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リリカル龍騎の手がけた作品 002 こうして殺戮者がまた一人 016 誤解を呼ぶもの 023 死神と神父のダンス、開幕 031 怒りという名の強い意志 032 555→913 042 すれ違い、その結果 047 彼女の不運 052 Masked Rider TOPページへ バトロワまとめへ このページの先頭へ
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リリカルBLACK クロス元:仮面ライダーBLACK 最終更新:08/04/05 1話 時を越えろ 空を駆けろ 2話 南光太郎は砕けない TOPページへ このページの先頭へ
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「スカリエッティは何で脱獄出来たんや?」 機動六課部隊長室にて、一組の男女が向かい合っている。男の方はモニターの向こう側だが。二人の雰囲気は甘いそれではなく、真剣そのものだ。 『ああ、どうやら戦闘機人が幽閉されていた留置所で爆破テロがあったらしい。その隙を突いて彼女らは脱獄し、その足で彼の元に向かったようだ』 女性の方は六課部隊長、八神はやて。男性の方はフェイトの義兄であり、“時空管理局本局次元航行艦隊所属クラウディアの艦長兼提督”の地位にあるクロノ・ハラオウンである。 二人が話しているのは先日脱獄に成功した第一級犯罪者、ジェイル・スカリエッティについてだ。 「でも四人ともバラバラやったのに何で示し合わせたかのように行動できたんやろ?」 『簡単な話だ。彼女達は能力を封じる特殊牢に入れていたんだが、テロでシステムが停止してしまった。その際に復旧した能力を使って通信を行ったんだろう』 戦闘機人はデータリンク機能を持っている。それは詰まる所、戦闘機人同士の通信システムが高度に発達している証拠だ。 『テロについては現在調査中だ。脱獄についても何か分かったらまた連絡する。だから――』 「――分かってる。私らが絶対、スカリエッティは捕まえてみせる」 リリカル×ライダー 第八話『追跡』 「くそっ!」 現在、夜の12時。 広い森林公園で二匹の獣が争い合う。すでに公園は闇に支配されており、光源が電灯のみであるため薄暗い。 月も出ていない公園で、ジョーカーことカズマはアンデッドとの戦闘を繰り広げていた。 「あぁぁぁぁあぁ!」 右腕から生えた鋭利な刃物を思わせる突起物を目の前のアンデッド、リザードアンデッドに振るう。 だが奴は持っている剣でこちらの攻撃を弾き、巧みに間合いを取っていた。 アンデッドは解放されるたびに実力が変化する。特に2~10までのアンデッドは時には弱く、時には強くなり、果てはカテゴリーエースやジャック、クイーン、キングのような上級アンデッドにすら対抗しうる実力を持つ場合もある。 こいつは、前回より強力になったパターンのアンデッドだった。 「がぁぁぁあっ!」 ジョーカーはアンデッド打倒の証、ラウズカードが手に入るたびに強くなる特殊な個体だ。だが同時にカードが少ないと実力が低下してしまうアンデッドでもある。 俺は再び原始的な斬撃とも打撃とも言えない攻撃を繰り出す。その破壊力は鉄をもひしゃげさせるものだが、リザードアンデッドは持ち前の剣技で綺麗に受け流してしまう。 ――奴には今の攻撃は有効ではない。戦術を変更しろ。 ジョーカーの本能は時に便利だ。何故なら戦い方を自然と理解させてしまうのだから。 ただ、それに不思議な懐かしい連帯感を思い出すのは何故だろう。 俺はジョーカーバックルのサイドに付いたカードケースから一枚のラウズカードを抜く。 「Spade 5」キックローカスト。 それをハート型のバックルを二つに割るように入ったスリットに通した。 『――KICK』 それを通した瞬間、俺の体はジョーカーのそれではなくなった。 緑色の体、虫のそれである透き通るような羽根、強靭な足。それらの特徴を持つアンデッド、ローカストアンデッドに姿が変貌する。 唯一の違いは、アンデッドバックルではなくジョーカーバックルを付けていること。 「ぎぃぃあぁぁぁぁ!」 ジョーカー特有の能力。倒したアンデッドを封印したラウズカードによって、アンデッドの姿を借りる力。 声すらも影響を受けるとは思わなかったが。 俺はローカストアンデッドがしたのと同じように飛蝗を大量発生し、奴にぶつけた。 「グァウゥゥ……」 飛蝗を振り払うように剣を振るうが避けきれずに幾重も切り傷が刻まれていく。低い唸り声がその痛みを訴えている。 「ああああっ!」 その隙を突き、強靭な脚力を生かして跳躍、奴の胸にキックをぶちこんだ。 「グアァァァアァァ!」 アンデッドバックルが二つに割れる。俺はカードケースから封印用のカードを引き抜き、奴に投げ付けた。 緑色の光が吹き出し、アンデッドがカードに吸収されていった。 封印したカードは『Spade 2』スラッシュリザードだった。 「ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ」 不快な呼吸音が自らの口から漏れる。すぐに変身を解こうとし―― 「きゃあああぁ!」 ――女性の叫び声が、聞こえた。 振り向けば、一人の女性が“こちらを見て”悲鳴を上げている。 「……」 理由は、聞くまでもない。 だからジョーカーの姿にはなりたくなかったのだが、アンデッドを封印するにはこれしかなかったのだ。 ボアアンデッドの際、試しにもう一度チェンジデバイスでやってみたのだが、魔法はアンデッドに対し有効ではないらしく、すぐに再生されてしまった。 それにアンデッドを一時的とはいえチェンジデバイスで倒した際、現れるはずのモノリスは現れなかった。流石に遠い異世界までは飛んでこれなかったのか、はたまたアンデッドが倒さなければ現れないようになっているのか。 