。 49.委員会は、子どもが成長発達の段階の違いに応じてさまざまなニーズを有することを認識する [15]。締約国は、予算決定において、さまざまな年齢の子どもたちが生存し、成長しかつ発達するために必要なあらゆる要素を考慮するべきである。締約国は、予算のうちさまざまな年齢層の子どもに影響を与える部分を可視化することにより、子どもの権利に対するコミットメントを示すよう求められる。 [15] 乳幼児期における子どもの権利の実施についての一般的意見7号(2005年)および思春期の子どもの権利についての一般的意見20号(作成中)を参照。 50.委員会は、乳幼児期の発達への投資が、自己の権利を行使する子どもの能力に肯定的影響を与え、貧困のサイクルを打破し、かつ多くの経済的リターンをもたらすことを認知する。乳幼児期の子どもに十分な投資を行なわないことは、認知的発達にとって有害になりうるとともに、すでに存在する剥奪状況、不平等および世代を超えた貧困の強化につながる可能性がある。 51.生命、生存および発達に対する権利の確保には、現在世代に属するさまざまな集団の子どもたちのための予算を考慮する必要が含まれるとともに、歳入および支出に関して多年度にまたがる持続可能な見通しを立てることによって将来の世代を考慮に入れる必要も含まれる。 D.意見を聴かれる権利(第12条) 52.条約第12条は、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明し、かつその子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視されるすべての子どもの権利を認めている [16]。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルで設けられた子どもの意味のある参加のための機構を通じ、子どもに影響を与える予算決定についての子どもたちの意見を恒常的に聴くべきである。これらの機構に参加する子どもたちは、自由に、かつ抑圧または冷やかしを恐れることなく発言できるべきであり、また締約国は参加者に対してフィードバックを行なうことが求められる。とくに、締約国は、意見を表明するうえで困難に直面している子どもたち(権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたちを含む)と協議を行なうべきである。 [16] 意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)も参照。 53.委員会は、「自己にとってのあらゆる関心事について意見を聴かれ、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利の実現に投資することは、締約国が条約上負っている明確かつ即時的な法的義務」であり、そのためには「資源および訓練に対するコミットメントも必要になる」ことを想起する [17]。このことは、子どもに影響を与えるすべての決定への意味のある子ども参加を達成するための資金が用意されることを確保する締約国の責任を強調するものである。委員会は、予算決定に関わる子ども参加を保障するうえで、行政府職員、独立した子どもオンブズマン、教育機関、メディア、子ども団体を含む市民社会組織および立法府が果たす重要な役割を認識する。 [17] 一般的意見12号、パラ135参照。 54.委員会は、予算の透明性が意味のある参加の前提条件であることを認識する。透明であるとは、予算の計画、策定、執行およびフォローアップに関連して、利用者にやさしい情報が時宜を得た形で公に利用可能とされるということである。これには、量的な予算情報と、立法、政策、プログラム、予算編成過程のタイムテーブル、支出の優先順位および決定の論拠、支出額、成果ならびにサービス提供情報についての関連情報の双方が含まれる。委員会は、締約国が、意味のある参加を可能にするための、状況にふさわしい資料、機構および制度 [18] のための予算を用意し、かつこのような資料、機構および制度を整備しなければならないことを強調するものである。 [18] 条約第13条第1項参照。 55.予算編成過程への意味のある参加を可能にするために、委員会は、締約国が情報の自由のための立法および政策を整備することを確保することが重要であると強調する。これには、予算編成方針、予算案、策定された予算、中期報告書、年度末報告書および監査報告書のような重要な予算文書にアクセスする権利が含まれ、または少なくとも子どもたちおよび子どもの権利擁護者がそのようなアクセスを妨げられないことが含まれる。 56.委員会は、多くの国が、予算編成過程のさまざまな部分に子どもたちの意味のある参加を得てきた経験を有していることを認識する。委員会は、締約国に対し、そのような経験を共有し、かつ自国の状況にふさわしい優れた実践のあり方を特定するよう奨励するものである。 (子どもの権利と公共予算 後編に続く) 更新履歴:ページ作成(2016年10月27日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/272.html
子どもの権利委員会・一般的意見19号:子どもの権利実現のための公共予算(第4条)(後編) (子どもの権利と公共予算 前編より続く) IV.子どもの権利のための公共予算編成の原則 57.前掲第II節で明らかにしたように、委員会は、締約国には、自国の予算編成過程において、子どもの権利を実現するのに十分なやり方で歳入創出および支出管理を進めるための措置をとる義務があることを強調する。委員会は、子どもの権利を実現するための十分な資源の確保を達成するには、条約の一般原則および予算原則(有効性、効率性、公平性、透明性および持続可能性)を考慮することも含め、多くの方法があることを認識するものである。条約の締約国は、子どもの権利を実現する予算上の義務を果たすことについての説明責任を有する。 58.委員会は、条約の一般原則および以下の予算原則を自国の予算編成過程に適用することに関して各国がすでに専門的知見および経験を有していることを認識する。締約国は、優れた実践の共有および交流を進めるよう奨励されるところである。 A.有効性 59.締約国は、子どもの権利の増進につながるような方法で計画、策定、執行およびフォローアップを進めるべきである。締約国は、自国の文脈における子どもの権利の状況を理解することに対して投資するとともに、子どもの権利の実現に関わる課題の克服のために戦略的に立案された立法、政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう求められる。締約国は、予算がさまざまな集団の子どもたちにどのような影響を与えているかを常に評価するとともに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもにとくに注意を払いながら、自国の予算決定が最大多数の子どもたちにとって可能なかぎり最善の結果につながることを確保するべきである。 B.効率性 60.子ども関連の政策およびプログラムのために投入される公的資源は、費用に値する価値を確保するような方法で、かつ子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する義務を念頭に置きながら、管理されるべきである。承認された支出は策定された予算にのっとって執行することが求められる。子どもの権利を増進させるための財およびサービスは、透明なやり方でかつ時機を失することなく調達されかつ提供されるべきであり、また適切な質を備えているべきである。さらに、子どもの権利に対して配分された資金は無駄に使用されるべきではない。締約国は、効率的な支出の妨げとなる制度的障壁を克服する努力を行なうべきである。公的資金の監視、評価および監査は、健全な財務管理を促進するチェック・アンド・バランスとなるようなものであることが求められる。 C.公平性 61.締約国は、資源の動員または公的資金の配分もしくは執行を通じ、いかなる子どもまたはいかなるカテゴリーに属する子どもたちも差別してはならない。公平な支出とは、必ずしも子ども1人ひとりに同じ金額を支出することを意味するわけではなく、むしろ子どもたちの実質的平等につながるような支出決定を行なうことを意味する。資源は、平等を促進するため、対象の公正な設定に基づいて用いられるべきである。締約国には、子どもが自己の権利にアクセスするさいに直面する可能性があるすべての差別的障壁を取り除く義務がある。 D.透明性 62.締約国は、厳格な検討に対して開かれた公的財務管理の制度および実践を発展させかつ維持するべきであり、公的資源に関する情報は時宜を得たやリ方で自由に利用可能とされるべきである。透明性は、効率性ならびに汚職および公的予算の誤った管理との闘いに寄与し、ひいては子どもの権利の増進のために利用可能な公的資源を増やすことにつながる。透明性はまた、行政府、立法および市民社会(子どもたちを含む)が予算編成過程に意味のある形で参加できるようにするための前提条件でもある。委員会は、締約国が、子どもに関連する公的な歳入、配分および支出についての情報へのアクセスを積極的に促進すること、ならびに、立法府および市民社会(子どもたちを含む)の継続的関与を支援しかつ奨励する政策を採択することの重要性を強調するものである。 E.持続可能性 63.現在および将来の世代の子どもたちの最善の利益が、あらゆる予算決定において真剣に考慮されるべきである。締約国は、子どもの権利を直接間接に実現することを目的とした政策の採択およびプログラムの実施が継続的に行なわれることを確保するような方法で、歳入を動員し、かつ公的資源を管理することが求められる。締約国が子どもの権利に関連する後退的措置をとれるのは、前掲パラ31で述べたような場合のみである。 V.公共予算における子どもの権利の実施 64.委員会は、本節において、公的予算編成過程を構成する以下の4つの段階との関連でどのように子どもの権利を実現すればよいかについて、より詳細な指針および勧告を提示する。 (a) 計画 (b) 策定 (c) 執行 (d) フォローアップ 〔訳者注/図は略。PDFファイル参照〕 65.本節で焦点を当てるのは国レベルおよび国内下位レベルの公共予算編成過程だが、委員会は、国際協力を通じて条約の実施を促進することも締約国の義務であることを強調する [19]。このような協力は、該当するときには、国レベルおよび国内下位レベルの予算で目に見えるようにされるべきである。 [19] 前掲第II節および条約第45条参照。 66.委員会はまた、条約およびその選択議定書を全面的に実施するためには、予算編成過程全体を通じて部門横断型の、省庁間および機関間の効果的な調整および協力を図ることが重要である点も強調する。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルでそのような調整を維持するために、資源を利用可能としかつ情報システムの整備を図るべきである。 A.計画 1.状況の評価 67.予算の計画のためには、経済状況についてならびに現行の立法、政策およびプログラムがどの程度十分に子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足しているかについて、現実的な評価を行なうことが必要である。国は、マクロ経済、予算および子どもの権利の状況の現状および将来の見通しの双方について、信頼できる、時宜を得た、アクセス可能な、包括的なかつ細分化された情報およびデータを、再利用可能な形式で保持しなければならない。このような情報は、直接間接に子どもの権利を対象とし、かつこれを増進させる立法、政策およびプログラムを策定するために根本的重要性を有する。 68.締約国は、予算の計画にさいし、過去(少なくとも過去3~5年)、現在および将来(少なくとも今後5~10年)の状況を考慮に入れながら、さまざまな集団の子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)の状況を詳しく検討するべきである。子どもたちの状況についての信頼性がありかつ有益な情報へのアクセスを確保するため、締約国は以下の措置をとるよう促される。 (a) 子どもに関わる人口動態データその他の関連データの収集、処理、分析および普及のために設置されている統計機関および統計制度の権限および資源を定期的に再検討すること。 (b) 子どもたちの状況に関して利用可能な情報が、さまざまな集団の子どもたちおよび条約第2条の差別の禁止の原則を考慮するうえで有益なやり方で細分化されることを確保すること(前掲第III節Aも参照)。 (c) 子どもたちの状況に関する、利用者にやさしくかつ細分化されたデータを、国レベルおよび国内下位レベルで予算編成に関与する行政府職員および立法府議員ならびに市民社会(子どもたちを含む)に対し、時宜を得た方法で利用可能とすること。 (d) 子どもたちに影響を与えるすべての政策および資源のデータベースを設置しかつ維持することにより、対応するプログラムおよびサービスの実施および監視に関与する人々が、客観的なかつ信頼できる情報に継続的にアクセスできるようにすること。 69.締約国は、以下の措置をとることにより、予算決定が子どもたちに与えた過去の影響および今後与える可能性のある影響を調査するべきである。 (a) 過去の公的歳入徴収、予算配分および支出が子どもたちに与えた影響についての会計検査、評価および研究を実施すること。 (b) 子どもたち、その養育者および子どもの権利のために活動している人々との協議を行ない、かつ、予算決定において当該協議の結果を真剣に考慮すること。 (c) 予算年度全体を通じて子どもたちと恒常的に協議するための現行の機構を再検討し、またはそのための新たな機構を創設すること。 (d) 子どもの権利に関わる効果的な予算計画を支えるために新たな技術を活用すること。 2.立法、政策およびプログラム 70.財政問題、予算編成手続または子どもの具体的権利に関連する立法、政策およびプログラムは、子どもたちに直接間接の影響を及ぼす。締約国は、すべての立法、政策およびプログラムが条約およびその選択議定書にしたがったものとなり、子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)の現実を反映し、かつ子どもたちを害しまたはその権利の実現を妨げないことを確保するため、あらゆる可能な措置をとらなければならない。 71.委員会は、マクロ経済および財政に関する立法、政策およびプログラムが、子どもたち、その保護者および養育者に直接間接の影響を及ぼしうることを認識する(保護者等は、たとえば労働立法または公的債務管理による影響を受ける可能性がある)。締約国は、子どもの権利の実現が損なわれないことを確保する目的で、あらゆる立法、政策およびプログラム(マクロ経済および財政に関するものを含む)について子どもの権利影響評価を実施するべきである。 72.子どもに関連する立法、政策およびプログラムは、国際開発協力に関する決定およびその運営ならびに国際機関における締約国の構成員資格の一部に位置づけられるべきである。国際的な開発協力または金融協力に関与する国は、当該協力が条約およびその選択議定書にしたがって進められることを確保するためにあらゆる措置をとるよう求められる。 73.委員会は、必要な財源の水準を確認すること、および、予算計画担当者ならびに行政府および立法府の関連の意思決定担当者が実施のために必要な資源について十分な情報に基づく決定を行なえるようにすることを目的として、締約国が、子どもに影響を与える立法、政策およびプログラムの提案について費用見積もりを行なうことの重要性を強調する。 3.資源の動員 74.委員会は、子どもの権利のために利用可能な資源を維持するうえで、歳入動員および資金借入れに関する締約国の立法、政策およびプログラムが重要であることを認識する。締約国は、税および税外収入等を通じて国レベルおよび国内下位レベルで国内資源を動員するため、具体的かつ持続可能な措置をとるべきである。 75.締約国は、子どもの権利を実現するために利用可能な資源が不十分であるときは、国際協力を求めなければならない。そのような協力においては、受入国とドナー国の双方とも、条約およびその選択議定書を考慮に入れることが求められる。委員会は、子どもの権利の実現のための国際的または地域的協力には、対象を明確にしたプログラムに対する資源の動員、および、徴税、脱税との闘い、債務処理、透明性その他の問題に関連する措置も含まれうることを強調するものである。 76.