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~レクイエムの大迷宮 地下6階~ 「エコーズAct.1のDISC……」 文字を書き込むことで、書き込まれた文字そのままの「音」を発すると言うスタンドの能力を発動させ、タバサは床に擬音を表わす言葉を次々と刻み込む。 この世界でタバサが始めて出会ったDISCのスタンド、エコーズAct.3が進化する前の姿。 それが、たった今彼女が発動させているエコーズAct.1だと言う。 今ここにいる世界が“時間”と言う感覚その物が存在しないような場所であるせいか、この世界に来たばかりの頃に出会ったエコーズAct.3の記憶も、もう随分と懐かしい物のように感じる。 だが、自分はあのエコーズAct.3のことを決して忘れないだろうとタバサは思う。 今ここで自分が戦っていられるのは、エコーズAct.3が己を犠牲にしてまで、自分の為に道を開いてくれたからだ。そして今、エコーズAct.3と深く繋がった存在であるエコーズAct.1までもが、今こうして自分の為に力を貸してくれていることに、タバサは言葉に表わせない深い感慨を覚えていた。 「…………Act.3」 『タバサ急げ!すぐにヤツが追い掛けてくっぞ!』 「! …わかってる」 腰のベルトに指したデルフリンガーの言葉に現実に引き戻され、床にエコーズAct.1の文字を仕掛け終わったタバサは大急ぎで、先程逃げて来た場所とは逆の方向―― 即ち現在のタバサから見て真正面の方向に向かって疾走する。 『――何処へ行こうと逃すものか!我がハイウェイスターのスピードは時速60km! お前がこのフロアー内にいる限り、その追跡からは決して逃れられないのだーッ!』 ちらりと後ろを振り返って確認すると、もの凄いスピードで床を疾走する足跡がタバサ達に向かって接近して来る。だが、ハイウェイスターと名乗ったスタンドが一直線にタバサに向かって接近して来ると言うことは、敵はそう簡単に立ち止まることが出来ないということでもある筈だ。 それを見越したからこそ、タバサは先程自分の進行方向上に罠を仕掛けたのだった。 「ピ!」「ポ!」「ガチャン!」「ドゴォ!」「レロレロレロレロ」「ズキュゥゥゥン!」 やがて見込み通りに、背後から物凄い騒音が響き始めたのをタバサは確かに耳にした。 『うぬうぅおぉぉーッ!?クソッ、この音は康一のエコーズの仕業かァ!?うぐおおォォォォ!!』 そうした一連の「音」が聞こえると共に、タバサは一旦その場で足首をぐるりと半回転。 エコーズAct.1による「音」によって悶絶しているであろうハイウェイスターに向けて、タバサは先程とは全く逆の立場となって接近して行く。もう一つの人型の姿を晒してのたうち回るハイウェイスターを確認すると共に、タバサは両手を構えてDISCのスタンドを発動する。 「……エンペラー!」 幾らハイウェイスターが直接的なパワーに劣るとは言え、超高速で動き回るそのスピードは脅威だ。 敵が混乱している今の内に、距離を置いて確実に仕留めたい。 そうしたタバサの意志を正確に受け取って、彼女の意志のままに操作される銃弾型のスタンドエネルギーが、ハイウェイスター目掛けて一直線に突き進んでいく。 そして、そのまま彼女の狙い通りにエンペラーの弾丸がハイウェイスターの頭部を撃ち抜く! 転げ回っていたハイウェイスターの体が一瞬ビクリと震えて、力を失って地面へと倒れ伏す。 『クハッ……!や、やってくれたな……だがお前の「臭い」はもう覚えたッ! お前の養分を一滴も残さず吸い尽くすまで、ハイウェイスターの追跡は終わらないィィィッ!!』 頭を撃ち抜かれながらもなお勝利を確信した咆哮を上げながら、ハイウェイスターは消滅して行った。 『……フーッ。これでまた一段落、ってヤツかぁ?』 もううんざりだ、とでも言いたげにデルフリンガーが憂鬱な溜息をついた。 そして相変わらずの無表情ではあったが、今のタバサの気分もそんな彼と全く同じ物だった。 生まれ故郷であるハルケギニアに帰還するべく、レクイエムの大迷宮の最深部を目指す途中で、タバサとデルフリンガーがこの階層に足を踏み入れてまず最初に発見したのは、石造りの部屋だった。 タバサ達がこの世界に迷い込む直前までいたハルケギニアの古代遺跡によく似たその部屋の中には、今は離れ離れになってしまっている親友のキュルケや、 クラスメイトであるゼロのルイズ、青銅のギーシュ、そしてルイズの使い魔である平賀才人―― トリステイン魔法学院に通う今のタバサにとって、大切な友人達の姿があった。 「…………罠」 『ワナだよなぁ』 それを見た二人は即断した。 様々な世界の“記録”が形を成しているこの世界ならば、確かにハルケギニアで離れ離れになってしまった彼らの“記録”も何処かに存在しているかもしれない。 実際にレクイエムの大迷宮を訪れる前に、あのトリステイン魔法学院で働くメイドの少女シエスタや、魔法学院の建物それ自体の“記録”に、タバサ達は出会っている。 しかし彼女らの前に広がっているその光景は、あまりにもあからさま過ぎた。 誰かが自分達に幻覚を見せて、罠に誘い込もうという魂胆は明白だった。 最初はタバサ達も、多少名残惜しい気はした物の、無視して先へと進むつもりでいた。 ――だが、出来なかった。 例え幻であろうとも、それが罠だとわかっていたとしても。 タバサの掛け替えの無い人達が何者かに襲われ、傷付けられようとしている姿を見てしまったら。 万が一にでも、それが罠では無いという可能性があるのだとしたら。 タバサは“彼ら”を助けに行かない訳にはいかなかったのだ。 結果として、タバサとデルフリンガーはその幻覚の罠を仕込んだスタンド「ハイウェイスター」と、その部屋で共に待ち受けていた鋼鉄製の車型のスタンド「運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)」 に部屋の中へと誘い込まれて窮地に陥る羽目になった。辛うじて、一枚だけ保持していた瞬間移動の発動効果を持つペットショップのDISCによって、階層内の別の部屋へと逃れることは出来たが。 しかしハイウェイスターが持つ「相手の臭いを覚えて、高速で自動追跡出来る」と言うもう一つの能力によって、タバサが何処に逃げようとしても、ハイウェイスターは執念深く階層内を逃げ回る彼女を追い掛け続けて来た。 そしてハイウェイスターは、本体から距離が離れていても力を発揮出来る「自動追尾型」のスタンド。 例外こそあれど、そうした自動追尾型のスタンドは精密動作性を犠牲にする代わりに、どれだけダメージを受けたとしても、本体であるスタンド使いとは受けたダメージを共有しない場合も多々ある。 ハイウェイスターもそうした本体とダメージを共有しないタイプのスタンドだった。 先程からタバサも隙を突いては攻撃を加えているのだが、何度撃退してもその度にまた“新しい”ハイウェイスターが、一度覚えたタバサの「臭い」を嗅ぎ付けて、彼女の体から全ての養分を吸い尽くそうとして襲い掛かって来る。 この階層に辿り着いてからと言うもの、そんなイタチごっこの繰り返しだ。 こんなジリ貧の状態が続けば、いつかタバサは養分を吸われてカラカラのミイラになってしまうだろう。 ハイウェイスターだらけの部屋、まさに「ハイウェイスター・ハウス」とでも言った所だろうか。 不幸中の幸いと言うべきか、ハイウェイスターと共にタバサを罠に掛けた運命の車輪の方はハイウェイスターと違ってタバサの位置を直接は感知できないらしく、まだ再会してはいなかったが。 『さーて。マジでこれからどーするよ、タバサ』 「……本体を、叩かないと」 『ま、そうなるわな、やっぱ』 ハイウェイスターの本体であるスタンド使いは必ずこの階層の何処かにいる筈だ。 それを叩かない限り、ハイウェイスターは何処までもタバサを追跡して来るだろう。 デルフリンガーの問いも、それを改めて確認する為の形式的な物だ。 では、具体的にどうすれば良いか?タバサ達はその為のアイデアに、まだ至っていなかった。 『だとしてもなァ。何とかして本体のヤローを見つけねーと話にならねーんだよな』 「それは多分…平気」 そこで少し曖昧な口調になってから、タバサはぽつりと口を開いた。 「心当たりは、ある」 『なんだってぇ!?アンタ、アイツの本体が何処にいんのかわかるのか!?』 「多分。でも確証は無い」 『それでも予想だけなら付いてんだろ?まったく、スゲーおでれーたぜ、オレはよ』 感心するデルフリンガーを余所に、タバサはいつもの無表情で思案を巡らせる。 確証が無いとは言った物の、スタンド使いの居場所はまず自分の推測に間違いは無いはず。 ならば、後は如何にしてハイウェイスターと接触せずに本体まで近付けるかどうか、だ。 『それでタバサ、ヤツの本体は何処にいるんだ?生憎とオレにゃあ全然思いつかねーぜ……』 「……すぐにわかると思う。だから」 タバサは銀色に輝く一枚の発動用DISCを取り出しつつ、もう片方の手で腰に挿したデルフリンガーの刀身を引き抜く。そして一旦デルフリンガーの柄を逆手に持ち替えて、一見しただけでは、まるで朽ち果てる寸前のボロボロの状態に見える彼の刀身を地面に滑らせる。 『ン……?おい、タバサ?』 「あなたに、目になって欲しい」 そのままタバサは、銀色のDISCを頭に差し込んで、そこに刻み込まれている能力を発動させた。 『悪には悪の救世主が必要なんだよ、フフフフ…』 「う……っ……!」 その刹那、タバサの視界が深い闇へと覆われる。何一つ見えない完全な黒の世界。 だが、逆に鋭敏に研ぎ澄まされた聴力が、階層内のあらゆる“もの”の動きを彼女に知らせる。 再び行動し始めたハイウェイスターも、そして未だに出くわしていない運命の車輪の存在も、今のタバサには文字通り手に取るように感知出来ている。 『タバサ…!お前さん――ひょっとして“目を潰した”のかよ!?』 「うん。これで、本体の場所がわかる」 視力と引き換えに敵の動きを感知する「ンドゥールのDISC」の為に、一時的にではあるが瞳から完全に光を奪われたタバサは、片手に握り締めたデルフリンガーを杖代わりに地面に突き立てて、目的の場所に向かって歩き出す。 『なあ、タバサ』 前が見えていない為に、危なげな足取りで歩くタバサに向けて、デルフリンガーは言う。 『オレ、最初にお前さんと会ってから結構経つけどよお。なんつうか、この世界に来るまで お前さんがここまでガッツのある奴だったなんて、マジで思いもしなかったぜ……』 「……生きる為」 『あん?』 「生きる為なら、当たり前」 手に握り締めたデルフリンガーを頼りに歩くタバサは、いつも通りの無感情な声で呟く。 「だから、あなたの力を貸して欲しい」 それは、本心からのタバサの言葉だった。メイジとして魔法を使う為の杖を失ってしまった以上、元の世界にいた頃のように、自分一人の力では戦えない。スタンドのDISCだけでは無い、今もこうして自分の側にいてくれるデルフリンガーの存在が、今のタバサには必要なのだ。 『……わーったよ。そこまで言われちゃ、オレも男だ!ここで断ったらオレの男がすたるってもんだ。 ああタバサ、出口はもうちょい右だぜ。大体2メイルちょい……よし、そこだ』 「……ありがとう」 『いいってコトよ。その代わり、ヤツらをぶっ倒す作戦はお前さんに任せるからな』 「うん。最初から、そのつもり」 デルフリンガーと共にハルケギニアに帰って、皆と再会する為にも、ここで死ぬ訳にはいかない。 タバサは手の中のデルフリンガーをより強く握り締めながら、目の前に広がる闇の中を歩いて行く。 「ム…!?ほっほ~う、ハイウェイスターの野郎より先に俺を潰しに来たのかァ? だがスタンドのパワーは奴よりも、俺のスタンド「運命の車輪」の方が上なんだぜェ~…?」 部屋の中で運命の車輪、その運転席でスタンドを操作しているスタンド使いが高笑いを上げる。 タバサはンドゥールのDISCによる盲目の中、高速で移動して来るハイウェイスターの動きを 「音」で感知しながら、その接触をデルフリンガーのアシストによって出来る限り回避することで、ようやくハイウェイスターに出会うことなくこの場所まで辿り着いていた。 『…なあタバサ。先にコイツを倒そうってのはわかるけどよぉ、あの足跡野郎の方はいいのかよ?』 どこか不安げな口調で、デルフリンガーがタバサに向けて聞いて来る。 『コイツだってそう弱い相手じゃねーだろうし、急いで倒さねーと後ろから足跡野郎に挟まれちまうぜ?』 「……何とかする」 いつも通りの口調で、タバサは言う。 『何とか、ねえ……まあ構わねえけどよ。ヤバくなったら遠慮なくオレを使ってくれよ?』 「そうする」 既にンドゥールDISCの発動効果が切れて、元の視力を取り戻しているタバサは運命の車輪の姿を見据えながらも、デルフリンガーの言葉にこくりと頷いた。 「ククク…作戦会議は終わったらしいな?それじゃあ、逆にテメエの体をヒキガエルみてーにペシャンコに潰しちまうぜェ!ウヒッホァ!」 言うが早いか、運命の車輪がアクセルを吹かしてその車体をタバサに叩き付けるべく突っ込んで来る。 本体の意志がそのまま具現化したような運命の車輪の姿は、攻撃的かつ獰猛だ。 まともに激突すれば、小柄なタバサの体など間違いなくグシャグシャに潰れてしまうだろう。 そんな訳にはいかない。タバサは真横に跳躍し、運命の車輪の走行軌道を回避。 そのまま、新たに手に入れた装備DISCのスタンドを攻撃の為に展開する。 「クレイジー・ダイヤモンド…!」 ドラララララララァッ!! スタンドの拳による超高速のラッシュが、運命の車輪の側面に叩き込まれる。 あわよくば運転席を剥き出しにして、中のスタンド使いに直接攻撃出来れば―― だが、そんなタバサの淡い期待が通じる程、運命の車輪も甘い相手では無い。 クレイジー・Dからのダメージを車体表面に拡散させ、“少し車の表面が薄くなった”程度に抑え込む。 「ヒャホアハァ!力押しでもしようってのか?パワーなら負けねェってさっき言ったばかりだろォが!」 狭い室内で強引に方向を変えながら、再びタバサに向けて運命の車輪が爆走を始める。 もう一度タバサは横に避けようとして、両脚に力を込める。だが、その瞬間。 「…………ぅッ!?」 突然、右足に鋭い痛みが走る。 運命の車輪の突進自体は辛うじて避けられた物の、今のダメージによって跳躍の為の脚への負荷が中途半端になってしまった為に、タバサは体勢を崩して床に転がり込んでしまう。 『タバサ!?』 「うぅっ……フー・ファイターズ……!」 大急ぎで射撃DISCの発動効果によって傷口にプランクトンを詰め込み、応急処置。 何とか立ち上がれるようになったタバサの前には、既に運命の車輪が三度目の突進を仕掛けるべく、圧倒的な鋼鉄の質量から生じるその凶悪で車体をタバサの方向へと向けている。 「ククク…一体何をされたのかわからない、ってツラをしてるなァ?」 「…………っ」 「ウヒャホァ!俺の攻撃の謎はすぐ見えるさ!貴様がくたばる寸前にだけどなァ!」 運命の車輪の表面が輝いたと思った瞬間、タバサの体に再び何かに貫かれるような衝撃が走った。 「あう…っ!」 『クソッ!ヤツの攻撃が見えねェ!一体何を撃って来やがったんだ!?』 「…………油」 『何ィ!?』 「油を…ぶつけて来た……」 タバサが受けた傷跡から、鼻を突き刺すような独特の刺激臭が漂って来る。 更に良く見れば、傷口を中心として、彼女の服にキラキラと輝く粘り気のある液体が染み付いていた。 「冷静に気付くとはおたくシブいねぇ~。そぉうッ!貴様の言う通り、そいつは確かにガソリンさ!」 タバサも聞いたことのある言葉だった。 トリステイン魔法学院の教師コルベールが名付けた「竜の血」という物質。 