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就寝7時間 前はいっさい食事をしないとか、好物の缶コーヒー をやめるとか。簡単 ですが効用 ありですよ。 多量の 体脂肪 を消費 するため、カプサイシンジュースを飲んで1時間水泳のトレーニングをしました。 私の得意な泳ぎはクロールです。これは誰にも負けない自信があります。 特にクロールで速く泳ぐことにかけては抜群の自信を 持っています。 私がクロールを得意になったのは中学生の頃でした。 この頃から私はクロールだけは誰にも負けませんでした。 話はそれましたが、クロールを使ったダイエット法を今は実践しています。 毎日クロールで1時間泳ぐことでかなり体の脂肪を燃焼させることができます。 これを続けている私はいつもスリムな体型を維持しています。 だからクローりには感謝ですね。痩身 は体重数値よりも見た目の体型 重視のほうがモチベーションの継続 ができますね。 燃焼系栄養補助食品 ではありませんが、私は体操 30分 前にブラックコーヒーを1杯飲んでいます。カフェイン成分 が脂肪 を燃焼 させやすくするそうです。 お腹の箇所 を綺麗に痩せさせるためにはお腹の内側にある筋肉をアップ させるのが要 です。お腹の筋肉を鍛えることで腸 などの内臓が正常な位置に戻り、華麗 なウェストラインが出てくるようになります。 ちょっとした水泳トレーニング をした後スグに寝ると、体脂肪 の燃焼 効果を睡眠中も持続 できるという長所 もあります。 バランスステッパー などの肥満解消 の器具は、買ったけど使わないということが無いように、きちん目標 を持って購入するようにしましょう。 水泳トレーニング が苦手なかた は、岩盤浴かサウナもダイエットの手助け になることでしょう。楽しむことも必須 ですからね。 なにかしらのスポーツ は日ごろから やるのは基本です。けど ときどき さぼりますけどね。 炭水化物を過度 に補う のは太りすぎ になりやすいので量を減らし、夕食を控えめにするのがかなめ です。 様々な口コミ によると、サプリメントを摂取する やり方 で減量 に成功する人もいます。綺麗 なウェストラインは女性の憧れですよね。理想 の体格 を意識してシェイプアップ メニューを組んでくださいね。 栄養補助食品 や金魚運動マシーン などの器具は出費がかさむので、地道にスクワット も十分アリだと思います。 アメリカ などでも話題 ですが、EMS(腹筋マシーン)を使ってのスポーツ は基礎代謝量を増やしエネルギーを消費 しますので内臓脂肪症候群 予防にもいいです。 また 、掃除は部屋がきれいになるうえにとても 効能 のある全身のエクササイズ になるので、毎日 しっかりと行うようにすればダイエットにも効果的です。 また 、背中のポイント は自分では見ることができないので留意 が必要です。でも 意外と年齢を感じるポイント かもしれません。 リンク名 http //5thvqloijbw.cosplay-navi.com/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/20141016
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クローカー「SPEED」 爪(JROでいうカタール)を武器とするローグ系2次職。 始動スキルはクローマスタリー。 追撃ダメージが本鯖より増加しており、 短剣から持ち替えてもDPSがおちることはほぼない。 クリティカル2倍も健在で、 高DEF高Fleeに対するパッシブ型火力としては全職中最高クラス。 回避も全職中最高の水準にあり、優秀なサブタンク兼アタッカーとして暴れまわれる。 反面HP係数には不安を抱え、範囲攻撃もまったくないため 囲まれる、ないしは魔法攻撃を連打されると 一瞬で落ちることもあるので、ほかにタンクがいないときを除いては、 メインタンクになるのはあまり好ましくないかもしれない。
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パネル破棄 奥義ゲージが通常の2倍増える。←重要! パネルとバフ(剣)やデバフ(岩など)を移動できます。
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クロートー(神族-010) imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (クロートー.jpg) 初出:α1 / データ更新日:20150701 ステータス No. 神族-010 タイプ 運命神 召喚コスト 30 射程 近距離(350) Illust あさひろ CV 中川 亜紀子 Lv1 Lv20 HP 528 607 AP 62 71 ATK(物理攻撃力) 53 64 POW(魔法攻撃力) 0 0 DEF(物理防御力) 34 43 RES(魔法防御力) 33 38 MS(移動速度) 814 AS 0.75 0.78 口承 口承 アトロポス様、ラケシス様のご姉妹で、運命を司る三様のうち、運命の糸を紡ぐ御役目を担う、長姉にあたるのがクロートー様にございます。 彼女が紡ぎ出す糸、その一本一本が人間一人の人生に相当するのだとか。 考えるだに、相当身の引き締まる重責だと思うのですけれど、このご姉妹は仲がよろしくて、よくおしゃべりに興じて手元がお留守になってしまわれるようで……ああ!申し上げてるそばから縒りを間違えて捻じ曲がった糸が!なんと!そちら、車の糸がもうありません!よ、よくある事と言われましても……申し訳ありません。私には刺激が強すぎます。 アクティブスキル:運命の創出 指定タイプ 対象 効果タイプ 強化 消費AP 30 / 30 / 30 クールダウン 40 / 40 / 40 一定時間,自パーティーの最大HPを上昇させる。[上昇HP:100 / 150 / 200][効果時間:8 / 12 / 16] パッシブスキル:紡ぐ者 指定タイプ ― 効果タイプ 強化 1. 自パーティーに自身と同じタイプのユニットがいる場合対象の数に応じて同じタイプのユニットのHPリジェネが上昇する。[上昇HPリジェネ(1体につき):0.8 / 1.4 / 2] 2. 自パーティーのATKが上昇する。[上昇ATK:10 / 15 / 20] コメント [部分編集] ここにコメントを記述 動画
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前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア 41. 病と嫉妬 ふと、ルイズが目を覚ます。 そこは湯船の上ではなく、カトレアの部屋だった。 使用人が掃除したらしく普段通りに戻っている。 「ティファニアだったわね。あんのコブ付きエルフ」 治ったのはありがたいけど、何であんな治し方なのよ。 ねえさま死ぬかと思ったじゃない。と一人頭の中であの憎たらしい胸を、 こね回しながらそんな事を考える。そうこうしていると、 どうしたの?だいじょうぶ?と言いたそうにつぶらな瞳の動物たちが、 ルイズの近くに集まって来た。 「大丈夫よ。心配してくれているの?ありがとう」 近くの何頭かの頭を撫でてから、ルイズはベッドにごろんとした。 治って良かった、とルイズは嬉しそうにコロコロ転がり、 私が治したんだ。と勢いよくゴロゴロ転がって、勢いよくベッドから落ちた。 「あいたたた…あら」 逆さまの視点の中、一つの物がルイズの目に映る。 古ぼけた本だ。隣には表紙に何も書かれていない真っ黒の本があった。 それが何かルイズに分かるはずもない。彼女は古ぼけた本を手に取った。 「これ、ちいねえさまの日記帳だわ。昔持っていたもの」 カトレアは外を走るどころか、まともに立って歩くことも出来ない時期があった。 ベッドの上で、じっとしたまま一日を過ごすのはあまりにも苦痛であろう。 そう思ったヴァリエール公爵はこの日記帳を送った。 人の秘密が書かれたそれ。特にカトレアの物となると見てみたい。 ルイズは誘惑に駆られて開きそうになる。 「だめ。だめよルイズ。そんなことしたらちいねえさまが悲しむわ。 それ以前にロックの魔法が掛かっているから、下手に開けようとすると爆発してしまうわ」 誘惑に負けたルイズはどうしたものかと日記帳を見る。 自分の魔法をコントロール出来ている訳ではない。 コモン・マジックもいくつか試したが、凄惨な結果に終わってしまった。 これで諦めれば良いのだが、しかし変なところで頭が回るルイズは、 一つの方法を思いついた。本に付けられている鍵とは何の関係も無い『虚無』の呪文だ。 「リコードの魔法を使って、この日記が書かれた時に行けばいいじゃない」 そうと分かれば早速行こう。時間はだいたい八年前。 本当に、自分とカトレアが同じだったかどうかを調べるために、 ルイズはリコードの長い呪文を詠唱し本の記憶を探る事にした。 これなら中身を見ていないと言い訳も出来る。と屁理屈混じりの思考と共に。 「あんた誰?」 そこは抜けるような青空の下ではなく、白くて殺風景な部屋だった。 目の前には、大きなベッドで布団を被って寝ている女の子がいる。 背格好はルイズにそっくりで、手にはまだ新しい日記帳があった。 