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新都府の沖野区にある超高層オフィスビル。高さ250mで地上55階の地下2階建てのオフィスビル。 概要 93年に新都電鉄が1239億円をかけて建設したが、不況や周辺の整備が不十分だったために入居率が低迷し建設以後、 主な入居企業 新都電鉄オフィスビル開発本社 新都教育大学沖野キャンパス 首都電機サービスセンター 沖野区役所沖野支所 沖野区水道局 新都府役所沖野事務所 全国労働者連合会本部 三川組沖野開発事務所 沖野女子福祉短期大学 新都税理士育成専門学校 西川公務員専門学校 アクセス 新都電鉄沖野内陸線沖野オフィスビル駅
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第1ラウンドSS・オフィスビル街その2 ウ~ウ~ 「ひゃあゴメス警報だ!」 バーチャル世界住民の天童さん(四人家族のお父さん、オフィス街のマンション暮らし)はゴメス警報に飛び跳ねた。 バーチャル世界と言っても社会の常識は現実の現代に準ずる。なのでゴメスが襲来した時にはこうやって警報が鳴るのだ。 天童さんはありったけの食糧と水、妻と娘、ライフルと斧、サバイバルブックと救急箱をラジオを次々とシェルターに投げ入れる。 そして最後に自らもいぇるたーに飛び込みカギをあけた。現代のオフィス涯の建造物はゴメス対策に地下シェルターが備え付けてある。 警報からゴ分経つ頃には戦闘領域からほとんどの生存者は消え去っていた。 (ゴ・メ・ス) 「おっ、何で誰もいないんだ!?」 理由が自分にあるとも考えずゴメスは行く。徒歩で。ゴメスパロボは置いてきてしまっった。 「やっぱトイレ我慢しとくべきだったかよ?でも、戦闘開始と同時に操縦席で漏らすの最悪だしな」 はっは!と笑いながらゴメスは行く徒歩で。そして無人の街を妙な歌を口ずさみながら。 「ゴーはゴーメスのゴー、メーはゴメスのスー」 全部でゴ十三曲あるゴメxスォング。これを全て詠唱し終わった時ゴメスパロボが召喚されるのだ。 「ソードーラーシーゴーメース。ゴメスとゴメスゴメスビル、ブラボー」 一曲目のゴメスの歌を終え二曲目のゴメスとゴメスに移行しながら、ぶらりオフィスを行く。 頑張れゴメス。後ゴ十二曲。 (ゴ・メ・ス) 「むむ、何で誰もいないのだ。周囲全員全裸にして吾輩がどこか分からんようにする作戦が使えんではないか」 ポッポーと頭から湯気を出して起こる全裸の女。そう、露出卿である。 「さては吾輩を恐れて隠れたのだな!どうだ吾輩の推理は」 横を見ても突っ込んでくれる女の子はいない。転送時に彼女が置いてかれた事を思い出し露出卿ションボリ。 ちなみに、露出卿の推理はそれ程間違ってない。 もし対戦相手がゴメスじゃなかったらロシュア人警報が流oれて同じ事になってたからだ。 「むう、取りあえず近くのコンビニに行って一休みするか」 戦闘中なのにこの緊張感の無さ。頭ロシュアというネットスラングが生まれたのも当然だ。(類義語:頭ゴメス、頭スパキン) 「ロシュアのローはロリコンのロー」 自作の歌と共にコンビニへ向かう。この歌を全部歌い切っても別に何も起こらない。 コンビニに入ると、そこにゴメスがいた。頭ロシュアな露出卿はゴメスの顔を知らない。 だが、頭の先から足元までゴメゴメしたその姿はゴメス以外の何物でも無いと確信できた。 もしこの男にゴメス以外の相応しい名前があったら教えてほしいレベルだ。 「ゴゴゴ、ゴゴゴ、ゴメスパロボ、あーい!ゴメスフュージョン承認だーうおーん!」 立ち読みしながら泣きながら歌うという器用な真似をしているゴメス。店内に入って来た露出卿には気づいていない。 先制攻撃の大チャンス!だが、露出卿は武人な上に頭ロシュアである。不意打ちなど己の騎士道に反する事だった。 「もし、ゴメス殿・・・でよいか?」 泣き叫ぶゴメスに声をかけると、涙と鼻水でグシャグシャの顔で振り向いた。 「ねえんだ・・・どこにも・・・」 「一体どうしたというのだ?落ち着いて話したまえ」 「このテレビガイド、どこにも載ってねえんだ。いいともが」 「いいとも?そういえば吾輩も最近いいともを見てないな。すまない、その本少し拝借」 露出卿とゴメスは二人で目を通す、テレビガイドを何度も読んで彼らは二つの事を理解してしまった。 一つはチャンネルの桁がめっちゃバグっている事。 「おい、なんでチャンネルの番号がムチャクチャになってるんだよ!」 「チデ鹿とかいうもののせいだと聞いた事がある」 「マジか。録画とかできねえじゃんかよ」 ムショにいたゴメスは地デジ化を知らない。 露出卿は地デジ化の事は知っていたが、頭ロシュアな彼女が頭ゴエスな彼に説明できるはずもなかった。 まあわからないものはわからないものとして放置し、今大会三大馬鹿の二人は本題へと移る。 「ゴメス殿の言う通りだ。いいともはどこにも無かった」 「ああ」 露出卿の右目から一筋の涙が流れる。ゴメスと違い泣く姿も美しかった。全裸だけど。 「森田氏・・・彼の死を知らなかったとは吾輩一生の不覚」 「今日は飲もうぜ」 二人はコンビニ内の酒と食べ物を手にして店内の飲食コーナーに向かう。 代金は露出卿がレジに置く。こういう時の為に腰のベルトの内側に一万円札を貼り付けておいたのだ。従者のアイデアである。 ゴメス?受刑者が現金持ってるわけがない。 「森田氏に乾杯」 「タモリといいともに乾杯」 ウオッカの瓶と缶ビールが軽く触れ、チンと音を鳴らす。 そして二人はコンビニの本を色々読みながら文明の進化ってスゲーと語らい帰路に。 「って違あああああああう!」 帰ろうとするゴメスを呼び止める露出卿。良かった、戦わないまま終わるトコロだった。 「そうではないだろうゴメス殿!」 「タモリ生きてたのか!?」 「森田氏の事は忘れよ。吾輩はそなたと戦いに来たのだ!いざ尋常に、ゴクゴク、勝負!」 残っていたウオッカを飲みながらカッコつける。 「・・・おっ、そうだっけか!はっは!こんな綺麗なネーチャンが相手とは嬉しいぜ。 でも今日はもう遅いからさ、明日にしねえ?」 外はもう真っ暗。二人がこの街に来てから既に半日以上が経過していた。 天童さん家ではシェルターに入れてもらえなかった息子がキッチンで発狂していた。 「んじゃ明日!」 「ああ、いい勝負をしよう」 二人は忘れていた。一日経ったら勝負が終わってしまう事を。 だが、二人はそれを自力で思い出す事は無い。酒が入っていたし、頭ゴメスと頭ロシュアだったからだ。 (ゴ・メ・ス) 深夜一時mアホどもが戦闘空間に来てから19時間経過。 シェルター内の天道さん一家は眠れないでいた。 「ゴメスはもう去ったのかなあ」 「あなた、ラジオ聞いてみましょうよ」 ラジオをつけるとゴメスがスパロボで暴れる事無く、それどころか戦闘すらせず、戦闘時間を終ろうとしているというニュース。 天童さんの顔が青ざめる。 「妻よ、娘よ大変だ。このままでは保険金が下りない!!」 「何てこと!ゴメス被害の保険を期待して色々ローンで買ったのに!」 「ああ、このまんまじゃ息子にかけた保険も無駄になってしまう。・・・そうだ、俺が息子を殺してゴメスのせいにすれば」 「パパグッドアイディア!私達の自宅まではカメラ回ってないもんね?」 天童さんは銃を手にてシェルターを出る。 「ジュニア居るか?悪いが・・・家族の為に死んでくれ!」 キッチンの人影に向かって引き金を引く、 「ゴメスガーディアン!(生身)」 「なにぃ!」 銃弾はゴメスの背中で食い止められた。 「げえっゴメス!なんでこの家に!」 「この家だけ電気がついてたからだ!一泊させてもらおうと思ってな」 「吾輩もいるぞ!」 露出卿が剣を抜き舞う。天童さんの衣服が破れ銃が分解さっれ全裸となった。 「おのれぇ~俺はどうしてもお前らに家と息子を犠牲にされなきゃならんのだ。者どもであぇであぇ~」 天童さんの妻と娘が武器を手にして現れる。 「こうなったらこいつらを撃破してその後自作自演で家を壊して保険金ゲットだぜ!」 「頑張りましょあなた!」 「あたしもっと贅沢したーい!」 闇深き天童さん一家の顔が¥マークに染まる。完全に正気を失っている。 「うーむ、どうしてこうなったのだ?」 「理由はわからねえが酷い家族だなあ」 「う、うるさい”!お前らが暴れないからこうするしかないんだ!せめて時間内に戦おうとしてくれれば・・・」 「そんな訳で私達のローンの為に死んでくださいな!」 「お前らを殺したら次は弟だ!死ねオラー!」 天童さんはキッチンにあった包丁を手にして露出卿に襲い掛かる。だが一般人が魔人に勝てる訳なかった。 露出卿は天童さんの攻撃をゴセンチずらして回避、剣の背で天童さんの頭蓋骨をかち割る! 「グワー!」 「峰討ちである。安心したせ」 天童さんの妻と娘は斧とラジオを手にしてゴメスに襲い掛かる。だが一般人が魔人に勝てるわけがなかった。 「この身はゴメスでできている」 女二人の攻撃を回避しながらゴメスはスパロボ召喚のゴメスォング締めの曲UGW(アンリミテッドゴメスワークス)を口にする。 「さあ来いゴメスパロボーっ!」 ズガアアアン! 天道さん家の屋根を破壊しながら巨大な頭が振って来てゴメスの頭とドッキングした! 首からうえだけゴメスパロボ!首から下は生麦生米生ゴメス!酒入っていたし、何曲も飛ばしちゃったしこの結果も仕方ないね! 「ぎゃああああ頭重たいー!!!」 「「「うわーーーーーーー」」」 両手で巨大な頭を支えるゴメス。首から下はプルプル震えていて今にも倒れてしまいそうだ。 露出卿と天道さん一家の女性陣は抱き合って悲鳴をあげる。 「あmあなた何とかしなさいよ!ロシュア最強なんでしょ?」 「あんなでかいのが倒れてきたらゴセンチ動かしても無駄だからー!」 「わーんパパー!」 ポキンという音がゴメスの頭部から響く。 「首・・・折れたから・・・」 「「「もう駄目だー!」」」 支えを失った超ゴメ金の頭部がぐらりと傾き落ちてくる。 「ゴメスミマセンデシタあああああああああ」 ゴメスーンと地響き。露出卿他二名が下敷きになり血だまりに沈む。 ゴメスゴ番勝負、一戦目、露出卿。 勝者ゴメス。決まり手、零距離ゴメスミマセンデシタ (ゴ・メ・ス) 「一戦目からやってくれたなあお前」 「空気読めてなかったか俺?」 「全く読めてなかった!」 帰還後、ゴメスは看守達にしっかり絞られていた。本人は全く反省してないが。 「まあ過ぎた事はしゃーねえだろ。じゃあせえめてラストぐらいは空気読んでやんよ」 ゴメス軽く屈伸をしてから突如走り出す。 「あっ、ゴメスまてー!」 「EDは走るもんだぜ!」 CAST ゴメス:ゴメス武人 ゴメスパロボ;野沢雅子 看守軍団:野沢雅子 (ゴメスが見ていたかくれんぼゴメスをだしたこ子一等賞) 天童さん:野沢雅子 (夕焼けゴメスでまたゴメスまたゴメス) 天童妻:野沢雅子 天童娘:野沢雅子 天童息子:野沢雅子 (ゴメス ゴメス ゴメスってゴメス) 露出卿:デーモン閣下 (ゴメすぃゴメスにゴメゴメゴメス あったかいゴメスで眠るんだろな) タモリ:野沢雅子 (ゴメスもゴメろゴメスにゴメろ ゴメゴメゴメンぐりがえって) 「ゴメスミマセンデシタああああああーーーーーーーーーーー!!!」
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第4ラウンドSS・オフィスビル街その2 「あれ、もしかして……獅子中サン?」 「む。お前は」 C3ステーションに併設される食堂にて、大間 真(くもりにプロローグで負けたやつ)は偶然にも獅子中 以蔵(絆にプロローグで勝ったやつ)と出会った。 「確か……大間だったか。いくつか試合は見させてもらっているが、苦戦しているようだな」 Cセット(かけそば+ミニ親子丼、税込み580円)のそばをずるずるとすすりながら、以蔵は大間に座るよう促した。ばつが悪そうに笑いながら、大間は対面の椅子を引き自分の盆を置く。 「へへ、有名人のダンナに名前覚えてもらってるなんて光栄ですな。まあ実際、中々上手くはいかないもんで」 日替わりセット(しょうが焼き+ご飯・味噌汁・漬物、税込み550円)の漬物をかじりながら、大間はぼやいた。 「次のバトルは一ヶ月以上後になるらしいですわ。それが終われば次のインターバルは更に開き……あと2,3試合もすれば実質引退、って感じになりますかねえ」 「視聴者は新しいモノを求め続ける。変化に付いていけないようなら、それも致し方ない事だろう」 「手厳しいや、ダンナは」 率直な意見にたじろぐ大間だったが、その言葉は以蔵の本音であった。彼とてディーチューバーとして、短くない期間をVR空間で過ごしてきた。一握りの魔人がスターダムへと駆け上がる一方で、大間の様に一線を退く者はそれこそ数多、熱しやすく冷めやすい視聴者様方であればその消費速度は尚のこと。知力・体力・時の運、その他諸々に恵まれなくては、DSSバトルの参加者としては立ち行かない。 「しかしまァ、ダンナは今回上手くやりましたね。すごいじゃないですか絆ちゃん、ここまで3戦全勝なんて」 「ああ。しかし、この結果は俺にも読めなかった。あいつがここまでやるとはな」 以蔵がサポーターを務める枯葉塚 絆は、第3ラウンドの対『変幻怪盗ニャルラトポテト』戦を制し、遂に次回は全勝同士の一騎打ちへ臨む。対する相手はオスモウドライバーを駆る格闘技の天才『野々美つくね』。 「エキシビジョンとはいえ、これで絆ちゃんを倒したダンナの株も上がるってもんでさあ。中々の策士ぶりですな」 大間の言葉に、下心が漏れ出し頬が緩みそうになるのをこらえて、以蔵は大間へ聞き返す。 「ん……しかし、お前に勝った荒川 くもりの戦績は――1勝2敗、か。芳しいものではないな」 「ええ。率直に言って意外でしたよ」 あむ、とご飯としょうが焼きを咀嚼し飲み込んでから、大間は言葉を続ける。 「勿論、他の魔人の能力を舐めてるわけじゃあないですが。荒川の『全壊』はそれに拮抗し、なお余りある強さを持っている――実際に対峙して、俺はそう感じました。しかし、実際に蓋を開けて見れば、ロシュアの当世随一の剣士・露出卿はもとより、普通の女子高生だった絆ちゃんにすら敵わなかった」 自身を負かした相手に対する不満――よりも、心底不思議に思う態度が、大間の表情には色濃く出ていた。 「獅子中のダンナはどう思います? 荒川と彼女らの差は何処に有ると」 「意志、だろうな」 以蔵の答えには、迷いは無かった。 「能力の強弱・相性、身体の基礎強度の優劣、事前の仕込み・戦闘思考速度、それに偶然の偏り。挙げようと思えば勝敗決定の要因などいくらでも有るが、それら全てを引き寄せるのは意思の力よ」 「へえ」 言葉の意味は理解できたが、その深層までは大間には理解できていないようだった。 「それについては、荒川 くもりも相当なものだったのだろうが……お前も、実際に見れば解るかもしれんな。