子どもの権利に関する公的支出のための資源の動員は、それ自体、第IV節に掲げた予算原則を遵守するやり方で行なわれるべきである。資源動員システムにおいて透明性が欠けていれば、非効率、誤った財務管理および汚職につながる可能性がある。これが、ひいては、子どもの権利に支出するために利用可能とされる資源が不十分になってしまうことにつながりうるのである。家庭の支払い能力を考慮しないさまざまな税制は、不公平な資源動員につながりうる。そのために、すでに乏しい財源しか有していない人々(そのなかには子どもを養育している人々もいる)が不相応な歳入負担を負うことになりかねない。 77.締約国は、以下の措置をとることにより、自国が負う実施義務と一致するやり方で利用可能な資源を最大限に動員するべきである。 (a) 資源の動員に関連する立法および政策について子どもの権利影響評価を実施すること。 (b) 歳入の垂直的な(国の異なる段階間の)分配および水平的な(同じ段階における諸部局間の)分配の双方に関する政策および方式を債券投資、かつ、これらの政策および方針において居住地域が異なる子どもの間の平等が支持されかつ増進させられることを確保すること。 (c) 租税に関する立法、政策および制度を立案しかつ運営する自国の能力を再検討しかつ強化すること(脱税を回避するために諸国間で協定を締結することも含む)。 (d) あらゆる段階で、非効率または誤った管理を理由とする資源の無駄を防止し、かつ汚職または不法な実務と闘うことにより、子どもの権利を前進させるために利用可能な資源を保全すること。 (e) 第IV節に掲げた予算原則をあらゆる資源動員戦略において適用すること。 (f) 自国の歳入源、支出および負債が現在および将来の世代にとっての子どもの権利の実現につながることを確保すること。 78.委員会は、国が債権者および貸方に代わって行なう持続可能な債務管理が、子どもの権利のための資源の動員に寄与しうることを認識する。持続可能な債務管理には、借入れおよび貸付けに関する明確な役割および責任を定めた透明な立法、政策および制度の整備、ならびに、債務の管理および監視が含まれる。委員会はまた、持続可能性を欠いた長期債務が、子どもの権利のために資源を動員する国の能力にとっての障壁となりえ、かつ、子どもに悪影響を与える課税および受益者負担につながる可能性があることも認識するものである。したがって、債務協定との関連でも子どもの権利影響評価を実施することが求められる。 79.債務救済は、子どもの権利のために資源を動員する国の能力を高めうる。締約国が債務救済を受けたときは、当該救済の結果として利用可能となった資源の配分に関する決定において、子どもの権利が真剣に考慮されなければならない。 80.締約国は、天然資源の通じた資源動員に関する決定を行なうさい、子どもの権利を保護しなければならない。たとえば、そのような資源に関する国内的および国際的取決めにおいては、それが現在および将来の世代の子どもたちに及ぼす可能性のある影響が考慮されるべきである。 4.予算編成 81.予算編成方針および予算案は、国にとって、子どもの権利に対する自国の決意を、国レベルおよび国内下位レベルの具体的な優先課題および計画として実現していくための強力な手段である。締約国は、以下の措置をとることによって、予算関連の方針および提案を、子どもに関わる予算の効果的な比較および監視を可能にするような方法で作成することが求められる。 (a) 分野別分類(部門または下位部門)、経済的分類(経常費および資本支出)、行政上の分類(省庁)およびプログラム別分類(プログラムに基づく予算編成手法が活用されている場合)などの国際的に合意された予算分類システムを、それが子どもの権利と両立するかぎりで遵守すること。 (b) この一般的意見との一致を確保する目的で、予算編成方針および予算案の作成に関する行政上の指針および手続(標準ワークシートおよび協議対象関係者に関する指示など)を再検討すること。 (c) 分類システムをさらに再検討することにより、そこに、最低限、後掲パラ84に掲げたすべてのカテゴリーにしたがって予算情報を細分化した予算項目および予算コードが含まれることを確保すること。 (d) 自国の予算項目および予算コードが国レベルおよび国内下位レベルで対応していることを確保すること。 (e) 利用者にやさしく、時宜を得ており、かつ立法府、子どもたちおよび子どもの権利擁護者にとってアクセス可能な予算編成方針および予算案を公表すること。 82.予算編成方針および予算案には、子どもの権利に関わる自国の義務を国がどのように果たそうと計画しているかについての必須情報を伝えるものである。締約国は、予算編成方針および予算案を活用して以下の措置をとることが求められる。 (a) 子どもたちに影響を与える立法、政策およびプログラムがどのように資金の手当てをされ、かつ実施されているかについて説明すること。 (b) どの予算配分が子どもたちを直接対象としたものか、明らかにすること。 (c) どの予算配分が子どもたちに間接的に影響を与えるか、明らかにすること。 (d) 過去の予算が子どもたちに与えた影響についての評価および監査で得られた知見を提示すること。 (e) 子どもの権利を前進させるために最近とられた措置またはこれからとられようとしている措置の詳細を示すこと。 (f) 子どもの権利に関わる支出のために利用可能な資源の過去の状況、現在の状況および将来の見通しならびに実際の支出についての財務データおよび解説を提示すること。 (g) 成果および子どもたち(権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたちを含む)への影響に関する監視ができるよう、子ども関連のプログラム目標を予算配分および実際の支出と関連づける実績達成目標を定めること。 83.予算編成方針および予算案は、子どもの権利関連の団体、子どもたちおよびその養育者にとって重要な情報源である。締約国は、この点に関わる利用者にやさしくかつアクセス可能な情報を作成し、かつそれを公衆に向けて普及することにより、自国の管轄内にある人々への説明責任をいっそう果たすことが求められる。 84.明確な予算分類システムは、子どもたちに影響を与える予算配分および実際の支出が予算原則との関連でどのように運用されているかについて、国およびその他の主体が監視するための基盤となる。そのためには、最低限、予算項目および予算コードにおいて、計画されている支出、予算として策定された支出、改訂された支出および実際の支出であって子どもたちに影響を与えるもののすべてが、以下の要素によって細分化されていなければならない。 (a) 年齢(年齢層の定め方が国によって異なっていることは認識する)。 (b) ジェンダー。 (c) 地域(たとえば国内下位レベルの地域分類による)。 (d) 権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもの現在の分類および将来的に考えられる分類(条約第2条を考慮するものとする。第III節Aも参照)。 (e) 歳入源(国レベル、国内下位レベル、国際地域レベルまたは国際レベルのいずれであるかを問わない)。 (f) 国レベルおよび国内下位レベルの担当部局(省庁など)。 85.締約国は、予算案において、子ども関連のプログラムのうち民間部門への委託を提案するものまたはすでに委託済みのものがあればそれを明らかにするべきである [20]。 [20] 企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、パラ25参照。 86.委員会は、予算における子どもの権利の可視化に関してもっとも進んだ取り組みを行なっている国では、予算編成に対するプログラム基盤アプローチを適用する傾向があることに留意する。締約国は、このアプローチに関する経験を共有し、かつ、それを自国の状況に適用しかつ適宜修正するよう促されるものである。 B.策定 1.立法者による予算案の吟味 87.委員会は、国レベルおよび国内下位レベルの立法者が、子どもたちの状況についての詳細かつ利用者にやさしい情報にアクセスでき、かつ、予算案がどのように子どもの福利の向上および子どもの権利の増進を図ろうとしているかについて明確に理解することの重要性を強調する。 88.国レベルおよび国内下位レベルの立法者には、子どもの権利の視点から予算案を吟味し、かつ、必要なときは、さまざまな集団の子どもたちにとって予算配分がどのような影響を持ちうるかについて究明するための分析または調査研究を実施しまたは委託するための、十分な時間、資源および自律的権限も必要である。 89.立法者が子どもの最善の利益に奉仕するという監督者としての役割を果たせるようにするため、立法機関およびその委員会の構成員には、予算案が条約の一般原則および予算原則と一致するやり方で子どもの権利を前進させることを確保する目的で、予算案について質問し、これを検討し、かつ必要なときは予算案の修正を要請する権限が認められるべきである。 90.締約国は、国レベルおよび国内下位レベルの立法府(関連の立法委員会を含む)について以下のことを確保することにより、立法府の構成員が、予算立法の成立前に、予算案がすべての子どもたちに与える影響について分析しかつ討議するための準備を十分に整えられるように貢献するべきである。 (a) 子どもたちの状況に関する、わかりやすく利用しやすい情報にアクセスできること。 (b) 子どもたちに直接間接に影響を与える立法、政策およびプログラムがどのように予算項目に移し替えられているかについて、行政から明確な説明を受けること。 (c) 予算過程において、予算案を受け取り、これについての検討および討議を行ない、かつ子どもに関連する修正を策定前に提案するための十分な時間を与えられること。 (d) 予算案が子どもの権利にとって持つ意味合いに光を当てる分析を独立の立場から行ないまたは委託する能力を持つこと。 (e) 市民社会、子どもの擁護者および子どもたち自身を含む国内の関係者を対象として、予算案に関わる公聴会を開催できること。 (f) たとえば立法府の予算局を通じて、前掲(a)から(e)で述べたような監督活動を行なうために必要な資源を有すること。 91.締約国は、予算の策定段階において、国レベルおよび国内下位レベルの予算に関して以下のような文書を作成しかつ配布するべきである。 (a) 一貫した、かつわかりやすいやり方で予算情報を分類していること。 (b) 他の予算案および支出報告書との矛盾を回避することにより、分析および監視の便が図られること。 (c) 子どもたちおよび子どもの権利擁護者、立法府および市民社会がアクセス可能な刊行物または予算概略を含んでいること。 2.立法府による予算の策定 92.委員会は、立法府によって策定される予算が、計画されている支出および実際の支出との比較ならびに子どもの権利との関連における予算の実施の監視を可能にするようなやり方で分類されることの必要性を強調する。 93.策定された予算は、国ならびに国レベルおよび国内下位レベルの立法機関にとってきわめて重要な公文書と見なされるのみならず、子どもたちおよび子どもの権利擁護者を含む市民社会もアクセスできるようにされるべきである。 C.執行 1.利用可能な資源の移転および支出 94.締約国は、子どもの権利を前進させるための財およびサービスが購入されるさいに金額に応じた最大の価値が確保されるようにするため、透明かつ効率的な財務機構および財務制度を採用しかつ維持するべきである。 95.委員会は、締約国には、公共支出が有効性および効率性を欠いていることの根本的原因(たとえば、財またはサービスの質の貧弱さ、財務管理または調達のための制度の不十分さ、漏損、時機を失した移転、役割および責任の不明確さ、情報吸収・応用力の弱さ、予算情報システムの貧弱さならびに汚職など)を明らかにしかつ是正する義務があることを強調する。締約国は、子どもの権利を前進させるための資源を浪費したときまたはその管理を誤ったときは、これがなぜ生じたかを説明し、かつ原因にどのように対応したかを示す義務を負う。 96.子どもたちを対象とする政策およびプログラムには、所期のすべての受益者を予算年度内に計画どおりに網羅することができず、または意図していなかった結果につながる可能性もある。締約国は、必要なときに介入を図り、かつ迅速な是正措置をとることができるよう、執行段階において支出の成果を監視するべきである。 2.予算に関する中期報告 97.締約国は、策定された予算で定められているように子どもの権利を前進させるうえで見られた進展を国および監督機関が追跡できるようなやり方で、子どもに関連する予算についての恒常的な監視および報告を行なうべきである。 98.委員会は、予算報告が時宜を得たやり方で公に利用可能とされること、および、当該報告において、子どもに影響を与える立法、政策およびプログラムに関連して策定された予算、修正された予算ならびに実際の歳入および支出との間にある食い違いを浮き彫りにすることの重要性を強調する。 99.委員会は、締約国が、子どもの権利に関連する支出の報告、追跡および分析が可能になる予算分類システムを活用すべきであることを強調する。 3.予算の執行 100.締約国は、さまざまな集団の子どもを対象とする歳入徴収ならびに実際の支出の対象範囲および成果を、予算年度中および複数年次について、かつ、たとえばサービスの利用可能性、質、アクセス可能性および公正な配分の観点から、監視しかつ分析するべきである。締約国は、そのような監視および分析(民間部門に外部委託されたサービスに関するものを含む)を実施するための資源および能力が整えられることを確保するよう促される。 101.締約国は、策定された予算の実施状況を恒常的に監視し、かつ公に報告するべきである。これには以下の措置が含まれる。 (a) さまざまな社会部門を横断する形で、さまざまな行政段階において予算で策定された内容と実際に支出された内容とを比較すること。 (b) 予算年度の中間期までに実際に行なわれた支出、動員された歳入および生じた債務を網羅した包括的な中期報告書を刊行すること。 (c) 中期報告書をより頻繁に(たとえば毎月または四半期ごとに)刊行すること。 102.締約国は、子どもたちを含む市民社会が公的支出の成果を監視できるような、公的な説明責任を確保するための機構を設置する義務を負う。 103.締約国は、子どもの権利に関わる実際の支出との関連で規則および手続が守られること、ならびに、説明責任の履行および報告に関する手続が遵守されることを確保するための、内部的な統制および監査の手続を整備するべきである。 D.フォローアップ 1.年度末報告書および評価 104.年度末予算報告書により、国は、国レベルおよび国内下位レベルで、子どもの権利に関わる歳入、借入れ、国際協力および実際の支出についての説明責任を果たすことが可能になる。年度末予算報告書は、市民社会および立法府が、過去の年の予算実績を吟味し、かつ、必要に応じ、子どもたちおよび子どもの権利関連のプログラムに対して行なわれた実際の支出についての懸念を表明するさいの基盤となるものである。 105.委員会は、締約国が、年度末報告書において、子どもの権利に影響を与えるすべての歳入徴収および実際の支出についての包括的な情報を提供すべきであることを強調する。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルの立法府向けに利用者にやさしい報告書を発表するとともに、年度末報告書および評価を、時宜を得たやり方でアクセス可能としかつ公に入手可能とするべきである。 106.国および独立の評価機関が行なう評価およびその他の態様の予算分析は、歳入徴収および実際の支出がさまざまな集団の子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)に及ぼす影響についての貴重な洞察を提供しうる。締約国は、以下の措置をとることにより、予算が子どもたちの状況に与える影響についての恒常的な評価および分析を実施しかつ奨励するべきである。 (a) そのような評価および分析を恒常的に実施するための十分な財源および人的資源を配分すること。 (b) 予算過程全体を通じてそのような評価および分析の知見の厳密な評価および検討を行ない、かつ、それらの知見に関連して行なわれた決定を報告すること。 (c) 子どもの権利に関連して行なわれた実際の支出の有効性、効率性、公平性、透明性および持続可能性について評価する、独立の評価機関(研究機関など)を設置しかつ強化すること。 (d) 子どもたちを含む市民社会が、たとえば子どもの権利影響評価を通じて、評価および分析に貢献できることを確保すること。 2.監査 107.