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Rorschach Test 自作 左右対称のインクの染みを見て想像したものから人格を分析する性格検査の一つを、 考案したスイスの精神学者の名前から「(何)テスト」というでしょう? (2008年12月7日「 大量消費時代 」) タグ:学問・その他 Quizwiki 索引 ま~英数
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名前:シャッハ 性別:女 12才 クラス:ヒーロー2lv/ガンファイター1lv ステータス HP:20+11/3+0=34 SP:10+11/3+0=24 力:5+2/0+0=7 耐久:5+2/0+0=7 技量:5+2/2+1=10 俊敏:5+2/1+5=13 知力:10+2/0+0=12 抵抗力:5+2/0+0=7 HP:34+0+0=34 SP:24+0+0=24 攻撃力:7+0+0=7 防御力:7+0+0=7 命中力:10+0+3=13 回避力:13+0+0=13 素早さ:13+0+0=13 特殊攻撃力:11+0+0=11 特殊防御力:7+0+0=7 装備品 ハンドガン 所持品 弾丸×2 ゴム弾×2 一般スキル なし ヒーロースキル 《変身》 《ダークサイド》 《必殺技:素手》 《必殺技:銃》 ガンファイタースキル 《射撃術》SL2 《緊急回避》 総取得:PP1500 残り:PP50 所持金 20G 説明 「私が正義なのだー!」 ヨーヴィルの姪っ子。身長145cm、青髪赤目の少女。 普段は無邪気な少女だが、ひとたび変身すれば、立派な正義のダークヒーローである。 正義のためならば何でもするという信条の持ち主のため、かなりえげつない行動に出ることがしばしば。 戦闘時には他人に目もくれず、ただひたすら敵を撃ちぬく。
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ロールシャッハ 雷漸 かてきんちゃ セレンティア 桜咲t凜叶 闇色のぷるぷる ヒャアブル イラブチャー えらお レイレイ はいさーい こみゅーん 神龍目 ルデア なぐお 魔法のクレープ SunIle シエツ たかゆき社長 熱すぎる男前 HZMですよ
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登録タグ:【《用語》 と 記】 もしかして:ヘルマン・ロールシャッハ? トェイ、ないし(トェイ)とはジャスティスヒーローズの一部で団長を指し示す愛称(及び隠語)として使われている。 目次 概要 備考 関連項目 概要 トェイ、即ちヘルマン団長の模様(及び彼自身)の事を指し示す。 発祥はヘルマン自身が模様について「トェイに見える」と言い出した事から。 ……厳密に言えば彼の覆面の模様は(トェイ)とは少々異なるものなのだが....。 備考 関連項目 ヘルマン・ロールシャッハ? リンク? 編集記録: 初回執筆者:ヘルマン・ロールシャッハ?(c03206) 2012/03/24 最終更新者:ヘルマン・ロールシャッハ?(c03206) 2012/03/24 記事の最上部へ この記事を編集する コメントログ 各ページの編集ノートとしてお使い下さい。 名前
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登録タグ:【《用語》 え】 えっちだな。とはヘルマン・ロールシャッハ?がリグル・レイナードに対して言い放った言葉。 厳密に言えば「エッチだな。」ではなく「えっちだな。」である。 目次 概要 備考 関連項目 概要 リグルは自分のバストアップが完成し、ヘルマンに自分の服装についてどう思うか感想を聞いてみたところ、ヘルマンは大真面目に「えっちだな」と告げた事が発祥である。 年頃の女の子(当時14歳)に言う事ではないだろうに....。 備考 他人が卑猥な事を言った時のツッコミに使うのが適切。 性質上、この台詞を言う時は出来る限り真顔で言った方が好ましい。 えっちな話でもないのにえっちだなと言うと逆に自身が「えっちだな。」と認定されてしまうという手痛い竹篦返しを喰らうの諸刃の剣なので注意が必要である。 ( トェイ)<えっちだな。 ( トェイ) (*トェイ)ポッ 関連項目 リグル・レイナード ヘルマン・ロールシャッハ? 編集記録: 初回執筆者:ヘルマン・ロールシャッハ?(c03206) 2012/03/31 最終更新者:ヘルマン・ロールシャッハ?(c03206) 2012/03/31 記事の最上部へ この記事を編集する コメントログ 各ページの編集ノートとしてお使い下さい。 名前
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ぷっちょー//こいしちゃんウフフ//古明地 こいし-古明地 こいし-古明地 こいし-寅丸 星- 御影智久//プリズムリバーのレートを上げる作業//メルラン-アリス-ルナサ-リリカ- 賽が投げられて、ぷっちょーの先攻になりました。 御影智久 どぞー ぷっちょー では #配置:《表象「夢枕にご先祖総立ち」》 オートドローがスキップされました。 御影智久はカードを 1 枚引きました。 Turn 3 - ぷっちょー//体力20( 22) 呪力3( 1) 手札6( 6) 山33( 33) スペル1( 1) タイマー00 18(00 06) シーン なし 手札:無意識「弾幕のロールシャッハ」//うっかり//宝塔「レイディアントトレジャー」//無意識「弾幕のロールシャッハ」//うっかり//根性避け// #配置:《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 オートドローがスキップされました。 御影智久はカードを 1 枚引きました。 Turn 5 - ぷっちょー//体力20( 22) 呪力6( 3) 手札6( 6) 山32( 32) スペル2( 2) タイマー00 24(00 21) シーン なし 手札:うっかり//宝塔「レイディアントトレジャー」//無意識「弾幕のロールシャッハ」//うっかり//根性避け//無意識「弾幕のロールシャッハ」// #配置:《宝塔「レイディアントトレジャー」》 ぷっちょー うーん ↑起動:《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 オートドローがスキップされました。 御影智久はカードを 1 枚引きました。 御影智久 んー 御影智久は《幽霊シンセサイザー》を手札から御影智久のリーダーに配置しました。 Turn 7 - ぷっちょー//体力20( 22) 呪力6( 2) 手札6( 5) 山31( 31) スペル3( 3) タイマー00 54(01 21) シーン なし 手札:うっかり//無意識「弾幕のロールシャッハ」//うっかり//根性避け//無意識「弾幕のロールシャッハ」//心符「没我の愛」// ☆戦闘:ぷっちょー - 《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 vs 《鍵霊「ベーゼンドルファー神奏」》 - 御影智久 ★戦闘結果:ぷっちょー - dmg 2 3 dmg - 御影智久 #配置:《心符「没我の愛」》 ↑起動:《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 オートドローがスキップされました。 御影智久はカードを 1 枚引きました。 Turn 9 - ぷっちょー//体力18( 19) 呪力7( 3) 手札6( 5) 山30( 30) スペル4( 4) タイマー01 36(01 42) シーン なし 手札:うっかり//無意識「弾幕のロールシャッハ」//うっかり//根性避け//無意識「弾幕のロールシャッハ」//表象「夢枕にご先祖総立ち」// ☆戦闘:ぷっちょー - 《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 vs 《鍵霊「ベーゼンドルファー神奏」》 - 御影智久 ★戦闘結果:ぷっちょー - dmg 2 3 dmg - 御影智久 #配置:《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 ↑起動:《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 オートドローがスキップされました。 御影智久はカードを 1 枚引きました。 Turn 11 - ぷっちょー//体力16( 16) 呪力9( 3) 手札6( 5) 山29( 29) スペル5( 5) タイマー02 05(02 25) シーン なし 手札:うっかり//うっかり//根性避け//無意識「弾幕のロールシャッハ」//表象「夢枕にご先祖総立ち」//根性避け// ☆戦闘:ぷっちょー - 《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 vs 《鍵霊「ベーゼンドルファー神奏」》 - 御影智久 ★戦闘結果:ぷっちょー - dmg 2 3 dmg - 御影智久 #配置:《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 ↑起動:《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 ↑起動:《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 オートドローがスキップされました。 御影智久はカードを 1 枚引きました。 御影智久は《幻想郷縁起》を手札から捨て札に置きました。 御影智久は山札を丸ごと見ました。 御影智久は《メルラン・ハッピーライブ》を山札から御影智久のリーダーに配置しました。 御影智久は《フェムトファイバーの組紐》を山札からぷっちょーのリーダーに配置しました。 御影智久は山札を見るのをやめました。 御影智久は山札をシャッフルしました。 Turn 13 - ぷっちょー//体力14( 13) 呪力8( 4) 手札6( 4) 山28( 26) スペル6( 5) タイマー03 26(03 21) シーン なし 手札:うっかり//うっかり//根性避け//表象「夢枕にご先祖総立ち」//根性避け//光符「アブソリュートジャスティス」// イベント(ぷっちょー):《うっかり》 御影智久 対象は ぷっちょー ハッピー 御影智久は《メルラン・ハッピーライブ》を場から山札の一番下に置きました。 ☆戦闘:ぷっちょー - 《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 vs 《騒符「ソウルゴーハッピー」》 - 御影智久 ★戦闘結果:ぷっちょー - 【回避】 3 dmg - 御影智久 #配置:《光符「アブソリュートジャスティス」》 御影智久 いやいや 御影智久 決死出来ないっす ぷっちょーは《無意識「弾幕のロールシャッハ」》を準備状態にしました。 ぷっちょーの体力は今12 (-2)です。 御影智久 おk ぷっちょーの呪力は今5 (+3)です。 ぷっちょー でおkかな 御影智久 ですね ぷっちょー 忘れてた;w; オートドローがスキップされました。 