異世界より現れたと伝えられる空駆ける鉄の乗り物、竜の羽衣を動かす為の燃料のことを、同じく別の世界からやって来た青年、平賀才人が“ガソリン”と呼んでいたのを、タバサは覚えていた。 ――やはりスタンド使い達は平賀才人と同じ世界の住人なのだ! 今までの疑惑が改めて確信へと変わったことを、タバサは今はっきり自覚していた。 そして同時に思い出す。 竜の血、いやガソリンは乗り物を動かす為にそれ自体を燃やして使うのだと言う。 先程の攻撃の正体は、運命の車輪の燃料として積み込まれたガソリンを超圧縮して、弾丸として高速で撃ち出して来た物だった。 そして今、弾丸として撃ち込まれたガソリンは再び液体に戻って、タバサの身体にくまなく染み付いている。 「そして!この運命の車輪のガソリン弾を食らった貴様はッ!」 運命の車輪の言葉が終わる前に、突然タバサは背後から何者かに体を掴まれ、身動きが取れなくなる。 「…………っ!?」 『もう絶対に助からないって訳だぜ……!』 後ろを振り向けば、先程からタバサを追跡し続けて来たハイウェイスターが、 背後からのしかかるようにして彼女の身体をガッチリと捕らえていた。 『このままテメェの養分をカラカラになるまで吸い取ってもいいんだがよォ~…… のんびりしてるとまたどんな反撃食らうかわかんねぇからなぁ~? 吸える分だけ吸ってから、後は確実に決めさせてもらうぜェ?なあ、ズィー・ズィーの旦那ァ?』 「う……あぅ……っ!」 そう言ってタバサの体内の養分を吸いながら、ハイウェイスターはタバサの体を固定したまま離さない。 「クククッ……離すなよハイウェイスター!例えテメーが燃え尽きちまったとしてもよォ!」 『ああ、いいぜ?俺は自動追尾型のスタンドだからなァ、どんだけダメージを食らっちまったとしても本体にはなーんにも影響が無いからな…また新しいハイウェイスターを出せばいいだけだもんなァ!』 そして運命の車輪の中から、バチバチと火花を散らした電線がタバサに向けて近付いて来る。 『マジでヤバいぞッ!タバサ、何か手はねぇのかよ!?』 「…………っ!」 「逃れる手段などあるものかァ!この運命の車輪とハイウェイスターのコンビは無敵だ! 電気系統でスパークして俺の気分がハイ!ってヤツになるまでコゲちまいなァァァァッ!!」 そしてハイウェイスターに組み敷かれたタバサに電線が絡み付き、服に染み付いたガソリンと化学反応を起こして盛大な炎を上げて燃え上がる。 その中心にいたタバサは、彼女の体を拘束し続けるハイウェイスター諸共に炎へと包まれて行く。 「ううあぁぁぁぁ……っ!ああぁっ……!!」 「ヒャホハァハハハハハハーッ!!勝った!第六話、完ッ!!」 運命の車輪の本体、ズィー・ズィーは運転席から異様に筋肉で盛り上がった腕を突き出し、そして目の前で炎の柱に包まれるタバサに向けて勝利を宣言する。その瞬間―― 「うぬッ!?」 運命の車輪の車体を貫通して、小さな何かが運転席の中のズィー・ズィーの頬を掠めて飛んで来る。 良く見ると、カブト虫のような物体がそのまま運転席の中をフラフラと飛んで行き、やがて消滅した。 「タワーオブグレイだとォ?チッ、つまらねェ抵抗をしやがって」 かつての仲間の一人が操っていたスタンドの姿を確認して、ズィー・ズィーは舌打ちする。 確かに「灰の塔(タワーオブグレイ)」も、小さいながらに中々の破壊力とスピード、そして精密動作性を持っており、奇襲などの戦法で運用すれば恐ろしい効果を発揮することは間違いない。 だが、真正面から撃って来て運転席のズィー・ズィーを倒せる程、都合の良い威力を持つ訳でも無い。 「クククッ……しかしあの小娘、後何秒で黒コゲになるかねぇ~?ちょっと賭けてみるか?ウヒャホハハ」 陰湿な笑みを浮かべながら、ズィー・ズィーはハイウェイスターごと燃えるタバサの姿を見やる。 「ン?」 と、そこでズィー・ズィーは自分の膝の上に何か異物が転がっているのを発見した。 「なんだ…サイコロ…?なんでこんなモンがこんな所に……」 ズィー・ズィーは膝の上にあった正六面体の物体を拾い上げて、まじまじと見やる。 そして、サイコロからチロチロと赤いモノが見えたと同時に、それは運命の車輪の中に一気に広がってズィー・ズィーに向かって覆い被さって来た。 肌が削り取られ、灰の中の空気までが一瞬にしてカラカラになっていくような、そんな恐ろしく鈍い刺激が、紅く燃え上がる炎と共に運命の車輪の運転席に充満して行く。 「何ィィィィーッ!?」 ズィー・ズィーが手にしたサイコロは、既に元の形を取り戻して運転席の中に炎を撒き散らしていた。 それは、先程までタバサの着込んでいた黒いマントだった。 運命の車輪の火花によって全身を燃やされる直前、タバサはハイウェイスターに組み敷かれたままで自分の姿を自在に変えられる「ミキタカのDISC」を発動させ、運命の車輪のガソリンをたっぷり吸って火の付き始めたマントだけをサイコロに変えた。そしてサイコロに変えたマントを撃ち出したタワーオブグレイに持たせて、運命の車輪の中に送り込んで来た。 タワーオブグレイは攻撃の為に撃ち込まれたのではない、ただの運搬役に過ぎなかったのだ。 「うぉわぁぁァァァ!?クソッ、あの小娘ェェェ!! だッ、だがッ!奴とて炎に包まれてるのは同じこと!火ダルマになる運命は変わらな――」 それでも自身の勝利を疑わずにタバサの方を見たズィー・ズィーは、そこでついに言葉を失う。 『――ふぃ~!まったく、今度ばかりは死んだかと思ったぜェ~……』 こりゃ参った、とばかりにデルフリンガーが心から安心したように声を上げる。 そして地面に崩れ落ちて燃え落ちる寸前のハイウェイスターを後ろに、全身に炎の残り香を巻き付けながらも、デルフリンガーを腰に挿したタバサが今、確かにその場へと立っていた。 そのままタバサははっきりとした足取りで、運命の車輪を目指して力強く一歩一歩を踏み出して来る。 「バ、バカなァ!?俺は確かにヤツにブチ込んだガソリン弾に引火させたはず! それなのにどうしてアイツは黒コゲにならないんだァーッ!?」 激しく動揺するズィー・ズィーには何も答えず、タバサはまた一歩運命の車輪へと近付いて行く。 そしてタバサの体から、小さくなった炎と共に何かの塊がボトリと落ちて来た。 「イ……イエロー……テンパランスだとォォォッ!?」 タバサから落ちたモノの正体を確認して、ズィー・ズィーは全てを了解していた。 あらゆる攻撃を遮断すると共に、同時に全てを食らい尽くす強力な攻撃手段も兼ねた肉の塊を操るスタンド、「黄の節制(イエローテンパランス)」 これもまた、かつてのズィー・ズィーの仲間であったラバーソウルという男が操るスタンドだった。 タバサは全身を炎によって焼き尽くされる前に、防御用の装備DISCとして仕込んでいたその能力を発動させ、肉の塊をその身に纏うことによって炎のダメージを押さえ込むことに成功する。 そしてイエローテンパランスを纏った自分よりも先に、タバサを拘束するハイウェイスターが燃え落ちた為に、彼女はようやくその拘束から逃れることが出来たのだ。 しかし、タバサとて決して無傷と言う訳では無かった。 彼女がガリア王家一族の血統であることを証明する、その透明な泉のように美しい蒼穹の髪は炎に焼かれてその形を崩し、身に纏ったトリステイン魔法学院の制服も、ガソリンを吸い込んだが為にあちこちが焼け爛れ、袖口などには真っ黒な焦げ目がまるで傷口のように深く刻み込まれている。 彼女自身の透き通るように真っ白な肌も、炎に炙られたせいであちこちに歪んだ模様を生んでいた。 だがそんなことはお構いなしに、タバサは未だに運転席の炎が広がっている運命の車輪を目指して、無言で、しかし着実にその間合いを詰めて行く。 「うおおォォォォ!こッ、これでは運命の車輪が操縦出来ないィィィッ! なあオイッ!?今すぐハイウェイスターで何とか出来ねぇのかよォォォォ!?」 「無理だ!今のハイウェイスターはまだ完全に燃え尽きちゃいねぇ! ダメージが回復するか……もしくは一度完全に消滅させられたりしねーと、次の奴は出せねぇ! ……うおおお!炎が……もうダメだッ!俺は先に出させて貰うぜッ!!」 炎に包まれる運命の車輪――その助手席を大きく開いて、一人の男が慌てて転がり落ちてくる。 筋骨逞しい腕をしたズィー・ズィーでは無い、もっと取り分けた特徴を持たない平凡な姿の青年だった。 『おォ!?誰だこいつぁ……さっきクルマん中で見た奴とは違うぞ!?』 「本体」 『なんだと?』 「もう片方の…本体」 タバサは横目で運命の車輪から出て来た青年を見ながら、確信に満ちた声で呟いた。 そしてこの階層でハイウェイスターの生んだ幻覚の部屋に入った後の出来事を、頭の中で思い返す。 手当たり次第に階層内の小部屋に逃げ込んでは、彼女を追跡して来たハイウェイスターを迎撃する。 そんなことを繰り返して行く内に、この階層内に本体のスタンド使いが隠れられそうな場所など何処にも無いとタバサは感じていた。ましてや本体が直接スタンドを操作で追跡しているならまだしも、 ハイウェイスターは本体のスタンド使いの意志とは関係無しに動き回れる自動追跡型。 スタンドを通じて、タバサの移動を確認しながら逃げ回っているという訳でも無さそうだった。 しかし、それでもこの階層内の何処かに本体のスタンド使いがいる筈。 それらの状況を踏まえた時、タバサはある一つの結論に辿り着いた。 この階層で一番安全で、かつ見つかり難い場所――それは車型のスタンド「運命の車輪」の中だ! だからこそ、タバサは視力を失うという危険まで冒してンドゥールのDISCを使い、この階層内の敵の存在やその位置を感知しようとしたのだ。そしてンドゥールのDISCによって鋭敏に研ぎ澄まされた 聴力が、運命の車輪の中でいつ自分が倒れるのか?と言う話題で談笑する“二人の男”の会話を 捉えた時、ようやくタバサは自分の考えに対する確証を掴むことが出来た。 そして今、ついにこのハイウェイスターの本体を、目の前に引き摺り出すことに成功したのである。 『そーかそーか、こいつがあの足跡野郎の……や~っと見つけたよなァ。 散々っぱらオレ達のことを追い掛け回してくれやがって!お前さん、覚悟しやがれよ…!』 「く……!!」 頼りの綱のハイウェイスターも出せず、噴上裕也と言う名の青年は恐怖に脅えたような声を漏らす。 「……その前に」 運命の車輪まで目と鼻の位置にまで近付いたタバサは、いつも通りの無表情な声で呟く。 「こっちが先」 「ヒッ――ヒィィィィッ…!!」 炎の中で助けを求めるようなズィー・ズィーの悲鳴など耳に入らぬように、タバサは頭の中の装備DISCに宿るスタンドの力を解放し、その拳を運命の車輪へと向ける。 「クレイジー……ダイヤモンド……!!」 ドラララララララララララララァーーーーッ!!! 目にも留まらぬ速度で叩き込まれる拳のラッシュが、運命の車輪の車体にメリ込んで行く。 今や車全体にまで広がろうとしていた炎と、再生の隙を与えまいとするクレイジー・Dの猛打と言う二重の要因を受けて、それまで獰猛なパワーを発散していた運命の車輪の姿が 次々に捩れ、拉げて、まるで粉雪のようにその破片がボロボロと落ちて行く。 今、運命の車輪がその戦闘力をどんどん失われているのは、誰の目から見ても明らかだった。 「ウゲエェェェッ!つ、つぶれ……息が、出来ない……!」 炎に捲かれながらも、先程開かれた助手席のドアから必死に逃れようとするズィー・ズィー。 鍛え上げられた筋肉によって、まるで丸太のように太く盛り上がった腕とは対照的に、それ以外の部分は見るからに細身で貧弱そうな体付きをしている、非常にアンバランスな体型の男だった。 運転席から逞しい腕だけ出している姿も、今から思えばただのコケ脅しにしか見えない。 「…………!」 既に運命の車輪も、スタンドパワーによる変形も解かれて、元の小さなボロ車の姿を晒し出していたが、タバサはそんなことなど意にも介さずに、クレイジー・Dによるトドメの一撃を叩き込む! 「ブッギャアァァァァァ~~~~~~ッ!!!」 その一撃で吹っ飛ばされたズィー・ズィーはボロ車ごと壁に叩き付けられ、盛大な悲鳴を上げる。 そして、この世界が生んだ“記録”に過ぎない彼は、そのまま車ごとその姿をスッと掻き消して行く。 ズィー・ズィーと「運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)」、再起不能(リタイア)。 ゼロの奇妙な使い魔「タバサの大冒険」 To be continued… 第5話 戻る
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概要 曲一覧 概要 作者:soleil サイト:soleil-musique ジャンル:RPG 動作機種:Windows 製作ツール:RPGツクール2000 第二回紅白VIPRPG出展作品。ほのぼの系の正統派RPG。 作者は音楽素材作者としても活動されている方で、この作品のBGMは全て自作曲となっている。 曲一覧 曲名 ファイル名 備考 作曲者 配布元 ある日、森の中 sol_forest001.mid soleil soleil-musiquehttp //soleilmusique.web.fc2.com/ 朝を待つ紫陽花 sol_piano001.mid お正月には帰るよ sol_village001.mid Andantino アリサの冒険記-Andantino.mid Chaotic Invitation アリサの冒険記-Chaotic Invitation.mid Grand Finale! アリサの冒険記-Grand Finale!.mid jazzy girl アリサの冒険記-jazzy girl.mid Moonlight Voyage アリサの冒険記-Moonlight Voyage.mid Remember アリサの冒険記-Remember.mid Start of slapstick アリサの冒険記-Start of slapstick.mid The Trial アリサの冒険記-The Trial.mid Turn On Your PowerSource!! アリサの冒険記-Turn On Your PowerSource!!.mid ある日、森の中(Reggae) アリサの冒険記-ある日、森の中(Reggae).mid ウェディングマーチ(メンデルスゾーン) アリサの冒険記-ウェディングマーチ(メンデルスゾーン).mid おきらくジャーニー アリサの冒険記-おきらくジャーニー.mid サニーデイ・スウィング アリサの冒険記-サニーデイ・スウィング.mid スパイラル感情論 アリサの冒険記-スパイラル感情論.mid 雑魚戦 どろぼうネコ アリサの冒険記-どろぼうネコ.mid なんでこの歳で アリサの冒険記-なんでこの歳で.mid のんびり休憩 アリサの冒険記-のんびり休憩.mid ポケットの中には、希望がひとつ アリサの冒険記-ポケットの中には、希望がひとつ.mid ゆっくり休もう アリサの冒険記-ゆっくり休もう.mid 煙草の煙と不味い酒 アリサの冒険記-煙草の煙と不味い酒.mid 王様の話は長い アリサの冒険記-王様の話は長い.mid 何もないから平和なんです アリサの冒険記-何もないから平和なんです.mid 華不散歌 アリサの冒険記-華不散歌.mid 我的紐帯 アリサの冒険記-我的紐帯.mid 回老家 アリサの冒険記-回老家.mid 偶像破壊ラプソディ アリサの冒険記-偶像破壊ラプソディ.mid ボス戦 決めポーズ アリサの冒険記-決めポーズ.mid 決めポーズ(ループ付き) アリサの冒険記-決めポーズ(ループ付き).mid 見えない糸を手繰る アリサの冒険記-見えない糸を手繰る.mid 思い込みと壁 アリサの冒険記-思い込みと壁.mid 自然の息吹 アリサの冒険記-自然の息吹.mid 掌に残る感覚 アリサの冒険記-掌に残る感覚.mid 森の陰から アリサの冒険記-森の陰から.mid 青春ナイフ アリサの冒険記-青春ナイフ.mid ボス戦 想うが故に アリサの冒険記-想うが故に.mid 足跡 アリサの冒険記-足跡.mid 潮風 アリサの冒険記-潮風.mid 燃えろ!デコボコシスターズ アリサの冒険記-燃えろ!デコボコシスターズ.mid ボス戦 飛翔ファルコン号 アリサの冒険記-飛翔ファルコン号.mid 並木道 アリサの冒険記-並木道.mid 冒険の果てに アリサの冒険記-冒険の果てに.mid 魔の胎動 アリサの冒険記-魔の胎動.mid 勇者誕生 アリサの冒険記-勇者誕生.mid 夕飯の支度でもしよう アリサの冒険記-夕飯の支度でもしよう.mid 離別 アリサの冒険記-離別.mid 涙はいつか乾くから アリサの冒険記-涙はいつか乾くから.mid 鬱憤ブレイカー アリサの冒険記-鬱憤ブレイカー.mid ボス戦
