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表紙へ戻る / 次ページ 一 君が眼を開けるとそこは、暖かな陽光がふりそそぐ草原だ。 つい今しがたまで、大魔法使いの居城であるマンパン砦を目指してザメン高地を進んでいたはずなのだが、岩だらけの地面は柔らかな芝草に、 暗雲たれこめる空は綿雲の漂う蒼穹へと変化している。 上体を起こして眼をこすりつつ、君は呆然とする。 歩きながらいつしか眠りに落ち、平和な故郷の夢を見ているのだろうか? それともこれは、君を阻止せんとする大魔法使いの罠なのだろうか? 考える君の視界に小柄な人影が入りこむ。 身長五フィートあまり、黒いマントと白い清潔そうなシャツ、灰色のスカートをまとった少女だ。 長く薄赤い髪と大きな瞳が目立つ顔には、当惑の表情が浮かんでいる。 少女は意を決したように大きく息を吸い込むと、君にむかって 「あんた誰?」と尋ねる。 なんと答える? 重大な任務を帯びた魔法使いだと正直に答える・二六四へ 身分を偽り、旅の商人だと言う・三三へ お前こそ誰だと高圧的に尋ね返す・一九八へ 三三 君が身の上を偽って自分は行商人だと説明すると、少女はあからさまに落胆した態度を見せる。 「ゼロのルイズが呼び出したのは、冴えない平民だ!」 「商人ならちょうどいい、これからはお小遣いに苦労しなくて済むんじゃないか?」 遠巻きに君たちの様子を見ていた、やはりマント姿の少年少女たちがさかんに囃したてる。 ≪ゼロのルイズ≫と呼ばれた少女が彼らの嘲笑に対して怒鳴るのを傍目に、君は頭をめぐらせ考えをまとめようとする。 これが夢や幻ではないとすれば、どうやら君は遠く離れた土地へと魔法かなにかで送り込まれてしまったらしい。 言葉が通じ、遠くに石造りの城らしき建物が見えることや人々の服装からして、この土地の文化はアナランドやカレーより洗練されてはいるが、 根本的な差異はないようだ。 この地は、大海の向こうに存在するという悪名高きアランシアか、混沌としたクールなのだろうか? 視線をルイズと呼ばれた少女に戻すと、彼女は少年少女たちの指導者らしき眼鏡をかけた賢人めいた男となにやら話をしているが、 やがて君のほうを振り向くと、小さな杖を掲げつつ呪文を唱えはじめる。 “我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール” “五つの力を司るペンタゴン” “この者に祝福を与え我の使い魔となせ” この少女は魔女だ! 素早く行動しなければならない。一六三へ。 一六三 動かずに少女が何をするかを見届けるか(一〇七へ)? おとなしくしているつもりがないのなら、剣を抜いて斬りかかるか(二一四へ)、術を用いることもできる。 ZAP・三二二へ MAG・三四一へ KIN・三五五へ DUD・四六〇へ MUD・三六五へ 二一四 君が剣を抜いて進み出ると、少女は悲鳴をあげてその場にへたり込む。 どうやら、君の反撃をまったく予想していなかったようだ。 魔女とはいえ、無抵抗の少女を手にかけることに抵抗を覚え、とりあえず剣を下ろして話しかけようとするが、次の瞬間どこからともなく 一陣の強風が吹きつけ、君を吹き飛ばす! 石に後頭部をしたたか打ちつけ(体力点二を失う)意識が遠のく君が最後に聞いたのは、 「儀式を続けなさい、ミス・ヴァリエール……」という言葉だ。六へ。 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 八〇 食堂の前まで戻ってきたが、学生たちの朝食はまだ続いている。 貴族の子弟の食事ともなると、パン一枚や腸詰一本で軽く済ませるようなことはないらしい。 君はその場に立ってルイズの戻りを待つが、近くの石造りのベンチに腰をおろし、 背嚢から食糧を取り出し、 食事をしてもよい(その場合、体力点二を加えよ)。 やがて戻ってきたルイズは不機嫌そうな声で君に、ついてくるよう促す。 どこに行くのかと君が問うと、まもなく今日の最初の授業があり、教室では≪使い魔≫の同席が認められているという。 この世界の魔法の体系と修練の方法に興味を持った君は、ルイズに従って教室へ向かう。一八九へ。 一八九 そこは奇妙な構造の部屋だ。 部屋の一方の壁には濃緑色の大きな長方形の板が掛かり、いくつかの白墨が備え付けられており、板の前には人の胸ほどの高さがある 説教壇のようなものが設置されている。 説教壇から少し離れて横一列に机と椅子が並び、その背後では床が数フィートほど高くなり別の机の列が、その後ろではまた床が高くなり 新たな机の列が…といった具合で、 階段状の構造が反対側の壁まで続いている。 これなら部屋の反対側の席についていても、壁に掛かった板と壇がよく見えるのだということに気づいた君はしきりに感心するが、 ルイズはそれがどうしたと言わんばかりの態度で机と机のあいだに設けられた石段を昇り、椅子のひとつに腰をおろす。 ルイズの隣に立つ君は、驚きの目で周囲を見渡す。 ルイズのほかにも多くの少年少女が席についており、彼らの大多数は側に≪使い魔≫を従えている。 ある生徒は肩にフクロウを乗せ、別の生徒は机の上で鼠に餌を与えている。 もちろん怪物じみた≪使い魔≫を連れてきた者も多く、六本足の大トカゲや宙に浮く血走った眼球など、おぞましい姿もそこかしこに 見出される。 やがていかにも魔女といった服装だが人のよさそうな中年の女が現れ、シュヴルーズと名乗り、授業を開始する。 その内容は非常に興味深いものであり、君は一言一句聞き漏らすまいと集中する。 この世界の魔法は≪火≫≪水≫≪土≫≪風≫の四系統からなり、太古には≪虚無≫の魔法も存在したが現在では失われているという。 シュヴルーズ自身は≪土≫の魔法の使い手であり、これは金属の精錬や石材の切り出し、農地の土質の改善など、 文明の発展と維持に 欠かせない非常に重要なものなのだ。 ≪土≫の魔法に頼らぬ通常の冶金や建築もあるにはあるが、それらはまだまだ原始的で粗末なものであり、魔法使いたちに課せられた 責任は非常に大きい。 講義を続けるシュヴルーズは、≪土≫の魔法の基本である≪錬金≫について説明を始める。 君が修行のために巡ったレンドルランドやガランタリアなどの諸国には多くの錬金術師が居たが、彼らの誰ひとりとして卑金属を 黄金に変えることに成功した者などいなかった。 この世界では特殊な薬品も奇怪な儀式もなしに、杖の一振りで黄金を創り出せるというのだろうか? 君は≪土≫の魔法に畏敬の念を抱きながら、シュヴルーズを注視する。一七二へ。 一七二 シュヴルーズはまず自らが手本を示そうと言うと、壇の上に置かれた小さな石に向かって杖を振りかざし、短い呪文を唱える。 たちまちのうちに石は、黄金色の輝きを放つ金属に変化する。 