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まりわい【登録タグ PV師 作ま 作り手 絵師】 【ニコニコ動画】 【ニコニコ動画】 特徴 絵師・動画師。 澄み渡る青さを主体にしたPVに定評がある。コラボした楽曲も月・星・空をモチーフにしたものが多い。 同じく絵師・動画師の 真理恵氏 は妹。双子の姉妹関係。 姉妹揃ってとにかく制作ペースが異常なほど早い。それでいて、クオリティは折り紙つき。 リンク PIAPRO twitter 曲 Afloat BALLOON/てぃあら・アウトプットP Call of You chord liner Dancing in the snow Days in the your mail dear... Deep Blue Entreaty Film Fallout Heavenly I WANT ちゅっ! IROHA/Rin(ぎん) Lycieratia Midnight Fantasy Neria Pa Pa Pa リズム Pandemic paranoia/めざめP purple storm Regret/てぃあら Remain/Ariだい SING!!SING!!!SING!!!! sailing dreamers Tears/てぃあら Umbrella/てぃあら Undefined-End of Sorrow- Vanilla-Souls Winter beats 青空と箱庭 あの青は今も変わらない青で 甘い病淡い眩暈 雨と二人の青写真 アリスの世界地図 或る愛の日 インスタント・ヒーローズ 嘘と真実 歌う声は遠く風になってあなたの街へ行く 歌をきかせて ウタヲキカセテ 永遠/融合P 衛星少女 ~satellite girl~ エデナガルタ オルフェウス キス・ミー 君と暮らせるその日まで。 君と僕と約束と雨 空奏旅行 コワレ者 四季刻歌 少年イデオロギー ショットガンボーイ シンデレラ/kyoki ストックキャラクター セレスタ 相対性エモーショナル 空の夢模様 月舞-Dance of Strings 摘み色ギルティ デウス・エクス・マキナ 夏合宿告白前夜 七夜月の少女 果ての森のMemoria 花束を君に ハルシネーションテイル ハルモニア/ナナミP 半透明の少女 ひまわり/てぃあら 普遍的トリミングラヴ 踏み出す一歩 プラスティック少女 プリズムの砂時計 ペインフルチュートリアル ほしくず、ないとめあ 星空のラピス 星のティアラ 僕の一部 魔法陣とお絵描き少女 護りの唄 もう聞こえない モノクロナイフ モノクローム天使 夕空フェアウェル ルナライト 恋慕華 ロベリア わたしは灰色 和ロック Meteoroid CD Evaporated milk Honey Rabbits デウス・エクス・マキナ/CD パステル/CD 動画 コメント 姉妹どちらも好き! -- be (2012-04-10 14 51 13) 四季刻歌と空奏旅行のPVが良いですね!! -- ライン (2013-02-03 00 11 22) paranoiaの絵が超好きです! -- 名無しさん (2013-11-27 20 56 54) 真理歪さんも真理恵さんも好きだ! -- 名無しさん (2013-11-27 22 21 25) かわいい! -- 名無しさん (2013-12-27 11 51 08) 名前 コメント
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元スレURL 希「ブラジャーが」花陽「コワレチャッタノォ!?」 概要 二人でランジェリーショップに乗り込むのぞぱな タグ ^東條希 ^小泉花陽 ^のぞぱな 名前 コメント
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こわれたせかい【登録タグ shina007 こ 初音ミク 曲】 作詞:shina007 作曲:shina007 編曲:shina007 唄:初音ミク 曲紹介 shina007のボカロオリジナル初投稿作品。 歌詞 きっと探していた 確かな意味を求めて きっと震えていた 時の流れの中で ずっと 折れた心を包み込み そっと行く道さえも 遠いかすかな記憶でも 消して忘れていくよ 壊れた世界の中で 出会えた奇跡の様な 蒼く 光る 刹那の輝きを見つめ 夢と希望との果てに 最後の欠片を見つけ いつか 僕も あの場所に辿り着けるよ もっと確かなものだけを 信じ生きてきたけど 奪い去っていく秩序に 埋もれ 沈みそうだ 流れる時間の中で 崩れる景色を見つめ 全て 終わる 真実の形を残し 見えない未来と過去の 暗闇を抜けるように きっと 願う 新しい希望の歌に この世の果てまでずっと 続いてく道の彼方 そっと 進む 終わらない旅の途中で 壊れた世界の中で 出会えた奇跡の様な 蒼く 光る 刹那の輝きを見つめ 夢と希望との果てに 最後の欠片を見つけ いつか 僕も あの場所に辿り着けるよ コメント これいいな! -- 名無しさん (2011-11-19 21 52 22) 名前 コメント
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ぶりるP【登録タグ 作ふ 作り手】 【ニコニコ動画】投稿作品 特徴 2008年1月に「さくら」でデビューしたP。 主にリンを中心に曲を制作しているが、ミク、がくぽ、ルカ、グミも使用している。 聴き手を元気付けたり、前向きな気持ちにさせる曲が多い。 その一方で、おっさんホイホイ 的な曲を作ることも・・・。 「あいしあう」からはMikuMikuDanceを使用した動画の制作も始めた。 JOYSOUNDのカラオケ化リクエスト投票に参戦しました。 2015年7月3日に「秘密警察」が自身初の100万再生を達成した。「秘密警察」ミリオン達成時、再生数順では、「どえむ」・「どえす」と続く。 どうしてこうなった?→ど・ど・ど・どうでもいい! どうでもいいですよー! ミリオン達成状況 曲名 100万再生 備考 秘密警察 2015年7月3日 リンク 蜜柑派最後の砦(作者ホームページ) music muscle(作者ブログ) PIAPRO KarenT YouTube Twitter 曲 14歳 ANTI WHITE STORY Morning Star/ぶりるP NO MORE CHAIN あいしあう 雨どきラバー 上から目線 生まれ変わったら道になりたい オトメ☆純情☆発信中 おまえのものはおれのもの 終わらないパレード くもり空に晴れ間 黒のワルツ グルームリミット 恋ですね、わかります 恋のキャッスルロード 恋の特急みらくるメッセンジャー! コワレ者 最終鬼畜少女 さくら/ぶりるP 桜舞い散らない 桜満開なう さよならを聞かせてよ サンデイ・アフタヌーン 白いリボン 深夜2時でも私のためにアイス買ってきてよね ジレンマ/ぶりるP 聖調残酷物語 デウス・エクス・マキナ どえす どえむ どうしてこうなった/ぶりるP どうでもいい! ナミダ/ぶりるP ハッピースマイル 秘密警察 フキンシン フリーダム! 便所飯 曼珠沙華/ぶりるP もしもきみが 夜霧のベルロード 楽園パラダイス ラ・ラ・メリー・クリスマス レッツゴー! 私に不可能はない! 私の彼は戦国武将 わたしはいらない子 CD EXIT TUNES PRESENTS Vocalohistory feat. 初音ミク EXIT TUNES PRESENTS Vocalonexus feat. 初音ミク HATSUNE MIKU EXPO 2014 IN INDONESIA Innovator-HUMAN kagamination kagamination2 KarenT Songs KAGAMINE RIN/LEN sync-loid 02 V love 25 -Exclamation- 愛してくれなきゃしんじゃうよ? 雨どきラバー オトメ☆純情☆発信中 グルームリミット 恋の特急みらくるメッセンジャー! ゴー!ゴー!リンチャーズ 最終鬼畜少女/CD 財布と相談、おわった? 桜満開なう さよならを聞かせてよ/CD 聖調ぶりる歌曲集 デウス・エクス・マキナ/CD どえす どえむ どえむ/CD 二枚目なう 初音ミク -Project DIVA- F Complete Collection 秘密警察 ぶりる帝國の逆襲 ボカ☆フレ!-VOCALOID(tm) FRESHMEN- まぜてよ☆生ぶりる 妖艶和奏絵巻 feat. 初音ミク 動画 + セルフカバー・アレンジ・旧バージョンなど セルフカバー・アレンジ・旧バージョンなど コメント 「さくら」のカラオケ化の話はどうなったのでしょう? -- 名無しさん (2009-01-08 04 26 38) カラオケ化の投票受付してるみたいです! -- 名無しさん (2009-06-18 22 14 19) ついにCD発売だ!ぶりるさん最高! -- よもぎ (2009-08-03 11 53 58) 秘密警察カッコよすぎ!!大大好きっさ! -- いぃ (2010-11-21 20 21 24) ロック調のノリいい曲が大好きだからぶりる様最高!!センス良すぎる( ▽ *)いっそ全部カラオケ化を!!(σ▽σ)← -- 夏美 (2010-11-26 08 18 53) 上から目線最高! -- 名無しさん (2011-01-27 19 09 28) どえむ最高ww -- 名無しさん (2011-06-29 08 21 14) とにかく、全部好き! -- 名無しさん (2011-07-07 20 16 51) 朝から晩までお前をみうー!! -- 名無しさん (2011-09-28 21 08 34) どえむ最高!!!いい感じ☆ -- チルノ星 (2011-12-16 22 46 25) 秘密警察の、ギターの速弾きがすごいです!!ただいま挑戦中 -- スパイ (2012-01-25 16 31 17) リンのがんばれニッポンをカラオケ配信してくださいw -- 名無しん (2012-05-02 14 51 37) 秘密警察かっこよすぎ!ずるいですwこれからもがんばってください! -- ルサニー (2012-12-30 10 52 51) ぶりるさんはもっと評価されていいと思う。というかされるべきだと思う。秘密警察や上から目線の調教がすごく好きだ。 -- 名無しさん (2013-09-01 13 27 04) ガチ曲も好きだけど、ネタ曲とかちょっとアレな曲(オッサンホイホイ)とかもイイ!(`・ω・´) お願い、みらくるメッセンジャーとフキンシンもっと伸びて。 -- 名無しさん (2013-09-01 13 33 41) P は付けるの?付けないの? -- 名無しさん (2014-06-25 18 47 26) 名前 コメント