御影智久はカードを 1 枚引きました。 Turn 15 - ぷっちょー//体力12( 10) 呪力12( 3) 手札5( 4) 山27( 26) スペル7( 6) タイマー04 29(04 10) シーン なし 手札:うっかり//根性避け//表象「夢枕にご先祖総立ち」//根性避け//「サブタレイニアンローズ」// ☆戦闘:ぷっちょー - 《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 vs 《騒符「ライブポルターガイスト」》 - 御影智久 ★戦闘結果:ぷっちょー - dmg 3 3 dmg - 御影智久 #配置:《「サブタレイニアンローズ」》 ↑起動:《「サブタレイニアンローズ」》 ↑起動:《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 オートドローがスキップされました。 御影智久はリーダーをリリカ・プリズムリバーに設定しました。 御影智久はカードを 1 枚引きました。 イベント(ぷっちょー):《うっかり》 ぷっちょー シンセ 御影智久は《幽霊シンセサイザー》を場から山札の一番下に置きました。 ☆戦闘:御影智久 - 《鍵霊「ベーゼンドルファー神奏」》 vs 《「サブタレイニアンローズ」》 - ぷっちょー ★戦闘結果:御影智久 - dmg 3 3 dmg - ぷっちょー 御影智久 どうするかなー 御影智久 はっ 御影智久 たったいま気が付いた 御影智久 さとりじゃなくて、こいしhじゃないかw ぷっちょー いまさらwwww ぷっちょー もう終盤ッスよw 御影智久 やばい、次死ぬわこれwww 御影智久 勝負行くかw Turn 17 - ぷっちょー//体力6( 4) 呪力9( 0) 手札4( 3) 山26( 26) スペル8( 7) タイマー05 18(09 31) シーン なし 手札:根性避け//表象「夢枕にご先祖総立ち」//根性避け//「嫌われ者のフィロソフィ」// ☆戦闘:ぷっちょー - 《無意識「弾幕のロールシャッハ」》 vs 《騒符「ソウルゴーハッピー」》 - 御影智久 ぷっちょー ^q^ ★戦闘結果:ぷっちょー - 【回避】 3 dmg - 御影智久 御影智久 ああ 御影智久 リリカだったw ぷっちょー ;w; #配置:《「嫌われ者のフィロソフィ」》 ↑起動:《「嫌われ者のフィロソフィ」》 ↑起動:《宝塔「レイディアントトレジャー」》 オートドローがスキップされました。 御影智久はリーダーをメルラン・プリズムリバーに設定しました。 御影智久はカードを 1 枚引きました。 御影智久 引けなかったかw ぷっちょー 楽器幽霊 ぷっちょー か 御影智久 ですw Turn 19 - ぷっちょー//体力6( 1) 呪力12( 1) 手札4( 3) 山25( 25) スペル9( 8) タイマー06 20(10 16) シーン なし 手札:根性避け//表象「夢枕にご先祖総立ち」//根性避け//復燃「恋の埋火」// ☆戦闘:ぷっちょー - 《「嫌われ者のフィロソフィ」》 vs 《大合葬「霊車コンチェルトグロッソ」》 - 御影智久 御影智久 受けられなかったw ぷっちょー です ★戦闘結果:ぷっちょー - 【回避】 【回避】 - 御影智久 ☆戦闘:ぷっちょー - 《「嫌われ者のフィロソフィ」》(相手スルー) ★戦闘結果:ぷっちょー - === 3 dmg - 御影智久 御影智久 ありがとうございました ぷっちょー ありでしたー 御影智久 やっべ、ずっとさとり相手だと 御影智久 勘違いしてたw ぷっちょー ^q^ 御影智久 ソウルゴーで2点与えて、楽器幽霊引いてトランペット貫通4点勝ったという未来が ぷっちょー リリカL;w; 御影智久 ダメージ-3で無かったことにされそうな、と ぷっちょー あー・・・入ってないまである^q^ 御影智久 そうなのかーw ぷっちょー 根性とかパターンとか入れたらスペースなくなってしまった>< ぷっちょー 使ってみてほしい場面が多いなら入れようかなって感じで 御影智久 なるほど ぷっちょー では戻りますかー 御影智久 あいー 御影智久 ありがとうございました ぷっちょー ノシ 御影智久 ノシ
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Monochrome clearness ◆John.ZZqWo ヒーローってのはスーパーパワーがあるとか、コスチュームを着てるって事じゃない。 自らの意思でもって世界を良くしようと戦う人々の事を言うんだ。 ,,,〓) 深い海の底の様に黒に限りなく近い青色。そんな色の夜空に煌々と、 遥かな過去も、遠い未来にも、その姿を変えぬ真っ白な月が円を描いてぽっかりと浮かんでいた。 そんな月から降り注ぐ白い光に街の中にある様々は影を押し出され、それぞれのシルエットを浮かび上がらせる。 何に濡らされたのかじめじめとした黒い路面には誰かが落としていった片方だけの靴が転がり、 消火栓の上に被さった新聞紙がカサカサと虫のような音を立てている。 そして、そんなものに気を取られていれば路上にばら撒かれた酒瓶の欠片を踏みかねない。 避けて道の端へと寄れば側溝からは鼠の糞の匂いが立ち昇り、 顔を背ければそこには破けたゴミ袋から猫の死骸が顔を覗かせていた。 錆びついた金網がゲタゲタと悪魔の様に笑えば、割れたままのガラス窓が悪魔の牙をカチカチと鳴らす。 酔いを醒ますには最適で最悪な、気分が悪けりゃ便所の変わりにだってなる腐れきった路地。 そこに”ロールシャッハ”はいた。 着古して染みだらけのトレンチコートに、同じ薄茶色のソフト帽。 それだけを見ればなんてことはない。少しばかり時代錯誤な、パルプ誌の中のスパイか探偵の格好をした男でしかない。 だがしかし、その男の”顔”は異質だった。 目も鼻も茫洋と定かでない白地の上には何とも言い切れぬ、まるでインクを零したかのような黒い染みが浮かんでいる。 そしてその染みは彼の表情を表すかのように、しかし余人には決して想像できぬ形を持って度々形を変えるのだ。 これが、彼の”顔”だった。この怪人物こそがロールシャッハであった。 「HURM.」 溜息とも何かの確認とも取れる奇妙な嗄れ声を吐き、男は手にしていた手帳を閉じる。 なにやら年季の入った手帳にはとても後で読み返せそうもない字で何かが記されていたのだが、どうやらメモか日記らしい。 本人としては納得がいったのか、ペンを挟むと手帳を懐にしまいこんだ。 次に男はしゃがみこむと、傍に置かれていたボーイスカウトが背負っていそうバックを無遠慮に開き、中身を確認しはじめる。 どうやら中身についてもそれはボーイスカウトが背負っているバックに入っていそうな物ばかりのようだ。 一冊の新品の手帳。ルールブックを兼ねたそれをパラパラとめくり、一通り確認するとバックの脇に置く。 水の入った透明のボトルに、紙ではなくビニールでラッピングされたパン。 色付の地図に、奇妙な名前の羅列された名簿。何の変哲もない方位磁石に、最新の時計。 その他諸々。ひとつずつ確認すると脇に置き、全て確認し終えると彼はバックから出した全てをそのままバックに戻した。 取り立ててすぐに使う物はなかったらしい。バックの口をきつく縛ると彼はそれを肩にかけて立ち上がった。 と、ここで彼は胸元に手を当て、友人から貰った武器(アンカーガン)がなくなっていることに気づいた。 他にもなくなっている物はないか――もっとも、手帳とアンカーガン以外に元々たいした物など所持していないが、 彼はコートのポケットにひとつずつ手をつっこみ確認する。 どのポケットの中も綺麗に空っぽになっていた――いや、何かの感触が手袋に触れた。 取り出してみればそれはスマイリーフェイスの缶バッチだった。 50セントもしない、今時おまけにもなりやしないそれには黒ずんだ血がこびりついている。 ”コメディアン”と呼ばれた男の血である。彼の死がロールシャッハにとって今回の事件の発端だったのだ。 マスクを被り(身元を隠し)、犯罪者の前に現れては既存の法を無視し独自の判断で成敗するヒーロー(怪人物)。 30年代に現れ始めた彼らの中、その黎明より活躍していたひとりがコメディアンと呼ばれる男であった。 同じくコスチュームヒーローであるロールシャッハとは仲間という間柄にあった男だ。 実感としてはつい先ほど、今現在巻き込まれている奇妙な事態に遭遇する直前にロールシャッハはバッチを拾った。 コメディアンと呼ばれる男の遺品。無論、勝手に拝借したのだが、そこには弔いの精神よりも先に何かきな臭い予感があった。 彼は何者かによって殺されていた。ならば他のヒーロー達も狙われるかもしれない。 予感に従い、ロールシャッハは友人宅へと足を進め――その途中でこの奇妙な事態に巻き込まれたのである。 コメディアンの死と今回の奇妙な事態。そこに因果関係はあるのか。それはまだはっきりとしない。 ,,,〓) チカチカと明滅する壊れかけの街灯に誘われるように、ロールシャッハは深夜の街を当て所なく歩く。 ゴミと汚物に塗れた通りは不潔で汚い。だが今は、ある意味で清潔で綺麗であった。 ここには下品(そのまま)な言葉でしつこく呼びかけてくる娼婦も立っていなければ、膨らんだ上着の中に麻薬を隠し持つ売人もいない。 一軒一軒店を訪ねては店主に小遣いをせびり、色付きを見れば追い立てて暴力を振るう悪徳警官の姿も見えない。 ディナーの食卓に一品加える為に人を刺す馬鹿もいなければ、戦争帰りだと哀れみを請う嘘吐きもいない。 まるで暴動が起きた翌朝のような、”掃除”しきった次の日の朝みたいな、清々しくも白けた綺麗な光景であった。 ロールシャッハを苛立たせるあらゆる人間はここにはいない。だから彼は考え事に集中しながら歩くことができた。 考えながら彼は歩く。思考にあわせて顔面の柄が奇妙に蠢き彼の内面を投影する。 思考する。この奇妙な事態――実験の主は、これもコスチュームヒーローの仲間であったオジマンディアスに違いない。 声を聞けばそれは明らかなことだ。そしてどうやら厄介なことに、この実験には同じくDr.マンハッタンが協力しているようだった。 瞬間移動などという超能力は本物の超人である彼にしかできないことであるからだ。 ならばこれはコメディアンが殺されたことと関係するのだろうか? そして他の仲間達も関与しているのだろうか? 確認した名簿の中に見知った名前は存在しなかった。 ただ、ロールシャッハが奇妙だと感じたのは、そこにどうやら日本人らしき名前が多数並んでいたことであった。 日本。正義の鉄槌(原爆投下)から40年。 築き上げた領土を解体され、アメリカの監視下、戦うことを放棄させられ、再び狭い島の中へと押し込まれた奴等は 以来、経済再生とその発展のみに注力し、仕事中毒だと揶揄されながらも日本という国を世界という舞台に押し戻してきた。 TVコマーシャルで日本製品を見るのももう珍しくはない。メイドインジャパンは今や一つのブランドだ。 例えば時計(SEIKO)。例えば携帯型ステレオカセットプレイヤー(WALKMAN)。 今年打ち上げられた宇宙船の乗組員の中にも日本人の名前があった。 彼は地球に帰還すると自分を取り囲むインタビュアに対しこう言ったという――「宇宙からは国境線は見えなかった」 その発言の意図をロールシャッハは気にしたりはしない。 宇宙から地球を見た際の素直な気持ちであっても、地上で訓練していた頃から考えていた決め文句でもどちらでもいい。 