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~レクイエムの大迷宮 地下6階~ 『それじゃあ何か?オレ達にお前さんの探し物とやらを手伝え、と言う訳かい?』 「マ、結果的にはそうなるね」 ツェペリ男爵と名乗った男から詳しい事情を聞き終えた時、開口一番に口を開いたのは不満げな態度を隠そうともしないデルフリンガーだった。先程ツェペリにしてやられたばかりの噴上裕也は未だに仏頂面を浮かべたまま、タバサはいつも通りのぼんやりした無表情でツェペリの話を聞いていた。 お互いに敵意が無いことを確認した一同は、まずタバサ以外の満場一致で彼女を休ませることにした。 誰もが先程のハイウェイスターや運命の車輪との戦いによる消耗が激しいタバサを無理させたくはなかったと考えていたし、特に今まで散々ハイウェスターをけし掛けて来た張本人である噴上裕也は自責の念もあった為か、この場にいる誰よりも強くタバサの休養を主張していた。 その為に、今の所は新しい敵の気配が感じられないこの階層を動かぬまま、皆でツェペリの話を聞くことになったのだった。 「エイジャの赤石……か。聞いたことだけはあるな。 確か仗助のオヤジが昔、そいつを巡ってスゲェ化け物と戦ったとか何とか……」 昔プレイしたテレビゲームのストーリーを思い出すような気分で、噴上裕也が言った。 彼らの世界における吸血鬼を生み出す為の秘宝、古代の時代に作られた石仮面―― それを作った男達が、より遥かなる高みを目指して求めた物がエイジャの赤石だった。 赤石と石仮面が合わさった時、「柱の男」と呼ばれた彼らは天敵である太陽の光をも克服した究極の生命体となれる。噴上裕也はとある友人の父親から、そんな話を冗談半分に聞かされたのを思い出していた。 「そう、エイジャの赤石……私が“死んだ”時にはそんな物まであるとは思いも寄らなかったがね。 だが偶然にも、私はこの世界でその存在を知り、それがこの大迷宮の最深部にあることを知ってしまった。知ってしまった以上、私は赤石を探しに行かねばならない。 そして私は、それを永遠に封印せねばならんのだ……」 グラスに注いだワインを口に含めながら、ツェペリは半分独り言のような口調でそう言った。 『フム……目的の場所が同じだから協力して先に進もうって話……それ自体はまァ、いいだろう。 だがツェペリの旦那。アンタはまだ、オレ達に言ってないことがあるぜ?』 「何かな、デルフ君」 『何だって、お前さんがその赤石とやらを欲しがるか……その理由をオレ達はまだ聞いちゃいねぇ。 その辺についてハッキリと聞かねー限りは、まだアンタを信用する訳にゃあいかねーな』 「――フム」 口こそ開かなかった物の、今のデルフリンガー言葉と同意見とでも言いたげな態度で、噴上裕也もツェペリの顔を厳しい表情で睨みつける。対してツェペリは、大して動じた様子も見せずに、再びワイングラスを傾けて中に注がれた液体を少しずつ飲み干して行く。 「…………吸血鬼」 三者の生み出す微妙な緊張感を打ち破ったのは、タバサのその一言だった。 ツェペリから分けて貰ったサンドイッチを頬張りながら、タバサはツェペリの弟子、ジョナサン・ジョースターの記憶を封印したDISCの内容を一つ一つ思い出すように言葉を続ける。 「吸血鬼を増やさない為……石仮面に…力を与えない為……?」 「――そうだ。タバサ、君の言う通りだ」 ワイングラスを脇に置いて、何時になく神妙な顔でツェペリは頷いた。 「私は若い頃、世界中を旅する船乗りだった。私はとある探検隊の一員として、世界のありとあらゆる場所を旅して来た。遺跡発掘隊の隊長である父と一緒にな。そして幾度目かの探検の中で 発見したのが、吸血鬼を生み出す石仮面だった。 あの頃はまだ、そのルーツまではわからなかったがね。 そして……石仮面を船に積み込んで本国へと持ち帰る最中に、その事件は起こってしまった」 『――石仮面を被って、吸血鬼になっちまった奴がいた。そうだな?』 「そう。君の言う通りだ、デルフ君」 デルフリンガーの言葉に答えて、ツェペリはその唇を強く噛み締めながら続ける。 「その吸血鬼によって、私を除いて船の乗組員達は全滅した。 ある者は血肉を食い尽くされ、またある者は血を吸われてその身を屍生人(グール)に変えられてな…… 私は辛うじて、今まさに沈もうとしていた船から脱出出来た。そして、私は見てしまったのだ…… 私を追って、天敵である太陽の光をその身を浴びて、崩れ落ちて行く吸血鬼の姿を……」 ツェペリの噛み締めた唇から、一筋の赤い血が流れ出す。 「その吸血鬼の顔は発掘隊の隊長……私の父だったのだ……」 そして彼は、これ以上は無いと言う程の無念と絶望を口に乗せて、言った。 「その後、あるきっかけで仙道の存在を知った私は、長年の修行の末についに波紋法を体得した…… 失われた石仮面を破壊し、人間の世界に二度と吸血鬼が現れぬようにな。 そして私は、同じように石仮面と関わったジョナサン・ジョースターという青年に波紋法を教えた。再び姿を現した石仮面を破壊すべく、彼と共に新たに生まれた吸血鬼を倒そうとしたのだが…… 私は結局、それを果たせぬままに死んでしまったのだ。私の遺志をジョナサンに託して、な」 そこでツェペリは言葉を区切って、先程から黙って話を聞いているタバサに顔を向ける。 「タバサ。君はこの世界が生み出したDISCによって、ジョナサンの記憶を読んだらしいね。 だが私は、その話を聞かないでおくことにしよう。 我が最愛の弟子であり親友であるジョジョは、私だけでない大勢の人々の意思を受け継いであの邪悪な吸血鬼ディオを倒したのだと――そう信じているからね」 誇らしげに、そしてどこか悲しげな表情を浮かべながら、ツェペリは言う。 その様子を見て、もしかしたらツェペリはジョナサンの未来を知っているのかもしれないとタバサは 思った。ジョナサン・ジョースターは確かに、目の前のツェペリの遺志を受け継いで、吸血鬼と化した親友ディオ・ブランドーを倒した。だがジョナサンは新婚旅行へ向かう航海の最中、首だけの姿となって生き延びたディオに襲われ、最期には妻エリナを逃してディオと共に爆発する船の中へと消えたのだ…… 「……話が逸れてしまったな。ともあれ、私の目的は石仮面に纏わる全ての存在を闇へと葬り去ることだ。 例え私を含めたこの世界の全てが、過ぎ去ってしまった遠い過去の“記録”であろうともな…… そして石仮面の力に更なる“先”を与える赤石の存在を知った以上、それを見過ごす訳にはいかん。 何としてでも私自身の手で破壊したい――これが、私がエイジャの赤石を求める理由の全てだ」 まるで祈りを捧げるように語るツェペリの話を、タバサ達は黙って聞いていた。 彼と共に戦ったジョナサン・ジョースター、そしてその血統を受け継いだ戦士達が、ジョナサンと同様に邪悪な存在と戦い続けて来たことを、タバサはこの世界に来て断片的ではあるが知るようになっていた。 ジョースターの誇り高き血統。それは紛れも無く尊敬に値する物だとタバサは思う。 しかし彼らは決して、一人でその戦いに勝利して来た訳では無いのだ。 ジョースターの一族には常に仲間達がいた。その中には激しい戦いによって命を落とした者もいたが、彼らは皆、最後の時まで戦い抜き、そして残された者達に自らの意志を託して去って行った。 それこそが人を遥かなる高みへと導く「誇り」であり、更に未来へと受け継がねばならない「遺産」だ。 彼らが胸に抱いた光り輝く「黄金の精神」は、一人では決して掴めない物なのだ。 「誇り」とは血統のみを拠り所として与えられる物では無い。 タバサは父と母から受け継いだ血を誇りに思っているが、自分から全てを奪い去って行った憎むべき伯父一族の血族は、決して許すことは出来ない。 彼らの持つちっぽけな「誇り」など、絶対に認めてやる訳にはいかないのだ。 かつて、ハルケギニアでたった一人で戦い抜いて来た日々が間違っていたとは、タバサは思わない。 だが、今までずっと長い間、自分は孤独な戦いを続けて来たと言うタバサの考えは、間違いだった。 傷ついた母を守る為の戦いは、他でもないその母から受け継いだ命と心があればこそだ。 そしてトリステイン魔法学院で新たに生まれた友人達も、一度は彼らを裏切ってしまった自分を助ける為に、それこそ命を懸けて戦ってくれた。 もう自分は――いいや、最初からタバサは孤独などでは無かったのだ。 この異世界にやって来てからと言う物、タバサはそのことを深く実感するようになっていた。 孤独に耐えることは出来る。しかし全てを奪われて後に何も遺されないと言うのは、耐え難い苦痛だ。 自分には帰る場所があり、待っててくれる人達がいる。それは何よりも至福なのだとタバサは思う。 何よりも、今だってタバサには大勢の仲間がいる。ハルケギニアから一緒にやって来たデルフリンガーが共に元の世界に戻る為に力を貸してくれているし、この世界で出会ったエコーズAct.3等DISCのスタンド達や、あのトリステイン魔法学院の“記録”としてこの世界に存在するシエスタ、敵として出会ったにも関わらず、今ここで隣に座っている噴上裕也たってそうだ。 タバサの知る限り、ツェペリがジョースターの血統に与えた「誇り」は真に尊きものだった。 そんな彼が語ってくれた言葉を、タバサは今、信じてもいいと考えていた。 「…………わかった」 長らくの沈黙の後に、タバサは小さな、しかしはっきりとした声で呟いた。 「あなたと、一緒に行く」 「――そうか。信じてくれてありがとう、タバサ」 タバサの言葉に、ツェペリは心の底から頭を下げるように、そう感謝の言葉を述べた。 彼女のその一言を切欠として、先程までツェペリに対して疑惑の感情を投げ掛けていたデルフリンガーと噴上裕也も、観念したかのようにふぅ、と大きな息を付いて後に続く。 『……しゃーねーな。タバサがそう言うなら……ってのもあるけどよ。 そんな話を聞かされちゃあ、見て見ぬフリをすんのも寝覚めが悪くてしゃーねーや』 「だな。これでまだアンタを信用しなかったら、幾ら何でもカッコ悪いどころの話じゃねーぜ」 そして噴上裕也は、何処かすっきりしたようなその表情をタバサの方に向けて、言葉を続ける。 「タバサ。何処まで力になれるかわかんねーが、俺もアンタに付き合うよ。 そこの剣野郎の台詞じゃねーが、あんたらをここで放ったかしにすんのはマジで寝覚めが悪いしな」 『ほー、こりゃおでれーた。敵のクセにそんなコトを言って来た奴はお前さんが始めてだぜ』 「うるせーな、俺は誰だろうと一度受けた恩は絶対に返す主義なんだよ」 驚き半分、呆れ半分の口調で口を挟んで来るデルフリンガーに、噴上裕也が憮然とした表情で言い返す。 「それに、女にゃ出来るだけ優しくしとけっつーのも、俺のポリシーの一つでな。 第一、こんなチビを出会ったばかりの胡散臭ぇオッサンと二人っきりになんざしておけるか」 「ははは。いや、なんか、酷い言われようだねえ」 まるで気にした素振りも見せずに笑うツェペリを無視して、お互いに睨み合うデルフリンガーと噴上裕也は次第に語気を強めて行く。 『まあ別に付いて来んのは構わねぇが……その前に一つだけ言っとくぜ。 これから先、タバサにちょっかい出そうとか下手なコト考えんじゃねーぞ。 もしそんな真似しやがったら、このオレがテメエを真っ二つに叩き斬ってやるぜ! こんな話がキュルケの奴にバレでもしたら、オラぁ消し炭にされても文句は言えねーしな』 「何言ってやがる!誰がこんなチビなんぞに手なんぞ出すかよ! そもそも、ちゃーんと元の世界に俺のことをいつも元気付けてくれる女共がいるからなァ。 皆バカだけどよォー、あいつらのコトを放ったままじゃあ流石の俺でもそんな気分になりゃしねーよ!」 『そーかいそーかい。それだったら安心……とはまだ言えねェな! 女に優しくする奴は大概女を泣かすって相場が決まってるからな!相棒を見てりゃよーくわかるぜ』 「アホか!剣のクセに一体何処からそんな話を聞いて来やがったんだ、このなまくら刀ッ!」 『なまくらじゃねー!このボロい見た目は単なるカムフラージュだ! 六千年間生きて来た俺様の能力を舐めるんじゃねえぞ!』 「そんな大昔に作られたんなら充分ボロだろうが!吸血鬼なんてレベルじゃねーぞ、オイ!」 「……フフフ、賑やかな連中だ。これは想像以上に楽しい旅になるかもしれんな」 騒ぎ立てる一人と一本の声を楽しそうに聞きながら、ツェペリは再びワイングラスの中身を一口呷る。 タバサはそんなツェペリに近付いて、彼の耳に届くぐらいの大きさで言う。 「……ツェペリさん」 「うん?何かな、タバサ」 「どうして…知ってたの?」 「ム?」 「私のことを…どうして知ってたの?」 それは今までの会話で、ついに明らかにならなかった疑問だった。 先程ツェペリと初めて出会った時、最初から彼はタバサのことを知っているような素振りを見せていた。 確かに自分はジョナサンのDISCを通じて、断片的ではあるがツェペリのことを知っていた。 だが逆に、ツェペリが自分のことを知る機会など殆ど無い筈だとタバサは考えていた。 あのゼロのルイズのDISCがこの大迷宮の中に落ちていたように、もしかしたら自分の記憶を封じたDISCも存在しており、その内容をツェペリが見たと言う可能性もゼロでは無いだろう。だがそう考えるにせよ、やはりツェペリが最初からタバサに敵意を見せずに、逆に「自分の安全を保証する」と言い切ったことに対しての違和感を払拭するには、説明不足としか言いようが無かった。 「そうか…そう言えばまだ説明してなかったかな――要るかね?」 言いながら、ツェペリは懐から新しいサンドイッチの包み紙を取り出して、それをタバサに差し出す。 タバサは小さく頷いて、肉や野菜がたっぷり挟み込まれたそのサンドイッチを受け取った。 「私がこの大迷宮に来る少し前に、ある少女と会ったのだよ。 その娘から君とデルフ君の話を聞いてね、もし君達と会うことがあったら力を貸してくれと言われたのさ」 「…………」 「だからこそ私はこうして彼女から言われた通りに、君達へ同行を申し込んだと言う訳さ。 正直に言って、私も一人でこの大迷宮を潜るのは、少々骨が折れそうだと考えていたからね」 軽く肩を竦めて、ツェペリは既に空になっていたワイングラスを掌で弄ぶ。 「………シエスタ」 殆ど考えることなく、タバサはその少女の名前を口に出していた。 レクイエムの大迷宮に挑む前に訪れたトリステイン魔法学院の学生寮の部屋、その“記録”が形として実体化した場所で再会したメイドの少女。