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4ページ目 チョコボの森 ミンウ「ここでアレだ。乗れる鳥捕まえるぞ」 一通「あの走るやつな」 ミンウ「ああ、アレは便利だ。カヌーくらい便利だ」 一通「でもよ、あの鳥降りたら勝手に帰るのがムカツクよなァ」 ミンウ「ああ、アレはむかつく。カヌーで海行けないのと同じくらいむかつく」 一通「なンであのクソ鳥帰るんだろな。自分勝手だろ」 ミンウ「それはお前、アレだ」 ミンウ「タクシーと同じだ」 次へ トップへ
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7ページ目 ミンウ「アレだ。白魔道士だしMPめっちゃ使うからエーテルも買うぞ」 一通「おう。しかしよォ、エーテルってポーションに比べてすげェ高くねェか?」 ミンウ「バッカ、そりゃお前、アレだ」 一通「なンだ?」 ミンウ「HPと比べてMPの値って低めに設定されてる場合が多いだろ?」 一通「確かになァ。HP最大が9999なのにMPは999までだッたりするもンなァ」 ミンウ「そう、MPは999までだから大切に使わないといけない」 ミンウ「まぁ、ガソリンスタンドと同じだ」 次へ トップへ
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2ページ目 ミンウ「アレだぞ。ミシディアの塔はマジヤバいからな」 一通「ゴブリンとか出る感じか」 ミンウ「ゴブリンなんてものじゃない。ヒルギガースとかペプシマンとか出てくる」 一通「マジか……やべェな」 ミンウ「一説によるとオメガとかしんりゅうもいるらしい」 一通「マジかよ。次元の狭間にいるンだとばッかり思ッてた」 ミンウ「ああ、アルテマの本を手に入れるのはかなり難しいだろう」 ミンウ「だが多分アルテマはめっちゃ強いからヤバいぞ」 一通「あァ、ヤバいな」 次へ トップへ
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セレブと1ギル野郎 ◆HJkTyyPlkE 「ここで会ったが百年目よ、クソ王子! ヤリすぎて……ううん、ここで死んじまえ!!」 「な、何なんだ君は!?」 柔らかなウェーブヘアーを激しく揺らしながら、憎しみのこもった瞳で男を見つめる大人びた美少女。 その手にはアイスピックがしっかりと握られている。 「しらばっくれないでよ! ああん、思い出しても腹が立つ!! あんたなんて死んじゃえばいいのよ!!」 少女は明らかに殺る気である。しかし、無闇な殺生を好まず、また死者の国から蘇ったこの男は、 容易く他人に殺される気も、他人を殺す気もなかった。相手が少女とくれば尚更である。 「仕方ない…………ミニマム!! 」 「きゃっ!」 男の魔法詠唱と共に、少女は16cm程の小人へと姿を変えた。 小人化した少女は途端に身をすくませ、目の前の男から逃げようとする。 が、当然小さいのですぐに逃げられるわけもない。 「……いや……」 「大丈夫か? 私は君を殺そうとしない。落ち着いて話をさせてくれ」 「あ、あたしを殺さないの……? って、貴方、カサルじゃないの?」 「カサル? 誰だそれは。私はミンウ。フィン王国の宮廷魔道士だ」 「そ、そうなの。あたしは可憐。黄桜可憐……聖プレジデント学園の3年生よ」 冷静に見れば白いアラビア風の衣装とやや浅黒い肌しか共通点がない気もする。 可憐は突然自分がしたことが恥ずかしくなった。 「ごめんね。あたしの人違いのせいで……」 「いや、いきなり殺し合えなんて言われたら、混乱しても仕方がない」 「怒ってないの?」 「大丈夫だ」 「良かった。あたし、実は最近すごく嫌な奴に会ってね――」 クーデターのために日本に来ていたキール王国のカサル王子の身を、仲間たちと共に守ろうとしている内に、 自分は真剣にその男に惹かれていたということを可憐は初対面のミンウに打ち明けた。 真剣に結婚まで考えていたその男が、実は大の女ったらしで何人も嫁がいた……というオチつきで。 「――――ってわけで、そいつ、本当に不実なクソ男だったのよ! ああん、カサルは腹立つし、さっきのクソジジイもいきなり殺し合いをしろなんて言うし、 どうしてあたしはこうも男運がないのかしら!!」 「気持ちはわかるが年頃の女性がそんな言葉遣いをしてはいけないよ」 「だって……まあ、いいわ。貴方は少なくともそんな男たちとは違いそうだし」 「可憐……」 「だって、さっきあたしを殺そうと思えば、その不思議な力で殺せたはずでしょ? 小さくなってるあたしを踏みつぶせるはずだし。でも貴方は殺そうとしなかった……」 そこまで言うと、ぽわん、と音がして可憐の身長が元の大きさに戻った。 「あ、元に戻った。よかった、ちっちゃいままだったら動きづらいもの」 「ふふっ、びっくりさせてしまったかな?」 「まあ、最初はあたしが貴方をびっくりさせたんだし、お互い様よ」 さっきまでと異なり、二人とも笑顔になる。 「そういえば、貴方の背中に貼られている『アルテマ1ギル』って何のこと?」 「え……?」 「ん? だから『アルテマ1ギル』って、変な張り紙が……」 可憐が丁寧に張り紙をミンウの背中から引きはがし、それを見せる。 ミンウの表情が一瞬曇ったのを可憐は見逃さなかった。 「誰がこんな悪戯を……」 「意味はよくわからないけどムカつく張り紙ね。気にすることないわよ」 「ああ……」 それでもミンウの表情は優れない。それもそのはずだ。 アルテマ、それは彼が命と引き換えに封印を解いた禁断の書に記された魔法の名。 ミンウは信じていたのだ。自分の命を犠牲にすることで、アルテマが人々を救ってくれるだろうと。 しかしそのアルテマの肝心の威力は……というと「クソ」としか言いようがなく、 彼の遺志をついでアルテマを習得した仲間たちには、 「ミンウには悪いけど、この魔法……これだけ弱いんだったら、魔道書売って強い武器を買った方が良かったかもね」 「何言ってるんだよマリア。そんなクソ魔法、1ギルでしか売れやしないよ」 「よせ それ ミンウのいのち 1ギルと言ってるのと おなじ」 とボロクソに叩かれ、もう二度とアルテマを使わなくなる始末。 また、彼が仕えていたヒルダ王女や国民も、多忙のためなのか、それともアルテマの威力にあきれ果てたのか、 ミンウの死についても、アルテマの能力についても一切スルー。 無かったも同然にしたのだ。 これらの現実は、霊体となったミンウには全て筒抜けだったのだが、現世の人間がそれを知るわけもない。 気にせずにいようとしても、どうしてもその記憶が心をえぐる。 「大丈夫だ。私は今こうして蘇ったんだ……だから、過去のことなんて気にする必要なんてないんだ……」 可憐には聞こえないぐらいの声でミンウが呟く。 「聞きにくいことを聞くけど、まさかこの張り紙が貴方の支給品?」 「……まさか……」 またもやミンウの顔が引き攣った。 が、数分バッグの中身を確認し、安堵の表情になる。 「い、いや、大丈夫だ。ここに星屑のロッドがある」 「へー。かわいいー」 「……大の男が使うのにはふさわしくないデザインという自覚はある」 「だ、大丈夫よ。あたしの友達の……悠理のお母さんなんて高校3年生の娘がいるのに超少女趣味だし。 友達……? …………あ、そうだ……!」 「?」 「パニクっちゃっててさっきは考えられなかったけど、冷静に考えれば、あたしの仲間もここにいるかも知れない」 「仲間?」 「そうよ。皆、心から信じられる大切な友達。それにとっても強いんだから。 ……野梨子は男嫌いだから、ほんのちょっとだけ貴方を警戒するかもしれないけど、 きっとすぐにわかってくれると思うわ。いい子だしね」 「…………」 今の自分にそこまで信じられる人間はいるのだろうか……、とミンウは考えた。 しばらく考えると彼は可憐の手を取った。 「行こう。可憐、君の仲間たちを探しに」 「で、でも本当にいるかどうかもわからないのよ? それにどこにいるのか……」 「探さなければわからないだろう」 「ありがとう……」 可憐もアイスピックを拾い上げ、ミンウについていくことにした。 「あ、そうそう。ミンウ」 「?」 「貴方の仲間や知り合いに、王族や貴族等の超セレブはいるかしら?」 「『ちょうせれぶ』という言葉の意味はわからないが、私は宮廷魔道士だ。 王族の知り合いという意味ではヒルダ様がそれに当てはまるだろう」 ……彼はヒルダに対して、あえて『仲間』という言葉は使わなかった。 が、可憐はそれに気づくはずもなく…… 「……女じゃ意味無いのよねぇ……でも……ま、いっか……そっから合コンとかあるかもしれないし」 意外とお気楽に『玉の輿』という明るい未来のための計算を脳内で張り巡らせているのだった。 【F-4/深夜】 【名前】黄桜可憐@有閑倶楽部 【服装】聖プレジデント学園女子制服 【状態】健康 【装備】アイスピック 【持ち物】支給品一式 【思考】ミンウと一緒に行動して、同じ学校の親友たちを探す。 そして、生きて帰って玉の輿に乗る。(出来ればそのためにミンウに頼んで王族との合コンを開いてもらう) ※原作の第十三話(ドラマだと第七話)の後。 【名前】ミンウ@ファイナルファンタジー2( 152のサブタイトルは省略) 【服装】白のローブ 【状態】健康 【装備】支給品一式、星屑のロッド@FF2(炎を噴くことも出来る魔法使い用のロッド) 【持ち物】『アルテマ1ギル』と書かれた張り紙 【思考】可憐と共に行動し、彼女の仲間たちを探す。その後はまだ未定。 ※アルテマ解放後、一度絶命を経験。今回はそこからの復活。ホーリーまでの白魔法は使えるが、レイズ・エスナは使えない。 時系列順で読む Back その男は愛するあまり Next コードアルプス 反逆のクララ 投下順で読む Back その男は愛するあまり Next コードアルプス 反逆のクララ GAME START 黄桜可憐 刹那に飛ぶ鳥 GAME START ミンウ 刹那に飛ぶ鳥
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3ページ目 一通「話は変わるけどよォ」 ミンウ「なんだ?」 一通「アルテマの本に限らずファイアの本とかヘイストの本とか」 一通「読み終わッたら消えるけどありゃどういう仕組みなンだ?」 ミンウ「ああ、教えてやろう」 ミンウ「例えばお前、漫画とかゲームやった後売りに行ったりしないか?」 一通「するなァ、RPGとかクリアしちまったらいらねェしな」 ミンウ「それと同じだ」 一通「そうなのか」 次へ トップへ
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チャンミンウイ チャンムンウイの別名。
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1ページ目 ミンウ「そうだ。なんか皇帝とかヤバいからアルテマの本取りにいくぞ」 一通「そのアルテマッていうのは強ェのか?」 ミンウ「ああ、私の予想ではヤバい強いと思うぞ」 一通「へェ」 ミンウ「さぁ、行くぞ! ミシディアの塔へ!」 次へ トップへ