最高監査機関は、公的な歳入徴収および支出が策定された予算にしたがって行なわれているか否か検証することにより、予算過程においてきわめて重要な役割を果たす。監査においては、支出の効率性または有効性を調査し、かつ、特定の部門、国の統治機構または分野横断的な問題に焦点を当てることも可能である。子どもの権利との関連で行なわれる専門監査は、国が子どもに関する公的な歳入動員および支出を評価しかつ改善するうえで役に立ちうる。締約国は、監査報告書を、時宜を得たやり方でアクセス可能としかつ公に入手可能とするべきである。 108.委員会は、最高監査機関は国から独立しているべきであり、かつ、独立した、説明責任の履行につながる、かつ透明なやり方で子ども関連の予算に関する監査および報告を行なうために必要な情報および資源にアクセスする権限を認められるべきであることを強調する。 109.締約国は、以下の措置をとることにより、子どもの権利に関する公的な歳入徴収および支出に関連して最高監査機関が果たす監督の役割を支援するべきである。 (a) 最高監査機関に対し、時宜を得たやり方で、包括的な年次会計報告書を提出すること。 (b) 最高監査機関が子どもの権利に関連して監査を実施するための資源が利用可能とされることを確保すること。 (c) 実際の支出が子どもの権利に与えた影響に関連する監査に対し、公的な応答(国が監査の知見および勧告にどのように対応するかを含む)を行なうこと。 (d) 国の職員が、立法府の委員会に出頭して、子どもの権利に関連する監査報告書において提起された懸念に応答する能力を有することを確保すること。 110.子どもたちを含む市民社会は、公的支出の監査に対して重要な貢献を行ないうる。締約国は、以下の措置をとることにより、子どもの権利に関連する実際の支出の評価および監査への参加に関して市民社会を支持し、かつそのエンパワーメントを図るよう奨励されるところである。 (a) このような目的で公的な説明責任を確保するための機構を設置するとともに、これらの機構がアクセス可能であり、参加型であり、かつ有効であることを確保するために定期的にその再検討を行なうこと。 (b) 国の職員が、子どもに関連する公的支出の監視および監査を行なう市民社会および独立機関の知見に対し、十分な識見のあるやり方で応答する能力を有することを確保すること。 111.締約国は、子どもの権利に関連する従前の公的な資源動員、予算配分および支出に関する監査の内容を、予算過程の次の段階で参考にするために活用するべきである。 VI.この一般的意見の普及 112.委員会は、締約国が、この一般的意見を、自国のすべての行政部局、行政段階および行政機構、子どもたちおよびその養育者を含む市民社会、ならびに、開発協力機関、学術研究機関、メディアおよび民間部門の関連する部分を対象として広く普及するよう勧告する。 113.締約国は、この一般的意見を関連の言語に翻訳するとともに、子どもにふさわしい版を利用可能とするべきである。 114.この一般的意見に関連する最善の実務のあり方を共有し、かつ一般的意見の内容についてあらゆる関連の専門家および専門職員を研修するためのイベントが開催されるべきである。 115.委員会は、前掲のすべての関係者に対し、この一般的意見の内容に関連した優れた実務のあり方を共有するよう奨励する。 116.締約国は、委員会への定期報告書において、自国が直面する課題ならびに自国の予算および予算過程でこの一般的意見を適用するためにとった措置についての情報を記載するべきである。 更新履歴:ページ作成(2016年10月27日)。
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子どもの権利委員会・一般的意見15号:到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利(第24条) 前編 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 第62会期(2013年1月14日~2月1日) CRC/C/GC/15(2013年4月17日/原文英語) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-6) II.健康に対する子どもの権利を実現するための原則および前提(パラ7-22)A.子どもの権利の不可分性および相互依存性(パラ7) B.差別の禁止に対する権利(パラ8-11) C.子どもの最善の利益(パラ12-15) D.生命、生存および発達に対する権利ならびに子どもの健康の決定要因(パラ16-18) E.意見を聴かれる子どもの権利(パラ19) F.子どもの発達しつつある能力およびライフコース(パラ20-22) III.第24条の規範的内容(パラ23-70)A.第24条第1項(パラ23-31) B.第24条第2項(パラ32-70) IV.義務および責任(パラ71-85) → 健康に対する子どもの権利 後編A.締約国の尊重義務、保護義務および充足義務(パラ71-74) B.国以外の主体の責任(パラ75-85) V.国際協力(パラ86-89) VI.実施および説明責任履行の枠組み(パラ90-120)A.健康に対する子どもの権利についての知識の促進(第42条)(パラ93) B.立法措置(パラ94-95) C.ガバナンスおよび調整(パラ96-103) D.子どもの健康への投資(パラ104-107) E.行動サイクル(パラ108-118) F.健康権侵害の救済措置(パラ119-120) VII.普及(パラ121) I.はじめに 1.この一般的意見は、子どもの健康に対して子どもの権利の視点(すべての子どもに、身体的、情緒的および社会的ウェルビーイングを背景として、それぞれが有する潜在的可能性を全面的に発揮しながら生存し、成長し、かつ発達する機会を有する権利がある)からアプローチすることの重要性を基礎として作成されたものである。この一般的意見全体を通じて、「子ども」とは、子どもの権利条約(以下「条約」)第1条にしたがい、18歳未満のすべての個人をいう。条約が採択されて以降、近年、子どもの健康権の充足について目覚ましい成果が達成されたにも関わらず、相当の課題が残ったままである。子どもの権利に関する委員会(以下「委員会」)は、予防、治療およびケアのために利用可能な知識および技術の適用に対する政治的なコミットメントおよび十分な資源の配分があれば、子どもの死亡、罹病および障害のほとんどは予防可能であることを認識する。この一般的意見は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利(以下「子どもの健康権」)の尊重、保護および充足について締約国および何らかの義務を負うその他の主体を支援するため、締約国および何らかの義務を負うその他の主体に指針を示し、かつ支援を提供することを目的として作成された。 2.委員会は、第24条で定められている子どもの健康権を、予防、健康促進、治療、リハビリテーションおよび緩和ケアのための時宜を得た適切なサービスのみならず、最大限可能なまで成長発達し、かつ、健康の根本的決定要因に対応するプログラムの実施を通じて最高水準の健康に到達することを可能にする条件下で生活する権利にまで及ぶ、包摂的な権利と解釈する。健康に対するホリスティックなアプローチをとることにより、子どもの健康権の実現は、より幅広い、国際人権法上の義務の枠組みのなかに位置づけられる。 3.委員会は、子どもの権利および公衆衛生の分野で活動する一連の関係者(政策立案およびプログラムの実施に携わる者ならびに活動家を含む)、ならびに、親および子どもたち自身に宛ててこの一般的意見を公にする。広範な子どもの健康問題、保健制度、ならびに、国および地域によって異なるさまざまな文脈との関連性を確保するため、この一般的意見はその一般的性質を明確にしたものである。ここではもっぱら第24条第1項および第2項に焦点を当て、第24条第4項についても取り上げる [1]。第24条の実施においては、すべての人権原則(とくに条約の指導的原則)を考慮に入れなければならず、またエビデンスに基づいた公衆衛生上の基準および模範的実践によって実施のあり方が決定されなければならない。 [1] 有害慣行に関する一般的意見が現在作成途上にあるため、第24条第3項については取り上げていない。 4.世界保健機関憲章において、各国は、健康について、完全な身体的、精神的および社会的ウェルビーイングの状態であって単に疾病または病弱の存在しないことではないと考えることに合意した [2]。健康に関するこの積極的理解は、この一般的意見の公衆衛生上の基礎をなすものである。第24条はプライマリーヘルスケアに明示的に言及しているが、これに対するアプローチはアルマアタ宣言で定められ [3]、かつ世界保健総会によって強化された [4]。このアプローチで重視されているのは、健康に関する排除の解消および社会的格差の縮減を図り、住民のニーズおよび期待に即する形で保健サービスを組織し、関連セクターに保健を統合し、協働型の政策対話モデルを追求し、かつ、関係者の参加(サービスに対する需要およびサービスの適正な利用を含む)を強化する必要性である。 [2] 国際保健会議が1946年7月22日に採択した世界保健機関(WHO)憲章前文。 [3] アルマアタ宣言(プライマリーヘルスケアに関する国際会議、アルマアタ、1978年9月6~12日)。 [4] 世界保健総会「保健制度の強化を含むプライマリーヘルスケア」(A62/8)。 5.子どもの健康はさまざまな要因の影響を受けるものであるが、これらの要因の多くはこの20年間に変化してきており、今後も変化し続ける可能性が高い。これには、新たな健康問題の発生および保健面での優先課題の変化が注目されるようになったこと(HIV/AIDS、インフルエンザの世界的流行、非感染性疾患、精神保健ケアの重要性、新生児ケアおよび新生児期・思春期の死亡等)、ならびに、子どもの死亡、疾病および障害を助長する諸要因(世界的な経済・金融情勢、貧困、失業、移住および強いられた集団避難、戦争および動乱、差別ならびに周縁化等の構造的決定要因を含む)に関する理解が高まったことも含まれる。気候変動および急速な都市化が子どもの健康に及ぼす影響についての理解も広がりつつあり、ワクチンおよび医薬品等の新技術も開発されており、また、効果的な生物化学的、行動科学的および構造的介入策、ならびに、子どもの養育に関連しており、かつ子どもに積極的効果を及ぼすことが証明されてきた若干の文化的慣行についてのエビデンスもいっそう蓄積されている。 6.情報通信技術の進展により、子どもの健康権を達成する新たな機会および課題が生じてきた。保健セクターがこれまで以上の資源および技術を利用できるようになっているにも関わらず、子どもの健康促進、予防および治療のための基礎的サービスにすべての者がアクセスできることをいまなお確保できていない国は多い。子どもの健康権を全面的に実現するためには、何らかの義務を負っているさまざまな主体の関与が必要であり、また親その他の養育者が果たす中心的役割についての認識が高められなければならない。政府機関および非政府組織のパートナー、民間セクターおよび資金拠出団体を含む関係者が積極的に関与し、国、広域行政圏、地方およびコミュニティのレベルで活動する必要がある。国には、何らかの義務を負うすべての主体が、その義務および責任を履行するための十分な自覚、知識および能力を有すること、ならびに、子どもが自己の健康権を主張できるようにその能力が十分に発達させられることを確保する義務がある。 II.健康に対する子どもの権利を実現するための原則および前提 A.子どもの権利の不可分性および相互依存性 7.条約は、すべての子どもがその精神的および身体的能力、人格および才能を最大限可能なまで発達させることを可能とする、すべての権利(市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利)の相互依存性および平等な重要性を認めている。子どもの健康権それ自体が重要であるのみならず、健康権の実現は、条約に掲げられた他のすべての権利の享受にとっても欠かせない。さらに、子どもの健康権を達成できるかどうかは、条約に掲げられた他の多くの権利の実現にかかっている。 B.差別の禁止に対する権利 8.すべての子どもの健康権を全面的に実現するため、締約国には、脆弱性を助長する重要な要因のひとつである差別の結果として子どもの健康が損なわれないことを確保する義務がある。条約第2条には多くの差別禁止事由(子ども、親または法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位を含む)が挙げられている。これらの差別禁止事由には性的指向、ジェンダーアイデンティティおよび健康状態(たとえばHIV感染および精神的健康)も含まれる [5]。子どもの健康を損なうおそれがある他のいかなる形態の差別に対しても同様に注意が向けられるべきであり、また複合的形態の差別の影響に対する対処も行なわれるべきである。 [5] 「子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達」に関する一般的意見4号(2003年、Official Records of the General Assembly, Fifty-ninth Session, Supplement No. 41 (A/59/41), annex X)、パラ6。 9.ジェンダーに基づく差別はとくに蔓延しており、女子の新生児殺/堕胎から、乳幼児への栄養の与え方、ジェンダーに基づくステレオタイプおよびサービスへのアクセスに関わる差別に至るまで、広範な結果に影響を及ぼしている。女子・男子の異なるニーズ、ならびに、ジェンダー関連の社会的な規範および価値観が男子・女子の健康および発達に及ぼす影響に注意が向けられるべきである。伝統および慣習に深く根ざしており、かつ女子・男子の健康権を損なっている、ジェンダーに基づく有害な慣行および行動規範に対しても注意が向けられなければならない。 10.子どもの健康に影響を及ぼすすべての政策およびプログラムは、若年女性の全面的な政治参加、社会的および経済的エンパワーメント、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する平等な権利の承認、ならびに、情報、教育、司法および安全への平等なアクセス(あらゆる形態の性暴力およびジェンダーを理由とする暴力の撤廃を含む)を確保する、ジェンダー平等に対する広範なアプローチに根差したものであるべきである。 11.不利な状況に置かれた子どもおよびサービス等が行き届かない地域で暮らす子どもが、子どもの健康権を充足するための努力の中心に据えられるべきである。国は、子どもを脆弱な状況に追い込み、または特定の集団の子どもを不利な立場に追いやる、国および地方のレベルに存在する要因を特定することが求められる。子どもの健康に関する法令、政策、プログラムおよびサービスを発展させる際にこれらの要因への対処が行なわれるべきであり、公正を確保することに向けた活動が進められるべきである。 C.子どもの最善の利益 12.条約第3条第1項は、公的または私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関および立法機関に対し、子どもに関わるすべての活動において子どもの最善の利益が評価され、かつ第一次的に考慮されることを確保する義務を課している。この原則は、子ども個人または集団としての子どもたちに関わる保健関連のすべての決定において遵守されなければならない。子ども個人の最善の利益の判定は、その身体的、情緒的、社会的および教育的ニーズ、年齢、性別、親および養育者との関係ならびに家族的および社会的背景に基づいて、かつ、条約第12条にしたがってその意見を聴いた後に、行なわれるべきである。 13.委員会は、締約国に対し、子どもたちの健康および発達に影響を及ぼすすべての決定(資源の配分を含む)、ならびに、子どもたちの健康の根本的決定要因に影響を及ぼす政策および介入策の策定および実施において、子どもたちの最善の利益を中心に位置づけるよう促す。たとえば以下のとおりである。 (a) 治療の選択にあたっては子どもの最善の利益が指針とされるべきであり、実行可能なときは経済的考慮よりも優先されるべきである。 (b) 親とヘルスワーカー間の利益の衝突を解決するために、子どもの最善の利益が役立てられるべきである。 (c) 子どもが生活し、成長しかつ発達する物理的および社会的環境を阻害する行動を規制するための政策の策定は、子どもの最善の利益によって左右されるべきである。 14.