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私達は普通に生きていた。 なのにどうしてこうなったのか、知る由も道理も理論も根拠もない。 強いて挙げれば運命で、それが彼女の宿命だったのだろう。 故に、解せない。 理解してはいる。 分かっている。 了承できない。 承服できない。 何度噛み砕いても飲み下せない。 溜飲は下がらない。 納得できない。 何故だ。 何故、よりにもよって彼女が? 壊れかけたラジオのスピーカーから、何度目か分からない音声が木霊する。 『──路上で──した事件で、犯人は────と見られ、被害者は顔面を鈍器で数十回に渡り殴打された痕があり、身元の判別が不可能でしたが、残った歯型から──さんと────────』 スイッチを切る。 ラジオを、蹴飛ばす。 分かっている。 解っている。 もう戻らない。 分かっている。 時間は、巻き戻らない。 あの日の約束はもう、永遠に遂げられることはない。 戻らない。 戻らない。 ここはあの子のいない世界。 太陽は登るし、月だって、昨日嫌になるくらいに輝いているのを見た。 彼女がいなくても世界は回る。 あまりにも不自由なく、回っていく。 理不尽だ。 人が一人消えたぐらいじゃ、何も変わらない。 分かっていた。 分かっていた筈だ。 彼女とも話したことがあった筈だ。 人が一人いなくなっても、世界には影響はない。 二秒に一度人が死ぬ。 それを超えるペースで人は産まれている。 違う。 そんな科学的な視点は要らない。 そんな神様みたいな考え方は要らない。 そんな、他人行儀はもううんざり。 そう、それは他人事だから言えたことだ。 死刑制度に反対する人間が身内を殺されて変貌するのと何ら変わらない。 きっと私の、こういう不幸な別離も。 どこかを探せば同じような出来事が何十何百何千何万、幾らでも転がっているんだろう。 仮にこの感情を誰かに発信したとして、その誰かは精々その場での同情を浮かべて、良くて励ましてくれる程度なのだろう。 所詮は他人の出来事なのだ。 私のこの不幸はどうしようもないくらいに月並みで、ありふれていて、取り返しがつかなくて、何にこの感情をぶつければいいのか分からない。 怒りとか、憎しみとか、悲しみとか喪失感とか走馬灯とか、色んなものがグチャグチャになって、何も考えられなくなっていた。 ただこの現実を受け入れる為だけに用意された時間が、無数に私の前に降り注いだ。それだけだった。 彼女の訃報を最初に聞いたのは、彼女と待ち合わせをしていたいつもの喫茶店だった。 マスターはいつものように客のいない店の中で、グラスとか棚の手入れをしてた。 いつもと変わらない日常が、その日も来ると思ってたんだ。 いつあのドアを開いて彼女がやってくるのか、ただのんびりコーヒーを飲みながら考えてた。 今日は何を話そうか、何処へ行こうか、予定はどうなんだ、勉強は?進路は?そんな、他愛の無い会話が、今日だって変わらずに、当たり前にあると思ってた。 コーヒーが冷めた頃に、マスターがやってきて向かいに座った。 「今日は遅いね」なんて言いながら、暇そうな私を見て話し相手になってくれた。 コーヒーのおかわりまでオマケしてくれた。「そんなだから儲からないのよ」って言ったら、「もともと趣味みたいなもんさ」って返ってきた。 それから、どれくらい経ったろう。 マスターも流石に連絡することを勧めてきて、私は彼女の携帯電話に電話をかけた。 彼女は出なかった。 何度も何度も掛け直したけど、繋がらなかった。 私は何かおかしいって思って、彼女の家に行こうとして、席を立った。 瞬間、店の古いアンティークのラジオから、唐突なニュースが耳を砕いた。 ある学生が殺されたことを伝えるものだった。 マスターが手に持ったグラスを取り落として、ぱりんと割れる音が響いた。 息ができなかった。 嘘だ、今のはきっと、そう、何かの間違い、誤報。それか、別に彼女には関係ない、誰かが殺されたんだ。 そうだ。 そうに違いない。 そうに決まってる。 そうじゃなきゃやだ。 私は情けなくがたがた震えて、膝を着いた。 吐き気がしてきて、手で反射的に口を塞いだ。 後ろに何かを差し伸べられた感触があった。 後で、それがマスターの手だったことが分かった。 マスターはひたすらに、「大丈夫だ、大丈夫だから」って、ずっと言ってた。 ばかになってた私も、それに頷いて、何回も頷いて、しばらく震えていた。 愕然としたのは、その次の日。 朝のニュースを見ている時だった。 被害者の身元が明らかになった。 画面に映し出された写真は、見間違いようもなく彼女のものだった。 私は項垂れた。 頭の中が、遂に真っ白になった。 理解できなかった。 分からなかった。 何が起きたのか、理解することを脳味噌が拒んでいた。 『使用された鈍器は、ハンマーのようなものと思われ、遺体の状態から、犯人は被害者に強い恨みを持って────』 嫌だ。 いやだ。 聞きたくない。 見たくない。 私は意味もなく喚き散らして家中を走り回って、ドアに頭をぶつけて、倒れた。 倒れたからって意識が無くなったわけじゃなくて、私は激痛を訴える額に手を当てながら、正気を取り戻して、頭の中を揉み消した。 本能的にそうした。 多分、防衛本能だったんだと思う。 あの時、あれを受け入れていたら、きっと私は壊れてしまっていたと思うから。 彼女が死んでしまったことを意識したのは、彼女の葬式が終わってからのことだった。 遺影には彼女のぎこちない笑顔が写されていた。 愚かなことに、その時の私は、「なんで彼女の葬式をやっているんだろう」なんて思っていた。 だって、葬式は死んじゃった人がするんだよ? なんで、私はここにいるの? 棺の中にいるあの子を見ても、全然死んでるだなんて思えなくて、きっと眠ってるだけだって思った。いつか見た寝顔にそっくりだったから。 私がおかしくなったのは遺体の焼却の時だ。 この時の私の様は、それは酷いものだったらしい。 わけのわからないことを叫び散らして、周りの人に取り押さえられて。 私はよく覚えていない。 辛すぎて、覚えることを私が拒絶したのかもしれない。 多分私はその時、初めて泣いた。 起きた時に目元がすごく痛かったからだ。 手を動かす。目の前にかざす。 ぐー。ぱー。 足を動かす。 膝を曲げる。天に向かって伸ばす。 上半身を纏めて起こす。 首を回す。 目を擦って、起き上がる。 ああ、私は生きている。 胸が張り裂けそうだった。 彼女は、死んだ。 もういない。 どこにもいない。 私は家を飛び出した。 その場にじっとしていたら、どうにかなってしまいそうだった。 前も見ないで走り続けていたら、ある喫茶店に着いた。 ドアを開く。 からんと鈴の鳴る音がする。 聞き慣れた声の、聞き慣れない言葉を聞く。 「……いらっしゃい。とりあえず、座って」 マスターは、言って微笑んだ。 よく自慢していたアンティークのラジオが、ボロボロになっているのが見えた。 私は今頭の中にあることを全部吐き出した。 黒く淀んだコーヒーの水面に、いくつも零しながら。 マスターは優しく聞いてくれた。 全部、受け止めてくれた。 受け止めた上で、なんにも言わなかった。 多分、正解だ。 私は何を言われても納得しなかったように思うから。 私はお金を置いて店を後にした。 マスターは一言、「またおいで」とだけ、残した。 私は走った。 行く当てもなく走って、走って、どこだか分からない場所に来た。 ここはどこだろう。大きな陸橋が見えた。その向こうには夕陽だ。 私は彼女との約束を思い出して、よりいっそう辛くなって、また走り出した。 家に帰ってきたのは夜中で、親に叱られた。 けれど予想したほどではなかった。 一応、私の気持ちを汲んでいるのだろう。 私は布団に転がって、ため息をついた。 それから、彼女がいないことを思い出して、泣いた。 携帯電話の連絡先には、未だに彼女の名前が輝いている。 記録を漁れば、彼女とのメールのやりとりだって、残っている。 それはあの日で止まっていて、私の時間もきっと、止まったままだった。 時間は、刻々と、しかし緩やかに過ぎた。 私には、彼女の死を受け入れるという、ただそれだけの選択肢しか与えられなかった。 私は学校に行けなかった。 彼女のいないことを嫌でも思い知らされることが分かったからだ。 親もそれほど強くは言わなかった。 それに甘えて、私は部屋に閉じこもっていた。 何度も、何度も、彼女がいないことがどんなことか、同じ道を行ったり来たりして、繰り返して、辿り直した。 この世界は、平凡だ。 現実だ。 死んだ人間は生き返らない。 今頃彼女は骨だけになって、石の中にいる。 考える。 重ねる。 記憶の中の彼女と、その燃えたカスになった骨。 少しも現実味がなかった。 少なくとも私の頭の中では、まだ納得できていなかった。 それでも、どうにか間違いは正さなければならない。 私は彼女の墓を訪ねることを、再三の思考の末決意した。 彼女の両親は、私を快く迎えてくれた。 彼女の部屋にも上がらせてもらえた。 懐かしい気持ちになった。まるで今もあの子がそこにいるようだった。 何度か、私はここに来たことがあった。 よもやこんな形で訪れることになるとは夢にも思っていなかったが。 私は彼女の家で線香を上げて、彼女のお墓のある霊園の場所を聞いた。 深々とお礼をして、私は彼女の両親と別れて、自転車を駆った。 霊園に着くと、人は誰もいなかった。 もう夜になっていた。冬の墓地は寒々しく、何かが出そうな雰囲気ですらある。 いっそ出て欲しいと思っていたのは私だ。 暗い中、私は微かな月明かりを頼りに彼女の墓を探し出した。 水をかけるのは本当は駄目だと聞いてたから、わざわざ持ってきた雑巾で拭いて、それから線香を上げた。 墓に刻まれているのは無機質な文字。 石になってしまった彼女の姿。 「……ねぇ、どうしてあんた死んじゃったのよ」 空虚な声が、闇に吸い込まれる。 「大変なんだよ?学校行ったらもういきなりみんなに囲まれてさ」 「『辛くないの?大丈夫なの?』って」 「『だってあなた、あの子と仲が良かったんでしょう?』ってさ」 「私イヤになっちゃって、もう学校もしばらく行ってないんだ」 私の告白は独白になって、物言わぬ墓石に吸い込まれる。 「……こんなんじゃ駄目だよね」 「分かってるんだ、私が、意味のないことしてることくらい」 頬を何かが伝う。 「でも私ね、どうしてだろうね、どうやって生きてけばいいのか、わかんないの」 「おかしいよね」 「だって、卒業したらきっと、あんたとも違う進路進んで、それから二度と会わない道だって、あったかもしれないのに」 「なのに今会えなくなったからってさ」 「……勝手すぎるよね」 止め処なく溢れてくる涙を、拭う気も起きなかった。 そのうち、私は心の奥に湧いたどす黒い何かに気付いた。 不思議な気持ちだった。 活力が湧いてきた。 なんだってできる気になってきたんだ。 「……ねぇ、私さ」 「許せないんだ」 「あんたを殺した奴が」 『生きる目的』を得た私は、その日から気が狂ったように元気になった。 みんな笑った。 両親も、クラスメイトも、喫茶店のマスターも、 彼女だって! おめでとう、おめでとう、って、みんな祝福してくれた。 だから私に、後悔なんて必要なかった。 覚悟だって十分すぎた。 これで私は完膚なきまでに十全だった。 だから、ようやく捕まった犯人が更迭されるその日に。 私は。 私は、私は、私は。 私は。 物置から錆び付いたハンマーを取り出して、とびきりの笑顔を浮かべた。
