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てゐ 出現階層 4F、5F、6F、7F、8F タイプ ノーマル/知識 防御・弱点 ○=悪、格闘、電波△=魔法、知識、愛×=ゴースト ステータス Lv10 Lv50 HP 42 425 攻撃力 24 100 防御力 29 125 精神力 29 125 抵抗力 29 125 敏捷力 26 110 固有能力 運がよくなる スペカ一覧 スペカ 修得Lv 体当たり 初期 しっぽをふる 初期 甘い香り 11 なきごえ 12 往復ビンタ 13 かみつく 14 クランベリートラップ 15 でんこうせっか 16 しびれごな 17 闇討ち 18 毒霧 19 うそなき 20 リドル 22 不意打ち 24 おんがえし 26 開運大紋 28 毒電波 30 悪の波動 32 どくづき 33 涙 34 ヘドロばくだん 35 どろぼう 36 あまえる 38 だまし討ち 38 幸運の金だらい 40 エンシェントデューパー 42 誰も触れてないようなので、てゐの固有能力を検証してみた。 場所は1階で、戦闘回数は10回。 先頭参加キャラが、魔理沙/サニー/ルナの場合。 取得アイテム 紅より儚い永遠×2 東方妖々夢 エクステンドアッシュ 解毒薬 取得Disk枚数 4枚 魔理沙/サニー/てゐの場合。 取得アイテム 夜雀の歌声×2 天狗の手帖 春風の夢 紅より儚い永遠 東方妖々夢 煎餅 取得Disk枚数 7枚 戦闘回数が少なすぎるので信用できないけれど、 てゐがいる場合Diskの取得枚数が3枚ほど多かった。 ※B1Fでの取得データ/50戦闘 (玄室以外の敵も含む) パーティ Disk アイテム 魔理沙サニー咲夜 17 5 魔理沙サニーてゐ 40 10 魔理沙サニー咲夜、控えてゐ 27 5 魔理沙サニーてゐ(てゐと控えの咲夜交代) 23 10 魔理沙サニー咲夜(咲夜と控えのてゐ交代) 34 12 →戦闘終了時にてゐが前列にいることが条件?サンプル少ないので参考までに。
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因幡てゐ Tewi Inaba 初登場作品 東方永夜抄 種族 妖怪兎 性別 女性 一人称 私 特殊能力 人間を幸運にする程度の能力 「みんな、私の言うこと聞けばもっと幸せになれますよー。」 概要 迷いの竹林と、その奥にある永遠亭を住処とする妖怪兎。 外見は幼いがかなりの年月を生きているらしく、健康に気を遣って長生きする内に妖怪変化の力を身に付けた。 竹林や永遠亭に住む妖怪兎たちのリーダーであり、彼らは全ててゐの手下である。 永琳と輝夜が迷いの竹林に永遠亭を建てて数百年後に永遠亭に侵入した。 その際に迷いの竹林の所有者を自称し、二人が「人間に見付かるまで歴史が進まない仕掛け」を亭に施して月の使者を避けていた事を見越してか「人間を寄せ付けなくする代わりに手下の兎達に知恵を授けろ」と契約を持ちかけ、それ以来部下共々永遠亭に住み込んでいる。 なお、てゐは輝夜の能力と永琳の知恵の結晶である仕掛けのせいで新たな歴史が起こらない筈だった昔の永遠亭に唯一歴史を起こしている人物でもある。てゐが何故仕掛けを潜り抜けているかは永琳すら解っていない。 外見 癖っ毛の短めな黒髪と、兎の耳と尻尾を持つ。 服は桃色で、裾に赤い縫い目のある半袖ワンピースを着用。永夜抄では裸足だったが、花映塚では靴下を履いている。 性格 妖精のように気性の激しい性格。 また、非常にお調子者で悪戯好き。賽銭詐欺などの規模の小さな詐欺的行為も働いている模様。 閻魔の四季映姫にも「程度の低い詐欺」呼ばわりされている。ただ、詰めを誤り痛い目に合う事も。 ただし前述のように非常に長い時間を生きてきただけあり、知識と経験はかなり豊富なようである。 能力 人間を幸運にする程度の能力 他人に幸運を与えることが出来る。 迷いの竹林で迷った場合でも、てゐを見つけることさえ出来れば運良く竹林を抜けることが出来る。 ただ、折角貰った幸運も竹林を抜けるだけでほぼ全て使ってしまうのだが。 てゐの足元の花が全て四葉のクローバーになっていたり、金銀財宝を掘り当てていたりするなど、てゐ自身も幸運になれるようである。 +本ロワにおけるネタバレ 本ロワにおける動向 初登場話 030:Look into my evil eyes 死亡話 :[] 登場話数 2話 登場時期 詳細 初登場は30話「Look into my evil eyes」。 DIOとの交戦から離脱し、逃げ延びてきたブチャラティに接触。 腹に一物を抱えながら、彼女はブチャラティから事情を聞き出すことに。 第48話「お宇佐さまの素い足」ではブチャラティから事情を聞いた後に彼と同行し、共に人里へと移動。 コンビニで物資を回収した後、打倒主催者とマーダーの無力化を目的とするブチャラティと「自分が着いていった所で足手纏いになってしまうから」という理由で別れることに。 生存優先のスタンスではあるが、あくまで「殺し合いに生き残る」ことよりも「誰かがこの異変を解決して安全に事が済むこと」を望んでいる様子。 ブチャラティから閃光手榴弾を受け取り、彼に「幸福にする能力」を行使したてゐは一先ずの拠点とすべく虹村家へ移動。 支給品であるジャンクスタンドDISCから得られた「コロッセオの真実の口に仕掛けがある」という情報について思い返す。 コロッセオへの移動を考えるもブチャラティから聞いたDIOの存在を思い出し、吸血鬼が行動出来ない日中になるまで虹村家で待機することに。同時に己の身の振り方に付いても思案するのだった。
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てゐ あんぱん一周年記念祭終了後の朝、突如現れた兎 その実態は未だ謎に包まれている うさぎ習性 1.「一番かしら」 スレ立て直後早々に登場する傾向 2.「ぐっ」 こぶしを握って力強く歌う、どうやらサンホラーらしい 3. 人の服を借りて着る。あまりの早着替えにもはや見るほうは涙する暇もない。事務員服のはまりようは本人もびっくり。また虹裏喫茶ル・マンの制服もぴったりである。コスプレ大好きなご様子。 4. パン娘の一張羅を借りて着たりもしたけどやめて! それは彼女の着たきり一張羅なの! …ああ…着ちゃったのね…? 5. センの服はさすがに借りられなかった様子。とりあえず服が黒くなってセンをベルトのバックル風につけている 6.「てぬ」と呼ぶと「てみ」とかえしてくるよ? 7.割とドライな性格のようだ。 8.たまに寂しくなるときがあるので慰めてあげてください(要にんじん) 9.真紅とはたびたび良い争いをしているように見えるが、別に仲が悪いわけではないらしい 他のレスラーとの関係 ⇔偽乳魔人(恋人) ここのページを編集
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因幡 てゐ 加入場所 径の町 ステータス倍率 HP★★☆ MP★★★★ 攻撃★★★★☆ 防御★★★★ 魔攻★★★ 魔防★★★ 命中★★★★★★ 回避★★★★★ スキルツリー スキル名 前提スキル 種別 対象 消費MP 詠唱時間 効果 ラピッドラビット パッシブ 無し 0 0 誰にも負けない手先の器用さ。スキルレベルに応じてDex増加。 兎のリーダー パッシブ 無し 0 0 あらゆる動物を従わせる。スキルレベルに応じて動物種族に追加ダメージ。 挑発 アクティブ キャラ 10 0 対象を挑発する。単体の防御を減少させる。スキルレベルに応じて減少量増加。 スティールマネー アクティブ キャラ 10 0 対象のお金を盗む。スキルレベルに応じて確率増加。 スティールアイテム スティールマネー 3 アクティブ キャラ 10 0 対象のアイテムを盗む。スキルレベルに応じて確率増加。 誘惑チャーミング ラピッドラビット 5ラビットステップ 1 パッシブ 無し 0 0 店主を誘惑して、店のアイテムを安く買える。スキルレベルに応じて割引率増加。 粉飾スウィンドル ラピッドラビット 5ラビットステップ 1 パッシブ 無し 0 0 店主を欺いて、店にアイテムを高く売る。スキルレベルに応じて割増率増加。 吹き飛ばしの罠 アクティブ 床 10 0 地面に罠を設置する。敵が通ると吹き飛ばされる。スキルレベルに応じて吹き飛ばし距離増加。 移動不能の罠 アクティブ 床 10 0 地面に罠を設置する。敵が通ると移動不能状態になる。スキルレベルに応じて確率増加。 ラビットステップ アクティブ 使用者 5 0 素早く右か左に移動する。スキルレベルに応じて移動距離増加。 脱兎のごとく アクティブ 使用者 10 0 どこかに身を隠して、潜伏状態になる。スキルレベルに応じて持続時間増加。 兎の足 ラビットステップ 5 アクティブ 使用者 20 0 希に敵の攻撃を強制回避。この判定は通常の命中判定より前に行われる。スキルレベルに応じて回避率増加 ラビットダッシュ ラビットステップ 5脱兎のごとく 3 アクティブ 使用者 10 0 全力で走って、その場で戦闘から逃げる。スキルレベルで逃げられる確率が増加。 フォーチュンアタック 挑発5 パッシブ 無し 0 0 幸運の攻撃。通常攻撃に希にクリティカルが出るようになる。スキルレベルに応じて確率増加 トリックスター 挑発 5 パッシブ 無し 0 0 彼女の目的に特化した驚異のスキル。潜伏状態のまま攻撃を行うことが可能になる。スキルレベルに応じて潜伏中のMP消費量減少。 フォーチュンワールド フォーチュンアタック 5 パッシブ 無し 0 0 幸運の世界を作り出す。自分の周りの仲間が希にクリティカルが出るようになる。スキルレベルに応じて確率増加。 トリックワールド トリックスター 5 アクティブ 無し 50 1000 世界への悪戯。敵味方全てのキャラが、行動速度の遅いほど行動ゲージが早く貯まるようになる。 チェンジザセオリー フォーチュンワールド 10トリックワールド 10 アクティブ 無し 100 1000 世界の法則を乱す。敵味方全てのキャラが、ダメージ計算時に自分と相手のステータスを入れ替えて計算が行われる。 スキル詳細 チェンジザセオリー・・・・・・ボスにも効く。 特徴 幸運の白兎。人間を幸福にする能力を持つが、本人はこの能力を詐欺まがいな事にしか利用しない。 最強のボスキラー。 チェンジザセオリーが発動するとボスのインフレした火力を自分の物にすることができる、どころか相手からの攻撃も大幅にカットするのでまず負けることがなくなる。 ラスボスに至っては通常攻撃のみで嬲り殺すことすら可能。 反面、有用な攻撃スキルが殆ど無く回復技どころか遠距離・範囲攻撃すら持ち合わせていない。自分の目の前の敵にしか攻撃できないのである。 自衛戦闘以外だと罠を敵の周辺に設置して隙を作り出すくらいしか役目が無い。ボス戦では無類の強さを誇るが、雑魚相手の戦闘では活躍しにくい。 イベント戦闘では無効。ついにボスでも活躍しなくなってしまった・・・ -- 名無しさん (2013-02-07 00 30 08) ↑書き忘れた。チェンジザセオリーね -- 名無しさん (2013-02-07 00 41 24) ↑地てゐダンジョンでで経験位稼ぎには使える -- 名無しさん (2013-02-09 14 44 06) 名前 コメント
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「まさか~。私は何時だって人の言うことを良く聞く、 幻想郷で最も賢くて可愛い兎、って呼ばれてるんです」 『東方Project』の登場キャラクター。読み方は「いなば てい」。初出は『東方永夜抄』5面中ボスとしての登場。 種族は妖獣(妖怪兎)。「人間を幸運にする程度の能力」を持つ。 二つ名は「幸運の素兎」。初登場時のBGMは「シンデレラケージ ~ Kagome-Kagome」であり、 これがファンの間では彼女の専用BGMといった扱いだったが、 『東方花映塚』にて自機として登場した際には専用BGMとして「お宇佐さまの素い幡」が作曲された。 + 詳細な原作設定 ゲーム上では『東方永夜抄』では5面中ボス、『東方花映塚』では自機として登場する。 元々はただの兎であったが、長生きするうちに妖怪となった。その為見た目に反してかなりの高齢。 永遠亭や迷いの竹林の兎や妖怪兎達の中では最年長であり、リーダーでもある。 公式での描写から日本神話の「因幡の素兎(後述)」本人である可能性が高く、 それが事実であれば、『東方Project』全キャラ中でも3番目か4番目くらいの高齢者である。 + 因幡の素兎とは 淤岐島という離島に住んでいた兎が本土の因幡に渡る為にワニ(鰐とも鮫の方言とも)を騙して利用しようとした所、最後の最後に詰めを誤り、 身の皮を剥がれてしまった、という日本神話の有名なエピソード。 更に追い討ちに、素兎(しろうさぎ。白い兎ではなく裸の兎の意)は通りすがりの八十神に (八十柱、もしくはそれ以上の大量の兄弟神たち。因幡在住のヤガミヒメという女神に求婚する為にレース中)、 「皮を剥がれた傷が痛むなら身体に海水を塗りこんで風に当たっていれば良くなるよ」とデタラメを吹き込まれ、傷を更に悪化させてしまう事になる。 打ちひしがれ素兎が泣いていた所に、オオナムチ(大穴牟遅)という名の、八十神兄弟の内の一柱で兄達の荷物を運んでいた神が通りすがる。 オオナムチは素兎に、「傷を治したければ傷口を川の真水で洗って蒲の花粉を塗りつけておきなさい」と、 他の兄弟達とは違って適切な治療法を教え、素兎の傷は無事に治った。 すっかり感謝した素兎は、「ヤガミヒメは八十神の兄弟達ではなくオオナムチ様を夫に選ぶでしょう」と予言し、実際にその通りとなる。 この逸話をきっかけに、因幡の素兎は縁結びの神として祭り上げられる事となるのであった。 + オオナムチって? ちなみにオオナムチという神は後にオオクニヌシ(大国主)と名を変え、日本神話に様々なエピソードを残す。 『東方儚月抄』REX版第一話にて地上の妖怪兎達が彼の話題でキャッキャしていたり、 霊夢が「美形だから」と呼び出そうかと検討していたりするのがオオクニヌシである。 所詮男は顔である。 上述の通りオオクニヌシは元ネタでも大変なイケメンとされており、 「因幡の素兎」のエピソードで最初に妻としたヤガミヒメ以外にも多くの女神達を妻とし、180柱もの子を設けたリア充の極みのような神だった。 同じく『儚月抄』REX版19話でも触れられている通り、八坂神奈子の元ネタの一つであるタケミナカタ(建御名方神)も、 オオクニヌシの子の一柱である。 地上の国・葦原中国を大いに繁栄させ、それの支配権を奪うために高天原が遣わした神々にもその人柄に惚れ込んで高天原を離反する者がいた等、 国津神々の筆頭として十二分なカリスマと実力を備えていたようである。 また、七福神の大黒天と語感が似ている事から、同じ神格とされる場合もある。 そうなってしまうと、大黒天即ちマハーカーラーの主神格である、インドの三大神・破壊神シヴァとも同じ神となってしまうのだが、 まぁこういう無茶ぶりは神話ではよくある事である。 ちなみにてゐのスペルには「エンシェントデューパー」(古代の詐欺師)、借符「大穴牟遅様の薬」などこの話を元にしているものもあり、 ますますこの説に信憑性を持たせている。 また、霊夢が神降ろしした天石門別神(『古事記』の天孫降臨の段に登場、天孫ニニギに付き添って降臨した神様の一柱)を見て、 懐かしいと思っているあたり、「因幡の素兎」より後の出来事である「天孫降臨」も目撃してると言わんばかりの雰囲気である。 なお、『日本書紀』によると天孫降臨は約179万年前の出来事。 これらの元ネタより、てゐが伝承に出てくる因幡の素兎その物だとすると、少なくとも神奈子が生まれる前から生きている事になる。 ロリババアってレベルじゃねえぞ! まあ、伝承の因幡の素兎本人(本兎?)だと断定する根拠は無いので、本当にそこまでの年かは不明。1000年以上生きているのは確実らしいが。 かわいい見た目とは裏腹に陰険で嘘つきな性格で、人を騙したりする。 てゐの元ネタである因幡の素兎が鰐(鮫)を騙した事に由来しているようだ。 狡猾な性格で、ある程度距離を置いて接すれば人気が高いが、親密になればなるほど嫌いになるタイプである。 根っからの詐欺師的な性格で、何度しっぺ返しを受けても懲りない。 ただし、彼女の「人間を幸運にする程度の能力」は見かけたり会ったりするだけでも効果があるらしいので、 騙されてもそんなに不幸というわけでもないのかもしれない。僕はてゐちゃんが見られるだけで幸せです。 ちなみに能力の効果は阿求曰く、四十葉のクローバー級だとか。 しかし、通常てゐは迷いの竹林(永遠亭のある竹林。微妙な傾斜で方向が狂う、竹の成長が早いため目印がないなどの要員で迷いやすい)で目撃され、 目撃した人はこの竹林を出るのにてゐを見た事で得た幸運を使い切るらしい。案外凄いレベルの幸運なんだろうか。 幸運は別に人間限定という事でもないのか、『花映塚』では自分の足元のクローバーが全て四葉のクローバーという幸運を起こしていた。 数百年前、八意永琳と蓬莱山輝夜が隠れ住む「永遠亭」に侵入し、永琳との取引を行う。 その内容は「てゐが永遠亭を人間達から隠す代わりに永琳は妖怪兎達に叡智を授ける」というものだったらい。 ちなみにこの頃のてゐは白い服を着ていた。 この取引には一応ちゃんとした理由?があり、 てゐに言わせれば永遠亭がある迷いの竹林自体が、大昔は「高草郡(たかくさごおり)」と呼ばれていた場所で、 元々てゐ(因幡の白兎)が住んでいた所なので、自分の断り無しに住み着くとはどういう事だと直談判に行って上記の取引をしたわけである。 永遠亭に人を近付けない方法は不明だが、仕事っぷりは永琳からも信頼されており、鈴仙が40年程前に初めて竹林に来た時もてゐがいち早く発見、 永琳に「月からの侵入者が居る」と相手の素性まで見抜いて報告して指示を仰ぎ、永遠亭に逃げ込んでくるよう仕向けている。 ちなみに、てゐが侵入した時に永遠亭には、その名の通り「永遠の魔法(全ての変化を拒絶する術)」が輝夜の能力と永琳の術によって施されていた。 全ての変化を拒絶すると言う事は、歴史となる出来事が一切起こらないという事である (具体的には、壺の位置は動かせるが落としても割れない、水を土にこぼせば染み込まず水が容器に逆戻りする、など)。 てゐはそんな永遠亭に「変化」を起こした唯一の存在である。 どのようにして永遠の魔法を破って侵入したのかは明らかになっていない(永遠の魔法は『永夜抄』以降は解かれている)。 元々は正真正銘兎なので、今は仲間の兎ともども輝夜に飼われている形になっている。 永遠の魔法がかかっていた時代の輝夜からは、てゐも鈴仙も他の兎も区別を付けずに「イナバ」と呼ばれていた。 鈴仙の認識では、自分はてゐの上司で、永琳や輝夜はさらにその上の上司なのだが、 契約関係はあくまで対等で、てゐが永琳や輝夜の言う事を普段聞く義務も特になく、永遠亭でも昔から自由奔放に生活してきた。 永遠亭の住人は近しい存在ではあるのだが、月特有の地上を見下す価値観が残っているのを感じ取っていて、斜に構えた態度を取っている。 永遠の魔法が解けて以降、月的な価値観は変化していってはいるが、まだまだてゐが素直に接するほど抜け切ってないのが現状。 妖獣の身体能力は元々の動物が持っていた特性の影響が大きいとされる。ウサギの身体能力の特徴と言えば「脱兎の如く」と言われるスピード。 ウサギはチーターに似た骨格による走りが可能で、チーターが時速70~110km程度で20秒程走るのに対して、 ニホンノウサギは時速50~80km程度で5分程走る。 てゐがこのウサギの特性を受け継いでるかどうかは不明だが。 本編である『東方永夜抄』では、立ち絵無し・スペル無しの中ボスだったのに、 オマケ要素の『ラストワード』にカットイン付きで唐突に現れ、「誰てめえ」→被弾、という究極の初見殺しを受けて散ったプレイヤーは数知れない。 また、5面中ボスとして現れた際にも、他の中ボス専任連中とは違い耐久力が2ゲージある上に、 倒しても爆発して散ったりせず退却していくだけと、格の違いをそこはかとなく見せている。 その後上記にも書いてある通り、東方花映塚で自機として採用されたりと(中ボスでは彼女以外採用されていない)、 中ボスでありながら妙にいい扱いをされているという変わったキャラクターである。 そのため、ファン達からも(中ボスの中では)人気が高い方であるとかないとか。 + 二次創作での扱い ファンからは単に「てゐ」、若しくは捻って「てうぃ」「てーちゃん」「兎詐欺(うさぎ)」等と呼ばれる。 もっぱら腹黒の悪戯大好きなぶりっ子といった描かれ方である。 主な被害者はいじられキャラに定評のある月の兎さん。 『花映塚』や『月のイナバと地上の因幡』での会話を見るに、 一応は上司であるはずの鈴仙が、主な悪戯の被害者(二次的な被害も含む)であるのは公式設定らしい。 流石に月の頭脳やその主をからかうのはリスクが大き過ぎるのも原因か。 まあうどんげっしょーではこの人を落とし穴に落としたりしているのだが。てゐの知略恐るべし。 しかし漫画『東方三月精』では、魔理沙に騙されて毒草*1を食わされ嘔吐してしまった。 元ネタでも嘘を吹き込まれて被害に遭っているあたり、実は彼女自身も騙されやすいのかもしれない。 元ネタの因幡の白兎は、後に縁結びの神様として信仰されるようになったが、 てゐはファンの間でも神の眷属じゃないかと言われてはいるが、一応分類上は妖怪である。 ただ、竹林で彼女を見かけると迷わず抜けられるようで、人間からの信仰はあるようだ。 ニコニコでは黎明期から存在しているIOSYS制作のシンデレラケージアレンジ曲「ウサテイ」と、 それをゆっくりリメイクした「ウザテイ」が特に有名だろう。 ちなみにウザテイは、動画の内容も大百科も洗脳されそうなウザさとコアなファンからは好評で、 リメイクであるにもかかわらず100万再生突破どころかはてはウザテイ専用コミュニティまで作られている。 ウザテイに関して言えば正にウザいはホメ言葉なのである。 え?戦闘力? ロリっ娘におっぱいなんてありませんよ…アルカナや大番長じゃあないんですから…とでも思っているのか? なんと『東方儚月抄』において、てゐが巨乳に見えてしまう程の絶壁キャラが現れた。 戦闘力もいろんな意味でてゐ以下である。 これにより、「つるぺた幼女」とか「ロリババア」というイメージが強かったてゐも公式巨乳の仲間入りを果たした。 ナニ?絵師が違うからそうなっただけ?どの道貧乳扱いが主流?聞こえんなァ。 ちなみに、二次創作ではたまに語尾に「~ウサ」を付けているが、原作でそんな喋り方は特に見られない。 創作で使われる場合は「嘘をついている証拠」というような感じで使われる事が多い。 というか、そうでもしないと口調に個性が感じられないという(ドリ符「伝統と実績の金ダライ」 極稀に優曇華の事をお姉様と呼んでいる作品もあるが、実際はてゐの方が(多分)年上。 