約 1,615,328 件
https://w.atwiki.jp/ragadoon/pages/574.html
第7話「戦うご当地ヒロイン」 7.1.1. 1703年1月30日 三鷹市芸術文化センターでの公演から数日後、ヤマトは久しぶりに、「ノーライフキングが出てこない夢」を見ていた。と言っても、それはそれで、普通の小学二年生が見るような夢ではなかった。 そこに登場していたのは、雪の降る夜、時代劇に出てくるような武家屋敷に、夜討ちをかける数十人の武士達の集団であった。そう、これは元禄赤穂事件、いわわゆる「忠臣蔵」の一場面である。と言っても、小学二年生の彼にとって、忠臣蔵はそれほど馴染みのある物語ではない。何が繰り広げられているのか、よく分からないままその光景を見ていると、少し離れたところから、同じようにその様子を見ている「狐面の男」の姿を発見する。 「おぉ、また君か。久しぶりやな」 「お兄ちゃん、どうしてここに?」 「どうしても何も、ここ、僕の夢やで。あ、いや、違うか。僕の夢と、君の夢が繋がっとるんやな。なんとなく、君の近くは居心地がいいから、いつの間にやら近付いてしもうた」 相変わらず、何を言っているのかよく分からないヤマトだが、とりあえず、聞きたいことは色々ある。 「今までの夢も、お兄ちゃんが見せていたの?」 「ちゃうちゃう。あれはタケちゃんが、君に嫌がらせしようと思って見せとった夢や」 「タケちゃんって、誰?」 「なんや君、そんなことも知らんのか。まぁ、でも、君、まだ子供やからな。ご先祖様が何しとったかなんて、知らんでもええか。まぁでも、君、僕の夢とシンクロ出来るくらいの力があるなら、そろそろ、お父ちゃんから聞いとかなあかんで」 さっぱり訳が分からない会話を続けつつ、夢の状況について聞いてみると、どうやら、この赤穂浪士達の中の「寺坂」と呼ばれている人物が、ヤマトの祖先であり、この「狐面の男」の子孫でもあるという。その男は、討ち入りの最中に大将(大石内蔵助)から何かを命令されて、屋敷から出て、どこかへ走り去って行った。 「こん時はな、僕の友達が殺されようとしてたところを逃げ出して、それを今、君の御先祖様と僕が追いかけとる場面なんよ」 狐面の男がそう言って、走って行く「寺坂」を指差すと、彼の背後に、その狐面の男と同じような影がうっすらと見える。 「あれも、お兄ちゃん?」 「うん、そうそう。まぁ、そう言ってええんかは微妙やけどな。というか、そもそも僕自身、ホントは君のご先祖様と言っても良いかどうか、微妙な位置付けやし」 「よく分かんないんだけど…………」 「まぁ、分からんでもええよ。あ、とりあえず、クライマックスはすぎたから、もうええわ。ほな、またね」 そんな形で一方的な形で話を終わらされたヤマトは、目が覚める。さすがに色々と気になった彼は、父・タケルにこの夢の話を伝える。すると、「そうか、遂にお前の夢の中にも現れたか……」と呟いた上で、重い口調で「神代家の歴史」について語り始める。 タケル曰く、ヤマトの夢に出てきた「狐面の男」は、この国の最初のエクソシストと言われる「安倍晴明」であり、彼を始祖とする陰陽師の一族の末裔の一つが、神代家らしい。そして、晴明の子孫の中で「神代」を名乗ったのは「神代吉右衛門」という人物なのだが、彼の本来の名前は「寺坂吉右衛門」、つまり、夢の中で登場した赤穂浪士の一人であるという。 そして、あの「元禄赤穂事件」の討ち入りの真の目的は、吉良上野介が屋敷で密かに匿っていた「強大なダークネス」を討つことだったらしい(彼等の主君である浅野内匠頭の切腹も、そのダークネスの存在に気付いたことで、吉良に目をつけられて切腹させられたのだという)。ただし、そのダークネスが何者だったのかまでは、記録が残っていない、とのことである。 寺坂吉右衛門は歴史上、赤穂浪士の中に名を連ねてはいるものの、吉良を打ち取った後の高輪泉岳寺への報告の際には姿がなく、そのせいか切腹も免れているため、討ち入りに参加したのかどうかも怪しい謎の人物として伝わっているが、どうやら討ち入りの途中で、何らかの密命を受けて、三河国の吉良荘に行くことになったらしい。そこで何をしていたのかは分からないが、最終的には「神代」と名を変えて、ヤマトまで続く「陰陽師」の名家の一つを打ち立てることになったという。 いきなり大量の情報を聞かされて、さすがに頭が混乱していたヤマトであるが、とりあえず、少なくとも自分の周囲で、その過去にまつわる何かが起きようとしている、ということは、なんとなく実感しつつあった。 7.1.2. まりんの懸念 その日の朝、またしても政次との「二人っきりの登校」に成功したまりんは、先日の舞台についての感想を語る。 「この間の舞台、本当に凄かったね」 「あぁ、そうだな」 そう言いながら、政次は目をそらす。まりんは政次の晴舞台に感激していたようだが、もともと乗り気ではなかった舞台だけに、彼の中では、あまり良い思い出ではないらしい。 「ところでさ、ちょっと聞きたいんだけど……、舞台が終わった後、随分怖い顔をしてたけど、何があったの?」 重い口調で彼女がそう語ると、政次は黙り込む。 「あんな顔をしたあなた、今まで見たことなかったんだけど」 自覚はある。確かに、酒井の姿を見て、彼にまつわる過去の自分の因縁が頭にフラッシュバックした瞬間、自分自身が尋常ならざる殺気を抱えていたことは、彼自身もよく分かっていた。 「いや、すまねえ。今はまだ言えないな。もう少し、落ち着いてからにしてくれないか」 「そう……。でも、私もエクスブレインだから。私も少しは未来を見ることが出来るから。もしかしたら、私の力でどうにか出来ることかもしれないからだから、何かあったら、すぐ教えてね」 そう言って、まりんに真剣な眼差しを向けられると、政次はリアクションに困りながらも、落ち着いて答える。 「いや、これは俺自身が決着つけなきゃいけねえことなんだけど……、何か手助けが必要になったら、その時にまた改めて話す」 今の時点では、これが精一杯の返答だった。何しろ、自分自身がよく分かっていない過去にまつわる人物である。不確定な情報のままで、中途半端にまりんを巻き込む訳にもいかない、そんな心境であった。 7.1.3. 部長の事情 その頃、五十嵐邸の居候娘達は、それぞれに自分達の校舎へと登校していたのだが、そんな中、りんねと共に中等部の校舎へと向かうミラの前に、帝が現れる。 「やぁ、ミラ君、この間は本当にありがとう。実は、部員達の間でも君のマリアは本当の絶賛でね。もし、君が良かったら、正式に演劇部に入部してくれないか?」 実際、ミラの演技の評判が良かったことは事実である。しかし、部員達の評判がどうであろうと、彼女はミラを勧誘するつもりであった。それが彼女の個人的な欲望に基づいた心情であることは言うまでもない。 「一応、今のこの戦いが落ち着いてから……」 ミラとしても、今はそう答えるしかない。彼女もまた、自分自身のことすらもよく分からないまま、戦いに身を投じている状況である以上、今は、目の前の戦いのことを考えるので精一杯だった。 「……そうだな。今はまだ、僕達には使命があるからね」 そう言って、帝がひとまず納得すると、横からりんねが口を挟む。 「ところで先輩、いつ、姫子さんの家に来るんですか?」 確かに、「彼女」も歌姫であることが確定した以上、現在の彼等の戦略的には「五十嵐邸の住人」になってくれた方が望ましい。そのことは帝にも伝えてあったのだが、まだ彼女は意見を保留していた。 「え、あ、いや、それは、確かに考えてはいるんだが、しかし、さすがに今、僕がミラ君と一つ屋根の下で暮らすのは、ちょっと早いと思うんだ。いや、決して、僕が他の女性達に目移りしている様子をミラ君に見られたくないとか、そういう訳ではないんだよ」 何か心配事の次元がズレているような気がしなくもないが、いずれにせよ、まだしばらく、彼女は白泉寮での生活を続けるつもりらしい。 7.1.4. 恋愛スクープ? 一方、その白泉寮の双璧の片割れである英雄は、久しぶりに登校途中で姫子と遭遇していた。すると、この日は姫子の方から英雄に声をかける。 「あ、英雄さん。実はちょっとお願いが……」 彼女がそう言って近付いてきた瞬間、「パシャッ」という音が聞こえる。英雄がその方向を向くと、そこには「見慣れたカメラマン(♀)」の姿があった。 「えー、なになに? 鳳凰院さん、あなた、恋人いたの? ……ってか、この人って、五十嵐財閥のお嬢様よね? これって、スクープしていいの? マズいの? どーなの?」 興奮気味にそう語るニトロに対して、英雄は少し困った顔をしながら、こう答える。 「こちらは、姫子殿と言って、私の学校の友達だ。恋人ではないので、誤解してもらっては困る」 そう言われて、姫子は一瞬「あれ?」という表情を浮かべつつ、すぐに「いつもの笑顔」に戻って「はい」とだけ答える。 「あ、そうなんだ。あ、それはそうと、こないだの件だけど、なんか復帰したみたいね、あの二人」 浅美と高倉の話である。どうやら、演劇部のホームページにも、彼等の名前が戻り、次の公演の出演予定者の中にも名を連ねているらしい。 「どうも、新しいステージに挑戦してみたいとは思ったが、やはり、元の環境が一番居心地が良かったようだ」 「そっか。まぁ、確かにあの二人と部長の西園寺君が並ぶのはすごく絵になる、と私の友達も言ってたしね。じゃあ、また何かあったら、教えてね」 そう言ってニトロが去って行くと、姫子は特に「何が」とも言わず、 「ありがとうございます」 と一言だけ告げる。その上で、姫子はまた「次の任務」のために皆を招集するように、英雄に頼む。英雄はそれを了承しつつ、いつものように馬車に姫子を誘うことなく、一人で学校へと向かう。姫子はその「いつもと異なる様子」に微妙に違和感を感じつつも、笑顔で彼を見送った。 7.2.1. 西国の「ご当地ヒロイン」 その日の放課後、姫子は皆を集めた上で、新たな計画について語り始める。 「私はこれまで、武蔵坂学園を中心に歌姫の方々を探してきました。しかし、中には武蔵坂に来ることを拒否して、日本各地で独自にダークネスと戦っている灼滅者の人々がいます。その代表的な例が『ご当地ヒーロー」と呼ばれる方々です」 ご当地ヒーローは、その宿敵であるご当地怪人同様、比較的近年になって生み出された灼滅者とも言われているが、中には先祖代々一つの土地を守り続けている人々、つまり、サイキックアブソーバーの開発以前からダークネスと戦い続けてきた者達もいる。彼等の大半は自分達の故郷を守ることを優先し、武蔵坂学園からの招集を拒んでいるのだが、もしかしたらその中に、世界を救う「歌姫」がいるのではないか? というのが、彼女の仮説である。 「そこで、ルーツがご当地ヒーロー、いえ、この場合は女性ですから、『ご当地ヒロイン』と呼ぶべきでしょうか、いずれにせよ、その『ご当地パワー』で戦う方々の中で、西園寺さんのように、サウンドソルジャーをポテンシャルとする方が誰かいないか、と調べてみた結果、一人、有力な人が見つかりました。それが、この人です」 そう言って姫子が見せた資料には、ピンクのスーツを着たOL風の女性の写真が載っていた。 「この方は『知多みるく』さんと言って、愛知県知多半島のご当地ヒロインです。そして、彼女を中心とする16人の『知多娘』と呼ばれる方々が、芸能活動をしながら、知多半島の平和を守っているそうです」 続けて彼女が提示した資料には、16人の「知多娘」と呼ばれる面々の情報が列挙されていた。その概要は以下の通りである。 知多みるく 22歳 NPO職員 ご当地ヒーロー×サウンドソルジャー 美浜恋 20歳 大学生 ご当地ヒーロー×ダンピール 常滑セラ 22歳 空港職員 ご当地ヒーロー×ライドキャリバー 知多舞子 19歳 大学生 ご当地ヒーロー×魔法使い 半田酔子 24歳 OL ご当地ヒーロー×神薙使い 東浦未来 17歳(?) 家事手伝い ご当地ヒーロー×エクソシスト 阿久比ほたる 18歳 専門学校生 ご当地ヒーロー×ナノナノ 東海しゅう 21歳 製鉄所職員 ご当地ヒーロー×ファイアブラッド 南知多マリナ 21歳 海鮮食堂店員 ご当地ヒーロー×殺人鬼 大府あかね 16歳 高校生 ご当地ヒーロー×ストリートファイター 武豊乙姫 18歳 予備校生 ご当地ヒーロー×サウンドソルジャー 内海お吉 ?歳 芸者 ご当地ヒーロー×サウンドソルジャー 美浜愛 20歳 大学生 ご当地ヒーロー×ダンピール 広小路クララ 15歳 高校生 ご当地ヒーロー×シャドウハンター 大田メディ 20歳 地域レポーター ご当地ヒーロー×デモノイドヒューマン 太田川千代子 18歳 専門学校生 ご当地ヒーロー×魔法使い この中で、サウンドソルジャーをポテンシャルとするのは、知多みるく・武豊乙姫・内海お吉の3人だが、過去の経験上、歌姫は必ずしもサウンドソルジャーとは限らない。そのことも視野に入れた上で、ひとまず彼女達について調査してみる価値はあるのではないか、ということで、英雄、政次、ヤマト、ミラ、そして覇狼院花之の5人に、直接現地に赴いて彼女達が歌姫かどうかを確かめてほしいというのが、今回の依頼である。 本来ならば、姫子自身が赴きたいところだったのだが、先日、まりんの未来予知により、彼女が現地に赴くのは危険と判断されたことで、断念したらしい。そのため、今回は歌姫の識別役は、ミラと花之の二人に任せることになる。そして、花之は同時に、彼等の不在時に五十嵐邸が急襲された時のための「テレポート要員」でもある(ちなみに、彼女は「行ったことがない場所」に行くことは出来ないので、あくまでも「帰還用」にしか使えない)。 なお、翌日(11月23日)が都合良く土曜日ということで、姫子は既に(自分の分も含めた)6人分の新幹線のチケット(グリーン車)を用意していたらしいのだが、上記の事情から、余ってしまった自分のチケットは、乗車時刻を変更して(明日の午後に退院予定の)スサノオに譲ることにした。他の面々を連れて行っても良いのだが、五十嵐邸の防衛戦力を維持すべきという戦略と、病院暮らしが続いて鬱憤が溜まっているであろうスサノオに気分転換の機会を与えた方が良いだろう、という配慮故の人選である。 その上で、16人の中で誰が「歌姫」である可能性が高いか、という話になった時に、珍しくやる気を出している花之が口を挟む。 「あたしはね、この娘が怪しいと思うの」 そう言って彼女が指したのは、太田川千代子である。しかし、彼女の目線の先にあったのは、千代子に関する資料の隅に載っていた「2013年11月23日(土)より発売! 知多半島萌えスイーツコレクション第一弾 太田川千代子ケーキ 東海市のケーキ屋”La PALETTE”にて発売」という広告であったため(下図)、彼女の真意を一瞬で理解したその場の面々は、それ以上、彼女の話を聞こうとはしなかった。 こうして、男女5人(+1人追加予定)の愛知県への出張旅行が決定した。しかし、その旅行先で、彼等の想定とは大きく異なる事態が待ち構えていることなど、この時点での彼等は知る由もなかった。 7.2.2. 小さな水先案内人 そして翌日、彼等は新幹線のグリーン車に乗り、名古屋へと向かう。実は姫子がこの日を選んだのには、「善は急げ」ということの他に、もう一つ理由があった。というのも、ちょうどこの日、知多半島に存在するアミューズメント施設「南知多ビーチランド」の移転記念イベントが開催されることになり、そこに知多娘達が参加するという情報が届いていたのである。しかも、その移転事業に関わった土建業者は五十嵐グループの関連企業ということで、五十嵐グループの名を出せば、イベント前に楽屋などに入って、直接、知多娘と会話を交わすことも可能らしい。 とはいえ、彼等の中には誰一人として愛知県の地理に詳しい者などいないし、姫子本人がいなければ、係員を説得出来るかどうかも分からない。そこで姫子は彼等に、JR名古屋駅の「銀時計」前で、彼女の従兄弟である中田透(とおる)という小学4年生の男の子と合流するように伝える。彼女曰く、彼は歳に似合わずしっかり者なので、彼女の名代&水先案内人として、彼を信頼してついていけば良い、との話である。 「あと、一応、西園寺さんのこともあったのでお伝えしておきますが、透君は間違いなく男の子です。小さい頃、一緒にお風呂に入ったこともありますから」 サラッと言ってのけた姫子だが、それを聞いた英雄も、特にこれといったリアクションはなかった。無論、その瞳の奥で彼が何を考えていたのかは誰にも分からない。 そんなことを思い出しながら、名古屋駅に着いた彼等は、新幹線改札口の目の前にある「銀の時計」の前に到着すると、そこには、目元にかすかに姫子の面影を残した、帽子を被った小学生の男の子が待っていた(下図)。 「あ、いたいた。お前等だろ? 姫子ねーちゃんから聞いてるよ。俺は、中田透。とりあえず、お前等を南知多ビーチランドまで案内すればいいんだよな?」 「あぁ、よろしく頼む」 政次がそう答えると、透は到着した面々を見渡した上で、英雄の前にツカツカと進み出る。 「お前が、鳳凰院か?」 「あぁ、そうだ。中田透と言ったな、今日はよろしく頼む」 「なんか、姫子ねーちゃんに色々とつきまとってるらしいな、お前?」 ひとまず、このツッコミについては英雄はスルーしつつ、各人が自己紹介を終えると、透はボヤくように呟く。 「お前等全員、灼滅者なのか。いいよなぁ。俺もなぁ、サイキック能力があれば、武蔵坂に行けるのに。そしたら、姫子ねーちゃんの近くにいられるのに……」 この一連の会話で、なんとなく彼の姫子(と英雄)に対する感情を理解した彼等であったが、とりあえず、政次がフォローを入れようとする。 「まぁ、この力はいつ目覚めるか分からないし、目覚めてもいいことばかりじゃないぞ」 「それは、目覚めた人間だから、言えることだよ」 確かに、「持てる者」には持てる者の苦悩はあるだろう。しかし、それは「持たざる者」に理解出来ることではないのも道理である。 「……まったくだな、悪かった」 「一応、俺にも、エクソシストの素質はあるって、姫子ねーちゃんは言ってたんだけどなぁ……」 そうボヤき続ける彼に対して、今度は英雄が諭すように語る。 「もしも、お前に灼滅者としての力があるなら、いつか目覚める時もある。こればかりは、時を待つしかない」 「……あぁ、そうだね」 透はそう返したが、英雄とは目を合わせようとしない。どうやら彼にとって、英雄は完全に「敵」として認識されているようだ。 ともあれ、彼としても「姫子ねーちゃん」に言われた「彼等の案内」という使命を反古にする気は毛頭ないので、そのまま彼等を名鉄ホームまで案内する。 「名古屋駅は苦手なんだよなぁ。乗り場が分かりにくいし。俺も三河の人間だから、あんまり馴れてないんだよ」 そう言いながらも、彼は的確に客人達を名鉄線のホームまで案内し、そのまま常滑線に乗って、愛知県知多郡美浜町の「河和」駅へと向かう。南知多ビーチランドは、本来は美浜町の伊勢湾側の奥田海岸沿いに位置する水族館&遊園地だったのだが、それが今回の移転事業で、三河湾側の河和駅の近くへと移設されることになったのである。これは、特急停車駅でもある河和駅方面の方が陸路からの集客が望める上に、海路からも三河方面からの集客が望めるようになる、という思惑を視野に入れた上での移設プロジェクトであり、そのための莫大な費用の大半を、五十嵐グループが融資しているらしい。 そんな解説を透から聞きながら、やがて彼等を乗せた特急列車は、河和駅へと辿り着く。そして、そこから新規開通したばかりの直通バスに乗って、彼等は「新・南知多ビーチランド」へと到着したのであった。 7.2.3. 知多娘の真実 移転後初の大イベントということで、既に会場内には多くの親子連れ客と、知多娘目当ての若い男性客で賑わっていた。そんな中、透は彼等を連れて施設の裏口へと周り、係員に「五十嵐家の一員」であることを示す特殊な身分証明書を提示する。すると、突然、警備員は表情を一変させて恐縮した面持ちで、彼等を施設内へと迎え入れた。 周囲の会場職員達が彼等を奇異の目で見る中、女性職員達の話し声が聞こえてくる。 「あんな子、五十嵐家にいたっけ?」 「私、聞いたことあるんだけど、実はあの子ってね…………」 「え!? そうなの!?」 そんな好奇の視線に晒されていることを自覚しながら、透はうんざりしたような表情のまま、小声でボヤき始める。 「本当は、こんな形で五十嵐家の力なんか使いたくないんだけどな。姫子ねーちゃんの頼みだから、しょーがねーけど」 どうやら、彼は姫子以外の五十嵐家の人々とは、あまり仲がよくないらしい。その事情はよく分からないながらも、再び英雄が彼に語りかける。 「お前は嫌がるかもしれないが、お前がそうやって手伝ってくれると、姫子の身の安全のためにもなるんだ。だから、悩むのは分かるが、お前の行動は姫子のためにはなってるんだぞ」 「そ、そうか。じゃあ、まぁ、頑張らないとな」 相変わらず、目は合わせないものの、英雄の言うことには気を良くしたようで、彼はそのまま周囲の職員達に話を通しつつ、控え室へと向かう。彼等がしばらくそこで待っていると、やがて、本日のイベントの事実上の主役の少女が、トレードマークのピンクのスーツを着て、彼等の前に現れた。 「はじめまして、知多みるくと申します。わざわざ東京から来て頂いたそうで、ありがとうございます。よろしかったら、こちらをどうぞ」 そう言って頭を下げる彼女に続いて入ってきたのは、東海市でのケーキ屋のイベントから合流したばかりの、太田川千代子である。彼女の手に引かれたカートの上には、彼女の特製ケーキが並んでいた。まっさきにがっついた花之に続いて、他の面々もそれぞれに気に入ったケーキを口にしつつ、話を始める。 「本日は、どういったご用件でしょうか?」 そう問われた彼等は、「自分達が『ある人々』を探している」ということを前提とした上で、それを確かめるために一曲歌ってほしい、という要望を伝える。 「そういうことでしたら、これからイベントの中で歌う機会もあるので、そこで聞いて頂いても良いのですが…………、実は、そうはいかない事情もありまして」 「というと?」 「一応、話には聞いていたんですよ。でも、あなた方かどうか確認出来なかったので」 彼女がそう言うと、突然、花之が苦しみ始める。 「ご、ごめん、どこかにトイレとか、ないかな……」 彼女がそう言って腹を抱えながら青い顔をしているのを見た灼滅者達も、やがて次々と時間差で同様に体調を崩し始める。どうやら彼等が食べたケーキは、普通のケーキではなかったらしい。そんな彼等を見ながら、みるくは笑顔で話し続ける 「いやー、クラウス様から、伺ってはいたんですよ。東京から、歌姫を探しに来る人たちがいる、と。申し訳ございませんが、皆さんには、ここで消えて頂きます」 そう言って、彼女が左腕を縦に構えると、袖の下から腕時計のような何かが現れる。そして彼女は右手をそこに重ねると、こう叫んだ。 「変・身!」 次の瞬間、彼女の身体は見る見るうちに「細い手足が生えた一本の巨大な牛乳瓶」へと変わっていく。それはまるで、日曜朝の子供番組に出てくる1話限りの悪役のような姿であった(下図)。 「牛乳怪人、腐乱ギュニュール、見・参!」 これまで武蔵坂の外で戦う機会が少なかった彼等にとっては、あまり見慣れない異形の光景であるが、これこそが、「ご当地ヒーロー」が闇堕ちした姿、すなわち「ご当地怪人」なのである。 更に、扉の奥に控えていた、太田川も含めた15人の知多娘達が彼女の周囲に現れると同時に、それぞれが同様の「ご当地怪人」へと変貌していく。ある者は飛行機に、ある者は日本酒に、ある者は葡萄に、そしてまたある者はホタルに……、彼女達が愛する地元の特産物の形をした怪人の姿へと変わっていく。どうやら、既に知多娘達は、全員が闇堕ちしてご当地怪人となってしまっているらしい。16対4(+都市伝説1&一般人1)という圧倒的な戦力差に囲まれた彼等は、まさに絶体絶命の窮地にあった。 7.2.4. 一輪バイクの逃走劇 そんな中、彼等に思わぬ救世主が駆けつける。16人の知多娘(改め、知多怪人)達が彼等に襲いかかろうとしたまさにその時、彼等が囲まれていた控え室の壁をぶち破って、一台の一輪バイクが乱入してきた。そこに乗っていたのは、歳の頃は小学生くらいのサイドポニーの少女である(下図)。 「三河湾の平和を守る者・田原みなと、参上! 武蔵坂の人達、ここは一旦、退いた方がいいよ」 少女はそう言うと、胸元からスレイヤーカードを取り出すと、そこから彼女が乗っている一輪バイクと同型のバイクを5台、取り出す。 「それに乗りな! その子達の動きはこの子とシンクロしてるから、それに乗ってれば、運転しなくても私と一緒に走れるから」 何がなんだか分からないまま、ひとまず彼女が味方であるらしいと判断した彼等は、それぞれにバイクに跨がる。と言っても、数としては一台足りないので、一番小柄なヤマトと透が同乗し(本来なら、花之は空を飛ぶことが出来るのだが、他の面々よりも沢山のケーキを口にしていたせいか、今はそれだけの力が出せない状態らしい)、そのまま彼女のバイク操縦に引っ張られる形で、その場から逃走していく。 しかし、やはりバイクに乗った経験のない上に、先刻の謎のケーキによって体調を崩している彼等にとっては、「ただ乗っているだけ」の状態でも、身体のバランスを保つのは難しい。どうにか施設の外までは無事に脱出出来た彼等であったが、そこから更に路上を走っていく過程において、英雄がバイクから転げ落ちて傷を負ってしまう。 「馬車とは、かなり勝手が違うようだな……」 さすがに、日頃から馬車生活で、自転車に乗る機会すら少ない彼には、高速で走るバイクに乗り続けるのは難しかったようだ。なんとか改めて乗り直して逃走を続けていくと、やがて彼等の目の前に、三河湾の海が広がってくる。そして、河和の港に、一隻の小型フェリーが停泊しているのが見えた。 「いい? あそこに飛び乗るよ!」 彼等を先導するバイクの少女がそう言うと、彼等のバイクは更に加速して、海に落ちる寸前のタイミングで跳ね上がる。しかし、さすがにこの動きに合わせてバイクにしがみつきつつバランスを保つのは、彼等にとっては相当厳しい。またしても英雄、そして、ミラ、ヤマトまでもが体勢を崩してしまう。ここで、英雄はどうにかフォースの力を使ってバランスを取り直したことで、なんとかフェリーまで到達出来たが、ミラとヤマト(と同乗している透)はそのままバイクごと海に落下しそうになる。 「危ない!」 既に船上に到達していたバイクの少女は、そう言ってヤマト&透のバイクに飛び移り、彼等のバイクを蹴り落とすような形で反動をつけて、どうにか二人を抱えて船に飛び乗る。一方、ミラの元には、狐のような姿の「謎の霊的生命体」が現れ、一瞬にしてミラの首根っこを前足で引っ掴むと、彼女と同様にバイクを蹴り上げて船に飛び乗った。当然、彼等の乗っていた二台の一輪バイクは、そのまま海に沈んでいく。 「大丈夫ですか?」 どうにかフェリーに乗ることが出来たミラにそう言って駆け寄ったのは、巫女服姿で狐耳と狐尾を生やした、高校生くらいの女性である。その彼女の近くには、ミラを助けた「狐のような生き物」が寄り添っていた(下図)。 7.2.5. 三河湾の追撃戦 そして、彼等が飛び乗ると同時に、フェリーは出航し、知多半島を後にする。ようやく一息つける状態になったことで、彼等をここまで連れてきたバイクの少女は、状況について解説を始める。 まず、彼女、田原みなとは、知多半島の対岸にある渥美半島の大半を占める「田原市」のご当地ヒロインであり、彼女が乗っていた一輪バイクは、サーヴァントとしてのライドキャリバーらしい。そして、このフェリーは今、彼女の本拠地・田原市の伊良湖岬に向かっているという。 「危ないところだったね。彼女達の出すケーキを口にしていたら、とんでもないことになっていたよ」 実際には既に口にしてしまっていたのだが、そこまで状況を知らない彼女は、そのまま解説を続ける。 「あの知多みるく先輩は、知多半島のご当地ヒロインのリーダーだったんだけど、突然、東京からやってきた謎の淫魔によって、闇に堕とされてしまって、あんな姿になってしまったんだ……。今のあの人の目的は、知多半島以外で作られた牛乳に黄色ブドウ球菌を発生させること。そうすることによって、知多半島以外の牛乳を絶滅させようとしているんだ」 あの時に出されたケーキの原料となった牛乳が知多半島以外の代物かどうかは分からない。ただ、状況的に、今の彼等が腹痛に苦しんでいる理由が、その黄色ブドウ球菌である可能性は高そうである。そして、「東京から来た淫魔」は、みるく自身の発言から察するに、クラウスであることは容易に想像がついた。 そんなみなとに続いて、今度は同船していた「巫女服の女子高生」が語り始める。彼女の名は「豊川いなり」。彼女もまた東三河の豊川市のご当地ヒロインであり、ミラを助けた「狐のような生き物」は、サーヴァントとしての霊犬であるとのこと。どうやら、彼女が独自の情報網から、武蔵坂から灼滅者達が知多に来ているらしいという話を聞き、彼等の危険を察したみなとが救出に来た、ということらしい。 「てか、あんた、助けに行くなら、どうして車で行かなかったの? 馴れない人がバイクに乗ったら、転ぶに決まってるでしょ」 「いや、だって、あたし、やっぱりこっちの方が運転しやすいし」 そのやり取りを見て思い出したのか、英雄がみなとに頭を下げる。 「すまない。バイクを二台も海に落としてしまったが、あれは大丈夫なのか?」 「あぁ、いいよ別に。またパパに造ってもらうし」 どうやら、みなとは「愛知県の自動車会社」の社長の娘だそうで、あのバイクは「パパの会社で造っている一輪バイクの、あたし専用モデル」らしい。 そして、ここにいる「みなと」「いなり」の他にもう一人、「豊橋うずら(下図)」という豊橋市のご当地ヒロインと共に、彼女達は「渥美三姉妹」というユニットを組んで、「ご当地アイドル」としても活動しているらしい。 もともと、知多娘の妹分的な存在としてデビューしたが、彼女達が闇堕ちした現状では、闇の勢力がこれ以上広がらないよう、三河湾を挟んで対峙している状態である。 「まぁ、厳密に言うと、私、渥美半島じゃないんですけどね。でも、知多娘の中にも、東海さんとか、大府さんとかいるし」 そんな、愛知県の地理に詳しくない彼等にとってはイマイチ実感のない解説をいなりが語っていたところで、フェリーの船員が、みなとに向かって叫ぶ。 「お嬢様、大変です。南知多のフンボルト部隊が!」 そう言って彼が指差した方向を見ると、そこには、南知多ビーチランドの花形・フンボルトペンギン達が一心不乱にこちらに向かって泳いでくる姿があった。その目から、明らかに彼等が「闇の眷属」であることは分かる。 「まずいわね。あいつら、水中から船に穴を空けるつもりだわ。この位置から、あいつらを狙える人、いる?」 どうやら、みなとは近距離攻撃専門らしい。しかし、みなとのその問いに対して、灼滅者4人は揃って頷き、それぞれに武器を構えて迎撃する。英雄はハンマーを船に叩き付けることで起きる振動を利用して、ヤマトとミラは指輪から放たれるペトロカースの力で、政次は日本刀から放たれる月光のごとき衝撃波で、それぞれに腹痛に苦しみながらも、どうにか船を一切傷付けることなく撃退に成功した。 「へぇ、やるじゃない」 「みなと、次が来るわ!」 このフンボルト部隊に続いて、今度はイルカ、セイウチ、エイ、ウミガメといった刺客が次々とフェリーを襲ってきたのだが、それらは至近距離まで引きつけた上でみなとが迎撃する。更に日間賀島に差し掛かったところで、巨大タコの襲撃を受けることになるのだが、それは、いなりが霊犬(霊狐)との連携攻撃で瞬殺した。どうやら彼女達も、ご当地ヒロインとしては相当な手練らしい。 7.2.6. 遅れてきた少年 一方、その頃、ようやく闇堕ち検診に伴う入院から解放されたスサノオは、姫子から事情を聞き、名古屋に向かう新幹線のチケットと、「南知多ビーチランド」までの乗り換え方法が書かれたメモを受け取り、グリーン車に乗車していた。すると、そこに和服を着た見慣れない中年の男性(下図)が現れ、彼の隣に座る。 「おぅ、坊主。小学生がグリーン車か。いい身分だな」 「え? いや、別に、俺、いつもコレだけど」 そう言われたのがムカついたのか、なんとなく見栄を張りたくなったのか、スサノオがそう答えると、その男は更に話を続ける。 「そうか。どこまで行くんだ?」 「名古屋で降りようと思ってるんだ」 「ほう、奇遇だな。俺も名古屋だ。で、お前は何しに行くんだ?」 「ん? いや、普通に友達と遊びに行くんだよ。ちょっと怪我で遅れてしまったけど」 「そうか、怪我か。お前も色々と戦い続きだっただろうし、大変だっただろうな」 いきなり、見ず知らずの乗客から「戦い」という言葉を聞いたスサノオが反応に困っていると、その男は更に続ける。 「どうだった、あの二人は?」 「……あの二人?」 「柳生と服部だ」 さすがに、彼の中での「服部」という名前の記憶は曖昧だったが、「柳生」の名は忘れる筈がない。 「服部って…………、あぁ、あのワイヤーの人だよね……、って、な、なんでそれ知ってるの!?」 「当然だ。一応、ウチの組織は、組織としてはいい加減なものだが、アイツらは俺の関係者だからな。断っておくが、俺が襲わせた訳じゃないぞ。あいつらが勝手にやったことだ。俺はまだ、今のお前には興味はない」 「…………まさか、あなたが、本多五十六?」 「ほう、名前は知っていたか」 現状では、スサノオは彼のことは「名前」しか知らない。ただ、六六六人衆の序列56と言えば、上位陣がサイキックアブソーバーの力で機能停止している現在においては、最強クラスと言っても過言ではない存在であるということは、彼も知っていた。その存在を目の当たりにしたスサノオが動揺を隠せずにいると、本多は更に話を続ける。 「お前はその程度で終わる男ではない。お前はもっと強くなる。強くなってもらわねば困る」 「…………強くなった僕に、何をしようというんだい?」 「俺に殺されれば、それでいい。俺より強くなった上で、俺に殺される。それがお前の使命だ」 言っている内容が支離滅裂であるが、六六六人衆とは、そういう集団である。 「つまり、今の僕は殺す価値がない、と?」 「そういうことだ」 「……確かに、今、僕が襲いかかっても、すぐ負けるだろうね」 「それくらいは分かるようだな。しかし、お前は自分自身のことを分かっているのか?」 「自分自身?」 「お前が、どれほど恵まれた血統に生まれ、どれほどの潜在能力を秘めているか」 「血統? 僕は、貧乏な家庭に育って……」 スサノオが混乱していると、彼の携帯の着信音が鳴り響く。それは姫子からの連絡であった。 「構わん。ここで話せ」 そう言われたスサノオは、恐る恐る電話に出る。すると、どうやら透経由で姫子に「英雄達の現状」が伝わったようで、彼女はスサノオに、南知多ではなく、英雄達を乗せたフェリーが向かっている渥美半島の方面に向かうように伝える。 そのためには、出来れば「名古屋」ではなく「豊橋」で降りてほしい、と彼女は言っているが、現在、スサノオが乗っているのは「のぞみ」であり、名古屋まで止まる駅はない(そして、世間知らずの姫子がそんなことまで考慮している筈もない)。そしてまさに今、彼等を乗せた車両が「豊橋」駅を通過して行くのが確認出来た。こうなると、名古屋まで出てから豊橋へと向かうしかないが、当然、そのためにどのようなルートを選べば良いかなど、小学四年生で東京育ちの彼には分かる筈もない。 「どうした? 何があった?」 電話を切った直後、本多にそう問われたスサノオは、ここで隠し事をしても仕方がないと観念し、今から自分が豊橋に行くことに変更したという旨を伝える。 「そうか、それならば、まだ間に合うな」 本多はそう言うと、突然、どこから取り出したのか、日本刀を構える。その唐突な行動に対し、スサノオも咄嗟に武器を構えようとするが、次の瞬間、彼等の座っていたブロックの窓を中心とする壁が、本多の刀によって切り落とされた。時速270kmで走る新幹線の外壁に、突然、大穴が開いたのである。 「用事があるんだろう? なら、今すぐ行けばいい」 あまりに非常識すぎるその行動に困惑しつつも、その意図を察したスサノオは、覚悟を決めて飛び降りる体勢に入る。 「じゃ、じゃあ、もう少し強くなったら、また……」 「あぁ、俺は待っているぞ。お前は、『オロチ』よりも強くなる」 そう言って、本多はスサノオを新幹線から蹴り落とす。凄まじい勢いで放り出された彼は、それでもなんとか受け身を取ることに成功して、立ち上がる。当然、通常の人間なら、かなりの高確率で即死している筈である。 「いってぇ……、あのおっさん、乱暴だなぁ……」 そう呟きながら、とりあえず彼は、歩いて豊橋駅まで戻りつつ、携帯電話を鳴らして、英雄達に確認を取ろうとするのであった。 7.3.1. 「8人目」と「9人目」 ちょうどその頃、ようやく英雄達を乗せたフェリーも伊良湖岬に到着する。これでようやく、海洋生物の追っ手から逃れることが出来て安堵したところで、みなとが(今更ながらに)素朴な疑問をぶつける。 「ところで、あんた達、どうして知多に来たの?」 そう言われて、また一々説明するのが面倒臭いと思った政次は、単刀直入に「彼女達の歌が聞きたい」と提案する。 「んー、でも、うずら姉様がいないからなぁ。まぁ、いいわよ。ソロバージョンもあるから」 そう言って、二人はそれぞれに自分の得意曲を歌う。どちらも典型的なアイドル歌謡曲だが、みなとが歌ったのはシンセサイザーを多用したアップテンポな元気系ソング、いなりが歌ったのは、和音階主体でやや演歌寄りのバラード曲である。全くもって対照的な二曲であったが、ミラはこの二人のどちらの歌声からも、確かに「歌姫」の波動を感じ取っていた。 こうなると、残る「豊橋うずら」も同じ力を持っている可能性が高そうだが、彼女の現状についての話になると、やや彼女達の口調が重くなる。というのも、実は数日前から、豊橋近辺に茨城県のご当地怪人「トリンフル・ZENA」が出没し、豊橋中に鳥インフルエンザを撒き散らすという事態が発生しており、彼女は今、その病気に苦しんでいる(豊橋名産の)うずら達を助けるために、豊橋中を飛び回って、相当な過労状態になっているらしい(ちなみに、彼女のポテンシャルは、サーヴァントとしての「うずら型ナノナノ」であるという)。 ちなみに、この怪人、 知多みるく(腐乱ギュニュール)と同じ「ライバル撲滅系」のご当地怪人であり、茨城県産以外の鶏製品を駆逐することを目的としているらしいのだが、どうやら愛知県に来るように手引きしたのも、彼女の仕業のようである。 そして、当初は地鶏市場でのライバルだった名古屋を襲うのが目的だったらしいのだが、名古屋には、知多娘や渥美三姉妹達の大先輩にあたる「最強のご当地ヒロイン」がいるため、手が出せず、まずは手始めに豊橋のうずらから潰していくことにしたらしい。 そして、みなとが持っていた、その怪人の「手配書」の写真を見ると、そこには「筋肉質な男性の肉体の首の上から鶏の頭が生えている怪人」の姿が映っていた(下図)。 とりあえず、この怪人をどうにかしないことには、うずらも、彼女を心配するみなと&いなりも、この地を離れる訳にはいかないようである。 そんな中、スサノオから英雄の携帯電話に連絡が届く。ひとまず、彼が豊橋の近くまで来ていることは分かったので、一旦、豊橋駅まで出て、彼と、豊橋市内で鶉の解毒作業に従事しているうずらと合流しよう、という方針を固める。ただ、みなと&いなりは、知多軍が再び渥美半島に上陸する可能性を考慮して、しばらくは伊良湖岬に留まりたい、とのことだったので、彼女達からうずらに電話で連絡を入れてもらい、うずらにも豊橋駅近辺まで来てもらうことにしたのであった。 7.3.2. 合流と解毒 そして、彼等6人(英雄・政次・ヤマト・ミラ・花之・透)は一輪バイクで豊鉄(豊橋鉄道)渥美線の終点である「三河田原」駅まで出た上で、そこから同線で(反対側の終点である)「豊橋」へと向かうことになる。 しかし、その途上、彼等が乗っていた車両の車窓から、政次とヤマトは、信じられない光景を目にする。彼等と反対に三河田原へと向かう車両の中に、「異形の姿の三人」が乗車していたのである。一人は、みなとが見せた手配書に載っていた鶏怪人「トリンフル・ZENA」。そしてその両脇にいたのは、「バラの頭をした貴公子風の怪人」と「メロンの頭をした石ノ森ヒーロー的な怪人」である。バベルの鎖の力によって、一般人は誰も気にとめていなかったが、そんな三人が堂々とつり革につかまったまま電車に揺られて三河田原方面へと向かっていく様子が、確かに見えたのである(下図)。 さすがにこの光景を見たら黙っている訳にはいかないのだが、既に電車はすれ違い発進してしまったため、今の時点で彼等はどうすることも出来ない。ひとまず、電話でみなと&いなりに、怪しげな人物達がそちらに向かった、という旨を伝えた上で、彼等はそのまま豊橋駅へと向かう。 そして、豊橋駅でスサノオと合流を果たした彼等は、スサノオにここまでの経緯を説明した上で、まず、彼のポテンシャルに由来する「清めの風」の能力で、自分達の身体を蝕む黄色ブドウ球菌を除去してもらうことにする。そう、実は彼等の中で解毒のサイキックを使えるのは、たまたま今回の現場にいなかったスサノオだけだったのである。こうして、豊橋駅の片隅で彼等がひっそりと治療を続けていると、そこへ、満身創痍の状態の中学生くらいの少女が現れる。 「あの……、武蔵坂の方々、です、か……?」 この彼女こそ、渥美三姉妹の残り一人にして、みなとに見せてもらったCDのジャケットではセンターに写っていた少女・豊橋うずらである。どうやら彼女は、豊橋中のうずらを救う為にキュア能力を使いすぎて、既にフラフラの状態らしい。大元のトリンフル・ZENAを倒さない限り、彼女の窮状はどうにもならないと判断した彼等は、そのまま八人で再び豊鉄を折り返して、三河田原、そして伊良湖岬へと向かうことになる。 7.3.3. 伊良湖岬の決戦 そして、彼等がようやく伊良湖岬に辿り着くと、そこには先程の電車の中から見た三怪人が暴れ回り、それを止めようと必死の形相で戦うみなと&うずらが窮地に追い込まれていた。 「コケーッケッケッケ! 俺はトリンフル・ZENA! 名古屋コーチンも豊橋のうずらも、全て俺の鳥インフルエンザであの世行きだ!」 「我は聖騎士バラディン。日本中の全てのバラは、我が茨城フラワーパークが押収させてもらう。豊川のバラも例外ではない」 「マスクド・メロン、参上! 田原産の露地メロンも、全て茨城県産のメロンに偽装してやるわ。ありがたく思え!」 なぜか、ご当地怪人は定期的に自己紹介しなければ気が済まない性分らしいが、どうやらバラ怪人(聖騎士バラディン)とメロン怪人(マスクド・メロン)は、鶏怪人(トリンフル・ZENA)と同じ茨城出身で、(それぞれにスタイルは異なるものの)渥美地方制圧のために鶏怪人に呼び寄せられたらしい。 そして、彼等三人は瀕死のみなとに止めを刺すべく、合体攻撃「茨城トリニティ」を発動するが、いなりが身を挺してみなとを庇い、代わりに彼女が倒れてしまう。 「ね、姉様! 貴様等、よくも!」 そう言って憎悪の炎に燃えたみなとの身体から、ダークフォースが生まれつつあるのが目に入る。しかし、彼女がその闇の波動に目覚める直前、急いで駆けつけた武蔵坂組の中から、ヤマトの声が響き渡る。 「お姉ちゃん、やめて!」 その声が、逆上して我を忘れていた彼女の心の奥底にあった理性を呼び起こし、間一髪のところで、彼女は人としての心を取り戻す。そして、彼女達に代わって英雄達が三怪人と対峙することになった。 まず、鶏怪人が政次に猛攻をかける。彼の繰り出す鳥インフルエンザ・ウィルスが政次の身体を蝕み、更にそこに立て続けにメロンが体当たりの打撃攻撃をかけたことで、政次の身体は限界を越えてしまい、魂が肉体を凌駕した状態で、かろうじて立っているのがやっと、という状態にまで追い込まれる。 しかし、それと時を同じくして、ヤマトが持てるフォースを一気に注ぎ込んでメロン怪人に大打撃を与えると、既に満身創痍の政次からの決死の斬撃がメロンの表面を切り裂き、更にそこに英雄による大震撃が加わったことで、メロン怪人は自らの身体を爆発させて消滅する。その衝撃波は英雄にも強烈な一撃となったが、自らが生み出した炎の壁により、かろうじて致命傷は免れた。 一方、ミラはバラ怪人に絶妙のタイミングでペトロカースによる魔法力を打ち込むものの、どうやら彼は魔法力には耐性があるらしく、今ひとつ致命傷を与えられない。しかし、そのことから逆に斬撃には弱いと予想したスサノオの猛攻が加わり、バラ怪人もまた窮地に追い込まれる。そして、そこに止めを刺したのは、意外な人物だった。彼等の後方から、放たれた聖なる光が、一瞬にしてバラの花弁を散らしていく。それは、サイキックの力に目覚めた透の一撃であった。 「こ、これがサイキックエナジー……」 自らの力に透が困惑しているのを横目に、仲間が次々と倒されていく状況に危機感を感じた鶏怪人は、意を決して自らの身体を巨大化させる。しかし、そんな彼が英雄達に襲いかかろうとしたその瞬間、突如その戦場に現れた「見知らぬ和服の女性(下図)」が、一瞬にしてその巨大鶏を斬り倒す。 「我が名古屋の宿敵が、迷惑をかけたな」 彼女がそう言うと、フラフラの状態で後方から支援しようとしていたうずらが、こう叫ぶ。 「お、お市様!」 そう、彼女こそが、知多娘や渥美三姉妹の大先輩にあたる「最強のご当地ヒロイン・名古屋市(なごや・いち)」である。第六天魔王・信長の直系の子孫であり、愛知県の守護神とも呼ぶべき存在である彼女は、なぜか一瞬、ミラにチラッと視線を向けた上で、その場を去っていく。 7.3.4. 「10人目」 こうして、渥美半島を騒がせた茨城県からの刺客を退け、ようやく平穏を取り戻した彼等は、うずらにも歌を聴かせてもらうことにする。彼女の歌う曲は、80年代の筒美京平や馬飼野康二を彷彿とさせる、やや哀愁を帯びたメロディを組み込んだ正統派のアイドルソングであり、それは90年代以降に生まれた彼等の心にも響き渡る、まさに正道・王道の楽曲であり、その旋律を奏でる彼女の歌声からは、確かにみなと・いなりと同じ波動が感じられた。 それを確認した上で、政次はようやく、彼女達に「歌姫」の話を伝える。この世界を救うために、自分達の歌声が必要だということを聞いた彼女達は、助けてくれた彼等に協力したいという意志は示したものの、現状では知多勢がいつ攻めてくるか分からない状態なので、渥美の地を離れる訳にもいかない、と苦悩の表情を浮かべる。 ちなみに、知多勢が名古屋に攻め入る可能性については、お市とその配下である「名古屋十六将」がいる限り、ありえない、というのが彼女達の見解である。特に、エース格の「昭和パスタ(通称:山さん)」に関しては、彼女達が三人がかりでも勝てないほどの実力である、とのこと。 ただ、歌姫探しという点について言えば、名古屋十六将は全員男性であり、それを束ねるお市に関しては「あまり歌はお得意ではない」らしい。 「あの方の旦那さんは、世界的に有名な指揮者の方なんですけどね。奏(かなで)新九郎さんっていうんですけど」 うずらがそう説明した瞬間、「奏」という名に、武蔵坂組が凍り付く。そして、更にうずらは解説を続ける。 「あと、確か、娘さんがいるっていう噂も聞いたことはあるんですけど、誰も見たことはないんですよ」 失われていた「彼女」の心のパーツが今、ようやく見つかろうとしていた。 第7話の裏話 やってきました愛知県。遂に私が待ち望んでいた「ご当地ヒーロー話」の幕開けです。「腐乱ギュニュール」とか「トリンフルZENA」とか、しょーもないダジャレのオンパレード的な隠し芸大会。これこそが、私がサイキックハーツを通じて一番やりたかったコトなのですが、よくよく考えてみたら、それは番長学園でやればいいだけの話でもある、ということに気付いたのは、この回を終えた直後でした。 で、いきなり(現実世界における)知多半島のご当地萌えキャラである「知多娘」が登場したことには、プレイヤー陣もかなり面食らってたようですが、たまには、こんな話もアリかな、と。厳密に言うと、ルールブックには「ご当地ヒーローの必殺技には登録商標は使えない」と書いてあるんですが、キャラ名そのものに使ってはダメとは、どこにも書いてません(←屁理屈にも程がある)。 一方、渥美三姉妹については、もともと「知多娘」のパロディとして、このサイキックハーツ用に用意していたNPCなのですが、前期のエリュシオンに出した時とは、我ながら全然違うキャラになってますね(イラストも描き直してもらってますし)。そして、彼女達のサーヴァントが色々な意味でルール違反だらけなのですが(シンクロバイク、クリオネではなくウズラ、犬ではなく狐、etc.)、まぁ、それも「ゴールデンルール」として、許して下さい。 そして、この回からセッション中のテーブル上に「MacBook Air」と「外付けモニタ」を設置して「パワーポイントを使った紙芝居(背景やNPCの画像表示)」を展開するようになったのですが(背景画像の大半はネット上からの無断拝借なので、ここには載せられませんが)、思った以上に盛り上がったので、今後も定番として使っていくことになります。やっぱり、いくらTRPGが「想像力を駆使するゲーム」であるとは言っても、現実問題として、やっぱりイメージ画像があった方が伝わりやすいですからね。 ただ、その準備に時間を費やしすぎて、開始時間が遅れてしまったこともあり、中ボス戦もラスボス戦も最後は演出で終わらせるという、中途半端な形になってしまったのが残念なところです。他にも、後々の伏線となる台詞を言い忘れたり、色々とポカが目立った回でありました(この頃からICレコーダーも導入し始めたので、聞き返してみるとそのポカがよく目立つ)。 あと、致命的な大ポカとして、(イラスト担当者に指摘されて初めて気付いたのですが)「7.1.4.」のくだりで、ニトロが英雄と姫子のツーショットに対して食い付いてますけど、よくよく読み返してみたら、第1話の時点で既に「我が妻」として紹介してたんですよね…………。まぁ、これはアレです。バベルの鎖の力で忘れさせられてしまっていた、ということにしといて下さい。「ニトロはバベルの鎖をかいくぐれる程度の能力の持ち主」と言ってしまってますが、それはあくまで彼女の執着心が為せる技で、彼女の中でそれほど重要な情報ではなかったから記憶から消えてしまっていた、ってことで(言えば言うほど言い訳が苦しくなるので、この辺でやめておきます……)。 そして、もう一つ残念だったのが、この愛知遠征編を「学生設定」と絡めることが出来なかったこと。具体的に言うなら、当初は「誰かの修学旅行に便乗した物語」にしようかと思っていたのですが、修学旅行に行く学年のPCが一人もいなかったんですね、これが(まぁ、それ以前の問題として、そもそも東京都民の修学旅行先として愛知県は有り得ないとは思いますが……)。せっかくの「学園設定」があるので、遠出する際にも、社会見学とか、遠足とか、何らかの設定を絡ませたかったのですが、結局、妙案が思い浮かばずに断念したのが心残りです。
https://w.atwiki.jp/ragadoon/pages/984.html
