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かまいたちの夜 ・要約版:要約スレpart2-259 ・詳細版:part16-169~177・205~213・215~216・392~398・400~404・445~446、part17-43~45、 18-283~295 259 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/08/22(火) 23 55 52 ID SqyXDkBy0 とりあえず1と2だけ×3はまとめ中 かまいたちの夜 【事件】 主人公の『矢島透』は友人以上恋人未満の意中の女性『小林真理』に伯父が経営するペンションの『シュプール』にスキー旅行に誘われる。 しかし、宿泊客の一人でサングラスにコートという謎の男、『田中一郎』がバラバラ死体で発見される。 【謎】 ほとんどにアリバイがある。また可能な人でも死体を切り刻むのは時間的に無理。 【犯人】 山男風カメラマン『美樹本』 【トリック】 死体と一人二役、まず田中一郎としてチェックインして別の場所で殺していたバラバラ死体を部屋に置いて、 積もった雪が屋根から落ちる際に窓を割るように細工する。 その後こっそり抜け出し変装をやめ別人としてチェックインする。 【動機】 死体と二人組みの強盗だったが分け前で揉めた、目撃されたのは死体側だけ のため偽装を行った。 【結末】 犯行がばれた美樹本は透の腕を折り銃を出すが、透の決死の体当たりで体制が崩れた所を全員で取り押さえる。 169 かまいたちの夜1 sage 2005/06/22(水) 15 20 48 ID 964+6anK 登場人物紹介 透・・・主人公。中肉中背の大学生。真理とは友達以上恋人未満 真理・・ヒロイン。透と同じ大学。スポーツ万能、スタイル抜群 小林二郎・・・ペンション「シュプール」オーナー。真理の叔父(以下、小林さんと記載) 小林今日子・・小林さんの奥さん。気さくで面倒見のいい人(以下、今日子さんと記載) 香山誠一・・・社長。ハゲ、小太り、関西弁と典型的キャラ(以下、香山さんと記載) 香山春子・・・香山さんの奥さん。おしとやかで清楚な日本美人(以下、春子さんと記載) 久保田俊夫・・シュプールのアルバイト。長身のスポーツマンタイプ 篠崎みどり・・シュプールのアルバイト2。20代、ポニーテールのスポーツマンタイプ 美樹本洋介・・カメラマン。ひげもじゃのがっちり体型の山男 渡瀬可奈子・・OL三人組その1。痩せ型、長髪の派手めなお姉さん 北野啓子・・・OL三人組その2。ぽっちゃり型、いつも片手にスナック菓子 河村亜希・・・OL三人組その3。ショートカットでボーイッシュな女性。ちなみに全員18歳 田中一郎・・・謎の男。ロングコートに帽子、サングラスといかにも怪しい人物 ペンション「シュプール」の構造 1階・・・玄関、談話室、食堂、スタッフたちの部屋 2階・・・客室 地下室・・ワイン倉庫 ○○の部屋とか、部屋という表現は大抵2階の客室だと思って下さい 170 かまいたちの夜1、長いよ sage 2005/06/22(水)15 22 45ID 964+6anK その1 透と真理はスキー場に来ていた。スキーに不慣れな透は転んでばかり、 一方の真理は雪国育ちでその腕前を存分に披露していた。 そして透がクタクタになってきたころ、空模様もあやしくなってきたため、 二人はペンション「シュプール」へと帰ることにした。 透と真理は大学の同級生。透が果敢にアタックをしてきたものの一人相撲のようであったが なんと今回は真理からスキー旅行へ行かないかと誘われたのだ。願ってもないチャンスを 断る理由もなく、二人で旅行へ来たのであった。 「シュプール」は真理の叔父の小林さんが経営しているため格安で泊めてくれるそうだ。 シュプールへ着く頃には空は吹雪はじめていた。 透と真理はスキーウェアの着替えを済ませたあと、1階の談話室へ降りてきた。 そこでOL三人組・可奈子、啓子、亜希と出会う。カメラのシャッターを頼まれる透、 そのまま自己紹介しあい談笑していると、そこへ新たな客・香山夫妻がやって来た。 香山さんは小林さんとは旧知の仲で、着くなり関西弁であれやこれやとまくし立てるのであった。 奥さんの春子さんはおしとやかで何処か影があるような印象を透は受けた。 その後、みどりさんから夕食の準備が出来た事を聞き、食堂へ向かった。 食堂にはペンションには似つかわしくない客・田中がいた。田中はサングラス、コート、帽子と ヤクザのような格好であった。しかし、食事が運ばれると美味しさにそんなことを忘れのであった。 食後、真理がナイターへ誘ってきたものの、俊夫さんとみどりさんに吹雪のことを聞き断念する。 談話室に戻ってみると小林さんとOL三人組がなにやら言い争っている。 どうやらOL達の部屋に『こんや 12じ だれかが しぬ』と書かれた紙が投げ込まれたようだ。 気味悪がるOL達ではあったがテレビがその部屋にしかないこと、そして部屋に入らずともドアの隙間から 紙を投げ入れられることで納得し、誰かのイタズラということでその場は収まった。 171 かまいたちの夜1、長いよ sage 2005/06/22(水)15 23 33ID 964+6anK その2 その後、透と真理は談話室でくつろいでいると香山夫妻がやって来て、透を自分の会社へと誘ってきた。 やんわりと断るも香山さんは一人で話し続けるのであった。 ちょうど小林さんがビールを持ってきてくれたとき、外に何かが落ちる音がして驚く透。しかしそれは ただ屋根に積もった雪が落ちただけであった。そのまま窓を眺めていると、車の音が聞こえてきた。 そして、遅れてやって来た客・美樹本が現れた。外の吹雪がひどいらしく美樹本さんは大変苦労したと言う。 実際、今までにないほどの吹雪だそうだ。 美樹本さんは荷物を置いてくると談話室に現れ、自己紹介を始めた。陽気な性格らしく大声で話す人である。 皆でビール、紅茶などを飲んでいると小林さんが他の人達も誘うようにみどりさんに言った。 田中さんは人付き合いが良さそうでないということで、誘わなかったもののOL三人組はお茶を飲みに 談話室へと降りてくる。俊夫さんはテレビを見てるということで現れなかった。 人が増え騒々しくなる談話室。みなで楽しくお茶をしているときに突然「ガシャン」とガラスが 割れる音が響く。小林さんが一階を見て回るも異常はなく、俊夫さんを部屋から連れ出して戻ってきた。 そして各自、自分たちの部屋の窓が割れてないか確かめに行く。小林さん曰くほおっておくと 冷凍庫になってしまうらしい。透、真理、香山夫妻、美樹本さん、OL三人組ともに異常は見当たらなかった。 すると残る部屋は一つしかない。田中の部屋だ。 ふと真理があの脅迫状は田中の仕業ではないかとつぶやく。いやな予感がする透。 小林さんが田中の部屋をノックするも返事がない。強くノックするもやはり返事はない。 ノブを回すも鍵がかかっていたため、小林さんのマスターキーを使い部屋に入る。 部屋を開けた途端ひどい寒気が吹き抜ける。案の定、窓が開け放たれていた。 小林さんが田中さんを呼ぶが見当たらない。窓ガラスは割れ、枠だけになった窓が外壁に叩きつけられてた。 窓を調べようと近づくと、そこにはバラバラに切断された田中の死体が床に転がっていた・・・ 172 かまいたちの夜1、長いよ sage 2005/06/22(水)15 24 08ID 964+6anK その3 その後、殺害された田中を除く全員が談話室に集まっていた。 透はそこで、死体が発見されたこと、脅迫状のことを皆に話す。 かまいたち、プラズマのせいだと異常事態に混乱していると、香山さんが警察に連絡を入れるべきだと言う。 早速、小林さんが電話をかけてみるも繋がらない。どうやら電話線が切れてしまったようだ。 携帯電話を試すも電波が入らない。電話が使えない、外は吹雪、完全に閉じ込められてしまった。 人殺しがどこかにいるかもしれないのに…。 全員に不安が広がる。このペンションにすでに人殺しが隠れているかもしれない。 いつ襲われるか分からない状況だ。そんな時、真理が武器を持ったほうがいいのでは、と提案する。 賛同する一同。モップや果物ナイフ、スキーのストックを持ち、男性5人、透、美樹本、小林、香山、俊夫 で犯人が隠れていそうな所を点検してまわる。一階、二階と調べてまわるも何も見つからない。 そして香山さんがふと物置を指差す。その時、ガタッと中で物音が聞こえる。緊張が走る。 意を決して物置を開けると同時に何かが飛び出してきた。 なんと、猫であった。その猫はペットのジェニーだそうで、シュプールで飼われているそうだ。 その後も調べるも結局なにも見つからなかった。ほっとしたような不安なような気持ちになる一同。 談話室に戻り、とりあえず皆でコーヒーを飲む。そのとき透は疑問を抱く。 犯人は本当に外から窓を割って入ってきたのだろうか? 窓が割れる音がしてから田中の部屋に行くまでは、15分程度だ。そんな時間で人を殺害しバラバラに出来るのだろうか? なにか短時間で出来る方法があるのだろうか? 173 かまいたちの夜1、長いよ sage 2005/06/22(水)15 25 31ID 964+6anK その4 窓が割れる音がしたとき一人だけ談話室にいなかった人間を透は思い出す。 俊夫さん。透のなかで疑念がうずまく。いや犯人は外部の人間である、 そうあるべきだと無理に思い込もうと透はするのであった。 すると小林さんがふいに立ち上がり外を見てくると言う。何か痕跡を見つけられるかもしれない。 猛吹雪の中、小林、俊夫、美樹本たちで外を見回りに行った。 談話室で待っていると香山さんが携帯を試しに二階へ、OL三人組はトイレに行くといい二階へ行った。 裏口のベルが鳴り今日子さんは裏口へ、それについていく透と真理。 裏口には小林さんたちが戻ってきていた。何と美樹本さんが何者かに殴られ、頭から血を流していた。 美樹本さんを治療し二階の部屋へ運び、部屋を出ると香山さんと出くわし電話のことを聞くも やはり駄目だったようだ。談話室へ戻り、小林さんから事情を聞く。 外へ出るなり、はぐれてしまい気付いたときには美樹本さんは襲われていて、犯人の顔も見ていないようだ。 俊夫さんが襲った?再び俊夫への疑念が浮かび上がる。 美樹本さんは意識はあるものの医者に見せねば安心は出来ない状態だと言う。 そこへ俊夫さんが戻ってきた。そして、みどりさんがいないことに気付く。 みどりさんは気になることがあると言って、死体のある部屋に行ったらしい。 OL三人組もトイレに行ったきり帰ってこないのも気になる。 俊夫さんが見に行くと言う。透は迷った、俊夫さんを一人で行動させていいのか。 考えていると真理が行くという。また透は迷った、俊夫さんを見張るべきか真理を守るべきか… 迷っていたら真理はさっさと二階へと行ってしまった。もし犯人が二階に隠れていたら… 心配になったところで真理は二階から降りてきた。 OLたちは誰も信用できないと言う。つまり、このペンションの中の誰かが犯人だと思っている。 誰もが考えていた可能性だ。疑心暗鬼。 しかし小林さんは反論する。人を殺しバラバラにする時間があった人間がいるか?と。 人を殺しバラバラにするのに30分かかるとする…夕食が終わったのが8時頃 食堂を出ると脅迫状の件でOL達が騒いでいた。その後、香山夫妻・小林夫妻・OL達が談話室へ来る。 そして美樹本さんが到着したのが8時半頃。これ以降、俊夫さん以外の全員が事件まで談話室にいた。 俊夫さんにもギリギリ犯行ができた? 透は疑問に思う、犯人はいつ犯行を行った?いつペンションに入り田中を殺害したのか? 窓は閉まっていた。正規の入り口はひとつ。田中が自ら招き入れた可能性もある。 色々と推理していると、みどりさんがまだ帰ってこないことを俊夫さんが気にする。 真理が行った時みどりさんは見当たらなかったらしい。とにかく危険なのには間違いない。 OL達もふくめ全員でまとまっていたほうが安全ではある。そこで全員でみどりさんを探すことにした。 二階に行くとジェニーが物置に向かって鳴いている。 小林さんが物置を開ける。そこにみどりさんがいた、すでに息絶えた姿で・・・。 174 かまいたちの夜1、長いよ sage 2005/06/22(水)15 25 54ID 964+6anK その5 みどりさんは殴り殺されていた。その姿を見た俊夫さんは怒りわめく。狂ったがごとき怒り そして悲しみ。透は真理にOL達を呼ぶように言い、自分は美樹本さんを呼んだ。 皆で談話室に一緒にいるほうが安全であるからだ。俊夫さんとみどりさんを残し談話室へと向かった。 数分後、俊夫さんはみどりさんを抱き一階の自室へと連れて行った。 俊夫さんが戻ってきたあと、第二の事件の皆に話した。 自分たちの中に犯人がいる可能性、ペンションの中にいる可能性。どちらにせよ全員でいれば犯人も ヘタに行動はできないということ。しかしお互いを疑う状態は続く。 醜く罵りあい、泣きわめく結果、重い空気が流れてしまった。 空気を変えるべく香山さんがテレビをつけた。銀行強盗のニュースがやっていた。 香山さんは気分をほぐそうとニュースについてコメントした。透もそれに乗っかった。 真理、俊夫も乗ってきた。少し空気がやわらいだ。 そして透は何故みどりさんは殺されたのかについて考えた。「気になること」とは? 何かを知ってしまったから殺されたのではないか。 透は田中の部屋を調べてみることにした。 田中の部屋はユニットバスなどを使った様子はなく、また荷物も何も入っていなかった。 透は推理してみるもまだ分からない。そこでとりあえず消去法を使って考えてみる。 第一の事件(田中殺し)・・・結果、香山夫妻だけが犯行できる時間を持っていたことが分かる。 第二の事件(美樹本殴り)・・・香山さんだけは携帯を試すと言い一人になる時間があった。 みどりさんも同時に殺すことが出来た。 理にかなった推理だ。香山さんに全員から恐怖・怒り・悲しみさまざまな感情がぶつけられる。 香山さんは当然否定するも推理を覆すようなことはできない。その場ではとりあえず地下のワイン庫へ 閉じ込めておく事にした。香山さんにすれば真犯人から身を守れる、他の人にすれば犯人を監禁できる ということで香山さんも了承した。 明日になれば吹雪がやみ警察が来る、そう信じて皆、自室へ戻っていった。 175 かまいたちの夜1、長いよ sage 2005/06/22(水)15 26 20ID 964+6anK その6 犯人は捕まえた…とはいえ本当の犯人かは分からない。不安が残るなか透と真理は二人で透の部屋にいた。 身も心も疲れていた透と真理はそのまま眠ってしまった。・・・ふと眼を覚まし、時計を見ると午前3時50分。 夜明けまでまだ時間がある。そして透は真理がいないことに気付く。真理は今一人だ、不安がよぎる。 廊下にでるもしんと静まりかえっている、真理の部屋へと向かう。すると突然、悲鳴が聞こえてきた。 真理の悲鳴だ、そして再び悲鳴が聞こえた。 透は真理のもとへ急いだ。真理は一階にいた。小林夫妻が殺された、真理の様子から透はそれを察した。 …まさか香山さんが、と思い地下室へ向かうと鍵をかけておいたはずなのに地下室の扉が開いていた。 おそるおそる中に入るとそこには香山さんまでもが殺されていたのだった。 透はもはや正常な思考ができなくなってきた。とにかく生き残る、それだけを考えた。 二人は二階へ戻り生き残った人たち(透、真理、春子、俊夫、美樹本、可奈子、亜希、啓子)に新たな被害を伝えた。 しかし美樹本だけは出てこない。心配になり様子を見に行く透。呼んでも返事がない…ドアに鍵はかかっていない 部屋に入ると美樹本はベットにいた、がすでに手は冷たく脈が完全に止まっていた。 おそらく怪我で脳内出血でもしたのだろうと透は思った。 透にはやはり俊夫が犯人としか考えられなかった。田中さんとみどりさんを殺したのは香山。 みどりさんの復讐のため、小林夫妻を殺し、地下室の鍵を手にいれ、香山さんを殺害した。 そう考えればつじつまは合う。 その後、真理、春子さんはOL達の部屋でまとまっていた。透は一人で小林夫妻の様子を見に行った。 小林夫妻の部屋に入ると、小林さんが包丁で刺され死んでいた。そしてバスルームには今日子さんの死体。 部屋から出ると裏口のドアノブに血がついてるのに透は気付いた。ドアは鍵がかかっていた。 透は覚悟を決め外に出ると血痕が雪の上に落ちていた。吹雪の中、透は突如、俊夫に襲われた。 しかし、透だと気付くと俊夫は手を緩めた。俊夫はひどい怪我をしていた。「あいつだよ・・・」 『あいつ』にやられた。そう言い残して俊夫は死んだ。透は混乱した、俊夫は犯人ではなかった。 あいつとはいったい・・・? 176 かまいたちの夜1、バッドエンド編 sage2005/06/22(水)15 27 34 ID 964+6anK その7-1 生き残っているのは透と真理、春子とOL三人だけだ。 果たして女性にあんな殺人ができたのだろうか?もしや香山が本当は生きていて犯行を行ったのでは? 香山の死を確かめに透は再び地下室へと戻る。だが確かに香山は死んでいる。 となると犯人は…真理?信じられない、信じたくない、透はそんな気持ちだった。 そしてモップを持ち、透は二階のOL達の部屋へ行く。ドアを開けると予想通りの光景だった。 可奈子、亜希、啓子、三人とも殺されていた。 廊下に出ると透は真理と出くわした。真理が透へ向かって足早に歩いてくる。何か握っているのが気になる。 真理はぼくまでも殺すつもりなのか?絶望する透。真理はこちらに向かって飛び掛ってくる。 透は真理めがけてモップを振り下ろした。真理の頭から血が噴出す。 真理を問いただす透だが、ふと真理の傍に落ちているネックレスを見つけた。真理はこれを握っていたのだ。 真理は透に抱きつこうとしただけだった。真理はそのまま息絶えた。 これは夢、ただの夢なんだ。朝、眼が覚めれば真理が起こしに来てくれて、またスキーの特訓をするんだ。 このあと真理とは公認のカップルになて、何年後かには結婚したりしてたりして…楽しいことを考えているのに 透の目から涙が止まらなかった。これは夢なんだ…空想にふけった透が我に帰ると目前に人影があった。 人影が透を襲う。これで夢が終わる。長い夢が終わって真理が起こしにきてくれる。早く起こしに来てくれ… 177 かまいたちの夜1、バッドエンド編 sage2005/06/22(水)15 30 56 ID 964+6anK その7で分岐(その6までは一緒ってことです) その7-2 生き残っているのは透と真理、春子とOL三人だけだ。 果たして女性にあんな殺人ができたのだろうか?もしや香山が本当は生きていて犯行を行ったのでは? 香山の死を確かめに透は再び地下室へと戻る。だが確かに香山は死んでいる。 となると犯人は・・・春子さん?香山さんと共犯だったとすればありえる話だ。 透はOLたちの部屋に戻った。しかし、そこには春子はいなかった。そして響く悲鳴。 春子のワナだろうか?迷う透に真理が見殺しにできないと飛び出す。 春子の部屋は鍵がかかっていた。マスターキーを取りに行く透。一階に下りると突如、部屋の電気が全て消えた。 真理が気になり透は二階へと戻ると廊下に真理がいた。透を心配してきたらしい。 急いでOL達の部屋に戻った二人、すると電気が回復した。そこには惨殺されたOLたちの姿があった。 そこで透はある考えが浮かぶ。透が心配だからといって一人で出歩いたりするだろうか? OL達と一緒だったのは真理しかいないのでは?疑う透に気付いた真理。真理は怒り自分の部屋へと帰ってしまう。 透も自分の部屋へと戻った。透はもう眠ってしまいたい気分だった。 真理が透を殺す可能性、真理が真犯人に殺される可能性。どちらも最悪である。 そこへ響く真理の悲鳴。ワナ? 透はすべてがどうでもよくなってしまった。もはや生きている意味はない。 透は部屋の鍵を開け、そのままベットで眠りについた…目覚めれば真理に会えると信じて 終 205 かまいたちの夜1、殺人事件編ハッピーエンドsage2005/06/24(金) 20 47 42 ID 5ACLjtXu その4解決編 その3から分岐 透は考えた。じつは犯人はずっと前からペンションに入り込んでいたのではないかと。 いつ?何処から?戸締りがしていた以上、正面玄関などの人目につく所しかない。 とすると…犯人は正面から入ってきたが誰も見えなかったのだ。 透には真相が見えた。この事件の謎、そして犯人が。 透は皆に犯人が分かったと告げる。驚く一同。全員が見守る中、透はそっと話す。 「犯人は、美樹本さんだ」 しかし、美樹本さんはシュプールに着てからは、ほとんど談話室にいた。 荷物を自室へ持っていく数分の間だけを除いては。どうやって殺害したのか、疑問を言う一同。 確かにその時間では犯行は出来ない。透はあっさり認めた。だが透は「田中さんは殺せずとも 鈴木さんなら殺せたんじゃないかな」と言い添えた。理解できない様子の一同。 「つまり、あの死体は誰かは分からないが田中さんではない」と言い切る透。 誰にも田中さんは殺せなかった、が死体は確かにある。ということは死体は田中さんではない。 犯人が分かった代わりに被害者が分からなくなった、と俊夫さんは鼻で笑う。 では被害者はどこから入ってきたのか?と小林さんは眉をひそめる。 透は答える。「もちろん、正面玄関からですよ」 正面から入ればチャイムがなり、スタッフには分かるようになっていると小林さんは反論する。 一人で入ってくれば気付かれる。しかし、田中さんと被害者が一緒に入ってくれば別である。 田中さんは間違いなく一人だったと断言する小林さん。 「スキーバックの中を確かめましたか?被害者はその中にいたんですよ。すでにバラバラになってね」 透がそう言うと全員が息を呑んだ。 死体をバラバラにした理由、それは運びやすくするためであった。 そして脅迫状、あれも犯人が書いた物で、12時ごろ死体を発見されるだろうと犯人は予想していた。 死体発見のきっかけとなった窓が割れる音。あれも犯人のしわざで、わざと死体を発見するように 窓が割れる仕組みを仕掛けたのだ、アリバイ工作のために。 窓は外開きのタイプだ。犯人は外へ出た後、ロープを窓につけ、そしてロープの反対側には平べッたい 板のようなもの…バックの底板など…を繋いでおく。窓と板をロープで繋いだ後、その板を屋根の雪に 突っ込んでおく。すると時間が経つと積もった雪が屋根から滑り落ち、板も一緒に落ちる。 ロープで繋がった窓は勢いよく引っ張られ、外壁に叩きつけられて窓が割れるという仕組みだ。 板とロープはそのまま雪に埋もれてしまう。この計画ではいつ雪が落ちるか分からない不確実なものだ。 そこで犯人はいつ窓が割れてもアリバイが作れるように、服も髪型も変えてペンションに戻ってきて 透たちとともに死体を発見する方法を使った。 美樹本はまず田中の格好をして顔を隠してペンションに来る。一緒にバラバラ死体を部屋に置いて、 窓が割れる仕掛けを作り、窓から逃走する。近くに隠しておいた車などで着替え、再び美樹本として ペンションへやってくる。そして、皆と死体を見つけることでアリバイを作ろうとしていた。 自分の推理を話し終えた透は美樹本へ話しかけた。もしその髭が本物なら謝ると。 真偽を見極めるために透は美樹本の髭をぐいと引っ張る。するとベリッという音とともに髭が剥がれた。 「やっぱり…」透が呟くとともに美樹本は透の腕をねじあげた。 美樹本は本性を現した。透の腕を人質に美樹本は全員を威嚇する。 透は自分に構わず、美樹本を捕まえるようにと叫ぶ。それを聞いた美樹本は透の腕を折った。 苦しみわめく透。それを見て楽しんでるかのような美樹本。 すると真理が透を助けに美樹本へ飛び掛る。もみ合う二人、大柄な美樹本に真理がかなうはずないと 思いながら何もできない自分を透は歯がゆく思った。 しかし次の瞬間、美樹本が高く飛び上がりテーブルに叩きつけられた。何と真理が美樹本を投げ飛ばしたのだ。 驚く一同。護身用に合気道をならっていたのが役立ったらしい。呆然としていた一同も我に帰り 今のうちに美樹本を縛り付けた。透は応急処置をしてもらい、ようやく皆の緊張がとけた。 みんな無事だったことを素直に透は喜んだ。真理はかっこよかったと言ってくれている。 そして皆が見ていないのを確認してから二人はそっとキスをした。 完 206 かまいたちの夜1、殺人事件編バットエンドsage2005/06/24(金) 20 48 43 ID 5ACLjtXu その6解決編 その5>透は田中の部屋を調べてみることにした。 >田中の部屋はユニットバスなどを使った様子はなく、また荷物も何も入っていなかった。 から分岐 談話室に戻り犯人が分かったと皆に告げる透。 犯人は…美樹本だと透は言った。外へ見回りに行った時に殴られた。あれは自作自演であった。 死体をバラバラにするほど手間をかける犯人である、それぐらいやるだろう。 透は自分の推理を話し始める。透は最初、死体をバスルームで切断した後、部屋に放置したのだろうと 思っていた。しかし、バスルームを使った様子はない。つまりすでにバラバラの状態で持ってきたのだ。 田中=美樹本だと言う透。全員に動揺が走る。そして反論する美樹本。 透は「つけひげでしょう?外れかかってますよ」言うと、美樹本は思わず手をアゴに当てた。 かまをかけたのだ、美樹本は見事に引っかかった。ニヤリと笑う美樹本。 そして透は事件の謎を解き始める。バラバラだった理由。窓ガラスを割る仕掛け。脅迫状。(内容は前と共通) 自作自演の襲われたふりは、あまり外を調べられたくなかった、窓を割る仕掛けが発見される可能性があるからだ。 全てを語った透は美樹本へ動機を聞く。美樹本は話始めた、いつの間にかその手には銃が握られていた。 みどりさんはやはり真相に気付いてしまった、そのために殺された。 実はバラバラ死体は美樹本の相棒であった。美樹本と南(バラバラ死体)はニュースでやっていた 銀行強盗犯だったのだ。誰もが驚いた。分け前の分配で揉め、美樹本は南を殺した。 盗んだ金は宅配便でシュプールに届けられる予定だとも言う。死体をうまく処分する方法として 手の込んだ、この事件を起こしたのだ。 全てを話し終えた美樹本は金が届くまで待って逃げるつもりだと言う。そのために他の人間を縛らせた。 拳銃で脅されながら縛られていく一同。透は俊夫さんと一緒に後ろ手で縛られていた。 何とかしなきゃ、俊夫さんがささやく。透がとまどっていると俊夫さんはズボンに果物ナイフがあると言う。 ナイフを抜いた俊夫さんは透の縛られているロープを少しずつ切り始める。 透のロープが切れる、俊夫さんのロープを切っている時間はあるのだろうか? と、そのとき真理が美樹本へストックを振りかざしていた。透は真理の手を汚させまいと美樹本へ 体当たりを食らわせる。勢いで美樹本の手から離れた拳銃は、真理の足元へと転がる、拾う真理。 美樹本は透の急所へケリを入れると、真理に向かって歩き出した。 拳銃を美樹本へ向ける真理。声が震え、腕も震えている。透は目を閉じた。次の瞬間、銃声が鳴り響いた。 そして静寂。透はおそるおそる目を開けた。そこには真理が座り込んでいて、美樹本は首をかしげていた。 美樹本の後ろには俊夫さんがいて、まだ腕は縛られているのにモップを握っていた。 真理の弾ははるか天井の方へあり、美樹本は俊夫さんがモップで殴ったのだ。 俊夫さんは後ろ手で縛られていたのに、手は前に来ていることを不思議に透は思った。 俊夫さんは体が柔らかく、両手の間から足を通して手を前に持ってきたのだった。 美樹本を縛りつけ、一安心する一同。みどりさんさえ生きていれば・・・悔やむ透。 真理が落とした拳銃を俊夫さんが拾い上げ、美樹本を見つめていた。美樹本を殺そうとでも考えているのだろうか? そこで透は思い出す、美樹本が盗んだ金がシュプールへ届けられることを。人の命を奪ってまで欲しい大金。 まさか、と透は俊夫さんを見ると、俊夫さんは拳銃をスッと操作し弾倉をはずす。 それを透に預ける。俊夫さんはみどりさんところへ行くと言い、自室へ戻っていく。 透はおぼろげながらAT拳銃の知識を思い出す。一発撃った後、新たな弾が本体へ送り込まれることを。 嫌な胸騒ぎを感じる。その時、どこからか銃声が聞こえた。 なぜ?なぜ?殺人犯が生きているのに、なぜ俊夫さんが死ななければならないのか? 透以外は誰も理解できない様子でいる。透はもう説明する気もなかった。 どうしてこうなったのか、透はただただ悲しむしかなかった… 終 207 かまいたちの夜1、殺人事件編バットエンドsage2005/06/24(金) 20 49 28 ID 5ACLjtXu その7解決編 透は『あいつ』の正体に気付いた。あいつは美樹本だ。 すべてを理解した時、悲鳴が鳴り響く。あせる透。 階段を昇ると、春子さん倒れていた。周りにあいつの姿は見えない。 近づくと春子さんはもうすでに助からない状態なのが分かる。 犯人が分かった今、透は恐怖や悲しみより怒りの気持ちがはるかに強かった。 そして透は美樹本の部屋へと向かう。美樹本の死体へ透は話しかける。 すると美樹本は死体のふりを止め、起き上がった。手の冷たさは雪を触って冷やした。 脈は脇の下にタオルを強く挟んで血行を止めたために無かった。自分の推理を美樹本に聞かせた後、 透は怒りをぶつけた、なぜ皆を殺したのかと。はぐらかす美樹本、そして立ち上がり透へゆっくり近づく。 透はモップを持っていたが、美樹本の異様な殺気に押される。覚悟を決め、モップで殴りかかった。 しかし、美樹本は攻撃をかわし透の首を後ろから絞めつけた。その手にはナイフが握られている。 喉へ冷たいナイフが当たる。その時、「透?」と声が聞こえ、どんと音がして美樹本がふらついた。 透はそのときうまく美樹本から逃れた。が、すぐに美樹本によって押し倒され両手で首を絞められた。 苦しみ、意識が遠のいていく透。だが、ふと美樹本の力がなくなる。そして眼を開けるとドアには 真理が立っていた。真理の両手は血まみれであった。 真理は透を助けるべくナイフで美樹本を刺したのだ。長い悪夢が終わったと透は思った。 しかし、なぜ美樹本はこんなことをしたのか?どうやって田中を殺したのか? 今となっては誰も答えられない。だが、今は真理と生きていることを喜ぶのだった。 終 208 かまいたちの夜1、スパイ編 sage 2005/06/24(金)20 50 09ID 5ACLjtXu その2スパイ編 その1の夕食後>談話室に戻ってみると小林さんとOL三人組がなにやら言い争っている。 から分岐 どうやらOL達の部屋に『こんや かまいたちが あらわれる』と書かれた紙が投げ込まれたそうだ。 その言葉を聞き、青ざめる真理。気にする透だったが真理は答えてくれなかった。 誰かのイタズラ…もしくは誰かへのメッセージだが間違えてOL達の部屋に入れたのでは? どちらにせよ気にするものではない、と小林さんは言った。透もそうだろうと思っただろう、真理の 青ざめた表情さえ見ていなければ。ますます気にする透だったが、真理は透を置いて二階の自室へと戻っていく。 透が真理を追おうとすると、小林さんがお茶でもしないかと話しかけてきた。断るのも妙なため透は そのまま談話室にてお茶を飲むことにした。だが、やはり透は真理のことを気にかけていた。 あのメッセージ…もし真理へ当てたものだとすれば?真理が青ざめてもおかしくない…などと 考えていたところ、真理が二階から降りてきた。真理は何事もなかったごとき様子だ。 透はただの思いすごしだ、そう思いこんだ。 その時、外から車の音が聞こえた。遅れてやって来た客・美樹本が現れた。 美樹本さんが二階の自室へと昇っていくとき、OL達が鋭い目つきで彼を見ていたようだった。 お茶が入り、透、真理、OL三人、美樹本、小林夫妻、みどり、俊夫と談話室に人が増えにぎやかになった。 夜も更け、そろそろ寝ようと各自部屋へと戻っていく。 透は真理を部屋に誘うも断られる、やはり何かを気にしている様子だ。 部屋に戻り透は一人、真理のことを気にする。するとノックの音が聞こえる。真理?と喜んだ透。 しかし、ドアを開けるとそこには可奈子がいた。とまどう透をよそに可奈子は部屋に入り ワインを飲まないかと誘う。そして可奈子は透を誘惑する。色仕掛けに迷う透・・・ そして透は可奈子へと飛びかかった。・・・ふと気がつくと、そこには真理がいた。 透はいつの間にか眠っていたようだ。真理に起こされ、あたりを見回すと そこには可奈子の死体があった。 209 かまいたちの夜1、スパイ編 sage 2005/06/24(金)20 50 36ID 5ACLjtXu その3スパイ編 可奈子は喉元を真一文字に切り裂かれ死んでいた。驚く透に対し、真理は冷静に死体を観察する。 可奈子に誘惑されたことを真理に話した透は、床に血文字が書かれているのを見つける。 「かまいたち」 ダイイングメッセージなのだろうか?あの手紙との関係は?考える透に真理は気にするなと言い放つ。 慌てふためく透に真理は苛立ちながら、冷静に事を対処していた。そのことを透は不審に思った。 そして真理は小林さんを呼びに一階へ向かう。小林さんが透の部屋へ来ると、突然ベットの下などを 探し始めた。やがて小さな黒い物=盗聴器を見つけて外へ捨てた。 その後、小林さんは透が飲んだワインを調べ自白剤が入っていたと言った。 透を無視し話し始める小林さんと真理。フランス情報部がなんとかとか盗聴器がどうとか… なにがなんだか分からない透。小林さんは心を決め、透へ話し出した。 実は小林さん、真理も日本の諜報機関なのだと。他国のスパイの動向を探る役目らしい。 そう可奈子もまたフランスのスパイで透を重要な人物と勘違いして自白剤を飲ませたようだ。 その重要人物が「かまいたち」という伝説のスパイ集団なのだ。「かまいたち」は昔、ソ連のスパイで 重要な機密を握っていた。しかしソ連が崩壊した今、彼らは居場所がなくなってしまった。 しかし重要な機密を持ったまま行方がしれなくなったため、様々な国がその情報を得たいがために 彼ら「かまいたち」を手に入れるべく暗躍しているということを。 「かまいたち」が今夜このシュプールに現れる、そんな情報を日本は手にいれ「かまいたち」を 捕まえるべく、このペンションを借りて小林さんはオーナーの姿をして探していたのだ。 真理もまた普通の大学生という姿でカモフラージュし、ここへ来たのだ。透はそれに利用されただけ だったのだ。悲しむべきか怒るべきかも分からない透だった。 そんな透をよそに話は続く。ダイイングメッセージ・『こんや かまいたちが あわられる』という手紙。 これらは「かまいたち」をあぶり出すために行われたことだと小林さんが言う。 あの手紙はOL達の自作自演で、「かまいたち」という言葉に反応するかどうか確かめたのだ。 真理は反応してしまったために一緒にいた透を可奈子は狙ったのだった。 そして小林さんは死体をバスルームへ隠し、透に朝まで何事もなかったごとくしろと 言い放つと出て行った。真理も出て行き、部屋には透と死体だけになってしまうのだった。 210 かまいたちの夜1、スパイ編 sage 2005/06/24(金)20 51 31ID 5ACLjtXu その4スパイ編 死体のことを気にしつつ、何とか時間を潰した透。朝6時ごろに部屋から出て一階に行くと みどりさんがいて、透に話しかけた。俊夫さん、みどりさんも小林さんの部下だと言う。 それを聞いた透は少し安心し、談話室でコーヒーを飲んでいた。すると真理もやって来て ごく自然に話しかけてきた。その時、OL達二人も談話室へやって来て透と真理に可奈子のことを聞く。 はたしてスパイなのか透と同じくカモフラージュ要員なのか…当然知らないふりをする透たちであった。 その後、香山夫妻、美樹本さんもやって来て朝食まで時間を潰した。 朝食の時間、食堂には可奈子以外来ていた。あの怪しい田中も相変わらず顔を隠し食事を取っている。 このなかの誰かが「かまいたち」なのか…疑いだすとキリが無く、食事風景すら腹の探り合いのようだった。 そして最初に食べ終え二階へと向かったのは田中だった。 真理は何気ないふりをして田中の後をつけていった。透は食堂に残り他の人間の様子を見ていた。 次に美樹本が食事を終え二階へと行く。透はつい立ち上がり後をつけた、自分の部屋に盗聴器を 仕掛け、殺人をした相手のことを腹を立てていたのだろう。 二階につき、さり気なく美樹本を見ていると彼は普通に部屋に入っていった。が、すぐに出てきて 透のほうへ向かってやって来た。自室へと逃げ込む透、だがドアを閉めようとした所で美樹本に 力ずくで開けられ、透へと襲い掛かってきた。 体を押さえつけられる透、美樹本は透から情報を聞き出そうとする。 しかし突如、美樹本の力がなくなる。見ると真理が立っている、手刀一発で気絶させたようだ。 美樹本を縛り上げると、真理は透を連れ立ち美樹本の部屋へと向かう。 部屋で真理は手慣れた様子で、バックから様々な物を見つける。無線機、信号弾、パスポート どうやら彼はアメリカのスパイなようだ。美樹本は「かまいたち」ではなかった。 一方、田中は部屋でおとなしくしているようだ、彼が怪しいことには変わりはないが。 美樹本の部屋を出ると真理はすぐに透の部屋へ向かった。透もそれにつづく。 部屋に着くとまず気絶させた美樹本の様子を確認すると、つぎにバスルームへと向かう。 バスルームを開けた瞬間、何者かが真理を襲った。それは河村亜希だった。彼女がアイスピックを持ち 真理を狙っている。透が助けようとしたとき、背後から北野啓子が透の狙った。 啓子は透の首にピアノ線を巻き、絞め始めた。かろうじて指を食い込ませた透だが、このままでは 指も首もピアノ線によって切断されてしまう。嫌だと思う透、すると真理が透は関係ない人だと言った。 そして真理はOL二人…フランスのスパイ達に素性を話す、日本の諜報機関のものだと。 OL二人は可奈子を殺したのは透たちだと勘違いして、襲ってきたのだ。 事情を話した結果、二人ともおとなしくなってくれた。その時、部屋をノックする音がした。 OL二人はバスルームへ隠れる、そしてドアを開けるとみどりさんがいた。 211 かまいたちの夜1、スパイ編 sage 2005/06/24(金)20 51 53ID 5ACLjtXu その5スパイ編 どうやら小林さんが見当たらないらしい。真理はみどりさんに何か告げ、一緒に出て行く。 透は部屋に残っていると、またしてもノックする音が。出てみると春子さんがいた。 春子さんは小型銃を持っていた。またしても狙われる透。「かまいたち」について問いただす春子さん。 そこへ真理が戻ってきて、春子さんと格闘する。真理はあっさり春子さんをのしてしまった。 春子さんも縛りあげた後、田中の部屋へ行くと真理は言う。 OL三人、美樹本、香山夫妻がスパイであった今、残るは田中しかいない。 部屋を出た透はバスルームに隠れたOL達を気にする、が真理はみどりさんに催眠ガスを仕込むように 告げておいたから安心だと言った。 田中の部屋をノックする。ドアを開ける田中、部屋の中だというのにまだ帽子、サングラスの格好だ。 話があると告げると、田中は全てを悟った様子で部屋へ二人を招いた。 田中が何者であるか分かったと言い、金の取引を持ちかける真理。 それを聞いた田中は少し考え込む、すると突然ドアから声が聞こえる。 そこには香山夫妻が大型銃をこちらに向けていた。驚く田中に香山さんも取引を持ちかける。 どうやら香山夫妻はイスラエルのスパイのようだ。春子さんが透に真理を縛るよう脅す。 だが次の瞬間、バスルームが開き何かが飛び出してきた。 意外にも河村亜希と北野啓子だった。 香山夫妻が持っていた銃は二人によって奪われてしまった。 バスルームに閉じ込めておいたのだが、バスルームの天井裏が隣と繋がっていたため出てこれたのだ。 一体何がどうなっているんだ!悲痛な叫びを上げたのは田中だった。 その田中はこのままOL二人ことフランスに連れて行かそうになる。 亜希は啓子に迎えの連絡を入れるように指示し、啓子は部屋から出て行った。 悔しがる真理は唇を噛んでいた。しかし今度はドアから声が聞こえた。 ドアを開けるとそこには、みどりさんが啓子に拳銃を突きつけていた… 212 かまいたちの夜1、スパイ編 sage 2005/06/24(金)20 52 39ID 5ACLjtXu その6スパイ編 間一髪助かり、真理は亜希から銃を取り上げ、そして田中を外へ連れだそうとした。 香山夫妻、OL二人はみどりさんに任せ、透と真理は一階へと向かう。 そしてボスである小林さんに伝えようと小林夫妻の部屋に入るも誰もいない。今日子さんも見当たらない。 困惑しているとそこへ俊夫さんがやって来て、田中を外へ連れ出すのは自分の役目だと告げる。 そんなこと聞いていないと食い下がる真理だったが、小林さんがそう決めたと聞くとしぶしぶ承知した。 田中は俊夫さんに連れられていく、しかし透はそこで違和感に気付く。 俊夫さんの格好が薄着すぎるのだ。冬の雪山に行くのだから普通は厚着するはずなのに 俊夫さんは部屋着のまま田中を連れ出した。そのことを真理に告げると真理は俊夫さんを追い、裏口にいた 俊夫さんに銃を突きつけた。驚く俊夫さんに対して真理は冷たくあしらう。 真理は透に小林夫妻の部屋および俊夫の部屋を調べるように指示する。小林夫妻の部屋を再度調べる透。 そしてバスルームを開けると…そこには死体があった、今日子さんだった。 今日子さんは可奈子と同じく喉を真一文字に切り裂かれていた。その様子を見た真理は俊夫を問いただす。 しかし俊夫は自分が殺したのではないと、否定した。すると、部屋の外で様子を伺っていた田中が何者かに 連れ去られてしまった。慌てて田中を追う俊夫。しかし、飛び出した俊夫はマシンガンに餌食となり、絶命した。 意外な展開に驚く透と真理。透が壁からそっと覗き込むと、そこには何とみどりさんが田中とともに マシンガンを持っていた。可奈子を殺し、今日子さんも殺し、今また俊夫さんを殺した…全ての犯人はみどりだった。 彼女はダブルスパイだったようで、真理たちを裏切ったのだ。そして、田中を連れたみどりはスノーモービルに乗り ペンションから逃げ出そうとしていた。急いで追いかける透と真理。 二人もまたスノーモービルを使い、みどりを必死に追いかけた。荒れた雪道を全速力で駆け抜けていく二人。 透はまるでロデオのごとく飛び回るスノーモービルから落ちないようにするだけで必死だった。 そうこうしている間にみどりのスノーモービルに追いついた。スノーモービルを運転しながらマシンガンは さすがに撃てない、そのチャンスを狙って真理は近づくも、みどりは車体をこちらにぶつけて来た。 何とかみどりの攻撃をかわし、ふたつのスノーモービルは横に並んだ。 そこで真理は透に田中に飛びつくように指示をし、透は言うとおり飛びついた。 田中とともにスノーモービルから転げ落ちる透。雪の上とはいえ、かなり冷たく痛かった。 その後、スノーモービルがぶつかる音、そして壊れたような音が聞こえた。 透が雪の中から這い出てくると、そこにはみどりがいた。しかもマシンガンをコチラに向けている。 みどりは田中以外に用はない、まして余計な秘密を知った透は邪魔な存在。 マシンガンの引き金をみどりは引いた… 213 かまいたちの夜1、スパイ編 sage 2005/06/24(金)20 53 50ID 5ACLjtXu その7スパイ編完結 透に向けマシンガンを撃つみどり。 …しかし、弾が出ない。何度やってもカチリ、カチリと音がするだけで弾が出なかった。 「凍り付いているのよ」どこからか真理の声が聞こえた。 ここぞとばかりに透はみどりに飛び掛っていく、しばらく転がりあう二人。 だが、結局みどりが透の体を押さえつけたのだった。 みどりの手から現れる鋭いナイフ、その刃先には血の跡がついていた。これで皆を殺したのだろう。 今度こそ絶体絶命、透がそう思い覚悟を決めた時銃声が鳴った。 みどりの胸から血が流れる。信じられない様子のまま、みどりは死んだ。 真理が撃ったのだ。真理も服があちこち破け、顔には血がついている。 それでもお互いが生きていることに安堵すると、そこへ一台の車がやって来た。 降りてきたのは小林さんだった。驚く二人、そして小林さんは透、真理、田中、そして死んだみどりを 見てから「…済んだようだな」と呟く。 真理は事情を小林さんに聞く、その声は怒りを必死に抑えているようだった。 小林さんは言う。仕方がなかった、と。実はこの作戦は全て偽りで、『かまいたち』を捕らえる任務と 称して、内部の裏切り者を見つけ出す作戦だったのだと言う。真理も含め裏切り者の可能性のある者が この作戦に参加させられたのだ。さらに、『かまいたち』なんて存在しないとも言った。 伝説のスパイ『かまいたち』は日本の諜報機関が長い間をかけ、作り上げた幻想だった。 その幻想を内部にも外部にも信じ込ませることで、何かに利用するために作られたものであった。 結果として内部の裏切り者を見つけ、さらに各国のスパイを一網打尽することは出来た… だが、真理の気持ちは怒りに満ちた。皆をだました挙句、死人まで出ていることが許せなかったのだ。 小林さんはそんな様子にも気付かず、嬉々として話を続けていた。 そして、透と真理は同時に小林さんを殴り飛ばした。 二人は同じ気持ちだったらしく、互いを見て笑い出した。小林さんは怒りをあらわにしている。 しかし、二人はそんなことはお構いなしに、小林さんが乗ってきた車に乗り込んだ。もちろん田中も一緒だ。 そして、小林さんを置きざりにし、そのまま車を走らせた。 透はふと疑問に思った。田中は一体何者なのか?取引に乗ったのは何故なんだ? その疑問を口にすると田中は泣きながら答えた。 実は田中は、客のふりして宿泊しペンションのランク付けをする旅行雑誌のライターだった。 取引とは金を貰うかわりに評価をあげてやるということだったのだ。 それを聞いた透と真理は笑い出した。一番怪しい田中が普通の人で、後は全員スパイだったのだ。 こんな冗談があるのだろうか?透は馬鹿馬鹿しく思い、とてつもない疲労感に襲われるのだった… 完 215 かまいたちの夜1、ゲーム編 sage 2005/06/24(金)21 27 45ID 5ACLjtXu その2ゲーム編 その1>透と真理はスキーウェアの着替えを済ませたあと、1階の談話室へ降りてきた。 から分岐 談話室に来た透と真理はそこにゲーム機があるのに気付く。 面白そうだと思い、さっそく透はゲームを手に取った。 「弟切草」と「かまいたちの夜」の二つのソフトがある。