ただ、その通りだと彼は思うだけだった。 この地球には国境線なんか引かれてはいない。それはアイディンティの確立に囲いを必要とする人間の中にしかないものだ。 目には見えない。普通の人間には見えないのは当たり前でしかない。 見えるのは人間の心を覗くことができる者だけ――なぜなら、その線は人間の中に引かれているのだから。 余計なことを考えてしまうのはこの夜が静かすぎるからか。そう思った時、ロールシャッハは通りの先に男が立っているのを発見した。 ,,,〓) 奇妙な若者だった。 一見して東洋人だとわかる肌の色と顔つきだが、背が高い。 ロールシャッハは標準より小さい小柄な男ではあったが、それよりも頭ひとつ以上は高いのだから長身と言える。 もっとも、不健康そうな猫背の姿勢なので視線の位置はロールシャッハとそう変わらないのだが。 白い無地の長袖シャツにブルージーンズ。足元はくたびれたスニーカーを裸足で履いている。と、随分とラフな格好をしている。 質屋に全てを預けた帰りの苦学生か、はたまた夜中に窓を開けて突然ポエムを朗読し始める近所迷惑な輩か。 こんな夜の街にはそぐわない奇妙な清潔感があるというのがロールシャッハの第一印象だった。 しかしそのような印象は若者の目を見て軽く吹き飛んだ。 目が何よりも印象的であった。正確には目と、その下にはっきりと黒く浮かんだクマに強い印象があった。 それは何日も、いや何年も眠らずにいたかのような、まるで生まれてからずっと起きていたと思わせるような濃いクマ。 ならばこの若者はその両目で何を見続けていたのか。何を見張り(watch)続けていたのか? 若者はそんなことが気になる目の持ち主であり、”異様”な人物であった。 「――どうもロールシャッハさん。私は”L”です。」 私は”何”だと言った? 一瞬、ロールシャッハは疑問に思ったが、すぐに名簿の中に『L』とだけ短く記されていたのを思い出した。 自分の名前が知られていたことは取り立てて疑問に思わない。名誉か不名誉か、ロールシャッハの名前は知れ渡っている。 ロールシャッハは目の前の奇妙な若者に対し、何者かと問うた。どう対応すべき相手なのか、まだその材料が揃っていないからだ。 「Lと名乗ったはずですが。社会的な立場と言われれば、私は探偵です。 ……確認しますが、あなたの名前はロールシャッハで間違いありませんか?」 とてもそう見えるような風体とは言い難いが、若者は探偵なのだという。しかし嘘を言っている風でもない。 僅かな驚きを内心に隠したままロールシャッハは若者の言葉を肯定した。ロールシャッハとは”自分自身”に他ならない。 「そうですか。見た目からあなたがロールシャッハではないかと推測し、反応を窺おうと呼びかけさせていただきましたが 当たっていたようで何よりです。恥をかかなかったですし、こともスムーズに進行するでしょう」 反応(テスト)だと? ロールシャッハの顔の模様がぐにゃりと歪む。 「ええ、名前を呼んだ時に会話を求めるか、それとも問答無用で襲い掛かってくるのか。それを試させていただきました。 そしてあなたは少なくとも後者ではないと判明しました。 これは幸いなことです。多少、自衛の心得はありますが襲われないことにこしたことはありません」 ロールシャッハの若者に対する奇妙な印象はなお深まった。 この若者には全くといって悪びれる様子がない。そして言葉の中に嘘もごまかしも存在しないのだ。 自分のことを棚に上げて、ロールシャッハは若者に対して気味の悪い奴だと内心思った。 「ロールシャッハと名簿には記されていましたが本名とは思えませんね」 なんとも間の抜けた発言だ。だがしかし裏を読めば意味深な発言でもあった。こいつは俺がロールシャッハであることを疑うのかと? 「私のLという名前もひとつの呼び名にすぎませんが……ところで、そのマスク面白いですね。初めて見ます。 もしよろしければ脱いで素顔を見せてもらってもいいでしょうか?」 これが俺の顔だ。とロールシャッハは若者の要求をにべもなく断る。 さて少しは喰いついてくるのかと思いきや若者はじゃあいいですとあっさり引き下がった。全く掴み所がない男である。 「なるほど、いいでしょう。私も見せていただけるとは思っていませんでしたから。 では場所を変えましょうか。こんな所で立ち話というのも無用心です」 言うと、若者はロールシャッハの意思も確認せずくるりと踵を返した。まるでその必要はないとばかりに。 無視することも放置することもできたが、しかしロールシャッハはその背中に問うた。どうして自分がついてゆく必要があるのかと。 「簡単なことです。二人ならお互いに助け合うことができます。 ……私はこの”事件”を独力で解決できる確率は極めて低いと見積もっています。それは不可能と言っても差し支えないぐらい。 なので手を貸して欲しい。……あなたもそうだとは思っていませんか? 協力者が不可欠だと」 ロールシャッハの中に否定する為の理由は存在しなかった。 むしろ膨らむのは疑念だ。 目の前の若者はどうしてこうもあっさりと自分を信用するのか。あるいは、信用ではなく利用なのか。窺い知ることができない。 途中で反応(テスト)という言葉を若者は使った。ならば今もそうなのかもしれない。 これは彼なりの利用できる相手を見極める”面接(テスト)”なのではないかと――。 しかしそこまで考えても結局、ついて行かない理由は生まれなかった。増えるのは放置できない理由ばかりだ。 若者が悪人だとはっきりわかるならば話は簡単だが、そういうわけでもない。 結局、ロールシャッハは遠ざかる若者の背を追って歩き始めることにした。 ,,,〓) あらかじめ目星をつけていたのか、Lは十字路の角にあるコーヒーハウスに入るとそのまま一番奥のテーブルについた。 「……………………」 ロールシャッハのLについての奇妙な印象はますます強くなる。 若者は椅子の上に座っていた。いや、このままでは何の変哲もない当たり前のことだが座り方に特徴があった。 椅子の上に足を乗せ、膝を抱えるような姿勢で座っている。 まるで猿のような座り方だった。日本人を猿と例えるのはポピュラーな比喩表現だったが、この若者はそのままだ。 いぶかしむ目を向ければ、この座り方で頭の回転が40%上昇するらしい。 さてテーブルにはついたが、ウェイトレスもいなければ二人とも座ったままなのだからテーブルの上に温かいコーヒーがあるはずもない。 若者は長い腕を伸ばしてテーブルの端に置かれたシュガーポットを取ると、 自分の前に置き、蓋を開けると中から角砂糖をつまみ上げ、そのまま口の中へと放り込んだ。 ひとつ、ふたつ、みっつ、あわせて10個ほどつまむと、シュガーポットをロールシャッハの前へと差し出す。 「あなたもどうですか? 頭を使う時には糖分の補給が欠かせません」 ロールシャッハもそれには同意するところだった。それにまだ今晩は夕食をとっていない。腹は空いているのだ。 手袋をしたままの手をシュガーポットに突っ込むと角砂糖を握りこみ、そしてそれをそのままコートのポケットに放り込む。 「……食事の時はと期待したのですが、まぁいいでしょう。 それよりも本題に入りたいと思います。我々に時間的な余裕はありません」 どうやらまだマスクの下に興味があったらしい。油断ならない男である。 若者はテーブルの上にルールブックを兼ねたあの手帳を広げると、なにやらものすごい勢いで文字を書き始めた。 覗いてみると、どうやらそれは『Hor』から始まる言葉の羅列のようである。 「『Hor』『Set』『Isi』――これらの文字列から想像するものはありますか?」 ロールシャッハは唸るだけで答えない。 「意味の取れない3つの単語ですが、まずこれは略称ではないと考えます。略称であれば文字は全て大文字のはず。 しかしこれは頭だけが大文字。つまり、ある単語の頭三文字であると推測するのが妥当でしょう。 この実験という企画の性質と、主催者の言葉を鑑みるに、 このルールの根幹となる言葉の意味はいつか誰かが解くもの、解かれるものだということを前提に作られています。 そうであるならば、私達が全く解けないようなものでは意味がない。 つまり、これ以上のレベルで疑う必要はない。ある単語の頭三文字であるという推測は100%正解です」 若者はなおもペンを走らせながら己の確信をロールシャッハへと披露する。 難しい問題ではない。言われれば確かにそうだと思えたが、100%かと言われると簡単に首肯することはできなかった。 「そう考えた上でですが、 『Hor』の3文字から始まる言葉は固有名詞や複数語の組み合わせを含めてもせいぜい200ほどといったところです。 例えば、すぐに思い当たるものだと『地平線(Horizon)』でしょうか。 動物であれば真っ先に浮かぶのは『馬(horse)』でしょう。他には『ミミズク(Horned owl)』なんて言葉もあります。 実験という言葉と掛け合わせるなら『測定器(Horologe)』も可能性はあるでしょうか。 全く関係なさそうな言葉であれば『空豆(Horse bean)』など――」 200はあるという単語を全て書き終えたのか、ペンを止めると若者は手帳をロールシャッハの方へと向けた。 あまり読みやすい文字ではなかったが、開いた両側のページに『Hor』から始まる言葉がみっしりと書き込まれている。 「さてロールシャッハさん。これら200ほどの、幸いなことに200程度に絞られたとも言える言葉の群れですが、 ここから正解となる言葉を見つけ出さなくてはなりません」 そんなことがどうしても必要なのか? ロールシャッハは思い浮かんだ疑問をそのまま若者にぶつけた。 何も億劫だと思ったわけではない。 単純に、こんなことに意味はあるのか。この事態の解決に向かう道は他にあるのではと思ったからだ。 だが目の前の、真摯な目をした若者は必要だとはっきり断言した。 「ええ必要です。 我々はこの事件を解決しなくてはならないわけですから、この事件の首謀者である存在を上回るためにもまず その思想、……つまりこの事件の中に置かれたメッセージを正しく理解する必要があります。 理解がなくてはそれを上回ること、ひいてはこの事件を解決することもできません」 まるで作り話の中の名探偵だ。自分のことを探偵だなんて言っていたが、この若者は重度のシャーロキアンかもしれない。 それにこの若者は”我々”という言葉を使った。彼からすればロールシャッハはもう仲間なのだ。 無自覚の詐欺師なのかもしれない。ロールシャッハはこの段階ではまだLという男の価値を測りかねていた。 「さて、少し質問しますが、4枚の伏せられたカードがあり、そのうち3枚を開いて『スペード』『クラブ』『ダイア』が出てきた場合、 残りの1枚には何の印がついていると想像しますか?」 結論を出す前に話を迂回させるのも探偵らしい。 テーブルに拳を叩きつけて話を飛ばしてもいいが、ロールシャッハは素直に『ハート』だと答えた。 「ええ、そうです。ありがとうございます。 そう考えるのが自然であり、そこに人間の恣意的なものが介在するならばその可能性は少なくとも80%は見積もれます。 私が言いたいのは、これは『Hor』『Set』『Isi』の3つの言葉に関してもそうだろうということです。 この3つの言葉には明確な関係性があってしかるべきだと――」 言いながら若者はロールシャッハの目の前で手帳のページをめくってみせる。 そこにはたったひとつだけ大きく 『 H o r u s 』 と書かれていた。 