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ベルガリアード物語>地名 ファルドー農園は、西を風の海?に、東をチェレク湾?に接する霧の王国センダリアのほぼ中央に位置していた。 □関連項目 ファルドー ダーニク ランドリグ ドルーン ズブレット アンヘルダ エイルブリッグ クラルト
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アルファー ●「幻獣機」と名のついたモンスター群 使用カード 幻獣機ドラゴサック(OCG) 風霊神ウィンドローズ(OCG) 幻獣機テザーウルフ(OCG) 幻獣機ハムストラット(OCG) 幻獣機ブラックファルコン(OCG) 幻獣機メガラプター(OCG) 幻獣機レイステイルス(OCG)
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キャラ企画としてのアルファルグ・フォーデス 制作キャラ 羽島ヤシチ ナイアナ:波の悪夢 超ナイアナ:血波の悪夢 空士ノ紀磁丸(女)16歳 ナイアナ:毒の悪夢 いかせのごれ在住 スキュアロウ・バルカンチ(男)33歳 ナイアナ:修羅の裁き 孤高の新人ホウオウグループ幹部 鋼チタン&ウラン 11歳 女&男 特殊能力:合理双生 立場:学生 概要:2008年09月09日に羽島ヤシチで初参加
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アルファルデス視点から見たアリア姫戦争の後半戦。そして、帝國軍無双の回。なんというか帝國軍が強すぎるような気がするが、重軽60門もの火砲を集中し、そのうち12門は事実上の十榴なわけで、それも仕方が無いかと。 アル・ディオラシス軍の士気は高揚しきり、中天に達する勢いであった。 アル・カディア軍の残していった物資が惜しみなく兵士達に配られ、そこここで宴会が行われている。だが、国王の天幕の中では、さらなる軍議が開かれていた。 「このまま全軍をあげて追撃に移るべきかと」 アル・テュルタイオス元帥が、戦勝の興奮も冷めやまぬ中、アル・カディア軍主力にさらなる打撃を与えるべきと主張している。 日中の戦闘は、アル・カディア軍の予備兵力の投入の失敗によって、アル・ディオラシス軍の勝利に終わった。しかし、その勝利はぎりぎりのものであり、軍を立て直したアル・カディア軍が再度攻め寄せてきた時に、同じ様に勝てるとは限らない。この戦いでアル・ディオラシス軍も決して少なくない損害を被ったのである。それに、アル・テオポントス将軍を討ち取った「帝國」の魔道騎士達が今回の戦闘には参加していない。彼らが今回の戦闘に参加していたならば、アル・ディオラシス軍が勝てたかどうか、非常にきわどいところであったのだ。 「我が軍もすでに限界に達しつつあります。ここは余力を残した状態で一度メッセニア市に戻り、軍を再編成した上でシュキオン市を攻めるべきでしょう」 別の将軍が、アル・テュルタイオス元帥の積極論に反論する。 実際この一〇日間の行軍と今日の戦闘で、アル・ディオラシス軍の機卒機装甲は限界に達している機体が少なくない。このまま追撃戦に移ったとしても、行軍途中で脱落する機体の数はかなりのものとなりかねなかった。工部や整備器材の整ったメッセニア市郊外の宿営地に一度戻り、一度全ての機体を整備してから出撃するべきである、というのは、相応の説得力をもっている。 「ここでアル・カディア軍を逃せば、もはやシュキオン市へは近づくことすらかなわなくなるぞ」 「我らの目的は、このメッセニア地方を奪還すること。無理してシュキオン市へ進撃する必要はありませぬ。イトメ丘とヘイラ丘を包囲し、敵の出撃を妨害すれば、おのずとメッセニア地方は我らのものとなりましょう」 「だが、その包囲軍の兵站はどうする? 敵の神聖騎士も、「帝國」の魔道騎士も手付かずで残っておる。これに兵站を食い荒らされれば、我らはとても持ちこたえられぬ」 追撃派と帰還派の間の議論は、すでに議論の域を超えて怒鳴りあいに近くなっていた。 普段であれば即座に止めに入るはずの国王は、無表情を保ったまま、じっと地図の一点を見つめて沈思黙考に浸っている。 「陛下! ご決断を!」 「陛下!」 「陛下!!」 最早らちがあかぬの悟ったのか、将帥幕僚らが、一斉に国王に向けて詰め寄る。 アルファルデスは、一歩前に出て誰かが王の身体に触れようとするのを防げる位置に立つと、直立不動の姿勢をとった。 「明後日、投入可能な戦力はどれほどか?」 「はっ! 定数七割の機甲方陣三個、軽機装甲三〇と騎兵三千、そして近衛軍団となります!」 「アルファルデス。そちの隊は何機稼動する?」 「明後日ならば、五機までは」 「……そうか。「帝國」の魔道騎士は三機。アル・カディアの神聖騎士はあと数日は出てこれまい。ならば、ヘイラ丘とイトメ丘まで進出するならば可能か」 「「陛下!!」」 「アル・テュルタイオス元帥。明日半日で可能な限り軍を再編せよ。明後日にはヘイラ丘とイトメ丘にまで進出する」 「はっ!!」 全員が一斉に王に向かって最敬礼する中、アルファルデスは、自分が何か重要な事を見落としているような感覚に嫌な予感を感じていた。 次の日、急ぎ機卒機装甲の整備を済ませ、負傷者や破損機を後送させたアル・ディオラシス軍は、イトメ丘とヘイラ丘へ向けて東へと進軍を開始した。 すでにシュキオン市を出撃してから軍勢は半数近くにまで減ってはいたが、兵士の士気は高く、誰もが自達の勝利を疑ってはいなかった。 そうして前進するアル・ディオラシス軍が派遣した斥候が、だが驚愕するべき報をもたらしたのは、すでに陽も傾きかけた頃合であった。 「「帝國」軍が陣を張っているだと!?」 彼らが全く想定もしていなかった事態に、アル・テュルタイオス元帥が驚愕に目と口を開いたまま、おうむ返しに斥候からの報告を何度も繰り返した。 あまりの事態にアル・ディオラシス軍の将帥幕僚らの誰もが、思考を停止してしまっており、どう判断したらよいのか判らないでいる。 「敵の数はどれほどだ!?」 「すでに陽も傾きかけていますゆえに正確なところは判りかねますが、多く見積もっても七千はゆかないかと」 「機卒機装甲と砲の数は?」 「それが、敵の騎兵と軽機装甲に阻まれ、正確なところは判りませぬ。ただ……」 「ただ?」 「アル・カディア王太子旗と、「帝國」軍の黒地に金色の龍の連隊旗を五流、確認しております」 アル・カディア軍の総司令官がアリストメネス王太子である事は、昨日の戦闘で判明している。つまり王太子直属の近衛部隊と「帝國」軍五個連隊が相手という事になる。 「……七千ということは、半数はアリストメネスの近衛部隊というところか。「帝國」軍について全く判らないというのが、どうしたものか」 「「帝國」軍の連隊は、どの程度の規模なのだ? 誰か知らぬか?」 「確か、機装甲連隊は、機装甲一〇〇強に機卒四〇台程度のはず。五個連隊ということは、彼らの編成では一個混成旅団となるはず」 「つまり?」 「……確か、機装甲一〇〇に、機卒四〇、歩兵四千と騎兵一千、火砲二〇から三〇というところではなかったか」 「歩兵の数が多いな。しかし、それに近衛部隊が参加するとなるとやっかいだぞ。どれだけ機卒機装甲が稼動しているかは判らぬが、それでも五〇は下るまい。例の「帝國」の魔道騎士も含めれば、我が軍と機装甲の戦力は同等ということになる」 皆が頭を抱えてうなっている中、一人国王だけは無表情のまま沈思黙考を続けている。 アルファルデスは、昨日自分が感じていた違和感の正体に気がついた。 この戦争は、アル・カディアに「帝國」の皇女が嫁いできたために起きた戦争である。同じ様に皇姉アルトリアがアル・カルナイ王国に嫁いだ結果、アル・レクサ王国とハ・サール王国の間に戦争が勃発したが、その時も「帝國」は多数の援軍を送り込んでいる。今回の戦争を「帝國」が予想していなかった事はありえない。そうでなくては、こんな「帝國」から遠く離れた国に皇女を嫁がせるなどするわけがないであろう。 幸いにして、距離の問題もあってか「帝國」が送り込んできた軍勢はさして多くはない。ならば、アル・カディア軍が半壊している現時点でならば、勝ち目はあるのではないか。 「テュルタイオス」 「はっ、陛下」 「いかにして戦う?」 じっと昏い眼をして見つめてくる国王に、アル・テュルタイオス元帥は、姿勢を正して答えた。 「はっ! 敵は我が軍と同等の機装甲戦力と砲兵戦力を有しておりますが、機卒と騎兵の数で劣ります。故に機卒で敵の戦線全体に圧力をかけつつ、近衛軍団の騎兵を攻撃の主力として迂回攻撃を敵本陣にしかけるというのが確実かと」 「そうか。後退は可能か?」 「敵は騎兵の数で劣りますが、例の魔道騎士がおります。これが騎兵と共に攻撃を仕掛けてきたならば、とても振り払えませぬ。どこかで決戦を強要されることになりましょう」 「そうか。戦わねばならぬとすれば、どの地で戦うべきか?」 「このまま敵に攻撃を仕掛けるのは、待ち構えている敵の罠に飛び込むも同然かと。なれば、ここは一歩引いて我が軍に有利な地形にて迎え撃つのがよろしいかと」 「そうか、ではその様に取り計らえ」 国王が決断を下したその時、天幕の外で喧騒の音が聞こえてきた。 「何事か!?」 「伝令! 伝令! 敵軍、我が軍の南東二哩の地点に布陣を始めております!!」 「なんと!? もうすでに夕刻ぞ! この時間に軍を動かすのか、奴らは!?」 突如天幕に転がり込んできた伝令の報告に、皆一斉に机上の地図にかぶさった。 「いかん! そこに布陣されて平押しにされれば、我が軍の後背は急傾斜の先の川となる。部隊機動の余地がなくなるぞ!?」 「ええい、今から軍を動かすわけにはいかん。いっそ敵の布陣が終わる前に一部部隊なりとも突っ込ませて……」 「とにかく、夜襲に備えねば! 伝令! 伝令はおるか!?」 皆が突然の事態の急変に混乱を起こしている中、アルファルデスは、頭を回転させていた。 