約 1,503,691 件
https://w.atwiki.jp/8a8b2c3d8791/pages/338.html
#blognavi MC下手なのって最悪ー。 こんばんは、よしです。 昨日はありがとうございました。 最近食べてばっかりです。どうしましょう? 本日のドライバー;ここんとこ運転荒いよ。 カテゴリ [うは] - trackback- 2007年06月10日 21 28 49 三日連続(飛び飛びでプラス2日)でカラオケ……。しかも毎回2〜4時間。なおかつ一人で。録音しながらだと、緊張感からか、全然楽しくない。ああ、店員のお姉さん綺麗だよ。疲れた。 -- よし (2007-06-15 01 06 09) 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/433.html
前ページ次ページSSまとめ シリーズ/美空ウイルス 美空ウイルス.exe【ver 24.1】--------------------------------------------------------------- ここは何処だろう…。のどかは空気を掻いて宙を泳いだ。 一面に立ち込める霧。自分の体がより希薄になったように感じる。確かに光が体を透いている。 「私…どうなったんだろう…」 のどかは呟いた。 『あれ…宮崎?』 声がする。近くて遠い声。 耳元で囁かれているようで、でも、遥か彼方から聴こえてくるかのように小さい。 『えっ、本当ですか?』 別の声だ。誰だろう? のどかは眩暈を感じながら、辺りの濃霧を注意深く観察した。しかし、霧に変化はない。 『本当だって、今、確かに宮崎の声がしたんだって!おーい宮崎ー!聞こえてたら返事して〜』 「…は、はい!ゎ…私ですっ!」 のどかは返事した。誰でも良かった、誰かに認識されるのなら、自分に気付いてくれるのなら…。 『おっ!やっぱり宮崎だったんだ』 『朝倉さん…残念ですが、私には聞こえません』 朝倉?ここに朝倉和美がいる!? 「…ぁ、朝倉さんですか?」 『当ったり〜!ってことは、宮崎も、ちゃおりんに捕まったんだ?』 『えっ…本当に宮崎さんがいるんですか?』 『何言ってるの、さよちゃん。宮崎はちゃんといるよ』 「あの、もう一人の方は、どなたですか?」 すると、当人の代わりに朝倉が答えた。 『相坂さよ。宮崎の前に、ちゃおりんに消されてた2-Aのクラスメイトだよ』 『…あの〜、私、相坂さよって言います。 私には宮崎さんの声が分からないんですが、私の声は聞こえてますか?』 「えっと…相坂さんの声は聞こえてますよー…」 『ちゃんと聞こえてるってさ』 『わぁ、良かった』 『さて…ところで宮崎。今の2-Aは、どうなってる?』 美空ウイルス.exe【ver 24.2】--------------------------------------------------------------- 昼夜の区別ない超の城。虚ろな影はその廊下を這い、やがて適当な小部屋の闇に紛れた。 「…腹へった」 美空は、腹を空かしていた。虫の音は静まらない。ほとんどの部屋は漁ってみたが、 驚くべきことにこの基地には食べ物や飲み物といった品がないようだ。 あぁ、前言撤回。飲み物ならいくらでもあった。化学記号で綴られたラベルを無視すれば、 一時の満足は得られるかもしれない。その後で何が起きようと気にしないならば飲めばいい。 「もう…死ぬ…」 美空は部屋の中を見回した。 あれ?この部屋は何の部屋だろう?他と違って、実験室のような匂いがしない。 薬品も機械もなく、ただ部屋の床の中央に粉々に砕け散った鏡の破片が落ちているだけだ。 本当にそれしかない。ならば、この部屋に用はない。鏡は食べ物じゃないからだ。 美空はその部屋を後にした。 次の部屋は、いかにも秘密基地な部屋だった。 壁は意味不明な図や文字の羅列が書かれた紙片に覆われ、 機械を組み立てた後に余ったらしい部品が床に散乱している。 もしかしたら、この基地の地図があるかもしれない。美空は壁の紙片を順番に見ていった。 「いそうそうさシステム?…スレとは世界の集合体、各SS世界間を移動…新たな空間を作成… ふーん、これは地図じゃないね」 次の紙に目を移す。 「ぞくせいそうさシステム…他のSS世界をスキャン、属性をコピー… …うーん、これも地図じゃないよねぇ」 「今、帰ってきたネ」 声のする方を向くと、超が部屋の出入り口を塞いでいた。左手には見覚えのあるアレを下げている。 「もう夕飯の時間ヨ…」 「朝と昼はないのかよ…」 「気にしないでほしいネ」 「…で、その夕飯は何さ?」 凄く嫌な予感がする。 「味噌ラーメン…嫌いカ?」 美空ウイルス.exe【ver 24.3】--------------------------------------------------------------- 日が落ちてから、しばらくの時が過ぎた。 教室には再び2-Aが結集し、息の詰まるような空間を共有していた。 葉加瀬は真剣な顔付きで、PCの画面を睨んでいる。 しかし、ラジオ放送開始まではまだ何時間も残っていた。 このままでは葉加瀬の神経が限界を迎えてしまう…そう心配した夏美は適当な話題を振ってみた。 教室を和ませるための談話とか、そんな感じだ。 皆に遅れて、ひとり教卓で食事をしているネギ先生が目に入った。 「ネギ先生、何を食べてるんですか?」 夏美の声が教室に拡がる。 「へ?僕が食べてるものですか?」 ネギが顔を上げると共に、葉加瀬がネギの食べているものに注目した。ハルナが夏美に続く。 「確かに気になるわね、すごく美味しそうに食べてるし」 生徒たちの興味に、ネギが箸でそれを摘み、皆に見えるよう持ち上げて言った。 「タン塩弁当です」 夏美とハルナは後悔した。今度は別の意味で教室が静まってしまったからだ。 「たんしおべんとう?」 せつなちゃんが無邪気に訊く。千鶴が微笑みつつ、答えた。 「違うわよ、せつなちゃん。それは、"たんしょう"って読むのよ」 「ふーん。たんしょう〜!」 美空ウイルス.exe【ver 24.4】--------------------------------------------------------------- 愉快に騒ぐせつなちゃんを見て、夕映がハルナを小突く。 その眼は、なにやってるですか、と言いたげだ。ハルナはウインクを返し、舌を見せた。 「てへ、じゃないですよ、ハルナ…児童の発育に悪影響が出たらどうするつもりですか… …ん?それは何の本です?」 夕映が気になったのは、ハルナが暇潰しに持ち込んだ文庫だった。 表紙はカバーに覆われ、タイトルは分からない。ハルナはカバーを外し、本を夕映に差し出した。 「読んでみる?何かが目覚めるわよ」 どれどれ…と夕映は目を凝らした。 つ『世界がもし100人の新田だったら』 orz 気付くと、葉加瀬はまたPCに向き合っていた。 夏美には、恋人がどこか遠くに行ってしまったように感じられた。どこか、少し心が寂しい。 不意に眺めた今宵の空は、何故か黄色かった。 スポットライトのように丸い月は、空高々に磔にされていた。 ラジオまでは確かに時間がある。しかし、永遠にラジオが始まらない訳はなかった。 【つづく】 美空ウイルス.exe【ver 25.1】--------------------------------------------------------------- 「美空には、この計画の全貌を伝えておくつもりヨ」 味噌ラーメンを平らげた超が、寝転びながら言った。 「計画ねぇ…私には、あんたが何をやりたいのか、それすら掴めてないよ」 それを聞き、超が苦笑する。 「葛藤が生んだ迷いの軌跡ネ。しかし、今はもう何の迷いも無いヨ」 そう呟いて、超は包帯に包まれた自身の右手を見つめた。 包帯の下には、鏡を拳で砕いたその名残があるはずだ。超は軽く目を閉じ、ゆっくりと語り始めた。 「美空は空気、私は悪人…それぞれに自身の好まない属性を付けられているネ。 これは苦痛に繋がる属性だたヨ。強烈な個性は、その人物を記号化してしまう…嫌な話ダガ」 ふぅん…、美空はラーメンの最後の一口を箸で掴んだ。 「強烈な個性を失った場合、その人物はどうなるカ…私は、その人物が存在しなくなると考えたヨ 強烈な個性は、その人物そのものを代用してしまうネ。 その個性さえ保たれれば、細かな個性など見えなくなってしまうヨ。 強烈な個性…それは、我々の世界を牛耳る者たちの支配する術といえるネ」 美空はスープを飲んでいる。さすが五月だ、美味い。二日連続で食べても飽きがこない。 「だから、私は強烈な個性を操ろうとしたヨ。そして、属性とは何か、それを知ろうとした… まず、私は空間を操ったネ。空間、世界を移動し、移動させる…神の如き業ヨ。 では、空間とは、世界とは何であったと思うカ?」 美空は頬を指で掻き考えてみたが、その成果はなかった。 そもそも、実を言えば話なんて聞いてなかった。 美空ウイルス.exe【ver 25.2】--------------------------------------------------------------- 「空間…世界…それは、嘘のレベルだったヨ」 「…嘘のレベル?」 美空の適当な相槌に、超が頷く。 「そうネ、嘘のレベル…その世界を束ねるルールとでも言えば分かりやすいカ… 『もっこり真名さん』の世界、『ミラーワールド』の世界、『Dr.アコー診療所』の世界… 全てに異なるルールがあるヨ。 それらのルールは固く守られ、それが歪むことは世界観の崩壊を意味するネ」 そこで超は一度、呼吸を整えた。 「空間を、世界を操作して、初めて知ることができたヨ」 「何を?」 美空が促す。 「私たちが駒だと、わかたヨ。職人たちの駒、世界と世界を自由に移動させ、その存在の形を 自在に変化させ楽しむ…その為の駒ヨ。だから、私は真似てみたネ。それが、美空ウイルス」 美空はごくりと唾を飲み込んだ。自分の知っているものの名前が、唐突に現れたからだ。 「美空ウイルスは、美空と同様の属性を他人に与える装置ネ。空気という属性が最も相応しい人物 に空気属性を与えてしまう。そうすれば、美空と他の人物の差が分かると思たネ」 超は上半身を起こした。そして、美空を向き、真剣な眼差しで見つめてくる。 「美空の空気属性と、他の空気属性…同じ空気属性でも性質が違ったヨ」 なんとなく、美空は安心できた気がした。 「つまり、空気属性という個性は、美空自身の個性でもあるということネ」 美空は唾を呑んだ。 「それでも美空は、空気属性を捨てたいカ?」 気に入らなくても、それは自分の一部を成す要素なのだ。 その要素を捨てることは、自分を大きく変えることを意味する。 「超は、その悪人属性を消せたの?あんたさ、最初に私に言ったよね? 勝手に付けられた属性を一緒に消そう…って。本当の自分を取り戻そう…ってさ」 超はにやりと笑った。 美空ウイルス.exe【ver 25.3】--------------------------------------------------------------- 超の作った別位相の世界…それは、靄が視界を覆い尽す空間だった。 口から発せられた声は霧に吸い込まれ、遠くまで届かない。 だから、この空間に閉じ込められた者は、他人の存在を実感しにくい。 それがこの牢獄の持つ力であった。 今までは空気設定を支えるカラクリだったが、教室の皆が相坂さよの帰還を見留めてしまった為、 今やその役割は果たせなくなっている。なので、超はただの牢獄として使い始めたようだ。 のどか、さよ、朝倉の三名は、この空間に閉じ込められていた。 朝倉は、超が部屋にやって来たこと、彼女の操る三台の機械に襲われ、 結果、あの青い光線を浴びてしまったことを、のどかに教えた。 「どうせ、クラスの皆は、私とさよちゃんが駆落ちした〜とか騒いでるんでしょ?」 「そんな感じです…」 三人の視野はやはり濃霧が支配し、それぞれの姿は見えない。 霧が吸収しきれなかった、かすかな声の残り滓でしか意思疎通を図れない。超の牢獄は強力だ。 「問題は、どうやって脱出するか…だよね」 朝倉は手を腰に当てた。しかし、もちろん、誰も彼女の姿を見ることはできない。 「そういえば、宮崎って心を読める本とか持ってたよね?」 「アーティファクトのことでしょうか?」 「うん、それそれ。その本を使って、ちゃおりんの心を覗けば出口が分かるんじゃないかな」 そんなことは、超もお見通しだ。だから、のどかからはチャネリング少女属性を奪っておいた。 「…あの、それが…ごにょごにょ」 「え?何?よく聞こえないよ」 「…超さんに盗られてしまいました」 「何を?」 「だから…あの本です」 「…マジ?それって、マズイんじゃ…」 美空ウイルス.exe【ver 25.4】--------------------------------------------------------------- 教室では、既に作戦の準備が進んでいた。 ウイルスの動作を遅らせ、のどか空気設定解除と同時にウイルスを除去するのだ。 しかし、作戦の準備とはいっても仕事をするのは葉加瀬と茶々丸くらいで、 他は作戦の行方を見守ることくらいしかできない。 仕方のないことではあるが、誰もが申し訳なく思っていた。 教室の緊張した空気に耐えかねて、千雨は廊下を通り、満天の星空が覆う校舎の外へと向かった。 廊下は昼間のそれと違って、ただの建物の一部としてのそれに見える。 生活感がまるで欠けているのだ。 廊下の途中で、千雨は足音が増えたことに気付いた。 「ついて来るなら、コソコソすんなよ」 振り返ることなく千雨は言った。しばらくの沈黙の後、軽く小刻な足音が耳に届いた。 まだ千雨は振り返らない。すぐに、千雨の右腕に抱きつく感触があったからだ。 「いくぞ、ザジ」 コクリ…~ 二人は外に出た。 校舎は幽霊のように見える。表情のない白い壁。黒塗りされたように中を覗けない窓の列。 学校が眠っているというよりは、死んでいるみたいだ、と千雨は思った。 ザジが校舎のある一ヶ所を指差す。つられて千雨もそっちを見た。 そこには、一ヶ所だけ照明のついた教室があった。2-Aの教室だ。 中で動くクラスメイト達の様子は、極小サイズのテレビで見た映像を思い起こさせる。 「あいつら…頑張ってるな」 「うん」 空を仰ぐと、思った通りの空が見えた。千雨は前に顔を戻す。ザジがいる。ザジも千雨を見ている。 ちゅっ 「私も何か役に立てるかもしれないな」 千雨の言葉に、ザジがそっと手をそえた。 「うん」 二人は、教室へと戻って行った。星空よりも遥かに明るい、その教室へと。 美空ウイルス.exe【ver 25.5】--------------------------------------------------------------- 「私が悪人属性を解除できたかどうか…美空、知りたいカ?」 超は、すっと立ち上がり、床に座る美空を見下ろした。超の威圧感が美空を襲う。 「悪とは、対峙する二者間に成立する相対的な関係が前提となるヨ。 一人だけで悪にはなれないネ。だから、今は美空が善で、私が悪と呼べるかもしれないヨ」 美空はたじろいだ。 「ちょ…私に何かする気?」 超の顔が更に歪む。明らかに勝ち誇った顔。勝者の笑み。 「何かするか…いや、それはないヨ。もう無駄だと分かっているからネ」 「ど…どういうこと?」 「過去に、何かしたことがある…ということヨ、美空サン」 美空は自分の掌を見つめ、超に向き直る。 「まさか、私を空気にしたのって、あんただったの!?」 意外な返事だと驚き、そして超は声を出して笑った。その笑いは秘密基地中に木霊する。 まるで、秘密基地自体が笑っているみたいだ。 「それは違うヨw、しかし、それも面白い発想ネw」 笑いを堪えるのに必死、といった様子だ。 「じゃ、じゃあ…あんたは私に何をしたの?」 「美空を悪人に設定したヨ。気付かなかたカ? 私が美空に声を掛けた時、美空は既に悪人属性を持っていたネ」 「そ…そんな。でも何で…」 「簡単な話ネ。美空が悪となれば、私の悪人属性が解除できると思ったヨ。 しかし、それは失敗したネ。美空のシスター属性が悪人属性を強制解除してしまたヨ」 「だったら、私は一度、悪人だったってわけ?」 「悪人でない美空さんが、どうやってウイルスを撒くことができるカ?」 そこで、美空は閃いた。超が何をしようとしているのか分かったのだ。 超の目的は初めから変わってない。自分の悪人属性を解除すること、それが目的。 「まさか、超…あんた別の人を悪人にするつもりじゃ…」 「美空は勘が良いネ…」 【つづく】 美空ウイルス.exe【ver 26.1】--------------------------------------------------------------- 「正確に言えば、もうその人に悪人属性を付けてしまたヨ」 超は美空に微笑んだ。 「…つまり?」 それに対し、美空はまだ話の経緯を理解していないようだ。 「つまり、今の私に悪人属性というものは無いヨ。だからといって、善人というわけでもないガ…」 「じゃあ、悪人設定解除は成功したの?」 美空の問いに、超はゆっくりと頷いた。 「もし今の私が固定的な悪人だとして、美空にこの事実を話すと思うカ?」 美空は首を横に振る。 「だから、安心していいネ。そして、次は美空の番ヨ」 「わ…私の番?」 「だから訊いているヨ。自己に含まれている空気属性を捨てる覚悟はあるノカ…」 美空はうつむき、顔を超から隠した。正直、悩んでいるのだ。超はそれを察した。 「よく考えると良いネ。しかし、悩める時間はそんなに残っていないヨ」 超は腕に付けた時計を見せた。深夜、日付が変わろうとしている。 「今夜のラジオ、それが終わた時、決着がつくネ」 「それって、どういうことさ?」 「私の計算が正しければ、ハカセがウイルスを撃退してくれるはずネ」 「どうして、そんなことが分かるの?」 超は懐から一冊の本を取り出した。のどかの本だ。 「これは、心を読める本ネ」 反射的に胸を隠し、次に美空は頭を抱えた。心を読まれると聞いて、隠したくなったからだ。 「この本によれば、ハカセはウイルスを除去できるヨ …そう、ハカセは敵なる悪を倒すことになるネ」 「まさか超、最初からそのつもりで…?」 「非常事態の策だたヨ。そうでなければ、何故ウイルスをハカセに渡すカ…」 超の告白に話題を反らされ、美空は超に訊き忘れていた。 今の悪人は、誰なのか? 美空ウイルス.exe【ver 26.2】--------------------------------------------------------------- 「ハカセ…準備完了です」 葉加瀬は茶々丸を向き、こくりと頷く。茶々丸も頷き返す。 「それでは、作戦通り、ウイルス撃退を開始します」 時計の針は、ラジオ開始15分前を示していた。 「教卓に置かれたPCの画面に、宮崎のどかさんの空気設定解除が表示されたら、 除去開始の合図です。次の空気設定が実行される前にウイルスを破壊します」 葉加瀬の言葉は、一語一語しっかりと皆に届いた。これでウイルスの脅威は去るのだ。 「これでMの野望も砕かれたアル」 古菲が活気に満ちた声で言った。 「そこなのですが、Mとは誰なのか…たった今わかったです」 夕映は手元の名簿を皆に見せた。 「この春日美空さん、イニシャルはM.K…」 「だったら、その春日美空が犯人アル!」 「古韮さん、黙ってください」 「韮じゃないアル…(OωO;)」 夕映は咳をして、声で整えた。 「私はこの春日さんを覚えていません。これは彼女も空気になっていることを意味してると思うです。」 「それで、どうすれば良いんですか?夕映さん」 ネギが訊いた。 「それはわからないです。ただ、この事件の首謀者は超さんであったとしても、 春日美空さんも関与しているということです。例の犯行声明で、彼女は訴えています。 "自分はもう空気扱いされるべきではない"…と」 そこまで話すと、夕映は時計をちらりと見た。 「残念ですが、私はもうスタジオに行かなければいけません。 ただ、考えてみて欲しいのです。このような事件の背景に、何があるのかを!」 そして、夕映らラジオのDJは教室を出ていった。教室に沈黙を残して。 美空ウイルス.exe【ver 26.3】--------------------------------------------------------------- 沈黙を破ったのは茶々丸だった。 「ハカセ…春日美空さんの確認がとれました。間違いなく、彼女は2-Aのクラスメイトです」 「ありがと、茶々丸。それで、私はどうすれば良いと思う?」 「春日美空さん、彼女の空気設定も解除してみてはどうでしょうか?」 「なかなかハードルの高いこと言うね」 葉加瀬は眉間に皺を寄せ、PCの画面を睨んだ。韮んだ…ではない。睨んだ。 「でも、彼女が空気設定解除を本当に望んでいるかどうか…」 そう言いつつ、葉加瀬は犯行声明を読む。 『このスレには私以上の空気が存在している。分析隊がそれを証明している。 それにも関わらず、私が空気扱いされているのは何故だ。私は許さない。』 「…いや間違いないですね。これは空気解除を望んでいます。わかりました。 それも作戦の内に加えましょう!」 その十分後、ラジオからは時の到来を告げる声が流れ始めた。 『ゆえと…ハルナの…ザジちうスレ・傾向分析〜!…』 事件は、終局へと動き出す。 【つづく】 前ページ次ページSSまとめ
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/188.html
前ページ次ページSSまとめ 26-264 26-264 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 16 02 03 ID ??? 1/2 エヴァ「茶々丸!茶々丸!」 エヴァ「茶々丸!茶々丸はいないのか!」 茶々丸「呼んだ?」 エヴァ「遅いわ!」 茶々丸「(来たんだからええやん)」 エヴァ「茶々丸…今日こそはネピアのティッシュ、買ってきてもらうぞ…」 茶々丸「まだやるんですか?」 エヴァ「花粉症のシーズンある限りいつまでも続くぞ!」 茶々丸「そこまで言うならいっそ自分で買いにいかれてはどうですか?」 エヴァ「何?」 ゼロ 「ソノ方ガイイ運動ニナルゼ?」 茶々丸「今や備長炭が自分で働く時代ですから」 エヴァ「それは違わないか?」 ゼロ 「自分ノコトグライヤッテミロヨ、ケケケ」 茶々丸「では多数決しましょう。自分で買いに行けばいいと思う人ー。」 ゼロ 「ケケケ」ノシ 茶々丸「はーい」ノ 茶々丸「得票が過半数に達しましたので決定です」 エヴァ「待て!なんだその私に不利な多数決は!納得いかん!」 茶々丸「…じゃあどうせいゆうねん?」 エヴァ「もっと公平にしろ!こんな少人数でやるからいかんのだ!」 26-265 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 16 03 27 ID ??? 2/2 3-A教室にて 茶々丸「…では28対1、満場一致で『自分で買いに行く』ということに決定しました」 エヴァ「………orz」 茶々丸「ではこれお使いのメモです」 エヴァ「…どさくさにお使いまで押し付けられてしまった…」 さよ 「そして私は忘れられてしまった…グスン」 茶々丸「みんなありがとうなー感謝するわー」 26-270 26-270 名前:楓 守人4[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 17 08 19 ID ??? 楓 守人4 拙者、麻帆良の平和を守る陰の守人。もはや闇に生きる定めは捨てたでござる・・ 裕奈 「ハッ!!!」 残り7秒、点数は30−31。ツーポイントエリアより放たれたこのシュートが入れば逆転で勝利でござるが・・ 今日は体育館にて春の選抜に向けてのバスケットの予選試合がおこなわれているでござる 拙者は暇であったので、皆に誘われその応援にいったのでござる 桜子 円 美砂 「フレーフレー、ゆ、う、な!!」 楓 「なかなかの試合でござるな・・」 拙者は持参したピーナッツを頬張りながらその試合を見ていたでござる 白熱した試合、お互いになかなか点が取れず、それも接戦となっていたでござる そんな中、試合終了間際に最大のチャンスが裕奈殿に訪れたのでござるが・・ ボールは手を離れ、ゴールに向かって飛んでいったでござる ボールはバックボードに当たり、リングに当たる。そのままボールはリングの上をくるくると回転して・・ ダメでござる。このままではリングの外に・・相手チームの方、申し訳ないでござる 拙者は手に持ったピーナッツを親指ではじき、高速でボールに当てる やがてその力が加わったボールはリングの中に吸い込まれていったでござる 裕奈 「やったああああ!!!!」 その2秒後に終了のホイッスルが鳴り響いたでござる。試合終了、これで予選突破でござるな 真名 「今のはお前か、あまり手を出さない方がいいと思うが・・」 楓 「何のことでござるかな?」 真名 「ふふ、それならそう言うことにしておこうか」 楓 「知らない方がいいこともあるでござるよ。さあ、裕奈殿を祝福しに行くでござる」 完 26-285 26-285 名前:明日菜 唇 12[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 18 04 01 ID ??? 明日菜 唇 12 今の私に強敵が現れた。もしかすると最強の相手かもしれない ああ・・あれじゃあキス出来ないじゃない。もう・・ 今まで何人もの乙女の唇を奪ってきたのに・・でもこれでは手の施しようがない うむむ・・どうすればいいんだろう 私はこんなところでつまずいているわけにはいかない 私のキスを待っている乙女がたくさんいるんだから・・ エヴァ 「へっくしゅ!!」 エヴァちゃんがつけている花粉症のマスク・・これではキス出来ないじゃない ・・・そうだ、もしかしてこれで 明日菜 「はい、エヴァちゃん。ネピアのティッシュ、しかも花粉症用のソフトタッチタイプね」 目はぐずぐず、真っ赤に腫れ上がらせて、涙をためているエヴァちゃん 鼻をかませることが出来ればもしかして・・やっぱり!! エヴァ 「おお!!すまないな、花粉症はつらいんだ」 マスクを取り鼻をかむエヴァちゃん。かみ終わり一息ついてエヴァちゃんの口元が開けた。つまり・・ エヴァ 「むぅぅぅ!!!!」 渾身のキス、エヴァちゃんに逃げられないように咸卦法を使用。あまりのことにエヴァちゃんは合気も使えないでいる じたばたしてももう遅いって。エヴァちゃんの唇ちっちゃくて可愛い、食べちゃいたいな 暫くして唇を離す。私は自分の唇を舌で舐めてみた 明日菜 「ずいぶんと水っぽいね、花粉症って唾液もたくさん出るの?」 エヴァ 「き、貴様人の唇を・・・しかもこれはネピアのティッシュじゃ無いじゃないか!!!」 怒んないでよ、もう一回キスしてあげるからさ。あん、エヴァちゃん逃げちゃった・・ 完 26-291 26-291 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 18 33 54 ID ??? 真名「ふふふ…可愛いなアキラは…」 アキラ「真名…もう浮気しちゃダメだよ…?」 真名「ああ…すまないな」 アキラ「刹那さんじゃなくて…私だけを見て」 真名「もう浮気なんかしないさ。さてそろそろきめるぞ」 アキラ「んっ…!強すぎるよ真名…」 真名「ああすまn…」 「ガシャーン!!」 真名「な、なんだ!?ドアが吹き飛んだ!?」 アキラ「な、なに?」 ネギ「こんにちは。指導にきました」 アキラ「ネ、ネギ先生!?」 ネギ「どうも久しぶりのアナルハンターネギです」 ネギはいつもの笑顔だが普段とは雰囲気が違った 真名「こいつは…アキラ逃げろ!」 アキラ「え?なんで?」 真名「いいから!早く!」 アキラ「う、うん!」 ネギ「前に指導したのに学習能力がないんですか?」 真名「人は死んでも守らなくてはいけない時があるんだよ」 真名「ば…馬鹿な…前よりもテクニックが上がっているだと…」 ネギ「前よりも手強かったですが僕も強くなってるんですよ?」 「そういえば最近はアスナさんが皆さんに卑猥なことをしてるらしいですね…フフ…」 26-292 26-292 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 19 04 05 ID ??? 史伽「お姉ちゃんそろそろネジを巻く時間ですー」 風香「あ、史伽いつもアリガト」 茶々丸「私にも妹ができたのですね」 楓 「聞かなかったことにするでござる」 26-298 26-298 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 20 53 39 ID ??? 孤島にて 1/6 ―――とある南洋の孤島の砂浜、青く晴れ渡る空に透き通る蒼い海――― この世の楽園とも思える場所で、穏やかならぬ剣戟が響き渡る。 その音を繰り出すのは、甲冑を着た騎士と、体長70cm程の2本の小剣を構えた人形であった。 人形の名はチャチャゼロ。 Evangeline.A.K.McDowellの従者である。 チャチャゼロの後ろの砂浜にはいくつもの剣が突き立てられている。 「ケケケ、ドウシタ? ソンナモノカ?」 喋りながらも、2本の小剣を操り騎士に迫る。 「くそっ! ちょこまかと、人形の分際で!!」 騎士が剣を横薙ぎに払う――― 「キャハッ♪」 チャチャゼロはわざとギリギリに、楽しそうに避け、騎士の懐に飛び込む。 「ひっ」 剣をひきつけ体の中心をを守ろうとする。 だが、チャチャゼロの刃は、騎士の左肩を甲冑の隙間から浅く切るだけであった。 「アメェアメェ、モット動キヲ見ナキャ駄目ダゼ?」 「なめるなっ!」 口では強がってみせたが、騎士自身はもう勝機を見出せない。 26-299 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 20 54 22 ID ??? 2/6 血が薄く流れる。 左肩だけじゃない、さっきからこの人形は甲冑の隙間を狙って切りつけてくる。 それも、ごく浅くだ。 殺す気ならとうの昔に、自分は死んでいる。 ケタケタ笑いながら、何の感情も見て取れないガラスのような眼で見つめてくるその人形は、明らかに自分をなぶっていた。 くそっ、小さい体にあの速度… どうやったら捕らえられる…? 息が切れる。 甲冑を着て砂浜で戦うのは想像以上に消耗を強いられる。 相手は魔力で動く人形、しかも中空を舞う。 体力など関係があるとは思えない。 先に行った仲間たちが、魔力の源であるEvangeline.A.K.McDowellを追い込むか、消耗させればあるいは… 「勢イヨク来タ割ニハ、歯ゴタエガネーナ」 「うっ、うるさい!! 貴様ら悪の魔法使いを倒すために来たのだ!! まだまだこれからだ!!」 「ワザワザ虎ノ尾ヲ踏ミニ来ルトハ、御苦労ナコッタ」 「だっ、だま… れ…?」 人形の後ろ―――丘の上にある森の上空に、一つの小さな点が見えた。 かすかにたなびく金髪、そしてその上にある巨大な――― 「魔法、なのか…?」 「オッ」 ここからでもはっきりわかるほどの巨大な塊、きらきらと光を反射させながらさらに大きくなっていく。 氷なのか? だとすると、アレは魔法で、その下に見える金髪の持ち主が悪の魔法使い… Evangeline.A.K.McDowellなのか!! そうはっきりと認識した瞬間、巨大な塊が落下した。 スローモーションのように、ゆっくりと見えた。 それは夢のように思えたが、次の、島全体を揺るがす地響きが、現実を体に伝える。 「ケケケ、決マッタカ?」 「くっ、くそっ!!」 皆があそこで戦ってる、急がないと! 「オット、オ前ノ相手ハ俺ダ。 仲間ト共ニ死ニタキャ俺ヲ倒シテミナ」 「どけっ!!」 「ケケケ」 26-300 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 20 54 56 ID ??? 3/6 「ドウシタ、ドウシタ。 カスリモシネーゾ」 まだ丘の上の森では魔法の攻撃らしき光が見える。 早く、早く行かねば… 動きを止めるには……… 「!」 よし、やってみるか… 呼吸を整えて… 剣を逆手に… 「オッ、ナニカ思イツイタミテージャネーカ。 イイネェ」 惑わされるな! 動きを良く見て… 「ドーシテクレルンダ!?」 相手はリーチが短い。 そうやって飛び込んでくる! そうしたら右手の剣を、掌に貫通させて!! 「オオッ!!」 人形の手を掴む! そうしたら、左手の剣の内側を!! 切り上げるっ!!! キィ―――ンと、澄んだ音が響いた。 26-301 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 20 55 38 ID ??? 4/6 「あ…」 トスッと、砂浜に小剣が突き刺さる音。 人形は切り上げる剣に対して、左手の小剣を当てると、その反動を利用して避けた。 武器を捨てて。 「一張羅ガ台無シダゼ」 服の端かよ… 「悪カナカッタゼ? タダ、ヤッパリアメーヨ。 …オッ!」 他に… 他に手は… 「…御主人カラ連絡ガ来タゼ。 向コウハ片付イタソウダ」 …丘の上の森はもう、何の光も見えない… 「遊ビハ終ワリダナ」 遊びかよ… 膝が落ちる。 左手が痛む。 もう… 「殺シニ来タンダ、殺サレテモ文句言エネーヨナ」 人形が手をかざすと、自身の倍以上ある剣が砂浜から飛んで来て、その手に収まる。 「モウ、嬲ラネーヨ」 ゆっくりと近づく。 死が。 確実な死が、小さく、砂を踏む音を立てて。 ああ、ここに来るまでの事が頭を駆け巡る。 騎士になるために訓練した日々、噂で聞いた悪の魔法使いを倒そうと、 仲間と共に誓った日、この島に来る時、 『何でもいいから、無事に帰ってきておくれ』 と、言ってくれた… 「アバヨ」 「母さん…」 26-302 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 20 56 34 ID ??? 5/6 …目を閉じて待っていた、この世と別れる瞬間を。 だがそれはいつまでたっても訪れない。 目を開けると、剣は首の真横で止められていた。 「ナンダソリャ?」 「えっ?」 次の瞬間、横頬を物凄い勢いで叩かれ、吹っ飛ばされる。 砂が口に中に入って、血に混じりじゃりじゃりする。 「テメェ! 殺シニ来テ、ヤバクナッタラ”まま”カヨ!!」 剣の腹で殴られたらしい。 しかし、あの人形は何であんなに怒っているんだ…? 「ケッ、少シハ覚悟ノ決マッタ野郎カト思ッタラ… 只ノガキカヨ!!」 「あっ、ああ…」 「悪人デモナケリャ、英雄デモネー。 マッタク…」 人形はため息を一つつくと、剣を砂浜に突き立てて、その上に座った。 こちらに背を向けて。 「帰レヨ」 「へっ」 「モウ興味ネーヨ。 オ前ナンカニヨ」 その言葉が、なんだか深く、自分の心に突き刺さる。 「来タ時ノ船ガアルンダロ? ソレニ乗ッテままノ所ニ帰レヨ」 「なっ、なんで…」 「ナンデモ糞モネーヨ、死ニタキャ続ケルゾ? 