「『Horus(ホルス)』――エジプト神話における太陽神です。 世界中の神話の中に太陽神は登場しますが、例に漏れずホルスも偉大なる者。悪と対する者と捉えられ信仰の対象となっています」 若者は再びペンを取ると、『Horus(ホルス)』の下に『Seth(セト)』『Isis(イシス)』と続けて書き記した。 「これらは同じエジプト神話い登場する神の名前です。 セトは悪と戦争、嵐の象徴であり、イシスは母性を象徴し、神話の中でイシスの息子であるホルスはセトを討ち滅ぼしました」 ロールシャッハには若者が言いたいことがまだ理解できないでいた。 しかし、エジプト神話から言葉を選ぶのはオジマンディアスらしいと思った。 あの人類最高を極めた男がヒーローの名前として選んだ『オジマンディアス』という言葉そのものが同じくそうであるのだから。 「何も私がこの3つの名前を出したのは都合よく言葉が揃うからという理由ではありません。ルールをもう一度よく見てください」 今度は大きくページをめくり、若者はこの実験のルールが書かれたページを開いた。 ロールシャッハもすでに一度目を通したものだ。そこに書かれているものは記憶の中の一語一句となんら変わりはない。 『Horグループは、Setを全て殺すか、Isiを助け、実験終了時まで一人でも生かしておくこと』 『Setグループは、Horに属する者を皆殺しにすること』 『Isiグループは、ただ時間内生き残ること』 若者は続ける。 「これらの3つの神の名前とこれらのルールは当てはまります。 ホルスはセトを倒し、セトからイシスの身を守る。 セトはホルスを倒す。 イシスはそれを見守り決着を待つ。 この実験と呼ばれるゲームのルールを端的に表すと、それはつまり――」 正義と悪との対決ということになる。ロールシャッハの前で若者はそう発言した。聞いたロールシャッハの顔の模様がじわりと蠢く。 「ええ。ホルスはセトにイシスを殺害されないようにしながらセトを撃退。または殺害してしまう。 セトはホルスを出し抜いてイシスを殺害しホルスの勝利条件を奪うか、ホルスを直接殺害し勝利を狙う。 このルールが明らかになれば、全体の傾向としてこう動くだろうというパターンがいくつか想像できます。 問題はどういった基準で参加者がグループ分けされているかですが、これはこれから情報を得ることで――……」 ,,,〓) ロールシャッハは唐突に理解した。 天才の閃きが己の中にあったのではない。これは、単純に、身をもって思い知っていただけの事実だ。 この実験は縮図だ。ヒーロー(正義の味方)とヴィラン(悪役)と、その対決を見守り、時には何かの対象にする民衆。 オジマンディアスはそれをここに再現することで実験と称しているのだ。 天才である彼が何をしたいのかは、どうしてこんなことをしなくてはならないのかは別にして理解することができた。 そして目の前の若者はまだそれを理解できてはいない。実感を伴う所まで到達していない。 イシス――つまりは民衆をホルスとセトが取り合うポイントのように例えたが、それは正しい推察だが完全な正解ではない。 民衆はヒーローを憧憬の対象とすることもある。しかし、賭けの対象にもする。そして、妬みや憎悪の対象にもするのだ。 ヒーローの登場は賞賛を持って迎えられる。しかし、民衆がいつかヒーローを、神を不要だと唾棄する時が来る。 自らが吐き出す罪に塗れた奴らは度し難いほど図に乗りやすく、欲深く嫉妬深い。 高らかに謡われるのは不平の歌で、そのくせモラルという名の花畑を笑いながら土足で踏みにじる。 ルールを改めて思い返せば何もかもが明らかだ。民衆(イシス)には負ける条件が設定されていない。 ヴィランが死に絶え、ヒーローが姿を眩ましてもあいつらはちっとも困らない。 むしろ、ヒーローとヴィランの対決など、奴らからすれば娯楽の対象にはなれ、近ければ疎ましい規律そのものでしかない。 オジマンディアスは今一度測ろうとしている。正義の存在価値を、悪の存在意義を、善良なる民の存在証明を。 しかし、おそらくこれは現実の再現になるだろう。悪は消え、正義は追放され、堕落の沼につかる醜悪な民衆だけが残る。 何を期待してオジマンディアスがこんなことを始めたのか理解できない。あるいはこれは何かを見切る為の実験なのか。 ロールシャッハはしかし、 ロールシャッハはロールシャッハ以外の何者でもない。自分自身の正義に妥協しないだけだ。 それがいつどこであろうとも。現実でも、仮想の実験場の中でも、例えば悪夢の中でも、そしてここが地獄なのだとしても。 ロールシャッハは妥協しない。彼はその矜持を命綱のように、マスクの下の暗闇の中で強く握り締めた。 ,,,〓) しばらく後、ロールシャッハとLの似ても似つかない二人は肩を並べて夜の街の中を歩いていた。 「すでに我々と同じように考え行動を起こしている者もいるでしょう」 何者かとの遭遇を期待しながら歩きつつも、Lは推理を垂れ流す。探偵は日本製らしくマルチタスクだった。 「そして、それらは何もこの事件を解決しようという方向だけにとは限りません。 ゲームが進行した方が有利だと考える者や、欲に駆られてゲームの決着を急ぐ者。 なんらかの方法で自身がセトの立場にあると確信して場を乱そうとする者もいるかもしれません。 まずはできるだけ正確に状況を把握したい。集められた人間というのもこの場合は貴重な情報源です。 危険を伴いますが人間の善悪関係なしに当たっていかなくてはないないでしょう。 そこから新しく見えてくる実験の意図というものもあるはずです」 シャッハは結局、この奇妙な男と同行することにした。その理由は単純だ。 「私は悪というものが許せないんですよ。そして正義の力が持つやさしさを信じています。 なので私はこれまで事件を解決してきた。今回も同じです。私は正義の力でこの事件を解決したいんです」 それは、ともすればヒーローに憧れる子供が言うたわごとのようであったが、しかしLの言葉には真摯さがあった。 嘘矛盾の欠片すら含まない。そして昨日今日に標榜した言葉ではない力強さがあった。 Lは若い。だがしかし”ベテランのヒーロー”であることをロールシャッハはその言葉に感じ取ったのだ。 Lが別世界における最高の探偵であることをロールシャッハは知らない。 迷宮入りとなったものを含め3500件の事件を解決し、10000人を超える犯罪者を刑務所送りにしているとは知らない。 しかし、どこの誰かはわからないが信用に価すると判断した。 そしてなにより、今までいたどの仲間よりも自分と”正義の位置”が近いと感じたのだ。 Lというこの若者も、決して己の正義に”妥協”しない男なのだろうと―― ロールシャッハとLの似ても似つかない、しかしどこかでよく似た二人は肩を並べて夜の街の中を歩いて往く。 【H-8/市街地:深夜】 【ロールシャッハ@ウォッチメン】 [属性]:正義(Hor) [状態]:健康 [装備]:ロールシャッハの手帳@ウォッチメン、スマイリーフェイスの缶バッチ@ウォッチメン、角砂糖 [道具]:基本支給品一式、不明支給品x1-3 [思考・状況] 基本行動方針:この実験を停止/破壊させ、オジマンディアスに真意を問う。 1:Lと共に行動。情報を集め事態を解決する糸口を見つける。 [備考] ※参戦時期は、10月12日。コメディアンの部屋からダンの家に向かう途中です。 【L@DEATH NOTE 】 [属性]:正義(Hor) [状態]:健康 [装備]: [道具]:基本支給品一式、シュガーポット、不明支給品x1-3 [思考・状況] 基本行動方針:この事件を出来る限り被害者が少なくなるように解決する。 1:ロールシャッハと共に行動。情報を集め事態を解決する糸口を見つける。 [備考] ※参戦時期は、夜神月と一緒にキラ事件を捜査していた時期です。 【ロールシャッハの手帳@ウォッチメン】 ロールシャッハが所持していた物。 ロールシャッハ本人の私物であり、彼が捜査メモや日記を記すために使い続けている古い手帳。 書かれている内容が誰かに漏れないよう本人しか読むことのできない汚い字でメモや日記は記されている。 【スマイリーフェイスの缶バッチ@ウォッチメン】 ロールシャッハが所持していた物。 この実験に巻き込まれる直前、ロールシャッハがコメディアンの墜死現場で拾った缶バッチ。 スマイリーフェイスはコメディアンが愛用するマークで、この缶バッチも彼が身につけていたものである。 へしゃげたりはしていないが、コメディアンの血がこびりついている。 【シュガーポット@現地調達】 Lがコーヒーハウスで調達。 コーヒーの中に入れるための角砂糖が詰まったシュガーポット。 角砂糖などどうするのかというと――そのまま食べる。名推理に糖分は欠かせないのである。 ロールシャッハも角砂糖を食べる。というかむしろ彼にとっては主食のひとつである。 時系列順で読む Back 正義の/悪の・ヒーロー/救世主 Next とあるイカ娘の侵略目録《バトルロワイアル》 投下順で読む Back 正義の/悪の・ヒーロー/救世主 Next とあるイカ娘の侵略目録《バトルロワイアル》 より強き世界 ロールシャッハ 4人のイカれる男たち 実験開始 L
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過去と未来が混ざり合い、紅い月が明けることなく空にあり続ける歪んだ平安京。 その一角に、現代においては少々古めかしいが、平安京には合っている和服の少女が一人、勃然と佇んでいた。 少女の名前は斑目るり。金沢にある名家、班目家の三女である。 そんな彼女はただ、現状に当惑していた。 「ここ、どこ……?」 るりは殺し合いに来る前、班目家に送られた死の予告に怯えていた。 しかし、自分が一度危なかった時に、客人として来ていた金田一に助けられ、るりは彼に懐く。 そしてその夜、るりは父親への嫌悪からか他の何かか知らないが金田一の部屋に行き、様々な感情が混ざり合って泣き出してしまう。 それを金田一は必死に慰め、明日になったら一緒に遊ぶと約束してるりは自分の部屋に帰っていく―― 『……お主らは今から殺し合いをしてもらう為にここに呼び出させてもらった』 最中で殺し合いに呼ばれてしまった。 現状を何も吞み込めない中、るりより年上の少女二人が殺され、当惑のまま平安京に放り出される。 とにかく何かしないと、と思いこそこそと建物の陰に隠れる彼女。 とりあえずデイパックに入っている物を調べよう、としたところでるりの傍に別の人影が現れた。 彼女が人影の方へ視線を向けると、そこに男が立っていた。 男の外見は金髪碧眼の外国人で、るりからすれば大柄の男であり、彼女が怯えるには十分だ。 しかし、彼女が男に怯えたのはそれだけではない。 るりは、男の瞳が恐ろしかった。 恐ろしく冷たい視線。自分のことを何とも思っていない視線。 父が自分や母、姉達を見ている時と同じものを彼女は感じていた。 「ひっ!?」 るりは咄嗟に男から逃げ出そうとするが、なぜか体が急に動かなくなってしまう。 彼女は必死に動こうとするが何もできず、男はただ悠然と近づいてくる。 そして男はるりの首に腕を回す。 「安心しろ。せめて痛みは一瞬だけで済ませてやる」 そう言って、男はるりの首をあっさりとへし折った。 こうしてとある12歳の少女、班目るりの生涯は幕を下ろす。 殺し合いに呼ばれなかった別の未来では、血を分けた実の兄に殺されていた彼女。 果たして今の死に様と本来の死に様、どちらがマシだったのだろうか。 