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《クリス=カシック=パラレラーサ》 OR 光/水/闇文明 (21) クリーチャー:ディスペクター/ゼニス・セレス/サイバーロード (17371) ■ 水晶ソウル3 (このクリーチャーを召喚するとき、自分のマナゾーンにある裏向きのカードのマナの数字は3になる) ■このクリーチャーが召喚によって出たとき、すべてのプレイヤーの墓地、バトルゾーンにある「クリス=カシック=パラレラーサ」以外のクリーチャーを好きな数選んで良い。そうしたら、その選んだクリーチャーの「このクリーチャーが出たとき」から始まる効果を全て使っても良い。 ■自分のターンの初めに、相手のクリーチャーを一体選んでも良い。そうしたら、このクリーチャーは、次の自分のターンの初めまで、そのクリーチャーが持つ能力を全て持つ。 ■自分のマナゾーンかシールドゾーンに裏向きのカードがないとき、自分はゲームに負ける。 ■ブロッカー ■クリスターナル・EX このクリーチャーが離れるとき、または自分がゲームに負けるとき、代わりに自分のマナゾーン、シールドゾーンにある裏向きのカードを合計3枚表向きにしても良い。 作者:ユノア 補足 《クリス=タブラ=ラーサ》と《アカシック・パラレル》のディスペクターです。 「そのクリーチャーが持つ能力を、全て持つ」については、選んだクリーチャーのテキスト欄をそのままこのクリーチャーにすべて加えるという効果です。 評価 名前 コメント
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Signum malum ◆bbcIbvVI2g 「何?それは本当なのか!?」 夜神総一郎とメロ、佐倉杏子は移動中であった。 理由は簡単。あのスマートブレイン跡地から爆発音のようなものが響いてきたからだ。 あの戦いの後であそこに向かった誰かがゼロと戦っているのだろう。 今余波が向かってきても戦うことはできない。そう思い、そこから離れるために移動を開始したのだった。 当然時間は無駄にはできない。その最中にも情報交換をしておくのだった。 最初は佐倉杏子だった。 ここに来るまでの杏子のことなどこの場では本人にしか分からないため判断は難しかった。 だが、これまで魔法少女として基本的に一人で生きてきた佐倉杏子にはゆまという少女を助けた記憶など、増してや連れて行ったことなどないという。 そこはあえて保留にしておいた。 そして先ほどの声はメロと総一郎の互いの情報を明らかにしたときに総一郎があげた驚きの声だった。 「ああ、本当だ。まさかそんなことがあったとは…」 パラレルワールド、平行世界。 まさかそんなものを目の当たりにするとはメロも思っていなかった。 総一郎の世界ではLとキラ、月の戦いはLの勝利となったという。 一方メロの世界ではLは敗北し、キラが正義となりつつある世界が広がっていったという。 お互いの知り合いについての情報を開示しているところで気付いた事実だった。 (道理で夜神月がキラだったことを知っているわけだな) メロにはLがキラに勝ったのだということを聞いて、複雑な気分になった。 Lが勝ったのは良かっただろうが、もしそうなっていたら自分がニアを超える機会など到底来なかっただろう。 その為にワイミーズハウスを抜け出したのだから。 一方で夜神総一郎はやはりショックを受けていたようだ。 息子が道を誤ったまま世界がそれを認めてしまったという事実に。 彼の脳裏には息子のあの叫びが蘇っていた。 「…それで、君は月を止めるために戦っていたというのか?」 「ああ、死神のノートの存在も知っている」 大体のことは話したものの、夜神粧裕にしたことは伏せておいた。 メロとしてもあれには若干の負い目もある。そしてそれ以上に今変な感情を持たせることはマイナスにしかならない。 「あー、それで、一体どういう事だっていうんだ?もちっと分かりやすく言って欲しいんだけど」 そんな中、二人の会話についていけなくなった様子の杏子は支給品に入っていた羊羹を齧っていた。 総一郎はなるべく分かりやすいように杏子に説明する。といっても総一郎自身もよくは分かっていないのだが。 「う~ん、よく分かんないけど、要するにさっき言ってたゆまって奴があたしのこと言ってたっていうのは…」 「佐倉杏子と千歳ゆまが共に過ごしていた世界があったということだろうな」 そう言うメロもあまりに突拍子のない事実に若干困惑していた。 それならば今までのことに説明がつくとはいえ、簡単に受け入れられる事実ではなかった。 「…そういえば、今は何時だ?」 「そろそろ六時に近いけど、それがどうかしたのか?」 「どうやら時間のようだな」 ◇ 「クロちゃん、大丈夫?」 「…別にそこまで気にしてないわ」 シロナとクロエは向かった先で拾った少女、巴マミを連れて救急車を走らせていた。 その少女は未だ目を覚まさず、後ろで眠り続けている。 そしてスマートブレイン社へと向かおうとしたところで放送が始まったのだった。 「正直殺しても死にそうな人じゃなかったんだけどね」 遠坂凛。イリヤとカレイドルビーの出会いのきっかけとなった人物。おそらく彼女がイリヤと出会わなければ自分が誕生することもなかっただろう。 いつもルヴィアと喧嘩しては騒ぎを巻き起こすトラブルメーカーだった。 死んだからといってそこまでショックだったわけではない。魔術師とは常に死とは隣り合わせなのだから。イリヤはともかく、クロエはそれを弁えている。 ただ、あのルヴィアとのやり取りが、騒がしいあの声がもう聞けないのだと。 そう思うと何だか寂しいものがあった。 「ねえ、シロナさんはアカギって男のこと知ってるんだよね?」 「ええ」 「少しはニャースから聞いてるけど、詳しく教えて欲しい」 その問いかけは果たして失ったものへの悲しみを紛らわせるためか、あるいは放送者への怒りからか。 「そうね。ちゃんと言っておかないといけないわね」 さっきは己の行動の遅れでゲーチスに遅れを取るようなことになってしまった。 アカギのこともちゃんと話しておかねばならないだろう。 「そんな物が…」 「信じられないかもしれないけど、本当よ。それに本来ならあのディアルガとパルキアは神話の存在なの。 それをアカギは手に入れる方法を発見したの」 説明を受けたが、クロエには信じられるものではなかった。 シロナの連れているガブリアスのような存在の中に、時間と空間を司るような存在がいることなど。 そんなものがあるとすればもはや魔法の領域にいるようなものではないのか。 「でもそれって本物なの?その…、力を借りた模倣品とかじゃないの?じゃなきゃ神話の存在なんて…」 聖杯が呼び出すサーヴァントのような存在ではないのかと、むしろそうであったほうが納得ができるという思いを込めてクロエは問いかける。 「いえ、私はこの目で本物を見たことがあるの。アカギがどうやってあの二匹の力を再び手に入れたのかは分からないわ。彼が何を考えてこんなことを始めたのかも、ね」 彼の野望とこの状況にどんな繋がりがあるのか、それを考えるにはまだ情報が足りなかった。 そういえば、野望といえば言っておかなければならないことが一つあった。 「あと、一つ言っておかなければいけないことがあるの」 「あ、ちょっと待って。前に人がいるわ」 ◇ 「松田…!バカ野郎…」 総一郎が部下の死に悲しむ一方でメロと杏子は優先する人物の名前が呼ばれなかったことに安堵していた。 L、ニア、美樹さやかに鹿目まどかといった者たちはまだ生きているようだった。 夜神月の駒が一つ減ったという事実もいい知らせなのだろうか。 最もメロとしては手放して喜べるわけでもなかったが。 「なあ、お前」 「メロだ」 「その千歳ゆまって、どんなやつだったんだ?」 放送で呼ばれた、知る中でおそらく唯一であろう魔法少女。佐倉杏子を慕っていたという子供。 今この場で唯一それを知っているメロにその少女についてを問いかける。 「…そうだな、最初に会ったときはコンビニから食い物と金を持ち出していたな。 ガキにしてはよくやると関心したもんだ」 それを聞いてやはりその少女をその世界で連れていたのが自分なのだなということを考える杏子。 それもそうだ。もし目の前に人のいないコンビニがあれば、自分も同じことをしただろう。 別の自分が面倒を見ていたという魔法少女。これほど近くにいながら出会うことはなく死んでいった。 果たして自分はどんな思いで千歳ゆまと過ごしていたのだろうか。 もう捨て去った過去、あの巴マミと過ごした記憶が脳裏をよぎり、 「―って巴マミ?」 杏子のソウルジェムが巴マミの魔力の反応を捉えた。つまり巴マミがこちらに向かってきているということだ。 「む?あれは、救急車か?」 見ると救急車がこちらに向かってきていた。あれに巴マミが乗っているということなのだろう。 マミが乗っているのならばあれに殺し合いに乗った人間は乗っていないだろう。乾巧は大丈夫だったのかも気になる。 止めようとして前に出ると、向こうから止まってきた。 そして目の前で金髪の女性と肌が黒い少女が降りてきた。 「あなた達は…」 「そんなに警戒しなくても殺し合いに乗ってねえよ」 こちらに向かってくるのにも慎重な動きをしていた二人にそう言って警戒を解かせる。 「そっちに巴マミはいんのか?」 「何で知って…――ってあれ?あんた、もしかして佐倉杏子?」 「へぇ、知ってるのか。なら大丈夫だな。 乾巧ってやつは一緒なのか?」 「?いいえ、私達二人とその巴マミって子だけよ」 (なんだ?マミのやつ失敗したのか?) 乾巧の連れ戻しに失敗したのなら出てこないのも無理はないのだろうか、と自分を納得させる。 顔を見せることができないというなら無理に出す必要もない。 「もしかしてあなた達あのビルが崩れる現場にいた?」 「ああ、あそこで化け物みたいなやつと戦っていたよ 行くならやめとけ。さっきまでまだ戦ってるやつがいるみたいだしもうすぐ禁止エリアになるんだろ?」 「そうね…。じゃああそこで何があったのか教えて。こっちも出しうる限りは情報を出すから」 「そういえば名乗ってなかったわね。わたしはクロエ・フォン・アインツベルンよ、クロでいいわ。こっちはシロナさん」 「あたしの名前は知ってるんだよな。こっちは―」 「いい、自分で名乗る。メロだ」 「夜神総一郎、警察の者だ」 二人が自分で名乗ったのはやはり住んでいた世界ゆえだろう。 顔と名前を知られることが死につながる敵と戦っていたことで名前を他人の口から言われることに抵抗があった。 「メロ…、それに夜神、ね」 「クロちゃん?どうかしたの?」 「ねえ、ソウイチロウ、あなた夜神月って人の家族?」 「何?!」 「月に会ったのか?!!」 夜神月、という名前を出したとき二人は大きな反応を示した。どうやら夜神総一郎は夜神月の父親らしい。 サヤカの聞いていたことが正しければこのメロという人物は危険人物ということになる。 だがそれが正しいという保障もない。それにメロは聞いていた印象とは違う気がする。 ならば先にするべきなのは―― 「その前におじさんに聞きたいんだけど、夜神月ってどういう人物なの?」 無論父親とて知らないこともありえる。だがもしその彼が警戒する人物ならばまず間違いはないはずだ。 「それは夜神月に何か言われたという事か?ちょっと詳しく聞かせろ」 その問いかけにいの一番に反応したのは最も頭の回転が早いメロだった。 もし夜神月について何か手がかりがあるというならばそれを逃がすわけにはいかない。 「あーうん、言っていいのかな?…ま、いっか」 どうも様子もおかしいし言ってしまったことは仕方がない。そう考えて全部を話してしまうクロエ。 当然警戒していなかったわけではない。 しかし直接月から聞いたさやかに対して、クロエが聞いたのはそのさやかから又聞きしたものであった。 そのためキラという存在の脅威性や悪質さなどの部分までははっきり分かっておらず、漠然としたものとしか分かっていなかったのだ。 「俺とニア、L、松田桃太に美空ナオミがキラの手先の危険人物だと?それは夜神月が言ったのか?」 「正確には美樹さやかって子からそれを伝えられたんだけどね」 「さやか?おい、お前、さやかに会ったのか?!!」 「え?ああ、うん。会ったよ。会ったけど――」 「どうして先に言わねぇんだよ!」 「いや、だってサヤカからはそんな仲よさそうな印象なかったから…」 「佐倉くん、落ち着くんだ」 興奮する杏子を窘めたのは総一郎だった。だがそんな彼も突然現れた息子の情報に対する驚きを抑えているのが分かる。 「そのさやかって子から月とどこで会ったかは聞いているかい?」 「確か、来てすぐのところでD-4の間桐って家で会ったって言ってたような」 「そうか、意外と近くにいたんだな…」 「まあその後どっちに行ったかまでは聞いてないけど シロナ?どうかしたの?」 「え、あ、いえ。何でもないわ」 何か考え込んでいる様子であったシロナに声をかけたクロエ。 シロナは月が嘘をついていると言われたとき、ふと思った。もしかしたら美樹さやかという子はかなり危ない状況なのではないかと。 その月という人物の嘘を真に受け、さらにはあのゲーチスとも共に行動することになっていたのだから。 ゲーチスにその誤解を利用されて良からぬことを起こされるのではないか、とふと心配になったのだ。 「でさ、そろそろそっちで何があったのか聞かせて欲しいんだけど」 「あれ?マミのやつから聞いてないのか?」 「それがあの子見つけた時にはかなりの怪我を負ってて気絶していたの。 まだ目を覚ましていないのよね…」 「そうなのか」 色々なことに納得しつつ、まだ未説明のメロと総一郎にもあのビルであったことを話す杏子。 化け物としか言いようのない仮面の男、ゼロとそれと戦っていた乾巧というオルフェノクの男。 乾巧と自分とさらに戻ってきた巴マミ、さらにその場に現れた村上というオルフェノクとおそらく一時的な協力をしてゼロを撤退へと追いやったこと。 そして乾巧を裏切ったらしい木場勇治というオルフェノク。巴マミはゼロと戦う前にその男と戦っていたらしい。 さらに彼に殺されたという乾巧の仲間、菊池啓太郎と魔法少女の千歳ゆま。 仲間の死にショックを受けて去っていった乾巧と彼を追っていった巴マミ。 ここまでが杏子があそこで見た全てだった。 と、話を終えて気付くとシロナとクロエ二人の顔が心なしか青いような気がする。 「何だ?どうかしたのか?」 「…もしかしてあなたの言う乾巧って人、全身から刃みたいなものが突き出た狼みたいなオルフェノクだった?」 「え、まあそんな感じだったとは思うけど、何で知って―ってまさか」 シロナは頭を抱えたくなった。その後何があったのかは分からないが味方となり得た者に攻撃をしてしまったということは確かだ。 話を聞く限りでは、仲間を失ってショックを受けていたのを立ち直らせた少女を連れて逃げていたところを攻撃してしまった、ということになるのだろうか。 「シ、シロナは悪くないわ。最初に攻撃しかけたの私だし…」 「クロちゃん、いいのよ…。 あの、どちらか車を運転できる方はおられますか?」 「運転なら私はできるが…」 「この先の政庁という場所に仲間との集合を約束しています。もしよければ向かってもらえますか?」 「構わないが、君は大丈夫なのか?」 「ええ、私は大丈夫です。ガブリアス、お願い」 そう言って白と赤のボールを投げ、ガブリアスを呼び出すシロナ。 視線の先は巴マミを発見した場所に向いている。どうやら乾巧を探しにいくようだ。 「クロちゃん、先に戻っていて。もし移動することになっても私に気を使う必要はないわ」 「え、ならわたしも一緒に―」 「駄目よ。これは私の失敗なの。自分でけじめをつけさせて。 それにあなたまで付いてきたらあの子が起きたときに説明できないわ」 「……」 「ああ、そういえば一つ言い忘れていたわね。 クロちゃん、ゲーチスには気をつけて。あの男は危険よ」 「え…?」 その言葉を最後にシロナは飛び立つガブリアスに乗って去っていった。 「おい、あれは何だ?」 「えーっと、なんかポケモンっていう生き物らしいわ。詳しく聞きたかったら移動しながらでいいなら話すけど?」 「分かった。確か政庁だったな。佐倉くんも行くか?」 「…おい、さやかはどっちに行ったって言った?」 「アッシュフォード学園ってとこに行ったあとで友達の家に向かうって言ってたわ」 「そうかい。じゃあしばらくは大丈夫だな。あたしもそこに連れてけ。マミのことも気になるしな」 「メロ君はどうするんだ?」 「…悪いが俺はここで抜けさせてもらう」 「おい、何でだよ?夜神月ってやつ探すんだろ?おっさんと行ったほうがいいんじゃねえのか?」 「こっちにも色々あるんだよ」 メロとしては仲間がいらないというわけではない。一人で行動するデメリットはよく分かっている。 だが、それを差し引いても夜神総一郎と共に行動するのは気が進まなかった。 夜神総一郎の人格は分かっているし、敵対していないのであれば同行するのも吝かではない。だがもし月を見つけた時のことを考えると共に探すのは止めておきたかった。 「分かった。なら私に止めることはできないな。気をつけて行くんだぞ」 「最後に一つ聞きたい。 夜神月はたぶんあんたの知ってる夜神月じゃない。俺の知ってる方の夜神月だろう。 それでもあんたはやつを探すのか?」 「ああ」 「そうか。そっちもせいぜい気をつけろよ」 そう言い残して一人バイクを走らせて行った。 ◇ 「それにしてもマミのやつ、ボロボロじゃねえか…」 救急車の処置室に寝かされているマミは自分が最後に見たときよりボロボロになっているように見えた。 魔法少女としての力が肉体を修復しているため、傷自体はそれほど残っていない。 それでも体や服についた汚れからある程度の判断はできる。特に胸の辺りには明らかに何者かに撃たれたかのような血痕が見える。 (そういや、マミのやつあの事知らないんだよな…) きっと巴マミはソウルジェムの秘密は知らないはずだ。 だからさやかのように変な気負いをすることなく戦うことができる。 さやかはまどかの家に向かっているといった。なら今のところは親友を気にかけるくらいは可能な精神状態なのだろう。 あの時のように自暴自棄な行動はしない――と思いたい。ともあれこっちが片付いたら追いかけよう。 とりあえず今は、今だけは巴マミの方を優先したかった。 かつて共に戦ったもののあれの後にその下を離れ、その後も一人で戦い続け、そして気がついたら死んでいた存在。 