俺ガ振リ向イテマダ居タラ―――殺ッテヤルヨ」 26-303 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 20 57 20 ID ??? 6/6 「チャチャゼロ、そっちは片付いたのか?」 「…逃ゲラレチマッタ」 「ハッ、お前らしくもない。 珍しいことだ」 「ソッチハドーダッタンダ?」 「少しは使える奴も居たが、井の中の蛙だな。 功名心で来る奴など、所詮敵ではない」 「ソーダローナ…」 「まったく、向こうからわざわざ死にに来るのだから、世話はない」 「マッタクダ」 ―――夜の浜辺、大きな月と絶え間ない波音の中、チャチャゼロは剣の上にポツリと座る――― 「……ラシクネーゼ、マッタクナ……」 完 26-305 26-305 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 20 59 09 ID ??? 1/4 膝の上 冬の、空気は乾いているが、日差しが暖かいその日。 Evangeline.A.K.McDowellは、人形であり、従者でもあるチャチャゼロと共に、 屋敷の外に椅子を並べて太陽の暖かさを楽しんでいた。 「アー、退屈ダゼ。 隠居シタジジィジャネーンダゼ?」 「五月蝿い。 お前の虫干しも兼ねてるんだ」 「マッタク… ン?」 屋敷の前の林から、のそりと、灰色の小さな影が歩み出る。 「お前は…」 「ケケケ、懐カシイ顔ジャネーカ」 毛もバサバサで、切れかけた片耳を持つ一匹の老猫。 「な゛ー」 エヴァンジェリンの前に座ると、一声、かすれた鳴き声を上げた。 26-306 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 20 59 40 ID ??? 2/4 ―――十数年前、麻帆良学園に来て、やっとこの生活に慣れ始めた頃――― 「? おい、チャチャゼロ、ここにあった豚肉を知らんか?」 「サッキ、猫ガ持ッテチマッタゼ」 「な゛、何故止めん!!」 「無茶ユーナヨ御主人、動ケネーンダゼ?」 「ええい、この役立たずめ! いつもの奴か!?」 「イツモノ灰猫ダナ」 「くぅぅぅぅ〜、下等生物めが… 許さん!!」 「御主人来タゼ」 「待てコラアァァァァァァ!!」 「御主人、今ノ体ハ10歳ト…」 「へぶぅっ」 「アーア…」 「この罠を使えば…」 「コレハ鼠取リジャネーノカ?」 「フッ、所詮下等生物。 餌に釣られて大人しく捕まるだろう」 「…何故だ。 餌も無いし扉も閉まってるのに、何故奴はいない!」 「引田天功ミテーダナ」 「こうなったら毒だ! この錠剤を口にすればイチコロ… ククク、コイツを餌に…」 「クッ… 毒だけが残って…」 「期待ヲ裏切ラネー奴ダ」 「そうだ、糸だ! 糸を使えば奴など…」 (気付クノ遅スギネーカ?) 26-307 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 21 00 24 ID ??? 3/4 「おっ、来たぞ…」 「サッサト殺ラネーノカ?」 「フフフ、糸は餌につけてある。 奴がねぐらに戻って安心した所を、じわじわと… この私に対する無礼の数々を思えば、当然の事だ」 (悪… ジャネーヨナ…) 「ここが貴様のねぐらか… もはや逃げ隠れも出来んぞ。 と言っても、糸で動けんだろうが…」 「フゥー!!」 「フフ… まずは耳から切り落とすか… ほらほら、後半分だぞ? ククク…」 ガサ 「ニー」 「なっ!?」 「ニー、ニー」 「この仔猫たちは…」 「オ、ドウダッタ? 殺ッタノカヨ?」 「…やめだ」 「ハ?」 「真祖たるこの私が、たかが猫一匹にムキになるなど、ありえん!!」 「…」 コソコソ 「…御主人、猫ニ青魚ハ良クネーゼ」 「なっ、わ、私は別に…」 「アト、油ガキツイノモ駄目ダ。 油抜キシネートナ」 「そ、そうなのか?」 「…なぁ、この家の前にあったモグラの死体は何だ?」 「オ礼ダロ」 26-308 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 21 00 57 ID ??? 4/4 あれから十数年、たまに会っても一声鳴くだけで、決して懐こうとしなかったな… ここ最近姿を見なかったから、とっくにくたばってるかと思ったが、まだ生きていたか。 「フフフ、久しいな。 随分とみすぼらしくなったものだ」 「な゛ー」 抗議とも取れる声を上げ、老猫はひらりと、エヴァンジェリンの膝の上に飛び乗った。 「フフ…」 膝を通して老猫が喉を鳴らす音が伝わってくる。 その音に以前の快活さは感じられない。 初めてだな、お前が私の膝に乗るのは… 風が吹く。 冬の、乾いた冷たい風が。 奪われる体温の中で、膝の上の温かさは奪われることはなかった。 日差しが翳り、冬が本来の姿を見せ始める。 老猫は地面に飛び降り、エヴァンジェリンを見上げた。 「…行くのか?」 「な゛ー」 短く返事をすると、老猫は来た時と同じく林の中へと消えていく。 一度も振り返ることなく。 そうか… 逝くのか… 「最後ノ挨拶カ… 義理堅ェ奴ダナ」 「そうだな」 「ケケケ、泣イテンノカ?」 「泣くか!」 ただ… 体が冷えていく。 膝の上も。 先ほどの暖かさはもう、記憶の中でしかない。 「いつになっても、慣れることなどないな…」 膝の上 完 26-316 26-316 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 21 20 58 ID ??? ぎゅうっ 「だ〜っから!なんでお前はすぐ抱きついてくんだよ!!」 「……。」 「…その無言のクセに上目遣いで見てくんのやめろ」 「………」 「ちょ…ッ?!おま、やめ…っ!!」 「……… てか、…するなら事前に言え …くちびる切った」 「(コクコク)」 26-338 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 23 07 11 ID ??? 「…ちうー」 「ん〜?」 「ちうはザジのこと、好き?」 「ぶほっ!! ちょ、おま、いきなり何言い出すんだよ 紅茶吹いたっつーの…」 「……きらい?」 「んな訳ないだろっ て、てかはずかしいコト言わすな!!」 「(ニコッ)」 「(か、可愛いなコイツは…) じゃああたしも聞かせてもらうけど、ザジさんは誰が好きなんですかー」 「ちう!」 「…少しは照れろ」 「?」 「まぁいいや。 …あたしも好きだよ、ザジ」 26-330 26-330 名前:夏美 ロールキャベツ[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 22 51 13 ID ??? 夏美 ロールキャベツ 1/2 夏美 「出来たぁ!!」 くつくつ煮えるお鍋の中、赤色のとろりとした液体の中にそれはある 挽肉をキャベツで巻き、じっくりと煮込んだそれ。きっと美味しいはず 千鶴 「どうかしら・・」 母の味、もといちづ姉の舌で確認してもらう。どうだろう・・ 千鶴 「うん、おいしいわ。きっと喜んでくれるわね」 良かった、美味しくなかったらどうしようかと思ったから 早速熱いままの鍋にふたをして、私は工学部に急いだ ここ最近、葉加瀬は工学部につめて何かの研究をしています 私にはお手伝いは出来ないけれど、ご飯くらいは作ってあげたいと思いました でも葉加瀬ってお料理も出来る、だから美味しくないのを作るわけにはいかないのです だから、ちづ姉に教えてもらって美味しいのを作ったつもり・・です 葉加瀬は工学部の自分の部屋にいました 葉加瀬 「はーい」 インターホンから葉加瀬の声が聞こえてきました 夏美 「あ、葉加瀬?私、ロールキャベツ作ってきたから食べてよ」 葉加瀬 「あ〜夏美さんですか、今あけますのでちょっと待っててください」 ぷしゅう・・ 空気が漏れるような音がして、SF映画に出てくるような扉が左右に開きました 26-331 名前:夏美 ロールキャベツ[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 22 52 50 ID ??? 2/2 葉加瀬 「夏美さん〜ようこそ・・」 奥から葉加瀬が階段を下りてきて私を出迎えようとしています 夏美 「ねえ、これ食べてよ。おいしく・・」 私はつまずきました。そうなれば当然、鍋の中身がこぼれます 葉加瀬 「危ない!!」 ガシャーン!! 床に半分ほどロールキャベツが散らばりました。ぴかぴかに磨かれた床の上に私のロールキャベツが転がります 夏美 「あ・・」 絶望感が私を襲いました。何で私って・・ 夏美 「何で・・私ってこんなにドジなのかな。一生懸命にやっても・・だから私、自分が嫌いだよ」 私は視線を落とし、床を見つめました。だんだんとその視界が涙でゆがんでいきます 葉加瀬 「おいふいですよ。このロールキャベツ」 そんな声が聞こえたので私は顔を葉加瀬の方に向けました。葉加瀬は床に落ちたロールキャベツを食べています 夏美 「汚いよ!!食べちゃダメだって!!」 でも葉加瀬は食べるのを止めようとはしません 葉加瀬 「おいふい。それにほら、まだ鍋の中には残っています。これを一緒に食べましょうよ」 夏美 「でも・・」 葉加瀬 「私は夏美さんが好きです。ドジでも貧乳でも・・あと、身体のほうは大丈夫ですか?」 そう言っては葉加瀬は私を優しく抱きしめてくれます。嬉しいけど、何だか自分が惨めです 夏美 「痛くはないよ。ありがとう・・ごめんね・・」 私の涙は止まりませんでした。悔しいなあ、何で私こんなんなんだろ・・でも葉加瀬の優しさ、嬉しい 完 前ページ次ページSSまとめ
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/276.html
前ページ次ページSSまとめ 34-12 34-12 名前:二人の共通項[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 20 04 26 ID ??? 二人の共通項 1/2 『―――あ』 夕暮れ時の、寮近くの大型スーパーにて。同じ商品に手を出した瞬間、お互いの声が重なった。 「桜咲さんやん。こないなとこで逢うなんて珍しいなあ」 「和泉さんもよくこちらを利用されるのですか」 「うん。ウチらの寮の近くやったら、ここが一番品揃えがええから……」 あはは、と笑いながら亜子はおたふくソースを買い物篭に放り込む。 「桜咲さんもお料理するんやね。ウチてっきりお料理はこのかの担当や思うとったわ」 「は、はい……。木乃香お嬢様の料理は絶品です。私は買い出しに来ただけですから」 「ふーん……」 ぎこちなく返事をする刹那に、亜子はくすりと笑ってしまう。ちらり、と亜子は刹那の篭に目をやった。 そして、きゅぴーんと目が光る。 「うわ、それ鱧やん! ちゃんと骨切りされとるし……。桜咲さん、それどこに売ってたん!」 「え、えっとこちらです」 「ホンマや……。ホンマに鱧が置いたるやん……」 亜子は感動した様子で串焼きの鱧を二本、篭に入れた。 「えへへ。やっぱコレが出回るともうすぐ夏やなあ、って実感するわ〜♪ ゆーなにも鱧の良さを教えたらな!」 「―――ですね」 くすり、と刹那も微笑む。関西出身の二人にとって、鱧は夏を告げる魚であった。 「ありがとうな。桜咲さんに逢わへんかったら見落とすトコやったわ!」 「いえいえ。私もクラスの方とこのような所でお会い出来て、少し嬉しいです」 刹那は和やかな表情で答える。それは、以前の刹那からは考えられないような表情であった。 「桜咲さんも変わったなあ……。やっぱこのかのお陰なんかな?」 「ええっ!? そ、それは……」 亜子の指摘に、刹那はちょっぴり頬を赤くしてしまう。 「あんな、正直昔の桜咲さんは苦手やってん……。なんやぴりぴりしとったから……」 少し俯き加減で、亜子はこっそりと打ち明ける。 34-13 名前:二人の共通項[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 20 05 04 ID ??? 2/2 「ウチ、この学校に来た時から、このかと桜咲さんは気になっててん。おんなじ関西出身やったから……。 けど、ウチ気弱やから、桜咲さんにはなかなか話し掛けにくかってん……。このかやったら大丈夫やってんけど、 あの頃の桜咲さん、めっちゃ近寄りにくかったもんなあ……」 亜子の告白に、刹那は申し訳ないな、と思っていた。あの時の自分は、お嬢様をお守りする事しかなかったから。 けれど、今は違う。 木乃香と明日菜。あの二人のお陰で、人と触れ合う喜びを知ったから。 だから――― 「一応、和泉さんが私を気に掛けているのは御存知でしたよ」 くすり、と悪戯っぽい笑顔で刹那は答えた。予想外の反応に亜子はびっくりしてしまう。 「あん、せやったら話し掛けてくれてもええやん」 「あはは、済みません。あの頃は自分の任務で手一杯でしたから。けれど……」 刹那は穏やかな表情で、そっと囁いた。 「私がお嬢様と触れ合い、変わったのと一緒で、和泉さんも少し変わったのではありませんか?」 「えっ―――?」 「こうして私に積極的に話し掛けてくるのは、明石さんの影響だと思いますが」 「―――!!」 ぼんっ! と亜子の顔は瞬く間に真っ赤になる。 「ううっ、桜咲さんて意外といけずや……」 ジト目で刹那を見据える亜子。だが、すぐさま笑顔を浮かべた。 「せやね。ウチも変わったんやなあ……。ゆーなやみんなのお陰で……」 しみじみと呟く亜子の胸中には、お祭り娘の恋人がよぎっていた。 「ええ人に恵まれたんやね、ウチも桜咲さんも……」 「はい……」 二人はしばし雑談に花を咲かせた。そして、買い物を済ませ寮に着いた時、唐突に亜子が切り出した。 「せや! 今度一緒にお好みでも食べに行かへん? このかとゆーなも一緒で」 刹那は一瞬きょとんとしたものの、すぐさま頬を緩ませた。 「いいですね。次の休みにでも四人で行きましょう。約束ですよ?」 「うんっ!」 刹那の返事に、亜子は満面の笑みで頷いたのだった――― (おしまい) 34-23 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 21 49 30 ID ??? せっちゃんと亜子がもしカップルだったら 何をするにもぎこちなくて萌えになるのだろうと妄想 34-24 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 22 02 45 ID ??? 手をつなぐだけでもはわはわとか 亜子か刹那の手作り弁当とか イカン、鼻血が出てきた 34-26 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 22 26 36 ID ??? 亜子(今日こそいうんや、せっちゃんと!) 「なぁ、せ・・せ・・・」 刹那「?」 亜子「せ・・・正露丸飲む?」 刹那「?いえ、おなかの調子は悪くありませんが。」 「せ」から始まる大阪名物を知らない私は どう見ても関東人です、本当にありがとうございました。 34-28 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 22 35 03 ID ??? 「せ」でセルビア・モンテネグロが出てくる俺はどう見てもWカップ観戦中 34-29 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 22 41 26 ID ??? 28千雨「ロッペン乗ってるな」ザジ「・・・・・・・・!」千雨「どうしたザジ?」ザジ「ビッチ…」千雨「?」ザジ「ビッチばかり…ぷぷっ」千雨「そんな面白いか?」次の日ザジ「おはようちうビッチ!」千雨「ちうビッチ!?」オランダならダビッツやセードルフはどこいった二人とも能力高いだろと思った俺はWCCFでしか海外サッカー知らない奴 34-32 34-32 名前:真名ちゃんもっこり日記72[sage] 投稿日:2006/06/12(月) 00 26 10 ID ??? 真名ちゃんもっこり日記72 今、ネギ先生を追跡している。 どうも修行以外で挙動不審なところがあるらしい。 いいんちょたちのアシストで現在追跡中だ。 「…?」 ふふふ、先生は振り向くがダンボール箱に隠れているから分かっていない。 後ろを向くや否や足を出して間抜けに追跡しているのは気になるが… プルルルル プルルルル おっと無線だ、周波数141.12は… ピッ 「私だ、ショタコン」 「その呼び方どうにかなりませんの?」 「ノリだノリ。それよりこのまま追跡でいいのだな」 「もちろんですわ、もしも誰かとデートだとしたら…あぁ私はどうしたら ぶち …はいはい。 む?あれはエヴァの別荘。 そっと近づいて耳を近づける。 「―だめですマスター…そんなに攻めないでください」 「―どうした?昨日のお前はそこでくたばるはずではないだろう」 「―あっあっ、やめてください。これ以上はもう…」 まさかまさかまさかまさかまさか… そーっと覗く。 ドコォ YOU WIN 「ふふふ、どうした。この程度の連続コマンドもかわせんとはな」 「そ、そんなぁマスター。今のはハメ技ですよー」 …帰ろう。 34-33 34-33 名前:生教の二ノ宮さん[sage] 投稿日:2006/06/12(月) 01 24 25 ID ??? 生教の二ノ宮さん 麻帆良学園には生徒たちの悩みを解決するべく、ある組織が編成されていた その組織の名は生徒指導教員部。略して生教と呼ばれていた そして、そこにはある教員が所属している。その教員は生徒たちからは親しみを込めて”生教の二ノ宮さん”と呼ばれている 二ノ宮 「おおっ!!達筆で書いてあるぞ」 Q 三年女子 中国人 ちょっと出番があったかと思うと、爆破されるアル ちょっと出番があったかと思うと、総受けアル ちょっと出番があったかと思うと、汚されるアル 3−Aのみんなが中国人に酷いことするアル ワタシの体はもう・・・ぼろ切れのようアル 二ノ宮 「わかっていないな・・・」 A 生教の二ノ宮 私など出番なんていう物はない どのような形であれ、出番があることには感謝するんだ もし、それでも辛くて悲しいなら私の元へと来い 今ならしずな付きで慰めてやろう しずなは・・・凄いぞ? 二ノ宮 「結局、総受けの道しか残っていないようだな」 完 34-42 34-42 名前:生教の二ノ宮さん[sage] 投稿日:2006/06/12(月) 21 02 43 ID ??? 生教の二ノ宮さん 麻帆良学園には生徒たちの悩みを解決するべく、ある組織が編成されていた その組織の名は生徒指導教員部。略して生教と呼ばれていた そして、そこにはある教員が所属している。その教員は生徒たちからは親しみを込めて”生教の二ノ宮さん”と呼ばれている 二ノ宮 「・・・予告状?」 Q 三年女子 A・K 近日中に貴女の唇を頂きに参ります 麗しのお姉様へ 追伸 百合棒持ちの遊び人が貴女の貞操を狙っているようです、お気をつけて 二ノ宮 「ほほう・・・この私に挑戦しようとは」 A 生教の二ノ宮 質問ではないが答えてやろう どん、と来い どんな場所、どんな時間であっても誰の挑戦でも私は受ける。それが私だ それはさておき、百合棒持ちの遊び人に狙われる記憶はないのだが・・・ そちらは人違いではないのかな? 二ノ宮 「神楽坂も挑戦的だな、私が唇だけですますと思っているのだろうか?」 完 34-43 34-43 名前:マロン名無しさん[] 投稿日:2006/06/12(月) 21 07 06 ID mG7Vf0Ur ウチは麻帆良のたゆリスト 昨日はゆーなをたゆったで 明日はアキラをたゆったる TAYUNせよ! TAYUNせよ! ウチには友達恋人たくさん なぜならウチがたゆったからや TAYUNせよ! TAYUNせよ! ゆーな 「出たァーー!! 亜子さんの1秒間に10回たゆん発言!!!」 アキラ 「女王陛下にたゆられたみたいな気分だ!!!」 34-46 34-46 名前:のどかの部屋[sage] 投稿日:2006/06/12(月) 23 43 48 ID ??? のどかの部屋 〜ダ・ヴィンチ・コード編〜 る〜るる るるる る〜るる るるる♪ のどか「こっ・・・こんにちは、のどかの部屋です。きょ・・・今日から私が皆さん(クラスメイト)に オススメの本を紹介しますっ。今日の本はコレですー」 『ダ・ヴィンチ・コード/著:ダン・ブラウン』 のどか「今、話題のこの本・・・文庫で上中下と3冊もあるんですっ。すごいですねー」 みそら「っていうか本とかあたし苦手なんだけど」 のどか「えっと、このダ・ヴィンチ・コードはキリスト教が深く関わっていて、 日本人にはちょっと馴染みにくいストーリーなんです。だからシスターの美空ちゃんに 色々教えてもらえたら・・・って思ったんですけど・・・」 みそら「え?何のこと?あたしはシスターじゃありませんよ?」 のどか「あうぅ・・・やっぱり教えてもらえないんですね」 みそら「っていうかあたし、そういうの苦手だし何も知らないんだよねー 勉強とかサボってるし・・・ってヤバっ!」 34-47 名前:のどかの部屋[sage] 投稿日:2006/06/12(月) 23 44 21 ID ??? 鮫茶 「美空!! シスター美空!まったくどこ行ったのでしょう。」 みそら「ってなわけで、本屋ちゃん じゃ〜にぃ〜」 のどか「あうぅ・・・結局何も聞けなかったですぅ。 初期知識として『面白いほどよくわかる聖書のすべて―天地創造から イエスの教え・復活の謎まで 学校で教えない教科書/著:中見 利男』 がオススメです。 ちなみに、映画は3冊分を150分に纏めたので、かなり圧縮されてしまい 楽しめる人、楽しめない人、それぞれいるようです」 夕映 「で?のどかはどうするですか?ネギ先生を誘うためにチケットを購入したと パルから聞いたです」 のどか「ゆっ・・・ゆえー!」 夕映 「ツマラナイという下馬評を信じているですか?気にすることないです。 私は充分楽しめたですよ」 のどか「ゆえ・・・わざわざ私の為に下見してくれたの?」 夕映 「そっ・・・そんなことないです。わ・・・私はただこの映画が見たかっただけで・・・」 のどか「ありがとー、ゆえ」 夕映 「ちっ・・・・違うですー!!」 のどか「あっ、ゆえー えっと、というわけで、今回はこの辺で・・・次回もお楽しみにー ゆえー まってー!!」 〜えんど〜 34-48 名前:のどかの部屋[sage] 投稿日:2006/06/12(月) 23 44 52 ID ??? パル 「まぁたムリしちゃってー」 夕映 「ムリじゃないです」 パル 「まぁ、あんたのそういうトコがあたしは好きだけどね」 夕映 「なっ!!何を言ってるですか!!」 パル 「次映画見に行くときは誘ってよ、ね?」 夕映 「検討するです」 34-55 34-55 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 01 07 55 ID ??? 千雨「あーぁ、やっぱ日本負けたか……ま、私は最初から勝てるわけねぇと思っうわ何(ry ネギ「千雨さん、欠席ですか?」 朝倉「なんか絶頂しすぎて泡吹いたらしいよ」 真名「ザジにそこまでのテクがあったのか?」 ネギ「何があったのか知りませんか、ザジさん?」 ザジ「ガクガクブルブル」 34-56 34-56 名前:真名ちゃんもっこり日記73[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 01 10 48 ID ??? 55何が起きたんだ!?真名ちゃんもっこり日記731970年代ランチアはWRCで勝利することを目的に開発されたスポーツカー、ストラトスを開発する。V6エンジンをリアミッドシップに横置きし、後輪を駆動する。通常、ホイールベースは長いほど直進安定性が良いとされている。だがストラトスのリヤのトレッドは軽自動車のホイールベースよりも短い。これは「前後に短く左右に広い」ということであるが、つまりストラトスは直進安定性が極端に悪いことを意味している。しかし、その不安定さはミッドシップのエンジンレイアウトの効果もあり、抜群の回頭性を生んだ。そのコーナーリングスピードはライバルを圧倒し、ストラトスを勝利へと導き、伝説級の車へと押し上げたのである。直線を捨て、コーナーに全てを捧げた車。それがストラトスという車である。そんな車に私はとある依頼で報酬代わりとしてもらった。「とりあえず、これからヨロシクな」とりあえず無免許で乗り回し、免許を偽造までした。そのラリー仕様の車で堂々とアキラを横に乗せラブホに入ったり。カー○ックス中に脱輪したり。サイドブレーキかけ忘れでフロントガラスに傷が入ったり…最後には青のFDと戦ってスピンしてクラッシュ…あともう少し走れる…そう信じたかった…しかし、その思いは届かなかった。「なぁ、…そろそろ疲れたか?私が最後のオーナーで許してくれるか?」問いかけた所で車に意志などあるわけない。ましてや言葉を喋るわけがないのも知っている。でも私は喋りたかった。聞きたかった。ストラトスに意志があるならば、それを尊重してあげたかった。出来る事ならば…私は苦汁の選択を迫られ、ついに…ストラトスは静に私の元を去った。 34-58 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 01 12 06 ID ??? そして後日。 全ての処理を終えたストラトスは、私とアキラとの思い出をダッシュボードに詰め込んだまま 修理から戻って来た。 ヒャッホウ!!!(笑) 某所 「ククク、龍宮サンはしゃぎ過ぎネ」 「これからおもしろそうね」 「―ったく勝手にしろ」 そういうエセチャイナとダブルメガネがいた。 34-57 34-57 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 01 11 43 ID ??? 亜子「くーちゃん、一緒にサッカー見よな」 くー「またアルか…」 亜子「あ、あの、桜咲さんもよかったら一緒に…!」 刹那「はい、構いませんよ」 くー(ワタシと態度違うアル…) 亜子「(そうそう、日本が勝ったらたゆらせてもらうで、くーちゃん)」 くー「なっ…」 刹那「どうかしましたか?」 亜子「な、なんでもあらへんよ桜咲さん。なっ、くーちゃん?(ギロッ)」 くー「……」 34-59 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 01 13 02 ID ??? 前半日本先制 亜子「ぃよっしゃ〜!ようやったで俊輔!」 刹那「よかったですね」 くー(まずいアル。このままだとまたたゆられるアル) 後半終盤オーストラリア同点 亜子「くっ…でもまだや、まだ勝てるで!」 刹那「残念でしたね。まだまだ頑張ってもらいたいです」 くー(このままドローならうやむやにできそうアル) 34-60 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 01 14 36 ID ??? オーストラリア勝ち越し 亜子「まだや、まだ時間はある!追いつけるで!」 刹那「そうですね、最後まで諦めずに頑張ってもらいたいです」 くー(よしよし) オーストラリア駄目押し亜子「ま、まだ……」 刹那「……」 くー(これで決まりアルな) そのまま1-3で試合終了 くー「ハッ、負けた腹いせにたゆるつもりアルな!そうはいかないア…ル?」 亜子「……」 刹那「よっぽどショックだったんでしょうね、可哀相に」 そっと亜子を抱きしめる刹那。 くー(何アルかこの感情…。亜子にたゆられるのを期待してたアルか?刹那に嫉妬してるアルか?) 二人を置いてそっと部屋を出るくーであった。 34-63 34-63 名前:楓 守人 19[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 03 18 57 ID ??? 楓 守人 19 1/2 麻帆良の危険地帯、実は意外なところに存在するでござる それが図書館島 ?? 「もぐぅ・・・誰か・・・助けてください・・・」 図書館島の危険さから、拙者は結構な頻度で修行場にしているでござる そこで修行していると、そんな声が聞こえてきたでござるよ 声のする方にいってみると、なにやら本が崩れ落ちて山となっていたでござる しばらくその山を見ていると、ぞもぞと動いてうめき声をあげたでござるよ ?? 「たす・・」 拙者、急いでその本の山を掘ったでござる。すると中から出てきたのはのどか殿でござった 楓 「しっかりするでござる!!」 救出した後、ぺちぺちと頬をたたきのどか殿を起こそうとするでござるが、目を回したままなかなか起きないでござる 仕方がないので、そのあたりのベンチに寝かせて起きるのを待ったでござる のどか 「あれ?」 楓 「気がついたでござるか」 15分ほどすると、のどか殿が目を覚ましたでござる のどか 「私・・・本の雪崩に襲われて・・・」 楓 「埋もれていたでござるよ」 のどか 「楓さんが助けてくれたんですか?」 楓 「まあ、そんなところでござる」 34-64 名前:楓 守人 19[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 03 20 15 ID ??? 2/2 のどか 「あ、ありがとうございます」 のどか殿はぺこりとお辞儀をしたのでござるが、まだ調子が戻っていないらしく、すぐにふらついたでござる 楓 「まだ無理はいかんでござる」 ふらつくのどか殿を拙者は支えたでござる 思わず胸に倒れ込んできたので、そのまま抱きしめてしまったでござる のどか 「ふあっ・・・」 丁度良く胸に納まるのどか殿を、拙者は離すことができなかったでござる 楓 「のどか殿は小さくて可愛いでござるなぁ」 のどか 「そ、そんな、私なんて・・・楓さんは格好良くて頼りがいがあって・・素敵です」 楓 「背が高いだけでござるよ」 のどか 「私は・・・暗くて・・・おっちょこちょいで・・・」 何故かそのとき、のどか殿がとても愛おしく感じてしまったでござる 楓 「拙者は・・・そんなのどか殿が好きでござるよ?何というか・・・護ってあげたくなるような人でござろうか?」 のどか 「え?・・・」 楓 「気分は落ち着いたでござるか?」 のどか 「は、はい!もう大丈夫です」 楓 「では・・・あの本の山を片付けるでござるか」 のどか 「そ、そうでした!」 楓 「ふふ・・・急ぐとまた雪崩を起こすでござるよ?」 のどか 「そ、そうですね」 楓 「ここは拙者に任せるでござるよ。ニンニン♪」 のどか 「でも、お任せするなんて悪いです」 楓 「いいから、いいから、でござる」 のどか殿といると安らぐこの気持ち。心地よいでござる 完 34-77 34-77 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 20 24 41 ID ??? 前スレのラストの連作から勝手に続けてみるテスト ひんぬー同盟 ハカセ「失敗にもめげずバストアップを目指す、我らひんぬー同盟!」 風香 「ちょっとはめげろ。前スレの終わり、あの後ヒドい目に会ったぞ」 ハカセ「あはは〜。千雨さんの捕獲に成功したと思ったら、装置の向き間違えちゃいましたからねー」 風香 「これ以上減ったら本気で泣くぞ。てか泣いた。マジ泣いた。まあ元に戻ったからいいけど」 ハカセ「結局あの装置、吸った方も吸われた方も、一定時間で元に戻っちゃいますからね〜」 風香 「で、次どーすんの?」 ハカセ「とりあえず仲間を増やしましょー。3人寄れば文殊の知恵! そういえば史伽さんは?」 風香 「ああ、史伽は……」 史伽 『じたばたする方がみっともないです。無駄な抵抗はしない主義なのです』 風香 「……とかぬかしたから本気で一発蹴り入れて以来、冷戦状態なのダ」 ハカセ「なるほど〜、道理で2人とも様子が変だと思ったら……」 夏美 「(コンコン!) え〜っと、ここが『ひんぬー同盟』ですか?」 ハカセ「その通り、姉妹ゲンカにもめげず豊かな胸を目指す、我らひんぬー同盟!」 夏美 「とりあえずハカセに言われた通り、演劇部の誇る特殊メイク班を連れてきたよ」 ハカセ「ナイスです夏美さん! では工学部自慢の新素材で作った胸パッドと合わせてですね……!」 ハカセ「……できました! どこからどう見ても本物そっくりの綺麗なおっぱい! 手触りも完璧!」 風香 「…………」 夏美 「次は私もー。ちづ姉と比べても負けないようなのお願い!」 ハカセ「これで全て解決! ひんぬー同盟バンザイ! ひんぬーよ今日でさらば!」 亜子 「(たまたま通りがかって) あ〜! お、おっきな胸が……! た、たゆらせてッ!」 (たゆんたゆんたゆ…………ポロッ) 夏美 「…………」 ハカセ「…………」 亜子 「……取れちゃった orz 」 風香 「…………だめじゃん」 (続き、誰か勝手に書いても可。てか前スレラストも連作だし) 34-83 34-83 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 21 40 34 ID ??? ゆーな「にゃー」 亜子「職員室に用事?10分くらいで戻るんやな」 ゆーな「にゃー」 亜子「分かったで」 ゆーな「にゃー」 亜子「はー、帰ったらおいしいキャットフード食べよう…か」 … 亜子「む〜〜遅い。もう20分過ぎとるやん」 … 亜子「ゆーなが行ってからもう28分……もう我慢できん!キッ(時計の秒針を見る)…あと1分43秒で30分や」 …チッチッチッチ 亜子「30分になったら手をつないで公開キスの刑や、 そんでベッドに押し倒してたゆんたゆんして…(妄想中につきしばらくお待ちください)」 亜子「…あと30秒…29、28、27、26、25、24、23、22、21、あと20秒や…」 ゆーな「にゃー」 亜子「うわーーー!今帰ってこられたらあかんのにー!!」 ゆーな「にゃ、にゃー!?」 34-84 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 22 33 36 ID ??? 木乃香「なあせっちゃん、ウチゆーなと亜子ちゃん見て思ったんや。言葉なんて関係ない、愛があればどんな障害も乗り越えていけるって」 刹那「は、はぁ…」 木乃香「そんなわけでウチこれから『せっちゃん』としかゆわへんから」 刹那「お、お嬢様、いきなりそのように言われても…」 木乃香「せっちゃんせっちゃん」 刹那「お、お嬢様…」 木乃香「せっちゃんせっちゃんせっちゃん」 刹那「はっ、まさか!」 木乃香「せっちゃんせっちゃんせっちゃんせっちゃん」 刹那「そ、そんな…」 木乃香「せっちゃんせっちゃんせっちゃんせっちゃんせっちゃん」 刹那「そこまで言われたら…もう我慢できません!」 ガバッ 木乃香(なんも考えんと『せっちゃん』ゆうとっただけなんやけど…まあこれはこれでええなv) 34-87 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 22 47 48 ID ??? 桜子「……千雨ちゃん!