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1 / 15 ページ 加賀「私がここから出る必要はないわ。敵がもし私と戦いたいのなら、そこのドアを開けて中に入ってくればいい。 そうしないのであれば……あとは桐生助手次第ね」 加賀が見つめるモニターでは、今まさに桐生が六郎に掴みかかろうとしている瞬間が映し出されていた。 ――5F、エレベーターホール 桐生「何をわけのわからねえこと言ってるんだ。そっちから攻撃を仕掛けておいて、『協力して欲しい』だと?」 六郎は両手で桐生をなだめる仕草をしつつ、言葉を選びながら答えた。 六郎「ま、ま、まあ待てって。悪かった、悪かったからよ。いろいろと……事情があってだな、そもそも俺たちにとってはおまえが来ること自体が想定外だったんだから」 桐生「そのいろいろな事情に俺はただ巻き込まれただけなんだぜぇーッ? クッソ、いったん冷静になってたのによ……おまえの言い訳聞いてたらまたムカついてきやがった!」 六郎「は、話を聞けえぇ!!」 桐生「うるせェッ!! はじめから俺の行動要因は無関係の俺に攻撃しかけてきた、てめえにあるんだぜェッ!『コスモ・スピード』!!」 桐生のスタンドは片手で六郎の胸ぐらを掴んだまま、もう一方の拳をひいた。 桐生「おらァッ!!」 六郎「く、『クレセント・ロック』!! ガードだ!」 六郎のスタンドが発現し、かろうじてコスモ・スピードのパンチをガードした。 しかし、桐生はすでに胸ぐらを放していた拳で追撃を図る。 C・S「ホホホホホホホホホォォ――――――――――ッ!!!!!!!」 桐生はさらに続けざまにパンチを放っていった。 クレセント・ロックはコスモ・スピードのラッシュを防御し続けている。 桐生「ちっとだけ冷静になりゃあ、てめえの話も聞いてやれるぜ? そんときゃてめえは動けなくなってるかもしれねえけどなァ!!」 六郎「……ッ、動けなくなるのは……おまえのほうだッ!!」 コスモ・スピードが左のフックを放った瞬間、六郎は身を屈めてかわした。 突然の回避にコスモ・スピードは勢い余って体勢をくずし、攻撃が止まってしまった。 六郎「コスモ・スピード――――と言っておきながら、素早さはたいしたことないな?」 桐生「ヤベエ、『コスモ・スピード』、攻撃をガードするんだ!」 六郎「ガードなんかムダだぜ!!」 身をかがめた六郎の次の行動は、スタンドの直接攻撃ではなく……スタンドの能力発動だった。 六郎「ロケットを生み出せ、『クレセント・ロォォォック』!!」 六郎は床からロケットを生み出すと同時に後退した。 桐生「く…………!」 バン、と桐生の目の前で破裂音が響き、ロケットは爆発した。 その衝撃は爆弾、ほどまではいかないものの、六郎が桐生から距離をおくことには成功した。 桐生はロケットが爆発した場所からわずかに後退していた。 桐生「ッチ、腕がいてえ……ガードしようとしてた分、反応が遅れたな」 六郎「コイツが協力してくれないのなら……ヤるしかねえのかなあ……?」 桐生「だが、たいしたダメージじゃあない、いくぜ!」 2 / 15 ページ 距離をおいた六郎に向かって桐生が駆け出した。 15mほどの距離をおいていた六郎は桐生に対し、複数のロケットを生み出して攻撃する。 桐生「あいも変わらず、この攻撃か! こんな攻撃、見切るのはたやすいことだ!」 六郎(コイツ、攻撃のスピードに対し、回避のスピードが段違いに速い。それがコイツの能力なのか……?) 桐生「もはやこの攻撃に対し、恐怖は微塵も感じない!」 桐生は迫り来る2本のロケットをかわし、さらに六郎に近づこうとする。 六郎「だが、回避できない攻撃ではどうだッ!?」 桐生「!!」 2本のロケットをかわした直後、桐生の目の前にはすぐにもう2本のロケットが迫っていた。 桐生「コ、『コスモ・スピード』!!」 六郎「『クレセント・ロック』、着火だッ!!」 さきほどよりも大きな、けたたましい爆発音が響いた。 桐生が2本避けたあとの、目前の2本、都合4本のロケットに囲まれた状況で爆発した。 煙が貼れると、全面をスタンドにガードさせた桐生の姿があった。 桐生「ゲホッゲホッ!!」 正面からは目に見えた傷はないものの、ダメージは負っていた。 爆風に直接晒した背中は爆発による焦げ目が服についている。 桐生(四方からの爆発じゃあ、抜け道を見つけられなかったな……ヤバいぜ) 六郎「やっぱ、急造のロケットじゃあ破壊力がイマイチだな。かといって強すぎてバラバラになられても気が引けるんだけど」 桐生は膝に手をつき、肩で息をしていた。焼けた空気と煙を吸い込み、呼吸もままならないでいる。 六郎「だが、もういっぺんやれば、動けなくするのにちょうどいいだろ! 『クレセント・ロック』!!」 拳を床に打ちつけ、再びロケットを生み出す。 カーペットごと床が盛り上がってロケットの形をなし、火花を吐きながら発射されていった。 六郎はロケット弾を先に2本、間をおいてもう2本、発射した。先ほどと同じように桐生を囲って爆破させる狙いだ。 桐生「同じ手が……通用すると思うな!!」 桐生はスタンドを発現させ、ロケットに向かっていった。 深いダメージと、これまでの長い防戦のため、桐生に残された気力はわずかしかない。 そのわずかな気力を、最後の攻撃に費やした。 六郎「まだ……あきらめてねぇのか!?」 桐生(コイツのロケット……自在に操り、自在に爆発させることができるが……たったひとつ、盲点がある。 エントランスで放たれたロケットのうち1つは……壁にぶつかって爆発した。) 桐生「コイツの意思でロケットを爆発させない唯一の方法は……」 桐生は目前に迫るロケットに向かって跳び上がった。 桐生「弾頭の信管を押して、先に爆破させることだッ!!」 ロケットに飛び乗るようにして、ロケットを床に向けて蹴った。 弾頭が床に向けられ、先端が床に着くと同時に桐生は叫ぶ。 桐生「『コスモ・スピーーーーーーード』ッ!!」 爆音と、巻き上がる爆風に包まれたかに見えた。 爆風は他の3本のロケット弾をも巻き込み、誘爆して爆風はさらに大きくなる。 だが、桐生はそれよりも速く、その爆風を背にして猛スピードで六郎に飛びかかっていった! 六郎「うぉぉおおおおおおおおっっ!!?」 桐生「ウラァァァァァッッ!!!」 桐生はそのまま六郎を押し倒し、マウントポジションの体勢に持ち込んだ。 桐生「ホットな時間だったぜ……体も、魂もな!」 C・S「ホォ――――――――――ッッ!!!!」 3 / 15 ページ 六郎「『クレセント・ロック』、ガードしろォォッ!」 六郎は危険を察知し、すぐさまスタンドの両腕で上半身を防御した。 桐生のスタンド、コスモ・スピードは目下の六郎に対し、パンチのラッシュを打ち始めた。 桐生「ウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラァァーーーーッ!!!」 六郎「うあああああああああああああああッッ!!」 桐生のスタンド、『コスモ・スピード』の能力は5m内で動いているものと同じ速度で動くことである。 1度目の攻撃のときは、能力を発動したところで、四方から同じ速度の爆風が迫り、逃げようがなかった。 しかし2回目はあえて1つのロケットを先に爆破させることで、その爆風を背に能力を発動し、 その後誘爆する他のロケットの爆風から逃げて六郎に向かっていった。 C・S「ホホホホホホホホホォォ――――――――――ッ!!!!!!!」 六郎のスタンド、『クレセント・ロック』は降りかかるパンチの雨をほとんど腕で受けてはいるものの、 先ほどとは状況が違って逃れることが出来ない。 ロケットを生み出そうとすればガードを開くことになるし、ロケットの爆風が自分にも襲い掛かってしまう。 為す術もなく、桐生が打ち疲れるのを待つほか無かった。 しかし、昂った桐生にその気配はない…… ジャン「『ドッグ・マン・スターッッ』!!」 桐生「!?」 突如迫ってきた者の叫び声と同時に、桐生の身体が六郎の上から弾き飛ばされた。 1階の従業員通路にいたジャンが六郎の加勢に来たのだ。 ジャン「無事か、六郎」 六郎「ぐ……助かったよ。情けねえが、あんたが来てくれなきゃいつまで殴られ続けてたか……」 弾き飛ばされた桐生はすぐに起き上がった。攻撃自体のダメージはほとんどないといっていい。 桐生「クソッもうひとりの敵か。2対1じゃキツすぎるぜ……」 ジャン「そうだ、君に勝ち目はない」 ジャンは犬に「待て」というように桐生に手を向けた。 「すぐに攻める気はない」という意思の表れでもあった。 ジャン「だからこそ、もう一度君に頼みたい。『我々に協力してくれ』」 桐生「な……?」 4 / 15 ページ ジャン「もともと、我々の標的は君ではなかったんだ」 桐生「眼中に無い、って言いたいのか?」 ジャン「そうじゃない! 我々の目的は『ここから出ること』、『あの女を倒すこと』だったんだ! 君を攻撃したのは、君があの女の仲間か、洗脳でもされているのか懸念があったからだ」 桐生(あの女に洗脳……考えたくもないな) 桐生「ってちょっと待て、『ここから出る』ってどういうことだ? おまえら、ここにはトーナメントの試合で来たんじゃなかったのか?」 ジャン「はじめはそうだと思っていた。だが、違っていたんだ」 ジャンは懐から封筒を取り出し、桐生の足元に投げ落とした。 桐生はそれを拾い上げて中身を見た。 かつて自分のもとに届いたものとも加賀に届けられたものとも同じように、高級そうな紙にトーナメント運営の捺印があり、 その下にこの場所と、1週間前の日時が記されていた。 桐生「おいおい、どういうことだ? なんで1週間前なんだよ。加賀に届けられた手紙にはきょうの日付が書かれたぞ?」 六郎「俺に届けられた手紙も、ジャンのものと同じ内容だった」 壁に寄りかかって座っていた六郎が話し出した。 その語気には一方的に攻撃された桐生への怒りは表れていない。 六郎「俺もジャンも、トーナメントの優勝者だ。1週間前にここでジャンと顔を合わせて、コイツと戦うんだなって思ったとき、突然『あの女が現れた』んだ」 桐生「あの女?」 六郎「きょう、おまえと一緒にここに入ってきたあの女だよ。さっき加賀って言ったっけ?」 桐生「…………?」 六郎「んで俺とジャンの前で、『私と戦え、勝って見せろ。トーナメントを勝ち抜いたその実力、見せてみろ』って言ってよ。 二人同時での戦いを挑んできたんだ。」 桐生「加賀がか?」 ジャン「そうだ」 桐生にとっては二人の言っていることがなにがなんだかわけがわからなかった。 自分が加賀に聞いたのと辻褄があわないが、とりあえずは聞いてみることにした。 六郎「だが、俺たち二人がかりでもまったく歯がたたなかったんだ。長時間、何度かの戦いに及んでも勝つことが出来なかった。 