透は「かまいたちの夜」をゲーム機に セットし早速始めるのだった。ゲームが始まる。 …透と真理はスキー場に来ていた。スキーに不慣れな透は転んでばかり、 …一方の真理は雪国育ちでその腕前を存分に披露していた。 …そして透がクタクタになってきたころ、空模様もあやしくなってきたため、 …二人はペンション「シュプール」へと帰ることにした。 ゲームの内容が自分たちの行動と全く一緒なことに違和感を感じる二人。 …談話室に来た透と真理はそこにゲーム機があるのに気付く。 …面白そうだと思い、さっそく透はゲームを手に取った。 ここまで同じな事に透は不気味さを感じていた。 …「弟切草」と「かまいたちの夜」の二つのソフトがある。透は「かまいたちの夜」をゲーム機に …セットし早速始めるのだった。ゲームが始まる。 ……透と真理はスキー場に来ていた。……ゲームの内容が自分たちの行動と全く一緒なことに違和感を感じる二人。 さきほどの現実の会話さえ、ゲームのなかに出てきた。透の手は震えていた。 しかし、ここで止めると本当に気持ち悪いままになってしまう、透はむりやり続けた。 ………透と真理はスキー場に来ていた。………ゲームの内容が自分たちの行動と全く一緒なことに違和感を感じる二人。 ………しかし、ここで止めると本当に気持ち悪いままになってしまう、透はむりやり続けた。 予想通り現実とゲームの中の透と真理は同じ会話を繰り返している。 ゲームの中にゲームがあり、さらにゲームが…と終わらないループ。 ゲームの中の「透」が、さらにゲームの中の「透」をプレイしていた。 ………透と真理はスキー場に来ていた。……どうせここにゲーム機があるんだぜ、そう言ったのは 現実の「透」だろうか?それともゲームの「透」? ……ゲームの中で透と真理は当然スキーをしシュプールへ来て、ゲームをする… ……真理が言った、ゲームより話をしようと。それに「透」はうなずいた。 ……談話室には関西弁の社長と奥さん、それとOL三人がいた。 ……社長は釜井だと名乗った。それを聞いた透は驚いた、透も苗字はカマイ(鎌井)だと言う。 ……そして女の子や、黒メガネの怪しい人も加え宴会になった。 ……「実はわたしもカマイで…」「ノルウェーのノヨル・カマーイです」・・・ ……皆で酔っ払い大騒ぎし、実に楽しい夜だった、透はそう思った。 ……『鎌井 達の夜』 完 …「なんだ、このゲーム?」そう言って「透」はゲームの電源を切った。 …「ひどいな、こりゃ」そう言って「透」はゲームの電源を切った。 …「どうなってんの?」そう言って「透」はゲームの電源を切った。 ゲームの中の「透」は次々と電源を切っていく。「透」はそれを呆然と見つめていた。 そして「透」の手が誰かに操られたようにスイッチを切る… 我に返った気がして透は辺りを見回した。そして透は気付いた。 ・・・テレビの向こうで電源を切ろうと手を伸ばす、もう一人の「ぼく」の姿を・・・ (画面は砂嵐に) 終 216 かまいたちの夜1、ゲーム編 sage 2005/06/24(金)21 33 06ID 5ACLjtXu 分かりにくいと思うので、ちょっと解説。 文中…三点リーダはゲームの世界の話です。 元祖SFC版「かまいたち」は、オートセーブでした。 つまり最後に電源を切ったのはテレビの前のプレイヤーということです。 この話はリセットしないと話が終われない、先に進めなかったので、 電源を落とさざる終えませんでした。 あと最初に名前入力が出来て「ぼく」=「透」というわけです。 392 かまいたちの夜1、悪霊編 sage 2005/07/02(土)11 43 31ID OITnqTYZ その2悪霊編 その1>食後、真理がナイターへ誘ってきたものの、俊夫さんとみどりさんに吹雪のことを聞き断念する。 から分岐 夕食後、透は思い切って真理を自分の部屋へと呼んだ。談話室では何かもめてるようだが気にせず部屋へ向かった。 部屋に戻ると二人はいい雰囲気になる。そのとき、透は窓の外に何か人の姿がこちら見ている気がした。 驚く透は窓から外を調べてみた。この部屋は二階で外は吹雪だ、いるはずはない…が不安が拭えなかった。 真理が先ほど談話室で覗かれたとか、もめていたことを思い出す。気味が悪くなった二人は談話室で話を 聞くことにした。談話室へ戻ると、まだOL達と小林さんがもめていた。やはりOL達も二階の部屋で 人の姿をしたものに覗かれたようだった。透は小林さんの態度が怪しいことを感じていた。 OL達はしぶしぶながら、あきらめ二階へと戻っていく。小林さんに事情を聞こうとするも、 客商売として幽霊だのの話はご法度であると、たしなめられた。しかし、小林さんは小さな声で教えてくれた。 実はこのペンションには時々、幽霊が出ると。目撃してしまった以上、それが嘘とは思えない二人。 小林さんも始めは幽霊などいるはずないと思い、様々な要素を検討したらしい。だが、誰かのイタズラなど ではないことは確実であったようだ。すると、そこで小林さんは話を打ち切った。 ちょうど遅れて新しい客がやって来たのだ。その客は透と真理に挨拶をかわすと、早速話しかけてきた。 何か変わったことがなかったか?意味ありげな質問をする客に対し、二人は知らないふりをした。 ちょうど小林さんが戻ってきて、青ざめた表情でその会話に割り込んできた。 遅れてきた客は美樹本と名乗った、フリーライターらしい。このペンションにはある噂を聞いて やってきたらしい。その噂は…幽霊だと言う。その言葉を聞いた透たちは凍り付いてしまった。 その雰囲気を察した美樹本は、透と真理から情報を聞き出そうとした。 次の瞬間、女の人の悲鳴が響き渡った。美樹本さん、小林さん、透、真理は二階へと急いだ。 すると二階の一部屋から香山さんが出てきて、春子に何かがあったと言う。 部屋に入ると春子さんが倒れていた… 393 かまいたちの夜1、悪霊編 sage 2005/07/02(土)11 43 51ID OITnqTYZ その3悪霊編 香山さんに事情を聞くと、春子さんは窓の方を見ていたところ突然、悲鳴を上げ倒れたらしい。 透たちはやはり幽霊…と思った。香山さん曰く春子さんは自分は霊感が強いと言っていたようで、 それで何かを見てしまったのだろう。しかし、小林さんはそれを強く否定しようとした。 すると、春子さんが目覚めた。春子さんもまた、窓に何かをみたと言うと、不穏な空気が流れた。 この事態に気付いたOL達も部屋に来ていた。小林さんは慌てて誤魔化し、部屋のドアを閉めてしまった。 美樹本さんがいよいよ本物を見つけたと言うと、小林さんはかたくなに否定する。 美樹本さんは小林さんをさえぎるように、話し始めた。二十年前、クリスマスイブここで何かが起きたと。 話を聞き、うろたえる小林さんは話させまいと真理を連れて部屋を出ようとする。 しかし、美樹本さんは真理は事件の当事者だから聞く権利があると言った。真理はとまどい、小林さんは 怒り叫ぶ。真理の実の親が事件と関係あるとも言った。真理の心は揺れ動く。 小林さんに激しく問い詰める真理。小林さんは悲しげな表情を浮かべ、顔をそらした。 再び美樹本さんが話しを始める。二十年前はここはペンションではなく、大地主の炭焼小屋であった。 大地主には三人の子供がいた、一郎、二郎、純子という名だった。 真理が驚き口を出す。純子は母の名だと、しかし母には二郎しか兄弟はいないと聞かされていた。 なおも美樹本さんは話を続ける。長男の一郎は炭焼小屋の雇い人の娘・美雪と恋に落ち、子供を宿した。 それを知った大地主は激怒した、それでも一郎は父である大地主に説得を続けた。 そして、ある吹雪の日に一郎は父に呼び出されていた。しかし、父の態度を不審に思った一郎は慌てて 炭焼小屋へと向かい、そこで彼は血まみれの美雪とその両親を見つけた。 しかし、奇跡的に当時九ヶ月ごろの胎児の命は助かった。 その胎児は「真理」と名づけられ、子供のいない純子夫妻に引き取られることとなった… だが、この殺人事件は犯人は捕まらずウヤムヤになり、そして一郎は首を吊って死んだ… 事実を知り、衝撃を受け悲しむ真理。そんな真理を透はどうしてやることも出来なかった。 394 かまいたちの夜1、悪霊編 sage 2005/07/02(土)11 44 12ID OITnqTYZ その4悪霊編 小林さんは美樹本さんと睨みあう、すると真理が突然部屋から飛び出していった。 慌てて追いかける透、だがその前に皆へ怒りをぶつけてから追いかけていった。 真理は部屋にこもっていた、透はドア越しに話かけても、素っ気な返事ばかりだった。 そのため今は一人にしてあげようと思い、透もまた自室へと戻っていった。 しかし、真理が気にかかる。そばにいてやろうか、一人にさせとくべきか、迷っていたところに 突如、ガシャーンというガラスの割れる音で透は我に返った。 音を聞いて皆が部屋から出てきて集まる。しかし、真理と田中だけは出てこない。 呼んでも返事がない。すると今度は男の叫び声がした、今いないのは田中しかいない。 美樹本さんがいち早く田中さんの部屋をノックし呼びかける。ただならぬ感じに小林さんも マスターキーを使い部屋を開ける。すると、部屋の中から冷たい空気が流れ出した。 田中さんの部屋は赤くなっていた。血が壁一面に飛び散り、田中はベットの上で痙攣していた。 その様子に皆、絶句していると春子さんが頭を抱え倒れた、何か危険なものがいると呟いて。 春子さんはみどりさんに任せると透と美樹本さんは田中さんを調べた。窓が割られ、そこから 入ってきた何かにズタズタに切り裂かれたのだろう。その何かとは…? 悪霊…真理の両親の話を聞いた透はその考えが正しく思えてきた。 そして真理を思い出す、この騒ぎでも彼女は部屋から出てこない。気になる透は真理の部屋へと向かう。 激しくノックをし大声で真理を呼ぶ。ドアが開き真理がバスタオル姿で立っていた。 どうやらシャワーを浴びていたようだ。透は田中が殺されたことを真理に告げ、談話室へ集まろうと言った。 真理は着替えたらすぐに向かうと言ってドアを閉めた。 そして談話室にて、小林さんは警察へ電話をしようとするが通じない。透も試すが何も聞こえない。 何回か試すと何かが聞こえた。「真理…」電話からおぞましい声で真理を呼ぶ声が聞こえた。 透の背筋は凍りつく。するとまだ降りてこない真理が気になった。 その時、まさに二階から「やめて」という女性の声と意味不明の叫び声が聞こえた。 透は急いで二階へと向かう。すると香山夫妻の部屋から何かが争う声が聞こえる。 ドアを開けるとそこには香山さんと春子さんが血まみれで倒れていた。 そしてもう一人、全裸で返り血を浴びている女性…真理がいた。 395 かまいたちの夜1、悪霊編 sage 2005/07/02(土)11 44 26ID OITnqTYZ その5悪霊編 真理に呼びかける透、すると「真理…」透が電話で聞いたおぞましい声が再び聞こえた。 透は真理へと近づいていく、その時、真理の髪の毛がムチのように襲い掛かる。 透は痛みを感じ、胸元を見ると洋服ごと切り裂かれ、血がにじみ出ていた。 田中さんをやったのもこの髪の毛だろう。 再び襲い掛かる髪の毛、だが間一髪、美樹本さんが透を助けてくれた。 真理を呼ぶ透、しかし小林さんが呆然とした様子で言った。「美雪さんなのか?」 真理こと美雪は悲しく恐ろしい声で叫ぶ。「ムスメヲ…カエシテ」 美雪の霊は、真理の身体を媒体にしていると美樹本さんは言う。 やはり、これは真理なのだ。そう透が思った時、髪の毛が小林さんの首を締め付ける。 小林さんの顔色が紫になっていく、透は真理に呼びかける。 突然、真理の動きが止まり、そしてくずれおちた。 美樹本さんが手早く真理を毛布に包み、部屋へと連れて行った。 そして真理を部屋のベットに寝かせると美樹本さんは突然、透に向かって真理のことをどう思っているか 聞いてきた。彼女への素直な気持ちを言うと、美樹本さんはあとは任せると言って、お守りを透の首にかけた。 そのお守りには古今東西、ありとあらゆるお守りがくっ付いていた。 どれかしらが悪霊に効くだろう、そう言って美樹本さんは部屋から出て行った。 それから透は真理についた返り血を拭いてやろうと思い、バスルームを開けるとそこもまた血で 壁が染まっていた。…田中さんの返り血だろう。田中さんを殺した後、血を消すため真理はシャワーを 浴びていたのだ。そしてその後、何食わぬ顔で透と話をしていた… ふと気配を感じ振り返ると真理が立っていた。そして髪の毛で透の首を締め付けてくる。 が、突如異常な悲鳴をあげると真理の髪の毛が燃え上がった。 まさか、このお守りが効いたのだろうか?そう思いながら透はまた真理に呼びかけた。 すると、美樹本さんと小林さんが部屋に飛び込んできた。 しかし、突風が巻き起こり、部屋に壁に全員叩きつけられて動けなくなった。 割れる窓ガラス、割れる蛍光灯、怪奇現象が次々と起こる。 「ユルサナイ…」「ヒトゴロシ…」「ナゼコロシタ…」真理=美雪はそう言った。 それを聞いた小林さんは慌てて「手違いだった。私は手切れ金を持っていっただけだ、私のせいじゃない」と言い返す 美樹本さんが「あんたが殺したのか」と呟く。小林さんは懺悔するがごとく「私のせいじゃない」と繰り返すばかり。 透は目の前の怪奇現象より、真理の母親を殺したのが小林さんだったという事実の方に驚いていた。 ふと気がつくと部屋の怪奇現象は止み、恐ろしいほどの沈黙に包まれていた。 「ユルサナイ」「ゼッタイニユルサナイ」美雪は小林さんを責め、そして髪の毛で小林さんの首を絞め始めた。 お守りを投げるように、と美樹本さんが叫ぶ。慌てた透は首のお守りをバラバラにしてしまった。 散らばるお守り、様々な種類がある。どれが効果があるか分からない、透は手元に落ちてた安産のお守りを 真理に向かって投げつけた。しかし、お守りは軽く真理に届かない。しかたなく透は十字架、モアイ像 青い玉…全てのお守りを投げつけるも、全て効き目がなかった。小林さんはすでに限界である、絶望する透。 そんな時、美樹本さんが叫ぶ「もうやめるんだ、姉さん!」 396 かまいたちの夜1、悪霊編 sage 2005/07/02(土)11 44 50ID OITnqTYZ その6悪霊編完結 透は意外な言葉に呆然とした。美樹本さんが弟?疑問に思いつつ透がお守りを探していると なおも美樹本さんは叫び続けた。たまたま叔母の家にいた美樹本さんはあの事件に巻き込まれなかった。 まだ小さかった美樹本さんに周囲の人間は事実を教えなかった。しかし、事実を知った美樹本さんは 自分の手で仇を取ると決意をした。その言葉を聴いた美雪は、仇を美樹本さんに託そうした。 だが美樹本さんは「殺す」という復讐ではなく、事実を明らかにする形で仇を取るつもりだと言う。 すると、美雪は猛り怒った。建物全体が大きく唸りがごとく、床がきしみ、壁がたわみ、天井が揺れた。 天井がひび割れだし、再び部屋中に突風がうずまいた。美樹本さんがお守りを、と叫ぶ。 しかし、もう手元には安産祈願しかない。透が言い返すと美樹本さんが、そのお守りは真理が生まれるとき 美雪が持っていたお守りだと言った。これこそが復讐の憎悪を溶かすものだと確信した透はお守りを 持つ。が、部屋が波うち、お守りは遠くへ飛ばされる。走って拾う透に対し、美雪は髪の毛で絞めつける。 動けない透。美樹本さんが「真理の幸せを願うなら、もうやめるんだ!」と叫ぶ。 「真理」、その言葉を聞いた途端、絞めつける力が弱まった。それを機に、透はお守りを拾うことが出来た。 そして、お守りを真理の身体へと近づけていく。どんどん弱まっていく悪意。 真理の身体から力が抜けていく。透は真理の名を叫び、真理の身体を抱きしめた。 すると強い衝撃と熱さが透の身体をかけぬけたが、それでも透は強く真理を抱きしめた。 「イやヤあああアあー!!」真理とも美雪ともつかない声が響き渡る。 真理の身体から完全に力が抜け、崩れ落ちた。そして、何かが真理から抜け出るのを透は見た気がした。 美樹本さんも同じものを見たようで姉さん、と呟きながら涙を流していた。 全てが終わり、部屋が嘘のように静まり返っていた。小林さんもまだ息があるようだった。 真理をベットに寝かせると透は美樹本さんに疑問をぶつける。 美樹本さんは小林一族の誰かが犯人であると思い、証拠を探していた。ある時、シュプールの幽霊騒ぎを 聞きつけた、それをネタにうまく自白を引き出せないかと思い、ここへ来たようだ。 しかし、あの事件を真理に聞かせたせいで、ショックを受けた真理と美雪の憎悪がシンクロしたせいで あのような事態が起こったのではないかと美樹本さんは言った。 そして、透は一番気になることを聞いた。真理はいままでのことを覚えているのだろうか? 覚えていれば…二人の人間を殺し、実の叔父まで殺しかけた…この事実に耐えられるだろうか? 美樹本さんは、もし覚えていれば立ち直ることは出来ないだろうと言った。 しかし、透なら、真理を立ち直らせることが出来るかもしれない、とも言った。 真理のことを頼まれたが、透にはその自信がない。しかし、自分の出来ることをしようと透は思った。 まだ手に持ってた安産祈願を眠っている真理の手に握らせる。 透は真理の眼が覚めたら言ってあげようと思うことがあった。 『お母さんは君を愛していた』と… 完 397 かまいたちの夜1、その他 sage 2005/07/02(土)11 50 13ID OITnqTYZ エンディング集 殺人事件編 その4解決編の美樹本が透の腕を折ったで分岐、透は腕を折られ苦しんだ。そこへ真理が透を助けに 美樹本へ飛び掛った。透は真理を助けようと痛みをこらえ、必死で美樹本へ体当たりした。 すると真理が蹴り、俊夫さんが殴り、小林さんが絞め、みんなで美樹本へ襲い掛かった。 騒がしいなか透は意識を失う。気がつくとベットにいた。あの後何があったのだろうか? しかし、そんな事はどうでも良かった。隣で真理がいてくれるだけで… 完 その4解決編の窓を割るトリックの話で分岐、透は猫のジェニーを使って窓を割る仕組みを作ったの ではと考えた。しかし、それはすぐに否定されてしまう。すると突然、真理が窓を割るトリックが分かった と言い、見事に推理してみせた。全てを明かされた美樹本は真理を襲う。次の瞬間、真理の一本背負いで 美樹本は吹っ飛んだ。そして美樹本を縛り上げると、全員で真理を褒め称えた。香山さんが探偵になったら どうかと薦めた。真理もまんざらでない様子であった。ふと透は思った。美樹本は何故こんなことを したのだろうか? が、警察が調べることだと思い、特に気にしなかった… 完 その7で分岐、犯人がわからずOL達を疑う透。すると錯乱した可奈子が透を襲う。 抵抗し、可奈子を撲殺する透。しかし、それを目撃した真理が「人殺し!!」と言うと ストックを透めがけて突き刺してきた。透はそのまま息絶えた… 終 その7で分岐、犯人がわからずOL達を疑う透。しかし、俊夫は『あいつ』と言ったことに気付く。 OL達なら『あいつら』と複数形になるはずだ。OL達に部屋から出ないよう指示した透だが、 次の瞬間、悲鳴が聞こえた。部屋に戻ると真理が死んでいた。そして透の背後から犯人が… 終 その6の真理の悲鳴から分岐、真理のもとへ向かう前に他の人の助けを呼ぶ透。しかし誰も部屋から 出てこない。すると階段を上がってくる音がする。透は犯人だと思い、階段から突き落とした。 その人は死んだ。その人は…真理だった。透は壊れた。そして全てから逃げ出そうとして、 吹雪の中をひたすら駆け抜けた。しかし、逃げ出せるはずもなく雪山で静かに眠りにつくのだった。 終 その5の田中の部屋を調べるから分岐、田中の部屋を美樹本と一緒に調べに行く。 田中の部屋に入ると、一緒にいた美樹本がいない。まさか…と思い部屋の外を覗く透。 すると何者かに透は殴られた。何者かによって透は殺されてしまった… 終 その2の香山に就職を誘われるから分岐、透はそのまま香山さんの会社に就職した。 真理とは二度と会うことはなかった。数十年後、透は結婚をし会社の社長にもなった。 幸せだった。そして思い出のシュプールを訪れる、まさか、ここで事件に巻き込まれるともしらず… 終 その6解決編より分岐、透は犯人が分かったと皆に告げた。「犯人は…ぼくです」驚く全員。 真理は無実を訴える、しかし透は自分が犯人と言い張る。すると俊夫さんが透の腹へナイフを突き刺した。 …悪趣味な…冗談だったのに…後悔しながら透は死んだ… 終 398 かまいたちの夜1、その他 sage 2005/07/02(土)11 50 39ID OITnqTYZ エンディング集 スパイ編 その5の春子に狙われるで分岐、真理が戻ってきて春子へ重圧をかける。 透も真理を手伝おうと、春子へ襲い掛かる。…しかし、無情にも春子の銃によって 透は撃たれ、そのまま息絶えるのだった。 終 その6の俊夫が撃たれたで分岐、俊夫がマシンガンで死んだ。何があったのか透も慌てて 飛び出した。すると、そこにはみどりさんがマシンガンを持っていた。 透もマシンガンの餌食となって死んでしまうのだった。 終 その6のみどりを追いかけるで分岐、透はやはり自分はこんなことに巻き込まれたくないと言った。 真理もそれを承知する。みどりを追いかけていく真理。透は真理の部屋に隠れていた。 外から銃声のような音が聞こえた気がする…一時間…二時間…透は部屋で待ち続けるのだった… 終 悪霊編 その5の美樹本から真理への気持ちを聞かれるところから分岐、透は照れくさく、真理のことをどうとも 思っていないと嘘づく。それを聞いた美樹本さんは、他人を巻き込むわけにはいかないと言う。自分も他人では? といぶかしむ透だったが素直に部屋から出て行った。そして、香山さんの部屋をのぞくと俊夫さんとみどりさんが 香山夫妻の手当てをしていた。助かる可能性は低そうだった。ふと部屋の隅でうずくまっている小林さんを見つけた。 小林さんを問い詰める透だったが、小林さんはただ震えているばかりだった。 次の瞬間、誰かの叫び声がして、建物全体が揺れ始めた。真理と関係があるのか?そう思った透は真理の元へと 急いだ。すると、真理の部屋から美樹本さんが血を流して出てきた。その途端、建物の揺れがおさまった。 美樹本さん曰く、真理=美雪は外へ飛び出していったらしい、そして誰か無防備な人間を見つけたら 襲い掛かるつもりである。だから全員でどこかに集まるべきだと言った。 透と美樹本さんは皆を談話室へと集めた。そして談話室で皆、いら立ちながら話をしていると 突然、俊夫さんが浮かび上がった。おどろき見つめると、そこには真理がいて髪の毛で俊夫さんの首を絞めている。 悲鳴と泣き声が響き渡る。「コロシテヤル」そんな真理の声に小林さんは悲鳴をあげ、玄関へ逃げた。 小林さんはそのまま外へと逃げるつもりらしい、真理はそんな小林さんを睨みつけると 俊夫さんへの攻撃を止め、今度は小林さんへと襲い掛かる。 小林さんをいたぶるように、何度となく切りつける、あたりに血しぶきが飛び散る。透は動くことすら出来なかった。 そして、小林さんがあの事件を自白する。その後、美樹本さんが美雪の弟だと話し、透がお守りを使い 美雪を徐霊する。(その6と一緒) 真理に記憶が残るかどうかを話し、美樹本さんから真理を頼まれる。 透は自分に何ができるか分からない。だが今はそばにいてあげようと思った、笑顔が戻るその日まで… 完 400 かまいたちの夜1,迷路編 sage 2005/07/02(土)14 24 26ID OITnqTYZ その2迷路編 その1 透と真理はスキー場に来ていた。で分岐 真理はもう一回滑ろうとねだる。しぶしぶ付き合う透だが、真理によって無理やり中級者コースへと 連れてかれる。しかし、途中で透は転倒し足を捻挫してしまう。この足では車の運転が出来ない。 仕方なく、真理がシュプールまで運転することになった。だが真理は運転に自信がないようだ…不安に透は思った。 その1 食後、真理がナイターへ誘ってきた、で分岐 俊夫さんとみどりさんが外は吹雪くらしい、と注意をするも大丈夫だろうと思い行くことにした。 ナイターに付き合うことにした透は、さっそく用意をし車でスキー場へと向かう。 (以後、共通です) 二人の乗った車の前を何かが横切った。慌ててハンドルを切ると車は横転してしまった。 激しい衝撃が二人を襲う。真理のうめき声が聞こえる。二人は何とか車から脱出すると、歩いて 帰ることにした、幸い車にはハンドライトが積んであった。しかし、外は完全に吹雪だ。 不安をかき消しながら、二人は猛吹雪の中を歩き始めた。ここがどこか分からないが、とにかく進むしかなかった。 途中で分かれ道になった。透は自分のカンだけを頼りに、東に西に、北へ南に、ひたすら歩いた。 真理がボーッとしたところを叩き起こしたり、道に迷いながら進んだ。 行き止まりの池、道が途切れ進めない、そのたびに二人は引き返し進んだ。 防寒具を通しても寒さが伝わる、温かいものが欲しい。身体の感覚が少しずつなくなっていく。 ハンドライトの光はほとんど役立たない。もう自分が何処へ向かうのか良く分からない。 寒さと疲労で二人とも今にも倒れそうになっていた。この道があっているのか、疑心にかられる透たち。 引き返すべきか、進むべきか…透は進む道を選んだ。すると、遠くに明かりが見える。 …シュプールだ。間違いなくシュプールだった。生還できたことを喜ぶ二人、助かったのだ。 急いで玄関へと向かうと、奇妙な違和感を感じた。気のせいだろうと思い玄関へと向かうと そこに人が倒れていた。…俊夫さんだった。頭からは血を流し、確実に死んでいた… とにかく中へ入った二人が、大声で呼びかけるも誰からも返事がない。 何かあったのだろうか?そう思いつつ、とりあえず着替えようと思い、二階の部屋へと向かうと 廊下にまたしても死体を見つけた、香山さんの奥さんだ。やはり死んでいる。 せっかく助けを求めてきたのに、ここでも新たな恐怖が透を襲った。 緊張と不安の連続で透の頭は麻痺していた。むしろ吹雪の中に戻ろうかと思ったくらいだ。 ここは何かがいる。逃げ出したい気持ちを何とかおさえ、小林夫妻の部屋へと向かった。 二人とも殺されていた。混乱する真理を落ち着かせる透。二人は部屋へと戻り鍵を掛ける。 ただの悪い夢だと思いたい二人だったが、現実は厳しかった。 突如、鳴り響く女の悲鳴、もう一度響く悲鳴。悲鳴が消え静寂が戻ると、何者かが床を歩く音がする。 ゆっくりとコチラの部屋へ向かってくる。透は真理の手を握った、すると足音が部屋の前で止まった。 ドアをガチャガチャと音を立てる。無理に開けようとしているようだ。 そして、軽いノック…次に乱暴に叩くようにノックされる。悪夢はまだ終わらないようだった… 終 401 かまいたちの夜1 sage 2005/07/02(土) 14 27 08 ID OITnqTYZ その2 Oの喜劇編 その1 透と真理はスキー場に来ていた。から分岐 真理がもう一回滑ろうと透を誘う。透はやけくそになって、一晩中滑ってやると叫んだ。 二人で山頂へ昇り、ウルトラ・エキスパート・スペシャル・サンダー・ドラゴン・ウオリャー!・ トリャー!・ソリャー!・コースという上級コースに挑戦することにした。 そのコースは凄まじく、垂直の斜面にコブだらけ、そしてアイスバーンとなっていた。空には 稲妻が走っている。落雷で黒コゲになったスキーヤー達があちこちに転がっている。 透はにやりと笑うと、飛び出していった。「ウオリャー!」コブをかわし「トリャー!」大きくジャンプ 「ソリャー!」周囲のスキーヤーからおどろきと賞賛がわく。実は透は天才プレーヤーで今は五輪に 出ているのだ、あと少しで金メダルだ。「しっかりして!」真理の応援が聞こえる。もう少しでゴールだ… …「しっかりしなさいよ!」真理に頬を叩かれて、透は目覚めた。 透は雪の中で倒れていた、どうやらコースを外れ転倒したらしい。頭を打って気絶していたようだ… 心配した真理が運転をすると申し出る。しかし、透はそんなことしたら遭難しちゃうよ!と悲鳴をあげた。 いや、そんなわけないか。と何となく感じた嫌な予感をよそに、真理に運転を任せた。 真理が緊張しているのが気になり、免許持ってたよな?と透は聞く。…原付なら、と真理は答える。 驚く透をおかまいなしに車は飛び出していく。車を止めさせようとする透に対し、真理はゲーセンで 「究極レーサー」を完走したから大丈夫だと言い放つ。 ゲームと現実は違うと透が言い、無理やり車を止めさせ、その日はタクシーでペンションへと帰った。 二人は着替えると談話室へと向かった。そこには香山夫妻やOL三人組がいて談笑していた。 真理がどの子が好みなの?と意地悪く聞いてくる。だが、透は真理しか目に入らないとキザに言う。 見つめあう透と真理、二人だけの世界…そばにゲーム機があったが眼もくれず見つめあった。 その時、鳩時計が7時を告げる。すると小林さんが夕食の準備が出来たといった。 すでに腹ペコだった透は喜んで食堂へ向かった。食堂に着くと、隅の方にいる怪しい雰囲気の男が目についた。 可愛いフリルの付いた超ミニの赤いワンピースを着て、紫のアイシャドーと口紅をつけている。 頭には巨大な水玉リボンがある。真理が声をひそめ、ホモじゃないか?と聞いてくる。 「ホモ?」と透が聞き返すと、その声が聞こえたらしく低いしゃがれ声が隅から聞こえてきた。 「アタシはホモじゃなくてよ。オカマなの、オカマ。一緒にしないでよね、失礼しちゃうわ」 ホモとオカマは全然違う、失礼なことを言った真理をオカマさんに謝らせる透。 真理が謝ると、透は心の中で真理の成長を喜んでいると料理が運ばれてきた。 料理はおいしく、メインのステーキはとても美味しかった。何の肉だろうか?そう思い透はみどりさんに 質問すると、みどりさんの顔色が青ざめた。そのまま、みどりさんは逃げるようにキッチンへと行ってしまう。 402 かまいたちの夜1 sage 2005/07/02(土) 14 27 26 ID OITnqTYZ その3 Oの喜劇編 余計に気になる…そう思った透たちはみどりさんの後をつけた。すると、どこからか女性の悲鳴が聞こえる。 謎の悲鳴…正体不明の肉…青ざめたみどりさん…まさかと思う透。さらに一階の廊下の奥へと進むと また悲鳴が聞こえた。怯える二人はさらに進む。しかし、廊下の奥は物置になっていて行き止まりだった。 その時、猫のジェニーが現れた。嫌な予感を感じ物置を開けると、そこにはまた扉があって、それ開けると 地下へと続く階段があった。慎重に降りてく二人、その時、またしても悲鳴が聞こえた。はっきりと 階段の下から聞こえてくる。降りてみると、そこは食料品の貯蔵庫になっていた。 「クックック…素晴らしい…一体どんな料理にしてやろうかね…」 部屋の奥から聞こえる小林さんの声、その声は今までになく不気味な声だった。 「お願いです…もうやめてください…ひどすぎます…」みどりさんの声だ。 そっと覗き込む透。すると悪魔のような笑みを浮かべ包丁を握っている小林さん。 その小林さんの前には…にわとりがいた。 小林さんが包丁でにわとりの首を切り落とす。叫ぶみどりさん …なんてことない事実に拍子抜けし、食堂へと二人は戻った。食後のコーヒーを飲むと全員で談話室へと 集まった。いや、あのオカマさんだけいない。小林さん曰く、オカマさんは化粧を直しに部屋へ戻ったようだ。 と、その時すべての明かりが消えた。女の子達が悲鳴をあげる。小林さんが慌てずに今日子さんにロウソクを 持ってくるように言うと、今日子さんがどこかへ行った気配を感じた。 5分ほどして今日子さんがロウソクを持って戻ってきた。「準備ができたわよ」今日子さんが言う。 見ると今日子さんは驚いたことに、黒いブーツを履き、黒い革のボンテージファッションに身を包んでいた。 おまけにロウソクと一緒に革で出来たムチを持って… 小林さんが慌てて、ロウソクだけでいいんだと言うと、今日子さんはロウソクを置いて戻っていった。 ロウソクに照らされていると、不気味な集会のようだ。すると、ふいに可奈子が話し始める。 友達の妹の話で、彼女は数学が不得意なため夏休みに補習を受けていた。皆、固唾を呑んで話を聞き入る。 課題の出来た人から先に帰っていって、結局彼女は最後まで残っていた、そして恐ろしいことが起きた。 課題が終わって、彼女がトイレに行き、慌てて入った個室には何と…紙がなかったのだ… そして彼女は数学で赤点を取ってしまい、それ以来「呪いのトイレ」と呼ばれているらしい。 予想もしていなかった恐ろしい話に、皆しばらく黙っていると、突然 二階から男とも女ともつかぬ悲鳴が聞こえた。小林さんを先頭に数人で様子を見に行く。 田中さん=オカマさんを呼ぶ小林さん。しかし、返事がなくドアを開けてみた。鍵はかかっていない。 部屋は暗くロウソクの明かりで中を照らすと、人間の足が見えた。 明かりがふいに戻り、電気が再びついた…「彼女」は赤いハイヒールを履き倒れていた… 403 かまいたちの夜1 sage 2005/07/02(土) 14 28 40 ID OITnqTYZ その4 Oの喜劇編 「彼女」は血のように赤いイブニングドレスに着替えていた。深い襟元からは筋肉質な胸が見えていた。 太い足はストッキングを履いていて、毛深いのが分かった。青アザのようなアイシャドーに彩られた目は おどろいたように見開かれていた。小林さんが近寄り、話かけるも返事がない…やはり死んでいるようだ 「彼女」は左手に小さな板を持っていた。その板はべったりと血がついていた。 ダイイング・メッセージ?透の頭にある一つの考えが浮かんだ。 オカマ、板、血…かまいたち… いや、ただたんにそれだけのことである。 透は全員を見回すと、こういうときはこの中に犯人がいるのが相場だと言い、とりあえず談話室に 皆を集めた。透は一人一人の顔を見回した、ふと玄関を見ると、一人の男がしのび足で出て行こうと していた。黒ずくめの格好をしてスキーマスクを被り、手には血のついた包丁を持っている。 まったく知らない人だった。透はその人に大声で呼びかける。 すると男はしどろもどろになった。透はそこで謎の男の正体を言い当てる。 血まみれの包丁を見れば明白である…通りすがりの魚屋さんだ!!自信満々で答える透。 「い・・・いや、俺はあいつの後をつけて来ただけで…」と否定する魚屋さんに対して、透は この吹雪の中、魚を配達するのは大変なためスキーマスクをつけていると推理する。 それで全て説明がつくため魚屋さんは除外していいだろうと言った。 まさか、通りすがりの魚屋さんがペンションの客をころすはずがないと、完全に透は言い切った。 透はまず、悲鳴が聞こえたときアリバイがないものを探し始める。 小林さん、OL三人組…次々とアリバイを調べるも、不思議なことに全員にアリバイがあった。 すると、黒ずくめの魚屋さんが、そわそわし始めた。「それは…俺が・・・」と言う魚屋さんに 透はアナタには関係ないことですから、と言い黙らせた。 次に、何かトリックを使って犯行をしたのではと推理するも、あっさり否定されてしまう。 今度はあのダイイング・メッセージについて考えて始めた。 またしても関係ない魚屋さんが「そ、それは俺の…」と口をはさむので透は睨んでやった。 「かまいたち」と何か関係があるのか?それを考えていると俊夫さんとみどりさんが同時に話始めた。 「かまいたち」は三匹で一組の妖怪だと言うらしい。皆の目がOL三人組に集中する。 みどりさんと亜希はお互い顔のことをけなしあう。…そんな二人を無視して、さらに推理を続けた。 香山誠一…カヤマセイイチ。なんとなく「かまいたち」に似てるのでは?香山さんは反論する 404 かまいたちの夜1 sage 2005/07/02(土) 14 28 58 ID OITnqTYZ すると突然、魚屋さんがわめきだした。 魚屋さん曰く、俺があいつを殺したと言う。包丁もキッチンから取ってきたのだと言った。 冗談かと思ったが、どうやら違うらしい。どうみても魚屋にしか見えないのに。 スナックでバーテンをやっていると反論する魚屋さん。 動機を聞くと、ある日一人でお店に来た田中さんと恋に落ちたらしい。 しかし、田中さんは自分が男であると一言も言わなかったようだ。 あんなきれいな男がいるわけないと思ったらしい。どうやら美的センスが普通とはずれているようだ。 本当は今でも愛していると後悔する魚屋さん改めバーテンさんは、おいおいと泣き始めた。 美しくも悲しい愛の物語だったと締めくくる透。しかし、唯一分からないのが、あのダイイングメッセージだ。 そのことを聞くとバーテンさんは、俺の名前だと言った。 驚く全員。なんとバーテンさんは釜井達郎という名前だったのだ。全てを告白した釜井は泣き続けた。 今回の事件はぼくがこれまで解決したなかで、もっとも難しく悲しい事件でした。 ぼくはこの事件を「オカマの…」いや「Oの悲劇」と名づけたいと思います、と勝手にまとめる透。 その時、階段から声が聞こえた。「あーら、みなさん何をやっていらっしゃるの?」 何と死んだはずのオカマ…田中さんが降りてきた。田中さんは停電したときに釜井とぶつかり それで転んでしまい、ベットに頭をぶつけて気絶していたらしい。 包丁は小林さんのもので、にわとりの血が付着していたのだ、そして、暗闇の中で釜井が刺したと思ったのは 田中さんのブランドバッグだったのだ。あの板もにわとりの血だったのか? よく考えれば暗闇の中で顔も見えないのに、ダイイングメッセージなど残せない。そう真理に言われ透は 何も言い返せなかった。そして、田中さんと釜井さんは見つめあう。 「俺が悪かった、もう一度やり直そう」「私はあなたにふさわしい女じゃないわ」 「はなから女じゃないだろう!!」と喉まで出かかった言葉を飲み込み皆、黙って二人を見ていた。 二人は見つめあい、顔を近づける…全員顔をそむけた。ぶちゅ~スポン そうトイレのラバーカップのような音が部屋に響きわたる。 透は心の中で「Oの喜劇」に改名しなければいけないな、と思っていた 完 445 かまいたちの夜1,暗号編 sage 2005/07/05(火)21 35 02ID 6BKBEIi/ その3暗号編 その2>ノブを回すも鍵がかかっていたため、小林さんのマスターキーを使い部屋に入る。 部屋を調べるのをためらう小林さんをよそに、透は田中の部屋へと入って行った。 すると足元に丸められたメモ用紙を透は見つける。その紙を拾おうとして透は気付いた。 血が付着している。血に触れないように透はその紙を広げてみた。中には… 宝はシュプールの中ににある。 1と3の間、 冥土へと向かう道の途中。 負け犬は去れ。 車井戸がきしるから、 あの泥棒がうらやましい。 あなたに似た人より早く、 たからのありかを探りだせ。 と、書かれていた。文章も気になるし、血も気になる。まずは田中の部屋を調べてみるも 田中の姿は見えない。この血は田中のものなら…とにかく、一度談話室へと戻る一同。 そして、談話室で透はあの謎の文章が書かれた紙を全員に見せた。 田中がこれを残して失踪したこと…血がついていること…これらから宝をめぐって田中は何かに 巻き込まれたと考えるのが妥当だと透は言った。 あれこれ推測してみるが、よく分からない。業を煮やした俊夫さんが、とにかくこの文章を解けば 分かるはずだと言い、メモを見る。『1と3の間、』は当然2である。二階のことか?と俊夫さんが口にすると それを聞くなり、香山さんはがばっと立ち上がり、春子さんとともに二階へと駆け抜けていった。 そして、他の各自も二階を探すも何も見つからない。 『冥土へと向かう道の途中。』…冥土は地獄のようなもの、つまり地下室では?と美樹本さんが言うと それを聞くなり、香山さんが飛び出し、春子さんとともに地下室へと向かった。が、当然見つからない。 メモと睨めっこしながら、推理する一同。 シュプールはペンション名でなく、スキー場のことでは? 『あなたに似た人』は鏡に写った自分、つまり鏡の裏では? この言葉には意味がなくアナグラムなどでは? 「むむむ…」「うーん…」「???」「☆*♂♀?」悩む一同。 そして「分かった!!」透は叫んだ。宝は… 446 かまいたちの夜1,暗号編 sage 2005/07/05(火)21 37 04ID 6BKBEIi/ その4暗号編 宝は談話室にある。そう透は明言した。 すると、あるものは血まなこで辺りを見回し、あるものは半信半疑の様子だ。 談話室のどこにあるのか?小林さんがそう聞くと、透は答えた。 「頭の上です」全員で天井を見上げる。だが、透は別のところをみていた。 透は頭上の鳩時計を見つめた。鳩が飛び出す扉を開き、中をのぞくとそこには小さな袋があった。 透はそれを取り出し、中身を確かめる。赤や緑の宝石が光り輝いていた。宝石に混じって小さな紙もある。 真理がそれを取り読み出す。『おめでとう。謎を解いたようだな。宝は君のものだ』 透はまさか本当に宝が手に入るなどとは、思ってなくとても驚いた。 香山さんが分け前を得ようとするも、春子さんに叱られてしまった。 謎をどうやって解いたのか?真理が透にたずねる。 実はあの文章を縦読みしただけだった。ただし二文字目であるが。 は、と、土、け、井…鳩時計の中、となるのだ。真理は透を褒めた。 すると、またしても香山さんが知り合いの宝石屋に売ってやるから預けないか、と言い出す。 金でもせしめようとでもする気なのか、香山さんは驚くことを言い出す ので呆れる透たち。 まったくとてつもない商魂の持ち主だ。 「きっとそう言うと思いましたよ…」真理が突然話し出す。 「これを売ることは出来ません」 少しおおげさに真理は言った。 「どうせ偽者なんだろう?」と透は真理に聞く。 間をあけて真理は答えた。「あの手紙には最後こう付け加えてあるのよ」 『追伸ただしこれは全部ただのガラス玉です。総額三百五十円也。あしからず…小林二郎』 「小林さん!?」驚く一同。まさか小林さんの仕業とは誰も考えていなかったようだ。 実はちょっとした余興のつもりだったらしい。偽者だと分かって香山さんは大喜びをする。 小林さんは暗号みたいのを作るのが好きで、他にも色々作っているらしい。 田中は小林さんの親友で、小林さんの部屋に隠れているようだ。 小林さんを呼んでくると言って、部屋へと走っていった。皆で談笑していると小林さんが 慌てて戻ってきた。すごく青ざめている。「…死んでいる…死んでるんだ!」小林さんがそう言うと 皆息を呑んだ。「…またまた、小林さんたら」冗談かと思ったが、バラバラで死んでいるんだ、と 小林さんが叫ぶ。バラバラ…? これが恐ろしい悪夢の始まりだった… 完 43 PCが壊れたり大変だった… sage 2005/07/21(木)17 56 00ID MDSY7cjb その4チュンソフ党の陰謀編 その3暗号編 金でもせしめようとでもする気なのか、香山さんは驚くことを言い出す ので呆 れ る透たち。 まった く とてつもない商魂の持ち主だ。 「きっとそう言うと思いましたよ…」真理が突然話し出す。 「これ を 売ることは出来ません」 少しお お げさに真理は言った。 「どうせ偽者なんだろう?」と透は真理に聞く、から分岐 わたしはまだ生きている。そのことを神に感謝すべきなのかもしれない。 1994年、この『かまいたちの夜』がSFC用ソフトとして発売された時、原作者であるわたしは ある秘密文書をそのカセットの一部に忍び込ませることに成功した。 恐ろしい陰謀を止めるために。 当時の機密文書 今これを読んでいるあなたが誰なのか、わたしには分からない。子供なのか、大人なのか、男なのか、 女なのか…。このゲームの購買層を考えるなら、高校生くらいの男の子というのが可能性としては 高いのかもしれない。 いずれにしても、純粋にゲームを楽しもうとしてこのソフトを借ったごく普通の人であって、”彼ら”の 仲間でないことを痛切に願う。 あなたが誰なのか、私には分からない。わたしはさっきそう書いた。しかし、あなたの方はわたしの ことを知っているはずだ。少なくともその名前を、このゲームのパッケージなり、スタッフロールなりで 見かけているに違いない。 わたしの名前は我孫子武丸。いや、そういう名前で知られている人物の影にいる、本当の作者。 それがわたしだ。パッケージやマニュアルに顔写真が出ているかもしれないが、それはわたしではない。 わたしの名前を語っている”彼ら”の仲間だ。 わたしはこの『かまいたちの夜』のストーリーのほとんどすべてをチュンソフトの社内の一室で 書かされている。そしてわたしは今、仕事をしているふりをし、”彼ら”の目を盗みながらこれを 書いている。そう、”彼ら”とはすなわちチュンソフトの社員達のことだ。 44 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2005/07/21(木)17 56 54ID MDSY7cjb 正直に言うと、わたしも始めは”彼ら”の仲間、チュンソフトの社員だったのだ。しかし、この 『かまいたちの夜』の制作に参加し、プロジェクトが進むにつれ、この会社の真の姿とその恐るべき 陰謀に気がついたのだ。わたしはもちろん逃げ出そうとしたが、あと一歩のところで”彼ら”に 取り押さえられてしまった。それ以来、ずっとこの部屋に監禁され、強制的に仕事をさせられている。 ”彼ら”にとって都合のいいことに、わたしには身寄りもなく、社外の友人も少なかったから、 わたしの行方を探してくれる人もいないだろう。 この仕事が終わると同時に、わたしは殺されるだろう。だから多分、あなたがこれを読んでいる今、 わたしはもう”彼ら”の手によって抹殺されていることと思う。ここから何度も逃げ出そうとしたが そのたびにつかまり、思い出すのもおぞましい数々の拷問を受けた。 わたしはもはや生き延びる希望など抱いてはいないが、”彼ら”の陰謀を世間に伝え、阻止してもらうため これを書いている。普通のゲームの背後に、暗号を解かなければ見つけることのできないように、この メッセージを隠しておく・・・そうすれば”彼ら”の目に触れずに、外の人間に情報を伝えることが できると考えたのだ。マスターのROMにこのメッセージを仕込む事ができればいいのだが、わたしの立場 ではそれは不可能だ。一ケース分、あるいは二ケース分をすり替えるのがせいぜいだ。 その何十本かのうち、果たしてこのメッセージにたどり着ける人間がいるのかどうか、そしてたとえ これを読んだとしても信じてもらえるのかどうか…わたしにはまったく分からない。そしてまた、出荷 する前にチェックを受け、”彼ら”によって破棄されてしまうことがないという保証もない。 …あれこれ心配するのはよそう。誰か善良な人間がこれを読んでくれていることを信じ、わたしはこれを 書き続けることにする。 