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ドキッ!野郎だらけの自棄酒大会 ここはホストクラブ。しかしホストの姿はなく、代わりにシケたツラをした三人の男が寂しく飲み明かしていた。 「はぁ…」 明らかにシケたツラをしている男が溜め息をついた。その男はファッションなのかハゲなのかは知らないが頭頂部もかなりシケている。 よく見ると顔が赤く目がすわっている。どこからどう見ても酔っ払い親父そのものだ。 「ふぅ…」 まだ年も若く、見た目も悪くないのにハゲに負けず劣らずシケたオーラを出している青年も続いて溜め息をついた。 その目には涙が溜まっている。泣き上戸なだけかもしれないがそれにしては哀愁が漂い過ぎている。 「ガラハド殿もビュウ君もそんなに溜め息をつくと幸せが逃げてしまうぞ…」 白ターバンに覆面という怪しくもシケたいでたちの男がシケた言葉をかける。 鼻と口が覆面で隠れているのだ。多分素顔はシケてるのだろう。 「溜め息つくなって方が無理っすよミンウさん。俺、幼なじみに捨てられたんですよ?長年想い続けていた幼なじみに…」 ビュウと呼ばれた青年が死んだ魚のような目で辛い失恋の記憶を回顧する。 彼はヨヨという幼なじみに文字通り捨てられたのだ。 「しかも敵に寝取られたんです。俺の知らない間に幼なじみと敵が出来てたんですよ。 いやー大人になるって本当に悲しいことなんすねぇ…。 伝説の教会…結ばれるって言い伝え…結婚の約束…あれなんだったんでしょうねえ? 初恋は実らないって本当なんですね…あれ…おかしいな…目からまた汗が…」 目どころか鼻からも自称汗が出ているがそれを指摘するのは野暮というものだ。 「ビュウ君。辛いだろうけど、ここで次の恋を探しなさい。君はまだ若いし幾らでもやり直しがきく。人生これからだ」 人生の先輩らしくビュウを励まそうとするミンウだったが、それが一人でやけ酒を飲むハゲの怒りに火をつけたのだった。 「それは私に対する当てつけかきさまー!」 ハゲ、いやガラハドがミンウの体を強く揺さぶり八つ当たりをする。 「や、やめてくれ。現世で命を落とし、辛く悲しい思いをしたのは君だけではない。 確かに君は心無き者に殺害された分悲しみも大きいだろうが、 こうしてお互い復活出来たのだから辛い記憶を忘れ前向きに生きようじゃないか」 誰も使わない、1ギルの価値しかない魔法の封印を解くためだけに、命を落とす羽目になったミンウ。 一生懸命働いて手に入れた念願の名刀アイスソードを手に入れて自慢していただけなのに、殺されて奪い取られたガラハド。 幸せの絶頂から不幸のどん底に叩き落とされた分、悲惨度はガラハドの方が微妙に高いだろう。 だがガラハドが気にしているのはそういうことではない。 「ターバンとマスクで誤魔化してる分際で不細工ハゲにされた俺の不幸がわかるか!」 …こういうことである。 その昔、ガラハドはそれなりの美形聖戦士として名を馳せていたのだが、 何があったのかいつの間にか今のようなハゲ・ヒゲ・ケツアゴの三重苦を背負ったおっさんとなってしまったのだ。 「や、やめてくれ。ガラハド殿。そんなにハゲしくされたら私はおかしくなってしまう…」 誤解を招きそうな科白を吐くミンウ。 これをガラハドはまた別の意味で誤解したようだ。 「『ハゲ死苦』だと!?な、なにをいうきさまー!」 「ち、違っ。『激しく』だ!!」 「またハゲといったなきさまー!」 怒り狂ったガラハドは力任せにミンウの体を上下左右にシェイクした。 怒りのあまり、酒を飲んだ人間にそのような行為をしたらどうなるかすらガラハドは考えられなくなっていたようだ。 「ガラハドさん、そんなに揺らさない方が…」 あまりの剣幕に棒立ちしていたビュウが慌ててガラハドとミンウの間に割って入る。 だが時すでに遅し。 「うっ…」 ミンウの口からドンペリ味の(自主規制)が飛び出した! それを浴びたガラハドとビュウは汚れていく……汚れていく……。 「な、なにをするきさまー!」 運悪くミンウの(自主規制)の勢いの良さに吹っ飛んだ(自主規制)たっぷりの覆面を顔に貼り付かせたままガラハドは絶叫した。 それから約一時間後。 「タオルと着替え、ここに置いときますから……」 シャワーから一足先にあがり、酔いからもさめたビュウが鼻を摘まみながら二人分のタオルと着替えをシャワー室に投げ込んだ。 若いだけあって貸衣裳もなかなか様になっている。 「有難う、ビュウ君」 「な、何をするきさまー!服にシャワーがかかるところだったぞ!」 どうやら二人は無事に着替えとタオルを受け取ったようだ。 ホストクラブらしく、個室シャワールーム三つとタオル、そしてホスト用の貸衣裳が用意されてあったのは不幸中の幸いだった。 誰もホスト用の貸衣裳は似合わない気がするが元々の装備の洗浄と乾燥が終わるまでの辛抱だ。贅沢は言ってられない。 「まだ(自主規制)臭いぞきさまー早く出ろきさまー」 シャワーからあがり、案の定似合わないホスト衣装を着るガラハド。 その姿はコメディアンにしか見えない。 「すまなかった。着替えも終わったので今出るから少々待ってくれ」 シャワー室からミンウの声がした。吐いた張本人なだけあって色々と始末も大変な分シャワーが長引いたのだろう。 「大丈夫ですか?」 「ああ。私自体は大分楽になれたし、身も清めることが出来た。だが」 「だが?」 「ターバンとローブは乾けばなんとかなりそうなのだが、覆面はもう使えそうもない」 どうやら自分のターバンにも跳ねる程豪快に(自主規制)を撒き散らしたようだ。 で、その豪快な(自主規制)の主がシャワー室から出てきたわけだが…。 「ブ、不細工ハゲじゃなかったのかきさまー!」 そうである。ガラハドの言う通り、豪快な(自主規制)の張本人であるミンウは、不細工ハゲなんかじゃなかったのである。 ターバンと覆面を外し、素顔と髪を晒し、ホストスーツを着ている今の彼はガラハドの予想を覆す美形だったのだ。 ガラハドはなぜか勝手に自分が裏切られた気になった。 「顔と頭頂部を隠してるから不細工ハゲだと確信してたのに不細工ハゲじゃないとは何事だ!」 「が、ガラハドさん意味不明な上に失礼ですよ」 ミンウは目の前のハゲの謎の言葉に戸惑う。 「ガラハド殿…まだ酔ってるのか?私が君たちに粗相をしたことは謝るが、あまりわけのわからないことで怒らないでくれ」 が、どうしてガラハドがキレているかはわかっていないようだ。 酔っ払いのハゲの怒りの理由なんて別にわかりたくもないだろうが。 「そうですよ。ガラハドさん、いい年して大人気ないですよ」 ガラハドよりずっと年下のビュウがたしなめる。 皮肉にもそれが酒に酔ったガラハドの怒りを爆発させることになったのだった。 「もういい!貴様らなど友でもなんでもない!貴様らもグレイと一緒だ!友達面して私を殺して何もかも奪い取る気だろう!!」 さっき知り合ってやけ酒大会になっただけなのに友もへったくれもあったものではない。 「きさまらなんてだなァ!きさまらなんてだなァ!」 ガラハドはそう吼えると深い眠りについた…。 「ミンウさん、この人死んじゃったんですか…」 「安心してくれ。寝ているだけだ。ほら」 ミンウの言葉通りすぐにガラハドの熊のような鼾が聞こえてきた。 酔って怒って疲れて眠ってしまうとははた迷惑だが彼もそれだけストレスを蓄積させていたのだろう。 「ミンウさん、この人どうします?」 「どうするって…このまま放っておくわけにも行かないだろう」 「え…でもこうしている間にも貴重な女の子たちが…」 「ビュウ君…人に冷たい男は女性に嫌われるぞ」 「は、はい。わかりました。俺もここにいます」 要はミンウもビュウもお人好しなのである。 で、結局三人がどうなったかというと。 「……ミンウさんまで寝ちゃうんだもんな……」 この有り様だ。 ビュウは傍らで眠るミンウとガラハドを恨めしそうに見つめた。 さっきまで酒酔いで吐いていたのだから眠ってしまうのはしょうがないことなのだが、なんとなく納得がいかない。 いっそこの際二人を置いて自分は女の子探しの旅に出るべきなのではないだろうか。 だが生まれつきの人の良さが災いして、そんなことは出来ないのだった。 「人に親切にしてれば報われるっていうし、これでいいんだよな…?俺、間違ってないよな…?」 他の二人も不幸な人生を送ってきたが、一番不幸なのはこのビュウなのかもしれない。 頑張れビュウ!負けるなビュウ! 【街中のホストクラブ/一日目/深夜二時】 【ガラハド@ロマンシングサガ】 [状態]:ガラハゲ(リメイク版の容姿)・爆睡中・起床後二日酔い症状が残る可能性あり [道具]:支給品一式・愛すソード(アイスソードのパチモン) [標的]:ミリアムがこの場にいたらミリアムがいい [思考]:酔ったせいもあるけどやさぐれ気味 【ミンウ@ファイナルファンタジー2】 [状態]:爆睡中・起床後二日酔い症状が残る可能性あり [道具]:支給品一式・ランダム支給品 [標的]:今まで色恋沙汰に現を抜かす暇がなかったので起きてからじっくり考える [思考]:とりあえず犬死にだけは勘弁 【ビュウ@バハムートラグーン)】 [状態]:精神的にも肉体気味にも疲労気味 [道具]:支給品一式・ランダム支給品 [標的]:浮気しない一途な子がいい。でもまだヨヨが心に引っかかる [思考]:1:一刻も早く失恋のショックから立ち直る 2:お人好しなままの自分でいいのか軽い疑念
