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アルゲス 作品名:いづれ神話の放課後戦争 使用者:神仙 天華 いづれ神話の放課後戦争に登場する防具。 装神具の一つ。形状はドレス。 ゼウスの持つ「光輝」の鎧。 防具についての詳細来歴 完全消失現象 ラグナロクフォーム終末の焔を纏ったアルゲス テュポーンの権能 元ネタ 関連項目 関連タグ リンク 防具についての詳細 来歴 ゼウスの持つ「光輝」の鎧使用者はドレスに作り直している。 あのドレスは何なのかと思っていたが。 まさかアイギスを傘にしたように、アルゲスをドレスに仕立て直していたとは……いや、 そうする意味はない気がするが。 完全消失現象 触れたものを消滅させる触れたものは物質・エネルギー全てを消滅させられる。 どんな優れた防弾チョッキも、銃撃による「衝撃」は消せない。 それは鎧だろうが楯だろうが、防具ならみな同じだ。 だが、アルゲスにはそれがない。 銃弾も黄金剣も触れた端から威力を失い、灰となってしまう。 物理法則を無視した完全消失現象。 ラグナロクフォーム 終末の焔を纏ったアルゲス ブリュンヒルデから受けた終末の焔を取り込んだ姿ドレスから終末の焔が舞い、小さな火の粉にも完全消滅能力が備わっている。 あの黒い焔は、おそらくブリュンヒルデから奪ったラグナロクの焔だ。 あれをアルゲスのドレスに織り込むことで、絶対焼失現象をドレスの着衣部分だけでな く、黒焔まで付与したのか……!? テュポーンの権能 ギリシャ神話における「終末」としてテュポーンの属性が加わったテュポーンが生んだとされる怪物を召喚できる。作中ではオルトロス、ケルベロス、ヒュドラ、キマイラ、ネメアの獅子、ラドゥーン、クロミュオーンの牝猪、ゴルゴーン、スフィンクス、スキュラを生んだ。 「アンタの焔を取り込んだ結果、アタシにはギリシャ神話における終末の象徴テュポーン と同じ属性が備わった。これはアタシにも予想外だったけれど」 元ネタ アルゲス(Arges) ギリシャ神話に登場する防具。 天空神ゼウスが纏う鎧であり雷光雷火を放つとされている。 ゼウスとカドモスの娘セメレーがまぐわってディオニュソスを身籠った時、ヘラの奸計によりゼウスはセメレーにこの鎧を纏った真の姿をみせざるを得なくなった。 この鎧から放たれる雷光によってセメレーは焼かれてしまい、ディオニュソスだけが残ったという。 関連項目 アイギス 使用者の別の装神具。 ゼウスの権能 唯一神の権能 使用者の持つ権能。 雷霆 神の如き憤怒の一撃 使用者のレガリア 関連タグ いづれ神話の放課後戦争 ドレス 召喚 召集召喚 消滅 炎 神炎 神鎧 鎧 防具 リンク Wikipedia セメレー
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さ行 名前 原作 出演物語数 西行寺幽々子 東方Project 1 サイタマ ワンパンマン 2 斎藤一 るろうに剣心 3 斎藤一(薄桜鬼) 薄桜鬼 ~新選組奇譚~ 1 サイバーエンドドラゴン 遊戯王GX 1 裁判長 逆転裁判 2 サイレント・マジシャン LV8 遊戯王 1 サヴァン Sound Horizon 1 サウザー 北斗の拳 3 サウロン 指輪物語 2 サウンドウェーブ トランスフォーマー 2 早乙女アルト マクロスフロンティア 2 境井仁 Ghost of Tsushima 2 榊遊矢 遊戯王ARC-V 3 サカキ ポケットモンスター 赤・緑・青・ピカチュウ 2 坂崎孝太郎 カイジシリーズ 1 坂田銀時 銀魂 3 鷺沢文香 アイドルマスターシンデレラガールズ 1 ザクⅡ 機動戦士ガンダム 2 桜あかり ジュエルペットてぃんくる 1 桜井 女に惚れさす名言集 1 桜井小蒔 東京魔人學園伝奇 1 佐倉杏子 魔法少女まどか☆マギカ 1 桜小路ルナ 月に寄りそう乙女の作法・乙女理論とその周辺 2 桜田ジュン ローゼンメイデン 4 桜ノ宮苺香 ブレンド・S 1 サー・クロコダイル ONE PIECE 2 ザコプロくん 実況パワフルプロ野球 1 サザビー 機動戦士ガンダム逆襲のシャア 1 沙慈・クロスロード 機動戦士ガンダム00 1 蠍 アラクニド 1 サタンガンダム SDガンダム 1 ザップ・レンフロ 血界戦線 1 佐藤和真 この素晴らしい世界に祝福を! 1 里村紅葉 fortissimoシリーズ 1 真田明彦 ペルソナ3 1 真田昌幸 真田丸 1 ザナドゥ THE KING OF FIGHTERS 1 サーニャ・V・リトヴャク ストライクウィッチーズ 1 サバタ・ヴァンクリフ ジャバウォッキー 1 佐原 カイジシリーズ 1 サーバル けものフレンズ 7 サービスマン ボボボーボ・ボーボボ 1 サボテンダー ファイナルファンタジー 1 サボロー 企業・ご当地キャラクターその他 4 さまようよろい ドラゴンクエスト 2 サミュエル・アイザック バイオハザード 1 ザムザ ダイの大冒険 1 左門召介 左門くんはサモナー 1 沙羅 ジュエルペットてぃんくる 1 更識楯無 インフィニット・ストラトス 1 沙耶 沙耶の唄 2 佐山・御言 終わりのクロニクル 1 沢渡シンゴ 遊戯王ARC-V 3 沢渡真琴 Kanon 1 沢村栄純 ダイヤのA 1 沢村将馬 私立ジャスティス学園 1 サンシャイン キン肉マン 1 三世村正 装甲悪鬼村正 1 サンダウン・キッド ライブ・ア・ライブ 1 サンレッド 天体戦士サンレッド 1 シアン 魔界ガチャは今日も渋い 2 紫雲院素良 遊戯王ARC-Ⅴ 1 ジェガン 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 1 ジェシカ うちの奴隷が明るすぎる 1 シエスタ ゼロの使い魔 1 シェゾ・ウィグィィ ぷよぷよ 1 ジェットガルーダ 鳥人戦隊ジェットマン 1 ジェネラル カイザーナックル 1 ジェネラルシャドウ 仮面ライダーストロンガー 1 ジェノザウラー ゾイド 1 ジェノス ワンパンマン 1 ジェームズ・モリアーティ 名探偵コナン 2 ジェリド・メサ 機動戦士Ζガンダム 1アバター シェルビー・M・ペンウッド卿 HELLSING 1 ジェレミア・ゴットバルト コードギアス反逆のルルーシュ 1 シオ WaqWaq 1 ジ・オクトパス キン肉マンII世 1 潮田渚 暗殺教室 1 シオニー・レジス 第二次スーパーロボット大戦Z 3アバター 紫苑(黄忠) 恋姫無双 1 シオン・エルトナム・アトラシア メルディブラッド 1 命令者 ジガ 1 四季映姫・ヤマザナドゥ 東方Project 1 ジーク ゾイド 3 シグナム 魔法少女リリカルなのは 2アバター 時雨(艦これ) 艦隊これくしょん~艦これ~ 2 ジークリンデ・エレミア 魔法少女リリカルなのは 1 茂野吾郎 MAJOR 2 次元大介 ルパン三世 1 志々雄真実 るろうに剣心 2 獅白ぼたん バーチャルYouTuber 1 シスタークローネ 約束のネバーランド 1 シスターリリィ 2ch 1 枝垂ほたる だがしかし 2 シタン・ウヅキ ゼノギアス 1 シック・ヴァラクロロフェノル 回転むてん丸 1 シックス 魔人探偵脳噛ネウロ 3 祇堂鞠也 まりあほりっく 6 シドニー・マンソン 人造昆虫カブトボーグ 1 ジナコ・カリギリ Fate/EXTRA-CCC 1 シナモロール・ルロロマニック(シナモン) サンリオキャラクター 1 死神ディスト テイルズオブジアビス 2 死神博士 仮面ライダー 1 篠ノ之束 インフィニット・ストラトス 1 篠ノ之箒 インフィニット・ストラトス 4 東雲皐月 恋と選挙とチョコレート 3 東雲なの 日常 1 柴崎元治 ローゼンメイデン 1 柴田亜美 ドキばぐ 1 芝村舞 ガンパレードマーチ 1 ジプシー・デンジャー パシフィック・リム 1 渋谷凛 アイドルマスターシンデレラガールズ 1 島風 艦隊これくしょん~艦これ~ 2 島津豊久 ドリフターズ 2 島村卯月 アイドルマスターシンデレラガールズ 10 しまむらくん 2ch 1 ジム 機動戦士ガンダム 7 ジム・キャノン MSV 1 ジム・スナイパー カスタム MSV 1 ジム・ライトアーマー MSV 1 地虫十兵衛 バジリスク~甲賀忍法帖~ 1 志村新八 銀魂 3 シャア・アズナブル 機動戦士ガンダム 3 ジャイロ・ツェペリ ジョジョの奇妙な冒険 1 小牟 ナムコクロスカプコン 1 ジャギ 北斗の拳 1 シャキーン ショボーン派生 1 灼岩 戦国妖狐 2 蛇崩乃音 キルラキル 1 ジャック・アトラス 遊戯王5D's 2 ジャック・ザ・リッパー Fate/Apocrypha 1 シャナ 灼眼のシャナ 2 ジャミトフ・ハイマン 機動戦士Zガンダム 1 射命丸文 東方プロジェクト 1 シャーロット・E ・イェーガー ストライクウィッチーズ 1 シャーロット・カタクリ ONE PIECE 1 シャーロット・リンリン(ビッグマム) ONE PIECE 1 シャンテ・アピニオン 魔法少女リリカルなのは 1 ジャンヌ・ダルク Fate/Apocrypha 2 ジャン・ピエール・ポルナレフ ジョジョの奇妙な冒険 1 ジャン・ミシェル・ロジェ 遊戯王ARC-V 1 ジュウシマツ住職 ダウンタウンのガキの使いあらへんで 1 主人公(デビサバ) 女神異聞録デビルサバイバー 1 シュヴァリエ・デオン Fate/GrandOrder 1 シュヴァルツバルト THE ビッグオー 1 シュヴィ ノーゲーム・ノーライフ 1 酒呑童子 Fate/Grand Order 1 シュドナイ 灼眼のシャナ 3 ジュライ アリアンロッドRPG 3 ジュラル星人 チャージマン研 1 純狐 東方project 1 城ヶ崎美嘉 アイドルマスターシンデレラガールズ 1 少佐 ヘルシング 1 少女 ゲーセン異文化交流 1 少女(deemo) deemo 1 聖徳太子 ギャグマンガ日和 1 祥龍院隆子 ゲーミングお嬢様 1 ジョーカー DC Comics 2 諸葛亮孔明 横山三国志 2 食蜂操祈 とある魔術の禁書目録 1 ジョセフ・ジョースター ジョジョの奇妙な冒険 6 ジョナサン・ジョースター ジョジョの奇妙な冒険 2 ジョニー GUILTY GEAR 1 ジョニィ・ジョースター ジョジョの奇妙な冒険 2 ジョルノ・ジョバァーナ ジョジョの奇妙な冒険 1 白井黒子 とある魔術の禁書目録 3 白石紬 アイドルマスターミリオンライブ 2 白音若菜 逆転検事 1 白菊ほたる アイドルマスターシンデレラガールズ 6 白坂小梅 アイドルマスターシンデレラガールズ 1 不知火 艦隊これくしょん~艦これ~ 1 シリアス アズールレーン 2 シリカ ソードアートオンライン 1 シルヴィ 奴隷との生活 -Teaching Feeling- 2 ジル・ド・レェ Fate/Zero 1 シルバーカラス ニンジャスレイヤー 1 シレン 風来のシレン 1 白鐘直斗 ペルソナ4 1 ジン 名探偵コナン 2 シン・アスカ 機動戦士ガンダムSEED DESTINY 2 「深淵歩き」アルトリウス DARK SOULS 6 深淵の監視者 DARK SOULS 1 ジン=ガニス ロクでなし魔術講師と禁忌教典 2 真紅 ローゼンメイデン 1 真ゲッター1 ゲッターロボ 1 真月零(ベクター) 遊戯王ZEXAL 1 シンシア・レーン OVERMANキングゲイナー 1 新条アカネ SSSS.GRIDMAN 1 神条紫杏 パワプロクンポケット 1 新城直衛 皇国の守護者 3 人造人間16号 ドラゴンボール 1 人造人間18号 ドラゴンボール 2 人造人間サイコショッカー 遊戯王 1 真ドラゴン 真! ゲッターロボ世界最後の日 1 陣内栄 サマーウォーズ 1 陣内克彦 神秘の世界エルハザード 1 心内療 マンガで分かる心療内科 1 神野明影 相州戦神館學園八命陣 2 シン・メーン・アルティエン モンスターコレクション 2 真理 鋼の錬金術師 2 人狼女王テュレンヌ 境界線上のホライゾン 1 瑞鶴 艦隊これくしょん~艦これ~ 1 水銀燈 ローゼンメイデン 5 水月 ガンハザード 1 翠星石 ローゼンメイデン 3 水霊使いエリア 遊戯王OCG 1 枢斬暗屯子 激!!