あなたは多分どこかで、サブリミナル知覚という言葉を耳にしたことがあるだろう。 気がつかない程度の刺激・・・潜在知覚とも呼ばれているものだ。聞こえないほどの小さな音、認識できない ほど短い時間だけ映し出される画像…そういった知覚できない刺激が、潜在意識に影響を及ぼす。 ”彼ら”はこのサブリミナル知覚をゲームソフトにおいて実験しようと試みた。その最初が『弟切草』 というソフトだった。埋め込まれたメッセージは比較的他愛もないものだった。『チュンソフトのソフトは 面白い』というものだ。 メッセージを埋め込んだのと、そうでないソフトを別々の地方に出荷し、次回作の売れ行きを比べて 結果を探ろうというものだった。そして『トルネコの大冒険』というソフトによって実験の効果は 確かめられた。メッセージを埋め込んだ地域の売れ行きはめざましいものがあったのだ。 この段階でも、商業モラル上若干問題があることはお分かりだろうが、”彼ら”の真の狙いはビジネスの 成功などというささやかなものではなかった。やがては日本をになうことになる若者たちを子供のうちに 洗脳し、熱狂的なチュンソフトの支持者にすること。 45 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2005/07/21(木)17 58 01ID MDSY7cjb このソフトをプレイした子供達が大人になる頃には、チュンソフトは単なるゲームソフト会社ではなく 宗教法人、政治結社、多国籍企業の複合体となっているだろう。その時、洗脳された若者たちは中村光一を 神と崇め、”チュンソフ党”に投票し、チュン食品のインスタント・フードを食べながら廃人のように なってチュンソフトのゲームをプレイし続けることだろう。 それこそが”彼ら”の目的なのだ。経済、政治、信仰のすべてにわたって日本全体を支配すること。 笑い話のように聞こえることは承知している。しかしこれは本当のことなのだ。 現にこのソフトをすでに何度かプレイしているはずのあなたは、チュンソフトに対して奇妙な信頼感を 覚えているはずだ。十回以内であれば、まだ洗脳されきってはいない。二十回、三十回目でこれを読んでいる のだとすると、おそらく何を言っても信じてはもらえないことだろう。 しかし、これは真実なのだ。誰か”彼ら”の陰謀を暴いて欲しい。簡単なことだ、わたしがこれから教える 電話番号に、電話を一本かけるだけでいいのだから。わたしが全面的に信頼できる唯一の友人の電話番号だ。 彼にすべてを話してくれ。それだけでいい。 危険なことは何もない。逆に、彼に伝えてしまうことであなたの危険度は下がるのだ。 …恐がらせたくはないので黙っていようとも思ったが、そうもいかないようだ。 もしわたしがこのメッセージを何十本かのソフトに忍び込ませ、正常なカセットにまぎれこませることが できたとしても、”彼ら”はいずれ本数が合わないことに気がつくだろう。 そうすれば、”彼ら”が小売店までソフトを追跡するのは簡単だ。予約して買った人や、小さな店で買った 人なら、”彼ら”はすぐにでも見つけ出すだろう。もし量販店で予約せずに買ったのだとしても、安心はできない。 発売後一ヶ月…多分、それだけあれば”彼ら”の力ならすべてのソフトの行方を探り当てることだろう。 購入して一ヶ月以上経っているのだとしたら、確実に今のあなたは”彼ら”の監視を受けている。 高性能の指向性マイク、赤外線カメラ…そういったものがあなたの部屋のすぐ外であなたを狙っているに 違いない。 待って!窓から外をのぞこうなんて考えないほうがいい。ライフルの絶好の的になってしまう。 窓際には絶対立たないこと。今あなたがすべきことは、床を這って電話にたどり着き、わたしの友人に かけることだ。”彼ら”はこのメッセージを見つけてしまったあなたの口を塞ぐべきかどうか、すぐ外で 思案しているところなのだ。時間はない。電話をかけてすべてを伝えてしまえば、あなたを殺しても 後の祭りだ。だからあなたが生き残るためには、電話をかけなければならないのだ。 早く、早くしないと”彼ら”がやって来る。新聞の集金のふりをして。あるいは電気工事を装って ・・・ああ、外で”彼ら”の足音が …これが四年前の機密文書だ。 話を元に戻そう。 当然のことながら発売数日も経たぬうちに、わたしの行為は”彼ら”に発覚し、社内にある拷問部屋で 様々な責め苦を受ける事となった。しかし何百人かのユーザーの手元には確実にメッセージは届いたはず だし、そのうちの何人かは陰謀を止めるために行動を起こしてくれたと信じている。 しかし、チュンソフトの野望はいまだ潰えていないようだ。今回、『かまいたちの夜』をPS用ソフトと して再発売するというのだ。その結果、わたしも四年ぶりに地下の独房から引きずりだされ、移植作業 を手伝わされる事となった。当然、以前告発文書を隠していた「リセット」の部分は使えない。 やむなく文書を手直しするふりをして新たな隠し場所を作った。 果たして何人のユーザーがここにたどり着いてくれるのだろうか? そして何人のユーザーが、立ち上がってくれるのか? …これがばれれば、今度こそわたしは殺されるだろう。 後はただ運を天に託して祈るだけだ。 今これを読んでいるあなたが無事に生き延びて、陰謀を止めてくれる事を… 283 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 40 45 ID tn3x55WK 不思議のペンション編 Oの喜劇編その2>真理が「究極レーサー」を完走したから大丈夫だと言い放つ。 から分岐 何だアレができるなら免許がなくても安心だ、と透は思った。…そんなわけねーだろ!と一人でノリ突っ込みを する透は悲鳴を上げた。すると車の前に黒い影がよぎった。あわててハンドルを切る真理、なんとか急停車した。 「今の…見た?」真理が口にする。イタチだった、イタチが鎌を持っていたと答える透。 アレがかまいたち?透は迷信だろうと思うことにして、再び車は走り出した。 透たちは無事ペンションに戻ってきた。ペンションの名前は…「クヌルプ」 「あれ?」と違和感を覚える透。しかし気のせいだと思い、ペンションへと入っていった。 中へ入ると小林さんがいた。小林さんの顔もどことなく違うような?ペンションの内装も変わった気が? 疲れてるんだな、と透は思い2階へと行く。すると驚いたことに部屋の位置までもが変わっていた!! 「まさか!」透は叫んだ。 「ここは入るたびにマップが変わるというあの伝説の…」 「不思議のペンション!」 透と真理は地下へと通じる扉を見つめた。地下深くに誰も持ち帰ったことがないという伝説のお宝があるという。 「宝を見つけに行こう!」と高らかに言う透。どんな宝があるのか?と真理が尋ねると 「確か、幸せが一杯詰まった『しあわせの箱』じゃなかったかな?」と透が言うと真理は素敵だと言い さっそく二人で誰も生還したことがないという迷宮へと降り立った。 Level1 階段を降りると、冷気がただよっていた。湿気を帯びた、気持ちの悪い冷気に真理は帰ろうと弱音を吐く。 まだ1階じゃないか、と真理に言いかけたとき… モンスターが現れた。 ゴブリンだ。見るからにゴブリンとしか言いようのない化け物だった。 何とかして!と叫ぶ真理。よし、任せとけ!と透が言うと… 284 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 42 24 ID tn3x55WK 不思議のペンション編その2 透は攻撃をした。見事に攻撃が決まるとゴブリンは爆破した。 透たちは経験値を得て、レベル2に上がった。 ゴブリンはお金を持っていたのを真理が見つける。ゴブリンのガマグチ財布をあさり 小銭ばかりね自販機の下でも探ってると思うと哀れね、とつぶやくと180円を手に入れた。 さらに進むと階段があり、二人は降りていった。 Level2 2階は薄暗くよく見えなかった。すると突然明るくなった、と思いきや後ろを見ると炎の魔人が立っていた。 「ちょ、ちょっと待て!2階に出てくるには怖すぎじゃないか?なめくじとかキノコぐらいだろ普通だろ?」 透はゲームバランスの悪さを嘆いたがどうしようもなかった。 そして透は… 逃げ出した。二人は無事逃げることに成功し、奥へと進んでいくと別れ道になっていた。 右の道は暗く、下水のような臭いがする。左は明るく、乾いていた。 どっちに行く?真理が尋ねると、透は… 右へと進んだ。 すると階段が現れた。しかし後ろを見ると炎の魔人がいた。あわてて階段を二人は降りた。 降りた先は小さな部屋で、12個もの扉がある。手当たり次第、調べようと思った透だったが 突如、天から声が降ってきた。 「愚か者どもめ、よく聞くがいい」 真理は当たりを見回し「愚か者さーん、誰か呼んでますよ」と言った。 「ばか者!お前たちのことに決まってるだろうが!」と天の声。 あんた誰?とたずねるも、生きて私のところにたどり着ければ分かると天の声は言った。 そして口調を変え、「さーて、ここで『十二の扉』の時間がやってまいりました」 天の声いわく、一つの扉だけが正解で、それ以外は情け無用の一発死が待っているそうだ。 どれが正解なのか、とまどっていると各扉には記号やら数字やらが刻まれていることに気づく。 4、2、#、6、9、3、1、*、7、5、0、8 何だよ、この数字は、と透は文句を言うと天の声はヒントを忘れていたと言い 4の下の扉を開けるのじゃ、と言い残すともう声は聞こえなくなった。 くっそー絶対生き残ってやる、透はそう決意すると目を皿のようにして各扉を調べた、そして… 285 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 43 39 ID tn3x55WK 不思議のペンション編その3 透は意を決して、『7』の扉を思いっきり開けた。 すると、あの天の声が響き「ラッキーセブン!正解です!では賞品として…奈落の底へご招待!」 突然、床が傾き二人は滑り台のようにして落ちていった。 Level27 「3階の次が27階かよ、キセルみたいなダンジョンだな」と透が言うと 「思えば長い道のりだったわね…」と、真理は遠い目をしていた。 「7階では死の迷路をさまよい歩いたし、12階では魔術師に捕まってカエルにされかけたわ」 「…そ、そうだったかな…」と透がとまどうも真理はなおも続ける 「そうよ!19階ではドラゴンの巣に迷い込んで丸焼きにされかけたし、21階ではスフィンクスのp 謎を解かなきゃならなかった」 透もそんな気がしてきた… 「そうそう、25階じゃ大変だったよな!蛇の大群に囲まれて」透がそういうと真理は不思議そうに見つめた。 「何言ってんの?そんなのなかったわよ。25階は意外と簡単だったのよ」真理はそう言い放つ。 透はもう逆らわないことにした。 真理はこれが最後の階だと言うので、二人は気を引き締めた。 だだっ広い空間だが、特になにもなさそうであった。 何もないみたいだと気を緩める透に対し、真理は甘い!油断させておいて意外なところから来るつもりだ、と言う。 透は冗談半分に、まさかこの床の下とか?と言い床を踏みつけた。 すると、部屋一面がグラグラと揺れ始めた。地震?だが天井や壁もグラグラと揺れている。 まさかこの部屋自体がモンスターなのか?と透が叫ぶと、どこからともなく 「当たらずといえども遠からず、というところか」と再び天の声がした。 どういうことかと真理が聞くと天の声は「お前達は初めからわたしの中にいたのだ」と言う。 透は嫌な予感を抱きつつ、その先をうながした。 「わたしは業界初の意識を持った迷宮なのだ。人はわたしのことを恐れ敬意を込めて、こう呼ぶ …『迷宮くん』と」 「どこに敬意がこもっとるんじゃ」透は思わず関西弁でツッコんだ。 真理は迷宮くんになぜ意識を持つようになったか尋ねる。 迷宮くんにも確証はないらしく、仮説として複雑な迷路をモンスターが行きかううち、それが一種の 神経組織を形作ったらしい。モンスターの集合無意識ともいえる、それが迷路を作り変え、一つの意思と なって結晶化した、とされている。 分かったような分からないような話ではあるが、納得せざるおえなかった。 二人は迷宮くんに『しあわせの箱』について聞いた。 すると迷宮くんは金色に輝く宝箱を出現させた…しかも二つ。 片方は本物、しかしもう一方は『ふしあわせの箱』であって、そちらを選ぶと目覚ましは鳴らなくなり、 テストのヤマははずれるわ、ゲームのデータは消えるわ、と恐ろしい出来事が起こるようだ。 ヒントを天の声に求める二人、すると「弓を持つ手をつかさどるものは何か?」と言った。 真理はもっとヒントを求めてジタバタするが、迷宮くんはもう聞いてくれず決断を迫った。 そして透は… 右の箱を選んだ。その箱を開けると中から…美しいメロディが流れ出てきた。 さきほどのヒントは左手をつかさどるのが右の脳だという意味だったのだ。 じつは適当に選んだだけだったが真理が褒めてくれるので、透は黙っていようと思った。 『しあわせの箱』はオルゴールだったのか… 美しいメロディに身を委ねていたが、真理は不服そうだ。 迷宮くんは美しい音楽以上の何を求めるというが、真理は美味しいもの、きれいな服、お金と言い返す そんな真理に対し迷宮くんはロマンが無さ過ぎるとは思わんか?と諭す。 が「ロマン?ロマンでお腹が一杯になりまっか?世の中銭でっせ、銭」と真理は言う。 「真理…お前性格が変わってないか?」と透。 迷宮くんも、おまけと称してしおりを金色にすればCDドラマが聞けると言った。 どういうこっちゃと思いつついると、迷宮くんの気配が消えそうになる。 「では、さらばじゃ!」と言い残すと空間がぐにゃりと曲がった。 …気がつくと地下室の扉の前に二人はいた。夢?いや夢ではなかっただろう。 一階に戻るとすでに夜が明け始めていた。その朝日を目を細めながら二人で見つめていた… 完 286 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 44 36 ID tn3x55WK 不思議のペンション編別ルート その2から分岐 透は「あ、UFOだ!」と叫ぶと逃げようとした。 が、ゴブリンと一緒に真理までもが引っかかり、身を乗り出しUFOを探している。 「馬鹿!真理まで引っかかってどうすんだよ!」と言うとゴブリンも騙されていたことに気づき 透に飛び掛ってきた。クビを絞められる透、すると真理が「あ、ネッシーよ!」と叫ぶ。 するとゴブリンの力が弱まった、そこで透がゴブリンの腕をひねりあげてやった。 「グゲゲゲ…助けて」なんとゴブリンは言葉をしゃべれたのだ。 「ええまぁ、話の都合上。…というわけなんで助けてくださいよ」と言うゴブリンに対し 「なにが『というわけで』だ。ただで助けるわけにはいかん」 そこで透は…1万円をくれたら助けてやると言った。 持ち合わせが180円しかないと言うゴブリンに対し、コーヒー代にもなんないじゃないか、と怒りを あらわにするも、ゴブリンはどこからか取り出したハンカチで額の汗を拭きつつ 「そう言われましても、この業界も不況の波が押し寄せてましてね」と言った。 透はモンスター業界も苦しいんだな、と納得し180円で許してやることにした。 ゴブリンはお礼の代わりに地下5階にある泉には近寄るなと忠告を残し、去っていった。 そして先に進むと階段が見えてきた、さっそく降りようとするが、真理があれを見てと言う。 そこには『5階への直通エレベーターはこちら』とのこと。文明の利器を利用しない手はない。 エレベーターにはB1とB5しかない。B5を押すとエレベーターは動き出した。 エレベーターが開くと、そこには目のくらむようなネオンの洪水が待っていた。 まるで歌舞伎町さながらの光景には『ミステリアス・ファウンテンへようこそ』と書かれ ネオンの矢印がおでむかえをしている。 面白そうなので行ってみると、そこには小便小僧が立つ丸い泉があった。 そこでゴブリンの忠告を思い出し、逃げ出そうとするも目の前に鉄の格子戸が現れ 二人は閉じ込められてしまった。 とにかく脱出するために、泉を調べてみることにした。すると泉には… 『聖なる杯にて聖なる水を飲め。さすれば道は開かれるだろう』と刻まれていた。 聖なる杯?そんなものは当然持ってない透…仕方ないリセットするしか、と思ったとき 真理が小便小僧のそばにおいてある、洗面所用のコップのようなものを見つけた。 これしかない以上これが聖なる杯なのだろう。では聖なる水は? 普通なら小便小僧の大事なところから水が出てるはずだが、今はなにもでていない。泉も枯れている。 透は何気なく小便小僧の大事なところにコップを差し出してみると、途端にコップに水が注がれた。 意外に簡単なことに驚く透だったが、何だかコレを飲みたくなかった。 しかし、真理がイライラしたようにせかしてくる。聖なる水はなんだか黄色っぽくて妙な臭いがする。 悩んだが意を決して飲み干した。 すると、小便小僧が突如として動き出した。「よく『聖水』を飲んだな。よし、今出してやる」 小便小僧はそう言うと、壁ぎわの隠し扉を開け、なにやら操作した。 鉄の格子戸が開いていく…「また気が向いたらおいで」小便小僧はそう言ってクックックと笑いながら また元の位置に戻った。呆然とする透。 苦しさと悔しさで涙が出てきた。そんな透を真理は軽くなぐさめ、とっとと先に進むのだった。 (この後は地下2階以降同じ展開) 287 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 45 39 ID tn3x55WK エンディング集 不思議のペンション編 >真理が「あ、ネッシーよ!」と叫ぶ。から分岐 「え、ネッシーどこどこ?」と透が言うと「馬鹿!透まで引っかかってどうすんのよ!」 しまった!と気づいたときには遅くゴブリンの爪で透の喉が切り裂かれた。 薄れいく意識の中で透は、もしここに恐竜がいたら…不思議のペンションだから「フッシー」なのかな? などと考えながら死んでいった… GAME OVER >「なにが『というわけで』だ。ただで助けるわけにはいかん」そして透は…から分岐 強い武器をくれたら助けてやる、と言った。するとゴブリンは背中のリュックをおろし 中を探り始める。危険なのでトゲを抜いた鉄球や、使うと幻覚や眠りを呼び起こす剣ハルシオンなど 役に立たないものだった。だが透はリュックの中の村正という日本刀に目をつけた。 ゴブリンはその刀は抜くと恐ろしいことが起きるから、絶対抜くなと必死に止めようとする。 透は(ここで2つに分岐) 抜いた ゴブリンのいうことは嘘だと思った。身をぬくと美しい刀身が出てきた。背筋がぞくぞくする。 怯えるゴブリンに対し、透はニヤニヤしながら近寄り刀を振り下ろした。 ゴブリンは真っ二つになった、透は今まで味わったことのない快感を覚えた。 その透の雰囲気を恐れる真理、透は腕がむずむずした。すると村正から『人はもっといい…』という思考が 流れ込む。人?人がいい?と理解できない透だったがふと真理と目が合った瞬間に理解した。 透は気づかぬうちに刀を振りかぶっていた… 気がつくとペンションの地下室にいた。ダンジョンからいつの間にでてきたんだろう?真理は? そう思いながら1階へと行くと、小林さんが透の血まみれの格好を見ておどろいた。 『血を…もっと血を…』誰かが透を勝手に動かす。小林さんのクビが飛んだ。透と村正は歓喜にわいた。 しかし、悲鳴がそれを乱す。…今日子さんだ。風のように透は今日子さんを切り裂いた。 すべてを切り裂く自由な風。透は無我夢中で全てを切っていった。 突然、刀が黙り込んだ。血を求める声もしない、刀は透の腕から落ち床に刺さった。 透の頭の中にすべてがプレイバックする、ゴブリンに始まり真理、小林さん、ペンションの人たちを次々と 切っていった記憶。悪い夢でもみたのだろうか?血まみれの両手を見ながら考える 透はふらふらと歩き出す、あたりに死体が転がっている。夢ではなく現実だ。 透はさとった。夢でも真実でもどちらでもいい。そして村正を自分の喉に押し当てた… GAMEOVER 抜かなかった 仕方が無いのでハルシオンを貰っていくことにした、そして地下2階にて炎の魔人と遭遇。 さっそくハルシオンを使ってみることにする。効果は絶大だった。剣を振るうやすぐに睡魔が襲った…透に。 くそ、騙された!眠りにつきそうになりながら、透は自分が灼熱で焼かれていくのを感じた GAMEOVER >地下2階で炎の魔人と対峙し、そして透は…から分岐 実は弱いのかもしれないと思い、向かっていった。が、あっさり焼き殺されてしまった。 GAMEOVER >右の道は暗く、下水のような臭いがする。左は明るく、乾いていた。 >どっちに行く?真理が尋ねると、透は… 左を選んだ。すると、炎の魔人に出くわした。しまった!こいつのせいで明るかったのか!と 思ったのもつかの間、さきほどの魔人とはさみうちにされ、二人はクロ焦げになった… GAMEOVER 288 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 46 48 ID tn3x55WK >4、2、#、6、9、3、1、*、7、5、0、8 >くっそー絶対生き残ってやる、透はそう決意すると目を皿のようにして各扉を調べた、そして…から分岐 4の扉 思い切って開けると中から黒いマントを着たガイコツがいた。鎌を持った死神はシュンと鎌を振り下ろすと 透の首は飛んだ。透は首になっても意識があり、倒れていく自分の体を見つめていた… GAMEOVER 2の扉 思い切って開けると中から「ガー」と巨大なアヒルが現れた。そのアヒルは透をひとのみで飲み込んだ。 強力な胃液で透は溶けていった… GAME OVER #の扉 思い切って開けると中から、鋭くとがった槍が何本もとびだし、透は串刺しになってしまった… GAMEOVER 6の扉 思い切って開けると中から、美人な白装束の女性が現れた。が突然、クビがのび透の首を絞めていった… GAMEOVER 9の扉 思い切って開けると中から、巨大な鉄球が転がってきた。避ける間もなく下敷きになってしまった… GAMEOVER 3の扉 思い切って開けると中から、三船敏郎が現れた。三船さん生きていたんですか?と驚く透だったが とつじょ一閃、刀が走ると透は崩れ落ちた…サインが欲しかった… GAMEOVER 1の扉 思い切って開けると中から、巨大なドーベルマンが現れ噛み付いてきた。そしてそのまま意識を失った… GAMEOVER *の扉 思い切って開けると中から、大量のお米が飛び出した。お米の重みに圧迫され意識をなくした… GAMEOVER 5の扉 思い切って開けると中から、黒い闇が襲ってきた。正体はゴキブリだ。大量のゴキブリによって 透は体を食いちぎられてしまった… GAME OVER 0の扉 思い切って開けると中から、…何もなかった。空気さえもなにもない無限の空間に投げ出された そしてそのまま意識をなくしていった… GAME OVER 8の扉 思い切って開けると中から、巨大なタコが現れた。タコの足に巻きつけられ意識をなくした… GAMEOVER >しあわせの箱は右か左か選ぶシーンから分岐 そして透は…左を選んだ。「愚か者が!」迷宮くんは笑った。「すべてを消し去ってくれるわ!」 透は真理を見ると、なんと真理の体が透けていく。ふと自分をみると自分も透けている。 すべてが…無に…かえる… GAME OVER 289 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 47 37 ID tn3x55WK 真理の探偵物語編 わたしは銃口を突きつけていた。ロバートが裏で組織と繋がっていることは、知っていた。しかし 認めたくは無かった。涙を流しながらロバートを問い詰める。ロバートは君には銃を撃てないと言う。 しかし、わたしは気丈な決意で引き金を引いた。 「真理~コーヒー入ったよ~」 透の声で現実へと戻される。真理はハードボイルド小説を読んで、主役になりきっていた。 ため息まじりの真理は、とりあえず透のアゴに掌底を叩き込んだ。 「あがっ」 四年前にペンションで殺人事件をみごとに解いた真理は、大学卒業後に透を助手として 探偵事務所を開いたのだった。だが浮気調査だのペット探しだのと安っぽい話は引き受けたくない 小説の主人公のような裏で組織が…というような事件が欲しいのだ。 そんなこんなでもう二ケ月も家賃を滞納していたりすることを透が指摘すると 真理は透のスネに思いっきり蹴飛ばした。 「いてててて…ごめん」 ペンションでの事件のさいに透も一緒にいたため、当初二人はテレビなどにも出て、そこそこ有名ではあった しかし、大事件を望む真理のおかげで財政は圧迫していた。しかし、仕事が無くても探偵としての 修行は忘れていなかった。 「推理小説読んでるだけじゃないか…」と不服そうにツッコむ透に対し ミゾオチに正拳突きを決めてやった。 「ぐふっ」 当然これもイジメではなく格闘技の鍛錬の一環である。 身体をくの字に曲げて膝をついた透の首筋に手刀を振り下ろそうとしたときだった。 ノックとともにドアを開け現れたのは、捜査課の楠木警部補だった。 この人とはよしみがあり、何かとアテにされることがある間柄だ。 警察に恩を売って損はないだろうということで、楠木の相談に乗ってあげることにしていた。 床にはいつくばっている透に対して、楠木はどうした?と聞くと真理が「コンタクトを落としたようで」 とお茶を濁すと、真理はつま先で透をつついた。うめき声をあげながら透はゆっくり立ち上がった。 そしてゾンビのようにヨロヨロとしながら透はコーヒーを用意した。 三人は来客用のソファに座り、話始めた。 290 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 49 23 ID tn3x55WK A,Bの2パターンに分かれます その2A 楠木は「さっそくだがおとぎ話を聞いてくれるか」と言う。これは守秘義務があるための方便である。 「あるソフトウェアの会社の社長が自宅で殺された…と思ってもらいたい」楠木がそう言うと 「そういや一週間ほど前、そんな記事が新聞に…」などと言う透の足を真理は思いっきり踏みつけた。 まず現場の様子は、と言うと 被害者は五十嵐鉄雄(イガラシテツオ)42才、コンピュータソフトの開発販売会社の社長 事件は月曜日に発覚、11時には出社する彼が昼過ぎてもこなく、電話にも出ないため 社員の一人が自宅のマンションに出向いた。ドアはロックされ、応答してもでなかったが 気になり窓から様子を伺おうとした。現場のマンションは1階で、簡単なフェンスを乗り越えるだけで 内庭に回ることができ、そこから窓が見る事ができた。 そして窓越しにリビングでパジャマのまま、倒れている被害者を発見した。 窓にも鍵がかかっていたため、警察を待って管理人に合鍵で部屋へと入っていった。 被害者は自分のネクタイで首を絞められ、死んでいた。 密室殺人かと思いきや、犯人は被害者を殺害後、被害者の鍵を使ってドアをロックしたようだ。 死亡推定時刻は前日の日曜日の朝9時から12時頃までの間ということだ。 つぎに被害者をめぐる人間関係について もともとはプログラマーだったが、ある日独立してブラウザを開発してヒットして急成長したようだ。 その元いた会社の同僚の中島聡(ナカジマサトシ)が被害者が作ったソフトは自分のプログラムの 多くを盗用したとして訴えている。現在も裁判は係争中で、どちらも譲らぬ気配で泥沼化している。 この中島の元婚約者だった今村愛美(イマムラアイミ)である。この今村は被害者に言い寄られていたようで 始めは気にもとめていなかったようだが、被害者が独立して成功したのを境に事情が変わったようだ。 こっそり被害者と付き合うことにしたが、婚約者である中島にバレ、婚約解消された。 さらにそれを機に被害者も興味をなくしたように、中村を捨てた。 被害者の奥さんである徳子(トクコ)もまた、愛人である今村の存在を知ったときには包丁を持って 被害者に怪我を負わせたことがある。そのときは軽い怪我で済んだため警察沙汰にはならなかった。 しかし、その件以来、娘を連れて実家に帰っている。 そして野崎和也(ノザキカズヤ)で被害者の会社の元社員。野崎は会社の金の使い込みがバレ クビになり、嫁さんにも逃げられてしまった。被害者を逆恨みし、殺してやると脅迫めいた電話をしたこともある。 291 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 50 20 ID tn3x55WK その3A この4人が容疑者である。各人のアリバイなど 野崎聡 33才、独身 身長165センチ、体重83キロ。 日曜日の朝は家にいて10時過ぎ以降昼過ぎまで母親が家を訪ねている。 アリバイは確認済、しかし野崎の家から被害者宅までは40分程度 今村愛美 28才、独身 身長168センチ、体重58キロ 左手中指にダイヤの指輪、もとは野崎の婚約指輪。 日曜日の朝は外でショッピングをしていたとのこと。 10時半から友達と会い、夕方まで一緒。確認済み、犯行現場からデパートまでは1時間かかる 五十嵐徳子 38才、被害者の妻 身長155センチ、体重43キロ 日曜日の朝は家にいたとのこと。11時過ぎに娘が出かける。 凶器のネクタイは娘のプレゼントで朝10時に着くように宅配便で送ったとのこと。 野崎和也 41才、独身、離婚歴あり 身長171センチ、体重65キロ 日曜日は寝てたという。 楠木はこれらの資料から何か分かったか尋ねた。 頭を抱える透にたいし、真理は犯人がわかったくらいね、と平然と言った。 楠木も透も驚いた。そして真理は言った「犯人は…」 292 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 51 13 ID tn3x55WK その2B 楠木は「さっそくだがおとぎ話を聞いてくれるか」と言う。これは守秘義務があるための方便である。 「あるソフトウェアの会社の社長が自宅で殺された…と思ってもらいたい」楠木がそう言うと 「そういや一週間ほど前、そんな記事が新聞に…」などと言う透の足を真理は思いっきり踏みつけた。 まず人間関係からについて 被害者は五十嵐鉄雄(イガラシテツオ)42才、コンピュータソフトの開発販売会社の社長で もともとはプログラマーだったが、ある日独立してブラウザを開発してヒットして急成長したようだ。 その元いた会社の同僚の中島聡(ナカジマサトシ)が被害者が作ったソフトは自分のプログラムの 多くを盗用したとして訴えている。現在も裁判は係争中で、どちらも譲らぬ気配で泥沼化している。 この中島の元婚約者だった今村愛美(イマムラアイミ)である。この今村は被害者に言い寄られていたようで 始めは気にもとめていなかったようだが、被害者が独立して成功したのを境に事情が変わったようだ。 こっそり被害者と付き合うことにしたが、婚約者である中島にバレ、婚約解消された。 さらにそれを機に被害者も興味をなくしたように、中村を捨てた。 被害者の奥さんである徳子(トクコ)もまた、愛人である今村の存在を知ったときには包丁を持って 被害者に怪我を負わせたことがある。そのときは軽い怪我で済んだため警察沙汰にはならなかった。 しかし、その件以来、娘を連れて実家に帰っている。 そして野崎和也(ノザキカズヤ)で被害者の会社の元社員。野崎は会社の金の使い込みがバレ クビになり、嫁さんにも逃げられてしまった。被害者を逆恨みし、殺してやると脅迫めいた電話をしたこともある。 293 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 51 56 ID tn3x55WK その3B この4人が容疑者である。各人のアリバイなど 野崎聡 33才、独身 身長165センチ、体重83キロ 右足にギブスをつけ松葉杖をついている。 日曜日の夜は家にいたとのこと。足の骨折が完治していないことは確認済 今村愛美 28才、独身 身長168センチ、体重58キロ 右手人差し指に包帯。指は一週間ほど前につき指、利き腕ではなく傷も治りかかっている。 日曜日の夜は家にいたとのこと。 五十嵐徳子 38才、被害者の妻 身長155センチ、体重43キロ 左手親指に絆創膏。包丁で指を切ったとのこと。日曜日は家にいた。 野崎和也 41才、独身、離婚歴あり 身長171センチ、体重65キロ 日曜日は居酒屋に9時半から11時半までいたのが確認。そこから現場までは40分必要 楠木はこれらの資料から何か分かったか尋ねた。 頭を抱える透にたいし、真理は犯人がわかったくらいね、と平然と言った。 楠木も透も驚いた。そして真理は言った「犯人は…」 294 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 52 51 ID tn3x55WK その4A 犯人は五十嵐徳子よ、そう言う真理。なぜわかるんだ、と尋ねると ひとつひとつ検証すれば分かると真理は言った。 まず凶器のネクタイが届いたのが朝10時で犯行時刻はそれ以降、野崎のアリバイは証明できる。 今村愛美にも犯行をしてから、10時半にデパートに行くのは不可能。 野崎は脅迫をしていた人物にたいしてパジャマのまま招くとは考えにくい。 となると残りは五十嵐徳子しかいない、ということである。 それを聞くと楠木は目を輝かせながら、事務所を後にした。 数日後、透が真理に新聞を見せた。『ソフトウェア会社社長殺害事件解決』とのことだ。 その後、少しずつ依頼が増え始めた。はっきりとは言わないが楠木の紹介らしい。 しかし、このときの二人にはあのペンションの殺人事件より恐ろしい事件に巻き込まれることに なろうとは思いもしていなかった… 完 その4B 犯人は五十嵐徳子よ、そう言う真理。なぜわかるんだ、と尋ねると ひとつひとつ検証すれば分かると真理は言った。 まず、犯人は2階から飛び降りて逃げたということ。これは太っていて足を骨折した中島には無理である。 右後頭部を殴られているということは、本人は右利きで左利きの今村では無理である。 野崎は完全なるアリバイがある。となると残りは五十嵐徳子しかいない、ということである。 それを聞くと楠木は目を輝かせながら、事務所を後にした。 数日後、透が真理に新聞を見せた。『ソフトウェア会社社長殺害事件解決』とのことだ。 その後、少しずつ依頼が増え始めた。はっきりとは言わないが楠木の紹介らしい。 しかし、このときの二人にはあのペンションの殺人事件より恐ろしい事件に巻き込まれることに なろうとは思いもしていなかった… 完 失敗編 間違った犯人を言い当てる。 あまり乗り気でなさそうに楠木は事務所を後にする。 その後、楠木からの連絡はない 終 295 かまいたいの夜だよ sage 2005/09/10(土) 00 54 06 ID tn3x55WK おまけ ちょっとHなかまいたちの夜 12時で消灯との小林さんの号令とともに、各自部屋へと戻っていく。 OL達が汗をかいたからシャワーを浴びようという声を聞き、一人興奮を始める透。 真理とともに部屋へと戻ると、透は今日こそ真理と結ばれる日だと思い、一人先走り 前かがみになりながら部屋へと入っていった。 そして、夜更け…誰にも見つからないように真理の部屋へと忍び足で行く透。 一人妄想をふくらませつつ、喜びいそんで真理の部屋へと向かう途中 なんと目の前にバスタオル一枚の真理が現れた。「真理…」と飛び掛ると、一発ビシッと 食らわされた。よく見ると北野啓子であった。啓子の豊かな体つきに興奮する透。 啓子は透を呼びに行こうとしたと言う。そして透はOL三人組の部屋へと案内される。 みんな待っている、と啓子は言うと、まさか4人で…と興奮を抑えられない透であった。 そして部屋ではネグリジェ姿の可奈子パジャマ姿の亜紀であった。 緊張する透にたいし、やっぱり男の人がいないと駄目ねぇ、お願い早く、と急かされ 興奮しながら透は服を脱ぎ始めた。全裸でベットに飛び込もうとした透に対し はやくシャワーを…といわれ、透は浴室へと向かうと、すでにシャワーが出ていた 水!?そう実はただシャワーが壊れていて、それを直してもらうために透を呼んだのだ。 シャワーを直し、OL達の部屋を後にする透。すっかり気持ちは萎えてしまっていた。 しかし自分の部屋に戻ると、そこには可奈子がいた。可奈子は後ろ手でドアを閉めると 透に今度は私の体をなおし欲しいの、とささやく。 そして透と可奈子はベットにてギシギシアンアン始める。 …なんてことはない、ただのマッサージであった。 可奈子も部屋へと戻り、透は逆に居直り、真理に夜這いをかけてやる、と意気込み 真理の部屋へと向かう。 そして真理の部屋。ついに透は念願の真理と結ばれるのだ。 透は真理のもとへと近づき、真理の体へと触れる… ちょっと毛深いんだね真理と、思いつつ真理の顔を見ると、そこには 真理ではなく美樹本さんがいた。透のアプローチにとまどう美樹本であったが 実は美樹本も透をひと目みたときから気に入っていて… 一方そのころ真理は部屋で透が来るのを待っていた。気のせいか透の悲鳴が聞こえる。 きっと透も疲れて寝ているんだろう、そう思い真理は寝ることにした。 透と美樹本の熱い夜は続く… 終
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◆基本情報◆ レアリティ:R+ コスト:3 属性:無 配置:全て 制限:なし 能力:なし 分類:女性 進化前:かまいたち 進化先:なし 限界突破回数:10回 ◆カードイラスト◆ +画像を表示 イラストレーター/天杉貴志 ◆ステータス◆ LV 1 10 20 30 40 HP 48 53 60 66 72 AT 16 17 20 22 24 AG 43 43 43 43 43 限界突破 LV 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 HP 73 73 75 75 76 77 78 79 80 81 AT 24 24 25 25 25 25 26 26 26 27 AG ◆カード説明◆ 伝承として古くから伝えられる妖怪。つむじ風に乗って現れ、すれ違いざまに両腕に持った鋭い鎌で切り裂いていく。不思議と痛みを感じないのは、かまいたちが切り裂いたあとに薬を塗っていくからだと言われている。 ◆ダンジョンアビリティ◆ 防御減少体制25% 敵の防御力減少攻撃の耐性を25%加算する。 ◆行動◆ 特技:窮奇の鎌(ゲージ:3) 敵全体にAT×1.5のダメージを与える 発動確率:100% 効果1属性:無 効果1範囲:絶対 攻撃範囲 ■■■ ■■■ ■■■ 前列:傾倒の突風 範囲内の敵で一番AGの高いキャラの通常行動の発動確率を100%ダウンさせる(1ターン) 発動確率:100% 効果1属性:無 効果1範囲:絶対 攻撃範囲 クリティカル率 効果係数 ■■□ 100% ×1.00 ■■□ ■■□ 中列:裂傷の疾風 範囲内の敵で一番AGの高いキャラにAT分のダメージを与える (Lv30~) 範囲内の敵で一番AGの高いキャラにAT×1.1のダメージを与える (Lv35~) 範囲内の敵で一番AGの高いキャラにAT×1.2のダメージを与える 発動確率:100% 効果1属性:無 効果1範囲:絶対 攻撃範囲 クリティカル率 効果係数 (Lv30~) (Lv35~) ■□□ 65% ×1.00 ×1.10 ×1.20 ■□□ 25% ×1.20 ×1.32 ×1.44 ■□□ 10% ×1.50 ×1.65 ×1.80 後列:快気の涼風 前面の味方のAGをAT×0.6アップする(2ターン) (Lv40~) 前面の味方のAGをAT×0.65アップする(2ターン) 発動確率:100% 効果1属性:無 効果1範囲:相対 攻撃範囲 クリティカル率 効果係数 (Lv40~) □□□ 65% ×0.60 ×0.65 □○■ 25% ×0.72 ×0.78 □□□ 10% ×0.90 ×1.00 考察 高いAGと強力な特技を持つ3コスト。 反面、HPが2コスト並に低い。 特技のポテンシャルが高いのでうまく使ってみたいが、速すぎて自身にバフをかけるのは難しい。 大ダメージを期待するには何か工夫してAT強化をかけたいところ。 通常は前列にて相手の妨害や、後列にて中列キャラの加速をするのが基本だろう。 コストが軽いためとりあえず3コスト余ったら前列に入れてみると中々うざったい動きをしてくれる。 ただし1ターン目は相手の護神に前列行動が弾かれることも多いため、過信しすぎるのは×。 関連カード 神秘のインダス かまいたち コメント Lv30で中列の係数が1.1倍に変化 -- 2013-09-11 00 25 50 考察ひどくないか -- 2013-09-11 08 46 50 Lv40de -- 2013-09-11 22 10 17 Lv40で中列係数1.2 -- 2013-09-21 01 10 53 中列反映して勝手ながら考察書き直しました。 -- 2013-09-21 04 46 34 中列の1,2は35でなったで -- 2014-01-04 04 42 19 lv40で後列係数0.65 -- 2014-01-23 02 01 30 コメント すべてのコメントを見る
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飛車ちゅう氏が下記ブロマガで紹介した後折り鉤積み派生の速攻形。 折り返しにもL字を用いることでさらにマルチ巨大化&本線も増強。 なお飛車ちゅう氏は他にも後折り鉤積み速攻として以下を紹介している。 (こちらはかまいたちというよりダム積みの要素が強い) 参照(WebArchve):階段と挟み込みの奇襲戦法
https://w.atwiki.jp/brewwiki/pages/429.html
かまいたちの夜2 【サイト名】かまいたちの夜EZ2 【ジャンル】サウンドノベル 【課金体系】従量525円 【容量】-KB 【通信機能】あり 【簡易評価】あなたの評価点をクリック! plugin_vote2 is not found. please feed back @wiki. / plugin_vote2 is not found. please feed back @wiki. / plugin_vote2 is not found. please feed back @wiki. / plugin_vote2 is not found. please feed back @wiki. / plugin_vote2 is not found. please feed back @wiki. 2007/06/01 【使用機種】 41CA 【プレイ時間】 3時間 【評価・点数】 3/5 ストーリー、内容はさすが、じっくり読み込めた 音楽もシュチュエーションにあってて雰囲気にばっちし ただエンディングが3つしかない、途中の分岐もなしが不満 もう少しがんばってほしかった PS2版をやった人はあえて落とす必要すらないと思った 少し辛口採点でこの点数です サイト別/か行/かまいたちの夜EZ2
