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北欧 アンテロ・ヴィプネン(Antero Vipunen) フィンランドの叙事詩『カレワラ』に登場する巨人。 参考文献 松村武雄『フィンランド・セルヴィア神話と伝説』130頁 森本ヤス子『魔法の歌 フィンランドの民話カレワラより』134頁
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ワンマタル/Wammatar フィンランドの叙事詩『カレワラ』に登場する女悪魔。悪の娘。 別名 ヴァンマタル 参考文献 フェリックス・ギラン編/小海永二訳『ロシアの神話』青土社 森本覚丹訳『フィンランド国民的叙事詩カレワラ(下)』講談社学術文庫
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魔術。それはこの世界とは別の世界、すなわち異世界の法則を現実世界へ引っ張り出し様々な超常現象を発現させる技術を指す。 魔術の存在を知らない者からすればオカルトのようなもの。元々は才能を持たぬ者が才ある者へ追い付く為に開発された術。 法則たる下地となるベースは主に神話や伝承。手順を踏み己が生命力を魔力へ精製し、法則である神話などをコマンドとし、魔術的記号を示す事で魔術を行使する。この当事者達を魔術師と呼ぶ。 自身に刻む魔法名のブースターの一例として、魔術師達は組織構造を組み上げる。魔法名に刻んだ理想や信念を達成する為に。 今回語られる異説はそういった組織構造の一形態である、とある魔術結社で起こった内部抗争とでも言うべき事件。 結社の名は『多からなる一(イ・プルーリバス・ウナム)』。アメリカ合衆国の国璽に記載されている一文を組織名とするこの結社は他の魔術的組織から『弱小宗教・民族の寄せ集め』と表現されている。 また、列強国の侵略や大きな宗教の伝播、政治的な文化破壊などと言った理由から滅ぶ危険性を孕んだその土地固有の風習や古くからの伝統を守る事を主な目的としている。 その為か純粋な戦闘員も当然いるが、然程戦闘を得意としない・あるいは戦闘に消極的な魔術師も一定数存在する。 固有の風習や伝統を守る術は何も戦闘だけでは無い。むしろ戦闘に頼らない継続的な喚起や粘り強い教育が実を結ぶ事例は多数存在し、当然の事ながら結社で活動する穏健的な魔術師も心得ている。 無論掲げている目的のように必要に迫られた場合は結社として戦闘も辞さない。そんな『「大いなる個」に対する「多からなる一」たらん、世界の総意に対する抑止力たらん』という理念を有する『多からなる一』で発生した事件。 それは『多からなる一』秘蔵の魔道書の内の一つで、書に記載された魔術を行使すれば『多からなる一』が保管する魔道書の中で物理的な被害が最も大きくなると称される、十九世紀の魔術師エリアス=リョンロートがまとめたフィンランドの民族叙事詩『カレワラ』をある一人の少女が奪取した事を端に発する。 これは『多からなる一』正規メンバーにして魔道書原典『カレワラ』を奪取した少女カッレラと、同じく『多からなる一』正規メンバーにして逃亡を図ったカッレラを単身追った人間イロ=コイが中心となる物語。 描かれるは、現在進行中で進む物語の狭間たる海上戦から。太平洋のとある無人島周辺を舞台にした魔術師同士の戦いで一体何が交錯し、どのような思想が衝突したのか。物語の幕は…狭間の戦いらしく唐突に開かれた。 ~とある魔術の日常風景 異説「イ・プルーリバス・ウナム」Ⅰ~ 色濃い闇に覆われ、自分が主役だと言わんばかりに爛々と光り輝きながら己の存在を主張する星々も今夜ばかりは脇役に追いやられる、そんな異常な光景が確かに『そこ』にあった。 『そこ』とは太平洋に浮かぶ無人島。より正確に言えば、星々を脇役に追いやった『主役達』は無人島より相当離れた海域で時速千キロを超える速度で以て今なお激闘を続けている。 「いい加減しつこい!!」 霊装船団『ナンタヴェア』の一隻に搭乗するのは、『多からなる一』から魔道書原典『カレワラ』を奪取した少女カッレラ。しかし、少女の肩から伸びる腕は人のそれでは無い。言うなれば『巨人』の腕である。 フィンランドの民族叙事詩に登場した、天を覆う樫の木を切り倒した巨人をモチーフにした体積変換術式によってカッレラは部分的に己が身を巨人と成している。 土から炭素や窒素などの身体を構成する成分のみ抽出し作った着ぐるみを着ている様なものと言えばいいか。 属性的には土に分類されるこの魔術で巨大な腕を得ているにも関わらず、搭乗する『ナンタヴェア』に沈む兆候は一切見られない。 霊装船『ナンタヴェア』は船の主な材質は木や布でできており、楕円形のボートに布でできた帆が掲げられている全長6メートル程の簡素な船だが積載量は相当なものである。 その『ナンタヴェア』のコアであり魔術的記号が細工された蛇の卵に自身の魔力を注入して船を動かしているカッレラは傍に控えさせている『カレワラ』に意思を伝え、応える『カレワラ』もまた目にも止まらぬ速度で魔法陣と化している己のページを捲る。 「うだる熱、凍てつく空気、原初の雌牛が育む恵みの川で育ち成った原始の巨人。この身に纏うは始まりの巨人ユミルの血肉。しからば大海もまた原始の巨人の礎となれ!!」 威力を重視したカッレラが詠唱を終えた直後、彼女が構成する巨人の腕は千キロ超の時速で海上を走る『ナンタヴェア』から両腕を海中へ突き入れた。 原始の巨人ユミルの血は海や川となり、身体は大地となった伝承を逆に解釈しユミルの身体を構成する海や海底たる大地を操る。 常識では考えられない事象を無理矢理現実のものとする魔術。その証明として、海中へ潜り込ませた両腕が通り過ぎ去った後に出来た波飛沫が意思を持った怒涛のように盛り上がり、カッレラと同じく『ナンタヴェア』を操縦する追跡者を呑み込もうと襲い掛かる。 「海国フィジーにて蛇神ンデンゲイは最も偉大で最も強大!蛇神に超えられぬ高波などこの世に無し。天と海を引き裂いた御業で以て荒れ狂う大海原を平定せしめよ!!」 追跡者たる老人イロ=コイに表情に特段の焦りは見られない。皺多き年老いた肌を海水で濡らしながらカッレラと同程度の長さの詠唱を終えたイロは右手を水平に振る。 それだけで今にもイロを呑み込もうとしていた高波の怒涛は真横に何十にも引き裂かれ、イロに襲い掛かる間も無く母なる海へ還っていった。 「ちっ!まさにいたちごっこってヤツね!」 「そうじゃのう。何せ、わしがここに到着する前におぬしは別の者達とも戦闘を重ねておる。わしは、こうして戦いながらおぬしがまともな魔術を使えぬレベルまで疲労が溜まるのを待っておればよい」 「これが馬鹿老害お得意の消極的戦法か。臆病者のあんたらしい小賢しい戦法ね」 「誤解じゃの。普段ならこんな戦い方はせんわい。カッレラ。これでもわしは未だにおぬしを仲間だと思っておる。できる事ならおぬしを傷付ける事なく騒動を終結させたい。個人的にも、こんな戦いさっさと終わらせて魔術研究に没頭したいんじゃ。ヨボヨボの老いぼれの頼みを聞くのが若人の務めではないか?うん?」 「冗談よして。成ろうと思えば子供にでも中年にでも老人にでもなれるイカレ老害の言葉を真に受けるほど私は暇じゃ無いの!!」 カッレラは唇を噛みながらイロのふざけた言動に付き合う暇は無い事を言葉だけでは無く戦闘行為で示そうと魔術行使の燃料である魔力を練り上げる。 思えば『カレワラ』を奪取してからの流れ、いや奪取前から自分という存在の周囲に存在するであろう『運命』とやらはカッレラの予測から外れていた。 (潜在的な反体制派を扇動し内部抗争を誘発させ、混乱の最中に警備が手薄になった『カレワラ』を奪取する。当然途中で幾らかの不安定要素が現実化し、『カレワラ』奪取にそれなりの手間が掛かると思っていた。なのに、“あんなに上手く行くだなんて”。あれじゃ“早過ぎる”!!) カッレラは『カレワラ』奪取の為に念入りに準備をしてきた。『多からなる一』に潜在的に存在していた反体制派―単に『自分の宗教と他の奴の宗教が同列に扱われるのが気に入らない』という反体制派ばかり―を静かに焚き付けたのもその準備の一つ。 勿論計画に絶対は無い。作戦決行当日に限ってカッレラが予測していない不慮の要素が具現化する可能性も織り込み済み。 だが、事態はカッレラが想像する以上にトントン拍子で進行した。思わず拍子抜けする程『カレワラ』が保管された部屋に辿り着いたカッレラは事が上手く運び過ぎている状況に戸惑いながらもこの機を逃すわけにはいかないと揺れる心を抑え込み、『カレワラ』の奪取に成功した。 「馬鹿老害!『アレ』もあんたの仕業!?」 「『アレ』とは何じゃ?『アレ』とは」 「とぼけるなっての。空間移動用に必要な魔力を充填していたコアをセッティングするだけでよかった筈の『ナンタヴェア』の殆どがどっかに行った事を言ってるのよ!!」 後は反体制派が起こしている混乱に付け込んで、後々に必要となる幾つかの霊装を積んであるお目当ての『ナンタヴェア』に搭乗し、認識阻害の魔術結界に覆われた常世の海上移動要塞型神殿『ハワイキ』―『多からなる一』の本部であり、イロ=コイが開発した霊装でもある―の各所に設置されている『ブレ・カロウ』と呼ばれる特徴的な高い屋根を持つ神社的建築物から空間移動により逃走を達成する。 空間移動が可能な時間帯も計算しての作戦。実際には複数人物の魔力によってでしか空間移動は発動できない。だが、何事にも抜け道というのは存在する。 『ブレ・カロウ』による人や物体の空間転移に必要な魔力は確かに集団規模相当を求められるが、言い換えれば集団規模の魔力が充填されているコアのようなものを予め用意しておけば単独でも実質的に空間移動は可能なのである。 そして、コアとなる魔術細工済みの蛇の卵には殻に沿って卵内部を数日程度魔力が循環する機能が備わっていた。 これは遠隔操作や自動操縦時において必要不可欠な機能だが、カッレラはこの機能に目を付け逃走用の為に確保しておいたのだが、当の『ナンタヴェア』の殆どが数十分前には存在した船着場から消え去っていたのだ。 焦る心を必死に制御しながら方々を探し回ってようやく一隻だけ『ナンタヴェア』を見付けたのだが、今度は各所の『ブレ・カロウ』が構造を変形させながら一斉に地面の下へ沈んでいったのだ。 「さぁのう。少なくとも現在判明している事は、おぬしが乗っておる『ナンタヴェア』は完成したばかりの赤ん坊で“まだ主人に愛着を持っていない”という悲しい現実だけじゃの」 (どうせ、『ハワイキ』には馬鹿老害にしか知り得ない秘密があったって事でしょうよ。当然と言えば当然だけどね。手札を全て明かす魔術師が何処の世界にいるって話よ) 空間移動による逃走手段を封じられたカッレラは、止むを得ず充填した魔力を使用し『ナンタヴェア』による航海を開始した。 幸い空間移動用にと反体制派の幾人かを口車に乗せ魔力を注がせているコアは余力十分である。 『カレワラ』の記載内容を読みながら次なる行動である十字教への襲撃に作戦をシフトさせようとした矢先に見知らぬ外部の人間と戦闘を行う羽目になった。 『カレワラ』の力を試す良い実戦相手と考え戦闘を開始したカッレラだが、思いの他相手は強かった。相当の手練だったという事であろう。 それでも確かな魔力消費と時間の浪費と引き換えに『カレワラ』による強大な戦力で戦闘を優勢に進めていたところに現れた『多からなる一』の刺客がイロ=コイ。 魔術結社『多からなる一』へ、本部機能を置く居住地として絶好且つ最適な『ハワイキ』などの霊装を提供した魔術師としては相当の変わり者。しかも、率先して戦いに赴かない臆病者としてよく名が挙がる老いぼれ魔術師が一人で『カレワラ』を有するカッレラの前に立ち塞がった。 想像だにしていなかった人間の出現に呆然とするカッレラがトドメを刺そうとしていた外部の者達を助け避難する時間稼ぎを行ったイロは、カッレラに投降を呼び掛けるもカッレラは己の主張を曲げなかった。それに対してイロもまた戦闘を決断し、今に至るというわけである。 「さぁ、一緒に歌い始めよう、共に語ってゆこう。我ら、二つの方角よりやって来て出会いし者。『カレワラ』第二章【巨大な樫の木と大麦】を根幹に術式構築」 (来るか!『カレワラ』が恐れられる所以たる“即興複合術式”!!) カッレラの挙動に変化が生じる。巨人ユミルの腕と化した両腕から新たな巨人の腕が生え始める。ユミルは数多の巨人をその身体から産み出した始原の巨人である。 その神話に『カレワラ』は類似する無数の神話体系の逸話を自動的に付与・合成し、新たな物語を築き上げる。 カレワラ調韻律と呼ばれる独特なリズムを基本とし、時には高らかに唄い、時には談話形式へ主軸を置きながらカッレラは詠唱を紡いで行く。 「始原の巨人より産まれ出でし霜氷の巨人は母なる海を冷徹な氷の地獄に一変させる!!」 ユミルの左腕から生えた新たな巨人は霜氷の巨人フリームスルスの巨腕。海の象徴であり氷でできた体を持つと『カレワラ』では解釈された霜氷の巨人の手が海面に触れた瞬間、海底に達する程分厚く堅牢な氷の大陸が出来上がる。 『ナンタヴェア』は海面に『乗る』形で航海する性質である。よって、氷の上では身動きの取れない座礁船も同じ。 カッレラは自身の『ナンタヴェア』付近のみ海水状態を保っている。 対抗するイロは大得意とする炎属性魔術にて自身の周囲に存在する巨大な氷の連なりを融かす事に専念するが、どうしても船の進行速度は減衰を強いられる。 「始原の巨人より産まれ出でし霜の巨人ウートガルザ・ロキは虚像と実像を混ぜ合わせ、卑しい嬌声を挙げる!!」 対となるようにユミルの右腕から生えたのは霜の巨人ウートガルザ・ロキの巨腕。幻と姦計に長けたロキの巨腕は一瞬で粉々に砕け散り、 光を屈折させる微細な粒子となってイロの進行を妨げる。しかも、この粒子には対象―この場合はカッレラ―の気配や魔力の感知を誤認させる『幻』の性質も兼ね備えていた。 「始原の巨人より産まれ出でし大妖精シェートロールは千変万化の腕で以て人を溺死させる!!」 氷の大陸に『ナンタヴェア』を座礁させてしまったイロは船から降り、屈折する光の世界で右往左往していた。 そこへ分厚い氷をブチ抜いて海底から上昇してきた巨腕二つの掌にイロは包まれ、フリームスルスの力を一部解除して液体に戻った海中へ引き摺り込まれていく。 フィンランドの池に棲むとされる妖精にして巨人シェートロールは人々を水の中に引き摺り込み溺死させる逸話を持つ。 イロも抵抗するが、トロールに備わる特質として体組織における強力な再生能力により大地から伸びる土の巨腕は幾度破壊しても海底から材料を補給し再生する。 いくら魔術師と言えど余程の例外を除いて人間である事には変わりない。酸素が吸えない水中で囚われる事がどれ程の危機かは身を以て知っているだろう。 「……」 一分が経ち、二分三分と時間の針は進む。激しい音も次第に聞こえなくなり、海中から伝ってきた振動も止んだ。 奇妙な沈黙が場を支配するが、カッレラは気など緩めない。このままで終わる?そうは思えない少女の予感に、操るシェートロールの巨腕に起きた異変が追随する。 「ッ!?腕が…!!」 切られた腕さえ引っ付くほどの強大な再生能力を持つシェートロールの巨腕がガタガタと崩れていく。まるで猛烈な毒に冒され組織を溶かされているようなそんな感覚。 無論シェートロールの巨腕に起きた事象がカッレラ当人に反映されないよう速攻で海底との繋がりを切って事無きを得たカッレラは少々間を置いた後に異変に気付く。 具体的には海底から伝わる振動を。あるいは熱を。そして思い出す。イロが操る伝説ンデンケイは地獄の力を備える蛇神であると。 「ちぃっ!!」 気配を探ると、海底に流れる地脈の力が急速に膨張しているのがすぐにわかった。とはいえ海底、つまり大地との繋がりを一度遮断したカッレラにイロが放つ攻勢を邪魔する仕掛けの実行はタイミングを考えると不可能に等しかった。 よって直接的な戦闘力は魔術結社でも指折りの実力派である事に加えて、危険時における対処能力等こと戦闘においては頭もキレるカッレラはフリームスルスの巨腕を拳から氷の大陸へ突き刺す。次に宙に浮いた形となった自身からフリームスルスの巨腕を生やすユミルの腕を切り離す。 フリームスルスの巨腕を支えたる支柱とし、『ナンタヴェア』ごとユミルの手に収まったカッレラは腕力に物を言わせたユミルの投擲で付近の無人島へ向かった。 次の瞬間、カッレラがいた場所を含めて氷の大陸がマグマの噴出や立ち昇る灼熱の炎柱に覆われる。 地獄の力を灼熱の炎熱や煮え滾るマグマと解釈し、大地の隆起と共に強大な炎属性魔術を扱うイロが囚われていた海中から浮上する。 多少ながら傷を負い、血を流すイロの身体で特に目を引くのは変質した瞳と右腕だろう。縦に長く伸びる黒目、そして右腕の黒い鱗のような皮膚から思わず連想してしまう生き物……それは蛇。 …to be continued
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巨人モンスター 概要 トゥルサスは、フィンランドの叙事詩『カレワラ』の中に出てくる水属性の巨人。 フリームスルスと、色々似る。ただ、北欧の言葉ノルド語では「なんとかスルス」というものが普通で、単体で使われることがないことから、スオミ(フィンランド人の自称)の言葉がオリジナルで、北欧に伝播していった可能性がある(*1)。 ちなみに「カレワラ」は、「カレワの土地」の意で、カレワはフィンランドの伝承に出てくる巨人。であることからこっちは「ヨトゥンヘイム?とヨトゥン」に対応する。なんかフィンランドと北欧で文化の交流があったらしい。 参考文献 健部伸明編集『幻獣大全1 モンスター編』新紀元社
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【元ネタ】『カレワラ』 【CLASS】キャスター 【マスター】 【真名】ロウヒ 【性別】女性 【身長・体重】152cm・44kg 【属性】中立・悪 【ステータス】筋力E 耐久C 敏捷C 魔力A+ 幸運C 宝具A+ 【クラス別スキル】 陣地作成:A 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 「洞窟」「暗がり」に属する特殊な陣地を作ることができる。 道具作成:A 魔力を帯びた器具を作成できる。 キャスターは非常に高位の魔術師であり封印用のアイテム等様々な物を作成可能だが、 所持するサンポが破壊された場合に復元する程の技量はない。 【固有スキル】 ポポヨラの女主人:A 『カレワラ』においてキャスターを指す表現。 変化、高速神言、使い魔、等との混合スキルでもある。 キャスターは動物への変化を自由自在とし、病など陰性の概念を人工精霊に落とし込み使役すらしうる。 呪歌:A+ フィンランド土着の、歌を基盤とする魔術体系。 キャスターの腕前なら物質の生成や操作、大規模な天候操作など 宝具に匹敵する大魔術を操ることが出来るがそれ相応の魔力消費が要求される。 スキル「サンポの恵み」があれば神話の再演など容易いことだろう。 サンポの恵み:A キャスターが所有する無から穀物と富を生み出す道具『サンポ』の恩恵。 スキルとしては特級の魔力炉として働き、これが健在の限り魔力に困る事はほぼ無いだろう。 騎乗:B キャスタークラスでありながら、騎乗スキルを待つ。 船・ソリ・スキーなどを得意とし、魔術により陸空海を選ぶことのない機動を可能とする。 【宝具】 『現れよ、暗黒の眷属たち(ポホヨラ・ピメイス)』 ランク:B~A+ 種別:対軍/対国宝具 レンジ:1~80 最大捕捉:400人 キャスターが支配する闇の土地『ポポヨラ』に周囲を塗り替える大魔術。 これはキャスターとポポヨラの住民の心象風景の具現でもある。 レンジ内においてキャスターはかつて使役した者たちを呼びだす事が可能。 それは疫病、熊、化け物イク・トゥルソなどであり、またポポヨラの住民を呼び自らの魔術のサポートをさせる事も可能。 『隠れよ、天上の星光たち(ポホヨラ・ルオラ)』 ランク:A 種別:対軍/対国宝具 レンジ:1~80 最大捕捉:400人 かつて太陽と月を封じ、世界から光を奪ったキャスターの伝承が宝具となったもの。 発動と共に周囲は暗黒に包まれ、光は失われる。 太陽と共に熱を奪うことによる冷気の発生、光を奪うことによる盲目状態(ブラインド)の付与、 周囲を暗黒に包むことで「暗がり」に属する自身の陣地を宝具の効果範囲全域に拡張するなど、複数の効果を自在に操る。 また太陽、あるいは月に由来する同ランク以下の宝具、スキルを封印状態にする。 この宝具以上のランクのものであっても、Aランク相当の効果を削減することが可能。 【解説】 フィンランドの叙事詩「カレワラ」の登場人物。 暗くて寒い闇の土地ポホヨラを女だてらに執り仕切る老獪な魔術師。娘や村の女は美人が多い様子。 ある日流れ着いたワイナモイネンに『サンポ』を作ってもらえるよう交渉を呼びかける。 鍛冶屋イルマリネンを紹介され、サンポを作ってもらえたロウヒは、サンポをポホヨラの岩山に隠した。 『サンポ』とは奇跡の道具、何もないところから麦粉と塩と金を作る臼の機械で、 その日からロウヒとポホヨラの地に大いなる豊穣を与えたため、ロウヒは大喜びだった。 だがしばらくしてワイナモイネンとイルマリネン、それにレミンカイネンを加えた三人の一行が サンポの返却を要求しにポホヨラへと乗り込んで来る。当然ロウヒはこれを拒否して戦いの様相を呈する。 だが、カンテレの音色に晒されたポホヨラの民は眠りに落ちてしまい、サンポはその隙に奪われてしまった。 しばらくしてレミンカイネンの音痴な歌のお陰で目を覚ましたロウヒとポホヨラの民は追撃に乗り出す。 このときの戦いで劣勢に苛まれたロウヒはせめてもの腹いせにと、サンポを破壊し海中に没させた。 サンポは海の神のものとなり、海中と、更に欠片の流れ着いたカレワラの地に恵みを与えたという。 こうしてポホヨラからサンポの恵みが奪われてしまったためカレワラの民を深く憎んだロウヒは カレワラに幾多の災厄を差し向けるも、全ての謀略はワイナモイネンとイルマリネンによって打倒される。
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Kabukirewarashiカブキレワラシ妖精日本----------出典----------民間伝承 岩手県で、菩提樹の木に宿るとされる木の精。 人間の子供の姿をしており、民家の座敷に上がりこんでイタズラしたり、外で遊んでいる姿を目撃されたりする。 カブキレワラジは、何故か胡桃の木の上にいて、幹が三つに分かれている部分で遊んでいる。胡桃の木の上にいる時は赤い顔をしているという。
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トナルの証製作 ☆クエストアイテムは進行上ではイベントリ内に入れてください。 バック内では反応しません。アドリブンゲート(またはリンク)は必要。 魔・聖以外の方(または媒体ない人)はレビアゲートも沢山持っておくといいです。(レビア以外はルケシオン1回、カレワラ2回です。) ☆【エグラピス】先にゲットしておくと便利。 ミラクルボックス(紫)より入手。 ■氷の果実5個でアドリブン奥(監獄脱出後)の『ギャンブルブロニン』に「サイコロ」「じゃんけん」スキル所持で4連勝する。 【謎の石塊】Get ★スキル「じゃんけんごっこ」、「サイコロごっこ」はミラクルボックス「じゃんけん」は初心者D(閉鎖中)でGetできる。 大体100個くらいの氷の果実で1~2個出来たら上出来。 ■【謎の石塊】をレビア武器屋『コペイン』に投げ込む。 ■カレワラ銀行右上あたりにいる魔女に話しかけ、20万グロッドで 【イセトナ鍛錬書】を買い取る。 ■【イセトナ鍛錬書】をレビア武器屋『コペイン』に投げ込む。 『イセトナ』Get ■【イセトナ】【エグラピス】を持って『監獄のオルガナ』に話しかけて条件の2品をわたし、レビア北東部の根本が光るどれかの木の下に行くと 【ヴェロンブルー】を入手。 ★レビア北東部(21.84)(92.43)(35.39) ■ウェンディゴハイブ(アドリブン後半にある氷の塊)を3つ壊し、 カレワラ町の『プリクニ』に話しかけると 【アドルパウダー】をGet ★ウェンディゴハイブを壊すと敵が出現します。 ■ウェンディゴハイブを壊したときに時々ミラクルボックスがでます。出たら、 ルケシオン町の『トロリ』に話す 【絶対真空水瓶】Get ■【絶対真空水瓶】を持ってレビア町の薬屋『セニロ』に話しかけて 条件の1品をわたす 【古代魔法書魔法フラスコ】を10万グロッドで購入。 ■【アドルパウダー】【絶対真空水瓶】【古代魔法書魔法フラスコ】の 3点を持って、『監獄のオルガナ』に話しかけて条件の3品を渡す 【魔法のフラスコ】をGet ■【魔法のフラスコ】をレビア町の『ロバーツリー』に投げ込む 【ミラベルハイム】をGet ■【イセトナ】【エグラピス】【ヴェロンブルー】【ミラベルハイム】の4点持って、アイナガーデンの『庭師』に話しかけて条件の4品をわたし、【トナルの証】を貰う。 上へ
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『ナンタヴェア』ごとユミルの片腕による投擲によってイロの攻勢を回避したカッレラは、一本残ったユミルの腕を巧みに使い着地の衝撃を和らげ、無事無人島へ着陸を果たした。 その無人島は島にしては奇妙な形状をしていた。例えるならドーナツのような。中央部は湖となっており、その周囲をぐるっと円状に大地が囲む島。 海から顔を出している地面からは大小様々な木々が生えている。普通なら見る者に自然の味わい深い情緒を抱かせる風景だろうが、今のカッレラには大自然が生み出した景色に気を払う余裕は一片たりとも存在しない。 「ハァ…ハァ…」 『ナンタヴェア』を中央部の湖に停めたカッレラは荒い息を整える為に何度も深呼吸を繰り返す。 度重なる戦闘で消費した魔力、つまり魔力の元となる生命力の残存量を感覚で以て測るカッレラは、自身がまだ戦闘の続行は可能と判断する。 (『カレワラ』の魔術は強大だけど、その分魔力の消費量は大きい。『ナンタヴェア』のコアに充填されている魔力にはまだ若干の余裕はあるけど…うかうかしてられない) はっきり言って、イロとの戦闘をこのまま継続してカッレラに良い事など何一つ無い。ここは太平洋に浮かぶ孤島。移動の為には『ナンタヴェア』がどうしても必要となる。 『ナンタヴェア』は単独で動かす事もできるが、代償として魔力消費量増加が付き纏う。コアには若干の余裕があるとは言え、いずれはカッレラ自身の魔力で動かさなくてはならなくなる。 『多からなる一』が差し向ける追っ手はイロだけに収まらない筈である。時間が経てば経つ程カッレラにとっては不利となるのだ。 不幸中の幸いとでも言うべきか、今のところ自分達の激しい戦闘が他の魔術組織や魔術とは関係無い組織に勘付かれた気配は無いのが救いだ。 (でも、ちょっと安心したかな。魔道書の、しかも原典だから精神汚染がヤバいかなと身構えていたんだけど、言う程でも無かったな) その一方で、『多からなる一』から脱走して今までの短時間の中でカッレラは確かな安心材料を確保していた。それは魔道書原典『カレワラ』を読む際の精神汚染。 魔道書を読む際には必ず魔道書の『毒』が懸念事項として付き纏う。優れた魔術師であっても『毒』の汚染から完全防御する事は困難で、中には読んだだけで発狂した魔術師も数知れず存在する。 しかも、原典ともなればその汚染レベルは凄まじい。しかし、魔道書原典『カレワラ』を読んだカッレラに行動不能レベルの症状は起きていない。 相性が良かったのか、カッレラ自身の才覚とでも言うべきか。確かに『毒』の汚染はあったが、それでもカッレラはこうして『カレワラ』の魔術を自由自在とまでは行かずとも実戦レベルまで発揮させる事ができている。 「ようやくお出ましね。随分のんびりした歩調だ事」 不安と安心がないまぜになった心境を抱くカッレラは、マグマや炎柱が所々から噴出している海からゆったりとした歩調で歩いて来る老人に目を向ける。 水魔術を使って海上を歩いている老人イロ=コイの傍に乗船していた『ナンタヴェア』は存在しない。先程の戦闘で使い物にならなくなったのか、あるいは何か目的があって戦闘領域から離脱させているのかは本人のみぞ知る。 背後に光源たる炎を噴出させているせいでカッレラの瞳からはイロの顔や姿は影となっており、イロの表情や傷の程度を中々判別できない。 とにもかくにも、この追っ手を何とかしない限り先に進めない。そう考え、傍に控える『カレワラ』に意思を伝えようとしたカッレラは視線をイロから外す事ができなくなった。 「な、何よ…その姿は…!!」 目が釘付けになる。イロの身体に発生した異常をつぶさに観察したくなる。カッレラが目にしたもの。それなりに長い付き合いとなっているカッレラ自身、今までたったの一度も見た覚えの無いイロ=コイの変貌した姿。 両の瞳はいずれも黒目が縦長に伸び、衣服が肘の先から消失している右腕は黒い鱗のような輝きを放つ。それは、まるで蛇が目の前の老人に乗り移ったかのような光景だった。 ~とある魔術の日常風景 異説「イ・プルーリバス・ウナム」Ⅱ~ 「『何』と言われてもな。目の前の光景が現実。そうとしか言えんな」 「気色悪いわね。それがあんたの隠し玉?」 「さぁの。どう判断してくれてもよい。穿った見方をするのも、侮った見方をするのもおぬしの自由よ」 異様な蛇の視線に身が竦む感覚を覚えるカッレラ。隠していた魔術であろうイロが扱う未知の魔術に心当たりは無い。少なくとも蛇神ンデンゲイとは別物の伝承なり伝説なりを利用した魔術だろう。 マイナーな魔術がメジャーな魔術に勝る点として、全体的にその情報量の少なさが挙げられるだろう。十字教や北欧神話などのメジャーな魔術は規模が大きい分それだけ知られている。 勿論規模が大きいという事は細分化されているという事でもある。『○○神話に影響を受けた○○教魔術』のように異能のセッティングを自由に組み立てられる自由度の広大さもあるので、情報戦において一概にマイナー勢力が有利というわけでは無い。 とはいえ、強力無比を目指す場合メジャーな魔術に用いられる伝承は必然数が絞られてくる。専門分野と被っていれば、戦う相手の魔術への割り込みすら実現させる事も可能だろう。 しかし、それがマイナーな魔術となると対戦相手にとっては未知の魔術となる可能性が高い。当然対抗策としては相性などを無視した力押しになる傾向は確かに存在する。 『多からなる一』に所属する魔術師の多くは、このマイナー性―言い換えれば“希少性”―を重視する。もっとも、マイナー故にメジャーな魔術の力押しに負けてしまう事も大いに有り得るわけだが。 「ふ~ん。まぁ、あんたがどんな魔術を使おうが、私がやるべき事は一つ。あんたをブチのめして、十字教に宣戦布告する!」 「…どうしても十字教への襲撃を思い留まる事はできんか?」 「できないわね。そもそもあんた、今の『多からなる一』の現状を見て何とも思わないの?自分達が掲げる宗教や伝承を十字教のような『多数派』に軽んじられたくないと吠える癖に、一向に連中の思い描く理想像に対して大したアクションを取らない腑抜けた構造に!」 「腑抜けたとは心外じゃの。土地固有の伝統や風習を守る手段は、何も戦いによる戦果だけではあるまい。粘り強く、また辛抱強く働き掛けた結果根付く風習が存続した事例は幾らでもある。 特にわしを含めた『多からなる一』で活動する穏健的な結社員を見れば理解できるじゃろ?彼等は殊更戦闘に重きを置いてなどおらん」 「それが腑抜けてるって言ってんのよ馬鹿老害!!ホント老害よねあんた!年老いたあんたみたいな人間が組織にいたら、いずれ組織は立ち行かなくなる! あんたみたいな人間が『多からなる一』にいるから、知らず知らずの内に皆に臆病風が吹いてるのよ!!弱者というカテゴリーへ無意識の内に自分を置いちゃってるのよ!!」 イロの反論はカッレラの怒りの炎に油を注ぐだけだ。『多数派』の代表格たる十字教に敵対意思を示す事で弱者という立ち位置に甘んじる現状を変え、少数派宗教・民族としての誇りを取り戻す。 その為に敢えて『多からなる一』内部に抗争を引き起こさせ、自ら十字教へ戦いを挑み、その姿勢で以て皆の意識を変える。弱者から抜け出す。強者に牙を向く誇り高き勇者となる。それがカッレラの望みなのだから。 (…まっことこやつは。まるで昔の自分を見ているようじゃ。無知でいる事に恐れなど抱かず、未知な事に畏れず立ち向かっていったかつてのわしのような勇ましさよ。その在り方を今のわしは浅はかと断ずるも、この羨むべき心は抑える事はできんの) 対して、カッレラの非難を正面から受け止めるイロは少女の勇ましき言動にどうしても羨ましさを抱かずにはいられない。 確かに、カッレラの指摘する通り自分は年老いた。勇敢だった若き頃の勢いは歳を経る毎に鳴りを潜め、慎重に事を運ぶようになった。臆病者になった。否。“臆病を重視するようになった”。 何せ、若い頃の自分は一度怒髪天を衝けば周囲の制止を振り切ってとことん“やる”性質の人間だった。当時は無茶ばかりしていた。それが原因で魔術業界に引っ掛かった。 別段当時の自分の行動を否定するわけでは無い。現に、こうして一世紀以上の生を謳歌しているのもひとえに魔術あってこそだからだ。 「何でニヤニヤしてるのよ?その風貌のせいで、余計に気持ち悪いったらない。まさかとは思うけど、老いぼれの癖に私を見て発情でもしてるの?さっきまで色んな巨人を出してたもんね。 土から構成するからどうしても裸のような格好になっちゃうし。はっ、蛇の発情って目にした事無いけどきっとあんた程に気色悪くは無いんでしょうね?」 「失礼な。こう見えてもわしは一度結婚しておる。生涯で唯一人心の底から恋し、愛し尽くした人は我が伴侶のみ。そう決めておる」 「えっ?結婚?……………嘘よね?」 「嘘なものか!現実逃避するでない!」 「…マジ?」 「マジマジ」 「うっそ……!!あんたみたいなやつを旦那に持った奥さんに女として心の底から同情するわ。さぞかし、心の広~い深~い奥さんだったんでしょうね。…あっ、奥さんじゃなくて旦那さんの可能性もあるか。どっちにしろ苦労が偲ばれるわね」 (あぁ。広かったとも。深かったとも。短い年数じゃったが、我が伴侶程素晴らしい人に会った事は昔も今も無い。あやつとの間に子供が生まれておれば、もしかしたらカッレラのような芯の通った子供だったかもしれんのう) 心底呆けたというか驚愕の余りについ日常会話―普段からしてイロに対するカッレラの言動は常に反抗的である―をしてしまったというか。それだけカッレラにとってイロが結婚しているという事実は衝撃的だったのだ。 自分が伴侶の立場だったら絶対にこんな男願い下げだ。巨人の足で蹴っ飛ばしてでもお引取り願うだろう。 儷の片割れである者からすれば失礼極まる発言をかますカッレラに、イロはニヤけ顔を引き締めながらも目を細めながら懐かしい過去を回想する。 あんなに幸せな日々を過ごす事ができたのは愛しき人のおかげ。その一言に尽きる。病弱だった伴侶とは既に死別しており、儷の間に子供もできなかった。 しかし、かの人は何一つ悲観的な言葉を吐かず最期の最後までイロを思っての言葉を語り掛けてくれた。愛する伴侶の為にできた事は正直少ない。 魔術師となってからも以前と変わらず自由奔放で猪突猛進だったかつての自分は伴侶から与えられてばかりだった。 故に、生涯で唯一人自分と愛し愛される関係を作り上げる事ができたかけがえのないかの人の想いに恥じぬ生き方をしようとイロは心に決めている。 「カッレラよ。おぬしは優しいのう」 「そりゃねぇ。同情せざるを得ないっていうか…」 「そっちの話じゃ無いわい。わしに対して優しいと言っておるんじゃよ」 イロの投げ掛ける褒め言葉に手を腰に当ててふんぞり返っているカッレラの返答を訂正する老人は、縦に伸びる黒目をカッと見開く。 僅かに笑みさえ零すその言いようの無い気色悪さにカッレラは、皮膚が黒い鱗と化している右手で自分を指差してくるイロの言葉の意味する所を図りかねるのも含めて表情筋を引き攣らせる。 「はっ?誰があんたに優しくしてんのよ。さっきも言ったでしょ?私はあんたをブチのめすって」 「何故そこで『ブチのめす』となるんじゃ?どうして『殺す』とならんのじゃ?」 「ッ…」 イロが続ける言葉に喉の奥から出そうとした言葉が詰まる。 「…優しいのうカッレラよ。その敬老精神は他の若人にも見習わせたいくらいじゃ」 「勘違いしないで。私は私の目的を邪魔する奴相手に手を抜いたりなんかしない。どうしっても退かないなら殺してでも突き進む。馬鹿老害。あんただって例外じゃ無い」 「その割には攻勢が手緩いのう。例えば、先程ウートガルザ・ロキからシェートロールへ繋げたコンボじゃが何故幻に苦しむわしに対して『水中へ引き摺り込む』などという手緩い攻撃方法を選んだんじゃ? おぬしなら、『カレワラ』を持つおぬしならもっと強大な直接的攻撃手段を持つ巨人の力を使えた筈。そうじゃ、そっちの方がはるかに効率的で凄まじく効果も高かったであろうに」 イロはシェートロールという巨人をコンボの最後に持って来たカッレラの内心に疑問を抱いていた。本当にカッレラがイロを殺すつもりなら、あの場面でシェートロールの力を行使するのは詰めが甘い。 幾ら強大な再生能力を持つとはいえ、時間という猶予を与えればそれだけイロに対抗手段を行使させる隙を与える。 あの場面で最善かつ最も効果的だったのは、『これで終わりにさせる』という気概に相応しい強大な攻撃能力を有する巨人の発現だった。 カッレラだって理解していた筈。なら、どうしてカッレラはその手段を選択しなかったのか。 「心を偽るなカッレラ。おぬしが追っ手であるわしを最初に見た時、どんな態度を取った?どのような表情を浮かべていた?わしはちゃんと覚えておるぞ。 おぬしは呆然としておった。『どうしてアンタが追っ手として来るの?』という驚愕に揺れていた表情をわしは記憶しておる」 「……」 「おぬしは『多数派』による『少数派』へのイジメが大嫌いじゃからの。それは、言い換えれば力ある強き者が力を持たぬ弱き者への弾圧を許せない事と同じじゃ。 おぬしにとっては、わしのような臆病者が追っ手として来るよりおぬしのような勇ましき者が追っ手だった方が“楽”であったであろう? それか、わしが数に含まれていたとして『多数に上る追っ手』であった方が『少数派』として孤軍奮闘できる環境を得る事ができて万々歳じゃったろう? そうすれば、『少数派』の誇りを取り戻す事を大義名分として掲げるおぬしは結社に混乱を引き起こした罪に揺れる心に踏ん切りを着けて目的遂行に邁進する事が叶う」 「……つまり、あんたはこう言いたいわけ?『臆病者の馬鹿老害が仲間も連れず単身で追うのは、私の目的遂行を邪魔する人材として最適だった』と」 「それこそ、こうとしか言えんな。『目の前の光景が現実』。穿った見方をするのも、侮った見方をするのもおぬしの自由じゃが、『カレワラ』を使用した魔術攻勢を仕掛けたおぬしの判断材料は『臆病者のわしが生き残っておる』という動かぬ現実じゃぞ? おぬしが手を抜いたからこそ、わしは外部の者達を救助し避難させる時間稼ぎも果たせた。そうで無ければ、核級の破壊力を持つと謳われる『カレワラ』からあの者達を逃がす事ができたかどうかは正直怪しいの」 答えは至って単純。