それはタバサも良く知っている彼女本人では無かったが、戦いで傷付いたタバサを暖かく迎え入れてくれたシエスタの優しさは、この世界に迷い込んだタバサの胸を強く打ったものだ。 今、ツェペリが言う条件に該当する少女は、その彼女一人しか考えられなかった。 「そう、確かそんな名前だったかな。あの黒い髪と瞳は東洋人の血が混じっているのかもしれんな…… ともあれ私がここに来る前にも、随分と君のことを心配していたよ。 実を言うと、私が持ってるサンドイッチも彼女に作って貰った物なんだよ。 いやあ、実に美味かった。あんなに美味いサンドイッチを食った経験は、私もそうそう無いね」 「…………」 タバサはそれ以上は返さずに、ツェペリから手渡されたサンドイッチを一口噛み千切る。 パンと具材の豊かな味、そしてその調和を取る為に適度な量を含んだソースがタバサの口内へと広がって行く。やはりシエスタは料理上手だ。その事実に感心し、またそれを羨ましく思うと共に、タバサは学生寮の部屋で別れて久しい彼女のことを思い出す。 自分の身を案じ、こうまで気遣ってくれる彼女のその優しさが、なんと心地良いことだろう。 例えそれが“この世界の”シエスタが自分の与えられた役割を忠実にこなしているだけだとしても、 それでもタバサは彼女に深い感謝の気持ちを抱かずにはいられなかった。 それと共に、ハルケギニアで別れたきりの“本当の”彼女は今、何をしているのだろうと思い出す。 やはりトリステイン魔法学院で日々の労働に一生懸命勤しみながら、主人であるゼロのルイズに与えられた任務に付き合わされた平賀才人のことを心配しているのだろう。直接面と向かって話す機会はそれ程多くは無かったが、ある時タバサがケーキ作りを始めた時なども、嫌な顔ひとつせずに作り方を丁寧に教えてくれた物だ。もし元の世界に帰れたら、シエスタに会ってもう少し色々なことを話してみよう。 彼女が作ってくれたと言うサンドイッチの味を噛み締めながら、タバサは改めてその決意を固める。 『――妙手搦め手も結構だが、最後に物を言うのはやっぱパワーだぜ! 圧倒的なパワーと汎用性のある能力!これこそが個人戦闘のキモって奴だろーが』 「剣野郎にキモもクソもあるか!大体、一人一人の能力全部がバラバラなスタンド使い相手に 毎度毎度真っ向勝負なんぞ挑んでられるかよ! 相手のスタンドを使わせる前に潰せりゃベストだが、それが無理ならせめて相手をハメて こっちに有利な状況を作っとかねーと、命が幾つあっても足りゃーしねえんだよ!」 お互いに熱い口調で続いているデルフリンガーと噴上裕也の応酬は未だに終わりそうに無い。 タバサはそれを見てクラスメイトであるルイズとキュルケと言う友人二人の喧嘩を懐かしく思いながら、もう暫くの間はシエスタの作ってくれたサンドイッチの味を深く噛み締めることにした。 ~レクイエムの大迷宮 地下8階~ 同行を約束してくれたツェペリと噴上裕也は、タバサにとって心強い味方となっていた。 ツェペリが長年研鑽を重ねた波紋法は生半可な敵を寄せ付けなかったし、噴上裕也の発達した嗅覚とハイウェイスターのスピードは、敵に先手を打たせることなく終始こちらのペースに引き込むことが出来た。 またタバサ自身も、彼らとの探索によって新しいDISCやアイテムを次々に確保して行った。 そして今また、タバサ達は目の前に立ち塞がる新たな敵に対し、三人で力を合わせて立ち向かっていた。 「聞こえなかったかァ~?俺の「黄の節制(イエローテンパランス)」に弱点はねぇんだよォォォ! テメーらの肉を!ブヂュブブヂュル潰して引き摺り込み!ジャムにしてくれるぜェーーーッ!!」 肉の塊を操るイエローテンパランスのスタンドを操るラバーソウルが、勝ち誇った笑いを上げながら 全身に着込んだ肉の塊の一部をタバサと噴上裕也に向けて撃ち込んで来る。 「……クレイジー・ダイヤモンド!」 「避けろッ!ハイウェイスター!」 タバサは装備DISCによって発現させたクレイジー・ダイヤモンドの拳で肉塊を自分の体に付着しないように叩き落し、ラバーソウルから距離を置いていた噴上裕也は時速60kmの超スピードで以ってハイウェイスターを回避させる。 イエローテンパランスによって操られるその肉塊はラバーソウルを守る鎧としての役割だけで無く、取り付いた人間の肉を食らい尽くし、自分の一部として吸収することも出来る。 それはまさに「力を吸い取る鎧」であると共に「攻撃する防御壁」。 勝ち誇るラバーソウルの言葉はコケ脅しでも何でも無い。 彼の言う通りに、イエローテンパランスは攻防を兼ねた万能のスタンドに思えた。 だが、既にタバサ達は理解している。 例えどれだけ無敵に見えるスタンドであろうと、それを扱うスタンド使いが存在する以上、必ず何処かに付け入る隙がある。敵と、そして己自身のスタンドの特性やその限界を見極めれば自ずと突破口は開ける。それがスタンド使い同士の戦闘の基本だ。 タバサは噴上裕也と目配せをしてから、肉の鎧を着込んだラバーソウルに向けて両手を突き付ける。 「フー・ファイターズ!」 射撃用DISCに刻み込まれた能力によって、タバサの指からプランクトンの弾丸が撃ち出される。 「弱点はねーといっとるだろーが、人の話きいてんのかァァァァこの田ゴ作がァーーー!!」 距離を置いて撃ち込まれたプランクトンの弾丸が、ラバーソウルが纏う肉の塊に吸収されて行く。 そしてお返しとばかりに、先程と同様にラバーソウルは全身から肉の塊をタバサに向けて発射する。 タバサは再びクレイジー・Dを展開し、飛来して来た肉塊を弾き飛ばそうとする。 「…………っ!」 飛んで来る肉塊の動きは直線的ではあるが、早い。 その内の一つを跳ね飛ばしきれずに、タバサは右肩に肉塊を一つ食い付かせてしまう。 彼女に食らい付いた肉塊は、そのまま彼女の着ていた服を溶かし、タバサの白く柔らかい肩の肉を取り込んで少しずつ膨れ上がって行く。灼かれるような痛みが、彼女の右肩を通じて全身に走る。 「う……!うぅっ…!」 「テメェみてーなチビの肉なんぞ食った所で、大した量にはならねーだろうがなァ! だがッ!そんなチンケなスタンドで散々この俺様をコケにしてくれた礼はたァーップリしてやるぜェ~。 死ぬ前にようやくこのイエローテンパランスの恐ろしさが理解出来たかァ? ドゥー!?ユゥー!?アンダスタァァァァンンンンドゥ!?」 「ああ…よォく理解出来たぜ?テメーの無敵のスタンドがブッ倒される瞬間ってヤツをよォ~」 「何ィ!?」 タバサの攻撃に気を取られている内に、ラバーソウルの背後に回り込んでいたハイウェイスターが、勝ち誇った高笑いを上げるラバーソウルの頭部に向けてその拳を叩き込む。 だが、その拳も肉の鎧に塞がれて、本体のラバーソウルにまではダメージが通らない。 「バカが……そんな下らねぇ攻撃でよぉ? まだ俺のイエローテンパランスをどうにか出来ると思ってんのかァ?このタマナシヘナチンがァー!!」 「思っているさ。その肉襦袢がよォー、ブチュブチュ動いてるってことはよォ~…… そいつの中には動く為の「養分」がたっぷり詰まってるってコトだよなぁぁぁぁッ!!」 噴上裕也の咆哮と共に、ハイウェイスターはイエローテンパランスによって操られる肉塊の養分を我が物とするべく、肉の鎧に埋め込んだ拳を通してその養分を全身に吸収して行く。 「何ィィィィッ!?」 ハイウェイスターに養分を吸われた部分から、次々に肉塊が「壊死」してボロボロと崩れて落ちて行く。 「ま……まさかテメエのスタンドにこんな能力があったとはな……! だがッ!依然テメエが甘ちゃんなのは変わらねえなァ!肉のエネルギーが全部吸われちまう前にッ! 逆にテメエをイエローテンパランスで食い尽くしちまえば全て終わりだからなぁぁぁッ!!」 「ああ……そうだろうな。だがそれも、そこまでテメエが無事だったらの話だよなァ?」 「何だとォ……ハッ!?」 再びラバーソウルを覆う肉の塊がゴソリと崩れ落ちて、彼の体の一部分が外に露出する。 その場所は彼にとって自慢のハンサム顔。人間とって思考と肉体の中心である頭部そのもの。 今、ラバーソウルは最も優先して守らねばならない場所の一つを、敵の前に堂々と晒していたのだ。 「何イイイィィィィィーーーーーッ!!?」 肩の肉を食われているせいで動かなくなった右腕をだらりと垂らしたタバサが、そんなダメージなど お構いなしと言う態度で顔面を露出させたラバーソウルに駆け出して来る。 そして彼女の背後には、既にDISCの力によってクレイジー・Dのスタンドが再びその姿を現している。 「ハハッ……!じょ……冗談!冗談だってばさあハハハハハ!! きゅいきゅい!お肉食べたいの~!だなんて……ちょ…ちょっとしたチャメッ気だよォ~~ん!」 無表情で走って来るタバサに向けて、ラバーソウルは今まで生きて来た中で最高の笑顔を浮かべようとする。だがあまりの緊張によって顔の筋肉は激しく痙攣し、底抜けに明るく出そうと思った声も完全に裏返っており、さながら粘土をメチャクチャに引っ繰り返したように歪みきった表情になっている。 「た、他愛のないジョークさぁ!やだなあ!もう~!本気にした? ま……まさか……これから思いっ切りブン殴ったりなんてしないよね…………? 重症患者だよ鼻も折れちゃうしアゴ骨も針金でつながなくちゃあ!ハハハハハ、ハハハハハ……!!」 「クレイジー……ダイヤモンド!!」 ドラララララララララララァーーーッ!! 哀れ過ぎて何も言えない。そうとでも言うかのように、タバサはラバーソウルの言葉に一切耳を傾けず、 彼の自慢のハンサム顔に向けてクレイジー・Dの拳を叩き込み、そのまま終わりの無いラッシュへと繋げて行く。 「ブギャアアアァァァァア~~~~~~!!!!」 ラバーソウルの悲鳴と共に、やがて彼が身に纏っていた肉の鎧が力を失ってその場へと崩れ落ちて 行く。同時に、タバサの右肩に張り付いていた肉塊もその動きを止めて、ボトリと地面に落ちる。 それはラバーソウルがスタンドを操作する為に必要な戦意や精神力を失ったと言う証明だった。 ドラァッ!! 「ブゲェッ!」 最後にタバサは、トドメとばかりにラバーソウルの顔面へクレイジー・Dの右の拳を打ち込んでやる。 潰された蛙のような声を上げて彼の体が吹っ飛んで行き、やがてその姿がスッと消え去って行く。 それは単なる“記録”に過ぎないこの世界の住人が、“死んだ”時に迎える運命だった。 ラバーソウル&「黄の節制(イエローテンパランス)」、再起不能(リタイア)。 「……ううっ…!」 「タバサ…!」 緊張が途切れた為か、そこでようやく肩を抑えて痛みを堪えるタバサの体を噴上裕也が優しく支える。 イエローテンパランスの肉塊に食い破られた跡からは右肩の筋肉が剥き出しとなって見えており、そこから溢れ出る紅の血が、彼女の身体を覆う白い制服の肩から右腕に掛けて染み広がっている。 傷自体は致命傷では無さそうだったが、噴上裕也は寧ろ、彼女のそんな痛々しい姿を見せられる方が耐えられなかった。 女を痛め付ける奴は最低のクズ野郎だ。 噴上裕也の胸の内に、自分の住む町に潜伏していた、女の手首に異常な執着を見せる殺人鬼の話を聞いた時の憤りが蘇って来るようだった。 「大丈夫か、タバサ」 「………平気」 痛む右肩を出来る限り動かさないようにしつつ、タバサは姿勢を整えて懐からアイテムを一つ取り出す。 それは糸で作られたゾンビの馬だった。原理は不明だが、この糸で傷口を縫合すると傷が早く癒えると言う効用があるらしい。 「クレイジー…ダイヤモン――」 「待て、タバサ。俺がやってやるよ」 右肩に広がる傷口を縫い付けるべく、スタンドを出そうとするタバサを噴上裕也が制止する。 「大丈夫……」 「そんなワケあるか。お前、さっきから右腕が全然動いてねーじゃねえか。 本当は動かすのも辛いんだろ? ホレ、早くその糸渡しな。あまり綺麗にゃ出来ねーかもしれねえけどよ」 「……わかった」 根負けしたように頷いて、タバサは左手に持った噴上裕也にゾンビ馬を手渡す。 ゾンビ馬を受け取った噴上裕也は、糸の腹を咥えながら慎重な動作でタバサの体に糸を通して行く。 「うっ…!」 「痛むか?すまねえな、だがもうちょっとばかり我慢してくれよ、タバサ」 「うん……ぁうっ!くぅ…うっ…」 『おいおいフンガミよぉ、もうちっと優しく出来ねえのかよ?タバサの奴、随分と痛がってるじゃねーか』 唇を噛み締めて肩口に走る激痛に耐えるタバサを見かねて、デルフリンガーが遠慮がちに言って来る。 「無茶言うなよデル助。傷口が開いてる以上、どっちみち痛むのは変わんねーんだ」 噴上裕也は応急処置の手を止めないまま、デルフリンガーに向かって答える。 「俺も交通事故で入院したことがあるけどよ、そん時は包帯一つ巻き直すのだってスゲー痛かったからな。 ま、あん時は逆に俺の方が女共に面倒を見て貰う側だったんだがな」 そんな自分が、今こうしてタバサの手当てをしているのも妙な気分だった。 だが、決して悪い気分では無かった。自分に妹でもいたらこんな感じなのだろうか、と噴上裕也は思う。 『クソッ……こんな時に水魔法の一つも使えりゃあ、苦労はねぇんだがな』 「魔法ねえ。俺にとっちゃ、そっちの方が余程ファンタジーやメルヘンな話なんだがな」 『何言ってんだい。こっちから見りゃあ、お前らのスタンドも大した違いは感じられねーぜ?』 「違えねぇ」 入院中に初めてスタンド能力に目覚めた時、確かに初めて魔法を発見したような気分になったものだ。 あの時の驚きと興奮、そして未知の力を得たことへの恐怖を思い出しながら、噴上裕也は素直に頷いた。 ゼロの奇妙な使い魔「タバサの大冒険」 To be continued…… 第6話 戻る
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◎タバサの服 高名な風の魔法使い、タバサの服(風耐/黙無) 風耐性/沈黙無効 装備可:シズ・ベネ・アイ MP自動回復1% 常に縦縞の入った服を着て、そのセンスは無いわと、 他の魔法使い達の笑いを誘っていたタバサ。 自分と反対の属性を極めたメリサンドをライバル視していて、 事あるごとに勝負を挑んでいたらしい。 ……政治的な煽動と人間達の恐怖心が生んだ、 最悪の事件「魔女狩り」がタバサを殺してしまうが、 彼女は最後まで言葉での説得を諦めなかった。 メリサンドが人間達に手を上げず、 隠遁することを選んだのも、彼女の行動を尊重してのことだ。
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注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 タバサが大尉を召喚したお話 タバサの大尉-1