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かまいたちの夜2 ・要約版:要約スレpart2-260,279~281 ・詳細版:part4-83~96・126~135・209~211・305~319・348・386・388~399・416~419、part5-50~53・99~102・299~303 260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/08/23(水) 00 02 28 ID k+c+D1ei0 かまいたちの夜2 監獄島のわらべ歌 【事件】 前作は劇中劇扱いでゲーム『かまいたちの夜』のモデルとなった前作の面々が原作者『我孫子武丸』に招かれる。 しかし招待された島は監獄島と呼ばれ陰惨な過去のある島にある『三日月館』、 さらにその日は五十年に一度の暴風の日『かまいたちの夜』だという。 そこで島に伝わるわらべ歌になぞらえて連続殺人事件が起きる ①ゲームプロデューサーの『正岡』が館の角の部屋で首を切られて殺害 ②大阪の社長香山に後妻『夏美』が首を絞められ殺害 ③館の管理人の老婆『キヨ』が塔に吊るされ縛り首に 【謎】 ①部屋は密室 ②夏美の手には招待客の一人元ペンション従業員『みどり』が使用しているマニュキアが握られ、手を切断しようとした跡が 【犯人】 『キヨ』しかしこれは変装した姿で正体はシュプールのオーナー夫妻の妻、『小林今日子』 共犯者に生き別れの弟の作曲家『村上つとむ』 【トリック】 ①三日月館はその名の通り三日月を模しており今日子は逆側の角の部屋の窓から侵入した 三日月館には島にある人工湖の流れを切り替えて館を水没する仕掛けがありそれを使い 庭を泳ぎ渡った。 ②マニュキアは今日子がみどりにすすめたもので、盗み癖があった夏美はそれを盗み殺された。 ③つるされた死体は人形で遠目からでは人間かどうか区別できない。しかしカラスについばまれ綿が出ていた。 【動機】 前作に出たOL三人組はモデルになった人物は二人組だった。 今日子は以前結婚しており、前夫が亡くなり一人では子供を養えず養子に出していた、 その子供が前作の三人組みの一人『河村亜紀』だった。モデルの人物達がシュプールに集まった際、亜紀も偶然にも宿泊する予定だった。 親だと名乗る気は無くとも心待ちにしていた今日子だが、亜紀は誰かにひき逃げされて亡くなっていた。 犯人は宿泊客の中だと確信し今日子は先祖の館を使った計画を考えた。 そしてそのひき逃げ犯はみどりだった。 第一の事件の際閉所恐怖症だった正岡はみどりと部屋を交換していたために殺された。 【結末】 今日子も知らなかったが、かまいたちの夜の後は島を大津波が襲うのだった。 避難するみんなだが、今日子と二郎の小林夫妻はこのまま波に飲まれることを選び 村上もそれに殉じるのだった。 279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/07(木) 13 03 21 ID 2ciqlT980 260に補足かま2他編適当要約 陰陽編 三日月館のかつての主人、イエモンの、本人以外には邪神となる神復活の為に、 皆生贄にされてしまいましたとさ。 底蟲村編 蜘蛛VS常世の虫。結果はドロー。果物に見せかけた常世の虫の実を食べた小林、香山は化け物に。真理は次の常世の虫へ 透以外の他の連中は蜘蛛に殺されあぼん。そして底蟲村は火の海へ サイキック編 こんな体に誰がした!!ミネルヴァ社への復讐をする可奈子、啓子、キヨ(河村亜希) ちなみに真理と夏美、透もサイキッカー。亜希と透は薬投与のせいで、老け顔。 ミネルヴァ社VSサイキッカー。 まぁ色々あって敵味方共に、真理いがいあぼん。ちなみに進行は真理視点。 280 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/07(木) 13 04 46 ID 2ciqlT980 ピンクの栞 官能編 色情霊に取り付かれた透に女性キャラ(夏美以外)皆色仕掛けを仕掛けてくる。 イイトコロで夏美登場。このままではヤバイと思った透は夏美に除霊してもらい、我に返った皆にボコボコにされるも、 真理に本音をいい(真理が好きだからあんなことしたんだ!的な)そして、真理と一晩中話し合うことができましたとさ。 ちなみに除霊を断ると、男性キャラに掘られる展開に。 わらび歌編 ギャグ編。かまいたち祭りではなく、カマイタ(かまぼこ板)血祭りによって、島の住民に殴られそうになる一行。 他の皆をおとりにして逃げる透と真理。船で逃げ出すが、方向もわからず遭難。 僕の恋愛編 叙述その1 我孫子からの招待状が届き、真理を誘って、三日月館へ行く僕。 波止場で出迎えた我孫子は透だった。真理は二股をかけていて、邪魔者の僕を殺そうと透が襲い掛かる。 背後から透を石で殴り殺した真理は僕と抱きしめあう。 「信じて、私…二股かけてたわけじゃないのよ」という真理を許す僕。 真理は嘘をついてはいなかった。三股をかけていたから。それを僕が知るのはもっと後… 僕の青春編 叙述その2 真理に誘われて三日月館へ行く透。 真理にはもう孫もいて、透はただのお友達。 281 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/07(木) 13 05 28 ID 2ciqlT980 紺の栞 惨殺編 楓に寄生する線虫に寄生された人間は、殺人によって、快楽を得るようになってくる。 それによって襲ってくる皆を撃退しつつ、透と真理は逃げる。 だが、透も寄生されていて、真理を殺したくなり、その欲求に負けたくないので、気を失おうとすると、 真理も寄生されていたらしく、真理に殺される。 洞窟探検編 岸猿家の財宝伝説に目が眩んだ真理に引っ張られ、宝探しをさせられる透。 この伝説は実は嘘で、キヨ(利用されていた)と船長にぎゅうず様の生贄にされかかる透と真理。 足手まといのキヨを置いてきた船長に殺されかかる二人だが、キヨに助けられる。キヨは二人にお礼をいい消えた。 透と真理の仲はより深まったようである。岸猿家の財宝以上に素晴らしい宝を、透は手に入れたようだった。 妄想編 透はシュプールに行ったときの記憶がはっきりしない。 どうして船に乗っているかもわからない。真理から説明をうけ、我孫子に招待を受けたことを聞く。 島に上陸しても記憶が途絶えがちだ。 二匹の黄金虫も動いている。かさこそかさこそ… わけもわからず選んだ扉の先には巨大な二匹の黄金虫がベッドの上で重なり合って交尾していた。 下にいた黄金虫が透をみてこういった。 「美樹本さんは私から誘ったのよ。やめてよ、そんな目で見るの。勝手に純粋だの何だのって思い込まれても迷惑なのよ。 第一、今どきこんなもので女が口説けるとでも思っていたの?」 黄金虫は紙の束を床に叩きつけた。 紙束の表紙には『微笑む女神』というタイトル。透が真理に捧げた詩集だ。 こんなものがどうしてここに、何で黄金虫がこんなものを。 「やめろ!」思わず透は手近にあった電気スタンドを投げつけた。電気スタンドは窓を突き破る。 窓?三日月館に窓はないはずなのに。じゃあここはどこだ。 割れた窓から雪が吹き込んできた。 いつの間にか透の手には鎌が握られていた。 透は鎌を振った。黄金虫の頭が、脚が千切れ飛んだ。 誰かが笑っている。頭痛はとまらない。透は笑うのをやめた。 かさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそ 黄金虫が交尾する音が聴こえる…。 「ああ、またバッド・エンドだ」 透はコントローラーを投げ捨てた。 透は真っ白い部屋でずっとこのゲームをやっている。いつまでたってもグッド・エンドを迎えられないのだ。 テレビ画面の中から男が話しかけてきた。 「まだ思い出せないんですか。一昨年の十二月に『シュプール』で何があったか」 思い出せない。頭がひどく痛い。耳鳴りがする。 「その時ペンションにいた全員が殺害された。凶器は草刈り鎌です。そして犯人は…」 …そうだ、この男は医者だ。 思い出した。あの時ペンションにいた「全員」が殺された。そして「犯人」は…。 83 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 44ID zchuZkAH 矢島 透 主人公。 小林真理 透のガールフレンド。親の転勤に伴い引越し、透とは疎遠になっている。 小林二郎 真理の叔父。ペンション「シュプール」オーナーで料理が得意。 (小林今日子) 小林の妻。料理は不得意。 久保田俊夫 「シュプール」でバイトをしていたスポーツマン。 久保田みどり 元「シュプール」のバイト。俊夫と結婚した。 渡瀬可奈子 OL。美人。 北野啓子 可奈子の同僚で友人。ぽっちゃり型。 美樹本洋介 フリーカメラマン。 香山誠一 大阪の会社社長。前妻・春子とは離婚。 ──以上が一年半前「シュプール」に滞在していたメンバー(前作に出てた人)── 香山夏美 香山の後妻。派手好き。 正岡慎太郎 ゲームのプロデューサーで女好き。閉所恐怖症。 村上つとむ 作曲家。怒りっぽい。 菱田キヨ 「三日月館」の管理人をしている老女。 我孫子武丸 「三日月館」の主人。 84 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 46ID zchuZkAH 『かまいたちの夜』というゲームがある。 雪山のペンションで殺人事件が起こるという内容のゲームだ。 そのゲームの中には透たちが一年半前にペンション「シュプール」に宿泊した時と ほとんど同じ顔ぶれが登場しているのだ。 (『かまいたちの夜2』では、「シュプール」での殺人事件は現実では起こっていない事になっている) 透のもとへ一通の招待状が届いた。差出人は我孫子武丸。ゲーム「かまいたちの夜」の原作者らしい。 そこにはゲームへ出演してもらったことへのお礼と、 ゲームの売り上げで得た収入で購入した「三日月島」にある「三日月館」へと招待したい旨が記されていた。 真理と仲良くなりたい透は彼女を誘い、三日月島へ向かうことにした。 ~8月15日~ 透と真理は三日月島へ向かう小船の上にいた。真理の叔父、小林も一緒だ。 小林のもとへは招待状が届いていなかったのだが、妻の今日子が旅行に行ってて暇なのもあって、 「なぜオーナーの私が招待されてないんだ!」と勝手に参加してしまったのだ。 真理によると、我孫子武丸の正体はゲームの開発会社に問い合わせてもわからなかった、 しかしかなり事実を詳しく反映したゲーム内容であることから、当時そこにいたメンバーか その関係者に間違いないだろう、とのこと。 船の船長は三日月島へ遊びに行く事にあまり良い顔をしない。 三日月島は地元の者には「監獄島」と呼ばれている。 かつてそこにあった底蟲(そこむし)村が廃村になった後、三日月島は岸猿(きしざる)家という旧家の 私設監獄となっていた。酷使され、死んでいった奉公人たち…今から宿泊するのは元監獄の館なのだ。 その後岸猿家は没落し、再度無人島となったが、最近になって我孫子が買い取ったというわけだ。 さらに船長は島に伝わる《わらべ唄》を歌って聞かせる。 85 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 47ID zchuZkAH 底蟲村の しん太郎どん 痛い痛いと 泣いてござる 何が痛いと 蟹コがきけば 悪たれ鼬(イタチ)の ふうのしんに 喉を切られて 話ができぬ それで痛いと 泣いてござる びゅう びゅう びゅうの ざんぶらぶん びゅう びゅう びゅうの ざんぶらぶん 底蟲村の 女郎蜘蛛 嫌じゃ嫌じゃと 泣いてござる 何が嫌じゃと 狐コきけば 悪たれ鼬の ふうのしんに 手足もがれて 散歩ができぬ それが嫌じゃと 泣いてござる 底蟲村の 山姥どん 怖い怖いと 泣いてござる 何が怖いと 鴉コきけば 悪たれ鼬の ふうのしんに 高みに立たされ 身動きできぬ それが怖いと 泣いてござる 底蟲村の 風見鶏 来ない来ないと 泣いてござる 何が来ないと 童コきけば 悪たれ鼬の ふうのしんが 夏の終わりに 大雪降らせ 秋が来ないと 泣いてござる 底蟲村の 村の衆 今日じゃ今日じゃと 泣いてござる 何が今日じゃと 蛇コがきけば 悪たれ鼬の ふうのしんも わっかが解けりゃ 慌てて逃げる それが今日じゃと 泣いてござる びゅう びゅう びゅうの ざんぶらぶん ざんぶらぶんの どうどうどう 86 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 53ID zchuZkAH 三日月島はその名の通り三日月型をした島で、風の神を祀った神社、岸猿家が作った人造湖などがある。 三日月館も島と同じく三日月型をした建物だ。その周りを高い暴波壁が取り囲んでいる。 船長は三人を送り届けると「今日は《かまいたちの夜》だ…」と謎の言葉を残して去る。 監視塔、堀には剣山状の刃物、少ない窓…館は元監獄らしい陰鬱な造りだ。 三人を出迎えたキヨに導かれ館内に入ると、そこには既に久保田夫妻、可奈子と啓子らが来ていた。 久保田夫妻も招待状を貰っていないと聞いて安心する小林。内心ビクビクしていたのだ。 可奈子・啓子はゲーム「かまいたちの夜」では「仲良しOL三人組」として描かれていた。 勝手に加えられていた三人目「河村亜季」には聞き覚えすらないと言う。 近況などを話していると、遅れて村上、さらに遅れて正岡もやってくる。 ゲームの続編制作に関わる彼らも我孫子武丸に会った事はないそうだ。 その後香山夫妻と美樹本も加わるが、我孫子が現れることは無かった。 87 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 57ID zchuZkAH 夕食の時間。それぞれ自分のネームプレートが置かれた席へ座る。 我孫子はまだ現れず、イラつく村上は正岡と言い争いを始める。 その時、突然明かりが消えた。パニックに陥る一同。 美樹本が蝋燭に火を点けると、誰もいなかった我孫子の席に 若い女性の写真と、ヘコミと血のりで事故車のように見立てられたおもちゃの車が置かれていた。 写真の所に置かれたプレートには「河村亜希 享年19歳」の文字。 透は写真の女性の面立ちに見覚えがあるような気がした。 再び火が消え、重々しい声が響き渡る。 「ようこそ、私が我孫子武丸です。ご参加ありがとう。 訳あって姿を現す事は出来ませんが、私は間違いなくここにいます。 皆さん二日間ごゆっくりおくつろぎください…」 電気がつくと、すでに写真と車は無かった。 美樹本がキヨに我孫子の事を尋ねるが、キヨは「我孫子はまだ来ていないはずですが…」と 知らぬ存ぜぬの一点張り。 村上は怒り狂い、みどりは「帰る!」と言い出す。 しかし船は明日の夕方にしか来ない、とキヨが言うとしぶしぶ観念する。 88 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 00ID zchuZkAH 一人一部屋が割り当てられ、それぞれ思い思いに過ごす。 外では防波壁の扉が閉められた。かなり風が強くなっているようだ。 啓子は先に眠り、みどりは具合が悪いと言って休み、その他の面々は応接室で歓談していた。 食堂での出来事のせいか、皆どこかピリピリしている。 可奈子が酔っぱらった正岡に付き添って彼の部屋に行った後、気晴らしに外へ出ようか、と話しているとキヨがそれは無理だと言う。 「かまいたちの夜が……始まりました」 それはこの地方で決まって暴風の起こる8月15日の夜の事で、50年ごとに特に強い風が吹くという。 今日がその50年目の夜なのだ。 ますます不安を募らせながら、一同は解散する。 ~8月16日~ 眠りについた透だったが、悪夢にうなされ夜中の3時に目が覚めてしまった。 風雨の様子を確認しようと廊下に出ると、小林もトイレに行こうと部屋から出てきた。 その時、絶叫が響き渡った。 真理を起こし、三人で声の聞こえた方向、みどりの部屋へと行くが、扉には鍵がかかっている。 真理が呼んできたキヨに許可を貰い、体当たりしてドアを開けると… 正岡が喉を切り裂かれて死んでいた。 透はそこで何かを踏みつけてしまう。それは蟹だった。 「しん太郎」が「喉を切られ」て死に、「蟹コ」が側にいたのだ。わらべ唄と同じように。 89 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 03ID zchuZkAH 皆に正岡が殺された事が伝えられた。 みどりは閉所恐怖症の正岡に頼まれ、部屋を交換したのだという。 警察に連絡しようにも電話線が切れており、携帯電話も電波が届かない。 招待客以外に殺人者が潜んでいるかもしれないと館を調べるが、誰も見つからなかった。 濡れた地面に足跡もついておらず、外へ逃げたとも考えられない。 となると、ここにいる誰かが正岡を殺したということになる。招待客たちは互いに互いを疑いだす。 (補足・正岡の死んだ部屋はC字型の館の片端にある。窓があるのはこの部屋と、もう一方の端っこにある物置部屋だけ。) 美樹本だけが自前のクルーザーでこの島に来た、彼が犯人だとしたらすぐに逃げられるじゃないか。 そう考えた透は真理と共に美樹本のクルーザーへ向かった。 だがそこに居た美樹本は「こんな物騒な所早く逃げ出したいが、そうもいかなくなった」と沖を指し示す。 海面の水位が下がり、島のC字の口を開けた部分に岩礁が突き出していた。島は円環状だったのだ。 これで島に閉じ込められてしまったことになる。 90 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 05ID zchuZkAH 三人で館に戻ると、みどりとOL二人が泣いていた。俊夫、小林、香山もそこにいる。 夏美が死んでいたのだ。 首に「狐」の襟巻き(夏美が持ってきていたもの)が巻きついている。これで絞め殺されたらしい。 右の手首には切断しようとしたのだろう、深い傷がついている。またわらべ唄と同じだ。 夏美の手に何かが握られている事に真理が気づいた。夏美の指を開かせると、中からマニキュアの瓶が出てきた。 緑色の珍しいマニキュアは、みどりが使っているものと同じだった。 当然みどりは疑われ、犯人ではないと主張するが信じてもらえず、俊夫と共にその場を離れた。 可奈子と啓子も「人殺しと一緒にいたくない」と自分たちの部屋へ行ってしまう。 香山は夏美の側に残り、他の者は応接室で話し合うが、殺人犯の正体がわかるはずもなく 疑心暗鬼になる一同。 昼食の時間になった。 食事をとらないわけにもいかないということで、夏美に付き添う香山以外の全員が集まった。 しかしスープが出されたきり、一向に食事が出てこない。キヨの身に何かあったのではないか…? 念のため二人一組になって館内をくまなく探すが、キヨは見つからなかった。 キヨが居たはずの厨房を詳しく調べてみると、キヨの出していた料理は全てレトルトだったことがわかる。 そこで何かに気づいた様子の小林だが、透が何を聞いても答えてくれない。 もう一つ奇妙な事に製氷機から氷が全て無くなっていた。 91 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 08ID zchuZkAH 食堂に戻ると、またもや「河村亜希」の写真がテーブルの上に置かれていた。 我孫子武丸の声が響く。 「私は……河村亜希を殺した犯人を……許しません…絶対に…絶対に…絶対に…」 声はテープレコーダーから流れていた。 「馬鹿馬鹿しい。ちょっと出てくる。島が元に戻っているかもしれないからな」 そう言って出て行く美樹本の後を透と真理は追った。 外に出た三人は衝撃的な光景を目にする。 館の監視塔、通称《縛り首の塔》にキヨがぶら下げられていたのだ。 その死体に鴉がたかっている…わらべ唄の三番の歌詞だ。 殺人犯は我孫子武丸…目的は河村亜希を殺されたことの報復。しかしこれでは無差別殺人と同じではないか。 「とにかくキヨさんを降ろしてあげましょう」と透は言うが、この状況下で賛同する者はいなかった。 仕方なく透は一人で塔に向かうが、塔の入り口には鍵がかかっていた。キヨを降ろすことは諦めるしかなかった。 92 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 10ID zchuZkAH 館内に戻ると、相変わらず誰もが怪しいという状況の中、可奈子が部屋の前に落ちていたというキヨの遺書を差し出す。 『私の手は血に染まっています。私は主人である我孫子の殺人を手助けしてしまいました。 我孫子は正岡さまに復讐を遂げました。他の方には被害は及びません。 我孫子の正体は…亡くなった夏美さまです』 夏美が犯人だったのかと納得する面々と、夏美の潔白を主張する香山。 結局、「自分の手で、しかも手首がひどく傷ついた状態で自分の首を占められるものだろうか」 「報復が終わったのならば、さっき流れたメッセージは何なんだ」と透と真理が主張した事で、 キヨの遺書は我孫子の用意したニセモノだろうということに落ち着いた。 透と真理は水位が元に戻ったかを確認しようと館の外へ出た。 真理は「館は島と同じように本当は円環状で、正岡殺しの時、犯人はやはり窓から侵入したのでは」と透に話す。 再び館に戻って《縛り首の塔》を見た透はあることに気づく。 「キヨさんの死体を降ろして確かめたい事がある」 真理、小林、村上、美樹本が協力してはしごを支え、透がそれを上っていく。 はしごの上で透は《失われた環(ミッシング・リング)》を見つけた。それは中庭の泉に残された足ひれだった。 それに気づいた瞬間、透は塔のに潜んでいた何者かに突き飛ばされ、はしごから落ちて気を失ってしまった…。 93 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 12ID zchuZkAH しばらくして目を覚ました透は、第四の殺人を防ぐ為に皆を応接室に集めた。 だが、俊夫が呼びに行ったとき、部屋に閉じこもっていたはずのみどりは姿を消していた。 わらべ唄の四番目の歌詞は「かざみどり」… 「みどりさんが危ない!」と透たちはみどりの行き先の手がかりを探す。 どうやらみどりは我孫子に手紙で呼び出されたらしい。手紙には『人造湖に来い』とあった。 人造湖のほとりの小屋。 小屋の中の樽に、かき氷状の氷に首まで埋められたみどりがいた。またわらべ唄の見立てだ。 幸いなことにみどりは生きているようだ。俊夫がみどりを館へ連れて行く。 「さて……犯人はあなたですね」 透の呼びかけに応えて小屋の奥から出てきたのは、死んだはずのキヨだった。 館の泉は人造湖と繋がっていた。岸猿家が奉公人の逃亡を防ぐ為に作った仕掛けで、 防波壁の扉を閉じ、バルブを操作すると、館の庭に湖の水が流れ込む仕組みになっているのだ。 キヨは館を水没させ、物置部屋の窓から正岡の部屋の窓まで中庭を泳いで渡った。 これなら短時間で移動でき、庭に足跡も残らない。泉にあった足ひれはキヨが使ったものだった。 窓が無い館では、外の異変に気づく者はいない。暴風の騒音の中ならなおさらだ。 ドライスーツを着ていれば、びしょ濡れになる事もない。 だが食堂の仕掛けなど、キヨ一人では実行不可能なことがある。 キヨの協力者とは村上だった。村上は密かに皆を誘導して、仕掛けを準備する時間を作っていたのだ。 94 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 14ID zchuZkAH 透はキヨの正体に言及する。 「キヨさんの正体は……今日子さんです」驚く真理。 かつらをとり、老婆のメイクを拭うと、それは確かに小林の妻、今日子だった。 考えてみればキヨは招待もされていない小林の名を、小林が名乗る前から呼んでいた。 小林の様子がおかしかったのはキヨの正体に気づいたからだった。名前の事、料理が出来ない事、手紙の筆跡などで。 今日子が殺そうとしていたのは、久保田みどりただ一人だった。 正岡はみどりと部屋を交換していた為、暗闇で誤って殺してしまった。 夏美はキヨの部屋に忍び込み、あのマニキュアを見て年寄りがこんな物を持っているのはおかしい、と感じた。 『あんたが正岡さんを殺したんじゃないの』と疑われ、殺すしかなかったのだ。 (みどりが持っていた同じマニキュアは、かつて今日子の手からみどりに渡った物だった。) そして疑いの目をキヨから逸らし、また行動しやすくする為に、キヨの存在を消したのだが、 透が真実に気づいてしまったため、急遽みどりを呼び出した。 95 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 17ID zchuZkAH 今日子の旧姓は岸猿。 没落した貧しい家に生まれた今日子とその弟。弟は口減らしのために他家へ貰われた。 今日子は両親を亡くした後、漁師と結婚するが、夫は事故で死に、二人の間に生まれた娘は里子に出された。 今日子の弟とは村上つとむ、娘とは河村亜希。 小林と再婚した今日子は、ある日宿泊予定者の中に娘の名を見つけた。 娘を一目だけでも見ることを今日子は楽しみに待っていたが、その日「シュプール」に亜希が来ることは無かった。 亜希はペンションの宿泊客のものと思われる車にはねられ、一晩中吹雪にさらされて死んでしまったのだ。 今日子は犯人を捜すためにその夜の出来事をモデルに小説を書いた。幸運にもそれはゲーム化され多くの人の目に触れた。 しかし犯人が名乗り出るはずもなく、今回の無人島招待を計画したのだった。 夫と従業員のことは疑っていなかったため、招待状を出さなかった。 しかし食堂で、河村亜希の写真とおもちゃの車に露骨に反応したのはみどりだった…。 今日子が動機を語り終えた。 抜け殻のようになってしまった今日子、村上。 いつからか外に居て話を聞いていたみどりは、自分の罪を告白した。「殺されても仕方が無いんです…」 その時遠くから低い波の音が聞こえてきた…「島が元に戻ったかもしれない」「夕方には迎えの船が来る!」 館に戻ろうとした透たちは海岸で蛇のような生き物、リュウグウノツカイを見る。 そして島に向かって高波が迫ってきていることに気づく。 五番の歌詞の最後が「ざんぶらぶんの どうどうどう」となっているように、 島の円環が解けた影響で津波が起きているのだ。 96 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 19ID zchuZkAH 一同は丘の上に逃げようとするが、今日子はこの場に残ると言う。 呪われた岸猿の血は絶えるべきなのだと言って。そして小林も妻に付き添うのだった。 津波が迫る中小林は「いきなさい!」と透と真理に向かって叫ぶ。 丘の上に逃げたはいいものの、どうも波の高さは丘を上回るようだ。 透はとっさの閃きで三日月館に戻ろうと言う。館ならあの波に耐えられるかもしれない。 皆もそれに従う中、村上だけは「姉たちの最期を見届けたい」と言って丘に留まる。 館の中で波をしのいだ透たちが外へ出ると、島の被害は想像以上だった。 小林夫妻の姿も、村上の姿も無い。泣き出す真理。 『いきなさい』 小林の最期の言葉は『行きなさい』ではなく『生きなさい』と言っていたのではないか…透はそう思うのだった。 わらべ唄篇・完 補足 透が河村亜希の写真に見覚えがあったのは今日子の面影があったから 《縛り首の塔》を見て透が気づいたことは、キヨの死体(のニセモノ)から綿がはみ出ていたこと 126 かまいたちの夜2~陰陽篇~sage 111官能篇を書く前に陰陽篇を書きます 04/02/29 17 47ID 2oopJZ3T (島に向かうまではわらべ唄篇と同じ。 陰陽篇ではキヨ、村上、正岡は登場せず、夏美は密教や陰陽道に詳しい人物として描かれる) 島に向かう船の上で、透は我孫子について船長に訊く。 我孫子は地元の漁村「網曳村(あびこむら)」の出身ではないか、と船長は言う。 さらに詳しく訊こうとする透だが、船長は「網曳村の話はしたくない」と口を閉ざす。 「あんたらも物好きだな。よりによって《かまいたちの夜》にあんな島へ行くとは…」 船長が帰っていくと、美樹本がクルーザーでやって来た。 透、真理、小林、美樹本の四人は「三日月館」へ向かう。 美樹本は「かつてこの館は岸猿家の私設監獄だった」と透たちに話す。 岸猿家は奉公人を「カト(家兎)」と呼び、家畜のように扱っていたという。 島や館には風に由縁するものが数多くある。 風の神を祀った神社や、悪い風を切るという意味で館の窓に取り付けられた「風切り鎌」などだ。 美樹本はそれらの意味を説明しながら「糞忌々しい風が」とつぶやく。 だが透がその言葉の意味を尋ねると、美樹本は自分の言った事を覚えていないようだった。 127 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 48ID 2oopJZ3T 島の天候は崩れつつあった。さっきまであんなに晴れていたというのに。 館の応接室には、久保田夫妻、可奈子と啓子が既に到着していた。 遅れて香山夫妻がやって来た。合計十人だ。 我孫子が来るまで、館の探検をしていると、美樹本が食堂に集まってくれと言う。 皆が集まると美樹本は、「ぼくが《我孫子武丸》なんだ」と明かす。 美樹本は祖母が網曳村出身のため、このペンネームをつけたそうだ。 美樹本はふとしたことからこの島の事を知った。 祖母から岸猿家の話を聞いたときは作り話だと思っていたが、島が実在した為興味を引かれたのだった。 美樹本が調べたところによると、この島の前の持ち主・岸猿家は地元の網元にして神社の宮司でもあったらしい。 岸猿家の奉公人に対する残虐な仕打ちを知っていくうちに、ゲーム『かまいたちの夜』の シナリオを思いついたのかな…と美樹本は語った。自分でもよくわからないようだ。 しかも、島を買うために何度か下見に訪れているはずなのに、その記憶が曖昧であることなど、 美樹本の行動と言動にはどうも不可解なところがあった。 128 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 50ID 2oopJZ3T 夕食後、透は真理を誘って外に散歩に出た。透は二人きりが良かったのだが、香山と夏美もついて来た。 出かける四人に美樹本は声をかける。 「今日は五十年に一度の、《かまいたちの夜》と呼ばれる暴風の日だから、風が強まる前に帰って来てくれよ」 なぜ美樹本はわざわざこんな日を選んで招待したのか?と透は訝しがる。 散歩中、香山が何かに躓いて転んでしまった。 それは真っ二つに割れた石碑であった。なぜか側には美樹本のものと思われる、壊れたカメラが落ちている。 夏美が石碑に刻まれた文字を解読した。これは岸猿家の当主だった伊右衛門の霊を鎮める目的のものらしい。 ここで夏美がそれまでに気がついたことを述べる。 伊右衛門はかなり人々に恐れられていたようだ。 伊右衛門は風水を利用してこの島に気の力を集めていたのではないか。 何の為に気を集めていたのかはわからないが、溜まりすぎた気は《かまいたちの夜》の暴風で拡散するので、 気が暴発して悪影響が出るようなことにはならないだろう…。 129 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 53ID 2oopJZ3T 風が強まり、防波壁の扉が閉ざされた。 応接室からみどりの悲鳴が聞こえた。 透たちが応接室に行くと、天井に赤い線が一本引かれ、そこからポタポタと滴が落ちている。線は血で描かれたものらしい。 その時、階上から絶叫が聞こえた。 急いで二階に上がると、啓子の部屋からすすり泣きが聞こえる。 すすり泣く啓子の脇、ベッドの上には…首にベッドのスプリングが食い込み、可奈子が絶命していた。 啓子からなんとか話を聞き出すと、「突然スプリングが飛び出して、可奈子の首に巻きついた」と言う。 部屋には『朱雀』と書かれた紙が落ちている…。 突如啓子が笑い出した。 啓子はそこにいる一人一人を指差し、「ここにいる全員が死ぬ」と老人の声で告げた。 「すべては岸猿家のため…」啓子は気を失った。 130 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 56ID 2oopJZ3T 啓子を部屋へ運び、残りの者は応接室に集まっていた。誰も口を開こうとしない。 二階から大きな物音がした。 物音は美樹本の部屋からするようだ。誰かと争っているらしい。 「お前の思うようにはさせん!」と美樹本。 「たかがアビコの家兎に何が出来る」と老人の声。 透たちは美樹本の部屋の扉を開けようとするが、体当たりをしても開かない。 ようやく扉が開いた時、部屋の窓の下には、堀に植えられていた鉄杭によって串刺しにされた美樹本の死体があった。 まるで昆虫標本のように外壁に磔になっている。 そして部屋の床には『玄武』と書かれた紙。応接室の天井には、もう一本の線が描き加えられていた。 誰の仕業なのか。そもそも人間にあんな殺し方が可能なのか。さっきの老人の声は? 応接室で皆が話し合う。 とりあえず警察に連絡を、と電話を探すが、館には電話が無いようだった。 では携帯電話なら、と香山、夏美、俊夫が携帯を取り出すと、3人の携帯から奇妙な声が流れ出た。 『ひとつ、ふたつ、みつよついつつむつ、ななつやつ、ここのつ血に満たされば 逆しまの力ぎんと溢れ、この世の法破れや、妙婆詞(ソバカ)。 さすれば比斗神(ひとがみ)生まれるぞよ』 131 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 59ID 2oopJZ3T 一同は美樹本のクルーザーで逃げようとするが、玄関には鍵がかかっていた。 美樹本の部屋に鍵があるはずだ…皆で美樹本の部屋に行き、鍵を探すが見つからない。 美樹本が鍵を持っているのだ。俊夫が窓から体を乗り出し、鍵を取ろうとした。 その瞬間、突然窓が閉まり、俊夫の体を挟み込んだ。 透たちが窓を引き上げようとするが窓は意思を持つかのように俊夫を絞めつけ、 俊夫の体は胴体で切断されてしまった。 どこからか『白虎』と書かれた紙が舞い降りてきた…。 夫の死を目の当たりにして気を失ったみどりは自室に運ばれた。 応接室の天井にはまた赤い線が増えていた。これで三本。 「こんな事になるなら今日子の言う通り、島に来なければ良かった」小林が呟く。 今日子は岸猿伊右衛門の孫に当たるらしい。 三日月館での岸猿家の非道な行いを聞き知っていた今日子は小林をひき止めたのだが、 どうしても行くときかない小林に、お守りと言って五芒星の描かれた木人形を渡したのだ。 「それはセーマンちゃうのん?」人形についた印を見て夏美が言った。 132 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 18 01ID 2oopJZ3T 夏美、そして美樹本の部屋にあった岸猿家について調べた本によると… 五芒星(セーマン)に対する印はドーマン(縦四本、横五本の線を引いた碁盤目状の印) ドーマンの描き順には、臨、兵闘、者、皆、陣、列、在、前の九字が割り当てられる。 別の言い方では、朱雀、玄武、白虎、勾陳、南斗、北斗、三台、玉女、青龍。 (注・この説明はかなりいい加減に書いてます。陰陽道に詳しい人、間違いがあっても突っこまないでね) ドーマンの描き順と同じ文字が死体の側に。そして一本ずつ引かれていく天井の線。 どうやら人が殺されるごとにドーマンの完成が近づいているようだ。 勝手に付いてきた小林を除く、館に集まった九人は何らかの儀式の生贄にされるために呼ばれたのだ。 愕然とする一同。その時夏美が天井に線が一本増えている事に気づく。 廊下を誰かが歩いてくる。 それは全身を血に染めた啓子だった。先ほど携帯から流れ出た祭文をブツブツと唱えている。 啓子は手にみどりの首を下げていた。みどりの首は『勾陳』と書かれた紙をくわえている。 「我は岸猿家当主伊右衛門。ここに五の贄を捧げ奉り給う」 老人の声でそう言って、啓子は自分の首に包丁を突きたてた。『南斗』の紙がひらりと落ちる。 天井に五本目の線が引かれていった。 133 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 18 04ID 2oopJZ3T 応接室を離れ、食堂で残った五人が話し合う。 ドーマンの完成によって比斗神とやらが生まれるようだ。 伊右衛門は五十年かけて集めた気が最も高まるこの日、暴風によって気が散らされてしまう前に ドーマンを完成させたいのではないか…。 突然、喉が渇いたといって厨房に行く夏美。 おそらく美樹本は初めてこの島に来たとき、伊右衛門を鎮める石碑を壊してしまったのだろう。 目覚めた伊右衛門の霊は美樹本を操って、生贄にするためにこの島に皆を集めたに違いない。 透が真理に自分の考えを話していると、夏美の絶叫が聞こえた。 食堂に逃げ込んできた夏美は全身火だるまとなっていた。そしてそのまま凄惨な最期を遂げる。 夏美の死体に『北斗』の紙が張り付いていた。 香山は夏美を失った悲しみと怒りで、先ほどから一人何も喋っていない小林にくってかかる。 「お前が夏美を殺したんや!」「私は無関係だ」小林は食堂を出て行ってしまう。 ひとりにして欲しいと言う香山を残し、透と真理は二階へ上がった。 だが透は香山のことが気になり、真理を先に行かせて食堂に戻った。 134 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 18 06ID 2oopJZ3T 食堂から声がする。「見んといて……見んといて…」 透がそこで見たものは、香山の目をえぐり出す、炭と化した夏美の姿だった。 透は慌てて真理のいる部屋に逃げ込んだ。 五十年かけて溜めた気は、《かまいたちの夜》に吹き飛んでしまうはず… つまり部屋の中で夜が過ぎるのをじっと待っていれば助かるかもしれない!二人は希望を持つ。 部屋の外で小林の悲鳴が聞こえた。「助けてくれ!」 小林を見捨てる事は出来ず、透は扉を開け、そして見てしまう。 胸に穴を開けた美樹本、首に鉄線を食い込ませた可奈子、喉の裂けた啓子、 真っ黒に炭化した夏美、両目の無い香山、自分の首を抱えたみどり、上半身だけで這いずる俊夫…。 死者たちがあの祭文を唱えながら、こちらに迫ってくる。 部屋に入り扉を閉じるが、廊下からは扉を開けようとする音が聞こえてくる。 外では風が強まってきている。もう少しの辛抱だ。 しかし突然、小林が「奴らも頑張ったが、間に合いそうにもないなあ」と言って、 隠し持っていた鎌で真理を切りつけた。喉を切られて真理は息絶えた。 135 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 18 09ID 2oopJZ3T 伊右衛門の霊は、美樹本を離れ啓子にとり憑いていたが、啓子が死んだ今は小林に憑いていたのだ。 小林の参加は伊右衛門にとって願ってもない幸運だった。 小林に憑いていれば、孫である今日子を守り、岸猿家を再建できるからだ。 「さあて、あと一人。もう時間は無い」 小林の姿の伊右衛門が透に切りかかった。同時に透は小林の首に手をかける。 鎌は透の肩に刺さったが、透はそのまま首を絞め続け、小林の息の根を止めた。 扉は開いていたが、死者の姿はない。《かまいたちの夜》が過ぎようとしていた。 悪夢は終わった…そう思ったとき、声が響いた。 「やれ嬉し やれ嬉し とうとう九執血で満たされおった ひとつ ふたつ みつ よつ いつつ むつ ななつ やつ ここのつ 血に満たされ 今こそ逆しまの力 ぎんと溢れぬ」 九人目の生贄は誰でも良かったのだ。透でも、小林でも。 声は透自身が発するものだった。透の口から哄笑が溢れ出た…。 陰陽篇・完 比斗神=岸猿家にとっての守り神で、富をもたらすが、蘇らせた者以外にとっては邪神となる。 呼び出すためには血のドーマン(生贄)が必要。 209 かまいたちの夜2~官能篇~ sage 04/03/02 19 08ID sEVPQ++k 陰陽篇・透たちが散歩している所から分岐。 石碑が気になった透は、それを元の形につなぎ合わせる。 《かまいたちの夜》が始まった。恐ろしいほどの風の音がする。 透の部屋に真理が訪ねてきた。「なんだか恐くなっちゃって」二人は並んでベッドに腰掛けた。 透は思い切って真理の肩を抱き寄せ、見つめあった二人はキスをした。 今日の真理は妙に大胆だ…。我慢できなくなって、透は真理を押し倒す。 二人はベッドの上で抱き合い、愛撫する。 ついに、ついに一線を越えるのか…とその時。 部屋の入り口にみどりが立っていた。 「ぎょげええええ!」驚いて思わず真理の上から飛び退く透。 「そんな女に騙されちゃダメ」とみどり。 「私が彼とねるの」不敵に笑い、透の唇を吸う真理。 二人が透を奪い合い、透にあんなことやこんなことをしていた時。 「はじまってる~」「私もする~」突然、可奈子と啓子が服を脱ぎながら部屋に入ってきた。 四人の手によって服を剥ぎ取られ、 舐められたり噛まれたり吸われたりさすられたりこすられたりしごかれたりする透。 四人の女性にもみくちゃにされて痛い気持ちイイハァハァこんな幸せがあっていいのか。夢でも見ているのか? 「ここにおったんかいな」夏美が入ってきた。もしや夏美も、と思いきや違うようだ。 「あんた色情霊に取り憑かれてるで」 色情霊とは色欲に凝り固まって死んだ人間の霊だ。他の男連中はその力で眠りこけているという。 「あたしに任せとったらええねん。 大阪では『悪霊ハンター・お夏』と呼ばれとったんや。すぐ除霊したるわ」 『悪霊ハンター・お夏』!丈の短い装束(陰陽師とか巫女みたいな感じ)にコスチュームチェンジし、 ポーズを決める夏美。…夢でも見ているのか? 210 かまいたちの夜2~官能篇~ sage 04/03/02 19 10ID sEVPQ++k 気持ち良すぎて、このままではPS2では表現できないモノを出してしまう…透は除霊を願い出る。 夏美によると、真理に対する透の欲望が霊を招いたという。 夏美の力によって透の中から悪霊が出てきた。 悪霊=岸猿伊右衛門は語る。 せっかく自由になったのに、石碑を元に戻され再び封じられるところだった。 そこでその場にいた透の並外れた色欲を伝って、透に取り憑いたのだ。 透に子作りさせて、透の子どもとして転生するために。岸猿家の再興のために。 悪霊は去った。 我に返った真理たちに説明する暇も無くボコボコにされ、ひとり全裸で横たわる透。 絶望感に打ちひしがれていると、ノックの音がした。 真理だ。夏美に事情を聞いたらしい。 真理は悪霊に操られていた時のことを、わずかに覚えていた。「私にしたこと、あれも全て悪霊の仕業だったの?」 もう失うものなんてないさ、と透は本音を語る。 「あんなことをしたのは、悪霊のせいだけじゃなくて真理のことを愛しているからだ」 透と真理は一晩中語り合った。透は今、無理をすることも飾ることもなく真理と話が出来た。 《かまいたちの夜》に感謝すべきかもしれない…たとえこの恋が実らなくとも。 官能篇・完 211 官能篇 蛇足 sage 04/03/02 19 11 ID sEVPQ++k 夏美に除霊を頼まないと… こんな気持ちいいこと終わらせるなんてとんでもない!と透が躊躇していると、夏美は呆れて出て行ってしまう。 「透ちゃん、ここだったのね」妙に甲高い声がした。声の主は…こ、小林さん!? 小林は赤いハンカチを咥え、身をくねらせながら訴える。「透ちゃんが、透ちゃんが、好きなのおお」 そこに香山が加わった。「わしもや、わしもや。わしも好きなんやああ」 香山はビキニパンツ一丁という姿だ。ワンサイズ小さめのものという所がミソだ。 美樹本が現れた。美樹本の格好は、素肌に皮ジャンとブーツだけを身につけている。 「やあ、俺のことは兄貴と呼んでくれ」と美樹本。 「兄貴は俺だ。そうだよな、透」これは俊夫だ。 なぜか俊夫は褌一枚で全身びしょ濡れ、伊勢えびの一杯入った桶を抱えている。白い歯が眩しい。 なんだなんだ、真理たちはどこに行ってしまったんだ。というかこのシチュエーションはなんなんだ。 考える暇を与えず漢たちが透に迫り来る…三日月館に絶叫が響き渡った。 官能篇バッドエンド・終 305 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 20ID shVL7Qci (島に出発するまではわらべ唄篇と同じ。 底蟲村篇の真理は大学で民俗学を専攻していたが、引っ越しの際に大学を辞めてしまっている) 島に向かう船の上で、船長が語る。 三日月島は地元の者には「天国島」と呼ばれている。 底蟲村が廃村になった後、島には岸猿家の別荘が建てられた。 岸猿家の者たちは豪奢な生活をおくっており、まさにそれはこの世の天国だと、人々は嫌味をこめて呼んだ。 昭和の時代になると、岸猿家の当主・伊右衛門は怪しげなものに興味を持ち出した。 『不老不死』の研究である。 金にあかせた生活と、研究は続けられが、そのうち島の者の消息が途絶えた。 岸猿家の番頭が別荘を訪ねていったが、別荘には誰もいなかった…。 306 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 21ID shVL7Qci 船長は島に伝わるわらべうたを歌って聞かせる。 みのむしぶらりんしゃん美味そにみえる なんぼ美味そでも喰ろてはならぬ 喰ろたら一生生き地獄 みのむしぶらりんしゃん我慢がでけぬ 我慢でけぬなら喰ろうてごろじ 喰ろたらお山に捨てられる みのむしぶらりんしゃんたぢまのもりが とこよのくにで見つけねばよかった 喰ろたら生きるぞ万万年 「あんたらも物好きだな…よりによって《かまいたちの夜》に行くとは…」 館に行く途中、『網張(あみはり)神社』という神社を見つける。 船長は「《かまいたちの夜》の前にここにお参りしておけ」と言う。 神社の中は蜘蛛の巣が張って荒れ果てていた。 ここでは土蜘蛛を神として祀っているらしい。また、錆付いた剣もそこに納められていた。 透は神社の外で、茂みの中に人影を見る。この島には猿でもいるのだろうか…。 307 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 22ID shVL7Qci 「明日の夕方迎えに来る。気をつけることだ。《かまいたちの夜》には…『常世の虫』が目覚めると言うぞ」 透たちを館に送り届けると、意味深な言葉を残し船長は帰っていった。 透たちを柔和な顔をした老人が出迎えた。館の管理人、キヨだ。 応接室にいたのは、みどりと、この島の伝説を取材に来た美樹本。招待客はこれだけのようだ。 みどりは俊夫と結婚したが、俊夫は半年前に事故で死んだという。 我孫子が到着するまで島でも見物してくるといい、とキヨに言われ、 小林は湖へ釣りに、美樹本は山へ、みどりは中庭を散歩、透と真理は海へ泳ぎに行った。 浜辺にいた透たちのもとへ、すごい勢いでクルーザーが突っこんできた。慌てて逃げる二人。 クルーザーは岩礁に横腹をこすりつけ、止まった。クルーザーの中から出てきたのは香山だった。 クルーザーは壊れてしまったようだが、香山はこんなもんまた買えばいい、と豪快に笑った。 「ようこそ、歓迎するで。さ、わしの館へ行こうか」 308 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 24ID shVL7Qci 館へ向かう途中、香山は二人に「我孫子の正体は自分だ」と明かす。 ゲーム業界参入の第一弾『かまいたちの夜』が大当たりしたらしい。 (最初は『かやまたちの夜』というタイトルだったが、手違いで今のタイトルになったのだとか。) 今はかなり羽振りが良く、この別荘もクルーザーもゲームで儲かった金で買ったという。 そこでゲームに登場してもらったお礼に、透たちを招待したのだ。 小林夫妻は勝手にペンションを出したので怒ってるのではないかと呼ばなかった。(結局小林は勝手に来たが) OL二人は仕事で来られないそうだ。 透はなぜこの島を買ったのか、理由をきいた。 香山は答える。「この島には…『徐福伝説』があるからな」 他にもここには姥捨て山伝説、人魚伝説、『タヂマノモリ伝説』などもあるらしい。 『徐福伝説』 始皇帝の命令で徐福は不老不死の秘薬を探していた。 『海の向こうの蓬莱島(ほうらいじま)にその秘密がある…』 徐福はそう言って航海に出、消息を絶った。 『タヂマノモリ伝説』 垂任天皇が病になった際、家来の多遅摩毛理(タヂマノモリ)を『常世の国』に派遣し、 食べると不死になる『非時香果(トキジクノカクノコノミ)』を探させた。 309 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 25ID shVL7Qci 姥捨山以外の三つの伝説は全て『不老不死』に関係している。 そして岸猿伊右衛門はここで不老不死の研究をしていた…この島にはきっと何かある。 香山は伊右衛門の研究を引き継ぎ、不老不死を実現したいのだと熱っぽく語った。 その時、透はわらべうたを思い出す。 あの三番の歌詞には『たぢまのもり』と『とこよのくに』が出てきたではないか。 それを聞くと香山は「ここには何かある!」と一層確信を増す。 館に着くと他の皆に香山が我孫子武丸だということが伝えられた。 二階の自室へ水着を置きに行った透と真理。それぞれの部屋に入った時、透は真理の悲鳴を聞いた。 透が急いで真理の部屋に向かうと…蜘蛛がいた。 蜘蛛は天井に張った大きな巣の中心に陣取っている。