「ち、ちいねえさま?」 「はぁ?また幻覚かしら。幻聴まで聞こえるなんて。 ほんと、アカデミーは変な薬しか作らないわね。 まぁ、エレオノールが丹精込めて作っているんでしょうけどぉ?」 イメージの違いからショックを受けるルイズを余所に、 その少女は病的なまでに真っ白な髪を面倒そうにかいた。 その顔は痩せこけていて、目は鋭くルイズを睨んでいる。 肌の色も土気色に近く、生気はほとんど感じられない。 「ああ、そういえば――背格好以外はそっくりかしら。 ルイズに。私がこの世で一番嫌いなルイズに」 ルイズの視界がグラリと揺れる。自分でも分からない内に、 その言葉を聞いて倒れたのだ。 「どうでもいいわ。ああ、そうだ。もしあの子が来たらあんたが代わりに面倒見てくれない? もうたくさんよ。なんでわたしの所にばかり来るのかしら… 頭痛い、お腹も変だし…もう嫌。おやすみ幻覚さん」 ルイズは、言葉のほとんどが理解出来ていなかった。 ただ、ゆっくりと辺りを見回す。おそらく自分の家のカトレアの部屋で、 窓の外の色から今は昼間だと分かった。 カトレアが何度か、苦しげに呻きながら眠ろうとしてしばらく経ち、 ようやくウトウトとし始めた頃、扉が勢い良く開いた。 「ちいねえさま!」 小さなルイズがいた。泣いている。カトレアがピクリと動く。 モゾモゾと布団の中に入ろうとするが、小さなルイズがそれを阻止した。 「おきて、ちいねえさま。あねさまがいじめるの!」 カトレアはため息をついてから、布団から出る。 どうしようもなさそうな顔で見て、小さな子供の頭を撫でた。 「ルイズ、どういじめられたの?」 「もっとちゃんとしなさいって。わたしが魔法使えないのは変だって」 覚えてる。この次に私は励まされた。ルイズは自身の記憶を遡って、 過去の記憶を思い出した。 「大丈夫よ。変じゃないわ。ちっともね。すぐに使えるようになるわ。安心なさい」 「ほんとに?」 「ほんとうによ。さ、ここにいたらあねさまにもっと怒られるわよ? 早く戻った方がいいわ」 「うん。ちいねえさまありがとう」 作り笑顔でカトレアは手を振り、扉が閉められてから今のルイズを見た。 「面倒見ろって、言わなかったっけ?」 「え、い、あ?」 混乱するルイズを、あらん限りの侮蔑の表情で見てから、カトレアは舌打ちした。 「幻覚に話しても無駄ね。無駄ついでに聞いてよ。こんなこと誰にも言えないし」 眠気が消されたカトレアは、暇つぶしをルイズに向けた。 「あの子ね。一々わたしの所に来てこんな事があったあんな事があったとか言うのよ。 頭痛いってのに。しかも決まって後少しで眠れそうな時によ!? 信じられないわ。空気が読めない星の下で生まれたのでしょうね。 ああ、あの子はどうしたら静かになるのかしら…そうね、息しなくなったら何も言わなくなるわよね。 ねぇ、そう思わない?幻覚さん。首でも絞めて…う、あ…」 急に、カトレアは酷く咳こんだ。ルイズははっとしてカトレアに近寄ろうとしたが、 カトレアの殺気が籠もった叫び声で近づくことが出来なかった。 「来るな!もう嫌よ。体が痛むだけの魔法も…苦い上に飲んだ後は体中が軋む薬も、 母さまの意味のない努力もいらない!…楽にさせてよ。なんでこんな辛い思いしてまで、 治る見込みの無い病気背負って生きなくちゃいけないのよ…なによ。 魔法が使えない程度で泣いて。こちとら魔法どころか歩くことすらままならないっていうのに、 皆ルイズルイズルイズルイズ……うるさいったらありゃしない」 ついにカトレアは血を吐いた。ルイズは、未だ殺気を放つカトレアに近づき、 ヒーリングを唱える。スクウェアクラスの効果で幾分かマシになったのだろう。 しかし、カトレアはルイズの頬を引っぱたいた。 「幻覚じゃないならあんた誰よ!さっさと出てけ。 ここはわたしの部屋なんだから、わたし以外はいらないの! 誰もいらない!何もいらない!皆、みんな嫌い!」 ルイズは何も言えず、部屋を走り去って―― 気が付けば魔法が解除されて、フォンティーヌの寝室に戻っていた。 「私…わたしは…」 勝手に涙がこぼれていく。部屋の扉が開いた。 カトレアとラルカスが普段通りに部屋の中に入る。 ルイズの様に驚いたカトレアが言った。 「なにかあったの、ルイズ?」 「ごめんなさい。ごめんなさい…」 カトレアは不思議がった。にこやかにしていたのに、 一人ウィザーシンズ以外に何か変な事したかしら?と、ただ虚ろな目で泣いて、 謝るだけのルイズをじっくり見るとその原因が分かった。昔の日記帳である。 「に…に、良いのがないわね…まぁいいわ。勝手に読んだのかしら?」 ぽんと手を叩いてカトレアは納得した。おそらく『虚無』でも使ったのだろうと。 ルイズはただ謝っている。魔法の事はまだ何も言っていなかった。 「どこまで見たの?」 泣いているルイズを抱きしめて、カトレアは優しくルイズに聞いた。 ルイズは姉の胸の中で、消え入りそうな声を出す。 「…首、締めたいって。エレオノール姉さまに叱られた時」 どの時だろうか。と消えそうな声を聞いてカトレアは思った。 ただ、結論は一つだ。今もルイズは嫌い。 「そうね、そう思った時もあるわ。だってあなたの事嫌いなんだもの」 ビクリとルイズの体が震えた。ラルカスが驚いてカトレアを見る。 「か、カトレア?」 「ラルカスは黙っていてくれないかしら?これは姉妹の問題なの」 そう言われたら、黙るほか無い。カトレアはルイズを見る。 ルイズは目が涙に濡れているせいで、姉がどんな表情か分からなかった。 「それよりね、ルイズ。わたし今でもあなたの事嫌いよ。 この世で一番嫌いだわ。何よりも嫌い。大嫌い」 ルイズはさらに大声で泣き出した。 全部私が悪いんだ。だから嫌われたって仕方ないんだと、 ただただ、涙を流して苦痛に耐える。カトレアに抱きしめられたまま。 「だって仕方ないじゃない。あなた――こんなに可愛らしいのに泣き虫なんだもの」 「ふぇ?」 カトレアがルイズの顔を拭いた。泣きはらしたルイズの真っ赤な目には、 普段通りコロコロ笑いそうな笑顔のカトレアが映った。 「ルイズ、覚えておいて。嫌いと好きは表裏一体なの。 わたしがこの世で一番好きなあなたは、この世で一番嫌いでもあるのよ」 ルイズは訳が分からなそうな顔をしている。 カトレアは、ルイズのほっぺたを甘くつねった。 うにょーんと伸びる。 「柔らかいわね。エレオノール姉さまがよくされるのも分かるわ」 「ちいねえさま、怒ってない?」 「別に。一緒に日記の続き見ましょうか」 「やだ、もう見たくない」 そう言わずに。とカトレアがアンロックで鍵を外して中が開かれる。 ルイズはそれを恐る恐る覗いた。書き殴られた文字、内容はその日の出来事や体の痛みについて。 次のページには隅の方に小さく書かれた白い髪の女の子と、真ん中に書かれた桃色がかったブロンド髪の女の子の絵。 パラパラとめくっていくと時折血の後も見受けられた。 「昔、といっても二十四年前だけど。当時は、 わたしみたいなのが生まれてもすぐに殺されてたのよ。 表向きは流れた事にしてね」 よくあることよとカトレアは言った。 貴族とはなんだかんだいっても、最終的に見栄と伊達に生きる者達である。 そんな連中が体に不具合のある子供を育てたいと思うだろうか。 上流階級の中でも特に位の高い貴族などは、その意識が強く、 そうした子供は「無かったこと」にするのが暗黙の了解だった。 「母さまは、そういう生まれではなかったからでしょうね。 頑張ってわたしを生かそうとしたの。お父さまや皆の反対を押し切ってね。 お父様を悪いと思っちゃだめよ。それが「常識」だったのよ。 お母様も戦傷の治し方はよく知っていたでしょうけれど、病については素人なのにね。 悪い人じゃないわ。母親として立派だと思う。けれど死なせてくれた方が、 昔のわたしは喜んだわよ?例えそれが、後味を悪くする物にしかならないとしてもね。 結局私は生まれてからずぅっと毎日、酷い苦しみと闘う事になったわ」 ヴァリエール公爵の一目惚れから成立した結婚話は、 逆玉の代表例としてよく挙げられている。 挙げた連中の家が何故か何処かへ吹き飛ばされるのは、 トリステイン七不思議の一つにもなっている。 「それで、ねぇルイズ。 あなたが気持ちよく眠れそうな時にたたき起こされたら、 しかも毎日の様にそれをされたら、 静かにさせるにはどうすればいいかとか、考えたりしてみないかしら? わたしね。夜中とかに体中が痛くなって眠れなくなる日が多かったの。 だから少しでも昼間の間に寝たかったの。それにあなた、 わたしのベッドによく潜り込んできたわね」 笑顔のまま世間話をする様に話すカトレアは、逆に恐ろしく見えた。 ルイズは反射的に謝る。 「ご、ごめんなさい!」 そしてまた泣きそうになる。よしよしとカトレアはルイズを撫でた。 「怒っていないし、謝って欲しいわけでもないわ。 ただ、どうかしら。というお話よ。 結局わたしは八年くらい前にフォンティーヌに移り住む事になって―― ああ、あったあった。ここからだわ」 ルイズは日記を見る。ただ、「寂しい」だけがページの最初から最後まで、 大量に書かれている。文字が、痛みを訴えていた。 「ルイズ。あなたがいてくれたから、わたしは正気でいられたのでしょうね。 病気が悪化したのとわたしの体が大きくなったから、 こっちで本格的な治療をする事になったのよ。 アカデミーの実験体代わりと言っても差し支え無いわね。 でも、それ以治す外方法が無かったのよ。エレオノール姉さまは、 よくわたしに泣いて謝ったわ。