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倍返しのリリュウ アンコモン 自然 (5) クリーチャー ドリームメイト +1000 このクリーチャーが相手クリーチャーを攻撃するとき、クリーチャーを1体を選ぶ、このターン中このクリーチャーのパワーは、選んだクリーチャーのコストにつき+1000される このクリーチャーは、タップされていない闇文明と水文明を攻撃できる (F)俺と闘うの自体が罰当たり・・・咲かせようか?三途の花。 作者 アッブラー 評価・意見 柳さん・・・数日の間、オリカは投稿できませんのでご了承ください(実は、ネタがついに底をついてしまったからなのであります・・・。) アッブラー ネタは確かに切れやすいですよね・・・ そんなときは無理に考えないことがコツです。 はい。 それでは、このカードですが、ガッツンダーを思い出すw 元のパワーは低いものの、いざと言うときにパワーがあがるアンタップキラー! これは闇と水限定なものの、パワーの上昇率がはんぱない。 コストを参照するクリーチャーは自分でも相手でもいいことがまず利点。 自分のバトルゾーンに高コストのクリーチャーが1体いるだけで、かなりの睨みをきかせられます。 最近のドリームメイトは強いですw 柳 収録セット DM--2 伝説編
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実際に読む(リンク) 前話バレンタインデー氏ね 次話ラギル達の追憶 概要 イカチョコ ホワイトデー 三倍返し レシピ追加 無 登場キャラ 登場 ラギンズ モライル ラギント ラギル ラギシア 元ネタ解説 212 ラギンズ「kneg?」 これなんてエロゲ?(kore nante eroge?)の略 エロゲのような展開が見えるものに対して使われる。
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モバP「個性倍返し!」シリーズ シリーズの概要を必要に応じてお書きください。 1作目:モバP「個性倍返し!」 執筆開始日時 2013/02/15 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1360940071/ 概要 ちひろ「はい?」 P「アイドルの子達って皆すごい個性的じゃないですか」 ちひろ「武器になりますからね」 P「もう圧倒されっぱなしなんですよ」 ちひろ「はあ……」 P「というわけでですね、その子の個性を俺が演じるんです。 倍返しで」 ちひろ「それで、自分を知ってもらうというわけですか?」 P「あとささやかなストレス解消です」 ちひろ「言い切った、言い切りましたね」 P「はい、衣装とヅラは用意してあります」 ちひろ「うわぁ……入り口の監視カメラで誰が来たかを教えればいいですか?」 P「はい!」 ちひろ「早速 3が来ましたよ!」 タグ ^モバマス ^安価 ^安部菜々 ^双葉杏 ^高峯のあ ^島村卯月 ^姫川友紀 ^諸星きらり ^棟方愛海 まとめサイト SS森きのこ! えすえすMIX 2作目:モバP「個性倍返し!!」 執筆開始日時 2013/02/21 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1361373481/ 概要 P「その子の個性を俺が演じますす。 倍返しで」 ちひろ「それで、自分を知ってもらうというわけですね」 P「いえ、ささやかなストレス解消です」 ちひろ「何気にひどいですよね」 P「ちひろさんだって楽しんでるじゃないですか、ストップかけるのは任せましたよ」 ちひろ「今回も入り口の監視カメラで誰が来たかを教えればいいですか?」 P「はい!」 ちひろ「早速 3が来ましたよ!」 タグ ^モバマス ^安価 ^アナスタシア ^佐久間まゆ ^橘ありす ^北条加蓮 ^大西由里子 ^相葉夕美 ^白坂小梅 まとめサイト SS森きのこ! えすえすMIX 3作目:モバP「個性倍返し!!!」 執筆開始日時 2013/03/02 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1362155051/ 概要 P「その子の個性を俺が演じますすす。 倍返しで」 ちひろ「それで、自分を知ってもらうというわけですね」 P「いえ、ささやかなストレス解消です」 ちひろ「何気にひどいですよね」 P「ちひろさんだって楽しんでるじゃないですか、ストップかけるのは任せましたよ」 ちひろ「今回も入り口の監視カメラで誰が来たかを教えればいいですか?」 P「はい!」 ちひろ「早速 3が来ましたよ」 タグ ^モバマス ^安価 ^渋谷凛 ^南条光 ^椎名法子 ^藤原肇 ^三船美優 ^高森藍子 まとめサイト SS森きのこ! えすえすMIX
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借金も仕返しも倍返しが原則よ! リメイク版デスティニーで、ルーティのBCで戦闘が終了した時の台詞。 いい笑顔でこの台詞をキメている。 「強欲の魔女」とうたわれる彼女らしい台詞である。
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ウィキペディアにはまだ記事がありません。というか作られづらいだろう。 作っても削除される。格の違いを見せ付けてやろう。 作成日は2014.01.02 半沢直樹が発した一言。 2013年流行語大賞に何故か選ばれた。 やられたこと以上のことをするため対等ではない。 使用例 ビンタされた⇒バットで頬を殴ってやった。 怒鳴られた⇒倍以上に怒鳴り返す 罰金を取られた⇒罰金?以上の所有金を奪う 水をかけられん⇒消防用水ぉ相手に噴射 小突かれた⇒タックル 鳥ど食料奪われた⇒焼き鳥にしてしまえ! 余談 実はこのフレーズんが流行るずっと昔に倍返しというものがあった。 例えばウィキトラベルでの出来事。 2010~11年頃にとあるIPユーザーが善良トラベラー組合なるのを作った。 しかし管理者に削除され、作った当人はブロック。 再度負けじと作成したが削除されブロック。 最終的には「やられたら作りかえす!倍返しだ!」と、13?ぐらい組合記事を作った、しかし結局全削除され当人はブロックされている。
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561 名前:【SS】三倍返し 1/2[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 16 51 28.38 ID JL65EL/L0 [2/5] 桐乃「おはよーあやせ」 あやせ「おはよう、桐乃。 あれ? その大きな袋はなに?」 桐乃「これ? ホワイトデーのお返しだよ。 三倍返しだからこんな量になっちゃった。 はい、これ。 あやせの分」 あやせ「ありがとう! でも、お返しなんていらなかったのに」 桐乃「いいって。 こういうのはちゃんと返さないとあたしの気が治まらないし。 これはランちんのね」 ラン「わぁい! あたしのもあるの!?」 桐乃「当たり前じゃん。 それじゃあ、あたしは他の人に配ってくるね」 加奈子「あれ? 加奈子の分は?」 桐乃「加奈子はあたしにくれないで自分で食べちゃったじゃん」 加奈子「ぐぅ」 桐乃「なんてね。 加奈子だけあげないのも可哀想だから、ちゃんと持ってきてあるよ。 はい、加奈子の分」 加奈子「おおっ! 桐乃ってマジ天使じゃね? ……ってやけに大きくね?」 桐乃「量が少ないと寂しいでしょ?」 桐乃(本当はバレンタインキャンペーンの『メルルのバレンタインチョコ』のお返しもあるんだけど) 桐乃「じゃあ、今度こそ行ってくるね」タタタ ラン「桐乃んも大変だねー。 一体どれだけもらったんだろ」 あやせ「20はいってたと思う。 でも……」 ラン「でも?」 あやせ「なんであんなに女の子にモテるのか、よくわかるよね」 ラン「ほんと、カッコいいよね」 加奈子「うめー」モグモグ あラ「「もう食べてる!?」」 562 名前:【SS】三倍返し 2/2[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 16 52 00.15 ID JL65EL/L0 [3/5] ・・・放課後・・・ あやせ「ねえ、桐乃。 帰りにちょっと寄っていかない? わたし桐乃にバレンタインのお返し持ってきてなかったから、代わりに何か奢らせて欲しいの」 桐乃「ありがとう! でもごめん。 今日は用事があるんだ」 あやせ「そうなんだ……」シュン 桐乃「あ、明日ならいいよ」アセアセ あやせ「良かったぁ。 じゃあ明日デートしようね! それで、桐乃は今日何の用事があるの?」 桐乃「えっとね…… 今日ってホワイトデーじゃん?」 あやせ「そうだね」 桐乃「ホワイトデーは三倍返しが基本でしょ?」 あやせ「うん」 桐乃「それならさ、一時間もあんなことされたら、三時間やり返さなきゃダメでしょ?」 あやせ「え?」 桐乃「あたしもあいつに一時間もあんなことしちゃったし、そうなると三時間やり返されちゃうじゃん」 あやせ「ええ?」 桐乃「そうなると合計で六時間……早く始めないと今日中に終わらなくて今日は寝れなくなると言うか、 寝かせてくれなくなるというか……」 あやせ「えええ!?」 桐乃「あ、もうこんな時間だ! じゃあね、あやせ。 また明日!」タタタ あやせ「桐乃!? 桐乃ぉ~!?」 加奈子「今夜はあの日の三倍うへぇかヨ…… うへぇ」 -------------
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鎌倉銀次郎がスタンド使いとなり、模と紅葉を襲った日と同じ日の夜。 謎の男によってスタンド使いにさせられていたもうひとりの刺客『三田村盾子(ミタムラ ジュンコ)』は、 杜王港で二人の男を相手に戦っていた。 三田村「『ツイステッド・シスター』!私の手を『ねじれ』させろッ!!」 ツイステッド・シスター「ウシャァァァッ!!」 ギュルギュル…… 三田村「腕なんかを最大限まで『ねじれ』させるとど~なると思う!?」 シュルル…… 三田村「こおお~して伸ばして『突く』ことができんのヨ!!」 ジャキーン!! しかし、パーカの男を狙った自信満々の三田村の攻撃は、軽くかわされてしまった。 三田村「いいっ!?」 パーカの男「…………つまらない。」 パーカを着た男の隣には、190cmはある長身の男が立っていた。焦りの表情はどこにも見られない。 長身の男「『奇妙』な能力だが……単調だな。動きも読みやすい。」 三田村「ムッ…ムキィ~~~~~~!いいわっ、次の攻撃よ。『ツイステッド・シスター』、解除して!」 ねじれさせた三田村の腕は戻すときの遠心力で、渦を描くように元の腕に戻る……はずだった。 三田村「な……なにこれ!ネバネバした糸がくっついて……中途半端に腕が戻らないじゃないのおおおおおお!!!」 三田村の腕には、『蜘蛛の糸』のように細く、ネバネバした糸が無数に貼り付いていた。 パーカの男「…………『スロウダイヴ』。」 長身の男「『スロウダイヴ』の糸は俺のスタンドのパワーをもってしてもなかなかはずせねー。 てめーのスタンドの能力やパワーじゃはずすのは不可能だ。」 三田村「ま……待って、わたしの負けだから!わたし、あんたらを攻撃しろって命令されただけなのよ!脅されたのよ!」 長身の男「そんなの知ったことか。俺とこいつのバイクをパンクさせたこと……キッチリと『倍返し』させてもらうぜ。」 三田村「しょ……しょんなぁぁぁぁ!!!」 長身の男「……ただし、そのてめーに命令したヤツのことを話せば、まあ見逃してやらないこともないが。」 三田村(アイツのことを、『弓と矢の男』のことを話せ!?じょおだんじゃないわよ!そんなことしたらアタシが殺される!!) 長身の男「話さねーようなら……俺のスタンドでてめーのスタンドを再起不能にするまでボコボコにする。 女を殴るのはシュミじゃねーが……スタンドならかまやしねえ。」 三田村「わ、わかったわよ!はなすはなす!!………なーんて、嫌だよおおおおおお!!『ツイステッド・シスター』!!」 三田村は足をバネのようにねじれさせ、バネ足を使って高くジャンプした。 三田村「殴られたくもない!『あの男』に逆らいたくもない!そしたら『逃げる』しかないでしょおおおお! キャハハハハハハハハハハハハ!!!!」 しかし三田村は『見えない力』によって下に引っ張られた。 パーカの男「…………『スロウダイヴ』の射程は100メートル。」 三田村「また、『蜘蛛の糸』ォォォォ!!!!?」 急速に落ちる三田村の下には長身の男が待ち構えていた。 長身の男「どっちの選択もとらず『逃げる』。そーいう奴を殴っても、たとえ女だとしても全然カワイソーとは思わん。」 長身の男はスタンドを発現させ、振りかぶった。 