「き、金ですか?ミセス・シュヴルーズ!」 朝に寄宿舎で出会ったキュルケという少女が瞳を輝かせ、身を乗り出して質問するが、シュヴルーズはこれは真鍮であり、 黄金を≪錬金≫できるのは ≪トライアングル≫の自分より高位の魔法使いであると答える。 魔法使いなら誰もが黄金を創り出せるわけではないと知った君は、いくらか≪土≫魔法に対する畏敬の念を減じるが、それにしても たいした魔法であることには違いない。 次は生徒のうち誰かひとりに≪錬金≫を実践してもらうとシュヴルーズは言い、居並ぶ生徒たちの顔を見渡して、やがてルイズを指名する。 名を呼ばれたルイズはすぐには動こうとせず、困惑の表情を見せる。 「どうしました、ミス・ヴァリエール?」と、 シュヴルーズが問いかけるが、それをキュルケの悲鳴に近い声がさえぎる。 「先生、危険です!」と。 指名の取り消しを懇願するキュルケと、失敗は恥ではないと優しく促すシュヴルーズの声に耳を傾けていたルイズだが、やがて 「やります」と宣言して壇へと向かう。 主人を名乗る少女の魔法の実力が確かめられると興味津々で見守る君は、周囲の生徒たちの奇妙な行動に気づく。 キュルケをはじめとした大勢の少年少女が、落下物から身を守るかのように、机の下に身を隠しているのだ。 彼らにならって机の下に潜りこむか(一四五へ)? ルイズの≪錬金≫を見守るか(八八へ)? 八八 シュヴルーズと君が見守るなか、ルイズは杖を振りかざし、眼を閉じたまま短く呪文を唱える。 壇に置かれた石に向かって杖を振り下ろすと――凄まじい爆発が発生する! 運だめしをせよ。 吉と出たら一一へ。 凶と出たら一七九へ。 一七九 爆風とともに飛んできた壇の大きな破片を額に受ける。 体力点二を失う。 生徒たちの悲鳴と≪使い魔≫たちの吠える喧騒のなか、君は爆発の起きた方向に駆け寄り、徐々に薄れる白煙の中へと踏み込む。 爆発のすぐそばに居たシュヴルーズは仰向けに倒れているが、呼吸を確かめてみたところ、命に別状はないようだ。 この騒動の張本人であるルイズ自身はといえば、顔が煤で黒く汚れ、服のあちらこちらが裂けているが、目立った怪我はない。 「ちょっと、失敗しちゃったみたいね」 平然とした顔で、ルイズがつぶやく。 「また失敗しやがった、≪ゼロのルイズ≫め!」 「一度くらいまともに魔法を使ってみろ!」 浴びせられる生徒たちの罵声を聞きながら、君はルイズの二つ名の由来を理解する。二七九へ。 二七九 君とルイズは、彼女の魔法の失敗によって壇が砕け、窓のガラスが割れ、あちらこちらに破片が散らばったままの教室に居る。 爆発に巻き込まれたシュヴルーズが気絶したので授業は中止になり、ルイズ以外の生徒たちは他の教室へと移動したため、 ここに居るのは君たち二人だけだ。 罰として、破損した机や窓枠の交換と、教室の掃除を言いつけられたのだ。 君が机を抱えて運ぶ一方、この事態を引き起こしたルイズは黙々と机の埃をぼろ布で吹いている。 あれだけ自分は貴族であると偉そうにしていたルイズだが、どうやら彼女にはこの世界の貴族にとって不可欠な、魔法の才覚が ひどく欠けているらしい。 生徒たちは、男も女も教室を出て行く前に彼女を罵倒していた。 「家柄だけの≪ゼロ≫」「退学させてしまえ」「平民との私生児」と。 昼前に作業は終わるが、働いたのはほとんど君ひとりである。 疲労によって、体力点一を失う。 君は、気晴らしにこの薄情な少女を≪ゼロ≫とからかうか(一三二へ)? 黙って彼女の次の命令を待つか(二一八へ)? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 二〇〇 窓から見える空が漆黒から紺に変化した頃に、君は眼を覚まし室内を見渡す。 マンパン砦を目指すここ数週間の旅で、君は日の出とともに歩き出し暗くなる前に野営する習慣が身についているため、たとえ疲れ果てて眠りに就いても、 日の出の前には自然に起きてしまうのだ。 短時間とはいえ屋根の下で睡眠をとれたので、体力点一を加えよ。 あのルイズという少女は、君がいままで見たこともないような分厚く柔らかな布団にくるまり、相変わらずぐっすりと眠っている。 気楽なものだと、君は小さく呟く。 これからの行動を決めよ。 朝だと言ってルイズを揺り起こすか(二七〇へ)、それとも部屋を出て学院の敷地をうろついてみるか(九へ)? 九 領主の館といった趣きの寄宿舎から外に出た君は、冷たくすがすがしい空気を胸いっぱいに吸い込む。 薄暗いなか周囲を見回した君は、天を突いてそびえ立つ巨大な塔とその周囲に配置された比較的小さな四つの塔を目にすることになる。 あれらの塔が、若き魔法使いたち、将来の権力者たちを育てる学院の本体なのだろう。 森の小さな庵で、偏屈な老魔法使いのただ一人の弟子として魔法を習得した君にしてみれば、およそ信じがたい規模の施設だ。 君は中央の巨大な塔の方向へ向かってもよいし(一六四へ)、逆に学院の周辺を散策してみてもよい(一五七へ)。 一六四 君は足を止めてその巨塔を見上げる。 君が過去に足を踏み入れたなかでは最大の建築物であるアナランドの王城を、はるかに凌ぐ高さだ。 数日前に彼方からその影を見た、恐るべきマンパン砦にさえ匹敵する規模だろう。 これほどの建築物をどうやって完成させたのかと、君は考え込む。 強大な魔法で組み上げたのか、それとも無数の平民を奴隷のごとく働かせたのか。 塔の正面には城門を思わせるほど大きな扉があるが、裏手からはいくつかの煙の筋が立ち昇っている。 大きな扉に向かうか(一三六へ)、それとも煙の出る方向へと進むか(六五へ)? 六五 近づくにつれ、人の動く物音や気配が伝わってくる。 開け放しにされた扉から中の様子を覗いてみると、白い前掛けをまとった幾人かの男女がしょぼつく目をこすりながら、 火を焚いたり、山のように積み上げられた野菜や肉を別の場所へと運んだりしている。 どうやらここは、調理場の裏手のようだ。 「どうなさいました?」 中に居る人々のうち、覗き込む君に気づいた一人の女が声をかける。 年の頃十六・七、黒髪の少女だ。 黒い服の上から白い前掛けをまとい、頭には白い布でできた奇妙な飾りらしきものを着けている。 こんな早朝から働いているところからして、この少女はルイズたちが言うところの平民のひとりなのだろう。 この学院で雑用をこなす、住み込みの奉公人といったところか。 「あの……どちら様でしょう?」 君はどう答える? ある女生徒に召喚された≪使い魔≫だと話す・七六へ 調理場の新しい下働きだと話す・二二四へ 道を間違えたと言って引き返す・二八一へ 七六 「では、あなたがミス・ヴァリエールの使い魔になったという……」 黒髪の少女は驚きに目をみはる。 ≪使い魔≫を召喚すると人間が現れたという昨日の出来事は、前代未聞の珍事として学院の教師や生徒はもちろん、庭師や馬丁、メイド(君が聞いたことのない職業だが、女中の一種だろう) といった平民の奉公人たちのあいだでも噂になったのだという。 君はシエスタと名乗る少女に簡単に身の上を説明するが、自分は遠く離れた国の旅の商人であると偽る。 異国の魔法使いであり、重大な任務の途中でハルケギニアに送り込まれてしまったと言ったところで、信じてはもらえぬだろう。 「まあ、それではいつか私にも、遠くの国の品物を見せてくださいね」と微笑むシエスタに別れを告げ、君は寄宿舎の方向へと戻ることにする。 この世界で初めて、友好的な人物と知り合いになれたことを祝し、強運点に一を加えよ。一二へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 六 君はなんとも奇妙な夢を見る。 あの若き魔女に捕らえられ、嗜虐趣味のある彼女の手によって、左手の甲に焼印を押し付けられるという夢だ。 激痛と肉の焼けるおぞましい臭いに耐えられず、夢の中の君は気を失う。 眼を開けると頭が割れそうに痛む。 頭をあげ、後頭部にできたこぶをさすりながら周囲の状況を把握する。 そこは広々とした部屋だ。 一方の壁にガラスのはまった窓があり、反対側の壁には木の扉がある。 壁際には寝台や衣装箪笥などの高級そうな家具が並び、部屋の中央、君の正面には円卓と数脚の椅子がある。 椅子のひとつに座って君の背嚢を調べているのは、あの少女だ! 少女は君が眼を覚ましたのに気づくと、驚くべき事々を語りはじめる。一八三へ。 一八三 この地はカーカバードでもアランシアでもなく、『ハルケギニア大陸』の『トリステイン王国』という、君にとってまったく未知の世界であると、 ルイズという名の少女は語る。 あまりの驚きに呆然とする君を尻目に、ルイズは説明を続ける。 ここは魔法使いを育成する『トリステイン魔法学院』の寄宿舎であり、生徒は皆魔法の素質を持つ貴族階級の子弟であること。 王侯貴族はすべて魔法使いであり、魔法の使えぬ大多数の平民たちの上に支配階級として君臨していること。 彼女自身がトリステイン有数の大貴族の令嬢であり、卑しい平民である君とは住む世界が違うということ。 故郷のアナランドとはまったく違う、異様な魔法使いの身分と社会制度について知らされあっけにとられる君に向かって、彼女はさらに衝撃的な話を聞かせる。 君と彼女のあいだで、重大な契約が結ばれたのだというのだ。 彼女が≪使い魔≫と呼ばれる、魔法使いの下僕となる動物や怪物を呼び出す儀式を執り行ったところ、現れたのは獣ではなく人間、つまり君だったという。 ≪使い魔≫を呼び出す儀式は神聖にして冒さざるものであり、たとえ術者の意に沿わぬ存在が現れようとも、やり直しはきかぬらしい。 君が気を失っているあいだに彼女は君との主従の契約を終了させ、その証拠が左手の甲にうっすらと見える未知の文字らしき模様なのだ。 そして、君をもと居た場所──危険に満ちたカーカバードのザメン高地──に送り返す手段は存在せず、≪使い魔≫の契約を破棄する方法は≪使い魔≫の死だけだという。 ルイズの言うことが本当だとするならば、今の立場は絶望的だ。 もはや≪諸王の冠≫を取り戻すという君の重大な任務は、達成不可能になってしまったのだから。 しかし君は、希望を捨てない。 彼女がそれを知らぬだけで、君をカーカバードに戻すことができる未知の魔法や道具が、この世界のどこかにあるのではと考える。 それを調べるためには、当面の居場所が必要である。 ≪使い魔≫がなにをやらされるのかはわからぬが、とりあえずは彼女の庇護を受けるというのも悪い選択ではなさそうだ。 君の態度を、状況を理解して立場に納得がいったものとみなしたルイズは、 「だから、あんたは今日からわたしの使い魔、忠実な下僕なのよ」と言い放つ。 君はどう対応する? 自らを平民だと偽ってこの場は≪使い魔≫として忠誠を誓うか(一五七へ)、君自身も魔法使いであることを彼女に伝えるか(一六四へ)? 一五七 君が不承不承≪使い魔≫になることを認めると、ルイズの大きな瞳にわずかながら喜びの光が輝く。 君を従えたことに対する喜びではなく、説得が予想したよりも早く済んだことに対する喜びなのだろう。 ルイズは得意げに言う。 「それじゃあ、偉大なる『始祖ブリミル』の名にかけて誓いなさい! わたしの命令に従うこと、昼間みたいにわたしに暴力を振るわないこと、それから、 命をかけてわたしを敵から守ること!」 君は、聞きなれぬ異邦の神の名にかけて彼女に対する忠誠を誓ったが、内心では、自らの守護神である正義の女神リブラに深く懺悔する。 その後、君の寝床としてルイズが指定したのはなんと、冷たい石の床だ! 彼女自身は大きな寝台に潜りこみ、すやすやと寝息をたてている。 同じ部屋に大の男が居るというのにこの警戒心の無さは、先刻の誓いを絶対のものと確信しているためだろうか。 粗末な寝床には長旅で慣れているとはいえ、窓のガラス越しに輝く二つの巨大な月──このハルケギニアが≪タイタン≫の一部ではないという証拠だ── という異様な眺めに心を乱され、君はなかなか眠れない。二〇〇へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 二九六 体力点一を失う。 砂の持ち合わせはあるか? なければこの術の効果はないので、一六一へ戻って選びなおせ。 君が青銅ゴーレムたちの足下の地面に砂を投げると、途端に地面が泡立ちはじめ、流砂が青銅ゴーレムの足をとらえる。 六体の青銅ゴーレムは次々とその場に倒れ、重い青銅の躯体はみるみるうちに沈んでいく。 あっという間にその姿は見えなくなり、やがて流砂は、もとの固い地面へと戻る。 「≪土≫系統だ!」 「杖もなしに、あれだけの魔法を……?」 周りを囲んで見物していた生徒たちが、思いもよらぬ結果に驚きざわめくなか、君は決闘の相手であるギーシュを正面から見据える。 少年の顔は青ざめ、戦意を喪失しているのは誰の目にも明らかだ。 「き、君も≪土≫のメイジだったのか!?」 ギーシュが震える声で問いかけてくる。 君はどう答える? この世界とは原理の異なる、異国の魔法の使い手だと打ち明けるか?・四五へ 魔法の道具を武器にする平民だと答えるか?・一二五へ なにも答えず剣を構え、ギーシュに一撃を浴びせるか?・二二六へ 一二五 「君の国では、こんな恐ろしいマジック・アイテムを平民が使えるというのか。 どうりでメイジを恐れないわけだ」 ギーシュは君に怯えながらも、非常に感心した様子だ。 君が白刃をちらつかせながら、まだ決闘は終わっていないぞと言うと、 「もちろん、僕の負けだ! 参った!」と、 慌てて茎だけになった薔薇を放り投げ、頭を下げる。 