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第019話:鳥と翼 作:◆/91wkRNFvY シュゥゥゥゥン。 軽い落下感、どうやらテレポートとやらは無事に成功したようである。 「まったく、いきなり目覚めたと思ったら殺し合い? バカバカしいにも程があるっつーの」 一人、森の中で声を出す千鳥。 (でも、これはどういう事よ? あの場で見渡した限り、何かファンタジーっぽいヤツとか蒼いデカいのとかいたけど、 それにこの刻印、どうやらあの「薔薇十字騎士団」とやらの意向に反するようなことがあると爆発する、の・・・?) 辺りを見渡すが、ここはどうやら丘の上に建った神社、その境内の様である。敷地はそれなりに広いようだ。 「しかし、こうなった以上これが現実、なのよね・・・。 いつまでも混乱してるわけにもいかないし、とりあえず荷物の確認でもしますか」 この異常な状況で自分を保つには、とりあえず声に出していないと不安で仕方ないのだ。 しゃがみこみ、確認したデイバッグの中には、食料・水・懐中電灯・地図・鉛筆・紙・方位磁石・時計・参加者名簿、 「それに、これは鉄パイプ…?」 手首よりも少し細い金属の棒、それが千鳥に与えられた武器だった。 「うーん、これは鉄パイプ、よね、どう見ても。殴れってのかしら」 気を取り直し、参加者名簿を確認する。名簿をめくる手が止まった。 「相良、宗介・・・。良かった、ソースケもいるのね、さっきの場所では確認は出来なかったけど。 しかし、あの戦争バカがいるとなれば話は別ね、いるといないでは状況が変わるわね・・・」 普段、ソースケの事をバカだスットコドッコイだの言っている割には、信頼しているのである。 言いながら、再び名簿をめくる手が止まった。 「ガウルンって・・・、あの軍人? 生きてたの!? それにテッサまでいるなんて!」 (まずいわね・・・、テッサなんて陸にあがったら何も出来ないじゃない、もしガウルンに鉢合わせでもしたら・・・) 考え込む千鳥。ウィスパードの知識はこんな時に都合よく出てくる能力では無いのか、良い方法が何も浮かばない。 「さて、じっとしているのが得策とも思えないし、ここは神社みたいだけど、誰かいんのかなー。 いたとしても、こっちに友好的じゃないと困るなぁ」 千鳥は立ち上がり鉄パイプを肩に下げ、神社の中の散策を始めた。 「しかしまぁ、この神社、なんつー広さよ」 もう10分以上外周を歩いているが、方角・目測で計るに未だに半分すら歩いていない。 「はぁ・・・、この先どうなんのかなぁ、最後の一人になるまで戦い続ける、なんつーオハナシはゴメンだわ」 相変わらず独り言を続けている千鳥だが、 ガサッ (誰か、いるのっ!?) 慌てて振り向き、鉄パイプを構える。眼前には小さな林があり、その奥には崖が広がっているだけだが。 そこから聞こえた声は、予想とは大きく違うものだった。 「あ、あのっ、私、戦うつもりは無いんです!」 (女性? 年齢的にはあたしと同じくらい、いや、それ以下…?) 「どちら様かしら?」 少し、声を落とし尋ねる。 「私っ、しずくって言います! あの、出て行っても良いですか? 武器は、その、持ってるんですけど、攻撃する意思はありません」 (油断させておいて・・・、ということも考えられるわ。こういうとき、あの戦争バカならどうするでしょうね・・・) 「解ったわ、あたしも鉄パイプを持ってるの、戦う意思はないけど。念の為構えさせてもらうけど、出てきたら?」 千鳥の許可を得、林から出てきたのは上下一体の見慣れない白いスーツを着た小柄な少女だった。 「こ、こんにちわっ、私はしずくって言います、武器は、こんなのが入ってました」 言いながら鞄の中から取り出したものは、釘バットの様なものだった。 「また。随分似合わないモンを貰ったもんね・・・、あたしはこういう武器に縁があるのかしら? もう一度確認するけど、戦う意思はないのね? あたしは無いわ、ここを出たいの」 鉄パイプを少し下げ、尋ねる。 「はい、私もです。良かったら協力しませんか? きっと何とかなります!」 「ふふ、そうね。簡単に言ってくれるけど、あたしも賛成だわ。あたしはかなめ、千鳥かなめ」 武器を下げ、手を差し出し、お互い握手をする。 「あんた、手、冷たいけど、大丈夫?」 「はい、私は、えっと、ロボットみたいなものなんです」 「ロボットぉ? こんな大きさで? まっさかぁ」 そうなのだ、千鳥の知識では人間サイズ、それもこの小ささで人型機械を自立稼動させるなど、出来るはずも無いのだ。 「大体、あんたエラい人間くさいじゃない。そんなプログラム何て聞いたことも・・・」 「その、何て言ったら良いんでしょうか。本体の私は戦闘機の様なものなんですけど、この姿はそのオプションで、 でも、普段はこの姿での自立稼動なんか出来ないのに、元々私はヒトを模して造られたというか、ごめんなさい、上手に言えません」 「まぁ良いわ、何かもうチョージョーゲンショーのオンパレードって感じだし、信じましょ」 深く気にしない性格なのか、その辺の理解不能な部分は流すことにした。 「ありがとうございますっ、それで、これからなんですけど、どうしましょう?」 首を傾げ、上目遣いに訊ねてくる。 「あたしは探してるヤツがいんのよ。2人、あんたは?」 「はい、私も一人探しています。蒼い自動歩兵、ロボットなんですけど・・・」 「またロボットぉ? 蒼いのって、そういえばさっき集められた時にいた様な・・・」 先ほど一度集められた時の記憶を思い出す。確かに何かデカい蒼いのがいた。 「はい、私も見たんですけど、声をかける間も無くって・・・、彼の名前はBBって言います」 「そっか、あたしが探してるのはあたしと同い年の相良宗介って男と、やっぱり同い年のテレサ=テスタロッサって娘よ」 「とりあえず、この建物の中へ入りませんか? そこで少しこれからについてを」 「そうね、悪くないわ」 そして千鳥としずくは神社の中へと入って行った。 【鳥と翼(千鳥かなめ・しずく)】 千鳥かなめ [状態]健康。 [装備]陣代高校の制服、鉄パイプのような物(バイトでウィザード、「団体」の特殊装備) [道具]デイバック一式。 [思考]戦う意思は無し、宗介・テッサと合流したい。 しずく [状態]健康。 [装備]白い上下一体のスーツ、エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん) [道具]デイバック一式。 [思考]戦う意思は無し、BBと合流したい。 【残り115名】 【H-1/広大な神社の中、神社の裏手は崖/1日目・00 30】 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第018話 第019話 第020話 第016話 時系列順 第056話 - しずく 第110話 - 千鳥かなめ 第110話
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第219話:人によって嘘は真実を超える 作:◆I0wh6UNvl6 「千鳥?」 宗介は呆気にとられていた。 いつかは出会えると思ったがこんな形、彼らの間ではある意味日常茶飯事な形で再会できるとは思わなかった。 「ソースケ! あんたまさかこんなゲームに乗るつもりだったの!?」 かなめは宗介の目の前まで来ていた、どうやら先程の一件は見ていなかったようだ。 「こいつが、こいつがおまえの探していたやつか?」 後ろにいた男がかなめに尋ねた。 「ええ、見てのとおりの戦争オタクよ」 かなめが答えた。 「良かったですね、かなめさん! 探してた人に会えて!」 男の隣りにいる女の子が言った。 「そうね~嬉しいわ~、でもこの人はどうやらゲームに乗り気なようだからここでお別れしなくちゃ~」 かなめはじ~っと宗介を見ながら言う。 「それは違うぞ千鳥、さっきのあれには事情が…」 「武器も持ってない女の子にピストルつきつけるのにどんな事情があるのよ!」 宗介の言葉をかなめが遮った。 宗介としては今回間違ったことはしていないハズだった。 無論それは正論だったが、普段のこともあって宗介の脂汗は止まらない。 『今のうちに…』 3人の視線が宗介に向いているうちに祥子としては剣をとり逃げるつもりだった、銀の短剣に手がのびた。 が、直後剣と自分の手の間に銃弾が放たれた。 宗介のソーコムピストルだった。 「動くな」 宗介の声が冷たく響く。 「ん?」 目の前から殺気が…。 「だ・か・ら! 無抵抗の女の子に銃を向けるなっていってんの!!」 かなめのキックは宗介の顎を直撃した。 「千鳥…間違ってるぞ、今のは…」 宗介は必死に抗弁しようとする。 