委員会は、すべての子どもの治療、その差し控えまたは停止に関わるあらゆる意思決定の基礎としての、子どもの最善の利益の重要性を強調する。国は、子どもの最善の利益について判定するために設けられている、公式なかつ拘束力のある他の手続に加えて、保健分野における子どもの最善の利益の評価に関してヘルスワーカーの指針となる手続および基準を策定するべきである。委員会は、一般的意見3号 [6] において、HIV/AIDSに対応するための十分な措置は、子どもおよび青少年の諸権利が全面的に尊重されなければとることができないと強調した。したがって、予防、治療、ケアおよび支援のあらゆる段階でHIV/AIDSについて検討する際に、子どもの最善の利益が指針とされるべきである。 [6] 「HIV/AIDSと子どもの権利」に関する一般的意見3号(2003年、Official Records of the General Assembly, Fifty-ninth Session, Supplement No. 41 (A/59/41), annex IX)。 15.一般的意見4号 [7] において、委員会は、健康問題に関する適切な情報へアクセスできることが子どもの最善の利益にのっとっている旨、強調した。一定のカテゴリーの子ども(心理社会的障害のある子どもおよび青少年を含む)に対し、特別な注意がむけられなければならない。入院または施設措置が検討される場合、その決定は、子どもの最善の利益の原則にしたがって、かつ、可能なかぎりコミュニティにおいて、家庭的環境のなかで(可能であれば、家族および子どもに提供される必要な支援を得ながら自分自身の家庭において)ケアされることこそ障害のある子どもの最善の利益にのっとっているという第一義的理解に立って、行なわれるべきである。 [7] 「子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達」に関する一般的意見4号(2003年、Official Records of the General Assembly, Fifty-ninth Session, Supplement No. 41 (A/59/41), annex X)、パラ10。 D.生命、生存および発達に対する権利ならびに子どもの健康の決定要因 16.第6条は、子どもの生存、成長および発達(発達の身体的、精神的、道徳的、霊的および社会的側面を含む)を確保する締約国の義務を強調している。ライフコース中の広範な決定要因に対処する、エビデンスを十分に踏まえた介入策を立案しかつ実施する目的で、子どもの生命、生存、成長および発達の基底にある多くのリスクおよび保護要因が体系的に特定されなければならない。 17.委員会は、子どもの健康権を実現するためには、個人的要因(年齢、性別、学業成績、社会経済的地位および居住地等)、家族、同世代の子ども、教師およびサービス提供者からなる直近の環境で作用している決定要因(とくに、直近の環境の一環として子どもの生命および生存を脅かす暴力)ならびに構造的決定要因(政策、行政機構および行政制度、社会的・文化的価値観および規範を含む)を含む、多くの決定要因を考慮しなければならないことを認識する [8]。 [8] 「あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利」に関する一般的意見13号(2011年、Official Records of the General Assembly, Sixty-seventh Session, Supplement No. 41 (A/67/41), annex V)参照。 18.子どもの健康、栄養および発達を左右するもっとも重要な決定要因としては、母親の健康権の実現 [9] および親その他の養育者の役割がある。乳児の死亡の相当数は、妊娠前および妊娠中ならびに分娩直後の時期に母親の健康状態が望ましくないこと、および、母乳育児の収監が最適ではないことと関連して、新生児期に生じている。親およびその他の重要な成人の健康状態および健康関連の行動は、子どもの健康に重要な影響を及ぼす。 [9] 女性と健康に関する女性差別撤廃委員会の一般的勧告24号(1999年、Official Records of the General Assembly, Fifty-fourth Session, Supplement No. 38 (A/54/38/Rev.1))、第I章A節参照。 E.意見を聴かれる子どもの権利 19.第12条は、自己の意見を表明し、かつそのような意見を年齢および成熟度にしたがって真剣に考慮される子ども〔の権利〕を定め、子ども参加の重要性を強調している [10]。これには、保健に関わる対応のあらゆる側面(たとえば、必要とされるサービスの内容、当該サービスをもっともよい形で提供できる方法および場所、サービスへのアクセスまたはサービスの利用を妨げる障壁、サービスの質および保健専門家の態度、自分自身の健康・発達についていっそう高い水準の責任をとる子どもの能力を強化する方法、ならびに、子どもたちがピアエデュケーターとしてサービス提供にいっそう効果的に関与できるようにするための方法を含む)についての意見が含まれる。国は、効果的な介入策および保健プログラムの立案に対する貢献として子どもたちが有している健康上の課題、発達上のニーズおよび期待について知る目的で、子どもの年齢および成熟度に適合した定期的な参加型協議、および、子どもを対象とする調査研究を実施すること(その際、子どもたちの親とは別に行なうこと)を奨励される。 [10] 「意見を聴かれる子どもの権利」に関する一般的意見12号(2009年、Official Records of the General Assembly, Sixty-fifth Session, Supplement No. 41 (A/65/41), annex IV)参照。 F.子どもの発達しつつある能力およびライフコース 20.子ども時代は、出生から乳児期および就学前期を経て思春期に至るまでの継続的成長の期間である。身体的、心理的、情緒的かつ社会的な発達、期待および規範に関して重要な発達上の変化が生じるため、一つひとつの段階が重要な意義を有する。諸段階を経て進む子どもの発達は累積的なものであり、各段階がその後の段階に影響を及ぼしながら、子どもの健康、潜在的可能性、リスクおよび機会を左右する。子ども時代の健康問題が公衆衛生一般にどのように影響するかを評価するためには、このようなライフコースを理解することが不可欠である。 21.委員会は、子どもの発達しつつある能力が、自己の健康問題に関する独立した意思決定に関係してくることを認識する。委員会はまた、このような自律的意思決定についてはしばしば深刻な格差があり、差別をとくに受けやすい子どもはこのような自己決定を行使できる度合いがしばしば低いことにも留意する。したがって、支援的な政策が整備されること、ならびに、子ども、親およびヘルスワーカーに対し、同意、承諾および秘密保持に関する、権利を基盤とする十分な指導が行なわれることが不可欠である。 22.子どもの発達しつつある能力、および、ライフサイクルに沿って異なる健康上の優先課題に対応し、かつこれらを理解するため、収集・分析されるデータは、国際基準にしたがい、年齢、性別、障害、社会経済的地位および社会文化的側面ならびに地理的所在ごとに細分化されるべきである。これにより、時間とともに変化する子どもの能力およびニーズを考慮に入れ、かつすべての子どもに関連性の高い保健サービスを提供するのに役立つ適切な政策および介入策を計画し、策定し、実施しかつ監視することが可能になる。 III.第24条の規範的内容 A.第24条第1項 「締約国は、到達可能な最高水準の健康の享受……に対する子どもの権利を認める」(States parties recognize the right of the child to the enjoyment of the highest attainable standard of health) 23.「到達可能な最高水準の健康」の概念は、子どもの生物学的、社会的、文化的および経済的前提条件ならびに国が利用可能な資源(非政府組織、国際社会および民間セクターをはじめとする他の出所から利用に供される補完的資源を含む)の双方を考慮に入れたものである。 24.子どもの健康権には一群の自由および権利が含まれる。自由とは、能力の成長および成熟の進行にしたがって重要度を増すものであり、自己の健康および身体をコントールする権利(性および生殖に関わって責任のある選択を行なう自由を含む)が含まれる。権利には、到達可能な最高水準の健康を享受する平等な機会をすべての子どもに与える、一連の施設、物資、サービスおよび条件へのアクセスが含まれる。 「疾病の治療および健康の回復のための便宜」(に対する子どもの権利)(and to facilities for the treatment of illness and rehabilitation of health) 25.子どもは、予防、健康促進、治療、リハビリテーションおよび緩和ケアのためのサービスを含む、良質な保健サービスに対する権利を有する。第一次レベルでは、これらのサービスが、十分な量および質をともなって利用可能とされ、十分に機能し、子どもである住民のあらゆる層にとって物理的および金銭的に手が届き、かつ、すべての者にとって受入れ可能なものとなっていなければならない。保健ケア制度は、保健ケア面の支援を提供するのみならず、権利侵害および不公正の事案に関する情報を関連の公的機関に通報することも行なうべきである。第2次および第3次のレベルでも、保健制度のあらゆるレベルでコミュニティおよび家族を結びつける、十分に機能する紹介・移送システムをともなったケアが可能なかぎり利用可能とされるべきである。 26.包括的なプライマリーヘルスケア・プログラム(予防ケア、特定疾患の予防および栄養関連の介入策を含む)が、すでに効果が証明されているコミュニティ基盤型の取り組みに沿って提供されるべきである。コミュニティレベルでの介入策には、情報、サービスおよび物資の提供に加えて、たとえば公共空間の安全、道路安全ならびにケガ・事故・暴力防止教育への投資を通じた、疾病およびケガの予防も含めることが求められる。 27.国は、すべての子どもを対象とした保健サービスを支えるのに十分な人数の、適切な訓練を受けた人員を確保するべきである。コミュニティヘルスワーカーを対象とするものを含め、十分な規制、監督、報酬およびサービス条件も必要とされる。能力開発活動においては、サービス提供者が、子どもに配慮したやり方で活動し、かつ、子どもが法律により受給資格を有しているいかなるサービスも子どもに提供しないことがないようにするべきである。品質保証基準が維持されることを確保するため、説明責任を履行させるための機構を組みこむことが求められる。 「締約国は、いかなる子どもも当該保健サービスへアクセスする権利を奪われないことを確保するよう努める」(States parties shall strive to ensure that no child is deprived of his or her right of access to such health care services) 28.第24条第1項は、保健サービスおよび他の関連のサービスがすべての子どもにとって利用可能でありかつアクセス可能であることを、サービス等が行き届いていない地域および集団にとくに注意を払いながら確保する、締約国の強い行為義務を課すものである。そこでは、包括的なプライマリーヘルスケア制度、十分な法的枠組み、および、子どもの健康の根本的決定要因に対する持続的関心が要求される。 29.保健サービスに子どもがアクセスすることを妨げる障壁(金銭的、制度的および文化的障壁を含む)が特定され、かつ解消されるべきである。すべての子どもを対象とする無償の出生登録は前提条件であり、また社会保護的介入策(子ども給付金または子ども交付金、現金給付および有給の親休暇のような社会保障を含む)を実施し、かつこれを補完的投資と考えることも求められる。 30.保健追求行動のあり方は、それが行なわれる環境(とくにサービスの利用可能性、保健知識の水準、ライフスキルおよび価値観を含む)によって決まる。国は、親および子どもによる適切な保健追求行動を奨励することにつながる、促進的環境の確保に努めるべきである。 31.子どもは、子どもとともに活動する専門家によって子どもの最善の利益にのっとっていると評価される場合には、その発達しつつある能力にしたがい、親または法定保護者の同意を得ることなく、秘密が守られるカウンセリングおよび助言にアクセスできるべきである。国は、親または法定保護者がいない子どもを対象として、子どもに代わって同意を与え、または子どもの年齢および成熟度によっては子ども自身による同意を援助することができる適切な養育者を指名するための、法律上の手続を明確にすることが求められる。国は、HIV検査ならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのためのサービス(セクシュアルヘルス、避妊および安全な妊娠中絶に関する教育および指導を含む)など一定の医学的治療および介入策について再検討を行ない、これらの治療および介入策については親、養育者または保護者の許可を得ることなく子どもが同意できるようにすることを検討するべきである。 B.第24条第2項 32.第24条第2項にしたがい、国は、子どもの健康権に関連するその他の問題を特定し、かつこれに対処するための手続を整備することが求められる。そのためには、とくに、優先されるべき健康問題の観点から現状についての詳細な分析を行なうとともに、適当なときは子どもたちと協議しながら、主要な決定要因および健康問題に対応する、エビデンスを十分に踏まえた介入策および政策を特定しかつ実施することが必要である。 第24条第2項(a)「乳幼児および子どもの死亡率を低下させること」(To diminish infant and child mortality) 33.国には、子どもの死亡を減少させる義務がある。委員会は、5歳未満児の死亡のうちますます多くの割合を占めるようになっている新生児期の死亡に対し、特段の注意を向けるよう促す。加えて、締約国は、低い優先順位しか与えられないのが一般的な思春期の罹病および死亡についても対処を進めるべきである。 34.介入策において注意が向けられるべき問題としては、死産、早産合併症、出生時仮死、低出生体重、HIVその他の性感染症の母子感染、新生児感染症、肺炎、下痢、はしか、低栄養および栄養不良、マラリア、事故、暴力、自殺ならびに思春期女子の妊産婦罹病・死亡などがある。リプロダクティブヘルス、妊産婦保健、新生児保健および児童保健のための連続的ケアの流れのなかですべての子どもにこのような介入策を提供するため、保健制度を強化することが勧告されるところである。予防および説明責任の履行を目的として、妊産婦死亡および周産期死亡に関する外部調査を日常的に実施することが求められる。 35.国は、肺炎、下痢性疾患およびマラリアを対象とするコミュニティ基盤型治療など、すでにその効果が証明されている、単純、安全かつ安価な介入策の拡大展開をとりわけ重視するとともに、母乳育児の慣行の全面的な保護および促進を確保することに特段の注意を払うべきである。 第24条第2項(b)「プライマリーヘルスケアの発展に重点をおいて、すべての子どもに対して必要な医療上の援助および保健を与えることを確保すること」(To ensure the provision of necessary medical assistance and health care to all children with emphasis on the development of primary health care) 36.国は、子どもおよびその家族が生活している場所のできるだけ近く、とくにコミュニティの環境で提供されるプライマリーヘルスケア・サービスに、すべての子どもがアクセスできるようにすることに優先的に取り組むべきである。サービスの厳密な形態および内容は国によって異なるであろうが、いずれにしても効果的な保健制度が必要となる。このような保健制度には、健全な資金拠出機構、十分な訓練を受け、かつ十分な給与を支払われている人員、決定および政策の基盤となる信頼できる情報、良質な医薬品および技術を供給するための十分に維持管理された器材および物流システム、ならびに、力強いリーダーシップおよびガバナンスが含まれる。学校における保健サービスの提供は、疾患のスクリーニングによる健康促進の重要な機会となり、また就学している子どもにとって保健サービスのアクセス可能性を高めることにつながる。 