先刻、理不尽に叱りつけたシエスタに謝罪するのかと尋ねると、 「あれは、完全に僕の八つ当たりだった。 貴族として恥ずべきことだ、すぐにでも謝罪しに行く」という、 思った以上に潔い答えが返ってくる。 敗北を認めたギーシュに対し、君は食堂での非礼を彼に詫びることにする。 祖国の運命のかかった重大な任務の途中で突然、わけのわからぬ世界に連れ込まれた困惑と苛立ちが、君に食堂でのあの挑発的な 言動をとらせたのだ。 考えてみればもっと穏便に諌めることもできたのに、大人げない行為だと反省する。 君の謙虚な態度にギーシュは感謝し、騎士道的な行いを褒めたたえて、握手を求める。 貴重な知り合いができた。 強運点二を加え、一五四へ。 一五四 食堂に戻って、ギーシュがシエスタに真剣に謝罪するのを見届けた君は、ギーシュに続いてその場を離れようとするが、背後から呼び止められる。 「わ、わたしなんかのために、本当にありがとうございます!」 頬を紅く染めたシエスタが、君に何度も頭を下げる。 君がギーシュ相手に決闘を行ったのは、半ば憂さ晴らしのためだったのだから、ここまで感謝されるとかえって心地悪い。 たいしたことではないから気にするなと食堂を出ようとするのだが、シエスタは、ぜひ他の使用人たちにも会ってほしいと言う。 君はシエスタの頼みを聞くか(一一九へ)? 断って、ルイズの姿を探すか(二七八へ)? 一一九 シエスタに導かれ、君がやってきたのは食堂の裏手、調理場だ。 昼食の時間が終わってまだまもないため、大皿、匙、グラスなど大量の食器が運び込まれ、水を張った大桶に漬けられている。 食器が洗われているいっぽう、夕食の下ごしらえも行われているが、大半の料理人は手が空いているようだ。 シエスタが料理長らしき太った中年の男に君を紹介し、事の顛末を説明すると、マルトーという名の料理長は狂喜し、他の料理人たちも 歓声をあげる。 彼らは以前から貴族の横暴を腹に据えかねており、魔法の道具を使ったとはいえ、一介の平民である君が貴族の魔法に打ち勝ったというのを、 わが事のように喜んでいるのだ。 調理場は君を質問責めにするマルトーを中心に、お祭り騒ぎになる。 マルトーは君の前に豪勢な料理とワインを並べ、好きなだけ食べてくれと言う。 暖かな料理を口にした君は、食材の良さを抜きにしても、マルトーの料理の腕前は君の知る限り最高のものだと確信する。 今日まだ食事をしていなかったら体力点四を、すでにどこかで食べていれば体力点二を加えよ。 マルトーは、君がギーシュの青銅ゴーレムを葬った謎めいた魔法の道具を話題にあげる。 「そんな凄いものが、あんたの国じゃあ平民の手に渡っているのか」 君が背嚢から出した品々を眺めつつ、唸るように言う。 「なあ、いくらでも出すから俺にも売ってくれよ! 貴族連中が癇癪を起こしたときの護身用に欲しいんだ」 君は、右も左もわからぬこの土地では、これらの魔法の道具が命綱も同然なので、残念ながら譲るわけにはいかぬと答える。 実際は、魔法使いの術と併用しなければなんの効果もあらわれないうえ、道具自体はハルケギニアでも簡単に調達できそうなものばかりなのだが。 なおも道具を買い取ろうと粘るマルトーとシエスタに食事の礼を述べ、君は足早に調理場を立ち去る。四○へ。 四〇 君は調理場を出て、午後の授業に出席しているはずのルイズを探すが、考えてみればどこになんの教室があるのかを君は知らない。 五つの塔がそびえ立つ広大な学院内を、手当たり次第に探すわけにもいかぬだろう。 君は、誰か通りかかった人間に、教室の場所を尋ねるか(一八〇へ)? それとも、寄宿舎のルイズの部屋まで戻り、彼女の帰りを待つか(一三三へ)? 一八〇 本塔の周囲を歩き回る君は、ふたつのマントを羽織った人影を目にする。 一人はやや頭の禿げ上がった、学者風の中年の魔法使い。 昨日の草原の一件で、生徒たちを率いていた男だ。 もう一人は、緑がかった髪と眼鏡が目立つ、美しく理知的な女だ。 なにやら巻物の束を抱えている。 君はどちらに話しかける? 中年男(一三三)か、美女か(二七二)? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 一三三 声をかけると、男は驚いた様子で君を見る。 「おお、あなたはミス・ヴァリエールの……。先ほどの決闘ではお見事でしたな。 相手の血を流すことなく武器だけを奪い、 勝利を収めたあとも驕らず互いに非を認めあうとは」 貴族である魔法使いが平民、しかも自分の生徒の≪使い魔≫と会話するにしては、ずいぶんと丁寧な言葉遣いである。 なにか裏があるのかと警戒するが、男は君を高く評価しているうえ、もともと高圧的な態度をとることを好まない性格らしい。 君は、≪炎蛇のコルベール≫と名乗る教師の賞賛の言葉に相槌を打ちつつ、小さな疑念を抱く。 あの場に居たのは生徒ばかりで教師の姿はなかったはずだが、彼はどこから決闘の様子を見ていたのだろう? 君が事情を説明すると、コルベールは、ちょうど次の授業でミス・ヴァリエールを受け持つので、教室まで案内しようと申し出る。 「……しかし驚きました。ミスタ・グラモンは未熟な≪ドット≫に過ぎませんが、平民であるあなたが、マジック・アイテムの力を借りてとはいえ、 彼に打ち勝つ姿など誰も想像してはいませんでしたからな。平民でも簡単に使えてあれだけの効果があるとは、あなたのお国の マジック・アイテム作製技術は、そうとう高度なものなのでしょうなぁ。他にもああいった物をお持ちでしたら、いくつか研究用に……」 肩を並べて歩きながら、君はこの魔法使いと言葉を交わす。 コルベールは、その下級官吏を思わせる地味な風采に反して、豊かな教養と旺盛な知的好奇心を持ち、人柄も誠実なようだ。 コルベールの質問攻めが一息ついたのを機に、今度は君から質問をおこなうことにする。 君は、自分を故郷に戻す方法はないのかと尋ねてもいいし(八九へ)、決闘をどこから見物していたのかと尋ねてもいい(七〇へ)。 七〇 「ああ、そのことですか。学院長室には≪遠見の鏡≫という物がありましてな。それを用いれば部屋に居ながらにして、遠くの出来事が 手に取るようにわかるのです。 オールド・オスマンと私の二人で、じっくり拝見させていただきましたとも」 コルベールは嬉しそうに答える。 オスマンという人物は、このトリステイン魔法学院の学院長を務める、偉大な魔法使いであるという。 齢百とも三百ともささやかれる伝説的存在なのだが、どうも仕事に対して不真面目なところがあって困る、とコルベールは小さく溜息をつく。 君は続けて、自分を故郷に戻す方法を質問してみるか(八九へ)? それとも、過去に自分以外にも人間が召喚された例はないのかと質問してみるか(一三九へ)? 一三九 「私も昨晩、記録を調べてみましたが、人間が使い魔として召喚された事例は、一件もありませんでした。