とにかく、いざとなった国王を脱出させて国へ戻さねばならない。今の王国は、この国王の有能さゆえにまとまっているのであり、その王が失われれば混乱に陥り他国につけ入れられることになるのは確実である。最後まで王の傍につき従うのは誰にするか。「風」の精霊の加護を受け、遠見の術を持つアナクシダテスと、自分に次ぐ腕を持つ誰かの二人。自らは戦場に残って、例の「帝國」の魔道騎士と戦わねばならない。劣勢の中での混戦ともなれば、生きて帰る事はまず不可能であろう。 「鎮まれ!!」 そこまでアルファルデスの思考が進んだ所で、王が声を張り上げた。混乱に誰もが我を忘れている中、王の一喝に皆一斉に口を閉じる。 「事ここに至っては是非も無し。明日は敵と一戦まみえつつ、撤退する。今晩中にその準備をさせよ。兵どもも浮き足だっておろう。それを鎮め、明日の戦いに備えさせよ。よいな!?」 「「「はっ!!」」」 将軍達が大慌てで天幕から飛び出してゆくのを横目で見つつ、アルファルデスは、王の前にひざまずいた。 「何だ、アルファルデス?」 「これより、お傍に二名はべらせます。自分は今宵にてお別れを」 「……………」 「それでは、隊に戻りますゆえ、御免」 王の御前にて平伏したアルファルデスは、そのまま急ぎ足で天幕を出て行った。 「アナクシダテス、カナン。二人はこれから陛下の御傍に常にはべり、片時も離れてはならない。なんとしても帰国して頂かねばならぬ」 隊に戻ったアルファルデスは、緊張した面持ちで待ち構えていた部下達に、開口一番そう言い放った。 その言葉に、名指しされた二人は覚悟を決めた表情でうなずき、残りの者達は皆楽しそうな表情になった。そんな部下達を前にして、アルファルデスは、心の底から嬉しそうな表情を浮かべた。 「死ぬと決まったわけではないが、その覚悟はしておけ。敵はあの「帝國」軍だ。これまでの雑兵とは訳が違う。古代魔導帝國の末裔を自称する魔族との雑種に、神罰のなんたるかを教えてやろう」 「「はいっ!!」」 アル・ディオラシス軍と「帝國」軍との会戦は、朝靄が晴れ渡った頃合に開始された。 「帝國」軍は、機装甲戦列と歩兵中隊を組み合わせた大隊を第一線に六個を横一列に並べ、その後方の第二線にアリストメネス王太子の近衛部隊を展開させていた。さらに両翼に軽機装甲戦列と騎兵中隊を組み合わせた大隊を配置し、アル・ディオラシス軍の騎兵集団に対応できるようにしている。その騎兵大隊ごとに、六から九機のなんとも威圧感を漂わせている機装甲が配属されており、それらは三機一組となって、手に巨大な長斧や大太刀を持って待機していた。 それに対し、アル・ディオラシス軍は、三個の機甲方陣を横一列に並べ、各方陣の間に砲兵を展開させている。そして、両翼に軽機装甲を最前列に展開させた騎兵集団を配置していた。国王と近衛軍団は、機甲方陣から離れた後方に展開している。 戦闘の火蓋を切ったのは「帝國」軍であった。各歩兵大隊戦列の間に展開している野砲が、一斉に砲撃を開始したのである。その数は四個中隊二四門。大口径の重野砲の砲弾は、一哩離れた距離からでもアル・ディオラシス軍の重機装甲の大盾を貫通し、機体に損傷を与えてゆく。しかも、彼らが知るいかなる火砲と比較しても射撃速度が早い。まるで雨霰のごとくに降り注ぐ砲弾に、次々と機体が擱坐してゆく。 「このままでは埒があかん! 前進!!」 一方的に撃たれるばかりの味方に業を煮やしたアル・テュルタイオス元帥が、機甲方陣に対し前進命令を下した。それと同時に「帝國」軍の機装甲戦列も歩兵を伴って早足で前進を開始する。 これまで見た事も無い速さで長鑓を構え接近してくる「帝國」軍の機装甲戦列に、アル・ディオラシス軍の重機装甲は戦列を組みなおし、盾をかかげ、その隙間から槍を突き出して迎え撃った。だが「帝國」軍の機装甲戦列は、その槍の間合いのはるか彼方で足を止めて戦列を組み直し、長柄の穂先をそろえて槍衾として突き入れてきた。第一列が穂先を地面に下ろして一歩間合いを詰め、下からアル・ディオラシス軍の重機装甲の盾を跳ね上げ、長鑓を突き入れてくる。その一撃は重機装甲の装甲を易々と貫通し、次々と機体を擱坐させてゆく。槍の穂先を盾で受け、そのまま戦列に突入しようとする機体も、第二列第三列が掲げる槍の穂先に押し止められ、第一列が振り下ろし、跳ね上げ、突き入れてくる長鑓によって討ち取られてゆく。 「帝國」軍の機装甲戦列に正面から挑もうとせず、側面に回り込もうとした重機装甲も、「帝國」軍の重野砲の集中射を受けて次々と擱坐し、少数が戦列に挑んでは、両脇を固める機装甲が持った長斧で盾ごと機体を破砕されてしまう。 アル・ディオラシス軍の火砲も、味方の機甲方陣の攻撃を支援するべく射撃を行うが、「帝國」軍の後方から次々と降り注ぐ榴弾によって破壊され制圧されてしまう。そして、敵の火砲を征圧し終えると「帝國」軍の発射する榴弾は、機卒戦列へと降り注ぎ始めた。 その榴弾の威力は、直撃すれば機卒を爆砕させ、至近弾でも破片と爆風で擱坐させ、次々と機卒を破壊してゆく。その鉄と火薬の暴風雨に、アル・ディオラシス軍の機甲方陣は、なすすべもなく一方的に撃破されてゆくばかりである。 アル・ディオラシス軍の左右の機甲方陣は、左右に分かれた「帝國」軍の機装甲戦列の槍衾にその前進を阻止されていたが、中央の方陣は一気に突進し、アル・カディア王太子の陣に肉薄する事に成功したかに見えた。 だが、そのアルカルナイ王太子の近衛隊の前面に展開した、赤、青、黄色の三機の重魔道機装甲と、アル・カディア軍神聖騎士らの重魔道機装甲による阻止射撃が、機甲方陣の最前列の重機装甲を次々と撃破してゆく。そして、それら重魔道機装甲の左右に展開した「帝國」軍の軽野砲六門づつが次々と後続する機卒に砲弾を浴びせかけ、ばたばたとなぎ倒してゆく。 「騎兵は何をしている!?」 アル・テュルタイオス将軍の悲鳴の様な声に、だが騎兵は応える事は出来ないでいた。 数においてこそ圧倒してはいたが、しかし、「帝國」軍の軽野砲が各大隊ごとに六門が配備され、次々と騎兵戦列に散弾を撃ち込んでくるのだ。軽機装甲の突撃も、各大隊ごとに九機もいる重魔道機装甲からの魔法攻撃によって破砕され、なんとか「帝國」軍の戦列にたどりついた機体も、長鑓の槍衾によって討ち取られてゆく。 砲撃の中突撃してゆく騎兵集団も、左右斜め前に前進し騎兵大隊の前に展開してきた「帝國」軍戦列歩兵の銃剣付き燧発式小銃の交代射撃によって逆に次々と打ち倒され、戦列に達した騎兵も、突き上げられる銃剣によって刺殺されてしまう。 アル・ディオラシス軍の攻撃が「帝國」軍の予想だに出来ない阻止火力によって破砕された瞬間、待機していた「帝國」軍の騎兵集団が攻勢転移した。これまで阻止射撃に専念していた重魔道機装甲を先頭に、軽機装甲の戦列が長鑓を掲げて疾走し、その後方を槍騎兵大隊が追随してゆく。 アル・ディオラシス軍は気がつけば、左右を「帝國」軍の機装甲戦列と歩兵戦列によって、正面をアル・カディア王太子の近衛隊によって攻め立てられていた。まさに教科書に載せられていてもおかしくはない程に見事な両翼包囲の完成である。 「陛下、撤退を!!」 味方の機甲方陣が両翼包囲によって殲滅されてゆき、騎兵集団も追い散らされ、さらには左右から肉薄してくる「帝國」軍騎兵を近衛歩兵大隊が阻止している中、アル・テュルタイオス元帥は悲鳴の様な声をあげて王に戦場から離脱するよう進言した。 王が表情の消えた真っ白な顔つきでうなずき、乗っている白馬のきびすを返した瞬間、本陣左翼に展開している近衛騎兵大隊の中央で爆発が起き、火炎が柱となって立ち上った。 「敵襲!!」 混乱する騎兵大隊を「風」の魔術を使って軽々と飛び越えてきた重魔道機装甲が三機、本陣めがけて吶喊してくる。 「行くぞ!!」 アルファルデスは一声叫ぶと、「ゾイア・ベリッタ・アル・ディオラシス」を駆り、漆黒の重魔道機装甲の前に立ちはだかろうとした。 だが、彼女の掲げた円盾は敵が右肩に担いでいた大太刀の柄頭に弾かれ、彼女が突き入れた切っ先は敵の装甲の表面をかすめるように避けられ、半回転して懐に飛び込んできた敵の紫電をまとった大太刀の刃先が左肩に押し付けられた瞬間、一気に引き斬られ、機体は左袈裟に斬って捨てられた。 「姉様!?」 一撃にて打ち倒されたアルファルデスに、副官のイフィノエが悲鳴をあげる。そして、その隙を見逃す敵ではなかった。追随してきた二機のうち一機が、機体の膝をついて火炎をまとった長斧で彼女の「ゾイア・ベリッタ」の右ひざを両断する。バランスを崩して倒れた機体に、とどめの一撃が打ち込まれ、機体を火炎が焼いた。 また別の一機は、アルファルデスやイフィノエを救わんと駆け寄る三機を、爆炎の魔術をもってその脚を止め、三機が合流する時間を稼ぐ。 「よくも隊長を!!」 叫んだ古人の声に答えようとはせず、漆黒の機体は、揃って横っ飛びに打ち込んでくる三機の「ゾイア・ベリッタ」を避けると、疾風のごとく間合いを詰め、紫電や火炎をまとわせた大太刀や長斧で打ちかかり、刃先を突き入れ、次々と三機を討ち取ってしまった。 アルファルデスら五人の古人達が稼いだのはわずかな時間でしかなかったが、しかし、アル・ディオラシス王を生き残った近衛騎兵が護衛しつつ戦場を離脱するためには十分すぎるほどであった。 そしてアル・ディオラシス軍のほとんどは、「帝國」軍の包囲を突破する事ができず、戦場にその骸をさらす結果となった。 大破し、擱坐しているアルファルデスの機体に、彼女を打ち倒した漆黒の機体が近づき、操縦席の扉をこじ開ける。 「……生きてる」 その漆黒の機体の乗り手の声は、まだ歳若い少女のものであった。 自らの機体の膝をつかせると、少女は機体の外へ出て、アルファルデスの「ゾイア・ベリッタ」の操縦席へともぐりこんだ。 いかなる奇跡か、操縦席は機体が左袈裟に斬られていながら半壊で済んでおり、そしてアルファルデスは、その身体の一部を機体に押し潰されつつもなんとか生きながらえていた。少女は、首に巻いていた絹のスカーフをほどき、短刀で縦にいくつか切り裂くと、手早く止血措置をほどこしてゆく。 『小隊長』『どうしたんですか?』 少女と共に戦っていた漆黒の機体達が、魔術によって声をかけてくる。 『エウセピアは!?』 『あっちで』『残敵掃討中ですよ』 『来てもらって。この騎士、古人だ。多分、神聖騎士だよ』 『それって』『そんなに』『価値のある』『捕虜なんですか?』 『うん。多分、アル・ディオラシス王のごく近くにいた近衛騎士のはず』 『了』『解!』