どちらにしろ、アンデッドとの戦いを続けるなら、俺はジョーカーとして戦うしかない。そう、この視線にも耐え続けなければならないんだ。 何か、解決策はないか悩みながら。 ・・・ 一方の機動六課では、スカリエッティの捜索が進められていた。 捜査部隊はスバル、副隊長にヴィータ、分隊長になのはが付くスターズ分隊と、エリオ、キャロ、分隊長代理にシグナムが付くライトニング分隊の二手に分けたものである。 ちなみに本来ライトニング分隊長を務めるはずのフェイトはティアナと共に最近聞くようになった怪物事件の調査があり、今回は参加していない。 「けどなぁ……」 はやてがぼやきながら溜め息を付く。今回の捜査指揮を取っているはやては今の状況を快く思ってはいなかった。 理由は簡単、一週間に渡る捜査が無駄骨に終わったと聞けば誰でも溜め息をつきたくなるだろう。 全く持って、スカリエッティの足取りは掴めなかった。流石は天才科学者、その頭脳を不当に生かして巧妙に逃げおおせたのだろう。 「はぁ……」 問題はそれだけではない。巷で噂の怪物事件もはやての頭を悩ませる事例だ。貴重な戦力を引き抜かれ、はやてとしては厄介極まりない事件でもあった。 その上カズマ君の件もある。今でこそかなり持ち直したが、いつまたああなるか分からないのである。 今はザフィーラと同じように、特定の役職を与えず、六課の守備として置いている有り様だった。 「はあぁ……」 19歳にして溜め息が染み着きつつある自分を嘆きたくなるはやてであった。 ・・・ (うーん、今日もダメだったなぁ) もう次の日を迎えつつある時間帯。 わたしは報告書を纏めるために今日の捜査を思い出していた。 調べたのはミッドチルダとは別の次元世界。無人世界と言われるそこは、鬱蒼と茂る木々と強い酸性の海が支配する世界だった。調査自体は主に別部隊がやっており、自分達は怪しい、または危険な場所を調査しただけなのだが。 (スバルはやっぱり本調子じゃなかったなぁ) いつも一緒にいる相方、ティアナがいないからだろう、凡ミスが少々あったのを覚えている。少しずつそういった状況に慣れればいいと思って叱ったりはしなかった。 その代わりヴィータちゃんが怒ってたけど。 (ヴィータちゃんも教官が板についてきたね) くすり、と笑う。 あの小学生のような体格とお人形みたいな可愛らしい顔で、鬼みたいに厳しく教鞭を振るう彼女なら、すぐに教導隊でも人気が出るだろう。今度誘ってみよう。 そうすれば、わたしは辞めても大丈夫かな。 (――って、何考えてるの) よし、と気を引き締め直し、わたしは一気に報告書作成を終わらせた。 「これをはやてちゃんに送って……おしまい、と」 体を一度伸ばし、片付ける。後は、見回りだけ。 廊下に出ると消灯時間をとっくに過ぎているからか、真っ暗だった。すぐに懐中電灯を点ける。 そのまま一通り見回りをしていき、カズマ君の部屋を通り過ぎようとして、異変に気付いた。 「あれ? 鍵がされてない」 うっかり忘れたのか、それとも中にいないのか。 何故だか、わたしは後者だとすでに思っていた。 「カズマ君、入るよ?」 ドアを二、三度ノックした後に開ける。予感通り、中に人影はなかった。慌てて出て行ったのだろう、電気は点けっぱなしだ。 「どこ行ったんだろう……」 カズマ君は念話が使えないからチェンジデバイスに連絡を入れてみるが、繋がらない。 嫌な予感がして、わたしは隊舎を飛び出した。 「これって、タイヤの跡?」 外に出て何かないかと探してみると、隊舎の隣にある格納庫から伸びる芝生がえぐれている跡が見つかった。 それは最初の方は蛇のようにうねりながらも、途中から真っ直ぐに出入り口を目指していた。 よく見れば後で消したらしい跡が何本か見つかる。もしかして、何度もこうやって深夜に出て行っていたのだろうか。 「カズマ君……」 フェイトちゃんも心配はしていたが、まさかこんな事態になっているとは予想してなかったと思う。 「レイジングハート!」 『All right. My master.』 首に下げられた紅玉の形をしたインテリジェントデバイス、レイジングハートを呼び覚ます。 街中での飛行は禁止されている。わたしは地面すれすれに浮き上がりながら深夜の街を疾駆する。 そして付近で一番高いビルの屋上に飛び上がり、カズマ君を探す。 『Searching』 赤い宝石が屋上の虚空に浮かび、周辺をサーチする。 答えは、程なくして出た。 『There is an energy reaction the southwest from 3km.』 「南西3kmでエネルギー反応!?」 『It is a large-scale calorie. It seems that it is a special life reaction.』 大型の熱量。推定では特殊な生命反応。レイジングハートの予測だ。たぶん間違ってはいない。 胸騒ぎがする。 『Master, let’s hurry up.』 「わかってる。行こう!」 わたしはレイジングハートを掴むと一直線にその場所へ向かった。 フラッシュムーブによる加速を上乗せして数分かからず着いたそこは、電灯が寂しげに照らし出す公園だった。 (公園……ここに、いったい何が) カズマ君はいるのか。 そうして踏み込んだ公園で、わたしの視界に何かが映った。視線をそちらに向け、わたしは瞳でそれを捉えてしまった 緑色の、醜悪な化け物の姿を。 (何、あれ……) 公園の隅にあるトイレの裏側へ身を隠すように入る化け物。 自分の体がカタカタと震えだすのが分かる。けれど、義務感がわたしの体を突き動かす。 わたしは、見つからないようにそっと追い掛けた。追い掛けてしまった。 そして、見てしまったの。 (――――!?) あの化け物が、カズマ君の姿に変わる所を。 ・・・ 「くくくっ……」 なのはが街をサーチした時にいた高層ビルの屋上。 そこに独りの男が佇んでいた。 褐色のライディングジャケット、暗褐色のカーゴパンツ。とことん地味な色合いの格好で男は下界を見下ろしていた。 「探したぞ……」 その男が左手で何かを握りしめている。それは鋼色のボディに赤のアクセントが入った、黄金の三角形が埋まったクリスタルが填められている機器。 その側面には小さく『The second Change Device "Garren"』と刻まれている。 男が注視するのはあの公園。正確にはそこから出てきた男。そいつはヘルメットとゴーグルを付けながら赤いバイクに跨っていた。 「剣崎ぃ――――!」 男が理知的な顔に獰猛な笑みを浮かべる。 確実に、彼を復活させる駒が揃いつつあった。 ・・・ 真実を知ってしまったなのは。彼女は恐怖に駆られた自分を追い込んでいく。 一方のカズマは、ついに自らの記憶を蘇らせるきっかけと出会う。それは、この世界で初の、人間ではないが“知り合い”だった。 次回『仮面』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
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――俺は誰なんだ? 意識ある無意識、夢の中で微睡む。 それは眠りの中でありながら自我が保たれた世界。 ――俺はいったい何だ? 体の感覚はない。ここは夢であり、無意識が生み出した夢の世界。感覚を司るのは意識であり、無意識ではない。 だが、その世界も終わりを迎えようとしていた。 ――ここは、どこなんだ? そして、彼が覚醒する。ある役割を携えて。 リリカル×ライダー 第一話『覚醒』 「……どこだ、ここ」 周りを見渡すとビルが広がっている。街、というより都市か。ただし人気はない、というより、ビル自体が荒れ果てていた。高さが低いビル群は全てボロボロであり、とても人が住めるような建物ではなかった。ちなみに高層ビルと呼べる建物はない。何故か低いものばかりだ。 起き上がってみると目に写るのはグローブに包まれた手。そして半袖の白い無地のTシャツと、擦りきれたグレーのジーンズ。 体はまともだ。怪我も何もない。――ただ、何も思い出せないだけで。 「あれ、俺って名前何だっけ?」 名前だけじゃない。自分の出身地も今までどこにいたかも、自分が何者かも思い出せない。自分の好きな食べ物すら思い浮かばない。 「俺は、誰なんだ……?」 体が無意識で震えだす。自分が何者か分からないことを、無意識が恐怖しているのか。 そして悩んでいた俺は反応できなかった。突如の轟音に。 「何だ!?」 ビルの向こう側が爆発する。 そこから、人が飛び出した。 「人が、飛んでる……?」 その人とは、白い服を纏った女性だった。 顔は見えない。だが、その白い服と栗毛のツインテール、そして右手に握られた杖という特徴は読み取れる。 彼女は空を舞いながらその杖を下に向け、桜色の光線を放っていた。 「……俺は、いったい何処にいるんだ?」 混乱が加速する。自分の数少ない記憶にない光景。 そして不足するものは知識。アレが何なのか、理解できない。女の子がビームを撃ってる姿がどうにも納得いかない。俺の常識が異常だと警告している。 そして突然自らの左手が動き出した理由も、分からなかった。 「体が、勝手に……?」 俺の左手にいつの間にか握られている、鋼色のボディに青色の装飾が入った謎の機器。三角形を描くように配置された三つの黄玉が埋め込まれたクリスタルが、中央に填めこまれている。 「チェンジデバイス、セットアップ」 『Stand by ready set up』 いきなり動く俺の口。そこから吐き出される謎の台詞。そしてそれに答えるかのように目の前の機器から電子音声が発された。 その機器を俺の左手が腰の中央部分に持っていく。同時に機器から射出されたベルトにより、この機器はベルトのバックルのように装着された。 その光景に、既視感と違和感を同時に抱いた。 「変身」 『Drive ignition』 声と共に右手がバックルのレバーを引っ張る。その後に発される電子音声。そして、それは俺の預かり知らぬ所で完了した。 光り出し、回転を開始する黄金の三角形。 光り出す己の肉体。 光り出した体は鎧へと変わる。 一瞬で、俺の体は戦士のそれに変わった。 ・・・ 荒廃した街を模した空間シミュレーターが起動する訓練場。 そこにわたしことなのはと、模擬戦の相手であるフォワードメンバーがいた。 一対四の闘い。それは唐突に始まった。 自分に向かってくる二つの影。それを視界に収めながら更に目の前にはいない二人をサーチする。そして魔力スフィアの構築とレイジングハートへの魔力チャージを同時に行う。 マルチタスクを高度に習得しているわたしなら造作も無い。 先に来たのは自分と似たデザインの、しかし自分のより活動的にアレンジされた白いバリアジャケットを纏う少女、スバルだった。 彼女は右腕に装着されたスピナー付きの籠手を唸らせながら、足に履かれたインラインスケート型のデバイス、マッハキャリバーを走らせる。青い魔力で編まれた道、ウイングロードの上を。 空中に浮かぶ自分にもうすぐ届くという所で、わたしは先手を打つことにした。 「アクセルシューター!」 『Accel shooter』 自分の声に、右手に握られた杖型デバイス、レイジングハートが答える。 後方に配置されていた8基の魔力スフィアの内、4つが魔法弾へと変わり、スバルに迫る。 彼女は別方向にウイングロードを発生させながら機動力を活かして避けきる。けどアクセルシューターはただの魔力弾ではなく、誘導弾なのだ。避けられた4つの魔法弾は再度スバルに迫る。スバルの気は完全にアクセルシューターの方に逸れたみたいだ。 これでスバルの突撃は止めた。次はエリオだ。 わたしがスバルの相手をしている間に距離を詰めてきたもう一つの影の正体、槍騎士エリオ。 彼は槍型デバイス、ストラーダの穂先に備えられたブースターでこちらに突撃するつもりみたい。 けど、やらせない。 「ディバイィィン、バスター!」 わたしが向けた愛杖から放たれる桜色の砲撃。それがエリオに迫る。 彼は避けきれず、ストラーダで受け止めていた。 「くっ、ストラーダ!」 「エリオ君っ!」 エリオが必死にバスターを逸らそうとしている。その後方から悲鳴に近い、彼を呼ぶ可愛らしい声が響いた。 その声の方に目を向けると、まず白竜が視界に入った。 特徴的な純白の体と竜らしい雄々しい翼、その力強い羽ばたきにより飛行する白竜。その背中にピンクを基調としたバリアジャケットを着る少女、キャロが乗っていた。 「エリオ君下がって!……フリード、ブラストフレア!」 「ガァァウー!」 キャロの指示と共に、彼女を中心に魔法陣が広がる。そしてフリードという愛称で呼ばれた白竜フリードリヒの口腔に魔力が集まり、火球として撃ち出された。 「くっ、レイジングハート!」 『All right. Protection EX』 わたしの指示を待たず機敏に反応する相棒、レイジングハートはカートリッジを一発ロードし、足りない魔力を補って強固な防御魔法を発動させていた。 正に以心伝心、わたしのしたかったことを何も言わずとも行ってくれる。十年の付き合いになる相棒は、やはり頼もしかった。 火球と障壁が激突する。竜の一撃は爆発へと変わり、桜色の壁を乗り越えようと揺さぶる。……けど、わたしは抜かれない! 「キャロも強くなったね。でも、まだまだ私は負けないよ!」 『Short baster』 わたしの気合いと共に桜色の砲撃を彼女に撃ち込む。慌てて白竜を下がらせて避けようとするが、遅い! 「させるかぁぁぁ!」 唐突に視界を埋める青き騎士、エリオが砲撃の射線上に割り込む。彼はその槍で、ショートバスターを受け止めた。 小さな爆発と共にエリオをショートバスターが吹き飛ばす。けど彼の身を挺したガードのおかげでキャロを追撃するのは無理そう。なら―― 「レイジングハート、カートリッジロード!」 『Load cartridge』 レイジングハートのカートリッジを二発ロード。杖の先端にある金色のコッキングレバーが動き、二発の薬莢を排出していく。カートリッジに込められている魔力が魔杖に流れ、その暴れる力をわたしは必死に制御する。 魔力のチャージを終え、愛杖を後ろに向けた。 「見えてるよスバル!」 「わかってますよっ!……ディバィィィン、バスター!」 「ディバインバスター!」 真後ろにいたスバルのリボルバーナックルから蒼の閃光が迸る。 それをわたしは桜色の輝きで受け止めた。 同名の技同士がぶつかり合う。互いの魔力が一気に削られてゆき、砲撃同士が互いを食い合っていく。――けど、砲撃魔導師の名は伊達じゃないんだからっ! 「全力、全開!」 「く、あっ……!」 スバルの砲撃を押し返し、あまつさえ弾き飛ばす。わたしの砲撃にはそのぐらいの威力があるのだ。 「でもっ!」 「スターライト、ブレイカー!」 唐突に背後から魔力反応が迫る。スバルの反応から、罠だったんだと思う。 攻撃主は見なくとも分かる。こんな奇襲が出来る人員はあと一人しかいない。 「ティアナっ!」 『Round shield』 わたしが振り向いて手をかざす。そこに浮かび上がる魔法陣。 それが、橙色の砲撃を受け止めた。 「くうっ……!」 『Master,pleare back away.』 レイジングハートからの「後退しましょう」という提言。でも、それは聞けない。 何故なら、後ろにも脅威は迫っているからだ。 「スピーアアングリフ!」 エリオがストラーダに備えられたブースターを使って突撃を仕掛けてきた。これ以上は防御しきれない。 「レイジングハート、避けて!」 『Yes,my master.Flash move』 靴から生えた桜色の羽根、アクセルフィンが羽ばたく。それと同時に急激な加速と共に自分の体が引っ張りあげられた。 直下で交錯していく橙色の砲撃と槍騎士の突撃。 脅威は、まだ残っていた。 「リボルバーキャノン!」 背後に迫る一撃。リボルバーナックルによる必倒の拳撃。もう避けることはできない。 「ラウンドシールドっ!」 構えた左手から展開される魔法陣。これで彼女の一撃を受け止める。 「ぐっ、うおおお! 」 「バリア、バーストっ!」 スバルの拳は予想以上の威力だったので慌てて魔法陣を爆発させ、距離を取る。 だが再び迫るエリオ、キャロ、そしてティアナの連撃。リミッターがかけられているわたしにもはや手はほとんど残っていない。こうなれば一か八か、手は一つ! 「レイジングハート、アクセルフィン解除!」 『All right.Accel fin release.』 わたしの命令と共に消える靴の羽根と揚力。そしてわたしは重力に身を任せた。 「なのはさん!?」 スバルが目を見開き、悲鳴のような声を上げる。心配してくれたのかな。それを裏切るみたいで悪いけど―― 「スバル甘いよっ!」 「しまったっ!」 いち早く感付くティアナ。やっぱりティアナは頭良いな、目指す執務官は天職かもしれないね。でも、実戦では遅すぎるよ。 「ティアナ?」 「バカスバル! 早く追撃して!」 そう、今のわたしはビル群に落ちている。言わばビルの隙間に滑りこんだ状態だ。 つまり、ティアナやキャロの竜、フリードリヒ達の遠距離支援攻撃がビルに阻まれて届かない状態ということ。 「レイジングハート、アクセルフィン起動!」 『Accel fin active and load cartridge.』 アクセルフィンにより揚力が回復し、空中停止が行われる。そして残ったカートリッジを全て注ぎ込んだレイジングハートを、グリップ代わりにマガジンを握り締めながら構える。 直上にはエリオとスバル。慌てて逃げようとしても遅い。 「レイジングハート、バスターモード!」 