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~レクイエムの大迷宮 地下8階~ ガタンッ! 乳母車を抱えるハーヴェストと、それを奪い取ろうとするハイウェイスターの手の力が反発を起こし、乳母車が大きく揺れる。二つの力が拮抗することで、ハーヴェストの走行スピードに若干のブレーキが掛かる。 『ぬううッ……!』 数で圧倒的に勝るハーヴェストから、ハイウェイスターは中々乳母車を引き離せない。 両者が抵抗を続けるその度に、ガタガタと音を立てながら乳母車全体に振動が走る。 「……ふぁ……ふ……フギャア!フギャア!フギャア~!!」 やがてその振動に耐え切れなくなったのか、眠っていた赤ん坊が目を覚まして耐えられないとばかりに泣き始める。迷宮内に、赤ん坊の神経質な叫び声が途切れることなく反響して行く。 『クソッ!こいつらとっとと離しやがれ!ええいッ!俺としたことがまた女を泣かせちまったぜ!』 乳母車の中の赤ん坊が女であることを思い出したハイウェイスターが毒づく。 何とか彼女を救い出そうとハイウェイスターは更に手に力を込めるが、何時まで経ってもハーヴェスト達によってガッチリと固定された乳母車を奪い返すことが出来ずにいる。 ――そして、ハイウェイスターが焦りを抱き始めたその瞬間、それは起こった。 「ホギャア!ホギャア!ホギャアァ~ッ!」 『な…何だッ!?ガキの姿が……見えなくなってくッ!?』 泣き喚く赤ん坊を中心として、ハイウェイスターの目の前にある全ての“もの”が透明になって消えて行く。 その現象はやがて、乳母車全体に広がってそれを掴むハイウェイスターの腕にまで広がって行った。 『こ…これはスタンド能力だッ!このガキがスタンドで何でもかんでも透明にしちまっているのかッ!』 これはあくまでも、見えている物が透明になるだけの能力であるらしく、ハイウェイスターには未だに乳母車を掴む自分の手の感触を確かに存在していることを感じていた。 そもそも、視界よりも嗅覚によって相手を捉える能力に長けているハイウェイスターにとっては赤ん坊の姿が見えないことなどは大した問題などでは無かった。 そして、乳母車に触れているハイウェイスターの体の透明な部分がどんどん広がって行くと共に、乳母車の足元に群がっているハーヴェスト達の姿もまた、次々と透明になっているのがハイウェイスターにはハッキリと“見えて”いた。 『邪魔スル奴ガイルゾ…!』 『目障リダゾ…!』 『ヤッチマウゾ…!』 『片付ケチマウゾッ…!』 そんな声と共に、ハイウェイスターの体に妙な刺激が走り出す。 『うおっ……な、なんだッ…!?』 脚から胴体、両腕に頭と、体の下から上に向かって「痒み」にも似た刺激が全身を覆って行く。 背筋に冷たい予感が走ったハイウェイスターは、乳母車を掴んでいる片手を離して自分の体を払う。 彼の手に何かが当たる感触が伝わって来る。それは全長数cm程の塊のような感触だった。 そう――それは丁度、未だに足元で乳母車を抱えて走り出す、ハーヴェストの体その物のような感触! 『うおぉぉぉーーーーッ!!?』 ハイウェイスターが全身を覆う刺激がハーヴェストによる「攻撃」であると気付いた時、たまらずに乳母車を掴んでいたもう片方の手も離してしまう。衝撃によってハイウェイスターの体が吹き飛ばされ、ゴロゴロと無様に地面を転がり回る。乳母車の運搬から離れたハーヴェストの群れが更にハイウェイスターを痛め付けるべく、四本の腕でハイウェイスターの体を次々に削り取って行く。 『クタバッチマエバイインダゾッ!』 『邪魔ハサセナイゾ!』 『トドメヲ刺シテヤルゾッ!』 『グッ…!ち、ちくしょう、こいつらッ…!駄目だ、振り払えねぇッ!』 乳母車の中の赤ん坊が離れて行くのを、地面に倒れ伏したハイウェイスターは「臭い」で感知していた。 それと共に、自分や自分を襲うハーヴェストの姿の透明化が解除され、目で見えるようになって行く。 「――クソッ!嫌な予感はしてたが、予想通りになっちまったぜ!戻れハイウェイスター!」 ハーヴェストの攻撃によるダメージでハイウェイスターが完全に身動き一つ取れなくなる直前。 自分自身の“鼻”でタバサ達をここまで誘導して来た噴上裕也が大急ぎで自分のスタンドを解除する。 「波紋疾走(オーバードライブ)!」 「クレイジー・ダイヤモンド!」 スタンドを解除した噴上裕也を後方に下がらせて、前に出たツェペリの波紋とタバサの装備するDISCのスタンドが、ハイウェイスターの襲撃の為に乳母車の運搬から離れたハーヴェストの群れを一掃する。 そのまま未だに乳母車を手放そうとしないハーヴェストの本隊を追跡すべく、間を置かずに走り出す。 「…しかしフンガミ君。大分手酷くスタンドをやられていたようだが、君自身は大丈夫なのかね?」 「ああ…ハイウェイスターは遠隔操作にしていたからな。だがここまでスタンドにダメージを受けちまった以上、次に出せるようになるまで結構な時間が掛かっちまうな」 自分のスタンドがこうも手酷いダメージを与えられたことに歯噛みをしながら、噴上裕也は答える。 それと共に、先程までハイウェイスターが繰り広げていた一連の攻防を、自分の記憶として頭の中に叩き込む。ハイウェイスターが“見た”光景を、本体である噴上裕也が共有して行く。 「……俺達は確かに奴らに近付いてる。それは間違いねぇ。 だが気をつけてくれ。あのガキの乗った乳母車やコソ泥野郎のスタンドは、今は姿が“見えない”」 「見えないだと?」 顔色一つ変えずに走りながら、ツェペリが背後を走る噴上裕也に首を向けて尋ねる。 「ああ。あの赤ん坊のスタンド能力だ。自分を含めて、その辺の物を何でもかんでも手当たり次第に 透明にしちまうってヤツだ。どうやらあのガキがストレスを感じると共に発動するシロモノらしいな…… ギャアギャア喚いて涙からストレスを垂れ流しにしてるのが「臭い」を通じてよーくわかるぜ」 涙にはストレスの原因となる物質が含まれている。だからこそ人は思い切り泣いた後は気分が スッキリするのだという話を思い出しながら、噴上裕也は言った。 『おいおい。姿が見えねぇんじゃあ、一体全体どうやって掴まえりゃあいんだよ?』 「それを今から考えようって話だろ。ま、俺だけなら奴の「臭い」を辿れば楽勝なんだがな」 『そう言っときながら、さっき大切なスタンドをボコボコにされてたのは何処のどいつだぁ?あ~ん?』 「やかましい! ……と言いたい所だが、確かにあそこまでハイウェイスターをやられちゃあ返す言葉もねえな」 『あらら。こいつはマジで重傷だわ』 「……見えるようにする」 そこで噴上裕也とデルフリンガーの会話を制止するように、タバサがぽつりと呟いた。 『見えるように……って、何かいい手があるのかよ?』 「ある」 デルフリンガーの問いに、タバサは迷うことなく断言する。 「だから、あなたの力が必要」 そしてタバサは、自分の腰に挿したデルフリンガーの柄を軽く撫でて言葉を続けた。 「フム。何か策があるようだね、タバサ」 「…………」 ツェペリの問いにタバサは小さく、しかし自身有り気に頷いた。 「よし、ではここは君に任せよう。私は君のアシストに回る。君の手並み、見せて貰うよ」 「わかった」 『よーし!オレに出来るコトなら何でもやってやるぜ!期待してるぜタバサ』 「うん。お願い」 答えて、タバサは走りながらハーヴェストに盗まれずに済んだDISCの一枚を取り出す。 「――近いぞ!もうすぐだ……もうすぐ奴らの至近距離に入るぞッ!」 彼女の後ろを走る噴上裕也が、赤ん坊の「臭い」を捉えてそう宣言する。 「ホギャア!ホギャア!ホギャア!」 タバサ達が顔を正面に向ける。そこには何も見えなかった。 だが彼女達の耳には、真正面から赤ん坊が泣き喚く声が確かに聞こえて来た。 「気をつけろ!透明になってる範囲はどんどん広がっているらしい…スタンド共も襲って来るぞ!」 「…………!」 噴上裕也の叫びと共に、タバサは赤ん坊のスタンド能力で、それに近付く自分の体が少しずつ 透明になって行くのが見えた。時間を掛ければ不利だ。そう判断したタバサは迷うことなく手に持った 黄金色の装備DISCをデルフリンガーの柄へと差し込む。 「発動」 『よっしゃあ!』 気合を込めたデルフリンガーの雄叫びと共に、差し込まれたDISCが刻み込まれた能力を解放する。 その「愚者(ザ・フール)のDISC」を中心に生じた霧が、デルフリンガーに効果を増幅されたことで階層 全体を覆い尽くすかの如き勢いで広がって行く。 そして霧は乳母車に乗る赤ん坊の所まで広がって行き―― そのまま彼女のスタンド能力によって、透明になって掻き消える。 そして、透明な部分は一定の大きさの塊となって前方へ向かって線状に伸び、透明な軌跡を作る。 『――おでれーた!だが確かに、これなら赤ん坊が何処にいるか見えるな!』 赤ん坊が何もかもを透明にしてしまうならば、逆にその周囲を透明に出来る何かで覆ってしまえばいい。 そして、ザ・フールのDISCが生み出した霧によって、赤ん坊を中心に生み出される透明な部分が剥き出しになれば、その部分こそが赤ん坊がいる中心点としてタバサ達の目にもはっきりと“見える”。 『……マタ来タゾッ……!』 『邪魔ナ奴ラダゾ……!』 『返リ討チニシテヤルゾ……!』 赤ん坊が霧を透明にし続けている方向から、ハーヴェストの声が聞こえて来る。 そして間も無く、乳母車を運んでいたハーヴェストの群れから、その一部分がタバサ達を迎撃すべく飛び出してくる。それまで赤ん坊のスタンドによって透明だったハーヴェスト達が、乳母車から離れたことによってその姿を露わにしていく。 タバサは接近して来るハーヴェストに構わず、次に使うべきDISCを取り出そうと懐を探る。 「…………ぅ……っ!」 タバサに群がるハーヴェスト達の四本の腕が、彼女から少しずつ皮や肉を削り取って行く。 「痒み」にも似た痛みがタバサから集中力を奪って行くが、タバサはそれに耐えながらも何とか目的のDISCを取り出すことに成功する。 ――その瞬間。 急激に視界がぼやけ出したと思ったら、そのままタバサは全身の自由を失ってその場に崩れ落ちる。 『タバサ!?』 「ぅあ……!?う……あぁっ……!」 タバサは必死になって立ち上がろうとするが、体が全く言うことを聞いてくれない。 心なしか、今も彼女を襲っているハーヴェストの攻撃による痛みも麻痺しているように感じる。 その中で先程取り出したDISCを取り落とさなかったことだけは、僥倖と言うべきだろうか。 『しししっ……!』 彼女を嘲笑うハーヴェストの声にタバサが頭を上げると、ハーヴェストの一部が何やら細長い何かを持っているのが見える。 それを見た瞬間、タバサは自分の身に何が起きたのかをはっきりと理解した。 「いかん……!」 タバサの異変を見て取ったツェペリが速度を上げ、倒れ伏した彼女へと近付く。 「波紋疾走(オーバードライブ)!!」 そして右手を振り上げ、彼女の体に纏わり付いているハーヴェストに向けて波紋を叩き込む。 「う……くぁ……っ!」 ハーヴェストを通して、タバサの全身に波紋が流れて来る感覚が伝わって来る。 彼女の体に張り付いていたハーヴェスト達は、彼女の体にくまなく流れる波紋エネルギーを受けてたまらずに跳ね飛ばされて行く。全身の神経が混濁する中で、急に外から明確な刺激を与えられたことにタバサは不快感を隠せずに声を漏らした。 「タバサ!しっかりしろ、大丈夫か!?一体ヤツに何をやられたんだ!?」 「……どうやら、こいつを体の中に流し込まれたらしいな」 駆け寄ってきた噴上裕也に、ツェペリは先程ハーヴェストが運んで来た細長い物体を拾い上げて言う。 「こいつは……旦那の持ってたワインじゃねーか!?」 「そうだ。体内に直接アルコールを流し込めば、それだけで激しい酩酊効果がある…… つまり彼女は今、酔っ払っていると言うわけだ。それも酷い泥酔状態だな」 取り返した自分のワインボトルをしまいつつ説明するツェペリの言葉が正しいことは、今、噴上裕也が感じ取っているタバサの体が発するアルコールの「臭い」が証明していた。 「飲み過ぎには気を付けていたんだがねえ……それがこんなことになるとは」 「クソッ!こんな状態じゃあタバサに無理はさせられねえ! スタンドエネルギーの回復を待って、もう一度俺のハイウェイスターで……!」 「……大丈夫」 噴上裕也の言葉を制して、タバサは震える手で体を起き上がらせようとする。 体内を駆け巡るアルコールとハーヴェストから受けたダメージによって、そんな単純な動作も一苦労だった。 「タバサ!何が大丈夫なんだよ、そんなフラフラの状態で…!」 「……ツェペリさん」 傍らに立つツェペリの顔を見上げて、タバサは言葉を続ける。 「私を……連れてって」 「いいのかね?」 「うん」 自分の目を真っ直ぐに見つめて聞いて来るツェペリに、タバサははっきりと頷いた。 「わかった」 「ツェペリの旦那!」 非難めいた口調で叫ぶ噴上裕也に、ツェペリは厳しい視線を送る。 「フンガミ君、これは彼女の決めたことだ。先程私は彼女のアシストに回ると言ったばかりだしな。 彼女の意思は、出来る限り尊重させて貰うつもりだよ」 「………クソッ!」 そう宣言するツェペリの言葉に、噴上裕也は無力な自分に向けての怨嗟を込めて、吐き捨てる。 「わかった!わかったよ、だが俺も付いて行くぜ!もうすぐハイウェイスターのエネルギーも回復する。 次にまたタバサに何かあったら、今度こそ俺も手を出させて貰うからな!」 「いいだろう」 そう言って、ツェペリは片手で軽々とタバサの体を抱き上げて、再び乳母車を追って走り出す。 後に続いて走り出す噴上裕也に、タバサは軽く首を向けて、言う。 「……心配してくれて、ありがとう」 「…………!よせよ、俺は別に、礼を言われる程のコトはしちゃいねえ」 「いいの。ありがとう」 それは、タバサの心から思っていた本心だった。 面と向かって言われた噴上裕也は、気恥ずかしそうに頭をボリボリと掻き始める。 「……かぁ~!まァとにかくだ、俺達はまだあのガキを奪い返してねぇ。気合入れて行こうぜ、タバサ!」 「うんっ」 『やれやれ、お前さんがンなこと言われて恥ずかしがるような柄かよ』 「うるせえ!テメエもちったぁ気ィ入れろよ、デル助!」 そんな噴上裕也の態度に、デルフリンガーが呆れたような口調で口を挟んで来た。 「ま、その辺はとにかく……あまり時間が無いのは確かだね。私達は先に行かせて貰うよ」 「あ!おい、ツェペリの旦那!」 既にザ・フールのDISCによって生み出された霧は晴れ始めている。 一刻も早く決着を付けるべく、呼吸一つ乱さずに走っていたツェペリはその速度を一気に増して 走り去って行った。 「……ええいッ!」 自分より遥かに年長で、その上タバサを抱きかかえているにも関わらずに自分を遥かに上回る スピードで走るツェペリに内心舌を巻きながら、噴上裕也も彼らの後を追って走り続ける。 「う……ぐぅっ……」 「さてタバサ…!再び追い付いたのはいいが、今度はどうするつもりかね?」 「オギャア~!オギャッ、オギャッ、オギャア~~~!!」 これまでの騒ぎを知って知らずか、乳母車の中の赤ん坊は変わらずに泣き続けている。 辛うじて残っている霧の中で、透明の赤ん坊が移動する跡を目にしつつ、ツェペリは脇に抱える タバサに尋ねる。ただでさえ泥酔状態のタバサはツェペリに抱きかかえられた状態で、その上物凄い 速度で走られた為に、絶え間なく続く揺れによって脂汗を流して気絶しそうな程の最悪な気分に 陥っていたが、それでも何とか顔を上げて赤ん坊が生み出す透明の軌跡を見る。 「……これを」 そしてタバサは、先程から握り締めたままだった銀色の能力発動用DISCをツェペリに向けて差し出す。 「これを…このDISCを赤ちゃんの足元に向けて…投げて」 「足元……あのスタンド向けて、と言うことかね?」 タバサを抱える反対側の手でDISCを受け取って、ツェペリがそれを確認する。 「そう。……そうしたら」 次にタバサは危なげな動作で、それでもツェペリの体に触れないようにしながら腰のベルトから デルフリンガーを引き抜く。 『お?オレの出番か?』 「私が合図をしたら……すぐにDISCを発動させて」 他に装備するDISCが無かった為に、一応能力用に装備しておいたDISCを頭から出してタバサは頷く。 『あいよ。しかしそーゆー言い方をするってこたぁ、これからかなりギリギリの真似をしようって訳だな』 「……あなた達が、頼り」 タバサが神妙な顔を浮かべながら答える。 『フフン……お前さんにそこまで言われちゃあな、こっちもヤル気が出てくるってモンだぜ。 おうツェペリのおっさん!アンタも気合い入れてブン投げろよ!?』 「勿論だとも、デルフ君」 一度不敵な笑いを作ってから、すぐに表情を引き締めてツェペリは正面に向き直る。 