「何が間違ってるのよ! あんたのことだからいきなり茂みから飛び出して問答無用で倒したんでしょ!」 そしてかなめは祥子の方を向いた。 「そうでしょ?」 同意を求める。 戸惑いながらも祥子は考えた。 このまま一人で行動を続けるのは宗介のような相手にまたあったとき得策ではない、 このままついてってころあいを見て裏切るべきだと祥子は決断した。 返事がないのでかなめはうろたえた。 「え? もしかして違うの?」 祥子はボロを出さないように答える。 「ええ…彼がいきなり飛び出してきたから私も構えてしまって、その結果取り押さえられてしまって。 …その後自己紹介をして一緒に行動することになったのですが…その後私拳銃を持っているのを思い出して彼に教えようと取り出したときに…彼の前方に人影が見えた気がして、だから…」 少しツラいか、と思いつつ相手の反応を伺う。 「発砲したのか?」 宗介が聞いた。 「ええ…けど拳銃なんて扱ったことなかったから弾は方向がそれてあなたの方に飛んでいったわ… ごめんなさい」 「ふ~ん、じゃあ一概にソースケが悪いとは言えないわけね」 祥子は安堵した、なんとか乗り切れたようだ。 剣をとり皆の側に行く。 「けどソースケ! いきなり襲いかかったりしたところはやっぱりあんたが悪い!」 「だが相手は武装していた、交渉するにも戦力を削いでからのほうが…」 ゴッ! また鈍い音が響き渡る。 「待て、待てかなめ。 そろそろ自己紹介をさせろ、私はオドーと呼んでくれ」 このままでは埒があかないと思いオドーが名乗った。 「あ、私はしずくです」 続いてしずくが名乗る。 「ふぅ…まあいいわ、今に始まったことじゃないし。 あたしは千鳥かなめ、ソースケがお世話になったわね、よろしく」 「小笠原祥子と申しますわ、よろしく」 「相良宗介、階級は軍曹であります」 最後に宗介が名乗った。 敬語なのはオドーがいたからであった。 「おお、おお、物腰を見てもしやとは思ったがやっぱり軍隊出身か、よろしくな」 オドーが答えた。 「ハッ!」 宗介は敬礼した。 【E1/海洋遊園地/7 40】 【正義と自由の同盟】 残り94人 【相良宗介】 【状態】健康 【装備】ソーコムピストル、スローイングナイフ、コンバットナイフ 【道具】前と変わらず 【思考】あの女は油断ならない。大佐と合流しなければ。 【千鳥かなめ】 【状態】健康 【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード/団員の特殊装備) 【道具】荷物一式 【思考】宗介にやっと会えた。早くテッサと合流しなきゃ。 【小笠原祥子】 【状態】健康 【装備】銀の短剣 【道具】荷物一式(毒薬入り) 【思考】どのタイミングで裏切るか。祐巳助けてあげるから。 【しずく】 【状態】機能異常はないがセンサーが上手く働かない。 【装備】エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん) 【道具】荷物一式 【思考】かなめさんが探してた人に会えて良かった。BBと早く会いたい。 【オドー】 【状態】健康 【装備】アンチロックドブレード(戯言シリーズ) 【道具】荷物一式(支給品入り) 【思考】協力者を募る。知り合いとの合流。皆を守る。この娘少々危険な気がする。 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第218話 第219話 第220話 第172話 時系列順 第347話 第196話 しずく 第255話 第199話 千鳥かなめ 第255話 第199話 相良宗介 第255話 第199話 小笠原祥子 第255話 第196話 オドー 第255話
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番号 FJ05006 名前 林水敦信 読み はやしみずあつのぶ スター Lv 種別 BP SP 移動方向 4 ユニット 4000 1000 ↑ 【私は全生徒の利益代表者だ】○他の「陣代高校」の味方のBPを+2000。○夢(プランゾーンからプレイできる) 属性 陣代高校生徒会♂ 作品 フルメタル・パニック! ブロック 富士見書房 レアリティ U FJのカードで「陣代高校」を持つカードは、常盤恭子 美樹原蓮 神楽坂恵理 椿一成 千鳥かなめ 林水敦信
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フルメタル・パニック! 著者/賀東招二 イラスト/四季童子 富士見ファンタジア文庫 593 :フルメタルパニック 戦うボーイ・ミーツ・ガール:2011/10/16(日) 05 43 26.66 ID cqEQB4o5 ありえない程進んだ技術を持ち、紛争の抑止を掲げる謎の傭兵部隊「ミスリル」。 幼少期から人型ロボット・アームスレイブを駆り、現在はミスリルの戦闘部隊に所属する少年 相良宗介の新たな任務、それは日本の女子高生、千鳥かなめを本人にもバレないように護衛する事だった。 日本人かつ、17歳の宗介ならば同じ学校に転入するだけで、極自然に彼女の傍で護衛が出来る・・・と思われたが 幼い頃からゲリラ育ちな彼は、護衛に使用する銃火器その他を普通に持ち込もうとして没収され モデルガンだと思い込んでいる教師にそれらの危険性を必死で説明した上に 護衛対象につかず離れずなその姿勢が、ストーカー染みてキモい軍オタという最悪な認識を生んでしまう。 しかし、かなめは彼の真摯な姿勢は変態のそれでは無いと見抜き、きっと彼には何か事情があるのだ・・・と思いかけた所で 下着泥棒を撃退しようとした宗介を下着泥棒だと勘違いし、決定的な仲違いをしてしまう。 同僚のクルツやマオは、彼らの起こす騒動に呆れるばかりだが、監視している限り、どうみても千鳥かなめは普通の女子高生としか思えない。 結局彼女は何者で、自分達は何から彼女を守っているのだろうか? 594 :フルメタルパニック 戦うボーイ・ミーツ・ガール:2011/10/16(日) 06 16 11.59 ID cqEQB4o5 かなめとの仲を修復できないまま、学生一同は修学旅行へ。 休暇代わりに楽しんで来いと言われた宗介だが、かなめを狙ったテロリストに 沖縄行きの飛行機がハイジャックされて北朝鮮へと運ばれてしまう。 テロリストのリーダーは、かつて殺した筈の宿敵、戦争狂の殺し屋ガウルン。 宗介は彼らからかなめを守るべく戦うが、かなめは軍オタが錯乱して自分をプロだと思い込んでるのだと 宗介の言うことをまともに聞いてくれない。 しかし、巨大ロボット・アームスレイブを強奪し、一機でテロリスト達を圧倒する姿を見ると、彼女も事実を認めざるを得なかった。 彼はプロで、ここは戦場だ。 一方、宗介から連絡を受けたミスリルの仲間達は、手際よく学生達を救出していく。 クルツは宗介達の退路を確保するためにガウルンの操るコダールと対峙するが 圧倒的な性能を誇るはずの最新鋭機、ガーンズバックを持ってしても、逆にコダールに圧倒されてしまう。 宗介が強奪した旧式機、サベージでは当然敵うべくも無く、機体を失った彼らは脱出時刻に間に合わず 戦場に取り残されてしまう。 595 :フルメタルパニック 戦うボーイ・ミーツ・ガール:2011/10/16(日) 06 18 24.69 ID cqEQB4o5 このままでは全滅だ、自分達が囮になるから、かなめだけでも助かる方法は・・・と作戦を練る軍人二人に 自分だけ助かる気は無い、と待ったをかけるかなめ。 映画の知識を頼りの発言を、素人の妄想と切り捨てる宗介だが、クルツはその内のスパイ衛星を利用したミスリルへのSOSが 現実的に実現可能な物だと気づき、三人ともが助かる可能性にかける。 作戦決行から時間は流れ、ついにテロリスト達に追い詰められた三人、もはやこれまでかと思われたその時に ミスリルの切り札、ARX-7アーバレストが空から降って来た。 早速乗り込み敵機を次々と破壊していく宗介だが、ガーンズバックを一撃で破壊した コダールの謎の攻撃が襲い掛かる・・・が、結果は無傷。 何が起きたのか全く理解出来ない宗介だが、傍から見ていたかなめは、二機のASの全てを理解していた。 彼女が狙われていた理由、それはブラックテクノロジーと呼ばれる未知の技術を 生まれた時から脳内に持っていた為であった。 かなめ曰く、今の攻防は精神力を物理的な力に変える装置、ラムダ・ドライバによる物だという。 理屈屋の宗介は、そのあまりに意味不明な装置の存在を信じられなかったが かなめのアドバイスに従い、ガウルンに対する怒りを銃弾に込めた時、コダールは木端微塵に吹き飛んだ。 なんとか帰還した宗介は、あまりに物理法則からかけ離れた装置の説明を上司であるカリーニン少佐に要求するが 少佐は、君には知る権限が無いと一蹴する。 しかし、若い者には実感が無いだろうが、アームスレイブそのものもまた現実離れした異常な兵器だという事は覚えておけと忠告する。 そして、宗介は新たな任務へと赴いた。 日本の病室で目覚めたかなめは、礼も言えない内に宗介が居なくなってしまった事に落胆するが 見舞いに来たクラスメイトの中には、何食わぬ顔をした宗介が居た。 彼の新たな任務、それは千鳥かなめの護衛の継続だった。