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散りゆく者への鎮魂果 ◆.pKwLKR4oQ 「グンジィー、いたら返事してよ~」 朝日が降り注ぐ森の中。 そこに愛するグンジィーこと武田軍司を探して彷徨う木……ではなくて木ぐるみを着た少女、音無可憐がいた。 既に無粋な真似をしたアルフレッドとビブリは追跡劇の末に森の中で見失ってしまった。 こうなっては仕方ないので一度元いた場所に引き返してみれば、なぜか男が二人死んでいた。 理由はともかくどちらもグンジィーではない事が分かったので可憐に興味はなかった。 落ちていたデイパックとXM177E2とニューナンブM60を拾ってまたグンジィー探しの再会だ。 それから少ししてから社長が執り行った放送ではグンジィーの名前は呼ばれなかった。 この場に呼ばれていないのでそれは当然だが、可憐はここにグンジィーがいると確信していた。 グンジィーと一緒にいたと思ったら次の瞬間に目の前が真っ暗になってここへ連れて来られたからグンジィーも絶対ここにいるはず。 それが可憐の結論、グンジィーがここにいるという証明だ。 例え名簿に書かかれていなくてもグンジィーは絶対にここにいる。 二人きりで甘い一時を過ごしていた幸せの絶頂からいきなり意味不明な殺し合いに連れて来られたという残酷な仕打ち。 その反動から可憐の精神は本人の気付かない内に静かに狂い始めていた。 本来は殺し合いなどできるはずもない大学生なのに数時間で銃の撃ち方がだいぶ様になっているのもその影響の一つなのだろう。 「グンジィー、どこ……ん?」 ふと可憐は耳を澄ませば自分以外の声がある事に気付いた。 しかもその声は「可憐」を呼ぶ声のようであった。 「もしかして、グンジィー!! 今そっちへ行くのだ☆」 そして可憐は一人の男を見つける事になる。 だがその男は可憐の名を呼んではいたが、よく観察すればグンジィーではなかった。 それが分かると可憐は静かにニューナンブM60の照準を合わせた。 可憐にとってグンジィーでない者に用はないのだ。 ◆ ◆ ◆ 朝日を受けて輝く瑞々しい葉が生い茂る森の中。 その鬱蒼とした森の中にできた小さな広場に四人の男女がいた。 それぞれ呆然とした様子なのが一目で分かるほど無防備な状態であった。 「……たくさん死んだのよね」 「ああ、73人だから全体の半分程度になるか」 「くそっ――」 「ビブリ カナシイヨ」 有閑倶楽部の一員黄桜可憐、白魔導師ミンウ、飛行機乗りの少年アルフレッド、身体が線でできた兎ビブリ。 この一風変わった四人が巡り合ったのは今から1時間ほど前の事だった。 ミンウと可憐が森の中を探索していたところで必死な形相で走っていたアルフレッドとビブリに出会ったのが始まりだった。 遭遇した当初はお互い警戒し合ったものの、どちらにも敵意がない事が分かると張り詰めていた空気は霧消した。 その後は一旦どこか落ち着ける場所で話し合おうという事になり、この森の中にぽっかりとできた広場に来た訳だ。 その広場は人気も無く適度に草が茂っていて落ち着ける憩いの場所であった。 幸いビブリにはそこそこ立派な大テーブルと椅子が支給されていたので有り難く使わせてもらっている。 広場に腰を落ち着けた四人は早速各々体験してきた事を話し始めたが、この殺し合いを打破するような有力な情報は見当たらなかった。 赤い制服を着た青年と木のきぐるみを着た少女が危険だという事。 剣菱悠里、テリー・ボガード、アンディ・ボガードの三人が信用できる事。 有力な情報と言えるものはこの二つ程度だった。 そして広場に集う四人に暗雲が立ち込める中、社長による放送が始まった。 要約するとこれから6時間毎に死者と禁止エリアを発表していくという事だった。 第一回目の放送で告げられた死者の数は73人。 実に全体の約半数がこの地で命を落とした事が分かった。 その中にはアルフレッドが信用できる者として名を上げていたアンディ・ボガードの名前もあった。 失意に沈む内に放送は島の中央にある洞窟について含みのある発言を残しながら終わった。 「すみません。少しこの辺りを見回ってきます」 居心地のいい広場とはいえ、ここは殺し合いの横行する島の中。 周辺に危険人物がいないか偵察してくるというミンウの提案は妥当なものであり、誰も反対する者はいなかった。 ミンウは自分のデイパックを手に取ると、一人森の中に消えて行った。 残された三人はただ黙ってミンウが歩いて行った方角を眺めていた。 その空気はどうしようもなく重たいものだった。 このままずっと重い空気のまま時が無為に流れ続けるかと思えた。 だがそんな空気を破ったのは可憐でもアルフレッドでもなく、 「ビブリ オナカスイタヨー」 身体が線で出来た不思議なウサギ、ビブリだった。 ビブリは重苦しい空気も気にせずに自分のデイパックから全員共通で支給された食料を取り出していた。 ビブリの手の中にある食料はアンパンだった。 そのままビニール袋に入ったアンパンを両手で掴んで一気に口まで運ぶビブリ。 「イタダキマス」 パクッという音が聞こえてきそうな勢いでビブリはアンパンに齧りついた。 だがビブリは何故か齧りついた体勢のままで動きを止めている。 可憐もアルフレッドもその様子を見ていたが、ビブリが動かない理由に心当たりはなかった。 しばらくしてビブリは口元からアンパンを離して、一言呟いた。 「オット! ビニールブクロ トルノワスレテイタヨ」 その瞬間、周囲から音が消えた。 可憐もアルフレッドもビブリも黙ったままで。 徐々に聞こえてくる音は木々のざわめく音、次いで聞こえてくるのは―― 「くはははは、ビブリ、何しているんだ?」 「ホント、袋のままパンを食べる人なんて初めて見たわよ……えっと人でいいのかしら」 「ウウ ワラワナイデヨ」 アルフレッドと可憐の笑い声、そしてビブリの恥ずかしがる声だった。 いつのまにか二人の顔には先程までの沈痛な表情が嘘のような笑みが浮かんでいた。 「そうだな、落ち込んでいても何もならないよな」 「……アルフレッド君」 「僕はもう大丈夫だ。だから可憐さんも元気出そう」 「……はい!」 二人のやり取りを見たビブリは気付かれないようにほっと一安心していた。 可憐もアルフレッドもその様子に気付いたが、何も言わなかった。 ビブリがわざと馬鹿な事をやって場を和ませようとした事ははっきり言ってバレバレだ。 だからこそだろうか。 二人はビブリのその優しい行為を黙って受け止めておく事にしたのだった。 「可憐さん、君に夢はあるかい?」 「夢? そうね、玉の輿に乗る事かな。でも浮気は許さないから」 「へー、なるほど。それが可憐さんの夢か。ビブリは?」 「ウーントネ オトモダチ イッパイツクリタイナ」 「友達か。いい夢だな」 「そういうアルフレッド君の夢は何なんですか?」 「僕か、僕の夢は――冒険家になる事さ」 おそらくそれが言いたかったのだろう。 アルフレッドは敢然と立ち上がると、皆に宣言するかのように話し始めた。 「まだ今は一介の飛行機乗りだけど、僕はいつか立派な冒険家になってみせる。だから――」 ――この殺し合いから脱出してみせる。 その言葉が続けられる事はなかった。 「アルフレッド君!!!」 終了の合図は一発の銃声。 それがアルフレッドの聞いた最後の音だった。 何の言葉も残さないまま、自らの夢も叶えないまま、アルフレッドの短い生涯は終わりを告げた。 ◆ ◆ ◆ 周囲の偵察に行くと言って森の中へ入っていったミンウだったが、その顔はいつになく沈んでいた。 もちろん73人もの命が奪われた事への感傷もある。 だがそれ以上にミンウの中にある感情、それは醜い自分への怒りだった。 (私は、何を考えているんだ……) 放送でアルフレッドの知人の死が告げられた時、ミンウの心にはアルフレッドに同情すると同時にある考えを浮かべていた。 もし自分の知り合いが呼ばれていたら何を思ったのだろうかと。 そしてふと思ってしまったのだ。 ――イイザマダ、と。 その考えが頭をよぎった時、ミンウは己の弱さを恥じた。 確かに人々は自分が命を犠牲にしてまで封印を解いたアルテマを「1ギル以下」だと大いに貶しめていた。 それに対して怒りが無いと言えば、それは嘘になる。 実際自分の犠牲は何だったのかというやり切れない想いはある。 だが、だからと言ってアルテマを貶した人々が死んでいいはずがない。 アルテマを1ギル以下だと貶そうと、彼らがミンウの救おうとした人々である事に変わりはない。 ミンウはアルテマが人々を救うと信じたからこそ自らの命を犠牲にしたのだ。 それはすなわち彼らに自分の命を捧げるだけの価値があったという事に他ならない。 今は貶されているだけかもしれない。 しかし、1年後、3年後、5年後、10年後、もしかしたら100年後。 アルテマは人々を救うかもしれない。 (いつか、いつかきっと、皆分かってくれるはずだ。アルテマの大切さに気付く事を、私は信じている。なぜなら――) ふと気付くとミンウの立っている場所には一筋の朝日が差し込んでいた。 「――仲間だから。彼らが仲間だという事に変わりはない」 それが森の中で考えた結果、ミンウが辿り着いた答えだった。 まだアルテマは役立たずだと言われているかもしれないが、仲間達はいつかきっと分かってくれる。 いつしかミンウの心は晴れていた。 「さて、そろそろ戻りましょうか。幸い周囲に危険人物はいな――」 その瞬間、ミンウの耳に聞き慣れない音が飛び込んできた。 その音はミンウに数時間程前の出来事を思い出させる。 赤い制服の少年が所持していて、可憐を傷つけた武器が放つ音。 「銃声!? は、もしや!!」 ミンウは聞こえた音が銃声だと分かると、全速力で広場へと戻り始めた。 銃を放つという事は相手がいないと意味がない。 では、この辺りにいる参加者とは誰か。 ミンウが真っ先に思いついたのが広場に残してきた可憐達だった。 「可憐、アルフレッド、ビブリ、どうか無事で!」 広場への戻る道はしっかり覚えていたので、迷わずに走る事ができた。 それでも力の限り急ぐが、気持ちは焦るばかりだ。 可憐はここに連れて来られてからずっと、アルフレッドとビブリは放送前から行動を共にしてきた仲だ。 元いた世界の人々に比べて交流は浅いが、それでもこんな所で死んでいい人達ではない。 況してやこれは自分の不注意が招いた事かもしれない。 そんな思いが疾走するミンウの心を苛んでいた。 だから目の前に突然木が現れた時、ミンウは咄嗟に訳が分からず立ち止まってしまった。 「え――?」 二度目の銃声が聞こえた時にはミンウは地面に倒れていた。 ミンウは少し遅れて目の前に現れた木が自分の額に向けて銃口を向けていた事を思い出していた。 だが反射的に頭部を逸らしたとはいえ、誰が見ても頭部の傷は致命傷だった。 「またグンジィーかと思ったら違う人だったのだ☆」 そこでミンウはアルフレッドの言っていた危険人物の事を思い出した。 木のきぐるみを着て銃を所持している少女。 おそらく彼女がアルフレッドとビブリを追いかけていた危険人物なのだろう。 だがそこでミンウはある事に気付いた。 この少女はアルフレッドとビブリを追いかけていた。 しかも先程誰かが銃を発砲していた。 そこまで考えてミンウは彼女が広場にいた皆を襲撃した犯人だと推測した。 「そうか、君が……聞かせて、くれ。君が追いかけていたアルフレッド達は、どう、なったんだ」 「ん、ああ、あの人達なのですか――逃げられたのだ☆」 「そう……か、それ、は……良かっ」 「全然良くないのだ☆」 ミンウの最期の言葉が終わらない内に3度目の銃声が森の中に木霊した。 音無可憐の手の中にあるXM177E2から放たれた銃弾はミンウの頭を木っ端微塵に粉砕していた。 可憐の足元には弾切れとなったニューナンブM60が元々入っていたデイパックごと転がっていた。 ミンウの頭部を最初に撃った弾が最後の弾だったのだ。 「ふぅ、そのキレイな顔をフッ飛ばしてやったのだ☆」 殺し合いの場に連れて来られて早6時間。 今まで銃器など触れた事すらない可憐だったが、6時間前と比べて銃の腕は格段に上がっていた。 それは愛しいグンジィーへの想いの強さ故か、ここまで潜り抜けてきた戦いの経験故か。 だが可憐にとってそんな事は些細な事だった。 過去も現在も未来も可憐はグンジィーのためにあるのだから。 「それにしてもあの二人組の一人はアルフレッドって名前なのか。