37.推奨されているサービス・パッケージ、たとえば「リプロダクティブヘルス、妊産婦保健、新生児保健および児童保健のために必須の介入策、物資およびガイドライン」[11] が活用されるべきである。国には、世界保健機関の必須医薬品モデルリスト(可能であれば小児用製剤の形態をとった子ども向けリストを含む)に掲載されたすべての必須医薬品の利用可能性、アクセス可能性および負担可能性を確保する義務がある。 [11] The Partnership for Maternal, Newborn and Child Health, A Global Review of the Key Interventions Related to Reproductive, Maternal, Newborn and Child Health (Geneva, 2011). 38.委員会は、青少年の間で精神的健康障害(発達障害および行動障害、抑うつ、摂食障害、不安症、虐待・ネグレクト・暴力・搾取の結果として生ずる心理的トラウマ、アルコール・タバコ・薬物の濫用、インターネットその他の技術の過剰な利用およびこれらへの依存のような強迫的行動、ならびに、自傷行為および自殺を含む)が増加していることを懸念する。子どもの精神的健康、心理社会的ウェルビーイングおよび情緒的発達を損なう行動上および社会上の問題にいっそう注意を向ける必要があることは、ますます認識されるようになっているところである。委員会は、過剰な医療化および施設措置に対して警鐘を鳴らすとともに、各国に対し、子どもおよび青少年の精神的健康障害に対処するための公衆衛生面および心理社会面の支援を基礎とするアプローチをとり、かつ、子どもの心理社会的、情緒的および精神的問題の早期発見・治療を促進するプライマリーケア・アプローチに凍死するよう、促す。 39.国には、不必要な投薬を行なわないようにしつつ、精神健康障害および心理社会的障害がある子どもに十分な治療およびリハビリテーションを提供する義務がある。精神健康障害の世界的負担および国レベルで保健・社会セクターが調整のとれた包括的対応をとることの必要性に関する世界保健総会決議(2012年)[12] は、とくに子どもの精神的健康を促進し、かつその精神障害を予防するための介入策の有効性および費用対効果性に関するエビデンスが増えていることに留意している。委員会は、各国に対し、家族およびコミュニティの関与を得ながら、保健セクター、教育セクターおよび保護(刑事司法)セクターを含む一連のセクター別政策およびプログラムを通じてこれらの介入策を主流化することにより、その拡大展開を図るよう強く奨励するものである。家庭環境および社会環境のために危険な状況に置かれている子どもについては、その対処能力およびライフスキルを増進し、かつ保護的および支援的な環境を促進するため、特別な注意が必要とされる。 [12] 決議WHA65.4(世界保健総会第65会期、2012年5月25日)。 40.人道的緊急事態(自然災害または人災を理由とする大規模な避難に至るものを含む)の影響を受けている子どもにとっての、子どもの健康に対する特有の課題を認識する必要がある。子どもが妨げられることなく保健サービスにアクセスできることを確保し、子どもが家族と(ふたたび)一緒にいられるようにするとともに、食料および清潔な水のような物質的支援だけで子どもを保護するのではなく、恐怖およびトラウマを防止しまたはこれに対処するための親その他の者による心理社会的ケアも奨励するために、あらゆる可能な措置がとられるべきである。 第24条第2項(c)「環境汚染の危険およびおそれを考慮しつつ、とりわけ、容易に利用可能な技術を適用し、かつ十分な栄養価のある食事および清潔な飲料水を供給することにより、基礎保健の枠組の中で疾病および栄養不良と闘うこと」(To combat disease and malnutrition, including within the framework of primary health care, through, inter alia, the application of readily available technology and through the provision of adequate nutritious foods and clean drinking-water, taking into consideration the dangers and risks of environmental pollution) (a) 容易に利用可能な技術の適用 41.子どもの健康に関する新たな技術であってその効果が証明されているもの(薬剤、装備および介入策を含む)が利用可能となるのにともない、国はこれらの技術を政策およびサービスに導入するべきである。移動による提供体制およびコミュニティを基盤とする取り組みによって若干のリスクを相当に低下させることが可能であり、これらの手段をすべての者にとって利用可能とすることが求められる。このような技術には、小児期に一般的に見られる疾患の予防接種、とくに乳幼児期における成長発達モニタリング、女子を対象とするヒトパピローマウィルスの予防接種、妊婦を対象とする破傷風トキソイドの摂取、下痢性疾患の治療のための経口保水療法および亜鉛補給剤へのアクセス、必須医薬品としての抗生物質および抗ウィルス薬、微量栄養素補給剤(ビタミンAおよびD、ヨウ素添加塩ならびに鉄分補給剤等)ならびにコンドームが含まれる。ヘルスワーカーは、必要に応じてこれらの簡便な技術にアクセスし、かつこれらの技術を実行する方法について、親に対する助言を行なうべきである。 42.民間セクター(健康に影響を及ぼす企業および非営利組織を含む)は、子どもの健康における相当の前進に貢献しうる技術、薬剤、装備、介入策および処置法の開発・改良においてますます重要な役割を果たすようになりつつある。国は、必要とするすべての子どもが利益を享受できることを確保するべきである。国はまた、保健技術のアクセスおよび負担可能性を向上させることにつながりうる官民提携および持続可能なイニシアティブを奨励することもできる。 (b) 十分な栄養価のある食事の供給 43.栄養価が十分であり、文化的に適切でありかつ安全な食料 [13] へのアクセスを確保し、かつ栄養不良と闘う国の義務を充足するための措置は、特定の文脈にしたがって採択することが必要になろう。妊婦を対象として直接行なわれる効果的な栄養支援介入策には、貧血症、葉酸欠乏症およびヨウ素欠乏症への対応ならびにカルシウム補給剤の提供が含まれる。女性の健康のため、かつ胎児および乳児の健康的な発達を確保する目的で、生殖可能年齢のすべての女性を対象として、子癇前症および子癇の予防および管理が確保されるべきである。 [13] 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第11条、および、「十分な食料に対する権利」に関する社会権規約委員会の一般的意見12号(1999年、Official Records of the Economic and Social Council, 2011, Supplement No. 2 (E/2000/22), annex V)参照。 44.生後6か月までの完全母乳育児が保護・促進されるべきであり、また母乳育児は、実行可能であれば、適切な補助食品とあわせて2歳まで続けられることが望ましい。この分野における国の義務は、世界保健総会が全会一致で採択した「保護・促進・支援」枠組み [14] に定められている。国は、子どもの健康権に関する国際的に合意された基準(「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」および世界保健総会がその後採択した関連の決議、ならびに、世界保健機関・タバコ規制枠組み条約を含む)を国内法に導入し、実施し、かつ執行することを要求される。妊娠および母乳育児との関連で母親に提供されるコミュニティおよび職場における支援ならびに実行可能かつ負担可能な保育サービスを促進し、かつ1952年の母性保護条約(改正)の改正に関する国際労働機関第183号条約(2000年)の遵守を確保するため、特別措置がとられるべきである。 [14] WHO and United Nations Children’s Fund (UNICEF), Global Strategy for Infant and Young Child Feeding (Geneva, 2003) 参照。 45.乳幼児期における十分な影響供給および成長モニタリングはとりわけ重要である。必要なときは、施設およびコミュニティを基盤とする介入策を通じて重度の急性栄養不良の統合管理が拡大されるべきであり、また中度の急性栄養不良の治療(治療的な栄養補給介入も含む)についても同様である。 46.学校給食は、すべての児童生徒が十分な食事に毎日アクセスできることを確保するために望ましい手段であり、学習に対する子どもたちの注意を高め、かつ就学率を上昇させることにもつながりうる。委員会は、学校給食と組み合わせる形で栄養・健康教育(子どもたちの栄養状態および健康的な食習慣を向上させるための学校庭園の設置および教員の研修を含む)を実施するよう勧告するものである。 47.国はまた、子どもの肥満にも対処するべきである。子どもの肥満は、高血圧、心血管疾患の早期診断マーカー、インスリン抵抗性、心理的影響、成人期肥満の可能性の上昇および早期死亡と関連しているためである。脂肪分、糖分または塩分が多く、エネルギー密度が高く、かつ微量栄養素に乏しい「ファストフード」、および、高濃度のカフェインまたは潜在的有害性がある他の物質を含む飲料を子どもたちが摂取することは、制限されるべきである。これらの物質の販売促進は――とくに当該販売宣伝が子どもたちを対象としているときは――規制されるべきであり、また学校その他の場所におけるこれらの物質の入手は統制されるべきである。 (c) 清潔な飲料水の供給 48.安全かつ清潔な飲料水および衛生設備は、生命および他のあらゆる人権の全面的享受にとって必要不可欠である [15]。水および衛生を担当する政府部局および地方当局は、子どもの健康権の実現を支援する義務を認識するとともに、インフラの拡大および飲料水供給役務の維持管理を計画しかつ実行するさい、ならびに、無償の最低配分量および供給停止に関する決定を行なうさいに、栄養不良、下痢その他の水に関連する疾患および世帯規模に関する子ども指標を積極的に考慮することが求められる。国は、たとえ水・衛生分野で民営化を行なったとしても、自国の義務を免除されない。 [15] 水および衛生に対する人権に関する〔国連〕総会決議64/292。 (d) 環境汚染 49.国は、地域的な環境汚染があらゆる場面で子どもの健康に対してつきつける危険性およびリスクに対処するための措置をとるべきである。十分な住居(危険性のない調理設備があること、煙がこもらない環境であること、適切な換気が行なわれていること、廃棄物が効果的に管理され、かつ生活区画および隣接周辺環境からのゴミの処分が確立されていること、カビその他の有毒物質が存在しないこと、および、家庭衛生が確保されていることを含む)は、健康的な養育および発達の中核的要件である。国は、子どもの健康権、食料安全保障ならびに安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを損なう可能性がある事業活動の環境面での影響を規制し、かつ監視することが求められる。 50.委員会は、環境汚染に留まらず、環境そのものが子どもの健康にとって関連性を有することに注意を喚起する。気候変動は子どもの健康にとっての最大の脅威のひとつであり、かつ保健格差を拡大するものであるから、環境に関わる介入策においてはとくに気候変動への対応が行なわれるべきである。したがって国は、子どもの健康に関する問題を自国の気候変動適応・緩和戦略の中心に位置づけることが求められる。 第24条第2項(d)「母親のための出産前後の適当な保健を確保すること」(To ensure appropriate pre-natal and post-natal health care for mothers) 51.委員会は、予防可能な妊産婦の死亡および罹病は女性・女子の人権の重大な侵害であり、女性・女子自身およびその子どもの健康権に対する深刻な脅威であることに留意する。妊娠および出産は自然な過程であり、これについて明らかになっている健康上のリスクは、早期に発見されれば予防および治療的対応の双方が可能である。リスクをともなう事態は、妊娠中、分娩中ならびに産前産後期に発生し、かつ母子双方の健康およびウェルビーイングに短期的影響および長期的影響のいずれをも及ぼす可能性がある。 52.委員会は、各国に対し、子ども時代の諸段階全体を通じて、以下のような子どもに配慮した保健アプローチをとるよう奨励する。(a) 母子同室および母乳育児を保護し、促進し、かつ支援する「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブ [16]。(b) 子どもおよびその家族の恐怖心、不安および苦痛を最低限に抑えるやり方で良質なサービスを提供するためのヘルスワーカー研修に焦点を当てた、子どもにやさしい保健政策。(c) 青少年に対して好意的でありかつ配慮し、秘密保持を尊重し、かつ青少年にとって受け入れ可能なサービスを提供することを保健従事者および保健施設に求める、青少年にやさしい保健サービス。 [16] UNICEF/WHO, Baby-Friendly Hospital Initiative (1991). 53.妊娠前、妊娠中および妊娠後に女性が受けるケアは、その子どもの健康および発達にとって甚大な影響を与える。セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する介入策の包括的パッケージにすべての者がアクセスできることを確保する義務を充足しようとする際には、妊娠前から妊娠、出産および産褥期全体を通じての連続的ケアという考え方が基礎とされるべきである。これらの期間全体を通じて時宜を得た良質なケアを提供することは、健康障害の世代間転移を予防する重要な機会となり、またライフコース全体を通じた子どもの健康に対しても高い効果を及ぼす。 54.この連続的期間全体を通じて利用可能とされるべき介入策には、必須保健としての予防および健康促進ならびに治療的ケア(新生児破傷風、妊娠時のマラリアおよび先天性梅毒の予防を含む)、栄養ケア、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育、情報およびサービスへのアクセス、健康的行動教育(たとえば喫煙および有害物質濫用に関するもの)、出産準備支援、合併症の早期認識および管理、安全な妊娠中絶サービスおよび中絶後のケア、出産時の必須ケア、ならびに、HIVの母子感染の予防ならびにHIVに感染した女性および乳児のケアおよび治療が含まれるが、これに限られるものではない。分娩後の産婦および新生児のケアにおいては、母親が子どもから不必要に分離されないことが確保されるべきである。 55.委員会は、社会的保護に関する介入策に、ケアの完全普及またはケアに対する金銭的アクセスの確保、有給の親休暇およびその他の社会保障給付、ならびに、母乳育児代替品の不適切な販売促進を制限するための立法が含まれるべきことを勧告する。 56.青少年の妊娠率が世界的に高く、かつ、青少年の妊娠には関連する罹病および死亡のリスクが付け加わることを踏まえ、国は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わる青少年の特有のニーズを保健制度および保健サービス(家族計画および安全な妊娠中絶のためのサービスを含む)が満たせることを確保するべきである。国は、女子が自己のリプロダクティブヘルスについて自律的な、かつ十分な情報に基づく決定を行なえることを確保するために行動するよう求められる。青少年の妊娠を理由とする差別(停退学等)は禁止されるべきであり、また継続的教育の機会が確保されるべきである。 57.健康的な妊娠・分娩の計画および確保にとって男子・男性がきわめて重要であることを考慮し、国は、セクシュアルヘルス、リプロダクティブヘルスおよび子どもの健康のためのサービスに関する政策および計画に、男子・男性を対象とする教育、意識啓発および対話の機会を統合するべきである。 