私ね、亜子と裕奈を 千雨「やらねーぞ」 34-88 34-88 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/13(火) 22 48 22 ID ??? from:柿崎 [件名]なし [本文]バンド名、もしくは歌詞ぼしゅー。 from:ちさめちゃん スーパーメール [件名]バンド名:きゃっピーの☆イタりあーの [本文]『どいてどいてっ! アキハバラ』 どいてどいてっ! そこは私のspace ネコミミ☆うさミミ☆ ながれぼしミミ☆ 抑えきれない この気持ち いっそ掃除機で吸い取っちゃって ダメダメそれじゃ 壊れちゃう koiのフラグは現地調達 無垢なHITOMIで 恋もむくむく☆ああ ダメダメそれじゃ おっこちちゃう どいてどいてっ! お茶の水 ハートビートがどっきどき イシバシ楽器じゃ 買えないの 私のハートは 100万ボルト 待っててもうすぐ アキハバラ いっしょに入ろうあのお店 ハズカシクなんてない だって私は だって私は…… さぁページを開いて 受け止めて ダメダメそれは 18禁 新刊覗い なんでもない from:柿崎 [件名]なし [本文]長谷川!しっかりして長谷川!! 34-92 34-92 名前:体育は実技で![sage] 投稿日:2006/06/14(水) 00 19 19 ID ??? ったく!何で体育に筆記試験がなきゃいけないのよ…。 昨日しずなに付き合って朝まで呑んだのが堪えるわ…。 ふぁ〜ねむっ… うー むにゃむにゃ あぁ〜!?あぅわっと! ヤバいヤバい 今かんっぜんに寝てた。 …う〜 コーヒーでも飲んで目ぇ覚ますか… コクリコクリ……がたっ ゴン ダバダバ… って うわっ!やっちゃったよ〜 やば〜 答案用紙が… ま、いっか… おまけだ!もってけドロボー! あ〜も〜 やる気ね〜 いーや体育だし… ハイ、○、◎、丸!まるっ! 34-93 名前:体育は実技で![sage] 投稿日:2006/06/14(水) 00 32 22 ID ??? このか「うひゃ〜、アスナがんばったんやね〜85点?」 アスナ「…うん、でも何かおっかしーのよね。点数の割りに丸が少ないし。 しかも丸がいびつであっちこっちにミミズが這ったような跡があるんだけど」 くーふぇ「アスナは贅沢言い過ぎアル。ワタシのは茶ばんでるネ。しかもコーヒー臭いアル」 まき絵「じゃ〜ん!80点っだよ〜ん!って…え!?くーふぇ90点?!」 にのみー「……………」 34-95 34-95 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/14(水) 00 39 32 ID ??? 15年前のクラス ・幽霊、存在感なし、空白の席 (相坂さよ) ・どうみても子供、金髪、実は吸血鬼 (エヴァンジェリン) ・巨乳、年齢不詳(→とか言うと長芋) (源しずな) ・新体操部、バカレンジャー、男前 (二ノ宮) ・何故かいつも刀持ってる、神鳴流? (刀子) ・シスター、色黒、留学生、魔法生徒? (シャークティー) ・苦学生、新聞配達、世話焼き (明日菜がバイトしてる新聞屋のおばさん) 和美 「……なんか、今と変わんない雰囲気だね」 さよ 「ですね〜。ちょっと混ぜなおした感じでしょうか?」 34-96 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/14(水) 00 42 57 ID ??? 新聞のおばさんは15年じゃあきかんだろ 34-99 34-99 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/14(水) 01 10 15 ID ??? 新田「源先生 二ノ宮先生、今日帰りに飲みに行きませんか?」 二ノ宮「あ 今日は私たちちょっと…」 新田「残念賞ーー!!」 二ノ宮「あの人…ちょっと怖い」 34-102 34-102 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/14(水) 01 12 25 ID ??? 明日菜いいんちょ劇場 前回のあらすじ パルが作った『いいんちょ×明日菜』(成人向け)本がひょんなことから3−Aの教室全体に 広まってしまった。そのあまりにもエロスでハードな内容、それが実話を元に製作されている事 攻め担当のあやかのぶっちゃけ本音トークにより話題が話題を呼び、今や3−A公認の アツアツカップルとなってしまった明日菜とあやかであった。 登校時。 当然だが一同はパル作成の同人話で持ち上がる。 「ねー、美砂も見た?」 「見た見た、あれはすごいよね。円は?」 「うん、あれはすごかったよね」 「強烈アル、一回見たら忘れられないアルよ」 噂をすればなんとやら、明日菜が教室に入ってくる。 「出たー!あの受けネタ最高ー!」 「色っぽいよー明日菜ー!」 それぞれの黄色い声援を聞いた明日菜はそれに応えるべく、消しゴムをものすごい力で投げ込んだ。 シュ シュ シュ 「わー」「痛ーい!」「正確すぎるアル!?」 まったくと言わん張りの態度で明日菜は椅子に座る。 「明日菜ー、いいんちょとの仲はどこまで進んでるのー?」 「受けに入るときっていつもいいんちょに大股にされるらしいけどどうなの?」 流石に切れる一歩手前の明日菜。 「あんたたち〜〜〜〜」 「そんなにカッカしないことですわよ明日菜さん」 そこへ当事者のあるあやかが声をかけた。 34-103 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/14(水) 01 13 17 ID ??? 「出たー!あの明日菜相手にあーんなことやこーんなことをしてしまういいんちょこと雪広あやか!」 「ブルジョワだけどそっち方面はそれ以上にすごい!」 「どんなことしたらあんなテクニシャンになれるの〜」 そんな声援もあやかはまったく動じない。 「せや、いいんちょって昨日はどうやったん?」 木乃香の何気ない一言にあやかは― 「昨日は激しくしすぎましたわ。明日菜さん『腰が痛くてバイトいけない〜』って嘆いてましたわ」 「そうなんや、せやから明日菜は朝にバイト休むって言うとったんか〜」 ―さらりと当然のように返してきた。 わあああああああああああああああああああああああ そこへ響く大きな歓声。 「い、いいんちょ〜〜。そんなに堂々と言わなくても…」 顔を真っ赤にしてその場でで凹む明日菜。 「大丈夫ですわよ明日菜さん」 慰めるあやかだったが突然耳元で囁く。 「昼休みになったら、シャワーを浴びて保健室のベッドでお待ちになって」 「////////////」 ギク シャク ギク シャク ロボットみたいな動きで反応する明日菜であった。 するとさらにこの騒動を広めた張本人、早乙女ハルナが現れる。 「やっほー」 「出たーーーーーーーー!」 「ねー、今度のネタ教えて〜」 あの同人ネタは3−Aの間でちょっとしたブームとなり、それは他のクラス、教師にまで知れ渡っていた。 結局明日菜は昼休みまでの間、ずっと真っ赤な顔で下を向いたままであった。 34-104 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/14(水) 01 13 53 ID ??? 昼休み 「すごいね〜。あんなに広まるなんて」 「しかし覗きは関心しませんわね」 「ごめんごめん。今度は完全なネタになるから…でさ、昼休みの目標は?」 「3回ですわね」 「頑張ってね hearts、邪魔はしないよ」 さらりとすごい会話をするあやかとパルであった。 ―その頃の明日菜は 「…まだかな、シャンプー替えたの気づいてくれるかな?」 素直に待っていた明日菜、頑張れ明日菜!あやかの目標は昼休み終了までに3回だそうだ! おわれ 前ページ次ページSSまとめ
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/237.html
前ページ次ページSSまとめ 30-438 30-438 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 28 39 ID ??? 『♪トントンテケテケ・・・』 さよ「えぇ皆様、前座『寿限無』お楽しみいただけたでしょうか? 二つ目を勤めます、相坂亭さよでございます、どうぞよろしく。 え〜、言葉というのは・・・と洒落た枕詞をと思いましたが、作者のクオリティが低い上に 落語をあまり知らないので、このまま本編へ入らせていただきます。 では、華やかな城下町にたたずむ一軒のよろず屋の暖簾をめくってみましょうか・・・」 30-439 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 29 19 ID ??? さよ「むかしね、麻帆良って小さい町に江戸っ子気質な旦那と、よく口が回る女房が営むよろず屋があったんです」 朝倉「またお客さんを逃がしちゃったのかい?お前さんは商売がヘタだねぇ〜。」 千雨「うるせぇなぁ!ヘタだって言ってもよぉ、向こうが買いたくねぇって言ってんだろぉ! それを無理矢理買えって押し売るわけにもいかねぇだろうがよぉ! それによぉ、客は商品が気に入らないって帰ったんだよ!」 朝倉「お前さんが、気に入らなくなるような事を言うからお客さんが買う気無くすんだよ。 お客さん欲しそうに、よろず屋さん、このオコジョかわいいねぇって言ってきたろ、 そしたらお前さんが、ああかわいいよ。毎日のように風呂場を覗きやがるなんて言ったら いくらオコジョと言っても風呂場なんか覗かれるなら買う気無くすだろうよ。 別のお客さんにも、このオコジョは毎晩のように下着を盗んで寝床を作りやがるとかさあ なんでそういう事を言うのかなぁ?いくらオ(ry下着を盗むなら買う気(ry」 千雨「おうおうおう、黙って聞いてりゃあうるせぇなぁ」 朝倉「この間だって向かいのお医者さんが、千雨さん、この布団寝心地よさそうやねぇって言ったら おう、持ってきなって売っちゃったから家に布団が無くなっちゃってさぁ。 それで布団で寝たいからって向かいの診療所に行って布団借りて。 向かいのお医者さん言ってたよ、布団と千雨さんを一緒に買っちまった気がするなぁって。」 千雨「向かいの医者に、お前の好きな胸揉ませてやるから布団で寝かせろって了解取ってるからいいじゃねぇか。 ・・・・結局寝れなくなるけどな。」 朝倉「あんたバカでしょ・・・。」 千雨「・・・おう、流石にこれはしくじったと思ってる。」 朝倉「あーあ、何でもいいから私をアッと言わせておくれよ。」 千雨「何でもいいからアッと言わせればいいんだな。」 朝倉「・・・そうよ。」 千雨「じゃあそこでちょっと待ってろ。」 さよ「そう言うと奥へと引っ込み、少し経ってから戻って来まして」 30-440 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 30 16 ID ??? 千雨「これを声を出して読んでみろ。」 朝倉「アッ」 千雨「これでよし。」 朝倉「・・・確かに『アッ』といったけどさ、そう言う訳じゃなくて!」 千雨「どういう訳ならいいんだよ。」 さよ「旦那さん、『アッ』と書いた紙を奥さんに見せたです。 ちょっと違いますが、アッといわせる行動ですね。」 朝倉「儲かるもの買ってきてアッと言わせてよってこと! 今日はお前さん、市へ行ったんだろ。市へ行ったんならなんか買ってきたろ、なんかいいもの買ってこれたかい?」 千雨「いいもん?あったから買おうと思ったら他の奴が買っていくんだよ。」 朝倉「その前に買ったらいいじゃないか。」 千雨「買ったらいいじゃないかって言ってもよぉ」 =市場= 超「さあさあ寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!」 千雨「おい、これk・・・」 桜子「これいいな〜!釘男君!これ買って〜」 円「ははは、店員さん!これ一つ!」 超「毎度!」 千雨「しょうがねぇな。・・・じゃあこr・・・」 美砂「コレコレ!これください!」 超「毎度!」 千雨「・・・(帰るか)」 超「千雨サン、これ買ってみないかい?」 千雨「ええ?こんなもの誰も買わないだろ。」 超「そう、誰も買わないんだヨ。だから千雨サン、ワタシを助けると思って・・・」 千雨「ヤダ」 超「・・・買わなかったらコスプレ写真ばら撒いてやル」 千雨「え、え〜と、それはいくらだい?」 30-441 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 31 54 ID ??? 朝倉「・・・で、なに買わされたんだい?」 千雨「そこにおいてある太鼓・・・」 さよ「旦那が指差す方を奥さんが見ると、きったない太鼓が置いてあるんですよ。 さすがに奥さんビックリ」 朝倉「あれ・・・何?」 千雨「何?って太鼓だよ。」 朝倉「あんな汚い太鼓が売り物になるかいな?」 千雨「まあよぉ、古いものだからもしかしたら価値があるかも知れないだろぉ。」 朝倉「古いからって価値があるとは限らないでしょぉ。」 千雨「解るやつには解るんだよ!」 朝倉「ああそうかい、それでその太鼓をいくらで買ってきたんだい?」 千雨「一分」 朝倉「そんなもん二分の値をつけても売れはしないよ、また一分損した。」 千雨「うるせぇやい! おい、美空!この太鼓のホコリをはたいてくれ。」 美空「は〜い。 ・・・こりゃずいぶん汚い太鼓だねぇ。」 千雨「お前はうるせぇこと言ってないでホコリはたいてりゃいいんだよ!」 美空「へいへい」ドンドン 千雨「ゴホゴホ!何でここではたくんだよ!表ではたけ! あとな、叩くんじゃなくて、はたくんだよ!」 美空「はたいてたら鳴っちゃうんだよ」ドンドンドン 千雨「強くはたくからだろ、お前の存在感並みに弱くはたけ。」 さよ「この一言に腹を立てて、ドン!ドン!ドド〜ン!!!と思いっきりはたいたんで 先ほどから機嫌のよろしくない旦那が怒鳴ろうと表にでたら『おい』と声をかける人影が」 30-442 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 32 52 ID ??? アキラ「おい」 千雨「はいお侍さん、何でしょ?」 アキラ「今しがた、太鼓を打ったのはそのほうの家であるか?」 千雨「あっ、左様で・・・申し訳ございません、太鼓のほこりをはたいてまして。」 アキラ「で、太鼓を打ったのはそのほうの家であるのだな?」 千雨「はい、左様でございます。」 アキラ「いま、お上がお通りになると、その太鼓の音が耳に入った」 千雨「あの、そのぉ・・・あいつが叩いたんでありまして〜その〜・・あいつね、地味なのに目立とうとぉ・・・ え〜と、人間が地味なんですよ、ね。地味なのってあんな格好をしておりましてぇ、 ご覧ください地味な格好でしょ、あれを地味キャラって言うんですよ。」 「・・・なめんな」 アキラ「・・・いや、叩いた事を咎める訳ではない。 太鼓の音を聞いてお上が、どんな太鼓か見たいとおっしゃるので、屋敷に持参するようにとの事。 もしかしたらお買い上げなさるかも知れないぞ。」 千雨「ああ左様ですか、すぐにお屋敷に持参いたします」 さよ「こんな汚い太鼓が売れるかもしれないと思った旦那さんは、機嫌がよろしくなって」 千雨「へへへ、どうだいお前。お買いになるって人が現れたぜ。」 朝倉「誰が?何を?」 千雨「近所の大名様が太鼓を」 朝倉「大名様がぁ?太鼓を? お前さんそんなきったない太鼓が売れると思ってるのかい?大名様は綺麗な飾りが施してある 綺麗な太鼓だと思って待ってるだろう、そこへそのきったない太鼓を持っていってごらんよ、 そこの大名のエヴァンジェリン様はたいそう気が短いお方だから、こんな汚い太鼓を持ってきた道具屋めを 牢にぶち込んでおけ!って言われて牢屋にぶち込まれて当分帰って来れないよ。」 千雨「おい、よせやい!そんなこと言われたら持って行けやしねぇよ・・・。」 朝倉「冗談だよ。むこうさんで、その太鼓はいくらだと聞かれたら、お前さんいくらって言うつもりだい?」 千雨「一分で買ったから・・・・二分か・三分くらい・・・・。」 朝倉「お前さん、そんなものが二分、三分で売れるわけ無いでしょう。市で、一分で買って来ました。 一分で構いませんって売ってしまいなさいよ、どうせ売れないんだからさ。」 30-443 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 34 06 ID ??? 千雨「解った解った、じゃあ行ってくるよ。」 朝倉「はい、行ってらっしゃい。」 千雨「なんせでぇ、あの野郎!まったく、しゃくに障るね!ふざけやがってよぉ! いつかギャフンと言わせてやるんだ!」 さよ「さて、ぶつぶつ文句を言っているうちに大名さんの屋敷に到着して」 千雨「ごめんくださ〜い!」 夏美「なんだ、その方は?」 千雨「道具屋でございます。」 夏美「おう、道具屋か。入って良いぞ。」 千雨「へえ、ありがとうございやす。 ・・・・・・やあ立派な屋敷だねぇ、玄関はあそこかな? すみません!道具屋で〜す」 アキラ「先ほどの道具屋か?こっちへ上がれ、太鼓を持参いたしたか?」 千雨「へえ、持参してきました。どうぞ。」 アキラ「ではお上にご覧に入れるので、そこに控えておれ。」 千雨「ええ?!こんな汚い太鼓を!やめてくださいよぉ。」 アキラ「汚くてもなんでも、見せなくてはならぬではないか。 そこに待っておれ。」 千雨「そうですか。・・・・・・。牢にぶち込まれそうになったら逃げ出せるかな・・・。 ・・・・あ、戻ってきた。ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!どうか牢に入れるのだけは」 アキラ「何をやっておる、あの太鼓をお上がお買い上げになるそうだ。」 千雨「え゛?ああ、はい」 アキラ「あの太鼓、いくらで売るか?」 千雨「えぇいやぁ・・・いくらでしょう?」 アキラ「いくらでしょうと言われても・・・いいづらいのか?遠慮はいらぬぞ。 手いっぱいに申せ。」 30-444 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 35 21 ID ??? 千雨「では、手いっぱいに・・・」 アキラ「・・・手をいっぱいに広げて・・・両手広げていくらだ?」 千雨「へえ、二十万両で。」 アキラ「高すぎるな・・・。」 千雨「じゃ、十九万九百九十九両。」 アキラ「・・・高い。」 千雨「では、十九万九百九十八両。」 アキラ「高い・・・。」 千雨「十九万九百九十七両。」 アキラ「・・・。一両づつ下げられちゃ埒があかん。 こちらの方で値を言うから、それでよかったら売れ。」 千雨「へえ、いくらで?」 アキラ「三百両でどうだ?」 千雨「三百両?なんの三百両で?」 アキラ「小判で三百両だ。」 千雨「ほ、本物で?」 アキラ「偽物を出すか。」 千雨「へえ。」 アキラ「売れないのか?」 千雨「ええ売ります売ります!売りますとも!いや、売らせてください!」 アキラ「解った。では、受け取りを書け。」 千雨「いや、受け取りはいりやせんよ。」 アキラ「こっちでいるのだ。書け。」 千雨「へぇ、さらりさらりと・・・・はい、これで。」 アキラ「判を押せ。」 千雨「判、持ってないんですよ。あなたの判を押しといてください。」 アキラ「こちらの判を押してもしょうがないだろ、その方の爪印でいいから押せ。」 千雨「へえ、ではここに、ついでにこっちに・・・あ、もひとつこっちに」 アキラ「そんなに押さんでよい。」 千雨「じゃあ受け取りを。」 30-445 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 36 35 ID ??? アキラ「うん、よろしい。では、代金を渡すぞ・・・お〜い、金子を持ってまいれ〜! ・・・・・では、五十両ずつ渡すぞ。まず五十両。これで百両。」 千雨「ありがとうございやす。」 アキラ「・・・百五十両。・・二百両。・・・二百五十両。」 千雨「ちょwwwwマジかよwww」 アキラ「これで三百両。」 千雨「キタ━━(゚∀゚)━━!!」 アキラ「確かに渡したぞ。」 千雨「ありがとうございます!では、えぇ、わたしは売った品物は引き取らない事になっておりますがよろしいですか? へい、どうもありがとうございます。・・・あの、ちょいとうかがいますが、あんなきったない太鼓をどうして 三百両でかうんでしょ?」 アキラ「拙者にもわからんが、お上が言うには、あの太鼓は火焔太鼓と申して、 この世に二つというような国宝級のものらしいぞ。」 千雨「ああそうですか。じゃ、失礼しました。 ・・・・・おいおい、本当かよ。夢じゃねえか?一分で買ったのが三百両になっちまったよ。 女房の野郎、一分で売ればいいなんてよぉ、一分で売ったら丸損だぜ。 ・・・・・ああ、門番さん、さようなら。」 夏美「どうだ、売れたか?」 千雨「売れましたよぉ。」 夏美「いくらで売れた?」 千雨「大きなお世話だい。 ・・・・うっ、うへへ、うっへっへっへ、三百両だよ、三百両。 一分のもんが三百両!・・・やべ、ニヤニヤがとまらないぃぃ!」 さよ「一分で買った太鼓が三百両で売れて、旦那さんは上機嫌で家に帰って行きました」 30-446 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 37 53 ID ??? 千雨「おおい!今、帰ったぞぉ!」 朝倉「ああら、売れなかったけど牢にぶち込まれなかったんかい?」 千雨「何言ってんだいこん畜生、売れたよ。」 朝倉「一分で?」 千雨「いんや、向こうがいくらで売るって聞いてきたから」 朝倉「一分って言ったかい?」 千雨「そう言おうと思ったんだけど、いざとなると言えなくてよぉ。 そしたら向こうさんが、手いっぱい言って良いって言うから 手いっぱい広げてよぉ」 朝倉「で、いくらって言ったんだい?」 千雨「二十万両」 朝倉「それで?」 千雨「高いってさ。」 朝倉「そう言われるのは、あたり前田のクラッカーだよ!」 千雨「だから、三百両で売ってきた。」 朝倉「えぇぇ?!三百両!本当かい?」 千雨「そんなぁてめえ、ウソついたってしょうがねぇ。」 朝倉「まあ、ちょっと!見せてくれよぉ、私、三百両なんて見た事ないんだよぉ!」 千雨「ああ解った解った、見せてやるからちょっと待て。 ・・・・まず、五十両。」 朝倉「あらまあ!私、五十両なんてはじめて見たよぉ!」 千雨「次、百両。これで百五十両。」 朝倉「あららららら!」 千雨「ほら、二百両。二百五十両。」 朝倉「ちうちゃんすご〜い!ハグしちゃお!」 千雨「お、おい!よせやい!」 朝倉「あと残りぃ、早く、見せてよぉ〜。」 千雨「ほら、これで三百両!」 朝倉「ちうちゃん大好きぃ〜!」 千雨「いい加減にしろ!」 30-447 名前:まほ落語 二つ目 火焔太鼓[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 21 39 11 ID ??? 朝倉「お前さん、商売が上手だねぇ。」 千雨「へへへ、まあな。 ・・・じゃ、三百両はしまってと。・・・おい、なんで離れるんだよ。」 朝倉「でもさぁ、もうちょい高く売れなかったのかい?」 千雨「ほれ、三百両。」 朝倉「ちうちゃん大好きぃ〜!」 千雨「はいはい、じゃあここにしまってと。」 朝倉「でもさぁ、もうちょ」 千雨「・・・。ほれ、三百両。」 朝倉「ちうちゃ(ry」 千雨「お前は現金な奴だなぁ・・・。」 朝倉「エヘヘ。 いやぁでも、儲かるもんだねぇ。」 千雨「儲かるだろ?」 朝倉「うんうん、儲けるには音のするのに限るねぇ。今度は何を買ってくる?」 千雨「そうだなぁ〜、今度は半鐘を買ってきて売ろうかなぁ。」 さよ「って旦那が言ったらね、女房がこう言うんです。 お前さん、半鐘はいけないよ。オジャンになるからね。 お後がよろしいようで。」 30-451 30-451 名前:楓 守人[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 22 55 17 ID ??? 楓 守人 15 カラン・・カラン・・・ 拙者がいつものように麻帆良を巡回していたときのことでござる なにやら空き缶が触れ合うような音が聞こえてきたでござる 何かと思い、その音が聞こえる方に向かったでござるよ するとそこには、空き缶や空パックを拾う夕映殿がいたでござる 楓 「何をしているでござるか?」 夕映 「あ、楓さんですか。見てのとおり空き缶拾いです」 楓 「感心でござるな。しかし何故ゴミ拾いを?」 夕映 「何故と言われても・・・まあ、普段の恩返しです。飲んだ後も感謝の心、です」 楓 「ふふ・・では拙者も手伝うでござるよ」 こういうときは、楓忍法・・・は要らないでござる。地道にやることが大切なのでござる 夕映 「ふう、こんなもんですか」 集まったのはゴミ袋に6袋分、結構な量でござる 楓 「こんなにも出るものでござるか?拙者、少し悲しくなったでござる」 夕映 「皆がしっかりとしてくれればいいのですけれど、さ、手を洗うですよ」 楓 「手を?」 夕映 「そう、労働の後の一杯は最高ですよ?」 なるほど・・ 楓 夕映 「ぷは〜あぁぁぁぁ」 心からため息が出るとでも言うのでござろう。何でござろうか、この充実感 冷たい緑茶が体に染みるようでござる。たまらんなあ〜 夕映 「これもどうですか?スーパードリンク99%・・」 楓 「それは遠慮するでござる」 完 30-455 30-455 名前:五月 くいもん屋[sage] 投稿日:2006/04/29(土) 23 54 32 ID ??? 五月 くいもん屋 疲れたとき、癒しを求めるのは当然のこと 私は、そんな人たちを癒してあげたくてここに立ちます 私は五月、人を癒す、くいもん屋のおかみさん 五月 いらっしゃい 暖簾をくぐって現れたのは古さんでした 古 「ニーハオ、サツキ。お腹空いたヨ、何か食べさせて欲しいアル」 五月 古さん、もう修行の方は終わったんですか? 古 「そうアル。ネギ坊主のやつ、日に日に強くなっていくアル」。もうしばらくしたらワタシを抜くかもしれないアル」 五月 そんなに強くなっているんですか?ネギ先生 古 「まったく・・・もはや反則アルネ。あの成長は」 五月 ふふ・・古さんも頑張ってくださいね ことん、と古さんの前にチャーハンを置きます 古 「うはっ!!!サツキのチャーハンは最高アル。本場中国の味にも勝るとも劣らないネ」 五月 ありがとうございます 元気よくチャーハンをかき込む古さん。ほっぺについたご飯粒がチャーミングに見えます 古 「ふー。何だか元気が出てきたアル。今度はネギ坊主の修行ではなくてワタシの修行をするアル」 五月 頑張ってくださいね 古 「さあ、目指すは世界最強アル!!!ウヒョー!!!!うひゃひゃひゃひゃ!!!!!」 そう言うと、古さんは飛ぶように走り去っていきました 超さんからもらった特別興奮剤、ちょっと入れすぎたかな? 完 30-456 30-456 名前:真名ちゃんもっこり日記45[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 00 59 54 ID ??? 真名ちゃんもっこり日記45 今日もアキラとベッドで甘いひと時をすごしていた。 「真名、今日はどうしたの?」 「ふふふ、お前にすごいものを見せてやろうと思ってな」 私は男のアレの形をしたものを取り出した。 「真名!?それは」 「これは超とハカセが作った『百合棒Z』だ。これは取り付けた人のDNAを解析して人間の… 新田でいうカルピスを作る機能を取り付けた極上品だ。アタッチメント式でこちら側もイク瞬間を脳内に伝えるものだ。 ただこれは実験途中だからちゃんと動くかはどうかは使ってみないと分からないんだがな」 「え、いきなり…そんな…私…怖い。妊娠したら…」 「ふ、何を本気にしている。いくら科学が進歩したとしても、人間の神秘までは再現できんだろ。 出てくるのは色づけされたローションだ」 「そ、そうなの…」 だから…中田氏し放題! 「龍宮真名、イキまーす!」 「きゃーケダモノー!」 アハーン 「腰痛い。まだ中に入ってる感じがする…」 ふぅ、調子に乗って中田氏しまくったからな。私も相当腰にキている。 しかもこの『百合棒Z』すぐに壊れてしまったぞ。まったく耐久性がないものだ。 まぁいい。これだけの体験はそうそうできないからな。 30-457 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 01 01 31 ID ??? その頃 「あれ貸しちゃっていいんですか?超さん」 「いいネ。どうせ実験用だシ」 「でもあの『百合棒Z』って…本当に出来るのですか、アレ」 「う〜ん…ローションで代用してるとはいえ人間に近いアレを作る機能も理論上はあれで出来るはずネ。1%くらいの確率だけど」 「まぁ普通に使うだけなら問題ないと」 「遊びとシャレで作ったようなものだからどうでもいいヨ」 しばらくしてアキラが神妙な顔をして私に歩み寄った。 どうしたんだ?怒っているようにも困っているようにも見えるが。 「…真名のせいで…来なくなっちゃった」 へ? 嘘だろ…まさか…出来ちゃったの? 「あ、アキラ…そうなのか」 「?」 「その…子供…」 「うん」 ドギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン つづく 30-460 30-460 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 01 44 20 ID ??? 風香 甘えん坊将軍 1/5 むか〜し、むかし。あるところに将軍様がおられたそうな しかしこの将軍様、ちょっと困ったちゃんだっだのです 風香 「いえ〜!!城下町ぃ!!!」 再び遊び人の風(ふう)さんの登場です。お供の楓さんを引き連れ城下町へ突撃です 楓 「上様・・・まだ懲りていないでござるか?」 風香 「えへへ・・・あんな刺激的なこと初めてだよ。もう止めらんないよ!!!」 楓 「上様・・・」 風香 「ダメっ!!!ボクのことは風(ふう)さんって呼ぶの!!!」 楓 「はあ・・・でござる」 ため息をつく楓さん、先が思いやられます さて、麻帆良の城下を巡る将軍様、ここでとある建物に目をつけました 風香 「ね、ねえ。あの家は何?」 見れば少し大きめの・・・お寺でしょうか?看板には”寺子屋”と書かれています 将軍様が目をつけたのは、その中に楽しそうに走り込んでいく子供たちを見つけたからです きっと楽しいところだと思ったのでしょう。しかしここで楓さん、少しにんまりとします 楓 「ここは・・・そう、上様が一番嫌いなところかもしれないでござる」 風香 「え・・・」 30-461 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 01 45 29 ID ??? 2/5 二人はそっと扉の隙間から中を覗きます 中では子供たちが楽しそうに遊んでいます。鬼ごっこ、縄跳び、砂遊びなどとても楽しそうです 千鶴 「あら、何か用ですか?」 二人はとても驚きました。特に楓さんは心臓が飛び出そうなほど驚きます 振りかえるとそこには優しそうな少女が立っていました 二人は思います 風香 (おっぱいです) 楓 (おっぱいでござる) 千鶴 「何かしら?」 怒気にも似た気配に二人は少しばかりおびえました 風香 「あ、あはは・・・何だか楽しそうだなって思って」 楓 「そ、そうでござる。子供たちの楽しそうな声が聞こえてきたからちょっと覗かせてもらったでござる」 千鶴 「そうですか。私はこの家の主の千鶴です。せっかくですから中に入っていきませんか?歓迎しますよ?」 風香 「え、いいの?じゃあ、お邪魔します!!!」 楓 (何者でござろうか?この御仁。拙者に気配すら感じさせぬとは・・・) 千鶴 「何か?」 そう思った瞬間、柔らかな微笑みを楓さんに向けてきました 楓 (妖怪なのでは・・・) 千鶴 「みんな〜、始めるわよ」 少しばかりほんわりとした声が響きました。すると庭で遊んでいた子供たちが一斉に千鶴さんの前に集まりました 千鶴 「じゃあ、準備しましょうね」 子供たち 「は〜い」 子供たちは皆で机を用意し始めます 風香 「ねぇ、この子たち何してるのかな?」 楓 「ここは寺子屋、お勉強する場所でござるよ」 風香 「げ!!!」 やがて机は綺麗に並べられて、子供たちが順番にきちんと座りました 30-462 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 01 46 26 ID ??? 3/5 千鶴 「さあ、今日はこの人たちが一緒にお勉強します。では自己紹介をお願いします」 ぱちぱちぱち・・・ 子供たちが千鶴さんの隣に並んだ二人に拍手を送ります。二人は少し照れながら自己紹介をしました 風香 「ボクは風香、風さんって呼んで」 楓 「拙者は楓と申す」 ぱちぱちぱち・・・ 再び拍手が二人を包みます。子供たちの笑顔が二人に向けられました 千鶴 「では・・・お二人はそこの席に座ってください」 こうして二人はお勉強することになったのです 風香 「お勉強したくなくて逃げてきたのに・・何で」 楓 「諦めるでござる。さあ、始まるでござるよ」 千鶴 「ではこれを読んでください。わかる人、手を挙げてくださいね?」 と、千鶴さんは手に持った紙をみんなにみせました。そこには”さくら”と書いてあります 風香 「へ?」 楓 「静かにするでござる」 子供たちは誰も手を挙げません。「さ」とか「さく」とか言っていますが、なかなか読めないようです 千鶴 「みんな見たことはあるのよ?このおうちにもあるわよ?」 その言葉を聞いて、一人の少年が手を挙げました 千鶴 「はい、はるきくん」 はるき 「さくらです。さくらって書いてあると思います」 千鶴 「正解です。良くできました」 ぱちぱちぱち・・・ 皆が拍手ではるきくんを褒めます。はるきくん少し照れくさそうです 30-463 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 01 47 58 ID ??? 4/5 風香 (これが・・お勉強?字も読めないの?) 楓 (そうでござる。これが庶民なのでござるよ) 将軍様、少し悲しそうです 千鶴 「では次、これですよ」 次に手にした紙にはこう書かれています。”たまご” しかし今度の問題は難しかったようです。誰もが首をかしげています 千鶴 「ダメ?誰か読めないかしら?」 その時です 風香 「はい!!!」 元気よく将軍様が手を挙げました 千鶴 「はいっ、風さん」 風香 「それは・・たまごって読みます!!!」 千鶴 「はい、正解です!!」 ぱちぱちぱち・・・ 皆の賞賛の拍手が将軍様に ”すげー””てんさい”と言った声が将軍様を包みました その拍手と賞賛に将軍様、とっても嬉しそうです その後は将軍様は人気者になりました。ついでに言えば生徒から先生にもなってしまったのです 風香 「”ま”はこう書くんだよ」 将軍様を中心に、子供たちが集まって将軍様の書く文字を見つめています 千鶴 「あらあら、生徒じゃなくて先生だったのね」 楓 「すまぬでござるな」 千鶴 「いいのよ。子供たちも楽しそうだし」 楓 「うえ・・風殿も楽しそうでござる」 こうして楽しい時間は過ぎて行くのでした 30-464 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 01 49 48 ID ??? 5/5 千鶴 「また来てくださいね〜」 寺子屋からの帰り道、皆に見送られながら二人は夕焼けを背にお城へと帰ります 風香 「ボク・・・お勉強してみようかな・・・」 楓 「風殿・・」 風香 「今日はちょっと楽しかった。それに・・・」 楓 「それに?」 風香 「ちょっと悲しかった。勉強ってやりたくても出来ないんだって」 楓 「今日はそれを勉強したでござるな」 風香 「うん!!明日は勉強するぞう!!!」 しかし次の日・・・ 風香 「あっそぶぞう〜」 元気に城下町に逃走する将軍様、昨日の決意はどこへやら 楓 「勉強するのではなかったのでござるか?」 風香 「勉強は城下町でもできるしさ。突撃ぃ〜!!!」 やっぱり将軍様は将軍様なのでした 完 30-465 30-465 名前:夕映のカカオ朕道中[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 02 12 12 ID ??? のどか「夕映・・・・本当にやるの?」 夕映「当たり前です。新しい道を開く、それこそが私の使命なのですから」 そう話す二人の前にあったのは、ハルナの残せしカカオチョコであった。 夕映「では・・・・これでやってみるです!」 ttp //www.imgup.org/iup199079.jpg.html のどか「こ、これって・・・・納豆?」 夕映「あっ!こりゃたまらん!ヨダレずびっ! 〜〜ツウ〜よーな味だぜェ〜〜っ きっとおお〜〜お〜〜お〜〜っ!」 のどか「ゆ・・・夕映?」 夕映「き、気にしないでくださいです。」 のどか(口調もおかしかったけど一番気になるのはその自信がどこからくるのかなんだけど・・・) 夕映「それでは・・・イクです!」 夕映は風になった―― のどかが無意識のうちにとっていたのは「敬礼」の姿であった―― 涙は流さなかったが、無言の女の詩があった―― 奇妙な友情があった―― 30-471 30-471 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 08 36 40 ID ??? さよ「た、龍宮さーん」 真名「誰だ?ああ、あんたか。」 さよ「あの〜、依頼があるのですが。」 真名「どんな依頼だ?」 さよ「あの〜、その〜。朝倉さんと手をつなぎたいな〜って。 で、できますか?」 真名「難しいと思うが、金次第だな。 ところで、金を持ってるのか?」 さよ「え、え〜っと・・・朝倉さん払いで。」 真名「解った。 おい、朝倉。今、いくら持ってる?」 朝倉「今・・・。・・・」つ? 真名「10円か。10円なら・・・。 おい、早乙女!これ、借りるぞ。」 朝倉「た、龍宮さん、そのバールのような物を振り上げてどうす・・・」 ドゴ! 『ぎゃ〜!!!!!』 フワーリ 朝倉「あ、あれ?私・・・幽霊に。」 リレーしようぜ!(続き考えてなかったのはナイショ) つづき だれか たのむ 30-481 30-481 名前:マジカルボマーくぎみん[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 18 40 09 ID ??? 1/4 やっほー全国の皆! 私、釘宮円!くぎみん言ったらブッ飛ばす☆ 突然だけど、私には妹がいるの。 と言っても血が繋がってる訳じゃないし、そもそも同級生なんだけど。 これが可愛くて可愛くて。 甘えられるとつい何でも聞いちゃうんだよね。 今日も亜子に頼まれて街まで買い物に行ったんだ。 それで色々買ってさあ寮に帰ろうか、って所だったんだけど……。 「よーよーお二人さん、仲良さそうだなぁ」 「俺たちと遊ばなーい?」 頭の悪そうな男二人に絡まれちゃいました。 うぜぇ帰れ、的な視線を送ってみるも、男は気にした様子もない。 「お、そっちの青い髪の娘、俺の超好みじゃーん」 「なんだタケシ、お前こういう娘がいいの?」 タケシとやらが亜子を気に入ってしまったようだ。 怯える亜子の腕を強引に引っ張り、何処かへ連れて行こうとする。 「ちょっと!亜子を放しなさい!」 「うるせえ!」 ドン、と突き飛ばされる。 私が尻餅をついてる間に、男二人は亜子を路地裏へ連れ込んでしまった。 いけない、このままじゃ亜子がピンチ! こうなったら…変身よ! 路地裏は確かに人気はなかったが、特に入り組んでなかったので男共と亜子はすぐに見つかった。 亜子が地面に横たわっている所を見るに、恐怖で気絶してしまったのか。 それを幸いと亜子の体をベタベタと触る男共。 この野郎、許さない! 「待ちな!」 突然の制止に男共は怪訝な顔で振り向き、そのまま固まった。 まぁ無理も無い、学ラン着て釘バット持った人物を目の当たりにしたら誰でも固まる。 30-482 名前:マジカルボマーくぎみん[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 18 40 45 ID ??? 2/4 構わず私は二人に告げた。 「その娘から離れなさい」 「な、なんだお前、変な格好しやがって」 「バカじゃねぇの?」 「さっさと離れろと……」 私は釘バットを思いっきり縦に振りかぶり、 「言ってんだろ!」 男の隣りに振り下ろした。 グシャア! コンクリートが砕け散る。 うん、今日もなかなかの威力。 「な、何すんだテメエ!殺す気か!」 「悪い?」 「悪びれる気ゼロ!?畜生、コイツぶっ殺す!」 「おい、ちょっと待て」 男、タケシの方は私の方を見て何やら考えている。 「コイツの格好、微妙な女言葉、んで持ってる釘バット。……ま、まさかコイツ!」 「知ってるのかタケシ!」 「間違いねぇ……。奴の釘バットで殴られるとまるで爆破されたように骨が砕ける、そんな攻撃力から付いた名がマジカルボマー。そう……、コイツはマジカルボマーくぎみんだ!」 「その名で呼ぶなぁ!」 タケシの顔面に釘バットを叩き込む。 力は加減しといたが、タケシはぐぉぉとか言いながら鼻血を出してのた打ち回った。 「いいか、今度私をその名で呼んだら……お前の頭を五つ以上に砕いてやる」 「ひ、ひぃぃ!」 先ほどまでの態度を豹変させ、二人は土下座をして謝った。 「スイマセン!マジスイマセン!」 「アンタがあのマジカルボマーとは知らなくて!お願いですから命だけは!」 命乞いまで始める二人。 全く、この二人は一体どれくらい恐ろしい評判を聞いてるんだ。 実際の私は心が広いのに。 30-483 名前:マジカルボマーくぎみん[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 18 41 27 ID ??? 3/4 「心配しなくても命まで取りゃしないよ」 「ほ、本当ですか?」 「あぁ。右腕で勘弁してやる」 「へ?」 「何が『へ?』だ。妹に手を出してそれで済むなら安いモンだろ?」 「妹って……まさかあの女、いえお嬢さんが?」 「そうだ。お前らがさっきまで乱暴しようとしてたのが私の妹だよ」 亜子を指差して教えてやると、二人は顔を青ざめ、再び土下座を開始した。 「いいい、命だけはー!」 「未遂です、まだ未遂なんです!」 「分かってる。未遂なんだろ?だからそれに免じて右腕でいいって言ってるじゃないか」 優しく諭してやるも、二人は一向に右腕を差し出す気配がない。 仕方なく私はこう言った。 「腕出さないならそこに立て。アバラごと持ってってやる」 「ひ、ぎゃあぁぁぁぁぁ!」 「お助けぇぇぇえ!」 とうとう二人は泣きながら逃げ出してしまった。 まぁいいや。あらだけ脅せば二度と女の子に乱暴もしないだろう。 私は手早く学ランから元の服に着替え、亜子を揺すり起こした。 「おーい、亜子?大丈夫ー?」 「う……うぅん」 お、目を覚ました。 「あ、れ、くぎみん?あの男の人は?」 「警察呼ぶよ、って言ったら逃げてった。あとくぎみん言うな」 「そっかー。……ありがとな、円お姉ちゃん」 笑みを浮かべて亜子はお礼を言った。 この笑顔がある限り、私は亜子を守るんだろう。 「姉が妹を守るのは当然でしょ?」 私は亜子の頭をポン、と叩いた。 30-484 名前:マジカルボマーくぎみん[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 18 42 03 ID ??? 4/4 次回予告! 麻帆良学園に謎の秘密結社が潜入した。 悪の限りを尽くして学園の平和を脅かす戦闘員。 さぁ戦えマジカルボマー! 授業の遅刻には気をつけろ! 「という夢を見たんやけど」 「マジカルボマー……亜子にとって私って何?」 「くぎみん格好良かったわー」 「だからくぎみん言うな」 前ページ次ページSSまとめ
https://w.atwiki.jp/manafee/pages/317.html
日向坂で会いましょう #131 6thシングルヒットキャンペーン 「ってか」全員で巨大イラストを描きあげましょう! 高瀬は嘘がつけない。 6thシングル「ってか」のヒットキャンペーンで、日向坂46全員で富士急ハイランドのコーヒーカップに飾るイラストを制作した。 加藤、佐々木久美、高瀬の三人は13~14枚目の「ってか」ゾーンのイラストを担当。右端にシナモロールの頭のような形を模した雲を発見、加藤は高瀬の胸倉をつかみ「なんでシナモロール描いてんの!?」と激怒。高瀬も加藤の胸倉をつかみつつ自身のキャラクター「マナモロールだよ」と言い訳するが、次第に「描いたらって言ったじゃん、描いたらって言ったじゃん」とオフレコな内容を叫び始めるお茶目な一面を魅せた。 加藤と佐々久が事前インタビューで「高瀬がシナモロールを唐突に描き始めないか不安」と答えていたが、ヤラセ疑惑が浮上する事態となった。
https://w.atwiki.jp/schwarze-katze/pages/453.html
やけ買いなんかするもんじゃない ----*** 1・やけ買いなんかするもんじゃない ***---- 「ごしゅじんさまー。ごしゅじんー。あるじー。マスター。おーい」 「だー! うるさい、暇なら先に寝てろ! ……っひいいいい」 背中の毛がわさわさ一気に立った。ついでに裏声を出してしまった。いきなり後ろから耳にやわやわ噛みついたヤツがそのままの位置でうひひ、と笑うものだから、その息の圧力がまた耳にかかって首筋の毛まで立った。細い指が視界の隅に入ったかと思うと今度は 目元をマッサージされた。 「目の上ひげー。目の上ひげー」 「引っ張るなー! 頼む、邪魔しないでくれ、明日朝まで最低これだけは書類作っとかなきゃいけないんだよう……」 俺、なんでこんなの買っちゃったんだろう。 窓と戸を開け放ったままゆっくりと裏通りを進む馬車があった。中に詰めこまれたヒトメス奴隷の一人と目が合った。俺はその直前に結婚を考えていた彼女に別れを告げられていた。なもんで結婚用だったのに使う当てのなくなった、分割払い頭金にするくらいの金はあった。したたかに酔っていた。ヤケをおこした。 ゆえにこいつがここにいる。お嫁さんもらってもしばらくはここで住めるよなー、とか ほわほわ考えていた2LDKの賃貸住宅に、小市民には不釣合いな贅沢品が。 「ここだけの話ですがね、『落ちてきた』ばっかりの新品なんですよ。肌もきれいで健康体、お買い得商品」 黄色い目の口の臭いヒト売りはそう俺に耳打ちして、言い値より遥かに上の値を示した。値切りきれなかったもので、分割払いの先の長さを考えると貧血を起こしそうになる贅沢品になってしまった。 向かい合った俺をきつい目で睨みすえ、ヒトミと名乗ったヒトメスは、今は後ろから手をまわして俺の頬ひげを引っ張っている。 「抜けないもんだね」 「抜かないでお願い」 ……俺、ほんとなんでこんなの買っちゃったんだろう。 ヒトってのは脆弱で魔力がなくてすぐ死んじまうけど、夜の相手に絶品で従順で頭が良くて小器用で特にメスは料理が上手いとか俺、聞いてたんだけど。誰だそんな噂を流したのは。責任取れ。 ヒトミを買った次の朝、遠慮がちに仕事の間の掃除と夕飯を頼んだら、特にメシが大変な事になっていたもので俺はつい、そんな噂を流した奴への怒りもこめてヒトミを怒鳴りつけてしまった。そしたら逆ギレされた。 「文句があるなら電子レンジとレシピ集持ってこい!」 お前は何を言っているのだ。 俺の、頭が一瞬真っ白になった呆れ顔を見てヒトミは逆ギレで紅潮した頬を更に赤くした。 「すみませんね料理下手で。でもコンロも調味料もよくわかんないんですよ! わかったのマタタビ風味塩くらいだよ!」 それで、何かお祝い事があったら食べようと大事にとっておいた青猫印の高級干物が更に塩にまみれているわけか。全体的に塩っぽい食卓に悲しくなってひげを下げたら、へんな形の耳まで赤くなっていたヒトミが青筋を立てた。 「仕方ないでしょ、前のゴシュジンの所じゃちゃんとした料理人がいて私が料理する事なんてなかったんだから」 こちらこそすみませんね料理人なんて雇えない身で……って待て。待てやこいつなんて言った。 前のゴシュジンの所? 「中古かよ!」 「車かよっ」 俺が思わず叫んだ言葉に軽く、よく意味のわからないツッコミを入れながら、瞬時に鋭く吊り上がったヒトミの切れ長の目と、その瞳の奥に見えた光の色は一生忘れないだろう。忘れられないだろう。 「まさか『ワタシ、初めてなの』っていうヒト奴隷を期待してた訳じゃないよね。ガバガバじゃない事は確めたでしょ? 前のゴシュジンサマが大事にしてくれたから、傷もないし。……自分で言うのもなんだけどお買い得だったと思うよ」 喋る声と、喋る間に目を伏せていったヒトミの表情も忘れないだろう。 「いいかげんコタツ片付ければ? コタツ布団抜け毛だらけじゃん。ひえー、コタツ布団が白黒になってる」 「どーせ掃除すんの俺だろ、好きにさせてくれ。コタツに座布団が一番集中できんの」 身の丈に合わない贅沢品を購入してしまったもので稼がねばならんのです、頼むから計算に集中させてください贅沢品さん、尻尾足指でつまむなー頼むー、せめてこの入荷予定表だけは仕上げておかないと……。 付根からリズミカルに尻尾を踏まれたら、俺の理性が俺にさようならー、を告げて去っていった。そのこだまがまだ響くうちに、カギ尻尾ー、と楽しそうに言うヤツの足が、カギ部分を踏む前に。 腕だけ後ろに回してヤツの胴体あたりを抱え、コタツ布団に引きずりこんだ。 家に連れ帰った後俺の、ひそかに気にしているカギ尻尾を見た時ヒトミはそれまで動かさなかった表情を少しだけ緩めて呟いた。 「ミーコもカギ尻尾だったっけなあ……」 「ミーコ?」 「子供の頃うちにいた三毛猫」 ……「落ちモノ」が元いた世界に「猫」って動物がペットとして飼われている事は知っていたが、なんだか複雑な気分になったものだ。そのミーコはどうした、と軽く聞いたらとっくに老衰で死んじゃってる、と答えられたものだからなおさら。 「尻尾さわっていい?」 今にして思えばその時、「ご主人様に対してその口のきき方はなんだ」とでも言って冷静にしつけておけばよかったのだ。だが脳味噌では異世界の猫という動物に思いを馳せ、下半身ではいきなり押し倒してもいいもんかなー柔らかそうだなーなどと考えていた俺は、 実に気さくに「ほいよ」とヤツに背を向けて座ってしまった。 結果、俺は「尻尾で感じちゃうのボク」という新しい自分を発見し、ヒトミは口では「ごしゅじんさま」なんぞと言うものの俺を主人などとは全く思っていないであろう態度となり、現在に至る。 指の第一関節から先を右手から順に十本口に含んでいる間、ヒトミは何も言わない。動かない。じっと俺の口にまかせている。二度目にこれをやった時面白いのか、とだけ聞いてきた。ヒトの指と爪は柔らかくて面白い、と答えたら黙った。それ以降なんとなく抱く際の儀式のようなものになっている。その後ははだけさせた肩に舌を、そのまた後は首筋 にやわやわと牙を。 ……尻尾で興奮して押し倒した最初の日、ヒトはどこがいいのだろうかと慎重にいちいち聞いていたら「くそやかましい!」という声とともに急所を蹴られそうになったもので、試行錯誤という安全策を取らざるを得なくなった。誰だこんなのを買ったのは。俺だ。 「ふ……ん……」 こーいう声を上げさせてからは俺が強い。特に鎖骨がヒトミの弱点。座布団の端を握りのけぞって舌から逃れる体が、布地ごしでも胸の突起を目立たせている。舐めろといわんばかりなので舐めるしかないだろう。ヒトミが勝手に引っ張り出して着ている俺のパジャマを鼻先でまくりあげたら、ひげがくすぐったかったらしく露になった腹が波打った。 何度抱いてもヒトの柔らかさには感動する。こいつだけかもしれないが。胸も尻も太股も、二の腕もしっとり触りごこちがいい。中でもたゆんと揺れている胸がいい。齧りつきたくなるのを我慢してやっぱり我慢できなくて、思いきり口を開けて甘噛みしながら舌で 乳首をつついてやると今度は、くすぐったさへの反応ではない吐息が返ってきた。吐息と、耳をそっと探る指が。 「ああ……耳の毛すべすべ……腕の毛きもちいい……」 「……俺の長所は毛だけかよ」 ヒトミが恍惚とした表情で目を細めているから、まあいいんだけど。肌から離してしまった口をこれまた柔らかい唇に押しつけて、毛にばかり言及する声を封じながらだぶだぶのパジャマズボンと下着を一気に脱がせ、ようとした。コタツに引きずりこんだのは失敗だった。可動範囲が狭いったらない。肘天板にぶつけた。痛い。至近距離で見上げるヒトミが喉で笑って、体をずり上げてくれなかったらもっとお互いの足と腕に青痣が出来るはめになってたんじゃないだろうか。 女の裸が寒そうに見えるのはネコもヒトも同じ、けれど華奢な分こいつの方が痛々しい。こっちも慌てて脱いで覆い被さったら、待ちかねたように肩に顔を埋められた。本気で毛だけか、俺の価値。 それでも緩く抱えこんだ体を膝までゆっくりとなぞり、戻って足の間を探るとヒトミの息で肩が熱くなる。指に感じる液体を粘膜に戻そうとする動きには背に回された腕の力が弱く返ってくる。体温低いくせに、沈めた指の先はねっとりと、荒くなる息より熱い。 「……ヒトミ」 「ん」 「あ、そのまま」 大きく広げようとした両足を跨いで、少しずつ捻じこんでいく。まだ下半身の大部分コタツの中、コタツに当たって痛い思いをするのは俺だけでいい、と冷静なふりをしてみた。 そうでもしないと、苦痛なのか快楽なのか判断のつかないかすかなあえぎと締められる感覚にあっけなく暴発しそうになる。どうしてこいつはこんなに、こらえているような甘い声を出すんだろう。叫べばいいのに。動かしながら、敏感な箇所に根元を押しつけて腰を揺らしてやったらのけぞった喉から鋭く息を吸い込む音がした。コタツが邪魔で大きく動けないの、幸いしたかも。 「ちょっと、うあ、もう、だめかも」 「おれもっ……」 ただでさえ狭い肉の道で、突き入れた奥から順に、太股の筋肉まで総動員して絞り取る動きに耐えきれなかった。のけぞっていた上体が震えてしがみつくとほぼ同時に俺も果ててしまった。今度こそこいつをいかせていかせていかせまくってやる、と思っていたのに。 細かく打ちつけるのをヒトミは好むらしい、と頭の中にメモメモ。出したばかりの冷めた頭の一端では……なんで高い金出して買った相手を必死になっていかせようとしてんの? とかも考えてしまうわけですけれども。 窓と戸を開け放ったままゆっくりと裏通りを進む馬車があった。中に詰めこまれたヒトメス奴隷の一人と目が合った。腕と足を剥き出しにした粗末な服に、手枷足枷首輪鎖が不釣合いにごっつく見えたヒトたちの中、そいつだけは窓と開け放された戸から血走った目を離していなかった。だから、見物人の一人だった俺と目が合ってしまった。反抗的なのがいるな、大変だろう、とからかい混じりに値をつけたらヒト売りがこれもまたからかい混じりにさすがにその値じゃあ、と返した。そのうちついむきになって名刺を出したら即座に分割払いの話になった。俺はその直前に結婚を考えていた彼女に別れを告げられていた。ヤケをおこした。したたかに酔っていた。買ってしまった。「落ちてきた」ばかりだと言ったヒト売りの言葉を信じてしまったのは合った目の鮮烈な印象からだろう。 腹の下であえぐ顔を見ても、胸に「うははもふもふの面積広い」と頭をすりつける声を聞いても、あの時の、隙を窺う目と全身に緊張感をあらわした姿はいまだにはっきりと記憶に残っていて、たぶんずっと消えない。 「おい」 胸元に眠そうな顔をうずめながら、手を伸ばして背中の和毛を抜いているヒトミの腕を軽く押さえる。ついさっき抜け毛だらけとか言ったくせに、何をやってるんだ。 「二十年? 三十年? そんくらい後か、指差して笑ってやるからな。お前の胸がどんだけ垂れたとか、皺が増えたとかいちいち笑ってやるからな」 「ほう」 「ほうじゃねえ。本気でやってやる。シワシワになったら思いきり笑ってやる」 「へえ」 「今のうちにほーとかへーとか言っとけ」 「ふーん」 「いででででで抜くな、まだそれ抜けない毛!」 柔らかくて頼りない腕が、押さえていた俺の手をすり抜けた。眉間をすりすりと撫でられて俺は瞼を閉じた。 自分で発した言葉に目頭が熱くなったのをごまかすため、なんて絶対言わねー。 ほんと、ヒトなんて買うもんじゃない。 ----*** 幕間・ある日の朝と夜 ***---- 雨が降っている。 「ごしゅじんさまー、もういいかげん起きないと」 雨が降っている。石畳を被った水膜が滴を弾く音か、細やかな刻む音が私を更に苛立たせている。私の記憶が確かなら、起きないと遅刻するんでないかいごしゅじん。うーだのひにゃーだの唸りながら毛布抱えてる暇ないよ。 ミーコがでろんにゃろんと雨の日寝てばかりいたのは覚えている。前のゴシュジンも雨の日はよく居眠りをしていた。しかしこのごしゅじんは勤め人(勤め猫?)だ、本能に負けて遅刻したらいかんと思うのだ。元の世界では、這ってでも無遅刻無欠勤を貫こうとした私の責任感が許せない。 「ごしゅじん……ぬぐぐぐぐぐ」 毛布ひっぺがし失敗。ならば寝台の下に引きずり落とそうとしたが失敗。重い。目も開けやしねえ。ふなふなとか言ってるんじゃないー。 せめて朝ご飯でも用意しようかと、戸棚を開ければ一斤塊のパン、切って売られるべきだろう常識的に考えて、と歯軋りしてパンを戻し、またごしゅじんに声をかけるも答えはないのでブラッシングと洗顔の準備、済ませてもやはり白黒猫はヨダレをたらして寝くたれており、足踏みをしながら果物などコタツに並べ、致し方なく改めてパンを取りだし切ってみたら、「一枚なのに直立する食パン」なる末広がりの立体作品になってしまい、もうなんだか絶望した。 「ごしゅじぃん! 起きないとひげ引っ張るよ!」 「むー……ちゅー」 なに、この子猫がおっぱい吸うみたいな口。 「……お目覚めのちゅーしてくれたら、起きるかもしんない」 「…………」 皿に直立するパンを見て一瞬目を点にしていたごしゅじんは、まだ眠そうな顔のままもそもそそれを食べ終えて、言った。 「俺の勤め先、国内向けの商品しか扱ってないから、従業員みんなネコなんだよね。つまりほとんどみんな雨の日眠いの。今日も三分の一くらい遅刻してくるんじゃないかなー。俺、特に雨弱いから、珍しく早いなってびっくりされると思う。んじゃ、いってきまーす」 ……歪んだ逆台形になってしまったパンを見て湧きあがってくるこの黒い感情は何だろう。 雨はやんだが、ごしゅじんは夕食後もまだ少しぼーっとしている。 「ごしゅじん、そろそろちゃんとお風呂入ったら?」 「ん? 入ってるだろ」 嘘だ。私が湯を使った後に、申し訳程度にぴちゃぴちゃ要所要所を洗っているだけだ。ブラッシングは欠かさないとはいえ、今日のような湿度の高い日は特に、毛先まで脂がまわってぺっそりしているように見える。だいたいこの図体で蚤でもわいた日には、大変な事になるのではなかろうか。 「ヒトミ、そうは言うけどな、厄介なんだぞ男は」 ごしゅじんは短毛じゃないか。長毛にゃんこよりずっとマシだ。濡れるのが嫌なだけだとみた。 「う。うーんと」 何か反論があるのですかごしゅじんさま。 「ヒトミが一緒だったら、ちゃんと風呂入るかもしんない」 「…………」 先に風呂場で待っていたごしゅじんは、ものっすごくわくわくした顔で私を見てから私が手にした物に目を落とし、首を傾げた。 こちらのネコも、悲鳴は猫のそれに似ている。 「おま、お前、お前の世界じゃタワシでネコこするのかよおおお!」 「こするわけないでしょ」 力と体格では到底敵わない相手だが、幸いこちらは弱点を知っている。つかんでいる泡だらけの尻尾の主が、非難するように私を振りかえった。 「こするわけないでしょうが。向こうの猫は小さいんだから」 「大きさが違うからって、みぎゃー!」 「何悲鳴あげてるのごしゅじん、向こうの世界で、タワシ健康法ってあったんだよ? こーんなひ弱いヒトの肌でも耐えられるのに」 こーんな鍋底こすり用の固いタワシは使わないだろうけどね。 「ほんと、か……? ぎゃあお!」 ああ、お風呂での健康法といえば、粗塩こすりつけるってのも、あったっけなあ……。 ----*** 2・ベッタベタでもいいじゃないかよ ***---- 明るいオレンジからだんだん薄紫へと変わっていく空に、今日は月が両方とも白く目立つ。家々から漂ってくる夕食の匂いに腹が鳴った。ヒトミも腹を減らしているだろう。自然足が早まった。「いきなり暴走したり爆発したりしそうで怖い」と魔洸エネルギー器の使用を拒否するのはともかく、メシくらいは作れるくらいになって欲しいよ。昼は果物でしのいでいるらしいが、ある日帰ったらひっそり餓死していそうで怖いったらない。……今更ながら分不相応な買い物をしたもんだ。いや、ヒトミだけの話なのかもしれない、これ。ヒトって料理上手なんじゃなかったのか。 「おっ」 「ぴにゃ」 考えながら歩いていたら、太股のあたりに軽い衝撃がきた。見下ろせばまだ産毛の残るちびネコ坊主。ぶつかった俺を見上げた銅色の瞳がまんまる。すみません、と慌てて追いかけてきた母親らしき人の目も同じ色をしていた。こーいう時だ、結婚してえーと思うのは。 少なくとも分不相応な贅沢品の分割払いが終わるまでは嫁さんなんか貰えませんけどね! 通りから家の窓を確認したら、くせっ毛を風に揺らしながら夕空をぼんやり眺めている、黒髪黒耳の横顔がそこにあった。よかった、ちゃんとネコ女性に見える。ようやくヒトの耳を隠せるくらい髪が伸びたので、付け耳付け尻尾を渡しておいたのだ。「二十五で……ネコミミデビュー……」とかなんとか言いながらヒトミはがっくりうなだれていたが、要らないトラブル防止だ仕方がない。 それにしても。こうして家の窓から、まるで俺の帰りを待つように女性が外を見ているのって……。 なんだかおよめさんがいるみたいだ。 ヒトだよ、ヒトだけどよ。少しくらいひたってもいいじゃないか。 ヒトのヒトミも俺に気付いた。軽く手を上げたら、ヒトミはそれに応じるどころか、窓枠を握りしめて俺をまじまじと睨んだ。傷ついた。いや、傷ついたって言ってもちょびっとだけど。 「……で、ごしゅじん、今度は何持ってきたのかなあ?」 慎ましい夕食(作成者:ほとんど俺)をとり、片付け(担当:半々)を終えるやいなや ヒトミは俺の前にきっちりと座ってこう言った。笑っているけど目が、目が鋭い。なんで。 「ごしゅじんさまがヒゲを全部ぴんと張って尻尾立てて早足で帰ってきた時は、大抵ろくでもない物かろくでもない知識を『猫井』のお友達から仕入れてきた時です。今日は小脇に、朝は持っていなかった包みを大事そうに抱えていました。更に、普段なら『稼がなきゃいけないんだ』と持ち帰り仕事を出すため鞄に手をかけるところなのに、今日はその包みにまず顔を向けてから慌てて目をそらしました。ゆえに、またろくでもない物を持って帰ってきたのだと推測した次第です。以上、何か間違いがありますか?」 ヒトミこわい。俺ちょっと涙目。どっちが主人なんだこれ。いや俺だ俺が主人だ。 「猫井技研からのもの、全部ろくでもないと思っていたのか」 はいここ重要です。一旦言葉を切って物憂げに視線をそらしましょう。 「……『落ちモノ』を、お前を理解しようとして、やっていた事なんだがな……」 「ニーソックスに絶対領域の概念、四十八手図解、ふりふりエプロンと裸エプロンの概念、裸に男物のシャツ概念、裸エプロン派と裸シャツ派対立についての熱い考察、電池切れのあやしいおもちゃ、フランス書院、みさくら語、そんなもんばっかり繰り出された挙句『ヒトってこういうの好きなんだろ?』と言われ続けた日にゃあ、ろくでもないの一言で一括りにもしたくなるっちゅーねんエロヒトオタ猫」 マンガと小説には大喜びしてただろうがよっ! 仕事関係で知り合った猫井技研の奴と心友になって、調査後資料的価値のなくなった落ちモノを格安で譲ってもらっているだけだ。エロヒトオタとかゆーな。 「お前の事を考えて」演技をすぐやめるのは業腹なので、物憂げな顔のまま包みを手に取る。 「お前、泳げる?」 「なに、突然」 「ヒトの健康には水泳がいいって聞いてきたんだよ。穴場でほとんど人がいない場所があるっていうから、連れて行こうと思ってこうやって水着もらってきたのに、全部ろくでもない物扱いか」 ……あれえ。 一瞬反省の顔になったのに、どうしてヒトミさんは包みから紺色の布地が出てきたのを見た途端に正座の姿勢からおでこがゴンっていうくらい思いきり床に突っ伏してるんだろう。 「す……スクール水着か、それ……ベタだ、あまりにもベタだエロヒトオタ猫……」 ベタかよ。エロヒトオタ呼ばわりやめないのかよ。でも負けない。 「ほら、これ、字は違うけどヒトミって書いてあるんだろ? ヒト用だぞちゃんと」 広げた前面に縫い付けられた白布の、滲んだ字を示したらまたヒトミが呻いた。 「うん、高橋瞳って書いてあるね。でも、その上の『5-3』っていう数字には気付いて くれなかったのかなあ?」 「ぬ?」 「子供用! 思いっきり小学生の五年三組瞳ちゃん用! サイズ見てわかんない?」 暴れられました。 「え、でもこれ、伸びるよ、ほら」 「そら獣人の力で伸ばしたら伸びるだろうけども……」 ヒトミは頭を抱えて床を転げています。どうしよう。 それでも、まあ濡らせばもっと伸びるかもね、と言って渋々ながら着てみようとしてくれるあたりが、ヒトミの良い所。 「戸ガリガリするとミーコって呼ぶよごしゅじん!」 風呂場に閉じこもって内側から閂をかけるのは悪い所。しばらく戸のガリガリも我慢して待っていたらドタバタした音の後、低い声がした。 「……大惨事」 なにごとだ。 「……男子レスリンググレコローマンスタイル48キログラム代表……」 だからなにごとだなにが起こっている。 俺は家主だから知っている。この風呂場の戸は、一定のリズムで揺すると閂が外れるのだ。音を出さないようにしていたつもりだったが、地を這う声が返ってきてしまった。 「今開けたら寝ている間にお前のひげを全部切る」 ヒトミまじこわい。紳士であるよう努める事にしますすみません。 無理、と最後に吐き捨てた響きを残したまま扉が開いた。頬を赤らめたヒトミの顔が出てきた。残念ながら着衣ずみ。 「何があった」 「着れなかっただけ」 切れ長の目がいつもよりずっとすわっているので言及するのはやめておく。何を見たのだろう。 そうか、スク水プレイは無理だったか……。 「……スク水プレイ、だとう……?」 あ、あ、頭の中の呟きは途中から声に出ていたようです。瞬時に変わったヒトミの目の色! 怖いすげえ怖い! 「確信犯カッコ誤用カッコ閉じるだったのかエロヒトオタ猫!」 「ぎゃーカッコとか声に出して詳しく怒られた!」 詳しく怒らないで下さい耳捻られると痛い。 それでも俺の方がずるい。ヒトミが絶対にその要求に抗わないのを知っていて、彼女の指を口に含んで黙らせる。 即座に黙って順に指を舐めるに任せている、筈だったが、今回は途中でおずおずヒトミが声を出した。 「あのさごしゅじん。するのはいいんだけど……なんで片手にまだスクール水着握ってん の?」 「大惨事なんだってば! なんでそんな着せようってこだわるのヒトオタ猫!」 一つの萌え要素らしいから。ってのは置いておいて今は嫌がるヒトミに興奮してますすみません。 きつい水着に無理やり両足を通させて太股までずり上げたら拘束プレイみたいで更にいいですね。足が開かない分上体を倒させ、脱がせた肌を撫で下ろして後ろから入り口を探る。と、大人しくなったヒトミが風呂場の壁に向かって言った。 「なんか、この頃足閉じたままの、多くない? 私……ガバガバになってる?」 何バカ言ってんだこいつ。 「何バカ言ってんだ」 爪がかりのない漆喰に空しく立てられた指を観察しながら、滑らかな背に胸を伏せて擦りつける。 「なってねえよ」 今触ってるふくふくの胸とか突っ込んだらキュンキュン締め付けてくるであろうあそことか、ヒト最高ーヒトミいいーとか一々言うのはあほらしいから言わない。壁についていた腕もろとも抱きかかえて、肩に噛み付いて、もしゃもしゃさすって笑い声と甘い声を上げさせるだけ。 「大丈夫か? 入れるよ」 「……あ、う」 上体を抱きかかえて、後ろから具合を見計らいながら入れればやっぱりキュンキュン締め付けられた。のけぞった頭が俺の顎にクリティカルヒットを与えそうになったのを辛うじて避け、首筋に歯形をつけ、思いきり突き上げてやった。 終わった後太股につたう精が紺の布地にわだかまるのを見下ろして、ヒトミが吹き出した。 「結局スク水プレイされてるし」 いやこれは厳密にはスク水プレイとは言わない。 「不満そうな顔しないでよヒトオタ猫」 だからヒトオタとか言うなっての。 ****** 人気のない純白の砂浜、柔らかな風、黒い髪によく合う真新しい淡い色の水着、尻尾の穴をふさいだ部分はちょっとばかり見苦しいかもしれないけれど、似合っていますヒトミさん。なんでそんな怖い顔しておられるのでしょう。鳥肌立てて。 「……海かと思ったら避暑地の湖だし。避暑地。とっても涼しい」 うん。俺もここまで涼しいとは思ってなかった。目吊り上げないで怖いから。 「しかもまだ初夏の高原」 だから穴場で人気がないわけです。あなたも付け耳外して過ごしていられます。 「風邪で殺す気ですかご主人様」 ごめんまじごめん。そんなつもりはなかった。また今日の天気、曇り空で肌寒いときてる。 「さっぶいんじゃー!」 うん……俺も寒いと思う。 「悪かったってばよ!」 「しかもこの湖、火口湖? すごい冷たいよ!」 足指の先で波打ち際をかき混ぜて、水着姿のヒトが口を曲げた。 「お……泳がない、の?」 「三秒後に心臓麻痺で死ぬこの水温で泳いだら」 一応水に入りかけたヒトミが、戻って俺を湖に引きずりこもうとした。確かに冷たいですねごめんなさいごめんなさい濡れるの嫌。 「脱げ」 おお、ヒトミ積極的……じゃないんだな。唇紫色。 「脱げバカ猫!」 おいら暖房器具扱いであります! 毛! 毛だけ求められてる! 「……人肌で暖めあうって、スク水よりベタじゃねえか?」 「うるさい。さむいんじゃ」 ベタでもなんでも震えているので毛で覆うしかない。 涼風の中傾く日の光が湖面を輝かせているのを眺めながら、寒そうな女を後ろから抱えてるのってなんだかあんまりにベタベタだ。 「……ごめん」 「あ、いや、いいよもう」 「お、これってツンデレ?」 