今度こそ罰を与えるのだ☆」 可憐はグンジィーと『放送前に見失ったきり行方が分からない』アルフレッド達を探すべく森の中を歩き始めるのだった。 【1日目 朝/E-7 森の中】 【音無可憐@おそるべしっっ!!!音無可憐さん】 【服装】自前の木の着ぐるみ(略して木ぐるみ) 【状態】健康、脳みそ以外は至って正常 【装備】デザートイーグル(9/9) 【持ち物】支給品一式×4、はさみ、コンドーム、デザートイーグルの予備マガジン×2、XM177E2(29/30)@覇王愛人、S W M10(5/6)と予備弾24発@現実、不明支給品(元々天童のもの)×1 【思考】 1 大好きなグンジィー(武田軍司)を探す……のだ☆ 2 グンジィー以外の男や同性は邪魔なので問答無用で消す……のだ☆(特にアルフレッドともう一人(ビブリ)は許さない) 【備考】 ※平均以上の顔をした男は子供だろうとなんだろうとグンジィーだと勘違いしている。 ※参戦時期はどこかでグンジィーと二人きりになった時点です。 ※ジャック・ハーパーのデイパック(基本支給品一式、ニューナンブM60(0/5)@踊る大捜査線)はE-7の森の中に放置しました。 ※ミンウのデイパック(基本支給品一式、『アルテマ1ギル』と書かれた張り紙)と星屑のロッド@FFⅡはミンウの死体の傍に放置されています。 ◆ ◆ ◆ 「アルフレッド君!!」 「アルフレッド、シナナイデ!!」 二人がいくら揺すってもアルフレッドが目を覚ます事はない。 白い机に突っ伏したまま飛行機乗りの少年は自ら血で緑の大地を赤く染めている。 心臓に空いた穴からは真っ赤な血が際限なく溢れだしていて、それはつまり彼の死を意味していた。 彼が次に目覚める時があるとすれば、それは自分すなわちジェレミア・ゴッドバルトが最後の一人になった時だ。 「我が忠義のために――死んでもらおうか」 言葉を出したのは、せめてもの手向けか情けか。 結局、余計な一言を言ったせいで二人にはこちらの攻撃に気付いてしまった。 間一髪で机から転がるようにして銃弾を避ける様子が目に映る。 その代わり着弾したジャッカルの弾丸は机の上にあった荷物を弾き飛ばす結果となった。 着弾の勢いで破れたデイパックや中に入っていた道具が宙に舞い、数秒の間視界が塞がれる。 「悪足掻きなどしても無駄だ。おとなしく――!?」 貴重な銃弾を無駄にするのは気が進まなかったので腕に内蔵した刃で命を奪おうと思って走りだそうとしたが、それは無駄に終わった。 宙に舞っていたデイパックの残骸や道具が地面に落ちた後には、既に二人の姿はなかった。 何らかのギアスのような力を使ったのかは知らないが、とにかく二人を逃がした事は事実だった。 「逃げられたか。まあ、いい」 最後一人を目指す自分にとって今殺すのも後で殺すのも然して変わりはない。 既に73人も死んでいる現状を見れば、かなりの数の参加者が殺し合いをしている事は明白だった。 自分一人が焦って無理をする必要はない。 「それにしてもナナリー様も既に死んでしまったのか。これで厄介なのは枢木スザクだけか」 直接手をかける事が躊躇われるナナリー様が死んだ以上、最も厄介な障害は枢木スザクに他ならないだろう。 あの驚異的な身体能力の前ではサイボーグの自分でさえ敵うかどうか危うい。 出来る事なら誰か他の参加者に殺される事を祈りたいが、そうそう上手くはいかないだろう。 「さて死者には悪いが……これもルルーシュ様のため。これらの道具は貰って行くぞ」 だが、使えそうな道具は破れたバッグの中に残っていた手榴弾と馴染みの深い果物だった。 その果物は今の私への皮肉かと思えるほど……とても思い入れの強い果物だった。 ◆ ◆ ◆ 「うぅ、アルフレッドさん……」 「カレン ゲンキダシテ」 ここはD-9にある伝説の樹のすぐ傍である。 なぜそんな場所に今までF-7の広場にいた黄桜可憐とビブリがいるのか。 それはビブリのデイパックに入っていた支給品のキメラの翼のおかげであった。 キメラの翼とはルーラと同じ力を持つ道具であり、つまり一度訪れた場所に瞬時に移動できる。 咄嗟にビブリがキメラの翼を使った事で一度訪れた事のあるここに移動した訳だ。 「ぅ、あぁ……」 「ビブリ カナシイ ビエーンエンエン」 命の危機はひとまず脱したにもかかわらず二人の心は晴れない。 可憐はいつもの様子に比べて格段に落ち込んでいた。 親しくなりかけていたアルフレッドが目の前で死んだのだから無理はない。 だがビブリの方がアルフレッドとの付き合いは長い分、悲しみも深かった。 ビブリはアルフレッドの死を思うと、泣く事を止める事が出来なかった。 その泣き声は子守唄を欲する子供のようだった。 【1日目 朝/D-9 伝説の木の傍】 【黄桜可憐@有閑倶楽部】 【服装】聖プレジデント学園女子制服 【状態】健康、悲しみ、右腕にかすり傷 【装備】アイスピック 【持ち物】基本支給品一式、ランダム支給品0~2 【思考】 基本:仲間との合流。生きて帰って玉の輿に乗る(出来ればそのためにミンウに頼んで王族との合コンを開いてもらう)。 1 ミンウやビブリと一緒に行動して、同じ学校の親友たちを探す。 2 ミンウさん、大丈夫かしら。 【備考】 ※原作の第十三話(ドラマだと第七話)の後より参戦。 【ビブリ@ビブリボン】 【状態】健康(?)、深い悲しみ 【装備】なし 【道具】基本支給品一式 【思考】 基本:ビブリ コロシアイ シタクナイヨー ビエーンエンエン~ 1 ビブリ オトモダチ ツクリタイナア~ 2 アルフレッド シンジャッタヨー グスン ◆ ◆ ◆ 誰もいなくなった広場。 残っている物は須らく必要ないと判断された物ばかり。 アルフレッドの死体。 破壊された基本支給品一式。 血に塗れた机と椅子。 そして。 供え物のつもりだろうか。 橙色の果物――オレンジが一つ。 【1日目 朝/F-7 森の中の広場】 【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス】 【服装】小此木造園の作業着@ひぐらしのなく頃に、アーチャーの聖骸布@Fate/stay night 【状態】健康、強い決意、隠れ真性ロリコン 【装備】対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(4/6)@HELLSING 【道具】支給品一式×3、スクール水着、手榴弾5個@現実、オレンジ49個@コードギアス 【思考】 基本:主催者から死者蘇生の力を手に入れて、ルルーシュ達を生き返らせる。 1 再び主催者に会うために参加者を皆殺しにする(苦しまないように一撃で殺す。特にロリっ娘は確実に全力で一撃で!)。 【備考】 ※アルフレッドのデイパックの中身(手榴弾とオレンジ)を回収しました。 【アルフレッド@餓狼伝説 死亡確認】 【ミンウ@ファイナルファンタジーⅡ 死亡確認】 【全体備考】 ※以下各々のデイパックの内訳。 竜崎ゴウ:基本支給品一式、XM177E2(29/30)@覇王愛人、S W M10(5/6)と予備弾24発@現実 ビブリ:基本支給品一式、パプニカ製の大テーブルと椅子@ダイの大冒険、キメラの翼@ドラクエⅥ アルフレッド:基本支給品一式、手榴弾5個@現実、オレンジ49個@コードギアス ※S W M10(5/6)と予備弾24発@現実は元々ムースリーニ先生の支給品。 ※E-7の森の中の広場にパプニカ製の大テーブルと椅子@ダイの大冒険、アルフレッドの死体、アルフレッドのバラバラになったデイパックとオレンジ1個が放置されています。 時系列順で読む Back 雑貨屋、血に染めて Next オムニバス 投下順で読む Back 帝様がみてる Next オムニバス 情けは他人のためならず、なのだ☆ 音無可憐 もう何も恐くないのだ☆ 情けは他人のためならず、なのだ☆ アルフレッド GAME OVER 情けは他人のためならず、なのだ☆ ビブリ 7777 刹那に飛ぶ鳥 黄桜可憐 7777 刹那に飛ぶ鳥 ミンウ GAME OVER イエス・ユア・マジェスティ ジェレミア・ゴットバルト そんなの、聞いてないぞ
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1. …まぶたの向こうから,強い光を感じた.そして二人の,男性と女性の声が聞こえる. 「ミンウ,助かりますか?」 「はい.彼女も彼と同じように強い生命力を感じます.じきに意識を取り戻すでしょう」 私は目を開けられなかった.目を開けたら,また帝国の兵士が襲って来そうで・・・怖くて・・・.でも,ここはなんだか心が温かくなるような場所だということは,体中から感じられた.「ここは一体どこだと言うの・・・?」そう思った.すると,さっきの女性の声がした. 「あら,もう話せるまで元気になったのですね.ここはアルテアにある反乱軍のアジトのなかです.それも・・・」 そして今度は同じくさっきの男性の声がした. 「それも,負傷者を回復させる部屋,『魔方陣の間』だ.君はどうやら何かに怖がっているようだね.ここは,今ヒルダ王女からご説明があった通り,反乱軍のアジトだ.反乱軍は,帝国軍とは立場を異にする組織だから,大丈夫,目を開けて御覧なさい」 と言われたので,私は恐る恐る目を開けてみた.すると,白いターバンを巻いている男性と,頭に左右二対の角を生やした被りものをした女性が視界に入って来た. 「わ・・・私の声が聞こえていたのですか・・・?」 私がそう訊くと,その女性・・・ヒルダ王女は,はい,と頷いた. 「じゃあさっきの光は・・・,それより他のみんなは・・・?!」 私が思わずそう口にすると,白いターバンを巻いた男性は,私を落ち着かせるためなのか,穏やかな口調でこう言った. 「私は白魔導士・ミンウ.先程の光は私の白魔法によるものだ.『他のみんな』というのは,君と一緒に深手を負って倒れていた人たち,ということかな」 私はミンウの言葉に素早く答えた. 「はい,そうです.私はマリアといいます.他のみんなというのは,私の兄のレオンハルトと,フリオニールとガイというんですけど・・・」 と,言っている途中,この魔方陣の間に入って来た人がいた.彼は・・・. 「マリア 生きてた よかった・・・」 私は彼の声を聞いて,さっと起き上がり,彼の声と姿を認めると, 「ガイ!生きていたのね!良かった・・・」と,安堵した.そこで,反乱軍の一員らしい人がこの部屋の奥から来て, 「ヒルダ王女にミンウ様!次の負傷者が運ばれます!」 と言ったので,ミンウが, 「・・・どうやら君たちの最後の仲間かもしれない.さあ,回復作業は私に任せて,君たちは部屋の外に出ているんだ」 と言い,私とガイは魔方陣の間から出ることになった. 「最後の仲間」・・・?どういう意味だろう.反乱軍のアジトをガイと歩き回っている最中,私はさっきミンウから言われた言葉が気になったので,ガイに訊いてみた. 「ねぇ,ガイ.兄さんは?兄さんはどうしたの?」 するとガイはこう答えた. 「フィンの王女 おれたち 見つけ 助けた.