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カクバン(覚鑁) 平安時代後期の僧。 新義真言宗の開祖。 別名: コウギョウダイシ (興教大師)
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自作 その名前はメンバーの実家が運営していた繊維業社名に由来。 2009年12月24日、ボーカルである志村正彦が29歳の若さで亡くなった日本のロックバンドは何でしょう? (2010年2月4日 『さいあんせいあん』「 J-POP対策 」) タグ:音楽 Quizwiki 索引 な~ほ 志村正彦
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真「最終話ですって!?」 銀「幕切れには早過ぎなんじゃぁなぁい?」 翠「最終話って一体全体どういうことですぅ!?」 雛「ふぅえええぇ…こんなとこで終わるなんて雛ぜぇーーーったい嫌なのよーーーっ!!!」 蒼「まだあわあわわわてああわあわわ…」 金「蒼星石!お、落ち着くかしらーーーーッッ!!!」 薔「(´・ω・`)ショボーン…(´;ω;`)ブワッ…」 ↑前置ここまで ↓本編ここから … … … …(激しくショートカット中) 薔薇乙女の総本山へ辿り着いた一行 そしてその扉を開ける。 巴みめの「こんばんわぁーーーーーーっ☆!!!!!!」 J「…どーも」 流石に店員がやってきたのでは薔薇乙女たちも若干名を除いてヘドバンを止めた。 蒼「わぁっ!びっくりしたww(み、見られてないよねwww?)」 翠「て、て、店員共が揃いも揃って何用ですかぁ!?」 銀「あらぁ…貴方達ぃ、また来たのぉ何も注文してないわよぉww」 真「まぁいいのだわ、薔薇乙女は来る者拒まず、去る者追わずよ」 翠「嘘付けですぅ…さっき、思いっきり追ってきた(24,25話参照)ですぅ…」 金「あっ、みっちゃーーーーん!!!」 すると最初に動き始めたのは勿論この人 み「カナアァァーーーーーーッ♥♥♥逢いたかったわーーーーーーーっ!!!!!♥♥♥」 金「み、みっちゃんお、落ち着くかしらーッッ!!!ギャアアアアアアアァァム!!!!…」 哀れなり金糸雀はみっちゃんの強烈な抱擁の餌食となり断末魔が響き渡る… 銀「あらぁ?めぐぅまた逢ったわねぇ♥」 め「ちょっと訳ありでねー。また逢っちゃった♥」 薔「(゜(。。(゜(。。 (゜(。。(゜゜(。。 (゜゜(。。(゜゜(。。 (゜゜(。。(゜゜(。。!!!!!!!!!! 」 巴はまず今、熱唱中の雛苺の方へと目を傾けた。 巴「(流石ね雛苺、歌っているときはどんなことがあっても自分だけの世界しか見ていないわ)」 ♪ ♪ 雛B「Sッ的なッ制裁な牙からッ、天敵のッ存在をッ断つッ♪ 典ッ型的な欲ッからッ、チェンジッ出来ない国(こく)ッ!!♪ マヌケボケの戦争、論誹謗に貶そう×4♪」 蒼「なんという裏デス声www」 J「と言うか人間の声か…アレは…」 巴「桜田君、雛苺の声は人間の領域をとっくに超越してるわよ」 何も驚かずに冷静な返答をする巴に対して、ジュンはもう返す言葉が無かった。 ♪ ♪ 雛A「Hey♪!人間Sucker!!嗚呼、人間、人間Fucker!!♪… Hey♪!人間Sucker!!嗚呼、人間、人間Fucker!!♪… Hey♪!人間Sucker!!嗚呼、人間、人間Fucker!!♪…」 すると雛苺に何やら異変な仕草… 左手を上の方向へ手招きしている…流石に最後は皆であのフィニッシュを決めたいらしい… 真「あのサインは…ふぅ…やるしかないようね」 銀「あの子ったらぁ、味なこと考えるじゃなぁい♪」 蒼「決めるときが来たようだね…」 翠「決めるときが来たようですぅ!」 金「あれは…みっちゃんやるかしらッッ!」 み「勿論よ!カナッ!!!」 薔「(゜(。。(゜(。。 (゜(。。(゜゜(。。 (゜゜(。。(゜゜(。。 (゜゜(。。(゜゜(。。b!!!!!!!!!! 」 薔薇水晶はヘドバンしてながら一応意識はある様子。親指を立ててサインを送った。 巴「雛苺、解ったわ」 の「いいわよ雛ちゃんッッ!」 め「OK!任せといてッッ」 J「(ここは僕も空気読んでおくべきだな…)」 ♪ ♪ 雛A「HeyHey♪!人間Sucker!!!!嗚呼、人間、人間Fucker!!!!♪… HeyHey♪!人間Sucker!!!!♪ デデデデデデデ♪ 雛A+真銀蒼翠金薔巴Jみのめ「W h a t s u p , p e o p l e !!!!!!?????♪」 ズダズダズダズダ ♪ ♪ 雛A+真銀蒼翠金薔巴Jみのめ「W h a t s u p , p e o p l e !!!!!!?????♪」 ♪ ♪ ズダズダズダズダ ♪ ♪ 雛A+真銀蒼翠金薔巴Jみのめ「W h a t s u p , p e o p l e !!!!!!?????♪」 ♪ ♪ ジャジャジャン♪ 雛A「セーーーーーーッ!!!爽やか朝御飯!!!納豆御飯!!!!セーーーッホァ…ホァッ…♪」 終わった… すると客席側からは拍手喝采である パ チ パ チ パ チ パ チ パ チ!!!!!!!!! 雛「み、みんな…」 真「なかなか良かったのだわ雛苺!」 銀「いつもの3倍は輝いてたわよぉ…」 蒼「テラホルモンwwwオメガGJwwwwwww」 翠「ま、まぁチビ苺にしちゃぁよくやった方ですが、それで満足すんなですぅ!!」 金「よくやったかしらーー!!!」 巴「流石ね雛苺♥また学生の頃に戻りたくなっちゃった…」 み「キャーーーーーーーッッッ!!!!!♥♥雛アァァーーーーーーッ!!!!♥♥♥」 の「雛ちゃぁーん!とっても良かったよーー!!!」 め「ヒューーーッ!いいね!いいねぇ!!流石は薔薇乙女の悪魔の歌姫ね!!」 J「(あの顔にしてあの声…女って良く解んない生き物だww)」 雛「みんなぁーーーーっ!!!!有難うなのーーーッ!!!!!!♥♥♥」 雛苺は温かい声援と祝福の中、思った… 『歌には人々を幸せにする力がある。例えそれがどんな歌であっても…』 そして 薔「(゜(。。(゜(。。 (゜(。。(゜゜(。。 (゜゜(。。(゜゜(。。 (゜゜(。。(゜゜(。。!!!!!!!!!! 」 銀「ちょっwwwばらしーwwwwもう曲は終わったわよぉwwww」 蒼「大変だwwwwばらしー顔色がヤバイよwwwちょっww誰か止めて!!ばらしーのLPはとっくに0だよwww」 翠「こら!ばらしー!!!もう演奏は終わったです!!!」 雛「わあああぁぁ!!!ばらしー大変なのーーー!!!!」 金「ばらしー!もう止めるかしらーーーっ!!!」 真「ちょっ!ばらしー!!止めなさいッ!!!(はぁ…前途多難ね…)」 薔薇乙女たちのどの言葉も薔薇水晶の耳=脳には届かず 最終的に薔薇水晶はこの部屋にいる皆様によって力ずくで止めらました。 取り敢えずなんだかんだでスレカラ1周目はこれにて終了です… ?「さてはて、このスレタイカラオケ…一体これはどういう幕切r 翠「おめぇーの出番はまだ早ぇーーーですぅ!!!!!!」 ドゲシッ←蹴った音 ?「あべしっ!!!!!」 SeasonⅠ Fin Next Stage SeasonⅡ! ↑本編ここまで SeasonⅠ 途中経過 薔薇乙女/スレ番/曲名・アーティスト名/点数(Max100)/総勘定フラグ の順で見てください 薔薇水晶/91/紅・X/89Pt/0 真 紅/129/Carry On・Angra/99Pt/0 蒼 星 石/123/Rape Me・Nirvana/66Pt/1 金 糸 雀/101/ピチカート日和・Kukui/75Pt/0 翠 星 石/136/Painkiller・Judas Priest/62Pt/1 水 銀 燈/17/Aces High・Iron Maiden/90Pt/0 雛 苺/147/What s up,people?!・マキシマムザホルモン/???Pt/? ルール ・曲の取り決めはビンゴゲーム型抽選形式に行い、引き当てた番号のスレタイ曲を歌うもの。 ・引き当てた曲は必ず完奏しなければならない、勿論歌い方もスタイルに合わせて ・70点以下は総勘定フラグ+1。(但し真紅のみ95点縛り)←第2話参照 企画・ルール提案 あおのこ◆s/roZeN.m4 (28)へ戻る/長編SS保管庫へ