極虎一家 2 周防達哉 女神異聞録ペルソナ2 1 蘇芳・パヴリチェンコ DARKER THAN BLACK 6 須賀京太郎 咲-saki- 3 杉元佐一 ゴールデンカムイ 1 杉本鈴美 ジョジョの奇妙な冒険 1 少名針妙丸 東方project 2 スグリ スグリシリーズ 8 ズ・ゴオマ・グ 仮面ライダークウガ 1 スコープドッグ 装甲騎兵ボトムズ 1 スコール・レオンハート FF8 2 スーシィ・マンババラン リトルウィッチアカデミア 1 鈴園沙衣 カガクチョップ 3 鈴原るる バーチャルyoutuber 4 涼水玉青 ストロベリー・パニック 3 涼宮ハルヒ 涼宮ハルヒの憂鬱 3 スズラン アークナイツ 1 スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 遊戯王ARC-V 1 スタンク 異種族レビュアーズ 1 ステイル・マグヌス とある魔術の禁書目録 1 ステラ・ヴァーミリオン 落第騎士の英雄譚 1 ストーカー 機動武闘伝Gガンダム 1 ストレイト・クーガー スクライド 1 ストロング・ザ・武道(ザ・マン) キン肉マン 2 スパイダーマン MARVEL Comics 2 昴 hack//SIGN 1 素晴らしきヒィッツカラルド ジャイアントロボ 1 スペクター 遊戯王VRAINS 1 皇まとい 装神少女まとい 1 スライム ドラゴンクエスト 3 スレイ テイルズ オブ ゼスティリア 1 静謐のハサン Fateシリーズ 1 聖羅=シルヴィーン ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件 1 ゼオライマー 冥王計画ゼオライマー 3 世界一腕の立つ殺し屋 新條まゆ作品 1 ゼカリア スーパーロボット大戦 1 関裕美 アイドルマスターシンデレラガールズ 1 セシリア・オルコット IS 1 セシリー・キャンベル 聖剣の刀鍛冶 1 瀬田宗次郎 るろうに剣心 1 セツコ・オハラ スーパーロボット大戦Z 1 殺生院キアラ Fate/EXTRA-CCC 2 刹那・F・セイエイ 機動戦士ガンダム00 1 セディエルク ヴァーレントゥーガ 1 セト UNDER NIGHT INVERSE 1 銭形幸一 ルパン三世 1 セネリオ ファイアーエムブレム 5 ゼファー・コールレイン シルヴァリオシリーズ 1 蝉 魔王 JUVENILE REMIX 2 世良水希 相州戦神館學園八命陣 1 芹沢あさひ アイドルマスターシャイニーカラーズ 1 芹沼花依 私がモテてどうすんだ 1 セルゲイ・ヴィルコフ 遊戯王ARC-V 1 セレナ ポケットモンスター 1 ゼロ コードギアス反逆のルルーシュ 1 零崎人識 戯言シリーズ 1 ゼロ・ナイトブレイド BLADE METAL ZERO 1 禪院扇 呪術廻戦 1 禪院直哉 呪術廻戦 2 千川ちひろ アイドルマスター 5 戦艦大和 乗り物・メカ 1 戦艦レ級 艦隊これくしょん~艦これ~ 5 センシ ダンジョン飯 1 千手扉間 NARUTO 1 戦場ヶ原ひたぎ 化物語 2 先代巫女 東方Project二次 1 先導アイチ カードファイト!!ヴァンガード 1 閃刀姫-レイ 遊戯王OCG 1 閃刀姫-ロゼ 遊戯王OCG 3 せんとくん 企業・ご当地キャラクター 1 戦慄のタツマキ ワンパンマン 1 砕蜂 BLEACH 1 蒼星石 ローゼンメイデン 1 蒼竜神マヴェル 企業・ご当地キャラクターその他 3 ソニックスタッグ メダロット 1 ソニックブーム ニンジャスレイヤー 1 園川モモカ さばげぶっ! 1 園崎魅音 ひぐらしのなく頃に 1 ソーニャ キルミーベイベー 1 ゾーマ ドラゴンクエスト 2 ゾビロ ミタマセキュ霊ティ 1 ソフィー・トワイライト となりの吸血鬼さん 1 空崎ヒナ ブルーアーカイブ 1 ソラ スグリシリーズ 1 ソラス 千年戦争アイギス 1 ソラール DARK SOULS 1 ソリッド・スネーク メタルギア 2 雪車町一蔵 装甲悪鬼村正 1 ゾルフ・J・キンブリー 鋼の錬金術師 1 ソロモン Fate/Grand Order 1
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名称 成長 必要 初期 MAX 備考 攻撃 特攻 攻撃 特攻 アイギスの盾 普 20 早 12000 8128 晩 アイギスの氷盾【氷】 普 20 早 晩 サターンローブ 普 18 7347 10848 早 晩 ダイヤシールド 普 16 3072 2048 早 晩 9696 6566 デーモンシールド 普 14 2688 1792 早 晩 8496 5754 氷狩虎の兜【氷】 普 14 2688 1792 早 晩 忘却の鎧 普 18 3456 2304 早 晩 10896 7379 忘却の熱鎧【炎】 普 18 早 晩 10896 7379 マーブルメイル 普 12 2304 1536 早 晩 妖冠リリス 普 15 早 晩 ローランメイル 普 18 3456 2304 10848 7347 早 晩 ローランアースメイル【地】 普 18 3456 2304 10848 7347 ガチャ 早 晩 10896 7379 ローランアースメイル【地】 普 18 13017 8816 属性進化 早 晩 13075 8854 コメント 名前 コメント
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昨日 - 今日 - 【資料】NHK JAPANデビュー第2回『天皇と憲法』をめぐって シリーズ JAPANデビュー 第2回『天皇と憲法』 2009年5月3日(日) 午後9時00分~10時13分 総合テレビ (再放送)2009年5月6日(水)午前0時45分~1時58分(5日深夜) 総合 第1回についてはこちら あらすじ 日本が近代国家の骨格ともいうべき憲法を初めて定めてから120年。大日本帝国憲法は、プロイセン憲法などを参考に「立憲君主制」を採り、当時の世界からも評価されていた。しかし、19世紀帝国主義から第一次世界大戦を経てうねる時代の流れの中で、日本はその運用を誤り、立憲体制を瓦解させてしまう。一つは、議会を担う政党が党利党略に走って政策や理念を忘れ、軍部の肥大化を助長したことに原因がある。さらには、天皇を絶対視する思想が先鋭化し、統帥権を盾に取った軍部が政治を主導していったことが挙げられる。 國學院大學には、憲法起草者の法制官僚井上毅(いのうえ・こわし)が残した6000点を超える資料が保存されている。ドイツなど諸外国に残された資料も掘り起こし、どのように大日本帝国憲法が制定されたかを分析。さらに、政党政治の自滅と天皇絶対主義の国体論の激流を、これまで紹介されていない資料によって描き、大日本帝国憲法下の政治体制がどのように崩壊したかを検証していく。番組には、京都大学の山室信一教授、東京大学先端科学技術研究センターの御厨貴教授、評論家の立花隆さん、の3人の論客が出演。 http //www.nhk.or.jp/special/onair/090503.htmlより 参考ブログ 【NHKスペシャル】「JAPANデビュー」第2回「天皇と憲法」を見た JAPANデビュー 第2回 天皇と憲法 への疑問 「JAPANデビュー 第2回 天皇と憲法」 NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー 第2回「天皇と憲法」を見ました。 明治天皇制はなぜ崩壊したのか NHK「JAPANデビュー第2回 天皇と憲法」 別冊「東京帝大が敗れた日」東大生が体験した「8月15日」 天皇と東大:目次 放送予告:NHKスペシャル シリーズ「JAPANデビュー」 15年戦争資料庫
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コラム10:戦争と記録遺産 p163 ■コラム10■戦争と記録遺産 「宇宙からエイリアンがやってきて,大きな磁石で地球を包むと,人類の文明は一瞬のうちに失われるよ」 これは,5年ほど前,沖縄関係の映画フィルム収集の件で複製会社に相談した際,S社長が私に言った言葉だ。 近年,同社が受注するドキュメンタリー・フィルムの製作は,安価で編集しやすいデジタルが主流で,昔のような35ミリのロール・フィルムはすっかり影を潜めてしまったそうだ。しかし,デジタル記録は,紙やロール・フィルムなどと違って,データの一部が少しでも壊れると記録を再生することができなくなることから,近年のデジタル化の傾向を人類の記録遺産の継承という点で嘆いていたのである。 「エイリアンと電磁波……?」その話を聞いて,映画『インディペンデンス・デー』のシーンを想い浮かべた私だったが,「しょせん,空想の世界……」と,その話はいつしか記憶の彼方へと消えていた。 ところが,先のイラク戦争で,はっとさせられるニュースが目に留まった。米軍が戦争の実戦で初めて「電磁波爆弾」を使用した可能性があるというのだ。この爆猟とは,目標に向けて発射されたミサイルから高エネルギーの電磁波を放射することによって,コンピュータや電話など電子・通信機器を使用不能にし,相手の指揮系統を麻碑させるというものだ。エイリアンこそ登場しないものの,S社長の言っていた電磁波攻撃が,現実のものとして存在することに驚いた。電磁波爆弾の効果が報道されたとおりであれば,パソコンなどに保存されたイラク政府の記録の多くが失われてしまったことだろう。 イラクと言えば,約5,500年前に最初の文字を発明し,人類の歴史を拓いたメソポタミアの地だ。かの地の人々は,神殿へ奉納する家畜や穀類などの種類や数をやわらかい粘土板に刻み,乾燥させて保存し,いわゆる人類最初の公文書も残している。ところが,今回の戦争では,各地の博物館が略奪に遭い,この粘土板を始めとする数十万点の考古学資料や展示品などが一瞬にして消え去ってしまった。 我々は一般的に,歴史とは先人が長年にわたって培ってきた,目には見えない何かで,それを引き継ぎ,積み重ねていくことはあっても,すでにある歴史を矢うことはない,と考えがちだ。しかし,実際には,記録が無くなれば歴史も存在しない。 核兵器や電磁波爆弾など,人類の遺産一瞬に消減させることのできる武器が存在する今日,それらによって「先史時代」に後戻りする可能性もないとは言えない。べトナム戦争以来の本格的な戦争である今回のイラク戦争は,人命のはかなさとともに歴史のはかなさをも思い知らされる戦争である。 〔2003年6月「アメリカ通信No.11」〕 書籍「アメリカ国立公文書館徹底ガイド」