これは昔の同人誌などでたまに見かける程度であり、『永夜抄』の時点で台詞が無く、優曇華が5面ボスに対しててゐが5面中ボスだった事から、 「立場では下?」と勘違いしたからと思われる。 幻想郷において「全ての幼女が見た目通りの年齢ではない」という一例で、てゐも例外ではない。 MUGENにおける因幡てゐ 永琳や鈴仙(手描き)の技として早くからMUGEN入りはしていたが、後に単体で製作・公開する製作者が現れた。 オオバコ氏がドット絵を公開してからは、それを使用した改変キャラが多い。 この中でも強から狂まで幅広いランクのMUGEN動画で名を轟かせているのが、ピカポン氏の因幡てゐである。 + リアス式海岸氏製作 てゐ(?)ガー リアス式海岸氏製作 てゐ(?)ガー 2009年12月20日にリアス式海岸氏によって公開されたもの。 read meによると「元ネタが好きな方、すみません」。 イントロでは普通の手描き風だが、ドーピングによってその本性を現す。 ネコアルク・カオスのものを改変した手描きドットが用いられている。 「東方の悪戯兎詐欺とブレイブルーの赤鬼が合体したナマモノ」との事で、 『BLAZBLUE』の投げキャラ「テイガー」をモチーフにした技の数々を搭載している。 元ネタのテイガーさんと同じくダッシュ動作はなく、二段ジャンプも不可能。 通常打撃で口からヤゴコロを吐き出したり、ゆっくりを地面から生やしたりと、かなりネタ要素が強いキャラクター。 投げキャラではあるが通常投げを搭載しておらず、通常技のリーチも短く発生も遅め。 高ダメージのコマンド投げ、超必殺技をメインに据えて戦うキャラとなっている。 公開から8時間足らずで早速AIが製作された。もうジェバンニってレベルじゃねえぞ! 同年12月30日の更新でアストラルヒートも実装された。 その後長らく更新がなかったが、11年4月20日に1年振りに更新され、12Pカラーが追加された。 強化内容は、防御2倍、ゲージ常時MAX、超必殺技の攻撃力が1万超え、など。 + ピカポン氏製作 因幡てゐ(カンフーラビット) ピカポン氏製作 因幡てゐ(カンフーラビット) 2010年3月15日にピカポン氏によって公開されたもので、後述のレミリア改変てゐの前身でもある。 ドットはチルノ、中身はカンフーマンを改変したものが用いられている「カンフーラビット」。 イントロではカンフーマンの板割りの如く、優曇華を杵でぶん殴る。 技もカンフーマンベースだが、正確には和訳版カンフーマンがベースの為、ゲージ溜めと飛び道具が使える他、 シールドと兎の群れがやってくるうさぎラッシュが搭載されている。 カンフーアッパー相当の技が腕でなくヘッドバッドだったりと、細部は等身に合わせて変更されているが、 動きは基本的にカンフーマンに準じているので、カンフーマンやその改変キャラのスプライトをてゐに差し替えてみるのも面白いかもしれない。 なお、このキャラクターは攻撃ボタンが4ボタンではなく2ボタンになっているなど、 細かな点ではカンフーマンと異なっているため、カンフーマン用のAIをそのまま利用する事は不可能である。 AIは未搭載だが、コルクボード氏から簡易的なAIが公開された。 シールドでのディフェンスを試みながら、無敵時間の長いヘッドバッドを軸に攻める。 氏曰く、キャラ自体の性能が高いので、簡易AIでも勝率は悪くないとの事。 + 大会ネタバレ あのサンドバッグだったKFRが……(3 48~) AIさえ入れば、こんなに強靭に!(4 10~) ちなみにMUGEN祭 大盛りシングルトーナメントに出損ねた(というか推薦されなかった)。 KFRにとって、これが公式戦における初勝利だったりする(喜んで良いのか?)。 AIがあるって素敵な事よね……。 君も初心者用AI講座読んで、AI作成 や ら な い か + ピカポン氏製作 因幡てゐ(2体目) ピカポン氏製作 因幡てゐ(2体目) ピカポン氏によって公開された、ピカポン氏2体目のてゐ。 前述のカンフーラビットに、画像は天則のチルノのドット絵を、cnsはNachel氏のレミリア・スカーレットをベースにしたもの。 こちらは杵を使った技に人参やタケノコ弾幕など、基本動作がレミリア風になっている。 スピードと弾速のある弾幕で相手を引っ掻き回し、一発を的確に刺して行く面もそっくり。 しかし、特殊技や必殺技は独自のものが大量に搭載されており、罠スイッチを置く設置技や兎が出てくる当て身技、 相手を落とし穴に落とすコマンド投げ、ブリス技の物置や儚月抄4コマ由来のギターマシンガンや大砲、 回復しつつダメージを与える技に加えて、ロマン技や自爆技まで用意されおり、バリエーションが豊富。 AIでは見切りにくい兎玉やタライといった、AI殺しの要素が満載されており、設置キャラの側面も持っている。 中でも目立つのはストライカーの輝夜、永琳、鈴仙を使った技だろう。それぞれに複数の技が用意されており、AIも多用するので見る機会が多い。 ちなみにこのストライカーは有無を設定でき、ストライカー無しの時限定で出せる技も複数用意されている。 ストーリー等で使う時は、こちらのストライカー無しの設定にしても良いだろう。 また、最後の切り札として某有情拳に似た技によく似た「エンシェントデューパー」がある。 5ゲージ以上かつ瀕死状態でのみ発動可能で、ゲージに比例して威力が変動する大技だが、 相手を倒せなかった場合は自分が死ぬという一発逆転を賭けた博打技。 しかし普通にガード可能で、位置によっては殆どリターンが無い、LIFEの多いキャラはフルゲージ発動時でも削り切れないなど難もある。 とはいえAI戦で苦境をこの技で勝利に変えてしまう事も多々あり、見事KOした際の心綺楼風のカットインを見せる機会も多い。 ここには書き切れないが、原作STGや漫画版儚月抄由来の原作ネタ、有名な二次ネタ、パロディ技まで取り揃えている。 技がとにかく豊富なので、対人戦の場合は次に出す技が予想されにくいのが強み。 この他にも各種特殊やられに対応し、特殊イントロや勝利演出も数多く、あまつさえヤゴコロダンスまで踊りだす始末で、製作者の愛が籠められた逸品である。 特に特殊対応に関してはゆ~とはる氏キャラ、bara氏リリスと並び、本来成立する事が珍しい筈の対応を、動画出演の度に期待される程。 それだけにデータ容量が重く、100MBに迫る程。 特殊カラーも細かく分かれており、ランクに合わせて調整が可能。 7Pは原作モード。原作重視の技以外を制限したモード。 8Pは淫乱ピンク。常時アーマーで防御力が高い代わりにライフとゲージがどんどん自動減少し、最終的に死ぬ。 9Pは怒りのスーパーモード。攻防強化(攻撃力は全カラー中でトップ)、ゲジマシ、全攻撃ガード不能な攻撃特化。 ただしライフが緩やかに減り、喰らい抜けでもライフを消費する。 10Pは銀の聖者。攻防強化、ゲジマユ+ライフ自動回復。昔の11P・12Pに近い性能。 11Pは殺意の波動。攻防強化、ゲジマユ+ライフ自動回復。喰らい中でも回復し、ライフ消費の喰らい抜けも可能。 12Pは伝説の超戦士。高い防御力と根性値に常時アーマーの防御特化だが自動回復はしない。当然のようにゲジマユ。 特殊カラーはあくまでおまけと演出を程々にするキャラが多い中、カットインやストライカーまで専用のカラーになり、 ニュートラルポーズどころか一部の演出まで変わる(例:10Pでエンシェントデューパーが胡坐に)という拘りようである。 製作者マイリスト AIも当初は改変元のレミリアの物をそのまま使っていた(てゐ独自の技を出さない)が、 後日、ごく簡易的にではあるが、これまで使用しなかった技を使用するようにAIが調整された。 AI作成は自由となっているが、デフォルトで搭載されているAIでも十分に強く、某プレイ動画では、 うp主に「てゐだけで動画が一つ作れるくらい負かされた(意訳)」と言わしめたり、某大会では優勝を果たしたりと、全く不足を感じさせない。 これにガチ強AIが搭載されたらどうなる事か…。 かつてKOS-MOS氏から可愛いボイスパッチが公開されていたが、現在は公開停止中。 2010年12月31日に、製作者自ら「てゐを活躍させるため」という理由でミニトナメを開く。 取り敢えずラストのオチが酷い(褒め言葉)。 + 大会ネタバレ Mugen Hex Battle IIIにて前大会から引き続き登録されていたが、 参戦キャラは登録されているキャラの中から、逐次ランセレで決めるというルールのために参戦が遅れ、終盤になって霊夢軍に参戦。 そのまま一戦もせず最終決戦に臨んだ。 両陣営総当たりの最終決戦でも順番はランセレによって決められたが、ここでもその遅参ぶりを発揮。 ランセレに入らず、強制的に最後まで残る副将と大将を除いた、霊夢陣営最後の一人として登場する。 対する相手は敵陣営最後の一人にして、明らかに格上のkoikoi氏トキ。つぎつぎとコンボを決められ、星点灯、体力1割にまで追い詰められる。 しかし壁コンを落としたトキが、起き攻めに放った有情破顔拳を、有情破顔拳そっくりのエンシェントデューパーの無敵でかわし、 逆に倒すという大金星を上げる。 その後さらにトキ専用勝利イントロまで放ち、多くの視聴者に全てはこの日のために用意されたものと錯覚させ、 MUGEN史に残る名勝負とまで言わしめた。 その後は敵大将のミクの奮闘に阻まれて霊夢軍は敗北したものの、多くの人がミクの奮闘よりもてゐの勝利が報われなかった事を惜しんだ。 主役は遅れてやってくるとは、よく言ったものである。 + 石氏製作 Michael-T 石氏製作 Michael-T ピカポン氏のてゐのドットで作られた神キャラ。 現在はZIRU氏が代理公開している。 ただし、代理公開されているものは神キャラ化する以前のものなので注意。 オオバコ氏配布のドットを用いて作られたもの + ピカポン氏製作 因幡てゐ(3体目、真!!カンフーラビット) ピカポン氏製作 因幡てゐ(3体目、真!!カンフーラビット) オオバコ氏配布のドットを用いて作られた、ピカポン氏3体目のてゐ。 1体目と同じくカンフーマンベースだが、1体目から更新したものではなく、新たに作られた模様。 こちらはカンフーアッパー相当の技が蹴りになっている。 aahuroro氏のカンフーマンAIを改変した上で搭載しており、 その影響なのか、「うさぎラッシュ」などの追加技は非搭載で、攻撃ボタンもカンフーマンと同じく4ボタンとなっている。 ただし、うさぎラッシュ以外の追加技はスプライト自体は登録されているので、 旧カンフーラビットのcnsファイルとcmdファイルから、該当する記述をコピーすれば使用できる。 一方で外部AIに関しては旧版と違い、DEFを書き換えればカンフーマンのものをそのまま使用できる。 …と言っても、リーチを弁えないので、さほど強くはならない。 2012年5月17日には、搭載AIをkoikoi氏のものにした新バージョン「帰ってきた 真!!カンフーラビット」に更新された。 一応aahuroro氏AIの旧バージョンも残ってはいるが、ほぼ上位互換といっていいだろう。 + 石氏製作 Michael-Reforexister 石氏製作 Michael-Reforexister 詳細情報求む。 + Passer-by氏製作 しろうさぎ Passer-by氏製作 しろうさぎ Lycoris氏が同氏の煉をベースに、オオバコ氏配布のドットを用いて製作したてゐを、 Passer-by氏(或いは339氏ことSchmidt Hans氏)が改変したもの。現在は氏のOneDriveにて公開中。 てゐなのか、その部下なのかは不明という設定らしい。 + KON氏製作 因幡てゐ KON氏製作 因幡てゐ 現在は氏のOneDrve消失により入手不可。 オオバコ氏配布のドット絵を用いて作られたてゐ。 『東方萃夢想』をベースに『緋想天』や『非想天則』の要素を追加している。 画面下部に表示されている『萃夢想』風の霊力ゲージが目印。 機動力が高めで喰らい判定が小さいため逃げ性能が高く初見殺しな技が多い反面、 火力・制圧力が低く、技も一度ネタがばれてしまえば対処は可能であるため、 逃げ回りつついかに相手の虚を衝くかが重要となるキャラである。 ABAB氏のAIが公開されている。 + nns氏製作 非想天則風てゐ nns氏製作 非想天則風てゐ 最終版は2012年5月13日公開のver1.03。 オオバコ氏配布のドット絵(改変したものを含む)を使用。AIもデフォルトで搭載済み。 借符「大穴牟遅様の薬」は自己強化技で、4回使うと鈴仙の生薬「国士無双の薬」と同様に爆発する。 特殊カラーとして常時ゲージMAXの11P(黒カラー)と、さらに強化された12P(金カラー)がある。 なお、WinMUGENでの使用が前提で、新MUGENでの動作保障は一切してないとの事。 + HAL氏製作 月華の剣士風てゐ HAL氏製作 月華の剣士風てゐ こちらもオオバコ氏配布のドット絵で製作されたてゐ。 『月華の剣士』のシステムを用いたキャラになっており、弾幕どころか飛び道具が一切無い。 氏曰く「月華のシステムで作れそうだなーとなんとなく思った」との事。 同製作者の玄武の翁と同様、剣質「極」の強化やガード硬直短縮のON/OFFを設定できる。 全体的な性能としては、機動力の高い接近戦キャラといった所。 通常技のリーチが短い(特にA系)ものの、JBのめくり性能が高く、高火力なキャラとなっている。 2012年9月の更新で追加入力のタイミングによって威力が変化するコマンド投げも追加された。 小柄に見えるが、喰らい判定は見た目より少し大きめ(特にしゃがみが顕著)なので注意が必要。 付属のAIは無いが、2012年9月にsekt氏によりAIパッチが公開された。 + Felicity氏製作 てゐ・グローバー こちらもオオバコ氏配布のドット絵で製作されたてゐ。 名前の通り、ラッキー・グローバーの技を使うてゐ。システム周りは『'98UM』のエクストラモードのもの。 ラッキーはリーチの長さが特徴のキャラだが、このキャラのリーチは総じてあまり長くはない模様。 出場大会 + 一覧 + 因幡てゐ シングル オールスターゲージ増々トーナメント EPO成長トーナメント【えぽ】 新年!兎トナメ MUGEN祭 大盛りシングルトーナメント HIGE11P前後ミニランセル大会 狂下位以上狂中位付近ランセレバトル 東方宇超星トーナメント 第2回最近出来たキャラ or AI 大会 黒カラー限定ブラック杯 脱衣KO増々トーナメント 筐体クラッシャーズ集合!台パンシングルランセレバトル 金グロ前後 狂下位上限シングルトーナメント 負けて勝つ狂ランクシングルランセレ大会 「お前ら、真面目にやれ!」シングルランセレ大会 MUGEN祭 並盛りシングルトーナメント 東方狂大祭 多分私がNo.3だと思いますトーナメント みやびちゃん未満 ランセレぷりちーバトル 筐体クラッシャーズ集合!台パンシングルランセレバトル2 多分凶中位前後 本気を出せばお前らなんかランセレバトル 幕末前後!核ゲー入門ランセレバトル ミニ盛りシングルトーナメント リュウ前後凶中位級シングルランセレバトル 東西対抗東方狂大戦 ランセレに愛されろ!空気勢滅殺シングルバトル! 星取り地獄~輪廻杯~ 幻想郷サバイバルRe. 凶以下東方only大会 【MUGEN大祭】特盛りシングルトーナメント 東方永夜杯(ただしその姿は白い犬) タッグ 幻想郷男女タッグトーナメント 戦いごとにルールが変わる!!高性能タッグ大会 ゲージ増々タッグトーナメント mugenオールスター?タッグファイト 新秋東方タッグ杯 第二回東方夢幻童空杯 謎基準タッグプチ大会 第四回幻想郷お祭リーグトーナメント【タッグ】 女同士の絆を示せ!男子禁制!女性タッグバトル大会 【よしお前ら】第2期このメンツで戦ってもらった【ケンカしろ】 第三回東方夢幻童空杯 組ませたかっただけタッグ大会 第4回遊撃祭 幻想郷お祭ランセレトーナメント 第二回幻想郷お祭ランセレトーナメント【タッグ】 初心に戻る!至って普通のタッグトーナメント大会 【初心杯】 リリー「春ですよー!タッグですよー!」 友情の属性タッグトーナメント2 古参VS新鋭 新旧交代式TAG FIGHT 2012年公開キャラ&AIでタッグチーム大会 滅茶苦茶レベルなタッグ大会 EFZ&東方 黄昏タッグトーナメント ペットを大切にしない奴は死ねトーナメント 第二回EFZ 東方 黄昏タッグトーナメント 超お神杯凶上位前後タッグバトル 凶者繚乱タッグバトル MUGEN祭 並盛りタッグトーナメント 新生地獄の果てまで仲良し! 大お神杯凶上位付近タッグバトル 喧嘩上等! 強~凶下位付近タッグバトル 新顔タッグ地獄フェスティバル 友情の属性タッグサバイバル ゲージMAX!!クレイジータッグランセレバトル ギース&ロック中心強前後タッグバトル 運命に惹かれた者に捧げる!高性能タッグ大会【ステラ杯】(おまけ) 巡り会う運命よ再び!高性能タッグ大会【ステラ杯2】(おまけ) チーム 東方作品別トーナメント 作品別トーナメント2011 伝統の作品別トーナメント 強&凶ドリームチームトーナメント 大規模!作品別 成長ランセレサバイバルバトル 昨日の敵は今日の友 狂下位前後チームトーナメント 男子禁制!女子会ランセレ! 狂ったアンデルセン軍vsアーカード軍ランセレ大会 作品別7人組SUPER BATTLEトーナメント ベル主催!栄光のぽっこーん3VS3チームバトル【ポンコツ杯2】(おまけ) その他 戦いごとにルールが変わる!!高性能タッグ大会 カオス上等!地獄の超混成バトル ランセレパーティバトル 霊夢強奪戦 Mugen Hex Battle II ランセレパーティバトル デビルサマナー決定戦 Mugen Hex Battle III 生き残れ!! 金カラー限定ゴールド杯 【オカマ魔女主催】罰ゲーム前提チーム&タッグトーナメント 作品別総力戦大会するよー 版権キャラ VS オリジナル・アレンジ連合 勝ち抜き戦 ‐幻想郷‐六大勢力対抗戦 第二次:ランセレバトルロワイアル【凶VS狂】 禍たんくらい杯 手書きキャラonlyトーナメント 版権VSオリジナル 交代制作品別トーナメント ニコニコRPGMUGEN杯 ランダムカラー シングル&タッグ戦 狂乱の宴【狂以下タッグサバイバル】 メジャー&マイナーごちゃまぜ狂キャラ大会 打倒剣帝!無差別級大会 戦国ランス 東西対抗戦 ほこ×たて杯 最強の男たちVS最強の女たち 特大合コン再び!! パラ×ハル杯裏 新生男性軍VS新生女性軍 ポイント大強奪サバイバル! 新章・希望vs絶望 無理ゲー挑戦大会 殺戮の祭 GATTAIトーナメント 凶の宴 凶下位ランセレバトル! ボスハルク&DIO前後ランセレバトル 版権VSオリジナル 交代制サバイバルトーナメント 史上最大級 MUGEN界 男性連合軍VS女性連合軍 金ラオウ前後狂中位級ランセレバトル 覇王の大陸 決闘しようぜ!お前カードな!大会 たぶん永久vs即死トーナメント ムゲンモンスターGS 第3回 凶vsオワタ式狂 チームランセレマッチ 凶&狂オールスターバトル 超乱闘世紀末ランセレ杯 春閣下12P前後 狂下位ランセレ!台パンの向こう側へ! 狂下位パレードランセレバトル 真・最終章 MUGEN界 男性連合軍VS女性連合軍2 JAPANvsWORLD 狂下位~狂中位ランセレ合戦 きっと永久vs即死大会2 テストしようぜ!お前科目な!大会 永久vs 【ターゲット式ワンチャン】 ばけものフレンズ大会 愛と拳とジャパリまん ぜったい最胸☆OPPAI戦争!! 凶悪キャラオンリー!狂中位タッグサバイバル! 正義vs侵略者!都道府県陣取りゲーム 北斗四兄弟前後!!世紀末!!最狂チームトーナメント 第二次東西対抗!仲間を集めてワンチャン大会 金ラオウ前後狂中位級ランセレバトルFINAL EDITION 東方真本異争 三位一体 狂上位チームトーナメント 旅は道連れ世はサバイバルタワー2(助っ人) 更新停止中 ロイヤルランブル大会 東方原作準拠チームでランセレチームバトル アレンジ・オリ東方中心男女タッグトーナメント1.5 大乱戦!!強以上極限0トーナメント【強~神クラス】 第二回東方作品別トーナメント 第三回俺の嫁婿がチョーサイコー!トーナメント 逃走中サバイバル LastMission 「仲間は拾った」ダンサバチームトーナメント スター争奪MUGENパーティー 凶前後ランセレタッグバトルロワイヤル再逢 強~凶最上位付近「男VS女」対抗バトル! きゅんっ!乙女達のランセレバトル ぷらす 叩き壊せ!!台パン壊杯 狂下位上限前後 凍結 弾幕 Fighting Championship 東方キャラクター別対抗トーナメント 製作者別3段階ランセレ大会 ヒャッハー凶だぁー ランセレニューイヤーサバイバル Big Bang Age ポイント争奪!MUGEN学園バトル 新説 -狂門番杯- 第3回幻想郷サバイバル タッグ作って駆け上れ!ドルアーガ杯 平成vs令和 生き残りを賭けた合戦大会 削除済み 幻想郷キャラコンセプトトーナメント 真冬のランセレサバイバルトーナメント 【東方MUGEN】良キャラ さいきょう 決定戦 ジョジョの奇妙な冒険 男女タッグトーナメント ソーナンスを倒せ!トーナメント!! サモナー・オブ・キャッスル 非表示 皆ありえん(笑) ランセレタッグバトル! 大体、凶ランクくらいの大会で勝ちあがるにはどうすりゃいいですか? + てゐガー 【てゐガー】 忍者大好き!!SUPER幻想忍大戦!! Let s餌やり!★取りサバイバル 戦いごとにルールが変わる!!高性能タッグ大会 新秋東方タッグ杯 第二回東方夢幻童空杯 MUGEN祭 大盛りシングルトーナメント 第4回遊撃祭 幻想郷お祭ランセレトーナメント 第二回幻想郷お祭ランセレトーナメント【タッグ】 きっと永久vs即死大会2 東方新春タッグ杯【東方オンリー44タッグ総計88名】 更新停止中 ロイヤルランブル大会 150キャラ+俺総当りトーナメント 凍結 東方キャラクター別対抗トーナメント 出演ストーリー + 一覧 Drえーりん診療所(非戦闘) Transfer Avengers MUGEN STORIES INFINITY MUGEN街の夜雀亭 MUGEN街の夜雀亭 2nd がんばレイセン!R2 香霖堂夜想曲 とある吸血鬼の東方見聞録 東方一年戦争 突撃!隣の幻想郷! 中の国(手描きうどんげストライカー) ヒナナイの剣(非戦闘) 八意家の兎さん *1 チョウセンアサガオ。観葉植物としてはダチュラ、ないしエンジェルズ・トランペットの名でも知られる。 アルカロイド性毒物を含み、麻酔の原料などになる薬草ではあるが毒性も強く、昏睡や意識障害を引き起こす。 ゾンビはチョウセンアサガオの毒で意識混濁状態になった人間だという説もある。別名「キ○ガイナスビ」。 間違ってもそのまま食べていいような代物ではない。MUGEN的にはこの人の愛用品でもある。