ミス・ヴァリエールが 史上初ということですな」 コルベールが申し訳なさそうな表情をして話す。 「しかし、この春の使い魔召喚は例年に比べて少々奇妙でした。まったく未知の種の動物や幻獣が、何体か召喚されたのですよ」 コルベールの話によると、全身が炎のように赤い猛獣(これはキュルケの≪使い魔≫フォイアのことだろう)をはじめ、黒と白の毛皮に 長い尻尾をもった熊、手足に水掻きを持った小柄な亜人などが召喚されたという。 「どの文献にも、これらの使い魔に関する記述は存在しませんでした。あのオールド・オスマンでさえご存じないようで」 君にはその怪物たちの姿に心当たりがあったが、この場は黙っておくことに決める。 「未知の動物といえば……」 コルベールが話題を変える。 「昨日、ここから北に半日ほど行ったところにある森で、奇妙な亜人の死体が見つかったそうです。耳の先が尖っているのでエルフの死体だと 騒ぎになったそうですが、 黒髪で肌が浅黒く、醜くて背の低いエルフなんて初耳です」 なぜエルフの死体で騒ぎになるのかと君が尋ねると、このハルケギニアにおいてエルフとは、すべての人間に対する不倶戴天の仇敵なのだという 答えが返ってくる。 彼らが杖も使わずに行使する≪先住の魔法≫は、≪四系統魔法≫を凌ぐ強力なものであり、エルフの名は恐怖と同義なのだという。 「その奇怪な死体が、解読不能の文字で記された本を持っていたそうです。城下町の役人たちには誰も解読できなかったので、この学院に お鉢が回ってきましたが、今のところ解読は成功していません。あれは持ち主からして、≪エルフの魔法書≫なのかもしれませんな」 自分の冗談に含み笑いを漏らすコルベールの言葉を、君はゆっくりと反芻する。 その特徴からして、謎の死体とは、カーカバードの黒エルフなのだろうか……? 話をしているうちに早くも、今日最後の授業の時間だ。一一二へ。 一一二 コルベールに続いて教室に入ってきた君を見て、生徒たちは互いにひそひそと囁き交わす。 「……ギーシュに勝ったって本当か……」 「……異国のすごいマジック・アイテムを使う……」 席についた少年少女のなかにルイズの姿を求める君は、後ろのほうに座った彼女の薄赤くきらめく髪を見出す。 石段を昇る君は生徒たちの注目を浴びるが、朝の授業のときのような軽蔑と珍奇の視線ではない。 隣の席までやってきた君を、ルイズは大きな鳶色の瞳で見つめる。 君はどう声をかける? 勝手なことをしてすまなかった・二四二へ 俺もたいしたものだろう・二五へ 心配しなくても昼飯なら調理場でもらってきた・二五四へ 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 一二 寄宿舎のルイズの部屋へと戻った君は、頃合を見計らって彼女を揺り起こす。 君に着替えを手伝うよう命じるルイズと、この世界の女性に恥じらいはないのかと嘆く君との間で短い口論こそあったが、 やがて身支度を終えたルイズは、君を従えて廊下に出る。 そこで君たちは、紅蓮の炎のような赤い髪と褐色の肌をもつ少女に出会う。 少女といっても顔つきも体格もルイズよりずっと大人びており、服の胸元を大きく開いて豊かなふくらみを惜しげもなくさらけ出している。 やはり、この世界の女には恥じらいが足りぬようだ。 「あら、おはようルイズ」 赤毛の少女の声には、なにかを面白がっているようなひびきがある。 「おはよう、キュルケ」 対するルイズの挨拶からは、あからさまな嫌悪感が感じられる。 キュルケと呼ばれた赤毛の少女は君の姿を見て、噂は本当だったのかと哄笑し、≪ゼロのルイズ≫にお似合いのよい≪使い魔≫だと言う。 そして、本当の≪使い魔≫というものを見せてやろうと言うと、キュルケは開いた扉のほうを向いて 「フォイア!」と呼びかける。 その声に応じて、キュルケ以上に赤く豊かな毛に覆われた、姿といい大きさといい狼を思わせる四足獣が部屋の中から現れる。 「これって……なに?新種の山犬?」 赤い獣を見つめながら、ルイズが尋ねる。 「せめて狼って言いなさいよ。まあ、先生も知らなかったみたいだから、どこか遠くの国の幻獣ね」 自分の≪使い魔≫を犬呼ばわりされたことに眉を吊り上げながらも、キュルケは自慢を続ける。 炎を吐いたりはしないが、これは間違いなく≪火≫属性の未知の幻獣であり、赤く優美な姿は自分にふさわしいものだと言う。 キュルケが去った後、悔しがるルイズの罵声を聞き流しながら君は考える。 君は、キュルケがフォイアと名付けた≪使い魔≫、あの赤い獣の正体を知っている。 スナタの森とその周辺にのみ棲息する猛獣であるはずの火狐が、なぜこの世界にいるのだろうか?一一三へ。 一一三 ルイズは、君を特別に学院生徒用の大食堂に連れて行ってやると言う。 君はありがたく厚意にあずかるか(二一六へ)? 辞退して他の場所を探索してみるか(五二へ)? 五二 君の辞退の申し出に、ルイズは目を白黒させる。 「で、でも、朝ご飯まだなんでしょ?お腹すいてるんでしょ?いいから来なさい!」 君を強引に連れていこうとするルイズに対して君は、自分は卑しい平民なうえに服も体も長旅で汚れているので、主人に恥をかかせるだけではなく、 その学友にも迷惑をかけてしまうと答えて、同行をあきらめさせる。 君のほうをしきりに振り返るルイズの姿が、神殿ほどもある食堂の中に消えるのを確認してから、君は動き出す。 どこへ行く? 食堂の裏手、調理場へ向かう・二〇三へ 先刻の火狐を探してみる・一二一へ 食堂をひそかに覗いてみる・二二四へ 一二一 君は目当ての火狐を、食堂から少し離れた広場で見つけ出す。 生徒たちの≪使い魔≫は食堂に入ることが許されぬため、食堂の周囲をうろついたり寝転んだりしながら主人の帰りを待っているものが 多いようだが、君にとっては信じられぬ異様な光景だ。 双頭の大蛇がとぐろを巻いて眠り、そのすぐ横では黒猫が毛づくろいをしている。 獅子の体にサソリの尾とコウモリの翼、老人の顔を持つ恐るべきマンティコアと醜い大ガエルが、なにやら会話じみた調子でたがいに 唸り声を発している。 のんびりとした怪物たちの間を、足音をたてぬようそっと歩きながら、君はキュルケの≪使い魔≫である火狐へと近づく。 君に気付いた火狐は、二つの黒い瞳でじっと見つめてくる。 君は背嚢から使えそうなものを取り出すか(一四八へ)、それとも術を使うか(二〇九へ)? 二〇九 どの術を使う? HOT・四三〇へ LAW・四一一へ ZIG・三八四へ TEL・三六一へ YAP・三三八へ 三三八 体力点一を失う。 緑のかつらの持ち合わせはあるか? なければこの術は使えない。 一二一へ戻って選びなおせ。 緑のかつらがあるなら、それを頭にかぶり術を使って、フォイアという名の火狐に話しかけてよい。 フォイアにどこから来たのか質問すると、暗く大きな森から来たと答える。 