つまるところ、カッレラは弱いものイジメが大嫌いなのだ。それは『多数派』による『少数派』への弾圧に繋がる要素だ。 そもそも巨大宗教に数えられる『多数派』は自分達以外の宗派を『魔なる者』として排除している。その影響は『少数派』であればある程大きくなる。 カッレラは今までの人生の中で弾圧の影響を色濃く受ける場面・光景を何度も見て来た。見て、感じて、『許せない』と思うようになった。 自身が『多からなる一』に所属するのも、この『許せない』という気持ちが大きい。だから、自分は『多数派』のような人間にだけは絶対ならないと固く心に誓っている。 そんなカッレラは、『カレワラ』を奪取した自分へ『多からなる一』から差し向けられる追っ手として、『多人数に上る魔術師』もしくは『結社きっての精鋭戦闘魔術師』のどちらかだと想定していた。 客観的に考えてカッレラの想定はおよそ妥当と言える。そしてカッレラはそういう展開を待ち望んでいた。 負い目はある。罪の意識を抱いていないわけではない。でも、想定通りの追っ手を打ち破る事で自分の覚悟を改めて結社へ示す事ができる。本気度を見せ付ける事ができる。 追っ手を打ち破った末に自身が十字教に宣戦布告すれば、もしかすれば結社の中からカッレラの意思に同調する動きが発生する可能性だってある。 だって、皆も心の何処かで感じていた筈だから。考えていた筈だから。『多数派』に『少数派』が牙を剥く…そんな理想的な武勇伝を。 「………ハァ。どうしてあんたなのよ。あんたじゃ無ければ、私は僅かの迷いも振り切って戦えたのに。『多からなる一』は、どうしてあんた一人を追っ手として私に差し向けたわけ?もしかして、『ナンタヴェア』を逃走手段に利用された責任とかで無理矢理…」 「わしが望んだ事よ。皆にお願いしての。皆緊急時で焦っておったというのに、わしの頼みをちゃんと聞き入れてくれたわい」 「……そぅ」 それなのに。事もあろうに追っ手として立ち塞がったのがイロ。よりにもよってイロ=コイ。臆病者として有名で、カッレラ自身イロが戦う姿など一度とすら拝んだ事は無く、結社内部で発生するいざこざの仲介役としてよく駆り出される年老いた人間。 他のメンバーと同じようにカッレラにも『ナンダヴェア』の使用方法などを手取り足取り教え、日々の健康管理にも気を使うお節介焼き。 つっけんどんな態度で終始してしまう自分に対して何時も困ったようなはにかんだ顔を浮かべるイロを、カッレラはなんだかんだで信頼していた。 イロの霊装のおかげで『多からなる一』の活動はグッとやりやすくなった事もある。個人主義な魔術師には珍しく全体の和や協調を唱える変わり者を遠巻きで眺めながら呆れつつもクスッと笑いを零してしまう、そういう関係にいつしかなっていた事も確かにある。 だから、今回の騒動でも追っ手として立ち塞がる魔術師の想定枠にイロは最初から存在しなかった。どうして?決まっている。 まるで戦闘を行わない理由を『マジックアイテムや霊装の作製にかけては超一流だが戦闘はからっきし駄目』とまで噂される程の結社きっての臆病者の癖に魔術師として命懸けで『少数派』を守る活動を継続しているイロを、『カレワラ』を持つ自分の手で殺す事など強大な力を持つ『多数派』が力の弱い『少数派』を弾圧した末に殺す様と同じではないか。 『それなのに』。イロは自らの意思でカッレラの前に立ち塞がった。カッレラを止める為に。反抗期の娘を叱りに来た親のようにいつものような飄々とした雰囲気で現れた。 「あんた強かったのね。どうしてそれだけ強くてそんなに臆病なわけ?」 「……とある人に教えて貰ったんじゃ。臆病で居続ける事の大切さを」 「…なにそれ。ハァア…まぁいいわ。あんたは臆病者だけど戦闘も超一流だった。それだけわかれば……十分よ!」 「ッ!」 呆れているのか感心しているのか、もしくは両方なのか様々な感情が混ざった表情を浮かべるカッレラは、目の前の臆病者を強者と遂に認める。 カッレラのような人間からすれば臆病なのに強者という性質は理解できない要素が多いが、『カレワラ』を持つ自身とここまで渡り合えるからには認めざるを得ない。本当なら……“認めたくなんてなかったのに”。 「―――!」 イロは初めて耳にする。カッレラの魔法名を。己の信念をラテン語で表し、これを宣言する事は自分の覚悟を見せ付ける事と同義であるという偉大なる名を。 一部の魔術師にとっては殺し名と同じ魔法名をイロ相手にカッレラが名乗ったという事は、つまりカッレラはイロを『殺す』と決意したのだ。 「イロ=コイ!!私はあんたを殺す!!私の成したい事を為す為に!!私の願いを叶える為に!!あんたは……未だに私を裏切り者じゃ無く仲間だって呼んでくれる優しいあんたは、だからこそどうしようも無く邪魔なのよ!!」 島中の土や海底から巨人の材料となる炭素や窒素を掻き集めるカッレラ。今度は腕だけでは無く身体全体を巨人化させる目的で。 土属性魔術を得意分野とするイロは、カッレラの悲壮な決意に顔を歪ませながらも彼女の材料集めを妨害するべくンデンゲイ魔術によって割り込みを仕掛けようとする。 「ッ!?」 「あんたは優し過ぎる。魔術師にとって自分の命綱である魔術を他人へ教える事がどれだけ自殺行為なのかをあんたは理解していなかった。 『ナンタヴェア』や『ブレ・カロウ』の使用方法から、あんたのンデンゲイ魔術に用いられる魔術式はおおよそ見当が付く。 今までの戦闘も逆算の為の補強材料となった。今の私はあんたの魔術妨害を弾く事だってわけ無い!!」 カッレラの宣言は、イロの操るンデンゲイ魔術の基幹となる魔術式を逆算した事を示している。先程イロがマグマや炎柱を噴出させる時に地脈を利用した際土属性魔術で以て地脈の位置を探っていた事が決め手となった。 今までの経験によりンデンゲイ魔術に関する情報を集めた今のカッレラは、イロの魔術を妨害する事など容易い。 「AAAAAAAAAAAAA!!!」 イロの妨害を振り切ったカッレラは、とうとうフィンランドの民族叙事詩に登場した、天を覆う樫の木を切り倒した巨人そのものとなった。 十数メートルもの巨体から吐き出される咆哮は、夜の空気を切り裂く程の衝撃波となって方々へ振り撒かれる。 (だが、これ程の巨体となれば『カレワラ』による即興複合術式を組み合わせる際に多大な魔力消費は避けられぬ!!今までの立て続けの戦闘によってカッレラも相当魔力を消費してお……ッ!?) 自身の魔術を逆算されてしまったイロは、それでもカッレラの魔力消費による疲労が相当なものである現状に確かな勝機を見出していた。 『ハワイキ』を脱出してからの度重なる戦闘に加えて、完全な巨人形態での『カレワラ』使用は下手をすれば魔術師の生命力が枯渇し自爆を引き起こしかねない行為である。 