全部自分が悪いんだって。そんな事ないのにね。 そんな痛みと闘うだけの毎日よ。体はさらに軋んで痛んで大変よ。 薬のせいで胸は大きくなったけれど、この方法はオススメしたくないわね」 と冗談交じりにカトレアは言うが、ルイズは真剣に聞いていた。 泣きそうな顔の妹をよしよししながら、カトレアは話を続ける。 「それでね、そんな生活が続くともう本当に頭の中にね、未練がなくなっちゃったの。 楽になりたい。楽になりたい。それしか考えられなくなったわ。 でも、時たまあなたの事を思い出して止まるの。お手紙を送ってくれていたしね」 「ちいねえさま…」 自分が魔法を使えなくて抱いた負の感情が、ひどくちっぽけに思えた。 少なくても、そこまで思い詰めた事は無かったからだ。 精神的な苦痛は、肉体のそれに比べて遙かに楽なのだと、 今更ながらにルイズは理解した。少し悲しげな顔でカトレアは続ける。 「残念だけど、それも永遠には続かないのよね。 どうやって死のうかと考えたとき、自分で死ぬのはダメだって思ったの。 それは甘えだって。何でそう思ったのかは分からないわ。 でも、死ぬのなら獣にでも食われるのがお似合いだって思ったのでしょうね。 どうやってかは本当に思い出せないわ。けど、確かにわたしは近くの森に行ったの。 嵐の日の真夜中にね。そこでおもしろい人に会ったわ」 「誰?」 「シェオゴラスというお年を召した王子さ――ルイズ?どうしたの」 ルイズは思いっきりむせた。カトレアの表情がああ、と変わる。 その目は、以前狂気の島を統治していた老人の目に少し似ていた。 鳶色の目の瞳が猫の様に細くなったのだ。 「ふうん、知っているのね。その反応を見ると」 「ち、ちいねえさま?」 カトレアは普段通りにコロコロと笑うが、雰囲気が違った。 冷たくなったわけではないし、かといって熱いわけでもない。 ただ言いしれぬ不気味さを持った笑顔だった。 カトレアは真っ黒な表紙の本を手にする。 名前すら無いその本は、全ての禁忌が記されたマジックアイテムだ。 オブリビオンのある書庫で入手する事が可能であり、 実際にモリアン・ゼナスという男もこの本を読んだ。 しかしその副作用として、見た者を普通のままではいさせない。 多少緩和されているとはいえ、常人なら死を選ぶ苦しい病を患っているのにコロコロ笑えて、 読めば気が触れる本を読んでも平気ということは、つまり―― 本の力に飲み込まれないほどの、 とんでもなく強い精神力を持つに至ったということだが、 ルイズにはそんな事、分かるはずがない。 そもそも、この本が何かすらルイズは知らないのだから。 ばさり、と日記帳がベッドから落ちる。ルイズは考えたことすら無かったカトレアの部分が目に入ってしまった。 桃の空が笑ってる。暁に飲み込まれた私は極楽鳥についばまれ、 丸い顔した蝶になる。シェオゴラス様が踊る。だから猫目のわたしも踊る。 踊るわたしは何なのか?きれいな縄で飛ぶわたし。 フォークじゃないフォーク。だからスプーン。 そう、スプーンのカトレア。ビッグヘッドはおもしろい―― 「ちいねえさま?これって…」 また息苦しさを感じながら、ルイズは尋ねた。 気分は最悪で自分がどんな表情をしているかさえ分からない。 カトレアは、うふふと含みを持った笑いと共に答えた。 「虚無の魔法の事は知っていたけれど、ヘルマイオス様との契約で教えちゃいけなかったのよ。ごめんねルイズ。 けど、これでおあいこという事にしないかしら?ああ、この指輪はシェオゴラス様にもらった物だから」 どういうこと。わかんない。わけわかんない。 ルイズは、変わった指輪を嵌めるカトレアに恐怖を抱いた。 ほんの少し目が変わっただけだが、ルイズにとってはそれだけではない。 まるで今まで接してきたカトレアが全て演技であったかの様に錯覚してしまう。 実際の所どちらが演技なのか、それを判断することは難しい。 なにせカトレアは「昔の」シェオゴラスに感銘を受けたからこそ、今も生きているのだから。 「どうしたのルイズ?わたしはわたしのままよ。それともあなたが変わったのかしら? 答えは日記の中に。もう一度――入ってみたらどうかしら?」 コロコロ笑うカトレアが怖くなったルイズは、逃げるようにリコードで本の記憶に入っていく。 それがカトレアの目論見通りであるともしらずに。 ルイズが意識を手放すと、ラルカスはううむと頭を捻らせ、彼女に布団をかけた。 「いきなりすぎやしないかね?カトレア」 虚無だなんて初耳なのだが。とラルカスは言うが、 カトレアは意にも介さず歌うように口ずさむ。 「ねぇラルカス。雄牛のラルカス。あなたもわたしと同じかしら?少し違うかしら? 違っているのが普通だけれど。みんな違ってみんな良いって言うじゃない。 あなたもわたしもみんなと随分違っているけれど、それで良いのかしら?」 何も言わず、ラルカスはカトレアの頭を無骨な手で撫でた。 カトレアはいつもの様にコロコロと笑って、ミノタウロスの頬にキスをした。 「君がそういう風にごまかすときは、何かあるということだね」 「さぁ、どうかしら?」 どこまで本気でどこまでが演技なのか。なんとなく、 何度か出会ったあの老人の面影を主人に見るラルカスであった。 前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア
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サンダークロー チューン武器の一つで、雷の爪。 常に電流が流れる非常に物騒な爪武器。
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前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア 2 ご主人様の涙 「ねぇ。本当に人、いえ猫とかトカゲの亜人ですら先住魔法を使えるの? その、タムリエルって所は。」 先ほどの発言に驚くルイズを落ち着かせ、 彼女の部屋で証拠――簡単な自己回復の魔法――を見せても、 未だ信じられない様子で、何度も繰り返し聞き返すルイズに、 少しうんざりしながらマーティンは、先住魔法の意味をあまり考えずに、 先ほどからくり返し説明している事をぶっきらぼうに言った。 「そうとも、ご主人様。タムリエルと、 それ以外の全ての大陸と島々を合わせたニルンの地がある『ムンダス界』より 遠く離れた異世界『エセリウス』の影響と、 そこに住まう神々九大神の加護によって、 ニルンの生きとし生ける全ての知あるものは魔法が使えるんだ。 人によって得手不得手があるのは間違いないけれどね。」 「ムンダス界って何よ。まるでハルケギニアではないみたいじゃない。」 今までと違い質問を返してきたことに内心嬉しく思いながら、 自分の中に生まれた疑問を彼女に投げた。 「ここはオブリビオンではないのかい? ムンダス界とは定命の生物が住んでいるニルンの地とそれ以外の全てを、 例えばあの月とか星とかをまとめて一つの世界として指し示す言葉だよ。」 厳密には違うかも知れないが、メイジギルドを辞めしばらく経ち、 そういった定義についてすっかり忘れてしまったマーティンが、 特に知らなくても問題なかった事を詳しく教えられるはずもない。 確かこうだったか、と憶測で言っている節があった。彼女は気づいていないが。 「『オブリビオン』?えせりうす…だったかしら。 そことはまた違うのかしら。少なくともここはそんな所じゃないわよ」 「大違いだとも。」 どう違うというのか。ある理由から知識欲が強いルイズは、 いつの間にか自分の使い魔の話に夢中で、 出なければならない午後の授業の事などすっかり忘れていた。 しかし、彼女がなかなか魔法を成功させなかったせいで、 時間がとれずまともな授業ができないから、 使い魔との親睦を深める為自習となり、何の問題もなかったが。 「まず、オブリビオンとは開いてはならない扉だ。 それを開いて未だに正気を保っていられるかさえ怪しい所なんだ。」 「ここをそんな危険な場所だなんて言わないでよ。 けど、神様のいるっていうエセリウスとは違って、随分怖い所なのね。」 ああ、とてもとても怖いところだ。 そうマーティンはにこりと笑って言った。 親が子に物語でも読み聞かせているかのように。 「身を持って知っているからね。オブリビオンの中の世界は。 二つしか入った事は無いが、それだけで一生分の恐怖は味わったよ。」 そんな所ばかりではないらしいがね。とマーティンは付け加えた。 「どういうこと?あなた、そこに行ったの? それに二つって何?オブリビオンにはいくつか種類があるのかしら」 興味が尽きない。先ほど貴族で無いと風貌から思ったが、 なかなかどうして教養のある語り口で話すこの男は、 自らが言った通り貴族らしい身分なのでは無いのだろうか。 今まで聞かされてきた始祖ブリミルとその使い魔の物語とは全く違うが、 しかし語りには一つとして嘘が見えないこの話に、ルイズはすっかりのめり込んでいた。 どこか遠くを見る目で、マーティンは語り出した。 あまり思い出したい事ではないが、彼女の好奇心を満たして、 親睦を深めるのは決して悪いことではないだろうと思って。 「ああ、若気の至りでね。若い頃は誰だって力や名誉を欲する物だ。 オブリビオンに住む不死のデイドラ達の力に憧れた私は、 『メイジギルド』の見習いだった私は――」 「今、何て」 何だろうか。不死だとかのデイドラも興味はあるが、ありえるはずのない組合の名が出てきたが。 