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「こりゃあ、また派手にやられたモンだねぇ~。・・・本当に“派手”だ」 もうすぐ正午になろうという時刻に、1人暢気に歩を進めている男が居た。彼の視線の先には、昨日とあるスキルアウトの攻勢を喰らって大きな被害が出た成瀬台高校があった。 周囲には大勢のマスコミや野次馬が陣取り、それを警備員が抑えているといった具合だ。 「『風紀委員・警備員に対する宣戦布告か!!?怪我人多数発生』・・・『救ったのは勇ましき学生とその仲間達』・・・『犯人グループは依然不明』・・・か。 情報規制が敷かれているな。『六枚羽』の名前も無いし、犯行グループも不明となっている。 まぁ、無理もないね~。この街の隠蔽体質は今に始まったことじゃ無いし」 白髪染めの男の手には、朝刊が握られていた。そこの一面に、今回の件が大々的に報じられていた。 文面を見ると、内容に偏りが見受けられた。具体的には、犯人グループの目星・意図よりも、風紀委員達を救ったボランティア―『シンボル』―の活躍が取り上げられていたのだ。 人間は、悲惨な事件が発生した場合その悲惨さから目を背ける余りに少しでも希望と見受けられるモノに視線を向けることが多い。 これも、その1つ。情報規制を敷いた人間の意図は、この事件に関わる真実を少しでも隠蔽したがっていると見て間違い無い。 「よっ!やっぱり騒がしいねぇ、今は」 「あっ!!ご苦労様です!!・・・うん?あ、貴方が何故ここに!?」 ゴーグルを付けた男は、成瀬台を警備している警備員に気軽に声を掛ける。それに釣られて警備員も挨拶を返したが、ふと我に返る。 この『“天才”と呼ばれる警備員』は、今回の事件には直接関わっていない人間の筈だ。その人物が何故姿を現したのか? 「何、俺の可愛くも可愛げの無い弟子の顔を見に来ただけさ。ついでに、あいつへの届け物もあってね」 「弟子・・・ですか?」 「そう。だから、通してくれるかな?」 「わ、わかりました!どうぞ!」 「サンキュ」 そう言って、“天才”は成瀬台へと足を踏み入れる。己が弟子に会うために。 「・・・・・・」 沈痛な面持ちを浮かべる風紀委員が集まっているのは、成瀬台の多目的ホール。以前まで使っていた会議室は、『六枚羽』の攻撃により爆破されていたために。 彼等彼女等は、昨日起きた一連の事件を整理するために痛む体をおして集まっていた。休暇中だった固地も、事態を受けて戦線に正式に復帰している。 ちなみに、警備員である橙山達は上層部への報告へ赴いているためここには居ない。 「・・・入院することになったのは、159支部の厳原、花盛支部の六花・山門・篠崎・渚・幾凪以上6名だ。命に別状は無いが、いずれも重傷だ。彼女達は戦線を離脱する」 「月理ちゃん・・・かおりん・・・・・・うううぅぅ!!!」 「抵部・・・抵部・・・!!」 「・・・!!!」 「破輩先輩・・・」 頭に包帯を巻きながら、決して浅い傷では無いながらも椎倉は入院を拒否しここに居る。 彼の言葉に抵部が涙を流し、閨秀が後輩の頭を撫でる。一方、またしても親友が重傷・入院することになった破輩は悲痛な表情を浮かべ、隣に居る一厘が彼女を見やる。 「・・・また、176支部の焔火が失踪した。彼女の姉である焔火朱花が『ブラックウィザード』に拉致された点から、彼女もまた拉致された・・・もしくは殺害されたものと推測される」 「お、俺のせいだ・・・俺が・・・俺が・・・!!!」 「帝釈・・・!!!」 「・・・!!!」 固地の報告から朱花(達)が拉致されたことが判明し、また焔火と音信不通という現実から焔火緋花は拉致された・・・もしくは殺害されたと判断されている。 結局、昨日の検問態勢―急ごしらえの―は功を奏しなかったというわけだ。手続きを経て衛星監視も用いたが、車両を乗り換えられたのか目星の車両は見付からなかった。 その元凶の1人である鳥羽は自分を責め、そんな部下に加賀美は名前を呼ぶことしかできない。また、葉原も起こった非情な現実に唇を噛み締めていた。 「そして・・・その場に“勝手に”急行した178支部の真面と殻衣は敵の罠に掛かり、危うく死ぬ所だったのを例の殺人鬼に結果として助けられた・・・そうだな?」 「・・・はい」 「・・・その通りです」 椎倉の問いに、真面と殻衣は今尚震える体を抑えながらも返答する。あの時、多層同期爆弾が爆発する約2秒前に倉庫の壁が一部崩れていた箇所から激流の如き糸の大群が流れ込んだ。 それは自分や殻衣、そして『ブラックウィザード』の人間すら取り込み強引に引っ張り上げた。そして、糸に包まれ倉庫から出たと同時に倉庫街一体を巻き込んだ大爆発が起こった。 その爆発で自分達は―糸の操り主も―炎と衝撃を浴びた・・・筈だった。糸に包まれていたが故に、『筈だった』としか2人は言えなかった。 だが、大爆発によって発生した爆炎や爆圧が真面と殻衣を襲うことは無く、最終的には包まれた糸から放り投げ出された瞬間2人共に頭を強く打った負傷のみであった。 しかし、頭を打ったダメージで次第に意識は無くなっていった・・・そんな折に真面は目にし、殻衣は耳にした気がした。 盛大に爆炎を天上へ立ち昇らせる灼熱の息吹を周囲に侍らせながら宙へ浮かぶ夢とも幻ともつかぬ白の異形と、その異形が放った気だるげな声色を。 『弱者が強者の投じた網(きまぐれ)に偶然にも引っ掛かる・・・か。ククッ、まさに世界の理の上で蜘蛛と蝶が織り成す弱肉強食の宴だ』 獅子と骸骨が融合したかのような仮面を身に付けた異形を・・・仮面から鬣を垂らし、鋭利な爪や尖った尻尾を生やした『蜘蛛』を真面は見たような気がした。 大爆発を受けたかもしれない身とは思えない程白一色で綺麗に染められた“怪物”が漏らした陰気な声を殻衣は聞いたような気がした。 「・・・固地。真面達が気絶した後にその殺人鬼と相対したのはお前だ。その時の・・・」 「椎倉!!」 「・・・何だ、浮草?」 椎倉が固地に説明を求めようと言葉を紡ぐ最中に飛び込んで来たのは、178支部のリーダー浮草の怒声。 「何だじゃ無い!!どうして、網枷が『ブラックウィザード』の手先だということを皆に教えなかった!!?」 「・・・それは昨日も言った。皆が知ればどうしても不自然な挙動が発生する。俺達は『ブラックウィザード』の情報を殆ど集められていなかった。 だから、内通者である網枷を泳がせておくのが当時は有効だと考えた。もし、網枷に勘付かれれば・・・」 「その結果がこれか!!?多くの重傷者が出た!!警備員には何人もの重体者が出ている!!生死の境を彷徨っている!!お前達の判断が正しかったと、今でも言えるってのか!!?」 「・・・!!!」 浮草の怒りは収まらない。確かに、椎倉達が下した判断は有効だったのかもしれない。だが、蓋を開けてみればどうだ?結果は御覧の有様だ。 「・・・エリートである私としても、今回椎倉先輩達が下した判断に疑問を抱かざるを得ませんね」 「狐月・・・!!」 「せめて、網枷と同じ支部の176支部の面々全員には知らせておくべきでは無かったのですか?網枷にこちらの挙動を悟られるリスクはあります。 しかし、それ以上に重要視すべきリスクが・・・私達への被害という面でのリスクが大き過ぎます!!」 「現に・・・鳥羽は網枷先輩の片棒を担がされ、焔火ちゃんも・・・敵の手に堕ちました。 これは・・・防げる筈だった!!俺達が知っていれば、鳥羽や焔火ちゃんはこんなことをしなかった!!」 「斑や一色の言う通りだわ。・・・ねぇ、椎倉先輩。加賀美先輩にも、当初は教えていなかったんですよね?・・・私達を囮にでもするつもりだったんですか? 『ブラックウィザード』の情報を掴むために・・・私達が被るリスクに目を瞑っていたんじゃないですか?」 「・・・・・・」 次々に噴出する不満。斑・一色・鏡星が抱くモノは、当人達にとっては当然のように抱いてしまう感情だ。 リスク勘定の基準がおかしい。優先するモノが違うのではないか。一方、椎倉は苦痛の表情を露にする。彼等の指摘は、ある意味では正しかったが故に。 「・・・世迷言が聞こえたな?焔火や鳥羽が網枷のことを知っていれば、この事態は防げた?ハッ、こんなモノ、知らなくても気付く代物だぞ?」 嘲りの声と共に、目の前の机に両足を置いたのは“風紀委員の『悪鬼』”・・・固地債鬼。 「確かに、結果がこうなった以上俺や椎倉達が取った判断で反省しなければならない点はある。言い訳はできない。これは、紛れも無い現実だ。 だからこそ、この結果に至る上での過程を俺達は1つずつ洗い直していかなければならない。俺達の『目的』に沿った上で・・・な」 その禍々しい視線は、元凶の1人である鳥羽に向けられていた。 「全く。昨日の件についてだが、コンピュータ関係に詳しくない人間が煽てられた上に功を焦るからこうなるんだ。こういうのを『無能』と言うんだ。 もし、内通者の存在に椎倉が気付いていたとして、椎倉が内通者の挙動・・・すなわちアクセス状況を監視していないわけが無いだろう?」 「ッッ!!!」 「固地先輩・・・何が言いたいのですか?」 「ほぅ。お前のそんな目を見るのは初めてだな、斑。言った通りだ。『無能』は『無能』。その事実を俺は指摘したまでだ」 「あんたね!!!」 「続いて焔火。あいつは、事もあろうに網枷の口車に乗った。鳥羽の家を訪ねた際の会話から、焔火は自分から機密情報をペラペラと話したと見て間違い無い。 網枷が内通者の存在を知っている者の1人と勝手に判断したために。何故気付かないんだろうな、鏡星?網枷の会話には、何処かに不自然さがあった筈なのにな?」 「ぐっ!!」 固地は見抜いていた。斑達が、鳥羽や焔火を庇っていることに。庇うために、上司の責任に2人の失態を擦り付けようとしていたことに。 「そして、2人に共通することは・・・2つ。1つ目は、確認を怠ったことだ。何故確認を網枷1人に頼った? 何故自分から他者に確認しようとしなかった?リスク管理をするなら、複数の確認は必須だろ? 支部の単独行動は椎倉か橙山先生の許可が必要だ。今回の場合焔火と網枷が前線、鳥羽が後方だ。普通、こういうのは後方に控える者も確認しなければならないんじゃないか? 連携面を考えるなら、後方に居る椎倉か橙山先生に鳥羽は確認するべきだった。唯でさえ、リーダーである加賀美を排除しての行動だ。 普段後方任務に就いている網枷が前線に出る以上、鳥羽に課せられたモノはとても重たい。鳥羽、お前はそれを自覚していなかったな?」 「・・・!!!」 固地の指摘は的を射ていた。だから、鳥羽は反論できない。『主な任務は俺達との連携とUSBを差し込むだけ。後は椎倉先輩が主導する』と網枷に説明されていたために、 心の何処かで気軽に考えていた部分があった。煽てられていたこともあって、為すべき注意が疎かになっていた。 「債鬼君!帝釈は病み上がりの私を思って・・・」 「そんなことは言い訳にもならん。網枷は鳥羽のそういう甘い考えを見通し、そこへ誘導したんだ」 「そ、それは・・・!!」 「・・・もう1つは功を焦ったこと。これは心理面の問題だな。焔火と鳥羽、両者は功を焦っていた。鳥羽は同期の葉原に負けたくない、焔火については今更言うまでも無い。 だから、網枷の口車に乗せられた。冷静な思考ができなかった。きちんと物事を量れていなかった。 あいつと『無能』が組み合わさればこうなるのか・・・。つまりは、なるべくしてなった面もあるというわけだ。ハーハハハッ!!!」 “『悪鬼』”の高笑いがホールに響き渡る。それは、見えない糸を引き千切るのに十分なモノだった。 「固地いいいいいいいぃぃぃっっ!!!!!」 それは、“剣”。今まで沈黙を守っていた神谷が、固地に向けて『閃光真剣』を振り上げる。 振り下ろされようとする“剣”を固地は一切の動きも見せず、視線さえ揺るがさずに迎え撃つ。 ビシャッ!!! 「グアッ!?」 「稜!!落ち着きなさい!!!」 それは、水による目潰し。加賀美が近くにあった花瓶の水を『水使い』で操作し、神谷の目に放出したのだ。 「余計なことをする。神谷の好きにやらせてやったらどうだ、加賀美?フラストレーションが溜まりまくっているんだろう?」 「テメェ!!」 「稜!!駄目!!駄目だって!!」 減らず口が収まらない固地に更に激昂する神谷を、加賀美は後方から必死に抑え込む。 「・・・固地」 「・・・何だ、浮草?」 だが、こんなことで場は収まらない。切れた以上・・・伝染する。浮草が固地の胸倉を掴みながら、抑えていた怒りをブチ撒ける。 「お前は・・・そうやってまた傷付けるのか?“『悪鬼』”という仮面で、性懲りも無く他人を傷付けて・・・あの時のように・・・また!!」 「あれはもう終わったことだ。俺なりに反省していることを・・・“アンタは一番よく知っている”んじゃないか・・・“お飾りリーダー”?」 「お前・・・!!お前のような奴の、一体何処が『本物の風紀委員』なんだ!!?よくそんなんで焔火や真面達を指導できたモンだな!!」 「浮草先輩!!」 「だ、駄目です!!」 神谷に続いてキレる浮草を、真面と殻衣が抑える。 「ぶ、ぶっちゃけマズイんじゃねーか?このままだと・・・」 「収拾が着かなくなりますね。仲間割れをしている場合では無いのですが・・・彼等が抱く不満は私も少なからず抱いていますしね?」 「ううぅ!!」 鉄枷は、佐野の言及に怯む。鉄枷の場合は、まだあの“変人”の部屋に居たことや危害を受けていない諸々からそこまで不満は持っていないのだが、佐野としては神谷達の心情に近い。 覚悟はしていたとは言え、実際に軽くない傷を負った身としては『はいそうですか』と納得し切れるわけが無い。 多目的ホールが騒然となる。このままでは、風紀委員会自体が崩壊しかねない・・・そこへ!! 「うん、うん!こういう応酬も懐かしいねぇ。俺も昔はよくやったモンだ」 「「「「「!!!??」」」」」 一部を除く風紀委員達には聞き慣れない声が発せられた。その男は、悠然と多目的ホールに入って来た。 白髪染めをオールバックにし、ゴーグルの端末を装着したその男の佇まいには得も言われぬ威圧感を感じられた。 「く、九野先生・・・!!!」 加賀美が、何とか声を振り絞る。自身1度しか会ったことの無い“天才”―九野獅郎―の急な登場に、彼女は面食らってしまう。 「おっ!加賀美ちゃん。久し振り!これまた、美人さんになっちゃって!子供の成長は早いねぇ」 「は、はぁ・・・」 「それに比べて・・・債鬼!!!」 「はいっ!!!」 「「「「「えっ・・・?」」」」」 神谷達は、目の前の光景が俄かに信じられなかった。何と、あの傲岸不遜極まる固地が、九野に一喝に直立不動の体勢で固まってしまったからだ。 「・・・(チョイチョイ)」 「・・・(テクテク)」 九野が指で『こっちに来い』という合図をする。そして、それに従う汗ダラダラ状態の固地。何とも言いようが無い光景の後に・・・ 「お前のその人様に迷惑を掛ける悪癖はまだ直らねぇのか、このバカ弟子がー!!!!!」 「グアアアアアァァァッッ!!!!!」 「「「「「・・・・・・」」」」」 九野のヘッドロックに絶叫する固地。学生時代から体を鍛えている九野の筋肉は、緑川程では無いにしろそれ相応のモノを形成している。 「加賀美ちゃんも、何で連絡をくれなかったんだい?以前1度だけ会った時に、携帯の番号を教えていたじゃないか? このバカ弟子がバカをしたら、俺が思いっ切り仕置きするって言ったじゃない?こいつだけは、仕置きに実力行使が欠かせないからねぇ」 「え、えぇ・・・。すみません」 「いやいや、謝ることじゃ無いよ。全ては、このバカ弟子が粗相をしたからだしね。さぁ、債鬼?ここに居る皆に土下座するんだ」 「な、何故俺がそんなことを・・・!!?」 「聞いてただろ?最初に言った通りだ。相変わらず、お前の傲岸不遜な態度は年相応とは言えない代物だな。だから敵を作る。他人から良く思われない。 師匠である俺のメンツも、少しは気に掛けろよ。直せないなら直せないまでに、一言でいいから『ごめんなさい』くらいは言えるようにならねぇか。 それにしても、師匠に口答えするとは相も変わらずの度胸っぷりだな。