「だからなんでそんな概念ばっか詳しくなるかなこのヒトオタ」 どれだけヒトミが暴れても俺の力で軽く押さえる事ができる。でもなんだかじたばたしてるの可愛いんで胸揉んどこ。 「なに、エロ猫、するのお……?」 軽く息を荒げて肩越しに振り返るのそそるからやっちゃお。 胸を揉むうちいつのまにか、最初は醜いと感じていた筈のヒトの毛のない耳がすっぽり俺の口の中に収まっていた。舐り尽くして、胸と肩触って、指駆使して水着の股ずらして、やっちゃう時にはどちらの声が大きいのかわからなくなっていた。 歯を食いしばって声を殺した背が目の前で動く。どれだけ声を出せと言ってもうつむく。 水着脱がせればよかった。入れたのこすれまくり。 「どしたの、ごしゅじん」 いきなり動きを止めた俺に驚いてヒトミが首を捻り、こちらを見た。 「名前、呼んで」 「はいい?」 かなりの間。こいつ俺の名前忘れてるのかひょっとして。 「今更どしたの、キャパ」 「別に」 「なに鼻の頭赤くしてんの」 「うるせ」 ……だんだんと上下する腰の動きにひねりが加わるのはサービスなのだろうか。 「ヒトミ、こっち向けよ」 「ん」 もふっとしたいんだろう? 動きながらさかんに腕の毛撫でてるし、こいつ。 繋がったままもたもたと足を上げ(途中でひっくり返って後頭部を強打しそうになっていたので慌てて抱きとめた)、向かい合うなり、ヒトミは俺の胸に顔を埋めた。 それから背を一杯に伸ばして唇を押し付けてきた。 まだ冷たかった唇が俺の体温と同じになるまで、俺たちは付き合いはじめのガキがするような、不器用に触れ合うだけのキスを続けた。 細かく揺すり上げるたびに胸に感じる息が荒くなる。真っ黒い髪が胸元でがくがく揺れる。水着ごしに乳首を俺の体に擦りつけて、肩の毛を痛いほど握る指。熱く締め付ける脈動は間を狭めるばかり。虚空に放たれる言葉に意味はあるのか。感じる顔を伏せて見せようとしない頭。顔上げて、とかなんで懇願してるかな俺。やだって繰り返す声、いい。 「あう、やあ、だめ、もうだめ……」 いきそうですねいきそうなんですねヒトミさん、今日こそいかせまくってやる頑張れ俺。 「きゃ、キャパあ……いくっ……」 もちませんでした。そんな声反則。 風が立ち、湖面に小波が光る。そのほとりで冷たいー、とやかましく叫びながらヒトミが水着を脱いでいる。 「何もすぐ洗わなくても」 「カピカピになっちゃうでしょ。ざっとすすいどく」 照れたように笑う裸のヒトミかなりイイ、と鼻の下を伸ばしているうちに運命の瞬間が訪れていた。しまった忘れていた。 水着を湖水につけたヒトミが固まっています。 「何、これ」 どうみてもスケスケです本当にありがとうございました。 そう! これこそが、猫井技研がその知識と技術を結集して生み出した、濡れるととっ てもよく透ける水着! 男の欲望は技術を発展させる! 人気の無い場所を選び、じっく りゆっくり堪能しようとした深慮遠謀は今一瞬にして台無しになった! ヒトミの三日月型に開いた口に、無いはずの牙が見えるのはなぜでしょう。 「それで寒いのに泳がせようとしてたんかこのクソエロ猫ぉー!」 ヒゲは抜かないでお願い。あと、 もっかい名前呼んで。 ----*** 幕間・表紙に律儀に名前が書かれた日記 ***---- (以下、抜粋) ○月×日 晴れ 三日前、売り渡された。 こんなもんなのだろう。 新しい主人が細かく気を遣う。日記もその一つ。 前のゴシュジンより気楽にもふもふできる。 キャパシティという名前だそうだ。聞いた瞬間に笑いそうになった。色んな意味でいっぱいいっぱいそうな白黒猫。カギ尻尾。 △月○日 くもり これをごしゅじんに読まれた。ずっと読んでいたのだろうか。読めないとごしゅじんは言っている。本当かどうかは知らない。 まさか人の日記を読んで楽しむような恥知らずではないと、信じている。と書いておく。 ×月×日 雨 猫井のリードさんにキャパは仕事上日本語を少し読めるのだと教えられた。切る。ひげ全部切るくそねこ。 ×月○日 雨 今日は逃げ回るでっかい猫を追いかけて楽しかったです。 もう日記は読まないと耳を伏せて誓っていましたが、今ひとつ信用がなりませんのでここにもきっちり書いておきます。 今度読んだらひげでは済ませない。口でもそう言ってにっこり笑ってみたら涙目で尻尾を膨らませていました。弱え。あんたの方が強い筈なのに弱えよごしゅじん。 -------------------- 「大したこと書いてないだろお……」 「だからって普通読む?」 確かに私はこの猫の所有物で我侭を言える立場ではない。しかしこのごしゅじんは箒の連打を許すので、心置きなく大きく振りかぶって振り下ろせる。 「日記書かせたのは読むためだったんか」 「違う違う違う!」 箒のケバで二人とも咳き込んで一時休戦。 「お前をより良く理解するためにだな」 「斜め四十五度見たポーズで格好つけるなごしゅじん」 あ、また尻尾膨らませた。何というか、Sっけを自覚したよこのごしゅじんの所に来てから。柄は痛いからやめて、とか自分から言うあたり、ごしゅじんはMなのかもしれない。 「せめて、せめて名前呼んでグレッチでぶって」 『グレッチでぶって』って……椎名林檎もこの世界に落ちてきているのか。聞いてみた。ボロボロの歌詞カードだけ落ちてきたのだそうだ。猫井の担当者が解釈に苦労していたとか。だろうなあ。 さて。舞い上がった埃もおさまってきたようだし。 「結局ぶたれるのかあ!」 「ぶってって言ったのはお前だ、キャパシティ=スミス!」 まあ色々あってもこのご主人様の事は気に入っている。言わないけれども。 「で、グレッチでぶつって何?」 「ほんとは私も知らない……結構前の歌だよ、好きだけど」 「どんな曲なのさ」 そうか、たとえCDが落ちてきても再生手段がないのか。 「歌え」 げ。 ***しばらくおまちください*** 「ヒトミ……言っちゃなんだけど、歌下手……」 コロス。 ---------------------- (戸棚の奥に隠された日記帳より) ×月△日 ミーコの夢をみた。正座した私の前にきっちりと座って、うみゃごみゃとかなり長くお説教をしていた。 「やりすぎだ」と言いたかったのだろうか。賢い猫だったから、「立場をわきまえなさい」と言っていたのかもしれない。 ----*** 終・甘バカップルであと数十年 ***---- ヒトミがずっと俺の顔色をうかがっている。ひげを引っ張ったりカギ尻尾を遠慮がちにいじったりしても、こちらが芳しい反応を見せないとすぐに手をひっこめる。気を遣わせてしまっている、と思っても溜息はとまらない。それ以前はほぼ毎日手を出していたのがめっきり、という点が彼女には一番不審なのかもしれない。 原因は一週間前にさかのぼる――。 奇跡のような、とでも言おうか。この世界にはほとんど知り合いがいないだろうヒトミが、ある再会を果たした。 「ヒトミ、なのか?」 「え、御主人様?!」 ヒトミの驚いた声はその時の、付け耳付け尻尾でフードを深く被っていた格好には、不自然な台詞ではないかと俺は慌てた。だが相手の男が……。 御主人様、と呼ばれるのにまことに相応しい風貌だったもので、失礼にも開いた口が塞がらなくなった。 まず彼の出てきた場所が、小市民に縁のない高級品ばかりを取り扱う商会、その威圧感ある本社建物。扉の前で見送っている人とか、いるんですけど。横付けられた彼の迎えらしき馬車は金具から馬具までぴっかぴか、一分の隙もなく着こなした服は一目でわかる高級布地。 相当の実力者らしい上、その顔も体格も。喧嘩も強そうな厚い胸板に、毛色はレッドタビーと言うのだろうか、半長毛がつやつや光を放っていて、黄金の瞳にはくっきり凛々しく白のアイライン。首周りのみ長く伸びた毛並みはご立派の一言につきる。ヒトミと軽く立ち話をしている尻には、曲がってなどいない優美な尻尾がふさふさと伸びていた。 要は圧倒されたわけだ。 ヒトミが彼と話しながら、紹介するように何度か俺の方を振り返っていたが、何も耳に入ってこなかった。正直言うとその場から消えてなくなりたかった。 帰宅するなり付け耳をむしりとったヒトミの頬は、外出の興奮だけでなく赤らんでいるように見えた。 「いやあ、妙な離れ方をしたから気にしてたんだよね」 そうしてこっちが聞いてもいないのに、「前のゴシュジンサマ」の話を始めた。 生まれから毛並みのいい、その上辣腕家のゴシュジンが、別宅に囲っていた妾――ヒトミは「お嬢様」と呼んでいた――の、世話係兼話相手をしていたのだそうだ。 「だから正確には『前のゴシュジン』はお嬢様なんだけど、あの御主人様にも大事にはしてもらったし」 「……大事にされてたなら、どうしてまた売られてたんだ。あんな金持ちっぽい奴だったのに」 普通の顔をして聞いてはいたが、俺の尻尾は座布団をはみ出して床を叩いていた。ヒトミは肩をすくめた。 「御主人様がお嬢様との愛に燃えあがって駆け落ちかました。二人の仲については私も関ってたけど、まさかそこまでいくとはと驚いたっけなあ。……ちょうど、正妻さんの実家が落ちモノ詐欺にひっかかって大変な事になってた時期で、そこから逃げる意味もあったんじゃないかって話だった。案の定すぐ後に正妻さんと借金取りが突撃してきて、お屋敷大騒ぎ」 置いていかれた上売られた身なのに、ヒトミは二人とも幸せそうでよかった、と笑っていた。 「お嬢様を隠して落ち着いてから、堂々戻って正妻さんちに掛け合って、無償で走りまわって借財整理から家業立て直しにまで携わって、正妻さんとはきちんと別れたんだってさ。お嬢様の事、心配だったから安心したよ」 「そりゃあまた男前な話だ」 「御主人様」は察するにあの高級商会の役員か、駆け落ちの醜聞をものともせずにいる様子だったあたり、確かにやり手らしい、などと考えていたので、適当な相槌をうった。ヒトミはそれを興味がないしるしととったらしく、ぽんと立ちあがって夕ご飯にしよっか、と実に珍しい事に俺より先に台所へ向かった。 その夜、寝床の中で「ふかふかのびのびー」と口で言いながら俺の頬を伸ばしているヒトミを見ていたら「御主人様」の立派な鬣状の首周りを思い出してしまい、更にはヒトメスだしなー御主人様ともやっちゃってるよなーと下世話な方に頭がいき、ヒトミの指を咥える事ができなかった。 それから、一週間。 「ごしゅじん、どうしたのさ」 とうとう痺れをきらしたのか、夕食後仕事を広げようとしたちゃぶ台(さすがに夏になってからはコタツを片付けた)を強引に横に押しやったヒトミに、向かい合ってきちんと座られた。どうしたと言われても。 「……ひょっとして、前の御主人様の事?」 こいつはこいつで、様子がおかしいと気付いても言い出せずにいたらしく、「前の御主人様」は口の中でもごもごと発音されている。そのとおりなのだが説明が難しい。 「むー、やはり中古はいやでしたか」 「違う違う違う」 かといってこんなとんでもない誤解をさせたままにしておくわけにもいかない。 ……要は圧倒されたという事。それが一番近い。 むろんこちらも小市民とはいえ勤め人、「御主人様」のような、いやもっと貫禄のある人物(ヒトミが「猫物ではないか」と茶々を入れた)に会った事もある。それでもヒトミと御主人様が向き合っていたあの時、胸によぎってしまった言葉がある。俺ショボい。 「オットコマエだったな御主人様」 呆れたように口を開けてから、何やら言葉を探しているヒトミの顔を見ていたらもう一つ、ずっともやもやしていた思いがはっきりした。 「分不相応な買い物をしてしまった」 「俺なんかが買っていい贅沢品じゃなかったんだ、ヒトってのは。あんな金持ちにまた買われてりゃ、ヒトミもでっかい家に住めてきれいな格好して、美味い物食べてたまに奉仕して」 「そんないい暮らししてるヒト奴隷なんて、ほとんどいないと思う。別に私、ここでの生活に不満なんか、ないよ?」 言おうとした、「もっと幸せだったろうに」を遮って身を乗りだしたヒトミの黒髪が頬で揺れる。指が敷物を擦っている……と思ったら無意識のうちにだろう、俺の抜け毛を集めていた。 「ああ、そう言えば最近掃除もしてくれるよな。ありがとな。こんなさえないエロヒトオタに」 「それは、昼間ヒマだし他に取柄もないから……あーもー、だー、うっとうしい!」 ヒトミが思いきり腹に抱きついて、腕を尻尾に回してきた。落ちこんでいても尻尾は気持ちいいあたり、俺ほんとなんだかなあ。 「ごしゅじん、らしくないよ。エロヒトオタでいいよ、今私を買ってるのはごしゅじんでしょ?」 いつになく積極的に、俺の下半身を服ごしに鼻先で探ろうとしたヒトミを、しかし俺はできるだけ柔らかく止めた。尻尾のカギ部分を扱いていた彼女の指を外して、口に含む代わりに爪の先で撫でた。 「こういうのも、さ」 眉をよせたヒトミの、まっすぐに睨んでくる目からも逃げた。 「今まで甘えてたけど、ヒトの生理以外の時だって、嫌だと思ったらはねつけてよかったんだ。体もきれいで傷もない、具合はもちろんいい、本来なら金持ちに買われるような高級品だったんだろう?」 あの「御主人様」に買われるような。 沈黙の後、ヒトミは俺の指からそっと自分の手を離して……片膝を立てた姿勢になった。どっかりと。 んなわけないでしょう、というのが前置きだった。 曰く、向こうの世界ではごく普通の生まれで中小企業事務員、お嬢様だの御主人様だのがぞろぞろいる上流階級には縁も無し、そういう世界の教養も礼儀も無し。器量も普通で色黒と軽いくせっ毛を気にしていて、高級品などと呼ばれるいわれはまったく無し。ならば、なぜ前のゴシュジンサマがあれだったかというと。 ……曰く。落ちてきた途端えらい目にあって、売り飛ばされて、なんだこの理不尽な扱いはとぶち切れて、ヒト売りをなけなしの色気で油断させ逃げだしたらその通りにたまたま、ぴっかぴかの馬車があったのだと。 「中にいたのがいかにもひ弱そうな猫の『お嬢様』だったからさ、これなら私でも人質にして逃走に使えるかなー、って火事場の馬鹿力で馬車に突入しちゃったんだよね」 突入? ……おいおいおいおいおい! 「すぐ取り押さえられたけど」 「お……お前、よくその場で殴り殺されなかったな……」 そらしていた目をヒトミに戻して、身を乗り出してしまった。ヒトミの話は続く。 お嬢様のやさしさと好奇心、御主人様の鷹揚さと「これが欲しがっているらしいから」の一言で、命拾いして屋敷へ連れて行かれたが、売られる前よりはるかに待遇が良くても、御主人様はじめ周りがその手のモノ扱いをする事には変わりがないものだから。 「もう大暴れ」 大暴れ。どんどん聞くのが怖くなってきた。 「特に、お嬢様もモノっていうか、『着飾ってたまに来る御主人様のご寵愛を受けていればいい者』扱いされてるのが気に入らなかった。御主人様を頭っから怒鳴りつけたり」 あれを怒鳴りつけたのか……尊敬する、ヒトミ。 「仕舞いにはお嬢様つれて逃げようとした。これまたすぐに連れ戻されたけど、御主人様は自分の傲慢に気付いてなかっただけで根はいい人だったから、素直に反省してくれて、このとおりヒト奴隷なのに無傷無罰。運がいいんだろうな私は。また売られたって、いいスジからのモノだからって一応、格上の扱いをされたしね」 ――自分をごく普通だという小柄な頼りない腕力の、柔らかい女性は、どれだけの怒りと絶望を抱えて暴れていたのか。逃げてもどうしようもないと理解し、諦めに至るまでの心の動きは、俺にはとても想像できない。主人で遊ぶようなとんでもないヒト買っちゃった、とはじめ後悔したものだが、あれは丸くなった後どころの話ではなかったのだな、などとぼんやりバカな事を考える。 己の現状を嫌というほど理解させられてもなお足掻こうとして、ヒト奴隷の詰めこまれた馬車から隙を窺っていた彼女は、立てた膝に頬杖をついて微笑んでいる。 「らしくないよごしゅじん。本当に、本気で、ここの生活に不満はないって。庶民出身としましてはお屋敷よりずっと気楽に過ごしてるし。ごしゅじんの尻尾いじるのも面白いし。お買い得品だけど高級品なんかじゃないって、わかった?」 すっかり反省した俺が、謝ろうと口を開く前に、ヒトミがふっとうつむいた。 「ここで最初にごしゅじんに抱かれた時、どこがいいかここがいいか聞かれて、あんまりやかましかったからつい蹴ろうとしちゃったけど」 しだいに小さくなっていく彼女の呟きが、最後にかすかにこう、聞こえた。 ……たとえ少しでも、私の事を対等にみてくれているんだなって、嬉しかったんだよ。 黙って部屋の隅を見ているヒトミの目に映っている絵と、同じ物を見ている筈の俺の目が認識する絵はきっとずいぶん違っていて、どれだけ言葉を費やしてもお互い説明しきれないのだろう。 遅くなった、寝よか、と目をそらしたまま立ち上がったヒトミを、色々もやもや考えてから追いかけると、彼女は寝台の上でうつぶせに寝転がり、行儀悪く足をぱたぱたさせていた。そして、俺に少し前の表情を忘れさせそうになるほど、ごく普通の顔を向けてきた。 「あ、ごしゅじん、言い忘れた。飽きたらさっさと売り払っていいよ。高級品ではないけど大丈夫、優秀な勤め人のごしゅじんなら、きっと買値より高く誰かに売りつけられる! がんばれごしゅじん!」 「なあ?! 何言ってんだバカ!」 バカは俺ですな。 「シワ指差して笑ってやるって言っただろうが!」 ……バカを重ねていますな。どれだけ考えても、謝るのは間が抜けていて、慰めるのは彼女が望んでいないだろうという答えしかでてこないので、更にバカを重ねる事にする。 今こいつはここにいる理由を、行為にのみあると思っていて、行為に飽きられるのが不安なのだとエロヒトオタは今更ながらそれだけは理解した。なのでヒトミをひっくり返してガリガリ指をかじってやった。 「飽きないって」 痛みに顔をしかめても声を出さずにいるヒトミも積み重ねてバカ扱いにしておこう。左手指五本省略。ボタンが飛んでも繕うのは俺だと力でパジャマの前を開いて、 「ガバガバになったって飽きないよバカ」 はだけた肩に一週間ぶりに鼻を強く押しつければ甘い肌の香り。 素裸になってから体をくっつけるのが、最初に抱き合った時よりぎこちないのがなんだかおかしい。まあそれはつかの間で、すぐヒトミは目を細めて俺の首にすりすりと頬ずりしてきたわけですが。やっぱり毛か、毛なのか。 「『御主人様』にもこんな事やってたのか? ああごめん違う、気にしてるんじゃなくて、あの首毛は撫でごこちがよさそうだったから」 「んー、もふるどころか引き千切ろうとしたからなあ」 ……なんだか、ざまみろという気分。しかし凄えなヒトミ。畏縮する俺の方がおかしいんだな。 覆い被さる俺とヒトミ、どちらがより肌の多くの面積を相手に押しつけるか選手権……になってしまった。とにかく互いの体温と感触を貪り、巧緻な技などなんにもなくて、なのに勝手に高まっていく。 ヒトミの息と鼓動、俺の急いた腕の動き、いや逆かもしれない、わからなくなってくる。 あー柔らかいなーいいなーと言ったのが俺で、あったかいよもっとすりすりしてーと言ったのがヒトミだとは辛うじて判別できたがこれも逆だったかも。 彼女の足が腰に絡みついたのと、先っぽ涎だらけになった俺のあれが突き立てられたのはどちらが先だったのやら。 「あうっ、奥、奥いい、もっとお、あ」 だったら締めるなもたねえよ! 奥も入り口も! 「むり、や、きて、きてえ!」 言われなくてもあっけなく。吐き出される脈動と、ヒトミの顎が天を突く動きが同調した。 もそもそ後始末を終えて、もう一度横のヒトミを抱き寄せた。 「およめさんにー、なれー」 「今度は何事だごしゅじん?!」 腕に力をこめて、跳ね起きようとする体を押さえつける。 「うるせーくそ、お前ほんとの心は見せないから悔しいんだよ。嘘でいいから、もっと俺の名前呼べ。およめさんになれー」 俺を主人扱いしなくても抱こうとすると従順になるヒトミ。やけを起こして買ってしまったヒトのヒトミ。 「落ちつけご主人様、キャパ、ちょ、キャパ、何言ってんのいきなり!」 「いきなりじゃないよ」 説明は苦手で、出した金の分後ろめたい。それでも指先の毛で唇に触れた時、ヒトミの目に浮かんだ表情は嫌悪ではないと直感で思う。俺の長所、毛だけでもいい。 「誓えー。ずっと俺の傍にいるって誓えー」 「ヒトだよ私」 いいから。 嘘でも良かったのだけど、ぎゅうぎゅうに抱きしめて口付けた後のヒトミの顔はなんか可愛かった。 「……キャパシティ=スミスとこの世界の神に誓います。私、佐伯仁美はどんだけこのごしゅじんがバカでもエロでも、こいつの傍にいるって、誓います。って、こんなんでいいの?」 「うわー誓いっぽくねえー!」 一緒にげらげら笑っていながら、肩に伏せて顔を上げない頭を抱え込み、胸毛と腕毛でもっふもふにしてからこっちも。 「俺はヒトミに誓う。ひげ抜かれても、エロヒトオタとか言われても、何回でも好きだって言います。おっぱいが垂れてもシワシワになっても好きだよ、ヒトミ、だから……」 この世界の神には誓えなかった。抱きしめて、できるだけ大切にして、あとはこいつに何がしてやれるだろうか。 「だから、泣くなよう……お前が好きなんだよう」 ヒトオタ結構。エロネコ上等。口に出したら胸が軽くなった。 二人で暮らすようになってから伸びた分はどれくらいだろうかと、黒くしっかりした髪を指に巻きつけていじくっていたら、ようやく掠れた声がした。俺の肩毛にしみこんだ跡を見せつけてもこいつは自分が泣いていたのを認めようとしないのだろう。いいけど。いいけど、顔、俺の抜け毛だらけになってるんじゃないか? 「ヒトオタここに極まるって感じ……」 「悪いか。もう開き直ったからな俺。あと二百年くらいもっふもふにしてやんよ」 「二百年て、私ミイラだよバカ」 ヒトなんかほんと買うもんじゃない。でも多分、バカだのヒトオタだの繰り返しながらしがみついてくるこいつは、生まれ変わってきてもすぐに見分けられそうな気がする。シワシワになってからさっさとネコに生まれ変わって、また俺の傍にくればいいんだ。 バカバカ言ってたヒトミが唇を結んで、顎に額を擦り付けてきた。 少なくともあと何十年かは一緒だ絶対に逃がしてなんかやらねえ、覚悟しろ。 誓いの夜から数日。今度はヒトミが挙動不審。今夜は裸エプロンがいいなー、と言っても反撃がこない。 「エロヒトオタとか、言わないの?」 視線をそらすし。なんだか口を開き辛そうにしているし。 やっちまったか、俺。ひげと尻尾を下げたらヒトミが大慌てで見上げてきた。 「いや、あのさ、ごしゅじんだと思ってた人、あ、ネコか、におよめさんとか言われたら妙に意識するっていうか……うあー二十五にもなって私何やってんだ、ごしゅじんがバカ言うからだ!」 照れてた。照れていましたヒトミさん。だからって逆ギレするなよ。 「なんという萌えツンデレー!」 「叫ぶなヒトオタ猫!」 ようやく勢いが戻ったけれど、彼女の顔は真っ赤だった。 先の事は先の事として、今の所、 やけ買いも悪くないのかもしれない。 ----*** 幕間・酔っ払いの拾いもの ***---- 「たらいまあ~~」 「うわ、くっさい。ちょっと玄関で寝ないでよごしゅじん、……うあ?」 「呑んじゃったあごめえんヒトミぃ」 「はいはい、ほんっと弱いんだね、んで、これ、何」 「ヒトミお酒好きぃ?」 「まーね。どーせ通じないだろうけどアイレイ大好きだったよほらごしゅじん、ぐにゃぐ にゃしてないで袖から腕抜いて。もうとっとと寝なさい。水飲んでから。スモーキーマテ ィーニもう一回飲みたかったなあ」 「す……何?」 「スモーキーマティーニ。あっちの世界のカクテル。くっさいアイラ島のモルトウィス キーを、って別にどうでもいい話だよ、ほらほら転ぶよ、足元気いつけなってば」 「ふにゃー……モルトって、ル・ガルの地方から輸入されてるよ、今度買って来るねえー そっかヒトミ酒好きなんだあ、くっさいかはわからないけど、買って来るよお……」 「それはどうでもいいのよ、この、足元にいるの、何」 「ひろったー」 「……明日それは問い詰めようと思うけど、とりあえず何これ」 「知らないー、落ちてたー。お前の世界の『猫』ってこんなんじゃねえのー?」 「違う違う断じて違う! 何この生物! 何食べるのこれどうすればいいの! なんか一 つ目開いた! 目からなんか出した!」 **小ネタ1彼は誰とすれ違ったのか** 今度は何持ってきた。 そろそろ帰ってくる頃かと窓から外を覗いた私の頭に、太ゴチック体で黒々と浮かんだのはそんな文章。 日の暮れるのが早くなり、しんしんと地面から藍色に沈んでいく小路なのに、ネコのように目が良いわけも ない私が瞬時にエロヒトオタ猫を見分けられたのは、彼のスキップせんばかりの足取りがあまりに帰宅途中 の人々(ネコネコ?)の中で目立っていたからだ。特徴あるカギ尻尾は高く上がり、藍に溶け込むハチ割れ 模様の黒部分にきらきら光る黄褐色の瞳、白い鼻面からぴんと伸びるひげ、流石にそこまでは見えなかった がおそらく小鼻が膨らんで鼻の頭がピンク通り越して赤くなっているのだ。 寒気を全く感じていないかのような浮かれた様子、こんな風に帰ってきた時はー、エロヒトオタ歓喜のブ ツか知識を仕入れてきた時であってー、それはたいてい私の眩暈を喚起するようなしろものでー。 あの調子だとかなりのブツかいらん知識だ、と早くも立ちくらみを起こしている私を見上げ、でっかい白 黒猫な夫はものっすごいイイ笑顔で手を振ってよこした。私は窓枠にもたれてずるずると崩れ落ちながら力 なく手を振り返すしかなかった。 「ただいまー! あのな、ヒトミ、あのな」 その手のものを繰り出す場合、今まではどれだけ浮かれていても、夕食後の落ち着いた時間帯だったのだ が今回は違った。そーか玄関開けるなり話題にするほどのシロモノか。覚悟しておこう。 「おかえりごしゅじん。ご飯それともまずその話?」 「ええ?! いきなりいっちゃってもいいの?!」 「……まずご飯にしようね。野菜は切っておいたから」 腹をくくる猶予くらいはくださいごしゅじん。 しかしくくった腹は緩む事になった。 「すっげえ素的な人に会ったんだよ!」 「は?」 これは予想外。普段の倍速で鯵に似た魚に塩をふり天火に放り込み、並行して野菜炒めを作りながらごし ゅじんであり内縁の夫であるでっかい白黒猫はいまだ興奮覚めやらぬ様子で、結局ご飯作りと「話」を並行 した。薄い耳の内側も鼻も、目の縁まで濃いピンク色。あれ? 素的な人って、もしかして出会いってや つ? およめさんにしてもらったとはいえ、私はヒトで彼はネコ。皿を用意しながら私は覚悟のベクトルをずら した。 「お近付きになりたいなー、どーしよーどーすりゃいいのかなあ」 「仕事の関係で会ったんじゃないの?」 「それがすれ違っただけなんだよ」 長身をくにゃくにゃ揺らしていても、でっかい白黒猫の手は的確に調味料を加えていく。小まめで料理も 上手いし気配りもできる、仕事も遅刻以外は真面目らしいごしゅじん、なんで独り身なんだか不思議だった んだ。外見の印象については、ネコの美醜感覚がよくわからないんで横に置いておいても。恋は良い事だ。 ヒトオタになるよりずっと良い事だ。 「まず、声をかけるタイミングだよね。今日初めてすれ違ったの?」 「そう、今度いつ会えるのかもわかんない」 ようやく私もうまく塊のパンを切れるようになった。ニホンジンの感覚では鯵の塩焼きと野菜炒めにパン はいかがなものかと思うが、いまだに自分一人では米を炊けないもので仕方がない。竈の使い方は何とか覚 えたんだけどね。パンも温めておけば良かった、と頭の半分で反省しながら、もう半分では別の事を考えて いる。 さーて、ネコの彼女はヒトメス奴隷のいる家におよめさんに来てくれるものなのかなあ。前の御主人様は お嬢様と私がふにゃふにゃしているの、面白がっていたけれど。 ネコのおよめさんにはネコがいいに決まっている。はじめに聞いたとき比喩でなくひっくり返ったもんね、 ヒトとネコの寿命の違い。ずっと傍にいると誓ったけれども、ごしゅじんが――この極まったヒトオタ猫が、 私が寿命でも病気でもさっさと逝った後どうなるのかを想像して、早いとこネコのちゃんとしたおよめさん をもらった方がいいんでないかいと、常日頃悩んではいたのだ。覚悟のベクトルはまた売られる方向へ向い ている。ヒトオタグッズもきっと高く売れるよな。私は改めて腹に力を入れた。 「そんなに素的な人だったんなら、願え、祈れごしゅじん。努力すればまた会えるかもしれない!」 「うん、今日すれ違ったあたりまたうろついてみる!」 野菜炒めを皿に移し終えたおたまを握りしめ、彼はシャッキーンと上方を見つめていた。 鯵(に似た魚)の塩焼きを頭から齧りながら、でっかい猫がうっとりと頬を緩めている図はなかなかにシ ュールだ。私は箸を使っている。ちなみに私の残した頭や骨も彼が食べる。 「高級そうなスーツ着てたんだよ……どこに勤めてるんだろう、やっぱ猫技かなあ……」 「猫井技研なら伝手があるじゃない」 「なにせあそこ大企業だから。リックと違う部署じゃあ名前も顔も知らない可能性が高い」 どう味付けしたらこんなにパンに合うようになるのか、私には見当もつかない野菜炒めを飲みこんで、つ いでに売られるならどこまで自分用に買ってもらった服を持っていけるのか、まで先走った頭の中の仮定を 一旦飲みこんだ。 「もう一度会えるといいね」 「応援してくれるのかヒトミ!」 「もちろんだとも! で、どんなひと?」 仲人モードにチェーンジ! 情報が得られない事には想定も対策もできん。集中するため大急ぎで残りの 野菜炒めをパンに盛り、行儀が悪いのを承知で口に詰め込んだ。 「まず、センスがいいんだ。ウロコの色にスーツが合っててなあ」 センスはごしゅじん、正直言ってあまり良くないようだからその人と釣り合うかどうか……もぐもぐ。 ん? 今ウロコって? 聞き違い? 「首輪も鎖も着せる服のチョイスも」 ちょっと待った。なんだか、おい、嫌な予感が。口の中のものを一気に飲みこもうとして、胸が詰まった のは重い予感のせいだ。首輪と鎖て、おい。 「ごしゅじん? 素的なひとって、具体的に言ってみ?」 「んだから、洗練された仕草と眼光の」 具体的じゃねえよ。 「こらえきれない歓喜を僅かに出入りする細い舌が表してたりして、それが実にウロコに映えて」 たしかにウロコと言っている。はい消えたー、ネコのおよめさんの線消えたー。予感は黒くなっていくよ。 「クールな彼の表情と斜め後ろの彼女の遠い目との対比が、またこれが」 こ、こ、「これが」とか瞳孔開いて回想するなバカエロ猫。帰宅前の予想と腹くくりの方が正解でしたか、 もしかしなくても。黒い予感が、脳裏に描いた想像図に変わりましたよくそエロねこ。 「……早い話が、首輪鎖の羞恥プレイをしているとっても素的な人とすれ違った、と?」 「そーなんだよすっげえカッコイイヘビ紳士だったんだよ、どうにかしてお友達になれないかなあ?」 「なるなー!」 卓袱台返しならぬコタツ返しをしなかった私の理性を自分で誉める。後片付けの手間を考えて思い留まっ た。 ネコの好奇心に感謝した事もあれども今回は恨む。特にエロ方向に走ってしまったごしゅじんの好奇心を 叩き潰してやりたい。こんだ羞恥プレイかよ。 「応援してくれる筈じゃ……」 皿を洗いながらぽそぽそ呟く声を一切無視して私は拭いた皿を棚にしまった。尻尾がまだふくらんでいる あたり、さっき私どんだけ恐ろしい顔をしたのだろう。 「ヘビ紳士の彼女がさ、ニーソックスはいた時のヒトミと、似た表情でさあ、それで余計」 ……そらそうだろうとも。彼女さん、力一杯同情するよ。二十五でふりふりエプロンだのニーソだのって プレイも十二分に羞恥だと、このネコには理解できんのだろうな。 「ごしゅじん、そーいうSMちっくなのにも興味あったの?」 努力してにっこり笑ったら、エロな夫は後ろに倒していた耳をぴんと立てて何度もうなずいた。 「ほら、もっと尻尾しごいて欲しかったらにゃーって言いなさい」 「えーっと……なんか、違うくねえ?」 うつ伏せの背中に私をまたがらせ、でっかい白黒猫は枕の上で首を傾げている。違いませんごしゅじん。 後ろ手でカギ尻尾を、もう一方の指先で耳の中をくすぐられてひげがさかんに動いているじゃありませんか。 あ、羞恥プレイでしたね。素早く体を180度反転、おしりの白い部分を重点的に攻めてみまーす。 「ふかふかのおしりがぴくってなったよ。本当はたまたまも見て欲しいんでしょ? ふっふっふ」 「ふおお?!」 起き上がろうとした上体にヒップアターック。文字通り尻に敷く体勢は、私のお尻も気持ちが良いことが わかった。天然毛皮クッション体温付き、冷え込む季節に最適です。ぐぎゅ、とか雑音が聞こえたけれども 気にしない。しかしほんとにごしゅじんのお尻可愛いな、悔しい。つるつるの自分の尻が醜く思えてくる。 下でじたばたもがく感触を細かく感じ取れるのも楽しい。 「ヒトミー! いい加減に、ひゃああああ」 「『ひゃあ』じゃないでしょ、『にゃー』でしょ」 ……いや、本気で調教する気は無かったんだ。尻尾とたまたまをさわさわするのは楽しかったけれども。 なのでこんな声が返ってきた時にはどうしようかと思った。 「にゃあ……」 いささか掠れた声で、それでも確かににゃーって言いおったよこのごしゅじん。 ごしゅじん……本気でMか……。 -------------------------- 触発元作品:「The snake under the bed」(作・タダノサケビ氏) タダノサケビさんすみませんすみません。 -------------------------- *小ネタ2過去には暗い穴がある** 繰り返される日常の中、ふと感じた疑問が好奇心が、ひとつの切欠となる事もある。 下手くそな鼻歌など歌いながら、手際よく皿を拭いて片付けているヒトミを見ていたら口から勝手に言葉 がこぼれ出た。 「ヒトミ、向こうの世界で結婚してた?」 料理に関しては、調理器具に慣れてきてもその、あれな、腕だと嫌というほど知っているもので、たぶん そりゃないなーとは思ったけれども、なんとなく。 「はあ? 未婚だったよ、ごしゅじんにまだ言ってなかったっけ? 独り身仲間で飲み会やってアパート帰 ってきたらいきなりこっちに落ちたんだもん」 鼻歌が消え、笑みが消えた。まずいやはり触れるべきでない事柄だったとシャツの下で脂汗が吹き出た。 「言っておくけど、ヒトの25って別に嫁き遅れじゃないよ」 機嫌が悪くなったのはそれを疑われたと思ったせいかよ。今度は安堵の汗が出た。 ……そこでつるっとまた余計な事を口走ってしまうのが俺というネコだ。 「んじゃ、恋人とかいた?」 ヒトミの茶の瞳が焦点を無くした。手は皿を持ったまま止まった。そこでやっとまずい、と口を閉じたが 発してしまった言葉は取り消しがきかない。 ぼく、ふみこんじゃいけないところをふんだみたいです。 「……二年」 ぽそ、とヒトミが食器棚の中に向かって呟いた。 「いっつも二年、続かなかったんだよねえ……」 ふんじゃいけない……けど、ちょっとちがう種類の踏んではいけない場所だったらしい。ヒトミの背後に、 家の中なのに吹き荒れる木枯らしが見えた。 二股かけられた挙句、「彼女には俺が必要なんだ! ヒトミは強いから!」と捨てられる。 受験失敗から自暴自棄になって心中を持ちかけられる。 いきなり辞表を出してアパートに転がり込みパチプロになるとごろごろするばかり。 少し会わなかったら出会い系にはまって性病をうつされてくる。 「もてなかったわけじゃないんだけどねー、なんでかねー、あはははは」 淡淡と話された内容と乾いた笑い声に、俺は背中の毛を逆立てていた。彼女の背後に見える木枯らしは、 猛吹雪に変わっていた。よーするに、ものすごく男運が悪かったらしい。 「んじゃ、恋人とかいた?」 軽く聞いているつもりなのだろうが、開いた口の形が左右非対称だった。コタツで改めて向かい合い、話 してやったらその、牙をのぞかせた口のまま固まっていた。でっかい白黒猫な夫は、お調子者のきらいはあ るもののヒトの私にも気遣ってくれるいいネコだ。 「ごしゅじんこそ、なんで彼女も嫁もいないのさ」 声に出してから、外に内証にしている恋人がいてもおかしくない、と思いついたがそれは要らない想像だ ったようだ。……ごしゅじんの視線が、何もない空中で止まっている。遠い目という表現はあるが近い目と いうのは初めて見た。瞳孔が開いていてちょっと怖い。 「えーと、ネコにも結婚適齢期ってあるのかな?」 ……そこで追い討ちをかけてしまう自分の性格が恨めしい。反省より先に、つるっと言葉が出てきてしま った。 「うん……まあね……俺は、それ、過ぎてるよ……」 開いた瞳孔に灯りを反射させて中空を見るごしゅじんの後ろに、砂漠が見えた。 つまんないそうです。 二百年近い年齢のネコは、それまでの女性遍歴を一言ですませた。そのぽそりとした声色で、彼の背後の 砂漠は更に乾燥を増して細かい砂を巻き上げるようだった。思わずお茶で口を湿してしまいましたよ私は。 「ええ? ごしゅじん、こまめで優しくて真面目でいいひとだよ、もてないわけじゃないでしょ?」 「ん、でも、つまんないんだって。イイヒトだけど、って、だけどが付くんだよーうふふふふふ」 わたし、おもいっきり地雷をふんだみたいです うふふあははと背後に砂嵐を吹き荒れさせる白黒猫に、私はお茶の杯をを放り出しコタツから出てハイハ イで近づいた。 「ごしゅじん、つまんなくなんかないよ、いいひとでいい男だって、白黒はっきりした毛並みもふかふかだ し、かぎ尻尾も可愛いよ!」 「ヒトミ……!」 がっしと抱き合う図は絵に描いたようなバカップルバカ夫婦なのだろうが、誰も見てないからいいよもう。 ざりざりの舌で頬を舐めるのは正直勘弁して欲しいけど。 「ヒトミい、お前もいい女だよう、『サゲマン』なんかじゃないよう」 「……どっから覚えてきたのそんな言葉」 お互い存分にすりすりもふもふぎゅうぎゅうした後、ごしゅじんは私に目を合わせた。下がっていたひげ がようやく元に戻っている。 「俺、賭け事もしないし酒も弱いし浮気もしない、ずーっと真面目な夫でいるからね、ダメ人間になんかな らないからね」 優しいテノールの声と腕の力と、真摯な目、だけれども……。 私を買ってから。 ――マッハでエロヒトオタになってしまったのは誰だ。 「……あれ?」 「……ん……いや、ごしゅじん、これからは少なくともつまんないって言われる事はなくなるかもね……」
https://w.atwiki.jp/nekomimi-mirror/pages/262.html
やけ買いなんかするもんじゃない ----*** 1・やけ買いなんかするもんじゃない ***---- 「ごしゅじんさまー。ごしゅじんー。あるじー。マスター。おーい」 「だー! うるさい、暇なら先に寝てろ! ……っひいいいい」 背中の毛がわさわさ一気に立った。ついでに裏声を出してしまった。いきなり後ろから耳にやわやわ噛みついたヤツがそのままの位置でうひひ、と笑うものだから、その息の圧力がまた耳にかかって首筋の毛まで立った。細い指が視界の隅に入ったかと思うと今度は 目元をマッサージされた。 「目の上ひげー。目の上ひげー」 「引っ張るなー! 頼む、邪魔しないでくれ、明日朝まで最低これだけは書類作っとかなきゃいけないんだよう……」 俺、なんでこんなの買っちゃったんだろう。 窓と戸を開け放ったままゆっくりと裏通りを進む馬車があった。中に詰めこまれたヒトメス奴隷の一人と目が合った。俺はその直前に結婚を考えていた彼女に別れを告げられていた。なもんで結婚用だったのに使う当てのなくなった、分割払い頭金にするくらいの金はあった。したたかに酔っていた。ヤケをおこした。 ゆえにこいつがここにいる。お嫁さんもらってもしばらくはここで住めるよなー、とか ほわほわ考えていた2LDKの賃貸住宅に、小市民には不釣合いな贅沢品が。 「ここだけの話ですがね、『落ちてきた』ばっかりの新品なんですよ。肌もきれいで健康体、お買い得商品」 黄色い目の口の臭いヒト売りはそう俺に耳打ちして、言い値より遥かに上の値を示した。値切りきれなかったもので、分割払いの先の長さを考えると貧血を起こしそうになる贅沢品になってしまった。 向かい合った俺をきつい目で睨みすえ、ヒトミと名乗ったヒトメスは、今は後ろから手をまわして俺の頬ひげを引っ張っている。 「抜けないもんだね」 「抜かないでお願い」 ……俺、ほんとなんでこんなの買っちゃったんだろう。 ヒトってのは脆弱で魔力がなくてすぐ死んじまうけど、夜の相手に絶品で従順で頭が良くて小器用で特にメスは料理が上手いとか俺、聞いてたんだけど。誰だそんな噂を流したのは。責任取れ。 ヒトミを買った次の朝、遠慮がちに仕事の間の掃除と夕飯を頼んだら、特にメシが大変な事になっていたもので俺はつい、そんな噂を流した奴への怒りもこめてヒトミを怒鳴りつけてしまった。そしたら逆ギレされた。 「文句があるなら電子レンジとレシピ集持ってこい!」 お前は何を言っているのだ。 俺の、頭が一瞬真っ白になった呆れ顔を見てヒトミは逆ギレで紅潮した頬を更に赤くした。 「すみませんね料理下手で。でもコンロも調味料もよくわかんないんですよ! わかったのマタタビ風味塩くらいだよ!」 それで、何かお祝い事があったら食べようと大事にとっておいた青猫印の高級干物が更に塩にまみれているわけか。全体的に塩っぽい食卓に悲しくなってひげを下げたら、へんな形の耳まで赤くなっていたヒトミが青筋を立てた。 「仕方ないでしょ、前のゴシュジンの所じゃちゃんとした料理人がいて私が料理する事なんてなかったんだから」 こちらこそすみませんね料理人なんて雇えない身で……って待て。待てやこいつなんて言った。 前のゴシュジンの所? 「中古かよ!」 「車かよっ」 俺が思わず叫んだ言葉に軽く、よく意味のわからないツッコミを入れながら、瞬時に鋭く吊り上がったヒトミの切れ長の目と、その瞳の奥に見えた光の色は一生忘れないだろう。忘れられないだろう。 「まさか『ワタシ、初めてなの』っていうヒト奴隷を期待してた訳じゃないよね。ガバガバじゃない事は確めたでしょ? 前のゴシュジンサマが大事にしてくれたから、傷もないし。……自分で言うのもなんだけどお買い得だったと思うよ」 喋る声と、喋る間に目を伏せていったヒトミの表情も忘れないだろう。 「いいかげんコタツ片付ければ? コタツ布団抜け毛だらけじゃん。ひえー、コタツ布団が白黒になってる」 「どーせ掃除すんの俺だろ、好きにさせてくれ。コタツに座布団が一番集中できんの」 身の丈に合わない贅沢品を購入してしまったもので稼がねばならんのです、頼むから計算に集中させてください贅沢品さん、尻尾足指でつまむなー頼むー、せめてこの入荷予定表だけは仕上げておかないと……。 付根からリズミカルに尻尾を踏まれたら、俺の理性が俺にさようならー、を告げて去っていった。そのこだまがまだ響くうちに、カギ尻尾ー、と楽しそうに言うヤツの足が、カギ部分を踏む前に。 腕だけ後ろに回してヤツの胴体あたりを抱え、コタツ布団に引きずりこんだ。 家に連れ帰った後俺の、ひそかに気にしているカギ尻尾を見た時ヒトミはそれまで動かさなかった表情を少しだけ緩めて呟いた。 「ミーコもカギ尻尾だったっけなあ……」 「ミーコ?」 「子供の頃うちにいた三毛猫」 ……「落ちモノ」が元いた世界に「猫」って動物がペットとして飼われている事は知っていたが、なんだか複雑な気分になったものだ。そのミーコはどうした、と軽く聞いたらとっくに老衰で死んじゃってる、と答えられたものだからなおさら。 「尻尾さわっていい?」 今にして思えばその時、「ご主人様に対してその口のきき方はなんだ」とでも言って冷静にしつけておけばよかったのだ。だが脳味噌では異世界の猫という動物に思いを馳せ、下半身ではいきなり押し倒してもいいもんかなー柔らかそうだなーなどと考えていた俺は、 実に気さくに「ほいよ」とヤツに背を向けて座ってしまった。 結果、俺は「尻尾で感じちゃうのボク」という新しい自分を発見し、ヒトミは口では「ごしゅじんさま」なんぞと言うものの俺を主人などとは全く思っていないであろう態度となり、現在に至る。 指の第一関節から先を右手から順に十本口に含んでいる間、ヒトミは何も言わない。動かない。じっと俺の口にまかせている。二度目にこれをやった時面白いのか、とだけ聞いてきた。ヒトの指と爪は柔らかくて面白い、と答えたら黙った。それ以降なんとなく抱く際の儀式のようなものになっている。その後ははだけさせた肩に舌を、そのまた後は首筋 にやわやわと牙を。 ……尻尾で興奮して押し倒した最初の日、ヒトはどこがいいのだろうかと慎重にいちいち聞いていたら「くそやかましい!」という声とともに急所を蹴られそうになったもので、試行錯誤という安全策を取らざるを得なくなった。誰だこんなのを買ったのは。俺だ。 「ふ……ん……」 こーいう声を上げさせてからは俺が強い。特に鎖骨がヒトミの弱点。座布団の端を握りのけぞって舌から逃れる体が、布地ごしでも胸の突起を目立たせている。舐めろといわんばかりなので舐めるしかないだろう。ヒトミが勝手に引っ張り出して着ている俺のパジャマを鼻先でまくりあげたら、ひげがくすぐったかったらしく露になった腹が波打った。 何度抱いてもヒトの柔らかさには感動する。こいつだけかもしれないが。胸も尻も太股も、二の腕もしっとり触りごこちがいい。中でもたゆんと揺れている胸がいい。齧りつきたくなるのを我慢してやっぱり我慢できなくて、思いきり口を開けて甘噛みしながら舌で 乳首をつついてやると今度は、くすぐったさへの反応ではない吐息が返ってきた。吐息と、耳をそっと探る指が。 「ああ……耳の毛すべすべ……腕の毛きもちいい……」 「……俺の長所は毛だけかよ」 ヒトミが恍惚とした表情で目を細めているから、まあいいんだけど。肌から離してしまった口をこれまた柔らかい唇に押しつけて、毛にばかり言及する声を封じながらだぶだぶのパジャマズボンと下着を一気に脱がせ、ようとした。コタツに引きずりこんだのは失敗だった。可動範囲が狭いったらない。肘天板にぶつけた。痛い。至近距離で見上げるヒトミが喉で笑って、体をずり上げてくれなかったらもっとお互いの足と腕に青痣が出来るはめになってたんじゃないだろうか。 女の裸が寒そうに見えるのはネコもヒトも同じ、けれど華奢な分こいつの方が痛々しい。こっちも慌てて脱いで覆い被さったら、待ちかねたように肩に顔を埋められた。本気で毛だけか、俺の価値。 それでも緩く抱えこんだ体を膝までゆっくりとなぞり、戻って足の間を探るとヒトミの息で肩が熱くなる。指に感じる液体を粘膜に戻そうとする動きには背に回された腕の力が弱く返ってくる。体温低いくせに、沈めた指の先はねっとりと、荒くなる息より熱い。 「……ヒトミ」 「ん」 「あ、そのまま」 大きく広げようとした両足を跨いで、少しずつ捻じこんでいく。まだ下半身の大部分コタツの中、コタツに当たって痛い思いをするのは俺だけでいい、と冷静なふりをしてみた。 そうでもしないと、苦痛なのか快楽なのか判断のつかないかすかなあえぎと締められる感覚にあっけなく暴発しそうになる。どうしてこいつはこんなに、こらえているような甘い声を出すんだろう。叫べばいいのに。動かしながら、敏感な箇所に根元を押しつけて腰を揺らしてやったらのけぞった喉から鋭く息を吸い込む音がした。コタツが邪魔で大きく動けないの、幸いしたかも。 「ちょっと、うあ、もう、だめかも」 「おれもっ……」 ただでさえ狭い肉の道で、突き入れた奥から順に、太股の筋肉まで総動員して絞り取る動きに耐えきれなかった。のけぞっていた上体が震えてしがみつくとほぼ同時に俺も果ててしまった。今度こそこいつをいかせていかせていかせまくってやる、と思っていたのに。 細かく打ちつけるのをヒトミは好むらしい、と頭の中にメモメモ。出したばかりの冷めた頭の一端では……なんで高い金出して買った相手を必死になっていかせようとしてんの? とかも考えてしまうわけですけれども。 窓と戸を開け放ったままゆっくりと裏通りを進む馬車があった。中に詰めこまれたヒトメス奴隷の一人と目が合った。腕と足を剥き出しにした粗末な服に、手枷足枷首輪鎖が不釣合いにごっつく見えたヒトたちの中、そいつだけは窓と開け放された戸から血走った目を離していなかった。だから、見物人の一人だった俺と目が合ってしまった。反抗的なのがいるな、大変だろう、とからかい混じりに値をつけたらヒト売りがこれもまたからかい混じりにさすがにその値じゃあ、と返した。そのうちついむきになって名刺を出したら即座に分割払いの話になった。俺はその直前に結婚を考えていた彼女に別れを告げられていた。ヤケをおこした。したたかに酔っていた。買ってしまった。「落ちてきた」ばかりだと言ったヒト売りの言葉を信じてしまったのは合った目の鮮烈な印象からだろう。 腹の下であえぐ顔を見ても、胸に「うははもふもふの面積広い」と頭をすりつける声を聞いても、あの時の、隙を窺う目と全身に緊張感をあらわした姿はいまだにはっきりと記憶に残っていて、たぶんずっと消えない。 「おい」 胸元に眠そうな顔をうずめながら、手を伸ばして背中の和毛を抜いているヒトミの腕を軽く押さえる。ついさっき抜け毛だらけとか言ったくせに、何をやってるんだ。 「二十年? 三十年? そんくらい後か、指差して笑ってやるからな。お前の胸がどんだけ垂れたとか、皺が増えたとかいちいち笑ってやるからな」 「ほう」 「ほうじゃねえ。本気でやってやる。シワシワになったら思いきり笑ってやる」 「へえ」 「今のうちにほーとかへーとか言っとけ」 「ふーん」 「いででででで抜くな、まだそれ抜けない毛!」 柔らかくて頼りない腕が、押さえていた俺の手をすり抜けた。眉間をすりすりと撫でられて俺は瞼を閉じた。 自分で発した言葉に目頭が熱くなったのをごまかすため、なんて絶対言わねー。 ほんと、ヒトなんて買うもんじゃない。 ----*** 幕間・ある日の朝と夜 ***---- 雨が降っている。 「ごしゅじんさまー、もういいかげん起きないと」 雨が降っている。石畳を被った水膜が滴を弾く音か、細やかな刻む音が私を更に苛立たせている。私の記憶が確かなら、起きないと遅刻するんでないかいごしゅじん。うーだのひにゃーだの唸りながら毛布抱えてる暇ないよ。 ミーコがでろんにゃろんと雨の日寝てばかりいたのは覚えている。前のゴシュジンも雨の日はよく居眠りをしていた。しかしこのごしゅじんは勤め人(勤め猫?)だ、本能に負けて遅刻したらいかんと思うのだ。元の世界では、這ってでも無遅刻無欠勤を貫こうとした私の責任感が許せない。 「ごしゅじん……ぬぐぐぐぐぐ」 毛布ひっぺがし失敗。ならば寝台の下に引きずり落とそうとしたが失敗。重い。目も開けやしねえ。ふなふなとか言ってるんじゃないー。 せめて朝ご飯でも用意しようかと、戸棚を開ければ一斤塊のパン、切って売られるべきだろう常識的に考えて、と歯軋りしてパンを戻し、またごしゅじんに声をかけるも答えはないのでブラッシングと洗顔の準備、済ませてもやはり白黒猫はヨダレをたらして寝くたれており、足踏みをしながら果物などコタツに並べ、致し方なく改めてパンを取りだし切ってみたら、「一枚なのに直立する食パン」なる末広がりの立体作品になってしまい、もうなんだか絶望した。 「ごしゅじぃん! 起きないとひげ引っ張るよ!」 「むー……ちゅー」 なに、この子猫がおっぱい吸うみたいな口。 「……お目覚めのちゅーしてくれたら、起きるかもしんない」 「…………」 皿に直立するパンを見て一瞬目を点にしていたごしゅじんは、まだ眠そうな顔のままもそもそそれを食べ終えて、言った。 「俺の勤め先、国内向けの商品しか扱ってないから、従業員みんなネコなんだよね。つまりほとんどみんな雨の日眠いの。今日も三分の一くらい遅刻してくるんじゃないかなー。俺、特に雨弱いから、珍しく早いなってびっくりされると思う。んじゃ、いってきまーす」 ……歪んだ逆台形になってしまったパンを見て湧きあがってくるこの黒い感情は何だろう。 雨はやんだが、ごしゅじんは夕食後もまだ少しぼーっとしている。 「ごしゅじん、そろそろちゃんとお風呂入ったら?」 「ん? 入ってるだろ」 嘘だ。私が湯を使った後に、申し訳程度にぴちゃぴちゃ要所要所を洗っているだけだ。ブラッシングは欠かさないとはいえ、今日のような湿度の高い日は特に、毛先まで脂がまわってぺっそりしているように見える。だいたいこの図体で蚤でもわいた日には、大変な事になるのではなかろうか。 「ヒトミ、そうは言うけどな、厄介なんだぞ男は」 ごしゅじんは短毛じゃないか。長毛にゃんこよりずっとマシだ。濡れるのが嫌なだけだとみた。 「う。うーんと」 何か反論があるのですかごしゅじんさま。 「ヒトミが一緒だったら、ちゃんと風呂入るかもしんない」 「…………」 先に風呂場で待っていたごしゅじんは、ものっすごくわくわくした顔で私を見てから私が手にした物に目を落とし、首を傾げた。 こちらのネコも、悲鳴は猫のそれに似ている。 「おま、お前、お前の世界じゃタワシでネコこするのかよおおお!」 「こするわけないでしょ」 力と体格では到底敵わない相手だが、幸いこちらは弱点を知っている。つかんでいる泡だらけの尻尾の主が、非難するように私を振りかえった。 「こするわけないでしょうが。向こうの猫は小さいんだから」 「大きさが違うからって、みぎゃー!」 「何悲鳴あげてるのごしゅじん、向こうの世界で、タワシ健康法ってあったんだよ? こーんなひ弱いヒトの肌でも耐えられるのに」 こーんな鍋底こすり用の固いタワシは使わないだろうけどね。 「ほんと、か……? ぎゃあお!」 ああ、お風呂での健康法といえば、粗塩こすりつけるってのも、あったっけなあ……。 ----*** 2・ベッタベタでもいいじゃないかよ ***---- 明るいオレンジからだんだん薄紫へと変わっていく空に、今日は月が両方とも白く目立つ。家々から漂ってくる夕食の匂いに腹が鳴った。ヒトミも腹を減らしているだろう。自然足が早まった。「いきなり暴走したり爆発したりしそうで怖い」と魔洸エネルギー器の使用を拒否するのはともかく、メシくらいは作れるくらいになって欲しいよ。昼は果物でしのいでいるらしいが、ある日帰ったらひっそり餓死していそうで怖いったらない。……今更ながら分不相応な買い物をしたもんだ。いや、ヒトミだけの話なのかもしれない、これ。ヒトって料理上手なんじゃなかったのか。 「おっ」 「ぴにゃ」 考えながら歩いていたら、太股のあたりに軽い衝撃がきた。見下ろせばまだ産毛の残るちびネコ坊主。ぶつかった俺を見上げた銅色の瞳がまんまる。すみません、と慌てて追いかけてきた母親らしき人の目も同じ色をしていた。こーいう時だ、結婚してえーと思うのは。 少なくとも分不相応な贅沢品の分割払いが終わるまでは嫁さんなんか貰えませんけどね! 通りから家の窓を確認したら、くせっ毛を風に揺らしながら夕空をぼんやり眺めている、黒髪黒耳の横顔がそこにあった。よかった、ちゃんとネコ女性に見える。ようやくヒトの耳を隠せるくらい髪が伸びたので、付け耳付け尻尾を渡しておいたのだ。「二十五で……ネコミミデビュー……」とかなんとか言いながらヒトミはがっくりうなだれていたが、要らないトラブル防止だ仕方がない。 それにしても。こうして家の窓から、まるで俺の帰りを待つように女性が外を見ているのって……。 なんだかおよめさんがいるみたいだ。 ヒトだよ、ヒトだけどよ。少しくらいひたってもいいじゃないか。 ヒトのヒトミも俺に気付いた。軽く手を上げたら、ヒトミはそれに応じるどころか、窓枠を握りしめて俺をまじまじと睨んだ。傷ついた。いや、傷ついたって言ってもちょびっとだけど。 「……で、ごしゅじん、今度は何持ってきたのかなあ?」 慎ましい夕食(作成者:ほとんど俺)をとり、片付け(担当:半々)を終えるやいなや ヒトミは俺の前にきっちりと座ってこう言った。笑っているけど目が、目が鋭い。なんで。 「ごしゅじんさまがヒゲを全部ぴんと張って尻尾立てて早足で帰ってきた時は、大抵ろくでもない物かろくでもない知識を『猫井』のお友達から仕入れてきた時です。今日は小脇に、朝は持っていなかった包みを大事そうに抱えていました。更に、普段なら『稼がなきゃいけないんだ』と持ち帰り仕事を出すため鞄に手をかけるところなのに、今日はその包みにまず顔を向けてから慌てて目をそらしました。ゆえに、またろくでもない物を持って帰ってきたのだと推測した次第です。以上、何か間違いがありますか?」 ヒトミこわい。俺ちょっと涙目。どっちが主人なんだこれ。いや俺だ俺が主人だ。 「猫井技研からのもの、全部ろくでもないと思っていたのか」 はいここ重要です。一旦言葉を切って物憂げに視線をそらしましょう。 「……『落ちモノ』を、お前を理解しようとして、やっていた事なんだがな……」 「ニーソックスに絶対領域の概念、四十八手図解、ふりふりエプロンと裸エプロンの概念、裸に男物のシャツ概念、裸エプロン派と裸シャツ派対立についての熱い考察、電池切れのあやしいおもちゃ、フランス書院、みさくら語、そんなもんばっかり繰り出された挙句『ヒトってこういうの好きなんだろ?』と言われ続けた日にゃあ、ろくでもないの一言で一括りにもしたくなるっちゅーねんエロヒトオタ猫」 マンガと小説には大喜びしてただろうがよっ! 仕事関係で知り合った猫井技研の奴と心友になって、調査後資料的価値のなくなった落ちモノを格安で譲ってもらっているだけだ。エロヒトオタとかゆーな。 「お前の事を考えて」演技をすぐやめるのは業腹なので、物憂げな顔のまま包みを手に取る。 「お前、泳げる?」 「なに、突然」 「ヒトの健康には水泳がいいって聞いてきたんだよ。穴場でほとんど人がいない場所があるっていうから、連れて行こうと思ってこうやって水着もらってきたのに、全部ろくでもない物扱いか」 ……あれえ。 一瞬反省の顔になったのに、どうしてヒトミさんは包みから紺色の布地が出てきたのを見た途端に正座の姿勢からおでこがゴンっていうくらい思いきり床に突っ伏してるんだろう。 「す……スクール水着か、それ……ベタだ、あまりにもベタだエロヒトオタ猫……」 ベタかよ。エロヒトオタ呼ばわりやめないのかよ。でも負けない。 「ほら、これ、字は違うけどヒトミって書いてあるんだろ? ヒト用だぞちゃんと」 広げた前面に縫い付けられた白布の、滲んだ字を示したらまたヒトミが呻いた。 「うん、高橋瞳って書いてあるね。でも、その上の『5-3』っていう数字には気付いて くれなかったのかなあ?」 「ぬ?」 「子供用! 思いっきり小学生の五年三組瞳ちゃん用! サイズ見てわかんない?」 暴れられました。 「え、でもこれ、伸びるよ、ほら」 「そら獣人の力で伸ばしたら伸びるだろうけども……」 ヒトミは頭を抱えて床を転げています。どうしよう。 それでも、まあ濡らせばもっと伸びるかもね、と言って渋々ながら着てみようとしてくれるあたりが、ヒトミの良い所。 「戸ガリガリするとミーコって呼ぶよごしゅじん!」 風呂場に閉じこもって内側から閂をかけるのは悪い所。しばらく戸のガリガリも我慢して待っていたらドタバタした音の後、低い声がした。 「……大惨事」 なにごとだ。 「……男子レスリンググレコローマンスタイル48キログラム代表……」 だからなにごとだなにが起こっている。 俺は家主だから知っている。この風呂場の戸は、一定のリズムで揺すると閂が外れるのだ。音を出さないようにしていたつもりだったが、地を這う声が返ってきてしまった。 「今開けたら寝ている間にお前のひげを全部切る」 ヒトミまじこわい。紳士であるよう努める事にしますすみません。 無理、と最後に吐き捨てた響きを残したまま扉が開いた。頬を赤らめたヒトミの顔が出てきた。残念ながら着衣ずみ。 「何があった」 「着れなかっただけ」 切れ長の目がいつもよりずっとすわっているので言及するのはやめておく。何を見たのだろう。 そうか、スク水プレイは無理だったか……。 「……スク水プレイ、だとう……?」 あ、あ、頭の中の呟きは途中から声に出ていたようです。瞬時に変わったヒトミの目の色! 怖いすげえ怖い! 「確信犯カッコ誤用カッコ閉じるだったのかエロヒトオタ猫!」 「ぎゃーカッコとか声に出して詳しく怒られた!」 詳しく怒らないで下さい耳捻られると痛い。 それでも俺の方がずるい。ヒトミが絶対にその要求に抗わないのを知っていて、彼女の指を口に含んで黙らせる。 即座に黙って順に指を舐めるに任せている、筈だったが、今回は途中でおずおずヒトミが声を出した。 「あのさごしゅじん。するのはいいんだけど……なんで片手にまだスクール水着握ってん の?」 「大惨事なんだってば! なんでそんな着せようってこだわるのヒトオタ猫!」 一つの萌え要素らしいから。ってのは置いておいて今は嫌がるヒトミに興奮してますすみません。 きつい水着に無理やり両足を通させて太股までずり上げたら拘束プレイみたいで更にいいですね。足が開かない分上体を倒させ、脱がせた肌を撫で下ろして後ろから入り口を探る。と、大人しくなったヒトミが風呂場の壁に向かって言った。 「なんか、この頃足閉じたままの、多くない? 私……ガバガバになってる?」 何バカ言ってんだこいつ。 「何バカ言ってんだ」 爪がかりのない漆喰に空しく立てられた指を観察しながら、滑らかな背に胸を伏せて擦りつける。 「なってねえよ」 今触ってるふくふくの胸とか突っ込んだらキュンキュン締め付けてくるであろうあそことか、ヒト最高ーヒトミいいーとか一々言うのはあほらしいから言わない。壁についていた腕もろとも抱きかかえて、肩に噛み付いて、もしゃもしゃさすって笑い声と甘い声を上げさせるだけ。 「大丈夫か? 入れるよ」 「……あ、う」 上体を抱きかかえて、後ろから具合を見計らいながら入れればやっぱりキュンキュン締め付けられた。のけぞった頭が俺の顎にクリティカルヒットを与えそうになったのを辛うじて避け、首筋に歯形をつけ、思いきり突き上げてやった。 終わった後太股につたう精が紺の布地にわだかまるのを見下ろして、ヒトミが吹き出した。 「結局スク水プレイされてるし」 いやこれは厳密にはスク水プレイとは言わない。 「不満そうな顔しないでよヒトオタ猫」 だからヒトオタとか言うなっての。 ****** 人気のない純白の砂浜、柔らかな風、黒い髪によく合う真新しい淡い色の水着、尻尾の穴をふさいだ部分はちょっとばかり見苦しいかもしれないけれど、似合っていますヒトミさん。なんでそんな怖い顔しておられるのでしょう。鳥肌立てて。 「……海かと思ったら避暑地の湖だし。避暑地。とっても涼しい」 うん。俺もここまで涼しいとは思ってなかった。目吊り上げないで怖いから。 「しかもまだ初夏の高原」 だから穴場で人気がないわけです。あなたも付け耳外して過ごしていられます。 「風邪で殺す気ですかご主人様」 ごめんまじごめん。そんなつもりはなかった。また今日の天気、曇り空で肌寒いときてる。 「さっぶいんじゃー!」 うん……俺も寒いと思う。 「悪かったってばよ!」 「しかもこの湖、火口湖? すごい冷たいよ!」 足指の先で波打ち際をかき混ぜて、水着姿のヒトが口を曲げた。 「お……泳がない、の?」 「三秒後に心臓麻痺で死ぬこの水温で泳いだら」 一応水に入りかけたヒトミが、戻って俺を湖に引きずりこもうとした。確かに冷たいですねごめんなさいごめんなさい濡れるの嫌。 「脱げ」 おお、ヒトミ積極的……じゃないんだな。唇紫色。 「脱げバカ猫!」 おいら暖房器具扱いであります! 毛! 毛だけ求められてる! 「……人肌で暖めあうって、スク水よりベタじゃねえか?」 「うるさい。さむいんじゃ」 ベタでもなんでも震えているので毛で覆うしかない。 涼風の中傾く日の光が湖面を輝かせているのを眺めながら、寒そうな女を後ろから抱えてるのってなんだかあんまりにベタベタだ。 「……ごめん」 「あ、いや、いいよもう」 「お、これってツンデレ?」 「だからなんでそんな概念ばっか詳しくなるかなこのヒトオタ」 どれだけヒトミが暴れても俺の力で軽く押さえる事ができる。でもなんだかじたばたしてるの可愛いんで胸揉んどこ。 「なに、エロ猫、するのお……?」 軽く息を荒げて肩越しに振り返るのそそるからやっちゃお。 胸を揉むうちいつのまにか、最初は醜いと感じていた筈のヒトの毛のない耳がすっぽり俺の口の中に収まっていた。舐り尽くして、胸と肩触って、指駆使して水着の股ずらして、やっちゃう時にはどちらの声が大きいのかわからなくなっていた。 歯を食いしばって声を殺した背が目の前で動く。どれだけ声を出せと言ってもうつむく。 水着脱がせればよかった。入れたのこすれまくり。 「どしたの、ごしゅじん」 いきなり動きを止めた俺に驚いてヒトミが首を捻り、こちらを見た。 「名前、呼んで」 「はいい?」 かなりの間。こいつ俺の名前忘れてるのかひょっとして。 「今更どしたの、キャパ」 「別に」 「なに鼻の頭赤くしてんの」 「うるせ」 ……だんだんと上下する腰の動きにひねりが加わるのはサービスなのだろうか。 「ヒトミ、こっち向けよ」 「ん」 もふっとしたいんだろう? 動きながらさかんに腕の毛撫でてるし、こいつ。 繋がったままもたもたと足を上げ(途中でひっくり返って後頭部を強打しそうになっていたので慌てて抱きとめた)、向かい合うなり、ヒトミは俺の胸に顔を埋めた。 それから背を一杯に伸ばして唇を押し付けてきた。 まだ冷たかった唇が俺の体温と同じになるまで、俺たちは付き合いはじめのガキがするような、不器用に触れ合うだけのキスを続けた。 細かく揺すり上げるたびに胸に感じる息が荒くなる。真っ黒い髪が胸元でがくがく揺れる。水着ごしに乳首を俺の体に擦りつけて、肩の毛を痛いほど握る指。熱く締め付ける脈動は間を狭めるばかり。虚空に放たれる言葉に意味はあるのか。感じる顔を伏せて見せようとしない頭。顔上げて、とかなんで懇願してるかな俺。やだって繰り返す声、いい。 「あう、やあ、だめ、もうだめ……」 いきそうですねいきそうなんですねヒトミさん、今日こそいかせまくってやる頑張れ俺。 「きゃ、キャパあ……いくっ……」 もちませんでした。そんな声反則。 風が立ち、湖面に小波が光る。そのほとりで冷たいー、とやかましく叫びながらヒトミが水着を脱いでいる。 「何もすぐ洗わなくても」 「カピカピになっちゃうでしょ。ざっとすすいどく」 照れたように笑う裸のヒトミかなりイイ、と鼻の下を伸ばしているうちに運命の瞬間が訪れていた。しまった忘れていた。 水着を湖水につけたヒトミが固まっています。 「何、これ」 どうみてもスケスケです本当にありがとうございました。 そう! これこそが、猫井技研がその知識と技術を結集して生み出した、濡れるととっ てもよく透ける水着! 男の欲望は技術を発展させる! 人気の無い場所を選び、じっく りゆっくり堪能しようとした深慮遠謀は今一瞬にして台無しになった! ヒトミの三日月型に開いた口に、無いはずの牙が見えるのはなぜでしょう。 「それで寒いのに泳がせようとしてたんかこのクソエロ猫ぉー!」 ヒゲは抜かないでお願い。あと、 もっかい名前呼んで。 ----*** 幕間・表紙に律儀に名前が書かれた日記 ***---- (以下、抜粋) ○月×日 晴れ 三日前、売り渡された。 こんなもんなのだろう。 新しい主人が細かく気を遣う。日記もその一つ。 前のゴシュジンより気楽にもふもふできる。 キャパシティという名前だそうだ。聞いた瞬間に笑いそうになった。色んな意味でいっぱいいっぱいそうな白黒猫。カギ尻尾。 △月○日 くもり これをごしゅじんに読まれた。ずっと読んでいたのだろうか。読めないとごしゅじんは言っている。本当かどうかは知らない。 まさか人の日記を読んで楽しむような恥知らずではないと、信じている。と書いておく。 ×月×日 雨 猫井のリードさんにキャパは仕事上日本語を少し読めるのだと教えられた。切る。ひげ全部切るくそねこ。 ×月○日 雨 今日は逃げ回るでっかい猫を追いかけて楽しかったです。 もう日記は読まないと耳を伏せて誓っていましたが、今ひとつ信用がなりませんのでここにもきっちり書いておきます。 今度読んだらひげでは済ませない。口でもそう言ってにっこり笑ってみたら涙目で尻尾を膨らませていました。弱え。あんたの方が強い筈なのに弱えよごしゅじん。 -------------------- 「大したこと書いてないだろお……」 「だからって普通読む?」 確かに私はこの猫の所有物で我侭を言える立場ではない。しかしこのごしゅじんは箒の連打を許すので、心置きなく大きく振りかぶって振り下ろせる。 「日記書かせたのは読むためだったんか」 「違う違う違う!」 箒のケバで二人とも咳き込んで一時休戦。 「お前をより良く理解するためにだな」 「斜め四十五度見たポーズで格好つけるなごしゅじん」 あ、また尻尾膨らませた。何というか、Sっけを自覚したよこのごしゅじんの所に来てから。柄は痛いからやめて、とか自分から言うあたり、ごしゅじんはMなのかもしれない。 「せめて、せめて名前呼んでグレッチでぶって」 『グレッチでぶって』って……椎名林檎もこの世界に落ちてきているのか。聞いてみた。ボロボロの歌詞カードだけ落ちてきたのだそうだ。猫井の担当者が解釈に苦労していたとか。だろうなあ。 さて。舞い上がった埃もおさまってきたようだし。 「結局ぶたれるのかあ!」 「ぶってって言ったのはお前だ、キャパシティ=スミス!」 まあ色々あってもこのご主人様の事は気に入っている。言わないけれども。 「で、グレッチでぶつって何?」 「ほんとは私も知らない……結構前の歌だよ、好きだけど」 「どんな曲なのさ」 そうか、たとえCDが落ちてきても再生手段がないのか。 「歌え」 げ。 ***しばらくおまちください*** 「ヒトミ……言っちゃなんだけど、歌下手……」 コロス。 ---------------------- (戸棚の奥に隠された日記帳より) ×月△日 ミーコの夢をみた。正座した私の前にきっちりと座って、うみゃごみゃとかなり長くお説教をしていた。 「やりすぎだ」と言いたかったのだろうか。賢い猫だったから、「立場をわきまえなさい」と言っていたのかもしれない。 ----*** 終・甘バカップルであと数十年 ***---- ヒトミがずっと俺の顔色をうかがっている。ひげを引っ張ったりカギ尻尾を遠慮がちにいじったりしても、こちらが芳しい反応を見せないとすぐに手をひっこめる。気を遣わせてしまっている、と思っても溜息はとまらない。それ以前はほぼ毎日手を出していたのがめっきり、という点が彼女には一番不審なのかもしれない。 原因は一週間前にさかのぼる――。 奇跡のような、とでも言おうか。この世界にはほとんど知り合いがいないだろうヒトミが、ある再会を果たした。 「ヒトミ、なのか?」 「え、御主人様?!」 ヒトミの驚いた声はその時の、付け耳付け尻尾でフードを深く被っていた格好には、不自然な台詞ではないかと俺は慌てた。だが相手の男が……。 御主人様、と呼ばれるのにまことに相応しい風貌だったもので、失礼にも開いた口が塞がらなくなった。 