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星に手を伸ばすふたりの人 熱い、湿った風が吹く。 日光を浴びた樹は葉の気孔やクチクラ層を通して蒸散を行い、光と共に取り入れた余分な熱を吐き出している。 水分を吐き出した植物は、土壌との浸透圧差により根から新たな水を吸い上げ、同時に土中の養分も引き込んでいる。 水生植物や寄生植物であればいささか事情は異なるが、一般に樹木と呼ばれるものはそのようなサイクルを営んでいる。 植物とは生物であり、呼吸だとか、光合成だとか、そういった生命活動をしているものだ。 動物ほどの激しさを持たないそれを、普通の人間には感知しづらいというだけで。 だから、その途方もない大きさの樹が吹き付けるその風も、当たり前のものではあるのだろう。 その巨大な葉と同じ、深緑色のシルクハットとダブルスーツを纏う女の表情は穏やかだった。 植物めいた穏やかさだ。覇気のない虚ろな顔と見なす者もいるだろう。 彼女はそっと額に手をやる。柊の実のように真っ赤な髪が濡れて張り付いていた。 剥がすように手で拭うが、それ以上整えるわけでもない。 無造作でなお美しい、雪のように白い肌の若い女だった。 金の瞳は冬の夜空の星に似て寒々しく光る。 大きく息を吸う。金木犀にも、蝋梅にも、何にも似ていないその芳香。 肺に留めて二秒間、ふう、と口から吐き出した。 「ええ、これは、良い香りですね」 そして女は躊躇うことなく、軽い足取りで扉へ向かった。 この節は、彼女の物語。矛盾の特異点の物語だ。 ◆ ◆ ◆ 「ロダン! 圧巻の大きさですねえ」 ポンコツ婦警は感心した様子でそう口にした。 部屋の幅や奥行きは先ほどの女教皇の教導よりも多少狭い。 つるつるとした床中に手のひらサイズの星型の金属板が散らばり積み重なっている。 そして天井は異様に高い。ドーム状になっていて一番低い外周部でも7mはあると思う。 その部屋の最奥に次の枝へと続く門がある。 全高6m20cmの黒鉄の門。生々しくもがき苦しむ浮彫のモチーフは『神曲・時獄篇』。 200を超える人物の群像であり一繋ぎのモニュメント。 『地獄の門』。確かにそう呼ばれるロダンの作品に酷似していた。 「さっきのブッダ像もそうでしたけど置物のチョイスが美術的ですよね。どんな人の仕込みなんですかここ?」 オレに聞かれても困る。 試練の内容については話す権限がないだけだが、この樹については知識自体がほとんどない。 案内人と言っても最初にこれはクソダンジョンのデスゲームです、と告げた後は基本的に候補者を見届けることだけが役目だ。 下手を打たなくても大抵は死ぬ試練に向かう候補者にかけることの出来る言葉は少ない。 さっきも心構えのようなものを説いては見たがポンコツ婦警にとっては言われるまでもないことのようだったし、オレはこれでもこの迷宮に属する端末だ。 つまり所属としてはこいつを殺しにかかっている側なわけで、そんな奴が何を言うのかという思いもないわけじゃない。 それでも、オレには口を利く機能が備わっている。会話を求めるなら付き合うのはやぶさかじゃない。 例え意味のない言葉であったとしても、それを交わすこと自体はきっと大切なことだと思うから。 「なんでこんなデザインなのかは知らないが。よく見てみろ。おまえが知ってる美術品とは違うところが……」 「あっ、よく見たら人が。おーい! あなたも候補者の方ですかー?」 「くそ! やっぱり話を聞かねえ!」 そして不用意に話しかけるな! 友好的とは限らないとわかってるはずだろうが! 相手はいきなり襲いかかってこないだろうな!? いやオレがこいつを心配する義理もないんだが! ポンコツ婦警はへらへら笑って手を振っている。 対して相手は緩慢な動作で立ち上がった。 こちらが声をかけるまでは門の前に座り込んでいたのだ。 深緑のシルクハットにダブルコートのまだ若い――こっちのポンコツと同年代らしい女。 とりあえずは一人のようだ。 末端枝は越えたと言ってもまだまだ根から遠い側枝に過ぎない。 それぞれの候補者が辿る道は合流し始めるが違う枝にいる者もいるだろう。重なる道(ルート)であっても同じタイミングで同じ試練を受けるとも限らない。 緑の女は軽く手を挙げた。白手袋が肩の辺りまで持ち上げられ、ゆっくりと左右に動く。 うっすらと微笑を浮かべ手を振り返したのだった。 まさか、こいつもそういうノリなのか? オレは正直ぞっとした。 その時だ。 「ここで会えたことを嬉しく思う! この雄大無尽の樹中世界の中で同志との出会いはなんと嬉しきことであろうか! 貴君らの名を伺いたく思うが、問うばかりでは無礼という物! 吾輩は名乗るほどの者でもなく、僭越さに恥じ入るばかりであるが、まずは我が素性を耳に入れられよ! 我が頂く角は雷光であり、我が高き嘶きは雷鳴であり、しかして我が名も雷電の響を賜った!」 まさに雷のようにその声は朗々と響き渡る。 もうかなり友好的だとしても関わりたくない感じがしているがオレに選択権はない。 こんな時に限ってポンコツ婦警は話の腰を折ることもなく大人しく名乗り口上を聞いていた。 案内者同士は不干渉が原則だが機会があればあちらに優しい言葉をかけてやりたいと思う。 「我が名はドンダー! 賢明なる候補者ホリィ・クリスマスの友たる案内人である!」 前言撤回。 そっかー。今叫んでるのは案内人かー。関わりたくない。切実に。 ……などと思ってもオレにどうこうできるわけもなく。 オレがだんまりを決め込んでいる内にポンコツ婦警はあちらさんに近づいていってさっさと自己紹介を済ませてしまった。 ついでにオレのこともウォーたんとして紹介しやがった。もう諦めている。 「それじゃあクリスマス博士はクリスマスツリー博士なんですね!」 「いえ、クリスマスツリーの研究をしてはいますが博士ではありません」 二人の候補者は話しながらも手を動かす。 散乱する星型をかき集めているのだ。 三つ目の試練の名は星の門。 門を開けて先へ進むこと自体が試練になっている。 実を言うとこれは前回の剪定/選定では見なかった試練で、オレが経験者ぶることはできない。 