第24条第2項(e)「すべての社会構成員とくに親および子どもが子どもの健康および栄養の基礎的知識、母乳育児および衛生ならびに環境衛生の利益、ならびに事故の予防措置を活用するにあたって、情報が提供され、教育にアクセスし、かつ援助されることを確保すること」(To ensure that all segments of society, in particular parents and children, are informed, have access to education and are supported in the use of basic knowledge of children’s health and nutrition, the advantages of breastfeeding, hygiene and environmental sanitation and the prevention of accidents) 58.この規定に基づく義務には、健康関連の情報および当該情報の活用に関する支援の提供が含まれる。健康関連の情報は、物理的にアクセス可能であり、わかりやすく、かつ子どもの年齢および教育水準にふさわしいものであるべきである。 59.子どもは、ライフスタイルおよび保健サービスへのアクセスに関して十分な情報に基づく選択を行なえるようにするための、健康のあらゆる側面に関する情報および教育を必要とする。情報提供およびライフスキル教育においては、幅広い健康問題(健康的な食事ならびに身体活動、スポーツおよびレクリエーションの促進、事故およびケガの予防、公衆衛生・手洗いその他の個人的衛生習慣、ならびに、アルコール、タバコおよび向精神性物質を使用することの危険性を含む)が取り上げられるべきである。情報および教育は、子どもの健康権、政府の義務、ならびに、健康情報および保健サービスにアクセスできる方法・場所についての適切な情報を包含し、かつ、学校カリキュラムの中核的一部として、また保健サービスを通じて、かつ学校に行っていない子どものために他の場所においても、提供することが求められる。健康に関する情報提供資料は、子どもたちと連携しながら制作し、かつ広範な公共の場所において普及するべきである。 60.セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育には、身体(解剖学的、生理学的および情緒的側面を含む)に関する自覚および知識が含まれるべきであり、かつすべての子ども(女子および男子)がアクセスできるべきである。このような教育は、性的な健康およびウェルビーイングに関連する内容(身体の変化および成熟過程についての情報等)を含み、かつ、子どもがリプロダクティブヘルスおよびジェンダーを理由とする暴力の予防についての知識を獲得し、かつ責任のある性的行動をとれるようになるやり方で立案することが求められる。 61.子どもの健康に関する情報は、さまざまな方法(診療所、子育て教室、広報リーフレット、職能団体、地域団体およびメディアを含む)を通じ、すべての親に対して個別にまたは集団単位で、かつ拡大家族およびその他の養育者に対して、提供されるべきである。 第24条第2項(f)「予防保健、親に対する指導、ならびに家族計画の教育およびサービスを発展させること」(To develop preventive health care, guidance for parents and family planning education and services) (a) 予防保健 62.予防および健康促進においては、コミュニティおよび国全体で子どもたちが直面している主要な健康上の課題が取り上げられるべきである。このような課題には、疾病のほか、事故、暴力、有害物質濫用、心理社会的問題および精神的健康上の問題といった、その他の健康上の課題が含まれる。予防保健においては、感染症および非感染性疾患について取り上げ、かつ、生物化学的、行動科学的および構造的介入策を組み合わせて編入することが求められる。非感染性疾患の予防は、妊婦、その配偶者/パートナーおよび乳幼児を対象とする、健康的かつ非暴力的なライフスタイルの促進および支援を通じて、人生の早い段階から開始されるべきである。 63.子どものケガの負担を軽減するためには、溺水、火傷その他の事故を減らすための戦略および措置が必要とされる。このような戦略および措置には、立法および執行、製品および環境の改変、支援を目的とする家庭訪問および安全特性の促進、教育、スキル開発および行動変容、コミュニティを基盤とするプロジェクト、ならびに、搬送前のケアおよび救急ケアならびにリハビリテーションが含まれるべきである。道路交通事故を減らすための努力には、シートベルトその他の安全装備の使用に関する法律を定めること、子どもが安全な輸送機関にアクセスできることを確保すること、ならびに、道路計画および交通規制において子どものことを正当に考慮することが含まれるべきである。これとの関連で、関連産業およびメディアの支援が欠かせない。 64.暴力が子ども、とくに青少年の死亡および罹病の重要な原因のひとつであることを認識し、委員会は、子どもを暴力から保護し、かつ家庭、学校および公共空間における態度および行動の変容への子ども参加を奨励する環境づくりの必要性、健康的な子どもの養育について親および養育者を支援する必要性、ならびに、あらゆる形態の暴力に対する寛容およびその容認を固定化する態度に異議を申し立てていくこと(マスメディアによる暴力の描写を規制する等の手段によるものも含む)の必要性を、強調する。 65.国は、子どもを溶剤、アルコール、タバコおよび不法物質から保護し、関連のエビデンスをいっそう収集し、かつ、子どもによるこのような物質の使用を減らすための適切な措置をとるべきである。子どもの健康にとって有害な物質の広告および販売、ならびに、子どもが集まる場所ならびに子どもがアクセスするメディア経路および出版物におけるこのような物品の販売促進を規制することが勧告される。 66.委員会は、薬物の統制に関する国際諸条約 [17] および世界保健機関・タバコ規制枠組み条約をまだ批准していない締約国に対し、批准を奨励する。委員会は、有害物質の使用について権利基盤アプローチをとることの重要性を強調するとともに、適切なときは、有害物質濫用が健康に及ぼす悪影響を最小限に抑えるために有害性削減戦略を採用するよう勧告するものである。 [17] 麻薬に関する単一条約(1961年)、向精神薬に関する条約(1971年)、麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(1988年)。 (b) 親に対する指導 67.親は、幼児の早期診断およびプライマリーケアを行なうもっとも重要な存在であり、かつ、青少年のハイリスク行動(有害物質の使用および安全ではないセックス等)に対するもっとも重要な保護要因である。親は、健康的な子どもの発達を促進し、事故、ケガおよび暴力の危害から子どもを保護し、かつリスク行動の悪影響を緩和するうえでも中心的役割を果たす。自らが育つ場である世界を理解し、かつその世界に適応するうえできわめて重要である子どもの社会化の過程は、親、拡大家族その他の養育者の影響を強く受ける。国は、とくに子どもの健康上の課題およびその他の社会的課題を経験している家族を対象として、望ましい子育てのあり方を支援するための、エビデンスに基づく介入策(子育てスキル教育、サポートグループおよび家族カウンセリングを含む)を採用するべきである。 68.体罰が子どもの健康に及ぼす影響(致死性・非致死性のケガならびに心理的・情緒的影響を含む)に照らし、委員会は、各国に対し、家庭を含むあらゆる場面において体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰を撤廃するため、あらゆる適当な立法上、行政上、社会上および教育上の措置をとる自国の義務を想起するよう求める [18]。 [18] 「体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利」に関する一般的意見8号(2006年、Official Records of the General Assembly, Sixty-third Session, Supplement No. 41 (A/63/41), annex II)。 (c) 家族計画 69.家族計画のサービスは、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのための包括的サービスのなかに位置づけられるべきであり、かつ、カウンセリングを含むセクシュアリティ教育を包含するものであるべきである。これらのサービスは、第24条第2項(d)についての箇所で述べた連続的サービスの一環と考えることもできるほか、すべてのカップルおよび個人が、性および生殖に関する決定(子どもの人数、出産間隔および出産時期を含む)を自由にかつ責任をもって行なえるようになり、かつ、そのための情報および手段を提供されるように設計することが求められる。既婚および非婚双方の女性ならびに思春期の男子全員が、秘密を守られながら物資およびサービスにアクセスできるようにすることに、注意が向けられるべきである。国は、青少年が、サービス提供者の心情を理由とする拒否によって、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関するいかなる情報またはサービスも奪われないことを確保するよう、求められる。 70.コンドーム、ホルモン避妊法および緊急避妊薬のような短期的避妊法を、性的活動を行なう青少年が容易にかつ直ちに利用できるようにするべきである。長期的かつ恒久的な避妊法も提供することが求められる。委員会は、国が、妊娠中絶そのものが合法であるか否かに関わらず、安全な中絶および中絶後のケアのためのサービスへのアクセスを確保するよう、勧告する。 (健康に対する子どもの権利 後編へ続く) 更新履歴:ページ作成(2013年6月28日)。/表示がおかしくなっていたため再保存(2016年1月4日)。
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子どものまち「ピンポン横丁」 「こどものまち●●●●●●」は、●●市で年に●回行われている「まち」を模した遊びのプログラム。●●市における子ども達のためのプログラムの一つで、●●●●支援団体や●●●●団体、●●●●等が実施主体となって●●●●達の準備により、実行されている。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●という特徴を持つ。 目次 1概要 2歴史 3仕事ブース 4大人の会議(例) 5子どもの会議(例) 6話題(例) 6.1(始まりの頃の特筆すべき点) 6.2(現在の特筆すべき点) 6.3(外部の協力者) 7参考文献 8関連項目 9外部リンク 概要 こどもNPOの活動拠点で、もと卓球場を併設した民家であるピンポンハウスで開催しているため、規模は小さいが子どもの要求に柔軟に対応でき、ピンポン横丁の企画、運営、開催に至るまでほとんど子どもが主体で決定している。 また、店は事前に募集。 子どもがやりたい店の企画書を提出しMFP(中心メンバー)が決定する。お店の材料費は参加費で賄うため、1店舗の予算も子ども会議で決める。 歴史 第1回 2003年12月23日~25日 第2回 2005年 3月28日~30日 第3回 2006年 3月25日~27日 第4回 2007年 3月31日・4月1日~3日 第5回 2008年 3月27日~29日 仕事ブース 当市のこどものまちの仕事ブースは●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●という特徴を持つ。 例年用意される、または少数回でも特徴的に設置された仕事ブースは、次の通り。 案内係、 役場、 銀行、 職安、 べっこうあめ、 たません、 文房具、 看板や、 看板や、 選挙管理、 町長&秘書、 ピンポン食堂、 相談所、 フリーター、 ホットケーキや、 くじや、 ストラックアウト、 幼稚園、 マッサージ、 木を育てる、 掃除や、 靴並べ、 ラーメン屋、 折染め、 裂き織り、 雑貨や、 化学実験道具貸しや、 漫画喫茶、 新聞社、 折り紙、 クッキーや、 チラシ配り、 ジュースや など 大人の会議(例) こどものまちを主催する大人による会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 子どもの会議(例) こどものまちの主役である子どもによる会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 話題 (始まりの頃の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (現在の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (外部の協力者) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 主催団体 (特非)こどもNPO 2000年1月子どもの参画を理念に発足。2001年3月NPO法人認証。 子どもが自然や地域や人々との協働の体験の中から成長し主体的に生きることを支援するとともに、まちづくりや環境活動などさまざまな分野での子どもの社会参画を推進します。 事務局: 〒458-0031 名古屋市緑区作の山6番地ピンポンハウス Tel/Fax 052-896-4295(ビッグバン) kodomonpo2000@yahoo.co.jp 参考文献 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 関連項目 ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●。
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子どもの権利委員会・一般的意見12号:意見を聴かれる子どもの権利(2) 意見を聴かれる子どもの権利(1)より続く A.法的分析(続き) 3.締約国の義務 (a)締約国の中核的義務 48.意見を聴かれる子どもの権利は、適切な情報、必要な場合の十分な支援、意見がどの程度重視されたかに関するフィードバック、および、苦情申立て、救済措置または是正措置の手続へのアクセスを子どもたちに提供する機構を導入するために国内法を再検討しまたは改正する義務を、締約国に対して課すものである。 49.これらの義務を履行するため、締約国は以下の戦略をとるべきである。 第12条に関する制限的な宣言および留保を再検討しかつ撤回すること。 子どもの権利に関する幅広い権限を有する子どもオンブズマンまたは子どもコミッショナーのような、独立の人権機関を設置すること [8]。 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家を対象として、第12条および実践におけるその適用についての研修を行なうこと。このような専門家には、弁護士、裁判官、警察官、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカー、心理学者、ケアワーカー、居住型施設および刑務所の職員、あらゆる段階の教育制度の教員、医師、看護師その他の保健専門職、公務員および公的職員、庇護担当官ならびに伝統的指導者が含まれる。 規則および体制を整えることにより、子どもの意見表明を支援および奨励するための適切な条件を確保し、かつ子どもの意見が正当に重視されるのを確実にすること。このような規則および体制は、法律および機関内規則にしっかりと根ざしており、かつその効果に関して定期的評価が行なわれるようなものでなければならない。 広く蔓延している慣習的子ども観を変革するための公的キャンペーン(オピニオンリーダーおよびメディアによるものも含む)を通じ、意見を聴かれる子どもの権利の全面的実現を妨げる否定的態度と闘うこと。 [8] 独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)参照。 (b)司法的および行政的手続に関わる具体的義務 (i) 民事上の司法手続において意見を聴かれる子どもの権利 50.子どもの意見が聴かれなければならない主な問題について以下に詳述する。 〈離婚および別居〉 51.別居および離婚の事案において、当該関係のもとにある子どもが裁判所の決定の影響を受けることは明白である。子どもの養育費ならびに監護権および面接交渉の問題は、審判において、または裁判所が主導する調停を通じて、いずれにせよ裁判官によって決定される。多くの法域では、その法律に、関係の解消と関わって、裁判官は「子どもの最善の利益」を至高の考慮事項としなければならない旨の規定を置くようになっている。 