まず彼の出てきた場所が、小市民に縁のない高級品ばかりを取り扱う商会、その威圧感ある本社建物。扉の前で見送っている人とか、いるんですけど。横付けられた彼の迎えらしき馬車は金具から馬具までぴっかぴか、一分の隙もなく着こなした服は一目でわかる高級布地。 相当の実力者らしい上、その顔も体格も。喧嘩も強そうな厚い胸板に、毛色はレッドタビーと言うのだろうか、半長毛がつやつや光を放っていて、黄金の瞳にはくっきり凛々しく白のアイライン。首周りのみ長く伸びた毛並みはご立派の一言につきる。ヒトミと軽く立ち話をしている尻には、曲がってなどいない優美な尻尾がふさふさと伸びていた。 要は圧倒されたわけだ。 ヒトミが彼と話しながら、紹介するように何度か俺の方を振り返っていたが、何も耳に入ってこなかった。正直言うとその場から消えてなくなりたかった。 帰宅するなり付け耳をむしりとったヒトミの頬は、外出の興奮だけでなく赤らんでいるように見えた。 「いやあ、妙な離れ方をしたから気にしてたんだよね」 そうしてこっちが聞いてもいないのに、「前のゴシュジンサマ」の話を始めた。 生まれから毛並みのいい、その上辣腕家のゴシュジンが、別宅に囲っていた妾――ヒトミは「お嬢様」と呼んでいた――の、世話係兼話相手をしていたのだそうだ。 「だから正確には『前のゴシュジン』はお嬢様なんだけど、あの御主人様にも大事にはしてもらったし」 「……大事にされてたなら、どうしてまた売られてたんだ。あんな金持ちっぽい奴だったのに」 普通の顔をして聞いてはいたが、俺の尻尾は座布団をはみ出して床を叩いていた。ヒトミは肩をすくめた。 「御主人様がお嬢様との愛に燃えあがって駆け落ちかました。二人の仲については私も関ってたけど、まさかそこまでいくとはと驚いたっけなあ。……ちょうど、正妻さんの実家が落ちモノ詐欺にひっかかって大変な事になってた時期で、そこから逃げる意味もあったんじゃないかって話だった。案の定すぐ後に正妻さんと借金取りが突撃してきて、お屋敷大騒ぎ」 置いていかれた上売られた身なのに、ヒトミは二人とも幸せそうでよかった、と笑っていた。 「お嬢様を隠して落ち着いてから、堂々戻って正妻さんちに掛け合って、無償で走りまわって借財整理から家業立て直しにまで携わって、正妻さんとはきちんと別れたんだってさ。お嬢様の事、心配だったから安心したよ」 「そりゃあまた男前な話だ」 「御主人様」は察するにあの高級商会の役員か、駆け落ちの醜聞をものともせずにいる様子だったあたり、確かにやり手らしい、などと考えていたので、適当な相槌をうった。ヒトミはそれを興味がないしるしととったらしく、ぽんと立ちあがって夕ご飯にしよっか、と実に珍しい事に俺より先に台所へ向かった。 その夜、寝床の中で「ふかふかのびのびー」と口で言いながら俺の頬を伸ばしているヒトミを見ていたら「御主人様」の立派な鬣状の首周りを思い出してしまい、更にはヒトメスだしなー御主人様ともやっちゃってるよなーと下世話な方に頭がいき、ヒトミの指を咥える事ができなかった。 それから、一週間。 「ごしゅじん、どうしたのさ」 とうとう痺れをきらしたのか、夕食後仕事を広げようとしたちゃぶ台(さすがに夏になってからはコタツを片付けた)を強引に横に押しやったヒトミに、向かい合ってきちんと座られた。どうしたと言われても。 「……ひょっとして、前の御主人様の事?」 こいつはこいつで、様子がおかしいと気付いても言い出せずにいたらしく、「前の御主人様」は口の中でもごもごと発音されている。そのとおりなのだが説明が難しい。 「むー、やはり中古はいやでしたか」 「違う違う違う」 かといってこんなとんでもない誤解をさせたままにしておくわけにもいかない。 ……要は圧倒されたという事。それが一番近い。 むろんこちらも小市民とはいえ勤め人、「御主人様」のような、いやもっと貫禄のある人物(ヒトミが「猫物ではないか」と茶々を入れた)に会った事もある。それでもヒトミと御主人様が向き合っていたあの時、胸によぎってしまった言葉がある。俺ショボい。 「オットコマエだったな御主人様」 呆れたように口を開けてから、何やら言葉を探しているヒトミの顔を見ていたらもう一つ、ずっともやもやしていた思いがはっきりした。 「分不相応な買い物をしてしまった」 「俺なんかが買っていい贅沢品じゃなかったんだ、ヒトってのは。あんな金持ちにまた買われてりゃ、ヒトミもでっかい家に住めてきれいな格好して、美味い物食べてたまに奉仕して」 「そんないい暮らししてるヒト奴隷なんて、ほとんどいないと思う。別に私、ここでの生活に不満なんか、ないよ?」 言おうとした、「もっと幸せだったろうに」を遮って身を乗りだしたヒトミの黒髪が頬で揺れる。指が敷物を擦っている……と思ったら無意識のうちにだろう、俺の抜け毛を集めていた。 「ああ、そう言えば最近掃除もしてくれるよな。ありがとな。こんなさえないエロヒトオタに」 「それは、昼間ヒマだし他に取柄もないから……あーもー、だー、うっとうしい!」 ヒトミが思いきり腹に抱きついて、腕を尻尾に回してきた。落ちこんでいても尻尾は気持ちいいあたり、俺ほんとなんだかなあ。 「ごしゅじん、らしくないよ。エロヒトオタでいいよ、今私を買ってるのはごしゅじんでしょ?」 いつになく積極的に、俺の下半身を服ごしに鼻先で探ろうとしたヒトミを、しかし俺はできるだけ柔らかく止めた。尻尾のカギ部分を扱いていた彼女の指を外して、口に含む代わりに爪の先で撫でた。 「こういうのも、さ」 眉をよせたヒトミの、まっすぐに睨んでくる目からも逃げた。 「今まで甘えてたけど、ヒトの生理以外の時だって、嫌だと思ったらはねつけてよかったんだ。体もきれいで傷もない、具合はもちろんいい、本来なら金持ちに買われるような高級品だったんだろう?」 あの「御主人様」に買われるような。 沈黙の後、ヒトミは俺の指からそっと自分の手を離して……片膝を立てた姿勢になった。どっかりと。 んなわけないでしょう、というのが前置きだった。 曰く、向こうの世界ではごく普通の生まれで中小企業事務員、お嬢様だの御主人様だのがぞろぞろいる上流階級には縁も無し、そういう世界の教養も礼儀も無し。器量も普通で色黒と軽いくせっ毛を気にしていて、高級品などと呼ばれるいわれはまったく無し。ならば、なぜ前のゴシュジンサマがあれだったかというと。 ……曰く。落ちてきた途端えらい目にあって、売り飛ばされて、なんだこの理不尽な扱いはとぶち切れて、ヒト売りをなけなしの色気で油断させ逃げだしたらその通りにたまたま、ぴっかぴかの馬車があったのだと。 「中にいたのがいかにもひ弱そうな猫の『お嬢様』だったからさ、これなら私でも人質にして逃走に使えるかなー、って火事場の馬鹿力で馬車に突入しちゃったんだよね」 突入? ……おいおいおいおいおい! 「すぐ取り押さえられたけど」 「お……お前、よくその場で殴り殺されなかったな……」 そらしていた目をヒトミに戻して、身を乗り出してしまった。ヒトミの話は続く。 お嬢様のやさしさと好奇心、御主人様の鷹揚さと「これが欲しがっているらしいから」の一言で、命拾いして屋敷へ連れて行かれたが、売られる前よりはるかに待遇が良くても、御主人様はじめ周りがその手のモノ扱いをする事には変わりがないものだから。 「もう大暴れ」 大暴れ。どんどん聞くのが怖くなってきた。 「特に、お嬢様もモノっていうか、『着飾ってたまに来る御主人様のご寵愛を受けていればいい者』扱いされてるのが気に入らなかった。御主人様を頭っから怒鳴りつけたり」 あれを怒鳴りつけたのか……尊敬する、ヒトミ。 「仕舞いにはお嬢様つれて逃げようとした。これまたすぐに連れ戻されたけど、御主人様は自分の傲慢に気付いてなかっただけで根はいい人だったから、素直に反省してくれて、このとおりヒト奴隷なのに無傷無罰。運がいいんだろうな私は。また売られたって、いいスジからのモノだからって一応、格上の扱いをされたしね」 ――自分をごく普通だという小柄な頼りない腕力の、柔らかい女性は、どれだけの怒りと絶望を抱えて暴れていたのか。逃げてもどうしようもないと理解し、諦めに至るまでの心の動きは、俺にはとても想像できない。主人で遊ぶようなとんでもないヒト買っちゃった、とはじめ後悔したものだが、あれは丸くなった後どころの話ではなかったのだな、などとぼんやりバカな事を考える。 己の現状を嫌というほど理解させられてもなお足掻こうとして、ヒト奴隷の詰めこまれた馬車から隙を窺っていた彼女は、立てた膝に頬杖をついて微笑んでいる。 「らしくないよごしゅじん。本当に、本気で、ここの生活に不満はないって。庶民出身としましてはお屋敷よりずっと気楽に過ごしてるし。ごしゅじんの尻尾いじるのも面白いし。お買い得品だけど高級品なんかじゃないって、わかった?」 すっかり反省した俺が、謝ろうと口を開く前に、ヒトミがふっとうつむいた。 「ここで最初にごしゅじんに抱かれた時、どこがいいかここがいいか聞かれて、あんまりやかましかったからつい蹴ろうとしちゃったけど」 しだいに小さくなっていく彼女の呟きが、最後にかすかにこう、聞こえた。 ……たとえ少しでも、私の事を対等にみてくれているんだなって、嬉しかったんだよ。 黙って部屋の隅を見ているヒトミの目に映っている絵と、同じ物を見ている筈の俺の目が認識する絵はきっとずいぶん違っていて、どれだけ言葉を費やしてもお互い説明しきれないのだろう。 遅くなった、寝よか、と目をそらしたまま立ち上がったヒトミを、色々もやもや考えてから追いかけると、彼女は寝台の上でうつぶせに寝転がり、行儀悪く足をぱたぱたさせていた。そして、俺に少し前の表情を忘れさせそうになるほど、ごく普通の顔を向けてきた。 「あ、ごしゅじん、言い忘れた。飽きたらさっさと売り払っていいよ。高級品ではないけど大丈夫、優秀な勤め人のごしゅじんなら、きっと買値より高く誰かに売りつけられる! がんばれごしゅじん!」 「なあ?! 何言ってんだバカ!」 バカは俺ですな。 「シワ指差して笑ってやるって言っただろうが!」 ……バカを重ねていますな。どれだけ考えても、謝るのは間が抜けていて、慰めるのは彼女が望んでいないだろうという答えしかでてこないので、更にバカを重ねる事にする。 今こいつはここにいる理由を、行為にのみあると思っていて、行為に飽きられるのが不安なのだとエロヒトオタは今更ながらそれだけは理解した。なのでヒトミをひっくり返してガリガリ指をかじってやった。 「飽きないって」 痛みに顔をしかめても声を出さずにいるヒトミも積み重ねてバカ扱いにしておこう。左手指五本省略。ボタンが飛んでも繕うのは俺だと力でパジャマの前を開いて、 「ガバガバになったって飽きないよバカ」 はだけた肩に一週間ぶりに鼻を強く押しつければ甘い肌の香り。 素裸になってから体をくっつけるのが、最初に抱き合った時よりぎこちないのがなんだかおかしい。まあそれはつかの間で、すぐヒトミは目を細めて俺の首にすりすりと頬ずりしてきたわけですが。やっぱり毛か、毛なのか。 「『御主人様』にもこんな事やってたのか? ああごめん違う、気にしてるんじゃなくて、あの首毛は撫でごこちがよさそうだったから」 「んー、もふるどころか引き千切ろうとしたからなあ」 ……なんだか、ざまみろという気分。しかし凄えなヒトミ。畏縮する俺の方がおかしいんだな。 覆い被さる俺とヒトミ、どちらがより肌の多くの面積を相手に押しつけるか選手権……になってしまった。とにかく互いの体温と感触を貪り、巧緻な技などなんにもなくて、なのに勝手に高まっていく。 ヒトミの息と鼓動、俺の急いた腕の動き、いや逆かもしれない、わからなくなってくる。 あー柔らかいなーいいなーと言ったのが俺で、あったかいよもっとすりすりしてーと言ったのがヒトミだとは辛うじて判別できたがこれも逆だったかも。 彼女の足が腰に絡みついたのと、先っぽ涎だらけになった俺のあれが突き立てられたのはどちらが先だったのやら。 「あうっ、奥、奥いい、もっとお、あ」 だったら締めるなもたねえよ! 奥も入り口も! 「むり、や、きて、きてえ!」 言われなくてもあっけなく。吐き出される脈動と、ヒトミの顎が天を突く動きが同調した。 もそもそ後始末を終えて、もう一度横のヒトミを抱き寄せた。 「およめさんにー、なれー」 「今度は何事だごしゅじん?!」 腕に力をこめて、跳ね起きようとする体を押さえつける。 「うるせーくそ、お前ほんとの心は見せないから悔しいんだよ。嘘でいいから、もっと俺の名前呼べ。およめさんになれー」 俺を主人扱いしなくても抱こうとすると従順になるヒトミ。やけを起こして買ってしまったヒトのヒトミ。 「落ちつけご主人様、キャパ、ちょ、キャパ、何言ってんのいきなり!」 「いきなりじゃないよ」 説明は苦手で、出した金の分後ろめたい。それでも指先の毛で唇に触れた時、ヒトミの目に浮かんだ表情は嫌悪ではないと直感で思う。俺の長所、毛だけでもいい。 「誓えー。ずっと俺の傍にいるって誓えー」 「ヒトだよ私」 いいから。 嘘でも良かったのだけど、ぎゅうぎゅうに抱きしめて口付けた後のヒトミの顔はなんか可愛かった。 「……キャパシティ=スミスとこの世界の神に誓います。私、佐伯仁美はどんだけこのごしゅじんがバカでもエロでも、こいつの傍にいるって、誓います。って、こんなんでいいの?」 「うわー誓いっぽくねえー!」 一緒にげらげら笑っていながら、肩に伏せて顔を上げない頭を抱え込み、胸毛と腕毛でもっふもふにしてからこっちも。 「俺はヒトミに誓う。ひげ抜かれても、エロヒトオタとか言われても、何回でも好きだって言います。おっぱいが垂れてもシワシワになっても好きだよ、ヒトミ、だから……」 この世界の神には誓えなかった。抱きしめて、できるだけ大切にして、あとはこいつに何がしてやれるだろうか。 「だから、泣くなよう……お前が好きなんだよう」 ヒトオタ結構。エロネコ上等。口に出したら胸が軽くなった。 二人で暮らすようになってから伸びた分はどれくらいだろうかと、黒くしっかりした髪を指に巻きつけていじくっていたら、ようやく掠れた声がした。俺の肩毛にしみこんだ跡を見せつけてもこいつは自分が泣いていたのを認めようとしないのだろう。いいけど。いいけど、顔、俺の抜け毛だらけになってるんじゃないか? 「ヒトオタここに極まるって感じ……」 「悪いか。もう開き直ったからな俺。あと二百年くらいもっふもふにしてやんよ」 「二百年て、私ミイラだよバカ」 ヒトなんかほんと買うもんじゃない。でも多分、バカだのヒトオタだの繰り返しながらしがみついてくるこいつは、生まれ変わってきてもすぐに見分けられそうな気がする。シワシワになってからさっさとネコに生まれ変わって、また俺の傍にくればいいんだ。 バカバカ言ってたヒトミが唇を結んで、顎に額を擦り付けてきた。 少なくともあと何十年かは一緒だ絶対に逃がしてなんかやらねえ、覚悟しろ。 誓いの夜から数日。今度はヒトミが挙動不審。今夜は裸エプロンがいいなー、と言っても反撃がこない。 「エロヒトオタとか、言わないの?」 視線をそらすし。なんだか口を開き辛そうにしているし。 やっちまったか、俺。ひげと尻尾を下げたらヒトミが大慌てで見上げてきた。 「いや、あのさ、ごしゅじんだと思ってた人、あ、ネコか、におよめさんとか言われたら妙に意識するっていうか……うあー二十五にもなって私何やってんだ、ごしゅじんがバカ言うからだ!」 照れてた。照れていましたヒトミさん。だからって逆ギレするなよ。 「なんという萌えツンデレー!」 「叫ぶなヒトオタ猫!」 ようやく勢いが戻ったけれど、彼女の顔は真っ赤だった。 先の事は先の事として、今の所、 やけ買いも悪くないのかもしれない。 ----*** 幕間・酔っ払いの拾いもの ***---- 「たらいまあ~~」 「うわ、くっさい。ちょっと玄関で寝ないでよごしゅじん、……うあ?」 「呑んじゃったあごめえんヒトミぃ」 「はいはい、ほんっと弱いんだね、んで、これ、何」 「ヒトミお酒好きぃ?」 「まーね。どーせ通じないだろうけどアイレイ大好きだったよほらごしゅじん、ぐにゃぐ にゃしてないで袖から腕抜いて。もうとっとと寝なさい。水飲んでから。スモーキーマテ ィーニもう一回飲みたかったなあ」 「す……何?」 「スモーキーマティーニ。あっちの世界のカクテル。くっさいアイラ島のモルトウィス キーを、って別にどうでもいい話だよ、ほらほら転ぶよ、足元気いつけなってば」 「ふにゃー……モルトって、ル・ガルの地方から輸入されてるよ、今度買って来るねえー そっかヒトミ酒好きなんだあ、くっさいかはわからないけど、買って来るよお……」 「それはどうでもいいのよ、この、足元にいるの、何」 「ひろったー」 「……明日それは問い詰めようと思うけど、とりあえず何これ」 「知らないー、落ちてたー。お前の世界の『猫』ってこんなんじゃねえのー?」 「違う違う断じて違う! 何この生物! 何食べるのこれどうすればいいの! なんか一 つ目開いた! 目からなんか出した!」 **小ネタ1彼は誰とすれ違ったのか** 今度は何持ってきた。 そろそろ帰ってくる頃かと窓から外を覗いた私の頭に、太ゴチック体で黒々と浮かんだのはそんな文章。 日の暮れるのが早くなり、しんしんと地面から藍色に沈んでいく小路なのに、ネコのように目が良いわけもない私が瞬時にエロヒトオタ猫を見分けられたのは、彼のスキップせんばかりの足取りがあまりに帰宅途中の人々(ネコネコ?)の中で目立っていたからだ。特徴あるカギ尻尾は高く上がり、藍に溶け込むハチ割れ模様の黒部分にきらきら光る黄褐色の瞳、白い鼻面からぴんと伸びるひげ、流石にそこまでは見えなかったがおそらく小鼻が膨らんで鼻の頭がピンク通り越して赤くなっているのだ。 寒気を全く感じていないかのような浮かれた様子、こんな風に帰ってきた時はー、エロヒトオタ歓喜のブツか知識を仕入れてきた時であってー、それはたいてい私の眩暈を喚起するようなしろものでー。 あの調子だとかなりのブツかいらん知識だ、と早くも立ちくらみを起こしている私を見上げ、でっかい白黒猫な夫はものっすごいイイ笑顔で手を振ってよこした。私は窓枠にもたれてずるずると崩れ落ちながら力なく手を振り返すしかなかった。 「ただいまー! あのな、ヒトミ、あのな」 その手のものを繰り出す場合、今まではどれだけ浮かれていても、夕食後の落ち着いた時間帯だったのだが今回は違った。そーか玄関開けるなり話題にするほどのシロモノか。覚悟しておこう。 「おかえりごしゅじん。ご飯それともまずその話?」 「ええ?! いきなりいっちゃってもいいの?!」 「……まずご飯にしようね。野菜は切っておいたから」 腹をくくる猶予くらいはくださいごしゅじん。 しかしくくった腹は緩む事になった。 「すっげえ素的な人に会ったんだよ!」 「は?」 これは予想外。普段の倍速で鯵に似た魚に塩をふり天火に放り込み、並行して野菜炒めを作りながらごしゅじんであり内縁の夫であるでっかい白黒猫はいまだ興奮覚めやらぬ様子で、結局ご飯作りと「話」を並行した。薄い耳の内側も鼻も、目の縁まで濃いピンク色。あれ? 素的な人って、もしかして出会いってやつ? およめさんにしてもらったとはいえ、私はヒトで彼はネコ。皿を用意しながら私は覚悟のベクトルをずらした。 「お近付きになりたいなー、どーしよーどーすりゃいいのかなあ」 「仕事の関係で会ったんじゃないの?」 「それがすれ違っただけなんだよ」 長身をくにゃくにゃ揺らしていても、でっかい白黒猫の手は的確に調味料を加えていく。小まめで料理も上手いし気配りもできる、仕事も遅刻以外は真面目らしいごしゅじん、なんで独り身なんだか不思議だったんだ。外見の印象については、ネコの美醜感覚がよくわからないんで横に置いておいても。恋は良い事だ。ヒトオタになるよりずっと良い事だ。 「まず、声をかけるタイミングだよね。今日初めてすれ違ったの?」 「そう、今度いつ会えるのかもわかんない」 ようやく私もうまく塊のパンを切れるようになった。ニホンジンの感覚では鯵の塩焼きと野菜炒めにパンはいかがなものかと思うが、いまだに自分一人では米を炊けないもので仕方がない。竈の使い方は何とか覚えたんだけどね。パンも温めておけば良かった、と頭の半分で反省しながら、もう半分では別の事を考えている。 さーて、ネコの彼女はヒトメス奴隷のいる家におよめさんに来てくれるものなのかなあ。前の御主人様はお嬢様と私がふにゃふにゃしているの、面白がっていたけれど。 ネコのおよめさんにはネコがいいに決まっている。はじめに聞いたとき比喩でなくひっくり返ったもんね、ヒトとネコの寿命の違い。ずっと傍にいると誓ったけれども、ごしゅじんが――この極まったヒトオタ猫が、私が寿命でも病気でもさっさと逝った後どうなるのかを想像して、早いとこネコのちゃんとしたおよめさんをもらった方がいいんでないかいと、常日頃悩んではいたのだ。覚悟のベクトルはまた売られる方向へ向いている。ヒトオタグッズもきっと高く売れるよな。私は改めて腹に力を入れた。 「そんなに素的な人だったんなら、願え、祈れごしゅじん。努力すればまた会えるかもしれない!」 「うん、今日すれ違ったあたりまたうろついてみる!」 野菜炒めを皿に移し終えたおたまを握りしめ、彼はシャッキーンと上方を見つめていた。 鯵(に似た魚)の塩焼きを頭から齧りながら、でっかい猫がうっとりと頬を緩めている図はなかなかにシュールだ。私は箸を使っている。ちなみに私の残した頭や骨も彼が食べる。 「高級そうなスーツ着てたんだよ……どこに勤めてるんだろう、やっぱ猫技かなあ……」 「猫井技研なら伝手があるじゃない」 「なにせあそこ大企業だから。リックと違う部署じゃあ名前も顔も知らない可能性が高い」 どう味付けしたらこんなにパンに合うようになるのか、私には見当もつかない野菜炒めを飲みこんで、ついでに売られるならどこまで自分用に買ってもらった服を持っていけるのか、まで先走った頭の中の仮定を一旦飲みこんだ。 「もう一度会えるといいね」 「応援してくれるのかヒトミ!」 「もちろんだとも! で、どんなひと?」 仲人モードにチェーンジ! 情報が得られない事には想定も対策もできん。集中するため大急ぎで残りの野菜炒めをパンに盛り、行儀が悪いのを承知で口に詰め込んだ。 「まず、センスがいいんだ。ウロコの色にスーツが合っててなあ」 センスはごしゅじん、正直言ってあまり良くないようだからその人と釣り合うかどうか……もぐもぐ。 ん? 今ウロコって? 聞き違い? 「首輪も鎖も着せる服のチョイスも」 ちょっと待った。なんだか、おい、嫌な予感が。口の中のものを一気に飲みこもうとして、胸が詰まったのは重い予感のせいだ。首輪と鎖て、おい。 「ごしゅじん? 素的なひとって、具体的に言ってみ?」 「んだから、洗練された仕草と眼光の」 具体的じゃねえよ。 「こらえきれない歓喜を僅かに出入りする細い舌が表してたりして、それが実にウロコに映えて」 たしかにウロコと言っている。はい消えたー、ネコのおよめさんの線消えたー。予感は黒くなっていくよ。 「クールな彼の表情と斜め後ろの彼女の遠い目との対比が、またこれが」 こ、こ、「これが」とか瞳孔開いて回想するなバカエロ猫。帰宅前の予想と腹くくりの方が正解でしたか、もしかしなくても。黒い予感が、脳裏に描いた想像図に変わりましたよくそエロねこ。 「……早い話が、首輪鎖の羞恥プレイをしているとっても素的な人とすれ違った、と?」 「そーなんだよすっげえカッコイイヘビ紳士だったんだよ、どうにかしてお友達になれないかなあ?」 「なるなー!」 卓袱台返しならぬコタツ返しをしなかった私の理性を自分で誉める。後片付けの手間を考えて思い留まった。 ネコの好奇心に感謝した事もあれども今回は恨む。特にエロ方向に走ってしまったごしゅじんの好奇心を叩き潰してやりたい。こんだ羞恥プレイかよ。 「応援してくれる筈じゃ……」 皿を洗いながらぽそぽそ呟く声を一切無視して私は拭いた皿を棚にしまった。尻尾がまだふくらんでいるあたり、さっき私どんだけ恐ろしい顔をしたのだろう。 「ヘビ紳士の彼女がさ、ニーソックスはいた時のヒトミと、似た表情でさあ、それで余計」 ……そらそうだろうとも。彼女さん、力一杯同情するよ。二十五でふりふりエプロンだのニーソだのってプレイも十二分に羞恥だと、このネコには理解できんのだろうな。 「ごしゅじん、そーいうSMちっくなのにも興味あったの?」 努力してにっこり笑ったら、エロな夫は後ろに倒していた耳をぴんと立てて何度もうなずいた。 「ほら、もっと尻尾しごいて欲しかったらにゃーって言いなさい」 「えーっと……なんか、違うくねえ?」 うつ伏せの背中に私をまたがらせ、でっかい白黒猫は枕の上で首を傾げている。違いませんごしゅじん。後ろ手でカギ尻尾を、もう一方の指先で耳の中をくすぐられてひげがさかんに動いているじゃありませんか。あ、羞恥プレイでしたね。素早く体を180度反転、おしりの白い部分を重点的に攻めてみまーす。 「ふかふかのおしりがぴくってなったよ。本当はたまたまも見て欲しいんでしょ? ふっふっふ」 「ふおお?!」 起き上がろうとした上体にヒップアターック。文字通り尻に敷く体勢は、私のお尻も気持ちが良いことがわかった。天然毛皮クッション体温付き、冷え込む季節に最適です。ぐぎゅ、とか雑音が聞こえたけれども気にしない。しかしほんとにごしゅじんのお尻可愛いな、悔しい。つるつるの自分の尻が醜く思えてくる。下でじたばたもがく感触を細かく感じ取れるのも楽しい。 「ヒトミー! いい加減に、ひゃああああ」 「『ひゃあ』じゃないでしょ、『にゃー』でしょ」 ……いや、本気で調教する気は無かったんだ。尻尾とたまたまをさわさわするのは楽しかったけれども。 なのでこんな声が返ってきた時にはどうしようかと思った。 「にゃあ……」 いささか掠れた声で、それでも確かににゃーって言いおったよこのごしゅじん。 ごしゅじん……本気でMか……。 -------------------------- 触発元作品:「The snake under the bed」(作・タダノサケビ氏) タダノサケビさんすみませんすみません。 -------------------------- **小ネタ2過去には暗い穴がある** 繰り返される日常の中、ふと感じた疑問が好奇心が、ひとつの切欠となる事もある。 下手くそな鼻歌など歌いながら、手際よく皿を拭いて片付けているヒトミを見ていたら口から勝手に言葉がこぼれ出た。 「ヒトミ、向こうの世界で結婚してた?」 料理に関しては、調理器具に慣れてきてもその、あれな、腕だと嫌というほど知っているもので、たぶんそりゃないなーとは思ったけれども、なんとなく。 「はあ? 未婚だったよ、ごしゅじんにまだ言ってなかったっけ? 独り身仲間で飲み会やってアパート帰ってきたらいきなりこっちに落ちたんだもん」 鼻歌が消え、笑みが消えた。まずいやはり触れるべきでない事柄だったとシャツの下で脂汗が吹き出た。 「言っておくけど、ヒトの25って別に嫁き遅れじゃないよ」 機嫌が悪くなったのはそれを疑われたと思ったせいかよ。今度は安堵の汗が出た。 ……そこでつるっとまた余計な事を口走ってしまうのが俺というネコだ。 「んじゃ、恋人とかいた?」 ヒトミの茶の瞳が焦点を無くした。手は皿を持ったまま止まった。そこでやっとまずい、と口を閉じたが 発してしまった言葉は取り消しがきかない。 ぼく、ふみこんじゃいけないところをふんだみたいです。 「……二年」 ぽそ、とヒトミが食器棚の中に向かって呟いた。 「いっつも二年、続かなかったんだよねえ……」 ふんじゃいけない……けど、ちょっとちがう種類の踏んではいけない場所だったらしい。ヒトミの背後に、家の中なのに吹き荒れる木枯らしが見えた。 二股かけられた挙句、「彼女には俺が必要なんだ! ヒトミは強いから!」と捨てられる。 受験失敗から自暴自棄になって心中を持ちかけられる。 いきなり辞表を出してアパートに転がり込みパチプロになるとごろごろするばかり。 少し会わなかったら出会い系にはまって性病をうつされてくる。 「もてなかったわけじゃないんだけどねー、なんでかねー、あはははは」 淡淡と話された内容と乾いた笑い声に、俺は背中の毛を逆立てていた。彼女の背後に見える木枯らしは、猛吹雪に変わっていた。よーするに、ものすごく男運が悪かったらしい。 「んじゃ、恋人とかいた?」 軽く聞いているつもりなのだろうが、開いた口の形が左右非対称だった。コタツで改めて向かい合い、話してやったらその、牙をのぞかせた口のまま固まっていた。でっかい白黒猫な夫は、お調子者のきらいはあるもののヒトの私にも気遣ってくれるいいネコだ。 「ごしゅじんこそ、なんで彼女も嫁もいないのさ」 声に出してから、外に内証にしている恋人がいてもおかしくない、と思いついたがそれは要らない想像だったようだ。……ごしゅじんの視線が、何もない空中で止まっている。遠い目という表現はあるが近い目というのは初めて見た。瞳孔が開いていてちょっと怖い。 「えーと、ネコにも結婚適齢期ってあるのかな?」 ……そこで追い討ちをかけてしまう自分の性格が恨めしい。反省より先に、つるっと言葉が出てきてしまった。 「うん……まあね……俺は、それ、過ぎてるよ……」 開いた瞳孔に灯りを反射させて中空を見るごしゅじんの後ろに、砂漠が見えた。 つまんないそうです。 二百年近い年齢のネコは、それまでの女性遍歴を一言ですませた。そのぽそりとした声色で、彼の背後の砂漠は更に乾燥を増して細かい砂を巻き上げるようだった。思わずお茶で口を湿してしまいましたよ私は。 「ええ? ごしゅじん、こまめで優しくて真面目でいいひとだよ、もてないわけじゃないでしょ?」 「ん、でも、つまんないんだって。イイヒトだけど、って、だけどが付くんだよーうふふふふふ」 わたし、おもいっきり地雷をふんだみたいです うふふあははと背後に砂嵐を吹き荒れさせる白黒猫に、私はお茶の杯をを放り出しコタツから出てハイハイで近づいた。 「ごしゅじん、つまんなくなんかないよ、いいひとでいい男だって、白黒はっきりした毛並みもふかふかだし、かぎ尻尾も可愛いよ!」 「ヒトミ……!」 がっしと抱き合う図は絵に描いたようなバカップルバカ夫婦なのだろうが、誰も見てないからいいよもう。ざりざりの舌で頬を舐めるのは正直勘弁して欲しいけど。 「ヒトミい、お前もいい女だよう、『サゲマン』なんかじゃないよう」 「……どっから覚えてきたのそんな言葉」 お互い存分にすりすりもふもふぎゅうぎゅうした後、ごしゅじんは私に目を合わせた。下がっていたひげがようやく元に戻っている。 「俺、賭け事もしないし酒も弱いし浮気もしない、ずーっと真面目な夫でいるからね、ダメ人間になんかならないからね」 優しいテノールの声と腕の力と、真摯な目、だけれども……。 私を買ってから。 ――マッハでエロヒトオタになってしまったのは誰だ。 「……あれ?」 「……ん……いや、ごしゅじん、これからは少なくともつまんないって言われる事はなくなるかもね……」
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/288.html
