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エリン・ブロコビッチ(Erin Brockovich) ヒューマンドラマ、ノンフィクション 2000年アメリカ/ 同年日本公開 第73回アカデミー賞 主演女優賞(ジュリア・ロバーツ) エリン・ブロコビッチ コレクターズ・エディション [DVD] 主演:ジュリア・ロバーツ 監督:スティーブン・ソダーバーグ 全米史上最高の和解額、3億3千3百万ドルを勝ち取った女性の実話。 あらすじ 離婚歴2回。子ども3人。無職。預金残高16ドル。 強調した胸元にミニスカから露出した生足、昔出たミスコンが唯一の誇り。 そんなエリンはある日、転職活動中に自動車事故に遭う。 「向こうが明らかに悪い、確実に勝てる」と言われ、首にギプスをはめてひょこひょこ立った法廷で、挑発に乗って暴言を吐いて敗訴・・・ 「負けた責任を取れ」と弁護士のエドに詰め寄り、ほぼ無理やり法律事務所で働きはじめる。 そんな中、彼女はある医療記録を偶然見つける。それは巨大企業が隠蔽していた水質汚染を暴く手かがりになっていく。 みどころ ノンフィクション! 300億円もの和解金を、法律の素人(しかもすごいプロポーションの)が勝ち取るんだから凄い。 わりと人間くさくて好感の持てる主人公 誤解されそうな見てくれの彼女だけど、ド直球な発言と、住民達への感情移入っぷりが良い。 名言 エリン「弁護士ってのは絶対に謝らない人種なの?ムカつくわ」 エド「ミスコンクイーンってのは謝らない人種なのかい?ムカつくね」 レビュー ★★★★★ 巨大企業との戦いに二の足を踏むエド、署名に消極的な住民達、相手方の弁護士団。彼らに対して彼女が吐く台詞がいちいち良いなあと思う。 痛快ですっきりする映画が観たければ間違いなし。 これも好きかも MISS POTTER ミュージック・オブ・ハート しあわせの隠れ場所 しあわせの隠れ場所 [DVD] [Mas]
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ウンコビッチ堀川 性別:女性 所持武器:なし 攻撃力:0 防御力:6 体力:6 精神力:3 FS「大便」15 特殊能力『Yes , we are SCATOLOGY!』 発動率:104% 成功率:0% 効果:精神即死 100 対象:半径2マス全員 x2.5 時間:一瞬 x1.0 制約:移動した後使用できない x0.85 消費制約:自分死亡 50 非消費制約:精神攻撃 100 FS:15 調整:敵味方無差別 10 効果値:100*2.5*0.85 = 212.5 発動率:(100-212.5+150)*(1+0.1*15)+103.75≒104% 【能力原理】 自分の腸内にあるすべてのうんこを半径2マスにいる全キャラクターの脳の中にひり出して 頭ごと爆発させる能力だが、精神力の高い者にはうんこに対する耐性が高いため効かない。 全力でひり出すので能力発動まで一歩も動けず、また自身もそのまま衰弱死するという捨て身の技。 キャラクター説明 多感であった小2の頃に、ゲーム『脳を鍛える大人のDSトレーニング』をプレイしながら 映画『ソドムの市』を見ていた際、「人間の脳みそってウンコに似てるな……」と 一瞬考えてしまったことにより魔人に覚醒。と同時にスカトロ趣味に目覚める。 人間の脳みそにうんこをひり出し爆散した死体の中に体をうずめるのが至高の時間。 人間相手だと軽く殺せるが魔人相手となると全力でひり出さなければならず 自身のみの危険につながるため魔人相手に能力を使ったことはない。 いつか爆散うんこ魔人死体風呂に入りたいと夢見る乙女17歳。 見た目は割と地味。『君に届け』の爽子に似てるとかどうとか。
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「テレビでセリエAの試合をやっていても私はチャンネルを変えて大宮と新潟の試合を見る。守備的な試合はつまらない」 「私の中には常に攻撃の血が流れ続けてており、攻撃こそがわたしの哲学だ」 08年第4節大宮戦を終えて2-1でリードしてる後半30分 守備的MFの吉村に変えてFW杉本を投入したことを聞かれたときのコメント。 「ピクシーがやると言った絶対やる。」 07年11月仮契約のため来日した会見での発言。 「名古屋と僕は固い絆で結ばれている。クラブだけでなく、街、人びと、習慣、食べ物、すべてを愛している。」 「選手に要求するのは、ハードワークではない。スーパーハードワーク。やるからには限界にチャレンジする。」 「僕は、生粋の負けず嫌いなファイターだ。どんなに苦しくたって、最後の最後まですべての力を出し尽くし、 成功を収めてきた。勝者のメンタリティと燃えたぎる闘志を選手に伝えていくのも義務だと思っている。」 「ベンゲルは名古屋の黄金時代を築き、私に輝きを与えてくれた。今度は私がそれを行う番だ。」 「成功には、平凡なものと天地を揺るがすような偉大なものの2種類がある。私は前者では、全然満足できない。」 「神が地上に降り立ち、すべてがドラマティックに変わる。全幅の信頼を寄せてください。」 「期待は大きければ大きいほど、良い方向に進むパワーになる。」 ドラガン・ストイコビッチ語録 その1 監督就任前のセルビアでのインタビューにて 「名古屋と僕は固い絆で結ばれている。クラブだけでなく、街、人びと、習慣、食べ物、すべてを愛している。」 「選手に要求するのは、ハードワークではない。スーパーハードワーク。やるからには限界にチャレンジする。」 「僕は、生粋の負けず嫌いなファイターだ。どんなに苦しくたって、最後の最後まですべての力を出し尽くし、 成功を収めてきた。勝者のメンタリティと燃えたぎる闘志を選手に伝えていくのも義務だと思っている。」 「ベンゲルは名古屋の黄金時代を築き、私に輝きを与えてくれた。今度は私がそれを行う番だ。」 「成功には、平凡なものと天地を揺るがすような偉大なものの2種類がある。私は前者では、全然満足できない。」 「神が地上に降り立ち、すべてがドラマティックに変わる。全幅の信頼を寄せてください。」 「期待は大きければ大きいほど、良い方向に進むパワーになる。」 来日時 「家に帰ってくるという感覚。わたしの仕事は勝つということであり、そのために来た。」 監督就任会見にて 「私は常にネバーギブアップ、諦めないという信念を持ってきた。そしてこの信念を選手達にも根付かせたい。」 「攻撃的なサッカーがしたい。魅力があり戦えるチームにしたい。守備的なサッカーはしたくない。」 「常に攻め続けるサッカーが私の目標であり、選手にもこれを要求したい。」 「私が考える攻撃的なサッカーとは、チームとしてまとまりがあり、組織力の高いサッカー。 それを実践するためにはハードワーク、ハードトレーニングを行わなくてはなりません。それは我々の義務です。」 「試合を見に来たサポーターが、満足してスタジアムから帰ることができるチームにしたい。」 「良い結果を残すために来た。選手には、どの試合でも100パーセントの力を出してほしい。」 「ピクシーがやると言ったらやる。皆さん期待してください。」 ドラガン・ストイコビッチ語録 その2 1月下旬に始まった鹿児島指宿キャンプにて 「積極的なミスは許されるが、戦術的なミスは許さない。」 玉田に対して 「君は、Jリーグナンバーワンの選手だと思っている。去年ほとんど試合に出ていないのが信じられない。 今年はJリーグのMVPを取るつもりでプレーしてくれ」 ヨンセンに対して 「君を必要としている。攻撃の柱になってほしい」 試合前 「ゲームを楽しんでこい」 開幕戦後の玉田とのマンツーマンミーティングにて 「お前は代表を目指せ、目指すべきだ、入らなきゃだめだ。」 開幕2戦目アウェイ浦和戦を前に 「浦和は強い。リスペクトしている。今季加入した高原もいい選手だ。 それでも、我々のスタイルは変えない。守備をするために浦和に行くわけじゃない。」 TVインタビューにて 「相手は見ていない。自分達のことだけを見ている。自分達のサッカーをするだけだ。」 6戦目アウェイ清水戦を終えて 「組織化されたモダンで攻撃的なサッカーを見せることが最優先」 「テレビでセリエAの試合をやっていても、私はチャンネルを変えて、大宮と新潟の試合を見る。 守備的な試合はつまらない」 「モダンなフットボールをするためには、サイドを支配することと組織的な守備が必要だ」 ドラガン・ストイコビッチ語録 その3 第7節 千葉戦のハーフタイムで選手に激 「前半のことは忘れろ。後半新しいゲームが始まる。」 第7節 千葉戦後のインタビューにて 「これはハードワーク、一生懸命やってきたことの結果だ」 「グループで戦うことが重要」 「誰がプレーするかは重要ではなく、いかにプレーするかが重要だ。」 4月22日(リーグ戦6勝1分)のインタビューにて 「悪いオリジナルの方が良いコピーより良いと思っているので、私のオリジナルでやって行きたいと思っています。」 「“誰が”ではなく“いかに”プレーするかが大切だと思っています。」 「まとまってやること。これがある意味、キープレーヤーです。“オール・フォア・ワン、ワン・フォア・オール” 皆が1人のために、1人が皆のために戦っているということ。 キープレーヤーが誰と言うよりは、皆がキープレーヤーということです」 「我々は、ネバーギブアップの精神で戦っていくだけです。 」 「相手を尊敬はしますが、怖がってはいません。我々は自分達のクオリティーというものを信じていますから」 5月3日第10節G大阪戦 敗戦後の会見にて 「今日のグランパスは少し優しすぎた。サッカーの試合とは「小さな戦争」だという事を選手達に伝えたい。」 3連敗した後の5月6日第11節FC東京戦(アウェイ)を前にして 「守備だけに行くと言うのであれば、死んだも同然です。」 5月25日ナビスコカップH浦和戦 津田選手を途中交代で送り出す時の言葉 「おまえの最高の力を、全て出してこい」 5月31日ナビスコカップ京都戦に左SBでスタメン初出場した高卒新人の佐藤に対して。さえない前半のハーフタイムに 「おまえを起用したのはおれ。責任はおれにある。ミスしてもかまわないから思い切っていけ」 ドラガン・ストイコビッチ迷語録 キャンプにて 「納豆を食べろ。(体が)強くなるから」 【ドラガン・ストイコビッチ 秘話】 1990年Wカップ予選でユーゴはフランスを破り本選出場を果たした。ピクシー の華麗なボレーシュートで。 フランス代表はピクシーの活躍でW杯出場することが出来なかった。W杯終了後、 ピクシーはマルセイユに渡った。ピクシーはそのフランスリーグで執拗なマークと アンフェアなジャッジに合い、怪我に泣いた。その結果、満足いく結果が得られな かった。日本に渡るも、リネカーの陰に隠れ、実力は評価されなかった。ピクシー はフランスリーグのジャッジングの悪い思い出から、出場しても日本人審判の ジャッジングにまで疑念を抱いていた。 そのピクシーを救ったのは、ピクシーの真の実力とその過去を知るフランス人、 ベンゲルとデュリックス、パシだった。彼らはピクシーの能力に最大の信頼を置い ていた。ベンゲルがピクシーの心の痛みを名古屋で癒したのだ。 民族問題の深刻さを知る旧ユーゴの名プレイヤー達がピクシーを敬愛する理由 のひとつに、フランスのW杯出場を阻止した自国の英雄が、フランスのなかでも 気性の荒いサポーターの多いマルセイユに渡りプレーすることを決めたことにも ある。マルセイユサポーターからさえも罵声を浴びされたにもかかわらず、 フランス人を恨まなかったピクシーの人柄がそこにある。 ピクシーのサッカーに国境はない。 そこにあるのは、美しいサッカーを愛するひとりのフットボーラー、ドラガン・ ストイコビッチなのだ。 ピクシーの選手評価 玉田 好きな選手だった 村上(通訳) 中村直志
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デヤン・スタンコビッチ Dejan Stankovic 1978年9月11日 1994-1998 レッドスター・ベオグラード 1998-2004 ラツィオ 2004- インテル 備考
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アダム・マルコビッチ とは、【メトロイド(漫画)】?のキャラクター。 プロフィール 作品別 おもなセリフ 関連キャラクター 余談 コメント プロフィール アダム・マルコビッチ 他言語 Adam Malkovich 種族 【人間】 性別 男 職業 【司令官】 所属 銀河連邦 声優 日本語:小山力也英語:Dave Elvin 初登場 【メトロイド(漫画)】?(【メトロイド フュージョン】) 寡黙にして聡明な銀河連邦司令官。かつてはサムスの上官でもあり、彼女の過去についても知る理解者であった。 作品別 【メトロイド フュージョン】 名前のみ登場。 サムス曰く非常に優秀な司令官だったものの、サムスのことをレディー呼ばわりして神経を逆撫でするようなデリカシーに欠ける面もあったという。 本作でサムスは「B.S.L」における任務を銀河連邦から引き受けるにあたり、連邦が支給したスターシップに搭載されていたコンピュータが彼女の司令官を務めることになったが、そのコンピューターの淡々とした語り口調が彼を思い起こすものだったため、心の中で大いなる敬意とささやかな皮肉を込めてアダムと呼んでいた。 ……しかし、このコンピュータは本当にアダムその人と言える存在であった。 【METROID Other M】? フュージョンよりも前の時系列となる本作でようやくゲーム内に登場。 第07小隊を率いて、スペースコロニー「ボトルシップ」で作戦行動中に、救難信号を追って駆け付けたサムスと再会を果たす。 当初は(サムス曰く如何にも彼らしく)彼女のことを「部外者」として扱いあまり積極的に接しようとしなかったものの、任務遂行のために彼女の力が必要だと知り、作戦参加を認める。 回想では彼女の上官として働いていた頃の姿が描かれており、普段はジョークなど決して口にしない堅物だったものの、ブリーフィングの最後、 「異論は無いな?レディー」 と、毎回サムスに同意を取ろうとするのがお決まりだった。 それに対し、サムスは上官のブリーフィングへの合意のサインであるサムズアップではなく、 サムズダウン でそれに応えていた。 当時のサムスは悲惨な過去を持った反動で、周囲の人間から子どもや女性扱いされることを極端に嫌い、意地を張り心を閉ざしていた。 「レディー」の呼び名はそんな彼女の繊細な心根を理解した彼なりの心遣いであり、厳格で誰よりも正しい上官である彼に対し、サムズダウンという形で反発できる余地を与えてもらうことで、サムスは心の安らぎを得ていたのた。 幼くして両親を失ったサムスにとって彼は父親のような存在であり、彼女の心を理解し受け入れてくれた唯一かけがえの無い存在であった。 しかしある日、彼が率いる小隊がルシタニア号の救出任務を担当した際、事件が起きる。 当初は簡単な作業だと思われていたものの、ルシタニア号のエンジンのドライブユニットは予期せぬ暴走を起こしてしまい、このままではルシタニア号の乗客300人はおろか、彼含む小隊全てが最悪の事態に陥りかけた。 やむなくアダムはドライブユニットを切り捨てることで解決を図るが、それはドライブユニットの側で修理を担当していた、彼の弟であるイアン・マルコビッチを見殺しにすることを意味してた。 サムスはイアンを助けるための出動許可を求めるが、アダムは受け入れず、ドライブユニットを切り捨てた。 結果的にすべての乗客とイアン以外の隊員の命は救われたものの、当時のサムスは納得できず、それがきっかけで連邦軍を抜けてしまった。 サムス自身はそのことについて「彼の判断は正しかった。一番苦しい立場なのはアダムだったはずなのにそんな彼のことを責めることしかできなかった」「私は子供だった」と今もなお酷く後悔している(*1)。 その後、サムスはアダムがボトルシップで実行されていたメトロイド軍事化計画のレポートを纏めた張本人だと知る。 そのレポートは実際には軍事利用を推奨したものではなく「凍結以外の対処が非常に困難なメトロイドを兵器として使うことがどれだけ危険か」について訴えたものであり、軍の大多数の者からの理解は得られていた。 しかし一部の過激派がそのレポートから「逆に言えば凍結という弱点を克服できたメトロイドは無敵の兵器となる」という点に目を付けて悪用し、それがボトルシップで量産化されている「凍らないメトロイド」というどう考えても対処しようのない悪夢の兵器誕生のきっかけとなったのだった。 最終的にサムスですら対処が困難な新型メトロイドを纏めて滅ぼすため、メトロイドが製造されていたセクターZEROを内部からの衝撃で自爆装置を起動させることでメトロイド諸共爆破することを決意。サムスに後のことを全て託す。 サムスはパワードスーツの装着すら出来なくなるほど動揺し、彼のことを必死になって止めようとするが、別れ際の「異論はないな…レディ」の一言に対し、涙を流しながら昔のようにサムズダウンで応える。 その後、セクターZEROはボトルシップから排出され、緊急自爆装置が発動。アダムはその身を犠牲にして「凍らないメトロイド」という悪夢の兵器に引導を渡したのだった。 事件解決後、ボトルシップは施設ごと爆破処理されることが決定したが、その直前にサムスは無人となった施設に侵入し、アダムが使っていたヘルメットを回収。 彼の形見となったヘルメットに「待たせたな、アダム さあ、帰ろう」と語り掛け、ボトルシップを後にしたところで本作の物語は締めくくられる。 【大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U】 Wii U版に作戦行動中の姿でフィギュアが収録。 【大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL】 スピリットが収録。アートワークは制服姿。 【メトロイド(漫画)】? 本作で初めて姿が描かれた。第3話から登場。 銀河連邦に知的生命体として認められない種族が多い事を棚に上げるスペースパイレーツに一喝して情報を聞き出す、焦って単身ゼーベスへ向かおうとするサムスを止めずに軍が48時間後に出撃する事を知らせる等、サムス達の頼れる上官として描かれている。 おもなセリフ 「異論は無いな? レディー」部下だったころからサムスへと投げかけていた言葉。サムスはこれに対してサムズダウンで返していた。『フュージョン』のサムスは「私の神経を逆撫でするデリカシーに欠いた発言」と振り返っていたが、実際にはガチガチに凝り固まっていた若き日のサムスが、上官に対して反発できる心の猶予を与えてくれた気遣いだということを、他ならぬサムス自身が知っていた。 サムス「やめてくれ、アダム! 私が行こう!私ならそのメトロイドだって倒せるかも知れない!」サムス「可能性に賭けるべきだ!お願いだアダム!私が信じられないのか?ただ私を信じて、少しだけ時間をくれないか!」アダム「サムス、私はリドリーと戦えない」アダム「そうだ、君のように…銀河を守れはしない…ただの人間だ」アダム「だが君を守れる」サムス「まて!アダム! 行かないでくれ アダム! いやだ! アダム!まってくれアダム! アダム!』 アダム「異論はないな…レディ」サムスとの最期のやり取り。サムスからは実の父親のように慕われていた彼だったが、彼自身もまた最期までサムスのことを想い続けていた。 関連キャラクター 【イアン・マルコビッチ】?:弟。彼の殉職が原因でサムスは軍を抜けた。 【サムス・アラン】:かつての部下。 銀河連邦軍兵士 第07小隊 【アンソニー・ヒッグス】? 【モーリス・ファンボロー】? 【ジェイムス・ピアース】? 【ケイジ・ミサワ】? 【ライアル・スミソニアン】? 【アダム(メトロイド フュージョン)】:死後に彼をもとにして作られたAI。 余談 前述の通り名前の初出が『フュージョン』なのだが、同作品はサムスがスマブラに出演したことでシリーズ知名度が上がったのをきっかけに作られた、前作から 9年ぶり の続編である。そのため64やGBAユーザーのメイン層には『フュージョン』で初めてメトロイドシリーズに触れたという人も少なくなかったのだが、そのせいで(当時は情報サイトがそれほど普及してなかったこともあり)サムスのモノローグを見て、彼のことをシリーズ初期キャラクターだと勘違いした初見プレイヤーもそれなりにいた様子。 コメント 名前 全てのコメントを見る?
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キャラクター名:ザーラ=ストイコビッチ プレイヤー名:ホの四号 第一属性:炎 第二属性:闇 総合レベル :0 第一クラス エクセレントウォーリアー :0 第二クラス サモナー :0 ワークス : 出身 :第一世界ラース・フェリア 性別 :男 年齢 :16 性格 :かつては積極的だったが、今は正直 ライフパス :動物に育てられた :七色の声 コードネーム: 基本能力値 |プラーナ 筋 力:13 | 内包値: 7 器用度: 8 | 解放力: 3 敏捷度: 7 | 精神力:10 |HP 知 力: 7 | 最大値:22 信仰心: 4 | 重傷値: 4 知覚力: 7 | 幸運度: 7 |MP 移動力: 2 | 最大値:16 CF修正: 2 | EX: 0 戦闘能力値 :命中値|回避値| 受け|攻撃力|防御力| 受け|魔導力|抗魔力| 受け|行動値| 基本値 : 7 | 7 |■■■|10 |11 |■■■| 8 | 5 |■■■| 7 | クラス修正 エクセレントウォーリアー: 2 | 1 |■■■| 2 | 1 |■■■| 2 | 2 |■■■| 1 | サモナー : | |■■■| 2 | |■■■| 2 | 1 |■■■| | -------------------------------------------------- 未装備 : 9 | 8 |14 |12 |12 | 8 | 8 | -------------------------------------------------- -------------------------------------------------- 闘気+3 :+2 | | | | | |+1 | 特殊能力 タイミング: 備考: ●エクセレントウォーリアー ・勇者の素質 :常時 :星界、紋章魔法が使える。魔法の発動判定【命中】【攻撃】【治癒力】のジャッジでプラーナ*2 ・生命の炎 :超対抗 :HPを最大CL+3減少させて、それと同じだけプラーナを回復 ●サモナー ・契約 :通常 :レベル+1以下の任意のクリーチャーを従者にできる ・サモンサーヴァント :通常 :1シーンの間、従者を召喚できる 取得魔法 名称 Lv 属性 消費 発動値 カウント 持続 対象 射程 タイミング 備考 装備 : 重量 |命中値|回避値| 受け|攻撃力|防御力| 受け|魔導力|抗魔力| 受け|行動力| 射程 | コネクション マミヤ=マッセィ 所持品 備考: パーソナルデータ 身 長 :160cm 体 重:53kg 誕生日:? 利き腕 :左 好きな物: 嫌いな物: 趣 味 : 一 言 : 外見特徴:柔和そうな外見。黒髪をさっぱりと整えている プロフィール:父親は蟹 幼馴染は優雅なお嬢様 結果、自分がしっかりせねばと思い立ち、真面目になりました 従者 :第五世界からやってきた天使ミファソ 天然ボケ娘 Player:ホの四
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登録日:2011/11/06 Sun 13 16 21 更新日:2023/10/11 Wed 13 07 58NEW! 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 キモカワイイ ゲラゲモーナ ゲラコビッツ ネタバレ項目 マメーリア人 マリオ マリオ ルイージRPG3!!! マリオシリーズキャラクター項目 マリオ&ルイージRPG ラスボス 悪役 憎めない悪役 科学者 苦労人 ふるるる! マリオ&ルイージRPGシリーズに登場する敵キャラ。 初登場は1で、当時はゲラゲモーナの幹部を勤めていた。 マメーリア人であるため緑色の肌を持ち、トンボメガネと剥き出しの白い歯にアホ毛である。 語尾に「~るる!」と付ける。 声が無駄に高いのも合わせて、上司のゲラゲモーナ共々キモい。キモかわいいと言う声もある。 何気なく専用のテーマを持っている悪の科学者。 以下各作品のネタバレ マリオ&ルイージRPG/1DX オープニングでゲラゲモーナと共にピーチ姫(キャサリン)の声を奪いに来る。 その後は先攻でカメジェットを襲撃したり、マリオブラザーズに倒されたゲラゲモーナを吸い込みマシーンで回収する等、幹部らしい行動を見せた。 紆余曲折あって倒れているクッパを発見し、ゲラゲモーナ本人の了承を得た後に瀕死の主君の新たな器とした。 直接対決するのはクッパ城のラリーを倒した後で、ゲラマシーンに乗って戦いを挑んでくる。 (この時の会話で、彼がゲラゲモーナの事を良く思ってない事が分かる) 戦闘後、マメック王子とマリオブラザーズの連携により、海へ叩き落とされた。 「1DX」ではクッパ7人衆らクッパ軍団を洗脳した。クッパ軍団の洗脳が解けた後もマリオ&ルイージとクッパ軍団の相打ちを狙うといった狡猾な面が垣間見える。 マメック王子とマリオブラザーズの連携によって海へ叩き落された後もクッパ城に舞い戻りクッパ軍団と戦う。この戦いがクッパ軍団RPGのラスボス戦である。 このとき、クッパ城の地下で隠れてメカコビッツを製造しており、このメカコビッツ達と共にクッパ軍団に襲い掛かる。 マリオ&ルイージRPG2 サブキャラとして現代のキノコ城の地下に登場。パイプの奥でゲラコビッツサロンを開いている。 ベビィ達を見るといきなり発狂するが、すぐに我に還ってマメとバッジを交換しないか交渉してくる。 前作で負けたことを憂えており、やかましかった1に比べてかなり大人しい。 また、ここでしか入手できないウルトラフリーバッジはかなり強力。 因みに、この作品ではベビィでしか彼と会う事が出来ないので(成人である)マリオブラザーズと対面する事は無い。少々怪しんではいたが。 彼のこの時の台詞は3への伏線となった… なお、この作品が出るにあたって前作が大好きだったアメリカの翻訳担当から「何故ゲラコビッツを出さないのだ?出してよ」と要望があり、それで出すことになった模様。 マリオ&ルイージRPG3!!!/3DX 1の無念、2の憂いを晴らすかのごとく黒幕で登場。新たに部下のメタボスを引き連れてマリオブラザーズ&クッパと対峙する。 キノコ王国をメタコロ病で混乱させたり、クッパにバキュームキノコを食べさせてマリオ達を吸い込ませたりした。 今作でもクッパ城にいるクッパ軍団たちを洗脳しているほか、捕まえて各地で檻に閉じ込めたり買収したりなどしている。 なお、詳細は作中では語られないが、フィールド上には彼の顔を模したモンスターが多く登場する。 リメイク版の『3DX』では悪の三人組であるSSカンパニーの3人を雇っており、キノコ王国のみならずクッパ城も混乱に陥れようとする。 クッパ城に戻ろうとするクッパをあの手この手で邪魔をしようとしたが、体内のマリオ達の力もあり突破される。 太って動けなくなったクッパからピーチ姫を体内から回収した後、封印されたダークスターを奪いピーチ姫を使って暗黒の力を目覚めさせる。 そしてキノコ城で吸収した暗黒の力を使ってダークゲラコビッツとしてクッパに戦いを挑むが、力を完全に吸収出来ていなかった為か敗北、無様な姿へと成り果てる。 (リメイク版では「1」さながらの専用BGMをひっさげている。) この時の戦いでは、頭部のマシンを先に倒さない限り延々とゲラコビッツを回復されてしまう。 クッパだけで倒そうとしても途中で分離して画面上に退避するため、バキュームしてマリオ達で破壊することになる。 マシンさえ無ければ楽勝……なんて筈もなく、ダークスターの力もあってか結構強い。 中でも暗黒球をバリアのように回転させる技は、殴り飛ばしたクリボーをゲラコビッツに連続で当てて阻止しないと高HPのクッパでも大ダメージを受けてしまう上に、泣きっ面に蜂の如く防御力までダウンさせられる羽目に陥る。 正確に狙う技術が要求されるこの大技だが、恐ろしいことに『3DX』ではカウンター難易度が異常なまでに難しくなっており、一回もクリボーが届かず阻止できなかったなんて事もザラに起きる。 クッパの守りが不十分だとHP満タンからの即死すら有り得る極悪技に変貌し、オリジナル版の経験者ほど頭を抱えることに……。 よしんば耐えてもゲラコビッツは行動回数が多いため、次の技にかすっただけでやられてしまう可能性が高まり気は抜けない。 上記のカウンターを無視する前提で勝利を掴むには、防御面に装備を固めた上で、ゲラコビッツをなるべく早めに倒せるだけの攻撃力は確保したい。長引くだけ不利なので短期決戦を目指そう。 ふぎゃぎゃぎゃぎゃ!!! ふりゅりゅりゅ? 負けた彼は逃げ出すが、すぐにダーククッパに吸い込まれて完全となった暗黒の力と一体になる。 ダーククッパと並ぶマリオ ルイージ3RPG!!!のラスボスであり、戦いのさなかでダーククッパからこぼれ、 クッパがバキュームした後にマリオとルイージが戦うというとても珍しい構図での最終決戦となる。 マリオブラザーズはダークゲラコビッツのパーツにダメージを与えていき、チャンスを作って頭のてっぺんにくっついているダークスターコアを倒さなくてはならない。 見た目はちょっぴりホラー。 そしてラストバトルに勝利すると、ボロボロになりながらもクッパの体内で過去(1、2)の苦労話や自分の願望を溢しながら(*1)、マリオ達を巻き込むように自爆した。 なお、この自爆でマリオ達をやっつけられるはずもなく、単にクッパの体内からマリオやピーチ姫たちを出す以外の効用がなかった。 このようにして、彼は呆気なくクッパの体内で命を散らした。奇しくも、彼の元上司であるゲラゲモーナと同じ場所で最期を迎えたことになる。 時系列ではその後である『4』『ペーパーmix』では彼は登場しない。 るるるるる!追記・修正をお願いするるるるる!! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 骨にでもされたのか? -- 名無しさん (2013-11-13 00 32 53) ゲラコビッチに見えた -- 名無しさん (2013-11-13 07 16 25) イエロースターが彼に言った「結局悪いことってできないようになってる」はなかなか考えさせられる台詞だったな。 -- 名無しさん (2013-11-13 07 49 42) 3で声変わりした人 -- 名無しさん (2013-11-17 23 45 55) キモい言うなよ!海外じゃ人気なんだぞこいつ。 -- 名無しさん (2013-11-25 02 26 26) 当然ながら4では登場せず、キモ…かわいい? -- 名無しさん (2014-02-10 15 52 51) パーニョは出る -- 名無しさん (2016-01-26 01 19 38) かつての上司と同じ場所で同じ死に方をしてるんだな -- 名無しさん (2018-01-08 11 11 00) マリオ&ルイージシリーズで 印象に残ったのは、6年間裏方に働いたゲラコビッツ -- 名無しさん (2018-01-23 11 02 16) 3のリメイクで専用BGM貰えたのは個人的にナイスだと思った。 ステータス的には一番強いボスだからな・・・ -- 名無しさん (2019-01-07 19 40 37) 何気に3作品目まで皆勤賞だったのな -- 名無しさん (2020-08-24 13 05 08) 名前 コメント
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第1章 01-709 :腹黒ビッチ(前) 1/4 :09/03/13 23 41 57 ID TwHx7SL8 「ねえ、何読んでるの?」 初めて彼女に声をかけられた日のことを、俺はいつまでたっても 忘れられない。 暗くてダサくて取りえなんて何もなく、声を出さない日もザラにあ るような、いわゆる典型的なオタク君だった俺。明るくてオシャレで 頭が良くて、いつだって友達に囲まれて笑っているような、クラスの 中心にいる彼女―――斎藤有華(さいとうありか)。 いつもはクラスの隅で、そんな奴らを鼻で笑っているはずの俺は、 すっかり混乱してあわあわと答えを考えた。 「あ、ぅ、変身っていう……」 「変身……ああ、世界史で習ったアレ?スゴイね、そんなの読むん だ」 「そんなことない……」 あまりの恥ずかしさに、体と語尾が縮んでしまう。スゴイ、という言 葉は確かに嬉しい。だけど有華の言うような「スゴイ」というような自 覚は自分にもあったのだ。小難しい本を読んでみたい、ロシア文学 なんてものを読んでる自分カッコイイ、陰で笑われてるようなラノベ だけじゃないんだぞ、というような明らかに他人を意識した自意識が 働いて、この興味もクソもないものを読んでいたのだ。だって実際 読んでみて、確かにスゴイ文学性を感じたけど、惹きこまれるほど の強い興味なんてなかったのだ。 それくらいならむしろ―――目の前にいる有華のほうに、ずっとず っと惹かれる。 「一宮君、顔が真っ赤。かわいー」 01-710 :腹黒ビッチ(前) 2/4 :09/03/13 23 43 50 ID TwHx7SL8 馬鹿にするでもなく、指を口元にあててくすくすと笑う様はあまり に可愛らしかった。有華が言ったように、頭に血が上っていたんだろ う。脳みそが火になって、何も考えられなかった俺は、思ったことを 素直に言ってしまった。 「斎藤さんの方が、ずっと可愛いよ」 有華は目を丸くした。「えっ」と予想外のことを言われたらしく、思わ ずついて出た声がこれまた可愛い。いい匂いがする。ずっと後に教 えてもらったが、それは彼女の愛用するハンドクリームの香りだっ た。砂糖菓子のように甘くて上品な香りは、教室での彼女の明るくて 屈託ない性格に、少しだけ合っていなかった。頭が細胞以外のものに なってたその時の俺には、深く考えることはできなかったけれど。 誰が見たって不釣り合いだった。そんなことは俺だって分かってい た。なのに女子と話したことなんてない俺は、俺だけに向けられた可 愛らしいソプラノボイスに舞い上がったその瞬間、俺は実にオートマ ティックに恋をした。我ながら、単純だ。でも女と話したことがない男 だったら、誰だって勘違いする。そうだろう? 01-711 :腹黒ビッチ(前) 3/4 :09/03/13 23 44 57 ID TwHx7SL8 その日から、有華は俺に毎日話しかけるようになった。俺の会話の 内容なんて、ネットで得た情報と本の話。だけど有華はうんうんと頷 いてくれる。面白くもない俺のうんちくを、さも楽しそうに聞いてく れる。そして時々、俺の話題にも口を出してくる。その作家の本面白 いよねとか、物理なんて全然興味がなかったけど面白いんだねとか。 思えば、そんなつまらないことによく合わせられたものだと思う。し かし当時の有華曰く、 「せっかく近くの席に座ってるのに、話さないの勿体ないと思って」 そう言って、有華はにっこり笑った。なんと心の広いことだろう。 女の子に笑いかけられるのなんて、何年振りだろう。中学生の妹でさ え、俺のことは気味悪がって話しかけてこない。出来のいい兄には馬 鹿にされているし、有名私立に幼稚舎からエスカレーターで上がって 行った兄と、幼稚舎も中等部も高等部も落ち続けた俺とは、親の期待 のかけ方も天と地の差。もしかしなくても、俺がまともに会話するの は有華だけだった。オンラインですら、便所の落書きにアンカー付き でレスが来たら狂喜するレベルのコミュ力だ。 相手にしてもらっただけで恋をするなんて、なんて安っぽい男なん だろう。そして頭良し、器量良し、性格良しの有華は、なんて高嶺の 花だろう。 恋に落ちた瞬間に、こんな自分に落ち込みもした。 背がそこそこ高いせいで逆に目立ってしまう貧相な体型と、それを さらに悪化させる猫背。寝癖どころかカットすらおっくうで伸ばしっ ぱなしの髪。二十年前でも通りそうなダサい眼鏡。成長期に買い替え ないままだった制服は、さらに貧相さを増している。高校に入ってか ら投げやりになってそのまま暴投しっぱなしの成績。そして何より、 誰一人として自分に近づかないという現状。 他人の陰口なんて気にしないように、他人の視線をかいくぐって地 味に、地味に、と自分の世界にこもりきっていた俺は、自分自身の情 けなさにようやく気付いた。 01-712 :腹黒ビッチ(前) 4/4 :09/03/13 23 47 42 ID TwHx7SL8 「俺に近づかない方がいいよ」 と、何度か有華に言ったことがある。すると決まって、有華は悲しそ うに目を伏せる。 「私、何か悪いことした?悪いことがあったら、直すよ。だからそん なこと言わないで」 うるうるとした大きい目で見上げられると、そんなことを有華に言 わせてしまった自分の方が情けなく思えてしまう。 「俺が悪いんだ、こんな地味で気持ち悪い男、嫌だろ?」 「そんなことないよ!一宮君は色んなこと知ってて、話しているとす っごく楽しいの」 「いつも本かネットの話題ばっかじゃないか……」 「いいじゃない。私、一宮君のおかげで、読書が趣味になっちゃった んだよ?いろんな本を教えてもらえて、嬉しいの」 そうして、何も無かったかのように、最近読んだ本について語り始 める有華。無邪気に笑いながら俺の目をまっすぐ見つめる有華は、い つだって俺にはまるで天使のように見える。そしてそれ以上、強いこ とは俺には言えないのだ。 有華に恋をするなんて、おこがましい。席替えを間近に控えた頃に なって、ようやくそれに気付いた。有華との会話が無くなるのは身が 切られるほどの苦痛だった。しかし恋が実ることが無いことは、その 身の芯まで知っている。 だから誰にも、有華にも気づかれないように、フェードアウトして いくつもりだった。有華は誰にでも優しいし、友達ならいくらでもい る。有華も気にしないで、いつの間にか俺のことも忘れていくだろう 。そう思って、席替えの日を待った。 が、席替えの前日。 珍しく俺に話しかけない有華が、HR間近になってから耳元でこそり と「放課後、裏庭で待ってるね」と呟いた。裏庭というのは、保健室 の裏の温室とその周辺で、ほとんど誰も訪れないような場所だ。だけ ど秘かに、告白スポットとして人気を集めていた。俺はまさかと淡い 期待を持ちながら、だけど内心、そんなことありえないと思いながら 裏庭に向かった。 「一宮君のことが、好きなの!つ、……つ、付き合ってください!」 まさかの逆転サヨナラ満塁ホームラン。 目をぎゅっと閉じている有華は、手を握りしめてうつむいていた。 うそだろ、ウソだろ、嘘だろ、とそんなことばっかり頭を駆け抜けた 。これは何かの罠だ。だけど罠でもいい。こんな嬉しいことって無い よ。 「は、い」 情けない声だった。有華に届いたのかすら分からないような、小さ くて、どもった、俺らしい声。だけど、有華はぱっと頭を上げて、俺 の呆然とした顔を見つめて、ぱぁっとその顔を満面の笑みに変えた。 「ほんとに!?」 「う、うん」 「私と、付き合ってくれるの?」 「うん、お願いします」 「ありがとう、一宮君!」 ぱっと俺の手とり、有華はぎゅーっと握りしめ、そしてぶんぶんと 振った。ひとしきり感情の爆発をしたらしき後、落ち着いて、へにゃ っと体の力を抜く有華の姿の、何もかもが愛おしい。体の力が抜け て、口元が緩んだ有華は、にへらと笑う。 「うれしぃよぅ」 その時の安心しきった有華の顔を、俺は今も忘れられない。この顔 を、ずっと守っていってあげたい。俺はその時、確かにそう思った。 01-715 :腹黒ビッチ(後) 1 :09/03/14 06 01 48 ID isbQ7kqO 有華と俺が付き合い始めたことは、当初は誰にも秘密にしていた。 俺が頼み込んでのことだ。 「私は、そのまんまの克哉君が好きなんだよ?何も気にすることなん てないのに」 有華は悲しそうにしていたけれど、結局俺の意をくんでくれた。本当 に、俺には勿体くらい出来た彼女だと思う。だけどだからこそ、堂々と 「俺達付き合ってます」と言うのははばかられた。こんな暗くてダサく て気持ち悪い男と、明るくて可愛くてモテる有華が付き合ってるなんて、 みんなに知られたら有華が可哀想だ。せめて、俺が誰の前に出しても 嫌悪感をもたれない男になるまで、内緒にしておくべきだと思った。 「俺、有華に釣り合うような男になるよ。だから、待ってて?」 「……うん」 有華は、はにかむように笑った。がんばってね、と言う様に、俺の頬に キスをした。そのまま雰囲気が良くなって、自然と唇が重なった。それ が、俺のファーストキスだ。 01-716 :腹黒ビッチ(後) 2 :09/03/14 06 04 00 ID isbQ7kqO 可愛い彼女がいると、俄然やる気が出るものだ。まず気にしたのは 、何より外見。モサいダサいと言われ続けた俺の人生だ、それを直す のは大変なように思えた。 初めに気にしたのは、ひょろい体型だった。今まで運動部になんて 入ったこと無い俺は、何をしていいかも分からない。ジョギングと腹 筋を始めたけど、元々脂肪すらないからつくものもつかない。とりあ えず飯をひたすら食った。スポーツショップに初めて行って、ジャー ジとダンベルとハンドグリップを買ってきた。そうしてトレーニング を始めたのだが、 「私も一緒に走っていい?」 と有華が聞いてきたのは嬉しい誤算だった。秘密で付き合っているか ら登下校は一緒じゃないし、デートだって遠くに行かなきゃいけない から月に二三度くらい。平日に会おうとしたって、有華はアルバイト もしていて、いつも忙しかったのだ。 「だって、克哉君が頑張ってるところ、間近で見たいんだもん。それ に克哉君と、もっと一緒にいたいの。ね、ダメ?」 「いや、嬉しいよ!」 「やったぁ!えへへ、私も嬉しいな」 とろけるような声に、携帯の向こうで俺の方がとろけそうだったっ ていうか溶けた。有華への恋心で、もうでろんでろんだ。 それから毎日、有華とジョギングをするようになった。女の子だし 途中で辞めてもいいくらいに考えていたけれど、有華は毎日必ず俺の 家の前に立っていた。それが二か月経った頃には、俺の体は多少なり ともがっちりとし始め、疲れると曲がり始める猫背を有華が注意して くれるから、体格も良く見えるようになってきた。 「克哉君、最近すごくイイ体になってきたねえ」 なんて、有華が首を傾けてしみじみ呟く。俺は嬉しくて、有華の手 を握る。最近は照れずにそういうこともできるようになってきた。骨 と皮だけで貧相な手のひらも、ハンドグリップのおかげでがっちりし てきた。有華を、守れるように。そんな手に、少しでも近づけるよう にと頑張ってきた成果だ。 「有華も体が引き締まってきたな」 「そうなのー!前はぷにぷにだったでしょ?克哉君の隣にいると、ち ょっと太く見えないか、ひやひやしてたんだぁ」 「有華は元々すっごく細かったよ。いつだって有華は可愛い」 「う!……うー、ありがとー」 有華は「可愛い」と素直に褒めると、すごく照れる。クラスの男子 にだっていくらでも「可愛い」と言われたことがあるくせに、俺が言 う時だけは本当にもじもじと照れて顔を真っ赤にする。そんな有華が 可愛くて、俺はなおさら有華を褒めてしまう。 頭が良くて性格も良くて、お小遣いは自分で稼ぎたいのなんてしっ かりしている頑張り屋で、そして照れ屋で、人間としてもなんて素晴 らしい子なんだ。感動した俺は、なおさら自分を変えなければと奮起 することになった。 01-717 :腹黒ビッチ(後) 3 :09/03/14 06 06 10 ID isbQ7kqO 肉体改造を進めているのと同時期に、俺は勉強も始めた。俺も有華 も文系だけど、理科の選択が別れているので、来年は違うクラスにな るのは確実だ。しかも、有華は成績がいい。俺達の高校は、三年にな ると文理一クラスずつだけ特別クラスを作るのだ。トップ5に名を連 ねる有華は、このままだと特別クラス入りは確実だった。 それに比べて、俺はゲームやラノベにかまけて、平均点に届くのが せいぜいだった。有華と同じクラスに入りたい、その一心で勉強を始 めた。特進クラスの編成は、三学期の外部テストと期末試験で決まる。 有華と会えない平日の夜、俺は一心不乱に勉強した。今まで心血を 注いでいたゲームとラノベは、勉強の息抜きにとってかわった。すぐ に成績が上がったとはお世辞にも言えなかったが、それでも、じわじ わと成績は上がって行った。点数が上がるたびに、有華は「すごいね」 と喜んでくれた。 ある日、初めて訪れたのは、兄オススメの美容室だ。彼女ができた からと頼み込んで教えてもらった。兄には散々バカにされ、どうせ彼 女だってそんなに可愛くないだろうと言われて、さすがの俺もブチ切 れかけた。が、そうして兄の機嫌をそこねてはいかん。「有華はテメ ェの今までの彼女より数倍可愛いんだよ!」という言葉をどうにか呑 み込んで、「お兄様、どうかこのダサい俺をお兄様のようなイケメン にしてください」というキラめく装飾を施した賛辞にメタモルフォー ゼさせた。 「くそっ俺の取っておきなんだぞ」と渋々兄が教えてくれた美容室は 、今まで半年に一回程度行っていた床屋とは雰囲気が全然違う。女の 美容師(本人はスタイリストと言っていた)が俺を見て鼻で笑ったよ うな気もしたけど、本当のことだから我慢した。有華と初めて行った ゲーセンで撮ったプリクラを見せて、この子に似合う様な髪形にして くださいと頼んだ。クラスメイト?友達?この子可愛いねー、という 美容師の言葉に、やっぱり決して彼女には思われないんだなぁと軽く 落ち込んだ。 染めるかは迷ったけど、有華が黒髪を綺麗に伸ばして巻いているの を思い出して辞めた。黒髪の可愛い女の子の隣に、ダサい茶髪が一緒 に歩いても気味悪いだけだろう。何調子に乗ってんだと笑われるのが オチだ。 初めて行った美容室は、兄が勧めるだけあって腕がいいみたいだっ た。俺のようなダサい男でも、それなりに清潔感があるように見える。 「君、さすが健介君の弟よねー。そうしてるとカッコいいよー、服と メガネ変えちゃったらいいんじゃないかな?すぐ隣がメガネ屋だよ」 最初とは態度が変わった美容師と、千円床屋の七倍の値段にビビり ながら、とりあえず礼を言って、そのままメガネ屋に直行した。 01-718 :腹黒ビッチ(後) 5 :09/03/14 06 08 11 ID isbQ7kqO 「克哉君、かっこよくなったね」 髪を切ったのは春休みに入ったこともあって、有華は驚いたようだ。 春休みになれば、俺も有華も時間があった。電車を乗り継いで来たの は九十九里浜。海に行きたいと言う有華に、どうせなら今までの ような汚い海じゃなく、綺麗な海を見せてあげたいと思ったのだ。 「有華にそう言ってもらえると嬉しい」 「うん、かっこいいよ。私の彼氏ですって、みんなに自慢したいくら いかっこいい!」 「あはは、そこまで言わなくても」 「本当だよ?私には、克哉君が一番かっこいい」 「……ありがと」 「前だって今だって、私にとっては克哉君は変わらないもん」 かぁっと、顔に熱が上って行くのが分かる。有華は、俺が可愛いと 言うとこんな気持ちになるんだろうか。海は寒いからって、ミドル丈 のボアのコートを着ている有華は、文句なしに可愛い。寒いけど頑張 っちゃったと、俺の前でミニスカートを翻して見せる。ええ、可愛い です。食べちゃいたいです。スケベ心を隠すように、手で口元を覆っ た。 「もう、半年経ったんだねえ」 何を、とはわざわざ聞き返さない。俺だって指折り数えてるからす ぐに分かってしまう。 「俺、有華と付き合えて、本当に幸せだよ」 呟くように言った。俺は、幸せだ。それは、胃にしみるように広が っていく。独り言のような俺の言葉を、有華は俺の手を握って答えた。 その指先は、海風のせいで冷えていた。 「なんかあったかいもの飲もうか。有華冷えてる」 「いいねいいねー」 砂に沈む足を二人で動かして、駐車場近くの自販機を目指す。有華 は途中で足をとられて、一回転びそうになった。つないだ手と反対の 手で、なんとかそれを受け止める。 「大丈夫か?」 「うん、大丈夫。ありがとー」 俺の手は、少しは有華を守れるようになってきた。ダサ男じゃなく て、せめて無害な男になれているといいんだけど。そう思うと、この メガネがいきなり気になってくる。いわゆるオシャレメガネというや つだ。枠は普通の黒縁だけど、耳かけが違う色になっている。他にも 三個ほど衝動買いしてしまった。有華はどれを見てもかっこいいと言 うけど、「何この勘違いしてる奴」みたいに思われないことを祈る。 自販機に辿りついて、俺の方は缶コーヒーとすぐに決めたけど、有 華は迷っているようだった。その姿の、また可愛いこと。有華は何を しても可愛くて困ってしまう。迷っているうちに俺の方は先にコーヒ ーを取り出し、自分の財布を取って、有華の分の金も入れてしまう。 「ほら、早くしないと金落ちてくるだろ」 「うーんうーんうううーん」 そうしているうちに、ちゃりーんちゃりーんと空しい音。 「ほらなー」 「もうちょっと待ってー」 買い物をする時だって有華はそうやっていつも迷っている。有華に は、最早硬貨を手渡して、コーヒー缶で手を温めながら有華を待った。 あ、と有華が突然に俺を振り返る。 「三年も、同じクラスになれるといいね」 忘れようとしていた現実に、俺はうっと言葉に詰まる。 「私、信じてるから」 にこっと有華は笑って、紅茶のボタンを押した。 01-719 :腹黒ビッチ(後) 7 :09/03/14 06 12 25 ID isbQ7kqO そして、春。 生徒玄関に、多くの生徒が集まり、ざわめいている。いつもの登校 時間よりも早く着いた俺は、心臓をバクバクさせながら掲示板に向か っていた。 ―――行けるかどうかは、五分五分。外部テストは四十二位だった。 でも期末は十五位。枠は四十人。二学期までが酷かったから、それを 考慮されて落とされてるかもしれない。 不安だった。もし、有華と違うクラスだったらどうしよう。有華は 絶対大丈夫だと言ってくれた。外部テストでギリギリ駄目だった時は、 本当に落ち込んだ。だけど、有華が応援してくれたから、なんとかこ こまでやってこれた。 あまりの緊張に、胸が苦しい。学ランのボタンを一個開けて、少し 息をつく。近づいてくる掲示板。人が多く群がっている。 一宮 克哉。あ行だから、どのクラスになったってすぐに見つかる。 俺は人よりは少し背も高いし、掲示板にそれほど近づかなくても見つ かるだろう。遠巻きに、掲示板を見た。人の名前は十分判別できる距 離だ。特別クラスは十組。三年十組の表を、見つけた。 三年十組 担任 田中成知 1.浅田義之 2.一宮克哉 「いよっしゃあああああ!!」 後ろから歓びの叫びが聞こえて驚いてか、数人が俺を振り返る。そ れは嫌悪感より、ただの驚きのようだ。しかしガッツポーズでそれら をいなした。確認する必要もないと思ったが、一応有華の名前も探す。 「32.斎藤有華」あまりの感動にもう一回俺は吠え、そして踵を返し た。 有華はもう学校にいるだろうか。と、急いで教室に向かおうと掲示 板を離れようとしたが、有華は丁度、友達数人とこちらに歩いてきて いた。 「有華っ!」 本当は少しだけ、有華を呼ぶのをためらった。いくら頑張ったって、 まだ俺は成長途中のオタク君なのだ。だけど、この間のホワイトデー から、有華と二人で決めていた。 もし、同じクラスだったら、付き合ってることを隠さないようにし ようと。 「おはよう、克哉君」 いつもと同じように、有華はにっこりと天使のように笑う。落ち着 いたその姿に、少しでも俺のこの興奮を分けたいと、有華の手を掴ん だ。 「有華、同じクラス、十組だ!」 「え、本当!?」 「また一年間よろしくな!!」 「すごい、すごいよ、克哉君。よかったねー!」 有華の友人たちは、びっくりしたように俺達を見ていた。 01-720 :腹黒ビッチ(後) 8 :09/03/14 06 14 32 ID isbQ7kqO 「え、有華、それって一宮?」 おずおずと、茶髪の女が俺を指差す。 「うん、一宮克哉君でっす」 俺とつないだ手を、有華が見せつけるように上げる。三人の女がぽ かんと俺達を見る様に、俺は我に帰った。やっぱり、俺、かっこ悪い よなー。有華に、釣り合うわけないよなー。と、秘密にするのを辞め ることを、後悔し始める。俯きかけた俺を、有華が下からのぞきこむ 。落ち込みかけた俺と、にっこり笑いかける有華の視線が絡む。大丈 夫だよ、と彼女の眼が告げる。 有華は再び友人たちの方に向かうと、あっさり言った。 「ごめん、克哉君と先に行ってるね。いこ、克哉君」 「あ、うん」 棒立ちしている女三人をそのままに、有華は歩き始める。つないだ ままの手にひっぱられるように、俺も有華の隣に立った。 「……ふふ、気分いー」 上機嫌の有華が、聞き取れるかどうかの大きさで呟く。 「何が?」 「ん?ふふ、克哉君をみんなに見せびらかせられて、嬉しいの」 なんだ、そうか。俺は少しがっかりした。てっきり、同じクラスに なれたのが嬉しかったのかと思ったからだ。俺はそれで気持ちがいっ ぱいだったのに。だけど有華はそんな俺の気持ちを察知したのか、す ぐに目線を上げた。 「また、同じクラスだね」 177cmの俺と、160cmの有華とは、目線の高さが少し違う。だから有 華の顔は、いつも上目遣いで可愛い。俺は沈んだ気持ちをすぐに霧散 させてしまった。我ながらやっぱりお手軽な奴だ。 「ごはん、一緒に食べようね」 「ああ」 「毎日一緒に学校行こうね」 「うん、楽しみだな」 「でもって、毎日えっちしようね」 「うn……ってコラ有華、ここで言うことじゃないだろ」 「あれ?克哉君、エッチ嫌い?」 初めてのセックスは、二月だった。学外テストの結果が悪くて落ち 込んでいた俺に、心配した有華がバレンタインチョコと一緒にくれた のだ。期末テストの結果が良かったら、またしよーねと言われて、乗 せられた俺は、ああ、至極単純に脳みそができているようだ。 「……」 「嫌い?じゃあ、もうしないでおこうか?」 「……大好きです」 「エッチだけ?」 「有華のことが、もちろん一番大好きです」 「んふふ、よろしーい」 新学期が始まってからというもの、俺の生活はバラ色だった。 有華とは、朝はジョギング、昼食、登下校と、学校ではほぼずっと 一緒にいた。土日はデートだが、最近はカミングアウトしたというの もあって、堂々と都内を出歩いていた。有華は「嬉しい」と言って笑 う。 01-721 :腹黒ビッチ(後) 9 :09/03/14 06 18 48 ID isbQ7kqO だが、変化はそう言った些細なことだけではなかった。クラス替え をして、俺は高校に入って初めて、友人と言うものができた。それも、 いわゆるイケメングループだ。特進クラスとはいえ、ガリ勉ばかり じゃなくて、顔よし運動神経よし頭よしというような奴らも一定数い る。そいつらとなぜか仲良くなってしまったのだ。今までだったら完 全に委縮するような奴らで、最初は気後れしたけれどそのうち慣れた。 それに、なぜかイケメンは大抵いい奴らばっかだったのだ。ゲーム だってするしマンガだって読むし、最初はなんだこのパーフェクト人 間たちはと思った。だけど有華を見ていれば、そういう人間もいるも んだと納得がいく。有華も含めて、決まってそういうのは「要領がい い」のだ。 有華に釣り合うように、と頑張ったおかげで俺も人並程度に、…… いや、人並以上になれた。春の体力測定で驚いたのは、1500m走と握 力測定が学年トップ10に入ったことだ。地道な運動が実を結んだ結果 だ。成績だって、今は十位以内で安定している。有華にはさすがに及 ばないが、俺も一目置かれるようになった。 充実した学校生活に、可愛い彼女。友人には羨ましがられる。これ までの経緯を語って聞かせれば、「斎藤アゲマン説」が公然と流れる 始末。下品だからやめろと一応言ったが、俺も内心事実だと思ってし まったから説得力はない。有華は、俺の幸運の天使だと、くさいこと も思っていた。 後にして思えば、これが俺の幸せの絶頂だった。 九月。有華と付き合い始めて一年を迎えようとしたある日、俺は女子 に呼び止められた。彼女には見覚えがある。二年の時に、同じ委員会 だった女の子だ。放課後の裏庭に連れていかれ、その思いつめた表情 で、なんとなく気付く。告白だ。 自己改造が上手く行ってから、俺はたびたび女の子に告白されるよ うになった。最初はなんで俺なんかと思ったが、どうやら、有華のおか げで俺は外見だけいい男になっていたみたいだ。だけど体の隅々まで 有華に惚れぬいている俺は、告白を全て丁重にお断りしている。案の 定、彼女のそれも告白だった。 「悪いんだけど、俺、彼女いるから」 と、お決まりのセリフを言い、さっさとその場を去ろうとする。だけど彼 女は、引き下がらなかった。 「諦められないの。だって、私、去年からずっと一宮君のことが好きだ ったの」 「……さすがにそれは嘘じゃない?」 「ほ、本当だよ!」 「いや、君、俺のこと無視してただろ。話しかけても答えてくれなかった の、しっかり覚えてるから」 はーっと呆れを含んだため息を吐く。 「俺は、有華のことを大事に思ってる。だから、絶対君とは無理。俺の外 見しか見てないような子なんて、特にね」 ちらっと彼女の顔を見る。これで諦めてくれるかと思った俺は、彼女の なぜか勝ち誇った顔に違和感を覚える。 「斎藤さんだって、一宮君のこと外見しか見てないじゃない」 「は?」 「斎藤さんは、一宮君のこと利用してるのよ」 「……有華のことを馬鹿にするな」 有華のことを悪く言うような女となんてこれ以上話したくない。踵を返し、 裏庭を出ていこうとしたその時、女は叫んだ。 01-722 :腹黒ビッチ(後) 10 :09/03/14 06 21 30 ID isbQ7kqO 「斎藤さんは、一宮君の家の財産を狙ってるのよ。友達に話している のを、一年前に聞いたもん!」 ―――は? とんでもない内容に、思わず歩みが止まる。そんな俺を見て、彼女 はさらに言葉をつづけた。 「図書室にいるのは当番の私だけだからって、大声で話してたわ、あ の人たち。最初は一宮君の悪口だったけど、誰かが言いだしたの。一 宮君の家が代々広崎財閥の顧問弁護士で、大金持ちだって。そしたら、 最初はあなたのこと馬鹿にしてた斎藤さんが、一番食い付いたの」 『へぇー、じゃあ私、一宮クン狙おっかなー。女慣れしてないじゃん? ちょっと優しくすれば食いつくでしょ』 「私、一宮君のこと可哀想だと思ったの。だから、それから気になり 始めたわ。……それで、これ以上、見てられないと思ったの」 「……うそだ」 「本当よ。司書の先生だって覚えてる」 「……うそ、だ」 「嘘はついてないわ」 その後のことは、あまり覚えていない。 気がつけば俺は、家で電気もつけずにベッドに横たわっていた。ふ と横を見れば、カバンがあった。有華と一緒に買った高校生仕様の普 通のカバン。有華がふざけてつけたストラップがある。デートで行っ た渋谷のゲーセンでとった。そういえば金は俺が出した。 チカチカと、携帯が着信を示している。夏休みに有華とお揃いにし た機種。金は俺が出した。有華は一応遠慮していて、だけど嬉しそう にしていた。惰性で携帯を取る。着信五件、メールが二十通。どれも 六時以前。それからはぷつりと切れている。有華はバイトに行ってい るはずだ。最初の頃はデート代は自分で出すと言っていたが、俺がさ せなかった。それでも有華がバイトを続けている理由は、大学の進学 費用のためだった。そう、聞いている。でも、それも怪しいものだ。 俺が喜んで出していたはずの金、全部合わせたらきっとすごいこと になっているはずだ。映画好きの有華のために毎週のように新宿に行 ったし、ショッピングモールやデパートに行くたびに有華の服を買っ た。似合う?と有華がくるりと回れば、まるでそれは有華のものでな ければいけないように思えてくるのだ。飲食代だって俺が出した。親 からは小遣いを有り余るほど貰っていた。俺はそれに疑問を持ったこ とはなかった。なのに今になって、自分が馬鹿みたいに思えてきた。 その時、丁度着信が入った。時計を見ると、十時半。バイトが終わ ったんだろう。連絡もなく帰った彼氏に、電話をかけているんだろう。 彼氏?本当にそう思っているんだろうか。男心をくすぐる仕草、男 を惑わせる言葉、男をその気にさせる態度。 有華の着信を知らせるメロディが、延々と流れ続ける。ループして いくうちに、だんだんと脳内のもやが薄れていく。 そうか、俺って金づるか。 01-723 :腹黒ビッチ(後) 11 :09/03/14 06 24 32 ID isbQ7kqO 「ああああああああああああああああああ!!!!!」 携帯を壁に投げつける。バキッと嫌な音がした。投げたその手がう ざったくて、そのままの勢いで本棚を倒す。数が減った小説、その代 わりに増えた参考書。買ったばかりの赤本が目に入る。有華が行きた いと言うから、選んだ大学の名前。見たくなくて、ベッドの布団を乱 暴に引きずり下ろした。布団。ベッド。 ああ、ここで何度も有華を抱いた。何度も、何度も。最初は二人と も手探りだった。初めての時、俺はうっかりアナルに入れそうになっ て、有華を泣かせた。有華も初めてで、固まっていた。 そうだ、有華は、処女だった。そのことは間違いない。血が出てい たし、物凄く痛がって、俺の腕まで傷つけた。 金のために、処女まで差し出すのか。 気違いみたいに叫びながら、シーツを破った。ついでに布団も破っ ていた。綿が少しこぼれる。なんだか癪に触って、それをずたずたに 引きちぎり始める。勢い余って、後ろに倒れこむ。見えたのは鏡。 俺が。俺なんかが。そう思っていた、一年前の俺。 大丈夫だよ、ダサくたっていい。有華が必要としていたのは、金の ある俺だ。容姿なんてどうでもいい。 才色兼備の有華に釣り合おうと、必死に努力した。同じクラスにな りたくて、同じ大学に行きたくて、今だって努力してる。でもそんな のいらない。俺さえいればそれでいい。金のある俺さえいれば。 金さえあれば、完璧な有華には釣り合うのだ。 ガシャン。 すぐ向こうの俺が、粉々に砕けた。こちら側の俺の拳は、血にまみ れている。有華を守るために作った手の平。有華の、小さな手。バイ トで荒れやすいからって、バラの香りのハンドクリームにいつも包ま れている、か弱い手。守らなきゃいけない、なんて、勝手に俺が思っ て。 「っ、く、……」 唇を噛みしめてなんとかこらえようと思っていたものが、あふれる。 「う……うっく」 『ねえ、何読んでるの?』 俺は、本当に嬉しかったんだ。有華と二人になって、初めて俺は自 分が寂しかったんだと分かったんだ。話をして、誰かが真剣に返事を してくれる、君にとっては些細なことだろうけど、俺は幸せだったん だ。幸せ、だったんだ。 一年前の、有華と出会わなかった頃の自分に戻って、俺は泣いた。 01-724 :腹黒ビッチ(後) 12 :09/03/14 06 27 35 ID isbQ7kqO 破壊衝動が収まり、暗闇の中でぼんやりと座りこんでいた。その暗 闇の世界が、唐突に破れる。かちゃりとドアが開き、廊下の電気が入 り込む。 「克哉君?」 ソプラノボイスが奏でる俺の名前。愛おしくてたまらなかった―― ―そんないつもの感情が、ぴくりとも反応しない。 「どうしたの?今日、勝手に帰っちゃったでしょ。すごく心配したんだよ」 と、さも気遣わしげに中に入ってくる。どうやら、有華を気に入る母 親に入れてもらったらしい。電気がついていないのを不審に思った らしい。 「真っ暗だよ、電気つけるね」 ぱちりと、軽快なスイッチが四角い空間に鳴り響き、そして次の瞬 間、有華の「ひっ」という押し殺した悲鳴で満たされる。 「なっ……なに、これ?」 そして有華は、部屋の真ん中にいる俺を見つける。 「どうしたの、克哉君。何か、あったの?」 有華は、うつろな俺の顔をのぞきこむ。 「具合、悪いの?」 俺のおでこを触ろうと、有華の手が差し出される。白くて、綺麗で 、小さくて、俺が、守るための、手。ふわりとバラの香りがする。バ イト後でハンドクリームを塗り直したんだろう。可愛くて柔らかい有 華には、上品すぎて似合わないと思っていた香り。だけど、今は似合 うと心から思う。 この、したたかで、狡猾な女には、とても。 「きゃあっ!」 乱暴に腕を掴むと、床に引きずり落とした。非力な有華は、ろくな 抵抗も出来ずに引き倒される。 「な、なに?どうしたの、克哉君」 無垢な目をして、俺をまっすぐに見つめるその目が、今は癪に触っ て仕方ない。 「どうしたの?変だよ、何かあったの、かつ」 「お前さぁ」 誰にも向けたことのないような、凶悪な声が出た。それは確かに俺 の声帯から、俺の声音で、正しく紡がれた。 「俺と付き合ってたの、金目当てだったんだってな」 一瞬、何を言っているのか分からないという様に、有華は黙った。 言葉の意味が、理解できないらしい。もう一度言ってやろうかと考え たその時、有華がはっとして、目を見開いて、息をのんだ。 「やっぱそうなんだな」 「な、んで、」 「なんで知ったかなんてどうでもいいだろうが。事実は変わらないん だから」 「ちがっ、私!」 「『女慣れしてないじゃん?ちょっと優しくすれば食いつくでしょ』」 「―――っっっ!!」 「だっけ?」 馬鹿にしたように見下ろしてやると、顔面を蒼白にしている有華が そこにはいた。そうして、俺の残りかすのような最後の期待が、音も なく消えていった。くっくっと、腹の底から笑いがこみ上げる。くだ らない。そんなものにまだしがみついていた自分に、心底呆れてしま う。 「違う、私、ほんとに克哉君のことが」 「うるせえんだよ!!」 01-725 :腹黒ビッチ(後) 13 :09/03/14 06 29 44 ID isbQ7kqO バシッと、有華の頬と俺の手のひらとはあまりに大きく音を立てた。 乾いたそれを、俺は冷静に聞いていた。叩かれた勢いで横を向いた 有華の顔は、俺を見ない。叩かれた左の頬は、俺の血で少し汚れた。 「お前は金で俺と付き合うんだろ。金で俺に抱かれるんだよな。だっ たら、援交でいいじゃねえか」 言いながら、制服のセーターを押し上げ、シャツを引きちぎる。ボ タンがぶつぶつと飛んでいくのを見てか、有華が我に帰る。 「違う、最初は、お金目当てだったけど、違うの。違う、違う……」 「最初が金なら最後まで金だろ。なぁ?」 馬鹿な女だ、と思った。本当に信じてほしいなら、一言だって「金 目当て」だと認めてはいけなかった。そうすれば、俺はまた期待した だろうに。そう思いながら、慣れた動作でブラジャーのホックを外す。 完璧な有華の唯一の欠点、膨らみの薄い胸があらわになった。 「や、やめ……ねえ、違うの、違う」 その顔が、くしゃくしゃになっていく。大きな目が、涙を浮かべ始 めた。有華が泣くのを見たのは、これが三度目だった。一度目は、誕 生日にプラチナの指輪を贈ったとき。二度目は、小さな喧嘩をしてし まったとき。二度目は、悲しそうにぽろりとこぼした涙に、俺は本当 に後悔して、その後平謝りしたのだった。そのどちらとも、この涙は 違った。ああ、やっぱり今までのは演技か。妙に冷静な自分がいた。 この女は、今、男に初めて乱暴されている。本気で泣いている。これ までの涙は、本物じゃなかったのだと結論付けた。 「違う、違う、違」 「壊れたみたいに同じことばっか繰り返して、馬鹿じゃない?いい加 減やめないと、また殴るよ?」 「ちが、ひっく、……ひう、あぁあ」 「大人しくしてろよ。すぐ終わるんだから」 何度も触った有華の乳首は、胸の大きさの割に敏感だ。つまみ上げ れば、鳴き声の中に甘い響きが混ざる。舌でもなぶろうかと考えたが、 そこまでする必要がないと思ってやめた。手だけで十分だ。薄いけれ ど一応ある胸を、寄せ集めて揉みほぐす。 「うあ、あう……んんーっ!」 「そうだね、感じてる方がいいんじゃない?その方がお前も楽だし」 揉みがいはないけれど、でも見た目よりもずっと有華の胸は柔らか い。最初はしこりがあって固かったのも、一年かけて柔らかくしたの だ。それも俺の成果だった。 「あ、あ、いやあぁぁ」 乳首を刺激すれば、すぐに反応は帰ってきた。いつもは楽しむそれ も、今は不快感とまぜこぜだ。左手で胸を揉みほぐしながら、手をす るするとスカートにおろしていく。顔は有華の首筋に。息を吹きかけ ながらこうすると、有華は面白いほど良く反応する。耳の裏で呼吸を すれば、有華は身を震わせた。 「ふああぁぁ!」 本当に分かりやすくて、嫌になる。何度飽きもせずに同じことをや っても、有華の体は慣れていないような反応を繰り返した。それが愛 おしくてしょうがなかったのは、以前の自分だ。ちりちりと脳髄が焼 け切るような怒りにまかせて、下着を無理やりおろした。有華が悲鳴 のような喘ぎを上げる。 01-726 :腹黒ビッチ(後) 14 :09/03/14 06 32 25 ID isbQ7kqO 「なんだ、濡れてるな。そんなに金が欲しいんだ?」 ははっと、笑いながら言い捨てる。有華の喘ぎの中の、泣き声が強 くなった。 「やぁー……ひっく・・うえ、ごめ・ごめんなさい、ごめ・・・・・うああぁー」 「相変わらずモノ欲しそうにしてるよな、こんなにエロいのに、本当 に俺だけだったの?」 「かつやくん、としか、ひっく・・してない、っ」 「どうだかね。まあ、もうどうでもいいんだけどさ」 「っつ……う、うあああ!!」 「うるさい。だまって感じとけよ」 スカートの中に突っ込んだ血まみれの手を、有華の秘部に押し当て る。既に立っているクリトリスを中指で撫でてやる。有華はなぜか、 中指でしかクリトリスで感じることができないのだ。中指と同じよう な大きさのおもちゃでもダメだった。そのことを、『有華は俺専用だ ね』と、からかったこともある。 「うぁん!あっあっ、あぁぁああ!」 「やらしいね、有華」 「ふうぅぅ、ん、んっんっんっ」 「強姦されてるのに、感じるんだな。ああ、金のためだからか」 わざと有華を刺激する言葉を使っているのに、腕で口を押さえる有 華には聞こえていないらしい。首を振って、快楽に抗っている。イキ そうなんだろう。 「ほら、イっちゃえば?ほら、ほら」 「あっあっ……っああー!!ああー!!んぅ―――っ!!」 足の先までつっぱって、背筋をしならせ、有華はイってしまった。 恐ろしく劣情を誘う有華の姿に、俺の腰が熱くなるのが分かった。膣 から流れ出す愛液を、指にからめ取る。固まっていた血が溶け込み、 愛液が赤く染まって行った。ちょうど転がっていた布団で指をぬぐう と、血は消えて元の肌色が見えた。指を膣に差し入れて、具合を確か める。いつも通りの、あたたかでぬるぬるの有華がそこにあった。 かちゃかちゃとベルトを外す。そこでやっと、自分も制服だという ことに気付いた。煩わしく思いながらそこをくつろげると、腰下まで 降ろし、すっかり準備できた俺自身をこすりつけた。はぁはぁと荒々 しい息を続けながら自分のことに必死な有華を、笑みすら浮かべて見 下ろす。クリトリスでイったばかりの膣が、ひくひくとわなないて俺 を誘う。亀頭をはめ込んで、その誘いを受けることにした。 「っ、や・・・・・だ、め……ぁっっっ―――!!」 強引につき入れるのにふさわしい場面ではあった。が、俺はわざと その身に分からせるようにゆっくりと貫いていった。有華がそれを好 いていたからだ。ゆっくりと、感じる場所を撫でていく。 「んぁっ、あっ・あは………ぅううん」 ゆっくり、ゆっくり、奥に向かっていく。限界まで進んで、そうし て子宮口にぴとりと当ててやると、有華はぶるりと体を震わせた。 「は…ん……ぁん・…」 控え目なあえぎ声と一緒に、少しずつきゅうぅっと根元が締め付け られる。そこに肉棒があるだけで、有華は感じてしまうのだ。有華は、 中はゆったりと俺を包み込む癖に、袋に近い入口をどうしようもな く強く締め付けるのだ。そして、さらに奥に行けばいくほど、また強 く締め付けていく。包み込むような柔らかさと、強烈な締め付けを同 時に楽しめる。それからかすかに、ぱくぱくと子宮口も精液を求めて 口を開け始めた。 01-727 :腹黒ビッチ(後) 15 :09/03/14 06 34 51 ID isbQ7kqO 「ひん……っ」 自身の蠢きがいいところにこすりつけられるらしく、放っておいて も有華は感じてしまう。それを延々と眺めていて、有華に怒られたこ ともある。そのことを思い出して、また怒りが再燃して、俺は猛然と 突きこみを始めた。 「あん、っ、んっ、んあぁっ」 十分にほぐれた膣壁を、亀頭でさらに突きほぐす。すぶ、ぶちゅ、 と音を立てて。彼女の弱い手前のポイントだけ、しばらく鈴口でこす り続ける。 「あはぁ、ああぅ、あっ、んー、んふ」 その度に有華の奥は、さらにしまっていく。ここを突き入れてほし い、ほじくり返してほしいと、体が訴える。それでもこすこすと、確 かにGスポットだからそこも気持ちいいのだけれど、有華が本当に求 める部分の愛撫を避けてしまう。入口を押し広げるように出し入れす れば、くちくちと鳴いていたそこはだんだんとぐちっぐちっと本気の 音を出し始めた。 「んっんっんっ、ぅ、…うあっ……あぁー」 「ん?奥に入れてほしいのか?」 「あ、ああ、・っ、あう、うんっ」 「へえ、奥、ねえ」 「やあっつ、だめ、あう・ぁっ……」 「でもここでも十分イッちゃうだろ、有華は」 俺の言葉を肯定するように、有華はぶんぶんとまた顔を左右に振り 始めた。それは否定じゃなく、有華が感じている証拠なのだ。 「ほら、イッちゃえよ。イカせてやるよ」 強く、細やかにそこを衝く。ぐちゅり、ぐりゅ、と少しその部分を滑っ てしまうのは仕方ない。有華はぶちゅぶちゅと愛液を吹き出し続け ているのだから。 「あああっ、あっあっあっ、…………あぁあー!!んんー!!」 ガクガクガクガク。壊れてしまうくらい、有華は震えた。そして一 瞬体を硬直させて、そしてまた床に降りてきた。その間、俺はずっと 動きを止めて、眉根を寄せてそれに耐えた。イッた瞬間に、有華は中 の包み込むような部分まで、ぎゅうっと万力で締め付けるように力を 入れるのだ。最初のころは、それに耐えられなかった。今となっては、 腰に力を入れて、それを堪える耐性ができていたが。 「っは、はぁっ、はぁっ……ぐ、ぅ」 「……っ、は」 荒い息を吐きだし、途中で唾を飲み込むのに失敗して、口の端から それを垂れ落とした。ようやく力を緩める膣内に、俺も止めていた息 を吐き出す。そろそろ動くぞという合図のように、黙って軽く二三度 腰を引く。とろりと結合部から愛液が滑り落ちて行った。カーペット はもう既に濃い色に変わっている。膣内に残っている愛液で、ずるず るの内部は、さらに滑りよく奥へと俺をいざなう。そうか、それなら。 「あぐっ!」 勢いよく中に押し入れる。子宮に響くほど、強く。ぱくぱくと有華の 口が酸素を求めた。なんとかとどまっていた唾液が、こぼれおちて 行った。 01-728 :腹黒ビッチ(後) 16 :09/03/14 06 37 06 ID isbQ7kqO 「い、やだぁ・・や、、やぁっ」 痛みを感じるほどだろう、と分かってはいる。そのままぐりぐりと 奥に押し付けてるなど、鬼畜の所業だろう。でも有華はこれで感じる のだ。腰を引き、押し込む。それを何度もつづけた。何度も、何度も。 あんあんと喘ぐのも疲れたらしい有華は、ふぅふぅとか細く息を吐 き出す。 「おかしく、なるぅ」 目を白黒させて、有華は呟いた。 「元々腐ってるだろ、有華は」 耳元で囁いてやると、ほとんど正気じゃないはずの有華は、俺の言 葉に意識を遠くさせ、ぼろりと涙を落した。 その目をまっすぐに見下ろしながら、ひりひりする亀頭をはめこん で、細かく腰を動かし始めた。その度にまた大きくなった喘ぎが耳に ささやきかける。 「あ・あ・あ・あ…あああっ、あ」 「あー、うっ、イくぞ、イく」 「んあーっ、あああーっ!あ・あ・はぁあん、ぁああああ!!」 最後の激しい律動に、有華が鳴いた。それを心地よく、そして心地 悪く耳に響かせながら、最後に奥まで突い上げた。同時に、どくんと 根元を精液が駆け上がって行った。 「あっ、ああ……あぁぁ……」 「…っ、ぉう……・っう」 いつもなら。いつもなら、二人で抱きしめあいながら、最期を迎えて いるはずだった。背中の後ろまで、有華の腕を感じているはずだった。 なのに、こんなに、今は寒い。接しているのはお互いの下半身だけだ。 「っ・・・・さ」 精子を出し切るのに一生懸命で、有華が何かをつぶやいているのに 気付かなかった。汗だくのまま、朦朧としながら、有華の紡ぐ何事か に耳を傾ける。 「なさい……ごめんなさい……ごめんなさい、…ひっく、……ごめん なさ」 虚ろな目で謝罪を続ける有華に、急激に熱が冷めて行く。 今日、あの女が俺に告白なんてしなければ、こんなに最低のセック スをすることはなかっただろう。そもそも、いつも通りに有華と帰れた。 冗談を言いながら、どうでもいいような話を楽しみながら。受験前だけ ど、一周年記念にどこか旅行にでも行こうかなんて話しながら。 あの瞬間まで、俺は金なんてどうでもよかった。俺を何よりも幸せ にしてくれる有華を、幸せにしてあげたかっただけだ。有華にとって はその対価が俺自身じゃなくて、金だっただけなのだ。 だったら、何も知りたくなかった。何も知らないまま、幸せなまま でいたかった。何も知らないままなら、有華はただ俺と一緒にいてく れたのに。 01-729 :腹黒ビッチ(後) 17 :09/03/14 06 40 30 ID isbQ7kqO 「……帰れよ」 勝手にそれを引き抜くと、寝ころんで泣いて謝罪を続ける有華に、 冷たく言い捨てる。荒れ放題のベッドからカバンを探すと、財布を取 り出す。夏休み明けのテストの結果が良かったおかげで、母に渡され たばかりの万札があった。適当にひっつかんで有華にばらまく。四枚 が、はらはらと落ちて行った。一枚は、涙でぼろぼろの頬に張り付い た。呆然としていた有華は、それでよろよろと起きだした。 金を取る有華を見たくなくて、綿がむき出しでボロボロのベッドに 横たわり、目を閉じた。ごそごそと音が聞こえた。服を着ているんだ ろう。それからしばらくして、がちゃりとドアが開く音がした。俺を気に したのか、閉じる音は、本当に小さな小さな音だった。電気をつけた まま、俺は強制的に意識を無くした。何も考えたくなかった。 その日の夢には、有華が笑う顔と泣く顔が交互に出てきた、気がす る。 朝。目覚ましがなくても勝手に目は覚める。五時。有華とジョギン グに行く時間。外を見たが、有華はいない。当然のことだった。結局 学ランを着たまま寝ていたらしい。下にベルトがないのを見て、昨日 のことは夢じゃないんだとまざまざと思い知った。 朝日の下で、改めて部屋は酷い惨状だった。本棚は本やCDやゲーム 類をすっかり吐き出してしまって、かろうじて勉強机の支えがあって 斜めにとどまっている。が、そのおかげでデスクランプが完全に割れ ていた。 床も酷いものだった。カーペットはめくれあがり、ローテーブルが ひっくり返っている。ソファは重いからか無事だが、位置は多少ずれ ている。 ふと、ベッドを見る。酷くした自覚はあったが、あっちにもこっちにも 綿が飛んでいる。制服にもついていた。顔にも。頭にもついているか と、鏡を見た。割れていてほとんど見えなかった。手は、ところど ころ血が残ってはいたが、傷口は固まったようだ。 金はなかった。昨日、有華に投げたそれら。全部そのまま、有華の 頬に張り付いていたのも、そこになかった。 やっぱり金が目当てだったんだな。声にはしないで、ここにいない 有華に言う。 ここまで荒れた部屋の中で、ぼんやりと、これを母親に見せるわけ にはいかないなと冷静なことを考えた。だったら、いつも通りに学校 に行かなければ。俺は、風呂に入ろうと立ち上がった。 -- 第2章
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【キャラクタ・種族】コビット 大きめな小人、彫金技術に優れる、地下に住まう。 ノーム、ドヴェルグ(ドラフ(ドワーフ?ノウム?)など、神話などにもよく出る存在。 その一族。勤勉であり、厳格?職人気質。 ヒトの10倍ほどの寿命?、目は強い光に弱い(彫金とかに関連?) むしろ、目が退化してない?日の光に当たると石化する? 街のコビット 街の行政を取り仕切っている。街の中には専用の扉がいたるところに隠されているとか ハグルマジュツに感銘を受け神格化しつつある一族 町の地下に住まう、ある意味ここは彼らの街である 魔力を行使する能力は無いがつかさどる属性は地(土) 彼らが作り出す道具には魔法的な力が宿ることがある。
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第2章 01-754 :腹黒ビッチ 2章(前) 1 :09/03/18 03 33 33 ID mf3OzW4s 午前は授業が無かったので、サークルの部室で数人とテスト勉強をしてから学 部棟に向かった。学部の掲示板の前に、人が集まっている。集まりすぎて、近づ けない。 「おいそこのでかいの、ちょっと見てくんねー?」 「身も心も小市民達が偉そうに。……ちょっと待ってろ」 高校からさらに三センチ身長を伸ばしても、いまいちプラスになったことがない それが、珍しく利用されるこんな時くらいと言うのが悲しい。 「んー、あー、ゼミの選考結果か」 「俺どこ出したか覚えてないわ。俺何になってる?」 「悪いけど、名前小さすぎて読めない」 「克哉、そのメガネは伊達か。根性で読め」 「無茶言うな、お前こそ裸眼2.0だろうが」 後ろでそんな風に騒いでるからか、掲示板前からだんだんと人がいなくなってい く。ぞろぞろと数人連れ立って掲示板の前に立つ。 「里中と達吉は磯矢ゼミだな」 「第一通ったよっしゃー」 「マジで?てか俺磯矢んとこ出してたっけ」 「あー、田中ゼミと大倉ゼミはは俺らの中じゃ誰もいないみたいだな。あ、神田と克 哉とエイジが和田ゼミか」 「女子いねーの、女子」 「えーっとー、あ、女子は磯矢に集中してんな」 「いよっしゃああ!」 「華があるぞー!」 「お、別所さんが和田ゼミだぞ、克哉」 別所さんと言うのは二年で一番有名な可愛い女の子で、去年のミスキャンだ。 「そういえば克哉、別所さんと最近どうよ」 「どうよって言われても、まあ、遊んだりは何回かしてるけど」 「うおおおおお別所さんがなんで克哉みたいな奴に!確かに雰囲気イケメンだけど 超シャイボーイなのに!」 「うるさい!シャイボーイって言うな!」 「てか、克哉が和田ゼミってのが意外だよなー」 「あー、親父が最近うるさいんだよ」 振りではなく、心の底からうんざりした声が出た。そう、最近父親がとみにうるさい のだ。全然期待をかけていなかった次男が、ひょんなことでそれなりの大学の法学 部に受かってしまったのだ。兄がいるってのに、どうせなら保険にと俺にまで弁護士 になれと言いだした。 「正直言って面倒臭い。和田ゼミきついって有名だし……」 「まあまあ。これから別所さんとバラ色の大学生活が送れると思えばいいじゃねーか」 「そうだぞ、他には目ぼしい女子いないけど、別所さんがいるんなら万々歳だろ」 「キャワイイよなー、別所さん……」 「あ、女子もう一人いるぞ。斎藤さんも和田ゼミだ」 01-755 :腹黒ビッチ 2章(前) 2 :09/03/18 03 38 13 ID mf3OzW4s 斎藤、という名前に一瞬体を強張らせてしまう。が、誰もそんな俺には気付 かなかった。斎藤さんという名前に大きく反応したのは、俺だけじゃなかった からだ。 「うおおおお、和田ゼミに法学の二大美女が揃ってんのかよ!挟まれてゼミ 受けたい!『阿部君と一緒に一緒にレポートしたいな』なんて別所さんに言わ れたい!『しっかり聞かかないとお仕置きよ』なんて斎藤さんに冷たくあしらわ れたい!!」 ヒャッホーと、まだ新学期どころかテストも終わってないのに、栄治が一人 で興奮している。いつも一人でいる有華は、俺と付き合っていた頃とはまるで 真逆のイメージを持たれているようだった。 「一瞬磯矢ゼミ行けばよかったと思ったけど、別所さんと斎藤さんがいればト ントンだなーいよっしゃー」 「お前いい加減に落ち着けよ……」 そろそろ周りが邪魔そうに俺達を見ている。里中が行こうぜと言うので、俺達 は掲示板を離れようとした。 が、振り返るとそこに、斎藤有華その人が立っていた。 「あ……斎藤さん」 呟いたのは、今まで興奮していた栄治。だけど有華はにこりともせずに掲示 板を見た。 「掲示板、見てもいい?」 「ご、ごめん!今どきます!」 さささっと大げさな動きでそこをどくと、栄治は俺達の方に駆け寄った。有華は もう栄治には興味がないらしく、掲示板の文字を追っている。 掲示板を見る有華は染めてもいない黒髪を横で纏めて、いかにもお嬢様風の 女子大生だった。そのしゃんとした姿勢のいい立ち姿を、今まで騒がしかった俺 達もその場にいた学生も、みんな見ている。視線を感じているのかどうか、有華 は気にした風でもなく、自分の名前を確認すると、掲示板の前をさっさとどいた。 有華は次の授業に向かうらしく、真っ直ぐ、わき目も振らずに歩いていく。少し 意気をそがれた俺達も、なんとなくぞろぞろと歩きだした。 「斎藤さんって、なんかかっこいいよなー」 大学に入った当初、友人たちはそんなことを口々に言っていた。大学に入って から俺の世界はますます広がり、有華は確かに明るくて可愛かったが、他にも 可愛い子がザラにいるんだと知った。それでも有華が世間でいえば上等な部類 の女だという事実に変わりはない。腹が立ったので、金さえ払えばヤれる女だと 話してやったら、信じたのかどうかは知らないがさらに誰も気軽には近寄らなく なった。軽そうな男が何人か話しかけているのを見たことがあるが、有華が相手 にしていたかどうかは知らない。 「大した美人でもないくせに、お高く止まってるのよ」 女は有華をそう評する。誰もまともに相手にせず、一人の世界に没頭している 有華を、男の前ではまるで蔑みの対象のように扱う。大学の構内で時々見かけ る時の有華は、いつも何か本を携えていた。まるで以前の、暗くてダサい俺のよ うだった。ただ、元がいいからマシかもしれないが。が、そのせいで根も葉もない 噂が駆け巡るようにもなっていた。お水で働いてるとか、援助交際をしてるとか、 同年代の男は相手にしないで年上と付き合っているんだとか。それらの噂を聞い ているはずの有華だが、学校では何も反論したりすることもなく、静かに過ごして いる。 01-756 :腹黒ビッチ 2章(前) 3 :09/03/18 03 40 53 ID mf3OzW4s 後期最後の授業だった。いつも通り友人たちと、大教室の後ろを陣取る。サーク ルの女も数人来たりもして周り一帯が華やかだった。買わされて以来開きもしない 教科書をルーズリーフと並べておいて、惰性でペンを持ちつつやっているのは雑談。 いわゆる、楽に単位が取れる授業という奴だった。 上からは教室全体が見渡せる。寝てるのも携帯をいじってるのも、いくらでもいた。 真面目に授業を取っている方が珍しい。有華は、そんな珍しい学生の一人だ。 「何が楽しくて学校来てんのかな」 と、うちの大学に来た割には馬鹿なことを言う女には少し呆れた。まさに有華を見て いれば分かるだろう。お勉強のため、ただそれだけだ。受験から解放されたら遊ぶこ としか考えていない部類の女子には、到底分からないかもしれないが。 有華は、大学に入ってからずっと一人で過ごしているようだった。高校最後の数か 月もそうだった。俺が有華とのことを友人たちに言えば、みんなこぞって有華を責め た。有華は孤立した。クラスの女子も遠巻きに、有華の悪口を言っているようだった。 有華と同じ大学なんて行きたくないとも思ったけど、自分の目指せる偏差値の中で は一番いい大学だったし、国立だからネームバリューもあった。それに、今更有華の ために進路を変えるのも癪だった。有華はあんな事があってもやはり要領と度胸は あるらしく、成績を落とすことはなかった。それどころか最後まで教師に東大を受けて くれとうったえられるような余力さえ残して、有華は余裕で受験を終えていた。私立す ら一個も受けなかったらしい。不安がった母親にやたらめったら受けさせられた俺と は全く正反対だった。 そもそも俺と有華は、大学では話したことがない。高校では顔を合わさなければなら なかったし、狭い空間の中、嫌でも毎日有華の気配を感じなければいけなかった。だ が大学と言う所は不思議なもので、意識しなければ同じ空間にいることすら分からな いような、希薄な関係しか存在しない。 まるで、あの一年が夢のようだ。 レポートやらテストやらに追われるさなか。次のテストに備え、学食で数人とたまって いた。 「あ、一宮君、神田君!」 明るい声に話しかけられ頭を上げるとそこには、今代のミスキャンパス・別所愛美が いた。 「丁度良かった、探してたの」 「何かあった?」 「うん、春休みに入る前に学生全員と話しておきたいから、暇な時間に和田先生の部屋 に行ってくれって。今週中なら毎日いるらしいから」 「そっか、ありがと」 「葉山君にも伝えておいてくれるかな」 「分かった」 屈託なく笑う別所さんは、いつもにこにこと笑っていた昔の有華に重なる。どちらかとい うと愛らしい顔立ちの別所さんと、綺麗どころといった感じの有華とは対照的に見える。 だけどどちらも俺に愛想が良くて、そして世間一般に言えば美人だと言うことは一緒だっ た。有華とのことがあって女性不審気味で、しかも美人と言うこともあって別所さんには 一歩引いてしまう。 「今のところ、テストどんな感じ?」 そんな引け腰の俺にかまわず、別所さんはこうして交流を持とうとしてくる。 「ん……まあ、単位は大丈夫ってくらいかな」 「和田先生の面接パスするくらいなんだから、一宮君の大丈夫はとってもいいってことね」 「それって別所さんにも言えない?」 「私はすっごくがんばったもん」 別所さんは、魅力的な唇をにっこりと釣り上げる。その姿はまるで大輪の花を思わせた。 「ああ、そういえば和田先生の伝達って、図書館で斎藤さんに教えてもらったんだけど、」 と、別所さんは付け足す。 「あの人、噂には聞いてたけど本当にすごいみたいね」 「噂?」 01-757 :腹黒ビッチ 2章(前) 4 :09/03/18 03 43 30 ID mf3OzW4s 学内に出回っている有華に関する噂で、男とか遊んでるとか以外のものを初めて聞いた気 がする。驚いて、つい先を促してしまった。 「うん、一年の時から和田ゼミに顔出してるらしいの。ヤル気ありすぎよね。三年で取るはず の授業のテスト勉強してたわ斎藤さんだけは、最初から和田ゼミに内定してたらしいわよ」 和田ゼミは、俺達の大学の中でも屈指の司法試験予備校として有名なゼミだった。和田教 授もその気のある学生しかとらず、またその選抜も厳しいことで知られていた。 「ま、他人は気にせず、とりあえず単位とっちゃわないと。じゃあ、またデート行こうね、一宮 君」 軽い口調でそう言うと、別所さんはブーツの踵を鳴らしながら颯爽と去って行った。その後 ろ姿をぼんやりと見送り、ふと視線を感じて振り返る。 「克哉、お前いつの間にか別所さんと親密になってないか」 「なに、またデート行こうねって。俺達の前で堂々と言うくらいだから、もしかしてお前ものすご いアピールされてんじゃねーか」 「うおおおお!俺は単位とれるかどうかでひーひー言ってんのに、なんで克哉ばっかおいしい 思いしてんの?何だこの格差社会」 「……なんか慣れてる感じがして、俺は引いちゃうんだけどなぁ」 「もったいなさすぎるだろ!用意された据え膳を食わない男は今すぐ去勢しろー!!」 「ちくしょうっ、克哉なんて本当はエロゲでシコシコしてるくせに……!何があっても新作チェッ クは忘れないエロゲマニアのくせに……!」 「外では小説とか読んでインテリぶってるけど、ブックカバーの下がフ●ンス書院なこと俺達は 知ってんだぞ!」 「お前ら今すぐ黙らねーと、この間話してた学園モノ貸さんぞ」 シーン。一転、四人掛けのテーブルに響くのは、カリカリとシャーペンが紙を滑る音だけだった。 三コマ目が専門のテストだと言うこともあって、午前中からずっと学食に居座り続けた。それか らぞろぞろ連れ立って、最後まで教科書を読みながら法学部棟に向かう。その途中の図書館か ら、背筋をぴんと伸ばして何かを読んでいる有華が出てくるのを見た。小さなハンドブックのよう で、今から同じテストを受けに行く俺達の教科書とは明らかに違う。濃い青のストールで髪も一 緒に包みこんでいる有華の姿は、没頭しているのもあってかなんだか孤高の人のように見える のだった。 