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「戦争を知っていてよかった」 曽野綾子 新潮社2006.6.15 「新潮45」h15.1~17.3 戦争を知っていてよかった 世の中のすべてのことは―時には病苦でさえ―知らないより知っていた方が重厚な人間を創るものだが、戦後の日本には、あくまで知らない方がいい、という信念に囚われたものがたくさんあった。 病気はその一つで、これだけは確かに、人間を創るから病気にかかる方がいいという発想はどこにもない。 しかしそれ以外のことは、求めて悪い状態を体験することはないが、自然にそうなってしまった場合は、充分にその意味を評価する道が残されている。貧乏、親との死別、失恋、勤め先の倒産。どれもない方がいいが、そうなればなったで、その体験が別の人間を完成するきっかけになることが期待できる。 知らない方がいい、という信念の元に扱われた第一のものが戦争である。戦後、日本にはまともな軍事学も発達しなかった。孫子の言う「彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」という知恵も定着しなかった。しかし今度アメリカのイラク侵攻を見ながら、私個人は戦争を死っていてよかった戦争を体験として知っていてどんなによかったか、としみじみ感謝したのである。 私は十三歳の時に大東亜戦争の終戦を迎えた。その前に、アメリカの爆撃を受けて、東京が焦土になる姿を見た。知人の青年たちが、戦場から二度と帰らなかった現実の無残さを知識としてではなく体験として知った。 空腹、栄養失調、個人的・社会的貧困、女子工員の生活、アメリカ軍の進駐、戦後復興の姿も私小説的に見た。体験が明確な記憶に組み込まれる年頃になっていて幸いであった。ここ数カ月の間に私はあらゆるマスコミやいわゆる「その道の通」の友人たちから、イラク侵攻に予想される裏話を聞かせてもらい、読み続けて来た。どれも政治や経済にうとい私にとっては、眼の覚めるような貴重な知識であった。しかし同時に私は戦争を体験したおかげで、戦争について言われるさまざまな話に迷わされなくて済んでいる面もあることを感じた。 たとえば民間人を巻き込まない戦争などというものがあり得るという言い方ほどおかしなものはない。アメリカが敵とするのはサダム・フセインとその息子たちの政権であって、戦争は一般人を巻き込むものではないとアメリカ側は開戦前から言い、民間人の犠牲者が出たことは国際世論でも大きな非難の理由になっている。その時私は密かに思ったものだ。それならアメリカはCIAの名において、サダムに対して向こう何十年でも執勘に刺客を放つ宣言をし、それを実行に移す方が、確実に民間人を巻き込まなくて済むというものではないか? 一九四五年当時でも、戦争はあらゆる民間人を巻き込んだ。広島・長崎は非戦闘員を当然傷つけることを予測した攻撃ではなかったか。先日、当時十歳前後だった「往年の子供たち」(今はかなり年をくったおじさん・おばさんたち)が数人集まって空襲の話をしたのだが、アメリカの油脂焼夷弾は、火のついた油の飛沫が建物や人間にべたりと貼りつくもので、人間は生きながら火達磨になったという。 私の知人は一九四五年の三月九日夜の東京大空襲で焼け出された翌朝、隅田川にかかる橋の一つを渡る時、無数の小さな雪のようなものが、風に乗ってさらさらと足元に流れて来るのを見た。初めは気がつかなかったが、やがてそれは人間原の骨片であることがわかった。その夜を含めて、東京では十万人以上もの民間人が焼死したのである。そうした結果をアメリカが予想できなかったはずはない。つまり今とは比べものにならないほどの素朴な構造の武器しかなかった時代から、戦争は常に巻き添えになって殺される人も出ることを意味していた。 もし戦争がピンポイントで、敵の大統領官邸や作戦司令部だけを完全に制圧できるものなら、そして民間人には少しも被害なしで済むなら、戦争はお互いに納得した「戦争のプロ」同士の、西部劇の一騎討ちと同じで、少しも悪いものではないではないか。戦争が悲惨なのは、戦う意志も方途も持たない民間人が必ず巻き込まれるからなのだ。だからイラクで子供が負傷するのも女性が殺されるのも、それは第一にその国の長であるサダムの責任であり、次に他国に侵攻したアメリカの責任である。 大東亜戦争の時、国民はすべて大本営発表という報道管制下に置かれていた。そこで知らされたのは、すべて敗北を隠した偽りの発表であったが、それは程度の差こそあれ宣伝戦というものとしては当然のことだと私は今でも思う。もし戦時の発表が冷静で自制的で正直に真実だけを伝えるものなら、この点でも戦争は悪くないものであろう。 戦争は戦いなのだから、欺瞞と威嚇が基礎なのだ。エリマキトカゲだって、敵を打ち負かそうとして、エリマキの部分(あれは本当は何の部分なのだろう)を広げる。現実以上に自分の力を大きく錯覚させるのが戦いの常道だ。戦いだけでなく、政治も外交も、この欺瞞なしにやれることではないだろう。だから戦争における欺瞞にいちいち怒ることはないのである。 それにしても大東亜戦争の頃、私たちは(子供だったせいもあるが)相手の国について何も知らなかった。私の夫は開戦の時、中学四年生だったが、同級生に船会社の経営者の息子がいた。宣戦布告の翌日、夫はこの友人からアメリカと日本の船舶保有量の統計を見せられて、この戦いは負けると思った、という。しかしそんな客観的判断の資料を与えられていた日本人は当時例外中の例外であった。 アメリカがバグダッドに侵攻する前に、民兵の服(私服)を着た初老に見える男が、銃を片手にテレビのカメラマンに向かって、「バグダッドは死守する、アメリカは必ず負ける」と根拠のない明るさで決意を述べていたが、私たちはまさに同じ顔をして日本には神風が吹くから必ず勝つのだ、と確信し、割烹着を着て愛国婦人会のたすきを掛けたおばさんたちも、イラクの民兵と同じことを喋っていたのだと思う。 しかし私はごく最近にいたるまで、アメリカには(日本と違って)優秀なアラビストがたくさんいて、かなり現実を知って開戦に持ち込んだ、と考えていたのである。もちろん知っていたから、その通りにするということではない。しかし少なくとも「自由社会の指導理念」「公的見解」「表面上の理由」としてアメリカが述べた侵攻の理由、サダム政権後のイラク、のイメージが、あまりにも単純で現実離れしたものであり、恐らくアラブ通の間では全く通用しないものだろうと思われることに、私は煩悶している。 アメリカは、最初から繰り返しイラク国民を残虐なサダム政権から解放し、イラク国民を民主化し、真の自由の尊さを教えるために戦っているのだ、としている。しかしもしまともなアラビストがこの計画に噛んでいたなら、このような見解が、イラクに住む人々の「習憤と体質」「好みと安定」を反映するものではないことを強調しただろうと思う。 二〇〇三年四月五日には、アメリカはバグダッド国際空港を一応制し、ジャーナリストたちの質問は急にサダム以後の人道支援・暫定政権をどうするか、ということに移行した。アメリカはクルドと結んで、クルド地区への侵攻をたやすくしたから、クルド人たちがアメリカ軍を歓迎して笑ったり踊ったりする光景も放映されたのである。 しかしクルドもしたたかな人々だ。クルドはサダムに一九八八年に化学兵器で約五千人とも言われる人々が虐殺された歴史を持っている。アメリカに近づいて来たのは、「敵の敵は味方」という最も普遍的で単純な力の原則に則っているだけだ。アメリカが必要なくなれば、「金の切れ目が縁の切れ目」である。これはアフガニスタンでもイラクでも同じことだ。 アフガニスタンの時に私が初めて知ったのは、あちこちに群雄割拠していた部族の長たちのことを英字新聞が「ワーロード」と表現したことだった。ワーロードは「揶揄的な意味での将軍」だということになっている。つまり一番適切な日本語の訳は清水次郎長のような「親分」である。 民主主義が存在し得ない土地では―その理由は後に述べる―部族支配がその代行をするのは、全世界で見られる自然な成り行きである。アラブ国家の中でも、例外的にエジプトなどのように地中海文化圏に属し、長い年月の間に西欧的国家経営の理念と現実とに触れた国は別として、多くのアラブ国家の民衆は、現在も民主主義ではないし、またそれを本気で目指してもいない。百年、二百年先の遠い未来はわからないが、数十年で民主的国家が形成されるとは到底思えない。彼らにその能力がないというのではない。日常生活の中でそうした政治形態は全くそぐわないからである。 戦後のアフガニスタンに、西側は多額の金を出したが、あの金は一体どういう形でどこへ行ったか。忘れっぽいマスコミはこの頃アフガニスタンの状況をほとんど報道してくれないから、私たちにはわからないのだが、アフガニスタンで俄にインフラの整備もよくなり、放牧民的生活の中に、日本やアメリカ型の文化生活が進んだという話は、私たちの耳にはあまり入って来ていない。もちろん一部の金は、学校建設、道路の復旧、医療設備の改善に使われたであろう。しかし大部分の金は、部族の族長たちに配られて儲けになったはずだ。誰もが配分には決して満足してはいないだろうが、何しろいい儲けにはなったのだから、今のところはじっとしている。 当時アメリカからカルザイという不思議な人物が突如として出て来た。恐らく彼はアメリカの利権の代表者としてひっぱり出されたのだろうと皆思っているが、とにかくあの時アメリカから最も多くの金を引き出せるのは、グッチのデザインによる「民族どてら」をこざかしく着ているという噂のカルザイ以外にいなかったのだから、と、現実主義者の親分たちは仕方なく呑んだのだと識者たちは見ている。親分たちの関心は、つまり自分たちの部族にいくら分け前が廻って来るか、ということだけだ。彼らは常に分け前を多くくれる人に付くから、その同盟の構図は流動的である。そして多くのヨーロッバの国々とアメリカとソ連は、そうした力関係の中で「旦那」になり続けることに、多かれ少なかれ失敗して来ているのである。 アメリカにとって、日本に民主主義が定着したということは、判断を大きく狂わせる元になったと私は思うことがある。それはアメリカが自分流の民主主義を、ほとんど実験的に他の国家に植えつけた外交政策の奇蹟的成功例だったのだ。理由は二つある。 第一に、日本には国民全体にもう数百年間にわたる基礎教育があった。幕末の頃の日本人の識字率は恐らく世界最高であったろう。 第二に、戦後の日本は、初めに火力、次に水力で、国中に安定した良質の電力を供給することに成功した。既に達成されていた初等教育のおかげで、日本では電力整備を達成することが、制度的にも技術的にも意識的にも可能になっていたのである。 一九三〇年代には既に多くの家にラジオがあった。ラジオを持っている人は御自慢で大きな音でそれを鳴らしたから、木と紙でできた日本の家屋からは容易にその音が漏れ、隣近所でラジオを持っていない人もそれを聞いてラジオの恩恵に浴した。当時のねじ式の時計は一日に五分くらいは平気で狂ったが、ラジオが正午の時報をポーンと鳴らせば、人々は律儀に時計の針をなおせた。こうした電力の普及が、戦後の日本の工業化、近代化、民主化を底辺から可能にした。一方、いつも私が言うことだが、安定した良質の電気が供給されていない土地には民主主義はあり得ないから、彼らは昔ながらの族長支配の下で暮らすことを守られていると感じて来たのである。 イラクには国の隅々にまでは電気がないから、人々は民主主義というものを知らないに等しいし、またその欲求もないだろう。