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【検索用 きらいなところ 登録タグ 2009年 KAITO VOCALOID き ろみ男 曲 曲か 鏡音リン 鏡音レン】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:ろみ男 作曲:ろみ男 編曲:ろみ男 唄:KAITO コーラス:鏡音レン・鏡音リン 曲紹介 曲名:『きらいなところ』 歌詞 あなたのきらいなところは 卑怯で卑屈なところ 嘘をついて すぐ ひとのせいにして あとはしらんぷり あなたのきらいなところは ずぼらでルーズなところ 部屋汚いし 2時間以内は 遅刻じゃないみたい あなたのきらいなところは 意外にめめしいところ 誰かからもらった いらないものでも 捨てられないとこ あなたのきらいなところは やっぱり僕も似ていて あなたがくれた 抹茶のアイス 食べずに置いたまま (すき きらい ・・・) あなたのきらいなところは 彼氏ができたら いっしゅんで 僕のこと忘れて 病的に 夢中になるとこ あんなにすきっていったのに もう しねばいいのに コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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Q「ギザ10の価値はどれくらいなの!?」 A「一番価値があるもので30円程度」 ギザ10とは? 昭和26年、30年 10円+α 昭和32年 20円 昭和33年 30円 昭和31年、61年、64年 10円+α http //fleshwords.at.infoseek.co.jp/dt/dt034.htm
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わらいなく 漫画家。2010年に「月刊COMICリュウ」の新人賞にて銀竜賞を受賞しデビュー。 ニンジャヘッズ(ニンジャスレイヤーの愛読者)として有名で、pixivなどにてイラストを描いていたところ、 それが編集者の目にとまり、公式イラスト担当として抜擢されることとなった。 本作以外の主なお仕事 「NINJA SLAYER」書籍版 キャラクターイラスト&挿絵担当 「KEYMAN -THE HAND OF JUDGMENT-」 Ver2.2でのイラスト担当 SS085/SS風魔小太郎 SS087/SS服部半蔵
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ここで話は数年前にさかのぼる。 秋山澪、田井中律、琴吹紬、平沢唯の4人――所謂『放課後ティータイム』――がまだ桜が丘女子高校の軽音部で活動をしていた時のことだ。 もっとも当時は、メンバーは4人ではなかったのではあるが。 ある日いつものように、お茶とお菓子を囲んで雑談に耽っていたメンバーの前に、軽音部の顧問である山中さわ子がこんな話を持ちかけた。 さわ子「きゃにゅうふぃー♪ きゃにゅうふぃー ざっ はいぶれっ レイインボウ♪っと。さてと、今日は実はちょっとみんなに聞いてほしい話があるの」 律「なんだよー。新しいコスプレ衣装なら澪で試してくれよなー」 澪「ちょ、ちょっと……律! へんなこと言わないで!」 唯「澪ちゃんのメイド服姿、また見たいなー♪」 紬「見たいなー♪」 梓「いや……そろそろバンドの練習しましょうよ……」 さわ子「ときにあなた達……CDデビューしてみない?」 律澪唯紬梓「えっ?」 話を聞くと、さわ子の高校時代の軽音部仲間で、今は音楽業界に身を置く人間が、 この度新しくインディーズレーベルを立ち上げたらしい。 さわ子「それでね、どこかにいいバンドはいないかってその子に聞かれてて。で、思いついたのがあなた達っていうわけ」 澪「ちょっと待ってください……。私達、ライヴの経験だって学園祭でくらいしかないし……。CDデビューなんてそんな……」 さわ子「大丈夫よ。所詮インディーズだし。今は立ち上げたばかりでとにかく所属してくれるバンドがのどから手が出るほど欲しいっていう状況らしいし」 澪「でもお金が……」 さわ子「CDの製作費は殆どレーベルで持ってくれるらしいわ」 澪「いやでも……」 律「いや、それはおいしい話なんじゃないか? タダ同然で私達のCDが作れるんだぞ?」 唯「そうだね~。せっかくみんなで楽しく部活やってるんだから、記念として残るようなCD欲しいな~」 紬「来年の新人勧誘の時に配布して宣伝するのもいいかもしれませんね」 梓「わ、私もっ!! CD作ってみたいです!!」 さわ子「アウイエッ! きまりね! それじゃその子には私から連絡しておくから」 澪「そ、そうか……私達がCDデビュー……」 梓「これは……いっぱい練習しなくちゃいけませんね」 紬「音源として残るとなると、中途半端な演奏はできませんからね」 唯「練習の前にお菓子全部食べちゃおうよ~」 律「唯はもう少し緊張感を持て! って、さわちゃん、一応聞いとくけどそのレーベルなんてところなの?」 さわ子「確かボブ・サップ(BOB SUP)っていう名前よ。 言っておくけど、過度な期待はしないでね? 本当に立ち上げたばかりの弱小レーベルらしいから」 その後、5人はさわ子の紹介でボブ・サップ・レーベル所属バンドのコンピレーションアルバムに提供するための楽曲『ふわふわ時間』のレコーディングにこぎつけた。 さわ子の言うとおり、弱小レーベルだけあって借りられるスタジオも小さく、機材も紬の別荘に備え付けられていたそれより貧相とも思えるようなものだったが、 5人が5人とも初めてのレコーディングを緊張しながらも楽しみ、楽しみながらも真剣にやり遂げたのであった。 そして数ヶ月後、無事発売されたそのCDの参加アーティストには、『放課後ティータイム』の名が確かに記されていた。 唯「いやぁ……しかし私達の曲がこうしてCDになるなんて……感慨深いね」 澪「でも地元の高校生バンドばかりが参加したコンピレーションアルバムだろう? はたしてどれだけの人が買ってくれるのかな……」 律「贅沢は言うなって。CD出せただけでも凄いことだろう?」 紬「そうですよ♪ 私なんて嬉しくて毎日124回、リピート再生して聴いてます♪」 梓「クラスの子たちも『凄い凄い』って、とても評判ですよ!」 さわ子「アウイエッ! そんなあなた達に朗報よ!」 唯「? さわちゃん?」 律「いつの間に入ってきたんだ……」 梓「朗報って……なんですか?」 さわ子「実はね、あのアルバムの評判、凄くいいらしいの! この辺のレコード店でもどこも完売だって」 律澪唯紬梓「!」 さわ子「それでね、アルバムの中でも最も反響の大きかったバンドの名前が……なんと『放課後ティータイム』」 律澪唯紬梓「!!」 さわ子「で、ここからが本題よ。私の同級生のそのレーベルの社長がね、放課後ティータイムの単独音源をぜひリリースしたいって!」 律澪唯紬梓「!!!」 さわ子「と、いうわけであなた達、お菓子食ってダベってるのもいいけど、しっかりバンドの練習もしてね! ミニアルバムにしても5曲はオリジナルが必要よ! ちなみにレコーディングは一か月後!」 澪「う、嘘だろ……」 律「私達が……インディーズとはいえ……単独デビュー……?」 紬「夢みたいです……」 梓「私……軽音部入ってよかったです……!」 唯「どうしよう……私、この前追試があったからその勉強したせいでまたCのコードから忘れちゃってるよ……」 突然のグッドニュースに、5人は戸惑いつつも大いに喜んだ。 そこから一ヶ月間、5人は普段の「ふわふわ」な部活動風景とは打って変わって、バンドの練習に明け暮れた。 それはまさにストイックと言っても差支えがないほどの、普段の彼女達からは想像できない姿だったが、 5人が5人ともレコーディングという大きな目標があることで、練習の苦痛など微塵にも感じていなかった。 とにかく、軽音部の仲間で音を出すことが楽しい――。 そして、そんな仲間達と一緒に出した音をもう一度CDに出来る――。 そんな純粋な思いで、5人の頭の中は一杯だった。 そしてやって来たレコーディング。 澪と紬がこの日のために作ったオリジナル数曲と『ふわふわ時間』『私の恋はホッチキス』といった既存の曲を、 5人は2日間という短い期間でレコーディングしてみせた。 決して良いとはいえない音質、アレンジの甘さも窺える楽曲、技術的に未熟な演奏……それでもなお、それらの未完成な部分を補って余りある、 キラキラとしたエネルギーと輝く希望が詰まったアルバム『放課後ティータイム』が完成したのだ。 律「あの頃は楽しかったよな……」 唯「うん……。CDも最初はあまり売れなかったけど……少しずつ学校以外のライヴハウスとかでも演奏できるようになって」 紬「澪ちゃんも楽しそうでしたし……」 律「それに梓も……」 唯「いつからこんな風になっちゃったんだろう……」 紬「それはやはり――」 アルバムの売り上げは必ずしも思わしいものではなかった。 それでも、少しずつではあるが放課後ティータイムには地元のライヴハウスで演奏をする機会が増えてきた。 律が言うところの「目指せ! 武道館!」の目標はまだまだ遠かったものの、 ライヴハウスで自分達の学校の人間以外のオーディエンスに向けて曲を演奏することは、5人にとって新鮮であり、そして何よりも成長の糧となった。 律「だけど……本当に楽しかったのはそこまでだったんだ」 いつの頃からか、放課後ティータイムのライヴにはライヴハウスが満員になるほどの客が入るようになっていたのだ。 紬「たしか……私達がインディーズ専門の音楽雑誌に紹介されたのがきっかけでしたね」 『とびきりの美少女バンドあらわる!』――そう題された雑誌の記事にはバンドの説明やリリースされて程ないアルバムの紹介もそこそこに、 ベースを構えて凛々しくマイクに向かう澪の写真が大きく掲載されていた。 唯「女の子だけのバンドなんて……珍しかったからね」 要するに放課後ティータイムの曲や演奏でなく『彼女達自身』に何らかの偶像的なモノを見出したファン達が集まり始めたのだ。 律「あん時の澪の人気は凄かったなぁ……」 もともと整った顔立ちにモデルのような身体つき、そしてバンドではボーカルもこなし、反面、歌詞ではちょっと可愛らしい面も覗かせる ――そんな意外性を持つヒロイン、澪の人気はうなぎ登りであった。 そしてライヴへの集客と比例するかのように、当初は伸び悩んでいたアルバムの売り上げが爆発的に伸びたのだ。 さわ子「アウイエッ! ちょっとちょっと! すごいじゃないあなた達! 『放課後ティータイム』、ついにオリコンのインディーズアルバムランキング1位よ!?」 律「これは……マジで夢じゃないかもな武道館……」 唯「わわ~、頬をつねってみてもちゃんと痛いし。律ちゃん! これは夢じゃないんだよ!」 紬「今年のフジロックにも出演依頼が来ましたしね。ちょうど夏休みですし良かったです♪」 梓「フジロック……私、憧れたんです……」 律「それもこれも全部澪のおかげだな!! お前のおかげで私達も一躍ロックスター候補だ!!」 唯「またインディーズ雑誌の表紙飾ったしね! すごいよ、澪ちゃん」 紬「新曲の歌詞も評判ですしね」 梓「澪先輩……尊敬します……」 澪「……あ、ああ。そうだな……」 思えばこの時から既に澪の様子は、おかしくなる兆しを見せていたのだ。 そしてついに来るべき時がやって来た。 とある日のライヴ後、楽屋で談笑しながら紬の用意したお茶とお菓子でしばしの休息を楽しんでいた5人の前に、 とあるメジャーレコード会社の担当者を名乗る人間が現れた。 そこで語られたのは他でもない、メジャーレーベルへの移籍話であった。 勿論、5人は自分達に成功のキッカケを与えてくれたさわ子やバンドを見出してくれたボブ・サップ・レーベルを裏切る形になることは認識しており、 メジャー進出の話に即座に首を縦に振る気にはなれなかった。だが―― さわ子「アウイエッ! そんなの気にする必要はないわ。 みんながメジャーデビューして……学生時代の私がかなえなれなかった夢をかなえようとしているなんて、 これほど嬉しいことはないもの」 と、いうさわ子の言葉に後押しされた。 そして、ボブ・サップ・レーベルにも、所属バンドの出世を素直に喜ぶだけの器量が備わっていた。 『放課後ティータイム、満を持してのメジャー進出!!』――このニュースが世の音楽雑誌やインターネットにて一斉に報道されたのは、そのすぐ後のことだった。 3
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山本“KID”徳郁「三沢くらいなら勝てるんじゃない?」 235 :名無しさん@恐縮です:2009/06/24(水) 08 11 29 ID Ixe9EI/s0 505 :実況厳禁@名無しの格闘家 :2005/06/07(火) 20 54 58 ID rqAGbkf5 今日ニッポン放送のKIDのラジオ番組で KID「ジャマイカの格闘技はどうなの?」 知らんレゲエ歌手「向こうは最近キックや総合が盛んになってきた」 「でも何故か三沢を呼ぶって盛り上がってるんだよね」(苦笑) KID「何それ」w 「じゃあ俺の総合とかK-1のDVDたくさん見せてあげて」 レゲエ「本物を見せてあげないとね」 KID「何ならジャマイカで俺が三沢とやってもいいよ」(爆笑) レゲエ「そんな事言っていいの?」 KID「三沢くらいなら勝てるんじゃない?」 「弱いのわかるもん」 レゲエ「あーあ言っちゃった」(大爆笑) まあKIDも口が災いしてそのブーメラン受けてすっかり落ちぶれちゃったけどね -- 名無しさん (2010-04-03 08 58 53) 三沢の弱さがバレてるねw -- 名無しさん (2010-10-07 23 41 39) 三沢のどこに格闘技的な強さを見出すんだよw -- 名無しさん (2010-10-09 07 05 16) プロレスラーは体が強いとか、ミステリオが好きとか言ってたけどね -- (2011-01-11 20 14 11) 今ではブーメランなのが悲しい -- 名無しさん (2014-12-06 13 51 32) ブーメラン刺さって悦ぶノワヲタ -- 名無しさん (2014-12-19 13 54 11) と言うかブーメラン刺さってタヒねよノワヲタ… -- 名無しさん (2015-01-12 19 41 06) 天国で戦えるね -- 名無しさん (2018-10-08 12 17 31) 行き先は地獄だけどね -- 名無しさん (2018-10-10 23 37 15) 名前 コメント
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3.自分自身/PAST 「私は・・・、ほら、大丈夫だから」 ――あれ?アイツ・・・。 夢の中で俺は“目を覚ました”。 目の前に広がるのは幻想的なものでも何でも無い、とても現実的な風景と、その中に一人たたずむ金髪の女の子。 「本当はいけないんだけど、今日だけちょっとルール違反ね」 女の子は冗談っぽく笑って、肩をすくめた。 そしてその笑顔に気付く。 ――嗚呼、俺、御前の笑顔を良く知ってる気がする・・・。 こうやって夢の中で女の子に話しかけると、聞こえたのか、反応して苦笑してくれた。 なんでこんなに知ってるのに、思い出せないんだろう。 ――なぁ、御前、俺の・・・なんだ? 問いかけに彼女は表情から今までの笑みをなくして、悲しそうに言う。 「ごめんね、まだ思い出しちゃいけないんだよ、秋」 現実的な風景、沢山の建物がならんだ街中の流れる人込みの中に一人立ち尽くす彼女と俺の間の距離は、こんなにも近いのに何故かとても遠く感じられた。 「でも、嬉しいんだよ?微かでも覚えていてくれて・・・」 女の子の表情が明るくなり、風が吹いた。 ショートカットの金髪の髪が風に乗り、なびいて何かに気づいたように彼女は続けて言う。 「あ、そろそろ行かないと」 ――また会えるよな? まだ話していたい、この懐かしい感覚を続けていたい。そう思った俺は思わず聞いてみた。―――彼女は俺の好きな笑顔で答えてくれた。 「うん!何時になるかは解らないけど、また会えるから!」 彼女は嬉しそうに手を振って叫んだ。 それを見て距離が離れていくのに気付く。でも俺の体は前には進まない。 そして俺が無意識に口にした。 ――愛里、それは現実世界での話しか?それとも夢の中の話か? この問いに、彼女は驚いた反応を見せて、そして俺の意識は夢から離れた。 / 目を覚ます。 自分の部屋でないのに直ぐ気付いて、此処が榊原の家の中だということを思い出した。 そして、俺は何となくだが彼女を覚えていた。 水城愛里――。 俺の中で、一番親しかった存在。 「恐らくは親友か恋人関係・・・」 そんな事を口にして、ハッとした。 「あああああああ!」 思い出したように叫んで、 「しまった、コンビニから買ってきた俺のプリン冷やすの忘れてたああああ!」 急いで食卓に突撃するのだ、無謀な格好で。 そしてその後に食卓で遭遇する榊原から変体呼ばわりされ、嫌な場所に蹴りが入るのは言うまでも無い。 ちなみにプリンは榊原に食われていたというオチ。 「カザマくん」 朝の食卓で、命さん、榊原、アレックスと俺の4人で囲んだちゃぶ台に並ぶ朝食を挟んでアレックスが唐突に声をかけてきた。 朝食にしては豪華で味も間違いなく店を出せる程の美味さ。 和風式にご飯と味噌汁に沢庵、そして焼き鮭。普段、朝は食欲が無い俺も流石にこの料理を目の前にしてよだれを垂らさずには居られなかった。 これを作った本人ことアレックスはエプロンを着用したまま食卓のちゃぶ台についている。 「昨日、カエデちゃんから聞いたんだけど、支援武器を持っているんだって?」 聞かれて、俺は昨日の鍵を思い出した。 榊原は、常に持っていなさい!というので今もポケットにある。 それを俺は取り出して向かい側に座るアレックスに見せた。 「これの事だろ?」 「ちょっと見せてくれないかな?」 別に拒否する理由もないので俺はその鍵をアレックスへと手渡した。 受け取るなり食事中なのに片手にお箸を握ったまま鍵と睨めっこをはじめだしたアレックスを榊原はあからさまに嫌そうに見た。 この支援武器と呼ばれる言術者なら誰もが持つという武器が俺の家の倉にあった事、それが導き出す一つの真実は、昔の倉の所有者が言術者だった事である。 榊原の話では言術者の人口は以外と多いらしく、世界人口の1割3分は言術者だと言う。 1割3分というのは少ない数字に聞こえるが、これが以外と多い方らしい。 もし世界が1億人だったとしたら少なくとも1千3百万人が言述者といえば確かに多く聞こえる。 言術者達は基本的に表の社会に彼らの力を出す事は無い。さらに言術者は、他の言術者を見てもその人が言術者だという事を証明する方法が無いらしい。 つまり、実は近所のおばさんが言術者でしたー、なんて事は良くあるらしい。おばさん限定でなくても良いのだけど・・・。 「はい、ありがとう」 「ん?ああ、もう良いのか?」 睨めっこが終わったらしく、アレックスはこの支援武器について何も言わぬまま俺に返してくれた。 そして俺が鍵をポケットにしまう頃には榊原は朝食を終えちゃぶ台の側から離れていった。 「やっぱり、“草薙の剣”だった?」 風間秋が食卓を出て、部屋に七原とアレックスだけが残った頃、七原が切り出した。 「ああ、まさか再び目にするとは思わなかったよ・・・最後に見たのは何時だったかな・・・。今の“草薙の剣”は時代に合わせて姿、形を変えているみたいだけどね」 話に持ち出された“草薙の剣”。それは神話の中で登場する三種の神器の一つとされていて、それは秋が持っている鍵の事である。 アレックスは真剣な表情で腕を組んで何かを考えていた。 一方、七原は少し懐かしそうな表情で、 「あの剣が再び現れたと言う事は、やはり風間君は無関係でただ巻き込まれた、って事にはなりそうには無いのね」 「やはり彼の魂はヤマトタケルの生まれ変わりかな、彼が月蝕を見つけたのは偶然ではなく運命なんだろうね」 七原命は食後の緑茶をゆっくりと口にして開いたままも襖から空を見上げた。 「私達は何をしてあげられるかしら・・・」 「草薙の剣があるなら、伊邪那岐(イザナギ)もいるはず。僕等に出来る事は伊邪那岐の企みを阻止する事だけさ」 ふっと力を抜いて組んでた腕を下ろすとアレックスは立ち上がり襖に手をかけ七原と同じように空を見上げた。 「今日も天気が良い。外にでかけようかな」 晴れた空に向かい微笑んだアレックスは七原に微笑みをうつして言った。 / 俺は街中を歩いていた。 空唄市にある数少ない繁華街の通りを人ごみに紛れながらただ単にふらふらと歩き回っていた。 空唄市、紅葉区の繁華街と言ったら空唄市の住民で知らない人は居ないだろう。 というか、田舎だし空唄市は狭いからなー。 別に何か様があった訳では無い。未だに脳裏に残った夢の内容が忘れられず考え事をしていたら気づけば紅葉区に居たと行った所だろう。 繁華街は相変わらず賑わっていて多くの男性や女性、年齢は子供からお爺さんお婆さんまで限りなく歩き回っていた。 左右に並ぶ店はファーストフードのチェーン店、カラオケ、電化製品、八百屋、本屋、スーパーマーケットやら何でもござれだ。 此処の繁華街は田舎なのに歩けば何でも揃っているという事で住民の間でも人気があるのだ。 歩く人の表情を伺うと誰もが笑っている様に見えた。 一瞬、言術の事や怨霊の事などが嘘の話に思える。 しかし右ポケットにある通常の鍵とは違って少し大きめのその鍵がやはり裏の世界では信じられない化け物やまるで正義の味方の様に戦う戦士達がいるのだと教えてくれる。 榊原は俺があまりにも冷静な所が変だ、と言っていたが正直かなり混乱していた。 突然、今までの一部の記憶は嘘でした、なんて言われても一体何処から何処までの記憶が偽りで、思い出す記憶が本当記憶なのか偽者の記憶なのか判断が付かないのだ。 足が勝手に紅葉区へと向かったのはきっとそのせいだろう。 この繁華街にはちょっとした思い入れがあるのだ。正確には気がするだけなのだが。 っというのはついさっき思いだしたのだが、ただ確かなのは記憶にかすかに残る金髪のショートカットで活気的な女の子は本当の記憶に存在していて、偽りの記憶に存在していないという事だ。 そして俺はこの繁華街で金髪の女の子との思い出がある気がしたのだ。 確信は無いが今はなるべく混乱した記憶を整理したかったから、とにかく屋敷でじってしているより外を出歩いた方がきっとプラスになるだろうと信じて・・・。 それに怨霊は日が沈んだ時にしか出ないらしいからお昼に外に出歩いても問題は無いだろう。 ふと、隣を金髪の女の子が通り抜けて俺はとっさに振り返った。 だが知らない人だった。容姿が記憶に残っている顔とは全然違ったのだ。 彼氏であろう男の子と腕を組んで楽しそうに歩いてるその女の子の後姿を見送り、その様子が何か記憶のパズルに当てはまった気がした。 あのカップルがゲーセンの前を通り抜けると、誰もいなくなったゲーセンの前にとある記憶の光景が重なった。 「あー!もう、なんで取れないんだろー!」 ゲーセン前で苛立ってる制服姿の金髪の女の子が一人でブツクサ愚痴っていた。 その姿に気づいた俺はその場所から手を挙げて彼女の名前を呼んだ。 「あっ、秋じゃーん。良いとこに来たよホント!さっすがチームの救世主!もちろん私の救世主にもなってくれるよね?」 偶然ばったり出会うなり駆け寄ってきて何か訳のわからない話しを持ちかけられて俺は戸惑っていた。 答えを返す間もなく金髪の少女は腕を絡めてきた。 「ねぇ、お金貸してよー。どーしてもぬいぐるみが取れなくて、お財布の中身全滅しちゃったのよ。ね、いいでしょ?」 そして、っは、と記憶から現実に引き戻される。 「あー、そういえばアイツ俺の財布抜き取ってUFOキャッチャー続けたんだっけな。結局一個も取れず二人揃って金欠になったんだけどな。借りた分の金返してもらってないし」 一つの記憶を思い出して俺はゲーセンの入り口を眺めながら一人苦笑した。 小さな記憶だけど、それが確かな事実である事が解かる。それがとても嬉しかった。 「おっ、風間じゃねーか」 唐突に後ろから声をかけられて俺は振り返った。 「どーしたんだ?こんなとこでボケっと突っ立ってさぁ」 そこにはあからさまに悪の企みを持った悪のある笑顔でまさにその悪意ある計画を実行せんとする悪友、坂本英二が居た。 「却下だ」 話しを持ちかけられる前に俺は制止する。 「ちょっとまてよ、俺まだ何もいってねぇのに」 「御前の事だ。どうせこれからゲーセン行こうと思ってたけど財布忘れたから金かしてくれ、とでも言うんだろ?本当は財布持ってるくせに」 「っう、なんでわかったんだよ・・・テレパシー?」 図星かよ、この野郎。 「まぁ分かってるなら話は早い、っつーわけで、金かっしてー!」 「帰れボケ。貴様なんぞに貸してやる金はない」 「んだとゴルァ。大人しく金貸せって言ってんだよ!」 「カツアゲしても駄目」 「ねぇ、いいでしょ?かしてよ風間くん・・・」 「気色悪い裏声出して無理な色気と流し目されても駄目」 「あ、もしもし?風間さんのお宅ですか?実は娘さんが事故にあって大怪我されて、2時までに・・・」 「俺俺詐欺も駄目、ちなみに娘はおらん」 「ぶー、なんだよ良いじゃんか、金かしてかしてかしてぇー!!」 「だ だ こ ね て も 駄 目」 「昨日夜、榊原さんの家に入った事、明日の学校で言いふらしてやっちゃおうかなー」 「だから駄目なもんは・・・って、はぁ?!」 「そっか、駄目か、なら仕方ないよな!まぁ俺も無理に親友の財布から金を抜き取るほどの悪いヤツじゃないし、無理なら諦めるよ!」 と言って背を向けて去らんとする英二。 「ちょっ、まて坂本――・・・!」 「じゃぁな裏切り者!明日の学校、皆の前で脱チェリーボーイの話し聞かせてくれよ!」 「脱チェリーボーイって・・・じゃなくて、おい!!英二ぃーーーーー!!」 妙にさわやかな顔してスキップしながら輝き去って行く悪友の後ろ姿は追いかける間もなく人ごみに消えていってしまった。 ヤツが去った戦場には妙な脱力感と敗北感、そして毎度の事ながら疲れが残ったのであった・・・。 明日の学校は修羅場と化しそうだが、どうやって誤解を解くか・・・。 榊原の家に行った事が事実だと知られている以上、何をしに行ったのか言い訳を考えなくては・・・。 うーん、と唸る俺の横を再び同年代の金髪少女が通り抜けて行く。 それについ振り返ってしまうのだが、その横顔は―――・・・。 「――愛里?」 一瞬だけ見たその横顔は記憶にある本人とそっくりだった。 人違いかも知れない。 だが振り返らないその金髪少女を俺は思わず追いかけていた――。 / 紅葉区の繁華街のとあるファンシーショップから私は結局何も買わずに出た。 自動ドアのガラス扉から一歩踏み出すと相変わらず暑い夏の熱気が肌に触れて店から出るのを少しばかり惜しんだ。 「んー、あの服良かったのだけど・・・他の店も見てから決めるしか・・・」 服選びはなるべく安めで慎重に、というのが私流なのだが、友人は気に入った服があったら値段なんか気にするな!と言っていた。 とは言っても、生活資金は命とアレックスから貰っているとは言え、流石に服類や趣味の物はその生活資金から出す訳には行かないので、自給自足のお小遣いで購入するしかないのだ。 自給自足の方法は偶に臨時バイトしたりして貯めたりしている。 今では言術者として働けるわけだから少しは収入が多くなるが、言術者の仕事の給料というのはそれ程高いものでも無いのであった。 少なくとも、言術者業だけで生きていくのは難しい。 アレックスは成功報酬制の仕事を幾つかやっているらしく、株にも手を出しているらしい。 命は実は大手洋服会社のファッションデザイナーだったりする。 つまり、生きる中で言術者というのは副業みたいなものだ。 言術者業をメインで生きている人は恐らく殆ど居ないだろう。 生活費は今の所はフォローされているけど、何時か保護者の二人から独立しなければならないその日までに何か考えておかなくてはならない。そう思うとやはり貯金を貯める事も考えるのだけど、実際は貯まらないでつい消費してしまうのが女性なのだろうか・・・。 「やっぱ洋服買うのはやめておこうかしら・・・」 悩んでいるのに足は向かい側のファンシーショップへと向かっていく――。 「・・・!?」 一瞬、妙な胸騒ぎと悪寒に襲われた。 慌てて後ろを振り返るが、そこには何事も無く歩く人々の姿のみ。 「今のは一体・・・・・・ッ?!」 そして今度は源の流れが大きく乱れた。 何処かで言術者が力を開放したらしい、とは言えこの乱れ方は普通じゃない。 「・・・・・・」 妙な胸騒ぎがして、私は源の流れを感じながら、その開放源へと駆け出した! / 金髪の少女を追いかけていると、彼女は突然横に曲がって狭い路地裏へと入っていった。 此処で見失う訳にはいかない、と俺も路地裏へと入り後を追う。 狭い路地裏は薄汚れていたが、しかし肩幅以上のスペースがあったので楽に通り抜ける事ができた。 金髪少女を追ってやがて路地裏の小道から出ると妙な空間に出た。 ――赤い。 目の前に広がるのは、真っ赤な景色。 天も地も無く、その空間だけが赤くなっていた――。 赤、それはまるで誰かの血を吸ったかのように・・・。 そして急に体が冷えた。今までの夏の暑さが嘘のようにひいていく。 気づけば追っていたはずの金髪の少女が赤い空間の中でこちらを向いていた。 前髪が長くて彼女の顔が見えない。愛里じゃないのか? 「ひさしぶりね、草薙」 そして愛里かと思ったその姿は赤色に溶け、形を変えていき・・・、少女から大人びた黒髪の女性へと姿を変えた。 「まさかまんまと引っかかってくれるとは思わなかったわぁ」 やっと気が付いた頃には既に遅かった。 俺は罠にはまったと気づいて後ろを振り向くが、・・・そこには元々あった路地裏が無くなっていた。 四方八方が赤く、自分が立っているその場所が地面なのかすら分からない。 そう、この赤の次元はまるで二次元の様に影も光も無く、赤だけに包まれていた――。 俺は黙って前方に立つ黒髪の女性を見据えた。 「あらあら、そんなに警戒しなくても良いわよ。せっかく久しぶりに会えたんだから喜んで欲しいわ、草薙。・・・でも、邪魔者は排除して欲しいわねぇ」 先程から呼ばれている草薙の名前、誰だか知らないけど、人違いならそうであって欲しい。 とにかく一刻も早くこの空間から出たかった。 赤い色を見ていると、血を見ている気分になって――。 ――血? 目の前が過去のフラッシュバックに潰れる。 そこには大量の血を流して俺に微笑みを向ける少女が・・・。 ――血が、血が。 出欠が止まらない。俺は我武者羅に走り続けていた。 その少女を抱えて・・・。 少女、水城愛里? 彼女は必死に駆ける俺に精一杯の笑顔を向けて、唇を動かした。 ――ぁ・・・、ぁぁ・・・。 ぁ・・・。 ――ぁ、やめ・・・ろ。 思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無い思い出したく無いっ!!! ――ぁ、ぁぁ、あああああああああああああああああああああッッ!!!!!? 「うあああああああああああ?!」 無我無心に手に握りしめた鍵が刀へと姿を変える! 俺は頭の中で切れる何かが分からないまま奇声を挙げて黒髪の女へと飛び掛った! 「アイスブレイカー!!目を覚まして!!!」 そして、知った女性の声に俺は目を覚ました。 気づけば黒髪の女の姿は無く俺は刀の切先を榊原に向けられていて――!! 「・・・ッ!」 「キャ――」 ズドン! 刀に何かが刺さる感触と音が聞こえた。 ――俺は一体何をしていた? しばらくの静寂が訪れる・・・。恐る恐る顔を上げると刀は紙一重で榊原の頬をかすめて壁に突き刺さっていた。 「あ、アイス・・・ブレイカー?」 「ぁ・・・榊原、俺は・・・、俺は――」 何もかもが混乱していた。 気が付けば辺りの赤い空間は無くなっていて、路地裏に有る小さな空間で俺は榊原に刀を向けていて、俺は榊原を殺そうと・・・? 「だ、大丈夫!アイスブレイカー?混乱してるのは分かるわ。貴方は幻を見せられていたのよ!」 「でも、俺、もう少しで榊原を殺そうと・・・!」 それでも刀から手が離れない。刀身はザックリと壁に突き刺さったままで、体が動かなかった。 榊原は壁に背を預けたまま地面に腰を落としていた。 「落ち着いてアイスブレイカー!深呼吸して・・・、それからゆっくりと体から力を抜いて・・・」 俺は何か言いたい事が有ったのか、口ごもってから出来る限り落ち着こうと息を吸って吐いた。 何度かそれを続けてからゆっくりて力を抜くと刀から手が自然と離れて、急に襲われた疲労感で腰を落とした。 「どう?大丈夫?」 榊原は横顔の直ぐ傍にある刀から離れて、腰を落として何も言えない俺に問いかけた。 口は開くのに言葉が出てこない。 俺は大丈夫だと言いたくて二回ほど頷いた。 「状況を説明すると、貴方は何処かの言術者に幻を見せられていて、それで私を敵だと思い込んだのよ」 榊原は腰を上げて膝をついて俺の瞳を覗き込んだ。 「言術による幻は解けたけど、また掛かるかも知れないから覚えておいて。・・・自分を信じ続けるの・・・。絶対に疑っちゃ駄目、現実から目を背けても駄目、・・・わかった?」 ようやく少し落ち着いて来て俺は相変わらず声が出ないものの何度か頷いた。 未だに信じられないほど心臓が跳ね続けている。 榊原は、よし、と言って立ち上がってから刀を壁から引き抜いた。 すると刀は音も無く鍵へと形を戻していく・・・。 「立てる?一度私の家に戻りましょう」 言うと鍵を左手に、空いた右手を俺に差し伸べてきたので、その手を握り俺は何も言えないまま立ち上がった。 しかし足がふらついていて、何故か真っ直ぐ立てない。 それに気付いた榊原は黙って俺に肩を貸してくれた。 「・・・さ・・・さかき、ばら・・・」 「?」 「ごめん・・・」 ようやく声が出るようになると、俺はそれしか言えなかった。 そして俺の記憶は戻りつつあった――・・・。 / 夢を見た、夢の中で俺は笑っていた。 何時もの様に、何も知らなくて、愛里と一緒に笑っていた。 思い出せばアイツと初めて会ったのは幼稚園の頃――・・・。 「ねぇ、なんでみんなとあそばないの?」 幼稚園に初めて入った俺は既に友達を3人くらい作っていた。 母さんは、俺は人から好かれるタイプだと誇らしげだった。 でも、この幼稚園には入学してからずっと気になる姿があったのだ。 その頃はまだ恋とかそんな意識は無かったから、俺はその女の子を見て、なんで何時も泣いているんだろう?としか思わなかった。 だから俺は膝を抱えて座り込んでいる少女を後ろから声をかけた。 なんでみんなとあそばないの? 