「では――行くとするかッ!」 裂帛の気合と共に、ツェペリはタバサに指示された通りの場所へ銀色のDISCを投げ放つ。 ツェペリの膂力によって、DISCは古代インドで用いられたと言う投擲用武器のチャクラムの如く猛烈な勢いで飛んで行き、やがて赤ん坊のスタンド能力によって透明化され、見えなくなる。 「10……9……8……7……」 DISCが床に跳ね返って転がる音が聞こえない以上、どうやらタバサの狙い通りに乳母車の真下を走るハーヴェストの一体に差し込まれたようだ。タバサはそれを信じて、数を数えながら完全に頭から外した装備DISCをデルフリンガーの柄に押し当てる。完全に差し込むのは、まだ早い。 「6……5……4……3……」 ツェペリは何も言わずに、タバサを抱えてハーヴェストの群れとの距離を離さぬように走り続ける。 タバサの手に握られるデルフリンガーも、“その時”が来るのを無言で待っている。 「2…………1っ……!!」 そこでタバサは、力一杯にDISCをデルフリンガーの柄に差し込む。それと共にデルフリンガーは迷うことなく、そのDISCが宿しているエネルギーを自らの体内に吸収し、増幅して撃ち出した。 ――そして、0。 カウントが終わると共に、乳母車を抱えたハーヴェストが走っている位置から大爆発が生じた。 その爆発は周囲のハーヴェスト達を巻き込むと共に、その上に乗せられた乳母車をも爆風で宙に浮かび上がらせる。 「何ッ……これは!」 驚愕の表情を浮かべて思わず立ち止まるツェペリには構わずに、デルフリンガーから無数の糸が伸びて、前方へと吹き飛ぼうとしていた乳母車に絡まり付いた。 そしてデルフリンガーを握り締めているタバサがその手を力の限り自分の方へと引き寄せようとするのを受けて、デルフリンガーは糸が巻き付けられている乳母車をタバサ達の元へと引き寄せる。 そして少しでも落下の際の衝撃を殺せるように、出来る限り優しく乳母車を近くの地面に着地させる。 差し込まれてから10秒後に「破裂するDISC」をハーヴェストの一体に投げ込むことによって生じる爆発で乳母車を運搬するハーヴェストの群れを一掃、またそれによってハーヴェストが乳母車から手を離した所を「ストーン・フリーのDISC」の能力で糸を伸ばし、乳母車を掴み取って落下の衝撃を食い止める。 かなり乱暴な作戦だったが、タバサはそれ以外に手持ちのDISCでハーヴェストの大集団から乳母車を奪還する方法は無いと判断していた。 特にストーン・フリーのDISCは普通に能力を発動させていても乳母車を掴み取れなかっただろうが、 デルフリンガーの力を借りてその効果を増幅させてやれば上手く行く筈だと計算していた。 殆ど賭けに近い作戦ではあったが、結果として見事タバサの目論見通りに事が進んだのである。 「………しまった!」 だが、最後の最後でタバサは失敗した。 痛恨の表情を浮かべて、タバサは目の前の光景を見つめる。 ハーヴェストが破裂した際の衝撃で、赤ん坊が乳母車から投げ出されていたことに、タバサは気付かなかった。 いや、気付いていても反応出来なかったのだ。 その事実に気付いた時は、既にデルフリンガーに差し込まれて増幅されたストーン・フリーのDISCの 糸が、当初の予定通りに乳母車を掴み取るべく伸びていたのだから。 引き寄せた乳母車の透明化が解除されて行くのを目にしたた時には、もう手遅れだった。 そして、ザ・フールの霧に透明の軌跡を作りながら、赤ん坊が吹き飛んで行く先に広がっているのは―― 『水路かぁぁぁぁーっ!!』 迷宮内を縦横無尽に広がる「ナイル川」と呼ばれる水路に向けて、赤ん坊が落下しようとしている。 「…………っ!!」 「うおッ」 タバサは必死になって、赤ん坊を追おうとツェペリの腕の中でもがく。 しかし先程ハーヴェストによって体内に直接ワインを注入された体はまるで自由に動いてくれない。 彼女の剣幕にたまらずツェペリが抱きかかえる手を離した際に、タバサの体は無様に地面へと転がり落ちる。 「あぁっ……!あ……!!」 幾ら手を伸ばしても届く訳が無い。今までの人生において、少なくともタバサが三度経験した絶望―― 父親が暗殺された時。母親が自分を守る為に毒を呷って永遠に心を閉ざしてしまった時。 そして、トリステイン魔法学院の仲間達に敵として刃を向けてしまった時。 あの時の深く冷たい絶望が、拭いようの無い恐怖が、今再びタバサの胸に去来する。 自分のせいで。また、自分のせいで―― その絶望と恐怖は、いつしか自身に対する呪詛となってタバサの心を食らい尽くそうと広がり続ける。 そしてタバサの心に完全な止めを刺そうと、赤ん坊が水路へと墜落しようとする、まさにその瞬間。 「………っ!?」 落ちなかった。水面へと激突する音すら立てずに、赤ん坊の体は透明のまま水路の真上で静止している。 「ホギャア!ホンギャア!ホンギャア~!」 透明の為に顔までは見えなかったが、赤ん坊は先程と全く同じ様子で元気に泣いている。 その位置で赤ん坊を掴んでいる人型の腕が、彼女のスタンド能力によって少しずつ見えなくなって行く。 「――ハイウェイスター。やっと回復したぜ」 一度「臭い」を覚えてしまえば、そのスタンドは「臭い」の持ち主の所まで瞬間移動出来る。 自らのスタンドに赤ん坊の「臭い」を覚えさせていた噴上裕也が、タバサ達の背後でニヤリと笑った。 『んで?どーするんだよ、この嬢ちゃん。一緒に連れて行くのか?』 先程からタバサの胸に抱かれている赤ん坊の姿を見ながら、デルフリンガーが意見を求める。 僅かに残ったハーヴェストを全滅させて一旦休憩を取ることが決まってからと言うもの、タバサはずっと赤ん坊を抱いたまま離さないでいた。 自分のせいで命危険に晒してしまった申し訳なさと、その命が助かったことへの喜びで、胸がいっぱいだった。 そして赤ん坊を抱いたまま、何度もごめんなさいと謝り続けるタバサの姿に、その場にいた誰もが何も言うことが出来なかった。 タバサは泣いていた。 母親を守る為に、感情と共にかつての名前を捨てる決意をしてから、涙を流すのはこれが初めてだった。 泣いていたら、母を守れないから。泣き虫のままじゃ、強くなれないから。 それなのに、今は涙が止まらなかった。それでもいいとタバサは思った。 哀しみを捨てしまったら、泣くことまで忘れてしまったら、きっと人間は壊れてしまうのだと思ったから……。 そしてタバサの胸で抱かれる赤ん坊は、まだ少しぐずってはいたが、少なくとも近くにいるタバサ達を丸ごと透明化させてしまう程のストレスはもう感じていないらしい。 スタンドの影響も、せいぜいタバサの着ている制服が少し透明化して見えなくなっている程度だった。 「難しいな。この先、襲って来る連中はヤバくなる一方だろうしな。 そんな中で、このガキを連れたまんまってのは相当厳しいだろうな」 赤ん坊を抱きかかえているせいで、胸元が剥き出しになっているタバサの方へ出来る限り視線を送らないようにしながら、噴上裕也がデルフリンガーに答える。 「私も連れて行くのは反対だな。 フンガミ君の言う通り、これからの戦いにはこの子の存在は邪魔になってしまう」 そう同意するツェペリの言葉に、赤ん坊を抱いたタバサが非難混じりの視線を向ける。 だが当のツェペリは一向に気にした様子を見せない。 『ま、普通に考えりゃあそうだわな。かと言ってここまで苦労したってのに、置き去りにすんのもなぁ』 「託児所でもありゃいいんだがな。そうでなくても、誰が気の置ける奴に預けて面倒を見て貰うとか…… まあ、それが出来りゃあ苦労はしねえか」 冗談半分で呟いた噴上裕也の言葉に、タバサとデルフリンガー、そしてツェペリは顔を見合わせる。 心当たりが一つだけある。 気心の知れた相手で、職業柄家事万能で、しかも常に安全な場所にいる人物。 『……シエスタに頼む、ってのはどーだ?』 タバサとツェペリも考えていた内容を、そっくりそのままデルフリンガーが代弁する。 トリステイン魔法学院の学生寮の部屋でタバサ達を送り出してくれた、あのメイドの少女の顔が 二人と一本の脳裏に浮かぶ。 「そうだな……彼女に任せるなら安心だろうが、しかし」 「……戻れない」 タバサの呟きが、折角思い浮かんだ名案を完全に瓦解させてしまう。 今、彼女達が挑んでいるレクイエムの大迷宮は下りの為の階段しか無い一方通行だ。 シエスタのいる学生寮の部屋に戻る為には、最下層にいるこの大迷宮の守護者―― レクイエムと呼ばれる存在を打ち倒さねばならない。 そして今問題になっているのは、その最下層へ進む為に、この赤ん坊をどうすべきかという話だった。 ――本当にシエスタに頼めれば良かったのに。 落胆する一同に向けて、少し考える素振りを見せてから噴上裕也は口を開いた。 「……なあ。そのシエスタって奴なら、その赤ん坊の面倒を見てくれるって言うのか?」 『ああ。幾ら何でも、あいつなら連れて来た赤ん坊を放ったらかしになんざしねーだろ』 「そして、そいつはお前達とは顔見知りって訳か」 「そうだね。私も一度だけ会ったことがあるが、タバサとデルフ君達の方が付き合いは長いようだ」 噴上裕也の問いに対して、デルフリンガーとツェペリがそれぞれに答える。 再び思案の表情を浮かべてから、やがて噴上裕也は決然とした態度で言った。 「よし。それなら、俺がその赤ん坊を連れてシエスタって奴の所へ行ってみるぜ。 このガキを見せてアンタ達の事情を説明すれば、何とか信用して貰えるかもしれねぇしな」 「!」 『なんだとぉ…!』 予想外の噴上裕也の言葉に、タバサ達は目を見開いて彼の方を見やる。 「そうは言うが、フンガミ君。彼女の元へと行く為のアテはあるのかい?」 「心配ねえ。さっき、ハーヴェストの野郎が隠し持ってたブツの中に面白いモンがあった……ほれ」 頷いて、噴上裕也は人の記憶を封じた銀色のDISCを一枚取り出した。 「どうやらこのDISCを使えば、この大迷宮を一時的に脱出出来るらしい。 あんた達が言う、そのシエスタって奴の所までな。 俺がそのガキを抱いたまま使えば、一緒にこのダンジョンを抜けられるだろうさ」 噴上裕也が「ディアボロのDISC」と書かれたそのDISCをタバサ達に見せ付ける。 『んじゃあ何か?この嬢ちゃんを連れて帰るってことは、オメーはここでリタイヤって訳かい?』 「……ああ、そうなるな」 どこか冗談交じりに言った筈のデルフリンガーの言葉に、噴上裕也は神妙な顔で頷いた。 「悔しいけどよォ、俺がこんなことを言うのも、もうこれ以上はアンタ達の力になってやれそうにねぇ…… そう思ったからなんだ。 あんな虫みてーなチンケなスタンド相手にも、俺のハイウェイスターは手も足も出なかった…… これ以上アンタ達に付いて行った所で、逆に俺の方が足手まといになるんじゃねーかって、そんな気がしてな…。 アンタ達を見捨てるような、スゲーカッコ悪いことを言ってるってのはわかってる。だが……」 「…………いい」 拳を固く握り締めて言葉を続ける噴上裕也に、タバサは顔を上げながら言う。 「気にしないでいい。その気持ちだけで、充分」 「タバサ……すまねぇな、情けないこと言っちまって」 「ううん。これ以上、あなたを巻き込めない」 「……本当に、すまねえ」 赤ん坊を抱きながらこちらを見上げて来るタバサに対して、噴上裕也は心から深く頭を下げた。 『顔を上げろよ、フンガミ。お前、本当はタバサの胸が見たいんだろーが。無理すんなよ』 「うるせえよデル助。……だがま、確かにお前の言う通り、見たいってーのは否定しねーよ」 デルフリンガーにそう返しながらも、噴上裕也はついっとタバサの胸元から目を逸らす。 「フンガミ君、先程の君の言葉は「恐怖」から出た物だ。 そして今のは「恐怖」を克服した者の言葉では無い。君は「恐怖」に負けたのだ」 厳しい瞳で噴上裕也を見据えながら、ツェペリが言う。 「だが――」 そこでふっ、とツェペリは表情を崩して言葉を続ける。 「君はそれを知っている。自らの内にある感情の正体が「恐怖」であるということをな。 そして、その中で自分が考え得る最善の道を選ぼうとしている。 そのことを責める者は誰もいるまい……私でさえ、責めることは出来ないさ」 「……ツェペリの旦那」 「この赤ん坊を頼むよ、フンガミ君。君は確かに我々の力になってくれているのだ。 何処へいようと、君は私達の「仲間」なんだ。それは紛れも無い「真実」なんだよ」 噴上裕也の肩を力強く掴んで、ツェペリははっきりとそう言った。 『ヘッ……!まあ気にすんなよ、フンガミ! これからもタバサはオレ様が守ってみせるさ!ツェペリのおっさんもいることだしな』 「ツェペリの旦那……デル助……」 瞳に何か熱い物を感じながら、噴上裕也は大きく頷いた。 「ああ、わかったよ!このガキのことは俺に任せろ。だから二人共、タバサのことをくれぐれも頼んだぜ」 そして噴上裕也は、タバサの方を振り向いて真正面から彼女と向き合った。 「気を付けてくれ、タバサ。この先はそれこそ何が起こるかわからねぇ…… だが、俺はお前のことを信じてる。そして待ってるぜ、お前が無事に帰って来るのをよ」 「…………うん」 そこでタバサは立ち上がって、彼と同じように噴上裕也を真っ向から見据えて、言う。 「本当に……ありがとう、ユウヤ」 そう答えるタバサの顔に、今初めて見る笑顔が浮かんでいたのを、噴上裕也は確かに見た。 「……それじゃあ、名残惜しいが…タバサ、その赤ん坊を」 「うん」 タバサが差し出した赤ん坊に、噴上裕也が手を伸ばす。 そして彼の手が赤ん坊に触れようとした瞬間。 「ふぇ……?ふ、フギャア!フンギャア!フンギャア~~~!」 「うおぉッ!?」 慌てて噴上裕也が手を離そうとするが、その前に彼の手が先端から透明になって 見えなくなっていく方が早かった。そして赤ん坊の泣き声と共に、透明の範囲が次々に広がって行く。 「これはこれは…フンガミ君、あまりこの子に好かれてないようだねぇ。 いや、それとも彼女がタバサに懐き過ぎているのかな?これは」 『おい……フンガミ!女に優しいってぇーテメエのポリシーはどうしたよ!?』 「うるせー!かぁ~ッ、今までガキには興味ねぇつもりだったが、こりゃ考え方を考え直す時かァ!?」 「ホンギャア~~~~!!」 先程までの静寂が嘘のように、その空間が蜂の巣を突いたような騒ぎに包まれる。 そんな中で、泣き喚く赤ん坊を抱くタバサは、一人静かに、何かを口ずさみ始める。 「ひとつ願いごと――叶うとしたら――優しい腕の中、声を聞かせて――」 それは遠い昔に聞いた、懐かしい旋律。 夜、ひとりぼっちで寂しい思いをしていた時に、母がそっと自分を抱き締めながら聞かせてくれた歌。 闇の中で自分が怖がらないように、その手で優しく包み込みながら歌ってくれた、子守唄。 「あの日、抱えてた花は枯れたの――そんな胸の奥、誰も知らない――」 この歌は、母と過ごした大切な思い出の象徴。 自分と母とを、今でも結びつけてくれていることを、証明する言葉――。 「散った花びら――そっと拾い集めたら――」 微笑みを浮かべながら、優しげに――そしてどこか悲しげに、彼女は歌い続ける。 その歌を聴いて、泣き叫んでいた赤ん坊も次第に声を小さくして、やがて笑顔を取り戻して行く。 今、この場にいる誰もが、耳を済ませて彼女の歌声を聴いていた。 「青い翼広げ飛んでゆく――風が誘う、天と地へ―― どうかこの願い、叶うなら――魔法など――私にはいらない――」 またすぐに、戦いの時はやって来る。それと共に、大切な人達との別れも。 だけど、今だけは。今だけはそれを忘れたかった。 今、確かにここにある、この安らぎの時間は、誰にも壊せないものだから。 大切な人達と過ごしている掛け替えのない一瞬を、記憶という永遠の中に閉じ込めたかったから―― ゼロの奇妙な使い魔「タバサの大冒険」 To be continued…… 第7話 中編 戻る