民主主義がなければ、自動的に族長支配が機能し、族長によって人々は安全を守られている。 歴代の族長たちと比べて、サダムがどれほど「悪い支配者」だったか、私には充分な知識がない。しかしそもそも慈愛に満ち、部族民に湿情で接し、自分も部族民と苦楽を共にした族長などというものの存在はなかったはずだ。程度の差こそあれ、族長は常に収奪的圧政と時々わずかなお慈悲とを見せて支配して来たのだ。基本的にそうした社会形態以外、人々は馴染んでいないから、それ以外の政治形態は恐いし、嫌悪するのである。 私はそのことをインドで学んだ。三十年来私が働くことになった小さなNGOは、インドのイエズス会の神父たちにも経済的な支援をし、神父たちが不可触民の子供や青年たちの教育をする仕事を見て来た。神父たちはカトリック、不可触民はヒンドゥである。神父たちはしかしヒンドゥの生徒たちに、決してキリスト致をおしつけることはしなかった。彼らはただ子供たちをかわいがり、人間の尊厳を教えた。しかし私が驚いたのは、一番差別を受けている多くの不可触民が、特別な教育を受けている人は別として、決定的に差別が好きだということであった。これは不思議な情熱であった。彼らは、自分が最下層であると差別されることを、更に下の階層を設定し意識することで安定させていたのである。不可触民より下の部族というのは、私が見た限りでは、ヒンドゥ社会の外にある部族―例えばランバーディと呼ばれるジプシー、かつてアフリカからゴアに奴隷として連れて来られた肌の黒いシーディー、今でも森の奥深くに隠れて人を見ると逃げるゴーラ、遊牧して牛飼いをするガウリ、などという部族である。不可触民が、こうした人々を差別するのは、差別社会以外の形態を知らないので、同じような社会形態の中で同じようなやり方で矛盾を解消しようとするからである。 アフガニスタソもイラクも、民主主義などというものを知らないから、さし当りそんなものは要らない。サダムよりましな部族の支配者がくれば、それは望ましいが、どっちみち強力な支配者などというものは、多かれ少なかれ権力と財力をほしいままにして来たものだ。サダムを憎む人は多い。しかしその残忍さは理解し得るものだ。部族統治以外の政治形態を押しつける者は―ブッシュであろうと誰であろうと―もっと不愉快な存在なのである。自分にとっていいものを他人にもいいものとして押しつける。アメリカという国が、自国の行動の原理としてそれを口にする時、その説明の幼さに、私は辞易している。(二〇〇三・四・五)
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統合幕僚学校・高級幹部課程講義案 「『昭和の戦争』について」 福地 惇 (大正大学教授・新しい歴史教科書をつくる会理事・副会長) むすび 現下の課題 最後に本講義の纏めを述べよう。「昭和の戦争」は、満洲事変から敗戦までの一貫した「十五年戦争」と言うような戦争ではなかった。だが、支那事変と大東亜戦争は一連の戦争であった。支那事変は、有色人種の優等生大日本帝国の擡頭に我慢できない米英と世界の共産革命を先ず弱い部分である東アジアで成し遂げようとしていた共産ロシア(ソ連)が、支那の軍事独裁者蒋介石を背後から軍事的・政治的・財政的に支援・指導し、さらに支那共産党を介在させて闘わせた言わば代理戦争であった。ソ連や米英は支那事変を長引かせることで日本を世界戦争の舞台に引きずり出して撲滅しようと狙ったのである。共産ロシアは、米国同様に軍閥独裁者蒋介石を支援して日本と戦わせる一方で、中国共産党を育成し蒋介石の足元から支那大陸の共産化工作にも余念が無かった。 未だ弱小だった毛沢東指導の支那共産党の後方攪乱戦術は見逃し難い重大問題である。その謀略は異常に逞しかった。大日本帝国滅亡後、共産ロシアの目論見どおり、支那共産党の大陸制覇は達成された。アメリカはトンビに油揚げを攫われた。最後の段階で参戦した共産ロシアはユーラシア大陸を略制圧、我が国固有の領土である樺太・千島を不法占拠して今に至っている。これらは、謀略情報戦に不得手で、「信義」や「誠実」をモットーとする我々日本人には中々理解できない醜い世界の出来事だった。 最後にもう一度言おう。満洲事変から支那事変、そして大東亜戦争に関して我が国は侵略戦争の計画は何ももたなかったのである。だから、これらの戦争は我が日本にとっては「独立自衛」を求める以外の目的はなく、侵略戦争との意識は何もない戦争だったのである。モノの見事に誤解に基づく理想世界の拡大を欲した米国と、共産ロシアの二つの謀略勢力に支那大陸の戦場に引き込まれて、結局は押し潰されたと言える。 逆に言えば、一九三〇年代から四〇年代のアジア大陸の戦争は、米国とソ連の侵略戦争だった。アメリカは勝ち誇って「大東亜戦争」と言ってはいけない「太平洋戦争」と言えと命令したが、正にそこにアメリカのあの戦争への意欲、太平洋からアジア方面への侵略意欲が明瞭に出ているのである。これが大東亜戦争の真実である。 米国やソ連が日本を貶めるために創作した歪曲歴史観に基づく支那・朝鮮の至極「政治的」な言い掛かり挑発に、我が国政府は気遅れする謂われは全くない。韓国・北朝鮮の言い掛かりは歴史の事実を意図的に曲解した怪しからぬ妄言なのである。また、支那共産党政府要人が、事あるごとに日本政府は反省が足りない、「歴史を鑑にせよと」説教するが、全く善人と悪人が転倒した盗人猛々しい、片腹痛い言い草なのである。彼らは、支那共産革命を達成する目的で、日本軍と軍閥蒋介石を徹底的に共倒れになるまで戦わせる悪行を働いた張本人なのである。アジアの連帯など考慮の外、モスクワの指令に従い、アジアの共産化を追及していたのである。彼らが何時も勝ち誇って言う「抗日戦争の勝利」は、彼ら自身のものではなく、モスクワの勝利のおこぼれに預かったのである。間もなくモスクワからの自立の欲求が台頭し、「中ソ対立」に至った訳である。 戦後日本の政治家・官僚は祖国の歴史への理解度も国家・国民を正しい道に導こうとする勇気も洞察力も足りない。自尊心を失い国益追求への強い意志も失い、低次元の利害調整や私益追及に汲々たる 木偶の坊が多過ぎるのである。その基盤には国民の歴史観の歪みが厳然としてある。 日本民族最大の敵は、実は我々の足元に蔓延っている。我々にとって本当に大事な現下の課題は、「GHQ占領憲法」と「東京裁判史観」が、日本人から自信と勇気と品格を奪い去り、自虐的な卑怯者にしてしまった元凶だと言う真実を大悟することである。正々堂々の解決策は、国民精神と国家体制を祖国の歴史と文化・伝統の正統性に復古することである。 完 統合幕僚学校・高級幹部課程講義案
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飛び込んでくる敵に対して、美奈代騎は、フェンシングの突き技と同じ要領で半身を前に出し、斬艦刀を片手で突き出した。 そして、斬艦刀の切っ先が敵騎の装甲にめり込んだのと同時に柄から手を離した。 突き技の衝撃で、斬艦刀を折らないためだったが、そのまま騎体を半回転させた所を敵騎はその勢いのまま駆け抜ける。 美奈代は、その背中めがけて容赦なくシールドのエッジを叩き付けた。 「―――ぐぅっ!?」 騎体パーツがバラバラに粉砕される中、騎体が地面に叩き付けられる衝撃に、エーランドは歯を食いしばって耐えた。 「こ、こんな―――」 騎体はもう動かない。 スクリーンはすべてブラックアウト。 操作系はどこかショートしたらしく煙が出ている。 「こんなデタラメな話があってたまるか!」 エーランドは、脱出装置を作動させた。 緊急救難信号が発信され、開閉操作が効かなくなったハッチが吹き飛ぶ。 密封されていたコクピットに太陽の光と空気が流れ込んでくる。 「―――ここまで私に恥を掻かせるとは!」 チュインッ!! 毒づきながらコクピットの外に出たエーランドの手元で何かが弾けたのはその瞬間だ。 「何だ!?」 手を思わず引っ込めた。 まだ爆発は起きていない。 だが、何かが弾けたのは確かだ。 「ん?」 パンッ! チュインッ! 何かが弾けた場所を確かめようとかがんだ所を、何かがかすっていった。 黒い、小さな塊だった。 それが、高速で自分めがけて飛んできた。 弾けたのはその塊だと、エーランドは理解した。 飛ばして来た相手を求め、周囲を見回したエーランドは、自分の騎が擱座した場所がどこかようやく理解した。 自分を撃破した敵騎の前、自分が倒した敵の真横だった。 仰向けに倒れたその騎の胸部装甲が開かれ、そこから上半身を出したパイロットが、こちらめがけて右腕を伸ばしている。 その手に掴んだモノが、どうやら金属の塊を打ち出す武器だ。 エーランドはそこまで理解すると、即座に行動に出た。 一息で、武器を持つ相手の所まで跳躍、その腕を掴んだのだ。 相手が、再びあの金属の塊を打ち出す余裕をエーランドは与えなかった。 右腕を掴んで、相手をねじ伏せたエーランドは、その時初めて相手が女性であることに気づいた。 「―――女?」 自分を睨み付けてくるのは、エーランドにとっては妙齢の女性。 その女性の口から何事か言葉が漏れる。 “離せ”とでも言っているんだろうが、エーランドにとってはどうでもよかった。 「まぁいい」 エーランドは喉で笑うと、相手の右腕を抑える腕に力を込めた。 グッ 「うっ!」 女は、うめき声を上げ、武器を掴む力を失う。 エーランドは、女から武器を取り上げ、そして言った。 「安心しろ。私は女は殺さん」 武器を取り上げられてもなお、戦う意志を瞳に浮かべる女に、エーランドは小さく吹き出した。 「夢見が悪いからな」 女がエーランドに飛びかかってきたのはその時だ。 だが、エーランドの一撃が女を襲う方が速かった。 みぞおちに入った一撃で女は力なくエーランドの腕の中に崩れ落ちる。 「―――活きのいい女だ」 クイッ。 みぞおちの痛みに必死になって耐える女のあごを掴んだエーランドは言った。 「また逢おう」 そして――― 「二宮教官っ!」 “征龍改(せいりゅうかい)”から降りた美奈代が駆け寄ってくる。 美奈代の手には自動小銃が握られていた。 「ご、ご無事ですか!?」 敵騎を擱座させた美奈代にとって誤算だったのは、敵騎のパイロットが二宮を人質にしたことだ。 なにがどうしたものか。 それとも魔族とはそういうやり方をするのかわからないが、二宮の最後の抵抗をねじ伏せた魔族は、二宮をその場にねじ伏せ、動きを止めた。 コクピットの中に入りこんだため、二人が何をしていたかはわからない。 ただ、二宮を巻き込む危険性が高すぎ、美奈代達は、何も出来なかったのは確かだ。 おそらく、時間にして数分とたっていないだろう。 その間、二宮を人質にとられた美奈代には恐ろしく長い時間が過ぎた気がした。 すべてを終わらせたのは、海からの攻撃。 重迫撃砲と思われる攻撃が連続して美奈代騎の周囲に落下する。 シールドを構え、防御姿勢をとる間に、海岸から突如、得体の知れないフォルムのメサイアが出現。 その手の中へと、魔族は消えていった。 美奈代がコクピットへ潜り込んで体勢を整え直すよりも速く、敵は海へと消えていった。 もし、敵が美奈代騎を狙っていたら、美奈代は確実に死んでいただろう。 「二宮教官っ!」 何故か呆然として口元を指で抑える二宮に呼びかけるが、二宮はまるで反応しない。 ただ、顔を赤くして、ぼんやりとしているだけだ。 「教官っ!?」 美奈代はその肩を激しくゆすった。 「……泉」 「はい!」 