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死の先を逝く者たちよ ◆x/rO98BbgY 氏 清潔な白い壁面を、飛び散った血潮が鮮烈な真紅に塗り変える。 金属が擦れ合うような耳障りな唸り声が、一騎の鼓膜を酷く軋ませた。 「が、ががっげぼぐあがぁっ!」 「ハハ、ハハハハハ、ハハハハハハハッ!!」 「やめろっ! やめろっ! やめろおおおおおぉーーーーーー!! 甲洋ーーーーーーーーーーーーっ!!!!」 抉られていた。 シャーロット・E・イェーガー中尉の腹部が。 一騎の友人である春日井甲洋の持つ、チェーンソーに。 ゴリゴリという硬質な音は、シャーリーの肉体を貫通した回転鋸が、背後の壁面をも削っている音であろうか。 それとも壁面に磔にされている、シャーリーの背骨が砕ける音であろうか。 どちらにしても、あれではもう助かりっこない。 完全に脱力してしまったシャーリーの柔肉は、いまやチェーンソーのエンジンが刻むビートに合わせて、ブルブルと揺さぶられるのみ。 時折大きく痙攣すると、それに合わせて大量の血反吐を少女は吐いた。 コバルトブルーの瞳は虚ろに伏せられ、自重すら支えられなくなった剥き出しの脚が、力なく崩れ落ちる。 グラマラスな肢体を包んでいたジャケットのボタンが弾け飛び、シャーリーの肉体はチェーンソーによって縦へ縦へと切り裂かれていった。 両断され、露わにされた血塗れの内臓は、回転する鋸によってめちゃくちゃに蹂躙され、辱められている。 それを見ても真壁一騎は、肩を震わせてただ叫ぶ事しか出来なかった。 「やめろ、やめろよ甲洋……もう、やめてくれ……俺が憎いなら、俺をやればいいだろっ!? シャーリーさんは……もう、許してやってくれぇーーーー!!」 ――俺のせいだ……俺に付き合わせたばかりに、こんな目に合わせてしまった……。 自己嫌悪に、涙する。 胸中に去来するのは、取り返しのつかない喪失感。 快活だった、年上の少女。 その彼女を助けたいと思っても、四肢にはまったく力が入らない。 土下座をするかのような体勢で、少年は目前の惨劇を見ているしかなかった。 極度の無力感と挫折に打ちひしがれる一騎に、甲洋が声をかける。 「ははは、どうだ一騎。苦しいか。だけど、こんなものじゃないぞ。 遠見も、総士も、みんなお前の目の前で殺してやる。 それが……俺が、お前に与える罰だっ!」 少女の鮮血に濡れた顔で、甲洋は嗤う。 これこそがお前の罪に相応しい罰だと。 誰も助けられずに、死んで行けと。 甲洋の狂笑を聞きながら、一騎は呆然としていた。 俺たちはいったいどこで、ボタンを掛け違えてしまったのだろうかと。 「こう……よう……みんなで……島に……」 「……ふん。俺くらい、手加減しても簡単に倒せるとでも思っていたか?」 薄暗い、病院のロビー。 土下座の体勢で、なにやらぶつぶつ呟いている一騎を、甲洋は見下ろしている。 ひどく気分が高揚していた。 ――見たか翔子。あの一騎に、俺は勝ったんだっ! 甲洋は、一騎よりも力がある事を示したかった。 示せれば、自分なら翔子を助けられたという証になる。 最初のファフナーのパイロットに、自分ではなく一騎を選んだ総士が間違っていたという証明になる。 そうだ。総士がそんな判断ミスをしたから、俺は翔子が出撃した時も、トイレの片隅で震えているしかなくて―― 「違う!!」 甲洋は激情のままに、病院の白い壁を殴りつける。 最初からファフナーのパイロットに選ばれていれば、俺はあんな風に逃げてなどいなかった。 翔子を守る為に、ちゃんと戦っていた。 間違っていたのは、総士と一騎だ。 「そうだ、俺なら翔子を助けられた。一騎に勝ったんだからな、俺は……」 リノリウムの床に這いつくばる一騎を見下ろしながら、甲洋は勝利の実感に浸る。 そして確か、シャーロット・E・イェーガーと言ったか。 あの時、勝負に水をさした女が、芋虫のように這っているのも気分が良かった。 「うう……あたしがおそい? あたしがスロゥリー?」 如何なる幻を見ているのか、一騎と同じように何事かを呟きながら、剥き出しの下半身をもぞもぞと動かしている。 もう一人、甲洋の知らない黒髪の女は、うつぶせのまま微動だにせずに倒れ込んだままだ。 春日井甲洋が、数で上回る彼ら三人をこのように無力化出来たのは、彼が所持する二つ目の武装錬金に秘密があった。 ――時を遡る事、十分前。 爆発音に導かれて近くの森へと赴いた甲洋は、思わぬ拾い物を得て病院へと戻ってきた。 そしてソレのテストをしようとしていた所に強襲をかけてきたのが、一騎たち一行である。 雷神の如きスピードで迫るシャーリーの存在に気付いた時、甲洋は既に上半身を裸に剥かれていた。 なぜそんな事をしたのかは知らないが、彼らは甲洋が手に持つ核鉄のほうを先に取り上げるべきだった。 その核鉄を見逃した時点で、勝負は既に決まっていたのだ。 チャフの武装錬金アリス・イン・ワンダーランド。 この武装錬金によって密集させたチャフによる発光は、それを見た者に強度の幻覚を見せるのだ。 一騎と問答している間、甲洋が秘かに散布したチャフの光を受けて、皆一瞬で動かなくなった。 そして今頃は、とびきりの悪夢でも見ているのだろう。 虚ろな表情で、床を転がっている彼らは既に敵ではなかった。 「とりあえず、女たちは殺しておくか」 幻覚によって無力化した一騎は、総士をおびき寄せる餌にでも出来るだろうが、女たちは甲洋にとって無価値であった。 あまりにも人質が多いと、いざという時立ちまわる事が出来なくなる。 ゆえに、ここでの殺害を決意し、鞄からチェーンソーを取り出そうとした甲洋は―― 「痛っ!?」 突如、飛来した石礫に手の甲を打たれて、短い悲鳴をあげた。 礫の飛んできた方向に振り向くと、倒れていたはずの黒髪の女――アルファルドが、スリングを構えて立っている。 「お、おまえ……幻覚から目覚めたのか!?」 さきほどまで倒れていた女の復活に、甲洋は僅かな動揺を見せた。 チャフの武装錬金による発光を、再び女に浴びせかけるが、もはやその光にアルファルドが怯む事はない。 「幻覚だと? そうか、この幻は、その武装錬金によるものか。色々とあるものだな……。 だが、あいにくと、私はそれくらいの悪夢は見慣れているのでな」 アルファルドは、床に落ちていた青龍偃月刀を拾い上げると、何もない虚空を一閃する。 その虚空に、何を見ていたのか。 口角を片側だけ吊り上げて、女はシニカルに微笑んだ。 そんなアルファルドを前にして、甲洋はまるで蛇に睨まれた蛙のような心境であった。 武芸の心得などない甲洋であったが、それでも目前の女が、自分よりもはるかに場馴れしている事は判る。 甲洋は、自己の保有戦力を素早く計算し――。 チャフの武装錬金アリス・イン・ワンダーランド――効果なし。 シェルターの武装錬金アンダーグラウンドサーチライト――あと数時間は使用不能。 チェーンソー――鞄の中。エンジンの始動には、時間がかかる。そんな暇はない―― いずれも、戦力足り得ないと判断した。 せっかく無力化した一騎たちは惜しかったが、じりじりと出口の方へと後退しながら、アルファルドの出方を窺う。 「ホムンクルスじゃないなら、お前に用はないが……その武装錬金には興味がある。 どうだ。それを渡すなら、私はこの場から立ち去ってやってもいいが?」 「なん……だと? どういうつもりだ?」 女は、核鉄と引き換えに、一騎とシャーリーを渡すと言っている。 どこまで本気なのかは知らないが、虎の子たる核鉄を簡単に渡せるはずがない。 殺し合いに抗う者たちが、集団を作るのは自明の理だ。 この武装錬金は、そういう者たちに対しての切り札となる。 渡した所で、女が約束を守る保障もなく、乗れるはずもない条件だった。 その意思を、甲洋の表情から読み取ったのか、アルファルドは軽い溜息を付く。 「交渉決裂か。それなら、実力で奪い取るしかないな」 青龍偃月刀を構えた女が、ゆらりと揺らめくと、リノリウムの床を蹴って甲洋へと迫る。 その速度は、甲洋の想定よりもはるかに速いものだったが、なんとか床へと転がりこむ事でその一撃を避けると、 甲洋は最後の持ち札を切った。 「来いっ! メカ沢あああああああっ!!」 「ブルァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 破砕音と共に、壁が砕ける。 コンクリートの破片が飛び散り、白塵の粉が舞った。 甲洋の呼び声に応え、薄壁一枚向こうから『何か』がロビーに突入してきたのだ。 ――それは、人と言うにはあまりにも丸すぎた。 大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。 それはまさにドラム缶だった。 メカ沢新一。 彼は甲洋が森で見つけ、洗脳をほどこしたサイボーグ戦士である。 円柱型の体躯から伸びた鉄板のような足が床を踏みしめれば、ガシャリガシャリと金属音が鳴り響き、 どうやって動いているのかも判らない、か細いアームには巨大なドリルが取り付けられている。 メカ沢は、壁を粉砕したそのドリルでアルファルドを不意打ちし、その重厚な威圧感を持って彼女を退けたのである。 「……なんだこのドラム缶は」 サイボーグ戦士である。 「メカ沢、撤退するぞ。スモーク弾だっ!」 「ラジャァー」 甲洋の指示に野太い声で応えると、メカ沢の頭部がカパッと開き、グレネードの発射装置が展開される。 