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対戦型ゆっくりゲーム by 十京院 典明 対戦型ゆっくりゲームというのを買ってきた。最近流行っているらしい。 「おーい、れいむー」 俺は家飼いのれいむを部屋に呼びつけ、PCを起動する。 やがてぺたんぺたんと階段を上る音がして、れいむが俺の部屋のドアを開ける。 「ゆゆっおにーさんゆっくりしていってね!」 「あーはいはいゆっくりゆっくり。ゲーム買ってきたんだが、やるだろ?」 「げーむさん!れいむげーむさんするよ!」 このれいむには時々ゲームの相手をさせているので、ゲームパッドぐらいなら操ることができる。 ピコリーン \ゆっくりしていってね/ 「ゆゆ!ぱそこんさんのなかにもれいむがいるよ!ゆっくりしていってね!」 * * * * 俺はキャラセレ画面で固まった。 「……」 画面には10匹のゆっくりが馬鹿面を晒している。それはいいのだが、 左上から、れいむ、れいむ、れいむ、まりさ、まりさ、ありす、ちぇん、みょん、れみりゃ(胴なし)、れみりゃ(胴あり)。 「おにーさんどうしたの?」 「……れいむ三匹とまりさ二匹の見分けが付かないんだけど」 「ゆゆ!こんなのもわからないなんておにーさんはばかだね! れいむとれいむとれいむとまりさとまりさだよ!」 「仕方ない、マニュアルでも見るか」 俺はマニュアルを広げた。 = = = = マニュアル お買い上げいただきありがとうございます。 本ゲームは、従来の対戦型格闘ゲームとはびみょんに異なったシステムを採用した新感覚ゆっくりゲームです。 勝利条件は自キャラのゆっくりゲージを100%まで溜めることか相手のゆっくりゲージを-100%まで下げることです。 基本動作 A=隙の少ない、ゆっくりする行動をします。 B=隙の少ない、相手をゆっくりさせない攻撃を繰り出します。 C=効果の大きい、ゆっくりする行動をします。 D=効果の大きい、相手をゆっくりさせない攻撃を繰り出します。 ←←=バックステップです。後ろにゆっくり跳ねます。 →→=ダッシュです。前にゆっくり急ぎます。 (コマンド)=さまざまな効果を持つゆっくりむーぶを発動します。いわゆる必殺技です。 特殊なルールを紹介します。 通常種ルール 通常種のゲージは自動で微量ずつ99%まで増加します。 通常種には当たり判定が無く、各種通常技およびゆっくりむーぶ中のみ当たり判定が発生します。 従来の格闘ゲームのように相手を攻め殺すよりは、自キャラをゆっくりさせつつ、 相手をゆっくりさせない戦い方が基本です。 うーぱっく 試合中、うーぱっくが通りかかり様々なアイテムを投下することがあります。 プリンやキノコ、干し草といったゆっくりゲージ増加アイテムから玄翁、ガラス箱といった危険なブツまで種類はさまざま。 なお、ゲームの性質上ゆっくりのリアルスペックとの乖離が見られる場合があります。 あらかじめご了承ください。 キャラ紹介 およびゆっくりむーぶコマンド表 れいむ(れいむA) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆっくりはねるよ! ←→←B or D ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ! ↓溜め↑A or C 『ゆっくりしていってね!』は全ゆっくり中最高のゲージ溜め性能があり、とくにC版は高効率。 移動の遅いれいむ(れいむC)やれみりゃざうるすと距離が離れたなら、 『ゆっくりはねるよ!』→『ゆっくりしていってね!』でゆっくりゲージを溜め切ってしまうこともあるほど。 『ゆっくりはねるよ!』は移動技。Bは後ろ、Dは前へと移動する。れみりゃ(胴無し)から逃げるほど速くはない。 うーぱっくからのアイテム回収や、ゆっくりしていってね!の布石に。 『ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ!』は、わずかながら無敵判定の存在する攻撃技。ダメージもなかなかで、ゲージ上昇有り。 攻撃重視型のみょん、れみりゃ(胴無し)などへの切り返しやカウンターを狙おう。 れいむ(れいむB) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆ~♪ゆ~♪ ←/↓\→A or C ゆゆ~♪ 相手の近くで↑\←↓\→B or D 歌の上手なれいむ。『ゆっくりしていってね!』はれいむAの同技に比べてゲージ上昇が少ないものの、二種類の歌技がそれを補う。 『ゆ~♪ゆ~♪』Aは低く、Cは高く飛ぶ飛び道具で、相手に当たると動きを止める。画面端に消える際にもゲージ上昇有り。 『ゆゆ~♪』はいわゆる一回転投げ。歌で相手の動きを止め、相手をゆっくりさせる(わずかに相手のゲージも上昇)とともに 自らのゲージを大幅に上昇させる大技。当たり判定のない状態の通常種をも吸い込むため、常に近接状態で立ち回り 相手をゆっくりさせないことが重要。 れいむ(れいむC) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆっくりうまれるよ! ↓溜め↓ おちびちゃんゆっくりしていってね! ←/↓\→B or D ゆっきゅちちていってにぇ! →←↑ B or D 植物型にんっしん中のれいむ。移動が遅く、特定のキャラには大幅不利ながらもスペックは低くない。 おちびちゃんゲージ(初期値1)の数だけ使える『ゆっくりうまれるよ!』でおちびちゃんを増やしながらゆっくりしよう。 おちびちゃん4匹以上の『ゆっくりしていってね!』には攻撃判定が付属する。 『おちびちゃんゆっくりしていってね!』は赤ゆゲージを溜める技。隙が少ないので暇を見てゲージを補充せよ。 『ゆっきゅちちていってにぇ!』は『ゆっくりしていってね!』の硬直を減少させる専用技。 攻撃判定のあるゆっくりむーぶも移動技も持たないため、攻められると脆く距離を離されても相手に一方的にゆっくりされ終了、 という危険性をも孕む(にんっしん中だけに)テクキャラ。通常技での立ち回りと間合い取りを研究しよう。 まりさ(まりさA) ゆっくりしていってね! A or C連打 むーしゃ、むーしゃ、しあわせー! →\↓/← B or D ここはまりさのゆっくりぷれいすだよ! ↓溜め↑A or C れいむと同じスタンダードタイプのゆっくり。『むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!』はうーぱっくから食べ物ゲット時にのみ 使えるゲージ大幅上昇技。移動速度が速く食べ物をゲットしやすいため、狙いどころは多い。 まりさ(まりさB) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆっくりしていってね! ↓\→A or C ゆっくりはねるよ! ←→←B or D まりさAよりもさらに移動速度が速いスピード特化型ゆっくり。 二種類の『ゆっくりしていってね!』を持ち、コマンド版は飛び道具。 ワギャ〇イザー、あるいはエコ〇ズAct2風の書き文字が攻撃判定を伴って飛ぶ。発生、速度にすぐれるD版は 相手のゆっくりむーぶを阻止するのに適する。 ありす ゆっくりしていってね! A or C連打 しゃんはーい →↓\A or C ほーらい ←↓/A or C 『しゃんはーい』はカチューシャから人形を生み出し前方に配置。相手を押し返す効果がある。最大8つまで配置可能。 『ほーらい』は高速で跳ねる飛び道具。6/1とらんぷる。 通常種の近くにいるとゲージの自動上昇率が高まるキャラ特性を持つ。しかし近接不得手のシューティングキャラ…… おお、つんでれつんでれ。 ちぇん わかるよー A or C連打 わからないよー 被ダメージ中に←→↓\B or D らんしゃまぁぁぁぁぁ!! ←/↓\→B or D 『わかるよー』はその場でゆっくりする、ゆっくりしていってねタイプのゲージ上昇技。 上昇率は低いものの、ゆっくりしていってねに比べ当たり判定が小さいため特定の飛び道具をかわしつつゆっくりし続けられる。 『わからないよー』は被ダメージモーションをキャンセルして高速離脱する。 『らんしゃまぁぁぁぁぁ!!』はゆっくりらんを召喚。らん存在時は通常技が変化しゲージ上昇率が上がったり性能が変化したりする。 長いコンボをことごとく封殺する『わからないよー』は伝家の宝刀。 しかしながら自身のゲージ溜め能力も高くは無いため過信は禁物。 硬直の大きい『らんしゃまぁぁぁぁぁ!!』を余裕を持って発動する位置取りが重要。 みょん ゆっくりしていってみょん! A or C連打 ちーんぽ! ↓溜め↑A or C でぃーっく! ↓溜め↑B or D 『ちーんぽ!』は黒くてたくましいもの(餡子製の刀)で相手を突き上げる攻撃判定技。ヒット時は黒くてたくましいもので さらに相手を突き上げる追加攻撃が2回まで出せる。 『でぃーっく!』は黒くてたくましいものを振り回す攻撃判定技。当たり判定も大きいので被カウンター注意。 通常技も主に、黒くてたくましいもので行う。 れみりゃ(胴無し) うーうー! A or C連打 たーべちゃーうぞー! 相手の近くで↑\←↓\→A or C ぐんぐにる ↓\→B or D 『たーべちゃーうぞー!』は相手ゆっくりゲージの80%を消し去る大ダメージ技で、当たり判定のない 状態の通常種も捕まえられるが、間合いが狭く発生も遅い。確定状況を作れるかどうかが勝負の分かれ目。 『ぐんぐにる』は槍状の飛び道具。 通常技も弾幕攻撃なので、なぶり殺しと一撃必殺の二段構えで相手をゆっくりさせないよう飛び回れ。 れみりゃ(胴有り) うー! A or C連打 うっうー! ↓\→A or C うあうあ♪ ←→←B or D れみりあうー☆ ←/↓\→A or C たーべちゃーうどー! 相手の近くで↑\←↓\→A or C ざうるす進化 ↓溜め↓ 捕食種ながら、こちらはゲージ上昇重視タイプのゆっくり。 『うっうー!』、『うあうあ♪』、『れみりあうー☆』は連続入力可能。『うあうあ♪』と『れみりあうー☆』には 攻撃判定があり、ゲージを溜めつつ攻撃できる。 『たーべちゃーうどー!』は『たーべちゃーうぞー!』と代わり映えの無い性能だが、各種ゆっくりむーぶでゲージを溜めつつ、 100%阻止に近づいてきた相手に狙えないこともない。 『ざうるす進化』は、文字通りれみりゃざうるすになる。ざうるす時はゲージ上昇速度が飛躍的に上昇するが移動速度が激減。 対れいむCなどに。同一コマンドで元に戻ることもできる。 = = = = 「なるほどねー。 ……それにしてもれいむまりさの顔の違いがわからん……」 れいむはれいむAを、俺はれみりゃ(胴無し)を選んでゲーム開始。 「どぼじででびりゃえらぶのぉぉぉぉぉぉ!!!???」 「このお兄さん、たとえ貴様がゆっくりといえども容赦せん。 それにもともと、ペットショップ使いなもんでね」 * * * * かくしてゲームスタート。 \れでぃぃぃ……ゆっくりしていってね/ 「語呂悪!」 「ゆゆゆ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 開幕からゆっくりしていってね連呼のれいむ。 ……ああなるほど。 ゆっくりや⑨でもプレイできるように全キャラ連打コマンド持ってるわけね。 「ってやべえ!」 予想以上にゲージの上昇が速い。慌てて弾幕攻撃をするが、すでにれいむのゲージはかなり溜まっている。 少しずつゲージを削るが、通常種ルールの当たり判定消滅とゲージ自動上昇によって開いた差はなかなか縮まらない。 「ゆっぐりじでいっでねっでいっでるでじょぉぉぉどぼじでゆっぐりじないのぉぉぉぉ!!!」 俺は一向に当たる気配のない弾幕攻撃を諦め、れみりゃ持ち前の素早い飛行でれいむに近づく。 「てめーこそ喰らって死ねぇぇぇぇぇぇ!!!『たーべちゃーうぞー!』」 「『ゆっくりはねるよ!』」 すかり。 起死回生の一発は(たぶん暴発した)移動技にかわされ―― 「っ―――!?」 \うぃなー いず れいむ/ 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 俺は、ゆっくりに負けた男となった。 * * * * 俺はこのゲームを舐めていた。それは認めよう。 俺はれいむの餌を七日分用意して、俺自身の身支度を整えた。 玄関に出た俺をれいむが呼び止める。 「ゆゆゆ!おにーさんどこいくの!?」 「旅に出る。 一週間後に、貴様との再戦を申し込む。それまでこの家には帰らん」 「どぼじでぞんなこというのぉぉぉぉ!!??おにーさんならとくべつにゆっくりしていっていいよぉぉぉ!?」 「もともと俺の家なんだが。 まあそれはいい。PCは置いていくから、せいぜい腕を……腕はないか。 せいぜいあんよを磨いておけ」 「いやだよ!!おにーざんといっじょにいだいよぉぉぉぉ!!!」 「俺も一週間後にもっと強くなって帰って来る。その時まで首を……首はないか。 あんよを洗って待っていろ」 「ゆゆぅぅぅーーーん!!」 * * * * それから、格ゲー仲間の友人に電話をかけ、メシを作ってやるかわりに一週間の格ゲー強化合宿を取り付けた。 言うまでもないが、飼いれいむに対戦で負けた話をしたらたっぷり三十分ほど笑われた。 こうして、友人との対戦に明け暮れる日々が幕を開けた。 「これぶっちゃけ、無しれみ弱いぞ……詰んでるマッチアップが多すぎる」 友人の指摘はもっともだった。 当初は気にも留めていなかった通常種ルールが、実は馬鹿にならない強さで設定されている。 あの日の初プレイでれいむが見せた、れいむAの高火力な開幕『ゆっくりしていってね!』が ゲームエンドに直結するほどにだ。一度奪われたリードはそうそう奪い返せない。 「うーむ……」 「胴れみはどうよ。俺も使ってないけど」 「そういや試してなかったな」 俺はれみりゃ(胴有り)を選び、友人はれいむA。 \れでぃぃぃ……ゆっくりしていってね/ 「語呂悪ぃ……」 「やっぱそう思うよな」 「うっうー!」 「うあうあ♪」 「れみりあうー☆」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 開幕『ゆっくりしていってね!に対して、『うあうあ♪』の先端に発生する攻撃判定がぎりぎり届かない。 単発の『うあうあ♪』も試したが、そもそもリーチが短く届かない。 そしてやはり逃げ切られる。 「なぁ……れいむAって強キャラじゃね?」 「まごうことなき強キャラだな……むしろ厨キャラまであるな。んで捕食種弱い」 「このサークル、れみりゃになんか恨みでもあるのか……?」 「マイルド調整の結果じゃねーの……それにしてもれみりゃ弱い」 「だけどさぁ、れいむA使う気ないんだろ?お前の性格からして」 「わかってんじゃねーか」 下手の横好きといわれても、俺は勝つためにキャラ換えしたことは一度も無い。 それは誇れることなんかじゃなく、くだらないこだわりに過ぎないのだがどうしてかキャラ換えできない。 それはきっと、俺そのものと強く癒着してしまっているのだ。 たとえば、ゆっくりがゆっくりを求めずにはいられないのと同じようにそれは当たり前のことなのだ。 「……次、行こうか」 「ああ」 俺はれみりゃを選び、再び対戦を始めた―― そして、またたく間に一週間が過ぎる。 俺は友人に礼を言って、帰途に就く。 「じゃあ、行ってくるぜ」 「頑張れよ」 * * * * 「ゆゆゆ!おにーさんまってたよ!ゆっくりしていってね!」 「だから俺の家だと言うに…… まあいい、勝負だ!れいむ!」 「ゆふふ……れいむはかなりあんよをあげたよ。せいぜいゆっくりしていってね」 「あんよ……?ああ、腕を上げたって事な。 俺だってそうさ。一週間前までのみじめな俺には二度と戻らない」 れいむはれいむA、俺はれみりゃ(胴付き)を選んだ。 \れでぃぃぃ……ゆっくりしていってね/ 0.60- 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 れいむは開幕ゆっくりしていってねを放つ。単純だが効果的な戦法だ。対して俺も手を打つ。 ボワン 「ゆゆ?」 ざうるす進化だ。これにより、俺のれみりゃはれいむに負けないゲージ上昇率を得る。 友人との合宿で、れいむAの火力に対抗するべく俺が考え出した、たった一つのソリューション―― 俺達は発想を転換しなければならなかった。 相手を倒すことより、自分がゆっくりすること。 それがこのゲームシステムにおいて、もっとも効率よく勝利条件を満たす手段なのだ。 格闘ゲームの常識に捕らわれていた俺と友人が、使えない技として無意識に除外していたざうるす進化。 それこそが勝利への鍵だったのだ。 4.42- 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!……」 「うーうー!ぎゃおー!うっうー!」 Cゆっくりしていってねの連打よりも、ざうるすれみりゃと化したれみりゃの技の方がわずかにゲージ上昇率が高い。 その微細な積み重なりは、やがて目に見える値となってゲージに表れる。現在れいむ57%、れみりゃ65%だ。 5.21- 「ゆゆっれみりゃはゆっくりしないでね!ゆっくりするのはれいむだよ!」 ついにれいむが痺れを切らせた。 「『ゆっくりはねるよ!』」 ――予想通りだ。 「『うーうー!もとにもどるどぉ~』」 ボワン こちらへ素早く跳ねてくるれいむのモーションに辛うじて反応し、れみりゃを通常形態へと戻すことに成功する。 ジャンプからのぼでぃぷれすをガードし、続く通常技を頭を抱えてやり過ごす。 「ぷんぷん!もうおこったよ! 『ここはれいむの……」 微妙な状況だ。 ――発生前に潰せるか(↓Aでカウンターを狙える) ――ガード(削られる/ゲージ2%減) ――喰らえば仕切り直し(ゲージ増減れいむ+7%れみりゃ-5%/それより距離が離れるのはまずい/Cゆっくりしていってねで死ぬ) 「……ゆっくりぷれいすだよ!』」 読み違えれば ――潰せる(無理だ) 負ける。 高速で流れる思考とは裏腹に、反射的に指が動いていた。 「――っ!」 俺の親指はAボタンを外してパッドを掴み、れいむのふくれっ面攻撃をガードする。 ――まだ行ける(ゲージはまだリード/進化or↓AB踊りコンボor投げ) 7.33- れいむが小さく一歩退がった。一瞬間が空く。 「うー!うー!」 それは俺のれみりゃのボイスではない。 画面の左上部から飛来する小さな影。その位置はれみりゃよりれいむに近い―― 「うーぱっく!れいむにあまあまちょうだいね!」 その瞬間、なにもかもがスローモーションに見えた。 俺は指を滑らせ←Cを繰り出す。 ←Cは攻撃判定は無く、前方に踏み出しながらゲージを溜める踊り技だ。 もしもれいむが攻撃を繰り出したらカウンターとなってしまう。 しかし俺には確信があった。 ――次に貴様は『ゆっくりはねるよ』と言う れいむは一生懸命にあんよで十字キーを操作している。 間違いない。れいむにとっては複雑な技コマンドを出すために、常時よりも丁寧にあんよを動かしている。 「『ゆっくり……」 ――逃がさん(投げ)(投げ)(投げ) すでに←Cの硬直を利用しコマンドは完成している。 「……はねるよ!』」 ――ここからなら ←Cで踏み出したこの位置からなら、ぎりぎり届く。 しゅばっ 「うー!」 れみりゃの手が伸びて、今まさに後方へと移動しようとしたれいむを捉える。 「ゆゆぅぅぅぅぅーーー!!??」 「つかまえたどぉ~。『たーべちゃーうどぉー!』」 画面がブラックアウトし、れいむの絶叫が響き渡った。 * * * * \うぃなー いず れみりゃー/ 「うっうー!」 「ゆゆん……さすがはおにーさんだよ!」 「いやーれいむこそなかなかだったぞ。レバガチャかと思ったら意外にコマンド正確だったしな」 だからこそキャラ差を読みでカバーすることができたわけでもあるのだが。 「もういっかい!もういっかいだよ!」 「よーし、やろうか」 俺は快く承諾する。 「さぁーて、”リベンジも果たしたことだし”俺もれいむA使っちゃおうかな~」 俺は勝つためにキャラ換えはしないが、その他の理由でキャラ換えすることは結構あるのだ。 「ゆゆっ!まけないよ!れいむがいちばんうまくれいむをつかえるんだよ!」 「俺だって負けないぞー。何せ、六日間もゆっくり練習してきたからな」 俺はこの時のために練習してきたれいむAで、れいむを完膚なきまでに叩きのめした。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりはねる(キャンセル)ぷくー! ゆっくりしていってね!ぷくー!ここはれいむのゆっくりぷれ(キャンセル)ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!ゆっくりしていっ(キャンセル)ばかなの?ゆっくりしていってね!ばかなの?しぬの? ゆっくりしていってね!ばかなの?ばかなの?ばかなの?しぬの?ゆっくりしていってね!」 「ゆあああああああ!!!!!おにーざんばっがりずるいよ゛ぉぉぉぉぉぉぉ!!!! でいぶもゆっぐじじだい゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 俺は軽快にコンボを継続し、れいむを空中に浮かせ続けながら言ってやった。 「おそらをとんでるみたいだろ?れいむ、ゆっくりしていってね!」 「ゆぐぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!!!!!」 END ■ □ ■ □ ちなみにこの二ヶ月後、れいむA、れいむC、ちぇん、みょんに10割コンボが発見され―― 世界は、核の炎に包まれた。