「……頼みがある」 「な、なんですか!?」 「……私が」 どこか焦点のあわない目をした二宮は、美奈代に言った。 「私が、あの魔族と何をしていたか、忘れてくれ」 「わ、忘れるもなにも……」 美奈代は困惑した顔で答えた。 「私、何も見えていませんよ!」 「そ……そうか」 二宮は安堵したという顔でため息をついた。 「それならいい」 「あの―――教官?」 「忘れろ」 二宮はそう言うと、コクピットに潜り込んだ。 唖然としてコクピット前に立つ美奈代に、コクピット内部から二宮が届いた。 その声は、軍人としての、そして教官としての声でしかなかった。 「泉―――ベルゲはどうなっているか?」 「人類の新型兵器……か」 カーメン大佐がスクリーンの向こう側でうなるような声を上げた。 「エルプス系魔法の応用技術であることは間違いありません」 エーランドの横に立つ女性士官が、書類片手に言った。 司令部から派遣されてきたマイナ技術大尉だ。 「物質の原子レベルでの結合を崩し、原子崩壊させることで物質そのものを破壊します。騎体の損傷痕に、エルプス系魔法独特の痕跡があることから明らかです」 「実体系武器では対抗出来なかったと?」 「武器がその役割を果たしません」 マイナ技術大尉は言った。 「エルプス系魔法の前で実体系兵器及び防御は一切無意味です」 「……そうか」 カーメン大佐は、数回、小さく頷くと言った。 「マイナ技術大尉を信じよう。エーランド少佐には悪いことをした」 「いえ」 エーランド少佐は、その外見故か、若干気障に見えるほど優雅に敬礼した。 「マイナ技術大尉がヒートサーベルを持ってきてくれました。同じ過ちは繰り返しません」 「当然だ」 「……」 数分後。 相次ぐメースの喪失をねちねちといびるカーメン大佐との通信を終え、瞑目して落ち込んだエーランドの横。 そこでは、マイナ技術大尉が表情を変えずにエーランドを見ていた。 人形のような美しく涼しげな容姿をしたマイナ技術大尉は、金髪の貴公子然としたエーランドの横に立つとちょっとした似合いだな。と、その様子を眺めていたシグリッド大尉は思った。 「?……ああ」 その視線に気づいたのか、エーランドはマイナ技術大尉に向き直った。 「すまなかったな。大尉」 無理に笑ってみたつもりだが、ぎこちないだろうとエーランドは自身でそう思った。 「いえ」 マイナ技術大尉は、愛想笑いを浮かべることさえなく、手にした書類をエーランドの前に突き出した。 「ツヴァイ4騎と、関連武装の受領書類です。確認の上、サインを願います」 エーランドは無言で書類を受け取る。 何故か一瞬、顔を引きつらせ、一番上の書類だけを自分のポケットにねじ込むと、二枚目にペンを走らせた。 「その……マイナ技術……大尉」 受け取った書類を確認したマイナ技術大尉は、引きつった顔を崩せずにいるエーランドに言った。 「騎体と部下を失ったことに関する始末書と進退伺いを3時間以内に提出してください。それと、一枚目に挟んでおいた、損害賠償と罰金の件ですが、お支払い方法はいかがなさいますか?」 エーランドは悲しげな顔をしながらも、精一杯胸を張って答えた。 「もちろん、漢(オトコ)らしく現金一括払いだ!」 「……低金利のクレジット会社、紹介しましょうか?」 「いらんっ!」 ●“鈴谷(すずや)”艦橋 「残念なことになったわね」 「……そうね」 美夜と二宮の目の前で炎上を続けるのは、エーランドが放棄したメース、ツヴァイだ。 騎体の鹵獲(ろかく)を狙ったが、仕掛けられていた自爆装置が作動。 騎体は一瞬にして炎の中に消えた。 火葬を前に、敵騎の秘密がわかると期待していた面々には失望の色が走る。 「よっぽど私達に騎体を渡したくないみたいね」 「……そうね」 「……」 「……」 「……真理?」 「何?」 「敵と、何があったの?」 「……何も」 「……そんなにいい男だったんだ」 「何のこと?」 「今、顔に出たわよ?」 ●“鈴谷(すずや)”教官室 「ひでぇもんだ」 長野は、書類をデスクに放り投げると、コーヒーを飲もうと椅子から立ち上がった。 コーヒーメーカーの横に置かれたインスタントコーヒーの瓶を掴むと、中身を慎重に確かめた。 日本から持ってきたお気に入りのストックは、残り1本。 それでさえ、残りは瓶の半分にも満たない。 「……シャレにならねぇ」 「誤字脱字、ありましたか?」 長野のぼやきを聞いて声を上げたのは、長野の隣のデスクでパソコンを動かしていた美晴だった。 「いや?」 長野はコーヒーを淹れながら首を横に振った。 「損害が大きすぎると思っただけさ」 口ではそう言いながらも、長野が顔をしかめたのは、二宮がまとめた“伊吹”生存者に関する報告書を読んだからだ。 富士学校から派遣されたのは教官・候補生が31名、教員は12名とMC(メサイア・コントローラー)が19名となっている。 この数で、自前の“征龍改(せいりゅうかい)”6騎と、正規部隊から回されてきた“幻龍改(げんりゅうかい)”12騎を運用する。 さらに第二中隊から派遣され来た“幻龍改(げんりゅうかい)”6騎、騎士とMC(メサイア・コントローラー)、それぞれ6名ずつがこれに加わっていたが……。 「今や半分も残っていねぇとはな」 そう。 彼等の半数以上が“伊吹”と運命を共にしたことになる。 22騎存在した騎体に至っては10騎しか存在しない。 “伊吹”から引き出して修復した騎を加えて10騎なのだ。 長野は、生き残った騎体の割り当てに関する書類の作成を命じられていた。 “征龍(せいりゅう)”は元々第七分隊が使うことになっているし、今更使用者たる候補生の人選を変更して、セッティングを変えるくらいなら、第七分隊に使わせた方がいいと、長野は判断していた。 余談ではあるが、どうにもパソコンが苦手な長野は、柏美晴に代筆を依頼していた。 美晴に頼んだ理由は、長野曰く、彼女が候補生の中で最もキーボードの入力が速いと定評があることと、何よりMC(メサイア・コントローラー)に頼むと高くつきすぎるからだという。 それにしても……。 コーヒーカップに口を付けた長野は、二宮でさえ怒りを通り越してあきれたという出来事を思い出した。 “伊吹”で奇跡的に生還した3人組のことだ。 山科教官とその教え子2名。 第三分隊隊長の都築と副長の山崎だ。 何故生き残ったのか。 その報告は、長野でなくても顔をしかめるしかないものだった。 “伊吹”被弾の時。 候補生達は出撃騎搭乗者とそうでない者に分けられ、後者はブリーフィングルームで待機を命じられていた。 だが、そのいずれにも山科教官達の姿はなかった。 壮行会の際、山崎教官の深酒につきあわされた都築と山崎共々、二日酔いでドクターストップがかかっていたからだ。 素行不良で問題教官扱いされることが多かったとはいえ、そのおかげで彼らは命拾いしたことになる。 どういう皮肉か、長野にはわからない。 それに対して、さすがだと長野でさえ感服するのが、出撃部隊にいながら生還した第一分隊長の染谷だ。 染谷は“幻龍改(げんりゅうかい)”に搭乗し、池田大尉の背後、第一分隊二番騎につけてハンガーデッキで待機していたところで“伊吹”の被弾に遭遇した。 発艦準備中のフライトデッキ内部に飛び込んだ一撃は発艦待機中のメサイアを吹き飛ばし、メサイアが積載していた広域火焔掃射装置(スイーパーズフレイム)を破壊した。 広域火焔掃射装置(スイーパーズフレイム)から発生した消火困難な火災を含む爆発は、ハンガーデッキからフライトデッキへの進入経路までを一瞬のうちに、乗組員や騎士、そしてMC(メサイア・コントローラー)ごと破壊した。 元来、弾薬や可燃物には事欠かないハンガーデッキだ。 爆発は爆発を生み出した。 激しい衝撃により、染谷騎は他の騎が搭載していた弾薬の爆発に巻き込まれ擱座した。 他の教官や候補生達の騎も、ほぼ全騎が似たような状況、もしくは破損した騎の下敷きになって動かすことが出来ない有様だった。 メサイアに搭乗したままでは艦内から出ることが出来ないと判断した染谷は、教官である池田大尉に騎体放棄の許可を求めたが、池田大尉は染谷達にかまうことなく、自分だけ強引に“征龍改(せいりゅうかい)”で脱出を試みた。 結果は、池田大尉は妖魔の群れに襲われて死亡したのだが、反面、その後の染谷の行動は優等生の典型的模範例を示していた。 まず、MC(メサイア・コントローラー)と共に騎体を放棄し、ブリーフィングルームも含め、負傷者だらけとなったハンガーデッキを駆け回り、まだ動ける者達をまとめると、彼らと共に、負傷兵達を安全な場所へ移した。 デッキ内部にあふれたリキッドやオイルが引火すれば自分たちが危険になると判断したのも染谷が一番速かった。 ハンガーデッキに侵入した妖魔達から逃れるため、生存者と共に居住ブロックへ逃れ、たった一カ所のエアダクトを除き、すべての通気口と通路を閉鎖し、籠城の構えを指揮したのも染谷だった。 生存者達が、池田大尉のように逃げ出していれば妖魔達の餌食は避けられなかっただろう。 すべては染谷候補生の英雄的な決断力と行動力によると、二宮は報告書をまとめている。 長野も否定はしない。むしろ肯定的にとらえている。 そこまで考えて、長野は美晴に訊ねた。 「染谷候補生はどうしている?」 美晴はコーヒーを受け取りながら意味ありげな笑みを浮かべた。 「お忙しいと思いますけど?いろいろと」 「?」 ●“鈴谷(すずや)”第3層通路 グイッ! 「きゃっ!?」 ハンガーデッキからの帰り道。 候補生同士の打ち合わせを終えた美奈代は、部屋に戻る途中、突然、通路の角から飛び出した腕に手首を掴まれた。 何だと思うヒマさえなく、真っ暗な部屋に放り込まれた時には遅かった。 ガチャッ。という音を、背後で聞いた。 「なっ?」 振り返った美奈代が見たものは、ドアの前に立つ金髪の少女だった。 日本人ではマネ出来ない、その西洋人系特有の容姿。 “金色の妖精”という言葉が脳裏に浮かんだ。 そのあまりに美しい少女は、すでに艦内で知らない者はいない。 美奈代は、目の前の相手について、フィアという名前と、自分にとって個人的に好ましくない相手だという認識だけは持っていた。 「あの……」 「―――お願いってわけじゃないんだけど」 美奈代の言葉を遮るように、やや敵意をむき出しにた声で、フィアは言った。 正直、フィアの声を初めて聞いた美奈代は思わず後ずさった。 (こ……声まで可愛いなんて) 外見だけでなく、声まで愛らしいなんてあんまりだ。 美奈代は、女として自分が負けていることを、嫌でも自覚させられた。 神様、私、何かしましたか? 「……聞いているの?」 ドアを背に美奈代を睨みつけるフィアにそう言われ、神様に文句を言いに逝った美奈代は、現実に戻った。 「え?うえええっ!」 「……」 その素っ頓狂な声に、一瞬だけ怪訝そうな表情を浮かべたフィアは、美奈代に言った。 「これ以上」 その声色で、暗闇の中でも、美奈代にはわかった。 この子は、私を嫌っている。 でも―――どうして? フィアはそんな美奈代の心境に構うことなく言った。 「―――瞬(しゅん)に近づかないで」 瞬。 染谷瞬(そめや・しゅん)。 それは、美奈代にとって意中の男性の名だ。 「なっ?」 「瞬は私のものよ」 フィアは勝ち誇ったような、むしろ美奈代を哀れむような表情でドアノブに手をかけた。 「彼……優しくしてくれるの」 ●“鈴谷(すずや)”食堂 「そんなものは」 コーヒーを飲みながら美奈代の話を聞いていた宗像は、表情さえ変えずに言った。 「ハッタリだ」 「で、でも……」 美奈代は、染谷がフィアに気に入られていることを理由に、その身の回りの世話を命じられているのを知っている。 