52.このような理由から、別居および離婚に関するあらゆる立法には、子どもが意思決定担当者によっておよび調停手続において意見を聴かれる権利が含まれていなければならない。法域によっては、政策上または立法上の問題として、子どもに自己の意見を表明する力があると見なされるいずれかの年齢を定めることが望ましいとされている場合もある。しかし委員会は、この問題が個別事案ごとに決定されることを期待するものである。これは年齢および成熟度に関わる問題であり、そのため子どもの能力を個別に評価することが必要だからである。 〈親からの分離および代替的養護〉 53.家庭内で虐待またはネグレクトの被害を受けているという理由で子どもを家族から分離するという決定が行なわれるときは常に、子どもの最善の利益を判断するためその子どもの意見が考慮されなければならない。このような介入は、子ども、他の家族構成員または虐待もしくはネグレクトを訴えるコミュニティの構成員からの苦情申立てによって開始されることが考えられる。 54.委員会の経験では、意見を聴かれる子どもの権利は締約国によって常に考慮されているとはかぎらない。委員会は、締約国が、立法、規則および政令を通じ、里親養護または施設への措置、ケアプランの策定および見直しならびに親および家族の訪問に関わるものを含む決定において子どもの意見が求められかつ考慮されることを確保するよう勧告する。 〈養子縁組およびイスラム法のカファラ〉 55.子どもが養子縁組またはイスラム法のカファラのために措置され、かつ最終的に養子となりまたはカファラの措置が行なわれる見込みのときは、子どもの意見を聴くことがきわめて重要である。このようなプロセスは、継親または里親家族が子どもを養子とするときにも、子どもと養親になろうとする者がすでに一定期間ともに生活していた可能性もあるとはいえ、必要となる。 56.条約第21条は、子どもの最善の利益が最高の考慮事項であると述べている。養子縁組、カファラその他の措置に関する決定においては、子どもの意見を考慮することなく子どもの「最善の利益」を定義することはできない。委員会は、すべての締約国に対し、可能であれば養子縁組、カファラその他の措置の効果について子どもに情報を提供し、かつ子どもの意見が聴かれることを立法によって確保するよう促すものである。 (ii) 刑事上の司法手続において意見を聴かれる子どもの権利 57.刑事上の手続において、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利は、少年司法手続のあらゆる段階を通じて全面的に尊重されかつ実施されなければならない [9]。 [9] 少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年、CRC/C/GC/10)参照。 〈罪を犯した子ども〉 58.条約第12条第2項は、刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われまたは認定された子どもが、意見を聴かれる権利を有すべきことを求めている。この権利は、子どもが黙秘権を有する審判前の段階から、警察、検察官および予審判事によって意見を聴かれる権利まで、司法手続のあらゆる段階を通じて全面的に遵守されなければならない。この権利はまた、判決および処分の段階ならびに科された措置の実施の段階全体においても適用される。 59.調停を含むダイバージョンの場合、子どもは自由なかつ自発的な同意を与える機会を認められなければならず、かつ、提案されているダイバージョンの適切さおよび望ましさについて判断するにあたり法的その他の助言および援助を得る機会が与えられなければならない。 60.手続に実効的に参加するため、すべての子どもは、自己に対する被疑事実について迅速かつ直接にならびにその子どもが理解する言語で知らされなければならず、かつ、少年司法手続および裁判所がとる可能性のある措置についての情報も提供されなければならない。手続は、子どもの参加および自由な意見表明を可能にするような雰囲気のなかで行なわれるべきである。 61.法律に抵触した子どもの裁判その他の聴聞は非公開で行なわれるべきである。この原則に対する例外はきわめて限定されたものであるべきであり、国内法で明確に定められ、かつ子どもの最善の利益を指針とすることが求められる。 〈子どもの被害者および子どもの証人〉 62.犯罪の被害を受けた子どもおよび犯罪の証人である子どもに対しては、国際連合経済社会理事会決議2005/20「子どもの犯罪被害者および証人が関与する事案における司法についての国連指針」[10] にしたがって、自己の見解を自由に表明する権利を全面的に行使する機会が与えられなければならない。 [10] 国際連合経済社会理事会決議2005/20、とくに8、19および20条参照。下記URLで入手可:www.un.org/ecosoc/docs/2005/Resolution%202005-20.pdf 63.このことはとくに、子どもの被害者または(および)証人が、審査中の事案への関与に関わる関連の事柄について協議の対象とされ、かつ、司法手続への関与に関する意見および懸念を自由にかつその子どもなりの方法で表明できることを確保するために、あらゆる努力が行なわれなければならないということを意味する。 64.子どもの被害者および証人が有するこの権利は、保健サービス、心理サービスおよび社会サービスの利用可能性、子どもの被害者および(または)証人の役割、「尋問」が行なわれる方法、苦情を申し立てたり捜査および裁判手続に参加したりする際に子どものために用意されている支援のしくみ、聴聞が行なわれる具体的場所および時間、保護措置の利用可能性、補償を受けられる可能性、ならびに、上訴に関する規定について情報を知らされる権利とも関連している。 (iii) 行政上の手続において意見を聴かれる子どもの権利 65.すべての締約国は、第12条の要件を反映した行政手続を立法で策定し、かつ、意見を聴かれる子どもの権利を他の手続的権利(関連する記録の開示、聴聞の告知および親その他の者による代理に対する権利を含む)とともに確保するべきである。 66.子どもは裁判手続よりも行政手続に関与することになる可能性のほうが高い。行政手続はそれほど形式的なものではなく、より柔軟であり、かつ法令を通じて確立することが相対的に容易だからである。手続は、子どもにやさしく、かつアクセスしやすいものでなければならない。 67.子どもたちに関連する行政上の手続の具体例としては、学校における規律上の問題(たとえば停退学等)、学校証明書の発給拒否および成績関連の問題、少年拘禁所における規律上の措置および特権を認めることの拒否、保護者のいない子どもによる庇護申請、ならびに、運転免許の申請に対応するためのしくみなどがある。これらの事案において、子どもは意見を聴かれる権利を認められるべきであり、かつ「国内法の手続規則と一致する」その他の権利を享受できるべきである。 B.意見を聴かれる権利および条約の他の規定との関係 68.第12条は、一般原則のひとつとして、第2条(差別の禁止に対する権利)および第6条(生命、生存および発達に対する権利)のような他の一般原則と関連しており、かつ、とくに第3条(子どもの最善の利益の第一次的考慮)と相互依存関係にある。同条はまた、市民的権利および自由に関わる条項、とくに第13条(表現の自由に対する権利)および第17条(情報に対する権利)とも密接に関連している。さらに、第12条は条約の他のすべての条項とも関係しているのであって、これらの規定は、子どもがそれぞれの条項に掲げられた権利およびその実施について自分なりの意見を有する主体として尊重されるのでなければ、全面的に実施することができない。 69.第12条と第5条(子どもの発達しつつある能力ならびに親による適切な指示および指導、この一般的意見のパラ84参照)との関係はとくに関連性を有する。親が指導を与える際には子どもの発達しつつある能力を考慮に入れることがきわめて重要だからである。 1.第12条と第3条 70.第3条の目的は、子どもに関わるすべての行動において、その行動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかに関わらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保することである。このことは、子どものためにとられるすべての行動において、その子どもの最善の利益が尊重されなければならないことを意味する。子どもの最善の利益は、締約国に対し、子どもの最善の利益が考慮されることを確保するための措置を行動プロセスに導入するよう義務づける手続的権利とそれほど変わらない。条約は、締約国に対し、これらの行動の担当者が第12条で定められているとおりに子どもの意見を聴くことを確保するよう、義務づけている。このような措置は義務的なものである。 71.子どもとの協議に基づいて確立された子どもの最善の利益は、諸機関、公的機関および行政の行動において考慮されるべき唯一の要素というわけではない。しかしそれは、子どもの意見と同様に、決定的重要性を有する要素である。 72.第3条ではもっぱら個別事案が対象とされているが、子どもに関わるあらゆる行動において集団としての子どもの最善の利益が考慮されるよう要求していることも明らかである。したがって締約国には、子どもたちの最善の利益を明らかにする際に子ども一人ひとりの個別的状況を考慮するのみならず、集団としての子どもたちの利益も考慮する義務がある。さらに、締約国は、官民諸機関、公的機関および立法機関の行動も検討しなければならない。この義務が「立法機関」に対しても拡大されていることは、子どもたちに影響を与えるすべての法令または規則は「最善の利益」基準を指針としなければならないことを明確に示すものである。 73.いずれかの定義による集団としての子どもたちの最善の利益が、個別の利益を衡量する場合と同じやり方で確立されなければならないことには疑問の余地がない。多数の子どもたちの最善の利益が問題となっているときは、諸機関、公的機関または政府機関の長は、子どもたちに直接または間接に影響する行動(立法上の決定を含む)を計画する際、具体的に定義されていないそのような集団の子どもたちのうち関係する子どもたちから意見を聴き、かつその意見を正当に重視する機会も設けるべきである。 74.第3条と第12条との間に緊張関係はなく、2つの一般原則の補完的役割が存在するのみである。一方が子どもの最善の利益を達成するという目的を定め、他方が子ども(たち)の意見を聴くという目標を達成するための方法論を用意している。実のところ、第12条の要素が尊重されなければ第3条の正しい適用はありえない。同様に、第3条は、自分たちの生活に影響を与えるあらゆる決定における子どもたちの必要不可欠な役割を促進することにより、第12条の機能性を強化している。 2.第12条、第2条および第6条 75.差別の禁止に対する権利は、子どもの権利条約を含むすべての人権文書で保障されている固有の権利である。条約第2条にしたがい、すべての子どもは、第12条で規定されているものも含む自己の権利の行使に関して差別されない権利を有する。委員会は、自己の意見を自由に表明しかつその意見を正当に考慮される権利を、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位を理由とするいかなる種類の差別もなくすべての子どもに対して保障するために、締約国が十分な措置をとらなければならないことを強調するものである。締約国は、子どもたちが意見を聴かれる権利を保障され、かつ、自己に影響を与えるすべての事柄に他のすべての子どもたちと平等に参加できるようにされることを確保する目的で、差別(権利を侵害されやすい立場に置かれたまたは周縁化された集団の子どもたちに対するものも含む)に対応しなければならない。 76.委員会はとりわけ、一部の社会で、慣習的態度および慣行によりこの権利の享受が阻害されかつ深刻に制限されていることに、懸念とともに留意する。締約国は、条約に基づくすべての子どもの権利の全面的実施を達成する目的で、このような態度および慣行の否定的な影響について意識啓発および社会の教育を行ない、かつ態度の変革を奨励するための十分な措置をとらなければならない。 77.委員会は、締約国に対し、意見を聴かれ、必要であれば支援を受け、自己の意見を明らかにし、かつその意見を正当に重視される女子の権利に特別な注意を払うよう促す。ジェンダーに基づくステレオタイプおよび家父長制的価値観により、第12条に掲げられた権利の女子による享受が阻害されかつ女児に深刻に制限されているからである。 78.委員会は、障害のある人の権利に関する条約第7条において、障害のある子どもが、自己の意見を自由に表明し、かつその意見を正当に重視されることを可能にするために必要な援助および設備を提供されることを確保する義務が、締約国に課されていることを歓迎する。 79.子どもの権利条約第6条は、すべての子どもが生命に対する固有の権利を有すること、および、締約国は子どもの生存および発達を可能なかぎり最大限に確保しなければならないことを認めている。委員会は、意見を聴かれる子どもの権利のための機会を促進することの重要性に留意するものである。子ども参加は、第6条、および、第29条に掲げられた教育の目的に一致する形で子どもの人格の全面的発達および子どもの発達しつつある能力を刺激する手段のひとつだからである。 3.第12条、第13条および第17条 80.表現の自由に対する権利に関する第13条および情報へのアクセスに関する第17条は、意見を聴かれる権利を効果的に行使するために決定的に重要な前提である。これらの条項は、子どもが権利の主体であることを確立するとともに、第12条とあわせて、子どもにはこれらの権利を自分自身で、その発達しつつある能力にしたがって行使する資格があると主張している。 81.第13条に掲げられた表現の自由に対する権利は、第12条と混同されることが多い。しかし、どちらも強く関連し合っているとはいえ、これらの条項は異なる権利を定めたものである。表現の自由は、意見を有しかつ表明する権利ならびにいかなる媒体を通じても情報を求めかつ受け取る権利に関連している。これは、どのような意見を有しまたは表明するかについて締約国による制約を受けない子どもの権利を擁護するものである。したがって、これによって締約国に課される義務は、コミュニケーション手段および公の議論にアクセスする権利を保護しつつ、これらの意見の表明または情報へのアクセスに対する介入を行なわないことである。しかし第12条は、子どもに影響を与える事柄について具体的に意見を表明する権利、および、自分の生活に影響を及ぼす行動および決定に関与する権利に関連している。第12条は、締約国に対し、子どもに影響を与えるあらゆる行動および意思決定への子どもの積極的参加を容易にし、かつ表明されたこれらの意見を正当に重視する義務を履行するために必要な法的枠組みおよび機構を導入する義務を課しているのである。第13条に掲げられた表現の自由は、締約国によるこのような関与または反応を要求するものではない。ただし、第12条に一致する形で子どもの意見表明が尊重される環境をつくり出すことは、表現の自由に対する権利を行使する子どもの能力の構築にも寄与するものである。 82.第17条に一致する形で情報に対する子どもの権利を充足させることは、かなりの程度、意見表明権を効果的に実現するための前提である。子どもたちは、自分たちに関係するあらゆる問題についての情報に、その年齢および能力にふさわしい形式でアクセスできる必要がある。このことは、たとえば、自分たちの権利、子どもに影響を与えるいずれかの手続、国内法令および政策、地元のサービスならびに異議申立ておよび苦情申立ての手続に関する情報について当てはまる。締約国は、第17条および第42条に一致する形で、学校カリキュラムに子どもの権利を含めるべきである。 83.委員会はまた、メディアが、子どもの意見表明権に関する意識を促進する上でも、そのような意見を公的に表明する機会を提供する上でも重要な手段のひとつであることを、締約国が想起するよう求める。委員会は、さまざまな形態のメディアに対し、プログラムの制作に子どもたちの参加を得ること、および、子どもたちが自分たちの権利に関するメディアの取り組みを発展させかつ主導する機会を創設することにいっそうの資源を振り向けるよう、促すものである [11]。 [11] 子どもとメディアに関する一般的討議勧告(1996年):www.unhchr.ch/html/menu2/6/crc/doc/days/media.pdf 4.第12条と第5条 84.