「ああ、だからメイジギルドの――」 「え?」 だから、何でそんな名前の組合がある。 ルイズからすれば例え全ての人々がメイジだとしても、 そんな組合の名はあり得ない事だ。だって、 彼女にとってメイジとは権威ある貴族なのだから。 落ちぶれる者がいたとしても元から落ちぶれているわけではない。 おそらく彼のいた世界では魔法を使えないより多くの人でない生き物を、 平民として見ているのだと思っていた。 そういう考え方しかできない環境で育ったのだ。 「え?じゃないだろう。君だって公爵令嬢ながら、 メイジギルドの見習いの一人で、魔法の真理を探究しようと、 勉学に励んでいるのではないのか?破壊の魔法を修めて、 バトルメイジになりたいのかもしれないが。」 マーティンのいたタムリエル帝国の中央、 シロディール地方の街では、たしかに魔法を使えない人間もいたが、 それはたいてい覚えたり使ったりするのが面倒で、 魔法を使わない向こう見ずな戦士ギルドの若い戦士か、 お金を出してギルドや魔法店から、呪文を買うほど魔法を必要としない一般市民ぐらいだ。 初代メイジギルドの会長や皇帝、 ユリエル1世がタムリエル全域に広めた魔法文化は、 魔法というものをメイジのみが扱える存在から、 誰もが扱える存在へと変えた。 マーティンが生まれるずっと昔の話だが、それ故、 何故彼女が貴族ながらメイジであるのかを彼は理解できていなかった。 魔法はありふれた物だから特別だとは思っていないのだ。 「違うわよ!メイジっていうのは、 貴族っていうのは魔法が使える人間の事!あんたの所だってそうでしょう!?」 生まれてから長い間植え付けられてきた概念とは、 そうそう頭から離れはしないものである。 特にルイズは年若く意地っ張りの頑固者であり、 違うと言われても頑としてそれを通す人間だった。 通さねば、生きていけなかった。不器用な生き方である。 ゲルマニアは、まぁ仕方がない。 何せあの赤毛の忌々しくて憎らしいあいつがいるのだ。 平民だって成り上がりで貴族にもなろう。 しかしそこでもメイジの貴族はいる。いて当たり前なのだ。 だというのにこいつは、私が呼んだ使い魔の場所では、 いや、まさか。そんなはずないじゃない。だって、 そうじゃなかったら私がしてきた事ってただでさえ失敗続きなのに―― 貴族としてしなくても良い無駄なことを延々としていたんじゃないの、だなんて考えるのもイヤ! メイジが貴族であるのが普通であるハルケギニアは、 トリステイン魔法学院の校訓である、 貴族は魔法をもってしてその精神となすという言葉からも分かるように、 魔法が使えるという事は貴族としての誇りと同義である。 特にメイジの貴族しかいないトリステインでは尚更の事だ。 ルイズはメイジながら全ての魔法を失敗するメイジである。 もし、彼女が幼い頃に、かのメイジギルドの創設者にして、 初代会長ヴァヌス・ガレリオンやギルドの誇る、 優秀なメイジと出会っていたなら、 彼らは彼女の爆発の原因を元気づけながら探り、 もしかしたらその爆発の真意を見つけていたかも知れない。 なにせ失敗しかしないのだ。普通に見たらどう考えても変だし、 その原因を探る事によって真理の探究に繋がるかもしれない。 とタムリエルの一般的なメイジ達は思うだろう。 しかし悲しいかな、 彼女はそのような良い意味での学者的発想のメイジと一切出会わず、 昔ながらの伝統に沿った教え方しかできないメイジの元で、魔法を学び続けた。 敵に背を向けぬ者は勇ましき貴族の心を持っているといえるだろうが、 魔法を全く使えぬ者を貴族と認める道理は、トリステインにはない。 そして彼女は、トリステインの王家に連なる公爵家の一員である。 愚直なまでに真っ直ぐな性根の彼女は、 貴族としての誇りだけは誰よりも負けない程に育ってしまった。 中身の伴わない自信ほど、他者を振り回す物はない。 それを分かっていてもルイズは貴族として振る舞わねばならなかったのだ。 故に、メイジが貴族でない世界など認めるわけにはいかなかった。 認めたくはなかったのだ。子供のわがままとも言えると分かっていたが、 それを認めれば自分が壊れてしまいそうで、どうしても嫌だとしか思えなかった。 そんなルイズの目には大粒の涙が浮かんでいる。 その涙を流しそうになるルイズの頭をそっと撫でて、マーティンは優しく語りかけた。 「そうか、それがここのメイジなのだね?ご主人様」 本当の親を知らぬまま育ち、メイジギルドに入って後、 自業自得とはいえ、危険な魔法でオブリビオンの世界を垣間見て、 共に魔法を学んだ友を死なせ、逃げるようにメイジギルドを去った、 全てにおいて未熟だった若い頃。 それから何十年と過ぎたある日、 教会に勤める司祭として住んでいた街が異形の化け物、 デイドラ達に襲われた。すんでの所で何人かの街人と共に教会に逃げ込み、 己が信仰する神々、「九大神」の一人であるアカトシュに祈りを捧げる中、 急に現れた後の盟友と共、にデイドラ達を蹴散らして街を襲った奴らを一掃した。 そこからも一般人には決して真似できないだろう、 様々な事柄を、盟友や老齢ながら頼もしき皇帝直属の特殊部隊『ブレイズ』の長ジョフリー。 それと盟友がどこかへ連れて行くと、 約束したまま何故か様々な所へ連れ歩くなかなか腕利きの戦士、 ジェメイン兄弟と共に体験したのだ。 そして、皇帝の命令を待つブレイズ達の拠点『曇王の神殿』に着いた後、 彼はどうであろうと皇帝にならなければならないのを実感した。 ただ50年生きているだけでも人生観は変わるというのに、 ここ数年でどれだけさらに変わったか。 自己の概念の変化を繰り返しているマーティンにとって、 そういう世界もありえるのだろうというのは、 彼女の悲しげな泣き声から察することくらいわけも無かった。 そして彼女はそれを拠り所として生きていかなければならないということも。 「そうよ、メイジは貴族なんだから。貴族がメイジ以外の何かなんて、 ありえないんだもん。だから、だからあんたの所もそうよね…?」 目を真っ赤にして泣きながらルイズは話す。メイジは貴族、 そんなハルケギニアにとって当たり前の話は、タムリエルにとっては全く当てはまらない。 「とりあえず、ゆっくり息を吸って、そう。しっかりと吸って長く息を吐いて…」 深呼吸をさせて落ち着かせる。どう切り出すか、 上手い具合に考えなければ彼女の精神そのものに悪影響を及ぼすだろう。 慎重にゆっくりとマーティンは話を始めた。 「まず、今の勘違いについて謝ろう。貴方の誇りをひどく傷つけた事を許して欲しい。 私のいた国ではそれが普通の事だったんだ」 「何でそんなのが普通なのよ。おかしいじゃない」 未だ目を真っ赤にするルイズはジロリとマーティンをにらむ。 これが逆恨みだとか八つ当たりだというものなのは分かっているが、 しかしそうしていないとどうしようもない気分になるのだ。 「私のいた国、タムリエルには以前魔法なんてほとんど伝わっていなかった。 と言っても何百年も昔の話だけどね。ある時ガレリオンという人が、 アルテウムという名前の島にある最初の魔法結社、 サイジック会という所で様々な魔法を学んで研究し、 当時明らかにされていなかった色々な魔法の構成について解き明かした。 偉大なメイジだったんだ。その、いわゆる研究者という意味のメイジとしてね。 私の世界のメイジは研究者としての意味合いが昔から強かったんだ」 アルテウムはサマーセット諸島と呼ばれる島々の一つであり、 それらはハイエルフの故郷である。 彼の伝記である「秘術士ガレリオン」を最近読んでいなかったせいで、 彼が人かエルフのどちらだったかマーティンは忘れていた。 おそらくハイエルフだったろうが、もしかしたらそれも地雷かもしれない。 人であると思わせる事にした。 「研究者ならこっちにもいるわ。王立のアカデミーには、 私のお姉様が働いているもの。でも、姉様は貴族だからね」 うん、そうだろうとも。彼はそう言ってルイズを否定することなく、 優しく笑みを浮かべながら話を続けた。 「さっき言ったように、私の世界では誰でも魔法が使える。 しかし、最初に魔法を研究し始めた人達は、それを自分達の為だけに使おうとしていたんだ。 正確には自分たちと自分たちが行う研究の発展の為に」 「随分と自分勝手ね。メイジが聞いてあきれるわ。魔法の力は人々の為に使われてこそよ」 ここのメイジは随分と一般寄りの考え方らしい ――実際は使えないからこその正論吐きなだけだが、 嬉しく思いながらマーティンは話を続けた。 「ああ、ガレリオンもそう思ったんだろう。彼はサイジック会を抜けて、 世の中の人々がもっと魔法と親しくなれるようにメイジギルドを創ったんだ。 伝記によると彼の生まれは貧しい労働階級だったらしい。 おそらくその時の思いからそういった組織を創設したのだと思う」 ルイズはびっくりした。平民が魔法を使うなんて! やはり認めたくはなかったが、しかしそのいきさつと、 マーティンが生きていた世界の特異性から考えると、 その元平民が行った事は本来貴族がやるべき事かもしれないとも思えた。 つまり、魔法の理解を深めるために平民に魔法を教えようというのだ。 杖が無くては魔法が使えないハルケギニアの魔法と違い、 ニルンとか言う別の世界から来たらしいマーティンの先住魔法は、 呪文を唱えるだけで魔法が使える。 