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ビーデル
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ID.3101~3200 ムーデル ステータス ステータス No 3181 Lv 1 Rare ☆3 属性 無 種族 魔物 COST 0 最小HP 0 最大HP 0 限突最大HP 0 最小ATK 0 最大ATK 0 限突最大ATK 0 Limit Over 0 Charm 0.0 スキル 無し リンク 無し プロフィール 無し 関連 ID.3101~3200 備考 コメント 名前 コメント
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キャラ紹介(外部リンク) ∧∧Σ ∧∧ (;゚∀゚) (*゚∀゚) ~| っっ ~(_,,) (/ U 名前:ツーデルベルト・タウンゼント 職業:Rogue(ならず者)(一応錬金術士見習い) 性別:♂ 年齢:14歳 種族:ツー族 技能:錬金Lv12 盗賊Lv14 ツッコミLv36 初登場:Recipe 1 OPENING 拡大 1 Recipe 1 フサフサ玉 本編 76 補足 小さいときケントニャスにいたが、ストチル仲間全員が衛生局に捕まった際に逃亡。 シーナにちょっかいを出すが逆にコキ使われることに あだ名:ヤムチャ ヘタレ ツンデレ etcetc... 現在はシーナの錬金術修行にジュワルベ他の戦闘訓練にノルとのお勉強に店の手伝いにとメキメキ鍛えられ実力を伸ばしている。 つー種全般に言えることだが外見が整っていて中性的で、コイツの場合は特に女の子に間違えられやすい また、多くの人間をショタコンへ(一方的に)目覚めさせている罪な男でもある。 ヤセの超大食い 役所への申請名は「ツンデレベルト・タウンゼント」(無論シーナ独断) 良くも悪くも人物として完成している節があるシーナに対して成長の余地が残されている点からアトリエスレの実質的な主人公といえる。 人物相関 キャラ キャラとの関係 初遭遇 シーナ 師弟関係・保護者 錬金女 Recipe 1 フサフサ玉 ニラッチュ 友達?空気? Recipe 1 陽と火の杖(前編) キキーン 嫌だァァァ Recipe 1 【コマンド】>『設備増築』 前編 ジュワルベ 戦闘訓練での師弟関係 Recipe 2 【コマンド】>『公共施設』>銀行 タカラ 無能の兄ちゃん Recipe 2 【酒場】と【依頼】 ノマ インスパイ屋の兄ちゃん Recipe 2 【酒場】と【依頼】 モランス 友人・錬金 ツッコミ仲間 テリー Recipe 11 『誰よりも純粋な 君の 始まり 』1 ノル 友人・恋愛感情? Recipe 4 迷い猫探し ニャラギ ノルのお伴・友人 Recipe 4 迷い猫探し モナハルト 戦闘訓練の相手・従業員仲間 Recipe 4 『モナハルト』(中編) ダシガラ 助けられる かがく女 Recipe 5 『科学』 ボルトゴッチ Recipe 5 『科学』 ホーン 外見がだらしねぇあんちゃん Recipe 6 『ホーンさんの自堕落な休日』(後編) モラーレン 生首こわい Recipe 9 【奇人変人】 キート 友達 Recipe 12 ―【乱入】― !! 5th Intruder !! ―【挑戦】― 警察官 カオス Recipe 12 警官の活躍 ロゼ 同居人 Recipe 13 6th Guest & 7th…… ウララー 潜入する Recipe 22 ウララー魔法堂 エー 介抱してもらう Recipe 22 ウララー魔法堂 ルーシィー こわいお客 Recipe 27 教会、二日目の午後 ジル ジルねーちゃん Recipe 28 キャンディ×キャンディ ツエック 友達 同じタイプ Recipe 30 ツエックの心 ラーク 森で出会う Recipe 37 オクヤマ・ツクモ ツクモ 同上 葬乱のねぇちゃん Recipe 37 オクヤマ・ツクモ ナタ 戦闘訓練の相手・姉貴分 Recipe 40 黒頭巾…? フーディア ノルの友人 Recipe 47 遠出のあとで④ わが良き友よ ベル 壁のおばちゃん Recipe 47 遠出のあとで④ わが良き友よ キリング 似たもの同士(頭部以外) Recipe 48 ◇第一楽章 ~黒騎士~ マール 戦闘訓練の相手 Recipe 70 弓使いの修行 前編 フュシャ 剣術の弟子 Recipe 19 きみ死ね 登場作品 Recipe 1 OPENING フサフサ玉(作品) 小ネタ2 陽と火の杖(前編) 陽と火の杖(中編+後編) 【コマンド】>『設備増築』 前編 Recipe 2 【コマンド】>『設備増築』 後編 【コマンド】>『公共施設』>銀行 アマカケル 閑話休題 モナーブルグ中央広場 【酒場】と【依頼】 Recipe 3 【品質】と【従属効果】 【ノーマル調合】 【アレンジ調合】 【ラフ調合】 軽い説明 【てきとー調合】 ○○のアトリエ? 朝イチ調合 ひらがなカード Recipe 4 『モナハルト』(前編) レンタンの歌 レンタン シャドウゲイトなツーデル 親子丼(作品) 勝負 ニラッチュの一日 『モナハルト』(中編) 迷い猫探し 毒男人形 鋼の救世主 チ-ズケーキ 材料採取 ギコルチェス・トーア 戦争とは裏切りである 前編 地球儀 Recipe 5 『モナハルト』(後編) お料理教室 圧縮 無能による悲劇 材料採取2 『科学』 行方不明 HGスーツ ツーの調合 Recipe 6 お嬢様 ツンデレ 『ホーンさんの自堕落な休日』(後編) ↑続きの小ネタ お酒 れんびん(作品) 小ネタ(レシピ6) 『カボチャと似てるじゃん? 色とか』 ノルの母親 子供の悩み うにご飯(作品) うにご飯2 「解禁日」前半 「解禁日」(別バージョン) Recipe 7 【武器調合】前編 おねいちゃん(作品) 『戦い方』 8頭身 【リビングアイテム】 【リビングアイテム 2】 ツーデルの苦悶 エビフライ 【鍛冶調合】後編 Recipe 8 増幅されますた 『綿・毛・絹』 Recipe 9 私の名はダシガラだ ――食べていい? 『年末スペシャル(前編)』 あのバカは世界を目指す 【奇人変人】 Recipe 10 バート精錬所 童貞小ネタ 童貞小ネタIII 品質鑑定 うめねた Recipe 11 『誰よりも純粋な 君の 始まり 』1 アトリエ定期検診2006 Recipe 12 ―【乱入】― !! 5th Intruder !! ―【挑戦】― 警官の活躍 Recipe 13 6th Guest 7th…… End of Xmas Go to Next year ライトセーバー1 青魔導士 アトリエ大王 ツーデル依頼達成 謝罪男2 Recipe 14 名無しの警察官の歌 『誰よりも純粋な 君の 始まり 』2 Recipe 15 無題(前編) 無題(中編) まさか Recipe 16 『誰よりも純粋な 君の 始まり 』3 商業戦略的バレンタインデー ヤバンティinしぃのアトリエ Recipe 17 なし Recipe 18 ノルとカレイドスコープ ハンマー(前編) 二人で一人(中編) Recipe 19 『誰よりも純粋な 君の 始まり 』4 ギルガメの使い方 きみ死ね 主役が誰だか分からない話 Recipe 20 『誰よりも純粋な君の始まり』5 『誰よりも純粋な君の始まり』7 素材専門の商人 はじまりの理由 Recipe 21 とある教会にて5 Recipe 22 言葉の刃 小さくて大きなもの ウララー魔法堂 Recipe 23 アトリエだらけの運動会【ポロリはないよ】 Recipe 24 ツーデルvsアブノーマルズ Recipe 25 knight 第一話 とある学校の授業風景 Recipe 26 なし Recipe 27 教会、二日目の午後 『誰よりも純粋な君の始まり』9 あとりえ☆メモリアル~ツーデルベルト味~ ウホッ!バカな男… Recipe 28 キャンディ×キャンディ サンマとレンタンと七輪 錬! 金! 術! ニラッチュの一日 えぴそーど Ⅱ ニラッチュの一日 えぴそーどⅢ セクシー Recipe 29 なし Recipe 30 ツエックの心 Recipe 31 じらいマン!!(作品) フサなる悲劇 Recipe 32 キモメン盗賊団:Atelier.C おげふぃんなキャラ紹介 「 剣修行 前編 」 納涼 Recipe 33 『護る者/護られる者』1 Recipe 34 knight 第2話 ノルと公園 前編 Recipe 35 夏祭り:プロローグ ぽぽ? Recipe 36 ノルと公園 後編 つーでるのきょうのにっき Recipe 37 オクヤマ・ツクモ Recipe 38 置物もどきのクエスト ゴーアップ・イン Recipe 39 Atelier.Cが来てくれたっ! I wanna close to you Recipe 40 なし Recipe 41 Let s REN-KIN Carnival!! Recipe 42 なし Recipe 43 なし Recipe 44 なし Recipe 45 凡BOX えでみるモンスターずかん Outsiders.1 フサな少女とモギャーな少年 Recipe 46 イグニッション・ジャストビフォウ Recipe 47 なし Recipe 48 遠出のあとで④ わが良き友よ ◇第一楽章 ~黒騎士~ Recipe 49 妖が来たりて チンピラとヤシガニ Recipe 50 なし Recipe 51 なし Recipe 52 なし Recipe 53 なし Recipe 54 なし Recipe 55 なし Recipe 56 なし Recipe 57 なし Recipe 58 なし Recipe 59 なし Recipe 60 なし Recipe 61 なし Recipe 62 なし Recipe 63 おしえてくれよその秘密 Recipe 64 なし Recipe 65 なし Recipe 66 なし Recipe 67 なし Recipe 68 なし Recipe 69 なし Recipe 70 なし Recipe 71 なし Recipe 72 なし Recipe 73 なし Recipe 74 嘘か真か ツーデルの依頼 Recipe 75 なし Recipe 76 なし Recipe 77 なし Recipe 78 なし Recipe 79 なし Recipe 80 なし Recipe 81 なし Recipe 82 なし Recipe 83 なし Recipe 84 なし Recipe 85 なし Recipe 86 日常モナーブルグ(1) Recipe 87 なし Recipe 88 日常モナーブルグ(5) 後 Recipe 89 日常モナーブルグ(6) Recipe 90 なし Recipe 91 脇道モナーブルグ(1) 日常モナーブルグ(8) 日常モナーブルグ(7) Recipe 92 脇道モナーブルグ(2) Recipe 93 なし Recipe 94 なし Recipe 95 なし Recipe 96 なし Recipe 97 なし Recipe 98 なし Recipe 99 なし Recipe 100 なし Recipe 101 なし Recipe 102 なし Recipe 103 なし Recipe 104 なし Recipe 105 なし Recipe 106 なし Recipe 107 なし Recipe 108 なし Recipe 109 なし Recipe 110 なし Recipe 111 なし Recipe 112 なし Recipe 113 なし Recipe 114 なし Recipe 115 なし Recipe 116 なし Recipe 117 なし Recipe 118 なし Recipe 119 なし Recipe 120 なし Recipe 121 なし Recipe 122 なし Recipe 123 なし Recipe 124 なし Recipe 125 なし Recipe 126 なし Recipe 127 なし Recipe 128 なし Recipe 129 なし Recipe 130 なし Recipe 131 なし Recipe 132 なし Recipe 133 なし Recipe 134 なし Recipe 135 なし Recipe 136 なし Recipe 137 なし Recipe 138 なし Recipe 139 なし Recipe 140 なし Recipe 141 なし Recipe 142 なし Recipe 143 なし Recipe 144 なし Recipe 145 なし Recipe 146 なし Recipe 147 なし Recipe 148 なし Recipe 149 東風の旅人-第2話 東風の旅人-第1話 Recipe 150 なし Recipe 151 東風の旅人-第5話 Recipe 152 なし Recipe 153 なし Recipe 154 東風の旅人-第8話 Recipe 155 星の行方 第二話 星の行方 第三話 Recipe 156 東風の旅人-第9話 Recipe 157 なし Recipe 158 星の行方 第四話 Recipe 159 なし Recipe 160 東風の旅人-第10話 Recipe 161 なし Recipe 162 なし Recipe 163 なし Recipe 164 東風の旅人-第11話 Recipe 165 なし Recipe 166 星の行方 第六話 Recipe 167 なし Recipe 168 なし Recipe 169 なし Recipe 170 なし Recipe 40 ├黒頭巾…? Recipe 41 ├Let s REN-KIN Carnival!! Recipe 43 ├祭りのあと Recipe 44 ├千本つり~祭の後~ Recipe 45 ├凡BOX ├えでみるモンスターずかん ├Outsiders.1 ├フサな少女とモギャーな少年 Recipe 46 ├イグニッション・ジャストビフォウ Recipe 47 ├遠出のあとで④ わが良き友よ Recipe 48 ├◇第一楽章 ~黒騎士~ Recipe 49 ├妖が来たりて ├チンピラとヤシガニ Recipe 51 ├『誰よりも純粋な君の始まり』13 ├いろんな秋 Recipe 52 ├Negative happy chain soul age ├遠出のあとで⑤絆の力 Recipe 53 ├あだ名をください ├一ヶ月遅れの夜 Recipe 54 ├教会、三日目の午前 2 ├Welcome to MHK ├トリビアル・ストーリー ├びふぉおはろうぃん Recipe 55 ├シーズ・ハロウィン ├はろうぃん・小ネタ Recipe 56 ├かぼちゃ奮闘記 Recipe 57 ├Outsiders.4 Recipe 58 ├knight 第3話 Recipe 59 ├りとる・めもりー・おぶ・ふぁんとむぺいん 前編 ├りとる・めもりー・おぶ・ふぁんとむぺいん 中編 Recipe 60 ├りとる・めもりー・おぶ・ふぁんとむぺいん 後編 ├グングニル Recipe 61 ├あやしいアトリエワールド ├角 × ○ Recipe 62 ├つっこみたい!1~3 ├遠出のあとで⑥ シーナの厄日 ├あだ名をください ノル編 Recipe 63 ├こんなアトリエは嫌だー 第二回 ├彼らのクリスマス・イブ ├聖夜の悪夢 ├男達の威勉徒(イベント) ├おしえてくれよその秘密 Recipe 64 ├セイント・ナイト ├正月初夢 ├大晦日の食べ物 ├思いついたが十二年 ├アトリエの歴史 Recipe 65 ├定期健診2007 ├乱痴気騒ぎ ├基本の基本 ├今年も行くぜ!アトリエ2007! Recipe 66 ├いつの日か… Recipe 67 ├真っ赤な誓い ├ツーデルと勉強 ├ガルニエ魔法商店&アトリエC ├始まりの鐘は鳴り Recipe 68 ├想いの系譜 ├赤の心得 Recipe 69 ├ガルニエ魔法商店&アトリエR Recipe 70 ├弓使いの修行 前編 ├チョコとシチュ Recipe 71 ├遠出のあとで⑦ 子守唄とオカリナ ├盗賊ギルドの元同僚 Recipe 72 ├遠出のあとで⑧ らぷそでぃー・おん・まざーずーり Recipe 73 ├第39回 すべて閣下の仕業
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クーデルカ 17-438~439、 18-171~173・309~317・360~366、 19-291~295・312~313・340~341・366~370・574~583 438クーデルカsage2005/08/16(火)15 10 17 ID TwVfqFhj ――これは、1898年10月31日、英国ウェールズ地方にあるネメトン修道院に 偶然集った三人の男女の一夜の冒険の物語である。 薄もや立ちこめ日暮れ迫る田舎道、一人馬を走らせる少女がいた。 目指すのは、断崖にそびえ立つ巨大な修道院。 玄関にたどり着くと馬を下り、ドアをたたくが開けられる気配はない。 仕方なく外壁を巡っていると屋根からロープが垂れ下がり、 その下に旅装が置き去りにされている箇所がある。 先客がいるようだ。 被っていたフードを脱ぎ捨て、ロープを使って登り始める少女。 美しく、勝ち気そうなその素顔。 屋根まで登り詰め、古びた窓を蹴破って中に飛び込むとそこは薄暗い穀物庫だった。 ドアにもたれ掛かり気を失っている若い男に気付き、警戒しながら忍び寄ると 「気の早い天使だな。俺はまだ死んじゃいない」 突然目を覚まし、男が言った。 明らかに重傷を負い、手に持った銃を持ち上げることもできないその様子を見て 「たいした違いじゃないわ。どうせもうじき死ぬんでしょ」 少女は冷たく突き放すが、後ろ手に油断無くナイフを握っている。 男が言う。 「『そいつ』に弾を撃ち込むまでは死にきれそうにないからな」と。 背後に不穏な気配を感じ、少女が振り返るとそこには男を傷つけた異形の化け物がいた。 とっさに握っていたナイフで刺すがたいした威力はなく、 化け物に殴り飛ばされてしまう。 男は発砲するが弾は当たらない。 「クソッ!」 少女に銃を投げ渡す。 439クーデルカsage2005/08/16(火)15 12 29 ID TwVfqFhj 少女が化け物を倒して戻ると、男はいよいよ死にかけている。 死ぬ前にお祈りを聞かせて欲しいと頼まれるが 「生憎ね…。あんたのために祈るなんてごめんだわ」と、笑い飛ばす。 「けど…そうね。助けてもらった借りは…返さなくちゃ」 男に手をかざし、しばらくすると傷は癒えた。 「おどろいたな…本物の天使だったのか」 「おめでたい人ね。この世に天使なんてものがいると思って? あたしはただの霊媒。ほんの少し傷を癒す力があるだけ」 「俺の名はエドワード・プランケットだ」 男が名を告げる。 富豪の息子が大金を持ってこの修道院に住んでいるという噂を聞いて 盗みにきたのだというその目的も。 君も自分と同じ流れ者なんだろうと問うと、 「同じなんかじゃないわ。あんたみたいな普通の人がどうしてこんな所に来たの」 少女はエドワードを責める。 「死にたくなかったらあたしの側を離れないことね」 立ち上がるのに少女の手を借り、その手を握ったまま 「よろこんで」 エドワードは言う。 手は邪険に振り払われる。 そして少女も名を名乗る。 彼女の名はクーデルカ。 ――闇の扉を開く者。 171クーデルカsage2005/09/02(金)15 11 34 ID 6t2YVPoJ 魔物と戦いながら薄暗い修道院を探索していくクーデルカとエドワード。 やがてこの修道院の管理人だというオクデン,ベッシー夫婦に出会い、歓待を受ける。 「スープぐらいしか用意できなくてごめんなさいね。たくさん召し上がってくださいな」 「おお、そうするがええ」 突然現れた二人を疑うそぶりも見せず、食事を勧める夫婦。 「ありがたい!ご馳走になります」 遠慮無くガツガツと食べるエドワードを横目に、クーデルカはスープに手を付けない。 「あら?ジャガイモのスープは嫌い?」 「いえ…、そういうわけでは…。でも…今はちょっと…」 「普段は私たち二人だけだからお客様が来ると嬉しいわ」 「この広い修道院の管理を二人だけで?」 驚くエドワードに夫婦は語る。 二人は縁があって修道院の管理を任されていること。 この修道院が九世紀ごろ、聖人ダニエル・スコトゥスによって 地に巣くう魔を鎮めるために建てられたということ。 半年前から修道院内に魔物が出没するようになり、徐々に増えていっていること。 オクデン氏がかつて船乗りだったこと。 建物の修繕をしながら、好きな絵を描いて暮らしていること…。 最後にオクデン氏に銃の弾薬を分けてもらい、夫婦の部屋を出て隣の厨房に入った。 172クーデルカsage2005/09/02(金)15 13 51 ID 6t2YVPoJ 「こいつはいい。保存食だ。少し頂いていこうぜ」 「あきれた。あれだけ食べたのにまだ足りないの?」 「三日も飲まず食わずだったんだ。腹も減るさ。 お前こそどうかしているぞ。せっかくのスープに手も付けないで」 「そうね。あたしも毒が入ってなければ遠慮せずに頂いたわ」 「なんだって…?」 「かすかだけど、毒草の匂いがしたわ」 にわかに腹を押さえ、苦しみだすエドワード。 「じゃああの二人、本気で俺たちを殺そうと…?」 「なにもしなければ、あと三十分くらいで死ぬかしらね」 床に転がりのたうち回るエドワードに背を向け、 暖炉の火に当たりながら淡々と話し続ける。 「ずいぶんと手慣れた手口に見えるわ。何か秘密がありそうね…」 「いい?エドワード。これから解毒してあげるけど、 怒ってあの夫婦の部屋に乗り込んだりしたらだめよ。 毒にやられたふりをして建物内を探索しましょう」 173クーデルカsage2005/09/02(金)15 20 35 ID 6t2YVPoJ 厨房の奥にある暗いハーブ園に入ると、中年の神父が気を失って倒れている。 さらに奥へ進むと、植物の姿をした化け物が襲いかかってきた。 それを倒し、神父を起こす二人。 「うーん…。なんだ…私は…。ここは…。そうだあの化け物に…」 「誰だね君らは?」 横に立つ二人に気付くと、神父はうさんくさげに言った。 「おい…。助けてもらってその言いぐさはないだろう」 「ほう…。昨今の追いはぎは人助けもするようになったのかね?」 「なんだと!」 「あたしの名前はクーデルカ。彼はエドワード。 どうしてこんな所で倒れていたのか聞かせてもらえる?」 激昂して神父に詰め寄ろうとするエドワードを止め、クーデルカが言った。 「ジェームズだ…。ジェームズ・オフラハティー…。 ちょっとした捜し物があってこの修道院に来たんだが、突然魔物が襲いかかってきて…」 「どこから入ってきたの?」 「正門に決まっている」 「本当に?」 「ああ。管理人夫婦が丁重にもてなしてくれたよ」 「毒入りのスープでか」 「何のことだね?」 「彼らはあたしたちを毒で殺そうとしたのよ」 「馬鹿馬鹿しい!」 ジェームズは二人の話を取り合おうとしない。 ますます憤るエドワード。 「あの化け物は俺たちが倒したんだぜ!」 「その身なりからするに、信仰の力で問題を解決した訳ではなさそうだな」 「祈ってどうにかなるような相手には見えなかったわ」 ジェームズはかなり敬虔かつ厳格な神父のようだ。 「よけいなお世話だったようだな。行こうぜクーデルカ」 ハーブ園を出ようとする二人。 「待ちたまえ! いかに私に主の御加護があったとて、用心するにこしたことはあるまい」 「私も一緒に行こう」 309クーデルカsage2005/09/12(月)19 42 58 ID h5s3+iwu 三人になった一行は、管理人の部屋のある区画を出て、渡り廊下に差し掛かる。 「何とも陰鬱な建物だな。聖堂はあるものの、主の御力が感じられん。 こんな場所に足を踏み入れねばならんとは…」 『ああ、すべての行き、行かねばならぬところ…』 ぼやくジェームズをからかうようにエドワードが詩を詠唱し始める。 「バイロンか…。私の趣味ではないな。第一品格がない」 「あんたが品格をとやかく言うのか」 「いいかね、詩というのは…」 「この嫌な霊気をはらってくれるんなら誰でもいいわ」 つまらなそうに二人の話を聞いていたクーデルカが口を挟む。 「あんたの好きな大工の息子でもね」 「異教徒め!なんと罪深い言葉を」 「会ったこともない奴に救いを求めるなんて馬鹿げてるわ。 ロンドンじゃ毎日人が飢えて死んでるのよ」 「いずれ不潔で不道徳な盗人どもではないか。 神の国は…」 そこで、近くの窓から銃弾が撃ち込まれる。 その場で三人はしゃがみ込む。 「これは魔物じゃないぞ」 「向こうの建物からだわ」 「毒じゃ死にそうもないと見て、手っ取り早い方法にしたわけか」 「馬鹿な!まだそんなことを」 「どっちが馬鹿だか、弾丸に聞いてみやがれ!」 挑発的に立ち上がるエドワード。 「馬鹿!」 クーデルカはあわててエドワードをしゃがませた。 310クーデルカsage2005/09/12(月)19 46 10 ID h5s3+iwu 渡り廊下を出て隣の区画に行くと、 そこは今までよりもさらに荒れ果て、陰惨な場所。 何の飾り気もない土間のような廊下、 壁の崩れ落ちた、がらんとした部屋の中には死体の山に人骨の山…。 三人はそこを通り、比較的家具の揃った部屋に入った。 「何てことだ…。この建物は死体と白骨であふれかえっている…」 「感じるわ…。部屋中が霊気でいっぱい…。頭が…痛い…」 よろめいてベットに腰掛けるクーデルカ。 「なんだか嫌なふんいきだな」 「恐ろしい…。主よ、迷える魂を救い給え」 「昨日今日こうなったんじゃないわね。 これだけ霊気が強ければ降霊ができるはず。 なにかわかるかもしれない」 「恥知らずな!少しは神に祈ったらどうかね!」 「ただよっている霊魂をあたしの中に呼び出して話をさせるのよ。 あたしがここに来たのも、ある女の霊に呼ばれたからなの」 話しながらも降霊を始めたクーデルカの体は前後に揺れている。 「がまんならん! 主を信じないばかりか、死者の平穏まで乱そうというのか!」 「うるさいわね!じゃましないでくれる?」 揺れはいっそう激しくなり、そして…。 「鎖と…闇と…死が…。そして…ああ…無数の…。 まるで…地獄…」 「どういうことだ?」 「幽閉されて…拷問のあげく…何千人も…」 311クーデルカsage2005/09/12(月)19 48 37 ID h5s3+iwu 『殺せ!!』 突然、クーデルカの声が別人のように恐ろしげな声に変わった。 『奴らはわしの指を切り落とした!わしの足をつぶした! わしの頭をくだき、贓物を引きずり出した!』 『奴らはあたしのすべてを奪ってここに閉じこめた! そして体を切り刻んだ!』 『ああ…目が、耳が!焼ける…。 助けて!助けて!』 「なんて酷い…」 正気に戻り、クーデルカは呟く。 「ここは…牢獄だったんだわ…。何百年もの間…密かに…。 権力に刃向かう者や、密通した者を…閉じこめて…殺して…」 エドワードは、クーデルカの肩に手をかけようとした。 『駄目だ、近寄るな!貴様!呪われろ!』 霊が抜けず、苦しむクーデルカを エドワードとジェームズはなすすべもなく見守ることしかできなかった。 クーデルカの回復を待ち、先に進むと廊下に人形を抱いた銀髪の幼い少女が現れた。 エドワードが声をかけようとすると、険しい表情で顔を背け、去っていく。 「おい!待てよ、おい!」 少女を追いかけるエドワード。 曲がり角を曲がり、立ち止まっている少女にゆっくりと近づこうとする。 「エドワード!」 クーデルカに肩を掴まれ、気が付けばそこから先は床が崩れ落ちていた。 宙に浮かぶ少女の笑い声が響き渡る。 「死ねば良かったのに…。落ちて死ねば良かったのに…」 少女は闇の中に姿を消した。 「亡霊か?」 「ああ…」 問いかけるジェームズに、エドワードは呆然と前を見つめながら答えた。 312クーデルカsage2005/09/12(月)19 50 38 ID h5s3+iwu 縄橋子を使って下に降り、一行は聖所の一つに入った。 ステンドグラスの前で、エドワードはため息をつく。 「どっちを見ても死んだ奴ばっかりだ。 生きてりゃさぞにぎやかだったろうな」 「何百年もの間放っておかれたのだ…。言いたいことも多かろう」 「ずいぶんと新しいものもあったわ。銃で撃たれた奴、斧で頭を割られた奴…。 外傷のないものもあった。きっと毒を盛られたのね…」 「そういえば俺達と同じ流れ者のようだった。 やっぱりあの…」 「管理人夫婦が殺したというのか?くだらん!」 「人が死ぬのがくだらないことなの?」 「どうせ物盗りのたぐいではないか。たとえ牢獄になっていたとはいえ、 ここが神聖な場所であることにかわりはないんだぞ。 それを汚す輩がどうなろうとわしの知ったことではない!」 「よくそんなことが言えるな。それでも神父か?」 「神父ではない。司教だ」 「どっちだってかまうもんか! そりゃ善良な人間がこんな場所で死んでたりはしないさ。 だがこいつは酷すぎる」 「君もあの夫婦を見ただろう。世話好きで信仰にもあつい。 人を殺す理由があるか?」 「信仰にあついだと!?考えてみろ!そんな奴がこの有様を捨てておくか? 埋めてやるくらいは誰だってするだろう!」 「ともかく!」 クーデルカが二人の言い争いに割り込む。 「ここにいるのがあたしたちと魔物だけじゃないのは確かだわ。 死にたくなかったら用心することね…」 313クーデルカsage2005/09/12(月)19 53 29 ID h5s3+iwu 家具が積み上げられた部屋に入ると、クーデルカはしゃがんで何かを調べ始めた。 「クーデルカ、なにかわかったのか?」 立ち上がった彼女にジェームズが尋ねる。 「いいえ。でも…」 突然、床に亀裂が走り、三人もろとも崩落した。 三人は死体の山の上に落下した。 立ち上がることもできないまま、 エドワードは階上からこちらを見ている人影を見つけた。 「誰だ!」 人影は答えることなく姿を消した。 落下した場所は壁と鉄格子に囲まれた地下牢だった。 鉄格子を破ろうとするクーデルカ。 「どうだ?出られそうか?」 「素手じゃ無理ね。熊でも連れてくれば別だけど」 「出られんだと…?じゃあ…どうなるんだ?」 「さあ…。そこの先客に聞いてみれば?」 死体に目をやりながらクーデルカはなげやりに答える。 「ちくしょう!あの人影を見たか?やっぱり誰かが俺達を…」 「そんなことより、この場をどうにかしたまえ! 君たち無法者には、牢を破るなんて慣れたものだろう!」 「そいつをイーストエンドで言ってみな! 言い終わるまで首が胴に付いちゃいないぜ!」 「くだらん!どうせ君達にはわかるまいが、私には神聖な使命があるのだ」 314クーデルカsage2005/09/12(月)19 55 14 ID h5s3+iwu 「むだなのに…。どうせなにもかも…」 鉄格子の向こうに、先程の亡霊の少女が現れた。 「あたしの名前はシャルロッテ…。でも名前なんて何の意味もないわ。 あんたが今生きてることも、もうじき死んじゃうことも…。 なんの意味も無いこと」 「あなたもここで死んだのね?」 「そうよ。あたしもここで死んだの。何百年も前に…。 生まれてすぐに閉じこめられて、九才の誕生日に首を切られたの。 それからずっとここにいるわ。ずっと誰にも知られずに…」 「ふびんな…」 呟くジェームズをシャルロッテは嘲り笑う。 「あわれむっていうの?あたしを? くだらないわ。そんなの三日もすれば跡形もないわよ」 「それはちがう。どういう事情があったにせよ、 君の母親は君のことを心配していたはずだ」 「…母親ですって。顔も…名前も…。どこの誰かも知らないのよ…。 そんなものに何の意味があって? あたしは生まれてから死ぬまで誰かに愛されたことなんて無いわ。 なにが母親よ…。死ねばいいのよ。みんな死ねばいいのよ!」 そう叫び、シャルロッテは魔物をけしかけて消えた。 315クーデルカsage2005/09/12(月)19 57 26 ID h5s3+iwu 魔物を倒し、戦いの余波で崩れた壁を抜けて三人は地下牢を出た。 拷問室や酸の池を通り、財宝が無造作に積まれた宝物室に入る。 「すばらしい!まったくすばらしい! こんな財宝が修道院に眠っているとは! あれはマンテ-ニャの作品か?なんとあれはカラヴァッジオだ! 信じられん…!なぜ今まで忘れ去られていたのか」 「財宝ね…」 夢中になっているジェームズを、クーデルカとエドワードは醒めた目で見ている。 「もしこの宝をヴァチカンに寄贈できたら、 全キリスト教徒にとって大切な財産となる大発見だ!」 「ここがどういう場所だか忘れたの? ただの修道院じゃない…。牢獄だったのよ! 権力争いに敗れた人間を閉じこめて処刑するためのね。 その財宝だってどうせ彼らから奪った品でしょう。 恨みや呪いが染みこんでいる…。そんなの見たくもないわ」 「私も忙しい身で君に信仰の重要さについて説く気にはならんが、 今日こうしてすばらしい財宝に出会えたのも すべては神のお導きのなせるわざなのだ。 神は全てを見ておられる。わかったかね?」 「糞くらえだわ!」 「君はどうだ?エドワード。彼女よりは学識がありそうだが?」 「興味ないね。どんな後光がさしてようが、しょせんはものだからな」 「つくづくがっかりさせられるよ。 君らに比べれば、そこらで死んでいる盗賊の方が 芸術の価値がわかっているだけましなようだ」 「くだらない皮肉を言ってないで、頭を使ったらどう? ここで死んでるのは金目当ての盗賊だけじゃない。 切り刻まれた女の死体がたくさんあったわ。 あれはごく最近のものよ」 「そうだな…まともじゃない。見慣れていても吐き気がしそうだ」 「やっぱりあの夫婦が…」 「馬鹿な!あの善良で義理堅い人達が恐ろしい殺戮を働くわけがない! どうせ欲にまかせて命を奪い合う愚か者…。 異教徒やら移民やら野蛮人どもの仕業であろう。 管理人夫婦を中傷するなどもってのほか!不愉快だ!」 316クーデルカsage2005/09/12(月)20 00 39 ID h5s3+iwu 「あんたの手にかかったらみんな異教徒のせいにされちまう。 司教って人種はみんなそうか?」 「君に言ってもわかるまいが、真実というものは…」 話しながらホールに入る三人。 大きなシャンデリアの下を通ろうとしたところで、またも銃声が轟く。 落下するシャンデリア。あわてて三人はそれをよけた。 犯人を追って階段を駆け上がると、流れ者風の男が逆に襲いかかってきた。 これを撃退し、男を問いつめる。 「盗人め!」 男に銃を突きつけるエドワード。 「警察の目を逃れて隠れ住み、宝物をあさっていたのね…」 「同業とはね…。さて、君達。どう言い訳するつもりかね? この男が我々の命を狙ったことは最早明白じゃないか! どこから来たのかね?ハンブルクか? どうせコレラで我々の国を根絶やしにしようとした連中のかたわれだろう」 「お前の知ったことか!黙れこの糞野郎!」 「確かに生まれなんて知りたくもないわ。 糞野郎ってのにも賛成よ。でもこれだけは聞かせて。 盗賊や女達を殺したのはあんたなの?」 「そりゃあ俺は移民さ…。シャンデリアを落としてお前らを殺そうとしたのもな…。 うらみがあるわけじゃないが、うまい汁は…」 「じゃああの死体もお前が!」 「そうじゃない!神にかけて誓ってもいい! (ジェームズに向かって)あんたの神とは違うが…」 317クーデルカsage2005/09/12(月)20 04 43 ID h5s3+iwu 「どういうこと?」 「あいつらだ。あの管理人夫婦の仕業だ。 信じてくれ!本当だ!ここにひそんで何度も見た。 あいつらが無法者を斧で叩き殺すのを! たいていの間抜けは奴らの善人ぶりに油断したところを 後ろから殴られて死んじまう」 「信じられん!」 「ひとおもいに死ねるならましさ。 毒を盛られた奴は息が止まるまで一晩中苦しみもがくんだ! 爪が内蔵に食い込むほど腹をかきむしって! 嘘じゃない!本当に見たんだ!あいつらは悪魔の生まれ変わりさ! 俺もいっぱしの悪党だが、とてもあんなまねはできん。 善良そうに見える奴ほど腹の底はどす黒いもんだ。 (ジェームズを指さして)こいつみたいに!」 笑い出すクーデルカとエドワード。憤るジェームズ。 「もっともな意見だ」 「こんな馬鹿話を本気にするのか? こいつは何十人もの人間を殺した殺人鬼だぞ。 警察に引き渡し、法の裁きを受けさせねば」 「本気にするなですって? 彼が移民だから?それとも異教徒だから? あんたの頭の中は差別と偏見でいっぱいよ!」 「俺はこいつを信じるぜ。悪党ってのは案外信心深いものさ」 「だが…。俺達を殺そうとした…」 エドワードは銃を手に、ゆっくりと男に近づいていく。 「ってことはだ…」 銃声。 「な…んてことを」 ジェームズは男の脈をとるが、すでに事切れている。 「これで命を狙う奴がいなくなれば主の御使いの勝ち。 まだ襲われるようなら不潔で野蛮な異教徒の勝ち。 どっちに賭ける?」 エドワードは、銃をジェームズに向けた。 360クーデルカsage2005/09/16(金)20 09 46 ID NIZ0XnXV 男が持っていた鍵を使い、クーデルカ達は管理人夫婦の部屋に踏み込んだ。 しかし食事の跡もそのままに、夫婦はどこかへ消えていた。 部屋の奥の物置に入ると、壁には何枚もの沈没する船の絵が掛かり、 床には生々しい血の跡が残っていた。 「プリンセス…アリス号」 絵に近づき、船に書かれた名前を読みとるクーデルカ。 「事故でテームズ河に沈んだ遊覧船だわ…。 これも…。これも…。何てこと。全部同じ船の…」 その時、クーデルカの霊視能力が働き 沈む船と溺死する人々の恐ろしいヴィジョンが見えた。 オクデンはかつて船乗りをしていたと言っていた。 そのことと関係が在るのだろうか。 361クーデルカsage2005/09/16(金)20 12 17 ID NIZ0XnXV 図書館の中のある書物保管庫にはいると、 ジェイムズは宝物庫の時のように感嘆しながら書物を漁り始めた。 「ひとつ聞きたいんだが、ここにあるのは何の本なんだ?」 「神秘学と錬金術に関する古今の文献だよ。 土から金を精製するというたぐいのやつさ。 たいていは欲に目がくらんだ詐欺師どものでまかせだが、 中には今日の自然科学を予見して有用な基礎実験を記録した良書もある。 当時はひとまとめにされていたらしいが、真理の探究には神の御加護がある」 「ジェームズ!」 長口上にいらついたクーデルカは口を挟もうとするが ジェームズは聞く耳を持たない。 「ヘルメス学…カバラ…。こんなものではない! なぜだ!なぜ見つからない!ここにあるはずだ!」 「なにか探しているのか?」 「わからん…。わからん…」 「わからんじゃわからん!なにをぶつぶつ言ってるんだ! あんたはどうもうさんくさい。隠し事はやめたらどうだ」 「気に食わんな。人にはそれぞれ事情がある。 詮索は無用に願おうか」 『お前さんのお気に召すそんな義理はないからな』 得意の暗唱でジェームズを揶揄するエドワード。 『嫌いなものは殺してしまう。それが人間のすることか?』 負けじとジェームズも、男を射殺した先程のエドワードの行動を批判する。 『憎けりゃ殺す。それが人間ってものじゃないか』 「くだらん詩をよむだけかと思えば、シェークスピアを暗唱するのか。 油断ならん奴だな」 「お互い様だろう」 362クーデルカsage2005/09/16(金)20 13 55 ID NIZ0XnXV 反目し合いながらも図書館を探索する三人は、 なぜか扉が壁に塗り込められている部屋を見つける。 隠された抜け穴を見つけ、仕掛けを解いて中に入ると 書物にあふれた部屋の隅に棺桶が置いてある。 ふたを開けると、その中には小柄な老人のミイラがあった。 「ただのミイラか…。期待させやがって」 「がっかりだわ…」 「聖なるかな!!フォモールの秘密!」 突然ミイラが起きあがり、叫びだした。 驚いて飛び退く三人。 「わだつみの底より…エミグレの!」 そこでミイラは糸が切れたように、元通りに倒れ込んだ。 「エミグレと言ったのか?お前はエミグレ書を知っているのか? どこにあるんだ?答えたまえ!」 動かなくなったミイラを問いつめようとするジェームズ。 「エミグレ書…?あんたの目的はそれか?」 答えずに逃げようとするジェームズに、エドワードは激昂する。 「おい…くそ神父!我慢にも限度ってものがある! どうしても言わないつもりか?よかろう…。 身ぐるみ剥いで放り出してやる!」 「…しかたない…。話そう…」 363クーデルカsage2005/09/16(金)20 15 37 ID NIZ0XnXV 「私はヴァチカンの法王庁からやってきた。 目的はこの場所で一冊の写本を探し出すこと」 「その写本が…」 「うむ…。エミグレ文書と呼ばれるものだ…」 「それは重要なものなの?」 「この数百年間法王庁の書庫深くに秘蔵され、 決して見ることができなかった幻の写本と聞いている」 「妙な話だな。そんなものがなぜここに?」 「盗まれたのだ」 「盗む!?法王庁から…!?」 「厳重な法王庁といってもどこかに油断があるものだ。 内部の事情に詳しい者か、金をばらまくことのできる者か。 密かに調査を進めたところ、この修道院を買い取ったある資産家が 大金を投じてエミグレ文書を盗み出させたことがわかった」 「ある資産家?」 「そう…。パトリック・ヘイワース。私の古い友人だ」 「でも高価な美術品ならともかく、どうしてそんなものを盗んだの?」 「わからん。彼は以前から魔術や錬金術に深い興味を抱いていたが…。 私は写本を返すよう彼を説得するつもりだった。 だが管理人夫婦の話では、パトリックはここ数日行方がわからないらしい。 いったいどうしているのか…」 364クーデルカsage2005/09/16(金)20 25 36 ID NIZ0XnXV 全く動かないミイラに見切りを付け、三人は図書館を出て聖堂へと足を踏み入れる。 ちょうどその時、午前0時を示す鐘が聖堂内に響き渡った。 「なに?この鐘は…!」 「日付が変わる…。しまった!今日は確か万霊節!」 高まっていく不穏な気配に、ジェームズは青ざめた。 聖堂の空中に気が集まり、黒い球体を形成していく。 「霊力が集まってく…。凄い力だわ。 まるで…怪物!」 突然、球体がはじけ、翼をもった巨大な黒い魔物が出現した。 魔物の発した衝撃波に吹き飛ばされるクーデルカ。 エドワードとジェームズもまた、魔物に追われてせまい側廊に逃げ込むが 聖堂への入り口が崩れ、戻れなくなってしまう。 「いかん!クーデルカが!」 一人取り残され、魔物から逃れるためにクーデルカは聖堂から中庭へ出た。 二人と合流するために探索を続けるうち、噴水の裏に隠された東屋を見つけた。 中にはいると、そこには血まみれの断頭台があった。 はしごを下りた先の地下には、さらに血まみれの作業台が…。 そこで若い女が斧で惨殺されるヴィジョンを見たクーデルカは 思わずその場でうずくまり、嘔吐する。 そこへ背後にオクデンが忍び寄り、棍棒を振り下ろした。 365クーデルカsage2005/09/16(金)20 28 15 ID NIZ0XnXV 「ヨーソロー ヨーソロー」 意識がもうろうとするなかで、歌うような声が聞こえる。 「綺麗な夕日だ。取り舵…取り舵いっぱーい」 共に聞こえる音は船がきしむ音だろうか? 最初は穏やかだった声はだんだんと乱れていく。 まるで…狂人のうわごとのように。 「いかん…船が沈むじゃないか! 待ってくれ!…わしの船が!」 目覚めると、クーデルカは断頭台に縛りつけられている。 「気が付いたのか?このゴロツキどもめ」 断頭台の横ではオクデンが斧を研いでいる。 船の音に聞こえたのはこの音だったようだ。 「売女!恥知らず!後悔するがいい! エレイン様さえ無事ならこんなことはせんで済んだのだ!」 「エレイン?」 「慈悲深い方だった…。わしの言葉を信じて下さった…。 わしの絵を誉めて…」 「あの沈没船の?」 「わしのせいではない!いきなりあの石炭船が! 夜の闇だ…。なにができる!あっという間に沈んで…。 わしは…。わしは…。エレイン様…」 斧を掴み、立ち上がるオクデン。 「わしがついていれば!貴様らなんぞこうして! いいか!肉の塊だ!塊にしてやる!」 「くるってる…」 「黙れ!」 366クーデルカsage2005/09/16(金)20 32 33 ID NIZ0XnXV クーデルカに向かって斧を振りかぶるオクデンに 背後から銃弾が撃ち込まれる。 「あなた…。もうやめましょう…」 そこにはライフルを構えたベッシーがいた。 「もういいのよ。もう終わり」 もう動かないオクデンに近づき、優しく頭をなでる。 「うちの人はね、昔は大きな遊覧船の船長だったの。 それはそれは立派な船でね。この人の誇りだった。 でも大きな事故があって、大勢の人が死んだの。 この人苦しんでね…。酒場に入り浸って。 馬鹿でしょう。いくら飲んだって忘れられやしないのに。 でもエレイン様に出会って…うちの人はやり直すことができた」 「エレインって人は亡くなったの?」 「ええ…。何故いい方ほど早く逝ってしまわれるのかしらね。 パトリック様がご旅行中に強盗が押し入って。 うちの人…。俺さえついていればってね」 「さあ…。お話はこれくらいにしなくちゃ」 クーデルカに戒めを解くためのナイフを握らせ、ベッシーはライフルを再び手にする。 「うちの人が待ってるもの。 この人…気が短いんだから」 銃口を喉に向け、そして――銃声。 オクデンの死体に寄り添うように横たわるベッシー。 291クーデルカsage2005/11/14(月)16 04 52 ID PUAwYUcy 仲間と合流するため、地下室に降り出口を探すクーデルカ。 壊れた扉の隙間から見える向こう側が、かつて通った場所であることに気付き こじ開けようとするが扉はびくともしない。 「クーデルカ!クーデルカ!」 悪態をつく彼女の耳に、向こう側からエドワードの呼び声が聞こえた。 「ここよ!わたしはここ!」 扉に駆け寄るエドワードとジェームズ。 「よかった!安心したよ。大丈夫か?怪我はないか?」 「ええ…あたしは平気。そっちは?」 「あやうく化け物につぶされるところだったが…。 なんとか左翼廊に逃げ込んだ。 おかげで聖堂に戻れなくなっちまったが…。 中庭から逃げてくるならここだろうと、地下道に降りてきたんだ」 「だめだわ!この扉が開かないの!」 話しながらもなんとか扉を開けようとしていたクーデルカが天を仰いだ。 「ちくしょう!」 「ほかに出口はないのか?そこは東屋の地下なんだろう?」 ジェームズが口を挟んだ。 「…あるわ。聖堂の方に向かって扉がある…」 聖堂にはまだ、あの黒い魔物がいるはずだ。 「それはおそらく左翼廊のまわりの抜け穴に通じているにちがいない」 「抜け穴?」 「よし!それだ! クーデルカはその扉から進んでくれ。 俺達は落ち合う場所を探す」 「わかったわ」 「クーデルカ」 「なに?」 「死ぬんじゃないぞ」 「あんたこそ!」 292クーデルカsage2005/11/14(月)16 07 24 ID PUAwYUcy 一人魔物と戦いながら地下回廊を通り、地上に出たクーデルカは 図書館の前にたどり着くが、鉄柵に遮られて入ることができない。 仕方なく隣の修道院付属墓地に行くと そこには牢獄で出会った少女の亡霊、シャルロッテや 修道院の創立者、聖人ダニエルの墓があった。 墓に祈りを捧げていると、背後で人の気配がした。 図書館の隠し部屋で眠っていたミイラだ。 「悔いあらためよ!裁きの日は近い! 天には七つのらっぱが鳴り響き、 汚れた全ての者は怒りの炎で焼きつくされるであろう!」 「だが…。わしは死なん…」 「何人の上にもわけへだてなく訪れるもの…それが死だ。 死こそが神の祝福であり、恵みに他ならない。 そうじゃないかね?」 「ダニエル・スコトゥス・エリウゲナ…つまらぬ男よ。 こいつには探求する心というものがない。 まあここに修道院を開いたことには感謝するが…」 293クーデルカsage2005/11/14(月)16 09 00 ID PUAwYUcy 「あんたは?」 「これは失礼した。 わしの名はロジャー・ベーコン。フランチェスコ会の修道士だ」 「修道士…。ミイラじゃなかったの?」 「確かに見たところ同じだな。 こんなに干からびておっては、ニシンの薫製のほうがまだましか。 昔は魔術師ともてはやされたものだが、時の流れにはさからえん」 「変な人ね。もし人と呼べるならだけど」 「人であることは何百年も前に捨てた。…今のわしは人ではない。 ならば何かと聞かれても困る。それはわしにもわからんからだ」 「いいわ…。別に知りたくもないし。 それよりどうしてあんな所で寝ていたの?」 「昔から寝起きは良くなかったのでな。 少し休むつもりがどれだけ眠ったか…。 今は何年だ?グレゴリオ暦はまだ通用するのか?」 「あたしをからかってるの?」 「もちろん本気だとも。 わしの知っている時計は棺桶に入れるには大きすぎるでな」 「一八九八年よ」 「これは驚いた…。まる百年も眠っておったのか」 「へえ…。あんたでも驚くことがあるのね」 「気をつけるがいい。 人生に驚きがなくなったら神への道を歩んでいる証拠だ。 さて…。礼と言ってはなんだが、鉄柵の鍵を開けておくから そこを通って行くがいい」 「なぜそれを?」 「先ほどからおまえの仲間が院内を走り回ってな…。 うるさくてかなわんのだ。 静かにするよう言っておいてくれ」 294クーデルカsage2005/11/14(月)16 13 47 ID PUAwYUcy 開けられた鉄柵を通り図書館に入ると、 エドワードとジェームズは印刷室にいた。 「クーデルカ!」 「良かった!無事だったようだな」 口々に叫び駆け寄る二人。 「そうでもないわ。悪い知らせよ。 (ジェームズに向かって)多分あんたにはね。 例の管理人夫婦に会ったのよ…」 「それで奴らは!?」 いきり立つエドワード。 「死んだわ…」 「この修道院に忍び込む盗賊や無法者を殺していたのはやはり彼らだったのよ。 でもそれには事情があった…」 いつになく消沈した様子のクーデルカを見て、ジェームズも彼女の話を信じた。 「わからん…。いったいなにが…」 「それはきっとあんたのほうがよく知っているはずだわ。 オクデンは死んだエレインの復讐をするつもりだったのよ」 「死んだ!?エレインが…!? どういうことだ!そんな馬鹿な話があるか!」 「エレインって誰だ?」 「あたしも知らないわ。 わかっているのはその女の霊があたしをここに呼んだっていうことだけ」 「ねえ…話して。エレインって誰なの? それからパトリックって…? パトリックが旅行中に盗賊が押し入ってエレインを殺したって彼らは言ってたわ。 彼女は管理人夫婦には恩人だったのね。 だから盗賊や無法者をうらんで片っ端から殺そうとしたんだわ。 あれは彼らにとって復讐だったのよ」 295クーデルカsage2005/11/14(月)16 17 18 ID PUAwYUcy ジェームズは語り出す。 「私は…アイルランドの出身でね。 家は小さいながら商家を営んで栄えていた。 幼いころから学業を好んだ私は、やがてイングランドの名門大学に進むことができた。 もちろん家族の助力のおかげだがね。 私はそこでパトリックと出会った。 ともに科学を志す仲間として我々は親しくなった。 だが同時にエレインという女性をめぐって競い合う敵でもあった」 「私は深く彼女を愛していた。 だが世の中は愛だけで暮らしていけるものではない。 家柄も財産もお嬢様育ちの彼女を幸せにする自信は私にはなかった」 「私はパトリックに道をゆずり…、 心の傷をいやすためにカトリックの司祭となって俗世を捨てた…。 私は生来勤勉なたちでね。 ヴァチカンで重責をまかされるほどの司教になったが…。 やはり人の情というものは捨てがたいものだ…」 「もう彼らとは二十年以上も連絡を取っていないが…、 幸せに暮らしてほしいと願っていた。 こんな事がなければ、二度とパトリックに会おうと思うこともなかっただろう…。 そうだ…パトリック…。あいつはどうしたのだ…。 エレインを幸せにすると私に誓ったはずだ! なぜこんなことに…」 「あたしが見た惨状はね…。 ただオグデン達が復讐のためにやったとは思えないほど酷いものだったわ…。 化け物どもが現れる理由だってそれじゃ説明がつかない。 きっとなにかもっと大きな秘密があるはずよ」 クーデルカは夫婦の遺体から見つけた鍵を掲げた。 「これがパトリックの館の鍵…。行ってみる?」 312クーデルカsage2005/11/16(水)11 27 27 ID pAukmJjo パトリックの館に行くには、牢獄を通らなければならない。 特別牢に足を踏み入れた三人の前にその部屋のかつての住人、シャルロッテが現れる。 「シャルロッテ…。これがなんだかわかる?」 クーデルカは探索の中で偶然見つけた、手紙の束を彼女に差し出した。 ――親愛なるわが娘へ アールデン城で静かに冬の到来を感じながら、 慣れない英語で、これを書き記しています―― 「あなたのお母様があなたに宛てた手紙よ…」 「母様…手紙…、…こんなに?」 ――あなたを幸せにしてあげられることの出来ない私はきっと悪い母親なのでしょう―― 「ハーノヴァー伯の后だったあなたのお母様は、 密通の子であるあなたを生むとすぐにアールデン城に幽閉されたわ」 ――あなたは私が心の底から愛した人、フィリップ・クリストファーの娘。 あなたの身体には、きっと彼の面影が深く刻まれていることでしょう、 そしてそれはあなたが決して独りではないということ、 あなたが祝福を受けて生まれた子供であることの証なのです―― 313クーデルカsage2005/11/16(水)11 30 42 ID pAukmJjo 「でも彼女は同じようにこの修道院に閉じこめられたあなたに向かって、 たくさんの手紙を書きつづったの。 あなたの姿を思い描きながらいつか会えますようにって」 ――叶わぬ願いとは知りながら、あなたに会う日を夢見ずにはいられません。 身体は遠く離れていても、心はいつもあなたと一緒にいます―― 「だけどそれが届くことはなかった」 ――この手紙ももう二十通は超したでしょうか。 拙い筆ながら、少しでもあなたに気持ちが伝わればどんなに嬉しいことでしょう―― 「彼女もあなたの死を知らずに手紙を書きつづけた」 ――あなたのことが知りたい。 たとえひと目でもあなたの成長を見てみたい。 毎日毎日、あなたの無事を祈らない日はありません。 愛しています 心より―― 「彼女はあなたを愛していたのよ…」 「そんな…今さら…愛していたですって…?」 愛を知らないまま九才で命を落とし、 何百年も彷徨っていた亡霊、シャルロッテは涙を流していた。 そして今、彼女の霊体は光を放ちながら天に昇ろうとしている。 「いやよ…だめ!怖いわ! 心が…とけちゃう。そんなのごめんだわ! 許すなんて!愛されるなんて!」 「あんたなんか大嫌いよ!あんたなんか!あんたなんか!」 クーデルカを罵りながら、少女の霊は消えた。 「シャルロッテ…。愛されるって…どんな気持ち?」 静かに涙を流すクーデルカ。 彼女もまた、愛されることを知らない一人の少女だった。 340クーデルカsage2005/11/18(金)19 56 53 ID c2fez75m 牢獄を抜けた三人は、鍵を使いパトリックの館に入った。 人気のない館内を探索するうちにエレインの肖像画を見つけたクーデルカは、 その場で招霊を始める。 肖像画から抜け出したように、金髪の美しい女性の姿が宙に浮かび上がった。 『お久しぶりですわ。オフラハティー様』 「エレイン…。君なのか?」 『ええ…。こんな形であなたと会うことになるなんて残念でなりません。 この女性が私の声に応えてくれたのですね。 ありがとう…私のような者のために』 「エレイン…。私には納得がいかないんだ。わけを話してくれ」 『ええ…お話しましょう。 私は十八年前…家に押し入った強盗に襲われて死んだのです。 仕方のないことでした…。 パトリックもオグデンも商用で外出していたのですから』 「許せん…そんなことがあっていいものか!」 『パトリックもそう言いました。 私の死が受け入れられなかったのです。 そして何年もかけて古の秘法を学びました。 私を生き返らせるために』 「死者の再生…?フランケンシュタインじゃあるまいし…?」 「フランケンシュタイン?」 「百年も前に書かれたたあいのない小説さ」 エドワードとクーデルカが口を挟んだ。 『彼は本気だったのです。 そしてそれを実現するための鍵を手に入れました』 「エミグレ文書…」 『ええ…。彼はオグデンの助けを得て古代ドルイドの力を使い、 この修道院で再生の儀式を行いました…ですが』 「うまくいかなかったのね?」 『再生したのは身体だけだったのです。 私の魂はこうしてさまよったまま。 身体とひとつになることはありませんでした。 そして恐ろしいことに、私の身体は心を持たない怪物となってしまったのです』 341クーデルカsage2005/11/18(金)19 59 43 ID c2fez75m 『あれは私の姿をしていますが、決して私ではありません。 オフラハティー様…お願いです。 あなたのお力で私の身体を塵にもどしてください』 「塵に…? だがそんなことをすれば君は生き返れなくなってしまう…」 『オフラハティー様…。 確かに私は盗賊に命を奪われました。 彼らは憎いかたきかもしれません。 ですが私の死は神様がお決めになったこと。 どうか私の死を嘆かないでください』 『私を生き返らせようというあの人の行いはまちがいでした。 悲しんではいけません。死は神の御心のゆえです。 どうぞ私の身体を滅ぼしてください。 あれは天の摂理にそむくもの。この世にあってはならないものです』 そう言い残し、エレインの姿は消えていった。 「待ってくれ!エレイン! 惨い…。なぜこんな惨いことが…」 ジェームズは床に膝を落とした。 「私は君の幸せのためにすべてをあきらめたというのに…。 これでは…。私の人生は…。 ちくしょう!私はなんのために今まで…」 謹厳実直なカトリック司教の顔を脱ぎ捨て、 泣きながらエレインの名を呼ぶジェームズ。 クーデルカとエドワードはかける言葉もない。 366クーデルカsage2005/11/21(月)18 00 32 ID iQKRKpOl エレインを救う方法を探すため、再び館内を探索する三人。 寝室に隠された書庫に入ると、ロジャー・ベーコンが本の山を漁っている。 「なんだ…遅かったではないか」 三人に気付いたロジャーがクーデルカに言った。 二人がすでに知己である様子に驚くエドワードとジェームズ。 「こいつは棺桶の中にいたミイラだろ…。 いつの間に知り合いに?」 「ミイラではない! わしの名はロジャー・ベーコン。何の変哲もない老人じゃ」 「俺は二十年生きてるがあんたみたいな変哲な奴は初めてだ」 「そうかね。 わしは六百年ほど生きておるからこの程度の変わり者は何人も見たわい」 「失礼だが…。十三世紀の魔術博士ロジャー・ベーコンとなにか関係が?」 「よく知っておるではないか。 わしがその魔術博士ロジャー・ベーコンその人さ」 「それではあなたは一二一〇年に生まれ、一八九八年の今日まで生きてきたと?」 「正確には一二一四年だ」 「クーデルカ…。いったいなんの冗談だ」 「あたしがききたいわ」 「冗談なものか!わしはれっきとしたロジャー・ベーコンだ」 「じゃああんたはなんという学校で誰に学んだのかね?」 「ぞうさもない。一二四七年からオックスフォードに学び ロバート・グローステストに師事した。 良い師ではあったが賢明ではなかったな」 「わしは『大著作』をはじめ自然科学に関する重要な本を何冊も書き記した。 この分野における先駆として後世に多大な影響をあたえたが、 わしにとって真に重要な仕事は、法王ホープの命令により 『エミグレ文書』を筆写したことにある」 367クーデルカsage2005/11/21(月)18 02 47 ID iQKRKpOl 「エミグレ文書?やはり知っていたのか?」 「あたりまえだ。五年もかけて書き写したのだぞ。 あの本のことならすみからすみまで知っておる」 「どういうものなの?」 「大地より湧き出でる生命の秘密! 古の民族フォモールが行っていた秘儀…。 不死や…あまつさえ死者の再生を我がものにし、 自然の持つ輪廻の法則さえもあやつる…。 ドルイド僧が継承したそのわざを かのアレクサンダー大王が図書館におさめるべく書き記させたのがそれだ」 「死者の再生…。やはり」 「エミグレ文書は長い間もっとも危険な文書として 法王庁の奥深く秘蔵されてきたが…、 数世紀にわたる保存に耐えられなくなり、 法王の命により新たに筆写されることになった。 その任に当たったのがこのわしだ」 「もっとも仕事が終われば殺されるはずだったらしいが、 わしがそんな油断をするものか! 密かに脱出してエミグレ文書に記されたこの聖地へ向かった」 「それではまさか…秘儀を?」 「試したさ!わが身を使ってね」 「成功したのね…」 「だが人には勧めんぞ。確かに死をまぬがれはしたがな…。 生命のしくみを根本から変える。激しい変化に身体が耐えられず、 このとおり世にも醜いありさまになってしまった…。 しょうがないから三百年ほど世界をめぐってな…、 人間の愚かさも見尽くしたゆえ…ここに戻って隠遁しておったのだ」 「さて…話も終わった。わしは少し調べものがあるでな。 ひとりにしておいてもらおうか」 368クーデルカsage2005/11/21(月)18 07 04 ID iQKRKpOl 書庫を追い出され、他の場所で手がかりを探すうちに 三人はパトリックの研究日誌を見つける。 そこには三年前、パトリックと管理人夫婦が修道院に移り住んでからの 恐ろしい日々がつづられていた。 『文書に記されたウェールズのこの地にたどり着き、 聖人ダニエル・スコトゥスの開いた修道院で我が妻エレインの再生に 着手することが出来る。決して後悔はない』 『調べれば調べるほど、この修道院はおぞましい建物であることが分かる。 あらゆる場所に死者の怨念が渦巻いているのを感じる。 しかしエミグレ書によれば、その怨念の力こそがドルイドの秘法を 復活させる大きな原動力となるのだ。 この場所を怨念で満たさねばならない』 『聖堂の地下に埋められていた大釜が秘密の鍵を握っていることが分かった。 早急に祭壇を築いて、儀式を行う準備を整えよう』 『ドルイドの儀式には生贄を捧げることが不可欠だ。 大釜を新鮮な血と肉で満たさねばならない。全てはそれからだ』 『ロンドンより戻る。特別あしらえで仕立てた馬車はずいぶん調子が良いようだ。 後ろの籠に女を三人閉じこめてある』 『神よ、私は今日、間違いなく、人が犯してはならない大きな罪を犯した。 娼婦達の血と肉をもって、ドルイドの儀式を行った。 大釜の中に彼女たちの生命の残滓を注ぎ込むと 凄まじい勢いで場の霊力が強まっていくのが感じられる』 369クーデルカsage2005/11/21(月)18 09 33 ID iQKRKpOl 『犠牲者が足りない。ダニエル・スコトゥスの強力な聖蹟に 押さえ込まれているため、満足に力を顕現できないのだ。 より多くの人間をこの場所で生贄にする必要がある』 『今日やっと、新しい犠牲者の一便が着いた。 オグデンの提案で、人買いの元締めに巨額の金をつかませたのは正解だった』 『この頃ではまた、ずいぶんと手際よく作業が出来るようになった。 オグデンと二人ではこれ以上効率を上げることは難しいが、 さりとて秘密を守るためには、人を雇うわけにもいかない。 そこでマンチェスターの機械製作所に、作業台を発注することにした』 『午前中六人解体。午後五人。夕食後一人』 『今日という日をどれだけ待ったろう。 いよいよエレインを再生させるための儀式を執り行う日が来たのだ。 大釜は全て娼婦達の血と肉で満たした。 今やこの修道院は、恐ろしいまでの霊力で満ち満ちている。 たとえ聖人といえど、これ程強い怨念の力に抗することは出来まい。 保存しておいたエレインの遺骸を祭壇に運び込んで、祭儀の呪文を施した。 エレイン、君は今も変わらず美しい。愛している。 死者の国から君を呼び戻そうとする私を許してくれ』 『なんということだ。全ての希望は去った。 あらゆる希望も、望みも、全てただの幻だったのだ。 エレインの遺骸を包み込むように伸び上がった生命の木は、 確かにドルイドの秘法を顕現するものだった。 だがしかし、恐るべきことに、再生して花弁の中から現れ出た私の妻は、 昔の姿そのままながら、人間としての魂を失っていた。 まさにそれは、怪物だった。 何百人の娼婦達を犠牲にして、私はいったいなにを為したのか』 『私に残された道はひとつしかない。 あまりに多くのものを私は失いすぎた。 ともに力を尽くしてくれたオグデンには、詫びる言葉もないが、 許してくれ、私にはもう、どうすることも出来ないのだ。 今はただ、静かに、妻とともに眠りたい』 日誌はそこで終わっていた。 370クーデルカsage2005/11/21(月)18 12 43 ID iQKRKpOl 研究日誌を持ち、三人はロジャーのいる書庫に戻った。 ロジャーはまだ調べものをしていた。 「なんだ…。まだなにか用なのか?」 「これを見てもらいたい」 「研究日誌?」 「教えて…そこに書かれたことが本当にありうるのかどうか」 「どれどれ…。ふん…ふん…。 なるほど死者の再生をな…。 大釜か…。まさにブランウェンの昔話だ。 おそらくここに書いてあることは事実であろうよ」 「やっぱり…。だがそんな…」 「わしは試さなんだがな。 確かにエミグレ文書には死者の再生にかんする記述がある。 だがこれを読んでもわかるとおり、ちっと準備がめんどうくさい。 死んでしまったものを呼び返すというのは 生きているものを不死にするよりはるかに強い霊力がいるからな。 まさか実際に挑むものがおったとは…」 「身体は生き返ったけど、魂はもどらなかったとあるわ」 「当然であろう。 古の民族は生命の秘密は手にしたが、魂の秘密には触れるべくもなかった。 彼らは死者をよみがえらせて労働力として使うことで 強大無比な文明を築いたがしょせんは人形と同じさ。 ただ人間の体をあやつったにすぎん」 「それじゃあ…」 「むろん、死んだ人間を昔のままに生き返らせようなどというのは無理な話だ」 「じゃあ生き返った身体を再び大地にもどすにはどうしたいいんだ!」 「それはむずかしい注文だ。すでに天地の理からはずれておる」 「頼む!教えてくれ!それが故人の願いなのだ…!」 「ふむ…。手がないではないが…。 そのためには強力な聖跡の力を借りねばならん。 この修道院を建立したダニエル・スコトゥスの腕が 石像の中におさめられて残っているはずだ。 あれをその大釜の中に投げ込めば、生命の木の源を断つことができよう。 その後は、火の力を呼ぶか水にまかせるか…わしにも見当がつかん」 「火か…水か…」 「どうしたらいいの?」 「聖なるかな!祝福あれ!全ての苦しみはいつかは終わるのだ!」 ロジャーの奇矯な叫びを聞きながら、三人は顔を見合わせた。 574クーデルカsage2005/12/12(月)17 09 16 ID k4mL+Z+1 石像の中に隠されていたダニエルの腕を携え、 三人は大釜のある大聖堂の扉の前にたどり着いた。 しかし、その扉は内側から堅く閉ざされていた。 「銃で撃ったって開きそうにないぞ。どうすりゃいい!」 「ここまで来て入れないなんて」 「クーデルカ…エドワード、君らはここで帰ってくれ。 この騒ぎはどうやら私の友人が起こしたことのようだ。 今さら助けを頼める筋合いではないことはよくわかっている。 この先は私一人で片をつける」 「かんちがいしないで。あんたのために行くんじゃないわ」 「いや…君はもどるべきだ。ここから先は危険すぎる」 エドワードもジェームズに賛同した。 「エドワード…、あんたこそここにいるべきじゃないわ。 あんたは確かに腕も立つし場数もふんでる。 ためらいなく人も殺せるでしょう。でも結局は普通の人間なのよ。 あたしはちがう。こういう世界でしか生きられない。 ここにしか居場所のない人間だわ」 「説教はやめてくれ!俺は俺の生きたいように生きる。 命を惜しんで平凡に暮らすなんてまっぴらだ。 後先考えずにやりたいことをやるのが俺の流儀でね。 人生は博打さ。 賭けたからには勝つまで続けるか…さもなきゃ死ぬかだ」 「エドワード…。あんたは本当に馬鹿だわ」 「らしいな」 575クーデルカsage2005/12/12(月)17 11 13 ID k4mL+Z+1 「好きにしたまえ」 ジェームズがあきらめたように言った。 「させてもらうさ」 「いばったってこの扉が通れなきゃしょうがないわ」 「そうだ…手はある。 パトリックの館を調べたとき、実験室に薬品がそろっていただろう。 私の知識があればあれを使ってニトログリセリンを合成できる」 「そいつはいい。強力な爆薬だ!」 「この扉ならフラスコ一杯で十分だ。 運ぶ途中で落としでもしたらたちどころに天に召されるがな」 その時、大聖堂の鐘楼の鐘が鳴り響き出した。 黙って耳を傾ける三人。 『いくぞ。それで事はすむ。 鐘が俺を呼んでいる』 『聞くなよダンカン。あれはおまえを送る鐘だ。 天国へか地獄へか、それは知らん』 エドワードの軽口にこたえながら、ジェームズは実験室に向かって歩き出した。 「私は作業を始めるから、君達は待っていてくれたまえ」 ジェームズを待つ間、手持ちぶさたなクーデルカとエドワードは 書斎の暖炉の前で酒盛りを始めた。 「それで?そのメラニーって女はどうしたの?」 「もちろん朝には消えてたさ。 部屋の中のものをあらいざらい持ってね」 「あんたってつくづく女運がないのね」 「昔の人は言ったよ。女と別れるこつは出て行かせることだって」 「負け惜しみだわ」 怪物に立ち向かう恐怖を打ち消すように泥酔し、笑いあう二人。 576クーデルカsage2005/12/12(月)17 13 55 ID k4mL+Z+1 「でもいいわね。悪口を言いあえる仲間がいて…。 あたしはひとり…。ずっとひとりで暮らしてきた」 「でも子供の時があっただろう?」 「ええ…あったわ…。 あたしが生まれたのはタリエシンっていう河のほとり。 ちっぽけな村だった…。 楽しい思い出が?ううん…。あまりおぼえていないわ…」 「あたしたちは青空の下で生まれ、青空の下で死ぬの。 それがあたしたちのおきて…」 「じゃあ君も青空の下で死ぬのか?」 「……。 あたしたちは生まれたときにあだ名をもらうのよ。 あたしの名前はスラトー」 「スラトー…。不思議な響きだな。なんて意味なんだ?」 「教えられないわ」 「それもおきてってやつか?」 「そう…おきてよ!」 「初めて見たときから君の瞳にはなにか謎めいたものを感じた。 それは君が孤独だったからなのかな。 『心の奥もつらぬく 君のまなざしの光は 望みで燃え立たせ 恐れで心を沈める』」 「またバイロン?」 「まあね」 「お気に入りなの?」 「そう…。なんだか自分に似ている気がして…」 「じゃあそいつもうぬぼれ屋なのね!」 「ロマンチストと言って欲しいな」 577クーデルカsage2005/12/12(月)17 15 21 ID k4mL+Z+1 「俺の親父は厳格な人でね。 自分の息子がありもしない冒険や理想郷に思いをはせて 学業をおろそかにするのを許さなかった。 だから子供のころの俺は、夢や空想や自分の大好きなことを 役に立たないむだなものだど押さえつけられて育った。 まるで自分が役立たずだと言われてる気がしたよ…。 まあ実際…、そうなのかも知れないが…」 「俺はきっと遅く生まれてきてしまったんだ。 俺が十五になるころには華々しい冒険はとっくに終わってた。 西部開拓時代はすぎ、ジャングルは植民地にされ 俺にはさすらうべき荒野も、切り開くべき密林も残っちゃいなかった。 あてもなく…俺は国中を流れて歩いた」 「そりゃけんかもする。良くない遊びもする。 たまには命のやり取りだってするだろう。 でもそれは決して本気じゃない。 俺が求めてるのはそんなものじゃないんだ。 うまく言えないんだが…、 俺は今でもなにか目に見えない宝物を探している気がするよ」 「クーデルカ…、君がうらやましい…。 他人にない霊能力を持って自由気ままに暮らせる君が…」 「あんたにあたしのなにがわかるの? あたしがどんな風に育ってきたか知ってるっていうの? 笑わせないでよ。なにが冒険よ…。 あんたなんにもわかっちゃいないわ! あたしがこのくだらない力のせいでどんな目にあってきたか」 578クーデルカsage2005/12/12(月)17 17 37 ID k4mL+Z+1 「あたしの父親はあたしが小さいころ死んだわ。 場所も時間も死に方もあたしが霊視したとおりだった。 あたしは自分の父親の死を言い当てたのよ。 あたしは呪われた子供。持ってはいけない力を持った子供。 母はあたしを恐れ、憎んだわ…。 自分の手で殺そうとするほどに…。 あたしは長老会の裁定で村を追放になった。 あたしはまだ九才だった」 「九つの子供が身寄りがなくてどうやって生きてきたかあんたにわかる? なにが宝物よ…。冗談じゃないわ。 あんたは泣いて物乞いをしたことがある? 今夜凍え死ぬのが怖くて体を売ったことがあるっていうの?」 「あのころのあたしはシャルロッテと同じ。 あの子が「自分は愛されたことがない」って泣いたとき…、 身を切られるような思いがしたわ。 あれはあたし! あたしも「みんな死ねばいいのに」と思ってた。 すべての人間を憎んでた」 「でもいいわよね。あの子は行けたんだもの、天国に。 あたしは今も生きて…ひとりぼっち…。 誰も助けてくれなかったわ。誰も!」 「クーデルカ…おまえ」 「あたしはあんたがうらやむような自由な人間じゃない。 無知で貧しくてうすぎたない女だわ。 食うために自分の誇りさえ捨てるような!」 579クーデルカsage2005/12/12(月)17 21 30 ID k4mL+Z+1 「でもね…、こんなあたしでも人の役に立てることがあるのよ。 あたしの力で人の傷をいやすとき、 少しだけ…生きててよかったと感じるわ。 愛されなくたっていい。生きている意味が欲しい。 誰かに必要だって言われたいのよ。 そうでなくちゃ、あんた…、あんたなんかに…、 わかって…、たまるもんですか…」 すすり泣くような声はとぎれ、クーデルカは子供のように丸くなって眠り込んだ。 そんな彼女の背中を、エドワードは酔いの醒めた目で黙って見つめていた。 「出来たぞ!完成だ!」 ジェームズが作ったニトログリセリンを持って三人は閉ざされた扉の前にもどった。 戸口にフラスコを置き、距離を取ってからエドワードが銃で着火。 爆発が起こり、大聖堂への道は開かれた。 「すげえ…」 ランタンを手に最初に足を踏み入れたエドワードが呟いた。 大聖堂の中は地下から伸び上がり天井を突き破る巨大な生命の木と 脈動する蔓によって蹂躙されていた。 棺桶の下に隠された地下室を見つけ、降りてゆくとそこには 日誌にあった大釜と、そして蔓に絡まれ絶命したパトリックの死体が転がっていた。 「パトリック…。哀れな…」 あとは大釜にダニエルの腕を投げ込むばかりだ。 しかし、そのあとに火を呼ぶか、水を呼ぶかはどうしても分からなかった。 大釜の前で車座になり考え込む三人。 突然ジェームズが立ち上がり、灯油の缶を手に取った。 「どうすんだ…そんなもの。まさか…!」 「手伝えとは言わんよ。これは私ひとりの問題だ」 そのまま床に灯油をばらまき始めるジェームズ。 580クーデルカsage2005/12/12(月)17 26 58 ID k4mL+Z+1 「いいんだな?」 ダニエルの腕を持ち、ジェームズはクーデルカとエドワードに問いかけた。 最後まで付き合おうという二人の気持ちは変わらなかった。 「聖ダニエル・スコトゥスよ!我らに魔を退ける力を与えたまえ! アーメン!」 祈りの声とともに大釜に腕を投げ込むと、大釜が沸騰し それまで力無く垂れ下がっていた無数の蔓が再び蠢き始めた。 あわてて階段を駆け上がり、地下室を出る三人。 暴れ回る触手のような蔓を避けながら、割れたステンドグラスを通って外に逃れる。 「汝、塵より生まれしものよ!おとなしく塵に還るがいい!」 灯油をばらまいた床に向かってジェームズはランタンを投げつけた。 たちまち火が燃え上がり、大聖堂内は炎の海と化した。 外壁に設けられた階段を上り、三人はエレインの姿をした怪物を倒すため 大聖堂の塔を登り始めた。 追ってくる蔓と戦いながら進み、塔の中程で生命の木の巨大な花のつぼみを見つける。 息をのみ、見守る三人の目の前でつぼみはゆっくりと開き始めた。 中から現れた美しい怪物は、突然強烈な光熱波を吐きかけてきた。 クーデルカは霊力の宿るペンダントでそれをはじき返す。 蜘蛛のような動きで飛び上がり、天井を跳ね回る怪物。 エドワードの放った銃弾が怪物をとらえ、撃ち落としたかに見えたが ほとんどダメージを受けた様子もなく復活する。 怪物に追われ、再び階段を駆け上がる三人。 鐘楼のある塔の屋上まで追いつめられたクーデルカ達の前で 怪物は巨大な植物のような姿に変態する。 怪物の咆吼に呼応するように、荒れ狂う空から雷が落ち 鐘楼の天井は崩れ落ちた。 瓦礫の中、長い夜の終わりを告げる最後の戦いが始まった――。 581クーデルカ グッドENDsage2005/12/12(月)17 30 39 ID k4mL+Z+1 クーデルカ達は苦闘の末、怪物に勝った。 身体のあちこちから血を吹き出しながら、怪物は金色の光を発し 塵に還ろうとしている。 その様子をジェームズは苦しげに見守っていた。 怪物の顔は不思議と穏やかな表情を浮かべ、 なにかを言おうとするかのように唇を動かしながら、下階の炎の中に落下していった。 クーデルカ達の戦いの様子をロジャー・ベーコンは遠くから見ていた。 「ずいぶんと面白いものを見せてもらったわい。 こりゃ眠るには惜しい時代かもしれん」 夜明けを迎えた塔の屋上で、クーデルカとエドワードは力を使い果たして横たわり、 ジェームズは瓦礫の石に腰掛けて海を見ていた。 「なあクーデルカ…。彼女は何を言おうとしていたんだろう」 「死んだ人は何も言わないわ。想い出になるだけ…」 「そんなもんか…?」 「まあね…」 「想い出か…。昔誰かに言われた気がする…。 死は想い出…。想い出は永遠の絆…」 呟きながら涙を落とすジェームズを、 海から立ち昇る日の光がやさしく包み込んでいった。 ネメトン修道院の深き闇は今、祓われた――。 <END> 582クーデルカ バッドENDsage2005/12/12(月)17 33 19 ID k4mL+Z+1 クーデルカ達は苦闘の末、怪物の前に倒れた。 クーデルカとエドワードは傷つき、すぐには動くことも出来ない。 「神よ!私がいけないのか! 邪な動機から信仰の道を志したから私を罰しようというのか!」 ジェームズは最後の力を振り絞り、十字架を手に立ち上がった。 「よかろう…。それがあなたの望むことならば。 捕らわれるべき者は捕らわれていく。 剣で殺されるべき者は剣で殺される!」 十字架を掲げ、向かってくるジェームズに怪物は後ずさった。 「私は私のあるべき姿を…喜んで受け入れよう! ずっと愛していた…エレイン…」 泣きながら十字架を頭上高く突き出すジェームズ。 その時、天から光が降り注ぎ、怪物とジェームズを取り巻いた。 光の中で、怪物は生前のエレインの姿を取り戻していく…。 「帰りましょうジェームズ…。懐かしいあの日に…」 やがて光は、ジェームズとエレインとともに天に吸い込まれるように消えていった。 呆然と見守っていたクーデルカとエドワードの目の前で、突然下階から炎が噴き出した。 「駄目だわ!もう炎がここまで!」 「馬鹿言え!まだ手はある!」 エドワードはクーデルカを抱き上げ、屋上の端に立った。 「大丈夫だ…。俺を信じろ」 背後で炎が爆発するのとほぼ同時に、エドワードはクーデルカを抱えたまま飛び降りた。 583クーデルカ バッドENDsage2005/12/12(月)17 37 38 ID k4mL+Z+1 一夜明け、輝く太陽の下でロジャー・ベーコンは 塔の瓦礫から一冊の本を拾い上げていた。 「近頃の若い者は無茶をするのう」 庭の壁際に作ったテントから出てきたエドワードは、 炎も収まり煙を上げる塔を見上げていた。 「あら…晴れたのね。もう少し露ってればいいのに…」 テントの中で髪を直しながらつまらなそうに言うクーデルカに、 エドワードは優しく微笑んだ。 修道院の前で荷物をのせた馬に乗り、 エドワードはクーデルカに別れを告げようとしていた。 「さよなら…自惚れ屋さん。次は遅い馬を買うことにするわ」 「なあ…お前のあだ名…。スラトーってどういう意味なんだ。教えてくれないか?」 「た…『宝物』っていう…意味よ…」 「そいつはいい!おぼえとくよ!」 「よいのか?後を追わなくて…」 去っていくエドワードを見送るクーデルカにロジャーが問いかけた。 「いいの…。あの人とはきっとまたどこかで会えそうな気がするから」 淋しげに目を伏せながらも、 クーデルカは心の中になにか温かいものが宿っているのを感じていた――。 <END>
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クーデルカ 17-438~439、 18-171~173・309~317・360~366、 19-291~295・312~313・340~341・366~370・574~583 438 クーデルカ sage 2005/08/16(火)15 10 17 ID TwVfqFhj ――これは、1898年10月31日、英国ウェールズ地方にあるネメトン修道院に 偶然集った三人の男女の一夜の冒険の物語である。 薄もや立ちこめ日暮れ迫る田舎道、一人馬を走らせる少女がいた。 目指すのは、断崖にそびえ立つ巨大な修道院。 玄関にたどり着くと馬を下り、ドアをたたくが開けられる気配はない。 仕方なく外壁を巡っていると屋根からロープが垂れ下がり、 その下に旅装が置き去りにされている箇所がある。 先客がいるようだ。 被っていたフードを脱ぎ捨て、ロープを使って登り始める少女。 美しく、勝ち気そうなその素顔。 屋根まで登り詰め、古びた窓を蹴破って中に飛び込むとそこは薄暗い穀物庫だった。 ドアにもたれ掛かり気を失っている若い男に気付き、警戒しながら忍び寄ると 「気の早い天使だな。俺はまだ死んじゃいない」 突然目を覚まし、男が言った。 明らかに重傷を負い、手に持った銃を持ち上げることもできないその様子を見て 「たいした違いじゃないわ。どうせもうじき死ぬんでしょ」 少女は冷たく突き放すが、後ろ手に油断無くナイフを握っている。 男が言う。 「『そいつ』に弾を撃ち込むまでは死にきれそうにないからな」と。 背後に不穏な気配を感じ、少女が振り返るとそこには男を傷つけた異形の化け物がいた。 とっさに握っていたナイフで刺すがたいした威力はなく、 化け物に殴り飛ばされてしまう。 男は発砲するが弾は当たらない。 「クソッ!」 少女に銃を投げ渡す。 439 クーデルカ sage 2005/08/16(火)15 12 29 ID TwVfqFhj 少女が化け物を倒して戻ると、男はいよいよ死にかけている。 死ぬ前にお祈りを聞かせて欲しいと頼まれるが 「生憎ね…。あんたのために祈るなんてごめんだわ」と、笑い飛ばす。 「けど…そうね。助けてもらった借りは…返さなくちゃ」 男に手をかざし、しばらくすると傷は癒えた。 「おどろいたな…本物の天使だったのか」 「おめでたい人ね。この世に天使なんてものがいると思って? あたしはただの霊媒。ほんの少し傷を癒す力があるだけ」 「俺の名はエドワード・プランケットだ」 男が名を告げる。 富豪の息子が大金を持ってこの修道院に住んでいるという噂を聞いて 盗みにきたのだというその目的も。 君も自分と同じ流れ者なんだろうと問うと、 「同じなんかじゃないわ。あんたみたいな普通の人がどうしてこんな所に来たの」 少女はエドワードを責める。 「死にたくなかったらあたしの側を離れないことね」 立ち上がるのに少女の手を借り、その手を握ったまま 「よろこんで」 エドワードは言う。 手は邪険に振り払われる。 そして少女も名を名乗る。 彼女の名はクーデルカ。 ――闇の扉を開く者。 171 クーデルカ sage 2005/09/02(金)15 11 34 ID 6t2YVPoJ 魔物と戦いながら薄暗い修道院を探索していくクーデルカとエドワード。 やがてこの修道院の管理人だというオクデン,ベッシー夫婦に出会い、歓待を受ける。 「スープぐらいしか用意できなくてごめんなさいね。たくさん召し上がってくださいな」 「おお、そうするがええ」 突然現れた二人を疑うそぶりも見せず、食事を勧める夫婦。 「ありがたい!ご馳走になります」 遠慮無くガツガツと食べるエドワードを横目に、クーデルカはスープに手を付けない。 「あら?ジャガイモのスープは嫌い?」 「いえ…、そういうわけでは…。でも…今はちょっと…」 「普段は私たち二人だけだからお客様が来ると嬉しいわ」 「この広い修道院の管理を二人だけで?」 驚くエドワードに夫婦は語る。 二人は縁があって修道院の管理を任されていること。 この修道院が九世紀ごろ、聖人ダニエル・スコトゥスによって 地に巣くう魔を鎮めるために建てられたということ。 半年前から修道院内に魔物が出没するようになり、徐々に増えていっていること。 オクデン氏がかつて船乗りだったこと。 建物の修繕をしながら、好きな絵を描いて暮らしていること…。 最後にオクデン氏に銃の弾薬を分けてもらい、夫婦の部屋を出て隣の厨房に入った。 172 クーデルカ sage 2005/09/02(金)15 13 51 ID 6t2YVPoJ 「こいつはいい。保存食だ。少し頂いていこうぜ」 「あきれた。あれだけ食べたのにまだ足りないの?」 「三日も飲まず食わずだったんだ。腹も減るさ。 お前こそどうかしているぞ。せっかくのスープに手も付けないで」 「そうね。あたしも毒が入ってなければ遠慮せずに頂いたわ」 「なんだって…?」 「かすかだけど、毒草の匂いがしたわ」 にわかに腹を押さえ、苦しみだすエドワード。 「じゃああの二人、本気で俺たちを殺そうと…?」 「なにもしなければ、あと三十分くらいで死ぬかしらね」 床に転がりのたうち回るエドワードに背を向け、 暖炉の火に当たりながら淡々と話し続ける。 「ずいぶんと手慣れた手口に見えるわ。何か秘密がありそうね…」 「いい?エドワード。これから解毒してあげるけど、 怒ってあの夫婦の部屋に乗り込んだりしたらだめよ。 毒にやられたふりをして建物内を探索しましょう」 173 クーデルカ sage 2005/09/02(金)15 20 35 ID 6t2YVPoJ 厨房の奥にある暗いハーブ園に入ると、中年の神父が気を失って倒れている。 さらに奥へ進むと、植物の姿をした化け物が襲いかかってきた。 それを倒し、神父を起こす二人。 「うーん…。なんだ…私は…。ここは…。そうだあの化け物に…」 「誰だね君らは?」 横に立つ二人に気付くと、神父はうさんくさげに言った。 「おい…。助けてもらってその言いぐさはないだろう」 「ほう…。昨今の追いはぎは人助けもするようになったのかね?」 「なんだと!」 「あたしの名前はクーデルカ。彼はエドワード。 どうしてこんな所で倒れていたのか聞かせてもらえる?」 激昂して神父に詰め寄ろうとするエドワードを止め、クーデルカが言った。 「ジェームズだ…。ジェームズ・オフラハティー…。 ちょっとした捜し物があってこの修道院に来たんだが、突然魔物が襲いかかってきて…」 「どこから入ってきたの?」 「正門に決まっている」 「本当に?」 「ああ。管理人夫婦が丁重にもてなしてくれたよ」 「毒入りのスープでか」 「何のことだね?」 「彼らはあたしたちを毒で殺そうとしたのよ」 「馬鹿馬鹿しい!」 ジェームズは二人の話を取り合おうとしない。 ますます憤るエドワード。 「あの化け物は俺たちが倒したんだぜ!」 「その身なりからするに、信仰の力で問題を解決した訳ではなさそうだな」 「祈ってどうにかなるような相手には見えなかったわ」 ジェームズはかなり敬虔かつ厳格な神父のようだ。 「よけいなお世話だったようだな。行こうぜクーデルカ」 ハーブ園を出ようとする二人。 「待ちたまえ! いかに私に主の御加護があったとて、用心するにこしたことはあるまい」 「私も一緒に行こう」 309 クーデルカ sage 2005/09/12(月)19 42 58 ID h5s3+iwu 三人になった一行は、管理人の部屋のある区画を出て、渡り廊下に差し掛かる。 「何とも陰鬱な建物だな。聖堂はあるものの、主の御力が感じられん。 こんな場所に足を踏み入れねばならんとは…」 『ああ、すべての行き、行かねばならぬところ…』 ぼやくジェームズをからかうようにエドワードが詩を詠唱し始める。 「バイロンか…。私の趣味ではないな。第一品格がない」 「あんたが品格をとやかく言うのか」 「いいかね、詩というのは…」 「この嫌な霊気をはらってくれるんなら誰でもいいわ」 つまらなそうに二人の話を聞いていたクーデルカが口を挟む。 「あんたの好きな大工の息子でもね」 「異教徒め!なんと罪深い言葉を」 「会ったこともない奴に救いを求めるなんて馬鹿げてるわ。 ロンドンじゃ毎日人が飢えて死んでるのよ」 「いずれ不潔で不道徳な盗人どもではないか。 神の国は…」 そこで、近くの窓から銃弾が撃ち込まれる。 その場で三人はしゃがみ込む。 「これは魔物じゃないぞ」 「向こうの建物からだわ」 「毒じゃ死にそうもないと見て、手っ取り早い方法にしたわけか」 「馬鹿な!まだそんなことを」 「どっちが馬鹿だか、弾丸に聞いてみやがれ!」 挑発的に立ち上がるエドワード。 「馬鹿!」 クーデルカはあわててエドワードをしゃがませた。 310 クーデルカ sage 2005/09/12(月)19 46 10 ID h5s3+iwu 渡り廊下を出て隣の区画に行くと、 そこは今までよりもさらに荒れ果て、陰惨な場所。 何の飾り気もない土間のような廊下、 壁の崩れ落ちた、がらんとした部屋の中には死体の山に人骨の山…。 三人はそこを通り、比較的家具の揃った部屋に入った。 「何てことだ…。この建物は死体と白骨であふれかえっている…」 「感じるわ…。部屋中が霊気でいっぱい…。頭が…痛い…」 よろめいてベットに腰掛けるクーデルカ。 「なんだか嫌なふんいきだな」 「恐ろしい…。主よ、迷える魂を救い給え」 「昨日今日こうなったんじゃないわね。 これだけ霊気が強ければ降霊ができるはず。 なにかわかるかもしれない」 「恥知らずな!少しは神に祈ったらどうかね!」 「ただよっている霊魂をあたしの中に呼び出して話をさせるのよ。 あたしがここに来たのも、ある女の霊に呼ばれたからなの」 話しながらも降霊を始めたクーデルカの体は前後に揺れている。 「がまんならん! 主を信じないばかりか、死者の平穏まで乱そうというのか!」 「うるさいわね!じゃましないでくれる?」 揺れはいっそう激しくなり、そして…。 「鎖と…闇と…死が…。そして…ああ…無数の…。 まるで…地獄…」 「どういうことだ?」 「幽閉されて…拷問のあげく…何千人も…」 311 クーデルカ sage 2005/09/12(月)19 48 37 ID h5s3+iwu 『殺せ!!』 突然、クーデルカの声が別人のように恐ろしげな声に変わった。 『奴らはわしの指を切り落とした!わしの足をつぶした! わしの頭をくだき、贓物を引きずり出した!』 『奴らはあたしのすべてを奪ってここに閉じこめた! そして体を切り刻んだ!』 『ああ…目が、耳が!焼ける…。 助けて!助けて!』 「なんて酷い…」 正気に戻り、クーデルカは呟く。 「ここは…牢獄だったんだわ…。何百年もの間…密かに…。 権力に刃向かう者や、密通した者を…閉じこめて…殺して…」 エドワードは、クーデルカの肩に手をかけようとした。 『駄目だ、近寄るな!貴様!呪われろ!』 霊が抜けず、苦しむクーデルカを エドワードとジェームズはなすすべもなく見守ることしかできなかった。 クーデルカの回復を待ち、先に進むと廊下に人形を抱いた銀髪の幼い少女が現れた。 エドワードが声をかけようとすると、険しい表情で顔を背け、去っていく。 「おい!待てよ、おい!」 少女を追いかけるエドワード。 曲がり角を曲がり、立ち止まっている少女にゆっくりと近づこうとする。 「エドワード!」 クーデルカに肩を掴まれ、気が付けばそこから先は床が崩れ落ちていた。 宙に浮かぶ少女の笑い声が響き渡る。 「死ねば良かったのに…。落ちて死ねば良かったのに…」 少女は闇の中に姿を消した。 「亡霊か?」 「ああ…」 問いかけるジェームズに、エドワードは呆然と前を見つめながら答えた。 312 クーデルカ sage 2005/09/12(月)19 50 38 ID h5s3+iwu 縄橋子を使って下に降り、一行は聖所の一つに入った。 ステンドグラスの前で、エドワードはため息をつく。 「どっちを見ても死んだ奴ばっかりだ。 生きてりゃさぞにぎやかだったろうな」 「何百年もの間放っておかれたのだ…。言いたいことも多かろう」 「ずいぶんと新しいものもあったわ。銃で撃たれた奴、斧で頭を割られた奴…。 外傷のないものもあった。きっと毒を盛られたのね…」 「そういえば俺達と同じ流れ者のようだった。 やっぱりあの…」 「管理人夫婦が殺したというのか?くだらん!」 「人が死ぬのがくだらないことなの?」 「どうせ物盗りのたぐいではないか。たとえ牢獄になっていたとはいえ、 ここが神聖な場所であることにかわりはないんだぞ。 それを汚す輩がどうなろうとわしの知ったことではない!」 「よくそんなことが言えるな。それでも神父か?」 「神父ではない。司教だ」 「どっちだってかまうもんか! そりゃ善良な人間がこんな場所で死んでたりはしないさ。 だがこいつは酷すぎる」 「君もあの夫婦を見ただろう。世話好きで信仰にもあつい。 人を殺す理由があるか?」 「信仰にあついだと!?考えてみろ!そんな奴がこの有様を捨てておくか? 埋めてやるくらいは誰だってするだろう!」 「ともかく!」 クーデルカが二人の言い争いに割り込む。 「ここにいるのがあたしたちと魔物だけじゃないのは確かだわ。 死にたくなかったら用心することね…」 313 クーデルカ sage 2005/09/12(月)19 53 29 ID h5s3+iwu 家具が積み上げられた部屋に入ると、クーデルカはしゃがんで何かを調べ始めた。 「クーデルカ、なにかわかったのか?」 立ち上がった彼女にジェームズが尋ねる。 「いいえ。でも…」 突然、床に亀裂が走り、三人もろとも崩落した。 三人は死体の山の上に落下した。 立ち上がることもできないまま、 エドワードは階上からこちらを見ている人影を見つけた。 「誰だ!」 人影は答えることなく姿を消した。 落下した場所は壁と鉄格子に囲まれた地下牢だった。 鉄格子を破ろうとするクーデルカ。 「どうだ?出られそうか?」 「素手じゃ無理ね。熊でも連れてくれば別だけど」 「出られんだと…?じゃあ…どうなるんだ?」 「さあ…。そこの先客に聞いてみれば?」 死体に目をやりながらクーデルカはなげやりに答える。 「ちくしょう!あの人影を見たか?やっぱり誰かが俺達を…」 「そんなことより、この場をどうにかしたまえ! 君たち無法者には、牢を破るなんて慣れたものだろう!」 「そいつをイーストエンドで言ってみな! 言い終わるまで首が胴に付いちゃいないぜ!」 「くだらん!どうせ君達にはわかるまいが、私には神聖な使命があるのだ」 314 クーデルカ sage 2005/09/12(月)19 55 14 ID h5s3+iwu 「むだなのに…。どうせなにもかも…」 鉄格子の向こうに、先程の亡霊の少女が現れた。 「あたしの名前はシャルロッテ…。でも名前なんて何の意味もないわ。 あんたが今生きてることも、もうじき死んじゃうことも…。 なんの意味も無いこと」 「あなたもここで死んだのね?」 「そうよ。あたしもここで死んだの。何百年も前に…。 生まれてすぐに閉じこめられて、九才の誕生日に首を切られたの。 それからずっとここにいるわ。ずっと誰にも知られずに…」 「ふびんな…」 呟くジェームズをシャルロッテは嘲り笑う。 「あわれむっていうの?あたしを? くだらないわ。そんなの三日もすれば跡形もないわよ」 「それはちがう。どういう事情があったにせよ、 君の母親は君のことを心配していたはずだ」 「…母親ですって。顔も…名前も…。どこの誰かも知らないのよ…。 そんなものに何の意味があって? あたしは生まれてから死ぬまで誰かに愛されたことなんて無いわ。 なにが母親よ…。死ねばいいのよ。みんな死ねばいいのよ!」 そう叫び、シャルロッテは魔物をけしかけて消えた。 315 クーデルカ sage 2005/09/12(月)19 57 26 ID h5s3+iwu 魔物を倒し、戦いの余波で崩れた壁を抜けて三人は地下牢を出た。 拷問室や酸の池を通り、財宝が無造作に積まれた宝物室に入る。 「すばらしい!まったくすばらしい! こんな財宝が修道院に眠っているとは! あれはマンテ-ニャの作品か?なんとあれはカラヴァッジオだ! 信じられん…!なぜ今まで忘れ去られていたのか」 「財宝ね…」 夢中になっているジェームズを、クーデルカとエドワードは醒めた目で見ている。 「もしこの宝をヴァチカンに寄贈できたら、 全キリスト教徒にとって大切な財産となる大発見だ!」 「ここがどういう場所だか忘れたの? ただの修道院じゃない…。牢獄だったのよ! 権力争いに敗れた人間を閉じこめて処刑するためのね。 その財宝だってどうせ彼らから奪った品でしょう。 恨みや呪いが染みこんでいる…。そんなの見たくもないわ」 「私も忙しい身で君に信仰の重要さについて説く気にはならんが、 今日こうしてすばらしい財宝に出会えたのも すべては神のお導きのなせるわざなのだ。 神は全てを見ておられる。わかったかね?」 「糞くらえだわ!」 「君はどうだ?エドワード。彼女よりは学識がありそうだが?」 「興味ないね。どんな後光がさしてようが、しょせんはものだからな」 「つくづくがっかりさせられるよ。 君らに比べれば、そこらで死んでいる盗賊の方が 芸術の価値がわかっているだけましなようだ」 「くだらない皮肉を言ってないで、頭を使ったらどう? ここで死んでるのは金目当ての盗賊だけじゃない。 切り刻まれた女の死体がたくさんあったわ。 あれはごく最近のものよ」 「そうだな…まともじゃない。見慣れていても吐き気がしそうだ」 「やっぱりあの夫婦が…」 「馬鹿な!あの善良で義理堅い人達が恐ろしい殺戮を働くわけがない! どうせ欲にまかせて命を奪い合う愚か者…。 異教徒やら移民やら野蛮人どもの仕業であろう。 管理人夫婦を中傷するなどもってのほか!不愉快だ!」 316 クーデルカ sage 2005/09/12(月)20 00 39 ID h5s3+iwu 「あんたの手にかかったらみんな異教徒のせいにされちまう。 司教って人種はみんなそうか?」 「君に言ってもわかるまいが、真実というものは…」 話しながらホールに入る三人。 大きなシャンデリアの下を通ろうとしたところで、またも銃声が轟く。 落下するシャンデリア。あわてて三人はそれをよけた。 犯人を追って階段を駆け上がると、流れ者風の男が逆に襲いかかってきた。 これを撃退し、男を問いつめる。 「盗人め!」 男に銃を突きつけるエドワード。 「警察の目を逃れて隠れ住み、宝物をあさっていたのね…」 「同業とはね…。さて、君達。どう言い訳するつもりかね? この男が我々の命を狙ったことは最早明白じゃないか! どこから来たのかね?ハンブルクか? どうせコレラで我々の国を根絶やしにしようとした連中のかたわれだろう」 「お前の知ったことか!黙れこの糞野郎!」 「確かに生まれなんて知りたくもないわ。 糞野郎ってのにも賛成よ。でもこれだけは聞かせて。 盗賊や女達を殺したのはあんたなの?」 「そりゃあ俺は移民さ…。シャンデリアを落としてお前らを殺そうとしたのもな…。 うらみがあるわけじゃないが、うまい汁は…」 「じゃああの死体もお前が!」 「そうじゃない!神にかけて誓ってもいい! (ジェームズに向かって)あんたの神とは違うが…」 317 クーデルカ sage 2005/09/12(月)20 04 43 ID h5s3+iwu 「どういうこと?」 「あいつらだ。あの管理人夫婦の仕業だ。 信じてくれ!本当だ!ここにひそんで何度も見た。 あいつらが無法者を斧で叩き殺すのを! たいていの間抜けは奴らの善人ぶりに油断したところを 後ろから殴られて死んじまう」 「信じられん!」 「ひとおもいに死ねるならましさ。 毒を盛られた奴は息が止まるまで一晩中苦しみもがくんだ! 爪が内蔵に食い込むほど腹をかきむしって! 嘘じゃない!本当に見たんだ!あいつらは悪魔の生まれ変わりさ! 俺もいっぱしの悪党だが、とてもあんなまねはできん。 善良そうに見える奴ほど腹の底はどす黒いもんだ。 (ジェームズを指さして)こいつみたいに!」 笑い出すクーデルカとエドワード。憤るジェームズ。 「もっともな意見だ」 「こんな馬鹿話を本気にするのか? こいつは何十人もの人間を殺した殺人鬼だぞ。 警察に引き渡し、法の裁きを受けさせねば」 「本気にするなですって? 彼が移民だから?それとも異教徒だから? あんたの頭の中は差別と偏見でいっぱいよ!」 「俺はこいつを信じるぜ。悪党ってのは案外信心深いものさ」 「だが…。俺達を殺そうとした…」 エドワードは銃を手に、ゆっくりと男に近づいていく。 「ってことはだ…」 銃声。 「な…んてことを」 ジェームズは男の脈をとるが、すでに事切れている。 「これで命を狙う奴がいなくなれば主の御使いの勝ち。 まだ襲われるようなら不潔で野蛮な異教徒の勝ち。 どっちに賭ける?」 エドワードは、銃をジェームズに向けた。 360 クーデルカ sage 2005/09/16(金)20 09 46 ID NIZ0XnXV 男が持っていた鍵を使い、クーデルカ達は管理人夫婦の部屋に踏み込んだ。 しかし食事の跡もそのままに、夫婦はどこかへ消えていた。 部屋の奥の物置に入ると、壁には何枚もの沈没する船の絵が掛かり、 床には生々しい血の跡が残っていた。 「プリンセス…アリス号」 絵に近づき、船に書かれた名前を読みとるクーデルカ。 「事故でテームズ河に沈んだ遊覧船だわ…。 これも…。これも…。何てこと。全部同じ船の…」 その時、クーデルカの霊視能力が働き 沈む船と溺死する人々の恐ろしいヴィジョンが見えた。 オクデンはかつて船乗りをしていたと言っていた。 そのことと関係が在るのだろうか。 361 クーデルカ sage 2005/09/16(金)20 12 17 ID NIZ0XnXV 図書館の中のある書物保管庫にはいると、 ジェイムズは宝物庫の時のように感嘆しながら書物を漁り始めた。 「ひとつ聞きたいんだが、ここにあるのは何の本なんだ?」 「神秘学と錬金術に関する古今の文献だよ。 土から金を精製するというたぐいのやつさ。 たいていは欲に目がくらんだ詐欺師どものでまかせだが、 中には今日の自然科学を予見して有用な基礎実験を記録した良書もある。 当時はひとまとめにされていたらしいが、真理の探究には神の御加護がある」 「ジェームズ!」 長口上にいらついたクーデルカは口を挟もうとするが ジェームズは聞く耳を持たない。 「ヘルメス学…カバラ…。こんなものではない! なぜだ!なぜ見つからない!ここにあるはずだ!」 「なにか探しているのか?」 「わからん…。わからん…」 「わからんじゃわからん!なにをぶつぶつ言ってるんだ! あんたはどうもうさんくさい。隠し事はやめたらどうだ」 「気に食わんな。人にはそれぞれ事情がある。 詮索は無用に願おうか」 『お前さんのお気に召すそんな義理はないからな』 得意の暗唱でジェームズを揶揄するエドワード。 『嫌いなものは殺してしまう。それが人間のすることか?』 負けじとジェームズも、男を射殺した先程のエドワードの行動を批判する。 『憎けりゃ殺す。それが人間ってものじゃないか』 「くだらん詩をよむだけかと思えば、シェークスピアを暗唱するのか。 油断ならん奴だな」 「お互い様だろう」 362 クーデルカ sage 2005/09/16(金)20 13 55 ID NIZ0XnXV 反目し合いながらも図書館を探索する三人は、 なぜか扉が壁に塗り込められている部屋を見つける。 隠された抜け穴を見つけ、仕掛けを解いて中に入ると 書物にあふれた部屋の隅に棺桶が置いてある。 ふたを開けると、その中には小柄な老人のミイラがあった。 「ただのミイラか…。期待させやがって」 「がっかりだわ…」 「聖なるかな!!フォモールの秘密!」 突然ミイラが起きあがり、叫びだした。 驚いて飛び退く三人。 「わだつみの底より…エミグレの!」 そこでミイラは糸が切れたように、元通りに倒れ込んだ。 「エミグレと言ったのか?お前はエミグレ書を知っているのか? どこにあるんだ?答えたまえ!」 動かなくなったミイラを問いつめようとするジェームズ。 「エミグレ書…?あんたの目的はそれか?」 答えずに逃げようとするジェームズに、エドワードは激昂する。 「おい…くそ神父!我慢にも限度ってものがある! どうしても言わないつもりか?よかろう…。 身ぐるみ剥いで放り出してやる!」 「…しかたない…。話そう…」 363 クーデルカ sage 2005/09/16(金)20 15 37 ID NIZ0XnXV 「私はヴァチカンの法王庁からやってきた。 目的はこの場所で一冊の写本を探し出すこと」 「その写本が…」 「うむ…。エミグレ文書と呼ばれるものだ…」 「それは重要なものなの?」 「この数百年間法王庁の書庫深くに秘蔵され、 決して見ることができなかった幻の写本と聞いている」 「妙な話だな。そんなものがなぜここに?」 「盗まれたのだ」 「盗む!?法王庁から…!?」 「厳重な法王庁といってもどこかに油断があるものだ。 内部の事情に詳しい者か、金をばらまくことのできる者か。 密かに調査を進めたところ、この修道院を買い取ったある資産家が 大金を投じてエミグレ文書を盗み出させたことがわかった」 「ある資産家?」 「そう…。パトリック・ヘイワース。私の古い友人だ」 「でも高価な美術品ならともかく、どうしてそんなものを盗んだの?」 「わからん。彼は以前から魔術や錬金術に深い興味を抱いていたが…。 私は写本を返すよう彼を説得するつもりだった。 だが管理人夫婦の話では、パトリックはここ数日行方がわからないらしい。 いったいどうしているのか…」 364 クーデルカ sage 2005/09/16(金)20 25 36 ID NIZ0XnXV 全く動かないミイラに見切りを付け、三人は図書館を出て聖堂へと足を踏み入れる。 ちょうどその時、午前0時を示す鐘が聖堂内に響き渡った。 「なに?この鐘は…!」 「日付が変わる…。しまった!今日は確か万霊節!」 高まっていく不穏な気配に、ジェームズは青ざめた。 聖堂の空中に気が集まり、黒い球体を形成していく。 「霊力が集まってく…。凄い力だわ。 まるで…怪物!」 突然、球体がはじけ、翼をもった巨大な黒い魔物が出現した。 魔物の発した衝撃波に吹き飛ばされるクーデルカ。 エドワードとジェームズもまた、魔物に追われてせまい側廊に逃げ込むが 聖堂への入り口が崩れ、戻れなくなってしまう。 「いかん!クーデルカが!」 一人取り残され、魔物から逃れるためにクーデルカは聖堂から中庭へ出た。 二人と合流するために探索を続けるうち、噴水の裏に隠された東屋を見つけた。 中にはいると、そこには血まみれの断頭台があった。 はしごを下りた先の地下には、さらに血まみれの作業台が…。 そこで若い女が斧で惨殺されるヴィジョンを見たクーデルカは 思わずその場でうずくまり、嘔吐する。 そこへ背後にオクデンが忍び寄り、棍棒を振り下ろした。 365 クーデルカ sage 2005/09/16(金)20 28 15 ID NIZ0XnXV 「ヨーソロー ヨーソロー」 意識がもうろうとするなかで、歌うような声が聞こえる。 「綺麗な夕日だ。取り舵…取り舵いっぱーい」 共に聞こえる音は船がきしむ音だろうか? 最初は穏やかだった声はだんだんと乱れていく。 まるで…狂人のうわごとのように。 「いかん…船が沈むじゃないか! 待ってくれ!…わしの船が!」 目覚めると、クーデルカは断頭台に縛りつけられている。 「気が付いたのか?このゴロツキどもめ」 断頭台の横ではオクデンが斧を研いでいる。 船の音に聞こえたのはこの音だったようだ。 「売女!恥知らず!後悔するがいい! エレイン様さえ無事ならこんなことはせんで済んだのだ!」 「エレイン?」 「慈悲深い方だった…。わしの言葉を信じて下さった…。 わしの絵を誉めて…」 「あの沈没船の?」 「わしのせいではない!いきなりあの石炭船が! 夜の闇だ…。なにができる!あっという間に沈んで…。 わしは…。わしは…。エレイン様…」 斧を掴み、立ち上がるオクデン。 「わしがついていれば!貴様らなんぞこうして! いいか!肉の塊だ!塊にしてやる!」 「くるってる…」 「黙れ!」 366 クーデルカ sage 2005/09/16(金)20 32 33 ID NIZ0XnXV クーデルカに向かって斧を振りかぶるオクデンに 背後から銃弾が撃ち込まれる。 「あなた…。もうやめましょう…」 そこにはライフルを構えたベッシーがいた。 「もういいのよ。もう終わり」 もう動かないオクデンに近づき、優しく頭をなでる。 「うちの人はね、昔は大きな遊覧船の船長だったの。 それはそれは立派な船でね。この人の誇りだった。 でも大きな事故があって、大勢の人が死んだの。 この人苦しんでね…。酒場に入り浸って。 馬鹿でしょう。いくら飲んだって忘れられやしないのに。 でもエレイン様に出会って…うちの人はやり直すことができた」 「エレインって人は亡くなったの?」 「ええ…。何故いい方ほど早く逝ってしまわれるのかしらね。 パトリック様がご旅行中に強盗が押し入って。 うちの人…。俺さえついていればってね」 「さあ…。お話はこれくらいにしなくちゃ」 クーデルカに戒めを解くためのナイフを握らせ、ベッシーはライフルを再び手にする。 「うちの人が待ってるもの。 この人…気が短いんだから」 銃口を喉に向け、そして――銃声。 オクデンの死体に寄り添うように横たわるベッシー。 291 クーデルカ sage 2005/11/14(月)16 04 52 ID PUAwYUcy 仲間と合流するため、地下室に降り出口を探すクーデルカ。 壊れた扉の隙間から見える向こう側が、かつて通った場所であることに気付き こじ開けようとするが扉はびくともしない。 「クーデルカ!クーデルカ!」 悪態をつく彼女の耳に、向こう側からエドワードの呼び声が聞こえた。 「ここよ!わたしはここ!」 扉に駆け寄るエドワードとジェームズ。 「よかった!安心したよ。大丈夫か?怪我はないか?」 「ええ…あたしは平気。そっちは?」 「あやうく化け物につぶされるところだったが…。 なんとか左翼廊に逃げ込んだ。 おかげで聖堂に戻れなくなっちまったが…。 中庭から逃げてくるならここだろうと、地下道に降りてきたんだ」 「だめだわ!この扉が開かないの!」 話しながらもなんとか扉を開けようとしていたクーデルカが天を仰いだ。 「ちくしょう!」 「ほかに出口はないのか?そこは東屋の地下なんだろう?」 ジェームズが口を挟んだ。 「…あるわ。聖堂の方に向かって扉がある…」 聖堂にはまだ、あの黒い魔物がいるはずだ。 「それはおそらく左翼廊のまわりの抜け穴に通じているにちがいない」 「抜け穴?」 「よし!それだ! クーデルカはその扉から進んでくれ。 俺達は落ち合う場所を探す」 「わかったわ」 「クーデルカ」 「なに?」 「死ぬんじゃないぞ」 「あんたこそ!」 292 クーデルカ sage 2005/11/14(月)16 07 24 ID PUAwYUcy 一人魔物と戦いながら地下回廊を通り、地上に出たクーデルカは 図書館の前にたどり着くが、鉄柵に遮られて入ることができない。 仕方なく隣の修道院付属墓地に行くと そこには牢獄で出会った少女の亡霊、シャルロッテや 修道院の創立者、聖人ダニエルの墓があった。 墓に祈りを捧げていると、背後で人の気配がした。 図書館の隠し部屋で眠っていたミイラだ。 「悔いあらためよ!裁きの日は近い! 天には七つのらっぱが鳴り響き、 汚れた全ての者は怒りの炎で焼きつくされるであろう!」 「だが…。わしは死なん…」 「何人の上にもわけへだてなく訪れるもの…それが死だ。 死こそが神の祝福であり、恵みに他ならない。 そうじゃないかね?」 「ダニエル・スコトゥス・エリウゲナ…つまらぬ男よ。 こいつには探求する心というものがない。 まあここに修道院を開いたことには感謝するが…」 293 クーデルカ sage 2005/11/14(月)16 09 00 ID PUAwYUcy 「あんたは?」 「これは失礼した。 わしの名はロジャー・ベーコン。フランチェスコ会の修道士だ」 「修道士…。ミイラじゃなかったの?」 「確かに見たところ同じだな。 こんなに干からびておっては、ニシンの薫製のほうがまだましか。 昔は魔術師ともてはやされたものだが、時の流れにはさからえん」 「変な人ね。もし人と呼べるならだけど」 「人であることは何百年も前に捨てた。…今のわしは人ではない。 ならば何かと聞かれても困る。それはわしにもわからんからだ」 「いいわ…。別に知りたくもないし。 それよりどうしてあんな所で寝ていたの?」 「昔から寝起きは良くなかったのでな。 少し休むつもりがどれだけ眠ったか…。 今は何年だ?グレゴリオ暦はまだ通用するのか?」 「あたしをからかってるの?」 「もちろん本気だとも。 わしの知っている時計は棺桶に入れるには大きすぎるでな」 「一八九八年よ」 「これは驚いた…。まる百年も眠っておったのか」 「へえ…。あんたでも驚くことがあるのね」 「気をつけるがいい。 人生に驚きがなくなったら神への道を歩んでいる証拠だ。 さて…。礼と言ってはなんだが、鉄柵の鍵を開けておくから そこを通って行くがいい」 「なぜそれを?」 「先ほどからおまえの仲間が院内を走り回ってな…。 うるさくてかなわんのだ。 静かにするよう言っておいてくれ」 294 クーデルカ sage 2005/11/14(月)16 13 47 ID PUAwYUcy 開けられた鉄柵を通り図書館に入ると、 エドワードとジェームズは印刷室にいた。 「クーデルカ!」 「良かった!無事だったようだな」 口々に叫び駆け寄る二人。 「そうでもないわ。悪い知らせよ。 (ジェームズに向かって)多分あんたにはね。 例の管理人夫婦に会ったのよ…」 「それで奴らは!?」 いきり立つエドワード。 「死んだわ…」 「この修道院に忍び込む盗賊や無法者を殺していたのはやはり彼らだったのよ。 でもそれには事情があった…」 いつになく消沈した様子のクーデルカを見て、ジェームズも彼女の話を信じた。 「わからん…。いったいなにが…」 「それはきっとあんたのほうがよく知っているはずだわ。 オクデンは死んだエレインの復讐をするつもりだったのよ」 「死んだ!?エレインが…!? どういうことだ!そんな馬鹿な話があるか!」 「エレインって誰だ?」 「あたしも知らないわ。 わかっているのはその女の霊があたしをここに呼んだっていうことだけ」 「ねえ…話して。エレインって誰なの? それからパトリックって…? パトリックが旅行中に盗賊が押し入ってエレインを殺したって彼らは言ってたわ。 彼女は管理人夫婦には恩人だったのね。 だから盗賊や無法者をうらんで片っ端から殺そうとしたんだわ。 あれは彼らにとって復讐だったのよ」 295 クーデルカ sage 2005/11/14(月)16 17 18 ID PUAwYUcy ジェームズは語り出す。 「私は…アイルランドの出身でね。 家は小さいながら商家を営んで栄えていた。 幼いころから学業を好んだ私は、やがてイングランドの名門大学に進むことができた。 もちろん家族の助力のおかげだがね。 私はそこでパトリックと出会った。 ともに科学を志す仲間として我々は親しくなった。 だが同時にエレインという女性をめぐって競い合う敵でもあった」 「私は深く彼女を愛していた。 だが世の中は愛だけで暮らしていけるものではない。 家柄も財産もお嬢様育ちの彼女を幸せにする自信は私にはなかった」 「私はパトリックに道をゆずり…、 心の傷をいやすためにカトリックの司祭となって俗世を捨てた…。 私は生来勤勉なたちでね。 ヴァチカンで重責をまかされるほどの司教になったが…。 やはり人の情というものは捨てがたいものだ…」 「もう彼らとは二十年以上も連絡を取っていないが…、 幸せに暮らしてほしいと願っていた。 こんな事がなければ、二度とパトリックに会おうと思うこともなかっただろう…。 そうだ…パトリック…。あいつはどうしたのだ…。 エレインを幸せにすると私に誓ったはずだ! なぜこんなことに…」 「あたしが見た惨状はね…。 ただオグデン達が復讐のためにやったとは思えないほど酷いものだったわ…。 化け物どもが現れる理由だってそれじゃ説明がつかない。 きっとなにかもっと大きな秘密があるはずよ」 クーデルカは夫婦の遺体から見つけた鍵を掲げた。 「これがパトリックの館の鍵…。行ってみる?」 312 クーデルカ sage 2005/11/16(水)11 27 27 ID pAukmJjo パトリックの館に行くには、牢獄を通らなければならない。 特別牢に足を踏み入れた三人の前にその部屋のかつての住人、シャルロッテが現れる。 「シャルロッテ…。これがなんだかわかる?」 クーデルカは探索の中で偶然見つけた、手紙の束を彼女に差し出した。 ――親愛なるわが娘へ アールデン城で静かに冬の到来を感じながら、 慣れない英語で、これを書き記しています―― 「あなたのお母様があなたに宛てた手紙よ…」 「母様…手紙…、…こんなに?」 ――あなたを幸せにしてあげられることの出来ない私はきっと悪い母親なのでしょう―― 「ハーノヴァー伯の后だったあなたのお母様は、 密通の子であるあなたを生むとすぐにアールデン城に幽閉されたわ」 ――あなたは私が心の底から愛した人、フィリップ・クリストファーの娘。 あなたの身体には、きっと彼の面影が深く刻まれていることでしょう、 そしてそれはあなたが決して独りではないということ、 あなたが祝福を受けて生まれた子供であることの証なのです―― 313 クーデルカ sage 2005/11/16(水)11 30 42 ID pAukmJjo 「でも彼女は同じようにこの修道院に閉じこめられたあなたに向かって、 たくさんの手紙を書きつづったの。 あなたの姿を思い描きながらいつか会えますようにって」 ――叶わぬ願いとは知りながら、あなたに会う日を夢見ずにはいられません。 身体は遠く離れていても、心はいつもあなたと一緒にいます―― 「だけどそれが届くことはなかった」 ――この手紙ももう二十通は超したでしょうか。 拙い筆ながら、少しでもあなたに気持ちが伝わればどんなに嬉しいことでしょう―― 「彼女もあなたの死を知らずに手紙を書きつづけた」 ――あなたのことが知りたい。 たとえひと目でもあなたの成長を見てみたい。 毎日毎日、あなたの無事を祈らない日はありません。 愛しています 心より―― 「彼女はあなたを愛していたのよ…」 「そんな…今さら…愛していたですって…?」 愛を知らないまま九才で命を落とし、 何百年も彷徨っていた亡霊、シャルロッテは涙を流していた。 そして今、彼女の霊体は光を放ちながら天に昇ろうとしている。 「いやよ…だめ!怖いわ! 心が…とけちゃう。そんなのごめんだわ! 許すなんて!愛されるなんて!」 「あんたなんか大嫌いよ!あんたなんか!あんたなんか!」 クーデルカを罵りながら、少女の霊は消えた。 「シャルロッテ…。愛されるって…どんな気持ち?」 静かに涙を流すクーデルカ。 彼女もまた、愛されることを知らない一人の少女だった。 340 クーデルカ sage 2005/11/18(金)19 56 53 ID c2fez75m 牢獄を抜けた三人は、鍵を使いパトリックの館に入った。 人気のない館内を探索するうちにエレインの肖像画を見つけたクーデルカは、 その場で招霊を始める。 肖像画から抜け出したように、金髪の美しい女性の姿が宙に浮かび上がった。 『お久しぶりですわ。オフラハティー様』 「エレイン…。君なのか?」 『ええ…。こんな形であなたと会うことになるなんて残念でなりません。 この女性が私の声に応えてくれたのですね。 ありがとう…私のような者のために』 「エレイン…。私には納得がいかないんだ。わけを話してくれ」 『ええ…お話しましょう。 私は十八年前…家に押し入った強盗に襲われて死んだのです。 仕方のないことでした…。 パトリックもオグデンも商用で外出していたのですから』 「許せん…そんなことがあっていいものか!」 『パトリックもそう言いました。 私の死が受け入れられなかったのです。 そして何年もかけて古の秘法を学びました。 私を生き返らせるために』 「死者の再生…?フランケンシュタインじゃあるまいし…?」 「フランケンシュタイン?」 「百年も前に書かれたたあいのない小説さ」 エドワードとクーデルカが口を挟んだ。 『彼は本気だったのです。 そしてそれを実現するための鍵を手に入れました』 「エミグレ文書…」 『ええ…。彼はオグデンの助けを得て古代ドルイドの力を使い、 この修道院で再生の儀式を行いました…ですが』 「うまくいかなかったのね?」 『再生したのは身体だけだったのです。 私の魂はこうしてさまよったまま。 身体とひとつになることはありませんでした。 そして恐ろしいことに、私の身体は心を持たない怪物となってしまったのです』 341 クーデルカ sage 2005/11/18(金)19 59 43 ID c2fez75m 『あれは私の姿をしていますが、決して私ではありません。 オフラハティー様…お願いです。 あなたのお力で私の身体を塵にもどしてください』 「塵に…? だがそんなことをすれば君は生き返れなくなってしまう…」 『オフラハティー様…。 確かに私は盗賊に命を奪われました。 彼らは憎いかたきかもしれません。 ですが私の死は神様がお決めになったこと。 どうか私の死を嘆かないでください』 『私を生き返らせようというあの人の行いはまちがいでした。 悲しんではいけません。死は神の御心のゆえです。 どうぞ私の身体を滅ぼしてください。 あれは天の摂理にそむくもの。この世にあってはならないものです』 そう言い残し、エレインの姿は消えていった。 「待ってくれ!エレイン! 惨い…。なぜこんな惨いことが…」 ジェームズは床に膝を落とした。 「私は君の幸せのためにすべてをあきらめたというのに…。 これでは…。私の人生は…。 ちくしょう!私はなんのために今まで…」 謹厳実直なカトリック司教の顔を脱ぎ捨て、 泣きながらエレインの名を呼ぶジェームズ。 クーデルカとエドワードはかける言葉もない。 366 クーデルカ sage 2005/11/21(月)18 00 32 ID iQKRKpOl エレインを救う方法を探すため、再び館内を探索する三人。 寝室に隠された書庫に入ると、ロジャー・ベーコンが本の山を漁っている。 「なんだ…遅かったではないか」 三人に気付いたロジャーがクーデルカに言った。 二人がすでに知己である様子に驚くエドワードとジェームズ。 「こいつは棺桶の中にいたミイラだろ…。 いつの間に知り合いに?」 「ミイラではない! わしの名はロジャー・ベーコン。何の変哲もない老人じゃ」 「俺は二十年生きてるがあんたみたいな変哲な奴は初めてだ」 「そうかね。 わしは六百年ほど生きておるからこの程度の変わり者は何人も見たわい」 「失礼だが…。十三世紀の魔術博士ロジャー・ベーコンとなにか関係が?」 「よく知っておるではないか。 わしがその魔術博士ロジャー・ベーコンその人さ」 「それではあなたは一二一〇年に生まれ、一八九八年の今日まで生きてきたと?」 「正確には一二一四年だ」 「クーデルカ…。いったいなんの冗談だ」 「あたしがききたいわ」 「冗談なものか!わしはれっきとしたロジャー・ベーコンだ」 「じゃああんたはなんという学校で誰に学んだのかね?」 「ぞうさもない。一二四七年からオックスフォードに学び ロバート・グローステストに師事した。 良い師ではあったが賢明ではなかったな」 「わしは『大著作』をはじめ自然科学に関する重要な本を何冊も書き記した。 この分野における先駆として後世に多大な影響をあたえたが、 わしにとって真に重要な仕事は、法王ホープの命令により 『エミグレ文書』を筆写したことにある」 367 クーデルカ sage 2005/11/21(月)18 02 47 ID iQKRKpOl 「エミグレ文書?やはり知っていたのか?」 「あたりまえだ。五年もかけて書き写したのだぞ。 あの本のことならすみからすみまで知っておる」 「どういうものなの?」 「大地より湧き出でる生命の秘密! 古の民族フォモールが行っていた秘儀…。 不死や…あまつさえ死者の再生を我がものにし、 自然の持つ輪廻の法則さえもあやつる…。 ドルイド僧が継承したそのわざを かのアレクサンダー大王が図書館におさめるべく書き記させたのがそれだ」 「死者の再生…。やはり」 「エミグレ文書は長い間もっとも危険な文書として 法王庁の奥深く秘蔵されてきたが…、 数世紀にわたる保存に耐えられなくなり、 法王の命により新たに筆写されることになった。 その任に当たったのがこのわしだ」 「もっとも仕事が終われば殺されるはずだったらしいが、 わしがそんな油断をするものか! 密かに脱出してエミグレ文書に記されたこの聖地へ向かった」 「それではまさか…秘儀を?」 「試したさ!わが身を使ってね」 「成功したのね…」 「だが人には勧めんぞ。確かに死をまぬがれはしたがな…。 生命のしくみを根本から変える。激しい変化に身体が耐えられず、 このとおり世にも醜いありさまになってしまった…。 しょうがないから三百年ほど世界をめぐってな…、 人間の愚かさも見尽くしたゆえ…ここに戻って隠遁しておったのだ」 「さて…話も終わった。わしは少し調べものがあるでな。 ひとりにしておいてもらおうか」 368 クーデルカ sage 2005/11/21(月)18 07 04 ID iQKRKpOl 書庫を追い出され、他の場所で手がかりを探すうちに 三人はパトリックの研究日誌を見つける。 そこには三年前、パトリックと管理人夫婦が修道院に移り住んでからの 恐ろしい日々がつづられていた。 『文書に記されたウェールズのこの地にたどり着き、 聖人ダニエル・スコトゥスの開いた修道院で我が妻エレインの再生に 着手することが出来る。決して後悔はない』 『調べれば調べるほど、この修道院はおぞましい建物であることが分かる。 あらゆる場所に死者の怨念が渦巻いているのを感じる。 しかしエミグレ書によれば、その怨念の力こそがドルイドの秘法を 復活させる大きな原動力となるのだ。 この場所を怨念で満たさねばならない』 『聖堂の地下に埋められていた大釜が秘密の鍵を握っていることが分かった。 早急に祭壇を築いて、儀式を行う準備を整えよう』 『ドルイドの儀式には生贄を捧げることが不可欠だ。 大釜を新鮮な血と肉で満たさねばならない。全てはそれからだ』 『ロンドンより戻る。特別あしらえで仕立てた馬車はずいぶん調子が良いようだ。 後ろの籠に女を三人閉じこめてある』 『神よ、私は今日、間違いなく、人が犯してはならない大きな罪を犯した。 娼婦達の血と肉をもって、ドルイドの儀式を行った。 大釜の中に彼女たちの生命の残滓を注ぎ込むと 凄まじい勢いで場の霊力が強まっていくのが感じられる』 369 クーデルカ sage 2005/11/21(月)18 09 33 ID iQKRKpOl 『犠牲者が足りない。ダニエル・スコトゥスの強力な聖蹟に 押さえ込まれているため、満足に力を顕現できないのだ。 より多くの人間をこの場所で生贄にする必要がある』 『今日やっと、新しい犠牲者の一便が着いた。 オグデンの提案で、人買いの元締めに巨額の金をつかませたのは正解だった』 『この頃ではまた、ずいぶんと手際よく作業が出来るようになった。 オグデンと二人ではこれ以上効率を上げることは難しいが、 さりとて秘密を守るためには、人を雇うわけにもいかない。 そこでマンチェスターの機械製作所に、作業台を発注することにした』 『午前中六人解体。午後五人。夕食後一人』 『今日という日をどれだけ待ったろう。 いよいよエレインを再生させるための儀式を執り行う日が来たのだ。 大釜は全て娼婦達の血と肉で満たした。 今やこの修道院は、恐ろしいまでの霊力で満ち満ちている。 たとえ聖人といえど、これ程強い怨念の力に抗することは出来まい。 保存しておいたエレインの遺骸を祭壇に運び込んで、祭儀の呪文を施した。 エレイン、君は今も変わらず美しい。愛している。 死者の国から君を呼び戻そうとする私を許してくれ』 『なんということだ。全ての希望は去った。 あらゆる希望も、望みも、全てただの幻だったのだ。 エレインの遺骸を包み込むように伸び上がった生命の木は、 確かにドルイドの秘法を顕現するものだった。 だがしかし、恐るべきことに、再生して花弁の中から現れ出た私の妻は、 昔の姿そのままながら、人間としての魂を失っていた。 まさにそれは、怪物だった。 何百人の娼婦達を犠牲にして、私はいったいなにを為したのか』 『私に残された道はひとつしかない。 あまりに多くのものを私は失いすぎた。 ともに力を尽くしてくれたオグデンには、詫びる言葉もないが、 許してくれ、私にはもう、どうすることも出来ないのだ。 今はただ、静かに、妻とともに眠りたい』 日誌はそこで終わっていた。 370 クーデルカ sage 2005/11/21(月)18 12 43 ID iQKRKpOl 研究日誌を持ち、三人はロジャーのいる書庫に戻った。 ロジャーはまだ調べものをしていた。 「なんだ…。まだなにか用なのか?」 「これを見てもらいたい」 「研究日誌?」 「教えて…そこに書かれたことが本当にありうるのかどうか」 「どれどれ…。ふん…ふん…。 なるほど死者の再生をな…。 大釜か…。まさにブランウェンの昔話だ。 おそらくここに書いてあることは事実であろうよ」 「やっぱり…。だがそんな…」 「わしは試さなんだがな。 確かにエミグレ文書には死者の再生にかんする記述がある。 だがこれを読んでもわかるとおり、ちっと準備がめんどうくさい。 死んでしまったものを呼び返すというのは 生きているものを不死にするよりはるかに強い霊力がいるからな。 まさか実際に挑むものがおったとは…」 「身体は生き返ったけど、魂はもどらなかったとあるわ」 「当然であろう。 古の民族は生命の秘密は手にしたが、魂の秘密には触れるべくもなかった。 彼らは死者をよみがえらせて労働力として使うことで 強大無比な文明を築いたがしょせんは人形と同じさ。 ただ人間の体をあやつったにすぎん」 「それじゃあ…」 「むろん、死んだ人間を昔のままに生き返らせようなどというのは無理な話だ」 「じゃあ生き返った身体を再び大地にもどすにはどうしたいいんだ!」 「それはむずかしい注文だ。すでに天地の理からはずれておる」 「頼む!教えてくれ!それが故人の願いなのだ…!」 「ふむ…。手がないではないが…。 そのためには強力な聖跡の力を借りねばならん。 この修道院を建立したダニエル・スコトゥスの腕が 石像の中におさめられて残っているはずだ。 あれをその大釜の中に投げ込めば、生命の木の源を断つことができよう。 その後は、火の力を呼ぶか水にまかせるか…わしにも見当がつかん」 「火か…水か…」 「どうしたらいいの?」 「聖なるかな!祝福あれ!全ての苦しみはいつかは終わるのだ!」 ロジャーの奇矯な叫びを聞きながら、三人は顔を見合わせた。 574 クーデルカ sage 2005/12/12(月)17 09 16 ID k4mL+Z+1 石像の中に隠されていたダニエルの腕を携え、 三人は大釜のある大聖堂の扉の前にたどり着いた。 しかし、その扉は内側から堅く閉ざされていた。 「銃で撃ったって開きそうにないぞ。どうすりゃいい!」 「ここまで来て入れないなんて」 「クーデルカ…エドワード、君らはここで帰ってくれ。 この騒ぎはどうやら私の友人が起こしたことのようだ。 今さら助けを頼める筋合いではないことはよくわかっている。 この先は私一人で片をつける」 「かんちがいしないで。あんたのために行くんじゃないわ」 「いや…君はもどるべきだ。ここから先は危険すぎる」 エドワードもジェームズに賛同した。 「エドワード…、あんたこそここにいるべきじゃないわ。 あんたは確かに腕も立つし場数もふんでる。 ためらいなく人も殺せるでしょう。でも結局は普通の人間なのよ。 あたしはちがう。こういう世界でしか生きられない。 ここにしか居場所のない人間だわ」 「説教はやめてくれ!俺は俺の生きたいように生きる。 命を惜しんで平凡に暮らすなんてまっぴらだ。 後先考えずにやりたいことをやるのが俺の流儀でね。 人生は博打さ。 賭けたからには勝つまで続けるか…さもなきゃ死ぬかだ」 「エドワード…。あんたは本当に馬鹿だわ」 「らしいな」 575 クーデルカ sage 2005/12/12(月)17 11 13 ID k4mL+Z+1 「好きにしたまえ」 ジェームズがあきらめたように言った。 「させてもらうさ」 「いばったってこの扉が通れなきゃしょうがないわ」 「そうだ…手はある。 パトリックの館を調べたとき、実験室に薬品がそろっていただろう。 私の知識があればあれを使ってニトログリセリンを合成できる」 「そいつはいい。強力な爆薬だ!」 「この扉ならフラスコ一杯で十分だ。 運ぶ途中で落としでもしたらたちどころに天に召されるがな」 その時、大聖堂の鐘楼の鐘が鳴り響き出した。 黙って耳を傾ける三人。 『いくぞ。それで事はすむ。 鐘が俺を呼んでいる』 『聞くなよダンカン。あれはおまえを送る鐘だ。 天国へか地獄へか、それは知らん』 エドワードの軽口にこたえながら、ジェームズは実験室に向かって歩き出した。 「私は作業を始めるから、君達は待っていてくれたまえ」 ジェームズを待つ間、手持ちぶさたなクーデルカとエドワードは 書斎の暖炉の前で酒盛りを始めた。 「それで?そのメラニーって女はどうしたの?」 「もちろん朝には消えてたさ。 部屋の中のものをあらいざらい持ってね」 「あんたってつくづく女運がないのね」 「昔の人は言ったよ。女と別れるこつは出て行かせることだって」 「負け惜しみだわ」 怪物に立ち向かう恐怖を打ち消すように泥酔し、笑いあう二人。 576 クーデルカ sage 2005/12/12(月)17 13 55 ID k4mL+Z+1 「でもいいわね。悪口を言いあえる仲間がいて…。 あたしはひとり…。ずっとひとりで暮らしてきた」 「でも子供の時があっただろう?」 「ええ…あったわ…。 あたしが生まれたのはタリエシンっていう河のほとり。 ちっぽけな村だった…。 楽しい思い出が?ううん…。あまりおぼえていないわ…」 「あたしたちは青空の下で生まれ、青空の下で死ぬの。 それがあたしたちのおきて…」 「じゃあ君も青空の下で死ぬのか?」 「……。 あたしたちは生まれたときにあだ名をもらうのよ。 あたしの名前はスラトー」 「スラトー…。不思議な響きだな。なんて意味なんだ?」 「教えられないわ」 「それもおきてってやつか?」 「そう…おきてよ!」 「初めて見たときから君の瞳にはなにか謎めいたものを感じた。 それは君が孤独だったからなのかな。 『心の奥もつらぬく 君のまなざしの光は 望みで燃え立たせ 恐れで心を沈める』」 「またバイロン?」 「まあね」 「お気に入りなの?」 「そう…。なんだか自分に似ている気がして…」 「じゃあそいつもうぬぼれ屋なのね!」 「ロマンチストと言って欲しいな」 577 クーデルカ sage 2005/12/12(月)17 15 21 ID k4mL+Z+1 「俺の親父は厳格な人でね。 自分の息子がありもしない冒険や理想郷に思いをはせて 学業をおろそかにするのを許さなかった。 だから子供のころの俺は、夢や空想や自分の大好きなことを 役に立たないむだなものだど押さえつけられて育った。 まるで自分が役立たずだと言われてる気がしたよ…。 まあ実際…、そうなのかも知れないが…」 「俺はきっと遅く生まれてきてしまったんだ。 俺が十五になるころには華々しい冒険はとっくに終わってた。 西部開拓時代はすぎ、ジャングルは植民地にされ 俺にはさすらうべき荒野も、切り開くべき密林も残っちゃいなかった。 あてもなく…俺は国中を流れて歩いた」 「そりゃけんかもする。良くない遊びもする。 たまには命のやり取りだってするだろう。 でもそれは決して本気じゃない。 俺が求めてるのはそんなものじゃないんだ。 うまく言えないんだが…、 俺は今でもなにか目に見えない宝物を探している気がするよ」 「クーデルカ…、君がうらやましい…。 他人にない霊能力を持って自由気ままに暮らせる君が…」 「あんたにあたしのなにがわかるの? あたしがどんな風に育ってきたか知ってるっていうの? 笑わせないでよ。なにが冒険よ…。 あんたなんにもわかっちゃいないわ! あたしがこのくだらない力のせいでどんな目にあってきたか」 578 クーデルカ sage 2005/12/12(月)17 17 37 ID k4mL+Z+1 「あたしの父親はあたしが小さいころ死んだわ。 場所も時間も死に方もあたしが霊視したとおりだった。 あたしは自分の父親の死を言い当てたのよ。 あたしは呪われた子供。持ってはいけない力を持った子供。 母はあたしを恐れ、憎んだわ…。 自分の手で殺そうとするほどに…。 あたしは長老会の裁定で村を追放になった。 あたしはまだ九才だった」 「九つの子供が身寄りがなくてどうやって生きてきたかあんたにわかる? なにが宝物よ…。冗談じゃないわ。 あんたは泣いて物乞いをしたことがある? 今夜凍え死ぬのが怖くて体を売ったことがあるっていうの?」 「あのころのあたしはシャルロッテと同じ。 あの子が「自分は愛されたことがない」って泣いたとき…、 身を切られるような思いがしたわ。 あれはあたし! あたしも「みんな死ねばいいのに」と思ってた。 すべての人間を憎んでた」 「でもいいわよね。あの子は行けたんだもの、天国に。 あたしは今も生きて…ひとりぼっち…。 誰も助けてくれなかったわ。誰も!」 「クーデルカ…おまえ」 「あたしはあんたがうらやむような自由な人間じゃない。 無知で貧しくてうすぎたない女だわ。 食うために自分の誇りさえ捨てるような!」 579 クーデルカ sage 2005/12/12(月)17 21 30 ID k4mL+Z+1 「でもね…、こんなあたしでも人の役に立てることがあるのよ。 あたしの力で人の傷をいやすとき、 少しだけ…生きててよかったと感じるわ。 愛されなくたっていい。生きている意味が欲しい。 誰かに必要だって言われたいのよ。 そうでなくちゃ、あんた…、あんたなんかに…、 わかって…、たまるもんですか…」 すすり泣くような声はとぎれ、クーデルカは子供のように丸くなって眠り込んだ。 そんな彼女の背中を、エドワードは酔いの醒めた目で黙って見つめていた。 「出来たぞ!完成だ!」 ジェームズが作ったニトログリセリンを持って三人は閉ざされた扉の前にもどった。 戸口にフラスコを置き、距離を取ってからエドワードが銃で着火。 爆発が起こり、大聖堂への道は開かれた。 「すげえ…」 ランタンを手に最初に足を踏み入れたエドワードが呟いた。 大聖堂の中は地下から伸び上がり天井を突き破る巨大な生命の木と 脈動する蔓によって蹂躙されていた。 棺桶の下に隠された地下室を見つけ、降りてゆくとそこには 日誌にあった大釜と、そして蔓に絡まれ絶命したパトリックの死体が転がっていた。 「パトリック…。哀れな…」 あとは大釜にダニエルの腕を投げ込むばかりだ。 しかし、そのあとに火を呼ぶか、水を呼ぶかはどうしても分からなかった。 大釜の前で車座になり考え込む三人。 突然ジェームズが立ち上がり、灯油の缶を手に取った。 「どうすんだ…そんなもの。まさか…!」 「手伝えとは言わんよ。これは私ひとりの問題だ」 そのまま床に灯油をばらまき始めるジェームズ。 580 クーデルカ sage 2005/12/12(月)17 26 58 ID k4mL+Z+1 「いいんだな?」 ダニエルの腕を持ち、ジェームズはクーデルカとエドワードに問いかけた。 最後まで付き合おうという二人の気持ちは変わらなかった。 「聖ダニエル・スコトゥスよ!我らに魔を退ける力を与えたまえ! アーメン!」 祈りの声とともに大釜に腕を投げ込むと、大釜が沸騰し それまで力無く垂れ下がっていた無数の蔓が再び蠢き始めた。 あわてて階段を駆け上がり、地下室を出る三人。 暴れ回る触手のような蔓を避けながら、割れたステンドグラスを通って外に逃れる。 「汝、塵より生まれしものよ!おとなしく塵に還るがいい!」 灯油をばらまいた床に向かってジェームズはランタンを投げつけた。 たちまち火が燃え上がり、大聖堂内は炎の海と化した。 外壁に設けられた階段を上り、三人はエレインの姿をした怪物を倒すため 大聖堂の塔を登り始めた。 追ってくる蔓と戦いながら進み、塔の中程で生命の木の巨大な花のつぼみを見つける。 息をのみ、見守る三人の目の前でつぼみはゆっくりと開き始めた。 中から現れた美しい怪物は、突然強烈な光熱波を吐きかけてきた。 クーデルカは霊力の宿るペンダントでそれをはじき返す。 蜘蛛のような動きで飛び上がり、天井を跳ね回る怪物。 エドワードの放った銃弾が怪物をとらえ、撃ち落としたかに見えたが ほとんどダメージを受けた様子もなく復活する。 怪物に追われ、再び階段を駆け上がる三人。 鐘楼のある塔の屋上まで追いつめられたクーデルカ達の前で 怪物は巨大な植物のような姿に変態する。 怪物の咆吼に呼応するように、荒れ狂う空から雷が落ち 鐘楼の天井は崩れ落ちた。 瓦礫の中、長い夜の終わりを告げる最後の戦いが始まった――。 581 クーデルカ グッドEND sage 2005/12/12(月)17 30 39 ID k4mL+Z+1 クーデルカ達は苦闘の末、怪物に勝った。 身体のあちこちから血を吹き出しながら、怪物は金色の光を発し 塵に還ろうとしている。 その様子をジェームズは苦しげに見守っていた。 怪物の顔は不思議と穏やかな表情を浮かべ、 なにかを言おうとするかのように唇を動かしながら、下階の炎の中に落下していった。 クーデルカ達の戦いの様子をロジャー・ベーコンは遠くから見ていた。 「ずいぶんと面白いものを見せてもらったわい。 こりゃ眠るには惜しい時代かもしれん」 夜明けを迎えた塔の屋上で、クーデルカとエドワードは力を使い果たして横たわり、 ジェームズは瓦礫の石に腰掛けて海を見ていた。 「なあクーデルカ…。彼女は何を言おうとしていたんだろう」 「死んだ人は何も言わないわ。想い出になるだけ…」 「そんなもんか…?」 「まあね…」 「想い出か…。昔誰かに言われた気がする…。 死は想い出…。想い出は永遠の絆…」 呟きながら涙を落とすジェームズを、 海から立ち昇る日の光がやさしく包み込んでいった。 ネメトン修道院の深き闇は今、祓われた――。 <END> 582 クーデルカ バッドEND sage 2005/12/12(月)17 33 19 ID k4mL+Z+1 クーデルカ達は苦闘の末、怪物の前に倒れた。 クーデルカとエドワードは傷つき、すぐには動くことも出来ない。 「神よ!私がいけないのか! 邪な動機から信仰の道を志したから私を罰しようというのか!」 ジェームズは最後の力を振り絞り、十字架を手に立ち上がった。 「よかろう…。それがあなたの望むことならば。 捕らわれるべき者は捕らわれていく。 剣で殺されるべき者は剣で殺される!」 十字架を掲げ、向かってくるジェームズに怪物は後ずさった。 「私は私のあるべき姿を…喜んで受け入れよう! ずっと愛していた…エレイン…」 泣きながら十字架を頭上高く突き出すジェームズ。 その時、天から光が降り注ぎ、怪物とジェームズを取り巻いた。 光の中で、怪物は生前のエレインの姿を取り戻していく…。 「帰りましょうジェームズ…。懐かしいあの日に…」 やがて光は、ジェームズとエレインとともに天に吸い込まれるように消えていった。 呆然と見守っていたクーデルカとエドワードの目の前で、突然下階から炎が噴き出した。 「駄目だわ!もう炎がここまで!」 「馬鹿言え!まだ手はある!」 エドワードはクーデルカを抱き上げ、屋上の端に立った。 「大丈夫だ…。俺を信じろ」 背後で炎が爆発するのとほぼ同時に、エドワードはクーデルカを抱えたまま飛び降りた。 583 クーデルカ バッドEND sage 2005/12/12(月)17 37 38 ID k4mL+Z+1 一夜明け、輝く太陽の下でロジャー・ベーコンは 塔の瓦礫から一冊の本を拾い上げていた。 「近頃の若い者は無茶をするのう」 庭の壁際に作ったテントから出てきたエドワードは、 炎も収まり煙を上げる塔を見上げていた。 「あら…晴れたのね。もう少し露ってればいいのに…」 テントの中で髪を直しながらつまらなそうに言うクーデルカに、 エドワードは優しく微笑んだ。 修道院の前で荷物をのせた馬に乗り、 エドワードはクーデルカに別れを告げようとしていた。 「さよなら…自惚れ屋さん。次は遅い馬を買うことにするわ」 「なあ…お前のあだ名…。スラトーってどういう意味なんだ。教えてくれないか?」 「た…『宝物』っていう…意味よ…」 「そいつはいい!おぼえとくよ!」 「よいのか?後を追わなくて…」 去っていくエドワードを見送るクーデルカにロジャーが問いかけた。 「いいの…。あの人とはきっとまたどこかで会えそうな気がするから」 淋しげに目を伏せながらも、 クーデルカは心の中になにか温かいものが宿っているのを感じていた――。 <END>
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ID.3101~3200 フーデル ステータス ステータス No 3178 Lv 1 Rare ☆3 属性 風 種族 魔物 COST 0 最小HP 0 最大HP 0 限突最大HP 0 最小ATK 0 最大ATK 0 限突最大ATK 0 Limit Over 0 Charm 0.0 スキル 無し リンク 無し プロフィール 無し 関連 ID.3101~3200 備考 コメント 名前 コメント
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ID.3101~3200 ヒーデル ステータス ステータス No 3176 Lv 1 Rare ☆3 属性 炎 種族 魔物 COST 0 最小HP 0 最大HP 0 限突最大HP 0 最小ATK 0 最大ATK 0 限突最大ATK 0 Limit Over 0 Charm 0.0 スキル 無し リンク 無し プロフィール 無し 関連 ID.3101~3200 備考 コメント 名前 コメント
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R1-010 レア ヨーデル 司祭 Lv.10 歩兵系 魔法防御 装備Lv:杖S光A 気力7 杖3 エトルリア王国 イラスト/葉朗 属性:【光】 【支援】 支援ステップ時に使用済みチップからも支援できる。支援チップを+1枚する。 装備:Mシールド 対象ユニットは次の自ターン開始時まで、魔法による攻撃・反撃のダメージが-2される。 上級職支援ユニット。 回復ユニットではないので使いどころが難しく、気力チップの乗せすぎには注意。
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▽タグ一覧 天気予報 富山 曲が素材シリーズ 柴田理恵界隈 音MAD素材 ニコニコで【ヨーデルの女】タグを検索する 概要 富山県の天気予報
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【ジ・エーデル・ベルナルwithカオス・レムレース】 【作品名】スーパーロボット大戦Z 【ジャンル】ゲーム 【共通設定・世界観】 世界観は無限の平行世界と、ある事象に生じる可能性分岐により発生する新たな世界の多元+α 太極:多元宇宙の全てを司る意思 源理の力(オリジン・ロー)もこれに属する力だと思われる 亜空間: この空間内だとバルディオスの移動速度は無限速になる(設定) なお、テンプレメンバーは亜空間内の戦闘でバルディオス移動に反応できたり攻撃を避けれる奴と同等以上の反応速度 オーバースキル:超能力のようなもの時間停止や読心能力など使用者によって異なる スパロボZのマス計算は最大ユニットの惑星サイズのゴーマ、一マス12000kmで計算 共通テンプレ:ソルグラヴィオンは惑星破壊可能な攻撃力で、他のテンプレメンバーもそれと同等の威力の攻撃力(効果範囲も惑星サイズ) テンプレメンバー全員の攻撃速度は無限速反応でも避けない速度 【名前】ジ・エーデル・ベルナルwithカオス・レムレース 【属性】源理の力(オリジン・ロー)を限定的に制御できる「人の手による鍵」、ラスボス 【大きさ】112m 868tの下半身がライオン型で上半身が人型ロボット 【攻撃力】インサニティ・インヴィテイション:槍型の武器の先端に魔方陣が発生しエネルギーを射出する技 威力は惑星破壊の0.9倍 射程は60000km 天獄:異次元の扉を開き異界の生物を召喚し、それらを率いて突進して相手を巻き込みそのまままた異次元の扉を開き相手を異界に置き去りにする 射程は98000km 最大惑星サイズ三つ分なら異次元に送れる 【防御力】惑星破壊の10倍には耐えられる 【素早さ】反応は無限速反応 移動速度は約マッハ7058 飛行可能 【特殊能力】宇宙空間戦闘可能 源理の力の一端を制御しているため、多元宇宙+αの範囲で準全知(全能ではない) 別世界の同一存在を召喚できる エーデルは倒しても、別世界の同一存在の別のエーデルが復活させる(作中で倒してが結局復活している) 【長所】多分またでてくる 【短所】攻撃力 【戦法】天獄で相手を異次元送り 【備考】ラスボス まとめ 【大将】 【名前】ジ・エーデル・ベルナルwithカオス・レムレース 【属性】源理の力を限定的に制御できる「人の手による鍵」 【大きさ】112m 868tの下半身がライオン型で上半身が人型ロボット 【攻撃力】インサニティ・インヴィテイション:惑星破壊の0.9倍、射程は60000km 天獄:異次元の扉を開き相手を異界に置き去りにする、射程は98000km 最大惑星サイズ三つ分 【防御力】惑星破壊の10倍には耐えられる エーデルは倒しても、別世界の同一存在の別のエーデルが復活させる(作中で倒してが結局復活している) 【素早さ】移動速度は約マッハ7058 反応は無限速 【特殊能力】 源理の力の一端を制御しているため、多元宇宙(単一宇宙×無限)+αの範囲で準全知(全能ではない) 【長所】多分またでてくる 【短所】攻撃力 77スレ目 195 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 01 24 32 ID KYlDBCvn 流れぶったきって悪いが 作品スレの方で ジ・エーデルがセツコルートのほうで多元偏在してるって発言があったらしいから多元偏在になってたけど 別のプレイした人からそんな発言はなかったし逆に作中ではにの多元に干渉する力が使い切れていない発言がある とツッコミ入ってたから修正行きにしといた方がいい 241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/09(金) 23 00 04 ID 8OWhh6MX ジ・エーデルって多元遍在なんだから今の位置から上でもほぼ負けないし 分けるような奴とだってこっちは遍在で死なないんだから寿命勝ち出来る そもそも微妙な攻撃力と多元遍在のヨグソトースとほぼ同じだし=で結べるだろ 242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/10(土) 00 37 23 ID S+8j9fqG 241 ジ・エーデルは寿命がないかわからないから 寿命がきたら全員同時に死ぬ扱いなんだろう 246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/10(土) 01 18 35 ID VQvB30/i 242 ジ・エーデルって遍在全てがリンクして同じように歳を取るもんなのか? 平行世界から自分召還出来るなら寿命負けなんてないだろ 249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/10(土) 02 12 12 ID S+8j9fqG 246 個々の世界ごとに時間の流れが違うとか個々の世界ごとに年齢が違うとかそういう設定がないなら 全員同じ年齢で同じように歳をとっていくのではないかと思ったけど、あんま前例とか覚えがないから違うかも・・・ 292 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/12(月) 00 32 51 ID VsD4Xgys 上の方でジ・エーデルの話が出てるけど 奴は他の世界に爺になったジ・エーデルとかが存在してるからリンクなんかしてなく 寿命なんてあってないようなものだろう 309 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/12(月) 23 05 23 ID JusWmui7 292 じゃあ一次多元遍在で寿命勝ち狙えるからほぼ同じのヨグと=だな ってか遍在の扱いは見直したほうがいいかもな 現状じゃ遍在してるから殺され続けても行動不能にはならないから負け扱いにはならないけど 次元移動なんかが出来ないヨグ=ソトースなんかは対峙するヨグ倒せばヨグはこちらに何の危害も加えられないんだし いくら消滅しなくても攻撃できないんじゃ負け扱いになるとか ジ・エーデルは次元移動できるけど基本勝てない奴はいくら呼び出しても勝てないんだし殺され続けて負け扱いになるとかね 311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/12(月) 23 24 49 ID kLLF339t 309 遍在も二種類いるしな 世界全体にまたがってるようなでかいやつと いくつもの世界に一人ずついるやつと ヨグは前者な気がするんだけど後者だっけ? 312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/13(火) 00 03 16 ID EgnRnOtc 309 ヨグは前者でジ・エーデルは後者。ヨグはすべての時間と空間にアクセス出来る 反面何処にも行けないし自分からは干渉できないんだっけ? なら、自由に一次多元宇宙を自在に移動できるという点でジ・エーデルが優位なんじゃない? 寿命云々は源理の力で何とかなる。同じ源理の力を持ったアサキムだって何百年何千年何万年、 下手すりゃアクエリの時代つまり1億と2000年前から生きてるだろうし、 それをアサキム以上に源理の力を使いこなしているジ・エーデルに出来ない事は無いだろ 17スレ目 615 格無しさん sage 2008/10/19(日) 01 45 34 ジ・エーデル・ベルナル 多元規模で復活系、無限速対応の惑星3つ分異次元送り ×>THE HORROR>ドロッセルマイヤー:無理すぎる ×>ニュクス=ペルフェクティオ:復活しても即死負けか △=ヨグ=ソトース:決め手なし ○>シャドームーン>絶対的至高者 オール・ハイエスト :異次元送り ×>神祖;異次元送りの後にアカシア操作負け こっから下は勝てなくても負けはしないだろう。長期戦有利だし。 ニュクス=ペルフェクティオ>ジ・エーデル・ベルナル=ヨグ=ソトース 617 格無しさん sage 2008/10/19(日) 01 57 46 シャドームーンって時間無視だしキングストーンフラッシュで異次元から脱出できないか? 619 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 03 38 というより影月の先方は自分で異次元にひきこもるから 異次元送りでも意味がない気がする 620 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 04 01 617 時間無視だったか。じゃあ分けだ ○>ももえギャリア>ヤプール>レオン・カスカータ :この辺には長期戦勝ち 神祖>ジ・エーデル・ベルナル>ももえギャリア>ヤプール 622 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 10 07 615 遍在だからニュクスとかはわけだろ 625 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 12 32 622 遍在つーより復活してくる系のテンプレに見えるが 630 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 15 56 628 なんで?アカシアで相手降参する運命にすりゃ復活の余地なしで降参負けだが 632 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 16 50 作中だと 同一存在を同時に倒さなきゃダメだな 無限の平行世界にいる全てのジ・エーデルが同一だとか台詞もあったな 633 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 19 25 630 多元規模で存在してるから単一で効くの? 634 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 19 43 632 倒す必要はない。相手が勝手に降参する運命に操作するだけ 他の宇宙同一存在が降参してないよとか言ってもしらないがw 635 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 23 42 あれ… アカシアって別次元にも効果あるんだっけ? 637 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 27 44 その理屈だと全能が多元偏在に余裕でかてることになるな 638 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 28 34 634 ん? 遍在の理由を書いてだけだが? 639 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 29 23 ナイアさん涙目 640 格無しさん sage 2008/10/19(日) 02 30 06 アカシア効かず、常時系の宇宙破壊や死も単一宇宙なので無効とすると △>ニュクス=ペルフェクティオヨグ=ソトース:決め手なし △>シャドームーン:決め手無し ○>絶対的至高者 オール・ハイエスト :異次元送り △>神祖;異次元送りの後にアカシア操作食らっても規模的に大丈夫 ニュクス=ペルフェクティオ>ジ・エーデル・ベルナル=ヨグ=ソトース=シャドームーン