今回運営が集めた16人、特にその上位陣については、理屈で測れない規模の力を持つ」 「『転校生』のようなもの、ですか?」 味噌汁をすする大間に、以蔵は首を横に振った。 「それもまた違う。例えるなら、前提条件全てを無視し、因果に直接干渉する程の力」 「……それが、意志の力だと」 「ああ。それが、荒川 くもりには僅かに不足していた。露出卿の折れぬ矜持や、絆の全てを受け入れる大器に対抗する為の何かが」 お碗に箸を置き、手を合わせる以蔵。大間は眉を下げながら、苦みばしった笑みを浮かべた。 「はは。やっぱ自分には、こっち側の世界は合いませんわ。大人しく、学生バレーのコーチに戻るとしますか」 「ん? 大間、お前そんな本業持ってたのか?」 「こっちも半分ボランティアみたいなもんですけどね。最初はまあ酷い有様でしたけど、近頃は結構やるようになってきたんですよ。見てるこっちもつい熱が入っちまって……」 相槌を打ちながら、大間の表情を窺う以蔵。その幸せそうに緩んだ表情を見、彼はきっと、もうこれ以上此方側へ来ることはないのだろうと以蔵は思った。 そして一方、本大会の参加者の殆どが、それとは逆方向へと進み続けている事もまた彼は感じていた。 ========== その凄惨な光景は、2ラウンド目の再現と言ってよかった。オフィス街の中、命を持たないNPC達は、その機能を失い道端へごろごろと転がっている。 「やれやれ、その破壊癖は相変わらずといったところかな? で、次は其処の高層ビルでも壊してみるかい」 「……場を整えていただけですよ。死にたくない観戦者の方達には、ログアウトしてもらいました」 車の通らない大通りに、信号機だけが明滅する。それらが交わるスクランブル交差点の真ん中に、くもりとその対戦相手『銀天街 飛鳥』は居た。 「貴方の能力――『天賦の銀才(シルバードロップ)』への対応策です。世界二位のあらゆる技術を拝借する其れは確かに強力ですが、対象を絞ってしまえばその応用力は著しく弱まる」 そして、とくもりは続ける。 「今回の試合、私はこれ以降『全壊』は使いません」 「……ふむ?」 「貴方は私から、『世界二位の破壊力』を奪えばいい。あるいは能力を使わずとも、此処からは只の殴り合いです」 「一回戦から、君の戦いは視聴させてもらっているけどね。君が一度でも対戦相手を『殴った』事はあったかな? 能力を使わないだなんて、信ずるに値しない言葉だね」 「ならばその意図、看破してみてはどうです。探偵さんはお得意でしょう? そういうの」 しかし、その答えをくもりは待たない。左足から駆け出し、緩い弧を描きながら飛鳥へ近づく。 (――二択だ。世界二位の破壊力か、それとも私自身の探偵能力か) 一度飛鳥が能力を発動してしまえば、それより後は世界二位の技術(今回の場合は『破壊力』)以外の直接干渉は不可能となる。くもりの能力からすれば、おそらく肉弾戦以外の攻撃は通らなくなるだろう。 (能力を使えば、推理光線は事実上封殺される。地力の推理発勁(バリツ)だけでも接近戦の能力で劣るとは思わないが……否、今の私の消耗具合を考えるなら、使える物は何だって――!) 迷った末、飛鳥は能力――『天賦の銀才』を発動した。眼前にまで迫ったくもりへ真っ直ぐ突きを放つが、くもりはそれを跳躍し、避ける。 「っせい!」 頭部を狙い横薙ぎに払った、不恰好な蹴り。ガードポイントを作りながら、飛鳥はそれを受け、返しの鉄槌を放つ。空中の受けは効かず、世界二位の破壊力で叩きつけられたくもりの身体は二、三度地面を跳ね、飛鳥と大きく距離を開けた。 「っ、つう、まだまだ!」 くもりは跳ね起き、再び前進を始める。空間破壊は使わず、只真っ直ぐに、愚直に。 (……本当に能力を使わないつもりか? あるいは引っ掛け(ミスリード)か) 互いの射程ギリギリのところで、とんとんとステップで身体を揺らすくもり。数秒後、今度は飛鳥の側から仕掛けた。ショートトレンチコートを翻し、袈裟懸けに蹴りを放つ。 「はああああ!!」 まともに攻撃を受けながら、右腕のクロスカウンター。能力抜きの単純な破壊力では、くもりの世界での順位はおそらく100位前後といったところだろうが、結局のところ当たってしまえばダメージを受けるのは同じこと。今度は二人同時に後方へと吹っ飛ぶ形になる。受身をとりながら、飛鳥はくもりへ語りかける。 「先程から推理はしているが、解らないな――荒川 くもり。このVR空間での破壊活動は、君の大望だったのではなかったのか? これ程破壊しつくしたいフィールドも無いだろうに、何故私との徒手空拳での勝負に拘る?」 「そう、ですね。前の私なら、きっとそうしていたでしょう」 転換点は、前ラウンドの対露出卿との試合。第2ラウンドの絆に敗北した時は、未だ彼女自身に大きな油断があった。故にその敗北を受け入れなかった――受け入れられなかったのは、事実。 「でも、それじゃ駄目なんです。私は漸く、敗北を理解しました。だから」 完璧な敗北だった。読みで上回られ、誘導されて操られ、正真正銘の全力でぶつかり――尚もその裸身は、遠かった。今まで戦ったどの勇者よりも、彼女は美しく気高く、そして強かった。 「もう負けたくないんです。勝ちたい。この戦いも、これからの戦いも」 敗北の記憶は壊せるが、その事実自体はくもりにも壊せない。そして、くもりも其れの破壊を望まなかった。魔王である彼女に残された汚点は、同時に彼女を人間たらしめるモノとなったのだ。 「……ふっ、はっ!」 息を吐きながら、三度の前進。ここに来て飛鳥は、彼女の纏うもう一つの力に気づく。 (固有能力は使っていない。そして純粋な身体強化――だけでもない。これは) くもりの呼吸のリズムが変わった。一本調子だったステップに曲げ、揺らぎの動きが加わり、打点を読みづらくする。魔王であるくもりならば、決して使わなかったであろう小手先の技―― 「――セイ、ヤ!(Say-ya!:「yaと言え」という意味の英語)」 くもりの身体が沈み、直後下から突き上げる拳が、飛鳥の身体を僅かに浮かした。 (っ、英語、だと――っ) 露出卿に敗北し、泣き腫らした目でマカロンを食べながら、彼女は今の自身にできる事を探し街へと足を伸ばしていた。何かをせずには居られなかった――そんな彼女の目に飛び込んだのは、バスロータリーに面するビルに掲げられた看板。其処にはややかすれた赤背景に白抜きで『駅前留学』の文字が躍っていた。 最早彼女に迷いは無かった。その日から今日まで血の滲むようなLessonを重ね、彼女は駅前留学で付け焼刃ではあるが英語を身に付けた。実力的には未だ初段にも満たない程度ではあるが、その技術は確実に彼女の血肉となり、魔人身体能力を引き上げている。 「hoooooo!!!」 連打される拳。当然飛鳥も反撃を試みるが、その拳が、蹴りが、すかされ逸らされる。 「咄嗟の時程、体に染み付いた動きが出てしまうものです」 飛鳥の攻撃を受け流しながら、徐々にダメージを蓄積させていくくもり。 「"本格派"の推理発勁の型は予習済み、貴方の癖に応じた微調整もできました……当たらなければ、世界二位の破壊力など虚しいものです」 どこか自嘲気味に独りごち、顔面に掌打を放つ。くもりが能力を使えば勝負有りの局面だったが、やはり彼女の能力は発動せず、飛鳥は鼻面を押さえながらくもりへ向き直った。 「伏線は張っておいた筈なんですけど、ね。とはいえ、流石にこれだけの未公開情報は反則ですか」 「……探偵殺すにゃ刃物は要らぬ、といった所かな。出来の悪い、三流の推理小説だ」 人は変わっていく。荒川 くもりも、銀天街 飛鳥も、そして他の参加者達も。望むと望まざるとに関わらず、交わり染まり、あるいは染めて、物語は続く。 「能力は使わない、と言ったが。君は強かったよ、強くなった――あるいは、私が弱くなったのかな」 「分かりません。だけど、もしそれがあなたの弱さだったとして、迷いや惑いに起因するものなら――あなたはこの先きっと、もっと強くなれる」 「君のように、かい。はは、探偵が魔王だなんて、柄じゃないね」 「……さて、そろそろ決着、つけましょうか」 がっし、と向かい合い、二人の両手が合わさる。破壊力を握力に転用し、飛鳥は簡単にくもりの両手を握りつぶす――が、それもまたミスディレクション。ほぼ同時のタイミングで、くもりは思い切り頭突きをかました。 「お、お、おおお」 飛鳥が怯んだ隙に、くもりは握りつぶされた両手を合わせ、一つの拳を作る。ハンマー投げのように、身体を軸とし回転しながら、その一撃は放たれた。 「ふ、っ、とべええ!(foot to be:「遠くへ行ってください」という意味の英語)」 大槌が飛鳥の腹部へ突き刺さり、彼女はビルの5階辺りまで吹き飛ばされた。渾身の一撃を放ったくもりは、その場にへたり込む。 『……銀天街 飛鳥を戦闘不能と判断。本バトルの勝者は荒川 くもりです』 VR空間に唯一人残ったくもりは、大の字に寝転がったままそのアナウンスを聞いていた。彼女のDSSバトルは、こうして幕を閉じたのだった。 ========== 「くもり」 目覚めた寝室で、晴也と雨がくもりを見下ろしていた。 「……ん」 「楽しかったか、くもり」 晴也が笑顔で尋ねる。 「楽しい――ばっかりじゃあ、なかったね。でも、これで良かったんだと思う。……お兄ちゃん、雨、今まで、迷惑かけてたね。ごめんね」 「やめろよ、姉貴。どうせ今からだって、さんざん迷惑かけられるんだから」 雨の言葉に、くもりは微笑んだ。 「私、此処を出るよ。お兄ちゃんと雨は」 「ああ。次は、俺達も一緒だ」「……仕方ないな、付き合うよ」 彼女は今回、能力を使わなかった。しかしそれは、あくまで自身の弱さをひた隠すための暫定処置。本能である破壊衝動が消えたわけではない。 きょうだい達は再び、この世界との決別を予感していた。
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第4ラウンドSS・オフィスビル街その1 紳士淑女の御一同、老若男女に諸姉諸兄、お集まりいただき光栄だな。 時間が無いから、手早く言うか。はじめまして(・・・・・・)、俺の名前は天問地文(あまどいじぶん)。俺読んで、世界最強の探偵だ。 「ああ……やっぱり見えねえな」 銀天街飛鳥と言う女、つまり私はオフィス街の只中を立ち尽くしていた。 如何せん、弱気になっている。私という生き物がいままで営んできた生業(なりわい)とは全く違う、東京に初めて渡って来た頃のことを思い出してしまった。 現代的なビルディングの群れに包囲され、負けじと胸を張り背を伸ばしたことを覚えている。三六〇度を見渡した、すべての方向から同じ人がやって来て、器用なことに私に触れもせずに、どこか遠いところに行ってしまう。 それがひどく寂しくて、人もまばらな故郷とまた違ったさびしさに独りで身を抱いた。あの頃に戻るだけだと思えば、きっと勇気も湧きだしてくるのだろうか? だけど、同じく何もないまっさらな状態でも、何も手に取っていなかったあの頃と今は違う。きっと、宝物を手にする前に戻るのは難しい。 差出人不明の招待状に釣られてここDSSバトルに出場してみたものの……立て続けに二敗、名声は地に塗れ相棒も失った。僅かに残ったなけなしの誇りを賭した戦いでも結果引き分け、私は私という生き方を再び見いだせずにいた。 「銀天街飛鳥とは、どうやるのだったか……?」 慰めの言葉も軽口も、もう飛んでこない。だからといって、私自身の口から言い出すのも何かが違う気がした。 空は曇天、いつ降り出してもおかしくはない濃い模様。足早にサラリーマン姿のNPCたちが歩を進めている。 無個性なスーツ姿の彼ら彼女らが交差して、私にも誰にもぶつからずに、無数の菱型を、鋭角的な図形を描いていく。ビルの屋上から見下ろせばさぞ見事な光景が広がるだろう。 「無個性……、か」 世界をそんな一言で片づけてしまえるくらい、私は世界を知っている気になっただろうか。今の私の頭の中には無個性な数字が乱舞している。 「 2467234712456716712712371346714674014567147357 45024671471367356740156734571257 」 「こんにちわ~。いいお天気ですね~」 だから。 無法図に世界を愛してしまえる魔王との出会いは、幸運だったのかもしれない。ざわつく環境音、彼女に触れまい、それでも急ごうとする人と人の雑踏の中、ぽつんと荒川くもり――異世界の魔王であり、転生の破壊者は立っていた。 割って入る。彼女は悠然と歩く。確かな。意図もせずに触れるだけで、描写を割く余地もなく紙を裂くほどの労力もなく、何の感慨もなく、道行く人々は消滅していく。 気づけば、雨音以外には何もしなくなる。 そして、地面に向けて垂直を引く雨の線が私たちをとみに濡らしても、どうしても私だけは微笑むことが出来なかった。 どうやら、俺が未来へ向けたメッセージは役に立ってくれたらしい。そうだ、彼女が見つけた暗号文は俺に由来するものさ。 ……と、言っても本来、この時点における俺と銀天街飛鳥なる探偵の間に接点はない。なのになぜわかったか。 それは、この暗号が普遍的な法則に従って成り立つもので、ある特定の人種を近くに持つ人間でないとまるで意味がないからだ。 それ以前に、慰み以上の意図はないはずなんだが、続けようか。 早速、種明かしと行こう。例文はわかるよな? 4 4 1 4 1 1 1 1 4 1 1 4 1 4 2 2 2 5 2 2 4 5 5 6 3 6 6 3 3 6 4 6 6 3 一見、意味不明だが整然とした数字の羅列に見えるが、こいつの本当の並び方はこうなる。 本来存在しない7や0は便宜上区切りとして入れたものだろう――、まだわからないか? ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● これでどうだ? とは言っても、急ごしらえだから穴はある。なにせ俺は読むのが専門で作るのは不得手だ。だが、ニュアンスは感じ取ってくれただろうか。 「ああ畜生。見えにくいな。喋るか。 察しの通り、俺は名前の通り『地の文』を操る魔人だ。地の文とはカッコ内の会話を除く、すべての文章とでも理解してくれりゃいい。 ……ははっ、地の文を理解しといて、天の言葉に縋るなんざ、皮肉なもんだな」 これじゃわかりづらいだろうな。 答えは『点字』だよ、俺の目はもうほとんど見えない。孫の顔を拝むことなんざ、きっと夢のまた夢だろうな。 「知りたいって思った時点で、その人は何かが変わってしまうって思うんです。あなたはどう思いますか?」 「知りたいということは戦いなのかもしれませんね、ですが……その欲求を否定できないと知っていて、よくぞ言う――ッ!」 接触即死、空間跳躍、精神の健全化、概念の破壊――。 今更に言い立てることではないかもしれないが、荒川くもり、魔王を号するだけあってその能力は圧倒的だ。 そして、『神』の領域に届きかねないその魔人でさえも一勝しか出来ていないというこの大会の恐ろしさに表立っておののき、密かに安堵した。 