それでもこの部屋に入った瞬間、オレには樹からデスゲーム進行のために必要な情報が与えられていた。 直接的な致死性は魔術師の工房以下らしいのだが、クリアできないやつは一生クリアできないタイプのものだった。 先ほど俺が言いかけたことは攻略のヒントではなく前提になるポイントだ。 本来の『地獄の門』との違い。 第一に、この部屋の門にはこれ見よがしに星型の凹みが設けられている。 第二に、門の上部に刻まれた碑文。ダンテの叙事詩に記された物とも違うそれは、普通に立っていても見えづらく、これに関しては案内人が口頭で伝えることになっている。 「汝らここに入るもの一切の望みを捨てるなかれ!」 クリスマス博士の傍らで鹿、もしくはトナカイ、あるいは角付きのカバにも見えるぬいぐるみが再び叫んだ。 こいつがドンダーで、口にした内容が碑文だ。 元ネタと比べてかなりすっきりとした短文だ。「諦めるな」以上の文意があるとは思えない。 二人の候補者は実際諦めずに、律義に、安直に頑張っていた。 それぞれが部屋中から50枚、計100枚の星形を集めて門の前に戻ってくる。 この部屋の全ての星形は門と同じ黒鉄で作られ、大きさも重さも寸分も違わない。 それを1枚ずつ門の凹みに押し込んでいく。 自動販売機がコインを飲み込むようにするりと門の中へと消えていき、その度にブブーと人をおちょくるような音が鳴る。 100枚目を入れ終わると、ガコンと音を立て床が傾き、門から入口へ向かって下り坂になる。 まだまだ床に余っていた星形は坂の下に大きく開いた口へと吸い込まれていく。 門にはつかまりやすい像がいくつも備わっているから候補者たちが落ちる心配はないだろう。 ちなみにオレはポンコツ婦警の胸ポケットに、ドンダーはクリスマスのシルクハットに押し込められている。 全ての星形が落ちれば床は元に戻る。この時候補者が星形を隠し持っているといつまでも戻らないというのは既にクリスマスが確かめていた。 きっかり10秒後ビープ音が鳴り、次に天井から雨のように星形が降る。 災害じみた轟音が響く。 当たり所によっては間違いなく死ぬ。 ただ、これも危険はほぼない。 門には立派なひさしがついていて、星形が落ちきるまでここに留まっていれば負傷する要因は全くない。 そうして20秒降り続き、床に溜まった星型の数は千や二千では効かないだろう。 回収前の星形にマーキングしていても補充後の星形にはなんの痕跡も残っていない、そしてかなり雑に扱われている星形ではあるが傷や歪みは一切なく識別は不可能だろうとはクリスマスの弁である。 彼女、結構な時間一人で頑張っていたらしい。 要するに。この試練はたった1枚の正しい星形を門にはめればいいのだが。 1割も確かめない内に状況はリセットされるのだ。 それを何度も繰り返している。 こっちのポンコツ婦警も合流し状況を理解してからそれに追随している。 諦めずに試行し続ければ正解を引く確率は0じゃない、と考えているのかもしれないが――。 「博士ちゃんはワタシより少し年下なんですねえ。危ない時は頼っていいからね? ここ指名手配犯もいるはずだし」 「はい、博士ではないですが頼ります」 あるいはなにも考えていないのかもしれない。 もしくは無思考で作業できる試練よりも、競争相手である候補者の人となりを確かめることを優先しているのか。 カチャカチャ音を立てて星を拾い集めながら二人の候補者は話をしていた。 樹の事情を知らずに乗り込んできたので力に興味はありません、敵対する必要はありません、というこっちの言い分は素直に信じられるものではないだろう。 いくらポンコツでも他の候補者側が蹴落としにかかる危険は理解しているはず、というかその辺りに関してはポンコツでもない。そこはまあ、認めている。 それにクリスマスがポンコツの目的を信じたとしても。 最奥で力を得られるのは最優の者だけなのだ。 根にたどり着くのが一人だけだと決まっているわけではなく、途中で脱落さえしなければ帰還はできる。他の候補者を排除しろというルールはない。 同時に何をもって候補者の最優を定めるのかというルールも語られていない。 たとえその気のない人間であっても最奥にまで連れ立っていけば、そいつに力を持っていかれてしまうという可能性を考慮せずにはいられないはずだ。 他の候補者にはポンコツ婦警を排除する理由がある。 ポンコツ婦警も襲われれば反撃に躊躇はしないだろう。 その名目が正当防衛か公務執行妨害かは知らないが、普通の警察業務の延長として戦いを忌避するような人間ではないはずだ。 ただ、クリスマスがそういう事をするかと聞かれれば、あまりしないんじゃないかな、という雰囲気はある。 荒事には慣れていなさそうだ。人を傷つけるような剣呑さは感じられない。 というよりは。率直に言って単純に弱そうなのだ。 こうして三つ目の試練にたどり着いている以上、身体能力が低いということは考えづらい。 戦闘技術が未熟でも致死性の攻撃ができる異能を持っている可能性だってある。 それでも、それ以前の問題として、彼女と戦うということをいくら想像しても全く危機感を覚えない。 ポンコツ婦警のワンパンで沈むイメージしかない。 あるいはそのように相手を油断させる能力が発動しているのかとも考えたが、ポンコツ婦警の視線を追えば抜け目なく観察し続けている。床の星を拾いながらもクリスマスから決して目を離さない。そのクリスマスの方はさっきからポンコツに背を向けている。余裕なのかなんなのか。 精神操作の類が絶対にありえないとは言えない。 先ほどの発言からしてポンコツ婦警は「警官として守るべき市民」として見なしたようだし、油断させるのではなく敵意を持たせない能力なのでは、と勘繰ることもできなくはない、が。 ……まあ、結局のところ、それはオレがぐだぐだ考えるべきことでもないのだ。 「そういえば博士ちゃんはなんでここに来たんです? 世間じゃ願いが叶うとかなんとか言われてるみたいですけどー。パワースポット巡りが趣味なの?」 「私が聞いた話では『万能の英知を秘めた水曜の瞳』を手に入れるという言い回しでしたね。なんとなく北欧神話になぞらえた言い方なのかな、と思いますが、ともかくそれを手に入れるか死ぬか、という話で」 「なるほど、そのファンタジックな瞳が欲しいと。