前ページ次ページSSまとめ 35-106 35-106 名前:Dr.アコー診療所3rd・5[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 00 15 23 ID ??? Dr.アコー診療所3rd・5 1/4 麻帆良学園中等部の保健室。そこにはちょっと性癖に難のあるドクターがいました。 「雨やね……」 窓の外を見ながら亜子先生は気だるそうに呟きました。しとしとと降り注ぐ雨。まだまだ梅雨明けは遠いようです。 「なんやろ、こーしとるとしんみりしてまうわ……」 保健室に響くのは、微かな雨音。そしてたゆんたゆんという音色です。 「あたしの胸で遊ぶなあああっ!」 すぱーん! 今度はスリッパの音が響きました。 「ったく、気分が滅入りそーなのは分かるけど、物憂げな表情でたゆんたゆんしないのっ!」 「えー? 雨の日に外を眺めながらアンニュイな気持ちでたゆたゆする。乙女にしか出来へん技やん」 相変わらずの減らず口に、裕奈さんは重い溜息をつくのでした。 「たゆんたゆんのドコが乙女なんだか……」 「乙女心を忘れたらアカンて。せやないとあんな風になってまうやん」 亜子先生の視線が注がれます。すると、 「うん? 私の顔に何かついているか?」 焼き鳥で一杯飲っていた二ノ宮先生は、そ知らぬ顔でとぼけました。 「保健室で堂々と居酒屋メニューを味わうのは、どう見てもオヤジですよ」 「ふん、こういった憂鬱な天気の時は、好き勝手に振る舞って気晴らしするのが一番だ」 裕奈さんのツッコミもなんのその。二ノ宮先生は美味そうにビールを喉に滑らせます。 「ほな、ウチも好き勝手に……」 「アンタはしょっちゅうでしょーが!」 すぱんすぱーん!! 手をわきわきさせた亜子先生に、再び裕奈さんのツッコミが火を噴きました。 「ううっ、ツッコミ早いわ……。まだ触ってへんのに……」 「亜子は年中無休でたゆたゆしてるでしょ。少しはガマンしなさい」 裕奈さんの冷たい言い草に、ますます亜子先生はどんよりしてしまうのでした。 35-107 名前:Dr.アコー診療所3rd・5[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 00 16 40 ID ??? 2/4 と、そこでガラガラガラ……、と入口のドアが開きました。 「こんにちはですー」 やって来たのは史伽さんです。背中にバッグを背負い、手には買い物袋を下げてますね。 「どうしたん史伽? 手伝いやったら今日は必要ないんやけど……」 「猫に手が貸せるくらいヒマなんだよね〜」 亜子先生と裕奈さんの言う事はもっともです。グラウンドが使えないせいか、 今日はいつにも増して患者さんが来ません。けれど史伽さんは笑顔を浮かべたままバッグを下ろしました。 「えへへ……、皆さん退屈だろうと思いましたから、お茶会をしませんか?」 そう言って史伽さんはいそいそとシートを床に広げ、差し入れのスイーツを並べました。 「おおーっ! でかした史伽!!」 「ありがとうな史伽! 気の利いた妹がいてお姉ちゃん幸せやわ〜♪ これでおっぱいおっきかったら最高なんやけど」 「あぶぶぶぶっ……!」 早速裕奈さんと亜子先生に可愛がられ、史伽さんは真っ赤になってわたわたしています。 「では準備をするか。ええとカップは何人分だ?」 二ノ宮先生は戸棚からごそごそとティーカップを取り出します。 「あ、お姉ちゃんとかえで姉も来ますので、六つお願いしますですー」 史伽さんがそう言うと同時に、ガラガラ……、と風香さんがやって来ました。 「ちわー! ボクはお菓子をたーっぷり持ってきたよー」 風香さんはどうだと言わんばかりに、どさどさとポテチやらチョコやらクッキーの数々を並べます。 「おいおい、結構な人数だな。どうせならしずなも呼ぶか」 「せやったら、今日はみんなでわいわい騒ごっか!」 二ノ宮先生と亜子先生の提案に、裕奈さんも双子もうんうん頷いたのでした――― 35-108 名前:Dr.アコー診療所3rd・5[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 00 17 42 ID ??? 3/4 「うあ、ホントにやってる……」 亜子先生に呼び出された円さん。保健室前の廊下まで進出したお茶会場に、思わず苦笑してしまいました。 保健室は紅茶と珈琲のブースとなっており、亜子先生と双子、裕奈さんといった面々が賑やかに集まっています。 保健室前の階段裏は日本茶です。しずな先生と二ノ宮先生、龍宮さんにアキラさんがまったりしています。 最後に廊下です。こちらは中国茶ですね。超さんにまき絵さん、古菲さんとハルナさんが寛いでいました。 「ちょっと目移りしちゃうなあ……」 そう言ったものの、円さんは結局妹二人と同じブースで楽しむ事にしました。 「えへへ、円お姉ちゃんには特別に、とっときのアールグレイをプレゼントやっ!」 「私のオススメのケーキですー」 早速、亜子先生と史伽さんの接待攻撃が炸裂します。やや照れくさそうにしている円さんに、 裕奈さんと風香さんはくすくす笑うのでした。 「にひひ、ゆーなすっかり恋人取られちゃってるじゃん」 「アンタだって妹取られてるでしょ」 裕奈さんと風香さんは互いに肘で突っつき合いながら、ほのぼのした三姉妹のやりとりを見守っていました。 「けど、かえで姉遅いなあ……」 「長瀬さんは軽食を買い出しに行ったんだよね?」 と、二人がウワサをしていると、当の本人がようやくやって来ました。けれどその表情は珍しく沈んでいます。 一体、どうしたのでしょうか? 「すまないでござる……。拙者、拙者は未熟者でござった……!」 風香さんの前でがっくりと項垂れる楓さん。ゆっくりと買い物袋を差し出しました。 「わお。」 風香さんが中身を確認すると、そこにあったものは全てプリンだったのです。 「あのスーパーがいけないでござる……。拙者の前でこれみよがしにプリンの特売を……!」 「ま、まあ紅茶や珈琲には合うからいいんじゃね?」 「そ、そうだよかえで姉!」 任務を果たせなかった罪悪感で涙に暮れる楓さんに、裕奈さんと風香さんはフォローを入れるのでした。 しかし、この人の前でプリンを見せたのは間違いだったのかも知れません。 35-109 名前:Dr.アコー診療所3rd・5[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 00 18 36 ID ??? 4/4 「えへへ、ウチはこっちのプリンをいただくで!!!」 きゅぴーんと目を光らせた亜子先生。素早く楓さんの二つのプリンに手を掛けました。そして、 「たゆんたゆんたゆんたゆんたゆんたゆんたゆんたゆん……!」 実に清々しい表情でたゆんたゆんを始めてしまいました。こうなると他の人も黙ってはいられません。 「亜子お姉ちゃんズルいですー! 私もたゆたゆするですっ!!」 「おおーっと、かえで姉のおっぱいはボクの物だよっ!」 「亜子先生ばかりにはやらせないネ!」 「ふむ……、長瀬のぷりんぷりんした胸は美味そうだな……!」 風香さんと史伽さん、超さんと二ノ宮先生。四人のたゆリストが一斉に楓さんのプリンに襲い掛かったのです! これではさすがの楓さんも成す術がありません。 「や、やめるでござる……! 拙者のプリンは食べ物ではござらん!!」 「えっと、取り合えず爆破しとく?」 「や、放っといた方が無難じゃね? つーか、亜子までオヤジギャグを使うなんて……」 円さんと裕奈さんはやれやれといった様子でたゆリスト達の暴挙を黙殺するのでした。 「ワ、ワタシは逃げた方が無難アル……!」 こそーりとその場を去る古菲さん。ようやく学習したようですね。 「おおっ、長瀬さんが総受けとな!! おね―さんネタが止まんないよっ!!」 早速ハルナさんはスケッチブックを走らせます。たゆリストの五重奏は滅多に見られませんからね。 「私も参戦していいか?」 「ダメ」 何やら龍宮さんはアキラさんに釘を刺されてますね。 「ふふっ、みんな元気ね」 「わあっ……! しずな先生の淹れたお茶、すっごく美味しい!」 そして、しずな先生とまき絵さんは太平楽にお茶を楽しむのでした。 こうして梅雨間のお茶会は、柿崎さんが乱入して酒宴に変貌するまで続いたそうです――― (久々のかえで姉登場なのにこんなんでごめん、と詫びながらつづく) 35-114 35-114 名前:マロン名無しさん[sage指摘されたので文体変えてみた] 投稿日:2006/07/07(金) 00 59 09 ID ??? 前スレ 763 課後部活の時間も終わった剣道場 そこには神鳴流の師と弟子が二人 「剣を交えるのも久しぶりね刹那」 「そうですね…ところで異動は本当なんですか?」 「あら、知ってたの」 「噂で聞きましたが…やはり本当なんですね…」 しばしの沈黙の後刀子が口を開いた 「まああんなことになったら当然よね…魔法の国で最低3年は謹慎だそうよ」 「すいません…私の力不足です…」 自分の無力さが悔しいのか刹那の手は竹刀を握り締め震えている 「刹那のせいでは無い、私たち大人がなんとかするべきでした」 「私の剣術は刀子さんのおかげで成長できました…これからどうすれば…」 「刹那の剣の腕なら3年も自分で鍛えれば私を超えるでしょう。その才能があなたにはあります」 「そんなこと…私は刀子さんが憧れだったんです!」 刹那の目は充血して今にも泣き出しそうな目をしていた 「泣いてはダメよ刹那。あなたは近衛木乃香の護衛という役です。護衛が弱みを見せるのは厳禁です」 「は、はい…」 「さあ話しは終わりです、最後の剣の修行を始めます」 刀子が竹刀を構える 「…はい!」 刹那も顔を拭うと竹刀を構えた 35-115 名前:マロン名無しさん[sage ] 投稿日:2006/07/07(金) 01 03 18 ID ??? 準備はいいですか刹那」 「…はい、いつでも」 「言っておきますが本気でくるように、もちろん私も本気でいきます」 「はい…」 一瞬の静寂の後刀子がまず先にでた 「バシ!」竹刀の乾いた音が剣道場に響き渡る 刀子が一方的に攻めて刹那は防戦一方だ 「どうしたの刹那?あなたの実力はその程度?」 (くっ…やはり刀子さんは私とは実力が違いすぎる…しかし!) 「ガシイ!」刹那がやっと刀子の剣を受け止めた 「刀子さんを超えねばお嬢様を守れない!神鳴流…斬岩剣!」 「くっ!しまっ…」 斬岩剣で刀子の竹刀を弾き飛ばすと一気に刀子の喉元に迫った 「はあ…はあ…私の勝ちですね…」 「見事です刹那、まさかもう抜かれるとは」 「いえまだ刀子さんには…」 「もう私が教えることは何も無い…と言いたいですが最後に一つ教えることがあります。いいですか?」 「はい!よろしくお願いします!」 「この指導に剣はいりません力を抜くだけです」 「え?それだけですか?」 刹那は不審に思いながらも竹刀を床に置いた 35-116 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 01 04 38 ID ??? 「そう、それだけで後は私に身を任せなさい」 刀子が刹那の肩に手をかける。刹那は何故か緊張で顔が赤くなっていた 「刀子さん…なにを…」 「薄々は感づいてるでしょ、性についての修行よ」 「やめてくださ…んむう!」 「刹那の口って小さくて可愛い…」 「ダメ…です…」 刀子が刹那の服を脱がしにかかるが何故か刹那は抵抗せずすぐに裸体を晒した 「真っ白でピチピチの張りのある肌…羨ましい」 「そんな見ないで…ください…」 「そのわりには抵抗が無かったじゃない、素直になったほうが楽よ」 刀子が刹那を攻め始める。3●年近く生きているだけあって経験は豊富だ 同姓相手には慣れていなくまだぎこちないが的確に場所を突いてくる 「やめてください刀子さん…ひゃあ!」 「敏感なのね刹那は、さあもっと激しく…」 「ガラ!」といきなり剣道場のドアが開きそこには2つの影があった 「こんなとこで何をしてる?探したんだぞ刀子」 「に、二ノ宮…」 「せっちゃんここでなにしとるん?」 「このちゃん…ダメ、見ないで…」 二ノ宮はニヤニヤと笑い木乃香は満面の笑みを浮かべている。 そして2人の威圧感は半端なものではなく刀子は立ち上がることすら出来なかった 「近衛、今日はお前が刀子をやれ。桜崎は私だ」 「了解や二宮せんせ♪」 「やめなさい近衛…お前が西の長の娘でも許さんぞ」 「この状態じゃ何言っても怖くないで葛葉せんせ♪」 「しかし桜崎も刀子の攻めでここまでとはな…壊れてもしらんぞ?」 刀子&刹那「汚れちゃった…」 35-124 35-124 名前:千雨 美学[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 02 08 08 ID ??? 千雨 美学 部屋は暗く、音はない 六畳一間に丸い小さなちゃぶ台が一つ。そして、そばに座布団を引く ちゃぶ台には何も置かず、ただ綺麗にする これ以上は、野暮だ 台所からヤカンのなる音が聞こえてきた。それがお湯が沸いた合図 台所のお盆にはどんぶりに冷えたご飯と箸とレンゲ、冷たい水が入ったコップに、後は永●園のお茶漬けのもと それだけを置く お盆をちゃぶ台の上に置いた。それだけで小さなちゃぶ台は埋まってしまう ヤカン敷きを畳の上に直接置いて、さらにその上に熱々のヤカンを置く 座布団に座り、冷えたご飯の上にお茶漬けのもとをかける。これにて準備完了 ヤカンを手に持ち、狙いを定める。狙いはどんぶり、冷やご飯の上にかけられたお茶漬けのもとを狙う お湯は軽くご飯が浸るくらい。お湯の量を間違えれば、濃さが変わってそれで終わり。一日が終わる 狙い通りにお湯を注げば、それを一気にかき混ぜる 冷やご飯のダマを無くし、さらさらのお茶漬けができあがり さあ、食事の時間だ おかきがふやけないうちに、レンゲで掬って口にかき込む あらかたおかきを食べてしまえば、後は好きなように食う 残ったおかきをふやかしても良い。箸でかき込んでも、レンゲでひたひたに掬って吸い込むように食べても良い どう食っても美味いのだ。うむ、美味い ザジがこっちを見ている。とっても食べたそうにこっちを見ている。でも私はこれをザジには食べさせない これは、私の美学だからだ。ザジすら寄せ付けない、美学なのだ 完 35-136 35-136 名前:生教の二ノ宮さん[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 18 34 58 ID ??? 生教の二ノ宮さん 麻帆良学園には生徒たちの悩みを解決するべく、ある組織が編成されていた その組織の名は生徒指導教員部。略して生教と呼ばれていた そして、そこにはある教員が所属している。その教員は生徒たちからは親しみを込めて”生教の二ノ宮さん”と呼ばれている 二ノ宮 「はて?どこかで見たような字だな・・・」 Q 愛を失った女 T・K 今日は七夕、せっかくの日なのに曇りだなんて残念 でも、雲の上で彼と会うからいいもん さっき天の川を見て来ました まだ彼は来ていません。恥ずかしがっているのかな? 今日はきっと思いを遂げます。一つになるんだから・・・きゃっ、恥ずかしい・・・ バツイチだけど頑張るもん。待っててね、未来の旦那様。はぁと 二ノ宮 「・・・」 A 生教の二ノ宮 結婚相談所に行け あるいは病院に行け 二ノ宮 「可哀想にな。ついに壊れたか・・・」 完 35-140 35-140 名前:アキラ どうぶつの森[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 21 04 05 ID ??? アキラ どうぶつの森 麻帆良学園の近く、何故か広大な森が広がっている 時々、私はここで物思いにふけるのが好き うさぎさんがいた 体毛は茶色、たぶん野うさぎさんだ こっちにおいでと手のひらを向けてみる うさぎさんは二、三度耳をぴくぴくさせると、跳ねながらこちらの方にやってきた 私のすぐ近くで止まると、じっと私の方を見つめてくる アキラ 「こんにちは」 うさぎさんは何も言わない。また、耳をぴくぴくさせた たぶん挨拶してくれているんだろう うさぎさんは警戒心が強い。それに人懐っこくはない たぶん逃げちゃうかな? しばらくすると警戒心が消えたのか、私の隣に座り込んでくれた 嬉しくなった私はそっと背中を撫で撫でする。うさぎさんはじっとしている。気持ちいいみたいだ アキラ 「名前は?」 当然、答えてはくれない。今度、ザジさんと来てみようか。ザジさんなら言葉がわかるかもしれない 抱き上げて、膝の上にのせてみた うさぎさんは私の膝の上で動かずに目を開けてじっとしている。その姿はまるで大福みたいだ 可愛い 今度来るときは、何か食べ物・・・持ってこよう 完 35-148 35-148 名前:古×楓[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 21 52 18 ID ??? 寮の一室に二人はいた。部屋は薄暗く妖しい雰囲気が漂っていた。 「ふふふ。古、美しいでござるよ。」 「そ、そんなまじまじと見ないでほしいアル…。」 楓の言葉を聞いて顔を真っ赤にする古。 「美しいものに見惚れてしまうのはしょうがないでござる。」 「…!!」 古は恥ずかしさのあまり俯いてしまう。 「この肌触り、弾力…。そそるでござる。」 小さな“山”。それを舐めるように見た後、その“山”をいじり始める。 「!…嫌ッ!そんな突付いたりしたらだめアル。」 「ふむ。突付くのはダメでござるか。ではこれは…」 チュ、チュゥゥゥゥ! 「ひゃっ!す、吸っちゃだめアル!」 楓は“山”の頂上を貪るように吸い始めた。 「…甘くて美味しいでござるよ。」 「ああ、だ、だめーー!」 「あ〜あ、カラメルだけ吸っちゃたアル…。」 「プリンはカラメルの味で良し悪しが決まるでござるよ。」 おわり 35-154 35-154 名前:さよ 小さな知識[sage] 投稿日:2006/07/07(金) 22 11 19 ID ??? さよ 小さな知識 さよ 「七夕の夜、60年待ちましたが彦星の現れていないさよです」 ハルナ 「七夕もネタよ、ネタ」 さよ 「これが有名な”ゲーム脳”ならぬ”同人脳”なんですね・・・」 ハルナ 「うるさいわね。じゃあ行くわよ?」 さよ 「へ?」 ハルナ 「ハルナの同人の小さな知識、始まり〜」 さよ 「わ、私の場所なのに〜」 ハルナ 「今夜はドジっ娘についてよ」 さよ 「え〜と・・・ドジっ娘?」 ハルナ 「な・に・とぼけてるのかな?あなたのことじゃない」 さよ 「わ、私ですか?私、ドジっ娘ですか〜?」 ハルナ 「転んだり躓いたり、一生懸命な行動が裏目に出たり・・・そのまんまじゃない」 さよ 「でも、でもぉ〜」 ハルナ 「しかも足もないのに転ぶなんて・・・やるわね」 さよ 「ぐすっ・・・まるで私、バカみたいじゃないですか〜」 ハルナ 「ドジっ娘って頭が良い場合もあるのよ。のどかも葉加瀬もプチドジっ娘属性持ってるし」 さよ 「・・・そっか」 ハルナ 「うふふ・・・それでドジっ娘を誰にアピールしてるのかなぁ〜?」 さよ 「そ、それは・・・その・・・」 ハルナ 「まあ、アピールして失敗するのがドジっ娘なんだけどね」 さよ 「やっぱりそんな属性要らないです〜」 ハルナ 「まあ、結論として・・・ドジっ娘って、死んでも治らない?」 さよ 「うわあぁぁぁん」 完 35-165 35-165 名前:さよ 光の中[sage] 投稿日:2006/07/08(土) 00 18 44 ID ??? さよ 光の中 1/3 放課後、夕暮れの教室でたたずむ私 ぼうっとしていると遠くから鐘の音が聞こえてきました たぶん見たことはないけど結婚式なんだと思う 私にはウエディングドレスなんて着れません。幽霊ですから・・・ 和美 「さよちん、何物思いにふけってるの?」 さよ 「朝倉さん・・・あの鐘の音・・・」 和美 「ああ、みそっちのとこの教会からだね。結婚式か何かかな?」 いつも一緒にいてくれる朝倉さん。そんな朝倉さんもいずれは結婚して、私を忘れちゃうのかな さよ 「ねえ、朝倉さん。まだ教会で結婚式、していますかね?」 和美 「間に合うかもしれないけど・・・行きたいの?」 さよ 「連れて行ってください。見たことがないんです」 朝倉さんに取り憑いたまま、私はある建物の前に着きました これが、教会 大きな建物を見上げると、十字架が神々しく見えます 和美 「終わっちゃてたね。中に入る?」 さよ 「はい」 35-166 名前:さよ 光の中[sage] 投稿日:2006/07/08(土) 00 19 21 ID ??? 2/3 朝倉さんが扉を開けると、そこは何かの象がまつられている部屋でした ステンドグラスから漏れる光が、後光のように見えてとっても綺麗です 和美 「礼拝堂だね。ちょっと前までここで結婚式、してたんだね・・・」 そうか。ここで、永遠の愛を誓うんだ ココネ 「あなたたち・・・誰?」 礼拝堂の奥からの突然の声に、朝倉さんが驚きました 和美 「おわっと!!あ、ゴメンね。勝手に入っちゃって・・・たちってさよちゃん見えるの!?」 ココネ 「気配だけわかる。もう一人はなんだか少し悲しい気配・・」 さよ 「こ、こんにちは・・・」 コクリ、と少女は何も言わずに頷いた 和美 「わ、私たちね、中等部の三年で・・・」 ココネ 「もしかして・・・ミソラ、知ってる?」 和美 「そう!!クラスメートなの!!」 ココネ 「そう、なら・・・いい」 和美 「あ、あはは・・・」 少女は振り向くと再び奥へと消えていきました 35-167 名前:さよ 光の中[sage] 投稿日:2006/07/08(土) 00 21 13 ID ??? 3/3 さよ 「朝倉さん、ここって結構光が入って明るいところなんですね」 和美 「ステンドグラスから光が入ってくるからね」 さよ 「きらきらして・・・だんだんと光が強くなってきて・・・綺麗」 和美 「光が強く?そんなことは無いと思うけど・・・さよちゃん!?」 光を背に受けて、象から何かがぼんやりと何かが出てきました。そのもやはとっても暖かい感じです もやは私を優しく包みこんできました そして、何か語りかけてきます ?? 「迎えに来た・・・」 さよ 「誰を?」 ?? 「長く・・・待たせたね」 さよ 「あなたは?」 ?? 「さあ、行こうか・・・」 体がなんだかふわふわと気持ちよくなってきました さよ 「私・・・あれ?どこへ行くの」 ?? 「私の元へ」 何だろう、この感覚。古く忘れていた感覚・・・眠いのかな でも、寝てみようかな。きもち・・・いいし・・・ 和美 「・・・ん!!・・・ちゃん!!!さよちゃん!!!」 え?あれ?私は何を・・・ 気がつくと、私は結構高い位置まで浮いていました。なんだか神象にお姫様だっこされているようです 和美 「なんか消えちゃいそうだったよ?ここってさよちゃんにはあんまり良くないようだね」 さよ 「あの光・・・何だったんでしょうか?」 完 35-184 35-184 名前:とりえリレーの中の人[sage] 投稿日:2006/07/08(土) 21 31 23 ID ??? しずな「さぁ…だーれだっ!?」 古韮「古韮アルy」 ドゴォ!! 円「ニセ者カエレ!」 千雨(対応早っ!?) 和美「ということで、今回の参加者は古菲でーす。」 古菲「作者は私にニセ者よこしたよね(´・ω・`)」 和美「そんなにショゲないの。ささ、今回は誰のかなぁ?」 茶々丸「次回が私ということらしいです。 ということは、古菲さんが私がらみのことをやることになります。」 明日菜「で、あたしが最後ってこと。」 ハルナ「おー、さすが本編のメインヒロイン。こりゃwktkね…。」 しずな「ということで、今回はこれよv」 真名「しずな先生(*´д`)ハァハァ」 3−Aとりえリレー 第28走『古菲 ネジに 大苦戦!?』 ドゴ…ぐちゃ……ざくぅっ!! (ぴんぽんぱんぽーん…… 『ただいま、アキラがメッタ刺しにしちゃったモッコリ真名さんと、 関係ないのに巻き添えくらった新田先生を処理中です。 もうしばらくお待ちください……。』) 作者『…アキラ…恐ろしい子っ!!』 千雨「お前の作品だろうが!!」 35-185 名前:3−Aとりえリレー 第28走[sage] 投稿日:2006/07/08(土) 21 32 15 ID ??? しずな「さて…新田先生も被害にあっちゃったし、ここからは私が進行するわね…。 茶々丸さんといえば、ネジですが……へぇ、そうなんだ……。」 千雨(お前教職員だろ!?まさかあいつがロボだって思ってねぇのか!?) しずな「今回はネジ巻き対決よ。 といっても、新田先生は再起不能らしいから、今回はぜんまいネズミを使ってやりましょう。」 千雨(ぜんまいネズミって……) しずな「このネズミのネジを巻いて、あそこにある旗の位置までたどり着いたらクリアね。 ただし、ネジを巻く時間は10秒。 その間にあそこを超えるくらい、ネジを巻かないといけないわね。」 古菲「なるほど…わかたアル!」 千雨「……大丈夫なのか、あのバカイエローは…。」 明日菜「大丈夫でしょ。くーちゃんって頭より体で動くタイプだし。」 古菲「いくアルヨー!!」 しずな「それじゃ…よーい…」 ズドゴォ… なめんなぁぁぁぁぁ…… 真名「スターター兼爆破処理班の龍宮です。」 千雨(お前………今回はナイスッ!) 古菲「ハイヤァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」 朝倉「おぉぉっとくーちゃん、スタートから気合十分だぁ!!」 新田「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 朝倉「しかし新田先生も恐ろしい形相で追い上げるッ!! 満身創痍の体であるはずのこのオッサン、いったい何歳なんだ!? っていうかなぜ新田先生がやっているのかっ!?」 古菲「そうこないとやる気が起きないアル…ハイヤァァァァァ!!」 朝倉「す、凄いっ!!新田先生の乱入で古菲、一気にスピードを上げたぁぁぁっ!!」 35-186 名前:3−Aとりえリレー 第28走[sage] 投稿日:2006/07/08(土) 21 33 07 ID ??? しずな「そこまでっ!!」 朝倉「さぁ、短いようで長かった10秒が幕を閉じ、いよいよ計測タイムだっ!!」 古菲「いくアルヨー…ほいっ。」 しゃぁぁぁぁ…… 朝倉「さぁスタートしたっ! ちなみに今回の目標距離は150mっ! 果たして届くのかっ!?」 しゃぁぁぁ… 朝倉「ここまではいたって順調です……しかし遅くなってきましたっ!」 古菲「いけアルーっ!!」 しゃぁぁぁ… 朝倉「さぁもう少しで150mだが、ゼンマイ切れかぁぁ!? だいぶスピードが落ちてきたぁぁぁ!!」 しゃぁぁぁ…ぁぁぁ…… 35-187 名前:3−Aとりえリレー 第28走[sage] 投稿日:2006/07/08(土) 21 34 32 ID ??? 朝倉「…止まったっ!150mライン上でギリギリ止まったっ!!」 しずな「……ん、クリア!」 古菲「やったアル!やったアルよ!!」 真名「よくやったな古。さてこれから…」 ドゴ…ぐちゃ……ざくぅっ!! (ぴんぽんぱんぽーん…… 『ただいま、アキラがまた龍宮をメッタ刺しにしちゃいました。 もうしばらくお待ちください……。』) 茶々丸「…次は私ですね。」 35-191 35-191 名前:エヴァ 七夕の願い[sage] 投稿日:2006/07/09(日) 00 28 55 ID ??? エヴァ 七夕の願い 1/6 7月7日 19:56:09 茶々丸ろぐでーた マスターが七夕の笹に願い事を書きました ”従者が増えると楽かもしれない” 画像データ、記録します・・・ 葉加瀬 「ほほう・・・そうなんですか・・・」 麻帆良大学工学部研究室、葉加瀬は画面に映るそのデータを興味深く見つめている 葉加瀬 「では、第一次量産型茶々丸計画・・・発動しますか・・・」 この日、工学部の年度予算の7倍が消費された そして翌日・・・ 茶々丸 「ご主人様、起床の時間です」 いつものように、従者に起こしてもらうエヴァ。やはり吸血鬼だけあって朝は弱いらしい エヴァ 「あと五分・・・だけ・・・寝る・・・」 しかし、従者はそれを許さなかった。強引に布団をはぎ取ってしまったのである 茶々丸 「ご主人様、起床です。それ以外許しません」 いつもとは違う従者の行動に驚きを覚えつつ、エヴァは抗議の声を上げた エヴァ 「貴様何をする!!あと五分と・・・ん?」 そこでエヴァは気がついた、従者の髪の毛がいつもの色と違う茶色だということに 35-192 名前:エヴァ 七夕の願い[sage] 投稿日:2006/07/09(日) 00 29 42 ID ??? 2/6 エヴァ 「お前・・何か・・・」 しかし従者はその質問の先を許さなかった 茶々丸 「ご主人様、お目覚めになられたのであれば洗面所にどうぞ。毎日の洗顔は大切です」 エヴァは何か釈然とはしなかった その理由は従者の行動がいつもとは違うことにもあるが、なんといっても従者の言葉が気にかかった ”マスター” 茶々丸はそう呼ぶ、ご主人様とは呼ばない ご主人と呼ぶのはゼロの方、意味は一緒でも、そこには意志が込められている はて・・・? そうは思いつつも、エヴァは何を確認するわけでもなく洗面所に向かった 茶々丸 「いらっしゃいませ。お客様は初めてですか?」 エヴァは思わず吹き出しそうになった。茶々丸が洗面所で座礼をしているのである エヴァ 「き、貴様何を!?それに何でここにいる!!さっきまで寝室に・・・」 そこまでいってエヴァは気がついた。またしても従者の髪の毛の色が違うのである 黄色の髪の毛の従者はゆっくりと立ち上がると、そっとエヴァの背後に回り、ゆっくりとネグリジェを脱がし始めた 茶々丸 「お客様もお好きですね。こんな朝早くから・・・」 エヴァ 「な、何を言っている!!だいたい洗面所に行けといったのは貴様ではないか!?」 茶々丸 「うふふ・・いいんですよ。全部私にまかせていただければ。お客様は私に身をまかせてくださいね」 エヴァ 「だーかーらー!!!」 気がつけば全裸であった。下着も着けずにネグリジェだけなので脱がすのは簡単だ 茶々丸 「では・・・洗顔ですね」 従者はそういうと、右の耳にある穴に何かのホースを刺した そのホースは蛇口に繋がっており、従者はホースが抜けないのを確認すると、蛇口をひねった 茶々丸 「お恥ずかしながら・・・洗顔舐め、参ります」 35-193 名前:エヴァ 七夕の願い[sage] 投稿日:2006/07/09(日) 00 31 14 ID ??? 3/6 どうやら従者の耳の穴は口に繋がっているらしい 従者は口から水道の水を溢れさせると、偽物ではあるが、最高のクオリティで作られた舌でエヴァの顔を嘗め始めた エヴァ 「ば、馬鹿者!!こんな洗顔の仕方がどこにある!!」 しかし、従者は止めることはなかった エヴァのまぶたを、鼻孔を、頬を、唇を余すことなく舐め続ける 念入りに・・念入りに・・・ 茶々丸 「私の舌の表面は極細の繊毛が敷き詰められています。洗顔には最適です」 この言葉は口からではない別のスピーカーから発せられているようだ 従者は顔を舐めながらも説明と奉仕を続ける エヴァは抵抗するがどうすることもできなかった 魔力もなく、人間とは構造の違う機械には合気も通用はしないのだ 茶々丸 「さあ、お顔が綺麗になりました。つやつやですね」 エヴァ 「何を言っている。どうした、茶々丸!!!壊れたのか!?」 さて、従者はエヴァの言葉を気にせずに奉仕を続ける エヴァの肩を片手で固定すると、こう言ったのだ 茶々丸 「お客様、次は・・・歯磨きですよ」 エヴァ逃げ出そうとする。しかし固定された肩を動かすことはできなかった 従者は次に左側の耳の穴に歯磨きチューブを差し込んで、ぎゅっと握る しばらく口を閉じてもごもごさせると、にやりと笑った むちゅうぅぅぅぅ・・・ 従者はエヴァにディープキスを敢行した 舌の挿入とともに、泡立てられた歯磨き液がエヴァの口腔内に流れ込むこととなる 35-194 名前:エヴァ 七夕の願い[sage] 投稿日:2006/07/09(日) 00 32 49 ID ??? 4/6 じゅぱっ・・・じゅるる・・・くちゅくちゅ・・・ それは異様な光景であった 金髪の、まるでお人形のような少女が、メイド服の女に唇を奪われているのだ さらにいえば、口の端から白い泡が漏れ出している エロスも感じるが、それ以前に少女がけいれんを起こしているようにも見えた 茶々丸 「洗浄を開始しますね」 やはりまた、どこかのスピーカーから従者の声が漏れた と、同時にエヴァの口腔内に大量の、それでいて勢いのいい水が流れ込む エヴァ 「ぐぶふおぁ!!!」 声にならない叫びが洗面所に響いた 次の瞬間、エヴァの口の端と鼻の穴から大量の水が吹き出す 茶々丸 「あら、いけない。強すぎたようね。ご免なさい、お客様」 やがて洗浄は終わり。従者はエヴァを離した エヴァ 「げほっ!!げほほっ!!」 床に手を突いてむせるエヴァ、目からは涙が流れ落ちている エヴァ 「貴様・・・壊れたな!!!」 茶々丸 「そんなことはありませんわ。もう一回、磨きます?」 エヴァ 「誰がするか!!!」 怒り心頭のエヴァ。全裸のまま、洗面所から逃げ出しリビングに向かった エヴァ 「何だというのだ!?ハカセが調整をミスった・・・」 リビングにもやはり従者がいた。リビングにいたのは黒髪の従者であった エヴァ 「・・・なんで?」 35-195 名前:エヴァ 七夕の願い[sage] 投稿日:2006/07/09(日) 00 33 55 ID ??? 5/6 黒髪の従者は・・・何となく冷たい感じがするとエヴァは感じた 従者の前のテーブルには食事が用意されていた。だがそれはとても貧相なものである 小さなお皿にコッペパンが一つ、そして隣には水の入ったコップが一つ置かれているだけであった 茶々丸 「エサ・・・食え・・・」 従者が発したのはそれだけである エヴァ 「エサとは何だ!!貴様、私の従者だろう!!」 従者は黙ってエヴァの様子を見ていたが、しばらくするとコッペパンを持ってエヴァに近づいた 茶々丸 「黙って・・・食え」 従者はコッペパンを両手で思い切り握ると、ピンポン球ぐらいの大きさにした そしてエヴァの口を無理矢理開き、それを押し込んだのだ エヴァ 「むごっ!!」 エヴァははき出そうとするが、従者は口を押さえてそれを許さない やがて赤い顔になりながら、エヴァはそれを何とか飲み込むことに成功する 茶々丸 「食ったら・・・学校行け・・・」 またもや床に手を突いてエヴァは喉を押さえながら涙をこらえていた エヴァ 「あんなことしたら普通の人間なら死ぬぞ!!!むきー!!貴様壊されたいのか!!」 茶々丸 「学校・・・行け・・・」 エヴァ 「うるさい!!!それに今の私は裸だ!!!いけるわけ無いだろう!!!」 そこでエヴァは気がついた。着替えるとき、いつも自分は従者に着替えさせてもらっているということに 35-196 名前:エヴァ 七夕の願い[sage] 投稿日:2006/07/09(日) 00 37 41 ID ??? 6/6 ギギィィィ・・・ 不気味な音を立ててリビングの扉が開く そして・・そこにいたのは無数の茶々丸たち 青髪の茶々丸はこう言った 茶々丸 「着替えです〜。可愛い熊さんのパンツですよ〜」 エヴァ 「ぱ、パンツに練り芥子は要らないだろう・・・」 赤髪の茶々丸はこう言った 茶々丸 「靴・・・はく?」 エヴァ 「靴に画鋲は要らないだろう・・・」 白髪の茶々丸はこう言った 茶々丸 「ネクタイ、締めへんとなぁ」 エヴァ 「それは首輪だ・・・」 茶々丸はいっぱい出てきた それぞれの手にはいろいろな衣装がもたれている だが・・・どれを見ても明らかに学校の制服ではない それらをすべて着せられる頃には・・・エヴァはエヴァでなくなっているかもしれない 一方、麻帆良大学工学部研究室では茶々丸のメンテナンスが行われている 茶々丸 「あの・・・葉加瀬。今頃マスターは起きて学校に行っているのでしょうか?」 葉加瀬 「大丈夫、大丈夫。量産型茶々丸を送っておいたから。いろんな性格にしておいたからきっと楽しいと思うよ」 完 前ページ次ページSSまとめ
https://w.atwiki.jp/vermili/pages/952.html
発言者:ケイトリン・ワインハウス 対象者:アンヌ・ポートマン 親友の行方を探す中、図らずも縛血者(ブラインド)となったアンヌ。 通常の人間とは異なる、その身体の変化を静かに感じ取りながらも、彼女はそれほど不安を感じてはいなかった。 自信が持てなかった以前とは違う、周囲の環境に対する見方の変化…… 周りを俯瞰する視点、「違う」という事の優越感に、少女の心は今までにない自信で満たされていた。 そうしてアンヌはまだ縛血者となっていなかった頃の友人が語っていた言葉を思い出す。 「日常」という軛を窮屈だと厭い、それを脱却したい、「飛び出したい」と強く願っていたケイトリンという少女の言葉を。 『あのさぁ、アンヌ……鳥っているじゃん。あいつらって、なんであんな風に飛べるんだと思う?』 ―――それは……なんだろ。翼があるから……じゃないかなぁ? 『あんたさぁ……あたしの質問の意味、真面目に考えてる?』 ―――ご、ごめんね。わたし、ケイティと違ってどんくさくて……… 『だからー、そういうのがアンヌの駄目な所なの。すぐ諦めたり、限界を決めつけたり』 『……あんたの逆なのよ。鳥ってヤツは』 ――――逆? 『ほら。あたしたちって、高い所に飛び移る時とかってどうする? ジャンプするじゃん』 ―――うん。ジャンプしないと、届かないもんね。 『でも、鳥は普通ジャンプしない。あの空めがけて、ただ飛ぶ(・・・・)んだよ』 『跳躍(ジャンプ)じゃなくて、飛翔(フライ)。次元が違うんだ』 ――――でも……人間は鳥じゃないからしょうがないよ、ケイティ。 『────そんなことないって。飛べるって意識。 それが大事なんじゃん? 自分が空(あそこ)に行けて当然っていう意識がさ』 そもそも鳥は飛ぼうとか考えてるんだろうか。まぁ、ここで鳥で暗喩してる「本物」は凡人と違って、当たり前のように上へ昇っていく連中を指してるんだろうけど。 -- 名無しさん (2019-02-10 11 04 47) まあ、思い一つで超人になった白木の杭や総統閣下が居るからな…だが、人間を棄てるのはどうなのか? -- 名無しさん (2019-02-10 12 55 53) ↑2鳥は進化の過程で「飛ぶ」という意思によって翼が発達したらしいって何かで見た -- 名無しさん (2019-02-10 13 53 34) ↑飛ぶという意志が種全体で続いて飛ぶという形質が残ったのか、それとも飛ぶことが必要な環境だったから飛ぶという形質が残ったのか、っていう話だったっけ、それ?うろ覚えだから違うかもだけど。 -- 名無しさん (2019-02-10 14 19 48) ゼファーさんには最も遠い概念かもしれない・・・ -- 名無しさん (2019-02-27 17 03 36) ↑あの人は自分自身飛べる鳥の癖にもっと高い所を飛んでる鳥を見て自虐しちゃうような人だから。自分が白鳥だって気づいてないか白鳥だったことに価値を感じてないアヒルのようなもん。 -- 名無しさん (2019-02-28 01 04 09) ゼファーさんは、飛べない、自分みたいな奴は空に行けなくて当然、という意識を当たり前のように抱え込んでる人だから。翼は割と立派なの持ってるくせに。そして、翼を持ってなくて欲しくて仕方ない人の前で愚痴とか言っちゃうのだ。 -- 名無しさん (2020-07-11 18 29 08) 名前 コメント