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うーうーうー♪ 少年は、ご機嫌に鼻歌を歌っている 俺はこいつの歩く速度に合わせて、ぶらぶらと歩いていた 将門様の下へ報告に向かう途中、たまたま顔を合わせたのだ 将門様に会いに行くと言ったら、自分も行く!と言って聞かなかった まぁ、いいだろう こいつ、なんだか将門様に気に入られているみたいだし うーうーうー♪ 少年は、ご機嫌に、ご機嫌に、歌っていたが 「……うー?」 …ふと その歌が止まった 「どうした?」 「うー……不吉。不吉の気配。うーうー」 「不吉?」 …他の都市伝説が それも、俺たちに友好的ではない都市伝説が、接近しているのか? こいつは、どうにも霊感的なものが強いらしい 契約した都市伝説の能力とは関係なく、都市伝説の気配を感じ取る事がある (…まずいな) こいつには、戦闘能力はない もし戦闘能力があったとしても、こんな子供を戦わせるなんて嫌である …きっと、あいつだって、そんな事は嫌がるだろうし 何とか、こいつを護りながら戦わないと 「…おびき出すぞ」 「うー!」 人通りの少ない路地へと、足を向ける てちてち、こいつもそれについてきて 「うー!ステーキのおにーちゃん、これあげる!」 「ん?…あぁ、ありがとうな」 渡されたのは、幸せの眉毛コアラ 見つけた者に、食べた者に、ささやかな幸運を 一種の保険でもあるそれを、口に放り込んだ ほのかな甘味が広がる 「……うー…不吉。近い、近い……うーうー!」 っと、こいつは、ますます、警戒しだした …相手の能力の影響下に入ったか? いつ、相手が仕掛けてきてもいいよう、警戒する 毎度思うが、俺の能力は不意打ち相手にはどうにも相性が悪い 発動まで、時間がかかりすぎるのだ 相手の肌がいい具合にこんがり焼けたら…そこからが、本格的な攻撃なのだから こちらから不意打ちする分には効果的なのだが、相手から仕掛けられるのは苦手だ いっそ、他の都市伝説とも契約しちまうかなぁ… …いやいやいや それをやると、都市伝説に飲み込まれやすくなるから駄目だ、と言われている 特に、同じようなタイプの都市伝説ならいざ知らず、まったくタイプの違う都市伝説との多重契約は危険だ、とあいつに釘を押されていた …それは、最後の手段なのだ ………それに……… ……と、その時 俺の隣にいた少年の姿が、消えた 「-----っ!?」 代わりに現れたのは、男 その手に、鉈を持ち…振りかぶった、体勢で こちらに向かって、鉈を振りぬいてくる! 「っと!?」 何とか屈んで、その攻撃をかわした ……っぶな!? あんなもんで切りかかられたら、流石に死ねるぞ!? どう考えても、敵意あり、殺意あり 敵とみなして、問題ないだろう と、言うより …少年はどこに消えた!? 少年を探そうとすると、男が、今度は鉈を脳天に向かって振り下ろしてきて っが、と 俺は、何とかそれを白刃取りして防いだ 「なん……なんだよ……手前は……ッ」 頭カチ割られた死体なんて、そんなジェイソンに殺されたような死体になるのは御免だっ! こちとら、高校の頃からしょっちゅう喧嘩に巻き込まれてきた 鉄パイプやら何やら、色々と頭上に振り下ろされた経験があるのだ これくらい、防いでやらぁ! ……まぁ、一部は幸せの眉毛コアラの効果のお陰もありそうだが ちらり、視界の隅に少年の姿が見えた …良かった、無事なようだ てちてちと、慌ててこちらに駆け寄ってきている …それなら 巻き込まない為にも、さっさと終わらせるべきだ! 男は、懐から何か取り出そうとしていた 予備の武器があるのだろう そんなもん、使わせるかっ! 能力を発動する 対象は、男ではなく…俺が触れている、鉈 別に、対象が人間である必要はない 生物・無生物に問わず、俺が意識すれば、熱する事ができる この大きさの鉈なら、さほど時間はかからない! 俺が触れている事によって、鉈が熱されていく速度は格段に早まる 熱による痛みを感じたのだろう、男が鉈から手を離して飛びのいた じゅう、と金属部分が溶けてきた鉈を投げ捨てる 刃の部分が溶け始めていたから、あれはもう使えないだろう てちてちてち 駆け寄ってきた少年は、俺の背後に隠れた そうだ、これでいい この男に他に味方がいないとも限らない こいつが怪我したら大変だ 「さぁて……形勢逆転だな。覚悟はいいか?」 この男から攻撃してきたのだ 正当防衛というやつである なんら問題はあるまい しかし、男は素早く身を翻し、大通りに向かって走り出した 「っ逃がすか!」 その後ろ姿を、慌てて追いかける …こっちの方がスピードはある 追いつける! ピタリ、男は足を止めた 観念したか、それとも、反撃でもしてくるつもりか? 反撃の隙など、与えるものか 能力を発動しようと、男を睨みつけた瞬間… 「え?」 「へ?」 ……んなっ!? 男の姿は、なぜか買い物袋をたっぷりと持ったおばさんと入れ替わっていた …相手の能力か!? 急いで、そのおばさんから飛びのき、路地に戻る 関係のない人間を巻き込む戦闘なんざ御免だ 「うー?逃げられた?」 「あぁ……くそっ、どう言う能力なんだよ、あのおっさん!?」 「うー……逢魔ヶ刻…うーうー!」 「逢魔ヶ刻?……入れ替わりかよ!?」 タチの悪い能力め! じっと見上げてくる少年に、苦笑した 「カッコ悪いとこ見せちまったな」 「うー!そんな事ない!ステーキのおにーちゃんカッコ良く戦った!うーうー!」 白刃取りー!と真似してくる少年 …勘弁してくれ 照れ隠しに、わしゃわしゃこいつの頭を撫でてやる 「…に、しても、だ。あのおっさんはこっちを襲ってきた訳で…俺達の敵だよな?」 「うー!敵!将門様の敵ー!うーうーうー!」 そう、敵だ 俺達「首塚」組織に、敵対の意思ありと見ていいだろう あの男の事も、将門様に報告しないと そうだ、あいつにも話しておこう 「組織」の人間だったなら、何か話してくれるかもしれないし もしそうじゃなかったら、無差別に能力者を襲う危険な奴がいる、と警告できる あいつの力になれるかもしれないじゃないか そう考えると、少し嬉しくなって 俺は、少年の手を引いて、将門様の下へ急いだのだった 終 前ページ次ページ連載 - 首塚
https://w.atwiki.jp/legends/pages/193.html
