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鯉(KOI) ACTADV 500円(税込)454MB 一匹の小さな「鯉」が、故郷を目指して今旅立つ。 鯉(KOI)では、その名の通りプレイヤーは一匹の鯉となり故郷の川を目指して旅をするアドベンチャーゲームです。 幻想的な音楽と水彩画のような広大なフィールドで彩られた世界観の中を、ゆったりと泳いでみてください。 旅の道中、行く手を遮る障害物や黒魚を回避しながら、仲間の魚たちを集めて花を咲かせることにより、汚れた水源を浄化しましょう。 フィールドの中にはパズル的な仕掛けや、ピース集めと言った要素も散りばめられているので、じっくり散策を楽しんでください。 鯉は故郷の川に辿り着く事ができるのか、ぜひ見届けてください。 配信日 2017年10月5日 メーカー フライハイワークス Tianjin Dotoyou Technology 対応ハード Nintendo Switch プレイモード TVモード, テーブルモード, 携帯モード プレイ人数1人 対応言語 日本語, 英語, 韓国語, 中国語 CERO A セール履歴フライハイ Takusan Game Sale! たくさんゲームセール! 400円(20%off) 2018/9/20 00 00~2018/10/3 23 59 フライハイワークス 年末年始お年玉大セール2018! 300円(40%off) 2018/12/27 00 00~2019/1/10 23 59 タイトル名を途中「金魚」に変更したことがあるのですが、諸事情で「鯉」に戻しました! やっぱり金魚じゃねーか!! -- 名無しさん (2018-07-13 19 37 25) https //youtu.be/GqABGzb_VcQ 鯉の数ある実況でもここが1番感動しました 攻略云々よりも雰囲気を味わうゲームですね -- 名無しさん (2020-04-21 07 08 35) 名前 コメント
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◆◇◆◇ “この世界”―――“界聖杯”に招かれる前。 元いた場所での、小さな記憶です。 お日様が落ち始めた、夕方の一時。 私/櫻木真乃が仕事の打ち合わせを終えて、帰宅しようとした矢先でした。 とん、とん、とん、とん。 きゅっ、きゅっ、きゅっ。 いつも聞き慣れた音でした。 シューズが床を蹴って、擦れながらリズムを奏でる。 アイドルである私達が常に耳にする、素朴なメロディー。 レッスン室の前を通り掛かった私は、それが気になって。思わず部屋を覗き込んでしまいました。 広い空間の中、大きな鏡の前で。 緋田美琴さんが、一生懸命にステップを刻んでいました。 283プロダクションに移籍してきた、芸歴10年の大ベテランさんです。 SHHisというユニットで活動していて、抜群の歌唱力とダンスで引っ張っています。 初めてパフォーマンスを見させて頂いたときは、ほんとにすごいなあって―――ただただ感動してしまいました。 これが、アイドルとしてずっと活動してきた人の実力なんだって。私は、改めて気を引き締めてしまいました。 美琴さんとはあまりお話をしたことがないけれど、それでもすごく印象に残っています。 綺麗で凛としてて、いつも格好良くて。 にちかちゃんと接してる姿を見ていると、なんだかもう一人のお姉さんみたいだなあって思っちゃいます。 だけど、その隣に。 レッスン室にいる美琴さんの側に。 にちかちゃんの姿はありません。 WINGでの優勝を惜しくも逃した、あの日以来。 にちかちゃんは、事務所に来なくなってしまいました。 事情は何もわかりません。きっと、プロデューサーさんやはづきさん達だけが知っていることで。 私達は、にちかちゃんがいなくなったという事実を―――ただ見つめることしか出来ませんでした。 思えば、あの時から、事務所は少しずつ“変わっていった”んだと思います。 にちかちゃんの不在。 噂で聞いた、はづきさん達の家庭の事情。 ひとりレッスンを続ける美琴さん。 今まで以上にお仕事へとのめり込むプロデューサーさん。 少しずつ綻びのようなものが見え始めて。 みんながそのことに、うっすらと気付いてしました。 そして、はづきさんが倒れてしまったあの日。プロデューサーさんと社長が仕事を続けられなくなったとき。 プロダクションの休止が伝えられた、あのとき。 私は、なにをしているんだろう。そう思ってしまって。 夜空に輝いていたはずの星々が、何処にも見えなくなってしまいました。 みんなを笑顔にするのが私達“アイドル”なのに、すぐそばにいる人達を支えられなかった。 それに気付いてしまった時から、私の見る世界はぼんやりと色褪せてしまいました。 それでも私は、プロデューサーさんの想いに報いるために。また事務所が続けられるように。アイドルとして、プライベートも犠牲にして走り続けました。 プロデューサーさんを支えられなくて、みんなを心配させて、私はどうしようもなく無力でした。 いまの私も、同じ。 本当にちっぽけで、結局なにもできない。 ―――なにも変えられない。 ◆◇◆◇ 「――――はい、櫻木です……はづきさん?」 ◆◇◆◇ 短い通話を終えて、私はスマートフォンをしまって。 そのまま、項垂れるように視線を落としました。 連絡が来たのに、何か手がかりが掴めるかもしれないのに。 私は、心のどこかで、一歩前に進むことを拒んでいる気がして―――。 相変わらず人が来ない、ひっそりと隠れた公園。 私は、ベンチの端っこに座っていて。 「あの……」 もう片方の端側――ひとり分のスペースを開けて、遠慮がちに座っていた“神戸あさひ”くんが話しかけてきました。 「何か、あったんですか」 あさひくんは、少しだけ気まずそうに。 だけど、心配するように聞いてくれます。 何処か不安そうだけれど。それでも、会ったばかりの私のことを気遣ってくれます。 お互いに、少しずつ気持ちは落ち着いてきたと思います。 私達ふたりの間に、会話は時々ありました。 聖杯を求めて戦っているのかと、あさひくんに問いかけたとき。あさひくんは頷きましたし、私も正直に自分の方針を打ち明けました。短い会話でしたけど、少しでもお互いのことを知ることができました。 そしてあさひくんがアヴェンジャーさんと相談することがあるから、と言って少しだけこの場から離れたとき。 その時も、少しだけ私達が言葉を交わしました。 お互いに語り合った時間は、決して多くないけれど。 それでも、あさひくんがどういう子なのかは、何となく伝わってきました。 最初はライダーさんにすごく怒っていて、ひかるちゃんにも反発していて、少し怖かったけれど。 本当は、大人しくて。優しい子なのかなって、今では思っています。 落ち込んでいる私を気遣うように、何も言わずにそっとしておいてくれたから。 俯きがちに苦悩していた私のことを、心配するように何度か見てくれたから。 上手く人と接することができないのは、私もいっしょでした。 引っ込み思案で内気、人とのお付き合いにも消極的で。そんな自分を変えたくて、アイドルになることを決意した私でした。 だから、あさひくんの素振りにも、思い当たるふしがあって。あさひくんの気遣いや優しさも、何となく汲み取ることができました。 「はづきさん……お世話になってる事務員さんから、電話が入ったんです」 「それって……事務所の、ですよね」 「はい。しばらく、事務所には近づかないでほしいって……」 だから私は、打ち明けられたんだと思います。 つい先程来た、はづきさんからの連絡について。 「私の、プロデューサーさんからの伝言でした」 ―――それは、プロデューサーさんからの“伝言”。 あのとき傍で支えることのできなかった、掛け替えのないひと。 私がひとりでアイドルとして奔走し続けることになった、きっかけ。 この世界でも、プロデューサーさんは事務所に来ていませんでした。 何か事情があるらしいことは聞きました。それが何なのかはわからなくて、結局は臨時の職員さんたちが頑張ってて、事務所の仕事も少しずつ縮小していっていました。 星に手を伸ばしても、決して届かない。 そんな言葉が、ふいに頭をよぎりました。 いつも、間に合わない。 いつだって、届かない。 みんなが責任を背負って、みんなが変わっていきます。 そんな中で、私は一歩前に進むこともできていません。いつだって、足踏みしているだけ。 元いた場所では、プロデューサーさんのことを支えられませんでした。すぐそばにいたはずなのに。ずっと私を支えてくれたのに。私は、それに応えられなかった。 灯織ちゃんやめぐるちゃんには、心配をかけてしまいました。罪の意識から一人で無理して、ふたりの想いを無視するばかりでした。 「あさひくん」 「……はい」 「私とあさひくんは、同じ道を進めないけど―――それでも、あさひくんのことはすごいなって思うんです」 ここでも、いっしょです。 私が咲耶さんを助けられたかもしれないのに。私だけが、咲耶さんを救えたのかもしれないのに。 結局私は、咲耶さんがどこにもいなくなったという話を―――手遅れになってから聞くだけでした。 戦いたくない。傷つけたくない。そんな私の思いを、ひかるちゃんは全部背負ってくれています。 あの場で、グラス・チルドレンの子を手に掛けたように。私にできないことを、私がやりたくないことを、何もかもひかるちゃんに押し付けています。 「わたしと、同じくらいの歳だと思うのに。 それでも……自分が何をしたいのか、はっきり決めてて。 ただ流されるだけの私と違って、ちゃんと考えて向き合ってる」 あさひくんは、聖杯を求めてる。 それを肯定したときの表情は、忘れられない。 真っ直ぐな眼差しで。覚悟はもう決めていることを、訴えかけてて。 それでいて、時おり辛そうな横顔をちらつかせるのが―――哀しくて。 きっと苦しいはずなのに、自分でちゃんと背負っている。 私は、こんなに無責任で。 どうしようもなく無力だって。 気付いてしまったから、身動きさえ取れない。 だめな自分を分かっているのに。どうしようもなく、こわくて。 なにかを裏切ることも、怖い。 なにかを壊してしまうことも、怖い。 「あさひくんのこと、全部は分からないけど。 それでも、本当に、ほんとうに、すごくって……―――」 ひかるちゃんがいたのに、すぐ傍で気付けたかもしれないのに。咲耶さんを助けることができなかった。 本戦が始まってからも、変わりません。 アイさん。ライダーさん。あさひくん。アヴェンジャーさん。―――ひかるちゃん。 みんな何かを背負って、頑張っているのに。 この聖杯戦争の中で、戦い続けているのに。 私は、進めていない。 いつまでも、取り残されているだけ。 「櫻木さん……?」 だから、私は―――プロデューサーさんの伝言が来たのに。 結局、はづきさんから何も聞けなくて。 それが、くやしくて。情けなくて。 心配するあさひくんの声もよそに、俯いてしまって。 「……私は、なにもできてないんです」 思わず、そんな一言がこぼれて。 「私は……」 そんなことを呟く今の自分を、見つめた途端。 「私はっ……――――」 涙が、ぽろぽろと零れて。 止まらなくなって――――。 「――――櫻木さん……!」 ―――そんな悲しみを裂くように、あさひくんが声を張り上げました。 私は思わず、目を丸くして。涙を擦りながら、あさひくんの方を向きました。 あさひくんを動揺させていることは、すぐに分かってしまって。 それでも、彼は息を整えて―――言葉を紡いでくれました。 「俺も……櫻木さんの苦悩を、ぜんぶ知ることは出来ないです」 あさひくんは、私の方を真っ直ぐに見つめてくれています。 不安や困惑を滲ませながらも、しっかりと一言一言を絞り出して。 「だけど。本当に優しい人は、いつだってひとりで苦しみを背負って……自分を追い込んでしまうから……。 俺も、“そういう人”を知っているから―――」 どこか、悲しそうな目で。 今にも泣き出しそうにも見える顔で。 それでも。私から、目を逸らさずに話してくれて。 「櫻木さんにも……自分を、傷つけてほしくない」 そう伝えてくれるあさひくんを見つめているうちに。 溢れていたはずの涙は、止まっていました。 彼の言葉には―――確かな優しさが、あったから。 「――――その通りです!」 そのとき。キラキラとした活力を放つ、元気な声が飛び込んできました。 それを耳にして、私はハッとそちらの方を見ました。 私よりも小さいのに、私よりもずっと元気でパワフルな女の子。 さっきまでアヴェンジャーさんと一緒に周辺の見守りをしてくれていた、大事なお友達。 そして。私の代わりに、戦う責任を背負ってくれている―――。 「あさひさん!真乃さんを励ましてくれて、ありがとうございます!ここからは、私が引き受けます!」 星奈ひかるちゃんが、霊体化を解いて私達の前に現れました。 その姿を見て、あさひくんは少し驚いてから。安心したように、かすかに微笑みました。 「みんな違って、みんなそれぞれ。 だから、真乃さんの悩みも真乃さんだけのものだって思います。だけど――」 ひかるちゃんは、私を真っ直ぐに見つめてくれて。 そして、言葉を紡ぎ始めました。 「それでも、真乃さんの気持ちはわかっちゃうんです!」 力みながらそう言うひかるちゃんの表情は、真剣そのもの。 私のことを本気で心配してくれている。 それをすぐに理解できて、私は何も言わずに耳を傾けていました。 「わたしも……あの時。あの“イマジネーション”を掴めなかった頃に、真乃さんと同じ気持ちになってたから……」 ―――ひかるちゃんの“生前”は、何度か夢で見たことがありました。 ひかるちゃんは、銀河を救う伝説の戦士。 「みんな何かを背負って先に行っているのに、みんなが未来へと歩き出したのに。 どうしてわたしだけ、燻ってるんだろうって。 わたしだけ進んでない、取り残されてる―――」 特別で、すっごくて、だけど。 天真爛漫で、色々なことに思い悩んで。 