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天国とは神のおわすことなり ◆JvezCBil8U 暗く、眩い星の海を、硝子の階段が一直線に割っている。 いや、硝子と見えたのは錯覚か。 蛍のような淡く白い光の粒子が、階段の形を描き出しているのだ。 その輪郭は薄らと滲み、虚空の闇へと溶け消えていく。 ここには天も地もない。 ただ黒一色の空間に、彩光の渦が配置されているのみだ。 もしかしたらそれらは星ですらないのかもしれない。 生き物のように細動を繰り返す煌めきは、重力から解き放たれた雪とも呼ぶべき幻想的な光景を見せつけてやまないのだから。 例外は一つ。 何処から続いているとも知れない儚い道、高みへと続く梯子だけ。 その行き着く先に――在り得べからざるモノが現出していた。 本来そこに鎮座しているべき宮殿、あるいは聖堂は、今は白い霧に包まれ姿を隠している。 その霧は、まるで意志を持つかのように感情を大いに表して、昂ぶっていた。 ――しばしの沈黙と蠢き。 そして、不意に。 霧を構成する水滴の一つ一つが、何かを穿つかのように一点に凝集する。 豪風を生む。 天災が降誕する。 凄まじい勢いで、天の果てを貫く。 同時――世界を埋め尽くす雷の帯が、この空間を支配した。 地獄の猛犬の叫びすら赤子の声にも等しく感じられる咆哮が、耳に聞こえる全てとなる。 霧の白と、雷の白。 二つの意志によって生み出された、二つの白。 闇がしばし塗り替えられ、然る後に静寂を取り戻す。 ――何一つ変わらない光景が、ただそこに存在していた。 彼らの試みは大いなる流れに呑み込まれ、塵一つとて残さない。 * シンセサイザーと歌い声のハーモニー。 あるいは、遠目より響く唄への不協和な伴奏。 嵐を呼ぶ風と共に訪れた不意の客。 大きな大きな女性の像の、その作り出す異常な状況に傾注していた4人――いや、3人にとって、闖入してきた電子音は唐突に過ぎた。 ある者は悠然と笑い、 ある者は目を細め、 ある者は口を開け、 三者三様の反応は、目を細めた一人に収束される。 視線を受けてひとまずの治療を終えたゾルフ・J・キンブリーが懐に入れて取り出したるは、2つの携帯電話。 その片割れが、この場で最も避けるべき騒音を奏で続けている。 ――キンブリーに支給された物品の一つこそ、これら一対の携帯電話である。 「う、うわ、うわわわぁ……っ! き、キンブリーさん! それっ、取れっ……じゃなくて、取って下さいっ!」 「はて、『取る』……と言いますと?」 慌てふためく森あいは、そこでようやくキンブリーが『携帯電話』の知識がないという事に思い当たる。 見ればキンブリーは形容しがたい種類の笑みを浮かべ、目の前の物体を矯めつ眇めつしているようだ。 ……このまま放っておけば相手が諦めて電話を切ってしまうかもしれない。 となると、その人に迷惑がかかってしまう。こんな状況で電話をかけてくる程度には友好的な相手が、だ。 それは、この心細い状況で自ら蜘蛛の糸を振り払ってしまうように思えて――、 「ちょ、ちょっと貸して! ……下さいっ!」 仕方なく森は、キンブリーの弄ぶカラクリの小箱、その片方に手を伸ばす。 『なぜキンブリーが携帯電話を持っているのか』 『持ち主が使い方も知らない携帯電話に掛けてくる相手とはいったい誰なのか』 『どうして、この図ったようなタイミングで電話をかけてきたのか』 そんな事に思い至る暇もないまま、日常の習慣で森はぱかりと画面を開く。 そこに示された名前は、彼女の知らない外国人の名。 「じょん、ば……?」 何も知らない森は、ついついその名を読みあげようとして――、 「あっ……!」 更に横から、掻っ攫われた。 趙公明が胡散臭いほどに爽やかな笑みを浮かべ、ウィンクしつつ通話ボタンを押す。 と、ぽん、と小さな風とともに自分の肩に手が置かれた。 ようやく気付く、ウィンクをして見せた先は自分ではないのだ、と。 「ふむ……、分かりました。 あいさん、どうやら私たちではなく彼が担当すべき事案のようです。 邪魔をしてしまうのも悪いですし、少し離れたところでこちらの――彼女の処遇をどうするか決めるとしましょうか」 振り返れば、キンブリーが狐のように目を細めて微笑を浮かべている。 肩に置かれた手の存在感が、何故か気持ち悪い。 大した力は入っていないのに、まるで万力で締め付けられるかのように伸ばした手が動かない。 首元の手がまるで刃物のように感じられて、森は自分でも気付かないうちにキンブリーの言う通りに動いている。 動かされている。 * 「……やあ! 数時間……いや、既に半日ぶりだね」 橋の方に向かったキンブリー達が十分に離れたのを確認し、ようやく趙公明は第一声を放つ。 「“彼”の部下としての役職名と、君自身の持つ能力と――、 二重の意味で“ウォッチャー”である君がわざわざどうしたんだい?」 電話の相手が、何がしかを囁いた。 轟、と、吹きつける風の音に掻き消され、声の主の台詞は趙公明以外の誰にも聞き咎められることはない。 「……御挨拶だね。あそこにあるだろう映像宝貝は僕が千年もかけて作った舞台装置だよ? 所有物を取り戻しに行って、何が悪いのかな」 巻く風は朝方に比べ次第に、着実に強くなってきている。 見れば、空の彼方に黒雲の帯が手繰り寄せられつつあるのが確認出来た。 雨か、雪か、はたまた嵐か吹雪か。 遠からず、この島は天の気まぐれに付き合わされることになるのだろう。 「あそこで起こるであろう舞踏会への招待状を握り潰すなんて! 普段の僕ならば聞き入る耳を持たないが、“彼”のお達し……という訳ならば話は別か。 トレビアーンな美的センスの同志の言葉とあらば、確かに僕も無視はできないからね!」 ――そう。 天候を統べることこそ、“神”にとっては古来より最も普遍的に弄ぶ力の一端だ。 遥か悠久の昔から、人は天の神に祈る。 雨をもたらし、豊かな恵みを下賜したまえと。 岩戸を開けて、陽光を眼下に与えたまえと。 「だが――、華やかなるステージを見て僕に動くな、というのはあまりに残酷! 無碍に断るのも好ましくないから、様子を見る段階は確かに踏まえよう。 だが、最終的に僕がどう動くかは僕が決めさせてもらう! 僕はあくまで利害の一致に基づく協力者、という事を忘れた物言いは感心しないな」 神を覆う薄靄のヴェールは、今まさに着々と剥がれ続けている。 「……まあ、“彼”の事だ。 こう告げる事で結果的に僕がどう動くのかすら、最初から織り込み済みなのだろう? 要するに、僕がどれだけ好き勝手にやろうと予定に狂いはあり得ない。そして、僕もそれで構わないよ。 何故なら“彼”は“ユーゼス”や“ゴルゴム”、そういう次元に佇む存在なのだからね!」 趙公明が言葉を切る。 すると電話相手はそれを待っていたのか、別の話題を新たに振った。 彼の妄言はその殆どが聞き流されていたのだろう。 あからさまに疲れたような溜息が、確かに受話器の向こうから届く。 天に太陽は輝いているのに、張り付くように辺りの気温は一向に上がらない。 心なしか、吐く息が白く色づいてきてさえいるかもしれない。 「……成程ね。“ネット”も思惑通りに軌道に乗り始めているのか。 となると、その掲示板とやらに麗しき僕の動画をリンクとして張り、皆に知らしめるのも面白いかもしれない! いや、blogとやらを拓いてみせるのも面白いかもしれな――、ん?」 電脳の海を使ったロクでもない催しを脳内に展開する趙公明の耳に、少しばかり予想外の話が届く。 「……ふむ。いいだろう、代わってみたまえ。 一体僕にどういう用事かな?」 聞けば、電話を代わって自分と話したい御仁がいるらしい。 見知った相手の名前を聞かされ、趙公明は鷹揚と頷いた。 そして耳に入るは、まさしく最強の道士と謳われる傍観者のその声が。 『何時如何なる時でもあなたは全く自分というものがブレませんね、趙公明。 それは確かに、あなたの強さではありますが』 「申公豹! 君がわざわざ僕に連絡を取るとはどういう風向きだい?」 旧友と出会った時のように声に喜色を滲ませて、気取ったポーズを虚空に見せる。 様にはなっているものの、いちいちその所作は演技臭く、くどいと言わざるを得ない。 『……いえ。いくつか不測の事態が発生しましてね。 あくまで我々にとっては、ですが。 王天君などは不満を隠すどころか苛立ちを露骨に表に出していますが……、おそらく分かっているからこそでしょう。 口では予定が狂った、などと言いつつも、その実掌の上で駒を踊らせているだけの“彼”の性格を』 なんでも紅水陣を用いての雑用に赴かされたのだとか。 封神計画の裏の遂行者であった頃からの苦労人ぶりに、ぶわっと趙公明は目の幅の涙を流す。 「――なるほど、確かに“彼”ならば僕たちにさえ全てを告げないのはむしろ当然だろう。 おそらくあのムルムルであっても全貌は知らされていないだろうね。 