ワタシからすればそういう名前がつくのは結局そういうフレーバーの宝石かなんかじゃないかなと思いますけど。えー、まあ応援はしますよ」 まだまだ夢見る年ごろってことですかね、ロマンチックではありますね、とポンコツ婦警は微笑まし気に頷いたが。 クリスマスはこちらに向き直り、気まずそうに首を振った。 「いえ、あの、もう一つの方です」 「もう一つ?」 ポンコツ婦警は首を傾げた。 オレも、ぬいぐるみの首が動くわけではないが、疑問符を浮かべる。 他の賞品とか副賞とか特にないはずなんだが。 「ええ、ですから、死ぬ方です。私の目当ては」 クリスマスは申し訳なさそうに目をそらした。 ◆ ◆ ◆ 空気が重い。 別に大気の成分が変わったわけではない。 出られないまま何時間も部屋にいると毒ガスが噴き出すとかそういう試練ではないし換気の心配もない。 時間は経ったが、いる場所もやってることも変わらない。 相変わらず扉に星をはめて、ブブーという音を聞いて、床が傾いて、出っ張りの多い像につかまって、ビープ音の後に星が落ちてくる、その繰り返しだ。 ポンコツ婦警は手を止めて天井を見ているが、クリスマスは作業を黙々と続けている。 いや、死ぬために来たってお前、コメントしづらいよ? 止めるべきか、励ますべきか、事情を聴くべきか、何も言わないべきか。 困るわ。 まあ深入りしないのがベターなんだろうが。 担当候補者の競争相手だし。いや、それも違ってくるのか? でもただ死ぬだけならこの試練でも前の試練でもいくらでも死ねただろうし。もっと言うと樹に入る必要もないし。 それもつっこむべきではないか? ポンコツ婦警もドンダーも何も言わない。 お前の候補者だろなんとかしろよ、と鹿ぐるみに目線で訴える、ことはできない。 この体はぬいぐるみなので眼球が動いたりはしない。 そもそもやつはシルクハットにしまわれたままでお互いに姿が見えない。 のではあるが。案外気持ちが通じたのかもしれなかった。 「我が友の言葉について貴君らも思うことはあるであろうが、これだけは言える」 今度は抑え目の音量で声が響く。 「ホリィ・クリスマスは弱さゆえに自死を避けるのではない」 ブブー。 「確固たる信念がある」 ブブー。 「死を求めるに足る理由がある」 ブブー。 クリスマス選手、門に星を入れ続けている。 「自殺しないのは単に宗教上の理由です。自分では死なないように頑張りつつも不可抗力で死ぬならセーフかな、という程度の考えなので。死ぬ理由も大したことではないですから、本当に気にしないでくださいね」 本人による全否定だ。 「その選択は、自分で考えた結果なんですよね」 ポンコツ婦警は唐突にそう言った。相変わらずその声色に緊張感はない。 「決心に他人からあーだこーだ言われるのは嫌でしょうけど」 むしろ暖かみさえ感じさせるような声で。 「博士ちゃんは可愛い子だから、単純にワタシが死んでほしくないです。思いとどまるように説得してもいいですか?」 「聞き入れるかはわかりませんよ?」 その答えは肯定だ。 それが即ち本当は死にたがっていないということにはならないけれど。 「ありがとうございます。えー、では事情は聴きませんから、嫌なことがあって死にたいのだと仮定します」 「ええ、それで合ってます」 穏やかにそう言う。 「どうしようもない悲劇があったとします」 「はい、ありました」 それは、どこかで聞いた話だ。 「その状況を自分ではどうにも変えられなかったとします」 「そうですね」 言葉に込められた気持ちは、きっと他人事ではなく。 「それでも、その状況は一人の人間のせいではないはずです」 「ええ、理由はいくらでも、なににでも求められます。だからこそ責任はどこにもない」 それでも、二人の間には。 「だったら、あなたにも」 「状況が発生した理由はそうでも」 どうしようもない差があるはずだ。 「その状況を変えられなかったのは、私の願う気持ちが弱かったからですよ」 自らの死を求める者と、そうしなかった者の差が。 カチュア=マノーはホリィ・クリスマスになにか言おうとしたのだと思う。 その言葉はビープ音がかき消した。 きっかり10秒後、星々が落ち始めた。 轟音の中で会話はできない。 そして。 「じゃあ、そろそろ先に進みましょうか」 そして星が落ちきった後、ポンコツ婦警はそう言った。 天井の一点を指さして。 ◆ ◆ ◆ 「おかしいと思ったのは、この部屋が何を試しているのか、という点です」 門のひさしの下をうろうろしながらポンコツ婦警は語り始めた。 「運試しではないでしょう。運というのは確率の偏りであって人間自身が備えている資質ではありません。仮に運を図るのだとしても――この部屋の星は何枚ほどあるかと思いますか?」 「10000くらいでしょうか?」 クリスマスも推理ショーっぽい雰囲気に付き合っている。丸め込まれやすいのかもしれない。ちょっと心配だよこの子。 「ええ、ワタシもその位だと思います。そして一度に持てる星は100枚まで。全部外れの確率は9900割ることの10000。99%です」 「それは、いくら続けてもそうですよ。2回リセットされるまでやっても全部外れの確率は99分の1の2乗にはなりません。リセット前の結果はリセット後の結果に影響を与えない独立した事象ですから」 「わかっています」 わかるの? ポンコツ婦警の癖に? いや、オレもわかるよ? 独立した事象だよな、うん。 「それでも1%の確率で成功する、というのは運試しにしては高すぎる確率だとは思いませんか? ぶっちゃけソシャゲのガチャの方がよほど渋いでしょう。マジで星5全然出ないですよねあれ」 「それは、私はやったことないので……」 「おーう……」 やっぱりポンコツだな。安心した。 「えー、とにかく運試しではないと思ったんですよ。だからね、普通に床から拾ったのでは得られないところに正解の星があるのだろうと。で、天井ですよ、ほらあそこ」 指さした先には星形の穴が開いている。 だが同じような穴は無数にある。 星が落ちてくる際の通過口なのだ。 「博士ちゃんがチャレンジした後、星が落ちてくる間、ワタシは星の落ちてこない穴を探してたんですよ。