そしてあの女は『つまらない』と言った後、ここを離れて今日再び戻ってくるに至るわけだ」 ジャン「この1週間弱の間……俺と六郎はあの女を倒すための策を練り、訓練を重ねた。ここはホテルだから、食う寝るには困らないしな。 そして今日、再戦の時を迎えたのだが、我々の策は看破されてしまった。君の介入もあってな」 桐生「…………」 ジャン「だからこそ、我々に残されている策はもはや、君の力に頼ることだけなのだ。……少しは理解してもらえたか?」 桐生「……さっぱり、わからねえ。俺にはおまえらが薄っぺらいウソついてるようにしか思えねえ」 六郎「まあ初対面でこんな話されりゃあそう思うのも道理だけどよ、ホントなんだって」 桐生「何度も何度も俺をナメやがって……いい加減にしろよ?」 ジャン「…………攻撃するのはよせ」 桐生「聞くかッ!!」 ジャン「君の手の甲を見てみろ」 桐生「…………?」 桐生の手の甲には、ジャンの『ドッグ・マン・スター』の能力の証である黒い星が描かれていた。 ジャン「さきほどの攻撃のとき、君に対し私のスタンド能力を発動させてもらった。」 ジャンはポケットからハンカチと小瓶を取り出した。 そのハンカチには桐生の手の甲に描かれているのと同じ黒い星のマークがある。 ジャン「私のスタンド能力は、黒い星を描いたもの同士を『同期』する能力だ」 ジャンは小瓶のフタを開け、中の液体をハンカチに染みこませた。 ジャン「ハンカチに『灯油』を染みこませた。私がハンカチに火をつければ、君は一瞬で火ダルマになる」 桐生「な……」 ジャンはポケットからライターを取り出し、点火した。 ジャン「そこから一歩でも近づけば、ハンカチに火をつける。君が我々に協力する、というのなら能力は解除しよう」 桐生「てめェっ!!」 ジャン「君への『要請』はすでに『脅迫』に変わっている!」 桐生「く…………」 5 / 15 ページ ジャン「私が不思議なのは……どうして君があの女の肩を持つのかだ。私と六郎が話したことに偽りは無い、君はあの女に騙されているんだッ!!」 桐生「そんなはずはない……あいつはロンドンに住んでるんだ。ずっと空港で待ち続けたが、1週間前には現れなかった……」 ジャン「国際空港ならこの国にはいくつもあるし、韓国からの船舶経由という方法もあるだろう」 桐生「加賀は、おまえら二人の能力を知らないぜ」 ジャン「君の前では知らぬフリをしていたのだろう。それに、今日の監視カメラを使っての策を破ったのはあの女だぞ?」 桐生「あいつの持っていた手紙は確かにトーナメント運営から届けられた手紙だった! 捺印がなけりゃあ偽造は不可能だ!」 ジャン「……それこそが、あの女が君を騙していた確かな証拠ではないか。あの女の能力は……何だ?」 桐生「…………『インクを操る能力』……」 桐生は加賀に手紙を見せられたときのことを思い出す。 <桐生「……なんだこれは? これは! まさか、あのトーナメントのか?」> <加賀「ええ、きっとそうね。その手紙には以前、私達が戦ったあのときと同じように、今日の日時と、この場所が記載されていた」> 桐生「加賀が、トーナメントのときに届いた手紙を……『書きかえた』というのか?」 六郎「あの女もトーナメントの優勝者だったのなら、届いた手紙は初戦から決勝まで3枚はあるはずだ。 俺とジャンに届けられた手紙、自身で持つ手紙を書きかえるには足りる数だろう?」 桐生「そんな…………バカな」 ジャン「君が我々の言うことを信じられないのはわかる。だがそれと同じくらい、君があの女を信じる根拠も疑わしいんだ」 桐生「………………」 六郎「どのみち、あの女を倒さにゃここから出られない。……信じてくれよ」 桐生(……この戦いははじめからあのトーナメントとは関係がなかった。1人のはずの対戦相手が、2人だったことを考えれば確かなことだ。 このベストの男の持っている手紙……おそらくこのロケット野郎の手紙も、偽造できたのは加賀だけ。 あの女が、加賀がこの2人の男の強さを見るために、ここへおびき寄せ、閉じ込めた……? そして…………) 桐生「この俺も……騙していたのか?」 ジャン「我々を君に信用させることは、難しいかもしれない。だが、我々2人ではあの女に勝つことはできないのだ。 …………聞かせてくれ、君の答えを」 桐生「俺は…………」 桐生はジャンの目を見た。彼が自分を騙しているとはあまり思えなかった。 自分を能力によって脅迫しているとはいえ、彼は嘘を言っていない。 自分を攻撃してきた六郎。返り討ちにはしたが、今のような命を握られている状況でも、彼は仕返しをしようとはしない。 彼は決して悪人ではないのだろう……。 加賀は……以前戦ったときよりもさらに飄々としているように思えた。 もし、それが、自分を取り繕っていたものだったとしたら…… 桐生「俺は……おまえらに…………協…」 そう、言いだした瞬間だった。 6 / 15 ページ <言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ> 突然聞こえた自分の声。 勿論自分で発したものではない。だが、少しノイズがかかるその声は確かに聞こえた。 <気にするな、俺はこのホテルというステージに紛れ込んだ野ウサギだとでも思えばいい。 野ウサギが駆け回り、何をしようがそれはホテルで起こりうる事象のひとつにすぎないのさ> 桐生「…………?」 再び聞こえた自分の声。 しかも聞こえたのは桐生だけではない。 ジャンと六郎も、その声を聞いて上を見上げている。 声は、天井につけられた丸いスピーカーから発せられていた。 加賀<自分の恥ずかしいセリフを聞いて、少しは頭をスッキリさせられたかしら?> 桐生「ぎゃああああああああああっっ!! また録ってたのかああああああああああっっ!!」 ジャン「……館内放送かッ!」 桐生「なにやってんだ加賀ァッ!!」 加賀<いい加減待ちくたびれたわ。ここからじゃそっちで何話してるかよくわかんないけど、戦うのやめたんならその二人をこっちに連れてきてくれないかしら? ピョンピョン跳ねて誘ってきてよ、野ウサギのように> 六郎「野ウサギ?」 <俺はただの野ウサギなんだからよ> <俺はただの野ウサギなんだからよ> <俺はただの野ウサギなんだからよ> 六郎「うわあ」 桐生「や、やめろお」 ジャン「何のつもりだ? 館内放送はフロント裏の監守室でしかできない。わざわざ居場所がバレるようなことを……」 加賀<私のために戦ってくれるのはあなたの勝手だけど、死なれちゃ困るのよね> 桐生「え……?」 加賀<私がここから帰れなくなるじゃない。今度は日本海側を通って帰りたいしね> 桐生「……またアシに使うのかよ」 六郎「ヘンなヤツだなあ」 7 / 15 ページ 桐生「ちっくしょ~~~こんな時でもあの女はよ~~……」 <桐生「俺はてめーに用があるんだ……」> <加賀「私に……? 私の体を求めているのかしら?」> <N・C「心ハ『イギリス』ニ置イテキタカラナ、クソワロタ」> <桐生「ッチ…………この人をバカにしたような口調、あのときと変わんねーぜ……」> そうだよ、コッチが本気でリベンジしようと思ってんのに、 あいつは前と同じようにくだらないこと言って、女らしい可愛らしさも皆無で…… <桐生「な、なんてモン持ってんだテメエ!!」> <加賀「警察官の七ツ道具のひとつ、ICレコーダー……!! 私はずっとあなたとの会話を録音していたのよ。 かつてはネゴシエーターをしていたこともあってね。相手の弱みを握ることは交渉の基本よ」> <桐生「それは交渉じゃねえ、イジメだ!!」> <<言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ>> <<言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ>> <桐生「や、やめろお」> しかも、そのくだらないことをガチでやってきやがるんだ。 あいつの生きがいは誰かが赤面するのを見て楽しむことなんだろう。 <加賀「あなたは私の戦いに手を出さないんじゃなかったの? やっぱりアレかしら、一夜を共にした私に情が湧いたとか……」> <桐生「違うッ! いつまでふざけてるんだおまえは!」> <加賀「ふざけてないわ、からかってるのよ」> あいつが、加賀が俺のことを騙していただって? そりゃあそのとおりだぜ。あいつは俺があわてふためく姿を見て笑うんだ。 腕組んで見下して、ニヤッと笑うんだ。ああ、ちくしょうめ……。 そんなあいつが、この2人をだましてここに閉じ込め、 トーナメントを勝ち抜いたその強さを味わい、楽しもうとした……? それがあいつの目的……? あいつの目的は…… <加賀「『21世紀の切り裂きジャック』なんつーバケモンを追ってるからねえ。だてに鍛えてないわ」> ふと思い出したのは、桐生が加賀にはじめて会った時、 人のいない小さな空港で戦っていたとき、加賀がつぶやいた一言だった。 <加賀「私が求めていたもの……それは『21世紀の切り裂きジャック』の情報よ」> そして次に思い出したのはこのホテルに入る前、トーナメントに参加した加賀が求めていたことについて話した時のことだった。 <桐生「『切り裂きジャック』?」> <加賀「日本でニュースになったかわからないけど……私が警部に昇進したばかりの頃、ロンドンを騒がせた殺人鬼よ。 大胆な殺人を何度も犯しておきながら、その行方をまったくつかめないでいたの。 この私のプライドを傷つけた唯一の人間よ」> <桐生「……警察官としてのプライドか。昇進したばっかりじゃあその傷もいっそう大きかったんだろうな」> <加賀「この私が他人にからわかわれることなんて決してあってはいけないことなのに……!」> <桐生「そっちかよ」> 加賀は今も『切り裂きジャック』の足取りを追っている。 トーナメントに参加したのも、そして今日招待状に従ってここに来たのも、殺人鬼の情報を得るためだと言っていた。 『切り裂きジャック』について話しているときの加賀の目は、いつもと違い真剣だった。 彼女が殺人鬼を捕まえることは、だれかをからかって楽しむことよりも……ずっと大事なことだった。 桐生「そんな加賀が……おまえたち2人を騙して戦おうとした?」 8 / 15 ページ 六郎「…………?」 桐生「あーっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」 ジャン「!?」 桐生「くだらねえ、くだらねえぜ!! あいつがそんなことしてなんの得がある? どうして楽しめる??」 ジャン「まだ我々を信じないか! 我々は確かに見たんだぞ? 1週間前、あの女の姿を確かにここで!!」 桐生「ああ、どうも信じられねえさ! おまえらの言うような大掛かりなことして、純粋に戦いを楽しんでいる加賀の姿なんて想像もできねえ!」 六郎「うわー、気でも違ったか?」 桐生「仮に万が一、おまえらの言うようなことをしていたとしてもよ……あんな高い志を持った人間に騙されても、悪かねェ」 ジャン「問答は……もはや無用か」 桐生「そこまで言うなら……あいつに直接会って確かめてみろ。この俺を……倒してからなァ! 『コスモ・スピード』ッ!!」 六郎「ジャンッ!!」 ジャン「く……『ドッグ・マン・スター』ッッ!!」 ジャンに向かって桐生が突進を図る。 だが、それと同時にジャンは灯油のしみこんだハンカチに火をつけ、 『同期』のスタンド能力により、桐生の体は炎に包まれた。 桐生は言葉も発さずにその場に倒れこんだ。 六郎「バ、バカ野郎!!」 六郎はとっさに起き上がり、近くにあった消火器をとって桐生に吹きつけた。 ジャンはあわてて火のついたハンカチを落とし、六郎はその火を消した。 桐生を包んでいた炎は消えたが、彼の服がところどころ焦げており、 自身も身動きがとれないでいた。 ただ、火傷を負ってはいるものの意識はかろうじて保っていた。 六郎「コロシはカンベンだぜ、コロシは」 ジャン「……すまない」 六郎「あんたは慣れたモンかもしれないけどよ。俺は一般人、コイツもそうさ」 ジャン「…………」 六郎「だが、決着はつけなくちゃいけねえ。俺はコイツが死なないよう看とくから、あとは頼んだぜ」 ジャン「ああ……」 ジャンは六郎と桐生を残し、ジャンは歩き出した。 9 / 15 ページ ジャン「………………」 ジャンは自身の敵が加賀であると本気で思っている。 ホテルのエントランスに姿を現した瞬間、たしかに加賀に対し憎悪の念が沸き起こった。 偽の手紙を送り、自分と六郎をここに閉じ込めた張本人であると……。 ジャンは廊下の端の扉を開けて従業員通路へ出た。 表の通路では監視カメラが見張っているからだ。 ジャン(とはいえ、あの女が今も監守室にいるかどうかはわからない。 あの館内放送をしていたときはたしかにそこにいたのであろうが、館内放送が止んでからは少し時間が経っている。 ハンディカメラを壊されてからは監守室の様子を見ることも出来なくなっている。 今、考えられる策としてはホテルのどこかに移動し待ち伏せるか……そのまま監守室で待ち伏せるか……『待ち伏せる』?) ジャンはここで初めて加賀に対し違和感を抱いた。 ジャン(あの女……加賀といったか、そもそも『待ち伏せる』必要などないはずだ。なぜならば……1週間前、『私と六郎2人を相手取って戦い、勝っているからだ』。 1週間のうちに私と六郎が練った策はすでに看破されており、あの男も戦闘不能となった今、『状況は1週間前と同じ』なのだ。 隠れる必要など無い、1週間前と同じく待ち伏せなどせずに正面から戦えばいいはずなのに……) ジャンは1階に降り、フロントの裏、監守室の扉の前に立った。 ここに降りてくるまで、人のいる気配も、通った形跡も見られなかった。 可能性としては、ここにいるのが一番高いだろう。 ジャンがドアノブに手をかけて、この扉を開いたあと、どう行動すればよいか少し考えたとき……もうひとつの違和感を抱いた。 ジャン(私と六郎は……あの女にどうやって倒されたのだった?) ジャンの記憶には、確かに地面に這いつくばる自分と六郎の姿、それを見下す加賀の姿がある場面が残っていた。 ただし、どうやって攻撃され、どうやって負けたか……はっきりと思い出せなかった。 そして次にジャンの頭に浮かんだのは……前提を疑うことだった。 ジャン(私と六郎が……たった1人の女に負けたのか?) ジャンは決して性差別意識を持っているわけではない。 だが、どうもおかしいと感じ始めていた。大の男2人が、スタンド使いとはいえ女1人に負けたことが…… ジャンの手はまだドアノブを握り締めたままだ。 握り締めたまま、動かしていない。 ジャン(だが……いまさらそのようなことを考えてどうなるというのだ。このまま立ち止まって考えていても、状況は変わらない!) ジャン「我々は……勝たなければならないんだ」 ジャンは、ドアを開きすぐさま中へ入った。 窓の無い監守室は真っ暗だった。 10 / 15 ページ ジャン「……!!」 ジャンの通ってきた従業員通路は、加賀と桐生が入ってきた時と同様に非常用出口を示す緑色のランプくらいしか明かりは点いておらず、薄暗かった。 そのため扉を開いても監守室に差し込む光はわずかで、監守室の中はほとんど真っ暗闇だった。 ジャン(監視カメラのモニターも切り、操作パネルのランプも点いていない。電源を落としているのか……) この監守室のモニターは一度電源を切ると、再起動してすべてのモニターが点くのには時間がかかる。 それはジャン自身が1週間の間に実践して知っていた。 ジャン(電源を入れれば、再びすべてのモニターが見られるまでには3分近くかかる。たいした時間ではないが……ここから出たのかもしれない) ジャンは監守室の天井を見上げた。照明の蛍光灯はわずかに薄く光っていた。 ジャン(消えた蛍光灯がまだ滞光している。まだほとんど時間は経っていないようだ。……もし照明を消して、監守室から出たのならば、私は1階であの女に遭遇していたはずだ。 つまり……『この監守室に潜んでいる可能性は大いにある』) ジャンは監守室の中……扉の横につけられた照明スイッチに手をのばした。 ジャン(私がスイッチを入れた瞬間に、奇襲を仕掛けることも考えられる。ここで、机のカゲにでも待ち伏せていたならば……『待ち伏せて』……) 再び、ジャンの頭の中にこの言葉がひっかかった。2人掛りで対峙して勝てなかったのに、今は待ち伏せているという違和感…… ジャン(いや、よけいなことは考えるな。今できるベストを尽くすんだ。照明をつけるのはこっちのタイミングだ。 つけた直後、方向さえわかれば、こちらが先手を取れる可能性は十分にある……) ジャンはタイミングを悟られぬよう、静かに息を整え、しばらく待った後…… パチリ、とスイッチを押した。 ジャン「!?」 その直後、ジャンの予想していた逆の事態が起きた。 明かりに照らされるはずの部屋は……『真の暗闇』と化したのだ。 天井の、ぼんやりと光っていた蛍光灯の明かりはスイッチを入れたとたん、パッと消えて部屋の明かりは失われた。 11 / 15 ページ バタン!! ジャン「なッ!!?」 ジャンの開いた扉が、勝手に閉まった。 従業員通路から差し込む淡い緑色の光さえ、失われた。 ジャン「な……なんだ、どういうことだ!!」 加賀「決着、よ」 暗闇のいずこから加賀の声が聞こえた。 加賀「私のスタンド『ニール・コドリング』はインクのスタンド。私の万年筆からインクはいくらでも膨張し、拡散できる。 すでにこの監守室は……『私のインク』で包囲している。今扉を閉めたのも私のスタンドよ」 N・C「絶対絶命ダゼ」 N・C「イワユル『四面楚歌』ダ。歌ッテヤロウカ? London Bridge is falling down, Falling down...」 N・C「ドウスル、優男ォ」 ジャンの周り四方八方からニール・コドリングの声が聞こえる。 ただし周囲は一面真っ黒で、ジャンは加賀の姿を捉えられない。 加賀「私からはあなたの姿がハッキリと見えるわ。暗闇に目を慣らしていたからね。ドアの隙間からほんのちょっとだけ差し込む光だけで、あわてふためくあなたが見えるわ」 ジャン「な……何故だ! 私は照明のスイッチをいれたんだぞ、なぜ照明が点かないんだ!?」 加賀「いいえ、すべては『逆』なのよ。あなたはスイッチを入れたんじゃない、消したのよ。 トリックに気づくヒントはあるはずだけど? 私がエントランスで、インクでカメラを黒く塗りつぶした時のこととかね」 ジャン(エントランスのカメラ……そうだ、あの天井のカメラがインクで染められたとき、 私はロケットとこの女の位置がわからなくなって、六郎に指示が送れなかった…………『天井』だと?) ジャン「天井を染めた……まさか今も!」 加賀「そう、あなたが入ってきたとき、天井はすでに『ニール・コドリング』で塗りつぶしていた。 蛍光灯が薄く光っていたのは滞光していたからじゃあない、点灯された蛍光灯が、インクを透かしていただけなの」 ジャン「――――――ッ、『ドッグ・マン・スター』ッッ!!」 加賀「無駄よ、無駄無駄。パワーだけならあなたのスタンドは勝るかもしれない。しかし数では……いや、もはや数の問題ではないわね。 『ニール・コドリング』は、あなたを包んでいるようなものだから……」 N・C「ウァリャァァアアアーーーーーーーーーーーッッ!!」 ジャン「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっ!!!」 12 / 15 ページ ―――――――――――――――――― ―――――――――― ―――― 部屋の照明が再びつけられた。蛍光灯の明るい光が監守室を照らしだす。 床にはジャンが横たわり、両手を縄で縛られている。 ジャン「……かつてない屈辱だ。だが……敗因は自分にある」 加賀「…………」 監守室の扉を開いた加賀は立ち止まり、背後のジャンの声に耳を傾けた。 ジャン「君が一緒に連れてきた男……彼のおかげで、よけいなことを考えてしまったのだ。 君は真の敵であるはずだと……そう思っていたことを、疑いだしてしまった。挙句、天井を染め上げたことに気づけなかった」 加賀「……そうじゃなかったら、もっと戦いは長引いていたかもね」 ジャン「『負けていたかも』……とは言ってはくれないか」 加賀「こんなところで、私が負けるはずは無いわ」 ジャン「ひとつ、質問していいか?」 加賀「何かしら? 交際の申し出なら聞かないわよ」 ジャン「…………私の名前は、知っているか?」 加賀「…………」 ジャン「私のもとに届いた手紙には、宛名に私の名前、その下にこの場所が記されていたのだ」 加賀「知らないわ」 ジャン「……そうか、なら彼の言うとおりだったのかもな。何故か我々は……おかしな思い違いをしていたのかもしれない」 加賀「何のこと?」 ジャン「君も含め……我々をここに誘い入れた者のことさ」 加賀「…………」 ジャン「きっともう外に出られるだろう……加賀、といったか」 加賀「あなたのお名前はなんというの?」 ジャン「脚蛮醤。ロケットの男は藤島六郎だ」 加賀「ギャバン・ジャン、六郎……ね」 加賀は手持ちの手帳にメモをすると、それをポケットにしまって監守室の外へ出た。 加賀は満身創痍の桐生のもとへは行かず、真っ直ぐエントランスに向かって歩いていた。 両腕を伸ばし、腰を回しながら扉へ向かって歩く。 彼女にはわかっていた。今日の戦いは……まだ終わっていないことを。 13 / 15 ページ ガラス戸を押し開け、ホテルの外へ出た。 空には厚い雲がかかり、薄暗くなっている。 加賀の視線の先には……一人の奇妙な男が立っていた。 体をくねらせ、微妙にアンバランスな姿勢で立っている。 なにより奇妙なのは、その長身と体格に見合わぬ容姿だった。 坊ちゃん刈りの頭に丸眼鏡、黄色いセーターに半ズボン。 子どものような服装ではあったが、その眼光と表情は中学生、高校生とも思えぬ大人の風格を漂わせていた。 加賀「こんなふざけた格好のあなたが……すべての元凶だったわけね」 ???「元凶だって……? 僕は『何も悪くない』」 男は姿勢を変え、背後からスタンドと思しきヴィジョンが姿を現す。 人型だが、頭には猫耳が、腹部に洗面器大の半円のポケットがついている。 信田「自己紹介が遅れたね。……名乗らせていただこう、信田信夫(ノブタ ノブオ)。そして我がスタンド『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』だ」 加賀「…………はじめからこの一件は、トーナメントとは何の関係もなかったということね」 信田「Exactly, 僕がこの舞台を用意し、君やあの2人の男に招待状を送ったのさ。……もう1人の男は予想外だったがね」 加賀「あのトーナメントの優勝者をどうやって調べたのかしら。ロンドン市警でもあのトーナメントのことは何一つ情報を得られなかったのに」 信田「……僕には信頼できる友達がいるんだ。『未来から来たお友達』がね。彼の『シークレット・アーツ(ひみつ道具)』を使えば、わけないことさ」 加賀「コ○助?」 信田「違う」 加賀「……あなたの言っていることは答えにはなっていないけれど……それじゃあ、トーナメント運営と同じ捺印の押された手紙を作ったのは?」 信田「それも『未来から来たお友達』に協力してもらった。あの手紙は僕のもとにも届いていたからね、複製は容易いことさ。報酬はドラ焼き1個だった」 加賀「……それじゃあ、ホテルを奇妙な力で封鎖したのは?」 信田「それも『未来から来たお友達』に」 加賀「もういいわ……何を聞いてもそう返すのでしょうね。彼ら2人を私と戦うように仕向けたのも、お友達の力とでも言うのかしら?」 信田「……それだけは、この僕自身の力さ」 加賀「え?」 信田「僕は1週間前に彼ら2人をホテルに閉じ込めた後、2人を相手に戦った。彼らに僕を恨ませるために、彼らを閉じ込めた『責任』は僕にあると……理解させるためにね」 加賀「……『責任』?」 信田「『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』の能力は、『責任』を『転嫁』する能力……君はコレに見覚えはあるかな?」 そう言って信田がポケットから取り出したのは、ひとつの『財布』だった。 加賀「それは……! 空港でスられた『私の財布』じゃない!!」 信田「そのとおり。ああ、財布はあとでお返しするよ。僕の目的はこんなはした金じゃない。君に触れることにあったのだから……!」 加賀「……フ、そういう理屈だったのね。なぜ彼らが突然私を襲ってきたのか……理解できたわ」 信田「察しがいいね。そう、君に触れたとき『責任』を『転嫁』したのさ。僕が彼らを騙し、ここへ招いたこと、彼らを打ちのめし、閉じ込めたこと…… それらすべては『君がやったこと』だとこじつけられ、彼らにそう思わせた!」 加賀「こんなことをして……何が目的なの?」 信田「これは僕の『リベンジ』なのさ。先のトーナメントで僕は初戦で苦汁を嘗めた。だが『僕は悪くない』。悪かったのは組み合わせのせいだったんだ。 僕が強いことを証明するには……そのトーナメントの優勝者に勝つことが一番だと考えた」 加賀「……勝ち進んだばっかりに、くだらないことに巻き込まれてしまったわ」 信田「ただ優勝しただけの者に勝つのでは足りない……その優勝者の中でもさらに強い者、それを倒すことで僕の汚名は返上できる。 加賀御守道、僕が負けたときのトーナメントの優勝者である君なら……さらにうってつけだな」 加賀「さっきからずっと負けフラグビンビンにおっ立ててるわよ」 信田「負けはしないさ……僕はあれから成長したからね。能力には頼らず、自らのスタンドのパワーを信じる。 『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』の比類なきパワーをね」 加賀「……たったひとつ、許せないことがあるわ」 信田「聞こうじゃないか」 加賀「空港で、私は財布をお尻のポケットに入れていた……」 信田「…………」 加賀「あなた、私のお尻に触れたのね?」 14 / 15 ページ 信田「……いかにも。あえて言わなかったがそのとおりだ」 加賀「仮にも女子としては許せないことだわ」 信田「だからどうだと言うんだ? ……正直、触っても何も感じなかったね」 加賀「……ふん、男レベルが低いわね。やはりまだ子どもというところかしら」 信田「どういうことかな?」 加賀「この鍛え抜かれた体の、引き締まったお尻の魅力がわからないとはね……」 信田「だから、それがたいしたことないというのだ」 加賀「何ですって?」 信田「あのトーナメントの時に触れた……あの巨乳の柔らかさ、心地よさに比べたらな」 加賀「……巨乳ですって!?」 その言葉を聞いた瞬間、加賀の表情が変わった。 驚いたわけでも、軽蔑したわけでもない。 それは……かつてないほどの憤怒。 加賀「惑火ちゃんのことかァァァァァアアアアアアアアッッッ!!!」 信田「……フン、そういえば出会っていたのだったな」 加賀「『ニール・コドリング』!!」 N・C「ホイサァ! ……ウワッ! 髪ガ逆立ッテル!!」 加賀「これほど怒りを感じたことはないわ……私でさえ下着姿を見ただけで、触れることはできなかったのに……!」 N・C「何ニ怒ッテルンダ?」 加賀「コイツをブチのめすわよ。こいつをコテンパンにするか、惑火ちゃんのおっぱいを揉まなければ、こいつの上に立つことはできないわ」 N・C「イヤ、素直ニコイツヲ倒ソウゼ」 信田「果たしてできるかな……忘れたのか? 私はあの2人の男と同時に戦って勝っているのだぞ!!」 加賀「そんなの関係あるかァッ!!」 加賀が万年筆を前にかざすと、その先からは『ニール・コドリング』のインクが高波のように勢いよく、高く、広がった。 15 / 15 ページ N・C「ウオッ! スゴイパワーガミナギッテクルゼ!! コレガ怒リノパワーカ……!!」 ニール・コドリングは巨人のごとく大きくなり、信田の前に立ちふさがった。 N・C「ウォリャーーーーーーッ!!」 信田に向かって振り下ろすパンチは軽やかに避けられてしまうが、地面に突き立てられた拳はアスファルトを割った。 信田「こ、これは……なんという精神力! だが、『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』の敵ではないッ!!」 「ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラーーーーーーーーッッ!!」 目にも留まらぬ速さのラッシュをニール・コドリングの巨体に打ちつけていく。 無数のパンチはインクの体を何度も弾けさせ、ニール・コドリングの体は縮んでいく。 信田「所詮はインク……耐久性など無いに等しいッ! まもなく打ち消し尽くしてくれる!!」 「ド~~ラドラドラドラドラドラドラドラドララララーーーーーーーーッッ!!」 ラッシュの最中にもニール・コドリングは岩石ほどの拳を打ち下ろすが、スピードはアリウム・セパ=エイト・ハンドレッドが上回っている。 ニール・コドリングのパンチはスルリと避けられ、アリウム・セパ=エイト・ハンドレッドのラッシュはニール・コドリングを削っていった。 信田(姿を現せ、加賀御守道ッ! そのときこそ貴様を吹き飛ばし、王者の名誉を奪ってやる!) 信田「…………ハッ!」 アリウム・セパ=エイト・ハンドレッドがニール・コドリングの体を人の大きさほどまで縮めたとき、加賀の姿はその背後には無かった。 加賀「スタンドのパワーがいくら強くとも、『あなた自身』が強くならない限り私には勝てないわ」 信田「……! 後ろだ、アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド……」 加賀「無駄ァ!!」 信田がニール・コドリングに気を取られている間に背後に回った加賀は、信田が振り向く前に渾身の蹴りを股間に放った。 信田「なぁっ!?」 悶絶するほどの衝撃が下半身から脊椎、脳に走った。 視界がまたたき、信田は内股になって地面に崩れ落ちた。 加賀「惑火ちゃんがあなたに勝ったということは、すでに制裁は加えられたのだろうけど…… 私の怒りも晴らさせてもらうわ……『ニール・コドリング』!!」 加賀の号令でニール・コドリングは再び巨体に膨れ上がった。 そして拳をおおきく振りかぶり…… 加賀「ぶっ飛べ、エロ小僧ッ!」 地面に突っ伏した信田に対し、さらに下から突き上げるようなアッパーは、 ちょうど膝をついて尻が持ち上がったところへ下から腹に命中し、体が持ち上げられた。 信田「あがっ、あじゃはぁぁぁぁぁぁっ!?」 かつて自分が図書館で惑火にされたように、 人間砲弾かのように空へ向かって撃ちだされた。 吹き飛ばされた体ははるか遠く、ホテルそばのスキー場のゲレンデの林の中へ突っ込んだ。 加賀「信田信夫……てめーの敗因はたったひとつ……この言葉がとてもふさわしいわね」 加賀は信田の突っ込んでった林に向かって万年筆を向けて言い放った。 加賀「『てめーは俺を怒らせた』」 ドォ―――――――――z___________ン 信田信夫……『未来から来たお友達』が家に連れ帰る。 その道中、何度も何度も叱責を受けた。しかし、まだ懲りている様子はないようだ。 脚蛮醤……桐生を六郎に任せ、姿を消す。スタンドの修行をやり直すようだ。 藤島六郎……桐生を近くの病院に連れ、しばらく見舞いに通った。 桐生麗……全治2ヶ月の傷を負い、入院した。加賀にリベンジするという目的をすっかり忘れてしまっていた。 本来関係がなかったのに一番ケガの多かった不幸な男。 加賀御守道……秋田市から日本海側を沿う電車の旅に出たが、一人旅がつまらなかったのか一日でさっさとイギリスへ帰国してしまった。 【ニール・コドリング & コスモ・スピード vs クレセント・ロック & ドッグ・マン・スター】 STAGE スキー場のホテル 勝者……ニール・コドリング/加賀御守道 コスモ・スピード/桐生麗 【ニール・コドリング vs アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド】 STAGE ホテルの外 ★勝者: 本体名 加賀御守道 スタンド名『ニール・コドリング』 ▼単発SS一覧へ戻る