第2話(BS34)「血統と資質」( 1 / 2 / 3 / 4 ) 1.1. 村への帰還 トオヤ、チシャ、カーラの三人は、「レア姫(に化けたパペット)」を連れて無事に彼等の所領であるタイフォンの村へと帰還した。そんな彼等を、村の執政官であるウォルター(下図)は安堵の表情で出迎える。 彼はトオヤの父レオンの代から長年にわたってこの村を支えた役人である。清廉潔白な人物で、村の財政の健全化のために、役人達の給料を削り、自らも質素な生活を送ってきた(実はトオヤと同等以上の甘党でもあるのだが、日頃はその点でも節制している)。生前のレオンに対して、長男であるトオヤを後継者とするよう、積極的に進言していた人物でもあった。 ほぼ徹夜で船旅を終えて帰ってきたトオヤ達は、ひとまずこの日は村で一服した後に「レア姫」を連れてアキレスへと向かう、という旨をウォルターに告げると、彼は心配そうな面持ちでトオヤに進言する。 「若様、あ、いや、失礼。領主様。先日は騎士団長様と言い争いをしていたようですが、今後はお言葉にはお気を付け下さい。今は我々が結束しなければ、我が陣営はいつ崩壊してもおかしくない状況ですので」 以前、トオヤがトイバルを諫めようとした進言が原因で謹慎処分となった状況の二の舞だけは避けなければならない、というのが、ウォルターにとっての最大の懸念のようである。 「それは分かっている。とはいえ、お爺様のやり方は……、いや、それは今は言うまい。とりあえず、一晩休んで、アキレスに向かう。またこのタイフォンを空けることになるが、留守はよろしく頼む」 「それは問題ありません。レア様に対しても、くれぐれも無礼の無いようにお願いします。あと、ゴーバン様に対しても、そろそろお言葉遣いを考えられた方がよろしいかと」 トオヤはあくまでゴーバンに対しては「兄貴分」として接しており、側から見る限りでは、それは「主家の若様」に対する態度ではない。ゴーバンの側もそんな彼に憎まれ口を叩きながらも慕っている様子ではあるので、今のところ特に問題は起きていないが、ゴーバンが爵位を継承した後もそのような態度を取り続けると、色々な意味で「示し」がつかないと言われかねない関係ではある。 「とはいえ、まだまだ子供だからなぁ」 若干遠い目をしながらアキレスの方面を見つめるトオヤの横で、カーラは先日のゴーバンの訪問時の一件を思い出して、げっそりした表情を浮かべる。 「稽古で実剣を使ってほしいと言うのは、もうやめてほしいです……」 「そんなことがあったんですか?」 そう反応したのはチシャである。彼女は自分がドギに異界文書を読み聞かせている間にカーラがゴーバンと会っていたことは聞いていたが、詳細までは知らされていなかった。同様に、トオヤも驚いた表情を浮かべる。 「あいつ、こないだ怪我してると思ったら、そんなことが……」 「いや、ちゃんと木剣でやりましたよ。ただ、私が力加減を失敗しまして……」 「お前は悪くない。あいつの性格は分かってるからな」 トオヤはそう断言する。実際のところ、(反体制派にとっての)第一爵位継承者に怪我を負わせることは重大事ではあるが、今回の件はあくまで稽古中の事故であり、たとえトイバルがまだ存命だったとしても、カーラの罪を問うことはしないだろう。ゴーバン自身も、ここでカーラを罰することは「自分が彼女より弱い」と認めることになる以上、彼女の非を責めるようなことはありえなかった。 「それはそれで、いい経験になったんじゃないですか」 チシャも微笑ましい笑顔でそう語る。彼女から見ても、ゴーバンはまだまだ「成長過程の従弟」であり、これを機に向上心を持って鍛錬に励んでくれればいい、と考えていたようである。 1.2. 虚像の女傭兵 一方、そんな三人に護衛される形で「レア姫」としてこの村に連れて来られたパペットであるが、ここで一つの問題が発生した。 昨夜の襲撃事件において、彼女(?)は「幻影の邪紋使い」としての力を用いてトオヤ達と共に戦い、撃退に成功した。だが、彼女がその力を用いた場合、見る人が見れば、それは「聖印の力」を用いた戦い方ではないことが露呈してしまう。つまり、姿がレアのまま邪紋を使って彼等を支援することは、人前ではなるべく避けるべきなのだが、先日の戦いでも彼女の加勢が無ければ勝てた保証はない以上、今後また同じような襲撃に遭った時に備えて、出来れば彼女がその本領を発揮出来る環境を整えておきたい。 そのための建前として、彼等はここで一人の「架空の人物」をでっち上げることにした。すなわち、彼等は「レア姫」としてのパペットを一旦客室に案内した上で、その場で彼女に「(特に誰がモデルという訳でもない)一介の女傭兵(下図)」の姿に変身してもらい、その姿で家臣や兵士達の前に彼女を連れ出して「トオヤがローズモンドで『凄腕の女傭兵』を見つけて雇った」という建前で紹介する、という作戦を考案したのである。 つまり、今後はパペットは状況に応じて「レア」と「女傭兵」という一人二役を演じ分けるという難題が課せられることになったのだが、サンドルミア留学時も同じような形で「レア」と「侍女」の姿を併用していた彼女にとっては、それは不可能な話ではなかった。 従来の「パペット」としての姿ではなく、あえて「全く新しい姿」を用意したのは、「パペット」の存在を知るワトホート派の極一部の者達と万が一敵対することになった時への対策である。その上で、あえて「女傭兵」の姿にしたのは「日頃は陰ながらレアの身辺警護をしている」という体裁にするためであった(レアの私的空間に入り込む際には、その方が差し障りがない)。 「さて、名前はどうしようか?」 「女傭兵」の姿となったパペットは、トオヤ達にそう問いかけた。今後、ワトホートやグレンとも対面する可能性がある以上、「パペット」と名乗る訳にもいかない。大陸出身という建前ならばブレトランド風ではない名前の方が良いだろうと三人が思案を巡らせている中、ふとトオヤが呟いた。 「『ドルチェ』とか、どうかな?」 それは大陸の言葉で「菓子」という意味である。甘党の彼ならではの安易なネーミングであり、女戦士の名前としてはいささか不釣り合いにも思えるが、当の本人は気に入ったようである。 「まぁ、いいんじゃないかな、コードネームっぽいし。センスがあるかどうかはともかく、君がつけてくれた名前なら、僕はそれでいいさ」 こうして、女傭兵「ドルチェ」が誕生した。その上でトオヤは「ドルチェ」を自分の傘下の兵士達の前に連れ出して紹介した上で、今後は状況に応じて、自軍の一分隊を彼女に率いさせることもある、という旨を通告する。突如現れた「得体の知れない邪紋使い」に対して、当初は兵士達は困惑したが、人々を魅了することに長けた彼女の人心掌握術の前に、あっさりと彼等は彼女を「新分隊長」として受け入れるに至ったようである。 1.3. 凱旋入城 翌朝、彼等は「レア姫」を連れて、トオヤとチシャの祖父である騎士団長ケネスの待つアキレスへと出発する。一応、パンドラからの再襲撃に備えて、タイフォンの兵士達による厳重な護衛を従えた上での行軍となった。「レア姫」は馬車に乗せ、その馬車の内側でトオヤと「ドルチェ」が彼女を護衛する、という体裁の上で(つまり、実際には馬車内には「二人」しかいない)、その馬車の両脇を騎乗したカーラとチシャが固めつつ、上空からの襲撃にも備えて、馬車の上にはチシャの呼び出したジャック・オー・ランタンを随行させるという万全の備えであった。 さすがにタイフォンとアキレスの間の街道は比較的治安の良い地域ということもあり、特に怪しげな集団に遭遇することもなく、彼等は夕方頃には無事にアキレスの城下町に到着する。それに対して街の民衆達の間では「タイフォンの領主様が、姫様を賊から守ったらしいぞ」という話が広まり、彼等を歓迎している様子が馬車内からも伺えた。 「大したものじゃないか。ちょっとした英雄だね」 馬車の中で「姫様」にそう言われたトオヤは淡々と答える。 「まぁ、タイフォンはそれほど大きな村でもないからな。小さなことでも、それなりに騒ぎになるのさ。それがこのアキレスの地にまで届いたのだろう」 実際のところ、今回の「姫様の救出計画」は(どこまで計画通りだったのかは不明だが)もともとケネスが企図していたシナリオである以上、おそらくはこの民衆達の高揚もケネスの部下達による工作の結果なのだろうが、あえてそのことはトオヤは口にはしない。 やがて彼等はアキレスの城の入口に到着するが、城の衛兵達は彼等に対して「城主様は急な案件で城を離れている」という旨を伝える。その話を聞かされたカーラがトオヤに問いかけた。 「こないだ、海軍の船と連絡が取れなかったことと関係あるのかな?」 「十中八九、そのことだろうな」 トオヤが淡々と答えると、傍の「レア姫」とチシャも頷き、それぞれに口を開く。 「君達としても、それは想定外の事件だったのだろう? ならば、今の時点で推測しても仕方ないだろうね。どうしても気になるなら、『お爺様』が戻ってから確認するしかない」 「まぁ、そんなに急ぐことでもないですしね」 ひとまず彼等は城代の従属騎士の指示の下で、城内の客室へと案内された。その上で、「レア姫」に対しても、トオヤの護衛(という名の監視)を条件とした上での自由な行動の許可も与えられる旨が告げられると、トオヤは「レア」に問いかけた。 「どこか、行きたいところはあるか?」 「私は何年もこの街に来ていないんだぞ。この街のことは全然知らない。むしろ、君のお勧めの場所を案内してくれ」 「そうか。それなら、エスコートは任せておいてくれ」 「期待しているよ」 そんな二人のやりとりの横で、カーラがボソっと呟く。 「あるじ、エスコートなんて出来たんだね……」 「で、出来るよ、うん……」 思わず動揺して「素」の口調になってしまったトオヤに対して、「レア」は微笑を浮かべながら右手を差し出す。 「期待しているよ。『姫様』の手を引きたまえ。光栄なことだよ」 「あ、あぁ」 トオヤは臣下の礼を取りつつ、彼女の手を引いて、城下町へと向かう。 「あるじ、男を見せる時だよ!」 「そ、そうか」 カーラに背中を押されながら去り行くトオヤを、チシャは微笑ましく眺める。 「エスコートするというなら、お邪魔をするのも悪いですしね。私は海軍の方々に話を聞きに行ってきます。時間があれば、若様達にもご挨拶してこようかと」 チシャがそう言うと、カーラも彼女に同行した方がいいだろうと考えるが、ここで「嫌な予感」が彼女の脳裏をよぎる。 「ゴーバン様にご挨拶……、しなきゃいけないのかなぁ……。また無茶なこと言われなければいいけど……」 1.4. 姫との思い出 トオヤと「レア」は城下町の様子を確認しつつ、地元で愛されている小さなケーキ屋へと向かった。実質的に戦時下ということもあり、町の中にはピリピリした雰囲気が漂い、人々の表情にもどこか不安感が広がっているのを「レア」は実感する。また、本来ならば賑わっている筈の商店街に入ると、空き家になったと思われる建物が目立つ。おそらくは、この国の将来を見限って大陸へと亡命したのだろう。 また、街の警備をしている兵士達の中に、明らかに「ガラが悪い面々」が多いことにも彼女は気付いた。正規兵の多くがテイタニアの騒動で戦死した状態で、対ワトホート派のための人員を境界線上に割かねばならないこともあり、比較的安全なこの街の治安維持のために主力を割く余力がないため、「質の悪い傭兵」に任せざるを得ない状態となってしまっているようである。 (今の反体制派の中心都市なら、こんなものだろうな) 「レア」がそんな感慨を抱く中、トオヤは彼女を連れて無事にケーキ屋へと到着する。 「若様、いらっしゃいませ! あ、もしかして……、そちらにいらっしゃるのは、レア姫様でしょうか?」 そう言われた「レア姫様」は素直に頷く。 「いかにも。何年もこの国を離れていたにもかかわらず、民に顔を覚えていてもらえるのは嬉しいことだな」 「えぇ、それはもう。まぁ、今はちょっと色々とややこしい御時世ですので、大変だとは思いますが、ぜひウチのケーキを楽しんでいって下さい。腕によりをかけて作りますので」 そう言って店主は、二人を店内の特等席へと案内する。そんな二人に対して、周囲の客は好奇の視線を向けていた。 「あれが噂のレア姫様か」 「騎士団長殿の若様がお助けになったとのことだが、ああして普通に二人で並んでいると、普通に恋人同士にも見えるな」 「騎士団長様はゴーバン様と結婚させたいと考えているという噂もあるが、年齢を考えると、やっぱりあっちの若様の方が合ってるよな」 そんな人々の声を「レア姫様」は面白がって聞いていたが、トオヤは緊張した様子で全く気付かない。やがて、店主が届けたケーキに手をつけようとするが、やや身体が震えているようにも見える。 「トオヤ、さっきからどうしたんだい?」 「あぁ、その、あまりの感動に、手が震えているんだ。最近ずっと節制してたからな」 「君はここにそう頻繁に来ていた訳ではないんだね」 「そうなんだ。最近、給金が削られてね……」 「世知辛いことだな」 どうやらタイフォンでは領主も給金制らしい(カーラはそれを「お小遣い」と呼んでいる)。とはいえ、それは単に財政事情だけが原因という訳ではなく、トオヤの体内の「血糖」と「脂質」を心配するウォルターの親心でもある(ウォルター自身も同様の弊害が体型に現れているからこその配慮であろう)。 「それにしても、懐かしいな。君がアキレスに来た時は、よくこの店に来たものだけど」 「『私』はこの店に何度か来た筈だが、『僕』は初めてだよ」 一応、周囲に聞かれないように、彼女は声を潜めながらそう告げる。それに対して、トオヤも少し声のトーンを落としながら答えた。 「そうだったか。この店はレアのお気に入りだったから、連れてきたんだがな」 「だろうね。あの子も甘い物が大好きだから。向こうでも、『姫様のティータイム』に付き合うのが僕の仕事だった。彼女もこっちにいた時は、お茶にも砂糖を入れなかったし、ブラックコーヒーしか飲まなかっただろう? あれ、『姫様だから』って、無理してたんだぞ。向こうでは、砂糖をドバドバ入れながら飲んでたさ」 「そうなのか?」 「僕はそんな彼女がブレトランドにいた頃の『姫様としてのこだわり』に付き合わされた結果、ブラックコーヒーにすっかり慣れてしまったがね。もう今更、砂糖なんて入れようと思わないくらいに」 ちなみに、そんなパペットに対して、サンドルミアで「砂糖ドバドバ入りコーヒー」を満喫していたレアが、何食わぬ顔で「パペット、随分渋い趣味をしているのね」と言ったこともある。その時は、流石にパペットも少し腹を立てたらしい。 「そうか。昔、彼女がブラックコーヒーを飲んでるのを見た時は、確かに随分大人びているなと思っていたが、意外とそうでもないんだな」 そう言いながら手元のコーヒーに大量の角砂糖と牛乳を投入していくトオヤに対して、パペットは思わず苦笑を浮かべる。 「すました顔の裏で、彼女も結構無理をしていたんだよ。あるいは、その時は『僕』だったのかもしれないね」 そんな思い出話に浸りながら、ふとトオヤが周囲を見渡しながら呟いた。 「しかし、こうして『何でもないひと時』を過ごしていると、国が二つに割れているなんて、信じられないな」 「でも、事実だよ。ここに来る前に、君も見ただろう?」 「あぁ。アキレスもだいぶ寂れてしまった。これも国が二つに割れてからだ。おかげで、最近はお気に入りの『甘い物の店』が次々と……」 「まぁ、落ち着いてくれ。どうにかしたいという気持ちはあるのだろう? だったら、それで十分さ。今は甘い物でも食べて落ち着きたまえ。今の君は、久しぶりに会った僕が見ても、焦っているように見えるよ」 「そうかな」 「少なくとも、そこにクリームをつけながら言うことではないね」 彼女はそう言うと、トオヤの口元についていたクリームを人差し指で拭き取り、その指を自分の口元に運んだ上で、小悪魔的な笑みを浮かべながらペロッと舐めた。トオヤは思わず咳き込み、慌ててコーヒーを飲もうとするが、逆に吹き出してしまう。そして「砂糖が足りない」と言いながら、更に角砂糖を加えて飲み直す。 そんな様子を「レア」は悪戯めいた笑みを浮かべながら眺めつつ、静かに席を立つ。 「じゃ、そろそろ戻ろうか」 そう言われたトオヤは、店主にコーヒーを溢したことを謝りつつ、代金を払って店を後にする。そんな二人の様子を周囲の人々は(会話の内容は殆ど聞こえていなかったものの)生暖かい目で眺めていたのであった。 1.5. 謎の投影島 一方、アキレスの海上警備を担当する役人達の元へ話を聞きに行ったチシャとカーラは、彼等が一人の「雇われ騎士」との間で問答を繰り返している場面に遭遇した。 その雇われ騎士の名はガフ・アイアンサイド(下図)。ケネス直属の傭兵団長であり、人脈が広く、様々な物品を調達する能力に長けていることで有名で、武具の目利きにも定評がある。そんな彼は役人達から何かを要請されている様子だが、それに対して渋い顔での返答を繰り返していた。 「今すぐ軍船を増やせとか言われてもねぇ、資金的にもかなり厳しい状態になってきてるし、これ以上の戦費を賄う余裕は、あんたらには無いと思うがねぇ」 そんな彼の姿を見たカーラは、顔を引きつらせた。というのも、以前、かつてカーラが「人」の姿でトオヤと共にアキレスを訪問した際、彼はカーラを一目見るなり、彼女の「本体」を購入したいと熱烈に懇願したのである。カーラは自分自身が「武器」であるという自覚はあるが、「物」として売買の対象と見做されることには強い抵抗があった。この辺り、彼女は通常のオルガノンよりも「人」としての意識が強いのかもしれないが、彼女がそのような気質であることの理由を、まだ彼女は知らない。 「おぉ、久しぶりだな、オルガノンさん」 カーラの姿に気付いたガフは、そう言って笑顔で声をかけるが、カーラはまだひきつった表情のままである。 「えーっと……、あなたのことは『商人さん』としかボクは認識してないんだけど、合ってたかい?」 「まぁ、ここでは『傭兵』として雇われているんだが、『商人』でも間違ってはいないな。どっちが本業なのかは、俺自身もよく分からん」 彼は「聖印」を持つ歴とした君主ではあるのだが、魔法師と契約も結ばず、また誰とも主従関係にある訳ではなく、ケネスとの関係もあくまで「傭兵隊長」兼「武器商人」としての雇用関係にすぎない。とはいえ、ケネスからの信頼は厚く、その雇用期間も長期にわたっているため、最近になって雇われ始めた(先刻トオヤ達が目の当たりにしたような)「質の悪い傭兵達」とは異なり、ほぼ正規兵に近い扱いでもある。 それ故に、彼はトオヤやチシャとも何度も面識はあり、彼等がこの国においてどのような立場の人物なのかも理解していた。 「タイフォンの魔法師様もいるってことは……、あぁ、そういえば、そちらの領主様が姫様をお助けになった、という話があったな」 そう言われた二人は、少し微妙な表情を浮かべながら答える。 「まぁ、『助けた』ね、うん……」 「今は二人で羽を伸ばしに行ってもらってます」 チシャの言うところの「羽を伸ばしに行っている二人」を思い浮かべつつ、ガフは何かを悟ったような顔を浮かべる。 「そうかそうか。まぁ、その二人がくっついてくれるなら……、あ、でも、ここの騎士団長さんとしては、ゴーバンの坊ちゃんに爵位を継がせたいんだったな。そうなると、それはそれで色々ややこしい問題になるのか」 今後のヴァレフールの未来を慮りながらガフがそう呟いている隣で、先刻まで彼と交渉していた役人の一人が、チシャに対して問いかけた。 「魔法師様、一つお聞きしたいのですが……」 「はい、なんでしょう?」 「召喚魔法を用いて『島のような大きさの巨大な投影体』をこの世界に呼び出す、ということは可能なのでしょうか?」 「島、ですか……? うーん、大きさにもよりますが、かなり高位の召喚魔法師であれば可能だとは思います。ただ、それは本当に限られた人にしか出来ないでしょうね」 実際、召喚魔法師の中でも、チシャが得意とする青(本流)の系譜の魔法ではなく、浅葱(亜流)の系譜であれば、生命体だけでなく、「地形」や「建造物」を召喚することも可能ではある。だが、人が住める程の大きさの「島」の召喚となると、そう容易いことではない。 その役人曰く、昨日の時点で、アキレス南東部の「混沌濃度の高い海域」に、それまで存在しなかった筈の「巨大な島」が発見されたらしい。 「それは……、自然発生であることを願いたいですね……」 投影体は、召喚魔法という形で人為的に呼び出さなくても、混沌の自発的(?)作用によって自然発生することも多い。そのような経緯で「異世界の空間」そのものがこの世界に出現することもあり、一般的にはその空間のことを「魔境」と呼ぶ。 大抵の場合、「魔境」はこの世界の理に合わない存在であるため、周囲の人々に害をもたらす可能性が高い以上、その発生そのものが望ましい話ではないのだが、それでも「自然発生の魔境」の方が、「人為的に作られた魔境」よりは幾分マシである。なぜなら、後者であった場合、それを作り出せる魔法師(おそらくはエーラムには所属していない「闇魔法師」)が存在するということになる。それはすなわち、同じような魔境を何度も別の場所で発生させられる可能性があるという、極めて危険な事態を意味していた。 「地殻変動とか火山とかの可能性もゼロではない筈だよ!」 カーラはそう言って場の空気を和らげようとするが、もし島一つが発生するほどの地殻変動が起きていたのであれば、その影響でアキレスやタイフォン全体を覆うほどの大津波が発生している筈である(実際、半年前にクリサリス湖の湖底火山が噴火して「湖内島」が発生した時には、テイタニアの近辺で大水害が発生している)。だが、ここ数年の間にそこまで大きく海が荒れたという記録は残っていない。 そしてアキレスの海軍関係者の証言によると、まだ確証には至っていないものの、今のところ「パンドラの闇魔法師達によってこの世界に召喚された投影島」なのではないか、という見解が有力であるらしい。現在、アキレス海軍はその対応に追われており、騎士団長であるケネス自らが海軍の主力部隊を率いて調査に向かっているという。 「島ひとつ召喚して、何をしようというのでしょうね……」 チシャはそう呟くが、実際のところ、皆目見当もつかない。ちなみに、その島が発見された海域はもともと混沌濃度が高く、それ故に通常の航海ルートからは外されており、アキレス海軍も通常時には近寄ることはなかった。だが、先日の誘拐未遂事件の時に「姫様を乗せた旅客船の近くの海域に偶然居合わせる筈だった巡回戦」が消息を絶った時点で、状況を確認するために派遣された軍船によって、偶然発見されたらしい。そして、その島の周囲にはその巡回船の残骸が浮かんでいたという。 もし、この島がパンドラの手によって作られた「地形投影体」であった場合、状況的に考えて先日の誘拐未遂事件において彼女達を襲った「蝿男」も、この島から出撃していた可能性が高い(実際、海域図を見る限り、蝿男が飛び去った方角とも一致している)。つまり、パンドラの本拠地(あるいは前線基地)がアキレスやタイフォンの近海に出現したとなると、さすがにこれは放置してはおけない大問題である。ケネスが自ら調査に赴くのも当然の話であろう。 とはいえ、現状ではその調査隊が戻るまでは憶測以上の見解は望めない。そんな中、カーラがふと思い出したかのようにガフに問いかけた。 「あなたは確か、『傭兵の頭』を張ってるのも仕事だったよね?」 「そうだ。どっちかというと、そっちが本業なんだがな。傭兵兼調達屋、ってとこだ。だからこそ、世界中の傭兵稼業の連中にも顔が効くし、武具の闇市場にも通じている。前にも言った通り、あんただったら、大陸中どこに出しても相当な値がつくだろう」 「せめて、『物』としてではなく、『雇う』とか、そういう言い方をしてくれたら、ここまでボクもあなたに不快感を抱かずに済んだんだけどね。まぁ、それはちょっと置いといて、今回、あなたが手配を依頼されてるのは、どういう類いの兵なのかは教えてもらえるかい? たとえば、船の上の戦闘に長けている兵が良いとか……」 カーラはその質問を通じて、現在のアキレスがどのような戦略的状況に置かれているのかを確認しようとしたらしい。それに対してガフは、特に隠しておく必要もないと考えていたので、率直に答える。 「まぁ、そうだな。正確に言うと、兵士ではなくて、軍船だ。『魔法で壊れない特殊な軍船』が必要なんだとよ」 もし、あの「投影島」がパンドラの手による召喚物であった場合、そこにはパンドラの闇魔法師達が集っている可能性が高い。そして、高位の元素魔法師の中には、巨大な「渦潮」を作り出すことによって海上の船を一瞬にして破壊する魔法を得意とする者もいる。それに対抗するには、エーラムによって造られた特殊なアーティファクト船か、もしくは異界から投影された特殊な船が必要、ということらしいが、いずれも入手するには相当な金がかかる。今のアキレスにはそこまでの金がないので、それを分割払い、あるいは「今のヴァレフールの内乱を集結させた後に払う」という条件でどうにかしてほしい、というのが役人達からの要求であったらしい。 当然、後者の場合は「この内乱で反体制派が勝利すること」を前提とした条件であり、少なくとも相手から賠償金を要求出来る程度の条件にまで持ち込まなければ、支払いは不可能である。無論、それはこの「船」の話だけでなく、現在雇われている多くの傭兵達に関しても同様であり、最終的に十分な報酬が支払われる見込みがなければ、兵士達が略奪を始めてその地が荒れる可能性もある。これが、一度始めた戦争が容易に追われない理由でもある。戦争において「引き分け」とは、実質的に「両軍共に負け」なのである。 このような状況において、ここまでヴァレフールを支援してきた大陸の幻想詩連合諸国は、このヴァレフールの内乱に対して、どう対応すべきかで迷っている。もともと連合と繋がりが強かったのはケネスであり、それ故にここまではどちらかというと反体制派寄りの国々が大半だったのだが、先日のパンドラ革命派との闘争での実質的な敗北もあって、もはや反体制派を見限って体制派を支援すべきではないかという声も広がりつつあるらしい。彼等の支援によって勢力を維持してきた反体制派としては、まさに今は崖っぷちの状況に立たされているのである。 ガフとしては、これまでのケネスへの義理もあるし、少なくともこれまでのケネスは金払いが良かったので、出来ればケネスに勝利してもらいたいと考えてはいるようだが、少なくとも今の、まともな「抵当」すらも用意出来ないような状況では、これ以上の協力は難しい、という状況であった。 1.6. 王子達との再会 チシャとカーラの二人がそんな深刻な事態に頭を悩ませているところへ、小さな乱入者が現れた。ゴーバンである。 「あ、いたいた!」 「おや、ゴーバンさん」 チシャは穏やかな笑顔で応じるが、彼の視線はその隣のカーラへと向けられていた。当然のことながら、彼女は浮かない表情で挨拶する。 「ご、ごきげんよう……」 「よーし、今日こそはこないだのリベンジだ!」 ゴーバンはそう言い放つと同時に、自身の聖印を掲げて、その中から光の大剣(巨煌刃)を出現させる。それを目の当たりにしたカーラは、慌てて声を荒げた。 「この場で出すのはやめて下さい! せめて、もう少し広いところで……」 「よし、分かった。広いところならいいんだな。じゃあ、中庭に来いよ!」 そう言われたカーラは、意気揚々と中庭へと向かうゴーバンの後ろを、断頭台に向かうような面持ちでついていく。相手はまだ幼いとはいえ、対混沌能力に特化された君主である。しかも、前回怪我させていることもあって、カーラとしてはまともに反撃するのも躊躇われる。 (これはボク、死んだかな……) それなりに本気で彼女がそう思いつめていたところに、救いの神が現れた。「レア姫のエスコート」から帰還したトオヤが、ゴーバンの後ろから現れ、全力で頭を殴りつけたのである。 「ってぇ!」 「何をしている?」 拳を握りしめたまま、静かな怒りを込めた表情でトオヤはゴーバンにそう言った。 「いや、何って、こいつが来たから、こないだのリベンジを……」 「お前な……、リベンジするのはいいとして、その手に持っているものは何だ?」 トオヤはそう言いながら、ゴーバンが生み出した「混沌を切り裂く光の大剣」を指差す。 「俺、木刀だと、やっぱり調子が出ないからさ」 「お前の聖印の性質上、そうだろうな。だが、その刃を俺の部下に向かってなぜ向けている?」 「いや、別に、本気で殺すつもりはねぇよ。ただ、俺がこいつより強いってことを証明したいだけで……」 「相性というものを考えろ」 実際、まだ未熟とはいえ、対混沌特化型の君主であるゴーバンの本気の一振りがカーラに直撃した場合、一撃死する可能性も無くはない。 「そんなこと言ったって、あいつだって普通の剣じゃないだろ? あいつ相手にそこら辺の普通の剣で戦うってのは……」 「ボクが普通の剣で戦うって選択肢はなかったのかい!?」 カーラがもっともな反応を見せる横で、トオヤはゴーバンに諭すように語り始める。 「お前は、もう少し考えてから行動に移せ。お前はただ、自分の力を振るいたいだけだ。それは本当の君主の姿とは言わない」 「じゃあ、本当の君主の姿って何だよ?」 「それについてはいずれ教えてやるが、力だけじゃない『本当に強い者』を目指すのが君主のあるべき姿だ」 それに対して、ゴーバンはまだどこか納得しきれない様子ではあるが、ひとまず刃を聖印の中に収め、渋々その場を立ち去っていく。一応、トオヤの言うことに対しては、憎まれ口を叩きながらもそれなりに耳を傾ける程度には、彼のことは信頼しているらしい。 そんな彼と入れ違いに、今度は弟のドギがその場に現れた。彼の方は、チシャがこの地に来たと聞いて、彼女に会いに来たようである。そして、その彼の隣には、チシャと馴染みの深い一人の侍女(下図)の姿があった。 彼女の名はアマンダ。かつてはチシャの毋であるネネの侍女を務めていたが、彼女の失踪後はドギの侍従長へと転属になった。歳はチシャの一つ上だが、その雰囲気からは年齢以上の落ち着きや風格を感じさせる。おそらく、彼女が「影の邪紋使い」であることがその一因であろう。彼女は主人の身の回りの世話を担当する雑用係であると同時に、いつどこから放たれるかも分からない刺客の手から主人を守るための護衛役でもある。 「お元気そうで何よりです」 アマンダはチシャに対してそう言いながら、深々と頭を下げた。彼女は元来は孤児であったが、偶然の奇縁でネネに救われて以来、失踪前のネネに対しては絶対の忠誠を誓っていた。そのため、子供の頃からチシャとは親しい間柄にある。 「お久しぶりです、アマンダさん、ドギ様もお元気そうで」 そう言われたドギは、その手に持っている書物を開きながら、チシャに問いかけた。 「あれから色々な本を読んで、こないだ紹介してくれた『赤くて丸い実』が実る木をこの国で育てるにはどうしたらいいか、色々考えてたんだけど、そのことについて、また相談したいと思ってたんだ」 その書物には、ヴァレフールの一般的な気候や土地柄について記されていた。異界文書ではなく、この世界の言葉で書かれた本ではあるものの、9歳の子供が読んで理解するには少々難しい。また、仮に内容を理解出来たとしても、それですぐに「異界の樹」の植林の具体策が考案出来る訳ではないのだが、それでも、この国のために自分に出来ることを探そうとする彼の心意気を大切に育んでいきたいと思っていたチシャは、自分の知り得る限りの知識で、優しく丁寧に助言を始める。 そんな中、その傍らに立つアマンダが二人にこう告げた。 「私が聞いた話によると、この木の実を使えば『アップルパイ』という大層美味な菓子を作ることも出来るようです」 実はこのアマンダも「果実の蜂蜜漬け」を好物とする甘党である。トオヤといい、レアといい、ウォルターといい、アマンダといい、なぜかチシャの周囲には、体内の「血糖」と「資質」が心配になる面々が揃っているようである。 1.7. 紡がれる物語 チシャによる「ヴァレフール地理講座」が終わった後、皆がそれぞれの客室へと帰還した上で、夕食の時間を待っている頃、アキレスの城に一人の吟遊詩人(下図)が訪れた。 彼の名はハイアム・エルウッド。ブレトランド各地を旅する吟遊詩人であり、ここ最近はこのアキレスを拠点に、酒場などで古今東西の様々な英雄達の叙事詩を披露しているらしい。以前に城内での宴会にも招かれたことがある彼は、城に務める兵士や役人達の間でも顔が知られており、そんな彼がその人脈を通して、トオヤに面会を申し出てきた。 「この度のあなたの英雄譚、ぜひとも新たな叙事詩として広めていきたいと思いますので、出来ればその救出に至るまでの経緯を詳しく教えて頂きたいのですが」 そう言われたトオヤが、どう話したものかと思案していると、横から密かにその話を聞いていた「レア」が姿を現す。 「彼の英雄譚だったら、私の口から語ろうか?」 「おぉ、それは是非も無いこと」 「どこまで正しく語れるかは保証しないがね。『助けられた姫』の瞳には、『王子様』はカッコ良く映るものだから」 そう断った上で、彼女は程良い脚色を交えつつ、重要な機密(自分の正体や、蝿男がチシャとカーラをレアと勘違いしたくだりなど)は割愛した上で、あくまでも「闇の眷属に攫われそうになった無垢なお姫様」が「勇敢な王子様」に助けられる物語として、特に矛盾もなく、辻褄のあった美しい英雄譚としてハイアムに語り聞かせた。それはさながら、そのまま旋律に乗せればすぐに酒場で歌えそうなほどに完成された物語であった。 「なるほど、分かりやすいご説明でした。ありがとうございます。この国は明るい話題がなかったので、この物語を私が民の皆様に聞かせれば、笑顔も戻ることでしょう」 ハイアムはそう言って、二人の前から去っていく。実はパペットは、自分が「レア」になる前に首都ドラグボロゥでこの吟遊詩人に会ったことがある(当然、その時の姿は今とは全く別人なので、ハイアムはそのことに気付いてはいない)。その頃から、この男は積極的に様々な情報を収集していたが、その中には「明らかに叙事詩の題材とはなりそうもない内容」も含まれていたため、彼のことは「ただの吟遊詩人」ではないのではないか、という疑念がその頃からパペットの中にはあった。だからこそ、適当にごまかす形で退散させたのだが、自分のことではないかのような「美しい物語」を聞かされたトオヤは、終始表情を固くさせたままであった。 「……あんなカンジで良かったかい、トオヤ?」 「あぁ、俺も思わず聞き入ってしまった。ところで……、今の話の主人公は誰だったんだ?」 全くもって今更なその質問に対して、「レア」は呆れたような口調で返す。 「君だよ、トオヤ。そんなに現実感が無かったかい?」 「いや、まるで『物語に登場する王子様』のような話しぶりだったから……」 「君が思っているより、私の目からはカッコ良く見えているのかもしれないよ」 「そ、そうか……、ありがとう……」 どんな顔をすればいいのか分からず、目線をそらしながら小声でそう答えるトオヤを見ながら、「レア」は複雑な表情を浮かべる。 「やっぱり、『王子様』にしては、少しシドロモドロすぎるかな」 2.1. 「姫」と騎士団長 翌朝、ケネスが無事に海軍の精鋭兵達を引き連れて、アキレスへと帰還した。トオヤが「レア姫」を連れてこの地に来ていることを知った彼は、すぐに「レア姫」を応接室に招き入れた上で、彼女との「対談」の場を用意させた。彼女を救った功労者であるトオヤ、チシャ、カーラの三人も、その場に同席する。 「おぉ、レア様、よくぞご無事で。この度は大変災難でございました」 自身も海上調査から帰還したばかりの身であったが、そんな疲れは一切感じさせぬ様子で、老獪なる騎士団長はそう挨拶する。 「あぁ。だが、貴殿のお孫殿のおかげで事無きを得た。感謝している」 何食わぬ顔で「レア」としてそう答える彼女に対して、ケネスは胸を張って応じる。 「トオヤもチシャも、私の自慢の孫達ですからな。さて、しばらくブレトランドを離れていた姫様はご存知ないでしょうが、現在、この国は混乱している状態です。大変申し上げにくいことながら、姫様のお父君が先代伯爵ブラギス陛下を毒殺し、そして爵位を乗っ取るという事態に陥っております」 あくまでも現時点ではそれは「反体制派の主張」にすぎない訳だが、その真偽については「レア」が知り得る筈がない以上、その点は肯定も否定も出来ない(そして「パペット」にとっては、その真偽自体はどうでもいい話であった)。彼女は言葉を選びながら、慎重に対応する。 「市井に出回っている程度の情報なら、私も把握している。連合と同盟がぶつかり合うこの地のことだ。大陸での関心も決して低くはない」 「そうでしょうな。サンドルミアでどのように噂が広がっているかは分かりませんが、我々としては、あのような非道を許す訳にはいかない。しかし、我々はあくまでも『ワトホート殿の非道を許さない』と言っているだけであり、『ワトホート殿の娘である姫様』には何の罪もないと考えております。むしろ、正しい王統を守るために、姫様には大変申し上げにくいのですが、お父君と少々距離を取って頂きたい。このままあの『大逆者』の元にいては、我々は姫様もその一派として討たねばならなくなります。それは我々の本意ではありませぬ」 そう力説する祖父の姿を見て、トオヤもようやく彼の思惑が少し見えてきた。どうやらケネスは、レアをワトホートから切り離すことで、実質的にワトホート側の「後継者」の手駒を奪う算段でいるらしい。 「父君の成したことがケネスの言う通りならば、それも致し方あるまい。その上で、具体的には、私に何を望む? この街に留まることか?」 「そうですな。少なくとも、『反逆者達』が占拠している今のドラグボロゥに姫様が戻られることは、私としては看過出来ませぬ。とはいえ、このまま国が割れた状態が続くことも、我々の本意ではありませぬ。今現在ワトホートに協力している者達の中にも、やむを得ず協力している者もいるでしょうし、いずれに協力すべきか方針を決めかねている者もいます。彼等の協力を得て、反逆者達に罪を認めさせた上で、出来れば、あくまでも将来の話ですが、二つの王統をもう一度統合する形にしたい、と考えております」 「出来ない話ではないだろうな。実際、テイタニアやオディールは、まだ態度を明確にしていないと聞く。彼等も表立ってケネス殿に協力は出来ないまでも、彼等を通じて和解の道を探ることは可能だろう」 「その通りです。その上で、あくまでも一つの選択肢としてですが、『本来の後継者であるべきゴーバン殿下』と姫様がご婚約なさるということになれば、この国の諸侯もそれで納得するのではないかと。もっとも、まだゴーバン殿下は幼く、結婚ということの意義も十分に理解出来ていないとは思いますので、今すぐにとは申しません。ただ、姫様が父君と決別した上で我々に協力して頂けると宣言して下されば、この国の混乱は収まる道は開けると考えております」 それは、トオヤも「レア」も概ね想定していた和解案であった。というよりも、現状においてこの分裂状況を打開する上では、それが最善の策であろうことは誰もが思いつく話である。無論、それで全てが解決するとはケネスも考えてはいない。むしろ重要なのは「その婚儀が実現した後、最終的に夫婦のどちらが聖印を受け継ぐのか」、そして「新体制においてどちらの派閥が主要な役職を任されることになるのか」といった諸々の案件である。ケネスがここで「レア」を自分の手元に確保しておくことで、その交渉を優位に進める環境を整えようとしていることは、この場にいる者達も容易に想像出来た。 「なるほど。ケネスの主張は理解した。だが、少々返答には時間を頂きたい。この国の将来のこともそうであるし、先ほど話題に出た私の婚姻のこともそうだ。私にとっても、ゴーバン殿にとっても、簡単に決断出来ることはないことはご承知頂きたい」 「無論でございます」 「私も『姫』としてこの国に生を受けた以上、私が誰と婚姻を結ぶかが政略の遡上に登ることは覚悟の上だ。だからこそ、軽々と決断していいことではない」 「それはその通りでございます。だからこそ、当面はこのアキレスに留まった上で、ゆっくりと考えて頂ければよろしいかと」 「そうさせてもらうとしよう。あと、今はなし崩し的にそうなっているが、貴殿の孫であるトオヤ殿を私の護衛のような形でお借りするぞ」 「それは勿論。トオヤもそれで異論はないな?」 急に話を振られたトオヤは、どこか淡々とした声で答える。 「えぇ、ありません」 自分の中で湧き上がる様々な感情を押し殺しながらそう言ったトオヤの表情を横目で見つつ、「レア」はケネスが満足そうな顔をしているのを確認した上で、話を終える。 「今、私から言うことはそれだけだ。トオヤ、君達からは何かあるか?」 「私からは特に」 トオヤは相変わらず「心の篭っていない声」でそう答える。その傍のチシャもまた「私もありません」と答えたことで、ひとまずこの対談の「本題」については、これでひと段落することになった。 2.2. 広がる困惑 続いて、ケネスはトオヤ達に対して問いかける。 「さて、その上で、姫様の救出の際の経緯について確認したいのだが」 それに対して、トオヤはどこまで語るべきか迷いつつ、昨日の「レア」が語った物語を参考にながら、「語れる範囲」を模索しながら答え始める。曰く、自分達が休暇で「たまたま」ローズモンドへと向かい、その帰路において「たまたま」姫と同じ船に乗り、そこで「ならず者達」が暴れ出したので、それをチシャやカーラと共に殲滅したものの、その直後に今度は「蝿のような、おそら投影体のような何か」に襲われ、どうにか撃退はしたものの逃げられてしまった、というのが、その概要である。 その話を聞いたケネスは、黙って一度席を立ち、自身の椅子の背後に置かれていた箱を取り出す。それは隻腕のケネスが片腕で持つにはやや厳しそうな程度の大きさであったが、彼は義手を用いて挟み込むようにそれを卓上に乗せると、その箱を開け始めた。 「正直、姫様の御前にこのようなものを出すのは心苦しいのですが……」 そう言ってケネスが箱を完全に開けると、そこに現れたのは不気味な「異形の生首」であった。それは紛れもなく、船の中でトオヤ達が遭遇した「あの男」の首である。 「お前が仕留め損なった『蝿のような何か』とは、こやつか?」 「……確かに、こいつです」 トオヤが衝撃を抑えながらそう答えると、ケネスは納得した顔を浮かべる。 「そうか。実は私は今朝まで南東の海域を調査していたのだが、そちらの方で『色々』あって、我々がこやつを討ち取るに至った。まぁ、その詳細はいずれまた話すとして、こやつで間違いないのであれば、私の判断は間違っていなかった、ということになるな」 独り言のようにケネスがそう呟いたところで、突然、扉の外から伝令兵の声が響き渡った。 「騎士団長様! 謁見を求める方が!」 ケネスは表情を歪ませながら答える。 「あえてこの場で割って入ってまで伝えねばならない来客とは、一体どこのどなたかな?」 「イェッタの領主、ファルク・カーリン様です!」 それは、現在のワトホート派の中核的人物の一人であり、ヴァレフールの七男爵の一人である。騎士としての高潔な人柄に加えて、その端正な顔立ちと気品溢れる立ち振る舞いから、ヴァレフール中の女性を虜にしていることでも有名な人物であり、この場にいるチシャもまた(それほど入れ込んではいないものの)その一人であった。 「これはおそらく、レア様の話を聞いた上でのことでしょうな。さて、どうするか……」 ケネスはそう言いながら、しばし思案を巡らせる。反体制派の本拠地であるこのアキレスに、まさか彼ほどの大物が単身で乗り込んで来るとは、この場にいる誰にとっても想定外だった。彼は自分の中の考えを言葉に出しながら、状況を整理していく。 「あの男は話が分かる人物の筈だ。それなりの交渉材料を持ってきた上で来たのだろう。とりあえず、会ってみるか……」 そこまで言ったところで、トオヤに視線を向ける。 「トオヤ、お前はどうする? お前もいずれこの国を支える身として、そろそろ外交というものがどういうものか分かってほしいところではあるから、同席したいなら、同席するでも構わん」 そう言われたトオヤは、相変わらず淡々とした口調で答える。 「それでは、同席させてもらいます」 「私もよろしいでしょうか?」 隣にいたチシャがそう申し出ると、ケネスもそれに同意する。そして、ここで「レア姫」と会わせないのも、それはそれで不信感を招くと判断したケネスは、このままファルクをこの部屋に招き入れるように、伝令兵に通達するのであった。 2.3. 継承者の証 応接室に案内されたファルク(下図)の背中には、巨大な袋が背負われていた。形状からして、 その中には剣か何かが入っているようにも見えるが、ひとまず彼はその袋を背中から降ろして脇に置いた上で、ケネスに対して一礼する。 「この度はレア姫を助けて頂き、ありがとうございます」 それに対して、ケネスはやや皮肉めいた口調で答えた。 「こちらも、わざわざ御足労頂いたことには敬意を表するが、しかし、あえて単身でこの城まで来たということは、私が貴殿を騙し討ちにするようなことはしない、と思われる程度には信用されている、ということで良いのかな?」 「それは勿論、私は騎士団長様のことはよく存じ上げておりますから」 「まぁ、ここで謁見を求めてきた貴殿を騙し討ちにしては、私はヴァレフール中の女君主達を敵に回すことになるからな」 ケネスは皮肉めいた笑みを浮かべながらそう返す。実際には、君主に限った話ではなく、国中の女性全般を敵に回すことになろうことは、彼も分かっていた。 「時にファルク殿、貴殿としてはヴァレフールのこの内乱、そろそろ終わらせたいと考えているのではないか?」 「その通りです。しかし、お互いに色々と『退けぬ事情』があることも分かっています」 冷静に「当たり障りのない回答」に徹するファルクの表情を凝視しながら、ケネスは更に核心的な話へと切り込んでいく。 「この機会に『両家の縁』を結ぶのが一番の解決策だと思うのだが、いかがかな?」 具体名を挙げずにそう言ったケネスであったが、当然、ファルクもその意図は察している。 「私もそれが一番現実的な道だと考えています。その上で、どのように新体制を構築するか、ということになる訳ですが……」 「私は貴殿とは今後も良き関係を結んでいきたいと思う。だが、グレンには副団長を降りてもらわねばならん。それが、和平の絶対条件だ」 ここで、ヴァレフールの対立の原因について確認しておこう。騎士団長ケネスと副団長グレンの対立の直接的な争点は「正統な伯爵位後継者」を巡る見解の相違であるが、あくまでもそれは一つの象徴的な事象にすぎない。より根本的な対立の原因は、外交方針の違いにある。 ケネスは幻想詩連合との関係を重視し、大工房同盟に与するアントリアの討伐の必要性を強調しているのに対し、グレンは「大陸の事情」に振り回されてブレトランド人同士の殺し合いが続くことを望んでいない。現状においてアントリアが征服したのはあくまでもトランガーヌの領土であり、ヴァレフールそのものへの侵入は食い止められている状態である以上、ここでいたずらに戦火を拡大するよりも、アントリアとの関係改善を目指すべきだと主張している(特に現在はアントリア子爵ダン・ディオードがコートウェルズに遠征中だからこそ、この機に反転攻勢をかけるべきか和平構築を目指すべきかで、両者の認識は大きく食い違っている)。 もう一つの対立軸は、神聖トランガーヌとの関係である。グレンやファルクは聖印教会の信徒である以上、教皇ハウルから「枢機卿」の称号を賜っている神聖トランガーヌとの交戦は望んでいない。グレンもファルクも、神聖トランガーヌの主力を担う日輪宣教団の掲げる過激な「混沌撲滅思想(魔法師や邪紋使いの存在そのものを許さない姿勢)」には批判的ではあるが、それでも「教皇庁のお墨付き」を得ている彼等と戦うことは、自領内の信者達の動揺を誘うため、なんとしても避けたいというのが本音であった。これに対して、実利主義者のケネスは昔から聖印教会の存在そのものを嫌っており、彼の中では神聖トランガーヌはアントリア以上に危険な「狂信者集団」である。だからこそ、神聖トランガーヌとの共存という選択肢は彼の中ではありえない。 つまり、端的にまとめると、ケネス派(ゴーバン派/反体制派)はアントリアに対しても神聖トランガーヌに対しても「主戦派」であり、グレン派(ワトホート派/体制派)はどちらに対しても「和平派」、ということになる(なお、もう一つの新興国家であるグリースに対しては、どちらも今のところ友好的な態度を示してはいるが、グリース子爵ゲオルグ・ルードヴィッヒに対しては「得体の知れない野心家」という評判もあり、全面的な信頼を寄せるには至っていない)。だからこそ、どちらも自分達が信じる「正しい道」へとこの国を導くために、この機に自分達が今後の外交の主導権を掌握する必要があると考えているのである。 とはいえ、互いに相手を殲滅するまで争いを続ける気はない。どこかで「落とし所」を探らねばならないことは分かっている。その上で、ケネスの中では、グレンとファルクを見比べた場合、まだファルクの方が「話が分かる男」だと認識している。グレンは(日輪宣教団ほど過激な教義解釈ではないにしても)信仰心が強い敬虔な信者であると言われているのに対し、ファルクは父が熱心な聖印教会の信者であったが故にその地盤を引き継ぐことになっただけで、彼自身はそこまで熱心な信徒ではないというのが、ケネスを初めとする多くの者達の認識であった。 「今のこの状況で、グレンの発言権を今のままにしておくことは看過出来ん」 「それについては、今後また色々と考えていく必要があるでしょう」 ファルクはそう言ってケネスの主張を軽く受け流しつつ、「この場における本題」へと議題を移行させる。 「私としては、縁談を進めること自体は望ましいと考えているのですが、せっかく戻られたレア様をいつまでも御厄介にして頂く訳にもいきませんので、ドラグボロゥにお連れ帰らせて頂こうと思うのですが」 予想通りの要求に対して、ケネスも率直に返す。 「我々としては、レア姫様に対しては何の悪感情もないが、こちらもワトホートを反逆者として名指しで批判している以上、そう易々とお返しする訳にはいかない」 あくまでもそれが「建前論」であることを匂わせつつ、そう答えたケネスであったが、ここでファルクは想定外の行動に出る。 「そう仰るであろうと思い、こちらも交換条件を用意しておきました」 そう言って、彼は持参した巨大な袋を開ける。その中から現れたのは、豪奢な装飾を施された一振りの大剣であった。 (!?) それを目の当たりにしたこの場にいる者は、全員驚愕の表情を浮かべた。彼等は皆、その大剣の名を知っている。それは四百年前に 英雄王エルムンドが用いたと言われる「宝剣ヴィルスラグ」であった。エルムンドの死後、それは長子シャルプへと受け継がれ、代々ヴァレフール伯爵家の家宝として継承されている。言わば、伯爵位後継者の証とも言うべき存在である。 「ヴィルスラグか……。随分と私の身を高く評価してくれているようだな」 「レア」がそう呟くと、ファルクはその剣を掲げながらケネスに告げる。 「そちらが『レア姫とゴーバン殿の御婚約』を御望みというのであれば、当方としては、こちらをゴーバン殿下にお預けしたいと考えております。ただし、これはゴーバン殿下自身に私がお渡しすることが条件です」 さすがにこの提案に対しては、ケネスも面食らった表情を見せつつ、慎重に言葉を選びながら答える。 「しかし、殿下はまだ年少の身。幼い殿下にいきなりそこまでの代物をお渡しするというのは、いかがなものか」 「とはいえ、ワトホート様は現在、ご承知の通り、いつ御倒れになられるか分からない身。ゴーバン殿を後継者になさるということは、いつ実際に伯爵位を継ぐことになってもおかしくない立場になる、ということです。現在難局を迎えているこのヴァレフールの国主を選ぶにあたって、この剣を預けることすら出来ないような方を、後継者として認める訳にはいきません。もっとも、もし『ワトホート様の病状を全快出来るような手段』があるのであれば、まだしばらくゴーバン殿が継承する必要性が発生しなくなるので、また話は変わってくるのですが」 ファルクは、ケネス側が「ワトホートの体質を治せる薬」を所有しているであろうことを暗示しつつ(この薬についてはブレトランドの英霊6を参照)、そう主張する。これに対してケネスは少し迷いつつも、トオヤに対してこう告げた。 「……殿下をこの場にお呼びせよ」 「分かりました」 そう言って、トオヤは応接室を出て、ゴーバンがいると思しき彼の私室へと向かう。 2.4. もう一つの縁談 「あのトオヤは、祖父としての贔屓目もあるかもしれぬが、非常に信頼出来る男でな。どうしてもレア姫を連れ帰るというのであれば、奴を護衛として連れていくのはいかがかな? どうやら姫様は、パンドラと思しき者達に狙われているらしい。腕利きの身辺警護は必要であろう」 ケネスがファルクにそう問いかけたのに対して、レアが割って入る。 「それは私の方からも同意しよう。何分、数年この国から離れていた身だ。信頼出来る部下というものは多くない。そんな中で、この地に向かう船の中で私の身を守ってくれたトオヤは、十分に信頼出来る存在だ。護衛としては申し分なかろう」 「それはそれで、当方としても構いません」 ファルクは淡々とそう答える。ケネスに何か「裏の思惑」があることは推察出来たが、レアがそれを望んでいるのであれば、それをあえてこの場で否定して話をこじれさせるのは得策ではないと判断したのであろう。 そんなファルクに対して、ケネスは唐突に本題から大きくそれた話題を持ち出す。 「ところでファルク殿、貴殿はまだ独り身であったな?」 「はい」 「貴殿は聖印教会に義理立てをして、未だ契約魔法師もおらぬ身だが、貴殿の教義解釈として、契約魔法師ではないにせよ、『女性の魔法師』と婚姻を結ぶというのは、教義に反することになるのであろうか?」 唐突な申し出に、その場にいる者達が全員困惑する中、ケネスは気にせず話を続ける。 「たとえば、そこのチシャはトオヤの契約魔法師なのだが、トオヤが『そちら側』に出向するということになれば、必然的に彼女もついて行くことになるだろう。一つの選択肢として、彼女をトオヤと契約させたまま、一人の女性として貴殿が妻に娶るということは可能かな?」 いきなり名指しされたチシャは動揺を必死に隠しつつ、どう反応すれば良いかも分からないまま黙っている。 「非常にもったいなき申し出でありますが、大事なお孫さんとの縁談ともなれば、そう易々と二つ返事で決めて良いことではありません」 「そうだな。こやつも、ヴァレフール中の女共から送られてくる刺客達を跳ね除けるだけの覚悟があるかどうかは分からんしな」 やや品のない笑みを浮かべながらチシャへと視線を向けたケネスに対して、チシャは内心複雑なまま愛想笑いを浮かべる。そんなやり取りを見せられたカーラは内心で頭を抱えていたが、一方で彼女にはもう一つ、先刻から気になっていることがあった。 それは、ファルクが手にしている「宝剣ヴィルスラグ」である。剣としての形状そのものは全く異なるものの、その鞘や柄の装飾部分からは、どことなく「カーラの本体」と似た雰囲気が醸し出されており、そんな剣に対して、カーラはどこか「不思議な懐かしさ」を感じていたのである。それはまるで、遥か昔に自分とこのヴィルスラグが「親しい関係」にあったかのような、なんとも言えない感覚であり、カーラは思わずその宝剣に対して自分が手を出しそうになるのを、必死に理性で堪えていた。 2.5. 「決める側」の責務 応接室でそのような「戯れ話」が繰り広げられている間に、トオヤがゴーバンの部屋に到着すると、そこには家庭教師の話を退屈そうに聞き流しているゴーバンの姿があった。 「お、トオヤ! 爺さんとの話、終わったのか?」 「いや、まだ終わってはいないんだが、とりあえず、お前をお呼びだ。ついて来てくれ」 「そっか。まぁ、あんまり難しい話をされてもよく分からないんだけど、行かない訳にはいかないよな」 ゴーバンは内心、勉強をサボる口実が出来たことを喜びつつ、トオヤと共に応接室へと向かう。その途上で、トオヤはゴーバンに対して問いかけた。 「お前、将来のこと、考えたことあるか?」 「俺がこの国を継ぐんだろ? で、お前が騎士団長になって、俺と一緒にこの国を支える。爺さんはそう言ってたぞ」 「じゃあ、お前が王様になったとして、何がしたい?」 「そうだなぁ……、とりあえず、悪い奴を倒したいな」 「悪い奴? それは誰だ?」 「この世界に混沌を広げる奴等さ。混沌のせいで、この世界はおかしくなったんだろ? 俺の力はその混沌を浄化するためにある。実際、まだこの国のあちこちに、人間を困らせている混沌は沢山いるからな。あ、もちろん、混沌が全部悪いとは思ってないし、お前んとこのアイツを浄化しようとは思ってないぞ」 「当たり前だ。もしお前がそんなことをしようものなら、俺とお前で泥沼の戦いを繰り広げることになるからな」 ゴーバンの聖印は「混沌」以外の対象に対しては有効な攻撃手段を持たない。一方で、トオヤの聖印はそもそも攻撃手段を殆ど持たない。故に、聖印の相性的に、この二人が争っても、おそらく決着はつかないだろう。そのことはゴーバン自身もなんとなく自覚した上で、彼はそのまま話を続ける。 「正直、アントリアがどうとか、トランガーヌがどうとか、その辺のことは俺はよく分からない。もちろん、この国に攻めて来るっていうなら倒さなきゃいけないんだろうけど、誰が敵で誰が味方なのかが分からなくなった時は、お前に聞く。それでいいだろ?」 「あぁ、俺も出来る限りの助言はしよう。だがな、ゴーバン、俺達君主は、この世界の方針を『決める側』の人間だ。そのためには、誰かを頼ってちゃいけない。自分で判断しなきゃいけないことも沢山あるだろう。俺も今はそれで苦しんでるところではあるんだが……、苦手だからと言って、それを全部俺にぶん投げるのはどうかと思うぞ」 「まぁ……、そうかもな……」 「それに、これは忘れちゃいけないことだが、君主にとって忘れちゃいけないのは、聖印の力だけじゃないんだよ。たとえば今のお前は、国際情勢とか、言われてもよく分からないだろう? そのことに関して、必死に学んでいく姿勢が大事なんだ。それが本当に強い奴ってことだ」 「なるほどな……」 「まだよく分からないかもしれないが、そのことだけは忘れないでくれ」 トオヤのその言葉に対して、ゴーバンは少し考え込んだ表情を浮かべながら、彼と共に歩を進める。トオヤも、まだ11歳のゴーバンにそこまで求めるのが酷であることは分かっていたが、それでも、ゴーバンが「この国を支える王を目指す」という志を掲げる以上、それは避けては通れぬ道だということを理解してほしいと、切に願っていた。 2.6. 王子と宝剣 やがて二人が応接室に到着すると、ファルクがゴーバンに対して一礼する。 「ゴーバン殿下、お久しぶりです。今、殿下の将来について、ケネス様と色々とお話をしていたのですが……」 ファルクはここで一呼吸置いた上で、一瞬レアに視線を移しつつ話を続ける。 「ゴーバン殿下には、そちらのレア姫様と御結婚して頂いた上で、この国を共に統治して頂きたい、と我々は考えております」 「えぇ〜? レア姉ちゃんとぉ〜?」 露骨に嫌そうな顔を浮かべるゴーバンに対して、その場の空気は一瞬凍りつき、当の「レア」は苦笑を浮かべる。 「随分と嫌われたものだね」 ファルクはその空気を消し去るために、あえてその反応を無視して話を続ける。 「もちろん、今すぐという訳ではありません。将来の話です。その上で、結納品として、こちらの宝剣ヴィルスラグを殿下にお預けしたいと思います」 そう言って彼がその手に握っていた「豪奢な装飾の大剣」をゴーバンの前に差し出すと、それまでうんざりしていた彼の目は急に輝き出した。 「え? マジ? ホント? ホントにくれるの!? それ!?」 ある意味で「子供らしい、予想通りの反応」を目の当たりにさせられたトオヤ達が思わず目を合わせる中、ゴーバンはカーラに視線を向ける。 「これがあれば、お前とも対等に戦えるよな!?」 「えぇぇぇぇ?」 「や〜め〜ろ〜!」 思わずトオヤが(公的な場に似つかわしくない態度で)そう言って割って入る。 「そこまでして私と手合わせがしたんですか、あなたは!?」 カーラがそう言いながら、トオヤの影に隠れようとするのを横目に見つつ、呆れた表情の「レア」が呟く。 「さて、どうしたものかな……。ファルク、ケネス、見ての通り、ゴーバン殿にはこの話は少し早いのではないか?」 そう言われたファルクであったが、彼は表情を崩さぬまま淡々と答える。 「そうかもしれません。しかし、これくらいの代物を提示しなければ、こちらの誠意も通じないでしょう。かと言って、ケネス殿に預けるという訳にもいかない。これは『伯爵位の後継者』のみが扱うことを許された宝剣ですから」 その主張には確かに一定の筋が通っている。とはいえ、ケネスとしてもいきなりの提案に対して、まだ即答出来るほど考えはまとまっていなかった。 「分かった。前向きに検討はしたいが、こちらも考える時間が必要だ。ひとまず今日のところは長旅でお疲れであろうから、この城で御滞在くだされ。こちらも、なるべく早く返答を考える」 「分かりました」 ファルクはそう言うと、一旦、宝剣を袋に戻した上で、部屋の外に待機していた衛兵によって、客室へと案内される。カーラが複雑な顔で、ファルクと共に部屋から消えていくヴィルスラグを眺めている一方で、ゴーバンは不服そうな顔を浮かべる。 「え? それ、くれるんじゃないの? くれるんじゃないのかよ?」 「だから、お前はもう少し落ち着きを学べ!」 トオヤにそう諭されるゴーバンを目の当たりにしながら、カーラは彼と手合わせせずに済んだことに安堵しつつも、ヴィルスラグに対して抱いた自分の中での「不思議な感情」の正体が分からぬまま、どんな顔をすれば良いのか分からない様子であった。 そんな中、ケネスがおもむろに口を開く。 「トオヤ、お前と二人で話がしたい」 「私は構いませんが……」 彼がそう言って周囲を見渡すと、真っ先に「レア」が頷く。 「では、私達は席を外すことにしよう」 そう言ってレア、チシャ、カーラの三人は、ゴーバンと共に退室するのであった。 2.7. 投影島の正体 「さて、お前にもそろそろ現実の政治というものを分かってもらわないといかんからな」 ケネスはそう言って話を切り出そうとすると、それを遮るようにトオヤが問いかけた。 「その前に一つ確認したいんだが、俺がいない間に何か話をしていたか?」 この部屋が「レア」を交えた「公の場」ではなく、「祖父と孫」の私的空間へと変わったことで、トオヤの口調は従来の「祖父に対する態度」に戻っていた。 「話? あぁ、それほど大したことは話していない。とりあえず、レア姫様を向こうに返すのであれば、護衛としてお前をついて行かせるのはどうか、という話をしていたのだ」 「あぁ、なるほど」 それについてはトオヤにとっても願ったりな話なので、特に異論はない。 「それと、戯れ程度にだがな。ファルク殿に『チシャをもらってくれんか?』と持ちかけてみたのだが、軽く受け流された」 そう言われたトオヤは、露骨に動揺して咳き込み始めるが、どうにか堪えつつ、平静を保とうとする。 「そ、そうか……」 「まぁ、契約魔法師がいきなり手元からいなくなったらお前も困るだろうが、あの男は味方に引き入れる必要がある。逆に言えば、あの男さえこちらに引き込めれば、事態は一気に好転する。そのための選択肢の一つだと思っていたのだがな」 ケネスはそう言った上で、話の本題へと移行する。彼は「レア姫」を前にした状態で話せなかった「誘拐未遂事件」と「海域調査」の真相について語り始める。 ****** トオヤも想定していた通り、ローズモンドからブレトランドへと向かう船の中で、トオヤ達が最初に倒した「ならず者達」は、ケネスによって仕込まれた傭兵達である。彼等はケネスの命令で「姫の侍従の者達を殺した上で、姫をさらう素振りを見せつつトオヤ達と程々に戦い、最後は海へと飛び込んで逃げ伸びろ」と命じられていた。そして「ヴァルスの蜘蛛から誘拐計画の話を聞いた」というケネスの話自体も、ただの方便である。 