後者、己の醜さをどうにか吐き捨てたいが。たまった唾を吐き捨てるには、私と言う探偵はマナーが良過ぎ、言葉を飲み込んで回避するしかない現状に、歯を打ち鳴らす! 「くっ」 たった今も、そこだけ消え失せた雨音との位相の差を聞き取れなければ終わっていた。 おそらく人差し指はもちろん、足の指先でも、肉のひとかけらでも奪われたならば、そのまま誇りの一片でさえ残さず理解(破壊)される。 これは仮説だが、露出卿との一戦から遙かに動きが良くなっている。どちらにせよ、情報が足りない。 遮蔽物の無い街路にあって、私は無惨に這いつくばり、雨と雨の切れ目を見る。 たった一人で踊り続ける、傍から見れば滑稽を通り越して狂人の沙汰だ。痛々しい……いや、なんという道化! 既に地に底にまで墜ちたプライドだったが――。 「荒川くもり、何を考えている!?」 「いやいや、今さっき気づいたんですけどね。私、皆さんのことは知りたくても、別に私のことまで知ってもらう必要は無いと思ったんですよ」 何を思ったか、荒川くもりの第一手はおのれ自身の姿を破壊することだった。 声はすれども、姿は見えず。足音はある、破壊の痕跡は残る、けれど実体は存在しない。なんという出鱈目か。 迷いなく、いや迷いも見せず、荒川くもりはすべてを削る、砕く、なくす、破壊していく。 灰色の街に彩りを寄せた街路樹の真横を駆け抜け、円環に出来損ないのキューピッドを添えたようなモニュメントを潜り抜ける、サラリーマンの仕事疲れに鞭打つ、コンビニエンスストアのエナジードリンクが空を舞った。 そのいずれもが消えていく。痕跡さえも残さずに。 これまで積み上げてきたすべてが無意味なものと化したことに苛立ちがこみ上げ、けれど飛散したガラス片で切った頬をなぞって、自分が笑みを浮かべていることに気づいた。 勝てると思った。ならば、それに向けて論理を組み立てよう。戦う理由なんて後付けで十分だと思って、あまりの不合理さに声を上げて笑った。 ならば、打開策はただひとつ。私が不得手とする推理光線、それを荒川くもりに向けて撃ち放つことだけだろう。必中必殺の銀の弾丸(シルバー・バレット)、火種はきっと君の居場所だ。 世界二位がなにを泣き言かと言うかもしれないが、推理光線を撃つ機会はきっと一度きりだ。 一事件につき――推理披露の場を何十回と設けることが叶う探偵は存在しない。 雨に遮られ、射線が定まらず、それでも真実を求めて私は走った。 よぉ、諸君、ふたたび天問地文だ。 畜生、また白くなってきやがった。自分の名前が書けなくなるなんて、俺はもう壊れちまったのか? 「だったら、こうやって口に出して話せばいいって? ははっ、名案だな。俺が万全の状態だったら弟子にしてやってもよかったんだろうが、生憎俺の本体は『地の文』の方なのさ」 会話文なんざ俺が俺だったらこう話すなんて、過去から推測されるリプレイに過ぎねえ。 俺が俺であるというアイデンティティの拠り所、探偵としての魂なるものはここにしか のさ。 畜生……、畜生――! 「だからな、荒川嬢の地の文を乗っ取ったってのは本当に悪いことをしたと思ってるんだぜ。あのお嬢さん、普段ぽややんとしているようで結構考えてるからなぁ。 考えすぎてドツボにはまってるところも多いから、俺がちょっといじってやれば強いのなんのって。」 まぁ、なんだ。俺が目を付けたって意味で銀天街飛鳥は、確かに最後の弟子になるだろうが、手加減はするなむしろリミッターを外せと書いておいた。 それにな、俺は彼女自身の思考には何も労力を割いてない、そう も。 雨は降りやみ、くもり空は彼女の時間。 姿を消したいなら、まずは光と音を破壊すればいい。 それなのに、一足飛びに存在に手を付けずに姿という概念的なモノに手を付けるとは。 何度目の自問自答か知れなかったが、その疑問を当の本人にぶつけてみても有意な答えが返ってくるはずもない。けれど、私の中、甘えという可能性を潰す役に立った。 犯人(てき)の自白を誘導するのは、探偵の常套手段のひとつに数えられているが、今回はそれが有効な手管ではなかったというだけのことだ。 「終わってしまった可能性にしがみついて、勝てる可能性に振り分ける労力を惜しむのは――でしたっけ、師匠」 そうはいっても、順調に追い詰められている。 上層にまで至る吹き抜けと、樹氷に似たぴかぴかの外見が印象的なビルだった。今は、半ば以上が抉り取られ、無惨に内臓をぼろぼろとこぼしていた。 今は、その正式な名を脳の限られた容量に叩き込むことさえ惜しかった。 この構図を相手も待ち望んでいたのだろう。 屋上での一騎打ち、外壁を含めてかつてビルだった破片が散らばる中での無言の決闘。片方の姿が見えないということを除けば、絵になることこの上ない。 この期に及んで商業主義に乗っかるのも片腹痛いが、ここ、すべての元凶となった『C3ステーション』本社ビルを完膚なきまでに破壊して終わると考えれば、意趣返しとしては悪くなかった。 ……ここまでの鬼ごっこの中では外側から肺を傷つけたらしい。 大いに血の絡んだ唾を吐き捨てる。今は、この一言を吐き出すために全身が持ってくれればと信じるだけだ。 どうと胸を張れ、指先はピンと張れ、呼吸は正しく、発声も正しく――叫ぶ。 「犯人は――私だ!!」 つまり、必然的に、銀色の推理光線は、あやまたず私を撃ち抜いていた。当然、それに値する罪を犯してきたことを私自身理解していたから威力も十全のものだった。、 ゆえに、それまでに一度、そして返す光で二度、荒川くもりを彼女に当たる存在を貫いていたことも偶然ではなかったけれど。 ここに至る構図は、別に狙ったわけではない。 砕け散った鏡面加工の外壁が私と言う探偵であり――犯人を曇りなく映し出していた、それだけ。そして、その射線上に荒川くもりもいた、それだけの単純で、乱暴な真実――。 確かに、私の推理光線は湾曲する性質を持つ。 ならば、直線状に立とうと怖くはない。だが、もう一つの鏡に反応し、それを目指すという特質の方が優先された、それだけのことだった。 コンマ一ミリ、私が死ぬのが遅ければそれでよかった。 どれだけ汚辱に塗れようとも死をかいくぐり、次の事件に希望をつなげるのが探偵のあり方だ。刹那に 犯人と刺し違えてきたのは量販品の安物だろうと口の悪い者は言う。 十中八九負ける勝負を、推理光線の誤射という悪手で相打ち同然のなりふり構わない勝ちの目に変えた。 それをそしられるのも尤もなことであるが、私は鏡に撃ったおのれの姿に恥じ入るものは無いと確信する。決着はついた。 荒川くもりの気配が急速に薄れていくのを感じる。 曇り空から晴れ間が差して、壊れた街に再生の兆しが生まれる。心臓の鼓動は止まっていても熟熟とした熱と痛みが日の光に負けず劣らないものであると信じている。 だから、銀天街飛鳥は、私は、私を再びやれることに、誇りを取り戻したことにようやく気づけた。 かかっ、勝ったか。俺の最後の弟子は、やっぱり天晴ってところだな。 尤も、そんな優れた弟子を育てた俺はもっと天晴なわけだが…… っと。先程まで死にかけとった奴が何をピンピンしておるか、と思う連中もいるだろう。 俺は生憎、『全盛期』の天問地文(あまどいじぶん)だからな。 死にかけで順序追って物語追うのがやっとこさの末期と違って、結末までスキップするのなんざ朝飯前ってことさ。 ま、これなら――孫の地文(じもん)のことも、任せられそうだな。 俺に似ず、随分とひん曲がった悪たれに育ったようだが……頼むぞ、飛鳥。 銀鏡反応と言う言葉もある様に、表面に銀のコーティングを施して作り上げた鏡は存在する。 奇しくも銀無垢の花嫁という言葉が頭に浮かんだ。 生憎、それを見届けてやれないのが口惜しいが―― まあ、老兵はただ去るのみ、さね。 ああそうそう、お若いの。最後に暗号のおさらいだ。 1246712713571275012345734571234567
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第1ラウンドSS・オフィスビル街その1 ~1~ ゴメシュー…。 排熱口から蒸気を噴出させ巨大な影が腕を振り上げる。 振り下ろされた巨大な鋼鉄の拳(ゴメスマッシュ)が輝ける摩天楼に風穴を開けた。 ゴ…ゴゴゴッ…メッ…ス。 鈍く低く、それでいて圧倒的な質量を感じさせる音を立てながら巨大なる建築物は崩れ始めた。 50mにも至らんとする巨大な人型は車を踏み(ゴメスタンプ)つけ、ビルを剣で切り(ゴメスラッシュ)とばし、電波鉄塔で街を薙ぎ払う(ゴメスイング)。 高層ビル群が立ち並ぶオフィス街に人影はない。 ここは戦闘用に調整されたVR空間であるからだ。 この巨大な人型を人影と数えるならば。 街を疾走する女と合わせて、二つの影のみが。 この街で行動し、そして街を破壊する者である。 「全くもって大雑把も甚だしい事であるな!」 「しかしながら最適解かと思われます、卿」 「然り然り、あの巨体からでは吾輩を探すのも一苦労であろう。街ごと叩くのが合理的だな。しかし、それがまともな相手であればの話だが」 「ゴメスはまともではない、という意味でしょうか?それとも卿がまともではない。とも聞こえますが」 「無論、両方だ!」 崩壊するビルの谷間を、降り注ぐ瓦礫の雨の中を女は疾走する。 その女は全裸であった。 完璧なる均衡な肉体を持つ全裸の女。 アンナ・ハダカレーニナ。 人は畏怖と尊敬を込めて彼女を露出卿と呼んだ。 街を打ち砕き進む鉄の巨人の操縦席に座る『ゴメンねスッ裸』な男。 その名をゴメス・ゴメス・ゴメス。 人々に恐れられたその名も名高き万出裸素王(バンデラスキング)ゴメス、その人である。 ~2~ ゴメスは露出亜(ロシュア)のメキシコに生を受けた。 メキシコの大地は厳しいロシュアの中でも特に厳しい土地柄である。 群生するサボテンの針はチクチクと全裸に突き刺さり。 砂嵐は全裸にはとても痛い。 サソリとかもとても危険だ。 氷と雪に閉ざされた地ロシュアなのに更にこの環境である。 その代わり流石の警察組織もこの地にまでは足を踏み入れる事は無かった。 人々は服を脱ぐために血を流さねばならない、そのような地である。 貧しい裸麦農家の子であったゴメスはこの地で細々と暮らす人たちを見て成長した。 ゴメスには理解できなかった。 何故人々はこの地で苦しい思いをせねばならぬのか。 ゴメスには怒りがあった。 何故裸になる自由がないのか。 5歳の時、ゴメスはパンツを脱ぐことにした。 両親はまだ早いと反対したがゴメスはパンツを脱いだ。 ゴメスは開放感を得た。 サボテンの針でゴメスのゴメスは傷ついたが逆にそれがゴメスを鍛えることになった。 小さくてふにゃふにゃで弱っちいゴメスはいつも血を流しバカにされた。 だが15歳になった時、サボテンの針もサソリの毒も砂嵐さえ、大きくて堅く逞しいゴメスには傷一つつける事が出来なくなっていた。 もう誰もゴメスをバカにする者は居なかった。 教会の牧師(全裸)は言った。 「ならばお前はこの厳しい環境と引き換えに自由を得ることになるだろう」 「すなわち酒と暴力と全裸だ」 「万の服を脱げ、それも自由だ」 「出す自由がある、ナニを出すかはお前が決めろ、自由だ」 「裸でいることができる、それはお前の持つ当然の権利だ」 「素っ裸、それは偽りなき自分だ、けして見失う事のない自分だ」 「そう、お前は万出裸素(バンデラス)だ」 「暴力と全裸がお前に欲しい物を与えるだろう!」 「気に入らないヤツは全裸で叩きのめせ!」 「お前は誰にも理解されないが、お前は誰にも理解される必要がない!」 「強く、大きく、生きろゴメス!」 この時、ゴメスは魔人として覚醒した。 大きく! 堅く! 逞しい! それこそが強さなのだと! 鋼鉄(サイバネティクス)は無敵の堅さを! 石油(オイル)は漲る巨大さを! 蒸気(スチーム)は逞しき熱量を! それは魔術によって生み出された鋼鉄の巨人(ギガント)! それはゴメスを象った蒸気の幻想(スチームパンク)! それは15の権能を持った全裸の天使(エンジェル)! 無敵の万出裸素王(ゴメスパロボ)の誕生である。 ゴメスパロボが世界中を荒らしまわり、露出亜への弾圧が厳しさを増したのはその少し後であった。 ~3~ 通常、VR空間には外部からのアクセスはできない。 だが露出卿に付き従う少女の魔人能力『匿名露出自撮り生放送コメント付き(アカバンガール)』はあらゆる電脳空間に潜り込み自撮り映像と音声を届かせることができ、相手からも反応を得る事が出来る凶悪極まりないハッキング 通信能力であった、ただし裸で。 とあるホテルの一室に無数のモニターとハードディスクに囲まれた少女が高速でキーボードを叩きながら、情報収集で露出卿のバックアップを行っている。 まあ、裸で。 それが少女の魔人能力の制約であるので致し方ない。 うん、仕方ないよね。 しかし、彼女のハッキング能力を持ってしてもゴメスパロボのシステムに潜り込むことはできない。 「バカなのですね、これはきっとバカなのですね。今時制御機構が完全蒸気機械式だなんて」 少女は微かに舌打ちをする。 「ふむ、馬鹿には違いあるまいが、ゴメスは単なる馬鹿ではない。あれは褒め称えるべき大馬鹿だ。」 胸を張って露出卿が応える 鉄と油と蒸気で動く鋼鉄の巨人は電子機器に無縁の存在だった。 「では正面から戦うというのは?」 「流石にそれは聊かに苦労するだろう。圧倒的力に対して圧倒的実力で組み伏せるというのは浪漫ではあるし、そういう戦い方も勿論好ましい。だが、違った戦い方もまた良しだ。さて戦闘空域の建造物データは解析できたかね」 「順次解析中です、卿」 「よろしい!では鋼鉄の巨人を退治するとしようではないか」 呵々と笑う声が少女の耳に届いた。 ~4~ 「うめぇな、ゴメチップス。マジウメェ!マジパネェ!ウケルww」 ゴメスパロボのコックピットでゴメスはゲラゲラと笑った。 食い散らかされたゴメスナックの数々とゴメスカッシュやゴメスプライトの空き缶が散乱している。 ゴメスは全裸であった。 「おいおいおいおい~。まだなのか~?まだ出てこねぇーのかぁ?」 手にしたジョイコントローラーのボタンを押すだけで股間のゴメスキャノンからミサイルが乱舞し高層ビルが崩れ去っていく。 「ひゃっほい!命中~、ハイ死亡~ってかァ?うひゃひゃ」 とてつもなくウザい独り言を呟きながらゴメスは街を破壊している。 「ンだよォ!あれだろ?露出卿ったら有名人じゃん?マジかよ俺の方が有名だっつうの!こそこそ隠れてないでさァ!ウルトラミラクル有名人のゴメス様の前に出てきてくれよォ!俺様ちゃんがサクッと片づけてさァ!俺の方が強いって事を教えてやっからよォ!」 ゲラゲラと不快な笑い声を大音量で街にばら撒きゴメスは進撃する。 (ああ~、うぜぇ。この程度の挑発に乗らねえってか。そりゃそうだよな。街ぶっ壊してりゃ巻き添えで死ぬかとも思ったけどよ。こんだけ目立ってちゃあ近寄っても来ねえかァ?) ゴメスにとって言葉は武器の一つである。 