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*fuku5204の表示を調整したものです。* *虐待少な目です* *とても良い目に合うゆっくりがいます* *とても良い目に合うお兄さんがいます* 踏まれてゆっくり とてもゆっくりできる場所で、今までに誰も見たことのないゆっくりが居る。 目撃されたと噂されている、その時点で語るに落ちてはいるのだが、つまりは 新種のゆっくりだろう。 ゆっくりづての話ではあるが、暇だった私はここを訪れたのだ。 人の立ち寄らぬ山奥。ゆっくりがゆっくり出来る、ここ一帯の中でも最高のゆ っくりプレイスがあると、ゆっくり達は言っていた。そうは聞いていたが、まさ かこれほどまでにゆっくりしているとは思いもよらなかった。 最も近隣の村から数えて、約1万5千ユクリード(1ユクリードは標準的なゆ っくりが一跳ねする程度の距離)程はあるのだろう。人も踏み込まぬ聖域と化し たこの場所は、谷と急斜面が入り組んでいることもあり、獣も少ないのだろう。 華咲き乱れ実りは熟し、穏陽差し込み抜ける風蒼し。豊穣の女神が2ダースくら い乱舞しているのかと思わせるような、ゆっくりの楽園であった。 世話をしているゆっくりを共に連れてきたのだが、かつて見せたこともないほ どゆっくりした表情を浮かべている。 「わかるよー」 しきりに頷いているのが、なんかずるい。 その「誰も見たことのない新種のゆっくり」は、ひっそりと木陰で涼んでいた。 「ゆっくりしていってね」、と挨拶する。『ゆっくりしていってね!』、そう返 事が来るものとしか思っていなかった私は、衝撃を受けた。 「ああ、是非ゆっくりして行ってください」 礼儀正しい!? 「わかるよー、ゆっくりしていくよー!」 それに比べてうちの子は。しかし、妙に嬉しそうだな。「らんしゃまを探す」 「見たことの無いゆっくりと友達になる」。目的の半分を消化したのであるから、 わからないでもないが。実を言うと、ただ山を歩き回るだけでなく、こいつのお 婿さんを探してたのである。新種が見つからなかった場合の、精神的口実に備え て。両方やらなければならないというのが、ゆっくり飼い主としては辛いところだ。 「よろしくね、ちぇん。それと、おね……にいさん?」 「おねえさんだ馬鹿者」 近寄って軽く踏みつける。 短めの髪に活動的な雰囲気を身にまとった私は、まあ男性に見られることも少 なくないのだが、とはいえ乙女の純情を踏みにじった対価は、自分が踏みにじら れることで支払わせるしかないだろう。 ちなみに山林を踏破するためにくるぶしまで隠れる丈夫なズボンを履いて来た ため、躊躇はない。 小娘が好んで着るようなひらひらとしたスカートであっても、躊躇はなかった だろうが。 まあそんな服飾は私には似合わないんだよなと――背中に忍び寄りつつある嫌 な予感から逃避するかのように、足の下に居るゆっくりとやらをやさぐれた心の 傷だけぐりぐりと踏みにじる。耳に良い影響を与えないような音響は、脳の片隅 で遮断しているので、例えばゆっくりみたいな変な物体の泣き叫ぶ声とかそんな 音があったとしても、何も聞こえない。あーあー、きこえなーい――考えつつ、 多分20分くらい続けて、諦めた。 「で、ちぇん。これ何ゆっくりだ?」 「ゆっくりはゆっくりだよ? わかるよー?」 小首をかしげる猫又なゆっくり。ううむ、かわゆい。近くの木に寄りかかり、 頬をつい、となぜてやる。 「たとえばお前はちぇんだな。向こうではしゃいでいるのは、まりさやれいむだ。 さてこいつは何ぞや?」 「むむっ! うーと、まりさ……いやぱちゅりー……? わ、わからないよっ!?」 だろうなあ。視線をさまよわせて悩み込んだちぇんを尻目に、観察してみる。 まず目につくのは飾りの多さだ。まりさの帽子やれいむのリボンなど、ゆっく りの飾りの切れ端を、ドスまりさもかくやと言う程に髪に飾りつけている。黒髪 は5分で刈り上げ、黒目をまとうまつ毛の切れは、なかなかに鋭いものを思わせ る。ゆっくり特有の下ぶくれはなく、全体的に精悍な顔つきだ。 こんなところより公園のベンチでツナギを着たまま座っているのがお似合いな 印象を受ける。あくまで印象だけだが。赤く染まった目元に残る涙の後が、過去 にあったであろう悲惨な不幸を思わせる。きっとたぶん明かに確定的に、今日以 前の過去にひどい仕打ちに遭遇した、その名残なのであろうな。 つーかもしかしなくても、こいつってさ。 「はい、自分は『ゆっくりおにいさん』です。ゆっくりしていってね。もう痛い ことはゆっくりやめてね!」 誰何の疑念が声に出ていたらしく、そいつは礼儀正しく自己紹介した。 「ていうかお前ゆっくりじゃないだろ。地面に埋まって、首を出しているだけだろ!!?」 「はっは、ばれましたか。自分はこうやってゆっくりとしむぎゅ」 勢いをつけて顔の中心を踏み抜く。 バカバカしいぞ本当。乙女がこのためだけに、一体何日の野宿を重ねたと言う のか。その柔肌を幾度の雨露に曝してきたと言うのか。 「い、痛いですっ!?」 「黙れ馬鹿」 自分がおろかであることを否定するかのごとく、目の前の「ゆっくり」を踏みに じり続ける。 「あ、あまり上品だとは言えませんよっ!?」 「もし自分の精神安定のためだけに他人を攻撃するとしたら、その人格は社会から 否定されることだろう。それほどまでに忌むべき行為であろうな。が、このまれに 見るゆっくりプレイスにいるのは、どうやら私と、とてもゆっくりしているゆっく りだけのようだ」 「いや自分は」 「そして人里では野良ゆっくりを攻撃することは村全体への間接的奉仕となるため、 この行為はもうまったくの慈善活動だ。やれやれ、自己を省みない奉仕の心が、ど うやらここでも遺憾なく発揮されてしまったようだな。本来ならば何らかの対価を 以て充当すべき行為ではあるが、その支払いに応じてくれるような存在は、山二つ を超えてなお存在しないのであろうな。我が事ながら頭が下がってしまって、もう 諦めて力任せに足を踏みにじるくらいしかやることがない」 「その足の下には哀れなおにいさんが居るんですけどねっ!?」 「もしお前が『おにいさん』とか言う、人間に準じる程度の小汚い種族であるならば、 何かそれを証明出来るよなあ。具体的にはこの行為への対価だが。いやいや何とは言 わないが、まあ亜人間種であることを証明することの出来る程度には価値のある、社 会経済を発展させる上で極めて重要な位置づけを占める物とか」 「お、お金なんて持ってませんんんんんっ」 例え身につけていたとしても、私には掘り起こせないのだろうが。 「おやおや、声はすれども人の姿は見えず。果てさて、面妖なことじゃなー。ちなみ に棒読みだ。あまりにも感情が入りすぎて棒読みに聞こえないかもしれないが、それ は内面からにじみ出る憤怒によるものであるが、私はちゃんと棒読みを心がけている のだぞ。ぐりぐり」 「やべでえええええ」 空が青いなあ。帰るの面倒だなあ。どうやって帰ろうかなあ。らんしゃま見つかる かなあ。見つかるといいなあ。 「自分は、自分は、……虐待お兄さんなんですぶううううう」 ふと、ちぇんを見やる。どうやら馴れないことを考えていたからであろうか、寝て しまったらしい。ゆっくりとしている夢でも見ているのだろう、ぴくぴくと反応する しっぽがほほえましくて、ついつい足にも力が入るというものであった。 「わかるよー! ……わかー?」 先ほどのゆっくりプレイスから、斜面を少しばかり上った所。 土中に埋まっていた、自称ゆっくりおにいさんこと元虐待お兄さんから、労働及び 赤く汚れた靴の対価として借り受けた――巻き上げたわけではない。あくまで有利な 状況で結んだ賃貸契約に過ぎない――、小さめの屋敷とでも言えるくらいに頑丈で広 い作りとなっている山小屋で人心地ついていると、目覚めたちぇんが不思議そうに見 回していた。 「さっきのゆっくりはね、ゆっくり出来ないゆっくりだったんだ」 「わ? わからないよー?」 眉を寄せるちぇんに――ついでにしっぽもくるりと丸まっている――、ゆっくりと 説明をする。 土中に埋まっていた変人は、つまるところ虐待に飽きた元虐待お兄さんであった。 人との交流を避け、来る日も来る日もゆっくりを虐待していたため、一切の新鮮味が 無くなってしまったのだという。生きる糧を失った彼は、ゆっくりとして生きること で逆にかつて持っていたゆ虐の精神を取り戻そうと考えたそうだ。ところが何の因果 か、彼にはゆっくりをゆっくりさせることの出来る才能があったらしい。自ら土に埋 まりながらも、ゆっくりに排斥されることなく、珍しいゆっくりとして認識され、慕 われたのだと言う。各種の飾りはその慕情の証であったのだろう。とは言え食事や生 活など何らの考えなく埋まった彼にとって、ゆっくり達からの援助無くして生きるこ とは不可避であっただろうことも、想像に難くない。 ゆっくりとの共生のために、彼女らに知恵と知識を与えるしかなかった彼の心境は、 いかなるものだったのだろうか。もはやゆ虐の民としての誇りは失われたのであろうか。 ここで私が出来ることは、ただ一つ。彼の遺志を継ぎ、ゆっくりを虐待することで しかない。私は特にゆっくりの虐待が好きなわけではない。だが彼が失った誇りと魂 を昇華させるために、あえて。そう、あえて、なのだ。……「まあどうでもいいか」 と思えることをせねばならないんすよ。主にらんしゃまが見つかるまでの暇つぶしく らいの感覚で? まあ、暇だし? ぶつぶつ。 「わかるよー! らんしゃまを探すんだね! 早く行こうよー!」 話聞いてないよな、こいつ。 「うん、今日は疲れたし、軽く近くを見て回ろうか。ご飯集めなきゃね」 「わかるよー」 ちぇんは、ぴょいんと私の肩に飛び乗ろうとして、目測を誤りずり落ちた。 「やっぱゆっくりって可愛いなあ。虐待するの面倒なんだよなあ。台詞考えたり、濁点 付けたりするのが特に」 「ゆ? おねえさん何か言った?」 「いやいや、ただ誰か本当に状況と種族ごとに分類した台詞データベース構築して関連 用語抜き出せると楽でいいんだよなあとか、突然閃いただけだよ」 どういう意味なのかは自分でもわかんない。わからないよー。 「やあおねえさん。おや、着替えたんですか? スカート姿も似合いますね。ゆっくり していってね!」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 元虐待お兄さんと、その周りで一緒になってゆっくりな歌を歌っていた大小様々なゆ っくり達が、私たちを歓迎した。遅めの昼食を終えた私達は、再度このゆっくりプレイ スへと赴いたのであった。小屋を借りた手前もあるし、作りすぎた昼食の差し入れに来 たのだ。普段ろくな物食べてないだろうしね。べ、べつに、あまりにもみすぼらしいと か、哀れすぎるとか、変なにおいが気持ち悪いとか言う理由じゃないんだからねっ!? ……言い訳完了。これで誰も、こいつがみすぼらしいとか哀れだとか変なにおいがす るだなんて、ひとかけらも思わないだろう。 ちなみにスカートに履き替えたのは、さっき男と間違えられたことが悔しいからなど では決してなく、小屋周辺に限ればとても穏やかな地形で、過ごしやすいことが判明し たからで、決してさっき男と間違えられたことが悔しいからではないのだ。大切なこと なので二回言った。ふう、言い訳完了。 ……なんだか言い訳してばっかりだ。 「細くて白い足がとても綺麗ですね! こうしてみるとまるで女の子のように見えぶぎゃっ」 「黙れ馬鹿。ぐりぐり」 「やべてー! ていうか、見えちゃいますよ!?」 「ん? 何が?」 「え、気づいてない? まじで? 気づいてないなら見ちゃいまぎゃあああああ」 目を開けた瞬間を狙い、かかとで踏み抜いた。まあこれくらいにしといてやろう。 「お、おねーさんゆっくりしていってね!?」 「ゆっぐりでぎないよおおお!」 周りからゆっくり達の悲痛な声が聞こえてくる。そういえばゆっくりがいることを、 しゃっきりぽんと忘れていた。 「ああ、大丈夫だよ。こう見えても私はね、このお兄さんとは仲がいいんだ、ほらこう してご飯を持ってくるくらいに」 差し入れを見せて、敵意がないことを示すと、途端にゆっくり達は周りに集まって来 た。ていうか地面に置いた土産に群がってやがる。 「ぐううう、めがあああ、ぐ、ぐぎぃ、くろ……え、ご飯くれるの? 俺に? まじで?」 「まあな。家くれたし。あ、ゆっくりいくつか貰ってくから」 「うん、わか……今なんて?」 「おーいおまえら、それはこいつのご飯だぞ、我慢しとけ。代わりに、そうだな、家に 連れて行ってやろう」 「「ほんと!? ゆっくりできる!?」」 「え、なんて言ったの? ねえ何か変な事言わなかった? ねえねえ!?」 その場に居たゆっくりは、れいむ、まりさが1匹づつ、赤れいむ、赤まりさが3匹づつ。 多分ではあるが家族なのだろう。 「わかるよー、ちぇんと一緒にゆっくりするんだねー」 肩から飛び降りたちぇんが、早くもゆっくり達と追いかけっこをして遊び始める。 その間に私は元虐待お兄さんから小屋の作りや道具についてレクチャーを受ける。 「えーと、何かするんですか? 黒ですか? そのゆっくり達を”可愛がる”んですか? ひょっとして黒ですか? ところでそのスカートの下に身につけていらっしゃるであ ろう衣服の色彩を一言で言い表したとしたならば、万人が万人諸手をあげて『黒』と答 えるであろう色で間違いはないですよね!?」 会話の間に執拗なまでに挟まれる漆黒なる台詞を流しながら、ようようにして聞くべ きことのあらかたを聞き終えた私は、何かを期待する変態の眼差しに、残念な事実を告 げてやる。 「ジャージ」 「うがああああああああああああああああああああああああああああああああ」 おお、物の見事に失望してやがる。あわれあわれ。 土産は簡単な野草サラダだ。地面に置いた皿に軽く盛っておいた。こうしておけば、 お腹が空いたときにでも食べられるだろう。 「さ。みんな帰るよ」 「わかるよー!」 「まっちぇにぇ! ゆっきゅりかえりょうね!」 「ゆゆっ、待つんだぜみんな、ここにゆっくり出来るごはんが落ちているぜ!」 「「「ゆっきゅりー! むーちゃ、むーちゃ、しあわしぇー!」」」 「ってそれ俺のおおお! 半年ぶりの、まともな飯がああああ!」 「おにいさん、ここはれいむ達のゆっくりプレイスだよ! ゆっくり出来ないなら出て 行ってね!」 ですよねー。 まあどうせ、こいつは動けないし、どうあがいても食えなかったのだろうけど。話に 聞いたほど慕われてはいないみたいだし。むしろおもちゃの扱いを受けているんじゃな いか? 飾りも、親愛の証などではなくて、所有権の主張だったりして。 「もう行くよー」 「「まって、まってにぇ!」」 陽の傾いた森の中、ゆっくりの速度に併せて家路に付くのもオツな物かもしれない。 後ろから、明日は何も履かないで来てねぇぇと言う誰かの魂の叫びが聞こえた気がす るが、多分気のせいだろう。あいつの名前は今から”変態”に決まったことは、だから ただの偶然だ。変態なんだからそんな不条理も許されるのだ。がんばれよ、変態。 小屋の改装――といっても大してすることもなく、動きにくくなっていた装置に油を 差したり、簡単な掃除をした程度だ――を終えた頃だろうか、遊びつかれて寝ていたゆ っくりの家族が起きだした。 気配はすれども、ゆっくり独特の発声が聞こえてこない。声の出ないよう、彼女達が 寝ている間に、口に布を詰め込み、塞いでおいたからだ。 ちぇんは別室で寝かしつけているので、防音に優れたこの小屋の中では、大声を出し たところで気付きはしまい。これは、虐待に馴れていない私が、不愉快にならないため の処置だ。 「まあわざわざ虐待する必要なんてないけど、ものは試しってやつで」 誰に言い訳するでもなく、とは言え私を第三者の視点で見ている者などは存在し得な いのだから、自分に対して言い訳をしているのは確定的に明らかなのだが、それはさておき。 異変に気付き恐慌に陥るゆっくり達に向かって、私は説明を始めるのであった。 「諸君。お気づきのとおり、君たちは今声が出ない。なぜなら、私が『ゆっくりできな くした』からだ。そう、私は実は、美しく麗しい『ゆっくりできない』お姉さんだった のだ。これからの諸君らの命運は辛苦に染まることになるだろう。ここで死ぬまで私に 蹴られ、殴られ、辱めを受け、子を為して子に食されるのだ、例えるとするならばだが。 諸君らは標準的な被虐ゆっくりとして生きることになるだろう。ゆっくりの知能でこの 部屋を脱出することは不可能だから、もし私が愛想を尽かしたとしても、諸君らはここ で餓える以外の選択肢を持ちようがないのだ。諸君らが私に対して、何らかの延命措置 を述べたいと言うのであれば、私を満足させる行動を以って請願する他に、どういった 手段が取れるだろうか。否。そもそも諸君らは……えい」 親ゆっくりが体当たりをしてきたので、自分でも意味不明であった演説を中断し、踏 みつける。口が塞がっているんだが……踏みつけた足を通して、悲鳴だか呻きだかが漏 れてくる。おお、愉快愉快。 「説明が悪かったか。ええとだな、つまり、お前達は『一生ゆっくりできない』と言う ことだ。私に逆らうと」 ゆっくり達を舐め回すように観察する。未だ状況を理解できない赤れいむ。期待の眼 差しを親に向けている赤まりさ。我関せずとばかりに寝ている赤れいむ。 「赤んぼう可愛いね。でも体当たりされて足が痛いんだよね。むしゃくしゃするから、 よし、潰そう」 踏みつける対象を、親まりさからねぼすけの赤れいむに変更した。 「あ、これ面白い。足の裏で、今にも潰れそうな体を、必死にひねって逃げようとして るんだよな。その蠢いている感触がこそばゆい。あと一押しで皮が裂けて、腐った芋の ようにぶにゃりと崩れそうなんだよね」 親達の体当たりがより強くなる。だが気にする程ではない。 「きっと痛いなんてものじゃあ、ないよなあ。大きな石で体を潰されている感触かな? 丸太に皮の端が挟まって、そのまま丸太の下敷きになる見たいに。餡子が、ゆっくり、 ゆっくりと外側へ移動して行くのって、とても痛いんだろうねえ。人間で言うと、皮膚か ら剥離した骨や筋肉が、砕かれながら搾られているような物だしねえ。可哀想に、まだ小 さい赤ちゃんだと言うのに、私に反抗するゆっくりなんぞを親に持ったばかりに!」 絶命寸前であろう赤れいむを親に見えるよう、足を移動させた。後頭部を押付けている ため、親と対面しているのはぱつんぱつんに膨張し、今にも張り裂けようとしている赤れ いむのいびつな顔であろう。内容物によって限界まで引き伸ばされた皮は、奇妙な笑み以 外に表情を浮かべることは出来ないであろう。横長に膨らんだ赤れいむの左右で、こぼれ 落ちてしまうのをかろうじて堪えているうつろな眼球は、果たして何かを映してはいるの だろうか。空気の詰まった紙風船のように、容易く裂けてしまうであろう赤れいむのその 命を握っているのが誰であるのか、さすがのゆっくりであっても理解出来たのだろう。親 ゆっくりは赤ゆっくりに駆け寄り、助け出そうと健気に私の足を押し返す。 私に反抗しないこと、これからする説明をよく聞くことを理解させた上で、解放する。 瀕死の赤れいむに、言葉を掛けてやることも出来ない家族。ほお擦りすら余命を縮める行 為なのだろうと、ゆっくりなりに理解しているのだろう、力なく舌を使って舐める程度だ。 死んでは元も子もないので、煮詰めた野苺を与えておく。餡子が漏れたわけでもないし、 すぐに回復するだろう。 「説明を再開するよ。ええと、この部屋には、『罠』が仕掛けてあります。50ユクリード、 かっこ1ユクリードは標準的なゆっくりが一跳ねする程度の距離かっこ閉じる、四方のこの 部屋に、タイルが敷き詰められているのです。床を見ると、白と黒がまだらになっているだ ろ? このあるマスを踏むと、ゆっくり出来なくなると言うことだ。例えばこのマスは落と し穴で、下に槍が隠れている。ほら、ぱかぱか開くだろ?」 足で踏むと、開いたタイルの底に、鈍く光る刃が隠されていた。 「君たちは『れいむ』と『まりさ』に分かれて、交互に罠を掛け合ってもらう。……のだが、 今説明しても理解が追いつかないだろうから、今日はこのへんでお終い。みんなゆっくりし ていってね!」 罠の設置された部屋で、声を出すことも出来ないゆっくりがどうやってゆっくり出来るの かは私は知らないが、まあなんとかなるだろう。食事は取らせるしね。 声も上げられず身を震わせて嘆いているゆっくりの家族を後に残して、部屋を出た。その 際、殺傷力のないただの落とし穴を踏み抜いてしまったことは乙女の秘密だ。 寝室に戻ると、ちぇんはいまだ寝ているようだった。もう昼だと言うのに。窓から差し込 む木漏れ日が、秋の深まりを優しく告げているように思える。 雪が降るまでには、家に帰らないといけないなあ。 「らんしゃまぁ~」 つぶやいた寝言は、まだ見ぬ伴侶に向けてのものだろうか。 彼女を起こさぬように胸に抱いて、私も午睡を嗜むことにした。 *次回予告* 家族を襲う数々のゆっくり。 だがそのゆっくり達とて、自分達を襲わねば死あるのみであったことを、ゆっくりの家族は 己の身を持って知ることとなる。 引き離された家族が出会うのは、殺戮の罠の中でしかないのか。 次回「愛、罠、ゆっくり」 1億円宝くじが当たるくらいの期待度で待て!
