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アーダー イーター+ファレッロ ヴァグマ 不動鬼+ネコカゲ 苔フォモール フォモール+苔ゴブリン ※カップリング先行企画(静かの山) ファレッロ ヒューリー+スケルトン ヒューリー+影食い エエエク+ミカシュ ※カップリング先行企画(風なき草原) ヨルマ ミカシュ+メギルエル アイアンナイト ダークナイト+ニュケノイア ダークナイト+不動鬼 ピンキー スタ+リット ドムーア 苔フォモール+ドラッド ネコカゲ 影食い+エエエク 影食い+ミーク 影食い+契約者 影食い+イーター デビルフォーク スタ+イーター スタ+ミーク 毒袋 契約者+ミーク 契約者+毒ゴブリン デスタ メギルエル+デビルフォーク あしん 不動鬼+フォモール リット スケルトン+土ゴブリン 土ゴブリン+土ゴブリン メカゴーレム ヴァグマ+ゴーレム ホワイトドラゴン ドラゴン+失敗作 顔鬼 不動鬼+石樹 どしん あしん+グッグ マスター キスタ+デスタ
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ゴーラ演義、ナーハン離宮の段 1 書きたいところだけ。時系列はすでにぐちゃぐちゃだし、誤認もめちゃくちゃにあるし、もうタヒぬか。何のために書いてるかとか、とっくの昔に喪失してて、まあゾンビだからな。 「よっ」 いつも通りの軽薄と言っていい仕草と声色に、マルクスはどっと力が抜ける。 北方軍司令サウル・カダフ元帥はいつもどおりに元気だった。 開封後直ちに帝都へ帰還せよ。帝都にて北方軍本部付きに復帰せよ、とだけ記された命令書を見て、マルクスは文字通り鑓の機神をかっ飛ばして帝都へと飛び戻ってた。命令書の署名にしても、急な復帰といい、元の部署と担当の急変を思わせたからだ。海賊事案の急変はブルーノ班の喪失どころではない被害をゴーラ湾南岸に出しかねない。 が、事態はもちろんそうではなかった。 軽薄ともいえるサウル・カダフ元帥の様子は、それを示していた。賢狼の名を奉られるこの獣人の元帥がどこまで本気でいつもの態度をしめしているのか、マルクスはいまだによくわからない。 彼、サウル・カダフ元帥は帝都の北方軍連絡事務所で、アウレイ騎士長ー参謀記章をつけているから北方軍参謀ーとともに在った。サウル・カダフ元帥のほうはいつもどおり、長椅子で両腕両足を伸ばして安楽な姿でおり、アウレイ参謀のほうは組椅子から睨むようにマルクスを見る。 「これを」 アウレイ参謀は分厚い資料をマルクスへと押し付け、サウル・カダフ元帥のほうはにへらと笑う。 「お前さんをひととき返してもらう要件ってやつだ」 最高の機密格を示す標示をつけられた、むつのはな、六花と称する作戦資料だった。 「読んでおいて。いまここで。四半刻したら他所様と参謀会議。二刻したら元老院方々に御説明会。北方辺境公御臨席」 「会議に、自分がですか」 「説明は自分が行う」 アウレイ参謀はむっつりと言う。アウレイ参謀、黒騎士の小隊長にして累代の近衛騎士家系であるのだが、彼には大北方戦争のときに21旅団業務を分担してもらって以来だった。まあもともとはマルクスのしくじりから始まった事であるし、当人には当時はあまり本意ではない任務でもあったらしい。その後に近衛騎士の矜持を回復できただか何だかで北方軍本部で機嫌よくあたる任務となったらしいのだが、彼からマルクスへの印象は、初めの時とあまり変わらないらしい。 むつのはなー六花作戦は、六号計画の量産前試験の最終段階だった。六号計画機、新開発の重魔動機の成熟は進んでいるという。噂ではイル・ベリサリウス元帥があまりの高性能に惚れ込み高性能を保ったままの開発をもとめ、一方で元老院はあまりの高価さに調達に難色を示しているという。アウレイ参謀に押し付けられた資料にはそれ以上のことが書かれていた。 「ゴーラ湾を渡洋・・・・・・」 試し切り、と。 何でもないというふうにサウル・カダフ元帥は言った。 「そ。北方軍司令からの提案。実施は御納得済み。細部計画を報告したら、あとは実施」 北方軍司令とは、眼の前にいて、北方軍司令からの提案と言った人そのもの。つまりサウル・カダフ元帥だった。マルクスは応じる。 「自分の役割があるとは思えませんが」 「うん。伝書係」 それは気が楽ではある。言葉通りならば。 渡された資料にはは、六号と呼ばれる新重魔道機についてはほとんど書かれていない。臨席者にはすでに承知のものと扱われている。マルクスも知らないわけではない。整備所要人工の劇的な低下と、黒の二改以上の魔力放出能、それらは大北方戦争で窺い見ていた。ただ、その後のイル・ベリサリウス元帥が惚れ込んだという経緯については噂しか知らない。 六号計画機量産型は、北方軍から配備が始まると予定されていた。北方における機神対応計画、ヤッサバたち龍神乗りに供されるのだろう。画期的に少ない整備所要人工は、12連隊のような驃騎兵連隊よりも作戦規模の機動性が上がることが想定されている。驃騎兵連隊すら後詰に置き去りにして、最小限の支援で単独で対機神戦闘を実施できる。北方軍と北方辺境には極めて都合が良い。北方軍は帝國軍なのだが、北方辺境の負担も少なくない。 「これは、暗殺と受け取られませんか」 「検討に検討を重ねた目標だ。現在、ゴーラ帝国内では政治的混乱が進み始めている。太守格の失脚も暗殺も起きている」 むっつりとアウレイ参謀は応じる。と、いうより、実施が先に決められ、そののちに目標を選出させられたのかもしれない。それにマルクスはそもそも議論する気はない。いつもの悪い癖が出てしまっただけだ。 「失礼した。計画に意見は無い」 資料では標的について明記されていた。ナーハン離宮近傍のアナン砦とある。アナン砦はともかく、ナーハン離宮のことはマルクスも知っていた。今のヨルマ帝の父帝、かのゴルム帝が即位する前、当時のゴーラ皇帝だったサウラ少年帝を幽閉した離宮がここだった。そのサウラ帝はこのナーハン離宮での舟遊びで水死したと伝えられている。もちろんゴーラ国内ですら、サウラ帝の崩御には当時のゴルム太師が関わらなかったはずがないと考えられていたという。だが当時ゴーラ帝国で吹き荒れていた雄渾主義からすればサウラ帝は情弱にすぎたと評された。こののちゴルムは自らゴーラ帝国皇帝となり、雄渾なるゴーラの建設に邁進した。折しも帝國内戦のとき。ゴルム帝は雄渾を呼号しつつ帝国をとりまとめ、諸大公を従え、連合王国や西方中原との交渉を進めた。そうしてゴルムの求めるゴーラの雄渾を推し進めていった。最後にはクルル=カリルの前で憤死したのだが。 アナン砦については、さすがのマルクスも知らない。だが資料は要領よくまとめてある。ナーハン離宮同様にゴーラ湾に面したところにある。わずかに南東に膨らんだ半島の東側付け根にある。皇帝領首都ミラクゴルドから見ると東側に離れたゴーラ湾北部に面している。アナン砦はナーハン離宮の南東の守りでもあり、またナーハン離宮港に出入りする船を監視もできるところにあるという。 アナン砦の城将はシクステン・シグムンテソン・シヴェン。ゴーラでの武人としての評価は高いという。ただそれは帝國での軍人の評価とはちがう。 シヴェン城将はまたアナン砦の守兵の忠誠も篤く得ているという。