タダで使える強力な武器であるという事をゴメスは熟知している。 敵を罵倒し挑発することで冷静さを欠いた相手を倒すのは楽なことこの上ない。 大会規約の目を盗んで看守どもを唆し出場の機会を得たゴメスはけして馬鹿ではない。 愚者と侮られることは、ゴメスにとって利である。 あえて馬鹿に振る舞う事で敵が油断してくれるなら。 多少の隙を見せて相手が動いてくれるなら。 そこを叩き潰せばよいだけの事なのだ。 「挑発に乗るわけではないが!戦いの準備は整ったぞ“万出裸素(バンデラス)”ゴメス!!」 何時の間にか。 (いや何時の間にか、じゃねェ。瓦礫の隙間を通り抜けやがったかァ?俺様の目を盗んでよォ!) ゴメスパロボの足元に全裸の女が立っていた。 「うひょ!良い女じゃねえかァ!死ね!露出卿!」 ゴメスパロボの排気口(ケツ)から猛毒の神経ガスとゴメスの足の匂いが噴出される。 ゴメスの15の機能の一つゴメスメルは障害物の多い対人戦において特に有効な攻撃だった。 が、しかし。 グラリ、とその瞬間にゴメスパロボの体が傾く。 いや回転する 「ンだァ!?」 露出卿が、ゴメスパロボを投げ飛ばしたのだ。 「いざ、参る!」 ~5~ 投げ技を持つ武術において、如何に相手の体勢を崩すのかというのが重要である。 「あれを持ち上げて投げ飛ばすのですか?卿」 「そうしたいのは山々だが、あれほどの巨体を技だけでどうにかはできないな」 「では、どうしますか?ワイヤーでも使って足を引っかけて転ばすとか」 「ふむ、準備さえ整えば悪くない作戦だが、あの質量を引っかけるとなるとワイヤーを使うにしても強度が足りぬ」 「では、別の考えを」 「いやいや、持ち上げるのは無理であるが。投げることはできるぞ」 露出卿の魔人能力『高速5センチメートル』は。 触れた物を5センチメートル移動させことができる。 ゆえに、肌の露出が多ければ接触面積が増えて有効な活用が可能となる。 なるのだ、全裸である事は致し方ないと言えよう! 言えるんだって! さて触れた物とはなにか。 魔人能力は個人の認識の拡大を世界の押し付けるとされる。 何に触れたかを露出卿がどう認識したかによって。 その効果は発揮される。 ~6~ 「いざ参る!」 露出卿が動く。 (道路を踏みつけよ!奴の左足が乗るこの直線道路を5センチメートル下方へ!) 露出卿は道路を踏み抜いて走りゴメスパロボの右足に触れる。 (この“右足”を右斜め前方に5センチメートル!) 浮き上がった足の隙間に腕を差し入れる。 (“ゴメスパロボ”を5センチメートル上方へ!) 流れるような動きを外から見れば、人間が50mにも及ぶ巨人を投げたように見えるだろう。 普通ならばその程度の誤差は鉄の巨人のバランス制御の範疇である。 だが、露出卿の能力は早い。 一瞬のうちにゴメスパロボは後方へ転倒する。 「舐めんじゃねぇぞ!このゴメス様をよォ!」 ゴメスガーディアンと呼ばれる(主にゴメスによる自称)後部防御フィールド展開機能。 そしてゴメスカイと呼ばれる飛行能力によって仰向けの体勢ながらゴメスパロボは踏みとどまる。 だが排出口(ケツ)に道路標識が突き刺さりガスの噴出が止まる。 (これも計算ずくか?危ねぇ!だが耐えたぞォ!?) しかし、攻撃は終わらない。 周囲に立ち並ぶビル群がゴメスパロボに対して一斉に倒壊したのだ。 「なッ!?てめェッ!」 「ずいぶん時間がかかったが、それぞれのビルの支柱や基礎を少しずつ動かしておいたのである。あとは道路が僅かに陥没すればこれこの通り。さて大質量の攻撃に耐えられるかね」 全力でその場を離脱する露出卿が呵々と笑った。 その女は全裸である。 ~7~ 瓦礫の山が崩れる。 「やりましたね、卿」 「ふむ、これで流石の巨人も動けはしないだろう、君のデータ収集と計算のおかげだ。しかし、動けなくなったのはゴメスパロボだけだよ」 「え?」 露出卿が崩れた瓦礫の山を見据える。 その山の頂上には全裸の男が立っていた。 男の名はゴメス。 瓦礫に押しつぶされる寸前にゴメスァラバと呼ばれる機体消滅能力を使いゴメスパロボを解除、瓦礫の中の空間をゴメスイムによって泳ぐように脱出したのだ。 「よぉ、露出卿。良い体してるじゃねえか、そそるぜェ!」 「ふむ、ゴメス。機械の体など脱ぎ捨てて全裸になった方が似合っているぞ」 「ぬかせ、化けモンに言われても嬉しくねえっつうの。ま、本物の化けモンってのはァ」 ゴメスが走る。 「俺だがな!」 ゴメスが地面から掴み取って投げた瓦礫が奇妙なカーブを描いて露出卿に迫る。 キィン…。 だが瞬時に瓦礫は黄金剣の一閃によって切り捨てられる。 「ひゃっひゃ!魔球ゴメスライダーつってな。ゴメスパロボにできる事はよォ。ま、俺も当然できるんだよォ!」 (流石にミサイルとか、バリアは無理だけどなァ…ま、そんなことまで馬鹿正直に言う必要は!ねえよなァ!) 「器用な男だ」 露出卿は黄金の剣を抜き半身に構える。 「ひゃーッ!!」 ゴメスが飛び上がる。 メキシコで鍛え上げられたゴメスの股間はサボテンより鋭く砂嵐より激しい。 「ゴメスラッシュ!!」 振り下ろされるゴメスの股間剣を露出卿は回避する。 「器用ゆえに、一つ一つの攻撃は、未熟!」 「そりゃどうも!参考にさせてもらわァな!」 踏みつけのゴメスタンプの追撃を黄金卿は剣で受ける。 剣を踏み台にしてゴメスがさらにジャンプ。 「痛ェーぜ、クソが!」 上空へのバック転の瞬間、ケツからゴメスメルを噴射! 毒ガスとまではいかないが単純にオナラは臭い! 「ぐぬッ」 「ヒィハァー!」 左右両拳のコンビネーションから繰り出されるゴメスマッシュ! 一瞬の目つぶしは流石の露出卿もたたらを踏む。 その隙をついた連撃が叩き込まれる。 「ぐはッ!」 「ヒャーハハ!!ゴメ…」 屈み込むように体勢を低くするゴメス。 「ゴメスイマセンデシターッ!!」 突如の土下座であるが、しかし露出卿は表情を変えない。 この男がこの局面で命乞いなどするはずもなし! 勢い良く叩きつけたゴメスの両手により大地に震動が走り露出卿のバランスが僅かに崩れる。 「ンて、謝るわけネェっての。わかるよなァ!!」 挑発、目つぶし、振動による崩し。 致命の一撃ではない、すべては相手の動きを封じる為の布石。 一瞬で良い、この強敵に対しては一瞬で良いのだ。 相手の動きを封じた一瞬。 その一瞬が必殺の勝機。 即ちこの一連の流れこそがゴメスペシャル! 次の一撃を必殺足らしめるゴメス最大奥義の一つ、通常の技を絡めても技の威力は少なく見積もっても倍となろう。 だが次に繰り出される技は必殺。 おお、見るが良い!ゴメスの股間が奇妙に曲がる! メキシコの毒サソリの猛毒を受け続けたゴメスの股間は今やサソリの尾にも等しい毒針と化したのだ! 次に繰り出される技こそゴメスの奥の手中の奥の手。 この技を知る者はゴメス以外にはいない。 何故なら受けた者は死ぬ以外になし。 人知れず鍛錬を積み、これだけを達人の技と極めたゴメスのバンデラス奥義。 他の技を未熟と笑われても構わない。 馬鹿と侮られても構わない。 最後に立つのが自分であれば。 ゴメスは全く構わないのだ。 卑怯ではない、それが露出亜のメキシコの大地を生きるゴメスの生き様である。 ゴメスカーレットニードル。 致命の一撃を前にして露出卿は自分の豊満な胸を揉んでいた。 ~8~ 相手が達人であるほど。 この能力は嵌る。 ほんの僅かの隙、ほんの僅かのずれ。 間合いを外し、間合いを詰める。 自らを触る。 『高速5センチメートル』によって、露出卿は自分自身を5cmだけ移動させたのだ。 「てっ!?」 ズシャッ…。 振り上げられた黄金剣がゴメスの体を逆袈裟に斬り割く。 「てめえェ、セコイ能力の使い方しやがって…だいたい最初からやり口が卑怯なんだよォ」 ゴメスの鋭い股間は露出卿の心臓ではなく左腕に突き刺さっていた。 ザンッ! 毒が回る前に返す斬撃で露出卿は自らの左腕とゴメスの股間を切り落とす。 「君に言われた場合、卑怯は褒め言葉と捉えてよいのかな?」 露出卿は血を流しながら笑う。 「ンなわけあるかよ、クソ女が。単純にムカつくだけだ」 「いや、だが見事であった、ゴメス。また立ち合いたいものだ」 「ケッ、二度と戦うかよォ。バーカ、バー…」 ドサリ、とゴメスは倒れ伏した。 オフィス街は見る影もなく瓦礫に埋め尽くされている。 倒れた男の周囲は血で赤く染まっていた。 勝者、露出卿。 ~9~ 「どうであるかな、吾輩の活躍は?ロシュアの評判もうなぎ上りではあるまいか」 「いえ、動画のコメントは『ロシュアヤベェ』とか『恐ロシュア』とか『おかずにしました』とか『男の全裸はいらねえ』などばかりですが」 「なんと、ふむふむ。確かにこれは身内の争いであったな」 「そういう問題ではないかと」 「しかし、良い男であったよ、ゴメスは」 「まあ、顔は良かったですね」 「顔が良く、肉体も鍛えられておる。性格は捻くれておるが、それも良さであろう」 豊満な胸を揺らし呵々と露出卿は笑うのであった。 おしまい
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裏第一回戦SS・オフィスビルその1 【1993年・足りない二人梅田に立つ】 「モア」 『めーらめーらとー、もーえるでジェラシー』 「モア、モア、モア」 歌ってるのはワイやない。ビル内のテレビで流れとるBGMや。 吉本新喜劇のエンティングで昔流れ取った曲や。確かワイが生まれた前後で この曲がプチヒットしとったけど、その後は使われん様になったから・・・、 二十年近く前かいな!おいこら迷宮時計、どこが現代やねん! まあ、過去が中世から近代の範囲って説明されとるから二十年前も現代に分類されるのは わかるけれどなあ、持っとる金使えへんやん!新千円札とか金ぴか500円とか全滅やん! まあええ、さっさと対戦相手の四葉っての倒して帰ればいい話や。 ワイはビルの中の避難民達をざっと見渡す。着の身着のままでここまで逃げてきた 人達が天井から吊り下げられたテレビで放送されとる吉本の番組見て笑っとる。 「すんませーん、こん中に四葉って女の子いはりますかー?」 「なんや、姉ちゃんツレとはぐれたんかー?」 「モア、モア、モア」 「まあそんな感じですわー」 「モア、モア」 数分後、人混みを押し分けて小学生ぐらいのチビッ子がワイの前に出てきた。 ・・・天使や、なんつーか全体的に天使やこのチビッ子。 「こんにちは、須藤四葉です!よろしくおねがいしますっ!あ、モア、モア」 「おう、どっからでもかかってこいやあ!」 「はい。モア、モア」 チビッ子元気に頭を下げる。ワイどーんと胸をはる。 「モア」 チビッ子なんかモアモア言うとる。そーいや昔TVCMでオッサンとオバハンのコンビの 漫才師がモアモア言っとったけど、それのモノマネやろか。 避難民数百人、演劇か何かとやいのやいの騒ぐ。 無関係の人が何人おっても関係あらへん。ワイは心の隅に良心を追いやり戦う決意をする。 「モア」 絶対やったる。 「モア」 やる。 「モア」 やれんのか? 「モア」 なんかやれん気がしてきた。 ワイは開始の合図とばかりにベースをかき鳴らす。 ジャーン! 「聞いて下さい、『こんな状況で戦えるかいな』」 「みなさーん、お歌の時間だよー。手拍子お願いしまーす!」 「よっしゃー!合いの手ならこの飯田トオル、末期がんの47歳に任せろー!」 ワイのタイトルコールの後に四葉ちゃんが合いの手お願いする。 避難民は即座に手拍子、彼らを代表してホームレスっぽい汚いオッサンが合いの手役に 立候補してワイの隣に立つ。このノリの良さ正に大阪や。 しっかし四葉ちゃんも場馴れしとるな。こう見えてお姉さんキャラかいな? 「ワン、ツー、ワンツーさんし」 ジャカジャカジャカジャカ 「飛んだ先は故郷大阪90年代(バブル!)、対戦相手は可愛い天使(モエモエ!) ビルの中には避難民(ギュウギュウ!)、ビルの外は滅亡中(な、なんだってー!) 見敵必殺誓って来たが(悪・即・殺は一女ちゃん!)、そんな決意はどこへやら(ズッコー!)」 ジャカジャカジャカジャカ(ヘイヘイヘイヘイ、ワオワオワオワオ!) 「ここが刑務所だったなら(プリズン!)、周りを無視して戦えた(ファイ!)、 相手が青年だったなら(メーン!)、躊躇をせずに戦えた(イヤーッ!)、 しかし現実振り返るならば(バーット!)敵は幼女で場は避難所(俺達ノーギルティ!)、 外は滅亡ワイは絶望(ジーザス!)、こんな状況で戦えるか!(ムリムリ無理さ絶対に!)」 ジャカジャカジャカジャカ(四葉ちゃんカモーン!) 「わたしは須藤四葉です(カワイイ!)、ゆめは世界平和です(イイネ!)、 それと家族もさがしてます(エーッ!)、だからゆうしょう目ざします(ガンバ!)、 めいきゅう時計そうだつ線ぜったいかつ気でいたけれど(あ・どーした!)、 こんな所じゃあ私もたたかえませーん!(そーじゃんそーじゃん当然じゃん!)」 ジャカジャカジャカジャカ(さあ二人一緒にせーの!) 「「ワイら時空冒険者」」 「ツマランナーと」 「四葉」 (俺はホームレスの飯田トオル47歳!金の為に戸籍も売った卑しい男!) 「「休戦しましょそうしましょ!」」 ジャーン! そして三日後、 ジャーン! 「聞いて下さい、『サンドイッチを作りたかったのにドーナツってるの?』」 「ワン、ツー、ワンツーさんし」 ジャカジャン! 「食パン切ってぇー、ミスったドーナツ!」 ジャーン! 「三十秒以内に食べてや~、このドーナツ消えるねん」 能力を使ってビル内で炊き出しに協力するワイの姿がそこにあった。 べ、別に勝負を諦めたわけやないんやからな!ここの人達を味方に付けながら チャンスを待っとるだけやからな!三日前はあれや、実は腹痛かったから! ホンマやから!ホンマにホンマやからー! 【1994年・避難民生活は楽しいな】 「さっきテレビで関西滅亡ってゆっとたで」 「あっちゃー、今年一発目の滅亡早くも襲来かいなー」 「わはは、去年の一発目に比べたら四日も遅いからマシやがな」 関西人てすごい。私はそう思った。ツマランナーさんいわく、 関西はほんとうにしょっちゅうめつぼーしているらしく、 関西と縁もゆかりも無い魔人が能力のコストとして関西をめつぼーさせること すらあるということだった。ひどい話である。そりゃあ、関西人もタフになるよ。 でもめつぼーにめんえきの無い関西人もいる。主にそれは親のいない小さな子供たちだ。 ひなん所になっているこのビルにはそんな子供達を育てる場所がそんざいしていて、 私はそこのお手伝いをしていた。 「てんしのおねーちゃん!今日はめつぼー警報もめつぼー注意報もないで! 外であそべるで!」 「ごめんね、私がビルの外に出ると禅僧のお兄ちゃんが消えちゃうから。 そういう、魔人能力の制約だから」 「そんじゃしゃーないな!外で変な形のガレキ見つけたらあげるわ!」 私とツマランナーさんがこのビルにきてから一年がすぎた。 