フィアを“語り石”に運ぶ際、フィアをコクピットで守っていたのが染谷だった。 あの戦いの中、自分のために必死になる染谷の姿に、フィアが惚れたというのが実情らしい。 「あの染谷にそんな甲斐性があるなら」 宗像は、落ち込む美奈代に手を伸ばし、その腹のあたりをなでた。 「お前の“ここ”は大変なことになっているぞ?」 「なっ!?」 「ふむ……すでに大変なことになっているな」 宗像が美奈代のお腹の肉をつまんでいる。 「レーション食べ過ぎたな。スカート、大丈夫か?」 「ち……ちょっと心配だ」 「全く」 美奈代の腹から手を離し、クックックッ……喉を鳴らして笑う宗像は、尊大なまでにゆったりと落ち着き払った様子で美奈代に言った。 言葉と態度に、不思議な威厳を感じる。 「お前の悩み事といえば、どうしてそう子供じみているんだ?」 「だ……だけど」 「恋のライバルからケンカ売られて?それだけで負けたとでも?」 「……」 「―――あの容姿だから、無理もないとは思うが」 「……そういえば、宗像は」 おや?と思った美奈代は宗像にたずねた。 「あの子には手を出そうとか、考えないのか?」 「外人は専門外だ」 宗像は言った。 「私は……そう、日本人形のような女の子は大好物だが、西洋人形はどうにもダメだ」 「……はぁ」 「菓子は和菓子に限る。日本人としてそう思うだろう?泉」 「……まぁ」 「……ずいぶんと生返事だな」 「和菓子と女の子を同列に語られても……返答に困る」 「全く……美意識のない奴だ」 その日の夕方。 “鍵”を乗せた飛行艦が針路を変えたという報告を、エーランドが受けたのは、食堂でのことだ。 トレイに乗った夕食を目の前に、エーランドは報告を聞いていた。 そのエーランドの前では、マイナ技術大尉がさっさと食事を始めている。 「予想針路は?」 船の生活で数少ない楽しみである食事をお預けされたエーランドは、厳しい士官としての表情を維持したまま、報告にきたムブナ中尉に訊ねる。 その間も、マイナ技術大尉の食事が止まることはない。 「情報では、ホルムズ海峡経由でドバイに入る予定でしたが」 「違うのか?」 「はい。ソコトラ島から北東へ針路をとっていたのですが、針路を真北にとりました」 「真北へ?」 マイナ技術大尉の持つフォークが、エーランドのトレイに伸び、チキンの照り焼きに突き刺さった。 「―――ぐっ!」 「何かお心当たりが?」 「いや―――続けてくれ」 「はっ。このままでは1時間後にアラビア半島に上陸します」 「敵の目的は何だ?」 マイナ技術大尉が、エーランドのトレイに伸びた。 「……実は」 ムブナ中尉が言いづらそうな表情になった。 マイナ技術大尉が、空になったトレイをエーランドの前に戻した。 「どうした?」 腹は減るが、それよりもエーランドの関心は、敵の動きにあった。 自分達が追跡していることを察知して針路を変えたというのか? ムブナ中尉は答えた。 「……実は、現在、インド洋に展開中の水中戦隊を含む全部隊に、一時的なインド洋から撤退及びアフリカ大陸への帰還命令が出ました」 「撤退?」 「はい」 ムブナ中尉は頷いた。 「理由はわかりませんが、人類が何か、大きな行動に出ると」 「何だそれは?」 「末端の我々にはわかりません」 「司令部は我々に何と?」 「人類側の電波情報に注意しつつ、追撃を続行しろ……と」 ●“鈴谷(すずや)”艦橋 「いい加減にしてくださいっ!」 美夜を夕食に誘いに来た二宮は、艦橋に入った途端に飛んできた美夜の金切り声に思わず飛び上がった。 一体、何を怒られたのかわからず、目を点にする二宮の前で、艦長席から立ち上がった美夜が顔を真っ赤にしてスクリーンを睨み付けていた。 「毎回毎回、どうしてそんな無茶ばかり!」 「これは命令だ」 スクリーンの向こう側。 そこは、アラビア海から遠く離れた東京だ。 一体、顔面に筋肉を持っているのかさえ疑わしい仏頂面を浮かべるのは、作戦部の田辺部長だ。 彼の後ろには、東京の夜景が映されている。 何故、東京タワーなのかはわからないが、少なくとも近衛軍飛行艦隊司令部が、東京タワーに近い場所に存在しないことだけは、二宮も知っている。 その目の前で、背景が次々と変わる。 春の富士山が映える田子の浦と近衛軍にどんな関係があるのかは、さらに知らない。 お祭りの山車に近衛が関係しているとは思えない。 日本を遠く離れた飛行艦乗り達への精一杯の配慮。とでも言うつもりだろうが、二宮には、怪しい外国人が日本を騙るためにでっち上げた背景としか考えられない。 「“鈴谷(すずや)”は針路を変更し、アラビア半島を横断、バーレーンに向かえ」 「何故、ホルムズ海峡経由ではないのですか!」 美夜は顔を真っ赤にして怒鳴る。 「この“鈴谷(すずや)”の貧弱な武装で、ただでさえ政情不安定なアラビア半島を、活きて横断出来ると?“鈴谷(すずや)”に沈めというんですか!?」 「作戦部は“鈴谷(すずや)”に対し、隠密行動をとることを命じる」 「飛行艦に隠密行動なんてとれると本気で考えているのですか!?副司令を出してくださいっ!」 「副司令は会議中だ」 「今度はどこの料亭です!このままなら“鈴谷(すずや)”は―――」 「……アラビア海は明日から嵐だよ。平野艦長」 脅し文句を言いかけた美夜をとがめるように、田辺部長は言った。 「嵐?」 美夜は、田辺部長の映るメインモニター横の気象情報ディスプレーを見た。 「……サイクロンは」 「違う」 田辺部長は、その太い猪首を横に振った。 「嵐が吹くのだ」 「……は?」 「本来なら、バーレーンさえ……いや、バーレーンこそが危険なのかもしれない」 「……?」 怪訝そうな顔をする美夜に、作戦部の部長は続けた。 「しかし、すでに補給物資はバーレーンに納入されている。現地米軍基地で受領してもらうしかない。“鈴谷(すずや)”をどう動かすかは、それからだ」 「……一体?」 「これは一般回線だ。平野艦長」 田辺部長は、何かを振り切るような顔で、そして強い口調で美夜に言った。 「これは厳命である。“鈴谷(すずや)”はバーレーンの米軍基地ににて物資補給後、現地にて別名あるまで待機せよ」 「……」 「―――もう一度、言わせる気か?」 「わかりました」 美夜は敬礼した。 「“鈴谷(すずや)”はこれより変針、アラビア半島を横断し、バーレーン米軍基地へ向かいます」 「……幸運を祈る」 艦長席に乱暴に座ると、背もたれにもたれかかり、美夜は歯を食いしばる。その肩は小刻みに震えていた。 「一体……司令部は……何を……」
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ここで手違いが生じる。 李提督にとっては、海大校に対する指示で自分の任務が終わったと思いこんだこと。 肝心の海大校は、通信管制を無視した党から送り込まれてきた莫大な通信への返答に手一杯になったこと。 最悪なことに、艦隊から離れて独立遊撃隊として通商破壊にあたる別働隊から敵輸送船団発見の報告がこの時入ったことは、後々まで海大校を後悔させることになる。 遊撃隊の位置はソコトラ島の沖合。 アデン湾から侵入する敵艦隊の哨戒も兼ねている。 そこからの通報だ。 「ソコトラ島沖合、艦種不明。一隻はタンカーと思われる」 それが遊撃隊からの報告だ。 ただ、“本当”にタンカーならその腹の中の油が敵に堕ちることだけは避けたい。 幸い、タンカーは遊撃隊から発進した航空機の攻撃可能なポジションにいる。 遊撃隊の指揮権は、提督から自分に移っていることもある。 だから、大校は“別働隊に”命じた。 ―――航空隊は、各個に攻撃に移れ。 いつもの命令だ。 命じられた航空隊は、航空管制官の命令通りに戦うことになる。 本当に、いつものことなのだ。 それに、今の彼の敵は目の前の書類だ。 提督から命じられた報告や、党幹部を満足させるためだけに求められる現在状況の報告―――しかも、党の定めた形式と時間を厳守する必要のある―――頭の痛い敵だ。 だが――― 「本当にいいんですか?」 通信管制官の一人がしつこくそう聞いてくる。 提督の命令通り、日本軍接近の報告を、波風立てないように準備していた大校は、その管制官を見ることもなく怒鳴った。 「いいと言っているだろう!いつも通りだ!武器使用自由、全力で叩けっ!」 「り、了解―――大校の命令と判断します」 管制官は震える声で命じた。 「艦隊司令部より紅6へ、攻撃を許可する。対艦ミサイル使用自由」 「―――おい」 紅6 対艦ミサイル。 その名にひっかかった中佐は、文面を書く手を止めた。 嫌な予感どころ騒ぎではない。 しらずに、声が震えてしまう。 「貴様―――今、どこに命令を出した?」 「ですから」 管制官の顔を見て大校は青くなった。 それは、日本軍に向かった部隊と通信を続けていた管制官だった。 「攻撃命令を発しました。大校の命令で」 「馬鹿者ぉっ!」 紅6は日本軍に向かいかけ、管制官からの撤退命令に断固抗議しつづけていた空母航空隊のコールサイン。 対艦ミサイルは、言うまでもないだろう。 「間違いないな?」 隊長はジャミングのひどい通信記録を、部下に確認を命じつつ、自らも耳で確認した。 「艦隊司令部は、攻撃を許可しました」 「録音、しっかり保存しておけ?。―――日本軍を叩くっ!」 「了解っ!」 「ミサイル接近っ!数10っ!」 レーダー担当の木村が悲鳴に近い声をあげた。 「墜とせっ!」 “鈴谷(すずや)”に設置されているML(マジックレーザー)砲が火を噴いた。 抜けるような青空に、光が走った後に白煙の柱が生まれた。 「FGF、全展開しますかっ!?」 「まだ早いっ!ML(マジックレーザー)だけで十分だ。余計なエネルギーを消費するな!生きて帰れなくなるぞ!?」 「はいっ!」 「うわ……すごっ」 戦闘機が編隊を組んで接近する。 戦闘機を間近で初めて見たさつきはしきりに感心するだけだ。 チカチカチカチカッ! “鈴谷(すずや)”の舷側にあるランプが激しく点滅を開始したのはその時だ。 緑の点滅と赤と黄色の3色。 「何?」 「警告です」 教えてくれたのはさつき騎のMC(メサイアコントローラー)、愛沢中尉だ。 「国際法規定のFGF(フリーグラビティ・フィールド)警告です」 「何でそんなもの出すんです?」 「FGF(フリーグラビティ・フィールド)は目に見えません通常航行時には、接触しないように警告する必要があります」 「今、戦闘中ですよ?」 「これでぶつかったら、向こうが悪くなるんです」 「―――成る程」 「バカ者っ!」 同じ頃、海大校は李提督から大目玉を食らっていた。 「誰が攻撃しろと命じたっ!飛行隊には戦闘停止を命じろっ!飛行艦だ、メサイアを搭載してはずだぞ!?」 「間に合いませんっ!」 そんな口論に近い会話を続ける二人の後ろで、艦長が手に持つ金属の筒が火を噴いた。 迎撃されたミサイルが光と煙の球に変わった。 ズズン……ッ!! 遠くで爆発音が響く。 もう恐怖感すら感じない美夜は木村に訊ねた。 「都合、これで何発目だ?」 「48発目ですっ!」 「その数、四方八方から―――よく撃つ」 対艦ミサイルは決して安い代物ではない。 それを48発だ。 感心する以外にない。 いい加減、あきらめてくれないだろうか。 美夜は内心でそう願っていた。 だが――― 「艦長、二宮中佐からです」 「―――私……えっ!?」 美夜はインターホン越しに伝えられた情報に思わず驚いてしまった。 「今度は爆装してきたぁ!?」 空母“天津”の艦橋から運び出されたのは、李提督と海大校。 その頭部からは血を流し、力無く手足を伸ばしている。 死んでいるのだ。 