魔方陣の間で回復 一番最初 おれ.レオンハルト いなかった・・・」 えっ?!兄さんは助けられていない?そんな・・・.じゃあまさか死ん・・・.・・・と,そこで,魔方陣の間からミンウとヒルダ王女が出てきたので,私は彼らに,兄さんの安否を訊きに話しかけようとしたけど・・・.他の反乱軍のメンバーに手を掴まれ, 「ミンウ様とヒルダ王女は作戦会議に入られるところだ!邪魔をしてはいけない」 と一喝された.だけど,次に魔方陣の間から出てきたのは・・・.私は思わず叫んだ. 「フリオニール!生きていたのね!良かった・・・.私・・・グスン」 兄さんと同じくらい想い慕っていた彼の無事を確認できたものだから,思わず涙が出てしまった・・・.でも涙を見られて心配をかけるのも,なんというか・・・申し訳ないので,すぐ涙を払って,素顔に戻った.そうだ.私は心配をかけてはいけないんだ.フリオニールは言う. 「マリア・・・ガイも無事だったか.レオンハルトは?」 ガイが状況を説明している間,私はずっと俯いてしまっていた.それを見て気づいたのか,フリオニールは, 「どうしたんだ?マリア.まだ傷が治っていないのか?」 と訊いてきた.あ,いけない,私ったら.心配をかけて申し訳ない,だから悟られまいと思いを固めていたところを,すぐに崩してしまって・・・.意志の弱い女ね,私って・・・.それに比べて・・・.私は答えた. 「傷は完治しているわ.ただ・・・兄さんのことがどうしても気がかりで・・・」 私がそう言うと,フリオニールは, 「大丈夫,生きているさ,きっと」 と,私を励ましてくれるかのように言ってくれた. 「そ・・・そうよね.きっとどこかで生きているわよね」 私もつられてそう答えた. 「反乱軍の会議,随分長いな.もう始まって何十分も経っている・・・」 「そうね・・・」 フリオニール,私,ガイの三人は,反乱軍のアジトにて,相談していた.相談の内容は,自分たち三人も,反乱軍に加えてもらえないか,ということだ.故郷を奪われたという思いもあるし,私たちの仲間・レオンハルトを捜すためでもあるし・・・.私たちの決意は,比較的すぐに固まった.やっぱりみんな幼馴染だから,思いが結束しやすいんだと思う. そうすること十数分後に,反乱軍の会議が終わったようだ.作戦会議室から,どやどやと同じような恰好をした人たちが出て来たのを見たからだ.私たちは,ヒルダ王女とミンウに会いに,作戦会議室の扉をたたいた.すると,扉の向こうから,どうぞ,と声がしたので,私たちは静かに入っていった.フリオニールがヒルダ王女に対して言う. 「あなたが私たちを助けてくれたのですね.ありがとうございます.ヒルダ王女・・・,ぶしつけではありますがお願いがあります.私たちを反乱軍に加えて下さい!」 だけど・・・ヒルダ王女は,「それはなりません」と答えた.それにはちゃんとした理由があって,私たちがまだ戦いに慣れていないから,とのことだった.そして,自分の町へ帰りなさい,とも言った.だけど私は納得がいかなくて, 「私たちの家はもう無いんです.帝国軍の攻撃を受け,両親も亡くしました.みんなが故郷を奪われたのに対し戦っているところを見ながら,アルテアでのんびりと暮らすことなんてできません.ですからヒルダ王女,私たちを反乱軍に加えて下さい!」 と熱弁をふるった積りだったけれど・・・. 「あなたはマリアといいましたね.『アルテアでのんびり暮らす』とあなたは言いましたが,それは合言葉ありきの話です.その言葉は,【のばら】です.よく覚えておくのです.【のばら】はフィン王国の紋章です.フィン王国・・・.先の襲撃で捕らわれた人々がフィンに集められ苦しんでいるという噂も耳にします.あなたの兄・レオンハルトも行方知れずでしたね・・・.もしかするとフィンの町に捕らえられているかもしれません.ただ,今ではフィンもモンスターで溢れかえっている危険な町です.ここを出る前に,ミンウにも話を聞いてみると良いでしょう」 と返された.そして,ヒルダ王女の言う通り,ミンウに話しかけると,彼はまずフィンへ行くことから全てが始まる,ということを言ったのだ. 反乱軍のアジトから出た私たち. 「これから,長い長い旅が始まるのね.まずは反乱軍に加えてもらわなくっちゃ」 私がそう言うと,フリオニールが答える. 「そうだな,マリア.まずは加えてもらうこと.それからが,長い長い旅の始まりだ.みんなでレオンハルトを捜しに行こう!そして・・・故郷を・・・取り戻そう!」 …私たちは,まずアルテアにいる人たちから情報を集めることにした. 2. アルテアの町を歩いてみて,気付いたことがあった.それは,町の人は皆,穏やかな生活をしている,ということ. 「辺境の町・アルテア」・・・.この町が辺境だということをミンウに教えられた私たちは,このアルテアの町を隈なく歩き,情報をかき集めようとした.そうして気付いたことが,この町の人の穏やかさだったりするわけで・・・.外部からアジトとして自分たちの町が拠点にされても意に介さないところが,やっぱりこのアルテアの町人たちの性なんだろうなあと思う. 「反乱軍のアジトで聞いた話なんだが」 フリオニールが話し始めた. 「帝国軍が滅ぼしたというカシュオーン王国の第二王子であるゴードンという人物がこのアルテアのどこかに身を潜めているらしいんだ」 そこで,ガイが, 「王子らしい人 見つけた おれ」 と言ったので,私も話に参加しようとした.そうよ,いつまでもビクビクしてばかりの意志の弱い女ではいられないわ!この旅の始まりから,意志の強い女になってみせるんだから!私の言うべき言葉は,「ガイ,その王子はどこに?」だ.「ガイ,その王子はどこに?」ね.OK,よし,これくらい練習したんだからもう言っても良いわよね. 「ガイ,その―」 「王子らしい人 いた アジトの裏に」 だけど,私の言葉は遮られ,更に私が言う間もなく, 「なんだ!灯台もと暗し,ってやつじゃないか!早速行ってみよう,アジトの裏に」 フリオニールがそう言い,私たちの行動はとんとん拍子に進んでいった. 私・・・マリアは,一人の人を相手にする時は会話が弾むんだけど,二人以上の人を相手にする・・・もしくは一緒に行動する時は,幼い頃からどうしていいか分からずにいた.ママごとだって,兄さんやフリオニール,ガイ一人だけを相手にするのなら,よく遊べたものだけど,そこにもう一人が入ってくると,もう手のつけようがないくらい,精一杯だった.今の私は,当時の私と同じで,もしかすると,対人関係に難あり?ひょっとするとコミュ障なのかもしれない. そう考えてばかりいると,ゴードン王子の言葉を聞き漏らしてしまっているかもしれないと思い,私は王子の言葉に耳を傾けることにした.すると・・・. 「そうか.君たちは帝国との戦いに志願したのか.私はヒルダに拒絶されるのが怖くて戦いに志願できずに,こんなところでうじうじしているんだ.笑ってやってくれ・・・」 私は一呼吸置き,そう言う王子に向かってこう話した. 「いいえ,ゴードン王子.あなた様を笑い飛ばすことなど私たちには到底できません.カシュオーンとフィンは同盟を結んだ国同士ではありますが,互いの距離は相当遠いものだと聞きます.ヒルダ王女への想いだけでここ辺境の町アルテアへ来るだけの気力だけでも称賛されるべきだと思います」 王子は一言, 「・・・ありがとう」 と言っただけだった.私はやっぱり一対一で話をするには問題ないんだけど・・・.どうしても二人以上になると・・・. 「・・・マリア,行くぞ,フィンへ」 「マリア 励ますの うまい」 ちがうの,ガイ・・・!そうじゃなくってね・・・! アルテアの町で装備を一式揃えた私たちは,いよいよフィンへ潜入することになった.フィンへ向かう途中,森に囲まれた村・ガデアにて旅の疲れを癒し,そしてアルテアから出発して何日が過ぎたことだろう,森を脱した私たちは,大きな湖の向こうに故郷・フィンとフィン城があるのを認めた. 「見て!フリオニールにガイ!私たちの故郷よ!湖の反対側からはこう見えていたのね・・・」 私は思わずそう叫ぶ. 「本当だ,マリア!あれが俺たちの故郷なのか・・・?」 と言うフリオニール.そしてガイは, 「湖 周らないと フィン 辿り着けない」 と言った.さすが幼い頃森で狼に育てられていた経歴がある人の言うことは違うわね.私たちは,また数日を湖を周るのに費やし,ようやっとフィン王国に辿り着いた. …フィンの町は,私たち三人が予想していた通り,戒厳令が出されていて,重苦しい雰囲気が漂っていた.城下町のなかは,帝国軍の兵士たちでいっぱいで,とても私たちが太刀打ちできる相手ではなさそうだった.私は,声を潜めて,フリオニールに訊いてみた. 「ねぇ,これからどうするの?町は兵士でいっぱいだし,単独行動もできないわ」 すると彼は, 「まず,情報収集の基本のパブへ行ってみることにしよう.何かが掴めるのかもしれない」 と私と同じように声を潜めて返した.そこで私たちはパブへと訪れた.フリオニールはパブへ入るなり, 「俺とレオンハルトでよくこの隠し扉のなかに入ってお互いの夢を語り合ったものさ」 と言いながら,その隠し扉とやらを開け,隠し部屋の奥へと入って行った.もしかしたら,この奥に兄さんがいるかもしれないと言うのね・・・.だけど・・・,隠し部屋の奥にあるベッドには,一人の戦士が横たわっていて,言うことには, 「俺を帝国に売るのか?それならせめて殺してからにしてくれないか.生きたまま捕まりたくない・・・」 …兄さん,レオンハルトとは違った声だった. フリオニールが合言葉【のばら】を言うと,その戦士は,ゆっくりと話し出した. 「そうか・・・君たちは反乱軍の一員だったのか.私の名はスコット.カシュオーンの王子だ」 そこでフリオニールは驚き, 「あなたがカシュオーン第一王子のスコット様なのですか?!討ち死になさったと聞きましたが・・・良かった!生きていらしたのですね」 と言った.スコット王子は続ける. 「ああ.だが私ももう長くはない・・・.反乱軍である君たちに頼みがある.弟のゴードンに・・・伝えてほしいことがある.もっと自分に・・・,自信を持て,と」 なるほどね・・・.やっぱり私の言った通り,ゴードン王子には素晴らしい気力があるのよ.そこで私が,「その他に伝えることはありますか?」と言おうと思った.一回練習したから大丈夫よね. 「その他に―」 「それから,ヒルダに愛している,と・・・.」 そこでまた私の言葉は遮られ,スコット王子とフリオニールのやりとりが始まった.王子は続ける. 「・・・いや,もうすぐ死ぬ人間の告白など・・・彼女を・・・,悲しませるだけだ・・・」 フリオニールは王子に訊いた. 「あの・・・レオンハルトという者をご存じありませんか?」 と.でも王子は・・・. 「生憎だが,役に立てなくてすまない・・・.その代わりにこれを持って言ってくれ.私の・・・『リング』と・・・,カシュオーン王家に伝わる書物の冒頭部分を書き写したもの・・・『世界年譜序文-冥界王-』だ・・・.