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第255話:チャンス到来/戦友 作:◆I0wh6UNvl6 商店街の入り口に5人が立っている。 「こっちのほうに飛んでったのよね?」 その中の1人、千鳥かなめが尋ねる。 「はい・・・確実ではないですけど・・・」 しずくが答える。彼女の探し人を追って中央まで来たのだが そこから足どりがつかめなくなっていた。 「さて、これから、これからどうする?」 「そうね・・・最悪しらみつぶしに探すしか・・・」 ぐう。 疲れからなのか盛大に腹がなった・・・。 「千鳥、空腹は思考を鈍らせる、腹が減っていたのなら・・・」 「うるさい!」 バックパックがもろに顔面をとらえた。 「何故殴る?」 「あんたの辞書にはデリカシーって言葉が載ってないの!?」 首を傾げる宗介、それを見てかなめは確信した。 『載ってないわね・・・』 「それじゃあそろそろ朝ごはんにしましょうか、そのあとこれからの行動を考えましょう」 しずくが提案した。 「え・・・でも・・・」 「大丈夫ですよ、それに私も少し疲れました」 「私も賛成しますわ、幸いここならば食料には不自由しないでしょうから」 まだいけると言おうとするかなめをしずくと祥子が押しとどめた。 『それに・・・ここならば逃げることも恐らく可能ですし』 祥子はチャンスと思った。 ここまで逃亡のチャンスを伺ってきたが 常に注意を払っている宗介のもとから逃げ出すのは不可能だった。 「それでは、それでは二手に分かれて食料を調達するとしよう」 「じゃあ私とオドーさんとしずくさん、相良さんと千鳥さんで分かれるのはどうでしょう?」 しめたとばかりに祥子がきりだす。 「そうだ、そうだな・・・それでいこう。よろしいかな皆の衆」 オドーが同意を求めた。 「ハッ!」 「ええ」 「じゃあ15分後にあそこの店に集合ってことで」 宗介、しずくが承諾し最後にかなめが集合場所と時間を決めた。 2人で商店街を歩きながらかなめはいつもの光景を思い出していた。 「ねえ宗介・・・」 「なんだ?」 「なんかさ、こうしてるといつもと変わんないよね。 この商店街いつも学校から帰るときに通るとことなんか似てる・・・」 「そうだな。確かに似ているかもしれない」 「まだ少し信じられないんだよね~、 今あたしたちがいる場所が戦場の真っ只中なんて」 「千鳥・・・」 会話をしながらもかなめは店先においてある食材をバックパックに入れていく。 「わかってはいるの、分かってはいるけど・・・怖くはないんだ。 あんたと一緒にいるからかもね」 少し微笑みながらかなめは言った。 「そうか・・・ならよかった」 宗介も微笑む、が、どこか寂しげだ。 「宗介・・・」 「クルツは・・・」 「・・・・・」 あえて触れていなかった名前を宗介は出した。 「あいつは・・・女がとにかく好きなやつだった」 かなめは少し笑って言う。 「なによそれ」 宗介も少し微笑んだ。 そして言葉を紡ぎだす。 「だから・・・おそらく手当たりしだいに声をかけて・・・・・失敗したんだろう」 「・・・そうよね・・・きっとそう・・・」 かなめも頷いた。 「まったく・・・馬鹿なやつだ」 その口調は淡々としていた。 「バカはあんたも同じでしょうが・・・」 微笑みを崩さずにかなめは言う。 「そうだな・・・」 「・・・宗介・・・我慢しなくていいわよ・・・」 「俺は何も我慢してなどいない、君こそ・・・」 言いかけたところで言葉が止まった。 微笑んだ彼女の目には大粒の涙があった。 そして彼女は宗介の胸に顔をあてた。 「別にあたしは・・・何も我慢してないわよ・・・」 その声は震えていた。 「そうか・・・」 そして、彼は自分の頬を伝わるものを感じた。 「ねえ宗介・・・あんたまで勝手に死なないわよね・・・」 「・・・・・当たり前だ、最後まで君を守りきるのが俺の任務だからな」 それはYESの意味ではなかった。彼女を守るためなら勝手に死ぬということだから。 それでも彼女は、 「うん・・・」 と言った。 【C3/商店街/10:30】 【正義と自由の同盟】 残り88人 【相良宗介】 【状態】健康、精神面に少し傷 【装備】ソーコムピストル、スローイングナイフ、コンバットナイフ 【道具】前と変わらず 【思考】大佐と合流しなければ。クルツ・・・。 【千鳥かなめ】 【状態】健康、精神面に少し傷 【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード/団員の特殊装備) 【道具】荷物一式、食料の材料。 【思考】早くテッサと合流しなきゃ。 クルツくん・・・。 【小笠原祥子】 【状態】健康 【装備】銀の短剣 【道具】荷物一式(毒薬入り) 【思考】どのタイミングで逃げるか。祐巳助けてあげるから。 【しずく】 【状態】機能異常はないがセンサーが上手く働かない。 【装備】エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん) 【道具】荷物一式 【思考】BBと早く会いたい。食料探さなきゃ。 【オドー】 【状態】健康 【装備】アンチロックドブレード(戯言シリーズ) 【道具】荷物一式(支給品入り) 【思考】協力者を募る。知り合いとの合流。皆を守る。食料を探さなければ。 2005/04/22 修正スレ47 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第254話 第255話 第256話 第248話 時系列順 第289話 第219話 しずく 第264話 第219話 千鳥かなめ 第264話 第219話 相良宗介 第264話 第219話 小笠原祥子 第264話 第219話 オドー 第264話
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リアルかくれんぼ(後編) ◆ug.D6sVz5w (前編から) 「……な? 冗、談だろ……」 「嘘……」 上条とかなめ。 穴のふちと底にいる両者の口から共に驚きの声が漏れた。 放送の前置きそのものは、最初の北村との話し合いでの考察を裏付けるかなり重要な内容を含んではいたのだが、正直今の彼らにそんなことはどうでもいい。 ――北村祐作。 ほんの数時間前に別れた仲間の死が告げられたのだ。 「どういうこと!?」 「わかんねえ!」 混乱の中、かなめと上条は互いに大声を張り上げる。 先に多少なりとも落ち着いたのは、荒事の経験がかなめよりも多い上条の方だった。 努めて冷静になって上条は考える。 ――北村が死んだ。 ――どこで? ――どうして? ――誰が殺した? 「――千鳥!」 「何よ!」 「いいか、落ち着け。ひとまず俺の事は無視して、お前は先に温泉に向かってくれ。ただし、一人じゃ危険だ。だから多分、まだ温泉にはシャナ達がいるだろうからあいつらと合流しろ。 ……もしも、温泉に人の気配がないようだったら南、海の方に向かってくれ。」 「……あ、ひょっとしたら……」 上条の言葉にかなめは少しぶつぶつと何かを呟いた後で、怒鳴り返してくる。 「ってあんたはどうするのよ!? ここにもしも殺し合いに『乗った』のが来たら逃げ場所がないじゃない!」 「大丈夫だ!」 上条は叫び返す。 そう、上条だってむざむざ死ぬつもりはない。 死地に留まりつづけるつもりもない。 そう、どんな時でも諦めないのは上条の長所の一つ。 「千鳥、っと……ここらへんを照らしてみてくれ」 「何かあるの?」 言われるがままに、かなめは上条が指差した場所に明かりを移す。そこには取り立てて変わったところはない。 「……何もないじゃない?」 「いや……」 そう言いながらそこに上条は両手を当て、強く押し込む――その前に。 ばぎん、という上条にとっては慣れた手ごたえと同時に、そこを中心に人一人が身を屈めれば通れそうな穴があいた。 「やっぱりな」 それを上条は得意そうに見た。 そう、落ち着いて周りを見渡せば気がついた。 上条が派手に降りた……もとい、落ちたせいで穴の中には埃が満ちていた。 明かりの中でその埃をよく見れば、横の方から風が流れていることには簡単に気がつく。 