意識したわけではないが、そんな有華の後ろをついて行くような形になってしまった。それなり に俺達は喋りながら歩いているのに、有華が気付いている様子はない。有華はイヤホンをしても いないのに、集中しているのか何も聞こえないようだった。 学内では、この曜日しかほとんどすれ違うこともない有華。それが、四月からは同じゼミでまた クラスメイトだったころと同じ、近い場所で授業を受けることになる。 嫌な予感がした。ざわりとした何かが、俺の中で暴れ始めている。こんな風に突き放したような 距離で、やっと自分を保てているのに。また少しでも近くなれば、正気でいられなくなるかもしれ ない。そんな恐れが、どうしても消えなかった。 「(……悪循環だな)」 俺は結局、有華の呪縛から逃れられない。 01-758 :腹黒ビッチ 2章(前) 5 :09/03/18 03 48 16 ID mf3OzW4s 有華と見た海を、何度も夢に見る。 海なら何度も行った。夏だって、冬だって。だけど目の前に浮かぶのはいつも、海風 の吹きすさぶ、あの春の海だった。 海岸線を、歩けるだけ歩いた。有華と俺の指が、絡まるように繋がっていた。ただ明る いだけに見えていた有華の笑みに、少しの柔らかさを見た。つられて俺の顔の筋肉も 弛緩してしまうようなあたたかさ。そして対照的な、指の冷たさ。全てが、まだそのまま 手の中に残っている。 視覚が、聴覚が、ゆっくりとフェードアウトしていく。自然と瞼が上がって行く。現れる のは、見覚えある天井。夢が夢だったと気付くのは簡単だった。 感情は、有華を見るたびいつも荒れ狂う。だけどこの夢を見る時だけは不思議と凪い だ。波の音と共に洗い流される様々なもの。そうして何も無くなった時だけ、俺は安らぐ ことができるのだ。 右手で顔を覆う。また眼を閉じる。が、眠気すらも全て無くなってしまっていた。それで も余韻を味わう様に、しばらく何もする気が起きなかった。こうして横たわっていると、目 が覚めているのに、波に乗っているようにゆらゆらと心地がいい。呼吸をするのも忘れ るくらい、自分が無に近いのを感じていた。 少しずつ思考が戻ってくる。朝。日差しが強い。晴れか?ああ、そうだ。今日はガイダ ンスがあったはず。 ゆっくりと起き上がる。時計を見る。十二時前。 「……行かないと」 悠長な口調だが、実際は遅刻ギリギリだ。だけどそんな気になれない。あの夢を見る 時は、いつもそうだった。 01-759 :腹黒ビッチ 2章(前) 6 :09/03/18 03 48 37 ID mf3OzW4s 成績通知書は、とりあえず全部の単位が取得できていることと、教養の授業を取り終 えたことを教えてくれた。専門の二つほどC(可)の評価を見つけて、これが二年前期じゃ なくて本当に良かったと胸をなでおろした。学務課でそれを受取って、その足で学部棟に 向かう。ゼミの顔合わせのために。 ホワイトボードを正面に、コの字型に並べられた机とイス。少し寝坊をした俺はギリギ リだった。既にそのほとんどが埋められていて、どこに座ろうかよりどこなら空いてるか、 座るのにマシかを優先的に考えるしかなかった。栄治と神田は既に二人で座っている。 どこがいいか思案していると、ひらひらと手を振られる。別所さんだ。 「ここ空いてるよ、一宮君」 何気ないような口調だけど、やってることは大胆だ。女子が三人しかいないのに、かた まる気はさらさら無いらしい。全員に聞こえるように言われては、断るのも悪い。選択の 余地もなく、渋々といった表情は隠して、別所さんの隣に座った。 「駆け込みね」 「ん、寝坊した」 「成績取りに行けた?」 「ギリギリ間に合ったよ」 「よかったね」 言っているうちに和田教授がやってきた。いかにも厳しそうにしかめっつらなのはいつも のことだが、学生に厳しいのは本当のことなので、囁き程度にも会話があった教室内は しんと静まり返った。 「揃ったかな。じゃあはじめる……」 「すいません!」 ガチャリ、と教授の声が遮られ、ソプラノが割って入る。急いで来たようでおでこを丸出 しに肩を張る、有華だった。 「遅れて、すいません」 「……まだ始まっていない。早く席に着きなさい」 「はい」 はぁはぁと息の荒い口元を隠しながら、斎藤有華はすぐ傍の最前列にさっさと腰を下ろ した。遅れてカバンからガサガサと物を出す音。それらを横目でさっと見つつ、和田教授 が話し始めた。 「えー、民法ゼミ担当の和田慶一郎です。よろしく」 愛想笑いの一つも漏らさない教授は、まず抑揚の少ない話し方で周りを圧倒した。 「このゼミを取る人は、おそらくほとんどが司法試験を目指す生徒だと思う。そういう風に シラバスにも書いてあるはずだ。途中でリタイヤするのは勝手だが、その場合はすぐに このゼミを抜けるように。邪魔だ」 睨みつけるでもないのに、ピリピリした空気が教室内を包んでいく。 「じゃあ、全員シラバス開けて」 その言葉に、ほとんど全員が固まる。シラバスなんてクソ重いモン、誰が持ってくるん だ。思わず隣を見ると、別所さんはなんと持ってきていた。口でパクパクと見せてと伝え ると、にっこりと彼女は笑った。が、隣の栄治も神田も持ってきていないらしい。ふと見渡 すと、持ってきているのは別所さんと有華だけだ。それを知っているのか知らないのか、 教授は勝手に話を進めていく。一年の予定をさらっと流すように言っていくが、そこに交 流的なものの説明が何もないのが気になる。淡々と説明を終えた後、付け加えるように 教授が言った。 「というわけで来週から授業に入るから教科書は買っておいてくれ。それと今日はこれか ら新歓コンパなんかがあるらしいが、ゼミのイベントには私は一切関知しない。先輩達と 話し合って勝手にやっててくれ。あと、君たちの学年の代表が決まったら知らせに来るこ と。以上」 勝手に話を進め、勝手に終わらせ、そして教授は去って行った。聞いていた以上に、厳 しいというか学生に関心のない教授だ。これのどこが司法試験の合格率は学内随一なん だと少し不安になった。 02-033 :腹黒ビッチ 2章(中):2009/04/01(水) 05 35 29 ID C4LeQOqO 責任の押し付け合いと言うのは、いつもお決まりの過程を経るものだ。誰がゼミ長やる? という議題に、最初は口をつぐむ。しんとした空間のぎこちなさに、全員が限界まで我慢す る。そのうち痺れを切らした誰かが、自分がいかにゼミ長になれないかを切り出す。そこか ら始まるのは、醜いなすりつけあいと相場は決まっている。 「俺はサークルの代表もやってるし」 「バイトで忙しいんだよ」 そうして泥沼化した話し合いが三十分を超えたくらいで、誰かが言った。じゃあ、くじびきで。 即席でくじを作り、引いて行くことになる。誰もが「最初からこうすれば良かった」なんて不毛 なことを思いながら。自分のくじは、幸い真っ白だった。はーやれやれとため息をついたその 時、有華が立ち上がった。 「……斎藤さん?」 「決まったみたいだから」 「え、っと、じゃあ斎藤さんがゼミ長……」 「じゃない。この通り白」 ひらひらと、全員に見えるようにくじを揺らす。 「バイトなの。もう遅刻寸前だから行くね」 「ちょ、ちょっと待って。これから新歓コンパなんだけど……」 「先輩達にはもう言ってあるから。それじゃ」 あっけにとられている他のメンバーを一瞥して、有華はさっさとバッグを取り、出て行ってし まった。 「なんつーか、斎藤さんってあんなだから和田教授と気が合うんかね……」 栄治がいささかがっくりした様子でちびちびと焼酎をすすっている。斎藤さんのメルアド聞き たいなーwktk!なんて意気揚々だったからこそ、その落ち込み具合は大きいようだ。 「元気だしてよ、葉山君。まだ始まったばっかりなんだし、話す機会は嫌ってくらいあるわよ」 「まあ、うちのゼミ自体法曹目指す奴だけだから、そういうピリピリしてるのも少なくないんだけ どね」 四年の先輩がそう言って、別所さんのグラスにビールを注いだ。六人掛けのテーブルには、 俺・栄治・神田・別所さんと、四年生が二人。先輩はさっきから別所さんのグラスにハイペース に酒を勧めている。お持ち帰りする魂胆なんだろうが、酒をあおる別所さんの様子に酔いは全 く見られない。むしろ先輩の方がべろべろになり始め、さっきから口が軽いのだ。 「斎藤さんはこのままストレートに問題なく行きそうだよなあ。あれだけ勉強してるんだから、も しかして東大の院でも目指してるんじゃないか?案外、受かるのも俺達より早いかもな」 神田は比較的冷静に話し始めた。 「でも、今から焦りすぎる必要はないと思う。院の試験はあるけど、本当の勝負は四年後だし ね」 「だな。トップ合格でも目指してるってんなら別だけど」 「案外、本当に狙ってるんじゃないか?和田教授も斎藤さんのことは買ってるみたいだ。まあ、 確かにね。彼女なら院行きはこのまま確実でしょ。噂では、三年卒業制の適用第一号になるか もってのも聞いてる」 「なんでそんなに生き急いでるんだかね。あの子みてると『鬼気迫る』ってのがそのまま当ては まるな」 先輩の言葉を耳に流しながら、思い出すのは寒い日もぴんと背筋を伸ばした有華の姿。俺達 にはただその背中しか見えないが、先輩達から言わせてみるとそれは余裕がないように見える らしい。ぐずぐずと、言葉にできない感情が胸に滞留する。 押し流すように冷酒を胃に入れた。 「そういえば、克哉は高校一緒なんだろ?」 栄治は赤い顔をして、へらへらと俺の顔をのぞきこんだ。 「……ああ、うん」 「斎藤さんって昔っからああ?」 昔から。たったその一言でよぎる、有華の笑顔。偶然今朝、有華の夢を見ていたせいで、それ はあまりにも鮮烈によみがえった。 「―――覚えてない」 「えー、あんな美人をー?」 嘘をつくのは、もう何度目になるかも覚えていない。噂になるほどの美人は飲み会の度に話題 には出るが、その度に俺はしらを切った。だけど、吐き出すようにつぶやいたその言葉は、存外 俺自身を苛んだ。有華、有華、有華。どれだけ俺に纏わりつく。どうしても離れない。 02-034 :腹黒ビッチ 2章(中) 2:2009/04/01(水)05 44 11 ID C4LeQOqO 眉間に皺が寄り出したその時、つんとジャケットを引っ張られた。 「ねえ、高校の時ってどうだったの、一宮君って」 つやつやと照明を照り返すピンク色の唇が、にこりと綺麗な形を作る。有華の厳格が遠ざかる。 少しだけぼんやりと別所さんの顔を見て、ようやく、自分の脳が回転を始めた。 「高校生の時は、ずっと本読んでた」 「フランス……」 「黙れ栄治。―――クラスに一人はいるだろ。教室の隅で、本読んでるような奴。その中の一人 だった」 何を読めばいいかも分からなかった。そのくせ人の視線ばかり気になって、初めは芥川賞作ば かりを読んでいた。家ではライトノベル専門のくせに。 「クラスメイトみたいにマンガ読む勇気もなくて、授業はついていけなくて、一人でぼんやりしてた」 「へえ、意外だね」 「そうかな、今もあんまり変わらないよ。……高三の時に格好とか気にしだして、それで友達が出 来たくらいで」 「ああ、あるよね。オシャレに気を遣いだす時って。私は中二だったなぁ。それまで、ひざ下のスカー トににくるぶし丈のソックス履いてたの。ダサいよねー」 「俺は逆。高三までスラックスの下にふくらはぎまである靴下履いてたよ」 「アハハハハ!すごい、ダサい!」 「ほんと酷かったと思うね。四十代のおっさんメガネに、猫背で、カバンはリュック。ダメ押しのように、 伸びた髪結んだりして。体育の時はみんなが俺を見ないようにしてた。シャツをズボンにインだぞ。 昔の俺を殴りたくなるな」 「ひ、酷い……でもいるいるそんな人……!」 「でも別所さんみたいに、中二だったらマシだろ。俺はもう手遅れ寸前だったし。自己改造目指して とりあえず買ったメンズノンノは、あの頃の俺には輝いて見えたね」 今にして思えば、あの頃の自分は本当に目も当てられない状態だった。でもそんな俺に、有華は 何も言わなかった。デートですら恥ずかしいはずなのに、何も言わずにニコニコ笑っているだけだっ た。だけど、何も言われないからこそ俺は自分の醜態を気にしたのかもしれない。口出しされてい たら、きっと俺はすぐに嫌気がさして、有華を遠ざけていただろうから。 「そっか……だからかぁ」 別所さんは、一人納得したように頷いている。 「私が話しかけても、いつも引き気味だったでしょ?地味ーに傷ついてたんだよ」 「……ごめん」 「あはは、いいよ。一宮君って結構かっこいいのに鼻にかけてる風でもないし、むしろ目立たないよう にしてるなーって思ってたの。私と話してる時も、「なんで俺が?」って目がキョドってるんだもん。 でも、なんとなく理由分かった」 向かいに座る別所さんは、真っ直ぐに俺を見つめてきた。俺はと言えば、否定することが何もない、 だけど気まずい。視線を外すように、舟盛りにされた刺身を取った。 「ねえ、一宮君」 「ん?」 一応ブリを咀嚼しているので、口を開けないようにして答える。ふと頭を上げると、別所さんの目は 熱を持っている。 「ゆっくりでいいから、私、一宮君と仲良くなりたい」 フラッシュバック。もしくはデジャヴ。 「……一宮君、どうしたの?」 別所さんは、不安な表情で俺の返事を待っている。そして俺の様子がおかしいのを不審に思ってい るようだった。 「いや、……いいよ」 「ほんとに?嬉しい」 とろけるような頬笑み。女の子特有の、砂糖菓子のように可愛い笑顔。 『うれしぃよぅ』 なのに目の前に現れるのは、同じように笑んだ有華。 明らかに俺に好意を持っている別所さんと話をしながら、それでも思い出すのは有華のことばかり だった。 02-035 :腹黒ビッチ 2章(中) 3:2009/04/01(水)05 45 34 ID C4LeQOqO みんな酔っぱらっているのに、俺だけが酔いの冷めた顔をして、二次会に向かう集団から一歩遅れ て歩いていた。別所さんは、四年の女の先輩と一緒にいる。ぼんやりと彼女を見つつ、横でぐだぐだ 文句を言っている栄治と神田と連れ立っていた。神田はべろべろに酔っぱらっている。そのふらふらな 足取りを気にしながら、俺は別所さんのことを考えた。 別所さんがこれから俺に告白してくるようなことがあったら。だけど今の俺には、それに舞い上がるほ どの情熱は無かった。むしろそのことを考えただけで寒気がするほどだ。世の中の女子には、もしかし て告白のマニュアルでも出回っているんだろうか。それほど、有華と別所さんのアプローチの仕方はパ ターン化しているように思えた。そのパターンに乗るほど、俺はパターン化されているんだろうか。そうし て、引っかかってしまう馬鹿な男なんだろうか。 これ以上仲良くならないといいんだけど。そんな予防線を張っていると、栄治が突然声を張り上げた。 「あ、あれって斎藤さんだあ!」 指をさす先は、でかい交差点。 「……いないぞ。幻覚だろ、栄治」 「よく見ろよカンダ!ほら、あのビル側の、アレ!」 「はあー?」 神田と栄治が二人して有華を探している。俺はどうせ酔っぱらいの見間違いだろうし、有華だとしても 探してまで見たくないと思い、青にならない信号を待ち続ける。が、神田まで声を上げた。 「……本当だ、斎藤さんだ」 「だろー!?俺、すげー!」 「なんで斎藤さんがここに……っていうか」 「あの男誰だー!?」 ばっと俺も、栄治が指をさす方を見る。交差点を挟んで、対向車線の信号に、確かに有華はいた。 が、それは、俺の知る有華ではなかった。 遠くから見ても目立つ、派手な髪形と派手な衣装……それはもういっそドレスと言っていい。春とはいえ まだ長袖の羽織物は外せない時期に、不似合いなくらいの露出の高い服。腕はむき出しだった。そして 夜の薄暗い街灯の下でもすらりと白いその腕は、スーツを着た男に回されていた。恋人、と一瞬考えたが、 そんな訳がない。男はどう見ても五十代だった。そして、ネオンが輝くビルに消えていく。それが意味する のは、ただ一つだった。 「お水で働いてるって本当だったんだな……」 栄治ががっかり気味に呟く。どう見ても夜の世界で働いているような、服と化粧、そして媚びた笑み。 目の前が、真っ暗になった。 02-036 :腹黒ビッチ 2章(中) 4:2009/04/01(水)05 47 46 ID C4LeQOqO 「おい、どうしたんだよ克哉」 二次会のカラオケに来てからずっと隅の席で酒を飲んでばかりいる俺に、心配したのか神田が声をか ける。 「飲みすぎだろ、どう見ても」 「……そうか」 「なんかあったか?っていっても、さっきの居酒屋は別に何もなかったよな」 BGMは、栄治が歌う聖飢魔II。本家に負けず劣らずの叫びっぷりだ。 「何も、ないさ。何も無かったんだよ。うん」 「訳が分からないぞ」 「俺の夢だったのかもしれない。だったらもう忘れたい」 俺のひとりごとに、神田は完全にクエスチョンマークを散らしている状態。そこに、みんながどん引きする くらいの閣下っぷりを発揮してきた栄治が帰ってきた。 「フハハハハ、吾輩のミサに酔いしれろ!」 この能天気な性格には助けられることも多いが、今ははっきり言って邪魔だ。が、俺のどん底の落ち込みっ ぷりに、栄治もふと我に返ったようだった。 「あれ、どうした克哉」 「……さっきから飲んでるんだけど、様子がおかしいんだよ」 「うわっ、これ全部お前が飲んだの?ひーふー……ってかさっきチューハイピッチャーで頼んでたバカってお 前!?」 「俺は止めたんだけどね」 「何してんだよ克哉ぁ。なんかあったのか?俺でいいなら聞くぞー」 栄治は生粋のお調子者だが、その分、他人を思いやれるいい奴でもある。どすんとさっきより近くに座った栄 治が、俺の言葉を待っている。アルコールに浮かされたように、俺の言葉はふわふわと宙を漂い始めた。 「有華が……」 「アリカ?」 「在り処……財布でも忘れたのか、克哉」 「有華が知らない男と歩いてて……」 「ありか……」 「アリカ……ありか……あ!斎藤有華!?」 「有華が、男と歩いてて……媚びてて……やっぱりあいつは俺と付き合ったのも、金目当てだったんだって思っ て……」 「俺と」 「付き合った?」 「うん、高校の時、一年付き合った」 「斎藤有華と?」 「うん」 そこで、ジョッキになみなみ注がれたビールを一気に飲み干した。ふうーと一息ついて、ふと黙り込んだ栄治を 見る。栄治はぽかんと口を開けて俺を見ていた。 「何それ、マジで?」 「マジで。でも、あいつ金目当てだった。俺んち、親が弁護士やってるだろ?俺は二男だからあんま関係ないんだ けど、でも親父が最近俺にうるさいんだよ、俺も院行けって、だから」 「んなこと前から聞いとるわ!え、何お前、斎藤さんと付き合ってたの」 「うん。俺の金狙ってたんだけどさ。あいつのためにプラチナの指輪も買ったし、夏休み沖縄行ったし、デート代も 出してやったけど、俺全然気づいてなくて」 「……それ、マジで?」 「うんーで、ある日問い詰めたら、そうだって言ってさー。俺ショックでさー。有華のために俺、かっこよくなったの になー。有華のために勉強もして、同じクラスにもなったのに。全部無駄だったんだよなー」 ぐらぐらと頭が揺れるまま、思いつくまま、色んなことを喋った。何を話しているのか分からないまま。その間も酒 をせがみ、ひたすら飲んでいた。ますます何をしていたのか分からなくなっていった。栄治と神田は、ただうんうん 頷いて聞いてくれていたと思う。 アルコールに火照る熱が、脳まで浸食していく。ゆらゆらと、世界の何もかもが揺れているようだった。波に漂うよ うなそれは、とても気持ちが良かった。ざあざあとカラオケの音は砂嵐のように不鮮明な雑音に変わって行き、ざあ ざあがざんざんに、そうしていつの間にか寄せては遠ざかるリズムになった。目の前までが揺れて、いつしか色を 持ち、遠くに雲を持つ海になった。 02-037 :腹黒ビッチ 2章(中) 5:2009/04/01(水)05 48 51 ID C4LeQOqO 有華はあれから、一つも俺に何か話しかけてきたことはない。 有華は確かに、金目当てで俺と付き合うなんて人として最低のことはしたけれど、だからといってそれを責めること が俺にできるか? 有華は、俺にそんな素振りを見せたことは一切なかった。それこそ、有華は非の打ちどころない恋人であり続けて いた。その裏を知らずにいた間抜けな俺は確かに可哀想だが、有華は、少なくとも一人の人間を最大限尊重して接 してくれていた。こんな風に、俺が人前に出せるような風貌と対人能力をつけるに至ったのは、間違いなく有華のお かげだ。マナー講座にでも行ったと思えば、確かに金を出してもおかしくない。 あの頃俺は、返しても返しきれないほどのものを有華にもらったと思っていた。もちろん愛情は一番だったが、それ 以外にもたくさんのものを有華はくれた。有華のしたことは、有華が俺にくれた様々のものを無にするほど、汚いもの だっただろうか? そうか。俺はずっと、有華を待っていたのだ。 言い訳でいいから、言葉が欲しかった。一言でいいから、何か、俺に執着する言葉をくれたら、それだけで俺は許し てしまうつもりだった。それだけ俺が有華にべた惚れだったことを、有華自身が知っているはずだ。俺を愛していると 言ってくれたら。そんなものでなくてもいい。あの時金を置いていってくれたら、それだけもう、俺は有華を追いかけて しまっただろう。 『好きだよ』 その言葉を、嘘でも言えてしまうなんて、信じたくなかった。信じたくない一心で大学まで追いかけて、ゼミまで必死 に探って、気難しい和田教授に頭下げて。 もう俺に一切関心なんてないと、有華から突き付けられた。それは、酷い絶望感だった。 それからしばらく、俺は無気力に過ごした。必要最低限のことはもちろんやる。大学にだってきちんと行った。だけど それ以上のことには、体が動こうとしなかった。 そんな俺に、事情を知る友人たちは慰めたり放って置いたりと優しく接してくれる。あんな女忘れろ、と言われたこと もある。だが、何をしたって有華のことが忘れられないのに変わりはなかった。今までだって、三年経っても忘れられ なかったのだ。それに、有華はいつもと同じ顔でゼミの教室にいるのだから。むしろあの夜の方が夢のようだった。 一ヶ月、二か月と日々は過ぎて行った。その間に、別所さんに声をかけられたことは何度もある。今までは流される ままにその話に乗っていたが、あれ以来俺は別所さんを避けるようになった。別所さんは最初怪訝な顔をし、それは だんだん悲しそうになり、最近では納得いかないという風に見えた。 だけど事態は、俺ではなく、周りが勝手に動いていた。 02-038 :腹黒ビッチ 2章(中) 6:2009/04/01(水)05 50 29 ID C4LeQOqO それから数か月が経ったある日、ゼミの終わってから駅を目指す道中、俺は忘れものに気付いて引き返すことに なった。来週発表の資料を、机の下に置いたままだった。一年の頃に同じようなことをやらかして、翌日になってか ら取りに行ったら新品のルーズリーフが無くなっていたことがあった。面倒ではあるが一応回収に行かなければ。 「あなた、常識がないのね!」 演習室のドアを開けようとしたその時、誰もいないと思っていた教室から誰かの怒り声が響いた。 「自分が最低だとか思ったことないわけ!?」 何やら修羅場のようだ。この声は別所さんだ。終わるまで入りにくいなと内心ため息をつき、ドアの前で待とうかと思っ た。 「何も知らない一宮君をもてあそんで、罪悪感のかけらもなかったの?」 唐突に、俺の名前が呼ばれる。心臓が跳ねた。 「一宮君に、謝りなさいよ。誠意こめて」 ドアにつけられたガラスから、そっと中をのぞきこむ。十五人のゼミ員のうち、十人くらいがそこに残っている。全員が 気まずそうな顔をしながら、一人の女を見ていた。槍玉に挙げられているのは有華だ。有華はまだ席に座ったままで、 別所さんはその前に立ち、有華を睨みつけている。有華はただ冷静に見つめるだけだ。 「……私のやってることが褒められたことじゃないことくらい、分かってるわよ」 「あ……ったりまえじゃない……っ!!」 「でも、あなたにそんなことを言われる筋合いも無い」 言い終わって有華は目を細め、別所さんを冷たく見上げた。 「これは私と、一宮君の問題でしょう」 有華の言い草に、別所さんの顔がますます紅潮する。 「関係あるわよ」 「……へえ」 「私は、一宮君のことが好きなの。だから、関係ある」 別所さんは堂々と言い放つ。俺を好きだと認める言葉に、全員がおお、と驚いたように別所さんを見た。が、ただ 一人、有華だけはその言葉に冷笑する。 「あはは!すごいね、別所さんにとっては、好きだったら他人事にも踏み込んでいいんだ?」 「……っ、何がおかしいの」 「そっちこそ常識ないんじゃない?ストーカーの言い分よ、それ」 別所さんを馬鹿にしたような言い方に、栄治が眉をひそめているのが見える。そして、俺を背にしている神田が言っ た。 「問題がすり変わってるよ。別所さんも落ち着いて」 「だって、この人おかしいわよ!なんでこんな状況でこんなに落ち着いてるの?悪いことを悪いって指摘されて、なん でこんなに冷静なのよ。金が第一だって、はっきり言ったわよこの人!頭おかしいんじゃないの!?」 「―――斎藤さんは、きっとそれが悪いことだなんて自分では思ってないんだろうよ」 栄治は、らしくない声色で呟く。有華は、その言葉に反応した。 「うるさい」 その時、有華の声が、聞いたこともないほど低いものに変化した。 「親に甘えてぬくぬく生きてる奴らが、何を偉そうに」 その場にいる全員が、黙り込んだ。ドア一枚挟んだ廊下にいる俺でさえも固まるような、負の感情を押し込めた 有華の顔は、その場にいるものすべてを凍りつかせる冷たい凄みがあった。 02-039 :腹黒ビッチ 2章(中) 7:2009/04/01(水)05 51 56 ID C4LeQOqO 「そうよ、あなた達の言うとおり、ホステスしてるけどそれが何か?母の友人の店だからね、高校の時だって「手伝い」 なんていってしこたま働いたわよ。でもそれがどうしたの。お金を稼ぐ方法なんて、新聞配達から援交までいくらでも あるじゃない。私のバイトが何だって、別にいいじゃない。お金を稼げるんだったら何だっていいわよ。時給一万円プラ スナンバー手当なんて、破格でしょ?」 だからってそんなバイト、と戸惑いつつ口をはさむ男がいた。今度は、有華はその男を見た。 「あんた達が思ってる通り、私はいつだって欲にまみれてるわよ。おいしいもの食べたい、綺麗な服着たい、化粧品に だって金かけた、大学だって行きたかった。あんた達だってそれくらいの欲はあるでしょ?そのために小遣い使って、 バイトもしてるでしょ?私だってそのために自分の利用できるもの利用してるのよ。女を武器にして、客取ってきてやる わよ。ダサい男とだって真剣に恋愛してやるわ」 「そ、その為に一宮君の気持ちを利用して、一宮君を傷つけて、それでいいっていうの!?」 「あのね、別所さんが何決めつけてるか知らないけど、私は金品をせがんだことなんて一回もないわよ。それに、飽き たら捨てるなんてことも、考えたことなかったもの。一生一緒にいる覚悟だってあった。むしろこれも真剣交際じゃな い。私は、一宮君のこと、大事にしてたわ」 「それらしい言葉で飾ったって、結局あんたは金目当てじゃない。金金金って、そんなに金が大事なの?だったら金と 結婚すれば!?」 ダンッ!! 教室内の時間を止めてしまうような、とても大きな音だった。机を殴りつけた有華は、別所さんをまっすぐに見ていた。 「そうよ、だから金持ちそうな弁護士になるのよ。だけどあんた達みたいに悠長に大学院になんて行く余裕もないから、 あんた達の何倍も必死に勉強してるんじゃない」 有華の言葉に、思い当たるのはあまりにも突飛なことだった。まさか、そんな馬鹿らしいこと。確かに有華は誰よりも 勉強していた。その姿は誰もが認めるものだったし、和田教授がことさら有華を認めているのも頷けるほどの猛勉強ぶ りだった。だが有華の言い草だと、それは俺達とは全く目指すものが違うということ。今になってそんなことをやろうとす る奴、初めて見た。 この場にいる全員が有華に呆れ、そして同時に怖れた。そのことは間違いないだろう。あくまで金を中心に回っている 価値観。それに従って動く誰よりも強い行動力。なんて極端な。 「あんた達の話聞いてると腹が立つ。あんた達は正義振りかざして、いい気になってればいいわ。弁護士だって職業よ。 悪人だって弁護してやって、金もらうのよ。金を稼ぐ手段なんて、結局は一緒じゃない。馬鹿にされたっていい、そんな の、私は辛くも何ともない」 そう言い捨てて、有華は机の上のものを、乱暴にカバンに入れていった。気迫に圧倒された奴らを最後に睨みつけ、 席を立つ。そして勢いよくドアを開けた。 「……っ!」 「あ……」 有華の顔が、驚きに染まる。一瞬動きを止め、俺を見上げ、完全に無防備だ。有華をしばらく見降ろしていると、彼女 は顔をゆがめ俺を睨みつけたが、すぐに我に帰ると踵を返す。廊下にヒールの音を甲高く上げ始めた。 「ちょ、有華、待てよ」 思わず声をかけるが、有華は反応しない。 「有華」 有華の歩みはだんだんと早足になって、小走りになる。 「有華!」 俺が叫ぶと同時に、有華は走り出す。ヒールとストラップじゃ走りにくいだろうに、器用に足を操っている。だけどスニー カーの俺に勝てるはずもなく、有華の腕は簡単に俺にとらえられた。 「離して!」 「逃げないなら離す」 誰もいない廊下で助かった。一つ間違えれば変人だ。揉み合いになりながらも呑気にそんなことを考えられるのは、 有華と俺の力の差が歴然としているからだ。有華は何度も腕を振り、逃げようとする。それを封じ込めるように体全体を からめ取り、なんとか有華が動きにくい体制をとった。最初は有華は猛然と抵抗していたが、そのうち諦めたのかだん だんとトーンダウンしていく。有華がとりあえず逃げないのを確認し、近くの空き教室に入った。 「有華」 俺は有華を呼び、必死に見つめる。だけど有華自身は決して俺の顔を見ようとせず、視線を下にそらして唇を噛んで いた。 連れ込んだはいい。だが、何を話せばいいのか分からない。 俯いていた有華が、やがて言った。 02-040 :腹黒ビッチ 2章(中) 8:2009/04/01(水)05 59 24 ID C4LeQOqO 「謝れって?土下座しろって?ああ、いくらでもしてあげるわよ。それであんたの気が済むならね」 ぞっとするような気迫。 「お、俺は、そんなわけじゃ」 俺の言葉に、有華は笑った。じっと、有華が俺を見る。まっすぐに俺の眼を射ぬく瞳は、明らかに俺を蔑んでいた。 02-843 :腹黒ビッチ 2章(後) 1:2009/11/18(水)17 26 45 ID 34xp4FbN 起きたら十時だった。一コマ目に遅刻するのはもう五回目で、単位は諦めた。昼飯 目的に大学に向かい、学食で本日の定食350円を手に席を探していたら、変な顔した 神田が手招きした。俺の分の席が空いている。 「克哉……コートにサンダルはさすがにねーよ……」 ちなみにコートの下はTシャツにGパンだ。今何月だっけ。その答えを見つけるのに も時間がかかった。 「それで電車乗ってきたん?」 「んー」 「つーかカバンは?」 「あー、忘れた」 「授業受ける気ないだろ……」 「んー」 「ゼミのレジュメなら俺が持ってるけど。ちょうど借りといてよかったよ」 神田に差し出されたファイルは、確かに俺のものだった。ぼんやりしてる隙に栄治 に勝手に半分くらい食われたけど、反応する気も起きない。見かねた神田が、栄治を 叱りつつ栄治のとんかつを二個、より分けてくれた。 「あ、別所さんだ」 栄治の声に視線を上げると、すっと俺たちの横を通り過ぎようとする別所さんがい た。俺たちの方は見ようともしない。相変わらず群を抜いた可愛さだ。 「隣、誰?」 「桐谷ゼミの院生」 「……女って怖いよなー。俺らまで巻き込んで克哉落としにかかってたくせに、脈な いと思った途端に乗り換えるとか」 「ま、別にいいんじゃない?別所さんももういないんだし」 「CA志望だって?今からで受かるんかねー」 別所さんから神田と栄治が就活の話に話題を移すのを横目に、俺は一人ぼんやりと 今年の夏のことを思い出す。 有華はあの日から、学校に来なくなった。みんなはあんなことがあって気まずいか らだと思っている。だけど本当のことは分からない。とにかく有華はいなくなり、俺 は腑抜けた。 最初は気のせいだと思った。だけど一日経ち、一週間経ち、一か月経って。そこま できてようやく、自分の日常から有華が消えてしまったと悟った。すると、日々を送 る気力がさっぱり抜け落ちてしまった。何にも興味が持てなくなった。毎日が、漂う ように彷徨っているような気がした。何もかもが平坦で、無色で、無味乾燥だった。 有華がいなくなってから、別所さんはあからさまに俺に誘いをかけるようになった。 毎日のように付きまとい、色々な手段で俺の気を引こうとしていた。が、俺の方はど うしても興味がわかない。それどころか、有華のことを思い出してしまう。 『私の何がダメなの!?』 夏のゼミ合宿で、別所さんがキレた。俺の部屋に来たが、何時間経っても全く手を 出そうとしない俺に痺れを切らしたのだろう。同じベッドに入りこまれて、抱きつか れて、泣かれた。それでも俺は、何もできなかった。 『ごめん』 なんとかなだめようとするが、別所さんは神経を逆なでられたようだった。俺を見 下ろして、睨みつけて、怒りに震えていた。 『別所さんがダメなわけじゃないんだ』 『ダメでもいい。私は、一宮君と一緒にいられればそれでいいのよ』 『違う、そういう意味じゃなくて』 身を寄せてくる別所さんの甘い匂いをぼんやりと感じながら、それでも、考えるの は有華のことばかりだった。 『俺は、有華じゃなきゃ、ダメなんだ』 02-844 :腹黒ビッチ 2章(後) 2:2009/11/18(水)17 27 43 ID 34xp4FbN あの日、有華は言った。 『噂だって悪口だっていくらでも流せばいい。謝ってほしいならいくらでも謝る。ど んな目で見られたっていい』 『ゼミ辞める。大学辞めてもいい。目の前から消えて欲しいなら、いくらでもする』 『なんだってする』 『だから』 『……忘れて』 最後は、小さな、小さな、声だった。俺を睨む目は変わらなかったが、口の端が震 えていた。言い終わると、有華は無理矢理俺の手をほどき、走って行ってしまった。 どうしたら忘れられるんだろう。ずっと考えてきた。なのに忘れてと有華に言われ て、忘れられるわけないじゃないかと叫びそうになった。それが自分の本心だと気づ いても、遅かった。 「それにしても女が一人しかいないとか、ほんと泣けるわ。残ったのは色気なしのガ リ勉池田だし……」 栄治がぼやいている。有華がいなくなり、合宿後に別所さんもゼミを抜け、ただで さえ男が多いゼミには、女子が一人しかいない。 「じゃあ栄治もやめれば」 「親父に殴られるからがんばる。てか俺より問題は克哉だろ」 話を振られても、何も反応できない。栄治が口を開いたその時、 「お、久しぶりじゃんおまえらー!」 聞き覚えある声が、辛気臭い場をぶち破った。 「うわ、上野じゃん、何リクスー着てんの」 「フッフーン、●テレの面接行ってきた」 「もう就活かよー、はやくね?」 「マスコミは今の時期から始まるんだよ」 「上野って、金融志望じゃなかったっけ」 「いや別にー、ひやかしだよ。あわよくば未来の女子アナとお近づきになろうかなと」 「メアド頂いてきたんですかー!?」 「何この人キモーイの視線なら頂いてきたぜ……」 上野はふっと一瞬遠い目をした。相変わらずノリのいい奴だ。大学に入った当初か ら籍を置いているフットサルサークルのメンバーの一人で、同じ法学部だからと二年 までよく授業も一緒で仲が良かった。三年からはコースも違うし、俺と神田と栄治は ゼミがきついからとサークルにも顔を出さなくなって久しい。そういや栄治と特に仲 良かったなと思いながら三人が話しているのをぼんやり見ていると、上野が突然、ぐ わしと俺の頭をつかんだ。 「ところで何この置物」 「あー、演習の発表に行き詰っちゃってるんだよ」 ナイスフォロー神田。それらしい言葉でやりすごしてくれたが、 「んなこと言って、実は振られたかなんかじゃねーのー?」 ぐっさり。そうだ。上野はいらないくらい鋭い。 「やめてっ、この子に触らないであげてっ」 「おうおう可哀想になあ、ヤケ酒なら付き合うぜ」 「いやもう三ヶ月くらいコレだから……」 「三ヶ月?引きずりすぎじゃね?」 「てか正確に言うと三年」 「三年!?克哉、ガラスハートすぎだろ!」 ほっとけ。声にするのも面倒くさい。そしたら勝手に栄治が今までの有華の顛末を 話している。やめろ。これ以上思い出させるな。でも栄治を止めるのもめんどくさい。 神田にすがろうと視線を送ったけれど、無視された。ひでえ。 02-845 :腹黒ビッチ 2章(後) 3:2009/11/18(水)17 28 14 ID 34xp4FbN 「んー、それって彼女が言う通り、忘れればいいんじゃないか?」 「忘れられないから、こうなってんだよ」 「俺たちも散々言ったよ」 俺もじとりと視線だけ送る。もう三年忘れられないんだから、まだまだ長期戦は間 違いない。下手すると一生ものだ。ふーん、とさして深刻そうじゃなく上野はうなず く。 「じゃあ、許してやれよ」 上野は、当たり前のことのように軽く言った。 「忘れられないし、新しい女にも走れないし、その子のことしか考えられないんなら、 もう許すしかないだろ。男なら、好きな女のしたことくらい許してやれよ」 言い終わると、上野はにっと爽やかに笑う。十一月になっても黒い肌に、白い歯が よく似合う。 「お、男らしい……」 「細かいこと考えない上野らしい……」 「ハハハ、惚れるなよ」 「惚れねえよ」 「ま、なんでもいいけど克哉早く元気出せよ。あとお前ら冬合宿は出んだろ、また麻 雀しようぜー」 んじゃーなー。勝手に開催したお悩み相談室は、解答一分であっさり終わった。脱 いだスーツを乱暴に振りながら、上野は颯爽と去って行く。 「相変わらずだなーあいつ」 「麻雀って、またどうせ上野の一人勝ちだよ……」 「追い出しコンパ酷かったよなー、全然追い出そうとしてないあの勝ち方とか」 「そういや夏は田中先輩が一晩で六万負けたってさ」 「むごい……」 そのまま冬の合宿どうするか、二人は話し始める。俺は一人、上野の言葉を反芻す る。 ゆるす、そのたった三文字。思いつきもしなかった俺は、最低な男だった。そんな ことに気づいて、またひっそりと落ち込む。 でも金目当てなんて酷いだろ。最低だろ。そう思うけど。 だけど、そうやって目を閉じて思考を止めるその最後に、有華に会いたいと思う。 干からびる世界の中で、それだけが鮮明になる。 俺は、有華を許せるだろうか。 02-846 :腹黒ビッチ 2章(後) 4:2009/11/18(水)17 28 47 ID 34xp4FbN それから、さらに数日後。 締め切り三十分前の課題を出そうと、教授の部屋への廊下をたらたら歩いていた。 働かない頭で土曜の図書館にこもりなんとか完成させたものの、飯も忘れて座りっぱ なしだった体はガチガチに硬くなっている。この後は予定もないし、どこか定食屋に でも寄って帰るか。そんなことを思いながら教授のドアを見ると、珍しくまだ在室中 の札がかかっている。仕方ないから直接渡すかと、ノックして、教授の声を確認して ドアを開けた。 「はいりたまえ」 話中の教授が、ちらりとこちらを見る。向かい側のソファに座った女子も振り返る。 ―――有華だった。 ぼんやりしていた頭が一瞬にしてさえた。殴られるような衝撃。 「一宮君?何をしている」 不審に思った教授が声をかけ、俺はぎくしゃくと課題の入ったファイルを手渡す。 「よろしく、お願いします」 「ああ、分かった。見ておく」 教授に頭を下げつつ、ちらりと有華を見る。有華はもう俺を見ておらず、どこか沈 鬱な表情でうつむいていた。 「そう落ち込まないでおきなさい。また来年もあるのだから」 そう言って、教授は有華の肩をたたく。いつだって厳しい教授が珍しく、優しげだ。 かっと血が上る。それ、セクハラじゃないですか!?叫びかけた。が、完全に部外者 の俺にはそんな権利はない。用がすんだら、ただ静かに部屋を出ていくしかない。名 残惜しい気持ちを抑えて、とりあえず扉を閉めた。 が、去ることができず、そのまましゃがみこんだ。 有華だ。有華がここにいる。数ヶ月ぶりの有華だ。なぜここにいるのかまったく見 当がつかないが、とにかく、もう二度と現れないかもしれないとすら思った有華がい る。 今まで休んでいた頭は、いきなり回転させてもうまく動いてくれない。足はもっと 動かない。 がちゃりと扉が開いた。 「有華」 目だけで驚いて、有華は俺を見下ろした。反応される前に急いで立ち上がる。 「送るよ」 「……いい」 「話がしたいんだ」 返事はなかった。ただ視線をそらして、拒否も受諾もしない。俺が歩き始めると、 有華もゆっくりとついてきた。 覇気のない有華に、何を話していいか分からずただ歩みを進める。下手なことを 言ったら、逃げられそうだ。色々と悩んだ挙句、当たり障りないことから始めてみた。 「今日、バイトは?」 「辞めた」 「辞めた?」 「お金貯まったから」 「そう、なんだ」 バイトと言えば、お水だろう。もうずいぶん前に見かけた時のことを思い出す。が、 あの時ほどもう鬱ではない。目の前にいる有華があの時のような派手な服装と化粧じ ゃないから、なおさらそう思う。 細くなったな。肩の薄さに気がつく。俺も人のことは言えないけど、でも、心配に なる。 02-847 :腹黒ビッチ 2章(後) 5:2009/11/18(水)17 29 20 ID 34xp4FbN 「もう、学校来れるのか?」 「……さあ、どうかな」 「どこか、悪いのか」 「違う、病気じゃない。……でも、来てほしくないでしょ」 「そんなことない」 即座に否定する。 「俺は、本当に辞めてほしいなんて思ってないんだ。だから、休んでたのが俺のせい だったら、ゴメン」 「違うわよ。一宮君のせいじゃない」 「でも」 「試験受けてたの。だけど落ちたからもう休む必要ない、それだけのことだから」 目の前から走ってきた車のライトに、一瞬、有華の無表情が照らされる。 「でも、一宮君は、これ以上会いたくないでしょう?」 有華は俺を見ない。 「私のこと、嫌いでしょう?」 まるで言い聞かせるような、静かな声だ。刺々しさが無いように感じられるのは気 のせいじゃない。 今しかない。有華は、きっと今しか聞いてくれないだろう。 優柔不断な俺の、ありったけの勇気を奮い立たせる。 「嫌いになろうとしたんだ」 最初の声は震えた。ごくりと唾をのむ。 「だけど、嫌いになれなかったんだ。結局、忘れられないんだ。有華のこと。有華と 付き合ってた頃のこと。こんなになってからやっと気付くとか、本当に、バカみたい だけど」 「……忘れてよ」 「ごめん」 有華は、ぴたりと立ち止まる。一歩先から振り返ると、有華は、顔をゆがませて俺 を見た。 「やめてよ、なんで、今そんなこと言うのよ。私は最低だって、一番知ってるでしょ」 精いっぱいの虚勢が、透けて見えた。こんな時につけ込むような言葉を言うの俺の 方が酷いのかもしれない。 「その通りだよ。酷いし、俺も傷ついた。……だけど、無理なんだ。思い知った。有 華がいなくなると、俺は駄目なんだ」 一生懸命に俺を見上げる有華の頭ごと、抱え込むように抱きしめる。 何年ぶりかの、ゼロ距離。 「好きだ、有華」 有華の反応は、遅かった。途方に暮れるような長い空白の後で、手がゆっくりと背 中に添えられる。おずおずと、ためらうような指先。それだけで十分だった。 有華をかき抱く。万感の思いを、俺の腕に込める。真っ暗なはずの晩秋の夜道が、 匂やかに色めいた。 02-848 :腹黒ビッチ 2章(後) 6:2009/11/18(水)17 29 52 ID 34xp4FbN どうしようかと問いかけても、ぎゅーっと抱き締められるばかりで何も反応がない ので、とりあえず俺の家に直行する。有華を乱暴した部屋に連れ込むのは少し気が咎 めたけど、有華が嫌がらないし、何より財布を忘れたからラブホにすら行けない。 筋肉の消えた体では正直有華を引きずるのはキツかったが、有華がくっついて離れ ないのは可愛くてしょうがなかったのでがんばった。さすがに階段でぜえぜえ言って たら、有華が気にして体重がかからないようにしてくれた。けど、やっぱりぴったり と有華は俺に抱きついているのに変わりはなかった。 電気をつけて、照らし出された散らかり具合に、うわあと自分でも引く。 「有華、ちょっと掃除するから離れて」 返事する代わりに、やっぱり抱きつく力が増すばかりだ。 「そうはいっても座れなさそうだから……」 今だってプリントの層を踏んでいるのだ。さすがになあと思って見渡し、ソファは 服だけっぽいので、足でスペースを広げる。……明らかに服じゃない物がむにゅっと した。 「有華ー座るぞー」 一応声をかけて、ゆっくりと慎重に腰掛ける。抱き上げるように、ソファの上に有 華を上げる。二人用のスペースはあるのに、有華は隣に移動しようとしなかった。思 わず苦笑する。 背もたれが傾いてるわけでもないから、キツい体勢だろうに。てっぺんしか見えな い頭を撫でる。こっち見ろーと念力送りながら。 「有華、どうしたんだよ」 「……だって」 「うん?」 「夢じゃないかって」 頼りなげな、か細い声。 「顔あげて、克哉君じゃなかったら、どうしようって」 そう言って俺の胸に顔をうずめるその様に、胸を打たれる。 「夢じゃないと思うけど」 「だって」 「嘘じゃないよ」 もう一度、言い聞かせる。俺は俺だよ、と。 「嘘じゃない」 それでも顔を上げない有華を、なだめるように撫でる。ずっと。有華が信じてくれ るまで待つつもりで。何分、何十分経ったか分からない。結構な時間、有華の体温を 楽しんでいた。寝ちゃったかな、と思い始めた頃に、有華が恐る恐るといった風で顔 を胸から離した。 声をかけると、有華はまたためらいそうだった。ゆっくりと、有華が顔を上げる。 昔と変わらない、意志の強い目が俺を映す。 「……あの、ね」 おずおずと、有華が口を開く。 「ごめん、なさい」 かすれた声で、それだけ言って、有華がくしゃりと顔をゆがませる。もっと言いた いことがあるみたいで、喉をひくひくと震わせる。だけど、もう声にならなかった。 「ふ……ぅえ……うえー」 あの日みたいにぼろぼろと涙がこぼれる。 俺を見上げる不安げな顔に、しみじみと、俺って本当に馬鹿だなと思った。なんで こんなに弱い子を放っておけたんだろう。深く傷ついて、怯えて、本当に信じていい のか疑っている。 02-849 :腹黒ビッチ 2章(後) 7:2009/11/18(水)17 30 26 ID 34xp4FbN 信じてほしい、と頭を撫でて、笑いかけた。俺の方も泣きそうな顔だったと思う。 目の奥が熱いし、喉もひりついている。 「もういいよ、許すって言っただろ」 「……ぇっ、うえー……っ」 「分かってるから。有華がすごく後悔してるって、もう分かってる」 あの日だって、本当はたくさん言い訳したかったんだろう。でも言葉が浮かんでこ なくて、謝罪の言葉しか言えなかったんだろう。そしてそうさせたのは俺だった。 「俺も、本当にゴメン」 ふるふると首が振られるが、ひくつく体を押しとどめる。なだめるように頭を抱え て、てっぺんにキスをする。徐々に顔に移動して、おでこ、目、鼻、頬、そして唇に。 「……しょっぱいな」 笑いかけると、有華は首に抱きついて、自分からキスを返してきた。 「ん、……っん」 ひっく、と泣きすぎてしゃっくりが止まらないらしい。息苦しいだろうに、それで も離れようとしない。しゃっくりが収まるようにと背中をさすると、またぺたりと体 を密着させてきた。 「はっ、…っ」 ちゅう、という音と一緒に、唇が離れる。至近距離で見つめあって、お互いをきつ く抱き締める。 「おっきくなってる」 「……ごめん」 思いっきり当たってるモノのことを言ってるんだと思う。てか、最初からクライ マックスでバッキバキだ。何しろ自己処理のことすら忘れて腑抜けてたのだ。何日オ ナニーしてないのかも覚えてない。結局下半身のことしか考えてないと思われたら嫌 だ。 でも、有華はそっと抱きついた。それがイエスの合図だとはすぐに分かった。現金 な俺は、そろそろと有華の胸に手を伸ばす。 「相変わらず、小さいな」 「やっぱり、大きい方がいい?」 眉を下げる様子に、ぷっと吹き出してしまう。 「有華さえいれば満足だよ」 笑いかけると、有華もくすぐったそうに笑う。またぺたりと抱きつかれて、動きに くいけど体をまさぐる。 「我慢できない」 「でも、すぐは痛いだろ」 「いい。すぐ欲しい」 催促するように、有華は腰を浮かす。そりゃ、俺は嬉しいけどさ。さすがにいきな りすぎないか、と下着を下ろせずに腰を撫でまわす。 「……だってもう、準備できてると思うの」 恥ずかしそうに、俺の首元に顔をうずめてささやく。え、っと。その部分に、恐る 恐る指を這わす。と、ぬるっと布地が滑った。 「んっ」 「うわ、すげ……」 しばらく割れ目と思われる場所を往復すると、下着がどんどん湿り気を帯びていく。 「ふぁ……ん」 確かにこれだと馴らさなくてもいいかもしれない。有華の無言の助けを借りて、下 着を取り去る。スカートに隠されてしまったそこを揉むように、指を入れる。 「やん・ぅ……ん、ん、」 02-850 :腹黒ビッチ 2章(後) 8:2009/11/18(水)17 30 52 ID 34xp4FbN くちゅくちゅとしばらく夢中で弄んでいたが、ふと、顔を上げる。じっと、必死な 瞳が俺に訴える。悲しそうな、切なそうな。 「おねがい」 心臓をわしづかみにされた。ベルトを緩め、ジーンズを半分ずりおろす。 「挿れるぞ」 「うんっ……」 入れると言っても体面座位の態勢で、有華がその気にならなければ入らない。亀頭 を膣に合わせただけで、有華が腰を下ろしていく。愛液が俺のペニスを伝った。 「あ・はぁ……ん」 根元にまで達し、思わず、俺はため息をついた。有華もはぁはぁと息を荒くしてい る。こつんと奥に当たり、背筋に震えが走る。ぎゅう、と互いを抱きしめ合い、体温 を確かめ合う。視線が絡み合い、どちらともなく唇が近寄る。くちゅりと唾液の音を 鳴らして、先ほどよりも深いキスを交わす。 ―――くちゅ、ちゅ……ぴちゃ 有華の髪の毛をかき乱し、頭を支えてまで深く、深く。奪い尽くし、与え尽くす。 この瞬間を、ずっと求めていた。 体の芯が疼いていた。すでにいつ達してもおかしくない。動きたい。そう思うが、 これだけぴたりと体を合わせていると、突き込むことができない。 「ん……んふ、あふ……」 「……ん、ぅ」 名残惜しいながらも、なんとか口を離す。なんで?と言わんばかりに切なく眉を寄 せる有華に、酷いことをしていると胸が痛む。 「有華、あの」 「ぅん……?」 「そろそろ動いていいか?」 しばらく有華は視線をそらした。あれ?嫌なのか? 「あの、ね」 「?どうした」 「動いたら、気持ちいいんだけど、ね」 「うん、気持ちよくなろう」 「……でも動くと、離れちゃう」 背中にまわされた手が、俺のシャツをきゅうと握りしめる。 「くっついてたいの」 そう言って、すりすりと胸に頬をこすりつけた。 「……――――~~~~~っっつ!!!」 可愛すぎる!!何これ!!何この可愛い生き物!!いい、正直きついけど、ずっと 抱き締めてる。ずーっとぴっとりくっついていようじゃないか! 「ごめんね、わがままで」 「いいよ、ずっとこうしてよう」 そう言って背中を撫でる。 有華が、幸せそうに、花が開いたように、満足そうに、笑った。 ずっと欲しかった。この笑顔が。大好きだった。有華のこの笑顔に、俺は恋をした のだ。 02-851 :腹黒ビッチ 2章(後) 9:2009/11/18(水)17 31 26 ID 34xp4FbN それからなんとかもぞもぞと服を脱いで、駅弁状態でベッドに移動して、挿れたま まずーっといちゃいちゃして。何もしてないけど、有華は途中で達していた。中にあ るって感覚が凄い、と言っていた。そして結局溜まっていた俺も途中で射精せねばな らず、嫌がる有華に謝りながらなんとか外に出した。生だってことを忘れるくらい、 長い間挿れっぱなしだった。 繋がりが解けても、俺たちは溶けたように抱きあったままだった。感慨深くて言葉 が出ず、会話はぽつぽつといったところだったけれど、空白を埋めるには十分だった。 有華の体温があまりにも心地よく、うとうとと瞼の重さに耐えきれなくなってきた 頃、ぽつりと有華が聞いてきた。 「別所さんとは、した?」 「……してない、ってか、何もなかったよ」 「そっか」 有華は笑う。 「私ね、克哉君が私のこと忘れて、幸せになればいいなって思ってたの」 「そんな……」 「克哉君が笑ってくれるなら、それでよかったんだ。相手が私なんて、もうありえな いって、思ってたから」 「俺は有華じゃなきゃダメだったよ」 有華は無言だった。俺は背中を撫でながら、恐る恐る聞く。 「有華は、他の奴としたか?」 「……ごめん」 「そっ、か」 「苦しくて、もう何もかも嫌になって、一回だけ、したんだ。でも、した後の方が苦し くて」 「……うん」 「ほんと汚いって思ったよ。何もかも嫌とか、それも飛び越して、何も考えられなく なった。楽になりたいなーとか、私何したいのかなーとか、そんなことしてたら何も手 がつかなくなって、試験も落ちちゃって、さらに落ち込んで」 派手な格好の有華を見た時はあれだけショックだったのに、今はあまりにも穏やかだ。 うん、うん、と頷きながら話を聞く。 「ほんとはね、私、……全部終わっちゃおうかなって、思ってたの」 「……うん」 「苦しくて、辛くて、解放されたくて、……海に、沈んじゃいたいな、って」 重い言葉だった。あの痛々しさはやっぱり気のせいではなく、そこまで思いつめてい たのかと俺まで苦しくなる。 「そしたら、偶然、克哉君が来て」 「うん」 「好きって言ってくれて」 「うん」 「今だって、夢みたいで」 声が段々と涙交じりになる。 「今度は、幸せ、すぎて、死んじゃい、そう」 ぽろぽろと泣く。衝動的に、有華を閉じ込めるように抱きしめた。 「夢じゃない」 何度だって言い聞かせる。今度こそ、俺が有華を守るから。 「愛してる」 「うん」 「愛してる」 「私も、あいしてる……っ」 約束する。 愛してる。 ずっと、一緒にいよう。 -- 第3章