ツマランナーさんは今では人語を話せる禅僧というあつかいになっている。 孤児院の外のことをほとんど知らなかった私にはいまいちピンとこなかったけど、 この時代にはまだビジュアル系も男の娘もそんざいしないし、ニューハーフというのも 何かちがうからとあれこれ考えたすえに禅僧だと名乗ってしまったんだって。 「IZAMがメジャーになってないこの時期にワイがビジュアル系とか 名乗るのは、ただの音楽好きがタイムスリップしてビートルズの立ち位置を奪うのに 等しいくらいのやってはアカン事なんや。つーても四葉ちゃんにはわからんか」 わからんかった。 で、ビジュアル系とかを名乗れないのは良いとして、何でレッサー禅僧なんて そんなウソを言ってしまったのか、飯田トオルさんと二人で聞いてみたら 「ワイのダチのおとんがそういう生き物って話を聞いた事あるねん。 やから、ついその設定借りてしもたんや。正直後悔しとる、レッサー禅僧てなんやねん」 だって。 そんなツマランナーさんも今ではすっかりここの一員だ。 最初は人が減ったスキをついて私と勝負しようとか考えていたみたいだけど、 関西がめつぼーするたびに避難者はビル内にほじゅーされていくし、 ツマランナーさんに会うたびにコッソリ『赤×モア』で彼の迷いやトイレへいきたい きもちを濃くしたりして半年ほどやり過ごしていたら、さいきんでは ほとんど勝負をいどまれる心配はなくなった。 家族は見つけたい、お外で遊びたい、でもここのみんなは孤児院にいた時は 知らなかった事をいろいろ教えてくれる。飯田さんは私達の事情について真剣に 相談にのってくれるし、ツマランナーさんのことももっと知りたい。 関西めつぼーが一段落するまではまだここにいようと思う。 【1998年・禅僧街道まっしぐら】 仏壇がある。仏具がある。床は板張りになっている。 ここに来てから五年、滅亡の度にビルに侵入し物資を奪おうとする暴徒が結構おった。 それを四葉ちゃんと飯田さんとワイの三人で撃退しとるうちに、 業者さんが色々世話してくれてワイ用の禅僧フロアが完成した。 部屋の中央、髪もヒゲも伸び放題で座禅しとるワイ。ゴスロリドレスもいい感じに ボロボロになってだいぶ袈裟っぽくなってきた。 ワイは目をカッと見開き叫ぶ。 「なーーーーんでーーーーーやねーーーーーーん!!」 ほんまなんでやねん。ワイはあの幼女(今や少女)と戦いに来たんやぞ。 能力発動以外で一言も発する事なくクールにベースで頭ぶっ叩いて帰る予定がもう五年や。 五年って!迷宮時計争奪戦の戦闘時間最長記録間違いなしやん、記念として一回ぐらい 殴らせろや!出てこいやラスボス! 「ぶっ壊してやるから出てこいや!迷宮時計の本体的な何か!」 ワイの叫びに応える様に扉ががらりと開いた。もろちん、やって来たのは迷宮時計やない。 「呼ばれて飛び出てラスボス登場!フハハハハ、さあ、お前の気分が晴れるなら 俺をその迷宮時計の本体的な何かとやらの代わりに好きなだけ殴るがいい!」 「飯田さん、そういうのええから」 末期がんに侵されながらもこのビルを守り続けるホームレスの飯田トオルさん、 こないだ47歳の誕生日を迎えたばかりのこのオッサンはワイと四葉ちゃんの存在を 真っ先に受け入れてくれて、ここで暮らす事へ色々協力してくれとるいわば恩人や。 「どうした、とうとう悟りに到達したのか?」 「いや飯田さん、悟りからは真逆の思いですわ」 「四葉ちゃんと戦いたい、そういう悩みか?」 「せや。人払いだけでいいから手伝ってくれんか?」 「出来んな。俺は身内には平等に接する中立主義者だ。それに、この梅田避難ビルには まだ四葉ちゃんは必要な存在だ。お前が負けたら四葉ちゃんが消えるという話だろう?」 「何でワイが負ける前提で話すねん!」 「お前は彼女を目の前にすると、その度に戦う気すら失っているじゃないか。 人の多さなんて関係ない。お前は彼女と戦える最低限の資格すら持ってないんだよ。 あっちがその気なら、お前さんは勝負を挑もうとしたのと同じ回数死んでる」 「う・・・」 反論出来んかった。確かにその通りや。この五年間チャンスは結構あった。 でもその度に腹が痛くなったり、戦う事が怖くなったり、四葉ちゃんを傷つけたく なくなったりして最初の一撃すら放てずにおる。 飯田さん以外はワイらをずっと仲良しだと勘違いしてる始末や。 「まっ、せっかく相手が見逃してくれているんだ。お前はもっと強くなるべきだ。 お前を慕ってくれるガキと一緒にな。ホラ、噂をすれば来たぞ」 スキンヘッドのガキが廊下を裸足で走ってくる。 げー、このビルの中で一番会いたくないガキが来やがったわ。 「レッサー禅僧のおっちゃん!修行してーや!」 「帰れ!おっちゃんは大人の話しとって忙しいねん。他の子供と遊べ」 「だって天使ママ喧嘩したらめっちゃ怒るもん、禅僧のおっちゃんなら 遠慮せず殴ったり蹴ったりできるもーん!」 「こらー!ワイは禅僧やぞ、もっと怖がれよ。うらー!いつか悟ったらお前を 真っ先に食ってやるぞー!」 「やーいやーい、天使の尻に敷かれるヒモのレッサー禅僧ここまでおいでー!」 「待てやサブイネン、いや違った。待てや珍念!」 板張りの床を二人で走り回る。 五年前、ワイと四葉ちゃんが休戦したちょっと後にこのガキは瀕死の両親に 抱きかかえられてここに来た。両親はここに来てすぐに死んでしもたから、 まだ1歳ぐらいの赤子やったこのガキの名前すらわからんかった。 んで、ワイがこいつに珍念と名付けた。 苗字がサブイネンと同じ佐分山やったから、何となくそう名付けたんや。 そのせいか知らんが他のガキと違ってワイに随分と懐いてくる。 しかも成長するごとにサブイネンにどんどん似てくる。 そういや、サブイネンもレッサー禅僧に寺で育てられたってゆうとったな。 この時代のサブイネンもこんな感じやったんやろか。 「くらえー、ひっさつ8ビートパンチや!」 「あ痛ぁ!」 ちゃうねん。 地の利を得る為の情報収集期間なんやからね! 【2000年・四葉は夢を見る】 私の目の前に猛獣がいた。猛獣は器具で無理やり大きく口を開けさせられていた。 「モア、モア、モア・・・」 私は猛獣の目の前に立たされ、延々と運命を加速する。 猛獣の口内の黒色、虫歯になる運命を加速させる。 猛獣は数分間虫歯の痛みで苦しみ続けた。そして死んだ。 結果を見届けた園長は満足げな顔で私に近づくと、猛獣が着けていたのと同じ 器具を私に装着し、ガムテープで私の両目を塞いだ後、口の中に腕を突っこんで来た。 既に全身を色んな器具で固定されていた私は痛みに身をよじる事も出来ない。 両目が見えないから園長を能力で止める事も出来ない。 口の中が胃液や鼻水まみれになるまでいじられ、そこで目が覚めた。 △△△ちゃんが両足を開いた状態で椅子に固定されていた。 「モア、モア、モア・・・」私は視界に映る△△△ちゃんの運命を加速する。 放尿する運命を加速された△△△ちゃんは物凄い勢いでオシッコを股間から吹き出し、 おせわ係を失敗した事を謝りながら私の顔面にオシッコを浴びせ続け気絶した。 結果を見届けた園長は満足げな顔で指を鳴らすとガムテープを構えた男の人が いっぱい現れた。「モア!モア!」目を塞がれる事やその後口の中に腕を突っこまれる事を 思い出した私は男の人達の睡眠欲や自責の念を濃くしていく。が、逃亡を封じられた 状態で複数を同時に相手ににしたら私の能力は酷く脆い。二人目を無力化した時点で ガムテープで両目を塞がれる、器具で口を無理やり開けられ園長の腕が突っこまれる。 口の中が胃液や鼻水まみれになるまでいじられ、そこで目が覚めた。 「どうした?顔色が悪いぞ、体調でも崩したか?」 『トオルくん47歳たんじょうびおめでとう』と書かれたケーキをシュバババとマッハで 食べながら飯田さんが私の顔を覗き込んでくる。妻夫木さんがこのビルで暮らす子供達に バースデーケーキを出していたら「俺も今月47歳になったからくれ」と言って来たので、 すんごーく、嫌そうな顔をしながら出したケーキだ。三十秒で食べないと勿論消える。 「最近怖い、夢を見ます」 「『怖い夢を見る』のか、『夢を見るのが怖い』のかどっちだ?」 「両方です」 私は最近になって夢というものを見る様になった事とその夢の中で毎回園長の 実験が行われている事、それと最後はいつも口の中に腕を突っこまれる所で 夢が終わる事を飯田さんに話した。 「任せろ、俺は末期がんだからこういう事に詳しいんだ。 んーむ、お前さんの話をまとめると・・・どう考えても喉の奥が怪しい! ツマランナー、内視鏡出してくれないか?」 ちょうど今月誕生日の子全員分のケーキを出し終えた妻夫木さんは、 やっぱり嫌な顔をしながらも内視鏡を出してくれた。 「まったく・・・何で俺がホームレスのおっさんの為に歌わなあかんねん」 「俺じゃなく四葉ちゃんの為だ、我慢してくれ」 「なおさら嫌やわ!こいつは俺の敵やねんぞ!」 「じゃあ早く勝負するんだな。出来るものならな」 「ぐぬー!やったるわい!珍念達が普通の学校行ける様になったらな!」 「ハイハイ頑張れ頑張れ、おっと、三十秒経つ前に口の中覗かないとな 四葉ちゃん、ちょっと我慢してろよ」 私の口の中に内視鏡が入っていく。夢の中の園長の腕のイメージが鮮明に蘇ってくる。 あ、コレ無理だ。酸っぱい液が逆流してくる。 「ウボオオオオオオエエエエエエェェェェ!!!!」 「我慢しろつったろ!」 ゲロまみれになった腕を慌てて引き抜き、飯田さんは汚れた腕を妻夫木さんの服や ヒゲで拭き取る。 「四葉ちゃん、吐くなよなー」 「はいゴメンナサイ」 「だが、ツマランナーの服を汚した甲斐はあったぞ。ノドチンコの裏にスイッチの様な ものがあった。あれは喉の奥から脳幹に向かって差し込んで、そいつの記憶を消したり 逆に記憶を焼き付けたりするのに使う器具だな」 「お前何でちょっと見ただけで断定できるねん」 「言ったろ?俺は末期がんだからそういうの詳しいって。実物を見た事あるから 間違い無い。四葉ちゃんが成長して脳幹に刺した針が抜けかけたのか、単に内部電池が 無くなったのかは知らないが、最近夢を見る様になったというのはそういう事だ」 そんな、それじゃああの夢は全部本当にあった事・・・! 夜中に園長に連れ出されて様々な実験を行った事や子供へのお仕置きに私を 使っていた事が本当に・・・!私は飯田さんの言葉に反論する事すらできず、 茫然と座り込んでいた。きっと顔は真っ青になっていただろう。 「心配すんな、四葉ちゃん。これは身体が正常な状態に近づいているという証拠だ。 これからどんどん夢を見る事ができる。それだけじゃない、起きている時だって 昔の事を完全に思い出せるかも・・・」 「だらっしゃー!」 どくちゃあ、と嫌な打撃音を後頭部から発して飯田さんは机に倒れ込んだ。 妻夫木さんがベースで飯田さんの頭をホムーランしたからだ。 「いいかげんにせい!末期がん患者でホームレスで年上だから色んな事我慢して来たけど、 流石に今のはあかんやろ!見ろ、四葉ちゃん泣いとるやないか!」 「あの、私も今年で18歳だから流石に泣いてはないです」 「泣いとったって事にしとけ、その方が飯田も反省するし。ええか、夢ビギナーの 四葉ちゃんは知らんかったみたいやけど、夢なんて99%がありえない出来事なんやで。 ワイの見た夢の中にはな、四葉ちゃんが見たのよりずっと怖い夢があるねんで。 聞きたいやろ?聞きたいやろ~?」 「えっと、別に」 「そうか聞きたいか!あれはなー、ワイの身体に迷宮時計が出てきたばかりの頃、 ワイが四葉ちゃん以上の美人さんやった頃に見た夢や」 勝手に夢の話を始める妻夫木さん。今やビジュアル系の面影がほとんど無い妻夫木さん。 そんなに自分が可愛かった頃の話をしたいのか、あの頃も私の方が可愛かったぞ、 そう思ったが、もう大人な私は黙って話を聞いてやるのだ。 この汚らしいゲロまみれのレッサー禅僧は私を慰めようとしているのだから。 「そんでなー、優勝してワイの時計が全部取れたのはええけど穴だらけになってな、 そこから身体の中身がどんどん抜けてって、ほんまもんの女の子みたいに なってしもたんや。中身と一緒に記憶とか思考力も無くなってたみたいで、 助けを呼ぼうとしてもアーウーとかしか声が出せず、ワイが誰なのかも 分からんよーになった頃ようやく助けが来たねん。でもそのオッサンが わっるい変態の金持ちの芸術家でなー、ワイの身体の穴のフチを撫でながら こう言うねん。迷宮時計争奪戦行ってこいって。夢の中まで迷宮時計かい! というか優勝したのに状況悪化しとるやないかーい!」 「アハハ、それって勝ち抜いたら穴の中が時計盤で埋まっていくんじゃないですか?」 「せやな、そんでまた時計外そうとして永久ループやな。そんでな、 夢の中で戦った場所はなんか洞窟っぽい所で、トロッコに乗った糸目の神父が ケヒャヒャーと笑いながらダイナマイト点火して突っ込んできてなあ」 「そんな展開色んな意味でありえませんよ!」 「やろ?夢なんてこんなもんや」 私の喉の奥にある装置や、小さい頃朝起きると口の中がしょっぱい事が度々あった事を 考えると、飯田さんの言う通り夢の中の事は本当にあった事なのかもしれない。 でも妻夫木さんの夢を聞いているとそんな事はどうでも良くなってきた。 あの孤児院での思い出は今でも大切だけど、私の人生は今ここにある。 出来るならば、ずっとこの人とここで・・・。 【2002年・謎の襲撃者】 「でかいな」 「うん、ごっつでかい」 ワイと珍念は横目で四葉の全身を上から下まで舐める様に見ながら そのでかさを堪能する。 髪は銀髪から金髪に変化し、胸はEカップ、身長179㎝、服は背中に穴が空けてあり、 そこから1メートル程ある二つの羽が生えてきている、頭の輪っかはギンギラギンに さりげなくその存在を主張し四葉自身の意思で光量を調整できる優れもの。 「妻夫木さん、それに珍念君も何を見てるんですか」 「いやな、レベル20で見事にクラスチェンジしたなーというか」 「せやな。須藤四葉・完聖体というか」 「もう、そういうのはやめて下さい!まだお昼ですよ!」 「にしし、夜ならええんやな。おとん、おかん、今夜はハッスルやな!」 そんなふうにリラックスしていると飯田の声が聞こえてきた。 (おーい、そっちで撃退を頼めるか?すまん、一人取り逃した) 空気読まん飯田のアホの声が脳内に流れてきたのを聞き、ワイたちは マジモードに思考を切り替える。 最近は減ってきたが物資を狙ってこのビルを襲う暴徒は未だ存在する。 大抵はビルの外で飯田がなんとかしてくれるんやが、たまにこうして ビルの中まで入ってくる奴がおる。 「飯田が突破されたか・・・ククク、奴はワイらの中で一番の使い手と呼ばれている・・・」 「いや、それヤバイやん。それやったらおとんもおかんも侵入者に勝てへんやん」 「大丈夫よ、飯田さんが梅田ビル最強と呼ばれているのは私達がこのビルから 出られないから飯田さんの功績が目立ってるだけ」 「それに飯田のアホは突破されたって言った。