それどころか、僕たちがそれぞれに知らされた断片情報を持ち寄ってさえ、その意図にたどり着けないかもしれない! 全く、実に素晴らしい脚本家だよ、“彼”は!」 まあ、そんな気遣わしげな所作が長続きするはずもなく、趙公明はコロコロ表情を切り替える。 既にその眼の中にはキラキラと輝く星が散りばめられていた。 “彼”とやらによほど近しいものを感じているのだろう、美的センスの相性もあって親愛すら抱いているらしい。 そんな奇矯者に対する反応も手慣れたもので、申公豹は相手の言葉を遮って話を切り出した。 『まあそれは置いておいて、本題に入るとしましょうか。 ……私は現時点を以って主催者を辞め、傍観者に戻ります』 ――沈黙。 珍しく、趙公明が顔の表情全てを消す。 僅かに言葉を口の中で転がして、平坦な口調で紡ぎ出した。 「…………。 太公望くんが斃れたからかい? それとも、他に理由があるのかな。 このバトルロワイヤルに僕や王天君を誘った当人が、最大の目的が消えてしまったから手を引くというのは――、 いささか、身勝手に過ぎないかな?」 また――一迅。 強く、鋭く、寒風が吹き付け走り去った。 貴族衣装が音とともにはためいて、ふわりと棚引いては落ち着いていく。 『無論、太公望の肉体の喪失が理由の大きな部分を占めているのは確かです。 始まりの人に戻る前の太公望と戦える――、それがまたも難しくなった以上はね。 ですが理由は、それだけではない』 一拍の静寂を置いて、申公豹は語る。 『……見届けてみたくなったのですよ、あなた達全員の行く末を。 その為には当事者よりも傍観者――“観測者”と言い換えてもいいですが――が望ましい。 その意味では、私は今しばらくこの祭事に関わり続けます。 場合によっては、また積極的に関わらせて頂くことになるかもしれませんね。立場は変わるかもしれませんが。 その時はあなたたちと敵対する可能性すらあるかもしれません』 台詞の最後の一文に、趙公明は僅かに表情を取り戻す。 そこに現れたのは紛れもない、羨望だった。 「“彼”に牙を剥いたのかい? 申公豹」 敵対の可能性の示唆。即ち『戦い』がそこに生まれ出るという事は。 因果の因となる何らかを、申公豹は試みたのだという事。 そして戦いを至上とする趙公明にとって、それは胸を焦がすほどに手を伸ばしたい代物なのだ。 『そこまでのものではありません。ただ、“彼”という存在を試してみたくなったのですよ。 なにせ、『太公望が早期に退場する』という事を分かった上で敢えて私に協力を要請したとあらば、 “彼”は最初から利用するためだけに私に近づいたという事なのですからね』 「そしてそれは、ほぼ確実なことである――、と」 口端だけを、歪めて答える。 申公豹の機嫌を損ね、しかしこの催しに何ら障害が出ていないという事は。 申公豹が、淡々と事実だけを連ねているという事は。 『……ええ。 なので私と、タイミング良く彼に意見を申し立てようとするもう一人とで“彼”と相対することになったのですが。 やはりといいますか、私では――私たちでは、“彼”に傷を与える事にすら手が届かないようです』 「ほう?」 まさしく、思った通り。 『雷公鞭を放ったところで、雷の全てが“彼”の横を通りすがって行くのですよ。 まるで、十戒の導き手が海を割るように。 その中で“彼”は悠然とただ立っていました。指一つ動かさずにね』 素晴らしい、と、その一言しか思い浮かばない。 “彼”との接点を作ってくれたこと。 それはまさしく申公豹に感謝すべき事で、だからこそ身勝手さと相殺して進ぜよう。 極上の笑みを浮かべながら、趙公明は一人頷いた。 『“彼”の前に力は無意味です。 手を届かせることが出来るとすれば、それは力ではなく――』 そして、受話器を手にしたまま、ゆっくりと首をを動かしていく。 視線の先に在るものをしっかと捉えながら、呟くように話を打ち切った。 「……失礼。どうやらエルロック・ショルメくんが来訪してしまったようだ」 言葉だけ見れば、唐突な闖入者に対応する字面。 されどその態度は穏やかに過ぎて、分かっていて敢えて聞かせたのかとさえ勘繰る事が出来てしまう。 一連の、会話を。 「さて、招かれざるマドモアゼルこと、ガンスリンガーガールあいくん。 キンブリーくんにこの事を告げたらどうなるか……、分かっているね?」 優雅な一礼を披露しながら、趙公明は携帯電話の電源を落とす。 そのまま念を押すかのように告げた言葉には、一切の温かみが存在していなかった。 酷薄な笑みとともに、金の髪持つ男は少女を見下ろして動かない。 ――何処から聞いていたのだろう。何時からそこにいたのだろう。 森あいも、ガクガクと体を震わせたまま動かない。 彼女は、知らないのだ。 キンブリーが、趙公明が“神”の陣営に座する事を知った上で、敢えて手を組んでいた事を。 「彼は持っている異能も頭脳の聡さも特別だからね。 こうして僕のようなものが近くにいるのも――、全く以って不思議ではない、と思わないかい?」 だから、こんなにも簡単な口車で勘違いをしてしまう。 『善良かつ蘇生の力を持つキンブリーを監視するために、趙公明が彼を騙して側にいたのだ』と。 趙公明は、嘘を吐いてはいない。 だからこそ、その言葉の響きが確からしさを伴って森に突き刺さった。 幾重もの雑多な考えが、森の脳内を乱舞する。 それは取り留めもなく拡散し、これからどうすべきかというのも纏まらない。 「……ぁ、」 ただただ、目の前の男が自分たちをここに放り込んだ連中の一味だと、それを知ってしまった恐怖が膨れ上がり、渦巻いている。 ごく、という唾を呑む音がやけに生々しく響いた。 キンブリーに頼りたい、という選択肢が真っ先に浮かび、しかしそれは趙公明の第一声が否定し尽くしている。 キンブリーくんにこの事を告げたらどうなるか……、分かっているね? 何度も何度もその一声がリフレイン。 もう、彼女にキンブリーを疑う余地はなくなっており――、だからこそ、彼の下に戻る事はできなくなった。 趙公明を出し抜かねば未来はないと、彼女の脳は勝手に決断を下してしまう。 植木を蘇らせるという小さな願いを叶えるために、キンブリーをこの男の魔の手から助けねばならないのだ、と。 押し潰されそうな重圧の中、一人ぼっちの彼女は息を荒くする。 不意に、じり、と音がした。 気がつけば静かに、趙公明はこちらににじり寄ってきていた。 「……う、ぁ、やだぁ……っ、ひゃ」 ずい、と押し出された手が禍々しく、トマトを握り潰すように脳天を掴もうとしている。 そこが、限界だった。 訳の分からない衝動が風船を割るかのように弾け飛ぶ。 「ひ、ぁ、わぁぁぁああぁぁあぁああぁぁあぁぁぁああぁああああぁぁぁああああぁぁぁ……っ!」 何処へ向かうとも知れず――、森あいは、駆けだした。 キンブリーを趙公明から救い、優勝させ、皆を蘇らせることだけをよすがとして。 そんな儚い砂の城だけが、今の彼女を彼女たらしめる唯一の頼り。 その幻想がぶち殺された時、彼女は果たしてどこへ落ちていくのだろうか。 知るとするならば、それはきっと“神”だけだろう。 【H-08/三叉路付近/1日目/午前】 【森あい@うえきの法則】 【状態】:疲労(中) 精神的疲労(中)、混乱 【装備】:眼鏡(頭に乗っています) キンブリーが練成した腕輪 【道具】:支給品一式、M16A2(30/30)、予備弾装×3 【思考】: 基本:「みんなの為に」キンブリーに協力 0:……植木……ごめんね…… 1:キンブリーを優勝させる。 2:鈴子ちゃん…… 3:能力を使わない(というより使えない)。 4:なんで戦い終わってるんだろ……? 5:趙公明からキンブリーを助け出したい。 6:趙公明に恐怖。何処でもいいから急いで逃走。 7:安藤潤也に不信感。 【備考】 ※第15巻、バロウチームに勝利した直後からの参戦です。その為、他の植木チームのみんなも一緒に来ていると思っています。 ※この殺し合い=自分達の戦いと考えています。 ※デウス=自分達の世界にいた神様の名前と思っています。 ※植木から聞いた話を、事情はわかりませんが真実だと判断しました。 ※キンブリーの話を大方信用しました。 ※趙公明の電話を何処まで聞いていたかは不明ですが、彼がジョーカーである事は悟っています。 ※どの方角へ向かったかは次の書き手さんにお任せします。 小さくなる彼女の背を一瞥し、趙公明はやれやれと嘆息する。 淑女たるものもっと優雅に振舞うべきだというのに。 少し脅し過ぎたとはいえ、せめてその銃で自分を打倒しようという気概くらいは見せて欲しかった。 聞かれてしまったのは少し注意不足だったかもしれない。 だが、フォローのおかげでこれはこれで面白い事態になったと言えるだろう。 戦闘快楽主義たる趙公明は、だから再度電話を手にすることにした。 掛ける先はWatcherでも最強の道士でもなく――、 * 見よう見まねで電話を取ったキンブリーが趙公明と待ち合わせたのは、橋の手前。 ――灰色づき始めた空を見渡せる、拓けた空間に二人の男が集い合う。 「……やれやれ。 だから勝手な事はするなと言ったのに」 あらぬ方向を見ながら独りごちるキンブリーの言葉は、無論森あいという少女に向けたものだった。 「おや、反応が薄いね。 少しばかり残念がるか、あるいは僕に憤ってくれた方が面白いのに!」 道化じみた態度を崩さない趙公明への対応も最早手慣れたもの。 眉を下げたうすら笑いを返しつつ、両手を開いて肩を竦める。 「その状況ではあなたの対応は及第点ですよ。 要は私に信を預けたという状態がクリアされてれば良い訳ですからね。 しかし――、これはあなたに同行することがやや難しくなったという事でもある。 今しばらくは平気でも、場合によっては後々別行動を考えなくてはいけないでしょう」 つまり、これからどうするか。問題はそこに集約される。 ひとまず趙公明は、向こうに見える巨大な女性の立体映像に関しては静観するよう釘を刺されたらしい。 が、この男の事だから、首を突っ込むのも時間の問題だろう。果たしてどこまで言いつけを守るやら。 他にも聞かされた話のいくつかでは、ネット、とやらにも興味が惹かれる。 この携帯電話という道具でも接続できるらしく、後で試してみようと心中呟く。 そして、それ以上にいろいろ楽しめそうな玩具が一つ。 「それにこちらとしても面白い素材を見つけましてね。 まあ、これ以上あの少女に構っても時間対効果は低いですし、丁度いい頃合いですよ」 目を向けた先には、倒れ伏した血塗れの少年が転がっていた。 肉体的にも精神的にも疲れ切ったのか今はぐったりとしており、しばらく目を覚ます事はないだろう。 正直な話、森あいにはこの少年との遭遇当初の険悪な雰囲気をもう少し耐えて欲しかったところだ。 血塗れで言動も支離滅裂なこの少年に恐怖を感じたのも仕方ないとはいえ、自分が彼と相対したほんの少しの隙に勝手に趙公明に助けを求めたとは。 その試みも何の意味もなかった上に、仕込みの仕上げを完了させることも出来なかった。 けれど、過去を振り返っていても得るものは何もない。 さしあたって今は目の前の少年――安藤潤也でどう面白おかしく遊ぶかを焦点にしよう。 邂逅のその瞬間を思い出す。 錯乱さえ感じさせる言動とともに覚束ない足取りでこちらの方へと駆けてきたこの少年は、 妲己や兄貴、金剛などと気になる単語をいくつも吐いていた。 どうやら何処の誰かは知らないが、下拵えを完璧に整えてくれていたらしい。 キンブリーでさえ舌を巻くその手腕は実に大したものだ。 また、この少年はキンブリー自身の事をどこかで聞きつけていたらしく、 自己紹介の折に『蘇生が出来るのは本当か』などと凄い剣幕で詰め寄ってきた。 無論、と鷹揚に頷いてやったら、その場で力尽きたらしくがくりとへたり込んでそのまま沈むように眠ってしまったのだ。 恐らくは先に仕込みを終えた白雪宮拳経由の情報だろう、種が育ってまた新たな種を育む様は見ていてとても嬉しいものである。 まさしく文字通り、糸を切ったように唐突に眠り込んでしまった少年。 まだまだ詳しい話は全く聞いていないが、それは目覚めてからのお楽しみにしておこう。 もう一つの問題として、さて、この治療を施した少女をどう扱うか、というものがある。 こちらもまた目覚める様子はなく、予定通り打ち捨てておくのが賢明か。 なにせ森あいがいなくなったとあれば、まさしく不要な代物でしかないのだから。 どうせはぐれるのなら、せめて無駄に力を使う前にしてほしかったですね、と内心愚痴をこぼすキンブリー。 まあ、一見ガラクタにしか見えないものにも使い道が残っている時もあるのも確かだ。 ひとまずこちらは保留とすべきか。 「――話を戻しましょう。 やっと合点がいきましたよ、私にこんなものが支給された理由がね。 あのカタログにあった“交換日記”――それがこの、ケイタイデンワ、とやらの機能だったとは」 この鬼札と彼自身の遭遇さえ予定されたこと。 そのサポートの道具まで目の前にある事に嘆息するも、悪い気はしない。 つまりはそれだけ、自分は“神”の陣営に近しいと見込まれているということなのだから。 頬肉をわずかに吊り上げ、く、と快を漏らす。 「まさしくお誂え向きに僕たちのために用意されたものだろうね! たとえ別行動をしたとしても互いに連絡し合い、フォローをしあうことが出来るアイテムだ!」 未来日記所有者7th――戦場マルコと美神愛。 本来は彼らが持っていた未来日記こそが、今、キンブリーと趙公明がそれぞれ手に持つ“交換日記”だ。 その機能は簡潔に説明すると、お互いの未来を予知し合うというものである。 片方だけ用いるならば“雪輝日記”とさほど性能に差はないが、二つ組み合わせることで所有者たちの“完全予知”を行う事が可能となる。 総合的な情報量が多いが雪輝中心の未来のみを予知する“無差別日記”+“雪輝日記”と違い、 情報量そのものは少ないものの使用者たち双方の未来をカバーすることが出来る性質を持つ。 逆に言えば。 所有者自身の未来を予知する事は出来ず、有効活用するためには相方との連携が必須とされる未来日記でもある。 「……加えて、使用にはリスクが伴う。 使用者の首輪から半径2m以内でこの“プロフィール欄”を編集し、本人の名前を入力することにより機能を解放することが出来ますが――、」 本来ならばマルコと愛専用の未来日記をこの殺し合いで用いることが出来るようにする措置なのか、 手順を踏むことで予知対象を変更することが可能だと説明書きには記されている。 “マルコ”の携帯電話からは“愛”の携帯電話の使用者の、“愛”の携帯電話からは“マルコ”の携帯電話の使用者の予知が可能となるようだ。 一見便利にもほどがあるアイテムだが、しかしキンブリーは使用に躊躇する。 そうは問屋が卸さないとばかりに説明書きの続きには無視など到底できない記述が存在していたのだ。 はあ、と心底渋い顔で長い長い息を吐く。 「……止めておきましょうか。現状そこまでの危難も存在しませんし、使う必要はないでしょう」 研究対象としても非常に興味深いし、未来予知によるリターンは非常に魅力的だが、致し方あるまい。 何より、この未来日記を使用するには相方への絶対の信頼が必要不可欠だ。 自分の未来を予知されては、いざ敵に回った時に確実に詰む。 ……特に。 現在の自分の相方のような、絶対に油断のならない存在に対しては、尚更。 向こうの行動を予知できるのはこちらも同じだが、地力の差が圧倒的だ。 策を弄してもその策まで知られてしまうようではお話にならないのだから。 確かに感性の近さなどから親近感のようなものは無きにしも非ずだが、流石に自分の未来を預けられるほどではない。 そもそもが唐突な出会いだったのだ、何時この協働関係が崩れてもおかしくない以上、身を委ねるには不安が過ぎる。 内心の不信を押し隠しながら、ちらり、と横目で趙公明を見る。 「……な、」 絶句。 さしものキンブリーであろうと、ただ、絶句するしかない事態がそこにはあった。 珍しく口をあんぐりと開け固まったキンブリーの耳に、ゲーム版封神演義のカラオケで披露された麗しき子安ボイスが入り込む。 「この電話が破壊された時、プロフィール欄に記された名前の持ち主もまた、死亡する……? 構わないじゃないか、戦いにはリスクが付き物だ! 自身が敗れる可能性もないまま力を振るうのは断じて僕の望む闘争などではない――、ただの子供の癇癪さ」 趙公明は目の前で、己自身の名前をプロフィール欄に入力して見せていた。 そして――、にこやかにそれを自分に放り投げてよこすのだ。 動けない。 目の前の奇行に理解が及ばず、時が完全に凍りついている。 だってそれは、心臓を手に握らせるのと同じこと。 キンブリーが今、受け取った携帯電話をちょいと割り折っただけで、たったそれだけでこの男は死ぬことになるのだ。 だと言うのに、趙公明は静水の如く全く揺らがない。 態度の意味が、分からない。 絞り出した声は途切れ途切れで、キンブリーの脳内は白に塗り潰されそうなのが目に見える。 「……一体、何を……考えている、のですか? 仮に今ここで私がこの携帯電話を破壊したら、あなたはあっさり死ぬことになるのですよ? 正面からあなたを倒すのは難しいでしょうが、握った電話の破壊だけならやってやれない事はない。 折しも今、あなた自身の言った通りに」 困惑を通り越し、狼狽とさえ呼べる反応を返すキンブリー。 趙公明はそれを見て満足したのか破顔し――、 「ハァーッハハハハッ! 愛さ、愛だよキンブリーくん!」 場違いな単語で、疑問の全てに答えて見せた。 「愛……?」 「そうとも。僕は君がそんな事をしないであろうという事を確信している。 親愛、信愛、友愛、人愛、敬愛、恩愛……。 僅かな時間の付き合いながら、君の嗜好は僕がそれらの感情を抱くのに十分だった。 