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~レクイエムの大迷宮 地下8階~ 「……ツェペリさん、は?」 右肩の痛みに顔を顰めながら、タバサは先程からもう一方の敵と一人で戦っていたツェペリの姿を探す。 「心配すんな。ツェペリの旦那なら、ほれ。あそこだ」 タバサの手当てを続けながら、噴上裕也は軽く首を振ってツェペリの居場所を指し示す。 普段通りの飄々とした態度を崩さずに、それどころか片手でたっぷりワインの注がれたグラスを弄びながら、ツェペリは身の丈2メイルを越える程の巨漢の攻撃を紙一重の動きで避け続けていた。 『おでれーた。余裕綽々って奴だな……人間って奴も鍛えりゃあそこまでの動きが出来るのか』 「全くだ。おかげで下手にハイウェイスターで割り込んだら、逆にこっちが足手まといになりそうだ」 先程のラバーソウルとの戦いで発動させたハイウェイスターはそのままに、噴上裕也はデルフリンガーと共に驚嘆の表情を浮かべながらツェペリの動きを見守っていた。 無論、万が一ツェペリが倒されたら即座にハイウェイスターを叩き込んでやるつもりなのだが、 目の前のツェペリがあの巨漢に敗れるという姿がどうしても想像出来なかった。 当のツェペリはタバサ達がラバーソウルを蹴散らしたことを察して、不敵な笑みを向けて来る。 「どうやら、もう片方の奴は倒すことが出来たようだね」 「おかげ様でな。タバサがまた怪我をしちまったが……とにかく、後はそいつをブッ倒すだけだな」 ハイウェイスターを前面に出して、噴上裕也は援護の用意があることをツェペリに知らせる。 彼の意図を察したツェペリは、逆に軽く首を振ってその必要はないと答えた。 「君はタバサの治療に専念してくれ。ま、こいつは私がチョチョイと片付けてしまおう」 ツェペリの言葉に、噴上裕也達は彼がそれまで戦っていた巨漢の姿を見上げる。 全身盛り上がった筋肉と、その瞳に満たされている知性とは程遠い、獰猛な攻撃の意思。 そして全身から放出する威圧感は、最早彼が人間を超越した存在であることをはっきりと示していた。 しかしそれでも、この男はツェペリの前に敗れ去る。その確信が、噴上裕也達にはあった。 「屠所の…ブタのように……青ざめた面にしてから、おまえらの鮮血の暖かさをあぁぁ味わってやる…!」 「切り裂きジャック…かつてイギリスを恐怖のドン底に陥れた殺人鬼。 そして今はただの屍生人(ゾンビ)か。 フフフ……こんな所でまたしても出会うことになるとは、世界とは狭いものだねえ」 「ウヒッ、ウヒヒヒヒヒヒ……どいつもこいつも…バラバラに切り刻んでやるぜ」 ジャック・ザ・リパーとも呼ばれるその巨漢が、丸太のように太い右腕を天上へと突き出した。 「絶望ォーーーーに身をよじれィ!虫けらどもォオオーーッ!!」 咆哮と共に、その指先から体内に隠し持った銀色のメスを突き出しつつ、ツェペリに向けて振り下ろす。 しかしツェペリは、放たれたジャック・ザ・リパーの右腕を軽く後ろに向かって跳躍し、あっさりと回避する。そしてそのまま、空中で片手に持ったワイングラスの中身を軽く口に含み―― 「波紋カッター!」 パパウパウパウ!パウッ! 歯の隙間から、超圧縮されたワインがジャック・ザ・リパーに向けて勢い良く吹き出される! ツェペリの波紋を帯びて刃のように鋭く固定化されたワインが、たった今振り下ろされたばかりのジャック・ザ・リパーの右腕を真っ直ぐに走り、ツェペリの胴程もある太さを持つその腕を綺麗に切断する。 「!」 「何だとォ…!?」 『ワインで腕をブッた斬りやがった…!おでれーた、これじゃあオレの立場なんてありゃしねえぜ!』 驚きの声を上げるタバサ達の声を背後に、ツェペリは綺麗な動作で地面に着地する。 「ウ…ウ…!UGOOOOOOOOOOOO!!!」 一瞬にして右腕を失われたジャック・ザ・リパーは激昂の雄叫びを上げ、今度は全身からメスを突き出しながらツェペリに向かって駆け出して行く。 「ノミっているよなあ……ちっぽけな虫けらのノミじゃよ!」 ツェペリは平然と、ジャック・ザ・リパーの体内から撃ち出されたメスをもう片方の手で持ったワインの瓶で弾き返しつつ、彼の戦いを見守っているタバサ達に向けて不敵な笑みを浮かべながら口を開く。 「あの虫は我我巨大で頭のいい人間にところかまわず攻撃を仕掛けて戦いを挑んでくるなあ! 巨大な敵に立ち向かうノミ……これは「勇気」と呼べるだろうかねェ?」 いいや、ノミどものは「勇気」と呼べんなあ。それでは「勇気」とはいったい何か!?」 「KUHAAAAAAAA!!」 メスを全て弾き返されたジャック・ザ・リパーが、今度は生き残った左手をツェペリに対して叩き付けようとする。しかし先程と同じように、ツェペリはその攻撃を何なく回避。 地面をも砕くかの如き勢いで振り下ろされたジャック・ザ・リパーの左腕は、まさにその勢いのまま床を突きぬけ、岩の様な左拳が地面へと埋もれる。 「「勇気」とは「怖さ」を知ることッ!「恐怖」を我が物とすることじゃあッ! 呼吸を乱すのは「恐怖」!だが「恐怖」を支配した時!呼吸は規則正しく乱れないッ! 波紋法の呼吸は勇気の産物!人間賛歌は「勇気」の賛歌ッ!人間のすばらしさは勇気のすばらしさ! いくら強くてもこいつら屍生人(ゾンビ)は「勇気」を知らん!ノミと同類よォーッ!!」 その瞬間、ツェペリが爆発的な勢いで、ジャック・ザ・リパーに向けてその脚を伸ばして行く。 その足には光り輝く波紋のエネルギー。屍生人(ゾンビ)に滅びを与える、太陽の光。 「仙道波蹴(ウェーブキック)ーーーーーッ!!!」 「GYAAAAAAAAA~~~~!!!」 猛烈な勢いで放たれたツェペリの蹴りと共に体内に波紋エネルギーを流し込まれたジャック・ザ・リパーが、断末魔の悲鳴を上げてのたうち回る。 体のあちこちに亀裂が入り、少しずつその巨体が崩壊を始めて行く。 「O……OGOOOOO~~~…!」 だが、地面から左腕を引き抜いて、ジャック・ザ・リパーは最後の抵抗を試みる。 それを受けてツェペリは大きく息を吸い込み、合わせた両手に再び波紋エネルギーを集中させる。 「恐れを知らぬ屍生人(ゾンビ)に掛ける哀れみは一切無し! これぞ太陽の波紋ッ!山吹色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライブ)ゥゥゥーーーッ!!」 反撃する隙も与えぬまま、ツェペリは太陽の如き輝きを放つ波紋エネルギーをジャック・ザ・リパー目掛けて叩き込む。散滅するに足る決定的な量の波紋を流し込まれ、身も心も殺人鬼へと堕ちて行った男は、今度こそ抵抗すら出来ないままにその肉体を塵へと還して行った。 「これが戦いの思考の一つ――「恐怖」を我が物とすることだ」 一部始終を見守っていたタバサ達の方に振り返り、ツェペリはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。 「さて、結構な道草を食ってしまったが」 タバサの応急手当が終わってから、ツェペリは世間話でもするかのような口調で言った。 ジャック・ザ・リパーを倒した後、ゾンビ馬による縫合が終わったタバサの傷をより早く、そして確実に治療する為に、ツェペリの手によって彼女の体に生命活動を促進する為の波紋が流されていた。 「最初に私が波紋法に出会ったのも、元は医者が治療の為に使っているのを目にしたからさ」 とはツェペリの談であったが、おかげで今のタバサは、受けたダメージ自体は別にしても、右肩に走る痛みは大分和らげられていた。後は出来る限り栄養を摂って、安静にしていればより完璧に治癒するだろうと言う話だったが、休むにせよ、先に進むにせよ、まずはこの階層の敵を全て叩いて安全を確保しなくてはならない。 その為に今、階層内の敵の「臭い」を感じ取れる噴上裕也に、皆の視線が集中していた。 「フンガミ君、このフロアにまだ敵がいるかどうかわかるかね?」 「そうだな…さっきの連中みてーに胸クソ悪くなるような臭ぇー感じはしねえが、やってみよう」 噴上裕也は頷いて、この階層全体の「臭い」を捉えるべく、その嗅覚をより鋭敏になるよう集中する。 「クンクンクンクン……」 波紋の呼吸によって肉体を活性化させているせいか、歳の割には殆ど「臭い」を発していないツェペリや金属特有の錆臭さを発するデルフリンガーの匂いまでもが、噴上裕也には手に取るように感じられる。 そしてミルクのように柔らかくて甘ったるい匂いの中に、咽返りそうになる程濃密で突き刺さるような血の香りを発散しているタバサの匂いを捉えた時、噴上裕也の胸は痛んだ。 今でこそ平然とした顔をしているが、やはり彼女は確かに傷付いているのだ。 彼女自身がどう思っているかなど関係無い。目の前に傷付いた女がいて、自分はその女が目の前で傷付くのを止められなかったと言う事実に、噴上裕也は激しい憤りを覚える。 ――もうこれ以上、目の前で女が痛め付けられるのを見せられてたまるか。 決意を新たに固めて、噴上裕也は再び階層内へと嗅覚を向ける。 あのイエローテンパランスやジャック・ザ・リパーの死肉のように、反吐が出そうな悪臭を放つ存在は感じ取れない。だが、まだ出会っていない“何か”がいる。その「臭い」を噴上裕也は確かに捉えていた。 「ムゥ……」 更に嗅覚を集中する。今、自分が感じ取れる「臭い」は二種類ある。 一つはタバサよりも更に柔らかい印象の匂いだ。それ程強くは無いが、しかし確かにそこに誰かが存在しているのは間違いない。 そしてもう一つは良くわからなかった。「臭い」自体が階層全体に散らばっており、しかも余程意識して捉えなければ掴み取れないような、そんな微弱な反応がそこかしこに漂っている。 『どうだ?何かわかったか?』 「ああ…イマイチ確証は持てねえが、誰かいるのは間違いねぇ」 嗅覚の集中を解いて、噴上裕也はデルフリンガーにそう答えた。 『なんでぇ、頼りねえな。お前さんの自慢の鼻はその程度なのかよ?』 「うるせえな。並の奴じゃあ、こっから「臭い」自体を感じ取れねーっつーの」 「……誰かいるのは、確か?」 タバサが小さな声で噴上裕也に尋ねる。彼はああ、と答えて、先程捉えた「臭い」について説明する。 「フム…他にも誰かいるような気がするが、ハッキリとわかる「臭い」は一つだけ……か」 「探しに行く」 迷いの無い口調でタバサが断言する。 「そうだな…正体が不明だとしても、相手の居場所がわかっているならばこちらから仕掛けてみるのも まァ、悪くは無いかな」 タバサの言葉に、ツェペリも一応の同意を見せる。 『おう。タバサがそう言うならオレは何処までも付いてくぜ』 「お前は単にタバサに付いて行かざるを得ないだけだろーが、デル助」 『何だとう?じゃあテメエは付いて来ないってゆーのかよ?』 「馬鹿言え、俺がいなきゃ案内も出来ねぇだろ。俺も一緒に行くっての」 「……決まりだな」 全員一致の見解を見せて、その意志を再確認すべく一同はお互いにうむ、と頷き合う。 「出発」 タバサのその一言と共に、一行は噴上裕也の先導で「臭い」の発信源に向けて歩き出した。 「これが「臭い」の元……だな」 噴上裕也の案内を受けて、一同は特に何の障害も無く、目的の場所に辿り着いていた。 『おいフンガミ…お前さんの言う「臭い」の元ってのは、本当にこいつで合ってるんだろうな?』 「ああ、間違いねぇ。ただ、まさかこんなモンだとは俺も思ってもいなかったがな……」 おでれーた、と呟きながら噴上裕也は問題の「臭い」の発生源を見やる。 それは何処からどう見ても、それが何なのか識別できないような奇妙な代物だった。 只一つ、それがどう考えても“ヤバいもの”であることは、誰の目から見ても明らかだ。 「果てさて。こいつは一体どうしたものかな」 ツェペリでさえ、目の前の“ヤバイもの”を見下ろしながら顎に手を当てて思案を巡らせている。 その中で一人だけ、タバサは迷うことなく“ヤバいもの”へと手を伸ばして行く。 「……おいタバサ、何やってんだよ!?」 後一歩で“ヤバいもの”に触れようとしていた彼女の手を、噴上裕也が掴み取って静止する。 「何考えてんだお前はよォー… こんな“ヤバいもの”に下手に触ったら、何が起きるかわかんねーだろうが!?」 「大丈夫」 心配そうにタバサを見つめる噴上裕也の顔を見上げて、彼女は自信たっぷりに答える。 「大丈夫だから、任せて」 「大丈夫って、お前……」 『まあ、心配すんなよ、フンガミ』 タバサが腰に付けたベルトに固定されているデルフリンガーが、二人の間に口を挟んで来る。 『ここはタバサに――いや、このオレに任せな!今すぐこいつの正体を明らかにしてやるからよぉ』 「明らかに…って、お前……」 「出来るのかね?」 不安げな表情を浮かべたままの噴上裕也とは対照的に、ツェペリは冷静にデルフリンガーへ尋ねる。 『ああ、問題ねぇ。オレっちは前にもこーゆーブツを鑑定したコトがあるんでね』 「成る程。それが君の能力と言うヤツかね?」 『そーゆーこった。他にももーちょい力は持ってんだがよ、それはそん時までのお楽しみってヤツだぜ』 「ははは、それは頼もしい話だな」 ツェペリは鷹揚に笑ってから、未だにタバサの腕を掴んだままの噴上裕也へと顔を向ける。 「なあフンガミ君、ここは一つ彼に任せてみようじゃないか」 「ツェペリの旦那……」 「君がタバサを心配する気持ちはわかるが、ここはデルフ君の出番のようだ。君の出る幕じゃあ無い」 静かな口調で、それでもはっきりと厳しい態度で以ってツェペリは断言する。 しばしの沈黙の後、やがて噴上裕也は観念したように嘆息して、タバサの腕を掴む手を離した。 「……わかったよ。おいデル助、上手くやれよ。くれぐれもタバサを危険な目に遭わせるんじゃねーぞ!」 『ンなこと、テメエに言われるまでもねーよ! …さーて。んじゃまあ、とっととこいつの正体を拝ませて貰うとしよーぜ、タバサ』 「わかった」 まだ肩に傷が残る右手でデルフリンガーの柄を握り締め、タバサは反対側の手で“ヤバいもの”に触れる。それと共にデルフリンガーはタバサの左手を通して、目の前の“ヤバいもの”を認識するべく自らの精神力を注ぎ込んで行く。 やがて“ヤバいもの”が淡く光り輝いたと思った瞬間、その真の姿をタバサ達の前に現して行く。 森を包み込む霧が晴れるかのように、デルフリンガーの力によって“ヤバいもの”の姿が明らかになる。 パイプを組み合わせたような骨格、その周囲と中身をすっぽりと覆う華やかな色の布。 中に小さな物を収容するように作られたスペースには、ふわふわと柔らかそうな毛布が敷かれている。 『……なんだこれは』 「……乳母車だろ」 呆然と呟くデルフリンガーに、噴上裕也が気の無い返事を返す。 彼の言う通り、目の前にある“ヤバいもの”の正体はどう見ても乳母車にしか見えない物体だった。 「………赤ちゃん」 そしてタバサの一言で、一同の視線が乳母車の中にあるものに集中する。 その中では、毛糸の帽子を被って顔面に白粉のような物を塗られ、ただ分厚いだけのタバサのそれとは異なる妙に鋭角的で真っ黒なサングラスを掛けた、奇妙と言えばあまりに奇妙な風体の赤ん坊が毛布に包まれて眠っていた。 これによって、目の前にある物体が乳母車であることが、疑いようのない事実であると証明される。 「フム……フンガミ君が認識した「臭い」と言うのは、この赤ん坊のことだったんだな」 「そうなるな。しかし…どっかで見たことがある気がするな、この赤ん坊」 『ん?ひょっとしてお前のガキだったりすんのか?』 「バカ抜かせ!だけど確かに、この赤ん坊を見たのは杜王町だった気がするな…… 杜王町…赤ん坊……スタンド………そうだ!思い出した!」 