その森には姿を見せずに襲いかかる大山猫や、動物を捕らえて絞め殺してしまう草などがいて危険だが、フォイアはそんなやつらは 怖くもなんともないと、強がってみせる。 フォイアが話しているのは、スナタ猫とくびり藪のことなのだろうか? どちらもスナタ森にのみ棲息する独特の怪物だ。 それ以上の役に立ちそうな情報は聞き出せぬため、君はフォイアに別れを告げ、食堂の前に戻ることにする。八〇へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 一〇〇 君は手にとった長剣をしげしげと眺める。 いわゆる片手半剣に分類される型の武器であり、柄を含めた全長は五フィート近いが、刀身が細いためか意外なほど軽い。 いままで使ってきた剣にくらべてやや大きすぎるきらいはあるが、偉大な魔法使いからの贈り物なのだから、ただの武器ではあるまいと考える。 君は剣を鞘から抜きつつ、これにはなにか魔法の力が込められているのかとオスマンに尋ねるが、謎めいた声に語りかけられて手を止める。 「あったりめえよ! おい、若ぇの。この俺様を、そんじょそこいらのなまくらどもと一緒にしてもらっちゃあ困らぁ!」 低いが威勢のいい、男の声だ。 あたりを見回すが、苦笑する老人以外は何者も見えない。 「なにを穴掘り鼠みてぇに、きょろきょろしてやがんでぇ! 俺ぁここだ、ここ!」 声の振動は、剣を持った君の手元から伝わってくる。 剣そのものが話しかけているのだ! 「≪インテリジェンスソード≫じゃ。太古のメイジたちが創り出した、自らの意思を持つ魔剣よ」とオスマン言う。 無機物に意思をもたせ、口を利けるようにする魔法そのものは、≪旧世界≫にも存在する。 君自身、カレーの北門では門扉そのものから警告を受けたことがあるのだ。 しかし、武器を喋らせてどのような利点があるのだろうか? あらためてオスマンに、喋る以外に特殊な能力はないのかと尋ねるが、 「わからん」と即答されてしまう。 オスマンによれば、数年前に街の武器屋を冷やかしたときに見つけたものらしい。 珍しいうえに非常に安かったため購入したのだが、このとおり口が悪く、ほうっておくと始終わめき散らすそうだ。 記録にも残されていないような古代の出来事を知っているのではと期待し、何度か話につきあってはみたものの、昔のことはなにもかも忘れてしまったと言うばかり。 ほんの数日でその≪インテリジェンスソード≫に飽きたオスマンは、剣を鞘に収めて黙らせると部屋の片隅に転がし、それきり埃をかぶるにまかせておいたのだという。 「まったく、身勝手なじじいだぜ! おい、若ぇの! この耄碌じじいにゃ、俺の価値なんてわかりゃあしねんだ。宝の持ち腐れ、猫にエキュー金貨って……」と剣がまくしたてるのを途中でさえぎり、 喋る以外になにかできることはないのかと尋ねる。 「あー、その……なにかできたはずなんだが……わりぃ、思い出せねぇんだ」と剣は言う。 錆の目立つ刀身から響くその声は、いくらか元気を失っているように聞こえる。 「とにかくだな! そう言うおめえこそ、どんだけの腕前が……」 話をそらそうとした剣が、何かを感じ取ったかのように沈黙する。 「……ふうん。おめえ、相当な修羅場くぐってきてんな? へへっ、驚いたか? 俺くらいの業物になりゃ、柄を握られただけでその人間がどこでどんだけ、 どんなふうに剣を使ってきたかがわかんのさ。気に入ったぞ、若ぇの。俺を使え。損はさせねえ」 君がカーカバードで刃の下をかいくぐってきたことを見抜くとは、たしかにこの剣には、自身が知りもしない神秘的な力が秘められているのかもしれない。 しかし、埃をかぶることにうんざりした剣が、自分を売り込むために適当なことを言っているだけだという可能性もある。 君はこの剣をオスマンから譲りうけるか(二八六へ)? それとも、他の品物を選びなおすか(一九七へ)? 二八六 君がこの喋る長剣を貰い受けると言うと、オスマンは 「なかなか似合いのふたり……いや、ひとりと一振りか」と笑って目を細める。 「それではデルフリンガー、達者でな」とオスマンに声をかけられた剣――デルフリンガーという銘らしい――は 「あばよ、老いぼれ! ようやっと解放されて、せいせいすらぁ!」と罵声で応える。 それを聞くと老人はつかつかと歩み寄り、デルフリンガーとその鞘を手にして、君に語りかける。 「あまりにやかましいときは、鞘に収めよ。そうすれば、貝のように静かになりおる。これこのように!」 オスマンの言葉どおり、鞘に収まったデルフリンガーは普通の剣と同様、なにも言わなくなる。 「それと、君を故郷に帰す方法じゃが、私なり調べてみるつもりじゃ。二つの世界をつなぐ術を知る者がおらぬか、魔法を研究しておる友人たちにも訊いてみるでな」 君は学院長に礼を述べるとデルフリンガーを片手に退室し、寄宿舎に向かう。一六へ。 一六 君が寄宿舎の部屋にデルフリンガーを持ち込みルイズに紹介した際、ひと騒動こそあったが(君はデルフリンガーの口の悪さを忘れていた)、その翌日、≪ユルの曜日≫はなんの事件もなく平穏無事に過ぎる。 技術点、体力点、強運点を最初の値に戻せ。 しかし、いつ七大蛇が復讐を果たしに来るかもしれぬと警戒する君は、いかなる時も剣と背嚢を手放さず、暇ができれば、国境の物見のごとく空を睨み続ける。 あの闘いに加わったルイズ、キュルケ、タバサの三人も七大蛇の復讐の標的となっていることだろう。 彼女たちのことも、心配もしなければならない。 あいかわらず我儘なルイズ、奔放なキュルケ、寡黙なタバサ、シエスタ、ギーシュ、マルトー、コルベール、オスマン。 過去の危険だが気ままな一人旅とは違い、ここには守るべき者たち、友人たちが居る。 気苦労の多い難儀な状況ではあるが、君はそれに対して、喜びを感じているところもあるのだ。 この世界とそこに住まう人々を、冥府の底からよみがえった大蛇どもが喰い荒らそうとしているのならば、それを阻止しなければならぬという 想いが君のなかで強まる。 だが、こちらから打って出ようにも怪物たちの居場所は杳として知れず、学院の人々に訊く限り、空飛ぶ大蛇を目撃したという情報もないようだ。 いまの君にできることは、ルイズの≪使い魔≫として雑用をこなし、魔法の授業を受け、警戒の目を光らせることだけだ。 夜になり≪フリッグの舞踏会≫が催されても、君は二つの月の光に照らされながら広場から広場へと渡り歩き、空を見張っている。 君の姿を目にした衛兵が近づき、話しかけてくる。 「まったく、貴族様って連中は毎度毎度、飽きもせずに食事に踊りに談笑だ。なにがそんなに楽しいのやら」と言って笑う。 君は、貴族には貴族の苦労があるのだろう、と答える。 流行のドレスを仕立てる代金をどう捻出するか、婦人との話のたねはなにがいいか、といったことに頭を悩ませずにすむ平民のほうがよほど気楽だ、と続けて言うと、 「違いない!