条約第5条は、締約国が、条約で認められた権利を子どもが行使するにあたって適当な指示および指導を行なう、親、法定保護者、または地方的慣習で定められている拡大家族もしくは共同体の構成員の責任、権利および義務を尊重しなければならないと述べている。したがって子どもは指示および指導に対する権利を有するのであるが、この指示および指導は、子どもの知識、経験および理解力の欠如を補うようなものでなければならず、かつ、同条で述べられているように、子どもの発達しつつある能力による制約を受けるものである。子ども自身の知識、経験および理解力が高まるにつれて、親、法定保護者または子どもに責任を負うその他の者は、指示および指導を、子ども自身の気づきを促すための注意喚起およびその他の形態の助言に、そしてやがては対等な立場の意見交換に、変えていかなければならない。このような転換は、子どもの発達の固定された時点で生じるのではなく、子どもが自分の意見を表明するよう奨励されるなかで着実に進行していくものである。 85.この要件は、子どもが自己の意見をまとめる力を有しているときは常にその意見が正当に重視されなければならないと定めた条約第12条によって活性化される。換言すれば、子どもが力を獲得していくにつれて、自己に影響を与える事柄の規制に関してますます高い水準の責任を負う資格を有するようになるのである [12]。 [12] 子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)。 5.第12条と子どもの権利一般の実施 86.以上のパラグラフで論じた諸条項に加え、条約のその他の条項も、ほとんどは子どもたちに影響を与える事柄への子どもたちの関与を要求しかつ促進するものである。このような多層的な関与については、参加という概念があらゆるところで用いられている。当然のことながら、このような関与の要となるのは第12条であるが、子どもたちとの協議に基づく計画、活動および発展は条約全体で要求されている。 87.実施の実践においては保健、経済、教育または環境のような幅広い問題への対処が行なわれるのであり、このような問題は個人としての子どものみならず子どもたちの集団および子どもたち一般にとっての関心事でもある。したがって、委員会は参加を常に幅広く解釈し、個々の子どもたちおよび明確な定義に基づく集団の子どもたちのみならず、先住民族の子ども、障害のある子どものような子どもたちの集団、または、社会における社会的、経済的または文化的生活条件によって直接もしくは間接に影響を受ける子どもたち一般のための手続も定められることを目指してきた。 88.子どもたちの参加に関するこのような幅広い理解は、〔国連〕総会第27特別会期で採択された成果文書「子どもにふさわしい世界」に反映されている。締約国は、「家庭および学校ならびに地方および国のレベルにおけるものも含む意思決定プロセスに、思春期の青少年を含む子どもが意味のある形で参加することを促進するためのプログラムを策定および実施する」ことを約束した(パラ32(1))。委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号で、「政府が子どもたちとの直接の関係を発展させ、非政府組織(NGO)や人権機関を通じて仲介された関係に留まらないようにすることも重要である」と述べている [13]。 [13] 前掲パラ12。 C.さまざまな場面および状況における意見を聴かれる権利の実施 89.意見を聴かれる子どもの権利は、子どもが成長し、発達しかつ学習する多様な場面および状況で実施されなければならない。このような場面および状況では子どもおよびその役割についてそれぞれ異なるとらえ方が存在しており、それによって日常的事柄およびきわめて重要な決定への子どもの関与が促されたり制約されたりする場合がある。意見を聴かれる子どもの権利の実施に影響を及ぼす方法にはさまざまなものがあり、締約国は子ども参加を促進するためにそれらを活用することが可能である。 1.家庭における実施 90.子どもがもっとも幼い年齢から自由に意見を表明でき、かつそれを真剣に受けとめてもらえる家庭は重要なモデルであり、かつ、より幅広い社会において子どもが意見を聴かれる権利を行使するための準備の場である。子育てに対するこのようなアプローチは、個人の発達を促進し、家族関係を強化し、かつ子どもの社会化を支援するうえで役に立つとともに、家庭におけるあらゆる形態の暴力に対して予防的役割を果たす。 91.条約は、子どもに適当な指示および指導を行なう親その他の法定保護者の権利および責任を認めている(前掲パラ84参照)が、それは子どもがその権利を行使できるようにするためであることを強調するとともに、指示および指導が子どもの発達しつつある能力にしたがって行なわれることを求めている。 92.締約国は、親、保護者および保育者に対し、子どもに関わるあらゆる事柄について子どもたちの声に耳を傾け、かつその意見を正当に重視するよう、立法および政策を通じて奨励するべきである。親に対してはまた、社会のあらゆるレベルで自由に自己の意見を表明し、かつその意見を正当に考慮される権利の実現に関して子どもたちを支援することが望ましいという助言も与えられるべきである。 93.意見を聴かれる子どもの権利を尊重する子育てスタイルの発展を支援するため、委員会は、締約国が、すでにある前向きな行動および態度をもとにそれらをさらに発展させ、かつ条約に掲げられた子どもおよび親の権利に関する情報を普及する親教育プログラムを推進するよう勧告する。 94.そのようなプログラムでは次のような問題を取り上げる必要がある。 親子間の相互尊重関係 意思決定への子どもの関与 家族構成員全員の意見を正当に重視するということの意味 子どもの発達しつつある能力の理解、促進および尊重 家庭内で意見が食い違うときの対処方法 95.これらのプログラムは、女子と男子は平等な意見表明権を有しているという原則を強化するものでなければならない。 96.メディアは、親に対し、その子どもの参加は子ども自身、その家族および社会にとって高い価値を有するものであることを伝えるうえで強力な役割を果たすべきである。 2.代替的養護における実施 97.施設を含むあらゆる形態の代替的養護のもとにある子どもたちが、自分の措置、里親家族またはホームにおける養護の規制および日常生活に関わる事柄について自己の意見を表明でき、かつその意見が正当に重視されることを確保するための機構が導入されなければならない。このような機構には次のようなものが含まれるべきである。 措置、養護および(または)処遇に関わるいかなる計画についても情報を得る権利、ならびに、意思決定プロセス全体を通じて自己の意見を表明しかつその意見を正当に重視される意味のある機会を子どもに認める立法。 子どもにやさしい養護サービスの開発および設置において、意見を聴かれる子どもの権利およびその意見が正当に重視されることを確保する立法。 第3条に基づく義務にしたがい、子どもの養護、保護または処遇の提供について定めた規則および規制の遵守状況を監視するための、権限のある監視機関(子どもオンブズパーソン、子どもコミッショナーまたは査察官など)の設置。このような監視機関には、居住型施設(法に抵触した子どもたちを対象とした施設も含む)に何ら妨げられることなくアクセスし、子どもの意見および懸念を直接聴き、かつ、施設自体によって子どもの意見がどの程度聴かれかつ正当に重視されているかを監視する権限が与えられるべきである。 施設の方針およびあらゆる規則の策定および実施に参加する権限を有する、居住型養護施設における効果的機構の確立(たとえば女子および男子双方の代表による子ども会など)。 3.保健ケアにおける実施 98.条約の諸規定を実現するためには、子どもたちの健康的な発達およびウェルビーイングの促進に関する子どもの意見表明権および参加権を尊重することが必要である。このことは、保健ケアに関する個別の決定にも、保健政策の策定および保健サービスの開発への子どもたちの関与にも当てはまる。 99.委員会は、自分自身の保健ケアに関わる実務および決定への子どもの関与に関わって検討が必要な、それぞれ異なってはいるが関連しているいくつかの問題を明らかにする。 100.乳幼児を含む子どもたちは、その発達しつつある能力に一致した方法で、意思決定プロセスに包摂されるべきである。子どもたちに対しては、提案されている治療ならびにその作用および結果に関する情報(障害のある子どもにとって適切かつアクセスしやすい形式によるものも含む)が提供されるべきである。 101.締約国は、子どもたちが、子どもの安全またはウェルビーイングのために必要な場合、子どもの年齢に関わらず、親の同意を得ることなく秘密裡に医療上の相談および助言にアクセスできることを確保するための立法または規則を導入しなければならない。子どもたちは、たとえば家庭で暴力もしくは虐待を経験しているとき、リプロダクティブ・ヘルスに関わる教育もしくはサービスを必要とするとき、または保健サービスへのアクセスをめぐって親と子どもとの間に食い違いがあるときなどに、このようなアクセスを必要とする可能性がある。相談および助言に対する権利は医療上の同意を与える権利とは異なるものであり、いかなる年齢制限の対象にもされるべきではない。 102.委員会は、一部の国において、子どもが定められた年齢に達した時点で同意権が子どもに移行する制度が導入されていることを歓迎するとともに、締約国に対し、このような立法の導入を検討するよう奨励する。このようにして、当該年齢以上の子どもは、独立した有資格の専門家と協議した後に個別の専門的評価を受けなければならないという要件を課されることなく、同意を与える資格を認められるわけである。しかし委員会は、当該年齢未満の子どもが自己の治療について十分な情報に基づく意見を表明する能力を実証できるときは、この意見が正当に重視されることを締約国が確保するよう、強く勧告する。 103.医師および保健ケア施設は、子どもたちに対し、小児科学研究および臨床試験への参加に関わる権利について、明確かつアクセスしやすい情報を提供するべきである。その他の手続的保障に加えて十分な情報に基づく子どもの同意が得られるよう、子どもたちに対しては当該研究に関する情報が提供されなければならない。 104.締約国はまた、子どもの健康および発達のためのサービスの計画およびプログラム立案に関して子どもたちが自己の意見および経験を提供できるようにする措置も導入するべきである。子どもたちの意見は保健体制のあらゆる側面について求められるべきであり、これには、必要とされているサービスの種類、そのようなサービスを最善の形で提供するための方法および場所、サービスへのアクセスを妨げる差別的障壁、保健専門職の資質および態度、ならびに、自分自身の健康および発達について徐々に水準を上げながら責任を負う子どもたちの能力を促進する方法も含まれる。このような情報は、とくにサービスを利用しまたは研究に参加した子どもを対象とするフィードバック・システムおよび協議プロセスを通じて入手することが可能であり、かつ、子どもの権利を尊重する保健サービスの基準および指標を策定する目的で、地方または国の子ども評議会または子ども議会に送付することができる [14]。 [14] 委員会は、HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年、パラ11および12)および思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年、パラ6)にも注意を促すものである。 4.教育および学校における実施 105.教育において意見を聴かれる子どもの権利を尊重することは、教育に対する権利の実現にとって根本的に重要である。委員会は、依然として続く権威主義、差別、敬意の欠如および暴力が多くの学校および教室の現実を特徴づけていることに、懸念とともに留意する。このような環境は、子どもが意見を表明することおよびこれらの意見が正当に重視されることに資するものではない。 106.委員会は、締約国が、以下の問題に関して子どもたちが意見を表明しかつその意見が正当に重視される機会構築のための行動をとるよう勧告する。 107.乳幼児期の教育プログラムを含むあらゆる教育環境において、参加型学習環境における子どもたちの積極的役割が促進されるべきである [15]。教授および学習においては、子どもたちの生活条件および展望が考慮に入れられなければならない。そのため、教育当局はカリキュラムおよび学校プログラムの計画に子どもたちおよびその親の意見を含めなければならない。 [15] 「万人のための教育に対する人権基盤アプローチ:教育に対する子どもたちの権利と教育における権利の実現のための枠組み」ユニセフ/ユネスコ(2007年)。 108.人権教育は、子どもが他の子どもたちおよびおとなとともに学び、遊びかつ生活する施設で人権が実践されないかぎり、子どもたちの動機づけおよび行動形成にはつながりえない [16]。とくに、意見を聴かれる子どもの権利は、条約で宣言されているとおり実際に自分たちの意見が正当に重視されているかどうか目の当たりにできるこれらの施設で、子どもたちによる批判的吟味の対象とされている。 [16] 教育の目的(条約第29条1項)に関する子どもの権利委員会の一般的意見1号(CRC/GC/2001/1)。 109.子ども中心の双方向型学習のために必要な協力と相互支援を刺激するような人間関係的雰囲気を教室につくり出すためには、子どもたちの参加が欠かせない。子どもたちの意見を重視することは、差別の解消、いじめの防止および規律維持のための措置においてとりわけ重要である。委員会は、ピア・エデュケーションおよびピア・カウンセリングの拡大を歓迎する。 110.意思決定プロセスへの子どもたちの着実な参加は、とくに、学級会、生徒会、ならびに、学校理事会および学校委員会への生徒代表の参加を通じて達成されるべきである。このような場で、子どもたちは学校方針および行動規範の策定および実施について自由にその意見を表明できる。これらの権利は、それを実施しようという公的機関、学校および校長の善意に依拠するのではなく、立法に掲げられる必要がある。 111.締約国は、学校に留まらず、教育政策のあらゆる側面について地方および国のレベルで子どもたちと協議するべきである。これには、教育制度、子どもたちに「2度目のチャンス」を与えるインフォーマルなおよびノンフォーマルな学習上の便益、学校カリキュラム、教授法、学校の構造、基準、予算策定および子ども保護システムの子どもにやさしい特徴を強化することも含まれる。 112.委員会は、締約国に対し、独立した生徒組織の発展を支援するよう奨励する。このような組織は、子どもたちが教育制度への参加役割を適切に果たすことを援助しうる。 113.次の学校段階への移行または能力・適性別コースもしくはクラスの選択に関する決定においては、意見を聴かれる子どもの権利が確保されなければならない。これらの決定は子どもの最善の利益に深い影響を及ぼすためである。このような決定は行政上または司法上の再審査に服さなければならない。加えて、規律維持に関わる事案においては、意見を聴かれる子どもの権利が全面的に尊重されるべきである [17]。とくに、子どもを授業または学校から排除する場合には、この決定は、教育に対する子どもの権利と矛盾することから、司法審査に服さなければならない。 [17] 締約国は、体罰を解消するための参加型戦略について説明した、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/C/GC/8)を参照することが求められる。 114.委員会は、多くの国で子どもにやさしい学校プログラムが導入されていることを歓迎する。これは、子どもたちと青少年が社会で積極的役割を果たしかつコミュニティ内で責任ある市民として行動できるよう準備させる、双方向的な、配慮と保護に満ちた参加型の環境を提供することを追求するものである。 5.遊び、レクリエーション、スポーツおよび文化的活動における実施 115.子どもたちは、発達および社会化のために遊び、レクリエーション、身体的および文化的活動を必要としている。これらの活動は、子どもの好みおよび能力を考慮に入れながら立案されるべきである。自己の意見を表明できる子どもたちは、遊びおよびレクリエーションのための設備のアクセスしやすさおよび適切さについて協議の対象とされるべきである。正式な協議プロセスに参加することができない、非常に幼い子どもたちおよび障害のある子どもたちの一部は、自分の希望を表明する特別の機会を提供されるべきである。 → 意見を聴かれる子どもの権利(3)へ続く 更新履歴:ページ作成(2011年5月2日)。