『Divine baster』 「全力、全開っ!」 先端が鋭い形状に変わったレイジングハート。その先端から魔力が溢れ出す。それらは巨大なエネルギーとして、直上の二人を呑み込んだ。 「「うわぁぁぁぁ!」」 呆気なく、二人が吹き飛んでいった。 「はぁはぁ、はぁ・・・・・・」 ようやく、終わった。フォワード陣の中でも前衛を担当するスバルとエリオを落とした時点で相手の負けだ。 『Master,are you all right?』 レイジングハートが心配そうな調子で語りかけてくる。電子音声だから口調は変わらないけど。 「ちょっと、キツかった、かな。胸が、凄く痛い」 『Your aftereffect will be hurting.Please rest now.』 「後遺症、かぁ・・・・・・。うん、今日はもう休もうか」 『Yes,my master.』 彼女はわたしのことを良く分かってる。いつも無茶に付き合ってくれるからこそ、わたしの異常にも敏感なんだ。 そう、退院してまだ間もないわたしに襲い掛かる、この痛みに。 リミッターとこの傷。今後は前線で戦うのも辛いかもしれない。 「よーし、今日はこれで終了。みんな、集まって」 「「「「は、はい!」」」」 声がハモるフォワードメンバー。でも流石にいつもと比べると余り元気がない。まぁ、いつも元気な約二名には砲撃を直撃させちゃったんだから仕方ないよね。もしかしたら悔しかったのかな? 確かに今日は惜しかったから。 そう気を抜いたわたしに、“彼”は襲いかかってきた。 「きゃあっ!」 『Protection』 死角から撃ち込まれる拳。ビルの隙間から突如現れた襲撃者。対応できたのは、わたしの愛杖だけだった。 「あなた、誰っ?」 目の前にいるのは全身にアーマーを装着した戦士だった。 ブルーを基調とした配色、胸に付けられた銀のプロテクター、肩のアーマーと、腿に複数の長方形を組み合わさるように装着された装甲。そして特徴的なのはヘルメット前面のマスク。一本角と複眼が配されたそれは、何処と無く甲虫を彷彿とさせた。 そのアンノウンが、今度は左手を振り上げる。 「まずいっ!」 『Flash move』 瞬間移動じみた高速移動で避ける。距離や機動はともかく、速度はフェイトちゃんのソニックムーブにだって負けない。 けど、距離が取れなかったのは不味かった。 相手は予想以上に素早く、もう追撃が迫ってきたからだ。 『Round shield』 相手のキックとわたしの魔法陣がぶつかり合う。ヴィータちゃんと初めてあった時に食らったラケーテンハンマーを思い出す一撃だった。そして、消耗したわたしにこの一撃は致命的だった。 「――きゃあっ!」 ラウンドシールドを維持するが衝撃を受け流しきれない。わたしは後ろのビルにある窓ガラスに激突した。 「い、た……い」 意識が朦朧としていく。まるであの時のよう。絶望だけが込み上げてくる。 彼は上からの青い魔法弾を、右手に発生させた小さな三角形の魔法陣で弾き、わたしに迫る。 (わたし、ここで死ぬ、のかな……?) 嫌だ、わたしは死にたくない。わたしは、わたしは! その時、変化が訪れた。 「や、めろ、俺っ!」 いきなり目の前の戦士が喋り出す。意外と、普通の青年だった。少なくとも声は。 彼は足を止まり、突然頭を掻き出す。まるで、そのマスクを外そうとするかのように。 「俺は、人を殺したりなんか、嫌だっ!」 そして、彼は地面に伏した。 ・・・ これは小さな物語。孤独な戦士と少女達の閑話。戦士と少女達は邂逅し、物語は始動する。 次回『カズマ』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
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リリカルブラッド クロス式・意外と壮絶な機動6課の慰安旅行 長編へ
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リリカル・パニック クロス元:フルメタル・パニック! 最終更新:07/10/14 プロローグ 第一話「昼と夜」 第二話「激突」 第三話「混戦」 第四話「懸念」 第五話「邂逅」 第六話「宿命」 第七話「追うものと追われるもの」 第八話「第二ラウンド」 第九話「傭兵VS魔導師」 第十話「嵐」 第十一話 「潜伏再開」 第十二話「疑念」 第十三話「悪あがき」 TOPページへ このページの先頭へ
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クラナガンの街を巨大なガジェットⅣ型が襲撃した。ガジェットⅣ型は名称でこそ四番目扱いにされているが 実際はガジェットⅠ~Ⅲの基となった物であり、古代ベルカ…下手をすればアルハザードの技術が関わっている かもしれない非常に強力な代物であった。しかしそれもあくまで人間と同じ位の大きさである。 だが、今クラナガンを襲うガジェットⅣ型は数十メートル級の巨大サイズであり、しかもガジェットⅣ型の 特徴である魔力探知さえ防ぐ強力なステルス機能と巨体から繰り出される強力な破壊力によって管理局を翻弄していた。 「無限書庫のユーノ=スクライア先生が探して来た文献によると、敵の名は巨大ガジェットⅣ型と言うそうです。」 「そのまんまだな。」 「何でも古代ベルカの時代にガジェットⅣ型をそのまま巨大化して作れば強力な戦力になるのでは? と考えた者がおり、安易な発想ながらに実際に作ってしまった代物なのだそうです。」 「うん。そのまんまで安易過ぎるな。」 「ですが強力な敵である事に変わりありません。」 現場で事を対処していた武装局員達がその様な事を言い合っている間にも、巨大ガジェットⅣ型が 姿を消した状態で街を斬り崩して行く。