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東の空が薄い紫色に染まり、ビルの陰がアスファルトに伸びる時刻。 半ば芸能界から引退に近い状態の真紅たちの部屋で珍しく目覚まし時計の音が鳴り響く。 「うぅ~、もう朝なの~」 「ふわぁ~~あッ、おはよう~かしらぁ~」 あくびをしながら目をゴシゴシとこする金糸雀は窓を開け、冬の冷たい外気を部屋に入れる。 「あぁ~ん、寒いのぉ~、窓を閉めるのぉ~」 「うぅ、ほんとうに寒いかしらぁ、でもこうしたら目が覚めるかしらぁ~」 「うゅ~、ほんとーなの~、目がパッチリしたの~金糸雀すごいのぉ~」 「えっへん、当然かしらぁ~、ところで真紅はまだ寝てるかしら?」 「うん、まだ寝てるのぉ」 「まぁ、しょうがないかしら、どうせバイトの面接はカナと雛苺だけだし…」 そう言いながら金糸雀と雛苺は身支度をすると履歴書が入ったバックをもってマンションを出る。 「なんだかドキドキするのよぉ~」 「大丈夫かしらぁ~、こんなのオーディションやコンサートの時のほうが緊張するかしら…で、でもやっぱりカナもドキドキしてきたかしらぁ」 事務所の隅でソファーに座り、係りの人がくるのを待っている2人は緊張しながらも周りをチラッと盗み見る。 コピー用紙をもって忙しなく事務所から出て行く者、パソコンのモニターを睨みながらキーを叩いている人、電話の対応をしている女性。 その光景は芸能事務所と大して変わらないのだが、ほんの少し前まで芸能界に身を置いていた2人の目にはどこか異質に見えた。 その違和感を感じ出した時、オーソドックスなビジネススーツを着た40歳を回ったばかり、そう見える男性がネクタイを触りながら表れる。 「こんにちは」 「こ、こんにちはかしらぁ~」 「こんにちはなの~」 「えぇ~っと金糸雀さん、雛苺さんですね?」 テーブルの上に置かれた履歴書を手にし、2人の顔を確かめ、写真、名前、住所、学籍などに目を通していく。 そして職歴に書かれた芸能プロダクション トロイメント所属、薔薇乙女の文字を見て不思議な顔をする。 「あの~、この芸能プロダクション、トロイメント所属って……?薔薇乙女…どこかで聞いたことが……アァァァ~~ッ!!」 不思議な顔が金糸雀と雛苺が元アイドルで1年ほど前に何かの番組で見た顔だと分かり、目を大きく開き驚く。 その声に事務所にいる人は、仕事の手を止め何事か?とばかりに興味の目をソファーに座る3人に向ける。 ……な、なんだか変な感じになってきたかしらぁぁぁ~ ……みんなヒナ達を見てるのよぉ~~ 緊張から不安に変わってきた金糸雀と雛苺。 2人が誰なの分かった男性は、しばらく履歴書に張られた写真と目の前にいる2人を交互に見直し、ゴホンッと咳払いをすると、少しソワソワした口調で面接を再開し、最後はお決まりのセリフで面接を終える。 「それでは2~3日中に電話でお知らせしますので」 「はい、それでは失礼しますかしら」 「失礼しましたなの~」 ペコリと頭を下げた2人は事務所から出て行く姿をニコニコと見送った彼の周りに事務所内の人々が集まり、金糸雀と雛苺の履歴書に目を通す。 「おい、あの2人って元アイドルなのかよ?」 「薔薇乙女ってあまり知らないなぁ~? おい、誰かパソコンで検索かけてみろよ~」 「あっ、ありましたよ、トロイメントって芸能プロダクションの薔薇乙女、3人組みで、つい最近解散したみたいですね」 モニターに映し出された薔薇乙女のサイトを多くの目が見つめる。 「あっ、課長、この子達、オレ知ってるッスよ、前にアイスクリームかな?何かのCMに出てたんじゃないかな?」 「あぁ、あの防波堤でアイス食ってるCMか?」 「そう、そう、それッス、たぶんあの子達だと思いますよッ」 2人が消えた事務所は今や大騒ぎになっている。 そんな騒ぎ声が聞こる廊下を通りかかった女性が不思議そうな顔をし、資料を抱えたまま事務所に来ると、みんなが覗き込んでいる モニターを後ろからチラッと見る。 「あれぇ?どうしたんですか、課長もみんな薔薇乙女の画像なんか見て?」 その声にみんなが振り返る。 そして課長と呼ばれた男はポンッと手を叩く。 「そうだ、草笛さんの部署って人が足りないって言ってたな?」 「えぇ、1週間前にバイトが2人辞めたから、人は欲しいですね~」 「女の子2人でも仕事は大丈夫なのか?」 「大丈夫ですよ、簡単な軽作業ですから、誰か面接に来たのですか?」 「うん、今この子たちが来たところだよ」 そう言いながら課長はモニターに映し出された金糸雀と雛苺を指差す。 一瞬、何を言っているのか理解できない草笛みつは、ん?っと首をかしげるが、ようやく課長が言っている意味が解ると抱えた資料を落とさんばかりに驚きの声をあげる。 「ウッソォ~、カナちゃんとヒナちゃんがぁぁ??」 「あぁ、さっそく週明けくらいから来てもらおうと思うんだ、まぁ、草笛さんと柏葉さんで仕事を教えてやってくれよ」 「は、はい、解りましたぁぁ~!」 そんなやり取りが事務所で行われているとは知らない金糸雀と雛苺は初めての面接での緊張から解放されたのか、会社の前で大きくフゥ~~っと息を吐いていた。 * 「ふぅわぁぁ~、よく寝たわ…」 太陽が昇りきり、街がせわしなく動き出した頃、真紅は起きる。 体のわりには大きめのパジャマはダボッとしており、歩くたびにズボンの裾をズルズルと引きずっていく。 「おはよう金糸雀、おはよう雛苺」 2人の名前を呼んでみるが返事はない。 不思議に思いながらも目覚めの紅茶を飲もうとキッチンに行き、何気に見るカレンダーの今日の日付には赤い丸印が付けられている。 ……そう言えば今日からアルバイトだって言ってたわね 無事、面接をクリアーした金糸雀と雛苺は真紅が起きだす数時間からこの部屋にはいなかった。 ……うまくやってるかしら、あの2人…… お気に入りのティーカップにお湯を入れようとした手は止まる。 2人が居ないこの部屋で真紅は、なんとも言えない疎外感を覚えたからだ。 薔薇乙女として同じ目標と希望をもっていた3人。 解散してもそれは変わらないと思っていた、しかし現実はそうはいかない。 そんなジレンマに金糸雀と雛苺はどんな形にしろ明日を見、それに向かって動き始めた。 ……わたしは、本当にこんな事をしてていいの? ……どれだけ待てば、またステージで歌えるの? ……もう、そんな甘い夢から早く覚めなくちゃ! ……でも、歌いたい、あのステージでファンの人達と一緒に歌いたい! 繰り返す自問自答に真紅は訳もなく部屋を飛び出すと、あても無く街を歩いた。 高層ビルから吹き降ろす風、スクランブル交差点を渡る人の群れ、途切れることの無い交通の流れ。 この巨大な街は多くの音に満ち溢れている。 その音、1つ1つが切なく響く。 一人がいやで部屋を飛び出した真紅だが、すれ違い行きかう顔は誰も知らない。 ……にぎやかな通りを歩くほど孤独を感じるのはどうして? そんな事を思いながら真紅の足はビル街の裏道を歩き出すと、そこには手入れの行き届いた公園が見えた。 滑り台とジャングルジム、そしてシーソーとブランコが3つ。 そんな小さな公園のベンチに1人の少女がチョコンっと腰をかけ、おそらく手作りなのだろう、三角形のサンドウイッチを両手で口に運び、横に置いた大きめの紙パックに入った牛乳を美味しそうに飲んでいる。 そして時折サンドウイッチをちぎっては足元にいるハトに与えている。 「…ハトさん…ぽっぽ、ぽっぽ…サンドウイッチ美味しい?」 ニコニコした笑顔でハトがパンをつつくのを見ながら、鼻歌まじりで食事を続ける。 「ふふふ~ん♪…ふふっふふんふん~~♪…」 バサバサバサ~~ッ 「…えっ……?」 突如、羽音を響かせたハトは空へと消えていく。 その音に少し驚いた顔をした薔薇水晶は前を見ると、そこには真紅がたっていた。 「こんにちは、私は真紅」 何故、この子に自己紹介しているのだろう? どうして私はこの子の前にいるのだろう? どうしてこの少女に話しかけているのか自分でも解らない。 しかし何か不思議な引力で引かれたように感じた真紅はそのまま薔薇水晶のとなりに座る。 「……ぅぅ…だ、誰ぇ?」 真紅に警戒心と驚きを見せた表情になった薔薇水晶はビクビクしながら途切れ途切れに言葉を出した。 それを感じ取った真紅はすぐに誤りながら、もう一度名前を言う。 「驚かせてごめんなさい、私は真紅、ただ話しがしたかっただけだわ」 「…私は…ば、薔薇水晶……」 小さな声で名前を言う薔薇水晶がもつ牛乳パックは小刻みに震えている。 幼い頃から虐待をうけていた彼女は異様なほど他人に対して警戒心を持ち、同時に恐怖すら覚えることがあった。 「こんにちは、薔薇水晶、貴女がさっき歌っていた曲って誰の歌なの?」 「……VAN HALENの…パナマ…銀ちゃんの好きな歌」 ボソッと呟くように言うと薔薇水晶はポケットから携帯のメロディーが流れる。 「…あっ……もう休み時間……終わっちゃう……」 「休み時間?」 「…うん…仕事の昼休み…」 そう言うと薔薇水晶はベンチから立ち上がり、ビニール袋にサンドウイッチを入れ、立ち去ろうとする。 そしてその時、真紅は初めて気付く。 彼女が着ているダウンジャケットの下にはボールペンやマジックが数本ささっている作業着であることを。 「また明日もここで会えるかしら?」 背を向けて立ち去ろうとした薔薇水晶に真紅は声をかける。 どうして知り合ったばかりの子に、また会う約束をするのか自分でも解らない真紅だが、何となくそんな声をかけてしまった。 そして、そんな真紅の声に薔薇水晶は立ち止まり、少し考える素振りを見せた後、小さく短い言葉をいう。 「……うん…いいよ」 そういい残すと薔薇水晶は駆け足で公園から出て行った。 (3)へ戻る/長編SS保管庫へ/(5)へ続く