あなた方は幸せを望んでいる あなた方は幸せを喜んでいる それだけならば、まだ良いのです 何故、あなた方は誰かの不幸を望むのでしょう 何故、あなた方は誰かの不幸を喜ぶのでしょう 誰かの不幸を望む事で 誰かの不幸を喜ぶ事で その不幸が、あなた方にも帰ってくるかもしれないのに Red Cape きゃいきゃいと、クラスメイトたちが談笑している その輪に適当に加わりながら、私は繁華街を歩いていた 前方を、男子たちも適当に集団になって歩いている …あぁ、もう、道に広がってだらだら歩いて 他の人達の迷惑じゃない そう、ぼんやりと考えながらも…私は、その集団の中の一人をぼんやりと見つめていた 集団の隅で、他の男子たちとは、ほんの少し距離をとって やや、眠たそうに歩いている…彼を 「いいんちょー?どうかしたの?」 「…いえ、何も」 ぼんやりしすぎていただろうか 隣を歩いていた子に話し掛けられた なんでもないの、と曖昧に笑って返す 何を考えているのだろう、私は 確かに、彼には助けてもらった でも、もうそのお礼はしたし …これ以上、彼を気にする必要なんて、ないのに 「なぁ、ゲーセン寄っていかね?」 「俺はやめとく。ゲーセン好きじゃないんだよ」 「え~、なんでだよ」 「電子音が大音量で鳴り響いてて、苦手なんだよ。頭痛くなってくる」 …そうか、彼、ゲームセンターが苦手なんだ ほんの、些細な彼の情報 それがわかっただけで、どこか嬉しい …これが、恋と言う物なのだろうか 私には、よくわからない ただ、少なくとも、彼の方は特にこちらを意識などしてくれていないだろう、ということはわかっていた ただのクラスメイトの一人 そうとしか思われてない その事実が、どこか寂しいと思う 「ねぇねぇ?このワンピース可愛くない?」 「あ、本当。可愛い~!」 ふと、皆の声に、視線を皆と同じ方向に向ける ブティックの店先に展示されているワンピース 今は、あぁいうのが流行っているのだろうか? (……私も) 私も あぁいう服を着れば、少しは可愛くなるのだろうか 少しは、可愛くなれれば …彼に、少しは意識してもらえるのだろうか? ほんの少しの、淡い希望 翌日 学校が休みだったから、私はブティックになど顔を出していた こんな店、来るのは初めてで…緊張してしまう …これだ、この、ワンピース 皆が可愛いと言っていた 私も、可愛いと思う…けど、私なんかに、似合うだろうか 鏡の前で合わせてみるが、ピンと来ない …やっぱり、試着してみないと、わからないか でも……うん 悩んでいた私 試着室に行こうか、どうしようか 悩んでいた…その時 「………!?」 店の、外に 彼の姿が見えた 隣に居るのは…化学の先生だろうか? ちょっと服装のイメージが違うけど、そうだけと思う ど、どうして彼が…!? 別に、彼がこちらを見た訳でもない でも、万が一、彼がこちらを見て、私に気付いたら… それが、なんだか恥ずかしくなって 私は、試着室に逃げ込んだ ほっと、息を吐いて… ……直後 「………え?」 私の視界は、闇に包まれた 気がついたら、真っ暗な部屋だった ここが、どこなのか 思考が、そんな事を考え出した時… 「………っひ!?」 私の思考は、恐怖に支配された 私は、拘束されていた よくわからない台の上で、裸で拘束されている ……そして 私に、近づいてきている、男 ぺたり、足音を響かせて その手に…血塗れの、ノコギリを持って……!! 悲鳴をあげる その悲鳴に、男はニタリ、笑って こちらに、手を伸ばして…… 「………ッ花子さん!!」 …多分、幻聴なのだろう 彼が、誰か…多分、女の人の名前を叫んだ声が、聞こえてきた どぉんっ!!と 轟音が聞こえてきて……っふ、と 私の意識は、再び闇に落ちた 花子さんが操る激流が、扉を押し流す 中にいた男が、ぎょろり、こちらを睨んできた 「…っ委員長!?」 「み?けーやくしゃの知り合い?」 …あぁ、もう、なんでまた委員長が!? 俺は舌打ちして、花子さんと一緒に部屋の中に飛び込んだ 俺達という乱入者に、男はノコギリを構えて警戒態勢をとってくる 試着室で、女性が消える そんな、都市伝説がある 消えた女性は、何者かに誘拐されて売り飛ばされるのだと …そして、その都市伝説と関係がある、とされる都市伝説がある ダルマ女 両手足を切り落とされ、見世物にされていた女 それは、かつて試着室から忽然と姿を消した女だった… 二つの別々の都市伝説 しかし、関係が深そうに見えるが故に、こうやって一つの都市伝説にまとまっている事がある この辺りの店の試着室から、女性が消えた…と言う話を聞いて この辺だと、クラスメイトも利用しそうな店で、クラスメイトが巻き込まれたら目覚めが悪いよな…と思ったのだ だから、退治しようと …そう、思ってはいたが まさか、委員長が捕まっているなんて! ぶっちゃけ、委員長におしゃれとか死ぬほど似合わなそうなのに 本人の前で口にしたら往復ビンタでも喰らいそうなことを考えつつ…俺は、花子さんと共に男を睨みつける べたり、べたり 男は、ゆっくりと、こちらに近づいてくる 「…男はいらぬ。その餓鬼は小さすぎる…どちらも、いらん。解体して捨てるか…」 物騒な事を呟いている 嫌なこだわり持つな、畜生が まぁ、都市伝説は、ある種のこだわりが強い者が多いらしいが 「けーやくしゃをかいたいなんてさせないの!」 花子さんが俺の前に立ち、健気に両手を広げてくれている 俺を護ろうとしてくれているのだろう 相変わらず、いい子だ 「………死ね!!!」 男が、ノコギリを振り上げた 相手は、戦闘向きではないようだし、戦闘慣れもしていないようだ …もし、男が戦闘向きの能力を持っていれば もしくは、少しは俺達のように、戦闘慣れしていれば あの人の気配に、気付けただろうに ばしゃんっ!!と 男が振り上げたノコギリに、茶色い泡立った液体がかかった 直後……ノコギリは、じゅう!と音をたてて融けていく 「………!?」 「マジでこんなもんも溶かせるんですね、そのコーラ」 「うん、そうだよ」 にこにこと笑いながら、不良教師……の、弟さんが、部屋に入ってきた 手に持っているのは、コーラの入ったペットボトル 試着室の都市伝説を探していたら、たまたま、顔を合わせて …相手の潜伏場所に心当たりがあるから、と連れて来てもらったのだ そこで、軽く立てた作戦が、俺たちがハデに中に侵入し…弟さんに、背後から攻撃してもらう、と言う物 まさか、ここまでうまく行くなんて …ごぽ、ごぽ、と 弟さんが持っているペットボトルからは、コーラが溢れ続けている 「さぁ、逃げられないよ?」 「やっつけるの!」 武器を失えば、最早まともに戦う事もできまい 花子さんと、不良教師の弟さんのコーラ 二つの都市伝説に囲まれ…男は、歯軋りをしている 「おのれ……おのれおのれおのれおのれぇえええええ!!」 叫ぶ男 その、足元に 穴が、出現した 「……っ!?」 誰か、他の都市伝説の攻撃能力? いや、違う …逃げるつもりか!? 花子さんが、俺が持ち込んでいたトイレットペーパーを男に放つ 弟さんも、コーラで追撃したが…一歩、遅かった 男は、穴に吸い込まれて、姿を消す …逃げられた! 「大丈夫、僕の知り合いがね、他の契約者を別の潜伏場所に、待機させてるはずだから」 「…そっちで、何とかしてくれると?」 「うん、してくれると思うよ」 にこにこと、弟さんは笑っている …あの不良教師と同じ顔で、こうやってにこにこと笑われると…なんて言うか、凄い違和感が あの不良教師、ほとんど笑った事ないし…と言うか、笑い顔見た事ないし 「だいじょーぶなの?あのおじさん、誰かがやっつけてくれる?」 「うん、そうだよ」 かっくん、首を傾げた花子さんを、弟さんが撫でている …そうか なら、いいか 多分、大丈夫だろう それよりも、委員長を解放してやらないと そう考えて、俺は台に拘束されている委員長に視線をやって… 「…!?」 委員長の、格好を見て 俺は、急いで委員長から視線を外す 「み?けーやくしゃ、どうしたの?」 「あ、いや、別に」 「初心だなぁ」 にこにこ笑ったまま、弟さんがさっさと委員長に近づいて拘束を解いてやっている …大人だなぁ 単に、高校生なんぞに興味が無いだけか? ひとまず、俺は息子を冷静にさせるべく 首をかしげている花子さんの前で、小さく深呼吸したのだった …ずるりっ 男は、先ほどまでいた部屋とほぼ同じ作りの…しかし、かなり離れた位置に存在する部屋に、出現していた おのれ、餓鬼共めが 男にも小便臭い餓鬼にも興味がない 自分が作り上げる作品は、女でなければならないと言うのに…!! 苛立ちながら、男がここに置いてあった予備のノコギリを手にとろうとした、その時 「………め、かごめ」 「…………!?」 どこからか、聞こえてきた歌声 男が辺りを見ますが、誰も居ない 歌声は、続き、続いて ………っざん!!と 男の首は、男の背後に出現した何者かによって、一撃で切り落とされ ごろり、静かに床に転がったのだった 「…お疲れ様でした」 室内に、黒いスーツにサングラスといういでたちの男性は入り込んだ 刀を持った青年に対して、小さく拍手する 「お見事。噂通り、強力な力のようですね」 「お世辞はいりませんよ」 黒服の言葉に、青年は苦笑してきた あの「はないちもんめ」の少女を囮にした事がある、という話を聞いて軽く怒りは湧いていたが …まぁ、いいだろう あの少女には、慰めにケーキなりなんなりを奢ってやるか そんな事を考えながら、黒服は青年と共に、主を失った部屋を後にしたのだった 「ん……」 …意識が、浮上する ここは…病室? 「あ、目、覚ましたか、委員長」 「え………え!?」 え? ど、どうして、彼がここに そして…どうして、私はここに? 「わ、私…どうして」 「ブティックの試着室で倒れてたんだよ。店員さん、焦ってたぞ。 勉強か何かのし過ぎで、寝不足だったのか?」 あれ?…あれ? 私が、倒れていた? ……じゃあ あれは、夢? 「------っ!」 ぞくり 全身を走り抜ける、悪寒 リアルな感覚が、蘇る 夢? あれは、本当に、夢だった? 「うなされてたけど、悪夢でも見てたのか?」 彼が、そう言って来た うなされて……あぁ、そうか 私は、悪夢を見ていたのか 彼の言葉に、私はそう納得する …自分に、そう言い聞かせる そう、あれは夢だったのだ タチの悪い、悪夢 そうに決まっている あれは、悪夢だったのだ あんなことが、現実にありえるはずがない…! 試着室に入ったら、どこかに連れて行かれて そこで、殺されそうになっただなんて そんな事が、現実にあってたまるか……! 「んじゃあ、俺はこれで。委員長の家の方にも連絡しといたから、後で親御さんが来ると思うけど」 「------あ」 立ち去ろうとした、彼の後ろ姿に 私は、声をかける 「……あ、ありがとう」 「ん?…あ、どういたしまして」 私の言葉に、彼はそう返事して…病室を、後にした …一瞬 彼の横に、おかっぱ頭の小さな女の子がいたように、見えたのは 気のせい、だったろうか そう、まるで、「トイレの花子さん」のような姿の… 「……っ」 小さく、首を振る 何を考えているのだ 夢の中で、彼は「花子さん」と叫んでいた その花子さんが、彼の横にいたなんて …そんな事があるはずがないのだ それを、認められるはずが無いのだ それを、認めてしまったら 私は、あの悪夢が現実のものであったのだと、認めてしまう事になるから 私たちはここにいます どうして、気付いてくれないのですか 私たちは、あなたが他のすぐ傍にいます どうして、私たちを見てくれないのですか あなた方が私たちを生み出したというのに どうして、あなた方は私たちを見て見ぬふりをするのでしょう 私たちが血に染まるのも、また、あなた方のせいだと言うのに Red Cape 前ページ次ページ連載 - 花子さんと契約した男の話
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2805.html
己は、後悔しているのだろうか 時折、イクトミは考える あの時、もっと強く警告していれば、あんな事にはならなかったのではないだろうか? 己が予見した、血塗れのあの男の姿を思い出すたびに そう、考えずにはいられないのだ 「どうしましたか?イクトミ。黙りこんで?」 「ん?…あー、いや、何でもねぇよ」 サンジェルマンに声を駆けられ、イクトミは軽く首を左右に降った …自分らしくもない 己は陽気で卑猥な蜘蛛の神 ネイティブ・アメリカン スー族が語るトリックスター 深刻な顔等、自分には似合うまい 「あー、そうだ、サンジェルマン。エーちゃんにも伝えといたけど、お前にも伝えとくな。X-No.0の痕跡をアメリカで発見。まぁ、あいつの事だから、とっくに移動隅だろうがな」 「おや、そうですか…やれやれ、彼も相変わらず厄介だ」 イクトミの言葉に、苦笑するサンジェルマン 上田が、小さく首をかしげる 「誰よ?X-No.0って」 「あぁ、アキナリも知っておいた方が良いかもしれませんね。都市伝説と関わる以上、彼と遭遇する危険性は、無きにしも非ずですから」 ことん、と 酒の入ったグラスをおいて、サンジェルマンはゆっくりと語る 「…X-No.0…ザン・ザヴィアー(Xan・Xavier)、「組織」上層部が一人にして、「組織」で始めての裏切り者です」 「裏切り者?」 「「組織」結成に関わっておきながら、「組織」結成と同時に姿を消したのさ」 なーに考えてたんだか、と肩をすくめるイクトミ あの気まぐれな男の考えは、少なくともイクトミには、ほとんど読むことができなかった 「「組織」としては、裏切り者であるあいつを討伐しようともしたっぽいんだがな。あいつ、反則的な能力持ってるから、ほぼ100%返り討ちにあってるんだな、これが」 「反則的な能力、ねぇ?」 「…正直、アキナリには、ザンとは遭遇してほしくありませんね。遭遇したとしても、戦うような状況に陥って欲しくありません。彼がどの能力を使ってくるかにもよりますが、あなたでは対抗することが難しいでしょう」 やや、難しい表情を浮かべるサンジェルマン 確かに、そうだろう イクトミも、同じ事を考える あの男の能力には、上田の契約都市伝説では…対抗できなくもないが、難しいだろう 「お前ら二人にそういわせるなんて、よほどすごい都市伝説と契約しているんだな、そいつは?」 「とっくの昔に飲み込まれ済ですけどね。飲み込まれない方が不思議なくらいの都市伝説ですから」 「まぁなー。村一つどころか街一つ一瞬で消せたり、建物とかそのままでも、街一つ分の人間一瞬で消したりできるからなー」 「あ、それと、爆発も起こせますよ。あれは。メタンガスの充満による爆発に似てますね」 「そう言えば、麦角菌を生み出して幻覚見せるとかもやってたな」 「何、そのチート」 上田の突っ込みももっともである あの男、相当チートな能力の持ち主だ 本体の身体能力が特別高い訳ではないのが救いか 「なぁに、それでも、単体で世界滅ぼすとまではいかないからマシだろ」 「まぁ、D-No.0と一緒に暴れれば、世界を滅ぼせるとは言われましたがね。D-No.0が「いなくなった」今となっては、それも不可能でしょうが」 「いなくなった」 その単語に、上田がかすかに反応を示した 「「いなくなった」、か。死んだではなく、か?」 「一応は、「暗殺された」と言うことになってはいますがね」 …あぁ、そうか やはり、この男も疑問に思っていたのか、とイクトミは妙な所で感心した サンジェルマンならば、あの状況に、疑問を抱いてもおかしくない 「暗殺とは、物騒だな」 「それも、身内から、ですからね。全く、あの当時の「組織」は馬鹿げていましたよ。彼を殺しても、事態は良い方向に進むはずがなかったと言うのに」 「結果、あっちこっちから嫌われる組織になっただろ、「組織」。まぁ、今はその馬鹿やった連中が天罰喰らってて、穏健派が力つけてきたから、少しずつはよくなってきてるけどな」 つ、と酒を口に含むイクトミ …D-No.0が望むような、平和的な形ではないかもしれないが 少しずつ、少しずつ……「組織」は、軌道を修正していっている どこか傲慢に、都市伝説と契約者を管理してきた「組織」 契約者や都市伝説、「組織」の黒服を、使い捨ててきた「組織」 …それが、少しずつ軌道修正されていっている 少なくとも、イクトミはそれを実感していた サンジェルマンは、どうなのかはわからないが 「…D-No.0、か。そいつがいなくなったって事で「組織」が悪くなったって言うんなら、そいつはよっぽどいい奴だったんだろうな」 「「そりゃもう」」 上田の言葉に、イクトミとサンジェルマンの返答が、被った それはもう、清々しいほどに 「あそこまで慈悲深いお人好しは、私もただ一人しか、見た事がありませんね」 178 名前:先日に引き続き笛の人に焼き土下座orz ◆nBXmJajMvU [] 投稿日:2010/06/14(月) 17 51 59.45 ID VLSnXgww0 「慈悲深くてお人好し?…そう言う奴だったら、今の「組織」にも一人、いるんじゃないのか?過労死候補生とか呼ばれてるって聞いた事があるが」 「あれよりも、もっと凄かったって事さ」 上田が言っているのは、恐らく、噂のD-No.962の事だろう 確かに、あの男も慈悲深いお人好しだ それは、認めよう それもまた、紛れもない事実だ だが D-No.0のそれは、D-No.962を遥かに上回るほどだった 慈悲部下過ぎる、お人好し過ぎる 人を疑う事を、全く知らないのではないだろうか、と思うほどの、お人好し 生まれついての性善説主義者 あまりにも真っ直ぐすぎる理想主義者 それが、D-No,0と言う男 「…あいつの優しさは、猛毒だよ」 相手が誰であろうと どんな存在であろうと その優しさは、向けられる 人間であろうと 都市伝説であろうと 命であれば、彼は救おうとした それが、善人であろうと、悪人であろうと、関係ない 『命は皆、等しく平等なものである』 『人は皆、誰かに祝福され、誰かに必要とされて生まれてくる』 『どんな命にも、代替は存在しない』 本気で、そう考えている男だった 疑いすらせず、そんな事を平気で言う男だった 「……何それ。いい奴すぎて逆に怖い」 「だろ?」 「そう言う男だったんですよ、困った事に。存在自体が奇跡のような男だったのかもしれません」 その優しさは、ある意味で罪だった ある意味で、猛毒だった もし、生まれてこの方、一度も他人の優しさに触れた事のない者がいたとして そいつが、D-No.0の優しさに触れてしまったとしたら その、優しさと言う猛毒に、一瞬で蝕まれる事だろう 場合によっては、命を落とす可能性すらある それほどまでに、あの男は優しすぎ、その優しさを誰にでも平気で向ける男だった 「なぁ、上田。お前は、死ね、とか、生まれてこなければ良かったんだ、とか言われた事は?」 「何、いきなり酷い言葉……まぁ、あるねぇ。一応、人殺しとかしたんだし」 「D-No.0は、そんなお前の事も許しただろうよ。お前に「生きていてもいい」「生まれてきてくれて、ありがとう」とか、平気で言っただろうよ」 「何それ怖い」 「言ったでしょうね、あの男なら……たとえ、相手が極悪非道の大悪党であろうとも、その存在を認め、罪を許し………罪を償う手伝いを、するのでしょうね」 もし、相手がそんな言葉を聞かなくて 馬鹿な事を言う奴だ、と罵ってきても、傷つけてきても、命を奪おうとしてきても …きっと、あの男は許してしまうのだ 「…洗脳……とは、違いますがね。彼の優しさは、他人に感染しやすいのですよ。事実、彼は悪事の道から脱出できそうもなかった都市伝説を、数体、その道から救い上げました」 「そいつら全員、あいつの親衛隊になったしな……ほんっと、猛毒だよ」 強硬派や過激派、がD-No,0を恐れた理由が、よくわかる あれは、彼の力を恐れただけではない ……もし、D-No.0が「組織」にあり続けたならば 自分達の部下も、そして、自分達も、また あの男の優しさに感染し、飲み込まれると ……それを、恐れたのだ 「因みに、もし、上田がD-No.0と遭遇したならば、あいつの優しさが感染して真人間になって善良な男になるに、百ドルかけてもいい」 「そこまで言うか」 「まぁ、私もうっかり、そちらに賭けたくなるのは否定できませんが」 「サンジェルマンまで」 まぁ…と サンジェルマンは苦笑し、また、酒の注がれた杯を手に取った 「…会う事は、ないでしょうけどね。彼は「暗殺」されたのですから」 「…………まぁな」 …自分達は、それを認めていない だが、一応、そう言う事になっているし………事実、あの事件以降、D-No.0の姿を見た者はいない D-No.0の血のサンプルを持っていたH-No.0が、大量に残されていた血痕はD-No.0のものである、と確認したし あの直後起きたとある自然現象が、D-No.0が死んだ証拠とされた以上、あの男は死んだことになっている だが、それでも D-No.0は生きているのでは、とイクトミは考えている あの自然現象が、D-No.0が死に、彼が契約し、そして飲み込まれた都市伝説が暴走した結果だと、強硬派達は言った だが、もし、D-No.0が本当に死んで、あの都市伝説が暴走したのなら……あんな「生温い」被害で終わっているはずがない それに、E-No.0にも告げた事だが…D-No.0の側近たち D-No.1~D-No.10までの10人が、あの事件の直後、全員失踪している D-No.0が個人的に集めていた人材であったゆえ、「組織」でもその全容は把握していないが、少なくとも、「組織」内部には一人も残っていない イクトミ自身はたまたま、見知っていた者が数人いて…その一人を、よりによって「教会」上層部の一人の中に、見つけた事をあるが ………恐らく D-No.0は、生きていて D-No.1達によって護られ、隠されているのだろう、とイクトミは考える それを、無理に探すつもりは、イクトミにはない 「組織」に見付かったならば、あのお人好しは今度こそ、殺されるかもしれないから (………だが) …同時に あの男が、生きていたとして 今の「組織」に接触したならば …そして、都市伝説渦巻き、「組織」がもっとも注意を払っている、学校町にやってきたならば それは、周囲にどんな影響を与えるのだろうか、と イクトミは、それがどこか、楽しみで 同時に、恐ろしく思えるのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4485.html
えー、あーどうも、俺はこの町―学校町のとある大学の文化学部民族学科に所属している清水 青です。 個人的には主に下位の民間説話―都市伝説を研究している。 今は、夜遅くまで仲の良い教授の研究室に残り、セカセカとレポートを仕上げているところだ。 教授は大層適当なお方で「巡回に見つかんなよー」と言って先に帰って行った。 この研究室がある棟は、学内でも最古の棟で、感知機等も設置されていない。大丈夫なんだろうか、この大学は。 そんなこんなでレポートも粗方片づき、そろそろ帰ろうかと伸びをすると、後ろに青白い顔をした女の人が立っていた。 「,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,どちら様ですか?」 「,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,シネ」 会話にならない、泣きそうだ。そういえば教授が帰り際に「ここ、出るから気をつけろよー」なんて言ってたな。 確か、昔とある女学生が教授と不倫をして、結局教授は家庭を選び、その女学生は教授の研究室で首つり自殺をし、今でもさまよい続けている っていう噂話を耳にした事があったが,,,,,,,,,まさか、彼女がそうなのか。 とかなんとか思っていると、彼女が掴みかかってきた。やばい死ぬタスケテ。 何とか腕を振り払い、出入り口へ逃げようとする。しかし、彼女も後ろから、物凄いスピードで追ってくる。もうやだ、家に帰りたい。 とっさに俺は、ポケットから煙草を取り出し、急いで火をつけ、一気に吸い込んだ。 すると、周りの景色が霞み、フウゥと息を吐きだすと、今まで霞んでいた景色がはっきりとしてきた。 これが、俺の「ラッキーストライクは天国に一番近い煙草」の都市伝説のテレポート能力。自分が今、一番行きたい所に行けるってやつ。 けど、あんま使いたくないんだよなぁ,,,,,,,,,,,,だって 「ヴゥエ、ッゲホ、ゲホゲホウエッ」 煙草吸えないんだもん。 とにかく、助かった,,,,,,,,,,部屋の眩いライトが目に染みる。同時に、何処かで嗅いだ事のある煙草の匂いがツンと鼻に入ってくる。 え?煙草おおおおおおおおおおおお!!!!「どっから入って来たんだこのエロ兄貴!!!!!」 どうやら、俺は妹の部屋にテレポートしてしまったらしい、しかも運良k,,,,,,,,,,,運悪く着替え中だった。 こうして、妹にボコボコにされながら、俺の災難続きの一日は終わった,,,,,,,,,,,,,,,,, あ、レポート研究室に忘れた,,,,,,,,,,,, fin- 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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前から登場していたの サスガ フルネームは流石 丈(さすが たけし)、コードネームは“オサスナ” 「組織」強硬派所属の中学三年生男子 契約した都市伝説は「校庭に現れる落ち武者の霊」 甘いものが苦手で、食は淡泊 過去に早渡と交戦済み 彼の活躍は以下を参照されたい 早渡と交戦した回(早渡視点) 早渡と交戦した回(サスガ視点) 「偽警官」と交戦した回(“モヒート”と) モヒート 本名は見辺 加賀実(みべ かがみ)、“モヒート”はコードネーム 「組織」強硬派所属の中学一年生女子 契約した都市伝説は「コークロア(_Mod.A)」 彼女も過去に登場済み(詳しくは上記リンクをチェック) 今回初登場の 割烹着の少女 「組織」穏健派所属の女の子 「人肉シチュー」の都市伝説である まるで給食の時間に割烹着を着た小学生の女の子といった容姿をしている 彼女の外見は上記都市伝説からの関連が想定しえない形態だが真相は不明 彼女は今回のように 時折穏健派のオフィスを抜け出しては強硬派所属の彼らに会いに行く 前ページ / 表紙へ / 次ページ
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ああ。これが俺の運命なのか。 友達もできないクラス内透明人間にして臆病者な上に童貞といった駄目人間極まりない俺の。 生きるという事には不条理ってことだ。誰かが確かそう言っていた。 まったく、実にその通りだと思う。しかし。だがしかし。 いかれた暴走車に轢き殺されて死ぬなんて。ましてや無人の。 いくら人生が不条理だからって 「納得いかないいいいいいいいいいい!!!」 叫んで、俺は全力でママチャリをかっ飛ばし田舎道を疾走していた。 すぐ後ろからは中型自動車が猛スピードで迫ってくる。 あんなのに跳ね飛ばされたらひとたまりも無い。即死だって即死! おかしなことにその運転席には人の姿が見られないのだ。 何?何?何なんだ!?何で俺は無人の自動車に追い掛け回されてるんだ? 俺は夜中に少し離れたコンビニへジャンプを買いに行っただけだぞ!? おかしいよ!おかしいって!どっからおかしくなったんだよ! おかしいといえばなんで道に人の姿がまったく無いんだよ! 夜中とはいえ車が凄い勢いで少年をひき殺そうとしてんだぞ!誰か気づくだろ!気づいてよ! てかここまでチャリで車から逃げ切れてる俺もおかしくね?俺こんな体力あったけ!? これが火事場の馬鹿力ってやつか?すごいなっ人体の不思議万歳!! などと混乱した頭で考えながら必死こいて自転車を飛ばしていると、 おもむろにペダルがぶっ飛んだ。 「え?」 自転車の耐久力も俺の体力も、限界だったらしい。 ガシャーン!!盛大な音を立てて、俺は自転車と一緒に地面に叩きつけられた。 その瞬間、視界が二つの目のようなライトで真っ白になった。 死ぬ瞬間、全てのものがスローにみえるって話は本当らしい。 その一瞬の間に俺は色んな事を考えた。 最初は、「あ、死ぬ。」とだけ思った。極度のビビリの俺なのに、不思議と恐怖はない。 次に「こんなヘマで死んでしまうなんて、最後まで俺はダメな奴だなぁ」と思った。 そして「俺が死んだって、世の中は何も変わりはしないんだよなぁ」そんなことを考えた。 「無人自動車にひき殺されるなんて。もしかしたら俺、恐怖のあまり頭がおかしくなったのかもなぁ」、とも思った。 だから、真っ白な光の中、バイクに乗った人影が車に突っ込んで助けてくれたのを見ても、 その時は「あぁやっぱり俺黄色い救急車に乗るべきなんだ」としか思わなかったんだ。 派手な装飾のバイクは車に乗り上げフロントを踏み潰した後、勢いのまま空中で一回転し綺麗に俺の横に着地した。 「貴様!私の出没場所で何をしている!」 男がライトが消えフロントガラスが粉々になった車に向かって叫んだ。 なんて浪々とし、そして響く声。なにゆえこんなに通る声をしてるんだ?俺は疑問に思った。 だってそもそも男の体には首が無かったのだから。 あかん。何だか感覚が麻痺してきた。もう何がおかしくて何がおかしくないのか。 すると男が無い顔をこちらに向けた。 「時に少年、お前は何者だ?ふむそうか。あの当たり屋に狙われてしまった身か」 いや、俺なんも言ってないんだけど勝手に一人で納得しちゃったよ。 「乗るのだ少年。このままでは危険だ」 首の無い男が尻餅をついている俺に手を差し伸べた。 しかし、ここでよーやく俺は今までの実感がじわじわと沸いてきたのだった。恐怖の。 「うっわああああああああああああああああ!?!」 我ながら本当に情けないが、無人の暴走車に首なし男。あまりにも非現実的でホラーなこの状況。 根っからの臆病者でヘタレの俺が叫ばずにいられない。 すると男はおもむろに俺の頬をバシッと叩いた。 い…いたひ。 「落ち着くのだ少年!私はお前に害を与えたりはしない!」 お、落ち着けったってンな状況で首の無い人に言われても… でも少なくとも目の前のこの男は、俺をあの車から助けてくれた。 その時、男の後ろで煙を上げていた車のライトが点滅しながら付いた。 まるで気を失っていた者が目を覚ますように。 「むむっいいから私の後ろに乗るのだ少年!何、腰が抜けただと?貴様、それでも玉がついた男か!」 あ、頭がついてない奴に言われたかないなぁー それにしてもこんな化け物男にさえ喝を入れられるなんて、本当に俺ってダメな奴… おとこは凄い力で俺の腕をグイっと引っ張り、後ろに乗せた。 「しっかりつかまっていろ」 轟音と共にバイクが発進した。 バイクは人通りの無い夜の道路を走り続けていた。 広い背中に遠慮しがちにしがみつき、こっそり俺は前の人をまじまじと見た。 なるべく首の断面図が見えないように。 「何だ。聞きたいことがあるならハッキリといってみるがいい」 「ヒィッ!?な、何でもないです!!」 「臆するな。私はお前を傷つける気など無い」 こ、怖いのは変わんないけど、どうやらこの人は本当にいい人みたいだ。 俺はありったけの勇気を振り絞り質問する。 「…い、色々ありすぎるんだけど…まず始めに、おっさん何者?」 「おっさんだと!?けしからん!私には『首なしライダー』という立派な名がある!」 ヒィィッなんか怒らせちゃったよぉぉぉどうすれば…………ん? 「く、首なしライダーってあの…?」 「ほう、知っていたか。あとでサインをやろう」 あるライダーが事故で首を失ってしまったが、バイクは体を乗せたまま走り続けた。 亡霊となったライダーは夜な夜な道を走っている。という、あの話。 確か俺の地元でもかなりはやった。当時の俺は小便ちびる程その話が怖く、 通学路のその道を通れなかった。おかげでしばらく毎日学校に遅刻してしまった。 「おいスルーをするのではない」 「ん、んじゃ、さっきの車は…?」 「当たり屋ファックスだ。話によっては当たり屋グループともいうがな。知っているか?」 知っている。「○○地方に当たり屋グループが出没しました。 以下のナンバーに注意して下さい」といった内容の回覧板、もしくはファックスが送られてくるといった話。 これも結構はやったなぁ。でも確かファックスが来るだけで車は実在しないはずじゃ… 「で、でも、それは噂話…誰かが回したただの怪談だ」 こんな男を目の前にしているというのに、俺はそんな理屈をこねる。 すると、ライダーが言った。 「そういった噂話が、回りまわって全国に伝わり、言霊という力を持った。そうして存在を得たのが、今お前の目の前に居る私だ」 ― そういえば。さっきこの男が「私の出没場所」と言っていた道。 俺が小学生の時、首なしライダーが出ると噂になった所だ。 俺は首なしライダー名乗る男の顔をまじまじ見ようとする。 しかし首があるはずのそこにはただ夜の真っ暗な空間が存在するだけ。 「お前ら…一体?」 その時俺は、無いはずの口元が不敵な笑みを浮かべた気がした。 「都市伝説だ」 そう言った首なしライダーの声は心なしか得意げだった。 「まったく。しつこい奴だ」 「え?」 「こんな話をしているうちにもう奴が来てしまったようだ」 振り向くと、ずっと後ろの方から二つのライトが迫ってくるのが見えた。 「で、でも普通の乗用車かも…」 「それはない。先ほどから辺りに人の気配が全く無いのには気づいているだろう。 いまやここは奴のテリトリー、いわば結界のようなものだ。 だからここに存在するのは当たり屋と私と、少年。お前だけなのだ。 そして結界を破るためには、その都市伝説の存在が消滅しなければならない」 「そんな…で、でも何で?おっさ…首なしライダーは俺を助けてくれるのに、あいつは…」 「人間の中には、悪い者もいれば良い者もいるだろう。都市伝説もまた然り。私は人間を傷つけないが、あの者は悪の心に捕らわれてしまった都市伝説なのだ」 「そ、それじゃあ俺を助けて!お願いだよ!」 「そうしてやりたいのはやまやまだ。しかし向うの方が数段上と見た。私の力では、奴を一時的なダメージを与えることが出来ても倒す事はできないであろう」 「そんなっ!?じゃ、じゃあ、一体どーすりゃ…」 「私と契約しろ、少年」 「へっ?」 契…約? 突然ライダーの口から出てきた言葉に俺はきょとんとする。 「人間のお前と契約すれば、私は今まで以上の力を持ち、奴を完全に葬ることができよう」 「ほっ本当!?」 「しかし」 突然ライダーは県境の大きな鉄橋の前で、バイクを止めた。 「え、何、どうしたの?」 「少年。お前も契約者として供に戦わなければならない。」 「!?」 な、何いってんだよ… この俺にあの車の化け物と戦えと!?ばっ馬鹿ゆーなって!!! そうしている間に当たり屋ファックスはどんどんこちらに迫って来ている。 「私と契約すれば、少年。お前を救ってやることができる」 「でっでも、無理だよ!!戦うなんて…!」 「可能性の限界など本人が決めるものではない」 「むっ無茶いうなよ!やれるわけないじゃん!」 「無茶をしてこそが真の男だ。己を信じろ!」 当たり屋はもう眼前に迫っていた。 「信じるったって…俺みたいな奴なんかに出来るわけないよ!」 「腹をくくれ少年!都市伝説に遭遇したその瞬間、 お前の平穏な日常は跡形も無く消え去ったのだ!」 なっ…なんつー理不尽な…………でも。 ライダーのその言葉で俺はふと思った。 クラスでは無視され、勉強も運動もろくに出来ず打ち込める事も何も無い こんな冴えない俺の人生、最初からもう終わってるも同然なんだ。 「わかった…!俺、お前と契約する。あの化け物と、た、戦うよ!」 「その言葉が聞きたかった」 瞬間、辺りが神々しい光を放った。 その光が当たり屋のライトだったのか、 はたまたライダーの体が放った光なのか、俺には分からなかった。 気が付くと、俺とライダーを乗せたバイクは鉄橋の入り口に直角にそびえ立っている 巨大な鉄柱を、凄いスピードで駆け上っていた。 「ぬあああぁぁぁあああああぁぁぁぁあqwせdrftgyふじこlp;」 一瞬前に俺たちが立っていたところを、 当たり屋が猛スピードで通過したのを何とか残像で捕らえた。 もしも一瞬でも遅かったらと思うと……ひっひぃぃぃぃっ!!! バイクは鉄柱のてっぺんまで一気に駆け上り、 一瞬夜の空を舞った。そして見事鉄橋の真ん中に着地。衝撃など全く無い。 「なっなんだよ今の動きっ!?てかっ鉄橋には入れないんじゃなかったのか!?」 ゼェッ ゼェッ ゼェッ 「今まで私のバイク技術は人間の身体能力までだったが、契約したことにより 常軌を逸したバイクコースを走ることも可能になったのだ。 そして契約は都市伝説がテリトリーに捕らわれることも無くす」 ば、ばいくぎじゅつ…今のはもう技術ってかもうなんつーか… 「くるぞ、少年。身構えろ」 ライダーの肩越しに、キュキュキュとタイヤのきしむ音を響かせて 当たり屋がこちらに向き直るのが見えた。 「ど、どうやって倒すの?ライダー」 「私が当たり屋の動きを封じる。その間にお前は車に乗り込み、運転席を破壊するのだ」 「ええええええっ何それ!?んなこと出来ないよ!てか破壊って…」 凄いスピードで当たり屋がまた突っ込んでくる。 「や、ヤバイっ来たよ!!」 「しっかり掴まっていろ少年!」 ライダーがそう叫ぶと、またもやバイクは華麗にジャンプし、突っ込んできた車を避ける。 宙に舞ったその瞬間、ライダーが車に手をかざした。 すると突如ライダーの手から幾本もの光る筋が伸び、当たり屋を縛り付けた。 地に着地し、ライダーが叫ぶ。 「今のうちだ!私のワイヤーでくくりつけられた者に 契約者のお前が攻撃を加えれば、大きなダメージとなるのだ! 案ずるな、私の首を切り落とした程のワイヤーだ。簡単にちぎれはしない、 と、言いたい所だが、相手が相手だ。残念なことに長くは持たない! 急げ少年!成すべきことをしろ!」 アクセルのかかる音がひっきりなしにしている車を、 今にも切れそうに張り詰めたワイヤーが押さえつけている。 怖くないといえば嘘だ。しかし。 次の瞬間俺はライダーの後ろから飛び降り、無我夢中で当たり屋に向かって駆け抜けていた。 割れたフロントガラスから運転席に滑り込む。 しかし、破壊するっつったてどうすれば… もたもたしていると、頑丈なはずのワイヤーがきしむ音が聞こえた。 「急げ少年!時間はないぞ!!」 ええいっこのさい適当だっ 焦りと混乱で頭がいっぱいだった俺は、力任せにハンドルを殴った。その瞬間。 ハンドルが、砕けた。 「あ……?」 突然のことに目が点になる俺。ま、まさかこれがライダーが言ってた能力… ライダーのワイヤーでくくりつけられた者を俺が殴ると大ダメージになる…!? その時、ライダーの叫び声が聞こえた。 「逃げろ!!少年!!!」 ブチブチブチッ!! ― え? ワイヤーがぶち切れる音と供に、俺を乗せた車は再び動き出した。 橋の入り口にそびえ立つ、鉄柱に向かって。 「ぎゃあああああああああああああ!!?!?」 半狂乱で俺はシートにつかまって絶叫した。グングンと目の前に巨大な鉄柱が迫る。 「長くは持たないって、全く持たないじゃないかああああああああ!!!」 かなり長い鉄橋だが、激突すんのは時間の問題。 しかもハンドルはさっき俺が破壊してしまったので利かない。 こんな事になるんなら、コンビニなんか行かなきゃよかったーーーー!!! すると、運転席のドアがガゴっとこじ開けられ、後方に飛んでいった。 「無事か少年!!」 「無事じゃないいいいいいいいいいいいいい」 当たり屋の横につき同じスピードでバイクをかっ飛ばすライダー。 彼はこちらに手を差し伸べた。 「早く!!」 「え?」 「こちらに飛び移るのだ!」 とっ飛び移る!?!? 運転席とライダーの間には結構な距離があるのだ。こんなスピードの中飛び移るなんて… 「むっ無理無理無理無理無理無理」 「先ほども言っただろう!たやすく己の可能性を否定するのではない!」 猛スピードの中、叫ぶライダー。しかし。 「でっできるわけないだろっ!俺みたいな臆病なダメな奴に!!」 俺はシートに抱きついて泣き叫んだ。 もうダメだ。これで俺は17年間の短い一生を終えるんだ。 「しかし、お前は私と契約する勇気を持ってくれた。 確かに臆病ではあるかもしれない。しかしこれだけは確かだ。 少年、お前は決してダメな奴などでは無い!!」 振り返り、さっきから無茶な事と説教ばかり言っている、首の無いこの男を見た。 そして差し伸べられた手を見つめた。 俺は…ダメな奴なんかじゃない…? その言葉は不思議と俺に勇気を持たせた。 よ、よーし。や、やってやるっての!やってやろーじゃねーかっ!!! 俺は意を決した。 どっちみち、やらなきゃ死ぬんだ ― !!! 「うわあああああああああああああああああああああああ」 そして。 真夜中の鉄橋を、俺は跳んだ。 それは一瞬の出来事のようで、とても長く感じられた。 ライダーの力強い腕が俺の体を受け止めた。 次の瞬間、数十メートル先で、鉄柱に激突した当たり屋が爆発した。熱風が肌を撫でる。 お、俺…生きてる… 「やったぞ、少年。見事悪の都市伝説を葬ることに……どうしたのだ」 情けないことに、今更になって、体の震えが出てきた。 「う…う…うわああああああ怖かったよおおおおおおおおおおお」 夜空に向かって思いっきり絶叫した。 さっきは無我夢中で何がなんだかって感じだったけど、今思い返すだけで… ヒイイイィィィィィイイイイっっ あかん、こんなんでいたらまたライダーに説教っぽいことを言われ… ― ポンっ 「さぞかし恐ろしかっただろう。よく頑張ったな、少年」 俺は、鉄橋の上で真っ赤に照らされながらライダーの大きな手を頭の上に感じた。 そうすると、不思議と恐怖が薄れ、俺の心は落ち着くのだった。 俺に兄貴は居ないけど、居たらこんな感じなのかな…。 その時、さっきまで感じていた熱風が徐々に感じられなくなった。 振り返り見ると、爆発の炎や当たり屋の残骸が、少しずつ消えていくのが見えた。 も、もう、何があっても驚かないぞ。うん。絶対に。 「奴が消滅した。と言うことは、結界も消えたということだ。 町に戻れば人の姿も見られるだろう。 それにしても、初めての敵からかなりの強敵を相手にしてしまったな。 本当によく頑張ったぞ少年」 …………ん? 「…『初めての』?」 「そうだ。これから私とお前は、様々な都市伝説と戦っていかねばならないのだ」 めまいが、した。 ちょ…今、なんつった…?頭がクラクラする。 「すまない。あの状況下で言うのを忘れてしまった」 あ、ヤバ…本格的にめまいが… 私とお前が契約してしまった今、これからも様々な都市伝説に遭遇するだろう。 しかし、そうやって悪の心に取り付かれてしまった者達を」 バッターン! 多分、今までの疲労感と取り合えず助かったという安堵感と今聞いた事実の衝撃が、一気に来てしまったのだろう。 俺は倒れた。 これからずっとこんな死ぬような怖い思いしなきゃなんないのか? 冗談じゃない。 「おい、しっかりするのだ!少年!少年ーーーーーーーーーーーー!!!!」 薄れていく意識の中で、ライダーの叫び声を聞いた。 生きるということは不条理ということだ。 それは普通の高校生を突如、首の無い男と供に都市伝説と戦うという日常に放り込む程に。 いつの日か、この「不条理」極まりない現実を受け入れて、 そんな毎日を臆することなく過ごせる度胸が、はてして俺に付くのだろうか。 そしてその日は来るのだろうか。 来るといいなぁ 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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終わりなき渇望 僕は、都市伝説が大好きだ。 昔から、そういった伝説やホラーを、僕はなによりも愛していた。 だから、その都市伝説が実際に存在していると知った時、僕は歓喜したものだった。 …………なのに 「や、やめろ……来るんじゃねぇよ……」 どうして、君は逃げるの? 僕はただ、君とハグがしたいだけなのに。 「くそっ、くんなよ、化け物がっ!」 どうして、君はそんなに敵意を向けるの? 僕はただ、君と出会えて嬉しかっただけなのに。 僕は今、とっても悲しい。 …………でも、君ならきっと分かってくれる。 君ならきっと、抱きしめさせてくれる。 「くそっ、くそっ、くそっ!」 そんなに怯えなくても、大丈夫。君はきっと、他の奴らとは違うから。 …………さあ、追いついた。 ……君も、駄目なんだ。 残念だよ、悲しいよ。 どうして、僕は都市伝説に触れないの? どうして、僕が触るとみんな消えちゃうの? 君たちは、僕には手の届かない世界の住人なの? せっかく君たちのために、僕も都市伝説と契約したのに。 ……まぁ、いいや。 また、都市伝説を探そう。 僕がハグしても消えたりしない、そんな強い都市伝説を……。 【終】 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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好きで、都市伝説と契約した訳じゃない 好きで、都市伝説になってしまった訳じゃない 誰が好き好んで、こんな化け物になどなりたいと思うものか そうだ、化け物だ 誰が何と言おうが、所詮、都市伝説など化け物に過ぎない 人間に恐怖され、畏怖される存在でしかありえない どんなに、人間の心を保ち続けようが 人間だと認められるはずがない たとえ、人間だと認めてくれる者がいたとしても それ以上の大多数に、人間である事を拒絶される 俺は、化け物だ 化け物に成り果てちまった 何よりも憎んでいた化け物、都市伝説に だから、復讐してやるのだ 俺を化け物にしやがった連中に 俺のような存在を、無数に生み出そうとしていた連中に あいつらを全員、殺してやるまで、俺はまだ死ねない だが、連中を全て始末すれば 俺に生きる理由など存在しない 化け物として生き続ける気など、俺にはない 復讐さえ終われば、俺に未練など存在しない 未練など、あるはずが、ない、のだ 前ページ次ページ連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者
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暗い暗いその部屋に、灰色のコートを着た男が帰ってきた 尾なしの犬を引き連れ、部屋に戻った男は……部屋の中にいた先客に、機嫌悪そうな表情を浮かべる 「……何の用だ」 「つれないですね。私は、あなたの協力者だと言うのに」 その女は、男…朝比奈 秀雄に、楽しげにそう、笑いかけた 白い髪が、ぱさぱさと揺れている H-No.9を名乗る、「組織」の黒服だ もっとも、黒いスーツの上に白衣を纏うと言うやや珍妙な出で立ちのせいで、「組織」の黒服と呼ぶには、やや違和感も覚える しかし、彼女は間違いなく「組織」の黒服であり…朝比奈に、「都市伝説との契約書」を「組織」から持ち出し、与え続けた女である とは言え…最早、その事実は「組織」にバレてしまった 消される前に「組織」を抜け出し、その際に持ち出してきた「都市伝説の契約書」が全て使い尽くされたならば…この女は、朝比奈にとってもはや用無しである こちらの事情を知る相手は出来る限り少ない方がよい 使えなくなった駒は、消すに限るのだ 「用があるのなら、さっさと言え。化け物が」 「まぁまぁ、そう言わずに……どうでしょう?私の契約都市伝説の力、あなたの計画に役立てるよう、使って差し上げましょうか?」 形のいい唇を釣り上げ、重たそうな胸を支えるように腕を組みながら、そう言って来たH-No.9 …確か、この女の能力は… 「…「病は気から」、か」 「そうです。この力を使えば……あなたがその権力を欲する家の今の当主の、三日以内にその命、終わらせる事ができますよ?」 「……余計な事をするな」 低く、そうH-No.9に告げる朝比奈 彼の不機嫌な思考に連動するように、クールトーが唸り声を上げる 「あの男に、今の状態で死なれては困る……翼が、次期当主に着く事を、確定させるまでは」 「他の当主候補を全員殺してしまえばいいのでは?」 「それでは、世間から不審の目を向けられる。それでは意味がない。なりふり構わぬのなら、それでも良いが」 冷酷に、そう口にする朝比奈 目的の為ならば、己の息子すら平気で利用する男だ かつて伴侶にした女の家族すらも、目的の為ならば容赦なく殺せる冷酷さは持っている だが、それでは、目的を達する上で、不都合なのだ だから、まだ殺さない ただ、それだけだ 「こちらの役に立つというのなら、その能力で街に不幸でもばら撒いておけ…ただし、日景の家以外にな」 「そうですか。それならば、そうしましょう」 笑い、H-No.9は部屋を後にしようとする その直前、朝比奈とすれ違い……どこか妖艶に、笑った 「…ところで。いい加減、あなたの三つ目の都市伝説、教えていただいても宜しいのでは?」 「……私が貴様を殺す事になったならば、その瞬間に知る事になるのだから、必要はない」 「………酷い人」 肩をすくめ、部屋を後にしたH-No.9 朝比奈は、忌々しげに彼女が出て行った扉を見つめた 「……化け物が………増長するようだったら、さっさと消してしまうか…?」 …いや あの能力には、まだ使いどころがある あの女が、裏切ったり、敵の手に落ちるようならば、その時に消せばいいだけのことだ 利用価値がある限りは、生かしておいてやってもいいだろう その価値がなくなるまで、使い潰してやればいい 「…しかし、コーク・ロアの兵が増えぬのは不便だな……対策を考えておくか」 兵は多ければ多い方がいい だが、所詮は使い捨てだ 使えば減るのだから、増やす方法も考えねばならぬ さて…どうしようか? 朝比奈は、どこか残酷な笑みを浮かべながら、思考をめぐらせるのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 悪意が嘲う
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―第26章 厳粛な葬儀― 「ルーモア」のマスターが死んだ…1回だけとはいえ利用した身だ。お礼ぐらいは言いに行かなければ… という訳で黒の礼服で身を包み、僅かばかりの香典と花を持ち、葬儀に参列することにした。…高校生が礼服持ってちゃ悪いかこの野郎。 葬儀に出てみると、やはり都市伝説関係者や組織の人間達が多く集まっていた。 とりあえず花を供え、香典をあげてきた。 最後に一言「うちの馬鹿のためにビールと枝豆用意して下さってありがとうございます…」 しかし、こういう湿っぽい場所はなんか性に合わない。早いとこ帰ろう。 ―人が死ぬなんて場面なんて回数こそ少ないが、何度か見てきている。なのに―それなのに― 「…クソッ!」人の一人も守れないで何の為の力なんだ!! そこまで親しい訳ではなかったが、無理言って喫茶店でビールと枝豆を出してもらったんだ! 「…よし、後は着替えて…っと!」俺はいつものスタイル―学ランボタン全開―に着替え、夜の街へと繰り出した!無論哨戒のためだ。 いつ相手が来るかわからない今、俺に出来るのはただ普通に歩いているフリをした哨戒なのだ。 「…今度は大切な人を死なせたりはしないっ!」 哨戒に出る俺の背中がやけに淋しく見えたのだった… 前ページ次ページ連載 - 結界都市『東京』