後は簡単だ。 例えここの入り口と同様に「そこ」が隠されていようとも、風が通るぐらいに薄ければ少し力を加えたらどうにかなる。 ……実際には薄いのは何らかの力で補強してあったからなのだが、そんな事実は上条の右手には関係ない。 「風が流れてるってことはここは外につながってるはずだ。俺もすぐに行くから頼む!」 「……わかった!」 本音を言うなら、例え何回かの荒事に巻き込まれていようとも、かなめはただの普通な女子高生だ。こんな場所で一人で行動するのは少し不安があった。 しかし、上条は上に登ってこれそうにないし、逆にかなめが地下に降りようにも、この高さを無事に降りるだけの自信はない。 それに彼女も温泉で何があったのかは知りたくもある。 (うん、何かあったら逃げ出せば平気よね……) そして彼女も決意を固めた。 「……当麻!」 「何だ?」 「最初会ったときから思っていたけど、あんたは運が悪いみたいだから用心しなさいよ」 かなめの言葉に上条は小さく笑う。 「サンキュ、千鳥こそ安全第一。危ないと思ったらすぐに逃げろよ」 「わかってるって」 かくして彼らの道は一旦は分かたれた。 きっとお互いにすぐ合えることを信じて。 【E-1/教会地下/一日目・朝】 【上条当麻@とある魔術の禁書目録】 【状態】 全身に打撲(行動には支障なし) 【装備】 無し 【道具】 デイパック、支給品一式(不明支給品1~2)、吉井明久の答案用紙数枚@バカとテストと召喚獣 【思考・状況】 基本:このふざけた世界から全員で脱出する。殺しはしない。 1:この地下から脱出。その後温泉に向かう。 2:かなめや先に温泉に向かったシャナ達とも合流したい。 3:インデックスを最優先に御坂と黒子を探す。土御門とステイルは後回し。 【備考】 ※地下道の先がどうなっているのかは次の書き手にお任せします。 ※教会内には何らかの異能の力が働いているところがありました。 【E-1/一日目・朝】 【千鳥かなめ@フルメタル・パニック!】 【状態】 健康 【装備】 とらドラの制服@とらドラ!、二十万ボルトスタンガン@バカとテストと召喚獣、小四郎の鎌@甲賀忍法帖 【道具】 デイパック、支給品一式(不明支給品×1)、陣代高校の制服@フルメタル・パニック! 【思考・状況】 基本:脱出を目指す。殺しはしない。 1:温泉に向かって情報を集める。 2:何かあったら南、海岸線近くで上条を待つ。 3:知り合いを探したい。 4:上条にはああ言ったが、少しだけシャナ達に対して疑念。 【備考】 ※2巻~3巻から参戦。 【備考】 ※マップ端からはみ出しても数秒間は大丈夫。それ以上は不明だがおそらくは消滅する。 ※『幻想殺し』で壁は少しだけ壊せるが、壁はすぐに再生するために今のところは脱出することはできない。 以上の情報を上条当麻と千鳥かなめは知りました。 ◇ ◇ ◇ 「…………」 六時間ごとに流れる放送。 その最初の一回を興味なくガウルンは聞き流した。 彼にとって興味がある人間は今のところ三人だけ。 その内一人、この会場で出会ったガキは名前も知らない。 しかし、興味を持つもう一人カシムこと相良宗介と同様、あいつがそうかんたんに殺されるはずがないから、ガウルンが殺すまで、あいつらが死ぬはずがないから気にするまでの事もない。 故に放送で名が呼ばれることを気にしなくてはならない相手は一人きりだったのだが、その相手、千鳥かなめは放送前にその姿を発見した。 ならばどうして放送を真面目に聞く必要があるだろう。 だからこそ、放送の少し後千鳥かなめが教会から飛び出してきた瞬間にも、ガウルンは対応できた。 (何をやっているニンジャ!) 咄嗟に動きを止めるために、彼に気がつかないで走っていくかなめに銃を向けたものの、彼女を気にせずこちらに向かってくる左衛門の姿に気が付き、銃を下ろす。 「どういうことだ?」 彼から少し離れたところで動きを止めた左衛門にガウルンは問い掛ける。 「うむ……実はの」 そうして彼は教会で様子をうかがって得た情報を語りだす。 「……成る程な。上出来だぜ、ニンジャ」 教会で何か事故か何かがあって、あのかなめと同行していたガキは動きが取れない状況に陥ったこと。 温泉に奴らの仲間がいたこと。 その仲間が今の放送で呼ばれたこと。 かなめが先行して様子を見に行くことにしたこと。 左衛門が伝えた以上の情報を吟味しながら、ガウルンは考えをまとめる。 「よし、じゃあ……」 当初、ガウルンは彼が教会に残されたガキをいたぶりながら殺して、左衛門にかなめを確保させるつもりだった。 しかしその指示を出そうとする直前に、ふと気がついたのだ。 ひょっとしたらニンジャの奴は勘違いをしているかもしれないと。 ガウルンにとってはかなめは、あくまでもメインデッシュであるカシムを苦しめて、絶望させるためのスパイス程度でしかない。 しかしもしも、左衛門がかなめをガウルンにとっての重要な存在だと勘違いしていたらどうする? もちろんいざとなれば二人まとめて殺すつもりではあるが、そんなもったいないことをわざわざする必要はどこにもない。 「俺はかなめちゃんの後を追って、温泉に向かう。ニンジャ、お前は教会に残ったが気の方を始末しな」 「うむ、心得た」 「ああ、それとついでだ。あのガキの顔も奪ってこいや」 あとはついでに口調のテストも済ませておく。 会話を聞くついでにあのガキの声の方も覚えたことだろう。 ニンジャが追いついたらかなめと会話をさせて、ぼろを出さないようなら上出来だ。 「なるべくはやくこいよ」 そう言い捨てると、左衛門を残してガウルンは走り出した。 相手の目的地が分かっているいる以上、先回りをすることは簡単だ。 だが、温泉で殺しをやった奴がこちらに向かってこないとも限らない。そんな見知らぬ殺人者にせっかくの獲物をくれてやるつもりはガウルンにはカケラもない。 ならば一番いいのはかなめの後を尾行することだ。 ガウルンはつい先ほど走っていった少女の跡を追い始めた。 【E-1/一日目・朝】 【ガウルン@フルメタル・パニック!】 [状態]:膵臓癌 首から浅い出血(すでに塞がっている)、全身に多数の切り傷、体力消耗(小) [装備]:銛撃ち銃(残り銛数2/5)、IMI デザートイーグル44Magnumモデル(残弾7/8+1) [道具]:デイパック、支給品一式 ×4、フランベルジェ@とある魔術の禁書目録、甲賀弦之介の生首 [思考・状況] 基本:どいつもこいつも皆殺し。 1:温泉でかなめを補足しつつ、ニンジャが来るのを待つ。温泉にまだ殺人者がいるようならばそいつの相手も楽しむ。 2:千鳥かなめと、ガキの知り合いを探し、半殺しにして如月左衛門に顔を奪わせる。 3:それが片付いたら如月左衛門を切り捨てる。 4:カシム(宗介)とガキ(人識)は絶対に自分が殺す。 5:左衛門と行動を共にする内は、泥土を確保しにくい市街地中心での行動はなるべく避けるようにする。 [備考] ※如月左衛門の忍法について知りました。 ※両者の世界観にわずかに違和感を感じています。 ◇ ◇ ◇ 肝心の仕掛け、隠し口そのものはものの数分程度で発見できた。 「ふむ……」 だがしかし、せっかく見つけた入り口を前に、如月左衛門はそこに入ろうとはせずに顎に手をやり考え込む。 彼が悩む理由は一つ。この先は一体どうなっているのかということである。 せっかく見つけた隠し口ではあるが、戸棚の奥に隠されていたそこは光が差し込まず、忍びである彼の優れた視力をもってしてもその奥を見通すことは適わなかったのだ。 うかつにここを降りていったその先には、あるいはあの若者が武器を構えて待っておるかも知れぬ。 あるいは底に逆しまに立てられた無数の刃が犠牲者を待っているかも知れぬ。 今やこの如月左衛門の命は彼一人のものではない。 甲賀卍谷の里全ての者の未来と同じ。 ましてやこの地での彼はどうにもふがいなきことばかりが続いている。疫病神か何かに取り憑かれたかと思えし現状、とてもではないが無謀な賭けに挑むつもりは彼にはない。 だからといって、このままここを立ち去るわけにはいかないのもまた事実。 あのにっくきガウルンめの指示はあの若者の殺害だけではない。あの若者を殺害したのちその顔を奪ってくることが彼への指示。 それに背けばどうなるか……。 主君、甲賀弦之介の生首をガウルンめに奪われている今はあ奴めの命令は如月左衛門にとっては絶対に守らなければならない。 「ええい、忌々しい!」 いつまでもうつけのごとくこの場所を見張っておくわけにもいくまい。 がうるんと、そして何よりも奴程度の男にまんまとしてやられた自分自身に悪態をつきながら、如月左衛門はひとまず入り口から離れると、教会内を探索することにした。 灯りか何かが見つかれば、この中にも入っていける。 ――そうして数分後。 「ないのう……」 十字架がある広間、そしてこの部屋もくまなく調べつつ左衛門は落胆の溜息をついた。 探索を開始してすぐに、数本のろうそくを発見して喜んだのもつかの間、この場には肝心の火種が無いのだ。これではせっかく見つけたろうそくもただのゴミと変わらない。 「…………」 それでも諦めずに、黙々と探索を続ける左衛門ではあったが、その胸中はがうるんへの怒りが残る。 そもそもがうるんめに奪われた彼自身の、そして弦之介の荷物があればこのような苦労は最初からしなくとも済んだのだ。 ところがあの男は左衛門にこうした指示を出しておきながらも、返した道具は何一つない。 もしもこの手にあのふらんべるじゅがあったのならば、あるいはあの闇の先に何が待ち構えていようとも恐れずに飛び込んでいけたかもしれない。 「……まったく無駄を…………む?」 不意に如月左衛門の動きが止まる。 確かに、聞こえた。 「――人の声?」 聞こえてきたのは間違いなく人の声。おまけにその内容は……。 わずかに逡巡した後、如月左衛門は声が聞こえた方へと向かうことにした。 少なくともこの地で容易く己の居所を明かすようなものが危険であるとは思われない。 「さて、鬼が出るか蛇が出るか」 距離はそれほど遠くない。 そこにいる相手がどのような相手であろうとも、先ほどのような失態は二度と見せまい。そうした固い決意を胸に彼は慎重に街を駆けていった。 ◇ ◇ ◇ 「はぁ……はぁ……」 温泉旅館を出てからしばらく、ただただ真っ直ぐ西に、走りつづけた櫛枝実乃梨の息はかなりあがってきていた。 しかし彼女の足は止まらない。 ソフトボールの練習と数多のバイトの経験によって鍛え上げられた彼女の根性はこの程度で音を上げてしまうほどやわではなかったし、それ以上に今の彼女に足を止める意思は一切、なかった。 (――いない) 走りつづける彼女の目に見覚えのある光景が映る。 そこはほんの少し前、シャナと秀吉とエルメスと、一緒になって訓練していた場所。 『ちょ、ちょちょっ、木下くんってば! ちゃんと後ろ支えててよ? 絶対離しちゃダメだかんね!?』 『無理じゃ! 自転車じゃあるまいし、支え切れるわけがなかろう!?』 あの時からまだ何時間もたってはいないのに、それがもうずいぶんと過去のことのように思える。 あの時はまだ、こんなことになるなんて想像さえしていなかった。また後であーみんや大河、高須君。みんなと元のように戻れるって信じていられたのに。 そうして「彼ら」から貰った情報で、北村君もここに呼ばれたことに驚いて、けどすぐに会えるから、他のみんなとも同じように簡単に会えるはずだって、そうあの時は思えたのに。 ――だけど今はどうだ? 実乃梨の足は止まらない。 あの場所はあっという間に後方へと流れて見えなくなった。 (やっぱりどこにも見当たらないじゃんかぁ!) あの時「彼ら」が調べに行くといっていた会場の端、黒い壁までは後わずか。 もしも嘘をついていなければ、本当に北村の仲間だったというのなら、とっくに異変があったはずの温泉へと向かうはずの彼らとは出会っていなければおかしい筈だ。 人がいい二人組みのようにあの時は見えた。 けれどそれは本当に確かだったのか。 北村君に会えるって思い上がったあまりに、何かを見逃していなかったのか。 実乃梨の心の内でどんどん彼らを信じたいという気持ちが薄れていく。 代わりに心の中に残るのは疑念。 そうこうする内に、ついに実乃梨はこの世界の端にまでたどり着いた。 「はぁ…………はぁ…………」 呼吸を整える間も惜しんで、周囲を見渡すが人影はどこにも無い。 「……っく!」 実乃梨は大きく息を吸い込み叫ぶ。 「上条当麻ぁぁぁああ! 千鳥かなめぇぇぇぇええ! いるんだったら、出、てこぉぉおおいぃぃぃぃ!」 ……おおいぃ ……いいぃ ……ぃ ただ彼女の叫び声だけがこだまする。 周囲には、誰もいない。来る気配も無い。 ……あるいはもう少し彼女が冷静であったなら、彼女達が別れた時間と距離の関係から、早期に調査を終わらせた彼らがどこか別の場所へと向かい、そのせいで出くわさなかったと思い至れたかもしれない。 しかし、普通の学生である彼女にそのような冷静さを期待するのは酷というものだろう。 だから結果として、彼女の疑惑は確信へと変わる。 「……許せない」 怒りと共に彼女は呟く。 北村君を殺したあの二人には絶対にそれ相応の報いを受けさせてやる。 今は温泉に戻るだけの時間も惜しい、少なくともあの二人がこの近くから北の方へと向かったことは間違いないはずだ。 だから彼女も北へと走り出し、すぐにこちらへと向かってくる人影を見止めて足を止めた。 「――誰、ですか?」 今は状況が状況だけに誰もが疑わしく見える。 とりあえず相手が声が聞こえる距離まで近付くのを待ってから、実乃梨は相手に声をかけた。 返事が無いようならそのまま逃げよう、そんなことを考えたが、意に反して相手はそこで足を止める。 中肉中背の特徴が無いのが特徴といった男だった。 そのまま男は害の無い笑顔を浮かべると、実乃梨に話し掛けてきた。 「あ、いや済まぬ。わしの名は如月左衛門じゃ」 「あ、私は櫛枝実乃梨」 「……」 「……」 「何か用でもあるんじゃ?」 しばしの沈黙の後に実乃梨の言葉に男は気恥ずかしげに頬を掻いてから聞いてきた。 「うむ、聞き違いならばすまんのじゃが、おぬし今かなめ、と叫んではおらんかったか?」 「!? 知ってるの?」 思いもしなかった男の言葉に実乃梨は食いついた。 その勢いに男はやや引いた態度を見せたものの 「うむ。それが千鳥かなめという女子ならばの。そうじゃな容姿は……」 と頷いた。 彼の語る千鳥かなめの風貌は間違いなく、彼女の知る千鳥かなめと同一人物だ。 「本当!? 居場所とかは知ってるの?」 「まあ、待て。先にわしの問いにも答えてもらおう」 さらに勢い込んで質問を重ねる実乃梨をやんわりと制止すると、一転して鋭い目つきで男は実乃梨をじろり、と見据える。 「わしが聞きたいのは一つ。おぬし一体あやつとどのような関係じゃ?」 「…………」 左衛門の問いかけに、実乃梨は一瞬押し黙った。 彼女とかなめの関係を正直に言った場合、もしも彼が実乃梨と同様に知り合いを傷つけられていたのなら、きっと同じ敵を持つもの同士、彼女の味方になってくれるだろう。 だがもしも、かなめの味方だったのならば彼女の悪行を知る実乃梨の口をなんとしてでも封じようとしてくるはずだ。 逆もまたしかり。 関係が友好的なものだといってしまえば、正直に言ったときとはきっと逆の結末が待っている。 「…………」 悩んだ末に彼女は正直に答えることにした。 「成る程のう」 左衛門は彼女の言葉にうんうんと頷き、ふと思い出したようにいう。 「おお、そういえば先ほどの質問の答えじゃが……」 ゴクリ、と実乃梨は唾を飲み込み、そしてそっとデイパックの中のバットの柄を握る。 「わしもそれは知らんのじゃ」 …… ………… ………………。 「……は?」 実乃梨はあっけに取られたように呟いた。 「は? あのどういうことでしょうかい?」 「うむ、実はわしはそのかなめという女子とは直の知り合いではない」 「じゃあどうして?」 当然の疑問を浮かべる実乃梨に向かって、左衛門は笑いかける。 「じつはの、わしと一時期行動しておったがうるんという男がそ奴を探しておったのじゃ。確か……大事な仲間とか言っておったのう」 「行動していた?」 しかしそういう彼は今一人きりだ。 さっきと同様、周囲に他の人影は無い。 「そう、奴はわしを裏切ったのじゃ」 苦々しげに左衛門は言い捨てる。 成る程と、驚くと共に実乃梨は納得もしていた。類は友を呼ぶという。そのがうるんという彼女の仲間も彼女同様に汚い奴だということだろう。 そんな実乃梨に左衛門は話し掛ける。 「話は変わるが実乃梨とやら、わしに手を貸さんか? おぬしもあ奴の仲間には恨みを持っているようじゃ。 ご覧のとおりわしはあ奴に襲われた際、荷物を全て奪われてしもうた。このまま奴らに挑むのは少々心許ないのが本音。 頼む! 力を貸してくれ!」 「うわ、頭をあげておくんなせえ!」 手をこすり合わせて、頭を下げる彼に慌てて実乃梨は駆け寄った。 「あたしだってあいつらには腹を立てているんだよ。左衛門さんだっけ? あんたが手を貸してくれるっていうんならむしろこっちこそ願ったり適ったり。共に力を合わせやしょう!」 「うむ、よろしく頼む」 やや芝居がかった口調の実乃梨に苦笑を浮かべつつ、左衛門は顔をあげた。 ――そして。 ◇ ◇ ◇ つかまえた ◇ ◇ ◇ ――――――――――――――――――――ゴキッ。 ◇ ◇ ◇ 「好き好んで女子を殺したいわけではないのじゃがな……」 沈痛な面持ちで櫛枝実乃梨だったものを見下ろしながらも、手は止めずに如月左衛門は、いや、櫛枝実乃梨の顔を奪った如月左衛門は呟いた。 彼とて人の子だ。 何も好き好んで婦女子を、それも一見して争いごととは無関係に過ごしてきたような町人を殺すことに胸が痛まぬといえば嘘になる。 だが。 「済まんな……わしの事ならば冥府にていかように恨んでくれても構わぬ。じゃが、甲賀の里の皆のためじゃ。祟るのはしばし待ってくれい」 沈痛な表情とその言葉とは裏腹に左衛門の手は淀みなく動き、実乃梨の髪を奪ってかつらを作り、そして服を脱がしていく。 ――数分後。 そこにいたのはぱっと見には、逢坂大河や川嶋亜美などのもともとの彼女の知り合いでさえ、区別がつかないほどそっくりに櫛枝実乃梨そっくりに化けた如月左衛門であった。 新たに得た知識、「でいぱっく」に彼女の遺体を詰め込むと、素早く境界に移動。そしてそのまま死体をほうり捨て「境界葬」を済ませると、ようやく「彼女」はにんまりとした笑みを浮かべた。 ようやく風は彼に向かって吹き始めた。 がうるんめが知らぬこの女子の顔なれば、奴の油断を誘い、近付くことも容易であろう。 なおかつこやつはあのかなめとやらの知り合い。 万が一、己の忍術をあのがうるんに見破られようとも、奴の指示を破って、あの若者の顔を奪ってこなかったことに対しても言い訳は立つ。 すなわち、今のこの状況。 何がどう動こうとも、彼にとっては有利になりこそすれ、不利となることなどはありえない。 「……くっくっく」 先ほどまでガウルンの側で浮かべていた作り笑いとは違う、久方ぶりの心からの笑みも借り物の顔ではちともの足りぬ。 しかし、上手くいけばその我慢も後少しの辛抱だ。 己の顔にて心からの笑みを浮かべられることを楽しみにしながらも、彼は油断なく温泉目掛けて走っていった。 【櫛枝実乃梨@とらドラ! 死亡】 【E-1/一日目・朝】 【如月左衛門@甲賀忍法帖】 [状態]:胸部に打撲 ガウルンに対して警戒、怒り、殺意 櫛枝実乃梨の容姿。 [装備]:マキビシ(20/20)@甲賀忍法帖、白金の腕輪@バカとテストと召喚獣 [道具]:デイパック ×2、金属バット 、支給品一式(確認済みランダム支給品1個所持。武器ではない?) [思考・状況] 基本:自らを甲賀弦之介と偽り、甲賀弦之介の顔のまま生還する。同時に、弦之介の仇を討つ。 1:温泉に向かい、 気付かれないようならガウルンを襲う。 2:気付かれたなら適当にごまかして、再び機を覗いながらガウルンの指示に従う。 3:弦之介の生首は何が何でもこれ以上傷つけずに取り戻す。 4:弦之介の仇に警戒&復讐心。甲賀・伊賀の忍び以外で「弦之介の顔」を見知っている者がいたら要注意。 [備考] ※ガウルンの言った「自分は優勝狙いではない」との言葉に半信半疑。 ※少なくとも、ガウルンが弦之介の仇ではないと確信しています。 ※遺体をデイパックで運べることに気がつきました ※千鳥かなめ、櫛枝実乃梨の声は確実に真似ることが可能です。また上条当麻の声、及びに知り合いに違和感をもたれないはなし方ができるかどうかは不明。 ※櫛枝実乃梨の話から上条当麻、千鳥かなめが殺し合いに乗った参加者だと信じています。 投下順に読む 前:必要の話―What is necessary?― 次:国語――(酷誤) 時系列順に読む 前:リリアとソウスケ〈そして二人は、〉 次:What a Beautiful Hopes 前:二輪車の乗り手 上条当麻 次:あぶなげな三重奏~trio~ 前:二輪車の乗り手 千鳥かなめ 次:競ってられない三者鼎立? 前:化語(バケガタリ) ガウルン 次:競ってられない三者鼎立? 前:化語(バケガタリ) 如月左衛門 次:競ってられない三者鼎立? 前:FRAGILE ~さよなら月の廃墟~ 櫛枝実乃梨 死亡
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ガウルン 登場作品【フルメタル・パニック!】 登場話数 6 殺害者 紫木一姫 最期の言葉「っ!? チドリカナメ!?」 【本編の動向】 登場話は036「とある舞台の人間失格」 退場話は124「モザイクカケラ」 参戦時期は原作の2巻から3巻の間 山の中、天文台の近くからスタート。最初に発見した参加者は御坂美琴。 彼女が「黒い壁」に電撃を放つ姿を確認し、ある程度彼女の能力を把握した上で天文台に先回りし、待ち伏せた。 先制攻撃こそ磁力で防がれたものの、美琴からの電撃は義足の存在と機転によってダメージを回避。 そのまま拳を打ち込んで形勢逆転、美琴を嬲り殺そう――としたところで、第二の人物の乱入を受ける。 その名は人間失格、零崎人識。 銛撃ち銃と拳銃の二連撃も、銃弾を軽く避ける零崎一賊の前には通用せず。ガウルンはすっぱりと思い切りのいい撤退を選択した。 彼はそして、原作因縁のあるカシム(相良宗介)を嬲り殺す、という目標に加え、零崎人識と御坂美琴へのリベンジを誓う。 続いてあてもなく山を降りる途中、死臭に導かれて甲賀弦之介の遺体を発見。 唾を吐き捨てたところで、戻ってきた如月左衛門(それも弦之介の変装中!)と遭遇する。 死体と瓜二つの相手に驚かされ、また、その卓越した運動能力に大苦戦するものの、駆け引きと観察眼ではガウルンも劣ってはいない。 僅かな手掛かりから目の前の男と死体との真の関係を見抜き、弦之介の死体を利用しての見事大逆転を決めてみせた。 見事KOした如月左衛門からその変装術を聞き出したガウルンは、その内容に驚きつつも、殺すよりも利用することを考える。 つまり、「弦之介の生首を返して欲しければ力を貸せ」と。 如月左衛門も激しい敵意を滲ませつつも、この申し出にしぶしぶ同意。緊張感ある旅の道連れとなった。 忍法の都合上、市街地の辺縁を動き回っていた彼らは、やがて教会近くで若い男女を発見。 その片割れ、女の方はガウルンの標的の1人、千鳥かなめだった。思いもがけぬ遭遇にほくそえむガウルン。 ここでニンジャにかなめの姿を奪わせよう、と考えたガウルンは、如月左衛門を先行偵察に出した。 だが、教会の中で変事が発生。 上条当麻は不幸にも抜けた床の下に転落、そして第一回の定期放送。 上に取り残された千鳥かなめは、単身温泉へと先行する格好となる。 そのことを戻ってきた如月左衛門から聞いたガウルンは計画を変更。 如月左衛門には残ったガキ(上条当麻)の始末と、彼の顔を奪うよう指示。 自分は先に出発して千鳥かなめを追いかけるので、すぐに追いつくように、と命じた。 結果論になってしまうが、ここでみすみす如月左衛門に単独行動の余地を与えてしまったことが、後に彼の命取りとなる。 温泉に行く途中、路上でバラバラになった死体(木下秀吉)を発見。 腕のいい殺人者が遠くない所に居ることを知り、また追加の銃も入手し、道を急いで温泉施設へ。 そこには、隠しようもない殺気をあからさまに放つ存在があった。 戦闘の愉悦を求めるガウルンは、挑発に乗って露天風呂へ。 そこにいた『少女』に銛撃ち銃を向けて――その『少女』の予想もしていなかった姿と声に一瞬だけ混乱。 状況を理解する余地すら与えられず、その首を切り飛ばされたのだった。 彼にしてはあまりにあっさりした最期だった。 ……まあ、別れたはずの如月左衛門が、見知らぬ少女(櫛枝実乃梨)の姿をしていて、 他のマーダー(紫木一姫)と素早く同盟関係を築いていた……なんて真相、流石のガウルンにも想像できなくても無理はない。 その性格の悪さを遺憾なく発揮してみせた彼だったが、どことなく周囲の皆を嘗めてかかっていた感は否めない。 特に、情報戦を軽視し、その面において大いに遅れを取ったことは致命的だった。 早々に「常識の通じない異能の持ち主」と交戦して生き残る、という幸運に恵まれていたにも関わらず、己の進む道を曲げなかった彼。 その態度の太さは、あるいは違う場所からスタートし、違う者と遭遇していればプラスに転じていたのかもしれないが……。