砦の守兵らは、先般の大北方戦争においても出動することはなく、一定以上の練度を保っていると評価されている。大北方戦争に出征しなかった理由はアナン砦の役割を保つためであったらしい。形の上では離宮警護の一部だ、と。ナーハン離宮から見れば守りと同時に出入りを制するところにある。 なお、今のナーハン離宮にはスヴェン・テディソン・ガーゼンという城将格が駐留している。これは近年の配置で、ロスヴァイセ・カールドッテ・ヴェストラ提督ーかのヴェストラ大将軍の細君でもあるーに近い人事と評価されている。アナン砦とシヴェン城将が標的とされたのは、このナーハン離宮のガーゼン城将と不和が情報として上がってきたからだという。背景情報はマルクスも知っていた。ゴーラ本国では、特にスカニア大公二ダロスらが、ヨルマ帝への二心を隠さなくなっているという。ゴーラで喧伝されているものとしては、帝國に屈したヨルマ帝は情弱であり、ゴーラ湾そして北岸本土での決戦を挑まないのは雄渾に悖るというものだ。またゴルム帝は真なる雄渾を果たし得なかった、ただの暴虐の輩にすぎぬと。いわく、ゴーラはゴーラの紐帯へ立ち返り、暴虐による偽りの雄渾ではなく、紐帯による真の雄渾を目指すべきだ、と。 もっともそれらはゴーラを席巻するほどではない。ゴルム帝をして憤死させたクルル=カリルの攻撃は、ゴーラ本国沿岸で行われており、多くのゴーラ国民がそれを見てもいた。それはいまさら雄渾の呼号ではどうにもならない本当の暴虐であったのだから。 一方で、ヴェストラ大将軍ら宿将はヨルマ帝への忠誠を篤く保っている。しかし軍勢としては帝國との戦争消耗から立ち直り得ていない。皇帝領の安堵は保たれているとされているが、むしろ穏健な籠城策ではないのかという分析もある。ベングンド参謀、ヴェストラ大将軍の知恵袋とも言われるヨーケ・ヨハンソン・ベングンドのシュリッセボルグ要塞での巧みな籠城戦は知られている。かの時、ヴェストラ大将軍の陣前反撃に帝國軍が手こずった。同じような策が見て取れるという。ヨルマ帝は、ミクラゴルドより皇帝領内へ短い行幸を繰り返しているのだと。この行幸を契機に皇帝領へのきめ細かい知行を進めようとしているのだと。 さらにヨルマ帝はゴルム帝の頃に諸国と結んだ、海外港での権益人事について様々に発布して、海外よりの穀物輸入を安定化せんとはかっているともいう。それらについては、ロスヴァイセ提督、ロスヴァイセ・カールドッテ・ヴェストラ提督の献策であろうと言われている。南岸を失ったゴーラ帝国は、今もゴーラ湾の通商を制しながら、連合王国や西方中原からの穀物輸入を必要としている。しかしその対価となるゴーラ鉄は、スカニアこそが圧倒的な輸出元なのだ。それらゴーラ船への便宜を制することで、スカニアを制しようという策なのだと。一方で、言ってみれば港湾税のように富を引き抜くヨルマ帝へのスカニア人の反発はより強まっている。それがゆえにヨルマ帝は人事をヴァーキア寄りに移しつつもあり、なおのことスカニアの反目は強まらざるを得ないのだと。同時にそれはスカニアによるヨルマ帝への反発を、スカニアとヴァーキアの対立にすり替えようという策とも取れる。 全体としてはゴーラ内部の対立は深まっている。特に諸国民街のある港湾街では対立も厳しく、太守格でも情弱と吊るし上げられ失脚するものもあれば、雄渾を呼号する者に暗殺、というより挑まれて敗死するものもあるという。それ自体はマルクスも知っていた。ゴーラ湾の海賊の痕跡を追跡するなら、対岸の権力関係にかならず繋がる。対岸の混乱が深まるほど、南岸側、いまや帝國領となった旧ゴーラ諸王国では流通すべきものが減ってゆく。貨幣か、穀物か、鉄か、帝國側から得たなにがしかか。抛金という形で海賊に吸い出されてゆく。 ともあれ、シヴェン城将が標的となったのは、まず陸将であり重機装甲を主とした兵勢をもっていること。標的としての強度が十分なこと。自身に政治的対立関係を伺わせること。そして帝國に有利過ぎない対象ということだった。何らかの形で敗死にしても、行方不明になったとしても、疑われるのは帝國ではなく、その他のゴーラ勢力というわけだ。 一方、ナーハン離宮のガーゼン城将を標的としなかったのは、ガーゼン城将がどちらか言えば船舶戦に長けた武人で、また情報ではナーハン離宮の整備を進めている穏健な城将と見られているからだ。ただ大北方戦争戦前より窮する皇帝領で、いかなる資金でナーハン離宮を修繕しているのかはさだかではない。資料の分析はそこまでた。だがナーハン離宮の来歴を知れば、例えばスカニアの資金を得て、ヨルマ帝の幽閉のためにナーハン離宮を修繕しているとも考えられる。単なる感想だ。そしてマルクスの感想はこの六花作戦には関わりはない。 六花作戦は、アナン砦のあるアナン半島の、砦とは反対側、西側に上陸することとしていた。小さな半島そのものをアナン砦からの盾とする。すでに先遣部隊はアナン半島に地堡を得て、アナン砦を監視している。六花作戦部隊はアナン半島より内陸側へ進入、陽動作戦を実施してアナン砦より守兵部隊を吸引し、これを撃破、さらに居座ることで、シヴェン城将を誘引して、これを撃破する。 暗殺にしては規模が大きい。シヴェン城将程度を暗殺するために、帝國が手を下したと考える者は、よほど確実な証拠を手にするものだけだろう。 それがために六花作戦では、証拠隠滅についても厳しく求めていた。貴重極まりない六号計画試作機であろうと、何らかの形で当該機体が行動不能となったとき、現地で処分する。確実に。 騎士仮面の破壊、機体仮面の破壊、機体中枢の破壊、胎内の操縦槽の爆破、海没。資料ではこのための爆薬を各機が携行することとなっていた。操縦槽へ設置する爆薬は機体中枢を同時に破壊する量であったし、そのときに同時に騎士の装着する仮面を焼却破壊することになっていた。機体仮面は外部にあって防護されてるために、操縦槽脱出後の騎士が別の爆薬か、その他の手段、場合によっては僚機によって破壊するものとしていた。もちろん搭乗騎士が脱出できなかった場合、僚機が外部から操縦槽と機体中枢を破壊する。 確実に破壊する、とされている以上、破壊確認を行わなけれならない。誰が行うといって、今回は作戦指導を行う以上、指導参謀ということになる。ここまで読めば、伝書係、というわけではないのがわかる。 「・・・・・・」 もちろん、破壊は最終手段だ。回収こそが本来の絶対要求だ。その援護のほうがずっと重要だ。とはいえそれも伝書係ではない。 六花作戦には3機の六号計画機投入を予定し、これをそれぞれ一隻の櫂船に搭載する。予備としてさらに一隻が同航し、これには予備の武装が搭載される。何らかの理由で六号計画機輸送船が損じたときには、予備武装を投棄して六号計画機を搭載して退避する。船団はさらに三隻を予定している。二隻は馬載し、瓢騎兵を一個分隊ずつ輸送する。偵察と支援のためだ。瓢騎兵自体は、北方軍にも適切な部隊が無い。中央の親衛軍から借り受けることになっている。第八瓢騎兵旅団の精鋭からだ。今でも皇籍旅団長部隊として、皇籍指揮官にしかできない任務を行っているだろうか。そして最後の一隻は指揮と偵察を行う。先発の先遣部隊を回収するのもその目的だ。船団の規模は七隻。十分に大きい。海賊なら人手のほうを増やすが、六花作戦部隊は六号計画機を輸送し、帰還させることが第一。支援部隊も最小となる。厳しい任務だ。