約 3,690,039 件
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■NORMAL キノコカップ 銅 パタパタ 銀 ピーチの隠しコスチューム 金 スイカの形のボール 星形のボール パチンコ玉のボール フラワーカップ 銅 ディクシー 銀 デイジーの隠しコスチューム 金 ヨッシーのタマゴの形のボール スターカップ 銅 クッパ 銀 モグリー コート「ギラギラさく」出現 金 トゲトゲのボール レインボーカップ 銅 ニンジャ&ハードモード出現 銀 シロマ 金 クロマ ■HARD キノコカップ 銅 キャサリン 銀 サッカーボール(提供アトラ様) 金 プクプクボール(提供アトラ様) フラワーカップ 銅 テレサ 銀 ヨッシーのニューカラー 金 サイコロボール(提供アトラ様) スターカップ 銅 プロペラヘイホー 銀 プロペラヘイホーニューカラー(提供アトラ様) 金 クリボーボール(提供アトラ様) レインボーカップ 銅 エキシビションに難易度さいきょう出現 銀 シロマニューカラー(提供アトラ様) 金 ニンジャニューカラー(提供アトラ様) 銅 優勝する 銀:一試合以上200点差で勝つ 金:全試合200点差で勝つ
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Backyard Cup コース B2 Hello World B4 The Big Ride B5 Basic Bumps 解説 シルバー ミス3回以内 タイム01 35.000 ゴールド -- プラチナ ミス0回以内 タイム01 15.000 National Bike Cup コース E2 Easy Wheeling B3 The Breakdown B6 Groundhog Begins E5 Mother of All Jumps 解説 シルバー ミス4回以内 タイム03 00.000 ゴールド ミス1回以内 タイム01 50.000 プラチナ ミス0回以内 タイム01 40.000 Regional Bike Cup コース E3 Logsplosive E6 Smooth Jumps E4 Upwardly Mobile E1 Building Blocks 解説 シルバー -- ゴールド ミス1回以内 タイム02 15.000 プラチナ ミス0回以内 タイム02 05.000 Master s League コース M8 Trippin the Plywood M11 Jolly Jumper M5 Stock Market M10 Under Ground M3 Container Rush 解説 シルバー ミス10回以内 タイム06 00.000 ゴールド ミス3回以内 タイム04 30.000 プラチナ ミス0回以内 タイム03 40.000 World Cup コース H3 Technique M4 Dreamscape H7 Classic M6 Tired Hill H6 Trials/Tribulations 解説 シルバー ミス80回以内 タイム10 00.000 ゴールド ミス20回以内 タイム07 00.000 プラチナ ミス0回以内 タイム04 30.000 World Championship コース M8 Trippin the Plywood M3 Container Rush H4 Concrete Dreams H3 Technique M10 Under Ground H7 Classic H8 King of the Hill H1 The Rise and Fall M5 Stock Market H6 Trials/Tribulations 解説 シルバー ミス100回以内 タイム11 00.000 ゴールド ミス25回以内 タイム10 00.000 プラチナ ミス0回以内 タイム09 10.000 Underground Cup コース H2 Dynamic Range B1 Middle Name Danger M1 Where s the Ground? H5 Unfair Bombardment M2 Let s Get Physical 解説 シルバー ミス35回以内 タイム10 00.000 ゴールド ミス10回以内 タイム06 00.000 プラチナ ミス0回以内 タイム04 25.000 Ultimate Endurance コース B2 Hello World M5 Stock Market E5 Mother of All Jumps B3 The Breakdown M10 Under Ground E4 Upwardly Mobile B6 Groundhog Begins M11 Jolly Jumper E2 Easy Wheeling E6 Smooth Jumps M3 Container Rush B4 The Big Ride M6 Tired Hill E3 Logsplosive M8 Trippin the Plywood E1 Building Blocks M4 Dreamscape B1 Middle Name Danger M7 Groundhog Returns B5 Basic Bumps 解説 シルバー -- ゴールド ミス10回以内 タイム12 00.000 プラチナ ミス0回以内 タイム10 20.000 DLC BIG PACK! Proving Grounds コース M23 Pipe Network M20 Space Station M16 Speed Trap M17 Epic Jumps M14 Dangerous Ride 解説 シルバー -- ゴールド ミス0回以内 タイム04 53.000 プラチナ ミス0回以内 タイム04 30.000 Professional League コース M12 Pro Speedway H10 Smelting Hazard M16 Workshop of Secrets M22 Fantastic! M21 Final Flashback 解説 シルバー -- ゴールド ミス4回以内 タイム04 15.000 |プラチナ|ミス0回以内|タイム03 40.000 | Technique and Skill コース H11 Junkyard H18 1 Bit Trip M17 Where s the Sky? M19 Condemned Complex 解説 シルバー -- ゴールド ミス2回以内 タイム04 56.000 プラチナ ミス0回以内 タイム04 20.000 Ultimate League コース H9 Wheels of Misfortune H13 Skyway H17 Prison Break H19 Smoke and Mirrors H16 Isabelle 解説 シルバー ミス75回以内 タイム14 00.000 ゴールド ミス30回以内 タイム05 40.000 プラチナ ミス0回以内 タイム04 10.000 The Midnight Club コース EX6 Diabolic EX2 Goin Up! EX4 Inferno II EX3 Groundhog Forever EX1 Brown Boxes EX5 Greatest Hits 解説 シルバー -- ゴールド ミス110回以内 タイム23 10.000 プラチナ ミス6回以内 タイム10 30.000
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第七回ダンゲロス最大トーナメント 【いいかんじの導入】 INFORMATION 【わかりやすい説明】 スケジュール 12月25日(火) 00:00 キャラクター投稿受付開始 12月29日(土) 00:00 キャラクター投稿受付〆切 12月29日(土) 21:00ごろ 本戦開始予定 12月30日(日) 21:00ごろ 本戦予備日 12月31日(月) 23:59 さようなら2018年 1月1日(火) 00:00 あけましておめでとう! キャンペーン情報 キャンペーン種別:忘年会 幹事:tasuku
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作る? 初版と最新版 初版:20??/??/??(曜日)?? ?? ?? 最新版:2015/07/18 Sat 00 59 14 最初に ここはあくまでも『予想』です。こうなってほしいな、は構いません。ですが必ずそうなるとは限りません。 「あそこに書いてた情報とゲームとじゃまったく違うじゃないか!」などとならないように。それを踏まえた上で閲覧・編集の程よろしくお願いします。 ステージ名:デンサンシティバトルトーナメント 登場作品:ロックマンエグゼ4 一部のアイテムの見た目がバトルチップに変わるぞ! さらにこのステージ限定のアイテムであるナビチップを使えば、いろんなネットナビがサポートしてくれるぞ! 通常ステージはデンサン/シティバトルトーナメント、ZRボタンまたはZ+Rボタンでホーク/イーグルトーナメント、ZLボタンまたはZ+Lボタンでレッドサン/ブルームーントーナメントのバトルフィールドになる。 ステージのイラスト ロックマンエグゼ4に登場したバトルフィールドがスマブラのステージに。 立体映像で映し出された球体の中にある、平面な電脳世界が戦いの場になる。 特徴 平面のステージ。 イメージとしてはWii Fitスタジオに限りなく近い。 このステージ最大の特徴は、一部のアイテムの見た目がそれに準じたバトルチップに変化する(性能は変化しない)ことと、このステージ限定のアイテムであるナビチップが登場すること。 設定を変更すれば、元のアイテムの見た目で使用できる。 仕掛け アイテムの変化 一部のアイテムの見た目がバトルチップに変化する。 変化するアイテムと変化先のバトルチップは以下の通り。バトルチップでないものも含まれますがご了承ください。 元のアイテム 変化後のバトルチップ カプセル ミステリーデータ マキシムトマト リカバリー50 ハンマー ガイアハンマー ビームソード パラディンソード リップステッキ バッドスパイス ファイアフラワー ヒートブレス ミドリこうら エアホッケー バンパー プリズム パサラン プラズマボール 緑ブロック アイアンボディ サンダー ライトニング 巨塔 フウジンラケット まほうのツボ エアホイール ドリル ドリルアーム ブーメラン ブーメラン ボムチュウ ラットン 十文字爆弾 クロスボム キラー ダッシュアタック バックシールド メットガード ロケットベルト エアシューズ キラーアイ キラーセンサー フリーザー アイスキューブ センサー爆弾 ステルスマイン スマートボム ビッグボム ナビチップ さらにこのステージ限定のアイテムとしてナビチップというものがあり、使うとナビが出現し、拾ったファイターのサポートをしてくれる。 ガッツマン CV:下山吉光 使用する技:ガッツハンマー ガッツハンマーは地を這う衝撃波を起こす。 「ガッツマンに任せるでガス!」 「ガッツハンマー!」 「どんなもんでガス!」 ブルース CV 松風雅也 使用する技:ファイターソード、ワイドソード、ソニックブーム ファイターソードは横に長く、ワイドソードは縦に長い。ソニックブームは斬撃を飛ばす。 「ブルース見参!」 「俺の剣を避けられるか!?」 「ソニックブームゥ!」 「こんなものか」 ファイアマン CV 加藤木賢志 使用する技:ファイアアーム 横一直線に火炎放射攻撃。 「オレの出番ってワケか」 「ファイアアームぅ!!」 「オレに燃やせないものはねえ!」 エレキマン CV 鈴木千尋 使用する技:エレキソード、サンダーボルト エレキソードで近くの敵を切り、サンダーボルトで落雷を起こす。 「俺の主に仇なす者は許さん!」 「エレキソード!」 「サンダーボルトォ!」 「貴様らでは俺を倒せん」 クイックマン CV 茂木優 使用する技:クイックブーメラン 目にも止まらぬ速さで移動し、ブーメランを投げる。 「オレの速さについて来れるか!?」 「遅い!クイックブーメラン!」 「この程度でオレに追いつけると思うなよ」 シャドーマン CV 伊藤健太郎 使用する技:手裏剣、分身切り 手裏剣を投げ、三体に分身し刀を振るう。 「お主たちに恨みは無いが、勝負だ」 「手裏剣乱れ撃ちィ!」 「分身切り!」 「これにて失礼する」 フリーズマン CV:田中総一郎 使用する技:アイスタワー、ツララフォール 地面から氷の柱を生やすアイスタワーと、上空から氷柱を落とすツララフォールで攻撃。 「ゴスペル最高司令官の私をなめるなよ」 「無粋な奴らめ、アイスタワー!」 「串刺しになるがいい、ツララフォール!」 「ゴスペルに逆らおうなどと思わないことだな」 ナパームマン CV:坂口候一 使用する技:ファイアボム、ナパームボム 爆発後も火がなかなか消えないファイアボムと、広範囲を焼き尽くすナパームボムで攻撃。 「戦いたくてウズウズしてんだ」 「当たりゃあ、ただじゃ済まないぜ!ファイアボム」 「爆殺!ナパームボム!」 「なかなかやるじゃねえか」 フラッシュマン CV:保村真 使用する技:フラッシュライト 画面全体に強烈な閃光を放ち、敵を麻痺させる。 「フフフ、オレの光からは逃れられん!」 「フラッシュライトォ!」 「どうだ、動けまい!」 メタルマン CV:千葉進歩 使用する技:メタルフィスト、メタルブレード 円盤型鋸を投げるメタルブレードと、シールドを無視して攻撃できるメタルフィストで攻撃。 「今日も拳が疼く・・・」 「メタルフィストォ!」 「メタルブレード!」 「俺も精進せねば・・・」 プラントマン CV:吉野裕行 使用する技:プラントウィード、ローズニードル 蔦で敵を拘束するプラントウィードとバラのトゲを発射するローズニードルで攻撃。 「ふふふ、にぎやかだねぇ」 「美しく散らせてあげよう、プラントウィード!」 「キミたちもこれで終わりだ、ローズニードル!」 「楽しかったよ」 ドリルマン CV:加藤木賢志 使用する技:ドリルドライブ、パネルクラッシャー、ガレキ 3つのドリルが横一直線に突撃した後、地面から3つのドリルとともに突き上げ、岩石を落とす。 「失せな、穴だらけになりたくなかったらな!」 「ドリルドライブゥ!」 「パネルクラッシャー!」 「遊ぶ時間はなさそうだ」 アクアマン CV 千葉千恵巳 使用する技:アクアシャワー 自分の周りに水を撒き散らすアクアシャワーで攻撃。 「アクアマンだぴゅ。」 「アクアシャワー!」 「疲れたぴゅ」 サーチマン CV:福山潤 使用する技:スコープガン 特定の敵を狙撃するスコープガンで攻撃。 「サーチマン、ミッションを開始します」 「そこだ、スコープガン!」 「任務完了。これより帰還する」 ウインドマン CV:咲野俊介 使用する技:ラウンドトルネード ステージを周回する竜巻を発生させる。 「私の力が必要なようだな」 「ラウンドトルネード!」 「ふむ、よい風が吹いておる」 シェードマン CV:中村秀利 使用する技:クラッシュノイズ 自分の周囲に破壊音波を発生させる。 「なめるな!人間どもぉ!」 「クラッシュノイズ!」 「私の手を煩わせるな!」 カーネル CV:安元洋貴 使用する技:スクリーンディバイド、カーネルアーミー 援護攻撃をするカーネルアーミーを設置し、カーネルは近くの敵を切りつける。 「私の前に立ちはだかる者は容赦せん!」 「カーネルアーミー、出撃!」 「小賢しい、スクリーンディバイド!」 「私は負けられんのだ」 トマホークマン CV:阪口大助 使用する技:トマホークスイング、トマホークエアレイド 広範囲を斧でなぎ払うトマホークスイング、斧をブーメランのように投げつけるトマホークエアレイド。 「ヘッ、オレを呼んだか!?」 「トマホークスイング!」 「トマホークエアレイド!」 「ウラララー!どんなもんだ!」 ジャイロマン CV 岸尾だいすけ 使用する技:ジャイロエアフォース ヘリコプター形態になり、爆撃攻撃。 「ジャイロフォームゥ!」 「ジャイロエアフォース!」 「ひゅ~、やるねえ!」 スラッシュマン CV:杉田智和 使用する技:ワイドスラッシュ、ローリングスラッシャー 敵を次々切りつけるワイドスラッシュと回転攻撃で敵を追いつめるローリングスラッシャー。 「俺の力が必要か・・・」 「ワイドスラッシュ!」 「逃がさん!ローリングスラッシャー!」 「さらばだ・・・」 キラーマン CV:大西健晴 使用する技:キラーズデスビーム、ヘルズシックル 一直線にビームで攻撃するキラーズデスビームと鎌を振るうヘルズシックル。 「ウェルカム・トゥ・ザ・ダークサイド!」 「貫け、キラーズデスビーム!」 「ヒャハハハ!祭りだ祭りだ!」 「キヒィ、もっと暴れてぇ!」 ダストマン CV:武虎 使用する技:ダストブレイク 敵を吸い寄せ、両手でプレス攻撃。 「ガハハハ、ダストマンだぜ!」 「ダストブレイクゥ!」 「ゴミはちゃんと分別しろよ!」 テングマン CV:浜田賢二 使用する技:テングスライダー、テングスラスト 縦横無尽にフィールドに体当たりを仕掛けるテングスライダーと鼻を伸ばして攻撃するテングスラスト。 「ぬう、戦か」 「テングスライダー!」 「テングスラスト!」 「うむ、良い戦いであった」 フォルテ CV:根本圭子 使用する技:ダークネスオーバーロード、カオスナイトメア、ダークアームブレード 強力な闇エネルギーを放射するダークネスオーバーロード、闇の爆破を起こすカオスナイトメア、次々と闇の剣で敵を斬るダークアームブレード 「感じるぞ、強者の波動を!」 「消えろ」 「無駄だ」 「くだらん」 「ふん、暇つぶしにはなったな」 「また、会う日が楽しみだ」 BGM ♪バトルプレッシャー(表曲) ♪ロックマンエグゼのテーマ(裏曲) ♪プロトの電脳 ♪自分との戦い ♪WWWエリア ♪グレイトバトラーズ ♪コピーロイドの電脳 ♪VSネビュラグレイ 箱・タルのタイプ SF 隠しファイターとのチャレンジマッチ [[]]とのチャレンジマッチはここで行われる。 BGMは「[[]]」 終点化 地続きではなくなる。 チップ化、ナビチップは継続される。 関連 新ステージ投票 ステージリスト ステージテンプレ コメント 少しレイアウトを変えました。 -- ヨンシャン (2015-03-08 00 29 28) 名前 コメント
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ロボットトーナメント トーナメントガール衣装案 (1400287:南天@後ほねっこ男爵領 提出) トーナメントガール =レースクイーンのようなものという質疑により チームごとにいるものと判断して、作成しました。 可能であれば、チームごとのカラーリングや、エンブレムなども入れたいなあと思います。 ゲイシャガール 悪の秘密結社風 女司令官風 魔女っ娘 ローマ、ギリシャ風 ツナギ技術屋風 以下は描いたものの、色塗りが間に合わなかったものです 完成品ではありませんので、評価無しでも結構です。 メードさん チャイナ
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第156回vip複合トーナメント結果 予選 予選組みあわせ(01vs02、03vs04、、、と1分30秒で対局) 予選勝者○→最強トナメ 予選敗者●→ツンデレ杯 へ進みます 01 孤客 ● 02 てらえもん ○ 03 (^o^) ● 04 masa-ni ○ 05 kuriou ● 06 koha ○ 07 クサーノ ○ 08 rtgf ● 最強トーナメント 最強トーナメント(勝ち進み、15分60秒、★棋譜保存) 【1日制です】 ┌ teramoes ┏┓ ┃┗ masa-ni(陥没) ━┛★ │┏ koha └┛ └ kusa-no ツンデレ杯 ツンデレ杯(負け進み、15分60秒、★棋譜保存) ┏ 孤客 ┌┛ │└ (^o^) ━┓★ ┃┌ くりおー ┗┓ ┗ rtgf 最強トーナメント決勝棋譜 先手:* koha 後手:* masa-ni ▲7六歩 △3四歩 ▲5六歩 △8四歩 ▲5八飛 △8五歩 ▲5五歩 △6二銀 ▲7七角 △5二金右 ▲6八銀 △4二玉 ▲5七銀 △3二玉 ▲5六銀 △4四歩 ▲4八玉 △6四歩 ▲3八玉 △6三銀 ▲2八玉 △4三金 ▲4六歩 △3三角 ▲1八香 △2二玉 ▲1九玉 △3二銀 ▲2八銀 △1四歩 ▲3九金 △2四歩 ▲5九金 △2三銀 ▲4八金左 △3二金 ▲6六歩 △1五歩 ▲6五歩 △同 歩 ▲同 銀 △6四歩 ▲5六銀 △9四歩 ▲3六歩 △7四歩 ▲3八金寄 △2五歩 ▲5四歩 △同 歩 ▲4五歩 △8六歩 ▲4四歩 △同 金 ▲4五歩 △4三金引 ▲3三角成 △同金寄 ▲5五歩 △6九角 ▲5九飛 △3六角成 ▲5四歩 △5七歩 ▲4七金 △3五馬 ▲3六歩 △6二馬 ▲5五銀 △4六歩 ▲同 銀 △5四銀 ▲5七飛 △5三歩 ▲3五歩 △8七歩成 ▲3四歩 △同 銀 ▲3五歩 △2三銀 ▲4八金引 △3六歩 ▲4一角 △7七と ▲同 桂 △8九飛成 ▲8二歩 △2六歩 ▲同 歩 △2五歩 ▲8一歩成 △2六歩 ▲5九歩 △8四馬 ▲2四歩 △同 銀 ▲2三歩 △同金上 ▲同角成 △同 玉 ▲3四金 △1四玉 ▲3三金 △同 銀 ▲3八桂 △2五金 ▲2六桂 △同 金 ▲2七歩 △2五金 ▲2六金 △2四金 ▲1六歩 △同 歩 ▲5四飛 △同 歩 ▲1五銀 △同 金 ▲同 金 △同 玉 ▲1六香 △2四玉 ▲1一香成 △1四飛 ▲1八香 △1七歩 ▲同 香 △1八歩 ▲同 玉 △1六歩 ▲2一成香 △1七歩成 ▲同 銀 △5九龍 ▲1六桂 △2三玉 ▲4九金寄 △9九龍 ▲2五金 △8八龍 ▲5八歩 △5六桂 ▲5七銀 △5五角 ▲1四金 △同 玉 ▲2八銀 △1七歩 ▲同 桂 △4八桂成 ▲同 銀 △7七龍 ▲5七桂 △1五歩 ▲1一飛 △1三香 ▲9一と △2三玉 ▲2六香 △2四歩 ▲同 桂 △1六桂 ▲1二飛成 △1四玉 まで164手で後手の勝ち 最強トーナメント準決勝棋譜 先手:* teramoes 後手:* masa-ni ▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲7八飛 △8五歩 ▲7七角 △6二銀 ▲4八玉 △5四歩 ▲6八銀 △4二玉 ▲3八玉 △3二玉 ▲2八玉 △5二金右 ▲5八金左 △5三銀 ▲3八銀 △3三角 ▲6七銀 △2二玉 ▲5六銀 △4四歩 ▲7五歩 △9四歩 ▲1六歩 △1二香 ▲1五歩 △1一玉 ▲5九角 △8四飛 ▲3六歩 △2二銀 ▲7六飛 △6四歩 ▲4六歩 △4三金 ▲3七桂 △4二角 ▲7七桂 △3一金 ▲4七銀引 △6二銀 ▲5六歩 △6三銀 ▲4八角 △8二飛 ▲5七角 △9五歩 ▲2六歩 △9三香 ▲2七銀 △6五歩 ▲同 歩 △9六歩 ▲同 歩 △8六歩 ▲同 歩 △7四歩 ▲8五歩 △7五歩 ▲8六飛 △7二飛 ▲8四歩 △7六歩 ▲8三歩成 △8六角 ▲7二と △8九飛 ▲7九歩 △7七角成 ▲8一と △6六歩 ▲4八金寄 △9九馬 ▲1四歩 △同 歩 ▲1三歩 △同 香 ▲4五歩 △6七歩成 ▲9三角成 △4五歩 ▲4四歩 △同 馬 ▲2五桂 △2四香 ▲1三桂成 △同 銀 ▲6一飛 △4一桂 ▲6三飛成 △7九飛成 ▲2五桂 △同 香 ▲同 歩 △4六歩 ▲3八銀左 △2六桂 ▲2四歩 △同 銀 ▲2六銀 △同 馬 ▲4三龍 △4九龍 ▲1四香 △1三歩 ▲1二歩 △同 玉 ▲1三香成 △同 銀 まで112手で後手の勝ち ツンデレ杯決敗戦棋譜 先手:**rtgf 後手:* 孤客 ▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲4八銀 △2二飛 ▲6八玉 △6二玉 ▲7八玉 △7二玉 ▲7六歩 △4四歩 ▲5六歩 △3二銀 ▲5五歩 △4三銀 ▲3六歩 △6二銀 ▲7七角 △9四歩 ▲8八玉 △3二金 ▲7八銀 △2四歩 ▲同 歩 △同 角 ▲2五歩 △4二角 ▲3七桂 △5四歩 ▲4六歩 △3五歩 ▲1六歩 △3六歩 ▲4五桂 △同 歩 ▲5四歩 △同 銀 ▲2二角成 △同 金 ▲5八金右 △3三角 ▲6六歩 △同 角 ▲7七銀 △5五角 ▲5六歩 △3三角 ▲4五歩 △6五銀 ▲4四歩 △同 角 ▲4五飛 △7七角成 ▲同 桂 △7六銀 ▲6八金寄 △5四角 ▲4二飛成 △8七銀成 ▲8九玉 △8八銀 まで62手で後手の勝ち ツンデレ杯準決敗戦棋譜