だが、「蝿男」に関してはケネスにとって全くの想定外の存在であった。おそらく、クリステルがトオヤに伝えようとした「よからぬ者達」とは、こちらのことだろう。もっとも、なぜ彼女がこの情報を彼等に伝えようとしたのかは不明であるし、それがヴァルスの蜘蛛自体の意図なのか、あるいは他の誰かの意志によって伝えられたのかも分からない。 そして、トオヤ達を回収する予定であった巡回戦を破壊したのも、その蝿男の仕業らしい。状況から察するに、おそらくトオヤ達に撃退されて飛び去った後、(意図的か偶発的かは分からないが)巡回船と遭遇し、交戦の末に破壊するに至ったようである。ケネスはこの巡回船との連絡が途絶えた時点で異変を察して別の調査船を該当海域へと派遣した結果、今まで危険区域だと思って立ち入らなかった海域に「巨大な島」を発見したという報を受け、海軍の主力部隊を率いて、自らその海域に乗り込むことになったのである。 そんな彼等に対して、その「島」から一隻の「異界の軍船」が出現し、ケネス達に交渉を持ちかけてきた。その軍船に乗っていた「島の代表者」と名乗る人物は「ここから立ち去れ。ここから立ち去るならば、我々は危害を加える気はない」と通達した上で、自分達のことを「パンドラ楽園派」と称していたという。 その人物曰く、「楽園派」とは、望まずしてこの世界に出現してしまった投影体達が、自分達の居場所を求めて結成した組織らしい。その意味で、パンドラの一員ではあるが、魔法師ではなく投影体が主体という時点で、明らかに他のパンドラとは異質な存在であるが、他のパンドラの諸派閥とも協力関係にあるという(ただし、その「代表者」の見た目は、普通の人間であった)。彼等は自分達にとっての「楽園」を築くために「異界の島」をあの海域に投影させたらしい。その上で、彼等は自分達に干渉しない勢力と交戦するつもりはなく、あくまでも「住み分け」という形での相互不干渉を望んでいるという。 一方、「レア」を攫おうとした蝿男は、パンドラの中でも「新世界派」と呼ばれる「最もラディカルな派閥」の一員であると、その楽園派の者達は主張していた(この点に関してはクリステルが事前にトオヤ達に伝えた情報とも一致する)。あの時、作戦に失敗した蝿男は、同じパンドラの「同胞」である楽園派の島へと逃げ込んでいたらしい。 つまり、この時点において、あの島の主である楽園派の面々が「相互不干渉」を訴えたところで、明確にヴァレフールに対して敵対行為を示した「新世界派」の蝿男を匿っている限りにおいては、ケネスから見れば言行不一致と言わざるを得ない。ケネスとしては、先日の騒動で「パンドラ革命派」に完敗して威信を失墜させていたこともあり、ここでパンドラに対して弱腰を見せる訳にもいかなかい以上、頑として「巡回船を破壊した人物の身柄引き渡し」を要求し続けた。 そして長時間に渡る交渉の末、最終的に楽園派は「蝿男の首」をケネスの前に差し出してきた上で、こう言った。 「こいつはお前達の手で倒した、ということでいいな?」 楽園派としては、今の時点でヴァレフールと敵対するつもりはないが、表向きは新世界派とも協力関係を結んでいる手前、自分達が蝿男を処断したと公言する訳にはいかないが故に、このような形で「互いの顔を立てる裏工作」を選んだらしい。この「(他派閥とはいえ)仲間を切り捨ててでも衝突を避ける」という彼等の選択を目の当たりにしたケネスは、彼等が本気で「相互不干渉」を求めていることを理解し、今後、彼等の海域には立ち入らないことを約束した上で、この首を持ってアキレスへと寄港した。 ケネスとしても、現状でこれ以上「敵」を増やす余裕はない以上、今の彼にとっては実質的にこれが最良手であった。無論、パンドラの一派との間で密約を結んだという情報を公にする訳にはいかない以上、この情報は門外不出である。 ****** 「新世界派が何を思ってレア姫を誘拐しようとしたのかは分からん。それは、楽園派の連中も分からんと言っていた。まぁ、本当かどうかは知らないがな。ともあれ、あの島の連中には今後一切関わるな。こちらもパンドラにハンフリーを殺されたことへの恨みはあるが、今の我々には、もう奴等と関わっている余裕はない」 一通り話し終わった上でトオヤに対してそう告げると、トオヤは静かに答えた。 「そうですか」 いつの間にか彼は先刻までの「淡々とした口調」に戻っていた。想定以上に「重い話」を聞かされた彼は、今のこの場が「祖父と孫の私的空間」では済まない、一種の「高度な政治的取引の領域」であることを理解した上で、無意識のうちに「本音を押し殺した表層的な対応」へと戻っていたのであろう。 「さて、その上でどうするか、なのだが、『楽園派』の者達が手を出して来ないにしても、『新世界派』の奴等が再びレア姫を狙ってくる可能性がある。まぁ、私としては、別に彼女が殺されるなら殺されるでもかまわんのだが、お前としては、そうは思ってないのだろう?」 「それは、まぁ……」 つとめて平静を装いながら、トオヤはそう答える。 「ならば、お前の手で彼女を守ってやればいい」 その言い分に対して、トオヤは黙って頷く。なお、この状況においても、トオヤは「蝿音がレアと間違えてチシャとカーラを攫おうとしたこと」については、ケネスには告げていない。もし、ケネスがまだこれ以上の情報を隠し持っているとすれば、このことについて相談することで何か真相を知る手がかりが得られるかもしれないが、そこまで腹を割って話せるほど、トオヤは祖父のことを出来ずにいた。 「さて、その上で、先刻のファルクからの申し出についてだが、受け入れて良いと思うか?」 そう問われたトオヤは、淡々とした口調のまま、思うところを率直に答える。 「私としては、正直、微妙だと思っています。宝剣は確かに本物かもしれませんが、宝剣がこちらの手にあったところで、それが何だと言われればそれまでです。向こうとしては、何が何でもレア姫様の身柄を抑えたいのでしょう。ならば、それにわざわざ乗ってやる必要はないのでは?」 「では、この話は断るべきだと?」 「もう少し、お茶を濁してみるべきかと。もうしばらくすれば、また情勢が動くかもしれません。それを見た上で決断しても良いかと」 確かに、パンドラの動きも含めて、ここ数日で様々な状況の変化がありすぎた。今の時点で即決することが正しいかどうかは、判断が難しいところだろう。 「なるほどな。だが、これだけは言っておこう。宝剣は確かに、ただの象徴だ。それ以外にどれほどの力があるのかは分からん。だが、象徴の力は侮れん。人は『分かりやすい英雄譚』を好む。そもそもなぜこの国は今まで『英雄王エルムンドの末裔』を後継者としてきたのか。そこに合理的理由はない。そこにあるのはロマンだ。『英雄王の血を引く者もまた英雄である』という、ただの非合理的なロマンにすぎない。しかし、ロマンこそが大衆の心を惹きつける。その意味では『英雄王の剣の後継者』という肩書きも、十分すぎるほどのロマンなのだ。私は合理主義者だと思われているが、『理』だけで世の中が動く訳ではない、ということが理解出来なければ、本当の意味での合理主義者とは言えない」 「確かに、お爺様の言う通りの面があるとは思います。とはいえ今、私達の陣営は苦しい。今の民に『英雄』を崇めるだけの精神的余裕があるでしょうか? それとも、このような時代だからこそ、『英雄』が必要だと仰るのですか?」 「そうだ。このような状況だからこそ、大衆の心を支える『英雄』が必要なのだ。とはいえ、いずれにせよ、熟考すべき問題ではあるとは私も思う。ひとまず、もう少しファルクをこちらに留めた上で考えてみるか。どの道、ファルクがここにいる間は、向こうも軍は動かせんだろう」 そこまで言った上で、ファルクはふと思い出したかのように呟く。 「まずはヴィルスラグが本物かどうかを確認する必要もあるしな。それについてはガフにでも確認させてみると良いだろう。おそらく奴が今、この国では一番の『武具の目利き』だからな」 それについてはトオヤも同意した上で、ひとまずトオヤとケネスの「非公式協議」は一旦終着し、二人は部屋を後にした。ここから彼等は、それぞれに複雑な想いを抱きながら、この厄介な難局を乗り越えるための方策をそれぞれに思案することになる。 2.8. 王子と「王女」 一方、一足先に応接室を後にしていた「レア」は、廊下に出たところで、「従弟」にして「未来の夫候補」であるゴーバンに声をかけていた。 「ゴーバン、少しいいかな?」 「……なんだよ?」 「私も君と二人で話がしたいんだ」 そう言われたゴーバンは、気まずそうな表情を浮かべつつ、「レア」に与えられた客室へと招き入れられる。チシャとカーラは、ひとまずこの場は空気を読んで、その部屋の外で待機することにした。 「ゴーバン、さっきの話、どう思う? 私が君の結婚相手と聞いて、随分不満そうだったじゃないか」 「だって、レア姉ちゃん、トオヤのこと好きだろ?」 直球でそう切り返してきたゴーバンに対して、「レア」は興味深そうな笑みを浮かべる。 「……へぇ、私を取ったら、トオヤに怒られるとでも?」 「怒られるっていうかなんていうかさぁ、正直、俺、まだ好きとか嫌いとかよく分からないけど、『他の男が好きな女』と結婚するっていうのは、さすがになぁ、色々めんどくさいことになりそうだし……」 ゴーバンは目線をそらしながらそう答える。実際、ゴーバンは「レア」のことが嫌いな訳ではない。だが、子供ならではの直感力で、彼は昔から「レアねーちゃんは、トオヤにーちゃんのことが好き」だと認識していたのである(もっとも、彼にそう感じさせていたのが「本物のレア」なのかどうかは、彼は知る由もない)。 「なるほど。でも、君はヴァレフールの統治者になるんだよね?」 「ま、そうだな。それが俺の使命だと、亡き父上からも爺さんからも言われてる」 「そのためにはどうすればいいと思う? 私と結婚せずに、どうやってそれを皆に認めさせる?」 ゴーバンも、自分とレアがどちらも後継者候補として推されていることは知っている。自分の方が正統な後継者だと周囲の者達は言っているが、それを認めない人々がいて、それが争いの種になっているという程度のことは、彼も認識していた。 「うーん……、そっか、それは俺が考えなきゃいけないんだよな……」 先刻のトオヤとの会話を思い出しながら、彼は必死で考える。 「……とりあえず、俺が『誰もが認める君主』になればいいんじゃないかな。お前の父ちゃんは、今の俺じゃダメだと思ってるから、俺が継ぐのを反対してるんだろ?」 「そうかもね。昔、お父さんが言ってたことがあるんだけどね。『トイバルにもう少し思慮があったら、伯爵位を譲ってあげてもよかった』って。別にあの人は、自分が伯爵であることにも、娘がその後を継ぐことにも、そこまでこだわりはないんじゃないかな。でも、今の時点で、私を次の伯爵にしたい人達も確かにいるんだよね、グレンのお爺さんとか。そういう人達を一番簡単に納得させる方法は……、君が私を殺すことだよ」 「何言い出すんだよ!」 唐突な突拍子もない助言に対して、思わずゴーバンは声を荒げる。 「私よりこの国を上手く導けるという自信があるんだったら、そうしなきゃいけない時がくるかもしれない」 「そうかもしれないけど……、でも、俺、トオヤのこと嫌いじゃないんだよな……」 どうやら彼は「レアが死ぬこと」よりも、「レアが死ぬことでトオヤが悲しむこと」が嫌らしい。その言い分に思わず「レア」は苦笑させられる一方で、ゴーバンは何かを吹っ切ったような顔で再び口を開く。 「まぁ、とりあえず、俺も色々考えるよ。確かに、俺、頭は良くないかもしれないけどさ。分からないなら分からないなりに考えるのが、君主の仕事なんだろ?」 「そうだね。うん、面白い話を聞けたよ。確かに君主には、そういうことを決めなきゃいけない時が、きっと来るのさ。でも、君は少し『違う』気がするんだよね……。国を守れるのは『王』だけじゃないんだよ。だからさ、私と結婚するにしたって、それを焦ってほしくはないんだ。君は君に出来ることを、ゆっくりと決めていってほしい」 「あぁ、そうだな……」 「レア」が何を言わんとしているのかはよく理解出来ないまま、それでもなんとなく理解したような気分になった状態で、ゴーバンは彼女の部屋を立ち去って行った。 2.9. 当惑する少女達 「レア」の客室でそんな話が繰り広げられている間に、扉の外で待機していたチシャは、先刻の応接室での光景を思い出しながら、ふとカーラに問いかけた。 「さっき、ファルク様が持ってたヴィルスラグを随分熱心に見てたみたいだけど、やっぱり、『武器のオルガノン』として、何か思うところがあったりする?」 そう言われたカーラは、どう話せば伝わるのかと思案しながら、訥々と話し始める。 「いや、オルガノンとしてというよりも……、ボクは五年前まで封印されてて、その前のことは分からない、ということは知ってるよね?」 「もちろん」 「その前に会ったことがあるかもしれないというか、なんか懐かしい気がするんだよ……」 「会ったことが?」 「『剣と会う』ってのが、おかしい言い方だってことは分かってるんだよ、ボクも。でも、ボク自身も剣だから、会うっていうおかしな表現になってしまった訳で……。多分、『使い手が同じだった』とか、『一緒にいる時期が多かった』とか、そんなような関係だと思う。なんというか、とても懐かしい気がしたんだ……」 「とすると、カーラも相当特別な剣なのかな。もし許せば、もう少しヴィルスラグを調べたいところだけど……」 「癪だけど、あの『商人兼傭兵頭の人』に聞いてみるのもいいかもしれない。もし、作られた工房が同じとかだったら、見抜いてくれるかもしれないし。でも、さすがにあれが投影体ってことはないと思うんだけどね……」 宝剣ヴィルスラグの由来については、正確な話は伝わっていない。「岩に刺さっていたのをエルムンドが引き抜いた」「泉の妖精から賜った」「エルムンド自身の聖印から生まれた」「元来はファーストロード・レオンの剣であった」など、様々な説が並存する。当然、異界の剣である可能性も十分に考えられるのであるが、ヴァレフール内にも一定勢力を持つ聖印教会派の中にはその説を頑として否定する者も多く、定説が確立されるには至っていない。 「一応、その可能性も頭にいれておいても良さそうかもしれないね。うん、ありがとう」 「ボクも正直、混乱してるというか、割と動揺してるかな……。突然のことだったし……」 二人がそんな会話を交わしているところに、非公式会談を終えたトオヤが現れた。彼は複雑な表情を浮かべながら、チシャに問いかける。 「さっき、お爺様から聞いたんだけど……、チシャ、結婚するの?」 いきなり「突拍子もない話」をもう一度掘り返されたチシャは、動揺した表情で答える。 「お、お爺様の戯れだと思いますよ、さすがに、えぇ……」 「だよね。急にいなくなられると困る、うん」 極度の緊張感から解放されたせいか、トオヤの語り口は無意識のうちに、先刻までとは一転した少年じみた「素の口調」になっている。 「私も出来れば、トオヤの元を離れたくないと思っているので」 それは契約魔法師としてのチシャの矜持でもあるし、従姉としての親族愛でもある。そう言ってもらえたことで、トオヤもようやく安堵した表情を浮かべた。 「いつも迷惑をかけてるけど、頼りにしてるんだ」 「えぇ。正直、私もファルク様に憧れているところはありますけど、結婚しろと言われると、またそれは違う気がするんですよね……」 「国中の女君主、女魔法師、女邪紋使いを敵に回すことになるからね」 そう言って互いに笑い合う二人であったが、実は一番恐ろしい「敵」は国の外(メガエラ)にいるということを、彼等はまだ知らない(その詳細はブレトランドの英霊1を参照)。 やがて、「レア」の客室からゴーバンが出てくるが、あえてトオヤ達はここでは彼とは会話を交わさぬまま別れ、再び「レア」と合流した上で、今後の方針について話し合う。そして「ガフによるヴィルスラグの鑑定」の必要性をケネスも感じているということを知ったカーラは、トオヤ達と共にその場に立ち会うという方針で合意することになった。 3.1. 宝剣鑑定 翌日、トオヤ達四人はファルクをガフの自宅へと案内し、ヴィルスラグを彼の前に提示させる。「宝剣」と称される剣を目の当たりにしたガフは、思わずため息を漏らした。 「これがヴィルスラグ……、そもそも過去に「実物」を見たことがない以上、ヴィルスラグの本物であると断言することは俺には出来ないが、明らかに『ただの剣』ではないことは分かる」 「では、贋作ではない、ということは信じてもらえますか?」 ファルクにそう問われると、ガフは鋭い視線で剣身を凝視しながら答えた。 「あぁ。贋作には贋作の『匂い』がある。無論、世の中には偶然似たような形状の剣が作られることもあるが、『偶然似たものが生まれた時』と『あえて似せようと思って作った時』では、明らかにそこから感じられるオーラが違うんだ。その意味では、この剣からは『贋作のオーラ』は全く感じない。これがヴィルスラグかどうかは分からないが、少なくとも、これまで世界各地で見てきたどんな聖剣、宝剣、魔剣の類いよりも、強力な『何か』を感じる……」 そこまで語ったところで、ガフはふと思い出したかのように、カーラを見ながら呟いた。 「そういえば、『あんた』にも少し似てるな、この剣。形状だけでなく、そこに込められた何か、よく分からないが……」 「オルガノンのボクと、その宝剣が?」 そのやりとりの最中、ファルクが一瞬、表情を歪める。それは「気付かれたくないことに気付かれた時の表情」であったが、そのことに気付いたのは「レア」だけだった。 「では、これが本物で間違いない、ということでよろしいですね」 そう言いながら、ファルクは粛々とヴィルスラグを再び袋に収納する。その上で、ファルクは「結論が出るまで滞在が必要ならばこの地に残る」と言い残した上で、再び客室へと戻って行った。そんな彼を見送りながら、「レア」は黙って思案を巡らせる。そんな彼女の表情を目の当たりにしたトオヤが、思わず声をかける。 「レア姫、何か浮かない顔をしているようだが?」 「……気にすることはない。自分の今後の身の振り方に関わる重要な話が出た翌日だ。少しくらい考え事をしても、バチは当たるまい」 ひとまずそう言って「レア」がごまかす一方で、カーラは先刻のガフの発言に対して、更に詳しく確認しようとする。 「『似せようとしたもの』と『偶然似てしまったもの』は違う、と言ってたけど、ボクとあの剣はどちら側だと思うかい?」 「少なくとも、『あんた』からも、『あの剣』からも、贋作の匂いはしない。あんたらが似てるのは『偶然』なのか、あるいは『別の必然』なのか……」 「作り手が一緒とか、そういう似方ではないのかい?」 「その可能性は十分にある。というか、素直に考えればその可能性が一番妥当なんだが、どうもそれだけではないような気がするんだよな。もっと根本的な何か……」 「目利きの調達屋」としてのプライドに賭けて、ガフはなんとしても結論を導き出したいと考えてはいたが、いかんせん「オルガノン」も「宝剣」もあまりに規格外すぎる存在であるため、どうにも可能性が絞りきれない。 前述の通り、四百年前にヴィルスラグがどこから現れたのか、明確な記録は残されていない。一方で、カーラには五年前にトオヤ達に発見される前までの記憶がなく、いつから「あの洞窟」の中にいたのかも分からない。また、投影体は本体が「異世界の存在」である以上、「元々いた異世界」の中では別の時代の存在だった者達が「こちらの世界」では同時に投影されることもあれば、逆に「元々いた異世界」では同じ時代だった者達が「こちらの世界」では別の時代に投影されることもある。そして、極稀にではあるが、『同じ存在』が複数同時にこの世界に投影されることもありえるとも言われている。したがって、もしヴィルスラグの正体が「投影体」であると仮定した場合、カーラとの関係性についてはほぼ無限に多様な可能性が並存することになる。 「そうか、ありがとう」 そう言って、カーラはトオヤ達と共にガフの自宅を後にして、城へと帰還する。その過程において「レア」ことパペットは、真実を確かめるために、とある「奇策」を密かに考案していたのであるが、この時点ではまだそのことには誰も気付いていなかった。 3.2. 謎の「話し声」 自室に戻ったパペットは、「レア」から「ガフ」へと姿を変えて、ファルクの部屋へと向かう。あくまでも「目利きのガフ」として、ファルクから更なる情報を聞き出すためである。だが、その「ガフ」がファルクの客室の前まで来たところで、本来はファルクしかいない筈のその部屋の中から微かに聞こえる「女性」の話し声に「ガフ」は気付いた。 「で、いつまでここに残るつもりなのか?」 それはどこか威圧的な声質であり、どう聞いても一介の侍女や召使いではない、一定の風格を感じさせる雰囲気が感じ取れた。 「彼等も考える時間は必要でしょうし、致し方ないでしょう」 そう答えたのは、明らかにファルクの声である。彼は公的な場では相手の身分に関わらず基本的に敬語で話す人物ではあるが、この時の彼の声色からは、相手に対して「相当な畏敬の念」が込められていることを「ガフ」は感じ取る。彼(?)がそのまま耳を凝らして聞いていると、再び先刻と同じ「女性の声」が聞こえた。 「それにしても、なぜ『あの子』がここにいるのか……」 「あなたは彼女を見た瞬間に、すぐにオルガノンだと分かったようですが、オルガノンには、オルガノンならではの『独特な気配』があるのでしょうか?」 「いや、特にそういう訳ではない。しかし、私が『あの子』を見忘れる筈がない。まぁ、正確に言えば『あの子』は、『オルガノン』ではないのだが……」 「どういうことですか、それは?」 「これ以上は言えない。この件に関しては、たとえワトホート様に聞かれても答える訳にはいかない」 「出すぎたことを申し上げました。いずれにせよ、彼等が決断しないことには、我々も行動出来ないのが現状です。正直なところ、私は『今回の計画』には反対だったので、話が流れてくれるのであれば、その方がありがたいのですが。あなた自身はどうなのですか? あなたの力をこのような形で使うことに、あなたは異論はないのですか?」 「私はあくまで、ただの道具。あの方の後継者のためにこの力を使う。それが私の全てだ」 ファルクと「謎の女性」の会話は、ここで途切れる。「ガフ」はここまでの話を聞いた上で、あえて少し間を空けてから扉をノックすると、すぐに中からファルクが扉を開けた。 「おや、先刻の鑑定士の方でしたか」 そう言って彼は「ガフ」を部屋の中へと招き入れる。そこにはファルク以外の人物の姿は見当たらない。ただ、そこには「ヴィルスラグ」が入っていると思しき袋が確かにあった。 「鑑定士というか、一応、本業はこっちも騎士なんだがな。まぁ、それはいい。で、ちょっと話をさせてもらっていいか?」 「なんでしょう?」 「あんたの持ってきたあの剣、普通の剣じゃないだろう? あぁ、この言い方はおかしいな。ヴィルスラグなんだから、普通の剣の筈はないんだが……」 ここで少し間を開けた上で、「ガフ」はファルクの目を凝視しながら問いかける。 「あれは、オルガノンか?」 「……ヴィルスラグの由来に関しては、様々な伝承があります。投影体だという説も無くはない。真相は未だ不明なのですが、もしかしたら、オルガノンなのかもしれませんね」 ファルクは聖印教会の一員ではあるが、投影体の有効利用に対しては柔軟な思想の持ち主である。だからこそ、なのかどうかは分からないが、はぐらかすような言い方で答えたファルクに対して、「ガフ」は更に追求する。 「ほーう。お前さんも知らないのか。だとすると、もし本当にオルガノンだったとしたら、いよいよ俺の目利きも本格的な領域にまで到達した、ってことになるな。で、結局のところ、ケネスの旦那とか、トオヤの坊ちゃんに隠してることはないんだな?」 「私は話すべきことは話しました。私が陛下から命じられたのは、このヴィルスラグを届けて、レア姫様をお連れすること。もしあなたの目から見てこのヴィルスラグが偽物だというならば、ケネス殿にそう進言して頂いても構わない。それがあなたの判断ならば」 「正直、分からねえな。本物を見たことがある訳でもねえしな」 「私も、実物を見る機会はそれほど多くはないですからね。陛下の戴冠式の時に拝見して以来です。その前は、いつだったか……」 淡々と話をそらそうとするファルクであったが、「ガフ」は更に釘を刺す。 「俺は一介の騎士で鑑定士だし、国の偉い皆様方のやることに口を出す気はねぇ。ただ、世話になっている人を騙そうっていうなら、それはちょっと気にくわねぇ。そうでないなら、別に言うことはないさ。邪魔したな、今言ったことは忘れてくれ」 「えぇ。先ほども申し上げた通り、私はあなたの目利きを信用しています。ですので、もしこのヴィルスラグが偽物だというのであれば、それは長い歴史の中で、どこかで偽物と替えられたという可能性もあるのかもしれません」 「……少なくとも、タダモノじゃねぇよ。ヴィルスラグか、あるいは『それに匹敵する価値のある何か』だ」 そう言って、「ガフ」は部屋を去って行く。そして廊下の途中で、周囲に誰もいないことを確認した上で再び「レア」の姿へと戻り、トオヤの部屋へと向かうのであった。 3.3. 宝剣を巡る仮説 その頃、トオヤの部屋ではチシャとカーラを交えた三人での、ちょっとした「お茶会」が開かれていた。 (ゴーバン様がヴィルスラグを手にしたら、ヴィルスラグと手合わせが出来るんだよな……。ゴーバン様を怪我させたくはないけど、でも、ヴィルスラグとは戦ってみたい。そうすれば、真実が分かるかもしれない……) そんな想いを抱きがなら苦悶するカーラに対して、チシャとトオヤは心配そうに声をかける。 「大丈夫ですか?」 「何か悩み事がある時は、甘いものを食べるといい」 そう言って、トオヤは一昨日の店でお土産として買ったクッキーを彼女に差し出す。すると、そこに「レア」が現れた。 「おや、ティータイムの会場はこちらかい?」 「あ、お嬢、お帰り」 「お帰りなさい」 「一体、どこへ行ってたんだ? 声をかけようと思ったら、あっという間にいなくなっていて、びっくりしたんだが」 トオヤにそう問われた「レア」は、正直に答える。 「ちょっとね、調べ物に」 「そうか」 「ガフさんの姿になって、ファルクさんの部屋に行ってきたよ」 それを聞いたカーラが、思わずお茶を吹き出す。当然、トオヤもまた驚愕の表情を浮かべた。 「バレてはいないのか?」 「バレたと思うかい?」 「その様子だと、バレてはいないようだな」 「さて、ここからが僕の手にいれてきた情報だ」 そう言って、「レア」は先刻のくだりを正確にそのまま彼等に伝える。ここまでの状況から察するに「宝剣ヴィルスラグ」の正体が実はカーラと同じ(?)オルガノンであるという仮説が、ここに来て急速に現実味を増してきたことに、彼等は驚きを隠せない。そして、その「ヴィルスラグ」と思しき女性の発言の中に出てきた「あるフレーズ」が、チシャは気になっていた。 「『あの子』ですか……」 前後の会話から察するに、それが「カーラ」であることはほぼ間違いないが、ヴィルスラグ(推定)からみて、カーラはそう呼ぶほどに親しい関係、ということらしい。 一方、トオヤは先刻の祖父との対談を思い出しながら、今回の体制派からの「不自然な提案」の真意が、ようやく掴めてきたような気がした。 「仮にヴィルスラグの正体がオルガノンだったところで、相当な価値があることは間違いないし、交渉の趣旨自体が大きく変わることはないと思う。ただ、もしヴィルスラグがカーラと同じように『人』の姿になって『自分の足』で自由に動ける存在だとすれば、交渉が成立して『姫様』を彼等が連れ帰った後に、ヴィルスラグが自力で城を抜け出して彼等の元へ戻ってしまうことも出来ることになる……」 トオヤがそう推察する傍らで、「レア」も頷く。 「そうだね。あと、この件を通じて、僕はカーラさんにすごく興味が湧いたね」 「そ、そうかい?」 突然そう言われたカーラは、少し驚いた表情を見せる。 「彼等は君のことを『オルガノンのようでオルガノンではない』と言っていた」 「うーん、それって、どういうことなんだろう? そもそも、そういう存在って、ありえるのかな?」 首を傾げるカーラに対して、トオヤと「レア」はどこか達観した表情で答える。 「混沌の引き起こす現象は理屈では測れない。何が起こるかは分からないからな」 「ま、僕もその辺の話は専門じゃないから、そんなのがいるんじゃないかと言われたら、それはそれで納得させられるさ」 「分からないものは分からない」という彼等の姿勢は、ある意味で一番の真理である。そして、それは「専門家」であるチシャにとっても同じであった。結局のところ、混沌とは元来「法則性を持たない」からこそ混沌なのであり、魔法師が「魔法」として統御出来る範囲の「法則化された混沌の作用」などというものは、この世界の混沌の中での例外的な極一部の事象にすぎないのである。 「ボクは本当に、君達に起こされる以前のことは覚えていないんだ……。不自然なほどに記憶がない……。でも、ヴィルスラグのことはなぜか『懐かしい』と思うんだ……」 なおも悩み続けるカーラに対して、トオヤが心配そうに問いかける。 「失った記憶の中で、ヴィルスラグと関わったことがある、ということか?」 「そうじゃないかとボクは思ってるよ」 「なるほど。とはいえ、別に無理に思い出すこともないさ。カーラはカーラだろ?」 「あるじ」にそう言われたカーラは、ようやく、どこかふっきれた表情を見せる。 「そうだね……。ボクはボクだ! 『あるじの剣』であることに変わりはない!」 まだ心のどこかに何か「引っかかるもの」が残った状態ではあるものの、いずれ分かる時が来ることを期待しつつ、今はひとまずそのことは考えないことにしたカーラであった。 3.4. 「武器」としての生き方 こうして、ようやくカーラが笑顔を取り戻した直後、彼女達が集まったトオヤの部屋の扉を何者かがノックする音が聞こえる。トオヤが扉を開くと、そこにいたのはファルクであった。その表情から、何か「重要な話」を切り出そうとしているように見えたトオヤは、あえて彼を(「レア」達がいる)部屋の中には入れずに、自ら廊下に出た上で、小声で話を聞くことにした。 「一つお伺いしたいのですが、あなたの従者の『黒い大剣を持った女性』、オルガノンの方とお見受けしましたが……」 「えぇ、そうですが」 「彼女とは、どこでお知り合いになられた?」 ここで唐突にこのようなことを聞かれるのは、端から見れば明らかに不自然ではあるが、先刻の「レア」の報告を聞いていたトオヤには、おそらくはそれが「あの子」の正体を確かめようとするヴィルスラグ(推定)のための聞き込み調査であることを推察する。 「これはこれで長い冒険譚となるのですが……」 トオヤはそう前置きした上で、あえて長々と「子供の頃の冒険譚」を物語仕立てで語り始める。「謎の魔法少女」のことも含めて全て事細かく説明したトオヤに対して、ファルクは最後まで集中力を切らさぬまま聴き終えた上で、ひとまず納得したような表情を浮かべる。 「なるほど。そういうことでしたか。ちなみに、彼女は今も『自分の素性』を分かっていないのですか?」 その問いに対して、トオヤはわざと話の焦点をズラして答える。 「オルガノンであるからには、おそらくヴェリア界とかいうところから来たのでは?」 「オルガノンの方々は、ヴェリア界に来る以前はどこかまた別の世界にいたものだ、という話を聞いたことがあります。と言っても、私は混沌にはあまり詳しくないのですが」 確かに、ファルクは聖印教会の信徒という立場である以上、混沌に詳しくはないだろう。そして、彼のような「混沌に詳しくない君主」は、普通は「ヴェリア界」という異界の存在自体を知らないのが一般的である。そう考えると、改めてトオヤの中での「ファルクと話していた女性」がオルガノンである可能性が高いように思えてくる。 「えぇ、彼女はどうやら記憶がないようです。しかし、なぜそれを?」 「私は聖印教会の身ですので、投影体のことはそもそもよく知りません。だからこそ、この機会に見聞を広めておきたいと思いまして」 答えになっていないと思いつつ、トオヤは彼の意図は概ね推察する。 「そうですか。では、彼女と会って行きますか? 今、中で茶会を開いているところなのですが」 そう言って、彼はファルクを部屋の中へと案内する。カーラは、従者と主人が同じ卓についているを見られるのが体面上よろしくないと思い、慌てて立ち上がった。 「先程、トオヤ殿から話を聞いたのですが、あなたはトオヤ殿に発見されたのですよね?」 「えーっと、はい、そういうことになりますね……」 正確に言えば、この場にいる「三人」に発見されたのだが、そのことはここでは大きな問題ではない。 「それ以前のことは全く覚えていないのですか?」 「そうですね……、投影されて間もなかったのでしょうか、何も覚えていることがないのです」 「なるほど。では、今のあなたの主人はトオヤ殿、ということで良いのですね?」 「えぇ、そういうことになります」 「しかし、トオヤ様はあなたのことをあくまで『従者』として扱い、『武器』としては扱っていないようですが……」 ファルクがそこから続けて何か言おうとしたところで、横からトオヤが割って入った。 「決して、『武器』として使っていない訳ではないですよ。私は守ることしか出来ない。そのために槍を持っていますが、彼女は私の代わりに『武器』として斬りかかってくれている。『二人で一人の騎士』ような存在ですよ」 「なるほど。では、あなたは、オルガノンとして、主人であるトオヤ様のために戦う今の立場で満足している、と?」 そう問われたカーラは、少し逡巡しながら訥々と答える。 「まぁ、確かに、あるじ自身の手でボクを振るってもらうにこしたことはないけど……、でもボクは自分で動いて戦うことも出来る。実際、その方があるじも出来ることが増えるだろう?」 そこまで言ったところで、思わず口調が崩れてしまっていたことに気付いたカーラが、慌てて言い直す。 「あ、いや、その、出来ることが多いでしょう?」 ファルクはそのことは気にせず、軽く微笑みを浮かべる。 「私はオルガノンの方々がどういう感覚で生きているのかはよく分かりませんが、『主人のために尽くしたい』『誰かのために尽くしたい』と考えるという意味では、実は我々人間とあまり変わらないのかもしれませんね。誰かのために尽くすことによって充実感、満足感を得るのは、我々も同じです」 その言葉に対して、カーラも納得した表情を見える。 「やっぱり、生き物として別のものでも、志は同じ、と言ってもらえると、私もこれまで、人と違うと思っていたので、安心することが出来ます。ありがとうございます」 慣れない敬語口調で必死に言葉を繋ぎながら、カーラも笑顔でそう答えた。 3.5. 事実と真実 そんな中、またしても別の来客がトオヤの部屋を訪れた。ドギの侍従長のアマンダである。と言っても、彼女はトオヤに用事があった訳ではない。 「チシャ様と二人とでお話をさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」 どうやら彼女はチシャの行方を探して、この部屋にたどり着いたらしい。チシャはトオヤに一礼した上で退室し、城内の一角にあるアマンダの小さな私室へと案内される。 「チシャ様、一つ確認したいのですが……、あなたはネネ様の行方に関して、ご存知ではありませんよね?」 「えぇ、はい」 「ネネ様から、失踪前に何か特別なことを聞かされてもいませんよね?」 「はい」 「あなた自身、今の時点でネネ様に対して、何か聞きたいことなどはありますか? 無ければ良いのですが……」 このアマンダの口ぶりからは、まるで「自分であればネネと話をつけられる」と言っているようにも聞こえるが、仮にそうだとしても、今、ここで安易にその話に乗って良いのかどうか、チシャには判断がつかなかった。 「それは……、聞きたいことはありますよ。少なくとも、なぜ何も言わずに失踪したのかは聞きたいですし……」 そんな当然と言えば当然の感慨を口にしつつも、アマンダの意図を測りかねていたチシャとしては、これ以上踏み込んだ会話を交わして良いのかどうかを迷い、そのまましばし会話が途切れる。 すると、再びアマンダが、今度は全く別の方面から切り込んできた。 「実は先刻、こちらの旦那様(ケネス)から、ただならぬ質問をされまして……。『チシャは本当にマッキーの娘なのか?』と」 もともと、マッキーの家族の中でチシャだけが目の色が違うことは周知の事実であったため、そのような「噂」は(チシャの耳に直接届くことは無かったが)あったらしい。だが、ケネスが先日の「謎の投影島の調査」から帰ってきて以来、急にそのことを強く疑い始めた様子である。もしかしたら、彼は投影島で何かチシャの出生に関わる情報に触れたのかもしれない。 「私は『そう伺っております』と答えておきました。この件に関して、あなたがネネ様から何かをお聞きしている訳ではないのですね?」 「はい、それはありません」 「では、改めてお聞きします。あなたはこれから先も、今は亡きマッキー様の御息女でありたいと思っていますか?」 その質問に対して、チシャは怪訝そうな顔を浮かべながら答える。 「えぇ、もちろん。なぜそのようなことを?」 「いえ、私はそれさえ確認出来れば満足です。あなたの今の考えが変わらないのであれば、これ以上は聞かない方がよろしいかと。旦那様は『自分の手駒として使える選択肢』が多い方がいいと考えているようですが……、私としては、あくまでもネネ様とあなた自身の考えを尊重したいと考えている。だから、あなたがマッキー様の子でありたいと考えているならば、それが『私の中での真実』です」 「そうですね……、『両親』を裏切ってまでどうこうしようという気はありません。私は、マッキーの子です」 血縁の真実がどうであれ、実際に「父親」としてチシャを育てたのは紛れもなくマッキーである。不倫疑惑からトオヤに対して父親として接しきれなかったレオンとは異なり、マッキーは若くして病死するまで一貫してチシャに対して「父親」としての愛情を注ぎ続けた。その彼が「実の父親ではない」と言われたところで、チシャにとっては「血縁上の父親」以上に彼の存在の方が大切であったという事実は変えようがない。 「分かりました。では、それを『私の中での真実』として、これから先も私は生きていきます」 アマンダはそう言い残して、侍従長としての仕事に戻り、チシャも自分の客室へと帰った。アマンダの反応から、改めて自分の出生への疑惑は強まったものの、今はそのことに対して、自ら詮索する気にはなれなかった。 3.6. 聖騎士達の想い 一方、チシャが退室したのとほぼ同時に、ファルクもまたトオヤの部屋を出て自室へと戻ろうとするが、トオヤはそんな彼に対して、改めて声をかけた。 「ファルク殿、少々よろしいですか?」 「なんでしょう?」 ファルクはやや警戒した面持ちで立ち止まり、話を聞こうとする。そんな彼に対して、トオヤは慎重な表情を浮かべながら問いかけた。 「あなたは、宝剣の代わりに姫様の身柄を王都に連れ帰るつもりのようですが、あなたはレア姫のことをどうお考えですか?」 「大変なお立場であろうとは思います。この国において、我々ワトホート様に仕える身としては、レア姫様が最後の希望の光ですから」 「そうですか……」 トオヤは少し間を開けた上で、独り言のように呟いた。 「この、分裂するに至ってしまったヴァレフールにおいて、それをまとめられる王は、誰なのでしょうね」 「私はワトホート様だと考えています。出来ることなら、あの人のご病気を直したい。そのための薬を手に入れたい。私としては、レア様のご帰還よりも、まず薬を手に入れたい。しかし、その薬の持ち主がそれを是としないのであれば、また次の選択肢を考えなければならない」 ファルクはそう言いながらトオヤの反応を伺うが、彼が「薬」という言葉に対して全く反応していないことから、トオヤが「薬」の件について何も知らされていないであろうと推測した上で、そのまま話を続ける。 「レア様とゴーバン様の婚姻だけが選択肢ではないと思っています。しかし、現状においてはそれ以上に望ましい解決策が私には思いつかない。ヴェラ様がいればまた話は変わってきますが」 仮に反体制派がワトホートの爵位継承の正統性を認めたとしても、先刻ファルク自身が言っていた通り、彼はいつ急死してもおかしくない体質である以上、「その次の後継者」は明確に定めておく必要がある。 ワトホートの長女のフィーナは現在行方不明。そして次女のレアも(トオヤ達しか知らないことだが)「本人」は行方不明の状態である。ただ、従属聖印の持ち主が死んだ場合、ワトホートにはそれが分かる筈なので、もしワトホートが「レア」がここにいると本気で信じた上でヴィルスラグまで持ち出しているのであれば、彼女が生きていることは間違いない(もっとも、その真意はまだ不明であるが)。 とはいえ、当面はパペットが影武者となってごまかすことは出来るものの、彼女(?)は邪紋使いであるため、「その時」が来た時に実際に聖印を受け取ることが出来ない。また、ワトホートほどではないにせよ、レアも微妙に身体が弱いという難点はある。王としての資質については、トオヤもファルクも5年前の彼女しか知らない以上、まだ現時点では判断しにくい。 一方、ワトホートの弟トイバルの子供達のうち、長男のゴーバンは、父譲りの「実直すぎる性格」と周囲から思われてはいるが、間近で彼の稽古の相手をしてきたトオヤから見ると、彼はまだ「子供」なだけで、それなりに周囲の助言を受け入れようとする柔軟さもある以上、これから先の成長次第では、名君となれる資質はあるのかもしれない。ただ、「トイバルの息子」というだけでワトホート側からは敬遠される可能性が高いだろう(無論、それはレアの側も同じことであるが)。 トイバルの次男のドギは最も幼いながらも勉強熱心で、賢王となれる資質はありそうだが、病弱である上に、そもそも聖印を受け取れない。歳を重ねることによってそのような体質が改善した事例も無くは無いらしいが、少なくとも今の時点では後継者候補にはなり得ない。 一方、この二人の姉であるサラは、幻想詩連合の盟主国ハルーシアの名門貴族の御曹司との婚約が決定しており、既にブレトランドを去って現地で花嫁修業中である。そんな彼女を今からでも呼び戻すことは出来なくもないが、現時点で縁談を破棄する正当な理由がない以上、その場合は実質的に「異国の貴族」が王配となる。そうなると幻想詩連合との繋がりがより一層強くなるため、グレン派としては容認しがたいだろう。 一部では最も資質に恵まれた存在とも言われていたワトホートの妹のヴェラは、臣下であるシュペルター家に降嫁した時点で本人が「私はもう伯爵家の人間ではない」と断言している上、今はテイタニアの騒動を解決するために大陸各地を放浪中の身である。どうしても他に選択肢がいなくなった場合には、帰還して後を継ぐことを本人も了承するのではないか、と期待する声もあるが、今のところ現実的な継承候補者とは言えない。 現時点で「血統」という観点から継承者としての条件を満たしているのは以上の面々である。ワトホート達の父ブラギスの兄弟達は皆早逝しており、ブラギスの父の兄弟達の末裔はいずれも縁組によって大陸諸国に点在しているため、上記の者達以外の王族の血縁者となると、かなりの遠縁となってしまう。 そして、彼等の中で誰が王としての「資質」を備えているのか、という点に関しては、年若の者達が多い以上、まだ何とも判断し難い。ただ、現実問題として諸々の諸条件に鑑みるに、実質的に「レア」と「ゴーバン」の二択となっているというのが、多くの者達の認識であった。 そのことを踏まえた上で、改めてファルクはこう言った。 「いずれにせよ、この国を立て直すために必要なのは、『治める者』だけではない。『支える者』も重要であると私は考えています」 「えぇ、それはもちろん」 「その上で、あなたはレア様とゴーバン様がもし御結婚された場合、その新体制を支えていくつもりはある、ということでよろしいのでしょうか?」 「俺は……」 しばしの沈黙の後に、改めてトオヤは答える。 「俺の役目を果たすだけです。領民やヴァレフールの国を守るだけです」 「それに関しては私も同感です。私もあなたと同じ『守る力』を神から与えられた『聖騎士の聖印』の持ち主ですから。だからこそ、早くこの争いを終わらせたい。ケネス殿にもグレン殿にも、それぞれに退けぬものはあるでしょうが、このまま続けていて良い筈がない。ただ、あなたから見て、今回の提案がその解決に繋がらないというのであれば、無理に推すつもりはありません。その場合は断って頂いて構いません」 どうやら「レア」が言っていた通り、ファルクは今回の「交換条件交渉」そのものに内心では反対しているようであるが、ひとまずそのことには触れないまま、トオヤはトオヤで自分の中での感慨を素直にそのまま述懐する。 「そうですか。正直なところを言えば、今の内乱はウチのお爺様と副団長殿の権力争いから始まった争いであり、身内の恥のようなものです。だからこそ、その二人の勝ち負け無しで終わってほしいと私は考えています。この争いが続くことで、一番苦しむのは領民達ですから」 そう言い残して、トオヤはその場を立ち去った。内乱を終わらせたいという思いは共有しながらも、その思いが微妙に噛み合わない今のこの状況に苛立ちを感じながら、それでも終わらせなければならないという強い決意を改めて胸に秘めて。 3.7. 国を背負う覚悟 この日の夜、改めてケネスがトオヤを自室へと呼び出した。契約魔法師としてのチシャと、側近としてのカーラの同席は認められたが、今回は「レア」は呼ばれなかった。おそらく彼女に聞かせたくない話なのだろう。とはいえ、出来れば直接その話を聞きたいと考えていたパペットは、あえてここで「カーラの人間体」の姿に化けた上で、「(人間体を消した状態の)カーラの本体(大剣)」を持って同席するという形で、実質的にその場に潜り込むことに成功する。 ケネスはそんな「カーラ」の正体に気付ける筈もなく、「身内」しかこの場にはいないという前提の上で、トオヤに問いかけた。 「家臣団と話し合った結果、今のところは『ファルクの出した提案に乗っても良いのではないか』という意見が多いが、お前はどう思う? 昨日の時点は乗り気ではなかったようだが、今もそう思うか?」 ケネスとしては、この提案を受け入れた上で、トオヤ達が体制派の内側に入り込むことによって様々な政治工作を施す機会が得られるのであれば、それもそれで一つの利点だと考えていたのだが、当のトオヤにその気がなければ意味がない。だからこそ、ここで彼の意思を確認する必要があったのである。 「私がこの交渉に乗り気でなかったのは、宝剣をこうも簡単に出して来ることに違和感を覚えていたからです。それに関して、あることが分かりました」 そう言って彼は、「『チシャによって呼び出された小型投影体』がファルクの部屋から盗み聞きした」という体裁で、パペットが聞いた情報をそのままケネスに伝える。 「つまり、どうやらあの宝剣はオルガノンのようなのです」 「……なるほどな」 「そうなると、宝剣を一旦こちらに預けた上で、密かに宝剣が人間体となり、この城を抜け出し、彼等の元へ戻るという算段かもしれません」 「それは『ヴィルスラグそのものが本来オルガノンだった』ということなのか、それとも『ヴィルスラグのふりをしたオルガノンをファルクが持参した』ということのか、どちらだ?」 「分かりませんが、ガフの話から判断する限り……、おそらく『もともとオルガノンだった』のではないでしょうか?」 ガフは「贋作の匂いはしない」と言っていた。もっとも、彼が「模倣して化けたオルガノン」の匂いまで識別出来るのかどうかは分からない。 「確かにな……。ヴィルスラグがオルガノンだという可能性は考えたことはなかったが、ありえない話ではない。四百年前から伝わる宝剣と言われてはいるが、そもそもオルガノンに寿命があるのかどうかも分からないしな……。その辺りはどうなのだ?」 ケネスは「カーラ」に問いかける。当然、パペットがそのようなことを知る筈がないが、ひとまずは当たり障りない回答でその場をごまかすことにした。 「今のところ、仲間のオルガノンが寿命で死んだという話を聞いたことはないです」 より正確に言えば「仲間のオルガノン」なるものがカーラにはいない。だが、言葉の上では、これはこれで「嘘は言っていない」ということになる。 「そうだろうな。投影体の中でも、この世界の中で歳を取る者と取らない者がいるからな」 「私の場合は、5年前から姿形は変わっていないので、寿命はないのかもしれません」 「カーラ」はそう答えるが、実際のところ、これについては「それぞれの個体による」としか言いようがないのである。混沌の産物(投影体)とは、そういうものなのだ。 「いずれにせよ、ヴィルスラグが本物であろうと無かろうと、『敵のオルガノン』をこちら側に置いておくことは、向こうにとっても色々な選択肢が考えうるということか……。しかも、もしそのオルガノンが本物の『宝剣ヴィルスラグ』でもあるならば、『そこの者』のように自律型で動き出した場合、どれほどの力を持っているかは分からん。何か『よからぬこと』を企んでいたとしても、そこら辺の雑兵では止められないだろう。その上で、奴等はゴーバンに預けることにこだわっていた。つまり……」 単純に城から単体で脱出するだけでなく、ゴーバンの誘拐、あるいは暗殺すらも考えうる話だろう。少なくとも、自分が相手の立場ならばそれは必ず選択肢に含めた上で考える、というのがケネスの見解であった。 「それを踏まえた上で、どうなさいますか?」 「確かに、そう考えると色々な意味でこの提案を受け入れるのは危険すぎる。とはいえ、ここで話をまとめたいところでもあるのだ。私としても、これ以上この不毛な争いを続けたくはない」 「そうですね。何より領民が苦しんでいる」 「ここで話が決裂したという形になると、なおさら話がこじれる可能性もある。何か代替案があれば良いのだがな……。レア姫の本音としては、どうなのだ? ゴーバン殿下との婚姻に対して、前向きなのか?」 ここにレア姫がいないという前提でそう問いかけるケネスに対して(それはそれで間違いではないのだが)、トオヤは率直に答える。 「それについては私は分かりません。ただ、あの方は君主としての役割をきちんと理解され、その責務を果たすべきだと考えているようです」 「市井の間では、お前こそがレア姫の相手としてふさわしいという評判もあるようだが、それについてはどう思う?」 これまであえて極力考えずにいた選択肢をいきなり提示されたことで、トオヤが咳き込み始める。どうやら、この「動揺した時に咳き込む癖」は、どうしても止められないらしい。ケネスとしては、トオヤのこのような「気持ちが表に出てしまう体質」が、「将来の騎士団長候補」としてはどうにも不安に思えた。 「お、俺としては……」 「弟分であるゴーバン殿下に取られるのは、癪か?」 あえて挑発するような言い回しでトオヤにそう問いかけたケネスであるが、トオヤが答える前に彼は持論を滔々と語り始める。 「はっきり言おう。私はこの国を継ぐ者は、必ずしも『英雄王の直系の血族』である必要はないと思う。ただ、英雄王の血統を継ぐ者の方が、民衆は支持しやすい。その上で、お前にその覚悟があるのであれば、お前がレア姫を娶り、爵位は彼女が継いだ上で、実質的にお前が彼女の夫として、この国を正しい方向に導いていくというのも、選択肢の一つだと考えている。公の場では言えんがな。あくまでも我々は、正統後継者はゴーバン様であるという建前は崩せない。だが、現実問題として、今のゴーバン殿下にこの難局を乗り切れるとも思えん。お前に、レア姫の王配として、この国を背負う覚悟はあるか?」 「俺は……」 トオヤが自分の考えを必死でまとめようとしているところで、「カーラ」が口を開く。 「申し訳ない、トオヤ。少し頭が痛いんだ。席を外していいかな」 「あ、あぁ……」 これは、パペットが「自分がこの場にいることでトオヤが答えにくくなる」と考えたのか、あるいは純粋に彼女(?)自身が「聞きたくない」と思ったのか、どちらとも取りうる状況で困惑しつつも、トオヤは素直に「カーラ」の退席を容認する(必然的に「本体」もそのまま部屋からいなくなる)。 この時、「カーラ」の口調が明らかに「いつもの彼女」とは異なっていたのであるが、ケネスはそのことには気付かなかった。むしろ、彼が気になったのは全く別のことである。 「オルガノンにも、頭痛というものがあるのだな」 彼は騎士の中では比較的混沌に関する情報に通じた人物ではあるが、オルガノンに関しては投影体の中でも非常に特殊な存在であるが故に、そこまで造詣は深くない。 「基本的には、『人』と同じですから」 「投影体の専門家」であるチシャがそう言ってその場の空気を落ち着かせている間に、トオヤの中ではようやく「今、自分が伝えたいこと」がまとまった。 「お爺様、少々、話はそれますが……、俺は、父に愛されて育った訳ではありません。母につきまとう噂話によって、正直、私は父に憎まれて成長したと言っても過言ではありません」 「その噂は私も聞いている」 「父上の感情として、そうなるのは至極当然のことだと思います。そのこともあって、私は両親のことを『家族』と思っていなかったのです。そんな私にとって、初めて手にした『家族』と呼べるような存在が、チシャであり、レア姫様であり、さきほど退室したカーラだったのです。俺はこれまで、領民を初め、彼女達のことを守ると言っていましたが、実際には違うのです」 「ほう?」 トオヤの口調が(一人称も含めて)ブレ始めていることから、彼がようやく「本音」で語り始めようとしていることをケネスは察しつつ、そのまま黙って話を聞き続ける。 「私は何より、家族を失うのが怖かった。最初は何も持ってなかった俺に、愛情を教えてくれた彼女達を失うのが、本当に怖かった。そのことを、船でレア姫を守った時に実感しました。そんな臆病者の私ですが、この国の、特に自分の領民達が苦しんでいるのを見て、失いたくはないと思っています。臆病者と罵られるかは分かりませんが、確かに守りたいとは思っています。それが王としてふさわしいかはともかくとして、君主として以前に守りたいんです。だから、お爺様、あなたが本当にこのヴァレフールという国を守りたいのであれば、私はどのようなことでも背負っていきます。何も失わないために」 気持ちがまとまらないままに話しているため、言いたいことの主旨はよく分からないが、少なくとも「必要とあればレア姫を娶ることも厭わない」と考えているのであろうと解釈したケネスは、その前提の上で改めて問いかける。 「なるほどな。だが、仮にお前がレア姫を娶ったとして、それはそれでまた色々な問題が起きるだろう。私としては、ゴーバン殿下もお前も私の孫だ。私の立場としてはどちらでもいい。だが、おそらくワトホート側はお前では納得しないだろう。レア姫と同格の存在とはいえないからな。『伯爵家の血筋を引いていない私の孫』がレア姫と結婚するとなれば、『なぜトオヤのなのか』『ならば自分でも良いのではないか』などと言い出す者も出てくるだろう。で、『お前』はそやつらを納得させられるだけの存在でありえると思うか?」 そこまで言ったところで、ケネスはあえて言い直す。 「いや、ここで問うべき問いとしては、正確ではないな。『今のお前』は、そやつらを納得させられるだけの存在であると思うか?」 トオヤは静かに答える。 「いいえ、『今の私』はそれほど強い存在ではありません。強くあろうとはしていますが、それだけです」 「では、『未来のお前』はそうなれると思うか?」 「俺一人では無理でしょう。俺は、ただの泣き虫な臆病者です。ただ、俺には幸いなことに、優秀な契約魔法師もいれば、非常に優れた剣もいます。そんな親愛なる俺の家族の助けがあれば、いつかヴァレフールところかブレトランド中に名を響かせる英雄になれるかもしれません」 「……そうであってほしいと、私も思っているのだがな」 ケネスはひとまず(完全にではないにせよ)納得したような表情を見せた上で、改めて「喫緊の課題」へと話題を戻す。 「そういうことなら、今ここで無理にゴーバン殿下との婚儀の話を進める必要もない。『そちらの選択肢』も残しておいた方がいいだろうからな。その上で、今のこの状況を改善するために、何が必要だと思う?」 「ひとまずは、向こうに歩み寄らなければなりません。そのためには、レア姫様を向こう側に渡すしかないかと」 「レア姫を向こうに渡した上で、その代わりにこちらは何を得る? 非常に大きな手駒を失うことになるぞ」 「えぇ……」 そのことはトオヤも分かっている。だが、老獪な策士であるケネスですら思いつかない解決策を、まだ17歳の駆け出し騎士にすぎないトオヤに考案しろというのも、無理のある話であった。 3.8. 時限案 しばしの沈黙が続いた後、ケネスはふと思い出したかのようにチシャに視線を向ける。 「すまない、チシャ。またここでトオヤと二人だけで話がしたいんだが」 「分かりました」 そう言って、チシャが退室すると、ケネスはやや声量を落として語り始める。 「実は一つ、チシャには、というよりも、エーラムには話せないことがあってな……」 それは、例の「投影島」におけるケネスとパンドラとの交渉の際の話である。「パンドラとの裏交渉」という行為自体、エーラムに所属するチシャの前で堂々と話せることではないのだが、ケネスは彼等との交渉を通じて、色々と情報を仕入れており、その中には、チシャの目の前では話しにくい事柄も含まれていたのである。 昨日の時点ではケネスはトオヤに対して「新世界派がレアを拐おうとした理由は分からない」と言っていたが、実はこの時点でケネスは既に一つの「重要な手がかり」を握っていた。それをトオヤに話さなかったのは、中途半端な情報を伝えることによってトオヤを混乱させない方が良いと考えたからなのだが、あれから僅か1日で状況が二転三転し、明確な方針が見えなくなってきたこの現状において、あえてそのことをトオヤに伝える決意を固めたのである。 「奴等がレア姫様を手に入れようとした明確な目的は不明だが、どうやら奴等には『エルムンドの血統の者』が必要らしい。そして、そのための誘拐対象候補として、『チシャ』と『あの剣』も新世界派に狙われていたらしいのだが、お前、何か知っているか? 特に、あの剣に関して」 チシャに関してはもともと「伯爵家の誰かの御落胤」なのではないかという噂もあったので、ケネスにとってはそれほど意外な話でもなかった(だからこその先刻のアマンダとチシャの問答が発生したのである)。だが、カーラに関してはその存在そのものがあまりにも謎すぎるため、皆目見当がつかない。 一方、トオヤにしてみれば、この情報自体は(船内での一連の経緯とクリステルからの事前通告に照らし合わせて考えるに)ほぼ想定通りの内容であったが、逆に言えば、それ以上のことはトオヤにも分からない。 「あのオルガノンは何者なのだ?」 「分かりません。しかし、カーラはカーラです」 ケネスとしては、ここで「伯爵家の血統」という後継者の条件を満たしうる「別の選択肢」が存在するなら、それも一考の価値はあると考えていたようだが、トオヤが知らないと主張するならば、今の時点でこれ以上問いただしても仕方がないと判断した上で、改めて本題に戻る。 「では、その件は一旦置いておこう。それはそれとして、交換条件はどうする? いっそ、何の見返りも求めずに返すという道も無くは無いがな」 前述の通り、トオヤ達を敵陣の内側に送り込めるというだけでも意義はある。その上で、トオヤとレアがそのまま仲を深めて婚姻にまで持っていくことが出来るのであればそれも大きな利点なのだが、今のところ、そこまでの気概がトオヤにあるとはケネスには思えなかった。 「我等としては、ワトホートに毒殺の罪を認めさせた上で退位させる、というのが最終目標ではある。だが、レア姫を人質に取ったところで、奴等はそれを飲まないだろう。そして人質を取った形でそれを認めさせたとしても、民衆はついてこない。ならばいっそ、我等がレア姫の継承権を認めた上で、その条件としてワトホートに即時退位を要求する、という道もあるが、どうする?」 おそらく、それがケネスとしての最大限の譲歩だろう。ワトホートの毒殺の嫌疑を曖昧にしたまま「体調問題」を理由にレアに即時継承させるという形式を取れば、両陣営の顔は立つ形での落とし所になる。その上で、ゴーバンもしくはトオヤとの婚約という条件を付与したかったところではあるが、昨日の時点での「レア」とトオヤの関係を見る限り、レア自身はトオヤのことを全面的に信頼しているように見えたため、ここで無理にどちらかとの婚儀を進めなくても、このままトオヤがレアの側近として新体制の中で確固たる地位を築ければ、グレン派に国政を乗っ取られることもないのではないか、とケネスは考えていた。 だが、トオヤとしてはその提案を認める訳にはいかない。なぜならば、今この城にいる「レア姫」が偽物であるため、「即時継承」はそもそも不可能なのである(ここでケネス相手にそのことを話せるほど、彼は祖父のことを信用出来てはいなかった)。トオヤはそのことに内心苦悶しながらも、それ以外に有効な選択肢が思いつかないため、どうにかその方向でまとめつつ、「ワトホートからレアへの即時継承」に反対するための「大義名分」を探ろうとする。 「確かに、それも一つの選択肢でしょう……。ならば、そのことを諸侯に認めさせるための交渉を、レア姫御自身になさって頂く、というのはいかがでしょうか?」 「ほう?」 「それが上手くいけば、彼女の後継者としての力量を証明することになりますし、それを我々が手助けするという形で共に諸侯から認められることが出来れば、我々『反体制派』だった者達が新体制下で軽んじられるということもなくなるかと」 つまり、「レア姫」を一旦返した上で、国内の反対論を強引に押し切って即時継承を要求するのではなく、トオヤ達が彼女の「次期伯爵就任」を支援すると宣言し、彼女と共に「彼女の為政者としての資質」を国内諸侯に説いて回った上で、皆が容認して納得出来る状態になった時点でワトホートからの継承を執り行う、ということである。当然、トオヤの本音としては、その間に「本物のレア」を探す道を探りたいとも考えていた。 その提案はケネスにとっても決して悪い条件ではない。そもそも、今の時点でケネスがいきなり掌を返してレア姫継承を容認すること自体が、ゴーバンへの継承を目指して共闘してきた同志達への裏切り行為とも取られる以上、このような形で「方針転換までの猶予期間」があった方が、諸侯としても柔軟な対応が可能となるだろう。その上で、レアにその資質がないと判断した者達が改めてゴーバンを推すことになれば、その時はその時でまた議論して決めればいい。それで再び泥沼の対立に陥る可能性もあるが、少なくとも現在の一触即発の冷戦状態よりは「ワトホート退位」を前提とした上での「平和的論争」での解決へと持ち込める分、幾分マシである。 「では、期限を決めるか」 「期限、ですか?」 「さすがに、そこでズルズルと話を引き伸ばされても困るからな。レア姫を返した上で、一年以内にワトホートは退位する。理由は健康問題でも何でもいい。その上で、一年後までの間に七男爵会議を開いて次期後継者を決定する。今回は『保留』は認めない。それでどうだ?」 この条件であれば、あくまでもゴーバン継承を主張する者達も、ひとまず納得出来るであろう。実際、現状において、態度不鮮明な三人の男爵も存在する以上、状況はどう転じるかは分からない。もっとも、その三男爵はレアの継承自体に異論を挟む可能性は低いと考えられており、むしろトオヤ達がレアによる継承を支援するのであれば、ガスコインをはじめとする反体制派の諸侯を納得させる方が骨が折れる可能性もあるし、体制派の側でも、レアへの継承は認めてもトオヤを側近として重用することに反発する者もいるだろう。いずれにせよ重要なのは、一年以内にレアと同時にトオヤ自身の評価も諸侯の間で高めておくことである。 「その上で、お前がレア姫と共に国内の諸侯を説得し、新体制に向けての挙国一致体制を築ければそれで良し。それまでの間に『レア姫とゴーバン殿下』もしくは『レア姫とお前』との縁談をまとめることが出来ればそれが最良の道だろう。相手はどちらでも私は構わん。いずれにせよ、お前が果たすべき最大の役割は、レア姫に他の『悪い虫』がつかないように気をつけることだ。お前の最大の敵はファルクだと思え。あの男を超える騎士になれば、お前がレアの夫になろうと、側近になろうと、誰も文句は言わないだろう」 一年以内にそこまでの名声を獲得しろというのは無理難題のように思えるが、現実問題として、(歳は10歳以上離れているとはいえ)レアとファルクの縁談という可能性も無いとは言えない。少なくとも、聖印教会の中にはそれを求める声が一定数存在するし、ファルクに密かに懸想する国内の独身女性達を納得させるという意味でも、実はそれが一番現実的でもある(本人の意志は不明だが)。 上述の通り、これはケネスにとっては「最大限のギリギリの譲歩」である。だが、政治的交渉というものは、そもそも最初から「ある程度までは譲歩する」ということを前提とした上で、互いに「取り下げ可能な要求」を一番上に掲げながら妥協案を探っていくものである。 「我々としてはワトホートに毒殺の罪を認めるべきと主張し続けてきたが、現実問題として、奴等がその条件を呑むことはないだろうし、そんなことは私も最初から分かっている。あくまでも外交上のカードの一つにすぎない。どちらにせよ、真実は分からんしな」 暗黙の了解とはいえ、公の場では言えないこのようなことを、ケネスはあえてトオヤに対して言い放つ。それはトオヤが新体制下において「次期騎士団長」に就任することを期待しているからである。それは、彼がケネスの「血統」を引き継ぐ者だからではない(トオヤの母の不倫疑惑はケネスも知っているし、そのこと自体はケネスは「どうでもいいこと」だと思っている)。あくまでも彼の中に、自分の後継者足りうる「資質」があると見込んだ上でのことである。 まだまだ甘さは残るが、トオヤが上記のような形での「妥協案」を自ら絞り出すことが出来たことで(その真意が「本物のレア姫を探すための時間稼ぎ」であることには気付いていなかったが)、ケネスは彼の中に秘められた「為政者としての潜在能力」を十分に感じ取っていた。 3.9. 新たなる決意 その後、再び四人はトオヤの部屋で合流し、トオヤは彼女達に一通りの話を伝える。その中には「チシャには伝えない方がいい」とケネスが判断した話もあったが、どちらにしてもその情報はほぼ彼等の中でも周知の話であったので、今更隠す必要もなかった。 「……という方針になったんだが、それでいいかな?」 それに対して、最大の当事者である「レア」は頷きながら答える。 「そうだね。その方針には概ね賛成だ。僕はレア姫が帰って来るまで代理を務める。それはつまり、何か重要な決断が必要になった時に、僕が決めることになる、ということにもなるのだが、なるべく姫様の意に沿うようにはするよ。ただ、ゴーバン殿下との結婚となると、あまり乗り気にはなれないな」 「あぁ、まぁ、それはそうだろうな。さすがに勝手に決めるわけには……」 「相手が君だったらいいんだよ、トオヤ」 涼しい顔で「レア」はそう言い放つ。 「え!? そ、そそれは、どういう……?」 「ここまで言っても、まだ分からないのかい?」 「あ、あぁ、うん、分かった。だが、すまない、今日は心臓に悪いことが多くてな……」 「偽物」とはいえ「レア」の顔でそのようなことを言われると、当然のごとくトオヤは平静ではいられない。いや、より正確に言えば、そもそも、この少女が「偽物」なのかどうかも、トオヤの中では微妙な位置付けなのである。少なくとも、彼がこれまで「家族」として接してきたレアの中の何割かは、もともと「彼女」の方だったのである。「自分の中でのレアへの感情」が、「行方不明のレア」への感情なのか、「この場にいるレア」への感情なのかも、トオヤの中ではよく分からなくなっていた。 そんな彼の心境を知ってか知らずか、「この場にいるレア」は、はっきりと断言する。 「今がどうかは知らないが、少なくとも以前の姫様は、君のことを好いていたさ。姫様が戻って来て、僕が御役御免になった時、結婚相手がゴーバン様よりは、まだ君の方が納得してくれる」 「そ、そうなのか……。そういえば、お爺様から、レア姫様に悪い虫がつかないように護衛するのもお前の仕事のうちだと言われてたんだが……、サンドルミアではどうだったんだ?」 それが「仕事」としての質問なのか、それともトオヤ個人の中の何らかの衝動が「知りたい」という感情を掻き立てていたのかは不明であるが、「レア」は淡々と答える。 「僕の知る限りでは、ないね。向こうの学園でも、外国から来た姫様にちょっかいを出そうという奴は、あまりいないのさ」 「そういうものか」 「まぁ、僕の知らないところで何かあったなら、それこそ僕の知ったことじゃない」 とはいえ、四六時中レアと共にいて、頻繁に彼女の影武者を勤めていたパペットの目を結んで誰かと逢瀬を交わすということは、現実的にはほぼ不可能であろう。トオヤはそれを聞いた上で、少し落ち着きを取り戻しながら、改めて話を本題に戻す。 「いずれにせよ、過去のことは分からないし、それよりも大事なのは未来を見ることだな。これから、君を『レア姫』としてドラグボロゥに一緒に行く訳だが……」 「それで、ヴァレフール中のお偉方を相手にした交渉合戦の始まり、という訳か」 「とはいえ、その過程で『レア姫』を狙う奴らが現れる可能性も十分にある」 「だけど、それについは心配ないな。だって、君が守ってくれるんだろう? 僕だけでなく、チシャやカーラも狙われるかもしれないけど、三人くらいは守りきってくれ」 「あぁ。そこは安心してほしい」 そうして勝手に話を進める二人に対して、カーラとチシャが少しだけ不服そうな顔を浮かべながら口を挟む。 「一応、ボクだって最低限の『守り』は出来るんだよ」 「守られてばかりじゃ、あまり気分よくありませんしね」 実際、カーラの「本体」は相手の攻撃を受け止める際にも並みの盾と同等以上の役割を果たせるし、チシャにも召喚獣を用いた防護壁を作る術はある。そのことはトオヤも理解した上で、改めて三人に対して頭を下げる。 「勝手に決めてすまないが、これからも、よろしく頼む」 そんな彼に対して、「レア」は小悪魔的な笑みを浮かべながらこう言った。 「これからも僕を守ってくれたまえよ。どこぞの暗殺者からも、どこぞの悪い虫からもね」 4.1. 和平への船出 それから一晩明けて、改めてケネスは家臣団との間で方針を協議した結果、ファルクからの「結婚を前提とした宝剣貸与案」を正式に断った上で、「一年以内のワトホート退位要求」を軸とする和平案を提案する。 当然のことながら、その提案の受諾の是非はファルクの一存では答えられないため、「一度ドラグボロゥに話を持ち帰った上で協議する」という返答になったのだが、あくまでファルクの個人的見解としては「その条件であれば合意を得られる可能性が高い」という旨を伝えていた。 そこで、ひとまずファルクは、レア(および護衛のトオヤ達)と共にアキレス所有の「アーティファクト軍艦」に乗ってドラグボロゥの南に位置する港町オーキッドへと向かい、その地に軍艦を停泊させた上で、ファルクが単身でドラグボロゥに赴いて正式にワトホートによる合意の旨が確認出来た時点で、レア達は軍艦を降りて首都へと向かう、という方針で一致するに至った。面倒な手続きではあるが、互いに「騙し討ち」を避けるためにはそれしかなかった。 こうして、ようやく「和平実現に向けての一歩」が踏み出されることになった、という情報は瞬く間にアキレス中に向かうことになり、町の人達の間でも「これで内乱が終わるかもしれない」という歓喜の笑顔が広がっていく。 ****** ここで問題になるのは、トオヤ達が「レア姫」の護衛のための兵(タイフォンの守備兵の大半)を率いたまま、長期にわたって所領であるタイフォンを留守にすることである。政務に関しては基本的にはウォルターがいれば問題はないが、彼はあくまでも「一般人」のため、もし混沌災害などが起きた場合、トオヤもチシャもいない状態では対応出来ない。 そこで留守居役として、雇われ騎士のガフとその傘下の傭兵団が当面駐留することになった。一応、ガフは「聖印」を持つ「君主」でもある以上、何かあった時は彼の聖印で混沌を浄化することは出来る。 「まぁ、『領主様代行』なんて柄じゃねえが、頼まれたからには、きっちり仕事はするぜ。久しぶりに、『君主』としての腕の見せ所だな」 そう言ってタイフォンへと向かおうとするガフに対し、トオヤはウォルターへの手紙を託す。そこには、改めて彼に苦労をかけることへの謝罪と感謝の言葉が綴られていた。 ****** 一方、ゴーバンは宝剣を貰えなかったことに不満を感じつつも、今回の和平案を通じて縁談が一旦破綻したことを喜びつつ、一年以内に次の伯爵が決定されるという話を聞かされた上で、それまでに自分が「立派な君主」になると宣言する。現状において、レアを後継者とする方向で話をまとめようとしているトオヤとしはやや心苦しかったが、そんなトオヤに対して、ゴーバンはこう言った。 「レアねーちゃんはお前にやるから、宝剣は俺が貰う」 それが継承者候補として何を意味しているのかはゴーバン自身もよく分からないまま、彼は笑顔でトオヤと、そして(困った表情を浮かべる)カーラを見送るのであった。 ****** これに対して、弟のドギはチシャに対して名残惜しそうな顔を浮かべながらも、こちらもこちらで納得した表情を浮かべる。 「せっかくだから、もう少し話がしたかったけど……、あなたもあなたでやることがあるなら、僕は僕で次に来る時までにもう少し勉強して、『あの木』をこの土地に根付かせる方法を考えたいと思う」 彼は彼で、なんとか自分の存在意義を見出そうとしているらしい。一方、彼の傍らに立つアマンダもまた、チシャに対してこう言って見送った。 「もし何かあったら、いつでも何でも私に仰って下さい。ネネ様も、この世界のどこかであなたを見守っている筈です」 その言葉の意味をあえて深読みせぬまま、チシャもトオヤやカーラと共に軍船へと乗り込むことになる。 ****** そんな彼等を見送る民衆達の中には、先日トオヤを訪ねた吟遊詩人ハイアムの姿もあった。 「久しぶりに、英雄と呼ぶに値する可能性のある人物に出会えて嬉しく思えます。いずれこの停滞した世界をあなたが救って下さることを、私も期待しております」 そう言って、彼はトオヤ達の門出を祝福する。その静かな笑顔の裏で、彼は冷静に今のこの状況を分析していた。 (どうやらまだ、反体制派の命脈は尽きてはいないらしい。そう報告しなければな……) 彼の正体は、幻想詩連合の本国ハルーシアからの密偵である。ブレトランドにおける情勢を本国に伝えることが彼の本業であった。連合内においては、ヴァレフールの内乱を早期に集結させるために、優勢と見られる体制派への支持を表明すべきではないか、という意見もあったが、この状況を見る限り、まだしばらくは様子を見守るべきであろう、というのが「密偵としてのハイアム」の現在の見解であった。 一方、「吟遊詩人としてのハイアム」は、トオヤから確かに「英雄としての潜在能力」を感じ取っていた。今はまだ駆け出しの騎士にすぎないが、そんな彼から「この世界を変革させられるだけの可能性を秘めたオーラ」を感じ取っていたのである。それ故に、彼はまだトオヤの「姫様救出の物語」を叙事詩にしようとはしなかった。おそらくここから先、まだまだ彼の物語は続いていく。今回の彼の武勇伝は、その最初のほんの些細な序章にすぎないかもしれない、という思いから、あえて今の時点で彼の物語を「小さな叙事詩」としてまとめることが憚られたのである。 そんな彼は、トオヤ達の出航に向けて沸き立つ街の一角で、数百年前から伝わる、この小大陸に住む者なら誰でも知っている「英雄王エルムンドの叙事詩」を歌い始める。いつかトオヤ達が、この叙事詩をも超える英雄譚を築き上げてくれることを期待しながら。 七つの聖印携えて 六つの輝石の加護を受け 五つの銀甲身に纏い 四つの異能を従えて 三つの令嗣に世を託し 二つの神馬の鞍上で 一つの宝剣振り翳し 全ての希望を取り戻す かの者の名はエルムンド ブレトランドの英雄王 4.2. 戦闘狂船団 こうして、トオヤ達を乗せた船はオーキッドに向かって出航した。その船内において、カーラは改めてファルクが有している「宝剣ヴィルスラグ」が気になっていた。ドラグボロゥに到着すれば、おそらくヴィルスラグは再び宝物庫に厳重に保管されることになるであろう。だからこそ、その正体を確かめることは今しか出来ないのだが、さすがにファルクに直接話を聞きに行く訳にもいかず、手合わせを申し出る決心もつかないまま、船は粛々と南西へと帆を進める。 やがて夜が更けて、一部の警備兵以外を除いた者達が静かに寝静まった頃、唐突に船内がザワつき始める。チシャと「レア」はその音で目を覚まし、そして甲板に様子を見に行こうとした瞬間、船が大きく傾き、体勢を崩して倒れる。そして、その衝撃でトオヤとカーラもまた目を覚ました。その直前に何かが直撃したような衝撃音が響き渡っていたため、おそらくは何者かによる砲撃か何かを受けたと思われる。 「トオヤ、起きてるかい?」 「大丈夫だ」 真っ先にトオヤの部屋に向かった「レア」は、彼の無事を確認すると、「傭兵隊長ドルチェ」の姿に変身し、チシャやカーラとも合流した上で、隣の集団寝室で寝ていた部下の兵士達に戦闘準備を整えさせる。 やがて彼等を従えて甲板に上がったドルチェは、その視線の先に不気味な形状の軍船が漂っているのを目の当たりにする。すぐさま彼女は近くの水平を問いただした。 「これはどうしたことだ?」 「あれは『オブリビヨン』の船です。誰に雇われているのかは分かりませんが……」 オブリビヨンとは、アトラタン大陸およびその周囲の幅広い地域で活動する、神出鬼没の傭兵集団である。その実態は不明であるが、腕利きの邪紋使い達を揃えた精鋭部隊であると同時に、戦場となった地を焼け野原にするまで破壊・略奪・暴行の限りを尽くす戦闘狂集団であるとも言われている(実は先日の対パンドラ革命派との抗争の際には、彼等の一部はケネスに雇われる形でアキレス側に協力していたのだが、当時謹慎中だったトオヤ達はその事情を知らない)。 「ここでこの船に沈まれても困るな。加勢する。奴等の目的は分かるか?」 ドルチェがそう問うと、その船員が答えた。 「宝剣ヴィルスラグをよこせ、と言ってます」 この船にファルクが乗船していることは周知の事実だが、ファルクがヴィルスラグを所有しているという情報は公開されてはいない。誰がそのことを漏らしたのかは不明であるが、ここで英雄王の後継者の象徴を奪われる訳にはいかない以上、彼女達は徹底抗戦を決意する(そもそも、仮にその宝剣を渡したところで、そのまま気にせず相手を皆殺しにするような連中、というのが、オブリヨンに対する一般的な認識であった)。 そんな中、そのオブリビヨンの軍船から巨大な砲弾が再び浴びせられるが、それを一人の男が身を呈して庇った。ファルクである。彼は大盾で身体を守りながらその砲撃を受け止めるが、さすがに生身で対軍船兵器の一撃を受け止めるのは負担が大きく、思わずその場に片膝をつく。ちなみに、その腰には一本の剣が差されてはいるが、それはファルクの本来の愛剣であり、ヴィルスラグではない。 「ファルクさん!」 日頃は冷静なチシャが思わず叫ぶ。だが、彼はすぐに立ち上がった。 「なんとか一撃は食い止めましたが、そう何発も止め続けるのは無理です。先刻からあの船の移動速度を見る限り、おそらく逃げ切ることも出来ないしょうから、こちらから接舷して倒しに行くしかない」 痛みに耐えながらそう語るファルクを目の当たりにしながら、ドルチェは船員に尋ねた。 「そのように船を動かせるか?」 「もちろんです!」 こうして、彼等を載せたアキレスの軍艦は、謎のオブリビヨンの襲撃船へと突撃し、そのまま乱戦状態に突入することになった。敵の甲板に立ち並ぶ不気味な邪紋兵団達に対して、カーラは敵を混乱させるために、あえてその「本体」を空高く振り上げた上で、こう叫ぶ。 「このヴィルスラグの一撃、受けてみよ!」 すると、敵の視線は一瞬にして彼女に惹き付けられた。彼女の剣身はヴィルスラグとは(微妙に似てはいるものの)明らかに異なる形状なのであるが、わずかな月光に照らされただけの夜の船上で、本物のヴィルスラグの姿を正しく認識出来ているとも思えない者達を騙すには、その一言だけで十分であった。 案の定、敵の主力部隊が船を乗り移ってカーラに向かって突進してくるが、その刃がカーラ隊に届く前に、聖騎士の聖印の力で強化されたトオヤ隊が間に割って入ってその突進を食い止め、その直後にカーラは自らの本体を一瞬だけ巨大化させ、その一瞬の間に周囲の敵達を一気に薙ぎ払う。 その隣ではチシャ隊に対して襲い来る者達もいたが、トオヤが光の壁を広げることでその攻撃を喰い止めつつ、チシャがウィル・オー・ウィスプを召喚して次々と敵兵を焼き払っていく。 一方、その奥に控える敵兵達に対して立ちはだかったのは、ドルチェ隊であった。彼女は独特のなまめかしい動きで敵軍の邪紋兵達の目線を翻弄しつつ、その不規則な動きの剣先から繰り出される攻撃で着実に敵の頭数を減らしていく。やがて、彼女の作り出す独特の空気に惑わされた他の部隊の邪紋兵達も彼女を襲おうとするが、ドルチェの視線に心を奪われた彼等の攻撃は(トオヤが庇うまでもなく)彼女にはまるで当たらない。 そうこうしている中、カーラが二度目の本気の斬撃を周囲に繰り出した結果、敵の本隊は大打撃を被り、完全に指揮系統が混乱した混乱状態へと陥る。 「おぉ、さすが宝剣ヴィルスラグ!」 アキレスの船員達が感嘆の声を上げる中、混迷する敵本隊に対してチシャが魔力の全てを込めたウィル・オー・ウィスプによる攻撃を繰り出した結果、あっさりと敵は殲滅される。まさに、数日前の蝿男との戦いで露呈した「詰めの甘さ」を克服したかのような完勝であった。 4.3. 剣少女の正体 一方、この戦いの最中、甲板の隅の方で、たった一人で巨大な剣を振るいながら戦っている女性(下図)の姿をカーラは発見する。交戦中はよく見えなかったが、戦いを終えた時点でカーラがその女性を凝視すると、その手に持っていたのは、明らかに宝剣ヴィルスラグであった。 どうやら、カーラが「囮」になったことで目立たなかったが、「彼女」もまた戦場でその身を振るわれていたらしい。そして、その「女性」の姿はこれまでこの船の中で一度も見ていない。また、その身を包む鎧の形状も、明らかにこの世界の代物ではなく、どちらかと言えばカーラの(封印を解かれた直後から着ていた)鎧に近かった。 そんな彼女に対して、カーラは駆けよろうとするが、それと同時に彼女の方からもカーラに向かって近付いて来る。そして彼女はカーラに対してこう言った。 「さすがだな、『宝剣ヴィルスラグ』殿」 軽い皮肉が込められたその口調に対して、カーラは深々と頭を下げる。 「えーっと、その、騙ってしまって、申し訳ございませんでした!」 それに対して「その女性」が何者言わないまま、カーラは恐る恐る頭を上げ、そして改めて彼女の顔を見上げたところで、それまでカーラの中で封印されていた「記憶」が、突然、カーラの記憶の奥底から蘇ってきた。 ****** カーラには、他のオルガノンとは違って、「元いた世界の記憶」は一切存在しない。それは忘れてしまったからではなく、もともと存在しなかったのである。 彼女は「厳密な意味でのオルガノン」ではなく、そもそも「投影体」ですらない。「投影体」とは、異界に存在する何かの「複製品」が、混沌の力によってこの世界に出現した存在であるが(それ故に、投影体がこの世界でどうなろうと、元の世界では「本物」は何も変わらず存在し続けている)、カーラにはそのような「元いた世界に存在する本物」なるものが存在しない。なぜなら彼女は「最初からこの世界で生を受けた存在」だからである。 彼女が生まれたのは、400年近く前のブレトランド小大陸。彼女の父の名は、シャルプ・インサルンド。英雄王エルムンドの長男にして、初代ヴァレフール伯爵となった人物である。だが、公式の家系図にはカーラの名は記されていない。なぜならば、カーラの母はシャルプの正妻ではなく、そして人間ですら無かったからである。 その母の名こそが、宝剣ヴィルスラグ。その正体は、英雄王エルムンドに支えた「剣のオルガノン」であった。つまり、カーラは「英雄王の息子」と「英雄王の宝剣(オルガノン)」の間に生まれた、半混沌の混血児だったのである(かつてカーラは、ケネスの契約魔法師であったハンフリーから「お前の体内には、通常の投影体に比べて半分の混沌核しかない」と言われていたが、これこそがその理由であった)。 宝剣ヴィルスラグはエルムンドの死後、その長男であったシャルプに受け継がれるが、その擬人化体としての「ヴィルスラグ」がシャルプと恋仲になり、やがてカーラが生まれた。しかし、この時点でシャルプには既に正妻がいた。また、「英雄王の宝剣」とはいえ「混沌の産物」との間に子供を作ること自体への倫理的な問題もあった(当時の彼等の認識としては、そもそも「人とオルガンンの間に子供が生まれること」などあり得ないと思っていなかったのかもしれない)。 それでも、正妻の目を盗んでどうにかある程度の年齢までは育てられたが、やがてその存在が明るみになりそうになったところで、「ヴィルスラグの旧友」を自称する一人の「魔法少女」が現れ、両親の同意の上で、彼女の力によってカーラはドラグボロゥ近辺の洞窟に封印されることになったのである。 「この国に危機が訪れた時に、英雄の資質がある者が現れたら、お前の封印を解く」 その魔法少女からそう言われたカーラは、その直後に記憶を一旦消された上で、「剣」の状態で四百年近くその洞窟に封印されることになった。 そして五年前、まだ子供だったトオヤ達が、(なぜか四百年前から全く歳を取っていない)その「魔法少女」に導かれ、彼女を引き抜くことになったのである。 ****** 一瞬にして失われていた記憶が全て戻ったカーラは、驚愕と困惑と感動と安堵が織り混ざった、なんとも言えない表情でそのまま「彼女」を凝視する。それは確かに、その蘇った記憶の中にあった「ヴィルスラグ」の「人」としての姿であった。 「さすがに、母の顔は忘れなかったか?」 笑顔でそう問いかけるヴィルスラグに対し、カーラは無言のままボロボロと涙を零し、そのまま彼女に抱きつこうとする。 「今は、あまり人目につく訳にはいかんからな……」 ヴィルスラグはそう言うと、一瞬にして「宝剣」だけの状態となり、そのままカーラは「母」を抱きかかえ、ハラハラと涙を流している。暗い夜の船の甲板の隅に立つそのカーラの姿にトオヤ達が気付くのは、その直後のことであった。 4.4. 闇に消えた謀略 その後、船はオーキッドへと辿り着き、「レア」やトオヤ達をひとまず軍船に留めたまま、ファルクはヴィルスラグを背負った状態で、早馬でドラグボロゥへと向かう。この村の領主であるイノケンティスは、」敵対していた筈のアキレスの軍船をそのまま停泊させろという命令に困惑するが、船の上から「レア姫」が住民達に笑顔で手を振る姿を見せたことで、町の人々は(よく事情は分からないまま)素直にその軍船を歓迎する。 一方、無事にドラグボロゥへと辿り着いたファルクは、ワトホートへの報告の前に、まずヴィルスラグを宝物庫へと届けることにした。その直前で、ヴィルスラグは自らの分身である「擬人化体」を出現させた上で、ファルクに問いかける。 「貴殿としては、これで安堵しているのだろう?」 「えぇ。私としては、宝剣であるあなたを、あのような『謀略』に用いることも、そのために幼いゴーバン殿下の心に傷を負わせることも、容認したくはなかったですから」 その「謀略」とは、ヴィルスラグをゴーバンに預けた上で、真夜中にゴーバンが寝静まった頃、ヴィルスラグが自分の本体の柄をゴーバンに握らせた上で「剣」だけの状態となり、その状態でゴーバンの身体を彼女が操って(オガルノンには、持ち主の身体を実質乗っ取るような形でその四肢を動かすことが出来る。無論、持ち主がそれを拒めば不可能だが、寝ている状態では止めようがない)、「ゴーバンの体」を用いてケネスを暗殺する、という計画であった。 この策略が成功すれば、反体制派の旗頭であるゴーバンが、その後見人でもあるケネスを自らの手で暗殺した、という情報が広がることで反体制派が大混乱に陥り、やがて彼等はそのまま内側から瓦解していくであろう、というのが、ワトホートの描いたシナリオだったのである。 ファルクとしては、あまりにも騎士道精神から外れたこの謀略に対して、当初から激しい嫌悪感を抱いていたが、彼は同時に「政治は綺麗事だけでは片付かない」という現実も分かっている。だからこそ、自らが主君と定めたワトホートの指示に従い、ヴィルスラグを届ける役を担うことになったのだが、それでも、自らが託された計画が失敗したことに対して、彼の中では謝罪や後悔よりも安堵の気持ちの方が遥かに強かった。 「では、また何かあれば、いつでも呼んでくれ。久しぶりに腕を振るう機会を与えられたおかげで、また本来の『武器』としての本能が湧き上がってきたからな」 彼女はそう言い残して「宝剣」だけの姿となり、ファルクはその宝剣を城の地下にある宝物庫へと届ける。結局、ファルクは「ヴィルスラグとカーラの関係」については何も聞かされないままであったが、ヴィルスラグ自身が話そうとしない以上、特にそこは深く関与するところでもないと考えて、彼の方からこれ以上追求する気はなかった。 ****** それから数日後、ファルクはオーキッドへと再び現れ、ワトホートが「時限付き退位案」を受け入れたという知らせを届けた。こうして、膠着状態が続いていたヴァレフールの内乱は、トオヤとケネスが提示した妥協案によって、ようやく解決に向けて、大きな一歩を踏み出すことになったのである。 【ブレトランド風雲録】第3話(BS35)「託される覚悟」 グランクレスト@Y武
https://w.atwiki.jp/bride/pages/88.html
狙うはバニシングパニッシャー! シンプルドーンの最大の特徴、それは 超強力なコマンド投げ超必殺のバニシングパニッシャーを A+Bのワンボタンで出せること。 画面暗転後にジャンプで回避不能なので、ステップやジャンプの着地から 突然出されると回避はかなり難しい。 バニシングパニッシャーはヒットすれば相手の体力を 半分近く奪う事ができるため、一発逆転を狙いやすい。 非常に爽快感があるため、まずはこの技を決めることから始めてみよう。 左:通常版 右:クライマックス版 体力満タンから見よこの減り!状態。この技を使わない手はない。 必要なゲージ溜め 当たり前だが、超必殺技を決めるためにはフォースゲージが3ゲージ必要だ。 またはブライドレベルをMAXにしてブライドレベルを溜めてクライマックス発動を する必要がある。 バニシングパニッシャーは決めれば体力を半分奪うことができ、そのラウンドを 勝利する可能性がかなり高くなる。そのため、まずはゲージを溜めることが基本方針となる。 ブライドレベルが3になれば6Cを3回ガードさせるだけでこのゲージ量。 クライマックス発動時はさらに倍。削りダメージも大きいので もはやガードさせるだけでリターン勝ちしていると言える。 ゲージさえ溜めてバニシングパニッシャーを決めれば、多少体力が負けてても逆転できるので、 シンプルドーンを使う場合は 無理をしない 事が重要。 ドーンは、6Cで出せるスプラッシュトゥブラックが、ヒットはもちろん、ガードされても かなりフォースゲージを溜めることができるので、 まずは遠距離でブライドゲージの残量に気をつけながら6Cを撃ちまくってみよう。 ただし6Cは硬直が長いので、ワンパターンになりすぎるとダッシュから反撃をもらってしまう。 慣れてきたら5CやしゃがみC、ジャンプ4C等の、その他の飛び道具も混ぜて、 的を絞らせないようにしてみよう。 Bボタンの出番! 各種飛び道具がヒットしてくれれば、それだけでも勝ててしまうが、 さすがにそんなに都合よくは当たらない上に、ブライドゲージも無くなってしまう。 そこでもう一つ、シンプルドーンの持つ強力な技6B(バスタータックル)を使ってみよう。 この技は ・発生が早い ・空中ガードができない ・ガードされても反撃をほぼ受けない と、かなりの高性能を誇っている。 しかもノーマルモードでは←タメ→コマンドなのだが、 シンプルモードなら当然6+Bボタンで出せてしまうため、 本来なら不可能な前歩きからや、ステップから出す事ができる。 リーチ、持続が長く、さらに判定も強力なため、中間距離から出せば 相手キャラが攻撃を出した所や、ジャンプをした所に当たりやすい。 ガードされても問題ないため、中間距離でとりあえず出してパなしてみよう。 このぐらいの距離が、タックルがギリギリ届く距離。 ここから内側はドーンの間合いだ(タックルパなしポイント) ※バスタータックルの弱点と注意 ・別に無敵が付いているわけではないので、相手の飛び道具には無力。 遠距離で出しても飛び道具にとめられやすい ・ガードされた場合は、反撃は受けないものの不利な状況なので、 連発で出しても相手の攻撃に止められやすい。 空中でもBボタンの出番! ドーンのジャンプBは打撃投げであるテイクオールツーアーミーが出せる。この技はさすがにガード不能ではないが、判定が非常に大きい。 相手が何か技を出していればその攻撃部分を掴んで投げるため、 まさに吸い込み!と言えるほどのリーチを誇る。 こんなに離れていても相手が技を出していれば…次の瞬間にはこの吸い込みである この技は空中で空振りしてもその後ジャンプ、ダッシュの空中行動が可能なので、 空振りのリスクは小さい。 相手が突っ込んできそうな時や近距離でジャンプした時、ジャンプ攻撃から キャンセルしてみたりと、空中で適当に出してみよう。ラッキーで当たることがきっとあるはずだ。 当たった時は相手が目の前でダウンするので、4C(デビルフィッシュ)でタコを召喚して 魅惑の起き攻めタイムへ移行できるぞ。
https://w.atwiki.jp/ragadoon/pages/1034.html
BS外伝『そうだ、マージャ行こう』 GM O-Ton 前編開催日 3月14日(水)夜21 00~ 終了 後編開催日 3月17日(土)夜21 00~ 終了 開催場所 オンライン(テキストセッション どどんとふむせる) 禁止スタイル ウィザード 【プレイログはここから】 今回予告 「マージャ良いとこ一度はおいで〜♪」 かつて混沌災害に見舞われ、廃村となっていたマージャ村。白狼騎士団軍楽隊長のレイン・J・ウィンストンが仮領主となってから、何度も国際音楽祭が開かれるなど、音楽鳴り響く平和な村として復興を遂げてきた。そして先日、ついに近辺の魔境が全て消失。「アントリア領内のノルド自治領」という一種の中立地帯としての環境も好感され、大工房同盟の国際会議が開かれるまでの場所となった。 もっとも今は、そういったイベントも開催されておらず、穏やかな日々が続いているように見える。 実はこの地の近辺には、アントリア旧子爵派の者達も潜んでおり、この村自身も、各地の孤児や、投影体、亡命者なども受け入れている。そんな様々な立場の者が凝縮し、るつぼになった状態であり、いつ何が起こってもおかしくない。それを、レインの特殊な立ち位置や博愛精神やカリスマといったもので抑えているだけ、という見方もできないことはない。 そんなマージャに、偶然にも同じタイミングで、4人の事情を抱えた者達が集まろうとしていた。 あらたな事件が始まるとも知らずに…… 混沌を収め、聖印に至れ! PC①『白狼騎士団の落ちこぼれ』 クラス:メイジ LV:1 年齢:10〜20代 キミは、白狼騎士団と契約しているが、まだ実戦で功をあげたことのない落ちこぼれ魔法師だ。白狼騎士団内を色々回ってみたが、どこも何故かうまくいかない。とうとうヴィクトール団長から「お前は一度レインの所で勉強してこい。そこがダメなら……あとはわかるな?」と、申し渡されてしまった。もう後には引けない。 因縁:レイン・J・ウィンストン 推奨感情 メイン:不安/サブ:任意 ラブ&ピースを歌う、異色の軍楽隊長。聖印の強さに関してはヴィクトール団長に次ぐ程になっていると噂される。 +PC1キャラデータ キャラクター名:ベゼリオ・ダンチヒ 年齢:26 性別:男 キャラクターレベル:1 Lv ワークス:契約魔法師A スタイル:メイジ/エレメンタラー(橙) 初期選択技能:感性/軍略知識 ■能力値■ HP:29 MP:49 筋力/反射/感覚/知力/精神/共感 ワークス 8/ 8/10/12/10/12 作成割振 / / / / 2/ 3 その他 =基本値= 2/ 2/ 3/ 4/ 4/ 5 スタイル / 1/ 1/ / 2/ 2 他修正 =合計= 2/ 3/ 4/ 4/ 6/ 7 ■装備■ =武器= 《タクト》 魔法判定+1 重量1 =防具= 《アカデミー制服》2/1/1/0 重量1 《ブーツ》0/1/0/0 重量1 ■所持品■ 名称/重量 《気付け薬》×2/4 《治療キット》/2 《筆記具》/1 《解毒薬》×1/2 《専門書:軍略知識》/2 = 重量総計 = 14/16 ■クラス特技■ 《基礎魔法習得》1 《混沌操作》 《魔法習得:元素魔法》3 《簡易魔法儀式》1 《魔陣構築》偉業 ■ワークス特技■ 《受動瞑想》1 《魔法習熟》1 ■基礎魔法■ 《キュアライトウーンズ》 《リウィンド》 ■ライフパス■ 出自:英雄 経験1:放蕩 経験2:副作用(触覚の鈍化) 目的:虚無 禁忌:怯懦 趣味嗜好:寝相が悪い ■コネクション■ 名前/関係/メイン感情/サブ感情 オルガ・ダンチヒ/義妹/親近感/劣等感 ■その他メモ■ 出自は大陸某所の名家の三男坊。 魔法の才を見出されエーラムに入学したものの、一時期成績不振でくさって悪い仲間とつるんでいた。 その際出処不明の怪しい薬に手を出してぶっ倒れ、死にはしなかったものの、以降魔法を使う度に副作用が出るように。 以後は反省して真面目に勉学に取り組み無事卒業・契約にこぎ着けたが、いまいち活躍できず至る現在。 自分に自信を持ちたい。 データ面は面白みのないところに落ち着いてしまった…。 コンバットメイジ取りたかったけど、MP10点の魅力には勝てなかったよ…。 ダンチヒ一門の出身。オルガさんの先輩に当たります。自身も凡才ゆえに彼女には親近感を覚えつつも、その事実から目を背けない精神性に劣等を感じている。うわこの先輩面倒くさい。 +オルガのプレイヤーより オルガ→ベゼリオ 義兄/尊敬/憐憫 一時期腐っていたとはいえ、いろいろお世話になった頼れる先輩。いまいち活躍できていないにも関わらず努力を続ける姿勢は心から尊敬している。(自分?…人に恵まれただけです。) ただ、彼の現状に対し無意識の内に多少見下している部分はあると思う。あくまで尊敬が主なので、表に出ることはほとんどないけど。 それと、どうでもいいけど兄様と呼びたい。 PC②『月光修道会の隠し子』 クラス:一般人(下記参照) LV:1 年齢:10代 ※キミはシナリオの展開次第で、君主か投影体の力に目覚めるかもしれない。一般人のままかもしれない。 ※裏ハンドアウトがつきます。 キミは、聖印教会の司祭である父と、月光修道会の特別な投影体を母に持つハーフだ。幼い頃から修道会で大切に育てられてきたが、どうやら最近両親の様子がおかしい。何やら修道会内でキミの身柄に関するよからぬ企みがあると気づいたようで、その被害に遭う前に、キミを安全な場所に避難させようと考えているらしい。 因縁:シュレーディンガーの猫 推奨感情 メイン:家族/サブ:任意 キミの母である、特殊な能力を持つ投影体。月光修道会内でも最重要人物(投影体?)として扱われている。ミラージュのように、多くの姿を持ち合わせているというが、それだけでは無いようだ。 +PC2初期キャラデータ キャラクター名:セラフィー・ヴィクトルム 年齢:20 性別:女 キャラクターレベル:1 Lv ワークス:貴族D スタイル:(無し) 初期選択技能:治療/意思 ■能力値■ HP:31 MP:28 筋力/反射/感覚/知力/精神/共感 ワークス 9 /8 /10 /12 /12 /9 作成割振 1/1/**/**/3 /** その他 =基本値= 10/ 9 / 10 /12 /15 /10 スタイル 0 0 0 0 0 0 他修正 =合計= 3/3/3/4/5/3 ■装備■ =武器= 《****》 =防具= 《****》 《****》 ■所持品■ 名称/重量 《****》/** 《****》/** 《****》/** = 重量総計 = **/** ■特技■ 《医学の徒》 《タフネス》 ■ライフパス■ 出自:継承 経験1:庶民の味方 経験2:質素 目的:意義 禁忌:財産 趣味嗜好:虫が苦手 ■コネクション■ 名前/関係/メイン感情/サブ感情 グライフ・アルティナス/ 忘却/ 寂しさ/可能性 ■その他メモ■ ブレトランドのマージャ村からは離れた場所で 生活をしていた礼節を重んじるいいとこ育ちの お嬢さん。 何不自由なく育てられ、人と神を愛する修道女。 家は決して貧乏ではないが贅沢を神の教えと反し 、人との距離を遠ざけるとして嫌っており、必要 最低限の生活を心がける。箱入り娘であり、理想 が先立つ事がしばしばある故に世間知らずの温室 育ちと軽んじられる事が多いが、努力に相応しい だけの知識は備えており、神学者と対等に会話す ること程度ならできる。 とはいえ自分の力不足と見識の無さを痛感してお り、聖印を持つ相手に嫉妬に似た尊敬を抱いてい る。 教会の粛々とした近寄りがたい雰囲気を改善する 為、「あなたの側の相談相手」をモットーに奔走 する、スーパーフリーダムアンドアクティブな淑 女。 ちなみにベジタリアンである。宗教等の問題では なく単に肉や魚をあまり好まないため。食べられ ないわけでもなく単に好き嫌いの問題。肉は肉汁 と油が苦手で魚は匂いが苦手。 +PC2【君主ver.】キャラデータ 【スタイル:メサイア】 ■能力値■ 【HP:41】 【MP:42】 筋力/反射/感覚/知力/精神/共感 ワークス **/**/**/**/**/** 作成割振 **/**/**/**/**/** その他 =基本値= **/**/**/**/**/** 【スタイル **/**/**/**/**/**】 他修正 【=合計= 3/4/3/5/7/5】 ■装備■ =武器= 《バックラー》 =防具= 《ソフトレザー》 《ガントレット》 ■所持品■ 名称/重量 《治療キット》/重量6 《気付け薬》/ 重量8 《****》/** = 重量総計 = 20/20 ■特技■ 《医療の徒》 《タフネス》 【《救難の印》】 【《治癒の印》】 【《快癒の印》】 【《真力の印》】 【《救世主の印》】(偉業) ■その他メモ■ 「聖印下さい!大事にするから!絶対大事にするから!」 本人がなりたかった自分。 回復特化です。 +PC2【投影体ver.】キャラデータ 【スタイル:神格(プロメテウス)】 ■能力値■ 【HP:48】 【MP:45】 筋力/反射/感覚/知力/精神/共感 ワークス **/**/**/**/**/** 作成割振 **/**/**/**/**/** その他 =基本値= **/**/**/**/**/** 【スタイル **/**/**/**/**/**】 他修正 【=合計= 3/4/4/5/7/4】 ■装備■ =武器= 《殉教者の槍》 =防具= 《闘神鎧》 《****》 ■所持品■ 名称/重量 《治療キット》/重量2 《****》/** 《****》/** = 重量総計 = 19/20 ■特技■ 《神性:医療》 《タフネス》 【《崇められし者》】 【《癒しの神光》】 【《遣わされし守護者》】 【《救いの護り神》】 【《運命導く加護》】(偉業) ■その他メモ■ プロメテウス…人が繁栄するように雷霆神に逆らい 火を与えた神。火は人を繁栄させたが、人同士が火 を使って戦争を行い罰として3万年もの間鳥に内臓 を啄ばまれ続けた。罰を受けることを知った上で人 を慈しんだ奉仕の神。 二度とオリュンポス界の人々に関われないよう、異 界に送り込まれた。 PC③『モンスター達の義兄弟』 クラス:一般人(下記参照) LV:1 年齢:10代 ※キミはシナリオの展開次第で、君主か邪紋使いの力に目覚めるかもしれない。一般人のままかもしれない。 ※裏ハンドアウトがつきます。 キミは、投影体達に囲まれて育てられた孤児だ。キミ達の親代わりである、毛皮のオルガノンのトラン爺。さらにキミと兄弟のように育った投影体達が3人。計5人で、各地の森や廃墟などを転々としながら、楽しく、時にはいざこざもありながら大きくなってきた。そしてアントリアの一角に来た頃、トラン爺がこうもらす。「わしの寿命が近い。そろそろお前達は独り立ちの頃じゃ」 因縁:トラン爺 推奨感情 メイン:家族/サブ:任意 物知りの毛皮のオルガノン。見た目は毛むくじゃらの着ぐるみのよう。本人曰く「わしは神の毛皮」との事。投影元の本体は着る事で様々な動物に変身する事ができたらしいが、キミはまだ見たことはない。 【三兄弟について】 長男サンマ よく喋る。ディープワンの投影体。 次男ツバメ やんちゃ。ガルーダの投影体。 三男ゴリラ ゴリラ。 ゴリラの投影体。 +PC3初期キャラデータ キャラクター名:ティム 年齢:12歳 性別:男 キャラクターレベル:1 Lv ワークス:無法者 スタイル:(無し) 初期選択技能:格闘/回避 ■能力値■ HP:39 MP:20 筋力/反射/感覚/知力/精神/共感 ワークス 12/12/11/ 8/10/07 作成割振 03/02/**/**/**/** その他 =基本値= 15/14/11/ 8/10/07 スタイル 0 0 0 0 0 0 他修正 =合計= 5/ 4/ 3/ 2/ 3/ 2 ■装備■ =武器= 《素手》 =防具= 《ローブ》 《ブーツ》 《シースベルト》/2×1 ■所持品■ 名称/重量 《解毒薬》/2×2 《ダガー》/1×1 = 重量総計 = 10/30 ■特技■ 《タフネス》Lv1 《体勢崩し》Lv1 ■ライフパス■ 出自:戦禍 経験1:離別 経験2:探求 目的:喪失 禁忌:虚偽 趣味嗜好:外見にこだわらない ■コネクション■ 名前/関係/メイン感情/サブ感情 クローディア・シュトライテン/忘却/尊敬/友情 ■その他メモ■ 出身は旧トランガーヌ。彼の国が滅びる際、騎士団の一員であった父に逃がされていた。何が起こったかわからないまま彷徨ううちに行き倒れ、トラン爺に拾われて今に至る。ただし、拾われる前のことは全く記憶になく、また未練もない。兄弟たちとの今の生活を楽しんでいる。 口数は少ないが感情豊かで、顔を見ていれば何を考えているかわかるくらいには単純。好き嫌いがはっきりしており、例えば問答無用で兄弟たちを浄化しようとする君主、そして聖印の力をあまり快く思っていない。ただし自分たちに害意がないとわかれば一瞬で打ち解ける。 +PC3【君主ver.】キャラデータ 【スタイル:セイバー】 ■能力値■ 【HP:51】 【MP:32】 筋力/反射/感覚/知力/精神/共感 ワークス 12/12/11/ 8/10/07 作成割振 03/02/**/**/**/** その他 =基本値= 15/14/11/ 8/10/07 【スタイル 2/ 2/ 1/ / 1/**】 他修正 【=合計= 7/ 6/ 4/ 2/ 4/ 2】 ■装備■ =武器= 《ダガー》 =防具= 《ローブ》 《ブーツ》 《シースベルト》/2×1 ■所持品■ 《解毒薬》/2×2 = 重量総計 = 9/30 ■特技■ 【《疾風剣の印》】LV2 【《鋭刃の印》】LV1 【《一刀入魂の印》】Lv1 【《閃光刃の印》】(偉業) ■その他メモ■ シースベルトからダガーを出します。攻撃型です。 +PC3【邪紋使いver.】キャラデータ 【スタイル:ライカンスロープ】 ■能力値■ 【HP:51】 【MP:32】 筋力/反射/感覚/知力/精神/共感 ワークス 12/12/11/ 8/10/07 作成割振 03/02/**/**/**/** その他 =基本値= 15/14/11/ 8/10/07 【スタイル 2/ 1/ 2/ 1/ /**】 他修正 【=合計= 7/ 5/ 5/ 3/ 3/ 2】 ■装備■ =武器= 《素手》 =防具= 《黄金の毛皮》(投影体装備) 《ブーツ》 《シースベルト》/2×1 ■所持品■ 名称/重量 《解毒薬》/2×2 《ダガー》/1×1 = 重量総計 = 15/30 ■特技■ 【《野生の双牙》】Lv1 【《投影体装備》】Lv1 【《獣の猛襲》】Lv1 【《地を駆ける者》】Lv1 【《狂乱の暴獣》】(偉業)Lv1 ■その他メモ■ 羊の角が生えてくるイメージ。本人は羊と言い張りますが攻撃用の爪は完全に肉食獣のそれ。謎。 ローブは脱ぎ捨てていいのだろうか。こちらも攻撃型です。っていうか足止め? PC④『カークランドを知る者』 クラス:一般人(下記参照) LV:1 年齢:10代 ※キミはシナリオの展開次第で、君主か邪紋使いの力に目覚めるかもしれない。一般人のままかもしれない。 ※裏ハンドアウトがつきます。 キミは、マージャの隣村、ヒュトラン村の出身だ。ヒュトラン村は、旧子爵家の人達とかなり仲が良く、現在のアントリアでは、やや色眼鏡で見られがちの村だ。キミは、村の中では一番の秀才で、旧子爵家のトップである、ミリア・カークランドとも、かつてそれなりに話をした事がある。村の人達が慕う理由がわかる程度には、良い人だとは思うが、それに囚われているだけの村の現状に疑問を抱くこともあった。さらに、隣村のマージャが余所者の力で廃村からあれよあれよと大きくなった姿を見て、キミは、このまま狭い世界にいるだけではダメだと思うようになった。そんなキミに、ヒュトラン村に良く現れる魔法師の、シアン・ウーレンが話しを持ちかけて来た。「それ程まで考えるのなら、マージャ村を見てくるといい。あの村には独特の何かがある。君ならそれが何なのか分かるだろう」シアンは、餞別に特製の魔石をキミに渡し、門出を祝ってくれた。 因縁:シアン・ウーレン 推奨感情 メイン:尊敬/サブ:任意 パンドラの魔法師。混沌の研究をし続けるために、各地で色々行なっている。ヒュトラン村やミリア・カークランド達とは協力関係を結んでいる。マージャ村にいるアマルを邪紋使いに覚醒させた恩人でもある。 +PC4初期キャラデータ キャラクター名:イレーナ・キャンベル(エドワード・スミス) 年齢:19歳 性別:女(男) キャラクターレベル:1 Lv ワークス:貴族B スタイル:(無し) 初期選択技能:軽武器/意志 ■能力値■ HP:26 MP:23 筋力/反射/感覚/知力/精神/共感 ワークス 12/12/9/10/9/8 作成割振 1/0/0/0/3/1 その他 =基本値= 13/12/9/10/12/9 スタイル 他修正 =合計= 4/4/3/3/4/3 ■装備■ =武器= 《ロングソード》 《バックラー》 =防具= 《ブレストプレート》 《ブーツ》 ■所持品■ 名称/重量 《気付け薬》/2×4 《解毒薬》/2×1 《筆記用具》/1×1 = 重量総計 = 24/26 ■特技■ 《武器熟練1》 《武器防御》 ■ライフパス■ 出自:没落貴族 経験1:大将首 経験2:お忍び 目的:忠誠 禁忌:無法 趣味嗜好:お茶の味にうるさい ■コネクション■ 名前/関係/メイン感情/サブ感情 レベッカ/興味/幸福感/劣等感 父の知人の勧めで一時期留学していたイスメイアで、男装して夜遊びしていたときに出会った美女。 華やかな彼女のいる酒場で過ごす時間はとても楽しいものだった。ただ、本当の自分と比べたとき、その華やかさに苦しみを覚えるときもある。 なお、ブレトランドに戻ってきてからは会う機会はなかったし、レベッカの正体も知らない。 セッションで拾えない?…フラグは折れる前提でとりあえず立てておくもの。 ■その他メモ■ 前ヒュトラン領主の一人娘。 キャンベル家は古くからアントリア子爵家に仕えた武門の家で、父パトリックも勇猛な武官であった。ただ、一方で領地経営の才には乏しく、また頑固で融通のきかない性格であった。そのため、ダン・ディオードが子爵位を強奪すると真っ向からこれに反抗、善戦するも最終的には彼に討たれた。 父の死後イレーナはヒュトラン村の有力者に匿われたが、父の聖印はダン・ディオードのものとなり受け継ぐことができなかった。ただ、そのためにダン・ディオードも彼女を積極的に探すことはなく、現在も形式的にはお尋ね者だが比較的自由に動くことができる。とはいえ、村の外に出たことはほとんどなく、外の人間と会うときも男装しエドワードという偽名を使うようにしている。 レインのことは当初は嫌いだったが、最近では父や前アントリア子爵にないものを持っていると感じるようになっている。とはいえ、前アントリア子爵家、特に同い年だったミリアとは仲がよく、単純に前子爵家を否定したくはないとも思っている。 あくまで一般人レベルではあるが、腕は立つ。また、父に厳しく躾けられたので基本的には礼儀正しく、穏やかな性格。ただ、ときおり気晴らしに男装して遠出しており、このときだけは自由な生活を楽しんでいた。男装が様になっているのはこの時の経験から。 +PC4【君主ver.】キャラデータ 【スタイル:パラディン】 ■能力値■ 【HP:39】 【MP:34】 【スタイル 1/2/0/0/2/1】 他修正 【=合計= 5/6/3/3/6/4】 ■特技■ 【《庇護の印1》】 【《光盾の印1》】 【《誘導の印1》】 【《重撃の印1》】 【《光壁の印1》】(偉業) ■その他メモ■ 重複部分は削除しました。防御寄り。 +PC4【邪紋使いver.】キャラデータ 【スタイル:レイヤー:ヒロイック】 ■能力値■ 【HP:39】 【MP:34】 【スタイル 1/2/0/0/2/1】 他修正 【=合計= 5/6/3/3/6/4】 ■特技■ 【《英雄存在1》】 【《英雄の武具1》】 【《英雄武技1》】 【《盾なる英雄1》】 【《英雄絶技1》】(偉業) ■その他メモ■ 重複部分は削除しました。攻撃寄り。 +特別ルール「一般人」について 本セッションでは、本来のグランクレストRPGには存在しない「一般人」というクラスのPCを作成する(下位分類としての「スタイル」は不在)。作成法は以下の通り。 能力値/HP/MPのスタイル修正&成長値:全て0 習得可能特技:ワークス特技のみ その他のルール:通常のPCと同様(天運も所持) 選択可能ワークスは「クラス制限のないワークス」のみ。 (合計でワークス特技2つのみを持っている) +マージャの人物簡易紹介【GMの偏見入り・今回のシナリオに関わるかもしれない人】 領主:レイン・J・ウィンストン ロード/セイバー・メサイア 白狼騎士団所属。究極の博愛主義者の音楽家。思い立ったらすぐ行動。 契約魔法師:ランス・リアン メイジ/サモナー 自称:堕天使かつヤマトゥ教団教祖。根は優しくて真面目だが、一見ただの中二病患者。 孤児院院長:ティリィ・アステッド アーティスト/レイヤーヒロイック レイン軍楽隊所属。物静かだが、熱い心を持つ。混沌の匂いを感じ取ることができる特殊なアーティスト。 駐在武官:アマル アーティスト/ライカンスロープ マージャ村にある犬屋敷の主人。シアン・ウーレンによってアーティストとなった。 駐在武官:メア アーティスト/シャドウ マージャ村にある猫屋敷の主人。ダン・ディオードの側近なのだが、実はマリア・カークランドの妹。 客人:デーモン・ミュンヒハウゼン 投影体/悪魔(?) 音楽とスモウレスリングを愛する悪魔。みんなが頑張っても全然浄化できなかったマージャ周辺の魔境の混沌核から生まれた。(=超やばい) 雇用魔法師:マリン・カーバイト 投影体(?)かつメイジ/プロフェット 魔導書をめくることで召喚できる魔法師。エーラムのお墨付きあり。 孤児院の最年長:二コラ 責任感が強い女の子。ティリィが留守の時にも頑張って孤児院の子どもたちをまとめてた。 孤児院の子どもたち 小さい動物のお友達たち +【NEW!】PC達のイラスト+シナリオ終了後のPC達の立場 ★セラフィー・ヴィクトルム:投影体ハーフの聖印教会員。レインの従属聖印をもらってメサイアとなり、そのままマージャ村に居住する。素直で臆病で押しが強い。 ★ベゼリオ・ダンチヒ:白狼騎士団付き魔法師(エレメンタラー)。様々な君主のもとを渡り歩いてきたが、このたび、セラフィーの監督役という体で、マージャ村で研修を続けることとなる。 ★ティム:投影体の義兄弟たちと育った野性児。投影体で育ての親だったトラン爺の力を受け継ぐ形で、ライカンスロープとなる。マージャ村の孤児院の隣に家をもらって、義兄弟たちや孤児院の子どもたちと楽しく過ごす。 ★イレーナ・キャンベル(偽名:エドワード・スミス):ヒュトラン村の前領主の娘。聖印や邪紋は持たない。理性的で常識人。男装をして遠出をすることがある。本能だけでつき進むレインとは袂を分かち、ヒュトラン村に戻る。 名前 コメント すべてのコメントを見る セラフィー所見:イレーナ…自分を守ってくれる最後のよすが。父の師が用意してくれた護衛ということもあって、彼女の前では奮起していた。 一枚も二枚も上手な相手であり、全ての事が済んで村を探すと彼女はもういない。「泣いた赤鬼」の赤鬼のような気持ちを抱いていると思う。きっといつか礼を言うために彼女を探すのだろう。余談だけど、多分性別には違和感を感じていたのではないかな。 -- (しんせー) 2018-03-30 22 02 06 セラフィー所見:ティム…境遇は非常に似ているように感じた。でもセラフィーよりもきっとずっと真っ当に強い人。思想も志も誰かからの借り物のセラフィーとは違い、家族を思うという天然物の思いを貫く在りようはセラフィーに大きな衝撃を与えた。いつか守れるようになりたい、そんな憧れと庇護が入り混じった不思議な感じ。 -- (しんせー) 2018-03-30 22 01 04 セラフィー所見:ベゼリオ…何者でもなかったセラフィーを君主と呼んでくれたからこそ、そうありたいと願う。 弱さに気付きながらも見守ってくれる彼はレイン以上にセラフィーにとってのヒーローなのかも。 最後の会話でベゼリオすらもが悩む一人の人と知り立派になって困った時に手を差し出せたらなあと思いながら時折泣かされるセラフィーであった。 -- (しんせー) 2018-03-30 21 59 45 無事外伝は終了しました。ログ等は後日アップいたします。皆様ありがとうございました! -- (O-Ton) 2018-03-18 16 35 41 PC2とPC4のHPなどを修正しました。 どどんとふへのリンクを張りました。(まだパスワードかけていますが) あと、ティムは覚醒したらローブ脱ぎ捨ててよいですw -- (O-Ton) 2018-03-09 01 00 55
https://w.atwiki.jp/ragadoon/pages/1519.html
2022年前期定例卓 見習い悪魔のTRPG デヴィルズ・アカデミア GM:睦月 PL:Tantal.、かんらん、Saki、ナエト 基礎情報 使用ルルブ:基本ルールブック、エピソード・ファイル、ネクスト・ステップ レギュレーション:自作のオリジナルシナリオ、PC継続キャンペーン 日時:毎週木曜日20時から PC一覧(+各PC達の所感) [部分編集] + ガネーシュ/ PL Tantal. ▼人間界ver. https //docs.google.com/spreadsheets/d/11KlGx476g9w3XN3r135EGPlbVtTq_ZBrr6y0xwu_T8w/edit?usp=sharing 名前:ガネーシュ 年齢:18 性別:中性 埋まれ:龍魔族 ◆技能◆ 3lv:《動物》《炎》《交渉》 4lv:《料理》《白兵戦》 スペシャル技能:お客様はマグナ・ロード様でございます ◆アビリティ◆ 頑強:これは体力の分 カバーリング:お客様を守ることは店員の役割です 全力攻撃:殴る 頑強Ⅱ:これは忍耐力の分 電撃作戦:料理はスピードも大事なのです ◆設定など◆ 「私はガネーシュです。以後、よろしくお願いします。」 「私?剣魔族だよ。」 「料理はパワーだよ、パワー。」 伝説って?→ああ! ラグメザーラでひっそりとやってる料理店の子。幼いころから料理のイロハを叩き込まれていたのでわりと料理がうまい。幼いころから料理のイロハを叩き込まれていたのでわりと料理がうまい。好きな食べ物はサバサンドとかメルジメッキ・チョルバスとか。 ◆持ち物◆ 万能包丁:親の親の形見。よく切れる 生クリーム:おいしい。 普段使いのもらった包丁(名刀) ――――――――――――――――――――――――――― ◆第一話メモ◆ なんかあだ名が生クリームになってしまった。 ◆第二話メモ◆ お見舞いはフルーツで ◆第三話メモ◆ 決め台詞言わせてやった ◆第四話メモ◆ 作り置き、あたためて食べてね ◆第五話メモ◆ 後で本でも送りましょうかね ◆おまけ、お遊び回◆ 序列が見える [部分編集] + モリア/ PL かんらん ▼人間界ver. https //docs.google.com/spreadsheets/d/1L9b21d21EnTy56DxmiU8ptp3MnNw8QD0lvMsdkisTq0/edit?usp=sharing 名前:モリア 年齢:18 性別:中性 埋まれ:文魔族 ◆技能◆ 3lv:《鉱石》《調達》《魔術戦》 4lv:《制作》《風》 スペシャル技能:暴風 ◆アビリティ◆ プリズム・レイ:事故みたいな不確実な"不幸"より、もっと確実な災厄を。何度も何度も繰り返し、計算されつくした魔法攻撃。 不屈のココロ:何があっても諦めない。だってすべては時間と努力で巻き返せることを知っているから。 不思議な発明品:翼を作る過程の副産物。様々な技術を気の向くままに詰め込んだ発明品は、ときに大活躍してくれる。 事前準備:"失敗した時のために。成功をより成功にするために。…皆のために、って思い始めてるのは、知らないふり。" ポイズン・ポット:僕たちもちょっとずつ強くなって、守護者もちょっとずつ強くなった。ちょっとずるいかもしれないけれど。僕だって強くならなくちゃ。 ◆設定など◆ 「ぼく、モリアです。よろしくね」 「あなたも大切なものをなくしたんだね。探すの、手伝うよ」 :ふわふわ。あんまり人に左右されないし、あんまり人に心を許してない。 眠たがり。なぜなら生きるのに必要な魔力まで無理して宝石に変えてるから。常に過労状態なので割と死にかけ。 :人の名前(意味の存在しない文字列)を覚えるのが苦手。そのひとのモチーフを彼なりに考えて呼ぶ。 :自分で作った宝石で、自分で磨いた技術で、翼を作って空を飛ぶ。認めてもらえないと思っているので人には翼を見せたくない。 :ビーフストロガノフが好き。あたたかいから。 物心がつく前に事故に遭い、両翼の切断を余儀なくされた。 飛べないこと以外は普通に生活できたけれど、飛行訓練に参加しなかったり遊ぶ時も常に地面を駆け回っていたことから、次第に異端視されいじめられるようになった。 それでも折れなかった彼は、持ち前の反骨精神で翼を作り始めるようになる。様々な文献に触れ失敗や成功を繰り返していくうち、やがて彼は研究の虜になった。周りからの声なんて無視するように研究に打ち込み、学校にさえ行かなくなって研究小屋にこもる毎日の中で、彼はついに翼を完成させる。しかしながら、みんなの前で飛んでみせたときに投げかけられた言葉は、待ち焦がれた称賛の言葉ではなく、「気持ち悪い」「偽物」という言葉だった。いじめられることすらも無くなって完全に一人ぼっちになった彼は、今日もまた翼の改良を続ける。目指すものが分からなくなったとしても。 ふわふわ。色んなことに興味を持つしそっちへ勝手にふらふら行っちゃうことも。反面ひとつのことに集中すると周りの声が聞こえなくなる。ちょっと電波。 別のことばっかり見てそうで、案外目を向けるべきことにもちゃんと目を向けてる子。困ったときには妙案を出すやもしれない。 みんなには協力するけれど、なんだかんだ最初は信頼はしていない。どうしても昔のいじめっ子を忘れられないから。 自分が誰かに認められる事は諦めたし、自分から誰かを評価づけようともしない。親愛を向けても期待をかけても敵意しか返ってこない中にいたので、相手に感情を向けることも向けられることもしなくなった子。 最初のうちは当たりさわりもなく淡白な反応をする。でもみんなからポジティブな感情を向けられ続けたら、信じていいのかめちゃくちゃ悩みながらも少しずつ自分を出せる…のかもしれない。依存先を人ではなく研究にしてるので、悪口や仲間はずれには割と強い。人から優しくされることなんて諦めてるので、どれだけ酷く扱われても「まあぼくには研究があるし」と思うことができる。 逆に言えば誰かから優しくされたらその諦観に対して疑問が出てきたり、ともすればひとの優しさを信じられるようになる(=嫌なことをされたときに傷つくようになる)ため、自分というものが揺らいですごく苦しい状況にはなる。それを乗り越えたらコミュ障だって解決できるんだろうけど、きっと今の彼には少し難しい。 自分で機械の翼を作り、それに風魔法でブーストして空を飛ぶ。ただし「気持ち悪い」「変」と言われ続けてきたので、めったに飛ぼうとしない。自分でも飛び方が普通じゃないのは分かってるし、皆から否定されるものだと信じ切っている。「翼みせて」って言うと、最初はやんわりと「邪魔だから出さないの」「魔力消費したくないから見せないよ」と断る。それでも追求すると怒る。 アカデミアのすみっこにある洞窟がお気に入りスポット。自分の魔力を洞窟にため込んで宝石を生やし、その宝石を加工して翼を作っている。魔力で作られていること、込め方を調整されていることから、ものすごく軽くて強靭ななんかすごい宝石になっている。ただし燃費は悪い上、少しでも余った魔力は宝石生成に回しがちなので常に魔力がすっからかん。いざというときに魔法が使えないとかよくある。 自分と同じように、何かを無くした人の手助けをすることが信条。根はいい子なのでそれ以外の依頼だってちゃんと取り組むけど、やっぱり失せ物の依頼のほうが張り切っている。 生きるのに必要な魔力まで宝石生成に使うので、いつもエネルギー不足。頭を動かすエネルギーも足りなくて、いつも睡魔に襲われている。次の瞬間に倒れても何もおかしくないレベル。 洞窟では一人でいるので、魔力を放出しすぎて意識を失うこともしばしば。魔力が戻ったらまた動けるようになるけど、それまでは飲まず食わずで倒れっぱなしとかよくある。人知れず野垂れ死んでてもおかしくない、そんな危うさを持つ子。 親も研究職で忙しかったため、誰かと食事をしたこともなければ誰かと長い間話したこともない。もちろん体を心配されたり、気遣われたりした経験もない。人から優しい感情を向けられることに慣れておらず、こわごわと触れてみたり、やっぱりやめてみたりする。 ◆持ち物◆ 翼:蝶々の翅の形のもの、鳥の翼の形のもの、飛行機の翼の形のものがある。時と場合によって使い分けるので、飛び方も戦い方も様々。マスターすれば、自分の翼のある悪魔よりも強いのかもしれない。材料の宝石は魔力を元に作っている分すごく貴重で、今は鳥のものしかスペアがない。壊れたらかなりの一大事。普段は空間魔法で持ち歩いてるけれど、どの翼もモリアの体の二倍くらいの大きさ。 薄緑の宝石:ペンダントにして所持している宝石。翼に使っているものと同じもの。小さいながらも中に精密なからくりが入っていて、魂の欠片をエネルギーに少しの間浮遊することが出来る。万一翼が全部壊れてしまったときのための保険。 小さな鍵:宝石と一緒にペンダントにかかっている鍵。幼い頃、翼を失った直後に誰かからもらったもの。その鍵の合う小屋(鍵のタグに場所が書いてあった)を勝手に研究室として使ってる。自分を哀れんだ魔王さまがくれたんだ、と本人は信じ切ってるけど、本当はどうなのかは誰も知らない。 ゴーグル:幼いころからの愛用品。幾度もの試験飛行と幾度もの落下の末ぼろぼろになっているが、レンズを替えフレームを継ぎなんとか使い続けている。普段はゴーグルと別に眼鏡をかけているので、たまにゴーグルを下ろそうとして眼鏡を強打することがある。 ◆つくったもの◆ 木製のペンダント:ゆみの祖母の家に使われている木材を少し拝借して作ったペンダント。中には風魔法が閉じ込められていて、ふたを開けるとふわりと木の匂いが広がる。まるで、もう存在しないあの家に帰ってきたかのように。モリアのペンダントと同じデザインの彫刻が小さく入っている。 煙幕:【不思議な発明品】で、攻撃を避けるために使った煙幕。風魔法と宝石の粉が封入されていて、発動するときらきらとした煙幕によって攻撃者を惑わせる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― ◆定例第一話◆ ビーフストロガノフは彼の思い出の味になりました。生クリームくんありがとう…。いつもは一人ぼっちであの洞窟で携帯食料(カロ〇ーメイト)を食べてる彼ですが、きっとあの晩の洞窟はすごくあったかくて居心地がいいと感じていたはずです。よるのにおいともりのにおいはいつも通りなのに、あの日はひとのにおいもして、おいしいご飯のにおいもして。いつもは灯さない焚火だってあって、ぼんやりしたオレンジの洞窟内をすごく不思議な気持ちで眺めていたんじゃないかな。「あの日のご飯がいままでで一番おいしかった」っていう自覚は彼にはありません。だっていままで食事になんて気を使ってきてないから。それでも、人生でまだ一桁回目の「誰かと食べる温かい食事」に、たしかに自分のなかで何かしらの気持ちが動いていることには気づいています。そしてそれを受けいれられないままでいます。 大樹くんとゆみ姉の様子にも少しだけ影響を受けています。おばあちゃんという取り戻せないとわかっているものを無理に取り戻そうとしないその姿に。彼女との温かな記憶を思い出すことだけで十分に喜んでいるその姿に。何もかもを捨てて、もう手に入らない翼を追い求めてきた彼には、彼らのその様子がひどく理想的に見えたかもしれません。だから、彼らが失われた家を思い出してわらえるように、あの首飾りを置いていきました。 最後のところで先生に「友達もできましたね」って言われてちょっと口角が上がっていたのは、たしかに本心です。自分にそんな存在が、少なくとも端から見て「彼らは友達である」と認識されるような人ができて、たしかに嬉しかったのです。ただ、まだその感情は本人のなかでも処理しきれていません。心の中にぽわりと浮かんだ「うれしい」という気持ちを頑張って無視していたんじゃないかな。笑みが浮かんだのも無意識です。 「わかりました」と答えたのも、本人的には「先生に『仲良くしてくださいね』って言われたから、ただそれに大人しく返事しただけ」だと思ってます。普段の彼だったら何も言わずにやり過ごすはずなのに。どうして答えたんだいモリアくん。そういうとこだよモリアくん。彼が少しずつ変わり始めているのは彼自身は認識していないけれど、長いこと彼の様子を見てきた(≒振り回されてきた)オリヴァー先生なら多分気づいています。 きっと解散した後、一人で洞窟で過ごしています。あのあたたかだった光景を思い出しては、いまこの場が冷たいことをやけに自分が意識していて不思議に思っています。邪念を振り払うように宝石生成に集中しすぎて、また魔力切れで倒れてるかもしれません。 みんなと仲良くなったら、そのあたたかさを受け入れてしまったら、もう一度冷たい場所へ突き落された時に辛くなることを知っています。この心地よい一人の場所が、”さみしい場所”になってしまうことに気づいています。ずっとしがみついてきたものを、離してしまうのが怖くて。心を開いた次の瞬間に、以前のように踏みにじられるのが恐ろしくて。彼はまだ、無意識にその手を取ることを拒絶しているようです。 ◆定例第二話◆ 彼は、のえるの風邪を治すことに全面的に賛成していたわけではありませんでした。本来はそれで死ぬかもしれなかった運命を捻じ曲げるのは、正しくないと思ったから。…羽を失うという運命を押し付けられた彼には、都合よく運命を曲げて救われる、なんてことは認めがたかったから。それでも、彼は救う方を選択しました。のえるが目を覚まさないと契約ができない、だから救う。彼自身は、そんな考え方でこれを選んだと思っています。それでも。心の奥底にあったのは、総司とのえるを羨むきもち。そんなにも心配して、苦しんで、祈るような関係を、彼は知りませんでした。そんな人は彼の周りにはいませんでしたし、奇跡を与えてくれる悪魔の存在だってありませんでした。だから、もしかしたら彼は途中から自分とのえるを重ね見ていたのかもしれません。あの日、自分の目の前に奇跡が舞い降りて自分を救ってくれたら。そんなことを考えながら、確かに彼はその選択をしたのです。 回復を祈る人がいるのなら、救われることも許されるのかなとも思っています(自分の中で「正しくない選択をした」ことに対する正当な理由をつけようとして、無理にそう考えている節もあります)。大切に思われている人にこそ、奇跡は訪れるのだ、と。誰からも大切に思われていなかったからこそ、奇跡なんて起こらなかったのだろう、とも。 二人の最後の魔法も、モリアくんにはとても美しく見えました。彼にとっては魔法とはあくまで手段にすぎず、そんなふうに飾り付けるような(行ってしまえば意味のない)使い方をしたことはありませんでした。けれど、どうしてでしょうか。彼はその魔法たちが、今まで見てきたどの魔法よりもずっとずっと良い魔法に見えたのです。いつか、あんな魔法を使ってみたい。そんな風に思うほどに。 やけに話す量が増えてたのはPLがいっぱいお喋りしたくなったからです。ごめんねモリアくん。たくさん働いたね、お疲れ様。でも、今までみたいに、実習の邪魔をされたりせっかくできた課題を奪われたりしなくなったから少しはやる気が出てきているのかもしれません。初めて誰かと協力してるし。今回は一応、実習の前の日はちゃんと眠ってきました。 [部分編集] + オフィーリア/ PL Saki ▼人間界ver. ▼私服ver. https //docs.google.com/spreadsheets/d/1Hjt2Ssr2koG1uyJtZn_RCnX37EMYUfhN1XsE8TKJq2M/edit?usp=sharing 名前:オフィーリア 年齢:18 性別:女性 埋まれ:歌魔族 ◆技能◆ 3lv:《地理》《芸術》《調達》《歴史》《射撃戦》 4lv:《歌》 スペシャル技能(第1話~第3話):フリューゲル スペシャル技能(第4話以降):Voyager Ⅱ ◆アビリティ◆ 不屈のココロ:ずっと、諦めだけは悪かったから。少しは人の役に立てるほどの意地を見せられるように。 幸運の子:幸運?運はいいのかな。 チェック&ショット:意地悪は遺伝かな。 みだれうち:数打ちゃ当たる。なんて言葉がある。本当かは知らないけれど、たまにはやってみようかな。 援護射撃:みんなが勝てるように。みんなが強くなれるように。みんなが幸せでいられるように。 ◆設定など◆ 歌うことが好きな悪魔だが、歌以外の音楽も好き。芸術関連について広く関心がある。 気弱で引っ込み思案だが、周囲の悪魔たちの影響もあり、変わりたいと思い始めた。そのために何をしたらいいかはまだ模索中。 みんなが幸せそうにしている顔を見るのが好き。みんなが楽しく過ごしていればそれが一番。逆にみんながうまくいっていないときは誰よりも心配そうな顔をしている。 甘いもの(特にチョコレート)とかわいいものが好き。動物は怖い。ねずみが特に嫌い。 ◆voyager 2◆ それは彼女自身が自分を見つけた一種の通過点。自身の自立と成長への新たな旅路を祝して。 自立とその先の孤独でさえも受け入れて進んで行けるように。 自らの手で手に入れた骨でできた弓で望んだ未来を打ち抜く。 由来は天王星の衛星の「オフィーリア」を発見した無人宇宙探査機「ボイジャー2号」から。新たな彼女の意思の発見とその遥かなる旅路の始まりを記して。 ◆持ち物◆ 歌術符 クロスボウ(フクイラプトル):兄に作ってもらったクロスボウ。クロスボウだがビームが撃てる。 [部分編集] + ゴウキ/ PL ナエト ▼人間界ver. ▼私服ver. https //docs.google.com/spreadsheets/d/1amCfBWt1OllFbFbemmsMgNJ0I67suZeMh6YgrwQTiVg/edit?usp=sharing 名前:ゴウキ 年齢:18 性別:男性 生まれ:鬼魔族 ◆技能◆ 3lv:《植物》《薬学》《地》《感情》《白兵戦》 4lv:《武器》 スペシャル技能:狂鬼化《バーサーク》 ◆アビリティ◆ 不屈のココロ:次があるっす。 愛用の武器:三刀流で俺は行くっす。 戦闘学習:次はどうしましょう? コミュニケーション:基本っすね。 全力攻撃:三刀流奥義《鬼斬》!! ◆設定など◆ 慣れない都会に苦戦している。 首の包帯は特に意味はなく、本人はカッコいいと思っている。人間界時の眼鏡も同理由。 人間界時に口に含んでいるのはソーダ味のキャンディー。ポケットの中には常に携帯されている。 喋ることは好きだが、初対面だと相手の顔色を窺いがち。仲間には目で伝えることもしばしばある。 狂鬼化中は怒っているわけではなく、普段よりかは元気になる程度。 ふざけるのは得意(そもそもふざけるの得意ってなんだ…?) 武器は金棒(鬼らしいからという単純な理由) 甘い物が好き。猫舌。意外と器用。 ◆重要設定◆ 鬼にしては非力。能力や狂鬼化も強いわけではないため、その分昔から武器への依存がある。よほど重かったり使用方法が分からなかったりしない限りはそつなく使える。ちなみに金棒が軽い理由も非力だからである。(要は先天性の力の弱さ) 魔界の東方で生活していた時に、祖母の漢方薬の調合を見て育ってきており、薬学にある程度かじってきている。一応魔界の一般的な薬学も手助けがあればできる。魔界の東方に実家がある。実家は田舎らしい。(修学旅行先とは異なる地域) モリアにペンダントを貰った際に「自分の生まれ故郷の事を思い出せたらいいなって……。」と言われた際に元気だったものの、少し反応に困っていた様子だった。あの時、緑の鬼は何を思っていたのだろうか……。 鵜馴染誡に悪魔であることを明かした際、緑髪について言及され、褒められた(?)時にとても嬉しそうであった。 ◆持ち物◆ キャンディ(ソーダ味)×大量:甘いものが好きらしい。最近はミックスフルーツ味も入荷。 金棒《NO NAME》:通常より軽い設計になっていて持ち運びが楽。 ミラージュブローチ×1:何故持ってるんだお前は。 ペンダント:モリアから修学旅行で貰ったもの。すごく装飾が繊細で緻密。かすかに故郷の東方世界の香りがする。 木刀:修学旅行のお土産。定番だね。 フクイラプトルの骨(大きい):大きい骨ってなんかいいね。だって骨だもの。 名刀《五代鬼徹》:修学旅行の最後に貰ったもの。大剣豪になれそうな感じがする。 ―――――――――――――――――――――――――――― ◆第一話を終えて◆ 初めての人間世界に興奮もしていたが自分の髪色(緑色)が人間世界ではかなり浮いていることに気づき、髪を黒に染めようかなと思った。途中で実習の進行において全く役に立てなかったことを実は引きずっている。正直ラスト決めただけじゃね?とも。 反省の時にふざけたのはそんな気持ちを知られたくなかったため。 意外と『(^_-)-☆いいじゃんいいじゃん』というのが気に入った。 「ビーフストロガノフ美味しかった!」 ◆第二話を終えて◆ 首の包帯がカッコよくないということに遂に気付いてしまった。といっても、本人は気にいってるのでそのまま行くらしい。飴を大量消費したので、買い出しに行く予定。 今回は人間との交流が多く、人間に対して興味以外の何かの感情が芽生えた?様子。 正直、どうして最後に土砂を綺麗にしたのかは、自分でも分かっていない。でも、なんかやらなきゃいけない感じがした。前回に比べて自分らしく皆の役に立てて自分としては大満足。反省の時は普通にいろんな感情が入り混じっていた感じ。 仲間と先生に感謝。 ◆第三話を終えて◆ 今回は楽しい(?)修学旅行!なんか討伐クエストは多かったが……。なんやかんやで東方出身の知識や行動が出ていた。流石にフクイラプトルは無理。てか皆食べ過ぎ。 今回の彼は何か普段に比べてより一層元気だった。久しい故郷の空気で嬉しくなっただろうか、はたまたそれとも…。皆と行動して、皆の新たな1面を知ることが出来て楽しかったと思っているはず。たった1泊2日の修学旅行、彼は何を思ったのだろうか? ちなみに三刀流になりました。『背中の傷は剣士の恥!』(金棒・名刀・木刀) ――――――――――――――――――――――――――――― ◇ゴウキの過去偏〈簡略に〉◇ "鬼魔族は魔族ではあるものの他の5種族とは異なり、魔界の東方世界に生きる。彼もまたその東方世界の出身だ。山奥の少し大きな家で生まれた彼は、鬼魔族としては非力だった。彼が手に入れた能力も狂鬼化も、鬼として誇ることもできない弱さだった。そして生まれながらにして黒髪の多い種族の鬼の中では、彼の緑髪は特に目立った。周囲の鬼からは虐げられ、見下され、身体中に酷傷 を残して家に帰った幼少期を過ごした。彼は強さを求めて武器を手に取った。鬼としての強さじゃなく、自分としての強さだ。武器に頼ることをを鬼の恥だと嘲笑されたこともあった。彼はいつしか自らの故郷が嫌いになった。 アカデミアに進学する際、分校に進学するという選択は彼にはなかった。彼は過去を振り切るようにして、黒き霧の都・ラグメザーラへと旅立った。アカデミア本校へと通うことに迷いなどなかった。彼は今までの自分との決別として、弱い自分を隠し、出来る限りのオシャレをして緑髪に出来る限り似合うように外見を気にするようになった。性格も無理して明るい性格になろうとした。 友人も特には作ろうとはせず、1人悲しいアカデミアでの生活だった。 そんな中彼に届いたのは初めての実習の招集用紙だった.......。" NPC一覧 [部分編集] + オリヴァー・サーファス https //docs.google.com/spreadsheets/d/1N359M7aoWThQeVPXrsd0ZaNxEj8ecSb7Q_ZhqroHgsc/edit#gid=0 名前:オリヴァー・サーファス 年齢:33 性別:男性 生まれ:歌魔族 ◆技能◆ 3lv:《地理》《知覚》《歌》《交渉》 4lv:《地》《射撃戦》 スペシャル技能:ヒュペルボレイオスの木 ◆アビリティ◆ 属性の矢、僕らは歌う、いつまでも、守護の願い、修練、幸運の子 ◆設定など◆ [部分編集] + エヴァ ▼人間界ver. ▼私服ver. https //docs.google.com/spreadsheets/d/17OfqjTLBpRL5lWCCifKiyn7uCslXZ6s0D2RxfBdWmEQ/edit?usp=sharing 名前:エヴァ 年齢:18 性別:女性 生まれ:剣魔族 ◆技能◆ 3lv:《植物》《運動》《光》《調達》《感情》《白兵戦》《料理》 4lv:《射撃戦》 スペシャル技能:Follow My Heart! ◆アビリティ◆ ガン=カタ、刃よ、天を駆けろ、修練、調達術、多才 ◆設定など◆ [部分編集] + マシュー ▼人間界ver. ▼私服ver. https //docs.google.com/spreadsheets/d/1iTsfZK59PbZNxvVQiS55GPgrnY1TaEqYrrugZ8le5GY/edit?usp=sharing 名前:マシュー 年齢:18 性別:男性 生まれ:文魔族 ◆技能◆ 3lv:《鉱石》《薬学》《制作》《魔術具》《水》《歴史》 4lv:《魔術戦》 スペシャル技能:一意に繊細に。 ◆アビリティ◆ 器用、事前準備、ヒーリング・ドロップ、ウェポンパリィ、修練 ◆設定など◆ [部分編集] セッション概要 第一話「思い出の味-サヨナラの味」 第二話「遠距離思案」 第三話「修学旅行は非日常にて」 第四話「大嫌いな御伽噺」 第五話「契約と破約」 見習い悪魔による実習感想文 PL達によるPC視点の実習内容報告書。毎話交代。 ※シナリオネタバレがあったりなかったりする。 [部分編集] + 第一話 ゴウキ@ナエト 第一話 ゴウキ@ナエト 第1回の実習は無事成功!(^_-)-☆いいじゃんいいじゃん←流行らせる! 今回実習を共にした仲間は、料理が得意でみんなを引っ張るリーダー的存在のガネーシュさ ん、そんなガネーシュさんに介護(?)されてるけど知識が豊富でのんびり屋さんのモリア君、いつもキョドっててもここぞの時に頼りになるオフィーリアさん! そんな中自分は戦闘中はラストアタック決めたけど、それ以外は全部空振り…。ずっと不屈のココロでなんとか気持ちを持ち堪えさせてたっす。何で6出ないんすかね。 しかも魔生(人間でいうところの人生)初の人間界!と勢いよく行ったはいいっすけど、周りの人間たちは意外と黒髪ばっかで自分の緑髪が浮きに浮きまくってて…。今度は魔法で髪を黒色に染めよっかな…。 初実習もどうなるか不安だったっすけど、実習中にキャンプやパーティまでしちゃって、楽しすぎて実習のこと忘れそうでしたっす。てかビーフストロガノフが最高!今度ガネーシュさんの食堂に皆と一緒に行きたいっすね! 人間と話すのは悪魔と話すのとそんな変わらなかったけど、人間と関わっていく内に他者を大切にしたい思いってのがあるってことが分かって、面白いと思ったっす。これからの実習でも人間との交流があるけど、初対面の相手でも話せるようにしたいっすね。 次回の実習も頑張るっす! 第1回実習感想担当:ゴウキ ☑採点:20点 ☑魂の欠片無事回収 ☑実習合格 [部分編集] + 第二話 ガネーシュ@Tantal. 第二話 ガネーシュ@Tantal. 第2回の実習は大成功って感じですね。 今回は前回のメンバーに、先輩のマシューさんとエヴァさんを加えた6人で挑むことになりました。それを2グループに分けて別々の場所から魂のかけらを集めるための情報収集を行うことになりましたが、、、思い返せばすごい距離がありましたね。そのおかげで新幹線とかいうすごい速い乗り物に乗れて楽しかったので良かったといえばよかったのでしょうか、遠いことって大変なんですね。ゴウキ君のおふくろは元気なのでしょうか、私はあったことありませんが。 最初の望みは簡単にかなえられたのですが、2つ目3つ目の望みはなかなか難しい条件がありました。しかし、モリア君がうまい方法を考えてくれたので何とかすることができました。賢いんですがね、もう少し、こう、何とかならないのでしょうか。 あと、1つあれば十分なところでたくさん出てくる現象何なんですかね、見つからないよりはましなんですけどあっても使わないし。7bでずっと失敗する誰かさんもなんなんですかね。それはそれとして、オフィーリアさんはすごいですよね。目立ちはしないんですが何か安定感を感じられる気がします。だから頼りになるんでしょうね。 初めて自分が契約を結びに行って、結構難しかったし、人間界の作法はまだまだ知らないことがたくさんあるということを知ることができました。まだまだ学ぶべきことは多いですね。 これからも頑張っていこうと思います。 第2回実習感想担当:ガネーシュ ☑採点:41点 ☑魂の欠片無事回収 ☑実習合格 [部分編集] + 第三話 モリア@かんらん 第二話 モリア@かんらん 今回の実習…ううん、修学旅行は、大成功でした。先生に評価してもらったわけじゃないけど、きっとみんなが楽しめて、成長できた2日間だったと思うから。 ぼくたちの目的地は東方世界、ソーダくんのふるさとでした。建物に囲まれたラグメザーラと違って、東方地域にはひろい海や山が広がっていたり、平べったくて大きな家が並んでいました。ぼくにとっては初めての景色だったから、ぜんぶがぜんぶ新しかったです。他の四人もきらきらした目で街並みを見ていました。みんなとおんなじ気持ちを、感じられてたのならうれしいな。 いちにちめに観光を終えてから、みんなでご飯を作りました。ひとと料理するのなんて初めてだったけれど、とってもうまくいきました。びっくりしたのは、フクイラプトルのことです。生クリームくんとみだれうちちゃんの提案で、狩りに行くことになったんです。鋭い牙をもっていてすばしっこくて、倒すのは大変でした。でも、強くなったみんなとならなんとか倒せました。自分たちで獲った肉は固くて野生の味がして、とてもおいしかったです。さすが生クリームくんだなぁ。 そして、夜。猫目ちゃんの提案で、ぼくたちはこっそり家を抜け出して神社へと向かいました。真夜中の神社で祈れば、願いが叶うという噂があったからです。熊みたいな生き物に襲われて死にかけて、抜け出したことが先生にバレて…それでも、どうにか神社にたどり着きました。みんなが何を願ったのかは分からないし、ぼくも自分の中だけにとどめておくつもりです。それでも、叶ったらいいなって思います。ぼくの願いだけじゃなくて、みんなの願いも。 先生のことを知れて、違う世界を見られて。ソーダくんとお土産を交換して、みんなとたくさんお話をして。初めてのことをたくさん体験して、そのなかで一番の初めてはみんなと笑いあうことでした。おんなじことをやって、楽しいなって思っているときに、まわりを見れば同じように楽しそうなみんながいる。そんなことが当たり前にあってこころがぽかぽかしました。きっと、これが「嬉しい」っていう気持ちなんだと思います。あの子たちと一緒にすごしたら、ずっとこの「嬉しい」が続くのかな。そうだったら、いいな。 第3回実習感想担当:モリア ☑採点:なし ☑修学旅行から無事帰還 ↓↓↓みんなの思い出の写真 [部分編集] + 第四話 オフィーリア@Saki 第四話 オフィーリア@Saki 今回の実習を通して、私は誰かを笑顔にすることについて沢山考えました。大事な人が遠くにいて、その人のことを大切に思っているからといって会えば幸せになれるわけじゃなくて…… どうしたらいいか、一人じゃ、きっと、わかりませんでした。「願いを叶える」こと。願いが分からないのに、無理矢理願いを叶えようとすることは間違っているんじゃないか。一人じゃ、ずっと、そう考えて、実習を成功させられなかったと思います。でも、一見突拍子もない行動をとっているように見えるモリアくんがいないと事態は進まなかったし、ガネーシュくんが作り置きするのとか思いついたの、私じゃ絶対できなかったしそもそも思いつかなかったし、最後に私がうまく星に夜空の色を映せなかったとき、ゴウキくんがいてくれたからなんとかなって、みんながいたら、一人じゃできないこともできるんだな、と思いました。それに対して、私はなにも返せなくて、何もできなかったから、何かしたいなってすごく思いました。 実習対象の鵜馴染先生は、きっと、「大人」だからいろんなことを知っている人間だということがなんとなくわかりました。一言で「大人」と言ってしまうことは簡単なことだけれど、悪魔でも、人間でも、「大人」って年齢を重ねた人のことを指すわけじゃなくて幸せも不幸も知っている存在のことだと思うから、だからこそ、願いを自分で見つけ出すことが難しくて幸せになりにくいかもしれなくて……鵜馴染先生が大事にしていることとか、鵜馴染先生だけじゃなくて、どんな「大人」にもそれが何かはわからないけれどそういうものがあると思うから、できることなら、そんな存在と出会いたいと思いました。そういう存在を幸せにできるように、それまでに、一人前の悪魔というか、「大人」になりたいです。 今いる友達、みんなのこと。みんななら多分「大人」にならないといけないときが来ると思うから、そんなときは、絶対、なにかしたいと思います。じゃなくて、なにかします。なにもしてほしくなかったらしないけれど。できることがあるなら、なんだって。だって、友達だから。 第4回実習感想担当:オフィーリア ☑採点:27点 ☑魂の欠片無事回収 ☑実習合格 [部分編集] + 第五話 マシュー@睦月 第五話 マシュー@睦月 僕らがやった第5回の実習。……実習にしてもらったって言い方が正確なのかもしれないけど、僕らはちゃんと6人で帰ってきました。 エヴァが心配だってことしか頭に無かった僕は、沢山の真実をあの地下書庫で目にした時、とても混乱してパニックになっていました。でも、皆と先生のおかげで、未来に希望と目標を持って頑張ることが出来た。花火の練習も、皆でガネーシュ君の家でご飯を食べたことも、協力してスノードームを作ったことも、僕にとってはどれもが友達の温かさを感じる出来事だったんです。 最終的に僕らは、僕らが1番良いと信じている決断を選択することが出来ました。未空くんとの約束は絶対に忘れません。彼が僕らに頼んだ最期の言葉だから、どれだけ彼にとってエヴァが大切な存在だったのかは分かるから、エヴァを大切するというその約束は何としてでも絶対に守るんだって強く思ってます。 未空くんに僕らのために捨ててもらったものはとても重たくて大きいもので……僕らは最後に彼に美しい景色を見せてあげられたかな。でも、僕らの全力を賭けた光はさ、本当に夜空に届いて花を咲かせたんだ。1人じゃ絶対に成し得なかったこと。それを僕らがやり遂げたっていう事実は、忘れてしまったとしても消えることのない大切な真実なんだって僕は信じてる。 僕らの学校生活はまだ続く。それは同時に僕らの友情も続くということ。みんな、本当にありがとう。今までも、そしてこれからもよろしくお願いします……! 第5回実習感想担当:マシュー ありがとう。皆が友達で良かった。皆のこと、未空のこと、本当に、本当に一生忘れない。 by エヴァ ☑採点:39点 ☑魂の欠片無事回収 ☑エヴァの帰還 ☑実習合格 0616お遊び回 各PC達とNPC達が15個(のはずだった)質問に答えてみた。 PL視点での回答もあり。キャラクターたちがとことん深掘りされています。 + ガネーシュ@Tantal. ガネーシュ@Tantal. ①好きな色は? →鈍色 ②好きな食べ物、嫌いな食べ物は? →好物:サバサンド、雑にうまい/苦手なもの:お肉焼いたやつはもう十分ですね ③好きな季節は? →秋 ④家族構成は? →親父一人だけ ⑤休日何してる? →お店番 ⑥好きな場所は? →開いてないときの自分のお店 ⑦人にちょっと自慢できる特技はある? →体が強いくらいかな ⑧服装のこだわりは? →カッターシャツは離せないね ⑨家事は得意? →親父に叩き込まれた ⑩最後に一言! →お客様大歓迎です。少々お高いかもしれませんが。 【エクストラ質問】 ⑪将来の夢ってある?(具体的なものじゃなくて、漠然としたなりたい像みたいなので良いよ……!) by マシュー →親父 ⑫好きな動物は? by ガネーシュ →すべての動物を好いてますよ ⑬みんなの好きな授業は? by モリア →授業に貴賤はないけど数字は苦手だよ ⑭今やってみたいことは? by オフィーリア →WASYOKU ⑮自分のお気に入りのものは?byゴウキ →包丁。形見だから、肌身離さず持っているようにしてる。 【更にエクストラ質問】私が代理で回答します(Tantal.) ⑯絵はうまい?byかんらん →そんなうまくないと思うよ ⑰自然と人工物(機械とか芸術)だとどっちがすき? byかんらん →自然のが好きだと思う ⑱本は読む? byかんらん →料理の本は読むんじゃねえかな ⑲歌はうまい? byかんらん →そんなうまくないんじゃないかな ⑳甘いものと辛いものはどっちがすき? byかんらん →甘いもの。生クリーム常備してるってこと ㉑お酒はすき?どんなお酒がすき? byかんらん →本格的に飲むのは止められてると思うのでまだ好きかはわかんないですね ㉒人付き合いはうまい? byかんらん →そこそこうまいんじゃないんですかね。私は下手ですけど ㉓絶対に曲げない信念はある? byかんらん →何かしらある。 ㉔行ってみたい場所はある? byかんらん →職員室の入れない場所 ㉕故郷はどんなところ?好き? byかんらん →家は店だけど落ち着いてていいとこだと思うよ 【PL向け質問】 ①一番合いそうな絵文字は何? →🔪 ②みんなに明かさないことってある? →そりゃあるでしょ ③あなたの悪魔は今幸せですか? →仲間ができて幸せだとおもいますよ、たぶん ④もしもこの子たちが願いを聞きに来てくれたらどうする? →願い事を見つける ⑤名前の由来は? →だいたいねとらぼのせい + モリア@かんらん モリア@かんらん ①好きな色は? →青緑…はもう見飽きちゃったな。むらさき。朝焼けのそらのいろ。 ②好きな食べ物、嫌いな食べ物は? →どっちもないよ。何でも食べられる。…びーふすとろがのふは、おいしいと思ったけれど。 ③好きな季節は? →夏。夏の森のにおいがすき。 ④家族構成は? →…両親は、いるよ。あとはいない。ひとり。 ⑤休日何してる? →こもってる。いろんなところに。 ⑥好きな場所は? →洞窟のなか、かな。 ⑦人にちょっと自慢できる特技はある? →ないよ。 ⑧服装のこだわりは? →ポケットがたくさんついてると使いやすくてすき。危ないから、あんまり腕とか脚は出さない服が多い気がする。 ⑨家事は得意? →得意、なのかな?いろいろしてはいるよ。うまくできてるのかは分からないけれど。 ⑩最後に一言! →…ねむい…… 【エクストラ質問】 ⑪将来の夢ってある?(具体的なものじゃなくて、漠然としたなりたい像みたいなので良いよ……!) by マシュー →……ゆめ、か。わかんないや。知ってもらうことが怖くなくなりたい、とは思うかな。 ⑫好きな動物は? by ガネーシュ →蝶。かれらの飛び方はうつくしいから。…動物、じゃないかも? ⑬みんなの好きな授業は? by モリア →…人間界の、実習。 ⑭今やってみたいことは? by オフィーリア →びーふすとろがのふ、を作る。 ⑮自分のお気に入りのものは? by ゴウキ →つばさ…ううん、ペンダント、かな。きらきら、してる。 【更にエクストラ質問】 ⑯絵はうまい?byかんらん →うまい…のかな?(美しい設計図を右手に、豚に見える犬の落書きを左手に持ちながら) ⑰自然と人工物(機械とか芸術)だとどっちがすき? byかんらん →人工物。変えようとしたら変えられるから。 ⑱本は読む? byかんらん →あんまりよまないかな。物語はとくに。 ⑲歌はうまい? byかんらん →…うまくは、ない。 ⑳甘いものと辛いものはどっちがすき? byかんらん →あまいもの。あたまがはたらくからね。 ㉑お酒はすき?どんなお酒がすき? byかんらん →のんだこと、いっかいだけ。なにも分からなくなっちゃうから、こわいなぁとは思ったよ。 ㉒人付き合いはうまい? byかんらん →…見てれば分かる、よね? みんなにきらわれてるから、だいじょーぶ。 ㉓絶対に曲げない信念はある? byかんらん →うーん、左右されないこと。ながされないこと。 ㉔行ってみたい場所はある? byかんらん →ポーション屋さんのバックヤードかな。 ㉕故郷はどんなところ?好き? byかんらん →首都の住宅街にあるふつうの家。あんまりすきじゃないかも。だれもいないしね。 【PL向け質問】 ①一番合いそうな絵文字は何? →🥱 ②みんなに明かさないことってある? →隠し事が沢山あってガードが堅いように見えて、気を許した相手には全部話す子だと思います。そもそも自分の話すことを聞いてくれる人に慣れていないので。 ③あなたの悪魔は今幸せですか? →幸せだと思います。少なくとも、以前よりは。 ④もしもこの子たちが願いを聞きに来てくれたらどうする? →魔法をたくさん見せてもらいたいです。 ⑤名前の由来は? →想像上の鉱物であるミスリルの生産地の名前から。 + オフィーリア@Saki オフィーリア@Saki ①好きな色は? →赤 ②好きな食べ物、嫌いな食べ物は? →好きな食べ物:チョコレート/嫌いな食べ物:辛い物 ③好きな季節は? →春 ④家族構成は? →父親(故人)と兄 ⑤休日何してる? →芸術鑑賞、川とか自然のあるところで花を見ること ⑥好きな場所は? →美術館、自然のあるところ ⑦人にちょっと自慢できる特技はある? →特になし ⑧服装のこだわりは? →自分が可愛いと思ったものを選ぶようにしている ⑨家事は得意? →人並 ⑩最後に一言! →こんな私だけどこれからも仲良くしてくれたら嬉しいな 【エクストラ質問】 ⑪将来の夢ってある?(具体的なものじゃなくて、漠然としたなりたい像みたいなので良いよ……!) by マシュー →皆が笑顔になるようにしたい ⑫好きな動物は? by ガネーシュ →基本的に動物は皆苦手だけど、特にねずみが嫌い ⑬みんなの好きな授業は? by モリア →芸術系 ⑭今やってみたいことは? by オフィーリア →植物栽培(ハーブとか)、オセロ ⑮自分のお気に入りのものは? by ゴウキ →紅茶 【更にエクストラ質問】 ⑯絵はうまい?byかんらん →人並み ⑰自然と人工物(機械とか芸術)だとどっちがすき?byかんらん →どちらでもいいけど静かなほうがよい ⑱本は読む? byかんらん →人並み ⑲歌はうまい? byかんらん →人並み ⑳甘党?辛党? byかんらん →甘党 ㉑お酒はすき?どんなお酒がすき? byかんらん →飲酒経験なし ㉒人付き合いはうまい? byかんらん →下手 ㉓絶対に曲げない信念はある? byかんらん →特になし ㉔行ってみたい場所はある? byかんらん →人間世界のデンマーク ㉕故郷はどんなところ?好き? byかんらん →自然の多いところ。綺麗だけど寂しい 【PL向け質問】 ①一番合いそうな絵文字は何? →😣 ②みんなに明かさないことってある? →正直ほかの悪魔たちや人間たちを恐れている。許婚がいる。 ③あなたの悪魔は今幸せですか? →幸せとはいえないしそれも本人はわかっている。 ④もしもこの子たちが願いを聞きに来てくれたらどうする? →ミレーの『オフィーリア』を一緒に見に行く。 ⑤名前の由来は? →元ネタはウィリアム・シェイクスピアの『ハムレット』のオフィーリア。主人公のハムレットの婚約者。最期は狂気に陥って柳の木の枝から落ちて川で溺死する。オフィーリアの死の場面を描いたミレーの『オフィーリア』の絵画が有名。スペシャル魔法は主人公のハムレットの「To be, or not to be」(生きるべきか、死ぬべきか)にするか、「Get thee to a nunnery」(修道院に入れ)にするか迷った。元ネタがわかりやすくなりすぎたり、えぐすぎるとされる解釈もあるから諦めて結局全然関係ないものからもってきてしまったけど今は正直そっちのどちらかのほうがよかったと思っている。 + ゴウキ@ナエト ゴウキ@ナエト ①好きな色は? →う~ん特にないっすね。まあ水色とか?ソーダ味っす。 ②好きな食べ物、嫌いな食べ物は? →好きな食べ物はビーフストロガノフと飴で、嫌いな食べ物は吉備団子っすね。三色団子やみたらし団子は好きなんすけどねぇ…… ③好きな季節は? →やっぱり夏っすね。テンション上がりません? ④家族構成は? →(父方の)祖父母・父母っすね。父は怖いっす。母も怖いっす。じぃちゃんもやはり怖いっす。ばぁちゃんマジで怖いっす。てか全員怖いっす。 ⑤休日何してる? →特訓(打倒ガネーシュさんっすね)と飴の仕入れっす。新味期待してて下さいっす。 ⑥好きな場所は? →人がいる所。皆とお話ししたいっすね! ⑦人にちょっと自慢できる特技はある? →ウィンクで星が出てくるっすね。たまに自分でも眩しい時があるっす。 ⑧服装のこだわりは? →首に巻いた包帯となんかかっこよさげな和服っす。これ自分で選んだんすよ? ⑨家事は得意? →ある程度は母さんにしごかれて来たんで、得意かは別としてなんとなくできますっすね。川で洗濯だけはなぜかしたくないっす。 ⑩最後に一言! →(^_-)-☆いいじゃんいいじゃん 【エクストラ質問】 ⑪将来の夢ってある?(具体的なものじゃなくて、漠然としたなりたい像みたいなので良いよ……!) by マシュー →とりあえず、皆との心の距離を縮めたいっすよね。 ⑫好きな動物は?by ガネーシュ →動物は大体好きっすよ。だけどもなんかイヌとサルとキジは近づきたくはないっすね。どうしてっすかね? ⑬みんなの好きな授業は?by モリア →魔法は好きっすよ?ただあんまり使わないだけで。 ⑭今やってみたいことは?by オフィーリア →教室までの近道の開拓。今は天井ルート開拓中っす。 ⑮自分のお気に入りのものは? by ゴウキ →やっぱり、飴とこの金棒っすかね。父さんから頂いた物なんすけど、この金棒の名前まだ教えてもらってないんすよね。1人前の鬼になっていつか教えてもらいたいっすね。 【更にエクストラ質問】 ⑯絵はうまい?byかんらん →かなり下手っす。 ⑰自然と人工物(機械とか芸術)だとどっちがすき? byかんらん →自然っすかね?田舎生まれなんで。 ⑱本は読む? byかんらん →鬼がそんなに本を読むと思います?ギリ魔導書っすかね。 ⑲歌はうまい? byかんらん →『はいっ、サイドチェストォォォォォォォ!』 ⑳甘いものと辛いものはどっちがすき? byかんらん →断然甘いものっす。辛いのはちょっと...... ㉑お酒はすき?どんなお酒がすき? byかんらん →酒は梅酒が好きっすね。 ㉒人付き合いはうまい? byかんらん →今は上手なほうだと思いますよ? ㉓絶対に曲げない信念はある? byかんらん →人が悲しんでいるときに寄り添える者でありたいっすね。 ㉔行ってみたい場所はある? byかんらん →みんなと一緒ならどこでも楽しそうっす。強いて言えば、動物園っすかね? ㉕故郷はどんなところ?好き? byかんらん →故郷は東方の田舎っす。好きかって?......さぁ?どうっすかね? 【PL向け質問】 ①一番合いそうな絵文字は何? → (^_-)-☆ ②みんなに明かさないことってある? →実はある。(ゴウキの過去について) ③あなたの悪魔は今幸せですか? →貴方が見てどう見えますか?それが答えです。 ④もしもこの子たちが願いを聞きに来てくれたらどうする? →まじで嬉しくなって、サイドチェストぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! ⑤名前の由来は? →ストリートファイターの隠しキャラの豪鬼。海外版では「akuma」の表記らしいので。真偽は不明。自分情報 + エヴァ@睦月 エヴァ@睦月 ①好きな色は? →赤! ②好きな食べ物、嫌いな食べ物は? →割と辛いもの好きだよ?フルーツも好き。野菜は嫌いだなぁ。 ③好きな季節は? →夏!テンション上がるv ④家族構成は? →一人っ子だよ〜〜 ⑤休日何してる? →散歩とか運動とか、何だかんだ言って体動かすの好きだから。 ⑥好きな場所は? →やっぱ魔界の森でしょ! ⑦人にちょっと自慢できる特技はある? →剣と弓両方使えるの割と自慢なんだよね。シュバって持ち帰るのも早いよ〜 ⑧服装のこだわりは? →赤リボンお気に入り。これつけるだけで気分上がるしね。 ⑨家事は得意? →めっちゃ苦手だったし、やりたくなかったんだけど最近ちょっと勉強中。料理作れるようになっておきたくって。せめて人に食べさせられるようなもの作るのが今の目標!! ⑩最後に一言! →みんな答えてくれてありがとっ 【エクストラ質問】 ⑪将来の夢ってある?(具体的なものじゃなくて、漠然としたなりたい像みたいなので良いよ……!) by マシュー →いいお嫁さんとか?恥ずかしっ// でもマジだよ。 ⑫ 好きな動物は?by ガネーシュ →ヒョウみたいな動物いたよね!チーターとか?猫に似てるけどカッコいい奴、あれ好きだな~。 ⑬みんなの好きな授業は? by モリア →んー--素材集めとして森に言ったりするのが一番かなぁ。捕まえたり採集したりするの好きだし。 ⑭今やってみたいことは? by オフィーリア →遠くまで旅行とか行ってみたいかも? ⑮自分のお気に入りのものは? by ゴウキ →自分用の剣と弓、これ2つ持ってる悪魔あんまりいないんだけど、私はどっちも自分用の特別製で結構お気に入り! + マシュー@睦月 マシュー@睦月 ①好きな色は? →落ち着いた緑。深緑とかかなぁ。 ②好きな食べ物、嫌いな食べ物は? →暖かいスープが好き。安心する。苦いものがダメ……。 ③好きな季節は? →秋から冬にかけて。涼しいのがいいなって言うのと、長袖が好きなんだ。暑いのはすぐへばっちゃうし……。 ④家族構成は? →小さい妹がいるよ。両親は文官として働いてるんだ。 ⑤休日何してる? →学校の調合室借りて実験したりする。もう、そこの先生と仲良しだから。 ⑥好きな場所は? →調合室と図書館。図書委員になったのも本に囲まれるのが好きだから……! ⑦人にちょっと自慢できる特技はある? →⑥で書いた場所の物の配置大体わかるよ。聞かれたらすぐ教えられる。 ⑧服装のこだわりは? →長袖が好きなのと、服はついモノクロの選んじゃう。人間界に行った時にピンつけるのは、エヴァが似合うんじゃないかってくれたから。 ⑨家事は得意? →人並みには得意だと思う。掃除も片付けも好きだし、料理もそこそこ出来るよ。 ⑩最後に一言! →何書けばいいんだろう……改めてよろしくお願いします? 【エクストラ質問】 ⑪将来の夢ってある?(具体的なものじゃなくて、漠然としたなりたい像みたいなので良いよ……!) by マシュー →両親がなってるように文官っていうか、魔界のそういう職につけたらなって思ってる。 ⑫ 好きな動物は?by ガネーシュ →犬かなぁ……。小さくてふわっとしてる動物が好きなんだ。 ⑬みんなの好きな授業は? by モリア →歴史学とか、国語とか。あと調合の授業も大好きだよ。 ⑭ 今やってみたいことは?by オフィーリア →徹夜を一回してみたい。体力が持たなくてすぐ夜眠くなっちゃうから……。 ⑮自分のお気に入りのものは? by ゴウキ →宝物とか大切なものは全部家に大事にとってるんだ。小さい頃に作った制作物とかが人には見せれないけどお気に入り。
https://w.atwiki.jp/ragadoon/pages/1567.html