アウレイ参謀は熟練の黒騎士であり、小隊長でもあるが、彼の為の黒の二を輸送し、また回収する余裕もない。アウレイ参謀はいう。 「完全に独立した作戦か」 「自分が同行し、指導する」 ゴーラ湾を南岸からアナン半島まで片道で二日、それも条件が良くて、だ。往復で四日。情報の伝達も少なくともそれだけかかる。また通報だけを目的とした船が頻繁に行き来すれば、それこそゴーラの目を引くことになろう。なるほど、伝書係は必要になる。 「自分が担当先任、貴公が次席となる。指揮官はバルコフ機装甲小隊長が作戦中隊長を兼任する。次席はグラミネア騎士長。その他の部隊、すべてバルコフ小隊長の指揮下となる。ただし現実には機装甲小隊長がすべてを管轄するのは極めて困難だ。船舶なら船舶、瓢騎兵なら瓢騎兵の既存の編成それぞれを指導するしかない」 これはどう見ても伝書係を求められているわけではない。 「アウレイ参謀と自分なら、離れていても意思疎通は可能、か・・・・・・」 「そうだ」 物相の観相を使うことになる。つまりは伝書係。 そしてマルクスには、アウレイ参謀に借りがあるのだ。 「わかりました閣下。アウレイ先任、よろしくたのむ」 アウレイ参謀はすこしの息をついた。 「よろしく頼む」 「じゃあ、二人とも以前のように仲良くやってくれ。そろそろ中央参謀本部各課だのがやってくる」 「中央参謀本部対外関係課員、北方担当課員、及び担当特別参謀です、閣下。北方辺境公より御側役も一名、さらに軍務担当執政官からも補佐官が一名、参画されます」 「うん、頼もしいねえ。まあヤッサバたちの相手をするより楽かい」 「とんでもない」 「まあ、その次は本チャン相手だからな。よろしくたのむよ」 この賢狼の軽薄な言いようは、たぶん本気で素なのだな、とマルクスは思った。 今になって調べてみると、認識が間違ってるとか間違ってねえとかそういうレベルじゃない間違いがあって、まあどうしうようもないが、なにせゾンビだからな。 どうにもならん、が、永久に描き続ければいつかは訂正もするさ。 2以降があり得るかどうかはわからん。
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14 ゴーラ演義 ナーハン離宮の段 14 パラグラフ 14 残念ながらケイレイはやる気がなくなってしまった。 ここは北方軍司令公室。かの賢狼サウル・カダフ元帥の執務室だ。 「なんだろうねえ、君ら」 サウル・カダフ元帥はいつものように執務卓ではなく、組椅子の長椅子のほうに両手両足を広げて安楽な姿でいる。卓に置かれた報告書をぱらぱらーっとめくると、ふう、と息をつく。それから長椅子の向かいに据えられた組椅子のマルクスとアウレイを見る。 「これ、本当だとしてさ、北方辺境公とかあねさんとか副帝陛下とか元老院に報告できる?」 「と、言われましても」 半ば抗うようにアウレイは言う。 「途中途中で魔導具で送信するよう次席参謀には指示しておりましたし、内容もそのままです。起きたことを可能な限りそのまま書き記したつもりです」 「そりゃわかってんだけどさ、ゴーラ皇帝の離宮に、ヨルマ陛下にヴェストラに、ゴーラの空飛ぶ機装甲に、グイン=ハイファールと六号が肩を並べて、八面六臂の大活躍ってさ・・・・・・」 にはは、と元帥は困ったように笑う。 「これ、芝居小屋でやってるゴーラ演義そのままだもんね」 それでも、その八面六臂の大活躍のほうは紙面の都合もあって概要だけにとどめおかざるを得なかったのだが。 「ケイロニウス・ガリウス執政官とか、これ読んでどんな顔すんのかねえ」 マルクスはあの厳しい顔を思い浮かべ、さあてどうなのかね、と無責任に思う。 「これ、六号の機密状況評価とかどうするかねえ」 ぼやくように元帥は言う。それは頭の痛いことの一つだった。破損した装備を含めてほぼ回収した。だが実機の戦闘状況を観察されてしまったのは確かだ。 一方でマルクス達としても、グイン=ハイファールの戦闘を実見し、それだけでなく欠けの魔導具を使って送信もしている。ヨルマ帝以下帝室中枢の状況情報も把握してきた。ゴーラ帝室は喧伝されている以上に家族的な強い紐帯に結ばれている。逆に言えばそれが外に向けられないかぎり、帝室の力は限られたままだ。 「あ、そうだそうだ」 不意にサウル・カダフ元帥は指を立てる。 「ベングンドと会ったんでしょ、どんな奴だった?」 「泣いてましたね」 マルクスが応じる。アウレイも頷く。 「ああ、泣いてたな」 「ホントに会ったの、君ら」 元帥は疑わしげに目を細める。泣きのヨーケとはどの資料にも書かれているが、本当にそうだったのだから仕方ない。とはいえヨーケが相手でなければこのような危うい綱渡りのような冒険は全うできなかったはずだ。 こんな話しだったのさ 終 事態14に備えた事前準備投稿である。このシリーズの続編が投稿されない場合は14へ進め。
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友達紹介で手に入る伝説の卵から手に入る。読んではいけない本を読んだせいで 異世界に飛ばされてしまった悪魔。鈴の音を聴きながら不思議な本ばかりを好んで読む。 (色違い>ヨルマ、ミカシュ) 成熟レベル:29 加入時 出現マップ ○ ◇ □ ── ── 奇妙な話(前全体/精神) 奇怪な話(前全体/精神) 鈴の音(前全体/精神) Lv 肉体 精神 健康 ○ ◇ □ 1 1 3 3 2 2 1 2 1 3 4 2 2 1 3 1 4 4 2 2 1 4 1 4 4 2 3 1 5 1 4 5 3 3 2 6 1 5 5 3 3 2 7 1 5 5 3 3 2 8 1 5 6 3 4 2 9 2 6 6 4 4 2 10 2 6 6 4 4 3 11 2 6 7 4 4 3 12 2 7 7 4 5 3 22 3 10 10 6 7 5 36 5 15 15 10 11 8 カップリング 対象 結果
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ゴーラ演義 ナーハン離宮の段 8 ナーハン離宮の夜の巻 「ヨルマ陛下は重傷を負っている」 「生きているのか」 アウレイは動じない。歩きながらマルクスは応える。 「生きてはいる。だが俺達に向かって言葉を話せる状況ではない」 「ならば都合は良い。貴様の策なら、ヨルマ帝が伏せているなら俺達が独自の判断で合力するのは情にはかなっている」 理にはかなっていない、ということだ。だがアウレイは是とした。もはや他に道がないということでもある。離宮を退き、アウレイとグラミネア、それにマルクスは部隊へと中庭を歩く。日はすでに落ちかけている。マルクスは言った。 「ヴェストラは滞在を許すとの裁可を下している。ヨーケの奴は、ヨルマ陛下のお声で許しがほしければ、目覚めるまで、ボロ布になるまで使い潰してくれると抜かした」 「次は、奴らの敵、か。備えるなら、早いほうがいい」 「脅威の度合いがわからない。ミクラゴルドのような城塞都市から退かざるを得なかった状況はかなり厳しい」 「貴様、予想せずに合力すると言ったのか」 「ああ」 「情報は?」 グラミネアが問う。マルクスは応える。 「無い。ミクラゴルドの宮城を奇襲したのは特殊部隊であったらしい。魔術的な攻撃とともに、諸将との連絡も取れないまま脱出せざるをえなかったんだ」 「諸将への連絡は?」 