だが、今回はお前の頭を足蹴にしてでも土下座させるぞ!!さぁ!!」 「ぐあああぁぁっ!!!」 「「「「「・・・・・・」」」」」 ヘッドロックを解いた瞬間に、固地の頭を掴まえて土下座させようとする九野。抵抗する“『悪鬼』”。この光景に、先程まで蔓延していた悲痛っぷりや憤怒っぷりが霧散していた。 唯単に、目の前の状況に思考が着いて行っていないだけとも言えるが。ちなみに、以前加賀美が漏らしていた“アレ”とは“九野獅郎への告げ口”である。 「も、もも、申し・・・申し訳・・・・・・あ、ああ、ありま・・・せ、せん・・・で、ででし・・・た・・・」 「何だ、そのたどたどしい謝り方は?ワンスモア!!」 「何ぃっ!!?」 「やれ」 「ぐぐぐ・・・!!!も、もも、申しわけ・・・」 「声が小さい!ワンスモア!!」 「申し訳ありませんでした!!!」 「何に対して申し訳が無いのかよくわからん。ワンスモア!!」 「そ、それを早く言え!!」 「しろ」 「ぐうううぅぅっ!!!」 「「「「「・・・・・・」」」」」 プライドがズタズタになりながらも何とか土下座を試みようとする弟子に、全く容赦しない師匠の冷徹な声が降り注ぐ。 しかも、固地の背に腰を下ろして足組みをしている始末である。そんな普段とは逆転してしまっている光景に、他の風紀委員達は瞠目するしか無い。 「あ、あのぅ・・・」 「うん?何だい、麗しいお嬢さん?」 「は、葉原です。え、えっと・・・九野先生は・・・固地先輩の師匠・・・と仰っていましたが・・・」 「そうそう。全く、困った弟子だよ。周囲を敵に回すような言い方しかできないからさ、ホント可愛げの無いバカ弟子だ」 「い、何時からお2人は・・・」 「小学生時代の債鬼を助けたことがあるんだよ。当時も口の減らないクソガキだったけど、今じゃあ体全体が減らない天邪鬼になっちゃったねぇ。 まだ、素直だったあの頃の債鬼が懐かしい。こいつは、俺に借りを返すことを切欠に風紀委員を目指したんだ」 「そ、そうなんですか!?」 「(緋花と同じような・・・!!)」 九野から明かされた固地が風紀委員を目指す切欠になった事柄に、葉原と加賀美は目を丸くする。 まるで、焔火が緑川に助けられたことで風紀委員を目指したのと同じように感じられたから。 「バ、バカ師匠!!そ、それ以上は・・・!!」 「この際、お前のことをよく知って貰ういい機会じゃないか、バカ弟子?え~と、さっきの続きだね。 債鬼は、俺に助けられたことが切欠で風紀委員になった。なったらすぐに俺の所に来たよ。『あの時の借りを返す!!』とか何とか。 その反骨精神振りが面白くてね。何時しか、俺と債鬼は師弟みたいな関係になった。こいつの言うことを悉く論破してやってさぁ、いっつも泣きべそかいて帰って行く様が面白かった」 「泣きべそ・・・固地先輩が?」 「そう。今だと血も涙も無い“『悪鬼』”って言われているけどね。本当に、あの頃の債鬼が懐かしい。誰のせいでこんな酷い性格になったんだろう?不思議だねぇ~」 「「「「「(アンタのせいじゃないの!!!??)」」」」」 九野の不思議そうな口振りに、心中でツッコミを入れる風紀委員達。元の固地の性格をより一層パワーアップさせたのは、どう考えてもこの“天才”しかいない。 弟子への仕打ちなんか、固地が普段から行っていることと瓜二つだ。ある意味では、まだ九野の方がマシとも言えるが。 「どう思う、2人共?」 「弟子が弟子なら・・・」 「師匠も師匠ですね・・・」 秋雪の質問に真面と殻衣が漏らした言葉が全てを物語っている。 「九野先生・・・でしたか」 「あぁ。君は・・・このバカ弟子の先輩だったかな?」 「178支部のリーダーをやっている浮草と言います」 「これは、ご丁寧に。バカ弟子がお世話・・・というか迷惑を掛けているようだね。師匠である俺からも謝るよ。済まない」 「いえ。それより・・・会議を再開したいのですが。とりあえず、固地から降りて・・・」 そう・・・全てを物語っている。何故、九野獅郎が固地債鬼の師匠足り得るか。その理由が・・・わかる。 「会議?あぁ、さっきの“会議ごっこ”のことかい?あんなモノ、再開した所で無駄さ。あのままじゃあ、何一つ有益な意見交換はできないね」 「ッッ!!・・・ど、どういう意味・・・!!?」 「平時と有事の区別ができていない人間が何を言っているのかね?この現状において何が優先されるべきなのか、その判断すらもできないのかい? この現状にさえ仲良しごっこを持ち込むのなら、余所でやってくれたまえよ。そんな人間は、今ここに必要無い」 口調が変わる。漂う威圧感が増す。そこに居るのは・・・“天才”九野獅郎。 「し、失礼ですが、あなたこそ今・・・!!」 「俺が債鬼との出会いを話したのは、この場を落ち着かせるためにやったことだ。バカ弟子が、皆が抱いているフラストレーションの捌け口として自分を指定した行為。 バカ弟子がどう思っているかは知らないけど、俺の目から見れば物の見事に『失敗している』。本人だって空中分解を望んではいないだろうに・・・つくづく不器用な奴だ。 なぁ、浮草君。君は、バカ弟子のように風紀委員(じぶん)の手で風紀委員会を空中分解させたいのかい?」 「ッッッ!!!」 浮草の言葉を全く意に介さない師匠は、続いて尻に敷いている弟子へ向けて言葉を放つ。 「債鬼も、途中から俺の目論見には気付いていただろう?」 「俺が土下座をすることは余計だろう!?」 「馬鹿言え。あんだけ口汚きく罵っていたんだ。お前が謝罪するのは当然だ。そもそも、俺の目論見とお前の謝罪は無関係な事柄だしな。 『お前の』目論見も予想は付くが、それにしたってやり方が乱暴だ。空中分解を自ら進めるリスクを負ってまでやることじゃ無い。お前のやり方がどんな時も通じると思うなよ? 指摘するにしても、もっと穏便な方法はある。普通に皆が理解してくれる方法はある。天邪鬼のお前じゃあるまいし。・・・『焦っていた』か?」 「ぐぅっ・・・」 「鳥羽君に対しても随分偉そうに言ってたけど、お前だってコソコソやってるじゃないか。余り人のことは言えないよな? それに、俺の目論見とは関係無しにこれくらいのことをしないとお前の心を知って貰えないという厳しくも温かな師匠心・・・」 「知るか!!」 「ハァ・・・本当に口が減らないな。・・・・・・」 弟子の抗議に耳を傾けながら、そんな弟子の心中を見抜いている九野はあることを思い付く。本当なら、必要最低限の用事を済ませて帰ろうと思っていたのだが。 目の前に広がる光景を見る限り、風紀委員会が負ったダメージはやはり深刻と言っていい。橙山達大人が席を外している以上、 傷付いた子供達への指摘とフォローをキッチリ行えるのは・・・おそらく自分しか居ない。色んな意味で。 「・・・それもいいか。よし!今から、君達に俺が“特別授業”を開いてやろう!!題材は、もちろん今回の件に関することだ!」 「なっ!?」 「さっきまでの“会議ごっこ”に比べたら、絶対有意義なモノになるのは間違い無い!この俺が保証しよう!」 「こ、ここでアンタの“特別授業”をか・・・!?」 「そうだよ、債鬼。言っとくけど、お前は俺が質問しない限りは黙ってろよ?経験者のお前が口を挟んだら意味が無い。これは、彼等のためと同時にお前のためでもあるんだぞ?」 九野が宣言した“特別授業”の開講に固地は青褪める。周囲を見渡せば、九野の突然の宣言に全員が目を白黒させている。 九野自身も皆の反応は予測していただろう。『この人は突然何を言い出すんだ?』・・・という声無き問いを。 しかし、風紀委員は同時にこうも思っていた。『数多の実績を持つ“天才”がこの場で宣言した以上、その“特別授業”は確かなモノを自分達に齎すのではないか?』・・・と。 「椎倉君。いいよね?いいな?よしっ、やろう!」 「・・・・・・わかりました」 「(九野先生は、ある意味債鬼君より厳しい・・・!!それに・・・!!)」 『これは・・・・・・機会があれば、一度浮草君に確認しなければならないね。リーダーとしての覚悟を。この俺自らが彼に会って直接問い掛けるとしよう。フフッ・・・!!!』 「(これは・・・!!)」 加賀美が色んな意味で背筋を震わせている間にも準備は進む。そして・・・“天才”の“特別授業”は開講を迎える。 「では、諸君!今回の件で噴出した問題は様々にある。故に、全ての事柄に対して焦点を合わせるつもりは無い。優先順位を付けて議論していく。よろしいかね?」 「「「「「・・・・・・」」」」」 ダン!!! 「「「「「ビクッ!!!」」」」」 「・・・返事は?最近の学生は、碌に返事もできないのかね?ねぇ、常盤台の一厘ちゃん?」 「ギクッ!!!」 「常盤台生は、皆将来有望な女の子達ばかりだと思っていたのにねぇ。よしっ、後で君の友達の苧環に聞いてみようか。『常盤台生の挨拶はどうなっているんだ?』ってさ」 「い、いえっ!!み、皆さん!!さっきは急展開に付いていけなかっただけですよね!?そうですよね!!?」 「「「「「(コクンコクン)」」」」」 「そうなのかい?確かに、急だったから戸惑っちゃったかな?では、もう一度聞こうか?よろしいかね?」 「「「「「はい!!!」」」」」 「よろしい。一厘ちゃん。さっきのはジョークだからね。本気にしないように」 「は、はい!!(よ、よかった・・・!!)」 漂う威圧感に呑まれている風紀委員達に、“天才”はジョークを交えながらマイペースに“特別授業”を始めて行く。 一厘の友達である―そして尊敬する九野に対するいわれの無い悪口や態度を決して許さない―苧環の名前を出して気を引き締めさせたのもその一環である。 「まずは、内通者である網枷双真の存在を一部の風紀委員達に知らされていなかった点だが・・・俺の意見はこうだ」 [『目的』を鑑みればアリ] 「さて、浮草君。何故こう俺が考えたのかわかるかい?」 「そ、それは・・・」 「君が、椎倉君や債鬼の立場に立ったとして考えてみてごらん」 「・・・それは、やはり『ブラックウィザード』の情報が乏しかったから、当時は網枷を泳がせておくしかなかった・・・。 もし、内通者の存在を誰もが・・・特に網枷が居る176支部の人間の多くが知ればその人間を通じて網枷にこちらの動きが悟られる可能性があった・・・ですか?」 「まぁ、加賀美ちゃんが気付いちゃった時点で皆に知らせる選択肢はあったかもしれないけどね。その辺りは、“他の事柄”との兼ね合いもあったかな? 君の見立てはおおよそ正しいと思うよ、浮草君。では、何故『ブラックウィザード』の情報が乏しいんだい?」 「・・・・・・わかりません。俺達の方が知りたいです」 「・・・他にこの問いに答えられる者は居るかい?」 「「「「「・・・・・・」」」」」 反応は無い。あの椎倉でさえも未だにはっきりとわかっていないこと。どうして、これ程までに『ブラックウィザード』の情報が出てこないのか? 『ブラックウィザード』と繋がっている組織が隠蔽工作に協力している可能性も、確証を持って言えることでは無かった。 「・・・では、債鬼。お前の見立てを言ってみろ。その顔振りだと、ある程度の予測は付いているんだろう? 何せ、椎倉君達とは違って支部活動という縛りの外で自分のやりたいことを制限付きながらもやっていたんだ。 彼等が日々の業務に忙殺されていたが故に気付かなかった、見落としていた部分はきっとある。 お前の真価・・・有事の際に発揮する慧眼を俺や皆に示してみせろ。さっきの『失敗』をここで取り返してみせろ。 偉そうに言うだけの存在じゃ無いことを、唯の天邪鬼で意地っ張りで融通が利かなくて素直になれなくて碌に友達が居ない人間じゃ無いことを今ここでもう一度証明してみせろ」 「(ピキッ)」 「債鬼君が・・・?」 「・・・・・・」 九野の視線が、加賀美の隣に座っている(+青筋を立てまくっている)固地に向けられる。 この“特別授業”では、ホワイトボード前に九野が立って、その周囲に各風紀委員が椅子を持って来て座っているという態勢だ。 「・・・そもそも、『ブラックウィザード』は一般生徒に薬を売り捌いていない。だから、情報が挙がって来ない・・・可能性が考えられる。確証は無いがな」 「「「「「!!!」」」」」 固地の口から告げられる驚愕の予測に、各風紀委員は目を見開かされる。これは、昨日雅艶と共に意見交換しながら妥当性を量っていた可能性である。 「で、でもよ!!あたし達の管轄内で薬物中毒者が出たのはどう説明・・・!!」 「それ自体が、奴等にとって別の意味で不測の出来事だったとすれば?正確には、起きた幾つかの不測の出来事で奴等が深刻に考えているのは・・・ということだ。 ここで言う重要視している不測とは、一般人に手を出したということだ。俺達風紀委員に見付かったことじゃ無い。そして・・・それは言い換えれば逆手にも取ることができる。 例えば・・・一般人に手を出さないことをルール化していたのにも関わらずにそれを破ったことによって組織の腐敗が露になるという結果が生まれ、奴等の『上』は問答無用で粛清した。 また、俺達風紀委員に見付かったことも逆手に取る。苦肉の策だろうがな。具体的には、一般人に手を出す・・・つまりは薬を売り捌くという噂を流し、俺達の目をそちらへ振り向ける。 俺達としては、実際に一般人に薬物中毒者が現れた以上そちら方面に視点が動く。内部の腐敗に関しても、それが進めばこちらに有利だしな。 内部分裂という可能性には若干期待をしていたんだが・・・徒労に終わったかもな。どうだ、“宙姫”?」 「・・・!!!」 それは盲点であったこと。『ブラックウィザード』の内部で『上』を無視した暴走が始まっている可能性があるという情報はあった(一部の風紀委員には、先程知らされた)。 その暴走により、花盛学園の生徒に被害が出た可能性がある。だが、それは可能性の域を超えないモノであった。 件の殺人鬼の実力を鑑みれば、『ブラックウィザード』という組織が主導的に“表”の人間へ手を出す可能性―その過程で暴走と花盛学園の件が起きた―の方が現実味を伴っていた。 仮に、一部の暴走があったとしても花盛の件以降実害の発生情報が出て来なくなった以上暴走の要因は粛清されたと見ていい。 そして、連中の『上』が事の露見に対策を打った上で主導的に“表”へ触手を伸ばし続けており、それが極一部の噂という形で発現している・・・そう捉えていた。 “『シンボル』の詐欺師”でさえ、『ブラックウィザード』が“表”に手を出していることを前提に考えていた。どうやら、想像以上に『上』は我慢強く、狡猾であるようだ。 「改めて振り返ると疑問が湧く。何故俺達の調査で『ブラックウィザード』の情報が“表”に出て来ないのか?何故実害の発生情報が6月初旬にだけ現れたのか? そして、何故それ以降音沙汰無しの状態がずっと続いているのか?組織の腐敗が進んでいる可能性も0では無いのに、何故明確な情報が漏れて来ないのか? 一般人に薬を売り捌いているという噂だけは入手できるのに。そう・・・噂しか出て来ない。鳥羽が聞かされた昨日の薬物売買云々は罠だとわかった以上考慮するに値しない」 「・・・その噂自体が、あたし達の目を惑わせる隠蔽工作ってことだよな?・・・でも、それじゃあ何で・・・」 「債鬼君・・・。何でしゅかんは・・・しゅかん“達”は連れ去られたの!?売り捌く目的は、お金だけじゃ無い。“手駒達”に仕立て上げるっていう目的も付随している筈。 “表”で薬を売っていないんだったら、普通はその対象じゃ無いと考えてもいい。緋花を誘き寄せるためだけなら、しゅかん1人だけでも・・・!!」 「・・・これも可能性でしか無いが、“手駒達”の減少は俺達の予想以上なのかもしれない。界刺が言うには、件の殺人鬼が『ブラックウィザード』に攻勢を仕掛けていた。 奴の見立てでは、“手駒達”対策か。ならば、その数は減少している筈だ。しかも急激に。それこそ、今までの調達方法では追い付かないくらいの減少速度だった。 背に腹は代えられない。早急に、“手駒達”の材料となる能力者を調達する必要性は確かに存在しているんだろう。ようは、秘かに“表”に手を出していたということだ。 これに関連して、昨夜から今日の午前10時半までに俺とバカ師匠で調べた限り、俺が目撃した8名の生徒以外に昨日から行方不明になっていると各警備員支部に通報された案件が複数ある」 「まさか・・・昨日からずっと調べてたの!?一睡もせずに!!?」 「そんなことは、この場に居る殆どがそうだろう。誰も寝ていない筈だ。別に驚くようなことじゃ無い。行方不明の件も、橙山先生が主導になって調査をし始めている」 確かに固地の言う通り、昨日の件でこの場に居る風紀委員の殆どは睡眠を取っていないし、固地の報告を受けた橙山が部下に行方不明者の件を調査するように指示を出している。 そもそも睡眠を取れる状況では無いとも言えるが、それでも固地のように怪我を負った者以外で“手駒達”に関する調査を行っていた風紀委員は他に居ない。 というのも、昨夜は橙山の指示でリーダー格(椎倉除く)以外の怪我を負っていない風紀委員は強制的に自宅待機させたのだ。 その内破輩・加賀美・浮草・冠は病院に搬送された支部員と共に一夜を過ごした。そして、唯1人自由に動ける足で九野の家を訪ねて彼と共に調査をし続けていたのが固地である。 この男は、強襲と拉致という大き過ぎる衝撃を受けても尚、次のことを考えて動いていたのだ。 「・・・!!ということは・・・」 「通報があった時間帯の中には正午前後も存在した。『ブラックウィザード』とは何の関係も無い事案の可能性も十分にあるが、今はその可能性を無視する。 これ等のことから推測するに、少なくとも昨日の午前中から『ブラックウィザード』は拉致活動に動いていた可能性がある。 『ジャッカル』全店で起きた爆発事件との関連性は未だはっきりしないが、全く無関係では無いとも推測可能だ。 何故なら、通報者の説明に『最近「ジャッカル」ってカラオケ店にずっと通っていた』というモノがあったからだ」 「・・・固地。これは、証拠隠滅も兼ねた爆発事件である可能性も・・・」 「ある!椎倉の指摘通り、『ジャッカル』を中心とした何らかの工作が行われていた可能性がある。そういえば、『ジャッカル』を統括する会社との連絡は・・・」 「取れていない・・・というか『ジャッカル』を買収したとされる会社の住居に警備員が赴いたが、もぬけの殻だったそうだ。さっき連絡があった」 「・・・架空会社だった可能性が高いな。それこそが、『ブラックウィザード』の表の顔の1つだったのかもしれない。 成程・・・中々露見しないわけだ。堂々と営業活動していたということ・・・」 「『ジャッカル』・・・?」 「加賀美?」 深まって行く議論の中で、急速に表情を暗くして行く加賀美に固地が不審げな視線と問いを送る。 「私・・・この前『マリンウォール』へしゅかんや緋花と遊びに行った帰りに『ジャッカル』に寄ったんだ。しゅかんの薦めで。 あの時、翌日からの捜査に差し障りが出ないようにって私と緋花が先に帰ったんだよ。しゅかんは、1人残っていたんだよ。まさか・・・その時に・・・!!?」 「・・・・・・『ジャッカル』が深く関わっていると仮定して、何かしらの工作をされた可能性が高いな。例えば・・・精神系能力を仕掛けられたりとか、薬を盛られたとか」 「・・・!!!あ、あの時・・・私が無理にでもしゅかんを引っ張って帰っていたら・・・も、もしかしたら・・・こ、こんなことには・・・!!!」 「それは言っても仕方の無いことだよ、加賀美ちゃん?」 後悔の泥沼に陥りそうになる加賀美に、絶妙なタイミングで九野がツッコミを入れる。議論を正しい方向へ向けられるようアドバイスするのは、教師足る役目である。 「九野先生・・・!!」 「俺達は次に繋がることを見付けるために、過去の出来事を洗い直しているんだよ?君が言っていることは、唯の後悔の吐き出しだ。 そんなモノが、一体何に繋がるんだい?それは、唯不平不満を零しているのと同じだ。そんな人間はここには要らない。さっさと出て行ってくれたまえ」 「ッッ!!!ご、ごめんなさい!!!」 「・・・次は無いよ?いいね?」 「はい・・・」 厳しい。固地のように悪辣な言い方をする人間に対してはまだ対抗する言葉を吐き出せるが、穏やかに言及されては何も言い返すことができない。 それが、揺ぎ無い正論であればある程口を開けなくなる。そんな、重たくなる雰囲気を振り払うように椎倉は固地へ可能性の研磨を持ち掛ける。 「そこに、『ブラックウィザード』と繋がっている組織が隠蔽工作に協力している可能性を加味すれば・・・」 「あぁ。益々面倒だ。そんな連中が、『六枚羽』なんてモノも持ち出して目立つに目立つ成瀬台への強襲という実力行使を仕掛けて来た確かな理由がある筈だ」 「何せ“派手”だモンな~。幾ら情報規制が敷かれるのを見越していたとは言え、真正面から学園都市の治安組織に喧嘩を売ったってことだし。 それに、廃棄が進んでいる旧型駆動鎧はともかく最新鋭の『六枚羽』の出所はそう簡単に隠せるわけが無い。もし隠せるとしたら・・・・・・」 「やはり・・・・・・“あれ”か?」 「・・・だろうね。『ブラックウィザード』と繋がっている組織の何れかに、“あれ”が居るんだろうね。 もしくは、“あれ”と関係している何かが。とは言っても実働部隊そのものは関わっていないだろうがね」 「“あれ”?さ、債鬼君!!“あれ”って何!!?九野先生も!?」 「「・・・・・・」」 加賀美の問いに、固地と九野は揃って口を噤む。この情報は、本来“表”の住人が知っていいモノでは無い。・・・“裏”の住人もだが。 「・・・知らない方がいい。この情報をお前達が知れば・・・死ぬ危険性がある」 「正確に言ってあげなよ。殺される可能性がある・・・だろ?」 「・・・!!!」 「(な、何か今のやり取り・・・界刺さんが常盤台に来た時に言ってたことと似てる・・・!!も、もしかして界刺さんのように固地先輩や九野先生も“裏”ってヤツの情報を!?)」 故に、質問への回答を拒否する2人。その真剣な姿に加賀美は何も言えなくなり、一厘はかつての問答を思い出す。但し、その推測は誤りではあるが。 「まぁ、今回の件の主体はあくまで『ブラックウィザード』だろうね。“あれ”は、一部を除けば性質的に正面から治安組織に喧嘩を売る真似は好まない筈だし、表立った協力は無いと見ていい。 精々隠蔽工作という名の情報操作に手を貸しているくらいだろう。唯・・・今回の情報規制は『ブラックウィザード』の意図が全て反映されているとは思えないな」 「だろうな。今朝の朝刊を見てもわかる通り、情報規制もさることながら『シンボル』のことが必要以上に大きく取り上げられている。 別に、『ブラックウィザード』が『シンボル』を優遇する理由は無い。『シンボル』を利用しなくても情報規制は敷かれる。むしろ、作戦を妨害する不安要素として見ていた筈だ。 もし、『ブラックウィザード』の作戦に『シンボル』の加勢まで含まれていたのなら、それに応じた布陣を昨日の襲撃時に敷いて俺達諸共殲滅に掛かった筈だ。 そして、それが無かったあるいは不十分であった以上『ブラックウィザード』にとっても『シンボル』の大々的な加勢は誤算だったんだろう。“この”情報規制も含めてな。 にしても、この用意周到っぷり・・・『シンボル』の情報を知っていなければできない芸当だ。・・・情報規制に利用されたな。 風紀委員会をボランティアである『シンボル』が善意の下鮮やかに救助したという、事実を殊更強調したこの希望的報道なら少なくとも俺達に対する一般人の反応は緩やかなモノになる。 『頼り無い』等の批判は出るだろうが、『風紀委員会は裏切り者の手引きで為す術も無く大打撃を喰らった』という事実が報道へ載るよりかははるかにマシだ。 絶望が強調されれば、批判はより苛烈なモノとなる。しかし・・・あの“変人”のことだ。本当なら、『大々的に風紀委員を窮地から助ける』という主役的な目立ち方をしたくは無かっただろうな」 「下手したら、風紀委員以上の脅威として一般人の中に潜む悪意を持った連中や一般人とは呼べない連中に目を付けられる可能性があるからね。打倒『正義の味方』としてさ。 お前から聞いた“3条件”も、それに対する予防線でもあったんだろう。『俺達を頼り過ぎるな』っていう。後ろ盾が無いボランティアだしさ。 そういう意味では、内心怒り心頭だろうね。まぁ、今更言った所でどうしようも無い。それをわかった上での、今回の助太刀だったんだろうし。 だからこそ、『ブラックウィザード』への不意打ちが成立したのかもね。網枷も『シンボル』のリーダーの思考や“3条件”について考えを巡らしていなかったわけが無い」 「(界刺・・・!!くそっ、こんな体たらくじゃあ何時まで経っても“借金”が返せないぞ!?)」 「(昨日のあたし達への助太刀は、あの野郎にとっては苦渋の決断だったのか・・・!!それを事も無げに言いやがって!!あの最後通牒は・・・本当に『最後』なんだな・・・!!)」 『シンボル』の助力は、人助け・人命救助という観点から不動としては当然のことをしたまでである。それが、例え風紀委員であってもだ。 母校を傷付けられるのを、黙って見過ごしているわけにもいかない。これ(人助け)は、水楯・形製・春咲も同様の思いである。 一方、界刺としては本音では反対だった。この助太刀が、後々どのような結果を自分達に齎すのかをある程度予想していたために。 だが、風路の件を考えるとこの時点で風紀委員会に大規模な犠牲者が出てしまうのは好ましくなかった。 もし、彼の妹である鏡子を救出に向かう場合風紀委員会を“巻き込んだ”上で、『東雲真慈討伐』の主役にしなければならない。 そのタイミングが数日後に来るという情勢下、風紀委員会が半壊状態になってしまっては自分の目的に支障を来たしてしまう可能性が低くなかった。 その他諸々のメリット・デメリット―情も含めて―を勘案した上で界刺は決断した。不動に決定権を譲るという形での協力を。無論、内心では風紀委員達に怒り心頭ではあったが。 破輩に示した『事実』を取り下げるつもりは毛頭無い。そもそも彼は、不動達が関わるとしても裏方的な協力に終始すると読んでいたのだ。それだけ、不動を信じていたとも言える。 当の不動も、もちろんその辺りに“線引き”を置いていた。界刺の予想通りに。だが、『ブラックウィザード』の攻勢は想定外の代物であった。 しかし、網枷の存在や『六枚羽』という予想外な戦力の登場を差し引いても、『こういう形』での手助けはしたくなかったのが『シンボル』のリーダーの嘘偽らざる心意であった。 「おっと。話が逸れたね。債鬼の言及にもあったが、『ブラックウィザード』の隠蔽工作力は大したモノだ。それ故に、内通者である網枷を泳がせておくという当時の判断はアリだ。 君達は『ブラックウィザード』を潰すことを『目的』としていた筈だ。その『目的』を果たすための1つの手段・・・それが内通者を泳がすことだった。 例え風紀委員や警備員に人的被害が出たとしても、必ずや『目的』を遂行しなければならない。そもそも、風紀委員会は警備員並に危険な職務に就くことは最初からわかってた筈だ」 風紀委員会は、普段危険度の低い任務を優先的に宛がわれる風紀委員が警備員並に危険度の高い任務に就く組織だ。 その意味は言葉以上に重い。危険度の高低は、そのまま命の危険度に直結する。だからこそ、風紀委員とてそれ相応の覚悟―命懸け―を持たなければならない。 「君達も名前くらいは知っているだろう?『殉職』という言葉をさ?『職に殉ずる』。すなわち、治安組織の一員として命を懸けて課せられた『目的』を達することだ。 その過程に・・・犠牲が唯の1つも無いなんて有り得ない。その犠牲になる可能性が今回で言う内通者の存在を知らされていなかった者達であり、 内通者の存在を知って対処に動いていた者達であり、重体を含めた傷を負った者達だ。可能性で言うなら、知っていた者達を優先して始末する可能性だってあった。 これは、想定上発生するかもしれない犠牲であり、この内の何割かが現実として発生した。こうなる危険性を・・・ちゃんと理解した上で橙山ちゃんや椎倉君は決断したんだ。 『目的』の達成のために。一般人を『ブラックウィザード』の脅威から守り抜くために。その覚悟や現実を背負おうとしない人間は、治安組織から去るべきだ。 死亡を含めた犠牲が発生する可能性を認めた上で、それを生み出したくないから粉骨砕身努力して犠牲を回避してみせるとかなら話は別だけど、 起こり得る現実そのものを最初から認めない人間は要らない。現状把握は、治安組織に身を置く者に求められるとても大事な事柄だよ?できない奴は・・・即刻立ち去れ」 「「「「「・・・!!!」」」」」 反論できない。正論故に。現状を把握した上での言葉であるが故に。 「中には『発生していい犠牲なんて存在しない』という人間も居るだろう。というか、そっちの方が圧倒的に多いかもしれない。俺はそれを否定するつもりは無い。その意見は正しい。 でも、俺の意見も正しいと思う。俺のような人間から見れば、『犠牲なんて存在しない』なんて意見は現実として有り得ないとも言うことはできるし、その逆も有り得る。 正しい、正しくない、間違っている、間違ってない・・・。見方とは・・・言葉とは・・・人間とは・・・・・・難しいね」 「・・・複雑ですね」 「加賀美ちゃんの言う通り、複雑怪奇だね。でも、これも人間だからこそできる特権みたいなモノさ。色んな見方や言葉を把握し、その中からどれを選択し、どう貫くのか。 それが大事なんだ。だからこそもう一度言おう。『起こり得る現状を把握する』ことすら怠る人間は必要無い。そんな人間の言葉に説得力は存在しない。 そして、聞こう!斑君、一色君、鏡星ちゃん。後輩を庇う余りに現状把握を怠っていた君達に、俺の言葉を覆すだけの力はあるかい? 君達が本当に起こり得る現実・・・すなわち上司の覚悟や後輩の失態をも全て把握した上で自分の意見を述べるならきっと俺に反論することができる筈だ。 言っておくけど、君達が抱いている感情や理屈は正しいんだ。正論なんだ。だから、俺も俺が考える正論で君達とぶつかろう。さぁ、やってみたまえ!」 「「「・・・・・・」」」 “天才”の問いに斑・一色・鏡星は何かを言おうとして・・・結局は何も言えなかった。正論に本当の意味で対抗できるのは正論だけだ。 そして、正論を口にするのに必要なのが現状把握だ。その必要なことを怠っていた今の3人に、正論を口にするだけの強さは備わっていなかった。 把握し切れなかった理由としては、176支部に配属されて以降は基本的に外回りで活動していた斑達は、後方支援における必要な確認・作業の手順を全て理解していなかったことが挙げられる。 普段から加賀美や葉原、網枷に後方支援業務を頼り切っていた。風紀委員会でも、2日間後方業務を命じられた挙句、勝手がわからずに余計な雑務を増やしていたことがその証明だ。 役割分担と言われればそれまでであるが、それが後方支援に就く鳥羽に求められていた行動を完全に把握できなかった一因となった。 そして、それを斑達自身が心の底から認識したため―本当は固地が鳥羽へ指摘した時点で薄々気付いていた―に九野へ反論することができなかったのだ。 「・・・もういいよ、3人共。その答えは、君達の手で導き出してみたまえ。誰のためでも無い、君達のために。 話を戻す。そんな非情な作戦を指揮する椎倉君達も、リスクに関しては十分考えて対処をして来た筈だ。彼等だって、好き好んで犠牲を生み出したくは無い。決して。 だが、結果としてそれは上手く行かなかった。それは揺ぎ無い事実だ。では、何故上手く行かなかったのか? そこで・・・先程債鬼から口汚く指摘されていた176支部の鳥羽君を例に挙げてみようか。『無能』という言葉を使うのは気が進まないが、ここは敢えて使ってみようか。 その方が債鬼の考えも伝わりやすいかもしれない。もちろん、俺の言葉でちゃんと説明するけどね」 「!!!」 「鳥羽君は、果たして昨日の件において『無能』であったのか『無能』では無かったのか。俺の見立ては・・・こうだ」 “天才”の視線が、176支部の鳥羽に向けられる。彼は、先程固地に『無能』と断じられた人間だ。そのせいで、神谷や浮草がキレた。 果たして、固地の師匠である九野は如何なる見立てを立てるのか。その結果は・・・すぐに出た。 [『無能』] continue!!
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「愚かな人間には死こそが恵み」 鳥山明の漫画『ドラゴンボール』及び関連メディアミックスに登場するキャラクター。 英語表記は悟空に倣って"Gokou Black"、あるいは"Goku Black"。 令和に入ってからは悟空の英語表記が"Son Goku"に統一されたため後者が主流になるか。 担当声優は悟空と同じ 野沢雅子 氏。 海外の吹き替えでもこの点は守られており、悟空役の Sean Schemmel 氏が兼任している。 悟空や悟飯、ターレスとはまた違う、低く囁くようでいながら存在感のある冷徹な声色で演じられており、野沢氏の演技の幅広さが窺い知れる。 TVアニメ「ドラゴンボール超(スーパー)」*1の"未来トランクス編"で初登場する。 本編世界とは別の未来世界に突如現れ、世界を壊滅状態に陥れた謎の人物で、 作品の主人公・孫悟空と瓜二つの姿をしている。 悟空とは異なる黒を基調とした胴着を纏い、左耳に「ポタラ」、右指に「時の指輪」と、 界王神のみが持つ事を許される神具を身に着けている。 しかし未来トランクスの世界では悟空は人造人間編の前に病死しており、ドラゴンボールも消滅しているため本人が蘇る事はまず有り得ない。 かつて過去(=本編基準の現代)の世界での悟空の事をよく知っているトランクスには、「姿形が似た偽者」としか考えられなかった (視聴者からしても、『Z』の劇場版『ドラゴンボールZ 地球まるごと超決戦』で、 孫悟空にそっくりなサイヤ人、ターレスが出てきた前例があるのでこう考えた人も多かっただろう)。 ゴクウブラックという名前はブルマ(未来世界)が便宜的に命名したもの(劇中では更に略してブラックと呼ばれる事が多い)で、 本人がそう名乗った事はなく、あくまで「孫悟空」を自称していた。 + その正体は…(ネタバレ注意) その正体は本物の悟空では無いが、ターレスのような他人の空似でもなく、 第10宇宙の北の界王ザマス(無論某クソゲーではない)が、超ドラゴンボールで悟空と自身の肉体を入れ替えたものであった*2。 本編での基本世界とは別の並行世界の悟空とザマスが入れ替わっている。 「お前らのセンスに合わせて名付けるとしたら… 『ロゼ』… そう…『超サイヤ人ロゼ』」 基が悟空の肉体であるため、サイヤ人特性の能力を持ち本家同様に超サイヤ人に変身可能であるが、 本家とは異なり「超サイヤ人ロゼ」と自称するピンク色の髪の特異形態となっており、 本家オリジナルである悟空やベジータの「超サイヤ人ブルー」と対照的な位置付けとなっている。 漫画版では通常の超サイヤ人にも変身可能であり、超サイヤ人ロゼは本来神である者が神を超えた超サイヤ人に変身しようとした結果とされる。 「お前らのセンスに合わせた」というが正式名称である超サイヤ人ゴッド超サイヤ人を知ったらどんな名称にしたかは謎である 一人称も初登場当初は「私」だったのが超サイヤ人の性質により変身後「オレ(=俺)」に変わり、 以後ノーマル形態でも一貫して「俺」に統一されている。一方の漫画版では口調は荒々しいが「私」のままである。 現代悟空との対面当初こそ二人称は「君」であったが、それ以外は他同様「お前」や「貴様」と呼び方が変わっている。 なお、悟空の肉体であるが故かは不明だが元々のザマスと比べて好戦的になっていたり、戦闘を楽しむかのような言動を見せることもある。 ザマスから不老不死になることを勧められても、強くなる肉体の方に魅力を感じているので断るという価値観の差異も生じている。 悟空の肉体を完全に使いこなせているわけではないので、悟空とベジータの動きに付いていけなくなる事もあるのだが、 本編よりも少し先の時間軸の悟空の肉体であるためか、あと一歩、二人が及ばないという強さを持っている。 ザマスが入った影響なのか、纏う気は紫と黒の非常に禍々しい色に変化している。 悟空と同様にかめはめ波を使う他、悟空が習得にかなり苦労していた瞬間移動も容易く使いこなす。 かめはめ波の掛け声は伸ばさずに短く切るのが特徴。 上述の超サイヤ人ロゼになった後はベジットのように気で作った剣を用いて戦うようになり、振ると同時に針状の気を飛ばす事も可能となった。 さらにサイヤ人としての特性をそのまま受け継いでいるため、追い詰められるほどにパワーアップしていく。 ちなみに漫画版ではパワーアップでどんどん手がつけられなっていくブラックと異なり、 悟空本人とベジータは鍛えすぎていて、追い詰められたことによるパワーアップを行ってもほとんど強化されない、と述べられている。 さらに幾度かの再戦を経てベジータに追い込まれた際にはベジータが「怒り」によってパワーアップしたことを知り、 自らもその身に抱えた「怒り」を力に変えることでさらに大幅にパワーアップ。 気の剣を鎌に作り替え、その一閃で空間を引き裂き、そこから溢れ出した煙から無数の分身を作り出して攻撃するという恐ろしい攻撃を披露した。 話を追う内に徐々にその全貌が明らかになって行くが、基本世界でもやはり同じ流れになろうとしていた。 しかしその前後に悟空とベジータが未来世界へ行った事によりその事を突き詰めたため、 現代へ戻った後にビルスとウイス、更には東の界王神(シン)と共に犯行現場を突き詰め、 ウイスが時間を巻き戻した後、ビルスがザマスを図に乗るんじゃないぞ破壊した事により一件落着。 ……と思われたが、トランクスはかつての人造人間編での経験があったため半信半疑な状態であった。 ビルス曰く「神が神を破壊すれば全ての時空を干渉する」*3と言っていたが、結局はトランクスの思っていた通りの展開であった。 これに関してビルスはさすがに自身の思惑以上な出来事であったためかなり責任を感じていた。 ビルスにとっては、このまま未来へ行ってブラックと未来ザマスを破壊する事は容易い事だったが、 界王神ではない破壊神が時空を行き来する事は立場上やはり不可能であるため、 シンとゴワスに悟空・ベジータ・トランクスの援護協力を要請するしか無かった。 終盤でゴクウブラックとザマス(未来)はポタラ合体を敢行し「合体ザマス」*4となって悟空達を追い詰めるが、 最終的には「全王」によって世界ごと完全消去された。 + スーパードラゴンボールヒーローズ 新時空大戦編で「紅き仮面のサイヤ人」名義で正体不明の人物として登場 (元々『ヒーローズ』には「仮面のサイヤ人」名義でバーダックが登場した前例がある事と、人間を見下す傲慢な言動から、 アーケードプレイヤー及びアニメ視聴者からは正体がバレバレであったが)。 合体ザマスになる前の時間軸で、フューから自身の顛末を聞かされた事から 「全人間0計画」を破壊神や全王に察知されずに行うべくあらゆる別次元に飛び、 99人もの悟空だけを倒す事で、自身の体を慣らし強化し続けた。 この修行と仮面の強化効果により、ブルーの悟空(『ブロリー』以降のヒーローズの展開があるため、未来トランクス編より遥かに強い)が、 同等以上の超ハーツとタッグを組んでも一蹴できるほどの戦闘力を獲得している。 そして悟空とベジータが修行している間に「全人間0計画」を行おうとするが、妨害に現れた「黒衣の戦士」が悟空顔だった事で警戒し、 「超サイヤ人ロゼ2」および「超サイヤ人ロゼ3」への変身を披露。 更には乱入してきたフリーザ、クウラの相手として、時の巻物を使い超一星龍を呼び出す。 そこに現れた身勝手の極意の悟空とSSGSS・暴走制御形態のベジータとも互角に戦うも、力及ばず敗北。 そのため「全人間0計画」に使う予定だったエネルギーを吸収、「超サイヤ人ロゼフルパワー」*5へと変身を遂げ、 ブルー進化以上の力を持つ暴走制御形態のベジータを一撃でダウンさせるほどにパワーアップ。 最終的にSSGSS・進化へと変身したゴジータに敗れ、そのまま消滅する事となった。 格闘ゲームでは合体ザマスと共に『ドラゴンボールファイターズ』に出演している。 基本的に超サイヤ人ロゼの状態で戦うが、戦闘前や戦闘後の演出では超サイヤ人ロゼになる前の姿も見ることが可能。 + 主なゴクウブラックの性能 素早い格闘攻撃と少し発生が遅い代わりにリーチと判定が強力で気弾無敵を持つ気の剣を用いて戦うキャラクター。 近距離は格闘攻撃で攻め、中距離は気の剣による牽制が強力、遠距離もビーム系飛び道具「ブラックかめはめ波」があるなど、 ありとあらゆる距離で戦うことが可能なオールラウンダー。 それに加えて発生が遅くなった代わりにコマンド投げの性質が追加されたビーム系飛び道具「神縛ブラックかめはめ波」を持っていたり、 移動を伴う必殺技を多く持つことから機動力が高かったりと、独特な性質も複数持っている。 さらにアシストの「ブラックかめはめ波」が万能で使いやすく、控えに回っていても様々な場面で輝ける。 単体のみではコンボ火力を伸ばす手段が乏しいことやUZCがロック技であるために扱いに癖があるのが欠点と言えるか。 また前述した通り機動力が高いのだが、このゲームは共通システムの超ダッシュ等の存在故に 全てのキャラの根本的な機動力が高いため、特別強力な点とまでは言えない部分もある。 全体的な性能が安定して高いことから、強さは中堅上位くらいとされている。 その万能さ故にどのような味方や状況にも対応しやすく、先鋒・中堅・大将のどのポジションでも活躍できる。 また、全体的に挙動が素直で分かりやすい上に強力なものが多いため、扱いやすく、初心者にも優しいキャラとなっている。 本作では特殊KO演出として、破壊すると見せかけてデコピンを食らわせるビルスの「破壊神の裁き」でKOされる際、 ゴクウブラックと合体ザマスのみ本当に破壊される(ついでにダメージも最大HPの約5倍と超オーバーキル化)というファンサービス(?)も。 また、担当声優が野沢女史であるということもあってか、開幕デモでの専用台詞が非常に多い。 特にDLCでの追加キャラに関してはほぼ全てのキャラに対して専用台詞が用意されている。 いずれも冷酷かつ残忍、常に相手を見下し、強烈な皮肉を混ぜることもあるなどゴクウブラックらしい台詞が多い一方で、 悟空の身内も含めて多くのキャラに見間違えられるバーダックを明確に別人と認識するどころか彼の過去も知っていたり、 ビルスと同様にGT悟空の体に起きた変化の事もしっかり把握しているなど、神らしい一面も垣間見せる。 この他、『ドラゴンボールゼノバース2』にも登場している。 + ザマスとは 「このザマスこそが、宇宙の知恵、宇宙の法、宇宙の力なり!」 第10宇宙の北の界王。界王神と同じ種族で、モヒカンヘアーと緑色の肌を持つ。 名前の由来は漫画の貴婦人(『ドラえもん』のスネちゃまのママなど)が語尾につける口調から。 mugen的にはマッドマンの語尾と言えば分かり易いだろうか。 担当声優は三木眞一郎氏。 海外では『ドラゴンボールエボリューション』でピッコロ大魔王を演じたJames Marsters氏が吹き替えを担当した。 その強さは、悟空に「第7宇宙の界王神(シン)より強い」と言わしめるほどで、超サイヤ人2に覚醒したトランクスと同等程度。 また、ロゼ化ブラック同様気の剣で戦う事が可能。 身長はシンよりも高く、シンを小学校低学年と例えるなら、ザマスは青年くらい。 現時点では破壊神を除く界王と呼ばれる人種上では間違いなく最強候補である。 第10宇宙を管轄する現界王神ゴワスより次期界王神候補として師事し、修行をしている。 しかし潔癖すぎる人格面故に、ドラゴンボール史上最悪の災いをもたらす事態へと発展してしまう。 悟空たちより数段劣るが不死身であるザマスと、不死身ではないがそもそも歯が立たない強さのブラック、どちらも同時に相手にすると厄介極まりない。 作中では基本世界、並行世界、未来世界と同一存在であるが時間軸の異なる三者のザマスが登場している。 三者の末路に関して、基本世界版はビルスに破壊(消滅)、残りの二者は全王に世界ごと消去(完全消滅)されている。 『スーパードラゴンボールヒーローズ』にも合体ザマスの姿で復活しているが、 こちらでは合体した事で不完全になった不死身能力が機能するようになりパワーアップしている。 そしてこちらでも全王消滅を目標とするハーツによるデモンストレーションとして「神殺し」の力で消去されてしまった。 + 余談中の余談だが 最近のMADでは「トランクスルー」のようなものとして、「ザマスルー」「ブザマス」「ウザマス」なるネタも見かけるようになっている。 しかし、相手にされたらされたで「破壊」という一人用のポッドのような扱いを受ける。 なお、「あなたにテコンドーを教えてやろうか?」とは何ら関係ない。あってたまるか 「我が姿は正義、我が姿は世界… 崇めよ、讃えよ…この気高くも美しい… 不死にして最強の神…ザマスを!」 MUGENにおけるゴクウブラック + Heal the world氏 Heal the world氏製作 2016年11月公開。スプライトは『超究極武闘伝』のものベースに胴着を部分改変したものを使用しており、 音源の少なさからターレス(こちらも野沢女史が担当)の台詞が一部流用されている。 こういった深刻な素材不足は同じ声のバーダックも同様だが、ゲームでの出演が多い分ブラックほど音源には困らないだろう。 + CobraG6氏製作 CobraG6氏製作 新MUGEN専用。 『超究極武闘伝』の孫悟空を改変したスプライトを用いて製作されている。 モーションは『ドラゴンボールファイターズ』を参考にしており、ザマスを召喚して攻撃する他、超必では合体ザマスになる。 AIは簡易的なものがデフォルトで搭載済み。 DLは下記の動画から + Human Human氏製作 Human Human氏製作 新MUGEN専用。 Alizzon氏の作品を改変・修正したもの。 スプライトは『超究極武闘伝』仕様で、孫悟空を素体にしている。 ボイスは悟空の流用だが、一部本人の声も取り入れている。日本語。 必殺技は明確に素体と差別化が為されており、鎌や剣による斬撃、特徴的な形状の気功波、相手を何度も画面端に叩きつけてバウンドさせる乱舞技と多彩。 凶上位相当の優秀なAIもデフォルトで搭載されている。 紹介動画(DLリンクあり) + Mikel8888氏 InSeph氏 MYTHOS氏製作 Mikel8888氏 InSeph氏 MYTHOS氏製作 新MUGEN専用。 海外産のちびキャラで、AAgus氏とJetrix97氏による『JUS』風ドットを用いて製作されている。 DLは下記の動画から 出場大会 JUS風キャラトーナメント JUS風キャラタッグトーナメント 【MUGEN大祭】特盛りシングルトーナメント 出演ストーリー クロスオーバー・ザ・ワールド *1 ちなみに『ドラゴンボール超(スーパー)』はTVアニメ版が先行で制作されているため、 コミック版とは話の大筋などは基本的に同じだが設定や内容などが微妙に異なる。 *2 ギニューのボディーチェンジと異なり、声は元の肉体のままとなっている。 ザマスの肉体に替えられた悟空がザマスの声で口調が悟空という場面がある。 なお、こちらの悟空は口封じも兼ねて妻子共々殺害されてしまった。合掌。 ゲーム作品『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』では肉体を入れ替えた直後のザマスが 「ザマス(孫悟空)」名義で実装されている。 *3 この時は結果論重視でトランクスの言い分通りの展開となったが、 本来はビルスが述べた通り神の力は全ての時空を干渉する。 そうならなかったのは、ゴクウブラックが神具「時の指輪」を身に付けていた事でそれらの干渉から免れていた事が原因となっている。 つまり逆を言えばタラレバ理論上、ビルスがセルを破壊した場合、 全ての時空におけるセルの存在そのものが完全消失するはずである。 *4 これを受けてか、ゲーム作品『ドラゴンボールフュージョンズ』ではオリジナルキャラクターとして、 少年悟空とフュージョンした「ゴマス」が登場している。 *5 なおこのロゼフルパワーだが、筋肉が盛り上がり尻尾も生えるが体毛は生えない、あとアーケード版では目元に隈取もつくという、 超サイヤ人3と4の中間のような特殊な見た目をしている。
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「光の使者、キュアブラック!」 『ふたりはプリキュア』『ふたりはプリキュアMaxHeart』で美墨なぎさが変身するプリキュア。 CVは 本名陽子 女史。 本名女史は『仮面ライダーBLACK』や『RX』にチョイ役子役で出演した(役はそれぞれ別)ことがあったため、 一部ファンからは「キュアBLACK」とも呼ばれている。 選ばれし勇者であるメップルの力によって変身する史上一人目にして唯一の「黒」のプリキュア*1。 お腹を露出したコスチュームを着た所謂「初代へそキュア」でもあるが、『MaxHeart』では服装が変更されてへそ出しではなくなった (同じくへそキュアだったキュアドリームも2年目ではへそ出しを辞めている。他はそもそも1年で終了している)。 相方は「白」のプリキュアであるキュアホワイト*2。 + 美墨なぎさプロフィール 10月10日生まれ、天秤座のO型。私立ベローネ学院女子中等部2年生(※無印開始時。『MaxHeart』では3年生)。 2年生の時点でもラクロス部のエースを務めており、3年生ではキャプテンとして活躍している。背番号7。 家族構成は研究職の父・岳と主婦の母・理恵、弟の亮太の4人匹暮らしで、家は「TOEI ANIME MANSION」。 食欲旺盛で、好物はチョコレートとタコ焼き。 なお、「靴下がちょっと臭い」という公式設定があり、敵幹部がほのかそっくりに化けてきた際、 「この情報を知っているのは本物のほのかだけだ」と正体判別に使用したことがある(無印第20話)。 前述の通り以後の「桃キュア」の原型となったキャラクターで、運動は得意だが勉強は苦手という部分が大体共通している (ただし、なぎさは水泳とウィンタースポーツは苦手)。 まぁ逆だったり、勉強も運動も苦手なキャラが多かったり、完璧超人が居たり、どちらも努力で克服したりと、実際は桃キュアにも色々居るのだが。 生意気な弟に対してよくコブラツイストを決めたり、しかし戦闘ではあまり使用しない 同性からラブレターをもらうなどボーイッシュに描かれており(ただし本人には憧れの先輩(男性)が居る)、 その分、心根は素直で自分の感情や思いがはっきりと表情に出る。 ただ、ネガティブな気持ちを引きずってしまい落ち込んでしまうこともしばしば。 口癖は「ありえなーい!」。 OPの歌詞では「ぶっちゃけありえない」とあるが、実は作中では「ぶっちゃけ」は数えるほどしか使っておらず、繋げて言ったことはない (後年、オールスターズの関連コンテンツでは「ぶっちゃけありえない」と言ったことはある)。 また、諺や慣用句を言い間違えることがよくあり、それをほのかが即座に訂正するのがお約束。 栄えある初代主人公ということで歴代プリキュアをまとめる立場のはずだが、 チーム競技であるラクロス部のキャプテンのはずなのに指揮能力が皆無で雑な指示を出してピンクチームを困惑させたこともある。 そのためホワイトと二人で遊撃に回った方が実力を発揮できるようだ。 …まぁプリキュアがあまりにも増えすぎて映画『プリキュアオールスターズ』で一言も喋らない「居るだけ参戦」が増えすぎた結果、 2017年以降は『プリキュアスターズ』に変更され、出演は「最新3チームのみ」となったため、なぎさ達も参戦しなくなったが…。 とは言ったが、2019年の『HUGっとプリキュア』(TV版)にはHUGっと側によるしょーもない理由により登場している + 余談(別の作品) 本作の数か月後に稼働開始したコナミのアーケードゲーム『クイズマジックアカデミーII』の新キャラ、 ユリの服装(マジックアカデミー格闘学科の制服)がキュアブラックに似ていた事がプレイヤーの間で話題になった。 ただしユリ自身は青髪ポニーテールにサテライトキャノン型のリボンと差別化されている。あと、おっぱいも大きい さらに余談だが、ゲームショーでコナミが複数人用意したユリのコスプレイヤーは全員白いシャツでヘソを隠していた。 多分ゲームショーではヘソ出しNGだったのだろう。 MUGENにおけるキュアブラック 以前よりMUGENでは、ドロウィン氏の手描きによるキャラや、 ザケンナーと同じく『ふたりはプリキュアMaxHeart DANZEN!DSでプリキュア 力を合わせて大バトル!!』のドットを使用したゆ~とはる氏のものが存在していた。 ただし、前者は既に入手不可、後者は未だWIPの体験版キャラである。 ここでは改変ゴーヤーンやキュアブルーム、キュアイーグレットを手掛けた柳川秀氏によるものを紹介する。 『Yes!プリキュア5GoGo! 全員しゅーGO! ドリームフェスティバル』のドットを使用している。 また、プリキュアのコスチュームは左右非対称のデザインなのだが、自分の向きに応じて異なるパレットを適用しているため、 立ち位置が入れ替わっても左右反転で表示されないようになっている。 ただし、ステートを奪われている状態(投げられ中)では右向き時のアニメになる。 現在は改変ゴーヤーンらと共に氏のOneDriveにて公開中。 改変ゴーヤーン同様のチェーンコンボシステムが搭載されており、 通常は攻撃が当たった際のヒットポーズ解除後からチェーンコンボ入力できるが、 このキャラはヒット/ガードに関わらず当たった瞬間から先行入力可能。 また、某ゲームのようにダウン値的なチェーン制限値システムがある。 通常技とコマンド技は制限値が30以上、超必殺技は40以上で当たらなくなるが、ターゲットがいなくなることでリセットされる。 必殺技の一つでは昇龍拳を体得しており、本家同様に623Pの昇龍コマンドで、発生直後に短時間の無敵が存在する。 さらには超必殺技として「偽・昇竜拳」が所持している(動作や演出は真・昇龍拳の再現)。 説明書によると、とあるストリートファイター直伝とかなんとか。 この他に、キュアブルームやキュアイーグレットには無かったシステムとして「極限状態」があり、 ライフ低下により根性値のように攻撃力・防御力が格段に上昇する他、極短い無敵時間が付加され自動でパワーゲージが回復する。 極限状態は2段階あり、2段階目では1コンボで900近くダメージを与えられるため形勢逆転を狙える。 AIはデフォルトで搭載済み。 5段階のレベル変更の他、攻撃力・防御力・初期のゲージ量を設定できる。 これ以外にもhatya氏による「キュアブラックEX」が存在していたが、現在は氏の引退により公開終了。 デフォルトで狂中位ランク近い強さの高性能で、超強化スイッチをONにすると圧倒的火力で狂上位で戦うことができる。 下の動画の希望絶望大会では、絶望側で登場し活躍していた。 参考動画 「それって……ほのかのこと……? ほのかのこと言ってんのーーーーーッッ!?」 出場大会 「魔法少女とも助け合いでしょ」杯 【MUGEN大祭】特盛りシングルトーナメント *1 以後、黒キュアはキュアセバスチャン(爺)や、敵が作った偽物(コピー)、と言った紛い物しか存在しない (所謂「黒ミューズ」は黄キュアの変装であり、ある意味紛い物である)。 そのため『オールスター』作品に出る際は「桃キュア」「ピンクチーム」扱いをされている。 例外的に『ハピネスチャージプリキュア!』では全プリキュアが共通の黒いジャケットを着ているが (一部の海外プリキュア(ハピネスチャージ世界では世界中にプリキュアが存在する)は改造ジャケットだが、色が黒いのは同じ)、 キュアブラックとは違いジャケット以外はパーソナルカラーである。 なおコスチューム的には『MAX Heart』から登場したシャイニールミナスの方が桃キュアにふさわしいのだが、 「桃キュアはメイン主人公」と言う決まりにより、ルミナスは(髪色から)黄キュア扱いをされている (黄色髪でもキュアハートやキュアフローラは桃キュア扱いである。変身前は桃髪と茶髪だけど(ルミナスは変身前から黄髪))。 まぁ当時の設定ではルミナスはプリキュアではなかったわけだが(『さんにんはプリキュアMH』ではないので)。 そして「プリキュア20周年作品」である『ひろがるスカイ!』にて、遂に青キュアにしてメイン主人公のキュアスカイが登場した 一応スカイも差し色としてピンクが使われているが、同作の桃キュアは4人目のキュアバタフライである(青白黄桃の順) まぁ流石に青空をイメージして青くないわけにはいかなかったのだろう。 スーパー戦隊ではバルイーグルに始まり赤が空属性を担当する事は少なくないけど(全員空属性なジェットマンは流石に仕方が無いが) 余談だが、この作品の黄キュアもレギュラー初の男性キュア(ただし妖精が人間に化けたもの)である (レギュラーでなければ『HUGっと』のキュアアンフィニ(白キュア)と「みんながプリキュア」が存在した。 ネタキャラで良ければ前述のセバスチャンの方が更に古いが。ゴリラとファイヤーは想像上の存在なのでノーカン)。 *2 なお「白キュア」も数えるほどしかいないため「青キュア」「ブルーチーム」扱いをされている。 と言うのも強化形態「スーパープリキュア」は女神や天使を意識した白い衣装に変化する事が多いため、 パーソナルカラーとして使いづらくなってしまったから。 厳密にはキュアイーグレットは「白銀」であり、キュアエコーは番外であるため 白キュアはホワイトとキュアリズムしか居ない。 更にはリズムも「キュアメロディと2人ピンク」(メロディが「桃地に白」、リズムが「白地に桃」)扱いで本当は桃キュアなんだとか。 キュアサマーは「白地に虹色」だが、メイン主人公なので桃キュア扱いされている。
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384 ブラックアウト・ナイト (1/2) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/11/01(日) 12 12 03 ID pPMoBxmP 「………………」 ノックに促され、自室のドアを開いた先には、変な女が2人いた。 「とりっく・おあ・とり~とぉ!!」 「とりっく・おあ・とり~とぉ!!」 「…………」 バタン。ガチャリ。 「ふう……。俺は何も見なかった」 こうして俺は、2人の悪魔から逃げることに成功し―― ドンドン!! ドンドンドン!!! ドカドカドゴォッ!!!! 「……ってわかったよ!! 今開けるから待てっ!!」 近所迷惑になる前に、観念してさっき閉めたドアを開ける俺。 決してドアを叩く音に、狂気を感じたからではない。断じてない。 「うぅ~……、とりっく・おあ・とりぃとぉ~……」 「うぅ~……、なんでドア、閉めちゃうのぉ~……」 「ええい泣くな。というか、そんなカッコした奴が来たら、普通は閉めるぞ。 大体なんなんだよその格好は。気でも触れたのかよ2人とも……」 そんなワケで、俺の目の前にいる妙な格好をした2人は、俺の実の姉と妹だ。 今夜はなんだかよくわからない、仮装みたいなカッコをしている。 「なによ、今夜は一段とノリが悪いぞ、おとーとっ!」 「ノリが悪いと女の子にもてないよ、にーちゃんっ!」 もてないのは誰のせいだと思ってんだよ、このバカ姉妹め。 昔からずっと、俺がもてないように、裏工作ばっかりしてたくせに。 オマケに今じゃあ、もう絶対他の女と付き合うなんて、出来やしないってんだ。 「大体おまえら、自分の可愛い子供たちを放っといて、何やってんだよ?」 「あ、あの子たちなら心配しなくても大丈夫。もうぐっすり眠ってるから」 「ちゃんと心配してくれるんだね。まあ、あたしたちの子供だもん、ね?」 そう、こんな子供じみたことをしているが、実は2人とも1児の母だ。 そして、2人の子供の父親は、実は血の繋がっている俺だったりする。 俺の寝込みを襲い、勝手にセックスして、子供をこさえやがったのだ。 それも初めてそれを知らされたのが、出産の1ヵ月前という計算ぶり。 2人とも○学生と○学生の身で、とんでもない無茶をしやがって……。 ちなみに子供たちは現在7ヵ月。2人とも可愛い盛り。 父さんと母さんの協力を得て、現在すくすくと成長中。 「で? 結局なんなんだよ、その格好は……?」 「あ、やっぱりおとーとってば、ハロウィンのこと覚えてなかったのね?」 「にーちゃん、今日はハロウィンの日なんだよ?」 「ハロウィンの夜には、子供たちがお化けのカッコして、家々を訊ね回るの」 「そんで『Trick or Treat』って唱えて、お菓子をもらうんだよ♪」 「ふぅん、まぁアレか。日本の某業界が陰謀のエセ祭りなんだな?」 「もう、おとーと(にーちゃん)ってば、夢がなさすぎっ!!」 どっかで聞いた科白を聞き流しつつ、俺は目の前の姉妹の格好を観察してみた。 妹の格好は、黒い魔女の帽子と外套を羽織り、その下は下着のような服だった。 それはオレンジ色でふわふわしていて、何か『かぼちゃぱんつ』を連想させる。 姉の格好は、首から下を長くて薄い白色の布で覆った、幽霊のような服だった。 うっすら透き通ったり、輪郭が出てきているが、おそらく布の下は全裸だろう。 妹が持っている、かぼちゃのランタンが少しは温かいとはいえ、寒くないのか? 「「もちろん寒いよっ! だからあっためて♪」」 「だったらちゃんと服を着ろ! このバカ姉妹っ!!」 なんかもう、心配するのもアホらしくなってきたよチクショウ。 385 ブラックアウト・ナイト (2/2) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/11/01(日) 12 21 36 ID pPMoBxmP 「まあそういうわけだから、とりっくおあとりーとっ♪」 「おかしをくれるまで、あたしたちは部屋に帰んないよ?」 言いながら、2人とも俺の部屋に侵入してくる。 まあ俺の部屋の中なら、廊下よりは温かいし、別にいいけど。 「ああちょっと待ってろ2人とも。おかしなら確か……」 言いながら、俺は机の引き出しの中を漁ってみる。 たしかこの中に、非常食用のスナックを貯めといたはずだが―― 「あ、その中のおかしなら、私たちがこないだ食べちゃった♪」 「うん、にーちゃんの浮気調査のために、忍び込んだ時だね♪」 「浮気とかいうな。そんで人の部屋に勝手に忍び込むなっ!」 なんかやる気をなくすと同時に、ふと嫌な予感が頭をよぎった。 その予感が確信に至ったのは、姉妹2人が俺の目の前に立った時だった。 「なっ、なんだよどうしたんだよおまえr」 「……そっか、おかしはないんだね、おとーと?」 「……だったら、もうイタズラするしかないね?」 そう言いながら、俺の身体をずいずいとベッドへと押しやる2人。 どう考えてもこの展開は、そっち方面の展開でしかなさそうだ。 だってコイツらどう見ても、明らかに欲情してやがんじゃねえか! このままじっとしてたら、俺はこいつらに犯される。早く逃げ―― 「ってあれ? 身体に力が入らな……ってかなんか、熱い………」 なんだコレ? なんだか気分がムラムラしてきやがった。 ペニスが勃起して、誰かに直に触られただけで射精しかねない。 驚いている間に、俺はあっさりと、ベッドに押し倒されていた。 そして両腕を姉妹2人に絡め取られ、もう逃げられそうにない。 「うふふふ。ようやく媚薬が効いてきたよ、いもーと♪」 「ランタンの媚薬キャンドル。使えたね、ねーちゃん♪」 「そんなもん仕込んでたのか……おまえら………」 俺のそんな呟きは、姉妹2人の濃厚なキスに、飲みこまれていった。 「あのさ、おとーと。私たちそろそろ、2人目が欲しいな~?」 「だからにーちゃん、あたしたちにまた、白いのちょーだい?」 馬鹿なこと言ってんじゃない、とツッコむ余裕は、今の俺にはない。 どんだけ父さんと母さんに迷惑かけりゃ気が済むんだよおまえらは。 まあ母さんは笑顔で「もっとやれ」みたいなこと言ってくるけどさ。 その横でひきつり気味な笑顔の父さんを見ると、いたたまれねぇよ。 というか、なんでマジであの2人、俺らをどうにかしないんだ? 普通なら子供たちが姦通しあって妊娠したら、隔離しにかかるだろ? まさかとは思うけど、あの2人も兄妹ってこと、ないだろうな……? 「精液(おかし)をくれなきゃ性的暴行(イタズラ)するぞっ♪」 「犯してちょうだい? じゃないとエロスなイタズラするぞっ♪」 「どっ……どっちもかわってねええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」 最後の俺の全力の叫びは、もはや誰も聞いちゃくれなかった。 てか胸や尻が押しつけ……前が見え………だから呼吸g………… ――この日、俺は何度目かの意識暗転(きぜつ)を体験した。もうやだこの姉妹……! ― Which are Treck or treat, you? ―
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お願いします。 -- 竹本涼馬 (2014-04-28 13 39 25) 配布方法を教えてください。 -- Vector (2014-05-11 16 30 18) やって見よう! -- 佐藤 秀憲 (2014-05-17 08 34 38) がんばれーw -- ふみと (2014-05-26 11 06 03) 鯖で使ってよろしいでしょうか -- 猫 (2014-06-15 15 44 00) こちらのワールドはマルチプレイに対応していません。 -- ブラック (2014-06-15 22 00 04) 体験版では出来ないですよね -- --- (2014-06-23 10 08 36) いれかたおしえて -- 木村 (2014-06-24 20 09 05) すごくおもしろそう -- 木村 (2014-06-24 20 10 21) 入れ方は上にかいてある ↑製品版買え -- 名無しさん (2014-06-25 13 45 55) 実況させてーーーー -- ゆっくり実況者白ネコ (2014-07-21 18 12 07) おちしひそくそそき -- hyggi (2014-07-23 10 19 51) まだいつやるか未定なのですが、 -- runa rei (2014-08-26 18 14 04) まだいつやるか未定なのですが、YouTbeで実況させて頂いてもよろしいでしょうか? -- runa rei (2014-08-26 18 15 32) 実況します! -- ryuta918 (2014-09-14 02 36 46) •がんばれ202will (2015-06-23 19 11 20) マインクラフトたのしい -- れいる (2015-07-19 18 02 22) マインクラフトたのしい -- れいる (2015-07-19 18 14 47) はい!、 -- こうたん (2015-07-30 16 21 46) 欲しい -- はやと (2015-08-07 08 10 26) 今後動画で使わせていただきます! -- mamesuke (2015-08-10 15 30 12) おもしろそおー -- タクミン (2015-08-29 09 54 16)ーw•がんばれーw•がんばれーw•がんばれーw -- 彰優 (2014-10-31 15 17 40) 動画とらせてもらいます! -- sogosogo2 (2014-10-31 21 49 14) 動画撮影させていただきます! プレイ -- あすか (2014-11-16 15 06 38) すごいです -- 磯田 (2014-12-20 16 42 08) 実況させていただきます(´∀`*) -- NAUNAO (2014-12-25 13 10 27) 体験版でできますよ -- 名無しさん (2014-12-29 12 23 08) 僕もぜひ実況させてもらいます! -- 黒の実況チャンネル! (2015-01-24 15 19 38) おもしれい -- たく (2015-02-02 19 33 58) fgb -- まなと (2015-02-16 18 37 42) やらせていただきます -- ゆっくり実況@K (2015-03-03 21 11 32) 体験版でもできた -- kousei 2150 (2015-03-10 21 12 55) 体験版でも出来るの!? -- yurinn (2015-04-18 20 58 25) 12 -- asdfghjkl; (2015-06-01 18 46 57) yariteeee -- 1202will (2015-06-23 19 10 43) やりたい -- 1
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ブラックバイソン【ぶらっくばいそん】 (バイソン、ブラックバイ、BB) 常に怪しく笑っている印象の、怖くて美しいお姉さま。 地・闇属性。 死を操る、鬼畜、気弱、海賊の角笛など設定の幅は広い。 グリーンサイとセットだったり、ピンで使われたりと様々。 ksgではバイキンマン役としてブライアンパンマンと共に登場するなど。 属性が死の支配者と被るせいか、彼女と対立、下位互換の存在として扱われる事がある。 同じく、大和魂と恋愛フラグの立つ事もある。 余談だが、特撮ドラマ『超獣戦隊ライブマン』には同名のヒーローが存在する。 さらに余談として『海賊戦隊ゴーカイジャー』において、女性が変身するヒロイン仕様の登場回が存在する。 関連キャラ 死の支配者:上司 下克上相手 ホワイトハウス:仲間(住居) アグネファイア:仲間(上司) ブリザルド:仲間(上司) ライスパーク:仲間(上司) グリーンサイ:仲間(同期) セイントミルク:仲間 ラブチャーム:仲間 大和魂:仲間 恋人 武蔵漁船:仲間 オレンジミカン:仲間 クリアクリーン:仲間 シアンライブラ:仲間 ピンクピーチ?:仲間 パワーパンダ?:仲間、ペット? カテゴリ:玉露軍
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ブラック ハーマン、ブラック 上限数値:報告のある最大の数値 スタイル:項目の上限数値がアップした時に使用したスタイル名 クエスト:アップした時のクエスト場所 上限数値 スタイル クエスト 備考 腕力 体力 器用さ 素早さ 知力 精神 精神 魅力 コメント コメント