負けたわけやない」 夢を見る様になって以来グングン成長しパーペキな天使に進化した四葉は 魔人能力の方もおっそろしい事になっとった。 視界に入りさえすれば一秒、「モア」って一回言うだけで生命体なら戦闘力続行を不可能に、 物質相手なら限界まで脆くする事が出来る様になっとる。 以前は子供相手なら数回、戦闘型魔人なら10回以上は必要やったから単純に考えて 戦闘力10倍界王拳や。・・・さて、ワイはこれにどうやって勝てばええんやろ。 まあ今は侵入者に集中や。 「やるで珍念、今日もフォーメーションAでイクで。四葉の視界を妨げない様に一歩下がれ。 侵入者が見えたら四葉が無力化する。最後はお前が16ビートでいたこましたれ」 「おとんも働きーや」 「ワイはその・・・四葉の後方を守る仕事があるからな」 「妻夫木さん、珍念くん、来ました!」 侵入者の足音が近づいてくる。四葉は視界を切り替えて、相手が入ってくるのを待つ。 侵入者と四葉が出会いさえすれば一秒で終わる。そのはずやった。 「あ、貴方は・・・」 侵入者がワイらの前に現れた。その姿を見て四葉の声が固まる。 両目に眼帯をつけて、目の部分に穴があけてあり両目を閉じとるという 前を見たいのか見たくないのかハッキリせんケッタイな格好した侵入者やった。 「存在するものは毅然としてあり……」 穴あき眼帯マンは意味不明な言葉を呟き、両目を閉じたまま散歩する様に ゆっくりとこちらに歩いてくる。 なんやわからんけど、ヤバイ。穴あき眼帯マンを放置するとトンデモない事が 起こる。ワイの音感がビンビンに危険信号を発しとる。 「四葉!敵の攻撃が来るで!何しとんねん、早く無力化せんと!」 「どうして、どうして貴方がこんな事を、デユーンさん」 「四葉ぁ!」 四葉はこの侵入者を知っとるのか?やけど、今はそんな事よりもこいつをどないかせんと。 四葉が戦えんならワイがやらんと! (ビートを刻め、正しくビートを刻む限りミュージシャンは無敵や) サブイネンの教えを思い出しながらワイは前進する。 穴あき眼帯マンの手が無防備な四葉に伸びる。その時、まさに間一髪! 「四葉!しっかりせい!」 ワイが四葉の手を取り引っ張る。 穴あき眼帯マンの手刀は空振り、四葉の前髪を数本斬り裂いただけやった。 「珍念!四葉と一緒に下がれ!ワイがこいつをぶっ飛ばす!」 「わかったで!」 ジャーン! 「聞いて下さい、『トラップカード発動!緊急脱出装置』」 穴あき眼帯マンが片目を開ける。防弾ガラスを破り墨の様に黒い激流がワイに迫る。 四葉の状態があんなやからワイが下がる事は出来へん。 攻撃を凌ぎながら歌い切る! 「ワン、ツー、ワンツーさんし」 ジャカジャカジャカジャカ 演奏しながらのサイドステップで激流を回避する。激流はワイの足元に直撃した後 急上昇し天井にぶちまけられた。 「ギガガガギゴ完成だー、ギガガガギゴ暴走だー、助けて博士! このままじゃあギガガガギゴに研究所を破壊されてしまいまーす!」 ジャカジャカジャカジャカ 天井に染みついた黒い物質は雫となりワイに向かって降ってくる。 幸いにもこの物質の追尾性は高くない様だ。 ワイはステージに投げ込まれるゴミや生卵を避ける要領でそれを回避する。 「まかせたまえ、助手よこんな事もあろうかと作っておいた緊急脱出装置だ! ギガガガギゴ飛んでったー、研究所は守られたー」 黒い物質は再び一か所に集まりワイを正面から飲み込もうとする。 だがそれはフェイクや、穴あき眼帯マンが濁流の反対側から襲ってくるのを ブリッジでかわす。ボケがぁ、ワイがギャラリーから目を離すわけないやろが! 四葉の時同様に敵の長い指が空を切る。伸ばしとったヒゲがいくらか毟られたが 演奏には支障をきたす事はあらへん。 「ギガガガギゴ放たれたー、おや、ギガガガギゴの様子が・・・ ゴギガガガギゴに進化したー!」 ジャーン! バズーカ砲がワイの手元に現れる、ワイは迷う事なく穴あき眼帯マンを狙い スイッチを入れる。 「緊急脱出装置起動!ぶっ飛べやー!」 BAKOOOOOOOOOON!!! バズーカの発射口からバネ仕掛けのボクシンググローブが飛び出し穴あき眼帯マンの 顔面にヒットすると、穴あき眼帯マンは割れた窓から飛び出して行きそのまま星になった。 「おとん、やったんか?」 「やってない、アレは殺傷力の無い場外勝ち専用の技やからな。まあ後は 飯田が何とかしてくれるやろ。それよりも四葉や、大丈夫か?」 あの男がいなくなったからやろか、四葉は大分落ち着きを取り戻しとった。 「四葉、穴あき眼帯マンと知り合いやったんか?」 「あの人は・・・」 「あっ、スマン。言いたないなら無理せんでもええから」 「いえ、大丈夫です。あの人は、私がいた孤児院『聖マルガレタ孤児院』に 多額の寄付をしてくれていたんです。まさかこんな手段でお金を得ていたなんて・・・」 成程ザ・ワールド、それがホンマならショックなのもわかるわ。 やけどその心配はいらへんねんで。ワイは四葉の肩に手を置き落ち着かせる。 「大丈夫や四葉、ここ平行世界やからアイツはお前とは無関係や!」 そう、ここに来て十年近くになるし、ワイの居た世界とあまりにクリソツなので 忘れてしまう事も仕方ないのだが、ここはワイと四葉から見たら平行世界なのだ。 よってあの穴あき眼帯マンは四葉の知ってる優しい人とは無関係なのである。 「まあ取りあえずはしばらくは警戒態勢でおろか。あの眼帯マンが また来るかもしれへんし」 やけど、ワイの心配は無意味に終わった。これまでの暴徒とは明らかに様子が違った 穴あき眼帯マンは脱出装置でぶっとばされた後、ゴギガ眼帯マンに進化して 帰ってくるなんて事もなく、一か月後にはワイらは日常へと戻り、襲撃の事も 記憶の隅に追いやられていった。 【2003年・誕生】 えきたい、なか、わたしいる。 にくのかたまり、がらす、うつってる。 きんのかみ、め、くち、はね、わっか、わたしだ。 「天使の様子はどうですか園長?」 「順調に育ってるよ。君が『梅田の守護天使』の細胞を持って来てから一年、 こうもうまく行くとは思わなかった、後は制御装置だ」 、 がらすのそと、おはなししてる。 おとは、きこえる。いみは、わからない。 「君が天使の細胞を入手するついでに持ち帰った『禅僧っぽいよくわからんもの』の 遺伝子情報を混ぜれば、今ある制御装置でなんとかなりそうだ」 「それでは天使の力が弱まってしまうのでは?」 「制御できないよりはいい。まずは我々に忠実な存在として育て上げ、 頃合いを見て禅僧の因子を消していき、徐々に天使の力を解放していこう」 まざる、わたしに、しらないだれかが。 かみがぎんいろに、わっかのひかりよわまる。 わたしは、だれ? わたしは・・・ 「名前はどうしますか?」 「ヨツバだ。天使の羽が二枚で、禅僧も六枚の羽を自在に出していたと聞く。 二枚羽と六枚羽の間に生まれた子でヨツバだ。これに君の名を加えて、 ストル・ヨツバというのはどうかな?」 「もう少し日本人風にした方が」 そうか、わたしは、よつば。 【2009年・足りなかった二人の決戦の時】 戦いを宿命づけられこの場に現れた二人、その内の一人がもう一人の戦意を奪い 戦いは回避された。だが、迷宮時計の力は天使の力すら及ばないのだろうか。 今、再び戦いを選択する時が迫っていた。 2009年初頭、梅田に新たな避難ビルが建設された。 収容人数はこのビルの三倍、関西滅亡のパターンに応じてバリアを張ったり地下に 潜ったりして各種滅亡をやり過ごす事が可能なネオ梅田避難ビルだ。 この新たなビルの完成、それは老朽化の進んだこの梅田避難ビルの 取り壊しを意味する。流石にそうなってはビルの守護者として崇められてきた彼らで あってもこの場に留まる事は出来ない。ネオ梅田避難ビルに住民が移っていくのを見た 二人はもうこの地で出来る事は無いと、休戦する理由も無くなってしまったと悟った。 「このビルにもすっかり人がいなくなったなあ」 「そうですね、最初私達が来た時はあんなにギュウギュウだったのに」 ビルの屋上で星を見上げ寄り添う二人。 とてもこれから死闘をする様には見えない。 「珍念は東京でうまい事やれるやろか」 「血は繋がって無くても貴方の子供です、心配いりませんよ」 「空、綺麗やなあ」 「最近の関西滅亡に爆発オチや流星群が無かったからだと思いますよ」 「ええ日や、こんなええ日にお前と戦える運命に感謝するで」 ツマランナーは四葉から一歩ずつ離れていき、四葉も反対側へと歩む。 お互いがビルの端に到着した所で振り返り、四葉が言った。 「どうしても、戦うのですか?」 「せやな、ワイの迷宮時計が戦え戦えってうっさいねん。ビルの取り壊しなんてのは 切っ掛けにすぎんのや。ワイはお前に勝って前に進まんとアカン」 この二人はビルの破片をペンダントにするというアイデアは浮かばなかった。 まあ、それを思いついたとしてもいずれは戦ったのかもしれないが。 「今迄ホンマ世話になったな。ワイが迷宮時計に急かされて戦いを望むたんびに お前はワイを止めてくれた。せやけど、コレはワイのもんや。ワイの決意も衝動も 願いもみーんなワイのもんや。お前にはもう背負わせん」 ツマランナー。本名は妻夫木乱。性別男。希望崎大学4年生。現時点での年齢38歳。 高校まで陸上をしていたが魔人化後にミュージシャンに転向し現在は禅僧を名乗る。 武器はベース。 運動能力:B+→A+ 近接戦闘力:D→B+ 中距離戦闘力:C→A 長距離戦闘力:C→B 戦闘精神力:B→A 戦闘経験:E→B 能力『歌えば多分なんとかなる』。一曲歌い、その歌のタイトルに合った効果を 強化・回復・アイテム召喚などの形で自身にもたらす。 「私は本当の家族を探す為に迷宮時計の誘いに乗りました。 でも、もうその願いは叶っています。もし私に父がいたとしたら それは妻夫木さん、貴方の様な人なんだと思います。だから、家族である貴方が この先傷つく道を進もうとするのなら絶対に止めなければなりません」 純粋天使・須藤四葉。性別両性。現時点での年齢27歳。 孤児院で暮らしており世間を知らなかったが、避難民との触れ合いと記憶を取り戻した 事で自分の為すべき道を見つけ梅田避難ビルの守護天使と崇められる。武器は天使の力。 運動能力:E→A 近接戦闘力:E→C 中距離戦闘力:B→A++ 長距離戦闘力:C→A++ 戦闘精神力:D→C 戦闘経験:E→B 能力『赤×モア』。視界を切り替えて運命の色を見る。見える色の一つを選び「モア」と 呟くとその色を濃くして運命を加速させる。 待たせたなお前ら、迷宮時計争奪戦の始まりだ。 この飯田トオル47歳、末期がんのホームレスが梅田避難ビル屋上中央にこしらえた 特別実況席(材料はミカン箱)からお前らに戦況をリアルタイムで伝えるぜ! 一切邪魔の無い戦いを楽しんでくれよ! さあ戦闘開始と同時に四葉の雰囲気が変わったぞ、使う技はもちのろんコレだ! 「モアッ!」 はい、この試合一発目のモアいただきました!今の四葉はモア一つで命あるものは死に 形あるものは壊れる程の運命加速力を持っているぞ。早くも決まったか―!? いや、決まって無いぞ!ツマランナーは物陰に隠れて四葉の視界から外れていた! このただっぴろい屋上の物陰とはなんだ、給水塔か?出入口か?いや俺だ! 二人の間で戦闘を見守っていたこの俺を肉壁にして視界から外れたのだ! ジャーン! 「聞いて下さい、『ツッペルランナー』」 ツマランナーは俺の後ろに隠れながら俺をギャラリーとして認識し 能力発動条件をクリア!だが、四葉は羽ばたいて空から再度狙いをつける。 そう、上空からならツマランナーの姿は丸見えだ!ベースを弾き始めるがこのままだと 四葉のモアが先に決まるぞぉー! 「モ」 「ワンツーワンツーさんし」 ジャ! 「世界のどこかにいるという自分と同じ見た目の人がドッペルゲンガーと言うらしい、 それじゃあ私のそっくりさんがいたらツッペルランナーだねツルペタ言うな ツッペルランナーカモン!」 ジャン! 「ア」 速い!ツマランナー何という速さだ!四葉がモアと言い切るまでの間に一曲歌い終わり、 分身を自分の真上に召喚し攻撃を防いだぞ!そういえば聞いた事があるぜ。 昔、DMCという漫画があった、その漫画の主人公ヨハネ・クラウザー二世は無敵の ミュージシャンだった。彼は一秒間に10回レイプと言いファンはそれを10回レイプと 言ったとちゃんとカウントしていた。 これはファンの耳が凄いという事じゃねえ。人の限界を超えた速度で歌いながら ちゃんと歌ったと認識させる『高速歌唱』という技術だ。魔術師の使う『高速詠唱』の バード技能版と思ってくれればいい。 フッ・・・俺の知らない間に高速歌唱まで習得していたとはな。 この勝負わからなくなってきたぞ。 「さあいくで四葉!」「覚悟せえや!」「囲んでぼこったる!」「本物のワイがわかるかな?」 おおっと!高速歌唱の説明をしている間にツマランナーが何人にも増えているぞ! そうか、ツマランナーの能力は新たな曲を歌うと前の曲で生まれた存在は消えるが、 分身と一緒に分身召喚を歌い続ければ理論的には延々と分身を増やせる! その手間はとんでもないが、高速歌唱が使える今のツマランナーなら容易いという事だ! 本物と偽物の違いは30秒経ったら消える事と服の下の迷宮時計の有無だけだ! 四葉は迫りくるツマランナー軍団から本物を見分けられるのかー!? 「本物はそこ、まだ飯田さんの背中にはりついてますね」 一発で見破ったー!そうだよな、運命の色で区別できるもんな。簡単に分かるよな。 そしてツマランナー!お前まだ俺の後ろにいたのか! さあ、四葉が自分に近い分身を消すとツマランナーが新たな分身を防御と攻撃に 振り分ける。千日戦争状態に突入してしまったぁー!互いに決め手が無い! 四葉は俺の後ろにいるツマランナー本体を狙えないし、ツマランナーも 分身をいくら戦力として投入しても四葉に届く前に消滅の運命を加速されて消える。 「妻夫木さんすみません、ちょっと本気出します」 おおっと、四葉はまだ本気では無かったというのか!? 謝罪の言葉と共に四葉は両手を構えその手の間にエネルギーが溜まっていくぞ。 そう、四葉の能力は運命加速だけではない!これは天使の奇跡の一つ爆発の奇跡だー! ジャーン! 「聞いて下さい『ドリルドリドリ― 「だっふんだ!」 「うおっまぶし」 ツマランナーが新たな曲を歌おうとした瞬間、聖なる言霊と共に光が俺と ツマランナーのいる場所に着弾し光に包まれた!高速歌唱しようにも 視界を光で潰されたらギャラリーが見えず能力発動出来ない! そしてこの爆発の威力と範囲は俺を盾にしてどうにかできるもんじゃないぞ! その一方で四葉は赤面している!発射の合図はもう少しカッコイイ言霊にしとけば 良かったという照れで赤面しているぞー! 光が晴れるとコンクリートの床に大穴が開きツマランナーはボロボロだ! 武器兼能力発動アイテムのベースもバラバラになってしまっている! 