基本情報 GM:睦月 PL:星野みや、和白、みん、透 + レギュレーション等 使用ルルブ:「闇に妖、人に花 総集編ルールブック」 開催時刻:木曜19 00~23 00 募集人数:四人固定、HO制 キャラクター紹介 [部分編集] PC1 PL名:星野みや PC名:東月 千代 性別:女 単花/菖蒲 https //docs.google.com/spreadsheets/d/1HEi-AVe1B2CXfMYwIybN5TvTAwlSVqI6jsPKkSdVxRM/edit#gid=0 + HO 〇HO1 種 ー貴方は特別だった。 貴方は神田にある小さな書店「東月書店」で働いている。客もほとんど来ない古書店、その店主である『東月フミ』に幼い頃拾われて以降、彼女と共に暮らしてきた。 そして、貴方には幼少期の記憶が存在しない。どこで生まれ、育ち、暮らしてきたのか。唯一耳朶に残っているのは、貴方に優しく語りかける母親らしき人物の声だけであり、それ以外は全く記憶が無いのである。 気がつけば独り路頭に迷い、ついには行き倒れてしまった幼い貴方を救ったのが、偶々郊外に出歩いていたフミであった。その日からずっと、彼女は貴方を育て続けている。元々一人で細々と生計を立てていたことや古稀を越える彼女の年齢を思えば、貴方を育てるために相応の無理をしていることは想像に難く無いが、「いつも不便かけてごめんなさいね」と謝りながらも貴方に彼女は変わらぬ愛情を注ぎ続けている。 そうした生い立ちと関わりあることかは分からないが、貴方の背中にはくっきりと赤色の花紋が入っている。普段は自分からも人からも見えない為に気にしたことは無いが、自分が巷で時折聞く”花憑人”という存在であるのかという疑問については確証がなく、家計に無理もさせられないため、古ノ花朔夜学園には通わず神田古書店街の奥で今日もせっせと働いている。 ―――――――――――――― ☆東月 フミ(とうづき ふみ) 東月書店の店長。今年で御年七十二歳であり、足腰の衰えから書店の奥で座っていることが多い。が、本の位置の把握や会計勘定では未だ衰えを見せず、まだまだ現役の働きぶりを見せる。 ―――――――――――――― ❖キャラメイク制限 単花固定。ただし、菊の花紋のみ選択禁止とする。 出自表、開花表は「不明」とする。経験表はHOに矛盾していないものであれば取得可能である。この時経験表のテキストを改変しても構わない(Ex 学園には所属していないため、学園部分を書き換える等) 年齢は13歳~16歳を推奨とする。 + 設定等 設定 直情型で無鉄砲。思い込みが激しく情に厚い。しかし記憶の欠落のためか刹那的な側面があり、痛みに鈍い。 フミを深く慕っており、名乗ることを許された名字を大切にしている。恩返しのためにと懸命に書店で働く。 本を汚さないよう普段手袋をつけている。本を読むのは好き。知識欲は割と旺盛。意外と言われると若干拗ねる。 客の出入りが多くない店で育ち、学校に通った経験もないため、同じ年頃の友ができたことがない。少し憧れる が、血縁もない自分を育ててくれたフミの手伝いの方が大事なのは当然。高齢のフミをひどく案じている。 何もわからず心細く一人彷徨った記憶が僅かに残っており、フミがいなくなることを恐れている。 常連の変わり者に刀の扱いを教えてもらった。周囲に年上ばかりだったためかそこそこ可愛がられてきた。 力持ち。フミの役に立てるので誇らしい。それはそれとして女らしくないとか言われたら口を利かなくなる。 動物好きで近所の犬猫に死ぬほど懐かれている。常連には仲間だと思われているのだと揶揄われ、むくれている。 過去を何も思い出せないことへの不安や、本当の家族が自分を探しに来ないことへのうっすらとした失望がある。 名前だけが過去の縁。拾われたばかりのころは、よくあの声が自分の名前を呼び頭を撫でてくれる空想をした。 PC2 PL名:和白 PC名:三条 杏 性別:女 単花/椛 https //docs.google.com/spreadsheets/d/1O9_gbwiIfoxZU1F6BeJtxAC5xQkfszZXHWS-x4yIueU/edit#gid=0 + HO 〇HO2 葉 ー貴方は望まれなかった。 貴方は代々日本帝国政府に仕える家系の子であり、妖魔と妖魔憑きを忌み嫌う格式高い皇居の街、霞ヶ関官庁街に暮らしていた。幼い頃から高等教育を受け、両親同様政府の為に働く立派な人物となるべしと未来を嘱望されていた貴方が己の将来をどう捉えていたかは分からないが、厳しい父と優しい母、そして貴方を慕う妹との生活は貴方にとって当たり前の日常であった。 そんな日々の最中に突如として起こったのが”赤口の大騒乱”――帝都東京にて数千人の死傷者を出した、未曾有の妖魔災害であった。当然両親はその対応に当たることとなり、貴方と貴方の幼い妹は外の禍乱に怯えながらも家の中で二人の帰りを待つこととなる。全てが終わり事態が収まった後、親の帰りを出迎えた貴方と妹が目の当たりにしたのは、母親の形見を手に悲痛な表情を浮かべる父親の姿であった。 母親が死亡してから、貴方の父親はより一層仕事に打ち込むようになった。長年政府と皇族達の間では「花憑人は妖魔に堕ちうる危険因子」との認識がなされていたが、大騒乱を経た後、貴方の父親を含む警察局の「花憑人危うし」の意向は一層強まり、貴方達兄弟も「妖魔に憑依されてはならない」と強く言い聞かせられることとなる。 そんな折に、貴方は何の因果か花憑人となってしまう。無論父親は酷く動揺し、貴方を強く責めた。遂には「出ていけ、お前の居場所はここには無い」と、弁明する機会すら与えられぬまま家を追い出されることとなる。貴方はそのまま花憑人育成の場である古ノ花朔夜学園に入学する手配を受け、それと同時に家族と絶縁する運びとなったのであった。 ―――――――――――――― ☆三条 小梅(さんじょう こうめ) 貴方の実の妹であり、今もなお霞ヶ関にて父親と共に暮らしている。性格は天真爛漫で好奇心旺盛。箱入り娘として育てられているにも関わらず、花憑人となった貴方を未だに慕い続けており、女中の目を掻い潜って会いに来ることもしばしばである。 ―――――――――――――― ☆三条 悠一郎(さんじょう ゆういちろう) 貴方の実の父親。長年官僚として帝都で働いている秀才。現在は警察局 妖魔犯罪対策課を指揮する任に就いている。 ―――――――――――――― ☆三条 千鶴(さんじょう ちづる) 赤口の大騒乱にて命を落とした貴方の実の母親。警察局 妖魔犯罪対策課にて父と共に仕事をしていたらしい。家族想いの優しい母親であったことを覚えているだろう。 ―――――――――――――― ❖キャラメイク制限 出自表は「高貴なる身」に固定される。HOに矛盾していなければGMを説得して他のものを取得することも可能とする。 古ノ花学園の生徒であること。 妹、父親、母親の名前・年齢はPLが自由に決定して良い。ただし妹の年齢は15歳以上でなければならない。 年齢は16歳~19歳を推奨とする。 + 設定等 設定 事件で両親のいない間、妹を元気づけるために下町で一緒に買い物をした帰りに妖魔に襲われる。「これから家までおにごっこしましょう、わたくしが鬼ね」と咄嗟に言って妹だけは逃がした。妖魔は杏に、妖魔と戦わずに家にいる普通の家族の幻を見せ、杏は夢心地で受け入れてしまう。 父親や妹にはそれを隠しており、だからか時折「わたくしは悪い子ですので」と呟く。自嘲気味に吐き捨てるかもしれないし、とっておきの作戦を共有する際、友人に悪戯っぽく囁くかもしれない。 成績も良く面倒見が良いので、宝蕾寮で幼い子どもたちに規律を守らせたり、集団生活に慣れない子の世話をする係を引き受け、実家の援助なくとも生活できる環境と少しの給金を得ている。 PC3 PL名:みん PC名:御影 累 性別:女 双花/菊・梅 https //docs.google.com/spreadsheets/d/1kxT2kOVPgkJ4Sgg27Y9WMYoXavLUVaqVfcrRPqyamHU/edit#gid=0 + HO 〇HO3 枝 ー貴方は頼りだった。 貴方は勒原御用所に所属する花憑人である。「妖魔は絶対悪」を掲げる由緒正しき対妖魔組織で活動する貴方は、日々妖魔の討伐に励み都民を守っている。 貴方には直属の先輩「碓氷 凪人」がおり、勒原の外でも交流を持つほどに親しくしている。彼は幼い頃から勒原の前線で働いている英才であり、勒原の者の中にもその優秀さに尊敬の念を抱く者は多い。 そんな彼は、かねてより”赤口の大騒乱”について関心を寄せているようであった。相反する信条を掲げるが故に元来確執の多い警察局と勒原御用所だが、件の騒乱の際には協力関係を結び、共同で事態の対処に当たったという。しかし、事件から七年経った今、組織同士の軋轢は再び深まり、両者の力の均衡を保とうとする争いは水面下で火花を散らしている。 「もし再び、あのような事件が起こったならば……」 と呟く彼は、どうやらこの状況を憂慮しているらしい。 今の退魔システムや花憑人の在り方が然るべきものとは言えない、ということは貴方にも分かっているが、対魔組織の一構成員が現状を変える力なぞ持っている筈も無し。貴方は今日も、帝都の平穏な日常を守るべく、勒原御用所の一員として力を振るっている。 ―――――――――――――― ☆碓氷 凪人(うすい なぎひと) その実績から、二十四歳という若さで勒原の重役についている異才。人当たりのいい性格だが、妖魔を許さないという信念は人一倍強い。 ―――――――――――――― ❖キャラメイク制限 勒原御用所に所属していること。 →勒原御用所スキルが取得可能となる代わりに、組織の恩恵と代償をも受けることとなる。 学園の卒業生でも、元から組織に所属していても、どちらでも構わない。 年齢は特に制限しないが、凪人の年齢が24歳であるため、それ以下であることを推奨する。 + 設定等 設定 古ノ花朔夜学園に所属しながら、勒原御用所にも勤めている。勤めてる理由は給料と恩義。 住んでる場所は新橋・芝地区の南東部の賃貸。家賃が安いから。 趣味は学園で図書委員会に所属してる通り読書。家にはまぁまぁな量の積読がある。 稼いだ給料のほとんどは本と家賃に費やされる。 勒原での上司、碓氷 凪人ととても仲が良い。少なくとも交友を持つ人物の中ではだいぶ信頼している。 本人には大抵素っ気ない態度をとる。が、碓氷からの頼まれごとは遂行するし、仕事もしっかりとこなす。 人をからかうのが好き。愛煙家。 口調は目上には敬語(碓氷は例外)。それなりに親しくなればタメ口。碓氷にはぶっきらぼう。 累は被差別的な身分の生まれで、当然家も貧しかった。人々から蔑まれ、全てが嫌になった時、花憑人になった。ある日、幼い累が月の出る空の下を歩いていた時、妖魔に襲われたのだ。そこを助けてくれたのが、今よりもさらに若き碓氷だった。碓氷が覚えているかは定かではないが、彼を追って勒原に入った。それを伝えるタイミングを逃してるうちに親しくなってしまったため、お礼を言うのが気恥ずかしく、言い出せないでいる。 勒原に所属している以上、「妖魔は悪」だとは思っているが、自身が被差別身分だったのもあり、花憑人を軽く扱うことはよく思っておらず、そこには少し疑念を残している。 PC4 PL名:透 PC名:牡鹿 樹 性別:男 双花/萩・牡丹 https //docs.google.com/spreadsheets/d/1XCViEyhTx9TYfX8GagFNHGxSRExYPxPJMJ1jP6socxk/edit#gid=0 + 設定等 設定 ▶職業・所属 商人 万年樹組合市場 ▶人種・出身 日本人、東京生まれ ▶年齢 17 ▶性別 男 ▶身長 175 ▶体重・体型 68 ▶外見的特徴・雰囲気 長身で引き締まった体躯。鋭く厳めしい雰囲気。赤茶の髪、眼鏡。左目の下に傷がある。 ▶性格 正義感や責任感が強い。悪く言えば自己中心的。 ▶職業 商人。祖父が収集や販売を行っていた事業を受け継ぐ形で、茶道具の取り扱いを始めた。樹自身に茶道具への思い入れはなく、あくまで商品と割り切っての商売をしている。 ---------------------------------------- ▼人物▼ ▶表の顔(他のPCたちが知っていてもよい情報) 銃使い。遠距離は苦手だが、近距離戦闘は得意。複数人を同時に相手にすることができるが、激しい戦闘では味方を巻き込んでしまう危険を孕んでいる。 優秀な能力を持ち、臨機応変で柔軟。自分に自信があり、王者のような風格がある。 思慮深く、冷静沈着で、強い正義感と責任感を持つ。妖魔へは個人的な因縁がある以上に、人々が妖怪に脅かされることを許せないと考えており、自分ができることは戦うことだと考えている。 周りの人々を支援し助けることに熱心。仲間だとみなした相手への信頼はとても固いが、敵とみなしたらどんなことでもする。自分にできないことは率直に認めて、仲間を頼ることができる。 自分のことに関しては無頓着で、無鉄砲に敵の下へ突撃するし、私生活は怠惰。 ▶裏の顔(他のPCたちが知らない情報) 自分の信念に従って行動することが多いため、その信念に疑問を持たれたときに悩むことがある。また、自分自身に対して過度とも言える自信を持っていることから、失敗を経験した際には、自己評価を下げるし、しっかり落ち込む。 ▶小ネタ 誕生日:10/22 星座:天秤座 血液型:O型 利き手:右 手癖、よくするポーズ:自然と少し胸を張る 感情表現:一見乏しく見えるが、人並みにある キャンペーン情報 赤日の花石榴 第1話『大安の播種』
https://w.atwiki.jp/kzai2012/pages/66.html
ナオヤ=ナオ(なおやなお) 『幸運星』 オブリガートのキャラクタ。モデルは尚屋。 髪の色:ブラウン 瞳の色:ライトグリーン 見ていて可愛そうになるくらいの強運(?)の持ち主。 無銘の機体を見つけたのも、たまたま操者として適応したのも 運良く(??)アーサーに見出されてそのまま軍属になったのも全部幸運のお陰。 人格的には至って苦労性なので、いつか夢にまで見た不幸に見舞われるその日まで、 彼に安息は訪れない、と思う。 最初瞳の色はヘイゼルにしようと思ったけど、『地味・目立たない・立場ない』の主人公の王道を 踏みしめそうだったので止めた。 好きなもの:家族(ショウたち)・平穏で平凡な生活・ぶどうパン 嫌いなもの:迷惑な戦争・トカゲ・小骨の多い魚・自分の強運 座右の銘:普通が一番。 搭乗機体:無銘/GOOD LUCK(スナイパー・キャノン) 力:C 速:B 防:B 魔:C 射程:超遠距離 (初代HPより引用)
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/51128.html
登録日:2022/05/17(火) 21 47 15 更新日:2024/03/18 Mon 17 41 08NEW! 所要時間:約 24 分で読めます ▽タグ一覧 PS イースリースタッフ ゲーム ゲームアーカイブス シミュレーション ハーティロビン ブリガンダイン 銀河英雄伝説 隠れた良作 遥か彼方 我々とは違う宇宙を仰ぎ見る世界フォルセナ まだ人が神話の時代の後、伝説の時代に暮らすこの世界で 戦士たちはただ名誉と愛のために己の命を燃やす 概要 ブリガンダインとはハピネットのブランド・イースリースタッフが開発した戦略シミュレーションロールプレイングゲーム。 剣と魔法のファンタジー世界でユニットを配置し、拠点を奪い合う国取りゲームで、 ファイアーエムブレムのキャラクターがマスターオブモンスターズのようなシステムで信長の野望をすると言えばだいたいあってる。 1998年にプレイステーションで「ブリガンダイン~幻想大陸戦記~」が発売。 2000年に新規キャラクター・ユニット・ボイスやイベントスチルやアニメーションの追加、音楽の一新、統一後の最終ボスなど 大幅な追加変更要素を加えたリメイク・完全版「ブリガンダイン グランドエディション(GE)」がこちらもプレイステーションで発売された。 メジャー級のヒットとはいかなかったものの作品の内容は高く評価されコアなファンがつき、 長らく入手困難なレアゲー・プレミアゲーとして知られていたが、2008年にGE版がゲームアーカイブスで配信されたことで 名前は知っていても入手できなかったプレイヤーにも触れられる機会が増え、新たなファンを獲得した。 旧イースリースタッフの社員だった五十嵐一開氏も本作の根強いファンで、彼の働きかけにより新作の制作がスタート。 そして2020年、PS4およびswitchで実に20年ぶりの新作「ブリガンダイン ルーナジア戦記」が発売されるに至った。 本項では初代の完全版にあたる「グランドエディション」版の内容を主に扱う。 ゲーム内容紹介 あらすじ ルーンの神々によって創造されたとされる魔法の大地フォルセナ。 そこには神々が残したルーン文字をその身に宿し、大陸に満ちるマナの力を使うことができる者達がいた。 「ルーンの騎士」と呼ばれる彼らは古のモンスターを使役し、争いを繰り返してきた。 聖王歴214年、フォルセナには6つの国があり、大陸中央の強国・アルメキア王国は 北のノルガルド王国との長きに渡る戦争に勝利し、6国の盟主として君臨していくものと思われたが、 翌年、アルメキアの将軍ゼメキスのクーデターにより一夜にしてアルメキアは滅び、エストレガレス帝国の建国が宣言される。 ここに6国の平穏は崩れ、大陸全てを巻き込む未曾有の大戦が巻き起ころうとしていた。 ルーンの騎士 本作の主役となる人物たち。作中では単に騎士とも呼ばれる。 マナの加護により通常の人間を遥かに上回る身体能力や魔法に加え、モンスターを使役することができる力を持つ。 ルーンの騎士の力に普通の人間では太刀打ちできないため、必然的に国同士の戦争も騎士同士の戦いとなる。 ゲーム的には騎士が「リーダー」、モンスターが「兵」という扱いになる。 各々がSTR、AGIといった基礎的能力と成長率を持ち、ここに後述のクラス補正が乗る。 最大の特徴として、本作の騎士のモンスターを使役する能力が「統魔力」と「統魔範囲」として数値化されているのが挙げられる。 統魔力はモンスターの編成コストの最大値で、モンスターのコストの合計が騎士の持つ統魔力を越えてはならない。(*1) つまり統魔力が高いほどより強く・より多いモンスターを使役できる。 本作はダメージを一定以下に軽減しにくいためどんなに強い騎士でも袋叩きにされれば危機に陥るし、 騎士の戦闘力はモンスターより高くなりやすいとはいえ、上級モンスターは騎士とも互角以上に戦えるものもいる。 このため使役できるモンスターの数と質を決める統魔力の値は騎士本人の戦闘力よりも重要視されやすい。 統魔力の初期値と成長率は各騎士によって決まっているため、基本的に最終的な統魔力が高くなりやすい騎士ほど将来有望となる。 初期能力が高いベテランがお膳立てして成長株の若手を育てるのが定石なのはファイアーエムブレムと同様。 統魔範囲とは騎士が指揮下のモンスターに十分な能力を発揮させられる範囲。モンスターは自部隊のリーダーの統魔範囲内なら十全に能力を発揮できるが、統魔範囲の外に出ると全ステータスが3割も減少しまう。 本作の基本的なダメージ計算は(攻撃力-防御力)の値に補正をかける形なので実際の影響は3割では済まない。 統魔力が多くても統魔範囲が狭い騎士だと騎士が危険に晒されやすく、挟撃なども仕掛けにくいなど戦術に制限がかかりやすくなるため、統魔範囲は地味ながら重要なステータスである。 ユニットのクラス ルーンの騎士はそれぞれユニットの特性を決めるクラス(職種)を持ち、自身の能力にクラスの補正を重ねた値が騎士の基本能力値となる。 クラスは各系統ごとに下級・上級・最上級の3段階あり、下位のクラスをマスターしなければ上位のクラスにはなれない。 レベルアップ時の統魔力以外の成長値はクラスごとに定められており、基本的に上位のクラスのほうが成長幅が大きい。 下級クラスになるには最低限のステータスが必要なので極端にINT(知性)が低いキャラが魔法使いになるといったことはできず、 中途半端に別系統の下位クラスをかじっても能力的にも中途半端になりやすいため、基本的には戦士or魔法使いの長所を伸ばす育成が推奨される。 また、クラスごとに能力値とは別にクラススキル(例:命中率+5%、行動後再移動)と習得魔法が存在しており、 同クラスで5回レベルアップするとクラスをマスターし、上位クラスへの道が開かれるほか、 他クラスへ変更してもクラススキルとそのクラスで習得した魔法が残ったままになる。 そのため、様々なクラスを経験することで最終的に強力な騎士になることができるが、その分弱い下位クラスでの下積みの苦労が多くなる。 なお、最大レベルは30で最上級クラスをマスターしつつ他の最上級クラスになるには最低25回のレベルアップが必要で、可能な騎士はごくわずかである。 各国の君主など一部の主要キャラは固有のクラスで固定となっており、拡張性に劣る分通常のクラスより能力が高めに設定されている。 騎士のキャラクター性 作中に登場するルーンの騎士たちはそれぞれに固有の名前と設定・CVを持ち、どいつもこいつもキャラが濃い。 総登場キャラクターは100人超え、声優だけでも47人も参加しているため、銀河声優伝説状態である。 メインとサブのキャラクターデザインの画風が違いすぎて同じ作品のキャラとは思えないほど雰囲気が違い、 露骨に技量の低い声優が混じっていたりもするが、それすらも個性として見られるような クセの強いキャラクターたちの織り成す群像劇もブリガンダインの魅力の1つである。 モンスター 本作のもう一つの主役。単独での運用は行えず、必ずルーンの騎士の配下に付ける必要がある。 雑兵兼使い捨て壁役のグール、戦場の花形のドラゴン、支援型のフェアリー・ユニコーンなど多種多様なモンスターが存在する。 モンスターは各拠点でマナを消費して召喚(生産)を行うことで入手する。召喚したモンスターはランダムな名前が付けられ(変更可)、同じクラスの別ユニットと区別できるようになっている。 召喚できるモンスターは召喚を行う拠点に依存するため、欲しいモンスターを召喚できる拠点の確保が戦略目標になることもありうる。 騎士との大きな違いとして戦闘で倒されたモンスターは騎士と異なり基本的に復活出来ず、死亡・消滅する。 そのためよっぽど高レベル高コストでもない限り、モンスターは騎士たちの壁となり倒れて行く(特に低コスト前衛)運命にあるのだが、 雑兵で投入したモンスターがなんだかんだ生き残って成長したりすると妙な愛着が湧き、使い捨て辛くなるなんて事も多い。 モンスターのクラス モンスターにもクラスが存在し、一定レベルになると上位クラスへのクラスアップが可能になる。 クラスアップすると基礎的な能力がアップし、多くが新たなスキルを取得する。 これもモンスターごとの個性が大きく、クラスアップで大幅に強化されるもの、特性が全く別のものになるなど多様なクラスアップが用意されている。 但しクラスチェンジすると上記のメリットの代わりに編成コストも増加するというデメリットがある。 複数のクラスチェンジ先を持つモンスターもいるが、騎士と異なり途中で別のクラスに変更することはできず上位方向への一方通行となる。 上位モンスターは非常に強力で最初は弱くてもクラスアップすると化けるタイプのモンスターも多いなど メリットがデメリットを上回ることが多いため基本的にはクラスアップしていくことが推奨されるが、 モンスターばかり育って騎士が育っていないと増えたコストを支えられなくなり頭数が減ってしまうため、 モンスターを育成するだけでなく騎士の育成も並行して進める必要がある。 ゲームシステム 本作は戦略級シミュレーションではあるが戦闘・戦術に重きが置かれており、 内政要素は各拠点から毎ターン生産される「マナ」をモンスターユニットの生産と維持に使用するのみと簡素。 ただしマナがどれだけ豊富でもいきなり高位のユニットを生産できるようになるわけではないためマナが多くてもあまり意味はない。 序盤のやりくりには困ることもあるが、中盤以降にマナに気を配る必要はまずない。 ターンの流れ 編成フェイズ 騎士の行動を決めるフェイズ。 所有する拠点に騎士を配置するか、クエスト(武者修行)に出すことで戦力向上を図るかを決定する。 クエストに出した騎士は戦闘に出すことはできず一時的に戦力が低下するので基本的には二軍以下の騎士たちが行くことになる。 騎士を増やす数少ない手段であり、アイテムを入手し味方を強化できることもあるため適度なクエスト派遣は重要。 モンスターの召喚(生産)と編成もこのフェイズで行う。召喚できるモンスターは召喚を行う拠点に依存するため、 欲しいモンスターを召喚できる拠点の確保が戦略目標になることもありうる。 また、召喚したモンスターを別拠点に輸送するには騎士の部隊に編成して騎士ごと移動する必要があるので、 現地調達を除いて戦力の補充には騎士の手を借りる必要がある。 攻撃フェイズ 敵拠点に戦闘を仕掛けるフェイズ。 敵拠点が隣接している拠点にいる騎士を敵拠点に向かわせることができる。 ただし、侵攻に参加できるのは戦略フェイズで配置移動しておらず、クエストに参加していない騎士のみ。 何人送っても1回の戦闘に同時に参加できる騎士は3人までだが、敵の編成に合わせて変更する、 欠員補充の輸送要員、次のターンに複数同時侵攻を仕掛けるなどの理由があれば3人以上で行くこともある。 戦闘は1拠点ごとに1ターンにつき1戦のみで、同時に侵攻が起こった場合はランダムで選ばれた1国以外の侵攻はキャンセルされる。 戦闘 概要 侵攻フェイズで敵拠点に移動した拠点に敵の騎士がいる場合、拠点にいる騎士との戦闘になる。 ヘクス(六角形)の敷き詰められた平面フィールド上に配置されたユニットを動かして戦うシミュレーション形式で、本作のメインパート。 このゲームでは騎士とその部下となるモンスターがまとめて1つの部隊となり、最大3部隊対3部隊で戦うことになる。 騎士のレベルの高い順に各部隊が行動し、敵味方全部隊が行動し終えるまでが1ターンとなる。 戦闘の勝敗は戦場に最後に残った騎士の陣営、あるいは13ターン終了時に攻撃側がマップ上に一か所ある 拠点の上に自軍ユニットを配置している場合は攻撃側が、そうでない場合は防衛側の勝利となる。 部隊行動と基本戦術 行動は部隊単位で隊員全員が連続で動くので小人数すぎると後退や集中攻撃といった行動が難しくなる。 またすべてのユニットはゾーン・オブ・コントロール(ZOC)を持ち、敵の隣接マスに侵入するとそれ以上は移動できなくなる。 このため味方後衛に近づけないよう前衛が壁を作ることが基本になる。 どんな雑魚でも足止めができるが、逆に言えば2体以上の頭数がいないと壁が作れず脆い後衛が攻撃されがち。 また、敵ユニットの周囲のマス全てを味方のZOCで囲った状態にすると敵の回避率が低下する(包囲効果)ため袋叩きにするのは戦略的にも理にかなっている。 これらの要素のため特に序盤はコストの高いモンスター1体よりも複数の安いモンスターのほうが役に立つ場合も多い。 終盤になるとじっくり育てたユニットのパワーが雑兵を圧倒していくようになるが、それでも基本は「数は力」であり、単騎無双とまでは行かない。 加えて鈍重なユニットなので素早いユニットになかなか攻撃を当てられない、 能力で負けているが属性の相性が良いため互角の勝負になる、 足場が悪い戦場では位置取りが楽な飛行ユニットや遠距離攻撃ユニットが有利になるなど 騎士とモンスターには属性とステータスの特性、戦場の条件で自然と相性が生まれるようになっており、状況に合わせて戦術・戦略を変えていくことが必要になる。 ユニットの離脱と生存の重要性 騎士はHPが0になるか自分のターンに撤退を選ぶことで自身の指揮する部隊ごと戦場から離脱する。 HPが0になった場合負傷でしばらく行動不能になるうえ、使役しているモンスターが一定確率で逃げ遅れてしまう。 戦闘の勝者は逃げ遅れたモンスターを自分のものにできるので、万が一主力モンスターが奪われると大変なことになる。 自主的に撤退した場合は逃げ遅れることはないが、部隊単位で撤退するので器用に瀕死になったユニットだけ逃がすことはできない。 加えて敵地で撤退する場合近くの味方拠点に逃げ込むため、進軍の足並みが乱れてしまうデメリットが生じる。 また、国の指導者である君主ユニットが負傷離脱した場合残りの全騎士も強制的に撤退しその戦闘は即座に敗北となる。 君主ユニットは総じて強力だが一発逆転を許す弱点でもあるのだ。 モンスターのHPが0になった場合、死亡し消滅する。蘇生アイテムもあるがレアなので基本的には死亡=ロストである。 モンスターの成長は騎士より速いとはいえ手間も時間もかかるため、主力モンスターのロストは陣営全体の大きな痛手となる。 時には使い捨てにしなくてはならない場面もあるが、成長が期待される主力モンスターをいかに生かして勝つかが戦略上重要となる。 逆に言えば、一時の敗北を受け入れてでも味方の主力を守りつつ敵の主力を削り兵の質で上回ることが長期的には勝利につながる。 陣営紹介 西アルメキア 王都を落ち延びたアルメキアの王子ランスが過去にアルメキアから独立した 西方のパドストー公国の全面支援を得て新たに立ち上げられた国。 カーレオンとは同盟関係にあり、カーレオンから攻められることはなく、カーレオンと自国のみが残ってもクリアとなる。 ただしこちらから攻め込めば同盟解消となり、他の敵国と同様の扱いになる。 旧アルメキア軍のベテランの多くがゼメキスについたこともあり、こちらは若い騎士が多い。 初期能力の高いユニットを駆使して成長率の高い若手の育成が進めることが重要になる。 敵としては成長すると厄介なのであまり長々と生かしておきたくない国。 ランス(CV:保志総一朗) ゼメキスのクーデターにより国と父を失った若き王子。理想と現実の狭間で成長していく。 初期レベル1なため初期では最弱の君主だが、成長率が高く育てば最強の君主になる大器晩成型。 帝国を滅ぼして王都を奪還するとクラスチェンジし、さらに能力と成長率が上がる。 レベル1のままクラスチェンジしてそこから育てるととてつもなく強くなるがそこまでしなくても十分すぎるほど強い。 ゲライント(CV:仲野裕) 「百戦のゲライント」の異名を持つ歴戦の剣豪で、若きランスを支える腹心。 最初からなかなか強いオッサンなのでいわゆるジェイガン枠かと思いきや、最初から最後まで主力として使っていける。 コールと二人でいかに若者を盛り立てていけるかがアルメキアの課題。 コール(CV:江角英明) パドストー公爵。かつての主君アルメキアの危機に自らの領地を返還しその下につくという剛毅な選択をした老人。 老人だから弱いだろうと思いきや西アルメキア初期では1・2を争う強キャラで、老人なのに成長率もそこそこある。 広範囲攻撃のホーリーワードでの削りと必中&経験値1.5倍バフを与えるハーロウで後進の指導に適任な育成の要。 すなわち育成が課題となる西アルメキアの趨勢の鍵を握る重要ユニットである。 メレアガント(CV:藤原啓治) コールの息子。本来彼に継承されるはずの領地をあっさりと譲られてしまったある意味かわいそうな人。 しぶしぶながらランスの下につくが、隙あらばその地位を奪うと宣言している。 最終的にはランスを認めるようになるが、表向きは反抗的な態度を貫くベジータ系ツンデレ。 西アルメキア唯一の初期から最上級クラスのユニット。反面成長性がかなり低いアルメキアの真ジェイガン枠。 ノルガルド 北方に位置する大国。旧アルメキアとは覇を競い合う長年の宿敵。 本編開始の1年前に先王ドレミディッツがゼメキスによって討ち取られてしまい、 ドレミディッツには女子しかおらず、男子しか王位を継げないことから遠縁のヴェイナードが即位した。 ゼメキスのクーデターを期に改めて大陸全土統一の意志を表明し覇道に乗り出す。 強力な君主と平均的に質の高い騎士が揃った強陣営。敵としても序盤から出てくるヴェイナードを始めとした強敵揃いで非常に厄介。 プレイヤーの場合エストレガレスに次ぐ隣接拠点の多さもありキッチリ戦略を立てないと泥仕合になりやすい中級者向け。 回復ユニットに乏しく消耗戦はやや不得手という弱点があるのでユニコーンかエンジェルを召喚できる拠点を早めに取ってそこを補いたい。 ヴェイナード(CV:真殿光昭) 「白狼」と呼ばれる北の雄。文武に優れた傑物で、彼を慕ってノルガルドに仕える者も多い。 実力主義者で他国に嫁いだ姉に執着するなど露骨に銀英伝のラインハルトへのオマージュがうかがえるキャラ。 高い白兵戦能力と範囲攻撃魔法を兼ね備えた強力なユニット。 初期能力が高いうえ成長率も高く、初期から範囲攻撃持ちで序盤から終盤までずっと強い欠点らしい欠点のない最優の君主。 ブランガーネ(CV:根谷美智子) 先王ドレミディッツの一人娘。男子でなかったという理由で王位を継げなかったことに不満を抱き、 今なおヴェイナードに対して敵愾心を剥き出しにしており、気が強い性格もあってキツい印象を受ける。 言うだけのことはあり初期能力・成長性ともに優秀な不動の主力。 女だてらにやたらSTRが高く、イベントでもSTRが上がるためためゴリラ呼ばわりされることも。 グイングライン(CV:大川透) ヴェイナードの親友にして軍師、銀の騎士、白狼の右腕の名で知られる冷静沈着な男。 知将らしく前衛職でありながらINTが高く、魔法を覚えさせれば物理・魔法両方をこなす万能戦士になる。 初期で回復魔法を覚えているため物理一本でも優秀で、ノルガルドプレイでは間違いなく主力の一員として酷使することになる。 ノイエ(CV:白鳥由里) 天使の歌声を持つ少女。周囲には隠しているがその身を病魔が蝕んでおり、 密かに慕うヴェイナードのため残りの命を燃やし尽くす覚悟で戦場に立つ。 HPは非常に低いがとんでもない統魔力成長率を誇り最終的には非主要キャラでは最強クラスの騎士になるストロング病人。 なお、ゲームのプレイ期間中(最短3年最長6年)はどうやったって死なない。死ぬ死ぬ詐欺である。 レオニア 東に位置する神託で王が選ばれる宗教国家。 僧侶でもある騎士たちと周囲を囲む険しい山による鉄壁の守りを誇る。 敵国と接する地域が少なく、いずれも強固な防衛拠点であるため背面の守りを固めて状況を整理しやすく、 隣接拠点が多いエストレガレスやイスカリオなどは自国の守りを捨て、 レオニアを乗っ取ってから落ち着いてスタートするという戦略もあるぐらい守りやすい。 騎士が僧侶系に偏っており攻めが苦手だが、最強の素質を持つ騎士キルーフを有し彼が勝利へのカギとなる。 敵とした場合序盤に泥仕合に持ち込まれるとキツいが、回復がこちらの攻撃に追いつかなくなってくると与しやすい相手。 プレイヤーの場合、基本的にリオネッセとキルーフのラブコメがメインとなる異端のシナリオとなる。 リオネッセ(CV:白鳥由里) ただの村娘だったが、前女王の予言に選ばれ女王となった少女。 健気で優しい心を持ち周囲の神官たちの助けを得ながら必死に女王の責務を果たそうとする。 一般の騎士と比べれば十分強力なのだが、他の君主と比べてしまうと初期能力・成長性ともにどうにもパッとしない最弱の君主。 その分相方のキルーフが抜群に強いので彼女を守れる強さを身に着けさせよう。 キルーフ(CV:遠近孝一) リオネッセの幼馴染。少々粗野ではあるが彼女とは相思相愛であり、突然女王にされた彼女の力になろうとする。 レベル3スタートかつそこそこの初期能力を持つうえ抜群の統魔力成長率を持ち、 クラスチェンジを繰り返して能力を伸ばせば文句なしの大陸最強騎士となる素質を持つ男。 マルチプレイモード(*2)では政略結婚でヴェイナードがリオネッセを妻にしてしまったため、寝取られ復讐マンと化す。 パテルヌス(CV:小村哲生) 若き女王リオネッセに代わって政務を取り仕切りながら、自らも前線で戦うレオニアの屋台骨。 レオニア唯一の初期最上級クラスであり、魔法はもちろん殴りもそこそこ強いスーパーハゲ。 レオニアの命運は彼の奮闘にかかっているといっても過言ではない。 ランゲボルグ(CV:岸祐二) 自称レオニアの頭脳。自身の頭脳に根拠のない自信を抱いており、 ノルガルドの出身だがヴェイナードにコケにされたことでレオニアに鞍替えした。 レオニアでも意味不明な献策を繰り返してキッパリ拒絶できないリオネッセを困らせている。 ブリガンダイン随一のネタキャラ枠で、実際めっちゃ弱いため「ランゲボルグさん」と愛(ネタに)されている。 エストレガレス帝国 アルメキア王国の将軍ゼメキスのクーデターによって興った国。 ゼメキスと旧アルメキアの猛将「帝国四鬼将」を中心として強力な騎士を揃え覇道を突き進む。 初期戦力は優秀だが、全方向を敵に囲まれている立地で防衛困難のうえ新しい騎士の加入が少なく、 さらに占領地域が増えると一部騎士は離脱してしまうのでさらに騎士不足が加速する。 加えて成長株が少ないため必然と一部の騎士に頼り切りになりがちでクリア難度は全勢力でも頭一つ抜けて高い。 敵としては序盤の強敵だが、滅ぼすと優秀な騎士が加入できるようになるので中盤には優先的に潰したい国。 ゼメキス(CV:大塚明夫) アルメキアの将軍だったが、クーデターを起こし主君の首を取って国を乗っ取った男。 ひたすらに戦場に生き戦場に死すことを望み修羅の道を行く生粋の武人。 高い初期能力と4マス遠距離攻撃を兼ね備えた最高のタイマン性能を持った君主。 初期から終盤まで通用するほどの強さを持っているので必然的に主力となるが、 単体攻撃しかできないため多数相手の殲滅力に欠け、レベルアップの残数も少ない。他の味方を育てることを忘れないように。 エスメレー(CV:天野由梨) ゼメキスの妻であり、ヴェイナードの姉。 ノルガルドから事実上の人質としてゼメキスに嫁いだ経緯を持つ。 いつも物憂げな表情を浮かべ、静かに佇む美女。 エストレガレスでは数少ない初期から有力かつ成長性のある強力な騎士。 帝国プレイではゼメキスと彼女を主力としつつミラ・ミレ姉妹を育て上げられるかが勝負どころ。 カドール(CV:菅原正志) 帝国四鬼将筆頭。「デスナイト」の名で知られ、黒い全身鎧と骨のような兜を身に着けた不気味な男。 固有クラス持ちかつ初期レベルが全キャラ最大の29で能力が高く、ゼメキス共々序盤では非常に厄介な強敵。 帝国プレイの場合は成長性がなく途中離脱してしまうためあまり頼りたくはないが、人手不足のため頼らざるを得ない。 ミラ(CV:小林由美子)・ミレ(CV:鈴木裕美子) 没落した名家に生まれた双子の少女。姉ミラが槍使いで妹ミレが魔法使い。 双子は不吉とされそれぞれ別の家へと養子に出されたがその間に家が没落。家名の再興のため帝国へ腕を売り込む。 帝国プレイでは数少ない成長株として鍛え上げることになる帝国のホープ。 帝国以外でも帝国を滅ぼせば別の国へ士官するのでほぼ毎プレイ見ることになる。欠点は妹(の中の人)の棒読み。 ソレイユ(CV:檜山修之) 「ビーストルーラー」の異名を持つ帝国四鬼将のひとり。母親を人質に取られ望まぬ戦いを強いられている。 全ユニット屈指の非常に高い統魔力を持つ強力な騎士だが、よほど対策を練らない限り途中離脱して敵に回ってしまう。 よって育てすぎると地獄を見るが、帝国は人材不足なのである程度は使わざるを得ない複雑なユニット。 帝国以外の場合は最初に帝国の拠点を落とした勢力のみが仲間にできるので初手で帝国の領地に攻め込むのは鉄板の定石。 エスクラドス(CV:小村哲生) 帝国四鬼将のひとりで、剣聖の異名を持つ元アルメキア王国剣術師範。 元々は人格者だったらしいが現在は人を斬ることで強さを示す修羅と化している。西アルメキアの剣豪ゲライントは彼の弟子。弟子の方が遥かに強くなるけど 大陸唯一の初期ソードマスターで初期レベルが高く、スキル面のしぶとさもあって序盤は相当強いが レベルアップの回数が少ない上に統魔力も微妙止まりで伸びしろがあまりないという典型的ジェイガンタイプの性能。 帝国プレイなら少なくとも序盤~中盤は使えるし、何より離脱しないので最後までお世話になることも多い。 シュレッド(CV:石井康嗣) 帝国四鬼将のひとりに数えられているが、ゼメキスのクーデターに反対したため幽閉されていた男。 ソレイユの離脱に際し、エスメレーの手で開放されエストレガレスの戦列に加わる。 確かに本人は強い。レベル20スタートでSTR・AGIともに高い。 だが統魔力が全騎士でもワーストクラスのため、統魔力が正義の本作では底辺扱い。 魔法による搦め手も使えず殴り一本しかないため、「多少本人が強くても兵が弱けりゃ意味がない」を体現してしまっている。 書き下ろしストーリーでその人物像が深掘りされるなどキャラクターはとても魅力的。ネタ抜きで。 シラハ(CV:松本保典) ニンジャ。出る作品間違えてるんじゃないかと思うぐらいニンジャの見た目をしている。 元はアルメキアがゼメキス暗殺のために雇った暗殺部隊の一人だったが返り討ちに遭い、シラハも帝国に仕えることとなった。 シラハ自身の性能はそこそこ止まりなのだがクラスチェンジすると二回行動+移動後遠距離攻撃を持つ本作最強のクラス「シャドウマスター」になれるというのがあまりにも強いので帝国では使える部類。 更に他国でも彼か後述のカザンが加入するとシャドウマスターへの道が開かれるため、帝国滅亡後は取り合いになる。 帝国が早く滅ぼされる理由の大半はこのニンジャ2人を放出させたいからと言っても間違いではない。 イスカリオ 狂王ドリスト率いる国。 「やりたいようにやる」をモットーとするドリストの下、変人たちが集まっている様はまるでサーカスのようである。 やりたい放題のドリストに民とアルスターは将来に不安を感じているが本人は気に留めようとしない。 キャラも濃いがステータスも偏っている曲者揃い。ノルガルド同様やや回復役が少ない。 初期領土の位置的に序盤から激戦区になりやすいため、開幕でコケるとどうにもならなくなりがちな中上級者向け。 ドリスト(CV:石井康嗣) 狂王の名で呼ばれる男。俺様主義で横暴な態度が目立つが、実力は確かなので誰も文句がつけられない。 君主ユニットとしては白兵能力が高めで、命中・回避に優れる。範囲魔法を持たないのが難点。 レベル30になるとクラスチェンジし、君主ユニットで唯一最凶の攻撃魔法メテオドゥームを覚えられる。 ただし普通に育てると唱えるためのMPが足りないので、成長厳選やアイテムでの補強が必要。 イリア(CV:小島幸子) ドリストに影のように付き従う槍使いの女。 数年前にドリストがどこからか拾ってきたこと以外の経歴は不明で、 ドリストの敵の排除と彼の命令には絶対服従の姿勢を見せる以外の意思を見せようとしないことから「キラードール」の異名を持つ。 固有クラスで初期レベルが高く即戦力になるが伸び代もそこそこ止まり。一応ヒロイン枠のはずなのに… ギャロ(CV:真殿光昭) 顔にペイントを施した大道芸人風の男。語尾に「やんす」がつくなどノリは軽く、 ただの腰巾着のように見えるがその実イスカリオでも上位クラスの実力者という食わせ者。 イスカリオにいるのも「ドリストと一緒なら一生退屈しなそうだから」というもので、イスカリオのノリを端的に表す人物のひとり。 やたら高いAGIを持ち、攻撃を避けまくるうえSTRも十分に高い。半面INTは低いので魔法系はまず無理と極端。 アルスター(CV:岸祐二) 通称「イスカリオの虐げられる良識」。まっとうな常識人であり、変人ばかりのイスカリオでは逆に異端な個性となっている。 真面目に政務をしないドリストに代わって政務を取り仕切るなど苦労を背負いまくっており、 国民の政情不安を払拭すべく自宅まで売って式典を打とうとするほど国を愛しているが、そのせいで妻には逃げられた悲しい男。 キャラ的には周囲からは軽く扱われているが、戦力的にはイスカリオに不足している支援・回復職ということで主力中の主力。 カーレオン 静かなる賢王カイが治める、魔法王国とも呼ばれる小国。 西アルメキアとは同盟関係にあり、西アルメキアから攻められることはなく、西アルメキアと自国のみが残ってもクリアとなる。 西アルメキアの場合と同様こちらから攻め込めば同盟解消となる。 大陸の端にあり、3方のうち1つは西アルメキアのため防衛が非常に楽。 初期騎士数こそ少ないが主力は粒ぞろいで、ターンが進めばさらに有望な騎士が増えていくため最もクリアが楽な初心者向けの国と言える。 前衛職の騎士が少ないので、前衛要員の確保が急務。 カイ(CV:伊藤健太郎) カーレオン王。普段はとてもそうとは思えない優男だが、有事となれば優れた手腕を見せる切れ者。 ヴェイナードがラインハルトなら、こちらはヤンのオマージュキャラ。 全ユニットで唯一初期から赤青緑の3属性の魔法を使いこなし、大半の相手の弱点を突いて戦える。 ただし魔法ユニットゆえに君主ながらやや耐久力に欠けるので、前に出しすぎての事故に注意。 メリオット(CV:三橋加奈子) カイの妹。少々お転婆なところもあるが、快活で明るい少女。兄の事を慕っている。 極めて優れた統魔力成長を持つ大陸最強クラスの成長株で、 低レベル加入かつ汎用クラスであるため様々な方向に能力を伸ばせるのも強み。 基本的には優れた統魔力を生かし、エンチャントレス系で魔法を習得しつつ 最終的には前衛を強力なモンスターに任せ後方支援に徹するアーチャー系にするのが鉄板。 ディナダン(CV:家中宏) 大陸で唯一「ナイトマスター」の称号を持つ男。漂々としているがその剣腕は大陸一の呼び声も高い。 堅苦しい政治の場は嫌いで国仕えを拒んでいたが、カイの器を見込んでカーレオンの食客となっている。 貴重な固有クラスの騎士で確率で物理ダメージ半減と確率で物理遠距離攻撃無効化の防御スキルを併せ持ち、圧倒的な白兵戦能力を持つユニット。 統魔力もそれなりにあり、魔法にさえ気をつければそうそう倒されない極めて強力な騎士。 本作の後半は魔法が強く、汎用クラスにチートクラスが存在するため最強の騎士なのかと言えば答えはNOであるが、 序盤からカドールと正面切って殴り合えるぐらいにはべらぼうに強いので、前衛不足のカーレオンでは最初から最後まで最前線に立ち続けることになる。 ミリア(CV:渕崎ゆり子) メリオットの親友の画家。各地を飛び回っていたため顔が広い。 彼女絡みのイベントで3人も騎士を加入させてくれるカーレオンの敏腕スカウトマン。 戦場でも「戦いなんてやめてモデルにならない?」とスカウトに余念がない。 スカウト能力が生かされているのか、本人も非常に優秀な統魔力を持つ有能オブ有能。 在野の騎士 国家に所属していない騎士たち。 主にクエストを行った際にランダムで加入するが、特定の条件を満たすと加入する者もいる。 コルチナ(CV:川上未遊) 踊り子見習いの少女。 ゲーム開始直後から仲間になる騎士ながら、成長性は全騎士でも上位というできる女。 序盤はクエスト報告のたびにコルチナ来い!と念じるのはブリガンダインあるある。 敵国に取られた場合も入った国を滅ぼした国に加入するため自軍入りする確率が高いのも嬉しいが、 レベル1スタートなので序盤に加入して育てられないと育てる機会を失いがちなのが難点。 ヒュード(CV:石川英郎) 自由を愛し、風任せの旅暮らしを続ける漂泊の騎士。 クエストで仲間になるが、仲間になった後もクエストに出し続けると 最終的にエルフの嫁を見つけて結婚してしまう。自由騎士ってそういう意味? 低レベル加入で手間はかかるが、育てば戦力としても優秀なできるリア充。爆発しろ(エクサブラスト)。 レイン(CV 石田彰) エストレガレスのミレの義兄。小心で頼りないヘタレぶりが目立つが、優しく純朴な青年。 10年以上もミレに想いを寄せており、周囲にはバレバレなのだがミレ本人には全く気付いてもらえない。 レベル1スタートで統魔成長率Sといかにもな「育てると強い」キャラなのだが、 加入条件が帝国が滅亡しており、ミラ・ミレ姉妹が加入していることなので 大抵中盤~終盤に差し掛かるころ。ここからレベル1の騎士を育てるのは茨の道である。 加入が早かったら、あるいは帝国で加入してくれたら…いろんな意味で残念なキャラである。 カザン(CV:藤原啓治) ゼメキスを暗殺するために雇われたが、返り討ちにされた暗殺集団の生き残り。こっちはそこまでニンジャニンジャしていない。 ゼメキスに鞍替えした裏切り者・シラハを処刑するために帝国滅亡後にシラハが再仕官した陣営の敵側につく。 統魔力は正直言ってショボく騎士としては劣化シラハだが、シラハと同じくシャドウ引換券であるというのがあまりにも強いため取り合いになる アルディス(CV:川上未遊) 竜と心を通わせ、竜とともに暮らす少女。 クエスト時に低確率で発生するイベントが発生した後、自国拠点を3つ以下にすると仲間になる。 クエストが発生するのも運なうえ、拠点数3以下にするというわざとやらない限りまずならない条件から 知らないと仲間にするのはまず不可能な、本作最大のレアキャラ。 苦労させられるだけあって全キャラでもトップクラスの圧倒的統魔力を誇り、最上級クラスのドラゴンまで連れてくる。 なお、大抵の場合加入条件を満たすのは自国にボコられて滅亡寸前の敵国なので、敵として出てくることはそこそこあったり。 その他 ハレー(CV:田中敦子) 流れるような槍捌きから、流星のハレーの異名を持つ流浪の女騎士。 唯一愛した男を殺され、仇討ちのために大陸を放浪している。 なかなか強力な騎士で全勢力でラスボス直前に加入するが、そこまで来ると育てている他の騎士のほうが強い。 西アルメキアのみ途中で一時加入するため育成する余地がある。 + 終盤ネタバレ注意 ブロノイル(CV:松山鷹志) 古より生きる強大な魔術師。裏で大陸の戦乱の糸を引いていた黒幕。 すべての滅びを望み、大陸に封じられたアウロボロスを復活させるべく ルーンの騎士たちが大陸のマナの力を濫用するように戦争を誘発させた。 強大な魔法を使い、強力な最上級モンスターを使役していることに加え、死者を改造し自らの傀儡とする外法をも操る。 カドール(CV:菅原正志) 実はブロノイルにより大陸の戦乱を拡大させるために送り込まれた刺客で、 その正体はハレーの恋人・リーランドを改造して作られた改造人間。 アウロボロス 「神よりも古き神」「混沌の蛇」と呼ばれる謎の存在。 ルーンの神々によりフォルセナの大地に封じられていたが、6国が戦争のためにマナの力を濫用したことで封印が解ける。 封印から解放された直後はまだ本調子ではなく騎士にも太刀打ちできる余地があるが、 完全復活してしまう(タイムオーバー)ともはや騎士の力でもどうにもならなくなりゲームオーバーとなる。 本作のラスボス。直線貫通攻撃と対象に複数状態異常を与える周囲攻撃の2つのMAP攻撃を持つ。 さらに一定時間ごとに雑魚敵を発生させるが、回避と反撃ができないという弱点がある。 余談 謎の魚屋CM PS版無印の際には魚屋の店主が鰤(ブリ)と鯛(タイ)を両手に持って「鰤ガン鯛~ン!鰤ガン鯛~ン!」とタイトルを叫ぶCMが流れ、見た人間に強烈な印象を叩きつけた。 そしてそのCMが長い間記憶に残り続けた結果、ルーナジア戦記でも再現CMが作成された。 史書ブリガンダインに追記・修正をお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 個人的にはファイナルファンタジータクティクス、ティアリングサーガに並ぶPS1でのSRPG傑作3柱の一角 -- 名無しさん (2022-05-18 01 39 49) 記載されていないけれど、アルメキアに初期配属しているリゲルも成長株。欠点は魔力が低く、魔法使いにチェンジ出来ないこと。条件付きで兄(二人)がいる陣営に行ってしまうこと -- 名無しさん (2022-05-18 06 13 24) 割りと硬派なゲームなのにCMが思いっきりふざけてたのが印象深い。 -- 名無しさん (2022-05-18 06 57 23) 個人的に在野騎士の情報も載せてほしい。最高の統魔力持ち幼女とか、双子とラブコメする義兄とか、なぜか連続イベント持ちの探検家とか -- 名無しさん (2022-05-18 09 03 29) レゲー特有の酷いランダム性が難点だと思ってたが、まさか2020年の続編でも据え置きと知った時は驚いた -- 名無しさん (2022-05-18 14 46 03) 敵が上位モンスターを雇うとかイカサマをしないから、中盤以降敵の主力を撃破すると後は消化試合気味になってしまうのが難点 -- 名無しさん (2022-05-18 20 10 51) CMのインパクトが未だに忘れられない -- 名無しさん (2022-05-18 22 13 09) ↑2ただその消化試合を終えた先に、SRPGでも屈指の強さを誇るラスボスが待ち受けてるってのは、この手の国盗りものとしては斬新だった -- 名無しさん (2022-05-19 09 40 54) 明らかに蛮族の国のイスカリオがラスボスの関係者がいたりと裏主人公みたいな扱いだったのは笑った。魔術師が太鼓持ちなのに強かったり、あの国は使ってて楽しかったな。 -- 名無しさん (2022-05-19 09 50 07) 鰤ガン、鯛ーン! のCMのインパクトが強すぎるし、ルーナジアでも同じCM作っててめっちゃ笑った -- 名無しさん (2022-05-19 11 44 25)
https://w.atwiki.jp/ragadoon/pages/1336.html
『見習い魔法師の学園日誌』第11週目結果報告(解決編) 1、幼子爵の接待(前ページ) 2、病床の少女達(前ページ) 3、巡回警備活動(前ページ) 4、貴族街の調査(前ページ) 5、子供達の戦い 6、真相と後日談 5、子供達の戦い 「あなた……、あの時、ユタに絡んでいた人よね……」 森の中でオーキスが遭遇したその人物の名は、ベル。かつての名は、ベル・ドルトゥス。嫉妬からユタに対して嫌がらせをしていた元生命魔法学部の上級生である。現在の彼は故郷のアストロフィに帰り、邪紋使いとなり、傭兵団「赤い月光」に入団した後、エーラムのアストロフィ邸の護衛任務に就いている。先日の魔法修得試験では、ファーストエイドの被検体として自らの身をクリープ達のために差し出すなど、かつての自分を反省した上での贖罪の道を歩んでいた。 だが、オーキスはそのような話は聞かされていない。そして今のベルは、オーキスとヴィルへルミネの目の前で、瀕死の重傷で倒れていた。 「た、たのむ……、解毒薬を……」 うわ言のように彼はそう訴える。この世界における一般的な「解毒薬」は、それほど高価な品物ではない。魔法学生ならば容易に手に入る代物であり、何かあった時のために常備している学生も多い。そして実際、オーキスもヴィルへルミネも、この時点で鞄の中に入っていた。 「これでいいですか?」 状況に混乱していたオーキスの横から、ヴィルへルミネが先に動く。彼女が解毒薬を処方すると、ベルは少し表情が楽になったような様子を見せるが、まだ身体そのものが重症であることには変わりない。 「オーキスさん、回復魔法って使えます? 私は未習得なんですけど……」 ヴィルへルミネがそう言ったところで、ベルは立ち上がった。 「いや、大丈夫だ。俺達がお前にしたことを思えば、これ以上の助けを頼める立場じゃない」 彼は足取りもおぼつかない様子で、しかし、その目には激しい憎悪と憤怒の感情を浮かべながら、闘争心を剥き出しにした形相で街の方面に向かって歩き出そうとする。ただ、今の彼の表情から読み取れる感情は、かつてオーキス達に対して八つ当たりの暴力を振るっていた時とは明らかに別物であることがオーキスには読み取れた。 「そんな身体で、何をするつもりなの?」 「止めなきゃならねぇんだ……、あの闇魔法師達を!」 強い決意を込めた口調でそう語るベルに対して、オーキスは溜息をつきながら、キュアライトウーンズをかけた。 「お前……」 「とりあえず、事情は話してもらうわ。そのための『情報料』として、今の魔法と解毒薬だけじゃ足りないっていうなら、もう一回かけてもいいけど」 「いや、十分だ。十分すぎる……」 明らかにまだ傷は完治していない状態だが、それでもベルはそう答えた上で、オーキス達に対して事情を説明する。自分がアストロフィ所属の邪紋使いになり、今はエーラムの同国邸で働いていることを告げた上で、彼は「本題」を語り始めた。 ベル曰く、現在のアストロフィ邸には、素性の知れない者達が頻繁に出入りしているらしい。彼等の正体について、邸宅の主であるハーラルやその側近達に聞いても何も教えてはくれなかったため、昨晩、独断でその者達の中の三人を尾行したところ、この森の中へと入り込んだという。 「三人のうちの一人はサーヤという名の中年の女で、俺がここに赴任してきた時から出入りしていた。言葉の訛りと雰囲気からして、おそらくはバルレア人だと思うんだが、ハーラル卿に対する接し方からして、多分、アストロフィの人間じゃない。残りの二人の名は、たしかネメシスとアルゴール、だったと思う。この二人は数日前から顔を見せるようになった。サーヤとは知り合いのようだったが、顔つきから察するに、バルレア人ではなさそうだった」 やがて彼等が森の奥深くへと入った辺りで、ネメシスが鞄の中から(暗闇の中だったため、はっきりとは見えなかったが)「小さな何か」を渡し、それに対してサーヤが謎の「呪文」を唱えた結果、その「小さな何か」が「巨大な多頭蛇型のガーゴイル」の姿に変わったという。 「多頭蛇、ですか……」 ヴィルへルミネは、師匠から聞いたクロードの予言を思い出し、軽く寒気を感じる。 「あぁ。あれはおそらく、タルタロス界のヒュドラがモデルになっているんだろう。で、サーヤの奴はこう言ったんだ。『そこに隠れている奴を倒せ』ってな。多分、俺がずっとつけてたのがバレてたんだろう。そのガーゴイルは俺に対して毒霧のようなものを吐いてきやがった。正直、俺はそいつをまともに食らった時点で『こいつには勝てない、そして逃げることも出来ない』と観念して、その場で『死んだふり』をすることにした。ダセェ話だが、他に仲間もいなかったあの場では、それが唯一の生き残る道だと判断したんだ」 そして、ベルのその判断は正解だった。その一撃で「尾行者」を倒したと判断したのか、それ以上の追撃はなかった。その直後、アルゴールの声で再び呪文のような何かが唱えられた後に、ヒュドラの気配は消え、そして彼等の足音は街の方へと向かって戻って行ったという。 「多分、奴等は『ヒュドラのガーゴイル』の召喚実験をしたかったんじゃないかと思う。で、俺が尾行してたのに気付いて、練習相手にちょうどいいと考えたんだろう」 それはあくまでもベルの推測にすぎない。だが、確かにそう考えれば、彼等のその不可解な行動も納得がいく。ヘラクレスは「ガーゴイル封じのための微弱な結界は残してある」と言っていたが、それが防げなかったのは、結界の力が弱かったからなのか、結界の範囲外だったからなのか、それとも別の要因なのか、この時点ではオーキスにもヴィルへルミネにも判断がつかない。そして、ヴィルへルミネは今の話を聞いた上で、改めてベルの身体を心配そうな様子で見詰める。 「ヒュドラの毒って、たしか、英雄ヘラクレスをも死に至らしめたっていう猛毒ですよね……」 「本来のヒュドラはそうだったのかもしれんが、俺に毒霧を浴びせたのは、所詮『ヒュドラの形をした石像』だからな。とはいえ、それでもアンデッドとしての俺の身体でも打ち消せない程度の猛毒ではあったし、実際、奴等がいなくなったら街に戻ろうとしていた俺も、その毒の進行を自己回復能力で打ち消すのが精一杯で、満足に動ける状態じゃなかった。だから、お前達には本当に感謝する」 ベルがそう言って改めて街へと歩き出そうとすると、オーキスは再び声をかけた。 「それで? 今からまたもう一度倒されるために、戦いに行く気なの?」 「俺一人じゃ勝てないことは分かってる。だから、ひとまず魔法大学の誰かにこのことを伝えるさ。一応、魔法師崩れの身として、闇魔法師の存在は許してはおけないからな」 「その三人が闇魔法師だという証拠はあるの?」 「少なくとも、エーラムの魔法師なら、きちんとそう名乗る筈だ。だが、俺はサーヤに『あなたは魔法師なのですか?』と聞いた時、奴は答えをはぐらかした。それに、俺は魔法の記憶は消されているが、なんとなく雰囲気で『エーラムの魔法』かどうかは分かる。サーヤが使っていた魔法はともかく、俺が倒れている間にアルゴールが唱えていた呪文は、明らかに普通の魔法じゃない。まぁ、俺の勘違いかもしれんが、どちらにしても、あんな胡散臭い連中が出入りしてる現状を、黙って放置する訳にはいかない。アストロフィのためにもな」 そもそも、彼はフラメア率いる傭兵団「赤い月光」の一員であり、ハーラル直属の武官ではない以上、ハーラルが怪しげな人物と接触している可能性があるならば、そのことを魔法師協会に対して内部告発することに躊躇はなかった。ハーラルは子爵家の一族とはいえ、彼から見ればあくまで「勤務先の管理人」にすぎない。 「それで、もし協力者が得られたら、その身体であなたも戦いに行くつもり?」 「当然だ。あの毒霧をまともに受けたら、並の魔法師では耐えられないだろう。だが、俺なら一発くらいは耐えられる。俺が一回食い止めている間に、どうにかしてもらうさ」 つい最近まで嫉妬に狂って後輩に嫌がらせをしていた男とは思えないような発言だが、オーキスは彼のその言葉から、嘘偽りは感じられなかった。おそらく、当時の彼は「自分の目指していた自分になれないことへの閉塞感と絶望感」から、心を乱していたのだろう。それが、邪紋という「力」を手に入れたことによって、ようやくその負の感情から解放され、それまでの自分の愚かさをようやく客観視出来るようになったらしい。だからと言って、過去の所業が消える訳ではないが、オーキスはそんな彼の背中から、二度目のキュアライトウーンズを放つ。 「お前……」 「この状態なら、二回くらいまで耐えられる?」 「あぁ……、恩に着る。そして、あの時は本当にすまなかった……」 「それは今回の件が終わってから、改めてユタに言うことね」 この二人の過去の事情を知らないヴィルへルミネは、彼等が何の話をしているのか分からない。ただ、最初にベルと遭遇した時にオーキスから感じられた不穏な雰囲気が、少しだけ緩和されているように見えた。 そんな微妙な空気を抱えつつ、彼等はエーラムの市街へと向かって歩みを早めてく。 ****** セレネの捜索に向かったエイミールとヴィッキーは、幸いなことに次々と「目撃情報」に遭遇する。さすがに、道行く人々に片っ端からガーゴイルと闇魔法師のことを聞いて回っていたため、多くの人々の目についていたらしい。 ヴィッキーがクールインテリジェンスを用いた上で、それらの情報から彼女の足取りを推測しつつ、更に捜査を続けて行くと、やがて彼等は重要な証言に辿り着く。 「その子なら、なんか男二人と一緒に、路地裏の方に向かって歩いてたな」 「男二人!? どんな奴だ!?」 エイミールが食い気味に聞き寄り、外見的特徴を聞き出すと、ヴィッキーはその旨をテレコミュニケーションを通じてクロードへと伝える。そしてクロードがその情報を他の「通話中」の面々に伝えると、ゼイドが反応した。 「その二人組、ユーミル邸に来ていた奴等かもしれない……」 ゼイドはあくまでも遠方から遠眼鏡で見ただけだが、確かに外見的特徴は一致していた。そして、少なくとも片方は魔法師であることが確定している。そのことを踏まえた上で、クロードは張り込み班の面々に「配置変え」の指示を出す。 「では、ゼイド君はヴィッキー君達と合流して下さい。ただ、ユーミル邸の近辺はまだ警戒する必要がありますので、ロゥロア君とルクス君はユーミル邸の近辺へと移動して、マシュー君と合流をお願いします。おそらく、ウィステリアに関してはこれ以上監視を続ける意味はないですから。そして、サンドルミア邸もおそらく今回に関してはシロなので、ディーノ君とエルマー君もセレネ君の捜索に回って下さい。アストロフィ邸には、まもなくフェルガナ先生率いる正規の査察隊が到着しますので、バーバン君とロウライズ君はそのまま監視の継続をお願いします」 その話を聞いた上で、クロードの目の前にいたジュードが問いかける。 「クロード先生、テレコミュニケーションの『窓口』の数、まだ余裕はありますか?」 テレコミュニケーションで通話出来る人数には限界がある。クロードは10人まで「通話先」として脳内登録することは出来るが、同時に何人まで通話を「開きっぱなし」の状態に出来るかと言われると、また話は変わってくるだろう。 「まぁ、あと一人くらいなら、どうにかしましょう……」 こうして、ひとまずジュードを中心とした「追加のセレネ捜索隊」が結成されることになる。そんな中、クロードの脳裏にまた新たな「連絡」が届いた。 「あ、今、ヴィッキー君から続報が届きました。エル君、ご指名です」 「え? 僕ですか?」 「君のロケートオブジェクトがまた必要になるようです。ヴィッキー君の案によると、ちょっと『回数』が必要みたいなので、精神回復薬が必要でしょうね。その辺にあるやつ、好きなだけ持って行っていいですよ」 ****** 「な、なんか人いっぱい来てんど!」 「さすがフェルガナ先生、動くのが早いな……」 ルクレール邸の二階の窓からアストロフィ邸の様子を伺っていたバーバンとロウライズは、窓越しにフェルガナ率いる査察隊が集まって来る様子に気付く。そして彼女達は、有無を言わさず邸宅の敷地内へと乗り込んで行った。 「無礼な! ここをアストロフィ子爵家の私邸と分かった上での狼藉か!」 すぐさま邸宅から現れた執事風の男がそう叫ぶが、フェルガナは捜査令状を掲げて叫び返す。 「貴殿等には、闇魔法師を無許可でエーラムに連れ込んだ容疑がかけられている。おとなしく邸内の捜査に協力されよ。断るならば、今すぐ闇魔法師もろとも、この屋敷を焼き尽くす」 そう言い切った瞬間、上空に屋敷を取り囲むように「異界の飛空船団」が現れる。 「おぉぉぉぉ!? な……、なんだぁ!?」 「オルガノンフリート! 浅葱流派の最高峰と言われる召喚魔法だ……」 バーバンとロウライズがその圧倒的な迫力を前に気圧される中、執事風の男は一歩も引かずに言い返す。 「ハッタリも大概にされよ。そのような無法が許されると思うほど、魔法師協会は愚かではあるまい」 「我等には人々の安全を守る義務がある。その義務を果たすためなら躊躇はしない。闇魔法師を逃がすための時間稼ぎを続ける気なら、貴殿もまた奴等と同罪だ」 「そんな横暴な理屈に我等が屈するとでも……」 執事風の男がそう言ったところで、屋敷から一人の青年が出てきた。 「もういい! もはやこれまでだ!」 その青年の顔は、既に焦燥しきっていた。 「アストロフィ子爵邸の管理人、ハーラル殿でよろしいか?」 「そうだ! 私は闇魔法師に脅されて、仕方なく奴等に利用されていたのだ! 頼む、私を奴等から解放してくれ!」 彼はそう言いながら、自らフェルガナの元へと駆け寄る。 「殿下……」 執事風の男はそう呟きかけるが、そこで口を噤む。 「ご英断、感謝致します」 フェルガナはそう告げると同時に、上空のオルガノンフリートに対して、屋敷の側面の「開け放たれた窓」の近辺の庭に対して一斉射撃を命じる。 「ぐはっ!」 そんな断末魔の声と共に、姿を消してその窓から外に逃げようとしていた一人の男が、その場に倒れ込む。それを合図にするように、一斉に査察隊は邸内へと突入を開始した。 ****** 「作戦は失敗だ。早くエーラムから逃げろ。俺もどうにかこの包囲網を突破して……」 パンドラ製の通信用魔法杖から聴こえてきたその声は、そこで途絶えた。「魔法杖を持っていた男」は、「隣にいる男」に対して、呟くように語りかける。 「とりあえず、アストロフィ邸に戻らなかったのは、正解だったみたいだな」 「あぁ、やっぱり、下町のアジトがバレた時点で、とっとと手を引くべきだったんだ。バルレアの連中に肩入れしすぎた……」 二人の男は溜息をつく。この二人は今、エーラムの町外れの路地裏で浅葱の召喚魔法シェルタープロジェクションを用いて生み出した「異界の地下室」の中にいる。魔法杖通信をしていた男の名はネメシス。もう一人の男の名はアルゴール。彼等はいずれも、闇魔法師組織「パンドラ」の一員である。 「で、どうする? 本当にこのまま、あいつらを見捨てて逃げるか?」 「まぁ、こいつに『人質』としての価値があるなら、捕虜交換を申し出るという選択肢もある訳だが……」 二人の視線の先には、縄で縛られた状態で眠っているセレネの姿があった。彼等は当初、道端で自分達のことを探っていたセレネを発見した時点で、彼女を拉致して尋問することで、魔法師協会側がどこまで「自分達」のことを把握しているのかを確認しようと考えていた。 そのために、彼女に接触した上で、仲間だと思わせて油断させた状態で路地裏へと連れ込み、背後から彼女にスリープの魔法をかけ、そして即席でこの「地下室」を召喚した上で、彼女を縛った状態で起こし、そして実際につい先刻まで、彼女から直接情報を聞き出そうと尋問していたのである。 ところが、実際に一度彼女を起こして話を聞いてみたものの、全く有益な情報は聞き出せなかった。その上で、彼女の口ぶりから「本当に何も分かっていない状態で、闇雲に探し回っていただけ」だと判断した彼等は、仲間からの魔法杖通信がかかってきたところで、再びセレネをスリープで眠らせて、そして現在に至る。 「こいつ、どう考えてもただの馬鹿だろ。最初は、馬鹿を装ってごまかしてるだけかと思ってたが……」 「そうだな……、まぁ、そうでもなければ、『あんなやり方』で俺達のことを探ろうとはしないだろう。その時点で気付くべきだったな……」 「こんな奴のために、俺達の仲間を解放してくれると思うか?」 「分からん。そもそも、今の時点でまだ生きているかどうかも分からんしな……」 「多分、『俺達の仲間』は全員お縄だと思う。『バルレアの連中』は分からんが……」 「サーヤ女史あたりはもともと単独行動していることが多いから、たまたま勝手に外に出てて難を逃れてる可能性はあるかもな」 彼等がそんな話をしている最中、地下室に設置されている通報装置が鳴り響く。どうやら、誰かが「入口」を見つけて、侵入してきたらしい。 「見つかったか! カムフラージュしたつもりだったが……、さすがはエーラムの連中だな」 「安心しろ。こういう時のために、出入口は二つある。反対側から逃げれば……」 そう言いかけたところで、別の警報が鳴る。 「何!?」 「両方バレたのか!?」 二人が困惑する中、彼等の籠もっていた地下室に、二つの異なる方向から「侵入者」が現れる。片方から現れたのは、ヴィッキー、エイミール、ゼイド、ディーノ、エルマーの五人。そしてもう片方の入口からはジュード、ジャヤ、テラ、ティト、イワンの五人が現れた。 ここに至るまでの間に、ヴィッキー達はまず手分けして「セレネを連れ去った二人」の目撃証言を探した結果、「少なくとも、貴族街の外には出ていないらしい」という結論に至り、この時点で「シェルタープロジェクションで地下に隠れている可能性」に思い至ったヴィッキーは、エルに頼んで「最も近くにあるシェルタープロジェクションの入口」を探させたところ、路地裏内で確かに「入口」を発見したのである。その上で、ヴィッキーは更に「別の入口」がある可能性も考慮して、エルに場所を移動させて何度か同じ魔法をかけてもらった結果、見事に「二つ目の入口」も発見するに至った(なお、当のエル自身はこの過程で精根尽き果てたようで、この時点で「ジュード組が突入した入口」の近くで小休止していた)。 そして、入って来ると同時にエイミールが叫ぶ。 「貴様ら! セレネ君に何をした!?」 この時点で、ネメシスとアルゴールは、この手元にいる少女に「人質としての価値」があると確信し、ネメシスは彼女の首元にナイフを突きつけながら答える。 「まだ何もしていない。そして、彼女がどうなるかは、お前達次第だ」 「何だと!?」 「俺達は、お前達と争うつもりはない。ただ、黙って俺達がエーラムから立ち去るのを見送ってくれればいい。俺達がエーラムの外に出るまで何もしなければ、その時点で彼女は解放してやる」 だが、ネメシスがそう言った直後に、彼がナイフを突き付けている筈のセレネの姿が、一瞬にして「帽子をかぶった、少し大きな猫」の姿へと変わる。 「な!?」 それと同時にエルマーの足元に「セレネ」が現れ、そして次の瞬間、「猫」は姿を消す。困惑するネメシスの横で、全体を見ていたアルゴールは即座に状況を理解した。 (今のは、ケットシー……、そうか、奴等の「影」に隠れていた猫妖精が、「妖精の輪」を使ったのだな) 「妖精の輪」とは、妖精界(ティル・ナ・ノーグ界)の住人達が引き起こす特殊な現象の一つであり、彼等は離れた場所にいる者達の立ち位置を「入れ替える」ことが出来る。そして今、エルマーの影の中に隠れて密かに同行していた猫妖精のアルヴァンが、影の中から「自分」と「セレネ」の場所を入れ替え(その結果として「影の中に入れない存在」であるセレネはエルマーの足元に出現し)、その直後にアルヴァンは再びエルマーの影の中へと戻ったのである。 「ネメシス、ガキだと思って甘く見てる場合じゃない。ここは全力で突破するしかないぞ」 「あぁ、そうだな。まだ切り札は使いたくはなかったが、やむを得ん!」 二人はそう言って背中合わせの体制となり、ネメシスはヴィッキー達に、アルゴールはジュード達に向かった状態で、懐から「小型の魔石像」を取り出しつつ、「ディスペルマジック」の魔法を唱え始める。 この瞬間、ティトが調べた情報を共有していた面々は、彼等がこの場で「小型化されたガーゴイルの封印」を解こうとしていることに気付き、そして即座にゼイドが手前のネメシスに対してカウンターマジックの魔法を唱える。この時、ゼイドは目の前にいる男が「先刻スリープをかけようとしたのを、自分のカウンターマジックで止めた相手」だということに気付いていた。 (あの時とは違って、今度は奴も本気……。だが、それでもここはもう一度、この可能性に賭けてみる。今の俺に出来ることは、これしかない!) そこにヴィッキーがアシストをかけ、更にエルマーの影の中からアルヴァンもまたゼイドに対して祝福の加護を与えつつ、彼の運命そのものを特殊な魔力によって捻じ曲げた結果、ゼイドのカウンターマジックは奇跡的な威力へと増幅され、ネメシスのディスペルマジックを失敗させる。 一方、アルゴールの方は無事に封印解除に成功し、ジュード達の目の前には巨大な怪鳥スチュパリデスのガーゴイルが現れる。だが、ここでテラは、ティトが話していた「圧縮魔法」の性質を思い出した上で、反対側にいるネメシスの方を指しながら、ジャヤに対してこう叫んだ。 「ジャヤ! あの石像に対して、ディスペルマジクを!」 先刻の時点でテラから「図書館組の得た情報」についても聞かされていたジャヤはすぐにその意図を理解し、テラのアシストも得た上で「ネメシスが持っていた石像」にディスペルマジックをかけると、その場に「三ツ首の魔犬ケルベロスの姿を模した巨大なガーゴイル」が現れる。そしてジャヤは叫んだ。 「その怪鳥を倒せ!」 ティトの調べた情報によれば、圧縮された魔石像は「ディスペルマジックをかけた魔法師」の指定した相手を攻撃する(ただし、その「最初の攻撃対象」を倒した後は、手当り次第に暴れ始める)。その情報を信じてジャヤがそう命じると、魔犬はその言葉通りに怪鳥に向かって襲いかかった。ジュード達を襲おうとしていた怪鳥は、やむなく魔犬への応戦を強いられる。 「ば……馬鹿な!」 「お前、何やってんだ!?」 ネメシスとアルゴールが混乱する中、ヴォーパルウェポンをかけた木刀を手にしたディーノがネメシスに斬りかかり、そしてエイミールとティトはエネルギーボルトを立て続けに放つ。そんな彼等をジュードはアシストで、イワンはリウィンドで支援した結果、ネメシスは深手を負ってその場に膝をついた。 「こ、こんなガキどもに……」 「落ち着け、ネメシス」 そう言いながら、アルゴールはネメシスに回復魔法をかける。その間にも魔犬と怪鳥は地下室を破壊しそうな勢いで大乱闘を繰り広げていたが、やはり天井の低い戦場では魔犬の方に分がある状態であった。そんな中、怪鳥が苦し紛れに翼を荒げて突風を起こすと、その風がゼイドの羽織ってたローブを一瞬剥ぎ取り、そして彼の顔が初めて衆目に晒される。 (あれが、ゼイドの素顔……) 今まで、ずっと顔を隠し続けていたことから、一部の学生達の間では「よほど特殊な外見なのでは?」「実は人間ではないのでは?」などと噂されていたが、その素顔は「隠さねばならない素性の持ち主」とは思えぬ程度には「普通の少年」であった。ゼイドは慌ててローブを被り直すが、この時、一人だけ彼の素顔に見覚えのある人物がいた。ネメシスである。 (あれは確か……、あの方の息子……?) 一方、エルマーは手元にセレネの身体を揺らしながら声をかける。 「大丈夫!? 怪我はない!?」 「むにゃ……、あれ? エルマーちゃん……? あの悪者達はどこに……、って、なんかみんな戦ってるぞ!」 「そうだよ! みんなで助けに来たんだよ」 「よし! なんかよく分からないけど、セレネもここは頑張るぞ!」 先刻までは手が縛られた状態だったため、魔法発動に必要な動作も取れなかったセレネだが、その状態から解放されたことで、彼女は(先刻一度起こされた時に密かに思いついていた)「秘策」を披露する。 「エルマーちゃん、リアクションよろしくだぞ」 小声でセレネはそう告げつつ、自分達の後方に「カルディナ・カーバイト」の幻影を作り出す。エルマーはすぐにセレネを意図を察した。 「カルディナ先生! 助けに来てくれたんですね!」 その声を聞いたネメシスとアルゴールは、驚愕の表情を浮かべながら、そのカルディナの幻影を目の当たりにする。 (カルディナ・カーバイトだと!? あの「実力だけなら若手最強」と名高い放蕩魔法師までもが参戦してくるとは……) (そういえばあのガキ、カーバイトだと名乗っていたような……、しまった、奴の直弟子だったのか……) 裏虹色魔法師カルディナ・カーバイトの悪評と実力は、闇魔法師達の間にも既に浸透していたらしい。既に劣勢だった彼等は、その幻影が本物かどうかを確認出来るだけの冷静さを持ち合わせておらず、戦意喪失させるには十分すぎるほどの衝撃であった。 「ここまで、だな……」 ネメシスはそう言って魔法杖を捨て、そしてアルゴールも黙って頷き、降伏の意を示す。彼等は(先刻までセレネが縛られていた)縄でその身を拘束されるが、この時、ネメシスは自分を縛り上げるゼイドに対してこう言った。 「なぁ、お前……、ライアスだろう?」 その発言にゼイドは驚愕し、そして思い出す。父の弟子の一人に、この男とよく似た外見の「ネメシス」という名の魔法師がいたことを。だが、この場で肯定する訳にはいかない。 「……人違いだ」 「そうかい……、まぁ、それならそれでもいいさ。お前がそう言うならそうなんだろうよ。お前の中ではな……」 それ以上、その男は何も言わなかった。なお、この間も魔犬と怪鳥の戦いは続いていたが、彼等の体躯ではこのシェルターの入口を通って外にでることは出来ないと判断したヴィッキー達は、ひとまずそのまま二体の巨大ガーゴイルを放置した状態で、二人の捕虜と共に「エルが外で待っている方の出入口」経由で、シェルターを後にした(なお、この時点ではまだネメシスもアルゴールも「カルディナ」が幻影であることに気付いていなかった)。 そして、助け出されたセレネはエルマーから事情を一通り聞いた上で、皆に深々と頭を下げる。 「みんな、助けに来てくれて、本当にありがとうだぞ! セレネが油断したばっかり、こんなことなってしまって、ごめんだぞ……」 さすがに少し気落ちした様子の彼女に対して、ヴィッキーが答える。 「まぁ、そこまで気にせんでもええで。結果的に言えば、セレネちゃんのおかげでこいつら捕まえることが出来たんやし。セレネちゃんがおらへんかったら、カルディナ先生も来てくれへんかったかもしれへんしな」 あくまで、(捕虜達が真相に気付いて暴れようとしたりしないように)「この場にカルディナがいる」という状況を装った上での発言だったが、実際のところ、セレネがいなければ「カルディナ」が出現していないことは事実でもある。 「ただ、義兄さんに心配かけたことだけは、反省して下さいね。本気で狼狽してましたから」 「おいこら、ジュード! 余計なことを言いうんじゃない!」 アイアス兄弟のそんなやりとりに対して、セレネはどう反応すれば良いのか分からない。先日、彼にプロポーズされた時のことを思い出して、赤面しながら下を向く。そんな彼女に対して、エイミールは短く一言だけ告げる。 「ともかく……、無事で良かった……」 「うん……、心配かけて、ごめんだぞ……」 そんな二人のやりとりを見ながら、義弟のジュードは「自分達の方の事情」(discord「出張購買部」7月16日)を思い出す。 (「あの人」は、メルキューレ先生と一緒に貴族街の巡回に行ってた筈ですけど、今はどうしているんでしょう……?) ****** その頃、オーキス、ヴィルへルミネ、ベルの三人は、市街の中心部である魔法学校の校舎内まで辿り着く。ひとまず高等教員の誰かと合流して事情を話そうと考えていたのだが、ここで彼女達は「ロシェルを乗せたシャリテ」と遭遇した。 「オーキスちゃん! あなたも捜索に来たの?」 シャリテがそう語りかけると、オーキスより先にベルが反応した。 「この狼、喋るのか!?」 ベルはあの乱闘騒ぎの時に「アネルカ」とは面識があったが、「狼のシャリテ」とは初対面である。一方で、シャリテの側もベルとは直接組み合っていなかった上に、早目にあの場からは退散していたため、彼の顔までは覚えていない様子であった。その辺りの事情を全て知ってるのはオーキスだけだが、説明すると長くなる上に、今の時点で説明する必要もないと判断した彼女は、あえてベルを無視してシャリテからの問いに答える。 「あなたの捜索しているものと同じかどうかは分からないけど、そんなところよ」 オーキスはそう答えつつ、ロシェルに問いかける。 「で、今のあなたは『どっち』なの?」 「わたしは『ロシェル』よ。さっきまでシャリテはお養父様と一緒に貴族街を巡回してたんだけど、お養父様は別件が入ったから、私が代わりに同行することにしたの。狼が一頭だけで街を歩いてたら、普通の人はビックリするだろうし」 普通は「巨大な狼を連れた少女」が歩いているだけでも十分に驚愕案件ではあるが、それでも狼単体で徘徊している状態よりはまだマシだと判断されたのだろう。少なくともこの魔法都市エーラムにおいては「魔獣を連れた魔法師」自体は、そこまで珍しくはない。 なお、現在の「ロシェル」は厳密に言えばメルキューレの正規の養女ではないが、これまでずっと彼の養女として暮らしてきて、そして今後も実質的に彼の保護下にあることから、今後も変わらずメルキューレに対しては「父」として接することにしたらしい。 一方、ベル同様に「彼女達」の事情を知らないヴィルへルミネは、直観的にロシェルに対してこう問いかける。 「あなた、ヤーナマゥナですか?」 「え? ヤーナ……? 何それ?」 ロシェルもシャリテも揃って首をかしげる。 「あ、違うんですね……、えとですね、ヤーナマゥナは動物と信頼関係を結んでいる女の人の事を言うんです。おぉばあちゃんの故郷にはたまに居たらしいです」 「信頼、か……。まぁ、そういうのとは、またちょっと微妙に違うのかもね、私達は」 シャリテがそう答えたところで、ロシェルはオーキスに現状を説明する。 「さっき、シャリテが『怪しい男』を捕まえたのよ。で、そいつは『御禁制の魔法薬』を誰かに届けようとしてたみたいなんだけど、なかなか口を割らないから、とりあえず、その薬の最初の持ち主を探そうと思って、その薬の匂いをシャリテに嗅がせて、同じような匂いを探してるの」 「御禁制の魔法薬」ということは、闇魔法師絡みの話である可能性が極めて高い。当然の如くベルが強い興味を示す一方で、ヴィルへルミネは嫌な予感を感じ取りつつ、周囲の匂いを慎重に嗅ぎ分けているシャリテに語りかける。 「それで、その……、この辺りにその気配があるんですか?」 「えぇ……。というか、段々近付いて来ている気がするわ。貴族街から、こちらの方に向かって来ているような……」 シャリテがそう答えると、オーキス達は思わず周囲を警戒する。そんな彼女達の視界には、喫茶「マッターホルン」の看板が映っていた。 ****** 「随分、張り切ってるようだね、シャロン君」 エマのお見舞いを早目に切り上げてマッターホルンに戻ったクグリは、店内に大量に並べられたテーブルと大皿、そしてその上に載せられた様々な料理を見ながら、厨房の中にいるシャロンに向かってそう語りかける。 「えへへー、せっかくマッダーホルン貸し切ってのお食事会させてもらえるだ。頑張ってりょーり作るだ!」 そう言いながら、彼はテキパキと準備を進めていく。とりあえず、ヨハネスの食の好みが分からないこともあってか、好きなものを好きなだけ食べられるバイキング形式を選択したらしい。 「やっぱり、山のごちそーとがっこーのりょーりを並べたビュッフェーがよさそうだら!」 「確かにね。これだけ色々あれば、きっと気に入ってくれる料理もあるだろう」 そんな会話をしている中、やがてヨハネス達が到着する。 「よーこそー、マッターホルンへー」 シャロンがそう声をかけると同時に、クグリも深々と礼をする。 「はじめまして、ヨハネス陛下。店長代理のクグリ・ストラトスと申します。どうか本日は、ごゆるりと当店で楽しい一時をお過ごし下さい」 「ありがとう。色々と噂には聞いているよ。この店にしかない特別な味付けの料理も色々あるんだってね」 「えぇ、まぁ、それはもう……」 何か「余計な噂」まで届いていそうな気がしたクグリは少し嫌な予感がしたので、あえて少し釘を刺すことにした。 「……陛下、本日はビュッフェ形式のお食事を用意しておりますので、あくまでも『お気に召した皿』だけ食べて頂ければ結構です」 「そうだね。せっかく用意してくれたのだから、出来れば全部味わってみたいけど、そんなに沢山は食べられないから。でも、僕のためにそこまで配慮してくれた君の真心だけは、全て残さず僕の中に刻み込ませてもらうよ」 さわやかな笑顔を浮かべつつそう答えたヨハネスを目の当たりにして、クグリは内心で様々な思いを巡らせる。 (なるほど……、これは確かに女の子達が騒ぎ出しそうな美少年だとは思う。ただ、明らかにロウライズ君とはタイプが違いすぎる。やっぱり、どこか妙だな……) 表面上は平静を装いつつ、そんなことを考えていたクグリに対し、ヨハネスはそのまま話を続けた。 「あと、出来ればこの子、クヌートも、僕と一緒にご飯を食べさせてもらってもいいかな? クヌートも味覚は人間と同じだから、人間が美味しいと感じるものなら、きっとこの子も喜ぶよ」 そう言って彼は自分の傍らにいるガーゴイルを指差す。どうやら、ここに至るまでの間にカロンとはすっかり仲良くなったようで、クヌートはカロンの持ってる猫のぬいぐるみを(カロン自身には触れないように気を配るような姿勢で)前足で撫でていた。 そんなクヌートの後方には、この店に入る直前に合流したジョセフの姿があった。彼は申し訳なさそうな顔を浮かべながら、クグリに問いかける。 「大変失礼な質問だとは思うが……、本日の食材の入手経路は心配ないのだろうな?」 要人暗殺において、毒殺は常套手段である。 「さすがに店長もそこは気を配ってくれてると思うし、シャロン君もちゃんと自分で味見しながら食べてるから、大丈夫だと思う。心配なら、僕が全て毒味してから提供することにしてもいいけどね」 クグリがそう答えたところで、今度はアーロンが口を開く。 「そういうことなら、ボクがやりましょうか? この間、アイアンウィルを覚えたので、どんな食材でもボクなら耐えられると思います」 彼は、一部の学生達が「マッターホルンの料理を全制覇するには、アイアンウィルは必須だ」などと話していたのを思い出したらしい。 「いや、アイアンウィルは『食べたくないものを食べる時』には有効かもしれないけど、別に毒に対する耐性が付く訳ではないから。どっちかというと、こういう時に必要なのはイミュニティの方だけど、習得者はこの場にはいないだろうし」 彼等がそんな話をしていると、ヨハネスが割って入る。 「僕としては君達を信用してるから、別にそこまで気を使ってくれなくてもいいけど、せっかくだし、みんなと一緒に美味しいものを食べたいから、君達が食べて『美味しい』と思ったものを僕に勧めてくれないかな? そしたら、僕もクヌートも君達と一緒にそれを食べるから」 周囲の面々を見渡しながら彼がそう告げると、アーロンがさっそく動き出す。 「じゃあ、まずボクが一通り味見してみますね」 そう言ってアーロンが最寄りのテーブルの皿に近付くと、そこには、ヴィッキースペシャルを用いたパスタや、「シルーカ・メレテス大絶賛」の札が貼られたプリンなどと並んで、不気味な見た目の料理が載せられた皿があった。 「これ……、もしかして、虫……?」 彼がそう呟くと、横からツムギが覗き込む。そこにあるのは、バッタのような形をした生き物を食材とした、山岳民特有の料理であった。 (なんか、イナゴの佃煮っぽいかも……?) どうやら彼女の祖国(の一部)にも、似たような郷土料理があるらしい。ちなみに、これはマッターホルンの正規メニューではない。 「せっかくだからー、エーラムであんま食べられない食材も集めただー」 シャロンはそう言いながら、その隣に今度は「蜂の幼虫」の煮物を持ってくる。これもまた、一部の山間部においてはポピュラーな食材であった。 (こ、これはさすがに……、いや、むしろ、今こそアイアンウィルを使う時!) アーロンは小声で呪文を唱えて「意志の力」を強化した上で、意を決して「バッタのような何か」を口に入れてみる。 「あ……、意外と美味しい、かも……?」 とはいえ、あえて最初の一皿目に勧めるような品でもない。そんなことを思いながら、続けて隣のハチノコにも手を伸ばそうとするアーロンを、ヨハネスは後方から相変わらず涼し気な笑顔で見詰めている。そんな彼に対して、ツムギは小声で問いかけた。 「あの……、この世界では、虫を食べることって、一般的なのでしょうか?」 「国によるだろうね。バルレアにも、時々そういう人もいるよ。僕はまだ食べたことないけど」 そうは言いながらも、別に食べること自体にはあまり抵抗は無さそうな口ぶりである。むしろ、その隣にいるクヌートの方がどこか怯えている様子であった。 「あなた、ライオンさんなのに、虫がこわいの?」 カロンがそう問いかけると、クヌートはゆっくりと頷く。そんな彼(?)を見て、カロンはますます愛らしく思えてきた。 「なんだか、味覚だけじゃなくて、心も私たちとあんまり変わらないみたいね」 ****** マッターホルンの店内でそんな会話が繰り広げられている中、シャーロットは警戒のために店の外を巡回していた。一応、バリーは入口近くで店の内外両方に目を配っていたため、シャーロットは彼の視界の範囲外となりそうな場所を重点的に調べていく。 そんな彼女は、店からやや離れた場所に公道の隅に設置されている「黄土色の箱」を発見する。材質が何なのかはよく分からないが、屈めば中に人が入れる程度の大きさであった。 (なんでしょう……? ちょっと怪しい気もしますが……) そう思った彼女がその箱に近付こうとした瞬間、今度は店の周囲の生け垣の一角から人の気配を感じる。いつもなら、ここで「そこにいるのは誰です! 出てきなさい!」と叫ぶ彼女であったが、今回は状況が状況だけに、より慎重な対応が必要ではないかと考え始める。 (もし、この中に悪い人達が隠れているとしたら、私一人では対応出来ない……、でも、今からバリー先生を呼びに行ってる間に逃げられるかもしれない……) そう考えた彼女は、ひとまずその生け垣の一角に対して、足止めのために(通用するかどうかは分からないいが)スリープの魔法の詠唱を始める。だが、その直後に生け垣の中から「見知った人物」が現れた。 「待て待て! オレ達だ!」 「レナードさん!?」 彼に続いて、中からノアとダンテも現れる。 「すみません、ボク達、ずっとここに張り込んでたんです」 「星が教えてくれたんだ。ここが決戦の場になる、ってことをな」 そんな彼等の声に反応して、バリーが近付いてくる。 「シャーロット君、そこに誰かいるのかい?」 だが、その瞬間、彼等の視界に「異様な光景」が飛び込んできた。それは、明らかに禍々しいオーラを帯びた「毒の息吹」が、公道側から店全体を覆うように迫ってきたのである。 「なんだ!?」 「ポイズンブレス!?」 「やっぱり、ここだったな!」 「いや、毒は聞いてないですよ!」 学生達がそんな叫び声を上げる中、バリーは即座に店内のヨハネスに対して元素障壁をかけようとするが、その前に彼等と毒霧の間に謎の「黄土色の防壁」が現れる。 「え?」 「こ、これは一体……?」 「魔剣の加護か?」 「バリー先生の魔法?」 実際のところ、レナードの魔剣は全く反応していないし、バリーも何もしていない。その「黄土色の壁」によって毒の息吹は店まで届く前に消失した。ここで、シャーロットはあることに気付く。 (今の壁の色……、あそこの道端にあった箱と同じ色だったような……) シャーロットがそう思って道端の方に視線を向けようとすると、その前に「巨大な多頭蛇の魔石像」が現れた。材質的には「クヌート」に似ているようだが、大きさは比べ物にならない、平屋建ての建物以上に巨大なガーゴイルであった。 「出やがったな!ガーゴイル!」 レナードはそう叫ぶと同時に、「魔剣」を構えてヴォーパルウェポンの魔法を(副作用の激痛に耐えながら)かける。その隣でダンテもまた木刀を構えるが、目の前にいるガーゴイルを見て、明らかに「今の自分では勝てない」ということは本能的に察知する。だが、それでもここで退く気は毛頭ない。 (勝てる勝てないじゃねえんだよ……、勝たなきゃいけない相手なんだよ……。ここで負ける訳にはいかねえんだ! 負けたくねえんだよ!) ダンテが心の中でそう叫んだ瞬間、彼が首飾りにしている、修学旅行の時に謎の女剣士から貰った「指輪」が光り、彼の目の前に「あの時の女剣士が持っていた、剣と盾が一体化した武具」が現れる。 「これは最高の獲物ですね」 その「武具」から、そんな声が聴こえてきた。それは確かに、「あの時の女剣士」の声だった。 「お前、やっぱりオルガノンだったんだな!」 「えぇ、そうです。では、私は好きに暴れますので、あなたはここから退避を」 「彼女」がそう告げた上で、オルガノンとしての「擬人化体(女剣士の姿)」を生み出そうとするが、その前にダンテは「彼女」の柄を握り締める。 「いいや。『お前』を使いこなして初めて『ダンテ・ヲグリス』だ」 「……いいでしょう。ならば、使いこなしてみなさい」 彼女はそう言うと、擬人化体の具現化を取りやめ、そのまま「武具」としてダンテに身を委ねる。この時、ダンテは本能的に感じ取っていた。おそらくは彼女が「自分が探し求めている魔剣」であるということを。 そんなダンテの「魔剣」に対して、シャーロットはヴォーパルウェポンをかけ、そしてノアはいつでも回復魔法をかけられるように魔法詠唱の準備を整えると、レナードが先陣を切って魔剣で切りかかった。 「ぶったぎってやるぜ! この毒蛇ガーゴイル!」 そう言って、いくつもあるガーゴイルの頭の一つに斬りかかる。その一撃は確かに命中し、その蛇頭はもがき苦しむ。 (すげぇ! これが魔剣の力か……) これまでに味わったことがない感触にレナードが興奮する中、別の二つの蛇頭が両横からレナードを襲おうとするが、そこに二つの影が割って入った。シャリテとロシェルである。マッターホルンの付近で「魔法薬の匂い」を探していた彼女達は、目の前に現れた巨大な怪物を目の当たりにして、まずは仲間を救おうと決意したのである。シャリテは強靭な体皮で、ロシェルは頑丈な人造皮膚で、その蛇の攻撃を弾き返す。 「お前ら!」 「なんかよく分からないけど、こいつがヘラクレスの言ってた『ガーゴイル』って奴なのね!」 「私だって戦えるってとこ、見せてあげる!」 一方、別の蛇頭はダンテに襲いかかるが、彼もまたその「謎の魔剣」の「盾の部分」によってその防ぐと、そのままスライドさせる形で「刃の部分」で逆に蛇頭に深手を負わせる。 そして、ダンテにヴォーパルウェポンをかけるために前線に出ていたシャーロットにもまた別の蛇頭が牙を剥こうとするが、そこに(シャリテ達と共にこの場を捜索していた)ベルが割って入り、彼女の代わりに蛇頭の牙をその身で受け止める。 「下がってな! 風紀委員!」 「あなたは、あの時の……!?」 シャーロットもまた「あの時の乱闘騒ぎ」の現場にいた一人である。 「魔法師は前線に立つもんじゃねぇ! それは俺達、邪紋使いの仕事だ!」 つい最近まで「前線で戦う魔法師(常磐の生命魔法師)」を目指してた男がそう叫ぶと、シャーロットは「少なくとも、今の彼は敵ではない」ということを確信した上で、彼の武器にもヴォーパルウェポンをかけ、ノアと同じくらいの後方にまで下がると、ノアがベルに対してキュアライトウーンズをかける。 そして、そんな三人の「乱入者」の後方では、オーキスが歯がゆそうな顔でその戦場を見つめていた。 (私の封印が解ければ……、皆を守るために戦える……) 彼女はそう思いながら、再びナイフをその手に握り、自らの身体を刺そうとするが、横からヴィルヘルミネが止める。 「何するんですか! オーキスさん!」 「私には力が必要なの! 皆を守るための力が! そのためには、またもう一度瀕死状態にならないと……」 「ダメです、そんなの! 一歩間違ったら、力の封印が解ける前に死んじゃうじゃないですか!」 二人が大声でそんなやり取りをしていると、その音に気付いたガーゴイルの蛇頭の一つが、二人に向かって襲いかかってきた。 「いいわ! 来なさい! あなたに私の身体の封印を解いてもらうわ」 「やめて下さい! 危険です、オーキスさん!」 「ミーネは下がってて! あなたのことは、私が守るから!」 そう叫んだ瞬間、オーキスは自分の身体に「何か」が起きたことを実感する。 (え? これって……) オーキスはすぐさまその「異変」の正体に気付くと、一瞬にしてヴィルへルミネの身体を抱きかかえて高速で駆け出し、蛇頭の襲撃をあっさりと避ける。それは明らかに「12歳の少女」の動きではなかった。 (封印が解けてる……。もしかして、私が知らない間に、私の封印に変化が……?) 実はノギロは、オーキスの力の再封印の時に、微妙に「解除条件」を変更していた。実際に自分が重症を負わなくても、本当に危険な状態になった時には、自分の意志で解けるように切り替えていたのである。それは、「今のオーキスなら、力を誤った形で使うことはない」と信じていた上での措置だったのだが、そのことを彼女に告げなかったのは「彼女に、自ら危険な場所へと飛び込んでほしくない」という想いがあったからである(なお、これが魔法師協会に許可を得た上での仕様変更なのか、彼の独断なのかは不明である)。 「オーキスさん、もしかして、今……?」 ヴィルへルミネも、オーキスの身体能力が明らかに格段に上昇していることはすぐに分かった。 「大丈夫。どうやら封印は解けてるみたいだけど、私はちゃんと『私』のままでいられている。だから……、私は『私』として、皆を守るために戦うわ。この『化け物』としての力を使って」 オーキスがそう告げると、ヴィルへルミネも頷く。 「分かりました。でも、今のオーキスさんは決して『化け物』なんかじゃない。ちょっと力が強いだけの、私と同じ『普通の女の子』です。だから、無理はしないで下さい」 「……ありがとう、ミーネ」 そう言って、オーキスもまた多頭蛇との戦いへとその身を投じるのであった。 ****** 「おいおい、話が違うじゃないか、カブトムシさん。あんたが近くにいる状態なら、ガーゴイルの召喚は出来ないんじゃなかったのか?」 「その筈だ。おそらく、あのガーゴイルは既に別の場所でこの世界に召喚された状態から、何らかの形で封印され、その封印が何者かによって解かれた、といったところだろう。だが、ここは我の結界の中である以上、奴の本来の力は発揮出来ない。かなりその力は抑制されている筈だ」 シャーロットが見つけた「道端に設置された黄土色の箱」の中で、アツシとヘラクレスはそんな会話を交わしていた。彼等もまた、この地で決戦が起きることを見越して、この「箱」の中でずっと張り込んでいたのである。なお、この「箱」はアツシが「神格としての力」を用いて作り出した特殊な「神器」であり、先刻の毒の息吹を食い止めた「謎の防壁」もまた、彼の力によって生み出した代物である。 彼の「本来の名」は、アツシ・アライ。「アライ神族」と呼ばれる特殊な神格兄弟の末弟である。彼等はかつて人間として「地球」に生を受けながら、地球の危機を「特殊な材質の箱」の力を用いて救ったことで「神」へと昇格した者達の投影体であった。 「うーん、なんか、分かったような分からないような理屈だけど、要するに、あのガーゴイルは『戦って倒さなきゃいけない相手』なんだよな?」 「そうだな。少なくとも我には、それ以外に止める方法は分からん」 「OK、分かった。それなら、俺も行かせてもらうぜ。このカワカミの赤バットでな!」 アツシはそう言って、自らのバットにヴォーパルウェポンの魔法をかける。 「分かった。それなら我も同行しよう。そして、我の力をお前達にも授ける。お前には、我が力を受け取る資格がある」 「大丈夫なのか? 前にビートが『神の力は重複しないから、自分はヘラクレスの加護を受けられない』って言ってたけど」 「それは『相性が悪い神』の場合の話だ。お主の場合は、どの世界の神族とも全く接点のない、ある意味で『異次元の神』だ。あまりにも異質すぎて、『他の神との相性』という概念そのものが存在しない」 「なんか、褒められてるのか馬鹿にされてるのか良く分からないけど、とりあえず、力を貸してもらえるなら、ありがたく受け取るぜ!」 アツシがそう言うと、ヘラクレスは彼の肩に乗る。そして、その状態で「箱」の外に出たアツシは、多頭蛇に向かってバットで殴りかかる。そしてヘラクレスは叫んだ。 「我が宿敵・ヒュドラへと立ち向かう、果敢なる若者達よ! 『英雄神の加護』をその身に受けて、真の勇者となれ!」 その声が響き渡ると同時に、その場にいる学生達は、自分の身体能力(特に筋力)が急激に上昇していくのを実感する。更にそれに続けて、アツシも叫んだ。 「みんな! 俺の力も受け取ってくれ! 姉ちゃん直伝の最強奥義、ダンボールの加護を!」 その声と同時に、各人の着ているアカデミー制服にも謎の加護の力が付与されることになったのだが、まだこの時点では、彼等はその効果には気付いていなかった。 ****** 「今、外から『ダンボール』っていう言葉が聴こえたような……」 マッターホルンの店内において、唯一その単語の意味が分かるツムギがそう呟く。なお、「彼女の住んでいた地球」には(少なくとも彼女が生きていた時代においては)「アライ神族」なるものは存在しない。おそらくは、無限に存在すると言われる並行世界の地球の一つなのだろう。 ともあれ、店の外に「巨大な石像の怪物」が現れたことは彼等にも分かっていたため、当然、店内は激しい緊張感に包まれていた。 「偶発的投影、という可能性は低そうだね……」 クグリは呟くようにそう言った。 「へーかが狙われてるー、ってーことだか?」 「少なくとも、その可能性を警戒する必要はありそうですね……」 シャロンとカロンがそんな会話を交わす中、アーロンがヨハネスに忠告する。 「とりあえず、陛下はここを動かないで下さい。ボク達とバリー先生が、絶対に守りますから」 そうは言いつつも、現実問題として今のアーロンは戦闘で役に立ちそうな魔法はまだ修得しておらず、建物の窓から見る限り、今はバリーの姿が確認出来ない。とはいえ、このタイミングでバリーが行方をくらますことはありえないので、おそらく、ここからは死角になるような場所で、何か手を打ってくれているのだろう、とアーロンは信じいていた。 だが、その提案にに対して、ヨハネスは疑問を呈する。 「いや、むしろそれは危険じゃないかな? もしボクが狙いなのだとしたら、この建物まるごと焼き払うという手段に出るかもしれない。むしろ、ここは皆でバラバラに逃げて相手を撹乱させた方がいいんじゃない?」 それに対して、横からジョセフが口を挟む。 「いえ、敵が何者かは分かりませんが、それが可能なら最初からそうしている筈です。あえてその手段を取らないということは、それだけの大規模魔法などを用いることが出来る者ではないか、もしくは何らかの『出来ない理由』があるのでしょう」 「なるほど……、確かに、そうかもしれないね……」 「ですから、我々は、少なくとも私は、陛下のお側を離れる訳にはいきません。最悪の場合、私が盾となって陛下が逃げる時間を稼ぐのも、護衛の任務ですから」 「そういうことなら、確かに、今は僕はここを動かない方が良いのかもしれない。ただ、外で君達の学友が戦っているのなら、君達も外に出て彼等の支援をした方がいいんじゃないかな。この建物の中に刺客がいるとは思えないし、いざとなったら、僕にはクヌートがいるから、そこまで僕にピッタリとくっついていなくてもいいよ」 一見すると正論のようにも聞こえるそのヨハネスの言葉に対して、あえてジョセフは一つの疑問を彼に対して投げかけた。 「無礼を承知の上でお伺いします。陛下としては、我々が近くにいない方がご都合がよろしいのでしょうか?」 「どういう意味かな?」 「先程も申し上げた通り、我々としては陛下を一人にする訳にはいきません。しかし……」 ジョセフはそう言って、あえて「クヌートの隣」に傅くようにしゃがんだ姿勢を取った上で、ヨハネスに対して、眼鏡越しの上目遣いでこう言った。 「パレット(調色板)殿がお一人で行動されたいのであれば、それをお止めするつもりはありません。それが陛下を守ることに繋がるのであれば」 この瞬間、ジョセフ以外の学友達は、ジョセフが何を言っているのか分からなかった。だが、この場にいる者達のうち、学生達を除いた「二人」は、すぐにその言葉を理解する。 「……気付いていたの?」 少年のような声でその言葉を発したのは、ジョセフの隣にいる「クヌート」であった。この魔石象が初めて発する「声」に、カロン達は驚愕する。そんな中、ジョセフは笑顔でそのクヌートに向かって、優しいそうな笑顔を浮かべながら答える。 「はい、陛下。大変失礼ながら、私の学友達と、そして我がエーラムの高等教員クロード・オクセンシェルナによって、お二人の素性を調べさせて頂きました。と言っても、気付いたのはつい先刻ですが」 その言葉に、ジョセフ以外の学生達が更に混乱する中、「ヨハネス」は不敵な笑みを浮かべ、そして「明らかに今までとは異なる声色」で語り始める。 「なるほど、さすがは名門オクセンシェルナ家の門主。ノルドにはオクセンシェルナ出身の名軍師が多いと聞くが、これは仮にバルレアを統一出来たとしても、その後で色々と苦しめられることになりそうだ……」 「へ、へーか……?」 「どういういこと、ですか?」 全く状況を把握出来ていないシャロンとアーロンにそう言われたのを無視して、「ヨハネス」はジョセフに笑顔を浮かべながら、こう告げる。 「そこまで分かっているのなら、話が早い。では、陛下のことはお頼みしますぞ」 「ヨハネス」はそう告げたところで、彼のその姿は「クヌートそっくりの魔石像」へと変わる。 「えぇ!?」 カロンがそんな声を上げて驚く中、その「ヨハネスからクヌートへと姿を変えた者」は、店の外へと向かって走り出す。誰もが皆、何がどうなっているのか分からずに言葉を失う中、ツムギが皆に問いかける。 「この世界の君主の人って、姿を変えることも出来るの?」 彼女のそんな率直な疑問に対しいて、クグリは端的に答える。 「君主にはいない。それが出来るとしたら、ミラージュの邪紋使いくらいだね」 そして、もしそうだとすれば、クグリの中での辻褄は合う。「あのヨハネス」がミラージュだとすれば、エマが一瞬心を奪われたのも、ミラージュ特有の「相手を魅了する能力」の効果だと解釈すれば無理もない。 だが、クグリが冷静にそう言えるのは「あの場面」に遭遇していなかったからでもある。アーロンがすぐさま反論した。 「いや、でも、あの人は確かに僕達の前で聖印を……」 そこまで言ったところで、アーロンは思い出した。あの時、ヨハネスが聖印を出した時点で、彼の手の中には「クヌート」が抱かれていたことを。 「……え? まさか、あの時、聖印を出していたのは……」 アーロンがそう言いながらクヌートの視線を向けると、その頭上には「子爵級聖印」が掲げられていた。 「そう、僕だよ。僕が本物のヨハネス。君達が僕だと思って接していたのは、ミラージュの『パレット』。まぁ、仕事上のコードネームらしいから、本名は誰も知らないんだけど……、今まで、彼が僕の影武者を務めてくれていたんだ。ずっと騙してて、ごめん……」 「で、でも、今、君主の人は姿を変えることは出来ないって……」 ツムギがそう口にしたところで、「ヨハネスと名乗るガーゴイル」が答える。 「僕は姿を変えたんじゃない。魔境の中で発生した混沌事故(ハプニング)の影響で、姿だけが『異界のガーゴイル』に変えられてしまったんだ……。でも、そのことを知られると国が乱れるから、殆どの人達にはこのことを隠した上で、元の姿に戻る方法を探すためにこのエーラムに来た」 そんな真相を知らされて皆が驚愕する中、最も動揺していたのはカロンであった。 「あ、あの……、わたし、陛下に対して、ずっと失礼な態度を……」 「いや、君は何も悪くないよ。騙してたのは僕達の方だし、それに……、正直、嬉しかった。ここに来る途中で、僕に触れた女の子達がみんな体調を崩してたらしくて、それで『元の姿に戻るまでは、誰にも触っちゃいけない』ってパレットに言われてたから、ちょっと寂しかったんだ。でも、君がステュクス(カロンのぬいぐるみ)を介して僕の近くにいてくれたおかげで、僕の心は救われたんだ。本当に、ありがとう」 「い、いえ、そんな、とんでもないです! 私はただ、その、陛下のそのお姿が『かわいいな』と思って、近くで見ていたかっただけで……」 そこまで言ったところで、カロンは思わず赤面する。 「あ……、いや、その……、こんな言い方も失礼ですよね! ごめんなさい!」 「どうして? 君にそう言ってもらえて、僕は嬉しいよ。こんな姿の僕でも可愛いと言ってくれる人がいるなら、それもそれで僕にとっては救いになる。まぁ、『君が好きになってくれたこの姿』のまま、君の隣に居続けるという訳にもいかないから、そこは申し訳ないんだけど」 「いえ、そんな、めっそうもないです。すみいません、いろいろと、ほんとうに……」 もはや何をどう返せば良いのか分からずに完全に混乱した状態のカロンを眺めながら、クグリは内心でボソリと呟く。 (なるほど……、あの影武者の振る舞いは、ちゃんと「本物」を忠実に再現していた訳か……) ****** (なぜだ!? なぜあんな子供達相手に、ヒュドラのガーゴイルが苦戦する!? 奴等の所持するガーゴイル達の中でも、最強クラスの存在ではなかったのか!?) マッターホルンの目の前で繰り広げられている戦いを目の当たりにして、一人の女魔法師は焦っていた。彼女の名はサーヤ。バルレア・パンドラに所属する闇魔法師である。現在、彼女は魔法で自分の姿を消した状態で戦局を見守っていたのだが、ただでさえヘラクレスの即席結界によってヒュドラの力が弱められていた上に、アツシによってコーティングされたダンボール装甲がヒュドラの毒の威力を完全に打ち消してしまっており、ろくに彼等に傷を与えられてもいない。逆に二本の魔剣と二人の人造人間、更には二柱の神と巨大狼という謎の力の合わせ技によって、ヒュドラの方が明らかに劣勢に立たされていた。 (戦いが長引けば、すぐに正規の魔法師達が現れる。それでは瞬殺されて終わりだ。ヒュドラが奴等を引きつけている間に、一気にあの店を焼き払ってしまう手もあるが……、今、ここで私が魔法を使えば、おそらく「奴」にこの場所がバレてしまう) 彼女の視線の先には「マッターホルンの屋根の上に登り、あえてヒュドラとの戦闘を子供達に任せた上で、全神経を集中させて周囲に気を配っているバリー」の姿があった。 (おそらく奴は「あのヒュドラを呼び出した者」が近くにいると考えたのだろう。そして、悔しいが、一人の魔法師としての実力は奴の方が圧倒的に上……、どうする? もういっそ、このまま諦めてバルレアへと戻るか……、いや、仲間を奪われた状態のまま、何も成し遂げられずにおめおめと変える訳にはいかない。せめてヨハネスの首だけでも奪わなければ……) そんな彼女の視界に「ライオン型ガーゴイル」の姿が目に入る。 (あれは確かヨハネスの護衛……、そうか、ならば今のうちに店内に入って、至近距離からヨハネスを……、いや、むしろこれは、私を誘い出すための罠か……?) 彼女がそう逡巡しているところで、その「ガーゴイル」はその姿が「筋骨隆々とした半裸の男」へと変わる。その瞬間、アツシの肩に乗っていたカブトムシが叫んだ。 「なぜ、我がそこにいる!?」 「え? どういうこと?」 アツシには全く意味が分からなかったが、その半裸の男は、かつて「人間」だった頃のヘラクレスそのものである。 (ヒュドラを挑発するなら、やはりこの姿だろう) パレットと名乗るミラージュの邪紋使いは、そんな思惑から、かつて見たことがある「異界の英雄ヘラクレス」の絵画そっくりの姿に変身したのである。そして実際、ヒュドラはその「ヘラクレスの姿」に完全に視線を奪われ、注意力散漫になったところに、レナード、ダンテ、アツシ、ロシェル、シャリテ、オーキスによる六連撃が繰り出された結果、いよいよ本格的に追い詰められていく。それでも果敢に蛇頭を「ヘラクレスの姿を模したミラージュ」へと向けて襲いかかるが、それらの攻撃は全てあっさりと避けられてしまう。 (これはもう、今すぐ逃げるか、決死の特攻をかけるかの二択……) その瞬間、彼女は強烈な目眩に襲われた。 (な、なんだ……、これは、スリープか……? なぜ私の居場所がバレ……) 彼女は意識を失いそうになるものの、自分自身にアシストの魔法をかけることで、どうにか意識を保つ。だが、次の瞬間、バリーが自分のいる方へと(ライドサイクロンの魔法を使って空を飛びながら)迫って来た。 (くっ! もはやこれまで! ならばいっそ……) 彼女がそう考えて、本気の攻撃魔法を彼に対してかけようとするが、それより一歩早く近付いたバリーが、彼女のいる周辺に対して強烈な風属性の攻撃魔法をかけ、まともに直撃したサーヤはその場に倒れる。そして、集中力が途切れたことによってその姿があらわになり、即座にバリーによって組み伏せられた。 「バルレア・パンドラのエージェント、サーヤだな?」 「……あぁ」 「見つけたのが俺で良かったな。一歩間違えば、あそこのお嬢さんに焼き尽くされていたぞ」 バリーはそう言いながら、「少し離れた場所で、左手に遠眼鏡、右手に火炎瓶を持っているハンナ」の姿を指し示す。 (あー、バリー先生に先に見つけられちゃったか。残念。バルレア・パンドラのエージェントだったら、何か面白い魔法具とか持ってそうだから、上手いこと死骸を確保出来れば儲けものと思ったんだけどなぁ……) ハンナは先刻のエルとの会話から、おそら「ヨハネスの命を狙うバルレア系の闇魔法師」が出現するのではないか、と勝手に予想を立てていたのである。 (まぁ、いいや。他事にかまけてる場合じゃないしね。ヨハネス陛下、早く店から出てきてくれないかな♪) 遠方からそんな思いを抱きながら、ハンナは遠眼鏡の照準を店の出入口へと戻す。そんな彼女の個人的思惑など知る由もないまま、組み伏せられた状態のサーヤはバリーに問いかける。 「なぜ、私の居場所に気付いた?」 「スリープの魔法にかかった時、抵抗するために魔法を使っただろう? いくら姿を消していても、魔法を使えばそこに魔法師の気配を感じ取ることは出来る」 「いや、その前に、私の居場所が分からなければ、スリープの魔法もかけようがないだろう! どうやって見つけた?」 「見つけてなんていないさ。ただ、どこかこの近くにいる筈だと思ったから、片っ端からスリープの魔法をかけ続けていた」 「なん……、だと…………?」 サーヤの目には、バリーはただ周囲を見渡していただけのように見えたが、実は彼は「自分が魔法を使っていること」を悟られないように気を配りながら、ひたすら周囲にスリープをかけ続けていたのである。バリーの一族は「魔法を使う時に演武を舞うこと」で知られているが、それは「その方がより魔力を高めることが出来る」という理由でやっているだけで、別に舞わなくても魔法は使えるし、魔法を使っていること自体を隠匿したまま発動させることも出来る。 「まぁ、こんな気の長いやり方が出来たのも、あいつらがヒュドラの相手をしてくれてたおかげだ。どうだ? すごいだろ、うちの見習い魔法師達は?」 「そうね、最底辺の下っ端ですらこのレベルなら、私達の勝てる相手じゃなかったわ……」 諦めきった表情でサーヤがそう呟いたところで、既に満身創痍だったヒュドラのガーゴイルに対して、ダンテが懇親の力を込めた一撃を叩き込む。 「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 その一撃でガーゴイルの身体は破壊され、その力の根源であった混沌核にまでその「魔剣(のオルガノン)」が到達する。 「喰らいます」 魔剣のオルガノンは淡々と呟きながら、その混沌核を自らの内側へと吸収し、そしてダンテの手元から姿を消す。時を同じくしてレナードの手元の魔剣もまた消滅し、そして副作用に耐えながら魔法を使い続けていたレナードと、慣れない力を多用しすぎて体力が限界に達していたオーキスは、二人同時にその場に倒れる。 皆が二人に駆け寄る中、ノアはレナードの傷を魔法で癒そうとするが、彼に触れた途端、彼の身体の「古傷」が熱を帯びていることに気付く。 (これは……、キュアライトウーンズでは治せないかも……) そう判断した彼(彼女)は、まずファーストエイドを発動させて「通常の治癒魔法で治療可能な状態」にしてから、改めてキュアライトウーンズの魔法をかけることで、どうにか彼の一命を取り留める。一方、オーキスに対しては、店の中からカロンとシャロンが窓を空けて身を乗り出した状態でキュアライトウーンズをかけることで、どうにか彼女も無事に意識を取り戻した。 「おい、ダンテ! お前、なんで俺に魔剣を預けてくれたのかと不思議に思ってたが、お前の方がもっと強え魔剣を隠し持ってやがったんだな!」 「まぁ、そういうことになるのか? いやあ、俺もよくわかんねえんだけどさ」 実際、ダンテも「彼女」についてはろくに分かっていない。ただ、おそらく再び「ゴルフ場」に戻ったのだろうと考えた上で、いずれまた彼女に会いに行かなければな、と考えていた。 「それにオーキス! お前、いつの間に普通に『あの力』を出せるようになってたんだよ!」 「私もよくわからないわ。でもまぁ、多分……、それが出来るようになったのは、あなた達のおかげね……」 オーキスは、自分の心の成長をもたらしてくれた周囲の面々に対して内心で改めて感謝しつつ、彼女の中では微妙な関係にあった「ロシェル」にも声をかける。 「あなたとも、これから先は仲良くしていきたいわ。ある意味、似たような存在なのかもしれないし」 「そうね。私も、あなたのことは、もう少しよく知りたいと思う。正直、まだよくわからないことが多すぎるから」 彼等がそんな「よくわからない話」を繰り広げている中、なぜか「一番よく分からない存在」である筈の「アツシの力」には誰も触れないまま、やがて「ヨハネス(の姿に戻ったパレット)」と「クヌート(として振る舞っているヨハネス)」が彼等の前にも現れ、一人一人の功を手厚く労うのであった。 ****** その後、ネメシス、アルゴール、サーヤの三人の身柄は、今回の件の捜査本部長であるフェルガナの元へと引き渡され、アストロフィ邸で拘束された者達の証言とも照らし合わせた上で、「これ以上の潜伏者はいない」と判断された結果、この件に関する捜査はひとまず終了となった。一方で、ロゥロアが目撃した「左右の瞳の色が異なる魔法師」については「今回の件とは直接的には無関係」ということで、引き続き別件(魔力増幅薬)での指名手配状態は続けるものの、それ以上の捜索には踏み切らなかったようである。 なお、地下室に残されていた二体のガーゴイルに関しては、報告を受けたフェルガナが乗り込んだ時点で、死闘を勝ち抜いた満身創痍のケルベロスだけがその場に残っていたが、彼女の手であっさりと倒されたらしい。 そして、アストロフィ邸はしばらく魔法師協会が差し押さえた上で内部を慎重に調査することになったため、ヨハネス(パレット)とクヌート(ヨハネス)は(彼等自身もまた、今回の事件における「重要参考人」であるという事情もあり)、魔法師協会が用意した特別宿に数日間滞在してもらうことになった。 6、真相と後日談 翌日、クロードは改めて、今回の一連の事件に関して「事件の真相」に強い興味を示していた(独自の推理を展開していた)者達を集めて、今回の顛末の全容について解説することにした。なお、ここで彼が語った内容は、彼の推理に基づいた上で、関係者各人に確認を取った上での「ほぼ真実に近いと思われる推論」である。 「今回の騒動は、実質的に二つの事件が絡み合って進行していたのです。一つは『ヨハネス殿の身体の変異事件』、そしてもう一つは『ヨハネス殿の暗殺未遂事件』です。そしておそらく、それぞれの事件に関わっていた人々の大半は、もう一つの事件については殆どもしくは全く把握していませんでした」 一つ目の事件は、バルレアの瞳で発生した。アストロフィ子爵ヨハネスは、子爵級聖印を有してはいるものの、まだその聖印を十分に使いこなせてはいない。だが、いずれは魔境を浄化しなければならない身として、彼は自ら「魔境浄化の実戦訓練」を側近のフラメアに申し出たのである。フラメアは「まだ早いのではないか」と躊躇しながらも、現実問題として巨大な混沌核の浄化にはヨハネスの聖印が必要となる以上、早目に体験させた方がヨハネス自身のためでもあると判断し、周囲には黙って密かに魔境調査団に同行させる形で、ヨハネスを魔境へと連れ出したらしい。 なお、この魔境遠征の間、ヨハネス不在を悟られないように、アストロフィに昔から仕えていた「パレット(調色板)」という「通り名」を持つミラージュに影武者を依頼していた。パレットはもともとはブレトランド南部のヴァレフール伯爵領出身であり、当時の騎士団長ケネス・ドロップス(現:ケネス・カサブランカ)の懐刀の一人であったが、十数年ほど前に諸々の経緯の末に同じ幻想詩連合の一員であるアストロフィへと出向になり、その際に先代アストロフィ子爵に心酔し、そのまま彼の側近となったらしい(ちなみに、パレットの師匠の名はパロット(鸚鵡)、弟弟子の名はパペット(人形)という。無論、いずれもあくまで「通り名」である)。 パレットはこれまでにも何度も様々な人物の影武者を務めてきた「歴戦のミラージュ」であり、ヨハネスの影武者を務めるのもこれが初めてではなかったため、当初は気楽な気持ちで引き受けていた。 ところが、この魔境遠征で彼等は凶悪な混沌事故(ハプニング)に遭遇し、ヨハネスはその身体を「異界のガーゴイル」に書き換えられてしまった。魔境においてこのような事故が発生すること自体はそこまで珍しくはないが、大抵の場合、その変化はそこまで長時間継続するものではなく、魔境を出た時点で元の姿に戻ることが多いのだが、バルレアの魔境では、その効果がそのまま永続してしまう事例が稀に発生する。今回のヨハネスの一件が、まさにそれだったのである。 幸いなことに、変化が発生したのは外見だけで、ヨハネスの心までは混沌には侵されず、国家としいてのアストロフィの生命線である子爵級聖印を維持することは出来た(似たような事例においては、聖印が混沌核に書き換わってしまったという記録もあるため、この点に関しては不幸中の幸いである)。だが、この事実が知られれば国内外に著しい悪影響を及ぼすと判断したフラメアは、その現場にいた者達以外には極力この事実を伏せた上で、ヨハネスの姿を元に戻す方法を模索した。 その結果、高位の生命魔法師の中には「ポリモルフ」という、外見を変化させる魔法を使える者もいるという話に辿り着いたフラメアは、旧交のあった生命魔法師のノギロ・クァドラントに相談したのである。これに対してノギロが「門外不出のエーラムの特殊魔法具を使えば、元に戻せる可能性はある」と返信したため、フラメアは藁にもすがる気持ちで、彼に幼子爵を委ねることにした。その状況を自然に演出するために「留学」という名目を考案し、真相が発覚するリスクを減らすために、パレットとヨハネス自身以外の供を一切付けずに、ひっそりと送り出すことにしたのである(その背景には、フラメアとパレットとの間の絶対的な信頼関係があった)。 なお、「ガーゴイル化した姿のヨハネスの身体に触れた女学生達もまたガーゴイル化した」という案件については、後にノギロが調べたところによると、どうやら「まだ身体が未完成の子供にしか効かない程度の混沌の伝染性」が今のヨハネスの身体には内在しているらしい。これについては当初彼等も全く無警戒だったのだが、実際にジュノ達が体調不良を起こしたという話を聞いた時点で、念のため学生達の「接触」を禁止することにしたらしい。なお、ジュノ達からの二次(三次?)感染については、彼女達自身が完全に魔物化する前に食い止められているせいか、今のところそれらしき症状が発生したという報告は届いていない。 ここまでの説明を終えた時点で、ジョセフはクロードに問いかける。 「クロード師が感じ取った『予兆』の件については、ノギロ師には伝えていたのですか?」 「えぇ、もちろん」 「ということは、ノギロ師はその時点で、ヨハネス陛下が狙われるかもしれない、ということには気付いていたと思うのですが、それでもその『第一の事件』のことを、クロード師にすら伝えていなかったのですか?」 「ノギロ先生は、義理堅い人ですからね。アストロフィ側から『絶対に他の者には漏らすな』と言われて、そのことを既に承諾していたのだとしたら、たとえ協会の意に反してでも、漏らしはしないでしょう。ましてや私はアストロフィと敵対関係にあるノルドに多くの弟子を送り込んでいる身です。私がその情報を漏らすことがないとノギロ師自身が信じてくれたとしても、アストロフィ側がそれを快く思わないと判断したら、私には漏らしません。あの人は、そういう人です」 「その結果として、アストロフィ自体が危機的状況に陥るリスクが増えたとしても、ですか?」 「はい。あの人が重視しているのは、あくまでも『個人間の友誼』であって、『友人の政治的成功』ではありません。そもそも今回の案件は、あくまで『闇魔法師』を介在させたことがエーラムの規律に反していただけで、アストロフィ内での主導権や聖印の奪い合いに関して、契約魔法師でもない我々がどちらかに加担する義理はありません。アストロフィという国全体から見ても、今回の暗殺事件が失敗に終わったことが、長い目で見てプラスになるかマイナスになるかは分かりませんからね」 実際、アストロフィ国内においても、主戦派のフラメア達の施政に反対している国民は決して少なくないし、客観的に見ても、彼女達の方針が最終的にアストロフィを崩壊へと導いてしまう可能性は決して低くはない。そのような案件だからこそ、エーラムの魔法師としては、彼等の権力闘争に対しては適度な距離感が必要となる。 「おそらく、ノギロ先生としては『今の自分は個人的友誼に基づいて動いているからこそ、政治的陰謀と闇魔法師問題が絡み合った事件には関わるべきではない』と判断したのでしょう。だからこそ、暗殺未遂問題については我々に託した上で、自分はヨハネス殿の身体を治す方法の解明に全力を注ぐことにしたのだと思います」 以上が、クロードから見た今回のノギロの行動に関する見解である(ちなみに、この話をしている時点で、まだノギロは研究室から出て来ていなかった)。 そして、ここからが問題の「第二の案件」、すなわちヨハネス暗殺未遂事件の話である。 「この暗殺未遂事件には、少なくとも三つの勢力が関わっています。一つ目は、アストロフィ内における反フラメア派としての文官勢力および彼等と結託したハーラル卿。二つ目は、バルレアの瞳の浄化を阻止しようとしているバルレア系パンドラ。そして三つ目は、『異界の魔石像(ガーゴイル)』を呼び出す技術を持つ闇魔法師集団です。この第三の勢力に関しては、パンドラの一員と言って良いのか微妙な存在のようですが、ひとまずここでは『パンドラ石像派』とでも呼んでおくことにしましょう。彼等の本拠地がどこにあるのかは不明ですが、世界各地で彼等の仕業と思しい『ガーゴイル発生事件』が勃発しているので、それなりの規模のある集団だと思われます」 学生達が捕まえた捕虜達のうち、イェスタとサーヤはバルレア系パンドラ、ネメシスとアルゴールはパンドラ石像派のエージェント、ということになる(もっとも、イェスタに関してはまだ「エージェント見習い」とでも呼ぶべき立場だったようだが)。証言は微妙に食い違っている箇所もあるが、クロードが総合的に判断した結果、今回の暗殺未遂事件は、この三者の利害が一致したことで引き起こされたらしい。 まず最初に結託したのは、ハーラル達とバルレア系パンドラである。彼等は共通の敵である「瞳を浄化しようとするフラメア派」を倒すために、彼女達の旗頭であるヨハネスの暗殺を共同で考案した。ただし、前者にとっては「ヨハネスの聖印をハーラルが手に入れてアストロフィの主導権を握ること」が目的であるのに対し、後者は「ヨハネスさえ死ねば、その聖印をハーラルが手に入れようが、消失しようが、どちらでもいい」と考えていたため、既にこの時点で内在的対立要素を孕んでいた。 そして、前者の目的に合致する形でヨハネスを暗殺するために最適な手段として、石像派の持つ「小型化されたガーゴイル」を用いることが最適だとバルレア系パンドラは考えた。すなわち、ハーラルが管理するエーラムのアストロフィ邸にて、密かにヨハネスの寝所にガーゴイルを設置し、彼が寝静まった時点で急襲させ、その命と聖印を奪う、という作戦を計画したのである。 ただし、この場合は当然、ハーラルによる暗殺を疑う者は現れるであろう。エーラムの論理としては、それでも作戦が成功すればハーラルを新たなアストロフィ子爵として認める他ないのだが、肝心のアストロフィの国民の大半はそれでは納得しないだろうし、最悪の場合、国が分裂することにもなりかねない。そこで、カモフラージュのために、エーラム全体で大規模なガーゴイル災害を引き起こし、その混乱の中で命を落としてしまった、という体裁が必要だと考えたのである。 バルレア系パンドラからこの作戦への協力を要請された石像派は、バルレア勢が所有している様々な「バルレアの瞳でしか産出されない投影装備およびそれを元に作られた魔法具」を対価として受け取ることを条件に、彼等の作戦に助力することになった。石像派はバルレア勢に対して『ディスペルマジックで解除可能な小型化封印を施された魔石像』を手渡した上で、カモフラージュのための「ガーゴイル大量発生」のために、まずは下町の一角にアジトを築いて下準備を進めた上で、最終的には(ほぼ無人の)ユーミルの邸宅を密かに占領して、そこから各地の貴族の邸宅を無差別の攻撃することで「ユーミルによって引き起こされたガーゴイル事件」と周囲に誤認させる、という作戦だったらしい。 無論、現実問題として聖印教会の敬虔な信者である現ユーミル男爵がそのような手段を採る可能性は低い、と冷静に考える人も多いだろうが、それでも、アストロフィにとっての最大の敵対勢力であるユーミルの国際的信用を多少なりとも下げることが出来るなら(少なくとも「エーラム内の別邸の管理不行き届き」で責められる可能性は十分にあるだろう)、それだけでも十分に意味のある作戦であった。仮にユーミルが冤罪だと分かったとしても、その場合は「パンドラによる無差別殺戮」という結論にまとめられれば、自分がその黒幕だという事実は隠し通せるとハーラル達は考えていた(なお、当のパンドラ両派にしてみれば、自分達の悪評が広がったところで、今更何の問題もなかった)。 しかし、実際にはゴシュによって「下町のアジト」は発見され、ゼイドとマシューによって「ユーミル邸の乗っ取り」は失敗し、バルレア勢から石像派に手渡される筈だった「ガーゴイルの大量召喚のために必要な資材となる魔法薬」もまたシャリテによって奪われてしまったため、結果的に彼等の「大量ガーゴイル召喚」の陰謀は完全に頓挫し、最後は苦し紛れにサーヤが携帯用ガーゴイルの封印を解くことでヨハネス滞在中のマッターホルンを襲う程度のことしか出来なかった、というのが今回の事件の顛末である。 ここで、今度はジャヤがクロードに疑問を投げかける。 「バルレア勢にしても、石像派にしても、基本的には『より強い力』を求めている集団だということは分かった。魔境に出現する投影装備も、強大なガーゴイルも、手にした者は大きな力を得ることになる。だが、その上で彼等は、最終的に何を目指しているのだ? 力を得ること自体が目的なのか? それとも、その力を得た上で何かを成そうとしているのか?」 「それについては、おそらくそれぞれのグループ内でも意見は統一されていないと思います。ブレトランドのパンドラの場合は、最終目標の違いに基づく四つの派閥が併存しているようですが、バルレア勢や石像派に関しては、どちらかというと『目標』ではなく『手段』の共通性によって形成されている集団のようですから」 だからこそ、彼等の行動原理は読みにくく、事前対応が難しい。その意味では、今回の場合は政治権力と結びついて動いてくれたことで、比較的その足取りが追いやすかった側面もある。 「なお、今回捕らえた石像派の者達の話によると、彼等は自分達が呼び出すガーゴイル達の出身世界を『ユグドラシル宇宙』と呼んでいるようです。その世界の中にも『地球』と呼ばれる区域があり、そこに存在する『グレイブヤード』という組織に所属する一人の技術者によって、それらのガーゴイルは生み出されているらしいのですが……、この世界のことについては、まだ分からないことが多すぎて何とも言えません。ただ、もしその世界の詳しい話が分かれば、彼等の具体的な目的も見えてくるかもしれませんね」 ちなみに、その技術者の名は不明だが、彼等の間では「マイスター」と呼ばれているらしい。その話をゼイドが黙って(しかし、フードの中では複雑な表情を浮かべながら)聞いている横で、今度はテオフラストゥスからも質問が投げかけられた。 「今回の二つの事件が同時に発生したのは、本当にただの偶然なのでしょうか?」 確かに、「ヨハネスがガーゴイルの姿となった状態でエーラムに来ることで、ヘラクレスの結界を解かざるを得なくなったタイミング」で「バルレア勢が石像派に協力を依頼する」という状況は、一見すると明らかに出来すぎているように見える。 「それについては私も気になっていたのですが、彼等の証言を信じるならば、どうやら私の当初の想定とはかなり異なる形で連動していたようです」 今回の暗殺事件に関わっていた三派の尋問の結果から察するに、どうやら彼等はいずれも「ヨハネスが連れていたガーゴイル」の正体には気付いていなかったらしい。むしろ、ハーラル達は当初「ヨハネスの護衛が、得体の知れないガーゴイル一体だけ」という状態から、そのガーゴイルが「相当に強大な力を秘めた魔物」ではないかと警戒していた。その上で、「奴等もまた、どこか別の闇魔法師組織から戦力提供を受けているのでは?」という疑惑もあったという。 その話を伝えられたバルレア系パンドラの面々は、その時点で真っ先に「石像派がフラメア達に協力しているのではないか?」と疑い、旧知の存在であった「左右の瞳の色が異なる闇魔法師」経由で石像派に探りを入れてみた結果、その時点で彼等は全く関与していなかったことが判明し、逆にそこから協力体制の構築へと話が進んでいったらしい。 ここで石像派が彼等への協力を決意した背景には、前述の魔法具提供だけでなく、彼等自身の根源的な行動原理自体も関係していた。というのも、その話を聞かされた石像派の面々は「そのライオン(ネメアーの獅子)型ガーゴイルがエーラム内にいる状態なら、むしろそれを触媒とする形で『十二の魔物』を元にしたガーゴイルの大量召喚は実現させやすいかもしれない」という憶測に至ったのである。もともと彼等(石像派)の中でエーラムは「ガーゴイルが出現しやすい土地」という認識であり(それは実際に過去の様々な事象が証明している)、その意味では彼等自身にとっても「本格的な大規模召喚のための実験の機会」として最適な候補地だったらしい(なお、ヘラクレスの対ガーゴイル結界に関しては、彼等は存在すら認知していなかった)。 そして、彼等がこのタイミングがガーゴイル召喚に適していると判断した理由はもう一つあった。これはまだエーラムでは未実証の仮説だが、「投影体の出現には、世界的に一定の『周期』がある」という俗説が存在する。そして、石像派の面々はヨハネスが連れている「ネメアーの獅子」のことを「最近になって偶発的にこの世界に投影された存在」であろうと予想していたため(実際、その予想も半分は正解なのだが)、「今こそ『ヘラクレスの伝承由来のガーゴイル』を呼び出す好機」と判断したらしい。 つまり、今回の事件を引き起こした三派連合は「勘違いと思い込みによる連合」であった。その上で、それぞれに自分達の目的を達成することしか頭になかったため、肝心なところで連携が上手くいかず、最終的にはハーラルもあっさりとパンドラを切り捨てて命乞いをすることに躊躇はなかったようである。 なお、現在もまだ諸々の取調べ中ではあるが、ハーラルはあくまで「闇魔法師に脅されて協力しただけで、本当は暗殺計画などやりたくなかった」と証言している。彼の処遇をどうするかについては、アストロフィ内の問題として、ヨハネス(実質的にはフラメア)に丸投げするというのが、今のところのフェルガナの方針であるが、仮にハーラルの証言を信用するとしても「エーラムへのハーラル一派の立ち入り禁止」程度は要求するつもりなので、いずれにせよエーラム内のアストロフィ邸には、新たな主が必要となるだろう。 パンドラ両派に所属する者達(イェスタ、サーヤ、ネメシス、アルゴール、etc.)の処遇については、クロード達よりも更に「上」の機関に委ねることになるため、この場で明言出来ることは何もない。ただ、いずれも貴重な情報源となりうる存在であるため、何らかの司法取引が発生する可能性もある。それもこれも、彼等が大量殺戮を決行する前に取り押さえることが出来たが故であり、その点については間違いなく学生達の功績であった。 クロードとしては、これで概ね伝えるべきことは伝えたつもりであったが、ここでジュードが手を挙げる。 「あの、一応の確認なのですが……、今回の件に関してはアストロフィ以外の国は関与していない、という結論で良いのですよね?」 ウィステリア出身の彼としては、やはりどうしてもそこが一番気になるらしい。 「そうですね。状況的には他の国が裏で関与していてもおかしくない事件でしたが、今のところはその形跡は見られません。しいて言えば、ユーミルが冤罪にされかけた、というくらいです」 ジュードがホッと胸をなでおろした横で、今度はテラが発言する。 「ここまでのクロード先生の説明で、私としても概ね納得は出来ます。ただ……、他の可能性は本当にありえないのでしょうか?」 「どういう意味ですか?」 「確かに『全てが偶然となりゆきの結果』と解釈しても不自然のない事件ではあります。しかし、私にはこの『矛盾なく展開された経緯』が逆に不気味にも思えるのです。裏で誰かが全ての糸を引いていたのかもしれないという懸念が拭えないのですが……、これは杞憂でしょうか?」 「確かに、その可能性も完全に否定することは出来ません。その場合、鍵になりうる人物は、誰だと思います?」 「『二つのパンドラを結びつけた人物』が、どうしても気になるのです」 先刻のクロードの説明の中では一瞬で流されてしまった存在である、左右の瞳の色が異なる魔法師。その男は、かつてこのエーラムで「危険かもしれない魔法薬」を学生達に対して配布していた人物でもあった。 その時に渡された薬をまだ密かに持っているテオフラストゥスが黙ってその話に聞き入っている中、クロードは淡々と答える。 「確かに、私もその点は気になっています。もしかしたら、最初のヨハネス陛下の混沌事故の時点から彼が裏で操っていた可能性も否定は出来ない。しかし、憶測だけで考えるならば他にもいくらでも可能性を語ることは出来ます。たとえば……」 クロードはそう前置きした上で、考えうる限りの仮説を次々と提示しながら、それらの仮説を立証するにはどのような証拠が必要になるか、逆にどのような証拠が見つかれば否定することが出来るか、といった「状況把握のために必要な検証の手順」について簡単に説明していく。そんなクロードの姿を目の当たりにして、ジョセフは思わず小声で呟いた。 「これが時空魔法師の頂、クロード・オクセンシェルナの実力か……」 ****** この日の夜、丸二日以上研究室に籠もりきりだったノギロが、ようやく部屋から姿を表した。少し疲れている様子ではあるが、その表情は充足感に満ち足りている。 「大丈夫? お義父様……」 オーキスが心配そうに見詰める中、ノギロは静かに頷く。 「バリー君とクロード君から、魔法杖通信で大方の話は聞いています。私が持ち込んでしまった厄介事を解決するために、あなたにも無理をさせたようですね」 オーキスはまだ今回の事件の全容までは聞かされていないため、「私が持ち込んでしまった厄介事」という言葉の意味は理解出来ないが、何の話をしているのかは概ね察しがつく。 「無理はしていないわ。私自身が望んだことだから」 はっきりとした自我を感じさせる瞳で彼女がそう答えると、ノギロは黙って静かに笑顔を浮かべる。そして彼は魔法杖通信を通じて、エーラム特別宿の宿主に連絡して「ヨハネス(パレット)」と「クヌート(ヨハネス)」に、「エーラムの一角にある特殊な施設」へと足を運ぶように要請した。 *** 「結論から言えば、陛下のそのお身体を治すために今から私がおこなおうと考えているのは、ディスペルマジックを応用した私の創作魔法です。ディスペルマジックは『魔法によって組み上げられた混沌の効果』を分解する魔法ですが、これは陛下の体内に宿っている全ての混沌の産物を一度分解する、という手法です。これが何を意味しているか、お分かりですか?」 特殊な魔法陣が書かれた施設において、ノギロは「ガーゴイルの姿をしたヨハネス」にそう問いかけた。その傍らには「ヨハネスの姿をしたパレット」もいる。 「もしかして……、聖印も壊れてしまう、ということ?」 聖印もまた、元は混沌から作り出された産物なのである。 「はい。あくまでも一時的な現象なので、陛下の強い御志があれば、すぐに元通りに聖印を組み直すことは可能です。しかし、もし陛下の中での御心が揺らいでしまっている状態では、その再構成に失敗してしまう可能性もあります、その場合、聖印は混沌核となり、陛下は身も心も完全な怪物となってしまうかもしれません。おそらく、今よりも遥かに強力な……」 「それなら、他の人に一旦、聖印を預けた方がいいのかな?」 「確かにそれも一つの方法です。しかし、その場合、聖印を失った瞬間に、陛下の魂が混沌に飲み込まれてしまう可能性も発生します。ただし、聖印は『誰か』の手で引き継がれることになり、アストロフィ子爵領を存続することは可能となります。もっとも、その場合、誰にそれを引き継いでもらうのか、という問題はある訳ですが」 少なくともこの状況下では、ハーラルだけは絶対にありえない。ただ、傍流や遠縁でも良いと割り切るのであれば、他に候補もいない訳ではない。 「……成功の可能性が高いのは、どっち?」 「私の見立てが間違いでなければ、聖印をお持ちになった状態で、ご自身で組み直すやり方の方が、成功率は高いと思われます。もっとも、それは陛下の中で『自分が君主として生きていく意志』をはっきりと固めている場合、に限った話はでありますが」 つまり、「自分がアストロフィの君主として生きていける可能性の高さ」を優先するか、「最悪でも確実にアストロフィの聖印を存続させること」を優先するかの二拓ということである。それに対して、ヨハネスは即答した。 「それなら、他人に預けたりはしない。僕が責任を持って、この聖印をきちんと組み直す。それが、父様からこの聖印を引き継いだ者としての責務だから。ここで逃げ出すようなら、何のために皆に迷惑をかけてまでここまで来たのか分からない。今度はちゃんと『人間の姿』で皆に御礼を言うって、決めてるんだから」 はっきりとした強い意志を抱いてそう断言したヨハネスを見て、ノギロは笑顔で頷く。 (なるほど……、ただ見目麗しいだけの御令息ではなかった、ということか。むしろ、この自我の強さがあるからこそ、この状況でも混沌に心を飲まれなかったのかもしれない) そんな感慨を抱きつつ、パレットが見守る中、ノギロは術式を開始しようとしたところで、ヨハネスはノギロにこう言った。 「ひとつ、お願いしたいことがあるんだけど、いいかな……?」 *** それからしばらくたった後、その施設の特別施術室から「ノギロ」「ヨハネス」「クヌート」の三人が現れると、廊下には前日の「接待・護衛組」の面々が待っていた。ヨハネスは施術直前に、ノギロに「昨日のみんなを、この場に呼んでほしい」と告げていたのである。 三人を目の当たりにした瞬間、最初に口を開いたのは、カロンであった。 「成功したんですね、陛下」 彼女は「ヨハネス」の目を見つめながら、そう言った。すると、「ヨハネス」は聖印を掲げながら笑顔を浮かべる。 「ありがとう。僕が何も言わなくても、気付いてくれたんだね」 「はい。『ライオンだった時の陛下』と同じ目をしていましたから」 彼女のその言葉を聞いて「クヌート」がすぐさま「ヨハネス」の姿に変化し、「聖印を持ったヨハネス」の隣に立つ。 「私と並んでも、区別がつくかい?」 「はい。やっぱり、違います。うまく説明は出来ないけど……」 そう言われた「聖印を持っていないヨハネス」は苦笑を浮かべつつ、再び「クヌート」の姿に戻る。 「百戦錬磨のミラージュでも、『子供の目』は欺けない、ということですよ」 「悔しいが、その通りのようだな」 二人の「大人」がそんな言葉を交わすと、その場に集った他の子供達も笑顔を浮かべる。 ****** その後、ヨハネスは「今回の件に関わった全ての学生達」に真相を告げた上で、一人の「短期留学生」として、彼等と共に基礎教養の講義を受けることになった。当初は「建前」として設定された留学計画だったが、せっかくここまで来た手前、彼としてもきちんとその「建前」を果たした上で帰りたいと考えたらしい。もちろん、せっかく仲良くなった彼等とすぐに別れるのが寂しい、という本音もあったのだろう。 パレットに関しては、今後しばらくは「クヌート(ライオン型ガーゴイル)」の姿のまま、最初から自分がクヌートであったかのような素振りで、今後も彼の周囲を護衛し続けることにした。なお、ミラージュの変身はあくまでも「一時的な幻影の姿」であるため、ヘラクレスのガーゴイル結界には抵触しないことから、ひっそりとヘラクレスは結界を復活させる。 アストロフィ邸の扱いに関しては、フェルガナ達がくまなく調べ尽くした結果、「危険な物品はもう何も隠されていない」ということが判明したため、ひとまずは「留学中のヨハネスの宿舎」として、彼に返されることになった。当面はパレットやベル、そして今回の陰謀には加担していなかったと認定された一般使用人達に囲まっる形で、ヨハネス自身がこの屋敷の主として住まうことになる。 また、ジュノ達四人に関しても、ノギロはヨハネスに用いた時と同じ手法で彼女達の混沌を除去した上で、ヨハネスが聖印でその混沌の欠片を浄化していった(彼女達の場合は聖印も邪紋もその身体には宿っていないため、比較的容易に施術はおこなわれた)。その上で、クグリから「エマの事情」を聞かされていたパレットは、彼女の心を邪紋の力で弄んでしまったことを謝罪する。 「お詫びに、今度は君の想い人の姿になって、君の要望に答えてあげようか?」 冗談めかした口調でそう言ったパレットに対して、エマは笑顔で答える。 「いえ、もうすぐ始まる学園祭までに、あの人は答えを出してくれると言ってくれました。だから、私はあの人を信じています」 照れながらそう語ったエマを目の当たりにして、こんな純真な彼女を悩ませてしまったことを思い返したパレットは、改めて「ちょっとした罪悪感」に苛まれる。 一方、今回の事件には殆ど関与しないまま状況に流されていただけだったエンネアは、結果的に流れで「真相」を聞かされたことで、ノギロの生み出した「混沌を分解する術式」に強い興味を抱き、その詳しい内容を解析しようとするも、今の自分では到底理解出来ない高度な技術であることに愕然とし、改めて勉学に勤しむ決意を固める。 そしてもう一人、意外な人物が勉学への決意を固めていた。ダンテである。彼は次に彼女(魔剣)と出会う時に備えて、今までとは違う自分にならなければならない、という意識が芽生えたらしい。ここに来てようやく「遅れてきた純血の魔法師」が目覚めたようである。 こうして、新たな学友を迎えて学内の雰囲気も少しずつ変わりつつある中、まもなくエーラム魔法学校最大のイベント、「学園祭」が幕を開けることになるのであった。
https://w.atwiki.jp/ragadoon/pages/1283.html
こちらのページはプレイヤーの皆さんで自由に編集して下さい。自分のPC名の右上の「部分編集」を押せば編集可能です。追加設定、人間関係、SSなど、好きなだけ加筆して下さい。 ただし、イラストに関してはwiki外のサイトとの連携の都合上、Y武が一括管理しているので、自分で直接載せるのではなく、ragadoon30@gmail.comまで送って下さい(なお、picrewなどを用いる場合は、必ず元サイトのURLも教えて下さい)。また、wikiの編集方法が分からない方も、文面を上記のアドレスに送って頂ければ、代わりに掲載します。 カーバイト一門 [部分編集] +アーロン・カーバイト (作成メーカー: 少年少女好き?2 ) キャラクター名:アーロン・カーバイト プレイヤー名:らんまる(@Ranmaru_free) 年齢12 性別男 +PC登録時の設定 +外見的特徴 身長はやや低め(140cmちょっとくらい)、健康的な体つき、明るめの茶髪。 農民ではあるが、割と整った身なりをしている。顔だちも整っている。 現状は制服を着崩したりはしていないが、今後チャラくなる可能性はあり。 +ライフパス 出自農民 経験1平々凡々 経験2大罪 信念/目的色恋 信念/禁忌裏切り 信念/趣味趣向猫が好き +詳細設定 「かっこいい人間になる」という思いを抱いて入学した少年。ただ現状、「かっこいい=男らしい、モテる」という図式が成り立っているため、男らしさに磨きをかけようと努めている。 基本的に活発で前向きだが、少し危なっかしいこともある。 年相応のやんちゃもするが、人に危害を加えるようなことはしない。(かっこよくないため) 嘘をつくことは下手で、正直。 入学前に元エーラムの学生と仲が良かったので、自然科学など一般教養の知識が少しある。 カーバイト家への入門を決めた理由は、その元学生が加入していたため。 また、一人称が「ボク」なのも元学生の影響。 エーラムに入学してから日が浅いので、まだ学校にはあまり慣れていない。部活も現在吟味中。 +一人称 通常時:ボク 公的な場所:ボク +二人称 年上男性:あなた 年上女性:あなた 同世代男性:お前 同世代女性:お前 年下男性:お前 年下女性:お前 ※打ち解けた場合は年上でもお前呼び有り +敬称 年上男性:さん 年上女性:さん 同世代男性:呼び捨て 同世代女性:呼び捨て 年下男性:呼び捨て 年下女性:呼び捨て ※打ち解けた場合は年上でも呼び捨て有り +口調 通常時:タメ口 公的な場所:敬語 +台詞 「ボクはアーロン!にーちゃんみたいなかっこいい人間になるために来たんだ!みんなよろしくな!」 [部分編集] +エルマー・カーバイト キャラクター名:エルマー・カーバイト プレイヤー名:ライヒ(@Reich_159) 年齢12 性別男 +PC登録時の設定 +外見的特徴 身長は145cmであり、この年頃の男子にしては小柄である。薄紫色の髪を少し伸ばしており、ミディアム程度にしている。横の髪は右耳だけはかけてある。後ろ髪は襟足が少し長い。目つきは少し鋭く、あまり笑わない。警戒している野良猫のような子どもである。右手には革製の手袋を、白いシャツにネコのネクタイをつけている。 +ライフパス 出自略奪(右手の指先の自由) 経験1病気 経験2天才の孤独 信念/目的ロードを支える/王佐 信念/禁忌怠惰に過ごさない/怠惰 信念/趣味趣向無闇に暴力を振るわない +詳細設定 エルマー・カーバイトは市井の出身である。彼は両親に恵まれなかった。父親には「どうしてお前は俺の言うことを聞かない!」と怒鳴られて母親には「女の子が欲しかったのよ、、」と言われ続ける日々であった。彼はそんな両親から【シャルロッテ】という女性名を付けられ、おしとやかに育てられた。しかしながら彼は混沌を操る才能を持っていた。自分の才能を自覚した彼は親の言うことに従うはずがなかった。彼は孤独を選んだのだ。更には数年前に右手に壊疽を発症し、これを生命魔法で止めるのに彼の家はとても払いきれない多額の負債を背負ったのだ。彼は食事と寝床が保証されているから家出はしてこなかったが、ついに家を追い出されてしまった。それからは行くあてもなく寒くて冷たい日々を拾い物のジャケットで凌いでいた。彼は12歳になった時、名をエルマー(高貴な者)と名乗りその名に恥じぬメイジになることを決意した。現在はアカデミーに引き取られており、すぐカーバイト家に入ることとなる。 +一人称 通常時:僕 公的な場所:私 +二人称 年上男性:あなた 年上女性:あなた 同世代男性:くん付け 同世代女性:さん付け 年下男性:キミ 年下女性:キミ ※仲良くなればだんだん呼び捨てに近くなっていく。 +敬称 年上男性:さん付け 年上女性:さん付け 同世代男性:くん付け 同世代女性:さん付け 年下男性:キミ 年下女性:キミ +口調 通常時:上手く喋れない感じ 公的な場所:上手く喋れない感じ+苦手な敬語 +台詞 『僕は、、エルマーといいます。カーバイト家の皆さんや、アカデミーのみんな、、よろしくね。』 『、、とくに喋ることは無いんだ、僕は魔法の研究や依頼の消化に戻るから、、それじゃ。』 [部分編集] +セレネ・カーバイト (作成メーカー: つちのこめーかー ) キャラクター名:セレネ・カーバイト プレイヤー名:O-Ton(@OTon_raga_OB) 年齢13 性別女 +PC登録時の設定 +外見的特徴 紫髪赤目、アヒル口 +ライフパス 出自双子 経験1突撃 経験2非才 信念/目的世界制覇 信念/禁忌優柔不断 信念/趣味趣向負けず嫌い +詳細設定 魔法の素質をもった、双子の姉。「双子のダメな方」と言う不名誉な二つ名で呼ばれている。 妹の名前はディアナ・アルティナス。妹は超優秀。セレネは昔から比較され、劣等感を抱いてきた。姉妹二人とも同時期にアカデミーに入る。妹のディアナは引く手数多であり、名門アルティナス家にすんなり決まったが、姉のセレネは行くあてがなく、カーバイト一門に半ば拾われる形で所属することになった。 妹に負けないために、でっかくなる事が目標。何をやるにしても妹より先に手をつけたがる(妹より順番が前になったという現実が嬉しいらしい)ため、考えるより先に走る事が癖になっている。 結果的に、感覚だけで動くイノシシになるため、各所でトラブルを起こしまくっている。それが「双子のダメな方」と言う二つ名を不動のものとしている事実に本人はまだ気づいていない。 +一人称 通常時:セレネ(自分の名前で呼ぶ) 公的な場所:あたし +二人称 年上男性:そこのおにーちゃん、おじちゃん 年上女性:そこのおねーちゃん、おばちゃん 同世代男性:そこのキミちゃん 同世代女性:そこのキミちゃん 年下男性:そこのキミちゃん 年下女性:そこのキミちゃん ※名前が分かったら、名前+ちゃん呼びが基本。先生は名前+先生、先輩は名前+先輩。(先生や先輩もとても仲良くなったら名前+ちゃん呼びする) +敬称 年上男性:ちゃん 年上女性:ちゃん 同世代男性:ちゃん 同世代女性:ちゃん 年下男性:ちゃん 年下女性:ちゃん ※名前が分かったら、名前+ちゃん呼びが基本。先生は名前+先生、先輩は名前+先輩。(先生や先輩もとても仲良くなったら名前+ちゃん呼びする) +口調 通常時:タメ口、〜ぞ!〜だ!をよく使う(行くぞ!やるのだ!など) 公的な場所:丁寧語を頑張るけどタメ口が混ざる ※(ふんす)(ドヤァ)を良くする。 +台詞 「うはは!世界最強の魔法師の卵、セレネ・カーバイトだぞ! そこのキミちゃんの名前はなんだ? ふんふん。○○ちゃんだな!一緒にこの課題頑張ろうな!セレネがいれば最速でクリア間違いなしだぞ!(ふんす) 何せセレネはな、えーと……えびてん?いかてん?あ、いだてんだ! いだてんなんだぞ!(ドヤァ)……あぁん?? こらいま『双子のダメな方』ってボソッといったやつは誰ちゃんだ!? 名を名乗れい! セレネはディアナより上に決まってるだろーっ!」 [部分編集] +ディーノ・カーバイト (作成メーカー: 少年少女好き2 ) キャラクター名:ディーノ・カーバイト プレイヤー名:グッピー(@guppii_mtg) 年齢13 性別男 +PC登録時の設定 +外見的特徴 黒髪、木刀(後日picrewで作成予定) +ライフパス 出自農民 経験1学究 経験2ライバル 信念/目的魔法の道 信念/禁忌邪悪 信念/趣味趣向名乗られたら名乗り返す +詳細設定 ド田舎の農村の村長の家の四男坊 村にたまに落ちている特別な力もなく害もない投影された物を集めるのが趣味だった ある日拾った、魔法剣士とその仲間たちの冒険を描いたとある地球の漫画全巻を読み、それに感動して自分もこうなってみたいと思うようになる そう思っている最中、村の近くに立ち寄ったカルディナ・カーバイトとゴブリンとの戦いを偶然目にする その時まさに漫画の魔法剣士のような、剣技と魔法を融合させたような戦いを目撃し、即座に弟子入りを頼み込んだ 幸い魔法の才もあったため、(よく投影物が落ちている原因もディーノだった)無事カーバイト一門としてエーラムに入学。複数系統の魔法を習得して初めて受けられる魔法剣士の講義の受講資格を得て、最高の魔法剣士になることを目指して日々努力している。 性格は熱血系で好奇心旺盛 天才系ではなく努力型の人間 複数系統の魔法の勉強をしつつ鍛錬しつつたまに起きる騒ぎに首を突っ込みつつと非常に活発に行動している またいつも投影体の木刀を腰から下げている 本人はいまだ力を引き出されていない伝説の武器だと信じているが、わかる人から見ればただの京都の土産屋とかで売ってるアレ +一人称 通常時:俺 公的な場所:俺 +二人称 年上男性:あんた、~先生、~さん 年上女性:あんた、~先生、~さん 同世代男性:あんた、お前 同世代女性:あんた、お前 年下男性:君 年下女性:君 +敬称 年上男性:~先生、~さん 年上女性:~先生、~さん 同世代男性:呼び捨て 同世代女性:呼び捨て 年下男性:呼び捨て 年下女性:呼び捨て +口調 通常時:タメ口 公的な場所:丁寧語(テンションが上がるとたまに崩れる) +台詞 「俺はディーノ・カーバイト!最高の魔法剣士になる男だ!」 「魔法剣士への道は一歩にしてならず!今日も努力あるのみ!」 カサブランカ一門 [部分編集] +エト・カサブランカ キャラクター名:エト・カサブランカ プレイヤー名:ユウネコ(@tohkotower100) 年齢10 性別男 +PC登録時の設定 +外見的特徴 赤い目、明るい茶髪、少し長い髪を後ろで結んでいる。前髪にヘアピン、通常の制服にネクタイの代わりに紐リボン。右手には火傷跡があり、黒い手袋をしている。左手には古めかしい指輪をしている。両手は上着が大きいので袖で隠れている。 身長は低め、気弱そう。 +ライフパス 出自狂気 経験1平々凡々 経験2暴走 信念/目的迷い 信念/禁忌殺害 信念/趣味趣向アクセサリがないと落ち着かない +詳細設定 いつもおどおどしている気弱そうな少年。とある事情により心因性の記憶障害を起こしている。 生まれは某国の田舎村、エトは村の近くの森で自然と触れ合い野生動物と戯れる事が好きだった。 ある日、エトは気まぐれに向かった森の奥である物を見た。生きる炎の一端を。 その後村の大人達は森の奥で倒れているエトを発見し、目が覚めたエトは記憶を失っていた。 記憶を失ってからのエトは不安定ながら魔法の才能があった、エトの両親は彼の現状を考え彼をエーラムへ送った。 現在の彼は自分の名前も故郷の事も両親の事も覚えてはいない。彼の生きる世界はこの場所しか無い。 彼が記憶を取り戻した場合、何が起こるかは分からない。 +一人称 通常時:僕 公的な場所:僕 +二人称 年上男性:あなた 年上女性:あなた 同世代男性:君 同世代女性:君 年下男性:君 年下女性:君 +敬称 年上男性:さん 年上女性:さん 同世代男性:さん 同世代女性:さん 年下男性:くん 年下女性:ちゃん +口調 通常時:ゆるいですます口調、すこし吃る 公的な場所:ですます口調、少し吃る ※仲が良かったり付き合いが長くなると吃らなくなるし、ですますがちょっと抜ける。 +台詞 「えっと、僕の名前はエト、エト・カサブランカ…です。よろしくお願いします。」 「好きな物…?そうですね、えと、動物とか、好きです。」 「き、嫌いな物…?うるさいところと、あと…火は、少し。苦手、です。」 [部分編集] +エル・カサブランカ キャラクター名:エル・カサブランカ プレイヤー名:Katherine MacArthur(@KatherineINuniv) 年齢15 性別男 +PC登録時の設定 +外見的特徴 身長 166 cmの細め 茶髪とそばかすと眼鏡が特徴 +ライフパス 出自継承 経験1戦禍 経験2禁忌 信念/目的魔法の道 信念/禁忌闇魔法 信念/趣味趣向甘いものは別腹 +詳細設定 本名エルディン・イキシア。アルトゥークにある、聖印教会の影響がつよい村の君主の息子として生まれる。魔法師の才能を旅のメイジにみつかると、その村内での立場がなくなっていった。その後色々あって、父(君主)の弟がクーデターを起こし、両親は死にかろうじて逃げることができた本人は、隣村のつてからエーラムに行くこととなった。 現在はエル・カサブランカとなり、将来的には時空魔法を専攻しようと思っている。また、今は無理だが、いずれ信頼できる君主を見つけ、暴政を敷く父の弟を討ち取りたいと思っている。 性格は生真面目でポジティブ。かたくるしいと思われることもあるが、同門の前ではそうでもない。仲良くなるのに時間がかかるタイプかもしれない。 +一人称 通常時:(年上に対して)私/(年下・同年代に対して)僕 公的な場所:私 +二人称 年上男性:あなた 年上女性:あなた 同世代男性:君 同世代女性:君 年下男性:君 年下女性:君 +敬称 年上男性:さん 年上女性:さん 同世代男性:さん(近しい人は呼び捨て) 同世代女性:さん(かなり近しい人は呼び捨て) 年下男性:くん(近しい人は呼び捨て) 年下女性:ちゃん(近しい人は呼び捨て) +口調 通常時:穏やかだがちょっとかたい口調 公的な場所:丁寧語 ※同門の人の前ではわりとほんわかしている +台詞 自己紹介 「はじめまして、エル・カサブランカです。カサブランカに来てから、一年と少しになります。将来は時空魔法を学びたいと思ってます」 同級生との会話 「今日の課題多いね…………多分やればこなせる量だとは思うけど、結構時間かかりそうだよね」 師匠との会話 「師匠、戻りました!早速なんですが、この設問の意味がわからないんですけどどう答えればいいんでしょう?」 「ありがとうございます!」 クアドラント一門 [部分編集] +オーキス・クアドラント (作成メーカー: 少年少女好き?2 ) キャラクター名:オーキス・クアドラント プレイヤー名:彩雲(@type91_rev3_rev) 年齢12 性別女 +PC登録時の設定 +外見的特徴 身長152cm。 肌は色白(日本人のPL目線)で、 若干青みがかった銀髪をツインテールにしている。 瞳は紅色。 基本的な外見は、 「オートマタオリジン・オーキス」で検索 虎っぽい猫っぽいぬいぐるみを持っているが、その外見は 「ウォーフェロー・オーキス」または「ドレスアップ・オーキス」で検索(個別のイラストは無いです) ちなみにぬいぐるみは新品である。 +ライフパス 出自戦禍 経験1俊英 経験2孤独(任意) 魔法師としては珍しく、あなたは他の魔法師と関わりをほとんど持たなかった。 信念/目的迷い 信念/禁忌怯懦 信念/趣味趣向猫が好き +詳細設定 彼女の親はかつてある領地の契約魔法師であり、彼女はその教えを受けてよく学んだ。 しかし、その領主が領地を荒廃させ、さらに身勝手に他領への侵攻を企てたために彼女の親は領主に反逆した。 親は最終的に反逆者として打ちとられるも、力を失った領主はクレストを奪われ、 領地は新たな領主によって再生された。 親を失ったショックで記憶のほとんどと感情を失っている。 親の最後に残した言葉「自分らしく生きてほしい」をかなえるため、 天涯孤独になった彼女は暫く放浪の旅をしていたのだが、 親が魔法師でその教えを受けていたという事は、 彼女もまた魔法師となりうるし、その事が魔法師協会に知らされていたという事である。 (親が教育、監督していた頃はまだしも、)なりかけの魔法師が1人でいる事を魔法師教会が放っておくはずもなく、 彼女もまた放浪の旅に限界を感じていたので、 魔法学校の「赤の教養学部」へと入学する運びとなった。 放浪の旅の経験で整理整頓が得意。 手提げかばんには猫のようなぬいぐるみが入っている。 ぬいぐるみは自作。 また、科学にもそれなりに詳しいが、 それは自身の持っている魔法師の在り方が関係している。 6/23追記 話がとぶことが多いが、それは前提となる話を先にしようとするため。思惑としては今までの話に繋がっていることが多いので、最終的には戻ってくる。 +一人称 通常時:私 公的な場所:私 +二人称 年上男性:貴方 年上女性:貴方 同世代男性:貴方 同世代女性:貴方 年下男性:貴方 年下女性:貴方 +敬称 年上男性:(呼び捨て) 年上女性:(呼び捨て) 同世代男性:(呼び捨て) 同世代女性:(呼び捨て) 年下男性:(呼び捨て) 年下女性:(呼び捨て) +口調 通常時:標準語 公的な場所:丁寧語 +台詞 (対PC) 私の名前は、オーキス。オーキス・クアドラントよ。よろしく。 ……貴方は、いったい何をやっているの? そう。これが……心なのかしら。よくわからないわ。 (対GM,PL。いわゆるメタ向け) 私の名前はオーキス。あ、でも元ネタがあると困る事があるわよね。 その場合は……そうね、ランでいいかしら。 実は私、本来の構想では「経験と共に心を学び、自己を確立していく自動人形」だったの。 「ネクロニカでやれ?」……あの世界観で心が正しく育つとは思えないわ……。 それはそうと、元々はその方向性でキャラメイクをしていたのだけど、 グランクレストで自動人形だと投影体になってしまうでしょう? でも、投影体だと経験を既に持っているから構想との相性が悪いのよ。 だから、そのあたりの設定をばっさりと無くしてしまったの。 どちらにしろ、私のする事は変わらないわ。 学校でいろんな事を経験し、私らしさを見つけるの。 ……1つ、問題が見つかったわ。 本当は私、もう少し物静かな感じの性格――正確に言えば感情に乏しい感じなのだけど PLがそれをうまく演じ切れていないみたい。 オフセだとすぐに台詞に詰まるくせに、こんな時に限って饒舌だなんて、困ったPLよね。 そういえば、元ネタに関することを発言するときは""『神龍の戦記』というおとぎ話""と言うわ。あるかどうかはわからないけれど。 何故って……その、居るのよ。偶然の一致をしている子が。 最後に、私がメタ向けの自己紹介もしているのは、文章量を上げて台詞のサンプルを増やすためよ。 +魔法師の在り方※PLと共通 魔法師教会の目的は、混沌を消し去る事。 だけど、そうした場合、魔法師は魔法が使えなくなると言われているわ。 では、そんな事に協力する魔法師――自分の能力も経験も全てなかったことにしてしまえる人間は、果たしているのかしら? 少なくとも、そんな人はそう多くは無いはずだわ。 魔法師協会が出来たころは、混沌の無かった時代を知っていて、 混沌の使い方もよくわかっていなかったからこそ、それを目指して頑張ることもできたでしょうけど。 だからこそ、彼らには魔法師でなくなった後に残るものが必要なの。 それが、科学などの魔法以外に独占された知識。 以上の事から、私は魔法師教会の知識の独占は必要悪だと考えているわ。 独占を止めさせたければ、先にグランクレストを完成させるべきね。 ただ、そうすると気がかりなことがあるの。 クレストの統一が進み、グランクレストはもうそろそろ完成するわ。 だから私の親は私に科学の知識も沢山教えたし、私もそれを進んで学んだわ。 けれど、学園にはそういった様子はないわ。 魔法師教会は、本当にグランクレストを完成させるつもりがあるのかしら? 私がPLの考えを継承するのは、同じ考えのほうがRPしやすいからというのが大きいけど、 ライフパスの通り、困っている人を見捨てることはしたくないから。 混沌災害で誰かが被害にあう事を防ぎたいの。 ――でも、シャリテが消えてしまうと考えると、グランクラストを完成させることに協力できないかもしれないわ。 +第7週以降変更点 感情面 今まで希薄だった感情が有機的に機能し始めた。 今のオーキスはそれに振り回されているので感情的になっている。 身体に関して 今まで隠してきた反動か、人間でない事に逆に敏感になっている。 ただ、自分が普通じゃない=人間でないことを否定的には思っていない。 逆に、第7週での成功体験からか普通じゃない事を理由に諦めるという事を嫌っている。(普通じゃない部分が直接の原因である場合はその限りではない) +プランAH 簡単に言うと、次の通り。 「実は、彼女は記憶と感情を失ったわけではない。 ヒトニ造ラレタばかりの彼女はそもそも経験を持っておらず、感情が成長していないのだ。 もっとも、それ以外の点については――創造主を争いによって失ったことも含めて真実である。」 詳しくは、 オーキス・クアドラントのあれこれ を参照。 クレセント一門 [部分編集] +ヴィルヘルミネ・クレセント キャラクター名:ヴィルヘルミネ・クレセント プレイヤー名:ありす(@aricyan2) 年齢9 性別女 +PC登録時の設定 +外見的特徴 橙がかった金髪、同系統の目。耳の横で縛った髪をうさ耳を模した飾りで覆う。 +ライフパス 出自異界の血 経験1学究 経験2暴走 信念/目的求道 信念/禁忌暴露 信念/趣味趣向アクセサリーがないと落ち着かない +詳細設定 祖先にうさ耳の亜人の投影体がおり、それを公言してはばからない少女。 頭は悪くないが、良くも悪くも真っ直ぐで、誤魔化すことが出来ない。 異界の民の特徴の濃い祖父を貶されて、相手を追い出すように町の一角を森林に変えてしまったため、少し早くにエーラムへ来た。 祖先の故郷を伝聞よりもっと知りたいと勉強には意欲的。 +一人称 通常時:わたし 公的な場所:わたくし ※親しい相手には『ミーネ』 +二人称 年上男性:あなた 年上女性:あなた 同世代男性:あなた 同世代女性:あなた 年下男性:きみ 年下女性:きみ +敬称 年上男性:さん、殿 年上女性:さん、殿 同世代男性:さん、くん 同世代女性:さん、くん 年下男性:くん 年下女性:くん ※親しい相手なら(愛称)っち、(愛称)ちー +口調 通常時:だよ、かな、です〜 公的な場所:ですます口調 ※たまにお国言葉として一族にしか分からない単語を出すことがある +台詞 「ヴィルヘルミネです。ヴィルでもヴィリーでもミーネでも好きに呼んでね。この飾りはねぇ、ご先祖さまのお耳を模してるんだ〜。じいちゃんの代まではふわふわのお耳だから、そのまねっこなんです!」 「マレビトだったおおばぁちゃんが、『この子は土のカミが宿ってるね』って言っていたそうなので、土の魔法を覚えたいです。でも、おおばぁちゃんのとこみたいな異界の事を知りたいので、召喚魔法も興味あります〜」 +SS(Twitterからの転載) +4週目 「師匠さんから、許可、もらえなかったです・・・」 少ししょんぼり、とぼとぼと。 おひさまにこにこ、外出日和。 「羊さん怪我するの可哀想だし、ミーネの土神(テヌカミ)なら直ぐに元通りの土地にできるのにな〜」 小石を蹴ると、てんてんと。 少しばかりふくれてみる。 ヴィルヘルミネは師匠の元に、己の力の制御の練習のため、黄金羊の牧場での行使の許可を得に行った帰りである。 結果はみてのとおり。 「もう少し、お勉強して。 基礎魔法ひとつ使えるようになってから、かぁ。先が長いですね〜。」 こんなぽかぽか素敵な日、 落ち込んだまま、なんてもったいない! 「そういえば、セレネさんが『たこぱ』というお茶会をすると言ってたかな」 先日出会ったお姉さんの一人、せっかくだしおじゃまさせてもらおうかな。 「セレネさんもお話してみたいって言ってたし、ケネスさんもお誘いしようかな〜」 気分は浮上、るんるんと。 足取り軽く、とことこ歩く。 +5週目 「でもねぇ、師匠さん。 冷静に考えても、あの事件はあの方法以外での解決は難しいと思うんです・・・ 『投影体滅ぶべし』って頭に血が上ってたので、最初凌いだだけでは追撃が来るでしょう? だから、距離取ったのは正解だったと思うのです。 なんで笑うですか!?」 「・・・え、あ。 そっか、じいちゃん避けなかったからミーネが頑張らないと、てがんばったけど、じいちゃんなら、対処、どうとでもできるはずです。 あそこまでしなくても良かったってみんな思ってたから、ミーネは暴走娘って思われてたんですね・・・ でも!師匠さん笑いすぎですよぉ!」 「wwwww(震え)」 (でも、この義娘がきちんと考えて異界の力を行使していたことは驚いた。 素直で優しい性格で、戦場に出せるか不安だったが。 これは信頼する君主と共にであれば、覇道だって歩めるかもしれない) 「ああ、そうふくれてくれるなw」 (まぁ、まだしばらくは可愛い私の義娘だ) +6週目 「ミーネは庶民なので、マナーが不安なのです。是非、ケネスさんに教えていただきたいのです」 「ふむ。少しばかりであれば教えることも可能でしょう。ところでヴィル先輩、『習うより慣れろ』と言う言葉がありましてな。」