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第180回vip複合トーナメント結果 予選 予選組み合わせ(01vs02、03vs04、、、と1分30秒で対局) 勝者○→最強トナメ 敗者●→ツンデレ杯 01 ボルギンス ● 02 Mikuru. ○ 03 ねるふ 04 hanepon 05 yuuiti35 ○ 06 3gen ● 07 明日香 ○ 08 kanaria ● 09 beginner □ 10 柊つかさ ■ 最強トーナメント 最強トーナメント(勝ち進み、15分60秒、★棋譜保存) ┏━ Mikuru. ┌┛ │└─ ┌┓★ │┃┏━ hanepon │┗┛ │ └─ ━┓★ ┃ ┏━ yuuiti35 ┃┌┛ ┃│└─ ┗┓★ ┃┏━ 明日香 ┗┛ └─ beginner ツンデレ杯 ツンデレ杯(負け進み、15分60秒、★棋譜保存) ┏━ ボルギンス ┏┛ ┃└─ ┌┛★ ││┏━ ねるふ │└┛ │ └─ ━┓★ ┃ ┏━ 3gen ┃┌┛ ┃│└─ ┗┓★ ┃┌─ kanaria ┗┓ ┗━ 柊つかさ 最強トーナメント決勝棋譜 先手:* 明日香 後手:* hanepon ▲7六歩 △8四歩 ▲7八飛 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6六歩 △4二玉 ▲6八銀 △6二銀 ▲4八玉 △3二玉 ▲3八玉 △3三角 ▲2八玉 △2二玉 ▲3八銀 △5四歩 ▲5六歩 △5三銀 ▲5七銀 △1二香 ▲5八金左 △1一玉 ▲4六歩 △2二銀 ▲3六歩 △5一金右 ▲4七金 △3一金 ▲1六歩 △1四歩 ▲4五歩 △4一金右 ▲4六銀 △2四角 ▲6五歩 △3三角 ▲4四歩 △同 銀 ▲6八飛 △5三銀 ▲5五歩 △同 歩 ▲同 銀 △8六歩 ▲同 歩 △5四歩 ▲4六銀 △7七角成 ▲同 桂 △4四角 ▲5五歩 △同 歩 ▲5八飛 △5四銀 ▲4五歩 △5三角 ▲5五銀 △同 銀 ▲同 飛 △8六角 ▲6六角 △4二金直 ▲5一飛成 △5三角 ▲3一龍 △3三銀打 ▲5一龍 △8九飛成 ▲5四歩 △8六角 ▲5三金 △3二金 ▲5二龍 △3一金 ▲4三金 △5一歩 ▲同 龍 △4四歩 ▲5三歩成 △6九龍 ▲5五角 △5八歩 ▲3二銀 △5九歩成 ▲3一銀成 △同 銀 ▲同 龍 △4九と ▲3三金 まで91手で先手の勝ち 最強トーナメント準決勝棋譜 先手:* yuuiti35 後手:* 明日香 ▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲7八銀 △6二銀 ▲1六歩 △1四歩 ▲6七銀 △4二玉 ▲5六歩 △5四歩 ▲9六歩 △9四歩 ▲7八飛 △8五歩 ▲7七角 △3二玉 ▲4八玉 △2四歩 ▲3八銀 △2三玉 ▲3九玉 △3二銀 ▲2八玉 △5三銀 ▲8八飛 △5二金右 ▲7八金 △7四歩 ▲8六歩 △同 歩 ▲同 飛 △8五歩 ▲8七飛 △6四歩 ▲9七桂 △9三桂 ▲9五歩 △8四飛 ▲9四歩 △同 飛 ▲8五桂 △同 桂 ▲同 飛 △9九飛成 ▲同 角 △同香成 ▲8一飛成 △6五歩 ▲6一飛 △5一金引 ▲同飛成 △同 金 ▲同 龍 △3六桂 ▲1八玉 △2八飛 ▲1七玉 △4四角 ▲2六桂 △同 角 ▲同 歩 △2五桂 まで64手で後手の勝ち 先手:* Mikuru. 後手:* hanepon ▲2六歩 △8四歩 ▲7六歩 △3四歩 ▲7八金 △3二金 ▲2二角成 △同 銀 ▲6八銀 △7二銀 ▲3八銀 △8五歩 ▲7七銀 △8三銀 ▲3六歩 △8四銀 ▲3七銀 △7四歩 ▲6九玉 △4二玉 ▲7九玉 △9五銀 ▲4六角 △7三角 ▲8八銀 △3三銀 ▲5六歩 △4六角 ▲同 銀 △5四角 ▲9六歩 △8四銀 ▲7七銀 △3六角 ▲5八金 △6四歩 ▲6六歩 △7五歩 ▲2五歩 △3一玉 ▲2六飛 △7二角 ▲3七桂 △4四歩 ▲1六歩 △1四歩 ▲6八金右 △9四歩 ▲5五銀 △8三角 ▲6四銀 △5二金 ▲7五歩 △6三歩 ▲7一角 △7二飛 ▲5三角成 △同 金 ▲同銀成 △7五飛 ▲2四歩 △同 歩 ▲2三歩 △6四角 ▲4三金 △3七角成 ▲3二金 △同 玉 ▲4三金 △2三玉 ▲3三金 △同 桂 ▲2九飛 △7六歩 ▲8八銀 △5六角 ▲4三成銀 △2二金 ▲4二銀 △4七角成 ▲4九飛 △4八金 ▲6九飛 △5八歩 ▲4九歩 △3八金 ▲9七銀 △5九歩成 ▲同 飛 △同 馬 ▲8八玉 △5六桂 ▲6七金直 △5八飛 ▲7九歩 △7七歩成 ▲同金寄 △5七馬 ▲3二歩 △7六歩 ▲3一歩成 △7七歩成 ▲9八玉 △8七と ▲同 玉 △8六歩 ▲同 銀 △同 馬 ▲同 玉 △8五飛 ▲9七玉 △8六銀 ▲9八玉 △8七金 まで114手で後手の勝ち ツンデレ杯決敗戦棋譜 ツンデレ杯準決敗戦棋譜 先手:* ねるふ 後手:* ボルギンス ▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △7四歩 ▲6六歩 △7三桂 ▲6七銀 △6二銀 ▲7八飛 △6四歩 ▲7五歩 △同 歩 ▲同 飛 △7二金 ▲4八玉 △6三銀 ▲7四歩 △8五桂 ▲7三歩成 △同 金 ▲同飛成 △7二飛 ▲6三龍 △7七桂成 ▲7二龍 △8八成桂 ▲6一金 △4二玉 ▲同 龍 まで29手で先手の勝ち
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「ただの過労ね……念のためお薬を出しておくわ」 そう言って、女医は戸棚の扉を開けて 中に入っている幾つもの袋の中の一つに指を入れた。 そのまま、しばらく袋の中をまさぐっていたが、彼女が指を袋の中から戻すとその掌の中には十数個の薬の包みが。 そして、掌に握られている薬を小さな布袋の中に全て入れて、机の側の椅子に腰かけている青年に手渡した。 「ありがとうございます、永琳さん」 青年は肌蹴ていた服装を整えながら、女医に一言礼を述べる。 心なしか、青年の顔はあまり血色がなく、あまり体調が芳しくないことが窺える。 「ふふ、気にしなくてもいいわよ」 永琳と呼ばれた女医は、青年に笑顔を作りながらそう言った。 そして、机の前の椅子に腰掛け、サラサラと手慣れた手つきでカルテに患者の症状を書き込んでゆく。 「それよりも、あんまり無理して働き過ぎちゃダメよ。貴方の未来のお嫁さんの為にもね…」 なおも診察結果をカルテに書き込みつつ、青年をからかうように永琳は続けた。 「はは、俺に恋人はいませんよ……ただいま募集中ってやつです」 永琳のからかいを受け流し青年は軽口を叩いた。 でも体には気をつけますよ、と更に付け加える。 「ふぅん……募集中なの」 ふと、永琳のペンが止まる。 そして、何かを噛み締めるように、ゆっくりと、やんわりとそう言った。 僅かな笑みを浮かべたまま、青年を見据える。 「私でもいいのかしら?」 「へ?」 青年の思考が凍りつく。 目の前の女性が、あまりに不可解なことを言ったために理解が追い付かなかったからだ。 「私でもいい?」というのはどういうことなのだろうか、と眼を見開きながら青年は凍りついた思考を緩やかに融かしてゆく。 そして、永琳の発言の前に どのような会話があったかということについて記憶を巡らせる。 その時点になって、ようやく青年は自身が抱いていた疑問が緩やかに氷解してゆくのを自覚した。 しかし……青年はその考えを自分で否定する。 有り得ない――――と、青年は目の前の女性を見つめながらそう考えた。 端正な顔立ちに、大人の色気が凝縮されたかのようなスタイルの良い身体。 サラサラと手触りが良さそうな銀色の輝く美しい髪。 彼女が僅かにでも色目を使えば――――仮に使わなかったとしても――――彼女に言い寄ってくる男など、それこそ星の数ほどもいることは間違いない。 ――――こんなに奇麗な女の人が、自分のような特に取り柄のない男にそんなことを本気で言うはずがない 青年はそう考えていた。 「はは……またまた御冗談を」 顔にややひきつった笑みを浮かべながら、青年は永琳に調子を合せようとする。 「冗談じゃあ、ないのだけれど」 永琳が立ち上がり、足音も無くそっと青年に近づいてゆく。 しかし、青年は動けなかった。 椅子に座ったまま、身じろぎ一つできない。 「あなたが望むなら、私は構わないのに」 ドクン………! いつの間にか、二人の距離はとてもとても短くなってしまっていた。 青年の顔が、上から永琳の透き通るような瞳に覗きこまれる。 永琳のやや紅潮した顔がとてもとても美しくて、永遠にこうしていたいと青年は感じていた。 「か、構わないって……」 ドクン……ドクン…… 青年の心臓の鼓動が徐々に早くなってゆく。 そんな青年の鼓動をさらに速めようと、永琳はさらに身体を青年に寄せる。 そして、座ったままの青年の両肩に手を置いた。 「私は貴方のものになっても構わない……そういうことよ」 ドクン…ドクン…ドクン… 永琳が、青年の首筋に、つぅ……と指を滑らせた。 「うぁ!」 指で首筋を撫でられた驚きと、くすぐったさに青年の身体がビクッと痙攣する。 しかし、それっきり生唾を飲み込むことすらもできずに 青年は動けなくなってしまった。 「……じ、冗談……ですよね? 永琳さんみたいな奇麗な人が、俺のことを……なんて」 「あら、あなたは嘘だと思っているの?」 ドクン ドクン ドクン ドクン… 相変わらず頬笑みは絶やさず、意外そうに永琳は青年に尋ねる。 対し、青年は場の雰囲気に完全に飲まれており、言葉を発することができない。 しかし一方で、青年は永琳の笑みが僅かずつだが危険な色を孕んできていることに気づいていた。 一言で言うならば、妖しい笑み。 それは、まるで悪戯を仕掛けた子供の――――否、違う。そんな生易しいものでは無い。 あえて形容するのならば……それは、蜘蛛の巣に捕えられた獲物を喰らおうする女郎蜘蛛のような――――美しいけれど危険な匂いがする妖しい笑み。 青年は 妙な胸騒ぎを感じ、彼の心臓が――――先程、永琳に迫られた時とは別の理由で――――早鐘を打ち始める。 その本能的な恐怖に耐えられずに、青年が永琳の腕を払い 立ちあがって帰ろうとしたその時―――― ちくっ 青年の首筋に鋭い痛みが走った。 「!?」 続いて、首筋から何かを体内に流し込まれるような感覚が。 虫にでも刺されたのかと、青年は手を首筋に回そうとしたが―――― 「ふふふふふ……」 「う…ぐ…!?」 永琳が妖しい笑みを浮かべるとともに、青年の身体から激しい速度で力が抜けてゆく。 慌てて力を込め踏ん張ろうとしても、破れた風船に息を吹き込むかのように、全身にまるで力がこもらない。 椅子から転げ落ちそうになる青年の肩を、永琳は両手で掴み―――― 「つ・か・ま・え・た」 と、酷く嬉しそうな笑顔を浮かべてそう言った。 さすがに、青年も今自身に生じている異変が 目の前の女性によるものだということを理解する。 「ちょ、永琳さん! 身体が動かないんですけど! てか、あなた一体何を――――」 「だって、貴方ったら逃げるんですもの」 永琳はそう言って、視線は青年に向けたまま 何かを机の上にひょいと放り投げた。 カシャン! 青年の目の端に、中身のない注射器がカルテの上に転がって止まるのが見えた。 「うふふふふふふふ……」 びくぅっ! 再び、永琳が堪えられないかのように笑みを漏らす。 永琳の笑いに驚き、青年は視線を永琳に戻した。 そして、彼女の目を見たとたん、青年の目に恐怖と絶望が宿る。 彼は、一瞬で理解したのだ。 永琳の眼が――――獲物を前にした肉食獣の目そのものだということを。 「ひぃぃ……っ」 青年の本能が――――それこそ、かつてないほどの爆音で――――警鐘を鳴らし始める。 既に指先まで力が全く入らなくなってしまっているが、何としても危機から逃れようと必死に体をよじらせる。 けれども、青年のその動きは全く意味をなさない。 むしろ、捕食者の嗜虐心を更にそそらせるスパイスにしかならなかった。 「ほーら、じたばた動かないの」 「だ、誰か、助けてくれぇぇっ!!」 助かりたい一心で、青年は必死で助けを呼ぶ。 そんな青年に優しげな頬笑みを浮かべながら――――その細い体のどこに力があるのか――――永琳は彼の身体を軽々と抱えあげた。 「ふふ、叫んでも無駄よ」 月の頭脳とまで呼ばれた天才少女に抜かりは一切ない。 青年が蜘蛛の巣―――もとい、この診察室にかかることは既に想定し、既に人払いは済ませてあったのだ。 何よりも―――青年は知らなかったが――――防音加工を施しているこの診察室の中では、如何に声を張り上げようとも外に聞こえることはない。 「よいしょ……っと」 永琳が 青年を簡素な診療台の上に寝かせる。 対する青年のほうも、いい加減助けを呼んでも無駄だと気づいたのだろう。 青年は目の前に迫る肉食獣に完全に委縮してしまっていた。 「お、俺をどうするつもりなんですか!?」 青年の脳裏に、様々な悪夢の光景が流れては消えてゆく。 投薬の実験台にされ、廃人となるか。 生きたまま解剖され、死人となるか。 それとも、妖怪兎たちの生き餌となり、跡形もなく喰われゆくか。 「安心なさい、あなたに打ったのはただの筋弛緩剤よ」 三時間もすれば元に戻るわ、と永琳は続けた。 とはいえ、そんなことを言われても安心できるものでは無い。 その三時間の間に何をされるのかわからない以上、青年の恐怖のメーターが振り切るのも時間の問題と言えた。 「そんなに…嫌なのかしら?」 あまりにも青年の怯えようがひどかったのか、ふと 永琳は彼にそう呟いた。 永琳の悲しそうな表情を目の当たりにした青年の恐怖が僅かに和らぐ。 「……私は 貴方のことを こんなにも想っているのに」 永琳は、右の掌で青年の頬を優しく撫であげる。 そして、頬を紅く染めながら万感の意を込めて永琳は青年にそう囁いた。 恐怖で凍えかかった青年の心が緩やかに暖かくなってゆく そして、事此処に至って、ようやく青年は永琳が本気だということを理解した。 遅ればせながら、青年の鼓動が加速しはじめ、恐怖で青白くなっていた頬が紅く染まる。 それこそ、心臓の音が激しく耳に響いてくるほどに。 それこそ、自分自身で紅く染まった顔が熱いと思えるほどに。 「嫌だと言っても、あなたは私のものにするわ」 永琳はなおも青年に囁きながら、診察台の脇に腰掛ける。 そして、彼女はその艶っぽい唇を耳元に近づけながら…… 「最初は、その唇から」 耳元で妖しく囁かれ、青年の身体が硬直する。 永琳が青年の耳元から唇を離すと、彼は茹で蛸のように赤くなってしまっていた。 「ふふふ、そんなに頬を紅く染めて――――」 そんな青年の頭を優しく撫であげながら、永琳は自身の唇を舐めて湿らせる。 その仕草があまりに色っぽくて、青年の心はますます永琳のものになってゆく。 「――――可愛いらしい人」 永琳の唇が、青年の唇に次第に次第に近づいてゆく。 あたかも、青年を焦らすかのように、その速さは本当に遅かった。 青年の左手の指は、いつの間にか永琳の指に絡め取られており、彼の右頬に永琳の手が添えられる。 永琳の吐息が頬にかかり、そのくすぐったさに身をよじる。 これから来るだろう、甘いひとときに戦慄しながらも、どこか心の奥底では期待しながら青年は静かに目を閉じた。 そして―――― ドタドタドタドタ!!! 「ししょぉぉぉぉ――――っ!!」 スパーン! 激しい足音が聞こえてきたと思ったら、これまた派手な音をたてて障子が勢い良く開かれた。 障子の向こうの廊下には、青年が良く見知った顔が―――― 「鈴仙!!」 青年の助けが今頃通じたのか、ようやく助けが訪れたのだ。 助かった、と青年は安心するものの、その反面 甘い時間が寸前で終ってしまったことにやや寂しさも感じていた。 青年は酷く複雑な心境で救世主を見つめてる。 「……あらあら、人払いしていたはずだったのにねぇ」 ゆっくりと、診療台から降り立った永琳はボソリと呟いた。 その声には怒気が込められており、猛烈かつ獰猛な殺気が周囲を包んでゆく。 「……っ」 青年は永琳のその殺気に気圧されてしまったが、鈴仙がそれに気圧されることはなかった。 その小さな拳を握りしめ永琳をひたすら睨みつける。 いつものいじられキャラの鈴仙は、今の彼女のどこにも見受けられない。 鈴仙にその姿に、青年はこの上ない頼もしさを感じていた。 けれども、動けない自分を助けてくれるはずだった鈴仙の次の言葉は――――― 「ずるいです!」 「は?」 ――――青年の想像の遥か斜め上を超えて、そのまま飛び去っていった。 「わ、私も……○○と…その、キス…したいのに!! 抜け駆けなんてずるいです!!」 永琳の近くまで歩み寄り、自分の師匠を涙目で見上げながら、鈴仙は叫ぶ。 自分の身に纏っているスカートを いじらしく両手で掴みながら、鈴仙は叫ぶ。 その頬は 彼女の瞳と全く色に染まりきっていた。 あまりの事態に青年は言葉を出すことさえもできない。 「待ちなさい」 凛とした声が響くとともに、二人の人物が扉から入ってくる。 「姫様にてゐ!」 今度こそ助かったと青年は確信した。 だが―――― 「主に抜け駆けして恋泥棒とはどういうことなのかしら、永琳?」 「あらあら姫様、恋心と忠誠心は別ですよ」 輝夜と永琳がやんわりとした口調で会話する。 二人とも笑顔だが、青年には言葉での殺し合いが繰り広げられているように見えていた。 「鈴仙もずるいじゃない! 危うく出し抜かれるところだったわ!!」 「ち、違うわよてゐ! 私はただ、師匠を止めに来ただけ!」 そして、てゐは鈴仙に喰ってかかる。 そんなてゐを、鈴仙は声をやや荒げながらなだめていた。 その光景を、青年は茫然と見つめるだけしかできなかった。 「………永遠亭に何が起こっているんだ?」 動かない体のことも忘れ、青年はひどく冷静にそう呟く。 混乱のあまりに、これは夢か思ったほどだった。 だが、青年は知らない。 まだ終わりではないことを。 むしろ、始まってすらいなかったのだ。 「抜け駆けはさせないぞ!」 「○○は渡さない……特にお前にはな! 輝夜ッ!!」 「慧音に妹紅!?」 いつも世話になっている上白沢慧音と、藤原妹紅が診療所の窓から飛び込んできて―――― 「そうはさせないわ!」 「○○は私の獲物よ!」 「夜雀に蛍まで……」 顔なじみの友人でもある、リグル・ナイトバグとミスティア・ローレライが反対側の窓から姿を現した。 おかしいのは永遠亭の中だけでは無い。 永遠亭の近辺に住む者達までおかしくなっている。 おかしくなっているという表現はいささか失礼かな、と青年は考えたものの それ以外に理解ができない現象が生じているのだ。 全員面識はあるものの 今までそんな好いた好かないの話は一切なかったはず、と青年は限りなく困惑する。 ――――何故、いきなりこんなことに? 青年の混乱などそっちのけで、乙女たちはたがいに恋の火花を散らし合う。 「だったら、勝負しましょう?」 その時、このままでは埒があかないと判断したのか永琳が提案する。 「勝負……?」 「いいわね……誰が、○○の心を射止めるかの勝負!」 「いいだろう! その勝負乗った!!」 期せずして、永遠亭の周辺に住まう人物が一同に会し、戦い合うことになる。 「……永遠亭周辺に一体何が起こっているんだ?」 青年は最後まで冷静だった。 しかし、その冷静さも―――― 「そう言うことならば、黙ってはいられないな……」 ――――更にもう一人入ってきた乱入者の前で完膚なきなまでに崩れ去った。 「お、お前は……なんでここに!?」 ・ ・ ・ 時間的に僅かに遡り―――― 「フフフ……ようやく互いに牽制し合うのをやめたみたいですね。待ってましたよ、この時を」 大きな鏡の前に立ちながら、射命丸文はそう呟いた。 彼女の前にある大鏡には、永琳が青年に迫っている姿が映っている。 その大鏡の周囲には7つの小さな鏡があり、その鏡には永琳と青年の下に急がんとする7名の少女たちがそれぞれ映し出されている。 千里眼の能力を付加した鏡……それが、その鏡の正体だった。 「ま、そう仕向けたのは私なんですけどね」 恋に関しては初心者同然の月の頭脳を唆して、青年を襲うように仕向けたのも。 それを他の者たちに伝えたのも……全て、この天狗の少女の仕業だった。 「えー、コホン!」 文は背後に振りかえる。 そして、彼女の背後にいる者たちに向かい―――― 「最甘なひとときが見たいですか――――ッ」 『オ――――!!!』 ――――文の声に、大勢の声が呼応する。 叫び声の主は、紅魔館・西行寺家・マヨヒガの住人…そして、その他の妖怪や、紅白の巫女、黒白の魔女といった面々。 彼女らは皆、この甘いやりとりを生温かい視線で見つめるために集まっていた。 極上に甘ったるい愛の争奪戦を肴にした壮大な宴会を行うために。 「私もです、私もですよ! 皆さん!!」 (いい記事になりそうですしね) 期せずして、千里眼の大鏡の中では 鈴仙が乱入してきていた。 そして、文はここぞとばかりに声を張り上げて―――― 「全選手入場!!!」 一夜限りの、甘い甘い恋のお祭りの火ぶたが切られた。 「女殺しは動けない!! 更なる鈍感を重ね ただの青年は呆けたままだ!!! 普通の人間!! ○○だァ――!!! 超天才薬師の超不器用な愛情表現だ!! 生で拝んでドキドキしやがれッ 恋に狂う月の頭脳!!八意 永琳!!! ほのかな想いなら絶対に敗けん!! いじられ役の純粋な恋心見せたる 健気な純情兎 鈴仙・優曇華院・イナバだ!!! 難題をすっ飛ばして永遠の伴侶とはよく言ったもの!! 永遠の想いが今、○○の前でバクハツする!! 恋焦がれるお姫様 蓬莱山 輝夜だ―――!!! ○○は私のもの 邪魔するヤツは思いきり騙し ○○を幸運にするだけ!! 因幡の恋兎 因幡 てゐ!!! ○○の前でなら私はいつでも純情乙女だ!! 燃える純愛 藤原 妹紅 顔を紅く染めて登場だ!!! 譲れない理由があるッ 想いの歴史が長いのは当たりまえ!! 真の姿はナイショだ!!! 二人の歴史の創造者! 上白沢 慧音がきてくれた――!!! ○○はボーイッシュな魅力で迫ってナンボのモン!!! 愛の蛍少女!! 森の中からリグル・ナイトバグの登場だ!!! ○○を魅了するなら私の歌声がものを言う!! あなただけのラブソング 夜雀の愛 ミスティア・ローレライ!!! 若き店主が入ってきたッ なんでくるんだッ 呼んでないぞ!? ○○をいつでも男幕結界で待っているッ 森近霖之助の登場だ――――ッ 以上、○○を除く9名によって○○争奪戦を行いますッ!! 永夜抄ッ! 最甘トーナメントッッ! 開幕……ッ!」 To Be Continued……『初めてのチュウ 永夜抄最甘トーナメント編』 永遠亭の一室――――永琳の診察室の外では、ひどく派手な破壊音が響いていた。 破壊音だけでは無く、何者かの叫び声、悲鳴、怒号……それはまさに戦場で奏でられるの生々しい大合葬と言えよう。 「外はこの世の地獄かよ……」 時折、稲光のように診察室の障子に光が映り、そして雷のように轟音が響き渡る。 大音量の戦場の調べに、青年はただただ身を竦ませて怯えることしかできない。 何よりも、ごく身近な場所でこれほどの激戦が繰り広げられているのに、筋弛緩剤で身動き一つできないというのは青年にとって想像以上に苦痛だった。 逃げることができない恐怖――――必死で目をそむけようとも現実は変わらないという絶望。 いつしか、青年は現実逃避をするかのように かつての平和な生活に想いを馳せ、必死でそれが現実のものになるようにと祈る。 「なんでこんなことに……」 同時に8人の乙女と1人の男から、想いを告げられた――――現在に比べれば 途方もなく平和な――――数時間前がとてもとても懐かしかった。 ・ ・ ・ ――――2時間程前 全ての始まりは、永琳の一言からだった。 「……普通の人間である○○を守るには、やっぱりそれなりの力が必要よね?」 一口に○○争奪戦とは言ったものの、どういう勝負方法にするかでいきなり彼女らが揉めたのは想像に難くない。 それも当然であり、皆 自分の得意分野で勝負をしたいに決まっている。 彼女たちの想いは、全て紛れもなく本物だった。 だから、彼女たちは何があっても負けるわけにはいかなかった。 永琳は、そんな彼女たちに この世界に共通している揉め事の解決方法――――即ち、弾幕ごっこを 勝負の方法として提案したのだった。 「ぐ……」 夜雀の少女が唸り、蟲を統べる少女の顔が青ざめる。 それも、無理からぬこと―――― 妹紅や輝夜たちに比べ、彼女たちはどうしても戦闘面では数段劣るからだ。 だが、その時―――― 「いいですよ」 強い意志を孕んだ凛とした声が響き、永琳の前に一人の少女が歩み出た。 「ウドンゲ……」 その少女は――――永琳の弟子、鈴仙・優曇華院・イナバ。 「いいのかしら、一切の手加減はしないわよ?」 たとえ姫様でも、貴方であろうともね――――幾分真面目な表情を浮かべながら、永琳はそう言った。 その真面目な表情に、輝夜と鈴仙は永琳が本当の本気を出そうとしていることに気がついた。 普通ならば、戦闘能力において優曇華は手加減している永琳にすら永琳に遠く及ばない。 さらに、本気を出した永琳には輝夜ですら遠く及ばない。 「――――私だって、○○を守りたい想いは誰にも負けません」 どう考えても、優曇華には不利な闘い。 けれども、鈴仙は永琳をなおも見据えたまま一歩も引くことはなかった。 「だから――――」 鈴仙は負けてもいいとは考えていない。 むしろ、勝つつもりだった。 否、勝たなければならなかった。 あなた 「―――― 私は、今日こそ…… 師 匠 を超える!!」 何よりも強い意志を秘めたその紅い瞳が、永琳を射抜くかのように見据える。 彼女の姿を、 「……私も、構わないわ」 ミスティアの目に―――― 「私もだよ」 「私も」 ――――そして、リグルとてゐの目に強い光が宿る。 彼女たちも気づいたのだ。 圧倒的な不利……そんな程度のものに尻込みするほど、自分たちの愛は安いものだったのか――――と。 「そうね、誰が○○を守るに相応しいか……決着をつけましょうか、妹紅?」 「ふん……お前だけは真っ先に脱落させてやるよ」 その傍らでは、輝夜が嘲るような薄笑いを浮かべながら妹紅を見やり、妹紅は険悪な表情をあらわにしながら返す。 「お前とまともに戦うのは、初めてだな……妹紅」 「ふふ…でも手加減は無しだよ? 互いに後悔しないためにね――――」 「ああ、もちろんだ」 慧音と妹紅の二人は、互いに手加減抜きで戦うことを誓いあった。 どちらが勝っても、後悔しないために。 そして、最後の一人―――― 「いいだろう」 香霖堂の店主である霖之助が同意する。 かくして、永夜事変の関係者が―――― 一名無関係者はいるが―――― 一堂に会し 弾幕バトルロワイヤルを繰り広げるというみょんなこととなってしまったのだ。 「俺の意思はどこに……」 ヒートアップする彼女たちに、青年の呟きはもう届かなかった。 だがここで、霖之助以外の全員の前に思ってもみない事態が生じる。 「ふふ、負けられないんでね――――」 すっ―――― 霖之助が、右手をズボンに、左手を上着にかける。。 そして、全身に力を込め勢いよくその服を剥ぎ取った。 「――――僕も久しぶりに本気を出すとしよう!」 バサァッ――――!! 水色を基調とした霖之助の服が――――あたかも、マントを翻すかのように――――彼が腕を勢いよく振るとともに一瞬で剥ぎ取られる。 そして、その服の下から現われたのは、鍛え上げられた鋼のような筋肉と しみ一つない純白な褌一丁だけだった。 少女たち全員が呆気に取られた。 『――――――』 そして、一瞬の後―――― 『き――――きゃあああああああああっ!!!』 怯えを含んだ黄色い悲鳴――――もとい、金切り声を リグル、ミスティア、てゐ、優曇華の4人が発する。 とりわけ、いつも歌ってばかりで発声量に自信があるミスティアの声が特に激しく響き渡った。 永琳、輝夜、妹紅、慧音の4人は、やや頬を赤く染めながらも 不快なものを見たともいわんばかりに目を背ける。 「ふっふふふ……こんなこともあろうかと――――鍛えに鍛えたこの肉体!!」 ムキィッ!! 全く空気を読まずに、霖之助は自身の腕の、胸の筋肉を盛り上げる。 そして、のしのしと力強く歩みを進めながら、未だ呆けたままの少女たちを残したまま診察室から出てゆく。 その場のすべての少女の目に――――この男だけは絶対に勝たせるものか――――と、殺意の光が宿った。 ・ ・ ・ その後、何があったかはあえて語るまでもない。 彼女たちは二時間半にも渡って 文字通り君臣の情も、家族愛も無いようなバトルロイヤルを繰り広げていた。 現実逃避のさなか――――半ば彼女たちに呆れながらも――――青年は一人の少女を思い浮かべていた。 「――――が勝ってくれればなぁ……」 そして、自身がほのかに想いを馳せるその人物の勝利を願う。 「あれ?」 ふと、青年が素っ頓狂な声を上げて目を診療所の障子に向ける。 いつの間にか、叫び声も破壊音も聞こえなくなってしまったからだ。 虫の音すら聞こえぬまま、不気味な静寂が辺りを包んでいる。 終わったのか、と青年が考えたその時。 すっ―――― 静寂の最中、小さな音とともに診療所の障子が開く。 「……誰ですか?」 永琳に打たれた筋弛緩剤のために、未だ診療台から動けずにいる青年は、恐る恐る見えない勝利者を尋ねた。 「ふふふ……」 バトルロイヤルの勝者は笑みを漏らしながら、青年の前に姿を現した。 その者の名は―――― 青年は知る由もなかったが、この戦いは純粋に戦闘能力だけならば永琳が抜きんでていた。 普段、輝夜を上回らぬようにセーブしている力を全力で出せば、その力は妹紅すらも凌ぐ。 永琳が隠している力は、それほどまでに大きなものだった。 永夜事変の関係者全員で10回勝負を行えば、10回とも永琳が他の全員を抑え勝利しただろう。 ……ただ一つのイレギュラーさえなければ。 「さあ、君もこの褌をつけるんだ」 青年争奪戦バトルロイヤルの勝者が青年に迫る―――― その人物は、ほぼ一糸まとわぬ全裸に近い姿―――純白の褌一丁―――で、その手の中には紅い褌を携えていた。 「そして、僕の男幕結界の一部になってくれ」 他の8人は、全て褌を纏った男に倒されてしまったのか、診療所の襖からは、霖之助しか現れなかった。 ――――信じられない 青年は本気を出した永琳が、輝夜や妹紅よりも強いということは知らなかったが、それを差し引いても 全員が全員、そこらの妖怪などでは相手にならぬほど強いというのは幾度となく目にしてきた。 けれども、霖之助の強さはほとんど見たことがない。 いつも魔理沙に良いように振り回されている、ただの道具屋の店主がこれほどの力を持っていたことを青年は知らなかった。 霖之助の褌姿は本日初めて見たけれど、それでもあの面子の中で生き延びることは無いと考えていただけに その驚愕は途方のないものであり―――― 「ぁ…ぁぁ……」 青年の表情に次第に次第に恐怖の色が滲み出てくる。 青年に男色の趣味は無く、まだ筋弛緩剤が効いているため体が思うように動かせない。 逃げようにも逃げられないのだ。 できることといえば、顔を恐怖に歪め 信じられない結末に身を震わせることだけだった。 「ああ、そうか…動けないんだったね」 霖之助が青年に優しく語りかける。 まともな恰好をしてさえいれば、女性ならばそれだけで虜にされるであろう優しい声。 しかし、青年は女性でもないため、怖気しか走らない。 ましてや褌一丁のみを身に纏った男に 迫られ このようなことを言われれば、怖気を通り越して嫌悪しか感じない。 「じゃあ、僕が着せてあげよう――――この褌を」 びくうっ!! 青年の表情が絶望と恐怖に染まる。 それは、二時間前に永琳に薬を打たれたとき以上の恐怖だった。 このままでは……間もなく 青年はズボンを下ろされて、下着を奪われて…… 抵抗も、逃げることすらもできずに―――― ――――嫌だ その時点までは、青年は確かに霖之助に対してそう考えていた。 けれども―――― 男の手が青年の頬に添えられる。 やや、武骨ながらも温かい掌、そして何よりも鍛え上げられた鋼の肉体。 霖之助の鍛え上げられた肉体に、男として憧憬を感じるような奇妙な感覚を味わう。 「ふふ、リラックスしてきているね……」 霖之助の言う通り、青年の身体から力が抜け始めてきていた。 かすかに漂う霖之助の匂いが青年の中の正常な意識を惑わしてゆく。 霖之助の肉体に対する憧れが、惑う青年の意識をさらに惑乱させてゆく。 「嬉しいよ、○○」 眼鏡越しに、霖之助は頬笑みを浮かべる。 その眼はあくまで、いつも落ち着いた霖之助のままだった。 カチャ……! 霖之助の手が、青年のズボンのベルトのバックルに手をかけ、軽い金属音とともにそれを外す。 そして、動けぬ青年の腰に手を回し、彼の身体を僅かに持ち上げた。 シュルルッ…… そのまま、霖之助は青年のベルトを抜き取る。 その、ひどく手慣れた手つきに青年は―――― 「り、霖之助……手慣れてるな」 ――――頬を赤く染めながら、ボソリと呟いた。 彼の頬にさす赤みは羞恥からか、はたまた―――― 「いいや、初めてさ……今だって、ドキドキしすぎて狂ってしまいそうだよ」 霖之助の言葉はあくまで淡々としている。 けれども、青年はその声が僅かに震えていることに気づいた。 やや震える手で、霖之助は青年のズボンに手をかける。 「いいかな?」 霖之助が、青年の目を見つめ優しく尋ねる。 ――――この男の手で、褌を纏うのもいいかも知れない そう考え、青年は新たな世界の幕開けに身を震わせた―――― 「 ん な わ け ね ー だ ろ !!」 「うわっ」 青年が突然我に返り、あらん限りの声を張り上げて叫ぶ。 そして、霖之助は青年の豹変に驚きの叫び声をあげ、後ずさる。 これが霖之助の男幕結界のなせる技か、もう少しで青年は異常な世界に籠絡されてしまうところであった。 「だ、誰か助けてぇぇぇ!!」 そして、青年は必死で叫び 助けを請う。 妖怪イナバでも、毛玉でも、魔理沙でも誰でもよかった。 けれども、もし叶うのならば―――― 「どうしたんだい、いきなり?」 「助けて、――――!!」 ―――― 想いを寄せるあの少女に助けに来てほしかった。 あの9人の中にいた青年の想い人に、彼は必死で助けを乞う。 青年が、心の底からこのバトルロイヤルに勝ち抜いてほしいと願った少女に。 とたん、声も無く霖之助が青年に覆いかぶさってきた。 青年の背を一瞬で冷たいものが包む。 (――――、ごめん……) 貞操が無理矢理奪われることへの諦めの入り混じった眼で、青年は想いを寄せる少女に詫びた。 「間にあった――――」 診察室の入り口から、柔らかな少女の声が聞こえた。 青年の目の前には、相変わらず霖之助の胸板がある。 診療所の入口は霖之助の身体が邪魔をして見えない。 「――――!?」 そして、声も無く 霖之助が診察台から崩れ落ちた。 その背後から、一人の人影が―――― 「あ……」 その人影を、青年は信じられない物を見るかのように見つめていた。 何故ならば、その少女は青年が勝ってほしいと願った少女だったから。 青年が、自身を彼女のものにしてほしいと本気で願った女性だったから。 その者は―――― ①永琳 ②鈴仙 ③輝夜 ④てゐ ⑤妹紅 ⑥慧音 ⑦ミスティア ⑧リグル 『初めての褌 永夜抄最甘トーナメント 勝者 こーりん編』永遠に未完 ① 永琳 薄暗い部屋の一室に短い黒髪の少女がいた。 彼女の側には、映画のスクリーンのような巨大な鏡がある。 しかし、どういうわけだろうか。 その鏡には、周囲の光景は全く映っていない。 かわりに映し出されているのは、とある診察室のような部屋だった。 鏡に映る部屋の中には、診察台に寝かされている一人の青年。 そして、床に崩れ落ちる褌姿の男の姿がある。 「やはり、勝ち残ったのはあなたでしたか……」 黒髪の少女――――射命丸 文が、鏡を眺めながら呟く。 鏡に映る診察室……その入口に、赤と青の衣装に身を纏った少女が佇んでいる。 「楽しませてもらいますよ……永遠亭の天才薬師」 文は彼女の背後を振り返る。 彼女の背後には多くの人影が座りこみ、数多の目が鏡に注がれていた。 その数多くの瞳は一つの例外なく、全てが期待の色に染まっている。 まるで、映画の上演を待っているかのように―――― 静かに開幕を待つ観客を、文は満足げに見まわし、息を大きく吸う。 そして―――― 「幻想郷最愛カップルを目指して何が悪い!!! 」 始めよう 一夜限りの甘い甘い恋の略奪戦争 その最終幕を―――― 「女として生まれ男として生まれたからには、誰だって一度は最強の絆を志すッ! 最強の愛など一瞬たりとも夢見たことがないッッ! そんなカップルは一人としてこの世界に存在しないッッ!! それが心理だ!!! けれど、ある物はふられてすぐにッ――――ある者は恋敵にッ! ある者は運命の悪戯にッ! ある者は種族の差に泣いて!! それぞれが最強の絆をあきらめそれぞれの道を歩んだ…… 人間 妖怪 妖精 毛玉 褌男 ―――― しかしッッッ! 今夜あきらめなかった者がいるッッ!! 偉大なバカップル2人組!!! この大会で誰よりもッ! 誰よりもッ!! のぞ 最高に結ばれあうことを飢望まれた2名!! フ ァ イ ナ ル 永 琳 と 普 通 の 人 間!!!」 ・ ・ ・ 「えー…りん……」 診察台の上で、呆けたように青年は彼女の名を呟いた。 「ふぅ……」 栓がされた試験管を携えながら、永琳は診察室の入口に佇んでいた。 その試験管の中にはドドメ色の液体が詰まっている。 「間にあって、よかった…」 霖之助の背にはドドメ色の液体がべっとりと付着しており、そこからシュウシュウと嫌な匂いのする煙が噴出していた。 ツンとした悪臭が鼻をつき、青年は思わず顔をしかめる。 その液体が、人体にどのような効果をもたらすかは 青年にはわからない。 けれども、相当ヤバいものであることは 容易に想像がついた。 「大丈夫かしら、○○?」 「――――」 あまりに安心したために青年は完全に放心してしまっていたが、永琳をまじまじと見た瞬間 彼女の姿に絶句した。 その赤と青の色彩が入り混じった服は所々が破れ、奇麗な腕の到る所には青痣や切り傷が付いている。 服で隠された所はもっとひどいことになっているのだろう。 彼女自身も肉体的にかなり弱っているようであり、その姿は勝者と呼ぶにはあまりに無残なものだった。 「俺は平気です……でも、永琳さん…大丈夫なんですか?」 「……大したことは…ないわ」 ――――嘘だ 永琳の膝は僅かに震えており、相当に衰弱しているのは明らかだった。 壁にもたれかかって少しでも体力の回復に努めようとしているのが、その証拠。 「ここもあまり安全では無いわね……」 永琳はぼやきながら、青年に近寄る。 けれども、床に横たわる霖之助から鋭い視線を一瞬も外さない。 一瞬たりとも霖之助に油断はしていなかった。 永琳は、ポケットの中からボタンのついたリモコンのような機器を取り出す。 そして、無造作に無く そのボタンを押した。 「○○、私の部屋に行くわよ」 「え? うわっ!」 青年が、永琳の細い腕に再び抱えあげられた。 ガコン! 青年の目の端に、床の一部がスライドしてゆくのが見える。 そして、その床の下には暗く底が見えない穴があった。 永琳は、○○を抱えたまま、その穴の中に―――― 「ちょ……待――――うわああああああっ!!」 青年の身体は、その叫び声と永琳とともに奈落に落ちていった。 ・ ・ ・ どれほど深く落ちただろうか―――― ふわっ…… 暗闇の中を落下する。 恐怖し固く瞳を閉じていたが、不意に奇妙な浮遊感を感じた。 青年は恐る恐る目を開く。 優しい頬笑みを浮かべた永琳が、青年の目に映った。 「ようこそ、私の部屋へ」 ――――ひどく簡素な和式の部屋。 それが、青年が抱いた最初の印象だった。 青年がそう思ったのも無理はない。 そこには、生活に必要な最小限のものしか置かれていないのだ。 けれども、決して寂しい部屋では無かった。 例えて言うならば、大人の部屋とでも言うのだろうか。 無駄を省いてはいるものの、どこか落ち着きを感じさせる部屋だった。 また、部屋の奥にある机の上に可愛らしい熊のぬいぐるみが置いてある。 大人びてはいるが、どこか可愛らしさの残る永琳の性格を現したような部屋だった。 とさっ…… 永琳は、青年を畳の上に横たわらせ、押し入れから敷布団を運び出す。 そして、青年を敷布団の上に寝かせつつ永琳は小さく囁いた。 「少し、ここで待っててね」 見られるのが恥ずかしかったのだろうか――――永琳はさりげなく、机の上のぬいぐるみを押し入れの中に隠す。 そんな彼女の可愛らしさに、青年の胸は高鳴ってゆく。 そんな青年を焦らすかのように、そのまま永琳は部屋の入り口に向かった。 「ど、どうしたんですか??」 「少し汗をかいたのよ……湯に浸かってくるわ。それまで、そこから動かないでね」 「……動けないんですが」 「ふふっ、それでいいのよ」 笑みを浮かべながらそう言い残し、永琳は扉を開けて出ていった。 そして、青年の周りを静寂が包む。 すー…… 心を落ち着けようと大きく息を吸ったとたん、彼女の布団に染みついた永琳の匂いが 胸一杯に充満する。 とても甘くて、いい匂い。 まるで、全身を永琳に包まれているようだった。 「ん?」 そんな最中、青年は自分の身体がかすかに動くことに気づく。 まだ、自由自在とまでは程遠い。 けれども、左手の指が僅かに自分の意志の通りに動く。 右手の指も、両脚の指も然り。 「お、動く…」 青年の身体から、筋弛緩剤が抜けてきているのだろう。 緩やかに時が流れるたびに、次第に次第に青年の身体に打ち込まれた筋弛緩剤の効き目が薄れていった。 まず、脚や手の先端から徐々に動くようになり、次いで全身を覆っていた倦怠感と痺れが消え失せてゆく。 けれども、薬が抜ける度に妙な疑問が青年を苛みつつあった。 (なんでまた風呂に……?) もう、青年の身体からはほとんど身体の痺れが消えている。 その気になれば歩くくらいのことはできるというのにだ。 青年が逃げたら、永琳はどうするつもりだったのだろうか。 トッ…トッ…… 青年の耳に、廊下を歩く足音が聞こえてくる。 それは、次第に近づいて来ていた。 身体を起こしながら、青年は足音の主について考えを巡らす。 この状況で廊下を歩いてくる人物など、一人しか考えられない。 そんな青年の予想を裏切ることなく、足音が部屋の手前で止まる。 そして―――― スッ―――― 襖がゆっくりと開くと、浴衣を身に纏った永琳がそこにいた。 「――――」 しばらく、呆けたように永琳は立ち尽くしていた。 その視線は青年に釘付けになったまま、まるで信じられない物を見ているかのように。 「え、永琳さん、どうしたんですか?」 永琳に声をかけながらも、青年の心臓は爆発しそうなほどに早鐘を打ち鳴らしていた。 無理も無い。 身体を上気させた永琳の色っぽさは、普段の彼女のそれとは比較にならなかった。 いつもはみつ編みにしている髪は下ろされており、水分を吸った髪の艶やかな色がとても美しい。 そして、赤みを差した肌のが艶やかさを醸し出している。 さらに、胸元の浴衣が少し肌蹴ているために永琳の豊満な胸がちらちらと覗き、青年の情欲をふつふつと滾らせる。 それを直視するのを躊躇い、視線を下に逃がすものの、今度は浴衣からちらちらと覗く艶めかしい脚が視界に飛び込んでくる。 たまらず、永琳から視線を離そうとしても、青年の心に湧きあがる本能的な何かがそれを許さない。 対する永琳は、青年の視線などお見通しなのだろう。 湧き上がる喜びを無理に抑えつけているような頬笑みを浮かべている。 「なんでもないわ……ただ、一つ聞きたいのだけれど――――」 「なんですか……って、ちょ、ちょっと永琳さん!?」 永琳はゆっくりと青年に近づいて行き、膝を折って青年の側にしゃがみ込む。 そのまま、青年に身体を寄せ、その頬に細く奇麗な手を添えた。 「もう薬は切れているはずなのに 逃げないということは――――期待しても、いいのかしら?」 湯で火照った暖かな掌が、そして熱い身体が、青年の身体に当てられた。 ――――熱い けれども、とても心地の良い熱さだった。 永琳の熱い肢体に、青年の身体が焼かれていく。 石鹸の匂いと永琳の匂いが混ざり合い、甘い香りが青年の思考を侵食してゆく。 「あ、あの永琳さん…少しでいいので、待ってくださ……」 我ながら度胸のない言葉だ、と青年は考えるもののそれ以外の行動が取れない。 薬の効果で動けないのではなく、永琳が醸し出す雰囲気が動きを封じている。 「ダメ……人間はすぐに死んでしまうもの。一秒でも、無駄にしたくないの。 それにね――――もう、我慢できない。今日は時間がある限り、あなたに甘えて、甘えられていたいの……」 「…………」 青年の懇願を却下し、耳元で永琳は小さく囁く。 心臓の鼓動はすでに爆発寸前だ。 このまま永琳に耳元で囁かれると、本気でどうにかなってしまいそうだった。 「あ、あの」 「なにかしら?」 「……どうして、わざわざお風呂に?」 そんな質問の答えなど、本心から聞きたかったわけでは無い。 ただ、自分のペースを少しでも取り戻そうとする為の時間稼ぎだ。 「馬鹿ね……女はね、好きな人の前ではいつでも綺麗でありたいものなのよ。 それに、戦いで汚れた身体……貴方にだけは見ていられたくなかったから」 言葉とは裏腹に、永琳は優しい笑みを浮かべながら青年に囁く。 溢れんばかりの純粋な想いを受け、青年はペースを取り戻すばかりか ますます永琳に籠絡されてゆくのを自覚した。 「あなたが、大好きよ」 ド ク ン !! それは、まさに最高の殺し文句だった。 しかも完全に不意打ちだったのが、青年には致命傷だった。 ど真ん中ストレートな愛情表現だった。 頬が、体が熱くなっていくのを青年は自覚してゆく。 「ふふ……そんなに頬を紅く染めて、本当に可愛らしい人。さっきの続き――――してほしい?」 畳みかけるように耳元で囁かれ、青年はくすぐったさに身を竦める。 永琳はそんな青年の腕を軽く掴み、逃がさない。 もう一度、青年の耳元で永琳はゆっくりと囁く。 「 し て 、 ほ し い ?」 「………」 青年に断る理由など無い。 コクリ…… 「してほしかったら、私を名前で呼んで」 青年を焦らすかのように、永琳は 「え、永琳…さん……」 はむっ 「ぅぁっ!」 突然、永琳が耳を食み、青年は悲鳴を上げる。 耳の裏側に温かい息がかかり、くすぐったさに身をよじらせる。 けれども、永琳から逃げることはできない。 「違うでしょう? もう一回」 あたかも、これは罰だとでも言わんばかりに永琳は蠱惑的な声で囁く。 「え、えーりん…さん……」 今度は、チロチロとくすぐるように耳に舌先が這わせられる。 ゾクゾクするような甘い快楽が青年の全身を包み、青年の身体から力が抜けてゆく。 言われるままに名前で呼んでいるというのに、何が間違っているというのだろうか。 「ちょ、やめ……えー…りん……」 やめてくれ、と青年は言おうとする。 だが、その言葉は最後まで紡がれることはなかった。 それほどに、青年は永琳に耳を舐めしゃぶられることに翻弄されてしまっていた。 「……え?」 青年が小さな声を上げた。 突如、青年の耳を舐めしゃぶっていた永琳の舌が止まったのだ。 そして、理解した。 永琳の舌が止まったことから、正しい回答が何なのかを。 「……もう一回」 「えーりん……」 青年は、正しい答えで再び永琳を呼ぶ。 永琳の顔にこの上ない幸せそうな笑みが浮かび、彼女は青年の耳から唇を離した。 「よくできました……これはご褒美よ」 「――――ん…っ!?」 永琳が青年の唇を奪う。 そのまま、青年の唇は、永琳の舌に割り開かれてゆく。 互いに、情欲のままに舌と唾液を交わし合う。 青年は永琳の求愛に負けずに彼女の唇を求める。 しかし、あまりにも永琳のキスが上手すぎる。 もし、永琳が戦いによって消耗していなかったら、おそらく青年はされるがままになっていたはずだ。 きっと、幾度となく素敵な恋をして、素敵なキスをたくさんしてきたのだろう。 自分以外の男に永琳の唇が奪われたと考えるだけで青年の心は嫉妬で焼き尽くされる。 けれども、そんな嫉妬も永琳の唇に優しく蕩けさせられる。 この上なく熱い、濃厚なキスだった。 だが、熱いのはキスだけでは無い。 青年と永琳の身体も次第に熱くなってきている。 青年は興奮で、永琳は湯上りの熱い身体もあり、互いに熱を高め合う。 そして、長く長い時が流れ、永琳が青年から唇を離した。 「どうかしら?」 「頭が…くらくらして……」 「ふふ……よかった。初めてのキスだったから、少し心配だったの」 「は、初めて!?」 辛うじて「嘘だ」という声を呑みこんだ。 初めてにしては、あまりにも上手すぎる。 「経験はないけれど 知識はあるもの」 「…………」 「ふふ、安心して…私は最初から貴方だけのものだから……」 あまりの愛しさに、永琳をいつの間にか抱きしめていた。 柔らかな身体の感触が気持ちいい。 熱い身体の感触がたまらなく心地よい。 「…えーりんさん?」 ふと、永琳に目をやると、いつの間にか彼女はスースーと寝息を立てて寝入ってしまっていた。 永遠亭の影の主とも呼ばれる彼女の、ここまで無防備な姿は初めて見る。 けれども、そんな無防備な永琳がなんだか可愛らしかった。 「おやすみ、永琳」 青年は、柔らかいその頬に優しく口づけた。 ・ ・ ・ 「二度とッ……ある意味、二度とこんな大会は見られないでしょうッッ!! 9度に亘る熱い愛の逢瀬は――――ただの一度とて凡庸な内容はありませんッ! 全ての抱擁がッッ! 全てのキスがッッ!! そして全てのイチャつき行為が………ッッ!!! イカしてたァッッ!!!! 幻想郷の世界において「何の能力も持たない人間」ということが――――あるいは惰弱だとの声もあるでしょう。 しかし覚悟を決め快く愛を受け入れる青年の表情の―――― 己の愛が届かず敗北をうけいれる褌男の表情の―――― 傷つき勝利をてにした少女の表情の―――― そのどれもが我々の心を突き動かさずにはおきませんッッ!! イチャイチャしようとする姿は――――かくも美しい!!! 「イチャつく」ことは美しい!!! 「イチャつく」ことはスバラシイ!!! アリガトウ青年ッッ!! 愛あるイチャイチャ イズ ビューティフル!!!」 『初めてのチュウ 永夜抄最甘トーナメント 勝者 永琳編』end ④ てゐ ――――④てゐ 「てゐ!!」 「ふふっ、助けにきたよ 王子様♪」 青年の視界から霖之助の身体が消える。 崩れ落ちる霖之助の背後から、少女の姿が見える。 愉快そうな口調で、少女――――てゐは診療所の入口に立っていた。 その表情は余裕と自信に充ち溢れいる。 背は小さく、普段はあまり強そうには見えない てゐ―――― けれども、青年には そんな彼女が 何よりも頼もしく見えていた。 「た、助かったよ……」 あまりに安心したために青年は完全に放心してしまう。 無理もない。 あと僅か、てゐの助けが遅れていれば、青年はその身を穢されていたに違いなかった。 「……あれ?」 「どうかした?」 青年がてゐの姿を見る。 彼女の身体は穢れ一つなく、その姿がとても頼もしい。 けれども、そんなてゐの姿に 青年は訝しげな視線を向ける。 「外であんな派手な戦いやってた割には、無傷なんだな?」 「う……」 そう、それが青年の目には奇妙に映っていた。 アレほどの戦いがあった割に、てゐの身体には傷一つない。 服に汚れすら付いていないのだ。 あのメンツの中でまともに戦って傷一つないというのは、あまりにもおかしい。 となれば―――― 「――――さては、漁夫の利を狙ってたな?」 おそらく、全員が互いに消耗戦を繰り広げた末に、最後に残った一人倒そうとしていたに違いない。 青年は確信めいた推測を持って彼女に問い詰める。 「う゛……」 彼女が気まずそうに呻き声をあげる。 それが、青年の想像が正しいという何よりの証拠だった。 「う、うるさいわね!」 ムキになって、青年にがなりたてるその姿は――――まるで幼い子供が癇癪をおこしている姿そのものだ。 青年よりも遥かに長く生きているというのに、子供ような愛嬌をも持ち合わせる少女。 そんなてゐが 青年には何よりも可愛らしく見えていた。 「まったく……策士と言って欲し――――」 怒りを露にするてゐの表情が凍りつく。 「ん? どうした?」 表情を強張らせるてゐに、青年が声をかけた瞬間―――― 彼女の凍りついた表情は、一瞬で激しい緊張に強張った。 「え?」 突如として、てゐの姿が青年の視界から消える。 どたんっ…! 「うわっ!?」 身体のすぐ側に衝撃を感じ、青年は身を竦ませる。 衝撃の方向に目をやると、ちょうど顔のすぐ横に てゐの細い脚が見えた。 「て、てゐ?」 彼女は消えたのではない。 目にもとまらぬ速さで跳び、診療台の上に着地したのだ。 「逃げるよ! ○○ッ!!」 そう言われるや否や、青年はそのまま 赤子が背負われるように抱えられる。 彼女の細腕の どこにそんな力があるのか、と青年は考えたがそれすらも一瞬のことだった。 「うわっ!!」 突如として、てゐは青年の身体を背負ったまま診療台から飛び降りる。 そして、文字通り脱兎の如く診療所の扉に走った。 「ちょ、てゐ! 何やってるんだ!?」 動けない青年は、彼女に振り落とされたら受け身すら取れない。 そのため、必死に彼女の背中にしがみつこうとし、身を竦ませることしかできなかった。 増してや、てゐが何をやろうとしているのかすらわからない今、 「喋らないで! 舌噛むよ!!」 彼には、何故てゐがそんなに慌てているのかわからない。 しかし、青年はふと背後から視線が向けられているの感じる。 振り返ろうとしても、身体が麻痺しているために振り返ることができない。 「――――褌ハ、嫌ナノカナ?」 感情の籠らぬ、男の声が背後から響く。 その声は小さく、低い声だった。 けれども、その声は悲哀と嫉妬に充ち溢れていた。 「――――!!」 彼は、てゐが逃げようとしていた理由を一瞬で理解した。 霖之助が、目を覚ましたのだ。 青年の背に突き刺さる、視線が恐ろしい。 診療所を飛び出したところで、霖之助の視線も感じなくなった。 それでも、霖之助はいずれ追い付いてくる。 そう思わずにはいられないほど、それは冷たく恐ろしい視線だった。 「少し飛ばすよ! ○○!!」 既に、てゐは青年を抱えながら永遠亭の出口まで差し掛かっていた。 あとわずかで、迷いの竹林に逃げ込むことができる。 竹林の中はてゐに地の利がある。 霖之助の視線はどこからも感じない。 振り切ったか、と青年は考えた。 しかし―――― ヒュゥゥゥゥゥ―――― 青年とてゐの耳に、風を切るような音が聞こえる。 「なんだ…?」 奇妙な風切り音はどんどんと大きくなってゆく。 そして―――― ドゴォォォォン!! 「きゃああっ!!」 「うわぁっ!?」 竹林に派手な閃光と爆発音が響いた。 霖之助に何の武器で攻撃されたのか理解できずに、爆風に二人は吹き飛ばされる。 どしゃっ! 「っぐぁ!」 動けない青年は、受け身も取れずに直に地面に叩きつけられる。 痛い。 死ぬほど痛い。 「はぁ……っ……はぁ…っ……○○、大丈夫…?」 てゐが青年によろよろと駆け寄ってくる。 彼女の姿を見た瞬間、青年は思わず絶句した。 額の、脚の、腕の――――全身の至る所から赤い血がだらだらと流れ出している。 「ぐぅぅぅ……っ!!」 てゐは歯を食いしばって、呻き声を上げながら青年に向かって歩く。 そして、青年の身体が、再び抱えあげられる。 全身に傷を負い――――それでもなお、彼女は青年を抱え逃げのびようとしているのだ。 「てゐ! もういい、俺を置いて行け!!」 青年は、たまらず叫んだ。 霖之助の目的は、自分自身のはずだった。 青年が残れば、きっと霖之助はこれ以上てゐに危害を加えることはない。 その確信を持って、てゐに自分を置いて行くように叫んだ。 「……だよ」 あまりに痛いのだろう。 てゐは苦痛にぽたぽた涙を流しながらも、再び走り出した。 その小さく細い体にはあまりに重い、青年の身体を抱えたまま―――― 「てゐ!?」 「……いや…だよ」 苦痛に涙しながら―――― 迫りくる霖之助の姿に恐怖しながら――――てゐは走る。 「渡したくない……」 「――――」 「○○は……絶対に誰にも渡したくないの……!!」 ・ ・ ・ あれから、たっぷり一時間半も逃げただろうか―――― 奇麗な泉の側に、てゐと青年はいた。 すぐ傍には奇麗な湧水がこんこんと湧きだし、泉に流れ込んでいた。 既に筋弛緩剤の効果は切れており、青年は自前の手拭いに湧水を含ませる。 冷たい水が手に突き刺さるが、青年はそんなことを意に介している暇はなかった。 「はぁ……はぁ……」 「大丈夫か、てゐ?」 霖之助の追撃をようやく振り切ったと確信したのが、この泉にさしかかったところだった。 しかし、てゐの身体はすでに限界を超えていたのだろう。 この泉の側で崩れるように倒れてしまった。 霖之助の攻撃による傷はそれほど大きくはない。 しかし、原因はわからないが それ以上に彼女の衰弱が激しかった。 おそらく、目に見えない大きな傷を 身体のどこかに負ってしまったのだろう。 「…苦しい…よぉ……」 うわごとのように呻き声をあげるてゐ。 未だかつて見たことも無いほどに、苦しそうな表情を浮かべている。 けれども、青年はそんな彼女の身体についた傷を、手拭いで申し訳程度に清めることしかできない。 このままでは、確実にてゐは―――― 脳裏に浮かぶ最悪の光景を必死で打ち消しながら、青年は必死にてゐを救う方法を考える。 けれど何を思い浮かべようとも、それを実行するだけの力が青年には無かった。 ―――― せめて、薬でもあれば…… 青年は自分の力の無さを悔いていた。 助けを求めることすらもできない、己の無力さを。 けれども、その時―――― 「――――!」 青年の脳裏に、これ以上ない助けが思い浮かんだ。 彼が、永遠亭に来た理由は何だったか? そう、体の調子が悪かったためだ。 その時、永琳は何を青年に渡したか? そう、青年は過労のための薬を永琳から受け取ったはず。 青年は、ズボンのポケットを探った。 ――――ある。 ポケットの中から、小さな袋を取り出す。 この薬を使えば、傷はともかく衰弱のほうは何とかなるかもしれない。 けれども、一瞬だけ青年の脳裏に恐ろしい想像が浮かぶ。 「人間のために作られた薬を妖怪に与えても大丈夫なのか?」ということを。 「う……ぁぁ………」 青年はてゐを再び見る。 顔を蒼白にさせながら、荒い息をついている。 時折あげる呻き声がとても痛々しく、見ているだけで青年の胸まで痛くなる。 ―――― 他に方法はない。 一か八か、賭けるしかなかった。 青年はてゐを抱き抱え、湧水の側まで運んだ。 「てゐ、薬だ……」 青年は、てゐを抱きかかえたまま 片手で薬の包み紙を開いてゆく。 薬の包み紙の中にある白色の粉薬を彼女に飲ませようとする。 「う…ぅ……」 「飲んでくれ」 そして、水を手ですくい彼女の口元へ寄せる。 けれども、その水も薬も彼女の口の中に入ることはなかった。 てゐの唇の端から、零れ落ちてしまうのだ。 彼女には、もう薬を口にする力も無いのだろう。 「――――ごめん」 一回だけ、青年はてゐに謝る。 そして、彼は水を口に含み、薬の包み紙の中にある白色の粉薬を自分の口腔内に放り込む。 もう一度、口に薬と水を含んだまま青年はてゐを見やる。 容態は先程と変わらず最悪の様子だ。 てゐの紅い瞳は既に虚ろになってきている。 もはや、半ば意識も無いのだろう。 彼女には、青年がこれから何をやろうとしているかすらわかっていないに違いなかった。 想いを寄せる少女に、これから このようなことをするという悦びと…… 同意も得ずに、このようなことをしなければならない罪悪感に苛まされながら、青年はてゐの唇に自分の唇を寄せる。 そして、青年は――――てゐの唇に自分の唇を押し当てた。 口に含んだ薬を水とともにてゐの口の中に流し込むために。 「ん……」 てゐが小さく声を上げる。 なんて、柔らかいんだろう。 ずっとこのまま、彼女の唇を貪っていたい。 そう思わせるほどに、彼女の唇はとても柔らかかった。 けれども、青年はそんな邪念を必死に頭から消そうとする。 弱っているてゐに口づけして喜ぶなんて…最低な行為だと頭の中で自分自身を罵る。 けれども、てゐの瑞々しい唇が、惑う青年の邪念を増幅してゆくばかりだった。 激しい葛藤に悩まされながら、青年は薬をてゐの口の中に送り込んでいった。 青年は薬を一気に流し込むことはしなかった。 一気に薬を流し込めば、彼女がむせてしまうからだ。 ゆっくりとゆっくりと彼女の口の中に薬を流し込む。 ある程度の量を流しこんだら、唇を離して彼女が薬を飲み込むのを待った。 こくっ…… てゐの咽が蠕動する。 こくっ、こくん…… ほどなくして、てゐは彼女の口の中の薬を全て飲みこむ。 再び、同じ要領でてゐの口に薬を流し込む。 ゆっくりと、ゆっくりと青年の口腔内の水がてゐの口に流し込まれてゆく。 そのまま、青年は薬を全ててゐの口の中に注ぎ込んだ。 (よし……!) あとは、てゐの容態が落ち着くまで待つしかない。 そう考え、青年が てゐから唇を離そうとした瞬間―――― 「んぅっ!?」 青年が、悲鳴ともつかぬくぐもった叫び声をあげた。 青年の表情が驚愕に歪む。 それも無理も無いことだった。 ぐったりとして動かないてゐが、いきなり青年の唇を求めだしたのだから。 驚きつつも 青年は、てゐをつき離れようとする。 しかし、彼女の両腕が青年の頭をしっかりと掴んでいるため、逃げることができない。 その細い腕のどこにそんな力があるのだろうか。 けれども、襲い掛かられるように激しく求められるのが、嫌では無かった。 いつしか青年は津波のように襲いかかるてゐの情欲に呑まれてしまった。 そして、求められる快楽にゆっくりと目を閉じる。 てゐの舌は青年の口腔内をまさぐってゆく。 怯えるように引っ込んでいる青年の舌はすぐに探り当てられた。 そして、舌をてゐの舌先にチロチロとくすぐられる。 まるで、彼女が青年の緊張をほぐしているかのように。 てゐの柔らかい舌に理性を、甘く、優しく蕩かされてゆく。 しかし、そんな青年の心を裏切るかのように―――― 「え……?」 ――――てゐの唇が青年から離れる。 「うわっ…!」 てゐの小さな身体が、青年にのしかかってくる。 そのまま、青年はてゐに馬乗りにされてしまった。 青年を見降ろしながら、てゐは笑みを浮かべていた。 その時の彼女の眼を、青年は生涯忘れないだろう。 あたかも、計画通り と言わんばかりの、邪悪な笑みを孕んだ目。 「……くふふふふ」 心底、愉快そうにてゐは笑う。 さすがに青年も、事此処に至ってようやく気付かざるをえなかった。 「……弱ってるふりしてたな、お前…?」 自分が、まんまとてゐの名演技に騙されてしまったことを。 「騙されてくれて、ありがとう……○○」 「いつから騙してたんだ?」 苦々しい表情を浮かべ、青年はてゐに問う。 彼女に騙されるのは、すでに慣れてはいたものの、ここまで激しく騙されたことはない。 「最初からだよ……霖之助の攻撃を喰らったように見せかけたのもそうだし 派手に怪我したように見せるために血糊を使ったのもそうだし 本気出せば簡単に逃げられるけど、1時間ばかりわざと捕まらない程度に逃げたのもそうだよ。」 「………」 青年の上に乗ったまま、てゐはベラベラ種明かしを始める。 よくもまあ、そこまで悪知恵が働くものだと逆に感心してしまう。 「全ては、弱ったふりして○○に口移しで薬……もとい、キスしてもらうためだもん」 てゐはそう言ってネタばらしを締めくくった。 頬をやや赤らめながら、とても幸せそうに微笑む彼女は可愛らしい。 この上なく可愛らしいのだが、その可愛らしさは魔性を孕んでいた。 見た目は人畜無害なウサギさんでも、彼女の心は小悪魔だった。 それも、紅魔館の小悪魔よりもタチが悪い。 「私のために必死になる姿……すごくキュンときたよ」 万感の思いを込め、てゐは青年に顔を寄せてそう囁く。 白いウサギさんの頬は、さらに赤く染まっていた。 「………」 「お礼を、してあげるね――――」 てゐがその可愛らしい小さな顔を 更に青年の顔に近づける。 「――――って、あれ……?」 その動きが、途中で止まった。 「今度は、どうしたよ……?」 「か、体が……痺れて……」 青年の目にも、てゐの身体が小刻みに震えているのがわかった。 けれども、アレほど派手に騙された後で再び引っ掛かるほど青年はお人好しでは無い。 「今度は何の罠だよ……」 「ち、違うよ……本当に体が……」 やや苦しげにそう言いながら、てゐは青年の身体の上に倒れ込む。 青年は、てゐのその姿を見てため息をつきながら、ふと視線を横に巡らせた。 そこには、薬の袋が転がっている。 「ん?」 その袋から、薬の包み紙以外の紙がチラリと見えた。 なんだろう、と思い 袋に手を伸ばしてその紙を摘む。 その紙には、数行の文字が書かれてあった。 <この薬は人間用です。妖怪には飲ませないでね。 えーりんより P.S 妖怪が飲んでも死なないけれど、身体の痺れなどの効果が出るから気をつけてね。> 本当に霖之助の攻撃によって彼女の身体が傷ついていたら恐ろしいことになっていた。 そう思い、青年はわずかに胆を冷やす。 けれども、それ以上に―――― 「ふーん、そーかそーか…… 動 け な い の か ぁ ……」 ―――― 動けない彼女を目の前にして、心が躍っていた 考えてみれば、青年はこのウサギの少女に事あるごとに騙されてばかりだった。 けれども、てゐは 青年の身体の上でその発育途上気味な肢体を痺れさせている。 青年にとって、これは またとないチャンスだった。 そんな彼女に、これからどんなお仕置きをしてやろうかと想像するだけで、ゾクゾクするようなとした歓喜が全身を包む。 「よっと」 「きゃ!」 青年は、てゐを身体から引きはがし その場に横たわらせる。 まな板の上に乗った哀れなウサギさんに舐めるような視線を送りながら 舌舐めずりをした。 「え、えーと……○○、目が怖いんだけど?」 「人を死ぬほど心配させてくれやがって……」 対し、てゐはやや怯えを孕ませた視線を青年に向ける。 その表情は、さながら狼に喰われようとしているウサギさんそのものだった。 「 お 仕 置 き だ な ぁ ……」 「や、ちょっと…やめ――――」 襲いかかろうとする青年の姿を目の当たりにし、てゐは恐怖に瞳を閉じる。 さすがのてゐも、事此処に至っては 自分の行いを反省せざるを得なかった。 ただし――――反省しつつも、てゐの心にはどこか求められることへの喜びはあったのだが。 ふわっ…… 「――――え?」 てゐの上半身が引き起こされるとともに、彼女の背中に温かいものが当たる。 予想外の感触に、てゐが目を開けるが 、目の前には誰もいない。 けれども、てゐの背後から とても温かい声が聞こえていた。 「俺もまだ完全には体が動かないし……最近冷えてきたしな」 「……ぁ…」 てゐの目の端に、優しい青年の顔が映る。 「しばらく、こうしていようか。お仕置きは、また今度ということで」 青年はそう囁き、座ったままてゐの身体を背後から優しく抱きしめた。 てゐの心を温かいものが包んでゆく。 てゐは、まるで身体とともに心まで包まれているかのように感じていた。 「今回は、本当に肝が冷えたぞ……もう、冗談でもあんなことやらないでくれよ?」 「……うん」 てゐは、頷いたまま動かなくなってしまった。 青年には、その理由がわかっている。 胸に当たるてゐの心臓の鼓動が、激しく蠕動している。 きっと、優しく抱きしめられて緊張しているのだろう。 そう考えるだけで、青年は今にもてゐを押し倒してしまいそうだった。 それほどに てゐは可愛らしかった。 「ね、○○……」 ふと、てゐが俯きながら、青年に声をかける。 「ん?」 「……大好き」 青年は、呆気に取られた。 キス一つにあれやこれやと手を尽くすような少女の、いきなりの愛情表現に言葉を無くしてしまう。 「こ、今度という今度は全然嘘じゃないからね! 別に騙そうなんてしてないんだから――――」 また嘘だと思われたのだろうか――――てゐは焦るように早口でわめく。 「俺も、大好きだ」 そんな子供のようなてゐの姿に、青年は苦笑してしまう。 なんて、可愛らしいんだろう、と―――― 「ほ、本当……?」 「ああ…」 青年は、背後からてゐの頬に口づける。 とたん、長い耳が緊張でふさふさと震える。 そして、因幡の白いウサギさんは羞恥と喜びに頬を赤く染めた。 二人の甘い時間は終わらない。。 数多の竹の隙間から差し込む月光が二人をいつまでも包んでいた。 『初めてのチュウ 永夜抄最甘トーナメント 勝者 てゐ編』end うpろだ462・466・467・507 10スレ目 157、232、239 ─────────────────────────────────────────────────────────── ――――最甘トーナメント 勝者鈴仙 前編 「まさか、あなたが勝ち残るとは……いじられ役の意地と底力を見せましたか」 薄暗い部屋の一室――――黒い髪の少女が、そう呟いた。 彼女の側には、巨大な鏡が壁に立て掛けられていた。 ――――しかし、どういうわけだろう。 その鏡には、周囲の光景は全く映っていない。 かわりに映し出されているのは、とある診察室のような部屋の光景だった。 その部屋の中には、診察台に寝かされている一人の青年。 床に崩れ落ちる半裸となった褌の男。 そして、部屋の入口にウサギの耳を持つブレザー姿の少女が佇む。 「楽しませてもらいますよ……月の兎」 黒髪の少女――――射命丸 文が、鏡を眺めながら呟いた。 そして、背後に振り返る。 そこには、多くの人影が座りこみ、数多の目が鏡に注がれていた。 その数多くの瞳は一つの例外なく、全てが期待の色に染まっている。 まるで、映画の上演を待っているかのように―――― 静かに開幕を待つ観客を、文は満足げに見まわし、息を大きく吸って―――― 「先の戦いにより、永遠亭は致命的とも言える大損害を被ってしまいました」 ―――― 一夜限りの甘い甘い恋の略奪戦争――――そのグランドフィナーレの幕をあげた。 「奮戦虚しく、多くの宝物と貴重な薬品が失われ、正に精も根も尽き果てんばかりでした。 けれど……見渡してみてください。 この迷いの竹林に在っても尚、逞しく花咲かせし優曇華のごとく、甦りつつある彼等の愛の絆を。 傍らに立つ戦友を見てください。この期に及んで尚、その眼に激しく燃え立つ気焔を。 彼等を突き動かすものは何なのでしょう。 そして、満身創痍の彼等が何故再び立つのでしょう。 それは、全身全霊を捧げ愛に身を捧げる事こそが、伴侶ある者に課せられた責務であり、愛に殉じた者への礼儀であると心得ているからに他なりません。 永遠亭の庭に眠る者達の声を聞いてください。 竹林に吹き飛ばされた者達の声を聞いてください。 褌仲間を増やそうと散った者の声を聞いてください。 ……彼らの悲願に報いる刻が来ました。 そして今、青年少女が旅立ちます。 恋心届かなかった輩と、我等の好奇の視線を一身に背負い、思う存分イチャつこうとしているのです。 歴史が彼等に脚光を浴びせる事が無くとも……我等は刻みつけましょう。 所構わず愛の逢瀬を交わし合う彼等の雄姿を、我等の魂に刻み付けるのです。 ……イチャつく青年と少女よ。 諸君に戦うコトを強制した我等を許すな。 諸君を戦に巻き込んだ我等の悪戯心を許すな。 ……願わくば、諸君の心のふれあいが、我等の飢える心の清涼剤とならん事を――――」 ・ ・ ・ 数分後―――― 「よいしょ……っと。ここまでくれば、もう大丈夫よ。 ……まだ、動けない?」 「いや、大分マシになった」 ○○は、鈴仙に支えてもらいながら、何とか彼女の部屋までたどり着くことができた。 永琳による筋弛緩剤の効果が薄れつつあるのだろう。 次第に肉体を動かすのが億劫でなくなってきていることを○○は実感していた。 鈴仙は、未だに力の篭らない○○の身体を支え、ゆっくりと布団の上に寝かせる。 本来、鈴仙はそこらの人間の男よりも力はあり、○○を抱えて運ぶこともできた。 だが、○○はそれを頑なに拒んだのだ。 その理由は――――語るに及ばずといったところだろうか。 「ありがとうな、鈴仙。助かったよ」 「うふふ、どういたしまして」 一言二言の言葉を交し合った後、沈黙が続く。 その沈黙に耐えられず何か言い出そうとするも 互いが互いを意識してしまい、言葉を紡ぐことすらもできない。 「「…………」」 なぜ、そんなに互いを意識しているかは、言うまでも無いだろう。 かなり混沌とした状況だったが、3時間前に鈴仙が○○に友以上の感情を抱いていることを暴露したからだ。 鈴仙にしても、○○を奪われてしまうという危機感から思わず彼への思いを口にしてしまったのだが その危機が去った今、二人に残ったのは気恥ずかしさのみ。 「ねぇ……○○……」 不意に、鈴仙が口を開く。 ○○の傍にゆっくりと膝をつき、鈴仙は彼の胸板に手を置く。 そのまま、彼女はそっと顔を○○に寄せて囁いた。 「一つだけ教えて欲しいことがあるの。 もう、知っているよね……私は、あなたのことが好きです」 「あ、ああ……」 ゆっくりと言葉を紡いでゆく鈴仙は、○○がこれまでに見たことの無いほど妖しくて、美しかった。 ○○は否応なしに異性としての彼女を意識させられ、その胸を高鳴らせる。 尤も、もう少し彼に観察力があれば、鈴仙の手がかすかに震えていることにも気づけたのだろうが。 「――――あなたは、私のことをどう思っていますか?」 鈴仙は、赤い瞳を潤ませながらそう囁く。 ひたむきな視線を、ただひらすら○○に向けながら。 「う……」 その、“視線”が――――問題だった。 ○○は苦悶の表情で、視線を鈴仙の顔から背ける。 ――――鈴仙の紅い瞳、もとい狂気の瞳。 見るだけで波長を狂わせ、人間の頭脳など容易に破壊できる鈴仙の魔性の瞳。 ただの人間である○○には、それを見つめ返すことはできない。 今でさえ、鈴仙の瞳を一瞬目にしただけで、頭が割れるような苦痛が○○を襲っていた。 「……ごめんなさい、やっぱり……ダメだよね、私なんかじゃ……」 鈴仙から目を背けたという○○の行為が“拒絶”と鈴仙に誤解させてしまう。 心なしか……いや、その身体は目に見えて震えが強くなっていた。 「ち、違う……!」 ○○のかすれる目に、鈴仙が悲しげな雰囲気を纏わせながら立ち上がろうとする光景が映る。 その瞬間、○○は本能的に このままでは取り返しのつかないことになると悟った。 力を振り絞って彼女の腕を掴み、強引に引っ張る。 「きゃっ!」 強引に腕を引っ張られ、鈴仙の身体は○○に倒れこむ。 「う……ぁ……」 鈴仙の腕を引いた拍子に、○○はまたもや彼女の目を直視してしまった。 ○○は鈴仙に二の句が告げられず、頭を襲う激痛に 辛うじて苦痛の呻き声を抑えることしかできない。 「やぁっ、○○……苦しい、よ……」 絶対に放さないと言わんばかりに、○○は鈴仙を強く抱きしめる。 未だ目の奥底で視神経をズタズタにするかのような激痛は消えないが、 鈴仙を抱きしめていると、不思議と苦痛が和らいでいく気がしたのだ。 「ごめん、しばらく……このままで――――」 ○○が掠れるような弱弱しい声で囁いた、そのとき―――― 「――――あ」 ここに至って、鈴仙もようやく○○が目を背けた原因に思い当たったようだ。 そして、彼女は今更ながらに これまでの記憶を掘り起こす。 ○○が鈴仙の視線から目をそらしていたのはどういう時だったか――――ということを。 「もしかして……だからなの?」 「……?」 「だから――――いつも私が貴方を見ていたときに目を逸らしていたの?」 ○○に抱かれながら彼の胸の中で鈴仙は問いかける。 その問いに、○○は静かに頷いた。 「そう……だったんだ……」 ぽた……ぽた…… 「……え?」 鈴仙が呟くようにそう言ったとたん、○○の胸に 何やら暖かい雫が零れ落ちる。 もちろん、雨漏りなどでは断じてない。 「……ふぇ……ぐすっ……」 「ちょ、ちょっと鈴仙、どうしたの? ごめん、俺 何かマズイことやった?」 「ちが、違うの……いつも目を背けられるから―――― 嫌われているのかなって……怖くて、苦しくて、悲しくて……よかった……でも、でも…… ごめんなさ……本当に、ごめんなさい……!!」 ぽろぽろと流れ落ちる涙と共に、彼女は想いを吐露してゆく。 愛しい異性に嫌われていなかったという安堵の喜び。 おそらくは幾度となく望まぬ苦痛を与えてしまった後悔。 それらがない交ぜになって。 嬉しさと申し訳なさがいっぱいになって。 鈴仙は、ただ『よかった』と『ごめんなさい』をひたすら繰り返し続けた。 「鈴仙……」 そんな鈴仙を言葉も出せずに見つめながら、○○の心にも罪悪感が宿る。 が、それ以上の――――爆発しそうなほどの愛しさが、一瞬で罪悪感をかき消して―――― 「……ん……っ……!?」 時が止まったかのように、鈴仙の涙が止まった。 鈴仙は、余りのことに何をされているのか理解できない。 ただ、○○にされていることが“心地いい”モノだということは理解できていた。 「やぁ……んっ、ぁ……」 鈴仙の頬を熱が吹き抜ける。 うっすらと紅く染まる頬と、高ぶった感情で潤んでゆく瞳。 彼女の全身が言い表せない感情で赤く染まり、羞恥とともに掠れた甘い声が響いた。 震える細い指が、不安定な心の支えを求めるかのように○○の服を掴んで離そうとはしない。 「んっ、ふぁ……」 時折、唇が離れるたびに、鈴仙の掠れきった弱弱しい悲鳴が零れる。 氷が解けるかのように鈴仙の身体の緊張は解きほぐされる。 ○○の熱い吐息が頬に浴びせられるたびに その熱が更に彼女の心に焔を灯す。 純情な兎は襲われながら理解した。 “肉食獣に食われる”ということを。 「はぁ、ぁぅ……!」 ただ当てられていただけだった○○の唇が、更に鈴仙を求め始めた。 まるで蛇のように鈴仙の上唇を、下唇を、頬を首筋を這いまわる。 ぽふっ…… 「んんっ、ぁぁ……」 ○○の身体が鈴仙の細い身体を押し倒し、薄紫の髪が真っ白いシーツの上に舞う。 まだ薬は切れていないはずなのに、○○はそんなそぶりさえも見せない。 鈴仙の頭の横に両肘を着いて、彼女の頭と頬に掌を添えた。 まるで、食らいついた獲物を逃がさないように。 「やっ、やっ、んんっ……」 逃げることのできないまま更に唇を貪られる。 鈴仙の掠れる声が拒絶を色を示すも、心の底では拒絶していないことは明らか。 その証に、彼女の手は○○の身体を掴んで離そうとはしない。 拒絶の声は、ただ少し心の準備を必要としているだけだった。 ただ、心の準備を整え、この熱く甘い時間を十二分に堪能したいだけ。 けれども、彼女の心の準備が整うことはない。 「んぁっ……ふぁぁ……」 陵辱されるかのように、鈴仙の唇は嬲られ奪われてしまう。 鈴仙はただひたすら喜色を孕んだ甘い声をあげ続けることしかできなかった。 そして、ようやく熱い口付けは終わり、二人の唇が離れる。 「はぁ……っ、はぁ……」 熱い吐息と共に、くたりと彼女の両手がシーツの上に転がった。 余りの刺激と、余りの甘さに、精も魂も尽き果ててしまっていた。 「……誤解させちゃってゴメンな、鈴仙……大好きだよ」 力なく横たわる鈴仙に、○○の声が 微笑とともにかけられた。 「うそ……」 思わず、鈴仙は呆けてしまう。 心の底から飢餓していたはずのモノが、実は既に腕の中にあったという事実。 幾度となく夢見てきたことが、余りにもあっさりと自分のものになったという現実―――― 「嘘じゃないし、夢でもないよ……俺も、鈴仙のことが好きだ。 さっき、鈴仙が助けに来てくれて……本当に心の底から安心したんだ」 「……あ……」 「助けに来てくれて、ありがとう。愛してる、鈴仙」 ――――それが決して嘘や幻ではないと、○○の口から告げられる。 ほんの少し前には、不安と恐怖で怯えていた鈴仙の表情。 それは、今や この上ない安らかで幸せな笑顔に変わっていた。 「ありがとう……大好き、誰よりも愛してます。心の底から、あなたを――――」 ○○の胸に顔を埋めながら、鈴仙はただひたすら己の幸福を嬉しんでイチャ。 ・ ・ ・ ――――永遠亭の庭は美しい。 その場所をよく知る者から、そういう声を聞く者は多い。 たまに行われる宴会の場としても、永遠亭はよく候補として挙げられている。 実際、永遠亭の庭には四季の美しさを十二分に引き出す配置や手入れがなされており 和風の建築物の中では、冥界の白玉楼の庭と双璧をなす美しさを持っていた。 ……けれども、そんな美しい庭園の姿は今は見る影もない。 木や瓦といった建築物の瓦礫と、砕けた岩が転がるだけだ。 「○○……」 その廃墟の中、一人の女が佇んでいた。 赤色と青色を基調とする衣服は、あちこちが破れ、焦げ付き…… 陶器のように白く美しい肌には、幾つもの無残な傷の跡が残っている。 「……そう、私は……選ばれなかったわけね……」 女は頭を垂れながら、ぼそり、と静かに呟いた。 その瞳には、何かを焼き尽くすような焔と、悲壮感が宿る。 両極端な感情を胸に秘めながら、女はゆっくりと頭をもたげる。 「……このままでは、終わらせないわよ……」 空に浮かぶ満ちた月を一睨みし、女は動き出した―――― ――――To be continued……『最甘トーナメント 勝者鈴仙 後編』 新ろだ128 ─────────────────────────────────────────────────────────── 鏡の中に映る、極甘な光景―――― 濃厚だが、優しい口付け。 互いを、ただひたすら求め合うような抱擁。 一線を越えない程度に交わされる、互いの気分を高めあうようなスキンシップ。 目に見えるほどにアツアツな二人の愛情は どこか淫らであり また、それを見る者にそこはかとない羨ましさすら感じさせる。 そんな甘い砂糖を具現化したかのような光景。 ある者は、この上ないほどにニヤニヤとした厭らしい視線を送り ある者は、その光景に耐え切れず顔を両手で覆い隠しながらも、指の間から恐る恐るその光景を眺め また、ある者は嫉妬を孕んだ視線を注ぐ。 そんな観客達の反応を見ながら、射命丸文は考える―――― 鏡に映る二人の“愛”そのものに完全に当てられてしまったのは、この集いの主催者である文ですら例外ではない。 はちきれそうなほどに昂ぶる彼女自身の情動と鼓動は、彼女の理性を総動員しても抑えること到底叶わない。 文は その意志の強そうな黒い瞳を輝かせながら 己の思考を一切衣着せずに吐露しはじめる―――― 「気分はどうですか、お集まりの皆さん!? そして幻想郷中の全住人達!! 以・後・一・切! 貴方達に退屈な時間はありません!! なぜなら! あの二人の愛に果ては無く!! 断じて私にも 二人の取材を終わらせる気は無いからです!! さ~~~あ 観ます魅せます イチャイチャ ネチョネチョ イチャイチャ ネチョネチョ イチャつき(フィーバー)タイムのスタートですッ!! 欲望と純愛の確率変動―――― ここから先は…… 延々と口に残る極甘な砂糖を噛み締めるがいいッ!! うふふふふ…… アャ――――っハハハハ!!」 ――――その直後、文は観客に五月蝿いと蹴られた。 ・ ・ ・ 同時刻の鏡の中の世界―――― 即ち、永遠亭の鈴仙の部屋では、互いの想いを打ち明けあった二人が長い抱擁を終えようとしていた。 互いに、名残惜しい部分はあるものの――――自分達の関係と想いは、先に進めなければならない――――そんな意識が、二人にはあった。 「でさ、想いを打ち明けあったのはいいんだけど――――どうしよう」 「え、あの……どうかしたの?」 眉を寄せながら頭を抱える○○に、鈴仙は心配そうに声をかける。 ――――この期に及んで、何を心配しているのか――――と。 無論、鈴仙とて○○の愛情を疑っているわけではない。 ないのだが――――それでも、不吉な予感が頭をよぎり、恐怖してしまうのは 恋する者の性というものであろう。 「いや、好きな人と視線を合わせられないのはさすがに地獄なんだよなぁ……ねえ、鈴仙。狂気の瞳、何とかならない?」 確かに、と鈴仙は悟る。 鈴仙が○○に送る視線は、あくまで一方通行。 彼女の愛情たっぷりの視線に、○○は応えることができるはずもない。 それこそ『自分の想いが届いていないのではないか』という恐怖に、鈴仙は夜も眠れぬほどに怯えていたのだ。 だから、互いに視線を交し合えないということは、二人が前に進むということへの最大の壁であろう。 だが、二人の前に立ちはだかる壁は、余りに大きく、乗り越えることは至難そのもの―――― (地獄、かぁ……喜んじゃいけないけど――――なんだか、嬉しいなぁ……) けれど、そんな壁を前に、鈴仙は『視線を合わせられないことを“地獄”と言わしめるまで愛されている』という事実に頬を緩めてしまう。 それを不謹慎と理解してはいるものの、強い愛情を寄せられて身体の奥から沸きあがる喜びに頬を染めることしか出来なかった。 尤も、彼女はそれを表に出しはしなかったが。 「うーん、さすがにそれは――――」 けれども、どうすれば良いのだろうか―――― 月の兎である鈴仙といえど、狂気の瞳そのものを無くすことなどできない。 それをするには○○か鈴仙のどちらかの目を抉るしか方法は無い。 自分の目ならともかくとして、○○の目を奪うことなど絶対にできなかった。 否――――自分の目も、無くすことはできない。 自分の目を無くしてしまったら――――それこそ、寂しがり屋の彼女は、○○に常時抱きしめてもらい 彼を傍に感じ続けてなければ正気を保てないだろうから。 暫く頭を抱え、考え込んだ末に――――鈴仙の脳裏に“ある記憶”が浮かび上がる。 「――――あ」 「どうかしたの?」 「うん、もしかしたら――――ちょっと、待ってて」 そう言うと、鈴仙はゆっくりと腰を上げ、部屋の隅にある鏡台の化粧棚に向かった。 そして、化粧棚の引き出しを開き、その中を何やらごそごそと探し始めた。 「たしか、ここに――――あった!」 探し始めてから十秒も立たない間に、鈴仙は目当てのものを探し当てたようだ。 ○○の元に戻る彼女の手には、布が一切れ握られていた。 否、布ではない。 本命はその布に包まれたモノであり、それは―――― 「それ――――眼鏡……?」 ――――そう、眼鏡。 縁なしの、何処にでもあるような飾り気も変哲もない眼鏡だった。 理解ができないといった風に眉根を寄せる○○に、鈴仙はさらに告げる。 「昔、師匠にもらったの。この眼鏡をかければ、狂気の目の効果が無くなる……って」 「効果がなくなる?」 「うん、『いつか、あなたの全てを捧げてもいいと想う男が現れたら使いなさい』――――って」 疑問に思いながらも、○○は鈴仙から眼鏡を受け取る。 そして、眼鏡を持ったまま、眼鏡越しに彼女の瞳をちらりと見た。 ……○○の頭を襲い掛かるはずの頭痛は無い。 もういちど、ちらりと鈴仙の目を――――今度は少しだけ長く見る。 けれども、結果は同じだった。 「あ、ほんとだ……なんともない。 “狂気の目を殺す眼鏡”か……永琳ってば、なんだか魔法使いみたいだな――――」 その眼鏡を用いれば、恋人同士として視線を交し合うという極自然な行為をすることができるようになる。 二人の愛を遮る最後の難関は、○○に“魔法使い”と称された一人の天才の手によってあっさりと崩れ去ったようだ。 けれど、二人の前にはもう一つの壁が立ちふさがる。 それは、二人を引き裂く程の力も無く、増してや二人の愛を遮るほどの壁ではない。 壁というよりは、“狂気の目を殺す眼鏡”によって派生的に出てきた ちょっとした“問題”だ。 「――――で、どっちがつける?」 「「…………」」 とたん、○○も鈴仙も沈黙する。 (あなたの眼鏡姿、見てみたい……) (鈴仙の眼鏡姿、見てみたいな……) そう、最後の問題は、『どちらが“狂気の目を殺す眼鏡”をつけるか』ということ。 眼鏡は、その人間の印象をガラリと変えてしまうことを、二人とも理解していた。 だからこそ、互いが互いに全く同じことを思い浮かべる。 ――――自分が想いを寄せる相手が、眼鏡をつけることにより どれほど印象が変わるのだろうか? 鈴仙も、○○も――――愛しい者の別の面を見てみたいという欲望を抑えることができなかった。 だからこそ、二人は考える。 いかにして、相手に眼鏡をつけさせるか。 いかにして、相手に眼鏡を着けさせることを、相手に納得させるかということを。 「ここは鈴仙がつけてみるのもいいんじゃないか?」 「だ、ダメだよ……私はほら、ウサギ耳だから。 だから、あなたがつけてみて」 「…………」 「……ど、どうしたの?」 「ううむ……ウサ耳な鈴仙に、眼鏡の道は遠いのか……!」 どうやら、長く生きている分、鈴仙のほうが一枚上手だったようで―――― 鈴仙と○○の知恵比べはあっさりと彼女に軍配があがった。 「なんか、照れくさいなぁ……」 ぶつくさと呟きながら、○○は渋々といったふうに手に持っていた眼鏡を顔に装着する。 眼鏡そのものには度は入っていないものの――――鼻と耳と視界に纏わりつく違和感に、○○はわずかな不快感を感じてしまう。 「わぁ……」 けれど、鈴仙は○○の変貌にただただため息を漏らすだけだった。 まるで異質とも思えるほど 印象が変わった○○に、感嘆の声をあげる。 「すごく知的な感じがする……」 だが、ガラリと変わった○○の印象に感嘆する鈴仙の声は、○○には聞こえなかった。 「………………」 ○○が鈴仙に視線を向けるたびに、非常に高確率で彼女の狂気の瞳が○○を見つめ返していたのだ。 『目をあわせられなかった』――――それは、即ち――――○○は、鈴仙の顔をまともに見たことが無いということ。 初めて見る鈴仙の容貌に、○○は声が出せない。 さほど手は加えられていないはずなのに 美しく整えられたように見える眉。 瑞々しく熟れきったサクランボを想像させるような薄い桃色の唇。 見る者を虜とするような、自信に満ち溢れた――――けれど、何処か儚げな弱さを併せ持つ赤い瞳。 それらが――――端正という言葉すらも生温い程に、神業めいた絶妙なバランスで、鈴仙の顔の上に整っている。 それに加え、さらさらと絹のような手触りを想像させる美しい薄紫の髪。 ふっくらと、やや控えめに自己主張する胸。 そして、世界中の全ての男の性的欲求をそそらせると口にしても過言ではないほどに、子宝に恵まれそうなやや大きめの臀部と 膝上15cm程度のスカートから伸びるむっちりとした厭らしい太腿。 あまりに美しく、厭らしく、可愛らしい容姿に、○○は息を呑むほどに見惚れてしまう。 それこそ、これほどの美少女が自分に想いを寄せていることなど、夢に違いないと○○に思わせる程に。 「鈴仙……すごく、きれい……」 思わず、○○は自分自身の思考を口に出てしまう。 けれど、鈴仙にとってその言葉は、不意打ち以外の何者でもない。 「え、えっ? ちょ、ちょっとまって! そんなこと――――」 「もっと、よく見せて」 逃がさないと言わんばかりに、○○は鈴仙の頬を優しく掴む。 ふっくらと、人肌の温度に暖められたマシュマロのような頬の感触が気持ち良い。 狂気の瞳の効果が無くなってしまったかわりに、○○は別の意味で鈴仙に狂わされることになってしまったようだ。 それこそ、鈴仙の顔が、いずれは二人の間で交わされるであろう性行為によって淫らに歪む様など――――想像するだけで達してしまいそうになる程に。 「あ、あの……そんな、まじまじと見ないで……恥ずかしいよ」 鈴仙の息が、ゆっくりと荒いものになってゆく。 無理も無いだろう。 逃げることもできぬまま――――まあ、鈴仙には逃げるつもりなど無かったが――――愛する異性に顔をつぶさに覗き込まれているのだ。 この状況で照れずに平常心を保てる者など、そうはいないだろう。 (あああああ、どうしよう。私の顔、こんなに見つめられちゃってるよぉ……) 今、鈴仙を支配している感情は羞恥。 そして、それを遥かに上回るほどの恐怖だった。 彼女にとって何よりも恐ろしかったのは、○○に嫌われること。 だからこそ、『身体や顔を綺麗に洗っておけばよかった』や『少しだけでもお化粧しておけばよかった』などといった後悔が鈴仙の脳裏を駆け巡る。 尤も、そんな鈴仙の感情など杞憂に過ぎなかったのだが。 「……かわいい…………」 二人の間には、もはや会話すらも成立していない。 鈴仙は○○の視線に耐え切れず、頬を 彼女の瞳の色と同じ色に染めあげており ○○は鈴仙の顔の虜と成り果ててしまっていた。 そして、○○は 鈴仙の薄紫の髪を掻きあげ、形の良い小さな耳元にゆっくりと口を近づけ―――― ――――いや、耳? 「な……耳が二つ!?」 「あ」 この時点になって、○○も気づくことができたようだ。 鈴仙の頭の横に、人間と同じ耳があることに。 To be continued…… 新ろだ181 ───────────────────────────────────────────────────────────
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「ただの過労ね……念のためお薬を出しておくわ」 そう言って、女医は戸棚の扉を開けて 中に入っている幾つもの袋の中の一つに指を入れた。 そのまま、しばらく袋の中をまさぐっていたが、彼女が指を袋の中から戻すとその掌の中には十数個の薬の包みが。 そして、掌に握られている薬を小さな布袋の中に全て入れて、机の側の椅子に腰かけている青年に手渡した。 「ありがとうございます、永琳さん」 青年は肌蹴ていた服装を整えながら、女医に一言礼を述べる。 心なしか、青年の顔はあまり血色がなく、あまり体調が芳しくないことが窺える。 「ふふ、気にしなくてもいいわよ」 永琳と呼ばれた女医は、青年に笑顔を作りながらそう言った。 そして、机の前の椅子に腰掛け、サラサラと手慣れた手つきでカルテに患者の症状を書き込んでゆく。 「それよりも、あんまり無理して働き過ぎちゃダメよ。貴方の未来のお嫁さんの為にもね…」 なおも診察結果をカルテに書き込みつつ、青年をからかうように永琳は続けた。 「はは、俺に恋人はいませんよ……ただいま募集中ってやつです」 永琳のからかいを受け流し青年は軽口を叩いた。 でも体には気をつけますよ、と更に付け加える。 「ふぅん……募集中なの」 ふと、永琳のペンが止まる。 そして、何かを噛み締めるように、ゆっくりと、やんわりとそう言った。 僅かな笑みを浮かべたまま、青年を見据える。 「私でもいいのかしら?」 「へ?」 青年の思考が凍りつく。 目の前の女性が、あまりに不可解なことを言ったために理解が追い付かなかったからだ。 「私でもいい?」というのはどういうことなのだろうか、と眼を見開きながら青年は凍りついた思考を緩やかに融かしてゆく。 そして、永琳の発言の前に どのような会話があったかということについて記憶を巡らせる。 その時点になって、ようやく青年は自身が抱いていた疑問が緩やかに氷解してゆくのを自覚した。 しかし……青年はその考えを自分で否定する。 有り得ない――――と、青年は目の前の女性を見つめながらそう考えた。 端正な顔立ちに、大人の色気が凝縮されたかのようなスタイルの良い身体。 サラサラと手触りが良さそうな銀色の輝く美しい髪。 彼女が僅かにでも色目を使えば――――仮に使わなかったとしても――――彼女に言い寄ってくる男など、それこそ星の数ほどもいることは間違いない。 ――――こんなに奇麗な女の人が、自分のような特に取り柄のない男にそんなことを本気で言うはずがない 青年はそう考えていた。 「はは……またまた御冗談を」 顔にややひきつった笑みを浮かべながら、青年は永琳に調子を合せようとする。 「冗談じゃあ、ないのだけれど」 永琳が立ち上がり、足音も無くそっと青年に近づいてゆく。 しかし、青年は動けなかった。 椅子に座ったまま、身じろぎ一つできない。 「あなたが望むなら、私は構わないのに」 ドクン………! いつの間にか、二人の距離はとてもとても短くなってしまっていた。 青年の顔が、上から永琳の透き通るような瞳に覗きこまれる。 永琳のやや紅潮した顔がとてもとても美しくて、永遠にこうしていたいと青年は感じていた。 「か、構わないって……」 ドクン……ドクン…… 青年の心臓の鼓動が徐々に早くなってゆく。 そんな青年の鼓動をさらに速めようと、永琳はさらに身体を青年に寄せる。 そして、座ったままの青年の両肩に手を置いた。 「私は貴方のものになっても構わない……そういうことよ」 ドクン…ドクン…ドクン… 永琳が、青年の首筋に、つぅ……と指を滑らせた。 「うぁ!」 指で首筋を撫でられた驚きと、くすぐったさに青年の身体がビクッと痙攣する。 しかし、それっきり生唾を飲み込むことすらもできずに 青年は動けなくなってしまった。 「……じ、冗談……ですよね? 永琳さんみたいな奇麗な人が、俺のことを……なんて」 「あら、あなたは嘘だと思っているの?」 ドクン ドクン ドクン ドクン… 相変わらず頬笑みは絶やさず、意外そうに永琳は青年に尋ねる。 対し、青年は場の雰囲気に完全に飲まれており、言葉を発することができない。 しかし一方で、青年は永琳の笑みが僅かずつだが危険な色を孕んできていることに気づいていた。 一言で言うならば、妖しい笑み。 それは、まるで悪戯を仕掛けた子供の――――否、違う。そんな生易しいものでは無い。 あえて形容するのならば……それは、蜘蛛の巣に捕えられた獲物を喰らおうする女郎蜘蛛のような――――美しいけれど危険な匂いがする妖しい笑み。 青年は 妙な胸騒ぎを感じ、彼の心臓が――――先程、永琳に迫られた時とは別の理由で――――早鐘を打ち始める。 その本能的な恐怖に耐えられずに、青年が永琳の腕を払い 立ちあがって帰ろうとしたその時―――― ちくっ 青年の首筋に鋭い痛みが走った。 「!?」 続いて、首筋から何かを体内に流し込まれるような感覚が。 虫にでも刺されたのかと、青年は手を首筋に回そうとしたが―――― 「ふふふふふ……」 「う…ぐ…!?」 永琳が妖しい笑みを浮かべるとともに、青年の身体から激しい速度で力が抜けてゆく。 慌てて力を込め踏ん張ろうとしても、破れた風船に息を吹き込むかのように、全身にまるで力がこもらない。 椅子から転げ落ちそうになる青年の肩を、永琳は両手で掴み―――― 「つ・か・ま・え・た」 と、酷く嬉しそうな笑顔を浮かべてそう言った。 さすがに、青年も今自身に生じている異変が 目の前の女性によるものだということを理解する。 「ちょ、永琳さん! 身体が動かないんですけど! てか、あなた一体何を――――」 「だって、貴方ったら逃げるんですもの」 永琳はそう言って、視線は青年に向けたまま 何かを机の上にひょいと放り投げた。 カシャン! 青年の目の端に、中身のない注射器がカルテの上に転がって止まるのが見えた。 「うふふふふふふふ……」 びくぅっ! 再び、永琳が堪えられないかのように笑みを漏らす。 永琳の笑いに驚き、青年は視線を永琳に戻した。 そして、彼女の目を見たとたん、青年の目に恐怖と絶望が宿る。 彼は、一瞬で理解したのだ。 永琳の眼が――――獲物を前にした肉食獣の目そのものだということを。 「ひぃぃ……っ」 青年の本能が――――それこそ、かつてないほどの爆音で――――警鐘を鳴らし始める。 既に指先まで力が全く入らなくなってしまっているが、何としても危機から逃れようと必死に体をよじらせる。 けれども、青年のその動きは全く意味をなさない。 むしろ、捕食者の嗜虐心を更にそそらせるスパイスにしかならなかった。 「ほーら、じたばた動かないの」 「だ、誰か、助けてくれぇぇっ!!」 助かりたい一心で、青年は必死で助けを呼ぶ。 そんな青年に優しげな頬笑みを浮かべながら――――その細い体のどこに力があるのか――――永琳は彼の身体を軽々と抱えあげた。 「ふふ、叫んでも無駄よ」 月の頭脳とまで呼ばれた天才少女に抜かりは一切ない。 青年が蜘蛛の巣―――もとい、この診察室にかかることは既に想定し、既に人払いは済ませてあったのだ。 何よりも―――青年は知らなかったが――――防音加工を施しているこの診察室の中では、如何に声を張り上げようとも外に聞こえることはない。 「よいしょ……っと」 永琳が 青年を簡素な診療台の上に寝かせる。 対する青年のほうも、いい加減助けを呼んでも無駄だと気づいたのだろう。 青年は目の前に迫る肉食獣に完全に委縮してしまっていた。 「お、俺をどうするつもりなんですか!?」 青年の脳裏に、様々な悪夢の光景が流れては消えてゆく。 投薬の実験台にされ、廃人となるか。 生きたまま解剖され、死人となるか。 それとも、妖怪兎たちの生き餌となり、跡形もなく喰われゆくか。 「安心なさい、あなたに打ったのはただの筋弛緩剤よ」 三時間もすれば元に戻るわ、と永琳は続けた。 とはいえ、そんなことを言われても安心できるものでは無い。 その三時間の間に何をされるのかわからない以上、青年の恐怖のメーターが振り切るのも時間の問題と言えた。 「そんなに…嫌なのかしら?」 あまりにも青年の怯えようがひどかったのか、ふと 永琳は彼にそう呟いた。 永琳の悲しそうな表情を目の当たりにした青年の恐怖が僅かに和らぐ。 「……私は 貴方のことを こんなにも想っているのに」 永琳は、右の掌で青年の頬を優しく撫であげる。 そして、頬を紅く染めながら万感の意を込めて永琳は青年にそう囁いた。 恐怖で凍えかかった青年の心が緩やかに暖かくなってゆく そして、事此処に至って、ようやく青年は永琳が本気だということを理解した。 遅ればせながら、青年の鼓動が加速しはじめ、恐怖で青白くなっていた頬が紅く染まる。 それこそ、心臓の音が激しく耳に響いてくるほどに。 それこそ、自分自身で紅く染まった顔が熱いと思えるほどに。 「嫌だと言っても、あなたは私のものにするわ」 永琳はなおも青年に囁きながら、診察台の脇に腰掛ける。 そして、彼女はその艶っぽい唇を耳元に近づけながら…… 「最初は、その唇から」 耳元で妖しく囁かれ、青年の身体が硬直する。 永琳が青年の耳元から唇を離すと、彼は茹で蛸のように赤くなってしまっていた。 「ふふふ、そんなに頬を紅く染めて――――」 そんな青年の頭を優しく撫であげながら、永琳は自身の唇を舐めて湿らせる。 その仕草があまりに色っぽくて、青年の心はますます永琳のものになってゆく。 「――――可愛いらしい人」 永琳の唇が、青年の唇に次第に次第に近づいてゆく。 あたかも、青年を焦らすかのように、その速さは本当に遅かった。 青年の左手の指は、いつの間にか永琳の指に絡め取られており、彼の右頬に永琳の手が添えられる。 永琳の吐息が頬にかかり、そのくすぐったさに身をよじる。 これから来るだろう、甘いひとときに戦慄しながらも、どこか心の奥底では期待しながら青年は静かに目を閉じた。 そして―――― ドタドタドタドタ!!! 「ししょぉぉぉぉ――――っ!!」 スパーン! 激しい足音が聞こえてきたと思ったら、これまた派手な音をたてて障子が勢い良く開かれた。 障子の向こうの廊下には、青年が良く見知った顔が―――― 「鈴仙!!」 青年の助けが今頃通じたのか、ようやく助けが訪れたのだ。 助かった、と青年は安心するものの、その反面 甘い時間が寸前で終ってしまったことにやや寂しさも感じていた。 青年は酷く複雑な心境で救世主を見つめてる。 「……あらあら、人払いしていたはずだったのにねぇ」 ゆっくりと、診療台から降り立った永琳はボソリと呟いた。 その声には怒気が込められており、猛烈かつ獰猛な殺気が周囲を包んでゆく。 「……っ」 青年は永琳のその殺気に気圧されてしまったが、鈴仙がそれに気圧されることはなかった。 その小さな拳を握りしめ永琳をひたすら睨みつける。 いつものいじられキャラの鈴仙は、今の彼女のどこにも見受けられない。 鈴仙にその姿に、青年はこの上ない頼もしさを感じていた。 けれども、動けない自分を助けてくれるはずだった鈴仙の次の言葉は――――― 「ずるいです!」 「は?」 ――――青年の想像の遥か斜め上を超えて、そのまま飛び去っていった。 「わ、私も……○○と…その、キス…したいのに!! 抜け駆けなんてずるいです!!」 永琳の近くまで歩み寄り、自分の師匠を涙目で見上げながら、鈴仙は叫ぶ。 自分の身に纏っているスカートを いじらしく両手で掴みながら、鈴仙は叫ぶ。 その頬は 彼女の瞳と全く色に染まりきっていた。 あまりの事態に青年は言葉を出すことさえもできない。 「待ちなさい」 凛とした声が響くとともに、二人の人物が扉から入ってくる。 「姫様にてゐ!」 今度こそ助かったと青年は確信した。 だが―――― 「主に抜け駆けして恋泥棒とはどういうことなのかしら、永琳?」 「あらあら姫様、恋心と忠誠心は別ですよ」 輝夜と永琳がやんわりとした口調で会話する。 二人とも笑顔だが、青年には言葉での殺し合いが繰り広げられているように見えていた。 「鈴仙もずるいじゃない! 危うく出し抜かれるところだったわ!!」 「ち、違うわよてゐ! 私はただ、師匠を止めに来ただけ!」 そして、てゐは鈴仙に喰ってかかる。 そんなてゐを、鈴仙は声をやや荒げながらなだめていた。 その光景を、青年は茫然と見つめるだけしかできなかった。 「………永遠亭に何が起こっているんだ?」 動かない体のことも忘れ、青年はひどく冷静にそう呟く。 混乱のあまりに、これは夢か思ったほどだった。 だが、青年は知らない。 まだ終わりではないことを。 むしろ、始まってすらいなかったのだ。 「抜け駆けはさせないぞ!」 「○○は渡さない……特にお前にはな! 輝夜ッ!!」 「慧音に妹紅!?」 いつも世話になっている上白沢慧音と、藤原妹紅が診療所の窓から飛び込んできて―――― 「そうはさせないわ!」 「○○は私の獲物よ!」 「夜雀に蛍まで……」 顔なじみの友人でもある、リグル・ナイトバグとミスティア・ローレライが反対側の窓から姿を現した。 おかしいのは永遠亭の中だけでは無い。 永遠亭の近辺に住む者達までおかしくなっている。 おかしくなっているという表現はいささか失礼かな、と青年は考えたものの それ以外に理解ができない現象が生じているのだ。 全員面識はあるものの 今までそんな好いた好かないの話は一切なかったはず、と青年は限りなく困惑する。 ――――何故、いきなりこんなことに? 青年の混乱などそっちのけで、乙女たちはたがいに恋の火花を散らし合う。 「だったら、勝負しましょう?」 その時、このままでは埒があかないと判断したのか永琳が提案する。 「勝負……?」 「いいわね……誰が、○○の心を射止めるかの勝負!」 「いいだろう! その勝負乗った!!」 期せずして、永遠亭の周辺に住まう人物が一同に会し、戦い合うことになる。 「……永遠亭周辺に一体何が起こっているんだ?」 青年は最後まで冷静だった。 しかし、その冷静さも―――― 「そう言うことならば、黙ってはいられないな……」 ――――更にもう一人入ってきた乱入者の前で完膚なきなまでに崩れ去った。 「お、お前は……なんでここに!?」 ・ ・ ・ 時間的に僅かに遡り―――― 「フフフ……ようやく互いに牽制し合うのをやめたみたいですね。待ってましたよ、この時を」 大きな鏡の前に立ちながら、射命丸文はそう呟いた。 彼女の前にある大鏡には、永琳が青年に迫っている姿が映っている。 その大鏡の周囲には7つの小さな鏡があり、その鏡には永琳と青年の下に急がんとする7名の少女たちがそれぞれ映し出されている。 千里眼の能力を付加した鏡……それが、その鏡の正体だった。 「ま、そう仕向けたのは私なんですけどね」 恋に関しては初心者同然の月の頭脳を唆して、青年を襲うように仕向けたのも。 それを他の者たちに伝えたのも……全て、この天狗の少女の仕業だった。 「えー、コホン!」 文は背後に振りかえる。 そして、彼女の背後にいる者たちに向かい―――― 「最甘なひとときが見たいですか――――ッ」 『オ――――!!!』 ――――文の声に、大勢の声が呼応する。 叫び声の主は、紅魔館・西行寺家・マヨヒガの住人…そして、その他の妖怪や、紅白の巫女、黒白の魔女といった面々。 彼女らは皆、この甘いやりとりを生温かい視線で見つめるために集まっていた。 極上に甘ったるい愛の争奪戦を肴にした壮大な宴会を行うために。 「私もです、私もですよ! 皆さん!!」 (いい記事になりそうですしね) 期せずして、千里眼の大鏡の中では 鈴仙が乱入してきていた。 そして、文はここぞとばかりに声を張り上げて―――― 「全選手入場!!!」 一夜限りの、甘い甘い恋のお祭りの火ぶたが切られた。 「女殺しは動けない!! 更なる鈍感を重ね ただの青年は呆けたままだ!!! 普通の人間!! ○○だァ――!!! 超天才薬師の超不器用な愛情表現だ!! 生で拝んでドキドキしやがれッ 恋に狂う月の頭脳!!八意 永琳!!! ほのかな想いなら絶対に敗けん!! いじられ役の純粋な恋心見せたる 健気な純情兎 鈴仙・優曇華院・イナバだ!!! 難題をすっ飛ばして永遠の伴侶とはよく言ったもの!! 永遠の想いが今、○○の前でバクハツする!! 恋焦がれるお姫様 蓬莱山 輝夜だ―――!!! ○○は私のもの 邪魔するヤツは思いきり騙し ○○を幸運にするだけ!! 因幡の恋兎 因幡 てゐ!!! ○○の前でなら私はいつでも純情乙女だ!! 燃える純愛 藤原 妹紅 顔を紅く染めて登場だ!!! 譲れない理由があるッ 想いの歴史が長いのは当たりまえ!! 真の姿はナイショだ!!! 二人の歴史の創造者! 上白沢 慧音がきてくれた――!!! ○○はボーイッシュな魅力で迫ってナンボのモン!!! 愛の蛍少女!! 森の中からリグル・ナイトバグの登場だ!!! ○○を魅了するなら私の歌声がものを言う!! あなただけのラブソング 夜雀の愛 ミスティア・ローレライ!!! 若き店主が入ってきたッ なんでくるんだッ 呼んでないぞ!? ○○をいつでも男幕結界で待っているッ 森近霖之助の登場だ――――ッ 以上、○○を除く9名によって○○争奪戦を行いますッ!! 永夜抄ッ! 最甘トーナメントッッ! 開幕……ッ!」 To Be Continued……『初めてのチュウ 永夜抄最甘トーナメント編』 永遠亭の一室――――永琳の診察室の外では、ひどく派手な破壊音が響いていた。 破壊音だけでは無く、何者かの叫び声、悲鳴、怒号……それはまさに戦場で奏でられるの生々しい大合葬と言えよう。 「外はこの世の地獄かよ……」 時折、稲光のように診察室の障子に光が映り、そして雷のように轟音が響き渡る。 大音量の戦場の調べに、青年はただただ身を竦ませて怯えることしかできない。 何よりも、ごく身近な場所でこれほどの激戦が繰り広げられているのに、筋弛緩剤で身動き一つできないというのは青年にとって想像以上に苦痛だった。 逃げることができない恐怖――――必死で目をそむけようとも現実は変わらないという絶望。 いつしか、青年は現実逃避をするかのように かつての平和な生活に想いを馳せ、必死でそれが現実のものになるようにと祈る。 「なんでこんなことに……」 同時に8人の乙女と1人の男から、想いを告げられた――――現在に比べれば 途方もなく平和な――――数時間前がとてもとても懐かしかった。 ・ ・ ・ ――――2時間程前 全ての始まりは、永琳の一言からだった。 「……普通の人間である○○を守るには、やっぱりそれなりの力が必要よね?」 一口に○○争奪戦とは言ったものの、どういう勝負方法にするかでいきなり彼女らが揉めたのは想像に難くない。 それも当然であり、皆 自分の得意分野で勝負をしたいに決まっている。 彼女たちの想いは、全て紛れもなく本物だった。 だから、彼女たちは何があっても負けるわけにはいかなかった。 永琳は、そんな彼女たちに この世界に共通している揉め事の解決方法――――即ち、弾幕ごっこを 勝負の方法として提案したのだった。 「ぐ……」 夜雀の少女が唸り、蟲を統べる少女の顔が青ざめる。 それも、無理からぬこと―――― 妹紅や輝夜たちに比べ、彼女たちはどうしても戦闘面では数段劣るからだ。 だが、その時―――― 「いいですよ」 強い意志を孕んだ凛とした声が響き、永琳の前に一人の少女が歩み出た。 「ウドンゲ……」 その少女は――――永琳の弟子、鈴仙・優曇華院・イナバ。 「いいのかしら、一切の手加減はしないわよ?」 たとえ姫様でも、貴方であろうともね――――幾分真面目な表情を浮かべながら、永琳はそう言った。 その真面目な表情に、輝夜と鈴仙は永琳が本当の本気を出そうとしていることに気がついた。 普通ならば、戦闘能力において優曇華は手加減している永琳にすら永琳に遠く及ばない。 さらに、本気を出した永琳には輝夜ですら遠く及ばない。 「――――私だって、○○を守りたい想いは誰にも負けません」 どう考えても、優曇華には不利な闘い。 けれども、鈴仙は永琳をなおも見据えたまま一歩も引くことはなかった。 「だから――――」 鈴仙は負けてもいいとは考えていない。 むしろ、勝つつもりだった。 否、勝たなければならなかった。 あなた 「―――― 私は、今日こそ…… 師 匠 を超える!!」 何よりも強い意志を秘めたその紅い瞳が、永琳を射抜くかのように見据える。 彼女の姿を、 「……私も、構わないわ」 ミスティアの目に―――― 「私もだよ」 「私も」 ――――そして、リグルとてゐの目に強い光が宿る。 彼女たちも気づいたのだ。 圧倒的な不利……そんな程度のものに尻込みするほど、自分たちの愛は安いものだったのか――――と。 「そうね、誰が○○を守るに相応しいか……決着をつけましょうか、妹紅?」 「ふん……お前だけは真っ先に脱落させてやるよ」 その傍らでは、輝夜が嘲るような薄笑いを浮かべながら妹紅を見やり、妹紅は険悪な表情をあらわにしながら返す。 「お前とまともに戦うのは、初めてだな……妹紅」 「ふふ…でも手加減は無しだよ? 互いに後悔しないためにね――――」 「ああ、もちろんだ」 慧音と妹紅の二人は、互いに手加減抜きで戦うことを誓いあった。 どちらが勝っても、後悔しないために。 そして、最後の一人―――― 「いいだろう」 香霖堂の店主である霖之助が同意する。 かくして、永夜事変の関係者が―――― 一名無関係者はいるが―――― 一堂に会し 弾幕バトルロワイヤルを繰り広げるというみょんなこととなってしまったのだ。 「俺の意思はどこに……」 ヒートアップする彼女たちに、青年の呟きはもう届かなかった。 だがここで、霖之助以外の全員の前に思ってもみない事態が生じる。 「ふふ、負けられないんでね――――」 すっ―――― 霖之助が、右手をズボンに、左手を上着にかける。。 そして、全身に力を込め勢いよくその服を剥ぎ取った。 「――――僕も久しぶりに本気を出すとしよう!」 バサァッ――――!! 水色を基調とした霖之助の服が――――あたかも、マントを翻すかのように――――彼が腕を勢いよく振るとともに一瞬で剥ぎ取られる。 そして、その服の下から現われたのは、鍛え上げられた鋼のような筋肉と しみ一つない純白な褌一丁だけだった。 少女たち全員が呆気に取られた。 『――――――』 そして、一瞬の後―――― 『き――――きゃあああああああああっ!!!』 怯えを含んだ黄色い悲鳴――――もとい、金切り声を リグル、ミスティア、てゐ、優曇華の4人が発する。 とりわけ、いつも歌ってばかりで発声量に自信があるミスティアの声が特に激しく響き渡った。 永琳、輝夜、妹紅、慧音の4人は、やや頬を赤く染めながらも 不快なものを見たともいわんばかりに目を背ける。 「ふっふふふ……こんなこともあろうかと――――鍛えに鍛えたこの肉体!!」 ムキィッ!! 全く空気を読まずに、霖之助は自身の腕の、胸の筋肉を盛り上げる。 そして、のしのしと力強く歩みを進めながら、未だ呆けたままの少女たちを残したまま診察室から出てゆく。 その場のすべての少女の目に――――この男だけは絶対に勝たせるものか――――と、殺意の光が宿った。 ・ ・ ・ その後、何があったかはあえて語るまでもない。 彼女たちは二時間半にも渡って 文字通り君臣の情も、家族愛も無いようなバトルロイヤルを繰り広げていた。 現実逃避のさなか――――半ば彼女たちに呆れながらも――――青年は一人の少女を思い浮かべていた。 「――――が勝ってくれればなぁ……」 そして、自身がほのかに想いを馳せるその人物の勝利を願う。 「あれ?」 ふと、青年が素っ頓狂な声を上げて目を診療所の障子に向ける。 いつの間にか、叫び声も破壊音も聞こえなくなってしまったからだ。 虫の音すら聞こえぬまま、不気味な静寂が辺りを包んでいる。 終わったのか、と青年が考えたその時。 すっ―――― 静寂の最中、小さな音とともに診療所の障子が開く。 「……誰ですか?」 永琳に打たれた筋弛緩剤のために、未だ診療台から動けずにいる青年は、恐る恐る見えない勝利者を尋ねた。 「ふふふ……」 バトルロイヤルの勝者は笑みを漏らしながら、青年の前に姿を現した。 その者の名は―――― 青年は知る由もなかったが、この戦いは純粋に戦闘能力だけならば永琳が抜きんでていた。 普段、輝夜を上回らぬようにセーブしている力を全力で出せば、その力は妹紅すらも凌ぐ。 永琳が隠している力は、それほどまでに大きなものだった。 永夜事変の関係者全員で10回勝負を行えば、10回とも永琳が他の全員を抑え勝利しただろう。 ……ただ一つのイレギュラーさえなければ。 「さあ、君もこの褌をつけるんだ」 青年争奪戦バトルロイヤルの勝者が青年に迫る―――― その人物は、ほぼ一糸まとわぬ全裸に近い姿―――純白の褌一丁―――で、その手の中には紅い褌を携えていた。 「そして、僕の男幕結界の一部になってくれ」 他の8人は、全て褌を纏った男に倒されてしまったのか、診療所の襖からは、霖之助しか現れなかった。 ――――信じられない 青年は本気を出した永琳が、輝夜や妹紅よりも強いということは知らなかったが、それを差し引いても 全員が全員、そこらの妖怪などでは相手にならぬほど強いというのは幾度となく目にしてきた。 けれども、霖之助の強さはほとんど見たことがない。 いつも魔理沙に良いように振り回されている、ただの道具屋の店主がこれほどの力を持っていたことを青年は知らなかった。 霖之助の褌姿は本日初めて見たけれど、それでもあの面子の中で生き延びることは無いと考えていただけに その驚愕は途方のないものであり―――― 「ぁ…ぁぁ……」 青年の表情に次第に次第に恐怖の色が滲み出てくる。 青年に男色の趣味は無く、まだ筋弛緩剤が効いているため体が思うように動かせない。 逃げようにも逃げられないのだ。 できることといえば、顔を恐怖に歪め 信じられない結末に身を震わせることだけだった。 「ああ、そうか…動けないんだったね」 霖之助が青年に優しく語りかける。 まともな恰好をしてさえいれば、女性ならばそれだけで虜にされるであろう優しい声。 しかし、青年は女性でもないため、怖気しか走らない。 ましてや褌一丁のみを身に纏った男に 迫られ このようなことを言われれば、怖気を通り越して嫌悪しか感じない。 「じゃあ、僕が着せてあげよう――――この褌を」 びくうっ!! 青年の表情が絶望と恐怖に染まる。 それは、二時間前に永琳に薬を打たれたとき以上の恐怖だった。 このままでは……間もなく 青年はズボンを下ろされて、下着を奪われて…… 抵抗も、逃げることすらもできずに―――― ――――嫌だ その時点までは、青年は確かに霖之助に対してそう考えていた。 けれども―――― 男の手が青年の頬に添えられる。 やや、武骨ながらも温かい掌、そして何よりも鍛え上げられた鋼の肉体。 霖之助の鍛え上げられた肉体に、男として憧憬を感じるような奇妙な感覚を味わう。 「ふふ、リラックスしてきているね……」 霖之助の言う通り、青年の身体から力が抜け始めてきていた。 かすかに漂う霖之助の匂いが青年の中の正常な意識を惑わしてゆく。 霖之助の肉体に対する憧れが、惑う青年の意識をさらに惑乱させてゆく。 「嬉しいよ、○○」 眼鏡越しに、霖之助は頬笑みを浮かべる。 その眼はあくまで、いつも落ち着いた霖之助のままだった。 カチャ……! 霖之助の手が、青年のズボンのベルトのバックルに手をかけ、軽い金属音とともにそれを外す。 そして、動けぬ青年の腰に手を回し、彼の身体を僅かに持ち上げた。 シュルルッ…… そのまま、霖之助は青年のベルトを抜き取る。 その、ひどく手慣れた手つきに青年は―――― 「り、霖之助……手慣れてるな」 ――――頬を赤く染めながら、ボソリと呟いた。 彼の頬にさす赤みは羞恥からか、はたまた―――― 「いいや、初めてさ……今だって、ドキドキしすぎて狂ってしまいそうだよ」 霖之助の言葉はあくまで淡々としている。 けれども、青年はその声が僅かに震えていることに気づいた。 やや震える手で、霖之助は青年のズボンに手をかける。 「いいかな?」 霖之助が、青年の目を見つめ優しく尋ねる。 ――――この男の手で、褌を纏うのもいいかも知れない そう考え、青年は新たな世界の幕開けに身を震わせた―――― 「 ん な わ け ね ー だ ろ !!」 「うわっ」 青年が突然我に返り、あらん限りの声を張り上げて叫ぶ。 そして、霖之助は青年の豹変に驚きの叫び声をあげ、後ずさる。 これが霖之助の男幕結界のなせる技か、もう少しで青年は異常な世界に籠絡されてしまうところであった。 「だ、誰か助けてぇぇぇ!!」 そして、青年は必死で叫び 助けを請う。 妖怪イナバでも、毛玉でも、魔理沙でも誰でもよかった。 けれども、もし叶うのならば―――― 「どうしたんだい、いきなり?」 「助けて、――――!!」 ―――― 想いを寄せるあの少女に助けに来てほしかった。 あの9人の中にいた青年の想い人に、彼は必死で助けを乞う。 青年が、心の底からこのバトルロイヤルに勝ち抜いてほしいと願った少女に。 とたん、声も無く霖之助が青年に覆いかぶさってきた。 青年の背を一瞬で冷たいものが包む。 (――――、ごめん……) 貞操が無理矢理奪われることへの諦めの入り混じった眼で、青年は想いを寄せる少女に詫びた。 「間にあった――――」 診察室の入り口から、柔らかな少女の声が聞こえた。 青年の目の前には、相変わらず霖之助の胸板がある。 診療所の入口は霖之助の身体が邪魔をして見えない。 「――――!?」 そして、声も無く 霖之助が診察台から崩れ落ちた。 その背後から、一人の人影が―――― 「あ……」 その人影を、青年は信じられない物を見るかのように見つめていた。 何故ならば、その少女は青年が勝ってほしいと願った少女だったから。 青年が、自身を彼女のものにしてほしいと本気で願った女性だったから。 その者は―――― ①永琳 ②鈴仙 ③輝夜 ④てゐ ⑤妹紅 ⑥慧音 ⑦ミスティア ⑧リグル 『初めての褌 永夜抄最甘トーナメント 勝者 こーりん編』永遠に未完 ① 永琳 薄暗い部屋の一室に短い黒髪の少女がいた。 彼女の側には、映画のスクリーンのような巨大な鏡がある。 しかし、どういうわけだろうか。 その鏡には、周囲の光景は全く映っていない。 かわりに映し出されているのは、とある診察室のような部屋だった。 鏡に映る部屋の中には、診察台に寝かされている一人の青年。 そして、床に崩れ落ちる褌姿の男の姿がある。 「やはり、勝ち残ったのはあなたでしたか……」 黒髪の少女――――射命丸 文が、鏡を眺めながら呟く。 鏡に映る診察室……その入口に、赤と青の衣装に身を纏った少女が佇んでいる。 「楽しませてもらいますよ……永遠亭の天才薬師」 文は彼女の背後を振り返る。 彼女の背後には多くの人影が座りこみ、数多の目が鏡に注がれていた。 その数多くの瞳は一つの例外なく、全てが期待の色に染まっている。 まるで、映画の上演を待っているかのように―――― 静かに開幕を待つ観客を、文は満足げに見まわし、息を大きく吸う。 そして―――― 「幻想郷最愛カップルを目指して何が悪い!!! 」 始めよう 一夜限りの甘い甘い恋の略奪戦争 その最終幕を―――― 「女として生まれ男として生まれたからには、誰だって一度は最強の絆を志すッ! 最強の愛など一瞬たりとも夢見たことがないッッ! そんなカップルは一人としてこの世界に存在しないッッ!! それが心理だ!!! けれど、ある物はふられてすぐにッ――――ある者は恋敵にッ! ある者は運命の悪戯にッ! ある者は種族の差に泣いて!! それぞれが最強の絆をあきらめそれぞれの道を歩んだ…… 人間 妖怪 妖精 毛玉 褌男 ―――― しかしッッッ! 今夜あきらめなかった者がいるッッ!! 偉大なバカップル2人組!!! この大会で誰よりもッ! 誰よりもッ!! のぞ 最高に結ばれあうことを飢望まれた2名!! フ ァ イ ナ ル 永 琳 と 普 通 の 人 間!!!」 ・ ・ ・ 「えー…りん……」 診察台の上で、呆けたように青年は彼女の名を呟いた。 「ふぅ……」 栓がされた試験管を携えながら、永琳は診察室の入口に佇んでいた。 その試験管の中にはドドメ色の液体が詰まっている。 「間にあって、よかった…」 霖之助の背にはドドメ色の液体がべっとりと付着しており、そこからシュウシュウと嫌な匂いのする煙が噴出していた。 ツンとした悪臭が鼻をつき、青年は思わず顔をしかめる。 その液体が、人体にどのような効果をもたらすかは 青年にはわからない。 けれども、相当ヤバいものであることは 容易に想像がついた。 「大丈夫かしら、○○?」 「――――」 あまりに安心したために青年は完全に放心してしまっていたが、永琳をまじまじと見た瞬間 彼女の姿に絶句した。 その赤と青の色彩が入り混じった服は所々が破れ、奇麗な腕の到る所には青痣や切り傷が付いている。 服で隠された所はもっとひどいことになっているのだろう。 彼女自身も肉体的にかなり弱っているようであり、その姿は勝者と呼ぶにはあまりに無残なものだった。 「俺は平気です……でも、永琳さん…大丈夫なんですか?」 「……大したことは…ないわ」 ――――嘘だ 永琳の膝は僅かに震えており、相当に衰弱しているのは明らかだった。 壁にもたれかかって少しでも体力の回復に努めようとしているのが、その証拠。 「ここもあまり安全では無いわね……」 永琳はぼやきながら、青年に近寄る。 けれども、床に横たわる霖之助から鋭い視線を一瞬も外さない。 一瞬たりとも霖之助に油断はしていなかった。 永琳は、ポケットの中からボタンのついたリモコンのような機器を取り出す。 そして、無造作に無く そのボタンを押した。 「○○、私の部屋に行くわよ」 「え? うわっ!」 青年が、永琳の細い腕に再び抱えあげられた。 ガコン! 青年の目の端に、床の一部がスライドしてゆくのが見える。 そして、その床の下には暗く底が見えない穴があった。 永琳は、○○を抱えたまま、その穴の中に―――― 「ちょ……待――――うわああああああっ!!」 青年の身体は、その叫び声と永琳とともに奈落に落ちていった。 ・ ・ ・ どれほど深く落ちただろうか―――― ふわっ…… 暗闇の中を落下する。 恐怖し固く瞳を閉じていたが、不意に奇妙な浮遊感を感じた。 青年は恐る恐る目を開く。 優しい頬笑みを浮かべた永琳が、青年の目に映った。 「ようこそ、私の部屋へ」 ――――ひどく簡素な和式の部屋。 それが、青年が抱いた最初の印象だった。 青年がそう思ったのも無理はない。 そこには、生活に必要な最小限のものしか置かれていないのだ。 けれども、決して寂しい部屋では無かった。 例えて言うならば、大人の部屋とでも言うのだろうか。 無駄を省いてはいるものの、どこか落ち着きを感じさせる部屋だった。 また、部屋の奥にある机の上に可愛らしい熊のぬいぐるみが置いてある。 大人びてはいるが、どこか可愛らしさの残る永琳の性格を現したような部屋だった。 とさっ…… 永琳は、青年を畳の上に横たわらせ、押し入れから敷布団を運び出す。 そして、青年を敷布団の上に寝かせつつ永琳は小さく囁いた。 「少し、ここで待っててね」 見られるのが恥ずかしかったのだろうか――――永琳はさりげなく、机の上のぬいぐるみを押し入れの中に隠す。 そんな彼女の可愛らしさに、青年の胸は高鳴ってゆく。 そんな青年を焦らすかのように、そのまま永琳は部屋の入り口に向かった。 「ど、どうしたんですか??」 「少し汗をかいたのよ……湯に浸かってくるわ。それまで、そこから動かないでね」 「……動けないんですが」 「ふふっ、それでいいのよ」 笑みを浮かべながらそう言い残し、永琳は扉を開けて出ていった。 そして、青年の周りを静寂が包む。 すー…… 心を落ち着けようと大きく息を吸ったとたん、彼女の布団に染みついた永琳の匂いが 胸一杯に充満する。 とても甘くて、いい匂い。 まるで、全身を永琳に包まれているようだった。 「ん?」 そんな最中、青年は自分の身体がかすかに動くことに気づく。 まだ、自由自在とまでは程遠い。 けれども、左手の指が僅かに自分の意志の通りに動く。 右手の指も、両脚の指も然り。 「お、動く…」 青年の身体から、筋弛緩剤が抜けてきているのだろう。 緩やかに時が流れるたびに、次第に次第に青年の身体に打ち込まれた筋弛緩剤の効き目が薄れていった。 まず、脚や手の先端から徐々に動くようになり、次いで全身を覆っていた倦怠感と痺れが消え失せてゆく。 けれども、薬が抜ける度に妙な疑問が青年を苛みつつあった。 (なんでまた風呂に……?) もう、青年の身体からはほとんど身体の痺れが消えている。 その気になれば歩くくらいのことはできるというのにだ。 青年が逃げたら、永琳はどうするつもりだったのだろうか。 トッ…トッ…… 青年の耳に、廊下を歩く足音が聞こえてくる。 それは、次第に近づいて来ていた。 身体を起こしながら、青年は足音の主について考えを巡らす。 この状況で廊下を歩いてくる人物など、一人しか考えられない。 そんな青年の予想を裏切ることなく、足音が部屋の手前で止まる。 そして―――― スッ―――― 襖がゆっくりと開くと、浴衣を身に纏った永琳がそこにいた。 「――――」 しばらく、呆けたように永琳は立ち尽くしていた。 その視線は青年に釘付けになったまま、まるで信じられない物を見ているかのように。 「え、永琳さん、どうしたんですか?」 永琳に声をかけながらも、青年の心臓は爆発しそうなほどに早鐘を打ち鳴らしていた。 無理も無い。 身体を上気させた永琳の色っぽさは、普段の彼女のそれとは比較にならなかった。 いつもはみつ編みにしている髪は下ろされており、水分を吸った髪の艶やかな色がとても美しい。 そして、赤みを差した肌のが艶やかさを醸し出している。 さらに、胸元の浴衣が少し肌蹴ているために永琳の豊満な胸がちらちらと覗き、青年の情欲をふつふつと滾らせる。 それを直視するのを躊躇い、視線を下に逃がすものの、今度は浴衣からちらちらと覗く艶めかしい脚が視界に飛び込んでくる。 たまらず、永琳から視線を離そうとしても、青年の心に湧きあがる本能的な何かがそれを許さない。 対する永琳は、青年の視線などお見通しなのだろう。 湧き上がる喜びを無理に抑えつけているような頬笑みを浮かべている。 「なんでもないわ……ただ、一つ聞きたいのだけれど――――」 「なんですか……って、ちょ、ちょっと永琳さん!?」 永琳はゆっくりと青年に近づいて行き、膝を折って青年の側にしゃがみ込む。 そのまま、青年に身体を寄せ、その頬に細く奇麗な手を添えた。 「もう薬は切れているはずなのに 逃げないということは――――期待しても、いいのかしら?」 湯で火照った暖かな掌が、そして熱い身体が、青年の身体に当てられた。 ――――熱い けれども、とても心地の良い熱さだった。 永琳の熱い肢体に、青年の身体が焼かれていく。 石鹸の匂いと永琳の匂いが混ざり合い、甘い香りが青年の思考を侵食してゆく。 「あ、あの永琳さん…少しでいいので、待ってくださ……」 我ながら度胸のない言葉だ、と青年は考えるもののそれ以外の行動が取れない。 薬の効果で動けないのではなく、永琳が醸し出す雰囲気が動きを封じている。 「ダメ……人間はすぐに死んでしまうもの。一秒でも、無駄にしたくないの。 それにね――――もう、我慢できない。今日は時間がある限り、あなたに甘えて、甘えられていたいの……」 「…………」 青年の懇願を却下し、耳元で永琳は小さく囁く。 心臓の鼓動はすでに爆発寸前だ。 このまま永琳に耳元で囁かれると、本気でどうにかなってしまいそうだった。 「あ、あの」 「なにかしら?」 「……どうして、わざわざお風呂に?」 そんな質問の答えなど、本心から聞きたかったわけでは無い。 ただ、自分のペースを少しでも取り戻そうとする為の時間稼ぎだ。 「馬鹿ね……女はね、好きな人の前ではいつでも綺麗でありたいものなのよ。 それに、戦いで汚れた身体……貴方にだけは見ていられたくなかったから」 言葉とは裏腹に、永琳は優しい笑みを浮かべながら青年に囁く。 溢れんばかりの純粋な想いを受け、青年はペースを取り戻すばかりか ますます永琳に籠絡されてゆくのを自覚した。 「あなたが、大好きよ」 ド ク ン !! それは、まさに最高の殺し文句だった。 しかも完全に不意打ちだったのが、青年には致命傷だった。 ど真ん中ストレートな愛情表現だった。 頬が、体が熱くなっていくのを青年は自覚してゆく。 「ふふ……そんなに頬を紅く染めて、本当に可愛らしい人。さっきの続き――――してほしい?」 畳みかけるように耳元で囁かれ、青年はくすぐったさに身を竦める。 永琳はそんな青年の腕を軽く掴み、逃がさない。 もう一度、青年の耳元で永琳はゆっくりと囁く。 「 し て 、 ほ し い ?」 「………」 青年に断る理由など無い。 コクリ…… 「してほしかったら、私を名前で呼んで」 青年を焦らすかのように、永琳は 「え、永琳…さん……」 はむっ 「ぅぁっ!」 突然、永琳が耳を食み、青年は悲鳴を上げる。 耳の裏側に温かい息がかかり、くすぐったさに身をよじらせる。 けれども、永琳から逃げることはできない。 「違うでしょう? もう一回」 あたかも、これは罰だとでも言わんばかりに永琳は蠱惑的な声で囁く。 「え、えーりん…さん……」 今度は、チロチロとくすぐるように耳に舌先が這わせられる。 ゾクゾクするような甘い快楽が青年の全身を包み、青年の身体から力が抜けてゆく。 言われるままに名前で呼んでいるというのに、何が間違っているというのだろうか。 「ちょ、やめ……えー…りん……」 やめてくれ、と青年は言おうとする。 だが、その言葉は最後まで紡がれることはなかった。 それほどに、青年は永琳に耳を舐めしゃぶられることに翻弄されてしまっていた。 「……え?」 青年が小さな声を上げた。 突如、青年の耳を舐めしゃぶっていた永琳の舌が止まったのだ。 そして、理解した。 永琳の舌が止まったことから、正しい回答が何なのかを。 「……もう一回」 「えーりん……」 青年は、正しい答えで再び永琳を呼ぶ。 永琳の顔にこの上ない幸せそうな笑みが浮かび、彼女は青年の耳から唇を離した。 「よくできました……これはご褒美よ」 「――――ん…っ!?」 永琳が青年の唇を奪う。 そのまま、青年の唇は、永琳の舌に割り開かれてゆく。 互いに、情欲のままに舌と唾液を交わし合う。 青年は永琳の求愛に負けずに彼女の唇を求める。 しかし、あまりにも永琳のキスが上手すぎる。 もし、永琳が戦いによって消耗していなかったら、おそらく青年はされるがままになっていたはずだ。 きっと、幾度となく素敵な恋をして、素敵なキスをたくさんしてきたのだろう。 自分以外の男に永琳の唇が奪われたと考えるだけで青年の心は嫉妬で焼き尽くされる。 けれども、そんな嫉妬も永琳の唇に優しく蕩けさせられる。 この上なく熱い、濃厚なキスだった。 だが、熱いのはキスだけでは無い。 青年と永琳の身体も次第に熱くなってきている。 青年は興奮で、永琳は湯上りの熱い身体もあり、互いに熱を高め合う。 そして、長く長い時が流れ、永琳が青年から唇を離した。 「どうかしら?」 「頭が…くらくらして……」 「ふふ……よかった。初めてのキスだったから、少し心配だったの」 「は、初めて!?」 辛うじて「嘘だ」という声を呑みこんだ。 初めてにしては、あまりにも上手すぎる。 「経験はないけれど 知識はあるもの」 「…………」 「ふふ、安心して…私は最初から貴方だけのものだから……」 あまりの愛しさに、永琳をいつの間にか抱きしめていた。 柔らかな身体の感触が気持ちいい。 熱い身体の感触がたまらなく心地よい。 「…えーりんさん?」 ふと、永琳に目をやると、いつの間にか彼女はスースーと寝息を立てて寝入ってしまっていた。 永遠亭の影の主とも呼ばれる彼女の、ここまで無防備な姿は初めて見る。 けれども、そんな無防備な永琳がなんだか可愛らしかった。 「おやすみ、永琳」 青年は、柔らかいその頬に優しく口づけた。 ・ ・ ・ 「二度とッ……ある意味、二度とこんな大会は見られないでしょうッッ!! 9度に亘る熱い愛の逢瀬は――――ただの一度とて凡庸な内容はありませんッ! 全ての抱擁がッッ! 全てのキスがッッ!! そして全てのイチャつき行為が………ッッ!!! イカしてたァッッ!!!! 幻想郷の世界において「何の能力も持たない人間」ということが――――あるいは惰弱だとの声もあるでしょう。 しかし覚悟を決め快く愛を受け入れる青年の表情の―――― 己の愛が届かず敗北をうけいれる褌男の表情の―――― 傷つき勝利をてにした少女の表情の―――― そのどれもが我々の心を突き動かさずにはおきませんッッ!! イチャイチャしようとする姿は――――かくも美しい!!! 「イチャつく」ことは美しい!!! 「イチャつく」ことはスバラシイ!!! アリガトウ青年ッッ!! 愛あるイチャイチャ イズ ビューティフル!!!」 『初めてのチュウ 永夜抄最甘トーナメント 勝者 永琳編』end ④ てゐ ――――④てゐ 「てゐ!!」 「ふふっ、助けにきたよ 王子様♪」 青年の視界から霖之助の身体が消える。 崩れ落ちる霖之助の背後から、少女の姿が見える。 愉快そうな口調で、少女――――てゐは診療所の入口に立っていた。 その表情は余裕と自信に充ち溢れいる。 背は小さく、普段はあまり強そうには見えない てゐ―――― けれども、青年には そんな彼女が 何よりも頼もしく見えていた。 「た、助かったよ……」 あまりに安心したために青年は完全に放心してしまう。 無理もない。 あと僅か、てゐの助けが遅れていれば、青年はその身を穢されていたに違いなかった。 「……あれ?」 「どうかした?」 青年がてゐの姿を見る。 彼女の身体は穢れ一つなく、その姿がとても頼もしい。 けれども、そんなてゐの姿に 青年は訝しげな視線を向ける。 「外であんな派手な戦いやってた割には、無傷なんだな?」 「う……」 そう、それが青年の目には奇妙に映っていた。 アレほどの戦いがあった割に、てゐの身体には傷一つない。 服に汚れすら付いていないのだ。 あのメンツの中でまともに戦って傷一つないというのは、あまりにもおかしい。 となれば―――― 「――――さては、漁夫の利を狙ってたな?」 おそらく、全員が互いに消耗戦を繰り広げた末に、最後に残った一人倒そうとしていたに違いない。 青年は確信めいた推測を持って彼女に問い詰める。 「う゛……」 彼女が気まずそうに呻き声をあげる。 それが、青年の想像が正しいという何よりの証拠だった。 「う、うるさいわね!」 ムキになって、青年にがなりたてるその姿は――――まるで幼い子供が癇癪をおこしている姿そのものだ。 青年よりも遥かに長く生きているというのに、子供ような愛嬌をも持ち合わせる少女。 そんなてゐが 青年には何よりも可愛らしく見えていた。 「まったく……策士と言って欲し――――」 怒りを露にするてゐの表情が凍りつく。 「ん? どうした?」 表情を強張らせるてゐに、青年が声をかけた瞬間―――― 彼女の凍りついた表情は、一瞬で激しい緊張に強張った。 「え?」 突如として、てゐの姿が青年の視界から消える。 どたんっ…! 「うわっ!?」 身体のすぐ側に衝撃を感じ、青年は身を竦ませる。 衝撃の方向に目をやると、ちょうど顔のすぐ横に てゐの細い脚が見えた。 「て、てゐ?」 彼女は消えたのではない。 目にもとまらぬ速さで跳び、診療台の上に着地したのだ。 「逃げるよ! ○○ッ!!」 そう言われるや否や、青年はそのまま 赤子が背負われるように抱えられる。 彼女の細腕の どこにそんな力があるのか、と青年は考えたがそれすらも一瞬のことだった。 「うわっ!!」 突如として、てゐは青年の身体を背負ったまま診療台から飛び降りる。 そして、文字通り脱兎の如く診療所の扉に走った。 「ちょ、てゐ! 何やってるんだ!?」 動けない青年は、彼女に振り落とされたら受け身すら取れない。 そのため、必死に彼女の背中にしがみつこうとし、身を竦ませることしかできなかった。 増してや、てゐが何をやろうとしているのかすらわからない今、 「喋らないで! 舌噛むよ!!」 彼には、何故てゐがそんなに慌てているのかわからない。 しかし、青年はふと背後から視線が向けられているの感じる。 振り返ろうとしても、身体が麻痺しているために振り返ることができない。 「――――褌ハ、嫌ナノカナ?」 感情の籠らぬ、男の声が背後から響く。 その声は小さく、低い声だった。 けれども、その声は悲哀と嫉妬に充ち溢れていた。 「――――!!」 彼は、てゐが逃げようとしていた理由を一瞬で理解した。 霖之助が、目を覚ましたのだ。 青年の背に突き刺さる、視線が恐ろしい。 診療所を飛び出したところで、霖之助の視線も感じなくなった。 それでも、霖之助はいずれ追い付いてくる。 そう思わずにはいられないほど、それは冷たく恐ろしい視線だった。 「少し飛ばすよ! ○○!!」 既に、てゐは青年を抱えながら永遠亭の出口まで差し掛かっていた。 あとわずかで、迷いの竹林に逃げ込むことができる。 竹林の中はてゐに地の利がある。 霖之助の視線はどこからも感じない。 振り切ったか、と青年は考えた。 しかし―――― ヒュゥゥゥゥゥ―――― 青年とてゐの耳に、風を切るような音が聞こえる。 「なんだ…?」 奇妙な風切り音はどんどんと大きくなってゆく。 そして―――― ドゴォォォォン!! 「きゃああっ!!」 「うわぁっ!?」 竹林に派手な閃光と爆発音が響いた。 霖之助に何の武器で攻撃されたのか理解できずに、爆風に二人は吹き飛ばされる。 どしゃっ! 「っぐぁ!」 動けない青年は、受け身も取れずに直に地面に叩きつけられる。 痛い。 死ぬほど痛い。 「はぁ……っ……はぁ…っ……○○、大丈夫…?」 てゐが青年によろよろと駆け寄ってくる。 彼女の姿を見た瞬間、青年は思わず絶句した。 額の、脚の、腕の――――全身の至る所から赤い血がだらだらと流れ出している。 「ぐぅぅぅ……っ!!」 てゐは歯を食いしばって、呻き声を上げながら青年に向かって歩く。 そして、青年の身体が、再び抱えあげられる。 全身に傷を負い――――それでもなお、彼女は青年を抱え逃げのびようとしているのだ。 「てゐ! もういい、俺を置いて行け!!」 青年は、たまらず叫んだ。 霖之助の目的は、自分自身のはずだった。 青年が残れば、きっと霖之助はこれ以上てゐに危害を加えることはない。 その確信を持って、てゐに自分を置いて行くように叫んだ。 「……だよ」 あまりに痛いのだろう。 てゐは苦痛にぽたぽた涙を流しながらも、再び走り出した。 その小さく細い体にはあまりに重い、青年の身体を抱えたまま―――― 「てゐ!?」 「……いや…だよ」 苦痛に涙しながら―――― 迫りくる霖之助の姿に恐怖しながら――――てゐは走る。 「渡したくない……」 「――――」 「○○は……絶対に誰にも渡したくないの……!!」 ・ ・ ・ あれから、たっぷり一時間半も逃げただろうか―――― 奇麗な泉の側に、てゐと青年はいた。 すぐ傍には奇麗な湧水がこんこんと湧きだし、泉に流れ込んでいた。 既に筋弛緩剤の効果は切れており、青年は自前の手拭いに湧水を含ませる。 冷たい水が手に突き刺さるが、青年はそんなことを意に介している暇はなかった。 「はぁ……はぁ……」 「大丈夫か、てゐ?」 霖之助の追撃をようやく振り切ったと確信したのが、この泉にさしかかったところだった。 しかし、てゐの身体はすでに限界を超えていたのだろう。 この泉の側で崩れるように倒れてしまった。 霖之助の攻撃による傷はそれほど大きくはない。 しかし、原因はわからないが それ以上に彼女の衰弱が激しかった。 おそらく、目に見えない大きな傷を 身体のどこかに負ってしまったのだろう。 「…苦しい…よぉ……」 うわごとのように呻き声をあげるてゐ。 未だかつて見たことも無いほどに、苦しそうな表情を浮かべている。 けれども、青年はそんな彼女の身体についた傷を、手拭いで申し訳程度に清めることしかできない。 このままでは、確実にてゐは―――― 脳裏に浮かぶ最悪の光景を必死で打ち消しながら、青年は必死にてゐを救う方法を考える。 けれど何を思い浮かべようとも、それを実行するだけの力が青年には無かった。 ―――― せめて、薬でもあれば…… 青年は自分の力の無さを悔いていた。 助けを求めることすらもできない、己の無力さを。 けれども、その時―――― 「――――!」 青年の脳裏に、これ以上ない助けが思い浮かんだ。 彼が、永遠亭に来た理由は何だったか? そう、体の調子が悪かったためだ。 その時、永琳は何を青年に渡したか? そう、青年は過労のための薬を永琳から受け取ったはず。 青年は、ズボンのポケットを探った。 ――――ある。 ポケットの中から、小さな袋を取り出す。 この薬を使えば、傷はともかく衰弱のほうは何とかなるかもしれない。 けれども、一瞬だけ青年の脳裏に恐ろしい想像が浮かぶ。 「人間のために作られた薬を妖怪に与えても大丈夫なのか?」ということを。 「う……ぁぁ………」 青年はてゐを再び見る。 顔を蒼白にさせながら、荒い息をついている。 時折あげる呻き声がとても痛々しく、見ているだけで青年の胸まで痛くなる。 ―――― 他に方法はない。 一か八か、賭けるしかなかった。 青年はてゐを抱き抱え、湧水の側まで運んだ。 「てゐ、薬だ……」 青年は、てゐを抱きかかえたまま 片手で薬の包み紙を開いてゆく。 薬の包み紙の中にある白色の粉薬を彼女に飲ませようとする。 「う…ぅ……」 「飲んでくれ」 そして、水を手ですくい彼女の口元へ寄せる。 けれども、その水も薬も彼女の口の中に入ることはなかった。 てゐの唇の端から、零れ落ちてしまうのだ。 彼女には、もう薬を口にする力も無いのだろう。 「――――ごめん」 一回だけ、青年はてゐに謝る。 そして、彼は水を口に含み、薬の包み紙の中にある白色の粉薬を自分の口腔内に放り込む。 もう一度、口に薬と水を含んだまま青年はてゐを見やる。 容態は先程と変わらず最悪の様子だ。 てゐの紅い瞳は既に虚ろになってきている。 もはや、半ば意識も無いのだろう。 彼女には、青年がこれから何をやろうとしているかすらわかっていないに違いなかった。 想いを寄せる少女に、これから このようなことをするという悦びと…… 同意も得ずに、このようなことをしなければならない罪悪感に苛まされながら、青年はてゐの唇に自分の唇を寄せる。 そして、青年は――――てゐの唇に自分の唇を押し当てた。 口に含んだ薬を水とともにてゐの口の中に流し込むために。 「ん……」 てゐが小さく声を上げる。 なんて、柔らかいんだろう。 ずっとこのまま、彼女の唇を貪っていたい。 そう思わせるほどに、彼女の唇はとても柔らかかった。 けれども、青年はそんな邪念を必死に頭から消そうとする。 弱っているてゐに口づけして喜ぶなんて…最低な行為だと頭の中で自分自身を罵る。 けれども、てゐの瑞々しい唇が、惑う青年の邪念を増幅してゆくばかりだった。 激しい葛藤に悩まされながら、青年は薬をてゐの口の中に送り込んでいった。 青年は薬を一気に流し込むことはしなかった。 一気に薬を流し込めば、彼女がむせてしまうからだ。 ゆっくりとゆっくりと彼女の口の中に薬を流し込む。 ある程度の量を流しこんだら、唇を離して彼女が薬を飲み込むのを待った。 こくっ…… てゐの咽が蠕動する。 こくっ、こくん…… ほどなくして、てゐは彼女の口の中の薬を全て飲みこむ。 再び、同じ要領でてゐの口に薬を流し込む。 ゆっくりと、ゆっくりと青年の口腔内の水がてゐの口に流し込まれてゆく。 そのまま、青年は薬を全ててゐの口の中に注ぎ込んだ。 (よし……!) あとは、てゐの容態が落ち着くまで待つしかない。 そう考え、青年が てゐから唇を離そうとした瞬間―――― 「んぅっ!?」 青年が、悲鳴ともつかぬくぐもった叫び声をあげた。 青年の表情が驚愕に歪む。 それも無理も無いことだった。 ぐったりとして動かないてゐが、いきなり青年の唇を求めだしたのだから。 驚きつつも 青年は、てゐをつき離れようとする。 しかし、彼女の両腕が青年の頭をしっかりと掴んでいるため、逃げることができない。 その細い腕のどこにそんな力があるのだろうか。 けれども、襲い掛かられるように激しく求められるのが、嫌では無かった。 いつしか青年は津波のように襲いかかるてゐの情欲に呑まれてしまった。 そして、求められる快楽にゆっくりと目を閉じる。 てゐの舌は青年の口腔内をまさぐってゆく。 怯えるように引っ込んでいる青年の舌はすぐに探り当てられた。 そして、舌をてゐの舌先にチロチロとくすぐられる。 まるで、彼女が青年の緊張をほぐしているかのように。 てゐの柔らかい舌に理性を、甘く、優しく蕩かされてゆく。 しかし、そんな青年の心を裏切るかのように―――― 「え……?」 ――――てゐの唇が青年から離れる。 「うわっ…!」 てゐの小さな身体が、青年にのしかかってくる。 そのまま、青年はてゐに馬乗りにされてしまった。 青年を見降ろしながら、てゐは笑みを浮かべていた。 その時の彼女の眼を、青年は生涯忘れないだろう。 あたかも、計画通り と言わんばかりの、邪悪な笑みを孕んだ目。 「……くふふふふ」 心底、愉快そうにてゐは笑う。 さすがに青年も、事此処に至ってようやく気付かざるをえなかった。 「……弱ってるふりしてたな、お前…?」 自分が、まんまとてゐの名演技に騙されてしまったことを。 「騙されてくれて、ありがとう……○○」 「いつから騙してたんだ?」 苦々しい表情を浮かべ、青年はてゐに問う。 彼女に騙されるのは、すでに慣れてはいたものの、ここまで激しく騙されたことはない。 「最初からだよ……霖之助の攻撃を喰らったように見せかけたのもそうだし 派手に怪我したように見せるために血糊を使ったのもそうだし 本気出せば簡単に逃げられるけど、1時間ばかりわざと捕まらない程度に逃げたのもそうだよ。」 「………」 青年の上に乗ったまま、てゐはベラベラ種明かしを始める。 よくもまあ、そこまで悪知恵が働くものだと逆に感心してしまう。 「全ては、弱ったふりして○○に口移しで薬……もとい、キスしてもらうためだもん」 てゐはそう言ってネタばらしを締めくくった。 頬をやや赤らめながら、とても幸せそうに微笑む彼女は可愛らしい。 この上なく可愛らしいのだが、その可愛らしさは魔性を孕んでいた。 見た目は人畜無害なウサギさんでも、彼女の心は小悪魔だった。 それも、紅魔館の小悪魔よりもタチが悪い。 「私のために必死になる姿……すごくキュンときたよ」 万感の思いを込め、てゐは青年に顔を寄せてそう囁く。 白いウサギさんの頬は、さらに赤く染まっていた。 「………」 「お礼を、してあげるね――――」 てゐがその可愛らしい小さな顔を 更に青年の顔に近づける。 「――――って、あれ……?」 その動きが、途中で止まった。 「今度は、どうしたよ……?」 「か、体が……痺れて……」 青年の目にも、てゐの身体が小刻みに震えているのがわかった。 けれども、アレほど派手に騙された後で再び引っ掛かるほど青年はお人好しでは無い。 「今度は何の罠だよ……」 「ち、違うよ……本当に体が……」 やや苦しげにそう言いながら、てゐは青年の身体の上に倒れ込む。 青年は、てゐのその姿を見てため息をつきながら、ふと視線を横に巡らせた。 そこには、薬の袋が転がっている。 「ん?」 その袋から、薬の包み紙以外の紙がチラリと見えた。 なんだろう、と思い 袋に手を伸ばしてその紙を摘む。 その紙には、数行の文字が書かれてあった。 <この薬は人間用です。妖怪には飲ませないでね。 えーりんより P.S 妖怪が飲んでも死なないけれど、身体の痺れなどの効果が出るから気をつけてね。> 本当に霖之助の攻撃によって彼女の身体が傷ついていたら恐ろしいことになっていた。 そう思い、青年はわずかに胆を冷やす。 けれども、それ以上に―――― 「ふーん、そーかそーか…… 動 け な い の か ぁ ……」 ―――― 動けない彼女を目の前にして、心が躍っていた 考えてみれば、青年はこのウサギの少女に事あるごとに騙されてばかりだった。 けれども、てゐは 青年の身体の上でその発育途上気味な肢体を痺れさせている。 青年にとって、これは またとないチャンスだった。 そんな彼女に、これからどんなお仕置きをしてやろうかと想像するだけで、ゾクゾクするようなとした歓喜が全身を包む。 「よっと」 「きゃ!」 青年は、てゐを身体から引きはがし その場に横たわらせる。 まな板の上に乗った哀れなウサギさんに舐めるような視線を送りながら 舌舐めずりをした。 「え、えーと……○○、目が怖いんだけど?」 「人を死ぬほど心配させてくれやがって……」 対し、てゐはやや怯えを孕ませた視線を青年に向ける。 その表情は、さながら狼に喰われようとしているウサギさんそのものだった。 「 お 仕 置 き だ な ぁ ……」 「や、ちょっと…やめ――――」 襲いかかろうとする青年の姿を目の当たりにし、てゐは恐怖に瞳を閉じる。 さすがのてゐも、事此処に至っては 自分の行いを反省せざるを得なかった。 ただし――――反省しつつも、てゐの心にはどこか求められることへの喜びはあったのだが。 ふわっ…… 「――――え?」 てゐの上半身が引き起こされるとともに、彼女の背中に温かいものが当たる。 予想外の感触に、てゐが目を開けるが 、目の前には誰もいない。 けれども、てゐの背後から とても温かい声が聞こえていた。 「俺もまだ完全には体が動かないし……最近冷えてきたしな」 「……ぁ…」 てゐの目の端に、優しい青年の顔が映る。 「しばらく、こうしていようか。お仕置きは、また今度ということで」 青年はそう囁き、座ったままてゐの身体を背後から優しく抱きしめた。 てゐの心を温かいものが包んでゆく。 てゐは、まるで身体とともに心まで包まれているかのように感じていた。 「今回は、本当に肝が冷えたぞ……もう、冗談でもあんなことやらないでくれよ?」 「……うん」 てゐは、頷いたまま動かなくなってしまった。 青年には、その理由がわかっている。 胸に当たるてゐの心臓の鼓動が、激しく蠕動している。 きっと、優しく抱きしめられて緊張しているのだろう。 そう考えるだけで、青年は今にもてゐを押し倒してしまいそうだった。 それほどに てゐは可愛らしかった。 「ね、○○……」 ふと、てゐが俯きながら、青年に声をかける。 「ん?」 「……大好き」 青年は、呆気に取られた。 キス一つにあれやこれやと手を尽くすような少女の、いきなりの愛情表現に言葉を無くしてしまう。 「こ、今度という今度は全然嘘じゃないからね! 別に騙そうなんてしてないんだから――――」 また嘘だと思われたのだろうか――――てゐは焦るように早口でわめく。 「俺も、大好きだ」 そんな子供のようなてゐの姿に、青年は苦笑してしまう。 なんて、可愛らしいんだろう、と―――― 「ほ、本当……?」 「ああ…」 青年は、背後からてゐの頬に口づける。 とたん、長い耳が緊張でふさふさと震える。 そして、因幡の白いウサギさんは羞恥と喜びに頬を赤く染めた。 二人の甘い時間は終わらない。。 数多の竹の隙間から差し込む月光が二人をいつまでも包んでいた。 『初めてのチュウ 永夜抄最甘トーナメント 勝者 てゐ編』end うpろだ462・466・467・507 10スレ目 157、232、239 ─────────────────────────────────────────────────────────── ――――最甘トーナメント 勝者鈴仙 前編 「まさか、あなたが勝ち残るとは……いじられ役の意地と底力を見せましたか」 薄暗い部屋の一室――――黒い髪の少女が、そう呟いた。 彼女の側には、巨大な鏡が壁に立て掛けられていた。 ――――しかし、どういうわけだろう。 その鏡には、周囲の光景は全く映っていない。 かわりに映し出されているのは、とある診察室のような部屋の光景だった。 その部屋の中には、診察台に寝かされている一人の青年。 床に崩れ落ちる半裸となった褌の男。 そして、部屋の入口にウサギの耳を持つブレザー姿の少女が佇む。 「楽しませてもらいますよ……月の兎」 黒髪の少女――――射命丸 文が、鏡を眺めながら呟いた。 そして、背後に振り返る。 そこには、多くの人影が座りこみ、数多の目が鏡に注がれていた。 その数多くの瞳は一つの例外なく、全てが期待の色に染まっている。 まるで、映画の上演を待っているかのように―――― 静かに開幕を待つ観客を、文は満足げに見まわし、息を大きく吸って―――― 「先の戦いにより、永遠亭は致命的とも言える大損害を被ってしまいました」 ―――― 一夜限りの甘い甘い恋の略奪戦争――――そのグランドフィナーレの幕をあげた。 「奮戦虚しく、多くの宝物と貴重な薬品が失われ、正に精も根も尽き果てんばかりでした。 けれど……見渡してみてください。 この迷いの竹林に在っても尚、逞しく花咲かせし優曇華のごとく、甦りつつある彼等の愛の絆を。 傍らに立つ戦友を見てください。この期に及んで尚、その眼に激しく燃え立つ気焔を。 彼等を突き動かすものは何なのでしょう。 そして、満身創痍の彼等が何故再び立つのでしょう。 それは、全身全霊を捧げ愛に身を捧げる事こそが、伴侶ある者に課せられた責務であり、愛に殉じた者への礼儀であると心得ているからに他なりません。 永遠亭の庭に眠る者達の声を聞いてください。 竹林に吹き飛ばされた者達の声を聞いてください。 褌仲間を増やそうと散った者の声を聞いてください。 ……彼らの悲願に報いる刻が来ました。 そして今、青年少女が旅立ちます。 恋心届かなかった輩と、我等の好奇の視線を一身に背負い、思う存分イチャつこうとしているのです。 歴史が彼等に脚光を浴びせる事が無くとも……我等は刻みつけましょう。 所構わず愛の逢瀬を交わし合う彼等の雄姿を、我等の魂に刻み付けるのです。 ……イチャつく青年と少女よ。 諸君に戦うコトを強制した我等を許すな。 諸君を戦に巻き込んだ我等の悪戯心を許すな。 ……願わくば、諸君の心のふれあいが、我等の飢える心の清涼剤とならん事を――――」 ・ ・ ・ 数分後―――― 「よいしょ……っと。ここまでくれば、もう大丈夫よ。 ……まだ、動けない?」 「いや、大分マシになった」 ○○は、鈴仙に支えてもらいながら、何とか彼女の部屋までたどり着くことができた。 永琳による筋弛緩剤の効果が薄れつつあるのだろう。 次第に肉体を動かすのが億劫でなくなってきていることを○○は実感していた。 鈴仙は、未だに力の篭らない○○の身体を支え、ゆっくりと布団の上に寝かせる。 本来、鈴仙はそこらの人間の男よりも力はあり、○○を抱えて運ぶこともできた。 だが、○○はそれを頑なに拒んだのだ。 その理由は――――語るに及ばずといったところだろうか。 「ありがとうな、鈴仙。助かったよ」 「うふふ、どういたしまして」 一言二言の言葉を交し合った後、沈黙が続く。 その沈黙に耐えられず何か言い出そうとするも 互いが互いを意識してしまい、言葉を紡ぐことすらもできない。 「「…………」」 なぜ、そんなに互いを意識しているかは、言うまでも無いだろう。 かなり混沌とした状況だったが、3時間前に鈴仙が○○に友以上の感情を抱いていることを暴露したからだ。 鈴仙にしても、○○を奪われてしまうという危機感から思わず彼への思いを口にしてしまったのだが その危機が去った今、二人に残ったのは気恥ずかしさのみ。 「ねぇ……○○……」 不意に、鈴仙が口を開く。 ○○の傍にゆっくりと膝をつき、鈴仙は彼の胸板に手を置く。 そのまま、彼女はそっと顔を○○に寄せて囁いた。 「一つだけ教えて欲しいことがあるの。 もう、知っているよね……私は、あなたのことが好きです」 「あ、ああ……」 ゆっくりと言葉を紡いでゆく鈴仙は、○○がこれまでに見たことの無いほど妖しくて、美しかった。 ○○は否応なしに異性としての彼女を意識させられ、その胸を高鳴らせる。 尤も、もう少し彼に観察力があれば、鈴仙の手がかすかに震えていることにも気づけたのだろうが。 「――――あなたは、私のことをどう思っていますか?」 鈴仙は、赤い瞳を潤ませながらそう囁く。 ひたむきな視線を、ただひらすら○○に向けながら。 「う……」 その、“視線”が――――問題だった。 ○○は苦悶の表情で、視線を鈴仙の顔から背ける。 ――――鈴仙の紅い瞳、もとい狂気の瞳。 見るだけで波長を狂わせ、人間の頭脳など容易に破壊できる鈴仙の魔性の瞳。 ただの人間である○○には、それを見つめ返すことはできない。 今でさえ、鈴仙の瞳を一瞬目にしただけで、頭が割れるような苦痛が○○を襲っていた。 「……ごめんなさい、やっぱり……ダメだよね、私なんかじゃ……」 鈴仙から目を背けたという○○の行為が“拒絶”と鈴仙に誤解させてしまう。 心なしか……いや、その身体は目に見えて震えが強くなっていた。 「ち、違う……!」 ○○のかすれる目に、鈴仙が悲しげな雰囲気を纏わせながら立ち上がろうとする光景が映る。 その瞬間、○○は本能的に このままでは取り返しのつかないことになると悟った。 力を振り絞って彼女の腕を掴み、強引に引っ張る。 「きゃっ!」 強引に腕を引っ張られ、鈴仙の身体は○○に倒れこむ。 「う……ぁ……」 鈴仙の腕を引いた拍子に、○○はまたもや彼女の目を直視してしまった。 ○○は鈴仙に二の句が告げられず、頭を襲う激痛に 辛うじて苦痛の呻き声を抑えることしかできない。 「やぁっ、○○……苦しい、よ……」 絶対に放さないと言わんばかりに、○○は鈴仙を強く抱きしめる。 未だ目の奥底で視神経をズタズタにするかのような激痛は消えないが、 鈴仙を抱きしめていると、不思議と苦痛が和らいでいく気がしたのだ。 「ごめん、しばらく……このままで――――」 ○○が掠れるような弱弱しい声で囁いた、そのとき―――― 「――――あ」 ここに至って、鈴仙もようやく○○が目を背けた原因に思い当たったようだ。 そして、彼女は今更ながらに これまでの記憶を掘り起こす。 ○○が鈴仙の視線から目をそらしていたのはどういう時だったか――――ということを。 「もしかして……だからなの?」 「……?」 「だから――――いつも私が貴方を見ていたときに目を逸らしていたの?」 ○○に抱かれながら彼の胸の中で鈴仙は問いかける。 その問いに、○○は静かに頷いた。 「そう……だったんだ……」 ぽた……ぽた…… 「……え?」 鈴仙が呟くようにそう言ったとたん、○○の胸に 何やら暖かい雫が零れ落ちる。 もちろん、雨漏りなどでは断じてない。 「……ふぇ……ぐすっ……」 「ちょ、ちょっと鈴仙、どうしたの? ごめん、俺 何かマズイことやった?」 「ちが、違うの……いつも目を背けられるから―――― 嫌われているのかなって……怖くて、苦しくて、悲しくて……よかった……でも、でも…… ごめんなさ……本当に、ごめんなさい……!!」 ぽろぽろと流れ落ちる涙と共に、彼女は想いを吐露してゆく。 愛しい異性に嫌われていなかったという安堵の喜び。 おそらくは幾度となく望まぬ苦痛を与えてしまった後悔。 それらがない交ぜになって。 嬉しさと申し訳なさがいっぱいになって。 鈴仙は、ただ『よかった』と『ごめんなさい』をひたすら繰り返し続けた。 「鈴仙……」 そんな鈴仙を言葉も出せずに見つめながら、○○の心にも罪悪感が宿る。 が、それ以上の――――爆発しそうなほどの愛しさが、一瞬で罪悪感をかき消して―――― 「……ん……っ……!?」 時が止まったかのように、鈴仙の涙が止まった。 鈴仙は、余りのことに何をされているのか理解できない。 ただ、○○にされていることが“心地いい”モノだということは理解できていた。 「やぁ……んっ、ぁ……」 鈴仙の頬を熱が吹き抜ける。 うっすらと紅く染まる頬と、高ぶった感情で潤んでゆく瞳。 