「・・・あああっ、ワイのベースが~」 「これで終わりです、降参して下さい」 そうだな、攻撃と防御の起点を失ったツマランナーに勝ち目は無い。 よってこれにて決着!閉店ガラガラー! (※GK注)自キャラ敗北SS:【裏・一回戦第5試合】【キャラクター:ツマランナー】 「まだや、まだベースは残っとる。ワイがワイこそがベースになればええだけの話や」 長年愛用したベースを失ったからか?ツマランナーがヤケクソともとれる発言を しているぞ!勝ち目が無いのは誰の目にも明らかだ、だがまだ決着はしてないという事は 確かな様だ。すんませーん、まだ続くみたいでーす! それじゃあコレは、 (コレね) ↓ 『自キャラ敗北SS:【裏・一回戦第5試合】【キャラクター:ツマランナー】』 あっちに置いといてと、 →『自キャラ敗北SS:【裏・一回戦第5試合】【キャラクター:ツマランナー】』→→→→ うんせうんせ、 →→→→→→→→→→→→→→→『自キャラ敗北SS:【裏・一回戦第5試合】【キャラクタ よっこいしょほいしょっと、 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→『自キャラ敗北SS: もうちょい右か、よいこらせっと、 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→ で後はこうやって戦闘続行オケー! (※GK注)先程は失礼しました。引き続き戦闘SSをお楽しみください。 「まだや、ワイ自身がベースになれば戦闘は可能や。ホンマ甘いで四葉、 今トドメささんかった事後悔させたる」 「無理を言わないで下さい!私よりずっと弱いくせに!」 俺にも無理を言ってる様にしか見えない。仮に一曲歌ってベースを作ろうにも 演奏の為のベースが無いのだ。詰んでいる。 しかし、そんなの関係ねえとばかりに、ツマランナーは再び俺の背中に隠れながら 歌い始めた。 ジャーン! 「聞いて下さい、『トラップカード発動!緊急脱出装置』」 「ベースの音!?そんなさっき確かに破壊したはず!」 俺の身体が邪魔で四葉にはツマランナーがどうやってベースの音を出しているのかは 分からない。だが俺にはハッキリと見えている。後ろに目をやると、ツマランナーは 喉を弾いてベース音を出していた。喉ベース!その手があったか! 「ワン、ツー、ワンツーさんしギガガガギゴ完成だギガガガギゴ暴走だ助けて博士! このままじゃあギガガガギゴに研究所を破壊されてしまいまーす!まかせたまえ、助手よこんな事もあろうかと作っておいた緊急脱出装置だ!ギガガガギゴ飛んでった研究所は守られたギガガガギゴ放たれたおやギガガガギゴの様子がゴギガガガギゴに進化した!」 ジャン! 高速歌唱と喉ベースの併用で声を枯らしそうになっても、それでも口から 血反吐吐きながら何とかツマランナーは歌い終わった。 出てきたのは芸術家を吹っ飛ばしたあのバネ式バズーカだー! 「飛んでぇけぇぇぇ!君の胸にスィーツ!」 真っ直ぐ俺の顔面に向かってグローブが飛んでくるぞー!・・・え、俺? BAKOOOOOON!!!! 勝負中散々俺の事利用しておいてこの仕打ちかよー! ああー、二人の身体が豆粒の様に小さくなっていくー! くっそ、マイクフルパワーだ、音声拾えるかー!? 「盾にしていた飯田さんを、どうして!」 「なんとなくムカついたからや。それに、おかげでお前の隙をついて接近戦に持ち込めたで」 よし、音声まだ拾えた。どうやら俺を吹っ飛ばしたのは無意味、 そして無意味な一手を使えば四葉の隙をつけると読んだのか!そうだよな、 四葉ちゃんマジ天使だから俺がぶっ飛べば一瞬でもそっちを心配するよな。 本当に四葉は良い子だよ。ツマランナーと違ってな! 「こんだけ近ければ爆発の奇跡も無理やろ」 この状態で四葉に用意された選択は二つある。塩化の奇跡と運命加速。 四葉の瞳が運命加速のモードに変わっていく。ああ、やっぱりそっちを選んでしまうのか! 相手を塩の柱にしてしまえば確実に勝てるが、それだとツマランナーが ほぼ確実に死んでしまうからな。 彼女は選べなかった、それが勝利への確実な道だと知っていても。 四葉のこの戦いでの目的はツマランナーの救済、使い慣れず出力の調整が 難しい塩化の奇跡は選べなかったのだろう。ああ、なんという悲劇か! 実力を出し切れば勝っているのはお前なのに! 「そう来るのは分かっていたで、何年も一緒におったから」 ツマランナーは四肢を亀の様に丸めて内臓と脳をガードだ! こいつの四肢には迷宮時計がびっしりと貼りついている! 迷宮時計の運命は未定、つまり四葉は運命加速でこれを壊す事は出来ないぞ! 「モア!」 ビキィ! 「はうぁ!」 しかーし四葉いったー!迷宮時計の隙間に存在する生身の肘の運命を加速し、 軟骨を限界まで擦り減らせて、ダイジョーブ博士の手術に失敗したパワプロくんと 同じぐらい肘を使いものにならなくしやがったー!ツマランナー思わず悶絶だー! だがっ、だがしかしっ、 ガシコーン! 「捕まえた」 ツマランナーはまだ致命傷ではなーい!腕が動かせないからカニばさみで 四葉を捕獲したぞ! 「8ビートでいくでえー!」 ツマランナー大きく頭を振り下ろしたぁー! 「モア!」 四葉はツマランナーの脳の運命を加速させ脳閉塞による失神KOを狙う! しかーしツマランナーは首をひねって狙いをつけさせない! どぐちゃあ! これぞバンドマンだと言わんばかりのヘッドバンキングが決まった~! 「モア!」 「無駄や、お前のソレは見て喋って当てる。せやからお前の視線を恐れず 正面からじっとみとれば次にどこにくるか予想できる。 一秒を一秒としてしか認識してないお前やから、この距離ではもう絶対に ワイには当たらん」 探偵に推理光線がある様に、手芸部の糸が攻防において様々な形で使用される様に、 ミュージシャンにはこのビート刻みがある!音楽を一定以上極めたミュージシャンは 一秒を分割して認識し、その分割しただけの行動を割り振る事を可能とする! 集中力と音感とリズム感の果てに得た先読み能力と柔軟な動きは、至近距離での 戦闘において他の魔人を圧倒する! 「モア」 「当たらん!」 円を描くように頭を振り、視界から一度外れての頭突きだぁー! どぐちゃあ! 「も」 「させん!」 どぐちゃあ! 「塩に」 「もう手遅れや!」 どくちゃあ! 止まらない!止まらないっ!止まらないー!ツマランナーはもうトマランナー! ツマランナーのヘッドバンキングが連続して四葉の顔面に叩き込まれていく~! っと、ここでツマランナーがヘッドバンキングをしながら仏のポーズ! 勝利を確信してのフィニッシュへのムーブだぁ~! 「ナムナムナムナムナムナムナムナムナムナムナムナムナムナムナムナムナム」 どぐちゃどぐちゃどぐちゃどぐちゃ!どぐちゃ!どぐちゃ!どぐちゃあ! 「も、もうやめて・・・」 「ナムアミ・ダブツ(さよならや)、喝!」 ゴ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン 須藤四葉、鐘の音と共に崩れ落ちた~! 15年以上をかけて行われたオフィスビル戦はツマランナーが制した! それでは皆さん、名残惜しいがこれでさよならだ! 【2010年・出会い】 故郷の父さん母さんお元気でっか?ワイは変な奴に絡まれて色々ピンチです。 「セイヤー!そこの姉ちゃん俺と結婚してよ~」 「セイヤー!おっと、俺にも結婚してくれよ~」 「あ、あの困ります。ワイ男ですし・・・」 「同性婚でも重婚でも構わねえぜ~!永住権が欲しいだけだからさあ!」 「逃げても無駄だぜ~、俺たちゃG国で公務員試験勉強した事があるんだ。 マッハ1から逃げれるもんなら逃げてみな~」 まさか東京に来て女装外出を楽しみだした途端にガイジンに絡まれるなんて! 東京は滅亡がないから安全って聞いとったけど全然そんな事無かったわ。 ああ、こんな時漫画ならヒーローが助けてくれるんやけど・・・。 「ヒーロー見参・・・ヒーロー見参・・・ヒーロー見参!」 ヒーローはおった。ピンポンみたいな頭した男がピンポンっぽい演出で現れた。 「そこまでにしておくんやな雑兵ども、とっととオウチに帰りなさいや」 「セイヤー!何だてめぇは?何で三回もヒーロー見参って言ったんだあ~」 「セイヤー!一回言えば十分だろが~」 「同じ事を繰り返すのは関西人やからや。国に帰る気がないならワイの秒間 32発のパンチが火を吹くでえ」 クリリン(仮)が得意げに拳を構える。だが、32連発のパンチと聞いて雑兵二名は バカにする様に笑った。 「セイヤー!ば~~かじゃねえの?俺達は秒間100発のパンチが撃てるんだぜ~」 「セイヤー!200対32という事だぜ~、キセキの世代フルメンバーとただの高校生が バスケするぐらいの絶望的な差だぜ~」 「それがどうした?ワイの32発はお前らの200発と質がちゃうわい」 「な、なめやがって~、行くぞ雑兵B!100連パンチが味方にあたらない様に 左右から適切な距離をとって挟み撃ちで仕留めるぞ」 「了解だぜ雑兵A!」 雑兵二人が左右からサンプラザ中野(仮)に襲い掛かる! ワイはこの隙に逃げようとも思ったけど怖くて足が動かへん。 くっそ、せめてベースがあれば・・・でもワイの能力弱いし・・・。 「「セイッセイヤー!」」 ハゲ丸(仮)の左右に数え切れぬ程の拳!そして打撃音! ポクポクチーン!ポクチーン!ゴーン!ポクチーン!ポクポクチーン! 信じられへん光景がワイの前に広がってた。 雑兵二人の方が明らかに手数もスピードも上なのに、井出らっきょ(仮)の身体に 一撃もヒットしていない。そして、天津飯(仮)の攻撃は全弾クリーンヒットしている! ポクポクチーンポクポクチーン!ゴーン! リズミカルに雑兵の足を踏み、目を突き、耳を引っ掻き、体勢が崩れた所に 頭突きを入れている。なんやねんこの動き! 「ナムナムナムナムナムナムナムナムナム」 あ、展開が一方的になったら何かジョジョっぽく叫びながら攻撃しだした。 「ナムアミ・ダブツ(さよならや)」 ゴ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン 最後に大きく振りかぶってからの頭突きで雑兵二名をまとめてぶっ飛ばして決着。 相手が起き上がらないのを確認した月光(仮)はワイの方に笑顔で振り向く。 「どや?ごっつかっこよかったやろ」 「は、はあ。あ、あの、今のキモカッコイイ動きなんなんです?」 「32ビートや。一秒を32に分割し、そこに行動を割り当てる。大抵の奴は 一秒を一秒としてしか認識できへんから目に見えへん大きなアドバンテージを 得られるってわけや。よし、それじゃあ助けてやったからお前ワイの仲間になれ」 「は、ハイ?」 「バンド組もうぜって言うとるねん。初めまして、俺は佐分山珍念、 レッサー禅僧やったおとんがしょっちゅうサブイネンと呼んでたからお前もサブイネンと 呼んでくれるとうれしいなって」 サブイネン(確定)がワイの手を握って引きずっていく。 レッサー禅僧?32ビート?サブイネン?バンド組もうぜ? えーっと、落ち着けお前。言うてる事めちゃくちゃやぞ。 「ちょ、ちょっと!知らない情報がいっぺんに入りすぎてワケワカメなんやけど」 「大丈夫!お前はワイの見込んだ男や!きっとワイにすぐ追いつく。 あ、そや。一応名前と楽器と高校の時何やっとったか教えてーな」 「妻夫木乱って言います。楽器はベース。これでも高校では結構有名な 陸上選手でしたんやで魔人になって引退したけど」 ワイの簡単な自己紹介を聞いたサブイネンはカタカタと震え出した。 「んなアホな、いくらなんでも奇跡すぎるやろ・・・」 「あのー、どうしましたー?」 「奇跡やー!!!!いっつみらくるやあああああ!」 後光が差す程の笑顔をこっちに向けてくるサブイネン。キモイ。 「決まりや、お前の芸名はツマランナーや」 「ハア?」 「バンド名も今決めたで。ワイとお前、それからもう一人おるから三人揃って オモロナイトファイブ!」 「はああ?」 「で、リーダーの座はくれてやるわ!よろしゅー頼んますリーダー!」 「はあああああああああああああああああああ!?」 なんやねんこのテンションは。 お前はタイムスリップしてきたワイの家族か何かか! 故郷の父さん母さんお元気でっか?ワイは変な奴に絡まれて色々ピンチです。 【2012年・真相解明?】 梅田避難ビルから西に数百メートル、ここには現在小さな寺が立っている。 避難民に食べ物を与え、親の居ない子供達を世話し、暴徒から物資を守って来た 天使と禅僧を称え、かつて禅僧が住んでいたフロアを再現した寺がそこに建てられていた。 それが私の今の家だ。 「あ~~~~~~~~~~~~~今日も何もしなくても梅田の人達のお供えとかだけで 生きていける~~~~~不労所得ってすばらしい~~~~~~」 部屋の中でゴロンゴロンゴロン。 もう戦いも育児も一生分やったからこうやってゴロゴロしててもいいよね。 「おーい、入るぞ」 「はーい、どうぞ」 飯田さんがドーナツを持って来てくれた。 私をそれを奪い取り、二個まとめて口に捻じ込む。 「おいひぃ~~~~~~」 「アイツの召喚したドーナツの味を再現した『レッサー禅僧ドーナツ』、 だが別に三十秒で消えたりしないから落ち着いて食べていいんだぞ」 「だって美味しいんですもん。というか、言っちゃ悪いけどこっちの方が 味付けが濃くて美味しいです」 「あーあ、いい女だったのにすっかり堕天使が板についちまって」 し、仕方ないじゃないですか! だって外の世界には美味しいものがいっぱいあるんだから! 孤児院でも梅田ビル内でも食べれなかった分楽しんで何が悪いのー! 「お前さん今幸せか?」 「はい、まあまあ」 「ツマランナーに勝ち譲って後悔してないか?」 「あれは本気の勝負の結果ですよ。それに彼はもうすぐ帰ってきます」 「ほう、お前の方は気付いていたのか」 飯田さんはニヤリと笑う。 「気付いたのは何時からだ?」 「こっちに来てから一年以内、ツマランナーさんと完全な協力体制を築く事が 出来た時です。彼は教えてくれました。自分のいる世界とこの平行世界はあまりにも 似た部分が多いと。彼は考えもしませんでしたが私はその時思ったんです。 基準世界と平行世界は全く繋がりの無い世界という原則ルールは私達に適用されるのか?」 「つまり?」 「私達が飛んだ世界は、私達が住む平行世界と同一世界の二十年前だったんじゃないですか?」 ドーナツの砂糖がついた指を舐めてからビシィと飯田さんに突きつける。 飯田さんはハッハッハと笑いそして答えた。 「惜しい」 「あらら、違ったんですか」 「お前さんらがイレギュラーでも住んでる世界と同じ世界に落とすほど 迷宮時計は馬鹿じゃねえ。ただ、互いに影響が無いぐらいに遠い平行世界に落とすって 部分については、このオフィスビル戦においてはかなりサボっていたと見える」 「つまり・・・どういう事だってばよ?」 「ここはお前達のいた平行世界のすぐ隣の世界だ。だから起きる出来事は ほとんど変わらんし、片方の世界の異変がもう片方に影響が起こる事もある。 だからツマランナーと非常に似た存在がこっちにもいる可能性が非常に高い。 もっとも、迷宮時計に関する事項だけは異なるが」 「つまり・・・どういう事だってばよ?」 「あー、もう箇条書きで説明していいか?ペン貸せ」 飯田さんはドーナツ屋のチラシの裏にサインペンでここで起こった事、 これから起こる事を次々と書いていった。 ・この世界にもツマランナーは存在するが、彼は迷宮時計には選ばれない。 ・この世界のサブイネンがツマランナーとバンドを組むかは不明だが、 彼らは迷宮時計に選ばれないので少なくとも迷宮時計争奪戦が理由で自殺したりはしない。 ・四葉はツマランナーから2014年までに起こる出来事をいくつか聞いているが、 この世界でも同じ事件が起こる可能性は高い。(迷宮時計絡みを除く)。 ・ツマランナーが帰っていった方の平行世界ではサブイネンの自殺及びそこから 始まる迷宮時計絡みの出来事は確定しており、迷宮時計を完成させる以外でこれを 変更する事は出来ない。 ・ツマランナーがいる方の世界におけるサブイネンの育ての親はツマランナーや 四葉とは別人。ただし、彼らに似た存在であると思われる。 チラシの裏にざっと目を通した私は決意を胸に電話に手を伸ばす。 「レッツアベノミクスぅー!もしもし証券会社ですかー!」 「落ち着け」 飯田さんはネットで取引した方が手数料がお得だと教えてくれた。 文明の利器ってすげー! 「つーかお前の『赤×モア』で株価予測したり操作したりできねーのか?」 「私が株に無知だし形の無い存在だから難しいかと」 「そんなもんかね。じゃ俺はこれで」 「あ、待って下さい」 帰ろうとする飯田さんを呼び留める。 彼にはもう一つだけ聞いておきたい事があるんだった。 「飯田さんって何者なんです?何で全身の運命の色が他の人と違うんですか?」 「俺は帰る家を無くした末期がんのホームレスさ。ホームレスに未来がなくても 別におかしくはないだろう?じゃあな脱落者、もう会う事は無いだろう」 それが私達の恩人、迷宮時計と同じ色をした人との最後の会話だった。 【2014・勝者の帰還】 顔を触る。 「スベスベやぁ~」 ベースを見る。 「ピカピカやぁ~」 ボディラインを鏡に映す。 「ナーイスボディやぁ~、迷宮時計があるのは気に入らんけど」 若いってええなあ。決めた、今日からスキンケアもっと真面目にやる。 「と、ゆーわけで、戦闘時間最長記録大幅更新間違い無しな 長期戦やったけれど無事に帰還!若返って気分は強くてニューゲームや!」 息を大きく吸ってーの!高速歌唱―! 「レイプレイプレイプレイプレイ、あれ?」 一秒間に4.5レイプ。遅くなっとる。そんなー!理屈は理解してコツも つかんだ気がしとるのにできへん様になっとる。 「ならば8ビート禅僧パチキじゃコラー!」 柱に向かって頭突き、鈍い音がして額が割れた。 「ンギャース!」 ゴロゴロと転がり悶絶。 そして間の悪い事にこのタイミングで長らく忘れてたあのイベント襲来。 「さらにンギャース!」 勝利して帰って来た事で解放条件を満たしたのか、ワイの肉体がさらに迷宮時計に 浸食されていく。痛みが止まった所で鏡で時計の増えた数と位置を確認する。 「えーと両手の爪全部が時計盤になって、それと両目かあ。 とうとう顔にまで広がりはじめたか」 鏡で確認すると黒目の中に小さな長針と短針が現れチクタク動いている。 幸い視力には問題ないし、間近で見ないと分からないぐらいに目立たないが 勝ち進むとどうなるかますます不安になってきたわ。 「助けて四葉!顔面に10回以上頭突きしたの謝るから! そうや、閃いた!大阪行ってみよう」 平行世界に留まる事15年ちょっと、避難ビル内で聞くニュースはどれもこれも ワイの世界と一緒やった。もしかしたら、ワイが飛んだのは同じ世界の過去やないんか。 今更ながらその可能性もあると気づいたワイは、マスコミに気付かれん様に 地味なワンピースに着替え化粧もナチュラルにして大阪へと猛ダッシュで向かった。 急ぐから走る! 「新幹線大人一枚」 急ぐからこそ走る! 「タクシー!梅田旧避難ビルまで」 急ぐからこそ走って着いた!梅田旧避難ビル横のお寺に突入する。 居た!あの羽と輪っかは見間違えるわけあらへん! 「四葉―!」 「ヨツバってだれやー!」 クルリと振り返るその顔は、見知らぬオバハンやった。 「誰や!」 「アンタこそ誰や!」 とんだ無駄足やった。 これもなんもかんも基準世界のせいや!絶対許さんぞ基準世界人! 新幹線とタクシー代払え! このページのトップに戻る|トップページに戻る
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第2章第2話 オフィス街の霧 "この生き物は何!? ‐ジェニー・ルイス" "ミミズだ!庭にいるのとは違って、ちょっと凶暴だけど。 ‐ニック・カッター" 第2章 第2話 オフィス街の霧 登場する生物 巨大ミミズプテラノドンコエルロサウラプス 放送 イギリス 2008年1月19日日本 2009年9月3日 シリーズ 第2章 エピソード 第2話 オフィス街の霧 セッティング 亀裂調査センター都心のオフィスビルスティーブン・ハートの家 前回 第1話 ラプトル襲撃 次回 第3話 森に潜む牙 あらすじ 調査チームの新メンバーとして広報担当のジェニーを紹介されたニックは目を疑う。なんとクローディアだった。だがジェニー本人は別人だと否定し、誰もニックの言葉を信じない。コナーはビデオ店でキャロラインという女性と出会い急接近。スティーブンが帰宅するとそこにはケガをしたヘレンが…。 オフィス街のビルで“時空の亀裂”が発生し、悪臭のする霧が立ち込めていた。ニックたちがビルに到着すると、消防隊員の叫び声が…。 ストーリー まだ更新していません。 キャスト 人物名 声優 日本語版声優 ニック・カッター ダグラス・ヘンシャル 堀内賢雄 スティーブン・ハート ジェームズ・マレー 川本克彦 コナー・テンプル アンドリュー・リー・ポッツ 宮下栄治 アビー・メイトランド ハンナ・スピアリット 斎藤梨絵 ジェニー・ルイス ルーシー・ブラウン 加藤優子 ジェームズ・レスター ベン・ミラー 横島旦 オリバー・リーク カール・テオパルド 村治学 キャロライン・スティール ナオミ・ベントリー 佐古真弓 兵士 ティム・ファラデー - 消防隊長 シドニー・コール - 女性消防士 - - 永田氏 - - 秘書 - - テリー - - イギリスでの視聴率 不明 第1話 太古の扉 第2話 恐怖の巨大グモ 第3話 海の怪物 第4話 ドードーの悲劇 第5話 空の殺し屋 第6話 未知なる獣 第1話 ラプトル襲撃 第2話 オフィス街の霧 第3話 森に潜む牙 第4話 水底に響く声 第5話 砂漠の遭難者 第6話 罠 第7話 陰謀の果て
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トップページ 新聞論評 新聞論評 2011 新聞論評 20100711 this Page 2011年7月11日 締 切 新聞論評 学籍番号 201014031 氏名 冨田裕太 1.新聞情報 見出し 三菱商事、オフィスに卓上照明導入 新聞名 日刊工業新聞 朝刊 発行日 2011年7 月11日 面;6面 2.要約 三菱商事は夏の節電対策として、社員のデスクに卓上照明のタスクライトを導入し、運用を始めた。業務に必要な照度を確保して天井の蛍光灯照明を消灯または減灯し、使用電力量を抑制する。(87文字) 3.論評 卓上照明のタスクライトの導入数は6500個で、その投資額は約1億3000万円になる。三菱商事はタスクライトを導入するだけでなく、さらにビル内にあるテレビや自動販売機の稼働数を半減させるなどの施策も併せて実施する。7月から大口利用者を対象にして電力の使用制限が始まったが、施策拡充によりピーク電力を15%以上削減する考えだ。タスクライトの採用により、作業を行うところで必要な照度を確保することができ、天井や間接照明を従来よりも低い照度に設定できる。このためオフィスビルなどの事業所での節電に役立つとされている。このタスクライトを導入したのは、三菱商事ビルディングと入居している丸の内パークビルディング。三菱商事ビルでは5月に、パークビルでは6月までにタスクライトを導入した。今月4日から全面運用を始めた。このように節電を推進していくところが増えていくのは良いことだ。果たしてどれだけの効果が得られるのかこれからの経過に注目したい。(406文字) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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トップページ 新聞論評 新聞論評 2009 新聞論評 20091124 This Page 2009年11月30日 締 切 新聞論評 学籍番号1814090 氏名 河本和樹 1.記事情報 新聞名:日本経済新聞(朝刊) 日付:2009年11月26日(木) 面数:13面 見出し:オフィス清掃ロボ 2.要約 富士重工業と住友商事がオフィスビル向けの清掃ロボを開発した。価格は1台300万から400万を予定し、レンタルも検討する。一年以内のビルの管理会社を中心に年間50台の導入を目指す。他にも農作業向けロボットも開発。(100文字) 3.論評 商品の詳細はロボットに搭載されているセンサーで障害物を回避しながら床の砂やちりを吸引する。狭い通路でも作業できるように全長50㎝、幅45㎝、高さ80㎝という小型のロボットである。 確かにこのようなロボットを導入することにより、オフィスはきれいになるし、何より人間が掃除をしなくていいという利点もあるが、果たして本当に正しいのか疑問である。ゴミのほとんどは人間のせいで存在している。自分たちで汚したのに自分たちで掃除をしないのはどうだろうか。 私たちは小学校の時から自分たちの教室は自分たちで掃除をして、自分で汚したものは自分できれいにすると習ってきているし、それは常識だと思う。しかしこのように大人たちが楽をしてロボットに掃除を任せるというのは、子どもに対して良い影響は与えないと思う。確かに掃除は大変だが、自分たちのオフィスは自分たちで掃除をするべきだと思う。ロボットが掃除をしてしまったら、ゴミを簡単に捨ててしまう癖がついてしまう恐れがあるため、ロボットに掃除を任せるのは反対であるが、大きなものの下に落ちている小さなゴミなどは任せても良いとは思う。 このような便利なものを開発すのではなく、現在深刻化している介護などに役立つロボットをもっと開発したほうが良いのではばないだろうか。(535文字) 4.コメント こんにちは、論評お疲れ様です。 そうですね。自分で汚したものは自分で掃除をするべきです。 ですが、オフィスなどにおいては、ロボットがするか掃除のおばちゃんがするかの違いだけではないでしょうか また、最後の一文にある現在深刻化しているという文章は「看護などのロボット」のことを指すのでしょうか それとも、現在の看護の体制のことを指しているのでしょうか。教えて下さい。 -- (上田聡) 2009-12-04 16 54 09 コメントありがとうございます。 看護の約にたつロボットを作るべきではないだろうかということです。 -- (河本和樹) 2009-12-07 01 18 29 論評お疲れ様です。河本君はきっと看護ではなく、介護のことを言いたいのだと思います。(違ったらごめんなさい><) 当たり前のことですが、介護を受けるおじいさんやおばあさんは人間です。全自動の看護ロボットが生まれれば確かに「介護する側」にとってとても便利なものです。 しかし、「介護を受ける側」の人たちはどうでしょう。全自動の機械に介護されていると、自身をお荷物、工業製品という風に考えてしまい、生きがいをなくして行くのではないかという考えが一般的です。 そのため、現在の介護ロボットの開発は「介護者の負担を減らす」という考え方の下で行われています。商品化はされていなかったと思いますが、少ない力で要介護者を持ち上げたり、入浴を手助けする機械も開発されています。 老老介護の問題も深刻化していますし、介護ロボットの開発は必要不可欠ですね。 -- (平岡 裕樹) 2009-12-07 14 55 43 確かに介護の事です。 「介護を受ける側」の人たちはどうでしょう←言っていることは分かります。 そのため、別に個人で持つとかではなく、老人ホームに置くロボットなどです。 例えば、老人ホームの売店に買ってきてほしいものなどの言って、買ってくるロボットや、 老人ホーム内の掃除などでも良いです。 寝ている人の体をふくなどと言ったものは、人間などで構わないということです。 まとめていえば、介護をする人の助けをするロボットの事です。 -- (河本和樹) 2009-12-08 02 43 07 名前 コメント すべてのコメントを見る
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第4ラウンド第8試合:VR戦場地形『オフィスビル街』 ・ここは、得票数がもっとも多いSSが勝者となる、誰が一番面白いお話を書けるか競いあうインターネット上のゲームを行なっている会場です。 ・このページではダンゲロスSSC3、第4ラウンド第8試合、VR戦場地形『オフィスビル街』の試合SSを公開しています。 試合SS 試合SS 第4ラウンドSS・オフィスビル街その1 VS 第4ラウンドSS・オフィスビル街その2 文字数:5,256文字 文字数:5,444文字 SSの文字数を事前に確認したい方は、文字数の隣の色を反転させて表示させてください。 文字数を確認する必要のない方はそのままSSをお読み下さい。 このページを訪れた方は、誰でもご自由に試合SSを読んでいってください。 それぞれのSSを読み比べて、話の内容に応じて1~10点の得票ポイントでそれぞれのSSを評価してください。 ポイントをつける基準、面白いと判断する基準はなんでも構いません。貴方が面白いと思った内容に応じて投票しましょう。 貴方の投票がゲームの勝者を決める! ・投票フォームはこちら 対戦キャラクター キャラクターの並び順と試合その1、その2の順序は関係がありません。 キャラクター名 性別 特殊能力名 荒川 くもり 女 全壊(オール・デストラクション) 銀天街 飛鳥 女性 天賦の銀才(シルバードロップ) VR戦場地形『オフィスビル街』 ビジネスマン達が通うオフィスビル、高層ビル施設が居並ぶ地形。 オフィスビル内には業務のための様々な道具、設備が存在する。 第4ラウンド:VR戦場地形 山岳地帯 前の試合| 第4ラウンドSS一覧 |次の試合 第4ラウンド:VR戦場地形 リゾート施設