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化語(バケガタリ) ◆LxH6hCs9JU 暗澹たる空には闇の帳がかかり、直下で蠢く者を密とする。 のっぺりした容貌の男が一人、沈痛な面持ちで死者のむくろを運んでいた。 名を如月左衛門。甲賀卍谷衆が一人にして、変顔の忍者である。 左衛門が慎重に運ぶは、彼の忠臣にして甲賀卍谷衆が頭目、甲賀弦之介の遺体であった。 四肢をもがれ、首を失い、それはそれは見るも無残な亡骸であったが、左衛門に泣き言はない。 左衛門の後ろでは、髭面の男がいやらしい笑みを浮かべながら歩き付いていた。 彼奴の名はがうるん――仏を辱めることに一切の躊躇もなき卑劣漢である。 甲賀と伊賀あいまみえる忍法殺戮合戦の折、左衛門が巻き込まれたのは別の争乱であった。 うぬら、座椅子を奪い合わん――服部家無縁の輩に生殺与奪の権利を剥奪され、左衛門は酷く憤慨した。 だが、好都合でもある。ここには朧ら伊賀者も多く集っているがゆえ、争乱に紛れれば絶好の好機也! 否、好機云々にほくそ笑む己が愚鈍であったのだと、弦之介のむくろに詫びを入れつつこれを葬った。 舞台の端、飲み込まれれば一巻の終わりであろう黒き壁を前にし、左衛門は弦之介をこれに投げ入れたのだ。 絶対に露見してはならぬむくろ、埋没する一寸先は闇……だからこそ好都合。 長年のあいだ仕えてきた君主に、追悼の意を告げ、また別れも告げる。 ああ、それにしても……。 忌々しい……実に忌々しい……後ろのがうるんなる男がこれ忌々しい……。 如月左衛門が忠臣、甲賀弦之介の首を抱えるは――甲賀者ではなくこのどことも知れぬ馬の骨なのだ! 忌々しい……なんと忌々しい……呪詛の念で人が殺せたならば、なんと良きことか。 忍法怨念縛り――死なれよがうるん。うぬの辿ろう黄泉路は闇なれど。―― ◇ ◇ ◇ 甲賀弦之介の《境界葬》が終了した後、ガウルンと如月左衛門の原野での会話である。 「おなごに化ける……ともなれば、いささか面倒であろうよ」 と、如月左衛門が言った。 おなごに化ける。つまりは、女性に変装する。性別を偽るともなれば、それはたしかに容易ならないだろう。 さすがのジャパニーズ・ニンジャも女には化けれないってか、とガウルンは嘲笑気味に言い返した。 「面相が問題なのではない。厄介なのは髪よな。少々の長さならば伸ばすこと容易じゃが……おぬしの言う千鳥なるおなご。 これはいかほどか……ほう。腰ほどとな。ますますもって面倒な……完璧に化けるとなれば、皮を剥ぎ被る必要とてあろうな」 と、如月左衛門が言った。 ガウルンが左衛門に化けて欲しいターゲットは現状二人。カシムとウィスパードの女――相良宗介と、千鳥かなめである。 女性である千鳥かなめの外見的特長を言葉で説明すると、左衛門はやはり難しいとこれを返した。 長髪のおなごは厄介極まりない。毛皮を被るとまではいかずとも、かつらをこしらえる必要があろうよ、と。 「逆に、男ともなれば容易なものよ。その相良なる男、体格のほどはどうか。ほう、おれとさして変わらんとな。 ならば結構。我が同胞に鵜殿丈助なる太っちょの男がいたが、あれほどになるとおれでも難しくなってくるのでな」 と、如月左衛門が言った。 左衛門の忍法はあくまでも顔だけを変えるものである。となれば、体格のほうはどうにもならないのだろう。 標的と比較すれば左衛門の体格に無理はないが、意外と融通が利かないんだな、とガウルンはこれをなじる。 「ああ、丈助は太っちょのなかの太っちょだったゆえ。それはそれは、並大抵の太っちょではなくての。 少々の背丈くらいならほれ、間接を外し骨を伸ばすことでどうとでもなる。心配せずとも上手くやってみせよう」 と、如月左衛門は自信ありげに言った。 仕事柄、間接外しの技など見るに珍しいものでもない。しかしそれで体格を変えるともなれば、目を見張る。 髪は最悪短くしたとしても問題はないだろうし、胸には詰め物をすればいい。女に化けることとて、不可能ではないのだ。 「だが、気にかかるのは声……そしてしゃべりかたよの。男であろうが女であろうが、一度覚えた声を真似ることなんぞ容易い。 まあ、女の声色は男と比べつかれるが、些細なことよ。声を真似きれたとて、話し方で見破られることこそ心配と言えよう」 と、如月左衛門はガウルンの声で言った。 違和感もない、完璧な自分の声が返ってくる。いや、違和感ならあった。その時代錯誤な口調だ。 ジャパニーズ・ニンジャの掟かなにかだろうか。用いる言語こそ日本語だが、この左衛門の喋りは妙に芝居がかっている。 「がうるんよ。おぬし、なにゆえそのような珍妙な言葉遣いを用いる? いったいどこの者じゃ? ……聞かぬ名よの。しかし不思議と、おぬしの言葉を理解できておるのは……まこと奇怪な」 と、如月左衛門は訝りながら言った。 すべての言葉をそっくりそのまま返したい、とガウルンは顰め面を見せながら思った。 カシムに化けるにしても千鳥かなめに化けるにしても、たしかにこの喋り方ではすぐにバレてしまうだろう。 どうにかして矯正させる必要があるか、とガウルンは面倒くさそうにぼやいた。 「ところでがうるん。おぬしにはおれの化けの皮が剥がれる瞬間を見られたが……どうじゃ? 今度は実際に、おれの顔が変わる瞬間を拝みたくはないか? 変ずる顔は、そう――うぬの顔じゃ」 と、如月左衛門が言った。 不意の提案に、ガウルンはなるほどと唸る。妙案かもしれない。 カシムにとっても千鳥かなめにとっても、ガウルンは顔を合わせたくはない存在として認識されているだろう。 そんな顔が、いざ対面となった折に二つ聳えていれば……相手方の驚く様を想像しただけで、楽しくなってくる。 しかしガウルンは、その手には乗らねぇよ、と如月左衛門の案を一蹴した。 左衛門がどのようにして顔を変えるのかは知っている。変わるべき顔をまず泥につけ、型を取るのだ。 この提案をのむということはつまり、ガウルンが自らの意思で泥土に顔を埋める必要がある。 それは左衛門にとって好機以外のなにものでもないだろう。なにしろこの男、ガウルンに対し純然たる殺意を秘めているのだから。 泥土に顔を埋めた瞬間、そのまま頭を押さえつけ窒息死させようという左衛門の魂胆がみえみえだった。 「……まあよいわ。機会はその、相良や千鳥の顔を手に入れてからで遅くはあるまい。 是が非にでも、おぬしに見事なものと言わせてみせようぞ。おお、そのときが楽しみじゃ。――」 と、如月左衛門は本心を語るでもなく言った。 白々しい。ガウルンは我慢し切れず、声に出して左衛門の白々しさを嘲笑った。 いつ噛み付いてくるとも限らない下僕。しかし首輪を繋ぐのは頑強な鉄のリードだ。 主君たる甲賀弦之介の首を抱えるガウルンに、左衛門はどこまで逆らえるものか……それがおもしろくもある。 「してがうるん。どこへ向かう? ……しがいち、とはまた、奇異なことを申す。 ふん。不知ではあるがそれも仕方なかろうよ。ここは、卍谷とは空気が違いすぎるでな」 と、如月左衛門は尋ねつつ言った。 とりあえずは町に出よう。このような人気も薄い原野では、獲物も見つかりにくいというもの。 市街地に向かうと言っただけで首を傾げる左衛門の馬鹿さ加減に、わずかながらの不安を覚えつつも。 おいおい大丈夫かぁ、と零してガウルンは移動を開始する。 ◇ ◇ ◇ 原野を越え、景色が移り変わると同時に驚愕が生まれた。 立ち並ぶ民家の様は、如月左衛門にとってまさに都……を越える、魔都と称すに値すべきものであった。 彼の知らない言葉で説明するならば、カルチャーギャップ。ここは、左衛門にとっては未来の街並みなのだ。 「なんと。不気味じゃ……まるで土塀の上を歩いておるような……なんと不気味なことか……。 しかしこれはことぞ、がうるん。おれの忍法は粘度の良い泥がかなめゆえ、このような地面では。――」 と、如月左衛門は地面の感触を確かめつつ言った。 彼が土塀のようと言い表す足元の石畳は、現代においてはアスファルトという名を持つ。 雨天時の泥寧化や乾燥時の砂塵、車両の走行等に耐え得るための一般的な舗装であり、日本では珍しいものでもない。 この男、ジャパニーズ・ニンジャと思いきや辺境の原住民かなにかなのか……、とガウルンは頭を抱えた。 たしかにこのような硬い地面では、左衛門の言うとおり変顔の忍法も役立たずとなるだろう。 だからといって騒ぎ立てるほどのことでもない。泥土が必要になったらば、そのつど町から出ればいいだけのこと。 ゆえに市街地の中心までは足を伸ばさず、山のふもと辺りでの活動を徹底する、とガウルンは説いた。 「ほほう……いや、それならば文句もない。多少は窮屈でもあるがの、そこは我慢しようかい。 物見遊山としゃれこむわけではないが、いやはやこれほどの奇観、めったに拝めはしないだろうよ」 と、如月左衛門は周囲を物珍しそうに眺めながら言った。 なんという田舎者だろうか。世界各地を渡り歩いてきたガウルンとて、これほど妙な男は見たことがない。 いや、この反応はもはや異常ですらある。まるで、生まれてきた時代を間違えたかのような……。 ……と考えたところで、所詮は些事。 いずれは殺す、その程度の男なのだから、彼の生まれに疑問を抱いたところで甲斐もない。 大切なのは殺すまでの間、この男をどう御するか。左衛門の忍法は、ガウルンの趣向にとてもよく合う。 彼の顔を利用し、カシムや千鳥かなめを欺き、そして生まれる反応が、ガウルンは見たくて見たくて仕様がないのだ。 その一瞬のためならば、多少は面倒であっても狂犬を飼い馴らすこと躊躇わない。 