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←前の月 現在のページ 次の月→ 2013年01月 2013年02月 2013年03月 計151曲 2013-02-01 (8) 夕方感傷 / Yuda 処女作 人魚の唄 / 霧姫知華 アジュガ / river Hands for Snow / 音坂キョーヘイ こぐま座一番星 / わか 愛してる / れるりり Everlasting / ルミナスP 処女作 ,おればななP ヨワムシ君は今日も行く / ふーにん 2013-02-02 (5) おべんとうのうた / 走るP 献身的宇宙論 / Stremanic コインロッカーベイビー / 極悪P リバイバルゴースト / フルオキセチン フリーフライター / 探査P 2013-02-03 (8) パラダイス☆ダンスフロア / EasyPop はらり、はらり。 / 燃素P キミトツナガルぷろとこる / どんぞこ メランコリア / 市瀬るぽ ラヴラヴモーション / フルオキセチン みゅじぷり!~みゅーじっくぷりんす~ / 佳澄ゆい(tone*3) No net No life / なきゃむりゃ 心像 / ケイシャー 2013-02-04 (3) 深い海の底から / こめ オパンティングソング / アナバ アムリタ / フルオキセチン 2013-02-05 (8) ハチノジダンスと古いエコー / betcha Lights / Toshihiro 処女作 LittleSpoon Latte / (∵)キョトンP ハルカゼトドケ / cicci おおかみなんかこわくないッ! / OSTER Project rose quarts / narry ametrin / narry 喫茶アンブレラ / ぺぺるる(ぺ猫) 2013-02-06 (4) 自火胴着 / 初音圧縮P ナナイロノ蝶 / えんどりP 夢と悪夢 / KTKT Lost half ;105 / アモン 2013-02-07 (4) 待ち猫と少年 / ほのぼのマスター 処女作 チャンス! / EasyPop 発熱エモーション / PSGO-Z 僕と林檎 / LUSTEA 処女作 2013-02-08 (3) trans-Create / keisei 夕空感傷 / Yuda 愛は蜉蝣のように / niceneet. 2013-02-09 (6) ハッピィエンド / あすきP 遠雷に響く叫び / Mick 処女作 hollow out / ウツロー 午前二時四十分ノ憂鬱 / 豆腐屋 ハルシノシス / みずまんじゅうP ウタカタストロフィ / ちゅうとろP 2013-02-10 (7) 思いを込めて / ミケランジェロン 処女作 恋色スノウ / 風筒P Untitled / たつまき 星標 / YUKISON ノイズラヂヲ / maedakengo 18歳、君の言葉、僕の思い / TOMe 処女作 26歳、思い出すのはいつも同じ事 / TOMe 2013-02-11 (7) Lonely Day Lonely Night / Seven Flower 腐女子は二度死ぬ / bibuko GUN SHOUT! / まだ仔 Hydroenergy Synchronizer / ddh fly more / Eon 春にはまだ寒すぎる。 / 沢田凜 nor truth / lemo mis 2013-02-12 (8) スター☆トレイン!! / 環ネコP スクランブルエッグガール / out of survice loop loop / すいっち ノンストップ / 空海月 lonely / 午後ティー 最果てに告ぐ / 真夜中P Your Sound / S@TORU My Sweet Heart / 空海月 2013-02-13 (8) チョコレイトなんてあげない! / KSH Works Harmonia jealousy / taqumi 処女作 チョコレート・エモーション / 縫糸 君が死んでも歌は死なない / ツマー Lost eight seconds / AVTechNO! B-CLASS HEROES / 鬱P SpokeSnowman / クロジ ホォカスポゥカスクッキング / マチゲリータP 2013-02-14 (5) トルマリンイミテイトショコラティエ / ゆずひこ 黒髪少女 / 黒澤まどか 処女作 水底で歌う夜色の世界 / 藍乃 SAKURA(sweet)HALU / lemo mis 雨上がり、空は青 / つこ 2013-02-15 (4) [Tear]そして、終わりの無い。 / れじれこ 処女作 恋文 / バイカP Hide And Seek / びにゅP Lastear / AVTechNO! 2013-02-16 (4) Happy Song / YUKISON プロローグの終わりに / 人口モノクローム 溶けない雪 / wataru ほしうた / なぎ 2013-02-17 (4) ニツマルミュージック / ARuFa 【L】una / Eve(☆P) rusty / kk2 Rab it.. / うさだ ぴょん 2013-02-18 (1) Here Bereaved / Jizel 処女作 2013-02-19 (5) Daydream / iON 処女作 夢の終わりに / 音坂キョーヘイ シロクロ / うしろめたさP ナダミタマ -灘御霊- / オトホギ 純情スカート / 40mP 2013-02-20 (5) 止める世界 / 氷夢P キセキ / とあ 処女作 monochro / 竹の 処女作 あなたと笑顔で / 群咲拓海 ジェイルハウスねこ / MSS 2013-02-21 (3) 強行突破 / ラマーズP 赤熱恋鎖反応 / 紫陽花合唱団 Sweet Heart / ういろー丸P 2013-02-22 (4) wood bell / うや 冬の国へ / kuma(alfred) blue letter / アキ(みずまんじゅうP) lucid silence dreaming / tac_ 2013-02-23 (7) ハートビート / Modetaro おえおえお / 梨本うい それは、真昼の彗星 / 椎名もた 雑草ラプソディ / lemo mis 涙星~spring star flower~ unlock / ちんまりP ツギハギとロジカル / ShiroKuro(Matica) 処女作 2013-02-24 (5) Unfragment (syatten Remix) / ツナマヨP 感情八号線 / uguis08 妄想ロンド / 緋色 君は言う / 816 桜上水 / アキバヲタP 2013-02-25 (3) ステップをふむ / 円盤P もういいの?まだだよ / DropBox リコリスとナルコプレシイ / どん 2013-02-26 (3) gimme / whoo 黄昏の人 / iceP まどろみ / ウラナリc 2013-02-27 (3) 異国の街 / HaTa 処女作 自鳴迷宮 / Lemm ロストファンタジア / 確定P 2013-02-28 (6) 密会のミレン / acane_madder ヒツジのワルツ / LIM ピエロノミルユメ / もきゅりすとP コワレ者 / ぶりるP ゆれる世界を / みうつー 重力操作の新化学 / ただのCo
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― ―― 地面には紅い花々が咲いている、その花々はソレを中心に広がっていた ソレは地面に倒れている 私はソレに向かって銀色の棒を振り下ろす 「あぁ”っ!!」 その顔をするな、汚らわしい その声を出すな、汚らわしい その身体は何だ、汚らわしい 汚らわしい、汚らわしい、汚らわしい、汚らわしい、汚らわしい、汚らわしい 汚らわしい、汚らわしい、汚らわしい、汚らわしい、汚らわしい!!!! 私は一つ思う度、銀色の棒を振り下ろす 「はぁ…はぁ…」 これで、あともう少しで……私とゆたかの幸せな生活が戻るんだ… そう思うと自然と笑みがこぼれてくる さぁ、終わらせよう…これで、これで戻ってー 「…っぁ…ぃ…み……ちゃ……」 ソレは最後に私に話かけて来た え? …そんな…嘘……まさか……そんな……私は… 「あ…あ……あ…?」 私は…わたし、は………ワタシハ… 「いやぁ"あぁあ"ぁあああぁぁぁ!」 どこで間違えたのだろう 何を間違えたのだろう どうして…どうしてこうなったんだろう、、今となってはもう― コワレルセカイ1★\決意 ―いつからだろう、あの女に恐怖するようになったのは …ああ、ゆたかと一緒に私の家に行った時からだっけ ―いつからだろう、私がこんな風になったのは みゆきさんに…あの女のことを聞きに行ったところからなのだろうか―― …… ――― ―― ― 「おはよ~みなみちゃん」 「ん…おはよう……ゆたか」 私達は一緒の布団で寝ている 「昨日は…その…ねだっちゃってごめんねみなみちゃん」 「ううん、、私がイッちゃうなんて…ゆたか上手くなった?」 「そうかな~?」 私の気分は晴れなかった あの女は…さくらはあの後それといった行動はしてこなかった…でも 怖いんだ 2人なら大丈夫かと思ったけどやっぱり…怖い、、そして…ゆたかに対する罪悪感もある ゆたかと暮らすようになってもう3日になる…でもずっと、ずっとだ コノ 横デ寝テイル ユタカハ本物ナノ? 本当ニ? 本当ニソウナノ? ドウシテソウ言エル? アノ時2回トモ気付カナカッタノニ? と、、ゆたかを抱いている時にあの女が笑い出すんじゃないのか、と 「ん~」 ゆたかが目を閉じ何かをもとめる仕草をする 「…なに?」 「も~みなみちゃん、お目覚めのキスだよ!」 「え、あ…そうだったね」 私は軽くキスをする 「…最近のみなみちゃんなんだか変だよ?」 「……そうかな」 今日の天気はこれ以上ないというくらいの快晴らしい でも、、私の心は曇っていた 学園に行ってもその気分は晴れる事が無く むしろ…より重くなる 「最近二人で暮らし始めたって本当っスか!?」 「うん!そうだよ~!!毎日が楽しいんだ~」 ゆたかは屈託のない笑顔で答える 『…みなみさんのお母さんはどこに行ったんです?』 「う~ん、近くの親戚さんの家に移ったみたい」 「とイウことハ毎日ガストロベリータイムといウことデスね~!!」 『あのさ、しんぱてぃにも分かるように説明してくれない?』 「「ツまり2人は朝モ昼モ夜モずっと一心同体とイウことデス(っス!)!」」 『…ふ~ん』 「おお、意見が一致したっスね!」 「2人のカップリングは万国共通デス!、名護さんは最高デス!」 「二人のラブラブっぷりを漫画に記録していいっスか?」 「うん…いいよね、みなみちゃん?」 「…え、あ、うん……」 「モうラブラブ過ぎテお腹イッパイデす!」 「ゴチになりますっス!」 …ゆたかが幸せそうな顔をする度、、私の心が痛みだす ゆたかの気持ちなんてまったく考えずに…私があの女が怖いからって勝手に私が言ったことだから、だ それにゆたかなら返事はOKだろうと…心の奥でそう思っていた 毎日あの女に怯えているんだ 『みなみさん、どうかしたんですか?なんだか最近―』 うーちゃんが尋ねる 「え、いや、何も…」 …信用出来ない、、うーちゃんもみゆきさんもしんぱてぃも、、あの女の仲間じゃないのかと思ってしまう いや、姉妹という繋がりはあるんだっけ… 『……』 「なんでもない…なんでもないから…」 『そう…ですか』 チャイムが鳴る 昼休みだ この前までは田村さんやパトリシアさん、ゆたかやうーちゃん、しんぱてぃ達と楽しい時間を過ごしていたのに、、今は― 「岩崎さんどうしたの?、全然食べてないじゃないスか」 「…食欲が無くて」 「フぅム、、ダイエットですカ?」 「まぁ…うん」 『ここんとこずっとじゃない?しんぱてぃ心配だよ…』 ……分かってる、分かってるんだ みんなは悪くない、悪いのはあの時あの女に気付けなかった自分だ 迷惑をかけるわけにはいかない 「…ちょっと行ってくる」 「みなみちゃん、どこに行くの~?お姉ちゃんのとこだったら―…」 「…来ないで」 ゆたかが狐につままれたような顔をする 「…ごめん」 …これは私の問題なんだ ゆたかを巻き込むわけにはいかない 「…すぐ戻るから」 私は3年の教室を目指す 『みなみさんここのところずっと昼休みを抜け出してますよね、、』 「あ~、、ソうイエバ」 「なにかあったんスかねぇ?」 「あト、うーちん!」 『な、なんですか?』 「モウ少し私達の話ニノッてきてモいいジャないですか!」 『すいません…どうも話の輪に入るのが苦手で…』 「まぁそれよりも食べない理由何だと思うっスか?」 「それはモチのロンロン!愛すルユタカの為と相場ハ決まッテイるでス!ダイエットでス!」 「え~そうかなぁ」 「絶対そうっス!