胴体だけで70センチはある。 真理を逃がし、蜘蛛と対峙する透。 部屋にあった傘を手に取り、蜘蛛の腹に何度も突き刺す。蜘蛛は廊下へと逃げ出した。 真理が呼んできた美樹本たちと合流し、蜘蛛の体液の跡を追う透。 廊下の突き当たりで天井に潜んでいた大蜘蛛が香山に襲いかかろうとしたその時、 いつのまにか菜箸を手にしていたキヨが、それを蜘蛛の頭に突き立てた。 310 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 26ID shVL7Qci さっきの蜘蛛のような化け物がいるというのに、迎えの船が来る明日までこの島にいなければならないのか。 恐怖と不安で落ち着きをなくす一同。 「ちょっと待ってください」美樹本が声をあげた。 さっきの大蜘蛛は伝説の土蜘蛛なのではないか。 あんなものが存在するくらいだ、もしかしたら不老不死伝説も現実にあるのかもしれない。 もしそれが発見できれば大スクープだ。自分はここに残る…、美樹本は言った。 さらにみどりも残ると言い出した。 俊夫を失ってから、人は何故死ぬのか、何故愛する人と死に別れなければならないのかという疑問が、頭から離れないのだ。 本当は大学で研究を続けたかった真理も、民俗学の生きた資料を目の前にして帰ることは出来ないという。 しかし透と小林の反対にあい、しぶしぶと真理は部屋に荷物を取りに行く。 真理が透を呼んだ。 透が真理の部屋に行ってみると、さっきの大蜘蛛が張った巣に、蜘蛛の糸で妙な模様が描かれている。 それは『アフナイソトクカヘレ』と書いてあるように見えた。首をひねる透の横で、真理は顔を青くして読み上げた。 「危ないぞ。疾く帰れ」 蜘蛛が警告を?そんなまさか…。 311 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 27ID shVL7Qci 結局、透、真理、小林は帰ることになった。 クルーザーの無線機で送迎船に連絡はしたものの、船が来るのは夕方だという。 それまでここ待つと言う小林。しかし真理は「底蟲村に行ってみたい」と言い出した。 江戸時代に廃村となった村。管理人のキヨは底蟲村には絶対近づくなと言っていた。 一人でも行くと言う真理を止められず、また心配でもあったため、透と小林、香山も一緒に行くことにした。 村は驚くほど当時の景観を残していた。異様な量の蜘蛛の巣を除けば。 村の入り口には警告文が記してある。 『ココカラ先底蟲村 常世ノ入リ口ナリ 入ルナヨ 入ルト死ヌルゾ 皮溶ケルゾ 肉腐ルゾ 骨砕ケルゾ 五臓六腑ミナタダレルゾ 忌マハシキモノ多ク現レルゾ 一名 スクナビコナ トイフソレハ スデニ死ニタルモノデアル』 スクナビコナとは国造りを手伝い、後に常世の国へと飛ばされたという体の小さい神様のことだ。 警告文を無視して村に入ると、そこにいた全員が何とも言えぬ嫌な感じを味わう。明らかに村の中は空気が異質だった。 小林が村に生えている灌木に近づいていった。透と真理も後を追う。 312 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 28ID shVL7Qci 奇妙な植物だった。 葉は無く、黒光りする枝に白い花と小ぶりのバナナのような黄色い実がついている。 香山によると、村の裏山にもこの木がたくさん生えているという。 料理人の小林は、この実が気になり味見してみた。「うん…いけるな。」 実を平らげ、他の三人にも食べろと勧める小林。 透は皮をむいてみた。ピンク色で甘い匂いがする。 だが…ねっとりしていて、粘液に包まれていて、妙に生々しい。まるで生肉のようだ。 改めて臭いを嗅ぐと、髪の毛が焼けるときみたいな臭いがするように感じる。 小林が見ている手前捨てるわけにもいかず、香山は一口だけ実を食べた。あまり口に合わなかったようだ。 真理が実を口に運び、噛み切ろうとした瞬間、透は悪い予感がしてそれを止めた。 廃屋を見に行こうといって、透はその場から真理を連れ出した。 廃屋の中には長持ちがあった。真理がそれに近づくと長持ちの陰から人影が飛び出してきた。 それは真理に襲い掛かり、真理を助けようとした透も組み伏せられてしまう。 サルのような姿のそいつの顔は、生ける屍、ゾンビというのが一番近かった。 首を絞められ、もう駄目かと思ったとき、天井から何かが落ちてきた。蜘蛛だ。 蜘蛛はゾンビにに飛び掛り、そいつの首を食いちぎった。 だが、首が千切れてなおゾンビは動けるようだ。そのまま廃屋から飛び出し、逃げてしまった。 騒ぎを聞きつけた小林と香山がやってきて、残っていた大蜘蛛を殺した。 313 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 29ID shVL7Qci この島には大蜘蛛以外の化け物もいる…。神社で見た猿のような影はあの化け物だったようだ。 あんな目にあったため、真理もようやっと帰る気になった。真理だけではない、香山もだ。 クルーザーの所に戻ってきたとき、小林が腹が痛いと言って苦しみだした。 もしやさっき食べたあの実が原因だろうか…。 しばらくするととりあえず痛みは和らいだようだが、船が来るまではまだ時間がある。四人は一旦館へ戻る事にした。 透が小林を背負い、山道を歩いた。 ふと気がつくと香山の様子がおかしい。顔色が悪い。キョロキョロと辺りを見て何かを探しているようだ。 どこか具合でも悪いのか、と透が声をかけようとした時、 「ミ…ミ…ミミミ…ミミミミミミミミミミミミミミ…!」 突然、小林が大声をあげた。口から泡を吹いて叫んでいる。 透の背から落ち、小林は四つん這いになって凄まじい速さで走り出した。そして草むらに消えてしまう。 四人は小林を探した。 捜索を続ける透と真理の背後で音がした。 二人が振り返ると、そこには底蟲村で見たゾンビのような化け物の姿があった。 化け物が三体。そして化け物と一緒にいたのは小林だった。皆、あの実を貪り食っている。 香山がやって来て、その物音に気づいた化け物たちと小林は、やぶの中に消えていった。 香山は化け物が食べていた実の残骸を見て、ただ一言「……そうか……」とつぶやいた。 「あの実のせいで叔父さんはあいつらの仲間になってしまった…あれは食べてはいけないものだったのよ」真理が言うのを聞いて、透は閃いた。 わらべうたの「みのむし」とはあの木の実のことだったのではないだろうか。 「喰ろたら一生生き地獄」は、食べたら化け物になってしまうことを表していたのか…。 314 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 32ID shVL7Qci 館に戻ると、館は外も中も蜘蛛の糸で覆われていた。前に進むのも困難なほどだ。 他の者たちを探して食堂へ行くと、そこには蜘蛛に体液を吸い尽くされた美樹本の死体があった。 透たちはみどりとキヨを探し続けた。 みどりは物置部屋にいた。蜘蛛の糸に絡み取られぐったりしているが、生きているようだ。 みどりを助けようとすると、七体の大蜘蛛が立ちはだかった。 この数には太刀打ちできない…どうするかと迷っていると、キヨが火のついた松明を持って現れた。 炎で蜘蛛を焼き、追い払い、みどりを抱えて館から逃げる一行。 透たちは館の外に逃げたものの、十数体もの蜘蛛に囲まれてしまう。 すると、あのゾンビのような化け物たちが現れ、大蜘蛛たちに攻撃を始めた。しかし大蜘蛛に押され気味だ。 「蜘蛛が多すぎてスクナビコナでは防ぎきれません。早くこちらへ」キヨが言った。 「網張神社に、かつて大蜘蛛退治に使われた太刀、《蜘蛛切丸》があります。 あれさえあれば、蜘蛛たちを根絶やしにすることができるのです」 なぜキヨはそんな事を知っているのか。そこまで知っていながらなぜ自分で行かないのか。 透たちは疑問を感じるが、今はそれどころではない。 みどりも目を覚まし、蜘蛛たちに行く手を阻まれながらも透たちは神社に辿り着いた。 315 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 33ID shVL7Qci 神社の周りには島中の蜘蛛がひしめいていた。 神社にあった錆びた剣《蜘蛛切丸》を振りかざすと、蜘蛛たちは後ずさっていく。 真理が透の袖を引っ張った。透が真理の指差す方を見ると、以前見たのと同じ蜘蛛の巣に書かれたメッセージがあった。 『ツルキヲタスナ』…剣を出すな… 『トコヨノムシアラワレ コノヨオワル』…常世の虫現れ、この世終わる… 《蜘蛛切丸》の威力は凄まじく、蜘蛛たちは無抵抗のまま殺されていった。 喜んだのも束の間、香山が剣を取り落とし、苦しみだした。 「とうとう来よったか……」香山は理性のあるうちに、と言って、透たちに自分の考えを伝えた。 自分や小林がこうなった原因…あの木の実はおそらく『トキジクノカクノコノミ』だ、と。 「体が…体が言うことをきかんのや!実をくれ!実…ミミミミミミミミ!」 そう叫んで香山は、小林と同じように走り去る。 透と真理はあのわらべうたを思い出す。あの歌にはなにもかも秘密が隠されていたのだ。 『タヂマノモリ』が持ち帰った木の実は、この世にとんでもない災厄をもたらすものだった。 あの実を食べた者は死ななくなるのではなく、ゾンビのような姿のまま死ねなくなるのだ。 そんなものが世界に広まったらどうなるか。 蜘蛛の巣に、文字が残されていた。 『モウテオクレ』 …もう、手遅れ… 「香山さんも小林さんもきっと『底蟲村』にいるわ」 突然、みどりが歩き出した。みどりからは今までとは違う、決意のようなものが感じられた。 316 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 34ID shVL7Qci 透と真理は底蟲村の前にいた。みどりは一人でどんどん先へ行ったため、見失ってしまった。 村の中の嫌な感じは以前より増したようだ。 しかし裏山の辺りまで来ても、蜘蛛もゾンビも姿を現さなかった。 透は真理の様子がおかしいことに気づく。 顔面が蒼白で、キョロキョロと辺りを見回している。真理はあの実を一瞬口に含んだが、まさか…。 透が躊躇いつつもそのことを訊こうとした時、真理が「あっ」と声をあげた。 裏山は『トキジクノカクノコノミ』だらけだった。一面にその木が生えている。 そして木の周りには、ゾンビのような化け物が群がり、実を貪っていた。 人相のすっかり変わった小林らしき人もいる。そして香山も。 香山は透たちを見て恥ずかしそうに苦笑いするが、実を食べるのはやめなかった。 「わしはもうあかん。頭はしっかりしとるんやが、体が言うことをきかんのや…」 真理もふらふらと木の方へ近寄っていく。透は無理矢理ねじ伏せて真理を止めた。 「私、実を食べていないのに…あんなふうになりたくない。透、私を殺して!」 透は無言で真理をつかむ手に力を込めた。 「この実は粘膜に触れただけで作用を起こす。すぐに吐き出しても手遅れじゃ」 声がして振り向くとキヨが立っていた。 「あんたは何者なんだ。なぜいろいろなことを知ってる」 つかみかかる透の手をかわし、キヨは語り始めた…。 317 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 35ID shVL7Qci あの実…『トキジクノカクノコノミ』は木の実ではない。 『常世の虫』の卵なのだ。わらべうたにあった『みのむし』とは『虫の実』のことだった。 虫の実を食べた者は、理性を失い死ねない化け物『スクナビコナ』になる。 彼らはその名の通り不完全な幼体だが、稀に成熟する資質を持つ者が出る。 そして成熟した者は常世の虫となる。 今、底蟲村の地下に眠る常世の虫は、五十年に一度、この世を不死の国にするために地下から出ようとする。 それを食い止めていたのが、常世の虫を封印する為に島に置かれた土蜘蛛たちだった。 これまで何百年もの間、常世の虫の復活は蜘蛛たちに阻まれてきたが、 今回は透たちの手によって邪魔者の蜘蛛はいなくなった…。 キヨは『タヂマノモリ』だった。常世の国から『トキジクノカクノコノミ』を持ち帰った張本人。 島の『スクナビコナ』は、飢饉の時に『虫の実』に手を出し山に捨てられた底蟲村の村人たち(これが姥捨山伝説のもと)と、 不老不死を追求した岸猿家の人間の成れの果てだった。 キヨは透にも虫の実を食べさせようとした。もの凄い力で押さえ込まれ、もう終わりかと思ったが、急にキヨの力が緩んだ。 キヨの手を掴む人物がいた。 「何だかわからないけど、急にすっきりしちゃった。あんた、いいかげんにしなさいよ」真理だった。 真理はキヨに一本背負いをかけ、キヨが動けないでいるうちに二人は逃げ出した。 318 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 36ID shVL7Qci 突然大地が揺れて、二人は地面に投げ出された。 村の地下から、常世の虫が現れたのだ。激しい揺れの中で透は真理を見失ってしまう。 小山ほどもある巨大な虫の背には、無数の『トキジクノカクノコノミ』が生えている。 木のように見えていたものは虫の体の一部だったというわけだ。 「うれしや…うれしや…この世を常世に、常世をこの世に…トコヨコノヨトコヨコノヨ…」 キヨに合わせて『スクナビコナ』たちも唱和する。「トコヨコノヨトコヨコノヨトコヨ…」 虫の進行方向にみどりがいた。 みどりは全裸で、両手を広げて虫を阻むように立っていた。このままでは踏み潰されてしまう。 しかしなぜか常世の虫はみどりの前で立ち止まった。次の瞬間…。 みどりの目や口、全身の穴という穴から無数の微細な蜘蛛がぞろぞろと出てきた。 みどりは蜘蛛に捕らえられた時、卵を産みつけられていたのだ。今まで動いていたのはみどりの皮を被った子蜘蛛だったのか…。 蜘蛛は見る間に成長し、他の蜘蛛と融合して、一匹の巨大な蜘蛛になった。 二体の巨虫は押しつ押されつ格闘する。 劣勢になった常世の虫のもとへ行こうとしたキヨの足を香山が掴んだ。 「まだ人間でおるうちに、やることはやっとかんとな」 香山以外の『スクナビコナ』たちまでがキヨの前に立ちはだかった。「もう死にたい…常世に帰りたい…」 キヨが虫を助けに行けずにいるうちに、虫と蜘蛛の戦いには決着がついていた。 相討ちだ。常世の虫も大蜘蛛も死んでしまった。 319 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 37ID shVL7Qci 透と真理は村の外へ脱出した。 村の囲いの中から香山が顔を出した。「たったひとつ、心残りがある。会社のことや。透くん、わしの会社をついでほしい」 透が頷くと香山は何度も何度も礼を言い、村の中へ消えていった。 次の瞬間、村の地下から火柱があがり、村は地の底へと飲み込まれていった。 キヨも、虫も、蜘蛛も、香山たちも…全てが消え、村の痕跡すら残らなかった。 気がつくと二人は船上にいた。送迎船の船長が迎えに来てくれたのだ。 色々な事があったが、こうして生きている。何より真理が隣にいる。透は幸福感に酔いしれていた。 だから真理の話も聞こえていなかった。 「実を口にしたのに、私はどうして『スクナビコナ』にならなかったのかしら。 キヨが言っていた『成熟する資質を持った者』って…もしかしたら私は…」 透が真理のほうを見た時、真理は甲板に膝と両手をついていた。 真理の背中が透の目の前でぱっくりと割れた。 そして中から…虫が現れた。 カラスアゲハのような真っ黒な虫は、透を一瞥して飛び立った。 真理の抜け殻を手にして呆然としている透の上に、月の青い光が降り注いでいた。 底蟲村篇・完 補足 キヨやスクナビコナは、神社に張ってあった結界のために『蜘蛛切丸』を手にすることはできなかった。 《蜘蛛ん太刀の夜》が訛って《かまいたちの夜》となった。 348 かまいたちの夜2・底蟲村篇 sage 04/03/06 10 22ID A/Nf2lsh 前の別の人だが追加 真理に実を食わせてるかと(口にさせてはならない) 真理とキスしたかでエンドが違う。 1「真理が実を食べた、又は口にした」 >「キスした」→「真理成熟、透化け物化」 >「キスしてない」→「真理成熟」 2「真理が実を食べてない」 >真理・透無事脱出(たぶんこれがパッピーエンドだと思われる) あと、うろ覚えだが、このどれかが船まで行かないEDだった気がする。 386 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 20ID cqkjhnP8 (わらべ唄篇で正岡の死体を発見したところから分岐。 事件のことを真理に相談した透の意識は唐突に薄れ、ここからは真理の視点で物語が進む) 真理の〈力〉によって、透は気を失ってしまった。まさか、こんな時に〈力〉が始まるなんて。 正岡の死はわらべ唄と符合する点が多すぎる、と言って小林はわらべ唄を口ずさんだ。 真理は初めて聞いたときからこの唄が気になっていた。どこかで聞いたことがあるような気がするのだ。 小林にしたって、一度聞いただけですらすらと歌えるのはおかしい。 とにかく皆に知らせようと言う小林に、少し待って欲しいと言って、真理は正岡の死体に触れると… ――三日月館の内部、病室のような場所、いくつも並んだベッドとその上の子どもたち、薬品、 ベッドから垂れ落ちた手、シーツに染み付いた血―― 断片的な映像が真理の頭の中にフラッシュバックした。 まだふらついてる透も含めた全員が応接間に集められ、正岡の死が伝えられた。 殺された、ということはこの島に殺人者がいるということになる。 電話線は何者かによって切られ、警察に知らせることも出来ない。 館を調べても何も見つからず、根拠のあるアリバイを証明できる者もいなかった。皆の間に不安が広がる。 388 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 21ID cqkjhnP8 自室に戻ると、透が言った。 「気絶した時、真理の声が頭の中に直接聞こえた。それにあの時、僕は真理になって僕を見ていた」 僕に何か隠しているんじゃないか、と透に問われる真理。 透は自分にとって一番信用できる人物だ。そして透も自分を信じてくれる。真理は秘密を明かす決心をする。 真理には特別な力がある。 物に残った人間の記憶を読み取る能力だ。 人の記憶や思いを探る事も出来なくはないが、それは相手の肉体・精神ともに大きな負担をかけることになる。 先ほど透が気を失ったのはその為だった。(しばらく使えなくなっていた〈力〉が突然目覚め、コントロールできなかった) ただし、〈記憶〉はそれを残した者の心理によって歪められている。(嫌いなものは醜く歪められ、その逆は好ましく映る) そのため完全な事実が読み取れるわけではないが、犯人探しに役立つかもしれない。 真理は透と共に正岡の部屋を調べてみたが、たいした手がかりは見つからなかった。 そこで、もう一度死体の記憶を読み取ってみることにした。死体の頭部に触れると… ――男の姿、フクロウの図案、〈ガンツフェルト症候群〉という文字、燃える人間―― 「何をしている」不意に美樹本が現れた。 死体の発見者の透と、真理の行動を怪しむ美樹本。しかし意外にも透は慌てることもなく毅然とした態度をとっている。 美樹本は「怪しまれるような行動は慎め」と言い残して出ていった。 389 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 22ID cqkjhnP8 朝食の時間は、島が閉じてしまったことが話題となっていた。これでは誰も脱出できない。 食事が済むと、真理は透を誘って外へ出た。二人きりになると透が言った。 「おかしな話だけど、僕はゲームをやってもいないのに河村亜希を知ってる気がするんだ」 「私もなの。河村亜希に見覚えがある気がする。…それからあのわらべ唄も」 それだけではなかった。二人とも、初対面のはずの村上や正岡にも以前どこかで会ったように感じていた。 そういえば二人が初めて出会ったときも同じような感覚を持った…。 しばらく歩いていると、村上と可奈子が言い争う声が聞こえた。 真理たちに気づくと逃げるように去っていく村上。それを可奈子が追いかける。 可奈子は真理とすれ違う時に囁いた。「思い出した?」 ハーバーで透がバッジを拾った。フクロウの図案の小さな丸いバッジ。 それは真理が正岡のビジョンの中に見たものと同じだった。真理はバッジの〈記憶〉を見てみた。 ――五人の幼い子どもたち、〈ガンツフェルト症候群〉、そして子どもの頃の真理自身の姿―― 真理は透に今見たものを伝えた。真理の中に何か引っかかるものがあった。 390 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 23ID cqkjhnP8 館に戻ると、館内は異様な雰囲気で女性のすすり泣く声が聞こえてきた。 声のするほうへ行くと、血の海の中で夏美が死んでいた。 両目が潰され、首には狐の襟巻きが巻きついている。両の手首はもがれかけていた。わらべ唄の見立てだ。 目を泣き腫らした香山が搾り出すように言った。 「こいつはこないだまでミナミのソープで働いとったんや。わしらはそこで知りおうて…。 春子に死なれて、お前にも死なれたらどないしたらええんや!」 離婚したと言っていたが、春子は死んだのか…。 真理は隙を見て夏美の死体に触れてみた。 ――泣いている子どもたち、春子や香山の姿―― 真理は小林に肩をつかまれ意識を引き戻された。小林は悲しげに「そんなことはやめた方がいい」と言った。 消沈している香山を残して真理たちは部屋の外へ出た。 叔父は何か知っている…。真理は真相を確かめるべく小林の部屋に行った。 小林に確認するように真理は話した。 捨て子だった真理は今の両親に八歳の時引き取られた。それ以前にいたのは『愛護苑』という施設だ。 愛護苑は真理がいた当時、ミネルヴァ社という日本でも有数の薬品会社がスポンサーとなっていた。 そして小林は脱サラ以前、ミネルヴァ社の開発部にいた。 真理は小林の研究室で何日かを過ごした事がある。 そこには何人もの子どもたちが集められ、検査をし、薬品を与えられた。あれは確かに何かの実験だった…。 391 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 24ID cqkjhnP8 「どうして今さらそんなことを…」青ざめる小林。 真理は小林に拾ったバッジを突きつけた。フクロウのバッジは、ミネルヴァ社の社章だった。 「ガンツフェルト症候群って何。今ここで何が起こっているの」と真理は訊いた。 「知れば後悔することになる」と小林は言ったが、真理の決意は固かった。小林は話し始めた。 ガンツフェルト症候群とは、第二次性徴前の子どもだけがかかる、内分泌異常を伴う神経障害だ。 これにかかった者は、視覚や触覚などを失う代わりに五感とは別の知覚や能力が開花することがある。つまり超能力を持つ。 そして小林は症候群の原因となる毒素を研究していた。 「その毒素を私に?」真理が訊いたが返事はなかった。 突然部屋に俊夫が入ってきた。 「ミネルヴァのことで話があるんですけど」俊夫は問答無用で小林を連れて行こうとした。 真理が思わず俊夫の腕を掴むと、〈力〉が勝手に発動し、真理の意識は俊夫の中に入っていった。 その時見えたのは、小林を殺すビジョンだった。俊夫はミネルヴァ社のスパイなのだ。 透が真理たちを呼びに来た。「大変だよ。早く外へ」真理たちは気絶した俊夫を置いて外へ向かった。 外へ出た真理は、監視塔の先端に串刺しになった村上の死体を見た。死体はカラスにつつかれ、内臓がはみ出している。 「わらべ唄よ…」啓子が呟いた。わらべ唄を口ずさむ啓子。 「茶番はやめろ!部外者の目を気にしてる場合じゃないだろ」みどりの肩を借りて俊夫が館から出てきた。 「こいつらが犯人に決まってる。あの実験では女しか残らなかったんだ」俊夫は啓子たちを指して言った。 「ミネルヴァの犬が何を吠えてるの」啓子は俊夫の正体を知っていた。 俊夫はナイフを構えて啓子に向かっていくが、その腕は見えない力でねじ切られてしまった。 「姉さん、やっちゃってもいいの?」そう言って俊夫に近づいたのはキヨだった。 キヨから〈力〉があふれ、俊夫の首がぎりぎりとねじれていく。 「それくらいにしておけよ」それを止めたのは美樹本だった。美樹本は銃をキヨに向けた。 美樹本もミネルヴァ社の関係者だったのだ。 392 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 25ID cqkjhnP8 美樹本は語る。 一年半前、「シュプール」にはミネルヴァ社の関係者が集まっていた。 小林を監視していた俊夫、そのサポートをしていたみどりと、何か起こりそうだというので援軍として駆けつけた美樹本。 結局その時は何も起こらなかったのだが…。 「ちょっと待ってくれ」香山が話に割って入った。「何を言ってるのかさっぱりわからんわ」 夏美は誰に殺されたんだ、ミネルヴァとはなんだと詰め寄る香山を、美樹本はためらいもなく撃ち殺した。 続けて、俊夫が倒れた。もう死んでいるようだ…もし生きていたとしても、手首からの激しい出血で死は間近だろう。 次に美樹本は逃げ出そうと走り出したみどりを背後から撃った。 仲間じゃないのか、と問う小林に美樹本は言った。「俺のすべきことは被験者の回収と情報漏えいの阻止」 そして小林に銃口を向ける。そこに真理が立ちはだかった。「あなたに私は撃てない。私は…被験者のひとりよ」 「真理ちゃんも記憶が蘇ったわけだ。ミネルヴァの洗脳もあんまりたいしたもんじゃないな」と美樹本。 「被験者の回収ということは、実験はまだ続けられているのか。あれだけの事件を起こしたというのに」小林が言った。 その時美樹本が透の存在に気づいた。透は部外者だ。香山のように殺すつもりなのだ。 真理はとっさに〈力〉を使い、美樹本の意識の中に入り込んだ。 393 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 26ID cqkjhnP8 十三年前。 ミネルヴァの研究所ではサイ能力者(超能力者)を人工的に作り出す薬品の開発が進められていた。 試薬は子どもにしか効き目がなかった。愛護苑から、身寄りのない子どもだけが数十人選ばれ、ミネルヴァ社の研究施設に入れられた。 危険のない実験のはずだった。 しかし投薬が始まってから一週間目の夜。ほとんどの子どもたちが体調に異変をきたし死んでいった。 しかも同時に火災が発生し、研究所は全焼してしまった。 生き残った被験者は五人。 河村啓子・亜希の双子の姉妹、米倉夏美、田嶋可奈子、そして真理。 ミネルヴァ社は隠蔽のため彼女たちを処分しようとしたが、小林がそれを止めた。 記憶を消し、今後監視をつけて追跡調査をすることを条件に…。 事件の直後、小林はミネルヴァ社を辞めたが、彼にも俊夫とみどりの二人が監視につけられた。 研究は正岡と村上が引き継いだが、真理を除く被験者四人は、数年前示し合わせたかのように姿をくらました。 その後薬は完成。美樹本が被験者の第一号となった…。 真理の意識は美樹本から抜け出した。美樹本は気を失っている。 いわば美樹本も実験の犠牲者だ。あたりに転がる死体を見て、真理はやるせなさを感じる。 その時、啓子が俊夫のナイフを拾いあげて美樹本を殺そうとした。啓子を止める真理。 「あなたまだわかってないの」啓子が蔑むように言った。 死んだ夏美を除くと被験者の生き残りは、真理、可奈子、啓子、河村亜希…。 キヨが啓子の妹、河村亜希だった。 亜希は超人的なサイコキネシス能力を身につけたが、薬の影響でホルモン分泌が異常になり、急速に歳をとってしまったのだ。 「その苦痛があなたにわかる?こいつらなんて死ねばいいのよ!」 亜希は美樹本に向かって〈力〉を放つ。夏美や俊夫を殺したのと同じ〈力〉だ。 いつの間にか目覚めていた美樹本はそれに応戦する。二人の間で〈力〉が膨れ上がった。押される美樹本。 「やめてええ!」真理が叫ぶと同時に、透が空に向けて美樹本の銃を撃った。〈力〉の放出は途切れ、美樹本は倒れる。 透は真理に銃を渡し、美樹本を背負って真理と小林をうながした。「行こう。彼女たちから逃げるんだ」 394 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 27ID cqkjhnP8 山道で真理たちは休憩をとった。 啓子たちの狙いは自分だ、自分を置いていけ、と言う小林を真理は諌める。 あの三人は仲間のはずの夏美を殺したのだ。叔父さんにだって何をするかわからない…。 「どうせあの女は人殺しさ」そう言って現れたのは啓子だった。 可奈子が透視で真理たちの居場所を見つけ、啓子はここまでテレポートしてきたという。 正岡を殺した時も、同じようにテレポートで部屋に侵入したそうだ。 夏美はソープで働いている時に香山に目をつけ、正妻になるために香山の妻・春子を〈力〉で殺したのだという。 手に入れた豊かな生活を守るために、夏美は協力を拒んだ。だから殺した。 小林は処分されそうだった自分たちを救ってくれた。だから殺すつもりはなかったのだが…。 小林の姉にひきとられ幸せそうに暮らす真理を見て気が変わった、と啓子は言った。 「私たちは亜希がああなって暮らしていくのにも必死だったのに…」 「真理が私の姉に引き取られたのは偶然だ。それよりも何故洗脳が解けた」 問う小林に啓子は答える。 食卓に置かれたおもちゃの車は、可奈子の弟のものだった。可奈子の弟も実験の犠牲者だ。 ある日、可奈子のもとにそのおもちゃが届けられた。『ミネルヴァの実験を思い出せ』というメッセージとともに。 そこには五人の生き残りの名前も書いてあり、全てを思い出した可奈子は啓子たちを見つけ出した。 三人は実験の関係者に復讐する為に夏美に協力を求めたが断られた。 真理にも知らせようとしたが、その前にミネルヴァ社に気づかれてしまい、逃げ出すしかなかった。 危険を冒して「シュプール」に行った。その後、ゲームを利用して関係者に揺さぶりをかけ、正岡と村上の所在を知った。 そしてこの島に関係者を集めた。 わらべ唄は啓子たち姉妹が研究室で歌っていたものだった。 船長にわらべ唄を歌わせたのは、関係者に当時の事を思い出させ、それをテレパシーで探る為だった。 ミネルヴァ社と戦うために協力しなさい、と啓子は小林に言った。 真理は止めるが、小林は真理に手を出さないことを条件にそれを呑んだ。 395 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 28ID cqkjhnP8 啓子は亜希と可奈子をこの場に連れてこようと、〈力〉を使おうとした。 その時ヘリコプターが飛んできた。救助か?と真理は思ったが、ヘリからは銃弾が飛んできて啓子の体を貫いた。 小林が真理の手を引き、逃げようとした時、突如戦闘ヘリは爆音とともに炎上した。 「パイロキネシス…」小林が呟いた。 真理、透、小林は力なく館に戻った。とっさの事で、美樹本は山道に置きざりにしてきてしまった。 「さっきの爆発は真理がやったのか」と小林に訊かれるが、真理には覚えが無い。では可奈子か亜希がやったのか…? あの戦闘ヘリはミネルヴァ社のものだ。美樹本が連絡したのだろう。 薬品は完成し、かつての被験者はもう研究の価値は無い。ミネルヴァ社の裏の顔を知るだけの邪魔者だ。 ミネルヴァ社に処分されるのが先か、可奈子たちに殺されるのが先か…。 絶望的な状況だが、透が言った。「可奈子ちゃんたちと協力して戦うんだ」 館に入ると、「啓子を見殺しにしたわね」と言って可奈子と亜希が小林に詰め寄った。 そんな場合じゃない、と真理が言うと同時に、ミネルヴァ社の私兵が館に突入してきた。こんな状況なのに透は妙に楽しそうだ。 小林は兵士たちに殺されてしまい、残る四人は二階へと逃げた。 階下で手榴弾が爆発し、その爆風が真理を襲った次の瞬間、炎が立ち昇った。 まるで龍のようにうねる炎は、侵入者たちに襲い掛かり、薙ぎ払った…。 396 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 29ID cqkjhnP8 二階の一室で真理は目を覚ました。しばらく意識を失っていたらしい。 「あれはあなたがやったの?」と可奈子たちに言われるが、何のことか分からない。 「パイロキネシス…あらゆるものを爆発炎上させる能力。こんな時には便利だよね」 そう言ったのは透だった。 実験で投薬を受けたのは子どもたちだけではなかった。他に三人の妊婦がいたのだ。 そのうち二人は流産したが、一人は無事だった。それが透の母親だ。 母の胎内にいた時から透には意識があった。 十三年前、透は胎内から〈力〉をふるい、研究室を焼き尽くした。 透の母親は火事で焼け死んだと思われていたため、監視もつかずに暮らしていた。 しかし八年ほど前にその存在がミネルヴァ社に知れ、母親の周りに不審な人物がうろつきだした。 その目を逸らす為に透は別の事件を起こし、母親を始末した。 可奈子に車を送ったのも透だった。被験者たちに実験の事を思い出させるために。 真理に近づいたのは、研究所にいた時から真理の事が好きだったから。 (透は真理と会う時には自らに仮想の記憶を植え付けていたため、真理が透の意識に触れたときも過去のことは読み取れなかった。 真理の〈力〉に触れたのがきっかけで、今は透の偽の記憶も外れている) 透の成長は常人よりも速かった。体は青年だが中身は十三歳なのだ。亜希と同じ薬の副作用だ。 それを聞いて、真理は透の妙な子どもっぽさに思い当たる。 397 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 30ID cqkjhnP8 可奈子がミネルヴァの軍隊が迫っている事を感じ取った。 テレポートが使える啓子はもういない。今は手を組んで戦うしかない。 可奈子が透視で兵士の居場所を探り、透が焼き殺した。 兵を投入しても無駄だと悟ったのか、ロケットランチャーでの攻撃が始まった。 亜希が飛んできた弾を破壊するが、攻撃はまだ続いている。逃げなければいずれやられてしまう。 中庭の泉は海水だった。海と繋がっているはずだ。 真理たちは亜希の力で身を包み、透の炎を推進力にして水中を進み、館を脱出した。 出た場所は島の人造湖だった。(泉は海と湖の二ヶ所と繋がっている) 亜希は〈力〉の使いすぎか、気を失っているようだ。 透は可奈子に敵の居場所を訊いた。どうやら敵は館の方に集中しているようだ。 「よし、行こう」透は無邪気に笑って歩き出した。 館を見下ろす丘の上で、透は意識を集中した。そして〈力〉を放った。 館が炎に包まれ、豆粒のように見える兵士たちが一瞬で焼き尽くされる。 これは虐殺だ。ミネルヴァのやったことと変わらない…。真理は目を逸らさずそれを見ていた。 398 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 31ID cqkjhnP8 突然、透の周囲の空気が揺らぎ、透の頭が吹き飛んだ。 「そのバカがサイ能力者だったとはな」美樹本の仕業だった。 美樹本は可奈子を殴り飛ばした。亜希はまだ気絶している。 真理は美樹本のものだった銃を構え、美樹本に向けた。 「人を殺すってのは、なかなか思いきりが必要なんだ。お前にはできない」美樹本が真理に近づいてきた。 真理は銃を撃つが、銃弾は美樹本をかすめただけだった。 銃は美樹本に奪われてしまう。「言ったろ?真理ちゃんには無理だ。だが俺にはできる」 そう言って美樹本は可奈子を撃ち殺した。 次に未だ目覚めていない亜希に向かって発砲する。亜希の身体がとび跳ねた。 真理は後先も考えず美樹本に飛び掛かった。しかし美樹本は動かない。 亜希が最後の力で美樹本の動きを封じていたのだ。 真理は美樹本の手を掴み、意識を集中した。 美樹本の記憶が見えた。貧しい家庭、借金、金のために実験体になったこと…。 次に見たものはがきょとんとした顔で目の前に立っている真理自身の姿。 今、真理の意識は美樹本の中にあった。そして美樹本の意識は真理の中に…。 ―おまえの心に、もう帰る場所はない。 美樹本の中の真理は美樹本の頭に銃口を当て、引き金を引いた。 人間相手にサイコメトリーをする際、真理の意識は数秒間相手の肉体に入り込む。 その時相手の肉体を操れるのではないか…危険な賭けだったが、それは成功した。 美樹本は死に、真理は生き残った。 みんな死んでしまったというのに、私は生きている…焼け落ちた館を前に、真理は考えていた。 399 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 32ID cqkjhnP8 (サイキック篇は『完』と表示されるエンディングが三つあります) 真理の中には怒りがあった。 彼らは真理の愛したものを全て奪っていったのだ。許すべきではない。 同時に真理は恐れてもいた。 自分は復讐が始まるのを楽しんでさえいるのではないか、と。 しかし、他に選ぶ道はない。真理の心は既に復讐を選んでいた。 サイキック篇『復讐』・完 みんな死んでしまった。透や小林だけではない。ミネルヴァ社の人間たちも、何十人と…。 自分に生きる権利はあるのか。あれだけの死を目にして、なおも生きていけるのか。 答えは否だ。ひとりで生き延びても意味は無い。 真理は銃口を自分のこめかみに当てた…。 サイキック篇『疑問』・完 殺戮も、復讐もたくさんだ。もう悲惨な物事に出会いたくなかった。 ここであったことを記憶して生き延びること…それがわずかなりとも供養になるのではないか。 それを一生心の中に置いておくこと…それが自分に下された罰かもしれない。 真理は船着場へ向かった…。 サイキック篇『帰還』・完 416 かまいたちの夜2~惨殺篇~ sage 04/03/10 18 31ID /zN8Y43h (わらべ唄篇でキヨの死体が発見された後から分岐) 中庭に手帳が落ちていた。手帳はキヨのものだった。 そこには自分が我孫子武丸だということ、正岡や夏美を殺した事が記されていた。 動機は今となってはわからないが、キヨが殺人に悦びと恐れを抱いていた事は明らかだった。 殺人犯とはいえ、キヨをあのままにしておくのは忍びなかった。 透が物置部屋に梯子を取りに行くと、香山がキヨを降ろすのを手伝うと言ってくれた。 二人で物置に入ると、不意に香山が「わあっ!」と叫んだ。 木彫りの置物を手に取ったところ、ぬるぬると嫌な感触がして驚いたのだそうだ。 梯子を運び出すと、塔の下に真理が待っていた。真理も手伝ってくれるようだ。 透は梯子に登ってキヨの死体に近づいた。 死体の目から白い物が零れ落ちた。 糸の塊のようなものがあふれ出て、はらはらと透の顔や下にいる真理たちに降りかかった。 手にぬるりとした感触があった。透が手を見ると、白いものは糸などではなく体長二、三センチほどの細い線虫だった。 驚いたはずみに透は梯子から落ちてしまった。 気がつくと透は自分の部屋に寝かされていた。館は静まりかえっている。 透は他の者を探し、隣の村上の部屋へ行った。 村上の部屋には血の臭いが充満し、服装からして村上と思しき首無し死体が壁に釘付けにされていた。 透は真理の姿を探した。 廊下を走っていくと、啓子の部屋のドアが開いていることに気づいた。 中を見ると、そこには三体の首無し死体がぶら下がっていた。死体からおびただしい量の血が流れ出している。 死体はどれも女性だったが、真理はその中にいないようだ。啓子、可奈子、みどりだろう。 417 かまいたちの夜2~惨殺篇~ sage 04/03/10 18 32ID /zN8Y43h 真理の部屋へ行くと、ドアには鍵がかかっていた。真理は中にいるらしい。 真理は透が一人であることを確認すると、扉の向こうに作っていたバリケードを取り除きはじめた。 「透くんやないか!」呼ばれて振り向くと香山と小林がいた。小林は香山に肩を借りてなんとか立っているようだ。 小林が透に何かを訴えるような目を向けた。 声は出せないようだが、その口が確かに『タスケテ』という形に動いた。 何があったのかと透が香山に聞くと、香山は小林を床に降ろした。小林の背中には鎌が突き刺さっていた。 香山は鎌を抜き取り、小林の首に当てた。 そして、よいしょ、どっこいしょ、と声を掛けながら香山は小林の首を切断し始めた。 透が金縛りにあったように立ち尽くしていると、ようやく部屋から出てきた真理が、その光景を見て悲鳴をあげた。 透は我に返り、真理の方を見た。真理が「危ない!」と叫んだ。 その声で身をかわしたが、香山の鎌は透の肩を裂いた。「うまいこと、よけたな」と香山。 透は真理の手を引いて逃げ出した。 館から逃げ出した二人は、気がつくと山の中にいた。 透の傷は浅かったが、二人ともショックが大きく、へたりこんでしまう。 透が気を失っていた時、真理は悲鳴を聴いたのだという。 真理が声のした方に行くと、俊夫の部屋から鎌と俊夫の生首を持った香山が出てきた。 真理は自分の部屋に逃げ込んだのだそうだ。 418 かまいたちの夜2~惨殺篇~ sage 04/03/10 18 33ID /zN8Y43h 背後で物音がした。「無事だったか」美樹本だった。 なぜ香山はあんなことを…と悩む透に美樹本は言った。「ふうのしんって何だと思う」 美樹本は地元の漁師にもらったという冊子を見せた。そこにはこんな文章が書かれていた。 底蟲村の村の衆 一人残らず死んでござる なぜに死んだかきこうとしたが 悪たれ鼬の楓の津が 最後の一人も殺してしまい 島に残るはただ風ばかり そして誰もいなくなったとさ… 『楓の津』と書いて『ふうのしん』… 確かにこの辺りには楓の木が多い。『津』は液体、つまり楓の樹液ということだろう。 美樹本は「香山さんはこんなものを触っていなかったか」と言って一本の枝を取り出した。 それは香山が物置で触った置物と同じ木の枝だった。枝の表面はじっとりと濡れている。 美樹本は枝を踏みつけた。割れた枝の中からは無数の白い線虫が出てきた。 「憶測だが、楓に寄生するこの線虫は人にも寄生するんだろう。 そして寄生された人間はキヨや香山のようになるのさ」 そして美樹本は「今なら俺にも人を殺す快楽というものがわかるよ」と言った。 美樹本も虫の寄生した楓に触ってしまったのだ。糸のように細い線虫は毛穴からでも体内に侵入できるのだろう。 「香山もこの辺りにいるはずだ。俺はあいつを相手に自分の欲求を満たす。 どちらが生き残っても君たちの敵になる…さあ、俺がまだ人であるうちに逃げるんだ」 透は真理の手を引いて走り出した。 419 かまいたちの夜2~惨殺篇~ sage 04/03/10 18 34ID /zN8Y43h 海岸まで行けば美樹本のクルーザーがある。 透たちは何かに追われるように走り続けた。途中、透たちは香山の『コレクション』を見た。 一本の木に果実のように生っている六個の生首。それを見た真理は気を失ってしまう。 「どや、なかなかのもんやろ」透が振り返ると香山がいた。香山は美樹本の首を持っていた。 香山は笑みを浮かべながら透に近づいてくる。 十分近くに来たところで、透は香山に飛び掛った。 しかし香山に押さえ込まれ、背中を切られてしまう。香山が透の首を掻き切ろうと、透の上に屈みこんだ。 その瞬間を狙って透は香山の眼球に指を突きたてた。たまらず香山は顔を押さえて立ち上がる。 透は香山の落とした鎌を持ち上げ、痛みでうずくまる香山に向かって振り下ろした。何度も何度も。 キヨの死体から落ちてきた線虫は透の体内に入り込んでいたのだ。 透の中に、殺人への悦びが沸き起こっていた。 透は真理の傍らに倒れた。 真理を殺したいという欲求。その欲求に負ける前に、気を失ってしまえばいい。透は目を閉じた。 真理が起き上がる気配がした。真理は透の手に握られた鎌をもぎ取った。 透は納得した。真理が生首を見て気を失ったのは、膨れ上がった欲望の大きさに押しつぶされそうになったからだったのか…。 横たわる透に鎌が振り下ろされた。 惨殺篇・完 50 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/13 20 00ID JZR//hGz (送迎船に乗るまではわらべ唄篇と同じ。船長にわらべ唄を聞くのも同じ) 島には半ば海に没した小洞窟があった。「探検したくなるわね。中に宝物があるかも」と真理。 それを聞いて船長は、 「あの洞窟の中は迷路のように入り組んでいると聞いた。甘い考えで危ない真似をするな」と厳しく言った。 三日月島には『暮拿島(くれだじま)』いう呼び名もある。 島の内海は『穢牛頭(えぎゅうず)の海』と呼ばれていた。昔、島では牛を神に捧げていたからだそうだ。 大学で民俗学の助教授をしていた船長の息子は、その話を聞くと 『あの島には岸猿家の秘宝が隠されている』と言って『底蟲村』に行き、死体となって洞窟から出てきたのだ…。 館に着いた透たちをキヨが迎え入れた。応接室には懐かしい顔が揃っている。 まだ部屋が片付いていないので、しばらく島でも見物していてくれ、とキヨは言った。 透は真理を海へ誘うが、真理は館を探検したいと言い出した。しぶしぶ付き合う透。 物置部屋で二人は『覚書』と書かれたノートを見つけた。 このノートを手にしたのなら、自分の代わりに岸猿家の財宝を見つけ出してほしい…ノートにはそう書かれていた。 ノートの持ち主は網曳(あびこ)和弘。あの船長の息子だろう。 真理はノートを読むと「宝探しをしましょう!」と言って透を底蟲村へ引っ張っていった。 底蟲村に行くと、村の中心部には小さな祠があった。 祠の石碑には『久納租宮(くのうそきゅう)』と彫られている。 網曳のノートには『久納租宮は蛇尾輪道(だびりんどう)に通ず』と書かれていた。 そして『あくたれいたちのふうのしん』は一字飛ばしで『クレタの牛』と読めることも。 どうやら三日月島にはギリシャ神話との共通点があるようだ。 『暮拿島』は『クレタ島』、『穢牛頭の海』は『エーゲ(アイギウス)海』 『久納租宮』は『クノッソス宮殿』、『蛇尾輪道』は『ラビリンス』… クレタ島のミノス王がラビリンスにミノタウロスを幽閉したという神話。それに似た話が岸猿家にも伝わっていた。 生贄にするための牛を世話していた娘が突如妊娠し、牛の頭を持った子どもを生むという伝説だ。 