隠すにはそこが一番いいですから。つまりこれはそう、ガチャ運ではなく観察力とかなんかそういうのを試す試練だったんですよ!」 「な、なんだってー!」 ドンダーが叫んだ。お前はオレと同じで知ってたはずだろ。 ……うん、ポンコツ婦警の言うことは正しい。 門を開く星はそこにある。 この部屋の試練は「思い込みからの脱却」。 あの碑文も単純な試行を繰り返させるための誘導だ。 あれをわざわざ伝えなきゃいけないオレたちは結局のところ候補者の味方ってわけじゃないのだ。 あくまでもこの樹のシステムの端末でしかない。 個人の心情ってやつはあるがそれとこれとは別の話、どうしようもないことだ。 しかしこの試練、知っていれば本当に単純だけどな。いくら失敗してもやり方が間違っているとは確信できない、というのは恐ろしい。 実際クリスマスはハマっていたし。諦めない心があるのだと美点のように言うこともできるが。 というか気づいてもあの星の雨の中で目当ての穴を見つけるのはきついと思う。 そこは理不尽クソゲームだ。 「お話はわかりました。でもどうやって星を取りましょうか」 「天井まではこの門を登ります。とっかかりが多いですから簡単です。その後は外れの穴に手をかけて進むしかないですね。かなりのオーバーハングですがガッツ出していきましょう」 「私はちょっと自信がないですね……」 クリスマスは謙虚にそう言った。謙虚というか、やはりオレには実力を隠そうとしているようにしか思えないのだが、ポンコツ婦警は額面通りに受け取ったらしい。 「あー、じゃあワタシが一人で登るんで、博士ちゃんは地上から指示を出してください。天井まで行って視点が変わると見失っちゃうかもしれないですし」 「ええ、それなら」 そしてポンコツ婦警はクリスマスに警棒を持たせて、この角度で見て先端に重なる穴ですよ、と伝え、するすると門を登り始めた。 オレを胸ポケットにつっこんだまま。 「よっ、ほっ、ていっ」 「……二人で進む気か?」 小声で尋ねる。返事は呆れるほどに単純な声。 「そうですよー?」 「気に食わない、とか。思わないのか?」 「いやいや良い子じゃないですかー。根性はちょっと出してほしくないこともないですけども」 「……そうだな」 そしてポンコツ婦警はいともたやすく星を手にした。 今回はこいつの異能も要らなかったな。 「ほいっとぉ」 そのまま天井から飛び降り着地する。 「見てましたか博士ちゃん!」 ポンコツ婦警は手にした星を高く掲げた。 そりゃ見てたよね。ちゃんと誘導してたんだから。 駆け寄るクリスマスはまたも申し訳なさそうな顔をしていた。 「すごかったです。マノーさん。あの、ごめんなさい」 「謝ることはないですよ。適材適所ですからね」 「ええ、でも、本当はもっと簡単に済んだはずなんです」 クリスマスは頭を下げて、また上げた。 今度は毅然とした顔だった。 「私、魔人なんです。能力を使えれば……」 「あ、ああー、そういうタイプ……」 ビリーバーかぁ、とポンコツは聞こえないように呟いた。 コメントに窮している。 もしかしたらこの部屋に入ってから一番困っているかもしれない。 「えー、『使えれば』ってことは使えない自覚があるんですよね? 使えないんだからしょうがないでしょう。気にしない、気にしナーイ」 「本当に気にしなくていいぞ。こいつ魔人能力とか信じてないし」 「信じてない?」 うん、それはそれで意味がわからないよな。 一緒にいれば嫌でもわかるとは思う。 この同行がどのくらい続くはわからないけれど。 「ま、とにかく先に行きましょうよ!」 会話を打ち切ったポンコツ婦警は勢いよく門に星を押し込んだ。 腹立たしいブザーはならず、虹色の光が広がった。 「星5演出来ましたね!」 だからそれクリスマスには伝わらないんだっての。 「ええ、開きましたね」 「うむ! いざゆかん、英知と死地とを求めて導かれる場所へ! 第四の試練へ!」 ドンダー、試練の間はなんだかんだで静かだったな。本当は空気読めるやつなのか? キャラが掴めん。 そういえばクリスマスの魔人能力も内容を聞いてないな。 まあ、こいつらがどんなやつらであるのか、それは案内人が気にすることじゃない。 ただ、彼女らが先に進むなら、それを最後まで見届けるだけだ。 「かくて、我らは扉をくぐる、ってな」 「一切の望みを捨てずに、ですね」 ポンコツ婦警はにへらと笑う。この先でもこいつは笑っていられるだろうか。 案内人ではなくただのオレとして、そんなことが頭に浮かんだ。 ◆ ◆ ◆ 世界樹を遡る、二人目の候補者(とくいてん)。 研究者、ホリィ・クリスマス。 所属なし。 鍛えていない魔人としては並の身体能力。 その異能は『聖なる贈り物(クリスマスプレゼント)』。 12月25日が訪れる度一つだけ、靴下に入る物体に限り、心から欲しいと思う物を手に入れることができる。 望む物がない場合、なにかを望むまで能力行使の権利を持ち越すことができる。 この能力は10年間使用されていない。 目的は、自らの死。 世界樹の最奥に死を求め、しかし自殺行為は禁じている。 存続を求めることなく、可能性に手を伸ばし続ける。 矛盾の特異点。 道(ルート)は交わり、天へと伸びる。 星にかざした手の如く。 剪定の刃が断ち切るまで。 SSツリーリンク 初回 第2回 第3回 天より伸びよさかしまの樹 (このSS) 斯くして闖入者は場を紊す 彷徨う愚者に下る鉄槌
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対戦に勝つためのコツについて 対戦に勝つためのコツ 対戦に勝つためのコツについて ゲームを遊ぶからには勝ちたい。 対戦で勝つためのコツや知っておくと良いと思われるTIPSを以下にまとめる。 記載されている内容以外にもこんなコツがあるよ、というものがあれば逐次追記して頂きたい。 対戦に勝つためのコツ ■シールドを上手く使う あああ ■残弾管理とシールド管理を行う あああ ■射線を意識する あああ ■有利位置を取る あああ ■適切な間合いを取る あああ ■スキル組み合わせのシナジーを考える あああ ■相手のスキルを読み解く あああ ■地形を利用する あああ ■最後まで諦めない あああ =====以下テンプレ===== ■あああ あああ