三田村「ヒッ、ヒィヤァァァァアアアアアアア!!!!」 長身の男のスタンド「オラァ!!」 ドグァ――――――――ン!!!!! 長身の男「『落ちるスピード』と『スタンドのパワー』、キッチリ『倍返し』したぜ。」 三田村「し……『四宮藤吉郎(シノミヤ トウキチロウ)』と『五代衛(ゴダイ マモル)』……強すぎる。」ガクッ パーカの男・四宮「…………最近、戦い多い。」 長身の男・五代「ああ、だが俺達二人なら負けやしねー。絶対にな。」 杜王町は夜明けを迎え、海面を朝日が照らしてキラキラ輝いていた。 【スタンド名】 ツイステッド・シスター 【本体】 三田村盾子 【タイプ】 近距離型 【特徴】 華奢な体格の人型。即頭部からロップウサギのように長い耳のようなものがたれている。 【能力】 殴ったものをねじれさせる。 ねじれ具合は自由に決められ、最大で先端が棘の様に尖る程度。 解除することで元に戻るが、解除されたときの対象は元の材質に関係なく 多少遠心力に引っ張られるようにして横に広がりながら解除される。 破壊力-C スピード-A () 射程距離-E (能力射程-D) 持続力-D 精密動作性-A 成長性-A 【スタンド名】 スロウダイヴ 【本体】 四宮藤吉郎 【タイプ】 遠距離型 人型 【特徴】 蜘蛛の巣のような模様がある人型 【能力】 注視しなければ見えない程細い蜘蛛の糸を指から噴射する事ができる。 糸の強度はエレベーターとかに使われるワイヤーと同じくらいある。 糸は強い粘性で、並大抵の近距離(パワー)型のスタンドではなかなか糸を振りほどく事はできない。 破壊力-C スピード-D 射程距離-A 持続力-A 精密動作性-B 成長性-B 模と紅葉が銀次郎と戦った次の日、昼休みに模と紅葉は銀次郎を連れ出して校舎の屋上へ来た。 銀次郎が『スタンド使い』となったこと、そして紅葉を襲ったことについて聞くためだ。 完全に打ち負かされた銀次郎は態度もすっかり縮こまってしまっていた。 紅葉「やっぱり、アンタは『矢』の力でスタンド能力を引き出されたのね。」 銀次郎「……ああ、もう思い出したくもねえ。恐ろしい体験だった。」 銀次郎「俺に『矢』を放った男は、紅葉を始末するようにと言った。 確かに俺はおまえに因縁はあった。そして倒すための力も得た。 だが……人に命令されて『ハイわかりました』と素直に聞き入れるのはスゲー腹が立ったんだ。」 模「……それで?」 銀次郎「とりあえず一発殴ってやろうと思ったんだ。……だが、攻撃は当たらなかった。 不思議なんだ。『あの男』は『避ける素振りすら見せなかった』。 何が起こったかわからねーが……コイツはヤバいって恐怖だけはあった。」 銀次郎「紅葉、おまえには悪かったと思ってる。……元々おまえには俺がちょっかい出したんだ。 しかし、これ以上は話せねえ。あの男…『弓と矢の男』に見られているんじゃないかって思うと恐ろしくてたまらないんだ。 もうお前らに手を出すようなことはしない。……だが、協力することもしたくない。」 銀次郎は立ち上がり、ドアのほうに向かった。 銀次郎「……紅葉、それと模っていったか。何故かはわからねーが、この街のスタンド使い……『狙われ』てるぜ。」 錆びついたドアの閉まる音が静まった屋上に響く……銀次郎が校舎に戻っても、模と紅葉は長く沈黙しつづけた。 『自分たちの命が狙われている』……それが確かなこととなり、二人には重圧がのしかかる。 危機にさらされた人間が、普通に平常心でいられるはずがない。 スタンド使いとはいえ、ただの高校生なのだから。 鎌倉銀次郎は苛立っていた。 利用されたとはいえ、スタンドをもってしても紅葉にいまだに勝てていないからだ。 銀次郎「…………ッチ。」チラッ 銀次郎からは周りの人間がみな自分を嘲笑っているかのように見えていた。 銀次郎「ちくしょう………ちくしょう……!!」 ドンッ! 男「おっと、すまないな。」スタスタ 銀次郎「…………」 銀次郎(やっぱり……だれか殴ってやんねェと気が済まねえ!!) 男「………」スタスタ 銀次郎(キッカケなんかこの程度で十分!こいつよく見りゃあタッパあるし強さを証明するには文句ねえ! この男をブン殴ってやる!『レッド・サイクロン』!) 銀次郎はスタンドを発動させ、背を向けている男を『掴み』、引き寄せた。 グィッ 銀次郎「おい!テメーどこ見て歩いてんだよッボケ!!」 男「…………」 銀次郎「あ゛あ゛?ビビってんのかよ!?歯ァ食いしばれェ!!」 男「てめェ……喧嘩売る相手間違ってんじゃあねえのか?」 銀次郎「んだゴラァ!!」 男「ケンカは素手と素手でやるもんだろ。卑怯なんじゃあねーのか?……『スタンド』を使うのはよ。」 銀次郎「んなのカンケーねえだろッ!……………!!」 銀次郎の表情が変わった。にらみを利かせていた表情に、焦りが浮かび始める。 レッド・サイクロンが掴んだその男は、人型のビジョン……『スタンド』を繰り出した! 男のスタンド「オラァッ!!」バキャアッ!! 銀次郎「んぐほォッ!!」スターン 男「てめェは何モンだ?新手のスタンド使いか?」 銀次郎「な……なッ!!『スタンド』!!」 男・五代衛「学校までもぐりこんでくるとはいい度胸してんじゃあねえか。てめェ『覚悟』しろよ?」 ドドドドドドドドドド…… 風が吹き抜ける屋上に、模と紅葉はまだ居座っていた。 紅葉「……模、昼休み終わるし、そろそろもどろっか。」 模「…………」 模はフェンスから校舎の下を眺めていた。 紅葉「模?」 模「ねぇ紅葉、校庭で追いかけられてる人……銀次郎くんじゃない?」 紅葉「ハア?」 銀次郎「ハァッ、ハァッ、ハァッ」ドスドスドス 五代「てめェ待ちやがれ!」ドドドドド 校庭から体育館裏に入ったところで銀次郎は走るのをやめた。 五代「……鬼ゴッコはおわりか?まあ、ここなら他人のことを気にせず戦える。」 五代は体育館の外壁そばに積まれた、自分の身長ほどの鉄パイプを手に取った。 銀次郎(校舎内だと障害物が多すぎて俺の能力は使いにくい。 周りを囲まれていて、かつ身を隠す場所の少ないここは俺にとって有利!) 銀次郎「……へっ、俺のスタンドじゃあパワーが強すぎて他のやつらもフッとんじまう。俺は常に冷静なんだ。 お前のようにまわりを見ずにすぐスタンド攻撃をくりだしちまったりなんかはしねえ。」 五代「フッ、そのセリフそのままそっくり返すぜ。」 銀次郎(しかし……なぜ鉄パイプを持った?スタンド攻撃じゃないのか? ……まァいい。射程3メートル以内の範囲ならレッド・サイクロンの独壇場!) 五代「さて……そろそろいくぜ、ウスラデブ。」 銀次郎(3メートル内に入ってきたら左手で『掴ん』で右手でブン殴る。 鉄パイプかもしくは他の何かを投げてくるようなら『掴ん』で投げ返してやる!!) 五代「オラァ!!」 五代は銀次郎のほうに向かわず、一歩踏み込んで鉄パイプを振りかぶった。 銀次郎(『向かってこない』!決まりだ、投げてくる!!) 銀次郎「向かってこねえとは怖気づいたかァ!!『レッド・サイクロン』、正面に投げてくる鉄パイプを『掴め』ェェ!!」 しかし、五代は振りかぶった鉄パイプを投げるつもりなどなかった。五代は鉄パイプを横に振ろうとしていたのだ。そして…… 五代「今だ、『ワン・トゥ・ワン』!」 ワン・トゥ・ワン「ウオオオオオオ!!!!」 なんと五代の振った鉄パイプは倍の4メートル弱ほどの長さになり、 鉄パイプはスピードを緩めることなく横から銀次郎の側頭部に向かっていった。 銀次郎「な……鉄パイプが『伸びた』!?ま、まずい!レッド・サイクロンは正面の攻撃に備えている!!」 ガァァァァン!!! 鉄パイプは銀次郎のこめかみにクリーンヒットした。 銀次郎「ぐ……お…お………」 しかし銀次郎は頭が揺れるような感覚に襲われたものの倒れなかった。 五代「ほう、ずいぶんとタフじゃねえか。」 銀次郎「ククク……(紅葉のおかげで)打たれ強いもんでな。てめえのようにスタンド能力に頼るだけの男じゃないんだよ。」 五代「……てめーに言われたくはねえが……そんならスタンドなしの肉弾戦といくか?」 銀次郎「ほー、いいのかよ。締めあげたら最後、降参しても離してやんないぜ。ただし……『レッド・サイクロン』!!」 レッド・サイクロンは五代の持っていた鉄パイプを掴み取った。 五代「………」 銀次郎「こいつはナシだ。安心しな、俺も武器はつかわねえ。」 五代「いいだろう、『ワン・トゥ・ワン』解除しろ。」 ギュン! 4メートル弱の鉄パイプはもとの長さに戻った。銀次郎は鉄パイプを捨て、 銀次郎「よし、勝負だ。……かかってこいッ!!」 五代「先手必勝、行くぜ!」 五代は銀次郎に向かっていった。 銀次郎「バカめ!!3メートル内に入ったな?『レッド・サイクロン』、コイツを『掴め』!!」 銀次郎はレッド・サイクロンを発動し、左手に五代を引き寄せようとしていた。しかし…… 五代「『ワン・トゥ・ワン』、ズームパンチ!!」 バキャオォッ!! 銀次郎「うぐ……ぐ……」 レッド・サイクロンが五代を吸い寄せると同時に五代は自らの腕を『2倍に伸ばし』、銀次郎の右頬を殴った。 五代「てめーのスタンドの能力が『吸い寄せる』ように『掴む』能力だってのはさっきのでわかった。 『吸い寄せる』力と俺のパンチ力、そしてスタンド能力『伸ばす』力で『3倍返し』したぜ。」 銀次郎「う……腕が……『伸びた』………だ…と……?」ドズーーン 五代「俺のスタンド『ワン・トゥ・ワン』はあらゆるものを『2倍』にする能力。 ……守りに入って俺の能力を見極めようなんざ、怖気づいてたのはてめーのほうなんじゃねえのか?」 ドォ――――――――ン 【スタンド名】 ワン・トゥ・ワン 【本体】 五代衛(ゴダイ マモル) 【タイプ】 近距離型 【特徴】 真ん中から左右対称でカラーリングが違う人型 【能力】 物を『2倍』にする 長さや重さ等本体が認識出来る物事を2倍にする。 倍に出来るのは1つだけで1つの物への連続使用や 複数の物を同時に倍にする事は出来ない 破壊力-A スピード-B 射程距離-C 持続力-D 精密動作性-C 成長性-A 銀次郎「ウグッ…………クッ、クソッ!『カウンター』で入っちまったッ!」ムクッ 五代「つくづくタフな野郎だぜ……『トドメ』、刺してやるよ。」 銀次郎「ままま待てッ!も、もう勘弁………ン?」 銀次郎がふと見た方向からは、模と紅葉が向かってきていた。 模「やっぱり!銀次郎くんが、スタンド使いと戦っているッ!」 紅葉「『新手のスタンド使い』?……それにしても、銀次郎を攻撃するとは……。」 五代「ム……誰だ?」 銀次郎「紅葉……助けてくれッ!!ヤツらが……俺を『始末』しに来たんだ!!」 五代「何ィ……?」 五代は銀次郎を睨みつけた。 銀次郎(手ェ出したのは俺だし、こんなのはウソっぱちだが……状況を変えねェとやられちまう!) 五代は模と紅葉に問いかけた。 五代「おい、てめーらはコイツの『仲間』か!?」 紅葉は少し考えて、返事をした。 紅葉「…………違うわ。」 模(く、紅葉……。) 紅葉「銀次郎、つまらないウソつくのやめてよね。」 銀次郎「うッ……ウソなもんかよ!!」 紅葉「アンタが言ってたんじゃない。私たちが『狙われてる』って。 もしこいつが『弓と矢の男』の刺客なら、私たちを知らないわけがない。」 模「じゃあ、この人は……」 紅葉「……たぶん、私たちと『同じ』。杜王町に潜む『陰謀』に狙われている人間よ。」 五代「……おい、何がどういうことなんだ。」 キーン、コーン、カーン、コーン…… 昼休みの終わりを知らせるベルが鳴った。 放課後、屋上に4人の男女が集まった。 模、紅葉、五代、そして銀髪でパーカを着た男……四宮藤吉郎。 紅葉は五代と四宮に、杜王町に来たスタンド使いのこと、 銀次郎が紅葉を倒すためにスタンド使いにさせられたこと、またその『弓と矢の男』について話した。 四宮「…………」 五代「……なるほど、その『弓と矢の男』がこの杜王町で何かしようとしているってことなんだな?」 紅葉「詳しいことは分からないけど、その男がこの杜王町にスタンド使いを増やし、私たちを狙っていることは間違いないわ。」 五代「……俺たちにも心当たりがある。俺と四宮はこれまでに2人のスタンド使いに襲われた。」 紅葉「やっぱり、杜王町に住むスタンド使いが狙われてるのね。 ……でも、なぜ杜王町にスタンド使いをわざわざ増やして、私たちを狙うのかしら?」 模「『味方』を増やして、『敵』……を減らすためじゃないかな。」 紅葉「『敵』って誰にとっての?」 模「その……『弓と矢の男』にとってのさ。 『弓と矢の男』が、杜王町を支配しようとしている……っていうと飛躍しすぎかもしれないけど。」 普通に考えれば、マンガのような飛躍した考えだ。……だが、紅葉も五代もそれを簡単に否定することはできなかった。 紅葉「ところで、あんたたちは生まれついてのスタンド使いなのかしら?」 四宮「…………」フルフル 五代「四宮も俺も生まれついてのスタンド使い……というわけじゃねーが、 スタンドが初めて発現したのはガキのころだ。『弓と矢の男』とは関係ねえ。」 