長く話したせいか大分疲れてしまった・・・少し・・・眠らせてくれないか・・・」 と言って,そのまま息を引き取ってしまった・・・. フィンからアルテアまでの帰り際,コテージのなかで私たち三人は,それぞれ言葉を交わしていた. 「フリオニール,そのリング,綺麗ね」 「ああ・・・」 「どうしたの?顔色悪いわよ?」 「すまないマリア,心配をかけてしまって・・・.このリングの他にもう一つ貰ったものがどうしても気になって・・・うずうずしているんだ」 「うずうず?」 「ああ.何か末恐ろしいことが書いていそうな予感がして・・・.でも大丈夫だから.アルテアに帰ったら,マリアはゴードン王子にスコット王子からの言伝てを頼む.俺とガイは,ヒルダ王女にスコット王子からの形見の品を渡してくるから!」 そういったやりとりがあった日から数日後,アルテアに戻り,フリオニールから言われたようにして,私はゴードン王子に言伝てをし,アジトにてフリオニール,ガイと合流した.私たちを前にヒルダ王女は, 「フィンに潜入して生きて帰ってくるとはなかなか腕が立つようですね.私はあなた方の力を見くびっていたようです.是非とも反乱軍の一員として力になって下さい.魔金属である【ミスリル】を手に入れるために強い戦士を必要としているのです」 こうして,私たちは,反乱軍の一員として迎えられることになった. 3. 反乱軍の一員として,改めてヒルダ王女や白魔導士・ミンウに迎えられた私たち.そこで早速,ヒルダ王女は私たち三人に任務を与えた.彼女が言ったことを要約すると・・・.先のフィン襲撃で我々が負けてしまったのは,魔金属・【ミスリル】で作られた武具を装備していなかったためだという.【ミスリル】の武具を装備した帝国兵たちに敵うはずもなくここアルテアに逃げてきた,とも言った.そして,【ミスリル】についてだけれど,その魔金属について調べさせている,サラマンドという町に住む反乱軍の諜報員・ヨーゼフからの音信が不通なので,様子を見に行ってきて欲しい,とのことだった.更に,あなたたちの助けになるでしょう,と言って,私たち三人に加えて,ミンウも同行することになった. ミンウは,改めて私たちに自己紹介をして,作戦会議室のヒルダ王女のすぐ横でサラマンドへの道程を分かり易く説明してくれた.そこへヒルダ王女も話に入ってきて,また新しい情報を教えてもらった.彼女の話によると,先のフィン襲撃で帝国側も手傷を負っているらしく,それを補うためにバフスクという町で沢山の町人や奴隷を使って【大戦艦】と呼ばれる【飛空船】を建造中なのだという.そしてミンウからも新しい情報を教わった.彼は【飛空船】について色々と話した.昔,フィンには「白騎士団」というものが存在し,そのリーダーはシドと言う男だったけれど,天翔ける【飛空船】の建造に夢中になってフィンから去って行ってしまったこと.そして今現在そのシドはポフトという町で運輸業を営みつつ【飛空船】の研究に没頭していることを話してくれた. フリオニールとガイは,うんうん,と頷いていて話の内容をきちんと把握しているようだったけれど,私はといえば・・・,サラマンドへ行く目的を理解するので頭がいっぱいいっぱいだったのに,【大戦艦】,バフスク,が出てきた辺りで頭のなかがパンクしてしまいそうになった.とにかく,今の私たちの目的はサラマンドへ行ってヨーゼフという人の様子を見に行ってくることよね?それでいいのよね?反乱軍のアジトを出た後,私は自分たちの目的がなんなのかを確認するためにフリオニールに一応訊いてみた.ミンウにはあまり聞こえないように.だって,折角反乱軍の一員として認めてもらったのに,「君はもう目的を忘れてしまったのか?使えないやつだ」と思われるのはイヤだから.フリオニールにそのことも打ち明けてみたら彼は, 「そんなことはないんじゃないか?仲間一人一人がちゃんと目的を理解し合っているのを確認するのは大事なことだと思う.よく言うだろう?『聞くのは一時の恥 聞かぬは一生の恥』だって.それにマリアが今,目的を確認しに訊かなかったら,俺も目的が分からなくなっていたところだったよ.【大戦艦】のことで頭がいっぱいで・・・」 そうだったのね,フリオニール.あなたはもうそんな先のことまで考えていたというのね.そこで不意に誰かが後ろから私とフリオニールの肩をくっつけるように抱えたと思うと, 「みんな 目的 わかる これ 大事」 と声がした. 「ガイ・・・ありがとう」 と私が返す. フリオニールはどういうわけか少し照れくさそうにしていた. ミンウはというと,こんな私たちを見て,優しく笑っていた.私,こういう雰囲気・・・ほのぼのとした感じ・・・が大好きよ. ミンウが持っているカヌーで,パルムの町へ目指し,湖を渡っていた.私たち四人は,それぞれ別の行動をしている.フリオニールはずっと湖の向こうを見ているし,ガイはカヌーを漕いでいる.ミンウは,じっと目を瞑ったままだ.瞑想でもしているのかな?私はというと,やっと使い慣れてきた弓の手入れをしていた.そうしながら,湖面を見てみた.太陽の光が水面に反射されてキラキラと光っている.私は心の中で呟く.「きれいね・・・」と. 湖に囲まれた,私たちの故郷,フィンでは今,なにが起こっているんだろう. あの日,私は朝早くに行われる王国主催の弓技大会予選に出るために早く寝ようと思ったんだ.そうしたら寝る前に母さんが私の部屋に入ってきて,こう言ったんだっけ. 「マリア.あなた,一体どうして弓に興味を持ち始めたの?レオンハルトやフリオニールに影響されて?あの子たち,血気盛んなんだから・・・.母さん,あなたにはガイのようにじっとして落ち着きがあって優しい人になって欲しいと思うの」 と. 「母さん.私は,もう自分の人生を他の人に決められたくないの.父さんや母さんの言うことは分かるけど,私は私が決めた道を歩くことにした,それだけよ.弓に興味を持ち始めたのは,いつもの狩りに役立つかなって・・・」 と私は返すと,母さんは寂しそうに部屋から去っていったっけ.これが,私の両親との最後の別れになってしまった・・・.私はそのまま寝て,次に目が覚めた時には,家が全焼した後だった.奇跡的に助かった私は,机の上に弓と一緒になって残されたメモを見つけ,読んでいく内に大粒の涙を流したんだ.メモには, 『沢山のパラメキア帝国の軍隊が来て,女子どもを渡さないと家に火を着ける,と言われたわ.マリア,どうやらあなたの言っていたことは正しかったみたいね.あなたはあなたの思うがままに生きなさい 母さんより』 と書かれていた. あの日から・・・私は目を開けるのが辛かった.だってまた帝国軍が襲ってきて私の周りからまた誰かがいなくなると思うと・・・夜も眠れなくなって・・・ 水面からの光が原因なのか,一時の間,私はフラッシュバックしていた.フリオニールが,私に話しかける. 「マリア.どうしたんだ?気分でも悪いのか」 私は答える. 「ええ,ちょっと『あの日』のことを思い出してね・・・」 「そうか・・・『あの日』から全然眠れていないものな・・・マリアは」 とフリオニールは言い,ミンウにどうにかして欲しいと頼んだ.すると,ミンウは, 「それならば,この『スリプルの本』を読みなさい.読んでいくと,誰でも,海より深く眠れる本だ」 私はミンウからその本を受け取ると,早速読み始めた.・・・すると,彼が言った通り,私は微睡という名の流砂に飲み込まれていった. 4. ハッピーバースデー トゥー ユー♪ ハッピーバースデー ディア マリアー♪ 「ねえマリア!ぼくといっしょにおどろうよ!」 「なにを言っているんだフリオニール!マリアはぼくとおどりたいにきまっているだろう?」 「なにおう?ぼくたちだってマリアのたんじょうかいによばれたんだぞ!」 「み・・・みんなおちついて・・・」 この後,私と誰が踊るかで町の男の子同士で取っ組み合いのケンカが始まったんだっけ.私はというと,本当は兄さんと踊りたかったんだっけか・・・.更にその後,結局私は一人ぼっちになってしまうことになる.自分の誕生会なのに. 「マリア.着いたぞ,湖の向こう側に」 と言って,私を夢から覚まし,フリオニールが起こしてくれた.彼は続ける. 「この先,しばらく歩いた後にパルムという町があって,そこからミンウが言っていた,シドがいるポフトの町までの定期船が出ているらしい」 「ガイとミンウはどこへ行ったの?」 私がそう言うと, 「先にパルムの町に行って待っててもらっているよ.定期船の運賃がもっと安くならないか交渉中でもある」 とフリオニールが言ったので,私は急いでカヌーから降り,彼と一緒にカヌーを折りたたみ,パルムの町まで急いだ.反乱軍に入って,すぐ足手まといになった気がする・・・.もっとがんばらなきゃ・・・! パルムの町へ着いた私たちは,ガイとミンウに合流」し,早速定期船に乗せてもらった.船に乗っている間,弓の手入れを完璧にやり遂げた私は,私たち幼馴染三人に新たに加わったミンウに積極的に話をしようと,彼に声をかけた. 「ミンウ様.あなたが担いでいるその円筒の形をしたものはなんですか?」 私がそう尋ねると,ミンウは私の方を振り向き,こう話し始めた. 「マリアか.ミンウ,と呼んでくれても構わない.この筒には【反乱軍の旗】が入っていてね.この先の旅路で役に立つかもしれないと思い,持ってきたんだ」 私は更に,その【反乱軍の旗】について尋ねると,ミンウはまた続けて話した. 「この【反乱軍の旗】には重大な意味が込められていてね.私の出身地であるミシディアの古の伝説から来ているものなのだが・・・.聞きたいか?」 私は,はい,と答えた.そうすると,ミンウはゆっくりと話し始めた. 「昔々,戦争によって離れ離れになった織物屋を営んでいた夫妻がいた.夫は戦場へ兵士として戦いに出て行かなくてはなり,妻は夫の帰りを待つことになった.だが,戦争が終わっても,夫は帰って来なかった.妻は,自分の町に住む人々にその不条理を訴えた.すると,町人の多くの人が彼女に賛同の意を示したのだ.何故,戦争が終わったのに愛する人を帰してくれないのか,と.そこで民衆は一念発起し,その妻・・・女性を先頭に,彼女が独自に織った旗を掲げ,国に陳情に出たのだ.これが,ミシディアに伝わる,『民衆を導く健気な女神』伝説だ.その時に使われた旗が,今正に君たちが目にしているものなのだよ.この話は伝説ではなく,きちんとした史実なんだ.フィンで反乱軍を立ち上げた時,私はこの旗を,【反乱軍の旗】にしたらどうか,とヒルダ王女に告げた.すると,彼女は,快諾してくれた」 【反乱軍の旗】をいつの間にかガイとフリオニールも加わってまじまじと見る私たちに,ミンウはそう語ってくれた.旗は,よく見てみると,タペストリー調になっていた.要するに,旗一枚に,一つの物語が織ってあった.始めから途中までは,夫への想いが込めてあったのか,その夫妻の生活風景が織られていた.そして最後に織られていたのは,炎をまとった鳥だった.不意に,フリオニールが 「この一番最後の鳥・・・のようなものは・・・」 と言ったので,ミンウはこう返した. 