だってー」 ― あの女が言ったコトで正しかったコトは3つある 1つはゆたかが好きなこと 1つは私とゆたかの関係を嫌っていること そして……あの時私は感じていたことだ、、 不本意ながら…私の下着は濡れていた………これは事実だ それは…ゆたか以外に私は汚された、、ということだ そしてあの女が言っていた"あるやつ"、その人がみゆきさんでないという言葉を信じるならば― みゆきさんはあの女の対処法を知っているかもしれない ―そう思ってここ数日3年生の教室に行っているんだけど …みゆきさんは何日も休んでいる、、今まで皆勤賞だったのにどうしたんだろう… 今日は来ているのかな?と思いながら3年生の教室に向かっている途中で、、みゆきさんに出会った 「みゆきさん!」 「…みなみさん…おはよう…ござい…ます……」 みゆきさん目は充血していて、目の回りにはくまが出来ていて…なんというか… いつもの気品あふれるオーラ?が感じられなかった、あと気のせいか若干痩せている気がする 「…みゆきさん、どうしたんですか」 「ええ…この四日間…寝てないんです…徹夜ですよ……フフフフフフ」 みゆきさんがぐらぐらと揺れだす…ああ、いつかの田村さんみたいだ 「大丈夫ですか?」 「…大丈夫じゃありませんね…あのお、、峰岸さんのせいだす…」 …何で峰岸さんが登場するんだろう 「…そもそも新型をたった一週間で造り上げるというのが無茶な話だと思いませんか?」 「はぁ…」 …みゆきさんは何を言っているんだろう 「というか一週間不眠不休で働ける人は我々スタッフの中でお母さましかいないのは 分かっているのにどうしてあんなことを安請け合いするのか理解に苦しみますそう思いませんか?」 「…はぁ」 この後もみゆきさんはたまっている鬱憤を晴らすかのごとく私の話を聞かないでずっと愚痴を言い続けた でも…そろそろ言わないと休み時間が終わってしまう 「あの、、」 「何か?」 「え、と…さ…もえさんのことです」 「もえがどうか…したんですか?」 急にみゆきさんの顔が真剣になった 「あ、いえ、その…」 「本当にもえにはほとほと困っているんです…なんであんな性格になったのか、、…あれの おかげで何度裁…大変な目にあったことか、、処分しようにも高良製高性能ヒューマノイドですし扱いがですね…」 みゆきさんは疲れているからか私が聞きもしないことを色々と教えてくれた そして分かったことは― このことを高良家―とくにみゆきさんに相談しない方がいいということだ 相談したら……間違いなく高良家にとって都合のいいように持っていかれるのだろうから 「それで…あの頃の高良家って…」 「あぁ…あの頃と言ってもほんの数ヶ月前ですね兄さ…あの人を筆頭に当時高良家は軍事兵器を搭載したヒューマノイド を戦場に送り込んで軍事路線に介入しようとしてたんです、もえはその名残ですねまぁ簡単に言うと厨二病です」 「はぁ…」 「もえの能力は幻を見せて・聞かせて・体験させて、相手の精神を壊すことにありますね、そしてある程度は相手の行動も操れますし…」 そうか、だからあの時私は―… 「まぁ、、そこまでに持って行く過程が大変なんですけどね」 「…幻にかからないためにはどうしたら」 「んん…そうですね、、、心を強く持つこと、ですね」 「…もう…いいですか?」 「…え?、はい」 みゆきさんはそう言ったあと教室に座っていたかがみ先輩の方へ歩いていった 「拙者、乳首ビンビン丸と申す!」 「…あんたそう言うセリフ止めないか、、ってかあんた恥ずかしくないのか?」 「大丈夫、何を隠そう私は羞恥心しらずの達人だー!」 「………あ…おはよう!みゆき、久しぶり…どうしたの?」 「…寝ます」 「は?」 そう言った途端みゆきさんはかがみ先輩の体に倒れ、いびきをかきはじめた 「ちょ、なっ…みゆき…離れっ」 みゆきさんは手をかがみ先輩の背中に持っていきがっちりと掴んでいる 「わー!お姉ちゃんスゴいね~」 「ふむぅ…かが×ゆき・ゆき×かがフラグビンビン丸とm」 「ええいやめんか!、もうどっちでもいいから早く助けてくれ!暑苦しいから!」 教室の方がやけに騒がしい…別に関係はないのだけれど 「―…心を強く…持つ」 それが幻に…あいつに立ち向かう方法 …私が守るんだ、ゆたかを ―そして私自身を ― ―― 高良家の地下からは2人の声が聞こえる 『…みなみがみゆきお姉さまに接近したみたいだよ?、さくら』 『遅かったわね、、待ちくたびれちゃっわよ♪』 二人の声は部屋に響き渡っている 『そう言ってもたったの3日じゃん?』 『…3日もあれば金持ちの坊ちゃんに近付いて破産させるくらい簡単に出来るのよ? …私が3日もじっとしてるなんて耐えられないわ』 『じゃあ何でじっとしてたんだ?』 『期が熟すのを待ってたってとこかな♪』 『…矛盾してるじゃん』 『ふふ♪ゲームのはじまりよ、みなみ…せいぜい私を楽しませてよね?』 そう言ってさくらは壁に貼ってあるみなみの写真をまじまじと見つめる 『…いつもの様にバックアップ頼んだわよ』 『へぇへぇ、分かりましたよ』 『っと、、その前になまった体をほぐさないとね…あ☆、そうだ、、まずは―』 コメントフォーム 名前 コメント
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(コワレモノ~血飛沫に狂え~)へ 斗貴子の身体がフラッと倒れる。 「え、あ、」 自分の左手を見て善吉は驚愕した。 血と肉が染み付いている。 次に斗貴子を見る。顔が潰れている。そこにあるはずの顔がただの肉の塊。 脳みそがピューピュー出ていて、辺りを赤で染める。 血の特有の鉄臭い匂いも広がる。 「俺が……殺した?」 善吉は決して殺してやろうなんて考えていなかった。ただ、斗貴子が迫ってきて。 敵意を感じて思わず腕を振り抜いた。 だが結果はこれだ。鉄の塊であるリボルバーナックルを全力で振り抜いたらこうなることぐらい善吉にもわかるはずだ。 それでも振り抜いてしまったものは振り抜いてしまったのだ。 時間は戻るわけもなく、そこには血で濡れた一つの肉塊と一人の哀れな青年が残った。 「あ、ああああ、ああ」 ――――掠れた声が出る。あれおかしいな、声でねえよ。どうした声帯壊れてんのか。 嘘だよな、俺殺してないよな!ほらお前も起きろよなぁ。おい起きろよ起きて嘘だと言ってくれ。 揺すっても揺すっても揺すっても起きない……。赤い液体が顔に降りかかるな。なんだよこの塗料臭いな。 ベチャッとした肉もついてるし。気持ち悪い―――― でも残念。その幻想は現実。 「――――」 ――――認めちまえよ、お前は。人吉善吉は―――― 「ち、がっ!俺はっ!」 “人殺しなんだよ” そんな声が善吉の耳に入った。 「あああああああ、ああああぁぁああ、ああァあ嗚呼ァああ、あああ、ぁああぁ!!!!」 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し! 「やめてくれ!俺は、おれは……何も悪くねえ!!!! 俺はただ、後ろから襲いかかれたから振り払っただけだ!」 脳内を駆け巡る人殺しというリフレイン。紅の呪縛が善吉を攻め立てる。 「だけど……」 人吉善吉は狂わないでいられるだけの意志の強さがあった。 それ故に狂えない。何も考えなくてすめばどれだけ楽なことか、と善吉は思った。 「俺が……俺が!!!!」 真実は一つだけ。 「殺しちまったんだ」 頭を抱えて、蹲り、何も聞きたくない、見たくない。 目の前のことから目を背けたくて。 人を殺したこと。それが泥のように自分の頭の中にへばりつく。 されど、この恐怖劇は終わらない。 何かが善吉の肩に触れて、そのまま飛んで行った。 数瞬後に善吉は遅れてやってきた痛みに顔をしかめる。 見れば肩に抉れたような傷があるではないか。 何だこれは?まだ敵がいたのか?善吉の頭の中はもはやグチャグチャで何を考えればいいのかさえわからない。 それでも自分を襲った相手の顔を確かめようとうしろを振り向いたその時。 善吉をさらなる衝撃が襲った。 「何でだよ……」 自分でもびっくりするくらい小さな声だった。善吉は呆然としながらそんなことを思った。 「竹内……」 そして振り返った廊下の先にいたのは仲間だと思っていた少女――竹内理緒だった。 手には大きなクロスボウを持ち、こちらに向けて射ったところか。 「外しましたか。大型のクロスボウだから手に余りますね」 「お前……最初から俺のこと騙していたのかよ。答えろよ、竹内……」 善吉の言葉がフロア内に木霊する。 嘘だと言ってくれ。質の悪い冗談だってよ、と善吉は泣きそうな顔で呟く。 「ご苦労様でした、あの人を殺していただいて。おかげであたしが危険な綱渡りをしなくてすみました」 「何だと……」 だが返答として返ってきたのは無情な事実。竹内理緒が殺し合いに乗ってるということ。 ただそれだけ。 「騙しててごめんなさい。でも仕方ありませんよね?これは殺し合いなんですから」 善吉が黙っている間も理緒の言葉は続く。 「あたしにもいろいろとあるんですよ、いろいろと」 「…………な……」 「はい?」 掠れたつぶやきのような音が理緒の耳には聞こえた。 スプリンクラーの雨のせいで余り聞き取れなかったが確かに声のようなものが善吉から発せられた。 「……ふ……け……な……」 善吉はふらりと立ち上がり、前を見る。 「ふざけんなよ……」 この言葉に込められた感情は何であろうか。 怒り――――いいえ。 哀しみ――――いいえ。 絶望――――いいえ。 失望――――いいえ。 狂気――――いいえ。 どれも違う。今の善吉に。 人吉善吉の頭の中に存在するのは。 「“どうして”、なんだよ?」 感情が感じれられない無機質な言葉が善吉の口から出る。 無。ひたすらな無。虚無のココロ。 何かが。善吉の大事な境界線が。無くなったような。 理緒はそんなことをふと思った。 「どいつもこいつもよ、殺すのがそんなに好きなのかよ」 淡々と善吉は喋る。理緒はそれを訝しみながらも聞く。 理緒は今すぐ善吉を撃つことは出来る。 クロスボウには矢を装填している。 だができなかった。なぜか、そうしてはいけない気がしたから。 「こいつは護りたいものがあるからみんな殺す。 竹内はいろいろあるから殺す。……何でだよ。どうしてそんな簡単に人を殺すって言えるんだよ」 その言葉は理緒に響いた。そしてとあることを思い出す。 ブレードチルドレン。呪われたヤイバの子供達。 そのブレードチルドレンを排除するために動いていた“ハンター”と争っていた時のことを。 理緒はブレードチルドレンとして、敵対する者を容赦なく殺してきた。 それも仕方はない。殺らねばこちらが殺られるのだから。 だが人を殺したことには偽りはない。 自分の意志で――明確なる意志で殺したのだから。 (あたしは人を殺してきた。あっさりと、時には凄惨に。 だけどそれは簡単だった?違う。それだけはありえない。だって――) 理緒は言う。苦々しく、顔を歪めながら。 「簡単な訳ないじゃないですか……」 「なら、」 「それでも殺さないといけないんです、“希望”を護るために!」 「“希望”を護るため?」 善吉は問う。ということはこいつもとある奴を護るために殺し合いに乗ったのか、と考える。 「そうです。その人は私達の“希望”。呪われたあたし達のたった一つの光」 理緒は語る。呪われた自分達の定めを。そして“希望”の存在の尊さを。 善吉は黙って残酷と言えるブレードチルドレンの“運命”を聞く。 「それで?結局はそいつの、“希望”のためにこのゲームに乗ったってことだろ」 「ええ、あたしは決めたんです、あの人の剣とも盾ともなろうって」 その理緒の一言に善吉は―――― 「アホらしいな」 冷酷に否定した。 「俺にだっているよ。ここに。この島に大切な幼馴染が。俺にとっての“希望”が。 でも、俺が護りたいからなんて言って殺し合いに乗ったらそれこそ本末転倒だ。 めだかちゃんはそんなことされても喜ばない。だから俺は乗らなかった。 だから俺は人を殺すことを否定した」 それでも人を殺しちまったんだけどな、と善吉は呟く。 依然と言葉は淡々としていて、感情めいたものはない。 人を殺してしまい壊れてしまった心の残りカス、その残骸で起動している“人吉善吉”の“ロボット”が喋っているかの様に。 「竹内は“希望”を護るために殺し合いに乗った。 それでその“希望”とやらが死ぬってことも当然考えてんだよな? まさかこのどこよりも危険な島で五体満足で無事でいるとでも思ってんのか」 え?そんな言葉が理緒の口から漏れた。その考えは予想外で考えもしなかった。 それは理緒が無意識に頭の奥に仕舞っていたこと。 そして考えたくもなかったこと。 “希望”である鳴海歩が―――― 「もう死んでるかもしれないぜ、な」 「そんなことありません!彼は!弟さんは死にません!!!」 善吉の言葉を遮って理緒は叫ぶ。それだけはあってはならないことだから。 もし鳴海歩が死んだとしたらブレードチルドレンは破滅あるのみだ。 それに自分の決意はどうなる。ここにアイズや浅月などの仲間がいて尚殺し合いに乗ることを決意したのだ。 ただ鳴海歩を護るが為だけに。 「それに救い?ばかじゃねえのか」 理緒が頭の中でぐるぐると思考を重ねている間も善吉は否定の言葉を紡ぐ。 「そんな血まみれで救われるわけねえよ。ただのエゴで人を殺して、よ」 「あ――――」 それは鳴海歩が死ぬことより奥深くに眠って、いや考えてすらいなかったこと。 理緒にとってそんなことは一度も考えたこともなかった。 「でも、それでもあたしは救われたいんです」 救われたい、その一心で理緒は生きてきた。 そして、誰よりも鳴海清隆と鳴海歩を信じてきた、それは狂信とも言えるだろう。 その狂信を捨てることなどできるのだろうか。 否。考えというものはそう簡単に変わるものではない。 ましてやこの極限状態。あらゆる面からみても最悪の環境で有る。 「そうか、もういい。悪いけどさ俺、まだ死にたくねえんだよ」 「奇遇ですね、あたしもです」 二人は向かい合う。互いの距離はそれなりに離れていて飛び道具のある理緒が圧倒的に有利だ。 「この場を切り抜ける。それには、俺は、俺、は。人を殺すしか――」 「……」 自分に無理やり言い聞かせるように善吉は狂ったように独白を続ける。 もうこの人は普通には戻れない、と理緒は思った。 目は濁っていて、浮かべる薄笑いは気持ち悪い。 「だからさ――死んでくれ」 理緒がクロスボウの先を善吉の頭に向け矢を放つ。 それよりも早く善吉が懐から何かを取り出す。 そして理緒がクロスボウのトリガーを引く前に善吉が手に持った何か――スタンガンを理緒に向けて投げる。 理緒はそれにより標準が少しずれた。そのせいで少しずれて矢が飛んでいく。 「……っ!」 矢は狙っていた顔ではなく右肩に突き刺さった。理緒は急いで予備の矢をクロスボウ装填するが。 「残念だったな」 それは遅すぎて。 「い、や」 理緒のもう善吉は楽に殺せるという油断がこの結果を生んだ。 「まだ、死にた」 再び血の華がこの廊下に咲く。 ◆ ◆ ◆ 「俺は……」 善吉はスプリンクラーの雨に濡れながら一人佇んでいた。 足元には先程まで生きていた竹内理緒の成れの果て。 顔は斗貴子と同じように潰れて原型をなさない。 「殺したんだ。あいつはともかく、竹内は純然な意志で」 そういってこの廊下に転がる二つの死体を見る。 ――眼に刻め。これはお前がやったんだ、人殺し。今更善人ぶるな―― ――よくも殺してくれたな。生きたかったのに、救われたかったのに―― 善吉の頭の中では微かに残る人を殺したことを咎める常識的な心、殺した二人の恨み声が鳴り響く。 無論、声など実際には聞こえない。それは善吉の被害妄想的なものに過ぎない。 「殺しを許容――受け入れてしまったんだ、俺は」 だが、善吉は心身ともにボロボロだった。 右肩に刺さった矢は丁寧に抜き、制服を引きちぎって無理やり止血したが痛みは残る。 精神的にも普通の高校生では考えられない激動の一時だった。 (狂ってしまったんだろうな、俺は) そう心中つぶやいて、気分を変えようと無理やり笑ってみる。 窓に映った自分の顔は酷く歪んでいた。 いつもの皮肉げな笑みはどこに行ってしまったのだろうか。 「行こう……もう終わったんだ」 善吉は落ちているデイバッグにクロスボウなどを全部拾いこの場所を後にする。 ここにいたら余計なことを考えてしまう。 そして階段をおりビルから外へ出た時ふと考える。 (めだかちゃん……できれば、今は会いたくないな) 心の整理がつかない今、幼馴染の黒神めだかに会ったら余計な心配を絶対にかけてしまう、と善吉は苦笑しながら思う。 (ははっ、こんなことがあった後でもめだかちゃんの事を考えるなんて、馬鹿だな俺は) その時の善吉の顔が少しはましになっていた気がするが、それもすぐに消えて。 再び、歪んだ顔に戻る。 (疲れた。少し……休んでもいいよな) そしてそのままふらっと地面に倒れて善吉の意識は闇へと落ちていく。 だがその前に何かの音が善吉の耳に聞こえた。 (誰だ……どうでもいいか。もう俺、何も考えたくねえ) 今度こそ善吉の意識は闇に落ちていった。 これから人吉善吉は立ち直れるのか。それとも負の螺旋に囚われるのか。 今はまだどちらともいえない。 【竹内理緒@スパイラル ~推理の絆~ 死亡】 【津村斗貴子@武装錬金 死亡】 【H-7/一日目・深夜】 【人吉善吉@めだかボックス】 【状態】気絶、びしょ濡れ、肉体疲労(大)、右肩に刺突痕、右肩上に切り傷、精神崩壊? 【装備】左手用リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのは 【持ち物】 支給品一式×3、スタンガン、アーマライト AR18(使用不能)、予備マガジン×3、 クロスボウ、竹内理緒の不明支給品1~2(銃に立ち向かえる武器はない) 【思考】 0.――――― ※折れた宗像形の日本刀@めだかボックスはビルの前に転がっています。 【宗像形の日本刀@めだかボックス】 宗像形がいつも手に持っている日本刀。 特に何の変哲もない。 【スタンガン】 電圧により相手にショックを与え無力化する道具。暴漢に襲われた際にでも使うのが適切。 当て所が悪ければ当てられた相手は死ぬ可能性もある。 ちなみに携帯型のハンディータイプである。 【アーマライト AR18】 アメリカ、フェアチャイルド社のアーマライト事業部が、アーマライトIncとして独立後の1963年に開発した突撃銃。 製造権をコルト社に売却してしまったAR15に替わる、新たな5.56mm口径ライフルとして、アーサー・ミラーらによって設計された。 作動機構には、オーソドックスなガスピストン方式のガスオペレーションを採用している。 ちなみにこの銃はなぜかどこの国の軍隊にも採用されないというかわいそうな銃でもある。 【左手用リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのは】 ギンガ・ナカジマが左手に装着している非人格式・拳装着型アームドデバイス。 リボルバーナックルが持つオートパーソナライズ機能により、 使用者の身体に合わせたサイズに変化すると同時に、色彩も使用者が設定した色合いに変化することができる。 【クロスボウ】 矢などを発射する武器。拳銃型で大きい。 ◆ ◆ ◆ 「どうするんですか、これ?」 「そりゃあ、このままにはしない。どこかに運んで治療するさ」 倒れ伏した善吉の前で喋る二人の男女、十六夜咲夜と睦月透真。 二人は銃声が聞こえたので知り合いが襲われてないかと様子を見に来たのだ。 結果、見つけたのは傷付いた人吉善吉だ。 「でもこの子の腕を見なさい、血が付いているわ。 もしこの子がゲームに乗っていたとしたらどうします?」 「その時は俺らで止めればいいだろ。それにもし乗ってなかったとしたらどうする。 このまま見捨てろってことかよ」 「はぁ……あなた馬鹿でしょ?」 「いきなり口が悪くなったな……馬鹿でいいよ。目の前の人一人救えないで何がゲームからの脱出だ!そんなの認められるかっ!」 咲夜の冷静な指摘にも透真の考えは搖れない。 彼の心の中では善吉を助けることは既に決定事項だ。 「止めても無駄だぞ。俺は一人でもこいつを助ける」 そう言って透真は善吉を背負って歩き出す。 「わっ」 「その子の片方の肩を貸しなさい。二人の方が疲れないでしょ?」 「咲夜……!」 「勘違いしないで下さい。その子が少しでも怪しかったら私は切り捨てるわよ?」 「それでも、ありがとう咲夜」 透真が笑うのに咲夜も仏頂面ながらしっかりと答える。 二人は少しよろけながらもどこか安心して治療ができる場所を探すため夜の闇に消えていった。 【H-7/一日目・深夜】 【睦月透真@操り世界のエトランジェ】 【状態】健康 【装備】 【持ち物】 支給品一式、不明支給品1~3 【思考】 0.善吉をどこか安全に治療できる場所に運ぶ。 1.今は乗らない。 【十六夜咲夜@東方Project】 【状態】健康 【装備】ミセリコルデ 【持ち物】 支給品一式、不明支給品0~2 【思考】 0.善吉をどこか安全に治療できる場所に運ぶ。ただし何かあったらそれなりの対応を取る。 1.今は乗らない。 BACK バベルの階段をあがれ 時系列順 NEXT 臆病者のロンド BACK バベルの階段をあがれ 投下順 NEXT 臆病者のロンド GAME START 竹内理緒 GAME OVER GAME START 津村斗貴子 GAME OVER GAME START 人吉善吉 NEXT 狂語‐クルイガタリ‐ BACK 糸仕掛けのプレリュード 睦月透真 NEXT 狂語‐クルイガタリ‐ BACK 糸仕掛けのプレリュード 十六夜咲夜 NEXT 狂語‐クルイガタリ‐
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「はぁっ、はぁっ」 夜のオフィス街。普段なら静寂が支配するはずだがこの場は違う。 断続的に吐かれる息の音と地面を踏む足音。 その音を出す原因――それは二人の少女の“鬼ごっこ”。 竹内理緒は逃げていた。この夜の街を全速力で疾走して、時には後ろをふり返りながら。 ツインテールがゆらゆらと揺れる。髪が乱れに乱れてしまったがそんなのを気にしている余裕はない。 「抵抗はしないほうがいい」 後ろから追いかけてくる外敵はセーラー服の少女。鼻より少し上に横一文字に残っている傷が印象的だ。 津村斗貴子。“錬金の戦士”として活動していた少女、だが今は逃亡の身であり“錬金の戦士”とも敵対している。 「大人しく殺されろ!」 斗貴子はこのゲームを即座に理解し、自分の取るべき方針を決めた。 それは。 「……カズキのためなんだ。剛太でさえ殺さなくちゃいけないんだ。 私は――カズキをこのゲームで優勝させるって決めたんだ」 逃げている理緒には聞こえない小さな声でぼそっと斗貴子は言葉を吐いた。 もう斗貴子の意志に迷いはない。 ただ殺すために。目の前で逃げ回っている無力な少女を殺すために。 駆ける! (やばいな、これは。逃げ切れない) 一方、理緒は逃げながらも頭の中では冷静に分析をしていた。 ブレードチルドレンで破壊の魔女と呼ばれるのは伊達ではない。 有事の時の判断力に加えて行動力の高さ、どれをとっても常人より遥か上に位置している。 だがその理緒であっても今の状況は厳しいと言える。 理緒は再び後ろを振り返って斗貴子を見る。 「……っ!」 まだついてきている、逃げ切れない、と理緒は苦い表情を作り舌打ちをする。 (いきなり襲われたから武器の確認もしてないあたしに比べて…… あっちはあの腰に下げている刀、あれ一つでも十分脅威。八方塞がりだね) 武器の優劣の差。素手と得物が有るのとでは訳が違う。 それはどうあがいても揺るがないものであり、理緒が明らかに不利だと言うことを物語っている。 だから理緒は走る。下手に何かをするよりは逃亡した方が生きのこれる確率が上がると判斷したためだ。 (全然振り切れないなんて。ホント、嫌になっちゃう) だが理緒の誤算は斗貴子を普通の女子高校生だと思ったことだ。 斗貴子は“錬金の戦士”として訓練していたこともありそこらの一般人とは違うのだ。 そして“鬼ごっこ”は唐突に終わりを告げる。 「はうっ!」 理緒が転んでしまうことで。即座に起き上がろうとするが、 (足を捻った?どうしてこんな時に!) 起き上がろうとしても起き上がれない。そのために必然と歩みはそこで止まる。 「好機……だな」 斗貴子は理緒が動けないのを見て刀を抜き、斬り殺そうと迫る。 理緒の頭にあるのは―― (あたしはここで斬り殺されて終わるの?でも不思議。そんな感じが全然しない) 危機が目の前に迫っているというのに、なぜか浮かびあがる安堵感。 まるで“運命”がそう語っているかのような。 (おかしい、あたしは“死ぬ”――“死なない” これは何?この――) あたしが“操り人形”になっている感覚―――― その予告じみた“運命”の通り。 竹内理緒は死ななかった。 「おい」 理緒の耳に届くのは男――自分と同じくらいの年代の声だろうか、声に若さを感じる。 「何やってんだよ、ちびっ子苛めて」 声の発せられた方を見ると黒のブレザーを着て、顔は不機嫌そうで。 「あんたにとっちゃあ俺はお邪魔なんだろうが」 それでも不機嫌そうな表情とは裏腹に優しさを感じさせる声。 「人吉善吉だ。止めるぜ、あんたを」 そう名乗って斗貴子に向かっていった。 ◆ ◆ ◆ 金属音が鳴り響く。戦いの、殺し合いの音が小刻みに辺りを支配する。 「おらっ!」 「はあっ!」 津村斗貴子、人吉善吉――――二人の少年少女が武器を持ち争っている。 斗貴子は刀を。善吉は左手には手甲を。 「これで!」 斗貴子は突き、薙ぎ払いと高速の勢いで斬撃を繰り出す。 全ては人の命を一撃で刈り取れる代物。 だがそれを。 「はっ!遅いよ、あんた。この程度なら……」 善吉は意にでも返さない。 突きを手甲をつけた左手で弾き、薙ぎ払いを何もつけていない右手でなめらかに受け流す。 「めだかちゃんの方が数倍速いんだよ!」 そして、右足で渾身の蹴りを斗貴子の腹目がけて繰り出す。 当たったら一撃で地に沈むように重い一撃。 「お前の方こそ……遅いんだよ!」 斗貴子は咄嗟に後ろに跳ぶことで蹴りを悠々と躱す。 善吉は再び駆ける。先手必勝と言わんばかりに、斗貴子の懐に潜り右手でアッパーを放つ。 「その程度で、私を打倒出来るとでも?」 斗貴子は安々とアッパーを躱し、刀で首を刈ろうと刃を走らせる。 だがその一撃は惜しくも空を切り、首を刈るまでにはいかない。 「おい、お前何ぼさっとしてんだよ、速く逃げろ!」 「すいません足をくじいてしまって」 「だったら匍ってでも行け!俺だっていつまでも守ってらんねぇぞ!」 「余裕じゃないか、私を相手によそ見などとはな」 善吉が理緒に意識を向けた僅かの間、斗貴子は善吉の顎めがけて掌底で叩き上げる。 「――!」 声をあげる暇もなかった。善吉はそのまま吹っ飛び理緒の横に堕ちる。 (なんて威力だよ。こいつただのちょっと武道とかやってる女子高校生じゃねえぞ) 追撃。刃による振り下ろし。死がもうすぐやってくる。 おいおいここで終わるのか――いいや、まだだ。終わらせない。 「てめえのほうこそ、余裕ぶっこいてんじゃねえ!!!!」 振り下ろしが善吉の身体を裂く前に。 動く。 「なっ!」 善吉は旋転しながら振下ろしを避けて刀の側面を全力で蹴りつける! ガキン、と鉄が折れる音があたりに響いた。 「これで武器はなくなったぜ!」 善吉の蹴撃により刀身は折れてもはや使い物にならない。 斗貴子は一旦後退しようとするが。 「逃がさねえ」 善吉は再び右足での渾身の蹴りを叩きつける。 腕を交差してなんとか直撃を避けた斗貴子だがその威力に押されて吹っ飛んだ。 そのまま地面にゴミのように転がり動かない。 もう起き上がる気配はなく終りの空気があたりに漂う。 「おい大丈夫か」 「は、はい。どうもありがと……!?」 理緒の言葉が途中で止まる。 そしてなにか信じられない物を見るかのような顔を―― 「――ぁ」 それに数瞬遅れて善吉も振りかえる。理緒と同じように先程までの余裕の表情が一瞬にして霧散した。 「なっ!?」 「効いたよ。なかなかの一撃だった」 そこにいたのは幽鬼のように立つ津村斗貴子だった。殺気は消え去り、静かな空気が辺りに蔓延する。 表情は何も感じさせない無。 「最初だからいろいろと温存しておこうだとか」 ヤバイ。これはヤバイ。 理緒と善吉は怖気のような感触を斗貴子から感じた。 「せめて安らかに死なせてやろうとか」 善吉は理緒を抱えて今すぐにでも逃げ出そうと駆け出す。 「もう止めだ。お前ら二人とも――」 斗貴子がそう言ってデイバッグから取り出したものは。 「臓物をブチ撒けろ!」 その言葉と同時に善吉は全力で横に跳ぶ。 その一秒後、善吉がさっきまでいた場所を銃弾が蹂躙した。 斗貴子の手にあるのは無骨な突撃銃。アーマライトAR18。 「ちくしょう!?あんなの相手に真正面からやれるかよ」 その言葉を捨て台詞として跳んだ勢いそのままに善吉はすぐそばにあったビルに入った。 斗貴子が銃を使い慣れてないのか運がいいのかわからないが銃弾は奇跡的にも善吉達に一発も当たらなかった。 「っ!一発も当たらないとは。まあいいさ。このビルの中に追いつめた。ゆっくりと狩ろうじゃないか」 マガジンを交換して斗貴子は善吉達の逃げたビルに入る。 急がず慌てず冷静に。慢心はもうない。 「カズキ……こんなことぐらいしかできない私を許してくれ」 再び“鬼ごっこ”が始まった。 ◆ ◆ ◆ 「……なかなか広いな」 斗貴子はビルの三階にいた。隅々まで探しているため上の階に登るのが遅くなっているためにそれなりの時間が過ぎてしまっている。 だが、この“鬼ごっこ”にも転機が訪れる。 この三階もあらかた調べ終わって次の階へ行こうかと考えていたその時。 「っ、何だこれは!」 ビルの中の火災報知器の大きなベルの音が鳴り響いた。 ジリリリリとやかましいくらいに鳴り続ける。 「今度は……水か」 ベルのうるさい音と同時に襲来したのは上から降りかかる水。 火災報知器によって天井にあるスプリンクラーが発動したのだ。 「冷たい……!まふざけた嫌がらせをしてくれるじゃないか奴等」 斗貴子を水の雨が襲う。まるで傘もささずに台風の吹き荒れる外にいるかのようだ。 あっという間に全身びしょ濡れになってしまった。 「殺してやる。臓物を盛大にブチ撒けてグシャグシャにしてやる」 そして斗貴子は上へ上へ登っていく。 善吉達を一刻も早く見つけて殺すために。その“鬼ごっこ”は突然の終焉を迎えた。 「よお」 「!?」 突然の陽気な声。まるで親友に挨拶するかのような気軽な口調で。 人吉善吉が現れた。 「ほう、わざわざ殺されに来てくれたか。あの小さな女の子は?」 「さあ?」 「ふざけるな、ヤケになったのか。お前の命を握っているのは私だぞ?」 斗貴子はアーマライトAR18の銃口を善吉に向けて威嚇する。いつでも撃てるように安全装置も外した。 これでチェック。この場は津村斗貴子が支配している。 斗貴子の頭の中にはすでに善吉を殺すシュミレートが出来ていた。 「それよりさ」 「何だ、命乞いか?それならもう……」 「違う。一つ聞きたいことがあってさ。アンタ、こんな殺し合いの場でも落ち着いていられる胆力に加えて、戦闘もできる。 それなのになぜあいつら……主催者に反抗しない?」 「……」 善吉の問いに斗貴子は沈黙で答え、そのまま数秒過ぎる。 「やっぱ、自分が生き残りたいから「違う!!そんなくだらない理由じゃない!!!」……っ。 じゃあ何だよ」 そして再び数秒過ぎ、沈黙が二人を包む。二人の耳に入るのはスプリンクラーから吐き出される雨の音のみ。 善吉が何か言葉を発しようとしたその時。斗貴子がポツリと声を出した。 「大切な……私の命を投げ売ってでも守りたい人がいる。そのバカはお人好しでな。 どんな奴も無条件で信じようとする。……そいつを死なせたくない!……ただそれだけだ」 斗貴子の小さな声は段々と大きくなり、善吉にはそれは哭くような悲しい声色に聞こえた。 「……主催者に抗う?私達は既に命を奴等に握られているんだぞ?それに私達をさらう手際の良さ。 勝てると思うか?私は思わない。だったらいくら悔しくても乗るしかないだろう!! 文句など言わせない。私だって必死に考えたんだ。それで、この道を選んだのだから」 「……そうかよ」 斗貴子の言葉を善吉は静かに返す。説得は今は不可能。そう悟った。 「じゃあ俺はあんたを倒す。生憎とあきらめが悪いんだよ、俺は。 こんなところで死ねない。あのふざけたおばさんに一発かますまではな」 「勇ましいな、だがそれは無理だ。お前はここで死ぬんだからな」 「だから言っただろ……」 瞬間。 「一発かますまで死ねないって!」 善吉が斗貴子に向けて走り出した。斗貴子は冷静に銃口を善吉の胸に向けて、トリガーを引く。 それで終わり。善吉は弾丸に貫かれて死ぬ、そして理緒をいぶり出して殺す。 だがその考えは粉々に打ち砕かれた。 「な!?なぜ弾がでない!!」 斗貴子の持つ突撃銃、アーマライトAR18は何の動きも示さない。 銃弾がでない、なぜ? さっきまでは使えたはずなのに、なぜ? 「何でだ、何で出ない!!!くそっ!!!!」 斗貴子は子供がわめき散らすように叫ぶ。その間にも善吉は斗貴子の元へ勢いよく迫って来る。 「くそっ!」 斗貴子は使えない突撃銃を捨てて迎撃しようとするが。 「もう遅い」 善吉は懐に入り、黒い何かを斗貴子の腹部に押し当てる。 「しばらく寝てろ、そんで頭冷やせ」 バチッ、と小さな音が鳴った。 斗貴子は腹部に当てられた黒い何かによる痛みに苦悶の声を上げて気絶した。 ◆ ◆ ◆ ここで時は少し前に戻そう。 まだスプリンクラーの雨が吹き荒れる前のビルの中。善吉と理緒は二人で相談をしていた。 「このビルは十三階建てか、不吉な数字だ。どっかの会社みてえだけど今はそんなことより――」 「はい、そのようですね。善吉さんすぐにあの人はやってきます、早々に戦略を立てないと」 二人は斗貴子を何とか撃退するためにどう動くべきか思考を重ねている。 (おいおいどうするよ、あれ。あんなのに立ち向かえるか! 拳銃ならともかくあんな突撃銃だと蹴り飛ばす前に蜂の巣になっちまう) 善吉の内心は焦りでいっぱいだった。 かっこをつけてみたはいいが、やっぱり失敗したかなどと考えがネガティブの方向へ向かってしまう。 自分は普通の男子高校生なのだ。幼なじみの黒神めだかとは違うんだ。 ただの凡人には荷が重すぎるだよ、と善吉は自嘲する。 「善吉さん」 「ん?何だ理緒ちゃん?」 「何だじゃないですよ、戦略を立てなくちゃって言ったじゃないですか。 それと理緒ちゃんとか子供扱いしないで下さい!これでも高校二年生です!」 「本当に?」 「冗談でこんなこと言いますか。こーすけ君といい亮子ちゃんといい。善吉さんも! そんなにあたしは子供に見えますか!ロリですか!」 「まぁ落ち着けって。そんなことどうでもいいじゃんか」 「どうでもよくありません!」 理緒はむすっとした顔で善吉を見る。 くりっとした目に子供のような愛らしい顔、身体も発育途中の小さな体。 これで高校二年生とは何の冗談だと善吉は苦笑する。 こんな時じゃなければかわいいものだとか笑って考えれるが今はそんな状況ではない。 命がかかっているんだ。 頭の中の余計な思考をやめて理緒とこれからについて相談する。 「わかってるって。竹内は高校二年生、そうだろ?」 「何度も言ってるじゃないですか、ってこんな口論してる暇はありません。 戦略ですよ、戦略。速く考えないとあたし達二人とも血の海に沈みますよ」 「縁起でもないこというなよ。だけどよ戦略っていっても奴がどうするんだ。 俺の支給品にはあんな突撃銃に太刀打ちできる物はないぞ。 さすがにこの篭手じゃあ無理だ」 そう言って善吉は腕を振り上げて理緒に篭手を見せる。 「これ……何です?かなり大きくて、面白い形状をしてますね」 「リボルバーナックルって言うらしい。 何かストレージデバイスだの何だかんだ書いてあったが役に立ちそうもない。 他には……これだ。奴を無効化出来るかもしれねえけど……」 デイバッグからとり出されたのはスタンガン。 近づいてこれを使えば相手を気絶させられることが出来るかもしれないが、そもそも近づくことができないのだ。意味はない。 「あたしもこんなのしか……」 理緒が出したのもあまり戦闘に向くものではなかった。当然突撃銃相手には何の役にも立たない。 (だめだだめだめだめだ!これじゃあ勝てねえ。やっぱりあの女が来るのを見計らってどっかに隠れてる。 階段近くとかがいい。そしてあいつが出てきた瞬間に強襲……いや、リスクが大きすぎる!) 強襲作戦はリスクがあまりにも大きすぎる。故に善吉は頭の中で却下とし、ゴミ箱行きを決める。 (うまく隠れて、あの人が隙を見せているうちに階段に全速力で向かって逃げる…… こんなの戦略ですらない。分が悪すぎるよ、本当) 理緒もいろいろと考えるがどれも現実味のないもので成功する可能性も低い。 (俺達二人があいつをなんとか撃退出来る方法) (あの銃をかいくぐれる何か……) 二人は押し黙って自分の世界に入る。生きてこの場を抜けるための策を深く考えるために。 (つーか銃をどうにかしないと始まらないだろ。あの銃さえなければ) (銃を封じるだけじゃ駄目だ。あの人は近接戦闘もできる。それに善吉さんの蹴りを受けて立っていられる人だ。 仮定としてまず銃を封じたとする。何か一撃で意識を刈り取れるのは……) さらに考える。考える、考える。 (ああいう銃の弱点は水だ。水に浸れば動作不良を起こして銃弾が発射されないはずだ。 だがここに水はない。飲み水でも使うか?) (スタンガンなら……!でもこれ程度で気絶するとは思えない。 水でもかければ電気が良く通って効くと思うけど) 考えろ、考えろ考えろ!頭をフル回転させてどう動くべきかをさらにさらに考える!! 水を安全に相手にかけるには…… ――――思いついた。 ◆ ◆ ◆ 「はぁ、疲れた」 そして今に至る。善吉達の考えた戦略は簡単なものだ。 火災報知器を鳴らし、スプリンクラーを発動させる。上から降る水によって銃はびしょ濡れになり動作不良を起こす。 斗貴子自身も水に濡れることによってスタンガンの通りもよくなる。 これだけだ。 理緒は足の怪我の都合で別の安全な場所で待機している。善吉が出てきても足手纏いになるだけだと言ったためだ。 「さて、竹内のところにでも戻るかな。こいつが起きる前にさっさと逃げねえと」 善吉は身を翻し、理緒のいる場所に戻ろうと歩き出した。 「……ズ…………に」 小さな囁きのような声。 「………ズキ…………めに」 善吉は気づかない。 「……ズキのために」 斗貴子が勢いよく起き上がり善吉に弾丸のような速さで駆ける。 「カズキのために!貴様を殺す!!」 やっと善吉が気づいた。 「!?」 そして半ば無意識に“左腕”で横一閃に振り抜いてしまった。 それは鬱陶しい虫を払うかのように。 「え?」 グシャッ、と肉が潰れる音が響いた。 (コワレモノ~血飛沫に嗤え~)へ
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「はぁっ、はぁっ」 夜のオフィス街。普段なら静寂が支配するはずだがこの場は違う。 断続的に吐かれる息の音と地面を踏む足音。 その音を出す原因――それは二人の少女の“鬼ごっこ”。 竹内理緒は逃げていた。この夜の街を全速力で疾走して、時には後ろをふり返りながら。 ツインテールがゆらゆらと揺れる。髪が乱れに乱れてしまったがそんなのを気にしている余裕はない。 「抵抗はしないほうがいい」 後ろから追いかけてくる外敵はセーラー服の少女。鼻より少し上に横一文字に残っている傷が印象的だ。 津村斗貴子。“錬金の戦士”として活動していた少女、だが今は逃亡の身であり“錬金の戦士”とも敵対している。 「大人しく殺されろ!」 斗貴子はこのゲームを即座に理解し、自分の取るべき方針を決めた。 それは。 「……カズキのためなんだ。剛太でさえ殺さなくちゃいけないんだ。 私は――カズキをこのゲームで優勝させるって決めたんだ」 逃げている理緒には聞こえない小さな声でぼそっと斗貴子は言葉を吐いた。 もう斗貴子の意志に迷いはない。 ただ殺すために。目の前で逃げ回っている無力な少女を殺すために。 駆ける! (やばいな、これは。逃げ切れない) 一方、理緒は逃げながらも頭の中では冷静に分析をしていた。 ブレードチルドレンで破壊の魔女と呼ばれるのは伊達ではない。 有事の時の判断力に加えて行動力の高さ、どれをとっても常人より遥か上に位置している。 だがその理緒であっても今の状況は厳しいと言える。 理緒は再び後ろを振り返って斗貴子を見る。 「……っ!」 まだついてきている、逃げ切れない、と理緒は苦い表情を作り舌打ちをする。 (いきなり襲われたから武器の確認もしてないあたしに比べて…… あっちはあの腰に下げている刀、あれ一つでも十分脅威。八方塞がりだね) 武器の優劣の差。素手と得物が有るのとでは訳が違う。 それはどうあがいても揺るがないものであり、理緒が明らかに不利だと言うことを物語っている。 だから理緒は走る。下手に何かをするよりは逃亡した方が生きのこれる確率が上がると判斷したためだ。 (全然振り切れないなんて。ホント、嫌になっちゃう) だが理緒の誤算は斗貴子を普通の女子高校生だと思ったことだ。 斗貴子は“錬金の戦士”として訓練していたこともありそこらの一般人とは違うのだ。 そして“鬼ごっこ”は唐突に終わりを告げる。 「はうっ!」 理緒が転んでしまうことで。即座に起き上がろうとするが、 (足を捻った?どうしてこんな時に!) 起き上がろうとしても起き上がれない。そのために必然と歩みはそこで止まる。 「好機……だな」 斗貴子は理緒が動けないのを見て刀を抜き、斬り殺そうと迫る。 理緒の頭にあるのは―― (あたしはここで斬り殺されて終わるの?でも不思議。そんな感じが全然しない) 危機が目の前に迫っているというのに、なぜか浮かびあがる安堵感。 まるで“運命”がそう語っているかのような。 (おかしい、あたしは“死ぬ”――“死なない” これは何?この――) あたしが“操り人形”になっている感覚―――― その予告じみた“運命”の通り。 竹内理緒は死ななかった。 「おい」 理緒の耳に届くのは男――自分と同じくらいの年代の声だろうか、声に若さを感じる。 「何やってんだよ、ちびっ子苛めて」 声の発せられた方を見ると黒のブレザーを着て、顔は不機嫌そうで。 「あんたにとっちゃあ俺はお邪魔なんだろうが」 それでも不機嫌そうな表情とは裏腹に優しさを感じさせる声。 「人吉善吉だ。止めるぜ、あんたを」 そう名乗って斗貴子に向かっていった。 ◆ ◆ ◆ 金属音が鳴り響く。戦いの、殺し合いの音が小刻みに辺りを支配する。 「おらっ!」 「はあっ!」 津村斗貴子、人吉善吉――――二人の少年少女が武器を持ち争っている。 斗貴子は刀を。善吉は左手には手甲を。 「これで!」 斗貴子は突き、薙ぎ払いと高速の勢いで斬撃を繰り出す。 全ては人の命を一撃で刈り取れる代物。 だがそれを。 「はっ!遅いよ、あんた。この程度なら……」 善吉は意にでも返さない。 突きを手甲をつけた左手で弾き、薙ぎ払いを何もつけていない右手でなめらかに受け流す。 「めだかちゃんの方が数倍速いんだよ!」 そして、右足で渾身の蹴りを斗貴子の腹目がけて繰り出す。 当たったら一撃で地に沈むように重い一撃。 「お前の方こそ……遅いんだよ!」 斗貴子は咄嗟に後ろに跳ぶことで蹴りを悠々と躱す。 善吉は再び駆ける。先手必勝と言わんばかりに、斗貴子の懐に潜り右手でアッパーを放つ。 「その程度で、私を打倒出来るとでも?」 斗貴子は安々とアッパーを躱し、刀で首を刈ろうと刃を走らせる。 だがその一撃は惜しくも空を切り、首を刈るまでにはいかない。 「おい、お前何ぼさっとしてんだよ、速く逃げろ!」 「すいません足をくじいてしまって」 「だったら匍ってでも行け!俺だっていつまでも守ってらんねぇぞ!」 「余裕じゃないか、私を相手によそ見などとはな」 善吉が理緒に意識を向けた僅かの間、斗貴子は善吉の顎めがけて掌底で叩き上げる。 「――!」 声をあげる暇もなかった。善吉はそのまま吹っ飛び理緒の横に堕ちる。 (なんて威力だよ。こいつただのちょっと武道とかやってる女子高校生じゃねえぞ) 追撃。刃による振り下ろし。死がもうすぐやってくる。 おいおいここで終わるのか――いいや、まだだ。終わらせない。 「てめえのほうこそ、余裕ぶっこいてんじゃねえ!!!!」 振り下ろしが善吉の身体を裂く前に。 動く。 「なっ!」 善吉は旋転しながら振下ろしを避けて刀の側面を全力で蹴りつける! ガキン、と鉄が折れる音があたりに響いた。 「これで武器はなくなったぜ!」 善吉の蹴撃により刀身は折れてもはや使い物にならない。 斗貴子は一旦後退しようとするが。 「逃がさねえ」 善吉は再び右足での渾身の蹴りを叩きつける。 腕を交差してなんとか直撃を避けた斗貴子だがその威力に押されて吹っ飛んだ。 そのまま地面にゴミのように転がり動かない。 もう起き上がる気配はなく終りの空気があたりに漂う。 「おい大丈夫か」 「は、はい。どうもありがと……!?」 理緒の言葉が途中で止まる。 そしてなにか信じられない物を見るかのような顔を―― 「――ぁ」 それに数瞬遅れて善吉も振りかえる。理緒と同じように先程までの余裕の表情が一瞬にして霧散した。 「なっ!?」 「効いたよ。なかなかの一撃だった」 そこにいたのは幽鬼のように立つ津村斗貴子だった。殺気は消え去り、静かな空気が辺りに蔓延する。 表情は何も感じさせない無。 「最初だからいろいろと温存しておこうだとか」 ヤバイ。これはヤバイ。 理緒と善吉は怖気のような感触を斗貴子から感じた。 「せめて安らかに死なせてやろうとか」 善吉は理緒を抱えて今すぐにでも逃げ出そうと駆け出す。 「もう止めだ。お前ら二人とも――」 斗貴子がそう言ってデイバッグから取り出したものは。 「臓物をブチ撒けろ!」 その言葉と同時に善吉は全力で横に跳ぶ。 その一秒後、善吉がさっきまでいた場所を銃弾が蹂躙した。 斗貴子の手にあるのは無骨な突撃銃。アーマライトAR18。 「ちくしょう!?あんなの相手に真正面からやれるかよ」 その言葉を捨て台詞として跳んだ勢いそのままに善吉はすぐそばにあったビルに入った。 斗貴子が銃を使い慣れてないのか運がいいのかわからないが銃弾は奇跡的にも善吉達に一発も当たらなかった。 「っ!一発も当たらないとは。まあいいさ。このビルの中に追いつめた。ゆっくりと狩ろうじゃないか」 マガジンを交換して斗貴子は善吉達の逃げたビルに入る。 急がず慌てず冷静に。慢心はもうない。 「カズキ……こんなことぐらいしかできない私を許してくれ」 再び“鬼ごっこ”が始まった。 ◆ ◆ ◆ 「……なかなか広いな」 斗貴子はビルの三階にいた。隅々まで探しているため上の階に登るのが遅くなっているためにそれなりの時間が過ぎてしまっている。 だが、この“鬼ごっこ”にも転機が訪れる。 この三階もあらかた調べ終わって次の階へ行こうかと考えていたその時。 「っ、何だこれは!」 ビルの中の火災報知器の大きなベルの音が鳴り響いた。 ジリリリリとやかましいくらいに鳴り続ける。 「今度は……水か」 ベルのうるさい音と同時に襲来したのは上から降りかかる水。 火災報知器によって天井にあるスプリンクラーが発動したのだ。 「冷たい……!まふざけた嫌がらせをしてくれるじゃないか奴等」 斗貴子を水の雨が襲う。まるで傘もささずに台風の吹き荒れる外にいるかのようだ。 あっという間に全身びしょ濡れになってしまった。 「殺してやる。臓物を盛大にブチ撒けてグシャグシャにしてやる」 そして斗貴子は上へ上へ登っていく。 善吉達を一刻も早く見つけて殺すために。その“鬼ごっこ”は突然の終焉を迎えた。 「よお」 「!?」 突然の陽気な声。まるで親友に挨拶するかのような気軽な口調で。 人吉善吉が現れた。 「ほう、わざわざ殺されに来てくれたか。あの小さな女の子は?」 「さあ?」 「ふざけるな、ヤケになったのか。お前の命を握っているのは私だぞ?」 斗貴子はアーマライトAR18の銃口を善吉に向けて威嚇する。いつでも撃てるように安全装置も外した。 これでチェック。この場は津村斗貴子が支配している。 斗貴子の頭の中にはすでに善吉を殺すシュミレートが出来ていた。 「それよりさ」 「何だ、命乞いか?それならもう……」 「違う。一つ聞きたいことがあってさ。アンタ、こんな殺し合いの場でも落ち着いていられる胆力に加えて、戦闘もできる。 それなのになぜあいつら……主催者に反抗しない?」 「……」 善吉の問いに斗貴子は沈黙で答え、そのまま数秒過ぎる。 「やっぱ、自分が生き残りたいから「違う!!そんなくだらない理由じゃない!!!」……っ。 じゃあ何だよ」 そして再び数秒過ぎ、沈黙が二人を包む。二人の耳に入るのはスプリンクラーから吐き出される雨の音のみ。 善吉が何か言葉を発しようとしたその時。斗貴子がポツリと声を出した。 「大切な……私の命を投げ売ってでも守りたい人がいる。そのバカはお人好しでな。 どんな奴も無条件で信じようとする。……そいつを死なせたくない!……ただそれだけだ」 斗貴子の小さな声は段々と大きくなり、善吉にはそれは哭くような悲しい声色に聞こえた。 「……主催者に抗う?私達は既に命を奴等に握られているんだぞ?それに私達をさらう手際の良さ。 勝てると思うか?私は思わない。だったらいくら悔しくても乗るしかないだろう!! 文句など言わせない。私だって必死に考えたんだ。それで、この道を選んだのだから」 「……そうかよ」 斗貴子の言葉を善吉は静かに返す。説得は今は不可能。そう悟った。 「じゃあ俺はあんたを倒す。生憎とあきらめが悪いんだよ、俺は。 こんなところで死ねない。あのふざけたおばさんに一発かますまではな」 「勇ましいな、だがそれは無理だ。お前はここで死ぬんだからな」 「だから言っただろ……」 瞬間。 「一発かますまで死ねないって!」 善吉が斗貴子に向けて走り出した。斗貴子は冷静に銃口を善吉の胸に向けて、トリガーを引く。 それで終わり。善吉は弾丸に貫かれて死ぬ、そして理緒をいぶり出して殺す。 だがその考えは粉々に打ち砕かれた。 「な!?なぜ弾がでない!!」 斗貴子の持つ突撃銃、アーマライトAR18は何の動きも示さない。 銃弾がでない、なぜ? さっきまでは使えたはずなのに、なぜ? 「何でだ、何で出ない!!!くそっ!!!!」 斗貴子は子供がわめき散らすように叫ぶ。その間にも善吉は斗貴子の元へ勢いよく迫って来る。 「くそっ!」 斗貴子は使えない突撃銃を捨てて迎撃しようとするが。 「もう遅い」 善吉は懐に入り、黒い何かを斗貴子の腹部に押し当てる。 「しばらく寝てろ、そんで頭冷やせ」 バチッ、と小さな音が鳴った。 斗貴子は腹部に当てられた黒い何かによる痛みに苦悶の声を上げて気絶した。 ◆ ◆ ◆ ここで時は少し前に戻そう。 まだスプリンクラーの雨が吹き荒れる前のビルの中。善吉と理緒は二人で相談をしていた。 「このビルは十三階建てか、不吉な数字だ。どっかの会社みてえだけど今はそんなことより――」 「はい、そのようですね。善吉さんすぐにあの人はやってきます、早々に戦略を立てないと」 二人は斗貴子を何とか撃退するためにどう動くべきか思考を重ねている。 (おいおいどうするよ、あれ。あんなのに立ち向かえるか! 拳銃ならともかくあんな突撃銃だと蹴り飛ばす前に蜂の巣になっちまう) 善吉の内心は焦りでいっぱいだった。 かっこをつけてみたはいいが、やっぱり失敗したかなどと考えがネガティブの方向へ向かってしまう。 自分は普通の男子高校生なのだ。幼なじみの黒神めだかとは違うんだ。 ただの凡人には荷が重すぎるだよ、と善吉は自嘲する。 「善吉さん」 「ん?何だ理緒ちゃん?」 「何だじゃないですよ、戦略を立てなくちゃって言ったじゃないですか。 それと理緒ちゃんとか子供扱いしないで下さい!これでも高校二年生です!」 「本当に?」 「冗談でこんなこと言いますか。こーすけ君といい亮子ちゃんといい。善吉さんも! そんなにあたしは子供に見えますか!ロリですか!」 「まぁ落ち着けって。そんなことどうでもいいじゃんか」 「どうでもよくありません!」 理緒はむすっとした顔で善吉を見る。 くりっとした目に子供のような愛らしい顔、身体も発育途中の小さな体。 これで高校二年生とは何の冗談だと善吉は苦笑する。 こんな時じゃなければかわいいものだとか笑って考えれるが今はそんな状況ではない。 命がかかっているんだ。 頭の中の余計な思考をやめて理緒とこれからについて相談する。 「わかってるって。竹内は高校二年生、そうだろ?」 「何度も言ってるじゃないですか、ってこんな口論してる暇はありません。 戦略ですよ、戦略。速く考えないとあたし達二人とも血の海に沈みますよ」 「縁起でもないこというなよ。だけどよ戦略っていっても奴がどうするんだ。 俺の支給品にはあんな突撃銃に太刀打ちできる物はないぞ。 さすがにこの篭手じゃあ無理だ」 そう言って善吉は腕を振り上げて理緒に篭手を見せる。 「これ……何です?かなり大きくて、面白い形状をしてますね」 「リボルバーナックルって言うらしい。 何かストレージデバイスだの何だかんだ書いてあったが役に立ちそうもない。 他には……これだ。奴を無効化出来るかもしれねえけど……」 デイバッグからとり出されたのはスタンガン。 近づいてこれを使えば相手を気絶させられることが出来るかもしれないが、そもそも近づくことができないのだ。意味はない。 「あたしもこんなのしか……」 理緒が出したのもあまり戦闘に向くものではなかった。当然突撃銃相手には何の役にも立たない。 (だめだだめだめだめだ!これじゃあ勝てねえ。やっぱりあの女が来るのを見計らってどっかに隠れてる。 階段近くとかがいい。そしてあいつが出てきた瞬間に強襲……いや、リスクが大きすぎる!) 強襲作戦はリスクがあまりにも大きすぎる。故に善吉は頭の中で却下とし、ゴミ箱行きを決める。 (うまく隠れて、あの人が隙を見せているうちに階段に全速力で向かって逃げる…… こんなの戦略ですらない。分が悪すぎるよ、本当) 理緒もいろいろと考えるがどれも現実味のないもので成功する可能性も低い。 (俺達二人があいつをなんとか撃退出来る方法) (あの銃をかいくぐれる何か……) 二人は押し黙って自分の世界に入る。生きてこの場を抜けるための策を深く考えるために。 (つーか銃をどうにかしないと始まらないだろ。あの銃さえなければ) (銃を封じるだけじゃ駄目だ。あの人は近接戦闘もできる。それに善吉さんの蹴りを受けて立っていられる人だ。 仮定としてまず銃を封じたとする。何か一撃で意識を刈り取れるのは……) さらに考える。考える、考える。 (ああいう銃の弱点は水だ。水に浸れば動作不良を起こして銃弾が発射されないはずだ。 だがここに水はない。飲み水でも使うか?) (スタンガンなら……!でもこれ程度で気絶するとは思えない。 水でもかければ電気が良く通って効くと思うけど) 考えろ、考えろ考えろ!頭をフル回転させてどう動くべきかをさらにさらに考える!! (*1) ――――思いついた。 ◆ ◆ ◆ 「はぁ、疲れた」 そして今に至る。善吉達の考えた戦略は簡単なものだ。 火災報知器を鳴らし、スプリンクラーを発動させる。上から降る水によって銃はびしょ濡れになり動作不良を起こす。 斗貴子自身も水に濡れることによってスタンガンの通りもよくなる。 これだけだ。 理緒は足の怪我の都合で別の安全な場所で待機している。善吉が出てきても足手纏いになるだけだと言ったためだ。 「さて、竹内のところにでも戻るかな。こいつが起きる前にさっさと逃げねえと」 善吉は身を翻し、理緒のいる場所に戻ろうと歩き出した。 「……ズ…………に」 小さな囁きのような声。 「………ズキ…………めに」 善吉は気づかない。 「……ズキのために」 斗貴子が勢いよく起き上がり善吉に弾丸のような速さで駆ける。 「カズキのために!貴様を殺す!!」 やっと善吉が気づいた。 「!?」 そして半ば無意識に“左腕”で横一閃に振り抜いてしまった。 それは鬱陶しい虫を払うかのように。 「え?」 グシャッ、と肉が潰れる音が響いた。 (コワレモノ~血飛沫に嗤え~)へ
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(コワレモノ~血飛沫に狂え~)へ 斗貴子の身体がフラッと倒れる。 「え、あ、」 自分の左手を見て善吉は驚愕した。 血と肉が染み付いている。 次に斗貴子を見る。顔が潰れている。そこにあるはずの顔がただの肉の塊。 脳みそがピューピュー出ていて、辺りを赤で染める。 血の特有の鉄臭い匂いも広がる。 「俺が……殺した?」 善吉は決して殺してやろうなんて考えていなかった。ただ、斗貴子が迫ってきて。 敵意を感じて思わず腕を振り抜いた。 だが結果はこれだ。鉄の塊であるリボルバーナックルを全力で振り抜いたらこうなることぐらい善吉にもわかるはずだ。 それでも振り抜いてしまったものは振り抜いてしまったのだ。 時間は戻るわけもなく、そこには血で濡れた一つの肉塊と一人の哀れな青年が残った。 「あ、ああああ、ああ」 ――――掠れた声が出る。あれおかしいな、声でねえよ。どうした声帯壊れてんのか。 嘘だよな、俺殺してないよな!ほらお前も起きろよなぁ。おい起きろよ起きて嘘だと言ってくれ。 揺すっても揺すっても揺すっても起きない……。赤い液体が顔に降りかかるな。なんだよこの塗料臭いな。 ベチャッとした肉もついてるし。気持ち悪い―――― でも残念。その幻想は現実。 「――――」 ――――認めちまえよ、お前は。人吉善吉は―――― 「ち、がっ!俺はっ!」 “人殺しなんだよ” そんな声が善吉の耳に入った。 「あああああああ、ああああぁぁああ、ああァあ嗚呼ァああ、あああ、ぁああぁ!!!!」 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し! 「やめてくれ!俺は、おれは……何も悪くねえ!!!! 俺はただ、後ろから襲いかかれたから振り払っただけだ!」 脳内を駆け巡る人殺しというリフレイン。紅の呪縛が善吉を攻め立てる。 「だけど……」 人吉善吉は狂わないでいられるだけの意志の強さがあった。 それ故に狂えない。何も考えなくてすめばどれだけ楽なことか、と善吉は思った。 「俺が……俺が!!!!」 真実は一つだけ。 「殺しちまったんだ」 頭を抱えて、蹲り、何も聞きたくない、見たくない。 目の前のことから目を背けたくて。 人を殺したこと。それが泥のように自分の頭の中にへばりつく。 されど、この恐怖劇は終わらない。 何かが善吉の肩に触れて、そのまま飛んで行った。 数瞬後に善吉は遅れてやってきた痛みに顔をしかめる。 見れば肩に抉れたような傷があるではないか。 何だこれは?まだ敵がいたのか?善吉の頭の中はもはやグチャグチャで何を考えればいいのかさえわからない。 それでも自分を襲った相手の顔を確かめようとうしろを振り向いたその時。 善吉をさらなる衝撃が襲った。 「何でだよ……」 自分でもびっくりするくらい小さな声だった。善吉は呆然としながらそんなことを思った。 「竹内……」 そして振り返った廊下の先にいたのは仲間だと思っていた少女――竹内理緒だった。 手には大きなクロスボウを持ち、こちらに向けて射ったところか。 「外しましたか。大型のクロスボウだから手に余りますね」 「お前……最初から俺のこと騙していたのかよ。答えろよ、竹内……」 善吉の言葉がフロア内に木霊する。 嘘だと言ってくれ。質の悪い冗談だってよ、と善吉は泣きそうな顔で呟く。 「ご苦労様でした、あの人を殺していただいて。おかげであたしが危険な綱渡りをしなくてすみました」 「何だと……」 だが返答として返ってきたのは無情な事実。竹内理緒が殺し合いに乗ってるということ。 ただそれだけ。 「騙しててごめんなさい。でも仕方ありませんよね?これは殺し合いなんですから」 善吉が黙っている間も理緒の言葉は続く。 「あたしにもいろいろとあるんですよ、いろいろと」 「…………な……」 「はい?」 掠れたつぶやきのような音が理緒の耳には聞こえた。 スプリンクラーの雨のせいで余り聞き取れなかったが確かに声のようなものが善吉から発せられた。 「……ふ……け……な……」 善吉はふらりと立ち上がり、前を見る。 「ふざけんなよ……」 この言葉に込められた感情は何であろうか。 怒り――――いいえ。 哀しみ――――いいえ。 絶望――――いいえ。 