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と、思いきや。 なんと俺の担当「地理」は1時間目だ。しかもクラスは6組、チクショウ。 Get Back jojoってか? あ~教室入りたくねぇ。 「え~っと授業開始ね。学級委員いるの?」 「私なのだわ。規律、礼」さっきのツインテール少女か。真紅だったな。 とりあえず適当に雑談して後は自習させるか。 「さて、今日やるところは~えーインドか。インドと言えばジョジョ3部でも 舞台になったな、うん。アヴドゥルがかわいそうだった。 あと昔『日本印度化計画』なんて歌があったな。日本をインドにし~てしまえって知らねぇ?」 「……」 うわぁ。世代の違いキツイなぁ。 「……ま、まぁ日本のカレーは現地のそれとは全くの別物なんだがな。 あ、これトリビアねちなみにその歌歌った大槻ケンヂはジョジョ4部の音石明 のモデルになってるからチェックしとけよ。それでなくても4部は筋少ネタが多いからな」 「せんせー、せんせー…」 「何だ?え~っと、ひ、ひな…苺」 「『じょじょ』ってな~に~?」 なんだってェ―――ッ(←な、なんだってー、に非ず) ……筋少はしかたないにしてもまさかジョジョまで知らないとは、 一体学校では何を教えているんだッ!?(←勉強) 「よし、教えてやろう。『ジョジョの奇妙な冒険』とはッ!!あの手塚大先生に 絶賛された天才荒木飛呂彦先生が1987年から『週間少年ジャンプ』に連載した 伝説の能力バトル漫画だッ!!その超個性的な絵及び『ジョジョ立ち』と呼ばれるポージング。 さらに『スタンド』の発案は少年漫画の最大の壁である『力のインフレ化』を攻略したッ!! その影響はもはや計り知れないッ!!!内容は第一部『ファントムブラッド』から…」 「先生…先生!!」 「なんだ真紅、今いいとこなのによ」 「授業を再開しなさい。校長先生に言って給料下げられてもいいならいいけど。 後呼び捨てはやめて」 ぐっ…痛いトコ突くなぁ。こいつはそんなに授業を受けたいのか? 俺が学生の頃自習になったら狂喜乱舞だったぞ。 「はいはい…」 「はいは一回よ」 図にのるんじゃあないッ! このツインテールがッ。くそう、 女の子だからどう対応すりゃいいのかわからん。 「え~ここがインダス川で…ここが…そんでここが…だ。ノートにとるように」 ええいっ、こんな感じでいいのか? 「教科書を黒板に写してるだけね。それじゃ自習と一緒よ。貴方本当に教師? 教師なら私たちにこの大切な時間を使って意味のある知識を伝えるべきじゃないの?」 お前は某灼眼のツンデレ少女かッ!!まぁ真紅だけど…。目の前の席だから無視できないのが悲しい。 「ええいっ、うるさいうるさいるさいうるさいッ!!そんなに言うならお前がやれぇい!!!!」 「今度は逆上?全く…男の教師は想像以上に下劣ね」 想像もなにもねーだろーがッ。 「し、真紅、その辺にしたほうがいいのかしらぁ」 「貴方はだまってなさい。金糸雀。どうなの?梅岡先生?」 く…この気持ちッ例えるなら3部で史上最弱のスティーリー・ダンにこき使われてる承太郎ッ!!! 落ち着け…ぷっつんしたらクビだ…リサリサ、じゃなかったきらきー校長(かってにあだ名)の言ってたことを忘れちゃあいけない。 「う…う…」 *** 退屈 私にとって学校は、いえ…世の中はそれのみで構成されてるとずっと思ってた。 くだらない教師のくだらない授業。それでも真面目に通わなきゃいけない学校。 もし心の通じ合える友達がいなかったら、多分とっくに辞めているだろう、と思う。 そのせいかどうか、授業中教師に無意味に歯向かうのは私の妙な癖になってしまった。 たぶん元からの性分なのだと思う。中途半端なことは大嫌いだった。 そんな生意気で世間知らずな私に、そう、数え切れない色々なこと…いい事も、悪いことも、なにより私たちの人生を決めてしまったのがこの妙な教師だと言うことに、当然気づくわけがなかった。 「どうなの!?梅岡先生っ」 「う…う…」 この手の教師はたいてい理論で対抗できなくなると逆切れするのだわ。 そうしたらこっちの勝ちね。 ほら、もうすぐ… 「う~~ううう…」 「…?」 「あんまりだ…」 なんだか様子が妙だった。うつむいて…体を震わせている? キレるというより…これは、まさか… 「H E E E E Y Y Y Y あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ」 なっ…… なっ泣いたあああぁぁぁ!!!?? 予想外!き…気持ち悪いわ。なんなの?このひと!? まわりを見るとみんなも唖然としていた。当たり前だわ。 こんな…男の人が大声で泣き叫ぶなんて、信じられない。 *** 「フ~ンフフ~ン♪」 パリィィィン 「ハッ、コップが勝手に割れるなんて…真紅になにかあったのかしら」 (注:真紅の母) *** 「AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!」 「え…ええっ!!?な……」 「………フゥー、スッキリしたぜ」 突然、その教師が泣き止んだ。妙に不敵な笑みをしているわ。 「俺は他の教師と違ってキレやすい性格でな。時々こうやって怒りを発散してるのさ。 だが次はねぇぜ。プッツンするぜ。プッツン梅岡するぜ。おぼえてろよッ!!!!」 よ、読めない…私は大体の教師の性格や心を読んで邪魔をしてきたわ。 でも……この人は今までのどの教師とも違う、異質な存在だわ。 「うしっ、気を取り直して続きな。え~とインドの…」 世にも奇妙な事態を目の当たりにしてノートをとる暇もあたえられず、その授業は終わった。 一体…何者なのあの教師。少し興味がわいてきたのだわ。後で知り合いらしいことを言っていた金糸雀に尋問してみようと、私は思った。 *** チッチッチッチ… 職員室にて。俺は椅子に背もたれて、ただただ時計を凝視している。 あと32秒だぜ…誰かが時を止めない限りあと30秒で俺は… 「あっ梅岡先生、どうでした6組は?」 「うるさいな、真紅とかいうムスメが生意気だったぜッ。 あれが男だったら絞り上げて血を飲み干すところだったぜ全く」 「あはは、それはそれは…まぁ短い間ですからね。 我慢するか仲良くするかして乗り切ってくださいね」 「言われんでもそうするっての。…それより今何時ッ!!」 「えっ…そうね大体ねぇ」 「今何時ッッ!!!!」 「ちょ、ちょっとまってて~」 「今何時ィィィッッ!!!!!!!」 「ま、まだ早い…」 「ム、おっともう時間だゼッ。じゃーなっGood-Bye jojo!!」 「いや僕白崎ですってちょっとぉ……ああ、行っちゃった。すっごいスピードだなぁ」 *** 廊下にて 「やっと終わったのかしら~。早く帰って遊ぶのかしらぁ♪」 「ちょっといいかしら?金糸雀」 能天気にバッグを担いで教室を出た金糸雀を私は呼び止める。 「し、真紅?どーしたのかしら」 「ちょっと、梅岡先生について聞きたくて…貴方、あの人と知り合いみたいだったから」 「おっとぉ、それは翠星石も気になるですぅ」 「フフフ、ひょっとしていえないトコまでいっちゃた仲とかぁ?」 「気になるのー。あのせんせーいきなり『じょじょ』のはなししたり泣き出したりふしぎだったの」 いつのまにか呼んでもいないのに金糸雀の周りにいつもの集団が形成されていた。 「え…い、いやその…みんなが想像するようなことは何一つないのかしらぁ。 ただ、危ないところを助けてもらっただけなのかしら~」 「へぇ~かっこいいじゃなぁい」 「どんな感じだったですか?」 「そこは気になるところね」 「ええと、まず私が交差点で大型トラックに轢かれそうになって…」 「ええっ!!!!貴方命の危険よそれ…そ、それから?」 「その…よくわからないのだけど…梅岡先生がギュ~ンッと来たのかしら」 「ぎゅ~ん?」 「そう…例えば……」 ドドドドドドドドドドドドド 「な、何?このしつこいぐらいの擬音は!?」 「どぉぉぉけどけどけどけぇぇぇぇぇぇいッッ!!!!!!ア~イムアァハァ~イウェェェェイスタアアァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」 ギュ~ンッというかギュゥゥゥゥンという効果音と凄まじい突風が私たちの間を駆け抜けた。 駆け抜けていった何か→恐らく梅岡は時速約60キロで私たち間を通り抜けて行ったと思われる。 私たちを含む周囲の生徒たちは呆然とした表情で砂煙の跡を眺めていた。 「……あんな感じなのかしら~…」 「「「……あ~納得」」」 とりあえず私がわかったことは、あの男はもはや人間をやめてるような節がある、ということだった。 *** 「のりさぁ~ん。僕の気持ち受け取ってくだ…」 「どけどけぇい!!!!!!!!!!」 ドゴッ 「タコスッ!!!」 ん?なんか吹っ飛ばした気がするが気にしない~っと。 おおっとぉ、駐車場が見えてきたぜぇッ。 唐突にブレーキを踏むと両足の靴の裏から白煙が出て、火花が散った。 自慢のハーレーに群がる輩を追っ払い、校外まで引きずってエンジンをかける。 フフ、見開き2ページで紹介したいくらいだぜ。 そしてゴーグルをつけてっと、さて、パチスロでもやりにいくか …今日こそラオウに勝てるアタリ場所を見つけるぜぇぇぇッ!!! 爆音をたて、猛スピードを出そうとした。 ……が、曲がり角、及び信号多発の薔薇乙女高校付近では安全運転で情けなくノロノロ進むしかなかった… *** 「夢を~のせてぇ~走るゥ~車道~あしたぁ~へのぉ旅ィっとくらぁ」 やれやれ着いたッ!! さぁって今日こそ北斗百列拳だぜぇっと。 ……ん?なんだアレ? ふと見覚えの在る影に気づいてガラス越しに奥の席を見ると、見覚えの在る長い綺麗な銀髪。 「ウフフ~今日も絶好調よぉ~」 な、水銀燈だとッ!!やべぇ隠れろ…いや、なぜ俺が隠れる…。 くっそ~不良少女だとは思っていたがこんな白昼堂々とパチンコやる奴だとは思わなかったぜ。 あんにゃろ、いつか男と弁護士に騙されて懲役15年くらうぞ。 そんでトム・クルーズ似の看守にイロイロ見られ…イヤ、何を考えてるんだ俺はアアアァァァ。 う~ん、どうせ一ヶ月の任期だし、注意したら厄介そうだからほっといて別のとこいくか…俺には他のは結構遠いんだよなぁ。 やれやれだぜ。駐車場へ戻ろう、ちっくしょう…… 仕方なく俺は見つからないように駐車場へ戻ろうと歩き出した… と、その時 「ねぇねぇキミ達どこの高校?今ヒマ?俺らと遊ばない?」 ナンパだ、ちゃらちゃらした見てるだけでボラボラボラ…ボラーレ・ヴィーア(飛んでいきな)といいたくなる遊び人学生だ。しかも3人もだ。 ま、それだけなら俺には何一つ関係ないわけだが、問題はその…ナンパには相手がいますよね…… あれ…始めてみた時……なんていうか……その……真紅たちなんだよぉぉぉぉ!!!!!! なに?お前らホントにスタンド使い?弓と矢が流失?イヤだよこんな運命…俺たちははみんな「運命の奴隷」なのかァ? 「水銀燈を探しに来たら全く…貴方たちと付き合ってるヒマはないわ。とっとと消えて頂戴」 「アハハ、手厳しいなぁ。ツンデレってやつぅ?かーわいい♪」 「とっとと消えなさい下等生物」 「あ?ンだとてめぇ…ふざけてんじゃねぇ――ぞ」 おいおいおいおい、なに焚きつけてんだと真紅ゥ!!!ああっ今も現在進行形でッ。 ほら雛苺とかおびえてるじゃあねぇかッ!!!!しゃーねぇな、ここは俺がビシッと決め… 「ここはカナに任せるのかしら~みんな逃げるのかしらぁ~!」 ええ~~っ。お前?大丈夫かよ本当に。トラックにひき殺されそうになったんだぜ? 子供みたいに泣いてたし…ってなんでそんな自信満々なんだァッッ!!! 「ハァなに言ってんのコイツ。つーか俺たちにあやまってくださいマジで!」 「先に乱暴しようとしたのはそっちかしらぁ。謝るのもそっち!!」 「おいおいおい、俺たちはちょっとそこのコの手を掴んだだけだぜ?それなのにおもっきしひっぱたきやがって、俺の手を」 「話がつかなければ実力行使よ、やりなさい金糸雀」 お前じゃねぇのかよッ!!真紅 「へぇやんのかてめぇ。俺らナメっと痛い目みるぜコラァ」 「ふふふ、おまえらなんかこの右手で十分なのかしら♪」 「てめぇチョーシこくんじゃねぇぇぇぇッ!!!!!」 ゲッあの野郎いきなり襲い掛かってきやがったッ!!軟骨はうまくねぇぇぞぉぉぉぉ!!!!!! 「てやぁ――ッみっちゃん師範直伝みっちゃん流…」 「「な?」」 チャラ男のパンチ(へなちょこではあったが)を軽々かわし、金糸雀は宙を舞ったッ!! 「うおっまぶし…ぎゃ、逆光が…」 一瞬彼女の姿が消える、そして、そしてッ 「いたいけな女の子を襲おうとしたつけは―――お金じゃ払えないのかしら~~っ」 ドゴドゴドゴドゴォォォォン くっ…あれは、突き(ラッシュ)だとッ早すぎてまるでみえねぇ――ッ 一瞬の間にチャラ男どもが道路わきまでぶっとんで行ってしまった。 サラサラサラ…ビリッ 「ツケの領収書かしらぁ」 「「うげっぐあ~!!」」 バ――――ン 三人の男の重なり合ってダウンする姿を背に、金糸雀がクールに言った。 「上出来なのだわ金糸雀、さ、雛苺もいくわよ」 「ま、まってなのー」 三人は何事もなかったかのように(雛苺は違うか)パチンコ屋へ向かった。 水銀燈を探しに行くのだろう。そういやアイツ補習だったな。 つーかよ、俺の存在は一体なんだったんだ? *** やれやれ…帰る場所があるというのがこれほどまでに幸せなことだとは思わなかったぜ。 正確には俺の家じゃねぇけど気にしちゃいけないぜ。 「ラリホォォ~~ただいまぁって奴だぜぇ」 この時間は梅岡(本物)もコリンヌも誰もいないはずなので我が物顔でふるまえるのだ。 もう日も暮れてきたし疲れたし寝ようかね。こんな疲れた日ははじめてだぜ。全く真紅め… 「……ッ!!」 な、なんだ?今背後に不気味な気配を感じたッ!!その気配は俺の背後から舐めるようにぴったりと俺に張り付いているッ! い、息が…くそ、緊張か…体が動かない……認めたくはないが…この俺は「恐怖」しているッ!! この背後の存在によってッ! 「ずいぶん気分がいいのね…ローゼン。こっちの気苦労もしらないで…」 ヤヴァイ…この声はコリンヌが完全にキレてるときの声だぜっ。 『少しでも動いたら殺す!!』というような、凄まじい殺気ッ!! そうだ…この『気配』の主はコリンヌ。こいつはいつもは美人のくせにキレるといろんな意味で手が付けられなくなるのだ。 「あんた…私に何か隠してるわね…仕事就いたとか言ってるけど……まぁいつものことだけど、いえ、今回はちょっと違う気がするわ」 オイィィ!!!!なんて勘のいい女だアンタァ!!落ち着け…ここはあくまでも自然に話題をそらすんだ…素数をかぞえろォ。 つーか顔近いよ、梅岡来たらなんか勘違いしちまうぞ、コレ。 「な、なぁ~にを言っているんだコリンヌ。今日のお前、怖ぇよ、 ヘビに睨まれた蛙…時を止めた丞太郎に肩を置かれるDIOっなんつって、ハハ」 「…知らない『封筒』があったわ。ええ、私がゴミを出す時…私の見覚えのない 『封筒』がゴミ袋に一つ入っていたわ…梅岡のじゃあない、そもそもこの家の配達物は全て私が把握していたはず、 でも誰かがこっそり『封筒』を抜いて中身を見て、捨てた…内容は何処へいったのやら…でもね、問題はそこじゃあないの」 「……」 「その『封筒』は『ローゼン』…あなたの占拠する部屋のごみ箱から見つかったのよッ!!!!どういうことッ!!説明しなさいッ!!!!」 うあっしまったァ!!中身の『手紙』のほうは念のために今もスーツの内ポケットにしまってあるのだが、封筒のほうは安心してぽいと捨てちまったアアア――ッ 不覚!!もしニセ教師をやっていることがバレたら一巻の終わりだ。 第三部、完ってやつだぜッ。ダメだ…ごまかすどころか指一本動くかどうかってぐらいからだが動かねぇ。しばらく時間がたてば腕一本は動かせそうなんだがなぁ~!! 「別に…知り合いからの、手紙だよ、その、結婚したとかなんとか」 「嘘、あなたにそんな親密な友人なんていないもの。それにいままであなたに手紙来たことなかったでしょうがッ!!」 「そ、そんなこたぁ…」 「じゃあ誰なの!?答えてッ!!」 「え…その…え、槐からだよ」 「…ふぅん、まぁ関わりたくない変人同士だから仲がいいかもね…でも」 ちょっとコリンヌが考えかけたようなそぶりを見せた瞬間ッ!! 彼女はベロンッと俺の頬を舐めたッ!!彼女はギロリと俺を見上げて言った。 「この味は…嘘をついてる『味』ね、ローゼン……梅岡もそうだったわ」 うわわわっ、場合によっちゃかなりエロいシチュエーションなのに『恐怖』しか感じないのは何故だッ!!!! というか梅岡、こんな目に何回もあってんのか…同情するぜ、つーかとっとと別れろよぉぉッ!! その方がこっちも楽なのにィ――ッ 「……まぁいいわ、あなたが何を隠してるか知らないけど、どうせスケベなビデオかなんかの領収書でしょ。 それにまがいなりにも真面目に働いてるらしいし……今日のところは許してあげるわ …今日だけね…嫌ならとっとと金貯めて出て行きなさい!!私が言いたいのはそれだけだから」 それだけって結構長い台詞だったぜ、いや、それよりもぐはぁ…コリンヌが出て行ってやっと呪縛が解けた気分だぜ。 息をはいて両手両膝をついて床を見ると、尋常じゃないほどの水たまり――俺の汗によるもの――が俺の顔を映していた。 こ、怖かった…DIOと対峙した気分だったぜ。 もう…今日は最悪だ…最近の俺の運勢どーしてかっこいい場面が全然ねーの? そして俺は…自室で二時間眠った、そして… …目をさましてからしばらくしてこれからの苦労を思い………ちょっと泣いた… 先が思いやられるけどTo Be Continued!! 第二話「ヤバイ「教室」にIN!!」へ戻る/長編SS保管庫へ/第四話「HINA A GOGO!!」へ続く
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Story ID 8xtPcxMy0 氏(5th take) 物事には何でも波長という物がある。 それが合う時にはパズルのピースがかちりと合うように自然となり、合わぬ時は不協和音のように存在そのものが不快となるものだ。 だが、その波長も合い過ぎては逆に問題であり─── -Trouble~薔薇水晶の場合~- ざわざわと騒がしい、真昼の通り。 若者好みの店が集まるそこは、平日であっても休日であっても活気がある。 サボりや休講の学生、時間が自由になるフリーター…そんな人種が行き交うそんな中、ある一角に人垣が出来ていた。 囲まれているのは我等がRozen Maidenのメンバーである。 撮影スタッフが数人、そしてメイクも居る。この日、メンバーは新譜に附属するブックレットの撮影をこの場で行っていた。 メンバー6人思い思いのアイテムを手に町を歩く、そんなお約束のショットを数枚撮影し終え、続いて個人のショットの撮影へと移行する。 それぞれの舞台衣装をフィーチャーした服装で撮影は順調に進み─途中、翠星石が「蒼星石と一緒に撮るです!」などと言い出したのを除けばだが─、薔薇水晶の撮影を行う事となった。 「いいロケーションを確保してあるのかしら。薔薇水晶、そこで撮影するかしら!」 びしっ、と金糸雀が指し示した先にはドールショップがあった。 「Dollworker-ENJU-」と看板に書かれたそこは、アンティークドールを専門に扱う所らしくショーケースには様々なドールが置かれていた。 今回の撮影コンセプトは、「一つのアイテムを使ってメンバーの魅力を引き出す」というものである。 水銀燈であればカクテルグラス、真紅ならばティーカップ、雛苺ならばぬいぐるみ、翠星石・蒼星石の姉妹ならば花束…といった具合だ。 そして薔薇水晶はそのミステリアスな魅力を引き出すため、アンティークドールが選ばれたのだ。 「…………」 こくり、と無言で頷く薔薇水晶。 てくてくと店に向かって歩き始めると、それにあわせて人垣も移動する。 「やあ、お待ちしておりました。ようこそようこそ」 少し吊り気味の目を細めた笑顔でメンバーとクルーを出迎えたのは、タキシードを爽やかに着こなした青年であった。 フランス人形であろうか、カールの掛かったブロンドが美しい人形を片手に抱きかかえている。 白崎と名乗った彼は、「おやおや、撮影されるのはこの方ですか。よろしくお見知り置きを、お嬢さん」と薔薇水晶の手を取って挨拶した。 その様に嫌味は無く、極めて自然である。こういった挨拶をし慣れている事は容易に伺えた。 「このお嬢さんと共に居ることで写真映えする人形は……これでしょうか、ね」 白崎が取り出した箱─鞄を模したそれには薔薇の意匠が施されている─には、膝を抱える形で小さな人形が納められていた。 シルバーブロンドのロングヘアに白を基調としたドレス、そして白薔薇の髪飾り。 瞳を閉じているそれは、ただの眠っている少女にしか見えぬほど精巧に作られていた。 「………綺麗」 薔薇水晶は表情こそ変えてはいないが、ほうと溜息をついたという行動で充分感動を察することが出来た。 「……触れても、いいですか…」と白崎に問い、許可が下りると壊れ物を扱うようにそっと抱き上げる。 曲げた左腕に座らせる形で抱いて微笑む薔薇水晶。 ─まるで、動き出しそう。 そんな事を思わせるほど、それは肌の色や存在感が人間そのものであった。 「……ええと、申し訳ありませんが……」 撮影クルーが申し訳なさそうに言う。 曰く、「あまりに自然すぎて魅力が相殺されてしまう」という事だった。 「それならば別の人形をお出ししましょう」と奥へと向かう白崎。 だが、薔薇水晶がそれを制止した。 「……この人形以外では…撮影したくない…です」 きゅ、と少女人形を抱きしめて主張する。 「おやおや、どうやらかなりお気に召したご様子ですね」と白崎は少々大袈裟に言った。 だが撮影クルーにとってはこれは洒落では済まない話であり、最悪撮影予定などを全て変えなくてはならなくなるのだ。 「薔薇水晶、我侭言っては駄目かしら!スタッフの人たちに迷惑が掛かるかしら!」 金糸雀がたしなめるが、薔薇水晶は頑として譲らない。 首を振り、主張を通そうとするばかりだ。 「それなら薔薇水晶、他の人形が駄目ならどうするつもりなの?その人形では貴女の魅力も人形の魅力も打ち消しあってしまうのよ」 見かねた真紅が助け舟を出す。 それを受けた薔薇水晶が暫し考えて、店の外を指差した。 その先は──中華料理店。 「………あそこで…撮影するの…どうかな。食事の風景…」 シュールである。 不思議な魅力が持ち味の彼女と、一般的すぎる行動の「食事」を合わせて撮った写真は果たしてどうなるのか。 撮影のプロですら、それは予想できなかった。 「………悩むより…やってみよう?おなかも…すいたし…」 時計を見ると14時である。 朝から撮影を続けていたため、全員食事をしていないのだ。それでは空腹も無理は無い。 少々の話し合いの後薔薇水晶の案で行くこととなり、人形を丁重に返却して全員で中華料理店へ移動するのであった。 「…で、薔薇水晶。普通こういう撮影って杏仁豆腐とか使うものだと思うけど…」 困り顔でテーブルを見遣る蒼星石。 それもそのはず、薔薇水晶の前にはシュウマイの乗ったせいろが3枚ほど置かれていたからだ。 「乙女」というには少々離れた選択である。 「………シュウマイ、好物だから…駄目…?」 雛苺の真似をするように、頬に指を添えて首を傾げた。 「いや、駄目とかそういう問題じゃ」 「…多分言っても無駄です、蒼星石」 薔薇水晶を制しようとする蒼星石と、それに対して諦念を以って諌める翠星石。 ある意味で正しい選択肢なのかもしれないが、しかしこれはレジャーではなく仕事である。 クルーに視線を向けると、こちらも困ったような表情でなにやら話し込んでいた。 「…どうします」 「どうもこうも…イメージって言われてもこれじゃあ…」 当然、意見は纏まらない。それはメンバーの間でも同じであった。 そんな間にも、薔薇水晶はシュウマイを一つ二つと摘んでは幸せそうな表情を浮かべている。 ちらり、と薔薇水晶に視線を送った水銀灯は、その「幸せそうな表情」にふと気付き、 「……幸せそうな薔薇水晶も可愛いわねぇ」 と呟いた。 その言葉にメンバーも視線を向ける。 普段無表情な薔薇水晶の、こんな表情は滅多に見られる物ではなかった。 「…なるほど、こういうアプローチもありかもね」 蒼星石は頷き、メンバーもそれに同意する。 クルーにも同様の話を通し、結局薔薇水晶の写真は「しうまいを美味しく頂く薔薇水晶」という奇妙なものとなった。 その後発売された新譜は、ブックレット効果か順調に売上を伸ばし、新たなファンを獲得する事に成功した。 薔薇水晶の写真も話題にのぼり、普段クールな彼女の変わった一面という事で概ね好評であった。 が、やはりイメージ優先という事もあり、後に発売される全てのアイテムにおいて、こうした写真が載る事は二度となかった。 ─その後、「Dollworker-ENJU-」に頻繁に出入りする薔薇水晶の姿が目撃されているが、その目的は決して明かされなかったという。 短編連作SS保管庫へ
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登場人物 ショウ・・・ロックバンド「パスカル」のリーダー。 バンドの成功のため「しあわせの会」に入る。 リュータ・・パスカルのベース担当。 ゼンジ・・・パスカルのキーボード担当。 ショウをしあわせの会から脱退させようと試みる。 謎の女・・・しあわせの会の会員。 ショウに 前島・・・・通勤電車で杏子に一目惚れした会社員でしあわせの会の会員。 ショウがチンピラ役となり、杏子と知り合った。 杏子・・・・前島が一目惚れしたOL。 その後前島との別れを依頼してくる。 マモル・・・パスカルのドラム担当。 しあわせの会の会員。ピンクパンサーの刺客で、パスカルをつぶしにかかる。 #1「あなたの幸せのために ロックバンドパスカルのリーダーショウはバンドが成功しないことに悩んでいた。 そんな時、しあわせの会を名乗る涼子と出会う。 #2「あなたの恋のために」 しあわせの会の尽力によりパスカルは成功への道を歩き出した。 次はショウが他人の恋のために力を貸す番だ。 #3「あなたの」 [[]] [[]] [[]] [[]] [[]]
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金糸雀ファイルのテーマ 心霊編 ※クリックで演奏開始 Music ピコピコ 氏 タリズマンという言葉を知っているだろうか?そうタリズマンとは お守りのことである。交通事故、病気などの災厄から守ってくれる物。 そのように物には時として不思議な力が宿るものである。その物が幸運を 運んでくるか、それとも異質な者を運んでくるかは誰にも解らない。 控え室で水銀燈はつまらなそうな表情でカメラのモニターを見ていた。 「もう最悪って感じぃ~」どうやら前に買ったDVDカメラを所属事務所の車に 置き忘れた際に社員の人が遊びで使用したようで、自分の顔とハンドルを持つ 男を撮った短い映像がモニターに映っていた。 「車に置き忘れる水銀燈がヘボなんですぅ」一緒にモニターを見る翠星石と 金糸雀。その映像はまず、自分の顔を撮り、続いてハンドルを握る男にカメラ を向けるというこれと言って何の価値もない映像であった。しかしオカルト 探求者である金糸雀はその映像に何やら強い興味を覚えた。 「このDVD借りてもいいかしら?」その映像には何かがある、証拠はなくとも 今の金糸雀の心には断固とした確信めいたものがあった。 「別に要らないからイイけどぉ、そんな映像どうするの?」 「ちょっと調べたいことがあるかしら~ハハハハ」 水銀燈の質問に笑って誤魔化した金糸雀はテレビ番組の収録を終えると急いで 自宅に帰り、じっくりと映像を見る。 「カナの思い過ごしかしら~?」おそらく自分の手で持っているカメラで自分 の顔を撮る、その背後から男の肩に手が見えるが、その手は運転席に座る 男の手である。その後、カメラはハンドルを握る男に向けられる。 そう、この辺りで何か感じる。そう思う金糸雀は何度も映像を見直す。 「こ、これかしらァァァ!!」 ハンドルを握る男に向けられたカメラはあるものを捕らえていた。 車の天上にあるサンルーフに映る者を。 その衝撃の瞬間を見た金糸雀の日記にはこう書かれていた。 8月3日(木曜日) これはもはや影や光の加減という説明ではとうてい考えられない。 走行している車についたゴミなどでもない、これはすぐにでも師であり、 この分野では一番の専門家である稲川氏に問題の映像を見てもらおうと 思う。しかしもう一つ不可解な疑問がある。前の映像(金糸雀ファイル2) の映像も今回の映像も同じく水銀燈のカメラによるものだ。 何かイヤな予感がする。このカメラをどこで入手したのか? 水銀燈に聞かなくてはならない。 そう日記に書き終えると金糸雀は水銀燈に電話を入れてみる。 「なぁに、こんな遅くにぃ?」 「あのカメラはどこで買ったかしら?」 睡眠を邪魔された水銀燈は少し不機嫌な声で答える。それはある中古電化品を 取り扱う店で、ほとんど新品なのに激安な値段が付いていたのを衝動買い したことを言いうと明日は5時起きだからといい一方的に電話を切られた。 その後、金糸雀は自分のオカルト情報網を駆使し、水銀燈がカメラを 購入した店を突き止め店員に詳しく話しを聞くと金糸雀の顔色は青くなり 悲鳴に近いような声を上げる 「あのカメラにはそんな秘密があったかしらぁぁぁぁぁぁ!!」 その驚愕の事実を知った金糸雀の日記にこう付け加えられていた。 調査の結果、やはり不可思議な映像を立て続けに撮れてしまう問題は 水銀燈のカメラにあるようだ。 一家心中をした家から引き取られたカメラを水銀燈は知らずに購入して いたのだ。私は悩む、この事実を水銀燈に言うべきなのだろうか? ああ見えて水銀燈は怖がりだ、このことを知ったら水銀燈の精神が壊れて しまうかもしれない、それにあのカメラの存在はオカルト研究者にとって 興味がつきない。水銀燈には悪いがあのカメラはしばらく彼女にもって いてもらおう。そう、万が一のことがあっても呪われるのは私ではなく 水銀燈なのだから。 金糸雀は愛らしい顔に似つかぬ悪魔的な事を日記に書くともう一度あの映像を見る。 (NGワード・心霊。 ダメな人はスルーして下さいね) 短編連作SS保管庫へ