そんな思いなどとうの昔に捨てたはずだったのに、千歳ゆまという少女の話を聞いて思い出してしまった。 (…たく、あたしもヤキが回ったもんだよな。早く起きろよバカ) 眠り続けるかつての師ともいえる存在の傍で、杏子は羊羹を齧りながら目覚めを待った。 (ゲーチスは危ないって言ってたけど…、サヤカってそいつとずっと一緒にいたんじゃなかったっけ?) 美樹さやかはここに来てからずっとゲーチスと共に行動しており、これからの予定も一緒に行動するというものだったような気がする。 彼が病院ではずっとシロナと会話していたこともあり、クロエにはゲーチスがどんな人物なのかイマイチ掴めていない。だからさやかからの話のなかでそれを想像するしかなかった。 もしやばいのならば杏子には説明しておくべきだろうか? さやかから聞く限りは殺し合いに乗るかどうかは微妙なところと言っていたが、杏子のほうはどうもかなりさやかに入れ込んでいるような印象だった。 などと考えているとふと気になったことがあった。 「ねえ、あんたは息子を追わなくていいの?」 隣の運転席で操縦している夜神総一郎に問いかける。 これまでの会話から彼が息子を探しているということは想像できた。そしてその息子を探しているらしいもう一人の男は一人で探しに出て行った。 なら彼も追いたいはずなのではないか? 「息子が他の人に迷惑をかけるようなことをしているのなら、それを放置することは私にはできない」 夜神総一郎にはLやキラと戦う皆が悪人として扱われることは我慢できなかった。もしそのまま誤解が広がればよからぬことが起きるのは目に見えている。 息子の不始末は父親である自分がつけねばならないと、そう考えていた。例えそれが己の知る月とは別の月であっても。 総一郎はこの場にその別世界の月がいるというのは何かの運命かもしれないと思っていた。 Lに勝ったことで道を外し続けている息子の道を正すこと。それがこの場に呼ばれた自分の役割なのかもしれないと。 一つ不安なことがあるとすれば、約束の時間までに流星塾に間に合うかどうかということだが。 まあ行く先に草加雅人の探している少女がいる可能性も否定はできない。 ともあれ自分の都合だけを優先するわけにはいかなかった。 「ふ~ん、そんなものなのかな?」 「君にもお父さんはいるだろう?父親とはそんなものだ」 「お父さん…かぁ」 クロエには父親のことを言われてもイマイチピンとこなかった。 何はともあれさやかのことだ。今はそんな空気には見えないが言うべきだろうか。 考えている間に4人を乗せた救急車は確実に政庁に近付いていた。 ◇ 勢いに任せて出てきたものの、正直はっきりとした行き先は特になかった。 やはり早急だっただろうかとメロはふと思う。 「それにしても何を焦っている…?夜神月」 一人になったメロはクロエから聞いた夜神月の情報を考えていた。 彼らとの情報交換はメロにとって大きな進歩であった。何しろ夜神月の動きも把握することができたのだから。 だが、だからこそ腑におちないことがある。 メロ自身は夜神月がキラであることはほぼ確信に近いものだったのだ。しかし夜神月自身は決して尻尾を握らせようとはしなかったはずだ。 それほどまでに慎重に動いていたはずの月が、なぜここにきてこのような行動に出たというのか? この場ではキラの知名度は低く悪評としては有効ではあるが、それは月=キラと考えている人間に確信を抱かせるリスクも合わせている。 それにニア、自分、松田桃太、美空ナオミ、Lの5人全てというのはいくらなんでも多い。さらに松田桃太までというのはどういうことなのだろう。 正直今までのキラらしくない。 そもそもこういったものはうまい具合に作用すればいいが、今回のようにいかないことだってあり得るのだ。 騙され易く正義感の強い者ならともかく注意深く慎重な者はそうすぐに行動に出るものではない。 (今の夜神月は何かおかしい…。それは何だ?) 平行世界のことを聞いたが、それでもこの夜神月がキラであり、それも自分の世界の月であることは間違いがない。 だがまだ何かが欠けている。まだピースが足りない。 (ニアなら何て言うのか…。いや、これは俺一人ですることだ) おそらくLやニアならば何かしらの仮説くらいは立てているだろうが。 答えを導き出すには夜神月を見つけることができれば一番手っ取り早い。だがやはり一人で行動するにはカードが足りない。 さっきのような怪獣や杏子の言ったゼロとかいう怪人などを相手にするには拳銃と呪術入りらしい宝石一つでは逃げられるかどうかも怪しい。 それに加えて月自身が広めている悪評のこともある。やはり夜神月を先に探すべきだろうか。 あるいはいっそのことシロナとかいう女を追ってみるのもありだろうか。 (一人…か) ふとバッグをまさぐると出てきたのはあのコンビニで今は亡き少女が持ち出した一枚のチョコ。 それを無造作に食べきると、メロは考察のために止めていたバイクを再び走らせた。 【D-3/東部/一日目 朝】 【シロナ@ポケットモンスター(ゲーム)】 [状態]:健康、魔力減少(小)、罪悪感 [装備]:モンスターボール(ガブリアス)@ポケットモンスター(ゲーム) 救急車 [道具]:基本支給品、ピーピーリカバー×1@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具 [思考・状況] 基本:殺し合いを止め、アカギを倒す 1:乾巧を探す 2:ゲームを止めるための仲間を集める 3:N、サカキを警戒 ゲーチスはいずれ必ず倒す 4:間に合うなら9時に政庁に集合する [備考] ※ブラックホワイト版の時期からの参戦です ※ニャースの事はロケット団の手持ちで自分のことをどこかで見たと理解しています [情報] 「まどか☆マギカ」の世界の情報(ソウルジェムの真実まで) 「ポケットモンスター(アニメ)」の世界の情報(ニャース談) 「プリズマ☆イリヤ」の世界の情報(サーヴァントについても少々) 「コードギアス 反逆のルルーシュ」の世界の情報 バーサーカー、ボサボサ髪の少年(北崎)は危険人物 【D-3/西部/一日目 朝】 【クロエ・フォン・アインツベルン @Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 [状態]:疲労(中)、魔力消費(小) [装備]: [道具]:基本支給品、グリーフシード×1(濁り:満タン)@魔法少女まどか☆マギカ、不明支給品0~2 [思考・状況] 基本:みんなと共に殺し合いの脱出 1:みんなを探す。お兄ちゃん優先 2:お兄ちゃんに危害を及ぼす可能性のある者は倒しておきたい 3:どうしてサーヴァントが? 4:崩壊したビルに向かう 5:9時に政庁に集合する [備考] ※3巻以降からの参戦です ※通常時の魔力消費は減っていますが投影などの魔術による消耗は激しくなっています(消耗率は宝具の強さに比例) ※C.C.に対して畏敬の念を抱いています [情報] 「まどか☆マギカ」の世界の情報(ソウルジェムの真実まで) 「ポケットモンスター(アニメ)」の世界の情報(ニャース談) 「プリズマ☆イリヤ」の世界の情報(サーヴァントについても少々) 「コードギアス 反逆のルルーシュ」の世界の情報 バーサーカー、ボサボサ髪の少年(北崎)は危険人物 【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】 [状態]:健康 [装備]:救急車(運転中)、羊羹(2/3)羊羹切り [道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]@現実、不明支給品1(本人未確認) [思考・状況] 基本:休んでいる暇はない。警察官として行動する。 1:政庁に行き、月の嘘についてを説明する。 2:警察官として民間人の保護。 3:真理を見つけ、保護する。 4:約束の時間に草加たちと合流する。 5:月には犯罪者として対処する。だができればもう一度きちんと話したい。 6:佐倉杏子から、事のなりゆきを聞きたい。 [備考] ※参戦時期は後編終了後です ※平行世界についてある程度把握、夜神月がメロの世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。 【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、ソウルジェム(汚染率:小)、ストレス少々 [装備]:羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入@現実 [道具]:印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1(本人未確認) [思考・状況] 基本:今はマミの様子を見つつ休む 1:とりあえず今だけはマミの面倒を見る 2:その後鹿目邸に向かっているらしいさやかを探す 3:真理を見つけたら草加たちのことを一応伝える 4:いずれ巧への借りは返す 5:夜神月は気に入らない [備考] ※参戦時期は9話終了後です ※夜神月についての情報を得ました 【D-3/???/一日目 朝】 【メロ@DEATH NOTE】 [状態]健康 [装備]ワルサーP38(8/8)@現実、原付自転車 [道具]基本支給品一式、呪術入りの宝石(死痛の隷属)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [思考]基本・元世界に戻り、ニアとの決着をつける。 1:今は夜神月を優先して探す。シロナは追うか? 2:死者(特に初代L)が蘇生している可能性も視野に入れる。 3:必要に応じて他の参加者と手を組むが、慣れ合うつもりはない。(特に夜神月を始めとした日本捜査本部の面々とは協力したくない) 4:可能ならばおりこに接触したい。 5:夜神月の行動に違和感。 [備考] ※参戦時期は12巻、高田清美を誘拐してから、ノートの切れ端に名前を書かれるまでの間です。 ※協力するのにやぶさかでない度合いは、初代L(いれば)>>ニア>>日本捜査本部の面々>>>夜神月 ※ゆまから『魔法少女』、『魔女』、『キュゥベぇ』についての情報を得ました。(魔法少女の存在に一定の懐疑を抱いています) ※平行世界についてある程度把握、夜神月が自分の世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。 ◇ 気がつくと巴マミは真っ暗な闇の中にいた。 ここはどこなの?どうしてこんなところにいるの? 確か私はたっくんと一緒に行動していたはず…。 『マミお姉ちゃん』 ふと声が聞こえる。それはもう聞くことのないはずの声。あのとき木場勇治に殺されたはずなのだから。 「ゆまちゃん?」 闇のなかで少女が立っているのが見える。声をかけながら駆け寄る。 「ゆまちゃん!大丈夫だった――」 『どうしてゆまをみすてたの?』 触れた瞬間そう言って振り返り、同時にゆまの首が落ちた。 「っ!?!?」 ショックで腰を抜かすマミ。そしてゆまの姿は消える。 すると遠くに見覚えのある二人の少女が見える。佐倉杏子と暁美ほむらだ。 「あ、暁美さん、佐倉さん!」 必死で呼びかける。しかし、 『こんなやつと一緒に行けないね』 『私達に触らないで』 返ってきた言葉は強い拒絶だった。 「そ、そんな…、どうして…?」 『それはお前がよく知っているのではないか?』 声が聞こえて振り返ると、後ろにはあの仮面の男、ゼロがいた。 「…っ!あなた…!」 『いいのか?そこで人が殺されそうになっているぞ』 ゼロが指をさした方には、ルルーシュと名乗った人が金髪の女に銃を向けられていた。 腰を抜かしている場合ではない。襲われたからといって死んでいいなどとは思っていない。それに金髪の女も捕らえなければ。 そう思って立ち上がって走り寄るが、間に合わずルルーシュは撃たれてしまった。 「あ、あなたどうしてこんなこと……え?」 撃った人間を見据える。そこに立っていたのは、紛れもなく自分、巴マミだった。 「私が、ルルーシュさんを…?」 『逃げる背後を容赦なく撃ち抜くか。中々の覚悟だな』 『綺麗事を並べていても所詮は人間か。つくづく失望させてくれる』 「ち、ちが……、私は…」 気がつくと、そんな言葉を投げかけたゼロも木場勇治もいなくなっている。 自分と同じ姿をした何かとルルーシュもどこにもいない。 そしてしばらく先に、茶髪の男性がこちらに背を向け歩いている。 「た、たっくん!!」 それは自分が人を見捨てそうになったときのことを任せた男、乾巧だった。 「待ってたっくん!たっく…、巧…さん?」 近付く度に何かがおかしいことに気付く。そして彼は、 『もう、俺に関わるな』 振り返ることなくそう言って消えていった。 再び一人きりとなったマミ。 ああ、そうなんだ…。全部私のせいなんだ…。 ゆまちゃんが死んだのも、ルルーシュが死んだのも、たっくんが傷ついたのも。 こんな私が誰かと一緒にいるなど…――――― ◇ 無論そんな光景は現実のものではない。巴マミはまだ眠り続けている。 だがそんな彼女のソウルジェムが、グリーフシードを使ったばかりにも関わらず、回復に魔力を使ったにしては多い濁りを持っていることは紛れもない現実だった。 【D-3/西部/一日目 朝】 【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】 [状態]:ソウルジェム(汚染率:小)、絶対遵守のギアス発動中(命令:生きろ) 、気絶中 [装備]:なし [道具]:共通支給品一式、遠坂凛の魔術宝石×10@Fate/stay night、ランダム支給品0~2(本人確認済み) [思考・状況] 基本:魔法少女として戦い、他人を守る 0:…… 1:???? [備考] ※参加時期は第4話終了時 ※ロロのヴィンセントに攻撃されてから以降の記憶がかなり曖昧です ※見ていたものはあくまで夢です。目が覚めたとき内容をどこまで覚えているかは不明です [情報] ※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識 ※金色のロボット=ロロとは認識していない 071 REINCARNATION 投下順に読む 073 最強の敵 時系列順に読む 053 私はいざというとき、アナタを殺します(前編) メロ 090 引かれ合うチルドレン 佐倉杏子 078 独りの戦い 夜神総一郎 055 だが…信用できないのはルルーシュ・ランペルージだ…!(前編) 巴マミ クロエ・フォン・アインツベルン シロナ 091 ガブリアスが見てる
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虚無の華 ◆bbcIbvVI2g 巴マミはそこまで強い人間ではない。 人々を守るために魔法少女として戦う彼女。その心の奥には常に過去の事故で自分だけ生き延びてしまったことへの罪悪感があった。 それでも、それに心を折られずに戦い続けてきただけでも強いのかもしれない。 常に正しいことのために力を振るうべき。それが彼女の生き方だったのだから。 そのはずだったのに。 見捨ててしまった。幼き魔法少女を。 殺してしまった。ルルーシュを、白い魔法少女達を。 そして、助けられなかった。自分のせいで死なせてしまった。かつての仲間を。 「ごめんなさい…、ごめんなさい…」 うわ言のようにそう謝罪の言葉を呟き続けるマミ。 その姿はかつて杏子やさやかの憧れた魔法少女の姿ではなかった。 それでも、マミにはその生き方しかできない。思いつかなかった。 誰かを犠牲にして生き延びた命を、自分のために使うことなどできなかったから。 「たっくん…」 会いたかった。だが、会っていいのか、という気持ちもあった。 こんな血塗られた手で、彼の近くにいてもいいのかという思いが。 そして何より、自分のことも信じられなくなっていた。 こんな自分がたっくんの傍にいると、いつか彼さえも殺してしまうのではないかと。 でも、そうだとしても、会いたいという思いはまた別のものだ。 会いたい。でも会ってはいけない。そんな相反する思いが彼女の中に存在する。 どうすればいいのか、どうするべきなのか。 答えは見つからないまま、気がつけば一際大きな建物の近くまでたどり着いていた。 ◆ 「戻ったぞ」 どれくらい経ったか、いや、それほど時間も経っていないだろうか。 C.C.とユーフェミアのいる部屋にゼロが戻ってきていた。 後ろにはクロと年配の男、そして手の中にはボロボロで気絶したニャース。 「ニャース?!何があったス…ゼロ」 「何者かに襲撃を受けたようだ。ゲーチスという男も負傷していた。 青髪の少女がその男を連れて襲撃者を追っていった。だから私はここへニャースを連れて戻ってきたわけだ」 「ねえC.C.。一つ聞きたいんだけど」 ふと会話に割り込むクロ。その顔からは何か警戒心のようなものを感じた。 「こいつ、あんたの言ってたゼロなのよね?信用できるの?」 「古い知り合いみたいなものだ。私の知る限りでは大丈夫のはずだ」 「…そう。私達、あの後例のビルの近くまで行ったんだけどさ。 そこにいたって話があるのよ。仮面を被ったマントの男、ゼロが」 「何…?」 C.C.は眉をひそめ、ユーフェミアは黙ってゼロを見つめていた。 そしてそれを聞いたゼロ、いや、スザクは仮面の下で無意識にユーフェミアから視線を逸らした。 「はぁ…、やはりな。だから無理があると言ったんだ。どうする?今更ではあるが」 「……。いや、できればこのままの方が望ましい」 「本当に面倒なやつだ。とりあえずこいつがそのゼロとは無関係であることは私は保証しておこう」 「ふむ…、まあ人には事情というものもあるだろうしな。こちらも直接会ったわけではないから何とも言えない。 佐倉杏子という少女がもう少しで追いついてくるはずだから、その後で話し合ったほうがいいだろうな」 「そっちの男は?」 「夜神総一郎って。C.C.、聞き覚えあるでしょ?」 「夜神…、そういえばさやかのやつが言っていたな」 「それは俺の息子だ。その件についても話がある」 人が増えるとどうしても積もる話もできる。 一つ一つ確実に出していかなければいけないことだ。 総一郎が言うには、彼の息子、夜神月の言った危険人物の話は出鱈目だという。 彼自身も知らない人物がいるとはいえ、今生存しているであろうL、メロ、ニアはそのような存在ではないという。 メロとニアに関しては少なくともメロには実際遭遇しており、Lはもし”どちらの”Lであってもそのようなことは有り得ないという。 「どちらの、とはどういうことだ?」 「メロと俺ではその、パラレルワールド、とか言ったか。どうも住んでいた世界とやらが違うらしい。 だがどちらのLであっても人を貶めようとする人間ではない」 「その月という息子さんのことは分からないのですか?」 「月は俺の知らないメロとニアという者を知っていた。俺の知る息子とは違う可能性があるから迂闊に推測することがな…」 平行世界とは予想以上にややこしいことになっている様子だ。 ともあれ、月という男が乗っているのかどうかはともかく、偽りの情報を流すことで他者を陥れようとしているのは事実の様子。 警戒は必要だろう。 「そういえばクロ、あの女はどうした?」 「シロナさんなら、あー…、ちょっとね。 それとここに来る途中で佐倉杏子と巴マミって二人見つけてて。もう少しで追いつくと思う」 「そうか。こっちにもさっきまではさやかのやつが居てな。 そういえばアッシュフォード学園にだが、お前の仲間がいたぞ。名前は確か…、ルヴィアだったか」 「ルヴィアが?そう、どっち行ったの?」 「いきなり襲ってきた女を連れて、東に向かっていった。放送で名前が呼ばれなかった以上、無事なはずだ」 「なんだ、なら大丈夫ね。差し迫って追わなきゃまずいってわけでもなさそうだし」 と、ふとその場にいた皆が銃声を捉えた。 それもかなり近く。この建物の中から聞こえる音だ。 「少しここで待っていろ」 ◆ ミュウツーは若干の困惑を感じていた。 暁美ほむら達と別れ、近くにあった建物に入ったところで一人の少女を見かけた。 あまりに虚ろな目をしていた彼女が流石に気になり、声をかけたのだ。 しかし次の瞬間、突如その手に現れた長い銃で撃たれたのだ。 「落ち着け、私はお前と戦うつもりはない」 声をかけるが銃弾と殺気は止む気配はない。 サイコキネシスで銃の向きを変え、銃弾も止める。 しかし少女はすぐさま戦法を変更し、地面から生えた大量のリボンで拘束してこようとする。 そちらに注意を向けてしまうと、今度は銃弾がかわしきれない。前面にバリアーをはることでかろうじて防ぐ。 ミュウツーからすれば巴マミを力づくで取り押さえたほうが楽な選択ではあった。 体を、銃口を抑えてこちらを拘束しにかかるリボンをサイコキネシスで操り逆に縛り上げることも可能かもしれない。 しかしミュウツーは目の前の少女と対話をしたかった。サトシを殺した少女のときとは違い、敵対する理由はないのだから。 できればどうしてこの少女は戦いを仕掛けてきたのか、それを問いたかった。 しかし銃弾とリボンを入り混ぜた戦い方はそれなりに精錬されたもので、手加減したままで取り押さえることも困難だった。 (やはり、私が人間ではないから、か?) 先にポッチャマに銃口を向けた少女、暁美ほむらを思い出す。 人間とそれ以外の存在はやはり分かり合えないのだろうか。 そんな諦めに近い思いが心の中で大きくなり始める。 サイコキネシスに篭った力が少しずつ強くなり始めた。その時だった。 「おい!何をやっている!」 戦っていた通路の奥から男が叫ぶ声が響いた。 仮面とマントの男と年輩の男。少なくともミュウツーは仮面の男は見覚えがあった。 「君は、巴マミくん?!何があった、佐倉くんは――」 「ゼロ?!!」 そして目の前の少女は仮面の男を見た瞬間、怯えと驚愕の混じった顔で銃口を向け始めた。 それも先ほどの比ではない。狭い通路に円形に8丁のマスケット銃が並べられる。 「っ?!隠れろ!!」 通路の角、銃弾の届かない場所にゼロは総一郎を押しやり、自身は前面にバスターソードを構える。 通路脇の壁を蹴り、銃弾をバスターソードで防ぐ。銃弾の衝撃で剣を取り落とすが問題ない。マスケット銃なら再装填する間に取り付く自信があった。 しかし彼にとって予想外なことに、マミは即座に、それ以上の数のマスケット銃を精製して瞬時に発射にかかる。 生きろギアスがあるとはいえ、流石に焦るスザク。しかし、それらは発射されなかった。 「私のことを忘れてもらっては困るぞ」 サイコキネシスでマスケット銃を押さえ込むミュウツー。加えて体の自由を奪う。 ミュウツーは自身のバッグから小さな木の実のようなものを取り出してゼロに投げる。 「それを食べさせろ。少しは落ち着くはずだ」 サイコキネシスに抗うマミの力はかなり強く、ミュウツーでも長期的に抑えるのは難しい。 だから自分が抑えている間にマミの精神を落ち着かせればいいだろうと、そう考えたのだ。 とりあえずミュウツーの意図は汲み取ったゼロは木の実を手に近づく。 だがそこでミュウツーにとっても予想外のことが起きる。 「っ…!!離して!!」 そう叫んだと同時に彼女の力が急に上がり、サイコキネシスすら振り切った。 さらに近づいてくるゼロの体に蹴ろうと脚を振り上げる。 だがゼロはそれをかわしてもう片方の足を払う。 そこでミュウツーは周囲のリボンでマミの腕を束縛。動きを封じる。 ゼロはすかさず、素早くマミの口にその手の木の実を押し込む。 「むぐっ…!」 そのまま口に入れたそれを無理矢理咀嚼させる。 「落ち着いたか?」 「はぁ…、はぁ…」 それを飲み込んだところで、彼女の呼吸が少し落ち着きを取り戻す。 しかしミュウツー、そしてゼロに対する敵意、警戒心は未だ保ったままだ。 マミは縛られたまま、それらを露にしたままゼロ、いや、スザクに問いかける。 「あなたは…、ゼロなの…?!」 ◆ 「で、どうなったんだ?」 「ユーフェミアって人と総一郎が隣の部屋で話聞いてるって。 私さっき撃たれかけたから正直近寄るの躊躇っちゃうのよね」 その一室に集まっているのはゼロ、C.C.、クロ、ミュウツー、そして未だ目を覚まさないニャース。 あの後マミを総一郎が落ち着かせ、隣の部屋で話をさせることにしたのだ。 ミュウツーやゼロに対しては拒絶感を強く感じたことで、総一郎とユーフェミアの二人であたることになった。 クロは本人の言うとおりであり、C.C.は何かやる気が起きなかった。 「それにしても、なぜお前がここまで来た?」 「深くは考えていない。ただ、あのさやかという人間ともう少し話してみたいと感じた。それだけだ」 「あいつならさっきまではいたが、もうここにはいないぞ」 「ン…、ニャア…」 そんな会話を続けていたところで、ニャースが目を覚ました。 「目が覚めたか。何があった?」 「いきなり見たこともないポケモンに襲われたニャ…。にゃーの力じゃどうにもならにゃい強さのポケモンだったニャ…」 「そのポケモンの外見は?」 「首が三つあったような気がするニャ…」 「首が三つ?それ、私見たかも。ここにくるまでのところで空飛んでたと思う」 「お前は知らないのか?」 「俺もすべてのポケモンを知っているわけではない。むしろポケモンは未だ発見されていないような種類のものも多い。 知っているとすれば、…研究者のようなものならばあるいは、だが」 確かアッシュフォード学園にはオーキド博士と呼ばれていた者がいたような気がする。あの老人なら知っているのかもしれない。 だが、今重要なのはそれが誰のポケモンなのかということであり、種類が重要なのではない。 もしかしたらニャースは狙われたのではないか、と考える。 話し終えると、ふうとため息をついてまた何かを考え込み始める。 「どうしたのよC.C.。さっきと比べたらなんか随分と無気力に見えるわよ?」 「そうニャ、大丈夫かニャ?」 「……」 ガチャ 扉が開き、夜神総一郎が入ってきた。 「待たせてすまない。どうも事態はかなりまずいことになっているらしい」 「まずいって?そういえば杏子って子、まだ追いついてこないけど、どうしたんだろ?」 「佐倉君は、……死んだそうだ」 総一郎はおそらく事情を知らないであろう皆に聞いた話を最初から説明していく。 あまりに情報が多いため、全てを聞いた後で質問を受け付けると前置きしておく。 巴マミはあの崩壊現場でゼロという仮面の男とルルーシュという学生に出会った。 ルルーシュはビル崩壊直後気球に乗って逃げ、彼女自身もそこから離れるも、ゼロの追撃を受ける。 そこで乾巧という人物に助けられるも、逃げた先で木場勇治という人物に襲撃を受けたこと。 その後の部分は総一郎自身も佐倉杏子とメロから聞いたことも交えて説明する。 そして、問題はその先の話である。 ここから南のエリアでルルーシュと再会した彼女は、銃弾で撃たれる。 その先の記憶は曖昧らしいが、白い魔法少女と赤い包帯を腕に巻いた男を見たとか。 そして、目が覚めたとき、目の前で青い魔法少女が佐倉杏子を殺していたところだったと。 その魔法少女を殺して、今いるこの場にたどり着いた。 「これが、彼女の説明した全てだ」 「ルルーシュと会っただと…?それにさやかが?どういうことだ?」 「ゼロと木場勇治という二人組なら聞いている。さっきその崩壊現場で戦ったという二人に会ったからな」 「……」 「それと、ゼロ、でいいのか?」 「私がどうかしたか?」 「話が終わったらきてくれとユーフェミア君が言っていた」 「…そうか」 ゼロは席を外す。 「俺もその巴マミと話をさせてもらっていいか?」 「…今は彼女は不安定だ。あまり刺激するようなことはしたくないが」 「私にも付き合わせろ。聞いておきたいこともある」 「ニャ…、にゃあはここで待ってるニャ。 今はちょっと歩けないニャ…」 こうして部屋にはニャースだけが残った。 ◆ ユーフェミアが待っていた場所は昔彼女自身がそこにいたであろう部屋。 かつてゼロがスザクであった頃は何度も入った場所である。 偶然にも部屋の場所は皆の集まっていた所からそう離れたところになかったため彼女はここを選んだのだろう。 「私の知るゼロは、兄、クロヴィスを殺し、お姉さま、コーネリアを2度、殺そうとしました。 でも、ナナリーが処刑されそうになった時にはどこからか現れて助けてくれました。 もし、私の想像通りであれば、彼の正体と仮面で顔を隠さなければならない理由についてなんとなく予想がつくんです」 そう言って、ユーフェミアはゼロの方を向く。 スザクは、この仮面の下の全てを見透かされているような錯覚に陥る。 だが、たとえそうだとしても動揺するわけにはいかない。ゼロを演じることを止めてはいけない。 今の自分は、たとえ名簿に載せられた名が枢木スザクであったとしても、ゼロであるのだから。 「…すまない。騙すつもりがあったわけではないのだ」 「いいんです。あなたにもきっと、その仮面を被らなければいけない理由があるのでしょう?」 そう言って、仮面の下にあるであろうゼロの目を見据えてこう言った。 「しかし、ゼロの名を名乗り続けるということは、この場においてあるいは余計な警戒心と混乱を招く可能性があります。先ほどの少女のように。 それでもあなたは、その仮面を被り続けるのですか?」 そう問いかける。その声は心から心配しているものだ。 それでも、スザクはこう答えるしかない。 「ああ、それも私にとっての償いとなるのだろう。 皆からの憎しみや怒りも全て受け入れる覚悟がある。もし誤解を生んでしまった際には一つ一つこの身で証明していく。 だからこの仮面を外すことはできない」 「そう、ですか…」 ゼロの答えを聞いて、一瞬悲しそうな目をしたが、すぐに表情を切り替えた。 「ごめんなさい、踏み入るようなことを聞いてしまって」 「いや、誤解を生みかねない姿であることは私とて重々承知している。 そのことが君に不快感を与えてしまったのであればこちらの責任だ。すまない」 互いに謝罪の言葉を述べるユーフェミアとゼロ。 ともかく話自体はこれで終わりのようだ。 部屋を出ようとする二人。だが最後にユーフェミアはこう口にした。 「でも、あの巴マミという方には仮面を被ったまま会うのは控えた方がいいと思います。 彼女、心に大きな傷を負っているように見えました…」 ◆ 部屋に入った瞬間、マスケット銃を構えての出迎えを受けてしまった一同。 「落ち着くんだ、巴くん!」 「…もう逃げないわ。私は、ちゃんと受け止めるって決めたんですから…!」 銃の向きはクロに向いたものだ。 しかしその言葉の意味は、向けられたクロにすら想像がつかなかった。 「何なのよあなた…!魔女が見せる幻影なの…?」 「…?」 「だって、あなたはもういないのよ!私が、私が…」 「何言ってるのよ?私がもういないって……。 待って、白い魔法少女…?もしかしてあんた、イリヤに会ったの?」 「えっ…?」 クロに名前を問われたことで驚く顔を浮かべるマミ。 無論彼女にそれに対する返答をすることはできない。白い魔法少女のことは名前すら知らないのだから。 ただ、殺してしまった少女と同じ顔をしたものが現れたのなら、それは亡霊としか思えなかったのだ。 「イリヤはまだ生きてるわよ。あんたさっきの放送聞いてないでしょ」 「あなた、あの子じゃないの…?」 「私はクロエ・フォン・アインツベルン。あんたが会ったのはイリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ」 先ほどの錯乱の理由はそれか、と納得するクロ。 しかし不自然なことがある。イリヤの名前も知らず、情報交換も行わずに戦闘行為に及んでいる様子。 だがイリヤの性格からしてこの巴マミと戦う理由はあるのだろうか。 それは美樹さやかから聞いた情報からは全く想像できない。 「何があったのよ?イリヤに何したの?」 「…分からない。分からないの…。戦ったのは覚えてるし、もしかしたら死んだかもしれないって思ったことも覚えてる。 でも、そこで何があったのか思い出せないの…!」 「一つ聞くぞ。お前、ルルーシュには会ったのか?」 「ルルーシュ…?確かに会ったけど…、でも、確かに彼に撃たれたのよ…。 だからルルーシュを拘束して、動けないようにしたの…。そしたら白い魔法少女に…」 「…何やってんのよイリヤ」 ある程度の事情は把握できたが、どうも彼女の記憶の一部があやふやになっている様子だ。 正直彼女の話を聞いただけでは何があったというのかは把握しきれていない。 ルルーシュの行動の意味も、今イリヤがどうなっているのかということも。 ただ、なんとなくだがC.C.には彼女の記憶が混雑している理由に心当たりを感じた。この場では結局それをマミに聞くことはなかったが。 「まあ今は休んでおけ。邪魔したな」 「え、もういいの?」 マミの前から姿を消すC.C.、そしてそれを追って部屋を出るクロ。 今巴マミの前に立っているのは、ミュウツー。 「お前はなぜ戦う?」 「え?」 「それほどまでに傷つき、恐れを感じていながらもお前の闘争心はかなりのものだ。 何がお前をそこまで戦いに駆り立てる?」 戦う理由。それは自分が魔法少女である以上決まっている。この命ある限り守るべき人間を守るためだ。 今までも、これからもそうやって戦ってきたのだから。 そこに何か理由が必要なのか。 しかしミュウツーは納得しなかったようだ。 「ならばなぜ守ろうとする?人間にそれだけの価値があるのか?」 傍から見れば人間の価値を低く見ているような言い方であるがミュウツーにそんな意図はあまりない。 ただ、彼自身も人間の価値というものを測りかねているのだ。それを彼女に問いたかったのだ。 「え…?あ、あなた何を言って、るの?」 その問いかけに大きく心を揺さぶられるマミ。 巴マミは人間の価値がどうとか、誰を助けるべきなのか、そんなことを気にして戦っているわけではない。 ゆえに、美樹さやかにとって、佐倉杏子にとって憧れの先輩なのだから。 だが、彼女はなぜ戦うのか、どうして人間を守るのか。その答えなど持ってはいなかった。 いや、そこには触れてはいけなかったのかもしれない。 なぜなら、巴マミの戦う理由、それは――― 「そこまでにしておけ」 見かねた総一郎が会話に割り込む。 「彼女はまだ子供だ。それにようやく落ち着いてきたところなんだ。 あまりおかしなことを聞くのは流石に避けるべきだろう」 「……」 ミュウツーは少し何か考えた後、おもむろにバッグから取り出した何かを巴マミの傍に置いた。 「餞別だ。また会うことがあれば改めて話をさせてくれ」 そう言って部屋から出て行った。 「……」 「まあ、何、気にすることはない。君も少し心と体を落ち着かせた方がいいだろう?」 「その、たっく…乾巧って人は…?」 「今は少し事情があってここにはいない。まあ大丈夫のはずだ」 「そう…、ですか…」 悲しみと安心の入り混じったような声を、小さく発したマミ。 ふと視線を下にやると、そこにあったのはうんまい棒コーンポタージュ味。一本10円ほどの安くて手ごろな駄菓子であった。 いつだったか、共に戦っていた彼女がその手ごろさと味から好んで食べていたような気がする。 うんまい棒を握る手にどこからともなく雫が落ちた。 「あれ…、私、泣いて…」 魔法少女として戦う以上、いずれは訪れるであろう死。 魔女との戦いで、あるいは魔法少女同士の縄張り争いで命を落とすものも見てきた。 だが、彼女はそんな中でも唯一親密な関係になれた魔法少女だったのだ。 その彼女がもういない。 改めてその事実に気づいたとき、目から溢れる涙を堪えることなどできなかった。 「う…、あ、うああああああああああぁぁぁ…!!」 泣き崩れる巴マミの姿を見て、夜神総一郎は静かに部屋を出た。 あまり年頃の女の子が泣く姿を見るというものに心苦しいものがあった。自身も娘を持つ父親として。 (魔法少女、か。まだあんな子供じゃないか…) 部屋を出て一人、総一郎は考える。 以前佐倉杏子から聞いた彼女の印象とは随分と異なるものだった。 死の恐怖に怯え、友達の死に涙を流す少女。どこが正義の味方なものなのか。 そういえばその佐倉杏子自身も家族を亡くしていると聞いた。 「月、お前ならどうするんだ…?」 キラは家族を殺人鬼に殺され、しかし公平な裁きを加害者に与えられなかった者を救った。 なら、家族を失い孤独のまま戦う少女に対して救いをもたらすことはできたのだろうか。 そんなことは正直分からなかった。 ただ、仮にも息子だった者。本当に神になりたくてあのようなことをしたとだけは思いたくなかった。 ◆ 「全く、何が正義の味方だ。ただの小娘じゃないか」 C.C.は呟く。言葉の奥には美樹さやかの人を見る目の無さを責めるような口調があった。 あいつの説明だけだと、もっとキリッとした人間を想像していたが期待外れだった。 とはいえルルーシュと会ったというなら後々話を聞いておかなければならないのだろう。 だが、それも優先事項というわけでもないが。ルルーシュはもういないのだから。 「で、クロ、お前はどうするんだ?」 「シロナさんのこともあるし、ここから離れるわ。幸い、あの巴マミって人と会って収穫もあったし」 そう答えたクロは懐から何かを取り出す。それは鮮やかな色をした宝石が数個。 かつてその手のものを所持した経験があったC.C.にはそれがそれなりに高価なものであることには気づいたが、それを収穫という意味が読めなかった。 というか、いつの間に持ってきたのだろうか。 「巴マミのバッグから魔力を感じ取ったから持ってこさせてもらったわ。これ、知り合いの魔術師の宝石なの。 これでしばらく魔力供給に関してはどうにかなりそうだし」 「ちゃっかりしてるやつだな」 「いきなり銃で撃たれたんだからこれくらいいいでしょ。それにこっちは命かかってるのよ」 なぜ魔力とやらに命が結びつくのだろうか。 戦いの最中にそれが切れたらまずいということなのかもしれない。 聞いてみようかとも思ったが長々と説明されたら面倒だと考えてあえて聞かなかった。 「でもさ、そのルルーシュって人のこと聞かなくてよかったの?仲間だったんでしょ?」 「ああ、だがそれももう過去の話だ。やつはもういない。今更聞くようなこともない。 …なあ、クロ。生きる理由を失った者はこの場でどう生きればいいんだろうな」 「はぁ?」 なぜそんなことを聞いたのか、自分には分からない。 ただ自分では見つけられない答えを他人に求めただけなのかもしれない。 だからこそ―― 「何、あんた生きるつもりないの?」 「さあな、ただ生きようと思う理由が分からなくなった。それだけだ」 チャキッ このように剣を向けられるというのはそれなりに予想外であった。 目の前で突きつけられたのは白と黒の双剣。それが首筋で交差して突きつけられていた。 「じゃあもしここで私があんたをこうやって斬りつけたとしても、何の問題も、何の後悔もなく安らかに死んでいけるっていうの?」 「それで殺せるかどうかは知らんが、殺してくれるなら抵抗はしないさ。私のこれまでを考えれば、私の命の価値など―」 シュッ 双剣は首の皮を切り裂く。 「生きようと思う理由?そんなものなければ生きられないの? 自分の命に価値がないって?なら見出しなさいよ。 私なんて生きる意味も理由も、生まれたときから無かったわよ」 ◆ そういえば以前ある人に戦う理由を聞いたことがあった。 自分達の出会いを否定し、それでも以前の生活に戻りたいと言った者のために戦う理由なんてあるのか、と。 彼女は迷わず答えた。彼女は私を友達と呼んでくれた。理由なんてそれだけでいいと。 そんな風に言える彼女が羨ましかったのかもしれない。 私には生まれたときから生きる意味などなかったのだから。 一つのとある目的のために生まれてきた私。だが、親はそれを放棄した。 記憶を、知識を封じた。まるでその存在などなかったのだとでもいうかのように。 それでも私はある奇跡のような偶然の元でこうやって生きている。何故? 自分自身で生きたいと願ったからだ。 そう思えた理由もあの時のもう一人の自分の言葉があったからだ。 この場においてもそうだ。もしシロナさんと出会わなければきっとあのオルフェノクに殺されていた。 それに何か意味があるのかは知らない。だが今こうして生きている事実ははっきりとあるのだから。 生きる理由なんて知らない。意味なんて知らない。 おめおめと殺されてやるつもりなどない、命ある限り抗ってやる。 それがクロの、この場における意思。 だから、生きる意味を失ったといって生きる意志すら無くす者を許容できなかった。 ◆ 「ふん、齢2桁も怪しい小娘が私に説教か?」 「そうね、生憎現界して数ヶ月の小娘よ。 別に説教する気もないし、死にたいなら死ねばいいわ。 でもね、生きる理由とか意味とか、そんなもの私の前で語らないでくれる?」 C.C.は鋭い眼でクロをにらみつけるが、クロも引かない。 C.C.がどんな人生を送ってきたかなどクロは知らない。興味もない。 だから生きていればいいことがある、などと言うつもりはない。C.C.を導くつもりも毛頭無い。 ただ、さっきの言葉は、今のクロには聞き流せないものだった、それだけだ。 「生きる理由、か」 不意にC.C.の後ろに現れるミュウツー。 いつからいたのか、話をある程度聞いていた様子だ。 「お前はそれを持っているのか?」 「何よあんた」 「お前に聞きたい。生きる理由とはどうやって見出すことができるものなのだ? なぜ自分がここにいるか、その理由が無くても生きていけるのか?」 「当たり前じゃない」 ミュウツーは何かを考えるようにクロを見つめ、視界から去っていった。 「……何かどうでもよくなったわ」 飽きたようにクロは双剣をくるくる回した後で腰辺りに吊り下げた。 「まあ悪かったわよ、いきなり剣向けたことは」 「気にするな。割と慣れてる」 ◆ C.C.、ゼロ、ユーフェミア、夜神総一郎、ニャース、巴マミは結局政庁に留まることになった。 近くにゼロ(マッチョの怪物の方)がいるというのも警戒しなければいけないことではあったが、逆に動きまわることで遭遇してしまっても危険だ。 特にニャース、巴マミは負傷しているため動きまわることは難しい。もしこっちに向かってきた場合は、まあ諦めるしかないだろう。 クロはシロナを待たずして出発した。 イリヤのことがやはり気がかりになったようである。シロナのことは、案外移動していれば会うこともあるだろうという考えもあった様子だ。 赤い外套を翻して政庁の窓を飛び出す。その腰に携えられているのは先ほど投影した干将莫邪。 「で、あんたどうして付いてきたのよ」 「……」 走るクロの後ろにはミュウツーがはり付いてきている。 足を動かすこともなくまるで浮遊するかのように地面を滑っている姿はなかなか面白いものではあるが。 「シロナ――シンオウ地方なるところでのチャンピオン。お前に付いて行けば会えそうな気がするのでな」 「ふーん、まあ別にいいけど」 ミュウツーは言わなかったが、彼がクロに付いていった理由はそれだけではない。 何故か彼女からは親近感を感じたのだ。 生まれたときには生きる理由も意味もなかったと言った目の前の少女。それは自分自身が知りたいと思った疑問だ。 そして今、私と似た疑問を抱えた少女はこうやって迷うこともなく生きている。 彼女がいかに答えを見つけ出したのか、生きようと思えるようになったのか、非常に興味を持った。 未だ見つからない答え、クロエ・フォン・アインツベルンという存在であれば示せるのではないかという期待。 それがミュウツーが彼女に同行した理由である。 「でも邪魔だけはしないでよね」 「分かっている」 ◆ 「ったく、小娘のくせに言ってくれる…」 C.C.は走り去るクロとミュウツーの背を窓から眺めながら呟く。 クロの言わんとすることは分かった。だが納得はできなかった。 あいつはようやく得られた存在意義を失ったことなどないのだろう。 私がそれをどれほど繰り返してきたか、あいつは知らない。 だがそんなことを口にすることはない。同情でも誘う気ならまだしも実際に口に出すのは論外だ。 それにあいつが言うこともまたある意味では真実。 心の整理をつけなければいけないだろう。今後のこと、この場でのこと、その全てを。 ふと近くにいる包帯でグルグル巻きになった生き物に問いかける。 「なあニャース、お前は自分の生きる意味について考えたことはあるか?」 「にゃ、そんにゃの、知らないにゃ」 返答は特に何ということもない当たり障りのないもの。 だがそれが普通なのだろう。普通に生きていくうえでは。 「だけどにゃ、もし帰ることができても、もうジャリボーイはいないにゃ…。 でもにゃー達はロケット団の一員としてこれまで通り生きていくんにゃと思ったらにゃ…」 「………」 「ゼロ、お前は――いや、なんでもない」 問いかけは黒い仮面を被った男に掛けられたもの。 だがこいつにそれは地雷だと気付き、問いかけるのを止める。 C.C.は一つ溜め息をついて改めて巴マミの休む部屋に足を進めた。 【D-2/政庁付近/一日目 午前】 【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]:魔力減少(小) [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、病院で集めた道具 [思考・状況] 基本:これからどうしたいのかを考える 1:心の整理をつける 2:巴マミが落ち着き次第、詳しい話を聞く 3:さやかの答えを聞きたいが、また会えることに期待はしない 4:プラズマ団に興味は無い。 5:ミュウツーは見た目に反して子供と認識。 [備考] ※参戦時期は21話の皇帝との決戦以降です ※ニャースの知り合い、ポケモン世界の世界観を大まかに把握しました ※ディアルガ、パルキアというポケモンの存在を把握しました ※桜とマオ以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線) 【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中、疲労(小) [装備]:バスタードソード@現実、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ [道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0~1 [思考・状況] 基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる 1:これからどうするか考える 2:なるべく早くユーフェミアと同行してくれる協力者を捜し、政庁に行ってもらいたい 3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい 4: [備考] ※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦 ※ゼロがユーフェミアの世界のゼロである可能性を考えています ※学園にいたメンバーの事は顔しかわかっていません。 【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】 [状態]:ダメージ(大)、全身に火傷(処置済み)、気絶中 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済) [思考・状況] 基本:サカキ様と共にこの会場を脱出 1:しばらくここで待つ。その間にどうするかを考える 2:C.C.の言っていることは難しくて分からんニャ 3:そういえばポッチャマはどこに行ったニャ? [備考] ※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです ※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線 【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】 [状態]:健康 [装備]:防犯ブザー@現実 [道具]:基本支給品一式(水はペットボトル1本)、シグザウエルP226(16/15+1)@現実、スタンガン@現実、モンスターボール(空)(ヒカリのポッチャマ)@ポケットモンスター(アニメ) [思考・状況] 基本:この『儀式』を止める 1:今は政庁にて今後のことを考える 2:スザク(@ナイトメア・オブ・ナナリー)と合流したい 3:他の参加者と接触し、状況打開のための協力を取り付けたい 4:細マッチョのゼロ(スザク)は警戒しなくてもいい……? 5:ルルーシュ…… [備考] ※CODE19『魔女の系譜Ⅲ-コードギアス-』でゼロの乱入した戦場からロイドに連れられ避難したよりも後からの参戦 ※名簿に書かれた『枢木スザク』が自分の知るスザクではない可能性を指摘されました ※『凶悪犯罪者連続殺人事件 被害者リスト』を見ました ※もう一人のゼロの存在を知りました。同時に細マッチョのゼロがゼロではないことを確信しました 【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】 [状態]:健康 [装備]:救急車(運転中)、羊羹(2/3)羊羹切り [道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]@現実、不明支給品1(本人未確認) [思考・状況] 基本:警察官として行動する。 1:巴マミが気がかり 2:警察官として民間人の保護。 3:真理を見つけ、保護する。 4:約束の時間に草加たちと合流する。 5:月には犯罪者として対処する。だができればもう一度きちんと話したい。 6:魔法少女とは何なのだ…? [備考] ※参戦時期は後編終了後です ※平行世界についてある程度把握、夜神月がメロの世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。 【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】 [状態]:ソウルジェム(汚染率:中)、絶対遵守のギアス発動中(命令:生きろ)、大きな悲しみ、精神不安定 [装備]:魔法少女服 [道具]:共通支給品一式×2、遠坂凛の魔術宝石×5@Fate/stay night、ランダム支給品0~2(本人確認済み)、不明支給品0~2(未確認)、グリーフシード(未確認)、 うんまい棒コーンポタージュ味@魔法少女まどか☆マギカ [思考・状況] 基本:魔法少女として戦い、他人を守る。だけど… 1:私はどうしたらいいの…? 2:自分が怖い 3:佐倉さん… 4:たっくんに会いたい、けど会いたくない [備考] ※参加時期は第4話終了時 ※ロロのヴィンセントに攻撃されてから以降の記憶は断片的に覚えていますが抜けている場所も多いです ※見滝原中学校の制服は血塗れになっています ※第一回定時放送を聞き逃しました。禁止エリア、死者などは把握していません [情報] ※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識 ※金色のロボット=ロロとは認識していない ※蒼い魔法少女(美樹さやか)は死亡したと認識 【D-2/市街地/一日目 午前】 【クロエ・フォン・アインツベルン @Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 [状態]:疲労(小)、魔力消費(小) [装備]:戦闘服、 [道具]:基本支給品、グリーフシード×1(濁り:満タン)@魔法少女まどか☆マギカ、不明支給品0~2、遠坂凛の魔術宝石×5@Fate/stay night [思考・状況] 基本:みんなと共に殺し合いの脱出 1:みんなを探す。今はシロナさんとイリヤを優先 2:お兄ちゃんに危害を及ぼす可能性のある者は倒しておきたい 3:どうしてサーヴァントが? 4:9時に政庁に集合する [備考] ※3巻以降からの参戦です ※通常時の魔力消費は減っていますが投影などの魔術による消耗は激しくなっています(消耗率は宝具の強さに比例) 【ミュウツー@ポケットモンスター(アニメ)】 [状態]:軽傷 、疲労(小) [装備]:なし [道具]:基本支給品、不明支給品0~1(確認済み) [思考・状況] 基本:人間とは、ポケモンとは何なのかを考えたい 1:クロに非常に興味 2:プラズマ団の言葉と、Nという少年のことが少し引っかかってる。 3:できればさやかと海堂、ルヴィア、アリスとほむらとはもう一度会いたいが…… 4:プラズマ団はどこか引っかかる。 5:サカキには要注意 [備考] ※映画『ミュウツーの逆襲』以降、『ミュウツー! 我ハココニ在リ』より前の時期に参加 ※藤村大河から士郎、桜、セイバー、凛の名を聞きました。 出会えば隠し事についても聞くつもり ※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線) ※巴マミ以外の人物は政庁にておおまかに情報交換を行いました。しかし以下の情報は明かされていない様子です ・ルルーシュを殺したのは巴マミ ・ポッチャマが暁美ほむら達に同行したこと ・美樹さやかが生きているということ(C.C.達もその発想に至っていない可能性有) ※以下二つはミュウツーに支給されたものです 【うんまい棒コーンポタージュ味@魔法少女まどか☆マギカ】 佐倉杏子が9話にて鹿目まどかに送った食べ物。 駄菓子屋などで広く売られているスナック。1本10円。 【ラムのみ@ポケットモンスター(ゲーム)】 状態異常を回復することができる木の実。 毒、火傷、眠り、麻痺、凍り、混乱状態が該当する。 086 Cross point 投下順に読む 088 氷の魔王―ジ・アイス― 時系列順に読む 071 REINCARNATION 枢木スザク 088 氷の魔王―ジ・アイス― ユーフェミア・リ・ブリタニア C.C ニャース 078 独りの戦い 巴マミ 夜神総一郎 クロエ・フォン・アインツベルン 100 Juggernaut-黒き零の魔人達 081 外見と心象の違い ミュウツー
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← ○ 「つまり、会場の何処かにいる魔女を倒せばこの呪術式―――魔女の口づけとやらも消える。 と、いうことでいいのかな?」 「はい。草加さんのおっしゃった灰化……オルフェノクの死因のように多少の加工は施されてるようですが、 わざわざ『参考にした』と明言してる以上、最低限のシステムは模倣されて然るべきです。 この会場そのものも魔女の結界であれば、魔女の消滅と同時に解放される見込みもあります」 あくまで希望的観測ですが、と付け加えて少女、美国織莉子は自己の推論を説明した。 罠の可能性も見越して草加から指定した路地裏に移動し、まずは互いの簡略的な自己紹介をする。 魔法少女の美国織莉子に、ポケモントレーナーのサカキ。 今は共に進んで殺し合う気はないという。 言い方に含みがあるものを感じるが、今それを気にしても話は先に進まない。 出会った人物、経験した出来事。危険と思われる、実際に襲われた人物の情報。 互いに情報を持ち込み検証を重ねた結果、収穫は草加にとって予想以上のものといえた。 中でも重要だったのは、厄介な呪術式の詳細が憶測混じりとはいえ判明したことだ。 人を限定空間に隔離してその身を食らう魔女なる存在。自殺衝動を植え付ける魔女の口づけ。 まどかからの証言と一致するし、この殺し合いの儀式そのものと符号する部分も多い。 これらが全て事実だった場合、魔女さえどうにかできれば事態が一挙に解決する事が出来る。 無論、鵜呑みにするのは危険だ。思い込みは視野を狭める温床に変わりやすい。 「……けど、全てを魔女に結び付けるのは早計だな。 君も言ったようにオルフェノクの能力、いや生態が組み込まれているし、スマートブレインの手も伸びているかもしれない。 奴らオルフェノクなら、こんな非道な真似も容赦なくやるからな」 その場合、社長である村上峡児も参加しているのが疑問となるが、奴らの社会構造など知りもしない。 いざこざに巻き込まれて切り捨てられたとしても、別に不思議ではあるまい。 アカギが強硬に技術のみを奪ったという線も捨てがたい。 その末路は大いに痛快である一方、与り知らぬ余所の手で復讐がご破算になったというのには忸怩たる感情も抱いていた。 「それは承知しています。 サカキさんの知るポケモンのように、私達魔法少女とは別の世界の要素がここにはある。 ですが、魔女あるいはそれに相当する存在が、式の構成の根源を担っているという確率は高いと見ていいでしょう」 「別の世界、ね。 確かにアカギもそんな事を言っていたが、まさか本当にそんなものがあるとはな」 アカギの発言に、サカキの話した神とも形容されるポケモン。 荒唐無稽な話だが、ニドキングというポケモンも見せられた上では無視するわけにもいかない。 願いを叶える対価に、魔女と戦う使命を背負う魔法少女。 オルフェノクに魔女。考えて見るとこの二要素にも類似した点は多い。 これらが同じ場所にひしめき合うというのも流石に無理がある。 なら別々に区切られた同士ということにすれば、草加にも折り合いが付けられた。 「となると、次は魔女の潜む場所か。 そっちに心当たりはないのかい?」 「おおよその見当は。 もっともこの仮説が正しい場合、我々は八方塞がりとなってしまうわけですが」 「……やはり禁止領域か。連中にとって都合の悪いものを隠すにはうってつけだからな」 会場の行動範囲を狭めさせ、殺し合いというシステムを滞りなく進行させる措置である呪術式。 しかしそこに魔女という『儀式の核』が紛れ込んでいるとすれば、また別の意味を加えることが出来る。 つまり、禁止領域には核を守る障壁としての役割もあるということ。 織莉子の言う通り、この説を完全に認めるとほぼ詰みの形に入ってしまう。 最悪のパターンも想定しつつ、別の切り口を探していくのが懸命だろう。 「織莉子。君は既に魔女が会場内にいると断定しているようだが、その根拠は何だ? 魔女がこの儀式の核であるなら、安全な場所に隔離していた方が奴らにとって万全だろうに」 合議の結論を待ったをかけるような、重く低い声が耳に届いた。 このように、サカキは普段会話に参加せず傍観の立場を取っているのに、時折こうして声を挟んでくる。 それも決まって、こちらの意見が出揃い煮詰まった頃にまるで計ったようなタイミングにだ。 ここぞという時に、婉曲的にこちらの求めている答えを差しに来る。 もし正面きって話していたとしたら、上手いように誘導されていたかもしれない。 織莉子よりもよっぽどやりにくい相手だ。会話の主導を彼女に任せているのもその自覚があるからなのか。 「それは―――先程も伝えたように、結界とは魔女が効率よく人を襲う為の狩場のようなものです。 人が多く行き交う場所の隙間から獲物を誘い込み、外からの邪魔もなく逃げ場もない空間に閉鎖する。 だから魔女は、基本的に自分のテリトリーから出る事はない。 というよりは、結界そのものが魔女の一部ともいえるものです」 結界の維持に魔女の力が使用されているのなら、外部と切り離す事は出来ないのではないか。 直に魔女と戦ってきた経緯を持つ魔法少女としての見地だけに、否とは言い切れる材料はない。 それを抜きにしても、理屈は筋が通っているものだ。 「魔女は人を喰らうもの。絶望を糧とし肥え太る負の化身。 そんな人外の物の怪を、完全に支配下に置けることが果たして本当に出来たとして――― この式などの維持にも必要なエネルギー、即ち餌が必要となる」 「つまり―――。 核が魔女の性質を備えているのなら、人間への食欲という本能も残っているかもしれない。 自らの領土内で死者が出れば、そいつが空腹に耐えかねて暴れ出すリスクも減ると」 締めくくるサカキの言葉に織莉子も頷く。 つまりは、魔女による「自殺死」を「他者同士の殺し合い」の形に置換しているわけだ。 そしてこの説は、アカギは魔女の全てを制御してるわけではない事実を示すものだ。 「……これ以上は仮定の上塗りです。 私の偏見に寄る部分も多くなりますし、ひとまずの結論はこれでいいでしょう」 『呪術式』は、『魔女、あるいはそれに相当する存在(以下、魔女と呼称する)』によって作用している。 『呪術式』は、オルフェノクの灰化等、多数異世界の技術によって加工されている。 また、会場の構築も『魔女の結界』に分類される可能性がある。 その場合、『魔女』を倒す事でそれらを全て消失できる見込みがある。 『魔女』は、この会場のいずれかに潜んでいる可能性が高い。 『禁止領域』は、それを隠匿する意味も込められている。 アカギは、『魔女を操る術』を備えている。 アカギは、『時間と空間を操るポケモン』を捕獲、所持している可能性がある。 『魔女』とは、このポケモンである可能性もある。 それ以外に、オルフェノクに関する技術も保有している事から、『技術、資金的な協力者』を抱えている。 「こうして揃えてみると……殆どが憶測だな」 「想像できた、という時点で十分な進歩だ。 こうなれば後は、そこから何が真実かを見極める検証の時間になる。 そうやって虱潰しに選択肢を絞り、残った事実を法則として定める。人間の歴史はそうやって続いている」 不確かといえど、何の手がかりも得られなかった以前からすれば比べ物にならない前進といえる。 なら次は、推論を如何に正論に変えていくかの行程に進んでいく。 「判明している時点で、この儀式の根幹を成していると思われるのはのは三つ。 魔女。 シンオウ地方に伝わる、時間と空間を操るポケモン。 オルフェノク、ひいてはスマートブレインの技術。 これらについてより深く知悉している者と接触するのが、目下の課題となるだろうな」 奇しくも、この場に集った三人は主催の保有する力とそれぞれに関係のある世界の人間だ。 この短時間に一定の仮説を揃えられたのもそれが理由だ。 同じことを、より広い範囲、広い関係で行えば、自ずと見えてくる答えがあるに違いない。 「オルフェノクの秘密、癪だが村上という男なら何か知ってるかもしれません。 しかし決して隙は見せないように。奴も乾巧同様卑劣なオルフェノクだ。 倒すという前提の元、あくまで機会があれば聞いてみるようにして下さい。」 草加が提示するのは、現スマートブレイン社長の村上峡児。 素直に情報を渡してくれるとは思えないが、どうせ殺すべき敵だ。 さんざん痛めつけた上で白状させるのには何の抵抗もない。 「シロナというトレーナー……アカギと同じ同じシンオウ地方出身でポケモンの歴史にも詳しい人物だ。 彼女なら詳しい話を聞けるかもしれないが……私の名は出さないでいた方がいい。 あまり良い関係とは言えないものでな」 サカキからは、アカギと直接関わりがあるかもしれないトレーナーが挙げられた。 この中では一番に会いたい相手といえる。 名を出さないよう忠告しているのは敵対した過去があるのかもしれないが、むしろ草加にとっては都合がいい。 やり用次第では、この男を追い詰める口実にも使える材料だ。 「織莉子ちゃん、君の他に魔女について詳しい人はいるのかい?」 「……残念ながら、他の魔法少女が知るのは、私が知るそれと似たり寄ったりでしょう。 私達以外に魔女を感知できる者がおらず、戦いにのみ専心するので精一杯なので、そういった核心に迫る事は難しいのです」 目を伏せて、申し訳なさげになる織莉子。 その仕草を見て、草加ははっきりと胡散臭いものを覚えた。 なぜなら草加は、魔法少女の秘密の一端を知っている。 自らの魂を肉体と切り離してソウルジェムなる宝石に加工する。 そして、契約と称してその処置を執り行うキュゥべえなる使者。 この秘密を聞いたのは鹿目まどかからもたらされたもの。 しかし織莉子は、会議の際この話題について一切触れることはなかったのだ。 ここにきて情報を渋むつもりか? だが事態解決に対しての織莉子の対応は積極的だ。 にも拘らず出し惜しみをするのは、弱みを見せて出し抜かれる懸念を抱いているからか。 それとも、本当に何も知らないのか。 キュゥべえに騙された、とまどかは嘆いていた。 つまりキュゥべえは始めからその真実を隠したまま契約を迫ったことになる。 とんだ詐欺まがいの行為だが、今攻めるべきは別の点にある。 織莉子は魔法少女についてどこまで知っているのか。 如何によっては、自分の中での彼女の評価を決めざるを得なくなる分水嶺だ。 全てをまとめて暴露してもいい。そうすれば結果ははっきりとする。 しかしまどかの友人はこの事実を知った時大層ショックを受けたと聞いている。 織莉子が知らなかった場合、自分が騙された事を知り同じ状態に陥る危険性もあった。 まかり間違って錯乱でもされようものなら被害を受けるのはこっちだ。 始末するのならともかく、今されても要らぬ手間が増えるだけだ。 「織莉子ちゃん。少し聞きたいんだけど―――」 密やかに算段を立てる草加の前で、織莉子が突如、あらぬ方向へと首を向けその先を食い入るように見つめた。 周囲に物音はしない。誰かそば耳を立てている者を見つけたと思ったが、そうでもないらしい。 「草加さん。 あなたが捜していると仰っていた、園田真理さんですが―――」 そういえば、と彼女が言っていた事を思い出す。 魔法少女はその願いに応じて固有の魔法が使えるようになると。 織莉子自ら申告してきた、その魔法は確か――― 「今、その人と思しき女性の姿が視えました。 場所は、施設から見てこの先、D-5の病院内に立ち入っているようです」 「なに……!?本当なのか、それは!?」 予見と予知の魔法少女の発した言葉は、草加の思考を染め上げるのに十分な衝撃だった。 今まで考えてた全てが頭から吹き飛んで、織莉子に激しく食ってかかった。 「ええ。あなたからの外見特徴が正しければ、それと一致した方の顔が映りました。 ですがどうやら……彼女は今危険な状況に置かれているようです」 目を伏せて申し訳なさげの織莉子だが、草加に渦巻くのは信用ならないという疑念だ。 予知のタイミングは突発的だと聞いていても、このタイミングは都合がよすぎる。 真に受けるにはあまりに危険と勘繰るのも無理からぬことだった。 「……私の言葉が疑わしいと思うのは当然でしょう。 奸計に陥れんとしてるのかと見做されるのも仕方のないことです。 ですが―――」 細い指に嵌められた指輪から出現した、装飾の施された宝玉を草加へと見せる。 美しい銀色の内部には、澱むような濁りが混ざっていた。 「魔法には、対価がある。 魔力を使う度ソウルジェムには濁りが生じ、疲労のように蓄積され、私達の負担となる。 私の魔法は範囲が広い反面、常時機能させておくには消耗が激しすぎる。 それをあなたのご友人のために使用した―――この意味をもって、今は納得して頂けないでしょうか」 しかし、何よりも守るべき相手と誓った人が目に見え、手に届く場所にまでいると知れば。 避けれる危険を冒してまで、急ぐ意味がある。 草加雅人にとっての園田真理こそ、その価値を求めるだけの愛の姿だ。 「―――ッ!済まない、そのバイクを使わせてもらう!」 返事を待つことなく、停めてあったバイクに駆け走る。 キーは奇襲を想定してか、繋がったままなのが幸いした。エンジンをかけグリップを握り締める。 元々このオートバジンはファイズのために宛がわれたサポートメカ。 ファイズを所持している自分こそが、一番の性能を引き出せる。手元を離れた所有物を取り戻すのは当然のことだ。 路地裏の出口に振り向きざま、持っていた最後の支給品を置いていく。 まどかから聞いたこれの用途が、魔法少女に必要なものであるのは分かっている。運賃代には十分釣り合うものだ。 アクセルを上げ、路面を疾駆する。 真理がいるとされる病院とはせいぜい2キロもない。バイクという高速で移動する手段がある今ならば僅かな時間で到着できる。 予言が真実であるならば、いい。 真理の救出に繋がり、織莉子自身にも利用価値を見いだせる。 心から善意で援助をしてくれたとすれば、役に立つ駒として協力してもらいたいものだ。 だがもし自分を利用するために真理の名を出汁に使い、偽の情報を渡したとすれば……。 そうなればあの二人は草加にとってただの障害だ。オルフェノク同様始末する対象に決定される。 悪評を広め、孤立させ、当て馬をぶつけてじわじわと嬲り殺す。 自分を好きにならない人間は、全て邪魔でしかないのだから。 真理―――。 今すぐ会いたい。笑顔を見たい。声を聞きたい。 優しく甘美な手で、子をあやす母親のように触れて欲しい。 その為に―――君を害する奴は全て滅する。 人も化物も区別なく、謂われなく死に目に会わせる。 全ては、君という存在を護る為。 俺という存在を守る為。 己の内を占める我心(エゴ)を膨らませ、銀の車体は直進を続けていく――― ☬ ☬ 止める声をかける暇もなく、草加雅人はこちらの所有していたバイクに乗り込んで路地の影に消えて行った。 尤も、始めから止める意思など美国織莉子は持ち合わせていなかったが。 運賃代わりとばかりに置き捨てられていったグリーフシードを拾い、自らのソウルジェムに重ねる。 度重なる予知魔法と感情の濁りで、穢れは五割に達しようとしていた。 その溜まった穢れを吸収させ、制服のポケットに仕舞う。 もたらされた情報のおかげで、検証の余地がある推論も立てられた。 ……まあ、一部の方に随分偏見的な意見も見られたが、差し引いてもお釣りが出るほどに価値はあっただろう。 サカキは勿論、織莉子にも、特に。 「行かせてしまって、よかったのか?」 問いただすサカキは、今まで移動に使ってきたバイクを横取りされて、些か不機嫌そうに見える。 「替わりのない大切な人を救わんとする……彼のその思いだけは本物だと思いましたから。 彼が間に合い、犠牲が出ないのであればそれが一番望ましい形です」 「ほう、するとあの予知は本当だったわけか。 私はてっきり、あの男を余所に飛ばす為の方便かと思ったが」 嘘ではない。 園田真理と思われる人物が予知に映ったのは本当のことだ。 ただ。実際に危機的な場面に直面してるかについては、真実ではかったといえる。 視えたのは『憔悴した様子の園田真理』のみ。 傷を負った姿を視たのでも、襲撃されたのでもない。 それでも、まるきり嘘にはなり得ないだろう。 ここは既に死地、いつどこで戦陣が切られても不思議ではない場所なのだから。 「……サカキさんは、人が悪いのですね」 言外の意味を込めたのでもない、率直な感想だった。 なのにそれを聞いたサカキは、堪え切れないとばかりに吹き出し、愉快そうに忍び笑いをした。 「……クハッ!いや失礼。馬鹿にしたつもりはないんだ。 しかし、そうだな……仮に私が悪い人だったとして、君は私をどうする。 正義の名を立てて罰するかね?」 「いえ。それには及びません。 法の裁きとは、それが機能しない場でない限り効力は持ちません。 ここはアカギ個人が支配する無法の地。まして次元の異なる世界に住まう人同士が邂逅している。 あなたの過去の罪業に対して、私が裁く権利は持ち合わせておりません。 あり得るのは、この場において私に害をもたらす行為をあなたが起こした時になるでしょう」 「ありがたい限りだな、それは。 ではここでは慎ましく自重してるとしようか」 この男は、少なからず犯罪に手を染めているのだと織莉子は直感した。 汚職を犯した父、本家の傲慢で冷徹な叔父達とは隔絶たる違いのある、より大きな野望を掲げる大志。 それは、初めて対峙し、言葉を交わした頃から察していたものだ。 相互に協力し合える「味方」ではあっても、背を預けられる「仲間」には、決してなれない。 「それより、元より了解は得ていましたが、私が先導する形で本当に宜しかったのでしょうか」 「寂れた中年より、可憐な少女に頼まれた方が色よい返事も貰えるというものだろう?」 「お上手な事を」 この関係を、不満とは思わない。 むしろ現環境では最上と言ってもよいだろう。 ポケモンの知識を持ち、サカキ自身にも優れた判断力、統率力がある。 直に草加と話して中心に立っているつもりでも、その実背中から手綱を取られている気すらある。 裏を取られるのは危険。本当ならもう少しの間、腹の探り合いに終始していたかもしれない。 けれど、その結果もたらしたのが、彼女―――呉キリカの死だ。 因果関係はないものだとしても、消極的に動いていたのが恨めしい。 キリカの死を、その直前まで予知出来なかった自身が許せないでいた。 この自責に押し潰されてはいけない。故に、為すべきは使命の完遂だ。 焦りはあるだろう。 心に気づかぬ隙が生まれ、油断ならない同行者につけこまれるのかもしれない。 リスクを承知し、危険があるのは予知せずとも考え付く。 それでもなお、手にする未来が視えているのなら。 伸ばして指にかかる所まで、近付いているのなら。 草加雅人を誘導したのもそのためだ。 友人に会わせたかった心も確かにある。しかしそれは表面上の理由。 真の狙いは、「壁」をひとつ取り除くこと。 過たず狙い撃つのに邪魔な障害を穏便に退かすことこそが肝要。 「遅れましたが、ここからは予定通り鹿目邸へと向かいます。 幸いバイクがなくとも近い距離です。徒歩でも時間はかからないでしょう」 「―――仇を討ちには、いかないのか」 断層で生まれたばかりの亀裂の隙間に差し込むような、サカキの鋭利な一言が胸を刺した。 脳裏に浮かぶ黒い騎士。 自分とサカキを圧倒した魔女を凌ぐ魔王。 草加からの目撃で判明した、呉キリカを殺した者。 湧きあがる黒々とした情感。 煮えたぎる溶岩のような気持ちを、決然とした意思で掻き消した。 「………………いずれ、打倒しなければならない相手なのは変わりません。 ですが今は、その時には遠い。 斃すと決めた限り、万全を期さなければ意味がないのですから」 ここで我を忘れ躍起になり、勝算のない復讐を優先するのは、キリカの望む私ではない。 自惚れでなく、彼女を深奥まで理解しているからこその、感情値への折り合いだった。 「確実に始末するのに十分な戦力を確保するか。 冷静な判断だな、実に結構」 ……やはりこの男は、人が悪い。 少しばかりの不満を溜め込みつつ、サカキの後を追い暗い路地裏を出ていく。 陽は天上に昇り、燦々と照らしている地上を、白と黒の男女は緩やかな足取りで歩いて行った。 ◆ 美国織莉子は抱えている。 呉キリカへの愛を。 それを奪った黒い騎士への殺意を。 それらを制御できるほど強靭な、自己の存在の意義を。 そして自分だけが秘め持つ、真実に辿り着く一片を。 ソウルジェムの秘密。 魔女を生み出す孵卵器という本来の役割。 それを仕組んだ全ての元凶、インキュベーター。 これらの公開に踏み切るのはまだ早い。 鹿目まどかという極上の魔女がいるためその可能性を否定してきたが、 儀式の構築に魔女が大きく関わってるとなると、その考えにも迷いが出てくる。 その疑念を決定的にしたのが、キリカの死を目にした瞬間だ。 魔力を浪費し、感情を疲弊させ、ソウルジェムの濁りが臨界に達した瞬間。 ソウルジェムという卵の殻を破って、魔女という雛は誕生する。 あの時のキリカのジェムの濁りは、魔女が生まれる直前まで溜まり切っていた。 なのに魔女は生まれず、宝石が砕けてキリカが絶命するだけに終わった。 これだけなら、単に制限の一環と見落としていただろう。 殺し合いをさせる隔離させた場所で、更に隔離させる結界が出来るのは許すわけがないと。 だが間近で砕け散る瞬間に立ち会った織莉子は、それだけでは説明できない現象を見つけていた。 罅割れ、亀裂を深めるキリカのソウルジェム。 完全に割れる直前、それは姿を変じ、グリーフシードへとなろうとしていた。 つまり、正確には割れたのはソウルジェムではなく、グリーフシードなのだ。 ソウルジェムのまま砕けるのとでは、これは雲泥の差がある。 そして新たな疑問が出てくる。その際に生まれた筈の魔女は、いったい何処に消えたのか。 そのヒントこそが、草加とサカキとによって練られた考察だった。 呪術式、それに結界が魔女を源として機能しているという仮説。 この説を正解と取るならば、プレイヤーと魔女は式を媒介にリンクしているのを意味している。 だとすれば、だ。 グリーフシードから漏れ出た魔女を、外界に現出するよりも前に、その魔女が式を通じて吸収したという説は成り立たないだろうか。 グリーフシードが支給されるにおける問題点も、これなら解決できるのだ。 穢れを取り込んだグリーフシードはまた新たな魔女を生み出す。 アカギが望むのはあくまでプレイヤー間による殺し合いだ。 参加者ですらない、自律的に暴走した支給品が介入するのは避けたいに違いない。 それも会場が魔女の結界の範囲内だとすれば、グリーフシードごと魔女を取り込むという芸当も可能かもしれないのだ。 魔女を喰う魔女など聞いたこともないが、もし可能ならこれほど強大な結界を築けるのにも理屈が立つ。 この仮説は、儀式の核心に迫る真実であると同時に、魔法少女にとっては災厄になりかねない諸刃の剣だ。 最悪、敵意を向けてくる者もいないとは限らない。 あの草加雅人も、人外のものへの異常な敵愾心を見せていた。 味方になり得るかもしれない人をも敵に回す仲間割れは、可能な限りは避けたいものだ。 だから、この考えはまだ公にするべきではない。 参考に編まれた考察自体、穴の多い不十分な出来だ。 ありもしない空想に不安を抱き、迷走の果て自滅するなど、それこそキリカに向ける顔がない。 それに考えが正しく、本当にインキュベーターが関わってるとすれば、絶対に知られてはいけない。 以上の思考は、織莉子が殺し合いの儀式を破る為に巡らせているもの。 それとは別の、織莉子自身が果たさなければならない使命。 全ては、その使命を果たす方にこそ優先すべきだ。 邪魔の入りづらい特殊極まるこの環境を利用して、己が大望を叶えてみせる。 砕けた魂の欠片を握り締める。 掌に伝わるのは心の温もりではなく、硬く冷えた肉に食い込む感触。 こんな小さなカケラの中に、かつて自分に全てを奉じてくれた少女がいた。 人格すらも投棄して変換して、何もかもを捨ててでも守ると誓った、傍から見れば哀れにも見られる命。 無意味な犠牲になるなど、無価値な石くれになるなど、絶対に赦さない。 歩く先にあるのは、遠からず見えてくるだろう一件の家。 千里を透かす未来(め)に映った、幼い一人の少女。 破滅の引き金。 悲劇の温床。 絶望を救済に変える路は、あと僅かで終着を迎えようとしていた。 ☬☬ "織莉子の魔法少女の衣装ってさ。可愛いよね。 白くてヒラヒラしてて、まるで蝶々みたいだ" 汚れを払い清め終わった顔は、膝の下を占拠して眠っているのと変わりない、安らかな寝顔。 頬を撫で、腕を通して急速に胸まで迫ってくる冷たさを感じなければ、これが死体とは思えないほど、綺麗な有様だった。 "そのままでも十分、有り余るほど綺麗で可愛らしくて美しいけど、 月夜で踊る様なんかは、それはもう輝くほど素敵なんだろうな" 少し待てば唐突に瞼を開き、跳ねるように飛び起きてお茶とお菓子を催促してきそうな、そんな夢想をしてしまう。 砂糖三個にジャム三杯。甘い甘い、シロップの思い出。 "ねえ織莉子。君の使命が終わったらさ。 そうじゃなくても、魔女の出ない夜があったらさ、二人で一緒に公園にでも出かけない?" あなたは知っているだろうか。 共に過ごした生活に、あなたという友達がいてくれたことに、私がどれだけ救われていたか。 "ん?何をするかって?月の光だけに照らされて、夜の公園で踊るのさ。 そこらの有象無象のアイドルなんかとは比べ物にならない、ヲタクとやらが視たら腰砕けものだよ。私が保証する" あなたは私(おりこ)を見てくれた。 私を個人(おりこ)として扱って、とても大切な人だと言ってくれた。 無邪気にじゃれ合うあなたと同じくらい、私もあなたに甘えられていた。 "―――え?踊るなら私も? む、無理無理無理無理!私、踊ったことなんかないし―――え、織莉子もないの?ホントに? ブルジョワって休日は夜な夜な社交パーティーとかしてるもんじゃないの?" あなたと過ごした時間は、短い人生においてさらに短い秒針に過ぎないけれど。 あなたがくれた思い出は、装飾だった私の人生と比べてもより重く、光り輝いた宝石のようだった。 "う……君からの頼み、ときたか。 困った。それは、断れない。 ええい、こうなりゃヤケだっ、誘ったのは私なんだし腹はくくる! だからその―――ヘンテコな動きでも、笑わないでくれよ?" あなたが―――私の、希望(ひかり)だった。 "笑ったら莉子のお手製ケーキだからね!あれ、これじゃ私が罰ゲー、なんでもありません! とにかく、約束だよ―――" 呉キリカという希望が持っていた思い。叶えたい願い。 最後まで信じてくれた美国織莉子こそが、その結晶だ。 それを忘れない限り、私の中には希望が生き続ける。 あの頃のように絶望するコトなんて、ない。 "織莉子"―――――― キリカ。 たったひとりの、私の友達。 わたし(あなた)の世界を救うためなら、私はどんな罪を背負う事になろうとも、構わない。 【E-6/市街地東部/一日目 昼】 【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】 [状態]:ソウルジェムの穢れ(0割)、白女の制服姿、深い悲しみと揺るがぬ決意 [装備]:グリーフシード(濁り 5割)、砕けたソウルジェム(キリカ) [道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)@ポケットモンスター(ゲーム) [思考・状況] 基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす 0:鹿目邸に向かい――― 1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない 2:優先するのは自分の使命。そのために必要な手は選ばない。 3:キリカを殺した者(セイバー)を必ず討つ。そのために必要となる力を集める。 4:ポケモン、オルフェノクに詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。 5 積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する 6:サカキと行動を共にする。隙は見せないが、事態打開に必要であれば情報手助けもする。 [備考] ※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前 ※ポケモン、オルフェノクについて少し知りました。 ※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。 ※キュゥべえが協力していることはないと考えていましたが、少し懐疑的になっています。 ※草加に伝えた予知は正確には『ひどく憔悴した様子の園田真理』です。 今後の状況には変化の可能性もあります。 【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】 [状態]:左腕に裂傷(軽度) [装備]:高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール(ダメージ(小)疲労(小))@ポケットモンスター(ゲーム) [道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)@ポケットモンスター(ゲーム) [思考・状況] 基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない 1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する 2:織莉子に同行する。暫くは自由にさせるが主導権は渡さない。 3:織莉子の提案通り、鹿目邸を調査。その後市街地を巡回した後病院へ向かう。 4:ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。 5:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする) 6:『強さ』とは……何だ? 7:織莉子に対して苦い感情。 8:高性能デバイスの存在は伏せておく。 [備考] ※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です ※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています ※織莉子の予知能力について大凡明確に理解しました。 ※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。 ※サイドンについてはパラレルワールドのものではなく、修行中に進化し後に手放した自身のサイドンのコピーだと思っています。 【草加雅人@仮面ライダー555】 [状態]:負傷(中) [装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身中)、オートバジン@仮面ライダー555 [道具]:基本支給品、 [思考・状況] 基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出 0:病院に急ぎ、真理を助ける。 1:ついでだがまどかには有る程度、協力してやっても良い 2:オルフェノクは優先的に殲滅する。そのためにLと組む 3:織莉子とサカキは今の所信用する。だが織莉子が嘘言を弄していた場合は…… 4:ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。 5:Lとの約束のため病院か遊園地へ 3:長田結花は殺しておく。……が、今は手出し出来ない。 6:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい [備考] ※参戦時期は北崎が敵と知った直後~木場の社長就任前です ※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました 【オートバジン(ビークルモード)@仮面ライダー555】 現在の護衛対象:草加雅人 現在の順護衛対象: [備考] ※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません ※『ビークルモード』への自律変形はできません ※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します [情報(織莉子、サカキ、草加)] 考察(織莉子、サカキ、草加) ポケモン、オルフェノク、魔法少女と魔女についての基本的な知識 危険人物の開示(バーサーカー、黒い騎士(セイバー)、乾巧、北崎、木場、結花、海堂) (織莉子、サカキは一部人物情報に懐疑的) [考察(織莉子、サカキ、草加)] 『呪術式』は、『魔女、あるいはそれに相当する存在(以下、魔女と呼称する)』によって作用している。 『呪術式』は、オルフェノクの灰化等、多数異世界の技術によって加工されている。 また、会場の構築も『魔女の結界』に分類される可能性がある。 その場合、『魔女』を倒す事でそれらを全て消失できる見込みがある。 『魔女』は、この会場のいずれかに潜んでいる可能性が高い。 『禁止領域』は、それを隠匿する意味も込められている。 アカギは、『魔女を操る術』を備えている。 アカギは、『時間と空間を操るポケモン』を捕獲、所持している可能性がある。 『魔女』は、このポケモンである可能性もある。 それ以外に、オルフェノクに関する技術も保有している事から、『技術、資金的な協力者』を抱えている。 以上の説の検証の為、ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しい事情を聞き出す。 オルフェノクについて:村上峡児(強硬手段を前提) ポケモンについて:シロナ(比較的穏健に接触可) 魔女について:該当者なし? [考察(織莉子のみ)] ソウルジェムから生まれる魔女は、この儀式を構成している『魔女』に吸収されている。 グリーフシードから生まれる魔女も同様である。 裏付けが取れるまで、この考察はなるべく秘匿しておく。 108 I was the bone of my sword(後編) 投下順に読む 110 君の銀の庭 時系列順に読む 096 美国織莉子、私の全て 美国織莉子 112 Fragment Hope サカキ 094 暴君主権 草加雅人 120 この醜く残酷で、美しく優しい世界(前編)
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ドラえもんたちは牛魔王を倒し、脱出に成功した。 そして、三蔵とリンレイとの別れの時が近づいてきた。 リンレイ「みなさん。本当にご迷惑をおかけしました……」 ドラえもん「迷惑だなんて。元はと言えば僕の不注意で……」 ドラミ「そうよ。お兄ちゃん……」 ドラえもん「三蔵様、とんだご迷惑をおかけしまして……」 三蔵「いや、私も大変勉強になりました。それからこのリンレイ、私に預からせていただけないでしょうか?」 のび太「そりゃいいや。ねぇドラえもん」 ドラえもん「重ね重ねご迷惑をおかけします……」 一同「あははは!」 のび太「頑張ってね、リンレイくん」 リンレイ「ありがとうございます。悟空様……」 のび太「実は僕、本当の名前は……」 ジャイアン「お前は孫悟空だよ!」 のび太「そう。聖天丹精、孫悟空!」 スネ夫「よっ、悟空ちゃん!」 一同「あははは!」 リンレイ「さようなら! さようなら!」 一同「さようなら!!」 ドラえもん「さぁ、僕たちも帰ろう……」 一同「うん!」 ドラえもんたちはタイムマシンで現在に帰還している。 のび太「本当に元の時代に戻ってんだろうね?」 ドラえもん「大丈夫……」 野比家。 のび太「ママ、ただいま!」 ママ「いったいこんな遅くまでどこ行ってたのよ!?」 のび太「戻ってないんじゃない?」 ママが部屋に入ってくる。 ママ「のびちゃん…… あら? どうしたの!? みんな……」 一同「ああっ……」 のび太「角がない。ママ!!」 ママ「ど、どうしたのよ?」 のび太「ママ……」 しずかたちもそれぞれ母親たちの胸に飛び込む。 (終)
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招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2 「美遊ーー!」 「何やってんのよー。早くしないと学校遅れるわよー」 「今行く」 いつもと同じ日々。 イリヤ達と学校へ行き、授業を受けて、放課後は遊ぶ。 何の変哲も無い、だけど大切な時間。 「今日の体育はソフトボールだぜぇ!よし、プレイボール!」 ボガッ!! 「グホァ!!!」 「ギャー!龍子の顔面にボールがめり込んだーー!」 「ああっ!鼻血がアーチ状に吹き上がってる!」 「実況してないで早く保健室へ行ったほうが…」 なのに、何か違和感を感じる。 「あ、士郎さん」 「お兄ちゃーん!」 「あ、イリヤ達おかえり。学校終わったのか」 誰かが足りない。何かが欠けてしまったような気がする。 家に帰ると、ルヴィアさんとオーギュストさんが迎えてくれて、後は軽くメイドの仕事をして明日に繋がる。 いつもと変わらないはずなのに、屋敷の中が妙に静かになってしまったような違和感を感じる。 そうだ、家のメイドはもう一人いなかっただろうか? 自分より扱いが悪くて、そのことにいつも不満を流しながら働き、何かあるとすぐにルヴィアさんと喧嘩を始める誰か。 「美遊、どうかなさいまして?」 「ルヴィアさん、その…、凛さんはどこにいるんですか」 パキッ その名前を口に出した瞬間、世界にヒビが入り、家にいたはずの風景がいきなり変わる――― ■■■■■■■■■■■―――! フシュルルルルルル!!! バーサーカーが森の木々を粉砕しつつこちらに向かってくる。 黒い狐が口から炎を吐き出してくる。 共に、狙いは自分。 そして、大質量の体と高熱の炎が体に接触した瞬間、世界は黒く塗りつぶされた。 「やっぱりそうですのね。せめて、夢の中くらいは平穏なままでいさせてあげたかったのですけど」 ふと、真っ黒な世界の中でそんな声が聞こえた。 いつも聞いていた声。まだその声を聞かなくなって半日も経っていないのに、すごく懐かしく聞こえた。 なのに、どうしてこんなに声が遠いんだろう? 「そろそろ時間ですわね。では行きなさい美遊。 あなたは一人ではありませんわ。あなたと共に戦ってくれる人もいます。イリヤスフィールも、クロも、サファイアもいます」 その声はとても優しくて。まるで心を包むかのように。 「それに何より、あなたはいつまでも、私の義妹(いもうと)なのですから」 「ルヴィア…さん?」 なぜかそんな声と共に、自身の義姉の、ルヴィアゼリッタ・エーデールフェルトの存在が遠ざかっていくのを感じ取った。 ◆ 「ルヴィ…ア、さん…?」 意識が開く。 どこかの家のソファーの上にいるようだ。 起き上がろうとすると、腕に鋭い痛みが走った。 何が起こったのか。そうだ。私は由花さんとロロさんを追っていったはず。 その時何があったのか思い出せないが、そのまま意識を失って気絶したような気がする。 どうしてこんなところにいるのか。 『美遊様!』 声に反応して手元を見ると、そこにはいつもと変わらないサファイアの姿。 服装こそ私服に戻っているが、どうやらずっと魔力供給を続けることで傷の回復を促してくれていたらしい。 『よかった…』 安堵の声。どうやら傷はそれなりに深いものだったようだ。 部屋は特に汚れていないが、血の匂いがうっすらと空気に混じっている。 「ごめん、心配かけた。…ここは?」 「あっ…」 と、美遊がサファイアに状況説明を求めたとき、部屋の入り口から顔を出す少女の姿が見えた。 「目、覚めたの?!傷の具合は大丈夫なの?!」 「…大丈夫」 「よかったぁ~…」 『美遊様、こちらの家で手当てをしてくださった、鹿目まどか様です』 「えっと、美遊…ちゃん、でいいのかな?」 「構わない。ねえ、サファイア。どこまで話したの?」 『美遊様の手当てを優先したので、まだ込み入った話までは』 「そう。傷の手当のことはお礼を言わせてもらう。もう行かなきゃいけないところがあるから」 時計を見ると、あれからそれなりの時間が経過している。早く追わなければ見つけることができなくなってしまう。 こんなところであまりゆっくりしている暇はない。転身しようとサファイアを掴もうとするが、その体をまどかに抑えられた。 「だ、ダメだよ、そんな怪我してるのに!まだ応急処置くらいしかしてないんだから!」 確かに腕の傷は血こそ止まっているが、あまり激しい動きをすると再度開く可能性がある。 一般論であれば正しい。が、自分はただの人間ではない。 サファイアの力を持ってすればこの程度の治癒にはそう時間は掛からない。 『美遊様、私も反対です』 「え、サファイア…?」 『その傷の治癒にはどうも時間が掛かっています。実際これまでの時間ずっと私が治癒に魔力を費やして止血が精々でした』 「…」 『少し考えなければならないこともできました。もう少しここに留まっては』 「でも、それじゃロロさんと由花さんが―」 『美遊様』 そのサファイアの声はまるで戒めるかのように静かで、しかしはっきりと放たれていた。 『先の放送をお忘れですか?ここは凛様のような魔術師でもこれほどまでに早く亡くなられているのです』 遠坂凛との付き合いはおそらくサファイアの方が長い。つまり自分の知らない彼女も知っているはずだ。 魔術師としての腕は一級品だった。そんな人でも生き残れなかったのだ。 『もしここで休むことで結花様やロロ様に何か影響がある可能性は否定することはできないでしょう。 それでもそれは美遊様の責任ではありません。むしろ私にとっては美遊様が傷付く姿を見るほうが辛いのです。 もちろん私は彼等を見捨てたいとは思いません。それでも美遊様に全てを背負って欲しくはないのです』 「………」 『どうか自分を見失われないようにお願いします』 「―――――分かった。じゃあ少しだけ。 えっと…まどかさん。ここで休憩させてもらっても構いませんか?」 ◆ 美国織莉子とサカキの二人は、黒い剣士の襲撃を退けた後、真っ直ぐに目的地である美国邸へと直行していた。 市街地を抜けて森に入って以降は道の悪さが気になるものの、そこまでの障害というわけではない。 道自体は車両走行に優しいものではなかったものの、バイクの性能にも助けられた。ある程度の荒地ならものともしないようだ。 もしかしたら後ろからあの剣士が追ってくるかもしれないということも考えられたため助かった。 だが、肝心の美国邸は。 「ここなのか…、君の家は」 「……一体何があったのでしょうか」 まるでミサイルでも落ちたのかという有様。もはや家としての体裁は保っていない。 そこにあるのはただの瓦礫の山だ。 「ここに、君の仲間は来ると?」 「そうですね…、もし来たら激怒するのではないかと思いますけど」 しかし、今この周辺にそのような声は届いてこない。少なくともこの周囲にはいないということなのだろう。 ――――例えば、この瓦礫の下に埋もれているなんてことがなければ。 まあ魔力の反応もない以上有り得ない話だが。 「家としては使い物になりませんが、少し気になるところもあります。立ち寄らせていただいてもよろしいでしょうか?」 「まあ構わんよ。こっちも急いでいるわけではないし、これほどの破壊を行える者がいるなら調査は必要だろう」 バイクは家の前に停めて家の中に入る。本来なら道路交通法とかに引っかかりそうなことだがこの場では誰が咎めるわけでもないだろう。 特に何もないだろうと確信した上で、敢えてサカキと別れて元・自宅であっただろう瓦礫の山を進む。 確かに自宅は、世間一般では豪邸といえるほどの広さはあっただろう。しかし生まれてずっと過ごした自宅だ。どこに何が、どの部屋があったかなどは分かる。 寝室、キッチン、客間、、自室、書斎。どの辺りがどうだったかということぐらいは予想がつく。 そして、その周囲にはそこがかつて自分の過ごした場所であることを示すかのように、記憶どおりのものが落ちている。 寝室があったであろう場所に落ちている布団の柄、素材。キッチンがあったであろう場所に落ちている食器の破片。 椅子の破片の模様、かつては本だったであろう紙の残骸、お菓子が入っていただろう包み。 全てが記憶の中にあるものと一致する。 自宅なのだから当然となど言えない。ここにあるのは自宅ではあるが、それがあるこの場は見滝原ではないのだ。 いかにしてこの家をこの場に持ってきた、あるいはこれほどまでに再現して作ったのだろうか。 手段はともかく持ってきたというなら再現率も当然だが、作ったというのであればあまりに気味の悪い話だ。 ふう、と息をついて目をやった先にあるのは、様々な植物が植えてあった庭園。 やはり花々は崩壊の巻き添えにあったようで、根から抉り取られるように倒れている。 かつてはここでよくキリカとお茶をしたものだった。しかしその時使ったテーブルは存在しない。 当然だろう。あの日この場に突如現れた魔女が破壊したのだから。 あれ以降はキリカに大きな仕事を任せたこともあり、結局テーブルの新調などしていなかった。 (…魔女?) 「家の中心には巨大なクレーターが出来ていた。それこそ空から大質量の物体でも降ってきたんじゃないかというほどに」 数分後、軽い調査を終えたサカキと合流した織莉子は、見たもの、気付いたことについての情報を明かしあっていた。 「念のためニドキングも出してチェックをしてみたが、特に何かを見つけられはしなかった。それ以外は収穫無しだ」 もしこれがポケモンによるものであるなら、同じポケモンなら何か気付くかと思い探らせてみたものの、何かあった様子はなかった。 あくまでポケモンによる破壊であると断言できないだけで、ポケモンが引き起こしたものである可能性も十分にある、と言った上で。 「それで、そちらのほうは何か気付いたことはあったか?」 「はい、ここは限りなく私の家、ですね。少なくとも残骸を確認する限りは」 「そうか」 「それで、少し考えたことがあるのですが―――――」 ◆ 特に問題もなく、まどかは美遊の頼みを受けた。 休息の中で、美遊はバッグに入っていた弁当を開いた。この数時間の間に戦いが続いていた体がエネルギーを求めていたのを感じたのだ。 するとまどかが興味を持ったように覗き込んできたので、美遊はまどかにも弁当を分けてあげることにした。 「これおいしい…」 『ここへ来て最初に出会ったタケシ様という方から頂いたものです』 「タケシさんと真理さん、大丈夫かな?」 『少なくともあの放送で名前を呼ばれることはありませんでした。ロロ様と結花様もそうですが、無事を祈るしかないでしょう』 「え、真理さんって…、もしかして園田真理さん?」 『お知り合いですか?』 「その、私じゃないんだけど、一緒にいた草加さんって人が探してて」 「これまでに何があったか、聞かせてもらってもいい?」 そうしてまどかはそれまでにあった出来事を話し始めた。 「最初、その、オルフェノクに襲われて、草加さんって人に助けられたの」 そうして話していくまどかの話の中には、美遊の直接的な知り合いはいなかった。 ロロの言っていたゼロとユーフェミアなどといった間接的な者はいたが。 『一つお聞きしたいのですが、まどか様は日本人ですよね?』 「? そうだけど…」 「ロロさん、私の出会った人から聞いた話だと、彼女は日本人を殺すかもしれないって」 「えっ…?でも、全然そんなふうには…」 『おそらく彼女もまたロロ様の知る彼女とは別なのでしょう』 そしてそこから話がさらに進んだ辺りで美遊の表情が変わる。 「バーサーカー…!」 「美遊ちゃん知ってるの?」 それは、Lという人物に北崎というオルフェノクと協力してあのバーサーカーと戦ったという話。 あの怪物と戦ったという事実もそうだが、何よりそれを一度とはいえ倒したという事実に驚かされた。 そしてその北崎というオルフェノクも、Lという人物が手綱を握ることでどうにか衝突は避けているものの危険人物であることには変わりないという。 「大体は分かった。じゃあこっちの話をする」 まどかの話は大まかに掴めたと感じた美遊は、こっちの話に移った。 だが、最初に出会った人物について話したところでまどかから大きな反応が返ってきた。 「真理さんって人に会ったの?!どこに行ったか分かる?!」 『ここから北で会いましたがそれ以降は。お知り合いですか?』 「…?一つ聞きたいんだけど、真理さん、草加さんについて何か話してなかった?」 『いいえ、お伺いしていませんが』 「だ、だって、草加さんは知り合いだって言っていたのに…」 『もしかして、草加様という方と真理様の世界は違うのでは?』 「世界って…?」 『平行世界というやつです。誰かからそのような話をお聞きしてはいませんか?』 言われてまどかが思い出すのは、あの時のゼロの言っていたよく分からない言葉。 あの時はその言葉が何を意味しているのか分からなかったものの、ここに来てそれがどのような影響をもたらすのか実感をもって知った。 『私達は乾巧という方がオルフェノクであることまではお聞きしていませんが』 「草加さんは、皆を騙してるって言ってたんだけど…」 「それ、本当なの?」 「え、どういうこと?」 「もしかしてその草加って人が嘘をついてるんじゃ――」 「そんなことないよ!だって、オルフェノクって怖いんだよ?!」 あの時、ホースオルフェノクに殺されかけたことは、未だにまどかの心に傷を残している。 だからこそ、オルフェノクという存在に対して心のどこかで拒否してしまうところがあった。 「…ごめんなさい。気に障るようなこと言ってしまって」 「う、ううん。こっちもごめん、いきなり大きな声出して」 ともあれ本人達が居ない場所では判断が難しいこと。そればかり話していてもことが進みはしない。 美遊は話を進めていく。 先に述べたバーサーカーとの戦い、ロロ・ランペルージや長田結花という人物との出会い、ポケモンを連れた名も知らぬ女の襲撃。 そしてあの放送の後の顛末。 まどかには驚きしかなかった。 自分よりも年下の、こんな小さな少女があの怪物と戦っているという事実に。 実物を見たからその恐ろしさが分かった。もしあれと会ったときに自分ひとりだったら恐怖で足が竦んで動くことすらできないだろう。 なのに、目の前の少女がそれと戦ったという。 (やっぱりすごいな…。それに比べて私は…) その後、長田結花という人物と出会い、直後に謎のポケモンという存在を連れた女からの襲撃。 女は撃退したが結花を見失い、追っている途中で放送が始まり、その中で兄が死んで錯乱したロロにより怪我をし、今に続く。 「美遊ちゃんってさ…、もしかして、魔法少女…なのかな?」 「え?」 「あ、ううん!何でもないの!分からなかったら気にしないで」 ふと、戦う少女と言われて連想した言葉を口走ってしまった。わけの分からないことを言ったかもと思われるかもしれないと思うまどか。 『まどか様ももしかして魔法少女なのですか?』 「ふぇ?」 しかし話を聞くと、美遊は実際に魔法少女という設定だと、サファイアは言っていた。(設定って何だろう…?) また、それが自分達の世界のモノとも恐らく異なるものであるだろうとも。 実際彼女達は、とある事件の中で同い年くらいで自分達よりも戦い慣れして戦闘能力を備えた別世界の魔法少女と出会う機会があったとか。 『よろしければ、そちらの魔術形態についてお伺いしてもよろしいでしょうか?』 「ま、まじゅつ…けいたい?」 『魔法少女の成り立ちや、仕組みといったものです』 「その…あ、そう、そっちから聞かせてもらってもいいかな?」 そうサファイアに問われたものの、何を話してよいか分からなかったためまどかは美遊に先に答えてもらうように聞いた。 専門的なことなど分からないし、そもそもあのことを話していいのか判断に困ってしまったのだ。 「私達は魔力回路を運用してサファイア達のような魔術兵装を用いることで平行世界からの干渉によって魔力を無限供給している。 サファイアは第二魔法の応用で作られた魔術礼装でマスター契約により運用可能。 戦闘においては魔力運用はあくまで魔力回路に依存するため使用者の一度に使用可能な魔力は『美遊様、まどか様の頭から湯気が上っています』 ともあれ、掻い摘んで大まかにサファイアの説明を聞いたまどか。 やはり難しかったものの、内容はキュゥべえが以前話したものとは全く異なるもののようだった。 大前提として、どうも魔法(魔術?)を使うには生まれつきの才能が必要であり、それが無ければ基本的に魔術を使うことはできないのだとか。 やはり迷いはあったが、話してみることで何か答えを見つけられるかもしれない。 あるいは人間でなくなったことを苦しんだ親友を救う術も見つけられるかも。 「それじゃあ、こっちも話すね。って言ってもそんな原理とか理屈とか、詳しいところは分からないんだけど―――」 ◆ 「なるほど、この空間は我々の記憶から作られたものであるかもしれない、と」 「はい」 織莉子とサカキは屋敷を巡回した後、壊滅状態にある敷地内の、ほんの少し空いた空間で自分達の考察について話していた。 「例えばこの家、私の家で間違いありません。おそらく崩れる前は完全に私の家を模倣していたはずです。 ただ、本音を言うならこの殺し合いという場において、そのようなことをする必要はあるでしょうか?」 「そうならざるを得なかった、というのじゃないのか?例えば家をこの場に持ってきた、とか」 「そのようなことも可能なのですか?……それは違うかもしれません。先ほど寄った衛宮邸という家を覚えていらっしゃいますか? 見たところ一世帯の家族が住んでいるであろう家のはずですが、生活感がまるでありませんでした。きっとこの私の家もそのようだったと考えられます」 「しかしそれだけではまだ我々の記憶から作られたものという考えにたどり着くには弱いと思うが」 「そうですわね。この地図を見ていただいてよろしいですか?」 そう言って織莉子は、支給品の中にあった地図を広げる。 孤島の島に、様々な施設が特に統一性もなく散らばっている。 「これらの施設を見て、何かお気づきにはなりませんか?」 「ふむ…。……名簿も見せてもらえないか?」 そう言い、名簿と地図を交互に見比べ、やはりと呟いて顔を上げるサカキ。 「ここに記されている施設は、他の参加者に関わりがあるものが多い、ということか?」 「はい。ここに呼ばれている参加者の苗字を持った施設だけで8軒。 そして学校と思われる施設は3軒、いえ、この流星塾という施設もあわせれば4件でしょうか。 他にも柳洞寺、スマートブレイン、アヴァロン、蓬莱島、さくらTVなど特定の固有名詞に当たるものも見受けられます」 「そういえばポケモンセンターやフレンドリィショップはポケモントレーナーであればまず知っているはずの施設のはずだ」 「この中で参加者との関わりがあるかどうか不明瞭なものは、警視庁、病院、美術館、政庁、遊園地でしょう」 他の施設はもしかすると誰かと関わりのある施設の可能性は高い。 古びた教会―――なぜ教会、ではなく”古びた教会”なのか。 人間居住区―――少なくとも自分達の世界では人間が住む場所などいちいち示したりはしない。何か人間の種族と共に生きている世界があるのかもしれない。 「そうなるとここへ来るまでの通り道の美術館に寄っておくべきだったかもしれませんが」 「それで、もし君の仮定が当たっていたとすれば、どのような憶測になると?」 「私達の世界には、魔女という存在があります。 彼等は結界の中に潜み、人間に対し様々な悪影響を与えるのです。 その中でも魔女に操られた者、意識を乗っ取られた者には魔女の口付けとよばれる印が付くのです」 「待て、魔女の口付けだと?それは――」 「はい、私達に付けられたこの呪いの元です。 そして彼等は、時には人間の記憶に入り込んでくることもあります」 思えばその地点にはもっと早くに気付くべきだった。 まさか魔女を思いのままにする人間がいるとは思わなかった。 しかしあの時聞いた神のごときポケモンの力をアカギが持っているのであれば、あるいはあり得るかもしれない。 無論、まだ推測の域は出ない。確信するには早いだろう。 だが、指針として、可能性としては考えておかねばならない。 すなわち、 「アカギ、あるいはその協力者は魔女の力を利用している可能性があります。それもその力を完全に支配下に置いた上で」 ◆ 『それは、本当なのですか?』 