友情を育んで、何度も苦難と対峙して。 たくさんの経験の中で成長していって。 つまり、普通の女の子。 「でも、私の友達―――ララは言ってくれした!わたしがいたから、ありのままの自分でいられたって! わたしはここにいてもいいんだって、教えてもらいました……それでわたしは前に進めたんです!」 友達がいたから、前に進めた。 友達に支えられて、成長できた。 ここにいてもいいって、側にいるひとに教わった。 そう語るひかるちゃんの言葉に、私は心を打たれていました。 「周りはどんどん変わってしまうし、そのせいで焦ってしまうこともあるかもしれない。 けれど!はくちょう座の星―――デネブは、何千年経っても!ずーっと輝き続けてるんです! 例え他の星が動いても、時と共に環境が変わり続けても!デネブはそこで確かにキラめいてる……!」 なぜなら、それは。 アイドルと、いっしょだったから。 誰よりも特別で。誰よりも、普通の女の子。 だからこそ―――お星さまみたいに、輝いている。 「―――真乃さんだって、そうです! 輝きはそれぞれ違って、真乃さんには真乃さんの輝きがあるからっ! 真乃さんは、皆の前でキラキラ光るアイドルだから!胸を張っていいんです!」 ああ。だから――――。 ひかるちゃんの、眩しい激励のおかげで。 私の脳裏に、あのふたりの顔が浮かんだんだと思います。 ―――真乃は、私の隣にいてほしいっ! ―――真乃は、私の隣にいて。 私と共に、輝くステージに立ってくれる仲間。 ずっと一緒に頑張ってきた、掛け替えのない存在。 センターに立つことになって、思い悩んでいた私に、慈しい言葉をかけてくれた親友達。 自分を傷つけなくてもいい。 無理に考えなくてもいい。 無理に背負わなくてもいい。 特別な私じゃなくて、私が好きだって言ってくれる友達がいて。 そして、そんな私を信じてくれる人がいる。 ―――みんな特別で、普通の女の子だ。 プロデューサーさん。 私は、ずっと迷っていました。 今も、迷いは消えません。 でも、ほんの少しでも、道筋が見えたんです。 「私は……責任を背負います!だからっ!」 そして。ひかるちゃんが、大きく息を吸って。 「真乃さんは、私の隣にいてください!」 眩しいほどの笑顔で、そう言ってくれました。 ――――その輝きに。そのキラめきに。私は、心を奪われていました。 胸の内の霧が晴れたような気がして。また、星空を見つめることができたような気がして。 だからこそ、私が今なにをしたいのかを、改めて見つめることができました。 先程かかってきた、はづきさんからの電話。 プロデューサーさんからの伝言。しばらくプロダクションには近づかないようにしてほしいという、突然の通達。 なんとなく、わかっていました。 全貌はわからないけれど、それでもプロダクションがいま大変なことになりかけているって、察することができました。 それはきっと、聖杯戦争に関することで――――。 だからこそ、私は決意しました。 283プロダクションに行って、確かめたい。目の前の現実へと、手を伸ばしたい。 現場でもしも、既に大変なことが起こっていたとしたら。 私達が向かっても、どうしようもないかもしれない。今度もまた、間に合わないかもしれない。 今から走ったところで。結局、なにも出来ないかもしれない。 それでも、私が信じたいものの為に。私を信じてくれる人の為に。 少しでも前へと進んで、確かめてみたい。 この場で何が起こっているのかを。あの事務所で今も戦っているかもしれない、“誰か”のことを。 咲耶さんも、こんな想いを背負って戦っていたのでしょうか。 誰よりも格好良くて、本当に優しかった咲耶さんなら、きっと―――。 今となっては、その答えも分かりません。 だけど。せめて咲耶さんの命も背負って、私は前を向いていきたい。 「アーチャーちゃん」 だから、ひかるちゃん。 私からも、“お願い”します。 「どうか一緒に、来てください!」 私は、ベンチから立ち上がって。 ひかるちゃんの手をギュッと握りながら、言いました。 「――――もちろんです!」 ひかるちゃんもまた、にっこりと笑ってくれて。 安心したように、大きな声で答えてくれました。 私もなんだか、安堵してしまって。口元に、自然と微笑みが出来ていました。 私は、思いました。―――ごめんなさい。そして、ありがとう。 私を信じられなかった、私を信じてくれて。 そばで支えてくれて。私の星空を、また見つけてくれて。 「真乃チャン、いいかな?」 「ほわっ!?」 「もうやるべきこと、決めたんだよな」 その矢先に、背後からひょっこりと声が飛び込んできて、私は思わずびくりと跳び上がってしまいます。 その人は真っ赤な覆面を被った顔で、ニヤリと笑っていました。 あさひくんのサーヴァント、アヴェンジャーさんです。 霊体化を解いて、姿を現したみたいでした。 「じゃあ俺ちゃんとも連絡先、交換しない?」 そう言ってアヴェンジャーさんは、懐からひょっこりとスマートフォンを引っ張り出しました。 あ、はい。しましょう!そんなふうに私もスマートフォンを取り出して、いそいそと連絡先を交換しました。 それを見たあさひくんは、予想だにしなかったような表情を浮かべていました。 「お前、スマホ持ってたのか!?」 「あれ、言ってなかったっけ」 「初耳だよ!」 「折角だしツーショット撮っちゃう?」 「撮るわけないだろ……」 「そうやってアタシを突き放すのね……」 「何のキャラだよ……」 のらりくらりと振る舞うアヴェンジャーさんに対して、あさひくんはたじたじです。 そんな姿が何となく微笑ましく見えて、少しだけくすりと笑んでしまいました。 ひかるちゃんも「あさひさんとアヴェンジャーさんも仲良しなんですね!!」って、目を輝かせていました。 ずっと気を張っていたあさひくんも、この時だけは肩の力が抜けているように見えました。 「あさひくん」 そんなあさひくんを見つめて。 私は、口を開きました。 「ほんとに短い間でしかなかったけれど。 そばにいてくれて、気に掛けてくれて、ありがとうございます」 感謝の言葉と共に―――私は、頭を下げました。 ひかるちゃんがいてくれたから、私はまた立ち上がることが出来たけれど。 そのきっかけを作ってくれたのは、間違いなくあさひくんの言葉でした。 自分を傷つけないでほしい。あさひくんがそう言ってくれたから、私はこれ以上自分を責めずに済みました。 「あの、櫻木さん」 そうしてあさひくんもまた、口を開きました。 それから少し悩んでいるように、沈黙して。 「俺達にも、手伝えることがあったら―――」 「いいや。嬢ちゃん達の気持ちを汲んでやりな」 アヴェンジャーさんの言葉が、あさひくんの発言を遮りました。 私もあさひくんも、思わず驚いてしまいました。 でも、アヴェンジャーさんの言っていることは、正しいことでした。 「巻き込みたくないんだろ、俺たちを」 アヴェンジャーさんは、私の気持ちを見抜いていました。 283プロダクションへと向かうこと。 少しでも前へと進んで、なにかを掴めるように頑張りたい。 それは、あくまで私のための目的です。 だから。あさひくんやアヴェンジャーさんまで巻き込んではいけないと、思ったんです。 「アヴェンジャーさんも、ありがとうございました。 ……どうか、お元気で。また会える時まで……」 だから、私はアヴェンジャーさんにもお礼を言いました。 そして、背を向けて去ろうとする直前。 私は、ふたりに対して、最後の一言を伝えました。 「―――機会があったら、『イルミネーションスターズ』の曲!聴いてくれたら嬉しいなって……!」 どうか、私の歌を聴いてくれたら―――嬉しいな、って。 私は、今でも無力かもしれない。あさひくんと違って、何もできないかもしれない。 それでも。私は、櫻木真乃は、アイドルだから。 歌で誰かの心を癒せればと、祈りました。 そうして私は、再び霊体化したひかるちゃんと共に、走り出そうとして。 「お嬢ちゃん達」 アヴェンジャーさんから、呼び止められました。 私は思わず、振り返りす。 「君達はイイ娘だ。全米1セクシーな俺ちゃんがわざわざ言うくらいマジだ。 だからこそ、気を付けな。その真っ直ぐな善意を食い物にする野郎ってのは、こういう場には絶対いる」 その声色は、真剣そのもので。 先程までの態度とは、全く違うものでした。 あさひくんに優しいアヴェンジャーさんも―――聖杯戦争のサーヴァントだから、ひかるちゃんのように凄い人なんだって。 私は、そのことを理解してしまいました。 そして。アヴェンジャーさんの言うことは、きっと正しいんだと思います。 ここは、戦いの場だから。 ちゃんと気を引き締めないと、いけない。 私はぎゅっと拳を握り締めて、改めて思い知りました。 そして、再びアヴェンジャーさん達に一礼をして―――公園を後にしました。 先のことは、わからないけれど。 上手くいくかも、わからないけれど。 それでも、私は―――羽ばたくことだけは、捨てませんでした。 【世田谷区/一日目・午後】 【櫻木真乃@アイドルマスターシャイニーカラーズ】 [状態]:健康、咲耶の死を知った悲しみとショック(大) [令呪]:残り三画 [装備]:なし [道具]:なし [所持金]:当面、生活できる程度の貯金はあり(アイドルとしての収入) [思考・状況] 基本方針:ひかるちゃんと一緒に、アイドルとして頑張りたい。 0:283プロダクションへと向かう。 1:少しでも、前へと進んでいきたい。 2:アイさんやあさひくん達と協力する。 [備考] ※星野アイ、アヴェンジャー(デッドプール)と連絡先を交換しました。 ※プロデューサー、田中摩美々@アイドルマスターシャイニーカラーズと同じ世界から参戦しています。 【アーチャー(星奈ひかる)@スター☆トゥインクルプリキュア】 [状態]:健康 [装備]:スターカラーペン(おうし座、おひつじ座、うお座)&スターカラーペンダント@スター☆トゥインクルプリキュア [道具]:なし [所持金]:約3千円(真乃からのおこづかい) [思考・状況] 基本方針:真乃さんといっしょに、この聖杯戦争を止める方法を見つけたい。 0:283プロダクションへと向かう。 1:アイさんやあさひさんのことも守りたい。 2:ライダーさんと戦うときが来たら、全力を出す。 ◆◇◆◇ 「いい子だな、あの子達」 「……うん」 「曲、聴いてやろうな」 「うん。……いつか、聴こう」 「あのアーチャーちゃんさ」 「……ん?」 「ちょっとパワーパフガールズに似てない?」 「それは知らないよ……」 真乃達を見送って、俺ちゃんはそんな会話を交わす。 あのアーチャーちゃん、なんかケミカルXとかで誕生するスーパーガールっぽいよね。 でもあさひからは呆れられるようにバッサリ言われて、俺ちゃんはシュンとしながら霊体化する。 因みにさっき取り出した俺ちゃんのスマホは、予選終盤にボコったマスターからパクったモンだ。 『しばらくはあの子達とつるむのも仕方ないって思ってたけどさ。 俺ちゃんからすれば、向こうから離れてくれて良かったよ』 真乃達を気にかけたのも事実だけど。 俺ちゃんの本心はそんな感じ。 念話を聞いてあさひは、僅かに眉間に皺を寄せて驚いた様子を見せる。 『良かった、って……』 『あさひ。利用したくなかったろ、あの子達』 あさひが何か言おうとしたのを、俺ちゃんはそう言って遮る。 それを聞いたあさひは、図星を突かれたように黙り込んだ。 『それに、見てられないだろ?ああいう優しい女の子達はさ』 ライダーを突っぱねてたあさひだけどさ、じゃあ真乃達とあのままつるんでいくのがアリかって言われると―――それも違うだろうさ。 真っ当で優しい子達の善意を平然と悪用できるほど、あさひはボンクラじゃあねえってコト。 それに、いつかはああいう子達も乗り越えなきゃならないとなれば、下手に付き合って感傷を持ちすぎるのも避けた方がいい。 俺ちゃん達は勝ち残る。同情や深入りってのは、やめておいた方がいい。 あさひもそのことを、無意識に分かっている。 ――――で、だ。 こっからは他の話。 あの星野アイってお嬢ちゃんが従えてるライダー。 あさひはそいつのことを「汚い大人」とか罵倒して拒絶してたし、とにかく突っぱねてやがった。 ライダーの野郎は暢気にそれを認めてた。どこ吹く風って感じだ。キンタマ叩いてやりたくなるな。 あいつを庇ってあげるアーチャーちゃんはマジに良い子だ。ユキオもそうだったけど、ジャパニーズガールってかわいいね。 “結局ライダーは汚い奴なの?”そこが問題。 俺ちゃんの答え―――ぶっちゃけあさひの言うこと、正しいと思うよ。あいつの嗅覚は間違ってない。 ただ、それはグラス・チルドレンとの繋がりとは別の方面での話ってワケ。 こっから先の話は、さっきあさひとも共有しといた。 櫻木真乃ちゃんと、アーチャーちゃん。 純真無垢でお人好し。だけど単なる考えなしじゃあない。責任や義理に対してはきっちり誠実だ。 そんな感じだから、徒党を組んだ時に裏切られる可能性は極めて低い。 そして聖杯を狙うつもりはないし、積極的に戦いたくもない。でも、いざとなりゃそれなりに戦える。 そんな子達と組む理由って何だ? 俺ちゃんが思うに、カモになるからだよ。 体のいい友達。もっと嫌らしい言い方すりゃあ、都合良く利用できる駒。 目的で競合しないし、適当な戦力にもなる善人。そりゃあいつらも目を付けるわ。 つまりバットマンに対するロビンみたいな存在―――ごめん、これは語弊があるわ。っていうか違う。 で、そういう訳だから。ライダー達はあの子達を利用している可能性が高い。 あいつらは他の同盟相手候補と交渉する為に一旦別行動を取る、なんて言ってたけどさ。 つまるところ、情報や立ち回りでおたくらが主導権握るために敢えて真乃達を交渉の場から突き放してるだけだろうね。 多分それは、俺ちゃん達に対しても同じこと。あいつらは“盟主”気取り。 そこ気付いてるかどうかはさておき、あさひがあんな態度になるのも納得だね。 俺ちゃん達も交渉の場から排除するような利用対象に過ぎないのなら、信用なんかしてやれないね。 そしてこっから先もあさひと共有した事柄。 