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1月にしては暖かい小春日和の午後、TV局のドラマ収録スタジオでは役者のセリフと動きに合わせてカメラのレンズが動いている。 緊迫した場面の撮影なのか、スタジオでは演技をしている際に出る音とセリフ以外は凍りついたような静けさが漂っていた。 そのスタジオの隅で金糸雀と雛苺は何度も頭を下げている。 ……そこを何とかお願いかしら~~ ……ダメだよ、もうドラマの配役やエキストラの手配も済んでるんだよ ……どうしてもダメなのぉ? ……ゴメンね、今回は勘弁してよ、その代わり今度は何か仕事をもってくるから、ねっ、そん時は声をかけるよ そんな会話が聞き耳をたてないと分からないくらいの小声で話されている。 チョイ役でもいいからドラマに出て芸能活動を再開したい。 そう考えた金糸雀と雛苺は知り合いのプロデューサーに声を掛けてみたが、首を縦にふってはくれなかった。 「はぁ~、断られちゃったなの~」 「これでアテは無くなったかしら、どうしようかしらぁぁ~?」 ガクリと肩の力が抜けた2人は、とぼとぼとTV局を後にした。 その頃、薔薇乙女が在籍していた事務所から真紅も彼女らと同じようにため息をつきながら出てくる。 「悪いが解散した君達に回す仕事はないんだよ」 「そんな……」 「残酷なようだけど、これも芸能界ってやつなんでね、諦めてほしい」 さきほど事務所の中で交わした言葉が真紅の気力をより一層萎えさせた。 ため息ともつかない弱々しい吐息を一度ならず二度、三度と出る。 その力なく小さく結んだ口元から出される息が白いものに変わる頃、街の街灯がポツリポツリと灯されていく。 夜の幕が降り出した空は群青色からじょじょに濃さを増していく。 そして月にかかる群雲をうけ、いつもより寂しさを感じさせた。 ……これからどうしたらいいの? 駅の改札は仕事終わりの人の群れと、これから夜の街を楽しむ人々を交互に出しては入れていく。 真紅はその人波に押されるように小さな体をホームへと進めていた。 「いったぁ~い、ちょっと~、どこ見てんよぉ~?」 「あっ…銀ちゃん大丈夫…?」 「ご、ごめんなさい…」 ホームに向かう通路で前を歩いていた少女のかかとを踏んでしまった真紅はその場ですぐに謝る。 「こんどから気をつけてねぇ~、行きましょ、ばらしー」 「…うん」 「ほんとうにごめんなさ……」 もう一度誤りながら顔を上げると、そこには先ほどの少女はいない。 ただ見知らぬ人波が右に、左に流れていくだけ。 少し周りに視線を泳がしてみるが、やはり少女の姿は見えなかった。 ……ふぅ~~ッ 深いため息をつくと、真紅も周りの人と同じようにホームへ進む。 途中なんどか地下街のショーウインドーに目を向ける、ライトの光に照らされた素敵な服が見える。 大勢の目に止まり、多くの羨望のため息をうけて飾られたマネキン人形。 真紅は、そのマネキン人形に、解散するまでの薔薇乙女を感じた。 そのガラス張りの華やかさと同じ感覚をもっていたはずなのに、今は明日の事すら見えない、非対称的なガラス張りの世界と現実の世界。 そのギャップに真紅の小さな背中は大きな戸惑いと不安が重くのしかかっていた。 「……あれ?」 薔薇水晶はショーウインドーの向かいにある楽器屋から真紅を見つけた。 「ねぇ、銀ちゃん…あの子……さっきの子だよ」 「ふぅ~ん」 薔薇水晶が指差す先にライトアップされたショーウインドーに並ぶ服を見つめる真紅の姿がある。 それをチラッと見た水銀燈は興味なさげな返事をすると、すぐに視線を壁に掛けられているギターに戻す。 赤いボディーに黒、白のストライプペイントが施された派手なギターをなぞるように見つめる水銀燈。 「…銀ちゃん…そのギター好きなの?」 「まぁねぇ~、このギターにはちょっと思い出があるのよ~」 薔薇水晶にそう答えた水銀燈はクスッと笑うと店内にある時計を見る。 「そろそろ行きましょぉ~、遅刻しちゃうわよぉ~」 「…うぅ……私、学校キライ…」 「そう~、じゃぁ、ばらしー置いていこうかなぁ~?」 「…あぁ~ん、まってぇ~、銀ちゃんッ!」 意地悪な笑みを作った水銀燈は店から小走りに出ようとする、その後ろを必死で付いていこうとする薔薇水晶がいる。 ……25万か…… 店を出る瞬間に振り返った水銀燈は、追いすがる薔薇水晶を通り越して壁に掛けられたギターの値札をチラリとみた。 そして2人は鬼ごっこをするように真紅の後ろを笑いながら走っていく。 ……あら、あの子たちは、さっきの? 背後を通っていく声に振り向く真紅。 その前を水銀燈と薔薇水晶の2人は横切っていく。 そして、名前すら知らない2人の後姿を目で追いかける。 だが、そんな真紅の視界を人込みが遮っていき、すぐに2人の背中は見えなくなってしまった。 ……あの2人は誰なの? なぜだろう? あの2人を見た瞬間から言葉に、いや、考えすらまとまらない何か漠然としたものを感じる。 そんな真紅は地下街を通り、改札を抜けてホームで電車をまっている人の列につく。 ……なんなのかしら?この感覚…? そう思っていると地下鉄のライトがホームに滑り込んできた。 プシュッとエアが漏れるような音と共にドアが開き、いつものように無表情の人々を吐き出しては飲み込んでいく。 真紅は背中を押されるように電車に乗り込むと、満員に近い車内で小さな体はカーブに差し掛かる毎にヨロッと振られる。 ヘッドフォンで音楽を聴く者、携帯を片手に忙しくボタンを押している人、新聞を小さく折りたたんで記事に目を走らせている人、つり革につかまり、文庫本を読んでいる人、そんな無機質なほど殺風景な地下鉄の中で真紅は先ほどから難じている予感ともいえる不思議な感覚をずっと考えていた。 なんだか、あの2人ともう一度会えるかも?そんな事を思っていると電車は目的の駅に到着する。 改札を通り、少し長い階段を上ると街の音が聞こえてくる。 行き交うヘッドライトの群れ、人々のざわめき、そんな雑音が真紅の胸にスッと入ってくる。 今まで窮屈な地下鉄の中にいた真紅にとって、ただの日常の音すらどこか軽やかな音色に思えた。 はぁ~~ッ ふぅ~~ 夜の空気を吸い込み、そしてゆっくり吐き出すと、冬の気温にさらされた真紅の吐息は白いモヤとなって街に溶けるように消えていった。 …ふふっ なぜか軽く笑った真紅は足取りも軽く、マンションに向かって歩き出す。 しかし、そんな軽い笑みもマンションに帰ると困った顔をした金糸雀と雛苺を見てすぐに現実に戻ってしまう。 「真紅…ダメだったかしら~」 「プロデューサーの人にまた今度って言われたの~」 真紅が帰ってくると金糸雀と雛苺は言いにくそうに昼間のことを告げる。 それを聞いていた真紅は靴を脱ぎながら事務所で話し合った内容を言う。 「どうやら私たちはプロダクションから仕事は貰えないみたいだわ」 「えぇ~ッ、事務所のほうもダメだったかしらぁ~?」 「うよぉ~、ダメだったの~?」 「ねぇ、真紅、これからどうするかしらぁ?」 「どうするって、なんとかして働かないと住む場所すら危なくなるわ」 「うぅ、今月と来月はいいとして、再来月が危ないかしら~」 薔薇乙女が解散し、事務所からもほぼ解雇状態になった真紅たちは収入がない。 そのため、アイドル時代に貯めていた貯金を使って生活費にあてていたのだ。 家賃はどうにか2か月分は払っていたが、その後のメドが立たない。 しばらく頭を悩ませる真紅と金糸雀をよそに雛苺は愛用のバックからゴソゴソと何やら薄っぺらい雑誌のようなものを取り出す。 「これで仕事を探してみるのよ~」 「それは何なの?」 「アルバイト情報って書いてあるのぉ」 「アルバイト情報誌かしらぁ~?」 「そ~なのぉ、帰りに寄ったコンビニに置いてあったの~」 ほんの少し前まではアイドルという肩書きをもっていた真紅と金糸雀には一般のアルバイトなどという世界は考えたこともなければ、もちろん経験すら無かった。 始めは興味本位でアルバイト情報誌をパラパラとめくっていくと赤いマジックでマーキングされている箇所が目についた。 「これ、何かしらぁ?」 「あっ、それはヒナが書いたの~」 「明電社、何の会社なの、雛苺?」 「う~ん、よく分からないのよぉ~」 「えぇ~っと、なにか電化製品を作ってる会社かしら~、経験、学歴不要って書いてるかしらぁ、あっ、ここ近くていいかも~かしらぁ」 「簡単なお仕事ってかいてあるのよぉ~」 「それに、短期、長期どちらでもイイみたいね」 「真紅、どうするかしらぁ、一応チェックしとくかしらぁ?」 真紅は金糸雀の声にしばらく目を閉じて考えてみる。 このまま望みが薄い事務所からの仕事を待つよりも今は少しでも収入がほしい。 しかし簡単に芸能活動を諦める気にならない真紅は自分でも思いがけないことを口走ってしまう。 「働いたら負けだわ」 「負け? 何に負けるのかしらぁ~?」 「せ、世間と自分自身なのだわ…」 「ほぇ~、自分自身?」 「そうよ、だって私たちはヤリたい事をするために芸能界に入ったわ、 それなのにこんな事で夢を諦めたらそこでお終いだわッ」 「じゃ、真紅には何かイイ考えがあるかしらぁ?」 「そーなの、ヒナ達はもうお金が少ないのぉ~、お金が無かったらうにゅ~も買えないのぉぉ」 「そんなのは分かってるわ、でも少しは考えさせて頂戴」 「でも面接の期限はあと3日しかないかしらぁ」 「それも見れば分かるわ、でも…とにかく私はもう少し考えたいの。アルバイトの件は貴女達で決めて頂戴」 それだけ言うと真紅はリビングから部屋に行く。 ドアを閉めるとき金糸雀と雛苺の声が聞こえた。 「何かしらぁ、今の真紅の態度? どうするつもりかしらぁ? とにかくさっそく面接の履歴書を書くかしら~」 「あっ、ヒナも書くの~」 そんな2人の声を聞きながら真紅はドアを静かに閉めた。 そして力なくイスを引き、背もたれに体重をかけて深く座る。 頬杖をつく真紅の目はただぼんやりと机の上にある時計の秒針を追いかけていた。 ………まだ20分もある…… ここは都立桃種定時制高校。 昼間は仕事や家事など、なんらかの事情で全日制の高校に通えない、または高校卒業の資格が欲しいと望んでいる人達が通っている。 そんな教室で薔薇水晶も真紅と同じ姿勢で時間の経過を目で追っていた。 ただ真紅と違うのは周りには熱心に黒板を見ている人、仕事の疲れで授業が睡眠薬となって居眠りをしている人などがいる。 横に座っている水銀燈にいたっては授業などそっちのけで携帯電話の電卓機能を使って何やら計算をしていた。 ……やっぱり今の給料じゃぁ、あのギターを買うのは再来月くらいねぇ~ 何度か計算をしてみるが、どうも今すぐという訳にはいかない。 手付金だけでも払っておこうか?そう考え出した時、授業終了のチャイムが鳴り出す。 その音にハッとわれに返ると、周りではガタガタとイスから立ち上がる音がきこえてきた。 そしてその音に混じって薔薇水晶の明るい声がすぐ横でする。 「…銀ちゃん、終わったよ……」 「もうそんな時間なのぉ~、そう言えばお腹すいたわねぇ~ばらしー」 「…うん、私も…すいたよ…もう、ペコペコだもん…」 「じゃ、帰りに何か食べましょうかぁ~?」 「うんッ、私…えぇ~っと、え~っと……エビフライがいい…」 「エビフライが食べたいのォ~?」 「うん…エビフライ、エビフライ…エビさんぴょんぴょん……」 「ふふふ、ほぉ~んと、ばらしーはお子様みたいねぇ~、いいわ 帰りにファミレスに寄りましょ~」 落書きだらけの教科書をバックに入れると水銀燈と薔薇水晶は校門を出て手をつなぎ、楽しそうな笑みを浮かべて歩き出した。 * 平日のファミリーレストランはそれほど混雑していない。 仕事帰りに一息つく者、時間を持て余した大学生などが数組いるだけ。 水銀燈と薔薇水晶は窓側の席に付く。 そこにウエイトレスがメニューをもってくると薔薇水晶は目を輝かせて、すぐさまエビフライセットを注文する。 それに対し、水銀燈は控えめな食事ですます。 「ふぅ~、ふぅ~……エビさん熱いよ」 「そぉ~、ゆっくり食べなさい」 「…うん…ふぅ~、ふぅ~……」 エビフライに息を吹きかけながら頬張る薔薇水晶を見ながら水銀燈はフォークでシーフードサラダをつつき、頭の中はあのギターを想像していた。 ……とにかく買うには節約しなきゃねぇ~ そう思いながら水銀燈は横に座席においたバックの中から教科書とノートに混ざって入っている1枚のCDを取り出す。 「…銀ちゃん、そのCD好きだね…」 「まぁね~」 そう短く答えた水銀燈は、サラダに入っているプチトマトをフォークで転がしている。 そして、薄汚れたCDケースには天使がタバコをもっているジャケットを見つめる水銀燈の脳裏にはあの日の煙に隠れた夜明けを微かに思い出す。 ……クッ!! 手にしているCDケースに思わず力が入る。 苦い顔付きになった水銀燈はしばし目を閉じる。 まぶたの裏と耳の奥には忘れようにも忘れられない光景と声がこだまする。 ―――――――水銀燈…オレはもうええから、はよう、逃げェ……… ―――――――イヤぁ~ッ!!私、そんな……… ―――――――オレはもうアカン…お前だけでも……… 目を閉じた水銀燈の額には薄っすらと汗がにじみ出している。 転がしていたプチトマトにグサリとフォークが突き刺さる。 「銀ちゃんッ!! どうしたの…銀ちゃん?」 薔薇水晶の声で目を開けた水銀燈は胸の奥から重い吐息をこぼしながらも笑みを見せる。 「ふふ、大丈夫よぉ、何でもないわぁ~」 「…ほ、ほんとー?……本当に大丈夫なの…銀ちゃん?」 心配そうに水銀燈を見ている薔薇水晶の目を大きくパチリと開けられ、ジワリと薄い涙の膜がにじんでいる。 「そんなので泣かないでよぉ、私は何でもないんだからぁ~」 「…うん……でも、なんだか…さっきの銀ちゃん怖かったよ…」 「ふふっ、そぉ? ゴメンね、ばらしー、食べ終わったら帰ろうかぁ?」 「……うん、もう私…エビさん食べたから…帰ろぉ、銀ちゃん」 2人が店を出て部屋に帰っていると近くの家々からは楽しげなTVの音とお風呂に入っているのだろうか、曇ったガラスの向こうからお湯が溢れる音などが聞こえている。 小さなアパートに2人で暮らしている水銀燈と薔薇水晶も1日の疲れを取るため早めに湯船につかる。 「ふぅ~、今日も疲れたわぁ~」 まだ二十歳にも届いていない少女にとって昼間の仕事と夜の勉学に疲れた体をほぐすように湯船の中で両腕を伸ばし、背伸びをしながら一息つく。 そして先ほどファミリーレストランで思い出した記憶の断片を払拭するように蛇口から冷たい水を出すと、それを両手ですくい、顔をひたす。 ……冷たぁ~い 十代の肌はその水を弾くようにツルンっと水銀燈の頬を滑って湯船に落ちた。 濡れた長い銀髪をバスタオルではさむように出てくると、先に風呂から出ていた薔薇水晶は湯上りのため火照った体を冷やすように紙パックの牛乳を美味しそうに飲んでいた。 「…銀ちゃんも…いる?」 「私はピルクルがあるからぁ、牛乳はいいわぁ~」 冷蔵庫からお気に入りの乳酸菌飲料をのどに流しながら薔薇水晶のとなりに座る。 「…エヘッ…銀ちゃんの髪…いい香りがするね…」 「そぉ? 同じシャンプーよぉ~」 ニコッと笑う薔薇水晶は水銀燈にキスをするかのように顔を近づける。 視力が極端に悪い薔薇水晶はコンタクトを外すとよく見えないからだ。 幼い頃に両親によって虐待をうけていた彼女の左目はほぼ見えないといっても大げさではなかった。 それを知っている水銀燈はより彼女に自分の顔が見やすいように自らも顔を近づけていく。 「……同じシャンプーでも…やっぱり銀ちゃんのほうがいい香りだよ」 「ふふっ、そうなのぉ~?」 互いの鼻がくっつくほど近付いて微笑みを浮かべて話す。 彼女達2人にとっては当たり前の光景である。 「ねぇ、銀ちゃん……銀ちゃんは…どこにも行かないよね?」 「ふふ、当然でしょ~、私はばらしーといつも一緒よぉ~」 「エヘヘ……嬉しい……銀ちゃん大好きぃ」 虐待をうけ、挙句の果てには捨てられ、施設に保護された彼女は誰も信じられないと深く傷ついた心を癒すことはできなかった。 しかし、そんな時おなじ施設にいた2歳年上の水銀燈と出会った。 同じ心の傷をもっていながらも強く美しい彼女に引かれ、そしていつも一緒にいた。 「私もばらしーのことだぁ~い好きよぉ~」 「うぅ~ん……銀ちゃん」 水銀燈に抱きつき甘える薔薇水晶。 そんな薔薇水晶にとって水銀燈は優しい姉であり、そして恋人でもあった。 薔薇水晶が中学を卒業すると2人は逃げるように施設から出ると仕事をしながら、夜は定時制高校に通い2人で暮らし始めた。 ここは彼女にとって夢にまでみた家族の暖かさを感じされてくれる。 「ふふ、ほぉんと、ばらしーは小さい子みたいねぇ~」 「…だってぇ…銀ちゃん大好きなんだもん……」 「ふふ、ほらぁ、ばらしー、牛乳があごに付いてるわよぉ~」 そういいながら水銀燈は薔薇水晶の唇からこぼれた牛乳の滴をペロリとなめる。 その舌はあごからゆっくりと上がっていき、互いの吐息が感じられると、そのまま2人の唇は重なる。 そして絡み合い目を閉じ水銀燈を感じる薔薇水晶は強く背中を抱く。 馴れ合う指先に薔薇水晶は子猫のような声で答える。 2人の静かで、そして熱い遊戯。 そして、ぐったりとして肩で大きく息をし、水銀燈の胸に顔を乗せたままいつのまにか眠ってしまった薔薇水晶の髪を優しくなでる水銀燈。 ……ばらしーは私がずっと守ってやるわぁ そう思いながら薔薇水晶の安らかな寝息を聞き、水銀燈も同じように眠りの中へと落ちていく。そして彼女は夢を見る。 (1)へ戻る/長編SS保管庫へ/(3)へ続く
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照明が落とされた薄暗い室内の中でステージとその周辺だけは卑猥な オレンジ色の灯りで照らされている。オディールが唄うSweet Ladyに観客は 心地よい音と声に体をゆらしている。 曲が終盤に差し掛かるといつの間にかステージに真紅と雛苺が現れ オディールと曲のエンディングをハモる。 突然のラプラスと薔薇乙女の競演に観客は色めき立つ。 人々の歓声の中で金糸雀のキーボードから静かなメロディーが流れ出し いつの間に入れ替わったのかノリからチェンジした翠星石のドラムが 静かに金糸雀のメロディーを支える。その静かに進行するメロディーに オディールの声が乗る。 「I look in your eyes and I can see~」 マイクをもった真紅はしばらくオディールの唄にゆっくりと体を左右に ゆらす。雛苺も同様に体を揺らしているとメグのギターのトーンに混じり 水銀燈のギターの音が混ざり出すと同時に巴のベースにも厚みが出る。 それは水銀燈と一緒に出てきた蒼星石が巴のベースに加わったからである。 (みんな揃ったのだわ、オディール。) (そうデスね、さぁ、真紅ちゃんとワタシの競演を始めましょう) それぞれを確認した真紅はマイクを口にもって行き、声を出す。 「Through the fire to the limit to the wall~」 オディールと真紅の声が一つになり店内を駆け巡り真紅の深みのある声と オディールの透明感のある声が観客一人一人の胸に突き刺さっていく。 「唄と音が走ってる・・・」 ライブハウスの隅で聴いている薔薇水晶はそう呟くとステージから届く トーンの振動と唄の波動を耳ではなく心で受け止め聴いていた。 曲が終わるか終わらないか、そんな微妙なタイミングで水銀燈のギターが 唸ると翠星石のドラムが激しい振動を叩きつける。 メグのギターもいつもの繊細なトーンから一変しカン高い高音を出すと 水銀燈のギターと音の攻防を繰り広げる。 薔薇乙女ファンとラプラスの街からきたファンが一気に歓声の声を出すと 店内の気温が真夏のように上昇したかのような錯覚すら感じられた。 水銀燈とメグの終わりない攻防を真紅とノリの2本のレスポールからでる リフで支えられ約6分間にわたりライブハウス内を駆け巡り、そのスピード 感のまま薔薇乙女とラプラスの競演は続いていった。 時に壮大なバラードで、時には心臓の鼓動を止めるかのような 激しいビートにより夢の競演は幕を閉じた。 Illust ID jPTspcOH0 氏(23rd take) * ライブの後ラプラスと薔薇乙女はライブ成功の祝杯とラプラス達の大学合格 と東京上京に乾杯をしていた。 珍しく飲むピッチを上げていた水銀燈は明日には東京に荷物を送るから 帰ると言い出したメグの肩に手を回す。 「えぇ~、荷物なんてぇ後よォ、後。今日わァ、朝まで飲むわよォ~」 その横でノリもかなり酔いが回った目つきで真紅を見つめる。 「あぁ~ん、真紅ちゃんって可愛いわぁ~。もう抱きしめたい!」 抱きつこうとすると同じくアルコール成分に支配され真っ赤な顔をした 真紅の平手がノリの手をピシャリと払いのける。 「抱き付くなやァ~。ワレぇ、うっとおしいねん」 関西弁をしゃべる真紅に言葉を無くす翠星石は黙ってウーロン茶に手を 伸ばそうとすると真紅と同じく目の据わった雛苺と巴がカクテルを翠星石 の前に置き2人同時にアルコールを翠星石に進める。 「なに茶やんか飲んでんねん、コレでもクゥ~っとヤリぃな!」 「はい、飲ませていただきます、ですぅ・・・」 うつむき涙目でカクテルを一気飲みさせられる翠星石のとなりの席では 蒼星石、金糸雀、オディールがほろ酔い加減ながら真剣に音楽の話をしていた。 いつになくアルコールの量が増える中で真紅はいつしか眠っていた。 途切れ途切れに思い出す場面はメグ達が迎えの車に乗り込むときにメグと 水銀燈が抱き合っていたこと、雛苺と巴が腕を組み何やら歌っていた事、 自販機の前で倒れている翠星石を笑いながら見ている金糸雀。 その後、気付くと水銀燈の肩に寄りかかりあの公園の前を歩いていた。 「ちょっと真紅ぅ、また体重増えたのォ?重いわよぉ」 「体重やんか増えてへんわ!それは何かの間違いやァ」 「ねぇ、なんで酔うと真紅と雛苺って関西弁なのぉ?」 「ウチは小学6年まで大阪に住んどってん、ヒナは神戸らしいで。 せやけど水やんは酒強いなぁ、ウチはもうアカンわ~」 ふらつく真紅を公園のベンチに誘導しながら水銀燈は今後アルコールを 真紅に勧めるのはやめようと心に誓った。 真紅と水銀燈は酔い醒ましに公園のベンチに座る。しばらくは真紅が しゃべる天王寺周辺の不思議ワールドについて聞いていた。 「へぇ~、大阪って変な人多いのねぇ~」 「メッチャ多いでぇ~。せやけどなぁ、このままやとウチらも 街に埋もれたただの普通の人になってしまう、のだわ」 少しずつ酔いが覚めてきた真紅の話は続く。 「今日、ラプラスと音を共にして、改めてロックの、音楽の中で 生きていたいと思ってん。あんなに気持ちのエエことは無いのだわ」 「そうねぇ、私も真紅と同じ気持ちよぉ。多分みんなも同じだわァ」 「ねぇ、水銀燈。私達も卒業したらラプラスと同じように東京に行かない?」 東京、それは地方都市に住む彼女達にとっては未知の大舞台であり 成功の階段を昇る上で欠かせない言葉。水銀燈は真紅を見つめニコリと笑う。 「東京、望むところよォ~。私は行くわァ」 その時、後ろから真紅と水銀燈に近づく2人の男がいた。 男の手が真紅と水銀燈の肩に置かれ声がかかる。 「ちょっといいかなぁ~」 振り向くと眩しいライトの光に目を細める真紅と水銀燈。 「君達はこんな時間に何を話してるんだい?この辺りは痴漢やら で物騒だよ。早く帰りなさい」 2人に声をかけたのは見回り中の警官であった。 「ちょっと今後の進路で悩みを聞いてもらってたのよぉ~。ねぇ真紅」 ベンチから立ち上がり水銀燈は普段と変わらない口調で誤魔化す。 「えぇ、そうなのだわ。進学か就職かを話してたのだわ」 真紅も立ち上がろうとするが残っているアルコールに足を取られフラつく。 「ん?君、もしかして酒を飲んでるのか?名前と住所と、行っていたら 学校名を言いなさい」 (チッ、ヤバイことになったわァ~) * 朝一番で真紅と水銀燈は生活指導室に呼ばれた。 「解っているだろうがお前達こんどはただの停学じゃないぞ」 担任の梅岡が怒鳴りながら真紅と水銀燈を交互に見る。 真紅は両手を膝に置きうつむいていた。その反対に水銀燈は小さな アクビをする。 「真紅、お前は1ヶ月の自宅謹慎だ。その間レポートをヤッてもらう。まぁ 退学処分じゃないだけマシだろ!ただこれで出席日数がギリギリになるから お前は1日も休めないぞ。解ったら行きなさい、それと水銀燈は残っていろ」 梅岡の言葉に席を立つ真紅。だが水銀燈の処分が気になり何度も振り返り ながら指導室を出て行った。 「どうでしたか真紅ぅ?」 心配した翠星石達が指導室の前でまっていた。 「1ヶ月の停学よ・・・それより水銀燈が気になるわ」 真紅達は指導室から漏れてくる梅岡の言葉に耳を傾ける。 「おい、水銀燈。お前はなんど校則を破れば気が済むんだ? おい、聞いているのか、水銀燈!」 水銀燈は小指を耳に入れ梅岡とは反対の方を向いている。 「聞いてるわよォ~、説教なら早く終わらしてちょうだァい。私ィ 眠いんだからァ」 「お前はただでさえ日数が足りないんだ、このままだと留年決定だぞ。 もう1年高校に来るか、それとも自主退学か?どちらかを選びなさい。 答えは停学あけに聞くぞ。いいな水銀燈!」 「はいはい、考えとくわぁ。で、もうイイ?私ぃ~、眠くてぇ」 あくびをしながら水銀燈が指導室から出てくる。 そこには涙を貯めた真紅の顔があった。 「す、水銀燈、あなた・・・」 「なぁに泣いてるの真紅ぅ~。こんなのどうって事ないわぁ」 「だって私があの時もっとうまくヤッていれば・・・」 「ウフフ、おバカさんねぇ。そんなの関係ないわぁ。それより今から 私とォ、真紅は長期バカンスよぉ。さぁ帰りましょ真紅ゥ」 そう言うと水銀燈は真紅の手をとり翠星石達にウインクと投げキッスを しながら学校を出て行った。 帰りの道中で何度も謝る真紅に冗談半分でおどけて見せる水銀燈。 「じゃぁ、今晩にでも電話ちょうだァい~。またねバイバイ」 落ち込む真紅を家の近所まで送った水銀燈は手を振り真紅と分かれた。 一人歩く水銀燈はポケットから細長いタバコを取り出す。 (チッ、留年決定ェ? 冗談じゃないわァ!) 足元にある空き缶を力任せに蹴り上げると大きく宙を舞った 空き缶は乾いた音を立てて地面に落ちるとそのまま坂道を転がり 落ちていった。 * 停学をもらい1週間が過ぎ、もてあます時間の中にいる水銀燈。 不安、漠然とした将来の不安が水銀燈をいつになくイラつかせる。 留年?自主退学?真紅達の前では強がっていた気持ちが凪いでいく。 (どうせ退屈な学校なんか)そんな気持ちの裏では今まで続いていた 当たり前の日常が途切れ出した不安に自分の考えがまとまらない。 「とりあえずぅ、就職ゥ?」 (私ィ、どうしたらイイのォ?) 「いっその事、こんな街を捨ててぇ、東京に・・・」 (一人でやって行けるのォ?) 「もう1回お気軽なぁ、女子高生もイイわぁ」 (留年?下のヤツラと同期ィ?冗談じゃないわァ) 自問自答する水銀燈の携帯が鳴る。着信相手はメグであった。 「もしもし、水銀燈?私、メグ」 「どうしたのメグぅ、いつもメールなのにぃ?」 水銀燈には無邪気なメグの笑顔が受話器越しに見える。 「近況報告ってヤツかな?というより水銀燈や薔薇乙女は元気かな?と 思って電話したの。ホラ、私って真紅さんやヒナちゃんの番号知らないから」 「真紅は相変わらず紅茶ばかり飲んでるわぁ。雛苺も相変わらず翠星石に イジメられてるわぁ。もちろん私は元気よぉ。メグはどう?」 メグは東京での大学生活も慣れだしラプラスもそろそろ本格始動したいと 思っていることを告げる。 「東京って街は楽しいよ。水銀燈も卒業したらこっちの大学に進むんだよね?」 「もちろんそのつもりよォ。メグの有栖川大学だっけェ、私もそこ目指そう かなぁ~ウフフフ」 「あら、自慢じゃないけど有栖川は偏差値たかいわよ大丈夫?フフフ」 「私ならぁ、楽勝よぉ!真紅や雛苺は難しいけどぉ、ウフフフ」 「水銀燈も薔薇乙女も元気そうで良かったわ。薔薇乙女がそろって有栖川 に来てくれたら素敵よ~、絶対歓迎するわ。来年の4月が楽しみ! じゃぁね、水銀燈、待ってるわよ。バイバイ」 電話を切った後も水銀燈は小さく静かに笑い続ける。 「ウフフフ・・・」 (ねぇ、メグぅ。私これからどうすればイイのぉ~?) (1)へ戻る/長編SS保管庫へ/(3)へ続く