ただ一つ言えることは、どちらであってもるりは決して幸せではなかった。 それだけが、確かなことである。 【斑目るり@金田一少年の事件簿 死亡】 ◆ 班目るりを手に掛けた男、ヘクソンは淡々と彼女のデイパックを回収しようとしていた。 彼は殺し合いに呼ばれる前、ある野望の為に動いていた。 千年前に封印された魔人、ジャークを蘇らせ世界の支配を企んでいた。 その過程でたまよみ族と組み、たまゆら族や埼玉のとある一家と小競り合いもあったが最終的にジャークは復活。 しかし当のジャークは千年の間に力を失った挙句ただのオカマとなっていた。 野望の失敗を悟ったヘクソンはせめてその場から逃げ出そうとするが、足を撃ち抜かれそれもできない。 結局、彼は警察に捕まった。 はずだが、気づけばこうして殺し合いに巻き込まれていた。 ヘクソンは考える。 どうやったかは分からないが、とにかく自分を警察から連れ出し、足を治してまで殺しあわせようとする二人の少女。 それがどんな意味を持つのかは、ヘクソンには分からない。 心を読むなどの超能力を持ち、実際に主催者二人の心を読もうとしたがそれはかなわなかった。 何も考えていなければ何も読み取れないこともあるが、あの場合は明らかに違った。 恐らく、何らかの方法で心に鍵をかけて対策しているのだろう。たまよみ族の首領も似たようなことをしていた。 そしてヘクソンは殺し合いに乗った。 利用し、利用されるなどよくあること。こうして命を握られている以上、逆らうのは得策ではないだろう。 優勝してなおいいように使われない保証もないが、その時はその時だ。 それにもし、主催者の言うこと全てが本当ならば、ジャークを超える力を身に着け、今一度世界征服を狙うのも悪くない。 こうしてヘクソンは殺し合いの場に降り立ち、早速一人目を殺害した。 彼は殺してもいい場面でも殺さないことも多いが、だからといって殺せない人間でもない。 なので少女の死体を見ても特に感慨にふけることもなく、デイパックだけ回収しようとしたのだが、その前に懸念が発生。 「誰だ」 建物の陰に問うヘクソン。 気配こそ消えているもの、心が読める彼はそこに誰かがいることは丸わかりだった。 「……お前がその少女を殺したのか?」 隠れていても無駄と察したのか、男が一人素直に出てくる。 男の風体は異様だった。 トレンチコートにソフト帽。それだけなら古臭いですむが、コートからは洗っていないのか異臭を発している。 そして何より、彼の顔が不気味だ。 人間が持つものではなく、白と黒が互いに蠢き、されど決して交わることのないままに動き続けている覆面を被っていた。 あの覆面は一体何で作られているのだろうか。ヘクソンは少しだけ気にかかった。 しかし、目の前の男はヘクソンの内心など分かる筈もなく、再び問いかけてくる。 「お前がその少女を殺したんだな」 「そうだ、ウォルター・コバックス。私が殺した」 「俺はロールシャッハだ」 そう言うと、ロールシャッハはデイパックから金属バットを取り出し、ヘクソンに殴りかかる。 名乗っていない名前を当てられても、ヘクソンが人を殺したと言っても何一つ動揺などしない。 ただ人殺しという悪を許さない、という強い意志を携えてヘクソンに向かっていく。 しかし―― 「当たらんな」 ロールシャッハの攻撃は、ヘクソンにはかすりもしない。 よく鍛えられていると言ってもいいロールシャッハだが、ヘクソンには通じない。 ヒマヤラで獣同然の生活をすることで超人的な身体能力と超能力を手に入れた彼にとって、ロールシャッハは常人の範疇でしかない。 故に攻撃など当たらず、逆に腹に拳を叩き込んで反撃。 ロールシャッハはその程度では怯まず、今度は蹴りを叩き込んで来ようとする。 それをヘクソンは足払いでバランスを崩すことで攻撃を止めた後、ロールシャッハの背後に周り首に腕を回す。 これでるりと同じく彼の首もへし折ろうとするが、次の瞬間、ヘクソンはロールシャッハから飛びのいた。 その直後、ヘクソンの顔がさっきまであった場所にフックが先についたワイヤーが発射される。 これはロールシャッハに支給された、彼愛用のワイヤーガンだ。 そんなものを自分に向けて撃つなど、さっきまでロールシャッハの心にはなかったはず。 ということは、首に腕を回された瞬間に思いついたということだ。 驚くべき発想力。恐るべき判断力と言わざるを得ない、とヘクソンは感じた。 そしてワイヤーを外してなお、ロールシャッハは再びヘクソンへと金属バットを携えて走って来る。 「付き合いきれんな」 まだ殺し合いは始まったばかり。 にも関わらずこれ以上戦うのは下策と判断したヘクソンは、懐から一枚のカードを取り出し、即座に使用した。 そのカードの名前はぶっとびカード。 桃太郎電鉄シリーズに登場し、使用すると自身をランダムで移動させるカードだ。 ヘクソンは支給されていたこのカードを使い、離脱を選んだ。 「さらばだコバックス。二度と会うこともあるまい」 「ふざけるな」 決して逃がさないとばかりにロールシャッハはバットをヘクソンに投げつけるが、彼はバットが当たるより先に転移した。 そして平安京のさっきまでとは違う場所のどこか。 少なくともロールシャッハから離れた場所に転移したヘクソンは、とりあえず近くの建物に入る。 そして―― 「ハァ……ハァ……」 ロールシャッハの前では余裕ぶっていたが、実際は少々疲労していた。 とはいっても、この疲労は戦い疲れではない。あの程度ならヘクソンは息一つ乱すことはない。 ならばなぜ疲れているのか。 「何だあの男は……? 本当に人間か……?」 ヘクソンはロールシャッハの思考の読みすぎで疲弊していた。 ヘクソンは人の心を読む能力があるが、それ故の弱点も存在する。 例えば心で何も考えず、歌いながら敵が向かってきた場合、平時なら思考など関係なく振り払える攻撃を成すすべなく喰らうことがある。 また逆に、あまりにも雑然、混沌としすぎた思考を読んだ場合、脳にダメージを負うこともある。 だがロールシャッハの思考はどちらでもない。 何も考えていないわけでもなく、雑然としすぎていたわけでもない。 いかにこちらを殺すかのみに特化した思考だった。 だが―― セックスに囚われた娼婦。 少女の骨を貪る犬。 ただ漠然と毎日を生きる大衆。 白紙にぶちまけられた黒のインクが作り出す、何の意味も持たない模様。 そして、自身が原子一粒残さず消滅する最期。 ヘクソンから見て、ロールシャッハという男は異常だった。 今まで見てきた誰よりも人の闇を知り、誰よりも狂っていた。 「化け物め……」 毒づきながらもヘクソンは体を休めることを選ぶ。 まだ殺し合いは始まったばかり。未だ見ぬ強敵もいる筈なのだから。 【ヘクソン@クレヨンしんちゃん】 [状態]:健康、精神的疲労(中) [装備]: [道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、斑目るりのデイパック(基本支給品、ランダム支給品0〜3) [思考・状況]基本方針:優勝し、ジャークを超える力を手に入れる 1:まずは少し休息する 2:あのロールシャッハという男、本当に人間なのか……? [備考] 参戦時期はクレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡終了後です。 足を撃ち抜かれていましたが、治療されています。 ◆ 「逃がしたか……」 消えた男、ヘクソンを追ってロールシャッハは辺りを探すが、一向に見つからない。 そもそもこの辺りにヘクソンはいないのだが、それを知る術はロールシャッハにはなかった。 とりあえず投げたバットとワイヤーを回収し、ロールシャッハは出発する。 彼はヘクソンのことを諦めるつもりもなく、また他にもいるであろう殺し合いに乗った参加者を許すつもりもなかった。 そして、自分を生き返らせた主催者も。 殺し合いに呼ばれる直前、ロールシャッハは南極に居た。 世界一頭のいい男が考えた最悪のジョーク。 冷戦を引き起こさせないためにニューヨークにいる数百万の住人を殺し、いないはずの宇宙人が攻めてきたというでっちあげを作り、人々を団結させるという作戦。 ロールシャッハは友人であるダニエルと共にそれを止めようとしたが、失敗。 結局、ジョークは真実となった。 それでもロールシャッハは真実をぶちまけようとするが、それを世界にただ一人の超人であるDr.マンハッタンが阻む。 彼は抵抗しなかった。 ロールシャッハの顔と言って憚らないマスクを取り、ただのウォルターとして死んだ。 だが彼は再び蘇る。ロールシャッハの顔を携えて。 『なぜ』だとか『どうやって』だとか、そんなことに興味はない。 ただ確かなのは、ロールシャッハに対し少女の皮を被ったあの糞共は、殺しという悪を強要している。 ロールシャッハは殺し合いの主催者を許す気はない。なぜなら彼はヒーローだからだ。 それは殺し合いに乗った者も同様である。 生き返らせてやれば犬の様に従うとでも思ったか? 命を盾に取れば跪くとでも思ったか? 笑わせるな。そして教えてやる。 俺はお前らが主催する殺し合いに巻き込まれたんじゃない。 お前らが、俺との殺し合いを始めたんだ。 だからそこで、俺に殺されるのを待っていろ。 そうだとも―― 「俺は絶対に妥協はしない」 【ロールシャッハ(ウォルター・コバックス)@ウォッチメン】 [状態]:ダメージ(小) [装備]:剣義鷹のバット@クーロンズ・ボール・パレード、ワイヤーガン@ウォッチメン [道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み) [思考・状況]基本方針:主催者を打破し、悪を裁く 1:さっきの男(ヘクソン)を探し、殺す 2:その他殺し合いに乗っている者も容赦するつもりはない [備考] 参戦時期は死亡後です。 【ぶっとびカード@桃太郎電鉄シリーズ】 ヘクソンに支給。 使用することで自身をランダムな場所に転移させることができるカード。 使い捨てなので、一度使うとなくなる。 【剣義鷹のバット@クーロンズ・ボール・パレード】 ロールシャッハに支給。 剣義鷹が持つ金属バット。 【ワイヤーガン@ウォッチメン】 ロールシャッハに支給。 撃つとフックのついたワイヤーが飛び出す銃。 ロールシャッハは人に向けて撃つこともある。