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1 / 6 ページ あらすじ 生まれ故郷の日本に帰ってきた本編の主人公の加賀御守道。 そこで出会ったのは、かつてトーナメントで加賀が勝利した桐生麗だった! 加賀に負けて以来、ずっと空港で働きながら待っていたという桐生だったが、 加賀が交通費をスラれたことで、加賀の運転手になることを条件に再戦をとりつけた! 加賀と桐生は秋田県へ向かう! 果たして加賀の目的とは……? 一方、とある建物に『奇妙な力』で閉じ込められてしまった六郎と脚蛮醤。 彼らはいったいどうなってしまうのか? そして、二人が手も足も出なかった男の正体は………!? 2 / 6 ページ ―――翌日。 秋田県八幡平、折干スキー場のホテルの駐車場。 加賀「―――着いたわね。」 N・C「茶色ノ壁ニ6階建テノ建物……間違イネェナ」 桐生「………………」 加賀「どうしたの桐生助手、茹で上がったカエルのような腑抜けた顔して」 桐生「どうしたもこうしたもあるかよッ!! 道中寄り道ばっかりさせやがって!」 加賀「仕方ないじゃない、いろいろ観光するのも目的だったんだもの」 桐生「東京、埼玉、栃木、福島、宮城、岩手と通ったとこ全部で飲み食いしやがって……」 加賀「あなたもいい思い出ができたんじゃない? ゆうべは民宿のひとつ屋根の下で寝て……」 桐生「俺は車中泊だったろーが!」 加賀「そうだっけ」 桐生「しかもゼンブ俺に金払わせてだ!!」 N・C「ケッコウ金持ッテタナ、オマエ」 加賀「自分で言っておいて何だけど、リベンジのためとはいえここまでよくやるわ」 桐生「く……職場復帰できないほどコテンパンにしてやるからな……」 加賀「まあ夫婦漫才はこのへんにしときましょう」 桐生「…………もういいや。そもそも、なんでてめーはこんなヘンピなとこまで来たんだ? まだ雪も降ってないこの時期にスキー場なんて……」 加賀「これを御覧なさい。」 そう言って加賀はポケットから1封の封筒を取り出し、桐生に差し出した。 桐生「……なんだこれは?」 桐生は不審に思いながら封筒の中の1枚の便箋を取り出した。 そこに書かれていた文章は、かつて彼も目にした事のある文章とよく似ていたものだった。 桐生「これは! まさか、あのトーナメントのか?」 加賀「ええ、きっとそうね。その手紙には『以前、私達が戦ったあのとき』と同じように、今日の日時と、この場所が記載されていた」 桐生「なるほどな……」 加賀「前の戦いで、結果として私は勝ちあがった……。しかし、私は何も得られなかった。私の求めていたものはおろか、富や財産、お金でさえも……」 N・C「金バッカダナ」 3 / 6 ページ 桐生「求めていたもの……?」 加賀「…………」 加賀が求めていたもの……それは、彼女が追う殺人鬼『切り裂きジャック』の情報だった。 その殺人鬼は加賀が警部に昇進した頃にロンドンを騒がせた大罪人であり、彼女の宿敵であった。 大規模な連続殺人を行ったにもかかわらず、ロンドン市警は殺人鬼の足取りを一切掴むことができなかった。 途方にくれていたとき、彼女の元に舞い込んできたのは先のトーナメントの招待状であった。 その主催団体は警察の情報網をもってしても実態を掴むことのできないものだった。 謎に包まれた団体……もしかしたら、殺人鬼となんらかのつながりがあるかもしれない。 そう思った加賀は主催団体との接触をはかるためにトーナメントへの参加を決意した。 しかし、勝ち進みはしたものの、大会のなかで主催団体と接触することは叶わなかった。 トーナメントで出会ったのはボクっ娘占い師、小金持ちDQN、巨乳女子高生。 もちろん、殺人鬼とは何も関係のない者たちだった。 桐生「誰が小金持ちDQNだ」 加賀「しまった、モノローグを声に出してしまったわ」 桐生「しかし、優勝しても何もなかったとはな……。賞金でも出ると思って、勝ち上がったらおニューのマシンの資金にしようとか考えたのに」 加賀「優勝しても何ももらえない……その可能性もあるわね」 桐生「え? 他に何かあるのかよ」 加賀「あるいは……『まだ終わっていない』とか」 桐生「…………!!」 加賀「おっぱいちゃんとの戦いのあとにまだ続きがあって、それがもし今日なのだとしたら?」 桐生「そしたらこのホテルには……」 加賀「相当な強者がいる……ということかもね。ま、どちらの可能性にしても、私は今日の話を断るわけにはいかないのよ。どうしても情報を得たいからね。 主催団体に足元を見られてるような気がして腹が立つけど」 桐生「…………」 加賀「じゃあ、行ってくるわね。ニール・コドリング、扉を開けたらすぐに戦闘体勢に入ってよ」 N・C「ワカッタゼ」 桐生「待て、俺も行くぜ」 加賀「……駄目よ。あなたには招待状が届いていないでしょう。あなたといっしょに戦って失格になるなんてゴメンだわ」 桐生「そうじゃない、言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ。ここでおまえに万が一があっては困るからな、俺が立ち合わせてもらう」 加賀「………………」 桐生「心配するな、俺は決して戦いに介入しない。石像とでも思ってくれればいい」 加賀「………」 『……ためにずっと待っていたんだ』 桐生に背を向けた加賀のほうから、かすれた声が聞こえた。 桐生「…………?」 <言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ> <言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ> <言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ> <言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ> 桐生「な……な、な、な、な!?」 加賀はポケットの中から小型のICレコーダーを取り出した。 ICレコーダーからは先ほどの桐生の声がリピート再生されている。 加賀「プクククク……うすら寒いセリフ吐きやがったわ」 加賀は腹を抱えてプルプル震えて笑いをこらえていた。 桐生「な、なんてモン持ってんだテメエ!!」 加賀「警察官の七ツ道具のひとつ、ICレコーダー……!! 私はずっとあなたとの会話を録音していたのよ。 かつてはネゴシエーターをしていたこともあってね。相手の弱みを握ることは交渉の基本よ」 桐生「それは交渉じゃねえ、イジメだ!!」 <言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ> <言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ> 桐生「や、やめろお」 4 / 6 ページ 加賀「ハァー……ついてきたいのなら勝手になさい。ダビデ像のポーズでもして、くれぐれも私の邪魔はしないで頂戴ね」 桐生「く……早速自分の言動を後悔し始めてきたぜ……」 加賀「前フリが長すぎたわ、さっさと入りましょう」 加賀はホテルの入り口のガラス戸を押し、中へ入った。続いて桐生もホテルの中へ入り、ガラス戸は閉ざされた。 エントランスに設置された監視カメラが二人の姿を捉えた。 ホテルの監守室に並べられたモニターのひとつに、その様子が映し出されていた。 薄暗い室内に二人の男の声だけが響く。 <……『あの女』、戻ってきたぞ> <よし、『俺たちをここに閉じ込めた』恨み、晴らさせてもらおうぜ> <……! もうひとり、誰か連れてきたみたいだぞ?> <……俺とお前と同じく、ここに閉じ込めるつもりなのか!?> <いや待て、ヤツの仲間という可能性もある……油断するな> <そうだとしても問題ない、『作戦どおり』いこう> <ああ、『今度こそ』あいつを捕まえてやる!> <おう!> 男は音をたてないよう、ひっそりと部屋を出て行った。 5 / 6 ページ ******************************************************************** ――ホテル内、エントランスホール。 天井の照明は点いておらず、非常口の緑色のライトだけがぼんやりとホールを照らしていた。 ホテルとはいってもそれほど広くはなく、入り口の左手にフロントがあり、その向かい側にはスキー客用のロッカー室がある。 フロントの前を通り過ぎれば、テーブルとソファーが並ぶ小さなラウンジスペースがあり、その奥にはエレベーターホールとレストランへと入る扉があった。 加賀「夏季休業中だから当然なんだろうけど、やっぱり客や従業員はいないみたいね」 桐生「それはそうだが、おまえの対戦相手の姿も見えないな」 加賀「ここに着いたときには1台も車は停まってなかったし、まだ来ていないか……」 桐生「どこかに潜んで待ち伏せているかもな。おまえのスタンド能力を使えば、この暗闇の中にまぎれてスタンドに偵察させることもできるんじゃねえか?」 加賀は人差し指を口にあて、静かにするよう桐生に促す。 加賀「……余計なことは言わないで頂戴。どこで聞き耳を立てているかわからないからね」 二人は立ち止まったまま、周囲の音に注意を向ける。 ゴウ――――ン…… 桐生「……何だ、この音は?」 加賀「これは……エレベーターね。エレベーターの扉が開く音……」 と、エレベーターホールのあるほうを向いたとき、その方向から何かが猛スピードで迫ってきた! 加賀「ッ!!」 間一髪で避け、飛んできたものは加賀と桐生の後方へそのまま向かっていき、壁にぶつかったとたん、小さな爆発を起こした。 今は跡形もなく砕け散ってしまったが、飛んできたものは人の腕の長さ、太さほどの棒状のものだった。 桐生「今ハッキリと見えた……あればロケット弾だ」 桐生は自らの反射神経と動体視力には相当の自信を持っている。 それがどれほどのものかを加賀も彼との戦いを通して知っている。 加賀「対戦相手はそんな兵器を持ち込んでいたというの……?」 桐生「……ここをどこの国だと思ってやがる、そんなものが簡単に手に入るわけないだろ。 それに、エレベーターホールはむこうの突き当りを曲がったところ……そこからじゃロケット弾は一度曲がってこなければならない」 加賀「じゃあやはり、スタンド攻撃……!」 そして再び、ロケット花火を打ち出すときのような、バーナーが噴き出すときのような音が響き、ロケット弾がこちらに向かって撃ちだされた。 加賀「……また避けなきゃ」 桐生「それじゃあダメだッ!」 待ち構えようとする加賀に対し、桐生は逆にロケット弾に向けて駆け出した! 桐生「『コスモ・スピード』!!」 ロケット弾が接近すると同時に桐生は自身のスタンドを繰り出し、ロケット弾を弾いて軌道を変えた。 ロケット弾は天井に向かったが、天井に当たる前に爆発した。 加賀「…………!」 桐生「このロケット弾がスタンド攻撃なら、爆発のタイミングも本体の意志で決められるだろう。