たぶんこれから、プロダクションにグラス・チルドレンか―――あるいはガムテとそのサーヴァント自体が攻め込んでくる。 白瀬咲耶を仕留めて、今もあれだけ能動的に活動してるアイツらが既に事務所に当たりをつけている可能性は高い。 で、それを察知したヤツが事務員を通じてアイドルを避難させた。 本戦開幕直後のこの時期。こんな直接的に「逃げろ」って伝えてくるケースがあるとしたら、そりゃもう聖杯戦争に関わってるとしか思えない。 真乃と咲耶は同じ事務所に所属するアイドルで、どっちも聖杯戦争のマスター。 ここまで来たら、他にも関係者がマスターになってても全く不思議じゃあない。 例えば、あの子が言ってたプロデューサーとかね。そいつ経由で避難指示出されたらしいから、寧ろプロデューサーが一番クサいな。 ただ、思ったことがあるとすれば。 あれが本当に避難指示である、っていう確信も持てないワケ。 「今はとにかく事務所から避難してほしい」なんて連絡がこの土壇場に届いてきたら、マスターなら「ひょっとして事務所がピンチなんじゃないの?」とか「もしそうだとしたら、それを察知してる事務員かプロデューサーも聖杯戦争に一枚噛んでるんじゃないの?」と気づいても不思議じゃあない。 そんで、真乃チャンみたいな良い子なら真相を確かめに向かうし(実際行ったしね)、仮に好戦的なマスターだったら他に何らかのリアクションを見せるかもしれない。 要するに、あの電話連絡自体が「事務所周辺のマスターを纏めて炙り出す為の小細工」って可能性ね。下手すりゃ事務所でキャスターとかが罠を用意して待ち構えているかもしれない。 盗聴やら偵察やらで事態を嗅ぎつけた奴らが揃いも揃って好戦的だったら、乱戦になる可能性だって否定できない。アメリカンプロレスの本場、WWE主催のバトルロイヤルみてーに。 そうなりゃグラス・チルドレンの襲撃より厄介。手負いのままじゃ面倒だし、あさひを守り切るのも難しい。 それに例え真乃達みたいな非戦派の主従が向こうにいたとしても、あまり合流したくはない。 こっちは聖杯狙って戦ってるんだ。仮にそういう「戦争したくない」って奴らが連合を組んだとして、その懐に潜り込んだりすれば、それだけでこっちの行動が制限されかねない。監視と牽制のハッピーセットだ。 もしも「聖杯戦争を潰すために好戦的なマスターを無力化する」なんて言い出す日が来たら、その時点で俺ちゃん達は袋叩き。 最悪、聖杯戦争を中断させるような小細工を弄する奴が現れないとも限らないが―――今はまだ様子見だ。実現の可能性は低い。 これからメジャーリーグやるって時に競技自体をスーパーパワーでぶち壊せるミュータント球団を参加させたりするか?させてたら界聖杯は辞職しろ。 もし仮にそんな奴らがいたら、俺ちゃんはそいつらをぶん殴ってやるね。あさひが聖杯を取れなくなる事態だけは絶対に避けなきゃならない。 俺ちゃんはガキの味方だ。 あさひの為に勝つって決めてるのよ。 そういう訳だから、真乃。アーチャー。 お前らは可哀想だけど、お前らに肩入れはしない。 あくまで手を組んだ相手。それ以上でもそれ以下でもない。 だからあの助言や、同盟のよしみ以上の手助けはしない。 でも、まあ。 その上で、敢えて言わせてもらうよ。 おたくらみたいな嬢ちゃん達、嫌いじゃないぜ。 あさひ、君達を利用したくないんだってよ。 眩しすぎるから、見てられねぇんだってさ。 それくらい君達は立派だし、間違いなく上等だ。 だからさ、何だ。 生きろよ。少しでも長く。 イルミネーションスターズの曲も、後で聴くよ。 俺ちゃん達はひとまずアイや真乃達との同盟を続ける。だが距離は置く。 星野アイとライダーは信用に足らないから。 櫻木真乃とアーチャーはあさひの心情から。 適当な距離で付き合いつつ、こっちもこっちで好きにやらせてもらう。 つまり、個人的に信用できる同盟相手を探したいところってワケ。 対等な関係で利用し合える、文字通りの協力相手。出来ることなら、あさひが心を痛めないような奴らの方がいい。 星野アイ。283プロダクション。グラス・チルドレン……そういう情報を出汁にして手を組めれば上等だ。 仮に共闘が成立したんなら、俺ちゃん達であのライダーどもをぶっ潰しに行くことも視野に入れる。 『そんでさ、あさひ』 そして、気になるのは事務所周りや方針のことだけじゃない。 少し前に、あさひに伝えたことがある。 真乃達と公園で休んでいた際に、あさひを呼び出して密かに相談したことだ。 『―――ここにお前の妹もいるかもしれないって話、覚えてるよな?』 俺ちゃんがそう言うと、あさひは黙り込んだ。 ライダーとグラス・チルドレン。櫻木真乃と白瀬咲耶。そいつらの繋がりから行き当たった推測だ。 この聖杯戦争ってのは、ある程度は縁者同士で呼び寄せられてるんじゃないか。 それはあさひも一緒で、ひょっとしたら神戸しおもここにいるんじゃないか。 ちょっと前に俺ちゃんは、それをあさひに話した。 あさひは、何も言わない。 しおがこの場にいたら、どうするか。 それが俺ちゃんが投げかけた問いだ。 少しだけ答えを待たせてほしい、ってさっき言われたけど。 やっぱりまだ悩んでるのか。そう簡単には決められないか。 まあ、いいわ。いると決まったわけじゃねえ。 今はまだポジティブに考えて、タコスでも食って――――。 『答えは、出てるよ』 そしてあさひが、反応してきた。 『例えしおがいても』 念話で飛んでくるあさひの声。 俺ちゃんは、そいつを黙って聞く。 『いや、“あの病室のしお”がいたら―――』 おい、あさひ。 声、震えてんじゃねえか。 俺ちゃんがそう思ってても、こいつは絞り出す。 『俺は、しおを乗り越えるよ。聖杯を獲ることは……諦めない』 『待てよ、あさひ』 その答えを前にして、俺は迷わず言葉を挟んだ。 『しおを、犠牲にすんのか?』 『ああ。……ああ』 『マジで言ってる?』 『本気だよ。俺は』 『しおを助けたいんだろ』 本気かよ。マジかよ。 流石の俺も、少しばかり焦ったよ。 相変わらず声は震えてやがる。 ああ、こいつ本当は嫌なんだろうな。 それでも、やりたいんだろうな。 『アヴェンジャー。なんで俺が聖杯に縋ったと思う? 母さんはいる、しおもいる。元通りだ。三人で居られるんだ。 なのに俺は願ったんだ、しおを取り戻したいって』 あさひはそのまま、言葉を続けた。 ここに来る前のこいつの境遇は、知っている。 おふくろと妹を守るためにずっと一人でクソ親父に耐えてて、それでもいつかは家族三人で暮らすことを夢見てた。 んで、親父がくたばってから、おふくろ達に会いに行った。 でも、妹はいなかった。必死になってそいつを探して、どっかの女が妹を拉致ってることが発覚。 必死になって追いかけ回して、必死になって戦って、その女はくたばったけど。 妹には、そいつがもう取り憑いてた。 『なんでだと思う?』 家族三人で暮らす。 きっとそれ自体は、もう叶ってたんだろうな。 おふくろは健在。妹も引き取れる。あさひは生きている。 ノープロブレムだ。そう、ノープロブレム。 『俺が、あのとき。あの病室で』 でも、そいつはな。 あさひが納得してなけりゃ、意味がないんだろうよ。 『今のしおを、否定したからなんだよ』 だから――――こんな答えが出てきたことにも、俺は驚けなかった。 しおを犠牲にする覚悟を決めるとは思わなかった。 でも、あさひが今のしおを否定してたってことは、何となく察していた。 『ずっと考えてた。しおを取り戻すには、どうすればいいのか。 しおの呪いを、母さんの呪いを解くために、どうすればいいのか』 つくづく思う。 この坊やは、真面目なんだよ。 抱え込んで、悩んで、駆けずり回って。 どうすりゃよかったのか、ずっと考えてやがる。 『―――やり直すんだ。人生を、全部』 そんな答えに、行き着くほどの人生。 あさひはそんなもんを歩んできたし、そのことについて苦悩してきた。 俺ちゃんもやったよ。時間遡行。 ケーブルの装置を勝手に使って、好き放題に過去をなんとかした。 だからあさひの方針を否定するつもりはない。寧ろ、やり直してなんぼってヤツ。 『俺たちは、三人で平和に暮らしてて。悪魔なんて、何処にもいなくて。 それで、普通の親子みたいにさ。毎日を幸せに過ごして……そんな人生を願うんだ』 そうでもしなけりゃ幸せになれねえんなら、尚更だよ。 でもな。そんな今にも泣き出しそうな声で喋られるとな。 『しおが“あの女”と逢うこともない。 母さんが自分を犠牲にする必要もない。 あの悪魔に耐える日々なんて、送らなくていい――――』 本当に大丈夫か?ってツッコミたくもなるんだよ。 そのために家族を犠牲にするの、なんだかんだ言って堪えるんだろ。 無理してんの、分かってるんだよ。 『“飛騨さん“だって、俺なんかの為に死なずに済む』 お前は真面目だし、いいヤツだよ。 そいつは分かる。一ヶ月付き合ってんだから当たり前よ。 だからこそ、言いたいこともある。 『だから。“今のしお”は―――“敵”なんだ』 なあ、あさひ。それは止めとけ。 戦うことでも、過去を変えることでもない。妹を敵にしても構わないってことをだ。 聖杯を獲るためなら幾らでも手を貸してやる。 俺ちゃんがサーヴァント共をめちゃめちゃにぶちのめして、グチャグチャのチミチャンガにしてやる。―――グロいな、この表現。 だけどな。その為なら妹を殺す覚悟もできてるって? なら、俺ちゃんからの忠告だ。 それだけは止めろ。そいつは悪いジョークだ。 昔テレビの“往年のコメディアン特集”で見たレニー・ブルースよりもよっぽどブラックだ。 でもなあ。そんなこと言っても、無駄なんだろうなァ。 一ヶ月付き合ってりゃ、分かっちまうんだよなあ。 『やれるのか?』 『やれる……いや、やるよ』 『言ってる意味、わかってるよな』 『わかってるよ。それでも、俺ならできるんだよ。 だって俺は、あの“悪魔”の血を引いてるんだから』 声震わせておいて、何が悪魔だよ。 あさひ。自分がどれだけピュアな坊やなのか分かってるか? 今にも泣きそうなツラしてる癖によ、お前。 『俺は、頑張るよ。俺は……絶対に諦めない』 でも、やるんだろうな。こいつ。 わかってるよ。 『だから、アヴェンジャー』 色々と言いたいところだが。 まあ、わかってるよ。マジでさ。 『これから先も、一緒に戦ってほしい』 やっぱりこいつは、止めないだろうな。 令呪を使ってでも、俺を従わせるだろうね。 曲げない、折れない。自分で在り続けること。 俺ちゃんも伝えた、人生の教訓ってヤツ。 あさひはまさに、それを貫いている。 幸福を掴むためなら、こいつは進み続ける。 たとえ、自分の妹を乗り越えてでも。 『……オーケーオーケー、わかったよ』 やれやれ。 クソッタレ、畜生。バカ野郎。 ファック、ファック―――ファック。 悪態の汚言が風船みたいに次々と浮かんできやがる。 日曜礼拝とかサボりまくってた俺ちゃんだけど、今だけは神に祈らせてくれ。 しおはここにいない。そうであってくれよ。 ジーザス。坊やをこれ以上苦しませるな。 『だけどな、あさひ』 そのへんは、運命に委ねるしかない。 妹をどうするかも、あさひが決めることだ。 でも、こいつだけは言っておきたかった。 『お前はお前だよ。本当にお前が“やれる”のなら、それはお前自身が腹括ったからだろ。 クズの血を引いてるかなんてどうだっていい、今のお前には関係ねえ。 自分を必要以上に呪ったりなんかするな』 おい、あさひ坊や。そういうことだ。 自分をいっちょまえの人間として認めてやらなけりゃ、幸せになんかなれねえ。 前を向きたいんなら、せめて胸くらいは張っとけ。 真乃にも言ったことを、自分でやるんだ。 『ごめん。……ありがとう、デッドプール』 そうしてあさひは、礼を伝えてきた。 子犬みたいに、か細くて健気だ。こういうところがピュアなんだよな。 飲み込んでくれるなら、安心できるけどよ。 それでもこいつは、心のどこかで自分をクズだと思ってる節がある。 クソ親父の血を引いていることを、必死に足掻いたのに何も変えられなかったことを、背負い続けてやがる。 だからほっとけないんだよ。ホントにさ。 あさひ。もしも、どうしても妹をやれるって言うんなら。 その時は、絶対にお前には殺させてやらねえよ。 本当にしおを殺す瞬間が来たら、俺がやる。俺があいつの妹を殺す。 お前、家族と幸せになりたいんだろ? だったら。家族殺しの罪とか、そういうもんは、俺が背負ってやるよ。 そいつが、大人としての筋ってヤツだ。 これから妹やおふくろと人生やり直すお前に、妹を踏み躙らせたりなんかしねえ。 だから俺が殺る。どうせ俺は元々クソ野郎だ。キンタマ顔のボンクラだ。汚れ仕事ならやれる。 でも、まあ。そう思ってても、心のつかえってモンは少しでもある。 ――――ヴァネッサ。俺のハニー。 ――――許してくれとは言わない。 あんだけ言われたのに。 あんだけ願われたのに。 結局俺は、汚れ役を引き受けちまった。 でもさ。こいつのヒーローになってやるって、俺も腹括っちまったんだよ。 この独りぼっちのガキの為に、なんかしてやりたいって思っちまったんだよ。 だから俺、とことん付き合うつもりでいるから。 力には、責任があるんだってな。 スパイディ、マジに立派だよ。 【世田谷区・どこかの公園/一日目・午後】 【神戸あさひ@ハッピーシュガーライフ】 [状態]:疲労(小)、全身に打撲(中) [令呪]:残り3画 [装備]:なし [道具]:金属製バット、リュックサック [所持金]:数千円程度(日雇いによる臨時収入) [思考・状況] 基本方針:絶対に勝ち残って、しおを取り戻す。そのために、全部“やり直す”。 1:折れないこと、曲がらないこと。それだけは絶対に貫きたい。 2:“対等な同盟相手”を見つける。そのために星野アイや283プロダクション、グラス・チルドレンなどの情報を利用することも考慮する。 3:ライダーとの同盟は続けるが、いつか必ず潰す。真乃達はできれば利用したくない。 4:“あの病室のしお”がいたら、その時は―――。 【アヴェンジャー(デッドプール)@DEADPOOL(実写版)】 [状態]:『赫刀』による負傷(胴体および右脇腹裂傷(小)、いずれも鈍速で再生中)、疲労(小) [装備]:二本の刀、拳銃、ナイフ [道具]:予選マスターからパクったスマートフォン [所持金]:なし [思考・状況] 基本方針:俺ちゃん、ガキの味方になるぜ。 1:“対等な同盟相手”を見つける。そのために星野アイや283プロダクション、グラス・チルドレンの情報などを利用することも考慮する。 2:真乃達や何処かにいるかもしれないしおを始末するときは、自分が引き受ける。 [備考] ※『赫刀』で受けた傷は治癒までに長時間を有します。また、再生して以降も斬傷が内部ダメージとして残る可能性があります。 ※櫻木真乃と連絡先を交換しました。 [共通備考] ①星野アイ&ライダーは完全な利用目的で櫻木真乃&アーチャーと同盟を結んでいると考えています。 ②283プロダクションには咲耶以外にもマスターが存在しており、それがプロデューサーである可能性が極めて高いと推測しました。 ③真乃の電話への退避指示から、事務所に何らかの脅威(白瀬咲耶と交戦したガムテおよびビッグマム?)が間近に迫っていると推測しました。 時系列順 Back 燦・燦・届・願 Next 天秤は傾いた、――へ 投下順 Back 女達の異常な愛情 Next 龍穴にて ←Back Character name Next→ 018 みんなの責任! 大切な人の願いは 櫻木真乃 040 咲耶の想いと、受け継がれる願い アーチャー(星奈ひかる) 神戸あさひ 057 あさひを狙うワナ!? 大パニックの街 アヴェンジャー(デッドプール)
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マスターピース アーティストそのものに関しては「気分上々↑↑」を参照 テレビ東京系アニメ「遊☆戯☆王ZEXAL」OP1 jubeatにおけるmihimaru GTの楽曲は「気分上々↑↑」「パンキッシュ☆」「アンビリーバボー feat.TAKUYA」に続き4曲目(後者2曲は削除済) KONAMI Arcade Championship 2011の1次予選課題曲だった BASIC ADVANCED EXTREME Level 3 6 9.7 Notes 179 418 634 BPM 152 Time 1 45 Artist mihimaru GT ジャンル アニメ Version copious 譜面※外部サイト ■ ■ ■ EXT 最初とラストの途中の16分同時押し ④□⑪⑧ |①②③④|⑨⑩⑪⑧ |⑤⑥⑦⑧|③⑦□④ |-⑨⑩-|①⑤⑥② |⑪---| 曲中の「へこたれないで意思と愛を」の「れ」(1番パネルと番12パネル)が同時押しになっている 動画 +譜面動画 譜面動画 YouTube 譜面動画 BASIC (フラワー+ハンドクラップ) 譜面動画 ADVANCED (フラワー) 譜面動画 ADVANCED (フラワー+ハンドクラップ) 譜面動画 EXTREME (フラワー) 譜面動画 EXTREME (フラワー+ハンドクラップ) 譜面動画 EXTREME (フラワー+ハンドクラップ+同時押し色分け) 譜面動画 EXTREME (フラワー+ハンドクラップ+BPM75%) 譜面動画 EXTREME (シャッター) 譜面動画 EXTREME (シャッター+ハンドクラップ+数字+同時押し色分け) ニコニコ動画 譜面動画 BASIC (フラワー+ハンドクラップ) 譜面動画 ADVANCED (フラワー) 譜面動画 ADVANCED (フラワー+ハンドクラップ) 譜面動画 EXTREME (フラワー) 譜面動画 EXTREME (フラワー+ハンドクラップ) 譜面動画 EXTREME (フラワー+ハンドクラップ+同時押し色分け) 譜面動画 EXTREME (フラワー+ハンドクラップ+BPM75%) 譜面動画 EXTREME (花火) +プレイ動画 プレイ動画 プレイ動画 BASIC (シャッター・EXC) PLAYER K*BT87-Z プレイ動画 EXTREME (フラワー・EXC) PLAYER TA9N.C-Y プレイ動画 EXTREME (シャッター・EXC) PLAYER K.W-INK プレイ動画 EXTREME (シャッター・EXC) PLAYER SYNS-Y プレイ動画 EXTREME (シャッター・EXC) PLAYER GA*KRN-P プレイ動画 EXTREME (シャッター・EXC) PLAYER W-STROKE プレイ動画 EXTREME (シャッター・EXC) plus プレイ動画 EXTREME (花火・EXC) 攻略・解説 各譜面の攻略に関する情報はこちらへ。 ラップの早いところは無差別16分かとおもいきや実は同時押し混じりでしかも曲に合っているので、曲をおぼえればある程度押せると思います -- 名無しさん (2011-09-15 23 18 01) [EXT]譜面傾向はR.P.G.と似ており、最初と最後がとにかく忙しい。道中はそこまで難しくないので、しっかり光らせよう。 -- 名無しさん (2011-09-16 09 12 16) [BSC]リズム通りの譜面だが一番最後が若干グレやすいかも… エクセ狙う時は最後勝負。 -- 名無しさん (2011-09-17 18 53 35) [EXT]前後十六分発狂の中に1回ずつだけ、1+12の同時押しが来る。これはエクセの時一番の障害になるから予習はしっかり。 -- 名無しさん (2011-09-25 01 11 06) [ADV]エクセは開幕勝負。開幕にある5・8の部分がグレやすい。ミュージックバーでいえば左から3番目の部分 -- 名無しさん (2011-09-28 21 15 21) ADVは16分が出てこないうえに密度も高くない。7は逆詐欺かと -- 名無しさん (2011-10-03 12 37 13) ↑ADVは出だしに一か所だけ16分があります。とはいえいずれにせよ7としては逆詐欺。 -- 名無しさん (2011-10-05 03 00 15) EXT 遅ズレかもしれない -- 名無しさん (2012-01-15 18 06 21) [EXT]サビが終わってもラストは油断しないように。また,最初とラストの発狂ができない人はおそらくLv9上位〜10下位になるかもしれない。 -- 名無しさん (2012-02-15 18 07 11) 最初と最後のラップ発狂の部分はあきらかにレベル10中位はある。それ以外は9妥当。 -- 名無しさん (2012-02-27 10 50 18) [BSC]↑で最後がグレやすいと書いてあるが、そこ以外に「ホントはさびしかった」の部分もグレやすい。今日狙っていて感じた。 -- 名無しさん (2012-04-14 17 07 32) [EXT]ラップの16分はボーカルのブレス部分で一呼吸置くと意識すると光らせられる。 -- 名無しさん (2012-11-19 22 53 53) 名前 コメント ※攻略の際は、文頭に[BSC] [ADV] [EXT] のいずれかを置くと、どの譜面に関する情報かが分かりやすいです。 ※体感難易度を書き記す際は、クリア難度・スコア難度のどちらかなのかを明記してください。 また、攻略と関係ない投稿・重複した内容は削除の対象になります 攻略とは無関係の話は該当する欄(情報交換&雑談) にてどうぞ。
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トップページ>onepiece>プリーツシャツワンピース NO.O0515 プリーツシャツワンピース (廃盤) プリーツシャツのワンピースではなく、どこかレトロ感のあるプリーツスカートのシャツワンピース。 おすすめの生地 おすすめの用途 このアイテムについてコメントしたい方で、wikiの編集が不安な方は、以下の コメントフォームからどうぞ。 名前 コメント このアイテムを作ってみての難易度はどうでしたか? 選択肢 投票 難しいので初心者には無理! (0) 難しいけれどがんばればなんとか (2) 意外と簡単 (2) 初心者にもおすすめ! (0)
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トップページ>sun pla>シャーリングワンピース NO.M113 シャーリングワンピース http //www.m-pattern.com/catalog/Sun%20Planning/m113.html おすすめの生地 おすすめの用途 このアイテムについてコメントしたい方で、wikiの編集が不安な方は、以下の コメントフォームからどうぞ。 名前 コメント このアイテムを作ってみての難易度はどうでしたか? 選択肢 投票 難しいので初心者には無理! (0) 難しいけれどがんばればなんとか (0) 意外と簡単 (0) 初心者にもおすすめ! (0)
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NYA/095 RR ピースサイン クー子/クトゥグア 女性 パートナー 邪神バトル クー子/クトゥグア 女性 レベル 1 攻撃力 2000 防御力 4000 【困ってる人を放っておけないのは、少年のいいところ】《混沌》《火》 【自】〔ベンチ〕この技は、1ターンに1回まで使える。技によってあなたの手札が控え室に置かれた時、あなたのベンチの〈クトゥグア〉が3枚以上なら、そのカードをあなたのエネルギー置場に置く。 作品 『這いよれ!ニャル子さんW』 備考 2013年6月25日 今日のカードで公開 このカードをパートナーにしているカード 取得中です。 関連項目 取得中です。
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目次 出入口 言語概要 音韻、文字 アクセント 文法概要 文法詳細 変化表 匪日辞書 例文 挨拶、基本語彙 簡易ピース語 ピース名 作者紹介 ここを編集
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ピースフルメロディー ひいすふるめろていい【登録タグ:VOCALOID 初音ミク 大洪水P 曲 曲ひ 曲ひい】 曲情報 作詞:大洪水P 作曲:大洪水P 編曲:大洪水P 唄:初音ミク ジャンル・作品:VOCALOID カラオケ動画情報 オフボーカルワイプあり オフボーカルキー -3ワイプあり コメント 名前 コメント
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『ちびちゃんたち!! きょうもおうたをうたって、いっぱいおかねをもらおうね!!』 『『『『『もりゃおうね!!』』』』』 夏も終わり、秋もすっかり深まったこの頃、ゆっくりれいむの一家が、橋の上のど真ん中に陣取り、汚い藁を敷いて座っていた。 この時期、ゆっくりたちは越冬に向けて、巣を作ったり、餌をため込んだりする大切な時期だ。 しかし、一家はそんなことをする様子は全くない。 いや、そんな時代遅れなことをする必要はなかったのだ。 最近、どこで覚えてきたのか、歌を歌って人間から金を貰おうとするゆっくりが増えている。 この一家もその類だった。 金をもらい、里で買い物をして、冬を越す。最先端ゆっくりの越冬方法だ。 成功率は限りなく低いが…… 『きょうも、きにょうのにんげんしゃんみたいに、いっぱいおかにぇをくりぇりゅかな?』 『きっといっぱいくれるよ!! きょうおかねをもらったら、にんげんさんのおみせでおいしいものをいっぱいかおうね!!』 目の前には、これまたボロボロで中身が少し残った缶詰が置いてあり、中には丸い金属がいくつも入っている。 ゆっくりの歌に金を払うアホがいるのかと思うかもしれないが、実はこれ、金でもなんでもない。 「一まん円」と手書きで書かれたビンの王冠が、大量に入っているのだ。 昨日、この橋を通った子供たちが、一家をからかって入れたものだ。 一家はすっかりこれを本物の金を勘違いし、調子に乗って、『ゆーゆーゆー……』と発声練習に余念がない 喉もないくせに、スター気取りとは生意気なことである。結局、人間の真似ごとをしていたいだけなのだろう。 この時点で、一家の命運は決まったようなものだ。 しかし、一家がそんな事に気付くはずはなく、一生懸命下手な発声練習に精を出していると、こっちに向かってくる男が目に付いた。 ロングコートを羽織った若い男だ。おそらくまだ二十代だろう。 季節は冬ではないが、今日は冷たい北風が吹きすさび、心底身にしみる。男はコートの襟をたて、体を縮めて歩いていた。 一家は思った。あの男は、きっと橋を渡るに違いないと。 『みんな!! にんげんさんがきたよ!! ゆっくりがんばって、おうたをうたおうね!!』 子供たちにはっぱを掛け、一列に整列させる。 男のほうに注目すると、案の定、男はこの橋を渡るようだ。 後数メートル。れいむたちは、男が目の前に来ると、一斉に男に声を掛けた……が、 『おじさん!! ゆっくりれいむたちのおうたをきいていってね!!』「待って!! 虐男さん!!」 れいむたちの声に、女性の声が重なった。 れいむたちは、どこから聞こえてきたのだと、辺りを見回した。 すると、男が歩いてきた方向から、一人の女性が走ってきた。 どうやら、れいむたちの声を遮ったのは、この女の人らしい。 男はちょうどれいむ一家の前で立ち止まると、女性のほうを振り返った。 「はぁはぁ……虐男さん。お願い、話を聞いて!!」 女は男の元まで走ってくる。 男と違い薄着に軽く外着を引っ掛けてきただけだが、よほど急いで来たのか、この寒い中うっすら汗をかいている。 膝に手を付いて荒い息を整えると、ようやく落ち着いてきたのか男に言葉を掛けようとした。 しかし、それが面白くないのはれいむ一家だ。 この男に先に目をつけたのは自分たちなのだ。 この女は、きっと自分たちより先に、この男に歌を聞かせようという魂胆に違いない。 途中から割り込んできて、お客を横取りするなんてマナー違反である。れいむは女に文句を言った。 『おねえさん!! れいむたちが、さいしょにおうたをうたうんだよ!! ゆっくりじゅんばんをまもってね!!』 一家は頬を膨らましている。 しかし、女はそんなれいむを無視し……というか、気付いていないのか、目もくれない。 ひたすら男の顔だけを見続けていた。 男も、そんな女の目を真摯に見つめている。 「愛で子さん……なぜここに来たんだ」 「なぜって……あなたを追って来たに決まってるでしょ!! 話も聞かずに出ていくなんて!!」 『おねえさん!! ゆっくりれいむをむししないでね!!』 「話ならもう終わっただろ。所詮、僕と君とは永遠に結ばれない運命だったのさ」 「そんな……なんで!! なんでそんなこと言うの!!」 『むししないでねっていってるでしょ!! ゆっくりきこえないの!?』 れいむがどんなに叫んでも、女の耳には届かなかった。 「所詮、僕はゆっくり虐待お兄さん。そして君はゆっくり愛でお姉さん。どうすればつり合うというんだ」 「……確かに私は愛でお姉さんで、あなたは虐待お兄さん。本来なら、決して相容れない存在……」 『もういいよ!! ちびちゃんたち、こんなおみみのきこえないおねえさんはむしして、おじさんにおうたをきかせようね!!』 れいむは業を煮やし、遂には女を無視して男に歌を聞かせるという、強行手段に出ることにした。 子ゆっくりたちを向いて、『せいの…』と小声で合図を取り始める。 「そうだ、だから……」 「でも!! でも、例え立場は違っても、私たちは愛し合っていた。それは紛れもない事実よ!!」 『ゆ〜ゆゆ〜〜ゆ〜ゆ〜ゆっくりしていってね〜〜〜♪』 「……んん……それは……」 「それとも、愛し合っていたと思っていたのは私だけ? 私が一方的にあなたを想っていただけなの? すべて私の独りよがりの恋だったの?」 『おじさん!! れいむたちのおうた、じょうずだったでしょ!! ゆっくりおかねをちょうだいね!!』 『『『『『ちょうだいね!!!!!』』』』』 歌とも言えぬ様な短い歌も終わり、一家は男に金をせびる。 「それは違う!! 僕も君を心底愛していた!! 絶対だ!! 博霊の神に誓う!!」 「だったら……なんで!!」 『おじさん!! れいむたちはおかねをちょうだいっていってるんだよ!! ゆっくりはやくおかねをここにいれてね!!』 「愛で子さん。さっきも言ったけど、僕は虐待お兄さんなんだよ」 「ええ……聞いたわ」 『おじさんまでれいむたちをむししないでね!! おうたをきいたんだから、おかねをいれないといけないんだよ!!』 「僕はそれを隠していたんだ、自分可愛さにね……そして、君も僕に隠していただろ、自分が愛でお姉さんであることを」 「虐男さん……」 『ゆゆっ!! おじさんたち、もっとおうたをうたってほしいんだね!! ゆっくりりかいしたよ!! きょうはとくべつに、もういっかいおうたをうたってあげるね!!』 れいむは、男が缶にお金を入れてくれないのは、歌があまりにも短すぎるからだと考えた。 男が自分たちの話を聞いていないなどとは、露ほども考えていない。 子ゆっくりたちに向かって、『もういっかいうたうよ』と言って、再度合図を送る。 「体が疼いて仕方がないんだ。ゆっくりを虐待しろってね。これは僕のDNAに刻まれた本能なんだ」 「そんな……そんなのって!!」 『ゆっくり〜〜ゆっくり〜〜ゆ〜っく〜〜り♪』 「呪いみたいなものさ。永遠に解けることのない呪いの鎖。この鎖が解けるとき、それは即ち僕が死ぬときだ。だから……僕は君といっしょにはいられない」 「う……うう……ぎゃ、虐男さん……」 『ゆんゆんゆんゆん♪ ゆ〜んゆん♪ ゆっくりしていってね〜〜〜♪♪』 「こんな僕の為に泣かないでくれ。自分から去っておいてなんだが、君は本当に素敵な女性だ。僕がいなくても、すぐに素敵な恋人が出来るさ」 「いやよ!! わたしは虐男さん以外の男性なんて!!」 『おじさん!! これでいいでしょ!! ゆっくりおかねをおいていってね!!』 「あまり僕を困らせないでくれ。新しい恋人が出来れば、僕のことなんてすぐに忘れられるさ。その時になって、昔こんな素敵な自分を振った馬鹿な男がいたなと、物笑いの種にでもしてくれ」 「いやよ!! いやいやいやいや……」 『いやいやじゃないよ!! おねえさんはゆっくりだまっててね!! おじさんのおかねはれいむたちのものだよ!! ゆっくりおかねをくれないといけないんだよ!!』 「愛で子さん……最後に僕の我儘を聞いてほしい。抱き締めさせてくれないか?」 「虐男さん……」 『わかったよ、おじさん!! いまおかねをはらえば、とくべつにかわいいれいむたちをだっこさせてあげるよ!! こんなちゃんす、もうないよ!!』 男はそう言うと、人目を憚ることなく、女を力いっぱい抱きしめた。 これが最後の我儘だと言わんばかりに…… 女も男の抱擁に応え、男の大きな背中に腕をまわした。 男の胸元に顔を埋め、涙を流し続ける。涙で顔はグシャグシャだが、そんなのお構いなしだ。 『ゆぅ……おじさんがおかねをはらってくれないのは、じゃまなおねえさんのせいだよ!!』 「ゆっくりなんて、存在しなければ良かったのに……」 『おねえさんなんて、いなければよかったのに!! ぷんぷん!!』 男の胸の中で、女がポツリと漏らす。 ゆっくりが居なければ、自分たちは愛でお姉さんにも、虐待お兄さんにもならなかった。 一生彼といっしょにいることが出来た。 すべてゆっくりがいたから、自分たちはこうなったのだ。 女はゆっくりという生物に、今初めて強い怒りを覚えた。 しかし、女を抱きしめたまま、男は首を横に振る。 「そんなこと言うもんじゃないよ、愛で子さん」 「でも!! でもっ!!!」 『ゆっ!? もしかしておじさん、おかねをもってないの?』 れいむの餡子脳に、ふとその考えが浮かんだ。 自分たちの素晴らしい歌を聞いてお金を入れてくれない人間などいる筈がない。 昨日の子供たちは、自分たちのあまりの美声に、お金の中で一番高い「一まん円」コインを、大量に投下してくれた。 子供ですら大金を払ってでも聞きたくなるような歌なのだ。 おそらくこの男はお金を持っていない。しかし、れいむたちの歌は聴きたい。そこで無銭視聴をすることにしたのだろう。 金を払わないのは業腹であるが、ファンは一人でも大切にするべきである。ここは「あーてぃすと」として、太っ腹なところを見せるべきだろう。 「僕たちが今あるのは、すべてゆっくりのおかげだということを忘れてはいけないよ。 ゆっくりが存在しなければ、僕はただの貧乏農家の長男として生を終えていたはずさ。君だって一介の里娘で終わっていただろう。 しかし、ゆっくりのおかげで、僕は虐待製品の製造・販売を一手に握るブリーングオブスローリー・カンパニーの代表に、君はゆっくりんピース代表の娘になれたんじゃないか。 ゆっくりなしには、今の豊かな生活はあり得なかったんだよ」 「そうだけど……でも!!」 『おじさん、びんぼうさんなんだね……ゆっくりかわいそうだね』 「それに、もしゆっくりが居なければ、そもそも僕たちは出会ってすらいなかったんだ」 「そ、それは……」 女も口を濁す。 男と女。立場が正反対の二人が出会ったのは、正しく偶然の賜物であった。 男は虐待するためのゆっくりを探しに、女はゆっくりんピースの一員として、ゆっくりが本当にゆっくり出来ているかを調査するため、森に来ていた。 しかし、突然予測にない大雨が降り、雨をやり過ごすため手近の洞窟に入ったとき、偶然にも二人は出会った。 初め、二人は互いの素性を隠しあっていた。 虐待をする男はある意味当然だが、ゆっくりを愛でる人間も、その道を理解できない人には気持ち悪く映ることがある。 特に農家のなどのゆっくりを毛嫌いしている人間には、ゆっくりを愛でるゆっくりんピースを敵視している者さえいるのだ。 そのため、二人は素性を隠したまま、薄暗い洞窟の中で、雨がやむのをひたすら待ち続けた。 二人の恋の始まりはそこからだった。 最初は薄暗く恐怖を演出する洞窟という環境に、つり橋効果が働いただけかもしれない。 しかし、暇を持て余し会話を交わしているうちに、二人はいつの間にかすっかり意気投合していた。 そして、無事に山を降りた後も素性を隠して何度か会っていくうちに、いつしかそれは本物の恋心に変わっていった。 二人は将来を誓い合う仲になっていった。 しかし、今日男が女の家に行って、すべてが壊れた。 男は自分が虐待お兄さんであることを告白する気はなかった。 一介の平凡な会社社長であることだけを伝え、もし会社のことを聞かれた時のことも考え、ダミー会社まで作っていた。 それほどまでに、男は女のことを愛していたのである。 しかし不運だったのは、女の家事情が特殊だったと言うことである。 女はこれまで実家で家事手伝いをしていると言っていた。それ自体に嘘はない……が、 「ゆっくりんピース代表の娘」 それが、女のもう一つの肩書だった。 女の両親とあった男。二人は知り合いだったのだ。それも最悪の方向で。 ゆっくりを虐待する代表と、ゆっくりを愛でる代表。今まで出会っていないはずはなかった。 部下同士が小競り合いになったことも、もう何度目のことだろうか。 幻想郷ゆっくり協会(GYK)で顔を突き合わせたことも、両の指では足りないくらいである。 楽しい会食になるはずが、一転、互いを罵り合う場となり、塩をあびせられた男は、憤慨し女の家を飛び出していった。 女は、すぐに男を追いかけようとするも、ゆっくりんピース代表である父に止められ、なかなか行かせてもらえなかった。 そんな父に生まれた初めて反抗し、上着を引っ掛けて出ていき、追いついたのがれいむたちのいた橋の上というわけである。 「ありがとう、愛で子さん。少しの間だったけど、愛で子さんと一緒にいられて楽しかったよ。これからは、お互い自分の道を歩んでいこう」 「虐男さん……」 『おかねがないならしょうがないね!! こんかいはとくべつに、おかねをはらわなくてもゆるしてあげるよ!!』 「さようなら、愛で子さん」 『ばいばい、おじさん!!』 女を離し、最後のあいさつを済ませる。 これですべて終わった。もう思い残すことは何もない。 男は女に背を向け、感傷に浸りながらゆっくり家に帰ろうとした。 しかし…… 「虐男さん!!」 女はシッカリとした声色で、男を呼び止める。 もう女をのほうを向かないと決意した男だが、弱々しく女々しい声色から一転、迷いのなくなった女の声に、いったいどうしたのかと女のほうを振り向いた。 「愛で子さん?」 「虐男さん!! 私はどうしても虐男さんのことを忘れられない!! だから……」 『おじさん!! ゆっくりなんでかえらないの? ここはれいむたちのおうたのすてーじだから、おかねのないひとは、ゆっくりかえってね!!』 「……だから?」 「だから……だから私も、今日から虐待お姉さんになるわ!! ゆっくりを苛めて苛めて苛め抜いてやるわ!!」 『これいじょうおうたのじゃまするなら、ゆっくりおじさんをいじめるよ!!』 「なっ!!!」 女の突然の発言に男は目を見開いた。 愛でお姉さんを辞めて、虐待お姉さんになる? そんなことが出来るはずもない。男は女の無謀な考えを改めさせる。 「馬鹿なことを言うものじゃない。そんなこと、無理に決まっている!!」 「虐男さんこそ馬鹿にしないで。ゆっくりを虐めるなんて簡単なことよ!!」 『ほんとうにおじさんをいじめるよ!! おじさんをやっつけるなんて、かんたんなんだよ!!』」 女はそう言うや、横にいたゆっくりのほうに目を向けた。 ゆっくりは、さっきから何か言っていたようだが、女の耳には入っていなかった。 大方、邪魔だからさっさとここを退けとでも言っていたのだろう。 まあそんなことはどうでもいい。 女は手近に居たゆっくり赤ゆっくりに目を付けると、それを手に取った。 『ゆっ!? おねえさん、れいむのちびちゃんをどうするの? ゆっくりはなしてね!!』 『ゆゆっ!! おしょりゃをとんでりゅみちゃい!!』 親れいむは赤ゆっくりを返せと喚いているが、女はれいむの言葉が聞こえていないのか、赤ゆっくりを持った手を男の目の前にかざした。 そして、その手に思いっきり力を入れる。 プチュ 『ゆぎゃああああぁぁぁあ―――――!!!! れいむのあかちゃんがあああぁぁぁ――――!!!』 女は男の目の前で赤ゆっくりを潰して見せた。 それを見て、絶叫する親れいむ。 潰された赤ゆっくりは、悲鳴を上げる間もなく、女の手の中でグシャグシャになった。 「はあはあはあはぁはぁ……ど、どう? 虐男さん!! わ、私もゆっくりを虐待して見せたわ。これで私も虐待お姉さんの仲間入りでしょ!!」 『なんでそんなことするのおおおおぉぉぉぉぉ―――――!!!!!』 れいむの悲鳴に反し、女は清々しいまでの笑顔を見せる。 これで自分は虐待お姉さんになった、これからも男と一緒にいることができる。 しかし、男は無表情で女の言葉を切って返す。 「……君はそれで虐待お姉さんになったつもりなのかい?」 「えっ?」 「真の虐待師は、虐待をするとき決して震えたりしない!!」 「!!!」 女は自分の手を見た。さっきから震えが止まらない。 そればかりか、全身から嫌な汗が吹き出し、止まる気配がなかった。 幼いころから愛でお姉さんであった彼女は、ゲス個体であれ良個体であれ、ゆっくりを殺害したことなど一度もない。 ゆっくりを殺した事に、鳥肌が、震えが止まらないのだ。 「た、確かに今は震えてるけど、ぎゃ、虐待を繰り返していれば、その内震えることなんてなくなるはず!!」 「ふぅ……君は何も分かっていないようだね」 「分かっていない?」 「虐待というものは、させられてするものじゃない。自分から進んでするということだ!!」 「!!!」 女は再度衝撃を受けた。 確かに自ら望んでしたことではない。男と一緒にいるために、信念も外聞も捨て無理やりしたことだ。 しかし、こんなことで諦めるわけにはいかない。 ゆっくりんピース代表の娘が、ゆっくりを殺す。それも、次代のゆっくりを担う赤ゆっくりを殺したのだ。 もう後には引くことは出来ない。 「で、でも……でも、そのうちきっと虐待が楽しくなってきて……」 「何よりね、愛で子さん。君がしたことは、虐待でも苛めでもないよ」 「えっ?」 「君がしたことは、ただの虐殺だ!!」 「!!!」 男の言葉に、彼女は三度目の衝撃を受けた。 虐待師でない彼女は、虐待と虐殺と混同していた。 ボロボロになったゆっくりの死体を見て、「また虐待師の仕業か!!」と憤慨していた父の姿も目撃している。 虐待の果てに死がある。だからこその赤ゆっくり殺害であった。 それを否定された彼女は、虐待と虐殺の違いがよく分からず、延々と考えを纏めあぐねていた。 男はそんな彼女を見て、仕方がないなと苦笑する。 「愛で子さん。どうやら君は、虐待と虐殺の違いがよく分からないようだね。仕方がない、僕が一度手本を見せてあげるよ」 男はそう言うや、女と同じく、何故か手近にあった赤ゆっくりを手にとって、女の前に掲げた。 『またああぁぁぁぁ――――!!! れいむのちびぢゃんをかえじでえええぇぇぇ―――!!!』 男はプチトマトより少し大きい赤ゆっくりを、親指と人差し指で軽く摘まむと、女の目の前で指に力を入れ始める。 『ゆびゃあああぁぁぁぁ――――!!! いじゃいよおおおおぉぉぉ―――――!!!』 男の指の中で、赤ゆっくりが悲鳴を上げる。 先程、女がしたときは一瞬で殺され、悲鳴を上げる間もなかったが、男は熟練のテクニックで、赤ゆっくりを潰さないように調節して力を入れた。 『やめでえええぇぇぇぇ――――!!!! でいぶのちびぢゃんになにずるのおおおぉぉぉぉ――――!!!』 『おねえぢゃんんんん――――――――!!!!』 『いもうどをはなじでええぇぇぇぇ――――――――――!!!!』 赤ゆっくりだけでなく、一家の絶叫までもが橋の上に響き渡る。 しかし、本来の彼女ならそんな一家に手を差し伸べるだろうが、今日はそんなことを気にしている場合ではなかった。 いや、その悲鳴すら彼女の耳には届いていなかった。 「解ったかい、虐殺と虐待の違いが。君たちゆっくりんピースの人間は虐待と虐殺を混同しているようだが、それは大きな間違いだ。 確かにアマチュアやルーキー虐待師の中には、すぐに虐殺に手を染める輩も少なくない。しかし、我々のような真のプロ虐待師は虐殺など決して行わない。 ゆっくりは生かさず殺さず、徹底的に肉体を、精神を甚振り続ける。その際、自我を崩壊させる虐待師は三流だ。二流は精神崩壊させずに苛め抜く。 そして一流は、意図的に精神崩壊を起こさせ、壊された自我を復元し、再度虐待を繰り返し、再度精神を元に戻す。死と新生を何度も繰り返させるのだ。 こういった一連の過程を楽しむのが、虐待師というものだ。ただ殺してしまうだけでは、解放感もカタルシスもあったものではない!!」 女は男の言葉に深い感銘を受けた。 今まで自分は、虐待師などただゆっくりを殺害するだけの人種だと思っていた。 しかし、それは大いなる間違いだった。 ならば、自分もそれを実践して見せる!! 男が未だ子ゆっくりを虐待しているように、自分もやってみせる!! 女は再び新しい赤ゆっくりをその手に持った。 そして男の真似をして、親指と人差し指の間に挟み、赤ゆっくりに虐待をする。 プチュ 結果は先ほどとなんら変わらなかった。 なぜ!? さっきと違って、力は抑えたはず!! 女は訳が分からず、再び赤ゆっくりを手をかけた。 今度はさっきと違い、ほとんど力を入れなかった。 しかし、肝心の赤ゆっくりの悲鳴が聞こえてこない。 いや、泣き喚く声は聞こえるのだが、痛がっているのではなく、女に殺されるのを怖がっての叫びだった。 これもある意味立派な虐待だが、女は自分が虐待をしているということに気付いていない。この辺りが、愛で派の限界なのだろう。 男も敢えてそれを伝えなかった。彼女を虐待師にしないために。 彼女が虐待師になる、それは男にとってこれほど嬉しいことはなかった。 素性を隠すことなく愛する彼女といつまでも一緒に居られるし、憎いゆっくりんピース会長の鼻も明かせる。 正に一石二鳥。不都合などあろうはずもない。 しかし、それが彼女にとって本当に幸せなのかと考えると、どうしても二の足を踏んでしまう。 ゆっくりを愛する彼女に、無理やりゆっくりを虐待させる。 心の中では泣いているはずなのに、自分のために無理やり笑顔を作らせてしまう。 それは、決して男の本意ではなかった。 そもそも男が惹かれたのは、目の前で震えながら虐待をし続ける彼女ではない。 有りのままの彼女に、ゆっくりを心から愛する彼女に惹かれたのだ。 だからこそ、男は彼女の心意気を、断腸の思いで否定し続ける。 しかし、自分の想いさえ否定している彼女に、男の深い想いが分かるはずもない。 もう何度目になるか分からない、赤ゆっくり虐待を敢行する。しかし…… プチュ またしても、赤ゆっくりは指の中で破裂してしまう。 「な、何でえええぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――!!!!」 『なんでえええええぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――!!!!』 なぜ自分には出来ない? 男は未だ赤ゆっくりに、あんなにも長く悲鳴を上げさせているというのに!! 女は分からず、地面に膝をついた。 ちなみにれいむ一家は、こんな惨劇が行われているというのに、この場を離れようとしなかった。 何しろ自分の可愛いチビちゃんの一匹が、男に捕えられたままになっているのだ。 母性の強いれいむ種に、それを見捨てることなど出来る筈はなかった。 もう二度と子供を奪われないようにと、自身の口の中に残った赤ゆっくりを仕舞い込み、頬を膨らませて男を威嚇する。 実に危機感のないゆっくりである。 「愛で子さん、これは今の君には到底無理な芸当なのだよ。 生まれたばかりの赤ゆっくりの皮というのは、とても儚く脆いものだ。今の僕と君の関係のようにね。 そんな赤ゆっくりに肉体的な虐待を加えることは、真の虐待師ですら容易なことではないんだよ。 僕が赤ゆっくりを殺さず力の調節を出来るようになるまで、何百、何千というゆっくりを虐待してきたからこそ身についた芸当なんだ。一朝一夕で身に付くほど、虐待道は甘くない」 これで、彼女も自分は虐待師にはなれないことを悟るだろう。男はそう思っていた。 しかし、彼女の男への愛情はそれを上回った。 無理でも何でもやってみせる!! 自分にも、虐待が出来ることを証明してみせる!! 女は親れいむの口を無理やり抉じ開け、中から赤ゆっくりを取り出し、手に持った。しかし…… 「な、なんで? どうして、こんなに簡単にしんでしまうのおおおぉぉぉ―――――――!!!!」 『なんででいぶのあがちゃんをごろずのおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ―――――――!!!!』 赤ゆっくりの皮は想像以上に脆く、女が何度やってみても、簡単に潰れてしまう。 遂には、親れいむの口を抉じ開けるも、すべての赤ゆっくりが居なくなっていた。 これ以上、ストックは無いのかと女の顔が青ざめる。しかし、すぐに表情に色が点った。最後の希望と言わんばかりの表情で、男の顔を見上げる。 男も彼女の言わんとしていることに気が付いたのか、仕方ないと溜息をつきながら、未だ指の中で絶叫を上げていた赤ゆっくりを手渡した。 これが正真正銘最後の虐待だ。 男は簡単にこの赤ゆっくりを虐待してみせた。ゆっくりが悪いからなんて、底の浅い言い訳は出来ない。 神様。博霊の神様。私に虐待の力を!! この赤ゆっくりに、悲鳴を上げさせてください!!! 女は目を瞑り、神に祈りをささげると、赤ゆっくりに力を加えた。 プチュ 「あっ……」 無情にも、博霊の神様はご加護を授けてはくれなかったようだ。 余談ながら、幻想郷にあるもう一つの神社、守矢神社のロリ神様は、自身の眷属がゆっくりの餌になることに、大層ご立腹とのことだ。 神という立場上、食物連鎖の理を否定をする気はないが、それと感情論は別の次元にあるものらしい。 もしも彼女が博霊の神ではなく、守矢の神に祈りをささげていれば、あるいは奇跡の風は彼女に吹いていたかもしれない。 閑話休題 女は地に手を膝をつき、その目からは止めどなく涙が溢れ出てくる。 自分は虐待お姉さんにはなれなかった。かといって、ゆっくりを殺した自分は、もう二度と愛でお姉さんにも戻ることが出来ない。 「うああああああああ――――――――――――――――――ん!!!! もう赤ゆっくりが一匹もいないよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ―――――――――――!!!!!」 『ゆわあああああああ――――――――――――――――――ん!!!! でいぶのちびぢゃんがみんないなぐなっだよおおおぉぉぉぉ―――――――――――!!!!!』 女は泣きじゃくった。 赤子のように、癇癪持ちの子供のように、みっともなく泣きまくった。 愛する男の前だというのも忘れ、地面に額をこすりつけて蹲った。 男はそんな女の体を抱き上げると、ハンカチを出し、涙を拭いてあげた。 「わ、私は虐待お姉さんになれないばかりか、も、もう愛でお姉さんに、も、戻ることさえ……」 「大丈夫。これを見ていたのは僕だけだ。僕が黙ってさえいれば、誰にも知られることは……!!!」 『おぢびぢゃんだちをころじだにんげんは、ゆっぐりじねえええぇぇぇぇぇ―――――――――――!!!』 子供の敵と言わんばかりの険しい表情で、れいむは女に体当たりをする。 しかし、丁度タイミング良く男が女の体を起こしにかかり、れいむ渾身の攻撃はスッパリ外れてしまう。 そして、勢いそのままに橋の上を転がっていくと、落下防止の手すりの下を綺麗に潜り抜けて、川の中に一直線にダイブした。 『ゆぎゃああああぁぁぁぁぁ―――――――――!!! なんでかわさんにおぢるのおおおぉぉぉぉぉ―――――――――!!!!』 れいむは流されていった。 「……僕さえ黙っていれば、誰にも知られることはなくなったよ。いや本当に」 男は先ほど飲み込んだ言葉を繰り返した。 「そんなことじゃない!! 私は、愛するゆっくりを自分の都合のために殺してしまったのよ!!」 「人間誰しも間違いはあるよ。それに他の動物愛護団体、例えば野鳥や小動物の愛護団体だって、生態系に異常が出ると、悲しさや悔しさを我慢して、間引きすることもある。 所詮は人間のエゴで管理されているんだ。ゆっくりだって同じことだよ。だから君は愛でお姉さんに戻れる。今回は偶々魔が差しただけさ。 心の底からゆっくりを愛しているんだろ。この震えた体が何よりの証拠だ」 「ぎゃ、虐男さん……」 二人は抱き合った。 抱きしめ、人目も憚らず、熱い口づけを交わし合う。 まるでその光景は、世界が二人だけになったかのような錯覚を覚えさせた。 しかし、シンデレラでいられる時間は長くない。 二人は惜しいと思いつつも抱擁を解き、互いを見つめ合うと、そのまま何も言うことなく同時に背を向けた。 言葉に出さなくても、しっかり分かっていた。自分たちの楽しかった時間は、これで終わってしまったのだと。もう二度と昨日には戻れないのだと。 明日からは、お互い元の生活に戻るだけだ。 男は虐待お兄さんに、女は愛でお姉さんに…… 遠く聞こえるゆっくりの悲鳴をBGMに、二人は逆の方向にそれぞれ橋を下りていった。 これは、ゆっくりによってすれ違ってしまった男女の悲しい愛の物語である。 〜fin〜 久しぶりに「ゆっくりいじめ系712 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語」を読み返し、どうにも納得出来なくて加筆修正してしもた 編集者さん、いつも御苦労さまどす 途中やラストが結構変更されているので修正版としてではなく、新規SSとして纏めてもらえると助かります 以前の内容のほうがいいという人がいるかもしれないので 過去作 ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後? 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『ちびちゃんたち!! きょうもおうたをうたって、いっぱいおかねをもらおうね!!』 『『『『『もりゃおうね!!』』』』』 夏も終わり、秋もすっかり深まったこの頃、ゆっくりれいむの一家が、橋の上のど真ん中に陣取り、汚い藁を敷いて座っていた。 この時期、ゆっくりたちは越冬に向けて、巣を作ったり、餌をため込んだりする大切な時期だ。 しかし、一家はそんなことをする様子は全くない。 いや、そんな時代遅れなことをする必要はなかったのだ。 最近、どこで覚えてきたのか、歌を歌って人間から金を貰おうとするゆっくりが増えている。 この一家もその類だった。 金をもらい、里で買い物をして、冬を越す。最先端ゆっくりの越冬方法だ。 成功率は限りなく低いが…… 『きょうも、きにょうのにんげんしゃんみたいに、いっぱいおかにぇをくりぇりゅかな?』 『きっといっぱいくれるよ!! きょうおかねをもらったら、にんげんさんのおみせでおいしいものをいっぱいかおうね!!』 目の前には、これまたボロボロで中身が少し残った缶詰が置いてあり、中には丸い金属がいくつも入っている。 ゆっくりの歌に金を払うアホがいるのかと思うかもしれないが、実はこれ、金でもなんでもない。 「一まん円」と手書きで書かれたビンの王冠が、大量に入っているのだ。 昨日、この橋を通った子供たちが、一家をからかって入れたものだ。 一家はすっかりこれを本物の金を勘違いし、調子に乗って、『ゆーゆーゆー……』と発声練習に余念がない 喉もないくせに、スター気取りとは生意気なことである。結局、人間の真似ごとをしていたいだけなのだろう。 この時点で、一家の命運は決まったようなものだ。 しかし、一家がそんな事に気付くはずはなく、一生懸命下手な発声練習に精を出していると、こっちに向かってくる男が目に付いた。 ロングコートを羽織った若い男だ。おそらくまだ二十代だろう。 季節は冬ではないが、今日は冷たい北風が吹きすさび、心底身にしみる。男はコートの襟をたて、体を縮めて歩いていた。 一家は思った。あの男は、きっと橋を渡るに違いないと。 『みんな!! にんげんさんがきたよ!! ゆっくりがんばって、おうたをうたおうね!!』 子供たちにはっぱを掛け、一列に整列させる。 男のほうに注目すると、案の定、男はこの橋を渡るようだ。 後数メートル。れいむたちは、男が目の前に来ると、一斉に男に声を掛けた……が、 『おじさん!! ゆっくりれいむたちのおうたをきいていってね!!』「待って!! 虐男さん!!」 れいむたちの声に、女性の声が重なった。 れいむたちは、どこから聞こえてきたのだと、辺りを見回した。 すると、男が歩いてきた方向から、一人の女性が走ってきた。 どうやら、れいむたちの声を遮ったのは、この女の人らしい。 男はちょうどれいむ一家の前で立ち止まると、女性のほうを振り返った。 「はぁはぁ……虐男さん。お願い、話を聞いて!!」 女は男の元まで走ってくる。 男と違い薄着に軽く外着を引っ掛けてきただけだが、よほど急いで来たのか、この寒い中うっすら汗をかいている。 膝に手を付いて荒い息を整えると、ようやく落ち着いてきたのか男に言葉を掛けようとした。 しかし、それが面白くないのはれいむ一家だ。 この男に先に目をつけたのは自分たちなのだ。 この女は、きっと自分たちより先に、この男に歌を聞かせようという魂胆に違いない。 途中から割り込んできて、お客を横取りするなんてマナー違反である。れいむは女に文句を言った。 『おねえさん!! れいむたちが、さいしょにおうたをうたうんだよ!! ゆっくりじゅんばんをまもってね!!』 一家は頬を膨らましている。 しかし、女はそんなれいむを無視し……というか、気付いていないのか、目もくれない。 ひたすら男の顔だけを見続けていた。 男も、そんな女の目を真摯に見つめている。 「愛で子さん……なぜここに来たんだ」 「なぜって……あなたを追って来たに決まってるでしょ!! 話も聞かずに出ていくなんて!!」 『おねえさん!! ゆっくりれいむをむししないでね!!』 「話ならもう終わっただろ。所詮、僕と君とは永遠に結ばれない運命だったのさ」 「そんな……なんで!! なんでそんなこと言うの!!」 『むししないでねっていってるでしょ!! ゆっくりきこえないの!?』 れいむがどんなに叫んでも、女の耳には届かなかった。 「所詮、僕はゆっくり虐待お兄さん。そして君はゆっくり愛でお姉さん。どうすればつり合うというんだ」 「……確かに私は愛でお姉さんで、あなたは虐待お兄さん。本来なら、決して相容れない存在……」 『もういいよ!! ちびちゃんたち、こんなおみみのきこえないおねえさんはむしして、おじさんにおうたをきかせようね!!』 れいむは業を煮やし、遂には女を無視して男に歌を聞かせるという、強行手段に出ることにした。 子ゆっくりたちを向いて、『せいの…』と小声で合図を取り始める。 「そうだ、だから……」 「でも!! でも、例え立場は違っても、私たちは愛し合っていた。それは紛れもない事実よ!!」 『ゆ〜ゆゆ〜〜ゆ〜ゆ〜ゆっくりしていってね〜〜〜♪』 「……んん……それは……」 「それとも、愛し合っていたと思っていたのは私だけ? 私が一方的にあなたを想っていただけなの? すべて私の独りよがりの恋だったの?」 『おじさん!! れいむたちのおうた、じょうずだったでしょ!! ゆっくりおかねをちょうだいね!!』 『『『『『ちょうだいね!!!!!』』』』』 歌とも言えぬ様な短い歌も終わり、一家は男に金をせびる。 「それは違う!! 僕も君を心底愛していた!! 絶対だ!! 博霊の神に誓う!!」 「だったら……なんで!!」 『おじさん!! れいむたちはおかねをちょうだいっていってるんだよ!! ゆっくりはやくおかねをここにいれてね!!』 「愛で子さん。さっきも言ったけど、僕は虐待お兄さんなんだよ」 「ええ……聞いたわ」 『おじさんまでれいむたちをむししないでね!! おうたをきいたんだから、おかねをいれないといけないんだよ!!』 「僕はそれを隠していたんだ、自分可愛さにね……そして、君も僕に隠していただろ、自分が愛でお姉さんであることを」 「虐男さん……」 『ゆゆっ!! おじさんたち、もっとおうたをうたってほしいんだね!! ゆっくりりかいしたよ!! きょうはとくべつに、もういっかいおうたをうたってあげるね!!』 れいむは、男が缶にお金を入れてくれないのは、歌があまりにも短すぎるからだと考えた。 男が自分たちの話を聞いていないなどとは、露ほども考えていない。 子ゆっくりたちに向かって、『もういっかいうたうよ』と言って、再度合図を送る。 「体が疼いて仕方がないんだ。ゆっくりを虐待しろってね。これは僕のDNAに刻まれた本能なんだ」 「そんな……そんなのって!!」 『ゆっくり〜〜ゆっくり〜〜ゆ〜っく〜〜り♪』 「呪いみたいなものさ。永遠に解けることのない呪いの鎖。この鎖が解けるとき、それは即ち僕が死ぬときだ。だから……僕は君といっしょにはいられない」 「う……うう……ぎゃ、虐男さん……」 『ゆんゆんゆんゆん♪ ゆ〜んゆん♪ ゆっくりしていってね〜〜〜♪♪』 「こんな僕の為に泣かないでくれ。自分から去っておいてなんだが、君は本当に素敵な女性だ。僕がいなくても、すぐに素敵な恋人が出来るさ」 「いやよ!! わたしは虐男さん以外の男性なんて!!」 『おじさん!! これでいいでしょ!! ゆっくりおかねをおいていってね!!』 「あまり僕を困らせないでくれ。新しい恋人が出来れば、僕のことなんてすぐに忘れられるさ。その時になって、昔こんな素敵な自分を振った馬鹿な男がいたなと、物笑いの種にでもしてくれ」 「いやよ!! いやいやいやいや……」 『いやいやじゃないよ!! おねえさんはゆっくりだまっててね!! おじさんのおかねはれいむたちのものだよ!! ゆっくりおかねをくれないといけないんだよ!!』 「愛で子さん……最後に僕の我儘を聞いてほしい。抱き締めさせてくれないか?」 「虐男さん……」 『わかったよ、おじさん!! いまおかねをはらえば、とくべつにかわいいれいむたちをだっこさせてあげるよ!! こんなちゃんす、もうないよ!!』 男はそう言うと、人目を憚ることなく、女を力いっぱい抱きしめた。 これが最後の我儘だと言わんばかりに…… 女も男の抱擁に応え、男の大きな背中に腕をまわした。 男の胸元に顔を埋め、涙を流し続ける。涙で顔はグシャグシャだが、そんなのお構いなしだ。 『ゆぅ……おじさんがおかねをはらってくれないのは、じゃまなおねえさんのせいだよ!!』 「ゆっくりなんて、存在しなければ良かったのに……」 『おねえさんなんて、いなければよかったのに!! ぷんぷん!!』 男の胸の中で、女がポツリと漏らす。 ゆっくりが居なければ、自分たちは愛でお姉さんにも、虐待お兄さんにもならなかった。 一生彼といっしょにいることが出来た。 すべてゆっくりがいたから、自分たちはこうなったのだ。 女はゆっくりという生物に、今初めて強い怒りを覚えた。 しかし、女を抱きしめたまま、男は首を横に振る。 「そんなこと言うもんじゃないよ、愛で子さん」 「でも!! でもっ!!!」 『ゆっ!? もしかしておじさん、おかねをもってないの?』 れいむの餡子脳に、ふとその考えが浮かんだ。 自分たちの素晴らしい歌を聞いてお金を入れてくれない人間などいる筈がない。 昨日の子供たちは、自分たちのあまりの美声に、お金の中で一番高い「一まん円」コインを、大量に投下してくれた。 子供ですら大金を払ってでも聞きたくなるような歌なのだ。 おそらくこの男はお金を持っていない。しかし、れいむたちの歌は聴きたい。そこで無銭視聴をすることにしたのだろう。 金を払わないのは業腹であるが、ファンは一人でも大切にするべきである。ここは「あーてぃすと」として、太っ腹なところを見せるべきだろう。 「僕たちが今あるのは、すべてゆっくりのおかげだということを忘れてはいけないよ。 ゆっくりが存在しなければ、僕はただの貧乏農家の長男として生を終えていたはずさ。君だって一介の里娘で終わっていただろう。 しかし、ゆっくりのおかげで、僕は虐待製品の製造・販売を一手に握るブリーングオブスローリー・カンパニーの代表に、君はゆっくりんピース代表の娘になれたんじゃないか。 ゆっくりなしには、今の豊かな生活はあり得なかったんだよ」 「そうだけど……でも!!」 『おじさん、びんぼうさんなんだね……ゆっくりかわいそうだね』 「それに、もしゆっくりが居なければ、そもそも僕たちは出会ってすらいなかったんだ」 「そ、それは……」 女も口を濁す。 男と女。立場が正反対の二人が出会ったのは、正しく偶然の賜物であった。 男は虐待するためのゆっくりを探しに、女はゆっくりんピースの一員として、ゆっくりが本当にゆっくり出来ているかを調査するため、森に来ていた。 しかし、突然予測にない大雨が降り、雨をやり過ごすため手近の洞窟に入ったとき、偶然にも二人は出会った。 初め、二人は互いの素性を隠しあっていた。 虐待をする男はある意味当然だが、ゆっくりを愛でる人間も、その道を理解できない人には気持ち悪く映ることがある。 特に農家のなどのゆっくりを毛嫌いしている人間には、ゆっくりを愛でるゆっくりんピースを敵視している者さえいるのだ。 そのため、二人は素性を隠したまま、薄暗い洞窟の中で、雨がやむのをひたすら待ち続けた。 二人の恋の始まりはそこからだった。 最初は薄暗く恐怖を演出する洞窟という環境に、つり橋効果が働いただけかもしれない。 しかし、暇を持て余し会話を交わしているうちに、二人はいつの間にかすっかり意気投合していた。 そして、無事に山を降りた後も素性を隠して何度か会っていくうちに、いつしかそれは本物の恋心に変わっていった。 二人は将来を誓い合う仲になっていった。 しかし、今日男が女の家に行って、すべてが壊れた。 男は自分が虐待お兄さんであることを告白する気はなかった。 一介の平凡な会社社長であることだけを伝え、もし会社のことを聞かれた時のことも考え、ダミー会社まで作っていた。 それほどまでに、男は女のことを愛していたのである。 しかし不運だったのは、女の家事情が特殊だったと言うことである。 女はこれまで実家で家事手伝いをしていると言っていた。それ自体に嘘はない……が、 「ゆっくりんピース代表の娘」 それが、女のもう一つの肩書だった。 女の両親とあった男。二人は知り合いだったのだ。それも最悪の方向で。 ゆっくりを虐待する代表と、ゆっくりを愛でる代表。今まで出会っていないはずはなかった。 部下同士が小競り合いになったことも、もう何度目のことだろうか。 幻想郷ゆっくり協会(GYK)で顔を突き合わせたことも、両の指では足りないくらいである。 楽しい会食になるはずが、一転、互いを罵り合う場となり、塩をあびせられた男は、憤慨し女の家を飛び出していった。 女は、すぐに男を追いかけようとするも、ゆっくりんピース代表である父に止められ、なかなか行かせてもらえなかった。 そんな父に生まれた初めて反抗し、上着を引っ掛けて出ていき、追いついたのがれいむたちのいた橋の上というわけである。 「ありがとう、愛で子さん。少しの間だったけど、愛で子さんと一緒にいられて楽しかったよ。これからは、お互い自分の道を歩んでいこう」 「虐男さん……」 『おかねがないならしょうがないね!! こんかいはとくべつに、おかねをはらわなくてもゆるしてあげるよ!!』 「さようなら、愛で子さん」 『ばいばい、おじさん!!』 女を離し、最後のあいさつを済ませる。 これですべて終わった。もう思い残すことは何もない。 男は女に背を向け、感傷に浸りながらゆっくり家に帰ろうとした。 しかし…… 「虐男さん!!」 女はシッカリとした声色で、男を呼び止める。 もう女をのほうを向かないと決意した男だが、弱々しく女々しい声色から一転、迷いのなくなった女の声に、いったいどうしたのかと女のほうを振り向いた。 「愛で子さん?」 「虐男さん!! 私はどうしても虐男さんのことを忘れられない!! だから……」 『おじさん!! ゆっくりなんでかえらないの? ここはれいむたちのおうたのすてーじだから、おかねのないひとは、ゆっくりかえってね!!』 「……だから?」 「だから……だから私も、今日から虐待お姉さんになるわ!! ゆっくりを苛めて苛めて苛め抜いてやるわ!!」 『これいじょうおうたのじゃまするなら、ゆっくりおじさんをいじめるよ!!』 「なっ!!!」 女の突然の発言に男は目を見開いた。 愛でお姉さんを辞めて、虐待お姉さんになる? そんなことが出来るはずもない。男は女の無謀な考えを改めさせる。 「馬鹿なことを言うものじゃない。そんなこと、無理に決まっている!!」 「虐男さんこそ馬鹿にしないで。ゆっくりを虐めるなんて簡単なことよ!!」 『ほんとうにおじさんをいじめるよ!! おじさんをやっつけるなんて、かんたんなんだよ!!』」 女はそう言うや、横にいたゆっくりのほうに目を向けた。 ゆっくりは、さっきから何か言っていたようだが、女の耳には入っていなかった。 大方、邪魔だからさっさとここを退けとでも言っていたのだろう。 まあそんなことはどうでもいい。 女は手近に居たゆっくり赤ゆっくりに目を付けると、それを手に取った。 『ゆっ!? おねえさん、れいむのちびちゃんをどうするの? ゆっくりはなしてね!!』 『ゆゆっ!! おしょりゃをとんでりゅみちゃい!!』 親れいむは赤ゆっくりを返せと喚いているが、女はれいむの言葉が聞こえていないのか、赤ゆっくりを持った手を男の目の前にかざした。 そして、その手に思いっきり力を入れる。 プチュ 『ゆぎゃああああぁぁぁあ―――――!!!! れいむのあかちゃんがあああぁぁぁ――――!!!』 女は男の目の前で赤ゆっくりを潰して見せた。 それを見て、絶叫する親れいむ。 潰された赤ゆっくりは、悲鳴を上げる間もなく、女の手の中でグシャグシャになった。 「はあはあはあはぁはぁ……ど、どう? 虐男さん!! わ、私もゆっくりを虐待して見せたわ。これで私も虐待お姉さんの仲間入りでしょ!!」 『なんでそんなことするのおおおおぉぉぉぉぉ―――――!!!!!』 れいむの悲鳴に反し、女は清々しいまでの笑顔を見せる。 これで自分は虐待お姉さんになった、これからも男と一緒にいることができる。 しかし、男は無表情で女の言葉を切って返す。 「……君はそれで虐待お姉さんになったつもりなのかい?」 「えっ?」 「真の虐待師は、虐待をするとき決して震えたりしない!!」 「!!!」 女は自分の手を見た。さっきから震えが止まらない。 そればかりか、全身から嫌な汗が吹き出し、止まる気配がなかった。 幼いころから愛でお姉さんであった彼女は、ゲス個体であれ良個体であれ、ゆっくりを殺害したことなど一度もない。 ゆっくりを殺した事に、鳥肌が、震えが止まらないのだ。 「た、確かに今は震えてるけど、ぎゃ、虐待を繰り返していれば、その内震えることなんてなくなるはず!!」 「ふぅ……君は何も分かっていないようだね」 「分かっていない?」 「虐待というものは、させられてするものじゃない。自分から進んでするということだ!!」 「!!!」 女は再度衝撃を受けた。 確かに自ら望んでしたことではない。男と一緒にいるために、信念も外聞も捨て無理やりしたことだ。 しかし、こんなことで諦めるわけにはいかない。 ゆっくりんピース代表の娘が、ゆっくりを殺す。それも、次代のゆっくりを担う赤ゆっくりを殺したのだ。 もう後には引くことは出来ない。 「で、でも……でも、そのうちきっと虐待が楽しくなってきて……」 「何よりね、愛で子さん。君がしたことは、虐待でも苛めでもないよ」 「えっ?」 「君がしたことは、ただの虐殺だ!!」 「!!!」 男の言葉に、彼女は三度目の衝撃を受けた。 虐待師でない彼女は、虐待と虐殺と混同していた。 ボロボロになったゆっくりの死体を見て、「また虐待師の仕業か!!」と憤慨していた父の姿も目撃している。 虐待の果てに死がある。だからこその赤ゆっくり殺害であった。 それを否定された彼女は、虐待と虐殺の違いがよく分からず、延々と考えを纏めあぐねていた。 男はそんな彼女を見て、仕方がないなと苦笑する。 「愛で子さん。どうやら君は、虐待と虐殺の違いがよく分からないようだね。仕方がない、僕が一度手本を見せてあげるよ」 男はそう言うや、女と同じく、何故か手近にあった赤ゆっくりを手にとって、女の前に掲げた。 『またああぁぁぁぁ――――!!! れいむのちびぢゃんをかえじでえええぇぇぇ―――!!!』 男はプチトマトより少し大きい赤ゆっくりを、親指と人差し指で軽く摘まむと、女の目の前で指に力を入れ始める。 『ゆびゃあああぁぁぁぁ――――!!! いじゃいよおおおおぉぉぉ―――――!!!』 男の指の中で、赤ゆっくりが悲鳴を上げる。 先程、女がしたときは一瞬で殺され、悲鳴を上げる間もなかったが、男は熟練のテクニックで、赤ゆっくりを潰さないように調節して力を入れた。 『やめでえええぇぇぇぇ――――!!!! でいぶのちびぢゃんになにずるのおおおぉぉぉぉ――――!!!』 『おねえぢゃんんんん――――――――!!!!』 『いもうどをはなじでええぇぇぇぇ――――――――――!!!!』 赤ゆっくりだけでなく、一家の絶叫までもが橋の上に響き渡る。 しかし、本来の彼女ならそんな一家に手を差し伸べるだろうが、今日はそんなことを気にしている場合ではなかった。 いや、その悲鳴すら彼女の耳には届いていなかった。 「解ったかい、虐殺と虐待の違いが。君たちゆっくりんピースの人間は虐待と虐殺を混同しているようだが、それは大きな間違いだ。 確かにアマチュアやルーキー虐待師の中には、すぐに虐殺に手を染める輩も少なくない。しかし、我々のような真のプロ虐待師は虐殺など決して行わない。 ゆっくりは生かさず殺さず、徹底的に肉体を、精神を甚振り続ける。その際、自我を崩壊させる虐待師は三流だ。二流は精神崩壊させずに苛め抜く。 そして一流は、意図的に精神崩壊を起こさせ、壊された自我を復元し、再度虐待を繰り返し、再度精神を元に戻す。死と新生を何度も繰り返させるのだ。 こういった一連の過程を楽しむのが、虐待師というものだ。ただ殺してしまうだけでは、解放感もカタルシスもあったものではない!!」 女は男の言葉に深い感銘を受けた。 今まで自分は、虐待師などただゆっくりを殺害するだけの人種だと思っていた。 しかし、それは大いなる間違いだった。 ならば、自分もそれを実践して見せる!! 男が未だ子ゆっくりを虐待しているように、自分もやってみせる!! 女は再び新しい赤ゆっくりをその手に持った。 そして男の真似をして、親指と人差し指の間に挟み、赤ゆっくりに虐待をする。 プチュ 結果は先ほどとなんら変わらなかった。 なぜ!? さっきと違って、力は抑えたはず!! 女は訳が分からず、再び赤ゆっくりを手をかけた。 今度はさっきと違い、ほとんど力を入れなかった。 しかし、肝心の赤ゆっくりの悲鳴が聞こえてこない。 いや、泣き喚く声は聞こえるのだが、痛がっているのではなく、女に殺されるのを怖がっての叫びだった。 これもある意味立派な虐待だが、女は自分が虐待をしているということに気付いていない。この辺りが、愛で派の限界なのだろう。 男も敢えてそれを伝えなかった。彼女を虐待師にしないために。 彼女が虐待師になる、それは男にとってこれほど嬉しいことはなかった。 素性を隠すことなく愛する彼女といつまでも一緒に居られるし、憎いゆっくりんピース会長の鼻も明かせる。 正に一石二鳥。不都合などあろうはずもない。 しかし、それが彼女にとって本当に幸せなのかと考えると、どうしても二の足を踏んでしまう。 ゆっくりを愛する彼女に、無理やりゆっくりを虐待させる。 心の中では泣いているはずなのに、自分のために無理やり笑顔を作らせてしまう。 それは、決して男の本意ではなかった。 そもそも男が惹かれたのは、目の前で震えながら虐待をし続ける彼女ではない。 有りのままの彼女に、ゆっくりを心から愛する彼女に惹かれたのだ。 だからこそ、男は彼女の心意気を、断腸の思いで否定し続ける。 しかし、自分の想いさえ否定している彼女に、男の深い想いが分かるはずもない。 もう何度目になるか分からない、赤ゆっくり虐待を敢行する。しかし…… プチュ またしても、赤ゆっくりは指の中で破裂してしまう。 「な、何でえええぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――!!!!」 『なんでえええええぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――!!!!』 なぜ自分には出来ない? 男は未だ赤ゆっくりに、あんなにも長く悲鳴を上げさせているというのに!! 女は分からず、地面に膝をついた。 ちなみにれいむ一家は、こんな惨劇が行われているというのに、この場を離れようとしなかった。 何しろ自分の可愛いチビちゃんの一匹が、男に捕えられたままになっているのだ。 母性の強いれいむ種に、それを見捨てることなど出来る筈はなかった。 もう二度と子供を奪われないようにと、自身の口の中に残った赤ゆっくりを仕舞い込み、頬を膨らませて男を威嚇する。 実に危機感のないゆっくりである。 「愛で子さん、これは今の君には到底無理な芸当なのだよ。 生まれたばかりの赤ゆっくりの皮というのは、とても儚く脆いものだ。今の僕と君の関係のようにね。 そんな赤ゆっくりに肉体的な虐待を加えることは、真の虐待師ですら容易なことではないんだよ。 僕が赤ゆっくりを殺さず力の調節を出来るようになるまで、何百、何千というゆっくりを虐待してきたからこそ身についた芸当なんだ。一朝一夕で身に付くほど、虐待道は甘くない」 これで、彼女も自分は虐待師にはなれないことを悟るだろう。男はそう思っていた。 しかし、彼女の男への愛情はそれを上回った。 無理でも何でもやってみせる!! 自分にも、虐待が出来ることを証明してみせる!! 女は親れいむの口を無理やり抉じ開け、中から赤ゆっくりを取り出し、手に持った。しかし…… 「な、なんで? どうして、こんなに簡単にしんでしまうのおおおぉぉぉ―――――――!!!!」 『なんででいぶのあがちゃんをごろずのおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ―――――――!!!!』 赤ゆっくりの皮は想像以上に脆く、女が何度やってみても、簡単に潰れてしまう。 遂には、親れいむの口を抉じ開けるも、すべての赤ゆっくりが居なくなっていた。 これ以上、ストックは無いのかと女の顔が青ざめる。しかし、すぐに表情に色が点った。最後の希望と言わんばかりの表情で、男の顔を見上げる。 男も彼女の言わんとしていることに気が付いたのか、仕方ないと溜息をつきながら、未だ指の中で絶叫を上げていた赤ゆっくりを手渡した。 これが正真正銘最後の虐待だ。 男は簡単にこの赤ゆっくりを虐待してみせた。ゆっくりが悪いからなんて、底の浅い言い訳は出来ない。 神様。博霊の神様。私に虐待の力を!! この赤ゆっくりに、悲鳴を上げさせてください!!! 女は目を瞑り、神に祈りをささげると、赤ゆっくりに力を加えた。 プチュ 「あっ……」 無情にも、博霊の神様はご加護を授けてはくれなかったようだ。 余談ながら、幻想郷にあるもう一つの神社、守矢神社のロリ神様は、自身の眷属がゆっくりの餌になることに、大層ご立腹とのことだ。 神という立場上、食物連鎖の理を否定をする気はないが、それと感情論は別の次元にあるものらしい。 もしも彼女が博霊の神ではなく、守矢の神に祈りをささげていれば、あるいは奇跡の風は彼女に吹いていたかもしれない。 閑話休題 女は地に手を膝をつき、その目からは止めどなく涙が溢れ出てくる。 自分は虐待お姉さんにはなれなかった。かといって、ゆっくりを殺した自分は、もう二度と愛でお姉さんにも戻ることが出来ない。 「うああああああああ――――――――――――――――――ん!!!! もう赤ゆっくりが一匹もいないよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ―――――――――――!!!!!」 『ゆわあああああああ――――――――――――――――――ん!!!! でいぶのちびぢゃんがみんないなぐなっだよおおおぉぉぉぉ―――――――――――!!!!!』 女は泣きじゃくった。 赤子のように、癇癪持ちの子供のように、みっともなく泣きまくった。 愛する男の前だというのも忘れ、地面に額をこすりつけて蹲った。 男はそんな女の体を抱き上げると、ハンカチを出し、涙を拭いてあげた。 「わ、私は虐待お姉さんになれないばかりか、も、もう愛でお姉さんに、も、戻ることさえ……」 「大丈夫。これを見ていたのは僕だけだ。僕が黙ってさえいれば、誰にも知られることは……!!!」 『おぢびぢゃんだちをころじだにんげんは、ゆっぐりじねえええぇぇぇぇぇ―――――――――――!!!』 子供の敵と言わんばかりの険しい表情で、れいむは女に体当たりをする。 しかし、丁度タイミング良く男が女の体を起こしにかかり、れいむ渾身の攻撃はスッパリ外れてしまう。 そして、勢いそのままに橋の上を転がっていくと、落下防止の手すりの下を綺麗に潜り抜けて、川の中に一直線にダイブした。 『ゆぎゃああああぁぁぁぁぁ―――――――――!!! なんでかわさんにおぢるのおおおぉぉぉぉぉ―――――――――!!!!』 れいむは流されていった。 「……僕さえ黙っていれば、誰にも知られることはなくなったよ。いや本当に」 男は先ほど飲み込んだ言葉を繰り返した。 「そんなことじゃない!! 私は、愛するゆっくりを自分の都合のために殺してしまったのよ!!」 「人間誰しも間違いはあるよ。それに他の動物愛護団体、例えば野鳥や小動物の愛護団体だって、生態系に異常が出ると、悲しさや悔しさを我慢して、間引きすることもある。 所詮は人間のエゴで管理されているんだ。ゆっくりだって同じことだよ。だから君は愛でお姉さんに戻れる。今回は偶々魔が差しただけさ。 心の底からゆっくりを愛しているんだろ。この震えた体が何よりの証拠だ」 「ぎゃ、虐男さん……」 二人は抱き合った。 抱きしめ、人目も憚らず、熱い口づけを交わし合う。 まるでその光景は、世界が二人だけになったかのような錯覚を覚えさせた。 しかし、シンデレラでいられる時間は長くない。 二人は惜しいと思いつつも抱擁を解き、互いを見つめ合うと、そのまま何も言うことなく同時に背を向けた。 言葉に出さなくても、しっかり分かっていた。自分たちの楽しかった時間は、これで終わってしまったのだと。もう二度と昨日には戻れないのだと。 明日からは、お互い元の生活に戻るだけだ。 男は虐待お兄さんに、女は愛でお姉さんに…… 遠く聞こえるゆっくりの悲鳴をBGMに、二人は逆の方向にそれぞれ橋を下りていった。 これは、ゆっくりによってすれ違ってしまった男女の悲しい愛の物語である。 〜fin〜 久しぶりに「ゆっくりいじめ系712 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語」を読み返し、どうにも納得出来なくて加筆修正してしもた 編集者さん、いつも御苦労さまどす 途中やラストが結構変更されているので修正版としてではなく、新規SSとして纏めてもらえると助かります 以前の内容のほうがいいという人がいるかもしれないので 過去作 ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後? 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