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日誌 ロールシャッハ記 20XX年 12月21日 例の犯罪組織の使い走りを取り逃がした。 赤い覆面を被った男の足下で物言わぬ亡骸となっていた。 俺以外のヒーローが活動しているという噂は悪党共から聞いていた。 直に会ったのはこれが初めてだ。 第三者の介入で奴から情報を引き出すことも叶わなかった。 不覚を取った。だが、次こそは逃がさない。 赤い覆面の男は第三者の呼びかけに応えず、一目散に逃げ出した。 聖杯を破壊する為に動いているのならば、不戦を訴える言葉を無視する筈がない。 十中八九、聖杯を狙っている連中だろう。 所詮は聖杯に踊らされるクズに過ぎなかったか。 ヒーロー気取りの虫螻が。 精々そのマスクで醜悪な本性を隠しているといい。 奇跡という欲に目が眩んだ貴様の醜い面は、いずれ白日の下に晒されることになる。 割り込んできた第三者はこの狂った殺し合いに反抗する意思を持っていた。 『主人』の方はまだ若い娘だった。 万が一の場合を考慮し、名は伏せておく。 元の世界においてはアイドルだったという。 己の肌を晒け出し、尻を振って大衆を喜ばせる恥知らずな淫売共のことだ。 穢らわしいセックス・シンボルに夢を見るとは、女というものはつくづく救い難い。 協力はする。だが信頼するつもりは決して無い。 淫らな雌豚に背中を預け切る程、俺は墜ちてはいない。 時刻は正午を過ぎていた。 支配者気取りの“見張り”は戯けた態度で闘争を煽る。 道化の様な語り口で人々を戦場へと駆り立て、奴はそれを見下ろす。 さぞや楽しんでいることだろう。 穢れた街で右往左往する俺達の姿を余興に、“見張り”は罪というクスリに酔い痴れる。 罪に与えられる見返りは罰だけだ。 ならば俺は、俺が定めた罰を叩き付ける。 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 身を潜めるのに適した、薄暗い廃ビルの内部にて。 二階へと続く階段に男は腰掛け、黙々とノートに何かを書き連ねていた。 何らかの暗号か、或いは恐ろしく乱雑な文字か。 真っ当な感性を持つ者には解読さえ困難な文章を書き殴っていく。 これが日記の下書きであると認識出来る者は、果たしてどれだけ居るのだろうか。 黙々と、淡々と、覆面の男は日記に今日の出来事を記していく。 時に毒づく様に、時に蔑む様な荒い言葉が羅列される。 「あの、ロールシャッハさん?」 「黙っていろ。じきに終わる」 傍でその様子を見ていた少女、多田李衣菜が声を掛ける。 一体何をしているのだろうか。 というより、何を書いているのだろうか。 興味を抱いた為に問い掛けようとしたが、覆面の男「ロールシャッハ」は李衣菜の言葉を切り捨てる。 黙々とデスクワークをこなすかの様に、ロールシャッハは日記を書き続けていた。 ―――何なんだろう、この人は。 幾許か前、李衣菜は聖杯戦争の戦場へと踏み出した。 二組の参加者が睨み合っている場面を目撃し、バスターを介入させることを選んだのだ。 結果として得られたのは、志を同じくする参加者との共闘。 ロールシャッハという人物との協力関係を結ぶことが出来たのだ。 しかし、李衣菜のロールシャッハという人物に対する印象は、はっきり言って良くなかった。 初対面の時からして、あんな脅迫じみた尋問をされたのだから。 その上余りにも太々しくて、図々しいくらいにマイペース。 おまけに、何を考えているのかもよく解らなくて―――― 「李衣菜」 「え、あ、はいっ!」 「何かあった時には此処に連絡しろ」 突然声を掛けられ、李衣菜は驚いて声を上擦らせる。 そんな彼女の態度を気に留めることも無く、ロールシャッハはノートの切れ端を差し出した。 切れ端に記されていたのは、携帯電話の連絡先―――と思われるもの。 李衣菜は渡されたノートの切れ端を受け取り、まじまじと番号らしきものを眺めていた。 異様に乱雑で読みづらいが、辛うじて読み取ることは出来る。 少なくともロールシャッハは日記に文字を書き殴る時とは違い、幾らか『他人にも読める様に』書いたつもりだったらしい。 それでも遠目で見た時には奇怪な文字の羅列としか思えない程の乱筆だ。 僅かに眉を顰めて番号を見つめていた李衣菜だったが、そう言えばと思い出す。 連絡先を教えて貰ったのだ。 協力者として、自分も連絡先を教えるべきだ。 そう考え、李衣菜もメモに連絡先を記そうとしたが。 「えっと、私も連絡先を…って、言いたい所なんですけど…」 「どうした」 「…紙、貰えませんか」 「………………」 若干恥ずかしそうに問い掛ける李衣菜。 ロールシャッハは無言でノートの一部を千切り、切れ端を李衣菜に渡した。 「李衣菜とやら、一つ質問がある」 「は、はい…」 「お前の従者…バスターだったか。奴は『戦わずして脱出する方法を探している』と言っていたな」 李衣菜から連絡先を受け取ったロールシャッハ。 直後に彼は李衣菜に問い掛ける。 「もしその手段が無ければ、お前達はどうする」 李衣菜の表情が、一瞬だけ固まった。 汗を流し、ごくりと唾を飲む。 戦わずして、つまり誰も殺すこと無く聖杯戦争から脱出する。 口に出して宣誓するのは容易い。 だが、どうやって脱出する? 具体的なビジョンなんてものは、これっぽっちも無い。 漠然とした希望。計画性の無い行動。 それ故に、李衣菜は答えることが出来ない。 もしも、脱出する為の手段が無かったら。 その可能性は理解していたし、そもそも誰も殺さずに脱出できるのかさえ解っていなかった。 だというのに、李衣菜の心には緊張と不安が込み上げていた。 今はこうして、脱出の為の手段を探している。 だが。 もしも、『探した上で見つからなかったら』? 李衣菜は無言のまま、その場で俯く。 脱出の方法があるのか、ということ自体は当初も疑問に思っていた。 初めから期待をしていなければ、当然そう思う。 デスゲームというものは普通は勝ち残った者しか生き残れないのだから。 だが、探した上で見つからなかったら、その時はどうするのか。 「初めからそんなものありはしない」という諦観とは違う。 可能性を模索し、その上で打開策が見つからなかったとしたら。 正真正銘、打つ手が無くなるだろう。 殺さずに抜け出せるかもしれない、という淡い希望さえも掌から零れ落ちてしまうのだから。 それこそが、本当の絶望というものだ。 無言で考え込む李衣菜を見つめ、ロールシャッハが言葉を続けた。 「さあ、答えてみろ。全てを諦めるか? それとも―――――生きる為に殺すのか?」 李衣菜は、思う。 もし。 もしも、そうなった時には。 今度こそ。 本当に、誰かを―――――? 「りーなさんっ」 ハッとしたように、李衣菜は振り返る。 そこにいたのは、いつの間にか姿を現していた長身の少女。 バスターのサーヴァント――――バスターマシン7号こと、ノノ。 霊体化していた状態から、魔力による実体を形成したのだろう。 彼女は李衣菜に歩み寄り、その肩に手を置いた。 「私には難しいことは解りません。でも、これだけは言っておきます。 りーなさんには、私が着いてます」 バスターは静かに微笑みつつ、李衣菜に優しくそう言う。 自らの相棒の言葉に、李衣菜の緊張と不安は自然と和らぐ。 そして、にこりと笑みを浮かべて―――バスターは言った。 「――――――ロックに行こう、ですよ!」 「バスター……」 李衣菜は、ぽつりと呟く。 私が着いている。 ロックに行こう。 その言葉を聞いた途端、李衣菜の中で憑き物が落ちた様な感覚がした。 安堵したような、大切なことを思い出したような。 そんな気持ちが、胸の内に込み上げてくる。 何をうじうじと不安になっていたんだろうと思う。 自分には、最初からバスターが着いている。 とてつもなく能天気だけど、真っ直ぐで、計画性も無くて。 だけど、そんなバスターは自分の手を引いてくれた。 真っ直ぐな瞳で、前を向き続けることを教えてくれた。 だったら――――最後まで諦めず、絶望に屈さず、走るべきじゃないか。 少しでも迷いかけた自分がカッコ悪いな、なんて李衣菜は思う。 初めから諦めていた方が、絶望なんかせずに済むだろう。 それでも、やらずに後悔するより、やって後悔する方がよっぽどマシだ。 挑戦すらせずに目の前の壁に屈することなんて、全然ロックじゃない。 最後まで諦めずに立ち向かい続けることこそが、ロックというものだ。 それ故に李衣菜は、改めて決心がついた。 「答えは出たか」 「…はい!」 すぅ、と李衣菜は深呼吸をした。 未熟で、抽象的で。 それでも、彼女の確固たる想いを示した言葉。 口に出すのは容易くても、実際に成し遂げることは難しい。 だからこそ、自分は最後まで希望に向かうことを諦めたくない。 そして李衣菜は、己の誓いを吐き出した。 「最後まで走り続けます!私達は、自分を曲げない! 生きている限りは、諦めたりなんかしないっ!!」 真っ直ぐに、目の前に立つロールシャッハを見据える。 李衣菜は己の感情を吐き出した。 己の中の有りの侭の想いを。 相棒と約束した、未来の選択を。 例えこの先にあるのは絶望だとしても。 それでも、踞って怯えるだけじゃ駄目だ。 最後まで諦めない。 諦めない人にこそ、本当の力が宿るのだから。 そう、教わったじゃないか。 李衣菜は相棒と己自身を信じて、進むべき道を確かに誓ったのだ。 宣誓を言葉にした李衣菜は、ただ黙ってロールシャッハを見据える。 対するロールシャッハも――――無言で、彼女を見据えていた。 沈黙がその場を支配する。 幾許もの静寂が、空間を包む。 汗が一滴、頬から流れ落ちる。 まるで自分を試すかの様な沈黙。 この緊張感が苦手だと、李衣菜は思う。 だけど、目を逸らしたくはなかった。 このまま相手の気迫に押されたら、何かに負けてしまう様な気がしたからだ。 そうして暫しの間、沈黙が続いた後。 「諦めない、ね」 静寂を破ったのは、李衣菜でもロールシャッハでもない。 ましてや、バスターでもない。 その声はロールシャッハの後方から響いたのだ。 直後、階段の踊り場に姿を現したのは銀色の暗殺者。 ロールシャッハのサーヴァント、アサシンだった。 「アテの無い未来に希望を賭けるとはな。理想主義者めいてる」 アサシンはゆっくりと階段を下り、ロールシャッハの傍に立つ。 彼が口にしたのは、シニカルな一言。 聖杯戦争を戦わずして脱出する。 まるで夢物語の様なハッピーエンドだ。 そんな理想に対し、アサシンは淡々と冷笑的に吐き捨てる様な言葉を吐き捨てる。 嫌味にも似た言葉に、バスターが眉を顰めた。 「理想主義者で結構ですッ! 何よりも悲しいのは、自分が望む理想からも目を逸らしてしまうことなのですから!」 真っ直ぐと視線を向け、反論を吐き出した。 バスターの表情に浮かんでいたのは、僅かな怒り。 アサシンの言葉を自分のマスターへの侮蔑と捉えたのだろう。 幾ら同盟相手と言えど、相棒とも言えるマスターへの冷笑は赦せない。 それ故にバスターは内心憤る。アサシンの言葉に反論する。 そんなバスターの言葉を聞くアサシンの表情は、顔を覆うメンポで伺えず。 「…そうかい」 ただ一言、アサシンはそう答えるだけだった。 淡々と素っ気ない言葉―――――されど、微かな嫉妬のようなものが籠った声色だ。 それにバスターらが気付いていたかは、定かではない。 李衣菜とバスターの答えを聞いたロールシャッハは、「Hm…」と静かに呟く。 そして、唐突にその場から立ち上がった。 李衣菜の横を通り過ぎ、ふらりと歩き出したのだ。 「あの、どこに行くんですか…?」 「情報収集だ」 李衣菜の問い掛けに対し、ロールシャッハはきっぱりとそう答える。 さっきの李衣菜の言葉への反応は何も無しに。 ぽかんとした表情を浮かべる李衣菜に、続けて彼は口を開く。 「着いてこなくていい」 余りにも素っ気なく、簡潔に。 ロールシャッハは、李衣菜を突き放すように言った。 「着いてこなくていい、って―――」 「俺は必要な時にお前へ連絡をする。お前も必要な時に俺へ連絡をする。 それだけだ。俺は馴れ合いやお守りの為にお前と組んだ訳じゃない」 唖然とする李衣菜を気に留めることも無く、ロールシャッハは背を向けて歩く。 彼は初めから李衣菜と行動を共にするつもりが無かったのだ。 あくまで有事の際の協力関係―――――常に行動を共にする気など毛頭無い。 ロールシャッハ自身、集団行動を好まないと言うこともある。 だが何よりも、自分の在り方が社会的な道徳から大きく外れているという自覚があった。 元の世界においても、この世界においても、ロールシャッハは周囲からこう呼ばれている。 サイコパス、あるいはパラノイアと。 そのことに関して気にしているつもりは無い。 