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りぜるスペシャルはりぜる氏考案の開幕テンプレ TSD→TSTと撃った後中あけRENに派生できる
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スタジオ登場時 はーい! おいしい料理で みんな ハピハピハッピー! みんなも作って みんなも作って ア・ラ・モード♪ (あらどーも) メニューをひらめいた時 ひらめきっ! キラメキッ! そると さぁ おまた~せ~! 新しいおいしさを プレゼンツ! クッキンアイドル まいん! ヒア・ウィ・ゴ~! ミサンガ なるほど、あのヒラメキからこの料理を思いついたのか いいぞ、まいん
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伝説のレースに参加するため、菜摘の故郷へやって来たりぜるたち。 舞台となる夫婦岩へ向かった一同は、明日のレースに備えて泳ぎの練習に余念がない。 友紀とりぜるだけでなく、皆がそれぞれの想いを胸にレースに挑もうとしていた。 その夜、寝つけずに海岸へと向かったりぜるは、同じく寝つけずにいた友紀と偶然出会う…。 編集長の一言 前回の後篇です。 友紀とのキスをしたいリぜる。 先生とのチャンスかと思い頑張る友紀 だが、りぜるは、負けた場合は、ある約束をしていた それを知らない友紀だが、自分に正直に動き勝負は、2人の対決になった そして、一瞬の軌跡が、起こる 映像は、こちら(消失の場合は、連絡の事 リぜるまいん ep 12 part 1 りぜるまいん サブタイトルへ戻る
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・春香が家にやってきた:第一話 家に帰ったら、春香がいた。 俺は驚いた。 だって、このリアルの世界に、3Dモデリングの春香が存在していたのだから。 しかも、飯を食っていた。ウチのお袋が作った飯だ。 「あ、お邪魔してまふ。」春香は中の人さながらに口にものを頬張ったまま答えた。 「た、ただいま。」それ以外の言葉が出てこない。 「おかえり。急にお客さん来たからご飯なくなっちゃったけど、食べるなら冷蔵庫の温めるよ?」 お袋は、この異次元からの訪問者に普通に食事を用意したっぽい。 「いや。俺は食ってきたからいいよ。」 そんなことより、この春香は、何?誰?何故?いつ?どうして? 「あの・・・プロデューサーさん?そんなに食べるとこじっと見られると・・・」 「あ、ごめんごめん」 春香のモーションも話し方もいつも通りだ。しかし、それがリアルの世界で見ると、これほどオーバーでわざとらしいものだったとは、今初めて気付いた。 見ると、春香は普通に箸と茶碗を持っている。 リアル世界との物理的接触は可能なようだ。 触ったら、いったいどんな感触なのだろう。 俺はあらぬ方向に妄想を進ませた。しかしここは自宅で、家族もいることを思い出した。 ・春香が家にやってきた:第二話 家に帰ったら、3Dモデルの春香が飯を食っていた。 俺は春香が食事を終えるのを待って、聞いてみた。 「春香、なんでここにいるんだ?」 「う~~~ん・・・ よくわかんないんですけど、気がついたら、いたんですよね。」 そうだった。春香はこういうヤツだ。いや、それ以前に、春香が自分の意志でリアル世界に現れたとは限らない。たまたまとか、事故の可能性だってある。 しかしこの狭い家の中では、いちいち腕を振り回す春香のアクションはあぶなっかしい。 いや、待てよ?! 「ということは、もしかして春香は、家に帰れないのか?」 「帰り方がわかれば、大丈夫だと思うんですけど・・・」 そうだ。同じような3Dモデルの外見、いや、背景画の外見をした、この春香が住む家が、この世界にあるかもしれない。 最寄りの駅の名前を聞いてみた。聞いたこともない駅名だった。住所も聞いてみた。それっぽい地名ではあった。 PCの電源を入れ、検索してみる。 春香が口にした駅名も住所も、実際には存在しないものだった。 「電話は?」 「私の携帯、気がついたらずっと圏外なんですよぉ・・・」 ウチの電話からかけさせてみたが、通じない。 俺は青ざめた。 やはり、この春香は次元を超えて来たのだ。いや、なんのはずみかどんがらがっしゃんか、来てしまったのだ。 春香は泣きそうな顔をしている。 おいおい、勘弁してくれよ・・・っていうか、ゲーム中ならここで選択肢が出るだろうに、リアルだから選択肢すら自分で考えなきゃならないじゃないかよ。 その時、お袋が横から「今日はもう遅いから、泊まっていきなさいよ。帰るところ、わからないんでしょう?」 「あの、でも・・・ご迷惑じゃないですか?」 「まだ子供なんだから、そんなこと気にしないの。」 俺は軽く感動した。ウチのお袋は、こんなに困った人に親切なできた人間だったのか!それもこんなアニメ絵の3Dポリゴンモデルの60fpsのアニメ声のオーバーアクションの地味な私服なのに自称アイドルなんてあやしげなこと言ってる人にまで。 ようやく人心地ついた俺は、改めて事態を整理してみた。 春香が 俺の家に 泊まる 残念なことに俺の思考はそこから全く離れることができなかった。 ・春香が家にやってきた:第三話 3Dモデルの春香が俺の家に泊まっていくことになった。 今、春香は風呂に入っている。 はたして服の下のテクスチャは存在するのだろうか。あんなところやこんなところは、あんな風やこんな風になってたりするのだろうか。 そんな妄想をしていると、コンコン、と部屋のドアがノックされた。 「はい。」 俺はひと呼吸おいて妄想を振り払った。 ドアを開けると、春香が立っていた。 「あ、プロデューサーさん、お風呂あきましたよ。いいお湯でした。」 そういう春香は、リボンを解いて、グッドスリープパジャマを着ていた。 「春香。お前、着替えとか持ってたのか?」 「え?いいえ?持ってませんけど?」 「じゃあ、そのパジャマはどうしたんだ?俺の家になかったはずだぞ。」 「あれ?そう言えばこれ、私のパジャマだ?どうなってるんでしょう?」 そんなやりとりをしながら、春香はドアの隙間から俺の部屋の中をチラチラ覗いていた。 「どうした?」 「えへへ。プロデューサーさんのお部屋って、どうなってるのかな、と思って。」 「見たいか?入りなよ。散らかってるけどな。」俺は春香を部屋に招き入れた。 「わあ。ここがプロデューサーさんのお部屋なんですね!」 そう言って、例のオーバーアクションで手を胸の前にまわす。 ガッ その手が、棚の上に置いてあったものに当たって落ちた。リボ春香だった。 「ああっ、すみません。私って本当にドジで」「触らなくていい!」 俺はあわてて声を上げた。このパターンだと先は見えている。片付けようとして慌ててどんがらがっしゃーんだ。二次災害の方が被害は大きいのだ。 「あ、ご、ごめんなさい!プ、プロデューサーさんだって、人に触られたくない大事なもの、ありますよね・・・」 そう言いながら、春香はある一点を見ていた。 視線の先を追ってみる。服を着替えさせてる途中で放置した半裸の美希ドールがあった。 いろんなものがいろんな意味で終わった気がした。 「・・・じゃ、俺、風呂入ってくる。」 「私は寝ますね。おやすみなさい。」 「おやすみ」 俺の夜があっけなく終わった。 ・春香が家にやってきた:第四話 3Dモデルの春香が家に来た夜が終わり、朝が来た。 「あ、おはやうごがいまふ。ぷろびゅーはーはん。」 居間に行くと、春香は朝飯を食っていた。服はアナザーカジュアルに着替えていた。 そうきたか。確かに毎日同じ服じゃあ不自然だもんな。 「おはよう。でも口に物を入れて無理矢理挨拶しなくてもいいぞ。あ、お袋、俺にも目玉焼きお願い。」 「はいよ。」 そう言えば、お袋は俺が『プロデューサー』と呼ばれてることに、疑問は持たないのだろうか。それとも、春香のことをどこかおかしいとでも思ってるのだろうか。 まあそれを言ったら、このアニメ絵の3Dポリゴンの存在そのものが、どう見てもおかしいのだが。 「ところで、今日は春香はどうするんだ。」 「え?」 「ほら、家に連絡がつかないわけだし、何も手を打たないでいいのか?」 「ああ。そうですね・・・でも、どうしたらいいでしょう?」 「事務所に行ってみたらどうだ?今日は休みだから俺もつきあうよ。」 「本当ですか?ありがとうございます!」 「朝飯食い終わるまで待っててくれ。」 「はい!」 そう言いながら、俺は覚悟を決められずにいた。 おそらく、いや、まず確実に765プロの事務所は、ない。 その現実を春香に突きつけないといけない。 その上で全くこの世界に寄る辺のない春香を、俺はどうするか・・・ 俺のそんなシリアスな考えを知るはずもなく、春香はのんきに歌っている。 「♪じーむしょじむしょ ♪765プロのじむしょ」 しかし、見事なまでに俺の知ってる通りの春香の行動だな。 なんだか見ていると気分が前向きになる。それが春香の魅力なんだろう。 本当に765の事務所があるんじゃないか、とも思えてくる。 しかし、現実はそんなに甘くはなかった。 ・春香が家にやってきた:第五話 3Dモデルの春香と二人で町に出た。 すれ違う人々が、一様に春香を見て、注目しているのがわかる。それは、春香がとても可愛いからなのか、それとも、フルポリゴンのアニメ絵が歩いているからなのか。 しかし当の春香は気にする様子もない。さすがに注目されることに慣れているんだろう。 そうして、目的の場所に着いた。 「あれ・・・?」春香が当惑した表情になる。 「事務所のビルが、ないですねえ?おかしいなあ。あんな大きなビル、見失うはずないのに・・・」 事務所レベルは3か。 「いつもレッスンしていたスタジオはどうだ?」 「そうですね。行ってみましょう!」険しい表情で言う。さすがに春香も深刻になってきたようだ。 そして、やはり、レッスンスタジオもたるき屋も、昔の事務所も何も見つからなかった。 「困っちゃったなあ、来週、ドームでライブがあるのに・・・。千早ちゃんと雪歩ちゃんはどこで練習してるんだろう?」 春香はどうも事態を把握できていないらしい。 いよいよだ。もう言わざるを得ない。 「春香。どうやらお前は、別の世界に来てしまったみたいだ。」 「え?な、なに言ってるんですか?プロデューサーさん・・・?」 「この世界には、765プロはない。高木社長も音無さんも、千早も雪歩も他の765プロのアイドルもいない。春香の家族も友達も、誰もいない世界なんだ。」 「で、でもプロデューサーさんは、いるじゃないですか?」 「俺はこの世界では、プロデューサーじゃない。食品会社に勤めるサラリーマンなんだ。現に春香の知ってる場所は、どこにもないだろ?」 まあいきなり信じろという方が難しいかもしれない。 俺は、春香をCDショップに連れて行った。 「ここに、春香のCDは、ないんだよ。あの伝説のミリオンセラー『太陽のジェラシー』は売ってない。」 「そんな・・・でも、そう言えば、どこのお店に行っても凄く目立つ所においてあったはずなのに・・・」 春香はあきらめきれない様子で、店内をきょろきょろし始めた。 納得の行くようにさせるか。 「ありました!私のCD、ありましたよ!」 春香が嬉しそうに持って来たのは、MA01だった。「ほら、ちゃんと太陽のジェラシーも入ってます!」 いかん。 俺はどう説明したらいいのか、わからなくなった。 ・春香が家にやって来た:第六話 3Dモデルの春香と俺は、公園のベンチに座っていた。 春香の手には、ケースにひびの入ったMA01。CDショップで春香が手に持ったまま転んでしまい、やむなくお買上げとなった。 「本当にすみません。プロデューサーさん・・・」 いつになく神妙な春香。 「気にするな。CDの一枚くらい。」 「そうじゃあないんです・・・。私、本当はわかってたんです。このCDは私のじゃない、ってこと。」 「え?」 「私、このジャケットも見たことないですし、曲も歌ったことないのが入ってますし・・・。ううん、そんなことより、プロデューサーさんの言ったこと、本当なんだと思います。あ、プロデューサーさんじゃないんでしたっけ。ごめんなさい。」 「いや、いいよ。俺は春香のプロデューサーのつもりだ。」 俺がプロデューサーじゃなかったら、春香はこの世界と何の接点もなくなってしまう。今まで見たことがないくらい落ち込んだ春香に対して、そんな真似はできない。 「昨日から、なんかおかしいなあ、とは思っていたんですけど、はっきり『違う世界に来た』って言われたらさすがに信じられませんでした。でも、そうじゃないとおかしいことばかりなんですよね。」 春香は空を見上げた。遠い目をしていた。そしてしばらくしてから、言葉を継いだ。 「事務所のみんな、学校のみんな、お父さん、お母さん・・・みんなに会えないのは、ちょっと淋しいかもしれないですね。」 「春香・・・」 「でも」 春香はこちらに顔を向けた。 「プロデューサーさんがいるなら、この世界も、悪くないかな、って思います。」 それ、ヤバい意味じゃないだろうな? ウソです。そんなこと絶対言いません。一瞬でもネタとしてでもそんなこと考えた俺を許してください神様。 「よし!決めた!」 俺は意を決して、ベンチから立ち上がった。 「え?何をですか?」 「俺は、この世界でもプロデューサーになる。春香をこの世界でもトップアイドルにしてみせる!」 「ええっ!!で、できるんですか?そんなこと?」 「できるかどうかは、やってみないとわからない。でも、やってみる価値はある。俺たちは、元々そのために出会ったんだ。春香をトップアイドルにするために。」 「わかりました!プロデューサーさん!私、頑張ります!」 春香は時にこちらが不安になるくらいあまりにも素直で単純だ。 「よし、そうと決まれば早速活動開始だ。」 「じゃあ、何から始めましょう?」 「やっぱり初日はミーティングだな。」 「あれ?その台詞、どこかで聞いたことがありますよ?」 俺は、にやりとした。 「春香、でいいかな?」 「プロデューサーさん。わっ、呼んじゃいました!」 俺たちは、顔を見合わせて笑った。 ・春香が家にやってきた:第七話 俺は3Dモデルの春香をこの世界でプロデュースすることにした。 実は昨日から考えていたことは、それだ。それがこの世界で春香が過ごすのに最高の道だと思っていた。 見込みは、ある。 アイマスのライブには千人単位で人が集まる。その中で、中の人専門という人間はそう多くはない。つまり、広報戦略さえしっかりすれば、少なくとも数百人規模のライブなら成功させられることになる。 人が集まらないなら、小規模でライブやサイン会をやってもいい。なにせ本物の天海春香だ。小規模でも継続させれば口コミでだってファンは集まってくるはずだ。 いや、大きく出るなら、ドンとテレビに出演させてアイマスファン以外も取り込めれば、本気でトップアイドルも夢じゃない。 さて、現実に目を戻す。 まずミーティングと称して、なぜか俺たちはカラオケボックスにいたりする。 実は、先ほど春香はちょっと気になることを言っていた。MA01に、歌ったことのない曲がある、と。 プロデュースするに当たって、まずはこの春香がどの曲を知っているか、さらに歌唱力はどんなものなのか、どうしても確認しておきたかった。 別に、春香のナマの歌をすぐ近くで独占して聞きたいなんてことは、ほんのちょっと、本当にほんのちょこっとだけ思っただけだ。 「じゃあ、ますは一曲目、おなじみ『太陽のジェラシー』から行ってみよう。」 「はい!」春香はニコニコと答える。やっぱり歌うのが好きなんだな。 ♪もっと遠くへ 泳いでみたい 光満ちる 白いアイラン♪ え・・・ う、うまい・・・ 春香は、俺のイメージより、全然歌がうまいじゃないか! 俺はコールを入れるのも忘れて聞き惚れた。 そうか。この春香は、これまでのレッスンで歌が上達してるんだ。 そうだよな。「ありがとうございまし た」とくじけそうになっても、厳しいレッスンに付いて来てくれたんだもんな・・・ 「天海春香で、太陽のジェラシーでしたー!あれ?プロデューサー・・・さん?」 「あ、ああ。ごめんごめん。」 つい思い出に浸ってしまい、曲が終わったのにも気がつかなかった。 「ところで、今はほとんど振り付けなしで歌ってもらったけど、ちょっとダンスの動きも見せてくれないか?ちょっとだけでいいんで。」 春香の実力は、俺の想像以上なのかもしれない。 「わかりました!じゃあ曲は・・・これで、ピッピッピッと。えいっ、送信!」 「どの曲リクエスト入れたんだ?」 「やっぱり得意な曲にしたかったんで、『私はアイドル』にしました。」さっそくイントロが流れ出す。 「え?こんな狭い場所であんな派手な動きやって大丈夫な どんがらがっしゃーん 遅かった。転びそうなところを助ける役得を狙う隙すら与えない早技だ。 「大丈夫か?春香?」 「あいたた・・・えっと、ちょっとお洋服が濡れちゃいましたけど、大丈夫です。でも、飲み物全部こぼしちゃって・・・」 一瞬。俺は見逃さなかった。 春香の服の濡れた部分が、素肌に張り付いている。つまり、服の下にも何かしらテクスチャは存在する。しかも肌色の。 これは、大発見だ!このバンナムの変態め!! ・春香が家にやってきた:第八話 3Dモデルの春香のプロデューサーとなった夜。 俺は、部屋でPCの画面に向かっていた。宣材と称して、半ば趣味で撮ってきた春香の写真を整理するためだ。 公園のベンチ、街角を歩く姿、カラオケを熱唱する姿、などなどたくさんある。 「・・・どうも、イマイチだなあ。」 下手な合成写真にしか見えない。アイドラのシーンよりもさらに収まりが悪く感じる。 しかも春香の表情そのものが、同じような笑顔で、同じ材料からコラ作ったようにも見える。某スレのキャプチャ職人の方が、よほどいい表情を捉えてる。 コンコン・・・ 「どうぞ。入っていいよ」 「お邪魔します」 予想はしていたが、春香だった。 「あ。それ、今日の写真ですね?」 「うん、でもちょっと納得できてないんだ。春香、写真映りあまりよくないな?」 俺は責任転嫁した。 「え?そうですか?うーん・・・いつもニコニコして撮りやすい、って言われるんですけど・・・」 「そうか?まあ今度、ちゃんと撮影用の服でも買って、また撮り直そう。」 「はい!お願いします。うわあ、楽しみだなあ。」 視線が斜め上を泳ぐ。 「ところで、プロデューサーさん。」 「なんだ?あらたまって」 春香が居住まいをただす。 「本当に、いろいろとありがとうございます。」 深々と頭を下げた。 「お、おい・・・。よしてくれよ。」 「でも、ちゃんとお礼は言っておきたかったんです。