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フェイロン(Faylon) 地数星 仲間にする方法 フェイレン参照 武器 レンジ S 名称変化 ゲンコツ→中ゲンコツ→大ゲンコツ 攻撃力 1 2 3 4 5 6 7 8 10 20 35 50 75 90 110 125 9 10 11 12 13 14 15 16 140 160 170 180 190 210 230 250 ステータス HP 攻撃 魔力 直防 魔防 命中 回避 速 運 属性相性 太 火 雷 風 水 土 星 音 聖 闇 斬 突 殴 飛 C C D C D C C C C C C C C C スキル上限 体力 攻撃 防御 技術 丹田 敏捷 魔力 魔防 詠唱 魔法剣 S A A A B C D A D - 伝承スキル上限 獅子奮迅 活殺自在 金剛不壊 韋駄天足 破邪顕正 因果応報 S - - - - - 剣弾一如 風林火山 乾坤一擲 明鏡止水 天地神明 王道楽土 - - - - - - 固有スキル お宝発見・A オボロ身上調査書 1. フェイレンさんのお兄さんで、ロイ君の山賊仲間だった少年です。 2. ロイ君よりひとつ年上ですが、すっかり子分ですね。と言うか、妹さんより立場が弱い感じです。本人がそれを全く苦にしていないところがまた、ねえ。 3. ロイ君が殿下になりすましたのに合わせて、なんとゲオルグさんにバケようとしたらしいですよ。作った衣装を一度着てみたら小さすぎて破けちゃったんで中止になったそうですが。
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ウンコとかチンコとか呼ばれてたりする 本人も狙ってやったに違いない
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天皇賞。 サクラチトシオーは堂々の1番人気で参戦。 対抗馬はダイヤモンドS⇒阪神大賞典を連勝しているステイヤー・タイトシホルダー。 昨年のステイヤーズSの勝ち馬アリストシレス。今年の万葉Sを制したトウカイトシックなど、スタミナ自慢のステイヤーたちが集結した。 どんどん「調子はどうですか?」 ノブン「大阪杯から変わらず」 どんどん「かなりの人気を背負うことになりそうですね」 ポンコツ「当然だな。中距離でも走れるだけで、この馬はステイヤー。これまでに比べると相手も弱い。こここそが絶対に勝たなければいけないレース」 どんどん「自信たっぷりですね」 ポンコツ「勝つのは当たり前。内容も求められるレースになるだろう。負ける要素が見当たらない。菊花賞を見ての通り、長距離なら絶対に負けない」 ノブン「あまり負けフラグを建てないでください、何回も痛い目を見てきてるでしょう?」 ポンコツ「フン、それさえ気にならないほど、今回の条件、相手。どれをとっても負ける理由がないんじゃないか」 どんどん「対抗は長距離実績が抜けているタイトシホルダーでしょうね。先行して押し切る豊富なスタミナが武器と言う点ではサクラチトシオーと近いタイプかもしれません」 ポンコツ「それはないな。モノが違うから。実際にレースになればわかるだろうが、確実にモノが違うんだよ。例え先行争いが激化しようと、負ける要素はひとつもない。他の馬たちにG1のチャンスを与えてやってもいいが、サクラチトシオーは日本の競馬を引っ張る馬。取りこぼしは許されない。残酷なことになるが、決定的な実力差を見せつけることになる」 どんどん「言い過ぎやろ」 ポンコツ「そして勢いそのままに春のグランプリ、宝塚記念も貰う」 レースでは終始マークし続けてくるタイトシホルダーを直線で振り切り、サクラチトシオーが2つ目のG1タイトルを手にした。 タイトシホルダーの横山武淑(たけとし)は「直線までは上手くマークが出来て、ついていくことが出来た。直線での競り合い勝負になるなと思ったけど、馬の余力が違いました。一度広げられた差を縮めることが出来ませんでした。作戦は間違ってなかったと思うけど…底力の差ですかね」と力負けを認めるコメント。 淑之は「世界一になる準備は出来た。もう負ける気はしない」と自信の勝利インタビュー。 ポンコツ調教師も「あとは宝塚記念のみ。トゥシグトーシーとトシマサルにリベンジして、古馬の頂点に立つ準備は出来ている」と吹きまくり。 G1連戦が続くサクラチトシオーだが、持ち前の頑丈さで、厳しいレースを耐えていた。 サクラチトシオー18
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エンコ レベル-数 35-6 生息地 牛鬼屋敷 構成 名前 種類 レベル 初期付与 使用技 エンコ 餓鬼 35 ▲ ホタ 蝙蝠 34 玉運び 狼 34 玉授かり 狐 34 備考 霊視もち ドロップアイテム 毛皮 動物の毛皮 油揚げ
https://w.atwiki.jp/gods/pages/12045.html
ンコ~ 【ンア~】【ンカ~】【ンサ~】【ンタ~】【ンナ~】【ンハ~】【ンマ~】【ンヤ~】【ンラ~】【ンワ~】 【ンカ~】【ンキ~】【ンク~】【ンケ~】【ンコ~】 ンゴウボウ ンゴーグノグンバル ンゴツィ ンゴリエル