51 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/13 20 01ID JZR//hGz ノートをかなり読み込んでいた真理は 「岸猿家の秘宝は蛇尾輪道にある。そして蛇尾輪道はここの地下にあるのよ」と言った。 祠の仕掛けを作動させると、透たちを乗せたまま祠の周辺がエレベーターのように下へと降りていった。 蛇尾輪道にはわらべ唄の歌詞になぞらえた数々の仕掛けが待っていた。 それを解くたびに古ぼけた鍵がひとつずつ手に入った。 先に進んでいくと、行き止まりに切り株のような石の台があった。順番からすると、次の見立ては《山姥》の歌詞なのだが… 「わかった!僕が《山姥》になればいいんだ!」 透が台に乗ると、台は真理を残して上昇してしまった。昇りきったところの正面に横穴がある。 「透一人で先に進んで」という真理の言葉どおりに、透は横穴に入っていった。 通路の奥から声が聴こえた。木製の扉の向こうからする、人のような獣のような、哀しく苦しげな声だ。 扉には鍵がかかっている。透は途中で手に入れた鍵を使い、扉を開けた。 部屋の中にはいくつもの燭台が置かれ、部屋の中心にいる声の主を照らし出していた。 紫色の座布団の上に載せられた、大きな牛の首。 まるで人間のような表情で、ぼろぼろと涙をこぼしている。 「せっかくの宝だ。ゆっくりとそばで見たらいい」 そう言って部屋の中に透を押し込んだのは、送迎船の船長だった。 船長の側に若い男が立っていて、その男に真理が捕まっていた。 男が真理を透のほうへ突き飛ばした。透にしがみつく真理。 「この牛が…宝」呟く透に、 「そうさ。岸猿家の秘宝だよ」船長が答えた。 牛の頭が人間の唇と歯と舌で喋った。「我ハ牛ニ非ズ」 「件(くだん)ね」と真理が言った。 くだんは人の身体に牛の頭を持つ怪物で、未来を予言する能力がある。 「それはくだんなんかじゃあない。岸猿家がその秘法で作り出した牛頭(ぎゅうず)様だ」と船長。 「平安の時代から我が一族に伝わる秘法よ」船長の背後から現れたのはキヨだった。 52 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/13 20 02ID JZR//hGz キヨの本名は岸猿キヨ。岸猿家の最後の生き残りだった。 船長と一緒にいる若い男は船長の息子・和弘だ。秘宝の話は船長と和弘の作り話だったのだ。 「ぎゅうず様には予言の力があるが、その力を維持するには生贄の血が必要なのさ」と和弘は話す。 昔は人間を生贄にしていたが、近代になってそれが難しくなり、牛の血を代わりに使った。 しかしやはり代用品は効力が薄く、ぎゅうず様の力は衰え、漁村は廃れて岸猿家も没落した。 最近になってキヨの存在がわかり、これで秘法の再現の目処がたった。 船長たちは生贄を呼び込むために嘘の秘宝伝説を流したのだ。 「さてと、ぎゅうず様がお待ちだ」と船長は鉈を取り出した。 「ソコナ二人、ヨオ聞ケ」突然牛の頭が喋り始めた。 「頭捨テ、蹴リテ終ワル」 「ぎゅうず様のお言葉です。これは避けることの出来ぬ予言」キヨは牛の頭に近づいた。 そして牛の流す涙を拭う。「そうか、哀れよのう。神の御身にしても永劫の時は辛うございましたか」 キヨも涙を流しながら、透たちに言った。「聞きましたか。終わらせるのです」 透は「わかったよ」と言って、牛の頭を床に転がした。 船長が鉈を振りかざして止めようとするが、真理がその腕にしがみついて邪魔をした。 透が牛の頭を蹴った。牛の頭が裂け、中から臓物のようなものが流れ出す。 呆然としている船長を殴り、透は真理の手を引いて走り出した。 キヨが小さくお辞儀をするのが見えた。 透たちは枝分かれした洞窟に出た。洞窟の壁や床は濡れていて、舐めるとしょっぱい。 今までは海に没していたのだろう。《かまいたちの夜》の影響で潮が引いているのだ。 この先は海から見た洞窟に通じているに違いない。「ここから海に出よう」透は言った。 透たちが進んでいくと、先の方が明るくなっていて夜空が見えた。 透は泳げないと言う真理を抱えて海に飛び込んだ。 53 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/13 20 03ID JZR//hGz 波止場に着き、海から上がると、そこには船長と和弘が待ち構えていた。 「他の出口は塞いできた。ここ以外に出る場所はないからな」 キヨに新たなぎゅうず様を作り出す力は無い。ただの足手まといだから洞窟内に閉じ込めてきた、と船長は言った。 「他の招待客は帰すとして、いらぬことをいろいろと知ったやつは…」船長が鉈を振り上げた。 死を覚悟して、透は真理をかばうように前へ出た。 その時、ずるりと船長たちの身体が沈んだ。見ると二人は腰まで地中に埋もれている。 二人の肩に、キヨの細い腕がかかっていた。 キヨの姿は幻のように透き通っている。 「岸猿家の秘法を甘く見てはならん。網曳村の人間ならそう聞かされてはおらんかったか」 キヨの腕に力が入り、二人は水に沈むように地面に飲み込まれていった…。 「村人たちには夢でぎゅうず様の死を伝えておきます。もう岸猿家があなたたちに迷惑をかけることはありません」 キヨは笑った。その姿がだんだん薄れていく。 「力を使いすぎたようですね。それでは、お世話になりました」 そう言って、消える寸前にキヨは深々とお辞儀をした。 「これで終わったのね」真理が透にしがみついてきた。透はその肩をしっかりと抱き寄せた。 岸猿家の財宝以上に素晴らしい宝を、透は手に入れたようだった。 洞窟探検篇・完 途中の選択肢や、謎解きの進め方によって中間部分の細部は違ってきます。 99 かまいたちの夜2~わらび唄篇~ sage 04/03/15 02 47ID BzW7qNCX 我孫子の招待を受けた透。しかし…嫌な予感がする。 真理から招待のことで電話が来た。真理は行く気マンマンのようだ。 「久しぶりに透にも会いたいし、この前素敵な水着も買ったの」 素敵な水着!?だが、そんなものに惑わされてはいけないのだ。 殺人事件が起こったり、悪霊に襲われる気がする。いや襲われるに違いない。 もちろん真理は「何バカなこと言ってるの」と一蹴する。 真理を一人で行かせては危険だ…!透も島に行く決心をした。 準備は念入りにしなければ。 サバイバルナイフ、スタンガン、危険を冒して手に入れたトカレフ、悪霊対策の十字架、ニンニク、銀の弾丸。 生物兵器対策のTNT火薬、血清、ペニシリン、ガスマスクにサリンの中和剤、そして照明弾。 保存食に水、ザイルとハーケン…保険証は必須だ。 透は60キロを超える重さの荷物を持ち、船にのりこんだ。 真理は相変わらず、透の心配を真に受けようとしない。 それにしても… 小林さん。招待もされてないのに嗅ぎ付けてくるとは…怪しい。 奥さんの今日子さんが来ていないのも怪しい…なんとなくだが、変装して島に先回りしている気がする。 船長も怪しい。今にも島についての因縁を話し出しそうだ。伝説とか、呪いとか、わらべ唄とか…。 「伝説?そんなもん聞いたことないのう」と船長。 「わらび唄ならあるぞ。わしなんか256番まで暗記しとる。歌ってやろうか」歌わないでいいです。 島はのどかな、まさにこの世の楽園といった風情だった。 浜辺には懐かしい顔ぶれも見える。…しかし気を許してはいけないのだ。そう、信じられるのは真理だけ。 「今晩は《かまいたち祭り》だ。楽しい夜になるだろうよ」と船長。 《かまいたち祭り》…!不吉な響きだ。やはり何かある…。 100 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/15 02 49ID BzW7qNCX 館は高い塀に囲まれ、奇妙な形をしていた。…怪しい。 こういう変わった造りの建物では殺人事件が起こると相場は決まっているのだ。 入り口にそびえ立つ監視塔。《縛り首の塔》……ではなかった。 塔は赤いロープで亀甲縛りにされている。《亀甲縛りの塔》だ。「……趣味わるっ」思わず透は呟いた。 「今日子のムチとロウソクを思い出すなあ…」小林が何か言ったが、聞かなかった事にする。 塀で隠されて外からはわからなかったが、館は目も覚めるようなショッキングピンクで塗られていた。 「……趣味わるっ」真理が呟いた。 敷地内の堀の中には、囚人の逃亡を防ぐ錆び付いた剣山…ではなく、無数のサバが突き立っていた。 炎天下でサバは腐臭を放っている。「趣味わるっ!!」思わず三人とも呟いた。 「サバ…鯖…錆(サビ)に字面と音が似ているからかな」頼まれてもいないのに説明をいれる透だった。 どうせ招待主は姿を現さないに決まってるさ、と透は主張するが、 パンダの顔をしたノッカーを鳴らすと「ようこそ。私が我孫子武丸です」いきなり本人が出てきた。 いや、肩透かしはくらったがまだまだ油断はできない…。 我孫子に案内され、客室に入る。客室の趣味も、なんというか独特だ。 壁はパステルピンク、ベッドの上にはベッドの半分を占めるほどの大きなクマのぬいぐるみ。 「ど、どうしてぬいぐるみが?」透は困惑するが、 「だって、あれがないと眠れないでしょう?」我孫子は当然のように言った。 真理は海に行くようだ。透も真理を守るため、付いていく。 ビーチには招待客のほとんどが揃っているようだ。 『海の家かまいたち』では老女が焼きそばを焼いている。我孫子が言っていたお手伝いのキヨだろう。 青い空と海。浜辺でくつろぐ男女。平和だ…悪い予感なんて気のせいだったのかもしれない。 透もビールを一気に飲み干した。 「………く、苦しい!!」 ビールに毒が…!?見れば、他の者たちも砂浜に転がって苦しんでいる。 キヨが上半身をのけぞらせて高笑いしている。やはりこの招待は罠だったのだ…。 101 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/15 02 51ID BzW7qNCX 「もしもし」と呼びかけられて、透は目を覚ました。 絶叫して目を開けると、キヨが腰を抜かしている。どうやら夢を見ていたようだ…。 陽はすっかり落ちている。他の人たちはとっくに帰って、夕食も済ませたらしい。 眠っている間に真理の身に何かあったら…!透は館へ走った。 当然ながら真理は無事だった。 「よくおやすみでしたこと。あのまま永遠に眠ってればよかったのに」ひどい。 どうやらこれから、皆で《かまいたち祭り》に行くようだ。 透は空腹だったが、真理を守るために一緒に行く事にした。 底蟲村から太鼓の音が聴こえてくる。このリズムは盆踊りだ。《かまいたち祭り》とは盆踊り大会だったのか? 和やかな光景に、透はいつしか笑い出していた。連続殺人が起こる?どうかしていた。ゲームのやりすぎだな。 透も盆踊りの輪に加わり、一緒に踊る。 我孫子がやぐらの上からマイクで話し出した。 「底蟲村の皆さん!今年もかまいたち祭りのために素晴らしい客人をお招きしました! さあ皆さん真ん中へどうぞ!」 透たちに言っているようだ。歓声と拍手の中、透たちは真ん中へ歩み出た。 「さあ皆さん、カマイタを!」 我孫子の掛け声で村人たちが一斉にカマボコ板を取り出した。太鼓のリズムが速くなる。 村人たちは透たちの方へじわじわと迫ってきた。 「カマボコ板…カマイタ?ということは《かまいたち 祭り》じゃなくて《カマイタ 血祭り》?」透たちは青ざめた。 我孫子が透たちに語る。 この村のご神体はカマボコ板のような形の大きな岩、『カマイタ様』だ。 この村は昔から台風の時期になると津波に襲われて、毎年死者が出ていた。 ある時、よそから来た漁師たちが酔っ払って、カマイタ様に小便を引っ掛けた。 村人は当然怒って、漁師たちを袋叩きに…するとその年はなぜか一人の死者も出なかった。 それがこの祭りの始まりだ。 102 かまいたちの夜2~わらび唄篇~sage名前欄そのままだった。100-101は間違い 04/03/15 02 53ID BzW7qNCX 村人たちは我孫子の説明が終わるのを待っているようだ。動きを止めている。 真理だけは守らなければ…透は賭けに出た。 「香山さん!あそこに少し隙間が!」透の言葉に従って走り出し、村人に囲まれカマイタで殴られる香山。 「美樹本さん!あの辺が!」香山よりは素早かったが、やっぱり村人に殴られ地面に丸くなる美樹本。 他の者たちもそれを見てパニックに陥り、走り出し、殴られる。 透は同じく走り出そうとする真理を引きとめた。 そして村人たちが他の獲物に集中する瞬間を見計らって、真理の手を引き走り出す。 包囲から抜け出した二人を村人数人が追いかけてきた。 港には島に来る時乗った船が泊まっていた。(船長も祭りに参加していた為) 船など操縦した事がなかったが、何とか動かす事が出来た。港で村人たちが罵声をあげている。 二人は甲板にくずおれ、しっかりと手をつないだ。 「ごめんね…ごめんね…透の言うこと、もっと聞いておけばよかった…」と真理。 数時間後。 「ねえ、いつになったら着くの?」 「明るくなったら陸地が見えるよ……た、たぶん」 「たぶん?たぶんってどういうこと!?分からないのにこんなに走ってきちゃったの?信じらんない!」 真理は泣きわめいていたが、透は安らかな気持ちだった。 真理と狭い船の中で二人きり。ここが僕たちのエデンだ。……駄目かな? わらび唄篇・完 299 かまいたちの夜2~妄想篇~ sage 04/03/17 18 56ID KHKyzXhH 『かまいたちの夜』というゲームがある。ゲームは透と真理が「シュプール」に行った時のことがモデルになっている。 真理と「シュプール」に行って…そのあとどうなったっけ?透の記憶はどうにもはっきりしない。 ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃぴしゃ 水音がする。そうだ船に乗っているのだった。 頭が痛い。二匹の黄金虫が頭の中で交尾している。 「どうして船に乗っているんだっけ?」隣にいる真理に話しかけて、初めてそれが真理だと思い出した。 真理からゲームのこと、その原作者に招待を受けたことを聞く。 ゲームの内容、「シュプール」で起きる殺人事件のことを思い出すと鳥肌が立つ。 気がつけば島に上陸していた。記憶が途絶えがちになっている。 館に着くと美樹本が出迎えた。 応接室には他のメンバーも集まっている。皆正座をして、横一列に並んでいる。 全員が透を見ている。口々に囁いている。 ……やっぱり…だからなあ…してるはずだよ…いつかはこうなると…どうせもうすぐ……。 二匹の黄金虫も囁いている。 かさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそ… …かき出してからだよ。…ざあっと、一気に。…病気だからねえ、やっぱり。… 透の視界は闇に包まれていた。手足を縛られ、固いものの上に寝かされているようだ。 透の頭を覆っているものに小さな穴が開いている。そこから小林が見えた。 小林は額を指でかいている。そのうち額に穴が空き、ざあっと赤い砂が零れ落ちた。見る間に小林はしぼんでいく。 「ああ、自分でかき出しちゃったよ」と俊夫の声。 「こいつには、なに入っとんねん」香山が透を指して言った。 「かき出してみたらわかるわ」透の腕が切られた。 「この子、虫だわ」「どうりでなあ」あざけるような声。透の腕を虫が這う感触がした。 300 かまいたちの夜2~妄想篇~ sage 04/03/17 18 57ID KHKyzXhH 気がつけば周りには誰もいなくなっている。 かさこそと例の音がする。…いや、これは頭の中からするんじゃない、外からの音だ。 「透、起きてるのね」真理が来て透の頭の覆いを取り去ってくれた。 目の前に真理の顔が。純粋で愛らしい少女のような僕の真理。 「透、話はあと。逃げるのよ」 透は真理の後について部屋を出た。 廊下はひんやりとしていて、どこまでもどこまでも続く。 真理の姿が消えていた。どこかの部屋にでも入ってしまったのか? 極彩色に塗られた扉が並んでいる。透は金色の扉を選んだ。 なぜか扉を開けるのが恐ろしい。頭痛がひどくなってきた。 思い切って扉を開けると、巨大な二匹の黄金虫がいた。二匹はベッドの上で重なり合って交尾している。 下にいた黄金虫が透を見て、言った。 「美樹本さんは私から誘ったのよ。やめてよ、そんな目で見るの。勝手に純粋だの何だのって思い込まれても迷惑なのよ。 第一、今どきこんなもので女が口説けるとでも思っていたの?」 黄金虫は紙の束を床に叩きつけた。 紙束の表紙には『微笑む女神』というタイトル。透が真理に捧げた詩集だ。 こんなものがどうしてここに、何で黄金虫がこんなものを。 「やめろ!」思わず透は手近にあった電気スタンドを投げつけた。電気スタンドは窓を突き破る。 窓?三日月館に窓はないはずなのに。じゃあここはどこだ。 割れた窓から雪が吹き込んできた。 いつの間にか透の手には鎌が握られていた。 透は鎌を振った。黄金虫の頭が、脚が千切れ飛んだ。 誰かが笑っている。頭痛はとまらない。透は笑うのをやめた。 かさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそ 黄金虫が交尾する音が聴こえる…。 301 かまいたちの夜2~妄想篇~sageなんか中途半端に途切れた 04/03/17 18 57 ID KHKyzXhH 「ああ、またバッド・エンドだ」 透はコントローラーを投げ捨てた。 透は真っ白い部屋でずっとこのゲームをやっている。いつまでたってもグッド・エンドを迎えられないのだ。 テレビ画面の中から男が話しかけてきた。 「まだ思い出せないんですか。一昨年の十二月に『シュプール』で何があったか」 思い出せない。頭がひどく痛い。耳鳴りがする。 「その時ペンションにいた全員が殺害された。凶器は草刈り鎌です。そして犯人は…」 …そうだ、この男は医者だ。 思い出した。あの時ペンションにいた「全員」が殺された。そして「犯人」は…。 妄想篇・完 302 かまいたちの夜2~ぼくの恋愛篇~ sage 04/03/17 18 59ID KHKyzXhH 真理には我孫子からの招待状が届いてないそうだ。半ば強引に真理を誘って島へ行く。 船上で真理は「本当にあなたとシュプールに行った時のことなの?」と疑わしそうだ。 島に着くと、我孫子武丸と名乗る若者が現れる。帽子とサングラスで顔はよくわからない。 「他の招待客は…?」と訊くと、 「招待客は君一人だよ。君が真理の周りをちょろちょろしているのは目障りなんだ。死んでもらうよ!」 と言って、男はナイフを抜いて向かってきた。 その時、真理が男を見て言った。「あ、あなた…透!」 我孫子の正体は主人公の大学でのクラスメート・透だった。 真理は主人公と透に二股をかけていた。 透は邪魔者の四ツ橋某太郎(恋愛篇主人公の名前)を亡き者にするため、ここに呼んだ。 ゲームは某太郎と真理が「シュプール」に行った時ではなく、透と真理が行った時をモデルにしていたのだ。 某太郎に透のナイフが迫る…が、真理が背後から透を石で殴り殺した。 「真理!」「某太郎!」抱きしめあう二人。 「これだけは信じて…私、決して二股かけてたわけじゃあないのよ」泣きながら訴える真理。 「もういいったら。すんだことだよ」と某太郎。 確かに彼女は嘘をついていなかった。透と某太郎ともう一人の三股をかけてたのだから。 それを某太郎が知るのはもう少しあとのことだ…。 ぼくの恋愛篇・完 303 かまいたちの夜2~ぼくの青春篇~ sage 04/03/17 19 01ID KHKyzXhH 真理に誘われ、透は二つ返事で三日月島へ行く事を決めた。 これが真理を口説くラストチャンスになるかもしれない…何しろ透には時間があまり残されていない。 船が島に着くと、我孫子が出迎えた。 「ようお越しやす。真理さん、義男くん」 義男とは船の操舵をしていた若者だ。次に我孫子は真理に訊ねた。 「そちらのお年よりは?」 「私の茶道のお友達で、透さん。孫と二人だけじゃ寂しいから、お誘いしたの」と真理。 「この透という人は、ばあちゃんのファンなんです」と義男。 「ははは…老いらくの恋というやつですわ。お恥ずかしい」 透は入れ歯をむき出して笑った。 『この三日月島で、ぼくは君のハートをゲットする…』 ぼくの青春篇・完
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炎の町ボルパ付近に登場した雑魚。 運がよければまったく出会うことはない。 闇、吸収を無効化するが光、射属性に弱い。 周辺の敵の中では一番倒しやすい。 748は素の状態でこいつの攻撃を全て無効化できる。すごいぜ748! ちなみに風属性全体攻撃のかまいたちがあるため、防御が低かったりHPが低ければこいつでも苦戦するかもしれない。 名前 コメント すべてのコメントを見る
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今日 - 合計 - かまいたちの夜の攻略ページ サウンドノベル ノベルゲーム 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2013年11月18日 (月) 16時41分31秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
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かまいたちの夜2 ・要約版:要約スレpart2-260,279~281 ・詳細版:part4-83~96・126~135・209~211・305~319・348・386・388~399・416~419、part5-50~53・99~102・299~303 260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/08/23(水) 00 02 28 ID k+c+D1ei0 かまいたちの夜2 監獄島のわらべ歌 【事件】 前作は劇中劇扱いでゲーム『かまいたちの夜』のモデルとなった前作の面々が原作者『我孫子武丸』に招かれる。 しかし招待された島は監獄島と呼ばれ陰惨な過去のある島にある『三日月館』、 さらにその日は五十年に一度の暴風の日『かまいたちの夜』だという。 そこで島に伝わるわらべ歌になぞらえて連続殺人事件が起きる ①ゲームプロデューサーの『正岡』が館の角の部屋で首を切られて殺害 ②大阪の社長香山に後妻『夏美』が首を絞められ殺害 ③館の管理人の老婆『キヨ』が塔に吊るされ縛り首に 【謎】 ①部屋は密室 ②夏美の手には招待客の一人元ペンション従業員『みどり』が使用しているマニュキアが握られ、手を切断しようとした跡が 【犯人】 『キヨ』しかしこれは変装した姿で正体はシュプールのオーナー夫妻の妻、『小林今日子』 共犯者に生き別れの弟の作曲家『村上つとむ』 【トリック】 ①三日月館はその名の通り三日月を模しており今日子は逆側の角の部屋の窓から侵入した 三日月館には島にある人工湖の流れを切り替えて館を水没する仕掛けがありそれを使い 庭を泳ぎ渡った。 ②マニュキアは今日子がみどりにすすめたもので、盗み癖があった夏美はそれを盗み殺された。 ③つるされた死体は人形で遠目からでは人間かどうか区別できない。しかしカラスについばまれ綿が出ていた。 【動機】 前作に出たOL三人組はモデルになった人物は二人組だった。 今日子は以前結婚しており、前夫が亡くなり一人では子供を養えず養子に出していた、 その子供が前作の三人組みの一人『河村亜紀』だった。モデルの人物達がシュプールに集まった際、亜紀も偶然にも宿泊する予定だった。 親だと名乗る気は無くとも心待ちにしていた今日子だが、亜紀は誰かにひき逃げされて亡くなっていた。 犯人は宿泊客の中だと確信し今日子は先祖の館を使った計画を考えた。 そしてそのひき逃げ犯はみどりだった。 第一の事件の際閉所恐怖症だった正岡はみどりと部屋を交換していたために殺された。 【結末】 今日子も知らなかったが、かまいたちの夜の後は島を大津波が襲うのだった。 避難するみんなだが、今日子と二郎の小林夫妻はこのまま波に飲まれることを選び 村上もそれに殉じるのだった。 279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/07(木) 13 03 21 ID 2ciqlT980 260に補足かま2他編適当要約 陰陽編 三日月館のかつての主人、イエモンの、本人以外には邪神となる神復活の為に、 皆生贄にされてしまいましたとさ。 底蟲村編 蜘蛛VS常世の虫。結果はドロー。果物に見せかけた常世の虫の実を食べた小林、香山は化け物に。真理は次の常世の虫へ 透以外の他の連中は蜘蛛に殺されあぼん。そして底蟲村は火の海へ サイキック編 こんな体に誰がした!!ミネルヴァ社への復讐をする可奈子、啓子、キヨ(河村亜希) ちなみに真理と夏美、透もサイキッカー。亜希と透は薬投与のせいで、老け顔。 ミネルヴァ社VSサイキッカー。 まぁ色々あって敵味方共に、真理いがいあぼん。ちなみに進行は真理視点。 280 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/07(木) 13 04 46 ID 2ciqlT980 ピンクの栞 官能編 色情霊に取り付かれた透に女性キャラ(夏美以外)皆色仕掛けを仕掛けてくる。 イイトコロで夏美登場。このままではヤバイと思った透は夏美に除霊してもらい、我に返った皆にボコボコにされるも、 真理に本音をいい(真理が好きだからあんなことしたんだ!的な)そして、真理と一晩中話し合うことができましたとさ。 ちなみに除霊を断ると、男性キャラに掘られる展開に。 わらび歌編 ギャグ編。かまいたち祭りではなく、カマイタ(かまぼこ板)血祭りによって、島の住民に殴られそうになる一行。 他の皆をおとりにして逃げる透と真理。船で逃げ出すが、方向もわからず遭難。 僕の恋愛編 叙述その1 我孫子からの招待状が届き、真理を誘って、三日月館へ行く僕。 波止場で出迎えた我孫子は透だった。真理は二股をかけていて、邪魔者の僕を殺そうと透が襲い掛かる。 背後から透を石で殴り殺した真理は僕と抱きしめあう。 「信じて、私…二股かけてたわけじゃないのよ」という真理を許す僕。 真理は嘘をついてはいなかった。三股をかけていたから。それを僕が知るのはもっと後… 僕の青春編 叙述その2 真理に誘われて三日月館へ行く透。 真理にはもう孫もいて、透はただのお友達。 281 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/07(木) 13 05 28 ID 2ciqlT980 紺の栞 惨殺編 楓に寄生する線虫に寄生された人間は、殺人によって、快楽を得るようになってくる。 それによって襲ってくる皆を撃退しつつ、透と真理は逃げる。 だが、透も寄生されていて、真理を殺したくなり、その欲求に負けたくないので、気を失おうとすると、 真理も寄生されていたらしく、真理に殺される。 洞窟探検編 岸猿家の財宝伝説に目が眩んだ真理に引っ張られ、宝探しをさせられる透。 この伝説は実は嘘で、キヨ(利用されていた)と船長にぎゅうず様の生贄にされかかる透と真理。 足手まといのキヨを置いてきた船長に殺されかかる二人だが、キヨに助けられる。キヨは二人にお礼をいい消えた。 透と真理の仲はより深まったようである。岸猿家の財宝以上に素晴らしい宝を、透は手に入れたようだった。 妄想編 透はシュプールに行ったときの記憶がはっきりしない。 どうして船に乗っているかもわからない。真理から説明をうけ、我孫子に招待を受けたことを聞く。 島に上陸しても記憶が途絶えがちだ。 二匹の黄金虫も動いている。かさこそかさこそ… わけもわからず選んだ扉の先には巨大な二匹の黄金虫がベッドの上で重なり合って交尾していた。 下にいた黄金虫が透をみてこういった。 「美樹本さんは私から誘ったのよ。やめてよ、そんな目で見るの。勝手に純粋だの何だのって思い込まれても迷惑なのよ。 第一、今どきこんなもので女が口説けるとでも思っていたの?」 黄金虫は紙の束を床に叩きつけた。 紙束の表紙には『微笑む女神』というタイトル。透が真理に捧げた詩集だ。 こんなものがどうしてここに、何で黄金虫がこんなものを。 「やめろ!」思わず透は手近にあった電気スタンドを投げつけた。電気スタンドは窓を突き破る。 窓?三日月館に窓はないはずなのに。じゃあここはどこだ。 割れた窓から雪が吹き込んできた。 いつの間にか透の手には鎌が握られていた。 透は鎌を振った。黄金虫の頭が、脚が千切れ飛んだ。 誰かが笑っている。頭痛はとまらない。透は笑うのをやめた。 かさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそ 黄金虫が交尾する音が聴こえる…。 「ああ、またバッド・エンドだ」 透はコントローラーを投げ捨てた。 透は真っ白い部屋でずっとこのゲームをやっている。いつまでたってもグッド・エンドを迎えられないのだ。 テレビ画面の中から男が話しかけてきた。 「まだ思い出せないんですか。一昨年の十二月に『シュプール』で何があったか」 思い出せない。頭がひどく痛い。耳鳴りがする。 「その時ペンションにいた全員が殺害された。凶器は草刈り鎌です。そして犯人は…」 …そうだ、この男は医者だ。 思い出した。あの時ペンションにいた「全員」が殺された。そして「犯人」は…。 83 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 44ID zchuZkAH 矢島 透 主人公。 小林真理 透のガールフレンド。親の転勤に伴い引越し、透とは疎遠になっている。 小林二郎 真理の叔父。ペンション「シュプール」オーナーで料理が得意。 (小林今日子) 小林の妻。料理は不得意。 久保田俊夫 「シュプール」でバイトをしていたスポーツマン。 久保田みどり 元「シュプール」のバイト。俊夫と結婚した。 渡瀬可奈子 OL。美人。 北野啓子 可奈子の同僚で友人。ぽっちゃり型。 美樹本洋介 フリーカメラマン。 香山誠一 大阪の会社社長。前妻・春子とは離婚。 ──以上が一年半前「シュプール」に滞在していたメンバー(前作に出てた人)── 香山夏美 香山の後妻。派手好き。 正岡慎太郎 ゲームのプロデューサーで女好き。閉所恐怖症。 村上つとむ 作曲家。怒りっぽい。 菱田キヨ 「三日月館」の管理人をしている老女。 我孫子武丸 「三日月館」の主人。 84 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 46ID zchuZkAH 『かまいたちの夜』というゲームがある。 雪山のペンションで殺人事件が起こるという内容のゲームだ。 そのゲームの中には透たちが一年半前にペンション「シュプール」に宿泊した時と ほとんど同じ顔ぶれが登場しているのだ。 (『かまいたちの夜2』では、「シュプール」での殺人事件は現実では起こっていない事になっている) 透のもとへ一通の招待状が届いた。差出人は我孫子武丸。ゲーム「かまいたちの夜」の原作者らしい。 そこにはゲームへ出演してもらったことへのお礼と、 ゲームの売り上げで得た収入で購入した「三日月島」にある「三日月館」へと招待したい旨が記されていた。 真理と仲良くなりたい透は彼女を誘い、三日月島へ向かうことにした。 ~8月15日~ 透と真理は三日月島へ向かう小船の上にいた。真理の叔父、小林も一緒だ。 小林のもとへは招待状が届いていなかったのだが、妻の今日子が旅行に行ってて暇なのもあって、 「なぜオーナーの私が招待されてないんだ!」と勝手に参加してしまったのだ。 真理によると、我孫子武丸の正体はゲームの開発会社に問い合わせてもわからなかった、 しかしかなり事実を詳しく反映したゲーム内容であることから、当時そこにいたメンバーか その関係者に間違いないだろう、とのこと。 船の船長は三日月島へ遊びに行く事にあまり良い顔をしない。 三日月島は地元の者には「監獄島」と呼ばれている。 かつてそこにあった底蟲(そこむし)村が廃村になった後、三日月島は岸猿(きしざる)家という旧家の 私設監獄となっていた。酷使され、死んでいった奉公人たち…今から宿泊するのは元監獄の館なのだ。 その後岸猿家は没落し、再度無人島となったが、最近になって我孫子が買い取ったというわけだ。 さらに船長は島に伝わる《わらべ唄》を歌って聞かせる。 85 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 47ID zchuZkAH 底蟲村の しん太郎どん 痛い痛いと 泣いてござる 何が痛いと 蟹コがきけば 悪たれ鼬(イタチ)の ふうのしんに 喉を切られて 話ができぬ それで痛いと 泣いてござる びゅう びゅう びゅうの ざんぶらぶん びゅう びゅう びゅうの ざんぶらぶん 底蟲村の 女郎蜘蛛 嫌じゃ嫌じゃと 泣いてござる 何が嫌じゃと 狐コきけば 悪たれ鼬の ふうのしんに 手足もがれて 散歩ができぬ それが嫌じゃと 泣いてござる 底蟲村の 山姥どん 怖い怖いと 泣いてござる 何が怖いと 鴉コきけば 悪たれ鼬の ふうのしんに 高みに立たされ 身動きできぬ それが怖いと 泣いてござる 底蟲村の 風見鶏 来ない来ないと 泣いてござる 何が来ないと 童コきけば 悪たれ鼬の ふうのしんが 夏の終わりに 大雪降らせ 秋が来ないと 泣いてござる 底蟲村の 村の衆 今日じゃ今日じゃと 泣いてござる 何が今日じゃと 蛇コがきけば 悪たれ鼬の ふうのしんも わっかが解けりゃ 慌てて逃げる それが今日じゃと 泣いてござる びゅう びゅう びゅうの ざんぶらぶん ざんぶらぶんの どうどうどう 86 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 53ID zchuZkAH 三日月島はその名の通り三日月型をした島で、風の神を祀った神社、岸猿家が作った人造湖などがある。 三日月館も島と同じく三日月型をした建物だ。その周りを高い暴波壁が取り囲んでいる。 船長は三人を送り届けると「今日は《かまいたちの夜》だ…」と謎の言葉を残して去る。 監視塔、堀には剣山状の刃物、少ない窓…館は元監獄らしい陰鬱な造りだ。 三人を出迎えたキヨに導かれ館内に入ると、そこには既に久保田夫妻、可奈子と啓子らが来ていた。 久保田夫妻も招待状を貰っていないと聞いて安心する小林。内心ビクビクしていたのだ。 可奈子・啓子はゲーム「かまいたちの夜」では「仲良しOL三人組」として描かれていた。 勝手に加えられていた三人目「河村亜季」には聞き覚えすらないと言う。 近況などを話していると、遅れて村上、さらに遅れて正岡もやってくる。 ゲームの続編制作に関わる彼らも我孫子武丸に会った事はないそうだ。 その後香山夫妻と美樹本も加わるが、我孫子が現れることは無かった。 87 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 21 57ID zchuZkAH 夕食の時間。それぞれ自分のネームプレートが置かれた席へ座る。 我孫子はまだ現れず、イラつく村上は正岡と言い争いを始める。 その時、突然明かりが消えた。パニックに陥る一同。 美樹本が蝋燭に火を点けると、誰もいなかった我孫子の席に 若い女性の写真と、ヘコミと血のりで事故車のように見立てられたおもちゃの車が置かれていた。 写真の所に置かれたプレートには「河村亜希 享年19歳」の文字。 透は写真の女性の面立ちに見覚えがあるような気がした。 再び火が消え、重々しい声が響き渡る。 「ようこそ、私が我孫子武丸です。ご参加ありがとう。 訳あって姿を現す事は出来ませんが、私は間違いなくここにいます。 皆さん二日間ごゆっくりおくつろぎください…」 電気がつくと、すでに写真と車は無かった。 美樹本がキヨに我孫子の事を尋ねるが、キヨは「我孫子はまだ来ていないはずですが…」と 知らぬ存ぜぬの一点張り。 村上は怒り狂い、みどりは「帰る!」と言い出す。 しかし船は明日の夕方にしか来ない、とキヨが言うとしぶしぶ観念する。 88 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 00ID zchuZkAH 一人一部屋が割り当てられ、それぞれ思い思いに過ごす。 外では防波壁の扉が閉められた。かなり風が強くなっているようだ。 啓子は先に眠り、みどりは具合が悪いと言って休み、その他の面々は応接室で歓談していた。 食堂での出来事のせいか、皆どこかピリピリしている。 可奈子が酔っぱらった正岡に付き添って彼の部屋に行った後、気晴らしに外へ出ようか、と話しているとキヨがそれは無理だと言う。 「かまいたちの夜が……始まりました」 それはこの地方で決まって暴風の起こる8月15日の夜の事で、50年ごとに特に強い風が吹くという。 今日がその50年目の夜なのだ。 ますます不安を募らせながら、一同は解散する。 ~8月16日~ 眠りについた透だったが、悪夢にうなされ夜中の3時に目が覚めてしまった。 風雨の様子を確認しようと廊下に出ると、小林もトイレに行こうと部屋から出てきた。 その時、絶叫が響き渡った。 真理を起こし、三人で声の聞こえた方向、みどりの部屋へと行くが、扉には鍵がかかっている。 真理が呼んできたキヨに許可を貰い、体当たりしてドアを開けると… 正岡が喉を切り裂かれて死んでいた。 透はそこで何かを踏みつけてしまう。それは蟹だった。 「しん太郎」が「喉を切られ」て死に、「蟹コ」が側にいたのだ。わらべ唄と同じように。 89 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 03ID zchuZkAH 皆に正岡が殺された事が伝えられた。 みどりは閉所恐怖症の正岡に頼まれ、部屋を交換したのだという。 警察に連絡しようにも電話線が切れており、携帯電話も電波が届かない。 招待客以外に殺人者が潜んでいるかもしれないと館を調べるが、誰も見つからなかった。 濡れた地面に足跡もついておらず、外へ逃げたとも考えられない。 となると、ここにいる誰かが正岡を殺したということになる。招待客たちは互いに互いを疑いだす。 (補足・正岡の死んだ部屋はC字型の館の片端にある。窓があるのはこの部屋と、もう一方の端っこにある物置部屋だけ。) 美樹本だけが自前のクルーザーでこの島に来た、彼が犯人だとしたらすぐに逃げられるじゃないか。 そう考えた透は真理と共に美樹本のクルーザーへ向かった。 だがそこに居た美樹本は「こんな物騒な所早く逃げ出したいが、そうもいかなくなった」と沖を指し示す。 海面の水位が下がり、島のC字の口を開けた部分に岩礁が突き出していた。島は円環状だったのだ。 これで島に閉じ込められてしまったことになる。 90 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 05ID zchuZkAH 三人で館に戻ると、みどりとOL二人が泣いていた。俊夫、小林、香山もそこにいる。 夏美が死んでいたのだ。 首に「狐」の襟巻き(夏美が持ってきていたもの)が巻きついている。これで絞め殺されたらしい。 右の手首には切断しようとしたのだろう、深い傷がついている。またわらべ唄と同じだ。 夏美の手に何かが握られている事に真理が気づいた。夏美の指を開かせると、中からマニキュアの瓶が出てきた。 緑色の珍しいマニキュアは、みどりが使っているものと同じだった。 当然みどりは疑われ、犯人ではないと主張するが信じてもらえず、俊夫と共にその場を離れた。 可奈子と啓子も「人殺しと一緒にいたくない」と自分たちの部屋へ行ってしまう。 香山は夏美の側に残り、他の者は応接室で話し合うが、殺人犯の正体がわかるはずもなく 疑心暗鬼になる一同。 昼食の時間になった。 食事をとらないわけにもいかないということで、夏美に付き添う香山以外の全員が集まった。 しかしスープが出されたきり、一向に食事が出てこない。キヨの身に何かあったのではないか…? 念のため二人一組になって館内をくまなく探すが、キヨは見つからなかった。 キヨが居たはずの厨房を詳しく調べてみると、キヨの出していた料理は全てレトルトだったことがわかる。 そこで何かに気づいた様子の小林だが、透が何を聞いても答えてくれない。 もう一つ奇妙な事に製氷機から氷が全て無くなっていた。 91 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 08ID zchuZkAH 食堂に戻ると、またもや「河村亜希」の写真がテーブルの上に置かれていた。 我孫子武丸の声が響く。 「私は……河村亜希を殺した犯人を……許しません…絶対に…絶対に…絶対に…」 声はテープレコーダーから流れていた。 「馬鹿馬鹿しい。ちょっと出てくる。島が元に戻っているかもしれないからな」 そう言って出て行く美樹本の後を透と真理は追った。 外に出た三人は衝撃的な光景を目にする。 館の監視塔、通称《縛り首の塔》にキヨがぶら下げられていたのだ。 その死体に鴉がたかっている…わらべ唄の三番の歌詞だ。 殺人犯は我孫子武丸…目的は河村亜希を殺されたことの報復。しかしこれでは無差別殺人と同じではないか。 「とにかくキヨさんを降ろしてあげましょう」と透は言うが、この状況下で賛同する者はいなかった。 仕方なく透は一人で塔に向かうが、塔の入り口には鍵がかかっていた。キヨを降ろすことは諦めるしかなかった。 92 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 10ID zchuZkAH 館内に戻ると、相変わらず誰もが怪しいという状況の中、可奈子が部屋の前に落ちていたというキヨの遺書を差し出す。 『私の手は血に染まっています。私は主人である我孫子の殺人を手助けしてしまいました。 我孫子は正岡さまに復讐を遂げました。他の方には被害は及びません。 我孫子の正体は…亡くなった夏美さまです』 夏美が犯人だったのかと納得する面々と、夏美の潔白を主張する香山。 結局、「自分の手で、しかも手首がひどく傷ついた状態で自分の首を占められるものだろうか」 「報復が終わったのならば、さっき流れたメッセージは何なんだ」と透と真理が主張した事で、 キヨの遺書は我孫子の用意したニセモノだろうということに落ち着いた。 透と真理は水位が元に戻ったかを確認しようと館の外へ出た。 真理は「館は島と同じように本当は円環状で、正岡殺しの時、犯人はやはり窓から侵入したのでは」と透に話す。 再び館に戻って《縛り首の塔》を見た透はあることに気づく。 「キヨさんの死体を降ろして確かめたい事がある」 真理、小林、村上、美樹本が協力してはしごを支え、透がそれを上っていく。 はしごの上で透は《失われた環(ミッシング・リング)》を見つけた。それは中庭の泉に残された足ひれだった。 それに気づいた瞬間、透は塔のに潜んでいた何者かに突き飛ばされ、はしごから落ちて気を失ってしまった…。 93 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 12ID zchuZkAH しばらくして目を覚ました透は、第四の殺人を防ぐ為に皆を応接室に集めた。 だが、俊夫が呼びに行ったとき、部屋に閉じこもっていたはずのみどりは姿を消していた。 わらべ唄の四番目の歌詞は「かざみどり」… 「みどりさんが危ない!」と透たちはみどりの行き先の手がかりを探す。 どうやらみどりは我孫子に手紙で呼び出されたらしい。手紙には『人造湖に来い』とあった。 人造湖のほとりの小屋。 小屋の中の樽に、かき氷状の氷に首まで埋められたみどりがいた。またわらべ唄の見立てだ。 幸いなことにみどりは生きているようだ。俊夫がみどりを館へ連れて行く。 「さて……犯人はあなたですね」 透の呼びかけに応えて小屋の奥から出てきたのは、死んだはずのキヨだった。 館の泉は人造湖と繋がっていた。岸猿家が奉公人の逃亡を防ぐ為に作った仕掛けで、 防波壁の扉を閉じ、バルブを操作すると、館の庭に湖の水が流れ込む仕組みになっているのだ。 キヨは館を水没させ、物置部屋の窓から正岡の部屋の窓まで中庭を泳いで渡った。 これなら短時間で移動でき、庭に足跡も残らない。泉にあった足ひれはキヨが使ったものだった。 窓が無い館では、外の異変に気づく者はいない。暴風の騒音の中ならなおさらだ。 ドライスーツを着ていれば、びしょ濡れになる事もない。 だが食堂の仕掛けなど、キヨ一人では実行不可能なことがある。 キヨの協力者とは村上だった。村上は密かに皆を誘導して、仕掛けを準備する時間を作っていたのだ。 94 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 14ID zchuZkAH 透はキヨの正体に言及する。 「キヨさんの正体は……今日子さんです」驚く真理。 かつらをとり、老婆のメイクを拭うと、それは確かに小林の妻、今日子だった。 考えてみればキヨは招待もされていない小林の名を、小林が名乗る前から呼んでいた。 小林の様子がおかしかったのはキヨの正体に気づいたからだった。名前の事、料理が出来ない事、手紙の筆跡などで。 今日子が殺そうとしていたのは、久保田みどりただ一人だった。 正岡はみどりと部屋を交換していた為、暗闇で誤って殺してしまった。 夏美はキヨの部屋に忍び込み、あのマニキュアを見て年寄りがこんな物を持っているのはおかしい、と感じた。 『あんたが正岡さんを殺したんじゃないの』と疑われ、殺すしかなかったのだ。 (みどりが持っていた同じマニキュアは、かつて今日子の手からみどりに渡った物だった。) そして疑いの目をキヨから逸らし、また行動しやすくする為に、キヨの存在を消したのだが、 透が真実に気づいてしまったため、急遽みどりを呼び出した。 95 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 17ID zchuZkAH 今日子の旧姓は岸猿。 没落した貧しい家に生まれた今日子とその弟。弟は口減らしのために他家へ貰われた。 今日子は両親を亡くした後、漁師と結婚するが、夫は事故で死に、二人の間に生まれた娘は里子に出された。 今日子の弟とは村上つとむ、娘とは河村亜希。 小林と再婚した今日子は、ある日宿泊予定者の中に娘の名を見つけた。 