私、全然知らない所に来ちゃって。もし、プロデューサーさんに会えなかったら、って思ったら・・・。」 「こうして会えたじゃないか。俺も最初は驚いたけど、春香に会えて嬉しかったぞ。」 「本当ですか?ご迷惑だったんじゃ・・・?」 「本当に決まってるさ。現に、こうして春香をプロデュースすることを考えると、楽しくて仕方がないくらいだ。」 「よかった・・・。」 春香は嬉しそうに頬を染めた。 あ、これだよ。こういう表情を写真に撮りたいんだよなあ。さすがに今はそんな無粋なことはできないけど。 「さあ、今日はもう遅いから、寝た方がいい。細かいことは気にしないで、いつも明るく元気でいた方が、春香らしくていいぞ。」 「はい。ありがとうございます。じゃあ寝ることにします。おやすみなさい。お仕事の邪魔しちゃってすみませんでした。」 「ああ、おやすみ。」 バタン ふう。俺も寝るか。 俺は布団に入って、ちょっとにやけながら今のやりとりを思い出した。 あれ・・・ちょっと待てよ。もしかして・・・俺、ビッグチャンス逃してね? そうかそうかそうだよないろいろ世話してやったよなだからその代わりに春香お前をいただきますガバッとか。 いやいや、そんな困っていたところにつけ込むような真似は人としてヤバいだろ。 いや・・・逆に考えると、こんな夜更けに俺の部屋に来たってことは、春香もそれなりの覚悟と、へたをすると期待を持っていたんじゃないか? プロデューサーさんありがとうございますお礼に今夜は私をプレゼントしますどうか受け取ってくださいキャッとか。 え?俺、もしかして鈍感?知らぬ間に春香の気持ちを踏みにじった?あっちの世界のPと一緒? いやいやいやいや、それって冗談抜きでヤバい意味じゃないかよ。プロデューサーという立場を利用して所属アイドルにセクハラまがいのことをしているとか。 いや、合意の上ならセクハラじゃない。しかし、そういう問題でもない。 そうか、合意の上とは言え、他人から見たらセクハラと思えることをしているから、セクハラまがいなのか。今わかった。 でもプロデュース初日にいきなり手を出したら、そりゃ最短記録だろうなあ。 そうだよ。俺はプロデューサーなんだよ。プロデュース中のアイドルに手を出すのは本来いけないことなんだよ、うん。 いや、実際手を出してるヤツは実例に事欠かないよなあ・・・。 俺は、眠れない夜を過ごした。 ・春香が家にやってきた:第九話 3Dモデルの春香のプロデュースは、難航していた。 ある程度の覚悟は出来ていた。俺は芸能界にもマスコミにも全くコネも何もなかったのだから。 しかし、意外な所に大きな問題があった。 天海春香、その名前が、現在進行中のコンテンツのキャラクター名と完全に一緒である、ということだ。 名前が一緒なのは当然、当たり前だ。しかし、全く同じ氏名を芸名として使うとなると、話は別だ。 手始めに、と考えた小さなライブハウスですら、ライブのタイトル「天海春香ソロライブ」を、それはまずいから変えた方がいい、と言い出した。 しかし、天海春香という本名以外の名前を使うことは、意味がない。だいたい本名を使って何が悪い。 と言いながら、その本名であることを証明できる物がないのだ。 そうして、俺は副業(会社員)を休んで本業(プロデュース業)にいそしむこと数日。 その日も、何の成果も上げることなく、俺は家に帰って来た。 「ただいま・・・」 返事がない。 おかしい。春香がいるはずなのに、と思いながら、自分の部屋に入った。 春香がそこにいた。 春香は目に涙を浮かべ、怒りとも憤りとも悲しみともつかない表情で、こっちを見た。 「プロデューサーさん!私って、いったい何なんですか?!」 「え?ど、どうした、春香?」春香の雰囲気は尋常ではない。 「私、これ見ちゃったんですよ!」 どさどさっ げえええっ!俺の秘蔵のアイマス同人誌(18禁)!! 「あ!ち、違った、これじゃないです!こっちでした!」 どさどさっ え? これは、ただのアイマスのムック本じゃないのか? 「これが・・・どうかしたのか?」 俺は、おそるおそる訊いてみた。 「私って、天海春香って、ゲームの中の存在なんですか?」 「は?」 「ここに書いてあることって、全部本当に私の、私たちのことなんです。この絵もみんなそうです。でも、それってこの世界のゲームの中のことなんですよね?」 「あ、ああ・・・それは、その通りだ。」 「つまり、私は、私のいた世界は、ゲームの中に作られた、ゲームの中だけのものってことじゃないんですか?プロデューサーさんの言っていた、別の世界って、ゲームの世界のことなんですか?」 あ・・・ そうか。そういうことか。 俺たち鍛えられたプロデューサーは、春香のいる世界が、実在するものであるかのように考えている。 しかし、普通に考えれば虚構の存在だ。 つまり、春香は自分が虚構の世界から来た存在だと、そう思ってショックを受けたんだ。 それも当然だ。自分のいた世界が虚構だなんて、考えただけでぞっとする。 しかも、それは俺の考える限り事実だ。 春香はすがるような目で俺を見ている。 しかし、かける言葉が見つからない。 やがて春香はその場に崩れて泣き始めた。 「春香・・・」 「お母さん・・・小鳥さん・・・千早ちゃん・・・みんな・・・みんな、ゲームの中なんかじゃないよね?・・・みんないるよね?」 その時。 どこからか音楽が聞こえた。 「・・・私の携帯?!」 よく聞くと、曲は団結のイントロだ。 ずっと圏外表示のままだった春香の携帯が、鳴っていた。 番号は非通知。 春香がおそるおそる電話を受ける。 「もしもし・・・え?小鳥さん?!」 小鳥さんだって?! どこから?どうやって? そうか!小鳥さんは○女のまま○0歳を迎えて魔法が使えるようになったんだな! ・春香が家にやってきた:第十話 3Dモデルの春香に、小鳥さんから電話がかかってきた。 「はい。プロデューサーさんなら、いますよ?今かわります。」 春香が携帯を俺に差し出す。俺はそれを受け取った。 「もしもし。」 『あ、プロデューサーですか?音無です。音無小鳥にじゅうチョメチョメ歳です。でも年齢は秘密ですよ♪』 あんた、絶対魔法使えるだろ?魔法で俺の心読んでるだろ? 「ところで、音無さん、今どこから電話かけてるんですか?」 『事務所からですよ。そうそう、プロデューサー、最近全然事務所に来ないで、どうしてたんですか?ま、まさか!春香ちゃんと駆け落ちとか・・・!?これは、765プロ始まって以来の大スキャンダル!!もし悪徳記者に知れたら・・・』 「な、何言ってるんですか?違いますよ!」 事務所に来てない・・・? あ、そう言えば、春香が来てから、箱○もアケも全然やってなかった。まさかそのこと? そう思って部屋の隅の箱○を見る。 ん?電源が入ってるぞ? 春香が慌てて「あ、それは私が、どんなゲームなのか知りたくてつけたんです。」 『事務所のみんなも、私も、困ってたんですよ。春香ちゃんにもプロデューサーにも連絡が取れなくて。』 この箱○の電源が入ったら、小鳥さんからの電話が通じた・・・そういうことか? もし、そうだとすると・・・ 「すみませんでした。後で事務所に行きます。ところで、一つお願いがあるんですが。」 『はい。なんでしょう?』 「もし、今から30分しても、春香が事務所に行かなかったら、もう一度春香の携帯に電話してもらえますか?」 『30分後ですね。わかりました、じゃあ事務所で待ってますね。』 「お願いします。じゃあ後で事務所で」 俺は電話を切った。 「プロデューサーさん、今、私が事務所に行くとか言ってませんでした?」 「ああ。俺の考えが正しければ、だけどな。ちょっと一緒に事務所に行ってみよう。」 俺はあえて軽い調子で言った。 「それって・・・私が、元の世界に帰るってことですよね?」 春香、どこ見てしゃべってるんだよ? 「まだ決まった訳じゃないが、ちょっとやってみる。」 「私が帰ったら、プロデューサーさんは?」 「俺も事務所に行くってば。」 「あ。そっか・・・うーん・・・なんだかよくわからないんですけど・・・」 ダメだ。ここで時間をかけたらダメだ。どんどん話がややこしくなる。俺の気も変わるかもしれない。 俺は箱○のコントローラを接続し直した。サインイン。 「帰ったら、またここに来れますかねえ?」 「俺が事務所に行くよ。前みたいに。いつものように。」 ゲームを起動させる。 「プロデューサーさんは、私が帰ることになっても、さみしいとか思ってくれないんですか?」 だめだったか。さすがの春香も察したらしい。 ひとつ深呼吸をしてから、答えた。 「春香、俺は、春香にアイドルでいて欲しい。そして、俺はこの世界じゃ春香をアイドルにすることができないんだ。」 自分が言っていることが、本音か建前かわからなくなってきた。 「だから、元の世界で、一緒にトップアイドルを目指そう。な?」 現に春香は、さっきも元いた世界のことを思って泣いていたじゃないか。 帰ることが、春香にとっても最善の道なんだ。俺は半ば自分に言い聞かせた。 「で、でも、今すぐじゃなくてもいいんじゃないですか?」 「逆だよ。今すぐじゃなかったら、二度と帰れなくなるかもしれない。」 いつ箱○がRRoDくらうかもしれない。そうなると、福島に行って帰って来た箱○が元と同じ次元連結機能を備えているとは限らない。 それどころか、また電源を入れ直しただけでも、もうダメな可能性だってある。現に俺が、何百回と起動したって、小鳥さんから電話がかかって来たことなんて一度もなかったんだから。 「・・・わかりました。」 俺はその返事を聞いて、正直ほっとした。 あらためてスタートボタンを押して、ゲーム開始。 「プロデューサーさんは、プロデューサーさんですものね。」 「当たり前だろ?」 ユニット選択画面。 「でも、もし帰れなかった時は・・・」 「それは、まだ考えなくていいんじゃないか。」 ユニット選択。選んだユニットは『トリコし苦労』、春香、千早、雪歩のユニット。ランクAだ。 「でも、その時は、プロデューサーじゃないプロデューサーさんと、アイドルじゃない私とか・・・そんな未来があるのかなあ、なんて。」 ・春香が家にやってきた:最終話 「でも、その時は、プロデューサーじゃないプロデューサーさんと、アイドルじゃない私とか・・・そんな未来があるのかなあ、なんて。」 ドクン! 春香の言葉は、俺の心臓を直撃した。 そうか。そう言えば、俺はずっとプロデューサーとして春香を見ていた気がする。 もっと素直に、自分の意志で、春香と日々を過ごすことは出来たんじゃないだろうか。 でも、その日々だって突然終わる可能性はあるんだ。春香が突然こっちの世界に来たのと同じように。 だったら、春香が帰らなくても、突然帰っても、ずっとアイドルとそのプロデューサーという関係でいるのが、俺にとっても春香にとっても、幸せなんだ。 それに、俺はやっぱり、アイドル天海春香が好きだ!歌って踊る春香が! 「おはようございます。プロデューサーさん!」 画面から、春香の声がした。 あわてて周囲を見渡す。 さっきまで隣にいた春香は、もうそこにはいなかった。 ふう・・・ 体中の力が抜けた気がした。 最後はあまりにあっけなかったな・・・ 春香ぁ・・・ 「あれ?私、おはようございますって、さっきまで夜だった気がするんですけど、朝ですよねえ?それに私、事務所に来てますよね?あれ?」 盛大に吹いた。 画面の中に、この世界から帰って行った春香がいた。 「春香ちゃん、プロデューサー、おはようございます。」 「あ、小鳥さん。おはようございます。今日は朝の挨拶は社長じゃないんですか?」 「ええ。ちょっとプロデューサーに業務連絡があるの。さて、プロデューサー、さっそく業務連絡です。」 俺?俺のこと・・・だよな? 「まずは、春香ちゃんを無事に返してくれて、ありがとうございます。お礼に今回は、一回だけの特別ボーナスプロデュース週にしますね。」 え?なに?リアルでフラグ立ててスペシャルステージ突入ですか? 「そのかわり、この週のプロデュースが終わると、セーブができません。さらにこのユニットのデータは消えちゃいます。」 「おい、それはないだろう?!」 俺は、つい画面に向かって声を上げた。 「仕方がないんですよ。春香ちゃんがいなくなっちゃうなんて、重大な欠陥を出しちゃったデータなんですから、本当は、黙ってプロデューサーデータを丸ごと消しちゃってもいいくらいなんです。」 いやいやいやいや。それは勘弁して下さいマジで。 「では、ボーナスプロデュース、スタート!」 選択の余地なしですか。 「プロデューサーさん。今回は、ありがとうございました。あの、私たちからお礼があるので、どうか受け取って下さい。」 私たち? お、いつの間にか千早と雪歩もいるのか。例によって一言もしゃべらないけど。 「じゃあ、行きましょう!」 行くって、どこへ・・・? 「着きました。ドームですよ、ドーム!」 はやっ! 「私たち、明日からここでライブがあるんです。そして、会場内ではたった今、明日のステージのセットが終わったところなんです。そのステージで、なんと、プロデューサーさんのためだけに、一曲歌っちゃいます!名付けて、Live for P!」 ドームで、俺だけのために・・・。 シチュエーションとしては、かなり嬉しいな。 「あの・・・私たちにできるお礼って、こんなことしか思いつかなかったんです。でも、プロデューサーさんのために一生懸命歌います。だから、聞いて下さいね。」 3人はすでにステージ衣装に着替えていた。 もしかして、俺はお客さんだから衣装や曲やパート分けを選んだりできないのかな? せっかくの特別ステージだから、最前のかぶりつきでグラビア水着2を堪能とか、そういう特典はなしですかそうですか。 いかん。画面越しだと思うと、ついつい、いつもの下衆さが出てしまう。春香が俺のためだけに歌ってくれるというのだ。心して聞こう。 「それでは、行きます。曲は『まっすぐ』」 ピアノのイントロが流れ出す 心の奥に触れるメロディー 何度、このメロディーを聞きながら、プロデュースの日々を回顧したことだろう 春香のボーカルが入る 甘い声が、しっかりと力強くメロディーラインを辿る これがAランクアイドルにまでのし上がった春香の歌だ デビュー当時の春香とは、まるで別物だ いや、春香だけじゃない 千早も歌の表現に厚みを増し、雪歩もその歌に艶を加えている ああ・・・俺は、なんて幸せなプロデューサーなんだ・・・ 自分の手によって成長した彼女達の姿を、この目で見られるなんて・・・ 曲は間奏に入った ピアノが流れる こ・・・これは、ゲームエンディングバージョン?! ピアノが奏でるメロディーの中、俺は春香との日々を思い出していた ほんの数日間、でもいろいろなことがあったようななかったような日々 すると、雪歩が中央に進み出る 「春香ちゃんを、ありがとうございました。」 え・・・ 千早が出てくる 「春香のこと、本当にありがとうございました。」 最後に、半べそ顔の春香 「あ、ありがとう・・・っ ございましたっ!」 春香の顔が、俺の涙で滲んだ 春香は、それでもこらえて歌い続ける その歌は最後まで大きく乱れることがなかった 素晴らしいステージだった。 曲が終わると、俺は画面越しに拍手を送った。 春香が、ついにこらえきれずに泣き始める。 千早と雪歩が、両側から歩み寄って、春香の肩を抱く。 二人は、顔を見合わせると、こちらに向き直って、深くうなづいた。 ああ。お前たちが一緒なら、春香は大丈夫だな。 そう思った瞬間、こらえてきた涙が堰を切った。 千早と雪歩が見守る中、俺と春香は、いつまでも泣き続けた。 ・春香が家にやってきた:エピローグ 『そこでこっちを見ている君!』 社長の声で飛び起きた。 周りを見回す。 俺の部屋だ。 俺が向こうの世界に行ったというわけではなかった。 『そう、君だよ、君!』 ゲーム画面から出ている声だった。 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。外は朝になっていた。 俺は、携帯を取り出して日付を確認した。 春香が帰って行った翌日の日付だ。 全てが夢だった、ということでもなさそうだ。 「社長、失礼します。」 俺は一言断りを入れて社長の言葉を遮り、スタートボタンを押した。 ユニット選択画面を確認する。 『トリコし苦労』は存在しなかった。 はあ。 俺はため息を一つ、ついた。 視線を落とすと、妙なものが目に入った。 「リボン・・・?」 俺の左手首に、リボンが結んである。 赤いリボン。 よくよく見てみると、リボンの裏には、何か字が書いてあるようだった。 春香、バカだなあ。 字なんか書いてあると、俺はそれを読むために、せっかく春香が結んでくれたリボンを、ほどかないといけないじゃないかよ。 シュルル、とリボンを解く。 リボンの裏には、こう書かれていた。 心はいつでも一諸ですよ! 春香 俺は・・・ 泣いたらいいのか、笑ったらいいのか、突っ込んだらいいのか、わからなかった。 しばらく考えてから、俺は、リボンをPSPにストラップ代わりに結んだ。 これで、いつも、いつでも”いっしょ”だな、春香・・・。
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まいんちゃんDVDの解説です DVD公式 http //www.super-vision.co.jp/dvd/mine/ 通常版と限定版 まいんDVDには通常版と限定版があります。 限定版=通常版2巻分+特典映像+特典 (限定版第1巻のみ別) ※限定版2巻の収録内容=通常版2巻(たまご)+通常版3巻(スイーツ)+特典 ※限定版3巻の収録内容=通常版4巻(米)+通常版5巻(夏野菜)+特典 特典 限定版第1巻 特典:まいんちゃんポストカード、レシピシート 初回限定特典:レシピシート用リングホルダー 限定版第2巻特典 特典映像:挿入歌「きらめくカラフル」、「彼とフライパン」、「ごちゃまぜ片思い」のDVDスペシャルフルバージョンを収録 特典 :レシピシート3枚、ポストカード1枚
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クリスマスの夜を迎えた二人。 部屋に隠されていた成年コミックの赤裸々な内容に、友紀は自分とりぜるの姿をダブらせていた。 そんな時、背中に抱きついてきたりぜるの手にもそれらしき本が。 「りぜるは“オトナのC”の意味を知っているんだ。なら…いいよな」迷いを吹っ切った友紀は、りぜるの手を握りふとんの中へ…!! 編集長の一言 前回に引き続きりぜるのママたちの作戦。 龍之介たちが、外で、がんばっている頃、友紀は、行動せずにいたが、 状況に追い込まれすることを決意。そして・・・ 個人的には、りぜるちゃんの寝顔可愛い。 映像は、こちら(消失の場合は、連絡の事 リぜるまいん ep 21 part 1 りぜるまいん サブタイトルへ戻る
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まおうがまちにやってくる 魔王が街にやってくる シナリオ 本編 現代日本 竜の巣 魔改造 魔王ゴロゴロ +ストーリー 『ヒト』は『魔王』の家畜となった。 ある日のこと、地球は謎の存在からの攻撃を受けた。 人間達は必死に抵抗したが、圧倒的な個の力の前に、人々は蹂躙された。 その存在はさまざまな動物にその魔力を与え、異形へと変じさせ、田畑を焼き、都市を滅ぼし、経済網は寸断された。 尋常ならざる個の極地としての力量をもったその存在を、いつからか誰もが『魔王』と呼んだ。 あるものは逆らい、あるものは迎合し、またあるものは恐れ逃げ惑った。 ちりぢりとなって森へ、地下へと逃げていった。 街はかつての賑わいをなくし、ただ風雨にさらされるのみ。 そして人はわずかに残された資源を、生きるために奪い合っていた。 誰も、彼も、一切の余裕を失ってしまっていた。 +プロット 1 YOU『見ている人をどうやって主人公に感情移入させるか』 主人公=ヒガヨウコウ。高校生。 ある日の帰り道、ダチと本屋に寄り道。週刊誌の立ち読み。 友達と他愛ない会話 2 NEED『主人公の環境を一転させてしまう「何か不吉なこと」が起こる』 3 GO『主人公が元々いた世界から新しい世界に入り環境がガラリと変わる部分』 4 SEARCH『主人公が新しい環境に順応していく』 5 FIND『主人公が「女神」に会う。「4:SEARCH」での出来事は5の準備。物語の展開を左右する大きな「選択」を行う』 6 TAKE『「5 Find」で手に入れた女神と引き換えに大きな代償を払う。代償を払ったことは、主人公が最終目的を達成するためのカギになる』 7 RETURN『「7.RETURN」は物語のクライマックスへと続くシンプルなパート』 8 CHANGE『物語という旅が出発地(平和)に戻ってくるパート。ただし、出発地に戻る前には「大きな変化」がつきもの』 +第始章―月光― 異世界からの扉が開き、魔のものが地球世界を変質させる。 実体化する悪霊、邪霊、妖魔、魔族、魔王。 一変してしまった世界に、恐れ、怯え、戸惑い、飢え、犠牲となる数多の生物。 高校に通う陽光という名の少年も、巨大化した蛇に捉えられ、食われるところだった。 しかしそれを救ったのも魔王だった。 「はじめまして、ボクの名前はゴロゴロです。庭士やってます。種族はプリティードラゴンです。あと魔王らしいです」 不思議な名を名乗り、魔王を自称する謎の少女、ゴロゴロ。 しかしゴロゴロは、自分がなぜここに来ているのかわからないと言った。 魔王とは何か、異世界とは何か、異世界の扉は誰が何のために開いたのか。 疑問は尽きず、考えはまとまらないさなか、陽光は1つの決断をする 【魔王が街にやってくる】 第始章―月光― +第一章―小さな恋の歌― 村というカテゴリーの、人口1000人程度の過疎化の激しい自治体に、陽光たちは拠点を置くことにした。 魔王という存在に忌避感を示す人々はそれなりにいたが、現状は容認されることになった。 「そんなに嫌なら出ていく、魔物は自分たちで対処しろ」 という交渉が上手く運んだのだ。 村の内部の人間からは、陽光が村の住人でないことから、はったりではないことがすぐわかったのだ。 一変した世界で、魔のものに対抗する覚悟を持ったものは貴重、むしろ頭を下げてとどまってもらうべきだと結論を出した。 そして陽光とゴロゴロとあと一頭、巨大化した小動物のフィリムは、ゴロゴロのナワバリ拡大のために川をせっせと遡上する。 そこで一行は、困窮した美少女、ジーニアスに遭遇した。 【魔王が街にやってくる】 第一章―小さな恋のうた― +第二章―手のひらを太陽に― 夢の魔王ジーニアスを仲間に加え、一行は北部一円をナワバリに収めようと画策する。 南方面から来たジーニアスから仕入れた情報によると、南の市を手中に収めた魔王はジーニアスよりはるかに強く、戦いを回避する溜めにこちらのほうへ逃れてきたとのことだった。 北に向かってくる可能性はないかという陽光の質問に対し、人口的に北は旨味がないから多分大丈夫とジーニアスは答えた。 南の魔王の糧は人間の恐怖心だとジーニアスは言った。快の感情を糧とするジーニアスとは激しく競合する。邂逅のときに困窮していたのはそのためだったのだ。 恐怖心を糧にする魔王なら人口の多い南に向かうはず。しかし、気が変わって北に来る可能性も捨てきれない、一行は気を引き締める。 ジーニアスはゴロゴロにベタぼれだ。 快の感情を糧とするジーニアスは、サキュバスとリッチにハイブリットだ。 そのため、通常のサキュバスよりも上質なマナを糧として必要で、ゴロゴロに会えなかったら飢えて死んでいたと言う。 「人間だって、魔物だって、魔王だって、食べなきゃ死んじゃうでしょ。どう充足するかが重要なのよ」 結局、今起こっていることは、極めてシンプルな生存競争だとジーニアスは断じた。 【魔王が街にやってくる】 第二章―手のひらを太陽に― +第三章―天の星悉く動き― 北部をテリトリーに収めた一行は、ついに南へと進出する。 陽光が目にするのは変わり果てた故郷。活気があった中心街は、ブラドベインによって巨大化させられた動物たちによって見る影もない。 街にあった魔よけの木は焼き払われ人々は恐怖に沈み、息を潜めて生きながらえていた。 そこにいるのは、強大な力を行使する血の魔王ブラドベイン。 ジーニアスよりも強く、陽光よりも遥かに強い。 鳥、獣、人、そして友。 ゴロゴロの庇護のもとにいた北部から一点、陽光は辛い現実を目の当たりにする。 そこに現れた意外な協力者とは。 【魔王が街にやってくる】 第三章―天の星尽く動き― +第四章―超獣― 一行は、魔よけの木の化身、あけみの協力を得て魔王ブラドベインを下した。 北と南をテリトリーに置いたところで、今度は西へ向かうことにした。 はたして一行のその判断は吉と出るか凶と出るか。 広さの割に人口の少ない北に旨味がなかったのと違い、西はそれなりに活気があったにもかかわらず、ブラドベインが手中に収めていなかったのは理由がある。 西にあるものは、山と森と市街地と港と海と、水族館。 そして一行は、ついにそれと遭遇する。 「初めまして、ボクの名前はゴロゴロです。庭士やってます。プリティードラゴンです。魔王らしいです」 「俺は陽光。剣士で人間。あと魔王じゃない」 「ジーニアス……ジーニアスいいわ。種族はサキュバスとリッチのハイブリット。魔術師で魔王よ。これでいいんでしょ」 「まあ、丁寧にどうも。私の名前はユタカ。今は無職で、種族はベヒーモス。よろしくね」 【魔王が街にやってくる】 第四章―超獣― 第五章―目覚めよと呼ぶ声あり― 第六章―雨上がるとき― 第七章―英雄たちの哀唱歌― 第八章―ふるきものの帰還― 第九章―ハッピーバースデイ― 第十章―全ての人の魂の戦い― 第士章―この星をかけた魂の戦い― 第終章―はじめましてからさようならまで― +第1章【小さな恋の歌】 釣りをしていた主人公=陽光。 突如空に巨大な魔方陣。 世界中が魔王たちの襲来を受ける。 停電、通信障害、世界は【夜】に閉ざされる。 陽光自身もその被害を受け、森の中に放り出される。 森の中で長時間さまよった後に1人の女の子と出会う。 その名は魔王ゴロゴロ。寝てたら知らないうちにここにいたと言う。家族が心配しているから帰りたいと言う。 ゴロゴロが陽光に話しかけたのは、しばらく待っても戻れないから、何か知っているかなと思ったから。 なんとゴロゴロはこの周辺一帯を隔離していた。ケータイが使えなかったのはそれが理由。 なんと外では1カ月も経過していた。 巨大なヘビをきんきんブレスで退治する。 魔王たちの魔力によって、動植物が変質しモンスター化している。しかしゴロゴロはほわんとしている。 陽光はゴロゴロにこいねがう。どうか君は人の力になってほしい。 するとゴロゴロは冒険者の証を陽光に渡す。 陽光は冒険者の証でモンスター化した獣を倒すことを決意する。 まずいま居る場所の安全を確保することにする。ゴロゴロが隔離を解くと比較的すぐ県道に出た。 道沿いに民家があったので様子を伺う。 窓ガラスが幾つか割れており、ガムテープで補強がされてあった。 鍵はかかっているが、ゴロゴロは勝手に開けた。ぺちっと軽く叱る。 中に声をかけるが返事はない。しかしゴロゴロは動くものが4っついることを看破する。 それも庭士の力かと納得しつつ、何か助けが必要なら言ってくれと言ってドアを閉める。 テーマ 数百を超える『魔王』による地球の蹂躙 『魔王ゴロゴロ』も含まれる 「毒をもって毒を制す」 「結束しないと死ぬぞ」 「この世界の人の尊厳なんて相手は考慮してくれないぞ」 「なんだか知らないけど。とにかくよし!」 「頭を垂れるな顔を上げろ」 「魔王直属琉球及び先島諸島群環太平洋解放並びに弓状列島殴り込み艦隊(メガフロート:魔王城リュウキュウ)」 「リュウキュウ発進!」 「超弩級戦艦大和改メ準二級資源採掘船及ビ艦艇補給拠点大和」 「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律により『魔王』の無力化を図る」 だが失敗する。 ゴロゴロ可愛い 海の中は割と平和。 海上は修羅。 登場人物紹介 魔王ゴロゴロ 『夢の魔王』ジーニアス 比嘉陽光 高志保洋美 宮里正義 知念月子 伊波英雄 名護修也 《神の供物》豊 《大海嘯》カンナ 『お庭番』 『魔王お仕置きし隊』 『フィル』 『イリオモテヤマネコ』 『ノグチゲラ』 『ヤンバルクイナ』 『リュウキュウヤマガメ』 『ヨナクニサン』 『大和』 敵さん 『千里眼 順風耳 サトリのトリオ』 +艦艇 『軍艦達の眠る場所』 航空母艦「赤城」 航空母艦「加賀」 航空母艦「蒼龍」 航空母艦「飛龍」 航空母艦「翔鶴」 航空母艦「瑞鶴」 航空母艦「飛鷹」 航空母艦「大鳳」 航空母艦「信濃」 航空母艦「雲龍」 航空母艦「千歳」 航空母艦「千代田」 航空母艦「瑞鳳」 航空母艦「龍驤」 航空母艦「大鷹」 航空母艦「雲鷹」 航空母艦「沖鷹」 航空母艦「神鷹」 戦艦「大和」 戦艦「武蔵」 戦艦「陸奥」 戦艦「扶桑」 戦艦「山城」 戦艦「金剛」 戦艦「比叡」 戦艦「霧島」 重巡洋艦「筑摩」 重巡洋艦「最上」 重巡洋艦「三隈」 重巡洋艦「鈴谷」 重巡洋艦「熊野」 重巡洋艦「高雄」 重巡洋艦「愛宕」 重巡洋艦「摩耶」 重巡洋艦「鳥海」 重巡洋艦「妙高」 重巡洋艦「足柄」 重巡洋艦「羽黒」 重巡洋艦「古鷹」 重巡洋艦「加古」 重巡洋艦「衣笠」 軽巡洋艦「阿賀野」 軽巡洋艦「矢矧」 軽巡洋艦「能代」 軽巡洋艦「大井」 軽巡洋艦「夕張」 軽巡洋艦「川内」 軽巡洋艦「神通」 軽巡洋艦「那珂」 軽巡洋艦「長良」 軽巡洋艦「五十鈴」 軽巡洋艦「由良」 軽巡洋艦「名取」 軽巡洋艦「鬼怒」 軽巡洋艦「阿武隈」 軽巡洋艦「球磨」 軽巡洋艦「多摩」 駆逐艦「秋月」 駆逐艦「照月」 駆逐艦「涼月」(響灘沈艦護岸/軍艦防波堤) 駆逐艦「初月」 駆逐艦「新月」 駆逐艦「若月」 駆逐艦「霜月」 駆逐艦「島風」 駆逐艦「不知火」 駆逐艦「初風」 駆逐艦「夏潮」 駆逐艦「早潮」 駆逐艦「磯風」 駆逐艦「時津風」 駆逐艦「浦風」 駆逐艦「嵐」 駆逐艦「萩風」 駆逐艦「谷風」 駆逐艦「野分」 駆逐艦「浜風」 駆逐艦「舞風」 駆逐艦「秋雲」 航空母艦「レキシントン」 航空母艦「ヨークタウン」 航空母艦「ホーネット」 航空母艦「ワスプ」 航空母艦「プリンストン」 護衛空母「ガンビア・ベイ」 護衛空母「リスカム・ベイ」 護衛空母「セント・ロー」 護衛空母「ブロック・アイランド」 戦艦「アリゾナ」 重巡洋艦「インディアナポリス」 重巡洋艦「シカゴ」 戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」 巡洋戦艦「フッド」 戦艦「ビスマルク」 戦艦「ティルピッツ」 重巡洋艦「プリンツ・オイゲン」 +... 『剣士』ソード・シルベストリ 『拳士』ナックル・エストルンド 『槍士』オリヴィア・ランス 『弓士』ユーミール・カメリア 『術士』マジク 『法士』プルミエール・ストラウト 『練士』シフ 『商人』おっちゃん 『騎士』ヴィンセント・ヴィッテンハイム 『お姫様』アイリス 『第一王子』 『第二王子』 『王様』 『冶金師』ギルガメシュ 『鍛冶師』エンキドゥ +出会い 「でもそれって――」 ゴロゴロの言葉が途中で途切れ、その上半身が何かに飲まれた 思わず尻餅をつくヨウコウを、まぶたのない緑色の瞳がぎょろりと見つめた。 『蛇』だ、変質して巨大化したそれが、少女の体を頭からずっぷりとくわえ込んでいる。 「ーーーっ!ーーーっ!」 蛇の口からは、少女の小さな足だけが見えてばたばたともがいており、くぐもった声が蛇の体内から聞こえてくる。 しかしすでに少女の腕も蛇にのまれ、抜け出すことはもうできない、蛇はヨウコウをにらんだまま、鎌首をもたげて獲物を嚥下する。 蛇というものは『毒』の印象が強い生物だ。 実際、地球上で毒を持つ爬虫類のうち、その99%を蛇が占めるのでその印象は正しいと言えるだろう。 しかし、そのような毒を持ちながらも、進化の過程では実は蛇は弱者なのだ。 弱く、小さかった蛇の祖先の爬虫類はたので餌にありつけなかった。 弱かったので身を隠すために手足をなくし、狭いところにも潜り込めるようになった。 弱かったので身を隠すため冷暗所を好み、夜に狩りをするためピット器官を手に入れた。 だがそいつは違った。 魔王が街にやってきてから、世界は魔の瘴気に満ちた。 瘴気はあらゆるものを変質させ、その蛇は巨大な体躯を手に入れた。 身を隠すことはできなくなった、だがそれを補ってあまりある力を手に入れた。 怯えて毒に頼ることは必要ない、相手にまとわりついて自由を奪ってから食らうことなど必要ない。 ただ単純に近づいてむさぼる、たった1つのさえたやり方だった。 だが大きくなって不便になった事が1つある。 そして蛇はヨウコウに狙いを定めた。 餌 が 足 り な い。 蛇は目の前の獲物を見ながら、いつもこうだと思っていた。獲物とする生き物は己の姿を見ると恐怖し、身動きを取らなくなる。 弱かったころの記憶などとうにない。 己は強い、己以外の生き物は全て餌だ、脳を占める思考はそれだ。 そして全身をバネにように動かして獲物に飛びついたその瞬間、喉に違和感を覚えた。 狙いははずれ、蛇の体はヨウコウの横をすり抜けて枯れ木に激突、めきめきと折れた。 蛇は困惑していた、体が重い。 頭を持ち上げようとする、だが喉の部分が極端に重い、むしろ感覚がない。 蛇は何がなんだかわからず、ただじたばたとその巨体を無様にのたうち回らせながら、山の斜面を転がり落ちていった。 蛇の異変に何とか気を取り直しつつ、ヨウコウは腰を上げた。 腰回りの不快感、圧倒的強者を前に醜態を晒してしまっているが、幸いここは山中だ、他者の視線は気にしなくてもいい。 それよりも今は蛇だ、少女を飲み込み、そして自身を食らおうとした蛇がどういうことか斜面を転がり落ちていったのだ。 のたうち回る蛇の体に、なにやら不思議な光沢を見た気がしたが、一瞬だったからよくわからない。 様子を見に行くべきだろうか、それとも今すぐこの場を立ち去るべきか。 一瞬悩んだが、彼はそく決断した。 丸呑みされたのならまだ間に合うだろう、あの子を助けなければ。 ヨウコウは山の斜面をえっちらおっちらと下った。 蛇は絶命していた。 いや、むしろそれは「蛇」なのか、ヨウコウにはもうわからなかった。 表情筋のない蛇の苦しげに開かれた牙の先のしたたる毒液からしっぽの先端まで、金色の金属質の光沢に包まれていた。 ヨウコウはおそるおそる近づいてその外皮に触れる、ほんのりと温かいのは先ほどまで生きていたからだろうか。 こんこんと叩いてみる、不思議な感覚だ、鉄板を叩くより重厚な音がする。 すると、蛇の内側からこんこんと音がする。 一瞬ヨウコウはびくっとしたが、すぐわかった、あの子が生きてる。 おおいどこにいるんだと、こんこんと合図を送りながら少女の場所を探る。 こん、こん、ガンッ、ガンッ、デコッ。 すると内側から一層大きな力で叩き返され、蛇の外皮が一部盛り上がった。 場所はわかった、ヨウコウは今すぐ助けると言って持ち物を探った。 ナイフのような上等なものは残念ながら持ってない。あるのはその辺に転がってる石か家の鍵くらいだ。 ヨウコウは鍵を手に取った、鉄製であるだけ石よりはましだろうという判断である。 まずもって鍵を蛇の腹に突き立てると、想像より少ない抵抗に驚きを覚える。 鍵が折れないように慎重に蛇の薄皮を剥いでみる。巨体に相応しいほどの厚みの皮だったが、鍵で突くだけで貫けるほどの柔らかさだった。 これは『金』か?とヨウコウは思った、しかしなぜ蛇が急に金になってるのかわけがわからなかった。 そのとき、コンコンと内側から合図があった。 ヨウコウは察した。この子が何かやったのだと。 そしてヨウコウはせっせと掘り進め、小一時間かけてようやく少女を掘り出した。 少女は眠っていた。 ほっぺたをぺちぺちしたら目を覚ました。 +ストーリー 異世界から現れた魔王達によって地球は蹂躙された。 市場を破壊された人間たちはその文明力を失った やがて魔王達はお互いに戦いに始めるようになり、人間達は巻き込まれないよう息をひそめてかろうじて命を繋いでいた そんなさなか、ヨウコウは1人の幼い子供に出会った なんと子供も魔王だった、しかもヨウコウが住む地域を蹂躙する魔王よりはるかに格上の ヨウコウはその小さな魔王に協力を求めた、人の世界を取り戻したい、力を貸してほしい 小さな魔王は「いいよ」と快諾した、しかし「何をしたらいいのかな」とヨウコウに尋ねた ヨウコウは小さな魔王に何ができるのかを聞いた、すると小さな魔王は「お庭をつくるのが得意だよ」と答えた 「お庭」とはどんなモノなのかを実演してもらった、すると「ちょっと待ってね」と小さな魔王が言って少し後、荒廃した街の建物が動き出したのだ 「指定した範囲内のものならこうやって動かせるよ。範囲を拡張するのはちょっと時間かかるけど」 ヨウコウはこれは天啓だと確信した 小さな魔王は非常に強い、他の魔王を蹂躙することなどたやすいだろう だがそれでは支配する魔王があいつらからこの子に変わるだけだ、人はそれではダメだ 物事には順序というものがある 頭をすげかえるのではなく、我々の環境にこの子を取り込んでしまわなければならない 「一緒に、この島を取り戻そう」 「うん、いいよ」 小さな魔王は快諾した。 +冒険者の証とは そして主人公は、目の前の少女に、『魔王』に乞い願った。 「どうか君は人を滅ぼさないでほしい、そしてどうか魔王と戦うために力を貸してほしい」 あまりに虫のいい話に自己嫌悪する主人公。 人は弱い、魔王に比べるとその差は歴然。 魔王と戦うためと言うものの、この少女にそのまま戦うことを求めることにほかならないからだ。 「えっと……あ」 すると少女は、ポーチに手を突っ込み、ごそごそとあさって、小さなアクセサリを取り出した。 「じゃあ、これあげる」 少女は主人公の手を取って、その手のひらに乗せた。 懇願に対する予想外の対応に困惑する主人公。 「これは、一体?」 そして反射的に手のひらをにぎりこむと、突如不思議な感覚に包まれる。 「っ……」 視覚に干渉するいくつかの文字情報。つい手を目の前で振ってみるが、眼前の文字は消えない。 「これは……一体……?」 「それね、『冒険者の証』って言って、えっと、す、すー、ふふふんが見れるんだって。ほら、ボクも同じの持ってるんだよ」 そういって少女は、自分の首から提げたものを主人公に見せた。少女の首から下がっているものと、今主人公が手のひらに握っているものは見た目のデザインは違うが、少女のいうには同じ機能を持ってるということだろうか。 少女が言いたかったのは『ステータス』のことだろう、『**:比嘉陽光』と名前と一緒に年齢や種族も表示されている。 『ステータス』と『冒険者』、それは実生活でほとんど縁がない言葉。 「えっと、えっと、なんだったかな、使い方の説明書って確か見られた気がする」 そう言いながら、少女は自身の『冒険者の証』を掴んで視線を空中に向ける。 少女のそんな仕草を見て、主人公は少女が同じように視覚に表示される文字を追っているのだなと察した。 しかし、残念ながら表示される文字情報は、文字であることは理解できたものの主人公には読み取れなかった。 自分の名前の部分はちゃんとした漢字表記になっていたが、項目名としての『名前』は未知の文字表記だったのだ。陽光はそれが異世界の文字であると察した。 「異世界の文字はこうなっているのか、『日本語に翻訳』なんてそんな都合のいいことが起こるわけが」 表示が日本語になった。 「……なんだこれ」 「えっと、使い方、つかいかた……」 視覚に映る情報を、フェレンゲルシュターデン現象中の猫が如く目線を動かす少女を横目に、主人公はさらっとその項目を見つける。 というか普通に『ヘルプマニュアル』と書いてあった。 「へ、へ、へ、へるぷ、ま、ま、まにゅ、ある」 少女の仕草を主人公は不思議そうに見る。 以前からこのアイテムを所有していた少女のたどたどしさが謎なのだ。 情報の開示操作に特に技術は必要ない、初めて使う自分でも問題なく使えたのだ。 「あったあった。えっと、『冒険者の証』は冒険者活動を行うためのアイテムです。だって」 そこは既に読んだ。少女が操作に手間取っている間に表示済みの項目だ。 「えっと、『冒険者の証』は、冒険者たる同士に支給され、主に同士がモンスターと戦闘を重ねることで、け、けーけん点を獲得します。だって」 そこも既に読んだ。どうやらヘルプマニュアルに書いてある情報は同じようだ。 「『冒険者の証』は、冒険者のす、すー、すー」 「ステータス」 「すてーたす、を認識。カイジが可能になります」 「ステータスって言うとあれだな、名前とか種族とか。あと開示な」 『冒険者の証』を握り絞めたときに最初に見られた項目だ。ほかにも年齢や生年月日、性別、生まれ星座や職業という項目もあった。 ついでに主人公は、少女の発言のイントネーションをわずかに訂正する。 「開示」 「そうそう、そんな感じ」 「えへへ。んと、冒険者は、職業を獲得して、あび、アビリティーを獲得します」 マニュアルの記載項目は主人公側でも開示、確認はできているので、読み上げは不要なのだが、少女が妙に楽しそうなので主人公はもう少し付き合うことにした。 「経験点の獲得方法は職業によってさまざまです。剣を用いてモンスターを倒すことで獲得できる『剣士』や、徒手でモンスターを殴り倒す……これも『ケンシ』でいいのかな」 「すごい、読むの上手だね。んと、どれのこと?」 主人公が読み方に困った単語は『拳士』と書かれた部分のことだ。 「ん……わかんないや。続き読んで」 どうやら少女は、主人公のなめらかな音読技術を前に、あっさり聞くだけモードに移行してしまったようだ。 「『術士』はさまざまな魔術を用いて戦闘手段とします。『法士』は回復が得意な職業です。『弓士』は矢を放つ職業。『槍士』は槍を扱う職業です。か」 これまでの情報で、主人公は『冒険者の証』のアイテムが、いかにしてモンスターと戦う手段を獲得するかという観点によってつくられたことを理解した。 「……ん?」 少女に視線を向けると、少女は小動物のように首をかしげて見つめ返すだけだった。あたかも続きは読まないの、とでも言いたげな表情だ。 主人公の心に決意が宿る。魔王によって蹂躙されたこの世界、モンスターが跋扈するようになった世界において、モンスターと戦うためにつくられたこのアイテムの存在の意味。 少女に、魔王に、力を貸してほしいと懇願した。それは、圧倒的強者である魔王に対して隷属を宣言するようなものだ。 しかし、目の前の少女は、その懇願を言葉どおりに受け取り、まさに『力』のみを提供した。 人が、人の身で、モンスターに抗う可能性を示してくれた。 主人公はそれが、たまらなく嬉しかった。 「どうしたの?目から水が出てるよ?」 主人公は、少女の言い方につい笑ってしまう。 「これは『涙』と言って、感情が高ぶると、人は自然と出てきたりするんだ」 「へー、高ぶるってどんな感じなの?」 「そうだな……つらくて悲しいときとか、嬉しくてたまらないときとか。わかるかな」 「うーん……よく、わかんないや」 「そうか、そのうちわかるといいな」 「うん!じゃあ、続き読んで」 さて、続きと言われてもどうしたものか。読み聞かせの絵本じゃあるまいし、『冒険者の証』の説明文は、重要ではあるが面白いものではない。 「ちょっと確認したいんだけど」 「なーに?」 「そっちのステータスの項目になんて書いてあるのか教えてほしい」 「ん?いいけど、えっと、名前から言えばいい?」 「表示されてる文字がどう書かれているかを教えてほしい」 「ん?文字?どうって?ん?ん?」 「項目ごとに並んで書いていると思うけど、一番上に名前があると思う。最上段『名前:比嘉陽光』と俺のところには書いてある」 そうやって、主人公=陽光は、木の枝を使って書いてみせる。 「あれ?違うよ?」 だろうな、と陽光は思った。 今でこそ『名前:比嘉陽光』と表示が変わったが、少女のほうではもとの言語のままだろうと容易に察しがつく。 「そっちのほうでどう書かれているか書いてみてくれ」 陽光が少女に枝を渡す。 「んーと、ボクのところは、こう」 少女は地面に書かれた陽光の名前の下に、自分の視覚に表示される文字をガリガリと記した。 案の定、『名前』に相当する部分は異世界の文字で書かれていて読めないが、名前の部分は『5656』と書いているように見えた。 「ゴロゴロ?」 「あ、うん、そうだよ。ボク『ゴロゴロ』っていうんだよ、えへへ」 「こっちの世界では、『ゴロゴロ』ってのはこう書くんだ」 棒を少女=ゴロゴロから返してもらい、地面にカタカナで『ゴロゴロ』と書いた。 「へー、面白いねぇ。ちょっと、形似てる気がする」 似てるかなあ、と陽光は思った。 『5656』と『ゴロゴロ』、言われてみれば、確かに、いや、かろうじて? 「でもそっちの名前、えっと」 「陽光」 「ヨーコの名前も」 「ヨウコウ、な」 「ヨウコウ、の名前となんか違うね」 「ああ、俺が書いたのは漢字だからだな」 「カンジ?」 この世界ではいくつか文字の形式があって使い分けるんだ、とさらっと説明する。 「そうなんだ、面白いね。じゃあボクの名前って漢字でどう書くの?」 「どうも書かないぞ」 「なんで?」 「元の世界では漢字を使ってなかったんだろ?」 「うん、なかった」 「元々漢字を採用してない世界だったんだから、後から漢字を当てはめることはしないんだ」 「そっかー、残念……」 残念そうに眉を下げながら、ゴロゴロは『ゴロゴロ』の文字を指で何度かなぞる。 「それで、続きだけど、俺から『種族 人間』と書いている」 同様に字面に書いてみせる 「それも漢字?」 「ああ、そっちは?」 「ええと……ん?あ、ボクのほうもこっちのと一緒になったよ」 嬉しそうにゴロゴロは、陽光が書いた『種族』の文字を示した。 最初の文字表記の状態から日本語に切り替わったことから、どうやら所有者の意識によって表示が変化することを陽光はこの時点で察した。 「種族は何と書いてある?」 「えっとね、『プリティードラゴン」って書いてある」 「こうか」 そして陽光は、地面に『プリティードラゴン』と書いてみせた。 「あ、変わった。すごい、何これ」 どうやら、目の前のこのゴロゴロは、元々書かれている文字には目もくれず、陽光が地面に書く陽光の文字に興味津々のようだった。 自分の項目や語句が、陽光の書く文字に反映されていくのを面白そうに見ている。 「えっと次、せいべつ」 「『性別』っと」 「うん、なった。なし」 「な、なし?『なし』か」 「変わった。それも別の文字なの?」 「ああ、これはひらがな、さっきの『ゴロゴロ』って書いたのはカタカナって呼ぶんだ」 「へー、使い分けるの大変そう、すごいねぇ」 +職業ってなーに 『魔王が街にやってくる』 ゴロゴロと名乗る少女から『冒険者の証』をもらった主人公=ヨウコウ。 モンスターと戦う手段として、職業を獲得して身体を強化する機能があることを理解した。 そこでヨウコウは、どの職業を選択するのがよりよいか、ほかならぬゴロゴロに聞いてみた。 「わかんない」 ヨウコウの質問に対するゴロゴロの返答は要領を得ないものだった。 曰く、ボクはほかの職業のことはよくわからない、ボクはずっと同じ職業だったから、などなど。 ヨウコウはゴロゴロが何の職業を選択していたのかを聞く。 「ボクの職業は『ニワシ』だよ」 ヨウコウの冒険者の証に存在しない職業が提示された。 「何だニワシって」 発音から大体の予想はついたが、確認のために突っ込んでみる。 「えっとねぇ、適当な洞窟を見つけてお庭をつくるんだよ。ヒカリゴケを繁殖させて……」 「ああ、やっぱりニワシって『庭士』って書くのか。木を植えたり花を植えたりもするのか」 「なんで知ってるの?」 『ニワシ』=『庭士』はヨウコウの予想どおりであった。 しかしなぜそんな職業が『冒険者の証』に存在するのだろうか。 よくあるユニーク職業というやつだろうか、暗黒騎士→パラディンみたいな上級職とかそういう位置づけなのだろうか。 「ん?」 ヨウコウがゴロゴロの顔を見ると、子どものように見つめ返してくる。 「木を植えて花を植えて、あとは何をするんだ?」 ヨウコウはもう少し掘り下げて質問してみることにした。 「えっとね、あとは通路を広げたり、お部屋つくったり、うろうろしたり、落ちてるもの拾ったり……それくらいかな」 「それだけ?」 「うん。あ、そうだ」 するとゴロゴロは、腰に付けていたポーチに手を突っ込み、ごそごそとまさぐる。 「こういうのもつくったりするよ」 そういってゴロゴロが取り出したのは、てかてかまん丸とした謎の物体だった。 「何それ」 「えへへ、お団子だよ」 ゴロゴロに差し出されるままにヨウコウはそのお団子とやらを受け取る。 触った感触は石のようにすべすべとしている、ほんのり暖かいのはさっきまでゴロゴロが握っていたからだろう。 普通の泥団子のようにヨウコウは感じた。土を練って丸めて、表面がてかてかするまで丹念に磨かいたのだろう。 ちらりとゴロゴロに目をやると、まるでどうだと言わんばかりに瞳が輝いている。 「ああ、うん、まん丸で、きれいなお団子だ。これつくるの好きなのか?」 「うん。あのね、昔友達につくり方教えてもらって、ときどきつくってるの。いい感じの泥ってなかなかないんだよ」 ヨウコウがお団子を返すと、ゴロゴロはポーチの中にしまった。 謎は深まるばかりである。 +剣士になりました 『魔王が街にやってくる』 ゴロゴロから冒険者の証をもらったはいいが、結局わかったことはゴロゴロが『庭士』という職業を習得していることくらいだった。 ヨウコウは思案する。冒険者としてモンスターと対抗するにはどのような職業を選択するべきか。 「……考えても仕方ないか」 下手の考え休むに似たり、職業についての知識が一切ない状況で悩んでたって仕方ない。 それくらいなら早急に習得して行動に移すべきだ。 幸い職業リストの最上段に『剣士』がある。剣士は最良だっていう格言もある。 「ゴロゴロ、何か剣をもらえるか?」 「けん?あったかな……」 見た目幼い少女であるゴロゴロにたてつづけねだる行為に、ヨウコウは恥を感じたが、当のゴロゴロは特に気にせずポーチをあさっていた。 そんな様子を見て、ヨウコウはそのポーチも特殊なものなのだろうと察した。先ほど取り出した泥団子といい、今剣を探していることといい。 「これならどう?」 そう言いながらゴロゴロはポーチからにゅっと一振りの剣を引っ張りだした。 シンプルな造形で飾りは最小限、刃渡りは目算で70センチ程度。 「はい」 「うお」 ゴロゴロは無造作に剣を差し出す。普通に剣の柄を握っていたものだから、切っ先がヨウコウの顔に突きつけられる。 ぎらりと光る刃に気圧されながら剣を受け取ると、冒険者の証に変化があった。 ―条件達成、『剣士』を習得できます― 迷わず承認する。 すると特に派手なエフェクトなどは一切発生せず、ただヨウコウのステータスの職業の部分が剣士に変わった。 剣士習得。冒険者レベル1、アビリティ習得『剣技』『斬撃』『ボックス』『出し入れ』。 「ボックス?」 おおよそ剣士という職業に相応しくないアビリティだ、なんだこれは。 ゴロゴロに『ボックス』というアビリティは何かと聞いてみた。 だが聞いた後でふと気付いた。 「何それ、ボク知らないよ?」 「だと思った……」 これまでのやりとりで、ゴロゴロはなんとなく冒険者の証を使用しているだけだということを理解した。 使用している時間が長いが、それほど深く知識があるわけではないのだろう。 だがてっきりゴロゴロが持っているポーチが『ボックス』の効果のたまものだと思ったのだが違うのだろうか。 「これ?ずっと前から使えるやつだよ?みんな使えるから多分違うと思う」 みんなって誰だと突っ込みそうになったが言葉を飲み込む、突っ込んだら話が脱線する、とりあえず今は冒険者の証についてだ。 アビリティの効果を確認する。どうやらアビリティは習得すると効果を確認できるようだ。 『斬撃』は普通に剣による攻撃力の上昇、『剣技』は剣を使用すると身体能力が強化されるようだ。 そして『ボックス』は、ヨウコウの予想どおり剣士のアビリティではなく、別の職業による習得アビリティだった。 「『箱士』って何だ……」 謎は深まるばかりである。 ★★★ 『魔王が街にやってくる』 「ゴロゴロ、『剣』を持ってないか」 「剣ってあれだよね。あったかな……普段使わないから……」 ごそごそとポーチの中をあさるゴロゴロ。 「これは?」 そして取り出されたのは刃渡り30センチほどのナイフだ。 ゴロゴロから受け取ってみると、『冒険者の証』が反応を示した。 ―条件達成。『練士』を獲得できます― どうやら『練士』の獲得条件を達成したらしい。 獲得は保留する。今の目的は『剣士』の獲得だ。それには剣が必要なのだ。だがゴロゴロが剣を持っていなければ『練士』を獲得するのもやむなしだろう。 「ダメなのか……あとはこれとか」 庭いじり用のシャベル。手に取ってみるが無反応。 「これは?」 ティータイム用の小さなスプーン。同じく無反応だ。 「というかゴロゴロ。刃渡りは俺の肘から先くらいの長さくらいのものに限定して探してくれ」 「んと、ここからここまで? 結構大きいね、そんなの持ってたかなぁ」 ゴロゴロが俺の腕に触れて長さを認識する。 「それより長くてもいい?」 「ああ」 「うーん、これとか」 つるはし。反応なし。 「これよく使うんだけど」 スコップ。反応なし。 「あとこれ、たけみつ」 そう言いながら取り出されたものにぎょっとなった。それは刀だった。 笹の葉の形にくりぬかれた鍔、白塗りの鞘に笹の装飾が控えめだが丁寧に書かれている。 思わず両手で恭しく受け取った。ピッケルやスコップは片手で受け取っていたので、ゴロゴロは不思議そうに首をかしげた。 しかしながら『冒険者の証』は無反応だった。どうやら『刀』では『剣士』としては使えないのだろうか。 柄を握って抜刀を試みるが、どうしたことだろう、全く抜けない。 「『竹光』ってそういうことなのか?ただの飾りってことか」 「あー……んー、うん」 ゴロゴロは微妙に歯切れの悪い返事をした。俺は少し不思議に思ったが、抜刀できなくては意味がない。『竹光』をゴロゴロに返す。 ゴロゴロはそれを受け取りつつポーチに戻し、入れ替わりに剣をとりだした。あったようだ。 はい、と言って渡された剣を手に取る。すかさず『冒険者の証』が認識した。 ―条件達成、『剣士』を獲得できます― 『剣士』か『練士』か、少し迷ったが、予定どおり『剣士』を選択する。 ★★★ +ヒガシにて 幼い魔王の助力を受けて、ヨウコウのヨウコウは冒険者の証を手に入れた。 さらに、魔王が持ち物の中から「はがねのつるぎ」をくれたので、それを用いてモンスターに立ち向かう。 大地のマナから生まれたゴブリンや、変質して巨大化した昆虫、蛇や特定外来生物など、人の脅威となるモンスターを慣れないながらも倒していく。 『剣士』ということになり、自身の腕よりも重いはがねのつるぎは、正直かなりもてあまし、からぶって木に食い込ませたり、魔王にかすったりした。 「というか近い」 「邪魔?」 「危ないから離れて」 「はぁーい」 魔王のおかげでモンスターは危なげなく倒せる。というか魔王がフリーだとモンスターの攻撃がヨウコウに届かない。 飛びかかってきたモンスターの攻撃を魔王が防ぎ、それをはがねのつるぎでたたき切る簡単なお仕事です。 そんなこんなで、森を抜けて街道に出る。 しかし元々人口2000人も満たない田舎の村だ、いまやどうなっているやら。 村役場に行く、入り口のガラスは割れている、人の気配はない。 誰かいませんか、声をかけるが返事はない、役場のカウンターにはパンフレットがそのままになっている。 +森の中へ 河口から遡上すること数時間、男は振り返って声をかける。 「本当にこの先でいいのか?」 振り返った彼の視線の先にいたのは、金色の髪をした青い目の女の子。 だが彼が声をかけたのはその子ではない、もっと後ろだった。 「ふぅ、ふぅ。は、はっきりとした場所は、わからない。けど森のもっと奥に行けば多分会えるよ」 女の子のさらに後方50メートルほどの場所に、岩の上でへばっている小動物がいた。 彼らが歩いている場所の地形は、人間の脚力では多少起伏があるという程度の地形でも、体長20センチに満たない小動物にとっては非常に険しい道程なのだ。 人間が腕をつかって余裕で登れるような岩も、小動物の身ではどうにかして足場をみつけて乗り越えるしかない。 これまでの道中、小動物の体力にあわせて何度か休憩を挟んでいる。 休憩するたびに、2人のうちどちらかの体に乗ったらどうかと提案しているが、小動物は固辞した。 仲間の手をわずらわせたくないという小動物の思いは2人もわかっていたが、体の大きさによる体力の差はいかんともしがたい。 小動物の意思は尊重したいところだったが、明るいうちにもう少し先に行っておきたい。 男が視線を女の子へ向けた。 「ゴロゴロ、拾ってやってくれ」 「うん、わかった」 男の視線を受けて、ゴロゴロ、と呼ばれた女の子は手を持ち上げ、指先を空へ向けてくるっと輪を書いた。 するとどうしたことか、ゴロゴロの背後にいたはずの小動物が空中から姿を現し、ぼてっと落ちてきたところをゴロゴロがその両手でキャッチしたのだ。 「はぁ、はぁ、すまない。少し休んだら、また、自分で歩くから」 ゴロゴロの手の中でぐてっとなる小動物。起き上がる気力がないほど疲れているようだ。 肩に乗せると、小動物は力なく服を掴んだ。ゴロゴロはずり落ちないように片手で小さな体を支えながら前へ進んだ。 男、というにはいささか幼い、彼の名は陽光、現役男子高校生である。 小動物の名はフィル。特定外来生物だが諸事情があって人語を解する。 そして、小動物を肩にかついで陽光のあとをついてくるのがゴロゴロ。フィルのボスであり、何を隠そう自称魔王である。 ゴロゴロは50メートル後方にいたフィルを、自身の特殊な能力で手元に転移させたのだ。 +ジーニアスとの出会い 行き倒れている女をヨウコウが助けようとする。 ところが女は、ヨウコウに飛びつき唇を奪い、舌を入れてなめ回してエナジードレイン。 ほんの数秒のエナジードレインで、ヨウコウは脱力し昏倒寸前に陥る。 さらに女は、同行者であるゴロゴロへ狙いを定めて襲いかかる。 向かってくる女に対し、とっさにゴロゴロは迎撃しようと拳を握るのだ。 しかし、エナジードレインを受けて昏倒寸前のヨウコウから「殺すな」と言われて、困惑しつつ拳をほどく。 つなぎ止めていた意識の糸がぷつんと切れた瞬間、ヨウコウはまるでゴロゴロが女のみぞおちに重い一撃を入れたかのような、ズドンという音を聞いた。 気を失っていたヨウコウは激しく咳き込みながら目を覚ます。 するとそこには、驚いた顔でヨウコウを見るゴロゴロの顔があった。 ヨウコウが咳き込みながら飛び起きたので驚いたようだ。その手にはお水の入ったボトルが握られている。ヨウコウがいつでも飲んでいいと言って渡したものだ。 どうしたの、と聞くゴロゴロに、ヨウコウは咳き込みながらむしろお前が何をしたんだと聞き返す。 するとゴロゴロは、口が血でいっぱいだったから洗おうと思って、と言う。 咳き込みながらヨウコウは唇に手を当てる、べっとりと血がつく、どうやらあの女に無理矢理口づけられたときに歯をぶつけて切ったようだった。 ヨウコウはゴロゴロに、寝ている人間に水を飲ませようとしたらダメだとこんこんと説明する。 ゴロゴロは素直にわかったとうなずいて、ヨウコウにボトルを渡す。 ヨウコウはゴロゴロの好意を素直に受け取り、改めて自ら口をすすぐ。 ところで、あの女はどこに、とゴロゴロに聞くと、木陰を指さす。 そこには昏倒した女が、雑にうつぶせで寝かされていた。 ヨウコウはゴロゴロに、ロープを貸してくれと言い、ゴロゴロは快諾して道具箱から取り出す。 ヨウコウが女の体を起こし、両手首、両足首を堅く結びつける。ゴロゴロがボーガンもあるよって言っていたが、ヨウコウは今それは要らないと言うとゴロゴロは道具箱に片付ける。 このようなご時世だ、「エナジードレイン」をやらかすような存在がただの人間であるはずがない。 女の出自、目的を問いただす必要があると思い、拘束して目覚めをまつことにしたのだ。 ところで、ヨウコウはゴロゴロに自分はどれくらい気を失っていたのかを尋ねる。 するとゴロゴロはシンプルに「すぐだよ」と返答する。 すぐというと、30分?1時間?改めて聞くが、ゴロゴロは不思議そうに首をかしげるだけだった。 「すぐは、すぐ、だよ?」 そこでヨウコウは、ああ、時間の概念をいまいち理解できてないのかと察し、機会があればゴロゴロに小さな腕時計を与えてやろうと思った。 携帯電話を取りだして時間表示を見る。気絶前の詳細時間は把握してなかった、その時の時間帯は大体わかる。 すると、4時間もの間気絶していたことを理解してびっくり、それを「すぐ」と言うゴロゴロの時間感覚に2度びっくりするのであった。 +ジーニアスに話をきく 目を覚ましたジーニアスに事情を聞く。 サキュバスの王として、夢の魔王として君臨していたことを聞き出す。 そして地球にわけもわからずやってきて困窮していたことも。 「ははは、私もおしまいね。いくらお腹がすいてたからって人間からドレインしようなんてね」 人間はマナが薄い、ただのサキュバスならともかく、サキュバスリッチであるジーニアスからしてみてば獲物になり得ない。 「人にいきなりキスしてその言いぐさか。こちとら初めてな上に、歯が当たったりひどいめあったっつーのに」 ちなみにひどい目というのは主にゴロゴロによる、睡眠中の水の強制供与である。 「だってしょうがないじゃない、お腹すいてたし、なんだかやたらいい匂いしたんだもの、一生の不覚よ。あと私だって初めてだったんだからおあいこよ」 私も初めて、という言葉に少しどきっとしながらも、主人公は気になることを質問する。 「いい匂いってどういうことだ?」 「こう、なんて言うか、あんたとそのちっこいの、うちのサキュバスたちよりいい匂いしたのよね」 すんすん。 「うん、やっぱりする。変よあんたら、人間からそんな匂いなんて初めてだもの。ホントに人間?」 「俺は紛れもなく人間だが、そっちは違うな、ゴロゴロ、自己紹介」 「はいっ!ボクの名前はゴロゴロです。プリティードラゴンです。庭士やってます!魔王らしいです」 「魔王?あんたが?」 「うん、えへへ」 「ていうかプリティードラゴンって何よ」 「それな。あんたも知らないのか」 「知らないわ。ドラゴンなんてそんなごろごろしてるものでもないし」 「何?呼んだ?」 「呼んでないわよ。まあドラゴンってのが本当であるとしたら、その魔力が匂いの元なのかしら」 「本当なのに……」 「どうでもいいわよ……ねえ、ところでものは相談なんだけど」 「断る」 「まだ何も言ってないじゃない。ねえ、ちょっとでいいからキス……」 「断る」 「ちょっと話を聞いてったら。言うこと聞くからキス……」 「断る」 「ねえ、ねえ、おねがい、ホントお腹すいてるの。さっきあんたから吸い取ったはずなのにないの。お腹すきすぎて痛いの。ホントお願い、なんでもするから」 ジーニアスが吸い取った魔力は、ゴロゴロが防衛行動で軽く殴ったときに吹っ飛んだのである。 「断る」 「そんなに嫌なの?」 ゴロゴロからの援護射撃。 「ね、ね、ちびっ子もこう言ってるし、人助けだと思って」 「人じゃないだろ、サキュバスだろあんたは……」 ヨウコウが首を縦に振らないのは理由がある。ジーニアスが強すぎるのだ。 正直ヨウコウも年頃の男子だし、ジーニアスは美人ではあるし、キスすること自体は嫌ではない、シチュエーションさえまともであれば許容範囲とも言える。 だがそもそも、最初のジーニアスの口付けで、触れた時間は僅か5秒足らずでヨウコウの魔力が枯渇したのだ。 夢の魔王は伊達じゃない、ただの人間であるヨウコウには荷が重すぎる。 「そんなぁ……」 がっくりとうなだれるジーニアス。せっかく自分でも食べられる人間のオスと出会えたと思ったのに、その落胆ぶりはよほどのものだった。 そこでゴロゴロは、よしよし、とジーニアスの頭を撫でた。 「ほゎぁ……」 ジーニアスは変な声を出した。 ジーニアスの髪を撫でたゴロゴロの手つきは、子供が野良犬を撫でるかのような、ごく自然な動作だった。 その程度の動作は、ヨウコウもゴロゴロにやったことがあり、ゴロゴロはそのヨウコウをまねただけにすぎなかった。 生物同士のふれあいならば、何ら大したことのないかつてありふれた光景ではあったが、ジーニアスにとってはそうではなかった。 ジーニアスはサキュバスでありリッチだ。夢魔であり魔王でもあった。 数多の夢魔を従えて君臨していたジーニアスにとって、誰かに親愛の情をもって頭を撫でられるという出来事は極めて稀だったのだ。 それと同時にゴロゴロから流れてくる尋常ならざるマナ、属性は上記したとおり『親愛』。 『夢魔』であるがゆえに、肉体的より精神的な領域に近いジーニアスにとって、耐えがたいほど快かった。 「くひゅぅ……」 ジーニアスは、サキュバスの母とリッチの父を持つサキュバスリッチだ。 世界唯一ともいえる2つの特性を併せ持つジーニアスは。サキュバスの精神的特性とリッチの魔力的特性によって、快いと感じるボーダーラインが極めて高い。 何しろ、リッチである父から受けた愛情が基準の一つなのだ。 本人もその種族的特徴を理解しているのだが、この状況に困惑しつつも心地よさに抗えない。 何しろ両親を失って10年ぶりの「気持ちよい」という感覚に、身も心もあっさりと陥落していた。 +ジーニアスびっくりする ジーニアスを仲間に加え、一行は道なりに先へと進む。 しかしながら、気を失っていた時間が長かったため、小一時間で休憩、その日はその辺りで休むことにした。 周囲を軽く探索すると、空き屋が見つかるのは現代日本のいいところである。 ヨウコウが玄関のインターホンを鳴らす、反応はない。 「おじゃましまーす」 玄関のドアノブを回すが鍵がかかっている。 そこでゴロゴロにバトンタッチ、ゴロゴロがノブを回すとなんの抵抗もなく開いた。 「ねえちょっと、あんたら今なにやったの?」 ジーニアスの疑問にヨウコウが解説を行う。ゴロゴロは『庭士』なので、目の前の家を自分の庭の一部として掌握してドアを開けただけである。 「いやいやおかしい。そもそも『庭士』って何よ」 「『庭士』っていうのはね、お庭をつくれるんだよ」 「お庭をつくって、どうするの?」 「……えっと、穴を掘ったり……」 「埋める?」 「埋めないよぉ。うーん、うーん……」 「ゴロゴロは自分でも把握してないから聞くだけ無駄だぞ」 一生懸命説明をしようとするゴロゴロに、ヨウコウからのフォローが入る。 「お掃除行ってくるね」 ジーニアスとの会話をヨウコウに投げて、ゴロゴロは家の中へと駆けていく。 残されたヨウコウとジーニアスはゆっくりとした足取りで家の中に入りながら会話をする。 「ところで俺からの質問なんだが、ジーニアス、お前『冒険者』って言葉に心当たりはあるか?」 「?質問の意図がよくわからにないんだけど、冒険者ってモンスター倒したりダンジョン潜ったりするって話をちらっとサキュバスの子たちから聞いたことがあるくらいね」 「『冒険者の証』という言葉に心当たりは?」 「なにそれ、冒険者であることに証なんてものが必要なの?」 ヨウコウはジーニアスに、『冒険者の証』による職業という概念を説明する。 かといっても、なんとなくふんわりとした認識で活動しているゴロゴロから根気強く聞き出してまとめた情報なので、その精度は極めて粗いものだったが。 「ふうん、『冒険者の証』で『職業』が習得できるっていうわけなのね、それであんたが『剣士』で、ゴロゴロが『庭士』だってことなのね」 ジーニアスの感想はあっさりとしたものだった。そもそも彼女はそんなものを使わなくても自然に魔術を使える『魔術士』でもあるからなのだ。 人間って変わったものをつくるのねと、抱く感想はその程度である。 「お掃除完了したよー」 そうこうしている間にゴロゴロから声があがる。 今いる民家は人が入らなくなって久しいのだろう、埃が積もり、シロアリが柱を囓っていたのをゴロゴロが『庭士』の力で軽くお掃除したのだ。 さすがは『庭士』。自身の領域の環境保全は専売特許である。 ゴロゴロの声に誘われるままに庭に出ると、石が丸く並べられていて、その中に乾燥した木の枝が枯れ葉が盛られていた。 ヨウコウは枝を取り除き、枯れ葉をこんもり山にする。 「おーい、ゴロゴロ、火を点けるぞ」 「はーい」 ヨウコウが火を点けるためにゴロゴロを呼ぶと、ゴロゴロはささっと庭へとやってくる。 戸棚を物色してたのだろう、人数分の小皿がその手に大事そうに抱えられている。 火を点けるくらいなら自分でもできるのに、と思うジーニアスの目の前でヨウコウは木の枝を1本取ってゴロゴロに差し出す。 そしてゴロゴロは、その木の枝の先端にふっと息を吹きかけるような仕草をしたかと思うと、枝に小さな火が点いた。 それを見たジーニアスは、足の力を抜かし、ぺたんと地面に座り込んだ。 「ん?どうしたんだ」 何か非常識なものを目にしたかのようにぱくぱくと口を開閉するジーニアスを訝しげに見ながら、ヨウコウは枯れ葉の山に火を移す。 枯れ葉はよく燃えるようだった。 魔術の行使は、魔力をいかに効率よく使用するかが術者の力量だ。 中でも、魔術詠唱による魔力の発生と使用が同時に行える『音声魔術』は、単純明快で便利で使いやすいので初心者向けと言える しかしある程度の技能を持つ術者なら、詠唱による魔力の発生を不要とし、自身が保有している魔力を使用しての無詠唱魔術が可能となり、かくいうジーニアスもその程度はできる。 だからジーニアスが驚いたのはゴロゴロの無詠唱魔術ではなく、『吐息』を媒介にした魔術行使である。 プリティードラゴンや、冒険者の証のことは知らなくても、吐息を媒介にする魔術は知っている、最も神の力に近いとされる『ブレス』である。 そしてゴロゴロが行使した火のブレスは、ブレスの中でも極めて殺傷能力の高い、『メガフレア』と呼ばれるものである。 ジーニアスの全力の防御を貫通してあまりあるほどの魔力が、目のまで無造作に吐き出され、木の枝に燃え移り枯れ葉を燃やしているという信じがたい現実にジーニアスは立ち上がる気力を失っていた。 +水族館にて 『魔王が街にやってくる』 道すがらたどり着いた水族館。 国内最大のアクリル水槽として有名だったそこは、見る影もなかった。元水族館。 漂ってくる魚の生臭さと腐敗臭によって、入る前から、おそらくこうなっていることは想像できた。 それでもゴロゴロは、特に気にする様子がなく館内を歩いている。 いや、そこはもはや館内と言えるほど立派なものではなく、単なる廃墟となっていた。 ここは水族館だと言ったのは、ヨウコウ自身だ。ゴロゴロは中を見てみたいと言った。だから中に入った。 「お魚、いないね」 ゴロゴロは、がらんどうになった水槽をみる。 魔王の襲来によって、世界中が蹂躙された。この水族館もなんらかの影響を受けたのだろう。 水槽は割れて、水は流れて通路を浸した。 水はこの島の気候によって蒸発し、魚たちは取り残された。 外に野良猫が多かったところを見ると、おそらく猫たちが片付けたのだろう。 「魚、見てみたかったのか?」 「うん、ちょっと」 ヨウコウの質問にゴロゴロは短く肯定する。つま先にコツンとあたった水槽の破片をしゃがんで拾った。 「ボク、お庭つくるのはできるけど、お魚って見たことあまりないから」 拾った破片を手の中でもみもみしながら、ゴロゴロは壁の展示を見上げる。 水槽をかつて泳いでいた魚たちの紹介文。それはもはや、そこにあったことだけを示すだけ。 週末、連休、ゴールデンウィーク、なつやすみ。家族連れが多く訪れ、活気にあふれていたこの場所は見る影もない。 魔王の襲来、それはこの街の全てを、あらゆるものをむちゃくちゃにしてしまった。 「……ボクが来たから?」 「お前じゃないよ」 そんなゴロゴロの言葉を、ヨウコウはやんわりと否定する。 ゴロゴロは魔王だ。本人がそう名乗ったし、冒険者の証にもそう書かれていた。 ゴロゴロはほかの魔王を知らない。ゴロゴロにとっては魔王とは自分のことだ。 「ねえ、ボクはどうしたらいい。何をしたらいいのかな」 ゴロゴロには欲求がない。そもそもゴロゴロはわけもわからないままこの世界に来ているのだから。 元の世界ではただあるがまま、平穏の中で生活をしており、それ以上は望まない。 ほんのちょっとだけ、ゴロゴロは「さびしい」という気持ちを理解した。 ヒトに擬態したプリティードラゴン、魔王ゴロゴロ。 プリティードラゴンであれば、生来持っていた超耐性によってそのような気持ちに心を痛めることがない。 そんなゴロゴロの心の機微は、擬態ゆえの『弱体化』と、言えるものなのだろうか……。 『魔王が街にやってくる』 どうしたらいい、というゴロゴロの言葉に、ヨウコウはきちんとした返答をすることができなかった。 ほかの魔王を倒してくれなどと言うのは簡単だ。そしてそれを言ったらゴロゴロはおそらくそのとおりにしてくれるだろう。 だがヨウコウはそれを言うつもりはない。そもそもそのつもりがあるなら最初にそう言っている。 この星に住む人間の1人として魔王に対抗する力を求めた。ゴロゴロはそれに十全に応えた。ヨウコウにとってはそれで十分だったのだ。 「うーん……じゃあ、水槽だけ直すね」 「そんなことができるのか?」 「うん、これくらいの広さならよゆーだよ」 ゴロゴロは軽く言って。両手を掲げた。 気持ち斜め前、水槽に対してほぼ平行になるように手のひらを広げ、能力を行使する。 ゴロゴロは『庭士』だというのは最初に会ったときに聞いている。ここまでの旅の道中、能力の行使は何度か見た。 だがそれは、寝泊まりするための空き屋の鍵を外から開けたり、野宿する際に虫が入ってこないようバリアを張ったり、その程度だ。 空間に干渉する類いの能力というのはわかっていたが、これほど大きなものにも干渉できるとは驚きである。 周囲に散らばっていた、アクリルの破片が導かれるままに集まってくる。 まるで旧時代のビデオテープを巻き戻すかのように、破片が元のあるべき水槽の形をつくりあげる。 ゴロゴロは、少しずつ能力の効果範囲を広げ、地面に落ちている破片を次々に引き寄せる。 「ん?あれ?」 ゴロゴロの正面、上方にぽっかりと大きな穴が残った。 穴の大きさはゴロゴロが余裕でくぐり抜けられるほどだ。 ゴロゴロは能力の効果範囲を広げたが、破片が寄ってくる様子がない。 「どうしたんだ?」 「破片が足りないみたい」 ゴロゴロは地面に落ちた水槽の破片を集めて直そうとしていたのだが、肝心の破片が足りないようだ。 「そうか……。水槽が割れて水が流れたときに、遠くまで行ってしまったのかもしれないな」 「そうなの?」 断言はできないが、可能性としてはあり得るだろう。 「あとそこだけなのに……」 ゴロゴロは心底残念そうだ。確かにゴロゴロの言う通り、水槽のアクリルはゴロゴロの能力で修復されていて、ひびもない。 「どの辺にあるのかとかもわからないか?」 「うーん……何となく近づいてるってのはわかるんだけど……」 「なんだ、それなら問題――」 「誰が持ってったんだろ」 ゴロゴロの何気ない発言に、ヨウコウは一瞬息を止めた。 ヨウコウは、破片がただ遠くに行っていたから、引き寄せるのに時間がかかっているんだと思っていたのだ。 しかしその考えは、ゴロゴロの一言で完全に否定された。 持っていった、近づいてくる、それはすなわち、 『誰か来る』 近づいてくる何者か。そいつが何のために破片を持っていって、なんで今ここに来るのかはこの際どうでもいい。 「ゴロゴロ、修復はとりあえず置いといて移動するぞ」 「え、待たないの?」 移動を促されてゴロゴロはすこぶる驚いたようだった。 ゴロゴロにとっての目的は破片なので、それを待たないことに驚いたのだ。 「もう入り口のところにいるみたいだよ?」 「わかるのか」 「うん、入ってきた。破片持ってるみたい」 リアルタイムで動きを察知している様子のゴロゴロ。 のほほんとしているゴロゴロと正反対に、ヨウコウは気が気じゃない。 この情勢、こんなところに来るやつがまともなやつのわけがない。 十中八九魔王に違いないと確信していた。 「相手がどんなやつかわからない状態で接触するのは危険だ。一旦隠れて様子を伺うべきだ」 「ヨウコウがそう言うなら、わかった。いこ」 そしてゴロゴロはその場を離れようと足を進める。 ヨウコウもそれに伴い一歩を――踏 み 出 せ な か っ た。 「っ!?」 ぞくりと、得体の知れない感覚がヨウコウを襲った。 「あれ?行くんじゃないの?」 すたすたと先を行ったゴロゴロが、動かないヨウコウを不思議そうに振り返った。 ヨウコウの足が、全く地面から離れない。足の感覚がないわけではない。ただ単純に地面から離れない。歩けない。動けない。 「なんっ……だこれ……っ!?」 「来た」 狼狽するヨウコウをよそに、ゴロゴロは事実を言った。 ヨウコウはその方向へと体を向けて臨戦態勢に入る。足を持ち上げずすり足なら動けることに気付いたが、もう遅い。 通路の向こうから足音もなく、静かな足取りで女が一人姿を見せた。 ちなみに足音がしなかったのは、単純に水族館の床が柔らかく足音のしない材質だっただけである。 「そんなに急いで逃げようとしなくても、別に食べたりしないわよ」 女は腰に手を当てて胸を張った。大きなテンガロンハットをかぶり、その表情はよく見えない。 茶色のブーツに紺のソックス、膝丈のスカートに白いブラウス。 その辺を歩いていたとしても特に誰も気にもとめないだろう、気取ったところなど一切ない、ふらりと近場に出かけたふうな自然体。 ただそのおかげで、帽子の自己アピールの存在感が相対的に大きくなっている。 そしてそこで女が帽子を取った。 あらわになる女の容姿。 しかしヨウコウは、茶色い髪、ブラウンの瞳や整った容姿であることよりも真っ先に、その女の額に目を奪われた。 「にく……?」 思わずそう口から突いて出たのは、女の額に疑いようもなく「にく」と書かれていたからだ。 「あ、これ?わたしのアイデンティティなの」 ヨウコウのつぶやきを受けて、女が自分の額を指でとんとんと主張する。 そうやってにっこりする女の表情、普通の女性と何ら変わらない、朗らかさと暖かみをヨウコウに感じさせた。 かといって、警戒を解いたりはしない。相変わらず足は上げられない。 「何者だ」 「わたしは、ユタカっていうの。そちらは?」 ゴロゴロがヨウコウの横に並んだ。 「はい、ボクの名前はゴロゴロです。職業は庭士です。あと魔王らしいです。種族はプリティードラゴンです」 「まあ」 ユタカと名乗った女が、ゴロゴロの自己紹介に微妙な声を出した。 ゴロゴロの自己紹介はほぼ趣味みたいなものになっていて。一連の流れはテンプレみたいなものだ。 「丁寧にありがとう。では改めまして」 んんっと咳払いをして、女はかかとを揃えて背筋を伸ばした。 「わたしの名前はユタカです。現在無職です。魔王じゃないです。種族はベヒーモスです」 「は」 ヨウコウは絶句した。今何かさらりと凄いことをこの女は言わなかったか。 「それと、そちらのあなたは、お名前は何と言うの?」 ヨウコウは動揺を悟られまいと、1度大きく深呼吸をした。 「……俺の名前はヨウコウ。職業は剣士。一応冒険者で、種族は人間だ」 「ヨウコウくん、ゴロゴロさん、よろしくね」 再度の笑顔に、ヨウコウもユタカに敵意のないことを理解した。 ゴロゴロも無警戒でユタカに近づいているし、ユタカもかがんでゴロゴロに目線をあわせているし。 「よろしくユタカ。破片持ってる?」 「破片ってここの水槽のよね?はい、これが欲しかったんでしょ?」 「あんたそれを持ってきただけだったの……っ!?」 ヨウコウはぎょっとして、とっさに視線をそらした。 ヨウコウの目の前で、ユタカは白いブラウスをぐいっとめくりあげた。おへそからみぞおちがあらわになり、豊満な胸がぷるんと揺れる。 あろうことかユタカは、その胸のアンダーに破片を挟んで持っていたのだ!ノーブラで! 破片を受け取ったゴロゴロは、その表面に手を当てる。 「ありがと、ちょっと温かいね」 「そう?」 破片を受け取ったゴロゴロがヨウコウに近づいてくる。 「ねえヨウコウ、触ってみて」 「お、おう」 ゴロゴロから差し出された水槽の破片に手を触れてみる。なるほど確かにほんのり温かい。 「ごめんね、ずっと挟んでたからぬるくしちゃったかも」 「いや、もう、なんというか……うん」 間接的にユタカの体温を、異性の体温を感じて微妙な気持ちになる。 「あとこれ、何て書いてるの?」 「……「おさかなさんのおはか」かな」 「うん、けどそれ消していいわよ」 ユタカの肯定と消去了承も得られて、ゴロゴロは破片の表面をペちぺちたたいて水槽へと向き直る。 もらった破片を頭上に掲げて能力を行使すると、破片はあるべき場所へぴったりとはまった。 そして細かい破片で隙間を埋めて、表面をきれいに整える。 「隣いい?」 「……うん」 鋭意作業中のゴロゴロがよく見えるように。ユタカがあえてヨウコウの隣に並ぶ。 気が置けない様子でゴロゴロを見やるユタカ。ヨウコウはそれを見下ろす。おっぱい。 「ん?何か?」 「いや、なんでも」 並ぶとよくわかったが、ユタカはさほど身長は高くない。さすがにゴロゴロと比べると高いが、ヨウコウと並ぶと10センチは低い。 160あるかどうかといったところで、極めて平均的だろう。 「……ユタカさん、ちょっと質問したいことがあるんですが」 何となく口調が丁寧になってしまった。 「スリーサイズなら上から98、5――」 「ちげーよ!」 「ふあっ、何?ボクなんか間違った?」 荒げたヨウコウの言葉に反応を示したのはゴロゴロだった。 +陽光VS『魔王』 剣士「僕は何があろうとここを離れない。守ると誓ったんだ……っ!あがき続けると誓ったんだ……!」 魔王「この虫けらがっ!」 圧倒的な力。目の前にするのは絶望的なまでの差。 それは世界を蹂躙した魔王という個の境地。 たかだか人間でしかない自分にできるのは、かろうじて剣を杖に魔王を明確な敵意をもって睨みつける。 しかし魔王はそんな視線を鼻で笑う。 魔王「この私の道を遮ることが何より罪深いと知れ!」 魔王は手のひらにほんの僅か力を込める。 魔王にとっては微量と言っていい魔力だが、人間を消し飛ばすには十分すぎる量 それでも彼は逃げない。 『あの子』と出会い、力を貸してもらって魔王に立ち向かうと決めたときから、決して逃げないと決めたのだ。 魔王を倒すのは人間でなければならない、『あの子』に魔王を倒させてはいけないと思ったのだ。 剣士「ふんっ。俺はお前よりもっと強くて強い『魔王』を知ってるぞ。三下魔王なんて羽虫に向かって吠えてるのがお似合いだぜ!」 魔王の顔が恥辱に染まり、そして魔王は破壊の波動をぶち放った。 剣士のアビリティにある『剣閃』と比べものにならない威力のそれは、立ちふさがる人間を塵も残さず消し飛ばすだろう。 剣士は魔王の攻撃を迎え撃つ。 怖れはある、だが覚悟は『あのとき』済ませたのだ。 職業を最初に選ぶとき、あの子が『剣士』が使いらしいよと言った理由が今になってわかった気がする。 この『逆境』、困難を『克服』し、ここを『防衛』するという確固たる『意思』をもって『反撃』する! しかし力の差は歴然、自分は決して勝てないだろうと彼は理解している。 だが人のみで魔王に一矢報いることができれば、それが人の希望になる! 人一人、ちっぽけな命だが、未来に希望を残せれば悔いはない。 そして今、地上から人の灯火が1つ消えた。 魔王より放たれる破壊の力を剣で受ける。 それは、それ以外に身を守る術のない弱きものが藁を掴むかのような行為。 だがそのとき不思議なことが起こった。 余波が周囲に飛び散るながら、白銀の刃が魔王の力を飲み込み始めたのだ。 驚愕に目を見開く魔王と少年。 魔王の放った力は決して多くはない、だが人間を破壊するには十分すぎるもの。 剣の1本などと棒きれの如く誤差でしかないはず。 だがしかし、確かに剣は魔王の力を完全に無効化、飲み込んでいる。 そしてその一部が少年に還元される。 【剣士のレベルが上がります。アビリティ『剣聖』を取得します】 なんと、魔王の魔力を『剣士』の力に取り込んでいるらしい、理由はわからないがこれはチャンスだ。 この『逆境』を打破する絶好のチャンス。 【条件を達成しました。『剣士』の真のアビリティが開示されます】 (!?真のアビリティ?どういうことだ?) カンッ、と渇いた音が脳内に聞こえ、少年の視界に剣士のアビリティが示される。 『意思』『気合』『克服』『防衛』『反撃』『逆境』が、 『磨穿鉄硯』『意気軒昂』『披荊斬棘』『一所懸命』『捲土重来』『夷険一節』に、 (よ、読めない……) なんてことを思いながら、少年は千載一遇のチャンスに全力で剣を振るった。 『斬撃』によって剣の威力を増し、『鋭刃』で鋭さを高め、『両手持ち』で力を入れて、『纏』で魔力をまとわせ。 そしてあの子からもらった、たった今自分の身を守ってくれたこの剣を『愛用品』と強く認識し。 『剣聖』の『剣閃』が魔王の力を見事打ち返した。 そして魔王は、少年が打ち返した自身の力を埃を払うかのように弾いた。 魔王は警戒する、自らが行使した力は自らの基準では決して強いものではない。 だからといって人間に防がれるほど弱くは断じてない。自分は『魔王』なのだから。 その目の前の人間は、息を荒げながら剣の切っ先をこちらへと向けている。 この人間が何をしたのか、魔王には不明だったがその表情は気にくわない。してやったりとでも言いたげな表情だ。 跳ね返された己の力は片手で弾ける程度だったが、そもそも吹いたら飛び散るような木っ端の如き人間がどうやってあの攻撃をしのいだというのか、まったく理解ができない。 魔王は警戒する。得たいの知れないこの人間は今この場で消し去っておくべきだと即座に判断する。 「どうした、今ので全力か。もっと本気でかかってこいよ魔王とやら」 ハッタリだ、そうに決まっている。 先ほど程度の力を打ち返しただけで現在の様子を見ると九分九厘ハッタリだ。 魔王の全力に耐えられる人間がいるはずがない。 だが残りの一分で決断できない。挑発に乗って全力で放ってそれが跳ね返されたら極めて危険だ。 かといって中途半端な力で攻撃したら自分が消耗する可能性がある。 ち、と憎々しげに目の前の人間をにらみつける。 「覚えていろ。お前はこの俺が必ず殺してやる」 捨て台詞を吐いて魔王はすぐさま立ち去った。 魔王の気配が完全に消えるのを確認したその時、少年の全身から疲労が溢れだして地面にへたり込む。 「つ、疲れた……」 ハッタリが効いて助かった。もう少し強い攻撃をされたら耐えられなかったかもしれなかったからだ。 剣にもほころびが出ている、自分の弱さを実感する。 そして魔王の強さも実感し、理解する。人間の弱さを熟知しているからこそ己の発揮した力を警戒したのだと。 魔王がもう少し弱かったのなら、一か八かで攻撃されて耐えきれなかったであろうことが少年には痛いほど理解できていたのだ……。 接死のプレッシャーを前に堂々たる姿勢を見せて見事魔王を退けてみせた主人公。 「……っはぁ、はぁっ、はぁ……」 魔王の気配が消失したのを確認して大きく息を吐いた。 「死ぬかと思った……」 剣を下ろして地面に突き刺して軽く体重を預ける。 魔王との力の差は歴然だった、今こうして立っていられるのは奇蹟だろう。 「いや……違うか……」 「やるじゃない」 剣に目を落としたそのとき、主人公に声をかけてくるものがいた。 顔を上げると、そこには行動を共にするヒロインが柳眉を下げて笑みを浮かべていた。 「いたのか」 「いたわよ」 主人公の言葉が不満だったようだ、形のよい唇を少しだけへの字に曲げて言い返す。 「人間もなかなかやるわね。格下とはいえ魔王を気迫で退けるなんてね」 「いつからいたんだ?」 「最初からよ。あんたが心配だから守ってって『あの子』に言われてね。正直私にとってはあんたはどうでもよかったんだけど。あんたが死ぬとあの子が悲しむしね」 「そうか……ありがとな」 「な、なんで礼を言うのよ。私何もしてないし」 そして主人公は剣を見る。あの魔王の魔力を吸い取ったエナジードレイン、これはどう考えても目の前のヒロインが仕込んだものだとわかっていた。 「ああそれ、私じゃないわよ」 主人公ボッシュートである。 「確かにエナジードレインは私も特技だけどあんたの剣には興味がないし触ったこともないわ。ただやり方教えてって頼まれて『あの子』に教えたから、あの子がやったんでしょ」 そういわれると思い当たる節があった。 キャンプに剣を置いて席を外したことがあった。 戻って来たときには『あの子』が剣を枕にして眠っていて、翌日起きるまで剣を動かせなかったことがある。 その時だろうか。 「多分ね、まあどうでもいいけど。用事が済んだなら戻るわよ、『あの子』が待ってるから。私も疲れたし」 そういってヒロインは背を向けて歩き出す。主人公は数秒送れてその後に続いた。 生き残れたのは奇蹟などではない。『あの子』に力を借り、そしてまた今回も守られた。 そして心配されてヒロインまでかり出される始末だ。 「俺は弱いな……」 「そうね。でも卑下するほど弱くはないと思うわよ。ただ今回はもうちょっと弱ければ楽だったかもね」 「どういうことだ」 「さあ、どういうことかしらね」 ヒロインの金色の髪が主人公の目の前でゆらゆらとゆれる。 ヒロインは振り返らずに言葉を投げている。表情は見えない、発言の意図が読み取れない。 お互い沈黙して歩き続ける。 「チャンスだったんだけどね」 「どういう……」 はっと気付いた。 ヒロインが最初から、気配を消して戦いを観戦していたのであれば、横やりを入れるチャンスがあったのだろう。 魔王は主人公のハッタリを九分九厘見やぶっていた、だが僅かな可能性を排除できずに撤退した。 あのとき魔王が攻撃していれば、それはヒロインにとって最大最高の攻撃チャンスだったのだ。 「……ごめん」 「あんたが謝ることじゃないわよ」 「……ありがとう」 「どういたしまして」 「デレた」 「デレてない」 +牢からの開放 人々が捕らえられて牢に入れられている。それを解放しろと敵に要求する主人公。 戦いの末に敵を倒した。しかし敵は腹いせの如く鍵を壊してしまう。 再び牢に降りる。人々に敵を倒したことを言うと喜びの声をあげる。 ところが鍵が破壊されてしまって開ける手段がない。 主人公は剣で格子を斬ろうと試みるが、牢の格子は非常に頑強で壊せない。 すると、牢の中から「ホームセンターで何か工具を取ってきたらいい」と言う。 「よし、急いで取ってくるから、みんなもう少しだけ待っててくれ。さあ行こう」 主人公はパートナーである幼女の手を引いて外へ出ようとする。 「ねえ、これ外せばいいの?」 主人公に手を引かれても微動だにしない幼女。 「ああ、だが鍵が壊されて開けられない。だから壊すために工具を……」 「あ、じゃあ壊していいんだね」 ゴッ、と幼女からほとばしるマナがこの空間を、牢全体を満たした。 「何、こんなときに地震?」 牢の中の何も知らない人達はそんなふうに怯えた声をあげる。 「っせーの、ほっ」 ――ゴギギギギギギギッ。 誰もがまんまると見開いて我が目を疑った。 凄まじい金属のきしむ音が人々の耳を激しくつんざき、皆の目の前で、鉄格子がことごとく、紙切れの如く、誰にも触れられることなくねじ曲げられたのだ。 頑強なはずの鉄格子が、嵐の後のトタンのようにひん曲がってうち捨てられた。 「はい、どうぞ」 幼女は気安い様子でそんなことを言った。だが誰もが牢から出ようとしない。 目の前でこのような現象を見せられて、ああよかった、出られるぞ、なんて気楽に思える人間なんていやしない。 こんなことをできるやつが、人間であるはずがないことなど、誰にでもわかることなのだから 「……あー。もう大丈夫だから、出られますよ」 思わず丁寧語になる主人公。しかしそう促しても誰も動かない。 「……?」 首をかしげる幼女。「あれ、どうしたのかな、出たいんじゃなかったのかな」なんて考えていることは、主人公から横目に見ても明らかだった。 「……お前の力はそのまま見せて誰もが受け入れられるわけじゃないんだ」 「……そっか……じゃあ元にもど」 「さなくていいから、そのままでいいからな。ここはもう大丈夫だ。行こう」 戻そうとする幼女の力の行使を遮り。主人公は連れだってこの場を後にした。 幼女が人の心の機微を理解できるようになるのは、まだまだこれからだと、主人公は思ったのであった。 +天の星悉く動き、繽紛とまがひ飛び散る 魔王に支配されていたこの町に異変が起こった。 断続的に聞こえる戦闘の音、人々はまた魔王同士の戦いが起こったのだと思い、どうか巻き込まれませんようにと縮こまる。 ところがその日は様子が違った。 まるで町全体が一瞬異なる世界に変質したような感覚の後、町の外れに巨大な木が出現した。 その木は町の人々にある存在を連想させた、この町の出口に生えていた魔物よけの木。 だがそれは、魔王が世界に現れたその日に魔王によって真っ先に焼かれたはず、あっけなく焼け落ちるところを誰もが見たのだ。 木は確かに今存在する、しかもそれはまるで何百年もの時をそこで刻んできたかのように雄大に。 町を闊歩していた魔物共が断末魔を上げる。魔王がこの町に放った眷属で、人々はこいつらのせいで表を出歩けなくなっていたのだ。 木が種子を飛ばす、種子が魔物に触れると、魔物のマナを吸収して発芽、またたくまに『絞め殺し』た。 その木にとって、自身の破滅は大した問題ではなかったのだ。 元々立っていた木が破壊されたと言っても、種子は残っていたのでまた別のところで芽を出すだけの話だったのだ。 そう、木は、それは今でもかまわなかったのだ。 木が魔物を絞め殺す。そうなると困ったのはこの町を支配していた魔王だ。 魔王は魔物を放ち、人々に怖れを抱かせそれを自らの力としていた。 だがその供給源がみるみるうちに破壊されていく。 魔王は困惑していた、眷属たる魔物が破壊されていることではない、目の前にいる生物に対してだ。 そいつは人間だった、だがその目に怖れの宿る様子はない。 剣に確固たる敵意を乗せ、魔王へ攻撃する。 魔王にとって人間は、腕の一振りで破壊できるほどのとるに足らぬ脆弱なものだがその人間は違った。 魔王の放つ一撃を、剣で防いでいなして斬撃を見舞う。 直撃すれば死は免れない魔王からの攻撃を、剣の1本でしのいでみせる。 木の出現、魔物の討伐、謎の人間、そして町を一瞬覆った謎の力。 魔王は最大の脅威は目の前の人間ではないことを看破する。 この人間には仲間がいる、木はほぼ確定として少なくともあと1人。 人間にしてはかなり強いことを魔王は認めるが、それでも魔王からしてみれば人間の範疇を超えない強さだ。 敵を目の前にして時折意識が外れることに気付かない魔王ではない。 そして魔王は人間を軽く打ち払う。木っ端の如く飛ばされる人間だが、以外にも魔王は感嘆する。 殺す気で払ったのだが、あの状態から防御されるとは思わなかったのだ。 だが魔王にはそのようなことは些細なことで、優先攻撃対象を見定める。 「……あそこか」 建物の陰に隠れているやつがいる。 先ほどの人間がちらちらと意識を魔王から外したとき、意図的にそちらのほうを見ないようにしていた場所だ。 直線距離にして300メートルほどだがこの町を掌握する魔王にとって大した距離ではない。一瞬で転移してそいつの前に出現した。 そこにいたのは子供だった。 突如現れた魔王に対して、状況を把握できていないようなきょとんとした目で魔王を見上げる。 警戒心のかけらもないそんな振る舞いに、一瞬魔王は気を緩めそうになったが即座に気を引き締める。 得体の知れない力を発揮するやつだ、確実に一撃で殺害するため、魔王最強最大の攻撃を周囲の建物ごとぶちこんだ。 +ライトニングロッド 雷雲が天を覆い、今にも雨が降り出してきそうだ。 「えいっ」 そんな気の抜けた気合いの言葉とともにゴロゴロはライトニングロッドを天高く掲げた ――カッ――ゴロゴロゴロ。 その瞬間、まばゆい稲光が大気を引き裂き、ゴロゴロの掲げたロッドの先端に落ちた。 「えいっやあっ」(CV大本眞基子) ゴロゴロがそうしてロッドを振るてみせるが、その動きは極めてお粗末なものだった。 盾で受けるまでもない、片手剣で弾ける程度。腰も入ってないし握りも雑。 剣で弾こうとしたそのとき、ロッドが剣に触れたとたん言いようのない衝撃が全身を走ったのだ。 「あがっ……っ」 経験したことのない痛みに一瞬思考が止まり、視界がちかちかと白くなる。 「やぁーっ」 そしてそのスキに、ゴロゴロはロッドを大きく振りかぶり、がら空きになった相手の頭へとごっちーんと振り下ろしたのだった。 てきをやっつけたことを確認したゴロゴロは、ロッドを置いて仲間の元へ向かった。 負傷して膝をつく仲間をいたわる。 「だいじょうぶ?」 「ああ、だいじょうぶだ。それよりあれはなんだ」 「あれ?」 「お前が使ってたあの槍だ」 「あぁー、えっと、ライトニングロッドって言ってね、雷を落としてびりびりして、てきもびりびりするんだよ」 ゴロゴロからのふわっとした説明を考察する。 びりびり、というのはよくわからないが、武器による防御を貫通してダメージを与えられるとは非常に強力な武器なのだろうと推察をする。 武器を貫通するなら鎧も同様だろう、極めて強力で、理不尽な武器だ。 そして、倒したはずの敵が目を覚まし、ゴロゴロがその場に置いてきたロッドへ近づいていることに気付いた。 「……っ!ゴロゴロ、武器が……」 「えっ?」 気付いても体が言うことをきかず、かろうじてゴロゴロに知らせる。 しかし当のゴロゴロはのんびりと振り返り、ロッドを掴み杖のように起き上がる敵を見るだけだった。 「くくく……マヌケめ……。話は聞いたぞ、つまりこの槍は防御を貫通する特殊な力を持っているということなんだな……」 その特殊な力に加え、武器の扱いが素人なゴロゴロより、手練れの自分のほうが強いと、そのてきは確信していた。 「……はあーっ」 未だ負傷言えぬ体で呼吸を整え、ロッドを天高く突き上げて魔力を込める。 天上の雷雲はなおそこにあり、その呼びかけに応じてロッドの先端に雷を参らせる。 ――カッ、ピシャーン 「――――――――!!」 視界を塗りつぶす閃光、轟く雷鳴にかき消される声。 数秒の後、回復した目に映ったのは、ロッドを天に掲げた格好で真っ黒に変わり果てた敵の姿だった。 ライトニングロッド、その言葉の意味するものは『避雷針』である。 ゴロゴロが言っていたように、それを保有している自身もびりびりするのだ。ただゴロゴロは持ち前の超耐性で耐えていただけなのだ。 人間が雷の力に耐えられる道理がなかったのだ……。 +意思のぶつかり合い 「俺たち人間は魔王に勝てない、だから下るしかないんだ!それが人の取れる最善の手段なんだ!お前だってそれがわかっているはずだ! 俺たちとお前とで何が違うと言うんだ。お前だってその魔王を担ぎ上げているじゃないか!」 「そうだな、わかっているとも。お前こそ、わかっているじゃないか。お前たちは魔王の下に下った。 だが俺たちは魔王を担ぎ上げたのだ」 「同じことだ!」 「そう言うのなら! そう思っているのなら、お前は絶対俺には勝てない。人間らしくとことんまで語り合おうじゃないか!」 +魔王の望み 『魔王が街にやってくる』 「お前は魔王を担ぎ上げていると言ったな。魔王と良好な関係を築けていると。 だがそこに魔王自身の意思はあるのか。魔王の都合をお前は考えているのか」 「魔王、何かほしいものはあるか?」 「カレー食べたい」 「(安いな)ほかに何かこう、俺たちにやってほしいこととか……」 「んー……ツツジ植えたい」 「ツツジ?なんでまた」 「甘いから」 「……蜜?」 「うん」 +プレゼント 『魔王が街にやってくる』 「魔王、これやるよ」 「(受け取る)? ツツジくれると思ったのに」 「それも用意してるけど、時間がかかるから」 「そっか、そうだね。これはなに?」 「これははちみつって言うんだ。ちょっと手を出して」 「はちのみつ?そういうの食べるの?(手を差し出す)」 (指先にちみっと出す) 「きんぴかできれい。あむ(指先ぺろぺろ)」 「どうだ?」 「……すごく甘い……はちってこんなにおいしいんだ……(驚愕)」 「蜂は花の蜜を集めてはちみつを作るからな。蜂自体が甘いわけじゃないから獲って食べても意味ないぞ」 「あ、そうなんだ、はち捕まえてもだめなのか……もっと(手を差し出す)」 (差し出された手のひらのくぼみにぶにゅっと出す) 「ちょっと多い(ぺろぺろ)」 (魔王の隣にはちみつを置いて立ち去る) その日、舐めては手のひらに出すを延々と繰り返す魔王を多くの仲間が目撃した。 さらにその日の夜、用意された食事にはちみつをかけようとして止められる魔王の姿があった。 +魔王のやりたいこと 『魔王が街にやってくる』 「魔王、何かしたいこととかないか?」 「また?んー、じゃあねぇ……オリンピックやりたい」 「お、オリンピック?」 「うん、桜も咲いているし、いい天気だし、温かいし。お弁当つくって #65293;、はちみつもって」 「蜂蜜はおいときなさい。あとそれピクニックだな」 「……それだった。間違えちゃった」(照) +VS『彩の魔王』 『魔王が街にやってくる』 「くそ、こうなったらみんなまとめて消し飛ばしてやる!」 そういって彩の魔王は天高く飛び上がる。 そして自身が行使できる最上級の魔術を同時に6つ構築し放った。 それは人の身に行使するにはあまりにも過ぎた力だった。 大気を巻き込みながらお互いに干渉し合って余波が迸る。 「マジカルコーティング!」 魔法使いのヒロインが、全身の魔力を絞り出して強靭な魔法防壁を生み出した。 「アルティメットプロテクション!」 剣士のヨウコウが、大剣を盾代わりに頑強な物理防壁を生み出した。 2つの防壁が相互に干渉することで構築されたそのバリアは、今この瞬間、人の身でなし得る最上の守護に他ならない。 だが……。 「『魔王』を舐めるなあああ!」 彩の魔王が、既に放出した術にさらに魔力を注ぎ込んだ。 肥大化する破壊の本流がバリアをどんどん蝕んでいく。 苦悶の表情を浮かべる2人のヒーロー。だが魔王との力は圧倒的だ。 やはり『魔王』には勝てないのか……ここまできたのに……。 悔しさが2人の胸中に溢れ、最後の瞬間まで決して力をゆるめないまま、飴細工のごとくバリアが―― 「また、頼ってしまうのか……」 ――内側(・・)から砕かれた。 『魔王が街にやってくる』 彩の魔王は困惑した。 全力を込めて放った術が、虫けらが使用したバリアを破壊した。 それはいい、当然の帰結だ。魔王である自らが放った術を人の身で防げる道理はないのだから。 だが、なぜ人間が生きているというのか。 魔王は困惑していた、2人の後ろに隠れていた幼子が前に出てこちらを指さしていたからだ。 「……貴様何者も…「ゲッ」…のだ。何?」 幼子は慌てて口を手で押さえていた、思わず口から出てきた何かを抑えるように。 「ごめん、ちょっと」 幼子は、とんとんと軽く自身の胸を叩く、叩く度に「んっんっ」と小さな声をあげる。 信じられないことに、この幼子はげっぷをしたのだ、このような状況下で、尋常ならざる力を持つ魔王を目の前にして。 胸を軽く撫でる、眉をひそめる、どうやら胸焼けを起こしているかのような表情だ。 「グフ……ふう、すっきり」 「で、どうだった?」 疲労困憊で膝をつき、建てた剣にもたれかかりながらヨウコウは幼子に聞いた。 「そうだねぇ、いろんな食感が新鮮だったかなぁ。嫌いじゃなかったよ今の術」 彩の魔王は絶句した、この短いやりとりで全てを察した。 「貴様!何者だ!」 目の前のこの幼子が、自身の放った術を飲み込んだことを理解したのだ。彩の魔王は傲慢だが愚かではない。 魔王は、人間2人と戦っている時にも警戒は怠らなかった。この幼子が背後に控えていることは把握していたし、何かしらの能力を行使していないことも感知していた。 その身に纏うマナは、ある春の日の晴れた午後の陽だまりのように平凡で穏やかで、まるで小動物のような弱々しさだったのだ。 それが、一体、どうやって。 「はい。えっと、初めまして」 ぺこりと一例、挨拶の基本である。 「ボクの名前はゴロゴロです」 名乗りは挨拶の基礎である。 「『魔王』って呼ばれてます」 彩の魔王は言葉を失った、『魔王』だと?しかも、『呼ばれている』だと? 『魔王』とは、強大な能力を持ち、他人に自らのマナを与えて変質させてしまう力を持ったもののことだ。 彩の魔王も例外なくその力を持っている、だが彩の魔王は自ら魔王を名乗るようになったのだ。 自ら名乗り、実力を示し、他者から怖れを抱かれるもの、それが『魔王』の定義だ。 それをあろうことか『呼ばれている』とは、なんという魔王の安売りセールだ。 「そのような貧弱な魔王があるものか!」 魔王は激怒した。 「怒られた……」 魔王はしょんぼりした。 +スケートリンクにて 『魔王が街にやってくる』 「というわけでスケートリンクにやってきた」 「なにこれ、楽しそう!でっかい氷?」 「ああ、スケート靴を履いてこの上をすべって遊ぶんだ、楽しそうだろ?」 「やってみたい!やる!」 「よし、じゃあスケート靴のレンタルをしよう」 「借りてきた!」 「おう」 「はいた!」 「緩まないようにしっかり結んだな」 「ばっちり。しゅっぱーつ」 がっ、つる、すってーん 「…あれ?」 「ぶふっ」 「う、今のなし。もっかい」(ぷるぷるぷる) 「……くっ……生まれたての子鹿みたい……」(笑いをこらえている) 「あ、あれ?みんなあんな簡単そうに滑ってるのに……むずかしいな、おかしいな」(ぷるぷる) 「すぐ慣れるだろ。ほら、手を貸してやるから」(すいー) 「あ、じょーず、すごい」(相手の手を取る) 「俺は滑るのは小学生以来だが滑れるもんだな。それにしてもゴロゴロ、お前何でもできるって思ってたのに、こういうことって苦手なんだな」 「ん、ボクも知らなかったよ」 さて、スケートリンクで以外な一面を見せた魔王ゴロゴロだが、ご承知のとおりゴロゴロはプリティードラゴンだ。 プリティードラゴンの生物的コンセプトは『超耐性』であり、その中には『転倒耐性』も実は含まれている。 足場の悪いところでも転ぶ寸前に受け身を取ったり、高いところから落ちてもにゃんぱらりったりということができるはずなのだ、本来は。 では何故ゴロゴロは転んだのか、それはゴロゴロが今現在『人』に擬態しているからである。 人に擬態していても超耐性は健在であり、転倒耐性ももちろん働いてはいるのだが、擬態がそれを上回って効果を発揮しているのだ。 見られる相手によって姿を変えるプリティードラゴン、例え今はゴロゴロ自身の意思で人の姿に身をやつしていても、大本の性質が消えてなくなるわけではないのだ。 すなわち、「可愛い生まれたての子鹿」である。 小一時間後 「大体わかってきたよ」(すいー、すいー) 「もう俺より上手いじゃないか」 さらに小一時間後。 「あはは、たのしーい」(しゃっ、しゃっ、しゃっ) 『ねえあの子凄い上手』 『すごい速さで滑ってるね、スケートの選手かな』 「(なんか注目を集めてるな……)」 +通信会話 『冒険者の証』、いわゆるライセンスの中身がこうなってることを初めて知ったゴロゴロ。 『ユロン純貨』自体は何枚か手持ちがあったので、仲間に渡してみるが、ステータスは見られない。 しょんぼりするゴロゴロ、ライセンスの作成方法がわからない。 ただの『ユロン純貨』では安定的な貨幣としての用途しかない。 八方ふさがりのゴロゴロが、自身のライセンスで手遊びをしていると、突然それが激しく震えた。 予想だにしていなかった証の振動に思わずびくっとなり、落としそうになるがなんとかキャッチする。 「なんだろこれ?えっと……?」 ゴロゴロはわけがわからなかった。ライセンスを獲得して長いのだが、これまでこのように激しく振動したことはなかったからだ。 どうしたらいいかわからず、ライセンスを振ったり、指でぐりぐり押したり、ハンバーグをつくるときみたいにお手玉したりすると、振動が止まった。 ほっとしたのもつかの間、ライセンスから声が聞こえた。 『あーあー、こちら「聖都パルミア」。現在ライセンス間での通信機能のテスト中。聞こえるならば応答せよ。聞こえるならば応答せよ』 応答せよ、と言われたので応答してみた。 「はい、ボクの名前はゴロゴロです。これはなんですか」 『ほう、君がゴロゴロか。話は聞いている。こちらは……』 「ゴロゴロ!?本当にゴロゴロなの!?」 ゴロゴロの応答の声に対しての応答に割り込んできた女性の声、慌てた様子のその声にゴロゴロは聞き覚えがあった。『お姫様』だ。 相変わらずうるさいなあ、と思いながらもゴロゴロは応答する。 「うん。ゴロゴロです。なーにこれ」 『ああっ、可愛いゴロゴロ。突然いなくなって凄くすごく心配したのよ。大丈夫?怪我はない?一体なにがあ……』 『いやあすまない、割り込みが入ってしまった』 「どういうこと?」 『ふむ、どこから話したものか。とりあえず現在我々の世界に起こっている状況を説明しよう』 ある魔術師がいた。 その魔術師は幼い頃魔王に故郷を壊された。 「ボク知らないよ」 『君じゃない、別の魔王だ。話を続けてもいいかな』 「うん」 魔術師は魔王に敵意を持った。魔術師には才能があった。魔術師は魔王を倒した。 「すごい」 『よくある話だ。問題はここからだ』 魔術師は人を愛し、魔王を憎んだ。この世界から全ての魔王を消し去りたいと考えた。長い時間をかけて追放装置をつくりあげた。 装置は作動し、世界から魔王を追放した。追放された魔王はそちらの世界に行った。 『その結果がこれだ』 「それでボクも?」 『そういうことになる。個人的には羨ましいのだがね。だがこの世界の問題をそちらの世界に押しつけることは看過できない。装置はすでに破壊しているから魔王は今いるので全部だ。あいにく総数とどんな魔王がいるかまでは把握していない』 「3人倒したよ」 『……この短期間で?それはなかなか凄いな。褒めてやろう』 「えへへ」 『さて、そちらの世界の技術力が高いとは言っても個体としての能力が高い魔王は手に余るはずだ。戦略兵器級の能力を行使できる魔王もいるはず。そうなるとそちらの世界が保たない。個には個をぶつけるしかない』 「うん、でも『冒険者の証』がないよ」 『ライセンスは1つあれば増産はできる。『冒険者の証』を持った魔王がいたことが人類側の幸運と言えるな』 「ボクの宝物だから」 『そういわれると制作したかいがあるよ』 「え、つくったの?えっと……」 『私のことは『男爵』と呼びたまえ』 「えっと、男爵。ライセンスってふやせるの?ボクでもつくれる?」 『増産自体は難しいことではない。ライセンスに純貨を使用していることは知っているかね?』 「うん、きょう初めて知った」 『君の持つライセンスに使用している純貨と同じ純貨を6枚用意できるかな?合計7枚になる』 「うん、あるよ。チャリチャリしてる」 『それは非常によいことだ。なんの問題もなく増産は可能だ。では君のライセンスを平らなところに置きたまえ。通信はそのままでいい』 「こう?」(パチッ) 『そして純貨を6枚ライセンスの周囲に配置する。純貨同士はぴったりくっつけていい』 「こうだね。きれいに並べたよ」 『そして君のライセンスだけを表にする。『牡鹿』が書かれているほうが表だ」 「1枚だけ表ね。ひっくり返したよ」 『あとは呪文を唱えるだけでよい。呪文もこちらで指示する。メモの準備もいいかな』 「……」(ちらっ) 「(こくり)」(録音中) 「だいじょうぶー」 『承知した。では復唱したまえ。「その一 冒険者ギルドは、施設、土地、人材、技能、その他あらゆる生物の営みによって構成される。」 』 「ちょっと待って……。そのいち、冒険者ギルドは、施設、土地、人材、技能、そのたあらゆる生物の営みによって構成される。これが呪文?」 『続けて復唱したまえ。「その二 冒険者ギルドは、その独立性を永久に保持し、いかなる組織、権力、災害による圧力にも屈してはならない。」』 「そのに、その独立性を永久に保持し、いかなる組織、権力、災害による圧力にも屈してはならない。」 『大した記憶力だな。やり直す必要があるかと思ってたのだが』 「今、『復唱』のアビリティ取ったから」 『ああ、なるほど冴えているな。「その三 冒険者ギルドは、冒険者たる同士について、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別を行ってはならない。 」』 「そのさん、冒険者ギルドは、冒険者たる同士について、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別を行ってはならない。 なんか光ってきた」 『呪文が順調であるということだ。続けるぞ、「その四 冒険者ギルドは、冒険者たる同士に冒険者の証を発行しなければならない。また冒険者の証をもつものは所属する支部を自由に移動することができる。」』 「その四 冒険者ギルドは、冒険者たる同士に冒険者の証を発行しなければならない。また冒険者の証をもつものは所属する支部を自由に移動することができる。」 「その五 冒険者ギルドは、いかなる場所でも、冒険者たる同士なり得る生物が存在する場所にギルドの支部を設置しなければならない。」 「その六 冒険者ギルドは、冒険者たる同士の意思と理念と技能と裁量において支部を設置することを認めなければならない。」 「その七 冒険者ギルドは、ギルドに属する冒険者が円滑に活動できるよう合理的な配慮を行わなくてはならない。 」 「その八 冒険者ギルドは、ギルドの円滑な運営を行うために、冒険者たる同士に過重な負担を求めてはならない。」 「その九 冒険者ギルドは、冒険者たる同士間で発生した紛争が穏便に解決されるよう努めなくてはならない。すごい綺麗。金のオーロラみたい」 『その光一つ一つが魔術式だ。ライセンスの内部の『職業』の効果やらシステムを構築して周囲へ転写を行う。これらの機能はライセンスに組み込んであるので、条件が整えばあとは唱えるだけでよい』 「条件って、純貨の枚数どか、表の向きとか?」 『あとは大本のライセンスの保有経験点だ。術者に技能を要求しない代わりに経験点を消費する』 「え、それ聞いてない。大丈夫かな」 『足りなければ発動しないだけだ。現段階まで発動できているのだから問題はない。次で最後だ、「その十 冒険者ギルドは、頑張るあなたを応援します。」』 「その十 冒険者ギルドは、頑張るあなたを……応援します。なんかこれだけ、なんか違う」 『だが最も再重要で根本となるギルドの原則としている』 「……それってボクのことも応援してくれるの?」 『その三を思い出せ。冒険者ギルドは冒険者たる同士を差別を行わない。例え相手が人でも魔王でもね』 「すごい……なんだかすごく嬉しい」 『それはよかった。ゴロゴロ、これからも頑張ってくれたまえ』 「うん。頑張る」 【『冒険者の証』を6個手に入れた】 +エンカウントサンダードラゴン 『魔王が街にやってくる』 ――カンカンカンカンカンカン……。 突然鳴り出した遮断機に驚きを禁じ得ない。 魔王によって経済網は寸断され、鉄道網は麻痺していて、電車は一切動いていないはずだ。 しかし音は鳴り、ランプは点灯し、バーがゆっくりと降りてく。 踏切に近づいて線路の両側を覗き見る。すると遠くから何かが迫ってくるのがかすかに見えた。 さらに目を凝らすと、それは明らかに電車ではないことに気付く 「―――おん……」 それは『鳴き声』だった。慌てて身を引いて後ずさる。 得体の知れない何かが線路に沿ってやってくる。そそくさと物陰に隠れてやり過ごすことにした。 このご時世だ、得体の知れない何かなんてよくわからないものが、ろくなものであるわけがない。 「――にゃ――ん」 ドッ、ドッ、ドッと次第に大きくなってくる地面を踏みしめて蹴る音。 そしてソレは、その踏切のど真ん中でぴたりと足を止めた。 どくんと心臓が飛び跳ねた、なぜここで止まるのか。 なぜここでという思いを抱きながら、どうかさっさと通り過ぎてくれと願いながら息を潜める。 そして物陰の隙間から、その姿を改めてまじまじと見た。 日の光に照らされる白い体毛は白銀のように艶めき。その表面を黒い稲妻のような縞模様がいくつも走っている。 鼻を地面にくっつけて、ふんふんとにおいをかぐ仕草はまるで猫のような振る舞いだった。 というかどう見ても虎だった。しかもホワイトタイガーと呼ばれる類いの。 においをかぎながらその場でぐるぐると回る動きはどう見ても猫だった。 そしてソレはふと顔をあげてこちらを見た。 「ひっ……」 見るのをやめて体を縮める。 しかしソレは、興味を失ったのかあっさり視線を前に戻して駆けだして行った。 「にゃーん」 見られていた時間は10秒にも満たない僅かなものだったが、捕食者としてのプレッシャーは圧倒的だった。 「あんなのもいるのか……」 背中に冷や汗をびっしょりとかきながら、安堵の息を吐いたのであった。 ――『サンダードラゴン』が出現しました―― サンダードラゴンは線路上を徘徊します。 サンダードラゴン接近時に線路上にいるとエンカウントします。 北緯30度43分、東経128度04分 +目覚めよと呼ぶ声あり 目覚めよと呼ぶ声あり 北緯30度43分、東経128度04分、そこはそう定義される場所だった。 海底より吹き出す光が、水面の水の揺らぎにゆらゆらと踊る。 ドローンを使って周囲を調査するが以上は見つけられない。 この時勢だ、いかなる魔王の仕業ともわからない。 志願者を募り小舟を出し、その場所へと向かう。 彼らの心配をよそに、小舟はたやすくその場所に到達した。 光はただ海の底から出てくるだけで、熱くもなにもない。 すると突然、陸からゴロゴロがひとっ飛びで小舟に飛び移ってきた。 直線距離にして400メートルはあるのに、アスリートも真っ青な身体能力に驚愕しつつ、やはり魔王なんだなと再認識をする。 そしてゴロゴロは、彼らが引き留めるまもなく飛び込んだ。 ぎょっとする一向、ゴロゴロは自分たちの要だ、危険なことはさせるべきではない。 あわてて飛び込もうとするものもいたが、装備も何もないこんな状態で飛び込むなんて自殺行為だ。 大急ぎで島に戻り、海中探索艇を用意させようとするが、準備が整う前にざばっと上がってくるゴロゴロ。 ぴちょぴちょと海水をしたたらせながら、肌に張り付く服を手でしぼるゴロゴロ。 ヨウコウ達が「無事か」とか「いったいどうしたんだ」とか問いただす。 「うーん、よくわからないんだけど、なんか戦いたいって言ってる」 ゴロゴロ腰のポーチをひっくり返す。 ごとんと地面に転がる、直径1.5メートルの菊の紋章。 『北緯30度43分、東経128度04分』その場所はあまりに有名な場所だ。 旧時代の遺物、超弩級戦艦大和、ここはその墓標だ。 ゴロゴロが取り出したのは、大和の船首に取り付けられていた紋章だ。 大和は引き上げされずに英霊達の墓標となっている、だがなぜ、ゴロゴロはその一部を持ってきたのか。 「だってくれるって言うから」 戦いたいと言っている、ゴロゴロはそう言った、何が?大和が? 英霊達の魂が、魔王が跋扈するこの世界において、今だ消えずにいて目覚めているというのか? だが大和の残骸は海の底だ、引き上げるにも資材が足りない。 「なんとかしてみるね」 ゴロゴロが手をかざす、光が強烈に吹き上がる。 まるで海底火山の噴火の如く、水面が煮立ち、鉄塊が面を上げる。 砕けた装甲が、滅びた砲塔が、裂けた船体が、ゴロゴロによって与えられた魔力によって復元される。 【――戦艦大和、抜錨します――】 凜、と響くその声と共に、「北緯30度43分、東経128度04分」のその場所に、大戦時の姿の大和が姿を現した。 甲板には一人の女。 +こちら大和、明日に告ぐ こちら大和、明日に告ぐ] 魔王の手によって、第二次世界大戦中の戦艦大和がサルベージされ、戦時中の外観を取り戻す さらに、艦艇としての魂魄が甲板に屹立し、艦の武装をまるで自らの体のように動かせるようになった。 しかし、初戦は旧時代の遺物、敵の攻撃に晒されつつ、大和は悔しさに歯がみする。 また守れないのか、また水底に沈むのか。 そんな大和の甲板に、幼い魔王が一足飛びで飛び移ってくる。 大和を復活させた魔王だ、大和の「戦いたい」という願いに、自身の魔力を与えることで艦艇を復元することで叶えてくれた恩人である。 己の無力を謝罪しようとする大和、しかし魔王は興味なさそうに質問をする。 「ねえ、これって一人で動かせるの?」 魔王の質問の意図がわからない。艦艇の魂魄として、英霊に匹敵するほどの己の存在は、あらゆる武装を指先を動かすかの如く操ることができる。 だから、魔王の一人でも動かせる、というのが質問に対する答えとしては正しい。 「この船って、一人だけでいいの?」 一人だけ、という言葉には返答に詰まる。 戦艦大和、大和ホテルとも称されたこの艦は、とても豪華な内装であるというのは当時の常識でもあったからだ。 ホテルは一人では回らない、かならず従業員が存在する。 そして艦は一人では動かせない。それが常識である。 「ああ、うん、やっぱりそうだよね。じゃあそっちにも」 そして魔王は、その手を再度大和へかざして、魔力を与え、その眠りを妨げた。 「総員戦闘配置」 艦に命令が下された。 魔王の力によって、魂魄としての大和に集まっていた、かつての当時の船員たちのその魂が姿を取り戻す。 困惑する大和をよそに、船員達は持ち場につく。 かつて、その本来の力を発揮できず沈んだ大和の、当時の本当の力が、本当に、今こそ甦ったのだ。 船員達は命令を待つ、それが自分たちに課せられた最大唯一の使命であることがわかっているのだ。 その確固たる意思は、例え船そのものである大和自身にすら遮ることは叶わなかった。 大和は艦の武装を自らの体を動かすかの如く操ることができた。 だが今大和は、自身の体が自身が操るよりも効果的に動くという不思議な感覚を感じるのであった。 +英霊よ、未来を繋げ 英霊よ、未来を繋げ] 『魔王がミエにやってくる』 +... 主 人公(あるじ ひときみ) 主人公である。 伊勢 界人(いせ かいと) 人公の友人、姉、姉、兄、自身の4きょうだいの末っ子。 容姿端麗スポーツ万能眉目秀麗で非常にモテる。 実際呼び出されて告白されたりもするが一切を断っているらしい。 学校のアイドルからも告白されて、それを断った際に逆恨みをされてヤンキーに取り囲まれた。 人公もその場に居合わせたが、界人はヤンキーを3分で鎮圧した。 曰く「兄ちゃんのほうがつえーしこえー。でも姉ちゃんはもっとこえー」 きょうだいに溺愛されている自覚が強く、トラブルを自分で解決しないと『相手』がヤバイと思っている。 伊勢 照子(いせ しょうこ) 界人の上の姉、『太陽』のような女性。 いつもにこにこしており、優しい雰囲気を絶やさない。 界人が何をしても「いいのいいの」と言って許容する非常におおらかな女性。 しかし界人が1番恐れる人で、界人がトラブルを起こしたときはその日のうちに連絡が飛んでくる。 界人曰く、「どのルートで話が飛んでいってるのかさっぱりわからん」とのこと。 妹達を溺愛し、特に末の界人のことが大好きである。 伊勢 読子(いせ よみこ) 界人の下の姉、『月』のような女性。 無表情なクール美人、穏やかな雰囲気を絶やさない。 姉を敬愛し、弟を溺愛している。 伊勢 尊人(いせ みこと) 界人の兄。『嵐』のような男性。 冷静沈着で剛胆、快活で人当たりもよい。 普段は落ち着いておとなしいが、ひとたび何かが起こると嵐のように暴れ回る。 中学時代にプロボクサーデビューをして、成長にしたがって■■歳のときに全階級を制覇を達成した。 これはギネス記録であり、まだ破られていない 姉2人を畏怖し、界人を愛しく思っている。 「何かあったら兄ちゃんを頼れよ」と言って憚らないが、今のところなんの連絡もないので「俺の弟はみんなから慕われてるんだな」と満足げである。 ★★★ 人公「そういや界人、お前どんな女性が好みなんだ」 界人「そうだなあ……巨乳でロングヘアで金髪で耳が尖ってる子かな」 人公「エルフじゃねーか」 界人「異世界行きたいなぁ。エルフの女の子といちゃいちゃしたい」 界人は金髪巨乳エルフが好きで、異世界に行きたいなーと姉や兄にもそう言って憚らないのだが、 照子姉からは、各国の言語を勉強しておきなさいと言われて、英語と中国語を習得したのだ。文字を見れば言葉を理解できるようにするため。 読子姉からは、真実を見抜く力を身につけなさいと言われて、法律の本とか技術書を読んでいるのだ。何もないところから生活基盤を構築するため。 尊人兄からは、身体の能力を向上させろと言われて、普段の鍛錬を欠かさず行っているのだ。戦闘能力は必須なため。 界人「異世界チートとかいらない、エルフ美女を嫁にできればそれでいい」 人公「極まってんなお前……」 人公「ていうかダークエルフはお前的にどうなん」 界人「髪は?」 人公「黒か赤」 界人「肌は?」 人公「褐色か黄色かな」 界人「耳は」 人公「そりゃまあ、エルフだし尖って」 界人「アリだな」 人公「耳フェチじゃねーか」 ★★★ ★★★ ある日人公が学校へ登校したら、界人が挨拶をしながら、スマホのアプリを見せてくる そのアプリの名は『冒険者の証』で、異世界転移に憧れを持つ界人は大喜びの様子である。 界人が人公に、お前もダウンロードしようぜって誘ってくるが、人公が自信の端末でそのアプリを見ると、なんと有料アプリではないか。 「え、おまえコレ買ったの?」 「うん」 「これって何するアプリなんだよ」 「モンスターを倒して経験点を獲得してレベルアップするらしい」 「モンスターって?」 「未実装っぽい」 「ダメじゃん」 「でも『冒険者の証』ってそれだけでロマンだろ。1000円なんて小遣い感覚だし、月の権利書みたいなもんだよ」 しかし1000円あったら美味いものが食べられる、煮え切らないままに授業が始まる。 放課後、人公は界人と一緒にハンバーガー屋で駄弁っている。 「なあ、やろうぜ、ここ俺がおごるから浮いた金で、な?」 「お前もしつこいな、わかったよ、家帰ってからやっとくよ」 「さすが親友、話がわかる。実は姉ちゃん達にもインストールしてもらったんだよ」 「おまえわがままだな」 「末っ子の特権ってやつだよ。ちなみに俺は『法士』やることにしたから」 「ん?なんだその『法士』って」 「うん、『冒険者の証』で『職業』ってのが取れるらしいんだよ。8種類から選べるみたい」 「へー、ほかにはどんな職業があるんだよ」 「他にはなぁ……どうせあとでインストールするんだから自分の目で確認して選べよ」 「なんだよ、教えてくれてもいいじゃん」 界人は結局教えてくれなかった。 ムカついたので夜食のハンバーガーを持ち帰りをおごらせた。 界人は「いいぜ!だから絶対インストールしろよ!」と言って喜んで金を支払った。 その日の夜、約束は約束なので人公は『冒険者の証』をインストールした。 ダウンロードからインストールまで時間はさほどかからなかった。 表示されるステータス項目、セキュリティが心配になるが、界人が大丈夫というなら大丈夫なんだろうと思う事にした。 選択できる職業は8種類。剣士、拳士、弓士、槍士、練士、術士、法士、芸人。 芸人ってなんだ、と思いながらもどれにしようか悩む。 職業の説明を確認する。 剣士、拳士、弓士、槍士が基本的な戦闘職のようだ、だが界人は法士を選択したと言っていた。 法士は回復と補助を行う職業らしい、よくあるビショップ的な職業のようだ。 術士に興味を惹かれる。神に属する魔術を行使する職業とのことだ。魔法使いみたいなものだろうか。 界人にメッセージを飛ばしてどれがいいかを尋ねてみる。 『照子姉ちゃんは術士で読子姉ちゃんは弓士、尊人兄ちゃんは拳士だぜ!』ってメッセージがすぐ帰ってきた。 なるほど、界人はそれを踏まえて法士にしたのか、と納得しつつ、人公は練士を獲得した。 そして翌日。 魔王が街にやってきた。 ★★★ ★★★ 名前 コメント
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去年堂本光一主演だったドラマ 2007/4/3(火) 午前 0 32 「昨日公園」ってテレビドラマ、堂本光一主演でやりましたよね。 あれの中にも「聡子」ってキャラクターが登場するでしょ? それから前にも書いたけど、堂本光一が声優やったアニメ「獣王星」、 あれも、私があの漫画家樹なつみの大ファンだから やってくれたんですよ。 どーゆーわけか、ミカエル堂本光一さんも私の事をえらい好きでいて くれるみたいなんですねえ。うわ、光一ファンを敵にまわしてますねえ(笑)
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クリスマスの夜以降、りぜるに冷たく接してしまう友紀。 そんな態度に不安を抱いたりぜるは、あおいに相談に乗ってもらおうとする。 ところが、響子にくら替えした龍之介のメロメロな態度を目にしたあおいは、逆上して自暴自棄になっていた。 その勢いか、友紀を振り向かせる為、りぜるにとんでもないアドバイスを…!? 編集長の一言 葵ちゃんの怒りって怖いです。 でも、それに気がつかず言われたことをしてしまったりぜるちゃん これって、最悪の事態? それに上乗せして、各国のプロトマインド達が、友紀の家へ りぜると友紀の破局? 心配です 映像は、こちら(消失の場合は、連絡の事 リぜるまいん ep 22 part 1 りぜるまいん サブタイトルへ戻る
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寝ぼけて押し入れから落ちてしまったりぜるは、偶然にも友紀に添い寝する格好になってしまった。 目覚めた友紀は慌ててりぜるをはねのけ、「男くさいのが俺のウリなんだ」と言い放つ。 それを聞いたりぜるは、男くさくなれば友紀に一緒に寝てもらえると勘違い。 パパ達の協力も得て、男くさくなるための作戦を開始する…! 編集長の一言 りぜるの勘違いっぷりは、かわいさ選手権優勝レベル(?)です。 友紀の為に、友紀の父親と共におやじばっか電車に乗ったり パパAの友人を訪ねたり、スポーツをやったり パパCは、りぜるのために、企画書を作っていた。 そして、極めつけは、男の匂いシャンプーである。 が、うまくいくのか? 映像は、こちら(消失の場合は、連絡の事 リぜるまいん ep 3 part 1 りぜるまいん サブタイトルへ戻る