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なんで、こんなことになったんだ。 まるで他人事のように俺は目の前の光景を見ていた。 「これで、あんたはあたしのもの……」 俺に跨ったまま凄絶な笑みを浮かべる女――てゐ。 体中に飛散した体液が、ここで何が起こったかを証明している。 「あの女よりもあたしの方が良いでしょ? ねぇ?」 てゐが何かを言っている、でもそれを理解できる程の余裕はもう残っていなかった。 「ほら、早く言いなさいよ! 言えよ!! あたしの方が好きだって!!!」 ガクガクと体が揺さぶられる。それでも、思い浮かぶのはただ一人―― 「鈴仙……」 「てゐ、鈴仙を見なかったか?」 「……知らない」 「そうか、分かった」 ある日、俺は鈴仙を捜していた。 人里で買ったプレゼントを渡そうと思っていたんだけど、どこだろうか。 「喜んでくれると良いんだけどなぁ」 想いを寄せている彼女――鈴仙が喜ぶ姿を想像すると自然とニヤけてしまう。 「そんなんで喜ぶとは思えないウサ」 「うるさいな、これでも随分悩んだんだぞ」 人様の想像を邪魔するんじゃない。 「ふん、どうせ振られるウサよ」 そう言うと、てゐはドスドスと足音を立てながらどこかに行ってしまった。 「……機嫌悪いな、あいつ」 普段から色々とからかわれているが、最近は妙に機嫌がよろしくない。 「っと、それより鈴仙はどこかな」 早く渡して喜ばせたいぜ。 改めて決意した俺は、とりあえずてゐとは反対方向に向かうことにした。 だから気付かなかった。 てゐが、怨嗟を込めた表情で俺を眺めているのを―― それから数日経ったある日、俺は夢見心地の気分で竹林を歩いていた。 なんと鈴仙が俺に話があると言うのだ! それを伝えてきたのはてゐなので信憑性には欠けるが――もし本当なら期待せざるを得ない。 この前のプレゼント――ちなみにネクタイピン――はとても喜んでもらえたからだ。 てゐのことだから嘘も十分あり得るのだが、鈴仙が絡むとやっぱり気になってしまうのだ、俺は。 そして、鈴仙が待っていると言われた、竹林の中でも一際目立つ大きな竹が見えてきた。 だが肝心の鈴仙の姿は見えない。まだ来てないのか。 まぁすぐに来るだろうと、地面に腰を下ろす。 それからしばらくすると、ガサガサと近くから音がした。 その方向から現れたのは―― 「やっほー、お馬鹿な○○君」 てゐだった。ってことは……、 「嘘だってことか……。畜生、やられた」 ここまで期待させといてこの始末か。やっぱりそう上手くいかないよなぁ……。 1人でぶつぶつ言ってる間に、てゐはいつの間にか目の前まで迫っていた。 「本当、あんたって鈴仙が絡むと簡単にひっかかるよねー」 「うるせぇ。俺はもう帰る!」 ゲラゲラ笑いやがってこん畜生が。 こうなったら帰って本人に癒してもらおう。 そう思って立ち上がり、道を引き返そうとして―― 「逃がさないよ」 気付いたら俺は地面に押し倒されていた。 その犯人はもちろん――てゐだった。 「何しやがる!」 「せっかく2人っきりになったんだからさぁ、楽しもうよ」 「何言ってんだ、退け!」 「嫌」 「おい、からかうのもいい加減に……!」 必死に抵抗するものの、凄まじい力で抑えつけられて動けない。 「あたしが冗談でこんなことすると思う?」 「はぁ? いきなり何を……」 「あたしがこんなに想ってるのに、あんたはちっとも気付かないし」 そう言って顔を俯かせるてゐ。 「えっ、おい、それは」 おいおい、今のはどう考えても告白にしか聞こえないんだが。 「口を開けば鈴仙、鈴仙、鈴仙! 本当に腹が立つんだよね」 ここでバッ、と顔を上げるてゐ。その表情は――あまりにも歪だった。 目は虚ろで光を宿しておらず、笑みこそ浮かべているものの、歪んだ笑みと称するのにふさわしい笑みだった。 「だからさぁ、一生懸命考えたのよ。どうやったら○○が手に入るのか」 ニタァっと笑いかけられて、俺は背筋が凍りつきそうになるのを感じると共に、 あっけなく「罠」にハマってしまったのに気付き―― 「やっっと捕まえたんだからね。あたしの良さを一杯教えてあげるわ」 「た、助け」 助けを叫ぼうとした唇は、てゐのそれで塞がれた―― ここで話は冒頭に戻る。 てゐに散々貪られた俺は、もう何をする気力も無くなっていた。 「うふふ、こんなに汚したのは○○なんだからね。責任取ってね」 「……」 「何とか言ったらどうなの?」 「お、俺は鈴仙のことが……」 好きだと言うとした所で、バチン! と乾いた音が響くのと同時に頬に鋭い痛みが走った。 「まだ分からないの? こんなに愛し合ったのに」 「……っ、お、俺は鈴仙が」 そこまで言いかけて、またバチン、バチン、とさっきよりも力を込めて頬を叩かれる。 「分からないなら、分かるまで何回でも愛してあげる」 キッ、と光の無い瞳で睨みつけ、てゐは再び俺に覆い被さってきた。 「絶対にあんな女なんかに渡さない! あんたは私と一緒にならなきゃいけないの!!」 涙を流し、狂ったように叫びながら俺を求めるてゐ。 その光景はあまりに壮絶だった。 本当にこれは現実に起こったのか、自分は悪夢を見ているのではないのか。 もし夢ならば早く覚めてくれ、一秒でも早く。 だが叩かれた頬の痛みが教えている――これは夢ではないと。 ジンジンと痛む頬が訴える――これは現実なのだと。 「鈴仙……」 諦観に支配されつつある頭の中で、鈴仙は笑っていた。 それは俺を嘲け笑っているようにも、残された希望のようにも見えた。 全て受け入れれば、幸せになるかもしれない。 しかしそれは全てを諦めることでもある。 全部綺麗に丸く納まる選択肢ってのはないのだろうか。 「うふふ、○○、○○……」 甘ったるい声を出しながら俺に擦り寄るてゐ。 その蕩けきった表情から察するに、幸せに満ちていることは想像するのに難くない。 だが断じて言っておこう。 俺は幸せではない。 「好き好き好き、大好きぃ」 壊れた玩具のように何度も愛を囁かれるのも、 「○○の良い所は何でも知ってるんだから、まずね……」 馬鹿みたいに俺を褒めちぎるのも、 「あぁ、あたしだけの○○……。絶対に離さない、誰にも渡さない……」 こうして異常なまでに束縛されるのも――もう、うんざりだ。 ちなみに、ここは竹林のどこかで永遠亭から遥か遠くに位置している所らしい。 詳しくは俺も分からない。はっきりと把握しているのは目の前の兎だけだろう。 ここから逃げ出せば良い、なんて考えるだけなら簡単だ。 実行するのはえらく困難だからな。 何故ならば、俺の片手は手錠で封じられている上に、唯一の出入り口には鉄格子まではめられている。 加えて、ここが地下室――てゐ曰く「新居の小屋」の地下――であるとも言っておこう。 だが、1つだけここから出る方法がある。 それはてゐを愛すること。心から愛し、自分のものだけになると誓えば出してやると彼女は言った。 もちろん上辺だけの言葉は通用しない。 要するに、全てを捨てて自分だけと生きろってことだ。 「ここから出たいでしょ?」 「分かってるなら出せ」 「じゃあ、あたしのこと好き?」 「好きなら解放されてるだろうな」 もっとも、解放と言っても地下から出るだけで終わるだろう。 異常なまでに俺を求める彼女を愛したところで、結局更に求められるだけだ。 それに俺はこんな状況でも鈴仙のことを忘れられていなかった。 今頃、永遠亭では捜索が始まっている頃だろうか? 「あんな女のことなんて考えないで!!」 頬を両手で掴まれ、無理やり顔を向かされる。 「あんたはあたしだけ見てれば良いの。他に何も要らないの!」 ヒステリックな叫びをあげたかと思えば、唇を塞がれる。 それはまるで自分の存在を押し付けるようで――儚いものにも見えた。 もし、これが鈴仙だったら俺はあっさりと受け入れていたかもしれない。 誰よりも愛している彼女に愛されるなら、俺は……。 「どうして○○はあたしを見てくれないの?」 不意に言葉がかけられる。 「こんなに好きなのに、大好きなのに……」 虚ろな表情で寂しそうに呟くてゐ。 俺を捕えてから今まで――俺と居る時は――ずっと笑っていたというのに。 こんな顔をされるのは初めてだ。 その様子に思わずチクリと胸が痛む。だが、それでも俺は―― 「俺は鈴仙が好きだ」 「どうして!!」 「どうしてもだ」 「何で、何であたしじゃ駄目なのよ。あたしなら何でもしてあげるのに……」 ポロリ、ポロリと涙を流して訴えられる。 彼女に毎日求められるのには確かにうんざりしていた。 でも、今更ながら彼女の想いが痛いほど伝わってきて―― 「ねぇ、○○。あたし○○の言うことなら何でも聞くよ。愛してくれるならすぐに出してあげる。手錠も外してあげる」 捕えられているのはこっちなのに、逆に懇願されるなんて。 「お願いだから、あたしを見てよ。好きになってよ。あたしは○○以外要らないの。あんたしか要らないの」 いつも吐くような嘘ではない、本心からの叫び―― 「あたしには○○しかいないの。○○だけ、○○しか、○○、○○、○○……。 せっかく、あんたを独り占めできると思ったのに。やっと手に入ると思ったのに」 静かにしゃくり上げるてゐを見て、俺は不意に抱きしめたい衝動に駆られ――寸でのところで抑えた。 このまま抱きしめても、只の偽善にしかならないからだ。 彼女も恐らくそれを理解しているだろう。 自分を愛さない男に抱かれたところで、余計虚しくなるだけだ。 では、どうすれば良いのか? 彼女を心から愛せばそれで良いのか。 そんなことは無理だとずっと前から分かっているのに。 俺は鈴仙しか愛せない。 それは俺の中で不変の真理と化していた。 それから、しばらく経った後。 「ねぇ○○、あのね」 泣きやんだてゐが何か伝えようとした、その時―― バァン! と急に扉が弾けた。 ガラガラと周りの壁も崩れ、砂煙がモウモウと立ちこめる。 何だ、何が起きたんだ!? 俺もてゐも何が起きたか分からず、凝視するしか出来ない。 するとコツコツを靴音を立てて、誰かが近づいてくるではないか。 そこでハッとする。 もしかして――俺は誰が来たのか即座に思いついた。 「やっと見つけた……。○○、てゐ」 砂煙の中から、聞き覚えのある声と共に姿を現したのは―― 「あ、あんたは!?」 てゐが驚きの声を上げるその人物は―― 鈴仙・優曇華院・イナバだった。 俺は目の前の光景に驚愕と同時に喜びを感じた。 待ち焦がれた助け――鈴仙が来たのだ。 「ここまでよ、てゐ。貴方も○○も連れて帰るわ」 ゆっくりと歩を進めながらこちらに近付いて来る鈴仙。 連れて帰る、その言葉の意味を理解したのか、てゐは俺の前に立ち塞がり――吼えた。 「い、嫌だ! ○○はここであたしとずっと一緒に暮らすの!」 「自分のしたことを分かってるの? このままだと、貴方はただでは済まないのよ?」 「そんなの知らない! あたしは○○が欲しかっただけだもん、何も悪いことなんてしてない!」 「てゐ、貴方……」 「あんたこそ分かってない! あたしがどんな思いをしてたのか、どんなに苦しかったのか……!」 声を震わせ、指先が真っ白になるぐらい強く拳を握りしめるてゐ。 「いつもいつもいつも、いつだって!! ○○はあたしを見ようともしなかった! 鈴仙しか見てなかった!!」 「えっ!? それって……」 うわ、言われちまったよ。まさかこんな所でバレるとは。 でも今はそんなことを気にしてる場合じゃないな。 「だからこうしたのに……! 誰も邪魔できないように、○○があたしだけを見てくれるように。 体だって重ねた! 大好きって何回も言った!! それなのに○○はあたしを見てくれない。 それも全部お前のせいだ! お前が居るから○○はあたしを好きになってくれないんだ」 鈴仙への一方的な怒りと憎しみを隠そうともしないてゐ。これはマズい展開だ。 「てゐ、止めろ!!」 声を張り上げて叫ぶ。手錠で動きがとれないのがもどかしくてならない。 「○○はそこで見てて。あたしの方がこいつより良い女だってことを教えてあげるから」 駄目だ、まったく通じていない……! てゐは既に殺気立っていて、いつ鈴仙を殺しにかかってもおかしくない程になっていた。 どうすればてゐは止まるんだ? 思案しても妙案は思いつかない。 「出来れば話し合いで済ませたかったんだけど……そうもいかないみたいね」 てゐのただならぬ殺気を感知した鈴仙が臨戦態勢に入る。 「鈴仙!」 「大丈夫よ。そんな簡単にはやられないから」 鈴仙は俺に一瞬笑いかけて、すぐさま険しい表情に戻った。 それが気に食わなかったのか、てゐはスペルカードを取り出し弾幕を放とうとして―― 「ここじゃ○○を巻きこむから外に行きましょ。貴方だって○○が傷付くのは嫌でしょ?」 鈴仙の一言でピタっと動きを止めた。 「……そうね、○○が怪我しちゃうのは絶対に嫌。それだけは従うわ」 渋々とスペルカードを下げて、俺をちらりと振り返る。 「すぐ戻ってくるから」 そう言い残して、2人は外へと消えて行った。 てゐの一方的な言いがかりではあるが、よりによって2人が決闘するなんて……。 「畜生、俺のせいだ……」 ギリリと奥歯を噛みしめ1人ごちる。 こんなことになるくらいなら、2人に会うべきじゃなかったのかもしれない。 俺が最初から居なければこんなことにはならなかったはずだ。 自己嫌悪に陥り溜め息が何度も零れる。 今頃2人は激しい弾幕を繰り広げているのだろうか。 それにしては外から何の音も聞こえないし、戦いの余波も響いてこない。 余程遠くまで行ったのか、それとも既に決着が付いたのか。 俺がここから出るには鈴仙に勝ってもらうしかない。 鈴仙ならばてゐを殺すということもないだろう。それが一番望むべき展開だな。 だが、もしてゐが勝った場合鈴仙は――俺はそこまで考えて頭を振った。 最悪の結末を想像しかけて、思わず背筋が震える。 「そんなことには絶対ならないでくれよ……」 そうして、ただ待つこと幾許。 俺はぼんやりと天井を眺めていた。 あれからどれくらい経ったのだろうか。 僅か数分間のようで――はたまた数時間も経っている気さえする。 時間の感覚はとっくに失われていて、正確な予想がつかない。 その時だった、不意に階段を下りてくる足音が聞こえてきたのは。 カツン、カツン、と音を立ててゆっくりと誰かが――「勝者」が――下りてくる。 果たしてそれはてゐか、鈴仙か。 固唾を呑んでただ出入り口を見つめる。 緊張と共に胸が高まり、ドクドクと鼓動が激しくなる。 すると間もなく、人影が現れた。 体をふらつかせながら姿を現したのは―― 「痛たた……。まさかルールを無視されるとは思わなかったわ……」 戻って来たのは――鈴仙だった。 「鈴仙!!」 彼女の服はあちこちが焼け焦げていて、その下の肌にもたくさんの傷を負っていた。 「言ったでしょ? 簡単には負けないって」 「だけど、その傷は」 「これくらい何てことないわ。心配しないで」 「しかし……」 にこやかに笑うものの、明らかに疲労が隠しきれていない。 「平気平気。それより、ほら。鍵を持ってきたから、これで帰れるよ」 ヒラヒラと鍵を見せつける鈴仙。もちろん、すぐに外してもらった。 「ありがとう。ところで、てゐは……」 「外で伸びてる。しばらくは起きないと思うわ」 その一言にホッとする。 だが、安著している俺とは裏腹に彼女は急に真剣な顔つきになった。 「てゐ、凄く強かったわ。絶対に負けたくないって、気迫も凄かった」 どうしてか分かる? と続けざまに聞かれる。 俺の自惚れでなければそれは……、 「俺と離れたくなかったから、か」 「ええ。ルールを無視する程ですもの。余程貴方を独り占めしたかったのね」 独り占めしたかった―― 俺は今までてゐに言われ続けて来たことを思い出した。 ――ずーっと一緒だよ?―― ――あんたはあたしだけのもの―― ――大好き!!―― 真っ黒で歪だけど純粋な想い。 うわ言のように繰り返された愛の囁き。 好きな人と一緒になりたい、独り占めしたいがための暴挙。 それを実行するのに迷いはなかったのか、俺には分からない。 「○○……」 何か言いたげな顔をしている鈴仙。 俺はその頭にぽんと手を置いた。 「さぁ帰ろう。てゐを連れて帰って、永琳さんにその傷を見てもらわなきゃ」 「う、うん」 体をグーッと伸ばして歩き出す。鈴仙もそれに続く。 こうして、俺は永遠亭への帰還を果たしたのだった。 あれから一週間が経った。 俺は永遠亭に帰還し、日常へと回帰した――そのはずだった。 今の永遠亭は暗く静かで、そして悲しいムードがどこまでも浸透していた。 いつも騒いでる兎達の姿も今は見かけない。 まるで異変を起こす前に戻ってしまったようだ、とは永琳さんと姫様の談。 どうしてこうなったのかって? あぁ、それはだな…… 地下牢に入れられていたてゐが自害してしまった。 俺と鈴仙が付き合い始めたことを知ってしまい、あまりのショックに。 そのせいで永遠亭は以前の賑わいを失った。 統率者を失った兎達はほとんど出て行ってしまった。 残された者達には深い悲しみだけが刻まれて――何故、どうして、皆口々にそう呟き嘆いた。 まさかこんなことになるなんて。 原因を作ったのが自分となると、悔やんでも悔やみきれない。 胸が張り裂けそうなくらい苦しくて、いっそのこと体全てがもがれてしまえばいいと、そう思ってしまう程に。 それと―― 「○○……」 悲観に暮れていると、不意に後ろから声がした。 振り向くとそこには鈴仙の姿が。 「鈴仙か。どうした?」 「うん、ちょっとね」 言葉を濁し俺の横に座る。 伝えたいことがある、でも言いにくい。そんな表情のまま黙り込む。 僅かな沈黙の後に彼女はゆっくりと語りだした。 「てゐなんだけどね……やっぱり彼岸にも冥界にも来てないって」 やっぱり、その言葉が更に俺を不安にさせた。 懸念していた事柄が重くのしかかる。 幻想郷では死を迎えると彼岸を渡り、閻魔の裁きを受けなければならない。 冥界で暮らすにしてもそれは同様である。 しかし、てゐの魂はどこにも見当っていないのだ。 何故「来てない」のか。 辿るべき道を辿っていない魂はどこへ? 「○○……」 鈴仙が不安そうに俺の袖を掴む。 その瞳は不安気に揺れていて、まるで今にも消えてしまいそうで―― 「私達、会わない方が良かったのかなぁ」 それは聞き逃すにはあまりにも悲しい一言だった。 「私達が会わなければさ、きっとてゐは死なずに」 「止めろ!」 反射的に俺は叫んだ。 彼女が俺と同じ考えを抱いてるのが悲しくて、切なくて、何より悔しくて―― 「そんな悲しいこと言うな! そんな、そんな……」 「○○……」 せめて鈴仙の不安だけでも消してやりたくて、ギュッと抱きしめて包み込む。 「○○、温かいね。凄く落ち着くよ」 小さく溜め息を吐いて、彼女は俺の胸に顔を埋めた。 「今だけはこうしていたい……」 返事には応えず、腕に力を込める。 せめて、今は。今だけは―― だけど時間は緩やかに流れていかなかった。 ある日、鈴仙が体調を崩した。 その日は永琳さんは人里に出かけていて、姫様も退屈しのぎだと言って姿を消していた。 兎達も居らず看病が出来るのは当然俺だけ。 「大丈夫か?」 「ちょっとキツいかも……。ごめんね、こんなことさせて」 濡れタオルを変えてやると、ふにゃりと耳を垂れさせて申し訳なさそうに謝る鈴仙。 「気にすんなって。俺しか居ないんだしさ」 「うん。ありがとう、○○」 恋人を看病するだなんて美味しいシチュエーションだが今はあまり嬉しくない。 今の永遠亭の状況のせいでそれは尚更で。 「他に何かして欲しいことあるか?」 「えっと、師匠の診療室に風邪薬があると思うの。それを取って来てくれる?」 「分かった」 確かに、あの人の薬ならよく効くだろうしな。 「じゃあすぐ取ってくるな」 立ち上がって戸に向かおうとすると、 「○○!」 「ん?」 呼び止められたので振り返る。 「……あっ、ごめん。なんでもないの」 「? そうか」 何か言いたげな様子だ。しかしなんでもないと言うなら大したことではないのかな。 今度こそ戸を潜り、外を出る。 ……呼び止められた時に鈴仙の顔が不安そうに見えたのは――きっと風邪のせいだろう。 診療室は鈴仙の部屋から少し遠い所に位置しているので、足早に向かう。 しかし、誰も居ない屋敷は本当に静かでまるで別の世界――ここは幻想郷なのにな――に迷いこんでしまった気さえする。 ふと後ろを振り返ると長い長い廊下が続いていて――俺は少し不安になった。 俺は、本当に鈴仙の所へ帰れるのか? もしかして二度と戻れないんじゃないか? このまま屋敷の中を彷徨って、誰にも見つからずに―― そこまで考えて、俺は溜め息を吐いた。 馬鹿馬鹿しい。何ヶ月も住んでるのに今更迷うわけがない。 パァン! と頬を両手で叩いて気合いを入れなおす。 早く済ませてしまおう。 気持ちを新たに進んで行くと、「診療室」と書かれた木札が貼りつけてある戸が目に入る。 早速部屋に入り、目的の物を探しにかかる。 薬品棚を探ると綺麗な字で風邪薬と書かれたラベルが貼ってある瓶が見つかった。 「これだな」 綺麗に整頓されていたのが幸いした。これは永琳さんに感謝しなきゃな。 元来た道を引き返し鈴仙への元へと急ぐ。 少しでも早く良くなって欲しいからな。 部屋に着いた時には少し息が切れていたが、気にせず声をかける。 しかし返事はない。寝てしまったのだろうか? 「鈴仙、入るぞ」 部屋に入ると彼女は起き上っていて、外をぼんやりと眺めているようだった。 「鈴仙?」 とりあえずビンを机の上に置いて、改めて声をかける。 「○○……。戻って来てくれたのね」 「そりゃな。でも起きてて良いのか? 寝てないと駄目だぞ」 「寝て……? あーうん。そうね、寝ないとね」 一瞬首を傾げたかと思ったら、今度はクスクスと笑いだす。 何が可笑しいのかよく分からない。分からないが、気にしてる場合でもない。 「ほら、薬持ってきたぞ。飲め」 机上のビンから薬を取り出して渡そうとして、振り返って―― 急に足が地を離れる感覚がしたと思ったら、視界が大きく揺らいだ。 続いて後頭部から腰にかけて衝撃と鈍い痛みが走る。 地面に倒された、と気付いた時には鈴仙が体の上に跨っていた。 「ッ、鈴仙、何を……」 「ねぇ○○」 何をするんだ、と抗議の声をあげるよりも早く、彼女は喋りだした。 「私達、恋人同士だよね」 「それがどうしたってんだ?」 「しようよ」 「なに……んむっ!」 何を、と言おうとした唇は彼女のそれでいきなり塞がれた。 いきなりの展開で頭の整理が追いつかない。 何だ、一体鈴仙はどうしたんだ!? 「んん、ぅ、ちゅっ、ちゅっ」 しかし俺が戸惑っている間にも彼女は自らの舌を侵入させ、激しく絡ませてくる。 その甘美な感触に脳髄が蕩けそうになる――が、 「キャッ!」 理性を総動員させ、なんとか押し返す。 「ハァ、ハァ、鈴仙、急に何を……」 濡れた唇を袖で拭い、問う。 「ふふ……。○○ったら恥ずかしがり屋さんね。私は貴方の大好きな『鈴仙』よ?」 何故か自らの名を強調すると、彼女はゆっくりと起き上り、顔を俯かせて笑みを浮かべ―― そこで俺は彼女の異変に気付いた。 彼女の笑みが、酷く歪んでいることに。 それと同時に強烈な既視感と違和感が俺を襲う。 違う、鈴仙はこんな笑い方をしない。これではまるで別人だ。 それにこの光景を、前にもどこかで―― 「○○」 「わっ!?」 俺が記憶を呼び覚まそうとしている間に、いつの間にか鈴仙が目の前にまで迫っていた。 思わず後ずさろうとして――体の自由が利かなくなっていることに気付いた。 「ぐっ、か、体が」 「動けないでしょ? でも○○が暴れたのがいけないんだからね」 波長を操作されたのだと気付いても、既に瞬きすら許されなくなっていた。 「うふふ、次はねぇ、私の目を見て?」 今まで俯かせていた顔を上げる鈴仙。 その瞳を見た――見てしまった――時、俺は愕然とした。 ルビーを思わせる鈴仙の紅い瞳は光を失っていて、暗く濁っていたのだ。 これはまるで―― 「私の目、綺麗でしょ? ホ ラ 、ミ テ ?」 「うあああああぁぁぁ!!!」 彼女が言い終わるよりも早く、強烈な頭痛に襲われる。 同時に、心の中に何かがズルりと入り込んでくるのを感じ―― 「ごめんね、痛いよね? でもすぐに済むから。そしたら○○も分かってくれると思うの」 彼女が何かを言っているが、頭が割れるように痛むせいで何も聞きとれない。 心が、犯される。俺を構成しているものが剥がれ落ちては消えていく。 その代わりに「――」への想いだけが膨らんでいく。 「あ、あ……」 身も心もただ一色に染まっていく。 今までの俺が消えていく―― 「ぉ、まえ、は……」 「私のことが好きなんでしょ? 私も○○が大好きよ。 だからこれからも一緒だよ。ずっとずっとずーーっとね!」 「――」 その名を口にしようとしても、もう喋れない。 ガクン、と体全体の力が抜け落ちて前のめりに倒れそうになったのを、「――」に支えられる。 「○○は寝てて良いよ。あたしが連れて行ってあげるからさ。2人だけの秘密の場所にね」 薄れゆく意識の中で最後に見たものは―― 「イ ッ シ ョ ニ シ ア ワ セ ニ ナ ロ ?」 笑った「てゐ」の顔だった。
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因幡 てゐ(いなば てゐ) +1 てゐ11スレ目 262 1スレ目 268-270 1スレ目 340 1スレ目 381-382 391-393 1スレ目 472 1スレ目 639 1スレ目 684 1スレ目 755 3スレ目 452 4スレ目 67 +2 ・てゐ2(4スレ目>>373(うpろだ0021)) +3 てゐ35スレ目 497 6スレ目 406 クリスマスは大切な人と――(6スレ目 571) 6スレ目 976 7スレ目 710 +4 てゐ4好きだよなんて言わずとも(うpろだ308) てゐとお月見してゐたら(9スレ目 27) +5 てゐ5うpろだ318 10スレ目 389 7スレ目896 8スレ目 403 10スレ目 56 うpろだ1039 新ろだ57 新ろだ335 +6 てゐ6新ろだ429 新ろだ529 てゐのきもち(新ろだ670) 新ろだ2-054 Megalith 2011/12/06 うpろだ0021 うpろだ0042 +7 てゐ7うpろだ0047 +8 てゐ8 +9 てゐ9 +10 てゐ10 レス 1 35スレ目 246より後のレスはてゐ7以降にまとめ
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■てゐ1 てゐ、一生俺を騙してくれ!! てゐなら幸せです…いぁまぢで 1スレ目 262 ─────────────────────────────────────────────────────────── ここは墜ちた月の姫が住まう永夜邸。そして兎もいっぱいいる。 ある日、因幡の素兎たる因幡てゐがいつものように碌でもないことを考えながら廊下をほっつき歩いているとなにやらきゃいきゃいと騒ぐ声が聞こえた。 彼女は本能でその騒ぎに突っ込む。聞けば兎共の男性遍歴だの恋愛事情だのであった。 曰く、流した浮き名が数知れず。 曰く、実は私、女の人にしか興味がないんです。 曰く、百人男を喰いました――それは食い殺した人数の話だ。 話す趣はてんでまとまらない。 しかし、兎は人と並んで年中発情期と呼ばれるだけあって、話す事には事欠かないようである。 そしてある若い兎が、ぽそりとこんな事を言った。 ――ただの兎だった頃の飼い主が、一番好きだった。大きな掌で撫でられるのが、大好きだった―― てゐの脳裏に返るのは、この邸に来る前の、神世の時代、人と神と妖怪が、今よりももっと近くに生きていた時代の思い出だった。 ――そう、私の一番好きだった人。 ある日、彼女は海を渡ろうとして、その場にいた鮫を利用した。 だが、未熟な彼女の嘘はばれて、鮫達は彼女をぼろ切れのようになるまで蹂躙した。 そして、息も絶え絶えの体で助けを求めた神々は、彼女の今までの行いの代償とばかりに嘘の治療法を教えた。 ――思えばこれが自分第一、健康志向の始まりだったかも知れない。 今ならばそう回顧できるが、当時味わった絶望は凄まじかった。 もう、痛みのあまり命を投げ捨てようか――その時、かのじょの長い耳は、ある男の声を聞く。 「――息はあるか、兎」 そして、痛みを堪えて開いた瞳に、荷物を担いだ長身の男性の姿が、差し伸べられた手の大きな影が映った。 だまされて、苦しんで、誰かを信じるなんて馬鹿なことはもう止めよう――そう考えた彼女でさえも、思わず震えた手を差し伸べ返していた。 その後、彼女は真水で洗われ、がまの穂の上を転がされる。 それを行った彼の男の名は、大国主命。 出雲の王にして出雲大社の主祭神と呼ばれる、神世の英傑であった。 「傷はもう良いのか」 彼は鷹揚に、膝に乗せたてゐの頭を撫でて訪ねる。 その振る舞いは、当時最も巨大な国家の王に相応しく、勇壮にして慈悲に溢れていた。 「うん、もうすっかり。薬草ってすごいのね」 「そうか、それは良い。これに懲りたら、もう人を騙すなど考えぬ事だな」 てゐの答えに王は豪快に笑みを浮かべてそう言う。 しかしてゐは小生意気にもその耳をピンと立てて胸を張り、「これからは人を幸せにする嘘を付くわ」と言ってのけた。 その仕草に一時あきれた王は、すぐに彼女が耳を伏せたくなるほどの大声で笑いだす。 「ふはははっ!「人を幸せにする嘘を付く」か!全く、口の減らぬ兎だわい!それが「一皮剥かれた」末の答えか!」 王はハハハハと大きな声で笑って乱暴にてゐの頭を撫でる。 無骨で節くれた武人の手がてゐの頭を覆うたび、彼女は言いようのない安心感を得ていた。 戦乱。 それは後生に国譲りと記される物語。 アマテラスの子を名乗る、日の本の民達の侵略の物語。 出雲の王たる彼の子供達も、ある物は敵の軍門に下り、ある物は刃におびえて戦いを投げ、最も強かった息子でさえも軍神の前に破れた。 大国主命は決断を迫られていた。 戦って死ぬか。おとなしく諸手をあげて、死ぬか。 侵略者は降伏するならば彼を最も偉大な大社に祭ると言う。 神として祭る――それは人として終わる。つまり体の良い処刑であろう。 傍らを見やれば、妻は青い顔をして座していた。 女性である彼女に置いては最早座して死を待つ身である。 その顔に浮かぶ悲壮は彼の心を揺らした。 ――どうせ死ぬならば、奴等に一矢報いてから―― そう思いかけた彼の目に、一匹の影が飛び込んできた。 それは両手一杯にがまの穂を抱えた、てゐ。 「大国主様っ!戦うなら、傷薬になるから!生きて、帰って、これるからっ!」 息を弾ませた彼女は、両手に抱えたがまを差し出してそう、絞るように口にする。 その光景に、大国主命は思わず彼女の名を呟いて呆然とする。 そしてその必死な様に、小さな体に彼は一つのことを思い出した。 ――そうだ、戦うならば、民は死ぬ。国の命は王の命。民の命ではない! 今にも泣き出しそうな顔で、震えて彼を見やるてゐ。 王はその傍らに、憑き物の落ちたかのごとき顔で屹立していた。 「てゐ――戦は無しじゃ」 「…ぇ」 王の口から飛び出た言葉に、てゐは両手のがまを地に落として小さく呟く。 「王が戦えば民が死ぬ。王が死ねば民は生きる」 見つめた横顔は神話の英雄。 神となるべき男の、最後の決断の顔。 「儂は、大国主命は天照大神に降伏する。王として、国としてこの命、民のために差し出さん!」 恐ろしく、優しく、どこまでも澄んで響く声で、王はそう宣言した。 「てゐ、そう悲しい顔をするな。これが王としての、儂としての生き様だ」 彼はそう言うと、傍らで目尻に涙をためた兎の頭を、その大きな掌で豪快に撫でた。 言葉も口に出来ず、揺さぶられた彼女の瞳から、清らな滴が一つ落ちる。 「――有り難う、てゐ。お前は幸せを呼ぶ兎だ」 一拍おいて出た王の呟きに、てゐは形振りもかまわず大国主の胴に抱きついた。 「……っ…大国主様っ……私、全然幸せになんか出来てないっ!……死んじゃ、やだぁ!」 泣きじゃくり、悲鳴のように叫ぶてゐを、彼は優しく抱えて言い聞かせる。 「いいや、お前は幸せを呼んだ。お前のおかげで儂は愚かな戦いを止め、王として死に、偉大な神として祭られる事が出来る。儂の民も、お前のおかげで無駄に死んでいく事は無くなった。全く、お前は幸せを呼ぶ兎だ――」 彼はそこまで言うとてゐを引きはがして身を正す。 次いで、奥で泣いていた妻に向かって口を開いた。 「行くぞ、スセリ。華々しき神の座へ、この名連ねてみせようぞ!」 ――そして、彼はまるで勝ち戦に赴くかのように、悠々と、颯爽と、堂々と、出雲の大地を踏みしめて歩き出した。 「っ……大国主様っ、大好きだからっ…あなたは、最高の王様だからっ!!」 泣き叫んだ兎の瞳は、真っ赤だった。 「……でね、その男ったらね………てゐ?どしたの?ぼーっとして」 遠い過去に思いを馳せ、あの時の彼よりも大きな背中は、ついぞ見かけたことはない等と思っていたてゐは、仲間の言葉に思わず跳ね上がる。 「…ホントにどしたの?なんか涙が出てるよ?」 そう訪ねる仲間に、てゐはあくびをかみ殺しただけだと返す。 そして、あんたの話がつまらなすぎて、眠くなってきたのよ、とも言った。 「あーひどーい!じゃーてゐはどんな男落としたのよー」 兎はふくれてそう返す。 するとてゐは小生意気に耳をピンと立てて胸を張り、こう宣言した。 「男を落とした?私はそんな下らないことはしないわ!だって、私は人を幸せにする嘘を付く兎だもの!!」 竹林の中に、兎たちの笑い声が響く。 ここは日の本の国。神の住まう国である。 了 1スレ目 268-270 ─────────────────────────────────────────────────────────── プロポーズされるほうだが、 てゐ「結婚詐欺にだまされてみませんか?」 1スレ目 340 ─────────────────────────────────────────────────────────── てゐの場合、無条件で人間を幸せにする能力があるからなぁ。 たとえ裏切られても結局幸せになるとしたら、 そんなのずるいよてゐ だてって告白して、 あんたなんてお呼びじゃない ってさんざんバカにされて言いふらされて もう立ち直れないほどにこっぴどく振られても 俺きっと幸せになるんだぜ。 そんなピエロな俺どんだけMなんだよ あぁ、てゐに幸せにしてもらいたい… 1スレ目 472 ─────────────────────────────────────────────────────────── て ゐ に 押 し 倒 さ れ た い ! 1スレ目 639 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ええと…、あなたが好きですっ!」 まさか人参畑で告白された男も俺が初めてじゃないだろうか。 予想もしなかった事態に意識が現実逃避する。 目の前には顔を真っ赤にした鈴仙。 夕食の人参収穫していてこんな事態になるとは紅い館の主人でもわかるめぇ。 「え~、えっとだな…。」 なにか答えようとするものの、言葉が上手くでてこない。 「あ…、あの、いきなりで迷惑でしたよねすいません返事はあとでも結構ですのでなるべくならいい返事がいいかなとかずっと待ってますんで!」 息継ぎもせずに言いたいことだけ言って、鈴仙は飛び立ってしまった。 あ、青の縞。 「どうしたもんかな・・・。」 正直な所、鈴仙にそこまでの感情は持っていなかった。 「確かに可愛いと思うし、あの弄って下さいオーラはなんともいえないんだけどな…。」 一人つぶやきつつ、人参を収穫する。なんだか、心に違和感が残った。 数日後。 あれから、鈴仙とは何もなかった。 無論、一緒に永遠亭に住んでいるのだから会うことはある。 だが、以前から鈴仙とは持ち前の狂気の瞳ゆえにお互いに余り目を合わせなかったし、こっちを見かけると鈴仙が逃げてしまうのだ。 これじゃ話もなにもできやしない。 永琳さんからも、 「あなたはいい加減はっきりしなさい、それがあなたにできる善行よ。」 と、どこかで聞いたようなフレーズでからかわれてたりもしていたのだが。 それでも決心がつかなかった。心のどこかに何かひっかかりがあったのだ。 「それじゃちょっと姫の様子見に行って来るわね。」 どうやら今日の殺し合いは結構ハードらしい。替えの服やらを持って永琳さんが慌てて出て行く。 「鈴仙も連れていくから後はお願いね。」 そういって何か液体の入ったビンを渡される。なんだかこれコンソメ臭いんですけど。 「いざとなったら、それを飲むといいわ。」 何があっても飲めないな、この薬。 「あ、師匠~。ちょっと待ってくださいよ~。」 後を追って、鈴仙も出て行く。あ、やっぱり目合わせてくれない。 ちょっとしょんぼり。 数時間が経過。今回は随分長引いてるな。 くいくいっ ズボンのすそを引っ張られる。永遠亭にいるウサギ達の一匹だ。 彼女?達はしゃべれないので身振り手振りで伝えてくる。最初は苦労したが、今じゃ二次方程式までいけるぜ。 「えーっと、なになに。鈴仙が、部屋で、待ってる?」 とうとう向こうからお呼びがかかったか。 覚悟決めていかないとな…。 「鈴仙、入るよ?」 襖を開け、中に入る。 「…鈴仙?」 鈴仙はこっちに背を向けて立っていた。 「あの時の返事のことだよな…。えーっとあれはだな…、その…。」 緊張してまともにしゃべれない。ああもう!! 「たぶん俺はお前のことが好き……どわっ!」 急に飛び掛ってきた鈴仙に押し倒される。 俺の上に馬乗りになった鈴仙がこっちを見つめる。 なにか引っかかる違和感。 「……。」 鈴仙の顔がゆっくり近づいてくる。 あー、これキスってやつですか?鈴仙ってばこんなに強引だったのね。 … …… あれ、鈴仙と見詰め合ってるのに何もない?狂気の瞳なのに? そういや、鈴仙の目、……黒い? そこまで考えたとき、頭に浮かんだのはいたずら好きのうさぎ。 「……もしかして、てゐ?」 鈴仙、いやてゐの動きが止まる。 「おい待てよてゐ!いたずらにもほどがあるぞ!」 「……なんで、鈴仙なの」 押しのけようとした手が止まる。 「なんでいっつも鈴仙なのよ!私だって、私だってあなたの事が好きなのに!!」 頬に涙が落ちる。 「最初に会って、永遠亭に連れてきて、ずっとずっとあなたのこと見てたのに!!なんでなんで鈴仙に盗られなきゃだめなのよ!」 ああ、そうか。 俺を永遠亭に連れてきてくれたのもてゐ。怪我をしてた俺を看病してくれたのもてゐ。人参の育て方からなにまで教えてくれたのはてゐだった。 ずっと引っかかってた心のしこり。 自分でも気づかないままに、俺はこの子に惹かれていたのか。 「ごめんな、てゐ。」 頬に手を添えて、引き寄せる。 「罠とかいたずらも構って欲しかったんだよな。ごめんな。」 そのまま顔を引き寄せてキスをする。 「んっ……。」 てゐの能力は会った人間を幸せにすること。なら、初めて会ったあの時からずっと幸せだったんだな俺は。 こんなひねくれてて不器用な幸せを逃がすなんてありえない。 そして、俺はてゐを抱きしめた。 「あらあらまぁまぁ、お熱いわねぇ。」 永琳さん、タイミング計ってましたね。 「てゐ……。私の部屋で何やってるのよ……。」 鈴仙さん目が怖いです。狂気バリバリです。助けて。 「べーっだ!鈴仙ちゃんには渡さないもんねー!」 あああああ!!てゐも煽るなっていうか状況楽しんでるだろ!! 「波符『月面波紋(ルナウェーブ)』!!」 「遺言『エンシェントデューパー』!!」 弾幕の余波に巻き込まれて、ぶっ倒れる俺を師匠が見下ろす。 「で、どっちにするの?」 「勘弁してください……。」 1スレ目 684 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ん~…」 朝起きて、まず目に入ったのは、てゐの唇だった。 「ちょっ、ちょっと待って!!待てって!」 「…なによ、わたしに起こされるのは不満?」 「いやいやてゐ、そういうことじゃなくてな?日本の朝はもっと健全で健やかで爽やかであるべきで、 朝っぱらからそういうのはちょっと…」 「……わたしのことが、きらいなの?」 うっ、でたよ。必殺上目使いで涙目。且つ、頬を薄く染め上げる。 永遠亭にきた時、こいつに騙されててゐに惚れて、今ではすっかり主導権を握られてる。 てゐは本当はしたたかで腹黒くて俺俺詐欺で…でもちょっぴり優しくて。 きっとその優しさを隠すために、周りを騙してるんだ。 その『騙す』レベルがちょっと普通じゃないけど。 例えば、部屋から出たらたらいが落ちてきて、 横にふらついたら巨大な岩が転がってきて、 それに吹き飛ばされた先に何故か十字架があって、 そのまま屋根の上まで吊るされて、 その上俺目掛けて雷が落ちてくる。 なんて罠を遊びで仕掛けて悪戯好きを装う。 でも絶対に死ぬような危険な罠は配置しない。そこがてゐの優しさだ。 …………俺にはその優しさが向けられていないように思うのは気のせいか? 「…嫌いなわけないだろ?俺は、てゐが好きさ」 色々と思うところはあったが、それでも。俺に幸福をもたらした、俺だけの兎。 「じゃ、改めて、おはようのキス……」 俺はそっと目を閉じて、てゐを待つ。 …………チュ。 躊躇いがちに触れた、てゐの唇。そのやわらかく冷たい食感をもっと感じたくて、俺はさらに吸いついt ………『やわらかく冷たい食感』? 俺はそっと目を開けた。 こんにゃくでした。 「てゐぃぃぃぃぃーーーーーーーー!!!」 「あははははははーーーーーーーー!!!」 1スレ目 755 ─────────────────────────────────────────────────────────── 騙したいならいくらでも騙せばいい。 裏切りたいなら裏切ってくれて構わない。 利用したいならそれでもいい。不便な道具以下だろうけどな。 それでも、俺の手を取ってくれるなら、俺はずっとお前と一緒にいる。 さあ、どうするてゐ。お前が選んでくれ。 3スレ目 452 ─────────────────────────────────────────────────────────── 『俺が、絶対に幸せにするから……てゐっ!! 好きだぁぁぁぁぁっ!!!!』 いやもうね、幸せにしてくれるのならそれ以上に彼女を幸せにしてあげたいなと。 短くて気が利いたのも意外と難しい……。 4スレ目 67 ─────────────────────────────────────────────────────────── 桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけた黍團子、一つ私に下さいな。 ―――人には存在する意味がある。 ―――何かを望まれれば渡す事もあろう。何かを望めば与えられる事もあろう。 ―――大切なのはそれによって何に至るのか。それを知ることだ。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ その日、俺は兎と会った。 「何処だここ」 息を吐けば絹製のマフラー越しに白い湯気が噴き出す。 一歩前に進んでみれば、編み上げの半長靴が雪に沈み込む。 ヘルメットのバイザーを上げ、周りを見渡してみれば……白と緑のコントラスト。 「竹林?」 雪降る竹林に、俺は立っていた。 前も後ろも右も左もあっちもこっちもそっちもどっちもブルドッ……これは古いか。 我ながら少し混乱している。ともかく竹が生えている。 俺はバイザーを下ろして上空を見上げるが……生い茂った竹の葉のお陰で光も少なく、太陽の位置も分からない。 「何で俺はこんな所に居るんだ?」 呟いた瞬間、背後から何か重いものが落ちる音がした。 反射的に強化プラスチック製の大盾を構えて振り向き、背中の警杖に手をかける。 「……雪か」 いかんいかん、気が張り詰めているようだな。落ち着け。何時ものクールな俺となるのだ。 まずは状況確認……俺は竹林に居るようだ。まぁ見れば分かるが。 ならばとりあえず、何とかしてこの場所を抜けねばならん。 訓練も途中なのだ。早く合流しないと先輩に張り倒されかれん。 「……うぇぇ」 早く合流しなくても張り倒されかねないということを理解し、心底嫌そうなツラになるのは仕方ないと思われる。 まぁ誰も見てねぇだろうし、多少嫌そうなツラしてても誰も気にしないだろうが…… 「……」 なんか居た。 「あ……」「……」 竹林の陰から少女がこちらを覗きこんでいた。 緑と白の空間の中に浮かぶ柔らかな桃色の服と大きく深く紅い瞳。 こちらを見つめる表情からは何を考えているのかは分からなかったが…… 何故か、その瞳から目を反らすことが出来なかった。 「あー……えーと、寒くね?」 我ながら頭の悪い一言しか出なかった。いや、だってあれじゃあ防寒効果ないだろうしなぁ。 ピンクのワンピースだし。素足だし。 「あ、おいッ!?」 俺の第一声の直後、少女は俺に背を向けて走り始めた。 このような竹林に少女が1人、それもあんな薄い服で……ただ事ではない。 俺は大盾を背中に担ぎ、少女の後を追いかけた。 ~少女(を)追跡中~ 「ぜぇ、ぜぇ……」 何つー速さだ。いくら俺が雪慣れしてないつっても近付けもせんとは……ッ! 少女は既に見失ってしまった。少女に全力ダッシュで負ける男、我ながら何とも情けない話だ。 「ったく、何だってんだ。竹林に居たり女の子が居たり……」 少し時間をかけて落ち着いてきた息を確認し、再び足を動かし始める。 ともあれ、先の少女をもう一度探さねばなるまい。 一応、救助対象だろうしなぁ。見捨てて一人で出口探すわけにもいくまい。 ・ そしてそこから数時間、俺は迷いに迷い続けて…… 「家だ」 竹林が開け、目の前には木造立ての純和風な…… 「でけぇ……」 驚くほどに大きな建物があった。 半分安堵、そして半分、先の少女を見つけられなかった罪悪感を感じる。 だが、とりあえず人に会うことが出来れば連絡手段もあるだろう。 部隊に合流した後であの娘を捜索する部隊を編成してもらって…… 「ってまずは中に入らんとな」 いい加減この暑苦しい格好でも寒くなってきた。 ふと周りを歩いてみれば、人影を見かける。 「すみませーん、ここの人ッスかー?」 人影が振り向く。 「「え?」」 見覚えのある寒そうなピンクのワンピース。 ……俺と声を揃えたのは、先ほどの少女だった。 「ちょ、ちょっと! 何でアンタこっちに来てんのよッ!?」 「うわぁい、口悪いわこの娘」 可愛い顔してあの娘何とやら、第一声からこれかよ……と思いつつも、少しホッとする。 「ここの子だったか。ならアレだな、探す事もなかったか」 「?」 「あぁ、気にすんな。それにしても……寒くねぇか? そんな薄着で素足でマフラーも帽子もなくて、耳はあるが……耳?」 「何よ、耳がそんなに珍しい?」 少女はそう言って耳をピコピコ動かすので、おもむろに掴んでやった。 「ぴぎゃっ!?」 「ふむ……よく出来てんな」 手を離した直後、少女がこっちに向かって噛み付いてくる。 「ちょ、こら! ホントに噛み付くなッ!」 「うがぁーッ!」 籠手のお陰で歯は通ってないが、気分的に嫌だ。 「どうしたの、てゐ。何かさっきから騒がしくしてるみたいだけど……」 入り口が開いたため、俺と少女は揃って顔を向ける。相変わらず噛み付かれてるが。 「へーへん(訳:れーせん)」 「またウサ耳だ」 俺達の様子に、新しく現れたブレザー姿のウサ耳少女は一歩引いてこちらを見た。 「ま、また……変わったお客様ね、てゐ」 「ひゃふひゃはひはひょ!(訳:客じゃないわよ!)」 「まぁ客じゃなくてもこの際構わんが……君はここの子かい?」 「あ、えぇ。一応……」 「機動隊巡査。○○と言う者だが……」 俺は今だに籠手にぶら下がっていた少女を突きつける。 「お届けものだ」 永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永琳 てゐが何やら珍妙な格好をした人間を連れてきた、という報告をウドンゲから聞き…… 私は客間にその人間を通すように伝えた。 確かに彼は珍妙な格好をしていた。 青を基調とした全身を包む重装備、ヘルメットを脱いで脇に抱え、正座でこちらに一礼してきた。 とりあえず礼儀作法はあるようだ。 何故か部屋の隅でてゐがむくれていたが、とりあえず今は気にしないでおく。 軽く自己紹介を交える。 どうやら彼は外の世界の住人で、『キドウタイ』という部隊に所属していた青年らしい。 訓練中に突如、竹林の中に迷い込んでしまったようだ。あのスキマ妖怪が寝惚けて神隠したのだろうか? 部隊と聞き、思わず月の使者かとも思ったが…… どうやら外の世界で一般市民を守る防衛隊のようなものらしい。 実際、彼の装備を一度全部調べてみたが、どれも人を殺傷するだけの能力を持った武器ではなかった。 一応、長い棒と巨大な拳銃のようなものは預かることにしたが。 「しかし重いわね、これ」 「まぁ……総重量30kg越えますしね。ボディアーマーは防弾プレート込みだし、プロテクターもありますさね」 ワイシャツに青いズボンと、随分ラフになった格好で彼は説明してくれる。 「訓練って、これ付けたままするの?」 「フル装備に慣れてねぇといざという時に力を発揮出来ねぇらしいッスから。確かに重いけど……もう慣れましたぜ」 慣れるものなのかしら、これは。 続けてこちらから、ここが幻想郷という世界、彼が居た世界とは違う世界であるということを説明する。 初めのうちは半信半疑な彼だったが、 都合よく「出て来いやズッコケスカートぉおおッ!」と叫びながら突っ込んできた妹紅のお陰で説明は省けた。 直後に「やンのかこのハンドポケットぉおおっ!」と叫びながら現れた姫は、 最近ネトゲでのソロ活動に疲れているくせにオンライン上の友達が居ないのでフラストレーションを大変溜めてらっしゃるようだった。 ソロのネトゲほど虚しいものはない。 ちなみに彼は弾幕の余波に巻き込まれながら吹っ飛んでいた。 髪の毛がアフロになっていた。 余談だが私は見ていた。 妹紅のフジヤマヴォルケイノが放たれた瞬間、 てゐがニヤッと笑って彼の背中にドロップキックを放って突っ込ませたのを。 そして続きも見ていた。 彼がその足を咄嗟に掴んで2人揃ってヴォルケイノに被弾したのを。 てゐもアフロになっていた。 「……なかなか面白いコンビね」 「セットにしないでもらえませんか?」 「全くだ。この俺の死なば諸共精神が発揮されなければ俺1人でオチ担当だったぞ。 ぷっぷーッ! ウサギちゃん、何その髪の毛! ウサ耳がアフロに沈んでかっこわるーい!」 「あんだとー! やんのかこのアフロマッチョ! あとウサギちゃん言うなーッ!」 「あぁん? マッチョにアフロは神聖な組み合わせなんだぞコラーッ!」 2人はアフロ同士をバインバインぶつけ合いながらメンチ切りまくってた。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 魑魅魍魎と人間が共存する地、幻想郷……とやらに俺は迷い込んだらしい。 何のコラだい? と思ったが、流石にアレを見たら信じざるを得まい。火の鳥怖い。 俺は早々に元の世界に戻ることを望んだのだが永琳と名乗る女性に止められてしまった。 というのも外の世界に出すことが出来るのは2人、 1人は妖怪、1人は巫女をやってる人間で、どちらかに話せば外の世界に戻ることは可能なのだが…… 妖怪の方はこの時期冬眠しているとのこと。 蛙の妖怪か何かだろうか。 そしてもう1人の巫女の方もこの時期は近づかない方が良いらしい。 理由は聞かせてもらえなかったが、正月過ぎは機嫌が悪くなる体質なのかもしれない。 とりあえず、2月過ぎれば会っても問題ないだろうという話だ。 というワケで、俺は永琳さんの提案でしばらくこの『永遠亭』にお世話になることになった。 肉体労働に雑用、要するにこき使われるという条件付とは言え、行く先もない俺はなりふり構っていられなかった。 それを心底嫌そうな目で最初に見つけた少女、因幡てゐが見ていたので、ハンッと鼻で笑ってやった。 取っ組み合いになった。 あのちっちゃな体格で現役機動隊員の俺と五分に渡り合うとは、流石は妖怪兎だなおい。 ……男の意地にかけて、五分でしたよ? ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● やりませう、やりませう、これから鬼の征伐に、ついて行くならやりませう。 ―――彼は何の為に戦いを望んだのか。 ―――名誉? 地位? それとも金? ―――もしかすると、ただ大事な人を守りたかった。それだけなのかもしれない。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ それから数日が経った。 思えば何だかんだで色々と忙しい日々を送っている。 折角なのでここで、今までの日々を少しだけ振り返ってみよう。 【ケース1】 俺に最初に与えられた仕事は廊下の水拭きだった。 だが、永遠亭の廊下は何しろ長い。そりゃ俺が派遣された先のイナバの子達もうんざりするだろう。 こいつぁ最早、罰ゲームの一種だな。 だから俺は考えた。 機動隊の大盾の下に雑巾を敷き詰め、取っ手と俺の腰をロープで結ぶように繋げる。 そして、イナバの子達をその上に乗せて廊下を走るのだ。 ……イメージが湧かない人は犬ぞりを想像してもらおう。 犬が俺、ソリが大盾と雑巾、その上に乗る人がイナバ達だ。You see? これで俺の訓練にもなり、みんなも楽で素敵な水拭きとなるのだ。 あ、でも時々は普通に水拭きするけどな。でねぇとイナバ達がサボってるように見られるし。 その辺のフォローも完璧、流石だな俺者。 これが俺が編み出した全く新しい掃除技だ! うーぉおおおーーーッ! 「さぁ、今日も歌うぞー! 俺に続けー!」 「「「おーッ!」」」 ハートマン永遠亭ソングver1.00d 作詞 あなたの○○ 作曲 ハートマンZUN曹 俺と姫さんは部屋でゴロゴロ 姫さん転がりこう言った 「お願い(Webマネーが)欲しいの」 「パシリかよ」 おまえによし 俺によし うん まぁよし 日の出と共に起き出して 働けと言われて一日働く 因・幡・てゐはろくでなし 嘘つき 詐欺師 年中ワンピ 永遠亭が大好きな あの人誰だか教えてよ 永遠亭の薬屋さん! 俺の愛するえーりんさん! 俺のえーりん! 貴様のえーりん! 我らのえーりん! たすけてえーりん! 人から聞いた話では 鈴仙の瞳は電波塔 うん よし 感度よし 具合よし すべてよし 味よし すげえよし おまえによし 俺によし スカした美少女 大好きだ 俺の彼女はまだ居ない もし廊下で倒れたら 手術台に乗って復活する 「さあよみがえるのだ この電撃でー」 誰か見ててよ 見事な俺様! ※以下熱い想いを込めて最初から繰り返し×∞ ガラッと近くのふすまを開けて何か言いたげなブレザー兎こと鈴仙が出てきたので、足を止めた。 「ねぇ」 「ん?」 「一部……というか師匠の歌詞部分だけ毛色が違う気がするんだけど」 「鈴仙、お前も電撃受けたいか?」 「うん、まぁ仕方ないよね」 俺だって彼女を下手に刺激して電撃イライラ棒でヒギられたくない。 ヒギられました。(理由:姫さんの歌詞部分が気に入らなかったらしい) 【ケース2】 「はい、これ」 「飲まなきゃ、いけねぇんスよね?」 手渡されたどどめ色のカプセルを見つつ、すっごい嫌そうに言うが永琳さんに鼻で笑われた。 「今、人間の成人男性モルモットは数少ないの。折角居るんだから最大限活用しなきゃ」 「まぁ良いや……どーせごねても飲まされるんでしょうし、飲みますよ」 我ながら素敵な覚悟を決め、カプセルを水と共に流し込む。 数秒後、身体が熱くなり……そして割合すぐに治まる。 何だ、別に変化は無いじゃないか。 月の頭脳も大したことねぇなぁ……と思っていたら妙にスースーする。主に性的な意味で。 いや違う、この妙な感覚は性的じゃなくて股間部だ。 「ぎゃああッ! 俺の大事なパイナップルがぁーッ!」 「大丈夫よ、30分もしたらまた生えてくるわ」 「そんな雨後の筍みたいにポコポコ生えたり抜いたりして良いモンじゃねぇでしょうに!」 ズボンをパンツごと引っ張り、俺の股間部を確認するヤゴコロ先生。見られる俺も俺だが、流石だ。 「とりあえず、逆ふたなり効果は問題なく出てるわね」 「それは逆言わないんじゃねぇッスか?」 更に言うなら出てない、引っ込んでる。全部まとめて引っ込んでる。 というか男として見られて恥ずかしくない股間部なんぞ初めてだ。 何か(と書いて『スッパ』と読む)に目覚めてしまいそうで非常に怖い。 「そう言えば永琳さん、この薬……何のために使うんですかぃ?」 「……」 ひ・み・つ♪ 【ケース3】 「ところで……」 「何スか?」 「今夜もヨロシク」 「……またですか。まぁ良いッスけどねぇ……」 最近は輝夜の姫さんのネトゲに夜な夜な付き合って居る俺ガイル。 一瞬でもネチョい想像をしたやつは↓ため↑+Kのタイミングずれてジャンプヒールキックになってしまえ。 (http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/6306/1150384787/180) 「……本物の輝夜姫が今やネトゲ中毒者なんてことが世に知れ渡ったら、 かつて小学校の頃の劇で『かぐやひめ』役になれて喜んでた女の子が居た堪れない気分になりますな」 ちなみにその時の俺の役は『月の迎えを返り討とうとする兵士B』だった。 台詞は「うわぁ!」の一つだけ。 悔しかったのでトマトジュース使って盛大な死に様演じたら先生にしこたま怒られたほろ苦いメモリーがある。 「あの頃の俺は若かった……」 「今も充分若いと思うけど?」 「いやいや姫さん、精神の老化は人生の老化ですぜ。 とりあえず、過去の思い出を振り返って『あの頃は良かった』とか言い始めたら人間色々と終わりッスな」 「そういうものなの? 私にはよく分からないけど……」 分かってもらっても困るけどね。 「まぁ良いや。今日も飛ばすわよー!」 「頼みますから調子乗って暴れ回らんで下さいよ?」 オンライン上で姫のキャラ一回倒れる度に永琳さんが俺に一回人体実験をするという暗黙ルールがあったりする。 文字通り、死んでも殺すわけにはいかない。 「ぎゃー! 俺がログインする前にダンジョンに突っ込むなー!」 幸い、人体実験は3回程で済みました。 【ケース4】 「というワケで、うちの姫さんが何時もお世話になってるから一回くらいは挨拶しとけと永琳さんに言われたため、 本日は藤原さんちの妹紅さんに会いに来ました。 こんにちは妹紅さん、永琳さんの話には裏があるような気がしませんか?」 「また妙なヤツが来たなぁ」 わざわざ説明をした上にマイク(『くいしんぼう万歳』と書いたしゃもじ)を向けてみたのにつれないリアクションだった。 「……まぁまぁ妹紅、何時もの刺客じゃないだけマシじゃないか?」 「そうか刺客だな、よし殺す。とか言われたら……俺普通に殺されちゃうわけですが」 俺の中で妹紅さんのフジヤマヴォルケイノは最早トラウマだ。 『さん』付けて心なし口調が丁寧な時点でトラウマ具合を感じて欲しい。 「っていうか今日は慧音さんも一緒なんスね」 まぁ慧音さんも『さん』付けなワケだが。 「一応な……いざという時、『なかったこと』にしなければ色々と大変だし」 「何処も苦労してんスねぇ、俺の場合は何時も弄られてますが。身体的に」 「……人里に住居用意してやろうか?」 「でも最近は何故かバッチコーイって感じなんで、まぁ大よそ大丈夫スよ」 「それって洗脳って言うんじゃないの? ほれ、茶」 慧音さんと話してる間に妹紅さんが茶を入れてきてくれた。良い人だ。 とまぁこんな感じで俺達はしばしの間、和気藹々と世間話をしていたわけだが…… 夕刻となり、夜も更け、ぼくも帰ろ おうちに帰ろ でんでん でんぐりがえって そろそろ帰ろうかと思ったその時、 「う゛ッ!」 突如、慧音さんが湯飲みを落として苦しみ始めた。 「な、大丈夫スか慧音さん!」 「ゥ・・・ァァ・・・」 慧音さんが苦しむ様子を見て、妹紅さんも慌てて近寄ろうとし……そして足を止めた。 「まさか……! 月は出ているか!?」 「何そのサテライト以下略。……あ、出てますね。満月だ」 「満月だと!? マズい○○、早く離れろ!」 「え、な……何で?」 「フゥゥ・・・ハァァ・・・」 Caved!!!! 「うっかり新たな趣味に目覚めそうになりました」 機動隊・匿名希望 とまぁこんな感じだ。数日間の割にはまるで小話集のように充実してた気がする。 まぁビリビリしたモノ突っ込まれたり、大事な何かを失ったり、人体実験されたり、ケツがヒリヒリしたりと…… 何か10割がた永琳さんが関わってる上に、 そこはかとなく大切な何かを日々失いかけてるような気がするがまぁ死んでないのでよしとしよう。 とりあえず概ね、俺の永遠亭ライフは順調だと言える。 だが、そんな俺にも最近、気になることがある。 「うーむ……今日もまた会えなんだ」 永遠亭、イナバ達のリーダー、因幡てゐ。 俺が永遠亭に来る切欠となった少女。 最初の内に喧嘩した程度で、最近は顔も合わせようとしてくれない。 鈴仙曰く「普段なら誰彼構わず悪戯するのに……」と言っていた。 彼女の頭の上に絶妙なバランスで黒板消しが乗ってた時点で俺は納得した。 「と言うことは、俺だけ……だよなぁ」 いくら俺が何時かは外の世界に戻るとは言え、口すら聞いてくれないというのは寂しい限りである。 「しかし、多少強引に話しようとしても逃げられちまうしなぁ」 そもそもスピードの面では圧倒的な差があるのだ。 兎の脚力は伊達じゃない上に空まで飛びやがるしな。 その上、地の利もある。 この間、話をしようと彼女の部屋に行ったら……何と着替え中の鈴仙が居たという巧妙な罠を仕掛けられたくらいだ。 え? それでどうしたかって? いや決まってるでしょ旦那。座薬はねぇよな。(ケツを押さえながら) 「それはともかく、上手いこと何時も逃げられてんだよなぁ」 そこまで避けられる理由は何だろうか? 俺が知る由は無い。無論、他のイナバの子達も鈴仙も知らないそうだ。 「ったく、どうしたモンかねぇ……」 「お兄ちゃん、何悩んでるの?」 「いや、何でみんな空飛ぶのに見えないのかなって。絶対領域」 通りすがりのイナバの子に心配されたので、次点で気になって仕方がない悩みを打ち明けたら白い目で見られた。 ・ 「全く、しょうがないわね……」 ・ その晩。 俺は永遠亭の湯船の中で身体を伸ばしていた。 「あー……良い湯だ」 一日の疲れがダダ漏れる、この瞬間が俺は好きである。 どうせだから、風呂について少しばかり話をしよう。 実は昔、俺は何だかんだで一応は客人と言う扱いのため、一番風呂に入らせてもらっていた。 だが……イナバの子達の苦情により最後になったのだ。 ↓ちなみにその時の意見。 『お兄ちゃんの後って変な毛とか浮いてるからやだー』 『何か臭いしねー』 全俺が泣いた。 気分はお年頃の娘を持ったお父さんであった。頑張れお父さん。俺も頑張る。 ともあれそんな理由で俺は最後に回されたのだ。3日で。 だが! 今日は違う、今日はなんと一番風呂なのだ。 一番風呂というかつての栄光を失った俺は枕を色々な意味で濡らした。 あまりに悔しかった俺は、再び一番風呂に入らせてもらえるように、 髪と眉を除く全身の毛という毛を全部剃ったり、風呂入る前に全身くまなく洗ったり、 時にはイナバの子達が居るのに気付いていながら突撃し、偽うっかりエロスキルを発動させたりと地道な努力を続けたのだ。 一度永琳さんが入っている時に突撃してしまい、内側が1ドットしかない壺中の大銀河を叩き込まれたのも良い思い出だ。 ちなみにその時の映像は俺脳内のS級フォルダ内にしっかりと納められている。永久保存版だ。誰にもやらん。 ともあれ、そんな地道な努力が実を結んだ瞬間だと言えよう。 永琳さんが溜息をつきながら俺に告げたのも、俺の情熱を理解してくれたからに違いないのだ。 まぁ、この際一週間に一回だけという制限は大目に見てやるとしよう。 そして今日はその初日なのである。 「っと、いけねぇいけねぇ。剃刀忘れてたぜ」 言うまでもなく無駄毛処理用である。ツルツルお肌は趣味ではないが、一番風呂への最低条件なのだから仕方ない。 俺は湯船から上がり、腰に手ぬぐいを巻きながら脱衣室への扉に手を…… ガラ、と扉が開く。 「……」 「……」 てゐが居た。 まぁアレだ。色んな意味で描写は避けておく。 「よぉー、ウサギちゃ」 瞬時に閉まる扉。 反射的に阻止。 「恐ろしい早業だなオイ!」 「な、何でアンタが入ってんのよ!」 「ぁん!? 今日から一週間に一度、一番風呂に入らせてもらうことになってんだよ!」 「そんなわけ無いじゃない! 永琳様が言ってたのよ!? 私に先入るようにって!」 む?俺が入っていることは永琳さんも百も承知のはずだが……月の頭脳も時にうっかりエラー起こすのだろうか。 「えぇからとっとと入れ! そこまでスッパしてんだったら今入ろうが後で入ろうが変わんねぇだろうが!」 ともあれこれは話をする良いチャンスだ。 一歩間違えたら犯罪的な臭いがプンプンしやがるが、相手は俺より(中身は)年上の妖怪兎なのでなんら問題ありません。 「きゃーイヤー! だーれーかぁーッ!」 「あーもーうっせぇ!」 「ピギャッ!?」 空いていたもう片手で、てゐの耳をがっしと掴み、吊り上げて湯船に向かって歩いて行く。 途中、片足で湯船付近に向かって腰掛を軽く蹴り滑らせる。 「ぃよーし、楽しい風呂タイムだ。この俺様がウサギちゃんを隅々までクリーニングしてやるぜ」 「ぎゃーッ! はーなーせー! おかされるーッ!」 「誰がそんな貧相な身体に欲情すっかよ、このB級!」 ちなみにB級フォルダは整理する際にやや惜しみつつも容赦なくShift+Deleteするという位置付けである。 残念ながら俺にロリコンの趣味はない。 ジタバタと暴れるてゐを腰掛に座らせ、俺は湯船の縁に座り、手近な風呂桶でてゐに湯をぶっかける。 「ほれ、これでもう外に出れんな。そんな状態で外に出たら身体に悪いしなぁ?」 てゐが無類の健康マニアであるという情報は既に仕入れている。 情報量はカレーのニンジン横流しだった。末端まで情報規制の手が届いてねぇぜ、てゐちゃんよ。 「う゛ーーーッ!」 こちらに顔を向けず、唸り声を上げているのを聞き……俺は近くの石鹸を手で泡立て始める。 「まぁ髪の毛くらいは洗わせろ。そして聞かせろ。何故に俺を避ける?」 「……」 途端に黙り込む。チッ……ストレートはマズったか? 「だんまりか。まぁ良い」 充分に泡立った石鹸の泡を、満遍なくてゐの頭に乗せて……爪を立てないように丁寧に揉み込み始める。 「ふーん、意外と髪の手入れはちゃんとしてんだな。 お客さん、痒ぃ所はありませんかねぇ」 「……」 まただんまりか、うーむ……暖簾に腕押しってヤツだな。 しばしの間、沈黙とてゐの髪を洗う音だけが風呂場に響く。 「ねぇ」 「お?」 ちょっと意外、向こうから話し掛けてきた。 「髪洗うの、上手いわね」 「これでも元・カリスマ美容師だからな。嘘だが」 人の髪の毛を洗うのなんざ初めての経験である。だから、上手いと言われてちょっと得意気。 「ねぇ」 「ぁん?」 俺のボケにツッコまず、再びてゐが声を出す。 「アンタ、私が嫌いじゃなかったの?」 「何言ってんだオメェ。俺は好きだぞ、ウサギちゃんのこと」 「な、ななッ!?」 「永遠亭のヤツらもみーんな好きだぜ。何かとサドいけどな。 俺ぁ楽しいからこそ、ここに滞在してんだぜ。仕方なくじゃねぇ、その辺覚えとけよウサギちゃん」 カカッと笑い、何度か泡の中でてゐの髪を梳いてみる。 「しっかしオメェの髪、良い艶と手触りしてんなぁ」 「褒めても何も出ないわよ?」 「世辞は苦手なモンでなぁ」 お陰様で良い年しながら巡査止まりだ。 適度に洗い終え、てゐの頭の泡を湯でしっかりと流し始める。 「ねぇ」 「ん?」 三度目の声に、俺は桶を持ったまま固まる。 「……何も聞かないのね」 「話したくねぇことをムリヤリ聞くのは趣味じゃねぇからな。 とりあえず、嫌われてねぇって事さえ分かりゃ満足さね」 本格的に嫌われてるんだったら、一発弾でも撃ち込まれて終了だろうしな。 髪の毛まで洗わせてもらってんだ。それは無いと思いたい。 「ま、俺としてはだ。外の世界に戻る日まで、ここの想い出はしっかり残しときてぇわけだ。 一生に一度限りかもしれねぇ機会があったら、その機会を大事にしましょう、ってな」 そのまま、湯を汲んで自分も頭から湯をかぶり……ポンポンとてゐの頭を軽く叩く。 「だからまぁ、それまで短い期間かもしれねぇが仲良くしてくれや。な?」 そしてよっこらせっと立ち上がり、脱衣室へと足を向け…… 「ちょっと待ちなさいよ」 る前に止められたので、足を止めててゐの方を向く。 「私だけ洗われるのは悔しいじゃない。背中洗ったげるわよ」 ……ほぉ、嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。 「あぁ、頼むわ」 おもむろに歩き始めたてゐの横に並び、風呂場の隅にあったデッキブラシをてゐが掴んだので、俺も反対側を掴んだ。 「ウサギちゃーん? 流石の俺様でもこんなモンでこすられたらちょぉっと痛いかなぁー?」 動物園の大型動物じゃねぇんだぞ。 「まぁまぁ、遠慮せずに」 「いやいや、お構いなく」 デッキブラシを挟んで力を込め合う俺とてゐ。 歯をギリギリ食い縛り、コメカミに青筋を浮かべながら笑みを浮かべ合う俺達の姿は、傍から見れば何とも愉快な光景だろう。 ・ 結局、デッキブラシが砕け散るという大惨事によって引き分けた。戦いは何時だって無力な者から先に犠牲になる。 ありがとうデッキブラシ。こんにちはヘチマたわし。 やっぱ身体洗うんだったらヘチマたわしだよな。 亀の子たわし持ってきた時は思わず湯船に背負い投げ飛ばしてやったが。 「……思ったより広いのね」 てゐに背中を洗ってもらう。何となく気恥ずかしいモンがあるな、これ。 「鍛えてっからな。理想は背中に鬼の貌(かお)を浮かべることだし」 誰にもできないことみつけだせー、それが、君のばきー。 「そう言えば、イナバの子達が言ってたんだけど」 「ほう、俺の話題か? あのイケメンの彼女になりたいとかそんな感じの話題沸騰か? いやぁモテる男はつらいねぇ……って痛ぇなこのB級! そんな無駄に気合入れて擦るなッ!」 皮剥けるかと思った。 「馬鹿なこと言ってるってのも噂通りねぇ」 「どうしよう、俺……ナメられてる」 ギリギリギリと思わず歯軋りしつつ、俺より2回りほど小さいイナバの子達を思い浮かべて憤りをぶつけようとしたがむしろ和んだ。 俺にロリコンの趣味はないが、子供は好きである。 「でも……」 「ぁん?」 「時々、妙に寂しそうな笑み浮かべるらしいじゃない」 「……」 「今度はそっちが黙るのね」 「男にゃ時に黙って背中で語る時ってのもあるんだよ」 「嘘ね。図星を指されて誤魔化すお約束のパターンよ。今の発言は」 くっ、流石に百戦錬磨の二枚舌に生半可な誤魔化しは通用しないか。 「まぁ気にすんな。人には色々あるんだよ。言いたくない事の一つや二つな」 「……それは分かるけどね」 てゐの意味深な発言を最後に、しばらくお互いに沈黙が続く。 ……適当に話題振って流れを変えるか。 「しかし、背中洗ってもらうとか何年ぶりかねぇ……」 「外の世界だと、そんなに洗わないもんなの? 不健康よ、それって」 「洗うっちゃ洗うんだが……最低でも、外の世界じゃ1人で洗うのが普通だかんなぁ。 誰かに背中洗ってもらうってのは大抵は家族か恋人同士って相場が決まってるもんだ」 「……ッ!」 「ギャーッ! 痛ぇ痛ぇ摩擦で熱ぃ気持ち良いッ! 何しやがるこのB級ッ!」 「さっきから何なのよそのB級って!」 ・ 「平和ですねぇ」 月夜に2人、縁側で薬師と姫が茶を啜る。 「ギャーとか言ってるけど?」 「何時ものことでは?」 「それもそうね」 永遠亭は今日も平和だった。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 行きませう、行きませう、貴方について何処までも、家来になって行きませう。 ―――時に同じ意志を持つ者は現れるかもしれないが、それが同じ人間だとは限らない。 ―――だが、本当に同じ意志を持つのならば人種の間に垣根は無いのかもしれない。 ―――そう、もしかしたら人間と人外の間にすら垣根は無いのかもしれないのだ。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ その日、俺は鬼と会った。 1月も半ばを過ぎた。 鈴仙の涙無しには語れない愚痴を聞いたり、永琳さんの実験がエスカレートして時々記憶がなくなったり、 姫さんと妹紅さんの死合いに付き合わされ、その度アフロになって両者に腹抱えて笑われたり…… イナバの子達にシチューのニンジンを渡す代わりに肉を入れるよう要求したら、 脂身が山ほど入っていたという嫌がらせを受けたりする日々に満足しつつ、 俺は永遠亭の日々を割と楽しく過ごしていた。 てゐもあの風呂の一件の後……時々なら話をしてくれるようになった。 決まって他に誰も居ない時に限り、誰かが来たら遁走するという奇妙な行動を取っていたりはするが、 全く近付きすらしてくれなかった頃から比べたらまさしく劇的な進化と言えるだろう。 そんなある晩。 風呂に最後に入り終えた俺は部屋で1人、フル装備で腕立て伏せを行っていた。 機動隊員は身体が資本。いくらこき使われているとはいえ、基礎トレーニングをサボるわけにはいかない。 鍛錬は身体を作り、維持し、果ては自分の身を守ることにも繋がるのだ。 というかブッチャけ、機動隊に戻った時に鈍ってたら張り倒される。 「でも考えてみりゃ、この幻想郷じゃ俺の実力は下の下なんだよなぁ」 つーか、幻想郷の標準レベルがあまりにも高すぎる。その辺のイナバの子ですら弾を撃った時、俺は泣いた。 この永遠亭でのヒエラルキーの最下層に俺は居るわけか。 道理で最近、かつてその位置に居た鈴仙が妙に嬉しそうなワケだ。 何時か貴様のパンツを全部こっそり縞パンに変えといてやる。 「スタッフサービスに相談しよかな」 「何よ、そのスタッフサービスって」 「上司や部下に恵まれなかった時に無償で愚痴を聞いてもらう素敵なサービスだ」 よいっしょっと立ち上がって自然な流れでファインティングポーズに移行する。 流石の俺も、突然虚空から声が聞こえてきたら警戒する。 「うぉッ、なんだこりゃ!?」 部屋の天井には白い霧が不自然に集まっていた。 「下ばっか見てるから上に気付かないのよ」 上向いてやる腕立てってどんなんだ。 「まぁまぁ、とりあえず今回は戦り合う気は無いから、そう警戒しないでよ」 「そういうのは姿見せてから言いな、お嬢ちゃん」 「見せてるじゃない。さっきから裾引っ張ってるわよ」 「ぁん?」 確かにズボンを引っ張られる感触を感じ、下を見てみる。 「上ばっか見てるから下に気付かないのよ」 「……グレムリンか、アンタ」 こちらに向けてブイサインしてる小さな少女が、そこには居た。 ・ 「伊吹 萃香?」 床に胡坐を組み、瓢箪を煽る少女に向かい合い、俺も床に座って反芻する。 「そ、それが名前」 ちなみに萃香と名乗った少女の体格は先の小人ではなく、普通の人間サイズになっていた。少々幼いが。 幼いとは言え、その頭から突き出る二本の角は、それが決して人間ではないことを物語っている。 「んで、その西瓜が何用だ? 流石に不法侵入してたら永遠亭のヤツらも黙っちゃいねぇぞ?」 「あはは、ムリムリ! 月人ならまだしも他の有象無象の兎程度じゃ私を捕まえられりゃしないわよ。 ってちょっと待て人間。今物凄く馬鹿にしなかったか?」 「ハッハッハ、大した自信なこった」 自分が不利になりそうな発言を言っときながらサラリとスルー。これぞ瀟洒。 「まぁ良いや。で、あぁ、用だっけ? んー、これと言って難しい話じゃないわよ」 瓢箪をドンッと置き、笑みを浮かべる。 「ちょいと、外から来たっつーアンタと飲んでみたくてね」 ・ 厨房からグラスを拝借して戻ってきた時、萃香はまるで自分の部屋に居るかのように頬杖をついて横になっていた。 「おかえりー。今更だけどいけるクチ?」 「任せとけ。俺は毎晩酒を持ち込んでは一人酒盛りをして、時々先輩にバレては丸坊主にされるのが趣味という男だ」 「変わった趣味ね」 「これ以上髪の毛が無いときは下の毛も刈られるぞ。あれはクセになるな」 目の前の角っ娘の視線がとても痛い。だが俺は謝らない。 彼女の瓢箪から酒を注いでもらい、軽く乾杯する。 ・ 久しぶりの美味い酒に舌鼓を打ち、ほろ酔い気分で調子に乗り始める。 何を隠そう、俺は宴会の席で1人居たら何かと重宝される盛り上げの天才だ。 ……決して調子に乗り過ぎて最終的に俺がボコられるというオチをテンプレ化させる天才ではない。 「じゃーアレか、オメェは鬼ってヤツなんか?」 「だからそう言ってるじゃない。外の世界はどうなの、鬼の話とかあるのー? 炒り豆ぶつけたりする行事とかさ。アレ痛いんだよねー」 「あー、言い伝え程度ならな。2月3日はそっちの言う通り炒り豆撒くし恵比寿巻きも食うさね。 かく言う俺も鬼を演じたこともあるしな」 ちなみに機動隊のボランティアである。 鬼のマスクかぶって近所の幼稚園の子達に「うるせー豆ぶつけんぞ」とか言われてベシベシ豆を投げられていた。 あまりにぶつけられてばかりで悔しかったので、 一度、白い液体(豆乳)撒き散らしながら盛大にのた打ち回ったら先生ドン引き子供は号泣、 俺は先輩同期後輩教官問わずしこたま殴られるという地獄絵図が描かれたほろ苦いメモリーがある。 ちなみにその後、物凄い勢いで減棒されてしばらく様々な意味で地獄を見たのもそのメモリーのうちだ。 あの頃の俺は馬鹿だった。 「お願いだから鬼が誤解されるようなことしないでよ……」 「失敬な。鬼は怖がられて何ぼだろう。だから俺はガキに鬼の恐怖というヤツを刷り込んでやったのだよ」 「正論だが根本的に恐怖の方向性が違うわ!」 「そもそも人間の俺様が見たこともない鬼の恐怖を体現出来るわきゃねぇだろ!」 「逆切れするな馬鹿!」 馬鹿は人生楽しめます。 まぁそんなこんなで鬼の萃香と杯を交わし始めて更に数刻。 俺の機動隊伝説を萃香が大爆笑されたり、呆れられたり、瓢箪が俺の顔面にメリ込んだりしつつも馴染んできた。 途中で通りすがりの鈴仙が様子を見に来たりしたが、何故か生温かい瞳で「……ほどほどにね」と言い去って行った。 その時萃香はちょいと花を摘み(花を摘む=御不浄=厠=トイレ)に行ってたらしく居なかったので、 もしかしたら俺1人で酒飲んで奇声を発しているかのように見られていたのかもしれない。 失敬な。それではまるで俺がキグルイな人みたいではないか。 「まぁ分かってて隠れたわけだけど」 はかった喃。萃香、はかってくれた喃。 帰ってきた萃香と再び酒を飲み交わしつつ、ふと湧いた疑問を聞いてみる。 「しかし、萃香も奇特だねぇ。外から来てるからつっても、俺みたいな人間なんぞ見てても面白いか?」 何しろ不思議な能力もなければ変わった外見でもない。 普段の生活は我ながら愉快痛快な行動であるとは思うのだが、 これといって鬼の萃香が興味を惹くような部分は無いとは思うんだが…… 「いや、存外面白いわよ? 何とも滑稽で非力な人間が幻想に馴染もうと無駄な努力してる所とかさ」 場の雰囲気が一瞬にして変わったのを感じ、俺はグラスを片手に動きを止める。 「私はアンタのことをよく判ってるわ。ずっと見てたからね」 萃香はそんな俺の様子をみて、にやりと意地の悪い笑みを浮かべる。 「力はなく、種族も違い、考え方も違う。いくら皆に近付こうとしても、その距離はあまりにも遠い。 壁は越えられない。幻想にはなれない。何故ならアンタはただの人間だから。 そんなアンタは明るい笑顔が溢れる永遠亭の中でも実は孤独を感じてる」 無言でグラスの中身を煽りながら、萃香の言葉を聞く。 「そんな孤独なアンタは無理をしてでも皆に認められようとすることで自己を保とうとしてる。 あたかも寂しいと死んでしまう兎のように。 だから、何時までも認めてくれないように見えるあの兎が気になって仕方が無い」 あの兎、てゐのことか。 「どう? 私の考察、間違ってる点があればいくらでも反論して良いわよ」 「正論に対する反論は言い訳にしかなんねぇよ」 グラスを差し出すと、萃香が瓢箪を傾けて酒を注いでくれる。 「萃香の言った事は何一つとして間違っちゃいねぇ。ぜーんぶ正解だ。 そこまで俺の内心を把握されるたぁな。俺もまだまだ修行が足りんぜ」 「幻想郷の人間と比べりゃ、アンタくらい分かり易い人間は他に居ないわよ」 幻想郷の人間ってのはホントに人間か? 「でも……」 その言葉に、俺は萃香の方を見つめる。 「アンタは迷ってる。最初のうちは外の世界に戻る気で居た。いや、今でもまだ戻る気では居る。だけど……」 「この永遠亭という場所に惹かれる自分も確かに居る。 ここで一生を過ごすことになっても、それはそれで良いかもと思ってる。萃香に言われんでも分かってるさ」 俺の独白に、萃香は軽く笑う。 「正直だねぇ。正直者は嫌いじゃないよ」 「そりゃどーも」 ったく、こういう点で萃香みたいな人外との差を感じてしまう。これが越えられない壁ってヤツか。 「ま、考えることね。現実に戻るか、幻想に成るか。 アンタは幻想郷に居座るには、少しばかり異分子のままで居過ぎた。 どっちにしても覚悟を決める時期だと思うわよ、そろそろね」 外の世界に戻るならば、知り合った皆と別れて幻想を忘れる覚悟を。 幻想郷に留まるならば、外との縁を切って幻想を追いかける覚悟を。 逃げてはいけない選択肢が、俺の前の前に明確に提示された。 「御忠告ありがとさんよ。しかし……何でまた、萃香はそこまで言ってくれる?」 それこそ異分子、赤の他人である筈の俺に萃香がそこまで世話を焼いてくれる理由が見つからない。 好意に理由付けるのも無粋な話だが、気になる物は気になる。 このへんがまだ、外の世界の住人的なんだろうな。 「んー……何でだろうね。ちょいと私の聞き知ってる人間にアンタが似てたからかな?」 「そいつぁまた素敵な男だな」 俺に似てるということは、そいつはきっと絶世のイケメンだったのだろう。 「……アレはアレで変わった男だったって聞くからねぇ。人望……獣望はあったって話なんだけど」 俺を見ながらクスクス笑う萃香。何だか物凄く失礼なこと言われてる気がする。 「俺はともかく、永遠亭のヤツらを馬鹿にすっと怒るぞ?」 「永遠亭のヤツらって言うか、あの兎のことでしょ?」 この鬼っ娘は何処まで知ってるんだか……。 「アンタも奇特な人間よねー。 幼女趣味は無いとか散々公言してる割に、あれだけ関わろうとしない相手に必死に絡もうとして…… 挙句、問い詰めずに自分から引いちゃうんだから。何ともまぁ臆病者」 「俺ぁジェントルメンなんだよ」 「嘘。他の誰でもなく彼女に嫌われるのが怖いってことに気付いたんでしょう?」 ニヤニヤ笑う小鬼の笑顔は何とも眩しかった。 悔しかったので鰯の頭と炒った大豆と柊の葉を細かく刻んで味噌と醤油で軽く煮た物をツマミとして出してやった。 ヤツが絶叫と共に盛大に噴出したそれらは俺の顔面に直撃し、あげく瓢箪を口に突っ込まれてしこたま酒を流し込まれた。 ほろ苦いメモリーになった。 ちなみにその日はそこで俺の記憶は途切れているが……その日以降、夜は萃香と酒を酌み交わすようになった。 この縁が果たして俺にどのような影響を与えるのか、この時点では知る由もなかったが。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● そりや進め、そりや進め、一度に攻めて攻めやぶり、つぶしてしまへ、鬼ヶ島。 ―――森羅万象に絶対はない。 ―――正しいと思うことこそ間違いで、間違いだと思うことこそ正しいことなどこの世にはいくらでもあるのだ。 ―――我々がそれを見極めるためには、全てを疑い、時に対立をし、その上で受け入れねばならない。 ??????????????????????????? アイツが永遠亭に来て一ヶ月近く経った。 アイツは馬鹿で失礼で助平だが嫌いじゃない。 嫌いじゃない、多分……ど、どちらかと言えば……いや、でも駄目なのだ。 アイツはイナバ達に慕われ過ぎた。最近、私の統率力が乱れ始めてきたのだ。 わざわざアイツと接触しないようにして、私の威厳を保とうとしていたのに…… アイツはこっちの気も知らずズカズカと絡んでくる。 その上、最近アイツがもしかしたらここに残るかもしれないという噂を聞いた。 イナバ達は喜んでたが……そうなったら手の付けようがなくなる。 今の内に追い出しておかないと、私の立場が取られてしまうかもしれない。 それだけは嫌だ。 何時かは外の世界に帰ると言っていたからこそ手は出さないでいたが……やらないと、いけない。 私のポリシーには反してしまうけど……仕方、ないのよ。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 2月を過ぎたある日、永遠亭で事件が起こった。 大きいといえば大きく、地味といえば地味かもしれないが……事件であることに変わりはない。 永遠亭の住人達のスペルカードが全て盗まれたのだ。 だが幸いにも、スペルカードはすぐに見つかった。 俺の乱闘服の内ポケットの中から、だが。 ・ 「じゃあ、何時の間にかポケットの中にあったってわけね?」 「おぅ、俺自身も何時の間にかあって吃驚したくらいッスよ」 部屋の中には机を挟んで両腕を組んだ俺と永琳さんが向かい合っていた。 現在、取調べの真っ最中。 ちなみに永琳さんだけでなく姫さんも取調べするーとか言っていたが、何を思ったのか突如カツ丼を作り始め、 ちょうど通りがかった集団空腹状態のイナバ達に囲まれて右往左往していたのをさっき確認した。何しとんだあの姫さんは。 「んー……でも入ってたのは事実なのよねぇ」 「動機が俺しかないのも事実ですな」 「周りとの力量の差に焦った、もしくは単純に力を得ようとした無知な貴方がスペルカードを盗もうとしたってのなら一応のスジは通るわね」 なお、永遠亭の他面子に同様の動機は相当しないだろう。 叩き出されるリスクを負ってまでこのような真似はする理由がないしな。 外部犯でない限り、最も怪しいのは間違いなく新参の俺だと言える。 「まぁ、疑ってるわけじゃないわよ? 何だかんだ言いつつ、貴方がこんな姑息な手を使うとは思ってないし」 「そりゃ何とも嬉しいですな」 信用されてるってことは悪い気はしない。 「そもそも、こんな姑息な手は使うような投薬してないし」 「そりゃ何とも嬉しいですな」 実験されてるってことは悪い気しかしない。 冗談だよね? 「まぁそれはともかく、犯人の目処は付いてるけどね」 「あぁ、永琳さんもですか。実は俺もですわ」 俺が犯人に最も近いと言うことは、逆に言えば『そう仕向けた』という可能性も有り得る。 つまり、スペルカードを盗むことそのものが目的ではなく……俺を窃盗犯として仕立て上げることが目的。 それならば、1人だけ動機が出てくる。 これはおそらく……俺などより遥かに聡明な永琳さんの方が分かっているはずだ。 「まぁ、特に犯人を明確にしないでも私達を含めて誰も気にしないでしょうけど……」 「いや……明確にしてもらわなきゃ困りますぜ」 俺の言葉に、あら? と不思議そうに永琳さんがこちらを見つめる。 ニヤッと笑いつつ、俺は自分を親指で指し示す。 「犯人は俺だった、ってね」 そう、そういうことにしてもらわねば困るのだ。 「流石に永琳さんにゃまるっとスリっとゴリっとエブリシングお見通しだろうけど。 是非ともこの事件の犯人は俺ってことにしといて下さいや」 ………。 「優しいのは悪いことじゃないけど、人の罪を全部かぶろうとするのは、あの娘の為にならないわよ?」 「悪ぃッスね。間接的にとは言え俺が撒いた種ですからな。自分で処理しなきゃ」 俺の意図を瞬時に全て理解してくれたようだ。 流石は月の頭脳、天才と呼ばれる人だ。理解が早くて助かる。 俺が犯人でないと言い張れば、確かに永遠亭のヤツらはそうだと思ってくれるかもしれない。 だが、それでは不味いのだ。 俺が犯人でないということになれば……皆は今の俺達と同じ目処を付けて、次点の容疑者である『彼女』に目を向ける。 いや、むしろ最有力候補になる。 そうなってしまえば、『彼女』の立場が悪くなることは間違いない。 何しろ、俺を陥れようとした……という動機となれば永遠亭での立場は限りなく悪くなるだろう。 最悪、永遠亭から追放ということも考えられる。 それは俺の望むところではない。そうなるくらいなら俺が犯人として自首するのだ。 そしてこんな俺の行動は『彼女』の思惑通りなのだろう。 つまり、今回の事件は『彼女』自らが次点の容疑者となる…… 分かりやすく言えば己を盾とすることで、俺が自ら冤罪を被るよう仕向けたものなのだ。 まさしく『彼女』のシナリオ通り。そうと分かっていても俺にはこうすることしか選べない完璧なシナリオ。 だが、今回のシナリオは、その『彼女』のモットーに反している。 それを破ってまでこんな手を用いるということは、それだけ追い詰められていたのだろう。 迂闊だったぜ。今この瞬間まで……『彼女』の本音が分からなかった。これじゃ色々失格だな。 あくまで不敵に笑う俺に対し、その意を汲んでくれたのか……永琳さんは溜息を一つつく。 「……はぁ。分かりました。では、今回の事件の犯人……貴方に、とりあえず処罰を与えます。 流石に無罪放免というわけにはいかないしね」 俺は初めてこの間を訪れた時と同じように正座し、背筋を伸ばす。 「私達のスペルカードは私達にしか使えない。 例え盗まれようと、大抵はまた作れる以上……この行為に意味は無いわ」 永琳さんが俺をしっかりと見つめ、俺も決して目を反らさないように姿勢を正す。 「でも……スペルカードを盗もうとした意志は見過ごせないわ。 よって永遠亭の管理者の1人、八意永琳として……」 俺の予想が確かなら、俺に対する処罰はたった一つ。 「貴方の永遠亭の客人、住人としての権利を剥奪し……永遠亭からの即時退去を言い渡します」 永琳さんは、まさしくその処罰を俺に言い渡したのだった。 ・ 布団を畳み、掃除をし、俺は永遠亭に来た時と全く同じ装備を身に付けて、 俺の部屋だった場所でしばし正座して瞑想する。 正直な所、ああは言ったが未練がないワケがない。 ここの住人はどいつもこいつも楽しく、そして優しく、出て行く事なんざ考えたくもなかった。 だが、良い機会なのは確かだ。 時は2月、外の世界に戻るには丁度良い時期。 元々俺は外の住人、このように永遠亭のヤツらと過ごす事は本来あり得ない筈だったのだ。 ……と、自分に言い訳してみる。 「準備は……出来てるみたいね」 その声に目を開き、立ち上がりながら襖の方を見れば、そこには永琳さんと姫さんが居た。 「預かってた銃と棒は返しておくわ」 永琳さんが完全装備の俺に唯一足りなかった武器……ガス筒と警杖、そしてそのガス筒の弾2個を返してくれる。 「お? 弾も一緒に帰してくれるんですか。こりゃありがたい」 「これが無いと貴方は自衛手段に欠けるでしょ? 何しろまだ弾一つ撃てないんだから」 「普通の人間は素手で弾撃てるようになってませんからなぁ」 ガス筒を腰に、警杖を背中に背負う。改めて、これで完全装備だ。 「……本当に行くのね」 姫さんが俺を見て、心なし寂しそうに言ってくれる。 「えぇ、一応処罰は処罰ッスから。姫さん、ネット上の知り合いはもっと作っといた方が良いと思いますぜ?」 「直接会う事も出来ないのに知り合いなんて作っても仕方ないじゃない」 まぁそれも正論。 「伝説のかぐや姫に会えた……なんて、外に世界に戻っても誰も信じてくれねぇでしょうなぁ」 「多分、医者か何かを薦められるでしょうね」 「その時は永琳さんに診てもらいたいモンですな」 カカッと笑う。 「見送りにはいかないわ。処罰を与えた者として被処罰者を見送るのはおかしいことだから」 「了解してますさね。でもここで挨拶してくれるという点に俺は御2人の優しさを感じますがね」 「私があげたのは薬だけよ」 「私があげたのは苦労だけよ」 「俺はかけがえない想い出を貰いましたぜ」 3人同時に言った後、顔を合わせ、からからと笑い合う。 「全く、良い男ね。貴方みたいな男だったら難題の一つくらい、解けるのかもね」 「伝説のかぐや姫の『五つの難題』ってヤツですか。出してもらえるモンなら何とも光栄ですなぁ」 そこで、姫さんは何かを思いついたように微笑みながら、 「だったら、一つ難題を貴方に出すわ」 人差し指を立て、俺を指差す。 「客人でも住人でも、あまつさえ侵入者としてでもなく、この永遠亭に入る方法。 それが私が貴方へ出す難題よ。これが解けたらそうね……嫁にはならないけど、ご褒美をあげる」 「そりゃまた何とも難題ですなぁ」 それじゃどうやって中に入れというんだろうか。 つーか、そもそも処罰を言い渡されている状態では戻れんだろう。流石は難題。 ・ 姫さんと永琳さんの2人に別れを告げ、廊下を歩いて永遠亭の出入り扉を開ける。 そこには、多くのイナバの子達と鈴仙が居た。 「おいおい、こりゃまた見送りが多いねぇ……」 これでも一応、『スペルカード窃盗犯の追放』っつー名目なんだがなぁ。 イナバの子達が俺の姿を見て、駆け寄ってくる。 「行っちゃうの?」 「おぅ、そろそろ良い時期だしな」 「お兄ちゃん……姫様達のスペルカード盗もうとしたなんて嘘だよね?」 「いーや、スマねぇな。ちょいと魔が差しちまったのよ」 カカカッと笑いつつ、問いかけて来たイナバの子の頭をポンポンと軽く叩く。 皆の目は暗に、何故嘘をつくのかという疑問に満ちていた。 ……そんなに俺の言葉は嘘っぽいかねぇ。 「ほら、俺って演技派だからよ。皆も存分に騙されたワケだ。 ……今後は見知らぬ人間だからって簡単に信用してホイホイ付いて行くんじゃねぇぞ? 捕まって兎鍋にされちまうぜ?」 何か言いたげだったが、言葉が見つからなく眉をひそめるイナバ達。……心が痛む。 「よぉ、鈴仙。オメェまで見送りに来てくれたんか」 誤魔化すように鈴仙に話を振る。 「……本当に行くのね」 「オメェにしろ姫さんにしろ、そんなに出て行くのが意外か?」 カカッと笑ってやるが、鈴仙はこちらを静かに見つけたまま決して笑わない。 「意外に決まってるじゃない。あれだけここに馴染んでたのに…… 貴方が居なくなったら、イナバ達も哀しむわよ?」 「わはは、鈴仙は哀しんでくれんのか? そうしたらそこから始まるラブストーリーが怒涛の勢いで展開されぶらぁッ! えぇい零距離座薬弾はやめぃ! 何故か顔面にぶち込まれてるのにケツ痛くなるから!」 「座薬言うな!」 そんな鈴仙の様子を見て、ニィッと笑みを浮かべる。 「なぁに、ここのヤツらの絆は強いかんな。時間が解決してくれるさね。 俺が居たのは一時だけ、ちょっと変わった客人で卑怯者だったと。まぁそう思っといてくれ、な!」 そう言ってバンバンと鈴仙の背中を叩く。 「まぁアレだ。これからはまた何かと永琳さんの実験対象とかになるだろうけどよ、強く生きろよ?」 誤魔化すように大笑いし、周りを見渡してみる。 ……てゐは、居ないか。 ったく、最後くらいキッチリ別れと謝罪の言葉は言いたかったんだがなぁ。 神社まで送りましょうか?と聞いてくれた鈴仙の申し出を感謝しつつも断る。 折角の最後の竹林だ。 少々危険なのは百も承知だが、想い出を噛み締めながら歩いて行くことにしよう。 幸い、神社までの道筋も教えてもらったし、永琳さんに竹林抜けるために必要な道具も貰ったしな。どう見てもコンパスだが。 未練は残ったが、まぁ良い。 願わくば……永遠亭の皆が幸せになれるように。 特に『彼女』が罪悪感に囚われることなく幸せになれるように願っとくかね。 鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴仙 「じゃあな!もう会う事はねぇだろうが……達者に過ごせよ皆の衆!」 後ろ手を振りながら、彼の背中が少しずつ遠ざかる。 イナバの子達が目に涙を溜めながら手を振って見送っている。 彼の姿が竹林の中に消えてしばし経った後……私は呟く。 「てゐ、貴方……本当にこれで良かったの?」 「……」 彼女は出入り口の影、彼の死角となる場所で1人、佇んでいた。 今回の事件には多くの矛盾がある。 ほとんどの子は気付いてないが、私には何となく真相が見えていた。 「彼は最低でも……貴方に何かしようという気はなかった筈。 そんな人を追い出して満足なの? ねぇ、てゐ」 彼女が、一枚噛んでいるのだと。 私とてゐの間を冷たい風が吹き抜ける。 てゐはおもむろに、スタスタと歩き始める。彼が去った方向とは正反対の方向に。 「……何処に行くつもり?」 彼を追いかけるというわけではなさそうだ。 「ちょっと散歩よ、散歩」 てゐはそう言い、跳ねながら竹林の中へと消えていった。 彼女も迷っていた。 もし、もう少しだけ……あと少しだけ迷いが強ければ、 もしかしたら彼も出て行くことはなかったのかもしれない。 永遠亭を見上げてみる。 彼が去り、何となく寂しくなったように感じた。 賑やかな彼は思った以上に永遠亭に馴染んでいたらしい。 私は何も出来なかった。彼を庇う事も、てゐを止める事も。 無力だなぁ、私。 萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃香 兎が竹林を散歩しているのを眺める。 苛々しているのか、時々雪を意味もなく蹴っ飛ばしている。 「気に入らないな」 ―――だが、苛々しているのはアンタだけじゃない。 私の呟きに、目の前の兎はキョロキョロと周りを見渡す。 「私は自己犠牲を是とする人間は嫌いだ」 ぱすっと言う柔らかい音と共に着雪し、私は彼女の後ろに姿を現せる。 兎は振り返って私を視認し、顔を歪める。 「だが、それ以上に……」 私の一睨みに、兎の耳がピンと立つ。 「嘘吐きは、大嫌いだ」 兎が一歩下がる。 「特に、その嘘で他人を不幸にするような嘘吐きはな!」 「脱兎『フラスターエスケープ』ッ!」 直後、ヤツの投げつけたスペルカードから5本の線状弾幕が張り巡らされる。 弾幕は地面を、竹を、足場にして跳ねるようにこちらに向かってくる。 見れば……兎は既に背を向けて逃げ始めていた。 ……なるほど、逃走用に特化した弾幕か。なかなか面白いスペルカードね。だけど…… 「無駄、無駄ッ、無駄ぁッ!」 私は霧へと変化し、弾幕の間を抜けて彼女の真上で再び実体化する。 「酔夢『施餓鬼縛りの術』ッ!」 そのまま空中で鎖を伸ばし、一気に投げつける。 「きゃうッ!」 鎖は兎の足に絡みつき、ゴキリと鈍い音をさせる。 「ッ!?」 私はそのまま、勢いに任せて兎ごと鎖を振り回して……地面の雪に向かって叩き付ける。 「か……はぁッ!」 「逃げようたってそうはいかない。アンタは私の逆鱗に触れた。 卑怯な手段を使って、あの人間を駆逐した。……そう、かつて私達がされたように」 「あ、あぁ……ぁぅ」 鎖を外し、元の長さに戻す。だが兎は動かない。否、動けない。 施餓鬼縛りの術は霊力吸収の効果を持つ。 その上、脚も潰しておいた。飛ぶ事も跳ねる事も、ましてや弾幕を張ることなど出来はするまい。 「こればかりは許すわけにはいかない」 私は懐から、一枚のスペルカードを取り出す。 「鬼符『ミッシングパワー』」 ピンッとスペルカードを弾くのと同時に、私の身体が巨大化する。 竹の葉が邪魔にならないように竹林を越える大きさにはなれないが、それでも大きさとしては充分。 握った拳は足元の兎の身体と同程度だ。 「自身が吐いた嘘を後悔しながら潰れろ、この兎詐欺(うさぎ)ッ!」 その拳を振り上げ、振り下ろす。その瞬間…… 「警備実施要則、第四章、第二節! 第三十七条その二ぃいッ!」 居る筈のない人間の声が、聞こえた。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● おもしろい、おもしろい、残らず鬼を攻めふせて、分捕物をえんやらや。 ―――そして真実は姿を現し、決断を迫る。 ―――彼は何を思い、何の為に戦い、何を選ぶのか。 ―――正解はない。 ―――だが間違いも、ない。 ―――ただの人間の鬼退治。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 「実力規制を行なうにあたっては事態に応じ、危害を防止することぉッ!」 俺はてゐと萃香の拳の間に身を滑り込ませる。 そして、がっしと大盾で受け止め……ヒビが入り、悲鳴の上げるそれを思いっきり横に向け、全力で捌く。 「うぉらぁああッ!」 強化プラスチック製の大盾が粉々に砕けながら弾け飛ぶ。だが彼の犠牲は無駄ではなく、俺達は無事だ。 「そして、その一! 実力規制を行なうにあたっては事態に応じ、適切かつ妥当な方法によること!」 俺は腰から抜いた2型ガス筒を萃香に向かって突きつける。 そのまま引き金を引く。直径37ミリのガス弾が放たれ、萃香の眉間にメリ込む。 萃香が僅かによろけて……そしてこちらを見て目を丸くする。 「……本来、ガス筒の水平撃ちは禁忌(タブー)なんだがな」 「ちょッ、人間ッ!? アンタ何で……」 「これだからなぁ、おーい萃香! 息止めて目ぇ瞑っとけー」 「え?」 直後、先の弾から白い煙が噴き出し……萃香の顔を包んだ。 S(スモーク)弾。正式名称「S100L型」 内包した催涙剤を燃焼させてスモーク状にし、催涙ガスを噴出する機動隊の暴徒鎮圧用装備だ。 まぁ……流石に萃香にはそう効果はあるまい。 何しろ大きさがケタ違いだ。だが時間稼ぎは出来るはず。 俺は軽く咳き込む萃香を尻目に、てゐに向かう。 「よぉ、何か知らんが弱ってんな。立つことも出来ねぇか」 「う、うん……」 「弾幕は? 空も飛べねぇか?」 「無理……」 「何時もの皮肉を言う気力もねぇか。相当らしいな」 「……うぅ」 「まぁでも生きてて良かったぜ」 頭をわしゃわしゃ撫でると、てゐがむぅー……と唸る。 「でも何で……」 「運が良かったな。いや、俺にとっちゃ悪いんだが。出口への道間違えてなぁ。 つーかコンパス役立たねー! 速攻で大回転始めるってどうよ!」 からからと笑いながら再び萃香に向かう。 S弾の噴射が終わり、少し薄くなった煙の中からこちらを睨みつける萃香に顔を向ける。 「おぅおぅ、そんな怖い顔したら可愛い顔が台無しだぜ?」 「……その兎を助けるつもり?」 てゐを一度後ろ見て、不敵な笑みを浮かべる。 「おぅ、そのつもりだぜぃ。こればっかは杯交わした萃香と言えど退けねぇなぁ」 「……そう。なら……」 俺は乱闘服のボタンを外しながら、萃香を見上げる。 「やるか?」 「やらいでかッ!」 直後、萃香が勢いよく瓢箪を煽る。 それを視認した瞬間、乱闘服を萃香に向かって投げ広げ、俺は一気に振り向き…… てゐを掬うように両腕で抱き上げる。 「後ろ!」「分かってるッ!」 直後、俺達を燃え盛る炎が襲い掛かった。 萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃香 姿を小さくしながら、再び瓢箪を煽る。 私の周りの雪は先ほど私が吹いた火によって溶けて無くなっていた。 「ふーん……なるほど、修羅場はそこそこ潜ってるみたいねぇ」 あの人間と兎の姿は無い。 あの炎を前に、人の身であり、また何の能力も持たぬ男はこの場より逃げ切ったのだ。 その中心部、焼け焦げて原型を留めていない布切れを摘み上げる。 先ほど、あの人間が炎に向かって投げ付けた服だ。 どうやら燃え難い素材で出来ていたらしく、ほんの一瞬だけ私の炎を受け止め、2人を守る壁となり、そして燃え尽きた。 その使命を全うした、偉大な服を丁寧に地面に置き直し……私は笑みを浮かべる。 「さて、楽しませてくれるかねぇ」 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 「難燃加工施してる乱闘服があそこまで簡単に燃え尽きるとはなぁ……」 俺はてゐを抱えたまま走っていた。 上半身はワイシャツとマフラー、ヘルメットのみとなってしまっている。ハッキリ言って超寒い。 乱闘服を盾に炎と萃香から逃げたのは良かったが、同時に籠手を棄てたのは少々痛かった。 だってそうしないと脱げないんだもんよ。 「下に着てた服は棄てなくても良かったのに……」 「あれ重ぇんだよ」 ボディアーマーは防弾プレート込みで十数㎏。普段ならまだしも、逃げること前提ならば棄てざるを得なかった。 「ねぇ、これからどうするの?」 あの鬼から離れ、少し気力を取り戻しつつあるてゐが俺の腕の中で聞いてくる。 「あー……ちょっと待ってくれ。今逃げながら必死で考えてる所だからよ」 ジョギング気味に走りながら、ガス筒を中折り、空の薬莢を捨てて腰のベルトから一発の弾丸をその中に込める。 「ちょっと……何も考えないで出てきたわけッ!?」 「うっせぇ! 後先考えてたらミンチにされてただろうがッ! つーかあー怖かった! あのデカさはねぇよな! 一寸法師の気分味わったぜ!」 うわははは! と笑いながら先ほど感じた恐怖をムリヤリ誤魔化しつつ、ガス筒を再び腰に差す。 「ねぇ」 「ぁん?」 「どうして、助けてくれたの?」 「どうしてってそりゃ……」 決まってんだろ。 「みーつけた!」 直後、俺達の真上から聞こえる声。 2人して反射的に上を向けば、そこには薄くぼやけた白い霧が萃まっていた。 「萃香、か?」 「正解!」 その声と同時に霧の中から弾が撃ち出され、 「ぬぉおおッ!」「きゃあッ!?」 2人揃って悲鳴を上げつつ、俺は再び走り出す。 だが、逃げた先に再び白い霧が現れる。 鬼ごっこじゃ萃香にゃ敵わんか…… 「チッ、なら……てゐ、しっかり掴まっとけよッ!」 俺の言葉に、てゐは無言で首に腕を絡めて掴まる。 それを確認した後、片手を離し、腰からガス筒を抜き放ちざまに撃ち放つ。 「またあの弾? 無駄無駄ぁッ! 同じ手が二度通用すると思わないことね!」 確かにS弾ならば効くまい。 いくらS弾を撃ったところで、その噴射タイミングが遅い以上避けられるのは自明の理。 さっきは巨大化してた故に上手くいったが、霧状では尚更難しいだろう。 だが、あの弾ならば話は別である。 P弾。 S弾と共に、たった一発しか持ってない俺の切り札……ラストショットだ。 弾は頭上の霧状の萃香を抜け、竹の葉の間に入り……そして炸裂する。 衝撃で竹がしなり、しなった分だけ空を見せる。雪と竹の葉に混じり、白色の粉が空から降ってくる。 「てゐ! 息を止めて目を瞑れッ!」 ガス筒を放り棄てた手でてゐの後ろ頭を掴み、俺の首元のマフラーに押し付け…… 俺自身もマフラーに口を付けて、バイザーをしっかりと下ろす。 目の前の紅い瞳が大きく見開かれる。 それを気にすることなく、体勢を低くして一気に駆け抜ける。 「え、なにこ……いたッ! 痛い痛い痛い痛いッ! げ、ゲホゲホッ!」 後ろから聞こえてくる萃香の悲鳴を背に、俺は粉の範囲を抜ける。 P(パウダー)弾。正式名称「P100L型」 S(スモーク)弾が催涙剤をガス状にする弾に対し、P弾は催涙剤をガス状にせずにそのまま火薬を用いてぶちまける弾である。 そもそも催涙弾は粉末状で、ガス状にしようが粉末状にしようが効果は変わらない。 むしろガスが出尽くすのに時間のかかるS弾と比べ、一瞬で強烈な効果を発揮する。 特に萃香に対しては効果は抜群……霧状になっていれば問答無用で粉が付着する上、 自身が広く存在する分、本来ならば対多人数に対して使用される量を、全て1人で受ける羽目になるのだ。 流石の鬼と言えど、このダメージは尋常ではあるまい。 「よーし、とりあえず」 「ぅー……」 「ぁん?」 「ぅ゛ーーー! う゛ーーーーッ!」 「いでぇッ! な、何しやがんだ!?」 お宇佐様のウサパンチが俺の頬にメリ込む。 「何泣いて……あ! さっきの粉受けちまったのか!? 目ぇ瞑れつったろ!?」 「そうじゃないわよ……さっきアンタ、何したのよー!」 さっきっつーと…… ~青年回想中~ ガス筒を放り棄てた手でてゐの後ろ頭を掴み、俺の首元のマフラーに押し付け…… 俺自身もマフラーに口を付けて、バイザーをしっかりと下ろす。 目の前の紅い瞳が大きく見開かれる。 それを気にすることなく、体勢を低くして一気に駆け抜ける。 ↓ 手でてゐの後ろ頭を掴み、俺の首元のマフラーに押し付け…… 俺自身もマフラーに口を付けて、バイザーをしっかりと下ろす。 目の前の紅い瞳が大きく見開かれる。 ↓ てゐを首元のマフラーに押し付け…… 俺自身もマフラーに口を付けて、 目の前の紅い瞳が見開かれる。 ↓ てゐを首元のマフラーに『押し付け』…… 俺自身もマフラーに『口を付け』て、 『目の前』には紅い瞳。 ~回想終了~ 「……」 「……」 気まずい空気が流れる。 「ふ、不可抗力ってヤツだ!」 「う゛ーーーッ!」 お宇佐様のウサパンチが俺の鼻っ柱にメリ込む。 「待て待てッ! 遊んでる場合じゃないっての!」 「後でしっかり言い訳してもらうわよ!」 そいつは何とも夢の無い話だ。 それはともかく、本当に遊んでいる場合ではないのだ。 何故なら……俺達の目の前で霧が一箇所に萃まり、実体化しつつあったからだ。 萃香が地を転がりながらその姿を現す。その顔は涙と鼻水でグチャグチャだ。 だが、その憤怒の炎が燃える瞳はこちらをしっかりと捉えている。 闘争心は……全く衰えてない。戦意は落ちていない。 S弾とP弾の両方撃ち込まれてもまだ戦る気かッ!? 「ったく、本気で恐ろしいな鬼ってヤツはッ!」 俺は慌てて、その場から走り出そうとして……衝撃が頭を突き抜けた。 ヘルメットが飛ぶ。バイザーが砕け、ガラスの200倍の強度を持つ素材を使ったヘルメットに大きくヒビを入れながら空を舞う。 何とか踏みとどまった時初めて、俺はコメカミの痛みに気付いた。 萃香を見れば、まだ地面に倒れ付していたものの……その手には長い鎖が伸びていた。 コメカミから血が流れ出し、頬を伝って滴り落ちる。 だが、俺はそれを気にする事も逃げ出す事も出来なかった。 萃香がこちらを睨んでいる。 逃げられない。 そう思わせるような威圧感を持って、ゆっくりと立ち上がるが……俺はその姿を見続けることしか出来ない。 歯が噛み合わず、背筋に雪以上に冷たい何かが突き刺さったかのような錯覚を覚える。 そうか、これが…… 今の人間が忘れてしまった、遥か昔に存在した鬼に対する 恐怖 か。 僅かな対峙。実際は数秒そこそこだったのだろうが、動けない俺にとっては何分にも感じられた戦慄の間。 声を出したのは他ならぬ、 「もう、良いわよ。ここから先は私が何とかするわ」 てゐだった。 「え……?」 「だから、もう良いって言ってるのよ。もう充分回復したから、とりあえず下ろしてアンタは逃げなさい」 ……。 「まだあいつのターゲットは私でしょうし、今から逃げたら充分逃げられる」 ……ッ! 「それに、アンタみたいな足手纏いが居たら私だって逃げられないじゃない」 俺は震える手を離し……ゆっくりとてゐを下ろした。 てゐは雪の上に尻餅を付く。 「それで良いわよ。さぁ、早く……」 そして俺は歯を食い縛り、萃香に向かって背負っていた警杖をゆっくりと抜き……構える。 「ッ! 何してるのよ! 早く逃げなさいって言ったでしょ! そんなものでアンタが何とか出来るような相手じゃないのよ!」 「分かってるさ。だがな……震えてる女を見捨てて逃げるような男は地獄に落とされちまうからな」 「ッ!」 萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃香 私は少し驚いていた。 目の前の男の姿に、嘘吐き兎を守るために…背負っていた杖を構えた人間に。 まだやる気なのか。 鬼の威圧感はただの人間である彼を確かに一度、押し潰した筈だ。なのに…… 「何故そこまでしてその兎を守るの?」 じろり、と彼の後ろに居る兎を一度睨めつけて…… 「私は見てたわよ。 アンタを追い出した姦計、手口、全てをね。 でもあんたはそれを理解した上で守ろうとしてる。正直、そこまでする価値などないように思うのだけれど」 その姿が遥か昔……3匹の獣と共に鬼の住む島に乗り込んできたと聞く、ある男の姿を思い起こさせる。 私は直接見たことなど、ない筈なのに。 彼はその言葉を受け、少し目を瞑り……ゆっくりと口を開いた。 「理由は2つある」 静かに、僅かに震える声を隠すことなく人間は語る。 「疑問を疑問で返すようで恐縮だが、俺が何で機動隊なんてシゴトやってるか知ってるか?」 彼の言葉の意図を掴みかねて疑問を浮かべる私を見て、彼は静かに続ける。 「機動隊ってのな。決して面白いシゴトじゃねぇんだ。 毎日毎日アホのように訓練やって、先輩や上官にゃシゴかれて…… 真夏は炎天下の下で走り続け、真冬は身も凍る海で泳がなきゃいけねぇ。 その上、俺らが戦う時は何時も悪意と罵倒がぶつけられる。特には敵に、時には守るべき市民に。 これで面白いってヤツがいたらそいつは余程の馬鹿野郎だ」 「だったらどうしてそんなことしてるのよ」 彼は目を開き、しっかりとこちらを見据えた。 「決まってるだろうが、俺にしか出来ねぇからだ。 ―――決まっているだろう。俺にしか出来ないからだ。 誰かの為に死地に向かう、そんなことが普通の人間に出来るか。だから、俺がやってんだ」 ―――誰かの為に鬼ヶ島に来る、そんなことが普通の人間に出来るか。だから、俺がやってるんだ 萃香の目の前で杖を構える男の姿が、かつて鬼が棲む島にやってきたと伝えられし人間の幻影と重なった。 「かつて萃香は言ったな。力はなく、種族も違い、考え方も違う。 皆との距離はあまりにも遠い。壁は越えられない。幻想にはなれない。俺は孤独だと」 初めて彼と飲んだ時、確かにそんな事を言った記憶がある。 思えば、至って普通の……何の力も持たない人間と飲んだのは、あれが初めてだったかもしれない。 「確かにその通りだ。だが……」 彼もそれを思い出しているのだろう、懐かしそうな笑みを一瞬浮かべ…… 「今、現在、この瞬間、こいつを守れるのは俺しか居ない。 そこには距離も幻想も孤独も、俺を騙したことも関係ない。 例え弾が撃てんでも、無能力者でも、俺しかやれないから……やるんだ」 そう、言い切った。 「それが1つ目の理由」 そこで一息つき……少しの間を空ける。 まるで、心を落ち着けるように。まるで……何かを告白するかのように。 「そして、2つ目の理由は萃香も知っての通りだな」 にぃッと、普段の彼らしい……何とも不敵な笑みを浮かべる。 「てゐは俺にとって大事なヤツだからだ。好きなヤツを守ろうとするのは当然のことだろ?」 「え……?」 彼の後ろから小さな声が聞こえる。 私は目元を手で抑え、高笑いを上げた。 何たる無知。本物の鬼の力を知らない人間が鬼に挑むのだ。無知と言わずして何と言う。 何たる無謀。力の差を知った上で私に力勝負を挑もうと言うのだ。無謀と言わずして何と言う。 何たる蛮勇。自らが非力な人間であると理解した上で鬼に挑むのだ。蛮勇と言わずして何と言う。 何たる勇気。自らを騙した者のために信念と想いを持って戦おうと言うのだ。勇気と言わずして何と言う! 鎖を元の長さに戻し、パンッと一度拍手(かしわで)を打った。 「面白い! 面白いよ人間ッ! アンタみたいな人間は久しぶりだ! 分かった、この勝負受けよう! かつての人間と鬼のルールに乗っ取り、アンタが勝てば褒美をやるよ。 ただしアンタが負けたら……攫ってやる」 「分かった」 「ちょっとッ!?」 「大丈夫だてゐ。何しろ俺には……」 不敵な笑みと共に彼は振り返り、兎の額を小突いた。 「幸運の女神が付いてっからな」 そんな言葉と共に。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 俺は再度振り返り、再び萃香と相対する。警杖を正眼に構え、息を整え歯を食いしばる。 目の前には酒を煽る鬼っ娘1人。だが、その力は言うまでもなく『鬼』そのもの。 「それじゃ……」 震える心に活を入れ、震える身体に気合を込めるように声を上げる。 「この舞い散る雪の中、愛する兎を守り切るぜ、鬼っ娘ッ!」 「この舞い散る雪の下、嘘吐き兎と共に果てろ、桃太郎ッ!」 その言葉を皮切りに、先手必勝とばかりに渾身の力を込めて踏み込み……全力の振り下ろしを放つ! 萃香は動かない。不敵な笑みも動かない。瓢箪すらも動かない。 だが俺の動きも止まらない、狙いはただ一つ……萃香の脳天ッ! 硬質的な打撃音が周りに響く。 「ッ!?」 萃香は僅かに首を捻り、警杖を己の角で受け止めていた。 「先手はくれてやったよ。さぁ……それじゃ今度はこっちの番だッ!」 萃香がその小さな体を捻る。竜巻のような威圧感に、思わず吸い込まれてしまいそうになる。 マズ…… 「らぁあああッ!」 身体の内部を突き抜ける音と共に萃香の左拳が俺の腹部に叩き込まれる。 息が止まり、全身の神経が止まり、代わりに湧き上がる激しい嘔吐感と共に身体が折り曲がる。 続けて顔面に右拳のアッパーが叩き込まれ、俺は弾け飛んだ。 己が出す血飛沫と砕けた歯、吐瀉物の舞う空を見つめながら俺は吹き飛び……背中から着雪する。 沈黙が場を支配し…… 「い……」 それを掻き消したのは、 「いやぁあああーーーッ!」 てゐの悲鳴だった。 「いやぁ、いや……○○、○○ッ!」 ……て……ゐ……。 「あー……五月蝿い五月蝿い。死んじゃいないわよ。何だかんだでキッチリ鍛えてあるみたいだしね」 ……。 「でもまぁ、これで勝負ありかな? じゃあ約束通り攫っていかせてもらいましょうかねぇ」 ……! 「や、止めて! 悪かった、私が悪かったから! ごめんなさい! だから……だから彼を攫うのはッ!」 「いーや止めないね、ヤツも言っただろう? 『分かった』ってね。 一度結んだ約束は契約として破る事は許されない。口約束は言霊の契約、契約は……守るためにあるのさ」 クッ……。 「い……」 俺の呟きに、反応したであろう2人。 「何だ? まさかお前自身まで嫌だとか、ごねるんじゃないだろうな? だとしたら、私は嘘をついたお前をこの場で縊り殺さないといけないんだが……」 「ッ!」 てゐの息を呑む声、おそらく……今、萃香はおっとろしい形相をしてるのだろう。 ……見えてなくて良かった。 「いや、げほごほッ! はぁ……すぅ、俺も約束は守るべきだと……思う。 だが……勝ったと思うのは早計だぜぇ。萃香……」 俺の言葉に萃香はおそらく……何か聞こうとしたんだろう。 だが、その言葉は聞こえることはなかった。 それ以上の爆音が、萃香を包み込んだからだ。 「あー、何だかよく分かんないんだけどさ」 仰向けのままでもよく分かる、この熱気。俺の傍の雪が音を立てながら溶けている。 「とりあえず、撃ってみたんだけど……間違っちゃないわよね?」 これだけの熱を生み出す存在は、そうは居ない。俺の知りうる限り1人だけだ。 てゐが叫ぶ。そう、彼女の名は…… 「妹紅ッ!?」 「ったく、何これどういう状況よ。散歩してたら爆発音するもんだから来てみりゃ…… 兎は泣いてるし、あの時の人間は血塗れだし」 「やっぱ妹紅さんだったか……空に火の鳥が見えてたから、もしやとは思ったが」 「あらら、ボロボロな割には元気そうね」 「伊達に毎日、永琳さんに人体改造されてませんぜ」 「ゲホゲホッ! な、何よこれ……どういうことだ! 答えろ人間ッ!」 すぅ…と息を吸い、腕に力を入れて上半身を持ち上げる。 そして、晴れた煙の中から半分怒りに……半分困惑に揺れる萃香に目を向けて、笑みを浮かべる。 「俺じゃ……どれだけ立派なこと言っても、ガチンコで萃香にゃ敵わねぇ。 俺は英雄でも妖怪でもない、ただの人間だからな…… だが、今回ばっかは決して負けるわけにゃ行かなかった。なら……残った手は流局しかねぇだろうが。 ま、『運良く』……妹紅さんが来たからこそ、出来たわけだがな」 強調した運良くという部分に対し、妹紅さんが頭の上に疑問符を浮かべるが……萃香はその言葉で気付いたらしい。 「運良く……くっ、そうか。そこの嘘吐き兎の能力か!」 「御名答。言ったろう。俺には、幸運の女神が付いてると」 てゐの『人間を幸運にする程度の能力』 文字通り、これに賭けてみたわけだが……どうやら上手くいったようである。 「ま、よく分かんないけど折角普通に知り合った人間を見捨てるのも気分良くないからね。 とりあえず、続きやるんだったら相手になるわよ?」 妹紅さんはそう言い、軽く首を鳴らしながら萃香に向かって不敵な笑みを浮かべる。 萃香はギリギリと、こちらにも聞こえそうな歯軋りをしたが、どうやら不利と悟ったらしい。 いや違うな……萃香の性格上、勝負を挑まれたら逃げることはない。ならば…… 「再戦は次の機会だ! 覚えてろよッ!」 つまり、俺との勝負を優先してくれるらしい。俺との決着を付けるまでは他のヤツとは戦わない。 鬼の流儀ってヤツか。何ともまぁ……義理堅いこって。 「忘れようにも忘れられるキャラじゃねぇだろうが」 萃香が身体を霧と化して消えて行く。 それを見送ったのを最後に、俺の視界はゆっくりと傾き…… 這いながら近付いてきているてゐの泣き顔を見ながら……俺は意識を手放した。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 万々歳、万々歳、お伴の犬や猿雉子は、勇んで車をえんやらや。 ―――一つの結果は、口伝により各々の心を構築する材料へと変換される。 ―――どんなに時が経とうとも、例え真実とは違った歴史を伝えられようとも、 ―――その結果を持つに至った者と寸分変わらぬ信念を持つ者は必ず現れる。 ―――それが、輪廻というものだ。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ―――お母さん、お母さん! ぼく、大きくなったら桃太郎になる! ―――あらあら……それだったら今のうちからいっぱい運動して、身体を強くしないと駄目ね。 ―――うん! ……懐かしい夢。 俺の思い出せる、最古の記憶。 ―――でもね○○、身体が強いだけじゃ桃太郎さんにはなれないのよ? ―――え?どうして? 現実は厳しかった。この世界に鬼は居ない。 桃太郎は幻想の人間だ。いくら身体を鍛えようと『いない者』には『なれない』 ―――桃太郎さんはね、とっても優しかったの。大事な人、おじいさんとおばあさんを守りたかったの。 だからね、貴方が桃太郎さんになりたいんだったら大事な人を見つけなさい。 そして、その人を守ってあげなさい。そうしたら、桃太郎さんになれるわよ? そう、だから…… ―――……うん! わかった! 俺は、誰かを守ることの出来る……機動隊員になったのだ。 ・ 瞼が重い。 「……」 だが、起きなければならない。現状を把握せねばならない。 ―――てゐを永遠亭に連れて行かねばならない。 その意思を瞼を乗せて、ゆっくりと開けば……木板張りの天井が目に入った。 毛布が俺の身体に載ってるのに気付き、上半身を緩やかに上げる。 同時に生まれる腹部の鈍痛。 「~~ッ!」 痛みで思い出す。今までの経歴、気を失ったということ。そして…… 「ここは、永遠亭、か」 この場所のこと。 何となく見覚えのある内装、見覚えのある布団、見覚えのある…… ってここ俺の部屋(だった部屋)じゃねぇか。 周りをゆっくりと見渡して、再び手元に目を向ける。 さて……敢えて今まで気にしないように努めていたが、そろそろツッコまねばなるまい。 何でてゐが俺の腕に絡み付いて寝てんだ? 「てゐー、入るよー?」 ツッコんだ直後に襖の向こうから声が聞こえた。 顔を向けるのと同時に襖が開き、鈴仙が盆に皿を載せて入ってきた。 「……」 「よぉ」 「お、おはよう」 「おぅ、おはよう」 一文字加えるだけで会話になる不思議。 鈴仙は返事をしてきたのが俺だったのが余程意外だったのか、しばし固まっていたが…… 俺の腕に絡み付いていたてゐを見て微笑んだ。 「起きたんだ。良かった」 「何かてゐを見る視線が妙に生優しい上に微笑が果てしなく気にはなるが、これは一体どういうことなのか説明求む」 「てゐが起きたら礼言いなさいよ? 貴方が寝てる間、ずっと看てたんだから」 「俺、どのくらい寝てた?」 「……んー、一日半くらいかな?」 道理で外が暗いと思った。 「いや待て、考えてみりゃそれとこれと話は別だ。何で、てゐが、俺の腕に、絡み付いて、寝てんだ?」 「それだけ心配だったんでしょ。でもホント何があったの? 突然血塗れの貴方と半泣きのてゐを妹紅が抱えて来たかと思ったら、姫様とホーリーランドごっこ始めるし」 「ちなみに決まり手は?」 「クロスカウンター」 「引き分けか……」 流石にダブルノックアウトでは互いにリザレクションするまい。 「まぁ良いや、それらについてはまた今度聞くわね」 「おいおいな。ってオイ! さり気なくてゐに関する俺の質問に答えてねぇ気がするぞ!?」 「そういうのは、私から聞くんじゃなくて本人から聞きなさい」 鈴仙はクスクス笑いつつ、お盆の上の皿を俺に手渡す。 「すりリンゴ?」 「今の貴方にはそれが一番良いと思うわよ。それじゃ、私は出て行くわね」 鈴仙はそう言い、襖の方へと戻って行く。 「あぁそうだ、それと……」 「ぁん?」 「気付いてた? 貴方、何時の間にかてゐのこと呼び捨てになってるわよ。 今までずっと『ウサギちゃん』だったのにね」 「ッ!」 お大事にー、とにこやかに手を振りつつ鈴仙が襖を閉める。 くっ、この俺ともあろう者が鈴仙にからかわれるとは。 覚えてろ。何時か貴様のスカート全てにチャイナ服ばりのスリットを入れてやる。 と、俺が暗い覚悟を燃やしていると……小さな呻き声が聞こえた。 見てみれば、俺の腕に絡んでたてゐが目を擦っていた。どうやら起きたらしい。 ふむ……ここは一発爽やかにてゐを目覚めさせてやるとするか。 「よぉ、グッモーニン」 爽やかに歯を輝かせながらの俺の声に、てゐは目を見開き、勢い良くこちらを見つめてきた。 「あ……」 「?」 「ぷっ!」 突然、てゐが噴き出した。 「あはははははッ! 歯、歯がッ!」 歯? 「んがッ!? お、俺の歯が! 前歯がぁッ!?」 今気付いたが、上下の犬歯までの前歯が根元から全滅していた。 奥歯を噛み締めていてもあっかんべーが出来るという奇妙極まりない感覚が実に嫌だ。 「……そうか、あまりに衝撃的な一撃過ぎてダメージが完璧に麻痺ってたんだな。鬼の怪力、恐るべし……」 よくよく触ってみれば、俺の顔面は酷い有様だった。 まず、まるでミイラと見違わん限りに巻かれた包帯。 その上、鼻骨折れとるわ一部頬骨砕けとるわ瞼が一定以上開かないわと、我ながら何とも恐ろしい状態である。 何故か触ってみても痛みが無いのが殊更恐ろしい。 「永琳の薬の効果じゃない?」 ……包帯を解いた時、前の俺とは違う顔になってる気がしてならない。 しばしして、落ち着いてきたのかてゐが腕から離れつつ俺の横に座る。 少し残念だと思ったのは秘密だ。 「ねぇ」 「ぁん?」 鈴仙から貰ったすりリンゴを蓮華で掬い食べつつ、てゐの方を向く。 「2つ目の理由、あったじゃない」 「2つ目……あぁ、萃香に言ってたアレな」 何故てゐを守るのか、その理由を問われた時に返した言葉。 「……あれ、ホント?」 「あんなことをネタにして嘘付けるか馬鹿者。全部ホントだ」 「何で? 私が言うのも何だけど……貴方にそんなこと言われる権利なんて……」 「口開けぃ」 すりリンゴの乗った蓮華を片手にそう言い放つと、てゐは疑問符浮かべつつも素直に口を開ける。 てゐの口に皿に盛った大量のすりリンゴの方を流し込んでやる。 「もががぁー! ごぼッ! ゲホァッ! 何すんだコラぁーッ!」 「いょーし、それで良い。オメェに謙虚なツラなんぞ似合わねぇ。 良いか? 権利とかそういうのはこの際関係ねぇ。オメェが俺に何をしたかってのもこの際関係ねぇ」 蓮華のすりリンゴを食べ、空になった蓮華でてゐを指す。 「つーかむしろオメェ何かしたっけ? 覚えがねぇなぁ。記憶もねぇなぁ」 だって俺、一度も『誰が犯人か』言ってねぇしな。 あれ誰が犯人だったんだっけなぁ、殴られて思い出せねーやわははのは。 「というワケで、オメェがそういう態度だと色々覚悟して告った俺が馬鹿みたいじゃねぇか」 「格好良いこと言ってるけど、リンゴまみれだと格好付かないわね」 「オメェがやったんだろうが」 「そもそもリンゴ流し込んできたのはアンタでしょうが」 食べ物粗末、駄目、絶対。 「ハッハッハ、気にするな。あぁところで……」 目元のすりリンゴを拭う。 「何で俺の腕に絡んでたんだ?」 俺のスムーズかつナチュラルな会話の流れにあまりに感動したのか、てゐがピシッという効果音と共に動きを止める。 しばしの間の後、てゐが小さく呟いた。 「……怖かったのよ」 「怖かった?」 「見た感じ、まるで死んでるかのように寝てたから、生きてるってのを確認したかったのよ。 ……それで腕の脈、取ってたら眠くなって」 そのまま寝ちまったってワケか。 鈴仙は決して適当に答えてたわけではなかったらしい。 「落ち着くリズムだったんだから仕方ないじゃない!」 「何でキレてんだよ、ワケ分かんねぇよ!」 てゐッ! と真っ赤に染まるてゐの額に軽くチョップを入れる。 う゛ーー……と唸りながらこちらを睨んでくるてゐ。 何かムカつくので睨み返してみる。 「……」「……」 「ぷっ」「くっ」 「「あはははははははッ!」」 何時の間にか睨めっこになってたらしく、互いのすりリンゴ塗れの酷い惨状に同時に噴き出した。 「やっぱ駄目ね。アンタ相手だとどうにも緊張感無いわ」 「人に癒しを与える男だからな」 「笑えない冗談ね」 うわぁい、やっぱり口悪いわこの娘。 「そ・れ・で、こっちからも一つ聞きたいことがあるんだけど」 「何となく嫌な予感がするが一応聞こう、何だ?」 「良い勘してるわね。『言い訳』、で分かる?」 ―――後でしっかり言い訳してもらうわよ! 「あーあーあーあー、あれね。うん、まぁ不慮の事故だったっつーことで」 「それで済ませてたまるかッ! そ、その……初めてだったのよ! 不慮で済まされてたまるもんかッ!」 「じゃあどうしろっつーんだ」 「やり直しを要求するわ!」 ……。 「ワンモアプリーズ」 「やり直しを要求するわ!」 「正気か?」 「本気ならまだしも正気を疑うのはどうかと思うわよ、私は」 「それはその……えーと、『2つ目の理由』の返事と受け取って、良いのか?」 「……」 てゐは顔を真っ赤にして……小さく頷いた。 あ、その動作は結構キた。 「あー……まぁ構わんが」 俺の言葉に、更に顔を赤くするてゐ。 多分俺も顔が赤いだろうが……包帯してるので気付かれてはいないだろう。 「……今度はそっちからじゃなくて、わ、私からするから……ちょっと目を瞑っててよ」 てゐの言葉に頷きを返し、目を瞑る。 暗闇の中、てゐがスーハーと深呼吸しているのが聞こえる。 ……そんなことしてたらなおさら緊張するだろうに。 よしッ、という小さな呟きと共に吐息が近付いてくる。 そしてゆっくりと……自然に、自然に……重ねられる唇。 一瞬とも、数秒とも言える長いキス。 終わってしまうのが惜しくて、俺は……濡れた唇に、強く唇を押し付けて、体に腕を回す。 ……押し寄せる愛しさと生臭さ。 「生臭さ?」 感じた違和感と同時に回した腕も空振ったので、思わず目を開けると目が合った。 コイ目コイ科フナ属の淡水魚の総称。 すなわち、鮒(フナ)の目と。 「えいっ」 追い討ちをかけるかのように新鮮な鮒を顔面にぶつけられた。ベチンッと良い音がする。 「ふなぁぁぁぁあああああ゛あ゛あ゛ッ!」 劇的なまで淡水魚特有に生臭い! 包帯に生臭さが滲んで最早これは地獄だ、鮒地獄だ! 怒りが、命を懸けるほどの怒りが全身を! 「テメェコノヤロウ! これは決闘だな! 決闘の申し込みなんだな! ぶぶぶぶっ殺してやる!」 俺が布団を跳ね上げるのと同時に、てゐは襖を開けて脱兎の如く逃げ出した。 「あははははッ! やっぱこうじゃなくっちゃねー!」 「貴様にッ! 貴様に俺の大事なセカンドキスを鮒に奪われた気分が分かるか! テメェの唇も鮒臭くしてやる! 大人しくとっ捕まってその唇吸わせろ! キッシャーッ!」 そして誰も居なくなった部屋の中で、 一匹の鮒がビチビチと跳ねていた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 疾走する2人が廊下の角を曲がった直後、さっきまで彼らの居た隣の部屋の襖を開けて蓬莱山 輝夜と八意 永琳が出てくる。 「解かれてしまいましたね。姫の難題」 「客人でも住人でも侵入者でもなく『患者』として搬入される、無自覚の内に難題を解くってのも大したものよねぇ」 「それで、難題解決の褒美というのは何だったんでしょうか?」 「処罰の取り消しってのはどうかしら?」 「それは良いですね。でもその前に姫」 「何かしら?」 「鼻ティッシュは何ともなりませんか?」 「しょうがないじゃない。なかなか止まらないんだから」 そう言い、鼻に詰めたティッシュをフンッと押し込む輝夜。 もはや姫と呼ぶことすらおこがましいその動作に、永琳は苦笑いを返す。 ちなみに妹紅も同じように鼻ティッシュしたまま帰ったらしい。 物理的にも性格的にもメラメラ燃えている分、向こうの方が鼻血の出は良いに違いない。 きっと帰り道で出血多量で倒れてるだろうがリザレクションするのでなんら問題ありません、 と、その時…… 「やってくれたわね、御二人さん」 「あらこんばんは。子鬼さんと、霊夢」 声の聞こえた空を見上げれば、ゆっくりと降りてくる二つの影。 博麗 霊夢と伊吹 萃香は、輝夜と永琳に相対するように庭に降り立った。 霊夢がおもむろに、懐から一枚の折り畳まれた和紙を取り出し、 「『外から変わった人間が来てる。折角だから見に来ない? 蓬莱山 輝夜』」 広げることもなく読み上げる。 「アンタが手紙なんて珍しいとか思ってたけど、なるほど……萃香を呼び寄せるためだったのね」 「これだから月人は信用ならないのよ」 ふてくされる萃香の言葉に、永琳と輝夜はクスクスと笑う。 「まぁ、霊夢はこの時期、何かと機嫌悪かったしねぇ……性格上来ないとは思ってたけど」 「そう思うんだったら初詣に来て賽銭していきなさいよ」 「不死の私達にとって、一年の始まりなんて些細なものですわ」 「とか言いながら、年越し蕎麦とおせちが無かったら文句言いますけどね」 「美味しいじゃない、あれ」 「太るわよ」 霊夢のパスウェイジョンニードル並の一言は輝夜のハートを串刺しにしたらしく、彼女はがっくりと項垂れていたorz 「それだけじゃない。他にも色々と小細工してくれたようだな」 萃香が永琳を睨みつける。 「本来、あの人間の放った程度の煙幕なんて鬼には効かない。だからこそ2発目のダメージは予想外だった。 そう……まるで、炒った大豆をかぶったかのようだった」 永琳はその言葉に、ニコニコと笑みを浮かべたまま動じない。 「あの弾丸……2発目の弾に細工したな。 従来の粉末と炒った大豆の粉を入れ換えておく。単純ながらなるほど、鬼の私にとってはこれ以上ない効果だ。 そしてその入れ替えが出来たのは、あの人間から一時的に武器を預かってて……解析し、細工を行うだけの知能を持った者。 つまり……月の頭脳・八意永琳、アンタしか居ない」 永琳は微笑みを浮かべたまま何も答えなかったが、その沈黙が何よりの肯定であると如実に伝えていた。 「何でこんな事したのよ」 霊夢が、当然といえば当然の質問をぶつける。 「簡単よ。私達は永遠亭を提供し、何時も世話をしてくれたてゐに借りを返したかった、それだけ」 「でもそれが、何より難解な難題。私が出すような難題とは別の意味での……難題」 永琳と輝夜が交互に言葉を重ねていく。 「私達では彼女を幸せにする事は出来ない。 姫は永遠と向き合うこと、私は姫のこと、ウドンゲは永遠亭の皆のこと、それを最優先する。 彼女一人を優先するような人間は、彼女の周りに居ない」 「そう、あのイナバの能力は決して己が幸せになるとは限らない」 「例えば彼、○○はてゐと出会って幸せになった。僅か数日で永遠亭に馴染んだのがその証拠。 でも……その時点ではそれがてゐの幸せになるわけじゃなかった。 彼に自分のポジションを奪われかけ、あわや地上兎のリーダーとして威厳は失墜しかけた」 「でも、もし……彼が『あのイナバが幸せになること』に幸せを感じることが出来る人間ならば、 それは彼女自身も幸せになるという可能性はあった。私と永琳は、そこに賭けてみたのよ」 「彼がその人間であるという根拠はあったのかしら?」 「てゐと出会い、外に出るのではなく永遠亭に来たのがその根拠。 彼は竹林から出ることよりも先に、てゐを心配し探そうとした」 「ほんのちょっとの違いね」 霊夢の言葉に、チッチッチッと指を振って永琳は笑みを浮かべる。 「そのちょっとが大違い。 自分よりほんのちょっと他人を優先出来る程度の素直な馬鹿じゃないと、てゐを幸せにする事は出来ないからね」 「何しろ、あのイナバは素直じゃない嘘吐きだからねぇ。そのくらいがバランス良いのよ」 まぁ、今回は控えめだったみたいだけどね。と輝夜が袖を口元にクスクスと笑う。 それらを聞き、萃香が叫ぶ。 「じゃあ丸っきり私は当て馬ってことじゃないか! うっおーっ! くっあーっ! ざけんなーっ! 納得できるかそんなもーんッ!」 「あら、じゃあリベンジすれば良いじゃない」 「元よりそのつもりよ! こうなったら意地でもあの人間を攫ってやる!」 ……。 「三角関係?」 「意地になってるってところが無自覚っぽいわね」 「そこ! 何ヒソヒソしてんのよ!」 「それで、彼を外に連れて行くのかしら?」 縁側の隅っこでヒソヒソと話す霊夢と永琳にツッコむ萃香を華麗にスルーして、 微笑を浮かべる輝夜の台詞に、霊夢は肩を竦める。 「彼はもう、外の世界には戻れないわよ」 「あら、それはどうしてかしら?」 「何の能力も持たないただの人間が、どういう形であれ鬼と引き分ける。それは最早、立派な幻想なの。 幻想の人間と化してしまった以上、彼が外に戻るのは難しいわ。 博麗大結界は彼をここに押し留めようとするでしょうね」 「あら、それは大変」 「白々しい……ぜーんぶ計算づくでしょうに」 それこそ彼が来た時から今に至るまでね……と続け、2人を睨めつける。 その視線を受け、永琳は笑みを浮かべる。 「でも霊夢、一つだけ訂正させてもらうわね」 そして伝える。 「彼は外の世界に『戻れない』んじゃなくて、『戻らない』の」 彼が編んだ想いは、計算ではないのだと。 「彼にとって大切なものは、ここにあるんだから」 ――――――――――――――――――――――――――― 参考資料 ・機動隊万歳! ・我が青春の機動隊 ・幻想郷非公式ワールドガイド(仮) ・イチャスレ まとめのまとめ (特に『てゐ1』の項目は参考にさせて頂きました) ・winter scenery 同人誌『妖怪兎の歌』 (今回のてゐのイメージはこの同人誌よりお借りしました) ・100%東方カーニバル 『03.おウサ様がみてゐ【原曲:お宇佐さまの素い幡/出典:東方花映塚】 Arranger◎すぺらんかー+小宮真央[Silly Walker]』 (執筆時エンドレスBGM イ・ナ・バ(゚∀゚)テウィ!!) その他、様々なネタに関するサイト... (上記サイトは直リン可か分からないので名前のみ。・の横にある単語をググったらどんなサイトか分かります) ついでに ・実際に髪と眉以外の全身の毛という毛を剃ってみた俺自身のツルツルお肌 ・ここ最近の俺の昼飯、すりリンゴ ・滋賀県の郷土料理、鮒寿司 (匂いはきつかったけど美味しかったです。でも顔面にぶつけられたら多分殺意を覚えます) 4スレ目 373(うpろだ0021)
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因幡てゐ〔いなば てゐ〕 作品名:東方永夜抄 作者名:[[]] 投稿日:2008年2月17日 画像情報:640×480px サイズ:79,557 byte ジャンル:[[]] キャラ情報 このぐぬコラについて コメント 名前 コメント 登録タグ 2008年2月17日 個別い 東方永夜抄