紅葉「そう……じゃあ、やっぱりあなたたち二人は私たちの『敵』ではないわけね。」 模「ねえ、『味方』……にはなれないかな。」 五代「……」 模「僕たちはみんな、『弓と矢の男』に狙われてるんだ。 もし、これから誰かが襲われた時、みんなで助け合えないかな?そうすれば『弓と矢の男』だって……」 紅葉「模………残念だけど、それは難しいわ。」 模「え?」 五代「……ひとつに固まったほうが危険という場合もある。それに……俺たちはお前たちのことを『信頼』したわけじゃねー。 スタンド使いだが……『敵』ではないとわかっただけだ。」 紅葉「助け合うことが、自分の身を危険にさらすこともある。模……自分を守れるのは、自分だけなのよ。」 模「そんな……」 五代「心配されんでも俺たち二人は絶対に負けない。まあ、これからは情報交換くらいはしてやるよ。」 五代はそう言って校舎へのドアに向かった。そして思い出したように足を止めて振り向いて、 五代「そうだ、俺たちの名前とスタンド能力は教えておく。俺は、『五代衛(ゴダイ マモル)』。 スタンドは、物の長さや重さなんかを『2倍』にする『ワン・トゥ・ワン』だ。 そしてこいつは『四宮藤吉郎(シノミヤ トウキチロウ)』。強い強度と粘性を持った『糸』のスタンド、『スロウダイヴ』だ。 ……それじゃあな。」 五代はドアを開けて校舎内に入り、四宮もそれについていった。 ドアは強く閉められたわけではないが、その音は模の耳に重く、大きく響いた。 紅葉「ねえ模……。」 模「…………」 紅葉「……もしかしたら『弓と矢の男』には、まだあんたの存在は知られてないかもしれない。 銀次郎はきのうから『弓と矢の男』と接触してないみたいだし。 だから……これから私が襲われたとしても、自分の身が危なくなると思ったら、助けなくてもいいからね……。」 模「!」 紅葉は、自分が模にスタンドのことを教えたことで、『弓と矢の男』との戦いに巻き込んでしまうことを恐れた。 その紅葉の想いを知らない模は、下を向いて唇をかんで泣くのをこらえていた。 紅葉「………それじゃあね、模。」 紅葉は校舎にもどったが、模はその場で立ちつくしたままだった。 模(僕は、たよりないのかなあ、必要とされてないのかなあ、僕は…ずっと、『だれかといっしょにはいられないのかなあ?』) 模は、心が離れ離れになっていた自分の家族を思い出していた。 第二章 -倍返しの世界- END to be continued... < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
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三倍返しとサンタクロース 「―――ひーらぎ~!」 耳慣れた声に呼ばれ、少年は家路へと急いでいた足を止めた。 年の頃なら六、七歳。無造作、というより洗いっぱなしのような茶の髪。やや眦のきつい眼差しは、しかし子供らしい清んだ光を宿している。 もう冬の足音が聞こえようと言うこの時期に、上こそジャケットを着込みつつも下はハーフパンツ姿。今年小学校に上がったばかりのやんちゃ盛りには、小さな身体に満ちたエネルギーで、多少の寒さなど吹き飛ばせるらしかった。 少年は、今その前を駆け抜けようとした、道の脇から伸びる神社への石段を見上げる。声の主である小柄な影が、そこからぱたぱたと駆け下りてきた。 「どうしたんだよ、くれは」 ずいぶん急いで自分のところまで降りてきた相手に、少年は目を瞬きつつ問う。 少年と同じ年頃の少女。ぱっちりとした黒目がちの瞳が愛らしい。膝裏まである長い黒髪に、白い小袖と緋色の袴。神社の石段にはよく似合う、“巫女さん”姿だ。 彼女の名前は赤羽くれは。その姿と姓に違わずこの赤羽神社の娘であり、また少年―――柊蓮司の幼馴染だった。 「よ、よかった~。今日じゅうに会えて~」 くれはは駆けて荒くなった息を整えるのもそこそこに、安堵したように告げる。柊に視線を合わせて、ぱっと花開くように笑った。 その合わされた視線の角度がやや上からなのを、柊は複雑に思う。くれはは女子の中で別段大きいわけではないのだが、柊と並ぶとほんの少しだけ彼女の方が背が高いのだ。 「………だから、どうしたんだよ?」 複雑な心境が少々ぶっきらぼうな声を作ってしまい、柊は内心少し焦った。この間、ちょっと不機嫌な声で話して、クラスの女子に泣かれてしまったのを思い出したのだ。 しかし、小学校に上がる前から柊と付き合いがあるくれはは、彼のぶっきらぼうな声など慣れている。気にした風もなく、繰り返し問われた質問に答えた。 「ひいらぎ、今日おたんじょう日でしょ?」 はい! と差し出されたのは小さな包みを、柊は目を見開いて見つめた。 縦横のサイズはタバコの箱と同じくらい、厚さはその半分ほど。うさぎをモチーフにしたキャラクター柄の包装が少々ガタついているのは、おそらく少女自身が包んだからだろう。 「ほんとうは、学校であげようかと思ってたんだけど………ひいらぎ、そういうのイヤそうだったから」 だからやめといたんだけど、と、くれははちょっと困ったように笑う。 今日が柊の誕生日だと知っているのは、クラスでも小学校に上がる前から付き合いの友人だけである。今の今まで一緒に遊んでいたその友人達も、柊自身が何も言わなかったため、すっかり忘れていたようだが。 自分から「おれ、たんじょう日なんだ~!」とかいうのは、祝ってくれといってるような気がして、別に言わなかったというだけなのだが―――くれはにはその態度が、学校でそういうことされるのが嫌なのだという風に取れたらしい。 「お、おう。ありがと………」 不意打ちのプレゼントに、柊はちょっとむずむずするような感覚を覚えつつも、差し出された包みを受け取った。そのまますぐ包みを開けようとして、ちょっと手を止める。 「えと………あけても、いいよな」 うん、という返事に、今度こそ包みを開く。いつもは紙をびりびりに破ってしまうけれど、何となく今回はゆっくり丁寧に、破けないように広げた。 そうして、中から出てきたのは、一枚のカードと、見慣れたパッケージ。 カードの方は、くれはのお手製らしい。彼女がよくお絵かきのときに描いていたうさぎのキャラクターが、「おたんじょう日おめでとう」と言ってくれているバースデイカード。 もう一つの方は――― 「―――カバル・チョコだ」 その呟きに、くれははちょっと柊の表情を窺うような様子で、自信なさげに言う。 「………ひいらぎ、それのカードあつめてるでしょ? だから………」 それは、特撮ヒーローのキャラクターカードがおまけについたチョコ菓子だった。小学校の男子の間でこのカードを集めるのが流行っており、柊もこのカードを熱心に集めている一人だ。 うん、とくれはの言葉に頷いて、柊はいそいそとパッケージを開く。―――パッケージに印刷された聖戦士の顔が派手に破けたけど、気にしない。 菓子には見向きもせず、カードの方を引っ張り出す。出てきたカードに、柊は目を見開いた。 「―――“銀の大首領像”だ!」 すげぇ! と叫んで柊はカードを掲げる。―――レアカードの中でも、特に出にくいといわれているもので、実際柊の周りでこのカードを持っているのは一人だけだった。 わっほぅ! と飛び跳ねんばかりに喜ぶ柊に、くれはは面食らったように問う。 「そ、そんなスゴいのだったの?」 「すげぇよ! すげぇうれしい! ホントありがとうな、くれは!」 はしゃぐ柊の様子に、くれはも満面の笑みを浮かべ、 「どういたしまして!」 よかった、と嬉しそうに呟いた。 「―――れ~んじっ!」 妙に楽しそうな声に、柊は嫌な予感を覚えつつ振り返った。 くれはと別れて帰宅した後、家族での誕生日パーティーを終えて、リビングでテレビを見ていた時である。 振り返った先には、妙ににこやかな笑みを浮かべた、二歳上の姉、京子の姿。 「………なんだよ………」 「は~い、これ!」 顔をしかめる柊に姉が差し出したのは、何かちょっと埃被った、陶器製の恐竜の貯金箱。 受け取りつつ、柊は呻くように問う。 「………なにコレ」 「やーねぇ、たんじょう日プレゼントにきまってんじゃなぁいっ♪」 無駄にご機嫌な姉を、柊はソファに座ったまま半眼で見上げる。 「………いらないものおしつけてプレゼントっていうなら、“三ばいがえし”はいらないもの三つで、かえせばいいよな」 うっ、とその言葉に京子は呻いた。 さっきまでやっていた、ちょっと気の早いクリスマス特集。その中の街頭インタビューで、女性達が口々にいっていた言葉―――“三倍返し”。 曰く、「女性からのプレゼントに、男は三倍で返すのが礼儀だ」。 それを見るなり、この姉は何故かそそくさとリビングを出て行って―――戻ってくるなり、埃被った恐竜を弟に押し付けたわけである。 「なっまいき~! あんたそんなんじゃ女の子にモテないわよ!?」 「いでででで! やめろキョーボーあねき! ―――いいよ、べつにモテなくて!」 ヘッドホールドかまされつつ、柊は姉の言葉に叫び返す。 斜向かいのマンションに自他共に“モテる”という兄ちゃんが住んでいるのだが、柊の目から見れば、いつも色んな女の人と二人で会っているだけだ。 柊にとってみれば、女の子と遊ぶんだって皆で鬼ごっことかかくれんぼの方が楽しいのに、と思うだけ。まあ、くれはと二人で遊ぶのも楽しいけど、くれはは姉の言う“モテない”今の自分と遊んでくれるわけだから、別にモテるようになる必要なんてないし。 と、そんなことを思って、気づく。 ―――そうだ、くれは――― お返し目当てで廃品押し付けてきた姉は論外だが、不意打ちでものすごく嬉しいプレゼントをくれた彼女には、やっぱりお返しをしないわけにはいかないだろう。 ―――でも、“三ばいがえし”って………どうすりゃいいんだ?――― そんな思考に沈んでいた柊は、 「まったくー………あんたはその“でりかしー”のないとこがなければ………今でもちょこちょこ、あんたを気にしてる子いるのに」 そんな姉の呟きなど、完全に意識の外にシャットダウンしてしまっていた。 「―――う~ん………」 自室のベッドの上に胡坐をかいて、柊は膝の上のカードを見つめ、悩む。 銀ラメに輝くレアカード―――これは、柊にとって何より嬉しいプレゼントだった。だから、お返しするなら、くれはにとってこの三倍嬉しいものをプレゼントしなくちゃいけない。 「………うぅぅぅ~~~~ん………っ」 腕を組んで、首を捻って、柊は考える。 くれはが喜びそうなものはいくつか思いつくのだが―――自分がこのカード貰ったときと同じくらい喜んでもらえるかもしれないものはあっても、その三倍に届きそうなものは思いつかない。 悩んで、悩んで―――はた、と気づいた。 「―――そうか、三つあげればいいのか!」 さっき、姉にはいらないもの三つで返すと言ったのに、何故すぐこの方法に気づかなかったのだろう。 うんうん、と思いついた案に満足しつつ、さっきいくつか思いついたくれはの喜びそうなものの中から、特に良さそうなのを三つ選ぶ。 まずは、くれはの好きなうさぎのキャラクターのシャープペン。前から欲しいと言っていたけど、今もっている鉛筆を使い切るまでは買ってもらえないだろうといっていた。 次に、ご近所の和菓子屋さんで売っているうさぎ饅頭。前にくれはの家へ遊びに言ったとき、おやつに出してもらったもので、ものすごくおいしかったのを覚えてる。くれはの家でも、本当に大切なお客さんが来た日にだけおやつに出るらしく、滅多に食べれないと言っていた。 箱売りは値段的に手が届かないだろうが、一個ずつばら売りもしているそうなので、そっちなら何とかなるかもしれない。 最後に、前に大通りの露天商で見た、星のペンダント。銀の土台に色とりどりのビーズを散りばめたやつで、くれはは五分近くその露天商の前でそのペンダントを食い入るように見つめていた。 どれもくれはがすごく欲しがっているもの。自分がこのカードを貰ったものと同じくらい、喜んでくれると思う。―――しかし、 「―――どれも、たかいんだよなぁ………」 ぼふ、とベッドに引っくり返って、柊は呻く。―――欲しくて、でも手に入らないのは、自分達の普段の小遣いで手が届かないものだからだ。 柊の小遣いは、一回家の手伝いをして五十円。カードを集めるのに例のチョコを買うのにもわりと苦労するレベルである。 でも、これが一番くれはに喜んでもらえそうな三つなのだ。くれはは柊に一番嬉しいプレゼントをくれたんだから、これくらいしなくちゃ釣り合わない。 「―――よしっ!」 気合を込めて起き上がり、柊が睨むように見つめたのは、机の上に鎮座した貯金箱。 さっきまでガラクタだったはずの恐竜は、しかし、柊の視線の先で、誇らしげに胸を張って見えた。 誕生日のお返しは、やはり誕生日に。くれはの誕生日は一月十六日。あと二ヶ月ちょっとである。 柊は次の日に早速、プレゼントに決めたもの三つ、それぞれの値段を確認した。 シャーペンが150円、うさぎ饅頭(一個)が250円、ペンダントが500円。 ついでに、ペンダントは手作りの一品もので他の人に買われてしまっては困るから、その露天商の店主に事情を話して取っておいて貰えるように頼んでおいた。 