大きく目を見開いて、噴上裕也は乳母車の中で眠る赤ん坊に顔を近づける。 「このガキ、仗助とアイツの親父が拾ったっつー赤ん坊じゃねーか!スタンド使いの赤ん坊だぜ! そーか、道理でどっかで見たようなキテレツな格好をしてると思ったら……!」 「…………ふぇ」 興奮気味に語る噴上裕也の声に、赤ん坊の体がピクリと反応する。 「うるさい。起こしちゃ駄目」 タバサは人差し指を口元に当て、非難めいた口調で噴上裕也に言う。 「あ?あ、ああ……すまねぇ、タバサ」 「しかし…この赤ん坊がスタンド使いだって? フンガミ君、こんな小さな赤ん坊までがスタンドを使える物なのかい?」 タバサ達と同じように赤ん坊を覗き込みながら聞いて来るツェペリに、噴上裕也は大きく頷いた。 「ああ。一度その才能に目覚めちまえば、スタンド使いに年齢なんぞ関係ねー。 コイツ以外にも、生まれて一年も経ってねえようなガキがスタンドを使ったって話もあるくれーだからな…… 俺は違うが、このガキみてーに生まれながらのスタンド使いって奴も間違いなく存在してるぜ」 「なるほどな。波紋とは異なる、個人の才能と言うヤツか……考えようによっては危険な能力だな。 この子のように幼い子供や、あるいは邪悪な精神の持ち主が歯止めを利かせずにその力を使えば、大層恐ろしいことになるやもしれんな」 「そうだな。俺の住んでた町にも、人殺しの為だけにスタンドを使うようなゲス野郎が大勢いたよ。 ま、そう言う奴らは仗助みてーな連中が一人一人片付けて行ったんだが……」 呑気に眠る赤ん坊の顔を見つめながら、噴上裕也は先程から自分の胸に引っ掛かっている何かを思い出そうとしていた。自分は今、何か肝心なことを忘れている。そして、それは何だと言うのだ? 赤ん坊を興味深げに見つめるタバサの顔を見ながら、噴上裕也は思案を巡らす。そんな時だった。 「…………ん!?」 極限まで発達した噴上裕也の“嗅覚”が、こちらに接近して来る何者かの「臭い」を感知していた。 「気をつけろ!誰かがこっちに近付いて来るぞ!」 「!」 噴上裕也のその言葉に、タバサとツェペリは赤ん坊から顔を離して即座に臨戦態勢を取る。 『おいフンガミ……そいつぁマジな話なんだろうな?』 「冗談でこんな話が出来るかよ。大マジだ、しかも数がわからねえ」 自分達を守るように、噴上裕也はハイウェイスターを発動させてデルフリンガーの問いに答える。 「小さな、それも同じ「臭い」をする奴らが一斉に集まって来てるって感じだ。 こんなコトは初めてだぜ……しかもマズイことに、俺達はそいつらに囲まれてる」 四方八方から今自分達がいる部屋に「臭い」が集まって来るのを自覚しながら、噴上裕也は言う。 「私達は袋の鼠ってことかい?フム…敵の正体がわからない以上、確かにそいつはマズイねェ」 「……見極める」 下手にこの部屋を動かずに、敵の正体を確認する。タバサは言いたいことはそれだった。 『ま、敵を迎え撃つのはいいんだけどなぁ……この赤ん坊はどうするよ? マジでオレ達が囲まれてるってんなら、こいつ色々とジャマになるんじゃねーのか?』 「確かに、邪魔だね」 デルフリンガーの言葉をツェペリはあっさりと肯定する。 「だが下手に狭い通路に打って出て各個撃破、と言うのも避けたい所だ。 危険も大きいが、結局の所はこの部屋で迎え撃つのが一番生き残る可能性が高いだろう。 東洋の諺で言う所の、背水の陣――さしずめこの赤ん坊が、我々にとっての背水になるのかな」 「はん…!イタリア人の癖に良くもまあそんな言葉知ってるよな、ツェペリの旦那」 「………来た!」 噴上裕也の言葉を遮るような形で、タバサが鋭く言葉を漏らした。 そして彼女の言う通りに、通路の奥から小さな影が部屋の中に足を踏み入れ、その姿を現して行く。 『見・ツ・ケ・タ・ゾ…!』 『奴ラガ…イタゾ…!』 『ヤバイモノヲ…持ッテルゾ…!』 『収穫…スルゾ…!』 『「ハーヴェスト」ノ…収穫ダゾ!』 そんな声が部屋の周囲全体から響き渡って来る。その刹那、無数の影が部屋の中に殺到して来る。 まるで亀の甲羅のように丸みを帯びた頭と胴体に二本の足、そして左右に二本ずつ腕を生やした姿。 僅か数cm程の大きさしか無いそのスタンドの群れが、タバサ達に向けて一斉に飛び掛って来た。 「……っ!クレイジー・ダイヤモンド…!」 装備DISCのスタンドを展開して、タバサは「ハーヴェスト」と名乗ったそのスタンドを叩き潰して行く。 だが、後から次々に湧き出して来るハーヴェストの大集団に対しては、全く有効打になっていなかった。 「ハーヴェスト…!?見るのは初めてだが、こいつらがそうだってゆーのかよォ~!」 話にだけ聞いたことのあるスタンドを前に、噴上裕也もハイウェイスターで彼らを追い払おうとする。 『うおぉ!こりゃなんつー数だよ!?おいタバサ、なんかのDISCでまとめて吹っ飛ばしちまうか!?』 「駄目…!皆が…巻き込まれる…!」 新しいハーヴェストを弾き飛ばしながら、タバサはデルフリンガーの提案を即座に却下する。 大迷宮の中に落ちている装備用DISCの中には、確かにその発動効果によって広範囲に渡って攻撃出来る種類の物も存在する。だが、今のタバサの側にはツェペリや噴上裕也、 それに乳母車の中の赤ん坊までいる。 彼らを巻き込むような形でのDISCの発動は出来ない。 今の段階ではハーヴェストを一体ずつ各個撃破して行くしかない事実を腹立たしく思いながら、 タバサはクレイジー・ダイヤモンドの拳を振るってハーヴェストを潰して行く。 『手ニ入レルゾッ…!』 『頂キダゾ…!』 「………っ!?」 クレイジー・ダイヤモンドの攻撃を掻い潜ってタバサの懐に潜り込んだハーヴェストの何体かが、タバサがこの大迷宮で手に入れたエニグマの紙等のアイテムの一部を奪って逃げ出して行く。 『頂イタゾッ…!』 『ラッキーダゾ…!』 『モットモット欲シイゾッ…!』 貪欲さを剥き出しにした声を上げるハーヴェストの塊が、タバサ達の頭上を飛び越えて行くのが見えた。 「な…何だとォーッ!?」 噴上裕也の叫びを意にも介さずに、ハーヴェストの群れはタバサ達三人が揃って背を向けている 空間に向けて着地する。 その場所には、噴上裕也が言う所のスタンド使いである赤ん坊が眠る、一台の乳母車の姿。 『貰ッ…タゾ…!』 『サイコーダゾ…!』 『ザマミロダゾッ…!』 『スカット…サワヤカタゾッ…!』 乳母車の足元に群がって来た大量のハーヴェストが、力を合わせることで自分の体長を遥かに越える乳母車を軽々と持ち上げる。そしてタバサ達の死角を突いて、乳母車を奪ったハーヴェストの大集団は全速力で今いた部屋から逃亡を始めたのだった。 「パウッ!……ヌウゥ、どうやらしてやられたようだな…!」 纏わり付いて来るハーヴェストを波紋カッターで切り裂きながら、ツェペリが痛恨の表情を浮かべる。 「ド畜生がッ!奴らの狙いはあのガキだったってコトか…!」 「それは少し違うな、フンガミ君…奴らの目的は我々の持っている道具を強引に奪い取ることだろう」 私のワインボトルも何時の間にか盗られてしまった。後に残ったのはこの空のグラスのみさ」 既に一滴のワインも残っていないグラスをチラ付かせながら、ツェペリは足元へと近付いて来る ハーヴェストに波紋エネルギーを乗せた蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。 本来ならば、生身の肉体では精神エネルギーの顕現であるスタンドに触れることは出来ない筈なのだが、ツェペリが体得した波紋と言う生命エネルギーを接触させることで、スタンドにも影響やダメージを与えられることが今までの戦いで判明していた。 かつて、より効率的にスタンドの才能を発現させるべく、未知の物質で作られた弓と矢があった。 そして生前のツェペリが追い続けた、吸血鬼を生み出す石仮面―― これら二つは等しく、人間の内に秘められた未知のエネルギーを引き出す為の道具である。 そして、石仮面が生み出すエネルギーと正反対の作用を持つ波紋法の生命エネルギーもまた、人間の生命に深く結びついたパワーの一つ。 そう考えた時、波紋法とはスタンドと言う才能に近付くべく生み出された「技術」の表れであり、ついにその「技術」がスタンドの「世界」にまで入門して来たのだ――そう考えても良いのかもしれない。 「ギれるモンなら何でもいいってか!重ちーとか言うヤツ、相当意地汚いヤローだったみたいだな……!」 「……取り返す」 仲間の大半を乳母車の奪取に加わった為に、今タバサ達に纏わり付くハーヴェストの数は殆どいない。 タバサは残ったハーヴェストをクレイジー・Dで確実に掃討しながら、はっきりとした声で言った。 「赤ちゃんを、取り返す」 自分の欲望の為に、何も知らずに眠る子供ごと乳母車を掻っ攫って行ったハーヴェストに対しての憤りがタバサの声の中には含まれていた。クレイジー・Dの拳が、最後に残ったハーヴェストを叩き潰す。 「そう言うと思ってたぜ、タバサ。あのガキの「臭い」は既にハイウェイスターに覚えさせておいた。 念の為、自動操縦で先行させる。 俺も自分の鼻で奴らの動きを探って誘導するから、二人共俺に付いて来てくれ」 「わかった」 「うむ。任せたよ、フンガミ君」 噴上裕也の言葉に、タバサとツェペリが揃って頷いた。 「よし……行けッ、ハイウェイスター!くれぐれもガキの「養分」を吸ったりするんじゃねーぞ!」 噴上裕也の意志を受けて、人間型から足跡のみに姿を変えたハイウェイスターが時速60㎞の超高速で乳母車に眠る赤ん坊の「臭い」を追って駆け出して行く。 人一人が余裕で通れる通路を越えて、右へ左へ。 着実に近付いて来る赤ん坊の「臭い」を辿って、ハイウェイスターは更に歩みを進める。 『………見つけたぜ!』 間も無くして、視界の先にハーヴェストの絨毯に敷かれて移動する乳母車の姿が入って来た。 乳母車との距離を詰めながら、ハイウェイスターは考える。 スタンドとしては、自分のパワーは並以下だ。単純な殴り合いならば、今タバサが使っているクレイジー・Dの足元にも及ばないだろう。だがそれは目の前のハーヴェストとて同じこと。そうしたパワー不足を補う要素として一度に大量に姿を現せるのだろうが、僅かな時間の力比べならば自分の方に分があるだろう。 目的はハーヴェストの掃討では無く、あくまで奴らが持っている乳母車を奪取することだ。 ならば強引に乳母車を奪い返した後、全速力で自分の本体である噴上裕也達の元に戻ればいい。 精密動作はハイウェイスターが最も苦手とする能力だったが、乳母車を掴み取るぐらいならば 自分でも何とか出来る筈だ。問題は、中に赤ん坊が入った乳母車を持ち抱えた状態でこのすばしっこいハーヴェストから逃れることが出来るかどうかだが―― 『……やってみるか……!』 頭に浮かんだ僅かな迷いを振り払って、ハイウェイスターは覚悟を決める。 最高移動速度60㎞と言う自分の能力は、ハイウェイスターと、そして本体である噴上裕也にとっての誇りだ。その誇りを信じて、ハイウェイスターは乳母車を奪還するべくハーヴェストへと近付いて行く。 『コソ泥野郎め!その赤ん坊は返して貰うぜッ!』 足跡から人型へとその姿を変えて、ハイウェイスターはハーヴェストと並走しながらその手を乳母車へと伸ばす。ハイウェイスターの手に、乳母車のフレームの手応えが確かに伝わって来る。 そしてハイウェイスターはそのまま一気にハーヴェスト達の手から乳母車を奪い取ろうと力を込める。 ゼロの奇妙な使い魔「タバサの大冒険」 To be continued…… 第7話 前編 戻る
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召喚の儀式の日ある一人の平民が呼び出された。 何の特徴もないその男はある事件以降学院から忽然と姿を消した。 タバサの手記 ××月◎◎日/虚無の日 ここ数日でおきた殺人事件についてまとめる。 Ⅰつ目 同級生のマリコルヌが変死体で発見された。 自室で椅子に拘束されていた彼の胃袋は限界以上に食物が詰め込まれていた。 Ⅱつ目 ある街で徴税官の地位を利用し私服を肥やしていた貴族が殺された。 酒に毒を盛られたらしい。 衛兵がその酒を用意した給仕を探したが見つけることが出来なかった。 Ⅲつ目 再び学院の人間が殺された。 殺されたのは学院の長オールド・オスマンだった。 夜、街に酒を飲みに出掛けたところを襲われたようだ。 最初に死体を見つけた人間によると破裂音とともにオスマン氏が倒れたそうだ。 そのとき物陰からの一瞬光がもれたらしい。 Ⅳつ目 三度学院の人間が殺された、いや殺させられた。 今度は学院に奉仕する若いメイドだった。 一応の犯人は捕まっている。 彼女を殺してしまったのは才人という平民だった。 不気味な形をした刃のついた器具で腹割いたのだ。 その器具は、その、男性の股間・・・に装着するよう出来ていて、 それをつけたまま、あの、セッ・・を強要されたようだ。 Ⅴつ目 学院の危機感の無さが浮き彫りになった。 今度も学院でしかも貴族が殺されたのだ。 彼女の名前はルイズ。 名のある貴族に生まれたにもかかわらずまったく魔法の使えなかった彼女。 その鬱憤を晴らすかのように自分より下の立場の人間には容赦が無かった。 しかしその顔も、もう見ることは出来なくなった。 死んだから、ではなく無残に顔を切り裂かれ原形をとどめていなかったからだ。 ここまでの殺人にはある共通点があった。 事件の現場近くに、ひとつずつ意味不明の記号が描かれていた。 一応描き写してみる。 GLUTTONY GREED SLOTH LUST PRIDE しかし、一体何人が犠牲になるのだろう。 5人で終わり? 6人? それとも・・・・ ここまで書き終えたころタバサの部屋にノックの音が響く。 あの時学院からいなくなった平民だった。 「初めましてミス・タバサ。私は・・・・そうジョンでいいな。突然だが私は君の虜になってしまったんだ。だから君を選ばせてもらったよ。」 (映画「セブン」よりジョン・ドゥ)
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タバサの魔法服 風の魔法使いタバサさんの服(魔法/防御+28/風耐30%) 縦縞がやけに目立つが、耐性までついてる良装備。 041:タバサの魔法服 タイプ:魔法系防具 価格:60G 攻撃力:0 防御力:28 魔法力:0 魔法防御:0 敏捷性:0 運:0 最大HP:0 最大MP:0 風耐性+30% 特徴 使い勝手・希少性などを記入してください。 コメント 名前 コメント
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autolink ZM/W03-T08 ZM/W03-024 カード名:タバサの秘密 カテゴリ:クライマックス 色:黄 トリガー:1・風 【永】あなたのキャラすべてに、パワーを+1000し、ソウルを+1。 (風:このカードがトリガーした時、あなたは相手のキャラを1枚選び、手札に戻してよい) TD:ペルスラン「タバサというのは奥様がお嬢様にプレゼントされた人形の名前なのです」 CC:ベルスラン「王家は、困難な生還不可能と言われるような仕事を言いつけるようになったのです」 レアリティ TD CC illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 シャルロット・エレーヌ・オルレアンとシナジーのあるクライマックス。 トライアルに関しては他2つのクライマックスにもシナジーキャラがいるため、どれを選ぶかは悩みどころ。 ・対応キャラ カード名 レベル/コスト スペック 色 シャルロット・エレーヌ・オルレアン 3/2 8500/2/1 黄