『カレワラ』の魔術はいずれも強大ながらも術者に精神汚染と魔力消費を強いる諸刃の剣である事を看破していたイロは、だがそこで信じられない現象を蛇の瞳に映した。 (『カレワラ』自身の魔力を基に地脈のエネルギーを引き出し、『樫切りの巨人』に即興複合術式をじゃと!?まさか、この短期間の内にわしの想像以上に『カレワラ』がカッレラに馴染んでしまっておるのか!!) それは、魔道書原典『カレワラ』が持つ著者本人の魔力を下地に地脈に流れる炎属性のエネルギーを引き出している光景だった。 しかも、今まではカッレラの詠唱が必要とされていたのに今回は詠唱不要と来た。おそらくは、『カレワラ』内部の複雑な魔法陣によって詠唱不要となっているに違いない。 原典の中には干渉を感知すると自動的にその実行犯に対し迎撃術式を発動させるタイプもあるが、『カレワラ』もそのタイプ。 そして、この迎撃術式は著者や地脈の魔力を利用し行われる性質である。つまり、『カレワラ』は“『樫切りの巨人』に対して即興複合術式を発動させる為に『カレワラ』自身の魔力を基に地脈のエネルギーを引き出し、不足気味なカッレラの魔力を補った”という事。 意識的にしろ無意識的にしろ、カッレラの意思に応える『カレワラ』はイロが想像する以上にカッレラを認めているのだ。 「GAAAAAAAAAAA!!!」 (これは…この灼熱の巨人は……北欧神話の巨人スルトか!!) 大地を焼き、海を沸騰させ、空気を焦がす灼熱の巨人がイロの前に降臨する。名はスルト。北欧神話にて世界を焼き尽くした巨人と謳われる炎の巨人。 核級の破壊力を振り撒くとされる『カレワラ』が絡むのなら、炎核の巨人とも呼称できるだろうか。 闇夜を煌々と照らす炎の光、体中から排出される灼熱の火、吸い込めばたちまち肺を焼くに違いない炎熱の息吹、近付く事さえままならぬ炎核の巨人スルト。 かの神話で語られる巨人スルト最大の特徴であり最大の武器と言えば、間違い無く“あの”伝説の剣だろう。 (カッレラは逃走時巨人化魔術に利用できる霊装は持ち出せなかった。ならば、スルトになったとしても利用できる霊装も持っていない。一説ではかの豊穣神フレイの剣を持っているとも聞いた事はあるが、どちらにしろ霊装が無ければ!!) スルトは太陽のように光り輝く剣を持っていると謳われ、その剣で以て世界中を焼き尽くしたとされている。 また、北欧神話における終末の日ラグナロクにて豊穣神フレイと戦い奪い取った、かの『レーヴァテイン』と同一視される事もある常勝の剣をも所持しているという説も存在する。 だが、どちらにしろ今のカッレラはそれらの伝承を利用せきる霊装は持っていない。スルト魔術を十全には発揮する事ができない状態…の筈だった。 「AAAAAAAAAAAAAA!!!」 「ッッ!!!」 イロは知らなかった。カッレラもまた知らなかった。『カレワラ』が通常の伝承とは別の知識として書の中に秘めていた。 スルトが持つ世界を焼き尽くすとされる炎の剣は、実は剣そのものに巨大な炎が宿っているのでは無く『スルト自身』の力によるものであると。 すなわち、世界を焼き尽くした炎の根源は剣では無くスルト。故に、剣として利用できる霊装が無くともその強力無比な灼熱の力は行使できるという解釈だ。 地脈から取り出した火属性の強大エネルギーを活用し炎核の巨人スルトを再現するカッレラは、自身の意識が振り切れてしまいかねない爆発的な力をギリギリの所で制御する。 周囲の木々を瞬く間に塵に変える程の莫大な熱量の塊を体正面に集中させたカッレラは真上へ跳び、眼下に見下ろす形となったイロ目掛けて解き放つ。 「GAAAAAAAAAAAAA!!!!!」 北欧神話にて世界を焼き尽くした太陽の如き閃光と爆炎の放射が径を絞った一本の流星となって発射され、大地を、海を、そしてイロを呑み込んだ。 数瞬遅れて発生した巨大な爆発は海を蒸発させ、海底の地形を変え、甚大な爆風発生によって広範囲に真空空間を生み出した。 直後に四方八方から莫大な強風が爆発の中心地に殺到する程の…まさに核兵器と同等の破壊力を世に顕現させるに至った。 …to be continued
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牧場の少女カトリ 牧場の少女カトリ 音楽編 imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (25P7326.jpg) 発売元・販売元 発売元:キャニオン 販売元 発売日 1984.04.21 価格 2500円(税抜き) 内容 Love with You 〜愛のプレゼント〜 歌:小林千絵 プロローグ(交響詩〈フィンランディア〉より) 青空 のどかな風景 森と湖(交響詩集〈カレワラによる4つの伝説〉より) サラ(母)のやさしさ 働くカトリ(組曲〈恋人〉より) ひとりぼっち ともだちアデル 心配(組曲〈カレリア〉より) 祈り(組曲〈カレリア〉より) 夕暮れの牧草地 美しい星 涙(なみだ) 母の面影(交響詩〈フィンランディア〉より) 雪景色(組曲〈カレリア〉より) 不安(組曲〈恋人〉より) 逃亡(交響詩集〈カレワラによる4つの伝説〉より) 希望の光 うれしくて・・・ 幸せの時 交響詩フィンランディア 風の子守歌 歌:小林千絵 備考
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牧場の少女カトリ 牧場の少女カトリ 音楽編 http //page4.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d114931567 より 発売元・販売元 発売元:キャニオン 販売元 発売日 1984.04.21 価格 2500円(税抜き) 内容 Love with You 〜愛のプレゼント〜 歌:小林千絵 プロローグ(交響詩〈フィンランディア〉より) 青空 のどかな風景 森と湖(交響詩集〈カレワラによる4つの伝説〉より) サラ(母)のやさしさ 働くカトリ(組曲〈恋人〉より) ひとりぼっち ともだちアデル 心配(組曲〈カレリア〉より) 祈り(組曲〈カレリア〉より) 夕暮れの牧草地 美しい星 涙(なみだ) 母の面影(交響詩〈フィンランディア〉より) 雪景色(組曲〈カレリア〉より) 不安(組曲〈恋人〉より) 逃亡(交響詩集〈カレワラによる4つの伝説〉より) 希望の光 うれしくて・・・ 幸せの時 交響詩フィンランディア 風の子守歌 歌:小林千絵 備考