「取っているが皇帝領がどうなっているかわからない」 「敵は」 「特殊部隊の追撃はあったようだ。彼らが想定しているのは魔道機特殊部隊による襲撃だった」 アウレイは息をつく。 「こちらの人員をこの離宮に入れて防御態勢を作る。ヨーケと話そう。グラミネア、君は小隊に復帰し、六号小隊と部隊を離宮敷地へ入れろ。ゴーラ部隊との配置区分をうまく作らねばならん。それに魔力による自己復旧は今後の魔力所要と機密を考えると行わないほうがいいだろう」 「了解しました。指揮系統はどうなりますか」 グラミネアの問いにアウレイは苦笑する。 「今は、従前のままだ」 「バルコフ小隊長が作戦部隊長のままですね」 「ゴーラ司令部と協議して自分が指導する」 「了解」 少しの苦笑がグラミネアから漏れる。アウレイは言う。 「頼む。我々はヨーケと話す」 グラミネアは離宮の外へ、アウレイとマルクスは再び離宮へ。 話を聞いたヨーケは、そうか、と言った。 「大手門をカールスボルグ将軍におまかせし、我が殿には自在に動いていただくこころづもりであった」 「なるほどシュリッセボルグ要塞のごとし、というわけか」 応じてヨーケはにやりと笑みを浮かべる。アウレイは振り向き指で示す。 「では我が方の機装甲を大手門後ろへ配置する。小銃兵は壁際だ。驃騎兵は予備。おおよその配置はこれでいいが、配置区分を厳密にしなければ敵に付け入られる。我々が入らない部分を作り、これを明示してほしい。あとは・・・・・・」 アウレイはマルクスを見る。マルクスは別の答えをする。 「機装甲、アナン砦の軍勢から取り上げられないか」 「奴らはスカニアに通じている節がある」 ヨーケは応じる。マルクスは言う。 「構わない。こちらにはヴェストラ閣下と六号がある。引き渡さなければ砦ごと潰して後顧の憂いを断つ」 ふっふ、とヨーケは妙な含み笑いをしてみせる。 「何か」 「いくさにおいては何段も重厚な策を打ってくる嫌な敵であったが、味方にすると軽妙な策を次々に打ち出してくる。つくづく敵に回せぬ相手よ」 それはサウル・カダフ元帥への評価であり、今の軽妙な策とやらは、打つ手が無く苦し紛れに過ぎない。 アナン砦の件は、実にあっさりと終わった。ヴェストラ自身が出馬し、機神グイン=ハイファールが何の要求も示さずに、拳で城門を打ち壊したときに、中庭で平伏して降伏したのだった。とはいえ、機装甲の搭乗訓練を受けた兵は少ない。アウレイとマルクス自身、カールスボルグ将軍手勢のうち軽症だった一人、あとは将軍その人。 「これが城将機か」 砦の格納庫の一番奥が、ゴーラにとっては上席であるらしい。そこに作られた座に重々しく腰掛けてその姿がる。今となってはこの一機を斬るだけだった作戦だったのが信じられないほどだ。 「先任が乗ればいい」 だがアウレイは、いいや、と頭を振る。 「・・・・・・」 カールスボルグ将軍は、すでに起きられるようになったという。義娘とともに在るという。ヨーケとマルクスたちが向かったのはその義娘が伏せている寝所、最初にヨルマと言われて導かれた寝所だ。カールスボルグ将軍の義娘がヨルマを偽っていたというわけだ。そしてマルクスは思う、カールスボルグ将軍が己の身をもって魔力の矢弾を防ごうとしたのは、忠義のみではないかもしれないな、と。ただ将軍を前に口にして良いこととも思えない。話はまずヨーケからも口火を切らせる。 カールスボルグ将軍は寝台の脇にどっかりと座っていた。体中に包帯を巻いたままの痛々しい姿ではあったが、動けぬというほどではないらしい。ただマルクスたちを見ると、やはりにわかに険が面に現れる。 「余にいかにせよと」 「アナン砦はすでに占領し、城将の機を得ております。それに乗り守りを固めて頂たく存じます」 ヨーケは将軍の向かいに相対して座り、そういうのだ。アウレイもまた片膝をつくので、勢いマルクスもそうせざるを得ない。 「承知した」 「他に機体は無いのか」 小柄な双性者が言う。ヨーケが応じる。 「もちろんある。ただ重魔道機ではない」 「構わない。あたしも乗る」 「私もだ」 剣を携えた双性者もうなずき、続けて言う。 「ザフィール、シャマルは主を直に守れ。よろしいか義父上殿」 「ああ、そうしてくれ。お前たちがプロケライエのもとにあると思うだけで、どこまでも心強い」 そして将軍は大きな手で寝台の少女の髪を撫でるのだ。「また行ってくる。お前はシャマルの言う通り、よくよく養生するのだ。寝台で魔術に手出しなどするなよ。戻ったときには俺に元気な顔を見せろ」 「うん。とおさま。ご武運を」 将軍の大きな手に己の手を寄せて、少女は言った。 城将機には補佐で手勢だった搭乗員をつけて中央で予備とする。残りはアウレイ、マルクス、それから二人の双性者の四機。城将機も合わせて六機。 「連中は飛んでくる。全部じゃねえよ」 赤毛の小柄なヴィートは歩きながら腕組みをする。 「そもそも数が少ない。全部で十かそこらしか出てきてない。飛ぶのは数機だけだ」 でもな、と怒った様子でヴィートは言うのだ。 「お前らのあれを思い出して将兵が崩れたんだ」 「それに、そもそも洪水と魔術を組み合わせた攻撃が行われていた。ただの洪水ならミクラゴルドの城壁がひずむことなどありえない」 「沖合にまで流れてきた泥水はそれだったのか」 「グイン=ハイファールが水の流れを叩き割って引き裂いた。だから我らは脱出てきたのだ」 「ああ。痛快だった。あれがあればお前らだって叩き落とせただろうにな」 おそらくヴェストラが渡海してきたときに、陽動艦隊が飛ばした重魔道機の系譜なのだろう。 「ヴィート」 前を歩くカールスボルグ将軍が振り返りもせず言う。たしなめたのだろう。今はかりそめながら敵ではない、と。 「あれくらいの力を見せろよな、お前ら」 「無理を言うな」 アウレイがいなす。その背中にヴィートは舌を出してみせる。 「つまりまずはそれらの重魔道機が相手か」 アウレイは続け、マルクスも応じる。 「だがミクラゴルドが失陥したなら、ニダロス大公も動かざるを得まい。ヨーケはどう見ているか」 「スカニアは動くだろう。大公はそういう者だ」 歩きながらカールスボルグ将軍は言った。 「ただ期を見るに敏とまでは言えぬ。むしろ身勝手に積み上げた物があるだけだ。積み上げもので押してくるゆえ、手を付けかねる、そんな相手だ」 「ならば海上機動で近隣に上陸か、あるいは離宮そのものへ強襲を掛けてくる可能性はある。先任、六号小隊を分割するか」 グラミネアの魔導弓射で海上機動中の輸送船舶を撃破できれば、続く陸戦はかなり楽になる。 「いや、いつ来るかわからんもののために分割しないほうが良い。小隊で一致して早期に敵の前衛を撃破する」 「そうだ」 将軍は頷く。 アナン砦の機装甲は三割ほどは整備中のままだった。帝國のように部品の共通性を突き詰めてはいない。残りの半分ほど甲を外して軽くする改造が施してあった。辺境に配置されっぱなしの部隊だったのだ。運用を楽にするために現地改造されたのだろう。 「まあ、こんなものだろうな」 残りの五機のうちの一機を試して、マルクスはつぶやく。帝國の白系列どころか、緑系列、青系列にしても帝國の技術の粋をあつめた逸品であることが国外に出てみるとありがたくわかってくる。 『こんなもんだな』 ヴィートも言うからには、やはりそれなりでしかないのだろう。シグナムの乗った機も格納庫から出てくると砦の中庭で徒手の構えを取った。