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あれは今年5回目の雪が降る日の事だったと思う。 その時、里の北東に位置する防御陣地には私一人しか居なかった。 襲撃を掛けていたゆっくりの群れは殲滅した上に、そもそもゆっくりは冬眠の時期であったので畑をまじめに防御する必要は無くなっていたから、晩秋まであれほどいた加工所職員や農夫はみな自分が居るべき場所に帰っていた。 我々はゆっくりがどういう生物か失念していたのだ。 あの生物の習性は年が変わるごとに変化していき、その度に人間が対応を迫られていることをすっかり忘れており、今年の冬もゆっくりは来ないだろうから防御の必要は無い、そう思っていた。 古来より慢心は身を滅ぼしてきた。それは幻想郷でも同じことだ。 「あ~寒い。暖冬に慣れた身には厳しいな…。」 陣地に居住スペースを作り、里の家から移り住んだ私はこの頃幻想郷の寒さに参っており、陣地を放棄して里の家に逃げ帰ろうかと本気で考えるようになっていた。 薪を燃焼させる調理暖房兼用のストーブが置いてあるのだが、空調による暖房に慣れた身には如何とも頼りなかった。要するに寒い。 ホットコーヒーでも飲んで暖まるか。うん、そうしよう。外側から温められないなら内側からだ。 粗末な椅子から立ち上がり、戸棚をあけて大量のインスタント・コーヒーの瓶のうち中身が半分ほどになっている物を取り出す。入れっぱなしのスプーンで一さじすくい、外から持ち込んだ数少ない自分の持ち物であるマグカップに入れ、ストーブの上で湯気を噴出しているケトルを手に取る。湯を注ぐとホットコーヒーの完成だ。 戸棚に1ダースも工業製品たるインスタント・コーヒーが入っているのには理由がある。 里には喫茶店が何軒か有り、そこでは中々美味いコーヒーが供されている為に味が劣るインスタントのそれは酷く人気が無く、それ故に香霖堂で廃棄寸前だったのを運良く二束三文で購入できたのだ。 コーヒー通ならおそらく我慢ならないんだろうが自分としては一応コーヒーであれば良い、などと考えつつ粉っぽい液体をすすっていると、前線方向の彼方に何か見えることに気がついた。 陣地最前面の鉄条網、そのさらに向こう側で黒い塊がうごめいているようだ。 晴れた日でもなく吹雪の日でもない今日この時間帯だからこそ見つかったのかも知れないと思いながら双眼鏡を取り出す。 視界の中央に拡大されたのは金髪に黒いとんがり帽子のゆっくり、まりさ種らしい。 必死の形相で這いずりながら此方へと向かってくる。 ゆっくりまりさが何でこんな冬に?冬眠してるはずじゃないのか? そのまま力尽きて凍え死ぬのを見ていても良かったが、状況から何かただ事ではないと判断した私はコートを引っつかみ、外に出た。 真新しい雪を踏みつける音が心地よい。生憎と気温はそうでもなかったが。 雪で埋まりかけた壕に足を取られないよう気をつけて跨ぎ、確認が難しくなりつつある鉄条網を記憶を頼りに乗り越え、殆ど動かなくなったゆっくりまりさへと近づく。 最後の鉄条網を乗り越えたところでゆっくりはこちらに気づき、震えながら顔をあげてきた。 畜生、そんな顔をされたら助けない訳にはいかないじゃないか。 先ほどまでゆっくりと降っていた雪が吹雪きはじめた。 このままここでゆっくりしていると一人と一匹そろって凍えてしまいかねないので、ゆっくりまりさが動かなくなった事により彼女に付着し始めた雪を払おうと姿勢を下げた。 視界の端に違和感を感じる。 視線が低くなったことにより森の奥まで見渡せるようになったが、その奥にいたのはふくれた表情でこちらにやって来る巨大なゆっくりだった。 このゆっくりまりさを追いかけて来たらしい。 助けに来たのだろうかと思ったが、それにしては表情がおかしい。 これではまるで、このゆっくりまりさを始末に来たような──。 「おにいさん!そのこをゆっくりこっちにわたしてね!そうすればおにいさんみのがしてあげるよ!!」 何を言ってるんだこいつは。 おそらく渡したらこのゆっくりまりさは始末される。今の発言でその可能性は強化された。 ゆっくりまりさが死んでしまったら、いや、そもそもこのまりさを起こして話を聞かなければ一体何が起こっているか分からない。 わざわざ巨大ゆっくりが来るという事は、まず間違いなく何かが起きている。 ともかく、ゆっくりまりさは渡せない。 「断る!このゆっくりは俺が先に見つけたんだ!お前にはあげられないよ!」 「おにいさん!れいむにかてるとおもってるの!ゆっくりあきらめてね!」 ますます体を大きく膨らませる巨大ゆっくり。 聞く耳持たずか。あの巨体に相当自信があるんだろう、こちらに勝つ気でいる。 ならば、それ相応のおもてなしをしてやらなきゃな。 「きいてるの!おにいさん!それともりかいできないばかなの!」 無視して背負っていた小銃を構え、膝立ちして攻撃体勢に持っていく。 発言に返答がないことで巨大ゆっくりはもうこれ以上はというほど膨れ、顔を赤くしている。 こんな寒いのに頭から湯気を上げるほど体温を上げて大丈夫なのだろうか。 「もういいよ!ふたりともころすからあのよでゆっくりこうかいしてね!」 巨大ゆっくりがこちらを踏み潰すための助走体勢に入った。 その巨体ゆえに一回で最大跳躍できない巨大ゆっくりはホップ、ステップ、ジャンプのプロセスを踏んで敵を踏み潰す。 目の前の巨大ゆっくりはホップを終え、ステップに入ったところだ。 完全に勝ち誇っているニヤついた顔。 すぐに恐怖に染まるんだけどな。 ヤツがステップを終えて着地をする前に引き金を引く。 空中で下半身に銃弾を食らった巨大ゆっくりは物理の法則に従い前傾方向に回転する。 結果、いわゆる「足」の部分で受け止めるはずだった運動エネルギーを、顔面をしこたま打ち付ける事により吸収することとなった。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぅう゛う゛ぅぅ~!!」 よほど痛かったのか、降り積もった雪を振動で舞い散らせるほどの叫び声があがる。 巨大ゆっくりは通常のゆっくりに比してかなり耐久力が高いと聞いたことがあったので、攻撃の手は緩めない。 ボルトを操作して排莢、次の銃弾を装填する。 再び引き金を引いて発射。 二発目の銃弾は巨大ゆっくりの頭頂部から餡子へと音速で進入し、中核部分の餡子を切り裂いたのちに「足」の皮を衝撃波で破り、ついでにかなりの量の餡子を引き連れて森へと飛んで行った。 痛みを堪えて起き上がった巨大ゆっくりが睨みつけてくる。 「ゆ゛ーーっ!もうおこった!おにいさんはく゛るし゛んて゛し゛んて゛ね!!!」 滝みたいに涙を流しやがって、そんな顔で言われても説得力ねえよ。 構わず三発目を発射、貫通した瞬間に巨大ゆっくりの後頭部で何かが飛び散った。 こいつの後頭部だった物が銃弾の衝撃で吹き飛んだらしい。 巨大ゆっくりは涙を流す表情のまま前に倒れ、二度と動かなくなった。 まだ暖かい餡子が露出して美味しそうな香りをまとった湯気が上がっている。 岩のように凍りついたゆっくりまりさを拾い上げ、掛けた部分はないか確認。問題なし。 「帝国の逆襲」ならここでゆっくりまりさを巨大ゆっくりだった物の中へ入れてやる所だろうが、帰るべき場所はすぐそこなのでそのような事はしない。 小銃を背負い、冷凍ゆっくりを持ってその場を後にした。 本格的になり始めた吹雪にコートの襟を立てる事で対処しつつ、居住スペースへと戻った。 空調でなくとも暖房を掛けている部屋は外に比べれば天国のような暖かさ、ストーブを頼りないと思った事を反省する。 流石にテーブルの上に置いたマグカップはすっかり冷めていたが。 ゆっくりまりさを解凍するため、鍋を取り出しケトルから熱湯を入れる。 流石にそのままでは氷ごと饅頭ボディまで溶け出しかねないので、外から雪を持ってきてその中に溶かした。 風呂よりも熱いかなという位になったところで冷凍ゆっくりを鍋に放り込む。 放置していればそのうち解凍されるだろう。 冷めてしまったインスタント・コーヒーの酷さを再確認していると、鍋の中のゆっくりがわずかに震え始めた。 餡子が解けて生命活動を再開、融解を加速するために自らも震えて熱を発生させようとしている。 その段階からさらに10分経過してようやくゆっくりまりさは口がきける様になった。 ジャバジャバ音を立てて鍋の水をかき乱しながら左右を見回すゆっくり。 今すぐ叩き潰してやりたいが、何があったかを聞き出すまでは我慢我慢。 「やあやあお目覚めかな?ゆっくりしていってね!」 「ゆっ!?ゆっくりしていってね!」 お馴染みの挨拶をすると、すばやくこちらを向いて反応。起きたばかりだというのに流石ゆっくり。 「単刀直入に聞こうか。何があったんだ?なんで仲間に追われてたんだ?」 「ゆ…なかま…?……ゆっ!!ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛ぅ゛わ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!れ゛いむ゛ー!は゛ち゛ゅりー!なんでえぇー!」 「オイオイ、どうした。何かあったんだな?」 巨大ゆっくりに追われていた事を教えてやると泣き出してしまった。 仲間の名を叫んでいると言う事はその名の仲間はもう生きていないのだろう。 おそらく、そいつらが死んだ理由に巨大ゆっくりが関わっている筈だ。 「ゆっくりを養殖する巨大ゆっくりか、聞いたような話だな…。」 今は泣き疲れて眠っているゆっくりまりさ曰く、巨大ゆっくりの養殖場から命からがら逃げてきたらしい。 生まれたときから仲良くしていた友達が食い殺されるのを見て脱走を決心したという話だ。 まりさは眠る直前に、「おにいさん、あいつらにんげんをおそうつもりだよ。かえりうちにしてやってよ…。」と言っていた。 あんな大きさのゆっくりが里を襲うのか。 巨大ゆっくり、ゆっくりを養殖、里を襲撃…やはり聞き覚えがある。一体何の話だったかな… 里長なら何か知っていると思い、机に置かれた電話から受話器を取った。 「交換さん?里長のところに繋いでくれ。防御陣地からだ。」 交換手が接続するまでのこの空白時間は何時までたっても慣れない。大体交換手が必要なほど電話普及してるのかと。 しばらくして交換手が繋がった事を伝えてきた。里長の声それに続く。 里長は、それは今年の春に隣の里が巨大ゆっくりに襲われた話じゃないかと言っていた。 確かにそれだ。隣の里が急ごしらえの防御線で何とか殲滅したとかいう話だ。 その時の群れは人間の手により消滅した上にそもそも歴史ごと抹消されている、故に今ここにいるゆっくりまりさが逃げてきたのは別の群れだろう。 とにかく対策を検討しなければならない。 今のところ里が襲われる可能性を示唆しているのはこのゆっくりまりさの証言だけなので、流石に防衛体制を引き上げる訳には行かない。 せいぜい春の話の資料を手に入れて対策を練るぐらいか。 明日、里長のとこまで行って資料を貰わなきゃな。 眠ってしまったまりさは結局起きなかった。命からがら逃げてきたんだろう、全身かすり傷だらけで疲労が溜まっている様で、泥のように眠るという表現が相応しかった。 その日の夕食は窓の外に見える気味の悪いオブジェ──粉砕された巨大ゆっくりを見ながら袋麺を啜るというひどい物になった。 里長が言うには隣の里の勝利においては情報収集と初動の早さが大きな役割を果たしたらしい。 定期的なものではない為に人の少ない寄合所でそんな話が出始めた頃から嫌な予感がしていた。 頼むから偵察に行けとか言わないで下さい、せめて行かせるなら他の人にどうかお願いします、などと祈ってはいたもののその祈りは全くの無駄に終わった。 隣の里の巨大ゆっくりとの戦いの資料に、「巨大ユックリノ営巣地ヲ偵察スルトキハ、自衛ガ可能ナ者ガ望マシイ。」等と書かれており、現状で巨大ゆっくりを屠ったのは私だけだったから斥候として指名されたのは当然だろう。納得できないが。 「自衛ガ可能ナ者トハ、身体頑健デ何ラカノ格闘技ヲ修メタ者。」とか書かれており、自分は明らかに不健康で貧弱であると出来る限り抵抗してみたものの、「巨大ユックリトノ戦闘経験者ガ最モ適ス。」という記述を引っ張り出された挙句に、銃器で戦闘能力は補えると言われては両手を挙げざるを得なかった。 分かったよ。行けばいいんだろう? 皆、幸運を祈るだとか防寒対策に気をつけろよとか言いたい放題言いながらこっちを見送っていた。 畜生。このクソ寒い季節に森へ入れというのか。 ボヤいても問題は解決しない為、ヤツらの巣を探ろうとその場所を知っていそうな者、すなわちあのゆっくりまりさを取りに陣地へと取って返した。 怖いから行きたくないよとか泣き叫んでゴネるゆっくりまりさを「説得」し、準備万端整えて陣地を出たときにはもう昼飯の時間が終わる頃だった。 せっかくの昼飯を台無しにしてくれた巨大ゆっくりには必ずお礼をしてやると決意を新たにし、ゆっくりまりさの先導に従って森へと入る。 森の外は照りつける太陽光線を反射する雪が火傷するほど眩しいが、ありがたい事に森の中は薄暗かった。 光量の急激な変化についていけない目を瞬かせながら前を飛び跳ねていくまりさを注視する。 目的地に着いたのは陣地を出てから30分後だった。 斜面にぽっかりと空いた明らかに人の手で造られた穴に巨大ゆっくりが出入りしているのが見える。連中は鉱山跡を巣として利用しているようだ。 普通のゆっくりと違って連中の巨体じゃ巣を探すのに一苦労しただろう。 あの鉱山の大きさならまさにベスト・ゆっくり・プレイス。もうじきそうじゃなくなるんだがな。 双眼鏡をぐるりと巡らせて入り口の陣容を眺める。 入り口の右側に巨大ゆっくりがおり、そいつが出入りする仲間を監視していた。 あれで守らせているつもりらしい。あの巨体なら存在するだけで十分威圧感があるからだろう。 入り口を中心として半径10メートルの円状に柵が設置されているのも見える。 柵の形状から推測するに、内部で養殖しているという通常ゆっくりの脱走防止用かな。 あの大きさになると生意気にも知恵を付けるようだ。これでは中まで偵察するのは不可能かもしれない。 さて、困った。これでは連中の規模が分かりゃしない。 通常の生物なら廃棄物なりが出てくるだろうからそこから概算する方法があるが、ゆっくりという生物はコトに食物の摂取に関しては有得ないほどの効率を誇り、廃棄物を殆ど出さない事からこの手段は使えない。 歩哨の巨大ゆっくりを狙撃して強襲しようかと思ったが、流石に一人じゃ袋叩きだろうし、射撃音で気づかれたらアウトだ。 どうしようか?と話しかけようとゆっくりまりさの方を向くと、先に話しかけるまりさ。 「おにいさん。まりさのともだちをたすけてほしいよ…。」 「そうは言ってもね。あの見張りが邪魔なんだ。どうにかできないか?」 何と言うべきか、まりさは元気の無い顔からますます生気を失い、この世の終わりを表現した絵画の登場人物のような様子を見せた。 どうしたもんかな。いっそコイツを放り込んでから突入しようか?いや、せめて囮でもいいか。 できるかどうか聞いてみる価値はあるな。何せこいつは追撃から一回逃走に成功している。 「まりさ。この森の中だったらあの巨大ゆっくりから逃げきれるか?」 「ゆっ。たぶんできるよ…。おにいさん、あそこにはいってくれるの?」 「あの見張りが居なくなればな。どうだ?できるか?」 「やってみるよ。まりさがしんじゃってもなかまをたすけてね。」 囮になって欲しいと伝えると、まりさの顔に僅かながら生気が戻ってきた。 まりさ種は仲間思いのゆっくりになりやすいとは事実らしい。 こういうゆっくりは死ぬべきではないな。生き残って他のゆっくりのリーダーとなるべきだ。 黒々とした空間を見せる鉱山入り口にさらに近づいた。 こちらの姿を見張りゆっくりの視線から遮るものは子供の背丈ほどの藪しかない。 『…よし、行け!絶対に捕まるなよ!』 『おにいさん!がんばってね!』 出入りする巨大ゆっくりの姿が途絶えたところで作戦を実行に移す。 藪から全速力で駆け出すゆっくりまりさ。 「おおきいゆっくりはきもちわるいよ!ゆっくりしないでね!」 「ゆっ!?れいむのことばかにするの?ゆっくりしんでね!」 早速挑発の言葉を投げかけるまりさ。見張りゆっくりはまんまと釣られ、まりさを踏み潰そうと跳ねだした。 「ゆっくりおいかけてね!」 「ころしてあげるからゆっくりまってね!」 まりさは一瞬こちらを見た後、森の彼方、里の方向へと逃走に移る。 見張りゆっくりはその巨体が生み出す歩幅(?)によりあっという間に追いつくかと思えたが、まりさは倒木や木立の間をたくみに抜け、巨大ゆっくりを引き離しすらしている。 巨大ゆっくりは体重で障害物を踏み潰しながら追いかけるが、時々木に挟まってはマヌケな声を上げている。 これで良し。あいつが逃げている間に侵入しよう。 雪で反射された太陽光を浴びる銃剣が「白兵戦」の語源が何であったかを見せ付けるようにきらめく。 巨大ゆっくり相手では気休めにしかならない着剣した小銃を構えて突入した。 鉱山跡は不気味なほど静まり返っている。地中の適度に保温された空気が心地よい。連中は留守のようだった。 分岐が出て来るたびにその先を調べ、行き止まりであるのを確認する事5回。 6つ目の分岐先で巨大赤ちゃんゆっくりの部屋を発見した。 うん、資料にあるとおり、デカイな。普通の成体ゆっくりとほぼ同じとは…。 全員寝ているようだ。「ゅ…ゅゅゅ…」「ゅぅー…ゅぅー…」という寝息が聞こえてくる。 その幸せそうな寝顔と相まって直ちに殺戮する衝動に駆られるが、騒ぎになって親が戻るとまずい。 騒ぎになる前に始末できるような物─テルミット手榴弾は持ってきていない。 名残惜しいが赤ちゃんゆっくりの量を数えてその場を後にした。 こいつらを始末するのは後だ。 さらに奥へと進んで行き、10回目の巨大ゆっくりが掘り進んだと思わしき分岐をうんざりしながら通る。 その先の通路は巨大ゆっくり一匹分しかない。すれ違うときどうするのだろうと疑問に思いながら歩いていくと、100メートルほど進んだ辺りで急に道が広くなった。部屋に出たらしい。 部屋を見回すと、壁に掘られた幾つもの標準ゆっくりサイズの穴とそれを塞ぐ格子がある事に気が付いた。 どうやらここが養殖場らしい。 それにしては静かだな…。まさか全部食われたとは思えない、何せ『養殖場』だから。 だいいち、穴を覗き込んでみたが最近ゆっくりが形跡などは影も形も無い。 ここにゆっくりが閉じ込められていたのは昨日今日の話ではなさそうだ。 じゃあ、あのゆっくりまりさは一体…。 「おにいさん!ゆっくりのいうことをしんじるなんてばかなの?」 入り口からゆっくりが話しかけてきた。巨大ゆっくりの低い声ではない。通常サイズの声だ。 そこにいたのはさっき別れたゆっくりまりさ。なぜここに…。 「まだわからないの!?ほんとうにばかだね!おにいさんはまりさにだまされたんだよ!」 ゆっくりまりさが話し掛けてきてから3分経過した。 ゆっくりとしては驚異的なことにまだ話し続けている。曰く、まりさがどれだけ賢いかとか、巨大ゆっくりは自分の仲間だとか、人間を人質にして里から食料を奪うつもりだとか、本当に色々ベラベラ喋っている。 おしゃべりな悪党は死に易いんだがな。 「ちょっとおしゃべりしすぎちゃった!それじゃ、おにいさんはゆっくりしばられてね!ていこうはむいみだよ!」 やっと話が終わったまりさが得意げな顔で私を拘束しようと近づいてくる。 いつのまにか現れた巨大ゆっくりれいむがその後ろに続いており、口にはロープのような物をくわえていた。 通常サイズのゆっくりでは人間に力で勝つのは到底無理だから、仲間の巨大れいむに拘束させるのだろう。 さて…どうしたものか。小銃弾では3発以上命中させねばこの巨大れいむは無力化できない。 距離から言って、2発目を放つ余裕は無いだろう。1発目を当てた時点で飛び掛られて哀れ私は潰される。 悪役っぽくて嫌だが、この手しかないか。畜生。 「君はゆっくりれいむかい?とても大きいね!」 「ゆっ!れいむおおきいでしょ!」 私が話しかけると、胸を張って返事をする巨大れいむ。 ゆっくりまりさはそれが気に入らない様子だ。 「れいむ!にんげんとおはなししちゃだめだよ!はやくこいつをしばってね!」 「ごめんなさい!まりさ!いまやるね!」 まりさが叱り付けると巨大れいむは酷く怯えた顔で謝りだした。彼女の群れでの地位はそうとうのものらしい。これじゃ仲間というより手下じゃないか。 しかし、叱り付けられた巨大れいむは不満を覚えた素振りを見せず私に近づいてきた。 行動に移るなら今しかない。 「れいむ!僕を助けてくれたら美味しい物を食べさせてあげるよ!」 「おにいさんほんとうにひっしだね! れいむ!いうことをきいちゃだめだよ!このおにいさんはどうせあとでれいむをころすつもりだよ!」 「ゆっ!にんげんってばかだね!れいむがだまされるわけないじゃん!」 当然の反応だな。この程度で私を騙してここまで誘導するようなゆっくりまりさとその手下が騙される訳は無い。 なので、再び口を開く。 「れいむ!僕が君を殺すだって!?れいむみたいな大きいゆっくりにはとても勝てないからね!殺すなんてできないよ!」 巨大れいむはこの言葉を聞いて酷く動揺した。彼女にとってこの言葉は納得のできる物だからだ。 「れいむ!!にんげんはうそつきだよ!きかないではやくこいつをしばってね!」 まりさが動揺する巨大れいむをなだめようとするが、彼女の言葉を聞いても巨大れいむは動揺したままだった。 「れいむっ!!!にんげんはつよいんだよ!こいつがそのぼうでおおきいゆっくりをころすところをみたよ!!!」 「れいむ。騙されちゃダメだよ!僕がこんな棒切れでおおきいゆっくりに勝てる訳無いじゃん!」 相反する言葉を聞いて動揺の度合いを深める巨大れいむ。 暫くの間、ふらつきながらどうすべきか考えた後、彼女はどちらの味方をするか決めた。 巨大れいむが私のほうに向かっていくところを見たまりさは勝利を確信したような笑顔になったが、巨大れいむが私の横を通り過ぎ、その巨体を180度反転させてまりさのほうを睨み付けた時、彼女の笑顔は崩れた。 「おにいさんのいうとおりだよ!うそつきなのはまりさだよ!うそつきゆっくりはゆっくりしねぇ!」 「な゛んて゛ええ゛ぇぇぇえ゛ええ!ま゛り゛さ゛うそ゛つ゛い゛て゛な゛いよ゛お゛お゛ぉぉお゛ぉお゛!!!」 巨大れいむが頼もしさすら感じさせる身体を跳躍させ、まりさに飛びかかる。 勝負はあっという間についた。 まりさは踏み潰された後もしばらく叫びながら抵抗していたが、すぐに声が聞こえなくなった。 流石巨大ゆっくりだ。 「おにいさん!たすけてあげたからおいしいものはやくちょうだい!」 「そうだな。取り出すからちょっとゆっくりしててね!」 「ゆっくりまつよ!」 身体が大きくなると余裕が出てくるらしい。巨大れいむは私の言うことを素直に聞き、身体を重力に任せる楽な姿勢をとった。 ビニールの包装を施された一口サイズの羊羹を取り出し、れいむの方を向く。 「お待たせ!今あげるから口を大きく開けて舌を出してね!そこに乗せるよ!」 れいむは口をあーんと開け、おいしい食べ物を今かと待ち構える。 ビニールをやぶき、中の羊羹を舌に直接乗せてやった。 「れいむ!ゆっくり味わってね!」 「むーしゃ…むーしゃ…。」 私に言われた通り、口で何度も咀嚼するれいむ。口を動かすたびに目が垂れ下がり、頬が赤く染まっていく。 そんなにおいしく食べてもらえるなんて幸せだよお兄さん。 「しあわせー!」 食べ終わったようだ。発情してるんじゃないかという程に赤くなった表情で声を上げるれいむ。 余韻を味わった後、私のほうを向いてきた。 「おにいさん!もっとほしいよ!」 「ああ、ちょっと待ってな。」 欲の皮の突っ張ったヤツだ、予想はしていたが。 欲求に答えてやる為、再び荷物を開けた。 先ほどの羊羹とは別のところから紙で包まれた一本の羊羹に見えなくも無い直方体を取り出す。 巨大れいむはそれを見て再びあーんと口を開け、早く頂戴と視線で要求してくる。 「これも美味しいからね!ゆっくり味わってね!」 包装を解いて舌に乗せてやると、あっという間に口の中に入れたれいむはよく味わおうとなめまわし始めた。 口からはみ出した紐が何とも珍妙な雰囲気を醸す。 「ふぉにいふぁん!ふぁんふぁりふぉいひくはいよ!(おにいさん!あんまりおいしくないよ!)」 「そういうのは大人の味って言うんだ。れいむは大きいからもちろん分かるよね!」 「ひゅ、ふぉうふぁね!ふぉいひいよ!(ゆ、そうだね!おいしいよ!)」 アホか。それは食い物ですらねえよ。 それにしても口から紐が出てて食いにくくないだろうか? 「ふぉにいふぁん!ふぉっふぉひふぉふぁひゃひゃふぁお!(おにいさん!ちょっとひもがじゃまだよ!)」 「自然に生えている羊羹だからね、蔓が付いたまんまなんだよ。」 「ふぉうふぁふぉ?(そうなの?)」 巨大とは言え所詮ゆっくりか、この程度の知能らしい。 れいむが思い込みにより再び幸せそうな顔になってきたところで、紐の一端を持って伸ばしながら部屋の外へと出て行く。 部屋の中が完全に見えなくなったところで荷物からドロップ缶の上に取っ手が付いたような物体を取り出し、紐と接続。 部屋から微かに聞こえる声で、巨大れいむが未だにお楽しみ中であることを確認し、取っ手を掴んだ。 おにいさんのこと、まりさはうそつきだっていってたけど、おいしいものくれたしゆっくりできるひとだね! ようかんってあまくておいしくてしあわせー! 巨大れいむはそう思いながら渡された物体をしゃぶり、味を楽しんでいた。 最初こそ変な味だと思った彼女だが、大人の味だと指摘されるとだんだんと甘く感じるようになり、今では十分美味しいと感じるようになっている。 さいしょもらったやつはすぐにたべちゃったから、こんどはゆっくりあじあわなきゃ! れいむは噛む事すら躊躇しながら物体を舌で転がす。 最初に食べた物体があまりにも美味しかった為に思ったよりゆっくり味わえなかった後悔がある彼女は、今度こそ楽しむという不退転の決意で居た。 彼女はそれをくれた人物が部屋から消えたことに最後まで気が付かなかった。 取っ手を捻った瞬間、先ほどの部屋から猛烈な爆発音が発生、殆ど同時に部屋の入り口から黒や茶の飛沫が散弾銃のごとく噴出した。 セムテックスが巨大れいむの口内で起爆したことにより、彼女は発生した膨大な量のガスによって瞬時に膨張、次の瞬間当然の結果として破裂し、その身体の破片をあたり一面に飛び散らせた結果だった。 部屋に戻ったとき目にしたのは、壁や床、そして天井に存在する餡子をブチまけたような(実際そうなのだが)抽象芸術だった。 あまりにも斬新過ぎる芸術に目を奪われた私は、部屋をよく見回さなかったことを後で後悔する。 部屋の隅、かつて巨大れいむの一部だった餡子の山が呻きながらわずかに動いていた事に、私は気が付かなかった。 続く 書いているうちにタイトルと内容が剥離してきた。次で何とかする。したい。 by sdkfz251 このSSに感想を付ける
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『ゆっくりしてゆっくりしてゆっくりしていってね!!!』 「ゆ!ここをまりさたちのあたらしいゆっくりプレイスにするよ!」 もはやありがちなこの光景しかし… 「ゆっ!じゃまなれいむがいるんだぜ!いたいめにあいたくなかったら、さっさとでていってね!」 「とかいはじゃないれいむはさっさとでていってね!」 れいむは何も答えない 「ゆっ!ばかにしているね!まりさはこうみえてもやまでいちばんのちからもちなんだぜ! さっさとにげだしたほうがみのためなんだぜ!」 「…」 「ゆっがぁぁぁ!!!もうおこったよ!あとでごめんなさいしてもしらないからね!」 「まりさがんばってね!」 まりさはものすごい(ゆっくり的に)スピードで体当たりをした…はずだった 「ゆっぎゃぁぁぁ!!!いたいぃぃぃぃ!!!」 まりさはおもいっきり柱の角に顔面を打ち付けました れいむはまりさが突進してきた場所から少しずれた場所でまりさの方を見ていました 「も゛う゛ゆ゛る゛ざな゛い゛ん゛だぜえ゛!」 まりさは空高く(しつこいようだがゆっくり的に)舞い上がり 「づぶじでやるんだぜぇぇぇぇ!!!」と押し潰そうとしましたが 「ゆぶぇ!」例によってまりさは顔面から床に叩きつけられました 「なんでなんだぜぇ!!」まりさは起き上がるとれいむの方を見ました れいむはまたまりさが押しつぶしを当てようとしたところより少しずれてまりさの方を見ていました 「こんどこそゆるさないんだぜぇ!」とまりさが言いかけた瞬間 『ゆっくりしていってね!!!』とれいむから声がしました 思わず「「ゆっくりしていってね!!!」と返事を返してしまいました これにはまりさはニヤリとせざるを得ませんでした 「ゆっ!まりささまのちからをみておじけづいたんだぜ! このれいむはこしぬけなんだぜ!」 「さすがまりさね、あとでとかいはのあいでつつみこんであげるわぁ」 「ゆぅ~んてれるんだ『ゆっくりしていってね!!!』 「ゆっ!まりさはいまありすとあいのかたらいちゅうなんだぜ! ぶすいなまねをしないでほし『ゆっくりしていってね!!!』 「ゆがぁ!しつこいんだぜ!もうおまえのいばしょはここじゃないんだぜ! さっさとでていくんだぜ!」 『ゆっくりしていってね!!!』 「しつこいんだぜぇ!ゆっくりできないんだぜ!」 『ゆっくりしていってね!!!』 「ゆげぇ!こいつきもちわるいんだぜえ!」 「ぜんぜんゆっくりできないわ!こんなのとかいはじゃないわぁ!」 「もうこんなところでていってやるんだぜぇ!ゆ? なんででぐちがなくなってるのぉ!?」 まりさ達は確かに玄関の隙間から入ってきたはずでした しかし今は玄関はぴったりと閉じられ蟻の子一匹入るスペースすらありません 『ゆっくりしていってね!!!』 「もうこっちにくるなだぜぇ!」 「とかいはぁぁぁ!!」 まりさとありすは恐慌状態になって逃げ回りますが、どこへ逃げても 『ゆっくりしていってね!!!』としかしゃべらないれいむに追い詰められます 「もうごないでぇぇぇ!!」 「まりさ達が悪かったよ『ゆっくりしていってね!!!』 「ゆぎゃぁぁぁ!!!」 しばらくして家の主が帰宅しました 『ゆっくりしていってね!!!』「ゆぎゃぁ!!!」 家の主が様子を見に行くと、部屋の陰でがたがたと震えながら変な液体をばら撒いている まりさとありすの姿がありました 家の主は2匹をつかむと外へ放り投げました その時に 『ゆっくりしていってね!!!!』と大声で叫んであげました あのまりさとありすはもう二度とゆっくりしようとは思わないでしょう 「どうでしょうか?今回の企画は!?」 「ボツ」 「え!?」 『ゆっくりしていってね!!!』 「だって追い出すよりそのれいむ使って潰したほうが早いでしょ」 「床餡子で汚れないですよ!?」 「そのかわり、あなたの家の家具がめちゃくちゃだけどね」 『ゆっくりしていってね!!!』 「…それになんか、むかつくから」 終われ このSSに感想をつける
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「ゆっくりしていってね!!!」 目の前にゆっくりの一家がいた。 ゆっくり。 人語を解するが知能の低い、生きる饅頭。 その餡子は甘く、非常に美味であることから老若男女に人気のある食べ物だ。 しかし、畑を荒らすこともあり農業を営む者からは疎まれている存在である。 また、家に不法進入をしてきたり、その大きな声による騒音被害もあることから人間の里では害獣に指定されている。 「ゆ?ゆっくりしていってね!!!」 俺が何も返事をしないことを不思議がったのか、同じセリフを繰り返すゆっくり達。 大きいゆっくり霊夢が一匹と、小さなゆっくり霊夢が4匹。 大きいものはバスケットボールほど、小さいものはソフトボールくらいであった。 片親のようだ。 「君達は家族かい?お母さんは大きいれいむだけ?」 「ゆ!みんなれいむのあかちゃんだよ!!すごくゆっくりしたいい子達だよ!」 大きな霊夢、親れいむの話では、交尾した後すぐにもう1匹の親のゆっくり魔理沙は出ていったという。 自身と同じゆっくり魔理沙が生まれなかったためらしい。 なんというやり逃げ。 「れいむたちはゆっくりするよ!おにいさんもゆっくりしていってね!!」 俺が何も食べ物を恵んでやらなかったせいだろうか、興味を失った親れいむは野原でゆっくりし始めた。 俺もゆっくり霊夢なぞに興味はない。 ヘタに関わって付きまとわれたくないので家に帰ろう、と思った矢先、いいことを思いついた。 「なあお前ら、俺の家はここよりもっとゆっくりできるぞ。こないか?」 そして今、俺の家にはゆっくり一家がいる。 「ゆゆ!おにいさん早く食べ物を出してね!こどもたちがお腹すいてるよ!」 「ゆー!おにいさんはやくゆっくちさせてね!!」 「ゆっくち!ゆっくち!!」 当然、ゆっくりさせる気など毛頭ない。 俺は子れいむを2匹ずつペアにして、少し離したところに移動させた。 「ゆ?れいむの子供になにをするの?」 取り残された親れいむが不思議そうな顔をする。 もう用済みだから殺してもいいのだが、特に悪さもしていないゆっくりだったので生かしてあげよう。 それが生き地獄だとしても。 「お母さんれいむはどっちかの子供のほうに移動してね」 「どうしてなの?みんな一緒でゆっくりしたいよ!!」 「ご飯の前にはお風呂に入らないと。一度に5匹は大変だから2回に分けようと思ってね。先に入るほうと後に入るほうでわかれてね」 「ゆ!おふろ!れいむさきにはいりたい!!!」 「ずるい!れいむがさきだよ!!」 「おにいさんれいむたちをさきにして!!」 「そんなわけだから、お母さんれいむ、どっちかに移動してね」 そういうと、親れいむは特に不審に思うこともなく比較的近くだった子れいむの班へと移動した。 これが向こうの子れいむ達との今生のお別れだとも知らずに。 「よーし、じゃあお母さんがいなくても大丈夫なこっちのれいむたちからお風呂だよ!」 親れいむがいないことで少し不満がっていたので、おだててあげる。 単純な頭なのですぐにきゃっきゃと喜び始めた。 軽い体を持ち上げて、俺は奥へと歩きだす。 「わあ!おそらをとんでいるみたい!!!」 「すごくたかいよ!!」 もう生涯見ることのない外の世界を楽しんでいるようだった。 「じゃあここで永遠にゆっくりしていってね」 ここはお風呂場ではなく、台所。 そこに置いてあった鉄の箱に2匹の子れいむを投げ入れた。 「ゆ?おふろは?」 「ここはゆっくちできないよ!」 2匹の子れいむを入れてもあと5匹は入れるくらいスペースが余っていたので、あまり緊迫感がないようだ。 透明な箱ではないので、閉めると中の様子が見えないのだが、今回は好都合だ。 俺は子れいむ達の質問を無視して蓋を閉めた。 中から「ゆっくりあけて!」だの「暗くてゆっくりできない」といったことがかすかに聞こえるくらいだ。 鉄製だけあって、蓋を閉めるとあまり声は届かないみたいだ 俺は居間に戻り、残りの3匹達をさっきの2匹とは別のところに持っていく。 「ゆ?お兄さんここは何?」 「ここはお兄さんの家のお庭だよ」 つれてきたのは中庭。 塀で囲まれており、家の中からじゃないと入ることができない庭だ。 夏まっさかりの今日、中庭は背の高くなった雑草が生い茂りジャングルのようになっている。 「じゃあここで死ぬまでゆっくりしていってね」 ぽーん、と中庭に3匹のゆっくりを投げ込む。 「ゆ!?お兄さんお風呂はどうしたの!?こんなところじゃゆっくりできないよ!!」 「いちゃい!!ゆっくちさせて!!」 「ゆぅうう・・」 着地に失敗した子れいむ2匹が涙目になっていた。 「お風呂はないよ。君達はここで永遠にゆっくりするんだよ」 親れいむが俺に体当たりをしてきたので、全力で蹴り返す。 餡子を撒き散らしながら塀にたたきつけられ、そのまま動かなくなった。 「あら、死んじゃった?まあゆっくりしてけよ」 中庭唯一の入り口を閉じ、俺はその場を後にした。 夕方。 晩御飯の支度を終えた俺の足元には、先ほど子れいむ2匹をつめこんだ鉄の箱がある。 いよいよこれの出番がやってくる。 これは一言で言うなら、ゆっくりコンポストだ。 使用方法はとても簡単。 調理を終えた流し台の三角コーナーには、野菜のいらない部分や割れた卵などが入っている。 これを箱の中にいる子れいむ達に食べて処分してもらおうというものだ。 蓋を開けるとノンキに眠っている子れいむ達がいた。 「れいむ、ご飯を用意したよー!」 ご飯、その単語にピクリと反応し、すぐに目を覚ます子れいむ。 「ゆ!おにいさんはやくここからだしてね!ごはんもだしてね!!」 「おかあさんはどこなの!?はやくあわせてね!!」 お怒りのようだ。 しかし俺はこんなコンポスト達の相手をしているほどヒマではない。 子れいむに振り掛けるように生ゴミを入れた。 「それが君達のご飯だよ。これからずっとだよ。ちゃんと処分してね」 生ゴミにびっくりして何も喋らなかったのでそのまま蓋を閉めた。 ゆーとかやーとか騒いでいるが、さすが鉄製の箱だけあって3メートルも離れたら何も聞こえなくなった。 次の日、朝ごはんの用意で出た生ゴミを捨てようと蓋を開けると、昨日のままの生ゴミがそこにあった。 「ゆ!おにいさんれいむたちこんなのたべられないよ!!はやくだしt」 言い終わらないうちに生ゴミを捨て、蓋を閉める。 働かないコンポストの相手なんてしないものだ。 中庭に回ると、入り口の目の前で3匹が眠っていた。 親れいむは顔がぐちゃぐちゃに歪み、皮はずたぼろ、ところどころ餡子が飛び出しているが生きてはいるようだ。 こいつらは放っておけば勝手に働くだろうから、俺は放置して外に遊びに出かけた。 帰宅する頃にはもう夕方になっていた。 急いで夕飯の用意をし、生ゴミを捨てるためにコンポストの蓋を開ける。 すると、そこには子れいむ2匹の姿以外、特に何も無かった。 昨日と今朝の生ゴミは綺麗サッパリ消えていた。 さすがに育ち盛りの子れいむ達は、食欲に勝てなかったのだろう。 それに生ゴミと言っても、調理後すぐのものであったから腐ってはいなかったはずだ。 「よお、結局食べたんだな。おかわりを用意してやったぞ」 また振り返るように生ゴミをぶちまけ、四の五の言う前に蓋を閉めた。 ちらっと見た感じ、2匹はぼろぼろと泣いていた様子だった。 いきなり閉じ込められてゴミを食べさせられるのだから、その心境は分からないでもない。 どこからか、家に体当たりをするような音が一晩中聞こえていたが、俺はぐっすりと眠ることができた。 「おはよう。ゆっくりしているかい」 朝一番に中庭を訪れると、小さいながらもぷくっと膨れて威嚇する2匹の子れいむと、汚らしい皮の親れいむが待っていた。 「ゆ!おにいさんはやくここからだしてね!!れいむおなかすいたよ!!」 「おにいさんはゆっくりできないひとだよ!!ゆっくりしね!!」 「ぼべべびゅびゅっぼぼぼ!!!」 餡子を撒き散らしながら話す親れいむの言葉は理解できなかったが、とりあえず怒っているということだけは分かった。 子れいむを手にとると、若干痩せた感じがした。 「みんなはもう草刈りの道具だよ。早く草を食べてね!ご飯はそれだけだよ!」 こちらの班は、草刈りを目的としている。 草まみれの庭に放てば、食うものがなくなったゆっくり達は草を食べてくれるだろう。 育ち盛りの子れいむ2匹と、大きな親れいむがいれば、すぐに庭は綺麗になるはずだ。 「やだよ!!れいむ、にがいくさはきらいだよ!!」 「れいむもやだよ!はやくおいしいごはんをよういしてね!!!」 「ぶびっ!!!」 餡子が飛ぶ。汚いなあ。 「草を食べたくなかったら食べなくてもいいよ。お腹すいて死んじゃうだろうけどね」 その前に親れいむは出餡子多量で死にそうだが。 その後もゆーゆー文句を垂れる子れいむ達を置き去りにし、俺は扉を閉じた。 それから、3週間が経った。 ゆっくりコンポストはきちんと働いていた。 開始1週間ほどしたときに、子れいむ達がボイコットをしたこともあった。 生ゴミ以外の食べ物をくれ、くれるまで生ゴミの処理はしない、と。 俺は気にせず毎食ごとに生ゴミを投げ入れた。 2日もすると夏の暑さで溜まった生ゴミは腐臭を出し始め、どこに鼻があるのかもわからないのに子ゆっくりは悪臭に涙していた。 くさいくさいと涙ながらに許しを請う子れいむ達に、俺は一言、早く処分しろとだけ告げて蓋を閉じた。 次に蓋を開いたときには生ゴミは全て消えていた。 真っ青な顔をした子れいむ達を見れば、腐った生ゴミの処分がいかに大変かがよく分かった。 それ以来、腐らせることを極端に恐れ、生ゴミを入れるとすぐに食べるようになってくれた。 今、3週間前にうっかり捨てるのを忘れていたお弁当を、子れいむ達が必死で処分してくれている。 たまに嘔吐し、戻すこともある。 しかし、結局自分で処理しなければならないのだから一度で済ませばいいのに、と俺は思う。 これからも生ゴミの処理をよろしくね、そういい残し、俺は蓋を閉じた。 中から泣き声が聞こえたのは多分、気のせいだろう。 中庭も綺麗になった。 それこそ、最初の頃はニガイだの不味いだの文句たらたらだったが、いつしか諦めて黙々と食べるようになった。 そもそも野生のゆっくりは草や虫が主食なのだ。 何も問題はない。 それにコンポスト組に比べれば広い庭もあるし、子れいむにとっては親れいむもいるのだから幸せだろう。 それに家族だって増えている。 3匹では草が思うように減らないと感じ、おれはゆっくりアリスを加工所からレンタルし、強制的に交尾をさせ続けた。 そしてあっという間に3匹だった草刈り組は30匹へと増員された。 最近は近所で草刈りのアルバイトを始めた。 縄でつなぎ、リボンを人質にとって連日不味い草を食べさせている。 赤ちゃんゆっくりがわがままを言って草を食べない時は、見せしめに親や姉妹の前で皮を引き裂いた。 飛び散った餡子を食べさせると共食いを覚えてしまいそうだったので、一切食べさせることはしなかったが。 今日の出勤場所は、3丁目の田中さんの家だ。 リボンのない30匹のゆっくり霊夢を縄で繋ぐと、俺は家を後にした。 作:アルコールランプ? このSSに感想を付ける
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ゆっくりに選ばせる青年 6KB 駄文です 文字書くのって難しいです 設定とかそんなのはキニシナーイ 絶対にキニシナーイ 誤字とかもキニシナーイ 『 ゆっくりに選ばせる青年 』 あるところにそれなりに大きな館があった。 そこには1人の青年が住んでいた。 何故青年が一人で大きな館に住んでいるのかは気にしない。 館近くにゆっくりが生息する山があり、時々ゆっくりが訪ねてくる。 「私はあなたに1つだけ与えます あまあま と 住むところ あなたはどちらが欲しいですか?」 青年は決まってこの質問を訪ねてきたゆっくりに投げかけるそうだ。 ちなみにこの館を訪れたゆっくりは居なくなってしまうらしい。 おお 怖い 怖い そんな館にゆっくりがやってきた。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・もう少しだよ・・・」 「ゆぅ・・・」 所々ボロボロで疲れ果てた成体サイズのまりさと子ゆっくりのサイズのまりさがゆっくりと跳ねている。どうやらゆっくりの親子の様だ。 「おちびちゃん・・・がんばってね・・・」 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 今にも果ててしまいそうな子ゆを励ましながら何とか門までたどり着いた。 門の前には太陽のような笑顔の青年が親子を迎えた。 「何か御用ですか?」 「ゆっくりたすけてください・・・ゆっくりできないれいむからにげてきたんです・・・」 「ゆぅ・・・」 力無い声でまりさは助けを求めた。 どうやらまりさは番から逃げ出して来たようだ、 このまりさはれいむと番になって子供を儲け、まりさが母親役となり胎内出産でこの子まりさが生まれた。 しかし、れいむは自分と似た子が生まれなかったことに腹を立てて、 まりさに産後すぐに狩りに行かせたり、採るには命の危険性がある蜂の巣や果物などを採ってくるように命令し。 「とってこないとこのあかちゃんをたべるからね!れいむはくずものろまもきらいだよ!はやくしてね!」 っと赤ん坊だった子まりさをゆ質(人質)にしてまりさを扱き使っていた。 更にはまりさが居ない間、まりさが妊娠していた時に狩りに行かされたことや、 自分に似た可愛い(笑)な子が生まれなかったことに対するストレス発散として、 子まりさに体当たりしたり、苦い草や少し毒のあるキノコを無理矢理食べさせたりなどの虐待まで行っていたのだ。 心身共にボロボロだったまりさ達は子まりさの体力的なことも考えて赤ゆから子ゆになるのを見計らって、 れいむから逃げ出してきたのだ。 「・・・で、やっとここにたどりついたんです・・・ おねがいしますにんげんさん・・・たすけでぐだざい゙・・・」 「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・」 ある程度状況を説明し、泣き出した親子に青年は優しい声で尋ねました。 「私はあなたに1つだけ与えます あまあま と 住むところ あなたはどちらが欲しいですか?」 まりさ達は迷うことなく。 「すむところがいいよ・・・やまにはもうもどれないよ・・・」 と答えた。 それもそうだろう、山に戻れば番のれいむに見つかってしまうかもしれない、 まりさがボロボロになりながら採ってきた蜂の巣や果物などを食べていたれいむの栄養状態は頗る良いだろうし、 見つかったら只では済まないだろう。 その答えを聞いた青年は微笑みそっと2匹を抱きかかえて。 「わかった、まずは傷の手当をしようね?」 そう言って館の中に入って行った。 その後まりさ親子はこの屋敷を出ることはなかった。 次の日、1匹のれいむが屋敷を訪ねてきた。 その身体はでっぷりとしていて、野生とは思えない位栄養状態が良かった。 「れいむはおっととこどもにすてられてかわいそうなんだよ!? だからあまあまをちょうだいね!!! 」 「そういえば、昨日ボロボロのまりさの親子が館に来たな・・・」 「ゆ!? それはきっとれいむのまりさだよ! はやくあわせてね! そしてあまあまをちょうだいね!!!」 しつこくあまあまを要求するれいむに青年は笑顔で尋ねた。 「私はあなたに1つだけ与えます あまあま と 住むところ あなたはどちらが欲しいですか?」 れいむは迷うことなく 「あまあまだよ! れいむはぐるめだからちゃんとしたあまあまをちょうだいね!! そしてまりさをだしてね!!!」 と答えた。 まあ、予想通りという感じだろう。 その答えを聞いた青年は微笑みポケットから何かを取り出した。 それは粉のようなモノが入った袋だった。 「じゃあ口を開けてごらん」 「ゆ!? はやくしてね! れいむはのろまはきらいだよ!!!」 青年はれいむの口に袋の中の粉をドサッっと入れた。 「これめっちy・・・んぐっ!?にが!!!?おげぇぇぇぇぇぇぇえれえれえれ!!!!!」 れいむが粉を味わおうと口を閉じた瞬間、突然嘔吐し始めた。 口に含んだ粉だけでなく体を構成する餡子まで大量に吐き出し絶命した。 それを見届けた青年は 「ちゃんとあまあまをあげたけど、死んでしまったので館に入れてあげれないね」 そう言ってれいむの亡骸を館の隅にある焼却炉に入れ、館の中に入って行った。 青年がれいむに与えたのはサッカリン。 砂糖の500倍の甘さがありしびれるような刺激の後味を持ち、高濃度では苦みを感じるそうだ。 そんなモノを大量に口の中に入れられたのだからショックで死んでも可笑しくない。 いや、むしろ殺すつもりで青年はれいむに与えたのだろう。 この青年は目先の幸福を望むゆっくりには死を与える、ちょっと変わった虐待お兄さんだった。 彼は訪ねてくるゆっくりには必ずあの質問をしている。 質問に「あまあま」と答えたゆっくりにはあまあま(死ぬほど甘いモノ)を与え質問に「住むところ」と答えたゆっくりは館に連れて行っていた。 では、館に連れて行かれたゆっくりはどうなるのだろう? 「ゆぅ なんだかすごくゆっくりできるよ! おかあさん!」 「そうだね! とってもゆっくりできるね!」 昨日訪ねてきたあのまりさ親子は館の裏庭に居た。 傷も治り今はとてもゆっくりした気分なのだろう。 それなりに大きな館にはそれなりの大きさの裏庭があり、なんとなく草木が生い茂っていて、食べ物の心配もあまりなく、 ブロック塀と金網でしっかりと守られていて外敵から襲われる心配のないその庭には色んな種類のゆっくりが住んでいた。 その庭に住むゆっくりは青年から少しの食べ物を貰い、とてもゆっくりとした生活をしていた。 青年は食べ物を与えるだけで、特に何かすることはなく、偶にウッドデッキでゆっくり達を眺めるくらいしかしていない。 ここのゆっくり達は元々近くの山に住んでいたゆっくりだった、 様々な理由からこの館に訪れて、この庭に入れてもらっている。 他のゆっくりから迫害されて追い出された、ゲスなゆっくりから逃げてきた、兄弟と飾りの色が違い追い出されたなど理由は様々だが、 今は皆非常にゆっくりとしていた。 誰もが似たような経験を持ち、皆で仲良く助け合い生活をしている。 「ゆっくりさせてあげたい」という思いやりの気持ちから生まれる「ゆっくりしていってね!!!」がそこにはあった。 青年はそんなゆっくりの姿を見たかったのだった。 ○後書き 字を書くって難しいね やっぱり無理でした・・・ 考えたことをアウトプットするのはホント大変です・・・ 細かいことも大きなこともキニシナーイ 「まりさは赤ゆを口に入れて逃げればよかったんじゃね?」とか 「サッカリンでゆっくりを殺せるの?」とか 「起承転結できてないじゃん」とか 「つうか話の内容がイミフ」とか感じると思う でもそういうのは心のオシャレ小箱に閉まっておきましょうね きっと最初で最後のSSだし うん! by 犬がバールを背負ってきたワン! トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 有益な奴は残す いいね あ、でいぶは絶滅な -- 2014-07-30 22 52 43 普通に良いお兄さんだった・・・ 最近のは必要以上に殺しすぎるから困る -- 2012-10-03 00 26 23 いい話だぁ -- 2012-03-20 20 53 09 いいや性格がいいゆっくりも殺して悪いゆっくりも殺すほうが気持ちいい -- 2011-09-19 14 29 39 こんな大人になりたい -- 2011-05-28 20 00 59 やっぱり制裁派多いようだな -- 2010-09-27 01 06 36 いいなぁ。 本当にゆっくりが存在するなら私はこういう事がしたい でも赤ゆは全部潰す^q^ -- 2010-09-21 02 58 14 さっかりんww -- 2010-09-11 21 43 59 こういうのは良いね たしかにあまあまだね。嘘は付いていない -- 2010-06-30 17 31 41 これは良かった -- 2010-06-30 12 56 34 とかいはなおにいさんね!! -- 2010-06-19 06 15 18 虐待は好きだけどいいゆっくりは幸せになってもいいと思います -- 2010-06-18 01 28 27 いいね -- 2010-06-06 10 45 08 なんか爽快 -- 2010-06-05 01 37 52 因果応報ってすばらしい -- 2010-04-17 21 47 55 ゲスは制裁 いいゆっくりは救う この手の小説はきもちいい -- 2010-04-08 21 17 03 たのしめた -- 2010-02-24 02 16 53
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2008年、夏、東京。 俺はカメラ片手に繁華街をうろついていた。 幼女を盗撮しようとかそういうワケではない。 ターゲットはゆっくりだ。 最近発見された、生きる饅頭。 日本では大量に見つけることができるが、海外にはほとんどいない。 台湾やアメリカの一部の州ではゆっくりの生息が確認されたそうだが、ほぼゼロだ。 そのふてぶてしい顔、そしてその不思議な生態は日本だけでなく世界の注目を浴びている。 なんでも去年、日本に訪れた観光客が例年の3倍近く増えたという。 ゆっくりバブルと、世間は騒ぎたてていた。 俺はそこに目をつけた。 海外で放送されているゆっくりのドキュメンタリーは、ほとんどが田舎が舞台になっている。 元気いっぱいに跳ね回り、力いっぱい「ゆっくりしていってね」と発声する。 そんなハツラツとしたゆっくり達ばかりが主役だ。 だから俺はあえて、都会に住む、みすぼらしいゴミクズのようなゆっくり達にスポットライトを当てようと思った。 時代はインターネット。 世界はつながっているのだ。 既にブログは開設済み。 英語の読み書きだけは得意だったので、日本語ページと英語ページが用意されている。 あとはyoutubeにメインとなるゆっくりの動画をアップするだけ。 ブログは主に、動画の制作に関する話題や、日本にゆっくりを見に観光する際のお勧め情報を載せるつもりだ。 アフィうめぇと言える日を夢見て、俺は早朝の繁華街を歩いていた。 「おっ、第一ゆっくり発見」 建物と建物の間に、1匹のゆっくりがいた。 飲食店が多い繁華街なのですぐに見つかるとは思っていたが、こんなにすぐ見つかるとは。 こんなウジムシのごとくブリブリ湧いてるモノを見に、わざわざ日本にやってくる外人がいるとは驚きである。 「ゆっ・・・!」 さっそく、カメラを録画モードにする。 ドキュメンタリーのつもりなので、あとで編集はする。 流れとしては、日本語で喋る俺の声はそのままに、画面下のほうに英語の字幕をつけるつもりだ。 「まりさ種発見です」 まりさは膨れて威嚇はしないものの、、ぶつぶつと喋る俺に警戒をしているようだ。 「 ゆゆ・・・ゆっくり・・・」 田舎に住むゆっくりのように、嬉しそうに挨拶はしてこない。 それが都会に住むゆっくりの特徴だ。 「それでは挨拶をしてみましょう。ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっ、ゆっくり・・・ゆっくりしていってね・・・・」 ゆっくりとは思えない挨拶と媚びるような笑顔。 恐怖に脅える顔が透けて見える。 本心から発した言葉ではないのだろう。 だが、俺にはそんなことどうでもいい。 都会に住むゆっくりの典型的な例なので、撮影に協力してもらおう。 俺はズカズカと、まりさの方へ歩いて行く。 「ゆっ!ゆっくりこないでね!」 そう言いつつ、逃げようとはしない。 何かあるのだ。 ゆっくりが身を挺して守るものなど、赤子くらいなもの。 まりさの頭上から奥を除くと、ダンボールの中にソフトボールほどの子ゆっくりが4匹ほど眠っていた。 アタリを引いたようだ。 「やあ、まりさ。ちょっとお話があるんだ」 俺はまりさに撮影の話をした。 都会のカラスと同じで、都会のゆっくりは田舎のゆっくりに比べて知能が高いことが多い。 このまりさも普通のゆっくりよりも若干賢かった。 説明はすぐに終わり、撮影の許可をいただくことができた。 「じゃあ、これからまりさの生活を見せてもらうよ。よろしくね」 「ゆっくりりかいしたよ!」 許可してもらったのは、まりさの行動をすぐ後ろで撮影させてもらうこと。 そして、まりさはカメラを意識しないで普段通りに生活してもらうこと。 報酬としてエサをやるといったら、すぐに了解してくれた。 ただ、野良ゆっくりにエサをやるのはマナー違反である。 なので撮影が終了したら黙って帰ろうと思う。 「そうだな、それじゃちょっとまりさの体を見せてくれるかな」 「ゆっ。ゆっくりながめてね」 狭い場所なので、くるくる回って撮影ができなかった。 しょうがないので、まりさを近くにあった板に乗せて回転させる。 本当に、汚いまりさだった。 最初に感じたのは、顔の皮の色だ。 全体的に茶色に染まり、擦り傷がアチコチに見られる。 試しに触ってみると、油汚れのようなネットリとした不気味な粘着を感じた。 底部は硬かった。 連日、コンクリートを這っているため、タコのようになっているのだろうか。 髪の毛はボサボサで、ところどころにゴミや木の枝などが巻き込まれていた。 後頭部の髪には、噛んだガムがねっちょりとこびり付いていた。 しかもひとつだけでなく、いくつもついていたため、後頭部はガムまみれ。 「にんげんさんがむりやりつけたんだよぉ・・・!ま、まりざはっ!まりざはやべでっでいっだのにぃいぃぃ」 と、泣きだす場面もあった。 帽子も変な形をしていた。 トンガリ帽子のはずなのに、べっこりと潰れてプリンのような形をしていた。 また、帽子に巻かれているはずの白いリボンはなかった。 まりさ曰く、ガムをつけてくれたお兄さんに目の前で焼かれたらしい。 あらかた撮影したので、まりさを板からおろした。 「じゃあ俺は撮影してるから、まりさは普段通りに過ごしてくれよ」 「ゆっくりするよ」 まりさは子供達の眠るダンボールに向かっていった。 俺もすぐに後を追う。 「おちびちゃんたち・・・きょうもゆっくりできるといいね」 子ゆっくりは笑顔で眠っていた。 体は親同様、汚く着色されているのでお世辞にも可愛いとは言えないが。 まりさ種が3匹と、れいむ種が1匹。 よくある組み合わせだ。 「もう1匹、親のゆっくり霊夢はどこにいるんだ?」 「ゆぐっ・・・!」 今にも泣きだしそうな顔。 それをグッとこらえる仕草をしながらまりさは言った。 「れ、れいむはっ!まりざのぜいでじんじゃっだんだよ・・・・」 「ほー。それはなぜ?」 「へんなおにいざんが・・・!まりざのれいむをぉお!!!ゆぅうぅぅぅぅうっ!!!」 そのまま、まりさは泣き崩れてしまった。 勝手な推測だが、きっと悪い人間にれいむは殺されたのだろう。 まりさを逃がすために囮になったのか、それとも単にグズだったのかは分からないが。 「ゆっくり虐待かー・・・」 以前、youtubeにゆっくりアリスの虐待画像をアップした人間がいた。 グチャボロになりながらも、必死で生きようとするありすの姿が記憶に新しい。 アップロード者は、そのまま動物愛護法でしょっぴかれてしまったのだが。 「ま、ドキュメンタリーなら大丈夫だろ」 俺はカメラを子ゆっくりに向け、その薄汚い笑顔をアップで撮った。 日が高く上った頃、ようやく子ゆっくりが目を覚ました。 「ゆっくりさせてね!」 「れいむはおにいさんとゆっくりしたいな」 「まりさ、すごくゆっくりしてるよ」 「すりすりしてあげるね!」 と、俺の存在に気がつくとすぐに話しかけてきた。 意外と人懐っこい・・・というよりは媚びるのが得意のようだ。 1匹の子まりさがすりすりをして媚を売ろうとしてきたが、汚い皮ですりすりされても嬉しくない。 ウニクロで買った俺の服が汚れてしまう。 早々に親まりさに説明をさせた。 「ゆぅー・・・」 「れいむはひとりでゆっくりするよ」 「ゆっくり・・・」 「すりすりしてあげないよ」 すぐにエサをくれない人間だと理解したようで、俺への関心を失ったらしい。 単純で良い。 「ゆっ!それじゃあみんな。かりにいくよ」 「ゆー!」 「ゆっくりするよ!」 「ゆっくりしたい!」 「がんばってゆっくりしようね!」 親まりさの掛け声に、4匹の子ゆっくりが嬉しそうに応える。 狩り。 いったい、都会のど真ん中でどのようなことをするのだろうか。 ピョンピョコと跳ねる5匹の後を、カメラ片手に俺は足を進めた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 やってきたのは、すぐ手前にあったコンビニ。 狩りではなく乞食であった。 コンビニの外に置いてあるゴミ箱に隠れて、店に入る客に声かけをするだけだ。 みじめである。 乞食慣れしているのか、声も大きい。 「おじさん!まりさとかわいいおちびちゃんたちに、ゆっくりできるものをちょうだいね!」 コンビニから出てきた腰を曲げた老人に、親まりさは声をかけた。 「おじいさん!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしたいよ!おいしいごはんをちょうだいね!」 「ごはんたべたいよ!おねがいだよ!」 「れいむ、おじさんとごはんたべたいよ!」 「まりさにはいらないから、こどもたちだけでもゆっくりさせてね!」 親まりさが最後にそう言うと、子ゆっくり達は親まりさにすり寄り、「おかあさんもいっしょにゆっくりしたいよぉー」などと言うのであった。 演技派のようだ。 その老人は5匹に近寄り、とても外見からは想像もできないような回し蹴りを親まりさに放った。 「ゆぼげっへぇっ!!」 駐車場を転がっていく親まりさ。 老人は、それを呆然と見ている子ゆっくりにツバを吐きつけると、そのまま帰って行った。 「なんというモラルの低下。高齢化した結果がこれだよ!」 少し遠くから、俺はその様子を撮影していた。 まりさの帽子にはマイクが仕込んであるので音声もバッチリだ。 親まりさは派手な転がり方のワリに、意外とすんなり立ち上がった。 それどころか、レンズ越しに映る親まりさの体に特にキズは見当たらなかった。 その後も親まりさと子ゆっくりは、コンビニ前で乞食を続けていた。 お昼頃になると、その存在に気がついた店員に箒で追い出されてしまったが。 「ゆぅ・・・このままじゃゆっくりできないよぉ・・・」 「おなかずいだよぉぉお!!!ゆっぐりじだいのぉおお!!!」 「れいむはやくゆっくりしたい・・」 「もううごけないよおおお!!!」 「まりざおながずいだのにぃぃい!!!」 繁華街の中心を、貧相な一家が彷徨っている。 道行く人々は、視界に入らないよう歩いているようだ。 ずりずりと這う親ゆっくりが、あるものに気がついた。 「ゆ!これはゆっくりできるものだよ!!」 なんだろうと思っていると、親まりさは地面に顔を近づけた。 「これはあまあまだよ!ゆっくりできるんだよ!」 その笑顔といったら。 あれほど明るい笑顔を、あんなもので・・・。 「うわぁ・・・」 思わず声がこぼれた。 「ゆゅー?それなあに?」 「ゆっくりできる?」 「はやくたべたいよ!」 「ゆっくりちょうだいね!」 それは、道にこびりついていたガム。 誰かが吐き捨てたであろうガム。 多少硬くなっているようだが、親まりさの髪についているものほど硬化してはいないようだ。 親まりさはそれをくわえ、必死でひっぱっている。 哀れすぎて何も言えない。 「ゆゆっ!!とれたよ!!」 勢いあまって後ろに倒れこんだ親まりさ。 その口には、不衛生極まりないガムが。 「それじゃあおちびちゃんたち、ゆっくりたべてね!」 周囲の冷たい視線など、まるで無いかのように微笑む。 ただ、人の目があるのでおいそれとゆっくりを殺すワケにもいかない。 もしや、それを理解しているのだろうか。 「ゆー!あまあましあわせー!」 最初に食べさせてもらったのは、子れいむだった。 正直、見てて凄く気分が悪い。 誰が噛んだかも分らんガムを、よくもまああんなに嬉しそうに食べられるものだ。 「ゆ!まりさもたべたい!」 「れいむばっかりずるいよ!」 「まりさも!まりさも!」 「れいむ、そろそろこっちのおちびちゃんにもあげてね」 子れいむは聞き分けの良い子供だったらしく、ペッとガムを吐き出した。 すぐに別の子まりさがガムを口に含む。 「ゆー!まりさもあまあまー・・・・・・?」 顔にハテナマークをつける子まりさ。 「ぜんぜんあまぐないよぉおおおっ!!どぼじでなのぉおお!!?」 そりゃそうだ。 ただでさえ誰かが噛んで甘さが無くなっているのだ。 子れいむが噛んだことで、もはやただのグニュグニュしたものになってしまっているだろう。 「れいむがまりざのあまあまをどっだんだぁあああっ!!」 怒りの矛先は子れいむへ向いた。 猛烈な勢いで、子れいむに跳ね寄る子まりさ。 しかし、それは親まりさによって防がれてしまう。 「れいむになにをずるのぉおお!?だいぜづなしまいでじょおぉお!!?」 ボインっと膨れ、子まりさはそのまま吹き飛ばされてしまった。 ケガはしていないようだが、親まりさに弾かれたことが悔しいのか悲しいのか、起きあがろうとはしなかった。 「まりざもおぉお!!まいじゃもあまあまたべぢゃいのにぃいいっ!!!おぎゃーざんのばかぁああっ!!!」 子まりさの醜い声が繁華街に響き渡る。 「うるせーぞ糞饅頭が!」 すると、目の前の店から一人の男が現れた。 どうやら店員らしい。 「ゆゆ!みんなにげるよ!!おちびちゃんもゆっくりにげてね!」 おちびちゃん、泣き叫んでいた子まりさを呼ぶ親まりさ。 だが親の心なんとやら、子まりさはそれを拒む。 「や゙ぢゃよぉお゙ぉ゙お!!まりざのあ゙まあま゙っ!!ばりじゃのあ゙ま゙あま゙がえじでよぉぉぉおっ!!!」 「ゆぅうううっ!!!みんな、あのこはゆっくりできないこだよ!!いそいでにげるよ!!」 子まりさがあまあまを諦めるよりも、親まりさの見捨てる決断のほうが早かった。 親まりさと子ゆっくり3匹は、瞬く間に逃げて行った。 「ゆっ・・・!?おかあしゃ・・・!?ど、どぼじで・・・!」 茫然自失。 涙も止まり、声も止む。 それに満足したのか、店の男は戻って行った。 残されたのは、親に見捨てられた子まりさ1匹。 もう死ぬしかないだろう。 俺もそれに見切りをつけ、逃げた4匹を追った。 「あ゙ぁぁあ゙ああぁ゙ぁああぁ゙ああぁ゙ああぁぁぁ!!!ばりざのごどぼがあぁああっ!!!」 小さな公園で、親まりさがボロボロと泣き崩れていた。 「おかあさん、ゆっくりしてね・・・?」 「そうだよ、まりさたちがいるよ!いっしょにゆっくりしようね」 「あのこのぶんもゆっくりしようね」 それを3匹の子ゆっくりが慰めていた。 「おかあさんにすりすりするよ!」 「すりすりでゆっくりしてね!」 「すーりすーり♪」 そして始まるすりすり。 目糞に鼻糞を擦り付けているようなおぞましい光景だ。 「ゆっ・・・!みんな、いっしょにゆっくりしようね!あのこのぶんもゆっくりしようね!」 時計の針が午後3時も回った頃、ようやく親まりさは立ち直った。 「きょうはおうちにあるごはんでがまんしようね!かりはあしたやろうね!」 今日の狩りは終了したらしい。 何も得るものがない狩り。 逆に子まりさがいなくなって、何が狩りなのか。 「狩られ」だと思う。 そんなことを考えているうちに、4匹は帰路についていた。 「どぼじでごはんがないのぉぉぉおおっ!!!?」 帰って来た4匹を待っていたのは、残酷な現実だった。 「ごごにごはんがあっだのにぃいいい!!」 ここ、といって覗いているのは空のビール瓶のケース。 もともと黄色い色のケースだったようだが、色褪せてクリーム色になっていた。 キリンのビールケースだ。 子ゆっくり達は、すでに腹が減って喋る気力もないらしい。 マイクは親まりさの嘆きだけを記録していた。 「ゆっ・・・!でもおにいさんがごはんをくれるよ!きょうはゆっくりできるはずだね!」 それに気がつき、声が喜色に染まった。 体をふりふりさせながら、俺がエサを持って帰ってくるのを待っている。 「よし、今日の取材はここまでにするか」 youtubeにアップロードするのが目的なので、あまり長々としたものにするつもりはない。 せいぜい10分、長くても15分に収めるつもりだ。 なので、これ以上この一家の相手をするつもりはなかった。 「あとは編集して・・・、あれして・・・これして・・・・」 ぶつぶつと呟きながら、俺は親まりさに近づいた。 「よ、まりさ」 「おにいさん!やくそくのごはんをちょうだいね!」 「ごはんちょうだいね!」 「れいむにごはんちょうだい!」 「まりさにおいしいごはんをちょうだいね!!」 俺の姿を見ると、子ゆっくり達も気力を振り絞って声をかけてきた。 だが、相手をするつもりはない。 「マイク返してね」 帽子に仕込んだマイクを取り返す。 そして、そのまま背を向ける。 「ごっ・・・!?ごはんはっ!?まりさたちにごはん!」 なんだか生ゴミが騒いでいるが、気にしない。 蹴飛ばすのも嫌だったので、俺は全力疾走で駅まで駆け抜けた。 数日後。 俺はまた繁華街にやってきた。 アップロードした動画は、大好評だった。 アメリカをメインターゲットにしたつもりだが、世界中でウケたらしい。 英語、フランス語、スペイン語、中国語、ハングル、ロシア語で書かれたメールが山のように届いた。 英語しか読めなかったが。 そんな感想で目立ったのが、あの家族はあの後どうなったのか、という質問だ。 そんなワケで俺は再度、繁華街、あの建物と建物の間を見にやってきた。 「いるかな・・・?」 そこには、3匹のゆっくりの変わり果てた姿があった。 親まりさが1匹、子まりさが2匹。 子れいむはいなかった。 この数日の間に死んだか、逃げたか、食べられたかしたのだろう。どうでもいいことだ。 これは番外編としてブログに載せるつもりなので、今日はデジカメで写真撮影をする。 親まりさはゲッソリと痩せ細り、アンコが透けて見えそうだ。 表情は暗く、全てに絶望しながら死んだかのよう。 対して、子まりさ2匹は比較的まともな顔だった。 一体、この家族がどうやって死んだのか。 それは誰にも分らないだろう。 東京では、今日も数えきれないほどのゆっくりがゆっくりを求めて死んでいく。 誰にも存在を気づかれることなく消えていくモノもあるだろう。 この家族は少しはマシだ。 俺のアフィ収入になるのだから。 俺は次の企画を考えていた。 このSSに感想を付ける
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前 この主人公はまさに障害者的思考です 「ふう・・・結構歩くな・・・」 先日のゆっくり一家が教えてくれた方向へひたすら歩き続ける男と犬。 「ワォン!!」 カツオはまだ元気一杯のようだが男は歩き続けでバテ始めていた。 歩く途中ゆっくりを見つけては、群れの位置を聞いた。知っていた者は皆ほぼ同じ方向にドスの群れがあると言っていたのでこの方向で間違いはないだろう。 男はよくあんな饅頭なんかがこんな距離を移動できたなと感心していた。 さらにそのまま歩き続けると、突然カツオが吠えた。 しっぽを激しく振っており、やけに嬉しそうだ。 「もしかしてゆっくりの匂いか?」 「ワォン!!!」 「でかしたぞカツオ。案内してくれ」 急いでカツオの案内する方向へ向かう男。 ひたすら歩くと、ゆっくりの群れが見えてきた。 森が少し開けた広場のような所に40匹を越える大小のゆっくり達が楽しそうにゆっくりしていた。 男は皆殺しにしたい気持ちを抑えて近くにいたゆっくりに大してフレンドリーに声をかけた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆゆ!?ゆっくりしていってね!ようこそだよ人間さん!ここは人間さんに貸してもらったまりさたちのゆっくりプレイスだよ!ゆっくりしていってね!」 やけにゆっくりは歓迎してくれると男は感じた。男は鬱陶しいと感じる。 この辺の人間はゆっくりに危害を加えたりする人はいないだけでなく、人間とうまく共存関係を築いている。そんなゆっくりに手を出せばそれは 町と町との対立に繋がりかねないのだがこの男の思考にそんな発想は浮かんでこない。 「きっとこいつらは・・・気づいてると思うんだ(ボソ)」 まりさの声に釣られてほかの広場にいたゆっくりが大量に男の周りに集まってきた。 「「「「「「ゆっくりしていってね人間さん」」」」」 「「「ゆっくりできそうな犬さんだね」」」 「しっぽがもふもふだよ ゆっくりしていってね」 ゆっくりに歓迎されるという人生上初めて経験に男は少々動揺するも冷静に目的「物」の行方を質問する。 「あ・・・ああ・・ゆっくりしていってね・・。ところでお前ら、全身火傷を負って禿げた子饅頭二匹を連れた赤饅頭を知らないかい?れいむのことな?」 ゆっくりのことを饅頭と何度も言ったり、匹を使ったりとゆっくりにとって不快になる言動を連発する男。 ゆっくり達はお互い顔を見合わせる。何かこの人間さん変じゃない・・・?かと。 男は目に映るゆっくりはみなゆっくり出来なくさせたいところだが、今の第一に優先すべきことはあのれいむ一家の確保である。 「ゆ?もしかしてあのれいむのことかな?」 一匹のまりさが思い出したように声を上げる。 まりさは「変な人間さんだなあ」と思ったが、今まで人間に理不尽な暴力などをされていないので大して警戒せずれいむの事を伝えた。 「知っているのか!?」 良くてれいむの目撃情報程度だと思っていた男は思わず驚きと喜びに声を荒げる。 「この前倒れてたところを運ばれてきたれいむたちだね!ゆっくり知っているよ」 「案内してくれるかな?」 「すぐそこだよ!ゆっくり着いてきてね!」 「ありがとう!お前ら饅頭すげー使えるな。これお土産だ!遠慮しないで食え食え。ゆっくりできっぞ」 男は大きな麻袋をひっくり返すと。ビー玉サイズのスナックのようなものを大量に撒き散らす。 「ゆ?これにゃーに?おいちいにょ?」 小さなれいむが質問してくる。 「ああ。うまいぞ。ゆっくりできるから残さず食ってくれ」 「ゆわーい!!」 ゆっくりたちは大量巻かれた餌に飛びついた。 バグバグバグバグ・・・・ 「「「「しあわせー(しぇー)」」」」 「それじゃお前らこれやるから案内してくれよ」 まりさ、れいむ、ありすに食べ物を与え、れいむのところまで案内させる。 この先ほどから男がゆっくりに与えている食べ物の正体はゆっくりコロリ(遅効性)である。 味はゆっくりが好みそうな味付けであり、巣まで持ち帰って一家で食べてもらうことを念頭に作ってある。 体内に入った毒は決して体外へ排出されずにその身体を蝕む。 その具体的な症状として身体の急激な発熱とそれに伴う激しい頭痛、全身の肌に夥しい発疹、そして全身火傷を負っているような激しい痛みに襲われる。 摂取してから2〜4日程度で発症する。(食べ多量に依存) その症状は中和剤を摂取しない限り生涯煩わされることになる。 発症すればゆっくりはまともな生活を送ることができなくなり、食べ物を調達できなくなることによる衰弱死がまっている。 なお発症すると餡子は硬化され、痛みによる嘔吐感により、嘔吐しようとしても餡子はなかなか吐けない。 薬の効果はゆっくりを直接殺しはしないが、その薬の二次的作用でゆっくりは死んでしまう。 駆除よりも虐待向であるかもしれない。 決してゆっくりを楽には殺さないというすさまじい悪意がぎっしりと込められた薬を案内されている最中も最高の笑顔で男は振りまく。 巣と思われる穴から大小問わず大量に出てくるゆっくり達や、その事を聞きつけてわざわざ遠くからくるゆっくり達はその餌(毒)を貪る。 「おにーさんありがとう!」 「ゆっくりしてるね!おにーさん!」 「とってもとかいはね!」 ゆっくりはみな男に対してお礼を言う。それを聞いて男は笑顔のまま口の端を釣りあげる。しかしゆっくりはそれには気がつかない。 「ゆっくり着いたよ!あの穴にれいむがいるよ!」 「ありがとう。助かったよ。ゆっくりしていってね!」 穴からあのれいむの子と思わる子供が見える。毛がうっすらと生えているはいるが、遠くから見ればハゲ饅頭そのものである。 カツオもウォン!といって反応しているからおそらく間違いないだろう。 どうやら昼寝しているようで、まだこちらには気付いていない。好都合。 ゆっくり達にお礼をし、急いでその穴に向かい、穴の中へ屈んで入る。 中では一家が呑気そうに「ゆー ゆー 」と寝息を立てながら昼寝している。 (おや・・あの時潰れそこなった実ゆが赤ゆっくりになってるな・・) 男は直感的にその赤ゆが蔦についていた実ゆであると感じた。 赤れいむのサイズはピンポン玉よりも少し大き目であった。 すばやく用意したゆっくり用のさるぐつわを装着し、次いで子れいむ、子まりさ、に同様の処置を施す。 赤れいむはさるぐつわもできないほどのサイズなので、小さな小物入れの袋に詰め、それを懐へしまう。 それかられいむ、子れいむ、子まりさをさきほどまで餌(毒)を入れていた麻袋に一匹ずつ詰め込む。 詰め込まれる時も呑気な顔をして寝ているゆっくり達に男はイライラを感じる。 子れいむを掴んで袋に詰めようとするとき 「ゅー ゅー むにゃ うん・・ うん ・・」 プリ・・・プリプリプリ・・・・ プリプリと子れいむがうんうんをしだした。 ビキ!!男の頭に青筋が浮かぶ。 男は音を立てるべきではないと知ってはいるが、この子れいむの行為とその時の表情があまりにもイライラしたので洞の壁に投げつけた。 ドン「ゅ!!!!」 壁から落ちた子れいむは仰向けに地面に落下する。その時、子れいむが男の顔をしっかりと目視する。 (ゆ・・・・あ・・・あのときの・・・人間さん!!!!!!!!!!!) 「ゅー!!ゅー!!!ゅー!!」 子れいむはさるぐつわを付けられてまともに声をあげる事できない。しかしそれでも声を必死にあげようとする。家族に危険を伝えようと懸命にしている。 「ゅー!!!ゅー!!」 男は黙らせるために子れいむの顔の口を中心に拳を何度も落とす。一応殺さないように加減はする。 ズン!!「ゅ!!」 ドグ!!「ゅ!!」 ズン!!「!!!!!!」 子れいむは気絶するまで殴られ続けた。プルプルと振動し、しーしーとうんうんをたれながす子れいむ。 気絶した子れいむとまだ閉まっていない家族を麻袋へ詰める。 「ふぅ・・よし帰るか」 目的を達成した男は洞の外へ出て、帰ろうとする。 その時 「ちょっとまってね人間さん」 太い声が聞こえそちらを向く男。そこにはドスが居た。 あれほど大きな物体がこんな近くにいたら気がつかないわけがない。 これがゆっくりしていない者には決してドスの姿が見ることができないというステルス能力と呼ばれる能力である。 「れいむにいったい何のようなの?れいむは今治療中だよ。れいむをどこに持っていくつもりなの?」 あからさまに警戒されている態度を示す。この群れのゆっくりたちは疑うことを知らない奴は多かったが、ドスは違うようだ。 男は無言、何も答えない。理由は至ってシンプル。ゆっくりごときの質問に答える必要はないから。 ドスはそんな態度の男にイライラを感じた。歯を噛みしめギシギシと鳴らす。 「ほんとは・・・れいむの子供たちに怪我負わせたのっておにいさんでしょ?」 静かだが、ドスの声には怒りがこもっている。 気がつくと周りには比較的大き目なゆっくり達はぎっしりと男を囲いこんでいた。 「ゆっくり答えてもらうよ!あれはおにーさんがやったんでしょ?」 男はゆっくりの質問に一切答えるつもりはない。ひたすら無言でいる。答えたら負けだと思っている。 「みんな・・・れいむたちを取り戻したら 人間さんを捕まえて群れの外まで追い出すよ」 「りょうかいだぜドス!」 「れいむ達にまかせてね!」 「都会派じゃない人間さんはゆっくり死んでね」 ドスの発言に一斉にいきり立つゆっくり達。 「カツオ!帰るぞ。もたもたしてると家に着くのが夜になっちまう。」 男はまるでゆっくり達の事など気が付いていないような態度をとり、そう言って男とカツオは帰り道の方向にいるゆっくりを楽々と飛び越え、突っ走った。 「ゆゆゆゆゆゆゆ!!!!!!?」 男とカツオはゆっくりには出せない速度でその場から立ち去った。 ドスだけなら人間に追いつけたかもしれないがまわりにゆっくりがいるため跳ねて移動することができない。 「卑怯だよ!もどってきてね!!!れいむを離してね!!!」 男は無視する。目的は達成したので長いする気はない。どうせ、数日たてば先ほどの毒が回り始め、近いうちにこの群れは死者の山ができるだろう。 ゆっくりコロリはかなり強力であるし、その解毒剤はかなり値がはる。それを何百匹分も用意すれば大金である。 この辺りの人間もいくら群れと仲がいいからといっても、あんな饅頭のために大金は使わないだろう。 気が向いたら友人と群れの残党を狩るのもいいかもしれない。そんなことを考えながら男はひたすら走る。 「追うよ!みんな急いで!!」 急いでその後を負うゆっくり達。 しかし、ゆっくりから見る人間はすでに豆粒ほどなっており、到底追いつける距離ではなくなった。 「ゆああああ・・・ゆあああああ・・・・・」 男は群れから逃げ切った。 ガラガラガラ(扉を開ける音) 「ゆぅ・・」 その声を聞いてまりさはため息をついた。その音はゆっくりできない音である。 まりさは透明なケースに詰められた後、押入れに入れられているので、真っ暗である。故に音に対しては敏感になっている。 男は帰ってきたらまりさを蠅叩きで気絶するまで叩くことを習慣としていた。 その際まりさに対して、 「すぐにお前の家族を捕まえてゆっくり出来なくしてやるよ」 と毎回言う。その都度まりさは嫌な気分になる。 適度に虐待したあと男はまりさをケースに詰め、ゆっくりできない食べ物を与えまりさをケースごと押入れにしまう。 そしてまりさの所へ男の足音が近づく。 「ゆぅ・・・またあいつがくるよ・・・ゆっくりできないよ・・・れいむ・・・おちびちゃん」 ガラッ・・・ 一日ぶりに見る明かりである。まりさは男の顔を見つめる。 (今日の人間さんの顔は・・・なんか変だよ・・・ゆっくりできない・・) 「ゆぅ・・・にんげんさん・・まりさを自由にしてほしいよ・・・こんなのゆっくりできないよ」 男は毎回まりさの言葉を無視する。それもいつものことである。 「よろこべよ饅頭・・お前の家族・・・見つけたぞ・・・」 「ゆ゛っ!!!!!?」 その場で男は麻袋の中身を取り出し、放り投げる。 そこにはさるぐつわをされ言葉を発することのできない大きなゆっくり一匹と小さなゆっくり二匹が床に転がっている。 そこに転がっているのはまりさの・・・れいむと・・・おちびちゃんたちであった。 「でいぶ!!!!!おちびちゃんたち!!!!?」 男はれいむと子ゆっくりのさるぐつわを外し、懐にしまった袋から赤れいむを取り出す。 赤れいむは長時間の拘束により、ぐったりしている。しかし死んではいないようだ。 暗闇の中ひたすら逢いたいと、会ってゆっくりしたいと願ったれいむとおちびちゃんたちが目の前にいた。 そして、無事に生まれ落ちる事をひたすら願った赤ゆっくりもいた。 「でいぶぅ・・・・よ゙がっだ・・・無事だったんだねえ・・・」 「ゆ゙ゔゔゔ・・・・・まりざぁ・・・ごめ゙ん・・づがま゙っぢゃっだよ゙お゙ぉぉ・・・」 れいむはまりさを見た途端泣きだす。 「誰がゆっくりしていいっつったよ!」 男はそう怒鳴ると、子まりさを持ち上げ、顔から床に投げつける。同じように子れいむも投げつける。 バシン!!「ゆびゅ!!!!」「ゆぶ!!!」 うつぶせになりながら二匹の子ゆっくりのまわりには水たまりができた。子ゆっくりたちは過去に同じことをされたのを思い出していた。 その時、とっても痛くて怖くて・・・トラウマというべき事を思い出し、その恐怖のあまりしーしーを漏らしていた。 「ゆ゙ああああああああああ!!!おちびちゃん!!!」 「どぼじでごん゙な゙ごどずる゙の゙おおおおおおおおおおお!?」 「たっのしいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 男は親ゆっくりの問いかけには答えない。 「いじゃい・・・・よぉ・・・・」 うつぶせになった子れいむから声が漏れる。男は子れいむを掴みその表情を見る。 子れいむは怒りの籠った目を男に向ける。恐怖に必死に耐えながら口を開く。 「どうして・・・こんなことするの・・・もうやじゃよ・・・人間さんもこんな・・痛い事されたらいやでしょ・・・」 その表情を見て男は笑みを浮かべる。 「まだまだ元気いっぱいだああああ!!!!」 子れいむは今まで見たことのない高さまで持ち上げられ、怒りを忘れ恐怖がその餡子を支配する。 「たじゅげでおがあじゃあああああああああああああああ「オラア!!」」ブン!! バァン!!!!!「ゆ゙っ!!」 さっきよりも強く叩きつける。痛くて声も上げられない子れいむ。中枢餡に強い衝撃を受けブルブルと震えている。 「ゆあああああああああ!!!でいぶのおぢびぢゃんがあああああああああああ!!!!!?」 「お願いします人間さん!やめてあげてください!!」 男は無視する。 さらに子れいむと子まりさを何度も交互に床に叩きつける。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛」 痙攣する子饅頭×2 「いやー いい汗かいたなあああ そうだ、この前まりさに噛まれた礼してなかったね。ん〜〜どうしようかな まあとりあえず饅頭逃げないようにしまうか」 そう言って男は小さな透明ケースの中に赤れいむを投げこみ蓋をする。次に親ゆっくり達も大きな透明ケースに入れ同様に蓋をする。 「ゅ!」 赤れいむはその衝撃で目を覚ます。 「かわいくないれいみゅちゃん呑気におねんねしてたんでちゅか。それにしてもほんとにかわいくないね〜」 「ゆ・・・ゅぅぅぅぅぅ・・・・おきゃーしゃーんこわいよおおおおおおおおおおおおおお」 突然見たこともない大きく怖そうな生き物に可愛くないと言われ泣きだす。 赤れいむは生まれて間もないが、その持前の明るさでたくさん親れいむとれいむの姉たちをゆっくりさせてきた。 そんな自慢の赤れいむが可愛くないなどと言われては親れいむは我慢がならない。 「れいむはれいむの自慢のおちびちゃんだよ!ぷんぷん、ゆっくり訂正してね!」 親れいむは必死に訂正を求める。 男は無視し、子まりさと子れいむをじっと見る。 「この前あれだけやったのにまだまだ子まりさと子れいむは元気そうだな。んじゃ今日はこいつらでいってみるか♪」 「「ゆ?」」 男はゆっくりたち一家を台所へ持っていく。 それから火を起こし、鉄板をその上に固定し、加熱する。ついでに夕飯の米も炊く。最初のターゲットは白目をむいている子ゆっくり達だ。 親ゆっくりと赤れいむが入ってるケースを鉄板がよく見える位置に固定する。 それから桶に水を張り、そこに塩水とトウガラシの粉末と砂糖を入れる。 そして白目をむいている子れいむと子まりさを掴んでその桶に沈める。 子ゆっくり達は最初は反応がないが、すぐにその身体を激しくクネクネと掴まれた手から逃れるように動かし始めた。 男はそれらを桶から引き揚げて台にのせる。 「ゆびいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!いじゃいよおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」 「目がああああ!!!目があああああああああああああああ!!!!!!!!!じみ゙る゙よ゙おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 意識が覚醒し、痛みにのたうち回る子ゆっくり達を見て男は嬉しそうな顔をした。そして熱せられている鉄板に油をひく。 「それっ!すーぱーちゅっきりたいむだゾ!」 子れいむと子まりさをそれぞれ片手で掴み、その底部を熱した鉄板に押し付ける。 じゅじゅうううううううううううううううううううう!!! 「ぴぎぃいいいいいいいいいい!!!!!!」「やめじぇええええええええええええええええ!!!!!」 「ゆぅぅぅ 人間しゃんやめちぇにぇ!ゆっくちできないよ!しょんなこちょしゅる人間しゃんはゆっくちちね!」 「ゆあああああああ!!!!おちびちゃああああああああああああああああん!!!!?おにーさん!やめてあげてね!!やめてあげてね!!」 「俺がちゅっきりできなくなりゅからやじゃ。ゆっくちりかいしちぇにぇ!」 子れいむと子まりさはあまりに痛みのあまり必死にそれから逃れるべくジャンプしようとする。それを男の手が阻む。 がっちりと押さえつけられた子ゆっくりたちは鉄板から逃げだすことができない。 「やめでえええええええええええええ!!!おがあああーざん!!!!おがあああああーざん!!!!!!!」 「おねええちゃああああああああん!!」 30秒しっかりと押し付けられた子ゆっくり達の底部は焦げて固くなり跳ねることができなくなった。 「おちびちゃああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!?」 「おーほっほ・・焼き過ぎちゃったかなー 」 未だ悲鳴を上げる子れいむと子まりさ。 「まだまだ楽しませてくれよー・・さてと」 「「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」 男は鉄板の中央付近で焼かれているゆっくりを掴み鉄板の端のあたりに移動させる。その際チラッと子ゆっくり達の底部見てみる。 底部はカリっと茶色に焼けて実に美味しそうな感じに焼けていた。 「おにーしゃんおにゃかへってりゅよんだよ?ゆっくちりかいしちぇにぇ!」 男はゆっくりが焼かれているのと同じ鉄板の中央に肉や野菜を置き、焼く。 ゆっくりを焼きながら、夕飯の調理もする。 「おねがいじばず・・・おちびちゃんを助けてあげてください・・・・」 ムシャムシャバグバグ・・・ 「とってもゆっくりできるおちびちゃんなんです・・・・でいぶだぢのだいぜづなおちびちゃんな゙んでず・・・」 「ゴクゴク・・・うめえええ・・・」 「どぼじでお゙ばな゙じぎい゙でぐれな゙い゙の゙おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」 「あじゅいよぉ・・・・・・あじゅい・・・おきゃーしゃんたしゅけちぇ・・・・」 男は子ゆっくり達の様子を見ながら食事をとった。 その行為は男をとてもゆっくりさせるようで自然とお酒も進んだ。それから食事が終わるまで1時間近くかかった。 「あーうめえな。ゆっくりを焼きながら食べるご飯ってのはさ」 「・・・・・・・・ゆ゙・・・・・ゆ゙っ・・・・ゆ゙・・・・」 もう子れいむも子まりさもまともな声は発していない。とうに意識を失い、痙攣していた。 それを見せつけられた赤れいむはあまりのショックにより餡子を吐き、気絶している。 身体の三分の一が炭と化した子ゆっくりを親の入っているケースに投げ入れる。 「もうそのゴミいらないからあげるよ。」 「ゆぅぅぅ・・・おちびちゃん・・・・おちびちゃん・・・・ゆっくりしてね・・・」 「ゆ゛っ(ビクビク)・・・ゆ゛っ(ビクビク)・・・・・ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・・」 男はゆっくりを台所からさきほどいた部屋に戻し、押入れにしまう。 その際親ゆっくりがいるケースにはゆっくりコロリ(遅効性)を餌として与える。この餌は毒もあるが、甘みがあり、カロリーもある。 赤れいむにはそれは与えずに炊いた白米の残りを少しだけ。 「じゃあな饅頭。また明日かわいがってあげりゅよ」 「ゆぅぅぅぅ・・・・おちびちゃん・・・・おちびちゃあん・・・しっかりしてぇ・・・・」 その夜、親れいむと親まりさはゆんゆんと泣いた。涙が枯れるまで泣いた。 あれだけ可愛くてゆっくりさせてくれる子どもたちがこんな痛々しい姿になってしまった。なんでこんな目に自分たちが合うのだろう。 ゆっくりしたかっただけなのに。ただそれだけなのに・・・・そんな事を考え、結局親ゆっくりはその日眠ることができなかった。 そして次の日男により親は知らされることとなる。 子れいむと子まりさは長時間焼かれ、重度の障害を負ったことを。 子ゆっくり達は餡子に重大な損傷を受け、意識が戻ったのが、炭化した部分はもとより、焼かれていない部分の身体も動かせなくなり、喋ることも困難になっていた。 俗に言う寝たきりゆっくりである。 再起不能になった我が子を泣きながら見つめる親ゆっくりと赤れいむ。それを見ながら大笑いする男。 「ただでさえゆっくりなんてゴミ以下なのに寝たきりゆっくりなんて・・・・ププププププ・・・ククククク・・・ 存在してて恥ずかしくないわけこいつら・・・・・クックックククク・・・・ヒヒヒヒッヒヒヒヒヒッヒーーーーー!!!」 「ゆぅぅぅぅぅ・・・・・おちびちゃん・・・・守ってあげられなくてごべんでぇええええええ・・・・・」 「おちびちゃんをこんなふうにしたのは人間さんだよ・・・・絶対許さないよ・・・・・・ゆっくり・・・死んでね・・・・・・」 「おねーしゃん・・・・・おねーしゃん・・・・・・ゆ・・・ゆぅ・・・ゆええええええええええええん、ゆえええええええええええん」 「ククククククク・・・・・別に許してもらおうなんて思ってないよ。それとも許してくださいってお願いしてほしいわけ?・・・・プププププ・・・ さーて今日も元気にスーパーちゅっきりタイムだゾ!」 れいむとまりさ、寝たきり子れいむと子まりさを笑いながら蠅叩きで叩く。 もう十分すっきりしたから殺してしまってもいいやと思っている男の一撃は手加減がまったくなく、一撃を受けるごとに肌が抉れ、餡子が飛び出す。 叩く行為に飽きた男は親まりさに馬乗りになった後、素手で何度も殴りつける。親れいむにも同じことをする。 その行為にも飽きた男は子れいむと子まりさを家にある柱に適度な強さ何度も何度もで投げつける。 だがその際、子ゆっくりらは悲鳴をあげない。あげられない。なぜなら子ゆっくり達はもう壊れているから。 その様子をケースの中から見ていた赤れいむ。最初は「やめちぇー!!」とか「れーみゅおこりゅよ?」言っていたがはゆんゆんと泣くだけだった。 次の日、赤れいむを除く一家は大量に与えたゆっくりコロリの毒により激しい痛みに襲われる。 全身に夥しい発疹ができ、大量の脂汗が浮かべ「ゆぎぎぎぎっぎぎぎ」と苦しみ食いしばる顔と、その姿は加害当事者である男をも引かせた。 その姿に男はいい気味だとかひどいとかすっきりそういう感想はなく、ただキモイ、それだけであった。 「うへえ・・・きめえ・・・・」 男はその日のうちに赤れいむを除く一家を近所のおじさんの肥溜に落とす。 「ゆぎぎ・・・くざいよ・・・・おちびちゃんだけでも・・・たずげでね・・・・」 「ゅ・・・・ゅ・・・・」 寝たきり子ゆっくりたちもさすがにこの匂いは辛いらしく、声を必死に上げようとする。 男は無言で近くにあった棒を使ってまず子れいむを沈める。沈むことにより汚物が子れいむの口に流れ込む。子れいむはそのあまりの味と匂いに顔をしかめた。 気にせず肥溜の奥深くまで沈め、残った家族にも同じことをする。 そして残ったのは彼らの最後の一粒種である赤れいむだけであった。 もう赤れいむを守ってあげる存在はいない。 「おきゃーしゃーーん おちょーしゃーん!!!こわいよおおおおお!!!ゆえええええええええええん!!!!」 天涯孤独の身となった赤れいむ。だがそんなことで泣いている暇はない。 次の男のターゲットはこのれいむなのだから。 「お前の家族はみんなう○こちゃんになっちゃったよ。汚いねえ。最低だわ」 男は赤れいむに手を伸ばす。 この赤れいむにゆっくりした生活が訪れることは未来永劫決してないだろう。 虐待SSって書くの難しいですね。 次回はもっとしっかりした文章を書いてみたいと思います。 by洗脳君 このSSに感想をつける
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お手軽な甘味として大勢に親しまれている「ゆっくり」たち。 ただ食べるのではなく、さまざまに趣向を凝らされているのが、長い流行の秘密だろうか? ふとある方法を試してみたくなってので野生のゆっくりを捕獲することに決めた。 外に目をやると日も落ちかけていて、空がゆっくりと暗色に染まっていく。 ゆっくりの生態について知らないことが多いのだが、やはり夜のほうが捕まえやすいのだろうか? 昼日中であれだけ動き回っているのだから、夜はゆっくりと休息をとっていると考えるのが妥当だが、 なんとなく夜中でも「ゆっくりしていってね!」と叫びつつ飛び跳ねているような気もする。 せん無いことを考えながらもすでに外に出て、ゆっくりを探しはじめる。 できれば夜中は遠出をしたくないと考えながら耳をすますと、草木のざわめきや虫たちの合唱にまじり、 あきらかに場違いな声があった。 奴らだ! 良かった、どうやら近くにいるようだ。今夜中に捕獲できることに安堵し、声の方向に向かう。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりやすもうね!」 おあつらえ向きに二匹のゆっくりたちが今日の寝床であろう木の根元に寄り添っている。 思わず頬がゆるむ。 微笑ましいと感じたのではない、あまりにも幸先がいいから出た笑みだ。 そのまま捕まえてもいいのだが夜に騒がれるのは本意ではない。 「ゆっ、ゆっくりしていってね?」 「ゆっ!?」 「ゆゆっ!?」 泣き声を真似て近づいた。どもったのは恥ずかしかったからだ。 が、それが功を奏したのかゆっくりたちは無警戒に声をかけてきた。 人懐っこいとは聞いていたが、警戒させないにこしたことはない。 「ゆっくりしていってね!」 「おじさんもゆっくりする?」 赤いリボンに黒い髪。二匹とも「ゆっくり霊夢」と呼ばれる個体のようだ。 「ありがたい申し出だけど、ここじゃあゆっくりできないよ」 「どうして?ゆっくりできるよ!」 「ゆっくりしていこうよ!」 「ここは何でも食べちゃう妖怪の棲みかなんだよ。こんなところでゆっくりしたらむしゃむしゃと食べられちゃうよ」 「ゆ゛っ!?」 「ゆぐっ!」 かぶりつく身振りと共に言ってやる。子供騙しもいいところだが、表情を見るにすっかり信じたようだ。 何を想像したのか「ゆっぐりじだい!」「ゆっぐりざぜでえええ」となみだ目で震えている。 さて。 「ものすっごくゆっくりできる場所があるけど、いきたい?」 「いきたい!いきたい!」 「すっごくゆっくりしたい!!」 満面の笑みで言うゆっくり。それは媚びている笑みなのだろうか? そうして、二匹のゆっくり霊夢を抱きかかえて帰路につく。 「さ、ここでゆっくりしようか」 「「ゆっくりしていってね!」」 二匹をおろして扉を閉める。二匹は興味津々と言った態で家中を飛び跳ねている。 ここからが正念場だ。 ゆっくりと三和土からあがり、あぐらをかいて座ると笑みを浮かべながら二匹に声をかける。 「さ、いっしょにゆっくりしようか」 「ゆっくりしようね!」 「すっごいゆっくりしたい!」 近寄ってきたゆっくり霊夢たちをわしづかみにすると、そのままぎゅうぎゅうと押さえつける。 「ゆぎゅんぬぬぬぬぬぬぬ」 「ゆぐりじたいっゆぐりぃいい」 と声ならぬ声をあげるゆっくりの手触りからはみ出るかはみ出ないかの境界を推し量る。 なにぶん初めてだから失敗してしまうかも知れないが、なぁにそのときはまた持ってくればいいのさ。 中身が少しずれた感触が伝わってきたので、解放する。 「「ゆっ!!!」」 体が自由になり、怒りの言葉を出そうとする二匹。しかし口を開いた瞬間二匹を強くゆすった。 大きく、緩やかに、時にかきまわすようにゆする。 「ゆっゆっゆっくっりしっしして」 「いいいってっててってってねっね」 という泣き声が、しばらくすると 「ゆーゆーーゆーゆゆーーー」 「ゆ~ゆ~~~ゆ~ゆ~ゆ~」 と歌っているかのようなものとなる。 今度は小刻みに激しくゆする! すでに二匹の表情は赤らんでいて、目がうるみを帯びている。鼻息も荒くなり、明らかに熱を発している。 思い切り殴りつけたい気分を押し殺し、そのまま蠢動を続ける。 「「ゆっゆっゆっゆっゆっ」」 機械的に泣くようになったら、手を離して放置した。 一仕事終えたような感覚で、三和土の甕から水をすくって飲む。 振り返ると二匹のゆっくり霊夢は身を寄せ合って震えていた。 いや、これはお互いをこすりあっているのだ。それが徐々に鈍い動きになっていく。 いよいよか!と思い目を凝らすが違う。 二匹の体表に粘り気のある透明な液体が流れているのだ。粘度の高いそれはねとねとと音を立てて水溜りを作っていく。 掃除するはめになることにうんざりしながら見つめていると、粘液の音と「ゆっゆっ」という機械的な声に、 さらに荒い息遣いが混じって、とても精神衛生上よろしくない音が奏でられる。 吐き気を抑えるように水を一口ふくんだ。 しばらくすると、二匹が同時に 「ゆ゛ゆ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーッん!!」 と絶頂に達したように一声泣いた。 すると、これはもうやばいんじゃないかというくらい痙攣し始め、白目をむいて限界まで見開く。 さらには口もこれ以上ないほどに開かれ、まるで断末魔をあげているようだ。 表情の変化が終わると、痙攣も止まっていた。そのまま目に見えてわかるほどに色が黒ずんでいく。 二匹の頭の天辺から芽が出て、葉が伸び、蔦のように伸びていく。 蔦にいくつもの実をつける頃には二匹はからからに干からびていた。 身体をこすり合わせ始めてからここまでで、まだ一時間と経っていない。 植物か動物か定かではないが、生命の神秘の一端を垣間見た気がした。 同時に、あれだけ乱獲されているゆっくりが絶滅しない理由がわかったように思う。 やがて肉色の実は徐々に、だが確実にそれとわかる形を成していった。 黒い髪に赤いリボン。親と同じゆっくり霊夢だ。 一匹につき十個はあろうか、プチトマト程度の小さなゆっくり霊夢が並んでいるのは、壮観というよりは気色悪いと言えた。 そのまま観察していると、実のうちのひとつがゆっくりと震えはじめる。 眠りから覚めるように、糸のようにぴっちりと閉じられた目がゆっくりと開かれていく。 完全に見開かれると 「ゆっくりしていってね!」 と蚊の泣くような声で産声を上げた。 目覚めたゆっくり霊夢は、そのまま目だけできょろきょろと左右を見渡している。 蔦から離れないと自由に動けないのだろうか? 目があった。 「ゆっくりしていってね!」 その声はこちらに言ったものだろうが、それがきっかけになったのか他の実もぶるぶると震えだす。 二十個ものゆっくり霊夢のひとつひとつが目覚めて産声を上げている。 無事に繁殖は成功したのか、目覚めないものはひとつもなかった。 さぁ、長かったがここからが本番だ。 一番最初に目覚めたゆっくり霊夢に手を伸ばす。 「ゆぅ~?」 自分に近づいてくるそれをなんの危機感もなしに見つめているゆっくり霊夢。 そのまま無造作に蔦から引きちぎる。 「ゆ゛っ!」 一声なくとそのままぐったりしてしまった。手のひらで転がすがなんの反応もない。 しまった!早すぎたか!? そう思ったが、そのゆっくり霊夢はゆっくりと起き上がる。 「ゆっぐりじだがったのにぃ~~~」 涙をこぼしてこちらを見るゆっくり霊夢に安堵のため息をつくと、それを無造作に口の中に放り込んだ。 そのまま舌で口の中を転がすようにゆっくりと味わう。 時折、 「ゆっぶぅ~」 「ゆっぶりじゃぜでぇ」 「ぐらいよーっぜまいよーっごわいよーっ」 と口の中から聞こえてくる。お構いなしにゆっくりと味わい、咀嚼する。 「ゆっぎゃぶぅッ」 と聞こえたきり、なにも聞こえなくなった。 「あ……甘酸っぱいんだ……」 十分に成熟しきってないゆっくりは酸味があるようだ。食感も通常のゆっくり霊夢よりもいくらか歯ごたえがなかった。 お子様やお年寄り向けにできるかもしれないと思いつつ、次のゆっくり霊夢に手を伸ばす。 今度は口に入れたら弄ばずに即座に飲み込んだ。 ゆっくり霊夢の踊り食いだ。 これが一番やりたかったのだ。のどの奥から 「ゆっくり落ちるよ~!」 という声が伝わってくる。どこか滑稽で思わず噴出してしまった。 やがて胃に達したのか「ゆッ」という声とチャポンという音を聞いた気がした。 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしたいお?」「ゆっくりしようね!」 と聞こえてきて、すぐに 「ゆゆっ?」「とける?ゆっくりとけてる!?」「ゆっぐりじだいのにぃ」 となり「ゆっぐりざぜでぇえ…………」と沈黙した。 腹の中から聞こえるという不思議なことに興奮した。面白っ。 興奮した僕はゆっくり霊夢たちをちぎっては呑み、ちぎっては食べた。 声を上げてのどを通り過ぎていき、胃に落ちていく感覚に思わず熱い息をもらしてしまった。 腹から聞こえるゆっくり霊夢たちの声に、熱くほてっていく身体。 熱っぽい目で見ると、もうゆっくり霊夢は残り一匹になっていた。 それまでの惨状をおぼろげにも理解したのか、それはふるふると身を震わせていた。 ゆっくりと最後のゆっくり霊夢に手を伸ばし、やさしくつかみ、細心の注意を払ってちぎった。 声はあがらなかった。 それを手のひらにおき、見つめる。ゆっくり霊夢はなみだ目で震え、にっこりと笑うと 「ゆっくりしていってね!」 と言った。泣き笑いの表情と必死の物言いに、まるで命乞いをしているように見えてしまった。 思わず微笑み 「ゆっくりしようね」 というと、ゆっくり霊夢は満面の笑みを浮かべた。心からの微笑みに見えた。 それをやさしくつまみ、ゆっくりと持ち上げていく。 ゆっくりと口を開き、濡れた舌を出す。 ゆっくり霊夢をそこに近づけると 「ゆ、ゆっくり!?」 となぜか驚いたように言った。 そのまま舌に乗せると、飛び出そうとするのをかまわず口を閉じた。 口蓋に何かが当たった気がしたが、そのまま舌で口の中に転がし、存分に味わう。 泣き叫ぶゆっくり霊夢。 胃の中でどれだけが溶けて、どれだけが原型をとどめているかはわからないが 寂しくないようにと仲間のもとへと送ってやった。 プチトマトほどの大きさとはいえ、二十匹ものゆっくり霊夢をたいらげたので満腹だった。 げっぷに混じって、「ゆっくりしていってね!」という声が聞こえた。 おわり。 お付き合いくださりありがとうございました。
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※舞台は何故かゆっくりが当然のように存在している外界です。 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気のする)ゆっくりと呼ばれる謎の生物。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎるゆっくり達。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そして俺はそんな不思議に満ちた生命体の研究や飼育用の商品の開発に携わっている“ゆっくりカンパニー”のしがない一社員だ。 現在、俺はゆっくりの条件反射に関する実験を行っている。 実験内容は恐ろしく古典的なものでパブロフの犬そのまんま。 餌を与える前に音を聞かせて、実験体に内蔵された遠隔操作できるライターを点火するときにも音を聞かせる。 この実験で使用するゆっくりは生まれたてのゆっくりれいむの赤ちゃんが4匹。 赤ゆっくりれいむAには餌を与えるときにも、点火する時にも何の前触れもなしにいきなりそれらの処置を施す。 赤ゆっくりれいむBには餌を与えるときには何の音も聞かせず、点火するときにだけ録音した親の「ゆっくりしていってね!」という鳴き声を聞かせる。 赤ゆっくりれいむCには餌を与えるときに「ゆっくりしていってね!」という録音した親の鳴き声を聞かせ、点火するときには何の前触れもなし。 赤ゆっくりれいむDには餌を与えるときにも、点火するときにも事前に親の鳴き声を聞かせる。 つまり、「ゆっくりしていってね!」という音声に対して条件付けを行うのがこの実験の目的だ。 【実験開始】 赤れいむA 「ゆ~ゆゆ~、ゆぎゃっ!?」 仲間こそ居ないが遊具は十分に用意されている実験用のマジックミラーケージの中で機嫌良く遊んでいた赤れいむは俺が思いつきで点火した瞬間に短く悲鳴を上げた。 「ゆっぎゅりいいいいいい!ゆっぎゅりいいいいい!!」 突然、内側を火であぶられた赤れいむAの表情は苦痛と恐怖に歪んでいる。 「ゆううううう!ゆうううううう!」 大きな声で泣きじゃくり、跳ね回って助けを求めるが誰も助けになど来るはずがない。 「ゆううううう!ゆううう・・・」 痛みが引いたのか、それとも諦めたのかは定かではないし、この実験の趣旨とは関係がないので気にするつもりもないが、やがて泣くのを止めて再び遊び始めた。 しかし、親ゆっくりサイズのやわらかいボールに頬ずりしたり、滑り台から滑り降りたり、トランポリンに乗って跳ねたりしている様子に点火される前のような活発さはない。 「ゆー・・・ゆー・・・」 そんな見ているほうが虚しくなるような現実逃避じみた行動でも、30分も続けていれば遊びの楽しさが恐怖や孤独を慰めてくれるらしい。 「ゆ~、ゆ~ゆゆゆ~♪」 気がつけば内部を焼かれる前の元気さを取り戻していた。 それから1時間ほど1匹で遊んでいる赤れいむAを観察し、餌を与えてやる。 「ゆ!ゆっくり~!」 すると、お腹の空いていた赤れいむAは早速餌に飛びついた。 「む~ちゃむ~ちゃ、ちあわちぇ~!」 目に涙をためながら、本当に嬉しそうに餌を食べている。このタイミングで点火しようかと考えたが、変な条件付けが成立して食事をしなくなると都合が悪いので、それは次の食事に回すことにした。 10分ほどで餌を食べきった赤れいむAはしばらくその場でゆっくりしていたが、やがて眠くなったのかウトウトと舟をこぎ始めた。 そして、気がつけば「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」と可愛らしい寝息を立てている。 が、食後の安眠は突然の痛みによって終わりを告げることになった。 「ゆうううううううう!?」 幸福を打ち砕く2度目の点火。唐突かつ理不尽な痛みに赤れいむAは思わず飛び跳ね、床を転げ回った。 「ゆぎゅううううううううう!ゆぎゅううううううううう!」 それから、さっきと同じようにじっと観察する。 「ゆぎゅううううううう!ゆうううううう!!ゆぅううう・・・」 先ほどより大分早く痛みから立ち直った赤れいむAは再び眠ろうとするが、なかなか寝付けない様子ですぐに目を覚ましてはぶらぶらとそこらじゅうを歩き回っていた。 恐らく、眠っているときにまた点火されることを恐れているのだろう。 幼い身で頼るものもいないたった1匹の世界に放り込まれた孤独なゆっくり。その様子を見かねた俺はケージの中に甘いチョコレートを放り込んだ。 「ゆぅ?・・・む~ちゃむ~ちゃ、ちあわちぇ~!」 赤れいむAは本当に幸せそうに口元が汚れるの気にせずチョコレートを頬張る。 その表情を眺めながら、俺は3度目の点火を試みた。 赤れいむB 赤れいむBはすやすやと寝息を立てていた。しかし、そのことは実験に何の影響も及ぼさない。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっきゅりしちぇっちぇね!」 何故なら、ゆっくりにはこの言葉を聞かされると反射的に返事をしてしまうからだ。 その行動は本能の領域に突入しており、食事中でも、睡眠中でも、交尾中でも反応してしまう。 「・・・?・・・ゆぅ?」 突然響き渡った声の主を探す赤れいむB。その様子を確認したところですぐさま点火する。 「ゆぎょおおおおおおおおおおお!?」 さっきの赤れいむA同様に痛みで悶絶する赤れいむB。目からは涙がぼろぼろと零れ落ちていた。 「ゆうううううう!ゆうううううううう!!」 これまたさっきの赤れいむAと同じように転げまわりながら助けを求めるが、当然のように誰も助けてはくれない。 その光景を俺は無感動に眺めていた。 不思議とさっきほどの罪悪感も同情の念も湧き上がってこない。 「ゆっぎゅちいいいい・・・ゆうう・・・」 これまたさっきの赤れいむAと同じように落ち着き始めると、せわしなくそこらじゅうを歩き始めた。 「ゆー、ゆー・・・」 しかし、この実験は条件付けをするためのものだ。落ち着いてきた頃合いを見計らって、再びあの音声を再生する。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっくりしていってね!」 音声に対して反射的に返事したれいむが再び声の主を探そうときょろきょろ首を振り始める。 「ゆっぎゅぢいいいいいいいいい!ゆぎいいいいいいいい!」 それからきっちり5秒後、躊躇うことなく2度目の点火を行った。 「ゆっぎゅぢいいいいい!ゆぎぃいいいいいいい・・・・・・」 俺は淡々と観察を続ける。やはり、赤れいむA同様に2度目のほうが立ち直りが早かった。 たった2例に過ぎない。しかし、一度目は誰かの助けを期待していて、二度目はその期待がない立ち直りが早かったのだと思う。 次のCとDでは点火時間を調整して、一方がより大きな痛みでも同様の結果を得られるのか確認すべきだろう。 「ゆっぐ・・・ゆっぎゅりいいいいいい・・・」 そんなことを考えている間に赤れいむBは痛みから立ち直った。もっとも、まだ呼吸は荒いが。 呼吸が整い、落ち着くのを待って今度は何の前触れも無しに餌を与える。 その匂いをかぎつけた赤れいむBはすぐさま餌に飛びついた。 「ゆ!ゆ~!・・・・・・む~ちゃむ~ちゃ、ちあちぇ~!」 赤れいむAもそうだったが、本当に幸せそうに餌を食べている。食べ方が少々意地汚いが、それもまた愛嬌なのではないだろうか? 「ゆ!ゆっくり~!ゆゆゆ~~♪」 そうしてお腹の膨れた赤れいむBは楽しそうに歌い始めた。 俺はその決して上手くない歌にゆっくりと聞き惚れ、それが終わると同時にあの音声を流した。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっくりしていってね!・・・ゆうううう!?」 3度目の正体不明の声。赤れいむBが声の主を探すよりも先に怯えだしたことを確認した俺は、5秒後に3度目の点火をし、次のケージに向かった。 赤れいむC 赤れいむCはケージの中で楽しそうに跳ね回っている。子ゆっくりサイズのボールがお気に入りらしく、その上に飛び乗っては、滑り落ちてを繰り返していた。 「ゆっゆゆ~♪ゆ~ん!ゆーっ!」 ポヨンっとボールに体当たりを仕掛けてはプニッと地面に着地する。実に可愛らしい。 俺は赤れいむCが跳躍した直後を見計らって、いきなり内蔵ライターを点火した。 「ゆっぎゅうううああああああああ!うううう!!ゆぎゃっ!?」 空中で突然の痛みに襲われた赤れいむCはボールにぶつかり、反動で弾き飛ばされて地面に叩きつけられた。 「ゆぎょううううううう・・・!ゆぎゅあああああ・・・!」 今までの赤れいむ2匹と違って床に叩きつけられた分のダメージがあるせいか、少しだけ口から餡子を吐き出してしまった。 しかし、致命傷には程遠いらしく、元気に地面をのたうち回っている。 「ゆううううう・・・ゆうううううううううう・・・」 それでもさっきの赤れいむたちと男歩同じくらいの時間であっさりと立ち直った。 「ゆぅ・・・」 とは言え、さすがに餡子を吐き出した分でぐったりしている。 このままでは次の点火の際に面倒なことになるかもしれないので、もう一つの実験も兼ねて例の音声を鳴らす。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆぅ?」 出所不明の声に困惑している赤れいむCのそばにさっと餌を落とす。 「ゆ・・・!む~ちゃ・・・むーちゃ・・・」 やはり吐血、もとい吐餡の分が効いているのだろうか。他の赤れいむより目に見えて食事のスピードが遅い。 「む~ちゃむ~ちゃ・・・ちあわちぇ~!」 それでも回復力が売りのゆっくりだ。存分に食事を堪能し終えたころには点火によって受けたダメージはすっかり消えてしまっていた。 そして、傷の癒えた赤れいむCは何をするでもなく地面に寝そべってごろごろと転がり始めた。 そこですかさず2度目の点火。非常にゆっくりしていた赤れいむCは突然の熱と痛みで飛び上がる。 「ゆうううううう!」 そして、これで6度目になる変わり映えのしない苦しむ姿を俺の前に晒した。 唯一つだけ違うことがあるとすれば、他の赤れいむたちの時にはすでに消えていたライターの炎が今もなお萌え続けていることくらいだろうか。 「ゆ゛き゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」 ざっと今までの3倍の点火時間。先ほどの点火とは比べ物にならないダメージを受けた赤れいむCは白目を剥いて床を転げまわっている。 口からは餡子と泡を吹き体中から妙に粘着質な液体が分泌されている。恐らく脂汗みたいなものだろう。 どうやらダメージが大きすぎたらしく、ぴくぴくと痙攣している。さすがに死なせるとあとあと問題になるので、蘇生のためにこっそりとオレンジジュースを飲ませた。 「ゆぅ・・・?う!?ゆっぎゅぢいいいいいい!」 意識は取り戻したがそれでもやはりまだ痛いらしい。またしても悲鳴を上げながら転がっている。 しかし、そのうち回復することは明らかなので赤れいむCの苦悶なんてお構いなしに再びあの音声を再生した。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆきぃいいいいい・・・!」 声の出所を探す余裕はさすがにないらしい。再び痛がりながら涙を流す。 が、餌を置くとのろのろと起き上がると、餌の元へと向かっていき、むしゃむしゃと食べ始めた。 「む~ちゃ、む~ちゃ・・・む~ちゃむ~ちゃ・・・ちあわちぇ~!」 ようやく食べ終わり、元気を取り戻したところで、もう一度あの音声を再生する。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっくりしていってね!」 その言葉の直後に誰かを探すのではなく、モノ欲しそうに辺りを見回す赤れいむCの姿が確認できた。 適当なお菓子をケージの中に放り込んで、赤れいむDのケージへと向かっていった。 赤れいむD このケージの中の赤れいむDに関してはとにかく『ゆっくりしていってね!』を聞かせなければ始まらない。 よって俺はそのケージの前に来た瞬間に中の赤れいむDの様子を確認することもせずに例の音声を再生させた。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっきゅりちぇっちぇね!・・・ゆぅ?」 ここまではほかの赤れいむと全く同じ展開だ。しかし、この後の展開はやや違う。 赤れいむDが返事してから5秒後に点火。ただし、通常の2倍の時間点火し続ける。 これ以上やりすぎると赤れいむCのときのように致命傷を与えかねないので、あくまで2倍程度に収めておいた。 「ゆぎゅいいいいいいいいいいいいいい!ゆぐうううううう!」 とはいえ、幼い身には十分すぎるダメージなのだろう。白目を剥いて必死に跳ね回っている。 「ゆぎょおおおおおおお!ゆぎょおおおおおおおおおおお!」 目からは涙がぼろぼろ零れ落ち、我を忘れて叫んでいるため口からは涎が垂れ流しになっている。 その様子を落ち着くまで観察し続ける。 落ち着くまでの時間は最初の2匹より若干長いような気もしたが、誤差の範囲内といった程度。 落ち着きくと、他の赤れいむ同様に弱りながらも逃避行動的な遊戯を始める。 滑り台で遊んだり、ボールとじゃれたりしているうちに徐々に心身ともに充実してきたらしく、やがて元気になった。 そこで二度目になる音声を聞かせる。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆぅ?」 またしても声の出所をきょろきょろと探している赤れいむDの近くにチョコレートを置く。 「ゆゆっ!ゆ~っ!」 これまた他の赤れいむと同じような反応を示し、元気良くチョコレートに飛びついた。 「む~ちゃむ~ちゃ、ちあわちぇ~!」 と、ここですかさず3度目の音声。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆぅ?」 5秒ほど赤れいむDが声の出所を探している様子を観察したところで2度目の点火。 「ゆぎぃいいいいいいいいいいいいい!ゆううううううううううう!」 どうやら白目を剥くのは危険信号だったらしい。他の赤れいむたちと同じ時間の点火ではその兆候は見られなかった。 と言っても、当然痛いものは痛いわけで。赤れいむDは呻きながら床を転げまわっている。 しかし、これまた他のゆっくりと大差ない時間で痛みから立ち直り、また遊び始めた。 立て込んでいるのでさっさと4回目。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆっ!?」 赤れいむDは明らかに警戒していた。怯えきった表情であたりの様子をせわしなく伺っている。 そうして警戒しているうちに俺が置いたお菓子の存在に気付き、元気良く食べ始めた。 で、食べ終えたところで5回目の音声再生。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆぅぅ?」 赤れいむDは喜ぶでもなく怯えるでもなく、その音にどういう意味づけをして良いのか分からず困惑していた。 それは他の赤れいむでは見られなかった反応だ。 俺はとっとと3度目の点火を行って、その場を後にした。 【1週間後】 赤れいむA いつ何時点火されるか分からない赤れいむAは他の赤れいむとは比較にならないほど衰弱していた。 点火回数は他の赤れいむと殆ど一緒だから肉体的にはさして他と変わりないはずなのだが、やはり常に痛みに怯えなければならない生活が堪えたのだろう。 しかし、それ以上に面白い発見があった。不思議なことに赤れいむAは滑り台を使わないどころか使おうともしないのだ。 理由は2度ほど滑り台で遊んでいるときに点火されたことがあるから。自分の中で勝手に条件付けを行っているらしい。 「ゆっきゅちーゆっきゅちー・・・」 弱々しく鳴きながらずるずると地べたを這いずる赤れいむA。 跳ねないのは跳ねているときに点火されて大怪我をしたことがあるからだ。 「ゆっきゅちちちゃいよー・・・」 虚勢を張って「ゆっくり」と鳴いていてもゆっくり出来ていないことは重々承知しているのだろう。 時々そんな悲しげな声が漏れる。 しかし、この赤れいむがゆっくりできる日は永遠に来ないだろう。 寝るときには、いつ痛みに襲われるか分からない恐怖で眠りが浅くなる。 食べるときも、食事中に点火されて窒息しかけた経験から急いで食べ物をかき込み、食べているときに点火された食材には怖くて口がつけられない。 遊ぶときにも、痛みを恐れで元気いっぱい跳ね回ることも滑り台で遊ぶことも、ボールと喧嘩することもできない。 ・・・いつ痛みに襲われるかわからないことを学習してしまった赤れいむには自由と余裕がなかった。 「ゆっぐ・・・ゆぅううううう・・・」 そして、何の前触れもなしに泣き出す。赤れいむAは情緒不安定になってしまったようだ。 赤れいむB 「ゆー!」 赤れいむBは殆ど鳴かなくなった。 少なくとも「ゆっくり」という言葉をあの音声が再生されたとき以外に口にすることはなくなっていた。 点火の際の痛みが「ゆっくりしていってね!」の直後に来ることを学習した結果だろう。 「ゆぅ!ゆぅ!」 しかし、それ以外の点では到って元気であった。 ボールにタックルして跳ね飛ばされたり、勢い良く滑り台から滑り降りてそのまま転がって行ったりと非常に楽しそうに遊んでいる。 表情も満面の笑みといった感じで、本当に楽しそうだ。 しかし、例の音声を再生すると・・・ 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっきゅりちていってね!・・・ゆぎいいいいいいいい!!?」 点火される前から気が狂ったんじゃないかと思ってしまうほど怯え始めてしまった。 きっと、赤れいむBは群れの中に放り込んだら“ゆっくりできないこ”として爪弾きに遭うだろう。 赤れいむC 「ゆっくりしていってね!」 赤れいむCはその鳴き声をきっちりと習得していた。 この子の中では例の音声は美味しい餌やお菓子と結びついているのだから当然だろう。 「ゆっくり~!ゆっくり~!」 が、その元気さのわりには動きは非常に慎重で、あまり跳ねることをしない。 恐らく赤れいむAと同じように、いつやってくるか分からない痛みに警戒しているのだろう。 「ゆっくりしていってね!」 元気良く鳴きながら自分より一回りだけ大きいボールに頬ずりして遊んでいる。 もちろんどんなに元気な声を出していても跳ね回ったりする様子は一切見せない。 「ゆっくり!ゆっくち!」 それでもこんな風に元気でいられるのは「ゆっくりしていってね!」という言葉を心の支えにしているからだろうか? もっともそれはある種の信仰に近いものであり、そんな高度な精神活動をゆっくりがするのかは少々疑わしいところだが。 そんなことを考えながら音声を再生した。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっくりしていってね!・・・ゆう~♪」 赤れいむCはその言葉が聞こえた瞬間、本当に嬉しそうに飛び跳ねた。 赤れいむD 赤れいむDには少し変わった変化が見られた。 「ゆっくりしていってね!」という鳴き声をきちんと習得したという点は赤れいむCと変わらない。 しかし、その言葉を聞かされた時の反応が全く違っていた。 『ゆっくりしていってね!』という音声を聞かされた赤れいむDはその場でじっと固まって動かなくなる。 そして点火された場合、その直前にしていた行為をあまりしないようになる。 逆に餌を与えられた場合にはその直前にしていた行動を積極的に行うようになった。 つまり、音声を自分自身に注意を促すものとして認識したが、餌とも痛みとも結びつかなかったということだ。 そして点火された場合は自分が悪いことをしたから痛い目にあっていると考え、餌を与えられたときには良いことをしたと考えているらしい。 だから、あまり美味しくない餌を吐き捨てたときにあの音声を再生してみた。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆっくりしていってね!・・・ゆ!」 その表情にはゆっくりらしからぬに緊張感があった。 3秒ほど様子を伺ってから、お仕置きの意味合いも兼ねて点火する。 「ゆぎゅううううううううううううう!ゆううううううううう!」 しばし苦しそうに転げまわるが散々味わって来た痛みであり、実験開始時よりは大分大きくなっていることもあってすぐに立ち直ると、むしゃむしゃとさっき吐き捨てた餌を食べ始めた。 【追加実験】 実験で使用した4匹を母親のいるケージに放り込んでみました。 「ゆ!れいむのあかちゃん!ゆっっくりしていってね!」 母れいむは1週間経ってなお赤れいむたちのことを気にかけていたらしく、非常に嬉しそうに挨拶をした。 「ゆっくちちちぇっちぇね!」 一度たりともその挨拶を聞いたことのない赤れいむAは舌足らずながらも本能に従って元気良く返事した。 「ゆっくちしていってね!・・・ゆぎいいいいいいいいいいいいいい!」 赤れいむBは母れいむから遠ざかり、ケージの隅で震えていた。 「ゆっくりしていってね!・・・ゆううう~!むしゃ!」 赤れいむCは満面の笑みを浮かべて母れいむに噛み付いた。 「ゆっくりしていってね!・・・ゆ!」 赤れいむDはキリッとした表情で固まっていた。 とりあえず、全員の内蔵ライターを点火しておいた。 【報告】 赤れいむDを見る限り、最も人間に従順なペットとしてゆっくりを調教するためにはとにかく痛めつけることが重要だと言えるでしょう。 ---あとがき--- この実験は点火なしで餌だけを与えて条件付けを試みないとあんまり意味がありません。 あと、特定の行動をしたときにだけ点火する形での悪戯に対する条件付けも行わないと意味がありません。 まあ、ノリだけで考えたアホ実験なので細かいところは気にしないでください。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける