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「行ってくるんだどー」 「はい、気を付けて」 翌日、仇が住んでいるという森を前に、れみりゃは咲夜と美鈴に見送られていた。 「はい、これ」 咲夜からプレゼントを貰った。一振りのナイフと、円形の筒である。 「あなたなら大丈夫。あなたなら」 鬼より怖いと思っていた美鈴が、なぜか急に優しくなって、れみりゃの頭を撫でながら言った。 「うー、大丈夫だど」 それに、嬉しくなって、れみりゃは久しぶりに笑った。 しかし、すぐに顔を引き締める。 「御武運を」 奇しくも、二人の声が重なった。 れみりゃは警戒しつつ、森に入っていった。足運びは到底れみりゃ種とも思えぬ動きである。飛ぶと体力を消費してしまうために、まずは歩いて行く。飛ぶのは危ない時に緊急避難する場合などだ。 (あまあまの臭いがするどー) 特訓の中には、実戦形式ということで捕獲してきたれいむ種やまりさ種との戦闘もあった。五対一までは経験したが、勝負はどれも難なく勝った。そして、その時に臭いを覚えさせられたのだ。捕食種としての本能も手伝ってか、ゆっくりたちの臭いはすぐに覚えることができた。 「ゆっきゅち、ゆっきゅち!」 小さな、ピンポン玉サイズの赤ちゃんまりさが飛び跳ねていた。 「ゆぅ、おねーしゃんどきょにいるにょ」 どうやら一緒に遊びに来た姉とはぐれてしまったらしい。普通ならば、このサイズの赤ちゃんがこうして孤立してしまえば恐怖で泣き叫んでもおかしくはないのだが、この赤まりさは、迷子になったのを困ってはいたが、それほどに切迫した様子ではなかった。 なにしろ、赤まりさの所属する群れでは、滅多に死ゆっくりなど出ないので、死というものが身近に感じられない。そして、外敵が現れてもすぐに強くてカッコいい、ちゃんぴおんの赤バッチをつけた長やその長女のまりさが助けてくれる。 「うー、まりさの赤んぼだどー」 不意に、れみりゃが現れた。 「ゆ゛う゛っ゛」 いかに長たちに全幅の信頼を置いているとはいえ、捕食種を見れば思わず悲鳴を上げてしまうのは、先祖から連綿と受け継ぐ本能だ。 だが、すぐに赤まりさは気を取り直した。大声を上げて助けを求めよう。れみりゃが一匹ぐらいなんてことはない。長とその軍団は、れみりゃとふらんの群れでさえ追い払ったことがあるのだ。 「ゆゆっ、れみりゃはゆっくちちぬんだよ!」 恐れる色も無く、勝ち誇った顔でれみりゃを見る。勝てるとわかっている戦いだ。恐れることはない、そうなると、憧れの長まりさたちの戦いぶりを間近で見れるということが楽しみにすらなってくる。 ――れみりゃがきちゃよぉ! みんにゃきちぇ! そう、みんなを呼ぼうとして果たせなかった。れみりゃが、凄い速さで突進してきて持っていた木の棒を突き出して、その先っちょを赤まりさの口に突き入れたからだ。 「ゆ゛ぎぃ」 まともな声が出ずに、割れた声が口から飛び出す。 口から、棒が抜かれた。激痛が口中に広がっている。叫ぼうとする。 ――い゛だい゛い゛だい゛よ゛ だが、それは果たされず、赤まりさは振り下ろされた木剣によって叩き潰されて絶命した。 「うー、できるだけ騒がれたくないんだどぉ」 咲夜に言われた。出来るだけ気付かれないように数を減らしていくべきだと。 れみりゃの物腰には油断は無い。実際、少しでも油断していれば、赤まりさが助けを呼ぶのを許してしまっただろう。だが、れみりゃは既に死んでいた。今日、起きた時に一度頭の中で死んだし、先ほど赤まりさと相対した時にも死んだ。何をどう考えても負けるはずのない赤まりさにすら殺されることを想像し、れみりゃは死んでいたのだ。油断など、無い。 「おちびちゃーん、どこにいるのー!」 「ゆっくりへんじをしてね! ゆっくりむかえに行くよ!」 「どきょー、まりしゃー」 近付いてくる声に、れみりゃはすぐに身を隠した。あの赤まりさの姉妹たちが、迷子を探しにやってきたのだ。 テニスボールサイズの子れいむと子まりさが一匹ずつに、ピンポン玉サイズの赤まりさ一匹の三匹、バレーボールサイズの成体はいない。 (うー、こいつらもやれるどー) れみりゃはその構成を見て、自信を持って心中に呟いた。 茂みに伏せて隠れていると、その茂みに三匹が無警戒に近付いてくる。なにしろ、ここは偉大なるちゃんぴおんの長まりさが治める群れの縄張りなのだ。どうしても警戒感が乏しくなってしまう。 二匹の姉をやり過ごした。狙いは一番後ろの赤まりさだ。姉妹を探そうと周囲を見回しているために、却って足元などはお留守もいいところだ。 「ゆっ」 その声は、すぐ前を跳ねている姉たちにも聞こえないぐらいの小さな声だった。 口を押さえるように右手で掴んだ赤まりさを素早く引き寄せて左手の指を赤まりさの頭に突き刺す。声も上げられぬまま、赤まりさは体内の餡子をかき混ぜられた。そこまでやれば、中枢の餡子が完全に機能を破壊されてしまい意識が無くなる。その後に、口を押さえていた右手を口の中に突っ込み、上顎を掴み、左手で下顎を掴んで、上下に引き裂く。これでもし万が一生きていたとしても、赤まりさは声を出すことなどできない。 この間、二秒。姉たちは気付かないでぽよんぽよんと跳ねて行く。 少しすると、さすがに後ろからの声が全く聞こえないのに気付いた。 「ゆゆっ、妹がまた迷子だよ!」 「まりさはこういうのしってるんだぜ、にじゅーそーなん、っていうんだぜ、すごくゆっくりできなんだぜ」 「ゆゆぅ、ゆっくりしないでおとなたちを呼んでくるんだよ」 「まりさもそう思うぜ」 二匹の迷子を二匹で探すのには無理があると判断した子ゆっくりたちは、群れの中心部に戻って大人たちに助けを求めることにした。 元来た道を引き返す二匹だが、その時、視界の端に黒い、よく見慣れたものを見つけた。 「ゆゆっ、あれはおちびのお帽子なんだぜ」 「ゆっ、ほんとうだ! お帽子無くして困ってるよ! 拾っておいてあげよう!」 まさか既に妹が死んでいるとは思わない姉たちは、お帽子を拾って上げようと、そちらへと駆け付けた。また、お帽子のある方に妹がいるのではないかとの期待もあった。 「もう、お帽子無くしちゃだめだよ、っておかーさんいつもいってるのにねえ」 苦笑しながら、れいむが小さな黒い帽子を口にくわえる。まりさの帽子に入れておいて貰おうと、横を向こうとした瞬間、ぱん、と音がして何かがれいむの顔に当たった。 餡子が飛んできたのだ。 そして、こんな森の中で餡子の出所など、一つしかない。 「ゆっ……」 ゆっくりは根本的に肉体的にも精神的にも衝撃には弱い。特に精神的衝撃は、受けると少しの間、完全に行動不能に陥ってしまうことが多い。 れみりゃはそれに付け込んだ。れいむが、まりさが叩き潰されて死んだのだと理解する前に姉妹の後を追わせてやった。 「うー、うー、うー」 手際よくゆっくりたちを始末できて、れみりゃはほくそ笑む。久しぶりの笑顔。だが、先ほど美鈴に見せた無垢なそれではなく、それは捕食種の笑みだった。 「ゆっ! おねえさんは腑抜けたのぜ!」 「その通りなのぜ。あの時おとうさんとれみりゃに立ち向かったおねえさんじゃないのぜ!」 群れの集会場では、ゆっくりたちが三つに分かれて言い争っていた。 今、姉を罵ったのは、さらなる勢力拡大を画策し、人間の村にも攻め入ろうとする派。 対して妹に罵倒された、あの長女まりさのいるのが、不拡大方針派である。 もう一つは、要するにどっちにも付かずに、おろおろとしている中立派だ。 「人間さんはゆっくりできないよ! れみりゃやふらん、犬さんたちに勝てても、人間さんには勝てないよ!」 長女まりさは、必死に説得する。だが、この群れは順風満帆に行き過ぎていた。なにしろ、れみりゃもふらんも、それよりも恐ろしい野犬たちも、自分たちとはろくに戦わずに逃げていくぐらいなのだ。もうそうなるとゆっくりたちの脳味噌においては、もはや人間も恐るるに足らず、ということになってしまっていた。 その派には、かつてれみりゃを打ち倒した長まりさの子供たちが一匹を除いて全員属していた。そう、長女まりさ以外のまりさ九匹、子れいむ八匹の計十七匹が全てである。長女まりさは、姉妹を相手に孤軍を強いられていた。 長である母まりさはどうしているかというと、中立派と同じところにいて、オロオロと左右に視線をやっている。これまで、長女の補佐を受けて立派に長を勤めてきた。れみりゃを倒したちゃんぴおんであることが長になった条件だけに、体は鍛えていて今でも強かったが、長としての統率力には疑問があった。いや、というよりも、今まで食べ物は無くなりそうになれば都合よく人間さんが置いて行ったと思われる御馳走を苦も無く手に入れられたし、外敵も長たちが駆けつけて一発二発体当たりすれば逃げ出してしまう。 餓死者は出ない、外敵に殺される者もいない、そんなこの群れは文句なくゆっくりできていた。 みんながみんな、最低限の労働だけで後はゆっくりできる。それだけで長の評価はうなぎ登り。だから、別に特に何か決断を迫られるような状況にならなかったのである。 しかし、今や群れの内部抗争が本格化し始めていた。しかも娘たちが争っているとなると、長まりさは、母まりさ以外の何者でもなくなり、長としての振る舞いも忘れていた。 いつもは誇らしげに輝く赤いちゃんぴおんの証も、今日ばかりはなんだか色褪せて見えるようだ。 「ゆゆぅ、みんな喧嘩は止めてね……」 力なくぼそぼそと呟くような制止の声は、どちらにも届かない。最初に、双方の間を走り回って調停しようとしたにはしたのだが成功せず、中立派のところへやってきて後は見ているだけになった。 言っていることの内容は、長女まりさが正しいと思っていた。その辺り、母まりさはここまで強い強いと祭り上げられながらも、冷静に物事を見ていたと言える。 ――さすがに人間さんには勝てないよ。 一人や二人ならば、勝てるかもしれない――それも思い上がりなのだが――でも、人間さんはまともにやって勝てないとなると、ゆっくりたちには思いもよらないことを考えて攻めてくるだろう。多彩な道具類も恐ろしい。 しかし、妹たちの方は……なんといっても数が多かった。それだけかよ! と言われるかもしれないが、それだけなのである。 さっきも、長女まりさの方へ行って懇々と人間と戦うことの不利を説かれて納得し、妹たちの方へ行って、おかあさんは、おねえさんを取って自分たちを捨てるのか、と十七匹に感情論をぶつけられて、長女まりさの方へと戻って、納得はできないだろうけど、あなたはおねえさんなんだから引いてやったらどうか、と長の権威などまるで無いおかんの説得術を試みてあえなく拒否され、何度かオロオロと両者の間を往復して調停を諦めたのだ。 「こうなったらたすうけつで決めるのぜ、数が多いほうがせいぎなのぜ!」 埒が開かぬと見て、拡大方針派のまりさが言った。彼女は、その強さを買われて軍隊の長になっていた。戦闘訓練を受けた兵隊ゆっくりたちはほとんど彼女を支持している。 「ゆっ、それは……」 長女まりさが口ごもる。多数決を取れば、きっと拡大派が勝ってしまう。既に述べたように、この群れは恵まれすぎた。長女まりさとその支持者たちは決して多数派ではなかった。人間さんと戦いになっても、なんとかなると思っているのが多数派だ。今までもなんとかなっていたのと、やはり自分たちの強さを完全に勘違いしているからである。 「ゆ゛っ゛ ゆ゛っ゛ ゆ゛ーっ゛!」 そこへ、一匹の子れいむが駆け込んできた。その顔は顔面蒼白、つまりは全身蒼白、恐怖によって色が変わっていた。 「なんなのぜ! どうしたのぜ!」 「ていうか、遅刻なのぜ! お前たち一家は群れの話し合いに遅刻なのぜ!」 咎める声に、必死に言い訳をするれいむ。曰く、赤ちゃんがいなくなってしまったので、家族総出で探していたのだ、と。 「それで、その赤ちゃんは見つかったの? 見つかってないならみんなでさがさないと」 沈黙していた母まりさが、赤ちゃんがいなくなったと聞いて前に出てきた。 「ゆ゛ーっ゛ ゆ゛ーっ゛」 「何があったの? ちゃんと話してね! そうしないとなにもして上げられないからね。ゆっくりでいいから話してね!」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ」 「うーん、おとうさんとおかあさんはどこにいるの?」 まともに話ができぬと思った母まりさは、両親から話を聞こうとした。 「ゆ゛びぃ゛、おどうざん、おがあざん!」 さすがに尋常な事態でないのはわかるのだが、とにかく何が起こったのかはっきりしないとどうにもできない。困り果てた群れの仲間たちを見て、ようやく気持ちを少し落ち着けたのか、子れいむは搾り出すように言った。 「おどうざんも、おがあざんも、おねえざんも、いぼうども……ごろざれぢゃっだー!」 「ゆゆゆーーーっっっ!」 一斉に色めきたった。当然である。事故死や、老衰による自然死、その二つの死以外の死、殺害されての死など、この群れには無縁のものだったのだから。 「ゆっ、ことばはゆっくりよく選ばないとだめだよ? かぞくのみんなは殺されたの? 事故とかで死んだんじゃないの?」 長女まりさが念を押す。皆、そうであってくれと思った。殺された、というのは言い間違いで、なにか不幸な事故で死んだのであってくれ、と。 「ぢがうよ、れ゛み゛り゛ゃ゛だよ! あ゛いづに、ごろざれだんだよぉぉぉぉ!」 「ゆっ! れみりゃ!」 色々あって、外敵と想定されるものの中でも、れみりゃに対する敵愾心が長の一家には強いので、皆、表情が一気に張り詰めた。 「みんな、れみりゃが出たからには群れの話し合いはやめだよ、れみりゃをやっつけるよ!」 「ゆーっ!」 「ゆーっ!」 「ゆーっ!」 長の言葉に皆が皆、賛意を示す。 「それじゃあ、戦えるゆっくりはゆっくりしないではやく準備して集合だよ! 子供たちはここに残ってるんだよ! 子供たちを守るために何人か残るんだよ!」 「ゆゆっ、よし、お前の部隊は残るんだぜ!」 すぐに、軍隊長まりさが、ゆっくりみょんの率いる十匹の部隊を指名する。 「ちーんぼ!」 任せておけ、とみょんが応える。 「よーし、みんないくよ! ゆっくりしないでね! れみりゃをやっつけたらたっぷりゆっくりしようね!」 「ゆーっ!」 これぞ長の威厳というものか、少し前までオロオロとしていた母まりさの言葉に皆が従う。 いがみ合っていた長女まりさと姉妹たちも、それを忘れてしまったかのようだ。 これで、れみりゃを一緒に倒せば、みんなあの時のことを思い出して仲直りをしくれるかもしれない、と母まりさは淡い希望を持った。 「ゆゆぅ、これじゃゆっくりできないよ」 「ひどいことするのぜ、やっぱりれみりゃはクズなのぜ」 「生かしておいちゃいけないのぜ」 子れいむの家へとやってきた一同はそこで惨殺された両親の死骸を見て、悲しみ、怒り、これをやったれみりゃへの敵意を沸き立たせた。 「うー、バレたんだどぉー、仕方ないどぉー」 そのれみりゃは樹上にいた。そこから殺した一家の家を見下ろせるのだ。やってきた兵隊ゆっくりたちを見て、それほど厄介そうな相手はいなさそうだ、とれみりゃは安心していた。 「れみりゃを見つけたらすぐに報せてね!」 「ぜったい油断しないでね!」 れみりゃ捜索のために、部隊が分かれた。兵隊ゆっくりは約四十匹。子供たちの護衛に残ったものを合わせて、全てで五十匹ということになる。 「ゆーっ! 出でごい、れみりゃー!」 姉妹の中でも一番気の強い軍隊長まりさが一際怒りの声を上げて部隊の先頭を行く。 「うー、げんきのいい奴なんだどぉ」 れみりゃは樹上からその部隊へと狙いを定めた。 標的は最後尾のまりさ。時々後ろを向くのだが、その際に他の仲間から離れてしまい、急いで追いかける、という動作をしていたのに目をつけたのだ。 「ゆっ、うしろにはいないね!」 そしてまた、後方確認して、ゆっこらせ、と前を向く。 「ゆゆっ、待ってね、待ってね」 仲間たちに追いつこうと走ろうとしたその時、ぶん、と何かが空を切る音を聞いた。 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛!」 だが、そんなものはその後に来た衝撃によって完全に頭から吹っ飛ぶ。思い切り木剣で横から叩かれたまりさは右の頬が完全に裂け、亀裂は頭部にまで達していた。腕の力だけでなく、飛翔したエネルギーも乗せた一撃だ。 「ゆーっ! れみりゃだね! だれかれみりゃを見たのぜ!?」 「ゆぅぅぅ」 軍隊長まりさの問いに、他のゆっくりは力なく顔……つまりは全身を横に振った。 なんといっても、れみりゃが通常種のゆっくりたちに対して持つ最大のアドバンテージは飛行能力である。他にも胴つきならば手足の有無などもあるが、なんといっても空を飛べることにより生じる優勢は大きなものがある。 「ゆゆっ、まんまるになるのぜ!」 軍隊長まりさの号令によって、残った九匹のゆっくりたちは顔を外に向けて円陣を組んだ。これならばどこから来てもわかる。 軍隊長まりさは、母や姉と同じく、ゆっくり種としては十分に優秀な個体だ。しかし、それでも所詮ゆっくりと言ってやっては酷であろうか。相手が空を飛べるということをわかっていながら、それを考慮しなかった。 ふわり、とれみりゃは上から現れた。円陣の真ん中に降り立つ。 「ゆゆっ!?」 その背後の気配にいち早く気付いた軍隊長まりさが後ろを向くのと同時に、 「ゆべっっっ!」 れみりゃの振り下ろした木剣がその顔を両断した。 「ゆっ! ゆべ!」 「ゆゆぅ! ゆぎゃあ!」 「ゆゆ、べえっ!」 それからも後ろを振り向く奴から順番に叩き潰した。残り三匹というところで、 「ゆっぐりでぎない゛よお゛!」 「ま゛りさはにげるのぜ、じがたないのぜ!」 「でいぶがんばっだよ゛、でもぶりだよ、でみりゃには勝でないよ゛ぉぉぉぉ!」 まりさ種が二匹にれいむ種が一匹。振り返らずに前方に向けて逃げ出した。 「うー、待つんだどぉー」 最初から、九匹が同時にそれをやっていれば何匹かは他の仲間の部隊の所へ逃げられたかもしれないが、三匹程度ではれみりゃに次々に捕まってしまう。 「ゆ゛ぅぅぅ、れ゛み゛り゛ゃ゛ぁ゛」 全部殺すか動けないほどの大怪我を負わせたので、再び飛び上がって樹上に身を隠そうとしたれみりゃに、あの軍隊長まりさが、割れた顔もなんのその、恐ろしい形相で飛び掛った。 顔が割れているのだ。もちろんまともに飛べずにれみりゃには届かなかった。 「ごろじでや゛るぅ゛」 「うー、たいしたもんだどぉー」 半端じゃない根性であることはれみりゃも認めざるを得なかった。 「おおけがした奴はどーせそのままでも死ぬじ、なかまの足手まどいになるがら、そのままにするづもりだったけど、お前はなんか怖いからすぐ殺すんだどぉー」 実際は、そんな割れたまりさなど生きていても、執念深く怨嗟の声を吐くばかりでれみりゃの行動を阻むものにはなりはしない。それでも、れみりゃはその執念を恐れた。 「らいおんは、ミジンコを殺すにもふるぱわーなんだどぉ、らいおんさんすごいどぉー」 咲夜の教えにあった、獅子は兎を仕留める時にも全力を出す、という話の兎がいつどこでミジンコになったのかは不明だが、れみりゃはそう言うと全力で木剣を振った。 「おがあざんと、おね゛えざんが、おばえをごろず。ふだりとも、づよ゛いんだ!」 そう言った直後に、軍隊長まりさはトドメの一撃を貰い、完全に二つになった。 「うー、ゆっくりするんだどぉ」 優しい顔で、れみりゃは言った。そう、彼女にとってゆっくりを殺すのは、ゆっくりさせてやることなのだ。 「あっちでこえがしたよ! みんなゆっくりしないでいそいでね!」 「こりゃゆっくりしてるばあいじゃないよ!」 「ゆーっ、まりさ、へんじをしてー!」 声があっちからこっちから近付いてくる。さすがに悲鳴が聞こえてしまったのだろう。散った仲間たちが集まってくる。 「うー」 れみりゃはすぐに飛び上がった。 「ゆゆっ! れみりゃがいたよ! あの木に登ったよ!」 しかし、ちょっと飛び立つのが遅かったようで、駆けつけてきたゆっくりたちの何匹かに樹上へ隠れるところを目撃されてしまった。 「ゆゆっ、ここだね!」 「どこにいるかさえわかればもう怖くないよ!」 「ゆっくりしね! れみりゃはゆっくりしね!」 元々、真っ向からやり合えばれみりゃには負けないと思っているので、強気になっている。 「うー、そっちにはもういないんだどぉ」 小さく呟いたれみりゃ、既にゆっくりたちが取り囲んでいる木にはいない。一度真上に抜けて、別の木に移ったのだ。 それをわからぬ、言っちゃ酷だが所詮餡子脳、木に登ろうと頑丈で体力のあるものを下にして積み上がっていった。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 一番下の、この中では一番大きいまりさは必死に耐えている。他のゆっくりが心配して声をかけるが、 「だいじょうぶだよ、ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 と、耐えていた。 「もう少しで枝に届くよ!」 ゆっくりが十匹積み上がると、一番低い枝に届きそうになる。 これならば、十一匹目で届くだろう、とゆっくりたちは目を輝かせる。 「よし、いくよ!」 十一匹目に選ばれたれいむが張り切って飛び上がる。彼女は、一番下のまりさとは逆にこの中では最も体が小さいれいむだった。 「ゆっゆっゆっ」 「がんばれー、がんばれー」 十個積み上がった横に八個、隣に六個、といった具合に階段状にゆっくりたちが積み上がっている。そこをどんどん登っていくれいむ。 そして、遂に頂上へ到達した。 「ゆゆーっ、たかーい、おそらをとんでるみたいー」 「やったね、れいむ、とってもたかいね!」 「おそらをとんでるみたいだなんて、それはゆっくりできそうだね!」 ゆっくりたちが口々に喜びの声を上げる。そもそもなんのために積み上がってたんだよ、という話なのだが、ちょっと忘れているようだ。 「れみりゃはいる?」 長女まりさは、さすがに当初の目的を覚えていたので、頂上のれいむに声をかける。 「ゆっ! そうだったね、れみりゃー、ゆっくり出てきてね! びっくりするから早く出てこないでね!」 れいむが枝に飛び乗ろうとした瞬間。 「うーーーーーっ!」 れみりゃが降って来た。空から。 「ゆぎぃ」 頂上のれいむは加速のついたれみりゃの持った木剣を喰らってあえなく真っ二つ。 「ゆぎゃ!」 「ゆびぃ!」 「ぶび!」 木剣はどんどん下方へ向けて進む。 「うー、六匹だけしか割れなかったどぉー」 頂上にいたれいむを一匹目として、上から六匹目までのゆっくりが、完全に二つにされてしまっていた。外の世界の武術やら何やらの本を見せられたが、その中に積み上げた瓦を拳や肘で粉砕する絵があり、れみりゃはそれを真似てみたのだ。 「どぼちてそっぢがらぐるのぉぉぉぉぉ!」 ゆっくりたちはパニック状態だ。 「だじゅげでえええええ!」 「れいむおうぢがえるぅぅぅぅ!」 「まりざを置いて逃げるなんてひどいぜ、まりさが置いて逃げるべきなんだぜ!」 常日頃の自信もあっけなく崩壊し、捕食種をひたすら恐れるゆっくりたちがそこにいるだけだ。 「うー、うー、うー」 れみりゃは、それに追いすがり、叩き潰していく。 「みんなおちついて! ゆっくりおちついて!」 長の声に皆がハッを気を取り直す。 「ゆぅぅ、たしかに一対一ならばれみりゃには勝てないよ、でもみんなの力を合わせれば、勝てるよ!」 長女まりさがそれに被せるように言うと、実際にかつて力を合わせてれみりゃを倒したものたちの言葉ということもあってか、取り乱していたゆっくりたちは戦意を取り戻してきた。 「はんげきかいしだよ! ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでね!」 「ゆおおおおお!」 「ゆぅぅぅっ!」 口にくわえた武器を振り上げながら、ゆっくりたちが突撃してくる。一つの部隊を全滅させ、今また六匹葬り、逃げるところを追撃して何匹が潰したが、まだ三十匹近い数が残っている。 「うー、逃げるんだどぉー」 「待てぇぇぇぇ!」 「ゆっくりしね! ゆっくりしねえ!」 「みんなのがたきぃ! ゆっくりさせないよ!」 今度は立場が逆になり、逃げるれみりゃをゆっくりたちが追いかける。しかし、れみりゃが全速力で飛べば、ゆっくりたちには追いつけるものではなく、徐々に離されて行く。 れみりゃは飛びながら、乏しい知恵をしぼって考えた。乏しいとはいっても、咲夜によって散々に鍛えられたので、戦闘に関しては少しは知恵が回るようになっている。 「ちびのあまあまがいないんだどぉー」 さっきから気になっていたのはそれであった。きっと、大きな大人ゆっくりたちだけが来ていて、子供はおうちの方にいるのだ、という結論にゆっくりと辿りついた。 「うーーーー、うー!」 無い知恵絞って作戦らしきものが浮かんだれみりゃは、空中で尻を振ってダンスを踊る。 「うー、もう逃げ切れないから隠れるどぉー! ここなら見つかりっこないどぉー!」 わざと、追いかけてきているゆっくりたちに聞こえるような大声で叫んでから上空へと飛び上がる。 「ゆっ! れみりゃめ、隠れたみたいだよ!」 「ゆっへっへっ、とうとう追い詰めたのぜ!」 「みんな、れみりゃを探すよ!」 兵隊ゆっくりたちがそうしている間に、れみりゃは全速力でゆっくりたちがやってきた方角へと向かう。 「うー、ちいさいあまあま見つけたどぉー」 群れの集会場は、開けた場所になっていて上空からよく見える。そして、親たちの帰りを待つ子ゆっくりたちは、家に入らずに表に出ていた。どうしてもゆっくりの餡子脳では、飛行するものの行動予測がしにくいのだ。 「うー、ちょっと様子を見るんだどぉ」 近くに降り立ち、偵察する。 「うー、あいつとあいつと……あいつらは少しはやりそうだどー」 残っていたみょん隊長の部隊十匹を見て、れみりゃは即座に攻撃を仕掛けることにした。時間をかけていると、さっきの連中が戻ってくる。それに、何も今、ここにいるゆっくりを全滅させる必要は無い。少しは手強そうな兵隊ゆっくりを倒して、子ゆっくりを幾つか潰せばいいのだ。 「うーっ!」 まずは不意打ちで、子供たちがたくさん集まっているところを守っていたれいむを叩き潰した。そして、子供たちに向けて叫ぶ。 「ぎゃおー! たーべちゃうぞー!」 一瞬、完全に静寂になった。だが、その静寂が去れば、あとはもう阿鼻叫喚としかいいようがない地獄絵図である。 「ゆっきゅりぃぃぃぃ!」 「ちゃべないでええええ!」 「おきゃーしゃーん、ちゃすけちぇー!」 子ゆっくりが悲鳴を上げて逃げ出し、赤ゆっくりの大半は逃げることもできずにその場で泣き叫ぶ。 「うー、ゆっくりさせてやるどー」 れみりゃはぶんぶんと木剣を振る。軽い赤ゆっくりなどは叩いた時に木剣にへばりついてきたが、それも幾度も振っているうちにはがれて落ちた。 「ちゃすけでぇぇぇ!」 「ごろしゃにゃいでぇぇぇ!」 「みゃみゃあ、みゃみゃあぁぁぁ!」 へたり込んで泣く赤ゆっくりたちを優先的にれみりゃは潰した。最初は木剣を振っていたが、すぐに、踏み潰した方が楽だというのに気付いた。 「ちぃぃぃんぽ!」 惨劇に幕を引くべく最初に駆けつけたのは隊長みょんだった。その勇姿に、子ゆっくりも赤ゆっくりも、そして成体ではあるが戦闘向きではなく子供の世話のために残っていたゆっくりたちも目を輝かせる。 隊長みょんは、兵隊ゆっくりたちの剣の指導もしている。長やその一家にも一目置かれている強い強いゆっくりなのである。 当然、普通のゆっくりが相手ならば、みょん隊長が口で操る剣によって切り立てられてしまったであろう。みょん隊長の愛用の剣は人間が捨てていった金属の板を、石で叩いて時間をかけて作り上げた切れ味鋭い業物だ。れみりゃの持っているのは木製の剣。きっとみょん隊長の剣によって叩き折られてしまうに違いない。 ゆっくりたちは経験によって、木よりも金属の方が堅いと思っている。実際は木にも金属にもそれぞれ色々な種類があるのだが、それほど間違った認識でもない。 だから、ゆっくりたちは確信していた。みょんの剣とれみりゃの剣、打ち合わされればどちらが勝つか、を。 これで勝った。もうあのれみりゃはおしまいだ。と、早くもゆっくりしているゆっくりすらいた。……さすがに脳天気すぎるが、中にはいるのである、ゆっくりなだけに。 だが、弾き飛ばされたのはみょんの剣だった。剣ばかりでなく、みょん自身が飛ばされている。れみりゃの木剣は、特に堅い木を選んで咲夜が愛用のナイフで削って作ってくれたものである。その辺の金属板には決して引けをとらないし、なによりも、重さが違いすぎた。 みょんの剣技は、ゆっくりみょんの中でも高いレベルにあったが、圧倒的なウエイト差の前には無力だったのだ。いや、それだけに理由を帰するわけにもいかない。れみりゃの剣技もまた、馬鹿にしたものではないからだ。 「うー、こんばくりゅうを見たか、だどぉ」 魂魄流、と言っているつもりである。剣術には○○流とかいう分類があるらしい、と小悪魔に吹き込まれたれみりゃが、それでは自分がやっているのは何流か、と言い出したのにパチュリーが、魂魄妖夢が祖父から教わった技を習っているのだから、魂魄流だろうと適当なことを言ったためにそういうことになってしまった。たぶん、妖夢に言ったら止めてくれと言われるだろう。 「うー、でもおまえもこんばくりゅうと見たどぉ」 ゆっくりみょんは言うまでもなく、魂魄妖夢を模したゆっくりである。それが使う剣技であるから、本家のそれと似通ったところがある、というわけではなく、れみりゃは強い剣士は全員魂魄流をやっていると思い込んでいるのである。 「ゆっくりさせてやるどぉ」 生かしておいては厄介と踏んだれみりゃは、飛ばされて地面に落ちたみょんに追撃をかける。振り下ろした一撃を転がってかわしたのは、このみょんの高い身体能力を示していたが、既に口に武器無く、第二撃を防ぐことはできなかった。 みょん隊長があっさりやられた。その衝撃をまともに受けて、部下の兵隊ゆっくりたちは逃げ出した。 「ゆっきゅりぃぃぃぃ!」 「ちゃすけてえええ、ちゃすけてえええ!」 「ゆっきゅりできないよぉぉぉ!」 「ゆゆっ! 赤ちゃんたち!」 泣き叫ぶ赤ゆっくりの声に立ち止まった兵隊ゆっくりから、れみりゃの木剣の餌食になった。赤ゆっくりや子ゆっくりなどいつでも殺せると判断したれみりゃは標的を兵隊ゆっくりに絞ったのだ。 なんといっても、この群れのゆっくりたちに致命的に欠けていたのは実戦経験であった。経験したといえば、長とその一家に続いて口にくわえた武器を振るって走るだけ。長一家の最初の攻撃で敵は逃げ出しており、実際に戦うことなど無かったのである。そのため、あっさりと仲間、特に頼みとしていたものが殺されると簡単にパニックになってしまう。 先ほどは、長まりさや長女まりさがすぐに叱咤激励して立て直したが、この場にはいない。それをやるべきは、この群れに流れてくる前は方々を渡り歩いていて実戦経験もある隊長みょんであったが、それが殺されたことにより起こった恐慌なので治められるものがいない。 「だじゅげ……」 赤ゆっくりたちの助けを求める声に背を向けて、自ら助けを求めようとしたれいむを潰して、これでこの場に残った兵隊ゆっくりは最後だった。 「うー、さっきの奴らが戻ってくるまで、できるだけ殺すんだどぉー」 尻を振り振り謎のれみりゃダンスを踊りながら、生き残っている赤ゆっくりたちに近付く。 「ゆゆーっ! やっぱりこっちにいたよ!」 長たちが戻ってきた。 「うー、はやいんだどぉ、もっとゆっくりしてればいいんだどぉー」 思っていたよりも早く戻ってきたので、れみりゃは一度撤退することにした。 「うー、ちょっとあまあま持っていくんだどぉ」 ついでに赤ゆっくりを何匹か掴んで服のポケットに突っ込んだ。そろそろ空腹であるし、しばらく休憩しようと思ったのだ。 「ゆぎぃぃぃぃぃ!」 「みゃみゃぁ! ちゃすけちぇ!」 「やめちぇね! はなちちぇね!」 赤ゆっくりたちの声など聞こえていても聞こえないのも同然である。れみりゃは既に薄暗くなった空へと飛び立っていった。 「ゆ゛う゛う゛う゛ぅぅぅぅぅ」 「ひ、ひどいよ! ひどすぎるぅぅぅぅ!」 「あ、赤ちゃんたちがああああ!」 それあるを覚悟してはずなのに、その惨状を見ては悲しみのあまり叫ばずにはいられなかった。 「ゆぅ、ごめんね、みんな、まりざが、ぼっとはやぐ気付いていだら」 長女まりさが涙声で言いながら、何度も赤ゆっくりたちの死骸に謝っているのを、他のゆっくりたちが慰めた。 れみりゃに騙されたことに一番最初に気付いたのは、やはり群れで一番賢い長女まりさであった。れみりゃはもうここにおらず、子供たちがいるおうちを襲撃するつもりかもしれない、長女まりさがそれを告げた時、ゆっくりたちはパニックを起こしかけた。皆、自分の子供がいる。兵隊ゆっくりである前に親ゆっくりなのだ。 とにかく戻ろう、と長女まりさが言い、長も同意した。もし違ってもいい、とにかく戻ろう。とにかく子供たちの所へ戻ろう。むしろ、この予想が間違っていて子供たちが無事だった方がいいよ、まりさの予想は間違って欲しいよ、長女まりさの言葉に皆強く頷いた。そして、祈りながら、長女まりさの予想よ外れてくれ、と祈りながら全速力でゆっくりしないで戻ってきたのである。 「ゆ゛、ゆ゛るざないよ゛ぉぉぉぉ!」 長まりさの、血涙ならぬ餡涙くだるがごとき怒りの形相。 「れ゛み゛り゛ゃ゛、ゆ゛っぐりごろじてやるぅ゛!」 群れの皆はそれに同調して咆哮する。 「うー、こわいこわいどぉー」 森に響き渡る怨嗟の声を聞きながら、れみりゃは言った。完全に小馬鹿にしているようで、実際しているのだが、その一方で、れみりゃは決して油断していない。あの恨みの力は恐れるべきだ。恐怖するに値する。 れみりゃは油断しない。油断するなと教えられた。母は、油断したために殺されたのだから。 「れみりゃはゆっぐりしないんだどぉ」 ゆっくりとは、油断だ。だから、れみりゃはゆっくりしない。 れみりゃがゆっくりするのは、死んだ時だけだ。 「ここまで来れば大丈夫だどぉ」 群れの集会場から、十分に離れた木の上に降りて、太い枝の上に腰掛ける。 そろそろ、夜が近い。 「少し寝てから、こうげきさいかいだどぉ」 本来れみりゃは夜行性だ。夜という舞台でこそ十分に実力を発揮する。 しかし、しっかり寝ておかなければ、いくら本領発揮の夜といえども十二分に力は出せない。 「寝る前にお食事するどぉー」 ポケットに手を入れて先ほど捕獲しておいた赤ゆっくりを取り出す。とりあえず最初に掴み出したのはれいむ種だった。 「ゆぴぃー、ゆぴぃー」 ぐっすりと寝ていた。世界一脳天気な生き物といわれる赤ゆっくりの面目躍如である。どんなに恐ろしいれみりゃに捕まっても、その姿が見えなくなってゆらゆらと揺られているとあっさりとおねむーなのである。 「いただきまーす、だどぉ」 構わず、れみりゃは赤れいむを口に放り込んだ。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ?」 さすがに目を覚まして状況を確認しようとしているらしいが、何が何だかわからないだろう。 「ゆぎゃっ」 奥歯で押し潰されて、れいむは静かになった。それからほんの少しの間だけ生きてはいたようだが、すぐに完全に咀嚼されて絶命した。 「うー、もう二つあるんだどぉ、あまあまー」 次に取り出したのは赤まりさ。これもゆぴぃー状態である。両親が見れば「とってもゆっくりしているね!」と言うに違いないゆっくりした寝顔である。 「あーん」 しかし、一応同じゆっくり種とはいっても、捕食種は通常種とは違う美的感覚で生きているので、その寝顔をゆっくりしているともかわいらしいとも思わずに、ただの食料として口に入れた。 「ゆゆっ? きょきょはどきょ?」 やはり、口の中で目を覚ましてまりさは、自分の置かれた状況を確認しようとするが、このまりさは先ほどのれいむよりも聡明なのか、すぐに何があったかを思い出した。 「ゆぅぅぅ、まりしゃ、れみりゃに捕まっちゃったんだ! ゆえぇぇぇん!」 記憶力が鳥以下、特に赤ゆっくりは本当に刹那に生きていると評される生物としては、相当に頭がいいと言っていいだろう。きっとこのまま育てば、長女まりさのような賢いまりさになるだろう。だが、もう捕食種の口の中なのである。 「ゆっ、おきゃーしゃん! おきゃーしゃんがたしゅけてくれたんだね! そういえばきょきょはおきゃーしゃんのおくちのにゃかだよ!」 もう、そう思い込むことで自我の崩壊を救っているのか、赤まりさはおきゃーしゃん、おきゃーしゃん、と嬉しそうな声を上げる。 「うー、おきゃーしゃんだどぉ」 れみりゃ以外のなにものでもねえじゃねえか、と言うしかない言葉使いで母を名乗るれみりゃに、まりさはゆゆぅとおめめを輝かせた。 「おきゃーしゃーん! ちゃすけてくれてありがちょー!」 「うー、おきゃーしゃんはお腹空いてるからたーべちゃうぞー」 舌で赤まりさを奥歯の上に追いやって、遠慮なく噛み潰す。 「おきゃーしゃん、にゃにするにょー! ちゃべないでえええええ!」 「うー、うるさいんだどぉ、おきゃーしゃんは疲れてあまあまが欲しいんだどぉ」 「おきゃーしゃん、にゃんでぇ、ゆ゛ぅぅぅ」 「うー、ちょっとかわいそうになってきたんだどぉ……」 「もっど、ゆっぎゅりちたがっだ……」 「うー、実はおきゃーしゃんじゃなくてれみりゃだどぉ、おきゃーしゃんは赤ちゃんを食べたりしないんだどぉ」 「ゆ゛……ぅぅぅ……」 「うー、これでおきゃーしゃんに食べられたんじゃないとわかって、ゆっくりできるどぉ。うー、いいことしてしまったどぉ」 いいこたねえよ! と突っ込むものが誰もいないので、れみりゃはしばし自らの善行に酔っていた。 「うー、さいごの一個を食べて寝るどぉ」 最後は、赤れいむであった。先ほどの赤まりさの断末魔によって起こされたのであろう。目を覚ましてガタガタ震えている。 「ゆ゛ー、やべちぇね。でいむおいちくにゃいよ」 無駄とわかっていつつも、必死に懇願する。 「うー、食べ過ぎるとおなかぱんぱんになって動きがおそくなるんだどぉ」 と、いうことを咲夜に教えられたのを今思い出した。 「少し物足りないぐらいでちょうどいいんだどぉ、こいつは食べるの止めておくべきか、悩むんだどぉ、おなかの具合はびみょーなとこなんだどぉ」 れみりゃの独り言に一抹の希望を抱いた赤れいむは、ここぞとばかりに喚き立てる。 「にゃやむことにゃいよ! ちゃべないほうがいいよ! れいむおいちくないち、ちゃべるとおにゃかこわすかもしんにゃいよ!」 「うー、ん」 「ちゃべないほうがいいよ! ちゃべないほうがいいよ! じ、じちゅは、れいみゅのなかはうんうんなんだよ!」 もう必死も必死、とうとう自らをクソ袋呼ばわりである。 「うー、半分だけ食べるどぉ」 がぶりと、後頭部を齧りとって、残った部分は捨てた。 「うー、よく噛んで味わうんだどぉ」 れみりゃが最後のあまあまを飲み込んで眠りについた頃、下の方では、奇跡的に柔らかい草がクッションになって生き延びた前半分だけのれいむが、蟻にたかられてめでたく食物連鎖の輪の一部になろうとしていた。 「や、やめちぇね、ありしゃんやめちぇね! れいむ、うんうんだよ、うんうんでできてりゅんだよ!」 アイアムクソ、と叫びながら、赤れいむは蟻さんの餌になって死んだ。 (4へ続く)
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フルタゲの意識を変えてみる パックマンのフルーツを飛び道具として考えるのではなく、チャージすることで相手に接近戦を強いる圧力として使えるのではないかと思う。 使う側の意識ではあまり感じないが、相手からするとベル、ギャラクシアンを生成、キャッチされるとかなり面倒である。 この事から恐らく相手はフルタゲをダッシュガードするかして接近戦を仕掛けたくなるはずだ。 これが通用しない相手には普通にフルーツ生成、キャッチを行えば良いだけなので強い行動に感じる。 つまり何が言いたいか。フルーツターゲット溜めは目的にするな。 むしろ、相手に圧をかける手段なのである。 ただし、フルーツを溜めている間に接近された場合、間違ってもフルーツ投げは行わないように。基本、ダッシュガードかジャンプかで避けられる。リターンの割にリスクが大きすぎるのであまり強い行動とは言えない。 消火栓を超してくる相手にチェリー、イチゴを撒いておく これは机上論ではかなり強い行動である。リスクがほぼ0でリターンも大きく、同時にフルーツキャッチも狙える。 しかし 狙いどころが分からない。マジで狙いどころが分からない。というのもあって使っていないが、使い方を模索してみたいと思っている。うーん、でもベル溜めてる方が強いような気もするしなぁ……… 要検討! 復帰時にパワーエサを殴らせない パワーエサには食らい判定がある。パックマンが食べるという話ではなくて攻撃を受けるとエサが落ち、ヒットストップが起きるという事だ。これの何がいけないってヒットストップが起きている所に自身が突っ込む事だ。リドリーの空NやCFの空下など、崖外て食らうと即死の技を受けやすいのでエサだけは殴らせないよう一番大きな弧を描くように復帰することをオススメする。
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いままで書いたもの とかいはコーディネイター 植物型ゆっくり 魔理沙とゆっくり~邂逅篇~ 取替えられた子 お前なんかドスじゃない ばーさすちれーでん ねるねるねるゆ ゆっくりを飼うって難しい ゆっくり分身 れいぱー 公然猥褻れみりゃ 決死の虐待 虐待お兄さんの冒険 人外魔境の森編 ゆっくりさん ざぁ……ん。 美しい潮の音に眼が醒める。 瞼を開き身を起こす。視界一杯に蒼い空と海、白い雲と砂浜が広がり 海風が頬を撫でた。 「……」 「せ~んぱ~い」 どうしてこうなったのだろうと考えていると。背後から声が響いた。 後輩の声だ。首をぐるりと回してそちらを向くと、やはりそこには奴 の姿があった。 ぶんぶんと手を振って、 こちらに向かって走り寄り、 輝くような笑顔を浮かべ…… そして、一糸纏わぬ姿で。 「気色悪いもん見せんなぁぁぁ!」 「ぐげぺっ」 鳩尾に右拳を捻じ込むと、後輩が口から気色悪い液を吐きながら崩れ 落ちた。 虐待お兄さんの冒険 異形達の海岸編 「さて、言い訳を聞こうか」 日の光の暑さから逃れるために避難した岩陰で、俺は地面に横たわる 後輩を見下し、脚でやわらかい背中をぐにぐにと踏みつけながら問い ただした。 「緊縛プレイだなんて、そんなマニアックすぎますよぅ」 「解った、簀巻きのまま砂に埋まりたいんなら俺は止めない」 「えぇそうです。例によって僕が連れてきました」 その辺から拾ってきたスコップを砂浜に突き立てると同時に、後輩が 不満そうな膨れっ面でそう言い、そのまま言葉を続けた。 「しかしそれは僕だけの責任じゃありませんよ!」 「また俺の責任か? 俺はこの前の事を警戒して迂闊な発言は慎んだ はずだぞ」 「いえ、あの人の責任です」 そう言い、後輩は顎で右の方を指し示した。俺はそれを追って視線を ずらす。 そこには、一匹のゆっくりれいむを抱えてぽかーんと呆ける一人の青 年の姿が。 「お前ら何してんだ? そういうプレイか?」 「ゆ゛ぅーーーー! なわざんはゆっぐりでぎないーーーーー!!」 何か嫌な事でも思い出したのか急に暴れだすれいむ。 俺は後輩に視線を戻す。 「サークルのラーメン(渾名)じゃないか……あいつが?」 「そう、あれは三日前の事です」 そして、後輩は遠い眼で語り始めた。 『先輩、海と地下強制労働施設どっちが好きですか?』 『どっちも嫌いだバーカ! 俺はそんな所絶対いかんぞ!』 僕がそう言うと、先輩は涙目で叫び、部室から走って出て行ってしま った。相変わらず情緒不安定な人だ。 『なんだあいつ、急に走って出て行って……』 『あ、センパイ』 それと入れ違いにセンパイが部室に入ってきた。 この人はラーメンが大好きで大好きで仕方がなく、毎日三食ラーメン を食べているという噂まであるちょっと頭がアレなセンパイだ。 丁度いいと思い、僕はセンパイに先程の質問をする事にした。 『ところでセンパイは海と地下強制労働施設どっちが好きですか?』 『海だな。なんたって地下強制労働施設にはラーメンの材料になるも のは無いが、海には新鮮な魚介類があるからな』 センパイは選択肢に対するツッコミも無しに即答した。 『センパイは本当にラーメン好きですねぇ』 『あぁ。浴びるようにラーメンを食べるのが趣味だ』 『またまたぁ、いくらなんでも大袈裟ですよぉ』 『ハハハハハ』 僕がそう言うと、センパイは腕を組んで爽やかに笑い、 『大袈裟?』 そして、不思議そうに首を傾げながらそう言った。 「って事がありまして」 「関係のない俺をどうして連れてきた?!」 笑いながら語る後輩の胸倉(のあたりの縄)を掴み前後に揺さぶりな がら怒鳴りつけた。 「だって先輩がいないなら僕は海なんか行きたくありませんし」 後輩は不満そうな顔で言う。 「そうなると俺も一人で海は寂しいし」 そこにラーメンがひょこっと出てきての支援。後輩は得意げな表情を 浮かべ、びしっとこちらに指を突きつけた。 「ほら、先輩は必要じゃないですか」 「海に行くのを諦めろ!」 その手をべちんと叩き落し、二度と縄から抜け出せないよう厳重に縛 りつける。当然、その間も言葉は休めない。 「それと寝てる間にベッドごと運び出すな! この前森からベッドを 家まで運ぶのにどれほど苦労したと思ってる?!」 「配送業者に頼めばいいのに」 「ですよねー」 「貧乏学生舐めんな」 まるで漫画みたいに見事な簀巻きになった後輩を蹴飛ばしながらそう 吐き捨て、地面に転がるそれに腰掛けながら大きく溜息をつく。 「あー、もう。いい。疲れた。付き合ってやるから今回限りにしろよ」 「「わーい」」 嬉しそうに声を上げる二人。俺は腰を上げ、さっき地面に突きたてて おいたスコップを手に取りながら、後輩に告げた。 「ただし身の安全の確保のためお前は縛ったままここに埋めて行く」 「リアルゆっくり?」 地面から首だけ出した後輩の声が、辺りに虚しく響いた。 「ゆ゛あ゛ーーー! うみのいえはゆっぐりでぎないーーーー……」 遠くかられいむの泣き声が聞こえてくる。その声のゆっくりしてなさ に、れいむを置いてきた海の家を身ながら、ラーメンに声をかける。 「なぁ、お前のれいむあっちで凄い泣いてるけど」 「あぁ。れいむはツンデレなんだよ」 「先輩と同じですねー……」 一体どれだけ地獄耳なのか、埋められた場所から後輩が口を挟んで来 た。俺は迷わず聞こえない振りをしながら、クーラーボックスに腰掛 けて崖の上で竿を握るラーメンに話しかける。 「で、お前の目的は釣りか?」 「あぁ。ここで釣った新鮮な魚介類でとった魚介スープで究極のラー メンを作ってれいむに食べさせてやるんだ。きっといつもみたいに泣 いて喜ぶぞ」 「毎度思うんだけどお前のれいむ、あれ本気で嫌がってるんじゃない か?」 「んなわけないだろ。れいむはラーメン大好きだよ」 背を向けたままでそう答えるラーメン。その言葉に、確かな確信めい たものを感じて、俺は思わずラーメンに尋ねる。 「どうしてそう思う」 ラーメンは糸を海に垂らしながら、首だけこちらに向けて口を開いた。 「俺はラーメン大好きだ」 「あぁ」 俺は相槌を打って頷く。 「そして俺はれいむも大好きだ」 「あぁ」 先程と同じように相槌を打って頷く。 「つまり、ラーメン=れいむ。れいむはラーメンなんだ」 「……あぁ?」 うっかり先程と同じように相槌を打とうとして、明らかにおかしいも のを感じて思わず語尾が上がる。そんな俺の様子に気付かないまま、 ラーメンは視線を空の方へ向け、言葉を続けた。 「自分が嫌いな奴は可愛くない。だがれいむは可愛い。つまりれいむ は自分大好き。自分=れいむ=ラーメン。だからラーメンも大好きな んだよ」 ラーメンはそんなわけのわからない事を極当たり前の事のようにすら すらと述べ、そして再びこちらを向く。 「わかったか」 「俺には理解できない事がよくわかった」 「よかったな」 と、その時ラーメンの竿がびくりと反応する。 「ムッ! 引っかかったぞ!」 「根がかりじゃねーか?」 「いや、違う! こいつは大物だ!」 ラーメンはそう言うと立ち上がって竿と格闘し始めた。確かに見てい てもかなり強く引かれているのが解る。 そして、ラーメンは数分に及ぶ格闘の末、 「フィーッシュ!」 と叫び、竿を思いきり振り上げた。水面から黒い影が飛び出して、 「あ゛ーう゛ー!!」 と、泣いているような呻き声を上げながらべちょりと地面に落ちた。 俺とラーメンは、極めて特徴的な帽子に釣り針を引っ掛けたそれを 見下ろす。 「すわこだ」 「すわこだな」 「あ゛ーう゛ー」 地面に打ち付けた顔が痛いのか逃げるでもなくこちらに非難の眼差し をむけるでもなく、そこに座り込んで嗚咽を漏らしている。 ラーメンはてくてくとその背後に歩み寄って頭を鷲掴みにすると、腰 かけていたクーラーボックスを開いてぽいっとそこにすわこを放り込 み、蓋を閉めてまたそこに腰掛けた。 「……スープにするのか?」 「何事も挑戦だ」 ぁーぅー…… クーラーボックスの中から悲痛が声が漏れ出してくるが、それを気に する者は残念ながらここにはいなかった。 「ムッ! また掛かった!」 と、ラーメンが声を上げると同時に竿が大きくしなった。 「随分調子いいな」 「こいつでかいぞ! にしては随分大人しいけど……」 ラーメンの言う通り先程のように竿の先が大暴れするような事はなく 、 リールを巻き取ると素直に上に上がってきた。 そして、水面にぽちゃりと影が浮かぶと同時に、 「フィーッシュ!」 ラーメンは思い切り竿を振り上げた。んな事する必要ないと思うが、 きっとやらなきゃいけないワケでもあるんだろう。 そして、吊り上げられたその影は先程のすわこのように綺麗な放物線 を描き、そのまま地面に吸い込まれ―― 「およよ?」 その軌道の途中で急停止し、小首を傾げながら戸惑った声を上げた。 俺は思わず声を上げた。 「ゆっくりいくじゃねーか」 そこにいたのは、ふわふわと揺れる不思議な羽衣を纏った希少ゆっく りのゆっくりいくであった。通称サタデーナイトフィーバー。 ラーメンはつかつかといくに歩み寄ると、羽衣をわっしと掴んでまた クーラーボックスの中にぶちこんだ。そしてクーラーボックスに尻を 乗せて、一言。 「フカヒレスープゲット」 「ペットショップで6桁つくゆっくりを食う気か」 「手作りのラーメンの価値……priceless」 と、まるでいい話っぽい英単語を使っている隙にまた竿が大きく揺れ た。ラーメンは思わず立ち上がって踏ん張る。 「ムッ! また掛かった!」 「三回連続ゆっくりとかやめろよ?」 「ハハッ、まさか」 ラーメンは笑いながらそう言ったが、俺にはどうもフラグが立ってい るように思えて仕方がなかった。 「フィーッシュ!」 そしてラーメンが勢い良く竿を振り上げると、やはりというかなんと いうか。またもや丸くて黒い影が空に待った。どう見ても魚のシルエ ットじゃない。 またか、と思いそれを見上げたまま溜息をつこうとして……次の瞬間、 背筋に氷柱をブチ困れたような怖気に襲われた。 その黒い影は、見るものを恐怖と混乱に陥れる恐ろしい微笑を浮かべ ながら、言った。 「にーとーりー♪」 「ギャァァァァァァ!! バケモノォーーー!!」 俺は思わず飛んできたそのゆっくりにとりの顔面に渾身の右ストレー トを叩き込んだ。 「うわぁビックリした! 何だお前?!」 俺の突然の凶行に驚いたラーメンが声を上げるが、俺はにとりの顔面 を殴った時に手についたぬるぬるした液体を地面に擦り付けるのに夢 中で全く耳に入らなかった。 「あ、逃げられちまったじゃねーか。何すんだよお前」 「五月蝿い! あんなクリーチャーがいきなり水面から飛び出して来 たら誰だって叫ぶわ! 俺だって叫ぶ!」 獲物から外れた釣り針を掲げるラーメンに向かってそう吐き捨てると、 ラーメンは呆れたように溜息をついてまた糸を海面に垂らした。 その背中が俺を非難しているように見えたが、俺は人として当然の事 をやったまでなので反省する気はさらさらなかった。 と、そこでまたもや竿がびくりと震えた。 「ムッ! また掛かった!」 「やめろよ! これ以上バケモノを俺に見せてくれるなよ!」 「あー、いや。なんか異様に引きが弱い。こりゃ逃げられたか……も しくはとんでもない小物だな」 言いながらラーメンは竿を手放し、獲物に引かれるままにする。その 引きはいくよりは激しいものの、すわこや先程の魔物と比べれば明ら かに劣るものだ。見る限り、手ごたえもあまりない。 先の3匹の時とは打って変わってローテンションでリールを巻き上げ るラーメン。影が水面に映り、竿を引っ張り上げる時も何も口にはし なかった。 糸に引っかかったそれが白日の下に晒されると同時に、それは声を上 げた。 「やめてね! やめてね! まりさをはなしてね!」 「まりさつむりか」 「珍しいな」 それは、貝殻を背負ったゆっくりまりさの突然変異種、まりさつむり であった。ちなみに、突然変異種なのに何故か同じ姿のまりさがたく さんいるのは謎である。 「どうしてこんなことするの?! まりさはにとりといっしょにゆっ くりしてたのに! ゆっくりはなしてね! まりさおうちかえる!」 まりさは糸の先でぷーらぷーらと揺らぎながら、必死にこちらに非難 するような視線を向けて声を上げる。 ラーメンはすっくと立ち上がると、貝殻から針を外してぽいっとクー ラーボックスに放り込んだ。 「ゆー?!」 「あ゛ぅっ!」 「およっ?!」 中でぶつかったのか、すわこといくが声を上げたが、ラーメンがすぐ に蓋を閉めると声はほとんど聞こえなくなった。 俺はクーラーボックスに腰をかけたラーメンに声をかけた。 「やっぱり食うんだな」 「当然だ」 奴の返答は短かった。 「ムッ! また掛かった!」 ラーメンが言うと、握っていたその竿がぎしぎしと異様な音を立てて 軋み始めた。 「どうせまたゆっくりだろ? 今度は何だ?」 「いや、ちょっ……重ッ! 何だこれ?! 手伝ってくれ!!」 みしみしと今にも折れそうな異音を立てる。確かにただ事ではない。 俺は嫌々ながらも、なんか面白そうなのでラーメンの背後から手を回 して竿に手を添える。 そして、十数分にも及ぶ格闘の末、見事吊り上げた。 「フィーッシュ!」 巨大な影が頭上を飛び越え、背後でがごんと大きな音を立てた。 「「……がごん?」」 釣りの効果音とは余りにもかけ離れたその音に、俺とラーメンは声を 揃え、ぐるりと振り向いた。 「zzz……」 「……ぞ?」 するとそこには、木製の小船の上でいびきを掻いて眠っている、赤髪 ツインテールのゆっくりと、なにやらごちゃごちゃした帽子を被って 呆然とこちらを見上げてくる、緑髪のゆっくりが佇んでいた。 「ゆえーきとゆこまち……だな……」 「つか船ごと釣るか普通……」 さすがにこれをクーラーに入れるわけにもいかず、俺達はそいつらを 前に途方に暮れた。 「結局魚は一匹も連れなかったな」 ずりずりと音をたてる小船を押しながら、俺は言った。 「いや、でも変わりにこれだけゆっくりがつれたんだ。良しとするさ」 ざりざりと音を立てる小船を引っ張りながら、ラーメンは答える。 「やめるんだぞ! おふねをはなすんだぞ!」 そしてそう言いながら俺達についてくるえーきと、舟に乗せたクーラ ーボックスの中でゅーゅーと声を上げるゆっくり達。あと寝てるこま ち。 ラーメンはそれらに全く耳を貸さずに瞳を輝かせている。 「そいつらでスープ作ったらこれ以上無くカオスな物ができると思う んだが」 俺がそれらの味が混ざった汁を想像してしまったせいで浮かんできた 吐き気を堪えながらそう言うと、ラーメンはくるりと振り向き、いい 漢の顔で言った。 「男は度胸。なんでもやってみるのさ」 「あ、先輩! 酷いじゃないですか! 僕を縛ったまま置いてイっち ゃうなんて!」 と、ラーメンが借りた厨房の傍に引きずってきた舟を置いた所で後輩 がそう言ってきた。どうやら埋められたのを抜け出してきたらしい。 俺は、何を言ってるんだろうこいつ、と思いながら、それを口にする。 「縄抜けすりゃ良かっただろ」 「それもそうですね」 後輩は何度か身を捩ると、あっさりロープから抜け出した。 「さて、さっそくスープを作るか」 外で奴と離れた俺は、ゆっくりが5匹ほど入ったクーラーボックスを 前にしてそう呟いた。ゆっくり達はそれぞれ不安げな表情を浮かべて いる。……一匹、眠っているものもいるが。 「ゆゆっ? おにいさんなにしてるの? そのおなべなに?」 と、そこへ愛しのマイファニーれいむが現れた。その麗しさは立てば 芍薬座れば牡丹、跳ねる姿はゆりかもめという具合にキュートでファ ンシーだ。萌え死ぬ。 俺は口の端からだらだらと零れる涎を袖で拭い、れいむを抱きかかえ 言う。 「このゆっくり達をお風呂に入れてあげるんだよ」 すると、突然れいむの表情が一片した。 その時、れいむはあの日の事を思い出していた。 『よぉーしれいむ。今日は一緒にお風呂に入ろう!』 お兄さんがなにやら興奮した様子でそう告げる。 『ゆ? おにいさんおふろってなに?』 れいむはお兄さんが何を言ってるのかわからないからお兄さんに聞い てみた。お兄さんはれいむを優しく抱きかかえてくれて、それでこう 言った。 『お風呂っていうのはね、暖かいお水に入って体を綺麗にする場所の 事だよ!』 『ゆゆっ?! おみずはゆっくりできないんだよ! れいむとけちゃ うよ!』 怖い事を言うお兄さんの事が怖くなって、れいむはお兄さんの腕から 逃げ出した。でもお兄さんは笑いながら言った。 『大丈夫大丈夫、すぐ出ればとけないから』 『ゆ……ほんとう?』 『お兄さんがれいむに嘘ついたことあったかい? さ、早く入ろう』 何回かあるよ、と言おうとしたけど言うよりも早くお兄さんはれいむ を連れてその『おふろ』に向かっていった。 お兄さんにされるがままにしていると、ふとおはなにすごくゆっくり できる何処かで嗅いだ様ないい臭いが滑り込んできた。 『ゆゆーん! あったかくていいにおいがするよ!』 『ほられいむ、見てごらん!』 そう言って、お兄さんは扉をがらがらーっとあけた。ここがお風呂。 凄くいい臭いでゆっくりできそう。 ガガッ と、そこで頭の中にノイズのような物が走った。 なんだろう、なんだかゆっくりできない気がする。 どうして? こんなゆっくりできそうなのに。 そう、こんなにおいしそうでゆっくりできる臭…… あれ、待って。 お い し そ う な に お い ? れいむが考えてる間にも、お兄さんは言葉を続けた。 そして、答えは出た。 『ラーメン風呂』 『……ゆ?』 ラーメン。その単語を聞くと同時に、あの時に思い出が蘇る。 ツルツルシコシコの麺が髪に絡みつく感覚。熱くてぬるぬるする脂が 全身にまとわりつく感覚。 そして、とてもおいしそうな臭いに全身が包まれる、あの感覚。 そうだ、これはアレと同じ臭いだ。 ようやくそれを思い出したれいむの視界に、風呂桶一杯のラーメンが 映ると同時に。 『そぉい!』 れいむはお兄さんの手によって、ラーメン風呂に突っ込まれていた。 「ゆ゛ゎーーーー!! おふろはゆっぐりでぎないーーーーー!!」 「あぁ?! れいむ?!」 何を想ったのか、れいむは泣きながら俺の腕の中から飛び出し、何処 かへ走り去ってしまった。その姿もまた可愛らしい。 「ふぅ……さて、誰から煮込もうか」 気を取り直してクーラーボックスと向かいあう。すると、クーラーボ ックスの中では熾烈な戦いが繰り広げられていた。 「やだよ! まりさはおふろいきたくないよ! こまちたちがいって ね!」 「こまちとえーきもだぞ! おふろはこわいんだぞ! すわこがいく といいんだぞ!」 「あーうー!」 「ゆぅー?! どうしてまりさがいけなんていうの?! ひどいこと いわないでね?!」 「まりさだってさっきこまちにいけっていったんだぞ! だからまり さがさきにいくといいんだぞ!」 「どぼじでぞうなるのぉーーーーー?!」 どうやられいむがお風呂と聞いて逃げ出したせいでお風呂が怖い物と 思い込んでしまったらしい。俺はただ熱湯で茹でようとしてるだけな のに悪魔でも見るような目でこちらを見てくる。心外だ。 「「「ゆっぐりでぎないーーーーーーーーーー!!!」」」 しかし、こう嫌がられるとどうもやり辛い。最終的には全員煮込むと しても、誰からやるか。 俺が腕を組んで唸っていた、その時であった。 「ここはわたしがいきます」 突如、クーラーボックスの片隅に佇んでいたいくがきりっとした顔で そう告げた。 驚く俺とゆっくり達。いくはその場の全員の視線を集めながら、ふよ ふよと俺の顔の前まで飛んでこう言った。 「いくはくうきのよめるゆっくりです」 「「「きゃーいくさーん」」」 思わずゆっくり達から歓声が飛ぶ。ゆっくりなのに空気を読んで自分 から志願するとは見上げた根性である。 俺は感動しながらいくを寸胴鍋の前まで連れてくる。凄まじい熱量の 蒸気の上がる鍋を前に、さすがの空気の読めるいくもたじろいだ。し かし、頭をぷるぷると振ると再び表情を引き締め、「こんなのちっと もあつくないです」的な言葉を言ってクーラーボックスのゆっくりを 元気付けた。 そして俺がいよいよ飛び込むか、と思ったその時、何故かその場で語 りだした。 「わたし、このおふろからでたらおやまのそーりょーむすめさまにず っといっしょにゆっくりしようねっていいにいくんです……」 それを聞き俺は思った。それなんて死亡フラグ? 「それできれいなのはらをふたりでいっしょにかけまわったり、がん ばってあつめたごはんをいっしょにむーしゃむーしゃしてしあわせー したり……」 そう想う俺にも構わずいくは、幸せそうなどこか遠い所にいる誰かを 見るような、そんな目をしながら言葉を続けていく。 「それでふたりでずっとなかよくしあわせにくらして、いつかすっき りもしておちびちゃんもたくさんつくって、それから――」 「さっさと入れ」 「およよーーー?!」 痺れを切らした俺がいくを鍋に突っ込む。いくは一度完全に水没して から、慌てて水面まで浮き上がって叫んだ。 「あづいーーーーー!!」 熱湯であるからして、当然である。 「あづい! あづいでず! むりでずーー! ごべんなざいーーー! いぐはほんどうはぐうぎのよめないゆっぐりなんでずーーーーーー! ごべんなざいずるがらだじでぐだざいーーーーーー!!」 端も外聞も掻き捨て、くうきがよめるというプライドも捨て去り、熱 さのショックから自分が飛べる事まで忘れていくは必死に訴える。 そして、涙で瞳を潤ませながらこちらを見上げて、懇願した。 「おねがいだがらゆっぐりざぜでぐだざ」 俺は手に持っていた寸胴の蓋を閉じて、ゅーゅーと小さい呻き声が漏 れる寸胴に背を向ける。 そして、いくの余りの取り乱しぶりにクーラーボックスで縮み上がっ ていたゆっくり達の中から適当に一匹を掴み上げた。 「あ゛ーう゛ー!」 当たったのはすわこだった。 俺は開いている寸胴の鍋に向かってすわこを投擲する。ぼちゃんと音 を立ててお湯の中に叩き込まれ、先程のいくと同じように慌てて水面 まで戻ってきた。 「あ゛ーごぼぉっ?!」 そして苦しそうな呻き声を上げると同時に、何故か凄まじい勢いで鍋 の底へと潜っていった。帽子だけを残して。 その不可思議な行動に呆然としている俺の前で、鍋の水面ギリギリを 漂っていたその帽子が大きく溜息をついた。 「ふぃー。ずんぼーやなかったらそくしするところやったでぇ」 そう言って舌を使って額の汗を拭うすわこの帽子。 ここは、突っ込む所なのだろうか。 と、その時突然帽子がぐらぐらと揺れ、鍋の底から一つの影が浮き上 がってきた。すわこだ。 「ゆ゛ぶはっ! あ゛ーう゛っ?!」 水面に出て大きく息を吸うと同時に、また一気に鍋底まで押し戻され るすわこ。その一瞬に、帽子から何か棒的な物が伸びたのが見えた。 「おとなしゅうせんかい。ばらんすとれへんやろ」 「ごぼがぼごぼ」 そう言ってあぶくの上でぐりぐりと体をねじる帽子。 俺は、こんな時どんな顔をしたらいいかわからなくなり、ただただ無 言で鍋の蓋を閉じた。 「ちょっにーちゃんふたしめんといてーなあつーてしゃーないわー」 「がぼごぼごぼ」 何故かやたらとよく通る声が鍋からは響いていた。 聞こえないふりをしながらクーラーボックスに戻ると、そこではえー きが必死にこまちに声をかけていた。 「こまち! おきるんだぞ! このままじゃゆっくりできなくさせら れるんだぞ!」 「zzz……」 どうやら寝ているこまちを起こして一緒に逃げようとしていたみたい だ。これが友情パワーか。俺は感動し、胸に熱いものを感じた。 「はいはいこっちおいでねー」 「ご、ごまぢぃーーー!」 が、それはそれこれはこれ。眠っているこまちをむんずと掴んでそそ くさと鍋の前に戻ってこまちをお湯にぶちこんだ。 「やめるんだぞ! ごれじゃごまぢがゆっぐりでぎないぞ!」 その後ろからえーきが付いて来て必死にそう訴える。 俺は足元で必死にぽよんぽよんと跳ねるえーきを掴んで、鍋の中が見 える位置まで持ち上げた。 「zzz……ゆっくりしたゆだなーっとー……zzz」 そして鍋の中で心地よい寝息を立てる小町を見せて、一言。 「案外気持ち良さそうだけど」 「うぞはだめなんだぞ! ぐろだぞ! ぎもぢいいわげないんだぞ!」 「グロくはないと思うけど」 「ぐろじゃないぞ! ぐろなんだぞ!」 「グロなんじゃないか」 「ぐろじゃないんだぞー! ぐろだっでいっでるんだぞーーー!!」 泣きながら必死にグロいグロいとR-15指定を訴えるえーき。 そのえーきに対して俺は、 「あーもううるさいお前も入ってみろ」 口で相手をするのが面倒になり、こまちの浮かぶ鍋に叩き込んだ。 ばっしゃーんと音を立てて鍋の底まで沈み、水面にあぶくをたてる。 どうやら元が水棲ではないから浮かんでくるのに手間取っているらし く五秒ほどもその状態のままで、六秒目になりようやく水面に顔を出 した。 「やっばりあづいんだぞーーー?!」 「あついおふろはえどっこのたしなみさねー……zzz……」 「えーぎはぬるいほうがよいぞーーー?!」 鍋の中で仲良く会話をするえーきとこまち。というか、こまちは本当 に眠っているのだろうか。 「ひゃくかぞえたらでましょーねー……zzz……」 「はやぐでだいがらゆっぐりがぞえるんだぞ! いーぢ! にーい! だぐざーん! だぐざーん! だぐざーん! だぐざーん! だぐざ ーん! だぐざーん! だぐざーん! だぐざーん! だぐざーん!」 こまちに言われた通り必死に数を数えるえーき。俺は涙ぐましい努力 をするその姿に感動しながら寸胴の蓋を閉めた。 『ひゃぐっでどのぐらいなのがわがらないんだぞー?!』 閉ざされた寸胴鍋の中から悲痛な叫びが上がった。 「さて、残りは一匹だけだな」 俺は額を伝う汗を袖で拭いながらそう呟き、クーラーボックスに一匹 だけ残っているまりさを見下ろす。 「ゆっくりにげるよ! ゆっくりにげるよ! おにいさんはそこでゆ くりしててね!」 まりさは、クーラーボックスから抜け出そうと必死にクーラーボック スの壁面を這い上がろうとしては、重力に引かれて地面に落ちるのを 繰り返していた。 俺は「ゆぅー?!」といいながら転がり落ちたまりさに無言で手を伸 ばすと、その貝殻をむんずと掴んで持ち上げた。 「ゆっ! すごい! おそらをとんでるみたい!」 急に高くなった視点に驚き、まりさはそう言ってつぶらな瞳を輝かせ る。そして、何か凄い事に気付いたような顔でこう言った。 「まりさはおそらをとべたんだね! きづかなかったよ! このまま ゆっくりとんでにげるよ!」 とんだ勘違いである。 俺はまりさを摘み上げたまま、てくてくと寸胴鍋に歩み寄る。 「ゆ? そっちじゃないよ! そっちはあつくてゆっくりできないぷ れいすだよ! ゆっくりむこうにいってね!」 焦ったようにまりさはそう言う。そもそも、自分が飛んでると言った のに一体誰にお願いしているのか。 無論、俺は全く聞かずに寸胴鍋に向かう。 「ゆゆぅーーー?! どうしていうこときいてくれないのーーー?!」 ちっとも自分の思い通りにならず、まりさは癇癪を起こしたように怒 り始める。そして不満そうにぷくーっと膨れながら言った。 「もう! いうこときいてくれないならまりさあるいてにげるよ! ここでゆっくりおろしてね!」 と、そこで丁度寸胴鍋の前にたどり着き、俺はぴたりと立ち止まる。 それをどう勘違いしたのか、まりさは急に得意げな顔になった。 「ゆっ! わかればいいんだよ! これからはまりさにさからわない でちゃんという――」 俺は持っていた手を放す。 「ことを――」 そして、ぼちゃんというどうにもあっけない音を立てて、まりさが熱 湯に着水した。 俺はすかさず蓋を閉める。 『あづいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!?!?』 寸胴鍋の中からくぐもった声が響いた。 冷蔵庫にくっついていたキッチンタイマーをセットすると、俺は手近 な椅子に腰掛け、呟いた。 「さて、後はこのまま火にかけて3時間っと……」 そしてテーブルの上に置いておいた週間少年ゆンプを手に取り、人気 漫画のONEPLASE(世界で一番ゆっくりできるプレイスを目指してゆっ くり達が海を旅するというストーリー)を読み始めた。 『『『ゆっぐりでぎないー……』』』 傍らの寸胴鍋からは、そんな力ない声が漏れていた。 「できたぞー」 時刻は八時。 厨房から上機嫌なラーメンの声が響いてきた。 「長かったな」 「そういえばセンパイの作ったラーメンって食べるの初めてですね」 向かいの席に座っている後輩が俺のマイ箸にわさびを練りこみながら そう言った。俺はとりあえずその手に持ったチューブをひったくって 後輩の鼻の穴に突っ込み、握り締めてから言う。 「素材を知ってる側からすればゲテモノじゃないのを祈るばかりだ」 「ゆっくりただいま!」 と、そこへ何処に行っていたのか、ラーメンの飼いゆっくりのれいむ が地面に横たわって鼻を押さえながらごろごろと転がっている後輩を 踏み台にしてテーブルに跳ね上がった。 「おにいさん! きょうのごはんはなに?」 そして、口の端から涎を垂らしながら俺に尋ねてきた。 俺はその質問にそっけなく答える。 「ラーメンだそうだぞ」 「……ゆ?」 突如、れいむの動きがぴたりと止まった。 「へいお待ち! ラーメン一丁!」 それを見計らったかのようなタイミングで現れるラーメン。俺と、鼻 を押さえながら床から起き上がってきた後輩がそちらを向く。 と、同時に。 「そぉい! そぉい! そぉぉおい!!」 ラーメンが、猛々しい雄叫びを共にその手に持っていた海鮮ゆっくり スープラーメンをれいむ、後輩、俺の順に、その脳天目掛けて叩き付 けた。 脳髄に直接叩き込まれたような衝撃。その手並みの余りの鮮やかさに、 俺はラーメンの熱さを感じるよりも早く、意識を喪失した。 芳しい塩の香りだけが、辺りを漂っていた。 おわり 作者:○ーメンぶっかけ祭の人 このSSに感想をつける
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いままで書いたもの とかいはコーディネイター 植物型ゆっくり 魔理沙とゆっくり~邂逅篇~ 取替えられた子 お前なんかドスじゃない ばーさすちれーでん ねるねるねるゆ ゆっくりを飼うって難しい ゆっくり分身 れいぱー 公然猥褻れみりゃ 決死の虐待 虐待お兄さんの冒険 人外魔境の森編 ゆっくりさん ざぁ……ん。 美しい潮の音に眼が醒める。 瞼を開き身を起こす。視界一杯に蒼い空と海、白い雲と砂浜が広がり 海風が頬を撫でた。 「……」 「せ~んぱ~い」 どうしてこうなったのだろうと考えていると。背後から声が響いた。 後輩の声だ。首をぐるりと回してそちらを向くと、やはりそこには奴 の姿があった。 ぶんぶんと手を振って、 こちらに向かって走り寄り、 輝くような笑顔を浮かべ…… そして、一糸纏わぬ姿で。 「気色悪いもん見せんなぁぁぁ!」 「ぐげぺっ」 鳩尾に右拳を捻じ込むと、後輩が口から気色悪い液を吐きながら崩れ 落ちた。 虐待お兄さんの冒険 異形達の海岸編 「さて、言い訳を聞こうか」 日の光の暑さから逃れるために避難した岩陰で、俺は地面に横たわる 後輩を見下し、脚でやわらかい背中をぐにぐにと踏みつけながら問い ただした。 「緊縛プレイだなんて、そんなマニアックすぎますよぅ」 「解った、簀巻きのまま砂に埋まりたいんなら俺は止めない」 「えぇそうです。例によって僕が連れてきました」 その辺から拾ってきたスコップを砂浜に突き立てると同時に、後輩が 不満そうな膨れっ面でそう言い、そのまま言葉を続けた。 「しかしそれは僕だけの責任じゃありませんよ!」 「また俺の責任か? 俺はこの前の事を警戒して迂闊な発言は慎んだ はずだぞ」 「いえ、あの人の責任です」 そう言い、後輩は顎で右の方を指し示した。俺はそれを追って視線を ずらす。 そこには、一匹のゆっくりれいむを抱えてぽかーんと呆ける一人の青 年の姿が。 「お前ら何してんだ? そういうプレイか?」 「ゆ゛ぅーーーー! なわざんはゆっぐりでぎないーーーーー!!」 何か嫌な事でも思い出したのか急に暴れだすれいむ。 俺は後輩に視線を戻す。 「サークルのラーメン(渾名)じゃないか……あいつが?」 「そう、あれは三日前の事です」 そして、後輩は遠い眼で語り始めた。 『先輩、海と地下強制労働施設どっちが好きですか?』 『どっちも嫌いだバーカ! 俺はそんな所絶対いかんぞ!』 僕がそう言うと、先輩は涙目で叫び、部室から走って出て行ってしま った。相変わらず情緒不安定な人だ。 『なんだあいつ、急に走って出て行って……』 『あ、センパイ』 それと入れ違いにセンパイが部室に入ってきた。 この人はラーメンが大好きで大好きで仕方がなく、毎日三食ラーメン を食べているという噂まであるちょっと頭がアレなセンパイだ。 丁度いいと思い、僕はセンパイに先程の質問をする事にした。 『ところでセンパイは海と地下強制労働施設どっちが好きですか?』 『海だな。なんたって地下強制労働施設にはラーメンの材料になるも のは無いが、海には新鮮な魚介類があるからな』 センパイは選択肢に対するツッコミも無しに即答した。 『センパイは本当にラーメン好きですねぇ』 『あぁ。浴びるようにラーメンを食べるのが趣味だ』 『またまたぁ、いくらなんでも大袈裟ですよぉ』 『ハハハハハ』 僕がそう言うと、センパイは腕を組んで爽やかに笑い、 『大袈裟?』 そして、不思議そうに首を傾げながらそう言った。 「って事がありまして」 「関係のない俺をどうして連れてきた?!」 笑いながら語る後輩の胸倉(のあたりの縄)を掴み前後に揺さぶりな がら怒鳴りつけた。 「だって先輩がいないなら僕は海なんか行きたくありませんし」 後輩は不満そうな顔で言う。 「そうなると俺も一人で海は寂しいし」 そこにラーメンがひょこっと出てきての支援。後輩は得意げな表情を 浮かべ、びしっとこちらに指を突きつけた。 「ほら、先輩は必要じゃないですか」 「海に行くのを諦めろ!」 その手をべちんと叩き落し、二度と縄から抜け出せないよう厳重に縛 りつける。当然、その間も言葉は休めない。 「それと寝てる間にベッドごと運び出すな! この前森からベッドを 家まで運ぶのにどれほど苦労したと思ってる?!」 「配送業者に頼めばいいのに」 「ですよねー」 「貧乏学生舐めんな」 まるで漫画みたいに見事な簀巻きになった後輩を蹴飛ばしながらそう 吐き捨て、地面に転がるそれに腰掛けながら大きく溜息をつく。 「あー、もう。いい。疲れた。付き合ってやるから今回限りにしろよ」 「「わーい」」 嬉しそうに声を上げる二人。俺は腰を上げ、さっき地面に突きたてて おいたスコップを手に取りながら、後輩に告げた。 「ただし身の安全の確保のためお前は縛ったままここに埋めて行く」 「リアルゆっくり?」 地面から首だけ出した後輩の声が、辺りに虚しく響いた。 「ゆ゛あ゛ーーー! うみのいえはゆっぐりでぎないーーーー……」 遠くかられいむの泣き声が聞こえてくる。その声のゆっくりしてなさ に、れいむを置いてきた海の家を身ながら、ラーメンに声をかける。 「なぁ、お前のれいむあっちで凄い泣いてるけど」 「あぁ。れいむはツンデレなんだよ」 「先輩と同じですねー……」 一体どれだけ地獄耳なのか、埋められた場所から後輩が口を挟んで来 た。俺は迷わず聞こえない振りをしながら、クーラーボックスに腰掛 けて崖の上で竿を握るラーメンに話しかける。 「で、お前の目的は釣りか?」 「あぁ。ここで釣った新鮮な魚介類でとった魚介スープで究極のラー メンを作ってれいむに食べさせてやるんだ。きっといつもみたいに泣 いて喜ぶぞ」 「毎度思うんだけどお前のれいむ、あれ本気で嫌がってるんじゃない か?」 「んなわけないだろ。れいむはラーメン大好きだよ」 背を向けたままでそう答えるラーメン。その言葉に、確かな確信めい たものを感じて、俺は思わずラーメンに尋ねる。 「どうしてそう思う」 ラーメンは糸を海に垂らしながら、首だけこちらに向けて口を開いた。 「俺はラーメン大好きだ」 「あぁ」 俺は相槌を打って頷く。 「そして俺はれいむも大好きだ」 「あぁ」 先程と同じように相槌を打って頷く。 「つまり、ラーメン=れいむ。れいむはラーメンなんだ」 「……あぁ?」 うっかり先程と同じように相槌を打とうとして、明らかにおかしいも のを感じて思わず語尾が上がる。そんな俺の様子に気付かないまま、 ラーメンは視線を空の方へ向け、言葉を続けた。 「自分が嫌いな奴は可愛くない。だがれいむは可愛い。つまりれいむ は自分大好き。自分=れいむ=ラーメン。だからラーメンも大好きな んだよ」 ラーメンはそんなわけのわからない事を極当たり前の事のようにすら すらと述べ、そして再びこちらを向く。 「わかったか」 「俺には理解できない事がよくわかった」 「よかったな」 と、その時ラーメンの竿がびくりと反応する。 「ムッ! 引っかかったぞ!」 「根がかりじゃねーか?」 「いや、違う! こいつは大物だ!」 ラーメンはそう言うと立ち上がって竿と格闘し始めた。確かに見てい てもかなり強く引かれているのが解る。 そして、ラーメンは数分に及ぶ格闘の末、 「フィーッシュ!」 と叫び、竿を思いきり振り上げた。水面から黒い影が飛び出して、 「あ゛ーう゛ー!!」 と、泣いているような呻き声を上げながらべちょりと地面に落ちた。 俺とラーメンは、極めて特徴的な帽子に釣り針を引っ掛けたそれを 見下ろす。 「すわこだ」 「すわこだな」 「あ゛ーう゛ー」 地面に打ち付けた顔が痛いのか逃げるでもなくこちらに非難の眼差し をむけるでもなく、そこに座り込んで嗚咽を漏らしている。 ラーメンはてくてくとその背後に歩み寄って頭を鷲掴みにすると、腰 かけていたクーラーボックスを開いてぽいっとそこにすわこを放り込 み、蓋を閉めてまたそこに腰掛けた。 「……スープにするのか?」 「何事も挑戦だ」 ぁーぅー…… クーラーボックスの中から悲痛が声が漏れ出してくるが、それを気に する者は残念ながらここにはいなかった。 「ムッ! また掛かった!」 と、ラーメンが声を上げると同時に竿が大きくしなった。 「随分調子いいな」 「こいつでかいぞ! にしては随分大人しいけど……」 ラーメンの言う通り先程のように竿の先が大暴れするような事はなく 、 リールを巻き取ると素直に上に上がってきた。 そして、水面にぽちゃりと影が浮かぶと同時に、 「フィーッシュ!」 ラーメンは思い切り竿を振り上げた。んな事する必要ないと思うが、 きっとやらなきゃいけないワケでもあるんだろう。 そして、吊り上げられたその影は先程のすわこのように綺麗な放物線 を描き、そのまま地面に吸い込まれ―― 「およよ?」 その軌道の途中で急停止し、小首を傾げながら戸惑った声を上げた。 俺は思わず声を上げた。 「ゆっくりいくじゃねーか」 そこにいたのは、ふわふわと揺れる不思議な羽衣を纏った希少ゆっく りのゆっくりいくであった。通称サタデーナイトフィーバー。 ラーメンはつかつかといくに歩み寄ると、羽衣をわっしと掴んでまた クーラーボックスの中にぶちこんだ。そしてクーラーボックスに尻を 乗せて、一言。 「フカヒレスープゲット」 「ペットショップで6桁つくゆっくりを食う気か」 「手作りのラーメンの価値……priceless」 と、まるでいい話っぽい英単語を使っている隙にまた竿が大きく揺れ た。ラーメンは思わず立ち上がって踏ん張る。 「ムッ! また掛かった!」 「三回連続ゆっくりとかやめろよ?」 「ハハッ、まさか」 ラーメンは笑いながらそう言ったが、俺にはどうもフラグが立ってい るように思えて仕方がなかった。 「フィーッシュ!」 そしてラーメンが勢い良く竿を振り上げると、やはりというかなんと いうか。またもや丸くて黒い影が空に待った。どう見ても魚のシルエ ットじゃない。 またか、と思いそれを見上げたまま溜息をつこうとして……次の瞬間、 背筋に氷柱をブチ困れたような怖気に襲われた。 その黒い影は、見るものを恐怖と混乱に陥れる恐ろしい微笑を浮かべ ながら、言った。 「にーとーりー♪」 「ギャァァァァァァ!! バケモノォーーー!!」 俺は思わず飛んできたそのゆっくりにとりの顔面に渾身の右ストレー トを叩き込んだ。 「うわぁビックリした! 何だお前?!」 俺の突然の凶行に驚いたラーメンが声を上げるが、俺はにとりの顔面 を殴った時に手についたぬるぬるした液体を地面に擦り付けるのに夢 中で全く耳に入らなかった。 「あ、逃げられちまったじゃねーか。何すんだよお前」 「五月蝿い! あんなクリーチャーがいきなり水面から飛び出して来 たら誰だって叫ぶわ! 俺だって叫ぶ!」 獲物から外れた釣り針を掲げるラーメンに向かってそう吐き捨てると、 ラーメンは呆れたように溜息をついてまた糸を海面に垂らした。 その背中が俺を非難しているように見えたが、俺は人として当然の事 をやったまでなので反省する気はさらさらなかった。 と、そこでまたもや竿がびくりと震えた。 「ムッ! また掛かった!」 「やめろよ! これ以上バケモノを俺に見せてくれるなよ!」 「あー、いや。なんか異様に引きが弱い。こりゃ逃げられたか……も しくはとんでもない小物だな」 言いながらラーメンは竿を手放し、獲物に引かれるままにする。その 引きはいくよりは激しいものの、すわこや先程の魔物と比べれば明ら かに劣るものだ。見る限り、手ごたえもあまりない。 先の3匹の時とは打って変わってローテンションでリールを巻き上げ るラーメン。影が水面に映り、竿を引っ張り上げる時も何も口にはし なかった。 糸に引っかかったそれが白日の下に晒されると同時に、それは声を上 げた。 「やめてね! やめてね! まりさをはなしてね!」 「まりさつむりか」 「珍しいな」 それは、貝殻を背負ったゆっくりまりさの突然変異種、まりさつむり であった。ちなみに、突然変異種なのに何故か同じ姿のまりさがたく さんいるのは謎である。 「どうしてこんなことするの?! まりさはにとりといっしょにゆっ くりしてたのに! ゆっくりはなしてね! まりさおうちかえる!」 まりさは糸の先でぷーらぷーらと揺らぎながら、必死にこちらに非難 するような視線を向けて声を上げる。 ラーメンはすっくと立ち上がると、貝殻から針を外してぽいっとクー ラーボックスに放り込んだ。 「ゆー?!」 「あ゛ぅっ!」 「およっ?!」 中でぶつかったのか、すわこといくが声を上げたが、ラーメンがすぐ に蓋を閉めると声はほとんど聞こえなくなった。 俺はクーラーボックスに腰をかけたラーメンに声をかけた。 「やっぱり食うんだな」 「当然だ」 奴の返答は短かった。 「ムッ! また掛かった!」 ラーメンが言うと、握っていたその竿がぎしぎしと異様な音を立てて 軋み始めた。 「どうせまたゆっくりだろ? 今度は何だ?」 「いや、ちょっ……重ッ! 何だこれ?! 手伝ってくれ!!」 みしみしと今にも折れそうな異音を立てる。確かにただ事ではない。 俺は嫌々ながらも、なんか面白そうなのでラーメンの背後から手を回 して竿に手を添える。 そして、十数分にも及ぶ格闘の末、見事吊り上げた。 「フィーッシュ!」 巨大な影が頭上を飛び越え、背後でがごんと大きな音を立てた。 「「……がごん?」」 釣りの効果音とは余りにもかけ離れたその音に、俺とラーメンは声を 揃え、ぐるりと振り向いた。 「zzz……」 「……ぞ?」 するとそこには、木製の小船の上でいびきを掻いて眠っている、赤髪 ツインテールのゆっくりと、なにやらごちゃごちゃした帽子を被って 呆然とこちらを見上げてくる、緑髪のゆっくりが佇んでいた。 「ゆえーきとゆこまち……だな……」 「つか船ごと釣るか普通……」 さすがにこれをクーラーに入れるわけにもいかず、俺達はそいつらを 前に途方に暮れた。 「結局魚は一匹も連れなかったな」 ずりずりと音をたてる小船を押しながら、俺は言った。 「いや、でも変わりにこれだけゆっくりがつれたんだ。良しとするさ」 ざりざりと音を立てる小船を引っ張りながら、ラーメンは答える。 「やめるんだぞ! おふねをはなすんだぞ!」 そしてそう言いながら俺達についてくるえーきと、舟に乗せたクーラ ーボックスの中でゅーゅーと声を上げるゆっくり達。あと寝てるこま ち。 ラーメンはそれらに全く耳を貸さずに瞳を輝かせている。 「そいつらでスープ作ったらこれ以上無くカオスな物ができると思う んだが」 俺がそれらの味が混ざった汁を想像してしまったせいで浮かんできた 吐き気を堪えながらそう言うと、ラーメンはくるりと振り向き、いい 漢の顔で言った。 「男は度胸。なんでもやってみるのさ」 「あ、先輩! 酷いじゃないですか! 僕を縛ったまま置いてイっち ゃうなんて!」 と、ラーメンが借りた厨房の傍に引きずってきた舟を置いた所で後輩 がそう言ってきた。どうやら埋められたのを抜け出してきたらしい。 俺は、何を言ってるんだろうこいつ、と思いながら、それを口にする。 「縄抜けすりゃ良かっただろ」 「それもそうですね」 後輩は何度か身を捩ると、あっさりロープから抜け出した。 「さて、さっそくスープを作るか」 外で奴と離れた俺は、ゆっくりが5匹ほど入ったクーラーボックスを 前にしてそう呟いた。ゆっくり達はそれぞれ不安げな表情を浮かべて いる。……一匹、眠っているものもいるが。 「ゆゆっ? おにいさんなにしてるの? そのおなべなに?」 と、そこへ愛しのマイファニーれいむが現れた。その麗しさは立てば 芍薬座れば牡丹、跳ねる姿はゆりかもめという具合にキュートでファ ンシーだ。萌え死ぬ。 俺は口の端からだらだらと零れる涎を袖で拭い、れいむを抱きかかえ 言う。 「このゆっくり達をお風呂に入れてあげるんだよ」 すると、突然れいむの表情が一片した。 その時、れいむはあの日の事を思い出していた。 『よぉーしれいむ。今日は一緒にお風呂に入ろう!』 お兄さんがなにやら興奮した様子でそう告げる。 『ゆ? おにいさんおふろってなに?』 れいむはお兄さんが何を言ってるのかわからないからお兄さんに聞い てみた。お兄さんはれいむを優しく抱きかかえてくれて、それでこう 言った。 『お風呂っていうのはね、暖かいお水に入って体を綺麗にする場所の 事だよ!』 『ゆゆっ?! おみずはゆっくりできないんだよ! れいむとけちゃ うよ!』 怖い事を言うお兄さんの事が怖くなって、れいむはお兄さんの腕から 逃げ出した。でもお兄さんは笑いながら言った。 『大丈夫大丈夫、すぐ出ればとけないから』 『ゆ……ほんとう?』 『お兄さんがれいむに嘘ついたことあったかい? さ、早く入ろう』 何回かあるよ、と言おうとしたけど言うよりも早くお兄さんはれいむ を連れてその『おふろ』に向かっていった。 お兄さんにされるがままにしていると、ふとおはなにすごくゆっくり できる何処かで嗅いだ様ないい臭いが滑り込んできた。 『ゆゆーん! あったかくていいにおいがするよ!』 『ほられいむ、見てごらん!』 そう言って、お兄さんは扉をがらがらーっとあけた。ここがお風呂。 凄くいい臭いでゆっくりできそう。 ガガッ と、そこで頭の中にノイズのような物が走った。 なんだろう、なんだかゆっくりできない気がする。 どうして? こんなゆっくりできそうなのに。 そう、こんなにおいしそうでゆっくりできる臭…… あれ、待って。 お い し そ う な に お い ? れいむが考えてる間にも、お兄さんは言葉を続けた。 そして、答えは出た。 『ラーメン風呂』 『……ゆ?』 ラーメン。その単語を聞くと同時に、あの時に思い出が蘇る。 ツルツルシコシコの麺が髪に絡みつく感覚。熱くてぬるぬるする脂が 全身にまとわりつく感覚。 そして、とてもおいしそうな臭いに全身が包まれる、あの感覚。 そうだ、これはアレと同じ臭いだ。 ようやくそれを思い出したれいむの視界に、風呂桶一杯のラーメンが 映ると同時に。 『そぉい!』 れいむはお兄さんの手によって、ラーメン風呂に突っ込まれていた。 「ゆ゛ゎーーーー!! おふろはゆっぐりでぎないーーーーー!!」 「あぁ?! れいむ?!」 何を想ったのか、れいむは泣きながら俺の腕の中から飛び出し、何処 かへ走り去ってしまった。その姿もまた可愛らしい。 「ふぅ……さて、誰から煮込もうか」 気を取り直してクーラーボックスと向かいあう。すると、クーラーボ ックスの中では熾烈な戦いが繰り広げられていた。 「やだよ! まりさはおふろいきたくないよ! こまちたちがいって ね!」 「こまちとえーきもだぞ! おふろはこわいんだぞ! すわこがいく といいんだぞ!」 「あーうー!」 「ゆぅー?! どうしてまりさがいけなんていうの?! ひどいこと いわないでね?!」 「まりさだってさっきこまちにいけっていったんだぞ! だからまり さがさきにいくといいんだぞ!」 「どぼじでぞうなるのぉーーーーー?!」 どうやられいむがお風呂と聞いて逃げ出したせいでお風呂が怖い物と 思い込んでしまったらしい。俺はただ熱湯で茹でようとしてるだけな のに悪魔でも見るような目でこちらを見てくる。心外だ。 「「「ゆっぐりでぎないーーーーーーーーーー!!!」」」 しかし、こう嫌がられるとどうもやり辛い。最終的には全員煮込むと しても、誰からやるか。 俺が腕を組んで唸っていた、その時であった。 「ここはわたしがいきます」 突如、クーラーボックスの片隅に佇んでいたいくがきりっとした顔で そう告げた。 驚く俺とゆっくり達。いくはその場の全員の視線を集めながら、ふよ ふよと俺の顔の前まで飛んでこう言った。 「いくはくうきのよめるゆっくりです」 「「「きゃーいくさーん」」」 思わずゆっくり達から歓声が飛ぶ。ゆっくりなのに空気を読んで自分 から志願するとは見上げた根性である。 俺は感動しながらいくを寸胴鍋の前まで連れてくる。凄まじい熱量の 蒸気の上がる鍋を前に、さすがの空気の読めるいくもたじろいだ。し かし、頭をぷるぷると振ると再び表情を引き締め、「こんなのちっと もあつくないです」的な言葉を言ってクーラーボックスのゆっくりを 元気付けた。 そして俺がいよいよ飛び込むか、と思ったその時、何故かその場で語 りだした。 「わたし、このおふろからでたらおやまのそーりょーむすめさまにず っといっしょにゆっくりしようねっていいにいくんです……」 それを聞き俺は思った。それなんて死亡フラグ? 「それできれいなのはらをふたりでいっしょにかけまわったり、がん ばってあつめたごはんをいっしょにむーしゃむーしゃしてしあわせー したり……」 そう想う俺にも構わずいくは、幸せそうなどこか遠い所にいる誰かを 見るような、そんな目をしながら言葉を続けていく。 「それでふたりでずっとなかよくしあわせにくらして、いつかすっき りもしておちびちゃんもたくさんつくって、それから――」 「さっさと入れ」 「およよーーー?!」 痺れを切らした俺がいくを鍋に突っ込む。いくは一度完全に水没して から、慌てて水面まで浮き上がって叫んだ。 「あづいーーーーー!!」 熱湯であるからして、当然である。 「あづい! あづいでず! むりでずーー! ごべんなざいーーー! いぐはほんどうはぐうぎのよめないゆっぐりなんでずーーーーーー! ごべんなざいずるがらだじでぐだざいーーーーーー!!」 端も外聞も掻き捨て、くうきがよめるというプライドも捨て去り、熱 さのショックから自分が飛べる事まで忘れていくは必死に訴える。 そして、涙で瞳を潤ませながらこちらを見上げて、懇願した。 「おねがいだがらゆっぐりざぜでぐだざ」 俺は手に持っていた寸胴の蓋を閉じて、ゅーゅーと小さい呻き声が漏 れる寸胴に背を向ける。 そして、いくの余りの取り乱しぶりにクーラーボックスで縮み上がっ ていたゆっくり達の中から適当に一匹を掴み上げた。 「あ゛ーう゛ー!」 当たったのはすわこだった。 俺は開いている寸胴の鍋に向かってすわこを投擲する。ぼちゃんと音 を立ててお湯の中に叩き込まれ、先程のいくと同じように慌てて水面 まで戻ってきた。 「あ゛ーごぼぉっ?!」 そして苦しそうな呻き声を上げると同時に、何故か凄まじい勢いで鍋 の底へと潜っていった。帽子だけを残して。 その不可思議な行動に呆然としている俺の前で、鍋の水面ギリギリを 漂っていたその帽子が大きく溜息をついた。 「ふぃー。ずんぼーやなかったらそくしするところやったでぇ」 そう言って舌を使って額の汗を拭うすわこの帽子。 ここは、突っ込む所なのだろうか。 と、その時突然帽子がぐらぐらと揺れ、鍋の底から一つの影が浮き上 がってきた。すわこだ。 「ゆ゛ぶはっ! あ゛ーう゛っ?!」 水面に出て大きく息を吸うと同時に、また一気に鍋底まで押し戻され るすわこ。その一瞬に、帽子から何か棒的な物が伸びたのが見えた。 「おとなしゅうせんかい。ばらんすとれへんやろ」 「ごぼがぼごぼ」 そう言ってあぶくの上でぐりぐりと体をねじる帽子。 俺は、こんな時どんな顔をしたらいいかわからなくなり、ただただ無 言で鍋の蓋を閉じた。 「ちょっにーちゃんふたしめんといてーなあつーてしゃーないわー」 「がぼごぼごぼ」 何故かやたらとよく通る声が鍋からは響いていた。 聞こえないふりをしながらクーラーボックスに戻ると、そこではえー きが必死にこまちに声をかけていた。 「こまち! おきるんだぞ! このままじゃゆっくりできなくさせら れるんだぞ!」 「zzz……」 どうやら寝ているこまちを起こして一緒に逃げようとしていたみたい だ。これが友情パワーか。俺は感動し、胸に熱いものを感じた。 「はいはいこっちおいでねー」 「ご、ごまぢぃーーー!」 が、それはそれこれはこれ。眠っているこまちをむんずと掴んでそそ くさと鍋の前に戻ってこまちをお湯にぶちこんだ。 「やめるんだぞ! ごれじゃごまぢがゆっぐりでぎないぞ!」 その後ろからえーきが付いて来て必死にそう訴える。 俺は足元で必死にぽよんぽよんと跳ねるえーきを掴んで、鍋の中が見 える位置まで持ち上げた。 「zzz……ゆっくりしたゆだなーっとー……zzz」 そして鍋の中で心地よい寝息を立てる小町を見せて、一言。 「案外気持ち良さそうだけど」 「うぞはだめなんだぞ! ぐろだぞ! ぎもぢいいわげないんだぞ!」 「グロくはないと思うけど」 「ぐろじゃないぞ! ぐろなんだぞ!」 「グロなんじゃないか」 「ぐろじゃないんだぞー! ぐろだっでいっでるんだぞーーー!!」 泣きながら必死にグロいグロいとR-15指定を訴えるえーき。 そのえーきに対して俺は、 「あーもううるさいお前も入ってみろ」 口で相手をするのが面倒になり、こまちの浮かぶ鍋に叩き込んだ。 ばっしゃーんと音を立てて鍋の底まで沈み、水面にあぶくをたてる。 どうやら元が水棲ではないから浮かんでくるのに手間取っているらし く五秒ほどもその状態のままで、六秒目になりようやく水面に顔を出 した。 「やっばりあづいんだぞーーー?!」 「あついおふろはえどっこのたしなみさねー……zzz……」 「えーぎはぬるいほうがよいぞーーー?!」 鍋の中で仲良く会話をするえーきとこまち。というか、こまちは本当 に眠っているのだろうか。 「ひゃくかぞえたらでましょーねー……zzz……」 「はやぐでだいがらゆっぐりがぞえるんだぞ! いーぢ! にーい! だぐざーん! だぐざーん! だぐざーん! だぐざーん! だぐざ ーん! だぐざーん! だぐざーん! だぐざーん! だぐざーん!」 こまちに言われた通り必死に数を数えるえーき。俺は涙ぐましい努力 をするその姿に感動しながら寸胴の蓋を閉めた。 『ひゃぐっでどのぐらいなのがわがらないんだぞー?!』 閉ざされた寸胴鍋の中から悲痛な叫びが上がった。 「さて、残りは一匹だけだな」 俺は額を伝う汗を袖で拭いながらそう呟き、クーラーボックスに一匹 だけ残っているまりさを見下ろす。 「ゆっくりにげるよ! ゆっくりにげるよ! おにいさんはそこでゆ くりしててね!」 まりさは、クーラーボックスから抜け出そうと必死にクーラーボック スの壁面を這い上がろうとしては、重力に引かれて地面に落ちるのを 繰り返していた。 俺は「ゆぅー?!」といいながら転がり落ちたまりさに無言で手を伸 ばすと、その貝殻をむんずと掴んで持ち上げた。 「ゆっ! すごい! おそらをとんでるみたい!」 急に高くなった視点に驚き、まりさはそう言ってつぶらな瞳を輝かせ る。そして、何か凄い事に気付いたような顔でこう言った。 「まりさはおそらをとべたんだね! きづかなかったよ! このまま ゆっくりとんでにげるよ!」 とんだ勘違いである。 俺はまりさを摘み上げたまま、てくてくと寸胴鍋に歩み寄る。 「ゆ? そっちじゃないよ! そっちはあつくてゆっくりできないぷ れいすだよ! ゆっくりむこうにいってね!」 焦ったようにまりさはそう言う。そもそも、自分が飛んでると言った のに一体誰にお願いしているのか。 無論、俺は全く聞かずに寸胴鍋に向かう。 「ゆゆぅーーー?! どうしていうこときいてくれないのーーー?!」 ちっとも自分の思い通りにならず、まりさは癇癪を起こしたように怒 り始める。そして不満そうにぷくーっと膨れながら言った。 「もう! いうこときいてくれないならまりさあるいてにげるよ! ここでゆっくりおろしてね!」 と、そこで丁度寸胴鍋の前にたどり着き、俺はぴたりと立ち止まる。 それをどう勘違いしたのか、まりさは急に得意げな顔になった。 「ゆっ! わかればいいんだよ! これからはまりさにさからわない でちゃんという――」 俺は持っていた手を放す。 「ことを――」 そして、ぼちゃんというどうにもあっけない音を立てて、まりさが熱 湯に着水した。 俺はすかさず蓋を閉める。 『あづいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!?!?』 寸胴鍋の中からくぐもった声が響いた。 冷蔵庫にくっついていたキッチンタイマーをセットすると、俺は手近 な椅子に腰掛け、呟いた。 「さて、後はこのまま火にかけて3時間っと……」 そしてテーブルの上に置いておいた週間少年ゆンプを手に取り、人気 漫画のONEPLASE(世界で一番ゆっくりできるプレイスを目指してゆっ くり達が海を旅するというストーリー)を読み始めた。 『『『ゆっぐりでぎないー……』』』 傍らの寸胴鍋からは、そんな力ない声が漏れていた。 「できたぞー」 時刻は八時。 厨房から上機嫌なラーメンの声が響いてきた。 「長かったな」 「そういえばセンパイの作ったラーメンって食べるの初めてですね」 向かいの席に座っている後輩が俺のマイ箸にわさびを練りこみながら そう言った。俺はとりあえずその手に持ったチューブをひったくって 後輩の鼻の穴に突っ込み、握り締めてから言う。 「素材を知ってる側からすればゲテモノじゃないのを祈るばかりだ」 「ゆっくりただいま!」 と、そこへ何処に行っていたのか、ラーメンの飼いゆっくりのれいむ が地面に横たわって鼻を押さえながらごろごろと転がっている後輩を 踏み台にしてテーブルに跳ね上がった。 「おにいさん! きょうのごはんはなに?」 そして、口の端から涎を垂らしながら俺に尋ねてきた。 俺はその質問にそっけなく答える。 「ラーメンだそうだぞ」 「……ゆ?」 突如、れいむの動きがぴたりと止まった。 「へいお待ち! ラーメン一丁!」 それを見計らったかのようなタイミングで現れるラーメン。俺と、鼻 を押さえながら床から起き上がってきた後輩がそちらを向く。 と、同時に。 「そぉい! そぉい! そぉぉおい!!」 ラーメンが、猛々しい雄叫びを共にその手に持っていた海鮮ゆっくり スープラーメンをれいむ、後輩、俺の順に、その脳天目掛けて叩き付 けた。 脳髄に直接叩き込まれたような衝撃。その手並みの余りの鮮やかさに、 俺はラーメンの熱さを感じるよりも早く、意識を喪失した。 芳しい塩の香りだけが、辺りを漂っていた。 おわり 作者:○ーメンぶっかけ祭の人 このSSに感想をつける
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『ゆんはん』 18KB 虐待 ギャグ パロディ 小ネタ 日常模様 野良ゆ 赤ゆ れいぱー 現代 虐待人間 うんしー ぺにまむ ギリギリアウトなネタ 元ネタはMHP3ですが、私自身はこの作品がモンハンシリーズ初プレイとなるため、モンハン自体をまったく知らない人でも楽しめるように注意して書き上げてみたつもりです。 ★ パロネタ多いです ★ 虐待よりは虐殺よりです 201X年、世界は核の炎に包まれた。あらゆる生命体は絶滅したかに見えた… しかし、ゆっくりより早く野を駆け回る事の出来る健脚を誇り 「どぼぢでしゅんっそくっをほこるまりささまがおいつかれるんだぜええええ!!!」 ゆっくりよりも長く水に入っても溶けない強靭な皮膚を持ち 「ゆんやぁ!!!れいむのすべすべのおはだがとけちゃうよおおぉぉぉぉ!!!」 見た目にも騙されず虐待する冷静な心を持ち 「ちぇんはかわいいんだねーわかれyわぎゃ!わぎゃりゃないよー!!!」 2ケタの足し算を悠々と暗算できる明晰な頭脳を持つ鬼意惨は生き残った! 「むきょきょきょきょ!!そうめいたるもりのけんじゃであるぱちゅりーさまとけいさんでしょうぶができるわけが・・・エレエレエレ・・・」 性欲はド饅頭には欲情しないので負けた。とかいは(笑) 「んほおおお!!!いやがってるまりさもすてきだわぁぁぁあ!!!」 「もうやべでえええ!!!!!!!」 実際のところ使われた核は熱核爆弾だったため電磁波の影響で電子機器の殆どが壊れ、文明が殆ど無くなってしまい、ゆっくりを虐待し続けていた結果少し人より体力があったり、器用だった虐待鬼意惨が多く生き残っただけであった。 残留放射能は少なく、ほとんどの地域では放射能は確認されなかったため、短期的には生態系への影響は無いように思われた。 しかし、奇天烈な饅頭はわけが違ったのだ。 元飼いゆっくり度もは多少の知能があったため、人々の会話などから核爆弾が使われて、放射能といったものによっていろいろな問題が起きるということをなんとなく理解していた。 そして飼い主がいなくなった元飼いゆっくりは野生へと戻っていったのだが、その過程で 「ほうしゃのうさんはいきものをへんなかたちにしてしまったりする」という間違っているようであながち間違っていない情報が伝わり、広がっていってしまった。 実際のところ多少の影響を受けた虫や植物の変異があり、今まで見たことの無い虫や植物が生まれてきたことによりゆっくりたちの間でもそれは真実であるという認識が広まっていった そして・・・ Yukkuri Hunter 鬼意惨はとある村へ移動するために、山の中を分け入っていた。 その村の名前はユギャクの村と言い、なんでもその村の周りには今まで見たことも無いようなゆっくりが無数におり、その村ではそのゆっくりを使ったさまざまな製品が作られていてにぎわっているという話を行商人づてに聞いたのである。しかも村には温泉も出ているらしい。 元々住んでいた村が閑散とした農村であり、親しい身寄りもいない鬼意惨は仕事を求めて移動しているのであった。もちろんまだ見ぬゆっくりを虐待したいという趣味と、温泉に入るゆうかにゃんを覗き見したいという下心を抱いて。 「ぼうでいぶのあがぢゃんだめだいでえええええええぇ!!!」 「ぼでがいじばず!!!ばりざのあがぢゃんぼいがぢであげでくだざい!!!」 「「「ゆっきゅちうみゃれゆぎゃああああああああ!!!」」」 「はいはいゆっくりゆっくり、たべきれない程のあかゆを生めば良いじゃないってね~、ほらほら早く生めよワンモアセッ」 しかし、野良ゆを採取して食べながら移動する順調な旅路は、町の近くまで来たところで突如一変する。 バキバキガサガサ!!!!!! 「あ?何の音だ?ドスでもきたか?」 「「ゆわあああ!!!ちぇ・・・ちぇんおうががきたよおぉぉぉ!!!」」 「は?何?ちぇん・・?ゆっくりなんだろうけど木が倒れるような音がしてるぞ・・・っておい!」 音がだんだん近づいてきたと思ったら突如近くの木が倒れて、その倒れた後ろから巨大なちぇんみたいな何かが現れた。 「わかるよー!!!ここにあまあまがいるんだねー!!!」 今までさまざまなゆっくりを虐待してきており、その中にはドスまりさも含まれているため、余裕をぶっこいていた鬼意惨であったが、さすがにこれにはフリーズしてしまう。 「おいおいおい・・・新種のゆっくりがいるって聞いてきたのにこれじゃ・・・まるで化け物じゃねぇか・・・」 「ゆんやぁ!!ちぇんおう「まりさはゆっくりにげるよ!どんそくのれいむはゆっくりおとりになってね!!」どぼぢでそんなごどいうのおお!!」 「あっこら待ちやがれ!!」 するっと鬼意惨から逃げ出し、捨て台詞を吐きながら逃げ出すまりさとれいむ、そして 「わかれよー!!!ちぇんおうがさまからはにげられないんだよー!!!」 と言う声と共にでかいちぇんはくるっと後ろを向いたかと思うと宙返りをし 「「ぼっどゆ゙っ!!!!」」 丸太のような太く、とんでもなく長ェ2本の尻尾を叩きつけて2匹のゆっくりを叩き潰した。 その余波で叩きつけられたところにあった岩がお兄さんに向かって飛んでき、よけるまもなく当たってしまい吹き飛ばされてお兄さんはめまいがして倒れこむ。 (ここまで歩いてきてやっと村に着いたと思ったのに・・・最後に見るのがあんなバカみたいなちぇんだなんて・・・) かすれていく鬼意惨の目に映るのは叩き潰されたゆっくりをむさぼり食べるちぇん、そのちぇんの尻尾が叩きつけられて大きくえぐれた地面、そしてイチゴ柄の 「ゆうかにゃんのおふぁんつもっと拝見したい!!!」 「うわっきもっ」 「・・・あ、あれ、俺はとんできた岩が頭に・・ってここは・・?」 鬼意惨がキモい発言と共に目を覚ましたところは、見た感じ普通の家であり、しいて普通の家との違いを指摘するなら目の前の乙惨(おっさん)が悪趣味なれいむのりぼんがたくさんついた服を着ているくらいであった。 「ここはユギャクの村だよ、近くの森でちぇんおうがが出たって知らせを聞いて何人かの鬼意惨が向かっていったんだが、そこでぶっ倒れているあんたを発見して救助したってわけだ。」 どうやら鬼意惨は一命をとりとめ、しかも目的地に到達できたようだ。 「あ、助けて頂きありがとうございます。」 「いやいや、いってことよ。それにしてもお前さんも見たところ鬼意惨っぽいようだが、この町に来た目的もそれなのかい?いきなりあんな化け物に出会ってしまって面食らっただろう?」 「いえ、むしろ俄然やる気が沸いてきましたよ!第一化け物って意味では目の前にいる乙惨の来ている服のほうがよっぽど化け物です。」 「どぼぢでそんなごどいうのおお!!!」 鬼意惨はこの村に来ようと思った理由を話し、結果としてこの村にあるゆっくりハンティングギルドの一員となることにした。通称ゆンターである。 どうやら乙惨はギルド長らしく、いろいろな話も聞かせてもらい、今の装備じゃ心もとないという事でギルドの倉庫で眠っていた色々な古い武具を頂ける事となった。 「元々俺はマタギをやってたんだがな、まーゆっくりのほうが狩るのが楽なんでこっちの道に鞍替えしたんだよ。四つと違ってあいつらは気配に鈍感だし実力差なんて物が理解できないからむしろ立ち向かってくるくらいだからなぁ、ただここいらにいる奴らは玉石混合だ、注意しないとおまえさんが永遠にゆっくりする事となるぞ、まぁ最初はここになれるためにギルドにある仕事のうち飼いゆっくりレベルの仕事をしてみたらどうだ?」 という流れである。 こうして鬼意惨はギルドの一員となってゆンターとしての一歩を踏み出したのであった。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ レベル 飼い(下位) クエスト名 特産品であるキノコの採取 数量 50本 場所 ユギャクの村近辺 渓流 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 装備 頭部 古い帽子 上半身 古いウインドブレーカー 下半身 古いジーンズ 腕部 古い軍手 脚部 古い長靴 武器 古い鉈と盾 (片手剣) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ なんでも飼いゆっくりレベルの仕事はギルドの方針として、ギルドの将来を担うゆンターを育成することも兼て、必要な消耗品の支給や、ゆ車(足つきみすちー:見た目はダチョウみたいでちょっとキもい)の荷台に乗せて仕事場所への輸送を行ってくれるらしい。 「っと、ここがベースキャンプだ。村からちょっと入っただけでこんな綺麗な渓流があるなんて良い所だろ?」 初仕事とあって、ギルド長の乙惨が今日は説明してくれるためについてきてくれている。 ベースキャンプの部分は切り立った崖が近くにあるのだが、おかげで綺麗な清流や森が見え、また近くには色々な花が咲いたりしている。 「まーさくっと説明しちまうと、だ。そこにある大きな青い箱にはギルドからの支給品がまとめて入ってる。好きに使ってくれて良いが一回でつかって良い量は決まってるし、仕事が終わったら残った支給品は戻してもらうことになる。近くにある赤い箱は仕事で採取を頼まれた物とかを納品する箱だ。ベースキャンプには簡易睡眠が取れる場所もあるし自由につかってくれたらいい。あとは」 「そのおにいさんがこんどのしんじんさんかみょん?よろしくおねがいしますまた!」 「このようむだな、荷物が多すぎて困ったら村まで運んでくれるって寸法だ。並みのゆっくりには負けないしスィーもあるから足も速いってわけだよ。まぁ色々試してみれば判らないことも判ってくるだろうし、支給品の箱にも説明は書いてあるし、あとは色々やってみたらいい。ただゆンターの安全管理の問題があるから基本的に仕事は請け負ってから10時間でタイムリミットだ、この場合は今が8時だから18時には納品が完了してる必要があるってわけだ。」 説明が終わり乙惨は岐路に着くらしい。 「色々とご丁寧にありがとうございました、ひとまず今日のキノコの採取する仕事を成功させていきたいと思います」 「いいってことよ、ただ一個だけ注意しな、ここらへんのまりさはそこそこ大きいやつは爆発するキノコを利用して体当たりしてくるやつがいる、ここいらのゆっくりはわりと頑丈だからぶち当たられたら怪我くらいはするだろうし少しは気をつけてな。それじゃあ頑張ってきな。」 お兄さんは自由になったのでひとまず支給品を取り出してみることにした。 渓流の地図、ゆうかにゃん印の応急薬、足焼きアマギリ口縫いが終わった子ゆ(食料かこれ?)、武器を研ぐための砥石、ゆっくりに投げつけることでしばらくの間色のついた液体をたらし続けるペイントボール、謎の空き瓶とヤバゲな色の液体が入った瓶、そして・・・ 「「「「「ゆっきゅちちちぇいっちぇね!!!」」」」」 「なんでこんなところに赤ゆが・・・しかもすげぇ小さいしいろんな種類がいるしなんだこれ?」 歩く死亡フラグ事、赤ゆが大量に蠢いている箱があった。 「そういや箱に説明が書いてあるって言ってたな・・・あかゆ・・・あかゆ・・っとここか、何々?」 『この赤ゆっくりたちはギルドの技術によって開発された銃器用の弾丸ゆっくりとなります。脱皮して成長するアストロン種と掛け合わせることによって黒色火薬で発射する衝撃に耐え、凄まじい速さで打ち出すことが可能となりました。』 『ただし、ギルドからの提供は半永久的に使用が可能な、高速で精子餡を発射するありす弾となります』 『毒をもっためでぃすん弾や、強い衝撃を着弾先に与え昏倒させるすいか弾はあなたの狩猟ライフをよりよい物へと変えてくれるでしょう。そのほかの良質な弾などはぜひぜひ当店にてお買い上げください。尚発射する際に強度不足により砕け散る不具合が発生しているれいむ弾については、合同狩猟において弾丸が身内にも当たってしまう問題より、単独狩猟を行われる方へのみ販売を行っております:こーりん堂提供』 「ってことはこいつらは使い捨ての弾丸か、使える物は何でも使うだなんてまさにゆ虐の鏡だなこりゃ、あとれいむはここでも役立たずかよ」 今回鬼意惨は鉈と盾を持ってきているため、このあかゆを使わないので、ふたを閉め、特産品であるキノコを採りにいくこととした。 ベースキャンプから少し歩くと綺麗な浅い渓流が目の前に現れた、近くにはゆっくりの巣穴らしき物が見られ、何匹かのゆっくりが集まり川辺で水を飲んでいる。すぐ近くでも親れいむと思わしきれいむと、赤れいむが2匹、赤まりさが1匹水辺に跳ねていっている。 「れいむのかわいいおちびちゃんたち!きょうははじめておみずさんをごーくごーくしてみようね!!」 「「「ゆっきゅちぎょーきゅぎょーきゅちゅるよ!!!」」」 (確実に死亡フラグだろあれ・・・) お兄さんがそう思いながら見ていると、案の定赤ゆのうち一個が足を滑らせ川に落ちた。 「ゆんやぁぁぁ!!!ちょけちゃゆうううう!!!」 「れいむににたかわいいおちびちゃんがああああ!!!」 「「おにぇえちゃんがあああ!!!」」 (そういやギルド長が『ここいらのゆっくりはちょっと特殊でなぁ、皮とかおかざりを加工すると武器や服、防具を作るための素材になったりするんだよ。もし余裕があったら殺して皮とかを剥ぎ取ってみると良い』とか言ってたな、よし) お兄さんは川辺に近づくと赤れいむを拾い上げ 「おしょりゃをちょんじぇいりゅみちゃい!!!」 「ゆうううううん!!!!れいむににたかわいいおちびちゃんをたすけてくれてありがとう!!!おれいにあまあまもらってあげてもいいよ!!!たくさんでいいよ!!」 「りぇいみゅみょおちょりゃをちょんじぇみちゃい!!」 「きゃじょきゅのあいぢょりゅちゅえっきょみゃりちゃがおちょりゃをちょべにゃいにゃんちぇおきゃしいのじぇ!!」 戯言を吐いているド饅頭を無視したまま、手に持った鉈で真っ二つにした。 「も゙っ゙!!」 れいむ一家は何が起こったのかわからずフリーズしているが、ちょうど良いので今のうちにこの赤れいむから素材につかえそうな部分を剥ぎ取ることにした。 「あっちゃー真っ二つにしてしまったからかこのお飾りくらいしか使えそうにないな・・・もったいないことをしたな」 ザクッ テレテテン [赤れいむのおりぼん] を入手しました。 「もう一匹の赤れいむは盾のほうで叩き潰してみるかなっと」 ブンッ ぼよよん! 「うわっ、赤ゆの癖に無駄に弾力あるなくそっ、これでどうだ!」 鬼意惨は盾を持ち替え地面と挟み込むようにして体重をかけていった 「ちゅ!ちゅびゅれりゅうう!!!!」 グチャ! 「もっちょ・・・ゆっきゅち・・・ちちゃきゃっちゃ・・・」 ザクッ テレテテン [赤ゆの皮] を入手しました。 「おーすげー、赤ゆの皮のくせにすごい弾力だこれ、確かにこれなら服とか作ったり位できそうだな」 そういいながら鬼意惨は家族のアイドル末っ子まりさをどうするか考える。 「このまりさの帽子ところどころ破れてるし汚くて素材には使えそうにないな・・・皮は一枚とれたし中身でも搾り出してみるか?」 言うが早いか鬼意惨は鉈を振るってまりさの頭部を吹き飛ばし 「ゆっぴょえぇぇ!!?」 荷物袋の中に入っている万能液体用袋につめ移していった。 「ゆんやぁぁぁあ!!まりちゃにょにゃきゃみぎゃああ!!」 ザクッ テレテテン [赤ゆの餡子] を入手しました。 「美味しそうな餡子がとれたな、素材に使ったりは出来そうにないけどお金にはなりそうだな」 鬼意惨は赤ゆの餡子を荷物の中に戻し、まだフリーズしたままの親れいむをどうしようか考えていると、急に大きな物で殴られたような衝撃と共に地面を転がりまわる羽目になった。 「うわちいいいいい!!!いったいなんだってんだよ!!」 地面を転がるはめになったがそこは鬼意惨、しっかりと受身を取っておりもう起き上がっている。 いったい何が起きたのかとあたりを見回すと先ほどまでは近くにいなかったまりさがおり、 「よぐぼばりざのおちびちゃんをおおおおおお!!!」 と叫んでいることからこいつがさっきの衝撃の原因らしい。 (おいおいマジかよ、ゆっくりの癖にあんな衝撃を与えてくるとか不思議生命体にも程があるだろ) そう考えているとまりさは「ゆっくりしないでしね!!」と叫んで、普通のゆっくりが体当たりするように屈みこんだ。 鬼意惨はこのまりさがとりあえずどんな動きをするのか見てみないと殺しようがないと考えてしっかりと腰を落として盾を構えたのだが、その後の行動は軽くお兄さんの予想を裏切ることなった。つまりまりさは 「む~しゃむ~しゃ」と帽子からキノコを取り出して租借した後 「んほおおおお!!!」気持ち悪い叫び声を上げ 「おそらをとんでいるみたい!!!」けつからキノコと餡子が混ざり合った汚物を噴射しながらこちらに向かって飛んできたのだった。 「笑わせ殺す気か!!!」 鬼意惨は咄嗟に横に転がり体当たりをよける事に成功し、笑いながら体当たりをもらって死ぬという不名誉な死に方も回避することに成功した。 「第一なんで自分で空を飛んで『おそらをとんでいるみたい!』なんだよ!」 どうやら鬼意惨は突っ込み属性持ちらしい。 「ゆぐぐ・・・よくもまりささまのゆっくりだすとれゔぁりえをよけたね!!ぜったいにゆるさないよ!!ゆっくりしないではやくしね!!」 注 ゆっくりはゴミのようなものなので自虐です まりさはそういうと再びしゃがみこみキノコを租借し叫んだ後こちらに飛び掛ってきた。 「予備動作が大きすぎるだろ・・・しかもしゃがみこんだ時点で向いてる方向にしか飛べないみたいだし餡子脳すぎるな」 今度は盾を構えながらまりさを中心に円を書くように移動していたのだが、まりさは最初しゃがみこんだ時点で向いていた見当違いの方向に飛んでいってしまい、木にぶち当たっていた。 「ゆっぎいい!!!!よけるなああ!!!!」 「はいはいゆっくりゆっくり」 (しかしどうした物かな、この小さな盾で防いだら手をくじきそうだし、不用意に近寄って体当たりを食らうのもいやだし、うーん) そう、わりとこの体当たりは人間基準で見ても早いためうまく攻撃するのが難しいのだった。 「ぼうぜっだいにゆるさないよ!!!!!こうなったらきんっだんっのひっさつおうぎをつかうしかないよ!!!」 そういうなり三度まりさはしゃがみこんでキノコを租借し始めた、しいて違うところをあげるとするならばキノコの量が先ほどの数倍あるということくらいなのだが、 「まぁそれでも横に移動したらよけれるみたいだがな」 「おそらをとんでいるみたい!!!!」 先ほどよりは少し早いか?どうかという速さで同じようにまりさは飛んでいき、地面に落ちて、そしてその体勢のまま動かなくなった。 不審に思った鬼意惨が慎重に近寄ってみると、そこには うんうんキノコと一緒に中身が全部出てしまい永遠にゆっくりしているまりさがいた。 「まぁそりゃ禁断の奥義だわな、自分が必殺されるんだしってね」 ちなみにフリーズしていたれいむはまりさのうんうんを全身に浴びて永遠にゆっくりしていた。 ザクッ テレテテン [まりさのおぼうし] を入手しました。 ザクッ テレテテン [特産キノコ] を入手しました。 ザクッ テレテテン [れいむのおりぼん] を入手しました。 ザクッ テレテテン [れいむのあんよ] を入手しました。 「特産キノコってこれのことっぽいな、始めて見るキノコだし名前も特産キノコだし、うん」 れいむとまりさの死体から素材に使えそうな物を剥ぎ取りながら、鬼意惨は独り言を言う。そして周りにはまだたくさんのゆっくりたちがのんきそうに水を飲もうとして悪戦苦闘したり、のんきにゆ~ゆ~歌っている。 「ヒャアアアアア!!!虐殺だぁぁぁあ!!!!」 「おちびちゃんたち!きょうはかりのしかたをおしえるよ!!ゆっくりついてぎでね゙っ゙!?」 無謀にも赤ゆをつれて狩り(笑)にきているまりさを一刀の元に叩き切り 「おちょうしゃんぎゃあああんごっ!?!?」 泣き叫ぶ赤ゆを細切れにし 「ゆっくりのひ~♪まったりのひ~♪すっきりのひでびゅ!?」 のんきに歌うれいむを盾で叩き潰し 「びっ゙ぐ!?」「ま゙ら゙っ゙!?」「ゔぇ゙に゙ず!?」 白いさんっれんっせいっと名乗っていたみょん三姉妹を回転切りですべて両断し 「まったく!!ありすのとかいはなこーでぃねーとされているおうちにごみをなげこむだなんてとんないなかも゙の゙!?」 切り飛ばされたみょんの口に入っていた木の枝が飛び込んだ巣穴から出てきたありすを救い上げるように切り上げ 「わかるよーこのふくろにはあまあまがはいってるんだね゙ごっ゙!?」 いつの間にか荷物袋の中の携帯食料(ド饅頭)を盗もうとしていたちぇんを飛び掛ってきりふせ 「えれえれえれ・・・」 ぱちゅりーはそのあまりの惨状に勝手にずっとゆっくりし 目に付くゆっくり全てをことごとく永遠にゆっくりさせ続け、気がついたときにはすでに空は夕焼けに染まり、剣は刃こぼれ、鬼意惨も動き続けて息が上がって、そして周りのゆっくりの死骸には虫がたかり剥ぎ取れる素材は何一つ残っていない状態になっていた。 「おしごとのせいげんじかんだみょん」 「ゆっくりした結果がこれだよ!」 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ Quest Failured ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 支給品を返却しました。村へ戻ります。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ To Be Continued .... ? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 汚あきです。 ふと一行掲示板を覗いてみたところ、ゆっくりがナチュラルに存在するモンハン世界というネタがあったため、私の頭の中ではまったく持って普通にゆっくりが生活しているため、これはいけると思い、元ネタとして使わせていただきました。 言い回しや矛盾点などがあるかとは思いますが、お目こぼしくだされば幸いです。 作品とは関係ありませんが、コンバートあき氏の食品ネタは大好きです、かってにしんさくさんがはえてくるぷれいすをひとりじめするだなんてゆるせないよ!でもかんだいなれいむさまはあまあまをわけてあげるよ!!だからしんさくさんにはきたいしてるね!!! 私信ついでに質問なのですが、ふたばのほうは過去ログなどは見れないのでしょうか?作品を投稿した際にはご報告だけ上げさせていただいているのですが、普段はあまり見ることが出来ないのでまとめてみることは出来ないのかな、と。 過去作品 anko1811 ゆあつそうち anko1817 ゆっくりの甘さについて anko1865 ゆランス料理フルコース(前半) anko2701 ゆランス料理フルコース(後半) anko2805 こんにゃくなんとか
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『餌』 2KB いじめ 小ネタ 赤ゆ 捕食種 特にひねりのない小ねたです 紙の箱の中でうごめくもの達。 どれも生まれて間もない赤ゆっくりだ。 彼女達は優越感に浸っていた。 自分達は選ばれたのだ、自分達は飼いゆっくりになれるのだ。 同じケースの中に居た赤ゆっくり。 大きなケースに入れられていたバッチをつけたゆっくり。 そいつらよりも先に、自分達は飼われる事になったのだ。 いっぱいゆっくりしよう。 いっぱいゆっくりさせて貰おう。 箱の中の赤ゆっくり達は、幸せな未来を信じていた。 箱から出された赤ゆっくり達は透明な箱に入れられた。 飼い主に向かって元気に挨拶をするもの。 飼い主に向かって奴隷宣言するもの。 早速おうち宣言するもの。 あまあま要求するもの。 だが、飼い主は赤ゆっくり達に見向きもしなかった。 挨拶を解されなくて泣くもの。 無視されて怒るもの。 くつろいでゆっくりするもの。 うんうん、しーしを垂れ流すもの。 そんな赤ゆっくり達を気にする事もなく、飼い主は何かに呼びかける。 うーっと鳴き声が聞えてきた。 黒い羽を持つゆっくりが、飼い主の周りを羽ばたいている。 異変に気がついた赤ゆっくりは泣き叫ぶ。 気がつかないもの達は思い思いにゆっくりしていたり、悪態をついたりしている。 やがて無視出来ない事が起こる。 一匹の赤れいむが、飼い主に摘み上げられた。 赤れいむは幸せそうな顔で叫ぶ。 おしょらをとんでるみちゃーい! そして本当に宙を舞った。 飼い主が赤れいむを放り投げる。 ガブッ! 何が起こったか分からない赤れいむ。 やがて痛みが全身を襲う。 狂ったように暴れるが、その牙からは逃れる事が出来ない。 揉み上げを千切れんばかりにピコピコと動かす。 涙と汗が滝の様に流れる。 それを舌で舐め、味を確認する羽つきのゆっくり。 赤れいむにかかっていた圧力がふっと消える。 牙が赤れいむから抜けると、その穴から餡があふれ出す。 生命の危機を本能的に感じる赤れいむ。 必死に叫ぶが、誰も助けに来ない。 舌の上でコロコロと、しばらく転がされる。 ガブッ! 赤れいむは噛み砕かれ、絶命した。 透明な箱の中でそれを見ていた赤ゆっくり達。 何が起こったのか分からず硬直するもの。 狂ったように泣き叫ぶもの。 必死に命乞いをするもの。 震えながら威嚇するもの。 自信の運命を悟るもの。 だが、飼い主は相変わらず、赤ゆっくり達を見ようとしない。 目の前の捕食種に笑いかけるだけだ。 完 徒然あき
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autolink DC/W23-011 カード名:小さな頃みたいに 音姫 カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:2 コスト:1 トリガー:1 パワー:3500 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《生徒会》? 【永】応援 このカードの前のあなたのキャラすべてに、パワーを+1000。 【自】相手のキャラが、控え室から手札に戻った時、あなたは自分の山札の上から1枚を、ストック置場に置いてよい。 おはよ。……弟くんは、相変わらず寝ぼすけさんだね レアリティ:U illust. 13/01/04 今日のカード。
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『ゆたんぽ』 10KB いじめ 独自設定 5作目です とおりすがりです。 とりあえず現在進行形でいろいろ書いてます。 感想板のご意見をヒントにして…って考えてます。はい。 「」はゆっくり 『』は人間です 過去作 anko4545 ゆっくりしていくがいいさ anko4555 おにいさんはゆっくりする anko4561 鬼意山と遊ぼう! anko4580 ゆっくりしつもんするよ! ゆたんぽ 『さぁむぅぅぅぅぅぅぅぅい!!』 太陽が昇り始める早朝に、お兄さんの叫び声がこだました。 なんせ1月である。まだお正月である。 暖かくなるのはまだまだ先で、 去年以上の寒さがお兄さんを向かえた。 このお兄さん、暖房費をケチっているため、 厚い毛布二枚が夜のパートナー(性的な意味ではない)なのだ。 だがしかし、いくら毛布が厚かろうが寒いものは寒い。 昨日も寝付くまでずっと寒さと戦っていたのだ。 『ああぁぁぁぁ…もう8時だ…寒いよ、仕事行きたくないよ…』 そういいながらお兄さんは布団の中で着替えをすませ、 手袋をはめつつ出勤した。 『さ、寒い…会社に戻りたい…』 会社の帰り道にお兄さんは呟いていた。 今はまだ5時だが、昼とくらべてなおさら寒くなる。 しかも会社は暖かいコーヒーや暖房器具がそろえてあった。 ここまで寒いと仕事を終えた達成感も半減といった所か。 『しかしこれ、本当に役に立つのか…?』 お兄さんの手には紙袋が握られていた。 これは今日同僚から貰ったものなのだが、 なんでも寒い夜にぴったりの暖房器具らしい。 お兄さんの家は暖房もないのでありがたく頂戴したが、 なんとなく胡散臭かったのも事実だ。 と、そんなことを考えていた所に、 なんともまあ良いタイミングで奴らが現れた。 「やいくそにんげん!そのふくろさんのなかのあまあまをよこすんだぜ!」 「はやきゅよこしゃにゃいとしゃいしゃいしゅるのじぇ!!」 「せいさいされたくなかったらゆっくりしないであまあまをだしてね!たくさんでいいよ!」 「くそにんげんはゆっくりしね!」 と、なんともまあテンプレ通りなセリフのオンパレードで登場したのは、 まりさとれいむの番に、子れいむ二匹と少し小さい子まりさ一匹の家族だ。 この町でも野良ゆっくりはよく見かけられるが、 大抵の野良は人間と関わろうとせずひっそりと暮らすか、 地域ゆっくりとして安定した生活を送るかの2つに1つだ。 だがこの家族は賢くなかったようで、人間にあまあまを要求した。 というか紙袋の中があまあまとは誰も言ってないのだが。 『…まあものは試しだ、男は度胸、ってね』 そういいながらお兄さんはどこからともなくビニール袋を取り出し、 『そおい!』「ゆっ!おそらをとんで(ry」 『そおい!』「れいむはそらをとぶとりさ(ry」 『そおい!』「まりしゃはちゅいにおしょらをし(ry」 と子ゆっくり達をビニールの中にいれ、 「くそにんげんんんんんんん!おちびになにをし」『そおおおい!!』ドカッ「ゆ゛!?」 「ばりざぁぁぁぁぁぁぁ!?くそにんg」『そおぉぉぉぉい!!』バコッ「ゆ゛ぅ!?」 『ゴーゴーゴー!』「ゆがっ!」「ゆべぇ!?」 と親二匹をドリブルしながら家へと帰宅した。 本当なら一家をビニールに入れてもよかったのだが、 わざわざ親を蹴ったのはストレス発散にちょうど良かったからだ。 『マイホームに着いたぜ!』 意気揚々と自宅に帰ってきたお兄さんは、早速ビニールから子ゆっくりを取り出し、 紙袋からソレを取り出した。 「ゆぅ…ゆぅ…もうやべで…でいぶじんじゃうぅ………」 「ばりざはざいっぎょうなんだぜ…ぜったいに、まげないんだぜ…」 「おちょうしゃぁぁぁぁぁぁぁんん!しっかりしちぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆああああああん!おかあさぁぁぁぁぁぁぁん!」 「ゆぴー…ゆぴー…」 『えっと、まずは蓋を取り外し、ゆっくりを入れます、か』 「おきゃしゃん!くしょにんげん!はやくおちょうしゃんとおきゃあしゃんをかえしゅのじぇ!ぷきゅぅぅぅぅ!」 と子まりさがぷくー!しているが、お構いなしに次々と子ゆっくりを入れていく。 「ゆっ!きたないてでさわ…おそらを飛んでるみたい!(ぽとっ)ぶべぇ!?」 『えっと、オレンジジュースを適量入れて蓋をすれば完成です、なるほどなるどほ』 先ほど帰りに買った紙パックのオレンジジュースを中に入れて、 蓋をしっかりしめたお兄さんはベッドへと向かった。 「………?………………!!」 『すげぇな、全然声が漏れんぞ』 お兄さんは透明な蓋越しに子まりさが何か言っているのを見たが、 防音仕様のため、全く声が聞こえなかった。 『それじゃあ俺はお前らの親を虐待してくるから、布団をゆっくり温めてね!』 「…………!!」 もちろんソレの中にいる子ゆっくりには聞こえていない。 お兄さんはソレを布団に入れて、親ゆっくり達のいる玄関へと向かった。 「ゆゆ?くしょにんげんはまりしゃにおしょれをなしたのじぇ!ゆぷぷ!」 「さすがまりさだね!おねえちゃんはりっぱないもうとをもってうれしいよ!」 「ゆ、ゆぅぅ…?ここはどこなの?」 ソレの中に入れられた3匹の子ゆっくり達は、それぞれが勝手なことを言っていた。 「ゆゆ!あまあまな飲み物があるよ!」 ある、と言うかそれに浸っているのだが、 そんなことはどうでもいいとばかりに子れいむはオレンジジュースを飲み始めた。 「ごーくごーく!し、しししあわせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!へぶんじょうたいっ!」 足元のオレンジジュースを飲んだれいむはあっと言う間にヘブン状態になった。 野良生活ではよほどまずいものを食べてきたのか、 そこまで甘くないものでもご馳走なのだろう。 「ゆっ!れいむものむよ!ごーくごーく!」 「まりしゃものみゅんだじぇ!ごーきゅごーきゅ!」 「「し、ししししあわせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」 二匹ともオレンジジュースを味わっていた。 その様子はまさに獲物に集るカラスのよう。いやそれよりも醜悪だ。 オレンジジュースを飲み終えたころ、子ゆっくり達のいる場所に変化が起きた。 「ゆゆ!?なんだかぽーかぽーかしてきたよ!」 そう、ソレの中の温度が上昇してきたのだ。 外が寒かったこともあり、子ゆっくり達も活発に動き始めた。 「ゆゆ~ん!ここはとってもゆっくりできるね!」 「まりしゃもとっちぇもきもちいいのじぇ!」 「「「ここをれいむ(まりしゃ)のおうちにするよ(のじぇ)!!」」」 キリッとした表情でそう言い切った3匹。おうち宣言である。 自分の置かれた状況を理解できないとは、悲しいかな、だがそれがゆっくりという生物である。 そんな勝ち誇った表情をしていた3匹に現実という悪夢が牙をむけた。 「ゆっ!?まりしゃのゆっくりぷれいしゅが、ぽーかぽーかしすぎだよ!?」 なんと、ゆっくりとって適温だったソレが、さらに温度を上げたのだ。 およそ43度、人間ならお風呂の中でリラックスできる温度だが、 ゆっくりにしてみれば暖かい所の騒ぎではなかった。 「おうちさん、もうぽーかぽーかはいいよ!」 「まりしゃのいうことをきくのじぇ!ぷきゅー!」 「ゆ…なんだか、ゆっくりできないよ…」 子ゆっくり達はそれぞれ、温度が下がるように喋り続けた。 そんな願いもむなしく、ソレの温度は上がり続ける。 まるで井の中の蛙をあざ笑うかのように、じわじわと、確実に。 「あちゅいいいいいい!!れいむのゆっくりぷれいす、ゆっくりしてぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「なんなのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?ぜんぜんゆっくりできないよぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」 「ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!もうおうちかえりゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 あまりの温度に騒ぎ出した子ゆっくり達。 ソレの中で暴れまわるが、ゆっくり程度の力ではどうにもできない。 ふと上を見上げたまりしゃが、閃いたように叫んだ。 「ゆっ!あしょこだけあきゃるいよ!まりしゃはおしょとにでりゅよ!」 それは先ほどお兄さんが子ゆっくり達を入れた蓋だった。 蓋は透明なので、少しだけ他の場所より明るかった。 だが、それは子ゆっくりにとって、あまりにも 「ゆーんしょ、ゆーんしょ…ぴょんぴょんしゅりゅよ! ………どぼじでとどがないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 …高すぎたのだ。 とどいたとしても、蓋のせいで出られないのだが。 「ゆひぃ………ゆひぃ………」 「ぼう…やじゃ………」 「ゆっくりでぎないぃ……」 高温の中にされされること10分。 子ゆっくり達の体力は限界に達していた。 もう馬鹿みたいに叫ぶことすらままならない。 (どうして…おかあさんとおとうさんはたすけてくれないの…?) 姉のれいむは両親に助けを求めた。 (まりしゃはさいっきょうなはずだじぇ…にゃのに………にゃのに……… まりしゃは、さいっきょうじゃ、なきゃったにょ…?) 末っ子のまりしゃは己の無力さを悟ってしまった。 (もっとあまあま…たべたいよ…) 妹れいむはあまあまを欲していた。 それぞれの子ゆっくりが絶望を抱えるが、 オレンジジュースが死ぬことを許さなかった。 あんよに染みたオレンジジュースを舐めることもできず、 子ゆっくり達は灼熱の地獄を味わい続けたのだ。 『ヒャァァァァァァァァァァ!!いいゆ虐だったぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』 親二匹を蹂躙してご満悦のお兄さんが帰ってきた。 あの後親二匹をひたすら虐待し、 もはや原型をとどめないほどに痛めつけたのだ。 禿饅頭二匹は外に捨てておいたので、もうじきれみりゃあたりが始末してくれるはずだ。 『さて、寝るとしようかな』 そういってお兄さんが毛布に包まったとき… 『………あ』 『あったけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』 お兄さんの足元から、ほかほかとした暖気があふれ出し、 寒い中ゆ虐していたお兄さんを、優しく包み込んだのだ。 例えるならそれはまさに、『聖母の愛』だった。 『すごいなあれ!本当にゆっくりでほかほかになったぞ!』 翌日、職場のお昼休憩中にお兄さんは友人と話をしていた。 お兄さんの向かいの席に座っている眼鏡をかけた大人しそうな女性、 彼女がお兄さんに『ゆたんぽ』を渡した友人なのだ。 『でもどうしてゆっくりであんなに暖かくなったんだ?』 『うん、それはね…ゆっくりの声に秘密があるの』 ―――ゆっくりの声、人を苛立たせるあの声。 最近の研究の結果では、この声に特有の波長が含まれていることが発覚した。 さらに仮説によるとゆっくりはこの波長に反応するらしく、 「ゆっくりしていってね!」などの一部の単語はこの波長に変化があったという。 学会ではこれを『Y波』と呼び、活用法を模索中とのことだ。 『でね、私も少し調べてみたら、このY波に反応して温度を上げる材質が見つかったの。 これを利用すればゆっくりだけで暖房ができるんじゃないかなって…』 そう、なにを隠そう彼女はゆっくり関連の商品開発部門だ。 このゆたんぽを作ったのも彼女で、 お兄さんが使っていたのはその試作品なのだ。 ゆっくりが喋ることにより、容器内部のY波が多くなる。 それに応じて容器内の温度が上がっていくという仕組みだ。 この「ゆたんぽ」は、一匹でも勝手にしゃべり続けるゆっくりを有効活用できる製品なのだ。 つまりお兄さんはテストにつき合わされたわけだが、全く気にして無いようである。 『そーなのかー。でもこれ絶対売れるって!すごくあったかいもん!』 『ほ、本当に…?』 そういった彼女は少しうつむきになっていたが、気のせいか頬は少し赤くなっている。 『ああ本当に!本当と書いてマジって読むくらい本当に売れるよ!俺が保証する!』 『…あ、ありがと…』 やはりうつむいたままそういう彼女の顔は、赤く火照っていた。 『…真っ昼間からリア充めぇぇぇぇぇぇ…爆発しろぉぉぉぉぉぉ………』ぶすっ その後ろの席では白衣の男が、ギリギリと歯ぎしりをしながら 成体のれいむに爪楊枝をぶすぶすと刺していた。 「ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 『あー疲れた!今日はもう寝るぞ!』 家に帰って独り言のようにつぶやくお兄さんは、 真っ先に寝室に向かった。 『………そういえばゆたんぽ、入れっぱだった』 ふと気になってゆたんぽに触ってみると… 『…あったけぇ』 透明な蓋を開けてみると、三匹の子ゆっくりが まるでこの世の終わりを見た様な絶望的な表情をして固まっていた。 これではもう生きていないだろう、そう思いゴミ箱に向かおうとしたとき 「…………ゆひぃ………ゆひぃ」 なんと生きていた。確かに三匹とも呼吸がある。 『ヒャァァァァァァ!!なんてお得なんだぁぁぁぁ!!』 これはすごい。子ゆっくりとオレンジジュースで何度も使える暖房とは。 実にエコロジー。実に画期的。そういいながらお兄さんは わざわざオレンジジュースを温めてから持ってきた。 「も………やめちぇ………」 「あちゅいよ……………」 「た、たしゅけちぇ…………」 『それじゃ、今夜もよろしくな』 まだまだ冬は終わらない。 あとがき まだまださむいよ! うちではゆたんぽがげんえきです。 ちなみに作中のお兄さんは 加工所に勤めている設定です。 ゆたんぽに成体は入りません。子ゆっくりが成長すると抜けなくなります。 ご利用の際はお気を付けください。
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C++で読んでおくべき本 余裕があるなら読みたい本 Exceptional C++ はまってしまいがちなパターンを取りそろえたテクニック集。 Efficient C++ 効率的な、ハイパフォーマンスのコードを書くために必要なこと。 Modern C++ Design この本はある種の入門書かも知れない。 基本はLokiという一種のテンプレートライブラリにおいて使用されているテクニックを集めた物になっているのだが、テンプレート・メタ・プログラミングをやる上での基礎が詰まっている。 この本を読めばたちまちC++の暗黒面に堕ち、他の言語がつまらないものに感じるようになってしまうかも知れない。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/922.html
代表ゆっくり(前) 帰ってくると、今にゆっくりの一家がいた。 思わず「あっ」と声を出してしまい、奴らはそれに気付いた。 「ゆ!ここはまりさたちのおうちだよ!ゆっくりしていってね!!」 「おなかがすいたよ!!まりさたちにおかしをもってきてね!!」 「おにいさんはゆっくちできりゅひと?ゆっくちちていってね!!」 「ゆっくりできないひとはでていってね!!」 ゆっくりどもは一斉に俺に向き直ると、口々に好き放題抜かした。 大きめのまりさ種が一匹、これは母親らしいがまだ若そうだ。 更に子供らしいのがれいむ二匹、まりさ三匹の五匹。子供たちの中には赤ちゃんサイズのものも混じっている。 どこから入ってきたのかと思って見回すと、窓が開いていた。暑さから窓を開けて過ごしていたので、出る時閉め忘れたようだ。 台所に備蓄してあった食糧は食い荒らされ、大事に飾っていた花瓶は割られて中の花も食べられている。 押入れのふすまも体当たりで破られていた。あ、押入れの中にもう一匹子れいむ発見。ハマって出られなくなっていたんだな。 「ゆ!くらくてこわかったよ!れいむをこんなこわいめにあわせるおにいさんとはゆっくりできないよ!!はやくあやまってね!!」 とか、頬を膨らましながらありえないことをのたまっている。 以前ゆっくり虐待仲間である友人に聞いたのだが、 奴らの“自分の家宣言”は、そこが自分の家だと完璧に思い込んでいるわけでは必ずしもなく、 ゆっくりによっては頭のどこかで「本当はニンゲンのおうちである」と認識しているらしい。 その論拠には、自宅で“自分の家宣言”をしたゆっくりに「ここは誰の家?」と暴行を加えつつ詰問したところ、 「お゛にぃざんのお゛うちでずぅぅぅぅ」と答えた、ということだ。そのあと死んだってさ。 この子れいむは勝手に侵入した人家で勝手に怖い目に陥っておきながら、 それを自分のせいとは決して考えず、「この家が自分を怖い目に遭わせた」というあらぬ方向に考えを曲げ、 あろうことか、この家に現れた本来の持ち主だと思われる俺に責任転嫁してきたのだ。 よって先ほどの友人の論は、少なくともこのれいむ相手に限っては立証されたことになるだろう。殺したい。 しかし、そんなムカつきエピソードはとりあえずどうでもいい。 俺は無断で家に入ってきたゆっくりは全て苦しめながら殺す信条だ。 結果としてこいつらに待っているのは拷問死、それはどう足掻いても変わらない決定事項。 部屋を荒らしたり俺をイラつかせるのは、死際のささやかな抵抗として見守ってあげようじゃないか。 その点、この子れいむは良い線いってると思うよ。苦しむ時間が若干延びたかも知れないけど。 「一応言っておくけど、ここは俺の家であってお前らの家ではないよ!」 「ゆ?おにいさんなにいってるの?ここはまりさたちがさきにみつけたんだよ!!」 「まりさたちのいってることわからないの?ばかなの?」 「ゆっくりできないおじさんはゆっくりしね!」 別に言っても無駄なのは解ってたからどうとも思わない。むしろ素直に聞かれたら俺がびっくりして死ぬ。 とはいえこれで遠慮は要らなくなったので、とりあえず親まりさを蹴り飛ばして俺強いアピールしておく。 強めに蹴ったので、壁に顔面から叩きつけられた親まりさから多量の餡子が飛び散る。染みになっちゃうな。 子ゆっくり達は「ゆ゛ゆ゛っ!?」とか喚いて非難の限りを俺に浴びせてきたが、 親をぶっ飛ばしたことで人間の強さは印象付けられたらしく、同じ目に遭いたいかと問いかけると静かになった。 次に俺は、家に侵入してきた悪いゆっくりは全員殺すこと、子供達をどう潰していくかを宣言しておいた。 死刑宣告にも似た俺の言葉に、静かにしていた子ゆっくり達は泣き出してしまう。 何も知らせないまま虐待した方が新鮮なリアクションが得られるのでは?というご意見もあるだろうが、 俺は泣かせられる時は泣かせておく主義なのだ。それにどうせこんなの、ちょっとしたことでコロッと忘れるし。 閉ざされた居間の中を逃げ惑い始めた子ゆっくりたち。それをゆっくり追い回していると、 今まで俺が経験したこともなく、また思ってもみなかったことが起こった。 怪我をして顔面餡子まみれになった親まりさが俺のところまで這って来てこんなことを言ったのだ。 「ごべんばざい。ごごはおにいざんのおうぢでず。ばりざがみんなをざぞいまじだ。 だがらごろずならばりざだけにじでね。あがちゃんだぢはだずげてね」 おいおい、ピンチとなれば家族をも売ると悪名高いまりさが何を言い出してるんだ? 頭でも打ったのか? 打ったか。 「お前が家族を代表して罰を受けるってことか?」 「ぞうだよ。ばりざがだいひょうだよ」 「何でそんなこと考えた? 家族を売っても助かろうとするお前らまりさが……」 「がぞぐをうっだりじないよ。おにいざんはづよいよ。ざがらっでもむだだよ」 子ゆっくりをビビらせるためにやった俺TUEEアピールが、思わぬ効果を発揮したようだ。 このまりさは強いものに大人しく従うタイプのようだ。森の生活でも辛酸を舐めさせられてきたんだろう。 俺の怒りを鎮めるのが不可能だと悟るや、せめてその怒りを自分だけで全て引き受けようと思ったらしい。 うーむ、餡子頭の饅頭でも母親ということだろうか。惜しむらくは、家に入る前に人間の強さに気付けよ。 しかしその条件を飲むとなると、俺のどんな拷問や虐待もこいつらの美しい親子愛を演出するだけだ。 そんなのは気に食わないし絶対にごめんだ。とはいえ、虐待時のコミュニケーションを重視する俺としては、 まりさからの珍しい提案を全くの無碍にするのも惜しい。どうしたものか…… 「うーん……そうだな、気に入ったぞ! まりさ種にしては珍しい心掛けだ。殺すのは無しにしてあげよう」 「ゆゆっ!?」 「ただし、別のおしおきはするぞ。悪いことしたって解ってるなら、しょうがないって解るよね?」 「ゆ゛っ・・・わがっだよ。でもあがぢゃんだちはたずげでね」 「解ってるよ、お前が家族の代表だからな。お前こそ、その言葉忘れるなよ」 「ゆっ!?れいむたちころされなくてすむの?」 「おかあさんがおにいさんにゆるしてもらったんだよ!!」 「おがあざああぁぁぁぁん!!だずげでぐれでありがどおおぉぉぉぉ!!」 話を聞いていたらしい子ゆっくりたちもいつの間にか集まってきて、歓喜の涙を流している。 これでじぶんたちはたすかるんだ。忘れていた生の喜びを噛み締めている。 こいつらの餡子頭では、どうせまたすぐ忘れるだろうけどね。 でも一つ忘れちゃいけないのは、俺は家に入ってきたゆっくりはみんな殺す信条ってことだ。 たださっきのまりさの勇姿を見て、ちょっと別のことを思いついただけさ。 ーーー 俺は別室に行き、透明な仕切り板を使って、部屋を真ん中から二つに分けた。 一方にはゆっくり飼育道具が一揃い。すべり台やブランコなど、ゆっくり用の大きな玩具もある。 もう一方には今は何も置いておらず、仕切り板は人間にはまたげるがゆっくりに飛び越えるのは不可能な高さだ。 俺は手早く準備を済ませると、居間にいるゆっくり一家のところに戻る。 奴らは傷の癒えてきた親まりさを中心に、早くもゆっくりし始めていた。 手を叩いて注目を集めると、全員に聞こえるように話し出す。 「みんな聞いてね! お母さんまりさの立派で優しい姿に胸打たれた俺は、みんなを叩き潰すのをやめることにしました」 「ゆ!さすがおかあさんだね!!」 「おにいさんもこんなすてきなゆっくりにであえてよかったね!!かんしゃしてね!!」 「はいはい。でも悪いことをしたみんなにはお仕置きが必要だよね!」 「ゆ・・・おしおきいらないよ!れいむたちわるいことしてないよ!!」 「まりさはまりさたちのおうちでゆっくりしてただけだよ!!」 「ド饅頭は黙ってね! それでどんなお仕置きにしようかなって考えたんだけど、恐ろしいお仕置きを思いついちゃったんだ」 「ゆ゛ゆ゛!?もういやだよぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!」 「おしおきだめぇぇぇえぇぇぇ!!ゆっぐりでぎないのぉぉぉぉおぉぉ!!」 「まりざもうおうぢがえるぅぅぅぅぅ!!」 「ここがおうちじゃなかったのかよ。まあいいや、とにかく新しく考えたお仕置きを改めて発表します! それは……『ゆっくりさせること』!」 「「「ゆ?」」」 さっきから鬱陶しく表情を二転三転させていた子ゆっくりたちは、俺の言葉に戸惑い、一瞬固まった。 ゆっくりすることが至上の目的であるゆっくりに対し、ゆっくりさせることがお仕置きだとは。確かに意味不明だろう。 「みんな全然大したことないって思ってるだろ? でもそんなことないよ。これは恐ろしいことなんだ。 怖い人間のところで悪さをして、せっかく生き延びて反省する機会を与えられたのに、 君たちはその機会すら生かせず、逆にゆっくりさせられてしまうんだ。 そうするとまた調子に乗って人間のところで悪さをして、今度は殺されちゃうかもしれないよね! ある意味ただ殺すよりも恐ろしい、残酷な制裁行為だね!」 「ゆゆ!ここでずっとゆっくりするからだいじょうぶだよ!!」 「おにいさん、れいむたちをゆっくりさせてね!!おかしいっぱいちょうだいね!!」 「おにいさんもまりさたちのおうちでゆっくりしていっていいよ!!」 「ゆっくちちていってね!」 「ゆっくり~!!」 俺のありがたいお言葉には耳も貸さず、ゆっくりどもはニコニコしながら嬉しそうに跳ねている。 こいつらの脳内ではもう思い思いのゆっくりライフが始まっているらしい。 親まりさは俺の言っていることの意義を一応理解したらしかったが、自分もゆっくりしたいという誘惑には勝てないらしく、 子ゆっくり達と一緒にニコニコして喜んでいる。まったく。まあこんなのは詭弁だから良いんだけどね。 大体「ゆっくり」って何なんだよ、抽象的過ぎるんだよ糞が。それで何か意図が通じるとでも思ってるのかね? そんな良く解らないものを人様に強いるゆっくりどもには、一度同じ苦痛を味わってもらいたい。 「じゃあみんな、お仕置き部屋に移動しようね。覚悟しててね」 俺はゆっくりたちを全員抱きかかえ、先ほど板で仕切った別室へと移動を開始した。 「わーい!おそらをとんでるみたい!!」 「ゆゆ!たのしそうなものがいっぱいみえるよ!!」 「とってもゆっくりできそうだね!れいむきにいったよ!」 「はやくゆっくちちたいよ~~!!」 「おにいさん!はやくあのおもちゃのあるところにおろしてね!まりさのゆっくりスポットにするよ!!」 覚悟しろとやや凄んで言ったにも関わらず、ゆっくり達は能天気なものだった。 部屋に置いてあるおもちゃなどを見て、期待に目を輝かせている。 親まりさもそんな子供達を見て満足そうに微笑んでいた。苦痛に歪ませてやりたかったが、今は我慢した。 さて、子ゆっくりたちを床に降ろしてやる。ゆっくりを抱きかかえたまま身体を低くかがめると、 子供達はゆっくり~!とか奇声を発しながら各々畳の床へとべちょべちょ着地していく。 親まりさも子供達と一緒に飛び出そうとしたが、そこをぐっと押さえつける。「ゆ?」とか言いながら こっちを見上げて来る親まりさだが、俺は視線に構わず、親まりさだけ仕切りのもう一方側へと降ろした。 「おにいさんありがとう!!れいむたちのためにおもちゃをよういしてくれたんだね!!」 「いっぱいゆっくりしてあげるからほめてね!!」 「ゆゆゆ~♪」 すべり台やブランコ、シーソーにアスレチック、ゆっくり用柔らかクッション、涼しげな水場などなど。 さしずめゆっくり用遊園地とでも形容すべきパラダイスに、我先にと飛び込んだのは、好奇心旺盛な赤ちゃんれいむであった。 しかしその楽園への跳躍の途中で、赤れいむは無様に「ぶべっ!」と叫んで床に落ちてしまう。 夢中だった赤れいむはその存在に気付かなかったが、透明な仕切り板にぶつかったのだ。 「ゆゆ?かべがあってとおれないよ!!」 「おにいさん!これじゃれいむたちゆっくりあそべないよ!!」 「はやくかべをどかすか、まりさたちをむこうにはこんでね!!」 「これじゃゆっくちできにゃい~~!!」 ぷくーっと膨らんで怒ってみせる子ゆっくり、泣き出してしまう赤れいむ。 しかし俺はにっこりと優しく微笑んで返す。 「大丈夫だよ、安心してね!」 「あんしんできないよ!ゆっくりはやくしてね!!」 「まあまあ。実は君たちには、お仕置きしなくても良いことになってるんだ」 「ゆ?なにいってるのかわからないよ!ゆっくりせつめいしてね!」 「さっき聞いてた子もいるだろ? 君たちのお母さんが、『まりさがだいひょうになるからこどもたちをたすけてね』って言ったんだ」 「ゆゆ!まりさたちのおかあさんはりっぱだよ!!」 「りっぱなこどものれいむたちもはやくゆっくりさせてね!!」 「だからぁ、君たちはそんなことしなくていいんだって」 「ゆ?」 「君たちのお母さんが代表になって、君たちの分まで『ゆっくり』してくるからね!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ーーー!!?」 驚愕の表情を隠せない子ゆっくりたち。やがて一匹の子れいむが発見してしまう。 透明な板の仕切りの向こうに一匹だけたたずむ、親まりさの姿を。 「ゆゆゆ!?なんでおかあさんだけそっちにいるの!?」 「ずるいよぉぉぉおぉぉぉ!!れいむだぢもゆっぐりそっぢにづれでってねぇぇぇぇ!!」 「はやくこのかべをゆっくりなんとかしてね!!」 親まりさはおろおろと戸惑った様子で、子供達の方を見ている。 「おにいさん!これはどういうこと!?こどもたちもこっちにつれてきてあげてね!!」 「おいおい、そりゃ無いだろ。お前さっき自分で言ったこと忘れたの? 代表じゃなかったの?」 親まりさの苦情に、俺は親まりさにだけ聞こえるような小声で応えた。 「ゆ゛っ・・・でもこどもたちがゆっくりできないとかわいそうだよね!!ゆっくりはやくしてね!!」 「あのね、さっきの俺の話理解したよね? ここで『ゆっくり』しちゃうのは、子供達のためにならないんだよ。 正しい躾を受けられない子供ほど不幸なものは無いって、お前も親だったら解るよな?」 「ゆぅ~・・・?」 「だからお前が子供達の分まで『ゆっくり』するのは、立派な親の勤め! あいつらを助けることに繋がるんだよ。 むしろこんなところで『ゆっくり』させることは、お前らにとって大きな苦しみになるんだ! ゆっくり理解したか? お前は子供達のために、良いことをしているんだよ!」 「ゆゆっ?まりさ、ゆっくりしたほうがいいの?」 『子供達のため』『良いことをしてる』というフレーズに心が揺れたらしい。 そもそも『ゆっくりさせる刑』なんて意味不明なことを言い出した俺のマッチポンプなんだが、そんな難しい事は餡子には解らない。 ここまで来れば、思いついた通りの展開に持ち込むまでもう一押しだ。 「そうだよ! その板越しにお前らを分けたのは、見せしめのためなんだ。 恐ろしい『ゆっくり刑』を受ける母親を、子供達に見せて反省させるためのね」 『ゆっくりすると反省できず、結果的に恐ろしい』という論理から、 『ゆっくりすること自体が子供にとって恐ろしい』にすり替える。 冷静に考えればおかしな話だが、俺の畳み掛けに親まりさの餡子脳では対応できない。 「ゆ~・・・じゃあまりさ、みんなのためにしょうがなくゆっくりするよ!」 「偉いぞ! お前はまさしく親の鑑、子供達の誇りだな。だからちゃんと、家族の代表として宣言してやれ」 「ゆゆっ!わかったよ!!」 そして親まりさは、仕切り板の向こうでゆーゆーぴーぴー喚く子ゆっくりどもに笑顔で向き直った。 「おーい、お前らの偉大なお母さんから発表があるぞ!」 「みんな!!おかあさんがみんなのぶんまでちゃんとゆっくりしていくからね!! しんぱいしないでね!!ゆっくりしないでね!!」 「「「「ゆ゛ゆ゛!?な゛んでなのぉぉぉぉおおぉぉぉ!!」」」」 親まりさに裏切られ、自分達のゆっくりプレイスを独り占めされたと思った子ゆっくり達は、一斉に悲鳴を上げた。 うーん、親の心子知らずとはこのことか。 「おにいさんありがとう!!まりさ、あのこたちをくるしめるところだったよ!!」 「うんうん、お前も親として一皮剥けたな」 こいつはこいつで、俺の暗示にかかりまくってるしな。お礼まで言ってるよ。 ゆっくりがゆっくり出来ないことのどの辺が良いことなんだろうね。人間の子供の躾じゃないんだから。 親まりさだって、『自分がゆっくりするのが子供達のため』なんて本気で思ってるかどうか怪しいもんだ。 俺のこねた屁理屈の尻馬に乗って、自分がゆっくりする大義名分を得ようとしているんじゃあないのか? 自分がゆっくりするためには、他の全てを正当化する。そういう奴らだから今ここにいるんだ。 まあ仮に反省したとしても、全くもって無駄なことだけどね。それを生かす機会は永遠に来ないのだから。 こうして嘘と欺瞞で二重三重にコーティングされた、俺と親まりさによる躾が始まった。 子ゆっくりどもは真摯に反省する必要もなければ、欺瞞を暴き立てる必要もない。 ただ突きつけられた理不尽な現実に、ゆっくり出来ずに泣いててくれればいいのさ。 ーーー さて、それからゆっくりタイムが始まった。 まずは「おなかがすいたよ!!ゆっくりごはんもってきてね!!」と言う親まりさの要望に応え、 とりあえず棚にしまっておいたお菓子を出してやる。つーか、よくもいきなりここまで図々しくなれるもんだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」と癇に障る声を出しながら美味そうに食っている。 それを透明な板の向こうでうらやましそうに眺める子ゆっくりたち。 「おにーさん、れいむたちにもおかしちょうだいね!!」 「ゆゆ!おかーさんばっかりずるいよ!!」 「そう言うなよ。お母さんはお前らの為を思ってゆっくりしてるんだぞ。 良いお母さんだな! お前らはそんなお母さんの思いに応えないとね!」 「そんなことよりゆっくりおかしだしてね!!おもちゃももってきてね!!」 「こんなんじゃゆっくりできないよ!!」 こりゃ押し問答だな。しかし親に対して「そんなこと」は無いだろうに。 大体ゆっくり出来ないってどういう事だ? 針のむしろにいるわけじゃなし、畳の上で充分ゆっくりできるだろ。 極めて限られた条件下でしか『ゆっくり』とやらを出来ないこいつらを、果たしてゆっくりと呼んでいいものか。 「お前ら全然ゆっくり出来てないね! ちゃんとお母さんの想いを受け止めてるんだね。 お母さんがああしておしおきを受けている甲斐があるってもんだね」 「ゆゆ!?あれのどこがおしおきなの!!とってもゆっくりしてるよ!! あとまりさはゆっくりできないゆっくりじゃないよ!!ゆっくりできるよ!!」 おや、それは問題だ。俺はそう言う子まりさの帽子を取り上げた。 「ゆ゛ゆ゛ー!!まりさのぼうしかえして!!それがないとゆっくりできないよ!!」 「それはそれは、良かった良かった。お母さん思いの良い子だよお前は」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ーーー!!ゆっぐりじだいのぉぉぉぉ!!」 俺はしきりに『ゆっくりするのは悪いこと』であると強調していく。 しかし子ゆっくりたちにそんな論理を受け入れられるわけがない。親まりさに苦情を言う子ゆっくりも当然出てくる。 お菓子を食べ終えた親まりさは、すべり台を「ゆ~♪」と滑って子供のように遊んでいる。 子供の分もゆっくりするんだから当然か。 「おかーさん!なんでたすけてくれないでひとりでゆっくりしてるの!!」 「そこにあるおもちゃはまりさたちのだよ!!ひとりじめしないでね!!」 「しょんなおかあしゃんとはゆっくちできにゃいよ~~!!」 「それでいいんだよ!ここでおかあさんがだいひょうとしてゆっくりしてるからみんなはゆっくりしないですむんだよ!! そっちでおかあさんにかんしゃしててね!ゆっくりしないでね!!」 「な゛んでぞんなごどい゛うのお゛ぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!?」 この親まりさの子供に対する態度には、虐待好きの俺も顔負けである。クレイジーだぜ…… つがいや家族の絆を引き裂いて遊ぶ為には、いかにゆっくりの思考を誘導するかが問題になるが、 ここまで俺に追従してくれるとは予想外だ。 一瞬立派かもしれないと思ったが、所詮まりさはまりさだったかな。 そんなことを考えながら、俺は親まりさの乗るブランコを後ろから押してやる。 徐々に振れ幅が大きくなり、勢いを増していくブランコ。前後に振れる度に「ゆっゆっ」と声を出して喜ぶまりさ。 ある高さに達した時、ついに親まりさはぽーんと空中に投げ出される。 「ゆ~ん♪ おそらをとんでるみたい!!」 その様を見つめる子ゆっくりたちの瞳は、親まりさが地面に激突し、怪我をすることへの期待に輝いていた。 一人でゆっくりした罰を受けろ、と。さっきは身を挺して自分達を助けた母親なのにだよ? ひどい話だね。 しかしそんな子供達の様子など視界にも入れず、親まりさはやわらかクッションの上にぽよんと落下し、 そのままクッションの上で気持ち良さそうに転げまわっている。 一人ゆっくりした罰を受けるどころか、ますますゆっくりしてしまっている親まりさ――― その圧倒的ゆっくりっぷりは、まるで運命が味方をしているようにも映っただろう。 あまりに理不尽な現実に、子ゆっくり達は何とも言えない絶妙な表情で固まっている。 「ゆ~!このクッションとってもきもちいいよ!すごくゆっくりできるよ!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!なんで!!な゛んでなのぉぉぉぉぉ!!!」 「何でって、あれは加工所でも売ってないような高級ゆっくりクッションだからね。 並のゆっくりじゃ一生触れないような代物だよ。そりゃあ気持ちいいだろうなあ」 「ぞんなごどぎいでないぃぃぃぃぃい゛ぃぃぃ!!」 「おがあざんばっがりずるいの゛ぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!れいぶだちのゆっくりどらないでぇぇぇえぇぇぇ!!!」 「ここはあちこちゆっくりできるものだらけの、さいこうのゆっくりプレイスだよ!! みんなこっちにこれなくてよかったね!!そっちでゆっくりしないでみててね!!」 「「「おがあざんのばがぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」 「ゆゆ!みんなのためにやってることだよ!ゆっくりりかいしてね!!」 ホーントにバカですねぇ。 子供に罵倒されたゆっくりが悲しむ様は何度か見てきたが、こいつはゆっくり出来る喜びの方が勝っているようだ。 子供達に見せ付けるように本能の赴くまま、色々なアイテムを使って存分にゆっくりしている。 思えば、ゆっくり特有の人を見下す態度、他が自分のために動くのが当然というような言動。 それも本能なのだとすれば、他者を見下して「よりゆっくりしている自分」を際立たせることにより、 更なるゆっくりを実現するための無意識の働きなのかもしれない、と俺は思った。 つまり「みんなのぶんまでゆっくりする」為には、そういった優越感も親まりさにとっては重要なのだ。 子供達のためという大義名分、最高のゆっくりプレイスという具体的動機。 ゆっくりするのに充分なお膳立てを得たまりさは、もはや全力でゆっくりすることに何の躊躇も無かった。 「ゆゆゆ!おにいさん、おなかがすいたよ!ゆっくりごはんをもってきてね!!」 「ゆ!れいむもおなかすいたよ!!」 「ゆっくちごはんたべゆ~~!!」 「おっと、もうそんな時間か。用意するから待ってろよ」 ゆっくり達全員から催促され、俺は台所に向かう。 ちゃちゃっと晩飯を作り、俺と同じ献立をお盆に載せ、親まりさのところに持っていく。 そう豪華な食事ではないが、野生のゆっくりにとっては人間の食事というだけで至上のごちそうだろう。 よだれをだらだらと垂らした子ゆっくりどもが、飯を催促しながら足にぽんぽんぶつかって来るが無視。 結局、「ゆぅ~・・・」とか言って萎んでいきながら親まりさに食事を運ぶ俺を見送るしかない。 「ゆ!おそいよおにいさん!」 「悪い悪い、ゆっくりしてたもんでな。お前もゆっくりしてたろ?」 「ゆゆ!もちろんゆっくりしてたよ!!まりさはみんなのぶんもゆっくりするよ!!」 「よーし、そんなゆっくり出来るゆっくりまりさにご飯だぞー」 「ゆー!おいしそうなごはんがいっぱいあるよ!!」 「みんなの分もたくさん食べないとな?」 「ゆっ!そうだね、いただきます!はっふ、うっめ!めっちゃうんめ!すごくゆっくりできるごはんだよ!!」 俺達はしきりにゆっくりしていることを確かめ合っていた。 『ゆっくり』が何を指すのかは、未だに全然解らないが。 板の向こうまで美味しそうな匂いが流れていくので、子ゆっくり達は辛抱たまらないだろう。 脱水症状起こすんじゃないかってぐらいよだれを流しながら、爛々と輝く目で親まりさの食事を見つめる子ゆっくりたち。 「ゆゆ!れれれいむたちにもはやくごはんちょうだいね!!」 「ゆっくちはやくたべたいよ~!」 「おなかがへってしにそうだよ!しんだらゆっくりできないよ!!」 「ゆ゛!?まりざあぁぁぁぞんなこといっちゃだめぇぇぇえぇぇぇ!!」 「ゆ゛ゆ゛!!しんだらえいえんにゆっくりしちゃうよ!!!」 子まりさの『ゆっくりできない』発言に反応した子れいむが子まりさを咎める。自浄作用。 ゆっくり出来ないのは良いことだが、死なれてはつまらないので食事を与えるとする。 予め抜いてきた庭の雑草を子ゆっくりたちの前に放り捨てる。サービスで土は付いたままだ。 「ゆ゛ぅぅぅ!!なにごれぇぇぇえぇぇぇ!!」 「きたないよ!!こんなのごはんじゃないよ!!」 「お前らいつもこんなの食ってるだろう」 「お゛があざんだげずるいよ゛ぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!」 「こんなまずそうなくさたべられないよ!!おかあさんとおなじごはんをだしてね!!」 「これじゃゆっくちできないよ!!」 「へぇ~、ゆっくり出来ないのかい」 子れいむや子まりさ達はしまったという顔で、失言をした赤れいむを睨んでいる。 赤れいむは何が悪いのか解らず、目に涙を浮かべたまま姉ゆっくり達の視線に震えている。 「ゆ!いまのみんなにとってさいこうのごはんだね!!みんなはずっとそれをたべてね!!」 「「「ゆ゛ぎぃぃぃぃいい゛ぃぃぃぃぃぃ!!」」」 ごはんをべちゃべちゃ食い散らかしながら、親まりさは子供達に向かって笑顔で言い放つ。 子ゆっくり達は涙を流し、ぎりぎりと歯噛みしながら、 何匹かは失言の赤れいむを攻撃し、何匹かは仕切り板にべちゃべちゃ体当たりしている。 何か俺、親まりさと息が合って来た? 人生に二度とない、貴重な体験かもしれない。 しばらく見ていると、最初は文句を言っていた子ゆっくりどもも空腹には勝てないのか、 ごちそうの良い匂いの漂う中、ばらまかれた雑草をもそもそ食べ始めた。 うなぎを焼く匂いだけでご飯一杯いけた人もいたということだし、これはこれでオツなのかもしれないな。 だが「しあわせー♪」などと言い出すゆっくりは一匹もおらず、親まりさと対照的に重苦しい食卓となった。 もっとも、もしも雑草が美味しかったとしてもそれを口に出そうものなら、 俺に……いや、親まりさに咎められ、更に食事のグレードを下げられるだろう。 なぜなら親まりさのゆっくりは、みんなの分のゆっくり。 子供達がゆっくりしてしまっては、自分が存分にゆっくりできないのだ。それもこれも『子供達のため』。 このパラドックスに対してわずかな疑念が浮かんでも、ゆっくりしたいという本能的欲求に掻き消される。 クックック、この状況……いつまで続けようかな? よく考えてなかった。 しかしこの分では限界も近そうだ。ゆっくり見守っていくとするか。 やがてゆっくり達は食事を終え、就寝の時が近付いてきた。 あくびをした親まりさは、先ほどのクッションをベッド代わりにうとうととしていた。 と、そこに俺は小さなタオルケットをかけてやる。 「ゆ?おにいさん、これはなに?」 「掛け布団だよ。寝汗が冷えて風邪でもひいたらゆっくりできないだろ? よく汗を吸うし、風も通すから暑苦しくもならないぞ!」 「ゆ!とってもやわらかくてきもちいいよ!これならゆっくりねむれるよ・・・」 「それからこれもな」 ゆっくり用耳当てを親まりさに見せる。 「ゆ!こんどはなあに?」 「これをつけると静かになって、ぐっすり眠れるようになるよ。 風の音とか犬の鳴き声とかで起こされちゃったらゆっくり出来ないだろ? 朝になったら取ってやるよ。ほうら」 「ゆゆ!すっごくしずかになったよ!ありがとうおにいさん!!」 ゆっくりに耳なんてものがあるのか甚だ疑問だったが、効果は発揮されているようだ。 しかし今の俺って、まるでゆっくり愛でお兄さんだよな。正直気分悪いが、何事も経験だな。 それに後ろの方で苦しんでるゆっくり達もいるわけだし。 俺は親まりさにおやすみと声をかけて頭を撫でると、親まりさは小さく身体を震わせ、すぐに寝息を立て始めた。 親の過剰なゆっくりっぷりに、「ゆ゛!ゆっぐりねるなぁぁぁあぁぁぁ!!」「おがあざんはねむれずにくるしんでね!!」 などと呪詛の声を送っていた堪え性のない子ゆっくり達だったが、耳当てによって何も聞こえなくなったことを悟ると、 さんざん喚き倒して疲れたのか、みんなうとうとと夢の世界に入り始めた。 と、そこで俺が一喝。 「ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっ!?ゆっくりしていってね!」」」」」」 俺の挨拶に対し、本能的に子ゆっくり達がお決まりの返事をする。 こればっかりは逆らえないのでしょうがない。たとえゆっくりが何をしている時であっても。 「ゆ!おにいさんなにするの!!やめてね!!」 「まりさたちはつかれたからゆっくりねるんだよ!!」 「ねみゅれないよ~!!」 「え~? だからお母さんの眠った夜中ぐらい、君達にゆっくりしても良いよって言ってるんじゃないか。 ほら、ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっくりしていってね!ゆ゛~~!!」」」」」」 ゆっくりって、本当にマヌケな生き物ですねえ。ちなみに親まりさは耳当てをしてるのでぐっすり夢の中だ。 その安眠を保障するためにも、子ゆっくり達をゆっくり眠らせるわけにはいきませんもんねー。 とはいえ、俺も人間なので一晩中ゆっくりに付き合って起きてるわけにはいかない。 そこでこいつの登場だ。河童謹製、蓄音機~。 これは音を記録し、再生できる機械だ。更に自動ループ機能もついている。作業用BGMとか流す時に使える。 まあ作業っつっても主に虐待なんスけどね。 で、今回はゆっくりが「ゆっくりしていってね!」と言った時の音声を記録したものを、一晩中ループさせ続ける。 声は数秒置きに流れる。眠りに落ちつつある子ゆっくりを確実に引きとめ、覚醒させるだろう。 ゆっくりに止められないように高い台に置いて、セット完了だ。 いきなり知らないゆっくりの声が流れ出し、子ゆっくりたちは戸惑いの表情を浮かべた。 《ゆっくりしていってね!》 「「「「「「ゆっ、ゆっくりしていってね!ゆぅ・・・」」」」」」 《ゆっくりしていってね!》 「「「「「「ゆっくりしていってね!ゆ゛があ゛ぁぁぁぁ!!」」」」」」 《ゆっくりしていってね!》 よしよし、ちゃんと動作しているな。 ゆっくりは寝不足が原因で死ぬことはないと噂に聞いたので、実験してみる次第だ。 機械の作動を確認した俺は、「おやすみ~」と小さく声をかけ、部屋を出て自分の寝室に向かった。 寝る時は俺も耳栓をした。子ゆっくりの悲鳴が聞こえてきてうるさいのなんの。 明日に備えて、俺もゆっくり眠らないとね。 続き このSSに感想を付ける