だが、多田李衣菜という少女が日向の世界の人間であることは既に理解している。 それ故に邪魔であると感じたのだ。 余計な倫理や道徳心とやらで自分の行動を妨げられては面倒だ。 ロールシャッハはそう考えたのだ。 李衣菜の答えなど気にすることも無く、ロールシャッハは歩き出す。 それに続き、アサシンもロールシャッハを追って歩き始めた。 ちょっと、と李衣菜が声を掛けようとするもそれに応えることは無く。 ロールシャッハは廃ビルを後にすべく歩き、アサシンもまた李衣菜の横を通り過ぎる。 「…悪かったな、嬢ちゃん」 李衣菜の横を通り過ぎたアサシンが、ぽつりと呟く。 余りにも小さな声で呟かれた言葉を、李衣菜は僅かながら耳にした。 よく聞こえなかった。だけど、今謝られたような。そうじゃないような――――。 そう思っている間に、アサシンは既にロールシャッハと共に背を向けて歩き出していた。 今の一言は、何だったんだろう。 きょとんとした表情に、李衣菜がアサシンを見つめていた。 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 《なあ、マスター。あいつらのこと、どう思う》 《自分の理想を曲げない在り方は評価している》 歩道を歩き、ロールシャッハとアサシンは念話による会話を行っていた。 アサシンの姿はその場には存在しない。 気配遮断スキルによって身を潜めつつ、周囲の様子を伺がっているのだ。 多田李衣菜、そしてバスター。 彼女らは決して諦めず、己の理想を貫くという道を選んだ。 その点に関して、ロールシャッハは一定の評価をしていた。 妥協というものを否定し、最後まで前を進み続けることを選んだのだから。 少なくとも、自分から降りた癖にくよくよと後悔ばかりしていた一時期のドライバーグに比べれば遥かに前向きだ。 ロールシャッハはそう思っていた。 《だが、お前の言った通り…理想主義者そのものだ。 今後奴らがこの戦いで生き抜けるかと聞かれれば、こう答えざるを得ない》 同時に、彼は念話でそう言葉続ける。 少しの間を置いた後、再び呟いた。 《無理だろうな、と》 無慈悲に切り捨てる様に、言った。 彼女らの妥協しない姿勢は評価している。 だが、二人が掲げているのは余りにも素朴で純粋すぎる理想だ。 子供じみた平和論、理想論。そんなもので人間同士の騒動を解決出来るか。 答えは否だ。人間は欲深く、醜い存在だ。 平和を望むのが人間だと言うのならば、平和を脅かす争いを望むのも人間なのだ。 小綺麗な理想論で世界が救われると言うのならば、冷戦などそもそも起こる筈も無いだろう。 結局の所、人間は争いを捨てられない。この世はドブも同然だ。 そんな人間の愚かさの縮図のようなこの街で、人間の欲望を具現化したようなこの戦争で。 無垢な理想を振り翳すあの二人が生き残れるか、と聞かれれば――――口を紡がざるを得ない。 《だろうな。…ああ、解るさ》 ロールシャッハの返答に、アサシンは悟っていたかの様に呟く。 ―――――アテの無い未来に希望を賭けるとはな。理想主義者めいてる 先程、アサシンが彼女らに吐き捨てた言葉だ。 真っ直ぐ前を向き続けることが出来る二人に、少しでも嫉妬してしまったのかもしれない。 自分にはそう有り続けることが出来ないから、冷笑的な言葉を投げ掛けてしまったのかもしれない。 我ながら大人気ないモンだな、とアサシンは追憶する。 意地の悪い一言を少しでも悔いたからこそ、アサシンは李衣菜に謝辞の言葉を述べたのだ。 (自分が望む理想からも目を逸らす、ね…) アサシンの脳裏に、あのバスターの言葉が過る。 最も悲しいことは、自分が望む理想からも目を逸らすこと。 どこまでも純粋なあの少女だからこそ、そんな言葉を口に出すことが出来るのだろう。 (とっくに俺は、目を逸らしちまってるよ) 利己的な自分にあの様な生き方は出来ないと、アサシンは自嘲する。 アサシン――――シルバーカラスの願い。 それは「生前に吸い損ねた煙草を吸いたい」という他愛の無いものだった。 些細な未練を果たしたくて、聖杯の導きに応じたのだ。 だというのに、この地にはヤモト・コキも存在していた。 己の敵として。ロールシャッハが裁くべき『悪』として。 生前にシルバーカラスは最後のワガママとして、ヤモトにインストラクションを授けた。 親鳥が子に空の飛び方を教える様に、カラテの振るい方をあの少女に教えたのだ。 率直に言えば、ヤモト・コキには生きてほしい。 それがアサシンが望む最大の理想というべきものだ。 だが、無理な話だろう。 彼はロールシャッハのサーヴァントであり、彼女の敵なのだから。 いつか、この手で殺す時が来るかもしれない。 自らの手で未来を託した少女を――――自らの手で絶つ時が訪れるかもしれない。 それが、どうしようもなく虚しい。 《行くぞ》 そんなアサシンの心境を知ることも無く、ロールシャッハは念話で言う。 気配遮断スキルを維持したまま、アサシンが己のマスターに追従する。 衆愚の街を、二人の男が往く。 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 廃ビルを抜け出し、街へと躍り出た李衣菜。 彼女は見慣れぬ周囲の景色を見渡す。 思えば、ロールシャッハを追い掛けてこんな見知らぬ地域にまで来てしまったのだ。 ぽかんとしたように街並を眺めていた李衣菜だったが、ふと霊体化したバスターに念話を飛ばす。 《…ねえ、バスター》 《どうしました、りーなさん?》 《その、ロールシャッハさんのこと、どう思う?》 街の歩道を歩きながら、そんな問いを投げ掛けた。 少しの間を置き、バスターは李衣菜に返答する。 《…あまり良い印象ではない、というのが本音です》 《だよねー…》 やっぱり、と言わんばかりに李衣菜は呟く。 あまり良い印象ではない、というのは李衣菜も同じ感想だった。 短い時間の間で、ロールシャッハという人物の異常性に何度も触れてきたのだから。 初対面時の脅迫紛いの尋問に始まり、そこから常に太々しい態度を貫いていた。 廃ビルに足を踏み入れることになったのも、ロールシャッハが「日記を書きたい」と言ったからだ。 それに、「脱出の手段が無ければどうする」という問いを投げかけられた時もそうだ。 李衣菜の返答に対し、ロールシャッハは何の反応も返さずにその場を歩き去ってしまったのだ。 どこか暴力的で、他人への配慮や遠慮というものが一切感じられない彼の態度に、李衣菜達は少なからず悪印象を抱いていた。 《ですが、私達に協力をしてくれる方達であることも確かです。 彼らが本当に信用出来るかどうかは、これから見極めればいいのです!》 直儀にバスターから返ってきたのは力強い一言だ。 それを頭の中で聞き、李衣菜は静かに頷く。 ロールシャッハへの印象は決していいものではない。 だが、この殺し合いにおいて貴重な「協力者」であることも確かだった。 本当に信用出来るかは、まだ解らない。 しかし、それはこれから見極めていけばいい。 少なくとも今は味方同士であるのだから。 (脱出する為の方法、かぁ…) 李衣菜は思う。 ロールシャッハは聖杯の破壊を目的とし、自分達は聖杯戦争からの脱出を目的としている。 聖杯戦争には乗らないと言う立場同士で協力関係を結ぶことが出来た。 だが、聖杯戦争から脱出すると言っても――――その手段は思いついていない。 無論ながら、バスターも脱出する為の方法など知る筈が無い。 せめて、この聖杯戦争について教えてくれる人がいればいいのだが。 (……あ) 李衣菜はふと、ある人物のことを思い出した。 『DJサガラ』と言ってたか。 先程の通達で、聖杯戦争についての情報を伝えていた人物だ。 彼は一体何処にいるのだろうか。 李衣菜はそんなことを考えたのだ。 聖杯戦争について詳しく把握しているであろう彼と話が出来れば、少なくともヒントくらいは得られるのでは。 あわよくば、棄権の手段も知っている――――かもしれない。 可能性は低いが、少なくとも賭ける価値はあると思った。 尤も、DJサガラが何処にいるのか。 そんなことは李衣菜には解らないし、バスターにも解らなかった。 結局の所、手探りで探すしかないのかもしれない。 どうしようかなぁ、と李衣菜は考え込みながら歩道を歩く。 なんとなしに、向かい側の歩道へと目を向けてみた。 がっしりした体格のチンピラ風の若者が肩を揺らしながら歩いていた。 派手な装飾で着飾り、煙草を銜えながら部下を引き連れている。 あれがギャングというものなのだろうか。 ロックなアクセサリーだなあ――――と、李衣菜は呑気なことを考えてしまう。 比較的治安の安定して地域で暮らしていた李衣菜は、彼らのような存在を余り見たことがない。 それ故に気になったのか、ギャングらをまじまじと見つめる。 部下の一人がそれに気付き、李衣菜を睨んだ。 ビクリと心臓を掴まれる様な緊張感に襲われる。 すぐに明後日の方向を向き、見て見ぬふりをした。 部下の一人は怪訝な表情を見せたものの、すぐに李衣菜を無視した。 正直言って、今のは怖かった。 あんな堂々としたチンピラは自宅の周辺では見かけなかった。 思えば、そこそこ治安が安定した地域に住んでいたんだなあと李衣菜は思う。 それでも、日本に比べれば十分荒れている部類なのだが。 ちらりと、路地の方へと視線を向けた。 ぎらりとした目の小汚い浮浪者が、李衣菜を見つめている。 口元から涎を垂らし、懐に何かを忍ばせている。 李衣菜の背筋にぞくりと悪寒が走った。 獲物を見つけたハイエナのように、浮浪者はこちらの様子を伺っているのだ。 李衣菜はそそくさと早歩きをし、その場から離れる。 あの路地から逃げる様に。 様子を伺っていた浮浪者から逃れる様に。 それなりの距離を進んだ後、恐る恐る後ろを振り返った。 浮浪者は追い掛けてきていない。 諦めてくれたのだろうか。それとも、自分の思い違いだったのか。 李衣菜には解らないが、少なくとも身の安全は確保出来た。 ふぅ、と安心した様に一息つく。 《りーなさん、もしもの時は私が何とかします!》 《あ、うん!ありがとう、バスター》 直後に脳内に響いたのはバスターの声。 李衣菜は反射的に答え、礼を述べる。 もしもの時―――といえば、暴漢や犯罪者に襲われた時のことだろう。 ゴッサム・シティの治安は極めて悪い、との評判らしい。 何だかんだで事件に巻き込まれたことのなかった李衣菜にとって、少々実感の薄い事実だった。 それなりに安定した生活を送れて、ごく普通に学校へと通える。 それが李衣菜の日常だった。彼女はラッキーだったと言えるのかもしれない。 治安に恵まれた地域に住み、犯罪の被害に遭うことも無くここまで生活出来ていたのだから。 それ故に李衣菜は、危機意識が薄かった。 彼女はロールシャッハを追い、後先考えず治安の悪いダウンタウンに足を踏み入れてしまったのだ。 この地域は特に犯罪者が多く、犯罪組織の活動も盛んとされている。 そんな場所にのこのこと訪れる女子高校生など、いわば狼の縄張りに踏み込む羊のようなものだ。 (…私、緊張感足りてないのかなぁ…) 李衣菜は頬を掻きながらそんなことを思う。 自分はどうも、緊張感と言うものが足りていないらしい。 というより、物珍しい非日常というものが気になってしまうのかもしれない。 親友である前川みくからも何度か言われたことがあった。 「李衣菜チャンは危なっかしい」とか「危ないことに首を突っ込むのはロックじゃなくて無謀にゃ!」とか。 言われてみれば、確かにそうだ。 ロールシャッハ達の争いに割り込んだこと、そしてこの街の形相を目の当たりにしたことで、それを身を以て理解した。 