失望――――いいえ。 狂気――――いいえ。 どれも違う。今の善吉に。 人吉善吉の頭の中に存在するのは。 「“どうして”、なんだよ?」 感情が感じれられない無機質な言葉が善吉の口から出る。 無。ひたすらな無。虚無のココロ。 何かが。善吉の大事な境界線が。無くなったような。 理緒はそんなことをふと思った。 「どいつもこいつもよ、殺すのがそんなに好きなのかよ」 淡々と善吉は喋る。理緒はそれを訝しみながらも聞く。 理緒は今すぐ善吉を撃つことは出来る。 クロスボウには矢を装填している。 だができなかった。なぜか、そうしてはいけない気がしたから。 「こいつは護りたいものがあるからみんな殺す。 竹内はいろいろあるから殺す。……何でだよ。どうしてそんな簡単に人を殺すって言えるんだよ」 その言葉は理緒に響いた。そしてとあることを思い出す。 ブレードチルドレン。呪われたヤイバの子供達。 そのブレードチルドレンを排除するために動いていた“ハンター”と争っていた時のことを。 理緒はブレードチルドレンとして、敵対する者を容赦なく殺してきた。 それも仕方はない。殺らねばこちらが殺られるのだから。 だが人を殺したことには偽りはない。 自分の意志で――明確なる意志で殺したのだから。 (あたしは人を殺してきた。あっさりと、時には凄惨に。 だけどそれは簡単だった?違う。それだけはありえない。だって――) 理緒は言う。苦々しく、顔を歪めながら。 「簡単な訳ないじゃないですか……」 「なら、」 「それでも殺さないといけないんです、“希望”を護るために!」 「“希望”を護るため?」 善吉は問う。ということはこいつもとある奴を護るために殺し合いに乗ったのか、と考える。 「そうです。その人は私達の“希望”。呪われたあたし達のたった一つの光」 理緒は語る。呪われた自分達の定めを。そして“希望”の存在の尊さを。 善吉は黙って残酷と言えるブレードチルドレンの“運命”を聞く。 「それで?結局はそいつの、“希望”のためにこのゲームに乗ったってことだろ」 「ええ、あたしは決めたんです、あの人の剣とも盾ともなろうって」 その理緒の一言に善吉は―――― 「アホらしいな」 冷酷に否定した。 「俺にだっているよ。ここに。この島に大切な幼馴染が。俺にとっての“希望”が。 でも、俺が護りたいからなんて言って殺し合いに乗ったらそれこそ本末転倒だ。 めだかちゃんはそんなことされても喜ばない。だから俺は乗らなかった。 だから俺は人を殺すことを否定した」 それでも人を殺しちまったんだけどな、と善吉は呟く。 依然と言葉は淡々としていて、感情めいたものはない。 人を殺してしまい壊れてしまった心の残りカス、その残骸で起動している“人吉善吉”の“ロボット”が喋っているかの様に。 「竹内は“希望”を護るために殺し合いに乗った。 それでその“希望”とやらが死ぬってことも当然考えてんだよな? まさかこのどこよりも危険な島で五体満足で無事でいるとでも思ってんのか」 え?そんな言葉が理緒の口から漏れた。その考えは予想外で考えもしなかった。 それは理緒が無意識に頭の奥に仕舞っていたこと。 そして考えたくもなかったこと。 “希望”である鳴海歩が―――― 「もう死んでるかもしれないぜ、な」 「そんなことありません!彼は!弟さんは死にません!!!」 善吉の言葉を遮って理緒は叫ぶ。それだけはあってはならないことだから。 もし鳴海歩が死んだとしたらブレードチルドレンは破滅あるのみだ。 それに自分の決意はどうなる。ここにアイズや浅月などの仲間がいて尚殺し合いに乗ることを決意したのだ。 ただ鳴海歩を護るが為だけに。 「それに救い?ばかじゃねえのか」 理緒が頭の中でぐるぐると思考を重ねている間も善吉は否定の言葉を紡ぐ。 「そんな血まみれで救われるわけねえよ。ただのエゴで人を殺して、よ」 「あ――――」 それは鳴海歩が死ぬことより奥深くに眠って、いや考えてすらいなかったこと。 理緒にとってそんなことは一度も考えたこともなかった。 「でも、それでもあたしは救われたいんです」 救われたい、その一心で理緒は生きてきた。 そして、誰よりも鳴海清隆と鳴海歩を信じてきた、それは狂信とも言えるだろう。 その狂信を捨てることなどできるのだろうか。 否。考えというものはそう簡単に変わるものではない。 ましてやこの極限状態。あらゆる面からみても最悪の環境で有る。 「そうか、もういい。悪いけどさ俺、まだ死にたくねえんだよ」 「奇遇ですね、あたしもです」 二人は向かい合う。互いの距離はそれなりに離れていて飛び道具のある理緒が圧倒的に有利だ。 「この場を切り抜ける。それには、俺は、俺、は。人を殺すしか――」 「……」 自分に無理やり言い聞かせるように善吉は狂ったように独白を続ける。 もうこの人は普通には戻れない、と理緒は思った。 目は濁っていて、浮かべる薄笑いは気持ち悪い。 「だからさ――死んでくれ」 理緒がクロスボウの先を善吉の頭に向け矢を放つ。 それよりも早く善吉が懐から何かを取り出す。 そして理緒がクロスボウのトリガーを引く前に善吉が手に持った何か――スタンガンを理緒に向けて投げる。 理緒はそれにより標準が少しずれた。そのせいで少しずれて矢が飛んでいく。 「……っ!」 矢は狙っていた顔ではなく右肩に突き刺さった。理緒は急いで予備の矢をクロスボウ装填するが。 「残念だったな」 それは遅すぎて。 「い、や」 理緒のもう善吉は楽に殺せるという油断がこの結果を生んだ。 「まだ、死にた」 再び血の華がこの廊下に咲く。 ◆ ◆ ◆ 「俺は……」 善吉はスプリンクラーの雨に濡れながら一人佇んでいた。 足元には先程まで生きていた竹内理緒の成れの果て。 顔は斗貴子と同じように潰れて原型をなさない。 「殺したんだ。あいつはともかく、竹内は純然な意志で」 そういってこの廊下に転がる二つの死体を見る。 ――眼に刻め。これはお前がやったんだ、人殺し。今更善人ぶるな―― ――よくも殺してくれたな。生きたかったのに、救われたかったのに―― 善吉の頭の中では微かに残る人を殺したことを咎める常識的な心、殺した二人の恨み声が鳴り響く。 無論、声など実際には聞こえない。それは善吉の被害妄想的なものに過ぎない。 「殺しを許容――受け入れてしまったんだ、俺は」 だが、善吉は心身ともにボロボロだった。 右肩に刺さった矢は丁寧に抜き、制服を引きちぎって無理やり止血したが痛みは残る。 精神的にも普通の高校生では考えられない激動の一時だった。 (狂ってしまったんだろうな、俺は) そう心中つぶやいて、気分を変えようと無理やり笑ってみる。 窓に映った自分の顔は酷く歪んでいた。 いつもの皮肉げな笑みはどこに行ってしまったのだろうか。 「行こう……もう終わったんだ」 善吉は落ちているデイバッグにクロスボウなどを全部拾いこの場所を後にする。 ここにいたら余計なことを考えてしまう。 そして階段をおりビルから外へ出た時ふと考える。 (めだかちゃん……できれば、今は会いたくないな) 心の整理がつかない今、幼馴染の黒神めだかに会ったら余計な心配を絶対にかけてしまう、と善吉は苦笑しながら思う。 (ははっ、こんなことがあった後でもめだかちゃんの事を考えるなんて、馬鹿だな俺は) その時の善吉の顔が少しはましになっていた気がするが、それもすぐに消えて。 再び、歪んだ顔に戻る。 (疲れた。少し……休んでもいいよな) そしてそのままふらっと地面に倒れて善吉の意識は闇へと落ちていく。 だがその前に何かの音が善吉の耳に聞こえた。 (誰だ……どうでもいいか。もう俺、何も考えたくねえ) 今度こそ善吉の意識は闇に落ちていった。 これから人吉善吉は立ち直れるのか。それとも負の螺旋に囚われるのか。 今はまだどちらともいえない。 【竹内理緒@スパイラル ~推理の絆~ 死亡】 【津村斗貴子@武装錬金 死亡】 【H-7/一日目・深夜】 【人吉善吉@めだかボックス】 【状態】気絶、びしょ濡れ、肉体疲労(大)、右肩に刺突痕、右肩上に切り傷、精神崩壊? 【装備】左手用リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのは 【持ち物】 支給品一式×3、スタンガン、アーマライト AR18(使用不能)、予備マガジン×3、 クロスボウ、竹内理緒の不明支給品1~2(銃に立ち向かえる武器はない) 【思考】 0.――――― ※折れた宗像形の日本刀@めだかボックスはビルの前に転がっています。 【宗像形の日本刀@めだかボックス】 宗像形がいつも手に持っている日本刀。 特に何の変哲もない。 【スタンガン】 電圧により相手にショックを与え無力化する道具。暴漢に襲われた際にでも使うのが適切。 当て所が悪ければ当てられた相手は死ぬ可能性もある。 ちなみに携帯型のハンディータイプである。 【アーマライト AR18】 アメリカ、フェアチャイルド社のアーマライト事業部が、アーマライトIncとして独立後の1963年に開発した突撃銃。 製造権をコルト社に売却してしまったAR15に替わる、新たな5.56mm口径ライフルとして、アーサー・ミラーらによって設計された。 作動機構には、オーソドックスなガスピストン方式のガスオペレーションを採用している。 ちなみにこの銃はなぜかどこの国の軍隊にも採用されないというかわいそうな銃でもある。 【左手用リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのは】 ギンガ・ナカジマが左手に装着している非人格式・拳装着型アームドデバイス。 リボルバーナックルが持つオートパーソナライズ機能により、 使用者の身体に合わせたサイズに変化すると同時に、色彩も使用者が設定した色合いに変化することができる。 【クロスボウ】 矢などを発射する武器。拳銃型で大きい。 ◆ ◆ ◆ 「どうするのこれ?」 「そりゃあ、このままにはしない。どこかに運んで治療するさ」 倒れ伏した善吉の前で喋る二人の男女、十六夜咲夜と睦月透真。 二人は銃声が聞こえたので知り合いが襲われてないかと様子を見に来たのだ。 結果、見つけたのは傷付いた人吉善吉だ。 「でもこの子の腕を見なさい、血が付いているわ。 もしこの子がゲームに乗っていたとしたらどうするのよ」 「その時は俺らで止めればいいだろ。それにもし乗ってなかったとしたらどうする。 このまま見捨てろってことかよ」 「はぁ……あなた馬鹿でしょ?」 「馬鹿でいいよ。目の前の人一人救えないで何がゲームからの脱出だ!そんなの認められるかっ!」 咲夜の冷静な指摘にも透真の考えは搖れない。 彼の心の中では善吉を助けることは既に決定事項だ。 「止めても無駄だぞ。俺は一人でもこいつを助ける」 そう言って透真は善吉を背負って歩き出す。 「わっ」 「その子の片方の肩を貸しなさい。二人の方が疲れないでしょ?」 「咲夜……!」 「勘違いしないで。その子が少しでも怪しかったら私は切り捨てるわよ?」 「それでも、ありがとう咲夜」 透真が笑うのに咲夜も仏頂面ながらしっかりと答える。 二人は少しよろけながらもどこか安心して治療ができる場所を探すため夜の闇に消えていった。 【H-7/一日目・深夜】 【睦月透真@操り世界のエトランジェ】 【状態】健康 【装備】 【持ち物】 支給品一式、不明支給品1~3 【思考】 0.善吉をどこか安全に治療できる場所に運ぶ。 1.今は乗らない。 【十六夜咲夜@東方Project】 【状態】健康 【装備】ミセリコルデ 【持ち物】 支給品一式、不明支給品0~2 【思考】 0.善吉をどこか安全に治療できる場所に運ぶ。ただし何かあったらそれなりの対応を取る。 1.今は乗らない。 BACK バベルの階段をあがれ 時系列順 NEXT [[]] BACK バベルの階段をあがれ 投下順 NEXT [[]] GAME START 竹内理緒 GAME OVER GAME START 津村斗貴子 GAME OVER GAME START 人吉善吉 NEXT BACK 糸仕掛けのプレリュード 睦月透真 NEXT BACK 糸仕掛けのプレリュード 十六夜咲夜 NEXT