「わたし・・・ひっく、みんなとちがくて、くろくないからだれもあそんでくれないのぉ・・・ぅう」 そして初めてその女の子が泣いている事に気付いた。 なんで泣いてるんだろう? 俺には訳が分からなかった。彼女が何を言ってるのかすら分からなかった・・・。 みんなとあそべばたのしいのに、あそばないからないてるんだ・・・。 そう思って俺は女の子に右手を差し出して言った。 「ね、いっしょにあそぼーよ!いっしょにいればなかないよ?」 俺は笑顔で彼女が右手を握ってくれるのを待った。 彼女はきょとんとした顔で何がなんだか分からない様な表情だったが、暫くして恐る恐る俺の右手に彼女の右手が差し出された。 俺はその右手を掴み引っ張りあげて、手を繋いだまま皆と遊んでいる砂場まで一緒に走った。 最初、彼女は何時も驚いていたが、やがて同じように笑う様になって――。 「ねぇ、わたしすいじょうあいりっていうの。あなたは・・・?」 「ぼく、かざましゅーだよ!」 それが俺と愛里が初めて出会った日だ。 幼稚園だけでなく、気付けば小学校も同じだった。 腐れ縁か何かなのか、教室は毎年同じ教室になった。 当時の俺と愛里には、まだ恋愛というのがよく分からなくて、何かを意識しはじめたのは小6くらいからだったか・・・。 それから中学生になり、俺はずっと憧れていた学校のバスケチームに入った。 愛里はもともと剣道が得意で、そのまま剣道クラブに入った。 偶に俺のバスケチームが他校と試合することになると、例え俺がプレイしてなくても愛里は毎回必ず見に来てくれた。だから俺も愛里の剣道の試合は全て見に行った。 流石に同じ時間に自分の試合がある場合はできなかったが、俺たちは親友の様な関係だった。 そして中学2年の頃、唐突に友人にこんな事を聞かれた事がある。 「御前さ、水城と付き合ってるのか?」 「・・・――は?」 意識した事は無かった、と言えば嘘になる。 確かに愛里は女の子で、中学に入ってから時折胸の鼓動が早くなるような仕草も見せてくれた。 それでも俺はただの親友だ、と友人に言い張ったのは恥ずかしいからでもあったし、同時に愛里にはそんな気はきっと無いだろうと思っていたからだ。 もし俺から告白して、愛里がそれを拒絶した場合、そのまま親友の関係を続けるのが難しくなる。 俺は愛里との関係が無くなるのを恐れていた。 だが、それは唐突に起こった・・・。 ある日、俺はバスケの試合で大きなミスをしてしまった。 時間切れまであと1分で、2点差で負けていたチームは慌てていた。 俺も慌ててパスを回したのだが、それがミスを犯してしまったのだ。 ――相手のチームにパスを出した。 1分という時間は直ぐに潰れて、残り時間あと僅かなところで反撃も返せなかった。 俺は更衣室で先輩の人達に殴られていた。 「――御前のせいだ!!御前のせいで・・・っ!!!」 分かってる。 先輩の人たちは今年で中学を卒業して、全員それぞれの希望高校へと向かう。 つまりこの試合は、先輩達3年生の皆が揃ってやる最後のゲームになってしまったのだ。 そう、俺のせいで。 更衣室でロッカーに叩き付けられ、顔面を3、4発殴られてから地面に座り込んだ俺の腹を5、6回蹴った。 俺は全く抵抗しなかった。 無抵抗なのが余計に気に食わなかったのか、俺の襟元を掴み無理やり立ち上がらせると頭を掴んでロッカーに叩きつけられた。 「ちょっとやめなさいよ!!!」 と、突然男子更衣室の扉が開かれて愛里が現れた。 「んだよ?ああ、風間の彼女か」 彼女呼ばわりされて、彼女は顔を赤く染めたが怒りで混乱しているのか知らないが殴られて血だらけになってる俺の姿を見るなり、駆け寄って先輩達を突き飛ばし、俺に指一本触れさせんとするかの様に仁王立ちをした。 「風間は悪くない!大体あんた達、虫がよすぎるのよ!!」 「なんだとっ?!」 力強い愛里の声が更衣室に響き渡る。 「風間は今日休み無しで走り続けていたわ!それにチームの点数の7割が風間が取った点数じゃない!風間がいなければ今日の試合以上にボロ負けだったのが分からないの?!」 反論できない事実を突き付けられて先輩は怒り、口より手を出した。 愛里の制服の胸倉が掴まれて、 「このアマぁ!犯し殺してやる!!」 だがその瞬間俺の口は勝手に動いていた。 「水城に手を出すなぁあ!!」 先輩達や愛里以上に激しい怒鳴り声、たった一言で辺りが沈黙した。 胸倉から手を離されて愛里は地面に膝を付いて震えた。 ――泣いていた。 アイツが泣いた所を見たのは幼稚園の頃だけだった。 俺は愛里にかける言葉が見つからなくて黙った。先輩達も黙り続けて、更衣室には愛里の流す小さい嗚咽が残った。 「悪かったな風間・・・」 暫くの沈黙の後、先輩達は俺に言葉を残して更衣室を出て行った。 俺はその場に座り込んだまま泣きじゃくる愛里の背中を見続けていた。 後輩達も引き上げていって、更衣室には俺と愛里だけが残された。 愛里は自分自身の肩を抱いて泣き続けている。 俺は掛ける言葉も見つからず、初めて自分が愛里に何もしてあげられない事が悲しかった。 「水城・・・、ごめんな」 愛里はゆっくりと泣き崩れた顔で振り返って、座り込む俺の胸の中に飛び込んで先程以上に泣いた。 怖かった、怖かった、と泣き続けて、何時の間にか俺も涙を流していた。 「ごめんな・・・っ」 暫く一緒に泣き続けた愛里は、泣くのをやめて立ち上がると俺に右手を差し出してくれた。 俺がその右手を握り返すと引っ張りあげて立たせてくれる。 更衣室の窓から差し込む赤い夕日の光が目の前の愛里を照らしていて、愛里はとても綺麗だった。 「水城、俺、御前の事好きみたいだ・・・」 自然に口から漏れたその言葉を、愛里は驚いた顔を一瞬見せて、それから微笑んで言った。 「ふふ、知ってるよ?私もだもん」 楽しげに笑って――・・・。 「さっきまで泣いてたのにな」 俺たちはお互いの泣いた後の顔に写った笑顔に笑っていた。 そして愛里はあの時俺が言った言葉を言い直した。 「――いっしょにいれば・・・」 ――なかないよ。 ―ね、いっしょにあそぼーよ!いっしょにいればなかないよ? / 「いっしょにいれば・・・か」 「え?何か言ったかしら?」 肩を貸してくれていた榊原は帰路の途中つぶやいた俺の言葉をうまく聞き取れずに聞いた。 「いや・・・、なんでもない。もう大丈夫だ」 そう言って借りていた肩を返して自力で地面に立つ。 そして夕焼けに染まった空を見上げた。 あの時と同じ夕焼け同じ空。 愛里は何処かに居るんだろうか?それとも俺の記憶にあるあの血は愛里の・・・。 「榊原」 「ん?」 「腹減ったな」 「・・・はぁ」 / 「やぁ久しぶりじゃないか、伊邪那美(イザナミ)」 闇夜に沈んだ街のある一角でアレックスと七原命は黒髪の女と対峙していた。 「・・・誰?」 「忘れたのかい?三貴子を」 「あら、素戔嗚(スサノオ)と月讀(ツクヨミ)なの?貴方達にも呪いが掛かっていたとはねぇ」 「あの儀式の場に居た者の殆どが呪いに掛かっているよ、卑弥呼の呪いにね」 月の無い夜に七原は黙り続けて様子を伺っていた。 「僕らが君の前に姿を現した理由、知っているよね?」 黒髪の女、伊邪那美の魂をこの世から排除するためにアレックスと七原は現れたのだ。 伊邪那美という女はくすりと笑ってから得物を構えた。 それは鞭、言術者の支援武器だ。 「せっかくタケルと会えたんだから、此処で消滅される訳にはいかないのよ」 七原とアレックスも得物を取り出した。 七原の持つ支援武器は両腕にくっついた巨大な円形の盾。 彼女の服装は今までのコスプレとは違い、アレックスと同じ、スーツ姿だった。 アレックスが取り出した支援武器は一丁の拳銃。 「伊邪那岐が居るんだろう、何処に居るか教えてくれないかな?今回草薙を襲った怨霊も彼が操っていた事くらいは想像が付く」 「へぇ、流石草薙の右腕ってことかしら?2千年経ってもまだその頭脳は健在ね。でも・・・残念だけど教えてる事は出来ないわ・・・!」 黒髪、赤いドレスを着た女は鞭を振るった!うねる鞭は不規則な動きでアレックスの肩へと落下していく。 それを七原が右腕の盾で防いで、防御、途端に盾が八等分に分解した! 盾が崩れたのかと思えばその分解した盾の欠片は三角の形となり空中に浮遊する。 「伊邪那美・・・!」 初めて対峙する相手に口を聞いた七原は、腕を伊邪那美に向けると八個の浮遊する七原の支援武器がそれぞれ違う動きで高速で水無月に迫る。 「くっ・・・!」 それを避けんと後方に飛ぶが不規則に動く八つの支援武器を完全に避けきれず幾つかの武器が伊邪那美の体を切り裂いた。 一度の反撃に更に反撃を返そうと鞭を握り直す伊邪那美だが気付けばアレックスの拳銃の銃口が額に当てられていた。 「伊邪那岐は何処だい?」 一見決着が着いたかの様にみえるが、しかし、伊邪那美の表情はむしろ笑みが増すばかり・・・。その不気味な表情に疑問を抱いた途端、一閃の黒い太刀筋が銃口を伊邪那美へ突き付け押さえ込んでいるアレックスの首元へと迫ってくる――! 「――っくぅ!?」 唐突に迫ってきた太刀筋に気付きアレックスは伊邪那美を押さえつけるのを放棄して後方に跳躍、間も無く命の隣に着地した。 そして、アレックスはその太刀筋を振るった者の姿を見た・・・。 「な――、」 アレックス、そして命も同時にその姿を見て驚きの表情を隠せずにいた。 目の前に居るのは一人の少年。栗色の長髪で、長い髪を後頭部で結び吊るしている。 そして闇夜に溶け込む漆黒のロングコートを夜風になびかせ、片手には一振りの刀剣が握られていた。 月明かりが刀剣を怪しく照らす。 「天叢雲(あめのむらくも)――・・・!!・・・なるほど、ね」 しかしアレックスは自分の目の前に対峙する者が持つ剣がかつての愛刀であるにも関わらず、ニヤリと苦笑にも似た笑みを浮かべるのだった。 「・・・天叢雲と草薙を揃える気か。力の象徴を集めて何を企んでいるかは知らないが、伊邪那岐の企みに必要な物さえ解かってしまえば――・・・」 「ふふ、でもこちらには天叢雲が既にあるのよ? 草薙だって、もうすぐ・・・」 天叢雲と草薙・・・、それぞれの剣は一説には同一とされている。しかし此処に存在しているのは二つ、それぞれ別々の剣・・・。 「嗚呼、それと紹介しておくわね、新しい天叢雲剣のマスターを・・・」 伊邪那美が刀を持つ者の後方に立つと闇の中で笑みを浮かべた。 「彼の名前は、ウ ィ リ ア ム ・ ウ ェ ー ル ズ」 そしてアレックスと命の表情が再び驚愕なものとなる。 「ぁあ、そういえば、今の貴方も同じウェールズって名前があるらしいわねぇ?何か関係でもあるのかしら・・・?」 伊邪那美は同姓の理由を知っているにも関わらずわざとらしくアレックス・ウェールズへと問い掛けた、クスリクスリと笑いながら。 「・・・・・・・・・・」 一丁の銃を構えていたアレックスの手が軽く振るえ始めた。彼の目は恐れを映し出していて、そして銃のトリガーにかけた指が夏だというのに酷く冷えていた。 アレックスの頭の中で古い記憶が蘇る・・・、それはイギリスのある家を映し、赤く燃えて、全てを失い消えていく光景・・・、手元に残ったのは一人の愛する女性が持っていた小さい十字架のネックレス。 無意識の内に空いている左手が胸の中心辺りを服の上から掴んだ。 その服の下には小さい銀の十字架のネックレスがある。 肌に触れた十字架が一瞬チクリと痛みを作った。 「――ッレックス!アレックス!!」 命の声にッハっと我に帰り、目の前に対峙する者達を見直した。 しかし自分が自ら作ってしまった気の迷いと隙が相手の姿を見逃し、相手の二人は既にこの場から気配を消し去っていた。 「くっそ・・・っ!」 その場に残ったのは何も無い闇だけ・・・。 アレックスは拳銃の踵を傍に立つ一本の電灯にぶつけると空しい金属音が小さく響いた。 / 思い出し始めてる・・・。 そんな感覚が確かに俺にはあった。 しかし、思い出す内容は明るい物ばかりではない。 まだハッキリとは思い出せないが断片的に見える真っ赤な視界とドロドロの世界。 これは――、誰の記憶だ? ――俺の? 俺なのか? それとも、別の何かなのか? ・・・できればそうで有って欲しい。 榊原の屋敷の客室で敷かれた布団がとても暑く感じた。 何度もその場で寝返りを打ちながら頭から離れない赤色と未だに手に残っている刀の柄の 触が少しずつ俺自身の存在を潰していっている様な気がした・・・。 愛里は何か知っているのだろうか? ―何処に居るんだよ・・・・? ・・・・・・。 ・・・・。 / 誰もがもつ記憶。 そして記憶が示すのはその者の視点からの、過去――。 過去があってからこその現在、そして自分という存在。 過去がなければ、人はその存在を失ってしまう。 ・・・ただ真っ暗な闇の中で自分が誰だか分からないというのは、一体どういう気持ちなのだろうか? きっと苦しい筈。だから私は彼に過去を与えた・・・。 でも、それは同時に私が彼の存在を作ってしまったという事になる。 私はあの時、彼が目に浮かべていた涙を見て、助けてしまった。 でも、結局私のやっている事はナギと同じ・・・。 ――ごめんね、秋。もう、ちょっと・・・だけ、ね。 もうちょっとだけ、貴方の過去に居る私を信じて・・・? 本当の貴方の存在の理由は、まだ思い出さないで――・・・ね? 秋――。 そして時は止まらぬまま進んでいく・・・。 この世界の過去に隠されたモノはゆっくりとその姿を現し、そして黒いカーテンで覆い尽くして行くのだ。 過去からの現在。 PAST。それは過去。 PRESENT。それは現在。 本当に現在は過去からのPRESENTなのだろうか? 一人の男が祭壇に立ち、差し込む光に両腕を掲げて微笑む。 「さぁそのプレゼントの中身を、変えてしまおう。代わりのプレゼントはより良い物を――」 差し込む白い光が赤いモノとなり、祭壇を真っ赤に染めてしまう。 その中心に眠る金髪の少女の体を巻き込んで・・・。 「――《言語製作》、」 現在は崩れ始めていた。過去という名の大黒柱から・・・。 第三章 PAST END 名前 コメント
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きらいなもの 【きらいなもの】 きらいなもの 関連用語 キャラクターのプロフィールの一種で、文字通りそのキャラクターの嫌いなものを指す。 ライバルだったり敵だったりと、どのような嫌いなものなのかは様々。 キャラクターブックではダメ顔マークで、ポップンミュージックカードではブルーのハートマークで「Dislike」と表記されている。 関連用語 キャラクター プロフィール 出身地 趣味 すきなもの 誕生日 担当曲 基本要素・システム
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前回のあらすじ 鶴屋さんのおうちは非常に大きな旧家です。一生働かなくてもいいくらいお金持ちです。旧家ですが、鶴屋さん本人は大変に前衛的な方です。 もっともっと遊んでいたかったようですが、とうとう働かなくてはいけない時期になってしまいました。これが幸せなのか不幸せなのかは分かりかねますが。 新築の喫茶店をひとつ任されることになった鶴屋さんでしたが、それがとても面倒だったので公園へ逃げ出してしまいました。 その後、長門のマンションに連れて行かれたSOS団はハルヒによってショッキングな告白を受けてしまいます。 SOS団は解散するようです ~~~~~ ハルヒは高校時代、酒で苦い経験をして以来ノンアルコール主義を貫き通している。だから今日のように盛大なパーティーが開かれていても、テーブルの上にアルコールの類は一切構えられていない。まあそれは別にいいんだが。 盛大なパーティーといっても、どこか大きな会館を借り切って大人数ではやし立てたり、豪華絢爛に着飾った集団がマスカレードをつけて優雅に微笑んでいるわけではない。 場所は長門のマンションの居間。服装もいつも通りのラフな私服。パーティーなんて大げさな言い方じゃなくて、仲間うちのささやかな会合と言った方が適切なものだ。 しかし料理は鶴屋さんが用意してくれた豪華食材を使ってSOS団三人娘が腕によりをかけて作られた世界にひとつだけのメニューだ。どんなセレブなパーティーでもこんな食事を口にすることはできまい。 たとえここが富士の樹海の最深部であったとしても、こんな世界にひとつだけの満漢全席が豪勢に盛り付けられていれば、そこは超豪華グルメパーティー会場と化してしまうに違いない。 まあ、今回はグルメパーティーじゃなくてSOS団解散記念パーティーなわけだが。 テーブルが布巾で拭かれ、人の心をあやしくくすぐる芳香を放つ料理が次々と並べられていく。待ちくたびれたぜ。この晩飯を腹いっぱい食うために、俺は朝と昼の飯を抜いてベストコンディションを設定してきたんだ。 こみあげる唾液を飲み込みながらジューシーに揚がった狐色のから揚げに見とれていると、コップを並べていたハルヒに 「ボーっと突っ立ってちゃ邪魔でしょ!」 と怒られてしまった。 ひとりだけ熊のようにウロウロしているのも悪いので何か手伝おうかと逡巡するも、狭い室内をSOS団メンバー (俺以外) 全員が慌しく動き回っているんだ。手を貸せることは何もない。 することもないのに同じ室内にいるとハルヒから 「団長が働いてるってのに、雑用がサボるな!」 と突き上げをくらってしまいそうだったから、俺は身を縮めてこそこそと廊下へ避難した。 とりあえず宴の準備が終わるまで身を隠していよう。皆が忙しそうに動いてる横で暇そうにしてるのも気が引けるからな。 こそこそとトイレに隠れて家に電話すると、妹が受話器に出たようだ。今夜の晩ご飯は食べてくるからいらないと言う旨を両親に伝えてくれと伝言を頼むと、妙に不機嫌そうな声で妹が受話器越しにぼやいた。 『またSOS団のみんなで一緒にいるの?』 え? ああ、そうだが。それがどうかしたのか? 『キョンくん、いつもSOS団と一緒にいるじゃない。夜くらい家に帰ってきてもいいんじゃない? キョンくんはハルにゃんたちのおもちゃじゃないんだよ』 ここ数日妹がSOS団の話をする時、わずかな変化だが、不機嫌になっているような節がある。しばらく遊んでやっていないんですねてるんだろうか? まさかな。もうあいつだって立派な大人なんだ。 辺りを照らす電灯の明かりが、少し傾いだように思えた。 子供だろうが大人だろうが妹は妹であり、何歳になろうとも俺の大切な肉親に違いはない。しかしだからこそ距離をおくことだってある。俺の都合で距離を作ることだってある。たとえ家族同士であろうとも人と人との間に一定の距離は必要だと思うからな。 その距離を読み間違えた人がKYと言われたり、ストーカーなんて馬鹿げた事をしたりするのさ。距離を図るということは相手を認めるということだ。 人は他人の存在を認識しているからこそ、相手のテリトリーを侵さないよう留意していられる。もしもそのテリトリーと己のテリトリーが重なり合ってしまったら、人はそれを不快と感じ自己領域から相手を追い出そうとするだろう。 他人から煙たがれる人は、たいていこの近すぎず遠すぎずの距離が測れていないんだ。 遠慮して距離をとりすぎる人は相手に背を向けてその存在に心を許していないと受け取られがちだし、逆に近すぎると馴れ馴れしく、相手の領地を征服しようしている暗喩だと受け取られかねない。 身内同士ということで、俺と妹のテリトリーは互いに同種のものであり、特に警戒を強めることもなく開かれているけれど。それでも、何故か最近は無性に妹との距離感が気になるのだ。 「俺のことを心配してくれているのは分かるんだが、俺のことは放っておいてくれていいぞ。夜が遅くなって迷子になるような年でもないしな」 『ダメだよ。キョンくんは帰ってこないと。家族なんだから』 たまに妹と話が合わなくなるんだが、俺なりにその原因をいろいろと考えてみた。何が誘因で、俺と妹との論上にすれ違いが生じてしまったのか。 妹は言う。キョンくんのためだから、私が○○してあげるから、キョンくんは△△するべきだ、と。 朝俺をたたき起こしに来ることも、朝ごはんを作ってくれることもありがたいことに違いはないのだが、なんて言うか、こう言うと悪いが……俺にはそれがおしつけがましく感じられるのだ。 朝は私が起こしてあげる。ごはんは私が作ってあげる。キョンくんが暇そうだから遊んであげる。夜は寂しいだろうから、私がむかえてに行ってあげる。私が。なんでもしてあげる。 私が、私が、私が、私が私が私が私が─── ───だから、私が必要でしょう? だから? 俺は、妹にこう言わざるをえない。 「なあ。もうそろそろお前も、兄離れした方がいいんじゃないか?」 『えっ……』 電話の向こう側の妹の吐息が受話器越しに伝わってくる。まるで俺に何かを言い返そうとして、口外する直前にそれを思いとどまった。そんな感じの躊躇が電子音を通じて感じられた。 世話を焼きたがる人によくある傾向だ。怠惰な性質の人に世話を焼き (たとえそれが押し付けであろうとも)、自分がその人にとって必要な人間であろうと主張する。 認められたい。自分を見てもらいたい。私という個人を認知し、肯定してもらいたい。顕在したい。存在したい。でも、それを為すための具体的な方法が分からない。 そういう人は、自分で自分自身にひどく曖昧で、そこから価値が見出せないから、まるで自分の姿を鏡に映し出すように、他人に自己という姿を知らせ、それが有益なものであると思い込ませようとする。 有益ということは価値があるということだし、価値があるということは形を持ちえるということ。形を持つということは、曖昧に濁っている自分像をはっきりと目視確認できるということにつながる。 そういう人は一様に、相手のためだと言いつつも、その実、自分のことしか考えていないことが多い。俺は、大好きな自分の妹にそんな有言無実な人間になってもらいたくない。 『……でも、私がいなきゃ……キョンくんは』 だから俺は妹に言わなければならない。俺は妹の声を途中で遮り、明瞭な意思で言葉を発する。 「俺は大丈夫だ。自分のことは自分でできる」 俺にも悪い点はある。だらだらと怠惰な生活を送っていたことが、結局妹に悪影響を及ぼしてしまったと言えなくもないんだ。 負い目を持つ者、自尊心の低い者。そういう人が複数人集まり互いに自分の自己顕示欲をなすりつけ合う。そうして互いに、自分が相手にとって必要な人間であると認識し合う。共依存というやつだ。 きっとあいつは、日常の何かから逃げていたんだと思う。何に背を向けていたのかは知らないが、何かの苦難から目をそらしていた。しかしそんな自分が嫌だった。そんな自己嫌悪から逃げ出そうとしていた。その逃げ場が、畢竟俺だったのだ。 妹は俺に依存していた。俺に必要な人間であると認めてもらおうとして、世話を焼いていた。俺がもっとちゃんとしていればそんなこともなかったろうに、そのせいで妹に逃げ場を与えてしまった。 怠惰な兄の世話を焼くことに自分の存在意義を見出したあいつは、嫌なことから目を反らして生きる術を見出した。楽な道に進み、困難に向かい合って自分で自分の姿 (価値というべきか?) を目視確認しようとする努力を怠ったのだ。 はっきりしない俺の態度が、あいつの人間的成長を間接的に圧迫していた。だから、それに気づいたから、俺は妹にはっきりと明言したのだ。 もう、俺にお前の世話は必要ない。だからお前は辛い現実に身体からぶつかっていき、自分を誇って生きてくれと。 俺は通話を切られた携帯電話を閉じ、重い頭を抱えてトイレから出た。 そこで怒ったハルヒにつかまった。 「団長や他のみんなが一生懸命準備してるのに、料理もしてないあんたが何でトイレにこもってサボってるのよ!」 あぁ、いや、サボってたわけじゃないんだぜ。今夜は晩御飯いらないと家に連絡してただけなんだ。あと、妹に人生の先達として生きるという意味を哲学的な部分までにおわせつつ講義したりだな…… 「抹香臭い言い訳なんて聞きたくないわ! だいたい携帯で家に連絡なんて10秒もあれば十分でしょ。トイレにずっと立てこもっていた理由にはならないわ」 ……確かに、それはそうだな。ごもっとも。 「罰として、今夜のパーティーの司会進行役はあんたに担当してもらうわ! 意義は認めないわよ!」 マジかよ。勘弁してくれよ。そんなのはお前か古泉の役回りだろう。俺にやらせたってつまらないパーティーになるだけだぜ。 「いいのよ。SOS団内の雑用は全部あんたの専売特許でしょ。ごちゃごちゃ言わずにやるの!」 へいへい。ったく、しょうがないな。SOS団での最後の大役をまっとうさせていただきますよ。 えー、本日は大変お日柄もよく…… 「何つまんない前置き言ってるのよ。さっさと本題に入りなさい」 ええい、人に司会進行をやらせておいて。文句つけるんじゃない。 「挨拶はどうでもいいから。乾杯が済んだら一発芸をやりなさい、一発芸。思いっきりうける芸じゃなきゃ許さないわよ」 無茶苦茶言うなよ。俺にそんな才能はない。笑える芸を見たけりゃ、古泉に落語でもさせりゃいいだろ。 「はっはっは。僕もそちらの方面には詳しくないもので、ご期待に沿いかねると思いますよ。寡聞にして、申し訳ないです」 とにかくだ。俺に一発芸は無理だ。なんならハルヒが手本を見せてくれりゃいい。 「ダメよ。私は採点専門なんだから。司会やるのはあんたの役。役割分担は大事なのよ。分かってる?」 分かってる?と訊かれてもな。不条理を感じてやまないんだが。役割分担も大事だが、適材適所で司会に向いた人を配してくれよ。 「ぶつぶつ言ってる暇があれば、バック宙返りでもやりなさい」 お前は俺に何を期待してるんだ。100%成功するはずのない体術をやらせてどうしようというのか。たすけてピコ魔神……。 俺が反論したところでハルヒが聞くはずもないか。それでもやれ、いいからやれ、とやたらバック宙を推奨するハルヒに根負けして、バック宙の代わりに床の上で後転してやった。後方回転なんて小学校の授業のマット以来だぜ。 そんな程度の低いバック宙があるか!とやたらご立腹の団長殿だったが、しかたないだろう。これが俺のフルパワーなんだから。 「僕らは皆、あなたがバック宙をしようとして怖気づき許しを乞うか、それとも後頭部を床にしたたかに打ち付けるかを想像していたのですが。思ってもみなかったあなたの後方回転という切り替えしにはしてやられた思いですよ」 いつも通りの慇懃な笑顔で、褒めているのか小馬鹿にしているのか分からないセリフを口にして方を竦める古泉。しかしやはり馬鹿にされているんじゃないかと感じてしまうのは、きっと長年積み重ねてきた経験からの条件反射だろうな。 「馬鹿になんてしていませんよ。あまりにもいつも通りの、SOS団らしい展開だったのでとても微笑ましく、ハートウォーミングを感じていただけです」 ハルヒと鶴屋さんが朝比奈さんに前転を強要している現場を傍観しながら、俺と古泉はテーブルの後方席でぽつぽつと語り合っていた。別に意味があって古泉と並んで座っているわけじゃない。たまたまだ。 確かに、こうしていると何の変化も感じない。いつも通りのSOS団だ。俺がため息をつきながら、古泉が傍らで肩をすくめながら、長門が無表情に座り、ハルヒと鶴屋さんが朝比奈さんにかまう。 今日がSOS団の解散の日だなんて、面と向かって言われてもそれが本当だとはにわかに信じられない。まさに、いつも通りローテーション。気をぬけば明日も明後日も、毎日がリンクするように、変わらずSOS団は継続していくのでは、と思える。 「それにしても。あのハルヒがねえ。SOS団を解散するなんて言い始めるとは。未だに信じられないぜ」 朝比奈さんがハルヒと鶴屋さんに前倒しに転がされているのを眺めながら、古泉は小さく息を吐き出すように笑った。 「以前、僕が文化人類学の通過儀礼の話をしたことを覚えていますか?」 通過儀礼? ええと確か、バンジージャンプとか、抜歯とか、そういう痛い話だったっけ? 「そうです。人間が成長していく過程で、次の段階の期間に新しい意味を付する儀式のことです。涼宮さんはこのイニシエーションを経験したからこそ、SOS団を解散する気になったのでしょうね」 ハルヒが、そんな痛い儀式を? いつのことだ? バンジーだか刺青だか知らないが、ハルヒがそんなことをしたと聞いたことはないし、それにその程度でハルヒがSOS団を解散するとは思えないんだが。 クエッションマークが浮かぶ俺の頭を知ってか知らずか、膝をつきながら古泉は湯飲みを傾けた。 「通過儀礼は、なにも苦しみや痛みを伴わなければいけないというものではありませんよ。むしろ、苦痛を伴ったとしても、自分が人生の次の段階へ進まなければならないという意識を持っていなければ、無意味とも言えます」 そういや以前、成人式に行ったからと言って大人の仲間入りを果たしたと実感するわけじゃない、という話をお前から聞いたことがあったな。 「まあ痛みこそなかったようですが、ここしばらく涼宮さんはずいぶん苦しんでいましたよ。お忘れですか? 数日前の、世界中の時間軸が数年前まで巻き戻された事を。あれも涼宮さんの苦悩が引き起こしたイニシエーションの一環だったようです」 ……わけが分からなくなってきたぜ。またそうやって俺をからかって遊んでるんだろ? 「いえいえ。そういうつもりではないのですが。通過儀礼にたとえたのは話を進める上での便宜ですよ」 湯飲みを机上に戻し、古泉は膝を曲げたまま話し始めた。 涼宮さんはずっと悩んでいたんです。 私たちはこのままでいいのか? いつまでも無職のままでいいというわけはないけれど、だからと言ってどうすれば良いか分からない。 なんとかしなければならない。就職もしなければならない。しかしそれも思うようにいかず、ままならない。 社会に出ようとする意欲は十分あるのに、そこでは自分の価値感が通じない。世間と自分の間に温度差がある。いや、本当は温度差など気にならないほど小さな差でしかないけれど、私にはその小さな差が耐えられない。 社会に出れば思い通りにいかないことも多々あるだろうとは覚悟していたけれど、理性がそれをストレスとして認識してしまう。そして、それを耐え忍ぶよりも。それでも私にはSOS団がある。 就職先に納得がいかなくても、社会に得心がいかなくても、SOS団に行けばみんながいるんだし。無理して働きに出る必要もないわ。 でもこの年になってフラフラしてるのも嫌だし、ニートとか無職とか言われるのも癪だし。それに、SOS団にいつまでもこだわり続けるわけにもいかないし。皆も早く一人前に自立しないといけないし。 逃げていてはいけない。逃げているだけでは凝視しなければならない現実が見えなくなってしまう。ぼやけてしまう。背を向けてしまっては見えなくなることがある。そしてそんな、目線を反らして見えなくなるものこそが本当に大事なものなんだ。 SOS団は過ごしやすい我が家のようなものだけど、それが皆の視界を覆う目隠しになってしまうのは堪えられない。 当たり前のことだが、前が見えなければ前には進めない。前を見ようと思ったなら、前を向かなければならない。 前を向くということは、つまり─── 「歯を抜いたり身体に針を刺したり、分かりやすい直接的な痛みを与えるだけがイニシエーションではありません。人が自分自身を変えようとする苦しみは、どんな形であれ全てイニシエーションに通じます。それが社会に適応しかねるという懊悩であってもね」 壁に背をあずけた古泉は相変わらずの様子で、ハルヒに促されて前転する長門の動作を眺望していた。 俺は涼宮ハルヒという人間を誤解していたのかもしれない。と、ふと思った。 もう長い付き合いなのだから、あいつのことはよく知っていると思い込んでいた。それが、どうやらそもそもの間違いだったようだ。 あいつは普通であることを嫌い、平凡な日常に悩むことはあっても、それ以外のことには基本的に関心を抱いていないと思っていた。 ハルヒは、そうだった。この世界が常識を保っていられるのは、あいつが誰よりも常識人だったからに他ならないんだ。 だからハルヒは、常識的であるが故に非常識に憧憬を抱いていたんだ。ただそれだけのことに過ぎなかったのだ。 きっとハルヒは、俺たちの誰よりも現実を見据えていたに違いない。だからずっとあいつは、この惨めな無職人生に悩み、苦しんで、もがき続けていたに違いない。そう。俺たちに見えない場所で。 あんなにもハルヒは駆けずりまわっていたじゃないか。なのに俺はそれが、行動力旺盛なハルヒの日常的な姿だとハナっから思い込んでいて。 こんなにもあいつの近くいたのに。こんなにも長い間あいつの隣にいたのに。こんなにもあいつを理解していると思い込んでいたのに。 「誰でもそうですよ。自ら望み無職であるのではない限り、悩んだり苦しんだり、絶望したり息苦しさを感じたりしているものです。あなたもそうだったのではないですか?」 きっと俺は無意識のうちに、口をへの字に折り曲げていたことだろう。古泉の問いかけが的を得ていたからだ。 確かに俺は、そうだった。無職であることに無力感を感じ、怠惰な自分に嫌気をさしていた。 こんな不景気な今の時代が悪いんだ、政治家が悪いんだ、と大した主張もなく斜めぶったことを考えながらすごしてきた。 たとえるなら、それは23時59分59秒。いくら時が過ぎようと、1秒経とうと1年経とうと、この固化して変色した考え方を変えない限り、俺の中の時計の日付は変わらない。 忘れ物をしていたことに、今やっと気づいたような思いがする。 「理想と現実のギャップに苦しむことができるということは良いことですよ。苦しみに苛まれている最中にはそれを良いと感じる余裕はないでしょうが、しかしその苦しみを踏破できた時、人はさらに熟成された人間へと進化することができるのですから」 古泉の言わんとすることも分かる。たとえるならば、俺たちの持つ類の悩みとは井戸を掘る行為に似ているのだろう。 井戸を掘っている最中は疲れ、汗が噴出し、体力も消耗し、スコップを持つ手が痺れて痛むだろう。しかしそんな痛みに耐えて穴を掘り続けていれば、穴はより深くなり、穴としての体裁を整え、やがては水脈に行き当たるに違いない。 テストで高得点を取ろうと思えば必死に勉強しなけりゃいけないし、金を稼ごうと思えば額に汗して労働しなけりゃならない。 そういうことなんだろう。より立派な人間になるためには、それなりの、哲学を学ばなくてはいけないなどと言うつもりはないが、様々なことを考え、感じ、経験し、自分の中でそれらをまとめあげなければいけないのだろう。 いつだったか、谷口は俺に言った。なんの感慨もなく社会に出たって、大人らしいのが外観だけで中身が伴っていなければ、より大きな苦労を味わうだけだし、後悔に打ちのめされると。 「だから僕らは苦しむのです。悩めば悩むだけ、人が掘り下げる穴は深まります。受け入れが広く、深ければ、それだけ多くのものを内包することができるのですよ」 ハルヒの方を眺める古泉の表情は、とても穏やかだった。 「涼宮さんのイニシエーションは、おそらく終わったのでしょう。彼女は理想と現実のギャップの苦しみから、彼女にしか知りえない悟り的なものを感得し、その上でSOS団を解散するのが最良だと判断するに至ったのでしょう」 俺の方へ向き直った古泉の顔は、いつも通りのうさんくさい笑顔に戻っていた。 「俗な言い方をするならば、涼宮さんも大人になれたということですよ」 重い腰を上げて長門のマンションから出た俺は、肌寒い夜風に身震いしながらズボンのポケットに手をつっこんだ。 俺の一発芸に始まり、回ったり走ったりはしゃいだり、語ったり歌ったり転がったりしていたSOS団解散パーティーが解散パーティーっぽくなくなってきた頃合を見計らい、俺は苦笑しながら食料の買出しに国道沿いのコンビニへと出かけた。 今日は、とても意義深い日になったと、俺はこみあげる感情をおさえきれずに一人でニヤニヤと古泉のようににやけていた。 思い返すだけでおかしくなる。まったく、せっかくのSOS団の解散パーティーだと言うのに。 あれは3,40分前のこと。朝比奈さんが 「SOS団がなくなると、寂しくなりますね」 と涙ぐんでいた時のことだった。 「今度うちがさ、新しい喫茶店をオープンさせることになったんだよね。んで、その店の経営が私に一任されちゃってるんだけどさ。従業員も決まってないんだよ。みんなさえ良ければ、職場を提供するからそこで働かないかい?」 最初は鶴屋さんが何を言っているのか分からなかったが、次第にその意味が分かってきたことで、最高にご機嫌だったハルヒが大声で鶴屋さんに詰め寄っていた。 そんなに力いっぱい肩を揺すっていたら、鶴屋さんの首がとれちまうぞって言ってハルヒを取り押さえたっけ。 「従業員が5,6人いればいいな、とか思ってたけどさ。まだ竣工もしてない店だし、従業員の募集もしてなかったんだ」 「え、いいんですか、鶴屋さん?」 困惑気味の朝比奈さんの顔には 「またノリだけで言ってるんじゃないのかしら」 と書いてあるように見えた。 「もちろんさっ! SOS団の皆なら信頼できる人材ばかりだし、立派に店を盛り上げてくれるだろうって確信してるもんね! 私もみんなが一緒にいてくれたら、めがっさ楽しいお店になるって信じられるし!」 ノリだけで話を進めるのはSOS団の悪い癖だが、良い所でもあると素直に思えた。 新生SOS団の結成と方向性が決まったわね、とまた勢いだけで新団体旗揚げを宣言するハルヒを止める者が誰もいなかったのは、ハルヒを止められないと諦めていたからではない。誰もがハルヒと同じ思いを持っていたからだったからだ。 一瞬のうちにあっさりと就職が決まり面食らっていた俺たちだったが、少し落ち着いて冷静になってみると、今後の身の振り方をみんなで改めて話し合う必要がありそうだと言うことになり、足りなくなったジュースやおかずをとりあえず俺が買いに行くことになったのだ。 いつもならパシリに使われることに抵抗を感じるところだが、今日はそんなものは一切感じない。ただ、自分も皆のために動いてやりたいという積極的な心地よい満足感があるだけだ。 とにかく早く買う物を買って帰って、みんなで新団体の組織構成について話し合いたいと思う。 いい機会だから団体名をSOS団から変えてみたらどうだろう。俺も雑用から格上げしてくれないか。などなど。いろいろと打診してみるつもりだ。 俺がコンビニに行ってる間に全てを決められていないことを願いつつ。 「今日はまた一段と寒いわね」 街頭のほのかな灯りの下で物思いにふけっていた俺は、背後から聞こえた聞き覚えのある声に少し驚いて振り返った。 「何がいいかしら。私は中華まんなら肉まんがいいけど、みくるちゃんは肉まんよりピザまんとかの方が好きかもね。有希は、やっぱりカレーまんが好きかしら?」 白いカーディガンを羽織ったハルヒが、早足で近づいて来て隣に並んだ。 「あんたは何がいいの? 肉まん? ピザまん? まさかあんまんじゃないわよね? 私あんまんが苦手なのよ。だから、あんたが勝手にあんまんを買ってこないかどうか見張りにきたの」 俺の腕の横にある、中華まんみたいにつやの良い頬が少し印象的だった。 「お茶買って行きましょう。ジュースばっかり飲んでたら口の中がべたべたするし胸がつかえるもんね」 いつものことではあるが、今日はよくしゃべるな。そういう衝動にでも突き動かされているのか? 「あら、ペラペラしゃべるよりも、有希みたいに無口な方が良いってこと?」 極端なんだよ、お前の感覚は。その中間がバランスよくていいんじゃないか。 「なんだか、胸がいっぱいになってるのよ。今はね。だから胸の中にあるものを全部出しちゃいたいような気分なの」 ふーん。そんなもんかね。 人通りの少ない宵の街路を、散歩をするように俺とハルヒが並び様に歩いていく。月明かりが、少し暖かく感じられた。 俺、料理免許とろうと思うんだ。ラーメン屋とか、自分の店を持ちたいとか思ってるわけじゃないけどさ。なんか、そんなんもいいかな。なんて思って。 「そう。いいんじゃない?」 暗い夜道はまっすぐに伸びている。乾いた風が前髪をなで上げるように吹いて行く。垂れ下がったカーテンのような街灯の光が、しんしんと降り積もる雪のように胸の中へしみこんでくる。 横目でちらりとハルヒの頬に視線を向ける。ハルヒは何かを考え込むような表情で、さっきまでのハイテンションが嘘のように落ち着いた様子で空を見上げていた。 塀向こうの国道から車のエンジン音が聞こえてくる。遠くの線路から列車の走行音が軽いリズムを伴って響いてくる。そんな当たり前の、違和感ない日常の出来事のひとつとして、隣をハルヒが歩いている。 ハルヒと肩を並べていることに何の感情も芽生えない。今はそれが当然、当たり前のこと、意識しなくても鼻が酸素を吸い込んでいるように至当のこと。今は。 ああ。そうか。と、俺はそこに至ってようやく気づいた。 何に気づいたかって? 野暮なことは訊くもんじゃない。くだらないことさ。 ハルヒ、これやるよ。 俺はポケットから取り出した銀のブレスレットをもったいつけもせず、ぶっきらぼうにハルヒへ投げてよこした。 「なによ、これ? ブレスレット?」 ああ。こないだ買ったんだ。何て言うか、お前への誕生日プレゼント。包装もなしで悪いが、別にいいよな? 「私の誕生日? 私の誕生日はもっと先なんだけど。あんた、古泉くんの誕生日と勘違いしてるんじゃない? それならまだ分かるわよ」 まあ、いいじゃないか。深い意味はないんだ。やるって言ってるんだから、受け取っておけよ。 手に取ったブレスレットをまじまじと観察していたハルヒは、それを無言で目線まで掲げ上げた。月の光を反射する銀の腕輪は、ハルヒの手の上できらきらと高価な宝石のように輝いていた。本当は安物なんだけどな。 「そういえば、こうして思い返してみるとあんたからまともにプレゼントもらったのって、これが始めてだわ」 活発なハルヒにならもっと派手な物が良かったかなとも思ったが、こうしてみるとシンプルで落ち着きのある物の方がこいつには似合うんじゃないかと思えてくる。 「ありがと」 小さな声で、ハルヒはぽつりとつぶやいた。傍若無人な涼宮ハルヒにはあまり似つかわしくないセリフだな。似つかわしくない言葉だったからこそ、普段とのギャップが大きくて。なんだか少し動揺してしまった。 俺とハルヒは夜風の中、言葉も無く歩いていた。これほど心穏やかになっている自分を意識するのは、本当に久しぶりのことだと思った。 マンションからコンビニまでの距離は決して近くないけれど、道中で人とすれ違うことのない静かな時間だった。 やたらとまぶしい光を正面から受けながら自動ドアへ近づくと、それまで横に並んでいたハルヒがごみ箱の前で立ち止まった。 「早くしなさいよ。皆も待ってるんだからね」 お前、入らないのか? 外は寒いぞ。 「私はいいの。いいからほら、行ってきなさいよ」 いいのか? お前が見張ってないと、あんまん買ってくるかもしれないぜ? 「あんたが好きな物買ってくればいいわ。あんまん買いたいんなら買えばいいわよ」 ハルヒはくすんだ自販機にもたれかかると、腕に巻いたブレスレットを見つめながらそう言った。まるで欲しくて欲しくてたまらなかったおもちゃを買ってもらった子供のように、しげしげと。 分かったよ。じゃあ、すぐに買ってくるからそこで待ってろ。肉まんもたくさん買ってきてやるから。 「うん。待ってるわよ」 顔を上げたハルヒは目を細めて微笑みながら、小さく手をふった。 自動ドアが低い電気音をたてて横へスライドする。コンビニ内の暖かい空気がゆるゆると肌をなでる。 あったかい。 そうだ。とそこで思い直し、俺はハルヒの冷えた手をとって引っ張った。 ハルヒは少し驚いたふうに目を開いたが、俺の手に引かれるまま店内に入ってきた。 「どうしたの?」 ハルヒの冷たくなっていた手が、次第にあたたかくなっていく。水銀灯のような明かりを含む大きな目が、俺を見つめていた。 俺だけに買い物を任せるなよ。お前も買いたい物があれば選ぶといい。店の前で待ってるだけなんて、つまらないだろ? 尻込みせずに、何にでも飛び込んでみるもんだぜ。そっちの方が楽しいし、お前らしいじゃないか。 「そうね。そうよね」 店内には誰もいない。俺たち以外の客は皆無だ。店員も陳列棚の向こう側でかがみこみ、商品の点検を行っているみたいだ。 まるでこの場には、俺とハルヒしか存在していないような錯覚さえもする。 「買いたい物があれば、一緒に選んだらいいものね。私たち、これからも一緒なんだし。ずっと、一緒がいいよね」 ハルヒは銀の腕輪を巻いた手首をなでながら、「うん」 とうなずいた。 FM放送の送る音楽が流れる中、踊るような仕草で手元の小ぶりな買い物かごを手に取ったハルヒは、押し付けるようにそれを俺に手渡した。 「んじゃ、さっさと買い物済ませて帰りましょう!」 整然と棚に並べられた化粧品の前を元気よく小走りに通り抜け、大型冷蔵庫の前でハルヒは立ち止まるのももどかしく振り返る。 「絶対に、絶対にずっと一緒なんだからね!」 髪をかきあげるハルヒの動作が、妙に懐かしい風景のように思えた。 そうだよな。それがいいよな。と。 これから先、何が待ち受けているか分からない新しいことへの挑戦だけど。仲間たちと一緒なら不安など何もない。むしろ楽しみなくらいだ。 何があろうと、大丈夫。きっとうまくいく。性根を据えるほどの覚悟はできていないが、何があっても過去を振り向いたりはしないつもりだ、という覚悟は決まってるんだ。 俺はゆっくりとした足取りでハルヒの後を追う。ハルヒも手を振って催促しながら、それを待つ。 焦ることはない。そうさ。今までだって、別に焦ることはなかったんだ。 時間は、まだまだたくさんあるのだから。 ~SOS団の無職 ・ 完~
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否定側目線ッッ!! ○3年以内に国民の理解を得るのは不可能!! ⇒国民理解を得られなければ、他の税収も減るのでは?? ⇒国会不信につながり、今まで払っていた税を払わなくなるかも・・・ ⇒国のせいで出た借金!国民に求める前にまず国家が努力すべきであるというのが国民の意見あり!! ○逆進性をおせばどうかな? →後に増税することを考えているなら、自分たちの対策も考えとかないと矛盾しちゃうので要注意!! ●消費税が本間に安定的か?? →たとえば、景気が下がったときに消費税が与える周りへの影響が大きい時、消費税の外部不経済性の大きさとか調べてみる必要あり。 ●不況の今に増税した時のマイナスの影響の方が落ち着いてから導入した時のマイナスの影響がデカイとかわかればいいけど・・・