「―――党は小日本と戦えと命じられた」 張艦長とその部下が銃を手に艦橋から送り出される二人の死体を見送る。 「その命令に従えない敗北主義者は、我が国には要らない」 艦橋の通路から放り出された死体が海に消えていく。 「Su-30飛行隊の収容急げ。対艦ミサイルが効かないなら、爆撃にて出撃しろ」 それから一時間後。 中華帝国軍の爆撃を試みた機すべてが空母に引き返してきた。 全機生還だ。 「畜生っ!」 パイロットの一人が、キャノピーを叩いて降りてきた。 「何てザマだっ!」 パイロットは、即座に機体の下、パイロンを取り付けているハードポイントを見た。 「―――くそっ!」 翼下の10個あるハードポイントは、一つ残らずきれいに破壊されていた。 「たった一通過だぞ!?それでこれかっ!?」 ガシャンッ! ハードポイントに、そのパイロットが触れようとした時だ。 コクピットの近くですごい音がした。 パイロットがその音に驚いて後ろを見ると、機体の破孔から金属の棒が1本地面に落下していた。 何だ? パイロットは、その金属の棒が何か、即座にはわからなかった。 「中尉―――よく無事でしたね」 駆け寄ってきた顔なじみの整備兵に気づき、彼はその金属の棒の正体を訊ねた。 整備兵は言った。 「機関砲の銃身ですよ。敵の攻撃が砲を撃ち抜いたんです」 「そんな馬鹿な!俺は敵艦に1万程度しか接近していないぞ!?そんなまぐれが!」 「まぐれじゃないですよ。自分は経験がありますけど……メサイアの攻撃ってのは、それくらい正確なんですよ。中尉」 「……」 「中尉、これが初陣でしたっけ?」 「……ああ」 「ならよかった。メサイア相手に生きて帰ることが出来ただけでもハクが付きますよ」 Su-30部隊が去った後は、静寂のみが支配する航海が続く。 ラピス島まではもうすぐだ。 「中華の脅威は去った……か?」 「私、しばらくラーメン食べたくない。中華って言葉見るだけで吐き気がする」 「同感だな」 「美奈代、いい機会だからダイエットしなよ」 「うるさいっ!それにしても」 美奈代はそれが疑問だった。 「こんな所に何で中華帝国軍が?」 「哨戒ですよ」 牧野中尉が答えた。 「敵が米軍の進出を怖れている証拠です。もしかしたら、我々を米軍と誤認したのかもしれません」 「―――ってことは?」 「“鈴谷(すずや)”の警戒レーダーは捜索範囲が狭いです」 牧野中尉の言葉に、コンソールを操作する音が混じる。 「ラピス島まで、我々の出番ですよ?」 「敵は一体?」 「ここまで来るなら敵は空母機動部隊。そのお腹にはとっておきの厄介者が入っているはずです」 「厄介者?」 「はい」 コンソールパネルを操作する牧野中尉は、ちらりと通信モニター上の美奈代を見た。 「このフネを地上から蒸発させることの出来る厄介者です」 「やっと落ち着くことが出来るな」 比較的平然とした様子の宗像は手すりに寄りかかった。 入港を開始した“鈴谷(すずや)”の背後では、米海軍空母“シャングリラ・テキサス”が補給艦から燃料を受け取っている。 米艦隊と帝国海軍の艦艇50隻。 海兵隊と陸軍部隊を含めれば10万近い兵力が、このラピス島に集結している中だ。 喧噪はあるものの、それでも十分のどかというべき空気が美奈代達を包む。 爆音を轟かせながら、“プレステ2”が“鈴谷(すずや)”上空をフライパスしていくのを、美奈代達は甲板でのんびりしながら見守るだけ。 海軍がEUに貸しを作る意味で派遣している飛行艇だ。 「―――ねぇ」 甲板に大の字に転がって、その様子をぼんやりと眺めていた美奈代がぽつりと言った 「“アレ”には、どうやったら乗れるかな」 「“アレ”?」 美奈代は無言で遠ざかっていく“プレステ2”を指さした。 「PS2ですか?」 「メサイア操縦資格じゃ無理かな」 「無理無理」 さつきは笑った。 「戦車兵に潜水艦操縦させるようなもんだよ」 「……そうか」 「ここが気に入っちゃったんでしょ」 「……うん」 美奈代は「うんっ」と伸びをした。 「青が一杯の―――なんて言うのかな?こんな広くて、どこまでも行けそうな……吸い込まれそうな―――上手く言えないけど、とにかくそんな世界……私は好きだ」 「この戦いが終わったら」 美晴は悪戯っぽく笑った。 「南方県の事務官にでも転属希望出したらどうです?パラオやグアムあたりで」 「―――悪くないけど」 美奈代は小さく笑った。 「あの飛行艇のパイロットを目指したいな」 「本気?」 さつきはあきれ顔だ。 「海軍のシゴキはきついよ?」 「私は―――」 美奈代は、もう遠ざかってしまった飛行艇が飛び去った方角を指さして、 「この“青い世界”を自由に飛べる、あの“飛行艇”っていうのに乗ってみたいだけだ」 「PS-2は綺麗なデザインですもんね」 美晴は笑った。 「それなら美奈代さん、民間のパイロット目指した方がいいですよ。PS-2の民間版は、八式飛行艇と一緒に、東亜航空の南方航路路線で就航してますし」 「……そうか」 そっちもあったか。 美奈代はそう思ったが、 「やめておけ」 そう言ったのは宗像だ。 「人の命は重いぞ。下手をすれば、重みで翼が折れる」 「それでも」 美奈代は海の向こうを指さした。 「ああいうのより、よっぽど私の趣味には合う」 「ジェットよりプロペラ―――デジタルよりアナログな泉にはお似合いだな」 宗像は笑って美奈代が指さした海の方を見た。 黒い点が10以上、こちらに向かってくる。 ぽつりぽつりと、黒い点は時間を経るごとに増えてくる。 「―――待て?」 「ん?」 「今日、発進した戦闘機があったか?」 「宗像ぁ、あるわけないじゃん」 さつきは首を横に振った。 「ラピス島は戦闘機離着陸出来ないもん」 「じゃあ、アレはなんだ?あれ、スホーイだぞ」 皆が立ち上がって海を見たその瞬間、 サイレンが鳴り響いた。 「高度を上げろっ!」 無線機に怒鳴るのは、中華帝国海軍空母“天津”攻撃隊長呉大尉だ。 迫り来る島と無数の船舶を前に、彼は歓喜するよりむしろ驚愕していた。 「こうも簡単に取らせるかっ!?」 米軍の機動部隊が集結している海域に、何の抵抗もなく入り込めたことが、呉大尉には信じられない。 「一体こりゃ?」 すでに爆撃の射程に入ったというのに、未だに対空砲さえ上がってこない。 まぁいい。 余計なことを考えるな。 俺達ゃ、爆弾を落とせばいいんだ。 それで帰ることが出来る。 つまり、これは天佑だ。 呉大尉は自分をそう言い聞かせた。 「いけっ!」 呉大尉は、パイロンに吊した爆弾を敵めがけて投下した。 ズズゥゥゥンッ! “鈴谷(すずや)”の上空をSu-30が通過する衝撃が走り、美奈代達は半ば吹き飛ばされて甲板に転がった。 「な、何っ!?」 後一歩で甲板から海に落ちるところだった美奈代は、驚いて空を見上げた。 「見てわからないのか?」 宗像だ。 「教えてやろう。これは空襲というのだ」 「いや、そういうことじゃなくて」 美奈代が驚いたのは、こんな事態でも平然としていられる宗像の神経であり、同時に――― 「宗像ぁっ!」 「なんだ?」 「どさくさに紛れて何してるっ!―――きゃんっ!」 「うむ―――85のBと見た」 抱きすくめる要領で、美奈代の胸をわしづかみにする非常識さだ。 「違うっ!」 美奈代はムキになって怒鳴った。 「これでもCはあるっ!」 「む?それは違う。絶対カップが合っていないはずだ」 「二人ともっ!」 反論しようと口を開いた美奈代を止めたのは美晴だ。 「現状、わかってますっ!?」 「すまん」 美奈代達が立ち上がろうとした途端――― ズンッ! 「きゃっ!?」 爆発音に、思わず美奈代は甲板に伏せた。 空母と“鈴谷(すずや)”の構造物が邪魔でわからないが、どこかに被害が生じたのは間違いない。 恐る恐る顔を上げた時、その視界に紅蓮の色を含んだ黒い柱が映る。 「やられたのは!?」 「あっち―――米軍の方っ!」 「何で反撃しないんだ!?」 「するのは私達ですよっ!」 「ちっ!総員搭乗っ!」 ―――ついていない。 米第9任務部隊司令官ジョージ・キャンベルは部下の肩を借りながら、内心でそう毒づいた。 さっきまで質素だが、きちんと整理整頓が行き届いていた感のあった室内は、惨憺たる有様だった。 窓ガラスは全て砕け、窓から侵入した爆風が調度品のすべてをひっくり返し、風に流れて入り込む煙が呼吸さえ困難にさせる。 何より、負傷したり、死んで床に転がる将校の死体は目も当てられない。 その光景を目の当たりにする自分もまた、体中に痛みが走る。 「提督―――ご無事で?」 副官のリー大佐がキャンベル提督の額にハンカチを当てながら訊ねる。 「大したことはない―――何が起きた?」 「中華帝国軍の奇襲です」 「……最悪だな」 キャンベル提督がそう思うのも無理はない。 この場に居合わせたのは、日英米三軍の司令部同士。緊急の会合中だった。 議題は――― ラピス島周辺における、レーダーの使用不能、通信障害が発生。 これだ。 原因に関する見解は一つ。 狩野粒子。 レーダー上と、通信における障害程度なら、粒子レベルは低い。 問題は、狩野粒子が何故、この海域で確認されたか。 ―――原因はともかく、現実の事態に対処すべきだ。 ―――両軍共に、哨戒機を上げ、警戒に徹する。 会合は、そんな軍人らしい現実主義的な結論で終わろうとしていた。 その時、こう言ったのが誰だったのか、キャンベル提督は思い出せない。 ―――狩野粒子を中華帝国軍が使ったものなら、笑えませんな。 ―――全くだ。一体、連中はどこから狩野粒子を手に入れたんだ? (笑えなかったな) キャンベル提督はため息一つ、頭を強く振ると、自力で立ち上がった。 「チンクも、絶妙なタイミングで仕掛けてきたな」 「提督」 副官の一人、ハスラー大佐がキャンベル提督に進言した。 「本気で、そうお考えですか?」 「ん?」 「魔族軍の侵略と呼応するが如きタイミングで近隣諸国へ武力侵攻。さらに、この狩野粒子を前にして……」 「君は―――」 「自分は断言します。連中は、魔族軍とつながっています!」 「根拠は?」 「根拠!?」 ハスラー大佐は、上官に怒鳴った。 「周りを見てくださいっ!これで十分でしょう!」 ハスラー大佐の指さした先には、このラピス島までの航海を、その苦楽を共にしてきた司令部のスタッフ達のなれの果てが転がっていた。 「チンク共がこんなことしなければ、こいつらは“こう”ならずに済んだ!第一、我が軍はまだ宣戦布告すらしていない!中立宣言国ですよ!?」 「……っ」 「中華帝国軍が接近するタイミングで、この辺一帯が狩野粒子に汚染された!中華帝国軍が散布したと宣言して世論が信じればそれでいいんですよ、提督っ!」 「……とりあえず」 提督は答えた。 「政治的な話はペンタゴンとホワイトハウスに委ねよう。私の権限は国と国民から任された艦隊の範囲に限定されている」 「全ては、提督の報告にかかっています―――ホワイトハウスが、世論が我々に報復を許すか否か」 「善処しよう」 「安全が確保されるまで、シェルターに入ってください。今、艦隊に戻るのは危険です」 「その前に艦隊に対空戦闘を命じろ。メサイア隊は全騎戦闘態勢」 そこまで言いかけたキャンベル提督の声を遮ったのは、日本から送り込まれてきた飛行艇部隊を束ねる有馬司令の怒鳴り声だ。 「対潜警戒怠るなっ!」 壁にかかっていた電話相手に、それまでの温厚さは微塵も感じることは出来ない。 「水中から来られたらアウトだぞ!それから、“鈴谷(すずや)”を上げろっ!空襲が終わったら送り狼をさせるんだ!」 日本語がわからないキャンベル提督には、彼が何と言っているかわからない。 ただ、 タイセン。 ケーカイ 職業柄、キャンベル提督が知っている数少ない日本語の語彙にその言葉があった。 アリマは対潜警戒を命じた。 何故? 狩野粒子。 その存在が念頭にあったキャンベル提督は、その理由に即座に思い当たった。 彼は部下への命令を追加した。 「全艦、ソナー警戒。対潜兵装は即時発射可能にしろ、何隻か、対潜任務のため環礁から出せ。最悪―――」 提督は空襲の続く窓の外を睨んだ。 「アトミック爆雷の使用を」 「し、しかしっ!」 「“あれ”の使用は、大統領から私に一任されている」 「潜水艦相手にですか?」 「ジャック。メサイア隊を攻撃に出せ。それから君」 キャンベル提督は狼狽する副官をあきれ顔で見た。 「それは、地中海で我が軍が、何にどんな目にあわされたか分かった上での発言か?」
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●ボルネオ島 米軍呼称“ルート66”A地点 ガンッ! 鈍い金属音が響く。 グレイファントムのメースが“赤兎(せきと)”の胸部装甲に命中した音だ。 “赤兎(せきと)”の動きが鈍る。 メースの打撃がコクピットにまで達した証拠だ。 「よしっ!」 ミッキーがコクピットで歓声を上げた。 「とどめっ!」 振り下ろしたメースが“赤兎(せきと)”の頭部装甲を粉砕し、“赤兎(せきと)”は大地に倒れた。 「セラ、次は!?」 「2時方向、グレッグ騎が押されています」 「よし」 ミッキーの右前方で斧同士でしのぎを削っている騎がいた。 「グレッグ!そのままでいいっ!」 「すまんっ!」 ミッキーのメースが“赤兎(せきと)”の脇腹に命中し、“赤兎(せきと)”の姿勢がくの字に歪む。 グレッグ騎の斧がその顔面を捉えたのは、その直後だった。 「ふぇぇっ……焦ったぜ」 「貸しにしておく」 「了解だ―――指揮官(コマンダー)」 グレッグ騎が不意に動き、斧をミッキー騎めがけて―――いや、正確にはその背後めがけて投げつけた。 ミッキー騎の真後ろで斧を胸部装甲にまともにくらい、斧を振り下ろそうとした姿勢のまま、“赤兎(せきと)”が後ろへ倒れた。 「ミッキー、利子はついてないだろうな?」 ●ボルネオ島 中華帝国軍司令部 「“赤兎(せきと)”隊、被害甚大」 「後退命令を出せ」 朱少将は言った。 「可動機はすべてだ」 朱少将はシートにもたれかかり、深いため息をついた。 「……世代の違いとはいえ」 倍する戦力を持ちながら、“赤兎(せきと)”隊は一方的に倒されたとしか言い様がない。 グレイファントム達を相手に撃破の戦果が挙がっていてないのに、大破騎が投入戦力の3割に達している。 司令官として、これ以上の損害は看過出来ない。 戦いはまだ続くのだ。 徒に貴重な戦力を浪費すべきではない。 「本土からの返答は?」 「飛行艦隊が重い腰を上げてくれました」 参謀は言った。 「この島の鉱物資源を、飛行艦で安全に運びたいというのが本心でしょうが」 「戦場に空荷で来る馬鹿もおるまい」 朱少将は参謀からコーヒーを受け取った。 「負傷兵は集めておけ。本国へ後送する。それと」 コーヒーの香りに満足げな笑みを浮かべた朱少将は、参謀に訊ねた。 「メサイアが確認されたというのは、どこだ?」 「はっ」 参謀は島の地図を指さした。 「島東南部。偵察隊が発見しています。近くでは島北東部でも」 「回せるメサイア部隊は?」 「夕刻までお待ち下さい」 参謀は言った。 「本国から教導隊が到着します」 「教導隊?」 怪訝そうな朱少将に、参謀は自信げに答えた。 「“帝剣(ていけん)”の運用部隊です」 ●ボルネオ島北東部ジャングル 時折、中華兵に見つかるように動くだけでいい。 中華兵が時折思いついたように小銃を発砲するが、メサイア相手では豆鉄砲にすぎない。装甲を傷つけることさえ出来ない。 その前に当たらない。 美奈代は島の北東部でそんなことをしていた。 モグラ叩き。 その任務をそう評したのは、精霊体の“さくら”だ。 「ねぇマスター」 騎体をジャングルの中に潜ませた時、“さくら”が訊ねた。 「この後、どうするの?」 「この後って?」 「この島、いつ出ていくの?」 「今、二宮教官が洋上に出て“鈴谷(すずや)”と通信を試みているが……」 美奈代が戦況モニターに目をやると、二宮騎が戻ってきた。 ジャングルの上空すれすれを飛んで音もなくジャングルの中へと潜り込むという、恐ろしいほど高い操縦技術の手本を見たような気がした。 「つながったぞ」 二宮の声はどことなしに嬉しげだ。 「日没と同時に、ここに来る」 その言葉に、美奈代は時計を見た。 日没までの時間は3時間30分 「ここへ?」 「オトリだ」 二宮は言った。 「我々が通過したルートを通って別動の米軍のTAC(タクティカル・エア・カーゴ)部隊が兵士達の救出に向かう。“鈴谷(すずや)”はその間のマト担当だ」 「……被害……担当艦」 ゴクッ 美奈代は自分の口から出てきた言葉に思わず唾を飲み込んだ。 戦闘において一方的に被害を受け持つことで友軍を有利にする、それが被害担当艦だ。 艦が沈むことで、戦闘に勝利する人柱に近い立場だ。 「よく平野艦長が認めましたね」 それが、信じられない。 乗組員千人の命を預かる身が、あまりに軽率にしか見えない。 「あいつが認めたんじゃない」 二宮は言った。 「認めさせられた―――いや、それさえ違う」 「……」 「“命じられただけ”というのが正しいな」 「そんな!」 美奈代は目を見開いた。 「命じられたら、部下と一緒に死ぬとでも言うんですか!」 「泉」 二宮はため息混じりに言った。 「軍隊だけではない。組織の中間管理職とはそういうものだ。自分が望む望まないお構いなしに仕事を押しつけられる。部下と共に死ぬし、時に部下を殺す」 「……私」 美奈代は言った。 「そんなんなら、一生ヒラで結構です。組織になんか加わりたくないです」 「フン……お前はヒラでは済まないよ」 「え?」 「お前は絶対、私を越えるからな」 通信モニター越しに自分を見つめてくる二宮の声は、不思議と自信に満ちあふれた誇らしさが滲み出ているように見えた。 それは思い上がりかも知れない。 そう思った美奈代は、コンソールを見る振りをして視線を外した。 ―――二宮教官が、私のような問題児を評価してくれているはずがない。 そう思う。 ―――だけど それでも、 ―――もし、そう思ってくれているなら、何という嬉しいことだろう。 そう思えてしまうのだ。 「“鈴谷(すずや)”の上陸地点はここなんですか?」 美奈代は不思議なほどはやる心を抑えながらそう訊ねた。 「ああ。このジャングルの上空を移動することで敵を引きつける。先に海上で別れた米軍のTAC(タクティカル・エア・カーゴ)が正反対の方角で動くことになる」 「なら皆を集合させますか?」 「ポイントCでのランデブーが3時間後だ。30分もあれば十分だろう。そこでいい。というか、下手な通信は逆に危険だ」 「そ……そうですね」 「我々の任務はこの北東部に敵を誘い出すこと。そのためにやることがある」 「米軍が相手にしている敵を背後から叩く?」 「その通りだ」 二宮は楽しげに頷いた。 「ここに誘い出し、後は頃合いを見て撤退。今夜は、“鈴谷(すずや)”でゆっくりシャワーが浴びられるぞ」 二宮の楽しげな声に、美奈代も顔がほころんだ。 「楽しみです」 美奈代騎と二宮騎の作戦は、正直、無駄に近いものとなっていることを、日米両軍で知っている者はいなかった。 中華帝国側、朱少将は、すでに米軍の残存部隊に対する攻撃は貴重な戦力の浪費と見なしており、「撤退するなら勝手にしろ」というスタンスだ。 すでに中華帝国側の米軍残存部隊への攻撃は停止している。 米軍も撤退の通信を受け取っており、負傷兵のTAC(タクティカル・エア・カーゴ)への移乗準備と、TAC(タクティカル・エア・カーゴ)に搭載出来ない兵器や機密文書の処理が進んでいる。 状況は悪くない。 日没まであと1時間。 夕日が眩しい。 金色に染まるジャングルの中、美奈代達はただ、“鈴谷(すずや)”の到着を待っていた。 「もう少しで長野大尉達も到着する」 二宮騎からそんな通信が入った。 すでに敵の攻撃はない。 敵の集結地点はここからかなり離れているし、その方面からの侵入はセンサーで感知出来る。 センサーに反応はない。 「この島ともこれでおさらばだな」 「米軍は、この島を放棄するんですか?」 「違う」 二宮は笑って言った。 「中華帝国は、このままなら降伏するよ」 「―――えっ?」 「連中の補給線を止めた上で小さく叩く。小出しに戦力を使わせれば連中の物資は底を突く」 「……」 「泉。補給線が切れるっていうのは、お前が想像しているより遙かに怖いことだぞ」 「―――はい」 補給線が断たれる恐怖。 そう言われても実戦経験の浅い美奈代には、どうしてもピンと来ない。 ただ、バカみたいに頷くだけだ。 「米軍はこれから制海権と制空権を奪取に動く。後は空から空爆で中華帝国を叩く。こうなればほとんど一方的な戦いになる」 「うまくいきますか?」 「行ってもらわねば―――」 ピーッ! 「熱源っ!」 「何っ!?」 ズンッ!! 二宮騎のMC(メサイアコントローラー)、青山唯中尉の警告。 二宮の驚いた声。 そして、二宮騎が吹き飛ぶ音。 それを美奈代はすぐには理解出来なかった。 目の前で半身を吹き飛ばされた二宮騎が、ゆっくりとジャングルの中に倒れようとしていた。 「泉准尉っ!」 美奈代より早く現実に立ち戻ったのは牧野中尉だ。 彼女の鋭い怒鳴り声が、茫然自失の美奈代を無理矢理に現実に引き戻した。 「―――な、なんですか!?今の!」 「大口径ML(マジックレーザー)の狙撃!」 牧野中尉は引きつった声で言った。 「ま……まさか」 「二宮教官は!」 「バイタル反応正常……せ……センサーに反応なし?そんなバカ……な」 牧野中尉の意識は、敵攻撃に備えたエネルギー感知モニターに集中していた。 ログを見ても、何の反応もない。 「魔法反応まで……ど……どうやって?」 「中尉っ!」 ギンッ! 美奈代の声と、鋭い戦闘機動で、牧野中尉は我に返った。 「て、敵は!」 「センサーに反応なしっ!」 「じゃあ、アレはなんですか!?」 牧野中尉が見たスクリーンに映し出される3騎のメサイア。 重装甲をまとった“歩く要塞”さながらの騎だった。 それは、牧野中尉が見たことのない騎だった。 即座にライブラリーが開かれるが、 「不明っ、該当騎なしっ!」 そう答えるしかなかった。 「い……一体!?」 美奈代達は知らない。 中華帝国側の参謀が言った“帝剣”。 否、それさえ違う。 目の前にいるのは――― 「おそらく、中華帝国側の試作メサイアです」 牧野中尉はそう結論づけた。 「エンジン出力、その他の反応、“帝刃(ていば)”や“赤兎(せきと)”とは比較になりません」 パワースペックは間違いなく“帝刃(ていば)”の倍では効かないだろう。 フレーム反応も最新型だろうことを示している。 あの厚さの重装甲が本物なら、実剣は通らない。 牧野中尉はデータがとれていることを確認しながら、背筋を震わせた。 「こ……こんなの量産されたら!」 厄介じゃ済まない! その声が上がる前に、3騎は動いた。 「准尉っ!後退を!」 牧野中尉は叫ぶ。 データがない敵と斬り結ぶことが如何に危険か知っている牧野中尉の判断は正しい。 だが、 「教官を見殺しにする気ですか!」 美奈代にとって、敵が何だろうと、ここで逃げることは出来なかった。 二宮教官を助ける。 それこそが、美奈代の全てだったのだ。 迫り来る敵は長い柄に斧を付けたハルバードを振りかざす。 対する美奈代騎は斬艦刀を抜刀。 戦いの火ぶたが切って落とされた。