右、左、と拳を突き守りの構えからさらに拳を振るう。さらに蹴りを中段、上段と放って見せる。 『行けそうだ』 また重い足音と共に格納庫の奥からカールスボルグ将軍の城将機が歩いてくる。シグナムと同様に徒手の構えをとる。突きは素早く美しい。身を翻してとる守りの構えから、さらに放つ二段の蹴りは、負傷しているとは思えない強さを示している。将軍の機へ向かい、シグナムの機も構えをとる。将軍の機も滑らかに動き、構えをとった。止まっていたのは刹那に過ぎない。双方が滑るように踏み込む。重く衝きあう響きが続く。拳を放ち、それをさばき、蹴りをはなち、受け流して回し蹴りで返して見せる。それから身を躱して深く踏み込み内懐から放つ突きを、がっしと受け止めて押し返す。 『おい、お前。あたしの相手だ』 「型は知らんぞ」 『いいから相手だ、行くぞ』 構えを取ったヴィートの機は地を蹴って突っ込んでくる。応じるマルクスの見様見真似の型は、ヴィートにはまったく不満足らしい。 『本気でやれよ』 『ならば俺が相手をする』 背後からアウレイの機が踏み出してくる。ヴィートの機は構えをとる。 『いっくぞ!』 地を蹴って体ごと飛び込む突きに、アウレイは合わせて蹴りを放つ。受けながら、ヴィートはそれでもさらに飛び込んで、近い間合いからの膝蹴りを放つ。アウレイは受けつつ退き、けれど踏み込んで突きを放つ。応じるヴィートとの応酬に、ごんごんと鉄打つ音が響き渡る。 『いい加減にしろ。貴重な機を壊すな』 『最後だっ!』 声とともに放つ上段の蹴りを、アウレイは見事に受け捌いていた。 『やるじゃねえか』 『こんなものだ』 『それじゃ、本気はあとで見せてもらう』 「武器は複数選んでくれ、何が起きるかわからん。損じれば次がない」 カールスボルグ将軍は手斧を二本と大斧を選び、今や副官格となった手勢の者は長い刃の長柄と盾、それに剣を選んだ。名をセイヨンと言った。シグナムは剣を二振り、ヴィートは戦槌をやはり二振り、アウレイとマルクスは大斧とゴーラ式の剣とした。それが最も帝國式の装備に近いからだ。 運の良いことに軽砲もあった。城壁に置かれていた程度のものだ。大手門と裏門に二門ずつ配置するために、城壁から降ろす。 本来は予備の部品も運びたいところだが、そもそも交換している余裕が無い。魔力もそうだ。帝國では、後方、と兵站の二つに任せて置けることを、ここでは自前で用意せねばならない。状況が状況であるということと共に、帝國軍が作戦機動性を得るために、軍備の時点から装備を開発している稀有な存在なのだと強く思う。それが故に戦略拠点に物資を集積すれば、部隊は作戦機動力をそれぞれに発揮して決戦場に集結すらしてみせる。集結できる部隊が拠点環境に依存する諸国軍とは何もかもが違うのだ。 ナーハン離宮に戻った時は、すでにあたりはまっくらだった。堀の外には篝火が点々と焚かれている。ミクラゴルドでは宮中で奇襲を受け、ヨルマ帝が重傷を負ったという。ゆえに今もヨルマ帝は隠されている。カールスボルグ将軍の義娘が身代わりになるのも当然なのだろう。 今はくわえて帝國の小銃兵が警戒している。まだ五百人近く、中隊規模の警備兵力は有力だった。その分、ゴーラは内部の警戒に力を注げる。しかも帝国兵とゴーラ兵は所作からして違う。警備区分も完全に分けられていて暗殺者に紛れ込まれる公算は小さい。 『閣下、これを』 アウレイの機が地を示す。 横たえられているのはゴーラ式の大斧だった。先にグラミネアに撃破されたときに投げ出されたものだ。それを回収してきた。 『済まぬ』 将軍はそうとだけ言って大斧を手にとる。大斧を手にしたカールスボルグ将軍の機は、ふしぎといつもの彼らしく見える。常の彼など、マルクスは見たこともなかったはずなのに。力ある将軍が示す無形の力とは、ああいったものなのだろう。 離宮の中庭は不思議な様相だった。 中央にはあの機神グイン=ハイファールが立ち、その前、大手門の後ろには六号計画機の三機が片膝をついている。本来は、南岸で相互に戦う運命をもっているはずの機たちだった。本来斬られていた城将機は斬られたカールスボルグ将軍とともにグイン=ハイファールの隣にあり、セイヨンの機がさらに控える。逆側、グイン=ハイファールの左にはシグナムとヴィートの機がある。 「・・・・・・」 アウレイとマルクスの機は六号計画機近くに片膝をつかせている。配置区分からだ。 「倒せるのか」 不意にアウレイは問うた。顎で示す先には、グイン=ハイファールが立っている。マルクスはかぶりをふる。 「なぜ俺に」 「貴様、機神の乗り手だろうに」 それどころか、アムリウスの認めをなんとかして勝ち取らねばならなかった身分でもある。あれとて三度の余地があった。だから問い返す。 「たとえば先任は生身でヴェストラに勝てるか」 「やってみようじゃないか。する必要があるならな」 黒騎士はそういう考え方をする。 「と、いうより先任はあちらのほうが良かったか」 「貴様、馬鹿を言うな」 マルクスは苦笑する。どうみてもそう見えるからだ。 最も合力を嫌がっていたくせに、合力が成ってみれば、誰より馴染んでいる。アウレイの現場指揮官としての力が無ければ、合力はそもそもうまく行かなかっただろう。 そして、それゆえに敵はこちらの状況を掴みかねているはずだ。彼らが想定していない戦力がここにある。敵にとっても状況がわからない。必ず偵察をしてくる。 ゴーラ宮廷の警戒をかいくぐり、ヨルマ帝に傷を負わせたような敵だ。それらに対応させるには、黒騎士の警備がふさわしい。だから帝國軍部隊は大手門側にいるグラミネアは剣を機に載せてきているが、アウレイは持たなかった。今はゴーラ風の直剣を携えている。これがまた妙に似合う。 マルクスはいつもの杖を携えて、自ら斬り合いする気はさらさら無い。もってきた剣はマレンガに持たせたままだ。マレンガは手慣れた様子で湯を沸かし、お茶を入れ、軽食まで準備して水筒とともにマルクスへ持ち来た。どうでしょうな、などと言いながら。 「移動が無いんだから煮物にでもすれば良かった」 愚痴ともつかぬマレンガの言いようを聞きながら、マルクスは薄切りの硬い麺麭を甘煮入りの甘いお茶に浸して食べる。 「・・・・・・」 違和感がある。マルクスはアウレイへ目をやる。 アウレイもまた何か思う風からマルクスを見る。 魔力の気配だ。 ただの魔力ではなく、アウレイとマルクスが共に持つ魔導相の気配。物相を何者かが使っている。しかも、ごく近くで。使い方は帝國で兵法魔導として伝え教えられるものと少し違う。 「先任がやってくれ。俺が示す」 「貴様に任せる」 魔力合戦、術合戦になれば、生まれつき魔力を多くつかえる双性者が有利だ。それにマルクスには神具の鑓がある。 腰帯に挟んだ杖から、鑓を抜いた。魔力を込める。術を成して、その石突で地を突いた。 術が広がる。風のように。 誰にも観えぬようにと使う術に、吹き付けるのは、他者と相いれぬ砂塵。観えない相手にも、打ち付ける。 「!」 アウレイが駆けた。駆けながら抜刀する。剣風が広がる。 何かが宙を舞い、どっと音を立てて地へ落ちる。 生首だった。ばたりと倒れる音もする。 「警戒態勢!」 アウレイは音声を上げる。 「敵が入り込んだ。周囲警戒。持ち場を決して離れるな!搭乗員は機内待機!伝令、ここへ!」 伝令ばかりはゴーラから貸し与えられている。駆けきた伝令はゴーラ式の拳と手のひらを合わせる礼をとる。「敵襲。暗殺者だ。一人は斬ったが、他がわからぬ。警戒態勢を願う」 「承知!音声あげい!」 駆けゆく伝令とは別に、大きな貝より作られたゴーラ風のいくさ笛が低い音を夜空たかくへ吹き上げる。 マルクスはアウレイが斬って捨てた亡骸へと歩み寄る。男ではない。女に見えるが違う。双性者だった。 「魔導、か」 アウレイはひゅん、と剣をふるって血を飛ばし、鞘へと治める。マルクスも頷く。 「空を飛び、自然には無い洪水を操る。奴らに術の準備が出来ないだろうことだけが幸いだな」 「絡め手と力押しの両方だ。ならば時をおかずに次が来るぞ」 「空か」 マルクスは夜空を見上げる。 離宮は警戒態勢のための薪に囲まれている。空から見れば、招いているようなものだ。