娘を一目だけでも見ることを今日子は楽しみに待っていたが、その日「シュプール」に亜希が来ることは無かった。 亜希はペンションの宿泊客のものと思われる車にはねられ、一晩中吹雪にさらされて死んでしまったのだ。 今日子は犯人を捜すためにその夜の出来事をモデルに小説を書いた。幸運にもそれはゲーム化され多くの人の目に触れた。 しかし犯人が名乗り出るはずもなく、今回の無人島招待を計画したのだった。 夫と従業員のことは疑っていなかったため、招待状を出さなかった。 しかし食堂で、河村亜希の写真とおもちゃの車に露骨に反応したのはみどりだった…。 今日子が動機を語り終えた。 抜け殻のようになってしまった今日子、村上。 いつからか外に居て話を聞いていたみどりは、自分の罪を告白した。「殺されても仕方が無いんです…」 その時遠くから低い波の音が聞こえてきた…「島が元に戻ったかもしれない」「夕方には迎えの船が来る!」 館に戻ろうとした透たちは海岸で蛇のような生き物、リュウグウノツカイを見る。 そして島に向かって高波が迫ってきていることに気づく。 五番の歌詞の最後が「ざんぶらぶんの どうどうどう」となっているように、 島の円環が解けた影響で津波が起きているのだ。 96 かまいたちの夜2~わらべ唄篇~ sage 04/02/27 22 19ID zchuZkAH 一同は丘の上に逃げようとするが、今日子はこの場に残ると言う。 呪われた岸猿の血は絶えるべきなのだと言って。そして小林も妻に付き添うのだった。 津波が迫る中小林は「いきなさい!」と透と真理に向かって叫ぶ。 丘の上に逃げたはいいものの、どうも波の高さは丘を上回るようだ。 透はとっさの閃きで三日月館に戻ろうと言う。館ならあの波に耐えられるかもしれない。 皆もそれに従う中、村上だけは「姉たちの最期を見届けたい」と言って丘に留まる。 館の中で波をしのいだ透たちが外へ出ると、島の被害は想像以上だった。 小林夫妻の姿も、村上の姿も無い。泣き出す真理。 『いきなさい』 小林の最期の言葉は『行きなさい』ではなく『生きなさい』と言っていたのではないか…透はそう思うのだった。 わらべ唄篇・完 補足 透が河村亜希の写真に見覚えがあったのは今日子の面影があったから 《縛り首の塔》を見て透が気づいたことは、キヨの死体(のニセモノ)から綿がはみ出ていたこと 126 かまいたちの夜2~陰陽篇~sage 111官能篇を書く前に陰陽篇を書きます 04/02/29 17 47ID 2oopJZ3T (島に向かうまではわらべ唄篇と同じ。 陰陽篇ではキヨ、村上、正岡は登場せず、夏美は密教や陰陽道に詳しい人物として描かれる) 島に向かう船の上で、透は我孫子について船長に訊く。 我孫子は地元の漁村「網曳村(あびこむら)」の出身ではないか、と船長は言う。 さらに詳しく訊こうとする透だが、船長は「網曳村の話はしたくない」と口を閉ざす。 「あんたらも物好きだな。よりによって《かまいたちの夜》にあんな島へ行くとは…」 船長が帰っていくと、美樹本がクルーザーでやって来た。 透、真理、小林、美樹本の四人は「三日月館」へ向かう。 美樹本は「かつてこの館は岸猿家の私設監獄だった」と透たちに話す。 岸猿家は奉公人を「カト(家兎)」と呼び、家畜のように扱っていたという。 島や館には風に由縁するものが数多くある。 風の神を祀った神社や、悪い風を切るという意味で館の窓に取り付けられた「風切り鎌」などだ。 美樹本はそれらの意味を説明しながら「糞忌々しい風が」とつぶやく。 だが透がその言葉の意味を尋ねると、美樹本は自分の言った事を覚えていないようだった。 127 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 48ID 2oopJZ3T 島の天候は崩れつつあった。さっきまであんなに晴れていたというのに。 館の応接室には、久保田夫妻、可奈子と啓子が既に到着していた。 遅れて香山夫妻がやって来た。合計十人だ。 我孫子が来るまで、館の探検をしていると、美樹本が食堂に集まってくれと言う。 皆が集まると美樹本は、「ぼくが《我孫子武丸》なんだ」と明かす。 美樹本は祖母が網曳村出身のため、このペンネームをつけたそうだ。 美樹本はふとしたことからこの島の事を知った。 祖母から岸猿家の話を聞いたときは作り話だと思っていたが、島が実在した為興味を引かれたのだった。 美樹本が調べたところによると、この島の前の持ち主・岸猿家は地元の網元にして神社の宮司でもあったらしい。 岸猿家の奉公人に対する残虐な仕打ちを知っていくうちに、ゲーム『かまいたちの夜』の シナリオを思いついたのかな…と美樹本は語った。自分でもよくわからないようだ。 しかも、島を買うために何度か下見に訪れているはずなのに、その記憶が曖昧であることなど、 美樹本の行動と言動にはどうも不可解なところがあった。 128 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 50ID 2oopJZ3T 夕食後、透は真理を誘って外に散歩に出た。透は二人きりが良かったのだが、香山と夏美もついて来た。 出かける四人に美樹本は声をかける。 「今日は五十年に一度の、《かまいたちの夜》と呼ばれる暴風の日だから、風が強まる前に帰って来てくれよ」 なぜ美樹本はわざわざこんな日を選んで招待したのか?と透は訝しがる。 散歩中、香山が何かに躓いて転んでしまった。 それは真っ二つに割れた石碑であった。なぜか側には美樹本のものと思われる、壊れたカメラが落ちている。 夏美が石碑に刻まれた文字を解読した。これは岸猿家の当主だった伊右衛門の霊を鎮める目的のものらしい。 ここで夏美がそれまでに気がついたことを述べる。 伊右衛門はかなり人々に恐れられていたようだ。 伊右衛門は風水を利用してこの島に気の力を集めていたのではないか。 何の為に気を集めていたのかはわからないが、溜まりすぎた気は《かまいたちの夜》の暴風で拡散するので、 気が暴発して悪影響が出るようなことにはならないだろう…。 129 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 53ID 2oopJZ3T 風が強まり、防波壁の扉が閉ざされた。 応接室からみどりの悲鳴が聞こえた。 透たちが応接室に行くと、天井に赤い線が一本引かれ、そこからポタポタと滴が落ちている。線は血で描かれたものらしい。 その時、階上から絶叫が聞こえた。 急いで二階に上がると、啓子の部屋からすすり泣きが聞こえる。 すすり泣く啓子の脇、ベッドの上には…首にベッドのスプリングが食い込み、可奈子が絶命していた。 啓子からなんとか話を聞き出すと、「突然スプリングが飛び出して、可奈子の首に巻きついた」と言う。 部屋には『朱雀』と書かれた紙が落ちている…。 突如啓子が笑い出した。 啓子はそこにいる一人一人を指差し、「ここにいる全員が死ぬ」と老人の声で告げた。 「すべては岸猿家のため…」啓子は気を失った。 130 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 56ID 2oopJZ3T 啓子を部屋へ運び、残りの者は応接室に集まっていた。誰も口を開こうとしない。 二階から大きな物音がした。 物音は美樹本の部屋からするようだ。誰かと争っているらしい。 「お前の思うようにはさせん!」と美樹本。 「たかがアビコの家兎に何が出来る」と老人の声。 透たちは美樹本の部屋の扉を開けようとするが、体当たりをしても開かない。 ようやく扉が開いた時、部屋の窓の下には、堀に植えられていた鉄杭によって串刺しにされた美樹本の死体があった。 まるで昆虫標本のように外壁に磔になっている。 そして部屋の床には『玄武』と書かれた紙。応接室の天井には、もう一本の線が描き加えられていた。 誰の仕業なのか。そもそも人間にあんな殺し方が可能なのか。さっきの老人の声は? 応接室で皆が話し合う。 とりあえず警察に連絡を、と電話を探すが、館には電話が無いようだった。 では携帯電話なら、と香山、夏美、俊夫が携帯を取り出すと、3人の携帯から奇妙な声が流れ出た。 『ひとつ、ふたつ、みつよついつつむつ、ななつやつ、ここのつ血に満たされば 逆しまの力ぎんと溢れ、この世の法破れや、妙婆詞(ソバカ)。 さすれば比斗神(ひとがみ)生まれるぞよ』 131 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 17 59ID 2oopJZ3T 一同は美樹本のクルーザーで逃げようとするが、玄関には鍵がかかっていた。 美樹本の部屋に鍵があるはずだ…皆で美樹本の部屋に行き、鍵を探すが見つからない。 美樹本が鍵を持っているのだ。俊夫が窓から体を乗り出し、鍵を取ろうとした。 その瞬間、突然窓が閉まり、俊夫の体を挟み込んだ。 透たちが窓を引き上げようとするが窓は意思を持つかのように俊夫を絞めつけ、 俊夫の体は胴体で切断されてしまった。 どこからか『白虎』と書かれた紙が舞い降りてきた…。 夫の死を目の当たりにして気を失ったみどりは自室に運ばれた。 応接室の天井にはまた赤い線が増えていた。これで三本。 「こんな事になるなら今日子の言う通り、島に来なければ良かった」小林が呟く。 今日子は岸猿伊右衛門の孫に当たるらしい。 三日月館での岸猿家の非道な行いを聞き知っていた今日子は小林をひき止めたのだが、 どうしても行くときかない小林に、お守りと言って五芒星の描かれた木人形を渡したのだ。 「それはセーマンちゃうのん?」人形についた印を見て夏美が言った。 132 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 18 01ID 2oopJZ3T 夏美、そして美樹本の部屋にあった岸猿家について調べた本によると… 五芒星(セーマン)に対する印はドーマン(縦四本、横五本の線を引いた碁盤目状の印) ドーマンの描き順には、臨、兵闘、者、皆、陣、列、在、前の九字が割り当てられる。 別の言い方では、朱雀、玄武、白虎、勾陳、南斗、北斗、三台、玉女、青龍。 (注・この説明はかなりいい加減に書いてます。陰陽道に詳しい人、間違いがあっても突っこまないでね) ドーマンの描き順と同じ文字が死体の側に。そして一本ずつ引かれていく天井の線。 どうやら人が殺されるごとにドーマンの完成が近づいているようだ。 勝手に付いてきた小林を除く、館に集まった九人は何らかの儀式の生贄にされるために呼ばれたのだ。 愕然とする一同。その時夏美が天井に線が一本増えている事に気づく。 廊下を誰かが歩いてくる。 それは全身を血に染めた啓子だった。先ほど携帯から流れ出た祭文をブツブツと唱えている。 啓子は手にみどりの首を下げていた。みどりの首は『勾陳』と書かれた紙をくわえている。 「我は岸猿家当主伊右衛門。ここに五の贄を捧げ奉り給う」 老人の声でそう言って、啓子は自分の首に包丁を突きたてた。『南斗』の紙がひらりと落ちる。 天井に五本目の線が引かれていった。 133 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 18 04ID 2oopJZ3T 応接室を離れ、食堂で残った五人が話し合う。 ドーマンの完成によって比斗神とやらが生まれるようだ。 伊右衛門は五十年かけて集めた気が最も高まるこの日、暴風によって気が散らされてしまう前に ドーマンを完成させたいのではないか…。 突然、喉が渇いたといって厨房に行く夏美。 おそらく美樹本は初めてこの島に来たとき、伊右衛門を鎮める石碑を壊してしまったのだろう。 目覚めた伊右衛門の霊は美樹本を操って、生贄にするためにこの島に皆を集めたに違いない。 透が真理に自分の考えを話していると、夏美の絶叫が聞こえた。 食堂に逃げ込んできた夏美は全身火だるまとなっていた。そしてそのまま凄惨な最期を遂げる。 夏美の死体に『北斗』の紙が張り付いていた。 香山は夏美を失った悲しみと怒りで、先ほどから一人何も喋っていない小林にくってかかる。 「お前が夏美を殺したんや!」「私は無関係だ」小林は食堂を出て行ってしまう。 ひとりにして欲しいと言う香山を残し、透と真理は二階へ上がった。 だが透は香山のことが気になり、真理を先に行かせて食堂に戻った。 134 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 18 06ID 2oopJZ3T 食堂から声がする。「見んといて……見んといて…」 透がそこで見たものは、香山の目をえぐり出す、炭と化した夏美の姿だった。 透は慌てて真理のいる部屋に逃げ込んだ。 五十年かけて溜めた気は、《かまいたちの夜》に吹き飛んでしまうはず… つまり部屋の中で夜が過ぎるのをじっと待っていれば助かるかもしれない!二人は希望を持つ。 部屋の外で小林の悲鳴が聞こえた。「助けてくれ!」 小林を見捨てる事は出来ず、透は扉を開け、そして見てしまう。 胸に穴を開けた美樹本、首に鉄線を食い込ませた可奈子、喉の裂けた啓子、 真っ黒に炭化した夏美、両目の無い香山、自分の首を抱えたみどり、上半身だけで這いずる俊夫…。 死者たちがあの祭文を唱えながら、こちらに迫ってくる。 部屋に入り扉を閉じるが、廊下からは扉を開けようとする音が聞こえてくる。 外では風が強まってきている。もう少しの辛抱だ。 しかし突然、小林が「奴らも頑張ったが、間に合いそうにもないなあ」と言って、 隠し持っていた鎌で真理を切りつけた。喉を切られて真理は息絶えた。 135 かまいたちの夜2~陰陽篇~ sage 04/02/29 18 09ID 2oopJZ3T 伊右衛門の霊は、美樹本を離れ啓子にとり憑いていたが、啓子が死んだ今は小林に憑いていたのだ。 小林の参加は伊右衛門にとって願ってもない幸運だった。 小林に憑いていれば、孫である今日子を守り、岸猿家を再建できるからだ。 「さあて、あと一人。もう時間は無い」 小林の姿の伊右衛門が透に切りかかった。同時に透は小林の首に手をかける。 鎌は透の肩に刺さったが、透はそのまま首を絞め続け、小林の息の根を止めた。 扉は開いていたが、死者の姿はない。《かまいたちの夜》が過ぎようとしていた。 悪夢は終わった…そう思ったとき、声が響いた。 「やれ嬉し やれ嬉し とうとう九執血で満たされおった ひとつ ふたつ みつ よつ いつつ むつ ななつ やつ ここのつ 血に満たされ 今こそ逆しまの力 ぎんと溢れぬ」 九人目の生贄は誰でも良かったのだ。透でも、小林でも。 声は透自身が発するものだった。透の口から哄笑が溢れ出た…。 陰陽篇・完 比斗神=岸猿家にとっての守り神で、富をもたらすが、蘇らせた者以外にとっては邪神となる。 呼び出すためには血のドーマン(生贄)が必要。 209 かまいたちの夜2~官能篇~ sage 04/03/02 19 08ID sEVPQ++k 陰陽篇・透たちが散歩している所から分岐。 石碑が気になった透は、それを元の形につなぎ合わせる。 《かまいたちの夜》が始まった。恐ろしいほどの風の音がする。 透の部屋に真理が訪ねてきた。「なんだか恐くなっちゃって」二人は並んでベッドに腰掛けた。 透は思い切って真理の肩を抱き寄せ、見つめあった二人はキスをした。 今日の真理は妙に大胆だ…。我慢できなくなって、透は真理を押し倒す。 二人はベッドの上で抱き合い、愛撫する。 ついに、ついに一線を越えるのか…とその時。 部屋の入り口にみどりが立っていた。 「ぎょげええええ!」驚いて思わず真理の上から飛び退く透。 「そんな女に騙されちゃダメ」とみどり。 「私が彼とねるの」不敵に笑い、透の唇を吸う真理。 二人が透を奪い合い、透にあんなことやこんなことをしていた時。 「はじまってる~」「私もする~」突然、可奈子と啓子が服を脱ぎながら部屋に入ってきた。 四人の手によって服を剥ぎ取られ、 舐められたり噛まれたり吸われたりさすられたりこすられたりしごかれたりする透。 四人の女性にもみくちゃにされて痛い気持ちイイハァハァこんな幸せがあっていいのか。夢でも見ているのか? 「ここにおったんかいな」夏美が入ってきた。もしや夏美も、と思いきや違うようだ。 「あんた色情霊に取り憑かれてるで」 色情霊とは色欲に凝り固まって死んだ人間の霊だ。他の男連中はその力で眠りこけているという。 「あたしに任せとったらええねん。 大阪では『悪霊ハンター・お夏』と呼ばれとったんや。すぐ除霊したるわ」 『悪霊ハンター・お夏』!丈の短い装束(陰陽師とか巫女みたいな感じ)にコスチュームチェンジし、 ポーズを決める夏美。…夢でも見ているのか? 210 かまいたちの夜2~官能篇~ sage 04/03/02 19 10ID sEVPQ++k 気持ち良すぎて、このままではPS2では表現できないモノを出してしまう…透は除霊を願い出る。 夏美によると、真理に対する透の欲望が霊を招いたという。 夏美の力によって透の中から悪霊が出てきた。 悪霊=岸猿伊右衛門は語る。 せっかく自由になったのに、石碑を元に戻され再び封じられるところだった。 そこでその場にいた透の並外れた色欲を伝って、透に取り憑いたのだ。 透に子作りさせて、透の子どもとして転生するために。岸猿家の再興のために。 悪霊は去った。 我に返った真理たちに説明する暇も無くボコボコにされ、ひとり全裸で横たわる透。 絶望感に打ちひしがれていると、ノックの音がした。 真理だ。夏美に事情を聞いたらしい。 真理は悪霊に操られていた時のことを、わずかに覚えていた。「私にしたこと、あれも全て悪霊の仕業だったの?」 もう失うものなんてないさ、と透は本音を語る。 「あんなことをしたのは、悪霊のせいだけじゃなくて真理のことを愛しているからだ」 透と真理は一晩中語り合った。透は今、無理をすることも飾ることもなく真理と話が出来た。 《かまいたちの夜》に感謝すべきかもしれない…たとえこの恋が実らなくとも。 官能篇・完 211 官能篇 蛇足 sage 04/03/02 19 11 ID sEVPQ++k 夏美に除霊を頼まないと… こんな気持ちいいこと終わらせるなんてとんでもない!と透が躊躇していると、夏美は呆れて出て行ってしまう。 「透ちゃん、ここだったのね」妙に甲高い声がした。声の主は…こ、小林さん!? 小林は赤いハンカチを咥え、身をくねらせながら訴える。「透ちゃんが、透ちゃんが、好きなのおお」 そこに香山が加わった。「わしもや、わしもや。わしも好きなんやああ」 香山はビキニパンツ一丁という姿だ。ワンサイズ小さめのものという所がミソだ。 美樹本が現れた。美樹本の格好は、素肌に皮ジャンとブーツだけを身につけている。 「やあ、俺のことは兄貴と呼んでくれ」と美樹本。 「兄貴は俺だ。そうだよな、透」これは俊夫だ。 なぜか俊夫は褌一枚で全身びしょ濡れ、伊勢えびの一杯入った桶を抱えている。白い歯が眩しい。 なんだなんだ、真理たちはどこに行ってしまったんだ。というかこのシチュエーションはなんなんだ。 考える暇を与えず漢たちが透に迫り来る…三日月館に絶叫が響き渡った。 官能篇バッドエンド・終 305 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 20ID shVL7Qci (島に出発するまではわらべ唄篇と同じ。 底蟲村篇の真理は大学で民俗学を専攻していたが、引っ越しの際に大学を辞めてしまっている) 島に向かう船の上で、船長が語る。 三日月島は地元の者には「天国島」と呼ばれている。 底蟲村が廃村になった後、島には岸猿家の別荘が建てられた。 岸猿家の者たちは豪奢な生活をおくっており、まさにそれはこの世の天国だと、人々は嫌味をこめて呼んだ。 昭和の時代になると、岸猿家の当主・伊右衛門は怪しげなものに興味を持ち出した。 『不老不死』の研究である。 金にあかせた生活と、研究は続けられが、そのうち島の者の消息が途絶えた。 岸猿家の番頭が別荘を訪ねていったが、別荘には誰もいなかった…。 306 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 21ID shVL7Qci 船長は島に伝わるわらべうたを歌って聞かせる。 みのむしぶらりんしゃん美味そにみえる なんぼ美味そでも喰ろてはならぬ 喰ろたら一生生き地獄 みのむしぶらりんしゃん我慢がでけぬ 我慢でけぬなら喰ろうてごろじ 喰ろたらお山に捨てられる みのむしぶらりんしゃんたぢまのもりが とこよのくにで見つけねばよかった 喰ろたら生きるぞ万万年 「あんたらも物好きだな…よりによって《かまいたちの夜》に行くとは…」 館に行く途中、『網張(あみはり)神社』という神社を見つける。 船長は「《かまいたちの夜》の前にここにお参りしておけ」と言う。 神社の中は蜘蛛の巣が張って荒れ果てていた。 ここでは土蜘蛛を神として祀っているらしい。また、錆付いた剣もそこに納められていた。 透は神社の外で、茂みの中に人影を見る。この島には猿でもいるのだろうか…。 307 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 22ID shVL7Qci 「明日の夕方迎えに来る。気をつけることだ。《かまいたちの夜》には…『常世の虫』が目覚めると言うぞ」 透たちを館に送り届けると、意味深な言葉を残し船長は帰っていった。 透たちを柔和な顔をした老人が出迎えた。館の管理人、キヨだ。 応接室にいたのは、みどりと、この島の伝説を取材に来た美樹本。招待客はこれだけのようだ。 みどりは俊夫と結婚したが、俊夫は半年前に事故で死んだという。 我孫子が到着するまで島でも見物してくるといい、とキヨに言われ、 小林は湖へ釣りに、美樹本は山へ、みどりは中庭を散歩、透と真理は海へ泳ぎに行った。 浜辺にいた透たちのもとへ、すごい勢いでクルーザーが突っこんできた。慌てて逃げる二人。 クルーザーは岩礁に横腹をこすりつけ、止まった。クルーザーの中から出てきたのは香山だった。 クルーザーは壊れてしまったようだが、香山はこんなもんまた買えばいい、と豪快に笑った。 「ようこそ、歓迎するで。さ、わしの館へ行こうか」 308 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 24ID shVL7Qci 館へ向かう途中、香山は二人に「我孫子の正体は自分だ」と明かす。 ゲーム業界参入の第一弾『かまいたちの夜』が大当たりしたらしい。 (最初は『かやまたちの夜』というタイトルだったが、手違いで今のタイトルになったのだとか。) 今はかなり羽振りが良く、この別荘もクルーザーもゲームで儲かった金で買ったという。 そこでゲームに登場してもらったお礼に、透たちを招待したのだ。 小林夫妻は勝手にペンションを出したので怒ってるのではないかと呼ばなかった。(結局小林は勝手に来たが) OL二人は仕事で来られないそうだ。 透はなぜこの島を買ったのか、理由をきいた。 香山は答える。「この島には…『徐福伝説』があるからな」 他にもここには姥捨て山伝説、人魚伝説、『タヂマノモリ伝説』などもあるらしい。 『徐福伝説』 始皇帝の命令で徐福は不老不死の秘薬を探していた。 『海の向こうの蓬莱島(ほうらいじま)にその秘密がある…』 徐福はそう言って航海に出、消息を絶った。 『タヂマノモリ伝説』 垂任天皇が病になった際、家来の多遅摩毛理(タヂマノモリ)を『常世の国』に派遣し、 食べると不死になる『非時香果(トキジクノカクノコノミ)』を探させた。 309 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 25ID shVL7Qci 姥捨山以外の三つの伝説は全て『不老不死』に関係している。 そして岸猿伊右衛門はここで不老不死の研究をしていた…この島にはきっと何かある。 香山は伊右衛門の研究を引き継ぎ、不老不死を実現したいのだと熱っぽく語った。 その時、透はわらべうたを思い出す。 あの三番の歌詞には『たぢまのもり』と『とこよのくに』が出てきたではないか。 それを聞くと香山は「ここには何かある!」と一層確信を増す。 館に着くと他の皆に香山が我孫子武丸だということが伝えられた。 二階の自室へ水着を置きに行った透と真理。それぞれの部屋に入った時、透は真理の悲鳴を聞いた。 透が急いで真理の部屋に向かうと…蜘蛛がいた。 蜘蛛は天井に張った大きな巣の中心に陣取っている。胴体だけで70センチはある。 真理を逃がし、蜘蛛と対峙する透。 部屋にあった傘を手に取り、蜘蛛の腹に何度も突き刺す。蜘蛛は廊下へと逃げ出した。 真理が呼んできた美樹本たちと合流し、蜘蛛の体液の跡を追う透。 廊下の突き当たりで天井に潜んでいた大蜘蛛が香山に襲いかかろうとしたその時、 いつのまにか菜箸を手にしていたキヨが、それを蜘蛛の頭に突き立てた。 310 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 26ID shVL7Qci さっきの蜘蛛のような化け物がいるというのに、迎えの船が来る明日までこの島にいなければならないのか。 恐怖と不安で落ち着きをなくす一同。 「ちょっと待ってください」美樹本が声をあげた。 さっきの大蜘蛛は伝説の土蜘蛛なのではないか。 あんなものが存在するくらいだ、もしかしたら不老不死伝説も現実にあるのかもしれない。 もしそれが発見できれば大スクープだ。自分はここに残る…、美樹本は言った。 さらにみどりも残ると言い出した。 俊夫を失ってから、人は何故死ぬのか、何故愛する人と死に別れなければならないのかという疑問が、頭から離れないのだ。 本当は大学で研究を続けたかった真理も、民俗学の生きた資料を目の前にして帰ることは出来ないという。 しかし透と小林の反対にあい、しぶしぶと真理は部屋に荷物を取りに行く。 真理が透を呼んだ。 透が真理の部屋に行ってみると、さっきの大蜘蛛が張った巣に、蜘蛛の糸で妙な模様が描かれている。 それは『アフナイソトクカヘレ』と書いてあるように見えた。首をひねる透の横で、真理は顔を青くして読み上げた。 「危ないぞ。疾く帰れ」 蜘蛛が警告を?そんなまさか…。 311 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 27ID shVL7Qci 結局、透、真理、小林は帰ることになった。 クルーザーの無線機で送迎船に連絡はしたものの、船が来るのは夕方だという。 それまでここ待つと言う小林。しかし真理は「底蟲村に行ってみたい」と言い出した。 江戸時代に廃村となった村。管理人のキヨは底蟲村には絶対近づくなと言っていた。 一人でも行くと言う真理を止められず、また心配でもあったため、透と小林、香山も一緒に行くことにした。 村は驚くほど当時の景観を残していた。異様な量の蜘蛛の巣を除けば。 村の入り口には警告文が記してある。 『ココカラ先底蟲村 常世ノ入リ口ナリ 入ルナヨ 入ルト死ヌルゾ 皮溶ケルゾ 肉腐ルゾ 骨砕ケルゾ 五臓六腑ミナタダレルゾ 忌マハシキモノ多ク現レルゾ 一名 スクナビコナ トイフソレハ スデニ死ニタルモノデアル』 スクナビコナとは国造りを手伝い、後に常世の国へと飛ばされたという体の小さい神様のことだ。 警告文を無視して村に入ると、そこにいた全員が何とも言えぬ嫌な感じを味わう。明らかに村の中は空気が異質だった。 小林が村に生えている灌木に近づいていった。透と真理も後を追う。 312 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 28ID shVL7Qci 奇妙な植物だった。 葉は無く、黒光りする枝に白い花と小ぶりのバナナのような黄色い実がついている。 香山によると、村の裏山にもこの木がたくさん生えているという。 料理人の小林は、この実が気になり味見してみた。「うん…いけるな。」 実を平らげ、他の三人にも食べろと勧める小林。 透は皮をむいてみた。ピンク色で甘い匂いがする。 だが…ねっとりしていて、粘液に包まれていて、妙に生々しい。まるで生肉のようだ。 改めて臭いを嗅ぐと、髪の毛が焼けるときみたいな臭いがするように感じる。 小林が見ている手前捨てるわけにもいかず、香山は一口だけ実を食べた。あまり口に合わなかったようだ。 真理が実を口に運び、噛み切ろうとした瞬間、透は悪い予感がしてそれを止めた。 廃屋を見に行こうといって、透はその場から真理を連れ出した。 廃屋の中には長持ちがあった。真理がそれに近づくと長持ちの陰から人影が飛び出してきた。 それは真理に襲い掛かり、真理を助けようとした透も組み伏せられてしまう。 サルのような姿のそいつの顔は、生ける屍、ゾンビというのが一番近かった。 首を絞められ、もう駄目かと思ったとき、天井から何かが落ちてきた。蜘蛛だ。 蜘蛛はゾンビにに飛び掛り、そいつの首を食いちぎった。 だが、首が千切れてなおゾンビは動けるようだ。そのまま廃屋から飛び出し、逃げてしまった。 騒ぎを聞きつけた小林と香山がやってきて、残っていた大蜘蛛を殺した。 313 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 29ID shVL7Qci この島には大蜘蛛以外の化け物もいる…。神社で見た猿のような影はあの化け物だったようだ。 あんな目にあったため、真理もようやっと帰る気になった。真理だけではない、香山もだ。 クルーザーの所に戻ってきたとき、小林が腹が痛いと言って苦しみだした。 もしやさっき食べたあの実が原因だろうか…。 しばらくするととりあえず痛みは和らいだようだが、船が来るまではまだ時間がある。四人は一旦館へ戻る事にした。 透が小林を背負い、山道を歩いた。 ふと気がつくと香山の様子がおかしい。顔色が悪い。キョロキョロと辺りを見て何かを探しているようだ。 どこか具合でも悪いのか、と透が声をかけようとした時、 「ミ…ミ…ミミミ…ミミミミミミミミミミミミミミ…!」 突然、小林が大声をあげた。口から泡を吹いて叫んでいる。 透の背から落ち、小林は四つん這いになって凄まじい速さで走り出した。そして草むらに消えてしまう。 四人は小林を探した。 捜索を続ける透と真理の背後で音がした。 二人が振り返ると、そこには底蟲村で見たゾンビのような化け物の姿があった。 化け物が三体。そして化け物と一緒にいたのは小林だった。皆、あの実を貪り食っている。 香山がやって来て、その物音に気づいた化け物たちと小林は、やぶの中に消えていった。 香山は化け物が食べていた実の残骸を見て、ただ一言「……そうか……」とつぶやいた。 「あの実のせいで叔父さんはあいつらの仲間になってしまった…あれは食べてはいけないものだったのよ」真理が言うのを聞いて、透は閃いた。 わらべうたの「みのむし」とはあの木の実のことだったのではないだろうか。 「喰ろたら一生生き地獄」は、食べたら化け物になってしまうことを表していたのか…。 314 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 32ID shVL7Qci 館に戻ると、館は外も中も蜘蛛の糸で覆われていた。前に進むのも困難なほどだ。 他の者たちを探して食堂へ行くと、そこには蜘蛛に体液を吸い尽くされた美樹本の死体があった。 透たちはみどりとキヨを探し続けた。 みどりは物置部屋にいた。蜘蛛の糸に絡み取られぐったりしているが、生きているようだ。 みどりを助けようとすると、七体の大蜘蛛が立ちはだかった。 この数には太刀打ちできない…どうするかと迷っていると、キヨが火のついた松明を持って現れた。 炎で蜘蛛を焼き、追い払い、みどりを抱えて館から逃げる一行。 透たちは館の外に逃げたものの、十数体もの蜘蛛に囲まれてしまう。 すると、あのゾンビのような化け物たちが現れ、大蜘蛛たちに攻撃を始めた。しかし大蜘蛛に押され気味だ。 「蜘蛛が多すぎてスクナビコナでは防ぎきれません。早くこちらへ」キヨが言った。 「網張神社に、かつて大蜘蛛退治に使われた太刀、《蜘蛛切丸》があります。 あれさえあれば、蜘蛛たちを根絶やしにすることができるのです」 なぜキヨはそんな事を知っているのか。そこまで知っていながらなぜ自分で行かないのか。 透たちは疑問を感じるが、今はそれどころではない。 みどりも目を覚まし、蜘蛛たちに行く手を阻まれながらも透たちは神社に辿り着いた。 315 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 33ID shVL7Qci 神社の周りには島中の蜘蛛がひしめいていた。 神社にあった錆びた剣《蜘蛛切丸》を振りかざすと、蜘蛛たちは後ずさっていく。 真理が透の袖を引っ張った。透が真理の指差す方を見ると、以前見たのと同じ蜘蛛の巣に書かれたメッセージがあった。 『ツルキヲタスナ』…剣を出すな… 『トコヨノムシアラワレ コノヨオワル』…常世の虫現れ、この世終わる… 《蜘蛛切丸》の威力は凄まじく、蜘蛛たちは無抵抗のまま殺されていった。 喜んだのも束の間、香山が剣を取り落とし、苦しみだした。 「とうとう来よったか……」香山は理性のあるうちに、と言って、透たちに自分の考えを伝えた。 自分や小林がこうなった原因…あの木の実はおそらく『トキジクノカクノコノミ』だ、と。 「体が…体が言うことをきかんのや!実をくれ!実…ミミミミミミミミ!」 そう叫んで香山は、小林と同じように走り去る。 透と真理はあのわらべうたを思い出す。あの歌にはなにもかも秘密が隠されていたのだ。 『タヂマノモリ』が持ち帰った木の実は、この世にとんでもない災厄をもたらすものだった。 あの実を食べた者は死ななくなるのではなく、ゾンビのような姿のまま死ねなくなるのだ。 そんなものが世界に広まったらどうなるか。 蜘蛛の巣に、文字が残されていた。 『モウテオクレ』 …もう、手遅れ… 「香山さんも小林さんもきっと『底蟲村』にいるわ」 突然、みどりが歩き出した。みどりからは今までとは違う、決意のようなものが感じられた。 316 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 34ID shVL7Qci 透と真理は底蟲村の前にいた。みどりは一人でどんどん先へ行ったため、見失ってしまった。 村の中の嫌な感じは以前より増したようだ。 しかし裏山の辺りまで来ても、蜘蛛もゾンビも姿を現さなかった。 透は真理の様子がおかしいことに気づく。 顔面が蒼白で、キョロキョロと辺りを見回している。真理はあの実を一瞬口に含んだが、まさか…。 透が躊躇いつつもそのことを訊こうとした時、真理が「あっ」と声をあげた。 裏山は『トキジクノカクノコノミ』だらけだった。一面にその木が生えている。 そして木の周りには、ゾンビのような化け物が群がり、実を貪っていた。 人相のすっかり変わった小林らしき人もいる。そして香山も。 香山は透たちを見て恥ずかしそうに苦笑いするが、実を食べるのはやめなかった。 「わしはもうあかん。頭はしっかりしとるんやが、体が言うことをきかんのや…」 真理もふらふらと木の方へ近寄っていく。透は無理矢理ねじ伏せて真理を止めた。 「私、実を食べていないのに…あんなふうになりたくない。透、私を殺して!」 透は無言で真理をつかむ手に力を込めた。 「この実は粘膜に触れただけで作用を起こす。すぐに吐き出しても手遅れじゃ」 声がして振り向くとキヨが立っていた。 「あんたは何者なんだ。なぜいろいろなことを知ってる」 つかみかかる透の手をかわし、キヨは語り始めた…。 317 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 35ID shVL7Qci あの実…『トキジクノカクノコノミ』は木の実ではない。 『常世の虫』の卵なのだ。わらべうたにあった『みのむし』とは『虫の実』のことだった。 虫の実を食べた者は、理性を失い死ねない化け物『スクナビコナ』になる。 彼らはその名の通り不完全な幼体だが、稀に成熟する資質を持つ者が出る。 そして成熟した者は常世の虫となる。 今、底蟲村の地下に眠る常世の虫は、五十年に一度、この世を不死の国にするために地下から出ようとする。 それを食い止めていたのが、常世の虫を封印する為に島に置かれた土蜘蛛たちだった。 これまで何百年もの間、常世の虫の復活は蜘蛛たちに阻まれてきたが、 今回は透たちの手によって邪魔者の蜘蛛はいなくなった…。 キヨは『タヂマノモリ』だった。常世の国から『トキジクノカクノコノミ』を持ち帰った張本人。 島の『スクナビコナ』は、飢饉の時に『虫の実』に手を出し山に捨てられた底蟲村の村人たち(これが姥捨山伝説のもと)と、 不老不死を追求した岸猿家の人間の成れの果てだった。 キヨは透にも虫の実を食べさせようとした。もの凄い力で押さえ込まれ、もう終わりかと思ったが、急にキヨの力が緩んだ。 キヨの手を掴む人物がいた。 「何だかわからないけど、急にすっきりしちゃった。あんた、いいかげんにしなさいよ」真理だった。 真理はキヨに一本背負いをかけ、キヨが動けないでいるうちに二人は逃げ出した。 318 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 36ID shVL7Qci 突然大地が揺れて、二人は地面に投げ出された。 村の地下から、常世の虫が現れたのだ。激しい揺れの中で透は真理を見失ってしまう。 小山ほどもある巨大な虫の背には、無数の『トキジクノカクノコノミ』が生えている。 木のように見えていたものは虫の体の一部だったというわけだ。 「うれしや…うれしや…この世を常世に、常世をこの世に…トコヨコノヨトコヨコノヨ…」 キヨに合わせて『スクナビコナ』たちも唱和する。「トコヨコノヨトコヨコノヨトコヨ…」 虫の進行方向にみどりがいた。 みどりは全裸で、両手を広げて虫を阻むように立っていた。このままでは踏み潰されてしまう。 しかしなぜか常世の虫はみどりの前で立ち止まった。次の瞬間…。 みどりの目や口、全身の穴という穴から無数の微細な蜘蛛がぞろぞろと出てきた。 みどりは蜘蛛に捕らえられた時、卵を産みつけられていたのだ。今まで動いていたのはみどりの皮を被った子蜘蛛だったのか…。 蜘蛛は見る間に成長し、他の蜘蛛と融合して、一匹の巨大な蜘蛛になった。 二体の巨虫は押しつ押されつ格闘する。 劣勢になった常世の虫のもとへ行こうとしたキヨの足を香山が掴んだ。 「まだ人間でおるうちに、やることはやっとかんとな」 香山以外の『スクナビコナ』たちまでがキヨの前に立ちはだかった。「もう死にたい…常世に帰りたい…」 キヨが虫を助けに行けずにいるうちに、虫と蜘蛛の戦いには決着がついていた。 相討ちだ。常世の虫も大蜘蛛も死んでしまった。 319 かまいたちの夜2~底蟲村篇~ sage 04/03/05 20 37ID shVL7Qci 透と真理は村の外へ脱出した。 村の囲いの中から香山が顔を出した。「たったひとつ、心残りがある。会社のことや。透くん、わしの会社をついでほしい」 透が頷くと香山は何度も何度も礼を言い、村の中へ消えていった。 次の瞬間、村の地下から火柱があがり、村は地の底へと飲み込まれていった。 キヨも、虫も、蜘蛛も、香山たちも…全てが消え、村の痕跡すら残らなかった。 気がつくと二人は船上にいた。送迎船の船長が迎えに来てくれたのだ。 色々な事があったが、こうして生きている。何より真理が隣にいる。透は幸福感に酔いしれていた。 だから真理の話も聞こえていなかった。 「実を口にしたのに、私はどうして『スクナビコナ』にならなかったのかしら。 キヨが言っていた『成熟する資質を持った者』って…もしかしたら私は…」 透が真理のほうを見た時、真理は甲板に膝と両手をついていた。 真理の背中が透の目の前でぱっくりと割れた。 そして中から…虫が現れた。 カラスアゲハのような真っ黒な虫は、透を一瞥して飛び立った。 真理の抜け殻を手にして呆然としている透の上に、月の青い光が降り注いでいた。 底蟲村篇・完 補足 キヨやスクナビコナは、神社に張ってあった結界のために『蜘蛛切丸』を手にすることはできなかった。 《蜘蛛ん太刀の夜》が訛って《かまいたちの夜》となった。 348 かまいたちの夜2・底蟲村篇 sage 04/03/06 10 22ID A/Nf2lsh 前の別の人だが追加 真理に実を食わせてるかと(口にさせてはならない) 真理とキスしたかでエンドが違う。 1「真理が実を食べた、又は口にした」 >「キスした」→「真理成熟、透化け物化」 >「キスしてない」→「真理成熟」 2「真理が実を食べてない」 >真理・透無事脱出(たぶんこれがパッピーエンドだと思われる) あと、うろ覚えだが、このどれかが船まで行かないEDだった気がする。 386 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 20ID cqkjhnP8 (わらべ唄篇で正岡の死体を発見したところから分岐。 事件のことを真理に相談した透の意識は唐突に薄れ、ここからは真理の視点で物語が進む) 真理の〈力〉によって、透は気を失ってしまった。まさか、こんな時に〈力〉が始まるなんて。 正岡の死はわらべ唄と符合する点が多すぎる、と言って小林はわらべ唄を口ずさんだ。 真理は初めて聞いたときからこの唄が気になっていた。どこかで聞いたことがあるような気がするのだ。 小林にしたって、一度聞いただけですらすらと歌えるのはおかしい。 とにかく皆に知らせようと言う小林に、少し待って欲しいと言って、真理は正岡の死体に触れると… ――三日月館の内部、病室のような場所、いくつも並んだベッドとその上の子どもたち、薬品、 ベッドから垂れ落ちた手、シーツに染み付いた血―― 断片的な映像が真理の頭の中にフラッシュバックした。 まだふらついてる透も含めた全員が応接間に集められ、正岡の死が伝えられた。 殺された、ということはこの島に殺人者がいるということになる。 電話線は何者かによって切られ、警察に知らせることも出来ない。 館を調べても何も見つからず、根拠のあるアリバイを証明できる者もいなかった。皆の間に不安が広がる。 388 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 21ID cqkjhnP8 自室に戻ると、透が言った。 「気絶した時、真理の声が頭の中に直接聞こえた。それにあの時、僕は真理になって僕を見ていた」 僕に何か隠しているんじゃないか、と透に問われる真理。 透は自分にとって一番信用できる人物だ。そして透も自分を信じてくれる。真理は秘密を明かす決心をする。 真理には特別な力がある。 物に残った人間の記憶を読み取る能力だ。 人の記憶や思いを探る事も出来なくはないが、それは相手の肉体・精神ともに大きな負担をかけることになる。 先ほど透が気を失ったのはその為だった。(しばらく使えなくなっていた〈力〉が突然目覚め、コントロールできなかった) ただし、〈記憶〉はそれを残した者の心理によって歪められている。(嫌いなものは醜く歪められ、その逆は好ましく映る) そのため完全な事実が読み取れるわけではないが、犯人探しに役立つかもしれない。 真理は透と共に正岡の部屋を調べてみたが、たいした手がかりは見つからなかった。 そこで、もう一度死体の記憶を読み取ってみることにした。死体の頭部に触れると… ――男の姿、フクロウの図案、〈ガンツフェルト症候群〉という文字、燃える人間―― 「何をしている」不意に美樹本が現れた。 死体の発見者の透と、真理の行動を怪しむ美樹本。しかし意外にも透は慌てることもなく毅然とした態度をとっている。 美樹本は「怪しまれるような行動は慎め」と言い残して出ていった。 389 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 22ID cqkjhnP8 朝食の時間は、島が閉じてしまったことが話題となっていた。これでは誰も脱出できない。 食事が済むと、真理は透を誘って外へ出た。二人きりになると透が言った。 「おかしな話だけど、僕はゲームをやってもいないのに河村亜希を知ってる気がするんだ」 「私もなの。河村亜希に見覚えがある気がする。…それからあのわらべ唄も」 それだけではなかった。二人とも、初対面のはずの村上や正岡にも以前どこかで会ったように感じていた。 そういえば二人が初めて出会ったときも同じような感覚を持った…。 しばらく歩いていると、村上と可奈子が言い争う声が聞こえた。 真理たちに気づくと逃げるように去っていく村上。それを可奈子が追いかける。 可奈子は真理とすれ違う時に囁いた。「思い出した?」 ハーバーで透がバッジを拾った。フクロウの図案の小さな丸いバッジ。 それは真理が正岡のビジョンの中に見たものと同じだった。真理はバッジの〈記憶〉を見てみた。 ――五人の幼い子どもたち、〈ガンツフェルト症候群〉、そして子どもの頃の真理自身の姿―― 真理は透に今見たものを伝えた。真理の中に何か引っかかるものがあった。 390 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 23ID cqkjhnP8 館に戻ると、館内は異様な雰囲気で女性のすすり泣く声が聞こえてきた。 声のするほうへ行くと、血の海の中で夏美が死んでいた。 両目が潰され、首には狐の襟巻きが巻きついている。両の手首はもがれかけていた。わらべ唄の見立てだ。 目を泣き腫らした香山が搾り出すように言った。 「こいつはこないだまでミナミのソープで働いとったんや。わしらはそこで知りおうて…。 春子に死なれて、お前にも死なれたらどないしたらええんや!」 離婚したと言っていたが、春子は死んだのか…。 真理は隙を見て夏美の死体に触れてみた。 ――泣いている子どもたち、春子や香山の姿―― 真理は小林に肩をつかまれ意識を引き戻された。小林は悲しげに「そんなことはやめた方がいい」と言った。 消沈している香山を残して真理たちは部屋の外へ出た。 叔父は何か知っている…。真理は真相を確かめるべく小林の部屋に行った。 小林に確認するように真理は話した。 捨て子だった真理は今の両親に八歳の時引き取られた。それ以前にいたのは『愛護苑』という施設だ。 愛護苑は真理がいた当時、ミネルヴァ社という日本でも有数の薬品会社がスポンサーとなっていた。 そして小林は脱サラ以前、ミネルヴァ社の開発部にいた。 真理は小林の研究室で何日かを過ごした事がある。 そこには何人もの子どもたちが集められ、検査をし、薬品を与えられた。あれは確かに何かの実験だった…。 391 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 24ID cqkjhnP8 「どうして今さらそんなことを…」青ざめる小林。 真理は小林に拾ったバッジを突きつけた。フクロウのバッジは、ミネルヴァ社の社章だった。 「ガンツフェルト症候群って何。今ここで何が起こっているの」と真理は訊いた。 「知れば後悔することになる」と小林は言ったが、真理の決意は固かった。小林は話し始めた。 ガンツフェルト症候群とは、第二次性徴前の子どもだけがかかる、内分泌異常を伴う神経障害だ。 これにかかった者は、視覚や触覚などを失う代わりに五感とは別の知覚や能力が開花することがある。つまり超能力を持つ。 そして小林は症候群の原因となる毒素を研究していた。 「その毒素を私に?」真理が訊いたが返事はなかった。 突然部屋に俊夫が入ってきた。 「ミネルヴァのことで話があるんですけど」俊夫は問答無用で小林を連れて行こうとした。 真理が思わず俊夫の腕を掴むと、〈力〉が勝手に発動し、真理の意識は俊夫の中に入っていった。 その時見えたのは、小林を殺すビジョンだった。俊夫はミネルヴァ社のスパイなのだ。 透が真理たちを呼びに来た。「大変だよ。早く外へ」真理たちは気絶した俊夫を置いて外へ向かった。 外へ出た真理は、監視塔の先端に串刺しになった村上の死体を見た。死体はカラスにつつかれ、内臓がはみ出している。 「わらべ唄よ…」啓子が呟いた。わらべ唄を口ずさむ啓子。 「茶番はやめろ!部外者の目を気にしてる場合じゃないだろ」みどりの肩を借りて俊夫が館から出てきた。 「こいつらが犯人に決まってる。あの実験では女しか残らなかったんだ」俊夫は啓子たちを指して言った。 「ミネルヴァの犬が何を吠えてるの」啓子は俊夫の正体を知っていた。 俊夫はナイフを構えて啓子に向かっていくが、その腕は見えない力でねじ切られてしまった。 「姉さん、やっちゃってもいいの?」そう言って俊夫に近づいたのはキヨだった。 キヨから〈力〉があふれ、俊夫の首がぎりぎりとねじれていく。 「それくらいにしておけよ」それを止めたのは美樹本だった。美樹本は銃をキヨに向けた。 美樹本もミネルヴァ社の関係者だったのだ。 392 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 25ID cqkjhnP8 美樹本は語る。 一年半前、「シュプール」にはミネルヴァ社の関係者が集まっていた。 小林を監視していた俊夫、そのサポートをしていたみどりと、何か起こりそうだというので援軍として駆けつけた美樹本。 結局その時は何も起こらなかったのだが…。 「ちょっと待ってくれ」香山が話に割って入った。「何を言ってるのかさっぱりわからんわ」 夏美は誰に殺されたんだ、ミネルヴァとはなんだと詰め寄る香山を、美樹本はためらいもなく撃ち殺した。 続けて、俊夫が倒れた。もう死んでいるようだ…もし生きていたとしても、手首からの激しい出血で死は間近だろう。 次に美樹本は逃げ出そうと走り出したみどりを背後から撃った。 仲間じゃないのか、と問う小林に美樹本は言った。「俺のすべきことは被験者の回収と情報漏えいの阻止」 そして小林に銃口を向ける。そこに真理が立ちはだかった。「あなたに私は撃てない。私は…被験者のひとりよ」 「真理ちゃんも記憶が蘇ったわけだ。ミネルヴァの洗脳もあんまりたいしたもんじゃないな」と美樹本。 「被験者の回収ということは、実験はまだ続けられているのか。あれだけの事件を起こしたというのに」小林が言った。 その時美樹本が透の存在に気づいた。透は部外者だ。香山のように殺すつもりなのだ。 真理はとっさに〈力〉を使い、美樹本の意識の中に入り込んだ。 393 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 26ID cqkjhnP8 十三年前。 ミネルヴァの研究所ではサイ能力者(超能力者)を人工的に作り出す薬品の開発が進められていた。 試薬は子どもにしか効き目がなかった。愛護苑から、身寄りのない子どもだけが数十人選ばれ、ミネルヴァ社の研究施設に入れられた。 危険のない実験のはずだった。 しかし投薬が始まってから一週間目の夜。ほとんどの子どもたちが体調に異変をきたし死んでいった。 しかも同時に火災が発生し、研究所は全焼してしまった。 生き残った被験者は五人。 河村啓子・亜希の双子の姉妹、米倉夏美、田嶋可奈子、そして真理。 ミネルヴァ社は隠蔽のため彼女たちを処分しようとしたが、小林がそれを止めた。 記憶を消し、今後監視をつけて追跡調査をすることを条件に…。 事件の直後、小林はミネルヴァ社を辞めたが、彼にも俊夫とみどりの二人が監視につけられた。 研究は正岡と村上が引き継いだが、真理を除く被験者四人は、数年前示し合わせたかのように姿をくらました。 その後薬は完成。美樹本が被験者の第一号となった…。 真理の意識は美樹本から抜け出した。美樹本は気を失っている。 いわば美樹本も実験の犠牲者だ。あたりに転がる死体を見て、真理はやるせなさを感じる。 その時、啓子が俊夫のナイフを拾いあげて美樹本を殺そうとした。啓子を止める真理。 「あなたまだわかってないの」啓子が蔑むように言った。 死んだ夏美を除くと被験者の生き残りは、真理、可奈子、啓子、河村亜希…。 キヨが啓子の妹、河村亜希だった。 亜希は超人的なサイコキネシス能力を身につけたが、薬の影響でホルモン分泌が異常になり、急速に歳をとってしまったのだ。 「その苦痛があなたにわかる?こいつらなんて死ねばいいのよ!」 亜希は美樹本に向かって〈力〉を放つ。夏美や俊夫を殺したのと同じ〈力〉だ。 いつの間にか目覚めていた美樹本はそれに応戦する。二人の間で〈力〉が膨れ上がった。押される美樹本。 「やめてええ!」真理が叫ぶと同時に、透が空に向けて美樹本の銃を撃った。〈力〉の放出は途切れ、美樹本は倒れる。 透は真理に銃を渡し、美樹本を背負って真理と小林をうながした。「行こう。彼女たちから逃げるんだ」 394 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 27ID cqkjhnP8 山道で真理たちは休憩をとった。 啓子たちの狙いは自分だ、自分を置いていけ、と言う小林を真理は諌める。 あの三人は仲間のはずの夏美を殺したのだ。叔父さんにだって何をするかわからない…。 「どうせあの女は人殺しさ」そう言って現れたのは啓子だった。 可奈子が透視で真理たちの居場所を見つけ、啓子はここまでテレポートしてきたという。 正岡を殺した時も、同じようにテレポートで部屋に侵入したそうだ。 夏美はソープで働いている時に香山に目をつけ、正妻になるために香山の妻・春子を〈力〉で殺したのだという。 手に入れた豊かな生活を守るために、夏美は協力を拒んだ。だから殺した。 小林は処分されそうだった自分たちを救ってくれた。だから殺すつもりはなかったのだが…。 小林の姉にひきとられ幸せそうに暮らす真理を見て気が変わった、と啓子は言った。 「私たちは亜希がああなって暮らしていくのにも必死だったのに…」 「真理が私の姉に引き取られたのは偶然だ。それよりも何故洗脳が解けた」 問う小林に啓子は答える。 食卓に置かれたおもちゃの車は、可奈子の弟のものだった。可奈子の弟も実験の犠牲者だ。 ある日、可奈子のもとにそのおもちゃが届けられた。『ミネルヴァの実験を思い出せ』というメッセージとともに。 そこには五人の生き残りの名前も書いてあり、全てを思い出した可奈子は啓子たちを見つけ出した。 三人は実験の関係者に復讐する為に夏美に協力を求めたが断られた。 真理にも知らせようとしたが、その前にミネルヴァ社に気づかれてしまい、逃げ出すしかなかった。 危険を冒して「シュプール」に行った。その後、ゲームを利用して関係者に揺さぶりをかけ、正岡と村上の所在を知った。 そしてこの島に関係者を集めた。 わらべ唄は啓子たち姉妹が研究室で歌っていたものだった。 船長にわらべ唄を歌わせたのは、関係者に当時の事を思い出させ、それをテレパシーで探る為だった。 ミネルヴァ社と戦うために協力しなさい、と啓子は小林に言った。 真理は止めるが、小林は真理に手を出さないことを条件にそれを呑んだ。 395 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 28ID cqkjhnP8 啓子は亜希と可奈子をこの場に連れてこようと、〈力〉を使おうとした。 その時ヘリコプターが飛んできた。救助か?と真理は思ったが、ヘリからは銃弾が飛んできて啓子の体を貫いた。 小林が真理の手を引き、逃げようとした時、突如戦闘ヘリは爆音とともに炎上した。 「パイロキネシス…」小林が呟いた。 真理、透、小林は力なく館に戻った。とっさの事で、美樹本は山道に置きざりにしてきてしまった。 「さっきの爆発は真理がやったのか」と小林に訊かれるが、真理には覚えが無い。では可奈子か亜希がやったのか…? あの戦闘ヘリはミネルヴァ社のものだ。美樹本が連絡したのだろう。 薬品は完成し、かつての被験者はもう研究の価値は無い。ミネルヴァ社の裏の顔を知るだけの邪魔者だ。 ミネルヴァ社に処分されるのが先か、可奈子たちに殺されるのが先か…。 絶望的な状況だが、透が言った。「可奈子ちゃんたちと協力して戦うんだ」 館に入ると、「啓子を見殺しにしたわね」と言って可奈子と亜希が小林に詰め寄った。 そんな場合じゃない、と真理が言うと同時に、ミネルヴァ社の私兵が館に突入してきた。こんな状況なのに透は妙に楽しそうだ。 小林は兵士たちに殺されてしまい、残る四人は二階へと逃げた。 階下で手榴弾が爆発し、その爆風が真理を襲った次の瞬間、炎が立ち昇った。 まるで龍のようにうねる炎は、侵入者たちに襲い掛かり、薙ぎ払った…。 396 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 29ID cqkjhnP8 二階の一室で真理は目を覚ました。しばらく意識を失っていたらしい。 「あれはあなたがやったの?」と可奈子たちに言われるが、何のことか分からない。 「パイロキネシス…あらゆるものを爆発炎上させる能力。こんな時には便利だよね」 そう言ったのは透だった。 実験で投薬を受けたのは子どもたちだけではなかった。他に三人の妊婦がいたのだ。 そのうち二人は流産したが、一人は無事だった。それが透の母親だ。 母の胎内にいた時から透には意識があった。 十三年前、透は胎内から〈力〉をふるい、研究室を焼き尽くした。 透の母親は火事で焼け死んだと思われていたため、監視もつかずに暮らしていた。 しかし八年ほど前にその存在がミネルヴァ社に知れ、母親の周りに不審な人物がうろつきだした。 その目を逸らす為に透は別の事件を起こし、母親を始末した。 可奈子に車を送ったのも透だった。被験者たちに実験の事を思い出させるために。 真理に近づいたのは、研究所にいた時から真理の事が好きだったから。 (透は真理と会う時には自らに仮想の記憶を植え付けていたため、真理が透の意識に触れたときも過去のことは読み取れなかった。 真理の〈力〉に触れたのがきっかけで、今は透の偽の記憶も外れている) 透の成長は常人よりも速かった。体は青年だが中身は十三歳なのだ。亜希と同じ薬の副作用だ。 それを聞いて、真理は透の妙な子どもっぽさに思い当たる。 397 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 30ID cqkjhnP8 可奈子がミネルヴァの軍隊が迫っている事を感じ取った。 テレポートが使える啓子はもういない。今は手を組んで戦うしかない。 可奈子が透視で兵士の居場所を探り、透が焼き殺した。 兵を投入しても無駄だと悟ったのか、ロケットランチャーでの攻撃が始まった。 亜希が飛んできた弾を破壊するが、攻撃はまだ続いている。逃げなければいずれやられてしまう。 中庭の泉は海水だった。海と繋がっているはずだ。 真理たちは亜希の力で身を包み、透の炎を推進力にして水中を進み、館を脱出した。 出た場所は島の人造湖だった。(泉は海と湖の二ヶ所と繋がっている) 亜希は〈力〉の使いすぎか、気を失っているようだ。 透は可奈子に敵の居場所を訊いた。どうやら敵は館の方に集中しているようだ。 「よし、行こう」透は無邪気に笑って歩き出した。 館を見下ろす丘の上で、透は意識を集中した。そして〈力〉を放った。 館が炎に包まれ、豆粒のように見える兵士たちが一瞬で焼き尽くされる。 これは虐殺だ。ミネルヴァのやったことと変わらない…。真理は目を逸らさずそれを見ていた。 398 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 31ID cqkjhnP8 突然、透の周囲の空気が揺らぎ、透の頭が吹き飛んだ。 「そのバカがサイ能力者だったとはな」美樹本の仕業だった。 美樹本は可奈子を殴り飛ばした。亜希はまだ気絶している。 真理は美樹本のものだった銃を構え、美樹本に向けた。 「人を殺すってのは、なかなか思いきりが必要なんだ。お前にはできない」美樹本が真理に近づいてきた。 真理は銃を撃つが、銃弾は美樹本をかすめただけだった。 銃は美樹本に奪われてしまう。「言ったろ?真理ちゃんには無理だ。だが俺にはできる」 そう言って美樹本は可奈子を撃ち殺した。 次に未だ目覚めていない亜希に向かって発砲する。亜希の身体がとび跳ねた。 真理は後先も考えず美樹本に飛び掛かった。しかし美樹本は動かない。 亜希が最後の力で美樹本の動きを封じていたのだ。 真理は美樹本の手を掴み、意識を集中した。 美樹本の記憶が見えた。貧しい家庭、借金、金のために実験体になったこと…。 次に見たものはがきょとんとした顔で目の前に立っている真理自身の姿。 今、真理の意識は美樹本の中にあった。そして美樹本の意識は真理の中に…。 ―おまえの心に、もう帰る場所はない。 美樹本の中の真理は美樹本の頭に銃口を当て、引き金を引いた。 人間相手にサイコメトリーをする際、真理の意識は数秒間相手の肉体に入り込む。 その時相手の肉体を操れるのではないか…危険な賭けだったが、それは成功した。 美樹本は死に、真理は生き残った。 みんな死んでしまったというのに、私は生きている…焼け落ちた館を前に、真理は考えていた。 399 かまいたちの夜2~サイキック篇~ sage 04/03/08 21 32ID cqkjhnP8 (サイキック篇は『完』と表示されるエンディングが三つあります) 真理の中には怒りがあった。 彼らは真理の愛したものを全て奪っていったのだ。許すべきではない。 同時に真理は恐れてもいた。 自分は復讐が始まるのを楽しんでさえいるのではないか、と。 しかし、他に選ぶ道はない。真理の心は既に復讐を選んでいた。 サイキック篇『復讐』・完 みんな死んでしまった。透や小林だけではない。ミネルヴァ社の人間たちも、何十人と…。 自分に生きる権利はあるのか。あれだけの死を目にして、なおも生きていけるのか。 答えは否だ。ひとりで生き延びても意味は無い。 真理は銃口を自分のこめかみに当てた…。 サイキック篇『疑問』・完 殺戮も、復讐もたくさんだ。もう悲惨な物事に出会いたくなかった。 ここであったことを記憶して生き延びること…それがわずかなりとも供養になるのではないか。 それを一生心の中に置いておくこと…それが自分に下された罰かもしれない。 真理は船着場へ向かった…。 サイキック篇『帰還』・完 416 かまいたちの夜2~惨殺篇~ sage 04/03/10 18 31ID /zN8Y43h (わらべ唄篇でキヨの死体が発見された後から分岐) 中庭に手帳が落ちていた。手帳はキヨのものだった。 そこには自分が我孫子武丸だということ、正岡や夏美を殺した事が記されていた。 動機は今となってはわからないが、キヨが殺人に悦びと恐れを抱いていた事は明らかだった。 殺人犯とはいえ、キヨをあのままにしておくのは忍びなかった。 透が物置部屋に梯子を取りに行くと、香山がキヨを降ろすのを手伝うと言ってくれた。 二人で物置に入ると、不意に香山が「わあっ!」と叫んだ。 木彫りの置物を手に取ったところ、ぬるぬると嫌な感触がして驚いたのだそうだ。 梯子を運び出すと、塔の下に真理が待っていた。真理も手伝ってくれるようだ。 透は梯子に登ってキヨの死体に近づいた。 死体の目から白い物が零れ落ちた。 糸の塊のようなものがあふれ出て、はらはらと透の顔や下にいる真理たちに降りかかった。 手にぬるりとした感触があった。透が手を見ると、白いものは糸などではなく体長二、三センチほどの細い線虫だった。 驚いたはずみに透は梯子から落ちてしまった。 気がつくと透は自分の部屋に寝かされていた。館は静まりかえっている。 透は他の者を探し、隣の村上の部屋へ行った。 村上の部屋には血の臭いが充満し、服装からして村上と思しき首無し死体が壁に釘付けにされていた。 透は真理の姿を探した。 廊下を走っていくと、啓子の部屋のドアが開いていることに気づいた。 中を見ると、そこには三体の首無し死体がぶら下がっていた。死体からおびただしい量の血が流れ出している。 死体はどれも女性だったが、真理はその中にいないようだ。啓子、可奈子、みどりだろう。 417 かまいたちの夜2~惨殺篇~ sage 04/03/10 18 32ID /zN8Y43h 真理の部屋へ行くと、ドアには鍵がかかっていた。真理は中にいるらしい。 真理は透が一人であることを確認すると、扉の向こうに作っていたバリケードを取り除きはじめた。 「透くんやないか!」呼ばれて振り向くと香山と小林がいた。小林は香山に肩を借りてなんとか立っているようだ。 小林が透に何かを訴えるような目を向けた。 声は出せないようだが、その口が確かに『タスケテ』という形に動いた。 何があったのかと透が香山に聞くと、香山は小林を床に降ろした。小林の背中には鎌が突き刺さっていた。 香山は鎌を抜き取り、小林の首に当てた。 そして、よいしょ、どっこいしょ、と声を掛けながら香山は小林の首を切断し始めた。 透が金縛りにあったように立ち尽くしていると、ようやく部屋から出てきた真理が、その光景を見て悲鳴をあげた。 透は我に返り、真理の方を見た。真理が「危ない!」と叫んだ。 その声で身をかわしたが、香山の鎌は透の肩を裂いた。「うまいこと、よけたな」と香山。 透は真理の手を引いて逃げ出した。 館から逃げ出した二人は、気がつくと山の中にいた。 透の傷は浅かったが、二人ともショックが大きく、へたりこんでしまう。 透が気を失っていた時、真理は悲鳴を聴いたのだという。 真理が声のした方に行くと、俊夫の部屋から鎌と俊夫の生首を持った香山が出てきた。 真理は自分の部屋に逃げ込んだのだそうだ。 418 かまいたちの夜2~惨殺篇~ sage 04/03/10 18 33ID /zN8Y43h 背後で物音がした。「無事だったか」美樹本だった。 なぜ香山はあんなことを…と悩む透に美樹本は言った。「ふうのしんって何だと思う」 美樹本は地元の漁師にもらったという冊子を見せた。そこにはこんな文章が書かれていた。 底蟲村の村の衆 一人残らず死んでござる なぜに死んだかきこうとしたが 悪たれ鼬の楓の津が 最後の一人も殺してしまい 島に残るはただ風ばかり そして誰もいなくなったとさ… 『楓の津』と書いて『ふうのしん』… 確かにこの辺りには楓の木が多い。『津』は液体、つまり楓の樹液ということだろう。 美樹本は「香山さんはこんなものを触っていなかったか」と言って一本の枝を取り出した。 それは香山が物置で触った置物と同じ木の枝だった。枝の表面はじっとりと濡れている。 美樹本は枝を踏みつけた。割れた枝の中からは無数の白い線虫が出てきた。 「憶測だが、楓に寄生するこの線虫は人にも寄生するんだろう。 そして寄生された人間はキヨや香山のようになるのさ」 そして美樹本は「今なら俺にも人を殺す快楽というものがわかるよ」と言った。 美樹本も虫の寄生した楓に触ってしまったのだ。糸のように細い線虫は毛穴からでも体内に侵入できるのだろう。 「香山もこの辺りにいるはずだ。俺はあいつを相手に自分の欲求を満たす。 どちらが生き残っても君たちの敵になる…さあ、俺がまだ人であるうちに逃げるんだ」 透は真理の手を引いて走り出した。 419 かまいたちの夜2~惨殺篇~ sage 04/03/10 18 34ID /zN8Y43h 海岸まで行けば美樹本のクルーザーがある。 透たちは何かに追われるように走り続けた。途中、透たちは香山の『コレクション』を見た。 一本の木に果実のように生っている六個の生首。それを見た真理は気を失ってしまう。 「どや、なかなかのもんやろ」透が振り返ると香山がいた。香山は美樹本の首を持っていた。 香山は笑みを浮かべながら透に近づいてくる。 十分近くに来たところで、透は香山に飛び掛った。 しかし香山に押さえ込まれ、背中を切られてしまう。香山が透の首を掻き切ろうと、透の上に屈みこんだ。 その瞬間を狙って透は香山の眼球に指を突きたてた。たまらず香山は顔を押さえて立ち上がる。 透は香山の落とした鎌を持ち上げ、痛みでうずくまる香山に向かって振り下ろした。何度も何度も。 キヨの死体から落ちてきた線虫は透の体内に入り込んでいたのだ。 透の中に、殺人への悦びが沸き起こっていた。 透は真理の傍らに倒れた。 真理を殺したいという欲求。その欲求に負ける前に、気を失ってしまえばいい。透は目を閉じた。 真理が起き上がる気配がした。真理は透の手に握られた鎌をもぎ取った。 透は納得した。真理が生首を見て気を失ったのは、膨れ上がった欲望の大きさに押しつぶされそうになったからだったのか…。 横たわる透に鎌が振り下ろされた。 惨殺篇・完 50 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/13 20 00ID JZR//hGz (送迎船に乗るまではわらべ唄篇と同じ。船長にわらべ唄を聞くのも同じ) 島には半ば海に没した小洞窟があった。「探検したくなるわね。中に宝物があるかも」と真理。 それを聞いて船長は、 「あの洞窟の中は迷路のように入り組んでいると聞いた。甘い考えで危ない真似をするな」と厳しく言った。 三日月島には『暮拿島(くれだじま)』いう呼び名もある。 島の内海は『穢牛頭(えぎゅうず)の海』と呼ばれていた。昔、島では牛を神に捧げていたからだそうだ。 大学で民俗学の助教授をしていた船長の息子は、その話を聞くと 『あの島には岸猿家の秘宝が隠されている』と言って『底蟲村』に行き、死体となって洞窟から出てきたのだ…。 館に着いた透たちをキヨが迎え入れた。応接室には懐かしい顔が揃っている。 まだ部屋が片付いていないので、しばらく島でも見物していてくれ、とキヨは言った。 透は真理を海へ誘うが、真理は館を探検したいと言い出した。しぶしぶ付き合う透。 物置部屋で二人は『覚書』と書かれたノートを見つけた。 このノートを手にしたのなら、自分の代わりに岸猿家の財宝を見つけ出してほしい…ノートにはそう書かれていた。 ノートの持ち主は網曳(あびこ)和弘。あの船長の息子だろう。 真理はノートを読むと「宝探しをしましょう!」と言って透を底蟲村へ引っ張っていった。 底蟲村に行くと、村の中心部には小さな祠があった。 祠の石碑には『久納租宮(くのうそきゅう)』と彫られている。 網曳のノートには『久納租宮は蛇尾輪道(だびりんどう)に通ず』と書かれていた。 そして『あくたれいたちのふうのしん』は一字飛ばしで『クレタの牛』と読めることも。 どうやら三日月島にはギリシャ神話との共通点があるようだ。 『暮拿島』は『クレタ島』、『穢牛頭の海』は『エーゲ(アイギウス)海』 『久納租宮』は『クノッソス宮殿』、『蛇尾輪道』は『ラビリンス』… クレタ島のミノス王がラビリンスにミノタウロスを幽閉したという神話。それに似た話が岸猿家にも伝わっていた。 生贄にするための牛を世話していた娘が突如妊娠し、牛の頭を持った子どもを生むという伝説だ。 51 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/13 20 01ID JZR//hGz ノートをかなり読み込んでいた真理は 「岸猿家の秘宝は蛇尾輪道にある。そして蛇尾輪道はここの地下にあるのよ」と言った。 祠の仕掛けを作動させると、透たちを乗せたまま祠の周辺がエレベーターのように下へと降りていった。 蛇尾輪道にはわらべ唄の歌詞になぞらえた数々の仕掛けが待っていた。 それを解くたびに古ぼけた鍵がひとつずつ手に入った。 先に進んでいくと、行き止まりに切り株のような石の台があった。順番からすると、次の見立ては《山姥》の歌詞なのだが… 「わかった!僕が《山姥》になればいいんだ!」 透が台に乗ると、台は真理を残して上昇してしまった。昇りきったところの正面に横穴がある。 「透一人で先に進んで」という真理の言葉どおりに、透は横穴に入っていった。 通路の奥から声が聴こえた。木製の扉の向こうからする、人のような獣のような、哀しく苦しげな声だ。 扉には鍵がかかっている。透は途中で手に入れた鍵を使い、扉を開けた。 部屋の中にはいくつもの燭台が置かれ、部屋の中心にいる声の主を照らし出していた。 紫色の座布団の上に載せられた、大きな牛の首。 まるで人間のような表情で、ぼろぼろと涙をこぼしている。 「せっかくの宝だ。ゆっくりとそばで見たらいい」 そう言って部屋の中に透を押し込んだのは、送迎船の船長だった。 船長の側に若い男が立っていて、その男に真理が捕まっていた。 男が真理を透のほうへ突き飛ばした。透にしがみつく真理。 「この牛が…宝」呟く透に、 「そうさ。岸猿家の秘宝だよ」船長が答えた。 牛の頭が人間の唇と歯と舌で喋った。「我ハ牛ニ非ズ」 「件(くだん)ね」と真理が言った。 くだんは人の身体に牛の頭を持つ怪物で、未来を予言する能力がある。 「それはくだんなんかじゃあない。岸猿家がその秘法で作り出した牛頭(ぎゅうず)様だ」と船長。 「平安の時代から我が一族に伝わる秘法よ」船長の背後から現れたのはキヨだった。 52 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/13 20 02ID JZR//hGz キヨの本名は岸猿キヨ。岸猿家の最後の生き残りだった。 船長と一緒にいる若い男は船長の息子・和弘だ。秘宝の話は船長と和弘の作り話だったのだ。 「ぎゅうず様には予言の力があるが、その力を維持するには生贄の血が必要なのさ」と和弘は話す。 昔は人間を生贄にしていたが、近代になってそれが難しくなり、牛の血を代わりに使った。 しかしやはり代用品は効力が薄く、ぎゅうず様の力は衰え、漁村は廃れて岸猿家も没落した。 最近になってキヨの存在がわかり、これで秘法の再現の目処がたった。 船長たちは生贄を呼び込むために嘘の秘宝伝説を流したのだ。 「さてと、ぎゅうず様がお待ちだ」と船長は鉈を取り出した。 「ソコナ二人、ヨオ聞ケ」突然牛の頭が喋り始めた。 「頭捨テ、蹴リテ終ワル」 「ぎゅうず様のお言葉です。これは避けることの出来ぬ予言」キヨは牛の頭に近づいた。 そして牛の流す涙を拭う。「そうか、哀れよのう。神の御身にしても永劫の時は辛うございましたか」 キヨも涙を流しながら、透たちに言った。「聞きましたか。終わらせるのです」 透は「わかったよ」と言って、牛の頭を床に転がした。 船長が鉈を振りかざして止めようとするが、真理がその腕にしがみついて邪魔をした。 透が牛の頭を蹴った。牛の頭が裂け、中から臓物のようなものが流れ出す。 呆然としている船長を殴り、透は真理の手を引いて走り出した。 キヨが小さくお辞儀をするのが見えた。 透たちは枝分かれした洞窟に出た。洞窟の壁や床は濡れていて、舐めるとしょっぱい。 今までは海に没していたのだろう。《かまいたちの夜》の影響で潮が引いているのだ。 この先は海から見た洞窟に通じているに違いない。「ここから海に出よう」透は言った。 透たちが進んでいくと、先の方が明るくなっていて夜空が見えた。 透は泳げないと言う真理を抱えて海に飛び込んだ。 53 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/13 20 03ID JZR//hGz 波止場に着き、海から上がると、そこには船長と和弘が待ち構えていた。 「他の出口は塞いできた。ここ以外に出る場所はないからな」 キヨに新たなぎゅうず様を作り出す力は無い。ただの足手まといだから洞窟内に閉じ込めてきた、と船長は言った。 「他の招待客は帰すとして、いらぬことをいろいろと知ったやつは…」船長が鉈を振り上げた。 死を覚悟して、透は真理をかばうように前へ出た。 その時、ずるりと船長たちの身体が沈んだ。見ると二人は腰まで地中に埋もれている。 二人の肩に、キヨの細い腕がかかっていた。 キヨの姿は幻のように透き通っている。 「岸猿家の秘法を甘く見てはならん。網曳村の人間ならそう聞かされてはおらんかったか」 キヨの腕に力が入り、二人は水に沈むように地面に飲み込まれていった…。 「村人たちには夢でぎゅうず様の死を伝えておきます。もう岸猿家があなたたちに迷惑をかけることはありません」 キヨは笑った。その姿がだんだん薄れていく。 「力を使いすぎたようですね。それでは、お世話になりました」 そう言って、消える寸前にキヨは深々とお辞儀をした。 「これで終わったのね」真理が透にしがみついてきた。透はその肩をしっかりと抱き寄せた。 岸猿家の財宝以上に素晴らしい宝を、透は手に入れたようだった。 洞窟探検篇・完 途中の選択肢や、謎解きの進め方によって中間部分の細部は違ってきます。 99 かまいたちの夜2~わらび唄篇~ sage 04/03/15 02 47ID BzW7qNCX 我孫子の招待を受けた透。しかし…嫌な予感がする。 真理から招待のことで電話が来た。真理は行く気マンマンのようだ。 「久しぶりに透にも会いたいし、この前素敵な水着も買ったの」 素敵な水着!?だが、そんなものに惑わされてはいけないのだ。 殺人事件が起こったり、悪霊に襲われる気がする。いや襲われるに違いない。 もちろん真理は「何バカなこと言ってるの」と一蹴する。 真理を一人で行かせては危険だ…!透も島に行く決心をした。 準備は念入りにしなければ。 サバイバルナイフ、スタンガン、危険を冒して手に入れたトカレフ、悪霊対策の十字架、ニンニク、銀の弾丸。 生物兵器対策のTNT火薬、血清、ペニシリン、ガスマスクにサリンの中和剤、そして照明弾。 保存食に水、ザイルとハーケン…保険証は必須だ。 透は60キロを超える重さの荷物を持ち、船にのりこんだ。 真理は相変わらず、透の心配を真に受けようとしない。 それにしても… 小林さん。招待もされてないのに嗅ぎ付けてくるとは…怪しい。 奥さんの今日子さんが来ていないのも怪しい…なんとなくだが、変装して島に先回りしている気がする。 船長も怪しい。今にも島についての因縁を話し出しそうだ。伝説とか、呪いとか、わらべ唄とか…。 「伝説?そんなもん聞いたことないのう」と船長。 「わらび唄ならあるぞ。わしなんか256番まで暗記しとる。歌ってやろうか」歌わないでいいです。 島はのどかな、まさにこの世の楽園といった風情だった。 浜辺には懐かしい顔ぶれも見える。…しかし気を許してはいけないのだ。そう、信じられるのは真理だけ。 「今晩は《かまいたち祭り》だ。楽しい夜になるだろうよ」と船長。 《かまいたち祭り》…!不吉な響きだ。やはり何かある…。 100 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/15 02 49ID BzW7qNCX 館は高い塀に囲まれ、奇妙な形をしていた。…怪しい。 こういう変わった造りの建物では殺人事件が起こると相場は決まっているのだ。 入り口にそびえ立つ監視塔。《縛り首の塔》……ではなかった。 塔は赤いロープで亀甲縛りにされている。《亀甲縛りの塔》だ。「……趣味わるっ」思わず透は呟いた。 「今日子のムチとロウソクを思い出すなあ…」小林が何か言ったが、聞かなかった事にする。 塀で隠されて外からはわからなかったが、館は目も覚めるようなショッキングピンクで塗られていた。 「……趣味わるっ」真理が呟いた。 敷地内の堀の中には、囚人の逃亡を防ぐ錆び付いた剣山…ではなく、無数のサバが突き立っていた。 炎天下でサバは腐臭を放っている。「趣味わるっ!!」思わず三人とも呟いた。 「サバ…鯖…錆(サビ)に字面と音が似ているからかな」頼まれてもいないのに説明をいれる透だった。 どうせ招待主は姿を現さないに決まってるさ、と透は主張するが、 パンダの顔をしたノッカーを鳴らすと「ようこそ。私が我孫子武丸です」いきなり本人が出てきた。 いや、肩透かしはくらったがまだまだ油断はできない…。 我孫子に案内され、客室に入る。客室の趣味も、なんというか独特だ。 壁はパステルピンク、ベッドの上にはベッドの半分を占めるほどの大きなクマのぬいぐるみ。 「ど、どうしてぬいぐるみが?」透は困惑するが、 「だって、あれがないと眠れないでしょう?」我孫子は当然のように言った。 真理は海に行くようだ。透も真理を守るため、付いていく。 ビーチには招待客のほとんどが揃っているようだ。 『海の家かまいたち』では老女が焼きそばを焼いている。我孫子が言っていたお手伝いのキヨだろう。 青い空と海。浜辺でくつろぐ男女。平和だ…悪い予感なんて気のせいだったのかもしれない。 透もビールを一気に飲み干した。 「………く、苦しい!!」 ビールに毒が…!?見れば、他の者たちも砂浜に転がって苦しんでいる。 キヨが上半身をのけぞらせて高笑いしている。やはりこの招待は罠だったのだ…。 101 かまいたちの夜2~洞窟探検篇~ sage 04/03/15 02 51ID BzW7qNCX 「もしもし」と呼びかけられて、透は目を覚ました。 絶叫して目を開けると、キヨが腰を抜かしている。どうやら夢を見ていたようだ…。 陽はすっかり落ちている。他の人たちはとっくに帰って、夕食も済ませたらしい。 眠っている間に真理の身に何かあったら…!透は館へ走った。 当然ながら真理は無事だった。 「よくおやすみでしたこと。あのまま永遠に眠ってればよかったのに」ひどい。 どうやらこれから、皆で《かまいたち祭り》に行くようだ。 透は空腹だったが、真理を守るために一緒に行く事にした。 底蟲村から太鼓の音が聴こえてくる。このリズムは盆踊りだ。《かまいたち祭り》とは盆踊り大会だったのか? 和やかな光景に、透はいつしか笑い出していた。連続殺人が起こる?どうかしていた。ゲームのやりすぎだな。 透も盆踊りの輪に加わり、一緒に踊る。 我孫子がやぐらの上からマイクで話し出した。 「底蟲村の皆さん!今年もかまいたち祭りのために素晴らしい客人をお招きしました! さあ皆さん真ん中へどうぞ!」 透たちに言っているようだ。歓声と拍手の中、透たちは真ん中へ歩み出た。 「さあ皆さん、カマイタを!」 我孫子の掛け声で村人たちが一斉にカマボコ板を取り出した。太鼓のリズムが速くなる。 村人たちは透たちの方へじわじわと迫ってきた。 「カマボコ板…カマイタ?ということは《かまいたち 祭り》じゃなくて《カマイタ 血祭り》?」透たちは青ざめた。 我孫子が透たちに語る。 この村のご神体はカマボコ板のような形の大きな岩、『カマイタ様』だ。 この村は昔から台風の時期になると津波に襲われて、毎年死者が出ていた。 ある時、よそから来た漁師たちが酔っ払って、カマイタ様に小便を引っ掛けた。 村人は当然怒って、漁師たちを袋叩きに…するとその年はなぜか一人の死者も出なかった。 それがこの祭りの始まりだ。 102 かまいたちの夜2~わらび唄篇~sage名前欄そのままだった。100-101は間違い 04/03/15 02 53ID BzW7qNCX 村人たちは我孫子の説明が終わるのを待っているようだ。動きを止めている。 真理だけは守らなければ…透は賭けに出た。 「香山さん!あそこに少し隙間が!」透の言葉に従って走り出し、村人に囲まれカマイタで殴られる香山。 「美樹本さん!あの辺が!」香山よりは素早かったが、やっぱり村人に殴られ地面に丸くなる美樹本。 他の者たちもそれを見てパニックに陥り、走り出し、殴られる。 透は同じく走り出そうとする真理を引きとめた。 そして村人たちが他の獲物に集中する瞬間を見計らって、真理の手を引き走り出す。 包囲から抜け出した二人を村人数人が追いかけてきた。 港には島に来る時乗った船が泊まっていた。(船長も祭りに参加していた為) 船など操縦した事がなかったが、何とか動かす事が出来た。港で村人たちが罵声をあげている。 二人は甲板にくずおれ、しっかりと手をつないだ。 「ごめんね…ごめんね…透の言うこと、もっと聞いておけばよかった…」と真理。 数時間後。 「ねえ、いつになったら着くの?」 「明るくなったら陸地が見えるよ……た、たぶん」 「たぶん?たぶんってどういうこと!?分からないのにこんなに走ってきちゃったの?信じらんない!」 真理は泣きわめいていたが、透は安らかな気持ちだった。 真理と狭い船の中で二人きり。ここが僕たちのエデンだ。……駄目かな? わらび唄篇・完 299 かまいたちの夜2~妄想篇~ sage 04/03/17 18 56ID KHKyzXhH 『かまいたちの夜』というゲームがある。ゲームは透と真理が「シュプール」に行った時のことがモデルになっている。 真理と「シュプール」に行って…そのあとどうなったっけ?透の記憶はどうにもはっきりしない。 ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃ ぴしゃぴしゃ 水音がする。そうだ船に乗っているのだった。 頭が痛い。二匹の黄金虫が頭の中で交尾している。 「どうして船に乗っているんだっけ?」隣にいる真理に話しかけて、初めてそれが真理だと思い出した。 真理からゲームのこと、その原作者に招待を受けたことを聞く。 ゲームの内容、「シュプール」で起きる殺人事件のことを思い出すと鳥肌が立つ。 気がつけば島に上陸していた。記憶が途絶えがちになっている。 館に着くと美樹本が出迎えた。 応接室には他のメンバーも集まっている。皆正座をして、横一列に並んでいる。 全員が透を見ている。口々に囁いている。 ……やっぱり…だからなあ…してるはずだよ…いつかはこうなると…どうせもうすぐ……。 二匹の黄金虫も囁いている。 かさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそ… …かき出してからだよ。…ざあっと、一気に。…病気だからねえ、やっぱり。… 透の視界は闇に包まれていた。手足を縛られ、固いものの上に寝かされているようだ。 透の頭を覆っているものに小さな穴が開いている。そこから小林が見えた。 小林は額を指でかいている。そのうち額に穴が空き、ざあっと赤い砂が零れ落ちた。見る間に小林はしぼんでいく。 「ああ、自分でかき出しちゃったよ」と俊夫の声。 「こいつには、なに入っとんねん」香山が透を指して言った。 「かき出してみたらわかるわ」透の腕が切られた。 「この子、虫だわ」「どうりでなあ」あざけるような声。透の腕を虫が這う感触がした。 300 かまいたちの夜2~妄想篇~ sage 04/03/17 18 57ID KHKyzXhH 気がつけば周りには誰もいなくなっている。 かさこそと例の音がする。…いや、これは頭の中からするんじゃない、外からの音だ。 「透、起きてるのね」真理が来て透の頭の覆いを取り去ってくれた。 目の前に真理の顔が。純粋で愛らしい少女のような僕の真理。 「透、話はあと。逃げるのよ」 透は真理の後について部屋を出た。 廊下はひんやりとしていて、どこまでもどこまでも続く。 真理の姿が消えていた。どこかの部屋にでも入ってしまったのか? 極彩色に塗られた扉が並んでいる。透は金色の扉を選んだ。 なぜか扉を開けるのが恐ろしい。頭痛がひどくなってきた。 思い切って扉を開けると、巨大な二匹の黄金虫がいた。二匹はベッドの上で重なり合って交尾している。 下にいた黄金虫が透を見て、言った。 「美樹本さんは私から誘ったのよ。やめてよ、そんな目で見るの。勝手に純粋だの何だのって思い込まれても迷惑なのよ。 第一、今どきこんなもので女が口説けるとでも思っていたの?」 黄金虫は紙の束を床に叩きつけた。 紙束の表紙には『微笑む女神』というタイトル。透が真理に捧げた詩集だ。 こんなものがどうしてここに、何で黄金虫がこんなものを。 「やめろ!」思わず透は手近にあった電気スタンドを投げつけた。電気スタンドは窓を突き破る。 窓?三日月館に窓はないはずなのに。じゃあここはどこだ。 割れた窓から雪が吹き込んできた。 いつの間にか透の手には鎌が握られていた。 透は鎌を振った。黄金虫の頭が、脚が千切れ飛んだ。 誰かが笑っている。頭痛はとまらない。透は笑うのをやめた。 かさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそかさこそ 黄金虫が交尾する音が聴こえる…。 301 かまいたちの夜2~妄想篇~sageなんか中途半端に途切れた 04/03/17 18 57 ID KHKyzXhH 「ああ、またバッド・エンドだ」 透はコントローラーを投げ捨てた。 透は真っ白い部屋でずっとこのゲームをやっている。いつまでたってもグッド・エンドを迎えられないのだ。 テレビ画面の中から男が話しかけてきた。 「まだ思い出せないんですか。一昨年の十二月に『シュプール』で何があったか」 思い出せない。頭がひどく痛い。耳鳴りがする。 「その時ペンションにいた全員が殺害された。凶器は草刈り鎌です。そして犯人は…」 …そうだ、この男は医者だ。 思い出した。あの時ペンションにいた「全員」が殺された。そして「犯人」は…。 妄想篇・完 302 かまいたちの夜2~ぼくの恋愛篇~ sage 04/03/17 18 59ID KHKyzXhH 真理には我孫子からの招待状が届いてないそうだ。半ば強引に真理を誘って島へ行く。 船上で真理は「本当にあなたとシュプールに行った時のことなの?」と疑わしそうだ。 島に着くと、我孫子武丸と名乗る若者が現れる。帽子とサングラスで顔はよくわからない。 「他の招待客は…?」と訊くと、 「招待客は君一人だよ。君が真理の周りをちょろちょろしているのは目障りなんだ。死んでもらうよ!」 と言って、男はナイフを抜いて向かってきた。 その時、真理が男を見て言った。「あ、あなた…透!」 我孫子の正体は主人公の大学でのクラスメート・透だった。 真理は主人公と透に二股をかけていた。 透は邪魔者の四ツ橋某太郎(恋愛篇主人公の名前)を亡き者にするため、ここに呼んだ。 ゲームは某太郎と真理が「シュプール」に行った時ではなく、透と真理が行った時をモデルにしていたのだ。 某太郎に透のナイフが迫る…が、真理が背後から透を石で殴り殺した。 「真理!」「某太郎!」抱きしめあう二人。 「これだけは信じて…私、決して二股かけてたわけじゃあないのよ」泣きながら訴える真理。 「もういいったら。すんだことだよ」と某太郎。 確かに彼女は嘘をついていなかった。透と某太郎ともう一人の三股をかけてたのだから。 それを某太郎が知るのはもう少しあとのことだ…。 ぼくの恋愛篇・完 303 かまいたちの夜2~ぼくの青春篇~ sage 04/03/17 19 01ID KHKyzXhH 真理に誘われ、透は二つ返事で三日月島へ行く事を決めた。 これが真理を口説くラストチャンスになるかもしれない…何しろ透には時間があまり残されていない。 船が島に着くと、我孫子が出迎えた。 「ようお越しやす。真理さん、義男くん」 義男とは船の操舵をしていた若者だ。次に我孫子は真理に訊ねた。 「そちらのお年よりは?」 「私の茶道のお友達で、透さん。孫と二人だけじゃ寂しいから、お誘いしたの」と真理。 「この透という人は、ばあちゃんのファンなんです」と義男。 「ははは…老いらくの恋というやつですわ。お恥ずかしい」 透は入れ歯をむき出して笑った。 『この三日月島で、ぼくは君のハートをゲットする…』 ぼくの青春篇・完
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《かまいたち/Weasel s Slash》 通常魔法 自分フィールド上に風属性モンスターが2体以上存在する場合に発動する事ができる。 相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。 このカードの発動に対して魔法・罠・効果モンスターの効果を発動する事はできない。 風属性モンスターが2体以上存在する事が条件だが、チェーンを許さない万能除去と強力。 《ダンディライオン》のトークンは風属性なので、このカードの条件を満たすには打って付けと言える。 関連項目 ・フリー投稿
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SR かまいたち:風属性・MP24 覚醒前 覚醒後 基本情報 ステータス 上から、覚醒前レベル1・覚醒後0凸・1凸・2凸・3凸・4凸後の最大値(カッコ内数値は覚醒前数値) 武 智 美 ・初期値:2870・Lv 60 :7678・Lv 75 :8679・Lv 90 :9680・Lv 105:・Lv 120:(10620) ・初期値:2530・Lv 60 :6864・Lv 75 :7865・Lv 90 :8866・Lv 105:・Lv 120:(9880) ・初期値:2610・Lv 60 :6952・Lv 75 :7953・Lv 90 :8954・Lv 105:・Lv 120:(9960) スキル 妖刀鎌鼬 → 味方の風属性の武を特大UP アビリティ アビリティ1:鎌鼬旋風(初期に習得済み) 敵3人に風属性の武を大きくUPした攻撃・聖印+5・消費SP3 アビリティ2:鎌鼬大車輪(2凸で習得) 関連イベント イベント 『勝利を重ねて福を招け!節分聖戦祭』 特効 特記事項(入手方法など) 関連イベント連動特効ガチャ『千客万来 招福シートガチャ』 プレミアムガチャ