僕は君のその美学に敬意を払い、同時に親近感を抱いているのさ。 数多ある感情の全てに共通する一字があるのなら、それこそが真実。 これを愛と呼ばずに何と呼ぶのだろう!」 ブワリと趙公明の周りに何処からともなく黄金の花弁が舞い散った。 じぃ、と星を抱いて自分を見つめる真摯な瞳。 意識せずに、キンブリーの頬が思わず朱に染まる。 顔が熱を持つのを、自覚してしまう。 「愛――それは一なる元素。 僕はその愛を、これからも君と深めていきたいと思う!」 飛び込んで来いとばかりに鷹揚と両手を広げる趙公明。 何処までもまっすぐな視線は、確かにキンブリーへの十全の信頼を証明していた。 「……やれやれ。そうまで言いきられてしまっては、ね。 此方としても断ったら立つ瀬がなくなってしまうではありませんか」 キンブリーは、その強さに耐えられない。 目線を逸らす――、きっとそれは陥落を意味していたのだろう。 キンブリーは照れを隠すように頬を掌で隠し、自分自身の携帯電話を取り出した。 慣れない手つきで一字一字、慈しむように自分の名前を打ち込んでいく。 「……この催しを更に楽しむために最適な手段だと思ったからこそ、こうするだけですよ。 決して、あなたの為にした訳ではありませんからね」 相変わらず目線を合わさないキンブリーに、趙公明は静かに頷いた。 「無論、今はそれでいいとも。今は……ね」 「――ッ……!」 不意の言葉に息を呑み込む。 ようやく名前を打ち込むと、そこには確かに、手を取り合った自分たちの未来が示されていた。 「……ご自愛を。 流石に自分自身の命くらいは、己の手に収めておくべきですよ」 ゆっくりと歩み寄り、パートナーに電話を返す。 手と手で受け渡されるそれは、まるで指輪の交換のようだった。 観測者はここに、薔薇の花を幻視する。 いつしか真っ赤な花が、確かに咲き乱れていた。 【H-08/橋の手前/1日目/午前】 【趙公明@封神演技】 【状態】:健康 【服装】:貴族風の服 【装備】:オームの剣@ワンピース、交換日記“マルコ”(現所有者名:趙公明)@未来日記 【道具】:支給品一式、ティーセット、盤古幡@封神演技 橘文の単行本 小説と漫画多数 【思考】: 基本:闘いを楽しむ、ジョーカーとしての役割を果たす。 1:闘う相手を捜す。 2:映像宝貝を手に入れに南に向かいたいが、お達し通り様子見。 しかし、楽しそうなら乱入する。 3:カノンと再戦する。 4:ヴァッシュに非常に強い興味。 5:特殊な力のない人間には宝貝を使わない。 6:宝貝持ちの仙人や、特殊な能力を持った存在には全力で相手をする。 7:映像宝貝を手に入れたら人を集めて楽しく闘争する。 8:競技場を目指したいが……。(ルートはどうでもいい) 9:キンブリーが決闘を申し込んできたら、喜んで応じる。 10:ネットを通じて遊べないか考える。 【備考】」 ※今ロワにはジョーカーとして参戦しています。主催について口を開くつもりはしばらくはありません。 ※参加者などについてある程度の事前知識を持っているようです。 【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師】 【状態】:健康 【服装】:白いスーツ 【装備】:交換日記“愛”(現所有者名:キンブリー)@未来日記 【道具】:支給品一式*2、ヒロの首輪、不明支給品×1、小説数冊、錬金術関連の本 学術書多数 悪魔の実百科、宝貝辞典、未来日記カタログ、職能力図鑑、その他辞典多数 【思考】 基本:優勝する。 1:趙公明に協力。 2:首輪を調べたい。 3:剛力番長を利用して参加者を減らす。 4:森あいが火種として働いてくれる事に期待。 5:参加者に「火種」を仕込みたい。 6:入手した本から「知識」を仕入れる。 7:ゆのは現状放置の方向性で考える。 8:潤也が目覚めたら楽しく仕込む。 9:携帯電話から“ネット”を利用して火種を撒く。 【備考】 ※剛力番長に伝えた蘇生の情報はすべてデマカセです。 ※剛力番長に伝えた人がバケモノに変えられる情報もデマカセです。 ※制限により錬金術の性能が落ちています。 ※趙公明から電話の内容を聞いてはいますが、どの程度まで知らされたのかは不明です。 【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX】 【状態】:疲労(大)、精神的疲労(大)、情緒不安定、吐き気、 右手首骨折、泥の様に深い眠り 【服装】:返り血で真っ赤、特に左手。吐瀉物まみれ。 【装備】:獣の槍、首輪@銀魂(鎖は途中で切れている) 【所持品】:空の注射器×1 【思考】 基本:兄貴に会いたい。 0:……。 1:旅館に行って兄貴と会う。 2:キンブリーから蘇生について話を聞く。 【備考】 ※参戦時期は少なくとも7巻以降(蝉と対面以降)。 ※能力そのものは制限されていませんが、副作用が課されている可能性があります。 ※キンブリーを危険人物として認識していたはずが……? ※人殺しや裏切り、残虐行為に完全に抵抗感が無くなりました。 ※獣の槍の回復効果で軽度の怪我は回復しました。 【ゆの@ひだまりスケッチ】 【状態】:貧血、後頭部に小さなたんこぶ、洗剤塗れ、気絶 【服装】:キンブリーの白いコート 【装備】: 【道具】: 【思考】 基本:??? 1:ひだまり荘に帰りたい。 【備考】 ※首輪探知機を携帯電話だと思ってます。 ※PDAの機能、バッテリーの持ち時間などは後続の作者さんにお任せします。 ※二人の男(ゴルゴ13と安藤(兄))を殺したと思っています。 ※混元珠@封神演義、ゆののデイパックが三叉路付近の路地裏に放置されています。 ※切断された右腕は繋がりましたが動くかどうかは後続の作者さんにお任せします。 【交換日記@未来日記】 未来日記所有者7th、戦場マルコ&美神愛の所有する未来日記。 我妻由乃の“雪輝日記”の様に、特定の一人だけを予知する機能を持つ二つで一つの未来日記である。 使用者自身の予知は出来ないが、互いに未来を予知し合う事で完全予知を実現する。 今ロワには7thが参加していないため、携帯電話のプロフィール機能を用いることで予知の対象を変えることが出来る措置がなされている。 具体的には、使用者の首輪から半径2m以内でプロフィールの名前欄に本人の名前を入力することで機能が解放される。 予知の対象はもう片方の交換日記のプロフィールに記された名前の相手となる。 ただし未来日記のルールに則り、名前を入力した時点から携帯電話の破壊=使用者の死亡となる。 “無差別日記”や“逃亡日記”などで予知の対象変更が可能かどうかは不明。 * 1:【生きている人】尋ね人・待ち合わせ総合スレ【いますか】(Res 6) 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYArE スレタイ通り、人探しや待ち合わせの呼びかけをするためのスレです。 どこで敵の目が光っているか分からないので、利用する際にはくれぐれも気をつけて! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 6 名前:ポテトマッシャーな名無しさん 投稿日:1日目・午前 ID:mIKami7Ai 森あいさんと潤也さんのお兄様を探しています。 ご本人か行き先を知っていらっしゃる方がいましたら、ご連絡ください。 * 光の飛沫が形作る独演会。 半透明なパイプオルガンから噴水のように吹き上げては降り注ぐ金粉の流れが、天上の舞台を描き出している。 同心円状に拡散する煌めく粒子は、円盤の端に辿り着くと滝に呑まれて眼下に降り注いでいった。 まるで古代人の描いた地球のような円盤状の大地。 全天を闇と彩雲に包まれたその場所で、二つの影が世界を睥睨する。 木枠と扉だけが無数に宙に漂っており、その開いた向こう側には数多の人の生き様が映し出されていた。 ひとつは、純白のスーツに身を包み、長髪を後頭部で括った青年。 ひとつは、異形の剣を異形の身に佩く髑髏の男。 「事象を一面から捉える事は叶わぬ。 誰もが悪夢と罵る催事であろうと、兆しを待つ者には深淵へと渡された蜘蛛の糸として、千載一遇の好機となる折さえ在る。 我等の様に」 馬上の騎士が呟いたその声に、青年は応えを返さない。 ただ、その手に摘まんだ一輪の花を鼻に近づけ――、 「この美しく整った盤面に、願わくば」 虚空へと、投じた。 「なるべくなら良き日々が多くありますよう――」 花は光の濁流に飲み込まれ、千切られ、翻弄され――見えなくなる。 そして、誰も見届けることのない流れの中で、闇の中へと融け消え入った。 花の名前は曼珠沙華。またの名を彼岸花。 意味する花言葉は――、 時系列順で読む Back 燃えよ剣(下) Next 厨BOSS BATTLE-BERSERK- 投下順で読む Back 燃えよ剣(下) Next 厨BOSS BATTLE-BERSERK- 115 燃えよ剣(下) 安藤潤也 126 ゆのっちが橋のたもとで錬金術師と出会ったの巻 108 Guilty or Not Guilty ゾルフ・J・キンブリー 126 ゆのっちが橋のたもとで錬金術師と出会ったの巻 108 Guilty or Not Guilty 趙公明 126 ゆのっちが橋のたもとで錬金術師と出会ったの巻 108 Guilty or Not Guilty 森あい 125 「あの未来に続く為」だけ、の戦いだった 108 Guilty or Not Guilty ゆの 126 ゆのっちが橋のたもとで錬金術師と出会ったの巻
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No.22 おや、私はまだ生きているようですね。 キメラに致命傷を負わされ、傲慢に喰われたのですが。 まったく不思議なことです。 紹介が遅れましたね。 私の名前は、ゾルフ・J・キンブリー。国家錬金術師です。 マスター? いえ、サーヴァントですよ。 「ククク‥‥目覚めたか‥‥我がしもべよ‥‥。」 オッドアイというのでしょうか、両目の色が違う。 この金髪の少女は私のマスターのようです。 ゴスロリと言われる、種類の服装に身を包んでいます。 私が言えないかも知れませんが、変わり者ですね。 「初めまして。私の名前は、ゾルフ・J・キンブリーと申します。」 「‥‥ククク‥‥我が真名は、レイシス・ヴィ・ヘルシティ・すめらぎと申す‥‥。」 変わった名前の方ですね。 口調も変わった方。 鋼の錬金術師より年下でしょうか? 【マスターNo.22 羽瀬川小鳩@僕は友達が少ない】 【サーヴァント・キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】 BACK NEXT 021 No.21 投下順 023 No.23 021 No.21 時系列順 023 No.23 BACK 登場キャラ NEXT 聖杯戦争開幕 羽瀬川小鳩&キャスター 041 Imagine Bleaker
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インブリード配合とは・・・ 父馬と母馬の5代血統表内に同じ祖先馬がいる場合に発生する。(そのことを「クロス」と呼ぶ) 複数のクロスがある場合はその数だけ効果を得られる。 しかし、同一系統のクロスは産駒に近い効果しか得られない。 ※3番についての補足画像 同じファロス系のHabitatとSir Gaylordは産駒に近いHabitatの効果しか得られない。
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第三回放送までの死亡者リスト 時間 名前 殺害者 死亡作品 作者 死因 凶器 日中 暁美ほむら 足立透 128 InevitabilisI was waiting for this momentPuella in somnio ◆dKv6nbYMB. 射殺 ショットガン 午後 空条承太郎 ゾルフ・J・キンブリー 136 正義の味方 ◆BEQBTq4Ltk 刺殺 死者行軍八房 午後 セリュー・ユビキタス セリュー・ユビキタス 136 正義の味方 ◆BEQBTq4Ltk 自爆 五道転輪炉 午後 アンジュ 後藤 143 生の確立 ◆MoMtB45b5k 捕食 変形させた頭部 午後 西木野真姫 島村卯月 149 NO EXIT ORIONSilent today ◆BLovELiVE. 斬殺 千変万化クローステール 午後 サリア サリア 153 堕ちた偶像Before the Moment ◆w9XRhrM3HU 体力消耗 帝具の酷使 夕方 ゾルフ・J・キンブリー イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 145 かわいい破滅 ◆MoMtB45b5k 射殺 光弾 夕方 里中千枝 オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフ(美樹さやか) 159 It s lost something important again ◆ENH3iGRX0Y 刺殺 オクタヴィアの剣 夕方 ジョセフ・ジョースター DIO 160 その血の運命Bloody Streamその血の運命(後編) ◆BEQBTq4Ltk 殴殺 『世界(ザ・ワールド)』 以上 9人【残り35人】 おまけ 名前 最期の言葉 暁美ほむら (...役立たずで、ごめんね) 空条承太郎 「テメェを殴らねぇと死んでも死にきれねぇ」 セリュー・ユビキタス 「私はちゃんと正義の味方だったかな」 アンジュ 「お願い、生きて――」 西木野真姫 「ふふ…、暖かいね…」 サリア 「ごめんなさい、アレクトラ―――」 ゾルフ・J・キンブリー 「破滅の天使の誕生だ」 里中千枝 (少し、疲れた……かな) ジョセフ・ジョースター 「奇妙じゃったが――充実した人生だった」 殺害数 順位 該当者 人数 このキャラに殺された人 生存状況 スタンス 1位 後藤 4人 星空凛、蘇芳・パブリチェンコ、ノーベンバー11、アンジュ 生存 マーダー イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 4人 戸塚彩加、婚后光子、クロエ・フォン・アインツベルン、ゾルフ・J・キンブリー 生存 情緒不安定→マーダー 2位 ゾルフ・J・キンブリー 3人 クロメ、イギー、空条承太郎 死亡 マーダー セリュー・ユビキタス 3人 南ことり、由比ヶ浜結衣、セリュー・ユビキタス 死亡 危険対主催 サリア 2人 巴マミ、キリト(桐ヶ谷和人)、サリア 死亡 危険対主催 3位 キング・ブラッドレイ 2人 美遊・エーデルフェルト、渋谷凛 生存 危険対主催 魏志軍 2人 比企谷八幡、プロデューサー 生存 マーダー 御坂美琴 2人 前川みく、モハメド・アヴドゥル 生存 マーダー 足立透 2人 鹿目まどか、暁美ほむら 生存 マーダー DIO 2人 食蜂操祈、ジョセフ・ジョースター 生存 生存優先 4位 由比ヶ浜結衣 1人 浦上 死亡 情緒不安定 エンヴィー 1人 佐天涙子 生存 マーダー ペット・ショップ 1人 クマ 死亡 マーダー キリト(桐ヶ谷和人) 1人 モモカ・萩野目 死亡 対主催 園田海未 1人 園田海未 死亡 対主催 ロイ・マスタング 1人 天城雪子 生存 対主催 ウェイブ 1人 ペット・ショップ 生存 対主催 鹿目まどか 1人 花京院典明 死亡 対主催 島村卯月 1人 西木野真姫 生存 奉仕(セリュー・ユビキタス) オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフ(美樹さやか) 1人 里中千枝 生存 無差別
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時間 死亡者名 殺害者名 死亡話 死因 凶器 場所 早朝 蝉 キング・ブラッドレイ 002 岩に染入る蝉の声 斬殺 紅桜 F-7 内山はじめ 泥水次郎長 009結成!最悪のタッグ 失血死 剣 E-2 小屋の中 朝 ゾルフ・F・キンブリー ニコ・ロビン 006 つぅかチートキャラ多すぎる 絞殺 ハナハナの実 F-5 建物の上 コーディー 泥水次郎長 006 つぅかチートキャラ多すぎる 斬首 剣 F-5 商店街 伊藤 桜 007 「自己犠牲は正義ではない。」 射殺 FN FiveseveN B-2 ロープウェイ乗り場 内山はじめ 泥水次郎長 009 結成!最悪のタッグ 斬殺 剣 F-1 小屋の前 以上5名 残り67人 おまけ 名前 最後の言葉 蝉 「化けモン・・・じゃねぇ・・・か・・・・。」 ゾルフ・F・キンブリー なにがっ・・・ コーディー 「ぁぐっ!!!」 伊藤 「全部が嘘みたいだ。」 内山はじめ 「ぶっさん・・・バンビ・・・アニ・・・マスター…友達…ずっと、ずっと… 殺害者数ランキング 順位 該当者 殺害者数 被害者 生死 スタンス 1位 泥水次郎長 2名 コーディー、内山はじめ 生存 マーダー 2位 キング・ブラッドレイ 1名 蝉 生存 エドワード、イズミの保護優先 ニコ・ロビン 1名 ゾルフ・J・キンブリー 生存 マーダー(ルフィ達以外) 桜 1名 伊藤 生存 マーダー
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145 かわいい破滅 ◆MoMtB45b5k ロイ・マスタング、空条承太郎、セリュー・ユビキタスとの激闘を終えたキンブリー。 彼は、今や周囲が完全に崩壊し、ぽつんと文字通り取り残された民宿のベッドの上に倒れていた。 セリューの捨て身の攻撃により、全身に火傷を負った。 さらには作り出した3体の骸人形に加え、切り札の流星の欠片も失っている。 何度も死線を潜り抜けてきた紅蓮の錬金術師といえど、疲弊を隠すことはできなかった。 (……痛いですね) 意識を覚醒させたキンブリーが感じたのは、全身を苛む痛みだった。 火傷に加え、右頬の骨を折られてもいる。 (やりたいことは多いですが……) ウェイブや大佐、最初に遭遇した風を操る少女は殺しておきたい。 武器庫に設置されたという首輪交換も試してみたい。 (この様では果たせるかどうか) 俗に、体表の70%に火傷を負うと死に至るという。 今のキンブリーの上半身は、その多くが赤黒い傷に覆われている。 加えて息に苦しさを感じることを考えると、気道のどこかにも熱傷を負っているかもしれない。 水を体にかけて、とりあえずの応急処置だけはしておく。 (とりあえず、この場でできる首輪の解析だけでも進めましょう) 爆弾のエキスパートらしく冷静に分析をしながら、懐から首輪を取り出そうとする。 その時だった。 民宿の入口から人の気配がした。 (やれやれ、こんな時にお客さんですか) 殺し合いに乗っている人物ならば、今自分は間違いなく殺されるだろう。 しかし、無抵抗に殺されるのは性に合わない。 錬金術を発動させる準備をすると、来訪者を待ち受ける。 (――ほう、これはこれは) 現れたのは、戦場にはあまりにも似つかわしくない人物。 ピンクの華やかな衣装をまとった白髪の少女が、ベッドの傍らに立ちすくんでいた。 予想外の子どもの登場に、緊張感を削がれてしまう。 自分から積極的に攻撃するような気はなくなる。 そのまま、事が起こるのを待ち―― キンブリーが予期した瞬間はやってこなかった。 「殺さないのですか?」 ■ 時はしばらく遡る。 交戦した女性の3人組を見失ったイリヤは、西へ飛行していた。 クロエのために、美遊のために、一刻も早く殺さなければならない。 でも、あの3人には会いたくはない。 『――違う。怖いだけ、手放すのが』 『一人にして欲しくない』 『ずっとそばに居て欲しい』 特に、青い服の少女には絶対に会いたくなかった。 盲目らしいにもかかわらず、自分の心中を的確に見通すような物言いは、あまりにも怖かった。 途中で爆発音が聞こえ、噴煙が上がるのを見たが、それを無視する。 今の気持ちを引きずったまま、戦いに行くことはできなかった。 逃げるように、西へ西へと飛行する。 そのうち、ぽつんと浮いている民宿らしき建物が見えた。 (疲れたな……) 精神的な疲労が大きい。 爆発の跡らしきものが見えるが、小さな半島のような場所の中に生きている人間の影は見えない。 眠っていくつもりはさすがにないが、民宿なら体を休めることができる。 それに、もう一度きちんとルビーを説得したい。 イリヤは一直線に民宿へと向かっていく。 『……マスター、一番近い部屋に誰かいます』 民宿の入口に立つと、ずっと黙っていたルビーが告げた。 (誰、だろう……でも) 誰がいようと、どうせ全員殺すのだ。 それに、ここはほとんど孤島だ。 危険な相手でも、自分ならならば空を飛んで逃げられる。 心臓の鼓動を押さえつけ、扉に手をかけた。 「!!」 イリヤの目に飛び込んできたのは、紳士然とした男がベッドに倒れている光景だった。 (ひどい傷……) 男の上半身は火傷のような赤黒い傷に覆われていた。 (冷やしてあげなきゃ――。――?) 待て。 反射的に動こうとしたイリヤの動きが、止まる。 傷の治療? なぜそんなことをする必要があるのだろうか。 自分はどうしてそんなことを考えたのだろうか。 改めて、男を見る。 呼吸はしているが、動く様子はない。 もちろん、自分に攻撃してくる様子もない。 その姿はあまりにも無防備に見えた。 ――今なら、殺せる (――っ!!) イリヤの心臓が、再びどくんと跳ねた。 男に向き直る。 ステッキを構える。 『イリヤさん、やめて下さい!』 呼吸が早まる。 鼓動が爆発しそうだ。 先ほど3人を襲った時とは比べ物にならない緊張がイリヤの体を襲う。 ルビーの言葉も、耳に入ってこない。 そのまま時間は5分ほど経っただろうか。 事態は動かなかった。 イリヤは荒い呼吸のまま、男をじっと見据えていた。 「殺さないのですか?」 ■ 「――え?」 声をかけられるとは思っていなかったイリヤは、思わず間の抜けた声を上げた。 「はじめまして、お嬢さん。 お見苦しい姿で申し訳ありませんが、ゾルフ・J・キンブリーと申します」 キンブリーはぎこちなく身を起こす。 「不躾な質問を繰り返しますが、お嬢さんは私を殺さないのですか?」 先ほどまでの貴方は、そうしようとしているように見えましたが」 「な、何を言って――」 「その杖。玩具のように見えますが、私たちが扱う錬金術とは違った強い力を秘めている様子だ。 貴方は私のような怪我人を見て、助け起こすでも治療するでもなく、そんな代物を持って立っている。 この場が殺し合いであることを考えれば、これはもう私を殺そうとしているとしか考えられません」 怪我人とは思えない口調で、キンブリーは言葉を綴っていく。 「それで、貴方はどうしますか? 私を殺しますか?」 「殺すって……殺すって、そんなの……」 問いかけにイリヤは首を振り、涙を流す。 「分かんない、分かんないよ…… 私だって、誰かを殺したりなんてしたくない……怖い、怖いよ! でもでも! 美遊とクロには絶対、もう一度会いたい…… だから、私がやらなきゃ……でも……」 そのままキンブリーから視線を逸らし、泣きじゃくるイリヤ。 「お嬢さん」 そんなキンブリーは優しげに声をかけた。 「美遊、クロぉ……」 「事情はおおよそ分かりました」 「……え……?」 その声に、イリヤは顔を上げる。 「貴方はおおかた、最初はこんな殺し合いなどに乗るつもりはなかったのでしょう。 それが、美遊さんとクロさんというご友人が亡くなってしまった。 だから貴方は、2人を蘇らせるためにこの殺し合いに優勝したい」 そういうわけですよね、とキンブリーは投げかける。 「……そう、だよ。 だってだって、クロを殺したのはこの私なんだよっ…… もう一度会えなきゃ、謝ることもできないよぉ……」 再び顔を伏せるイリヤ。 そんな彼女をキンブリーは興味深げに見やる。 (ほう、単に友人を失っただけでなく自ら手にかけたとは予想外ですね) 様子からして、故意ではなく事故か何かだったのだろう。 「お嬢さん、お名前は何と仰いますか」 「……イリヤ……」 「イリヤさん。貴方が殺し合いに乗るというのなら、私が助けになりましょう。 ――私を殺しなさい」 「……え……?」 その声に、イリヤの体の芯は急速に冷えていった。 「イリヤさん。私はここに来てから少なくとも3人――まあ、1人は犬でしたが――の命を手にかけています。武器はこの刀です」 畳みかけるように言葉を放つ。 ベッドの傍らに抜き身の八房を置く。 黒光りする刀身に、そのイリヤは息を呑む。 「それに私、ここに来る前は軍人でしてね」 「戦争に出向いては、数えきれないほどの命を奪ってきました」 「巷では私のことを爆弾狂だとか、紅蓮の錬金術師だとか呼びます」 「そういうわけで、私は貴方のような子供にとって模範となるような人間ではないし、ましてや正しい道を教えることもできません」 「ただし、この場が殺し合いであり、貴方が目的のために殺し合いに乗るとなれば話は違います」 「私のような人殺しでも、教えることができる」 「殺していく道を、教えることができます」 次々に聞こえてくる日常からかけ離れた単語の数々に、イリヤが呆然とするのも構わず。 キンブリーはさらに言葉を続ける。 「イリヤさん、先ほどクロさんを殺したと仰いましたね。 その時の状況はどんなものでしたか?」 その言葉に、イリヤはしばらく考え込むと、あの時のことを語り出した。 「わかんない……クロが戦って、すごく傷付いてて。そしたら私、急に今すぐ殺さなきゃって思って…… そんなことしたくないのに、体は勝手に動いて……、こ、殺しちゃった……殺しちゃった……」 「なるほど、殺したのは自分の意思ではないということですね」 「そうだよ、信じて……信じてよっ……! クロは絶対死んでほしくないのに、なんで、私……」 「落ち着いてください」 また泣き出しそうになるイリヤをキンブリーは宥める。 「自分の意思とは関係なく、イリヤさんの体は動いたということですね。 ならば、イリヤさん。貴方は何者かに体を操られていた可能性が大きい」 「え……」 「平たく言えば、クロさんが死んだのは貴方のせいではないということです」 「私の、せいじゃ……ない?」 思い返す。 何かがおかしいという感じはあった。 この殺し合いの最初――DIOたちと別れてからだ。 ルビーや同行者たちとの会話が、どこかでずれていたような気がする。 「……でも」 けれど。 「そんなこと、言ったって……! 美遊もクロも、死んじゃった……! もう2度と帰って来ないんだよ! だから、私は……」 「殺し合いに乗りたい。でも決心がつかない。 ――そういうことですね」 イリヤは震えながら頷く。 そしてキンブリーは、再び長い言葉を紡ぎ始める。 「話は戻ります」 「私は殺し合いに乗っています。貴方も殺し合いに乗るというのなら、ぜひご協力をしたい」 「ところが、今の私は不覚にもこのような有様」 「これでは殺し方をご教授するどころか、元気な貴方と一緒に行動しては足手まといになりかねない」 「そこで、こういった形でご協力をいたしましょう」 「あなたは殺し合いに乗りたいが、決心がつかない」 「ならば、私は貴方に殺されましょう」 「私は意思を貫く人が好きです」 「自ら軍服を着ておきながら、殺すのは嫌だとわめき散らす連中を私はたくさん見てきました」 「貴方にはそうなって欲しくない」 「貴方が私を殺すことで、誰かに操られるのではなく、自分の意思で殺す覚悟を決め、それを貫くことができるというのなら」 「私は喜んでこの身を差し出しましょう」 『――ふざけるな!!』 ここで、刺激するのを避けてずっと黙っていたルビーが、ついに爆発した。 『それ以上イリヤさんを誑かすんじゃない、この悪魔!!』 「ほう、話す道具とは珍しい。ぜひとも連れ帰って解析したいところですが……残念です」 しかしキンブリーは、そんなルビーの激情を飄々と受け流す。 『イリヤさん、これ以上この男の言葉に耳を貸してはなりません!」 「黙って!!!」 イリヤは、ここに来てから最も大きい声を上げた。 「黙って……。私は今、ルビーじゃなくてこの人と話をしてるんだよ」 その気迫に、ルビーは思わず気圧される。 「……では、お話の続きです。 私はここに来てから色々な情報や物を掴みました。殺される前に、貴方にそれを授けましょう。 まずはこの刀です」 先ほど取り出していた刀を掴む。 「八房というそうです。実に不思議な物でしてね、これで斬り殺した相手を自分の意のままに動く人形にできるそうです。 何なら、これで私を殺して頂いても構いません。きっと良い戦力となるでしょう」 キンブリーは八房を差し出す。 イリヤは、それをしっかりとした手つきで受け取った。 次にキンブリーが取り出したのは、4つの首輪。 「首輪交換のことは聞いていますね? 私は本当ならば北の武器庫へ行って、それを試そうとしていたところです。 4つのうち3つは私が殺した参加者のもの、1つはその参加者が持っていたものです。 3人はかなりの戦力の持ち主でしたので、価値は高いでしょう。ああ、私を殺せば5つに増えますね。 もっとも、私は爆弾に関してはエキスパートを自認しています。 お待ち頂けるというなら、解析を試みてみましょう。この体でもそれくらいは可能でしょう」 イリヤは首輪を受け取る。 その手は、震えてはいなかった。 「それから、最後にとっておきの情報です。 イリヤさん。貴方が決心がつかないのは、半信半疑なせいではないですか? 『広川はああ言ったが、死んだ人間が生き帰るはずがない』とね。 しかし、この私はですね――一度死んで、蘇ったのですよ」 その言葉に、イリヤの息は止まる。 「本当ですよ。名簿にも載っているセリム・ブラッドレイ――。 彼は見かけは子供ですが、ホムンクルスというとんでもない化け物でしてね。 私は確かに彼に食われて消えていったはずなんです。 ――しかし現に、私の体はここにある」 「じゃ、じゃあ、クロ、も……」 キンブリーは頷く。 「ええ。死者の蘇生。私という生き証人がいる以上、広川の言っていたことは嘘ではない。 私が貴方に殺されてもいいと言うのは、このこともあります。私はこの場ではどうせ死んだ人間ですのでね」 イリヤが息を飲む音が、静まり返った室内に響き渡る。 「それから、錬金術師としての最後の仕事もしておきましょうか」 ベッドの枕元にあったスタンドと時計を掴み、爆弾に錬成し、イリヤに渡す。 「残る言うべきことは――そうですね、ウェイブ、マスタング、黒子と名乗る人間。 それから名前は分かりませんが、風を操る少女。 この4人は、私が殺そうと思っていた人間です。ぜひ貴方が遺志を継いで殺していただきたいですね」 「……その風の女の子なら、死んだよ。 ……私がクロを殺した時に、巻き込まれて……」 ぽつりと言うイリヤに、キンブリーは僅かに驚いた顔を見せる。 「そうですか。あの少女は強い人間でした。 ――やはりあなたには見所があるようだ」 キンブリーはイリヤに向き直る。 「――さあ。これで私の伝えるべきことは全てです」 「あとは何もかも、貴方のお気持ち次第」 「私を殺して殺し合いに乗るのも、やはり殺し合いに乗りはせず、このままここを立ち去るのも」 「どちらを選ぶのも、貴方の意思です」 「殺さないというのなら、私はその意思を大いに歓迎しましょう」 「しかし、貴方が殺し合いに乗るというのなら、これだけは言っておきましょうか」 「死から目を背けるな、前を見ろ」 「貴方が殺す人々のその姿を正面から見ろ」 「そして忘れるな、忘れるな、忘れるな」 「奴らも、そして私も、貴方の事を忘れない」 ――そして部屋の中は、痛いほどの静寂が支配した。 少女――イリヤの体は、再び激しい動悸に包まれる。 この男を、殺す。 誰かに操られるのではなく、自分の意思で。 そうすれば、言われた通りだ。 美遊のために、クロエのために。 殺す覚悟が、今度こそ出来上がる。 イリヤは、男に向かって一歩を踏み出す。 その体はベッドに横たわったままだ。 ステッキを構える。 何だか、たくさんの人が自分を呼び止めている気がする 士郎、リン、竜子、美々、雀花。 色々な声が、自分の後から聞こえてくる。 それにさっきからずっと、ルビーが呼びかけているようにも思える。 今ならまだ、戻れる。 手にかけてしまったクロの他の2人にも、許してもらえるかもしれない。 それでも。 美遊とクロの顔が浮かぶ。 笑ってくれなくても、いい。 2人に、会いたい。 声のするほうを振り返る。 たくさんの人の姿が見えた。 元からの知り合いだけでなく、ここに来てから会った人たちもいた。 でも、その中には。 美遊とクロの姿は、なかった。 幻は、消えた。 男に向き直る。 ステッキを振り下ろす。 その瞬間、部屋は巨大な閃光に包まれた。 ■ 男は、自分が異端であると知っていた。 それでも、男は殺しをやめず、男にとって正しく人生を生きた。 正しい道を歩み続ければ、良き最期を必ず迎えられると信じていた。 そして、男は望んだ通りの結末を手に入れた。 そのはずが、男は歪んだ意思によって、殺し合いの場へと再び立たされた。 2度目の人生でも、男は自分の思う正しい道を生きた。 己の美学に従って、殺し続けた。 そして今、2度目の望んだ通りの結末を――迎えようとしている。 「ああ……満足だ」 とても快い。 満ち足りた気持ちだ。 心残りがないわけではない。 だが、望み通りの死を2回も体験できる人間など、世界中を探してもどこにもいないだろう。 おまけに、今度は自分の遺志を継いでくれる人間まで現れたのだ。 「――実に素晴らしい」 キンブリーの意識は消えていく。 光が満ちる中で、その少女の姿は神々しくすら見えた。 「破滅の天使の誕生だ」 【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 死亡】 ■ 当初の目的通り、しばらく転身を解いて休みを取り、回復した後。 半壊した民宿を背に、イリヤは立っていた。 視線の先には、ここに来てから存在に気付いてはいたが、視界に入れないようにしていたものがある。 頭部がぐちゃぐちゃになった、上半身だけの女性の死体。 その首に、ステッキを当てる。 『イリヤさん、何を――』 ルビーが何か言い終わる前に、光が女性の頭を包んだ。 血まみれの首輪だけがぽとりと落ちる。 イリヤはそれを手早く引っ掴むと、空高く飛翔した。 目指すのは武器庫。 首輪交換機が設置され、キンブリーが目指していたと言っていた場所だ。 『……イリヤさん、もうやめてください。これ以上は――』 「……うるさいなあ」 何度目かの問いかけに、飛行がふと止まる。 「ルビーは私の何だっていうの? ただの道具じゃない! 美遊とクロを生き返らせることができるの? できないでしょ! 何もできないくせに私のやることにいちいち口を出さないで!」 『イリヤ、さん……』 「いい、ルビー? 今度何か私に口を出したら――ここから放り投げるからね」 下には何もない空中に差し出されるルビー。 そしてイリヤの目を見て――諦めたように、言葉を発した。 『……承知いたしました。 カレイドステッキ・マジカルルビー。あなたのご意思に従います』 イリヤは、それでいいの、と呟くと。 禁止エリアを避け、武器庫に向けて一直線に飛んでいく。 (イリヤさん……私は) 死徒二十七祖の第4位に列するほとんど伝説の魔法使い、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。 彼が第二魔法を用いて作り出した魔術礼装、カレイドステッキ。その片割れたるマジカルルビー。 だがそんな肩書きも、この場においてはどうしようもなく無力だった。 人々を守ることはおろか、敬愛するマスターが堕ちてゆくことを止めることすらできなかった。 もしもルビーが肉体を人間であったなら、きっと泣いているのだろう。 そろそろ沈もうとしている陽射しを浴びながら、イリヤは飛ぶ。 その姿は本当に、天使のように見えた。 【C-5/上空/一日目/夕方】 【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 [状態]:魔力消費(残り9割)、疲労(中)、飛行中 [装備]:カレイドステッキ・マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード・アーチャー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [道具]:デイパック×3、基本支給品×3、DIOのエキスが染みこんだイリヤのハンカチ、DIOのサークレット、キンブリーの錬成した爆弾×2 死者行軍八房@アカメが斬る!、美少女聖騎士プリティ・サリアンセット@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 クロエの首輪、イギーの首輪、クロメの首輪、空条承太郎の首輪、花京院の首輪、キンブリーの首輪、セリューの首輪、不明支給品0~1 [思考] 基本:美遊とクロの味方として殺し合いに乗って二人を蘇らせる。 0:武器庫に行き、首輪交換を試す。 [備考] ※参戦時期は2wei!の調理実習終了後。 ※『カレイドルビー』の制限は、自立行動禁止、引き出せる魔力の絶対量低下。 ※『カレイドルビー』には、誰でも使える改造が施されており、さらに吸血鬼の血を吸った事で何がしかの不具合が起きているようです。 ※アカメ達と参加者の情報を交換しました。 ※黒達と情報交換しました。 ※「心裡掌握」による洗脳は効果時間が終了したため解除されました。 ※クロエに分かれた魔力を回収したため、イリヤ本来の魔力が復活しました。 時系列順に読む Back 誰が猫の首に鈴を付けるのか? Next かくして亡者の意思は継がれず 投下順に読む Back 見えない悪意 Next 天秤 136 正義の味方 ゾルフ・J・キンブリー GAME OVER 138 ひとりぼっち イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 170 もう一度名前を呼んで
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ワンブリーガレシュカ(ワンブリー・ガレシュカ) 北アメリカのスー族の伝承に登場する戦士。 その名は「まだら鷲」の意。
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ドラゴンブリード (DRAGON BREED) 機種:AC 作・編曲者:石田雅彦 発売元:アイレム 発売年:1989 概要 アイレム情報規制の影響をモロに受けたためドマイナーな作品になった横STG。 ドラゴンに降りてアクションモードに以降できるヘンテコシステムも搭載。難易度はやや高い。 同時期同じように情報規制を受けた『Xマルチプライ』と同じ曲調だが、多少ファンタジー色が強い。 収録曲 曲名 作・編曲者 補足 順位 TITLE BACK CREDIT STAGE START BORN THEME OF BAHAMOOT STAGE 1 THEME OF ZAMBAQUOUS BOSS STAGE CLEAR EYES STAGE 2 BIG DRAGON STAGE 3 COLOR STAGE 4 DADADA STAGE 5 WALK! STAGE 6-1 ROLL! STAGE 6-2 THEME OF KAYUS ENDING CLOSE GAME OVER CONTINUE AGAMEN NAME ENTRY サウンドトラック アイレム レトロゲームミュージックコレクション
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【作品名】ハンコック 【ジャンル】映画 【名前】メアリー・エンブリー 【属性】ハンコックの妹兼元妻 【大きさ】青年女性並 【攻撃力】【防御力】ハンコックと同じ程度 【素早さ】ハンコックと互角の速度で移動し、かつ戦える反応。飛行可能。 【特殊能力】不老不死。大都市範囲の嵐を起こして竜巻や雷を起こすことができる。 【長所】能力的に兄よりも強いかもしれない 【短所】悪いところが兄に似ている 【戦法】トラックを持ち上げた状態で参戦。竜巻や雷で相手を攻撃。効かなかったらトラックで叩き潰す。 それでもダメなら普通の格闘戦に転じる。ちなみに作中ではトラックを持ち上げながら嵐を発生させるのはやっている。 【参考】 【名前】ジョン・ハンコック 【属性】スーパーヒーロー 【大きさ】青年男性並 【攻撃力】車を片手で持ち上げられる。チョコバーで銃弾を弾き返して相手に当てた。10mほどのクジラを持ち上げて放り投げれる。 ステンレス製の円板を凄い速度で投げ、手首だけを切り落とす。 一般男子を空中に放り投げ、10数秒ほど滞空させる。 月に肉眼で見えるくらいの大きなハートマークを刻める。 自分と同等の防御力の相手に格闘でダメージを与えられる。 【防御力】電車に激突されても無傷で微動だにしない。むしろ電車が潰れる。 ビルや道路の一部を破壊する勢いで格闘しても無傷だしトラックを持ち上げてそれで叩き潰されても無傷。 銃無効、ナパーム弾を容易に叩いて軌道を修正させる。 【素早さ】至近距離で銃弾に反応でき、飛行速度も音速で旋回可能。 長距離移動速度は弱った状態で一ヶ月以内に月まで行って帰ってこれるのでそれ以上。ちなみにこの速度と同等の相手と互角に戦える。 【特殊能力】宇宙空間移動可能。不老不死。 【長所】単純に強い。 【短所】物理無効には詰む。戦法がなんかヒーローっぽくない。 【戦法】クジラを持ち上げた状態で参戦し、それで叩き潰す。効かなかったら普通の格闘戦に転じて突っ込んで捕まえて投げる。 参戦vol.8 510 vol.8 658 名前: ◆OO2DpYoy62 [sage] 投稿日:2012/10/05(金) 18 48 47.55 ID ep+MjOfX メアリー・エンブリー考察 音速の反応と移動速度。都市規模の範囲攻撃が強力 トップスピード辺りから ○:トップスピード 雷勝ち ×:トラス・サウス 爆発負け ○:月森梓 耐えて雷勝ち ○:ドグラハンター(女) 落とされても飛べるので無問題。雷勝ち ○:高町美由希 耐えて雷勝ち ○:エイリアンクイーン 雷勝ち ○:敦賀迷彩 耐えて雷勝ち ×:木津多祢 ミサイル負け ×:槍桜ヒメ 逆撫負け ○:津村斗貴子 雷勝ち ○:井河アサギ 耐えて雷勝ち ○:ショチトル 雷勝ち ×:喜界島もがな 気絶負け ×:榛名さなえ 眠らされ負け ×:白崎チカ 屈服負け ○:モーラ 雷勝ち ○:鬼女 耐えて雷勝ち ○:ガブリール 雷勝ち ○○:毛利蘭(OP映像4)=井上和香(プロミスCM) 嵐起こして勝ち ○*7:本多愛~ポポミ 雷勝ち ○*4:アルクェイド・ブリュンスタッド~ヴィクトル・りら・フランケンシュタイン 同上 ×*6:あの女~仮面の女 戦法負け ○:魔神王 殺し続け勝ち ○:雨宮桜子 3分耐えて勝ち ○○:スペースウーマン>久遠 竜巻勝ち △:里中千枝 倒せない倒されない ×:御坂美琴(ラノベ) 電撃負け。というか、今まで至近からのサブマシンガン回避が考慮されてない気がする。 再考が必要か ○*7:木之本桜~コーデリア・グラウカ 雷勝ち ×:ジャンヌ・グルノーブル デル・テジャス負け ×:クラムベリー 破壊音波負け ×:御坂美琴 光速の電撃の方が速い。負け。 ×:セレネさん ビッグバン負け ×:シャナ 封絶負け ジャンヌ・グルノーブル>メアリー・エンブリー>コーデリア・グラウカ
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ジャンヌドシャンブリー(ジャンヌ・ド・シャンブリー) フランスのブルゴーニュ公の系譜に登場する人物。 ヌフル領主。 関連: ピエールキュウセイドシャンブリー (ピエール9世・ド・シャンブリー、父) イザベルドブルゴーニュ (イザベル・ド・ブルゴーニュ、母)