今、天井に着く前に爆発したのが証拠だ!」 加賀「ふ……一手、あなたに先んじられたわね」 桐生「フン」 加賀「けれど、あなたは私の戦いに手を出さないんじゃなかったの? やっぱりアレかしら、一夜を共にした私に情が湧いたとか……」 桐生「違うッ! いつまでふざけてるんだおまえは!」 加賀「ふざけてないわ、からかってるのよ」 桐生「~~~~~~ッ。……さっきの攻撃は、おまえだけじゃなく俺に対しての攻撃でもあった! さらに姿を見せずに一方的に攻撃をしかけるその卑劣さに腹が立ったんだよ」 加賀「そう思うのは勝手だけれど、これは私の戦いよ?」 桐生「気にするな、俺はこのホテルというステージに紛れ込んだ野ウサギだとでも思えばいい。 野ウサギが駆け回り、何をしようがそれはホテルで起こりうる事象のひとつにすぎないのさ」 加賀「自分を野ウサギに例えるなんて……可愛さアピールのつもりなのかしら、気持ち悪いわ」 桐生「思ったことをすぐ声に出すな」 6 / 6 ページ バシュウ! 再び、ロケット弾が発射される噴射音がエレベーターホールの方向から聞こえた。 加賀「……『ニール・コドリング』!!」 桐生「……! おい、おまえのスタンドでロケット弾をはじけるのか?」 加賀「その必要はないわ」 加賀は、『ニール・コドリング』……インクのスタンドをロケット弾に対して防御させるのではなく、天井に向かってインクをばら撒いた。 『ニール・コドリング』の混じった黒いインクはフロント上部の天井を染めあげる。 桐生「何を…………!!」 桐生は加賀の不可解な行動を見て、自ら再びロケット弾をはじこうと構えたが、ロケット弾は桐生のほうでも加賀のほうでもない、あらぬ方向に飛んでいって爆発した。 加賀「やはり……か」 桐生「ん?」 ゴウ――――ン…… 加賀「……エレベーターが行ってしまったようね」 桐生「くそ、追うぞ!」 加賀「待って、敵の能力を分析するのが先だわ。むこうから退いてくれたのなら好都合よ」 桐生「分析……って、ロケット弾の能力だってことは明白。おそらくは遠隔操作タイプだろ?」 加賀「そうかしら? こっちへ向かってきたところをみると操作はできるようだけど、通り過ぎたり、弾かれたあとで爆発したりと操作が雑なのよね」 桐生「……じゃ、自動操縦とか」 加賀「それならなおさら、ロケット弾が通り過ぎるはずはないでしょう」 桐生「…………」 加賀「別にタイプ分析をしたいんじゃないのよ。今確実なのは、ロケット弾を操作できるということ。ただし、その精度は悪い。 おそらくはロケット弾自体に『目』があるわけじゃないのよ。そして自動操縦でもない」 桐生「じゃあ何が……」 加賀「答えはあれ、よ」 加賀は先ほどインクをばら撒いた天井の隅を指差した。 『ニール・コドリング』が隙間なく塗りつぶした天井に、半球状のものが取り付けられていた。 桐生「監視カメラ?」 加賀「そう、アレを見ながら操作をしていたとすれば、私たちのほうへ向かってきていたことも、操作が雑だったことにも説明がつく。 インクで目隠しした瞬間に進むべき方向を見失ったのがその証拠よ」 桐生「…………そうか。だがこのスタンド、俺にはかなり相性がいいな。俺のスタンド能力にとってすれば……な」 そう言うと桐生はエレベーターホールへ向かって歩き出した。 加賀「ちょっと、どこへ行くつもりなの」 桐生「俺はエレベーターを見に行く。ヤツが何階に行ったか確認しなきゃな。そしてそのまま追うぜ。 言っておくが、おまえの指図は受けないからな。俺はただの野ウサギなんだからよ」 加賀「ちょっ……バカなんじゃないの」 加賀の制止にもかかわらず桐生はエレベーターホールへ向かった。 加賀は桐生を追う事はせず、フロントへ視線を向ける。 加賀「今の話、理解していなかったのかしら。監視カメラで見ているということは、敵がどこにいるかハッキリわかっているじゃない」 おそらくはホテル中いたるところに監視カメラは設置されている。 その監視カメラの映像はどこで見ることができるか…… 招待状が届いたとき、あらかじめこのホテルを調べていた加賀には目星がついていた。 加賀はフロントから身を乗り出し、「STAFF ONLY」と書かれた扉を開けた。 加賀「フロントの奥……監守室になら!」 考えられる居場所はひとつしかない……ただ、違和感をのこしてはいたが。 加賀は万年筆からスタンドを出し、監守室の扉を開けた。 すぐに攻撃を仕掛けようと敵の姿を探すが…… 監守室にはだれもいなかった。 加賀「なん……だと……!」 無機質な蛍光灯の白い明かりに照らされた監守室の中で立ち尽くし、しばらく動くことができなくなった。 to be continued ▼単発SS一覧へ戻る
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1 / 6 ページ ホテル6F、従業員用通路にロケットを操るスタンド使い……藤島六郎の姿があった。 襟元には従業員室から持ってきたインカムのマイクを留めていた。 片方の耳にだけつけたイヤホンから、男の声が聞こえる。 ジャン<六郎、あの女は監守室に現れた。> 六郎と共にこのホテルに閉じ込められた脚蛮醤だった。 彼らはこのホテルで『加賀を倒すため』行動をとっていた。 六郎「そーか、すべておまえさんの目論見どおりだ。問題は想定外のもうひとりの男だが……どうする? 倒すか?」 ジャン<……そうだな、彼にはちょっと動けなくなってもらおう> 六郎「よし、まかせとけ」 ジャン<……申し訳ないな> 六郎「そりゃ『彼に』か? それとも俺にか」 ジャン<…………彼はエレベーターに入ったぞ> 加賀の制止も届かず、桐生はエレベーターホールに入ってロケット弾をとばしてきた人間を探した。 しかしエレベーターの動く音が示したように、そこには誰もいない。 エレベーターの上部のエレベーターの停止した階を示す表示板は最上階である「6」を示していた。 無関係の自分に向けられた攻撃に腹を立てていた桐生はすぐさまエレベーターのボタンを押す。 エレベーターは2つ並べられており、右側のエレベーターの扉がすぐに開いた。 エレベーターに駆け込み、「6」を押した後すぐさま閉ボタンを押した。 ……エレベーターが動き出した直後、桐生は自分の行動を後悔した。 桐生(ちょっと待て……もし、敵が俺達をエレベーターに誘い込むのが目的だったら? 加賀はついてこなかったが、もしここでエレベーターを非常停止させられて、閉じ込められたらどうすればいいんだ?) だが、桐生の後悔は杞憂に終わる。エレベーターは順調に昇り、6階に到着した。 桐生はふうとため息をつき、扉が開くのを待つ。 だが扉が開いた先に待っていたのは、危険に変わりなかった。 バシュウウウウウウウウ!!! 桐生「うぉああああああっっ!!!」 扉が開くと同時に、十数機のロケット弾がエレベーターの中へ向かって入ってきた。 大きさはエントランスで見たものと同じ、人の腕ほどのものだった。 桐生(スタンドのロケット……同時に何発も撃つことも出来るのかッ!) 桐生「『コスモ・スピード』!!」 桐生の背からスタンドのヴィジョンが姿を現す。 コスモ・スピードは桐生の身体を覆うように腕を広げた。 桐生「俺の能力をもってすれば、この程度の数のロケットなんかすべてかわすことなんて容易いことだッッ!!」 猛然と襲い掛かるロケットの群れのすきまを縫うようにしてかわしていく。 もはや人の限界を超えた速度であるが桐生の身体にはさほど負担がかからない。 自分ひとりだけの時が早くなったような、もしくは自分以外の時だけが遅れているような感覚で桐生はロケットをかわし、エレベーターを出る。 2 / 6 ページ ロケットがエレベーター内で着弾し、誘爆する時にはすでに6階のエレベーターホールから出ていた。 エレベーター内の爆風で押し出された空気の圧力を背中で感じながらロケットの飛んできた方向に目を向けた。 バタン! 目を向けたと同時に、廊下の奥の扉が閉まった。 客間のドアが並んでいる側の反対側、従業員用通路に敵は逃げ込んだと桐生は考えた。 このまま逃がしてはならない、距離をつめなければ……敵を追おうとしたそのときだった。 ピリリリリリリリリリ!! 突然桐生のズボンのポケットから携帯の着信音が鳴る。 桐生の携帯に電話をかけてくるのは、レースの誘いか女性だけ。桐生は反射で電話に出た。 桐生「俺だが……って、こんなことしてる場合じゃないんだけどな」 加賀<別に構わないわ、私だもの> 桐生「うおぉおおおっ!! なんでオマエが!!」 加賀<ここに来るまでの旅行中にこっそりあなたの携帯を調べさせてもらったのよ。 あなたスゴいわねぇ、登録数の9割が女性だったわよ> 桐生「てめ、犯罪だろうが!」 加賀<2、3人ほどのコにわざと電話かけて痴話喧嘩の種落としてきたわ。あー楽しかった> 桐生「ふざけんな! つーか今どこにいるんだよ!」 加賀<監守室よ。ここの固定電話からあなたに電話をかけてるの。私の携帯、日本じゃ使えないし。 ここのモニターからあなたの背中が見えるわ。そしてたった今……敵と思われる男が5Fの廊下に現れたのもね> 桐生「……マジか?」 加賀<この電話は切らずにスピーカーホンにしておきなさい。モニターを見てあなたに指示をするから> 桐生「って、なんで俺がおまえの言うとおり動かなきゃならないんだ。戦うべきはおまえだろ?」 加賀<……私のいうとおりにしてくれれば、電話した女の子たちの誤解を解いてあげるわよ?> 桐生「…………まったく、交渉上手だなてめえは」 加賀<わかったらすぐに追いなさい。ぐずぐずしてると何をしてくるかわからないわよ> 桐生「はいはい、わかりましたよ!」 桐生は走り出し、従業員通路の扉を開けて中へ入った。 3 / 6 ページ それから十数分が経った。 監守室にいた加賀は電話を片手にモニターを見つめながら桐生に指示を出していた。 桐生が敵のロケットの攻撃を避け、加賀が監守室から敵の逃げる先を見て桐生に指示を出していく。 敵の現れた階に桐生が行くと、すぐさまロケットの攻撃を仕掛けられる……。 そんないたちごっこが続いていた。 加賀「桐生助手、敵はエレベーターで6Fまで上がったわ。すぐに階段で追いなさい」 桐生<あぁ!? ここは3Fだぞ、エレベーターでいったほうが早いだろうが!> 加賀「2つあったエレベーターの片方は最初にロケットで壊されちゃったでしょ。敵の使ったエレベーターに乗ったら、降りたときにまた待ち伏せされちゃうじゃない」 桐生<くそ……しかたねえなあ……> モニターの中の桐生は従業員通路の扉を開けて中に入った。 監視カメラが設置されているのは1Fのエントランス、レストラン、ラウンジシペースと、2F以上の客室フロアはエレベーターホールと廊下だけだった。 2F以上は廊下はすみずみまで見ることができたが、従業員通路は当然のこと、客も使う階段にもカメラは設置されていなかった。 6Fの従業員通路の扉をあけて桐生が中に入ると同時に、ツンツン頭の男は床を殴ってロケット弾を生み出し、放った。 ロケットはエレベーターホールから1度、2度曲がり桐生のいるほうへ向かっていった。 加賀「…………」 加賀は黙ってその様子を見つめていた。 向かってくるロケットの群れに対し桐生はスタンド能力を発現させてロケットをするりとかわしていく。 桐生がロケットをかわした直後、敵は今度は反対側の廊下へ走り出し、従業員通路へ出て行った。 このホテルは廊下がゆるやかなV字状になっており、桐生と敵は互いの姿は見えないようになっていた。 加賀「……おかしいわね」 加賀は目をしかめてモニターをにらみつけた。 耳元の受話器から桐生の大きな声が耳を刺す。 桐生<おい! 敵はまだいんのか!?> 加賀「うるさいわね、そう大きな声出さなくたって聞こえるわよ」 桐生<さっきからずっと向こうの攻撃を喰らうだけじゃねえか、このままじゃ俺ももたないぞ> 加賀「…………」 桐生<おい!> 加賀「今考えているのよ。疲れたならエレベーターホールで少し休んでなさい。そこなら敵がどこから出てきても対処できるから」 そう言うと桐生は無言のままエレベーターホールへ向かい、ソファに腰掛けた。 モニターごしではよく見えないが、一方的に攻撃され続けて精神的にも疲れがあるに違いなかった。 加賀(ここまでの攻防で……といっても防戦一方だけど、敵のロケットは遠隔操作できる……それは間違いない。 まるでロケットに目がついているかのように正確に曲がり、桐生に向かっていった……) しかし、エントランスで加賀が『ニール・コドリング』のインクで監視カメラの目を潰したとき、ロケットは確かに針路を失い、あらぬ場所で爆発した。 その監視カメラのモニターの映像は今も黒く塗りつぶされたままだった。 加賀(そう……だから私はロケットに目がついている可能性を消して、この監守室へ向かった。ここに敵がいるはずだったから……) だが、加賀がこの監守室に入ったときには中に誰もいなかった。出入り口は加賀が入ってきた扉しかなく、窓もついていない。 加賀(いったい、どういうことなの?) 加賀はモニターから目を離し、椅子の背もたれに頭をのせた。 加賀「…………あっ」 <ドガァァン!!> 加賀「!」 突然、受話器から爆発音のようなものが聞こえた。 桐生<おい、敵はどこにいる!?> 受話器から桐生の声が轟く。 加賀が起き上がりモニターを見ると、エレベーターホールに煙が立ち込めていた。 桐生<何やってるんだ! 敵が出たらすぐに言うんだっただろうが!> 加賀「……ごめんなさい。……また従業員通路の扉が閉まったわ。あなたが追わないのを見て、またこの階に現れたみたいね」 桐生<くそ、だんだんイラついてきたな……クールにならねぇと> 加賀「5Fに姿を現したわ。すぐに行って頂戴」 桐生は応えずに廊下を走り出していった。彼の苛立ちは敵だけでなく、加賀にも向けられている。加賀自身もそれをわかっていた。 加賀「……敵もなかなか狡いことするわね」 4 / 6 ページ 暗闇の中、ジャンの顔だけがぼんやりと照らされている。インカムのマイクを口元に近づけ、桐生に対峙する六郎に指示を出していた。 ジャン「……エレベーターホールの男には直接的なダメージは与えられなかったようだが、かなり苛立ちを感じているようだ。 冷静さを失い、体力を消耗すればあとはこっちのものだ。」 六郎<ちぇっ、簡単には倒せないか。あの女のほうはほっといていいのか?> ジャン「問題ない。まだ監守室から動く様子はないからな。またモニターから目をはなすようなことがあれば、また攻撃できるだろう」 六郎<よし、頼んだぜ> ジャン「…………」 ジャンは六郎へ指示を送りながら桐生と加賀の行動まで把握していた。 しかしジャンにとって想定外だったことは桐生の辛抱強さ……もとい、そのスタンド能力だった。 ジャン(せめて、不意打ちさえ仕掛けられたらな……あの女が六郎の居場所を伝え続ける限りそれはほぼ不可能だ。 あの男がカメラの下にいる限り、ロケットはどうやってもカメラに映るし、あの男が従業員通路を通るときには六郎のロケットを誘導させられない……) ジャン「……仕方ない、電話線を切るしかないな。万が一の脱出のために電話線はのこしておいたが……利用されてしまう以上、勝利は遠い」 しかし、桐生の行動を制限するためには六郎についてもらうほかなかった。 電話線を切るにはジャン自身が動く必要があった。 ジャンはこっそりと動き出し、暗闇の部屋から出た。 音をたてないように歩き、電話線の通っている壁のある場所……1Fの従業員通路、監守室付近に向かった。 桐生<ロケットはどこからだ? どこから来る!?> 加賀「今度はエレベーターは使っていない、廊下の奥から……ん?」 桐生<なんだ、どうした?> 加賀「……おかしいわね、ロケットを撃たなかった。あなたが廊下に出た直後、また従業員通路に引っ込んだわ」 桐生<え?> 加賀「……とりあえず、エレベーターホールにいて頂戴。もしかしたらあなたのいる扉から攻撃がくるかもしれない」 モニターの中で桐生は周囲に注意を払いながらエレベーターホールへと向かった。 加賀(やはりおかしい……敵は桐生の行動も把握して動いているとしか思えない) 加賀「やっぱり……『コレ』が答えなのかもしれないわね」 加賀は桐生の映っているモニターから目を移し、端のモニターを見た。 そこに映っているのは……加賀自身の背中だった。 先ほど椅子からふと上を見上げたとき、加賀は監守室の天井のスミに監視カメラがつけられていることに気がついた。 いや、正確にはこの部屋に入ったときに目には入っていたが今の今まで何も疑問をもたなかったのだ。 モニターに映っているのはどれも「客が入ることのできる場所」であり、この監守室のカメラだけが異質だった。 加賀(そもそも冷静に考えてみればおかしな話なのよ。館内を監視する部屋を監視する必要がどこにある?) 加賀「桐生助手、聞きなさい。敵は、監守室に取り付けたカメラから監守室のモニターを見て、ロケットを誘導したり、あなたの行動を把握していたのよ」 加賀は監守室のカメラを睨みつけた。 天井から提げられたカメラはエントランスにあるような半円ドーム型のカメラではなく、一般的なカメラに似た型だった。 そして、その側面には、『黒い星』が描かれていた。 5 / 6 ページ ジャン「!!」 1Fの従業員通路を駆けていたジャンは、加賀と目が合い、ぎょっとした。 ジャンは手にハンディカメラを持ちながら移動し、六郎に指示も送っていた。 ハンディカメラには監守室のカメラと同様、「黒い星」が描かれている。 ジャンは自身のスタンド『ドッグ・マン・スター』の能力により2つのカメラを『同期』していたのだ。 ジャンは常に監守室の監視カメラを通して監守室を、監守室のモニターを見ていたのである。 ファインダーを覗いてズームすれば、監守室に並べられたモニターをチェックすることが出来る。 これによってジャンは六郎と桐生の位置を知り、六郎に指示を出していたのだ。そのための訓練はこの1週間のうちにみっちりと行った。 ジャン「く……気づかれたか!? 急がなければ……」 電話線の通っている場所まではもうすぐだった。 加賀「『ニール・コドリング』!!」 加賀の万年筆からインクがあふれ出し、人の形を象ってゆく。 N・C「久シブリダナァ、オイ!」 加賀「あのカメラを通して状況を把握していたこと……ほぼ間違いなく、『スタンド能力』によるものね」 もし、監守室のカメラがただのカメラだったなら、敵が無線通信によりその映像を見ていた可能性を加賀は捨てられなかっただろう。 ただし、そのカメラには『ドッグ・マン・スター』の能力の演出……仕様のために『黒い星』が描かれていた。 監視カメラにデザイン性を求める意味はない。この黒い星こそが、スタンド能力によるものと思わせるには加賀にとって十分だった。 加賀「もしこれがデザインだったとしたら……安っぽすぎるデザインじゃない?」 N・C「違ェネェナァ」 加賀「カメラを破壊しなさい、『ニール・コドリング』!!」 ガシャァアアアアアン!! 映像が途切れる、と同時にアスファルトの床に置かれたハンディカメラは破壊された。 ジャンは壊れたカメラを尻目に、壁に向かって立っていた。壁は一部分が砕かれ、中にめぐらされたコードが露出している。 ジャン「くそ……あの男が介入しなかったら、カメラはバレなかったかもしれないのに……だが、これでヤツらの連絡手段も断つ!」 バヂィッ!! ジャンはスタンド攻撃によって壁の中のコードを遮断した。 ジャン「だが……まだ策は残されている! ……六郎っ!」 ジャンはインカムで六郎に指示を送りながら従業員通路を駆けていった。 6 / 6 ページ 加賀「……もしもし、桐生助手? もしもし?」 N・C「ドウシタ」 加賀「…………助手がいきなりツー、ツーって電子音の声マネをしはじめたのよ。ドッピオじゃあるまいし」 N・C「イヤ、ソレタダ単ニ電話ガ切レタダケダロ」 加賀「電話線を切られたのかしら、今更」 N・C「コレジャ指示ヲ送レネェゼ、ドースンダ」 加賀「…………」 N・C「オーイ、ドーシタンダッテ?」 加賀「今、電話線を切ったのは誰だと思う?」 N・C「エ?」 加賀「カメラにスタンド能力を仕込んだのは誰?」 N・C「……」 加賀「いまだモニターにあのツンツン頭の敵の姿は映ってるわ。彼に電話線を切ることは不可能よ。そして桐生助手にも不可能」 N・C「ソモソモ電話線ノ場所ナンテワカンネーダロ、アイツハ……ッテコトハ」 加賀「敵は……1人じゃない」 N・C「マジカヨ」 加賀「大マジよ。……事実上桐生助手を味方にしている現状では負けはないと思っていたけれど……かなり厳しい状況ね」 N・C「……ドウシテダ? 数ノ上デハ2タイ2ジャナイカ」 加賀「……もうひとりの敵、ツンツン頭じゃないほうは一度もカメラの下に姿を現してないわ。居場所が全く分からないの。 スタンド能力もハッキリ言ってまだよくわからないし、そのポテンシャルだって不明なのよ」 N・C「ナンダ、イツニナク弱気ジャネエカ?」 加賀「もしもう一人の敵が近距離パワー型のスタンド使いで、今この監守室の扉の外で待ち伏せていたとしたら……あなたは打ち勝つ自信ある?」 N・C「ナイデス」 加賀「即答するところがさすが私の精神体ってところだわ」 N・C「ジャア俺タチハ……」 加賀「ここから動くことはできないのよ」 N・C「モシヨ、モシダゼ? 桐生ノトコニ現レタラ、アイツハドウナルンダ? 勝テルノカ、一人デ?」 加賀「……難しいんじゃないかしら。現れたところを確認してから私が助けに行ったところで、間に合うかどうかもわからないし」 N・C「…………ナルホド、確カニ不利ダナ」 加賀「…………でもね」 加賀は口元をわずかに歪ませ、不敵な笑みを浮かべた……。 5F、エレベーターホール前で桐生の前に六郎が姿を現した。 今までで一番距離が近い対峙となった。もちろん、互いにとって顔を見るのは初めてである。 桐生「おまえが……ロケットのスタンド使いか。どういうつもりだ、姿を現すなんてよ」 六郎「…………おまえに、頼みがあるんだ」 桐生「……頼みだと!?」 六郎の言葉に桐生は拍子抜けする。いままでさんざん一方的に攻撃を仕掛けてきた相手に、頼みを請われるとは…… 何の頼みか聞く気にもなれず、一喝しようとしたとき、六郎はさらに続けて言った。 六郎「あの女を倒すため、俺たちに協力して欲しいんだ!」 桐生「ハアァ!?」 六郎「いいか……おまえは、おまえは……あの女に……」 六郎「『騙されているんだぞ』!!」 ジャンは足音で敵に居場所を悟られぬよう音をたてずに急ぎ足で従業員通路を移動していた。 ジャン(監守室のカメラさえバレなければ、六郎と私だけであの女に勝つことはできた……だが、バレてしまった以上、『状況は1週間前と変わらない』! 我々が勝つためには、今となってはあの男と協力するほかない……ここから脱出するためには……『あの女を倒さなければならない』からだ!!) 加賀は監守室の椅子に腰を下ろし、脚を机の上に投げ出して桐生と六郎が映るモニターを見つめた。 そして、ボソリと一言呟いた。 加賀「……でもね、私が桐生助手を助ける義務なんてないのよ……」 to be continued ▼単発SS一覧へ戻る
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あ~こ さ~と な~ほ ま~よ ら~ん
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■最優秀スタンド能力賞 投票総数 41 第1位 4票No.6293 ザ・ウィナー 【能力】 レイピアで魔法陣を描いき、それを飛ばす能力。 魔法陣に当たった(触れた)対象は、魔法陣の中で斬撃を喰らって切り刻まれる。 地面に魔法陣を描いて、地雷にのようにすることもできる。 勿論、レイピアでの直接攻撃も可能であり、 「ゼフィランサス・フルバーニアン(通称 ZFb)」という名の、 魔法陣とレイピアの同時攻撃の必殺技を使う。 【案師】 ID yI0Zp5v30 第2位 3票 No.6336 モライナキ 【能力】 周囲の生物の肛門内部にゴボウ巻きを生成し、それを強制排出させるガスを発する。 このガスに触れた生物は、絶え間ない強烈な便意(出るのはゴボウ巻きだが)に襲われる。 スタンドや本体の腕で相手に直接触れて能力を使う「直」ざわりをフルパワーで行えば、肛門括約筋の許容範囲を超えた巨大なゴボウ巻きを出現させることが出来る。 相手は肛門が裂けてしぬ。 【案師】 ID yd/Kp8PR0 No.6339 ムービッツ 【能力】 触れた影を奪う能力。 対象は奪われた影の量だけ耐久力や体力の上限が減り、 疲れやすくなったり、物理的攻撃に対してダメージを受けやすくなる。 すべての影を奪われたモノはまともに動けないほど衰弱する。 影を奪うことで相手を完全破壊や殺すことはできないので、 トドメは本体かスタンドで殴らせるかして直接攻撃するしかない。 すべての影を奪うには一定時間の接触が必要なため、 動くものが対象の場合何度か対象の影に触れる必要がある。 奪った影は24時間経つと自動的に対象のもとに戻るが、 本体が対象に触れることで意図的に戻すことも出来る。 【案師】 ID OgkOjj9l0 第4位 2票 No.6308 ストーム・チェイサー 【能力】 本体の『持ち物』を自動的に回収・奪還するスタンド。 『持ち物』が本体の所有を離れている場合にのみ発動し、 一直線にどこまでも遠隔自動追跡して奪還する。 条件次第で旅客機にすら追いつけるほどの超スゴいスピードを誇るため、逃げ切ることはまずできない。 障害物などにぶつかった場合、寸前で自動的に瞬間移動して回避する。 本体の執着が強い『貴重品』や『必要不可欠な物』が対象だと、スタンドパワーが爆発的に増加する。 『持ち物』が金庫に入っているなどして直接回収が難しい場合、その容器ごと持って帰ってくる。 【案師】 ID iHfiYpkg0 No.6313 ラヴポーションNO.9 【能力】 惚れたものの精神を小瓶にコレクションする能力。精神が抜かれた本体は仮死状態になる。 能力の発動条件は本体が惚れた相手にキスすることで満たされ、 本体の惚れ具合によって瓶の数字が小さくなる。 本体の気持ちが冷めると精神は解放される、無理やり瓶を壊すと瓶の中の精神が壊れて廃人化する。 瓶を壊したら相手を再起不能にできるのだが 本体は瓶に詰めている時期は本気で相手を愛しているのでする必要がなく 壊そうと思ったその時点でその相手への気持ちが冷めてしまっているので 精神は元の体に戻って、実質害がない。ただし他人に壊される可能性はある。 瓶につめられた精神とは会話が可能、現在瓶は1~5まで埋められていて1番には母親が入っている。 【案師】 ID BMV3mfqF0 No.6324 リフレクティア 【能力】 鏡像を操る能力。 鏡の中から自分を含め、映っている者の鏡像を現実世界から出現させることができる。 その時、鏡像を出現されたオリジナルは、能力を解除しない限り鏡に映らなくなる。 対象は生物のみであり、物質やスタンドなどは例外。 出現された鏡像は姿は勿論、音声や身体能力などもコピーできる。 ただし、体臭はコピーできない(体臭がない)。 オリジナルとの見分け方は「左右対称」である為難しい。 鏡像を出現させる際、本体の任意でメンタルを変えることができる (無くして操り人形のようにすることも可)が、 変えなかった場合、鏡像のメンタルはオリジナルそのままである為、 基本的に本体の命令には従うが本体の希望通りにはならないことも。 鏡像のダメージは、心臓部や頭部などが破損しない限り、腕を切断されても復元できる。 ただし、オリジナルがダメージを受けると、鏡像にもフィードバックする。 鏡像自体の能力はオリジナルとほぼ同等であるが、スピードは常人を上回り、 スタンド能力によって瞬間移動させることができる。 コピーは任意で解除でき、その後はオリジナルは鏡に映るようになるが、 再び鏡像を出現させるには、再度鏡の中から出現させる必要がある。 【案師】 ID Py0G67GaI No.6344 ブリトニー・スピアーズ 【能力】 全力で走る(奔る)ものを追いかけ、そのものの足を奪う。 追いかけられている人間はスタンドの有無に関わらず、 「ブリトニー・スピアーズ」を目視することができる。 【案師】 ID F2wwth/I0 No.6366 テンペスト 【能力】 「傷」の移動。 例えば自分が腕を骨折している正体の時スタンドで他人に触れると、 その触れられた人物はいきなり骨折し、自分は完治する。 これは自分だけでなく、 他のモノの傷もそれに触れさえすれば他の対象に移動させることができる。 また、逆も可能。 【案師】 ID hryZeNxO0 No.6376 シークレット・ヘブン 【能力】 『悪意』を受信する能力。 周囲の人間の悪巧みはすぐ察知でき、『悪意』の強弱も把握できる。 目の前の人間の嘘や裏切り、殺意を感知できるため、不意討ちを事前に回避できる。 ただし『悪意』の内容そのものを直接知ることは出来ない。 また、物体に込められた『悪意』を読み取ることもできる。 食事に仕込まれた毒とか、隠し持った凶器とか、犯罪事件の現場だとかを探知できる。 グロ画像のURLなんかにも使用できるらしい。 【案師】 ID AaAUGOCX0 No.6378 ドリームシアター 【能力】 寝ている間、同じ時間に寝ている「顔と名前を知っている」人間の夢の中に侵入し操る。 夢の場面を変えたり、自分が変身したり無敵になったり、 複数人を同じ夢の世界に連れて来たり自由自在。 他人の心を操ることはできないが、薬の力で情報を吐かせたりできるうえ、 夢の記憶を忘れさせた状態で目覚めさせることも可能。 ただしデス13のように現実世界に物理的影響を与えることはできない。 現実世界の1時間は夢の中の6時間分に相当する。 また、現実世界で右の拳でパンチすると相手を問答無用で眠らせることができる (スピードDなので簡単にかわせる)。 敵スタンドをパンチしてもダメージを与えるだけで、眠らせることはできない。 【案師】 ID n3g8slg+0 第11位 1票 No.6211 エンドレス・レクイエム 【案師】 ID gnD4va2/0No.6296 スカイフォール 【案師】 ID PxprIRpQ0 No.6301 99 Revolutions【案師】 ID 8VPfcAwAO No.6302 デセルト・ロッソ 【案師】 ID UR3pf3znP No.6303 イリーガル・ムーブ 【案師】 ID gYmE+oJO0 No.6306 ブラックサンド・ビーチ 【案師】 ID IuxM2n420 No.6311 ミノタウロ・ショック【案師】 ID 2G4MO2xm0No.6316 アックス・トゥ・フォール 【案師】 ID TriXH1Nr0 No.6321 ブラッディ・フラック・プルーフ 【案師】 ID 2RyEJ63rO No.6331 ティック・トック 【案師】 ID 2G4MO2xm0No.6333 ビージーズ 【案師】 ID cMglkxEY0No.6340 ワールド・グラップル・トーナメント 【案師】 ID yvLLpvO20No.6341 ディアレスト 【案師】 ID FQNjPkLk0No.6345 ブラック・ムーン 【案師】 ID x/ExeRc50No.6367 シーキラー 【案師】 ID 4r36DjJI0No.6373 ジャスト・コミュニケーション 【案師】 ID 6SuQvyVu0No.6374 不沈艦CANDY【案師】 ID 6F70PHBn0
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ご自由にどうぞ。 -- 2013-02-16 02 23 01 デザインが2つ以上ある場合でも能力は同じなので、能力の方の投票欄は1つでいいのでは? -- 2013-02-17 12 25 03 言われてみれば。直しておきました。 -- 2013-02-17 13 19 33
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No.229 『キャッツ・グローブ』 No.4219 『T-REX』 SP表示に切り替える 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]