彼女の全身が言い表せない感情で赤く染まり、羞恥とともに掠れた甘い声が響いた。 震える細い指が、不安定な心の支えを求めるかのように○○の服を掴んで離そうとはしない。 「んっ、ふぁ……」 時折、唇が離れるたびに、鈴仙の掠れきった弱弱しい悲鳴が零れる。 氷が解けるかのように鈴仙の身体の緊張は解きほぐされる。 ○○の熱い吐息が頬に浴びせられるたびに その熱が更に彼女の心に焔を灯す。 純情な兎は襲われながら理解した。 “肉食獣に食われる”ということを。 「はぁ、ぁぅ……!」 ただ当てられていただけだった○○の唇が、更に鈴仙を求め始めた。 まるで蛇のように鈴仙の上唇を、下唇を、頬を首筋を這いまわる。 ぽふっ…… 「んんっ、ぁぁ……」 ○○の身体が鈴仙の細い身体を押し倒し、薄紫の髪が真っ白いシーツの上に舞う。 まだ薬は切れていないはずなのに、○○はそんなそぶりさえも見せない。 鈴仙の頭の横に両肘を着いて、彼女の頭と頬に掌を添えた。 まるで、食らいついた獲物を逃がさないように。 「やっ、やっ、んんっ……」 逃げることのできないまま更に唇を貪られる。 鈴仙の掠れる声が拒絶を色を示すも、心の底では拒絶していないことは明らか。 その証に、彼女の手は○○の身体を掴んで離そうとはしない。 拒絶の声は、ただ少し心の準備を必要としているだけだった。 ただ、心の準備を整え、この熱く甘い時間を十二分に堪能したいだけ。 けれども、彼女の心の準備が整うことはない。 「んぁっ……ふぁぁ……」 陵辱されるかのように、鈴仙の唇は嬲られ奪われてしまう。 鈴仙はただひたすら喜色を孕んだ甘い声をあげ続けることしかできなかった。 そして、ようやく熱い口付けは終わり、二人の唇が離れる。 「はぁ……っ、はぁ……」 熱い吐息と共に、くたりと彼女の両手がシーツの上に転がった。 余りの刺激と、余りの甘さに、精も魂も尽き果ててしまっていた。 「……誤解させちゃってゴメンな、鈴仙……大好きだよ」 力なく横たわる鈴仙に、○○の声が 微笑とともにかけられた。 「うそ……」 思わず、鈴仙は呆けてしまう。 心の底から飢餓していたはずのモノが、実は既に腕の中にあったという事実。 幾度となく夢見てきたことが、余りにもあっさりと自分のものになったという現実―――― 「嘘じゃないし、夢でもないよ……俺も、鈴仙のことが好きだ。 さっき、鈴仙が助けに来てくれて……本当に心の底から安心したんだ」 「……あ……」 「助けに来てくれて、ありがとう。愛してる、鈴仙」 ――――それが決して嘘や幻ではないと、○○の口から告げられる。 ほんの少し前には、不安と恐怖で怯えていた鈴仙の表情。 それは、今や この上ない安らかで幸せな笑顔に変わっていた。 「ありがとう……大好き、誰よりも愛してます。心の底から、あなたを――――」 ○○の胸に顔を埋めながら、鈴仙はただひたすら己の幸福を嬉しんでイチャ。 ・ ・ ・ ――――永遠亭の庭は美しい。 その場所をよく知る者から、そういう声を聞く者は多い。 たまに行われる宴会の場としても、永遠亭はよく候補として挙げられている。 実際、永遠亭の庭には四季の美しさを十二分に引き出す配置や手入れがなされており 和風の建築物の中では、冥界の白玉楼の庭と双璧をなす美しさを持っていた。 ……けれども、そんな美しい庭園の姿は今は見る影もない。 木や瓦といった建築物の瓦礫と、砕けた岩が転がるだけだ。 「○○……」 その廃墟の中、一人の女が佇んでいた。 赤色と青色を基調とする衣服は、あちこちが破れ、焦げ付き…… 陶器のように白く美しい肌には、幾つもの無残な傷の跡が残っている。 「……そう、私は……選ばれなかったわけね……」 女は頭を垂れながら、ぼそり、と静かに呟いた。 その瞳には、何かを焼き尽くすような焔と、悲壮感が宿る。 両極端な感情を胸に秘めながら、女はゆっくりと頭をもたげる。 「……このままでは、終わらせないわよ……」 空に浮かぶ満ちた月を一睨みし、女は動き出した―――― ――――To be continued……『最甘トーナメント 勝者鈴仙 後編』 新ろだ128 ─────────────────────────────────────────────────────────── 鏡の中に映る、極甘な光景―――― 濃厚だが、優しい口付け。 互いを、ただひたすら求め合うような抱擁。 一線を越えない程度に交わされる、互いの気分を高めあうようなスキンシップ。 目に見えるほどにアツアツな二人の愛情は どこか淫らであり また、それを見る者にそこはかとない羨ましさすら感じさせる。 そんな甘い砂糖を具現化したかのような光景。 ある者は、この上ないほどにニヤニヤとした厭らしい視線を送り ある者は、その光景に耐え切れず顔を両手で覆い隠しながらも、指の間から恐る恐るその光景を眺め また、ある者は嫉妬を孕んだ視線を注ぐ。 そんな観客達の反応を見ながら、射命丸文は考える―――― 鏡に映る二人の“愛”そのものに完全に当てられてしまったのは、この集いの主催者である文ですら例外ではない。 はちきれそうなほどに昂ぶる彼女自身の情動と鼓動は、彼女の理性を総動員しても抑えること到底叶わない。 文は その意志の強そうな黒い瞳を輝かせながら 己の思考を一切衣着せずに吐露しはじめる―――― 「気分はどうですか、お集まりの皆さん!? そして幻想郷中の全住人達!! 以・後・一・切! 貴方達に退屈な時間はありません!! なぜなら! あの二人の愛に果ては無く!! 断じて私にも 二人の取材を終わらせる気は無いからです!! さ~~~あ 観ます魅せます イチャイチャ ネチョネチョ イチャイチャ ネチョネチョ イチャつき(フィーバー)タイムのスタートですッ!! 欲望と純愛の確率変動―――― ここから先は…… 延々と口に残る極甘な砂糖を噛み締めるがいいッ!! うふふふふ…… アャ――――っハハハハ!!」 ――――その直後、文は観客に五月蝿いと蹴られた。 ・ ・ ・ 同時刻の鏡の中の世界―――― 即ち、永遠亭の鈴仙の部屋では、互いの想いを打ち明けあった二人が長い抱擁を終えようとしていた。 互いに、名残惜しい部分はあるものの――――自分達の関係と想いは、先に進めなければならない――――そんな意識が、二人にはあった。 「でさ、想いを打ち明けあったのはいいんだけど――――どうしよう」 「え、あの……どうかしたの?」 眉を寄せながら頭を抱える○○に、鈴仙は心配そうに声をかける。 ――――この期に及んで、何を心配しているのか――――と。 無論、鈴仙とて○○の愛情を疑っているわけではない。 ないのだが――――それでも、不吉な予感が頭をよぎり、恐怖してしまうのは 恋する者の性というものであろう。 「いや、好きな人と視線を合わせられないのはさすがに地獄なんだよなぁ……ねえ、鈴仙。狂気の瞳、何とかならない?」 確かに、と鈴仙は悟る。 鈴仙が○○に送る視線は、あくまで一方通行。 彼女の愛情たっぷりの視線に、○○は応えることができるはずもない。 それこそ『自分の想いが届いていないのではないか』という恐怖に、鈴仙は夜も眠れぬほどに怯えていたのだ。 だから、互いに視線を交し合えないということは、二人が前に進むということへの最大の壁であろう。 だが、二人の前に立ちはだかる壁は、余りに大きく、乗り越えることは至難そのもの―――― (地獄、かぁ……喜んじゃいけないけど――――なんだか、嬉しいなぁ……) けれど、そんな壁を前に、鈴仙は『視線を合わせられないことを“地獄”と言わしめるまで愛されている』という事実に頬を緩めてしまう。 それを不謹慎と理解してはいるものの、強い愛情を寄せられて身体の奥から沸きあがる喜びに頬を染めることしか出来なかった。 尤も、彼女はそれを表に出しはしなかったが。 「うーん、さすがにそれは――――」 けれども、どうすれば良いのだろうか―――― 月の兎である鈴仙といえど、狂気の瞳そのものを無くすことなどできない。 それをするには○○か鈴仙のどちらかの目を抉るしか方法は無い。 自分の目ならともかくとして、○○の目を奪うことなど絶対にできなかった。 否――――自分の目も、無くすことはできない。 自分の目を無くしてしまったら――――それこそ、寂しがり屋の彼女は、○○に常時抱きしめてもらい 彼を傍に感じ続けてなければ正気を保てないだろうから。 暫く頭を抱え、考え込んだ末に――――鈴仙の脳裏に“ある記憶”が浮かび上がる。 「――――あ」 「どうかしたの?」 「うん、もしかしたら――――ちょっと、待ってて」 そう言うと、鈴仙はゆっくりと腰を上げ、部屋の隅にある鏡台の化粧棚に向かった。 そして、化粧棚の引き出しを開き、その中を何やらごそごそと探し始めた。 「たしか、ここに――――あった!」 探し始めてから十秒も立たない間に、鈴仙は目当てのものを探し当てたようだ。 ○○の元に戻る彼女の手には、布が一切れ握られていた。 否、布ではない。 本命はその布に包まれたモノであり、それは―――― 「それ――――眼鏡……?」 ――――そう、眼鏡。 縁なしの、何処にでもあるような飾り気も変哲もない眼鏡だった。 理解ができないといった風に眉根を寄せる○○に、鈴仙はさらに告げる。 「昔、師匠にもらったの。この眼鏡をかければ、狂気の目の効果が無くなる……って」 「効果がなくなる?」 「うん、『いつか、あなたの全てを捧げてもいいと想う男が現れたら使いなさい』――――って」 疑問に思いながらも、○○は鈴仙から眼鏡を受け取る。 そして、眼鏡を持ったまま、眼鏡越しに彼女の瞳をちらりと見た。 ……○○の頭を襲い掛かるはずの頭痛は無い。 もういちど、ちらりと鈴仙の目を――――今度は少しだけ長く見る。 けれども、結果は同じだった。 「あ、ほんとだ……なんともない。 “狂気の目を殺す眼鏡”か……永琳ってば、なんだか魔法使いみたいだな――――」 その眼鏡を用いれば、恋人同士として視線を交し合うという極自然な行為をすることができるようになる。 二人の愛を遮る最後の難関は、○○に“魔法使い”と称された一人の天才の手によってあっさりと崩れ去ったようだ。 けれど、二人の前にはもう一つの壁が立ちふさがる。 それは、二人を引き裂く程の力も無く、増してや二人の愛を遮るほどの壁ではない。 壁というよりは、“狂気の目を殺す眼鏡”によって派生的に出てきた ちょっとした“問題”だ。 「――――で、どっちがつける?」 「「…………」」 とたん、○○も鈴仙も沈黙する。 (あなたの眼鏡姿、見てみたい……) (鈴仙の眼鏡姿、見てみたいな……) そう、最後の問題は、『どちらが“狂気の目を殺す眼鏡”をつけるか』ということ。 眼鏡は、その人間の印象をガラリと変えてしまうことを、二人とも理解していた。 だからこそ、互いが互いに全く同じことを思い浮かべる。 ――――自分が想いを寄せる相手が、眼鏡をつけることにより どれほど印象が変わるのだろうか? 鈴仙も、○○も――――愛しい者の別の面を見てみたいという欲望を抑えることができなかった。 だからこそ、二人は考える。 いかにして、相手に眼鏡をつけさせるか。 いかにして、相手に眼鏡を着けさせることを、相手に納得させるかということを。 「ここは鈴仙がつけてみるのもいいんじゃないか?」 「だ、ダメだよ……私はほら、ウサギ耳だから。 だから、あなたがつけてみて」 「…………」 「……ど、どうしたの?」 「ううむ……ウサ耳な鈴仙に、眼鏡の道は遠いのか……!」 どうやら、長く生きている分、鈴仙のほうが一枚上手だったようで―――― 鈴仙と○○の知恵比べはあっさりと彼女に軍配があがった。 「なんか、照れくさいなぁ……」 ぶつくさと呟きながら、○○は渋々といったふうに手に持っていた眼鏡を顔に装着する。 眼鏡そのものには度は入っていないものの――――鼻と耳と視界に纏わりつく違和感に、○○はわずかな不快感を感じてしまう。 「わぁ……」 けれど、鈴仙は○○の変貌にただただため息を漏らすだけだった。 まるで異質とも思えるほど 印象が変わった○○に、感嘆の声をあげる。 「すごく知的な感じがする……」 だが、ガラリと変わった○○の印象に感嘆する鈴仙の声は、○○には聞こえなかった。 「………………」 ○○が鈴仙に視線を向けるたびに、非常に高確率で彼女の狂気の瞳が○○を見つめ返していたのだ。 『目をあわせられなかった』――――それは、即ち――――○○は、鈴仙の顔をまともに見たことが無いということ。 初めて見る鈴仙の容貌に、○○は声が出せない。 さほど手は加えられていないはずなのに 美しく整えられたように見える眉。 瑞々しく熟れきったサクランボを想像させるような薄い桃色の唇。 見る者を虜とするような、自信に満ち溢れた――――けれど、何処か儚げな弱さを併せ持つ赤い瞳。 それらが――――端正という言葉すらも生温い程に、神業めいた絶妙なバランスで、鈴仙の顔の上に整っている。 それに加え、さらさらと絹のような手触りを想像させる美しい薄紫の髪。 ふっくらと、やや控えめに自己主張する胸。 そして、世界中の全ての男の性的欲求をそそらせると口にしても過言ではないほどに、子宝に恵まれそうなやや大きめの臀部と 膝上15cm程度のスカートから伸びるむっちりとした厭らしい太腿。 あまりに美しく、厭らしく、可愛らしい容姿に、○○は息を呑むほどに見惚れてしまう。 それこそ、これほどの美少女が自分に想いを寄せていることなど、夢に違いないと○○に思わせる程に。 「鈴仙……すごく、きれい……」 思わず、○○は自分自身の思考を口に出てしまう。 けれど、鈴仙にとってその言葉は、不意打ち以外の何者でもない。 「え、えっ? ちょ、ちょっとまって! そんなこと――――」 「もっと、よく見せて」 逃がさないと言わんばかりに、○○は鈴仙の頬を優しく掴む。 ふっくらと、人肌の温度に暖められたマシュマロのような頬の感触が気持ち良い。 狂気の瞳の効果が無くなってしまったかわりに、○○は別の意味で鈴仙に狂わされることになってしまったようだ。 それこそ、鈴仙の顔が、いずれは二人の間で交わされるであろう性行為によって淫らに歪む様など――――想像するだけで達してしまいそうになる程に。 「あ、あの……そんな、まじまじと見ないで……恥ずかしいよ」 鈴仙の息が、ゆっくりと荒いものになってゆく。 無理も無いだろう。 逃げることもできぬまま――――まあ、鈴仙には逃げるつもりなど無かったが――――愛する異性に顔をつぶさに覗き込まれているのだ。 この状況で照れずに平常心を保てる者など、そうはいないだろう。 (あああああ、どうしよう。私の顔、こんなに見つめられちゃってるよぉ……) 今、鈴仙を支配している感情は羞恥。 そして、それを遥かに上回るほどの恐怖だった。 彼女にとって何よりも恐ろしかったのは、○○に嫌われること。 だからこそ、『身体や顔を綺麗に洗っておけばよかった』や『少しだけでもお化粧しておけばよかった』などといった後悔が鈴仙の脳裏を駆け巡る。 尤も、そんな鈴仙の感情など杞憂に過ぎなかったのだが。 「……かわいい…………」 二人の間には、もはや会話すらも成立していない。 鈴仙は○○の視線に耐え切れず、頬を 彼女の瞳の色と同じ色に染めあげており ○○は鈴仙の顔の虜と成り果ててしまっていた。 そして、○○は 鈴仙の薄紫の髪を掻きあげ、形の良い小さな耳元にゆっくりと口を近づけ―――― ――――いや、耳? 「な……耳が二つ!?」 「あ」 この時点になって、○○も気づくことができたようだ。 鈴仙の頭の横に、人間と同じ耳があることに。 To be continued…… 新ろだ181 ───────────────────────────────────────────────────────────
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第87回vip複合トーナメント結果 予選 予選組み合わせ(01vs02、03vs04、、、と1分30秒で対局) 予選勝者○→最強トナメ、予選敗者●→ツンデレ杯(負け進みトーナメント) 予選組み合わせ(01vs02、03vs04、、、と1分30秒で対局) 01 detteiu ● 02 ななしさん ○ 勝者○→最強トーナメント 03 yamuch ● 04 masa-ni ○ 敗者●→ツンデレ杯へ進みます 05 gal-game ○ 06 vivippp ● 07 ツンデレ ● 08 RAVIP ○ 09 cchiken ○ 10 viboon ● 11 ( ^ω^) ○ 12 derimo ● 13 バケツリス ● 14 taroimo ○ 15 pika ○ 16 scal ● 17 とろろ ● 18 eririn ○ 19 日向 ○ 20 jyakusha ● 21 marovip ○ 22 ヴぃっぺr ● 23 ri-ki ○ 24 seven ● 25 らららもん ● 26 e-roge ○ 27 天さん ○ 28 くさーの ● 最強トーナメント vip最強トーナメントAブロック(1回戦のみ金曜日、勝ち進み、15分60秒、★棋譜保存) ┏━ ななしさん ┌┛ │└─ pika ┏┓ ┃┃┌─ masa-ni ┃┗┓ ┃ ┗━ ( ^ω^) (感想戦中) ━┛★ │ ┌─ gal-game │┏┓ │┃┗━ taroimo (感想戦中) └┛ │┌─ RAVIP └┓ ┗━ cchiken vip最強トーナメントBブロック(1回戦のみ金曜日、勝ち進み、15分60秒、★棋譜保存) ┏━ eririn ┌┛ │└─ ┏┓ ┃┃┌─ 日向 ┃┗┓ ┃ ┗━ 天さん ━┛★ │ ┏━ marovip │┌┛ ││└─ └┓ ┃┏━ ri-ki ┗┛ └─ e-roge ツンデレ杯 ツンデレ杯Aブロック(金曜日、【負け進み】、15分60秒、★棋譜保存 272) ┏━ detteiu ┏┛ ┃└─ scal ┏┛ ┃│┏━ yamuch ┃└┛ ┃ └─ derimo ━┛★ │ ┏━ vivippp │┌┛ ││└─ バケツリス └┓ ┃┏━ ツンデレ ┗┛ └─ viboon 控え室:ttp //chat3.whocares.jp/chat/cr.jsp?rn=room1 ツンデレ杯 Bブロック(金曜日、負け進み、15分60秒、★棋譜保存 11参照) ┏━ とろろ ┌┛ │└─ ┏┓ ┃┃┏━ jyakusha ┃┗┛ ┃ └─ くさーの ━┛★ │ ┏━ ヴぃっぺr (棄権) │┌┛ ││└─ └┓ ┃┌─ seven ┗┓ ┗━ らららもん 控え室:ttp //chat3.whocares.jp/chat/cr.jsp?rn=room1 ツンデレ杯決敗戦 detteiu○ vs jyakusha● 最強トーナメント決勝棋譜 先手:* ( ^ω^) 後手:* 天さん ▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲6八飛 △6二銀 ▲1六歩 △4二玉 ▲1五歩 △3二玉 ▲7八銀 △5四歩 ▲3八銀 △3三角 ▲6七銀 △8五歩 ▲7七角 △4二角 ▲8八飛 △5二金右 ▲5八金左 △4四歩 ▲4六歩 △4三金 ▲3六歩 △7四歩 ▲4八玉 △3三桂 ▲3九玉 △2一玉 ▲4七金 △3二金 ▲2六歩 △2四歩 ▲2七銀 △5一角 ▲3八金 △5三銀 ▲5六銀 △7五歩 ▲同 歩 △7二飛 ▲2八玉 △7五飛 ▲6七銀 △7三角 ▲1八玉 △1五飛 ▲1六歩 △7五飛 ▲8六歩 △6四角 ▲8五歩 △7三桂 ▲8四歩 △2五歩 ▲8三歩成 △8五桂 ▲6八角 △2六歩 ▲同 銀 △8七歩 ▲同 飛 △8六歩 ▲8八飛 △4五歩 ▲8四と △4六歩 ▲4八金引 △2八歩 ▲同 金 △4七歩成 ▲同 金 △2八角成 ▲同 玉 △8七金 ▲8五と △同 飛 ▲7七桂 △同 金 ▲同 角 △8七歩成 ▲2二歩 △同 銀 ▲2四桂 △8八と ▲4一角 △4二金引 ▲3二桂成 △同 金 ▲4三金 △3一飛 ▲3二金 △同 飛 ▲4三金 △3一金 ▲3二金 △同 金 ▲2三歩 △同 銀 ▲2四歩 △3一金打 ▲2三歩成 △4一金 ▲2二歩 △3一玉 ▲2一歩成 △4二玉 ▲3二と △同 金 ▲3一金 △2七歩 ▲3九玉 △3一金 ▲同 と △8三角 ▲2二飛 △4三玉 ▲3二飛成 △4四玉 ▲6五歩 △5五歩 ▲4三金 △5四玉 ▲5三金 △同 玉 ▲6二銀 △5四玉 ▲5二龍 △6五玉 ▲5五龍 まで131手で先手の勝ち 最強トーナメント準決勝棋譜 先手:* 天さん 後手:* ri-ki ▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛 ▲2二角成 △同 銀 ▲9六歩 △6二玉 ▲7八銀 △7二玉 ▲6六歩 △3三銀 ▲9五歩 △8二玉 ▲6八玉 △5五歩 ▲6七銀 △9二香 ▲7八玉 △5一飛 ▲4八銀 △3二金 ▲4六歩 △9一玉 ▲4七銀 △8二銀 ▲5八金右 △7一金 ▲3六歩 △4四歩 ▲8八玉 △4二銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛 △4三銀 ▲7八銀 △5四銀 ▲3七桂 △5六歩 ▲同 銀 △3五歩 ▲同 歩 △5五銀 ▲同 銀 △同 飛 ▲4五歩 △3九角 ▲2六飛 △5七角成 ▲5六歩 △3五馬 ▲5五歩 △2六馬 ▲5三角 △6二銀 ▲4四角成 △同 馬 ▲同 歩 △4九飛 ▲4一飛 △3一歩 ▲1六角 △6九飛成 ▲同 銀 △4二金打 ▲6一飛成 △同 金 ▲同角成 △7一銀左 ▲5一飛 △6二角 ▲5四飛成 △3九飛 ▲7八銀打 △5三金 ▲4五龍 △1九飛成 ▲5四歩 △4四金 ▲4八龍 △5五香 ▲5三歩成 △同 角 ▲5六歩 △同 香 ▲5七歩 △4七歩 ▲同 龍 △4三歩 ▲5六歩 △3三桂 ▲5二金 △4二金 ▲5一金 △1七龍 ▲8六香 △同 角 ▲同 歩 △4五桂 ▲同 桂 △4七龍 ▲同 金 △4九飛 ▲4八歩 △8四香 ▲7五桂 △6九飛成 ▲同 銀 △8六香 ▲8七歩 △同香成 ▲同 玉 △7二銀打 ▲同 馬 △同 銀 ▲6二飛 △7一銀 ▲4二飛成 △4五金 ▲8三桂不成△同 銀 ▲8二銀 △同 銀 ▲同 龍 △同 玉 ▲7一角 △同 玉 ▲6一飛 まで133手で先手の勝ち 先手:* taroimo 後手:* ( ^ω^) ▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲7八金 △3二金 ▲2二角成 △同 銀 ▲8八銀 △3三銀 ▲4八銀 △7二銀 ▲4六歩 △6四歩 ▲4七銀 △6三銀 ▲1六歩 △9四歩 ▲9六歩 △1四歩 ▲3六歩 △7四歩 ▲3七桂 △7三桂 ▲5八金 △5二金 ▲2九飛 △8一飛 ▲7七銀 △6二玉 ▲6八玉 △5四歩 ▲6六歩 △4四銀 ▲6七金左 △3五歩 ▲4八金 △3六歩 ▲同 銀 △7二玉 ▲7八玉 △1五歩 ▲同 歩 △同 香 ▲1八歩 △5五銀 ▲4七銀 △3六歩 ▲4五桂 △6五歩 ▲同 歩 △3七歩成 ▲同 金 △6五桂 ▲6六歩 △7七桂成 ▲同 桂 △6四歩 ▲3三歩 △同 桂 ▲同桂成 △同 金 ▲4五桂 △4四金 ▲3八金 △3七歩 ▲4八金 △3八銀 ▲8九飛 △4七銀不成▲同 金 △5八銀 ▲4八金 △6七銀不成▲同 玉 △6六銀 ▲5八玉 △6七角 ▲4七玉 △4五金 ▲同 歩 △8九角成 ▲3五角 △4五馬 ▲7一金 △同 飛 ▲7三銀 △同 玉 ▲7一角成 △3六金 まで90手で後手の勝ち ツンデレ杯決敗戦棋譜 先手:**detteiu 後手:**jakusha ▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3二飛 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △3三角 ▲2一飛成 △4二銀 ▲2四歩 △3一金 ▲3二龍 △同 金 ▲2一飛 △3一銀 ▲2三歩成 △同 金 ▲同飛成 △2二飛 ▲同 龍 △同 銀 ▲7六歩 △9四歩 ▲3三角成 △同 銀 ▲3一飛 △6二玉 ▲3二飛成 △5二金 ▲3三龍 △5四飛 ▲6八銀 △9五歩 ▲3一龍 △3五歩 ▲6一金 △7二玉 ▲7一金 △8二玉 ▲8五桂 △8四歩 ▲8一金 △8三玉 ▲7二銀 △7四玉 ▲8三角 △6四玉 ▲5六桂 △6五玉 ▲同角成 まで51手で先手の勝ち ツンデレ杯準決敗戦棋譜 先手:**tundere 後手:**detteiu ▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △4四歩 ▲6八銀 △6二銀 ▲5八金右 △3二金 ▲7七銀 △3三角 ▲6七金 △5二金 ▲5六歩 △5四歩 ▲6八玉 △4三金右 ▲7八玉 △8四歩 ▲7九角 △8五歩 ▲8八玉 △7四歩 ▲7八金 △7三銀 ▲4八銀 △4二角 ▲2六歩 △2二銀 ▲3六歩 △6四銀 ▲4六角 △5五歩 ▲同 歩 △5二飛 ▲5六金 △7三桂 ▲5七銀 △8二飛 ▲6八銀右 △7五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲5四歩 △6四歩 ▲7六歩 △6六銀 ▲同 金 △8六歩 ▲同 銀 △5四金 ▲6三銀 △5三金 ▲7四銀成 △7二歩 ▲7五金 △8五歩 ▲7七銀引 △4五歩 ▲3七角 △6五桂 ▲6六銀 △8六歩 ▲8四金 △8七歩成 ▲同 玉 △8四飛 ▲同成銀 △8二歩 ▲7一飛 △5二玉 ▲7二飛成 △4三玉 ▲8二龍 △4四玉 ▲5八飛 △5四歩 ▲9一龍 △2四角 ▲4一龍 △4三金寄 ▲3二龍 △3一金 ▲5五金 △同 歩 ▲同 銀 △5三玉 ▲5四銀 △同 金 ▲5五香 △6九銀 ▲5四香 △4四玉 ▲4三金 まで93手で先手の勝ち 先手:**rararamo 後手:**jakusha ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5五歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △4四歩 ▲2三歩 △3二金 ▲2二歩成 △同 金 ▲4四飛 △4二銀 ▲7六歩 △4三歩 ▲4六飛 △5二飛 ▲2六飛 △5三銀 ▲2三歩 △3二金 ▲2二歩成 △同 金 ▲5六歩 △同 歩 ▲同 飛 △5四歩 ▲5八金右 △7四歩 ▲3六歩 △7三桂 ▲3一角 △3二飛 ▲5三角成 △6二銀 ▲4三馬 △3一飛 ▲5四飛 △5三歩 ▲2四飛 △5二金 ▲4四馬 △4一飛 ▲2二飛成 △4四飛 ▲7二金 △4二飛 ▲2一龍 △5四角 ▲3三角成 △2一角 ▲1一馬 △5四角 ▲4六香 △4三歩 ▲2一馬 △3六角 ▲3一馬 △1二飛 ▲2四桂 △1一飛 ▲3二歩 △2三歩 ▲4三香成 △同 金 ▲6一銀 △6四歩 ▲1二桂成 △同 飛 ▲2一馬 △2七角成 ▲1二馬 △1八馬 ▲3一歩成 △2九馬 ▲4一飛 △6一玉 ▲同飛成 まで79手で先手の勝ち