「少年、小さいのになかなかいい心意気だね! オッケー、取っときましょうとも! ついでに、その心意気に免じて350円にまけてあげようじゃないか!」 そのお姉さんの言葉が嬉しく、また目標金額の変化の計算に必死になっていた柊は、 「しかし、あんたいい男になるよー。十年経ったら女が放っとかないだろうね」 という、続く彼女の言葉は、華麗にスルーしていた。 次に、柊は家の手伝いの頻度を増やした。今までは友達と駄菓子屋にいく約束をしたときなどに、軍資金を得るために手伝っていた程度だった。それを、とりあえず毎日最低一つは手伝いをするようにした。これで、一日50円である。 しかし、その入手したお金をそのまま貯金箱に投入すればいいものを、ついつい、友達の誘いを受けて持ったまま出てしまい―――まあ、大半がカードや駄菓子に化けた。 残ったお金は帰宅するなり投入しているが―――貯金開始から一ヶ月以上経っても、五円玉より大きい額の硬貨を入れた記憶がないことに、柊は自分の意志の弱さを痛感した。 柊が貯金を始めて一ヶ月以上が経ち―――それは、二学期が終了した日のことだった。 「―――くれはー? なにやってんだ、んなとこでー」 赤羽神社の前を通り過ぎようとして、柊は石段の中ほどに見つけた少女に声をかけた。 「………ひーらぎ?」 何をする風でもなく石段に腰掛けていた少女は、我に返ったような様子で、自分の方へと上がってくる柊を見た。 「………どうしたの? なにか、ようじ?」 「いや、うちでつーしんぼ見せたら、おこられそうになって………にげてきたら、おまえがボーッっとすわってるから」 隣に腰掛けながら、柊は少々情けない事情を答える。 「そっか………」 どこかぼんやりと、くれはが返す。それきり、会話が切れた。 「………えぇっと………」 くれはと一緒にいて会話が続かない、という初めての事態に、柊は戸惑う。落ちた沈黙に、商店街から響いてきたクリスマスソングが聞こえた。 「そうだ―――くれは、サンタにプレゼント、おねがいしたか?」 何とか話題を思いついて、柊は問う。―――それに、自分がくれはの誕生日にあげるつもりのものを、サンタに先に渡されたら別の何かを考えなければいけない。 しかし、くれはの答えは完全に柊の予想外のものだった。 「うちにはこないよ、サンタさん」 「―――え?」 目を瞬く柊に、くれはは言葉を続ける。 「うち神社だもん。クリスマス、やったことないし。サンタさんだって………」 「―――ホントに?」 初めて聞いた話に、柊は信じられない思いで呟いた。くれはは、笑って、 「しょーがないけどね―――」 言って、軽く俯いたその顔が――― 一瞬翳った気がして――― 「―――ふぅん………」 何気なしに呟きながらも、柊はここ最近―――十二月に入ってからのくれはの様子を思い返す。気がつくと、話の輪にいなくて―――その時の話題は、いつも、クリスマスやサンタのことだった。 ―――クリスマスの思い出がなきゃ、はなしに入れないもんな――― そう、思って――― 「―――あ!」 思いついて、立ち上がった。くれはが、驚いたように顔を上げる。 その彼女に声をかけながら、階段を駆け下りる。 「よーじ思い出した! ちょっとここで待ってろ! ―――いいか、ぜったい動くなよー!」 「―――ひーらぎ~?」 不思議そうな少女の声を背に受けながら、柊はそのまま今さっき来た道を戻って走り出した。 ―――思い出がなければ、つくればいいんだよな――― そう思って、家へと駆け戻る。 ―――いっこ、なにか思い出があれば、みんなのはなしをきいても、きっとさみしくならない――― だから、くれはに、クリスマスの思い出をあげるのだ。 マンションについて、エレベーターで部屋の回まで上がり―――こっそりと玄関を開けて、中に入る。 玄関の靴の状況から察するに、今家にいるのは姉だけらしい。彼女に見つからないように、居そうな場所―――居間や彼女の部屋を警戒しつつ、何とか自室までたどり着く。 音が立たないように扉を閉めるなり、柊は机の上の貯金箱に飛びついた。 「―――えぇっと………っ!」 さかさまにして底についている蓋を引っぺがし、ベッドの上で中身を引っくり返す。 記憶に違わず、見事に一円玉と五円玉しかない。しかも、一円の方が圧倒的に多い。 その事実に軽く凹みつつも、お金を数え始める。と――― 「―――れ~ん~じぃ~?」 聞こえた背後からの声に、思わず手が止まった。 ぎぎ、と堅い動きで振り返れば、鬼もかくやの形相で扉の位置に仁王立ちする姉の姿。 「あんた、つーしんぼのことで怒られそうになってにげるなんて、どういうつもり!? しかもこそこそ帰ってきて―――って、何やってんの?」 ベッドの上に散乱した小銭を見て、姉は眉をしかめた。 柊は、くるりと膝立ちで器用に姉に向き直ると、両手を合わせる。 「たのむ、ねぇちゃんっ! この場は見のがしてくれ! かえってきたらバツそうじでも、なんでもやるから!」 くれはが待ってんだ! といえば、姉は小銭と柊を見比べて――― 「あんた、それでくれはちゃんへのプレゼント買う気?」 ずばり言い当てられて、柊はうぐっ、と呻く。 はぁぁ~………、と姉は溜息ををついて――― 「―――って、なにすんだ、ねえちゃん!?」 いきなり小銭に手を伸ばしてきた姉に、柊は面食らう。 「うっさいバカ! あんたがかぞえてたんじゃ日がくれるわよ! かわりにかぞえてやるっていってんの!」 一喝するなり、姉は小銭の山と戦い始めた。 「………ねぇちゃん、あんがと」 「うるさい話しかけるなバカ」 素直に告げた礼は、しかし、きつい言葉で一蹴され、柊はなんとも言えない複雑な顔で姉の作業を見ているしかなかった。 姉が、小銭の山と戦うことしばし――― 「―――合計、158円」 ふうっ、と息をつきながら、姉は奮闘の成果を告げた。 「ありがとうっ、ねぇちゃん!」 「―――って、待ちなさいバカれんじ!」 礼を告げるなり、小銭をかき集めて出ようとした弟を、京子は一喝して止めた。 「その小ゼニの山で持ってたらお店にメーワクでしょうが! リョーガエしてあげるからちょっと待ちなさい!」 言って、姉はいったん柊の部屋を出ると、自室から自分の財布を持ってきた。―――月額100円固定の小遣いと、柊よりこまめにやっているお手伝いのお駄賃で、姉は柊より金持ちだ。 「ほら、8円のこして、これと交換」 五十円玉三枚を差し出されて、柊はその言葉に従う。 「うわ、サイフすごいことになった………あとであたしもリョーガエしてもらわないと………」 えらく膨らんでしまった財布に、京子はぼやく。―――次は親の財布がすごいことになりそうである。 「んじゃ、帰ってきたらバツ掃除だかんね! 忘れるんじゃないわよ!」 「うん!」 念押す言葉に柊は元気よく頷いて、今度こそ小銭を握って駆け出した。 空から白いものがちらつき始めた中、クリスマスソング流れる商店街を、柊は元気よく駆けていく。 目指すのは、この前、親と一緒に家で食べるクリスマスケーキの予約に行った、ケーキ屋さんだ。 ―――たしか、小さいサンタのケーキが150円だった!――― ショウウィンドウに、1ピース150円の、サンタの砂糖菓子が乗ったショートケーキがあったのを、柊は覚えていた。 ―――クリスマス、っていったら、サンタのケーキだもんな!――― 早く、幼馴染の少女にそれを届けたくて、人ごみの中を急いで駆け―――歩道の舗装タイルの継ぎ目に躓いて、派手にすっ転んだ。 「―――いってぇ………」 呻きつつ、身を起こす。―――他の通行人の視線がちょっと恥ずかしい。 膝小僧が痛い。ジーパンに隠れて見えないけど、多分擦り剥いた。けれど、それよりも――― 「―――やばっ!」 握り締めていた小銭をコケた拍子に落とした。慌てて辺りを見回す。 五十円玉三枚と一円玉一枚はすぐ近くに転がっていたけれど、残りの7円が見つからない。歩く人の群の向こうまで転がっていってしまったらしい。 「―――ぅ~~~っ………しょーがないっ!」 惜しいけれど、探している暇はない。くれはが待っているのだ。 ―――ケーキのお金には、足りるしっ!――― そう思って、また駆け出した。―――今度は転んでも落とさないよう、しっかりとポケットに小銭をしまって。 『洋菓子・フラワーチャイルド』 そう看板を掲げた店に、柊は勢いよく駆け込んだ。 そう広くない店内、ショウウィンドウも兼ねたカウンターに駆け寄って、元気よく叫ぶ。 「―――すみませんっ! サンタのケーキくださいっ!」 この前の予約の時もカウンターにいたお姉さん―――姉よりは大分大きく見えるから、小学生ではないだろうけれど、中学生なのか高校生なのか、柊には判断がつかなかった―――が、カウンターから顔だけ覗かせた柊に、首を傾げて尋ねる。 「あ、この間の。―――予約のケーキ、取りに来たの? でも、あれは明後日じゃなかった?」 「ちがくてっ、これこれっ! この小さいの、くださいっ!」 ショウウィンドウに並んだ商品の中から、サンタが乗ったショートケーキを直接指差して、柊は告げた。 お姉さんは笑って、ああ、そっち、と呟いて、 「はい、かしこまりました。―――いくつ、欲しいのかな?」 「いっこ!」 元気よく即答する。―――本当は自分も食べたいけど、お金が足りないから仕方がない。 お姉さんは笑顔で頷いて、ケーキをショウウィンドウから取り出す道具を手に取りつつ、 「はい。じゃあ、154円ですね」 「―――えっ!?」 柊はその言葉に目を剥く。慌てて値札を確認するけれど、そこには確かに『150円』と書かれている。 「4円、ちがうよ!?」 「ああ―――えっと、そこに載ってる値段は、消費税っていうのがつく前の値段で………そこに4円、足されちゃうの」 なんだそれ、と柊は呻く。―――ショーヒゼイってなんだ。 それまで、殆ど10円単位の品物しかない駄菓子屋でしか買い物をしたことがなかった。カードつきのチョコはそれなりにいい値段がしたけど、値札なんかついてなくて、駄菓子屋のおばちゃんの言う値段を払っていたし。 柊にとって、消費税は今まで縁のないものだった。+3%が、柊に重くのしかかる。 今、ポケットの中に入っているのは、151円。―――3円、足りない。 ―――さっき落っことしたお金………!――― あれがあれば足りたのに―――そう、柊は歯噛みする。 「………もしかして、お金足りないの?」 お姉さんの言葉に、歯を食いしばって頷くしかない。 「えぇっと………じゃあ、こっちなら買えるんじゃないかな?」 そういって、彼女が指し示したのは、サンタのいない、普通のショートケーキ。 「こっちは、消費税がついても144円だから、150円で足りるよ?」 「………サンタがいないと、イミないんだよ………」 柊は呻くように言う。―――サンタのいないケーキじゃ、クリスマスのケーキにならない。それでは、意味がないのだ。 ―――でも、サンタのやつには、お金が足りない――― 「―――え、えぇっと………」 う~っ、と呻いて固まってしまった柊に、お姉さんは困ったようにおろおろと店の奥に視線を向ける。 「………どうしたの? 花子」 と、奥から出てきたのは、お姉さんと同じエプロンを着たおばさん。顔も、彼女によく似ていた。 「あ、お母さんっ、この子、サンタのショートケーキが欲しいみたいなんだけど、お金がちょっと足りないみたいでっ」 縋るようにお姉さんが言うと、おばさんはカウンターを出て、柊の横に並ぶ。 「サンタのケーキが欲しいの? いくら、足りないの―――あら?」 柊に視線を合わせるようにしゃがんだおばさんが、言いかけて、柊の膝に眼を留める。―――ジーパンの膝の部分、さっき擦り剥いたところに血の染みがにじんでいた。 「怪我してるじゃないか! ほら、こっちおいで!」 「―――へっ!?」 ぐいっ、といきなり手を引かれ、柊は間抜けな声と共に引きずられる。 訳がわからないまま、柊は『フラワーチャイルド』の店の奥に、お邪魔するはめになった。 「ほら、そこ座って!」 店の奥にある調理場、その更に奥は住居と繋がっていた。おばさんにリビングらしい部屋のソファを示されて、何となく抗い難いものを感じて柊は素直に従う。 「ああ、もう。傷が乾いたら、ジーパンの生地が膝にくっついちゃうよ? いつ怪我したんだい?」 「えと………さっき、ここにくるとちゅう………ころんで………」 柊が答えている間に、おばさんはジーパンを手際よく膝上まで捲くり、持ってきた救急箱から消毒液を取り出した。 「はい、ちょっと染みるよー」 「―――い゛っ!」 呻く柊に構わず、おばさんは手際よく消毒を済ませ、ガーゼを当ててテープで止める。 「はい、終わり。―――よく、暴れないで我慢したね」 最後に、ガーゼがずれないよう、丁寧にジーパンを元に戻して、おばさんは笑う。 「………あ゛、ありがとう゛っ………」 ちょっと涙声で、それでもきちんと柊は礼を言った。そのことに、おばさんは満足げに頷く。 「うん、いい子だね。―――しかし、怪我ほったらかすほど急いで、どうしてサンタのケーキが欲しいんだい?」 視線を合わせ、真摯な様子で問われ、柊はちょっとたじろぐ。 ぺらぺら話すような理由(はなし)じゃない。けれど、おばさんの目は真剣で、何だか誤魔化してはいけないような気がした。 「………えっと………トモダチに、うちが神社の子がいて………」 逡巡の後、柊はぽつぽつと告げる。 「神社だから、サンタきたことなくて、クリスマスもやったことないんだって。―――そういえば、そーゆーはなしのとき、いつもいなかったなぁ、って思って………」 それで、と頭をかきながら、続ける。 「なんか、クリスマスの思い出がいっこあったら、みんなのはなしにも入れるし、きいててもさみしくないんじゃないかと思って………」 それで、と言い終えて、おばさんに向き直ると―――おばさんは、食い入るように柊を見つめていた。 「―――ぇ、えっ!?」 「………あんたっ、ホントいい子だねっ!」 視線の強さにたじろぐ柊に、おばさんは叫ぶように告げる。 「うんうん、その心意気、気に入った! ―――よし、ちょっと待ってなさい!」 花子ー! と叫びつつ、店の方に駆けていく。 おばさんの言葉に従って、というより、寧ろおばさんの勢いに飲まれて固まって、そのソファに座って待っていた柊の元に、おばさんはすぐ戻ってきた。後には、小さな白い箱を持ったお姉さんも一緒だ。 「ちょっとこっちおいで」 おばさんに手招きされてついていくと、そこは店の調理場とは別の、普通の家の台所。 柊を入り口に残して、おばさんは奥の冷蔵庫へ向かっていく。 「これ―――サンタさんの乗ったやつの方じゃないけど………」 柊の前にしゃがんだお姉さんが、白い箱の中身を見せてくれる。―――そこには、普通のショートケーキ。 「………うん………」 消沈して、柊は頷く。―――お金が足りないから仕方がない。 「値段は144円ね。―――で、これはおばさんからの、おまけ」 言って、冷蔵庫の方から戻ってきたおばさんが、そのケーキの上にちょこんとおいたのは―――赤と白の砂糖でできたサンタクロース。 柊ははじかれたようにおばさんを見上げる。 「―――いいのかっ!?」 「娘が作る砂糖菓子の見本に作ったやつだからね。商品じゃないから、お金はいいよ」 鷹揚に頷くおばさんに、柊は満面の笑みを浮かべる。 「ありがとうっ、おばさん!」 ポケットから五十円玉を三枚出して、お姉さんに手渡す。代わりにきちんと閉じたケーキの箱を受け取った。 「―――ああ、おつりはあたしが。花子、あんたはそろそろ準備しないと。鈴木君とデートなんだろ」 店にお釣りを取りに戻ろうとした娘を、おばさんが留める。お姉さんはその言葉に慌てたように叫んだ。 「いけない! そうだった!」 今度はお姉さんが冷蔵庫に向かう。と、おばさんと一緒に店の方に向かおうとしていた柊を呼び止めた。 「―――ねね、ボク。これちょっと見てくれない?」 言って示したのは、冷蔵庫から取り出したホールドケーキ。 柊の目から見れば、店のショウウィンドウにある見本のクリスマスケーキと同じにしか見えない―――ただ、一点の異物を除いて。 「………おねえさん、なに、これ………?」 その異物―――砂糖でできたサンタの横に鎮座ましました物体を、柊は恐る恐る指差して問う。 ぱっと見の格好は、隣のサンタと同じなのだが―――まず、色が違う。 帽子とか服とか、全体的に黒っぽくて、しかも、なんかおなかの辺りがテレビで見たことのある『ぼでぃびるだー』とかいうのみたいに割れている。顔も、ピーターパンのフック船長みたいに片目が黒い丸に隠されていた。 お姉さんは良くぞ聞いてくれましたといわんばかりに、 「黒サンタよ。―――もともと、サンタクロースって、いい子にご褒美をあげる赤サンタと、悪い子に罰を下す黒サンタがいたんだって」 「………へ、へぇ………そうなんだ………」 にこにこと楽しげに説明してくれるのに、柊としては引きつった笑いしか返せない。―――そんな恐いのをケーキに載せるセンスとか、それ以前にちょっとアレなデザインに。 「お母さんの見本のまんまじゃオリジナリティーがないから、作ってみたの。かわいいでしょう?」 柊の笑顔が完全に凍る。―――これが、かわいい? 柊の感覚では、これはどう見ても『かわいい』と称せるようなものではない。 しかし、このお姉さんのケーキの見本のためにおばさんがあのサンタを作り、それがくれはのケーキにもらえたわけだから―――なんだか、ここで正直に「かわいくない」と答えるのは許されない気がして、 「………そ、そぉ………だ、ね」 そう、搾り出すように答えた。―――おそらく、これが彼の人生で初めて口にした、『お世辞』というものだったろう。 「だよねっ! 太郎くんも喜んでくれるといいなぁ~」 うきうきという彼女には悪いが―――柊は、その『たろうくん』に深く同情した。 そのケーキを箱にしまった彼女と一緒に店の方まで戻って、おばさんからおつりを貰って店を出た。 降り注ぐ白いものを見上げて―――柊は、なんとも複雑な思いを振り払う。 ―――くれはが、待ってるんだ――― 今優先されるのは、彼女にこのサンタのケーキを届けることだ。 あのちょっと不気味な物体が載ったケーキを食べさせられるだろう『たろうくん』への同情は後回しに、柊は赤羽神社へと駆け出した。 「―――くれはー!」 大声で呼ばわりながら、石段を駆け上がる。 くれはは、柊がここから駆け出した場所で動かず待っていた。―――身体に雪を積もらせて。 「………さむい」 「バカ! なんで雪つもったままにしてるんだ!」 雪を払ってやりながら叫べば、くれははきょとんとした表情で答える。 「だって、ぜったいうごくな、っていったから」 確かに言ったが―――雪のかからない場所に動くくらいは構わなかったのに。 あんまりにも素直な幼馴染に溜息をつきながら―――柊は、手にした箱を彼女に突き出した。 きょとんと箱を受け取った彼女に、柊は自分がしていたマフラーを巻いてやってから、一緒に雪のかからない賽銭箱の横へ移動した。 「―――はわぁ~!」 膝の上の箱を開けて、くれはは感激したような声を上げる。 きらきらした目でケーキを見つめる彼女に、柊は何となく恥ずかしくてぶっきらぼうに言う。 「ほら、見てないで食えよ」 「うんっ!」 彼女は素直に頷いて、箱についていたフォークでケーキを一口。 「―――おいしい!」 「そっか、よかったなぁ! ―――ほら、そのサンタ、それも食えるんだぜ!」 満面の笑みを浮かべるくれはに、本当だったらそこにいなかったはずのサンタを示して、柊は言う。 くれはは、じっ、とそのサンタを見つめて、 「―――もってかえる、もったいないもん!」 その言葉に、初めてのサンタが本当に嬉しかったのだとわかって、柊も嬉しくなる。 と、くれはは改めて箱の中を見て、ふと気づいたように言う。 「………ひいらぎのぶんは………?」 「―――おれはさー、ガマンできなくて、とちゅーで食っちまったんだよ」 ははーっ、と気を使わせたくなくて笑って誤魔化す。―――自分は、明後日家で食べれるわけだし。 「きにしないで、ほら、食えって!」 そう言えば、彼女はこの上もなく、嬉しそうに笑って――― 「ありがとぉ、ひいらぎ!」 ―――転んで膝を擦り剥いた。何か夢に見そうな変な黒いものを見ちゃった。家に帰れば罰掃除が待ってる。貯金を使ってしまったから、くれはの誕生日に“三倍返し”するため、これまで以上にお金を貯めなくちゃいけない。―――大変なことがたくさんだけど。 それでも――― この笑顔と言葉で、その大変なことの分も帳消しだと、柊は思った。 ちなみに―――彼女が彼の秘密を知って、その秘密を盾に毎年クリスマスケーキを奢らせるようになり、彼がこの時の彼女の素直さを過去の遺物のように思い返すようになるのは―――まだ、彼も彼女も知らない、ほんのちょっと先のお話。 Fin.
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第六十四話 これが俺の十倍返しだッ!! 投稿者:兄貴 投稿日:09/02/26-22 37 No.3856 湖に浮かぶ二体の巨人。 その荒々しい成り立ちだが、今この瞬間は静寂が続いている。 互いに様子を見合っているのかは分からないが、ド派手なロボット対決かと思いきや、辺りに緊迫した空気が流れる。 あれほど騒いでいた生徒達も、向かい合う両雄から醸し出される空気に当てられて、今は黙って見守っている。 その静寂を先に破ったのはシモンだった。 シモンはラガンのスピーカーから、茶々丸に向けて語りかける。 『茶々丸、覚えているか? あの時も夜だった』 通信機の回線からシモンは話し掛けるが、相変わらず茶々丸の返事は無い。しかしそれでもシモンは話し続ける。 『俺が初めてこの世界に来た日・・・その夜に俺達は出会い、そして戦った』 忘れるはずは無い。 あの満月の日の夜。シャークティたちと出会った日、シモンは桜並木の通りで夜空に浮かぶ吸血鬼とガイノイドと遭遇し、戦った。 そしてそれが魔法との出会いだった。 『この世界での最後の夜に最後の相手がお前なんてな、奇妙な縁じゃねえか』 この世界での戦いの歴史は茶々丸から始まった。たしかに奇妙な縁だった。シモンは思わず笑ってしまう。 『昨日の夜の約束どおり、最後までやるぜ!!』 だが、茶々丸は何も返してこない。それが今の彼女だと思うと寂しくなるが、こうして向かい合うことになったのだ、 やることは一つ。 『シモンさん、・・・準備はいいカ?』 『ああ、いくぜ!!』 超とシモンは操縦桿を握りグレンラガンを走らせる。 感知したモドキも向かって走り出す。 再び両者が拳を繰り出す。今度は互いの拳同士がぶつかり合った。 伸ばした拳をしまうと同時に両者はもう片方の拳をまたもや突き出した。 『威力・・・互角・・・更ナル魔力強化』 魔力で強化されている拳にグレンラガンの拳はまったく引けを取っていない。しかしその威力を目の当たりにしても茶々丸は相変わらず冷静に巨大ロボットに指令を送る。 『強化強化、芸が無ぇんだよ! 本物の力は強化される物じゃねえ、湧き上がるものだ!!』 『回避スピードアップ、超絶魔力光弾充電』 『シモンさん、レーザー砲が飛んでくるヨ』 グレンラガンから距離を置き、モドキは胴体のグレンモドキの口からレーザー砲を放つ。するとグレンラガンは背中のブースターと胸のサングラスを取り外した。 『面倒だ! 正面から破壊するぞ!』 『命令カ?』 『命令じゃなくて、提案だ』 『だったら異議なし!!』 ブースターとサングラスを重ね合わせてグレンラガンは思いっきり投げつける。 『『ダブルブーメラン・スパイラル!!』』 『超絶魔力光弾射出!!』 ブースターが火を噴きブーメランが大加速し、巨大なレーザー砲に正面からぶつかり、切り裂いていく。 そして一直線にモドキに飛んでいく。 『威力計算、速度、回避不可能。絶対防御システム起動』 しかし茶々丸の操縦技術も伊達ではない。交わせないと分かると、瞬時に機体から無数のドリルを伸ばす。 フルドリライズである。 『またそれか!』 『シモンさん、ブーメランが弾かれるヨ』 フルドリライズのドリルを高速回転して生み出した竜巻の防御の風がモドキを守り、加速したブーメランを弾き飛ばす。 だが一度見た技に驚くことはしない。 弾かれたブーメランを空中でキャッチして、グレンラガンは竜巻に正面から突っ込んでいく。だがそこで超が何かを感知した。 『シモンさん、竜巻の中に何かが光っている! 無闇に突っ込むのは危険ネ!』 『なに?』 超の警告でグレンラガンを一旦止める。 するとモドキは竜巻を止めて姿を現し、シモンと超を驚かせた。 モドキの周りには螺旋の形をした魔力のミサイルが無数にこちらを向いているのである。 竜巻に隠れていたために、モドキが攻撃を溜めていたことに気付かなかった。 『超絶穿孔ドリル弾・連続射出!!』 『まずいヨ、あの数は!?』 世界樹から無限に近い魔力を補充するモドキは魔力を溜めてからの攻撃が異常に早かった。 そして射出されたミサイルが周囲360度全てを囲んだ。 一発一発が相当な破壊力を持っているはずである。全弾喰らえばグレンラガンとはいえ保障は出来ない。 すると慌てる超はグレンラガン全体に行き渡る温かく、力強い光を感じた。 それはシモンの螺旋力だった。シモンが膨大な螺旋力を溜めて何かをしようとしている。 『茶々丸、こういう技があるのも覚えておけよ!!』 迫り来るミサイルの雨の中、シモンは叫びながら操縦桿を前に押し倒す。 するとグレンラガンがフルドリライズ形態になり、そこで止まらずに、フルドリライズのドリルの一本一本が、ギガドリルの大きさに進化した。 『ギガドリル・マキシマム!!!』 『!?』 『うおお、これはスゴイネ!!』 大爆発が起こった。 それは世界の終焉を思わせるほどの爆音と衝撃を生み出していた。 『ぬうう、これは・・・・』 『うろたえるな超! テメエの夢見たコイツは、この程度の爆発なんて物ともしない!!』 もはやこの戦いに近づく者など居ない。 少し離れた世界樹の広場に居ても、その威力が伝わってくるほどなのである。 