「火の鳥・・・『転生の炎』という術を使うと言われる,不死鳥・フェニックスのことだ.私もミシディア出身だというのに,至らぬところがあるのは許してほしい」 フリオニールは慌てて,「いえいえ」と言ったけど・・・.要するにミンウはフェニックスに関してよく知らないところがあるのね.そこで,ミンウが唐突に, 「フリオニール.君にヒルダ王女からの伝言がある.『率先して仲間を引っ張っているあなたはリーダーの才覚があるのでしょう.私もあなたから見習うべきところがあるようです.称賛すべきものです』だそうだ」 と言った.言われたフリオニールは,照れくさそうに,「俺はそんな・・・」と言っているかのようだった. そうこうしている内に,私たち四人を乗せた船は,港町ポフトに着いた.ええっと,確かこの町には,元白騎士団のリーダーだったシドという人物がいるのよね.ポフトの町のパブに,彼,シドはいた.白騎士団のリーダー・・・.そういう肩書きを聞くだけでは,すごく強くて頼りになりそうなイメージだけど・・・.実際のシドは,そういうイメージとはかけ離れていて,第一印象は"飲んだくれの中年男"みたいな人だった.とても,ミンウが言っていたように,きちんと運輸業に全うとしていて,【飛空船】の研究もしている人とは思えなかった.けれど,第一印象はアテにならない場合ってよくあるから,私はもっとシドのことを知ろうと直接彼に話しかけた. 「あの・・・シドさん?【飛空船】って一体どんな仕組みで動いているんですか?」 と.すると,シドは,よくぞ訊いてくれた!と言わんばかりの顔をしてパブの奥から丸めた紙を数本ばかし持って来ると,机の上にそれらを広げ, 「よくぞ訊いてくれたな,姉ちゃん!近頃は子分ですら俺の研究三昧に冷たい眼差しを向けるものだから,滞っていたんだよ!」 と言った.そして,ああだこうだ机の上に広げた【飛空船】の図面を指差されながら彼から説明を受けることになった.ミンウは,やれやれ,という態度をとっていたし,フリオニールとガイも,その様子を見ていて,少しばかりか引いている感じだった.・・・あれ?私,また余計なことしちゃった?もしかして・・・.また足手まといをした・・・とか? やがて,シドが,声のトーンを落としながら喋り出したので,私は,シドの話を聞くのに集中した. 「・・・それでな,この最新型の【飛空船】には【エクトラズム】という油が必要なんだが・・・.こればかりは,俺も手が出せねぇ.なにせそれが採れる場所といったら・・・セミテの滝の洞窟なんだからよ.今は帝国の領地内だ」 私は一応尋ねてみる. 「シドさん?その【エクトラズム】って外見はどんな風なものなんですか?」 すると,シドはこう答えてくれた. 「洞窟の奥の泉から,水と一緒に出て来る蛍光するものさ.油だから,水と分離していて採り易い.・・・ん?なんだ姉ちゃん,あんたまさかそれを採りに行って来てくれるって言うのか?」 「はい!困っている人を助けたいですから」 と私は答えたけれど,シドは, 「馬鹿なことは言いなさんな.姉ちゃん一人で帝国軍領地へ入るのは,わざわざ死にに行くようなもんだぜ」 「でも!」 私は反論しようとした.だけど・・・. 「マリア.そこまでにしておきなさい」 ミンウに止められた. …ポフトの町の宿にて,私はミンウから叱りを受けていた. 「いいかい,マリア.私たちは一番に成すべきことがある.それが何であるか,君にも分かるだろう?」 「はい・・・.サラマンドへ行って,ヨーゼフという人の様子を見に行って来ることです・・・」 「そもそも我々反乱軍は,祖国を捨てたあのシドを快しと思っていない.ましてやその彼から,今回の任務とは関係のないことまで引き受けてしまって・・・.もしそれが失敗したとしたら,誰が責任を取るというんだ?」 私は「すみません・・・」と言うしかなかった.結局,私は反乱軍の足手まといでしかないというのね・・・.私は宿屋のロビーから自室へ戻った.ややあって,私の部屋のドアをノックする音がしたので,どうぞ,と言うと,フリオニールとガイが入って来た.フリオニールが開口一番に言うことには, 「マリアが今日・・・シドに色々訊いたこと・・・間違いじゃなかったと思うんだ.その・・・ミンウに叱られていたところを見てしまったんだが・・・.俺たちも,マリアのことを,手助け・・・いや,力になりたいと思っている.だから,そんなに落ち込むことは,ないと思うんだ」 と.続けてガイも, 「おれたち 仲間 だから 協力する」 と言った.そこで私は,前々から思っていたことを打ち明けてみた. 「・・・ねぇ,フリオニールにガイ.私って反乱軍の一員として,足手まといというか・・・活躍できていないと思ってる?」 と.すると,意外にもフリオニールからすぐ返事が返ってきた. 「活躍できていないも何も・・・俺たちはまだ第一の任務を果たしていないじゃないか?」 「でも!このポフトに来るまでに私,あなたたちやミンウに沢山迷惑をかけてしまったわ!」 ガイが言う. 「マリア それ 『迷惑』 言わない」 「え?それどういう意味,ガイ?」 「誰でも 良いところ 良くないところ ある だから そこ おぎない合って 助け合って 仲間は生きていくもの おれ むかし そう 教わった」 「なるほどな」 とフリオニールは言う. 「マリア.ガイの言う通りだよ.人は迷惑をかけ合って生きていく生きものなんだ.そこをおぎない合えるか.助け合えるか.だから仲間ができるんだ.側にいられるんだ.・・・迷惑をかけない人なんて存在しないんだよ.だから・・・もう『足手まとい』だなんて悲しいことは言わないでくれ・・・」 そう言って二人は寂しそうに私の部屋から去って行った.私はその時,デジャヴを感じた.これは・・・!「あの日」の夜と状況が似ている!このまま目を瞑ったらまた私は大切な人を失ってしまうというの?お願い,それだけはやめて!フリオニールにガイ,もう一度私の部屋に来て,せめて笑顔で帰っていってよ! …そう言って大声で泣きじゃくる私の声を聞いたのか,フリオニールとガイがもう一度私の部屋に戻って来た. 「どうしたんだ?!マリア」 「『あの日』がまた来ないかって・・・怖くて怖くて・・・」 「おれ ミンウ 呼んで来る」 「マリア,もう怖がらなくても大丈夫だ.『あの日』のことを思い出したのか?ここポフトは,元白騎士団のリーダーのシドがいる町だ.さっきこの宿に手紙が届いてな.差出人はシドからで,なんでも『俺の目の黒いうちは帝国軍には入らせねぇ!』だそうだ.だから,安心しても良いと思う」 「ありがとう,フリオニール・・・」 ガイによって呼ばれたミンウは,その手紙を読み, 「・・・彼のことを少し見直したよ」 と言ったそうだ. 翌日,何も起こらずに平凡な朝を迎えられたことに感謝した私は,仲間たち三人に遅れをとらせまいと急いで準備をすると,サラマンド行きの【飛空船】に乗り,そこに降りた.サラマンドの町に着いた私たちは,ヨーゼフに会いに来た,と町人に言うと,その町人は,彼の家へ案内しれてくれた. 5. サラマンドの町は,町全体が雪で覆われていた.町の人にヨーゼフが住んでいるとされる家に案内されて行く間,私たち三人,フリオニール,私,ガイは,「雪」というものを初めて見て,興奮していたんだった. 「見て!フリオニールにガイ!雪化粧ってこういうのをいうのね・・・」 私がそう言うと,フリオニールは, 「ああ.確かに綺麗だな・・・.それよりマリア,寒くないか?」 と言ってきたので,私は答えた. 「大丈夫よ.実はヒルダ王女から事前にサラマンドについて色々聞いたから・・・.携帯用の防寒具をあなたたちの分まで一式持ってきているわ」 「さすが マリア しっかり者」 ガイったら・・・.・・・でも,「しっかり者」?本当にそうなのかな,私・・・. ギュム,ギュムと雪を踏みしめる音を立てながら私たち四人は,やがてヨーゼフの家の前までやって来た.そこでミンウが, 「反乱軍の参謀,ミンウですが」 と言った.けれど,家のドアから人が現れる様子もなく,ただ一言,「合言葉は?」と返ってきたので,ミンウは,【のばら】です,と言った.それでやっと玄関の扉を開けてくれるのかと思いきや,その家の主は,合言葉だけでは信用できんな,と言い,加えて,何か反乱軍であるという証拠の品を持っているのなら家に入れてやろう,と言った.私はハッと思い,ミンウに彼が担いでいる【反乱軍の旗】を指差した.ミンウは,分かっている,と呟き, 「証拠の品ならあります.【反乱軍の旗】です」 と言うと,いきなり玄関のドアが開き,緑色のコートを着込み,つるっ禿の逞しい男の人が出てきた.そして開口一番に, 「おお!これはこれは,ミンウ様ではありませぬか!ささ,どうぞなかへ.・・・そちらの方は?」 と言って私たちの方へ目を向けると,ミンウは答える. 「新しく反乱軍へ入ったフリオニール,マリア,ガイの三人です.どうぞ歓迎してあげて下さい」 と.結局私たちは,その男の人・・・ヨーゼフに案内されて,彼の家の中へ入っていった. ミンウは,早速【反乱軍の旗】を机の上にバサッと広げると,ヨーゼフを納得させた.そしてそれ以来,ミンウは何故か無口になってしまったのだ.ヨーゼフも黙っている.これは一体,どういう状況だというの?さっぱりだわ!やがて,フリオニールが,なるほど,分かった,と呟くと,ヨーゼフに向かって, 「あなたが反乱軍の諜報員であるヨーゼフさんですね?」 と言うと,彼らのやりとりが始まった. 「いかにも」 「あなたはヒルダ王女から【ミスリル】の調査をするようにと命を受けていたはずです.・・・音信が途絶えたのは何故でしょうか?」 「それは言えん・・・」 「そうですか・・・.それでも,あなたが生きていて良かったです.我々はあなたが帝国軍に命を奪われたのではないかと心配だったのです」 「・・・【ミスリル】のことだが・・・少しだけなら情報を教えてやろう.セミテの滝の洞窟で,この町の男たちが働かされている.【ミスリル】の採掘に皆疲れ果てているようだ.彼らを助け出すことができれば,お前たちは堂々と反乱軍の一員だと名乗れるだろう.そして,お前たちのことを信用してやろう」 これってもしかして・・・私たちのことを試そうとしているの・・・?ガイにそう訊くと, 「フリオニール 悟った テストなう と」 やっぱりそうだったのね・・・.と同時に,私は一つ思うところがあった.それは,【ミスリル】が採れる場所と,【エクトラズム】が採れる場所が一致しているということと,決して私がシドに色々訊いたのが間違いででなかったということを,ミンウに伝えたかったという思いだった.そしてそれをミンウに伝えると彼は, 「・・・偶然なこともあるものだ」 と言っただけだった.なに,その答え方?!私たちが一生懸命シドやヨーゼフから聞き出したことを,「偶然」という一言で一蹴するなんて酷いと思わない? ミンウが【反乱軍の旗】をしまい,セミテの滝へ向かおうとしていた時,ヨーゼフが, 「気を付けて行って来るのだぞ」 と声をかけてくれた.