発射されたグレネードは、スモーク弾。 有色の煙を拡散させ、視界を遮る事を目的とするグレネードだ。 甲洋とメカ沢は、その煙に紛れて病院を脱出しようとする。しかし―― 彼らが相対する敵は、『極限』であった。 視界を遮る煙をものともせずに、飛び込んできた褐色の影が甲洋を狙う。 「危ねェッ! 甲洋っ!」 「メカ沢っ!?」 「――!? 硬いなっ!」 甲洋に向かって鋭く突き出された偃月刀の刃を、メカ沢が体を張って受け止めた。 更に連続して放たれた薙ぎ払いをも、その円柱型の体で受けきると、メカ沢は右手のドリルで反撃に移る。 ロビーに充満した煙ごと螺子切るかのような、ドリルの一撃。 その攻撃を如何にして察知しているのか、アルファルドは上体を逸らして華麗に避ける。 「ここはオレに任せて、先に行きなぁ。なぁーに、このお嬢を足止めしたら、オレもすぅぐに行く」 「メ、メカ沢……よし、合流場所は打ち合わせた通りだぞ!」 「おぅ」 メカ沢は甲洋を先に逃がし、単独でアルファルドと向かい合う。 黄色い両眼が発光し、煙の中のアルファルドを睨みつけていた。 「ちぃっ、待てっ!」 「おおっとぉ、通さねェーよっと。」 アルファルドにとって、用があるのは甲洋の武装錬金だ。 先の巨人との戦い。 戦士としての技量で劣っていたとは思わないが、武装の性能差は、二対一という人数差を持ってしても如何ともし難かった。 プライドを傷つけられたアルファルドは、奴と同等の武器さえあれば――と、思わずにはいられなかったのだ。 それに所持していれば、錬金戦団への足掛かりとなるだろう武装錬金には武器以外の価値もある。 核鉄を餌に錬金戦団にもぐりこみ、錬金術の秘奥を盗み出せれば、ダイダラ社にとって大きな儲け口となるだろう。 ここで逃すにはあまりにも惜しい獲物だ。 しかし 「こぉれでお前を、バァーラバラに分解してやろぅかぁーーーーーー!?」 「それはひょっとしてギャグで言っているのか!?」 メカ沢が左手のドライバーを閃かせる。 さほど俊敏でもないその一撃を避けるのは容易かったが、こちらの攻撃も通らない。 アルファルドの青龍偃月刀は、かなりの業物であったが、下手に攻撃すれば手が痺れてしまうほどメカ沢は硬いのだ。 さて、どうするかと考えながら動きまわり、メカ沢の攻撃を凌いでいたアルファルドは、彼の後頭部に一つのボタンを発見した。 「……しかし、お前を置き去りにして行ってしまうとは酷い奴だな。知っているか? あいつは、かつての味方を殺そうとしていたんだぞ? お前も使い捨てられてしまうかもな」 「あいつが何をしようとしているかなんて、関係ねェーのよ。オレぁあいつの味方をするってェ決めたんだ。 それなら、友達(ダチ)の為に体を張ってやるのは当たり前の事じゃねェか。 女のお前さんには言ってもわからねェだろうが、そいつが不良(ワル)の――」 アルファルドの挑発。 だが、それに対しても、洗脳されたメカ沢は大地に根を張る巨木のように揺るがない。 渋い声で滔々と語り―― そしてその隙をアルファルドに突かれた。 跳び箱のように、メカ沢の天頂に手を突いて飛び越える。 そのまま背後に回り込んだアルファルドは、ファミコンのリセットボタンのような赤いボタンを押したのだ。 鬼がでるか、蛇がでるか。 固唾を呑んでアルファルドは、何が起こるのかを見守った。そして――。 『ただいまデータを初期化しました』 メカ沢は無力化された。 『音声ガイダンスに従って、名前を入力してください』 メカ沢を無力化したものの、時既に遅く。 甲洋には逃げ切られてしまったアルファルドは手に入れた戦利品をどう扱うか悩んでいた。 設定を変更して、自分の兵士にしてもいいが、単に装甲が硬いだけで使い勝手は悪そうであった。 「ふむ……」 しばらくメカ沢を前に考え込んでいたアルファルドは、いつしかドライバーを手の中に弄んでいた。 ――分解してみるか。 人とは違い、メカであれば首輪を取ってしまっても倫理的な問題はない。 それに、どういう構造で動いているのかという興味もあった。 解析できるようであれば、ダイダラ社で量産を考えてもよい。 要人警護のSPくらいには使えるだろう。 それに壊れてしまったアレの補修用パーツも取れる可能性がある。 「やるか」 呟き、メカ沢へと近付く。 そして、数十分に渡る、機械との格闘が始まった。 『ドッドッドッドッドッド』 特徴的なエンジンサウンドが、ロビーの中に木霊する。 スタイリッシュだった大型バイク『MTS1200S』の面影は既になく、その姿はメカ沢の外装に取って代わっていた。 「ふ、む?」 小首を傾げる。 アルファルドとしては、ここまでパーツを流用するつもりはなかったのだが、気が付いたらなぜかこうなっていた。 何が何だかよくわからなかったが、メカ沢の硬い装甲板は何かの役に立つかも知れなかったので、気にしない事にした。 メカ沢の首輪や、余ったパーツを鞄に仕舞い、アルファルドはとりあえずその場を離れる。 結局の所、メカ沢の構造については、謎のままだった。 さて、それはともかくとして一騎とシャーリーの二人である。 幻覚の果て、失神してしまったらしい二人の様子にアルファルドは呆れていた。 甲洋に二人の生死を委ねると言った、アルファルドの言葉は嘘ではない。 主催者の狙いを知る為には、ある程度ゲームが進んでみない事には始まらないからだ。 とはいえ、自ら手を汚すという選択肢はなかった。 正義を標榜する錬金戦士団と接触するため、なるべく足のつくような真似をしたくなかったという事もあるが、 観測者が自ら殺して回っていては、正しい測定結果など得られるはずもない。 なるべく殺し合いとは無関係な、傍観者としての立場を守らなければ、正しい測定結果は得られないのである。 もっとも、結果的にこの二人を助けた事や、津村斗貴子の死に影響を与えた事のように、この地に招かれた参加者である以上、 完全な傍観者となる事は不可能だ。 アルファルドが、殺し合いを観測しようという意思を持つ事。 それ自体が、既にこのゲームに影響を与えてしまっているのだ。 自覚はしていたが、自己の生存や、社の利益といった無視出来ない要因が絡む以上、割り切る他はない。 「だが、これ以上この二人と一緒にいる必要もないか」 シャーリーの足に付いた武装錬金「モーターギア・アナザータイプ」を奪うと、アルファルドは病院のメモ用紙を使った書き置きを放る。 ひらひらと舞い落ちたそれには『逃げた少年を追う為に、これを借りる』という趣旨の文章が、簡潔に記されている。 方便である。 とりあえず武装錬金を手に入れた今、これ以上の干渉は好ましくない。 この場から逃走した春日井甲洋が、あの武装錬金で如何なる惨事を起こそうとも、もはやアルファルドは止めるつもりもなかった。 進行していくプログラムの中で、どのような結果が出るのか。 それを知る事で主催者の狙いを突きとめ、交渉へと持ち込むのが彼女のプランなのだから。 アルファルドは、MTS1200S改めメカ沢バイクにまたがると、病院のロビーから飛び出した。 いまだ冷たい早朝の風を切りながら、アルファルドは次なる殺し合いを目撃するべく動きはじめる。 『ブルーン! ブルンブルーン!!』 「気のせいだろうか。少し鬱陶しくなったような気がするんだが……」 【メカ沢新一@魁!!クロマティ高校 バイク化】 【残り40人】 【一日目 C-4 道路 早朝】 【アルファルド@CANAAN】 [状態]:軽傷(手当て済み)、疲労(小) [装備]:青龍偃月刀@真†恋姫無双、核鉄「モーターギア・アナザータイプ」@武装錬金、メカ沢バイク@魁!!クロマティ高校 [道具]:基本支給品×2、ボイスレコーダー@DARKER THAN BLACK、自作のスリング、確認済み支給品0~2、デイバッグ×2 メカ沢の余りパーツ、首輪、ドライバー@現実 [思考] 基本:主催者と交渉に持ち込み、脱出する。他者の犠牲も厭わない 1:カナンに絶望を与える。 2:錬金の戦士との接触。 3:ヴィクターの末路への興味。 ※ボイスレコーダーには津村斗貴子との会話が録音されています。 ※メカ沢バイクにはグレネード詰め合わせ(スタン、スモーク、白燐各種2個づつのグレネード6個セット)が搭載されています。 スモーク弾は一発消費しました。 【一日目 C-4 病院 早朝】 【シャーロット・E・イェーガー@ストライクウィッチーズ】 [状態]失神 [装備] [道具]基本支給品×1、不明支給品0~1 [思考] 基本:501航空団の仲間と合流して脱出する 1:あたしが遅い? あたしがスロゥリー!? 2:ルッキーニと芳佳が心配 【真壁一騎@蒼穹のファフナー】 [状態]失神 [装備]宝剣・靖王伝家@真・恋姫†無双 [道具]基本支給品×1、不明支給品0~1 [思考] 基本:竜宮島の仲間を島に帰す 1:俺のせいでシャーリーさんが…… 2:総士、翔子を守る 3:竜宮島の仲間を探す 「はぁ、はぁ、はぁ」 病院から走って逃げてきた甲洋は、追手がかかっていない事を確認すると歩調を緩めた。 メカ沢には、はぐれた時の合流ポイントをインプットしてある。 甲洋はそこまで辿りついたら、しばらく待ってみるつもりであった。 「一騎……もうしばらくはその命、預けておくぞ」 思わぬ邪魔が入ったが、一騎に勝利しえた事実には変わりはなく、甲洋にさほどの落胆はない。 未だ戦力は十全。 幻覚が通じないイレギュラーへの対処法を考えれば、まだまだ優勝を狙えるだろう。 「翔子……待ってろよ。俺が必ず……生かして帰してやるからな」 雲一つない空を見上げて、甲洋は呟く。 空へと翔けていった少女を、今度こそは守るのだと決意を新たにした彼は、街の一角に敵影を発見する。 向こうは、まだ気付いていないようだった。 朝靄に紛れつつ、チャフの武装錬金アリス・イン・ワンダーランドを展開。 神経系に作用して方向感覚を狂わせる、この武装錬金の拡散状態での効果を活用すれば、このまま明後日の方向へと人影を 誘導する事も可能だろうが、甲洋はそうはしない。 新たに出会った人物から、翔子の情報を聞きだしたいからだ。 だから武装錬金を散布した目的は、防衛の為。 先程戦闘に及んだアルファルドは、この状態でも甲洋へと肉薄してきたのだが、保険はかけておいた方がいいだろう。 実際、彼女の攻撃を間一髪避けられたのは、その保険のおかげでもあったのだから。 そしてこれは情報を聞きだした後、速やかに攻撃へと移行する為の準備でもある。 人当たりのいい笑顔に殺意を隠し、甲洋は人影と接触を図った。 「あの……少しお尋ねしたいのですが……」 「ああーん?」 相手に害意を与えない為、二十メートルほどの距離を開けて話しかけた甲洋であったが、その女性の姿に思わず絶句する。 はいていないシャーリーや、アルファルドの軽装にも秘かに面食らっていたが、この相手はそれ以上であった。 なにせ上下ともに黒で揃えた、きわどい下着姿なのだ。 その他に身につけているものといえば、シースルーのスリップと、太腿までのストッキングだけだ。 島の外の女性は、皆こんな格好をしているのだろうか。 そもそも、竜宮島には中学校以上の学校がない。 卒業を迎えた上級生たちは、島の外の学校に進学する為、島には成熟した若い人間が極めて少なかった。 ファフナーに乗る様になった今では、その裏に隠された真実を知ってはいるが―― そういう環境で育った甲洋たちには、その手の刺激に対する免疫が極めて不足していた。 (く、くそ、何動揺してるんだ俺はっ!) 「あ、あの……翔子を……ストレートのロングヘアの、翔子という女の子を見ていませんか? 俺と同じくらいの年の子で、大人しそうな感じの子なんですけど……」 動揺しつつも両手をあげて、ゲームには乗っていない事を示しながら尋ねる。 そんな甲洋の様子に警戒を解いたのか、女性は話を聞いてくれそうな様子を見せた。 「翔子……翔子……うーん、どこかで聞いたような名前のような気もするけど……どこだったかしらねぇ」 「し、知ってるんですか!? 思いだして下さい! お願いします、どこで……どこで翔子の名をっ!?」 翔子の事を知っている。 そんなそぶりを見せた女性の言葉に、甲洋は食い付く。 「あらあら、必死ねぇ。そんなにその翔子って子の事が大切なの? 愛しちゃってるのぉー?」 愛してる。 そんな事は考えた事もなかったが、この胸の中で熱く翔子を思う気持ちが愛というものなのだろうか。 戸惑いながらも、甲洋は頷く。 その感情は、とても誇らしいものに思えた。 「そうなの……あっ、思い出したわ。翔子……羽佐間翔子よね。その子だったら――」 そんな甲洋を、微笑みながら見ていた女性が不意に翔子の事を思い出す。 甲洋は告げられる翔子の話を、一字一句聞き漏らすまいと息を呑み―― 「ぶっ殺したわよっ! こーやってねェー!!」 横殴りに叩きつけられた爆風に、堪らず転倒した。 極至近距離で、突然何かが爆発を起こしたのだ。 鼓膜が破れたような衝撃に、頭の中がキンと痺れた。 「あらぁ? あの子と同じように頭をぶっ飛ばしてやろうとしたのに――あんた、なんかしたぁ? 火薬が勿体ないだろーが。ふざけやがってこのヘナチョコがぁ」 「おま……え、翔子を……」 下着の女――リャン・チーが告げた言葉を、倒れ伏した甲洋は信じられない気持ちで聞いていた。 翔子を……殺した? 翔子が、死んだ? こんなに早く? 本当に? いや、そうなる事も覚悟はしていた。 覚悟した上で、それでも奇跡を信じて戦っていた。 元々、彼女の蘇生は、その奇跡から齎されたものだ。 だから、例え彼女が途中で死んだとしても、自分が優勝する事で彼女を蘇らせて――。 だから、絶対負けられなくて――。 そのつもりだったのに、不意に聞かされた翔子の死は、甲洋をどうしようもなく動揺させた。 再び翔子を失った悲しみと、翔子を助けられなかった悔しさと、翔子を殺した相手への怒りがごっちゃになった。 そして、 ――翔子が、もういない。 過去、一度味わった寂寥感が、再び甲洋の中に蘇っていた。 頭の中が翔子の思い出で飽和して、他の事が考えられなかった。 結局の所、甲洋は翔子の死を、今の今まで受け止めきれていなかったのだ。 だから、近付いてきたリャンに銃を突きつけられるまで、甲洋は何も反応出来なかった。 「愛なんてもんは、私と姉さまの間にだけあればいいのよ。 その辺ちゃぁんと自覚して、脇役は大人しく引っ込んでなさぁい」 (あ……俺は、また翔子を守れなかったのか……) 硬く冷たい鉄の感触に、意識が戻る。 いつのまにか、目が涙でぐしゃぐしゃになっていた。 しゃくりあげるように痙攣する喉が、最後の言葉を紡ぐ。 「頼む、一騎……翔子を……」 だが、轟いた一発の銃声が、その言葉をかき消した。 だからその言葉は、誰にも届くことなく大気の中に溶けて消えた。 核鉄の形に戻った武装錬金を回収しようと、少年の傍に跪いたリャン・チーは、そこに姉と慕うアルファルドの匂いを感じた。 ……ような気がした。 「これは……姉さまの残り香っ!? おい、お前! 姉さまに会ったのか!? どこだ、どこで会った!? どっちから来たぁっ!?」 肩を鷲掴みにして、揺さぶる。 なぜか裸の上半身を、爪が食い込むほど強く握り、何度も地面に頭を打ち付けるが、反応はない。 当然だ。 少年は、たった今リャン・チー自身が殺害したのだから。 「勝手に死んでるんじゃねえええええーーーーーーーー!! このダボがぁっ! 答えろ! 姉さまはどこ!? どこにいるの!?」 両頬を往復ビンタで張り飛ばす。 脇腹をつま先で蹴り飛ばす。 己が猛りを、思うがままに死体にぶつけながら、リャン・チーは喚いた。 だが、その問いに答えられる者は、もはやどこにもいなかった。 【春日井甲洋@蒼穹のファフナー 死亡】 【残り39人】 【一日目 D-4 市街地 早朝】 【リャン・チー@CANAAN】 [状態]:疲労(小) [装備]:核鉄「ニアデスハピネス・アナザータイプ」@武装錬金、グロック17(16/17)@現実 [道具]:基本支給品×3、マイクロUZI、チェーンソー@現実、核鉄「アンダーグラウンドサーチライト・アナザータイプ」@武装錬金 ドライバー@現実 、核鉄「アリス・イン・ワンダーランド・アナザータイプ」@武装錬金、メカ沢改造マニュアル@オリジナル [思考] 基本:アルファルドのために他の参加者を皆殺しにする 1:アルファルドと合流する 2:打倒カナン 3:はいてない奴らに復讐する ※ニアデスハピネス・アナザータイプの火薬量が半分を切りました。 052 熊が火を発見する 投下順に読む 054 [[]] 時系列順に読む 035 混浴~ふれあい~ アルファルド 0 [[]] シャーロット・E・イェーガー 065 MOTER 真壁一騎 028 フォークト=カンプフ検査法 メカ沢新一 バイク化 春日井甲洋 死亡 020 悪魔が目覚める日 リャン・チー 0 [[]]
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【元ネタ】ポーランドの伝承 【CLASS】キャスター(ライダー適正有り) 【マスター】 【真名】トファルドフスキ 【性別】男 【身長・体重】172cm・62kg 【属性】混沌・中庸 【ステータス】筋力D耐久E敏捷C魔力A+幸運C宝具C 【クラス別スキル】 陣地作成:B 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 “工房”の形成が可能。 道具作成:B 魔力を帯びた器具を作成できる。 若返りの薬など作成可能。 【固有スキル】 魂の束縛:B 悪魔との契約。 悪魔の気まぐれにより精神干渉、ST判定成功率が可変する。 高速詠唱:B+ 魔術詠唱を早める技術。 悪魔との契約により効果が上昇している。 その他、錬金術、占星術など使用可能。 【宝具】 『夜空に座する我が尊顔(クシェンジツ・トファシュ)』 ランク:C 種別:対人(己)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人 月の模様はトファルドフスキの顔であるというポーランドの伝承が宝具となったもの。 月の満ち欠けに合わせトファルドフスキの魔力数値を強化する。 また月の光を浴びることで魔力供給を可能とする。 ライダークラスで召喚された場合は宝具名こそ変わらないがランクAの対軍宝具となり 巨大な三日月に騎乗し、対象を押しつぶす質量兵器と化す。 【Weapon】 『サーベル』 トファルドフスキが持つサーベル。 近接戦闘で使用するが剣術スキルが無いため弱い。 ちなみにトファルドフスキにはセイバークラス適正は無い。 『雄鶏』 トファルドフスキが騎乗する鶏。 悪魔の使いとも幻想種とも言われているが詳細は不明。 現在はキャスタークラスで召喚されたため不所持である。 【解説】 パン・トファルドフスキ。ポーランドの伝承で語られる魔術師。 紅い服装と腰に差したサーべル、そして口ひげがトレードマーク。 しばしば鶏に騎乗した姿で描かれる。 貴族の出身であり、莫大な資産を元に魔術の研究を行っていた。 悪魔と契約し、偉大なる魔術の奥義を得たとされている。 ビドゴシチ市の市長をトファルドフスキが生成した霊薬で若返らせた逸話などが残っている。 最後には悪魔に魂を奪われ空に昇りかけるが、とっさに賛美歌を歌い悪魔を撃退 その後落下したトファルドフスキは月に不時着したとされている、 今日では月の模様はトファルドフスキの顏であるとポーランドにおいて語り継がれている。 ファウスト伝説との類似点がしばしば挙げられ、同じくトファルドフスキも実際の人物がモデルになっているとされている。 日本では滅茶苦茶マイナーだけどヨーロッパではそこそこ有名らしい
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基本情報 人物ライ・バテンカイスト ロイ・アルファルド ルイ・アルネブ 能力 セリフ 人間関係 ※最初から最後まで書籍版ではネタバレです。かなりのネタバレなので、必ず注意してください 基本情報 名前:ライ・バテンカイスト/ロイ・アルファルド/ルイ・アルネブ 性別:男 年齢:? 所属:魔女教 役職:大罪司教 種族:? 魔法:? 人物 三つの人格を持ち合わせた人物で三人とも魔女教大罪司教、暴食担当と名乗っているが、それぞれ以下のように異なる冠称を使っており、人格が切り替わると容姿も変化する。 【美食】ライ・バテンカイスト 【悪食】ロイ・アルファルド 【飽食】ルイ・アルネブ ライ・バテンカイスト ロイ・アルファルド 両手には布が巻かれ、その手首あたりから短剣の刀身が突き出しており、小柄な体躯の速度と身軽さを活かして戦う。 距離や建物の中にいても攻撃が届くという特性を持っている。 ルイ・アルネブ 3つの姿の中で最も戦闘能力が高い。 【飽食】の名から察するように美食や悪食のように何でも食べる訳ではなく、実力者など気に入った人物の記憶や名前のみを食しているようである。 能力 セリフ 人間関係 名前 コメント
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あるふぁらいど【登録タグ GUMI あ ガスマス子 曲】 作詞:ガスマス子 作曲:ガスマス子 編曲:ガスマス子 唄:GUMI 曲紹介 雨の日ソング イントロの雨音が印象的。 歌詞 (作者ブログより転載) Today is rainyday rainyday rainyday Today is rainyday rainyday rainyday Today is rainyday rainyday rainyday Today is rainyday rainyday rainyday 今日も聞こえる アルファの調べが エーテルに導かれて融け合う 濡れたアスファルトのかおり 狐の嫁入りに見惚れ 蜃気楼に飲み込まれてく 子猫がないてる 目に見えるすべてのものは どこから生まれてきたの? どうやって死んでいくの? 全ての答えは猫のみぞ知る ぽつりぽつりと雨垂れ落ちてく 空はナミダを流し続ける ひとつひとつがアルファの誘惑 剥がれ落ちるは虚性の網膜 ほうら振り向かないで 後ろはもう死んでる 前には未だ命が吹き込まれてない 急くな、今を見つめるのだ アルファが囁やくのです。 未だ見ぬ未来など無いも同然 今を生きているか? アルファの囁きに耳を傾け空を見上げながら 無心で探すリアルに手を伸ばせどまた幻影 膨張してゆく不安拡散してゆく重い思い 肩首筋耳の裏の裏に焼きつく幻影 あめあめふれふれ シトシトアタシに降り注ぐ 頭から爪先まで濡らして心まで 踊ろう裸足で さぁステップをワンツー 跳ね返るしぶき ぶつかる音と音のミュージック なにもかもどうでもよくなるまで さぁ Dance Dance and Dance 止み方を忘れたように降り続ける雨 流れ流れ行く雨垂れ眺めて視界はぼやけ明日も見えない このまま雨に溶けちゃってグッバイ 何も考えなくて良いよう ララルララルララ 雨音の奏でる狂想曲に夢中で 踊り狂い歌い狂い妄想に狂い頭が割れそう Today is rainyday rainyday rainyday Today is rainyday rainyday rainyday Today is rainyday rainyday rainyday Today is rainyday rainyday rainyday 今日も聞こえる アルファの調べが エーテルに導かれて融け合う コメント 名前 コメント
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アルファルデス視点でのアリア姫戦争について駆け足で描写した。とりあえずそういう理由で今回はえろえろは無し。そして長すぎるとwikiに叱られたので前後編に分割。 「食料の徴発に支障が出ている、だと?」 アル・テュルタイオス元帥は、軍議の席上でアル・テオポントス将軍からの報告を受けて、ふむんと鼻から息を吐きみっしりと筋肉のついた両腕を組んだ。 メッセニア市城門での戦いからすでに十日ほどが過ぎ、市の周囲には攻城陣地が構築されて攻略戦が行われている。当然のことながら万を超す大軍が一箇所に集中しているのである。市の周辺の村々から徴発してきた食料だけではそれだけの軍勢を食べさせてゆけるはずもない。そのため、アル・ディオラシス軍は徴発隊を編成してメッセニア地方の村々に送り出し、入手できる限りの食料を徴発しようとしていた。 その活動が上手くいっていないとの報告を受ければ、当然軍議の席もざわめくというものである。 「はっ! 各地で徴発隊が強力な青い機装甲に襲われ次々と全滅させられているとの事。また各地の村々から村人と食料が消えているとの報告も上がってきております」 「青い機装甲か。アル・カディアにその様な騎士がいるという話を聞いた事のある者はおるか?」 アル・テュルタイオス元帥が軍議に参加している将帥幕僚らを見渡すが、皆互いに顔を見合わせるばかりで、誰もそれに答えようとはしなかった。 アルファルデスは、国王の後ろに控えたまま今の報告について考えていた。 アル・カディア王国軍が軍勢の識別のために使う色は翠と亜麻の二色であり、当然機装甲もその色に塗られている。ちなみにアル・ディオラシス王国軍の識別色は群青と赤である。その中で青い色を機体に塗っているということは、傭兵か、どこかの国からの援軍か、どちらかということになる。そして「帝國」の皇女を王太子妃として受け入れたことで、ハ・サール王国との関係が悪化しているかの国が、戦争が始まってこれだけ素早くそれほどの腕を持つ傭兵と契約を結べるとは到底考えられない。となると消去法で、どこかの国、多分「帝國」からの援軍ということになるのではないか。 「聞いた者はおらぬか。さすれば、傭兵か、援軍か、それとも例の「帝國」の皇女についてきたという騎士か」 アル・テュルタイオス将軍の言葉に、軍議の席は騒然となった。 「帝國」よりわざわざ千五百哩彼方の遠国に嫁いできた皇女が引き連れてきた兵は、千にも満たぬ小勢と聞く。しかしながらその将は「帝國」でも名の知れた名将であったそうである。こと軍事に関しては他国の追随を許さぬとされる「帝國」で名将と称されるほどの者である。配下の騎士も相応に腕の立つ者である可能性が高い。 「ちなみに、これまで徴発隊が受けた損害はいかほどか?」 「はっ、機装甲二一機に機卒四七台、兵八百名とのこと」 「なんと! 徴発隊の機装甲機卒の四割もではないか!?」 そのあまりの損害の大きさに、軍議に参加している将帥幕僚の誰もが口を開き議論をし合っている。 その騒然とした状況を、だんっ、と机を叩く音が響き沈める。 「鎮まれ!! その青い機装甲について、もっと詳しい報告を述べよ」 国王が、相変わらずの無表情さを保ったまま王錫で机を叩き、皆の視線を自分の方へと向けさせた。 「はっ! 生き残った兵の報告によりますと、その青い機装甲は、鞭のようにしない伸びる剣を使い、もっぱら雷撃をして味方機装甲を焼き、討ち取っているとのことでございます。身のこなしは目で追えぬほどにも素早く、一撃は斧槍のそれをすら凌ぐとか。多数で囲んでも、気がつけば味方はことごとく討ち倒されているとのことでございます」 「なんと! 魔道騎士の乗る重魔道機装甲か。これはますます「帝國」の騎士としか考えられませぬな」 幕僚の一人がそう推論を口にしてアル・テュルタイオス元帥に視線を向けた。元帥は、むう、と一言うなると、居ずまいを正して国王の方へと身体を向けた。 「陛下。敵が魔道騎士となりますと、近衛隊に出撃を願わなくばなりませぬ。すでに徴発の終わった村、村人の去った村は少なくありませぬ。その青い機装甲を待ち構え、討ち取ることは決して難しくはないのではありませぬか?」 「……………」 アル・テュルタイオス元帥の言葉に、国王はしばし沈思黙考すると、妙に起伏の無い声で答えた。 「ならぬ。我らの目的はメッセニア地方をアル・カディアより取り戻す事。そのためのメッセニア市の攻略である」 王のその言葉に、皆は一斉に頭を垂れた。 さらに国王は、淡々と自らの考えを言葉にして続ける。 「敵が重魔道機装甲であるとするならば、当然出撃拠点があるはず。そこを叩けばよい」 「「「はっ!」」」 「テュルタイオス、そういえばシュキオン市へと向けた兵が全滅してからその後、どうなっておる」 「はっ! 敵は、シュキオン市の手前に位置します丘に陣を張り、周辺より兵を集め、我らが街に攻め寄せぬよう守りを固めております」 アル・テュルタイオス元帥の言葉に、国王は再度沈思黙考した。 アルファルデスは、ふとその言葉に違和感を感じた。だが、彼女は騎士であって将ではない。故にその違和感が何かを言葉にすることができなかった。その違和感を言葉にしたのは、国王その人であった。 「そうか。敵の意図は、我らをシュキオン市に誘き寄せる事であったか」 「陛下、つまり敵の意図は、我らの兵站を圧迫し、メッセナ市の包囲を解かせることにある、と?」 「おおよそ、その様なところであろう。テュルタイオス。抑えの兵をここに残し、主力はシュキオン市へ向けて出撃する。まずは先遣隊を派遣し、その敵が陣を張る丘を攻略させよ」 「はっ! しかし、そうなりますとまんまと敵の意図に乗せられる事になってしまいますが、よろしいのでしょうか?」 「構わぬ。シュキオン市そのものを攻めるつもりはない」 「はっ!!」 軍議が終わり天幕から退出したアルファルデスは、ふっ、と困った様な微笑みを浮かべると、メッセニア市を囲む味方の軍勢の陣を見回した。 メッセニア市は、多数の工兵、歩兵、機卒を動員して構築した攻城陣地によって包囲され、攻城櫓が何本も立って市壁との間で射撃戦を行っている。さらには幾重にも障害物を並べた宿営地には、まだ手付かずのアル・ディオラシス軍の主力が駐屯し、出撃に備えている。 時刻はそろそろ第五刻に達する頃であろうか、太陽はまだ中天に昇りきってはいない。 宿営地は、兵士のみならず、食料や酒を売り、戦利品を買い取りに来た商人らや、兵士相手の娼婦らで賑わい、さらには出撃を控えて暇をしている兵士達が博打を打ち、酒を飲み、うかれ騒いでいる姿も目に入ってくる。国王から支払われる給金は決して高くはなく、支給される食料も最低限のものでしかなかったが、周囲の村々を掠奪して得た戦利品や農民を奴隷として売る事で、兵士の一部はそれなりの金を持っていたりした。 その無聊をかこっている兵士達にシュキオン市への出撃の命令が下ると、宿営地内は一気にあわただしくなった。装具をととのえ、天幕を畳み、私物はまとめ、背負ってゆけぬ物は輜重の荷車に載せる。 その喧騒の中を、アルファルデスも出撃のための指揮をとるため、自らの天幕に急ぎ向かった。 出撃の準備は、彼女の副官が指揮をとって進めていた。 「姉様、出陣の準備は整いました。いかがなされます?」 「別命あるまで待機だ、イフィノエ。行軍序列だが、前衛はお前が、後衛はアルクメネが担当しろ」 豊かな黒髪を顎と眉の辺りで切り揃えた、吊り目のきつい美貌の古人がアルファルデスの元に駆け寄り膝をついた。彼女は肌の浅黒いアル・ディオラシス人の中では珍しく色白で、そして成熟した女らしい身体つきをしている。その黒い瞳には、アルファルデスを崇拝するかのような光が輝いていた。 そんなイフィノエを前にしても、アルファルデスは相変わらずの無表情を崩さずにいた。短く指示を下すと、すたすたとその場を歩み去り、隊の段列を構成している機卒らの下へ向かう。 イフィノエは、そんなアルファルデスの後姿を熱っぽい視線を追うと、すぐに他の古人達の元へと走り去った。 アル・ディオラシス軍主力の出陣の準備が整ったのは、中天に太陽が昇りきった頃であった。まず前衛としてアル・テオポントス将軍の指揮する一個機甲方陣と、騎兵と歩兵合わせて三千を主力とした五千の兵が、シュキオン市に向かって出撃する。吹奏楽器と太鼓で奏でられる勇壮な行進曲にあわせて地響きを立てて出陣してゆく軍団を、国王は白馬にまたがって見送った。 続いて国王自身が直率する主力が、アル・テオポントス将軍の進んでゆく道とは別の街道を進撃してゆく。前衛はシュキオン市への最短距離を進むべく行軍しているのに対し、主力は大軍の移動に適した整備された街道を進む事になっていた。なにしろ万を超える軍勢である。まともに舗装されていない道路では、あっというまに路面がぐずぐずになってしまって、機卒や荷車がぬかるみにはまって身動きがとれなくなってしまうことになる。 アルファルデスの率いる一隊は、近衛軍団の三つの機装甲隊の一つである。 アル・ディオラシス王国の近衛軍団は、近衛歩兵連隊、近衛騎兵連隊、近衛機甲兵連隊、近衛砲兵隊、その他の支援部隊で編成され、各連隊は二個の大隊で編成されていた。南方諸王朝の近衛部隊の常として、他の部隊に比較して火器と機装甲の装備比率が高く、錬度の高い専業の兵士で構成されている。王国各地から集められた郷士が乗る雑多な機卒や、貴族の子弟が駆る種々の機装甲や、徴集された歩兵や騎兵らとは、装備の統一性や士気の高さが全く違っていた。 それらの軍勢の中でもアルファルデスの率いる古人部隊は、全員が幼少の頃から神殿にて育てられ学芸武技を徹底的に仕込まれた、精兵中の精兵たる神聖騎士である。全員がひとかどの魔道騎士であり、幾度となく戦場で活躍してきた古参兵でもあった。 そのアルファルデスの隊が国王の直衛として行軍を始めてから三日目、前衛としてシュキオン市に向かっていたアル・テオポントス将軍の軍団からの伝令が到着した。 「報告申し上げます! アル・テオポントス軍団はイトメ丘攻めに失敗し全滅、アル・テオポントス将軍は戦死なされたとのことです!」 その報告を受けて、アル・ディオラシス軍首脳部に戦慄が走った。 なにしろ機装甲三〇機、機卒七〇機の機甲方陣一個を主力とし、各種火砲一〇門も有する有力な軍団が、一戦で全滅するなど常識的に考えてありうべからざる事態である。生き残った兵士らは、散り散りになって潰走しつつメッセニア市に向けて後退中との事であった。 「何が起きたのか、詳しく報告せよ」 急ぎ開かれた軍議の席で、国王は身体一つで逃げてきた指揮官の一人を問いただしていた。 「はい。敵は、イトメ丘とヘイラ丘の両方に陣を張り、丘のふもとに障害物を設置しておりました。ただし、二つの丘の中央を通る街道には障害物はなく、力ずくで突破可能なように仕掛けられておりました」 「続けよ」 「はい。将軍は、まず工兵隊を二つの丘へと進め、砲兵で支援させつつ障害物を排除しようとなさいました。しかし、丘の斜面には多数の銃座と砲台が隠されており、近づいた工兵隊は集中射撃を受けて損害を出し、後退させざるをえなくなりました」 あちこち傷だらけのその指揮官は、呆然とした表情のまま言われるままに言葉を続けている。 アルファルデスは、その言葉に耳を傾けつつ、とりあえず無表情を維持するのに努力していた。 「将軍は、次に重機装甲の戦列を前進させて障害物を乗り越えさせ、その後方で機卒に障害物を排除させようと試みられました。しかし、敵砲台は何箇所にも分散してあり、障害物を乗り越えようとしたところを盾の向かない方向から射すくめられ、戦列が崩れ、そこに例の青い機装甲と黄色い機装甲が斬り込み、味方は散々に討ち倒され、機卒も少なくない数が敵の砲兵によって撃破されました」 「砲兵は何をしていた?」 「砲兵は、射撃準備を整えたところを、魔道による火箋によって焔硝ごと焼かれ、全滅いたしました」 「……続けよ」 「将軍は、陣地を直接攻略する事を諦め、自ら機装甲に搭乗され、残った部隊の先頭に立って街道を突破しようと試みられ、例の青い機装甲によって討たれました。その後副官が兵をまとめて後退しようとされましたが、折悪しくアル・カディア軍主力が到着し、これの追撃を受けてほとんどが討ち取られました」 「そうか。ご苦労。下がってよい」 近衛兵に抱きかかえられるようにして指揮官が軍議の席から下がると、出席していた将軍幕僚らは一斉に口を開いてあれこれと敗因について議論をし始めた。 そんな動転した臣下らの姿を冷ややかな目で見渡した国王は、一度アルファルデスの方に視線を向けると、王錫を打ち付けて叫んだ。 「鎮まれ! 何をうろたえておる!」 その声に、まるで雷にでも打たれたかのように身をすくめた将軍幕僚らは、それぞれ頭に上った血を下げて冷静さを取り戻すと、一斉に国王に向かって平伏した。 「無様な姿をさらし、まことに恐句に耐えませぬ。アル・カディア軍主力が到着したとなれば、急ぎメッセニア市に戻り、現地の部隊と合流して決戦の準備を整えねばなりませぬ」 一堂を代表してアル・テュルタイオス元帥が国王に向かって言葉を発した。確かにアル・テオポントス将軍の軍団が全滅した今となっては、数においてアル・ディオラシス軍は相当に不利となってしまっている。このままシュキオン市に向かっても、途中で迎撃され手酷い敗北を喫するのが目に見えていた。 だが国王は、常と変わらぬ無表情のままその場の皆を見渡し、そして低い声で言葉を発した。 「敵がいまだに我が軍に接触してきてはいないという事は、我が軍を発見してはいないという事でもある。さらに、メッセニア市を包囲している軍団より敵の増援に襲われたとの報告がないという事は、敵は軍を進発させずにいるという事でもある。なればこそ、こちらより敵を奇襲し、一戦して敵の士気をくじく」 王の言葉に将軍幕僚らは、はっとしたような表情を浮かべ、そして皆一斉に再度平伏した。 「我が軍は数に劣るが、しかしそれだけ移動は素早い。すでに勝ったつもりでいる敵の心の隙を突く。そのつもりで全軍の士気を引き締め、戦意を高めさせよ」 「「「ははっ!!」」」 王の言葉に勇気づけられたのか、皆の顔に闘志が戻ってくる。 それぞれ、敗戦に混乱する部隊を取りまとめ、士気を鼓舞するべく各々の部隊へと駆け出してゆく。 その姿を見送ったアルファルデスは、自分も部隊へと向かった。 「この戦いは速度が勝利の鍵となる」 部隊の皆を前に、アルファルデスは、開口一番そう言い放った。 「敵が混乱している間に、どれだけ敵陣深くにまで食い込めるか、それが勝敗を分ける。我々はそのための槍の穂先となる」 「質問をよろしいですか? 隊長」 「なんだ、アナクシダテス」 「目標は、敵本陣でよろしいのですね? ですが、敵本陣には例の「帝國」の魔道騎士とアル・カディアの神聖騎士がいるはずです。これとどう戦いますか? 敵本陣に到着する頃には、我々は消耗しきっているでしょう。それでは敵本陣を前にして攻撃を防がれてしまいます」 軍衣を着ていると、年頃の少年にしか見えなくなるアナクシダテスが、厳しい表情で質問した。他の皆も同じ意見らしく、厳しい表情のままである。それを見てアルファルデスは、ふっと微笑んで肩をすくめた。 「我々は、今回は近衛隊の重機装甲のための道筋を作るだけだ。残念ではあるが獲物は奴らに譲る」 「神聖騎士を相手に、いくら近衛とはいえ並人で相手になるとは思えません」 「そうです。魔道騎士を相手にできるのは、同じく魔道騎士のみ。まして敵は「帝國」でも名のある魔道騎士でしょう。我らでなくては討ち取れるとは到底思えません」 口々に言い立てる部下の古人達に、アルファルデスは表情を消してじっとそれぞれの瞳を見つめ返した。 その視線の重さに、皆何も言えなくなり、黙ってうつむいてしまう。 「姉様。先鋒の指揮は私にお任せ下さい。姉様はあと一人を連れて敵本陣にお斬り込み下さいませ」 それでも、副官のイフィノエが異議を唱える。 神聖騎士に対抗しうるは神聖騎士のみ。それが彼女ら神聖騎士の誇りであり自負であった。そしてそれだけの実力を有している事を、彼女らはこれまで実績で示してきていたのだ。 それに対してアルファルデスは、抑揚に乏しい声でぴしゃりとはねつけた。 「命令は下した。それとイフィノエ、戦いに勝つ事と戦争に勝つ事は別だ。強敵を打ち倒せば戦いに勝てるわけじゃない。それを覚えておけ。判ったなら出撃の準備にかかれ」 主要街道を外れて側道へと行軍経路を変更したアル・ディオラシス軍は、多数の斥候役の騎兵を放ち、アル・カディア軍主力の位置を先につかもうとした。 まずはアル・カディア軍がシュキオン市へと向かう途中でこれを捕捉しなくてはならない。包囲軍は約一万程度の歩兵と砲兵を主力とした部隊を残してきているが、それでは機甲方陣を有する敵に襲われてはひとたまりもない。今は一刻も早くアル・カディア軍主力の位置をつかむことが必要であった。 そうして放った斥候が、アル・カディア軍を捕捉したのは、アル・テオポントス将軍が戦死してから四日目の事であった。 アル・カディア軍は、イトメ丘からわずか二日のところで停止しており、その場から動く様子がないという。その場所は、メッセニア地方の交通の要所であり、メッセニア市とシュキオン市の中間にあって、南北の街道と交差する要所であった。どうやら敵は、アル・ディオラシス軍の位置をつかめず、その場に停止して捜索に当たっているらしい。 「どうやらこの戦い、我らの勝ちよ」 その報告を受けた国王は、軍議の席に集まった将軍幕僚らを前にして、はっきりとそう言いきった。 実にアルファルデスも同意見であった。本来アル・カディア軍がなすべきは、メッセニア市の攻囲を解き、メッセニア地方の支配を奪回する事にあるはずである。確かにアル・ディオラシス軍主力の位置がつかめないのは不安材料ではあろうが、メッセニア市さえ抑えてしまえば、彼らは本国との連絡線を断たれて行き場を失ってしまうのである。そうなれば、兵の脱走や、機卒機装甲の脱落に耐えながら本国へと逃げ帰るしか他に方法はなくなるのだ。 だがアル・カディア軍は、所在の知れないアル・ディオラシス軍の影に怯えて守りを固めている。 そして、それこそアル・ディオラシス王が求めていた状況に他ならなかった。 「我が軍は、このまま敵に向かって急進し、一気に決戦を挑む。腰の引けたところに奇襲を喰らわせば、そのまま一気に形勢を有利にしたまま戦いを進められるであろう」 いつになく言葉の多い王に、皆一斉に平伏して賛意を示した。 その中でアルファルデスは、皆と同じ様に平伏しつつも、「帝國」の魔道騎士はどうしているのだろうかとそればかりを考えていた。 アル・ディオラシス軍とアル・カディア軍が会敵したのは、それから二日目の朝であった。 アル・ディオラシス軍は丸一日かけて移動し、途中アル・カディア軍の斥候を蹴散らしつつ前進し、その本隊のすぐ近くに展開したのである。アル・ディオラシス軍の接近に慌てたアル・カディア軍は、あわてて宿営地から軍を出し、迎撃する態勢を整えた。だがその時には、先遣隊として放たれたアル・ディオラシス軍騎兵隊が、その地域で最も高い高地を占領していたのである。 行軍隊形から、各部隊は次々と戦闘隊形に移り、平原へと展開してゆく。すでにアル・カディア軍は布陣を終えていたが、しかし確保している地形は決して守り易いものではなかった。ところどころに村の共有林があり、刈り入れの終わった畑の土は固く、機装甲機卒の移動の邪魔にはならない。 丘の上に本陣を構えたアル・ディオラシス軍は、北に布陣するアル・カディア軍に向かって、丘の西側に三個の機甲方陣を展開させ、丘の東側に一個の機甲方陣を展開させた。そして騎兵隊を丘の裏側に配置し、敵の視界に入らないようにする。西側の三個機甲方陣は、互いの間隔を広めにとり、東側の一個方陣は、比較的丘に近いところに配置した。 そしてアルファルデスの所属する近衛軍団は、本陣の丘の北側斜面に展開し、いつでも予備隊として投入できるように配置されている。 それに対してアル・カディア軍は、五個の機甲方陣を横一列に並べ、そのうち三個を西側に集中させていた。残りの二個機甲方陣は、それぞれアル・ディオラシス軍の東側の二個機甲方陣に対峙させるように配置している。また、東側の二個機甲方陣の後方に対機装甲用の障害物を設置していた。 ちなみにアル・カディア軍の本陣は、東側の三個機甲方陣の後方に展開している。 こうして両軍が展開を終えて互いに開戦の使者を交わしたのが第五刻半であった。開戦の前に互いに使者を交わして己の正当性を主張し、神々の加護が自分にある事を述べるのは、南方諸王朝の戦争における伝統的儀礼である。その口上を述べ合った後に、はじめて戦いが始まるのだ。 最初に行動を起こしたのは、アル・ディオラシス軍であった。四個の機甲方陣が前進を開始し、それぞれ前面に展開するアル・カディア軍の機甲方陣に攻撃をしかける。円盾を構えた重機装甲の戦列が互いに激突し、盾と盾をぶつけ合いつつ、その隙間に槍の穂先を突き入れる。分厚い鋼のぶつかり合う音が平原一杯にこだまし、遠雷のごとくに轟き渡る。 最初に押し切られ始めたのは、アル・ディオラシス軍の方であった。 アル・ディオラシス軍は、シュキオン市攻略のために軍を発してから一〇日近く行軍を続けており、各機装甲のあちこちにがたがきていたのである。戦いの前日にできる限りの整備をしたとはいえ、宿営地に篭って敵を待ち続けたアル・カディア軍と比較するならば、機体の状態は決して良いとは言えなかった。ぽつぽつと出来始めた戦列の穴を埋める事もかなわず、アル・ディオラシス軍の重機装甲は、じりじりと後退しつつ機卒戦列へ向けて押し込まれてゆく。 劣勢に陥ったアル・ディオラシス軍の重機装甲は、形成不利を認めると次々と機卒戦列の間をぬって後退し、機体に不調をきたした者は修理に、武器を失った者は換えの武器を受け取りに段列へと向かう。 そのまま一気に押し崩そうと盾を掲げた重機装甲へ向けて、機卒の戦列が槍衾を組み、何段に重ねられた穂先を突き出した。その槍の穂先を盾で逸らしつつ一気に戦列の懐へと潜りこもうとする重機装甲に向けて、後列の機卒が槍を下から跳ね上げるようにして押し戻そうとする。 槍衾に邪魔されて戦列を乱され、それ以上前進できなくなった重機装甲は、一度後退すると機卒戦列の相手を味方の機卒戦列に任せた。 互いの長鑓の穂先が機卒の薄い装甲を貫き、機体を破損させ動かなくさせるか、搭乗している騎士従士を負傷させ擱坐させるかしようとする。互いに機卒戦列に開いた穴を、後列の機卒が前進して埋め、槍衾の密度を下げないようにする。 互いに一歩も引かず方陣同士で戦っている中、西側で唯一敵と戦っていなかったアル・カディア軍の機甲方陣が前進を始めた。そのままアル・ディオラシス軍の西側の二つの機甲方陣の間に入り込み、側面から敵を攻撃しようとしたのである。 だがその動きは、その二つの機甲方陣の間に配置されていたアル・ディオラシス軍の砲兵隊によって阻まれる事となった。アル・ディオラシス軍は、足りない機甲方陣の数を補うため、あえて機甲方陣同士の間隔を広めにとり、そこに手持ちの野砲を二〇門強も擬装させて配置していたのである。至近距離から発射される野砲の球弾は、易々とアル・カディア軍の重機装甲の盾を貫通し、機体の装甲をへこませ、関節を破壊する。次々と擱坐する機体を避け、機甲方陣は前進しようとするが、ばらばらに突入しようとする重機装甲を、後退したアル・ディオラシス軍の重機装甲が両脇が攻め立て、討ち取っていった。 前進したアル・カディア軍の機甲方陣が後退し始めると同時に、丘の斜面に展開していたアル・ディオラシス軍の近衛軍団が前進を開始した。 近衛砲兵隊の一〇門もの野砲が、アル・カディア軍の最も東側の機甲方陣のさらに東側側面に展開し、砲撃を開始する。その横をまず軽機装甲を先頭にした騎兵連隊が駆けぬけ、次いで重機装甲を盾にした歩兵連隊が行進してゆく。 その行進を妨害しようと、後退した重機装甲が盾をかかげて機甲方陣の側面に展開しようとするが、続けざまに発射される球弾によって戦列を組むのを妨害された上、機甲方陣を一気に崩される羽目となった。 一度崩れた戦列を組み直すのは、極めて困難である。 アル・カディア軍の最も東側の機甲方陣は、そのまま一気に崩壊し、後方へと向けて潰走し始めた。 それに対してアル・ディオラシス軍の機甲方陣は、そのまま追撃戦には入らず、隣で消耗戦を戦っている味方を援護するべく敵の機甲方陣の東側側面に戦列を展開しようとした。だが、そこに後方の対機装甲障害物の群れから砲声が響き、多数の砲弾が機卒の戦列に向けて降りそそいだ。アル・カディア軍は、アル・ディオラシス軍の近衛軍団の突撃を予期し、東側にその砲兵隊の主力を展開させていたのである。 戦線の西側でとは逆に、東側では、アル・ディオラシス軍の機甲方陣が砲撃で崩壊し、潰走に移り始めていた。 そのままアル・ディオラシス軍の戦線が崩壊するかと思われたところで、アル・カディア軍の砲兵陣地に多数の火柱が立ち、集積された装薬とともに火砲が爆散してゆく。 近衛騎兵連隊のさらに先頭を進んでいたアルファルデスの重魔道機装甲部隊が、その「火」の精霊の魔術によって、アル・カディア軍の砲兵陣地を攻撃したのだ。大出力の魔法攻撃の威力は、見事なまでに三〇門近い火砲を吹き飛ばして余りあり、簡易なものとはいえ対機装甲障害すら一部破壊してのけたのであった。砲撃による妨害から自由となったアル・ディオラシス軍は、即座に戦列を立て直すと、そのままアル・カディア軍の東側機甲方陣に突撃を行った。そして、これまで正面から互いに削りあいをしていたアル・カディア軍の機甲方陣は、この攻撃に耐える事ができず、そのまま潰走に移った。 崩壊は、始まるとあっけないほどの速さで伝播していった。 東側二つの機甲方陣も崩壊すると、残る二つの機甲方陣もそのまま後退を始めた。アル・カディア軍の本陣は、結局その予備として拘置してあった近衛部隊を投入する事なく、北の宿営地に向けて逃走を始めたのである。こうなってはもはや誰にも逃げ出すことを押し止めることはできない。 最後に投入されたアル・ディオラシス軍の騎兵集団の追撃も含めて、アル・カディア軍はその投入した戦力のほぼ三分の一を喪失し、段列の糧秣器材その他を置き去りにして、シュキオン市方面へと逃走していったのであった。