それほどのサディストなのである、このガウルンという男は。 まず手にかけるは、カシムか千鳥かなめか、それとも御坂美琴や例のガキと面識を持つ者か。 想像するだけで下卑た笑いが滲み、気分が高揚してくる。 「殺すのはかまわんが、顔を潰しはせんでくれよ。深い傷などあればまこと厄介なものでな。 いや、元来のものであるならかまわん。しかし化けるのが目的とあらば、気をつけるべきぞ」 と、如月左衛門は忠告として言った。 変顔の術理は聞いた。万が一額に穴でもあけてしまえば、それすらもかたどってしまうのが左衛門の忍法。 多少の傷ならば泥土で型を作る際に修正できるだろうが、大きなものとなると厄介なのは容易に想像がつく。 カシムなどは元々生傷の耐えない男であり、顔にも傷があったが、逆にそれすらもかたどれることを称賛するべきだろう。 「すぐに殺すのもまずい。声はもとより、しゃべりかたの癖なども覚えておかねばならぬからな。 顔を変える。――これのみならば容易なものじゃが。縁者を欺くともなれば、さらに心得る必要があろうな」 と、如月左衛門はしつこくも忠告として言った。 この時代錯誤の男に、カシムや千鳥かなめの喋り方を一からレクチャーするというのも骨が折れる。 理想としては、標的を捕らえ、左衛門の目の前でいくらか喋らせてから息の根を止める。といったところだろうか。 「別に死人でなくともよいぞ。寝込みをさらい、泥土に顔を埋め型を取るでも良し。そこは任せる。 ふっ、目覚めたところで瓜二つの顔があるともなれば、何者も奇声を上げずにはいられなんだろうよ」 と、如月左衛門は付け加えて言った。 名も知らぬ輩ならともかく、カシムや千鳥かなめをすぐに殺してしまうというのも惜しい。 どうせならばたっぷりと怨嗟の声を上げさせ、その身を堪能しつくした上で殺したいものである。 「してがうるん。このままあたりを練り歩き獲物を探すか? それともなにかあてがあるか? はしっこ……とな。ふうむ、弦之介様を葬ったあの壁か。たしかに気にかかるしろものではあるが」 と、如月左衛門は西の方角を見やりつつ言った。 ガウルンたちがいるこの場所は、地図で確認すれば南西の端――すぐ隣に黒い壁が聳える地区である。 一見して人の立ち寄ることも少なそうな地域ではあるが、ガウルンはここで待ち伏せするのも良しと考えた。 なにしろこの会場は絶海の孤島というわけではなく、黒い壁とやらも遠目では夜空にしか映らないのだ。 ならば誰かしらがこう考えるはずである――西へ抜ければ、この場から脱出できるのではないか。 火事場から逃げ延びようとする野うさぎをしとめる。簡単なダック・ハント。 夜が開け、日が昇れば黒い壁も存在感を表し始めるだろうから、狩るなら夜間のほうが都合がいい。 待ちの戦法は正直退屈ではあるものの、それも朝までと考えれば苦ではない。 それまでは―― 「いや、まことあっぱれな男よな。少々、おぬしにも興味が湧いてきた。どうじゃろうがうるん。 弦之介様の首を返さんか? なに、即座に斬りかかろうことなんぞあるまいて。おれはおぬしを買うておる」 ――傍らの復讐心に滾る男を、せいぜい手懐けておくとしよう。 【E-1/一日目・早朝】 【如月左衛門@甲賀忍法帖】 [状態]:胸部に打撲 ガウルンに対して警戒、怒り、殺意 [装備]:マキビシ(20/20)@甲賀忍法帖、白金の腕輪@バカとテストと召喚獣 [道具]:デイパック [思考・状況] 基本:自らを甲賀弦之介と偽り、甲賀弦之介の顔のまま生還する。同時に、弦之介の仇を討つ。 1:当面はガウルンに従いつつも反撃の機会をうかがう。 2:弦之介の生首は何が何でもこれ以上傷つけずに取り戻す。 3:弦之介の仇に警戒&復讐心。甲賀・伊賀の忍び以外で「弦之介の顔」を見知っている者がいたら要注意。 [備考] ※ガウルンの言った「自分は優勝狙いではない」との言葉に半信半疑。 ※少なくとも、ガウルンが弦之介の仇ではないと確信しています。 ※遺体をデイパックで運べることに気がつきました 【ガウルン@フルメタル・パニック!】 [状態]:膵臓癌 首から浅い出血(すでに塞がっている)、全身に多数の切り傷、体力消耗(中) [装備]:銛撃ち銃(残り銛数2/5)、IMI デザートイーグル44Magnumモデル(残弾7/8+1) [道具]:デイパック、支給品一式 ×4、フランベルジェ@とある魔術の禁書目録、甲賀弦之介の生首 [思考・状況] 基本:どいつもこいつも皆殺し。 1:夜が明けるまでは待ち伏せしに徹し、会場の端から逃げようとする者を襲撃する。 2:千鳥かなめと、ガキの知り合いを探し、半殺しにして如月左衛門に顔を奪わせる。 3:それが片付いたら如月左衛門を切り捨てる。 4:カシム(宗介)とガキ(人識)は絶対に自分が殺す。 5:左衛門と行動を共にする内は、泥土を確保しにくい市街地中心には向かわないにようにする。 [備考] ※如月左衛門の忍法について知りました。 ※両者の世界観にわずかに違和感を感じています。 ※弦之介の首なし死体は黒い壁の向こう側に葬られました。 投下順に読む 前:泥の川に流されて 次:SIDE BY SIDE 時系列順に読む 前:泥の川に流されて 次:SIDE BY SIDE 前:丑三つ時(――苦死満つ刻――) ガウルン 次:リアルかくれんぼ 前:丑三つ時(――苦死満つ刻――) 如月左衛門 次:リアルかくれんぼ
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第196話:下手な嘘 作:◆I0wh6UNvl6 『さっきのあれは……』 荷物をまとめて出発しようとしているとき、しずくの頭の中には引っ掛かるものがあった。 普通の人間なら見えなくて当然の距離だったが、生憎彼女は人間ではなかった。 『さっきのあれは……BB?』 進路を決めていたとき、遠く離れた空に微かに見えたもの、彼女から見てそれは確かにBBだった。 「どうかしたのしずく? さっきから変よ?」 かなめが声を掛ける、すぐ後ろにはオドーもいた。 「いえ……なんでもありません」 こんなことを話しても意味はない。 しずくは黙っておくことにした。 「あんた嘘が下手ね。話してみなさいよ、黙ってたっていいことないわよ」 少し考えてから、しずくは話すことにした。 さっき北の空に何かが見えたこと、それが彼女の探していた人物に見えたことを。 「そう……」 かなめは話を聞き終えると、オドーの方向き直って言った。 「ねえオドーさん、あたし実はさっきの戦闘のとき足を挫いちゃったの、それで……」 「おまえも、おまえも嘘が下手だ、かなめ」 オドーが少し笑いながら言った。 「かなめさん、オドーさん!」 自分のただの勘のために危険な道を歩かせるわけにはいかないと思い、しずくは止めようとした。 だがその言葉をかなめが遮る。 「しずく、たまには勘で動くのもいいものよ」 にっこりと笑っていう。 「それに、いざとなったらオドーさんが守ってくれるしね」 自分が足手まといになったときには自ら命を絶つつもりだ。 という言葉は言わなかった。 「ああ、ああ安心しろ、お嬢さん方を守るのは私の、私の役目だ」 オドーからも頼もしい言葉が発せられた。 「かなめさん、オドーさん……ありがとう」 心から感謝の礼を述べた。 「さて、行きましょうか」 かなめが出発の声を掛ける。 そして3人は北へ向かった、その先に待ち望んだ再会のあることを信じて。 【H-1神社付近一日目6 10】 【正義と自由の同盟】 残り94人 【しずく】 【状態】機能異常はないがセンサーが上手く働かない。 【装備】エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん) 【道具】荷物一式 【思考】オドーとかなめに感謝、BBを追う。 【行動】E1経由で中央部へ 【千鳥かなめ】 【状態】いたって健康。 【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード、団員の特殊装備) 【道具】荷物一式 【思考】しずくの勘を信じる、宗介、テッサに会いたい。 【行動】E1経由で中央部へ。 【オドー】 【状態】健康 【装備】アンチロックドブレード(戯言シリーズ) 【道具】デイバック(支給品一式) 【思考】しずくの勘を信じる、協力者を募る、知人との合流、二人を守る。 【行動】E1経由で中央部へ。 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第195話 第196話 第197話 第189話 時系列順 第222話 第189話 しずく 第219話 第189話 千鳥かなめ 第199話 第189話 オドー 第219話