そして、彼の言っていたエセリウスとか言う何か色々と凄い力を持ち、 はるか天の彼方にあるとかいう神々が住む世界は、 全ての知ある者に、魔法を使えるようムンダス界を支えているさっき聞いた。 そこなら敵に背を向けぬ者を貴族と言えるのだろう。 どこか羨ましげに、彼の地に思いを馳せた。 そこで生まれていたなら私も魔法を使え、 貴族として胸を張っていたのだろうかと。 いや、違う。トリステインで貴族にならなければ意味がないのだ。 ルイズは思い直し、サイジックの事を考える。 本来メイジがすべき事をせずに平民に任せるなんて。 そのサイジックのメイジ達を思いっきり怒鳴りたくなる気持ちを抑え、 マーティンの話の続きを聞く。 「彼の創ったギルドの支部は、時の皇帝ユリエル1世の統治の元で、 瞬く間に広がっていった。皆魔法が使えることを大いに喜んだんだ」 ルイズはなるほどと思った。魔法が便利であるというのは、 貴族でありながら魔法が使えない自分が一番良く知っている。 その皇帝は人々の暮らしを良くしようと頑張ったのだろう。 顔すら知らぬ皇帝だが、その統治はきっと良かったのだろうと感じていた。 「もしかして――ここの平民に杖を持たせたら魔法が使えるようになるのかしら」 小さな声でルイズは呟いた。マーティンは、 彼女の思考形態の変化を内心少なからず喜んだ。 考えてみれば、何故平民が魔法を使えないのか、 ちゃんとした理由をルイズは知らなかったし考えたこともなかった。 常識と化していたそれを考えるメイジ自体がいなかったのだ。 もし平民も魔法が使えるというのなら、きっともっと人々の暮らしは良くなるのだろう。 そう思うと、先ほどまでの自分の積み重ねてきた行いが無に変わる事への怒りは、 何とも言えぬ無力感を伴った寂しさへと変わる。 貴族として平民の暮らしを向上させるのは平時においての義務と言える。 もし魔法を皆が使えるようになったなら、 それはきっと素晴らしいことなのは違いない。 それでも自分は失敗を続けると思うとやはり嫌な気分になる。 「さて、それはどうだろうか。ここは私のいた所の魔法とは、 色々と法則が違うようだ。今度はこっちの事について教えてもらえるかな。 その、よろしければだが」 どうやらある程度持ち直したらしい。 マーティンはそう認識すると話題を変えルイズの口から説明が流れるのを待つ。 必要とされる事は彼女にとってとても嬉しいことで、 嫌な気分がとりあえず消えたルイズは基本的な成り立ちから始めようかと口を開く。 「ええ、そうね。始祖ブリミルの話からでも始めましょうか」 真っ赤な目を細め、努めて明るい笑顔でルイズは言った。 先ほどまでの怒りや、寂しさと言った感情のうねりは、 物語の説明の途中で消えていった。 話しながらルイズは思う。 今も、これから先も私はトリステインで貴族をやっていくしかないのだ。 魔法が使えようと使えまいと。 そう思えば彼のいた世界に興味こそあるが、 そこにある様々な物の成り立ちについて、 とやかく言うべきではない事が何となく理解できた。 肩の荷がほんの少し軽くなった気がする。 立派なメイジになるのをあきらめた訳ではない。 しかし後ろ向きに考えるのは卒業しようと思った。 その平民から成り上がった自分の目標とは違う、 けれども間違いなく「立派なメイジ」がおそらくそうしたように。 もし、今までのやりとりを世話焼きな赤毛の彼女が見れば、 からかってこう言っていただろう。一つ大人になったわね、ルイズ。と 前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア
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スリープクロー 公式武器・爪LV9の武器。 睡眠薬が塗り込んである爪。
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前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア 漆黒のバラと炎蛇 ルイズがマリコルヌをしばいたりぶっとばしたりして、 ギーシュがケティとモンモランシーを舌足らずに褒め称える。 マーティンは死霊術の対策を思案しつつ、ルイズの魔法練習に付き添ったりして過ごしている。 キュルケは対抗して更に修練に励み、タバサはハシバミ草を貪るように食べ続け、 ついにマルトーに完敗宣言をださせた。 学院長はというと美人秘書の形をしたガーゴイルを経費で購入しようとして、 教師たちに止められる。 「なんでじゃ!ここの最高責任者はわしじゃよ!?」 「どう見てもいかがわしい機能付きでしょうが!!」 そんな平和な魔法学院とはうってかわって、トリスタニアでは厳重な警戒体制の中、 ある犯罪者の捜索が行われていた。要所の警備をしている衛兵達が総出で、 王宮の図書室に忍び込んだ盗人を捜しているのだ。大胆にも白昼堂々犯行に及んだ盗人は、 現在も城下町を逃走中である。 「おい、そっちにいたか?」 杖に明かりを灯して、暗所を捜索する衛兵だが捜索は難航しているようだ。 「いえ、こちらには」 「まったく、賊は何処に行ったというんだ!」 ちゃんと仕事に取り組む衛兵は早々に別の場所におもむくが、 明かりを灯して探している衛兵は、暗くじめじめした路地裏に留まっている。 盗賊ギルドとつるんでいる彼は、盗みに入った盗賊に目を合わせた。 「グレイ・フォックスの旦那に付き合うお前さんも大変だな」 「いいえ~。慣れてますから」 危なかった危なかったと収穫を手にシエスタは微笑んでいる。 次からはもっと上手くやってくれよ、と衛兵は右手を出す。 もちろんですよ、と盗人は金貨を5枚渡した。 「そら、さっさと行け。ここには『誰もいない』んだ」 「はーい。それでは失礼しますね」 どこにでも、金がもらえるならそちらに流れる者はいる。 盗賊ギルドが信用できる組織であることもあって、彼の様な衛兵も多い。 その多くは『革命』による無意識の内のパラダイムシフトが起こっただけかもしれない。 つまり大きいは、正義というパラダイムに移行したということだ。 シエスタは影の様に路地裏を駆けて、裏口からある建物に入る。 中はきわどい服装の妖精さんがたくさんいる店だ。 「あら、シエスタじゃないの」 「ジェシカ。スカロンおじさんはどこ?」 いとこが経営する「魅惑の妖精亭」はギルドの活動拠点でもある。 店長のスカロン氏は平民でオカマだが、裏世界では「影滅」の二つ名で知られており、 影も形も無いほどに無くなってしまった証拠品すら見つけてくる凄腕の情報屋である。 その情報力は盗賊ギルド発足前から一部の貴族も利用していた。 尚、チュレンヌは下っ端な為、ギルドに参加して初めてそんなことを知ったとか。 シエスタはジェシカからもらった妖精亭の服に着替えて、 店の中へと進む。入り口で接客をしているスカロンに目配せすると、 はいはい、とスカロンは他の娘に任せてシエスタと一緒に裏へ入っていった。 個室にて、スカロンは控えめながらもポージングを決めながら、 シエスタを見る。 「ダメじゃないのシエスタちゃん。警備に見つかっちゃうだなんて」 シエスタは苦笑いを浮かべて、弁解をする 「いえ、見つかる気は無かったんですよ。でも」 チチチ、と指を振ってから、スカロンは首を振った。 妙に様になっている。 「一流の盗賊は、尻尾すら掴ませないの。それでこそトレビアンなのよ。 今のシエスタちゃんはまだまだ一流には遠いわ」 経験が足りていないと目で言われ、あうとシエスタは落ち込んだ。 「オイタはこれくらいにして……今日盗ってきた物をみせてくれるかしら?」 コクリと頷いて、シエスタは一抱えある書類の束を渡した。 シエスタも文字は読めるが、公文書の様な難しいものを読むことは出来ない。 だから、内容の確認のために博識なスカロンに物品を渡しに来たのだ。 眉間にシワを寄せ、スカロンは小さくうなった。 「『魔法研究所実験小隊』……噂には聞いたことがあったけれど、 えげつない連中だったようねぇ。始祖に近づくってお題目の名の下に…… あらまぁ、これじゃガリアの北花壇騎士団の方がカワイイくらいだわ」 ペラリと書類をめくる度に、恐ろしい内容が明らかになる。 古代に使われていた魔法の再現という、何の意味も持たない行為の為に、 たくさんの人間が犠牲になっていた。 またそのいくらかが、黒い金の為に犠牲になった事もすぐに分かった。 「今の方針に変わった事を、神様に感謝しないとね。マジックアイテムの値段が下がったのも、 今のアカデミーのおかげよ」 スカロンは悲しそうな顔で内容を確かめていき、ついにお目当ての報告書を見つけた。 「ダングルテールの異端排除、これね。立案したのは高等法院のリッシュモン。 あいつか。昔から色々と黒い噂が絶えなくて、いけ好かない男だと思ってたのよ。 けれど、妙ね……この作戦で二人を除いて小隊は全滅しているわ」 実力者が揃った小隊が、魔法を使えない平民に遅れを取ることなどありえない。 それまでの戦績から考えてもそれは明らかだが、報告書にはそう書かれている。 「ダングルテールで何があったのか。もう少し調べてみる必要がありそうね。 リッシュモンの事はこっちで調べるわ。シエスタちゃんはダングルテールの生き残りからお話を聞いてきて」 シエスタは驚いてスカロンを見る。 「生き残りって…、みんな死んだんじゃないんですか?」 「ホラ話じゃなければ、今この街に一人いるわよ。傭兵やってるんですって」 美しい顔つきに細く鋭い目をたずさえた女は、トリスタニアの路地を歩いている。 髪は短く、鎧を着こなす様は男顔負けで、その表情は近寄りがたい雰囲気を作り出す。 背中の剣は使い込まれているようだった。 最近傭兵として名を上げている彼女は、久しぶりに顔なじみに会いに来たのだ。 「おお、アニエスじゃねえか」 「お久しぶりです、師匠」 武器屋のドアを開けると、少し寂しげな主人が出迎える。 アニエスは礼儀正しく礼をした。 「よせよ。そんな大層なことするんじゃあねぇ。それと、師匠っていうのも無しだ」 「あなたは伝説の英雄じゃないですか。ならそれ相応の礼儀は必要でしょう?」 アニエスは朗らかな顔で、武器屋の主人を見る。ケッ、 と武器屋の主人は居心地が悪そうに頭をかいた。 「昔の話さ……今日はどしたい?」 「数日こちらに滞在する事になったので、顔を見に来ました」 「そうか」 ぶっきらぼうに言い返して、男は黙った。アニエスは辺りを見回すと、 いつも調子の良い事を言っていた剣が無いことに気が付く。 「デルフ……売ったんですか?」 「ああ、お前に渡しても良かったんだが、動く時が来たんだとさ。あいつ、あのガンダールブの左手だったんだとよ」 「なんですって!?」 そんな驚くアニエスの後方、武器屋のドアが開く。 メイド服姿のシエスタが入ってきた。 「おぉ?フォックスのとこの腕利きじゃねえか。どした」 「ちょっとお聞きしたい事がありまして、ダングルテールにお知り合いがいたとか……」 「ああ、ならこいつだよ。おういアニエス……大丈夫か?」 主人がヒラヒラとアニエスの顔の前で手を振る。あ、と正気を取り戻したアニエスは、 気恥ずかしそうに笑う。 「で、アニエスに何の用なんだ?」 「いやー……言いにくいんですけど……」 アニエスは少し汗をかいているシエスタを見る。 鋭く視線は彼女を貫くが、どこか生暖かい優しさを含んでいた。 「さっさと言え。おおかた異端の教義の愚かさについて説きにでも来たのだろう?」 ダングルテールの住人は元々アルビオンの高山地方に住む異端の一派である。 シエスタは首を横に振り、そんなことではありませんと弁明する。 「では、何が聞きたいのだ?」 「あの日……何が起こったか」 ああ、そりゃ言いにくいだろうと主人は思った。 アニエスはふむと遠い目で天井を見る。 「確かに、聞きにくい話題ではあるな。少し辛気くさいが、 聞きたいのなら話してやらんこともない」 是非、とシエスタが答えたのを聞いてから、アニエスはとつとつと話し始めた。 「あれは今から20年前、わたしがまだ9つの時だったか、 ヴィットーリアと名乗る女性が漂流して来た。 重症を負っていたが、村のみんなの看護のおかげですぐに良くなった。 彼女はロマリアの生まれで、敬虔なブリミル教徒だった」 「え」 シエスタの知る異端者像と言えば、ブリミル教を毛嫌いし、 それに関係する物は壊さないと気が済まない連中、そんな危険な思想の集団である。 アニエスは、またかとでも言いたげに肩を落とす。 「あのな。確かにわたしや村の人々はお前達にしてみれば異端だろうとも。 だが人外の化け物ではないぞ?話をすれば理解しあえる。同じ人間なのだからな。 個人的にロマリアで私腹をこやす連中はさっさと死んで欲しいが。 話を続けるぞ。彼女が来て1ヶ月程経ったある日、メイジ共が来た。 子供やけが人は一つの小屋に集められ、大人は皆戦った……当然、負けたがな。 小屋に火が放たれ、子供は裏口から外へ出た。メイジはそれを魔法で殺していったよ。 最後に残ったのは、わたしとヴィットーリアさんだった」 ふぅ、と息をついて、再び口を開く。 「ヴィットーリアさんが炎で燃え、わたしだけになった時、彼女からもらった指輪が光ったのだ。 指輪が砕けて奇跡が起こり、メイジ共は死んだ」 「奇跡……ですか?」 シエスタの問いに、アニエスは頷いた。 「黒きバラをたずさえたお方だった。古き昔、 アルビオンを聖母サーシャの願いで空に浮かばせた精霊、アズラ様が降臨されたのだ」 シエスタは吹き出した。アズラと言えば、自分のギルドの守護神(らしき何か)のノクターナルと、 とても仲の悪い人の生死や死後をつかさどる神様のはず。 それよりなにより、この世界じゃデイドラは人を殺せないとシエスタは聞いていた。 アニエスは吹き出したシエスタを見て、ああ、とため息を吐く。 「わたしは正常だぞ?これは実話だからな。アズラ様はおっしゃられた。 村人はその命と引き替えに子供たちを救おうとしたのだと。 本来彼のお方は人間のいさかいに手を出したりはしないのだが、 その様に感銘を受け、わたしの命をお救いになられた。 疑問に思ったさ。何故わたしだけなのかとな」 アニエスは、自嘲気味に笑った。武器屋の主人はあまりいい顔をせず、それを眺める。 「ただ宿命によってあらゆる命に終わりがあり、 ただ偶然によって終わりを迎えなかったのがあなたの命なのだと言われたよ。 そして、生き残ったわたしはたまたまやって来たこの人に助けられたというわけだ」 武器屋の主人はああ、と低い声で呟いた。 「その、あー、アズラさまだかなんだかは良くわからんが、 ダングルテールには知り合いがいてな。そいつに会いに行った時、 たまたまこいつを見つけたんだ。しばらくは俺が面倒を見て、 それから独り立ちして、たまにこうして顔を見せに来る」 そういう仲だ。と主人はぶっきらぼうに言った。 「な、なるほど」 神様相手なら勝てる方がおかしいと言えるのかもしれない。 ノクターナル様も本気を出したら強いのだろうか。 シエスタは、何故小隊が壊滅したのかを知った。 「ところで、何故お前はこんなことを聞いたのだ?」 アニエスのもっともな問いに、シエスタは所々をぼかして話す事にした。 ノクターナルはNGかもしれないし、ギルドの深いところは教えるわけにはいかないからだ。 ついでにこの人の知っている教義も教えてもらいましょう。 『聖母サーシャ』。ミス・ヴァリエールやティファニアさんが言っていたサーシャと何か関係があるかも。 とシエスタは話しながら、アニエスから情報を引き出そうと決めたのだった。 オスマンに天誅を下し、コルベールは自身の研究室に戻った。 イスに座り「愉快なヘビ君2号」をニヤニヤしながら見ていたが、 ふと、昔の事が頭をよぎる。 ダングルテール。かつて何百年も前、アルビオンから移住してきた人々が開いたとされる、 その海に面した北西部の村々は、常に歴代トリステイン王にとって悩みの種であった。 彼らはブリミル教以外の宗教を信じる異端の集まりで、ロマリアから煙たがられているからだが……、 アルビオン人独特のひょうひょうとした気風を色濃く残し、 飲むところをきっちり飲んだため、激しく弾圧されるということもなかった。 つまるところ、彼らは要領よくやっていたのである。 二十年前、自治政府をトリステイン政府に認めさせ、異端教徒の寺院を開いた。 それがためにロマリアの宗教庁ににらまれ、圧力を受けたトリステインの軍により鎮定された、 と当時の文献には残っている。 二十年前のその日、コルベールは部隊を引き連れてダングルテールにやって来た。 一片たりとも忘れられない、ずっと頭に焼き付いて離れない鮮烈な記憶だった。 疫病の拡大を防ぐため、全てを焼き払えと命令されて彼はその通り任務を行った。 「変な連中だ。こいつらは平民だよな?それにしてもガキがいない」 彼の右腕だったメンヌヴィルが不思議がったが、 コルベールは何も言わず、まだ手が付けられていない家々を燃やし始めた。 「どこかの家に隠れているはず、か。さすがは隊長殿だ!」 子供たちは燃える小屋から飛び出してきて、それらは全て燃やされていった。 最後に出てきた女が少女を庇って炎を浴びた時、奇妙な現象が起こった。 何かが割れる音がしたかと思うと、突風が吹き荒れ炎を全てかき消す。 強い風につぶった目をコルベールが開くと、そこには青白い髪の褐色の女が立っていた。 片腕に黒いバラを持つその女性を見て、コルベールは言いしれぬ恐怖を感じた。 人間の姿をしているが、鎧に身を包んだわけでもない華やかな女の姿だが、 コルベールはその場を動けぬ程の恐怖を体に刻み込まれた。 何があっても、この女と戦ってはならぬと今までの経験からの勘が警告し続ける。 だが、それが分からぬ者がいた。 「あぁ?まだいたのか。まぁ、すぐに燃やすんだけどな!」 メンヌヴィルの火炎は景気よく女に向かう。 だが、女に当たる前に炎は消え、何故かメンヌヴィルが燃え上がった。 青い炎はメンヌヴィルを包みこみ、骨すら残さず燃やし尽くす。 周りにいたメイジ達は驚いて距離を空け、魔法を放つ。 だが全てかき消され、小隊のメイジ達はおののいた。 女は何もしていないのに、メイジ達は炎に焦がされて死んでいく。 「た、隊長!こいつはかないっこねぇ、逃げましょう!!」 近くにいた隊員に引きずられるように、コルベールは逃げ出した。 幸い、化け物のような強さの女は後を追って来なかった。 この任務が異端狩りであったことを彼が知るのはずっと後になってからである。 生き残ったコルベールは贖罪の為として部隊から逃げ出し、 オールド・オスマンに雇われた。 そして火を破壊以外の何かに使う為に研究を続けている。 「何故、わたしは生き残ったのだろうか。生き残ってしまったのだろうか」 いっそあの時、炎に燃やされてしまっていればこんな気持ちにならずに済んでいただろうに。 この二十年ふと己を責めてばかりのコルベールは、そんな嫌な気分から逃げるように、 円筒に錬金をかけ始めた。 前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア
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前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア 17,盗賊ギルドの秘密 「おお、何と…」 マーティンは言葉を失って、ただ目の前に浮かんでいる大陸を見やる。 空に浮かぶ「白の国」アルビオン。書物で確かに浮かんでいるのは知っていたが、 実際に見るのとでは大違いであった。 「どう?凄いでしょ!」 ルイズが楽しそうに笑う。さっきの事もあって、どうにか気楽になろうとしていた。 驚いているマーティンはルイズの方へ向いて、感激した風に言った。 「ああ、全くだよルイズ!しかし――ここまで大きな物が何で浮かんでいるんだろうか?」 「色々学説があるらしいけど、始祖ブリミルが風の精霊に頼んで、 このアルビオン大陸で聖地へ行ったって伝説がよく言われるわね。 昔はハルケギニアのどこへでも行けたらしいけれど、 今は精霊が、最後に始祖に頼まれた様にしか動かさないんですって」 「始祖ブリミルか…もし生きていたなら一度お会いしたかったな」 その原理や方法、例え伝説でも浮かんでいるこの大陸がその証拠だ。 その大いなる力をほんの少しは知りたいと思ってしまうのは、やはり彼もメイジだからだろう。 残念ながら、始祖ブリミルは神格化されて信仰されているものの、魂は神とならなかったらしい。 そうでなければもっと九大神が行う様な奇跡を起こすものだろう。 タムリエル独特の考え方が決して抜けないのは年のせいだろうか。 隣で同じように感動しているコルヴァスに気づかず、二人は白の国を眺めていた。 しかし、そんな和やかな雰囲気をぶち壊すかの様に、鐘楼に上がった見張りの船員が大声をあげた。 「右舷上方の雲中より、船が接近してきます!」 「旗を掲げていないだとぉ!?」 船長は焦った。現在後甲板でワルドと共に操船の指揮を取っていた彼は、 こちらに砲門を向ける空賊の船を、確かに目視で確認した。 「いかん、逃げるぞ!取り舵いっぱい!」 だが、時既に遅し。あれよあれよという間に船は空賊の手に落ちた。 頼みの綱のメイジは残念ながら打ち止めだったらしい。 ああ、くそったれ。船長はそう思いながら舌打ちした。 「空賊だ!抵抗するな!」 どこにそんな行儀良く歩く賊がいるんだよ。軍属だろお前ら。 そもそも賊のくせに何だその半年前から始めました的な服装は。 一般人には間違いなく恐ろしい空賊として見える彼らの格好は、 しかしコルヴァスには全く恐れを感じさせない。年季が違うのだ。 軍も賊も知り尽くしている彼にしてみれば、彼らが何者か手に取るように分かった。 そもそもこの時期に船襲うか普通。賊が暴れるのは崩壊後が相場だ。 その前にやり始めると、通商船より軍艦に見つかって落とされる可能性が高い。 賊共は金よりは、自分の命の方が大事だからこんなヤマ張らねぇよ普通。 ま、情報流したのは俺なんだけどな。姫さんめ、奇襲されるとかどこかで漏れてやがる。 だから、アルビオンにいて大丈夫な連中に機密輸送船が朝方こっちに来る。 と流すようアイテムで伝えたら案の定食いついた。 王党派が切羽詰まっているのは間違いないらしいな。 しかしながら彼の頭は愚痴しか出さない。襲うにしても空気を読んで欲しかった。 今回の話は断るつもりだったのに、ティファニアがねじ込んだんだ。 俺の恩人である彼女と関係深いアルビオン王家。 その王様も救出して欲しい。と言われたからにはそりゃやるが、 俺は普通後方から指示出しだろう。ああ、くそ。 何か皆してテファばっかり崇めやがって。 胸か、胸なのか。胸力なのかやっぱり。 本当はそんな訳でもないが、彼としてみれば何となく「負けた」気分がしていて、 何ともため息をつきたい気分になった。なのでため息をつく。 少し冷静になった。いかんな。ついついやってしまう。 そう思って今空賊に囲まれている皇帝の事を考えた。 マーティン陛下は動く気配無し。空気を読んでおられるのか、 それともお気づきになられているのか…まぁ、俺は雲隠れとしゃれ込むがね。 灰色狐は気配を消して空賊に真似た王党派の船に忍び込む。問題は無い。 たかだかこの程度の連中にバレてしまっては、 グレイ・フォックスの名を継ぐものとは言えないのだ。 勘違いしないで欲しいが、彼は強化外骨格で身を包んだりはしない。 お気に入りは革の防具である。 ショウタイムだ!気を取り直してそう思いながら、 船室で見つけた予備だろう連中の服を着込み、 空賊になりすますフォックスであった。 「あん?もう一人いなかったか…いや、いねぇか」 確認していた空賊の男は、何か違和感があったものの、 すぐに忘れてしまった。後からやってきて、 船長の帽子をかぶった空賊の頭はルイズ達に近づき大げさに言った。 「へぇ、貴族の客まで乗せてるのか!こりゃ――」 「黙りなさい下郎」 「驚いた!下郎ときたもんだ!」 マーティンは普通に立っているようで、 既に魔法をいつでも唱えられるようにしていた。 裾に隠したナイフは後三つで、投げれば急所に当てられる様に、 相手がどう動くかを常に見ている。 灰色狐に言わせれば「空気を読んでおられる」状態だった。 「てめえら。こいつらも運びな。身代金がたんまり手に入るだろうぜ」 所変わりタルブ。現在昼をまわる少し前。ワイン用のブドウと、 瑞々しい甘さと舌に優しい酸味のオレンジが名産の村である。 特にオレンジは平民貴族問わずに人気で、 アストン伯は、最近一箱2エキューで固定化宅配サービスまで行いだした。 良い感じに潤っているようだ。オレンジ自体の値段は一つ8ドニエである。 大きさは、成人男性のてのひらに収まるか収まらないかくらいの物で、 味も良く量も多いと人気を集める要因となっている。 「そんな訳でオレンジです。どうか食べていって下さいティファニアさん」 「まぁ、ありがとうございます。シエスタさん」 タルブにある盗賊組織、旧『影の一党』本部で、 現『盗賊ギルド』タルブ支部の小屋にて、 何故かメイド姿のままのシエスタが、 椅子に座る普段着のティファニアにオレンジを渡し、 テーブルにワインを置いた。 今、トリスタニアにはほぼ盗賊がいない。 お上の目もあるからということで、 作戦が始まる少し前に、ティファニアはタルブへと移ったのだ。 シエスタはというとあの後、どうにも手元がおぼつかずに作業が進まない事を、 マルトー経由でオスマンに知られ、事情を知っているらしい彼に、 一週間ほど暇をいただいたのだ。 「いやー素晴らしいですな。甘いオレンジがワインに合うとは」 「あの、何故いらっしゃるのですか?チュレンヌ様」 はっはっは。とチュレンヌは高らかに笑った。 「このチュレンヌ!ミス・ノクターナルに忠誠を誓った身。 例えそのお姿がエルフであろうとも揺るぎはしませぬ。 それに、今ギルドはほとんど機能停止を余儀なくされている状態。 ティファニア様をお守りするのは私以外誰がいると言うのかね?」 現在、ほとんどのギルド員がラ・ロシェールにて待機状態になっているか、 フーケに連れられアルビオンでの仕事中である。 ティファニアは一応『容姿を魔法で変えられる』ようにはなったが、 万が一を備えてここにいるのだ。アストン伯もこの件については良く理解している。 彼もまた、今の王家に多少思うところがあるらしかった。 「左様でございますか。お仕事の方は?」 「何、手の者に任せておるよ。皆良く働いてくれる。私は良い部下を持っていたのだな」 「素晴らしい事だなチュレンヌよ。しかし、ティファニア様。 貴女の様な方がこのようなところで匿われないといけないとは、 今私は初めて始祖に怒りを覚えておりますぞ」 「お、落ち着いて下さい。も、モット伯さん」 ティファニアが慌てたように言った。 フードもローブも纏っていないいつもの服装の彼女は、 いつも通りの優しいハーフエルフだった。 シエスタは心の中でため息をつく。もうチュレンヌがいる事はいい。いや、良くないけどいい。 何でこの人までここにいるんですか。というより何処から嗅ぎつけてきたんですか。 ジュール・ド・モットも、チュレンヌの様な感じでギルドに入った仲間であった。 しかし、今は公務中のはずである。当然、この件は知らない…はずだ。 「はっはっは。何、どうせまた学院に突っぱねられて終わりだろうに。 適当に流した方がどちらにも良いという訳だよ。」 『お前達も大変なのだな。我には到底真似できぬ』 「いやはや。夜の女王様は冗談がお上手ですな」 まぁ、百歩、いや千歩譲って上記の二人はアリとしよう。うん。 何なんだ。本当に何で貴女様までここにいますか。 シエスタは、最近フラリと現れては、 いい加減に返せとグレイ・フォックスに突っかかる彼女を見て、 頭が痛くなってきた。祈ったけど。確かに祈ったけど。 ここにいてくれとは一言も言ってないんですけど。 夜の女王と言われたその人物は、見た目麗しい女性だった。 真っ黒なローブで身をつつみ、黒い髪で白い肌、 大きくも小さくもない胸を持ち、 両肩に白にも黒にも見えるカラスを一羽ずつ立たせ、 もうあらん限り隙だらけでオレンジをほお張っていた。 『意味無き事を気にするな、我の信者シエスタよ。我は影のある所であらばどこであろうと現れる』 「いや、私のお願い聞いてくれましたよね?」 『無論』 「なら何でここにいらっしゃるのですか?