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株式会社KUURAKU GROUP(くふ楽) http //www.kuuraku.co.jp/ 株式会社KUURAKU GROUP(くふ楽) http //www.kuuraku.co.jp/ 株式会社EMシステムズ http //www.emsystems.co.jp/ 株式会社 UCOM http //www.fttx.co.jp/ リコー販売株式会社 http //www.r-hanbai.ricoh.co.jp/ 株式会社ジャステック http //www.jastec.co.jp/ 株式会社富士通関西システムズ http //jp.fujitsu.com/group/fks/ 株式会社 東計電算 http //www.toukei.co.jp/ 株式会社 モンテローザ http //www.monteroza.co.jp/ 株式会社リンクレア http //www.lincrea.co.jp/ 株式会社ワークスアプリケーションズ http //www.worksap.co.jp/ 日鐵商事株式會社 http //www.ns-net.co.jp/ 株式会社イノベーショントラスト http //www.i-trust.co.jp/ 株式会社 片岡製作所 http //www.kataoka-ss.co.jp/ 株式会社湯山製作所 http //www.yuyama.co.jp/ 日本コムシス株式会社 http //www.comsys.co.jp/ 株式会社アルトナー http //www.artner.co.jp/ 株式会社フォーラムエンジニアリング http //www.forumeng.co.jp/ 株式会社 DTS http //www.dts.co.jp/ ソフトウエア興業株式会社 http //www.sic.co.jp/ 東海リース株式会社 http //www.tokai-lease.co.jp/ 日本コムシス株式会社 http //www.comsys.co.jp/ 富士ソフト株式会社 http //www.fsi.co.jp/ 株式会社日本システムディベロップメント http //www.nsd.co.jp/ シグマトロン株式会社 http //www.sigmatron.co.jp/ 株式会社オンテックス http //www.ontex.co.jp/ 中央出版株式会社 http //www.chuoh.co.jp/ 株式会社再春館製薬所 http //www.saishunkan.co.jp/ 株式会社 アルプス技研 http //www.alpsgiken.co.jp/ 大和冷機工業株式会社 http //www.drk.co.jp/ 日本食研株式会社 http //www.nihonshokken.co.jp/ 株式会社丸八真綿 http //www.maruhachi.co.jp/ 株式会社ノエビア http //www.noevir.co.jp/ 株式会社大塚商会 http //www.otsuka-shokai.co.jp/ 株式会社サイバーコネクション http //www.cyber-co.com/ 株式会社アルファシステムズ http //www.alpha.co.jp/ 日揮ユニバーサル株式会社 http //www.n-u.co.jp/ ダイダン株式会社 http //www.daidan.co.jp/ 株式会社富士薬品 http //www.fujiyakuhin.co.jp/ ヤマトシステム開発株式会社 http //www.nekonet.co.jp/ 株式会社半導体エネルギー研究所 http //www.sel.co.jp/
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ブラックナイト(Black Night) (キャラクター、マーベル) 「ブラックナイト」の称号は、魔剣エボニーブレードの所有者に与えられるもの。 エボニーブレードは、6世紀のアーサー王の時代に、魔術師マーリンが隕石から鍛えて作った魔剣であり、人を斬ることができない。石や金属も両断する切れ味を持ち、あらゆるエネルギーを吸収したり、跳ね返したりして、使い手を守る。しかし、持ち主が人を殺めると、持ち主を血に飢えた狂戦士と化す呪いがかけられている。 初代:スカンディアのパーシー卿(Sir Percy of Scandia) 二代目:ネイサン・ギャレット(Nathan Garrett) 三代目:デーン・ウィットマン(Dane Whitman) 他にもエボニーブレードを受け継いだものがいるが、主要なブラックナイトは上記3名である。 スカンディアのパーシー卿(Sir Percy of Scandia)、スカンディアのパーシバル(Percival of Scandia) 初出:Black Knight #1 (1955年3月) 属性:人間、男性、地球人、イギリス人 概要 アーサー王の臣下の一人。円卓の騎士の一員。 パーシー卿の両親が亡くなったとき、マーリンが彼を呼び、マーリンのエージェントとなり、普段はプレイボーイのふりをしつつ、アーサー王の領土が侵されそうになったときは”ブラックナイト”の姿を取り戦うことを命じた。 ブラックナイトは、黒い鎧と、黄色い鷲の描かれた盾を装備している。鎧は、エボニーブレードと同じ金属以外は受け付けない。愛馬の名はサンダー。 キャメロット落城の時、死亡。魂は後のブラックナイトを見つめており、子孫のネイサン・ギャレットを避け、デーン・ウィットマンにブラックナイトを次がせるときに、この世に多く現れた。 ネイサン・ギャレット(Nathan Garrett) 初出:Tales to Astonish #52 (1963年11月) 属性:人間、男性、地球人、ブリテン籍、英国籍、米国籍を持つ 概要 スカンディアのパーシバルの子孫。デーン・ウィットマンの叔父。 イギリス出身の科学者。元は生化学者であり、中国の産業スパイも行っていた。 科学技術で作られた黒い鎧と兜に身を包み、翼のあるロボット馬を駆る。 マスターズ・オブ・エビルの一員。 当初は、ハンク・ピムの発明品を中国に売り渡そうと画策していた。 アイアンマンとの戦いの際に、倒したアイアンマンを上空から放り捨てるが、アイアンマンが咄嗟に馬の鞍を掴んだため、共に落下しそれが致命傷に。 装備は、フルアーマーに似た軽量なボディーアーマー(弾丸発射装置、目眩ましのライトなどを装備)、ビームなどを放射するパワーランス、エレンディラという名の空飛ぶ馬(黒色で悪魔のような外見)である。 デーン・ウィットマン(Dane Whitman) 初出:Avengers #47 (1967年10月) 属性:人間、男性、地球人、アメリカ人 概要 初代ブラックナイト、パーシー卿の末裔。二代目ブラックナイト、ネイサン・ギャレットの甥。 二代目の科学装備を受け継ぎ、パーシー卿の魂からエボニーブレイドと黒の鎧を託された。 その他、レーザーブレードを使うときもある。 ヘルメットと革ジャンで戦う時も 当初は叔父の装備を用い、叔父と同じようにマスターズ・オブ・エビルに入ったが、マスターズ・オブ・エビルを裏切り正義の道に入る。 ロマンスは多いものの、女運が極端に悪い。 エンチャントレスには石にされ、ワスプには振られ、二代目イエロージャケットは別の宇宙にいってしまう。 ヴィクトリアとはあくまで一線を超えることなく、セルシーは発狂と、どのパートナーともうまくいかなかった。 愛馬 最初の馬は、アラゴルンという遺伝子改良によって作り出されたペガサスをヴァルキリーから与えられた。 だが彼が十二世紀に行っている間、ヴァリナーという有翼馬を十二世紀で手に入れた。 通常は、湖の貴婦人に与えられたペンダントにより召喚される、ストライダーという白い天馬である。 アメコミ@wiki
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【別にいいわよ、時間には間に合ってるんだし】 【……沢山教えて、色んな事を】の続きです。 温泉旅行から帰宅して、あたしは日記をつけるや否やベッドに倒れこんだ。すっごく充実した心地良い疲れ。即座に夢の世界へと直行したわ。 次の日の朝。すっごく快適な目覚め。あたしは何時もよりもかなり早く起きたの。温泉饅頭を部室の冷蔵庫に仕舞おうと思ったから。うん、体調もバッチリ気分も爽快。温泉旅行&御主人様々ね!! 手早く準備を済まし、御主人様が御呪いを掛けてくれたネックレスを身に付け、元気よく玄関を飛び出す。きちんと皆に謝ろうと考えながら。うん、勿論、キョンにもね。じゃないと団長として失格だもん。 と、その勢いが門扉の手前で止まった。見慣れたシャギーカットの女の子が静かに佇んでいたから。 「有希っ!? ど、どうしてこんな所に?」 「迎えに来た」 「……迎えにって? あたしを? どうして?」 沢山の疑問符が頭の中を飛び回る。そんなあたしの疑問を全て無視して、有希は淡々と喋るの。 「全て無事に終了。何も心配しなくていい」 「無事に終了? 何が? ……御免、有希の言ってる事ちょっと判らないわ」 あたしの疑問に答える事無く、有希は大きく頷いたの。この子にしては珍しい位大きくはっきりと。「いつも通り」と呟き、そしてあたしをジッと見つめる普段通りの落ち着いた黒い瞳。 「……うん、判ったわ。有希がそう言うなら安心ね」 と訳も判らず、でも、安心してるあたし。何となくだけど、大丈夫だって気がしてきたわ。 「あ、そうだ!! 週末……御免ね、色々心配かけたでしょ?」 これまたコクリと頷く有希。あたしは少し照れ臭くなり、めちゃくちゃ早口で、 「でね、お詫びの品って言ったら変なんだけど、おみあげ買ってきたから、部室で食べましょ?」 と言って紙袋を持ち上げた。一瞬だけど確かに有希の瞳が輝いた。うん、興味を持ってくれたみたい。 「何?」 「ふふっ、それは部室に着いてからのお楽しみ!! だから早く行きましょ!!」 一方的にあたしが話し、有希が短く返答する今までと何ら変わらない会話パターン。長い坂を上りながら、有希に語りかける。 「……と言う訳で、温泉に行って気分転換してきたって訳なの」 「そう」 「うん……御免ね、心配させちゃって。ホントに団長失格だわ」 「団長は貴方にしか出来ない事。自信を持つべき」 「ふふっ、有希は優しいわね」 あらっ、有希に励まされるなんて、朝から縁起がいいわね!! それに、有希の変わらない態度にも安心しちゃった。 誰も居ない校内を抜けて部室へ。なんだか、久しぶりな気がするわ。時計を見ると始業まで1時間近くある。こんな時間に部室にいるのって文化祭以来かも。当然の様に有希が窓際の席に腰掛る。変わらない風景に思わず笑みが零れた。 「やっぱり有希が部室で読書をしてると、落ち着くわね」 有希が小さく頷いて読書を開始し、そして、あたしが鞄と紙袋を団長机に置くのと同時に、扉がバンッと大きな音を立てて開く。こんな時間に誰かしらと伺うと、何とみくるちゃんだった。 「あ、みくるちゃん!! おは……よ……う?」 珍しく荒っぽいご登場ね、って思いつつ挨拶しようとしたあたしに向かって、みくるちゃんは見た事も無い位キツイ表情を浮かべ、突進してくる。柳眉を逆立てるって今のみくるちゃんのためにある言葉じゃないかしら? えっと、本気で怖いんですけど……。 そして、戸惑い怯えるあたしの目の前で急停止。声を掛け様とした矢先、ペチとあたしは叩かれた。みくるちゃんに。右頬を。唖然としてみくるちゃんを見返すと、目に涙を一杯溜めて、 「涼宮さん!! どうして連絡してくれなかったんですか!? すっごくすっごく心配したんですからぁ……何かあったらどうしようかと!!」 あたしに縋りついて幼子の如く泣き出してしまったみくるちゃん。小さな声であたしの名前を幾度も呟いている。 「御免ね」「心配かけちゃったね」って何とか落ち着かせて椅子に座らせていると、今度は古泉君が駆け込んで来た。こちらも大きな音を立てて扉が開かれたわ。 あ、有希は当然、平然と窓際で読書。ホント、この子は変わらないわ。因みに有希が全員に連絡をしたらしい。何時の間に?って思ったけど、有希なら有り得るわねって納得。 あたしは、これまた心底安心したって安堵の見本例みたいな笑みを浮かべて入り口に佇む古泉君に声を掛けた。 「あ、お早う、古泉君。御免ね、心配かけたみたいで」 「……いえ、本当にご無事で安心しました。もし涼宮さんに万が一の事があれば、副団長として申し開きが出来ないところでしたので。ですが、出来ましたら、何処で何をされていたかは教えて頂きたいものです」 古泉君が片脚を引きずりながら、パイプ椅子に座る。ちょっと辛そう……。 「ん? 古泉君、脚どうしたの? 何か怪我?」 「あぁ、御見苦しい所をお見せしました。バイト先で少々無茶をしまして。いえ、軽い捻挫ですのでご心配には及びません」 何故か、凄く古泉君に悪い事をしてる気がして、あたしは「御免、無理しないでね」って優しく声を掛けていた。古泉君はびっくりしたらしい。暫く絶句してから「ありがとうございます」って頭を下げてきたの。何故か嬉しそう。 うーん、気のせいかもしれないけど、多分、謝らなきゃいけないのはあたしだと思うんだけど……。 古泉君に対し更に言葉を重ねようとして、皆があたしを見ている事に気が付いた。その視線の意味に思い当たり、あの日、勢いに任せて泊まりで温泉に行ってしまった事、連絡しようにも携帯が壊れてしまっていた事を大まかに説明。あんまり細かく言うとボロが出ちゃうからね。 「そこで思いっきり発散してきたから大丈夫よ」 と満面の笑みを浮かべ宣言する。 みくるちゃんは「携帯、壊れちゃったんですかぁ。だから連絡できなかったんですね」って頷いてるし、古泉君も「成る程、旅行ですか……それで……」って妙に納得してる。 聞けば、あの大雨の中、皆であたしを探して街中駆け回ったらしい。それを聞いてホントに申し訳なく感じて、あたしがもう一言何か言おうとしたその時、「ハルヒ!!」って大声で人の名前を叫びながら、キョンが息を切らして飛び込んできた。またまた扉はドカンと大きな音をたてる。 「あんた、ドアを開ける時は静かにって教わらなかったのかしら?」 「そっくり、その、言葉は、お前に、返す……じゃなくて、ハルヒッ!! 無事かっ!? 大丈夫かっ!? 怪我はないかっ!? それにっ……」 「……少し落ち着きなさい。その目は節穴なの? ちゃんと2本足は付いてるし、怪我なんてしてないし、別に変わった事は……まぁ、うん、ないわ」 って呆れ顔で呟いたあたしの言葉を遮り、キョンは土下座せんばかりの勢いで謝罪しだした。 「すまん!! あの時の俺はどうかしていた。女の子を叩くなんざ何て最低な事をしでかしたのか、自分でも理解できん。全く弁明の余地は無い。 罰金でも罰ゲームでも私刑でも何でもいい、全部甘んじて受けるつもりだ。ホントにすまん!!」 その台詞を無言で聞きその表情を眺め、金曜日の別れ方から、酷く気まずい雰囲気になる事を覚悟していたあたしは戸惑っていた。 気のせいか何時ものキョンに戻ってるって気がするんだけど? あの突き放した様な拒絶する様な心の壁の存在を感じないわ。この週末、あたしにも転機があったように、キョンにも何かあったのかしら? どこからどう見ても何時ものキョンよね。 あたしがマジマジとその顔を眺めていると、キョンに両肩を掴まれた。瞳を覗き込まれる。 ……ちょ、ちょっと、か、顔が近いわよ!! バカキョン!! 慌てて顔を背けるあたしに対し、力を込めて肩を握るキョン。前後に揺すられるあたし。 「ホントにすまなかった!! お前の消息が掴めないって古泉から聞かされた時、マジで焦った。一気に夢から醒める感じがした。俺は何をやってるんだって、もう色々と……」 目の前でキョンが辛くて泣き出しそうな顔をしてるの。あたしの心がキュンとときめく。鼓動も早まり、忘れていた忘れようとしていた情動がムクムクと頭を擡げようとしたその時……。 唐突に、チェーンネックレスがその存在感をアピールするが如く、チャリリと大きな音をたてたの。まるで「あんたは誰のものなのかしら!?」って叱責されたみたい。脳裏に御主人様の笑顔が浮かび、奴隷の文字が踊る。一気に頭が冷えた。 さり気無く、その手から身体を開放し距離を取る。序に団長席に腰掛け大きく深呼吸。そして、怪訝そうなキョンの顔へと、何時もの様にズビシと指を付きつけた。 「わ、判ればいいのよ……まぁ、あたしも、ホンの少しだけ酷い事を言っちゃったかなって思わなくも無い事も無いしね……。 ふんっ、許してあげるわ。でも、これからはもっと団長を敬う事!! いいわね!!」 あからさまにホッとしたキョンが、「いや、ホントに済まなかった」と謝罪の言葉と共に、あたしに近づいてくる。 だから、あんたが近寄ってくると……離れた意味が無いじゃない!! バカキョン!! キョンはあたしの心の呟きを気にも留めず、佐々木さんの事で弁明を続けている。何でも彼女とは別に恋愛感情がある訳ではなく頼れる親友だって。因みに中学時代も付き合っていた訳ではないって豪く力説されたの。何だか凄く必死……。 で、ここ暫く、悩みのあった佐々木さんの相談に乗っていたけど、それも無事片がついたから、またSOS団の活動に専念できるって。その悩みに関しては言葉を濁されたけど……。 「まぁ、ハルヒだけじゃなく、長門や朝比奈さんにも、序に古泉にも迷惑掛けっぱなしだったがな」 「これは手厳しい。僕は序……ですか?」 「あぁ。お前は序だ」 「ふーん、何だか大変だったのね……だったら、何であたしに相談してくれなかったのよ?」 「……あー、それはだな……そう、あんまり、団長に頼ってばかりじゃ、うん、俺も成長しないだろ? そうそう、もし、俺の手に余るようなら、最後の手段としてハルヒに頼ろうと思ってたんだ」 「……中々殊勝な考え方じゃない」 って口では呟きつつも、あたしは内心呆れていた。……どうして、男の人って判りやすい嘘をつくのかしら? キョン、あんたは嘘をつく時、一瞬目が右に流れるし、唇は舐めるし、少し早口になるの。判ってないんでしょうけど……。まぁ、あたしに話したくない事なんだろうから、黙って聞いてあげるけどさ。 「まぁ、それは置いておくとして。……で、ハルヒは、その、この週末は、一体?」 って、強引に話題転換を図るキョン。あたしもそれにさり気無く乗ってあげるわ。キョンからすれば、当然の疑問だろうしね。 あたしは、さっきと全く同じ説明を繰り返した。一字一句同じ文言で。その説明が終わるや否や、幾分呆れ顔でキョンが血相を変えて叫んだ。 「温泉!? 一人旅だと!? そんな危ない事を? 万が一何かあったらどうするつもりだ!? ってそれをさせたのは俺か……済まん、ホントに済まん」 「もう、いいわよ。あんたが反省してるのは十分伝わったから。許してあげ無い事も無くは無いんだから」 「ホントに済まん」 「だから、いいって……うん、反省してるんだったら、今までの10倍は団活に精を出しなさい。これは団長命令なんだからね!!」 「あぁ、努力するよ」 よぉし、これで何時もの様に団活が出来るわ!! 全員揃っての団活が!! 何時もの様に!! 湧き上がる嬉しさを内心感じながら、あたしは無意識にネックレスを弄っていた。チャリチャリと言う金属音があたしには心地良い。 「涼宮さん……銀のネックレスですかぁ? それ、旅行先で?」 あたしとキョンの会話を微笑ましそうに聞いていたみくるちゃんが、興味深げに尋ねてきた。 「えっ、あ……うん。おみあげ屋でみつけてさ、気に入って衝動買いしたの」 興味津々のみくるちゃんに、首から外したネックレスを見せびらかしていると、何時の間にやら有希までもがあたしの手元を見ていた。ってあなた、気配も感じさせずに何時の間に来たのよ? 「あら? 有希もアクセサリーに興味あるの? そうよね、女の子だもんね!!」 有希はあたしを見て微かに頷き、そしてゆっくりとキョンへと顔を向けた。 「なんだ、長門もそう言うのに興味があるのか?」 そんなキョンの戸惑いがちな問い掛けに、小さく頷いた有希。 「精査したい事がある。許可を」 「ん? そうか……。すまんが、ハルヒ。長門にネックレスを見せて遣ってくれないか?」 なんで態々キョンに断わりを入れるのかしら?と素朴な疑問を感じつつ、ネックレスを渡す。それを無言でジッと見つめる有希。 「有希? 豪く真剣なんだけど……えっと、何か気になるのかしら?」 「そう」 有希は小さく呟き、ゆっくりと中空に視線を泳がせ、そして小首を傾げた。土曜日にも見せた仕草。見えない誰かと会話を交わしてる感じのアレだ。気のせいか古泉君やキョン、みくるちゃんまでも緊張してるわ。部屋の空気が重い……。 有希はネックレスを見つめながら小さく何かを呟いていた。ホントに真剣……。みくるちゃんがその雰囲気に耐えられなくなったのか真っ青な顔をして震えてる。あたしも我慢できなくなって口を開こうとしたその瞬間、有希がネックレスを静かにあたしの手に乗せたの。何故か少し悲しそうだ……。 「え? もういいの、有希?」 「……そう」 「えっと、気になる事でもあった?」 有希は小首を傾げ、キョン、そしてあたしを見てから、小さく首を振り何事も無かった様に窓際に移動。本を取り上げた。再び、視線を本に落とし読書へと復帰する。 その有希らしい行動にホッとするあたし。でも、この重い空気を消さなきゃ!! だから、元気一杯腰に手を当て宣言するの。 「ホント、御免ね、心配かけちゃって。あたしはもう大丈夫だから!!」 「安心しました。やはり団長たる涼宮さんあってのSOS団ですからね」 「ありがと、古泉君!! でね、その御詫びって訳じゃないんだけど……温泉饅頭買ってきたから、食べましょ!!」 「お饅頭ですかぁ? あ、今、お茶を入れますねぇ」 みくるちゃんが条件反射の様にイソイソとお茶の用意を始めた。有希も何時の間にやらチョコンとキョンの横に腰掛け、じっと温泉饅頭の入った紙袋を見つめているわ。 その後、あたしの買って来た温泉饅頭をお茶請けにみくるちゃん特製の日本茶を頂く。思った通り、良い雰囲気になってきた。 皆気を遣ってくれてるのかあんまり週末の事を話題にはしない。あぁ、例外は古泉君。興味があるのか「何処の温泉に行ったのか」としきりと尋ねてきたの。正直に言うわけにもいかず、 「いい、古泉君? 女の子には秘密が沢山あるモノなの。……それを聞き出そうとするなんて、らしくないわよ」 ってウィンクしながら誤魔化しちゃった。古泉君は、何か思い当たる事でもあるのか、恐縮しながら、謝ってくれたの。 「それもそうですね。申し訳ありません。少し神経質になっていた様です」 その恐縮ぶりに罪悪感を感じたあたしは、さもこれは名案!!って感じで思い付きを口にした。 「そうだっ、SOS団恒例の慰安旅行、今度は温泉に行きましょう!! どうかしら、古泉君? このアイデア!?」 「流石は涼宮さんです。大変宜しいかと」 「皆はどうかしら?」 と、ホンワカムードの部室を見渡し返答を促す。 「何時から恒例になったんだか知らんが、温泉はいいな。ハルヒにしては珍しく常識的建設的な意見だ」 「ユニーク」 「ふ、ふぇ……お、温泉? え、えっと、確か、お猿さんとかと一緒にお湯に浸かるんですよね? ……それは楽しみですぅ」 と、それぞれから返事が返ってきたわ。皆乗り気で結構な事。でも……。 「……それはいいんだけど、みくるちゃん? 何よお猿さんって?」 「あ、あれ? この時代の温泉って、た、確か、お猿さんや熊さん、鹿さんと一緒にお風呂、入るんですよね? ……ち、違いましたっけ?」 この子は何を言い出すのやら……。年上のみくるちゃんに対してあたしは素でそんな失礼な事を考えてしまったわ。その想いが声に出る。 「……この時代?」 「ああ!! あのな、ハルヒ!! 朝比奈さんの言ってるのは、えっとな、受験の願掛けの事だ!! そう、願掛け!! うん、猿と温泉に入ると希望校に入れるらしいぞ!! ですよね、朝比奈さん!?」 「ふぇ? 願掛け? ……あ、そそそうです願掛け、です。はいそうなんです!!」 何やら、キョンが大騒ぎし、それにつられてみくるちゃんまでもアワアワしている。結構珍しい光景かも。でも、猿と一緒に温泉入ると受験に成功? ホントかしら? ちょっと半信半疑……こういう時は、物知り有希に聞くのが1番ね。 「へぇ、願掛け? ……ホントなの、有希?」 「……そう」 「ふーん、あたしは初めて聞いたんだけど、でも、面白そうね!!……じゃあ、古泉君、猿と温泉がセットになってる場所探しておいて。みくるちゃん断っての希望なんだから!!」 「中々難しい注文ですが……畏まりました。良さそうな所を幾つかピックアップしましょう」 あたし発案の温泉旅行は夏休み突入直後に行く事になった。みくるちゃんもそれなら大丈夫だって話だし。皆が乗り気になってくれたので、あたしはウキウキしていたわ。あ、でも、混浴はダメよ、混浴は。公序良俗に反するからね!! 正直、あたしは安心していた。あんな事があったせいで雰囲気がボロボロになってるんじゃないかと心配だったから。まぁ、原因はあたしにあるんだけどさ……。 和気藹々とお茶を嗜んでいると、みくるちゃんが「そうだ、実はタルトを買ってあるんですよ」と言い出した。確かに温泉饅頭は既に無い……大半は有希のお腹の中。って相変わらず凄い食欲ねぇ。 「日本茶にはどうかなって思うんですけど……」 「いいんじゃない、そんな組み合わせも中々不思議っぽくてさ」 「流石は涼宮さん、その探究心、僕も是非見習いたい所ですね」 「それ、探究心か? ……あぁ、俺は朝比奈さんのお茶があれば問題無しですよ」 「ふーん。じゃあ、あんたはお茶だけね」 「何でそうなる!?」 って好き勝手な事を言い合うこの雰囲気。あぁ、やっぱりSOS団って良いわね。で、みくるちゃんが冷蔵庫から取り出したのはリンゴと蜂蜜のタルト。うん、おいしそう!! 「これ、さっぱりとした甘さがお勧めなんですよ」と解説しながら、みくるちゃんはテキパキとタルトを切り分けてくれたわ。 あたしは、ちょっと皆の反応が気になって手を付けずに見守る事にしたの。古泉君がべた褒めしているのも、有希が無言でパクつくのも、みくるちゃんがそれをニコニコと眺めてるのも何時もの光景。何時もと違うのは……キョンね。さっきからあたしを気にしている。チラチラとこちらを伺ってるのが丸判りなの。 「何よ、キョン? 言いたい事があるなら言いなさいよ。我慢するのは精神に悪いんだからね!!」 「……あぁ、いや、別に他意はないんだがな。何時もの団活だなぁってさ」 って、ソッポを向いてモゴモゴと喋るキョン。やっぱり何時ものキョンだ。ちょっと安心。 「当然でしょ、全員が揃ってるんだし」 「いえ、涼宮さん。彼はですね……やはり、涼宮さんがいないとダメだと言いたいのですよ。それも太陽の様に晴れやかな笑顔のね」 「なっ!? 古泉!! 勝手に決め付けるな!! 俺は一言もそんな事を……」 「おや? 週末のあなたの動揺ぶり、様々な発言をお忘れになったとでも? 是非とも涼宮さんに……」 「ま、待て!! おい、まさか、お前……まだ根に持ってるのか?」 「はて、何の事でしょう? 僕には何の事だか判りかねますが?」 ちょっぴり邪悪な笑みを浮かべつつ、古泉君があたしへと向き直り口を開いた。 「涼宮さん、実はですね……」 「判った!! 古泉、判った、俺が悪かった!!」 古泉君の発言を必死に遮ろうとするキョン。古泉君はあたしをチラリと見た。その視線の意味を瞬時に悟りあたしは元気に命令。 「古泉君、発言を許すわ!! 言っちゃいなさい、団長命令!! ……それで、キョンは何と言ったのかしら? あたしの悪口?」 「ま、待ってくれ、考え直せ、ハルヒッ!! 嬉しそうな顔するな、古泉っ!!」 「いえ、残念ですが、団長命令では逆らえません」 大騒ぎしているキョンを尻目に、「では」と1つ咳をしてから口を開いたの。それも、キョンの口真似付きでね。 「『ハルヒに何かあったら、俺は生きていけない!! 古泉、俺に何が出来る!? いや、俺にも何かさせてくれ!! あいつのためなら何でもする!!』」 ……部室内は静かになった。キョンは呻き声を上げつつ頭を抱えて机にうつ伏せ。みくるちゃんは真っ赤な顔で口元を隠して硬直中。有希は冷たい視線でジッとキョンを見つめ、古泉君はしてやったりとニコニコ。肝心のあたしは……絶句状態。 キョンが「古泉、覚えていろ」って小声で呟き、顔をそっと上げチラリとあたしを伺う。バッチリと視線が交差。一気に顔が熱くなり、キョン共々茹蛸の如く真っ赤になる。それを誤魔化すべく、大きな声でキョンを糾弾。 「ああああんた、バッ、バッカじゃないのっ!! バカキョン!! エロキョン!! あんた、そ、そんな恥ずかしい事考えてたの!? い、言ったの!? 」 「ち、違うっ、古泉が勝手に言ってるだけで……」 「僕のせいにされるのは心外ですね。でしたら、それ以外にも僕の記憶に残っている発言を披露しましょうか?」 「古泉、お、お前……な、こん……」 「あ、あんた……一体どんだけ、は、恥かしい事言ったのよ!?」 「ま、待て、ハルヒ!? お、落ち着けっ」 あたしとキョンの言葉の応酬が始まる、正にそのタイミングで、みくるちゃんのフンワリとした台詞が2人を直撃する。 「ふふっ、キョン君も涼宮さんも真っ赤ですぅ」 「…………」 「…………」 こんな普段通りの掛け合いが堪らなく嬉しいけど、でも、その恥かしい内容に物凄く動揺しちゃったわ。それを誤魔化すべく、深呼吸を1つした後で、キョンをジト目で睨み付け呟く。 「あんたの恥かしい考えと発言に関しては後で厳重なる処罰を与えるとして……すっかり忘れてたけど、団活を重視するのは当然だとしても、あんた、勉強はどうするのよ? 正直、あたしはそっちの方が心配だわ」 「あぁ、それなんだが、虫が良いかもしれないが、もう1度だけ勉強を教えてくれ。スパルタでも何でも付いていくから」 「し、仕方が無いわね。ビシビシいくから、音を上げたって許してあげないんだから!! いい? これから団活の時間は勉学の時間だと思いなさい」 「お手柔らかに程々で頼む」 そんな口調も普段のキョン。すっごく安心してキョンに笑顔を向けながら、あたしはどうしてあんなにすれ違ったのかと疑問を感じたの。内心小首を傾げて、あたしも1口タルトを頬張った。口に広がるパイ生地とリンゴのハーモニー。 そして蜂蜜の甘味が口一杯に広がるのと同時に、キョンと視線が交わる。慌ててキョンは視線をそらしたわ。その挙動にドキリと心臓が跳ね上がった。嬉しくなって更にキョンに声を掛けようとしたその時、まるで警告するかの様に、ネックレスがはっきりと音をたてた。チャリリと。……それを耳にした瞬間、目の前のタルトが御主人様の暴れん棒君へと変貌した。何時も以上に充血している暴れん棒君。それは当然蜂蜜塗れ。あたしがおしゃぶりする前の状態。一気に口内に唾液が溢れ、身体の芯がジュクンと疼き、乳首が固まり腰が熱を帯びた。ゾクリと背筋を歓喜の波動が立ち上り、股間が一気に濡れていく。 「んっんん……あっ、うくっ」 自然と艶っぽい声が漏れた。慌てて口元を押さえ、声を押し殺す。 う、うそっ!? ……え、あたし、何で? ちょっと!! これ、ホントにおしゃぶりする直前みたい……や、やだ……どうして!? ここ、学校なのよ!? タルト食べてるだけなのに!! 「あれ? 涼宮さん、どうしました? も、若しかしてタルト、お口に合わなかったですかぁ?」 「えっ、んっ……ち、違うわ……」 「何だか顔が赤いな、ハルヒ? ……まさか体調でも悪いのか? 大丈夫か? 保健室でも行くか?」 気がつけば、皆があたしを見つめている。心配そうに……。キョンはあたしに視線を固定させたまま、立ち上がりかけている。 ダメ、来ないで、キョン!! こ、こんなの知られたくない!! こ、ここはダメ!! は、早く……何処かへ!! ここ以外の場所!! 「えっ、あ、いや。大丈夫。でも、御免。ちょっと席外すわね……」 って言い残し、部室を飛び出した。チャリリチャリリとネックレスが事の他大きな音をたてる。それに急き立てられるかの様にトイレへ、空いているブースへと駆け込む。体内から湧き上がる強烈な欲求。 「ど、土曜日に……んっ、あれだけ、くぅっ……だ、抱かれたのに……何で!?」 今弄ればきっと気持ちが良い……。それは本能が告げていた。 でも!! それは!! 御主人様に!! 禁止されてるの!! だから、耐えなきゃ!! あたしは右手人差し指の第二関節を口に咥えて思いっきり噛み、左手で壁に爪を立てる。腰から力が抜け便座にへたり込んだ。唾液が溢れ情動が強まる気配。ビクリビクリと身体が痙攣する。頭を壁に押し付けそれに耐えた。自然と内股になるあたし。甘い呻き声が漏れるのを必死で我慢。爪が壁にギリリと食い込む。 こんなとこ、皆に知られたくない!! こんな!! どうして、学校で!? 蜂蜜をちょっと口にしただけなのに!? なんで!? ……ホントに、変!! 頭の動きに合わせてネックレスが自己主張する。チャリリチャリリ。その音に乗って頭の中に内なる声が響く。「あんたは誰のものなのかしら?」と。 「んんっ!!……むぐっ!!」 「それを忘れたあんたへの罰よ。甘んじて受け止めなさい」と冷徹に告げる内なる声。罰と言う単語が怒った御主人様を髣髴とさせ、あたしを酷く動揺させたの。 「もし許して欲しければ、御主人様に……」と内なる声は囁く様に淡々と告げた。 ば、罰!? ……若しかして、あたしが、キョンと楽しく会話したからなの? 喜んだからなの? 胸踊らされたからなの? そうなの、御主人様? これ、御主人様からの罰なの!? ……あぁ、ゆ、許して!! 御主人様。あたしは御、御主人様だけだから!! だから……お願い、助けて!! 内なる声に導かれるまま、心の中で、必死に許しを請い、血が滲むほど指を噛み締めたあたし。気が付けばあの疼きは嘘の様にすっかり消えていたわ。でも、気だるげな身体と溢れる蜜があれは事実だよと告げているわ。 溢れた蜜を極力淫裂を刺激しないようサッと拭い、あたしは蹌踉めく様にブースを後にした。湿ったショーツが気持ち悪い。内心、ナプキンでも持ってくれば良かったと思いながら、洗面所で何度も何度も顔を洗った。欲求と記憶と恥辱が薄れるまで。何度も何度も……。 気が付けばネックレスは微かな音すらたてなくなった。アレほどあたしを非難する様に絶え間なくチャリリチャリリと鳴っていたのに……。ホントに御主人様に監視されてるのかしら? そんな事は有りえないのに……。 そして、何事も無かった様に部室に入るまでかなりの時間が必要だったの。身体が疼いていたなんて知られたくないもん……。 心配しつつもいつも通りに出迎えてくれる皆。 「ハルヒ、大丈夫なのか? 保健室とかは?」 「あ、うん。大丈夫、何にも問題はないから」 この様子では、気が付かれて無いみたいね。あたしはホッと一安心。でも、どれだけ御主人様の影響下にあるのかを否が応でも悟らされてたあたし。団活を愉しんでる皆が遠い……。ホントに、御主人様無しじゃ生きていけなくなってるのかも……。ショックだった半面、それが霞む位誇らしげに感じているのも事実だったの。もう逃げられない、でも、それでもいいわ。そんな思いも頭を過ぎる。何て不思議な感覚かしら……。 そして、表面上は至って平穏に時間は過ぎていく。今週の団活は終始キョンの勉強会。まぁ、コイツ以外の団員は成績優秀だから、何の心配も要らないんだけど……しっかし、コイツは頭は悪くないはずなのに、何でこんなに物覚えが悪いのかしら? 「だから!! それは昨日やった数式の応用で……」 「ん? ……こうか?」 「バッカバカバカ!! どうして応用だって言ってるのに、元の数式からして違う物を使おうとするのよ!? バカキョン!!」 余りに的外れな公式の使い方に、あたしは我慢できなくなった。問題を横から奪い取り、その眼前で実際に数式を書き殴る。 「ちょっと、貸しなさい!! だから……こうしてこうして、ここでコイツを挿入して……」 「あぁ……なるほどな。確かに応用だ」 「……感心してないで、いい加減覚えなさい!!」 「済まん。どうも数学だけは苦手でな」 「数学だけ? 今、数学だけって言ったの、あんた?……数学“も”でしょ!? あぁ、もう!! 今日は理系繋がりで物理にも手を付けたかったのに!!」 「いや、しかし、流石はハルヒだ。授業よりも判りやすいぞ」 まるで他人事の様に批評しているキョン。そのノンビリとした口調が更にあたしを苛立たせる。 全くあんたのために貴重な団活潰してまで勉強会をしてるのに!! 「ほ、褒めたってダメなんだからねっ!! 仕方が無いから、今日はこのページまでやりなさい!! それで今日は終了!!」 「……昨日もそうだったが、この後、勉強に付き合ってはくれないのか?」 「あ、あたしにだってね……用事の1つや2つはあるの!? その位察しなさい!!」 「あぁ、そうか、そうだよな。済まん、我侭を言って」 ここ数日、団活終了後にも勉強を教えてくれって言うキョンを振り切って、あたしは御主人様の所へと押し掛けている。キョンも大切だけど、でも、優先順位は御主人様の方が上。 御主人様に相談すれば、「俺の事はいいから、彼の勉強見てあげて」って言われるのも目に見えてるから、黙ってるの。 それに、気のせいか、キョンが……何て言うのかな、事有る毎に一緒に居たがるって言うか、甘えてくるって言うか、あたしばかり気にしてるって言うか。うん、兎に角、何時ものコイツじゃないの。ちょっと違和感があって怖いのよね。って別に逃げてるわけじゃないんだからね!! か、勘違いしないでよねっ!! 勉強会ばかりだった今週。折角だからと週末、久しぶりに不思議探索を決行する事となった。本当に何時以来になるのかしら? ……指折り数えてみると何と今月初だった。まぁ、GW明けから色々あったしね。 そして週末の土曜日の今日、5月も終わろうかと言う時期にしては暑い。真夏日にでもなってるんじゃないかしら。 「遅いッ!! ホントに何で何時も何時もあんたが最後なのよ!!」 あたしは腰に手を当てズビシとキョンを指差した。こいつってば何時もの通りラストに到着。 「悪いな。でも集合時間には十分間に合ってるだろ?……あぁ、すいません、朝比奈さん、お待たせしちゃって」 「いえ、わたしも今来た所ですから……」 何時もながら、あたしを無視してみくるちゃんにだけは優しい言葉をかけるキョン。以前ほど腹は立たないけど、やっぱり良い気分じゃないわ。 「全く、団長に対する敬意が感じられないのよ、あんたからは!! 皆あたしよりも先に来てるって言うのに!!」 「やれやれ……判ってるよ、罰金なんだろ、早く喫茶店に行こうぜ。それで怒りを鎮めてくれ」 「……別にいいわよ、時間には間に合ってるんだし。但し、次回はあたしよりも先に来なさいっ、判ったわね!?」 キョンを怒鳴りつけながら、あたしは内心、「御主人様に感謝しなさいよ」と呟いていた。だって玄関まで見送りに来てくれた御主人様に念を押されたの。可哀想だから遅刻して無い限り罰金を課しちゃダメだよって。それも甘いキスつき……。あたしに断われるわけ無いじゃない!! あたしはキョンを横目に、何時もの喫茶店へと脚を向けようとして立ち止まった。皆が何か言いたげにあたしを見ている。特にキョンは生き別れた兄弟に街中でばったりと出会ったかの様な表情だ。 「……何よ、皆、変な顔してるわよ? さぁ、早く喫茶店に行きましょう。さっさと籤引きして班分けするんだからね!!」 「……いや、ハルヒ? ホントに罰金はいいのか?」 「何? あんた、払いたい訳? ……だったら、止めないけど?」 「あー、そう言う訳じゃないんだがな。何と言うか、落ち着かないって言うか……」 「馬鹿な事、言ってないでさっさと喫茶店に行くわよ。時間は有限なんだからね!!」 その後、古泉君とキョンがヒソヒソ話をしているのを尻目に、女性陣を引き連れさっさと喫茶店へと向かう。 あっと、今日のあたしは、ライトグレーの可愛いチュニックにオフホワイトの長袖カーディガンを羽織り、ベージュのストッキングにダークブラウンのパンプスってスタイル。 夏真っ盛りの様な日差しの中、あたしは長袖にストッキングを穿いている。みくるちゃんですら、半袖なのに……。でも、これには理由があるの。人には言えない理由がね。御主人様にも言ってないわ。だって絶対、雨に打たれてる捨てられた子犬みたいにションボリするのが予想できるから。そんな御主人様を見たくはないもん。 何時もの喫茶店で、適当な軽食を注文し雑談。その最中、古泉君が罰金刑を免除した理由を妙に知りたがった。何時も物分りが良い副団長にしては拘るわね。 「いえ、涼宮さんの心境の変化を把握しておく事は副団長の重要な役目ですので」 「流石は古泉君!! キョンも見習いなさい。この常に団長を把握しておこうと言う使命感を!!」 「そんな事したら折角覚えた数式、英単語が消し飛んじまう。副団長の役目は副団長に任すさ。俺は団員その1兼雑用でいい……」 「全く仕方の無い。あ、古泉君、別に大した事じゃ無いのよ。ただ、責任者は鷹揚であるべきって悟ったからなの。だらしの無い部下の行いも笑って許せなきゃってね」 「流石は涼宮さんです」 「待て待て。誰がだらしの無い部下だ? 謂れの無い誹謗中傷には断固抗議させて貰おう」 「何言ってるのよ? あんた以外の誰がいるのかしら? 何なら罰金刑を復活させてもいいのよ?」 「……くっ、諭吉を人質にするとは卑怯だぞ、ハルヒ!!」 「まぁまぁ、御二方とも。ここは穏便にですね……」 「そ、そうですよぅ。久しぶりの探索なんですから」 「早急な班分けを提唱する」 と皆の絶妙なタイミングでの和睦勧告もあり、あたしとキョンは互いにソッポを向いてこの不毛な言い争いを終了させたの。 そして、爪楊枝に印を付けて恒例となった籤引きを実施。何時もより緊張はしない。誰と一緒になっても問題ないしって考えが頭を過ぎる……。 珍しく有希がいの一番に引いたわ。続いて古泉君、キョンの順番。その結果、あたしとみくるちゃんは籤を引くまでも無くペアとなった。 「あら、あっさりと決まっちゃったわね……。あたしはみくるちゃんとペアね」 「あ、そ、そうですね……よろしくお願いします、涼宮さん」 先に引いた3人はと見ると、キョンがホッとしながら、有希をチラリと眺めた気がするんだけど、思い過ごしかしら? 班分けも無事終了し、あたしはみくるちゃんの手を取り「アイラインの上手な選び方教えて欲しいの」ってレジへと向かう。 何せみくるちゃんはあたしのお化粧の先生なんだもん。 「アイラインですかぁ? そんなに難しいものでもないですよぉ……涼宮さんなら直ぐにコツ掴めますから」 「うーん、でもね、ほら実際にしてみないと判らない事ってあるじゃない? ネットで見ても今一ピンとこないしさ」 「ふふっ……じゃあ、化粧品売り場に直行ですね」 「勿論、寄り道せずに向かうわよ!!」 代金は全員で均等に割り勘。結構珍しいパターンかも。あたしはキョンへと向き直り、ニヤリと笑う。 「あんたの奢りじゃないパターンって珍しいわね? 雨でも降るんじゃないかしら?」 「……ん、あぁ、そ、そう言われると……そうだな」 「ちょっとは寂しいんじゃない?」 「んな訳あるか……あー、偶には財布にも休息させてやらんと過労死しちまう。休日出勤に深夜残業ばかりだったからな」 キョンは変な喩えを持ち出して、割り勘を歓迎している様に見える。まぁ、以前納得できないって谷口に言ってたもんね。ふん、ホントに御主人様に感謝しなさいよ、あんた。 「不思議なモノがあったら速攻で連絡する事」ってお願いしてあたし達は別れたの。キョン達は何か深刻そうな表情でヒソヒソ話をしてたみたい。でも、あたしはそれほど気にもせずにデパートへとみくるちゃんを引っ張っていった。当然、目的地は化粧品売り場。 化粧品を手にとっては試し、試しては別の品に目が向く。そんな楽しい一時を過ごす。 「そういえば、涼宮さん。……今日の服、暑くないんですかぁ?」 「え、あ、うん。ちょっと着てみたい気分だったの」 「あぁ。そういう気分の日ってありますよねぇ。そういえば、そのチュニック初めて見ますね……凄く、可愛いです」 あたしは内心の動揺を悟られない様、殊更笑顔でみくるちゃんにお礼を言うの。 長袖にした理由、それは、あたしの手首に麻縄で付いてしまった痣が残ってるから。……実は、あたし、今週ずっと麻縄で縛られて可愛がられてるの。所謂SMってヤツ。あ、全然嫌じゃなくて凄く気持ちが良いのよ? 何て言うのかな……不自由な自由? 束縛される開放感? うーん、良い言葉が見つからないわ。縛られただけで、キュンってくるし、御主人様への依存度も高まるの。だってホントに抵抗できないのよ。だからあたしは唯々諾々と、そして嬉々として御主人様の責めを受け止める。更にそのまま暴れん棒君が入ってくるとホントに堪らないの……癖になりそう。 で、昨日も縛られたんだけど……その後、お風呂でのマッサージが少なかったらしく、ちょっと跡が消えてなかったの。手を抜いたつもりはなかったんだけどな。 「こんな事言うと怒られちゃうかもしれないですけど……温泉から帰ってきてからの涼宮さん、何だか素敵です。落ち着いてるっていうか、女性的って言うか……憧れちゃいます」 「あはっ、みくるちゃんにそう言われると、自信が湧いてくるわね」 「はい……キョン君とも仲直りできたみたいだし、ホント良かったです。勉強会もすごく熱心ですし」 「え、あ、うん……ありがと、心配してくれて。で、でさ、アイラインって……」 キョンの話題から離れたくて、あたしはアイラインの事を質問。身近な商品を手に取りみくるちゃんへと手渡す。それを受け取り、みくるちゃんは嬉しそうにコツを説明してくれる。 あたしはソレを聞きつつ、キョンの事を思い出していた。表面上は以前と同様に振舞う様、気をつけてるつもり。キョンはSOS団の大切な仲間だし、あのギスギスした関係に戻りたくは無いの。だから話題や仕草、その他色々と気を遣う。近すぎず遠すぎず……。じゃないと、又ネックレスのお叱りを受けちゃうから。 「そいうえば、最近のキョン君って何時も涼宮さんの事気にしてますよね?」 「え!? そ、そうなの?」 「はい、部室で涼宮さんがいない時は、今何をしてるのかな?とか、まだ来ないとか……凄く気にしてますよ?」 「そ、それは……あれでしょ? あたしが早く来ないと勉強がって事じゃ無いかしら?」 「そうですよね」と口では言いながらも、みくるちゃんは、もう判ってますよ的な笑みを浮かべて、次の商品へと手を伸ばした。 「これなんか、涼宮さんに合いそうな色ですね?」 「え? そう? あ、でも好きな色かも……」 「はい、最近、涼宮さん、暖色系の柔らかいメイクが多いですから。もっと映えると思います」 あ、確かに最近は、御主人様の好みに合わせて暖色系メイクが多いわね。流石はみくるちゃん、しっかりとチェック入れてるんだ。 「そ、そうかな? うん、みくるちゃんのお勧めならこれ買っちゃおうっと!!」 「じゃあ、わたしは……これとこれを」 2人で厳選した化粧品を購入し、店員さんに「これなら、お客様の可愛らしさを十分引き出してくれますよ」と太鼓判を押され、意気揚々とお店を後にする。 「お世辞って判ってても、魅力的って褒められると悪い気はしないわね。……あ、でも、同じ様な褒められ方でも、ナンパだけは勘弁して欲しいわ」 「ですよねぇ、正直、引いちゃいます。皆さん、下心が丸見えで……」 みくるちゃんと、如何にナンパされる事が気分を害するかについて議論しながら、お昼のために集合場所へと向かったわ。 お昼は少し駅から離れた場所に佇むインドカレー専門店をチョイス。有希が微動だにせずジッとその看板を見つめていたわ。 「何だ、長門、あそこがいいのか?」 「是非ともあの店にすべき」 「そ、そっか……あー、ハルヒ? 長門がだな……カレーを食いたいらしい、今日はあそこの店って事でどうだ?」 「いいわよ、本格インドカレーって面白そうね。あたしも興味があるわ」 と、お店に突撃、勢い込んで注文したあたし達。勿論、辛さはマックス!! そして、食事開始から20分程度が経過した。 ……あたしは結構辛い物には耐性があるつもりだったんだけど、残念ながら激辛野菜カレーの前に敗北。悔しいけど、日本の方には少し刺激が強いかもって言う店員さんの助言を聞いておけば良かったわ。有希以外のメンバーも汗だくになってギブアップ。残り物は全て有希のお腹の中へ。 「有希、あなた、凄いわね……。全然汗かいてないじゃない? 辛くないの?」 「カレーとはかく有るべき」 「流石は長門だな。俺にはこの辛さは拷問だ……」 キョンの呻く様な意見に全面的に賛同するわ。有希以外のメンバーも内心同意見っぽい。みくるちゃんは涙目で水をチビリチビリと口にしながら、 「わ、わたしも、キョン君と同じですね……口の中がヒリヒリしてて大変ですぅ」 と呟き、珍しく古泉君も固い笑顔で「いえ、これは何と申し上げるべきか……貴重な体験をしましたね」ってキョンに語ってるし。 皆でお水を飲みつつ、午後の班分け。有希古泉君みくるちゃんと連続して印無し。午前の部に続いてあたしは籤を引いてない。ちょっと寂しいかも。……って事は今回はキョンと2人。 あー、以前ならこうなって欲しいけど、でも恥かしいからダメって感じだったのに、別に何の感慨も湧かない。いえ、湧かせちゃいけないの。 あ、でも籤引きでキョンとペアって初めてかもね……これも不思議現象の1つかしら? 古泉君が意味有りげな微笑を浮かべて、キョンを見てるわ。キョンはそれを知りつつそっぽを向いてるって感じ。今日の男性陣、何だかちょっと変。 「さっ、早速午後の捜索に取り掛かるわよ!!」 あたしはその微妙な空気を無視して、元気よく立ち上がったわ。 古泉君たちと別れて、キョンに何処に行こうかって聞いてみると、「お前の行きたい所でいい」ってやる気の無い返事。何でソッポ向いて答えるのかしら、コイツは。そのくせ、何故か何時もよりも近くにいるのよね。 ふぅ、比べるのも可哀想だけど、御主人様なら、あたしの行きたい所を把握した上でスマートにエスコートしてくれるのに……。 「あんたには自分の意見ってモノが無いのかしら? 団長が珍しく雑用の意見を聞いてあげようって温情を示してるのよ?」 「……ゴホン、あー、そのな、だ、だったら、映画でも見に行かないか? あ、新作映画らしいんだがな」 「映画? 別にいいわよ……って内容にもよるわね」 チラリとキョンの顔を伺うと、戸惑いと躊躇い、そこに何かを加えた微妙な表情を浮かべている。仕方が無い、あたしが背中を押してあげるわよ。 「キョン、何時も言ってるでしょ。言いたい事、我慢してるのは精神に悪いわよって。既に映画に誘ったんだから、思い切って内容を言いなさい」 「そ、そうだな……あー、その、恋愛モノらしいんだが……すまん、俺も詳しい内容を知らないんだ。あ、お前が嫌だって言うなら無理にとは……」 「あら、恋愛モノ? キョンにしては珍しいわね。あたしは別にいいわよ」 心底驚いたって顔で、2度も「いいのか?」って聞き返すキョン。そんなに可笑しい事かしら? 「何よ、あたしがそう言うの見ちゃいけないって言うの?」 「あ、いや、意外な感じがだな……あ、済まん誘っておいて」 全くだわ。人の事、何だと思ってるのかしら、コイツは? 動揺しているキョンからチケットを奪い取り、映画館の場所を確認する。 「事前にチケット買っておくなんてあんたにしては上出来だわ。……さっ、こっちよ。付いて来なさい」 あたしはキョンに背を向けてさっさと歩き出した。以前なら手首を掴んでいるところ。背後でやれやれって呟きと共に、キョンが歩き出す気配が。 無意識にネックレスを弄っているあたし。以前なら嬉しくて浮かれてただろうに、殆ど内面の変化は無い。いえ無いと思いこむあたし。だってネックレスがそれを許可してくれないのは明白だから。アレを最後に変な事にはなっていないんだけど、正直、こんな街中であんな事になったら……って想像するだけでゾッとするわ。 まぁ、素直に言えば、キョンの心配も判らなくは無いの。だって、あたしも恋愛モノなんてって考えてたんだから。でもね、御主人様とお部屋で往年の名作を鑑賞してそれを改めたわ。「ローマの休日」「カサブランカ」「ティファニーで朝食を」、どれも素敵だったんだから!! その肝心の新作映画を見終わって、あたし達は映画館を後にした。で、その内容なんだけど、んー、もう少し捻って欲しい感じもするけど、まぁ、程ほどかな? 無難なエンディングよねって感想を抱いているあたしの後ろでキョンは大欠伸。コイツってば、開始10分ほどで夢の世界に旅立って行ったわ。自分から誘っておいて信じらんない!! 予めチケットも買っておいて……待って、予め? キョンが? 可笑しいわね、コイツがそんなマメな事をするはずがないわ……とそこまで考えて、あたしにはピンと閃く事があった。古泉君の意味有りげな視線に、ソッポを向くキョン。 ……あぁ、成る程、これ、古泉君の仕込みかぁ。うーん、ネタバレしちゃうと結構興ざめするものね。 不満顔のまま集合場所へと早足で歩を進める。背後から付いて来るキョンが恐る恐るって感じで声を掛けてきた。 「なぁ……ハルヒ……その、何だ……」 あたしは歩みを止めずキョンへと顔を向け、その瞳を覗き込んだ。 「何よ、言いたい事があるなら言っちゃいなさい。最近のあんたは口篭るの多すぎ!!」 「あ、あぁ、そうかもな、済まん。……その、まだ、怒ってるのか?」 「はぁ!? ……当然でしょ、映画始まってモノの数分で寝ちゃうなんて!! しかもあんたから誘ったんでしょ!!」 「あー、それに関しては済まんとしか。まぁ、体質的に恋愛モノは合わないって事だな」 あたしは「ふーん、やっぱりね」と呟いてから、キョンを睨み付けた。その視線にキョンはタジタジ。 「……な、何が、えっと、やっぱりなんだ、ハルヒ?」 「この映画を手配したの、古泉君でしょ?」 あたしの容赦ない指摘に、キョンは答えに窮したのか、無言で天を仰ぎ、そして大きく溜息を付く。 そんなキョンの様子を伺いつつ、あたしは淡々と言葉を続けた。 「あんたにしては手回しが良過ぎると思ったのよね。しかも直ぐに寝ちゃって興味ありませんって丸判りだし。ホント、誰かさんじゃないけど、やれやれって感じよ」 「……あー、す、済まんな、ホントに。古泉からも途中で寝るなって念を押されてたんだがな、済まん。 ただ、俺が聞きたいのは、映画の事じゃなく、えっとだな、あー、この前のだな……」 「この前?……あぁ、佐々木さんの事? 別に怒ってなんかいないわ。あんたもあたしも謝ったじゃない。それで全てチャラなんだし。何で怒ってるって思ったのよ?」 「い、いや、最近、素っ気無いと言うか……あ、うん、 怒ってないならいいんだ、俺の気のせいだろ……」 素っ気無いってキョンの一言にあたしは内心動揺してしまった。言動には気をつけているつもりだったのに、キョンにそれを指摘されるとは!! こんな時には強気で押すに限るのよね……。 「……素っ気無い? あたしが? 団活潰してまで毎日、勉強、教えてあげてるのに? あんたがやってる特製参考書やテストは誰が作ってると思ってるのかしら? ホント、あんた、雑用なんだから団長への畏敬の念をもっと持ちなさい!!」 「あ、あぁ……そ、そうだよな。うん、済まん。色々あって少し神経質になってるみたいだな……」 そんな煮え切らないキョンを従え、駅前広場まで。既にあたし達以外のメンバーは集合していたわ。あたしは有希やみくるちゃんと軽く雑談。特に有希はお目当ての本を購入できたらしく、僅かながら浮かれてる様に感じるわ。その何時もの無表情の中に微かな喜の感情をうっすらと浮かべている有希を見ていると、以前から頼んでみようと思ってた事を思い出した。 「あ、そうだ!! 有希、お願いがあるんだけど?」 「何?」 「えっとね、読みやすい英語の絵本って知ってる?」 小首を傾げその先を促す有希に、明日香ちゃんの事を含めて事情を説明する。 「と言う訳でね、その子に英語を教える教材として絵本を使いたいのよ」 「任せて。近日中に厳選、報告する」 「ん!! お願いね」 その間、キョンと古泉君は何時もの様にヒソヒソ話。でも、その表情は何やら深刻そう。話題はなんなのかしら? ちょっと気になるけど……男同士の友情ってヤツだったら、あたしが首を突っ込むのも気が引けるわ。でも、気のせいかしら、2人の意識があたしに向いてる様な……チラ見されてる気もするし。うーん、自意識過剰なのかしら? 暫く雑談をして、今日は解散しましょうって雰囲気になった。実は、キョンから「この後、暇ならちょっと勉強に付き合って欲しい」って誘われたんだけど……重要な用事のあるあたしはそれを断わったの。 「あ、そ、そうか……無理を言って済まなかったな」 「別に気にしてないわよ。それよりも、数学、昨日までやった範囲でいいから、もう1度復習しておきなさい。月曜日にテストしてあげるから」 「ん、判った。ありがとな、ハルヒ」 「感謝するのは早いわよ!! もし、出来が悪かったら、罰ゲームなんだからね!!」 「ば、罰ゲームか……それは勘弁してもらいたいな」 「そう思うなら、しっかりと復習しておきなさい」 キョンに元気よく指を付きつけ命令する。「じゃあ、本日はこれで解散。週明け、また部室でね!!」ってお決まりの挨拶を残し、あたしは皆と別れた。 んー、気のせいかキョンや古泉君、何かを気にしてるというか、心配してる気がするんだけど……何だろ? ホントに変な2人……。 【ハルヒ、で、きもちよくなって、イってください】