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【※GK注:このSSは作者体調不良のため締め切り後の08/05 2 56に投稿されていますが掲載しています。つづきを書いていただくことももちろん可能です。】 彷徨う愚者に下る鉄槌 世界樹の根(ルート)まで、折り返し地点を迎えた頃合い。 さて。今回の候補者の一角にして問題児のポンコツ婦警がそもそもここにやってきた理由はといえば、 この世界樹に逃げ込んできた指名手配犯を追っかけてきたことだった。 そう。逃げ込んできた。 それはつまり、ソイツも候補者として「剪定/選定」に参加している、という揺るぎない事実を示す。 俺は、一体どんな犯罪をやらかせばポンコツ婦警に追い回されるハメになるのやら、と失礼なことを考えていたのだが。 出会ったソイツは、ポンコツ婦警の語った人物像からあまりにも、あまりにもかけ離れていた。 薊野 檻弥(あぞうの おりや)。 言葉一つで人々を煽動し、洗脳し、戦争を起こした……稀代の犯罪者。 ◆ ◆ ◆ 「なーんか、うってかわって殺風景な感じになりましたねえ」 お次の試練は『愚者の地雷原』。 地雷原、という隠すべき情報すら隠さない愚かしいネーミング。 入り口に立てられた『足元に注意!!!』の注意看板には、デッサンの狂ったトゥーンテイストのイラストが添えられている。 しかし、最も特筆すべきは部屋の広さだろう。 世界樹の外観から推定できる最大径の部屋幅を平然と無視したかのごとく、継ぎ目のない白い床が一面に広がって地平線が見える。 とはいえ床は真っ平らではなく、所々に不自然な破壊痕が点在している。 「反対側に、うっすらとですが……出口らしきところが見えますね」 クリスマス博士が目を細め、地平線の向こうに霞む扉を視認する。 白一色の中にぽつねんと、所在なさげに浮かぶ紅色の長方形の扉を。 「よーし、そんじゃ行きましょうか!」 ポンコツ婦警が張り切って、第一歩を踏み出そうとする……のを、クリスマス博士が慌てて止めた。 「待ってください。曲がりなりにも地雷原と書かれた領域にズカズカ侵入するのは危険かと」 「うーん、それもそうですねえ。……そだ、ウォーたん」 「あ?」 ポンコツ婦警に名前を呼ばれ、何か面倒なことが起きそうな予感がした時には遅かった。 いきなり俺の頭を鷲掴みにして、放物線を描いて綺麗に地雷原へとチェンジアップをカマしやがった。 「ぐえ」 いやまあ、ぬいぐるみの身体では固い地面に激突したところで苦痛も何もないのだが。心情的には悲鳴の一つも出したくなる。 「おいコラ何をしやがる! 案内人を投げんじゃねえ!」 「やー、地雷なら重量センサーの類いかなーと思いまして。 案内人に攻略を聞くのはダメでも、案内人を使うぶんには問題ないのでは、と」 「それで爆発したらどうするつもりだったんだこの先の案内は!」 「案ずるな同胞よ、お主の無念は我が引き継ぎ、お主の勇姿は我が語り継ごう!」 「お前は黙っててくれドンダー! あーくそ、血が出ちまっ……」 いやいやいや。ぬいぐるみの俺から血なんか出るわけねえだろ。 そっと視線を、紅く濡れている方へ向ける。 青年が頭から血を流し、倒れ込んでいた。 その傍らには、金ダライが転がっていた。 ◆ ◆ ◆ 『愚者の地雷原』。 本質は、候補者を虚仮にすることにある。 ベタな仕掛けを覆い隠し、部屋の広さすら誤認させる視覚災害効果。 地雷原で足元注意と言われて素直に警戒する愚か者目がけて、天井から金ダライが降るという古典的な仕掛け。 そして金ダライに隠された効果。それは―― 「……ええと。ここは……どこでしょう?」 ――頭で受けた場合、負傷の程度を問わず、何らかの記憶を奪われる、ということだ。 ◆ ◆ ◆ 「あの、助けていただいたのはいいのですが…… なぜ僕の手に、手錠がかかっているのでしょう?」 クリスマス博士に頭の傷を手当てされながら、倒れていた青年……薊野檻弥が困惑する。 肩甲骨辺りまで伸ばした髪を括り、少しフレームの歪んだ丸眼鏡をかけた青年。 年の頃は……二十代くらいか? 穏やかそうな童顔のせいで、もっと若く見えるが体格を考えたらこんなとこだろう。 その両手にはがっちりと手錠がはまり、ついでにその手錠は縄でポンコツ婦警とつながっている。 良くも悪くも、ごく普通の青年にしか見えない。 あらゆる組織を煽動して治安崩壊を招きかけた凶悪な犯罪者だとは、思えないほどに。 あからさまに狼狽する薊野青年をよそに、ポンコツ婦警は本分を全うしようとしていた。 「いやー、記憶がスッ飛んでもやった罪は消えませんのでー。申し開きは署のほうで聞きますからサッサとここを出ますよ!」 「え、待て待て待て。試練はどうすんだお前」 「えー、だって指名手配犯をこうして無事確保したからには一刻も早く拘置所にブチ込まないといけないんですよ」 「そうなると、ここでお別れ、ですかね」 クリスマス博士がドンダーを抱えながら、ポンコツ婦警に向けて呟く。 心なしか、どこか寂しそうな声色なのは気のせい、ではないのだろう。 「そうですねえ、私の目的は達成されちゃいましたからね。 名残惜しいですが、生きていればまたどこかで会えますとも……あっ」 ポンコツ婦警が、思わず発した言葉に落ち込む。 なにしろ、死に場所を探している相手に『生きていればまた会える』などと言ってしまったのだから。 だが、クリスマス博士は、意気消沈するポンコツ婦警の頭を一撫でして微笑んだ。 「……ふふ、そうですね。また、いつかどこかで」 「退くもまた勇気、本分を果たす為なれば我は喜んで送り出そう!いざさらば、友よ!」 ドンダー、お前との親密度はそこまで上がった覚えはないのだが? その言葉を呑み込みながら、クリスマス博士とドンダーを見送る。 片や、ポンコツ婦警は青年を引っ張って元来た方へと進む。 ……だが、愚者の地雷原はそう簡単じゃあないことを、オレは知っている。ドンダーも知っているはず、なんだけどなあ……。 ◆ ◆ ◆ 数分後。 「ええと……随分早いいつかどこかで、でしたね」 薊野青年が、場の空気を取り繕おうと小粋なジョークを飛ばしたが……逆効果だろ。特にお前が言ったら。 すっかり気まずそうな表情を浮かべながら、候補者三人は向かい合っていた。 血がすっかり乾ききった、薊野青年が倒れていた地点で。 転がる金ダライも、近くの破砕痕も寸分違わずそのままだ。 「どうしてここに戻ってきちゃったんでしょうか」 薊野青年が、不安そうに呟く。 「なるほど、足元が巨大なベルトコンベアになっていて、(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)戻されるわけですか」 ポンコツ婦警は早速現状を把握した……いや、書き換えちまった。 実際には、ベルトコンベアなんてチャチな仕掛けじゃあなく、先述の通りの視覚認識災害と 空間歪曲による永久ループなのだが、コイツの認識の前には無力。 ここら一帯、全面ベルトコンベア張りの面白アトラクションになっちまった。 「あの、でもそれだと……おかしくないですか?」 だが、ポンコツ婦警の認識に……薊野が口を挟んだ。 「ベルトコンベアだとしたら、なぜ僕の血痕のところに戻ってきたんでしょう?(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)」 薊野青年の疑問もさもありなん、と言うべきか。 だが確かにそうなのだ、ここがコンベア仕掛けになったのはつい先程なのだから。 『ここから』のループと、『これまで』のループとでは挙動が違う。 ポンコツ婦警の『常識強制(コモンロー)』は、異能をトリックに堕することは出来る。 だが……第三者の目から、疑問が残る結果になった場合、果たしてどうなるのか? 「嫌ですねえ、ベルトコンベアなんですから床自体も循環してるに決まってるじゃないですか」 「でもそれだと、金ダライはどうなるんでしょう? 流石に部屋の端まで来たら血痕の位置とズレると思いますよ?」 「むー……? 金ダライくらい、コンベアの勢いでたまたま同じ所まで転がることもあるでしょう」 「あと、そちらの方と別方向に歩いて行った筈なのに正面から出会ったのはどうしてでしょう?」 「ううむ、おそらく個別で向きや速度を制御して、方向感覚を狂わせている……のでは……」 だんだんと、ポンコツ婦警の反論の語勢が落ちる。 ポンコツ婦警自身が、自分の認識を確信しきれていない。 「ともかく、ここから移動する方法を考えるべきでしょうね」 見かねた博士が口を挟み、話題を一旦逸らす。 そうだ、帰るにしろ進むにしろどのみちここから脱出しなくてはならないのだから。 「ともかく! このコンベアさえ止めてしまえばいいんですよね。だったら」 いつもの調子を僅かに取り戻したポンコツ婦警が、薊野青年を捕らえていない方の拳を握りしめて――床目がけて振り下ろした。 大地を砕く瓦割り。 ばごん、と床が抉れる。 「あちこちにあった破砕痕はこうやってできたのでしょう。 地雷原とはすなわち、床を破壊して止めろ、という暗喩だったのです!」 「な、なんだってー!」 いやドンダー、お前リアクション要員に成り下がってないか? ともあれ、これにて『常識強制(コモンロー)』で移動阻害は防がれていざ次へ……とはいかなかった。 「いや、やっぱり変ですよ。それなら最初からこの部屋は機能停止してるはずです。 破砕痕があちこちにあるってことは、既に壊れてなければおかしいです」 数歩進んだところで、またも薊野青年が口を挟む。 その瞬間、歩く一行の足元に違和感……いわゆる慣性が働き、三人がよろめいた。 間違いない。ポンコツ婦警の『常識強制(コモンロー)』は理屈が通らなければ、無効なのだ。 「……」 遂に、ポンコツ婦警が口を噤んでしまう。 「あ、ご、ごめんなさい。ただ、どうしても気になってしまって……」 「……そんなはず、ないんです」 「え?」 薊野がフォローしようとするが、少し遅かった。 ポンコツ婦警……カチュアは、その瞳から涙を一筋零して、放心していた。 「だって、超技術だとか、魔法だとか。そんなもの、ないのに」 ――何かが、まずい。 オレの中の第六感――否。 世界樹のシステムが、異常を感知している! まさか。このポンコツ婦警。 世界樹の存在自体を、否定しようとしていないか!?(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・) 「なんで。わたしは、ただ」 一体何が、コイツのトラウマになっているのか。『常識強制(コモンロー)』なんて無茶苦茶な異常の否定を身につけたのかオレは知らない。 それに、候補者のプライベートに踏み込むつもりもない。だから知らなくても良いと思った。思ってしまった。 だが、オレは考慮しておくべきだったのだ。 『世界樹を登り切れば全知全能の力が手に入る』という事実を、眉唾もののヨタ話へと変えてしまう、世界樹にとって最も危険な異能の暴発の可能性を――! だが、そんな最大の危機は…… 一発のビンタで、止められた。 クリスマス博士が、ポンコツ婦警の頬をぱしんと張り飛ばしたのだ。 「は、博士ちゃん……? 何するんですか、いきなり!」 「よかった。……まずは深呼吸を、二回。落ち着いてください、マノーさん」 紅い髪を揺らしながら、静かに微笑むクリスマス博士。 「星の門をくぐったときのことを、思い出してください。 『一切の望みを捨てずに』って、言ったでしょう?」 「……あ」 促されるままに、深く息を吸って、吐く。繰り返し、吸って、吐く。 その間に、数時間前の希望を思い出したのか、ポンコツ婦警の瞳に力が戻る。 そして、にへら、といつもの笑みをクリスマス博士に向けた。 「……あの、本当に、ごめんなさい。 僕のせいで、どうやら嫌なことを……思い出させてしまったみたいで」 目に涙を浮かべながら、薊野が頭を下げる。 「あなたがどうして、ここの仕組みにこだわるかはわかりません……ですが。 今大事なのは、この部屋の構造を暴き立てることじゃなくて、先に進むことです。 ……その、試練がどうの、というよりは、人生的な……ええと、すいません、えらそうなこと言って」 たどたどしく言葉を選びながら紡ぐ薊野の頬を、今度はポンコツ婦警がぺちんと叩く。 「まーったく!記憶を失っても人を惑わす会話術は健在みたいですねえ。 うっかりやられるところでしたよ、ええ!でも私はもう引っかかりませんからね!」 完全にいつもの調子を取り戻したポンコツ婦警は、胸を張って薊野に対峙する。 ……記憶喪失の凶悪犯相手に、そこまで自信満々に向かったところでどうなるというわけでもないと思うのだが。 「ともあれ、愚者の地雷原の攻略法!今度こそ見つけましたよ!」 どうせロクでもない方法だろうな。オレは諦めつつも、どこか嬉しく思った。 ◆ ◆ ◆ さて、ここからはほとんど蛇足になるが、その後コイツらが試練をどう脱出したかについて語っておこう。 「地雷原、というネーミングがやはりカギだったのですよ。 地雷原を進むようにゆっくりと進め(・・・・・・・)ということです」 と、ポンコツ婦警は高らかに宣言した。 流石に今度は異論は出なかった……というより、薊野が異論を呑み込んだ格好ではあるが。 『常識強制(コモンロー)』を『部屋のトリックの否定』ではなく――『脱出方法の肯定』に使ったのだ。 大仰なまでにゆっくりと、数歩歩んで――後方確認。 血痕もろもろの痕跡は、確かに離れた位置にある。離れられている。 「少しばかり時間はかかるでしょうが、いずれ出口には辿り着きます。つまりは忍耐力の試練だったわけですね」 「結構、体幹のトレーニングになりそうな、速度ですね……」 「すいません、せめて今だけは縄をほどくなり手錠を解くなりして欲しいのですが……」 ヨガか太極拳を思わせるような、気の遠くなるような身体運びで着実に進み―― 遂に紅く塗られた壁へと辿り着いた。……壁。 そう、入り口から見えたのは出口ではなかった。 『ここから出る方法は、たった一つの出入口(・・・)を通ればいいんだよ~ん』 と書かれた、小憎らしい落書きだけがそこにあった。 ……そしてさらに数時間を要して、もう一度入口に戻ってきたことで試練達成と相成ったのだった。 ちなみに今度こそ蛇足だが、本来はタライもまた凶悪な候補者殺しだった。 数個に一個、超質量のタライが紛れていて避け損ねた候補者をミンチにする、という即死クソ罠。 あいにく、最初に薊野を助け起こした際にポンコツ婦警が「何の変哲もない金ダライ」と見なしたせいで 記憶脱落効果も超質量もなくしたタライだけが、行き帰りの彼らに降り注いだとだけ言っておこう。 ◆ ◆ ◆ 「さて、今度こそお別れ……だと思っていたのですが」 コブだらけの頭をさすりながら入口、もとい出口に戻った三人の前には―― 遙か上方へと延びる、螺旋階段の底があった。 底ということは、これ以上下に降りることは出来ない。 ……戻れない、ということだ。 「どうやら、ゴールするまでは帰してくれないようですね」 「ふふ、また次の試練も一緒に頑張ることになりそうですね」 「退路は無い、我らの前には希望と危険が広がっている!さあ進め若人たちよ、残る試練は僅かであるぞ!」 ドンダーも例によって例の調子だし、また次も一波乱ありそうだな。 だが、オレはコイツらの行く末が……そう、楽しみになってきていた。 「……あの、すいません、お二人とも」 輪の中に入り損ねていた薊野が、口を開く。 その口調の真剣さに、浮かれつつあった二人も振り向いて目を見る。 「先程の試練で、その、記憶をなくしてしまって……正直なところ、信じられないんです。 僕が、他の人々を苦しめた犯罪者だ、なんて。信じたく、ないです」 ですが、と言って一息置いて、薊野もまた、決意を口に出す。 「もし、世界樹の奥に辿り着けたら。……僕は、取り戻したいです。 お二人にも、譲れないものがあるのはわかっているんです、けどね」 どこか緊張したような薊野に、二人は柔らかく返事する。 「大丈夫ですよ、そう堅くならずとも。私の望みは、案外途中で叶うかもしれませんし」 「そーですそーです。何ならもう私は半分は叶ってますとも」 さっきまで世界樹を壊しかけたグズり屋はどこへやら、だな。 警官と犯罪者という垣根を今だけ忘れるかのように、ポンコツ婦警は前を向きながら告げた。 「だから、さっさと帰るために、進みましょう」 だが、オレは忘れていた。いや、オレたちは、と言うべきか。 なぜ薊野に付いてくるべき案内人がいなかったのか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。 誰一人として、その疑問を抱くことが出来なかったのだから―― ◆ ◆ ◆ 薊野は、女子二人と案内人の後ろをついていくように、とぼとぼと歩いていた。 (……うん、ここまでは“筋書き通り”かな) 彼のポケットの中で、小さなスマートフォンの画面が灯る。 『薊野檻弥は、記憶喪失を装いカチュア=マノーと接触し、共に世界樹の頂上へと向かう』 と書かれたテキストメッセージが浮かんで、消えた。 (だが……過信は禁物かな、コレ。所詮は『借り物の能力』だし、 まさかあんなに動揺するとは思わなかった。……慎重につつかないと、だね) 世界樹の崩壊――それはそれで『面白い』とは思ったが、それで自分が巻き込まれて死ぬのは二流のオチだ。 達成の瞬間にドミノが崩れてこそ、己が滅んで尚お釣りの来る悦楽たり得る。 (ま、せいぜい頑張るとしようか……邪魔な案内人は『もういない』しね) マノーとクリスマス、そして彼女らの案内人の気付かないところで。 薊野檻弥は、楽しそうに――邪気のカケラさえ浮かべずに、微笑んだ。 ◆ ◆ ◆ 世界樹を遡る、三人目の候補者(とくいてん)。 犯罪者、薊野 檻弥。 様々な組織・団体に所属し、しかし君臨することなく組織を変質させるのが趣味。 相手の人格を思いのままに曲げる、洗脳じみた話術に長けた天性の犯罪者。 無害なサークルを過激カルト集団に変え、 矮小な宗教団体をテロ組織へと組み替え、 善良な市民を悪辣な暴徒へと変貌させた。 動機は『面白いことの無い世の中を面白くするため』。 ただただ己が愉しむために、他人を巻き添えにする。 人はそれを、悪と呼ぶ。 彼が今持つ異能は『三文台本(スリーセンテンスシナリオ)』。 何らかの媒体に記述した文の内容を、三つまで実現させる。 あくまでも可能性を収斂させて実現に限りなく近づける能力のため、 世界樹の踏破や、他の人間に対して直接的な影響は与えられない。 逃亡直前に、彼が洗脳した人間から『借りた』能力である。 目的は、失った記憶の奪還……と、表向きには伝えているが……? SSツリーリンク 初回 第2回 第3回 第4回 天より伸びよさかしまの樹 星に手を伸ばすふたりの人 (このSS) Tower
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ウオノコ・コツボ 登場作品:ミシュガルドの秘境から帰れない、ミシュガルドを救う22の方法 登録者:ととここ
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