平民万歳だ」と相手は笑う。 しばらく貴族を題材にした冗談を言い合うと衛兵と別れ、君は石造のベンチのひとつに腰掛ける。 料理の匂いと舞踏の音楽が、君のところまで夜風に乗って流れてくる。 舞踏会場に居るはずのルイズは、最良の時を過ごしていることだろう。 今まで≪ゼロのルイズ≫と嘲笑されるばかりだった彼女が、一転して、≪土塊のフーケ≫を捕らえた功績を褒め称えられているのだ。 しかし、君はその場に同席するつもりはない。 君は魔法使いではあるが、この世界でももとの世界でも『平民』であることには変わりなく、あのようなきらびやかな場に現れることは許されぬだろうし、 そもそも君自身も、 金ぴかに着飾った連中と肩を並べたくはない。 毎日の光景として見慣れたつもりでも、この世界の貴族たちの過剰なほどの豪華絢爛ぶりは、やはり腹立たしいものだ。 そのようなことを考え二つの月を見上げる君だが、そのとき、背後に人の近づく気配を感じ取る。四六〇へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 一一九 夕日が沈む前に学院に帰り着き、馬丁に事情を説明してから馬を厩舎に戻した君たちは、寄宿舎へ向かう途中で意外な二人連れに出会う。 ひとりは赤い髪、褐色の肌、艶めかしい肉体をもつ少女≪微熱のキュルケ≫だが、もうひとりの小柄な少女は、君にとって見慣れぬ顔だ。 青い髪と白い肌をもち、いっさいの感情を浮かべぬ物静かな容貌で目立つところといえば、眼鏡のレンズ越しに輝く青い瞳くらいのものだろうか。 ルイズやキュルケと同じく黒いマントをまとい、自らの身の丈よりも長大な杖を手にしている。 「おかえり、ヴァリエール。道中は大変だったわね、学院の馬を死なせちゃうなんて」 動と静、赤と青、豊満と未熟――あらゆる点で対照的なふたりのうち、口を開いたのはキュルケである。 「な、なんであんたがそんなこと知ってんのよ!」 驚きの表情でルイズが言う。 キュルケはそんなルイズの様子を満足そうに眺めながら、 「風竜に乗って、空から見てたのよ。タバサが快く協力してくれたから」と答え、 隣に立つ小柄な少女の肩に手をやる。 「わたしのこと覗き見しながら、つけまわしてたの!? ツェルプストーの人間はほんと悪趣味ね」 ルイズの厭味を気にした様子もなく、キュルケは君のほうを見る。 「あたしが見張ってたのは、使い魔さんのほうよ。服を新調したのね。でも、あいかわらず硬派。ちゃらちゃらと着飾ったりせず実用本位で」 君のほうに手を伸ばし、襟をつまむ。 「虚飾を嫌う野性的なところと、魔法を熱心に勉強する知的なところ。両方を併せ持つなんて、不思議な人ね。 あたしのまだ知らないタイプだわ……」 そう言いながらキュルケは、両手を君の首の後ろに回し、顔を近づける。 「は、は、離れなさーい!」 顔を真っ赤にしたルイズが、君とキュルケのあいだに割り込み、 「人の使い魔に、主人の面前で、なに恥知らずなことやってんの!」とまくし立てる。 「あら、あたしは素敵な殿方と、より深く知り合いたいだけよ」 「人の所有物に勝手に手を出すのをね、世間では、泥棒っていうのよ!」 二人の口論に付き合いきれぬと一歩退いた君は、タバサと呼ばれた小柄な少女と目が合う。 彼女はすぐに目をそらしてしまうが、君はこの無口な少女に少しだけ興味を覚える。 君はタバサに話しかけてみるか(四へ)、ルイズとキュルケを仲裁してみるか(七八へ)、それとも黙ってなりゆきを見守るか(二一三へ)? 四 名を名乗りはじめましてと挨拶するが、少女は君をちらりと一瞥しただけで、すぐにそっぽを向いてしまう。 君が彼女との会話をあきらめて、いまだに口喧嘩を続けているルイズとキュルケのほうに向き直ったところ、 「タバサ」と小さな声が聞こえる。 彼女も名乗ってくれたようだが、それ以上の会話はない。 先刻のキュルケの台詞から考えると、このルイズ以上に幼く見える少女が≪風竜≫と呼ばれる空飛ぶ怪物を従えているらしい。 どうやら、外見からは想像できぬ魔法の実力をもつようだ。一四二へ。 一四二 ふたりの少女の言い争いは、まだ続いている。 「もっと感謝しなさいな、あなたの馬の仇、林から出てきたあの獣を退治したのは、あたしなのよ!」と自慢げにキュルケが言うと、 「誰もそんなこと頼んでないでしょ! ツェルプストーから恩を売られたって迷惑よ!」とルイズが返す。 兵が言っていた獣の黒焦げ死体とは、どうやらキュルケの魔法によるものらしい。 なぜそんなことをしたのだろうと考える君の隣で、タバサが 「世話焼き」と小さくつぶやく。 その言葉の意味を考えようとした君は、 「おお! こちらでしたか、ミス・ヴァリエールの使い魔殿!」という声に振り返る。 言葉の主は、教師のコルベールだ。 片手に古ぼけた本を持っているようだが、夕闇のなかでは表題までは見えない。 口論をやめたルイズとキュルケ、相変わらずの態度のタバサの注目を浴びるなか、コルベールは力を貸してもらえないかと言うと、 君に古ぼけた本を手渡す。 表紙を目にした君は、驚愕のあまり本を取り落としそうになる。 表紙に書かれているのは君の故郷、アナランドの文字だ! 君はあわてて驚きの表情を隠そうとするが、三人の少女とひとりの教師は、君の反応を見逃さない。 「その文字が読めるのですね!? オールド・オスマンでさえ見たこともないという、その文字を! 藁にもすがる思いで、 遥かな異国から召喚されたというあなたの協力を仰いでみたのですが、まさかあなたが≪エルフの魔法書≫を解読できるとは!」 コルベールは興奮を隠さず、君に≪エルフの魔法書≫を読んでくれとせっつき、三人の少女は意外な展開にぼうっとしている。 いや、タバサだけは違う。 「危険」と言うと、 杖を両手で持ち直す。 その言葉と同時に、君とコルベールの間の地面が突如盛り上がり、君たちふたりを弾き飛ばす! 地面に背中を打ちつけた(体力点一を失う)君が起き上がって何があったかを確認すると、さっきまで立っていた場所に、 人の背丈ほどもある 巨大な腕が地面から生えている。 その腕は土の塊でできており、あの≪エルフの魔法書≫を太い指で器用につまむと、そのまま学院の城壁のほうへと素早く滑っていく。 君は巨大な腕を追いかけるか(二四八へ)? それとも術を使うか? ROK・四○○へ WOK・三五二へ DIM・三三一へ BIG・三七五へ NIP・三三一へ 二四八 君は巨大な土の腕を城壁に追い詰めるが、腕は≪エルフの魔法書≫を頭上高く投げ上げる。 本の飛んだ先を目で追うと、城壁に設けられた通廊の上に、黒い長衣をまとった人物が立っているのを目にする。 頭巾を目深にかぶっているため、顔はわからない。 