ノクターナル様」 『未だ彼奴らは苦難に陥ってはおらぬ故。それに眠い』 さっき用意をしているとき、気が付けばいつの間にか座っていてオレンジをほお張っていた。 デイドラにしてみても、それはおいしいらしかった。 デイドラ王、そうマーティンは言っていたが彼ら(または彼女らか、両方持ち)は基本的に 『王子』の敬称が彼らに関する書物では記されている。それは階級的な物なのか、 儀礼的な物なのかは別として、とても何というか。 つまり、何で王子と呼ばれているのかを説明するのは面倒なのだ。 タムリエル地方の一つエルスウェアに住んでいる者達である猫人族のカジート (正確には違うが、シロディールには猫型しかいない) は、デイドラ『アズラ』をエイドラとして信仰していたりする。 デイドラの認識は、誤解を生みやすく色々とややこしいのだ。 おさらい的なものだが、デイドラは不死にして異世界オブリビオンに住む。 形状は様々だが、大抵暴力的なのが好みである。 定命の者の「祖先」と、言う意味を持つエイドラは死ぬ可能性を持ち、 やはり形状は様々だが、めったに人の世界に姿を見せない。 彼らは人にとって、オブリビオンよりさらに離れた異世界エセリウスに住む。 「デイドラ」というのは、元々タムリエルの古代エルフが、 「魔物」を意味する言葉として作った単語、「デイドロス」(Daedric)の複数形である。 今は、オブリビオンに住まう者達の総称として「エイドラ」の反語「祖先で無い」を意味し、 「デイドロス」はあまり使われなくなった。尚、種族としてデイドロス(Daedroth)と言われる、 二足歩行の白くてワニっぽいデイドラがいたりもする。 そんな訳で、マーティンはデイドラについて全く知らないハルケギニア人に、 分かりやすく、かつ返答が難しい質問をされないように、 領域を持っている者を『王』として教えたのだ。 本来は王子だが、なら王様は誰?とか聞かれるとそれはとても困るからだ。 誠実に生きよ。と『九大神の十戒』には書かれている為、あまり喜ばしい行いとはいえないが、 無用な混乱を招く真実は、嘘よりよほど質が悪いのを彼は経験上良く知っていた。 別段、デイドラの王子達を必ずしもそう呼ぶ必要は無い。 デイドラの『主』と呼ばれることも、『王』と呼ばれる事もあるし、 つかさどるものにちなんだ様々な異名をかの存在は持っているし、 また、単に『神』と言われることもある。ただ、 『王子』の方が良く使われるているだけなのだ。 オブリビオンにおいて、力のあるデイドラは皆『王子』と呼ばれる。 例外になりうるだろう存在がいるような気もするが、 何故そうなのかは記すことすらはばかれる。 まぁ、誓いを破った三人のエルフの罪の証として、 その種族を一人残らずダークエルフに変える程度の力を持っているのだから、 特別扱いでも構わない気がしないでもない。 『かような理由で我はいる。駄目か?』 「いえいえノクターナルさん。大丈夫なら一緒にオレンジ食べましょう」 『我が影は優しいな』 肩のカラスが一羽、ティファニアの肩へ停まった。 チュレンヌとモットは、麗しき二人の夜の女王に見とれている。 全体的に、穏やかで和やかな雰囲気だ。 ノクターナル。何を考えているのか分からないデイドラの中でも、 最も理解できないデイドラ王「ハルメアス・モラ」と同じくらい、 何を考えているのか分からない存在である彼女は、 神学者達の間でも時折話題になる。 ある時、一人のデイドラ学者が、 ノクターナルを信仰する青年と話したところ、彼はこう言ったという。 「ノクターナル様はあれです。何か考えているようで、実際何も考えていないんです」 包み隠さず言った彼は、その後色のない色の影に飲まれて再び現れると、 イエイエ、チガイマスヨ。カンガエテマスヨ。と言い出したそうだ。 学者はこれをネタに論文を発表したが、結局笑い物にされて終わりだったらしい。 彼女は、夜や影等の闇を司ると言う性質上、 秘密や、隠密行動に関することに支配力を持っている、と言われている。 盗賊等というのは、普通一匹狼で神より自分の腕を信じるが、 実際に神がいるタムリエルだと話は変わってくる。 かの存在の気分次第で相手にバレるとまずいので、 無言の内に、彼の地の盗賊達の多くは、 ギルド員でなくても彼女の庇護を受けようと、 例えば、常に黒い衣装に身を包んだりして、 彼女からの祝福を何とはなしに求めている。 だからといって彼女は特に何もしない。 タムリエルまで一々出向きたくないからだ。 そんな彼女は、何故か盗賊達からの盗難被害最多のデイドラ王でもある。 ちなみに、装飾のセンスはあまりよろしいとは言えない。 おそらく、暇つぶしを兼ねてクラヴィカス・ヴァイルという、 人間の商談などの契約を司るデイドラ王から、 「タダで」教えてもらっているからだろう。 比較的有名な話だと、今から300年くらい前の時代、 信者達の前で自慢の肢体を見せようと身体を覆う夜のマント一枚に、 お気に入りの頭巾をかぶって召喚され、マントと頭巾を脱ぎ捨てた際に、 隙を付かれてかぶっていた「ノクターナルの灰色頭巾」を盗まれた。 ほんの数年前には、自分を奉っている祠の神像から目を盗まれたりもした。 どうしてそんな物まで盗まれるのだろうか。信者達にも、彼女にも分からない。 あるトカゲ人間(アルゴニアン)が行った窃盗であった。 幸い、目は今や英雄となった者が取り戻してくれたが、 頭巾はグレイ・フォックスが被っている。お気に入りだから返して欲しいのだが、 上手い具合にやり込められた。他のデイドラ王なら、盗んだ時点で終わりだろう。 ノクターナルは、あまり荒事が好きではなかった。 「けど、何か変わってますよね。信仰によって強弱が変わっていくって」 『我らからすれば当たり前の事。故にそう言われても困る』 ずっと昔に、グレイ・フォックスに盗まれたノクターナルの灰色頭巾。 別に盗まれた事はどうでも良い。気にしてはいないが、 返してくれないか?と盗まれて数日したある日、信者に言付けて行かせてみた。 通常、ドラゴンファイアが灯っているタムリエルに、 デイドラ王が自力で姿を現そうとするのは、実際のところはとてもしんどい。 『不可能』ではなく『しんどい』だが、 デイドラ王達は、面倒なので自分から行かないで、 そこで信仰している自分の信者達を使うのである。 敢えて戦いに来ては、半殺しにされてオブリビオンに戻っていく、 本当にはた迷惑な破壊の権化である『メエルーンズ・デイゴン』を除いて。 基本的にデイドラ王達は享楽的な側面が大なり小なりあるのだ。 デイゴンも破壊と敗北が楽しくて来ているらしい。人間には訳の分からない話である。 祠の前にやって来たグレイ・フォックスは、ノクターナルの神像に跪いてこう言った。 「あなた様のかけた呪いにより、私はこれをはずすと誰にとっても、 『見知らぬ者』となるのです。ですので、これはお返しできません」 はて、そんな呪いかけただろうか。彼女からしてみれば、 それは呪いでもなんでもない。自分の力でどうにでも出来る、 頭巾にかけた魔法効果の一つなのだった。 「ですが、そのままでは私の命が危なくなるのも重々承知しております。 ですので、どうかあなた様を信仰する団体を創りますから、 これを私に賜ったという事にしてくださいませんか?」 どうしてかは知らないが、彼はデイドラの力がどうやって増幅するのかを知っていた。 力が増幅するのはありがたいので、ノクターナルは何となくOKサインを出した。 彼女は、色々面倒だったので自身から熱心に信者を集める口ではなく、 この申し出はありがたい事だったのだ。 こうして、初代グレイ・フォックス「エマー・ダレロス」は、 シロディールの盗賊ギルドに入り、ギルドは彼女を崇めるようになった。 第三紀433年より約300年前に、このギルドは彼によって作られたと言われているが、 実際の所、それよりさらに700年くらい前から細々と存在していた。 ギルドマスターになった彼は、グレイ・フォックスの噂を様々な手段で流し、 その結果グレイ・フォックスと盗賊ギルドは、誰もが知る有名な伝説となった。 盗んだ本人から呪いなぞかけておらぬが?と言われて、 ではどうしたものかと彼は悩み、結局その「呪い」ともいえる魔法効果を解除出来なかった。 盗賊ギルドにとって、グレイ・フォックスとノクターナルはその象徴と言える。 誰も名を知らぬ長と夜の女王。それがいなければ話にならぬのだ。 だから頭巾を次の長に渡し、その後に真相を伝えるようになった。 それが何代も続き、いろいろな理由から盗賊ギルド員になった、 地方都市アンヴィルの伯爵「コルヴァス・アンブラノクス」の代で、 ようやくこの忌まわしい魔法を解除する方法を見つけたのだ。 しかし、彼は魔法を解除するアイテムを手に入れることは叶わなかった。 失意に浸り、もはや全てがどうでもよくなったときにハーフエルフに呼び出され、 彼は生きる希望を見いだした。彼女だけは自分の名を覚えていてくれるのだ。 『ん』 「どうかなさいましたか?ノクターナル様」 ざわざわと、ノクターナルが作る影『だけ』が震える。純粋な黒よりさらに黒いそれは、 まるで、近づく物を全て飲み込む奈落の底の様な色であった。 『少し見てくる。もしや何か起こるやもしれん』 「気を付けてくださいね。ノクターナルさん」 ああ、我が影よ。そう言ってノクターナルは自身の影に包まれ消えた。 前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア