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Gotz ごっつ 鳥かごの魔女の手下。その役割は軽薄無思慮。 群がる鳥は馬鹿な男達。 何の役にも立たないくせに彼女の気を引こうと足元へ言い寄ってくる。 魔女にとっては嫌悪する対象でしかない。 概要 Robertaの使い魔。鳥の頭部・羽根に筋肉質な男性の胴体をコラージュした姿をしている。 同じくマスキュラーな体型の使い魔にはDaniyyel+Jenniferがいるが、実写取り込みをしているためより男性性が強調されている。 本編では第10話で暁美ほむらと対決。 数少ない登場シーンの大部分でほむらに時間を止められていたため、動く姿はほとんど見られない。 襲いかかるでも倒されるでもなくただ宙に浮いているだけで、うち1体はほむらがマシンガンを連射する時の踏み台になっていた。 本作の使い魔はほとんどが役立たずなのだが、最低でも戦闘員の役割は果たしていた。しかし彼らはそれすらできていない。 また、魔女図鑑ではっきり魔女に嫌悪されていると書かれているのも彼らのみである。 軽薄無思慮の「役割」を与えられているようなので、魔女の怒りに触れ「憤怒」の性質を満たしてあげること自体が彼らの仕事なのかもしれない。 名前 コメント
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ゆりかごのまち、あめのこもりうた【登録タグ Loro ゆ 巡音ルカ 曲】 作詞:Loro 作曲:Loro 編曲:Loro 唄:巡音ルカ 曲紹介 しっとりと雨降りな曲に仕上がりました、どうかお楽しみ頂ければと思います。(作者コメ参照) 歌詞 (ピアプロより転載) 「―だけど、ボクは君の事好きだよ」午後の寝顔に 雨と聞き慣れた曲に隠れて、イジワルをした すれ違い、掛け違うボタン(I just wanna be with you) 押し込んで、傷つけたパズル(I'd been knowing you're right) 水たまり、映り込む泣き顔(My heart always need you) 全部が幸せのプロローグ 眠たそうな空 雨のこもり唄 「Holiday Happy rain ah…♪」 ねぇ、夢の中ずっと閉じ込めて 君と、ボクと… 「―だから、ボクは君の事キライだよ」寄せた笑顔に ぎゅっ、と君の片腕を奪って「スキ」を伝えた いつか来るトキメキの期限(Is Love everlasting?) ボクじゃない 誰かの体験談(might be related to me) なんでだろう、苦しい胸の奥(I fear getting Ending) 「そんな事ないよ」って、抱きしめて ねぼすけな恋 きっと覚めぬ愛 Shining way Tiny tale ah 許されるまま ずっとこのままで 君と、ボクと ゆりかごの街 雨のこもり唄 「Holiday Happy rain ah…♪」 どうか神様ずっと見守って 君と、ボクと… 「Ta La La…Holy day Happy rain…♪」 コメント 追加ありがとうございました! ゆったりとした素敵な曲です。ルカさんの優しくてちょっと切ない声がぴったり。 -- 小百合 (2011-02-13 13 04 26) 同作者で、がくぽの「one」も素敵ですよね -- 名無しさん (2011-03-07 12 27 39) 名前 コメント
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あたたかなひびはゆりかごのなかで【登録タグ あ 初音ミク 曲 風呂埋葬P】 作詞:風呂埋葬P 作曲:風呂埋葬P 編曲:風呂埋葬P 唄:初音ミクAppend 曲紹介 今までを振り返ってみました。支えてくださった方々に、ありったけの感謝を。 風呂埋葬P の17作目。 UTAUを含めると19作目。 普段暗いことばっか言ってますが、案外捨てたもんじゃないんだと、ふと思うことがあって。なんだ、どうにかなるじゃないか、人生。 そんな気分の歌です。自分で自分を励ます歌。(作者コメ転載) クロニクル的なエンドロール風PVになっている。 イラストは 町夜氏 が手掛ける。 歌詞 ゆらりゆられ ゆりかごの中で 笑ったり 泣いたり 甘えたり 疲れて眠るまで いつもそこにあるもの ゆらりゆられ ゆりかごの歌は あたたかに 鼓膜をゆらして 世界を包みこむ ひだまりのようにね はなをなでる そよかぜと柔らかい毛布 ふわふわ雲 青いグラデーション いつもそこにあるよ ちょっとだけかすれてる 絵本が紡ぐストーリー 退屈な毎日でもページは刻まれてく 一歩ずつ歩き出そう 見たこともない道に沿って 疲れたら一休みして 焦ることもないさ 真っ暗なケモノ道も ランプ一個あればいいよ 頼りない足取りでも まあなんとかなるよ ずるっこは無しにしようよ ほらちゃんと最後まで歩かなくちゃ そのときには優しい笑みで ゆりかごをゆらしてよ そんなふうに そんなふうに また生まれてこれたらいいな そんなふうに そんなふうに 生まれかわる ゆりかごにゆられて 新しい朝日が登ってしまうから 昨日の僕を忘れぬように コメント 名前 コメント
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キンレイ 本店:大阪市中央区淡路町三丁目1番9号 【商号履歴】 株式会社キンレイ(1998年4月1日~) 近畿海運株式会社(1949年10月19日~1998年4月1日) 【株式上場履歴】 <ジャスダック>2004年12月13日~2005年12月15日(キャス・キャピタル・ホールディングス・ワン株式会社と株式交換) <店頭>2000年9月14日~2004年12月12日(店頭登録制度廃止) 【合併履歴】 1998年4月1日 株式会社キンレイ 【沿革】 旧株式会社キンレイの前身である近畿冷熱株式会社は、工業用ガス及び冷凍食品の製造、販売を目的として昭和49年12月に資本金400百万円をもって大阪瓦斯株式会社の全額出資により設立されました。その後、冷凍食品の販路拡大の一環として昭和52年9月には外食店舗をオープンし外食事業に参入いたしました。その後、平成3年4月に資本金400百万円をもって旧株式会社キンレイが設立され、近畿冷熱株式会社から外食事業及び冷凍食品の製造販売事業を継承し同年7月より営業を開始いたしました。昭和50年7月には、近畿冷熱株式会社とロイヤル株式会社との折半出資によってオージー・ロイヤル株式会社を設立いたしました。同社はロイヤル株式会社とのフランチャイズ契約に基づき、近畿地方においてファミリーレストラン事業を展開しておりましたが、当社は、当社所有のオージー・ロイヤル株式会社の株式100,000株のうち、61,000株を平成14年4月19日にロイヤル株式会社に譲渡いたしました。これに伴い、同社に対する当社の議決権所有割合は19.5%となり、オージー・ロイヤル株式会社は当社の関係会社ではなくなりました。なお、譲渡残39,000株についても、平成16年3月31日に同じくロイヤル株式会社に譲渡いたしました。また、当社(昭和24年10月19日 近畿海運株式会社として設立、本店所在地 大阪市北区梅田二丁目4番11号、1株の額面金額50円)は、旧株式会社キンレイ(平成3年4月23日設立、本店所在地 大阪市中央区淡路町三丁目1番9号、1株の額面金額50,000円)の株式の額面金額の変更及び単位株制度導入のため、平成10年4月1日を合併期日として、同社を吸収合併(合併により商号を近畿海運株式会社から株式会社キンレイに変更)、同社の資産・負債及びその他一切の権利義務を引き継ぎましたが、合併前の当社は休業状態にあり、合併後において被合併会社の営業活動を全面的に継承いたしました。従いまして、実質上の存続会社は、被合併会社である旧株式会社キンレイでありますから、以下の記載事項につきましては特段の記述がない限り、合併期日までは実質上の存続会社について記載しております。なお、事業年度の期数は、実質上の存続会社である当社の期数を継承し、平成10年4月1日より始まる事業年度を第8期としております。 昭和49年12月 近畿冷熱㈱設立(当社の前身) 昭和50年7月 オージー・ロイヤル㈱設立 昭和50年7月 冷凍食品の製造販売開始 昭和52年9月 近冷サービスコーナー甲子園店オープン 昭和53年4月 コンビニエンスストア向け冷凍調理麺の販売開始 昭和55年11月 冷凍業務用麺の製造開始 昭和57年5月 泉北工場(大阪府高石市)稼働開始(冷凍麺生産) 昭和58年10月 食品事業の関東での営業拠点として東京出張所(その後東京営業所に)を開設 昭和60年12月 ブリオッシュ・ドーレ ガスビル店オープン 昭和62年4月 華都飯店オープン 昭和62年9月 筑波工場(茨城県稲敷郡阿見町)稼働開始(冷凍麺生産) 平成元年8月 冷凍米飯の製造販売を目的としてユーユーフーズ㈱を合弁にて設立 平成元年11月 ピッツェリア・グロッタ オープン 平成2年12月 籠乃屋八尾店オープン 平成3年4月 当社設立、近畿冷熱㈱の外食事業及び冷凍食品製造販売事業を継承 平成5年7月 かごの屋 1号店(宝塚店)オープン 平成6年1月 ㈱フードサービスを合併 平成6年2月 ㈱ヒューテックノオリンに対する土地・建物(冷蔵倉庫、配送センター等)の賃貸を開始 平成7年4月 CHANMARU SAENG-MYEON Co.,Ltd.(韓国)と技術供与契約締結 平成8年7月 本社を大阪市中央区淡路町(現所在地)へ移転 平成8年11月 筑波工場増設ライン稼働開始 平成9年1月 華宮オープン 平成10年4月 近畿海運㈱と合併、株式の額面金額を50,000円から50円に変更 平成12年3月 東京営業所(その後東京本部に)にプレゼンテーションルーム開設 平成12年9月 日本証券業協会に株式を店頭登録 平成13年3月 大阪市阿倍野区にトレーニングセンター開設 平成14年4月 オージー・ロイヤル㈱の株式61,000株をロイヤル㈱に譲渡 平成15年6月 ブリオッシュ・ドーレ ガスビル店閉店 平成16年3月 ピッツェリア・グロッタ 閉店 平成16年12月 日本証券業協会への店頭登録を取消し、ジャスダック証券取引所に株式を上場 平成17年3月31日現在 かごの屋47店舗、その他4店舗
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[鳥かごの住人]藤堂 ユリカ+ No. 0024 レアリティ SR+ タイプ クール キャラクター 藤堂 ユリカ 初期オーラ 最大オーラ 4120 アピール クロックサーカス アピールポイント 18250 スキル オールスコアUP!(Ⅲ) ブランド LoLi GoThic ドレスアップ前 [高貴な笑み]藤堂 ユリカ 入手方法 [高貴な笑み]藤堂 ユリカをドレスアップ 実装日 2016年1月27日 ドレス カテゴリー 星座ロマンスドリームBOOM ドレス名 ブランド トップス やぎ座 ブラックケージワンピ LoLi GoThic ボトムス シューズ やぎ座 パープルジッパーブーツ LoLi GoThic アクセサリー - ブルーローズハット NO BRAND
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・ゆりかご の ゆめ Eno.1840様作成の物語「いきものの つくりかた」から生まれたいきものたちの物語です。 エンブリオを元とし、名前を貰う事で命を固定したいきものたち、そのほんの一部のお話。 いきものに関する話がちょくちょく出ており、自分のキャラクターもいきものの存在に大きく支えられていることもあって作りました。 また、作成中に生じたあるいきものとその父親たちに関するロールが、この物語を作る上での一つの大きな要素となりました。 いきものとそれに関するお話(中の人と外の人両方において)に対する一つの回答になればと思います。 アングレカムの花言葉は「祈り」「いつまでもあなたと一緒」。 ・くろいいきもの 拙宅のキャラ・アポトシアが貰ってきたいきもの。名前はもぺり。 鳥型・闇属性。 黒い鳥のような姿をしています。目は見えています。口の中に牙が生えており、猛禽類のような仕草を時折見せます。 おみそハウスにいる面々の記憶を元にして生まれたため、命の源の匂いがする彼らに懐いています。 ・まるいともだち オルトロス君【Eno.441】が貰ってきた卵から孵ったいきもの。名前は銀蔵くん。 鳥型・水属性。ペンギンに似た、まるまるとした姿をしています。ぺぴーとか言ってますがたまに普通に喋ります。 オルトロス君を父、ディルクさんを親分という風に見ているようです。 ・こわがりなともだち カリンちゃん【Eno.1417】が貰ってきた宝石から生まれたいきもの。名前はチェルリアちゃん。 獣型・無属性。耳の大きな獣の姿で、額に赤い宝石を持っています。よく叫びます。 臆病で心優しいいきもの。ふわふわと飛ぶことができます。 ・まぶしいともだち プリクス君【Eno.1841】が貰ってきたいきもの。名前はフォスちゃん。 鳥型・光属性。黄色い小鳥の姿をしています。ふとした拍子に眩しく光ります。 いきもの語では女性らしい口調で話しているようです。 ・ふんわりなともだち 金灯ちゃん【Eno.1606】が貰ってきたいきもの。名前は錦ちゃん。 亜人型・土属性。羊の特徴を持つ幼い女の子のような姿をしています。おっとりした性格。 植物にまつわる力があるようです。ふんわりとした雰囲気の癒し系。 and more ←物語一覧に戻る
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アリアと喧嘩をしてしまい、キンジはひとりで白雪の護衛をすることになった。 実家からの厳しい言いつけで学校外への外出を禁じられている白雪だったが、キンジはたまには羽根を伸ばしてもらおうと、彼女を花火大会に誘う。 花火を楽しんだ2人だったが、その翌日、キンジの携帯になぜか白雪からの「さようなら」というメールが届く。
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12月10日名古屋版夕刊 2009年12月10日 大阪版(京都)夕刊 関連ページ 12月10日名古屋版夕刊 「日本の母は息子の性処理係」毎日新聞が捏造記事172 http //hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/ms/1259162836/425 1面題字下:ハルタ製靴(株) 途中:毎日アースデイ新聞(カラー) 下:サントリーウエルネス(株)(3段) 2面下:AC(5段) 6面下:(株)ダリヤ(5段) 7面下:毎日小学生新聞(2段) 8面下:サンマリエ(株) 協賛:佐川急便(7段) 9面下:伊藤ハム(株)(お詫び) 毎日新聞中部社会事業団 Newsがわかる FM-aichi(5段) 10面下:Bridal Collection SPOSA DI MATSUEDA 2009年12月10日 大阪版(京都)夕刊 「日本の母は息子の性処理係」毎日新聞が捏造記事174 http //hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/ms/1262964672/350 一面:肛門科黒川梅田診療所 ★ 毎日アースデイ新聞 ”カラー”× 大阪市立美術館 ”2色カラー” 民宿福田 (京丹後市)”カラー”☆ 近畿リビング株式会社 ”下5分の1、2色カラー”★ 二面:興和株式会社 興和新薬株式会社 ”下5分の1” 三面:アヴァンス法務事務所 ”6分の1” 天ぷらの小松 (心斎橋)”6分の1カラー” 四面:クラブツーリズム ”全面” 六面:(株)イブキ (品川区)”全面” 七面:佐川急便協賛 囲碁のコーナー 八面:トラピックス 阪急交通社 ”全面” 十面:山田養蜂場 「広告」企画制作・毎日新聞社広告局 あさひ司法書士事務所 ピアノ卸売りセンター サンビューロー(株) ”下3分の1”★ 十一面:ハルタ製靴株式会社 八ッ目製薬 夕日ヶ浦温泉 海舟 阪急交通社 ”6分の1” 十二面:かごの屋 www.kinrei.com/r ”下3分の2カラー”☆☆☆ ×→自社広告 ☆→新規企業 ★→広告復活企業 (記憶違いならごめんなさい) 興和 関連ページ 2009年7月- 12月 毎日新聞に広告を出していた企業
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attention この話にはNPCとの絡み及び捏造が入ります。ご注意ください。 また曲解が多々入るため、苦手な方はブラウザ右上の×ボタン、及び赤○マークの閉じるボタンをお願いいたします。 いつも僕は最後の最後で見逃してきた。 手が届くと思った答えの先に、例え何もなかったとしても掴み取るべきであった。 なのに真実は指の間をすり抜けていくだけで、掴むことすらできないでいる。 何も得られないまま過ぎる時間の最後は必ず一つの言葉で締めくくられる。 「僕はまた―――会えなかった」 記憶の中でも、現実でも探し続ける青い龍は声一つ聞けず、また言葉一つ思いだすことすらできなくなってきている。 サーバーの欠損率が著しく上昇しているわけでもない。 なら答えは簡単だった。《僕》の把握していない何らかの力が働き その記録にだけは近寄らせないようにしていたのだろう。 「シュリ、どうした?」 「ああ、シトリー。またベッドの上で君と《こんにちは》してるね、僕」 シトリーの表情が暗い。 瞳は揃いのような青と赤のオッドアイになっている。 そもそも、彼女も自分も生まれた時は赤い眼を持っていたはずなのにどうして片目は青くなったのか。 その理由を自身は覚えていない。 サーバーに問いただしても理由のかけらさえ、出てくる事はない。 「シュリ、私は――」 いつもシトリーがこんな顔をするのには、きっと訳があるのだ。 記憶の障害。 アクセスできない個所。 そしていつも行きつく、あの大地の先で。 必ず目が覚めるとこの白いベッドの上にいる。 「起きましたか? シトリー。シュトリ、気分は?」 家主であるミルヒがさら、とした声で呼びかけてくる。これも何度目だろうか。 良く分からないが間違いなく一度や二度ではない。 「…ちょっと叔父上の所に行ってきます」 最近アークスの仕事から戻ってきた叔父にこの現象について聞いてみても良いかもしれないと思う。 しかし、叔父が自身をあまり好いていない事も分かっていた。 寝台から身を起こし、着替える。 そのまま彼の部屋まで続く廊下に出て、見知った姿を見た。 弟だった。 末の妹と同じく生まれた双子の男児。周りに興味のなさそうな姿。 誰かに似ていた。そう、自身の知る自身の姿に良く似ていたのだ。 「――ヒルト」 「…ああ、兄さんですか」 本当に興味が無いのだ、きっとこの存在に。 「叔父上は?」 「え、あぁ、アージェンスさんなら他の任務に行きましたよ」 「あ~、なんだぁ…入れ違いになっちゃったか。残念だ…」 冷静な叔父の意見を聞きたかっただけなのだが、ヒルトは一瞬だけ怪訝そうな表情を浮かべたように見えた。 きっと嫌なのだろうなとは思うが、別に問題には感じない。 「兄さん、アージェンスさんに何を?」 「ヒルトでもいいの。ねぇ、僕はヒルトの知る上で、昔の僕と何が違う?」 「…何が、というと?」 「だから、何が違う? 昔の僕と、今の僕と。この数カ月の僕は何か異なった所はあるかな?」 これは他者から見る姿が自身の認識とどこまで違うのかを知るためだ。 ヒルトは嘘をついたりはしないだろう。そこら辺は素直でとても安心している。 「兄さんは気付いていないんですか?」 「何を?」 「―――僕には時折、貴方が別人のように見えることがあります」 それは印象ではなく全く別の生き物のように。 さらりと告げた弟の言葉が反芻されていた。 別の誰かのように感じたのは何故か。それは本当に別の何かがいる可能性がある。 自身の記憶を一定において管理するような別の―――…。 「ねぇ、ヒルト。その人は―――昔の僕に似ていただろうか?」 これは素朴な疑問だ。今の自身とその印象が違う《もう一人》がいるとして、ではシュトリという存在は一体何なのか。 どちらが本物なのだ。 「…僕の記憶の中で、という話ならアークスシップに乗る前の貴方と今の貴方は大分違います。 逆に別人だと感じる貴方の方が、前に近いと思いますね」 「そっか…そうかぁ…」 つまりこの考えは間違いじゃなかったのだ。 ずっと感じていた違和感は間違いじゃない。弟に「有難う」と告げ、部屋に戻る。 ミルヒの姿はなかった。あるのは自身のサポートパートナー。 そしてサーバー素体の端末として置いているメイリールとアスレインだ。 「…メイリール」 いつも通りの返事をしてくる端末に一つ問いかけをするならば。 「エノワスサーバーの端末数は?」 「623体です」 「それは僕を含めてか?」 「はい」 「ではもう一つ。管理サーバーは《リオキシス》《メイリール》《アスレイン》《フェリクリウス》《エマー》の 五基で間違いないか?」 「―――いいえ、サーバーは六基です。○◇▲×※が足りません」 認識できない言葉がある。 明らかにアクセスできないこの言葉こそ上位の存在がいる証だ。 どうして気付かなかったのだろう。こんなにも記憶が曖昧なのは何故だったのか。 「そのサーバー名を教えてくれ、アスレイン」 「○◇▲×※だよ」 「――――シトリー」 自身の様子を隣の部屋から見ているであろう半身に声をかけた。 シトリーはゆっくり扉を開き入ってきた。 なるほど、テラスにいたのか。雪空が見えるそのテラスは家主のミルヒがとても気に入っている風景だという。 白く続くこの風景は自身もとても気に入っていた。 「シトリー、彼らは何て? 何と言っている?」 「…アルカディア…と、そう言っている。サーバー・アルカディア。お前と同じ名のサーバーだ」 その名が聞こえなかった理由は一つだ。 このサーバー名を《この僕》に知られてはいけなかった。 五つのサーバーのみが活動していると思っていた認識をずらしてはいけなかったのだ。 そう《シュトリ》という存在の在処が《自分》ではないという事実を。 「シトリー、僕はシュリかな?」 「勿論だ!私の兄にして半身たる男だ」 「その理由は?」 「…お前の記憶を私の力で弄った。それが適応されるのは《シュトリ》たるお前だけだ」 シトリーは目を伏せる。【追随と創現の記手】。 サーバーに記憶を持つ【理路整然の黙示録】たる自身。 それに強制書き込みを可能とする力はシトリーにしか使えない。 その役割を担った日から彼女はどこか淋しそうに言ったのを思い出していた。 『こんな力がなくとも、私とシュリは半身で、考えている事を隠したりはしないのに』 と。 その彼女を騙している男が《シュトリ》という男ならば、そいつは正真正銘最低最悪の屑だ。 「シトリー、僕は何度も《彼女》を思いだそうとした。その度に起きるとベッドの上…っていう状態を続けている。 間違いないね?」 「ああ、間違いない」 「なら、その理由は? 怒らないから教えてよ」 シトリーは口を噤む。あまり言いたい事ではないのだろう。 …ならば一つだ。彼女を安心させるために、ここから先に進むために、やらねばならない事がある。 シトリーの手を取って強く引いた。体勢を崩したシトリーは床にぺたりと座りこむ。 「シトリー、【追随と創現の記手】を使ってほしい。僕の言う通りに言って」 「嫌だ、もう使わないと…」 「使ってくれ! 真実が分かるかもしれないんだ!」 この廻り廻る連鎖の答えを知ることができるかもしれない。 サーバーにアクセスを開始する。メインサーバー名はリオキシスと表示されていた。 つまり自分のメインサーバーは《リオキシス》なのだ。 「…シュリ―――」 「いいね、シトリー。僕は何があっても君を裏切らない。さぁ、言ってくれ」 シトリーは呟く。その言葉は強制的にサーバーへ接続する言葉だった。 「サーバーへアクセス。サーバー名の確認、端末番号の表示」 彼女の持つ小さめの端末モニタに指示を出して、シトリーにその通りに言うように伝えた。 これで何があっても保険は掛かる。 『サーバー名、リオキシス。端末番号【006】です』 シトリーは目を丸くした。端末番号の数が明らかにおかしい。 《シュトリ》という存在は間違いなく端末番号など持たないか、もしくは【000】でなくてはならない。 「【006】をリオキシスのメイン回線から剥離。回線能力を維持し、以下強制的権限は《記手》に依存する」 カチンと頭の中で何かが変わるような音がする。 サーバー内に広がる空間はとても広く、美しい森のようだった。 森の木は皆、自分と同じように《作られた》であろう存在。もともと一本しかなかった木を単純に増やすのではなく 状況に応じた形で増やしていった結果がこれだ。 《自己を最初の一本》だと誤認することで、皆が等しく《シュトリ》本人だと思って生活しているならば。 一人一人の《シュトリ》は自分の考えのまま《もともと与えられた目的のため》にしか動かない。 それが自身の意思だと信じて疑わないからだ。 【006】とナンバリングされた自身がそうであったように、残りの622人も皆、同じなのだろうか。 「…シュリ、これは…」 「協力してくれて有難う、シトリー」 シトリーはただ静かに頷くだけだった。彼女には何が起こっているのか分かったはずだ。 目の前にいる男は《自身の半身》のコピー、もしくは人形なのだと。 「シュリ」 「僕は【006】だ、そう呼んで?」 「……【006】。何がどうなっているのか教えてほしい。少なくともお前が《シュトリ》本人ではないことは分かった。 じゃあ本人は何処に?」 サーバー内の森には複数の個体意識が保管されている。 いくらでも書き換えができる保存媒体と同じ。 このシステムを作り、管理・運用しているナンバーを持たざるものこそが《シュトリ》なのだ。 ならば本人とされる個体もまた《シュトリ》本人ではないのだろう。 生まれの肉体は本体でも、その脳は本物でも。 脳と記憶、そして人格といった精神的概念からすれば《シュトリ》とは、本人を含めた623体の端末の総意にして総称。 つまりサーバー・アルカディアこそがシュトリ本体に違いない。 ここにいる自分も本物。 そして肉体を保持するものも本物。 そうでなくては存在が成り立つわけがない。 なのに不思議なのは、自身の他に違う《シュトリ》がいても、自分もまた《シュトリ》で。 他のもまた同じく《シュトリ》なのだろう。 「シトリー。サーバー・アルカディアの場所は不明だ。 でも、少なくとも僕は君の力でアルカディアの管理から逃れた。だから…何にも惑わされずに判断できる」 「何を…だ?」 「僕は君の双子の兄であり、兄じゃない。そして君の知る兄はもういないんだろう。 それでも一番最初に六基の長たるサーバー・アルカディアが接続された個体を本物と呼ぶならば。 いや本人が正しいのかもしれないけれど。 この状況を作っている個体、彼こそがアルカディア。622体の別個体を全て管理し、データを保存し。 何もかもを理解した上でこの選択肢を選んだヒト。 623体で構成されるサーバー・アルカディアの長。 それが君の知るシュトリ・A・リマジュエール・エノワスその人かもしれない」 まるでその言い方が気に入らないという風にシトリーは首を横に振る。 自身の双子は、半身は。 《昔からずっと》生まれてきた時から《ずっともう人間ではなかった》のだという事実を。 前サーバーを担っていたキチェル・エノバは表向きでは《シュトリ》と同じ脳障害であったとされていたが 実際は違っているし、何よりもここまで機械として、システムとして成り立つ存在を 人間と呼ぶことはないだろう。 サーバー・リオキシス内に残っているデータの中で曖昧だった記憶が一つ一つはっきりしていく。 繰り返される記憶からデータを巻き戻す意味を。 そしてその記憶さえも【006】という個体のものではないことも。 「僕は…君の兄の姿をしたただの―――」 「言うな! お前はこのシトリーの双子の兄にしてエノワスの王子。お前がシュリだ、私の―――」 「違うよ。そうじゃない。でも、僕の記憶に君はいる。 きっと沢山の個体の中に君はいるんだ。まぁ、双子だったのが623人になっちゃっただけだよ。 大した問題じゃないって」 「…それ、大した問題だな?」 くつくつと笑いだしたシトリーにつられて笑う。 理由が分かれば何も怖くなくなった。記憶の中でリフレインされる真実がなんであっても。 「あの龍を失った時の記録が欲しいんだ、シトリー」 ◇◇◇ 意識レベルにおいて、サーバー内は森のようになる。 一人一人の人格こそが一本の木であるように。 しかし、枝葉は落とされなければならなかった。邪魔な枝は森に必要ないはずだった。 しかし、その木は、着実に他の木よりも大きくなる。 でも、その枝はもう―――落ちない。 ◆◆◆ 記憶の中にあるのは、いつでも同じ顔の人間が死ぬ姿だった。 エノワスを、あの惑星を支えてきたサーバーを分割し、そのまま時は流れて11年もの月日が経過している。 目的を叶える為ならば手段を選ばなかった。 潰した国や企業はもう数十を越えている。 文明の違いを良い事に、人を騙し、そして得た大量の物資は全て移動型移住艦の建造に使われた。 あと少し。あと少しで、あの惑星の人口全てを移住させるための艦が手配できる。 艦にはその先何十年もを生き抜く準備は整えた。 移住先の候補もいくつも準備してある。 惑星を見捨てる代わりに得るのは文明の維持とそして守りたかった自身の保全だ。 一人の我儘で大量の人間が巻き込まれる。 でも、いずれ皆死に至るならば、例え何と言われようと何が起ころうと。 殺されようとも気にも留めなかった。 「【105】がロストしたか――…あそこの鉱石は特殊だ。直ぐに【105】をもう一度準備しなければ」 サーバー・フェリクリウスへ指示を出し、各地に準備してあるラボに作成指示を出した。 今年はロストする素体が多すぎる。 「ねぇ、アルカディア・エノバ。これはどういう事?」 『――うーん…どういう事とは何についてかな、シュリ。僕は君で、君は僕。 脳に送っているデータは全て同一だ。何の認識もずれたりなどしていないよ?』 「シュリは、リオキシスにいる【006】の調整についても問題だと思っている。アルカディアは何もしないけど、理由は?」 『…シュリ。その理由は自分自身に問うているのと同じだと理解して敢えて言っているな? 答えは明確だろう。【006】は必要だからだ。この【アルカディア・システム】に』 その声ははっきりとしている。 サーバー・アルカディアことアルカディア・エノバこそ《シュトリ・A・リマジュエール・エノワス》その人だ。 そして自身もまた同一人物として《作られた》一人である。 623の端末。 それの主はナンバーを持たない唯一の脳。 今までの管理者がしなかった禁じ手を使い、核であったメインサーバー・エノバを乗っ取り その本体と自身の脳を組み合わせて新しいサーバーのシステムを構築したその人こそ、本物だ。 自身は恐れ多くも、その《本物》と常に同期しつづける電脳を与えられ、本物の肉体を素材にしたアンドロイド。 それがこのシュリの姿だ。 シュリは【アルカディア】でならなくてはならない。 シュリこそが本物でなければならないのに、どうして【006】を必要とするのだ。 同じく、同一の存在だと言いながら、自分には【006】が必要だとする理由が分からない。 目標まであともう少しだというのに、このバグを修正しなければ、最後の最後で失敗してしまうんじゃないのか。 「アルカディア、シュリは提案する。【006】の削除を――」 『その恐れは何に対しての感情だ?【001】。お前はシュトリ。 このアルカディアと同一たる唯一の端末だ。この程度で狼狽えるなど許さない』 感情のない声で【アルカディア】は言う。 確かに同じ存在なのに、体の中にいる感覚は一緒なのに。確かに別人のように感じるのはきっと。 この体の持ち主は―――本当の持ち主は【アルカディア】だからだ。 自身とて本物の《シュトリ》ではない。 だからこそ不安なのだ。【アルカディア】が『いらない』といったらそこで終わる。 【006】と交換と言われるかもしれない。 「シュリは―――シュリは…」 『分かっている、大丈夫だよ、シュリ。君は僕だ』 ◇◇◇ 夜はとても静かに時間の流れを受け入れる。 ぼんやりと光るライトは妙に眠たさを促していた。答えはいつ頃からか何となく分かっていたように思える。 僕は本物じゃなかった。 全て作りモノは僕自身だった。記憶も何もかも。 それでも僕は僕であると、そう思える何かが欲しいと願うのは駄目なのだろうか。 扉が開く音に振りかえる。 砂金色の髪をゆるやかにおろした双子の妹は自身の横に立つと不安げに笑った自分にふわりと目を細めて笑った。 「僕はさ、シトリー」 「なんだ?」 「本物の僕は、《シュトリ》は、きっと君を裏切りたいと願ったわけじゃないと思う」 「分かっている。当然だ。シュリはそんな性格ではない。例え苛烈であっても、元々の性質的に不可能だ。 あれは他者を排除できない。昔からそうだった。ずっと。 母が死んで、拍車がかかり、今となってはもうそれが当たり前になってしまっているのかもしれないが 《シュトリ》という人間は、他者に望まれた姿を写しだそうとする鏡そのもので、そして 鏡は受け入れることを拒否したりなどはしない。写り込むものを否定することなどあり得ない。 だからこそ解せなかったんだ。どうしてシュリは【あの龍】の記憶を消されることがあんなにも嫌だったのか」 シトリーにとっては大したことではないのだろうと思う。 しかし今の僕には良く分かる。彼が望んでいたのは、たった一つ、忘れないための祈りと。 たぶんそうまでして守り抜かねばならなかった。妹も持つ必殺の手から、自身の記憶を。 「シュリ、覗いてみないか? お前が知りたかった《シュトリ》そのものの記憶を」 「そんな悪趣味な事を――――…」 覗いてみたいと願うのは当たり前だ。 自身の主そのもの、自身の大本そのものの存在を知りたいと願うのは当然のことだろう。 だからこそシトリーはこのタイミングで聞いてきたのだ。あの《龍》のことを。 「……僕は、あの龍がどうなってしまったのかを知りたいよ、シトリー」 「……分かった。ならそのあたりだけを見る事にしよう、それならばいいだろう?」 +++ 僕は忘れてしまっていたのだろう。いや、きっとサーバーの中に答えが無かったのだ。 覚悟を決めるのは、いつだって運命と向き合うことを決めた時以外にあり得ない。 「…つまり何だ。これは。あいつは私を騙す為に、カミツにさえも協力を仰いだか」 覗き見た記憶には、彼と青い龍が映っていた。 サーバーの中から逆再生された記憶は、薄ぼんやりとしてはっきりはしていなかったが確かに。 確かに、その龍は《彼》の心を動かしたのだ。 止めた時間を、止まった感情を全て動かして、そして《未来を見据えるために》 願う先の未来を手に入れるために、手を伸ばすことを覚えさせた。 《彼》の行動は実に坦々としていた。 シトリーを騙す為にもう十年も前にロのカミツに協力を仰ぎ、《自分と同じ顔》の存在が来たら 何度でも《かの龍》が死んだ事を思い出させること。 そしてシトリーが来たら、一度協力し、必ず【追随と創現の記手】を使わせること。 シトリーの性格をよく知っているからこそ、その力を使わせた後の素体がどうなるか理解していたのだ。 そう、その《素体》こそが【006】である自身。 必ず【追随と創現の記手】を使えば、記憶の欠けた素体は暴走するように仕掛け そしてシトリーはそれに対処するために記憶のループという手段をとるしかない。 そう仕向けて、彼は。 サーバー・アルカディア自身に【追随と創現の記手】が使われないようにすることを望んだのだ。 「イズハルアに言うべきだろうか」 「シトリー、それはやめてほしい。そんな事をしたら、僕も、彼も皆…」 「でも、ハルアはあの男を信じて今も一人で王宮の化け物たちと戦い続けているんだぞ? そんな不条理あってたまるか。シュトリは間違っている。でも…私は―――こんな選択を選んだ半身を止める術がない」 何故?とは聞けなかった。 それは目の前の自分と、そして半身に国と共に死ねと言っているのと同意語だからだ。 イズハルアに報告すれば必ずシュトリ本人は王国に戻ることになるだろう。そして自分もだ。 今現在、イズハルアに昔持ち合わせていた未来を見る力も、人の心を読む力もない。 それは当然だ。彼女は、エノワスの王となるために、この【006】と。 僕と、能力を交換したのだ。左手の小指を入れ替えるといった術式と犠牲を持って 《彼女の能力》と《シュトリ本人から譲渡された中途半端な能力》を交換し、今の彼女にその力が無い。 その代わりに、気象を操る能力を、かの気象現創を手に入れた。王となるためにそれは必要なことだった。 だからこそ、イズハルアは気にもしないで。 信じていたのだ。目の前にいる男が、まぎれもなくシュトリ本人であると。 「僕と交換させることで……彼はイズハルアの力さえも奪うことに成功したのか」 「そうだ。でなければ、イズハルアはとっくに気付いていてもおかしくない。シュリは分かっている。 能力を理解し、自身を理解し、そしてシナリオを誰にも気づかせないために何度も何度も修正してきた。 ここまでの大きなミスを、リスクを負ってでもな」 今の僕の結果が、《シュトリ》の本意ではないと、そう思いたい気持ちもある。 しかしきっとこれさえもが計算されつくした結果ならば。ならばどうして。 彼はこんな風に【006】などという不安定な存在をこのアークスシップに残したのか。 その理由を何となく分かってしまうのは、この艦にいるならば、あの空を。 高く羽ばたいていた、あの青い龍への感情と交わした約束を忘れずにいられると思っていたのだろう。 機械のように生きるしかないと確信したその時に。 それでも機械は、忘れないことを選んだ。 それでも機械は、笑いあえる事を選んだ。 それでも機械は、夢を見ることを誇った。 そう彼は、機械だと分かっている自分自身を。たかがシステムになり下がった自分自身を。 それでも後悔などはしていないのだ。 たった一つの約束を違えないために。掴むべき奇跡を、自身の手で握るために。 それをいつまでも記録し続けるために【006】はこの船に乗せられていたのだ。 「シトリー、僕は彼に会いたい」 「会えるわけがない。強制的に呼びだすことなども不可能だろう。お前が下位サーバーの存在である以上は流石に駄目だ」 「あるよ、方法はある」 そう方法はある。 彼は【006】を消したいわけではない。そう、この僕を消してしまっては困ると判断している。 ならばそれを逆手にとって、動揺した隙に【アルカディア】に直接接続してみればいいのだ。 「シトリー」 「【追随と創現の記手】で、お前に働きかけろというんだろう? あれをおびき出す為に」 シトリーは深くため息をついた。そして部屋の中に戻ろうと促してくる。 家主のミルヒは当分の間、任務のために部屋をあけると言っていた。丁度良いタイミングだ。 寝台の上に座り、緩やかに微笑めばシトリーは言おうとしている事を全て理解しているような素振りで首を縦に振る。 シトリーはもう言葉を重ねることはなかった。 脳内に広がるのは深い森の姿だ。その一本が黒く染まり、見る見るうちに枯れていく。 これは僕自身の端末の姿だ。こうなれば、管理をしている本人がこちらに赴くしかない。 光のようなものが目の前を通過して、そして意識は一気に隔絶された。 まるで井戸の下から見上げるように、意識は遠のいていく。 しかし、はっきりと見えたのは。木の傍で佇む自身と同じ顔をした男の姿。 片目を赤いバラの飾りで隠し、そして手と足は電子化されているのか、赤とも言えぬ紫とも言えぬ、そんな色を 緩やかに讃えていた。 『酷い事をしてくれたものだ。お前も、シトリーも』 明らかにこちらに向かって話しかけているのだろう。纏った漆黒は容認を表す黒だった。 首を傾げながら自身の端末を一瞬で再生させた。緩やかに笑ったその姿は酷く自身の記憶の中の自分と似ていた。 《シュトリ・A・リマジュエール・エノワス》 それが目の前の彼の名だった。確かに、その人なのだろうと感じる。 『お前たちがこんなことをしてくれたおかげで、シュリは疑心暗鬼になるし 君以外に《リオキシス》に繋がっていた多数の《僕たち》は同じようにエラーを起こしてくれて大変だった。 手間をかけさせてくれるね、酷い酷い』 坦々と語る男の姿は本当に、静かだった。 行為を咎める様子はなく、既に人間とは呼べない彼は静かに笑うだけだ。 木に触れる。枯れていた木を撫でながら静かに笑い続ける彼との距離は縮まることはない。 触れることは決して許さないといわんばかりに距離は一定だった。 「僕は、貴方の端末だ」 『そうだ』 「貴方はどうしてこんなことをしたいと思ったの? シトリーやハルアを騙してまで」 『答えは分かっているはずだけれど?【006】。お前にはそれがあるはずだ、その記憶があるはず。 メインサーバーを脅し、こんなところにまで呼び出したんだ。本当に聞きたい事を聞くと良い』 そして彼は天を仰ぐように首をそらした。 『シトリー、君もだ。聞きたいことがあるのならば問うがいい。答えられる範囲で答えると約束する』 口調はあえて静かなままだった。覚悟を決めてここまで来たのかもしれない。 彼が僕と同じ存在で、僕の根底そのものであるというのならば答えは明確だ。 罠の中に飛び込む段階で、何があっても生きて残る算段はついている。 「いくらでも質問していいの?」 『勿論だ。そのためにここまできた。それ以外に時間を取った意味がない』 その言葉に反応したのはモニタを介してこの映像を見ているであろうシトリーだった。 彼女が震えぬわけがない。こんな言葉を前にして怒りを覚えぬわけがなかった。そういう女だ。 《では、聞こうか、我が半身殿。どうしてこんなことをした?》 『明確な答えは出ているはずだが?』 《答えろ、シュリ。どうしてこんなことをした? お前のクローン素体を作り、これをしている理由は何だ?》 そう。僕たちは分かっている。 彼がどういった手順でこの状況を作っていったかなど。でも分からないのは。 自身と繋がるサーバー・リオキシスから読み取れない内容の段階で、きっと自分以外の別の《シュトリ》も知らないのだ。 知らされるわけもない、たった一つの枝に大樹の意思は芽吹かないように。 《ハルアを騙し、私を欺いたその訳を教えてもらおうか》 シトリーの言葉に彼は苦く笑った。 そして距離を感じたその存在はやんわりと距離を詰めるかのように自身に近付き手を差し出す。 そうしてやっと気付いた。自分は思考の海に、この森の中に座り込んでいた事を。 そのまま差し出された手を掴んで立ちあがると、妙に顔色の悪いその男が困ったように目を細めるのを見逃さなかった。 『昔々、一つの惑星に文明が栄えました』 声はとても柔らかい。 『その文明は大きな空の、その先の星の力を使い、大きく大きく文明を育てていきました。 そして文明は気付きました。自身達が住まう惑星そのものを管理する力を手に入れれば もっと生活が豊かになると』 《そう、その力こそが気象現創。故にかつての管理者たちは皆気象を操る力を持っているはずだった》 『惑星を管理していたものたちが、危機に気付いたのは文明が発達した後でした。 文明によって空の星は力を失い、このままでは共に生きている惑星も一緒に滅んでしまうと知ったのです』 そうこれは、かつて母星にあったお話。 昔話のように語られるそれは、今もなお続く恐怖の象徴だ。故に《シュトリ》は考えていた。 故に《イズハルア》は悩んでいた。 失ったはずのかつての文明が少しずつ前の形に戻ってきていること。そして空の星と呼ばれる恒星が死に絶える前に 何とか文明を消し去り、恒星の命を長らえること。 文明を破棄すれば、《シュトリ》は死ぬだろう。命を繋ぐことはできてもその存在を維持できない。 文明を放棄すれば、最後の王として《イズハルア》もまた愛する民に殺されることになるだろう。 文明を維持できずに滅びを呼んだ王は処されるべきだと。 その未来を誰よりも嫌ったのは、目の前の【彼】であるはずなのに。 ならばどうしてこの話をするのだ。 《シュリ、私が聞いているのは》 『シトリー、僕はね。惑星を救うつもりはない。残念ながらそれは不可能だと知った』 《……百歩譲って、それを良しとして。ならばお前は何をしている。 アークスをやる必要もない、サーバーを持ちだす意味は何だった? そして【006】含むお前の素体を作る意味は》 その答えを彼はきっと言うのだろうと思った。 こちらの肩にポンと手を置き、笑ったから。 『答えは簡単だよ、シトリー。僕は惑星を救わない、文明を残す為に惑星を滅ぼす。 その代わりに、あの惑星に住む人間を他の星に移住させるんだ。全員、ね』 何を寝ぼけたことを、とシトリーは吐いて捨てるように言った。 でもそれが真実。彼は嘘などはついていない。本気でそれをするつもりなのだ。 『多くの人間を箱舟に乗せるには、その箱舟を準備する必要がある。システムを分解し、再度構築し。 そして惑星を旅立つ時に困らないくらいにはしなければならなかった。だから、僕は…。 僕以外の《使い捨て》を沢山準備して、僕という端末をいくらでも替えがきく存在にすり替えた。 いや、正しい形にしたと言った方がいいのかもしれない。 僕は端末として存在していながら、管理者だと位置付けられていたそんな存在だった。 エノワスは【理路整然の黙示録】の存在を見誤っていたんだよ。このシステムは、この存在は。 【最初】から、システムを管理する人間を【喰っていく】ことで成長するものだった』 《…まさか、お前は。システムを、あのキチェルから引き継いだエノバのシステムそのものを喰らったというのか?》 自身の知る限り、前サーバー管理者であるキチェル・エノバが残したシステムは。 最初のサーバーである《エノバ》と呼ばれるサーバー・コアの一部を脳に移植し、それと直接リンクすることで 利用できるものだった。 しかし彼が言っている事は違う。《エノバ》を喰らったといった。 最初の電脳にして、コアであったハズの《エノバ》と呼ばれるその存在に彼は自身の脳をすり替えたのだとしたら。 《エノバ》含む全てのサーバーは元より、古代人の脳を何らかの形で加工したもので作られていると聞いている。 つまり、その装置に自身を填めてしまったのだとしたら、もう彼は。 そう《シュトリ》という男そのものは。 『エノバはもういない。そう、アルカディア・エノバと呼ばれたその存在ももう無い。 エノワスでは【理路整然の黙示録】と呼ばれたエノバ・システムは、その存在を失って形を変えた。 この僕がそれをした。この僕が、それをするしかなかった。そうしなければ、僕は』 彼は言葉を飲み込むように唇を噛んだ。 《お前は消えてしまったのだと、そう言いたかったのか、シュリ。お前はお前を失いたくなかったと。 ただそれだけのために、ハルアや私達家族を…》 『そうだ。何とでも言えばいい。君の半身はそういう男なんだ。僕は自分が可愛いばかりに 惑星に住まう人間達そのものの運命を、人生を、全てねじ曲げようとしてる。そんな奴だよ。 自分勝手で、傲慢で、まるで神様みたいに人の命を弄んで。 …―――それでも』 そうそれでも彼は選び続けるしかないのだ。その選択肢を、必ず。 『僕は、僕の死ぬ未来も。ハルアが殺される未来も、全て回避してみせると決めた。奇跡を願っているとそう思うか?』 《夢物語を語るな愚図が。叶うはずもないものに縋るのは馬鹿がすることだ。奇跡は起こせない、お前は》 「…どうして? シトリー、どうしてそんなことをいうの?」 つい発した言葉に、目を見開いたのは【彼】の方だった。 言葉を呑んだシトリーは、画面の外でため息をついたに違いない。どうしてお前が味方するのだと。 でも味方しなければならなかった。彼はその奇跡を起こす力を手に入れるために、あれほどまでに拘っていたものを。 あれ程までに否定したかったものを。 全て自分に受け入れてまでも選んだ道なのだから。 「誰だって奇跡を望むよ。誰だって希望を選ぶよ、そうだろう? シトリーだってそうなはずだ。 願わくばシュトリが、自身の知る兄のままであってほしいと、そう願っていたのは君だ。 僕だってそうだ。願わくば君の兄でありたかったと、本当の兄でありたかったと思ってる。 でも違った。僕は本物ではなくて、今ここにいる【彼】が本物のシュトリだ。 そんな現実だよ、決して間違っているわけじゃない。でも理不尽な運命だと思う。 でも人は、それでも。その理不尽さを受け入れ続けるだけでは生きていけない。自分はここにいると。 それでも奇跡や未来を願って生きるのは普通の事なんだよ」 『お前はそう思うのか? 【006】。お前は過去の、そうアークスシップに乗った後の僕のデータを元に 精神プログラムが組まれている。故に、研究ごとには真面目に向かうようにしてあったはずだが… そんな思考を?』 「…シュトリ。僕が貴方に言えるのは、貴方が塗り替えて作り替えた新しいシステムは。 貴方が思っているよりもずっと優しく、そして残酷なものだよ。精神プログラムの同期は確かに成功してる。 でも別の因子を。例えばその同期したデータから大きく外れる出来事…ファクターが追加になった時。 それは《貴方の作ったコピー》の人格ではなく、その体が持った人格になり変っていく。 きっと多くの《僕の兄弟》が同じような事になっているはずだ。それでも貴方のシステムは壊れなかった。 なぜなら、それすらも貴方はシステムの中で演算していたからだ。 そういった個体そのものの人格形成を、個性を、それさえも奇跡を生み出せる過程と信じて残した。 だから貴方は……僕を消したりしなかった」 彼が大事にしていたその記憶と共に。 奇跡を掴むきっかけになるのならば、どんな要因でも縋った。 そうして彼は、沢山の死と生を受け入れ、時には自身でその死を受け入れ、そして。 一つのアルカディアとしてのシステムを作ったのならば。 もう、彼は人間ではなかった。 誰よりも人間でありたいと願った彼が、人間をやめた時に。その人間が何であるかを知るためだけに。 そのためだけに、覚えておくためだけに。 彼は可能性を捨てずに、そのエラーを、バグを愛し続けた唯の夢見る機械だったのだ。 その機械は夢を見続けている。 例え人格を失ったとしても、人間ではなくなったとしても。彼の見据えた、願う先の未来のために。 「貴方が望んでいるのは、惑星に住まう人全てを別の場所に移すこと。文明を新たに築かせること。 そのために貴方がしているのは。多くの《僕の兄弟》達を動かして、世界中を駆け回って。 ……未来を得るための金を稼いでいるんだろう? 居住型移送艦の建設には莫大な資金が必要だもの」 『…データを分析した……わけではないな。流石は僕といったほうがいいのか、それとも【006】。 お前がとても察しの良い素体であると褒めるべきなのか。 どちらにせよ、君はどうするね。僕に使い捨てにされるのは嫌だろう?』 「嫌ですよ、そんなの当然だ。僕が貴方に要求するのはただ一つです。サーバー・リオキシス自体を。 貴方のシステムの独立した配列に組み替えてほしい。そしてできればその権限を僕に下さい。 僕は貴方に協力する。貴方の願う資金繰りだってする。サーバー・リオキシスに繋がる僕の兄弟ごと 貴方は僕にあのサーバーを譲渡してほしいんだ」 息を呑んだように目を丸くした後、彼はゆっくりと笑った。 くつくつと声をあげて、彼の人は笑って真っ直ぐに手を伸ばし、そのままこちらの頬を指で撫でる。 何と愚かなことをしているのだと、創造主に向かって何を言っているのだと。 彼はきっとそんなことを言うのではないかと思った。 なのに彼は、あっさりと頷く。 『サーバー一つで満足できないとか、そんなことは言うなよ? もう一人の僕。 リオキシスはくれてやる。もともとそのつもりでシステムは独立してある。 故にリオキシスからはデータが見れないのだ。どうせ、シトリーの改竄を受ければ、何かしらあるとは思っていたし それに…』 「それに?」 『あの船は特別だ。君がずっとあの船に乗り続けるというのならば、サーバー一つ惜しくない。 どう頑張った所でサーバー・リオキシスはこのアルカディアの下位サーバーであるのは間違いないのだし。 譲渡は不可能だが、管理者を君にすることはできよう。よろしく頼むよ、【006】。 どうか君が、君の願う先の未来を手に入れられますように』 とん、と肩を叩いた指は軽い。 その手を取ろうと手を伸ばした瞬間には遅かった。 脳内の画像は真っ白な部屋に移り変わり、森はもう見えなかった。ただぽつんと、青い雪が降っている。 雪じゃない、これはきっと鱗なのだ。 結晶の欠片と共に見える、青い龍の鱗片。彼の愛した、その記憶を。 「僕に全部おいていくっていうのか。貴方の愛したそれを全て」 欠片に触れた週間、どうして記憶の中の龍が空をかけていくのか。 そしてどうして彼はイズハルアに《龍は空にいる》と告げていたのか。翼を失ったはずの青い龍は確かに。 彼の中では美しい青い空を、彼女の望んだ空を。 ただ美しい翼を広げて飛んでいたのだ。補完するのではなく、ただ彼が。 決して叶わない願いの先に、彼女を記録した。そんな彼女の幻影を―――多くの僕らは。 ただ愛し続けるしかないのだ。 +++ 接続が切れた先、目の前のシトリーの顔が酷く落ち込んで見えて首を傾げた。 どうして彼女が落ち込んでいるのか良く分からなかったからだ。 シトリーからすればきっと不毛な会話に聞こえていたのかもしれない。でも、僕には十分だった。 十分すぎるほどに彼は《シュトリ》そのものだった。だからこそ、安心したのだ。 「お前は馬鹿だ、【006】。あんな奴とっちめてやればよかった」 「いいよ、別に。彼は分かっていたから来てくれたんだ。僕がもう気付いてしまっている事。 君の改竄を受け入れている事を。本来なら君に命令される可能性がある状況で君の所にはこないだろう? なのに来てくれた。君と僕を信じたから来てくれたんだ」 その言葉を聞いてシトリーは再度ため息をついた。 何一つとして現状は変わっていない。だが、きっとシトリーはイズハルアに言うことはないだろう。 この真実を告げるほど彼女は愚かではない。 そして僕もまた、それを誰かに伝えたいと思わなかった。 「僕さ、シトリー。彼に会ってくるよ」 「は?!」 「だから、彼に会ってくる。時間旅行してくるね。きっとこの辺りに来ているはずだ。 でなければこんなにあっさりと現れるわけもない。だから君もよろしく」 ふんわりと笑って手を差し出せば、シトリーはただしぶしぶ握り返すだけだった。 ◇◇◇ 回線は流転していた。くるくると回る情報はコンソールを叩く指先から逃げていくようだった。 マザーシップに停泊しているロードサリファに客人が現れたのは、丁度その頃である。 白い、その欺瞞に満ちるような白はいっそ清々しいほどに美しく見えた。 青銀の髪が巻きあがる突風に揺らされている。 「やぁ、シュトリ・アルカディア。最後の納品かな?」 「ええ、ルーサー。貴方に頼まれた最後の素材を持って参上しましたよ。しかし、どうしてマザーシップに?」 「いいじゃないか。許可は出しておいたから普通に入ってこれただろう? さぁ、寄こしてくれ」 小さい銀製の箱に納められたその物質を彼に手渡ししてサインを貰う。 これで彼からの長きに渡る仕事もお終いだった。 「貴方とのデータの件に関しては」 「ああ、昔からの協定通りに、今回の件を持って君を含む端末には、僕の事は残らない。それでいい」 「わかった。全サーバーへの告知はその後にでもしておく。データは抹消される。 残るのはアルカディアの中にだけだ。それでいい?」 「ああ、それで結構。――――さて、君との話はお終いだ。アルカディアに代わってくれ」 彼はそう言ってゆるりと笑った。彼の望んでいるシュトリは、自身ではないというのは分かっている。 いましがた戻ってきたばかりの本物の《シュトリ》を出せと言っているのだ。 自身と常に同期しているから分かってはいるだろう。そのまま精神を入れ変わらせるかのように、体の接続先を サーバー本体に切り替えた。 ‐ ‐ ‐ ‐ 「…で、ルーサー。何の用事で?」 「何、君と話がしたかった。どうせ最後なんだ、少しくらい、いいじゃないか」 ルーサーが何を言いたいのかは分かっていた。 彼は現状を理解している。アルカディア・システムを考案するために彼の力と知識を借りたのだからそれは当然だ。 ルーサーは知識を与えることを惜しむ人間ではなかった。 科学者そのものと言ってもいいほどに、実験と結果には効率など求めないし、何よりもその過程を楽しむことさえ 彼にはできる素質があった。 そして長く、二年にも渡る技術提供を惜しみなくしてくれた彼に感謝の念すら持っている。 敬意は払えない。この男の底は知れないし、この男は全てを得るためなら一瞬で他の物を犠牲にするくらいは 平然と行えるだろう。 その対象に、間違いなく自分が含まれていても関係ない。彼は犠牲にする。大凡十年の見守った、この末路さえも。 だからこそ信用ならなかったが、それでも彼自体は誠実なのだ。 どんな時でも、自身の欲望にだけは。 「何を知りたかったの、ルーサー」 「君は僕が何を知りたいか考えたりしなかった? そのシステムで君は僕を演算しようとしてみなかったのかい?」 彼の問いかけは不毛だ。興味のないものを、このシステムは演算などしない。 金にならない話は、基本的にしたくない。時間の無駄だからだ。 「して意味があるならしてる。お金の匂いがしないから、貴方をね、ルーサー?演算する意味が分からない」 「酷いね、一応君のパトロンの一人だと思っていたんだけど」 「冗談でしょ」 「すまない、冗談だ」 ひらひらと手を振って彼はゆっくりと近付いてくる。 形の良い手でするりと頬から首筋を撫で、左胸の上に指をとん、と置いた。 冷たい体温。鼓動の少ない体。既に脳とは切り離されたこの体は、キャストの体と同意語だ。 ただそれがもともとの自身の体を元にした生体パーツであるということだけで。 「アルカディア。昔、君に言った質問をもう一度していいかな?」 「……」 「君は、人間か?」 その言葉の意味を彼は知っている。 そして彼はこの十年、ずっとこの言葉を待っていた。彼はこのアルカディアから。 《シュトリ》という存在の本質から、たった一つの言葉を聞くためだけに十年間もずっと。 ただただ協力を惜しんだりはしなかったのだと。 「……これで満足か、ルーサー」 「ああ、満足だよ、アルカディア。君のそんな表情が見たかった」 きっと苦虫を噛みつぶしたような顔をしているに違いない。 彼はたった一言、この言葉を聞きたかった。 「…最後にもう一度問おう。体を脳を切り離し、サーバーがなければ記録すらできない君は人間か?」 認めてしまえばきっともっと楽だったのだと分かっていても。 認めることはできなかった。だが、もうそれも良いのだ。 「……残念ながら、長年考えた結果、僕は人間ではない」 そうか、とルーサーは言った。 満足そうに笑い、そのまま肩に手を回して抱き寄せる。 何て冷たい体だと、嬉々として呟いた彼の耳元で、それでも、と言葉を続けた。 「それでもね、ルーサー。僕は貴方の言う人間ではなくても、ヒトでありたいと願っている」 そう言い放った言葉に、かの男は笑うだけだった。 そっと体を離し、距離ととって礼をする。最後の仕事だからこそ、鮮やかに終わらねばならない。 「それでは、ルーサー。御機嫌よう。もう二度と会わないことを祈っているよ」 「待ってくれ、アルカディア。最後に、君に聞きたいことがある。 君の従妹姫が持っていた未来を見る力で、君は一度だけ未来を覗いたことがあると言ったな。 ならばこの先はどうなっていた? 君の願う先の未来は、そこで見えたのか?」 イズハルアの能力を封じるために、【006】の体を用いてやったことは。 彼女の力と劣化した自身の能力を取り換える作業。それは魔術回路を交換するのと同意である。 その一瞬だけ、未来を見たのかと聞かれれば、見たのは確かなのだ。でも、その未来は。 未来とは。 「ルーサー、未来はね、決められているものではないからこそ素晴らしいんだ。 可能性を、奇跡を、それを人は愛し続ける。貴方もまたそうであるように」 その言葉に彼は笑うだけだった。 きっとこれが正解の答えでなかったのだろうとは思う。彼の望んだ答えはきっと違うけれど。 それでもこれが《シュトリらしい》と思ったに違いない。 「気をつけて行くんだよ、光の使徒。君以外にその高速艦は使えない。 誰も君を止めることはできない。迷わずに行くといい。――――シュトリ、君は」 「…なぁに、ルーサー」 「素晴らしい負け犬だな、本当に」 「あら、嫌だなぁ。それ、貴方もでしょう。欲しいモノが手に入れられない、貴方も僕も。 それでいいんだよ。それだけでいいんだ。僕らは、きっと」 見上げた空は美しい星の光を散りばめていても。 それはもう眩くて、あまりにも美しくても。手に入れられるものではないから。 それでも人は願ってやまない。 奇跡を手にする力を、世界を変える力を。 ゆりかごの中で、ずっと眠り続けている。
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【種別】 自在法 【初出】 III巻 【解説】 優秀な自在師である“愛染他”ティリエルが使っていた独自の自在法。ティリエルの、他者に愛情を注ぎ守る本質『溺愛の抱擁』に基づいている。 内部に山吹色の木の葉が舞い、霧で満たされた防御陣を作り出す。この内部は因果を外部と断絶した因果孤立空間となり、封絶の変種に含まれる。独自の特性として、内部の“紅世の徒”や自在法の違和感や気配を、外部から完全に隠す事が出来る。 このため、探知系の自在法で探らない限り、どんなに近くにいようとも“徒”の存在を感知できない。 通常は身体の表面を覆うように常時展開されており、その際は視認もできない。 また、封絶の様に広範囲に展開し、捕食や戦闘の場を作り出すことも可能で、その際には内部の存在を決して逃がさない隔離空間にもなる。 本編時のティリエルは、彼女の分離体とも言える多機能の“燐子”『ピニオン』と、込められた自在式を維持し続ける宝具『オルゴール』を用いることで、街一つを覆うほどに『揺りかごの園』を拡大させて相手を捕らえ、さらに仕掛けられた『ピニオン』を使って周囲の人間を喰らい、“存在の力”を自分たち“愛染の兄妹”に供給させていた。 取り込み兼放出口となっている、人間に偽装された『ピニオン』により、『玻璃壇』からの視界は、黴のように密集した斑の部分を蔓草のような紋様が結び合わせているように見えるほど、無茶苦茶に絡み合った装飾紋と撹乱と偽装の自在式で埋め尽くされ、通常の感覚では『ピニオン』と人間を見分けることが出来ない他、この自在法の特性も正確に把握できない。 また、放出口となっている『ピニオン』を発見して破壊したとしても、“燐子”としての正体を現した『ピニオン』は、破壊されると同時に様々な罠が起動する仕掛けとなっており、単独で対処するのは困難といえる。 一度はまってしまえば非常に強力だが、欠点として、『揺りかごの園』の維持、“存在の力”の供給、武器である蔓の大規模な顕現や維持や制御を行うピニオンを多数設置する下準備が必要なこと、『ピニオン』作成の自在式が相当複雑なものであるため、多数を維持するには宝具『オルゴール』によるサポートが不可欠な点が挙げられる。 IV巻で坂井悠二の異常に鋭敏な知覚により『ピニオン』の偽装を見破られ、彼の指示を受けたフレイムヘイズ『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーによって『ピニオン』を次々と破壊(正確には改変)されていき、最後には『揺りかごの園』の維持が不可能になって、“愛染の兄妹”の敗北へと雪崩れ込んでいった。 【コメント】 ☆アニメ版で登場・使用された。 ☆RPGでも時たま見られる、自分に有利な結界空間だった。 ☆結界の自在法は、他に『大地の四神』の一人センターヒルの『トラロカン』があった。 ☆封絶の変種は他にメアの『ゲマインデ』があった。史上最悪のミステス“天目一個”が、自身の周囲に張り巡らせていたのもそうだった。 ☆『棺の織手』ティスやノースエアやザムエル・デマンティウスやゾフィー・サバリッシュやアレックスやドゥニや『輝爍の撒き手』レベッカ・リードやフリーダーや『理法の裁ち手』ヤマベやピエトロ・モンテベルディや『儀装の駆り手』カムシンやドレル・クーベリックやパウラ・クレツキー相手に発揮したら面白そうだったのにな。