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ミルフェ商工会 解説 ミルフェ領主直轄の税収機関。 主に街の東側に勢力を築いており、幾つかの支部も東側に存在する。 街での商売権を発行したり、加盟している商人同士の相互扶助を行ったりしている。 商工会の重鎮としてヨルマ・アランコやゼン・ニスカネンなど街の有力者が名を連ね、領主と同等かそれ以上の発言権を有している。 街の商人の殆どが所属する組織だが、セーナル商会や麝香商会などに所属する例外もいる。 近年はカドラ鉱山の閉鎖から低迷する街の景気や麝香商会の台頭など多くの問題を抱えている。 それらへの対策の一環としてレウィニア軍の駐留に関しては肯定的。 雑感・考察 名前
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序章でヨルマの護衛を引き受けると出現 クリア後再訪不可 途中でミルモ・メネシス加入 崖でジャンプすると元に戻れない 回復の羽の先でBOSS戦 入手アイテム 入手アイテム 入手場所 備考 治癒の水・小 風精の援石 イベント入手 魔力石・小 隠し通路の先 出現モンスター 憑石あり 赤の獣使い 猫弓使い(女神化ゲージ200以下で出現率上昇) 憑石なし 砂丘国兵 麝香狼 ならずもの 堕ちた傭兵 砂丘擲弾兵(女神化ゲージ200以下で出現率上昇) ★カトラスは、明日葉街道に出現する砂丘擲弾兵のドロップでしか入手できないので(今後登場する同名の別モンスターでは不可)、 武器ないし情報コンプを狙う人は注意。 ボス 凶戦士ドルジス 200F敵の攻撃に耐える特殊戦闘。 2周目以降等は倒すことも可能(倒してもドロップアイテムなし、展開にも変化なし)。
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冬羽夜真(トウバ ヨルマ) :高生紳士(※NPC) キャラクター詳細 『変葬』 ステータス - 共鳴感情 - 技能値 - 設定 <夏葉界から見た冬羽夜真という人> 高校時代に所属していた登山部の先輩。界が高校1年生時に先輩は2年生。明朗快活で、リーダーシップのある男性。 大学は別になってしまったが、高校卒業後も共に山に登ることは多々あった。登山の際は、同じく高校時代登山部だった【花先帳】も共に同行していたが、自分が用事で行けない日は、帳と先輩だけで山を登る日もあった。 その後、帳が突如行方不明となって以降、自身も山に登ることがなくなったことから、以前程は連絡を取りあっていない。久々に会った先輩は、どこかやつれており、以前の先輩と同一人物か疑う程であった。 そうしてまた連絡を取らない日が続いた頃、冬羽夜真は死んだ。 登場セッション 21/07/21 【高生卓】変葬【#変葬03】
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天秤のLa DEA。の登場人物 天秤のLa DEA。の登場人物 セリカとその使徒および使い魔達 レウィニア神権国 ミルフェの街ミルフェ衛兵団 ミルフェ商工会 野牛の蹄亭 イーリュン神殿 麝香商会 ミルフェを訪れた者達 森淑の杜 ローレン一派 闇夜の混沌生み マーズテリア神殿 カドラ廃坑 その他 セリカとその使徒および使い魔達 セリカ・シルフィル ハイシェラ シュリ・レイツェン レウィニア神権国 レヴィア・ローグライア レフィン・リンズーベル サガモア・カレンベルク ランザブ・キルナン レウィニア騎士 ミルフェの街 アリシア・カーペント ミルフェ衛兵団 カウラ・グレイジー エクト ミルフェ商工会 ヨルマ・アランコ ゼン・ニスカネン ヤニス・ブルセギン 野牛の蹄亭 リンシャ・カーニラン イーリュン神殿 クーン・カリエステル 麝香商会 ルドーン・サイガス レニ ティント・カラマーイ ミルフェを訪れた者達 ヴァレフォル サリア・レイツェン ニウ・クライン ラクチェ・プレイラン グロック・ブレーム 娼婦 森淑の杜 ルー メルヤ ローレン一派 カチュア・クレイン グレバイト・フォル・ローレン ラティナ・ティン・レウィニア エーテルラティナ 闇夜の混沌生み アビルース・カッサレ ウェンディス・プラーナ ドルジス マチス・レフラー マーズテリア神殿 イルザーブ メティサーナ ロカ・ルースコート サウルーレ カドラ廃坑 リ・クアルー リザイラ リリエム イルン バルディエル シュヴェルトライテ フラロウス エルモン オリヴド ナラウク ビ・ルゲール ザイク・ラガン セキト・アイラン セティ・フェルエン モノレクル その他 ミルモ・メネシス ムールムール ヘルトマイト ハレッガ イルムベルグ ノーペレト ビフロンズ ミノソン ラテンニール ラファネル レキス
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マリエス国 浸透 (8) 時系列的にはおかしい、と言ったのは、実際おかしいわけで>< 帝國の医療魔術とは大したもので、打ち身の痛みを押さえる術なども良く効く。 機装甲を転ばせてかつ、体内の操縦漕で死ぬ者は、年に何人かはいる。死ななくても大怪我をするものはさらに多くいる。 めちゃくちゃ打ち据えられて、多少の打ち身で済むのは、けっこう腕のいい証しだな、とマルクスは己を慰めたりする。 軍医がこれまで相手にしてきた負傷兵からすれば、マルクスの打ち身などかすり傷そのもので、当日は氷で冷やし、あとは痛み止めが要りますか、そうですか、という調子だった。痛みどめは良く効いた。 実動演習から駐屯地に帰還し、演習の講評を行い、事後の研究や改善の元になる資料を残さねば演習は終了しない。マルクスはそれをまとめている。演習そのものの素の観戦記録と、観戦からえた所感と、所感から得られるもう少し抽象的な、そしてより長い先を見る時に使うべき知見とを。 参謀なのだからこちらが主な役割のはずなのだが、標的となって打ち据えられるなど理不尽極まりないと思う。宮仕えはそういうものだとわかっていても。 ヤッサバ黒騎士小隊長は、間違って殺しちまったら、軍法会議には掛けられてたな、などと物騒なことを言って笑った。確かに間違って殺さない程度の仕掛けで、設想に意味が無いと言い放ったヤッサバ小隊長の思うところが、体で理解できた。 それでもマルクスは腹が立ち、つい「では、黒騎士小隊長は制限なしで攻撃を行ったとき、ヴェストラをどれくらいの確度で倒せると考えているのか。