その人物は土の腕が投げた本を受け止めると身を翻し、城壁の反対側、学院の外に向かって飛び降りてしまう。 あの本を、得体の知れぬ者の手に渡すわけにはいかない。 そう決意した君が、黒い長衣の人物を追うために動こうとしたところで、ルイズ、キュルケ、タバサ、コルベールの四人が追いついてくる。 「土のゴーレム……まさかあれが、≪土こねのフーシェ≫なの?」 「≪土塊(つちくれ)のフーケ≫」 ルイズの間違いを即座にタバサが訂正する。 「やられた……本塔から持ち出したところを狙われるとは……」 痛む腰をさすりながら、落胆した表情のコルベールが言う。 未知の言語を解読する鍵が見つかったと思ったら、突然手許から奪われたのだ。 知識を得ることを喜びとする彼にとっては、まさに痛恨事だろう。 あの黒い長衣の人物は、近頃トリステイン全土を荒らしまわっている盗賊、≪土塊のフーケ≫というらしい。 強大な≪土≫系統の魔法使いであり、魔法に関連した器物を好んで獲物に選ぶという。 読めもせぬ文字で書かれているとはいえ、≪エルフの魔法書≫と名づけられた書物ならばその価値は計り知れぬ、とフーケは考えたのだろう。 君はアナランドの魔法使いの義務として、あの本を奪回しなければならない。 再び馬を借りて、フーケを追うか(八七へ)? ルイズたち四人の魔法使いに、なにか助力を仰ぐか(一六九へ)? どちらもいやなら、術を使ってもいい。 FAR・三三九へ ZEN・三八三へ NIP・二九七へ ZIP・四一○へ TEL・二九七へ 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 四六〇 振り返った君は、思わず感嘆の息を漏らす。 君が目にしたものは、白いドレスをまとい、長く薄赤い髪を金色の装身具を使って後頭部でまとめ、静々と歩み寄ってくるルイズの姿だ。 以前から眼が大きく可愛らしい顔立ちだとは思っていたが、こうして着飾った姿からは、大貴族の令嬢にふさわしい洗練された気品、優雅な美しさが伝わってくる。 いつもの我儘で高慢なじゃじゃ馬とは、似ても似つかない。 女とは衣装や化粧でこうも化けるものかと、君は感じ入る。 君が舞踏会はどうしたのだとルイズに尋ねると、彼女は 「なんだか、つまんなくなって」と言う。 「今までさんざん、ゼロだ、劣等生だ、とからかってきた連中が、掌を返したように馴れ馴れしく近寄ってきて 『お嬢さん、僕と踊ってもらえませんか?』とか言ってくるのよ? そりゃあ、最初は鼻が高かったけど、なんだかばかばかしく思えてきて。わたしがちょっと爵位を貰いそうだからって、下心丸出しで擦り寄ってくる、つまらない連中よ」 男子生徒たちが近づいてきたのは、名誉や称号よりも、彼女自身の美しさに魅かれてのことではないかと考えるが、それを面と向かって告げるのも恥ずかしいため、黙っておく。 「舞踏会の華として、ダンスのパートナーをとっかえひっかえなんてのは、キュルケに任せておけばいいわ。それで、ホールを脱け出してちょっと夜風に当たろうと思っていたら、 偶然あんたがいたわけよ」 そう言ってルイズは、君の隣に腰をおろす。 互いに無言で二つの月を見上げている君たちだが、やがてルイズが沈黙を破る。 「あの闘いで、わたしは何もできなかった。あの化け物を倒したのは、あんた。わたしは蛇に巻きつかれて、あんたの足手まといになっただけ」と、 自嘲するような調子でルイズは言う。 「でも、見てなさいよ。あんたがもとの世界に帰っちゃうまでに、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールのほうが、あんたなんかよりずっと強くて、 高貴で、美しいメイジだってことを証明してあげるからね」 彼女は真剣な表情でそう言うが、あまり思いつめるのも体に悪いだろうと考えた君は、それを茶化してやることにする。 それでは当分のあいだ帰ることができないなと笑い、それまで寿命がもてばいいのだが、とつけ加える。 「あ、あんたねぇ! 使い魔の分際で、ま、またご主人様をばかにしてー!」 いつもの調子に戻ったルイズが、顔を紅潮させて怒りの声を張り上げる。 月明かりに照らし出された彼女は、美しく、生意気で、愛らしい。 もうしばらくは、この世界に居るのもいいだろう。 さまざまな驚異と、愛すべき人々に囲まれて。 しかし、君は自らの内側に起こっている異変に気づいてはいない。 任務を完遂し祖国を救おうという義務感が、望郷の念が、いや、極めたはずの魔法の知識さえもが、波に洗われる石のように、徐々に磨り減っていることを…… 一四 君は武器を構え、六体の青銅ゴーレムに立ち向かうが、同時に繰り出される六本の槍をかわすことなど不可能だ。 一本が腕を貫き、もう一本が脚に突き刺さる。 しかし君は、悲鳴も苦悶の唸り声も上げない。 三本目の槍が、喉を貫通したからだ。 目の前が暗くなり、全身の力が抜け、その場にひざまずく。 君が最後に聞いたのは、自身の喉がごぼごぼと鳴る音と、 「か……彼が! 君が悪いんだ! ぼくは殺すつもりは……」と叫ぶ、 狼狽したギーシュの声だ。 もはや君が、アナランドに戻ることはない。 一八五 逃走のために背を向けるが、土ゴーレムはもう、すぐそこまで迫っている。 相手は君をつかもうと、大木ほどもある腕を伸ばす。 よけきれず、わしづかみにされた君を耐え難い激痛が襲うが、どうすることもできない。 ≪土塊のフーケ≫は、盗みを邪魔しようとする相手に慈悲をかけることはないのだ。 土ゴーレムは君を握りつぶす…… 四〇七 体力点一を失う。 石粉は持っているか? なければこの術は効かない。 持っていれば、標的を選び、その標的を石に変えてよい。 だが、土ゴーレムを石に変えたところでなんの意味がある? フーケがたちまちのうちに、石を土に変えるだけの話だ。 君が術を使っているあいだに、残りの二体が近づき巨大な腕を振り下ろす。 術に集中していた君は、その一撃に気づくのが遅すぎた。 ≪土塊のフーケ≫は、盗みのためなら殺人もいとわぬのだ。 痛みを感じる暇もなかったのが、不幸中の幸いだ…… 六七 武器を構えて月大蛇に打ちかかろうとするが、怪物のほうが先に動く。 月大蛇がルイズを全力で絞めあげると、彼女の全身から骨の砕ける鈍い音が響く! 目の前の光景に半狂乱になり、絶叫して大蛇に斬りかかる君だが、突然、左手の甲に刻まれた紋様の輝きが強まったことに驚き、 足を止める。 紋様の光はすぐに薄れ、それに合わせるかのように、君の意識も暗闇に飲み込まれていく。 その場に倒れ伏したときには、心臓の鼓動が止まっている。 君に刻まれた≪ルーン≫は非常に特殊なものであり、主人を守りきれぬ無能な≪使い魔≫には、しかるべき報いを与えるのだ…… 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