それ故に、少しは気をつけた方が良いのかもしれないと考える。 取り敢えず、早くこの辺りから離れよう。 李衣菜はそう思い、そそくさと歩く。 ふと、視線を横へと向ける。 李衣菜の足がぴたりと止まる。 彼女の目に入ったのは、壁に貼られた指名手配書の張り紙だった。 ヤモト・コキ。手配書によれば現在も逃亡中の殺人犯、らしい。 その首には多額の懸賞金が掛けられていた。 (私と同じくらいの女の子じゃん) 手配書の写真を見て李衣菜は思う。 なんでこんな女の子が人殺しなんてしたんだろう。 それも、異常なまでの懸賞金の額だ。 そういえばロールシャッハさんもこの子のことを話していた様な。 そんなことを考えつつ、李衣菜は再びその場から歩き出した。 【DOWNTOWN CHELSEA HILL/1日目 午後】 【多田李衣菜@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態]精神的疲労(小) [令呪]残り3画 [装備]なし [道具]なし [所持金]4千円程度 [思考・状況] 基本:帰りたい。 1.とりあえず今は帰宅。バスの停留所でも探そうかな… 2.ノノ、ロールシャッハ達と協力して脱出の方法を探す。 3.ロールシャッハへの恐怖心と苦手意識。同様にアサシン(シルバーカラス)にも僅かな恐怖。 4.DJサガラを探したいが、アテは無い。 5.ヤモト・コキが少し気になる。 [備考] ※アサシン(チップ=ザナフ、シルバーカラス)の外見、パラメーターを確認しました ※令呪は右手の甲に存在します ※ロールシャッハと連絡先を交換しました。 他にも何かしらの情報を共有しているかもしれません。 【バスター(ノノ)@トップをねらえ2!】 [状態]健康、霊体化 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本:マスターが帰りたいらしいので、手伝う 1.りーなさんは私が全力で守ります! 2.ロールシャッハ達と協力して脱出の方法を探す。 3.ロールシャッハへの不信感。彼が信用出来るのか見極めたい。 4.DJサガラを探したいが、アテは無い。 [備考] ※アサシン(チップ=ザナフ、シルバーカラス)の外見を確認しました ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 酒場の扉が、開かれた。 瞬間、場が一気に静まり返る。 招かざる来客の存在に気付いた悪党達が、沈黙する。 彼らの反応を気にも留めず、『覆面の男』は堂々と店内へと足を踏み入れる。 「御機嫌よう、バオ。情報収集をしに来た」 「……御機嫌よう、ロールシャッハ」 チェルシーヒルの酒場「イエローフラッグ」の店主であるバオは露骨に不機嫌そうに挨拶を交わす。 最悪の客がまたやってきた、と内心で思う。 この酒場は何故か悪党の溜まり場となっている。 軽犯罪で食い繋ぐケチな小物から裏社会に名を馳せる大悪党まで様々だ。 彼らは時に騒ぎや喧嘩を起こすものの、まだ話の通じる連中が殆どだ。 だが、この男はそのいずれとも違う。 規範や理屈というものを平然と蹴り飛ばす、本物の狂人だ。 自分の目的の為ならどんな手段だって使うする。 悪徳が秩序と化している街において、ある意味で最悪の『悪党』だ。 それ故に、店に居座っていた客達は一斉に沈黙する。 先程までやかましいくらいに騒いでいた悪党達は、一気に物言わぬ抜け殻の様に黙り込む。 今日はヤモト・コキとやらのハントが話題となり、普段よりも客が増えていた。 そのせいで、つい先程まで店内は普段以上に騒がしくなっていたのだ。 もう少し静かに出来ねえのか、とバオは思っていたが――――幾ら何でも、静かになり過ぎだろう。 奇妙な緊張感に支配された酒場で、ロールシャッハは口を開いた。 「ヤモト・コキという賞金首の小娘。 ネオナチ共が身を潜めているという犯罪組織。 包帯姿の東洋人が牛耳っているマフィア。 現場にコールタールのようなものを残すと言う例の殺人鬼。 これらに関する情報を集めている。知っている者が居るならば教えろ」 悪党共を見渡しながら、ロールシャッハが言う。 返事は、返ってこない。 誰も答えようとはしない。 依然として変わらず、緊張にも似た沈黙が場を支配する。 ある者はロールシャッハから目を逸らし、知らぬ存ぜぬといった態度で酒を飲んでいる。 ある者は冷や汗を流しながら、無言でロールシャッハを見つめている。 ある者は身体を震えさせ、顔を俯かせている。 この場にいる者の大半は、ロールシャッハが求める情報を持ち合わせていない。 それ故に誰もが黙り込む。 だが、悪党達はそれ以上に「ロールシャッハと関わりたくない」という想いが強かった。 悪党殺しのパライノアと面倒事になりたくない、という者が大半を占めていた。 だからこそ酒場は奇妙な緊張感に包まれている。 下手なことをすれば、ロールシャッハに何をされるのか解ったものではないからだ。 「Hum……」 沈黙する酒場を見渡し、ぽつりと呟くロールシャッハ。 その態度はどこか呆れ果て、彼らを蔑んでいるかの様だ。 頼むから、早く帰ってくれ。 この場に居るロールシャッハ以外の者達は皆、そう思っていた。 ロールシャッハが来れば、ろくでもないことが起きる。 ゴッサム・シティに住む悪党は誰もがそう理解していた。 しかし、そんな彼らの想いにロールシャッハが応える筈も無く。 そのまま彼は、ゆったりとした足取りで。 店内の隅の席へと歩み寄る。 ロールシャッハに横切られた客達の反応は様々だ。 ビクリと身体を震わせて怯えるか、異臭に表情を歪ませるか、あるいは睨みつけるか。 そんな彼らの反応をよそに、ロールシャッハは隅のテーブル席に座る男に声を掛ける。 「ヤン・ヴァレンタインだな」 ロールシャッハは、低い声でそう呟く。 彼の視線が見下ろす先に座っていたのは、チーマー風の若者だった。 ヤンと呼ばれた若者は、唖然とした様にロールシャッハを見上げる。 「ロ…ロールシャッハさんよ、俺に何の用? 俺らさ、か、顔馴染みだろォ?この店で、何度も会って」 「お前がネオナチ共の使い走りであることは、既に調査済みだ」 え、とヤンは驚愕の表情を浮かべる。 ヤンはこれまでもイエローフラッグで何度かロールシャッハを見ていた。 ロールシャッハに目をつけられてはいなかった。 大した取り柄の無い、ただの小悪党として見られていたのだから。 ネオナチの下っ端と言う素性は知られていなかった筈だ。 だが、ロールシャッハは今。 自分のことを「ネオナチ共の使い走り」と言っていた。 どこでその情報を手に入れたんだ。 何故知られているんだ。 ヤンの疑心や焦燥を余所に、ロールシャッハがヤンの右手を掴む。 そのまま、人差し指を握り。 「口を噤んでいればやり過ごせるとでも思っていたか、薄汚いウジ虫め」 ロールシャッハが心底忌々しげにそう呟いた直後。 ごきり、と鈍い音が響いた。 「あ、ぎゃあああああああああああああああぁぁぁ――――――――ッ!!!!!!!!?」 ヤンの絶叫が店内に響き渡る。 彼の人差し指が、あらぬ方向にへし折られていたのだ。 周囲に居座っていた客達の何人かが席を立ち、後ずさり始めた。 始まった。ロールシャッハによる『尋問』が。 店内の悪党達は、顔を青ざめさせる。 「今から俺の質問に答えて貰う。まず右手の人差し指から折った。 嘘を吐いた場合、次は中指をへし折る」 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 十数分後。 キィ、と酒屋の扉が開く音が小さく響く。 店内から姿を現したのは、覆面姿の男だった。 《用事は済んだか、マスター》 《ああ》 どこかで身を潜めている自らのサーヴァントと、念話による短いやり取りを交わす。 沈黙した店内を背に、男はその場を立ち去った。 【DOWNTOWN CHELSEA HILL/1日目 午後】 【ロールシャッハ@ウォッチメン】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [装備]ワイヤーガン [道具]ベイクドビーンズの缶詰、角砂糖 [所持金]5千円程度 [思考・状況] 基本:誰が何と言おうと、聖杯を破壊する。悪党は殺す 1.多田李衣菜らとの共闘。ただしあくまで自分の目的を優先。 2.ネオナチの組織を潰す。 3.赤い覆面の男(レッドフード)に警戒。 4.ヤモト・コキについては見つけ次第罰する。 [備考] ※アサシン(チップ=ザナフ)バスター(ノノ)の外見、パラメーターを確認しました ※多田李衣菜と連絡先を交換しました。 他にも何かしらの情報を共有しているかもしれません。 ※NPCのヤン・ヴァレンタインに尋問を行いました。 ネオナチの組織に関して何かしらの情報を掴んだようです。 【アサシン(シルバーカラス)@ニンジャスレイヤー】 [状態]健康、気配遮断 [装備]ウバステ [道具]なし [思考・状況] 基本:マスターに従う 1.多田李衣菜達と共闘。 2.赤い覆面の男(レッドフード)に警戒。 3.多田李衣菜、バスターへの複雑な心境。 4.ヤモト・コキについては…… [備考] ※アサシン(チップ=ザナフ)バスター(ノノ)の外見を確認しました BACK NEXT 030 Dead Man’s reQuiem 投下順 032 LAW/OUTLAW 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 016 Hooded Justice 多田李衣菜 034 The future of four girls? バスター(ノノ) 016 Hooded Justice ロールシャッハ 040 BLACK LAGOON アサシン(シルバーカラス)
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【ウォッチメン】出典の支給品 【『黒の船』のコミック@ウォッチメン】 ハインリッヒ・ルンゲに支給。 作中、黒人の少年がニューススタンドで読んでいたコミックスであり、行方不明の作家、マックス・シェアが原作を手がけたシリーズ。罪人の魂が集う海賊船、『黒の船』に纏わる、オムニバスストーリー。31号まで続く。 【アンカーガン@ウォッチメン】 ジョーカーに支給。 ロールシャッハの親友、ナイトオウル2世の発明品。ガス圧でフックを飛ばす銃。 高層ビルまで届き、大の男を軽々と引き上げられる。攻撃にも使える。 【ロールシャッハの手帳@ウォッチメン】 ロールシャッハが所持していた物。 ロールシャッハ本人の私物であり、彼が捜査メモや日記を記すために使い続けている古い手帳。 書かれている内容が誰かに漏れないよう本人しか読むことのできない汚い字でメモや日記は記されている。 【スマイリーフェイスの缶バッチ@ウォッチメン】 ロールシャッハが所持していた物。 この実験に巻き込まれる直前、ロールシャッハがコメディアンの墜死現場で拾った缶バッチ。 スマイリーフェイスはコメディアンが愛用するマークで、この缶バッチも彼が身につけていたものである。 へしゃげたりはしていないが、コメディアンの血がこびりついている。 【シルクスペクターのコスチューム@ウォッチメン】 二代目シルクスペクター愛用のコスチューム。黄色と黒のボンテージに、長手袋、ロングブーツの3点セット。 少しは丈夫かもしれないが基本的にはただの服。着こなすにはそれなりの体型が必要かも。