六割か」などと言ってしまった。 まずかったとは思うのだが、決してあてずっぽうに言ったわけではない。直接剣は交えなかったが、マルクスとてヴェストラの戦いを見ており、またヤッサバ小隊のやり方を、実際に叩きこまれもしたのだから。 ヤッサバ黒騎士小隊長の目に、刹那に殺気が宿り、だがそれは拭い去られて、聞こえよがしの舌打ちに変わった。彼は現状では何とも言えない。この演習程度で示せるものでもない、と言ったが、六割というのは、彼らの所感としても、当らずしも遠からずであったらしい。彼らが知るのはヴェストラその人ではなく、フォン・ベルリッヒンゲン902大隊長であるわけで、彼らなりに計っての判断なのだろう。フォン・ベルリッヒンゲンをしてもヴェストラを倒すに至らず、戦闘中拘束に留まった。 戦闘中拘束にはもちろん戦術的な意味はある。戦術のみならず、決闘でも狩りでもだ。フォン・ベルリッヒンゲン大隊長がヴェストラを最後まで拘束しつづけたからこそ、帝國軍の各正面は、戦い続けられた。 ヤッサバ小隊は拘束の術にも秀でていて、三機で一体のごとく、入れ代わり立ち代わりの連撃で、対処できなくなるまで追い込んできた。ほかにも鋼索を放ち、あるいは鋼索で作られた網に捕らえようとし、実際にも拘束しようとしてきた。それはもちろん狩りの最後の詰めに過ぎない。 ヴェストラを彼奴の旗本から切り離すための仕掛けこそ、流れの上ではもっとも大きい。そのために彼らは砲撃も行わせるし、地雷に誘い込みだってする。彼らの持つすべてを見せたわけではない。マルクスが白の三でなく、黒の二に乗っていたら、また別の仕掛けから始めていただろう。鑓の機神なら、さらに入念に狩りの策を練っただろう。その柔軟性や狡猾さこそが、ヤッサバ小隊長らの本当の力だ。 対抗部隊でも出さねば、ヤッサバ小隊の実力を評価することなどできないだろう。だが適切な対抗部隊などほぼありえない。901から人員を借りだしてきても、ヤッサバ小隊にとっては勝手知った相手なのだから。 この演習、12連隊の演習に合わせて黒騎士小隊の術を実演して見せろというのは、ヤッサバ小隊にとっても、面倒なだけの見世物だったかもしれない。 ともあれ、講評会議で、12連隊の能力は、高く評価された。 演習査閲官は、いずれも12連隊を高く評価し、卓越という言葉も幾度も出た。連隊長の指導、指揮。隷下部隊、各指揮官、士卒の錬度も高いと評価された。 低いわけなど無い。内戦後に北方出身者をもって編成された、近衛総軍部隊なのだ。旧北方辺境侯軍にあった者らも、多くが志願していた。帝國軍の北方動員をもって、ようやく安寧を得たのちの、志願なのだ。彼らの意気は生半なものではなかった。団結力や組織力でも、彼らはどこのものにも負けていなかった。 マルクスの目から見れば12連隊は、13連隊がトイトブルグに出征する直前より、部隊としての調律は取れていた。あのころの13連隊は、機甲騎兵に何ができるかも、明らかになっていたとは言えなかった。高い戦場間移動力を持つ機装甲を、騎兵で護衛しつつ、敵の苦痛とするところに進出して、機先を制する、その形が作り出されたのは、あれ以後だ。 12連隊は、同じことを帝國の領域内で行う。そのような部隊が求められる切迫性を、12連隊の幹部も、士卒の多くも共にしていた。 それゆえの練度だった。それは帝國の国防として、本来の姿ではない。帝國の国防が、この形に留まっているのは、屈辱でしかない。しかし今、彼らが愛する故郷を護る形は、これしかない。誰もそれを口にしなかった。屈辱は雪がれるべきだが、今の北方辺境にとっては、何も起きないことこそが勝利だ。その勝利のために彼らはある。その強い気持ちがある。 12連隊はその設立目的を達成するための準備が十分に整っている。 それだけではない。連隊には、帝國の道がある。北方辺境では兵站路として、旧南岸諸王国では軍道として整備され、大北方戦争で使われた道だ。休息も、一次駐留も可能な施設もある。これ以上を望むなら運河を作るでもするしかない。もっとも運河では速度は上がらない。12連隊に必要なのは速さのほうだ。 速さを補う通信経路もある。伝令経路は軍道機能としてすでにあり、今も保たれてもいる。これを越えるなら、狼煙のような長距離視覚信号がいる。これも機卒手旗で保たれている。沿岸で事が起きたとしても、その日のうちに連隊は出動可能だろう。 それは非常に高度で複雑な能力であり、これを保つには同じく高度な指揮、査定能力が必要になる。北方軍は本部と部隊の双方でこれを保つ必要がある。 そしてそれは、機神運用、対機神運用について指揮官を補佐する機神担当参謀であるマルクスに求められている力でもある。 彼らに対して指導することも含めて。 マルクスが、12連隊の実動演習に参画したのは、つまりそういうことでもある。 また、北方軍司令であるサウル・カダフ元帥に、元帥を通じて北方辺境公にこの問題の解決について報告すべき立場であるし、近衛騎士である以上近衛騎士団長に対して、他国の機神への帝國側の対処状況と、これに対して近衛騎士団がいかにあるべきかの提言もまた行わなければならない。 大北方戦争が終わったのちにも、マルクスが任を解かれずにある故なのだろう。 「・・・・・・」 これから北方軍本部にとんぼ返りして速報をサウル・カダフ元帥に提出し、つづいて帝都に飛びかえって近衛騎士団長に報告を行う。サウル・カダフ元帥は、ついでに、と諸々の中央での処理を求めてくるわけだけれど、それはまあ、構わない。 覚書だの、講評の写しだのをまとめて書類鞄に入れて鍵を閉じ、続いて私物を雑嚢に放り込む。機甲騎兵であったころですら、行李を手近に持っていたのに、今では雑嚢以外持たぬことも多い。古代魔導帝國の騎士たちには、たぶん手回りの小物などうつし世に顕現させたまま持ち歩くことなどなかったのだろう。操縦槽には余計なものを置くところは無い。 「・・・・・・」 扉を叩く音がして、マルクスは顔をあげた。 「ディートリンデ・ヴィルケ512大隊長です」 驚き、それから慌てて、マルクスは片付けかけていた荷物を寝台の枕元に寄せ、振り返る。、 「どうぞ」 「失礼します」 入室する姿は、以前と変わりないヴィルケ教官の頃のままの姿だった。いや、少し疲れているようにも見える。それはやむを得ない。 「お久しぶりです、ヴィルケ教官」 マルクスは踵を合わせ、礼を行う。ヴィルケ大隊長は、少しの笑みの後に真顔を取戻し、答礼した。 「今のあなたにもそう呼んでもらえるのは光栄です、レオニダス参謀」 マルクスは組椅子へといざなった。軍参謀ともなるとそれくらいの部屋は借りられる。従兵も借りられるには借りられるのだけれど、今のようなときに茶を出すくらいにしか声を掛けない。 ヴィルケ大隊長は、遅ればせながらもご結婚おめでとうございますと言い、稀にだけれど奥様とはすれ違うことはあり、お顔だけは存じ上げておりました、とも言う。マルクスは、にもかかわらず、婚礼の宴席に呼べなかったことを詫び、それから皆さまはお元気か、と曖昧に問うた。 「ええ。とても。前と変わらず」 それが彼女の答えで、それだけでキュエリエ教官が元気でいるのだろうとは思えた。今は13連隊長に正規に昇格したところだろうか。キュエリエ教官が13連隊の機装甲大隊長に就任した後、13連隊は東方辺境に移転した。その後に大損害を受けたという話にはひどく驚かされたのだけれど。 「お忙しいところに申し訳ありません。でも、講評を終えればたぶんとんぼ返りでしょうから」 「いえ、こちらこそ」 マルクスは応じる。 「御挨拶に伺おうとは思っていたのですが。何か、ご用件でも?」 いえ、とヴィルケ教官はかぶりを振る。 「本当にただの御挨拶です。先日のこともありましたし」 すぐにわかった。ヴィルケ大隊長による魔術戦技披露のことだ。マルクスは応じる。 「あれは、花を持たせていただいた形で」 「大隊にも私たちの課程からの出身者がいます」 私たちの課程、という言い方は彼女らしい。さらに言葉は続く。 「励みになるようなものを見せていただけましたし」 「不肖の生徒で」 「近衛騎士でもあられる」 それは機神のおかげ、と言いそうになり、マルクスは曖昧に口を濁す。ディートリンデ一門は帝國の長い歴史のなかで、機神を失ってしまった一門だった。ヴィルケ教官は懐かしげに小首を傾げ、マルクスを見やった。 「髪も伸ばされてるようで。どなたかと思ったくらい」 「これは妻との賭けに負けたからです」 面倒なのでそう答えることにしている。くすくす笑う彼女は、教官であった頃と変わりない。それは黄色中隊であった頃からだろうかとふと思う。 「お幸せそうで何よりです」 「ありがたいことに二人目も」 「それはおめでとうございます」 明るい人の、裏の無い言葉には、癒される。 「髪の賭けも、子供が関わっていました」 「どんな?」 「長男が私を見て、媽媽と言ったので」 もちろんそれは完全に本当ではない、やや膨らませた話ではあるのだけれど。ヴィルケ教官は、額を押さえて楽しげに笑う。 「じゃあ、早く御帰りになりたいでしょうに。引き止めるようなことをしてわるかったかしら」 「うるさい盛りですけれど」 「それはほんのわずかな間だけです。子供はすぐに大きくなってしまうから」 諦めとも、憧れともつかない何かが彼女の面を過ぎ去って行ったように見えた。 そのあとに、彼女は笑った。何か思い出すようにして。それから打ち消すような真顔を保って顔を上げる。 「・・・・・・」 マルクスを見て彼女は、なにか?とでも言いたげに瞬く。むしろマルクスが問うた。 「何か?」 「いえ・・・・・・」 けれど彼女は確かに何かを思い出して、今また笑った。彼女は口元を隠して笑いをこらえる。今までの彼女とは少し違う、艶やかさに似た何かがかすかに過ぎる。 「・・・・・・ごめんなさい。知人のことで思い出し笑いをしてしまって。人というのは、短い間に本当に変わってゆくものだと思って」 「いい友人は何よりの宝といいますし」 「お子さんもですけれどね」 一拍、二拍と、言葉の無い時が流れる。ヴィルケ大隊長は顔を上げる。 「お話できてよかったわ。レオニダス参謀。これから帝都へお帰りになるのでしょう?」 「ええ。何が御用があればお預かりしますが」 「いいえ」 彼女はかぶりを振る。 「帝都とここの間にも郵便はありますから。それよりも、ご家族お大事に」 「ありがとうございます。もうしばらくは12連隊とは縁が切れないとは思います」 「その時には、よろしくおねがいします」 彼女は言う。 「帝國と、この北方を護ることになるならば、いかなることでも、この身に賭けて」 そこでかすかに思いを巡らせ、思い浮かべるのはもちろん帝國のような巨大すぎて一人の人にとってはあいまい過ぎるものではなく、もっと確かに愛する者の姿であろうけれど。マルクスは応える。 「御覚悟、確かに承りました。」 別れは、先よりももう少し親しく、抱擁を交えた。 「・・・・・・」 いかなることでも、この身に賭けて。 しかしそれも、つまるところ、たかがヴェストラ一人。ヴェストラ一人を倒すために、北方全体を狩り場とする。しかも仕掛けが大きくなるほど、巻き込む領域は大きくなる。サウル・カダフ元帥はそれを是とし、北方全体を狩り場として良いともしている。それはもちろん、北方辺境公にも伝えられているし、北方辺境公も是としているはずだ。北方辺境公の是は、つまりそうした時に起きる惨禍を、是とせざるをえないということだ。 ヴィルケ大隊長にも、わかっているだろう。ヤッサバ小隊のように、ただヴェストラを狩るために、それを看過し得るだろうか。 しかし、ヴェストラが倒れればすべてが変わる。もしヴェストラ来れば、どんな犠牲を払っても殺さねばならない。 ヤッサバで確実でなくても、彼がヴェストラを追い込めば、近衛騎士団に狩らせても構わない。ヴェストラはゴーラ最後の剣だ。ヴェストラを失えば、ヨルマ帝のゴーラ治世はおろか、一千年続いたゴーラ帝国が滅び去る。 問題は滅びた後の方だ。滅びた後の策が立つまで、ゴーラ帝国を滅ぼしてはならない。それまでヨルマ朝廷が、ヴェストラの武威をもてあそぶようなことは許してはならない。できれば帝國が次の手を打てるようになるまで、そのままでいてほしい。 「・・・・・・」 とんでもねえ狸親父だ、と毎度のことながら思う。あるいは北方辺境公が、だろうか。二人してなのかもしれない。 ヴェストラを北方辺境に対して使わせないために、北方辺境はヴェストラを生きて返さない仕掛けを作り上げる。 ヴェストラがゴーラ帝国内のどこかに使われるなら一向に構わない。むしろ望むところなのだろう。ヨルマ帝の権威は高まり、ゴーラ帝国の命脈は永らえる。そのヨルマ帝の権威の挑戦先を、帝國に向けさせることだけは、許さない。仕掛けは、そのためのものだ。 まるで棋駒の読み合いのようだ。そしてサウル・カダフ元帥には、ゴーラ帝国もことを知れば同じく判断し、ことを起こさぬと確信しているようだった。 それもマルクスには判る。ヴェストラ軍には、ヴェストラその人の武威を扱える器を持ったものがいる。ヴェストラの武威を、いくさそのものを左右するだけでなく、二つの帝国の対峙を、一方に利するようにと使えるものがいる。 「・・・・・・」 だがまだ足りない。 そもそもヨルマ帝がヴェストラの武威をもてあそばねばならないのは、ヨルマ帝に、というよりゴーラ帝室の威信が失われたからだ。あれほど恐れられたゴルム帝は、帝國と干戈を交える前に憤死した。内戦によって疲弊しきっていたはずの帝國に、ゴーラ軍は散々に打ち負かされ、数百年にわたって少しずつ退いていた北方辺境との境は、ついに南岸の海岸線に至った。 ヨルマ帝はその後に擁立された皇帝だ。ゆえに威信に欠け、三つの大公家は帝室を軽んじ、逆にヴェストラの武威に頼るしかない。これにオスミナのオフィーリア王妃が絡んで、ゴーラ帝国情勢は、すでに帝國が手を入れずには済まないところにまで追い込まれている。オフィーリア王妃のゴーラ、とくにフィンゴルドへの強い態度は、もはや八つ当たりに近い。もちろんフィンゴルドによってオスミナ国土を犯された。怒りは当然で、同時にオフィーリア王妃自身のオスミナでの威信がかかっている。 とうぶん、もしかしたら一生、マルクスはオスミナの国境を跨げないかもしれない。 「・・・・・・」 諦めは人の足を止めさせる、と言ったのは誰だろう。 これは諦めではないのかもしれない。 己が倒れても、まだなにがしかこのうつし世に残り、それが安らかに過ごすところがあると思えるなら、人は諦めの産む沼に沈まずに生きてゆけるのかもしれない。 すっげー強引に〆た。うん。 マリエス国ネタにつなげるには、このままじゃ無理だったわ。 対海賊任務から始めればよかったのか。 おおう(ぽむ) 明日からそれで考えるw