それ故にぱっと見だけなら大規模ポルターガイスト現象にしか見えず その不気味さも相まって現場の士気は落ちていた。 「このままじゃいけない…。」 あんまり現場の局員が不甲斐ないので、助っ人として前線に駆り出された高町なのは一等空尉の姿が ちゃっかり存在した。彼女は最前線で勇猛に戦う振りをして、こっそりと建物の陰に隠れた。 そして周囲を見渡し、誰も見ていない事を確認するなり服の中から小型懐中電灯の様な怪しげな 機械を取り出し、空中にかざしつつスイッチを入れた。 その直後だった。眩い光がなのはの全身を包み、次の瞬間その身体を銀色の巨人へと姿を変えていた。 「あ! リリカルマンだ!」 「おお! リリカルマンが来てくれたぞ!」 銀色の肌に赤い模様、胸部にはクリスタル状の物が付いた異様な巨人。眩い輝きと共に街中に突如姿を 現した巨人に対し人々は恐れを抱くどころかむしろ誰もが歓迎していた。そして巨人は構える。 巨大ガジェットⅣ型に戦いを挑むつもりであった。 『ヘアァ!』 「リリカルマーン! 頑張ってー!」 さっきまで巨大ガジェットⅣ型に果敢に攻撃していた局員も戦闘を中止し、巨人と巨大ガジェットⅣ型の 対決に観戦を決め込む始末。おまいら働けと。しかし、巨大ガジェットⅣ型は依然姿を消したままであり 巨人も戦い難そうであった。 『ジェァ! ジュァァァ!』 巨大ガジェットⅣ型の鋭く巨大な鎌が巨人の背中に直撃した、忽ち巨人の背中から火花が散り 思わず巨人も悶えてしまう…が…その身体を切り裂かれるには至らない。ビルも容易く切断する威力を持つ 巨大ガジェットⅣ型の鎌をモロに受けているのにも関わらずにである。何と強固な身体であろうか。 『ヘァ!』 体勢を立て直した巨人は目から光を放つ。その直後だった。先程まで完全に姿を消していた巨大ガジェットⅣ型が 姿を現したのである。巨人の目から放たれる光線にはステルスを無効化する力があるのだろうか? いずれにせよ 姿を現した時点で巨大ガジェットも単なる巨大メカとなってしまう。巨人は巨大ガジェットⅣ型に掴みかかり… 『ジェアアアア!!』 甲高い雄叫びと勢い良く持ち上げ、地面に投げ落としていた。この激しい投げ技の前には重金属の塊である 巨大ガジェットⅣ型も忽ちひしゃげ、内部メカがショートしていく。そして巨人は巨大ガジェットⅣ型から 一歩下がると共に腕を十字に組んだ。 『ジュア!』 巨人の十字に組んだ手から眩い光線が放たれた! 光線は巨大ガジェットⅣ型を跡形も無く吹飛ばしていたのである。 恐るべき威力。勝利が決すると共に巨人は飛び上がり、天高く去って行った。 『シュワッチ!』 「リリカルマーン! ありがとー!」 「よし! 撤収!」 巨大ガジェットⅣ型は巨人の力によって倒され、武装局員達が撤収して行く中、何食わぬ顔で一緒に撤収して行く なのはの姿がそこにあった。 この巨人とは? リリカルマンとは? 一体高町なのはの身に一体何が起こってしまったのだろうか? 事は数ヶ月前に遡る事になる。 リリカルマン・出会い編へ続く
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「オルタドライブ?」 シャーリーの言う単語は、デバイス関係を多少は齧ったわたしにも聞き慣れないものだった。 カズマ君のデバイス、チェンジデバイスと言うらしい箱か又は物々しいバックルとでも形容するしかないそれは、下手なロストロギアより謎だらけのものだった。 もちろん普通のデバイスとは全く違う。機能もよくは分からない。おまけに厳重なプロテクトとダミープログラムによって内部データは閲覧できず、ブラックボックスな中身故にコピーも難しかった。 「ええ、カズマさんが何度か使用した後に調べてみたら幾つかプロテクトが解除されていたんです。それで調べてみたらそんな名前が」 シャーリーにしては珍しい、聞いたことのない専門用語みたいだ。彼女に分からないなら、わたしにも分かる筈がない。 「それで、そのオルタドライブって何のことなの?」 名前からして動力機関みたいな気はする。けれど動力機関が搭載されたデバイスなんて聞いたことがなかった。 「このデバイスに搭載された魔力精製機関のことみたいです。これのお陰でリンカーコアのないカズマさんでも魔法が使えるみたいなんですけど……」 魔力素を変換出来る装置自体を聞いたことがない、とシャーリーは続けた。 簡単に言えば人工のリンカーコアということだと思う。けどそんなもの、一体誰が作ったの? リリカル×ライダー 第五話『鉄槌』 訓練、訓練、また訓練だった。 機動六課隊員、特にフォワードメンバーは頻繁にヘリで任務に向かっていた。復興支援や、ガジェットと呼ばれる自立戦闘機械の掃討などを行っているらしい。JS事件の傷痕は、未だあちこちに残っているらしかった。 一方の俺はまだ任務に従事出来るだけの訓練を積んでいないため、一人居残り練習という有り様だった。一応、教官としてなのはが残っているのは不幸中の幸いか。 すでに俺が目覚めてから、一週間も時間は経過していた。 「飛行魔法に魔力付与攻撃、それにベルカ式防御魔法だけかぁ」 なのはが訓練データを見ながらぼやく。 薄々気付いていたが、俺は相当不器用らしい。基礎的な射撃魔法はもちろん、魔力スフィアの形成も出来なかった。というより、射撃魔法自体が向いていないのだろう。他に補助魔法や戦闘以外に使用する魔法も試したが、いずれもダメだった。 唯一、飛行魔法だけは利点になるらしいが。 「まぁ、カズマ君はどちらかというと騎士だしね」 騎士という言葉は聞き覚えがあるが、彼女の言う騎士はおそらく違う意味だろう。 「なのは、騎士って?」 「えっと、わたし達魔導師がミッド式魔法を使ってるのは教えたよね? ミッド式はね、攻撃魔法は主に射撃魔法が得意で他にも補助魔法や様々な魔法を使うのにも向いた万能な魔法体型なの。一方、ミッド式と対を成す魔法体系にベルカ式と呼ばれるのがあってね。そっちは格闘戦用の魔法を中心に戦闘に特化してるんだけど、それを扱うのが『騎士』」 ……分かったような、分からないような。 まぁ、斬り合いや殴り合いの方が向いてるのは事実だ。 「似たような戦い方をヴィータちゃんとシグナムさんがするから、帰ってきたら習うといいよ」 そのヴィータちゃんとやらは知らないが。 「それよりなのは、もう一度ガジェットってのと戦わせてくれ。実戦形式が一番伸びるのが早い気がするんだ」 俺の案をしばし顎に手を当てて考えた後、溜め息と共に首肯した。 「大体のことは分かったしね。でもガジェットじゃ、物足りないんじゃない?」 なのは曰く、殴り合いや斬り合いが主な俺はガジェットに対し相性が良いらしい。AMFと呼ばれる魔力を阻害するフィールドを持つガジェットは並みの魔導師には天敵となるものの、自分のように殆ど魔力を使わないものには何の障害にもならないのだ。故にガジェットは自分に取って少々役不足な敵だった。 「でも他にないんだろ?」 「そういうわけでもないんだけど……」 いつまでも顎に手を当てて悩むなのは。段々イライラしてきた。 「おい、そこまで悩むんならさっさとその隠し玉出せよ!」 「うーん、後悔しても知らないよ?」 なのはは、にこりと笑った。 ・・・ 「フェイトちゃんお帰り。ここんとこ忙しいのに厄介事押し付けちゃってごめんな?」 「平気だよ。それにはやてだって大変なんでしょ?」 「私は何時ものことや」 フェイトちゃんが一週間ぶりに帰ってきていた。 彼女に依頼したのはカズマ君の調査。執務官という立場を生かして本局で調査してもらっていたのだ。未だ記憶が戻らない以上、こっちが地道に調べていくしかないのだから。 「それでどうやった? カズマ君の世界は見つかった?」 「管理世界と把握している管理外世界からここ最近急にいなくなった人をリストアップしたんだけど、該当する人はいなかった」 「そっか……」 思わずほっとしてしまう自分が嫌いになりそうだ。けど、せっかく六課とも馴染み始めたカズマがいなくなったら寂しいというのは事実だ。そういって自分を誤魔化すことにする。 「けどね」 「ん?」 カズマ君の偽造の身分証明書を提出するために封筒に纏めていた手を止める。珍しい、彼女が言い澱むことがあるなんて。もう一人の親友ほどではないけれど、彼女も正義の人故に何でもはっきり言うのだ。 「実はそっくりな顔の人が15年前に日本で行方不明になったって情報があったんだ」 「なんやて!?」 まさかだった。確かにカズマ君の顔は東洋系だし、名前も日本人っぽいとは思っていた。しかし本当に日本人、つまりは私やなのはちゃんの故郷、第97管理外世界の出身だったとは。 「でも15年前だから今とは顔が違うはずなんだよね」 「あ……そうやね」 確かにそうだった。15年前に似ていただけなら今はずっと老けているはずだ。早とちりだった。 「そっか、ありがとな」 「いいよ、私も気になってたから」 そう言って微笑を浮かべた後、彼女はここを退室していった。 ・・・ 「はぁぁぁ!」 円筒形のガジェットを真一文字に切り裂く。薄っぺらな装甲は容易くひしゃげ、内部機器を粉砕しながらオイルを撒き散らして爆散した。まぁ、魔力を物質化させて、ホログラムで見た目をリアルにしているだけの偽物なのだが。 「これで、15体か」 訓練再開から10分、最初はガジェットと戦っててと言われて戦闘を続けていたが、数にキリがなかった。 そしてまた、ビルの屋上から三体のガジェットが顔を覗かせる。 「くそっ、おりゃあ!」 『Fly Booster』 俺の声に続き、バックルから電子音声が鳴る。それに呼応して背中にある二本のブースター先端に発動した魔法陣から青い魔力光が噴き出し、俺の体が浮かび上がった。 ちなみに、俺は今の体を見て思うことがいくつかある。 まずはバックル。本来はこんなものじゃなかった気がするのだ。他にも腹や肩のアーマーが不自然に感じる。本来ここには何かマークが描かれていたはずなのに。今は無機質な装甲だけだ。 そしてこの背中にあるこのブースターも違和感の原因の一つだ。 「おりゃあああ!」 『Slash』 飛び上がった俺の剣が蒼い魔力光を帯びる。 俺はビルに着地しながら右足を軸に体を回転させ、三体のガジェットを一度に切り裂いた。――そして一歩遅れて爆発する。 「これで、18体かよ」 違和感が何なのか、俺には分からない。今は精一杯生きるしかないのだから。 再び床から四体のガジェットがせり上がる。まだまだ休ませてはくれないか。 「りあぁぁぁあ!」 フライブースターを噴かせ、一気に突進する。いや、しようとした。 それを、轟音が遮った。 「だ、誰だ!」 ガジェットを粉砕した影。背は低い。だが赤い衣装と右手のハンマーが、俺の恐怖心をくすぐる。いったい誰だ? 「なのは、これは一体――」 「お前がはやてを誑かしたのかぁぁぁあ!」 「えぇぇぇ!?」 その赤い影が、俺に襲いかかってきた。 ・・・ 鬱だった。 何故彼をあそこまで罵倒したか分からない。犯罪者と勝手に決めつけ、彼に辛くあたった自分が堪らなく憎い。 任務の合間、つかの間の休憩時間に、あたしは何をやっているんだろう。あの模擬戦以来、考え事ばかりしている気がする。 「ティア?」 声がかかる。スバルだ。あたしに元気がないのを察して来てくれたんだろう。 「ねぇ、スバル」 「何?」 スバルになら、悩みを吐いてもいいかな? 執務官になるために、あまり他人を頼ったりはしたくないのだけれど。 「どうしてあたし、カズマさんにあんなに辛く当たっちゃったんだろう」 「ティア……」 理由は無いわけじゃない。ナンバーズを捕まえた際に、しかるべき罪を課せられるかと思ったら驚くほど軽くて管理局に不信感があったとか。最近良くしてくれているなのはさんを蹴飛ばしたことが許せなかったとか、はやて部隊長が庇ったのが信じられなかったとか。この頃アレの習得が上手くいかず溜まったストレスも原因かもしれない。ホントに、いろいろ。 けど本当は、この機動六課という輪を壊してほしくなかっただけかもしれない。そんな小さな事のために辛く当たった自分が、本当に小さく見えた。 「ティア」 「何よ?」 「一緒に謝ろうか」 「えっ?」 まさかスバルがそんなことを――と考えて、あたしよりもずっとそういうことを気にするやつだったのを思い出した。 「あたしも最初はまだ本調子じゃないなのはさんに暴力を振るったあの人が許せなかったけど、今では反省してるんだ。なのはさんがあの人は悪い人じゃないって言ってたの、早く信じておけば良かったって、今頃になって思ってる」 目に涙を滲ませ、顔を伏せながら言うスバル。きっと任務中も悩んでいたのだろう。それを気付かせないように空元気を出していたに違いない。あたしがいつも通りだったら分かってあげられただろうに。それが悔しい。 「だから、その」 「分かった。スバル、一緒に謝りに行くわよ」 「ティア……」 あたしはなるべくいつも通りに笑いながら、 「くよくよ悩むなんて、アンタらしくないでしょ」 あたしは、そう言った。 ・・・ 何故だか俺は、ティアナとスバルのことを思い出していた。 ティアナとスバルが謝りに来たのは昨日の話だ。こっちはかなり驚いたが、願ってもないことだったので俺も喜んで受け入れた。 何故、今そんなことを思い出すのだろう。 「ぐあっ!」 「どうした! その程度かよ!」 赤い服を着る人影は少女だった。ドレスのような派手なフリルがいくつも付いた服を来ていて、年は小学生くらいだろう。可愛らしい顔立ちをしている。 そんな少女が憤怒の形相を浮かべて、ハンマーを振り回しながら襲いかかってくるなんて悪夢としか思えない。 「グラーフアイゼン!」 『Jawohl!』 威勢の良い彼女の掛け声と、ハンマーから鳴る同じく威勢の良い機械音声が重なる。それと共にハンマー基部のコッキングレバーが動き、薬莢が排出される。 「カートリッジ!?」 「ラケーテン、ハンマー!」 『Raketenhammer!』 赤い魔力がハンマーを包み込む。一瞬の後、ハンマーのヘッド部分は異形の姿に変貌していた。 叩き付ける部分には鋭い突起が、反対側にブースターが付いた新たなハンマーヘッド。見るからに危険そうだと分かる凶悪な外見だ。 それを彼女は、ジェットを吹かして自分の体を軸に回転させながら俺に叩き付ける! 「あぁぁぁぁぁあ!」 俺はそれを右手に発動させた小さな三角形の魔法陣型の盾、パンツァーシルトで受け止める。 甲高い耳が馬鹿になるような音が鳴り響き、ハンマーから生えた突起が俺の盾をガリガリと削っていく。 凄まじい衝撃と突起による追加ダメージ。 俺を守る盾は、限界に達しようとしていた。 『お願い! わたし達の六課を守って!』 その時、なのはの声が耳を震わせた。 ――守る……? そうだ、守らなければ。今六課隊舎を守れるのは俺だけなんだ。 ――そうだ、俺は。 俺が、俺が戦わないと。六課を、ティアナやスバル、エリオ、キャロの帰る場所を守るために。 ――俺はもう、誰も失いたくない。 そうだ、俺は―― ――“全ての人を、守ってみせる!” 「おぁぁぁぁぁっ!」 右手が輝き出す。眩い群青の光は、右手に展開されている三角形の魔法陣を包み込んでいき、亀裂をみるみる修復させていく。 「な! コイツ、いきなり魔力量が――」 少女が表情を変える。だがそんなことはどうでもいい。 俺はフライブースターを最大出力にして押し返す。 均衡する力と力。 「バリア、バースト!」 その状況を、俺はあえて粉砕する。 「なぁっ!?」 盾となっていた魔法陣が爆発し、彼女とそのハンマーを吹き飛ばしながら噴煙で包み込む。これで一時的だが眼は潰した。 俺は死角に一瞬で飛び、青い光を帯びさせた剣を降り下ろ―― 「そこまで!」 ――そうとした所で、戦いは終わりを告げた。 ・・・ 「なのは! てめぇ!」 先程まで戦っていた赤髪の少女が、なのはに掴みかかっていた。 「ごめんね、ヴィータちゃん。ああ言ったらカズマ君と良い戦いをしてくれるかと思って」 「にしてもやり方が悪過ぎだ!」 おそらくなのはの言っていた秘策はこの少女の事だったのだろう。確かにえらく強い相手だった。 ちなみに今いる食堂で夕食がてら事情を聞くということで集まったのだが、彼女がキレ出してしまったため俺には何も出来なかった。 しかし俺はなのはの少女みたいな甘い声にまんまと乗せられたということか。考えてみれば俺が戦わずとも彼女がいた訳なのだから、責任感を持つ必要はなかったのだ。くそ、あの高い声と必死さのある口調は反則だ。思わず守りたくなってしまった。 でも、俺は何か思い出しかけた気が――。 「ホントごめんね。今度はやてちゃんが休み取れるようにわたしが仕事引き受けるから。一緒に遊園地とか、この頃行ってないんじゃない?」 「ほ、ホントかなのは? やったー! はやてと久しぶりのお出掛けだー!」 単純な奴だな、と思ったのは内緒だ。なのははもしかしてこうやって彼女“で”遊ぶことを目的としていたのではないか? そうは思いたくないが……。 「ところでなのは。この子はどういう?」 「あたしか?」 なのはに対して散々怒りをぶちまけたからか、先程よりはずっと爽やかな自信に満ちた笑顔をこちらに向けた。 「あたしはヴィータ。はやての守護騎士ヴォルケンリッターにして機動六課スターズ分隊副隊長のヴィータだ」 赤髪の少女、ヴィータはそう名乗った。 ・・・ ようやく仲直りをしたティアナはカズマへの詫びとしてクラナガンの案内を志願する。二人での奇妙な買い物は、しかし平和には終われない。 ついに物語は始動する。最悪の方向へと。 次回『覚醒』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
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