「うん…」 鹿目まどかは全てを話した。 魔法少女のこと。キュゥべえのこと。それに翻弄された皆のこと。そして、魔女の存在とその真実。 「魂を固定化させ変質させる。さらにその際発生するエネルギーを回収する。サファイア、そんなこと可能なの?」 『私の使用する魔術とは根本的な分野が異なるため何ともいえませんが、少なくともそれは魔法に匹敵する奇跡であることには変わりないでしょう』 契約の代価にいかなる願いも叶えるという異星生物。 その契約をしたものは魂を宝石に変換させられ魔女という生き物と戦う運命を背負うという。 そして、魔力を使い切ったとき、その魔法少女自身がその魔女へと変化する。 「サファイア、もし宝石魔術の際使用される魔力を人間の魂そのもので定着させた場合、どのくらいの魔力を生み出す?」 『生きた人間の魂そのものとなると、前例が無いため測り知ることはできません。あるいは凛様やルヴィア様であれば知られている可能性はありますが…』 「………」 「ご、ごめんね、変なこと聞かせちゃって」 「構わない。色々参考になった」 『まどか様、そのキュゥべえという生き物ですが、もしかするとアカギに何らかの関わりがあるのではないですか?』 「えっ?」 『魔女の存在と魔女の口付け――私達に付けられたこの刻印。希望と絶望という感情からエネルギーを変換する。 今の状況と一致させられる条件が揃っています』 「でも、それならどうして私がいるのかな…?」 まだ原理が分からないとはいえ、条件は揃いすぎているように見える。 しかしまどかはそれに対して疑問を呟いた。 「キュゥべえが言うには、私にはこれまでにない魔法少女の才能があって、今までにないほどのエントロピーを回収できるって言ってたし…。 こんな、もしかしたら私が、…死んじゃうかもしれないところに連れてくるのかな…?」 「どういうこと?」 「キュゥべえがそう言ったの。私には神様にもなれるほどの才能があって、宇宙を救えるかもしれないって。 そんな、多分キュゥべえにとって重要かもしれない私が死んじゃったら元も子も無いんじゃないかな?」 『確かにその部分だけを聞くと不自然に感じますが…』 確信を得るためにはまだ材料は足りない。可能であればまどかの言う魔法少女達やルヴィアと接触を図るべきだろう。 だが、得た情報は貴重なものだ。また異世界の魔法少女、魔女の存在など。 「それで、あなたはどうしたいの?」 ふと、美遊はそんなことを切り出した。 まどかは意味が分からず首を傾げる。 「どうしたい、って?」 「そんな力を持って、そんな不条理な願いを持ちかけられて、あなた自身はどうしたいの?」 『美遊様?』 それは唐突な問い。 なぜそんなことをまどかに聞くのか、美遊の心中はサファイアには分からなかった。 それに対し、まどかは少し考えた後ポツポツと話し始めた。 「私、今まで何のとりえも才能もなくて、このまま誰のためになることも、何の役に立つこともできずに生きていくんだろうなって思ってて。 そんな時に、街の人を守るために戦うマミさんを見て、好きな人のために魔法少女になって傷付いてくさやかちゃんを見て。 なのに何の力にもなれなくて。でも、キュゥべえはそんな私にも力があるって言って」 「あなたは契約したいの?人間じゃなくなっても、他の人を襲う存在になるだろうって知った今でも?」 「……魔法少女になりたいかどうかは分からないけど、でも、何にも出来ずに、守られてばっかりなのは嫌だし…。 だからもし私にもできることが、戦えるようなことがあるなら、力になりたいってそう「そんな覚悟で戦いに参加したいなんて言わないで」 その言葉に、美遊は唐突に割り込んだ。 「あなたは戦いの中にいるような人間じゃない。戦う理由を持っていない」 「そんなこと――」 「そんな、ただ何かをしなければいけないなんて理由しか持っていない人に、戦場に立ってほしくはない。あなたは、戦うべきじゃない」 そう、美遊はまどかの望みを、きっぱりと否定した。 ◆ 「ここから私達は北上しこの橋から市街地へと再び入ろうと思っています」 「先に寄った学校に寄るのではないのか?」 「最初はそのつもりでしたが、ここで戻ればあの剣士に遭遇する可能性があります」 もしあの子があの剣士と会い戦った場合、勝つことは難しいだろう。そして彼女もそれくらいのことは分かるはず。 だからこそ、もし出会えば逃げてくれると信じている。 あの傷があっても、彼女の能力を持ってすれば逃げることは可能なはずだ。 念を入れて、もしキリカがここに来たときのために、目印を残しておこう。 家の残骸の中にあった一枚のハンカチ。それを森の入り口の木に分かりやすいように縛り付けておくのだ。 これが自分のものだということに、キリカならば気付いてくれるはずだ。 市街地に向かった後は、まずそこから最も近い場所にある鹿目邸へと足を運び、その後病院に向かう。 可能な限り施設は調べておきたいという考えの元だ。 というのも事実ではあるが、実際には鹿目邸に向かうことにはまた別の思惑もある。しかしそれを口にしたりはしない。 今後の指針は決まった。 あの剣士が追いついてくる様子は無いが、もたもたして追いつかれてしまうとまずい。 特に未練もなく完全に崩壊している己の家に背を向け、入り口の門をくぐった。 (そういえば、何時ぶりだったかしら。キリカ以外の人をここに通すのは) そして特に意味もなく、ただ何となく。 そんなことを思った。 ◆ まどかは家の中にいた。 何かを考えるように、キッチンの椅子に座り込んでいた。 しかしその表情は決して明るくない。 戦うなと。自分には自分のなすべきことがあるのだと。 散々言われてきた言葉だった。 涙を流しながらそう伝えた少女もいた。その言葉を最後に親友の成れの果てと消え去った少女もいた。 (だけど…) でも、草加さんも杏子ちゃんもLさんも、皆それぞれの形で戦っている。 だったら、自分には何ができるんだろうか。 そのできることが、もし戦うことだったら、戦うしかないのではないか。 理由だってある。皆を守りたい。力になりたいと思っている。 それでも理由にはならないのだろうかと。 もしさっきあの少女に否定されたときにそう言えていれば何か変わっただろうか。 でも、現実にそんな術を持たないまどかには、そんなことを言うことはできなかった。 もしその存在があったとしても、おそらく嫌な顔しかできなかっただろう存在。 それでも、いつも悩んでいたときには姿を現して契約を迫ってきたあの生き物。 キュゥべえ――インキュベーター。 しかし、今この場においてはいくら悩んでいても、あの白い生き物が姿を現すことはなかった。 ◇ 「………」 あの後、居心地の悪さを感じ取った美遊は、鹿目邸の庭に出て外の空気を吸っていた。 襲撃者がいたときにはこちらに注意を惹きつけつつ屋敷を離れるつもりだったが、少なくとも今はそのような気配はない。 「サファイア、彼女にそこまでの魔力があるように見える?」 『彼女の世界のものと私達とでは、同じ名称であっても根本的原理が違うようですので一口に判断することはできません。 まどか様の世界の魔法少女に会ってみなければ何ともいえないでしょう』 これまでは一人も会ってこなかったが、会う機会があればサファイアの力をもって調べるのも仕事だろう。 腕の傷は、少なくとも動かす分には問題ないほどには治癒した。 あの時サファイアはロロを止めるために一時的に美遊の手を離れたことでバーサーカーと戦ったときと違い防壁を張ることができなかった。 バーサーカー戦でもそうダメージを受けなかった体にここまでの傷が残ったのはそのためらしい。 だが、もしあの場でサファイアが動かなければ、あの大口径の銃弾は美遊の心臓を撃ちぬいただろう。とっさの行動だったから分からないものの、あれをサファイアが防壁で受け止めることができたかと問われると分からない。 結果論なのだからあまり言っていても仕方ないだろうが。 今なら結花やロロ達を追うことを、サファイアは許してくれるだろうか。 だが、あの鹿目まどかにも若干気になるところがある。 『それにしても美遊様、先ほどの言葉は少し言いすぎでは?』 「…それは……、後で謝る」 少し言い過ぎたのではないかと、美遊自身も思わなくもない。 彼女自身が自らの立ち位置について悩んでいるのは仕方の無いことだろう。自分がどうこう言うことではないのだ。 ただ、彼女の世界の魔法少女の真実を知り、己の力を知らされていながらなおジレンマから抜け出せず答えを出せないその姿に少し苛立ちを感じてしまった。 いつだったか似たような感情を持ったことがある気がするが、あの時とはまた異なった感情のような気がする。 ふと、遠くを見つめながら、 「―――何でも願いが叶えられるなんてこと、全然いいことじゃないから」 そう呟いた美遊。 その言葉の意味も、その心中も、サファイアには量れなかった。 ◆ 二つの場所で起こった2組の、己の家への帰還。 その中で彼等は様々な考察を巡らせた。 それが果たして真実なのか、ただの思い込みでしかないのかはまだ分からない。 しかし、もし彼等2組に関して一つ言えることがあるとすれば。 本来出会うはずのない2人の少女の間にある距離が、確実に縮まりつつあるということだろう。 【D-6/鹿目邸/一日目 午前】 【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:擦り傷が少々 [装備]:見滝原中学校指定制服 [道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~3(確認済み) [思考・状況] 1:私、どうしたらいいんだろう… 2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも… 3:草加さんが追ってくるのを待つ 4:乾巧って人は…怖い人らしい 5:オルフェノクが怖い… [備考] ※最終ループ時間軸における、杏子自爆~ワルプルギスの夜出現の間からの参戦 ※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました ※美遊と情報交換をし、バトルロワイヤル開始からこれまでの出来事と遭遇者、「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」の世界の情報を得ました。(後者は難しい話はおそらく理解できていません) しかし長田結花がオルフェノクであることは知らされていないため、美遊の探す人物が草加の戦ってる(であろう)オルフェノクであることには気付いていません。 【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 [状態]:ダメージ(小)、左腕に大きな傷(処置済み、大体は治癒、ただし激しい戦闘を行えば傷が開く可能性有り) [装備]:カレイドステッキサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [道具]:基本支給品一式、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、支給品0~1(確認済み) [思考・状況] 基本:イリヤを探す 1:出発したいが、鹿目まどかのことも少し気になる。どうしよう? 2:結花、ロロを追いかける 3:知り合いを探す(ロロの知り合いも並行して探す) 3:結花の件が片付いたら、橋を渡って東部の市街地を目指す(衛宮邸にも寄ってみる) 4:真理の知り合いと出会えたら、真理のことを伝える 5:ナナリー・ランぺルージには要警戒。 6:『オルフェノク』には気をつける 7:まどかの世界の魔法少女を調べる [備考] ※参戦時期はツヴァイ!の特別編以降 ※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません ※まどかと情報交換をし、バトルロワイヤル開始からこれまでの出来事と遭遇者、「魔法少女まどか☆マギカ」の世界の情報を得ました。 しかし草加雅人が現在オルフェノク(長田結花)と戦っているであろうということは知らされていません。 [考察(まどか、美遊)] キュゥべえがアカギに関わっている可能性はあるが、まどかを参加させる理由が見当たらないため保留。 アカギは魔女の力を何かしらの形で利用している? 【D-7/美国邸付近/一日目 午前】 【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】 [状態]:健康、疲労(小)、ソウルジェムの穢れ(3割)、白女の制服姿、オートバジン騎乗中 [装備]: [道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)@ポケットモンスター(ゲーム) [思考・状況] 基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす 1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない 2:キリカを探し、合流する。 3:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する 4:サカキと行動を共にする 5:C-6南部の橋から市街地へ入り、鹿目邸を調査。その後市街地を巡回した後病院へ向かう。 [備考] ※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前 ※ポケモンについて少し知りました。 ※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。 ※アカギに協力している者がいる可能性を聞きました。キュゥべえが協力していることはないと考えています。 【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】 [状態]:左腕に裂傷(軽度)、オートバジン騎乗中 [装備]:オートバジン@仮面ライダー555、高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール(ダメージ(小)疲労(中))@ポケットモンスター(ゲーム) [道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)@ポケットモンスター(ゲーム) [思考・状況] 基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない 1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する 2:織莉子に同行する 3:織莉子の提案通り、C-6南部の橋から市街地へ入り、鹿目邸を調査。その後市街地を巡回した後病院へ向かう。 4:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする) 5:『強さ』とは……何だ? 6:織莉子に対して苦い感情。 [備考] ※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です ※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています ※魔法少女について少し知りました。 織莉子の予知能力について断片的に理解しました。 ※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。 ※サイドンについてはパラレルワールドのものではなく、修行中に進化し後に手放した自身のサイドンのコピーだと思っています。 ※アカギに協力している者がいると考察しています。 [考察(織莉子、サカキ)] この空間は参加者の記憶から作り出された空間、すなわち魔女の結界に類似したものである可能性がある。 アカギは魔女の力を何らかの形で利用している 【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】 現在の護衛対象:美国織莉子 現在の順護衛対象:サカキ [備考] ※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません ※『ビークルモード』への自律変形はできません ※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します 091 ガブリアスが見てる 投下順に読む 093 蛇の道は蛇 時系列順に読む 085 Lost the way 鹿目まどか 106 彼らの探し物 美遊・エーデルフェルト 076 私の光が全てを照らすわ 美国織莉子 096 美国織莉子、私の全て サカキ
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AN EARTH パラレルメモリーズ非公式@wikiへようこそ 2003年から2006年まで放映されたメディアミックス作品「AN EARTH パラレルメモリーズ」のまとめwikiです。 AN EARTH パラレルメモリーズとは? このページは自由に編集することができます。 メールで送られてきたパスワードを用いてログインすることで、各種変更(サイト名、トップページ、メンバー管理、サイドページ、デザイン、ページ管理、等)することができます まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 編集モード・構文一覧表 @wikiの設定・管理 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください アットウィキモードでの編集方法 文字入力 画像入力 表組み ワープロモードでの編集方法 文字入力 画像入力 表組み その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン一覧 @wikiかんたんプラグイン入力サポート バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、お問合せフォームからご連絡ください。
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