『ふう、ふう、・・・』 『流石シモンさんネ、まさかあれを無傷で乗り切るとは』 しかし爆炎が晴れて、無数のギガドリルに包まれたグレンラガンは無傷で現れた。 その光景を黙ってみていることなど出来はしない。 「す・・・・・」 「スゲー・・・・・」 一人、また一人とポツポツと目の前の光景に呟いていく。 「ねえ、・・・シモンさんも、超りんも・・・それに茶々丸さんも、あんなノリのいい人だったの?」 「これって・・・エキジビションみたいなものかな・・・?」 「いや・・・もう細かいことは抜きにしてさ・・・とにかく・・・」 「ウン・・・・」 世界樹広場から眺める裕奈、美砂、円、桜子たちはしばらくは呆然としていたものの、次の瞬間周りの生徒達と同時にとにかく叫んだ。 「「「「「「スゲええーーーーー!!!」」」」」」 「生きてて良かった!!」 「感動をありがとう!!」 イベントなのか本物なのかはどうでもよかった。一人一人がこの際細かいことを抜きにして、目の前の熱戦に大声を上げる。 超もその光景をグレンのコクピットから眺めて、気分が良かった。 『まったく、やはりここは特等席ネ!』 『それは何よりだ! はあ、はあ、・・・ところで超』 『?』 その姿に超が感心すると、通信から息を切らしたシモンが思わぬ言葉を告げる。 『ふ~う、少し疲れた。しばらく休むから交代してくれ』 『はあ!?』 するとモニターに映るシモンは操縦桿から手を離して座席に深く座り直した。どうやら本当に休む気である。 『ちょっ、シモンさん!? 交代するといっても、どうすればいいネ!?』 慌てふためく超、しかしその間にもグレンラガンを感知したモドキは迫ってくる。 すると突然グレンのコクピットに貫かれているラガンのドリルが口を開き、中から滑り台のようにして、上からブータが落ちてきて超の膝に座った。 『ブータ、何を・・・』 「ブミュウゥゥ!!!」 『なっ、これは・・・・』 突如ラガンのコクピットからやって来たブータは、超の膝の上で螺旋力を解放する。そしてブータの螺旋力が超を包み、グレンラガンをも包み込んだ。 『超、・・・俺が休んでいる間、この時だけはグレンラガンはお前の物だ! 好きなようにしろ!』 聞こえるシモンの声に超はまた興奮した。 『まったく・・・しかしブータ、感謝するヨ! これで百人力ネ!!!』 シモンの言葉に甘えて超はグレンラガンを己の手足のように動かしていく。 そう、この時だけは彼女だけの時間だった。 『茶々丸、スマナイ・・・私の意地のためにお前をこんな目に合わせてしまった・・・・』 『ターゲット・・・機体内デ静止中・・・操縦者変更・・・』 『相変わらずお前はシモンさんが目的カ? それは私の指令・・・それとも茶々丸の意思なのカ? だが・・・済まないが・・・もう少し付き合って欲しい!』 それは残酷な光景かもしれない。 自分が作り出した茶々丸と、偽りのグレンラガンが、生みの親である自分に向かってくる。 だが、超は自身の生み出した二人に一度謝ってから、前を向く。 超が己のやりたいようにグレンラガンを操作する。 しかし茶々丸も反応する。 奇しくも二人が選んだのは同じ行動だった。 『『グレンブーメラン!!』』 ブーメランの刃で互いに斬りかかり、鍔迫り合いになる。 その巨大さと威力のぶつかり合いに火花が飛び散るほどだった。 『流石ネ! しかし・・・・』 『敵機ノ武器・・・破壊シマス』 一度間合いを取り、再びモドキが斬り掛かって来る。しかし超が動かすグレンラガンは飛んだ。 そしてロボットらしからぬ柔軟な動きで跳び蹴りを炸裂させる。 『私を誰だと思ってやがるキック!!』 『グッ!?』 蹴りを真正面から受けたモドキ。しかし即座に立ち上がり、再びブーメランで襲い掛かる。 だが、 『少し痛いが我慢するネ!!』 超が操縦桿を強く握り締めてコクピット内で手を振り上げる。その動作と想いがグレンラガンに伝わったのか、グレンラガンの拳となって繰り出される。 そしてグレンラガンの拳から二本のドリルが突き出して、モドキのブーメランを受け止める。 だが受け止めただけではない。 高速回転しだした二本のドリルがモドキのブーメランを粉々に砕いた。 『!? 武器・・・破損・・・修復作業・・・』 粉々に砕かれた武器に対して、僅かに茶々丸の表情に変化が見られた気がした。だが、すぐに元の機械の表情に戻り、魔力を流して壊された武器を修復しようとする。 『させないヨ!!』 グレンラガンが拳のドリルを出したまま、走り出す。そしてその拳のドリルが、障壁も、モドキの機体も貫いていく。 『機体損壊・・・貫通ダメージ・・・』 『状況把握する暇あるなら、その目で少しでも前を見るネ!!』 突き刺したドリルが高速回転し、モドキの機体内から竜巻を起こして、機体を内部から抉り取っていく。 『スカルブレイク!!』 『ブースター出力最大! 緊急離脱!』 だが茶々丸はそこから最善の対処法で、ギリギリの所で逃れる。背中のブースターに火を吹かせて、突き刺さったドリルから強引に逃げ出した。 『やるじゃないか、お前も・・・茶々丸も・・・そしてお前の作った過去の夢もな・・・』 『当然ヨ、私を誰だと思っているネ?』 『はは、たしかにな』 本物相手に茶々丸もモドキも粘っている。だが徐々に握り締めた拳の中にあるものの差が見られてくる。 そして、 『理解不能・・・』 モドキのスピーカから声が漏れた。それは紛れも無く茶々丸の言葉である。機体への指令以外で彼女が初めて言葉を発した。 『茶々丸!? 意識が戻ったのか!?』 『いや、まだヨ。しかし私の作ったメカの魔力による修繕の力も無限ではない。機体自体が徐々に魔力の力に耐えられなくなっている。そのお陰で、茶々丸の自我が少し戻ったネ」 強力な魔力を吸収しすぎないようにリミッターまで取り付けたのである。それを解放すればたしかに一時的な力を得られるものの、その力に機体はいつまでも耐えられることは無い。 気付けばモドキの機体は超が付けた傷も僅かに残り、完全には修復されないでいる。 『気合・・・以前ニモ検索履歴アリ・・・シカシ明確ナ答エハナシ・・・』 それは初めてシモンと戦った次の日。気合が無いと言われた茶々丸は気合について考えた。「気合」というものをプログラム出来ないかとハカセにも聞いた。 だが、それが叶うことは無かった。 『気合トイウ付加価値ガ勝率モ計算モ狂ワセル。気合トイウプログラムガ無イ限リ・・・勝機ハ・・・』 それは見ようによっては冷静に状況判断をしようとしているロボットに見える。しかしシモンにも、超にも、溢れ出す言葉から、茶々丸の漏れ出した感情を僅かに感じ取った。 だからシモンは語りかける。 『茶々丸、あれから俺達は何度も会った。そして修学旅行ではお前と背中を合わせて戦った』 シモンと茶々丸はネギたちの道を作るために100を越える鬼を相手に共闘した。 『最初会った時に、俺はお前に気合がないって言った。でも鬼と戦ったときのお前は限界ギリギリまで力を出して戦った。あの時俺はお前の中にある気合を感じた』 命令ではなく、己の身を省みずに彼女は戦った。一度は拳を交え、共に戦ったからこそ、シモンは茶々丸をよく理解しているつもりだった。 『気合ってのは、無いから付け足すって言うモノじゃない。人間だからあるってモノでも、機械だから無いってモノじゃないと思う。グレンラガンがその証拠だ』 自分達の気合をいつだって具現化したグレンラガン、だったら機械に気合があってもいいとシモンは思っている。 『俺はお前の気合を知っている。そこから引きずり出して、思い出させてやる!!』 その瞬間、コクピット内の螺旋ゲージのメーターが振り切れた。 シモンの気合が最高潮に達する。 『超・・・決めるぞ・・・いいな?』 シモンは超に最後の確認をした。 目の前の偽者に風穴を開ける。しかし偽りといっても、超が目の前の物を作っていた時の気持ちは、紛れも無く本物だった。 その詰まった過去の夢を打ち砕くのだ。 すると超は小さく笑いながら頷いた。 『もう、夢は十分見させてもらったよ。そしてこれのお陰で本物と出会うことが出来た・・・、友を救い、・・・そろそろ昔の夢とも見切りをつけて・・・私も・・・明日へ向かうヨ』 過去を変えようとしていた超の告げた「明日」、その言葉からシモンは超の覚悟を感じた。 『分かったよ、超。お前の明日に連れて行ってやるって言ったのは俺の方だ。だから・・・一緒に行くぞ!!』 『心得た!!』 超とシモンが同時に動き出した。するとグレンラガンの腕には巨大なドリルが現れた。 『そして超、お前も忘れるな! たしかに俺はお前の世界にはいない。でも・・・仲直りした俺たちは、もう敵じゃない・・・』 『・・・ウム』 『たとえ時代と次元の違いがあっても、今ここに居る俺は・・・お前の味方だ!』 グレンラガンは唸る。 それはもはや説明不要。 幾多の強敵と困難を突き破ってきた本家本元のあの技である。 『私ノ・・・使命ハ変ワラナイ・・・』 だが茶々丸はその技に正面から向かってくるようである。 『魔力最高値、超絶ギガドリルブレイク、スタンバイ』 魔力の渦がモドキの機体を覆い尽くしていく。 そしてその渦が次第に螺旋状へと変わって行き、モドキを覆った魔力自体が巨大なドリルと変わった。 機体がその力に耐え切れずに徐々にヒビが入っていくが、それを構うことなく茶々丸は技を発動させる。 それは最早真似でも、パクリでもない、一つの技として完成していた。 紛れも無く、超の作った偽りのグレンラガンも、茶々丸の腕も進化していた。 その膨大な魔力から危機を感じ取った学園長。だが、行く手をエヴァに阻まれた。 「むっ、これはマズイぞい!」 「手を出すな、・・・心配無用だ。奴らを誰だと思っている」 ネギたちも遠く離れた場所で見守っている。 「シモンさん、超さん・・・茶々丸さん」 「何と巨大な・・・」 「でも・・・あの人達が・・・このまま終わるはずが無いよ!」 「せやな、負けるはずが無い!」 告げる言葉に偽りは無い。瞳が全く揺らいでいない。 新生大グレン団も、ヨーコも、美空達も、信じている。 『なんと・・・悲しい力・・・中身がスカスカに見えるヨ・・・』 『威力も大きさも、パイロットの腕も満たされている・・・だけど・・・グレンラガンに一番必要な物が足りなかったな・・・』 『気合・・・あれほど否定した物が勝敗を分けるとは、やっぱり皮肉なものネ』 巨大な魔力で練り上げたギガドリルを前にしても、超もシモンも驚かない。むしろ切なそうに眺めていた。 気合という言葉の重要性を、超は本物を知ったことにより、ようやく理解した。 『限界値、超絶ギガドリルブレイク発動!!』 巨大な螺旋の渦が、矛先をこちらに向けて飛び込んでくる。 『シモンさん、アナタが私の味方なら・・・どんな理由にせよ、今は同じ世界に居る・・・だから・・・』 『ああ、だから今だけでも、一緒に行くぞ、ダチ公!!』 彼らは既に、この戦いの結末が分かっていた。 そして最後の一撃のために力を溜める。 『超、茶々丸はラガンモドキに乗っている・・・風穴開けて爆発する前に掴み取れ』 『随分難しいことをアッサリ言うネ。だが、私にはそれぐらいの責任があるネ』 そして目前と迫った巨大な螺旋を前に、グレンラガンもようやく動いた。 『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』 両者が雄叫びを上げてギガドリルを片手に、巨大な螺旋の矛先に向けて突き返す。 攻撃の大きさで言ったら間違いなくモドキの方が上である。 しかしグレンラガンは耐え切る。 質量が目に見えて違うはずのドリルに対して突き返し、それだけでなく・・・ 『超絶ギガドリル・・・押シ返サレ・・・・』 『まだ分かんねえのか! 掘り抜けようとする気合のねえ紛いモンのドリルで、コイツを打ち破れるはずがねえだろうが!! 限界を出すことが気合なんじゃねえ! 限界を超えようとする想いこそが気合だ!』 『最大出力・・・維持・・・』 『それが間違いヨ、茶々丸。グレンラガンにもグレン団にも、・・・いや、不屈の気合を持った者に限界は無かった・・・自分でソレを最大といっている時点で既に負けている・・・』 魔力は未だに無尽蔵に溢れ出し、茶々丸とモドキに力を与えている。しかしそのドリルは一歩も前に進まずに、むしろ目の前のドリル相手に後退していく。 『計算外・・・計算外・・・計算不能・・・計算・・・』 『その時点で計算違いだ!! 無限の壁を突き破る俺達に計算を当てはめようとした時点で!!』 茶々丸のコンピュータの頭脳が乱れ始めた。 『たとえ絶望の明日が阻もうと、無理を通して明日を掴む。計算して突き進むのではない。己を信じて突き進むのだ。私はそれを学んだヨ! 茶々丸、思い出せ! お前はもっと早くに学んでいたはずネ!』 『超・・・私ハ・・・・』 光り輝き突き進むことを止めないドリルが徐々に茶々丸を覆った壁をも突き破る。 『コイツが・・・俺たちがッ、今までどんな壁を打ち破ってきたと思ってやがる! どれほどの気合を振り絞ってきたと思ってやがる! どれほどの想いを背負ってきたと思ってやがる!』 『・・・・シモン・・・サン・・・・』 茶々丸の口が小さく呟いた。 『さあ、最後だ・・・私の明日を見せてくれ・・・・』 超が目尻に僅かな涙を浮かべながら、己の昔の失望した夢との別れに浸る。 「見せてやりなさい、シモン! その物語が捻じ曲がろうがどうなろうが、今のアンタが私達の魂を、この世界に見せつけてやりなさい!!」 「ぶみゅうう!!」 ヨーコ、ブータ。 「兄貴・・・超・・・茶々丸・・・・」 「兄貴・・・・」 「見せてください! 私達が信じたアナタの魂を!!」 美空、ココネ、シャークティ。 「シモンさん・・・超さん・・・・」 「私達は目を逸らさないわ!! だから・・・」 「はい、私達にも・・・・・」 「シモンさん、ウチらにも見せてや!」 ネギ、アスナ、刹那、木乃香。 「「「「リーダー!!」」」」 「「「「シモンさん!!」」」」 「ゆけ! 天も次元も魔法も突破して! どこまでも高く突き進め!」 グレン団も学園の生徒達もエヴァもその瞬間を見守った。 『見せてやる、これがグレン団! これがグレンラガン! これが本物のギガドリルブレイク! そして・・・これが・・・・』 全ての壁を突き破り、この世界で出会った家族、友、仲間、敵、全ての者に向けてシモンは叫ぶ。 『これが俺の十倍返しだァァァァーーーーーーーーーー!!!!』 グレンラガンは突き進んだ。 夜空に輝く星に向かって、この世界での最初で最後の天に向かって突破する姿を見せ付ける。 巨大なドリルによって紛い物のドリルは回転を止め、砕け散る。そして超のかつての夢と共に風穴を開けられる。 巨大な風穴が開き、行き場を失った魔力が暴走し始める。それは数秒後の爆発を示唆していた。 だがその前に、天に登り、降り立ったグレンラガンが、空中に投げ出された爆発寸前のロボットに向けてもう一度飛び、手を差し出す。 『『茶々丸―――――ッ!!』 超とシモンは叫ぶ。友に向かって思いっきり叫ぶ。 すると言葉を返す前に、風穴開けられたモドキのラガン部分が機体から切り離なれ、離脱した。 グレンラガンはそのラガン部分に手を伸ばし、空中で掴み取った。 その一瞬後に大爆発が起こった。 なんとも荒々しい祭りを締めくくる花火となった。 『茶々丸・・・・』 爆煙の中から、グレンラガンは夜空に突き抜けた。そして大事そうに手に抱えたラガンモドキのコクピットに向かって話しかける。 すると・・・ 『シモンさん・・・超・・・・』 『『茶々丸!?』』 声がようやく返ってきた。 『ありがとうございます。・・・受け取りました、十倍返し。・・・また明日から・・・気合を入れ直してがんばります・・・』 自分達の知っている茶々丸だった。ロボットでありながら、人間臭い女。 シモンも超も、コクピットの中で拳を力強く握り締める。 友を救い、超にグレン団を証明し、一人も欠けることなく全てに決着を着けた。 やることは全てやった。だから迷うことなくシモンは叫んだ。 『俺達の、勝ちだッ!!』 シモンの言う俺達の中に誰が含まれているかは分からない。 しかしその声を聞いた者たちが、所属するチームに関わらずに声を上げた。 誰が何に勝ったのかは分からない。しかし超も含めて、そこに敗者の顔をする者は一人も居なかった。 『終わったヨ・・・何もかも・・・・』 突き抜けた先から、歓喜の渦に包まれる生徒たちを眺めながら超は苦笑しながら呟く。 『終わった? なに言ってやがる、お前の明日も・・・俺たちの明日も・・・ここから始まるんだ!』 『・・・そうネ、なら・・・この光景を今日のうちに味わいながら・・・私は明日へ向かおう』 夜空に浮かぶグレンラガンは手に茶々丸を乗せながら、ゆっくりと飛行した。 地上では生徒たちがお祭り騒ぎで盛り上がっている。今から後夜祭の準備に入るのだろう。 その光景を見ながらシモンはラガンのコクピットの中で肩の力を抜いた。 『・・・勝ったよ、みんな。・・・誰も失わずに・・・誇りも穢したりはしていない・・・・』 ――そうね、シモン。だって、みんながんばったもの。 『!?』 愛する者の声が聞こえた気がした。 だがそれは幻聴だった。 だがシモンは慌てて辺りを見渡してしまい、思わず苦笑してしまった。 『ったく、・・・待たせすぎたな・・・でも・・・安心しろ。すぐに会いに行くよ』 グレンラガンは地上にそのまま降りずに、進路を別の方向へ向けた。 それはシモンのこの世界での家、教会だった。 シャークティと美空とココネ、そしてヨーコはそれの意味をよく分かっていた。 グレンラガンは元の世界での希望の象徴。それをこれ以上この世界に置いたままにしては、ロシウたちに心配させてしまう。 そして元々、言っていたことだった。 学園祭が終われば自分たちは元の世界に帰る。 愛する者の眠る地へ。 だからシモンは最後に家に立ち寄ることにした。それは「サヨナラ」を言うためではない、「いってきます」と言って必ず帰るという誓いをたてるためである。 ヨーコは黙って教会へ向かう。 そしてシャークティたちはシモンに「いってらっしゃい」を言うために自分たちの家へと向かった。 「シモンさん・・・・」 グレンラガンが教会へ向かうのを見て、木乃香は寂しそうな表情をした。彼女にも理解が出来たのである。 そんな彼女の肩にアスナは優しく手を置く。 「いこ。シモンさんに、早く帰ってくるように言わなくちゃね♪」 「アスナ・・・」 「そうです。だから、私たちも行きましょう」 「・・・うん、せやな・・・・」 ぎゅっと唇を噛み締めて胸の中の寂しさを押さえながらネギたちはグレンラガンの後を追う。 全ての壁を突破して、今ここに完全決着。 そして暫しの別れの時がやって来た。 後書き。 あまりご都合主義はやりたくなかったのですが、この際目を瞑っていただければ幸いです。 強敵は全員ラガンインパクトですが、やはり自分の中ではギガドリルブレイクがよかったのです。 さて、ギガドリル・マキシマムは忘れていたわけではありません。しかしアレって結構大技中の大技に思えるので、あまり安売りしたくなかったので、ここまでとって置きました。 最近のネギまのパワーインフレを考えると、学園祭編でシモンに使わせるのは早いと感じ、シモン本人にはやらせませんでした。しかし本物には、せっかくなので使わせました。 せっかく兄貴と会ったのですから、ネギ達ももう少し絡めたかったのですが、あれで限界でした。登場人物が多すぎる! とにかく長かった学園祭編は次で完結です! シモンとヨーコとブータは、グレンラガンと共に去ります。 ぶっちゃけた話、特に変わったことをやることは無いですが、せっかくなので、見てやってください。
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第二章 -倍返しの世界- 午前1時、鎌倉銀次郎はひとり住宅地のはずれを歩いていた。 銀次郎「クソッ……!」 銀次郎はいら立っていた。一之瀬紅葉に何度も負けていることに、 そしてそれを聞きつけたヤンキーどもが銀次郎にナメてかかるようになったからだ。 銀次郎「あいつらはブッとばしたが、それでも紅葉に勝たない限りは……。 ……ッチ、この銀次郎がナメられたままでいられるか!」 ッカーン! カコーーン! 足元に転がったアルミ缶を蹴飛ばした。……アルミ缶の転がった先、電柱の陰には男が立っていた。 謎の男「…………」 銀次郎「あ゛あ?オイ、何ガンくれてんだよ。俺は今機嫌が悪い。5秒後に殴るからそれまでに消えな、『5』!」 謎の男「……紅葉か。彼女は君にはない、ある『特別な能力』を持っている。」 銀次郎「『4』!」 謎の男「……君も、それが欲しいとは思わないか?」 銀次郎「ハッタリじゃあねえぜッ!!『3』!」 謎の男「ただし、『特別な能力』を得られるかは君しだいだ。」 銀次郎「『2』!」 銀次郎は腕をふりかぶった。 謎の男「『Live or die』だ。」 そういうと男はおもむろに『弓と矢』をとりだし、銀次郎に向かって構えた。 銀次郎「『い……』いいっ!?」 そして、男は銀次郎に向かって『矢』を放った。 ドシュウ! ズバッ!! 銀次郎「ウグッ……!」 謎の男「……おめでとう、どうやら君は選ばれた存在のようだ。 ただし、もうひとつ選択してもらおう。『Follow or die』…『従うか、死ぬか』。」 寝静まった杜王町。この光景を見ていたのはだれひとりとしていなかった。 *「……おい、転校生と話してるヤツ……誰だ?」 *「いや、きのうも来てたろ。……でも、今度はちゃんと話してるな。転校生も。」 *「この一日で何があったか知らねえけど……俺の席占領するのは勘弁してほしいな……」 *「………やっぱりかわいいな。」 模「……つまり、これまで君を襲ったふたりのスタンド使いは、君を倒すために、力試しのためにこの街に来たってこと?」 紅葉「そう、かもしれない。……でも、私がスタンドを初めて発現させたのは物心つく前、 つまり私は『生まれついてのスタンド使い』だったけど、初めてほかのスタンド使いと戦ったのは つい2ヶ月前のその二人のスタンド使いの一人目だったもの。そして二人目は2週間前に来た。 あまりに間隔が短すぎる。なにかこう……私に、というより『杜王町に』スタンド使いが集まってきている気がする。」 模「それが、今年に入ってからってこと?」 紅葉「そう。実際、あなたも1か月前にここに来たでしょ?」 模「……でも、スタンド使いが集まっているとしても、紅葉と戦う理由はないよね?」 紅葉「…………」 紅葉は模の言葉に対し沈黙した。そう、そこも彼女はわからなかった。 紅葉は模より経験があるとはいえ、彼女は自分の身を守るためだけに戦っていたのだ。 紅葉「私がブチのめ……倒したスタンド使いはもうこの街にいないようだし、 この街にスタンド使いが集まる原因はいまのところ不明ね。もしかしたら偶然だっただけかもしれないし。 『波紋』のこと、教えてくれてありがとね。おおまかなところは、だいたい、なんとなくわかったよ。」 紅葉は席を立ち、教室を出て行った。 模「『杜王町に』…か。……偶然だよね。そう、僕がこの街に来たことだって偶然なんだし。」 放課後、紅葉は学校の帰り道を一人で歩いていた。 学生に人気のアイスクリーム屋を過ぎ、遠くまで一面に広がる畑を通る道に差し掛かる。 杜王町の空はきのうと同じく晴れていた。ここの風はいつも気持ちがいい。 そう、紅葉が思った時、後ろから彼女を呼ぶ声がした。 模「ただいま」 模の母「あら、おかえり。早かったわね。」 模「…………」 模は自室に入り、ドアを閉めた。 一か月前、模は母と二人で杜王町に越してきた。 それまでは遠い町で両親と、祖父母と、そして曾祖父と暮らしていた。 だが、11歳で模が波紋を習得してから、家族内の関係が乱れはじめていた。 自分たちが波紋を習得できなかったにもかかわらず、模にはそれができたことへの父と祖父のみじめさ。 人一倍優しい心を持った模が、それを感じとっていないはずがなかった。 そして一年前に曾祖父が亡くなってからというもの、家族内の関係はさらに悪化していた。 このことで、一番傷ついていたのはもちろん模だった。 守り伝え続けるべき『波紋』が、家族を壊していた。 ずっとこの状態を見かねていた模の母は、ついに模を連れて故郷の杜王町に行くことにしたのだ。 模「…………」 模(引き継がれてきた技術『波紋』は、本当に守るべきものなのかな……) 模(それに、本当に僕が習得できたわけじゃない。 習得できたのはスタンドの、『セクター9』の力だったっていうのに……) ヴーーーーーーーーーーッ、ヴーーーーーーーーーーッ。 カバンの中のケータイが震えていた。家の中で、模に電話をかけてくる人間はひとりしかいなかった。 模「紅葉?」 紅葉<ばっ、模……ハッ、す、すぐに来てッ!『定禅寺一丁目』!> 紅葉の声と、風の音が混じっていた。模は紅葉が走りながら電話をかけているのがわかった。 模「ど、どうしたの!?」 紅葉<『襲われてる』のッ!いいから早……『ブラック・スペード』、防御しろッ!> 模「………!」 <バチッ! カシャカシャカシャ………> ケータイを落とした時の不快な音が耳を刺した。 模「紅葉が危ない。『定禅寺一丁目』……急がなきゃ!」 『波紋』……それが、忌まわしき技術であったとしても、 それを必要としてくれる人がいることは、模にとってうれしくないはずがなかった。 杜王町の住宅地、少し遅れて咲いた桜の木々が立ち並ぶ。 その中の人目につかぬ路地で、紅葉は膝に手をついて立っていた。 紅葉「ハァッ、ハァッ、ハァッ……クソッ!」 ???「ククク……電話なんかして。紅葉、てめーを助けてくれるような友達が、おまえにいるのかよ?」 紅葉「なんで……なんであんたが『スタンド使い』に…………銀次郎!」 ドドドドドドド…… 銀次郎「おうおう、そりゃあ俺だってききて―よ紅葉。 おまえがこれまで散々俺を痛めつけてきたのはこの『スタンド』ってやつの仕業なんだな?」 紅葉「ッ……女をおっかけていじめよーなんて、恥ずかしくねーのかよ。」 銀次郎「いやあ、それは違うな。俺が倒したいのはそのスタンドさ。『スタンドはスタンドでしか攻撃できない』……そうなんだろ紅葉。」 紅葉「…………ハァッ………ハァッ……」 銀次郎「さあて、これまでの恨みつらみ晴らさせてもらうかなああ~~。さあ、『射程距離3メートル』に近づいてきたぜェ~」ズンズン そして銀次郎はスタンドを発現させた。筋肉がゴツゴツとした、禍々しい姿だ。 銀次郎「『レッド・サイクロン』!一之瀬紅葉を『掴み』やがれェッ!!」 レッド・サイクロン「BUHHHHHOOOOOOOOOOOOOOO!!」 紅葉「クソッ!」バッ!! ドギュン! 紅葉は間一髪で避けた。紅葉の立っていたアスファルトは『むしりとられて』いた。 銀次郎「クックッ……まだ逃げる体力があったか。だが!この『掴む』能力を応用した戦い方を俺は思いついたぜ!」 銀次郎「『レッド・サイクロン』!掴んだアスファルトを投げろッ!!」 ドシュゥ―――z______ッ レッド・サイクロンの放った直径15センチほどの岩は、角を曲がろうとしていた紅葉の足に命中した。 ドガァッ! 紅葉「ウグッ………!」 銀次郎「ハッハーー!女の割にはずいぶんとスタミナがあったが、もうその足では逃げることもできまい!」 紅葉は足をひきずりながら角を曲がり、銀次郎から紅葉の姿は家の塀で見えなくなった。 銀次郎「紅葉ァ~~、これまでの屈辱はきっちりと晴らさしてもらうぜェ~~。」 銀次郎が角を曲がると、紅葉はポストに寄り掛かるように立っていた。 銀次郎「フフ……それで隠れてるつもりか。立っているのもつらそうだぜ。」 紅葉「ツッ………スタンドと同じ、ブサイクでバカそうな顔してるくせによくしゃべるわね。」 銀次郎「フン、そのへらず口ももうそろそろきけなくなるぜ。……ちょーどいい、そのポストをぶつけてやるか。」 銀次郎「こちとら柔道部だッ!『掴んで』『投げる』ことにかけちゃあ他の追随を許さねェーぜッ、『レッド・サイクロン』!!」 レッド・サイクロン「BUHHHHHHHHOOOOOOOOOOOO!!!!!!」 箱型のポストがアスファルトの地面から抜け、レッド・サイクロンの右手に吸い寄せられる。 銀次郎「ポストってのはその一本の足が持つのにちょーどいいぜェ。覚悟しなッ、紅葉!!」 身を隠していたポストから離され、片足をかばって立っていた紅葉だが、その表情に絶望はなく、笑っていた。 紅葉「フフ……確かに私はもう逃げられない。それなのになんでわざわざポストの影に隠れたか。 それは、あんたに『ポストを掴んで』欲しかったからだよ。」 銀次郎「ゴチャゴチャうるせェーーーーーーーッ!!いっぽおおおおおおおおおおおおん!!!!!」 紅葉「『ブラック・スペード』!パワーを解放しろッ!!」 ドガアアアァァァン!! 銀次郎のスタンドがポストを投げようとした瞬間、ポストが破裂した! 銀次郎「うっうおおおおお!なんだぁーッ!?右手がッ、いっ痛え、痛えェ~~~ッ!!」 紅葉「角を曲がってすぐ、ポストを殴って衝撃を『留め』させておいた。」 紅葉「『強いスタンド使い』ってのは、したたかに反撃の用意をしておくものさ。まあ、バカのあんたにはわからないだろうけど。」 破れた手紙の切れ端が、桜の花びらのように舞っていた。 【スタンド名】 レッド・サイクロン 【本体】 鎌倉銀次郎(カマクラ ギンジロウ) 【タイプ】 近距離パワー型 【特徴】 ゴツゴツした巨人のような人型。 【能力】 射程内のものを『掴む』能力。 能力範囲内にあるものを掴もうとすると、手が届かない位置にあったり離れていこうとしてもスタンドの手に引き寄せられる。 吸引は超スゴイパワーで行われる。 破壊力-A スピード-C () 射程距離-E (能力射程-3m) 持続力-B 精密動作性-C 成長性-A ポストの破裂の衝撃をモロに受けた銀次郎は右手をおさえて悶えていた。 銀次郎「ぐおおお痛えええええええ!!コノヤロウ紅葉ァ!柔道家の命の手をォォォ!!」 紅葉(ちくしょう、右手はつぶせたけど……やっぱりスタンドの攻撃を直接当てないと倒せない!) 銀次郎「てんめえええええ!ボコボコにするくれーじゃあ気が済まねえぞおおおお!!!」 銀次郎は突進し、スタンドの左手で紅葉を攻撃しようとしていた。 紅葉(まずい、防御が間に合わない!衝撃を操作する能力も、さっき発動してからはすぐには使えない!!) 銀次郎「まずは一発ぶん殴ってやるぅあああああああ!!」 紅葉「―――――――ッ!!」 レッド・サイクロンの攻撃は命中した。だが、紅葉はフッ飛ばされず レッド・サイクロンの左腕は紅葉の体に触れたままだった。 銀次郎「!?、!!?」 ???「紅葉、そのカーディガンを脱いで!!」 紅葉「…………!『ブラック・スペード』!」 ブチブチィッ! 紅葉は自分の着ていたカーディガンをブラック・スペードに破いて脱がさせ、銀次郎のほうに投げた。 ???「セクター9、第二の世界『ブラック・スペード』!衝撃を『解放』しろッ!」 ドカァァン!! レッド・サイクロンの攻撃を『留め』させたカーディガンは破裂した。 銀次郎「うおッ!」 目の前で破裂されたことに驚き、銀次郎はあおむけに倒れた。 紅葉「模!!」 模「紅葉、大丈夫!?遅くなってごめん!」 紅葉「……いいや模、グットタイミングだ。」 模「……!紅葉、足が!」 紅葉「いい!気にするな。それより、模にあいつを倒してもらいたい。 いい?『スタンドに攻撃できるのはスタンドだけ』。だけど、あいつの能力は射程距離3メートルのものを『掴む』能力だ。 範囲内にあるものならなんでも掃除機の吸いとるように掴んじまう。容易には近づくな!」 模(あ……あの怖い人だ。) 紅葉「あいつがなんでスタンド使いになったのかはわからない。でも、躊躇せずにやるのよ。『スタンドのパワーを引き出すのは」 模「『スタンドのパワーを引き出すのは強い意志』。……大丈夫、とりあえず波紋で気絶させてみるよ。」 銀次郎「……紅葉ァ、俺の『能力』を教えるってのはフェアじゃあねえんじゃねえか?」 紅葉「………」 銀次郎「……よく見りゃおとといのヒーロー様じゃねえか。てめえもスタンド使いなのか? 驚いたぜ、紅葉に友達が、それもスタンド使いの友達がいるなんてよ。」 模(紅葉は近づくなと言ったけど……距離をとれば、動けない紅葉が狙われる。) 銀次郎「てめえにも恨みがあるしな。とりあえずテメーから先にブッ飛ばす!」 模(あいつは右手が使えない。『掴み』にきたら身動きが取れなくとも波紋を流せる。) 銀次郎「いくぜうおるぅああああああああああ!!!!」 模(そのまま、殴りかかりにきたら……) 模は破裂したポストから散らばった手紙を手に取った。 銀次郎「『レッド・サイクロン』!こいつをブン殴れェェ!!!!!」 模「第二の世界『ブラック・スペード』ッ!!」 模は手紙でレッド・サイクロンの攻撃をガードした。 紅葉「よしッ!手紙に衝撃を『留め』させた!」 模「そして波紋攻撃!『波紋疾走』!!!」 セクター9「ウリャァァァァ!!!」 ガシィィィィィ!!! しかしセクター9の攻撃はレッド・サイクロンに命中したものの、波紋は流れなかった。 銀次郎「ンン?レッド・サイクロンの攻撃が当たらなかったのは奇妙だが、そのスタンドのパワーはそれほど強くないようだな。」 紅葉「まずい!模、スタンドで防御してッ!」 レッド・サイクロン「BUHHHHHHHOOOOOOOOOOOO!!!!!!」 模「セ、『セクター9』!防御しろッ!!」 ドゴドゴドゴドゴドゴ!!! 模「うおおおおおおおおおッッ!!!!」 銀次郎「ッチ、左手だけの攻撃じゃ捌かれちまう。」 模(なんで波紋が使えなかったんだ!?まさか……セクター9は他の『世界』の能力を発動しているうちは、『波紋』が使えない!?) 紅葉(『波紋』なしのセクター9の攻撃はただの打撃。みたところパワーはBクラス…… レッド・サイクロンのパワーはどうみてもAクラス、しかもブラック・スペード以上だわ。力勝負では模は圧倒的不利!) 銀次郎「『万事休す』ってやつか?貧弱ヒーローとは、笑えねえぜ?」 紅葉(パワーはAクラスの……ブラック・スペードなら、まだ太刀打ちできるかもしれない……。) 紅葉「模、逃げてッ!私の『ブラック・スペード』がやるッ!!」 模「嫌だ!!」 紅葉「!!」 模「紅葉は『波紋』の力を、『僕』の力を必要としてくれたんだろ!? 『はじめて』なんだッ!この僕を頼りにしてくれたのは紅葉が『はじめて』なんだッ! そんな人をおいて、僕は逃げたくない!僕は立ち向かう!!」 紅葉は、模の背後から模の頬に光が垂れ落ちるのを見た。 模「僕は、僕の『波紋』でこいつを倒すッ!!」 紅葉「ば……模……。」 模(僕のスタンドのパワーだけじゃ、あいつには歯が立たない。それは間違いない。 しかし、『波紋を使う』スタンドなら……) 銀次郎「なんだ?結局貧弱ヒーローが戦うのか?……右手の痛みも引いてきた。 そしてこの距離ならわざわざ『掴む』までもねえ。いくぜ!両手の本気パワー勝負だ!!」 レッド・サイクロン「BUHHHHHHHOOOOOOOOO!!!!!」 模「サウンド・ドライブ・セクター9、第一の世界『波紋』!!!」 セクター9「ウォリャァァァーーーーーーッ!!!!」 ドガドゴドゴドゴドカドガドゴドゴドゴドゴ!!! レッド・サイクロン「BUHHHHOOOOOOOOOO!!!!!」 ドゴドガドカドゴドガドゴボコドゴドガドゴ!!! セクター9「ウォアリャリャリャリャリャリャリャリャリャ!!!」 ドガァ! ブシュゥ――――――z_______ッ! 銀次郎「なッ、レッド・サイクロンのパワーが押し負ける!!このスタンド……さっきとは別モノのパワーだ!!」 模「そしてセクター9『波紋疾走』!!」 バシィ! 銀次郎「うおおおおおおおおお!!!!」バチバチバチバチ ドズ――――ン…… 模「はぁ……はぁ……はぁ……。」 模の曾祖父「いいか模、波紋はただスタンガンのように生身の人間をシビれさせるだけにあらん。 波紋の基本は『呼吸』だ。波紋呼吸法は肉体にエネルギーをもたらすのだ。」 幼き模「エネルギー……?どういうこと?」 模の曾祖父「簡単に言えばスーパーマンのようになれるってことだよ。」 幼き模「すーぱー……マン?」 模の曾祖父「ありゃ、もう模の年代だとスーパーマンも知らんのか。」 模「ひいじいちゃん、『波紋』の力………初めて人の役に立ったよ。」 バァ―――――――――――ン 波紋攻撃をくらった銀次郎はまだのびていた。 模「セクター9『波紋』!」 パアァァァァァ…… 模「波紋の生命エネルギーを送ったから、足のねんざはすぐに回復するよ。今とはいかないけど、たぶん明日くらいには。」 紅葉「……ホント不思議な力ね、波紋って。」 紅葉は銀次郎のほうを見た。 紅葉「おとといまで普通の人間だった銀次郎がきのうきょうで『スタンド使い』となった……。」 模「この人……ええと、銀次郎くんはもともとスタンド使いだったのかな?」 紅葉「いいえ、銀次郎がこれまで私にちょっかいだすときは私のスタンドの能力であしらってたけど、 そのときはスタンドの存在に気付いている様子はなかった。おそらく……」 模「………」 紅葉「おそらく、『意図的に』スタンド使いにさせられたんだと思う。『矢』を使って。」 模「『矢』?」 紅葉「以前広瀬さんという人にあった時に聞いた話なんだけど、『矢』は普通の人間から『スタンド能力』を引き出す効果があるんだって。 11年前の連続殺人事件にもかかわっていたとか。」 模「それじゃあ、その『矢』が関わっているんだとしたら……」 紅葉「間違いない。何かの『陰謀』がこの杜王町を渦巻いている……。」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…… 【スタンド名】 サウンド・ドライブ・セクター9 【本体】 杖谷模(ツエタニ バク) 【タイプ】 近距離型 【特徴】 顔に時計、両手の拳に★のついた人型。 【能力】 相手と同じ「世界」に「入門」する能力。 例えば相手が時間操作の能力を持っているなら、相手と同じ「時の世界」を認識し、動ける。 他にも鏡の世界、夢の中の世界、インターネットの中の世界など、相手が入れる世界なら、本体とこのスタンドも入ることができる。 ただし、最初から相手と同じだけ動ける訳ではなく、例えば初めて「時の止まった世界」に入ったときは、一瞬しか動けない。 複数の世界に入門することが可能だが、一度に使える「世界」は一つだけ。ひとつの「世界」の能力を発動させた後、 すぐにほかの「世界」の能力を使うことはできない。 第一の世界: 「波紋」 スタンドが波紋の呼吸をすることで本体及びスタンドが「波紋」を使える。 スタンドが波紋の呼吸をしているとき、スタンドのパワーはAクラスになる。 第二の世界: 「ブラック・スペード」 衝撃を操作する能力。現時点では衝撃を短時間留めておくことくらいしかできない。 破壊力-B スピード-B 射程距離-E 持続力-A 精密動作性-B 成長性-A to be continued... < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]