それから私たちは十数日をかけて,サラマンドから西部へ進み歩き,今度はカヌーに乗ってまた何日も,狭い水路を東へ逆戻りし,そして遂にセミテの滝の洞窟まで辿り着くことができた.早速洞窟の中へ入ろうとする私たち三人を,「待つんだ」とミンウが止め, 「ここからはパラメキア皇帝が魔界から呼び出したという魔物が潜んでいるところだ.無用な戦闘は避けること.回復役は私が引き受けるが,受けた傷は基本自分で治すことも忘れてはいけない」 と注意を促してくれた.そうして,私たちの初めての敵陣攻略が始まった. フリオニールは剣を,私は弓を,ガイは斧を,そしてミンウは杖を携え,どんどん地下へと進んでいった.洞窟内はなるほど,さすがに魔金属・【ミスリル】が採れるだけのところはある.何ヶ所に渡ってキラキラ光る水晶が岩肌からその有様を見せていた.・・・私たちは,更に洞窟の奥へ進んでいった.すると・・・.スコップやつるはしなどの道具が見えたかと思うと,洞窟内でもちょっと開けた場所に数人の男の人たちが採掘作業をしているのを見つけた. 「皆さん!我々は反乱軍の者です!もう大丈夫です,もうじきここは帝国の陣地ではなくなります.・・・ここの指揮官はどこにいるのですか?我々がなんとか打ち倒してみせます!」 とフリオニールが叫ぶと,それまで採掘作業をしていた男の人たち・・・と一人の女の子が出て行こうとした.私はその女の子を引き止め,話しかけた. 「ねぇ,あなた,どうしてこんなところにいるの?」 すると,女の子は振り返り,私の言葉に答えた. 「大きな帽子を被った怖いおじちゃんが・・・私に言ったの.『お前はヨーゼフんとこの娘だからなぁ・・・人質になってもらうぜ』って・・・.それで私怖くて・・・」 私は彼女と背丈を同じくし,優しく話しかけた. 「私はマリア.あなたのお父さんの味方だから,怖がらないでね.もう大丈夫だから,安心して良いわよ」 と.女の子はぱあっと笑顔になり, 「ありがとう,お姉ちゃん.私,ネリーっていうの!」 私は,そう!,と返した.そして彼女らが地上に戻って行くのを見送った後,仲間の三人に遅れを取らすまいと急いで後を追った.・・・そして・・・.フリオニールが,「来たか,マリア!」と小声で言うと,ミンウが岩場に隠れるよう指示を出した. 「あの帝国兵・・・サージェントは,今まで相手にしてきた魔物とは比べ物にならないくらいの強さだ.みんなの力を合わせて立ち向かわないと,勝つことは到底不可能だろう」 と同じくミンウが言う.そして私たちは,ミンウの合図とともに,一斉に行く手を阻むサージェントに立ち向かっていった. … サージェントを倒した私たちは,奥まで進んでみると,確かにシドが言っていた通り,この洞窟の奥に泉があるのをみつけた.私は,取り敢えず【エクトラズム】を採ろうと,泉に浮かぶその油を一杯だけ掬ってみた.なるほど,これもシドが言った通り,蛍光・・・仄かな光を発している.他の三人は,【ミスリル】を探しているみたいだけど・・・.どうやら見つからないみたいだ.私が【エクトラズム】を掬い,バケツに入れていると,泉の最深部から煌めきを感じた.私は腕をまくって,その煌めいたものを泉の最深部から取り出した.これは,青みを帯びた金属・・・ひょっとして,これが【ミスリル】? 6. 私は,その青みを帯びた金属を両の手で持ち上げたまま,少しだけ意識が飛んでいた.・・・フリオニールに話しかけられるまで. 「マリア!それってもしかして・・・!【ミスリル】か?!」 私は意識を取り戻す. 「ええ,多分,【ミスリル】に間違いないわ.そうでしょ?ミンウ」 ミンウは答える. 「ああ,そうだな.その青さといい,女性である君でも軽々とそう持ち上げられる軽さといい,なによりその金属から放つ魔力はすさまじいものを感じる.【ミスリル】だと断定してもいい.マリア,よくやったね」 ああ・・・.私,初めてミンウに褒められた.良かったわ・・・.続けてガイが, 「マリア 大活躍なう」 と言ってくれた. …これって,私はもっと自信を持っていいよってことなのかしら?だって,みんな私のことを褒めてくれるから・・・.そうしたらこの場所に,なにか記念になるものを残しておきたい気になるじゃないの.洞窟の壁に文字を刻むとか?それじゃあなんだか地味よね・・・.もっと,こうパッと目立つような何かを・・・.・・・.あ!そうだ,あれをここに設置するのはどうかしら・・・.私はミンウに尋ねた. 「あの・・・ミンウ,ぶしつけではありますが,あなたが担いでいる【反乱軍の旗】をここに設置してもよろしいでしょうか・・・」 恐る恐る訊いてみたので,最後の方がほとんど聞き取りにくかった・・・と思ったけれど,ミンウは意外にも, 「ああ,いいと思う.反乱軍がここまで来たという帝国軍への見せつけにもなるだろうから」と許諾の意を示してくれた. セミテの滝の洞窟は,その最奥部にて,私たち四人は,【反乱軍の旗】を設置しようとしていた.泉の前に,まず旗を立てるための三脚を用意して・・・と.フリオニールが言う. 「しかしこんな大事な旗,こんなところに設置しても良いものなのですか?」 「ああ.旗は数枚あるから大丈夫だ」 とミンウが返す.みんなでこうやってなにかに一緒になって作業していると・・・色々思い出すわね・・・.無言状態になるのを心配した私は,呟いてみた. 「私・・・なんか『あの日』の前のことを思い出してきたわ.兄さんと私とフリオニールとガイと一緒にいた頃の話よ」 すると,フリオニールは,「ああ.あの頃は良かった・・・」と話に乗ってくれそうだった.ガイも,「あの頃 まだ 幸せ」と返してくれたので,私はゆっくりと話し出した. 「ねぇ,二人とも.あの頃は,よく四人で一緒に遊んでいたわよね.こうやって,丸くなって・・・.まるで,公園の砂場でお城をみんなで一緒に造ってた時みたい.他にも色々作ったわよね?懐かしいわ・・・.だけど・・・もうあの日々は二度と帰ってはこないのね・・・」 私は,これ以上続けると涙が出てきそうだっただったので,話題を変えようと,一生懸命次の言葉を探し,思いつき,そして言おうとした.でも・・・. 「あ,そう―」 「ガイ.そういえば君にもヒルダ王女からの伝言がある」 私の言葉は,ミンウによって遮られてしまった.その一連の様子を見ていたのかフリオニールは,私にこう話しかけてきた. 「なぁ,マリア.マリアって度々誰かに言葉を遮られているよな.本当に最近のことだけど.一体どうしてなんだろうな?・・・・・・・・・悩んでいるんだろう?一人の時はいいんだけど,二人以上の人とどう接していいか分からないって」 …私は正直,彼の言葉を聞いて,心を見透かされたような恥じらいと,分かってくれる人がいた,というような安心感を,激しく心の中で感じた.それと同時に,フリオニールという男性を見る目もなんだか変わったような・・・.そんな不思議な気持ちになった.こんな気持ちになったのは初めてで・・・.結局,私は「ええ・・・そうなのよ」とぶっきらぼうにしか答えることができなかった. 【反乱軍の旗】を無事設置することができた私たちは,ミンウのテレポでセミテの滝の洞窟の最奥部から脱し,瀕死状態のミンウをまだ熟練度が低い私のケアルで回復させた.そして,数日かけて,サラマンドへ戻った.ヨーゼフは娘のネリーちゃんが帰ってきたことで大変嬉しがっているようだった.特にネリーちゃんを励ました私に感謝の気持ちを伝えたいらしく,大きな手で何度も握手するのを求められた.彼が言うには,以前彼が私たちにとっていた態度は,私たちを試す積りだったのもあるけれど,ボーゲンという元フィンの伯爵で今は帝国の将軍に,脅されていた所以もあるらしい.ボーゲンって確か・・・スコット王子も話していたあのボーゲン伯爵のことかしら.あと,ヨーゼフはこんなことも教えてくれた.【大戦艦】は,【ダークナイト】が指揮官になってから建造が急速に進んでいるらしい,とのこと.もっともこれはフリオニールから後で聞いたことで,私といえば,ネリーちゃんの遊び相手になっていたんだけどね.そうなのね,帝国にはそんな強そうな人がいるのね・・・. ポフトの町へまた数日かけて戻った私たちは,シドに【エクトラズム】を見せた.すると彼は, 「すげぇや,よくやってくれたな姉ちゃん!これで俺の【飛空船】開発も一気に進むぜ.【大戦艦】なんかよりも遥かに高性能なやつをな!」 と私の手を握りながら大喜びしていた. パルムの町へ向かう船の上で,私たち四人は,早くも次にすべきことを話し合っていた.ミンウが言い出した. 「次の作戦のキーワードは,【ダークナイト】と【大戦艦】だ.皆,よく覚えておくように」 私は思い切って会話に参加してみた. 「その【大戦艦】って,バフスクで建造中なんですよね?では,【ダークナイト】もそこにいるということですね」 と.すると,ミンウは自然と頷き, 「ああ.そう言えるだろう.だが帝国軍も愚鈍ではない.我々が【ミスリル】を手にしたことで,もしかしたらサッと作戦を変えてくるかもしれない」 そういうやりとりを遠くから見ていたフリオニールは,私に「その調子だ マリア」というアイコンタクトをしてくれた.・・・多分,だけど. アルテアにある反乱軍のアジトへ戻って来ると,ヒルダ王女は,【ミスリル】をアルテアの鍛冶屋に持って行くことを私たちに伝え,そして,ミンウの予想通りの情報を私たちに提供してくれた.彼女が言うには,【大戦艦】の建造を指揮していた【ダークナイト】はかなり有能な者のようで,今は別の任務に就いているということ,そして【大戦艦】を破壊するなら今しかない,今すぐバフスクへ行ってそうして欲しい,とのことだった. そしてミンウから私たちの作戦報告を受けると,ヒルダ王女は,「まあ!」と叫び,私を自分のところへ来るように呼ぶと,握手し,抱きしめ,小さな声でこう言った. 「マリア,よくやってくれました・・・.実をいうと私もあなたと同じく,辛い立場にいたのです.ああ・・・,一度は王族の家になど生まれなければ良かったと思った時もありました.けれど,そのような思いを,誰に言うことができましょう?あなたも男の人ばかりのなかで懸命に生き抜いてきた女性なのですね.こうやって指示ばかり出している私などより・・・ずっと強い女だと思います.あなたのそんな強さを分けて欲しいくらいです.民を引っ張りきる力を.お互い,女同士,精いっぱい生きましょう.そして取り戻しましょう,平和を!」 私は,「はい!」と小気味よく返事を返した.そして,次の任務を果たすため,私たち四人は,ヒルダ王女に見送られ,アジトを去った. ねぇ,兄さん.兄さんは,今どこで何をしているの?私,兄さんとは別の意味で好きな人ができちゃった.でもそれは秘密.言ったらその人と喧嘩になるから.私たちが兄さんを見つけたら,笑顔で迎えてね.その代わりに,兄さんが故郷に帰って来たら,私たちが笑顔で迎えるから―. その時は,この世界にはきっと【反乱軍の旗】がいっぱい立ってて,平和な世界になっているに違いないわ―――! 戻る